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1962-02-27 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十七日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 内田 常雄君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       内海 安吉君    小笠 公韶君       金子 一平君    島村 一郎君       辻  寛一君    藤原 節夫君       緒方 孝男君    田口 誠治君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁総務部         会計課長)   大濱 用正君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     佐藤 正二君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房総務         参事官)    安川  壯君         外務事務官         (大臣官房人事         課長)     魚本藤吉郎君         外務事務官         (大臣官房文書         課長)     高瀬 直智君         外務事務官         (アジア局賠償         部調整課長)  高杉 幹二君         外務事務官         (経済局経済協         力部政策課長) 片上 一郎君     ————————————— 二月二十六日  委員柳田秀一辞任につき、その補欠として長  谷川保君が議長指名委員に選任された。 同日  委員長谷川保辞任につき、その補欠として柳  田秀一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置を定める法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)  在外公館に勤務する外務公務員給与に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第四五  号)  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第八七号)  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置を定める法律の一部を改正する法律案及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案一括議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。緒方孝男君。
  3. 緒方孝男

    緒方委員 外務大臣はお忙しい中を出られたということでございますから、あまり長い時間をとろうと思いません。前回の委員会でもって、経済協力局設置について、その経済協力という問題についてお伺いしましたが、そのときには、川村政務次官の御出席がありました。いろいろ御説明を聞きましたが、その根本問題については、どうしても大臣の御説明もお願いしなければならないということで、大臣の御出席を願っておるわけです。  今の日本外務省においても、東南アジアはもとよりのこと、中南米など、至るところに経済協力体制を作ろうとしている。もちろん、その目的は、経済問題を通じて友好親善をはかっていこうという一つの問題もあります。しかし、いま一つの主たる目的は、日本経済伸展をはかろうといゆことが、その主たる目的であろうと私は考えるわけであります。そういたしますと、経済伸展をはかろうということになりますると、やはり今日までの情勢から見ましても、今後の貿易進行状態は、入超のような状態になっている、これをどうしても輸出黒字の出るような方向に進んでいかなければ、実際の経済伸展にはならない、こういうふうに考えるわけです。今外務省なり日本政府がこの経済協力を進めていこうというその方向は、必ずしも日本経済伸展に役立つかどうかということに、一つの疑問を持たざるを得ない。具体的に申しますならば、韓国との経済協力も盛んに進めておる。北朝鮮とも貿易を進めるようになっておるが、技術的にはまだ外務省  のところに大きな問題を残したままになっている。具体的に言ってみましても、NHKが契約した放送施設の契約など、すでに機械が全部できておるにもかかわらず、その技術家を招待することができないし、訓練をさせることもできないということから、その取引が具体的に進められないという困難な状態に立っている。そういたしますと、日本経済伸長に多少でも役立つところの海外貿易というものを、もっと広範に進めていくことが最も必要なことではなかろうか、こう考えるわけですが、それに対してはあくまでも門戸を閉ざしておかなければならないものかどうか、その点を一つお伺いしておきたい。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  今日、経済技術協力というものが非常に重要であることは、もう緒方さんよく御承知通りで、私からもあえてつけ加えることはございませんが、要するに、世界全体の平和ということを考えまする場合に、やはりそれぞれの国における経済繁栄ということが大きな課題でございまして、今日、東西の問題のほかに、いわゆる南北の問題ということがいわれておりますのも、このゆえでございます。すなわち、経済開発度の低い地区に対して、すでに工業化等が行なわれた地区から大いに経済協力をしなければならぬ、こういうことでございまして、その意味で、国際連合においても、いろいろな技術援助計画やら、、特別基金の制度やら、児童基金というようなものまで設けておりまするし、また、国際復興開発銀行、あるいは国際金融公社、あるいはIDAというようなものも作られておりまするし、また、コロンボ計画あるいは開発援助委員会、いわゆるダック、DACというもの、あるいはまたアジア生産性機構というものまで作られておるのであります。しかし、今緒方さんおっしゃいましたように、この経済協力を進めつつも、わが国輸出貿易伸長にも資しなければならない、これも当然私ども大きな課題として考えなければならぬことでございます。ただ、ここに二つの型がございまして、一つは、たとえば東南アジア、この地区にわれわれが貿易を大きく伸展させようということを考えます場合、やはりこの地区経済を大いに活発ならしめ、経済を発展せしめていかなければならぬわけでございます。その意味で、いろいろな借款を供与したり、あるいは先方単一農業地区モノカルチャー地帯を、もっと多角的に開発するということにわれわれが協力する建前があるわけでございます。もう一つの面は、実はナイジェリア等において一番顕著に見られておりますが、非常にこの地区には日本出超になっております。この地区では、ナイジェリアには日本商品は八千万ドルくらい出ておるのでありますが、日本ナイジェリアから買うものは八百万ドルくらいしかない。すなわち、ナイジェリアに対しては十倍からの出超になっておるわけであります。そうしますると、これではひどいじゃないか、こういう状態では日本商品も差別せねばならぬ、こういうことを先方考えるわけでございます。そこで、そう言って下さるな、あなたの方から品物が買えるようになればもっと買いますからということで、この地区経済協力のことを考えていく、こういう面でやはり経済協力を進めていくという点も現われてくるわけでございます。今お話のように、われわれといたしましては、あらゆる国に対して、開発度のおくれている国に対しては大いに経済協力をすることを考えております。しかし、経済協力といいましても、日本の資金というものは限られておりまするから、日本の得意とする技術面においても大いに協力する。従って、もっと経済技術協力を進めるということを考えておりまして、この対象はいかなる国に対してもさようなことを考えるわけでございまするが、ただ、一番むずかしいのは、東西両陣営の角逐の場になっておるようなそういう地帯、ことに共産圏の諸国に対する経済協力、これは今お話のように、非常にむずかしい問題でございまして、これはやはりその時期、方法等についていろいろ諸般の事情を考慮しながら、これを進めていくということにならざるを得ないかと存じておる次第でございます。
  5. 緒方孝男

    緒方委員 あまり普遍的な問題を論じておったのでは時間がかかろうと思いますから、きょうはそういうことはできるだけ避けたいと考えるわけですが、共産圏の問題については、いろいろとむずかしい問題があると言われておりますが、むずかしくしておるのはあなた御自身じゃないだろうかと私は考えるわけです。もっとすなおな姿でもって商売をなさったらよかろう。中国との民間協定の面を見ましても、今年度も相当多額なものが予想されております。ましてや、その中にも、私が聞きますととろにおいては、船舶発注ども行なわれておる。ようやく五百トンの船舶が一年がかりででき上がったというようなことですが、それも技術交換などがむずかしいから、なかなかできない。まだ希望としては、五千トン級の船舶三隻も発注の可能な状態にある。しかし、これも実際に仕事を進めようとするなら、向こうからの通商代表部でもこちらにおられるなら、そういうものは一切の障害が取り除かれるけれども、電報ばかりの商売というものはできがたいというのが、今日民間から起こっておる大きな障害になっておるわけです。そういうところの通商代表部を設けたり、または北朝鮮でも、御承知のように、昨年度の貿易の帳じりは相当黒字を出しておる。こういう問題も広げれば広げられる余地はあるけれども、それをむずかしくしておるのはあなたの方にあるのじゃなかろうかとわれわれは考えざるを得ないわけです。そういう面に対して、もう少し幅を広げるあなたの御意思はあるのかないのか、その点を一つお伺いしておきたい。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この面は、実は共産圏に対する貿易も、私ども決してなおざりにしておるわけではございませんで、これは確かに政治経済は別のものだというふうに考えております。ところが、実際に朝鮮の場合は、南の方の韓国とも貿易をやっておる。北鮮とも今緒方さんのお話のように貿易をやろうとしておる。こういう場合にはやはり比較の問題が出てくるわけでございまして、韓国側から、北鮮との交流に対しての非常に強い異議というものが出て参りまする場合に、現状においてはやはり日韓の間に国交がございませんものですから、私どもとしては、早く日韓の間に国交を回復して、国交を創始すると申しますか、始めて、しかる後に、今度は韓国側との間に、十分にそういう点について先方理解を深められるような状態になったその次の次元において、北の方ともまたいろいろ話をする、こういうことは可能だと思いまするが、現状において両方に話をいたしますととは、両方を失うという点も考えられますので、まあ、これもやはり時期を見てだんだんにやっていかなければならぬと思います。  それから、中共との関係でございますが、これは大へんこのごろ伸びてきております。御承知のように、昨年の一月から六月までは、日本から中共へ出ております品物はわずかに二百万ドル、中共から日本が買っております物が九百八十万ドルくらいでございまして、非常に少なかったのでございますが、後半期非常に伸びまして、往復でそれでも四千万ドルから五千万ドルくらい、非常に躍進をいたしましたので、現状において少し注意しておればまだまだこれは伸びる、かように思っております。中共との関係は、やはり国交はこういう状態でございまするし、非常にむずかしい問題でございますから、十分貿易貿易として終始しながら、全体としての外交的な面から、十分にわが国として大きく打撃を受けないようにしていかなければならぬ。小さいものを拾おうと思って、非常に大きなものを失う場合もございますし、全部が伸びればそれにこしたことはございませんけれども、これはやはり時期もございましょうし、その点についてはいろいろな方法考えていかなければならぬ、きめこまかくいかなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  7. 緒方孝男

    緒方委員 中国との国交を今後どうするかという根本問題については、外務委員会の論議にこれはおまかせしなければならぬ。この席上で私はその問題に触れようとは思いませんが、問題は、経済協力を各所に進めながら、日本経済伸展をはからなければならぬという必要から出てきておる。この問題と外務省自身が取り組まなければならぬ。そういう時期に、多少でも経済伸長貿易伸長に役立つあらゆる方法をきめこまかにとらえていかなければならぬということは、あなたも御指摘の通りなんですから、そうするならば、非公式でも、中国などの駐在員ですか、そういうものを日本にとどめておくことができないものかどうか、その点を、むろん、これも三年前にはだいぶん論議された問題ではありますが、新たな時点に立って考える御意思があるかないか、その点をお伺いしておきたい。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今、国と国との関係貿易考えます場合に、こちらの考え方もございますが、やはり相手側考えというものも、これは大きな要素でございまして、どうも現状においては、はなはだ残念なことでございますけれども、今の状況においてお話のようなことをするのは、ちょっと時期が早いんじゃいか、いずれまたそういう時期もあるかと思いますけれども現状においてはさようなことは考えておりません。
  9. 緒方孝男

    緒方委員 相手方の問題もあるというが、もし相手側がそれを望む場合には、外務省としては考慮してもかまわないという今の御説明ですか、その点を念を押しておきたい。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私の言葉が足りませんでしたかもしれませんが、このことだけでなくして、外交全般に対する相手方態度というものを含めて申しておるつもりでございます。
  11. 緒方孝男

    緒方委員 そうすると、まだ今のところ、時期としてわれわれはそういうことを考え意思はない、こういう御答弁のように解釈していいわけ一ですか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようでございます。先ほども申し上げたように、全般貿易が伸びておりますから、もう少しこの状況を見ていろいろ判断したらよろしいのではないか、かように思います。
  13. 緒方孝男

    緒方委員 韓国との将来の民間投資ということを考えれば別の問題ですが、通常の貿易の面で、将来の可能性が持たれるとお考えになっておられますか。普通の貿易面で、日本経済伸長に大いに役立つというふうにお考えになっておりますか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問の御趣旨がはっきりわかりませんのですが、われわれといたしましては、韓国との間の国交正常化するということは、もちろんけっこうなことであると考えておりますが、しからば、国交正常化したら非常に貿易が伸びるかというと、やはり韓国の国内の事情もございますし、先方生産物状況もございますし、それはある一定の限度があると思います。しかし、少なくとも、現在韓国に対しては、アメリカを初め、西独あるいはイタリア、あるいはフィンランドですか、いろいろ注目しておる国もございます。それで、近い日本が、いろいろな面で韓国工業化近代化に貢献をするということになりますれば、そうした面での輸出相当に伸びるんじゃないかというふうにも思っております。
  15. 緒方孝男

    緒方委員 私たちしろうと考えてみましても、韓国と普通の通商をやってみても、損失多くして得なしという面しか現状では考えられない。そういうところには、盛んに協力だ、国交正常化だと言って、非常に積極的に動いておる。もう一歩の障害を取り除けば貿易額相当に上昇する可能性のある面には、非常に冷淡な態度をとっておる。そこに私たち理解に苦しむ問題が出てくる。あくまでも日本政府としては、これをほんとう政治的に問題を一切考えようとしておる。政治的な理念貿易なり経済政策を行なうということになると、日本経済は、自民党政府のこの政治的理念でもって一切が犠牲にならなければならない。こういう形になると思うのですが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本が、戦争の結果、非常に打ちのめされて、領土も小さくなり、この膨大な人口を抱えて、これほど経済が復興して、民生も、それはいろいろな面で不満もございますけれども、一応向上をしてきた。これは、やはり日本貿易によって立っておる国でございますので、その面での政策が、十全ならざるも相当成功しておるという結果ではないかと思っておる次第でございます。今日の世界情勢は御承知通り、非常に一方に雪解けを望みながらも、東西抗争現実の姿がきびしいわけでございまして、その中に立って、われわれは、外交の方針を、やはり日本全体が十分に富み得るように、そういう方向を見定めて参りませんと、たとえば非常に局部的に考えて、ここに何か注文がある、それじゃこれに飛びつけというようなことになりまして、全体を大きく失うようなことがあっては、これは非常に危険なことである。この点はよく考えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  それから韓国の場合に、あそこには大した資源はないじゃないか、こう仰せられれば、私も大体そういうふうに思うのでございます。しからば日本はどうだ。日本は大した資源はない。しかし、それでもこれだけ繁栄してきている。やはりこれからの経済というものは、資源があるということはもちろん大事でございますけれども、その資源を他から持ってきて、うまく使うという使い方の仕組みでございますが、それがうまく成功するということになりますれば、相当経済が繁栄する。経済が繁栄し得れば、購買力が盛んになり、そこで、日本との貿易が盛んになるということは可能だと思います。
  17. 緒方孝男

    緒方委員 あなたのお説からいたしますと、韓国も今は資源はないが、将来にはまたどういう生産力を持ってくるかもわからない。今そういう現実が行なわれつつある。日本資本韓国に投下する。御承知のように、先方は六百万の労働稼働力を持っておる。その労働稼働力の中で五百万人が失業状態にある。日本は低賃金だと世界から言われておるが、日本労働者の低賃金どころではない。まさに賃金とは名のつけられないような状態でもって、労働人口があふれておる。ここに日本資本家諸君が目をつけて、この労働力をどう利用するかという、いわゆる加工産業を興そうという一つの動きがある。これが将来もしそういう方向に進むとするならば、日本加工産業は、韓国の安い低賃金で生産されて、日本の国に逆輸入してくるという現象は、おおい隠すことのできない現実になろうと思います。そうなった場合には、韓国の低賃金が、日本労働者の低賃金を引き起こす動機になりはしないかと私は思いますが、その点についての見通しなり何なりがありますればお伺いしたい。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国との間に、民間の方が、いわゆる保税輸出ですか、そういうことを考えておられるという話は私も聞いておりますけれども、直接その詳しい内容は存じません。しかしながら、一方においていわゆる低賃金問題でございますけれども、これはいろいろな見方がございます。名目賃金をドル・ベースで換算してみれば幾らという見方もございますけれども、最近労働省の人に聞いたのでございますが、実質賃金、要するに、食糧その他生必物資を買い得る賃金の価値ですね、それで割り出してみますと、イギリスが一八〇に対して日本は一〇〇というくらいで、そう著しい差異はない。アメリカに比べれば、アメリカは五五〇にもなる。アメリカイギリスの違いほどイギリス日本の違いはないということが出るという話を聞いておりますけれども、われわれとしては、賃金が実質的にも名目的にもふえることはけっこうなことだと思います。それについてできるだけやるのがいいと思いますが、しかし、一方において、隣国である韓国が非常に困っておる。それを、私どもが自分の国さえよければいいというので、見のがすこともいかがなものかというふうに、一方に思っておるのであります。非常に離れた、遠いところの開発をわれわれ一生懸命やっておるわけでございます。コンソーシアムという、各国が共同して債権国になってインドやパキスタンに金を貸すということでも、日本相当応分の寄与をし、十五年というような非常に長い期限の金を貸しておるわけでございます。そういうことから見ますれば、やはり近い韓国に、今お話しのように、賃金とも名のつかぬような非常な低賃金に苦しんでおる人たちがあるとすれば、私どもはそれに対して日本の力の及ぶ範囲の協力をするということは、人道上も当然じゃないか。経済学というものはだんだん変わってきて、最近の経済学は、ヒューマニティの経済学というか、やはりそういうことも考えていかなければならぬのじゃないかというふうに思っている次第でございます。
  19. 緒方孝男

    緒方委員 まことにけっこうなヒューマニズムですが、韓国には、あなたも御承知のように、アメリカは過去十年間に四十数億ドルという膨大な援助をしてきた。膨大な援助をしてきて、韓国経済が少しでもよくなったかというと、一つもよくなってこない。なぜかというと、その持っておる政治体制に、独善的な、官僚的な圧制者の姿しかなかったから、そういうふうな状態になっておる。現在の朴政権は、なおそれに輪をかけたような状態でやっておるじゃありませんか。アメリカでさえも、韓国援助はどぶの中に突っ込むようなものだとあの議会でもって嘆かせたと同様の状態を、日本が今度は繰り返そうとしておるわけです。これはアメリカの肩代りだと言っても過言じゃないだろう。そういうところに入れて、はたしてまた将来の希望が持たれるかどうかという、単なる経済的な不安も一つある。いま一つは、軍事政権でもって国民を押えつけておる線、それは、押えつける圧力と同様の反発が、国民の中になければならないと思う。当然また現実的に現われてきておる。そういう国民を押えつけていくような政府をささえるために、あなた方が経済援助をしたからといって、韓国国民がはたして喜ぶかどうか。あなたのヒューマニズムは、一独裁政権に対するヒューマニズムであって、韓国国民に対して必ずしもそれが友情的な処置ではなかろうと私は考える。その点の御解釈を私はお伺いいたしておきたい。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国が独立しましてから、李承晩政権というものは、非常な排日侮日の政策を根本的にとっておった。それが、日本と非常に近い場所にありながら、国交を妨げておったと私は思っております。最近張勉政権以来、この態度は変わって参りまして、おっしゃる通り、現在の朴政権は、これはクーデターでできたものでございますけれども、しかし、彼らは、私も直接その人たちに会ってみましての感想は、非常にまじめに韓国民生韓国経済の再建について考えております。そのクーデターという形にとらわれるよりも、彼らがほんとう韓国人を愛し、韓国の国というものを思うその情熱を、やはり買ってやりたいように思います。しかも、いつまでもやるというのじゃございませんで、明年の八月、これは民政に切りかえる、こういうことを声明しております。こういう話を申し上げますと、また非常に長い議論になるわけでございますけれども、前の張勉政権民三政権であった、今度来年九月に予定される政権民主政権である、その間の過渡的な——韓国経済を建て直し、民生を安定するために、また、今までのアメリカ援助等が非常に非能率であった、それを改善するための過渡的な政権である、こういうふうに私ども考えて、これとの間に国交正常化して、韓国ほんとうにデモクラチックなよい国になりますように、われわれとしまして、隣国でございますから、応分のことをやって上げたい、こう考えております。アメリカ援助はむだなことじゃないか——むだだった面もあるかもしれません。しかし、われわれは、アメリカよりももっと韓国のことはよく知っておる。われわれの知恵——緒方さんの知恵も十分拝借したいと思いますが、われわれ日本人の知恵で、われわれの能力をもって一つ隣国をりっぱにして、その国の国民にもしあわせを味わわせたいという気持を持っておるわけでございます。
  21. 緒方孝男

    緒方委員 あなたのお説からすると、今の朴政権が二年後には明らかに民政に移管するという。民政に移管するということは、何も朴正煕氏が政界を引退し、軍部が一切政治には口を出さないということを保証したものではないだろう。もちろん、それは総理大臣をかえるとかいうようなことも、形式的にはあるかもしれない。民議会の再建をはかるということも、形式的には行なわれるかもしれない。しかし、朴正煕自身が政界を一切引退するという公告も何もあるわけじゃありません。現在の姿でもって多少形を変えるということにしかわれわれは解釈しておらない。次に来る民主政権というものが必ずできるという保証は、これはどこにもないわけです。それに対して外務省は、形式的な言葉でもって国民をごまかそうとしておるとしか私たち考えるわけにはいきません。  もう一つ、私は、それ以前に、賃金問題でだいぶんうんちくのほどを示されましたが、韓国は御承知のように、農業国だ。純然たる農業国であった。今韓国の農村の疲弊というものは、一切に増して一番疲弊しております。この疲弊した原因は一体どこにあるのかと申しますと、アメリカの余剰農産物を大量に放出して援助をやったがために、韓国の農村はつぶれてしまった。今ではもう前借を持たない農業家というものは一人もおらない。自分で植え付けた農作物を自分の手でもって刈り取ることもできないような韓国の農村の姿だと私たちは伝え聞いております。こういう援助が、必ずしも韓国全体の経済の発展やまたは韓国全体の国民の幸福と連なっておらないということを立証しておるだろうと思う。その点、日本はそういうことをやらないのだというふうにおっしゃるかもしれませんが、一面日本のことを考えたら、私は心配になります。先ほども言いました保税輸出というような形で、もし低賃金労働を使って日本に逆輸入してくるような状態が起こってくれば、必然的に日本の低賃金を呼び起こさなければならない。低賃金がいい悪いの論争は抜きにして、その低賃金政策は一度蔓延するや、日本購買力というものに大きな打撃を与えてくることは事実であります。今世界の人が、日本は低賃金から脱却することによって経済を伸ばすととはまだ相当の余裕があると指摘されておるのは、その通りであります。この上に低賃金を引き起こして購買力を押えていく方向が、はたして日本経済の発展に役立つかどうかということは、労使の利害関係を抜きにして、考えなければならない問題じゃないかと私は思います。してみると、そういう保税輸出というような政策が、はたして日本の将来の経済のために有益なものであるかどうかということは、もう少し根本的に検討しなければならない問題ではなかろうかと思いますが、小坂さんの御見解を一つ承っておきたいと思います。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 低賃金の問題になりますと、東南アジアでかなり低賃金の国はたくさんあるわけであります。われわれはその国からも品物を買ってやらなければ、その国の全体の経済のささえができません場合には、これを考えるということはある程度やむを得ませんけれども、今お話しのように、ことさらに日本の低賃金を招来するようなものが日本に大量に流れ込むというようなことでありますれば、これは防遏しなければならぬと思います。やはりわれわれは何よりも自分の国の商業が大事でありますし、その産業に従事しておられる勤労者大衆が大事なんでありますから、それについては、十分その問題について特別に考慮することは当然だと考えております。
  23. 緒方孝男

    緒方委員 その論争は一応この程度にして、先に進ましてもらいますが、先般の委員会で、今日韓会談の進め方が——もちろん、向こうから出されているのは、財産請求権の金額の問題が非常にかけ離れておるということの話も伝え聞いておりますが、日本のこれに対する態度というものは、いわゆるふとんか着物かということであなた方は御折衝なさっておられるそうであります。厚いふとんをかければ、寝巻は薄くてもかぜは引かぬじゃないかというふうなことでもって、実際の財産請求権というものは、金額として相当に押えても、それをいわゆる経済協力の面でカバーしていこう、それでいいじゃないかというのが、池田総理と朴正煕氏との会談の中で了解点に達した、そういうようなことが盛んにいわれておりますが、そうしますと、先般の質問の中で、私が経済協力という中には民間の投資を含むのか言えば、それは民間の投資もやはり含まれておるということなんです。民間の投資が政府の慫慂に基づいて行なわれて、もし将来その投下資本に危険が生じた場合はどうするかという質問に対しまして、鶴見さんですか、投資保障協定というものを結び、保護処置をとっていく、こういうようなことを答弁されてきたわけなんですが、はたしてそういうようなことだけでもって個人の投下した資本を十分に保障させ得るというお考えがついておられるのかどうか、その点をあらためて大臣からお伺いしておきたいと思う。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民間の企業家の諸君が、今のお話韓国に興味を持たれて投資をされる、それを野放図に政府が保障するというようなことは全然考えておりません。やはり経済協力というものが行なわれる場合に、政府としてもこのことが望ましい、こういうものについて、何か特別の事情によって損失をこうむらされるというものについては、今お述べになりましたような投資保障協定というものが作られて、そのワク内で考えるということはあり得ようと思います。ただしかし、だれでもかれでも、やたらに金を持っている者が向こうへ出て、損したからみんな政府にと言われても、政府としてはとてもさばき切れるものでないということは、これは言うまでもないことだと思います。
  25. 緒方孝男

    緒方委員 そうすれば、どうもふとんの中身がさっぱりわからなくなってくるわけですが、経済協力という形で、現実には今建設省も外務省の方々も、民間の団体の方々と軌を一にし、歩調をそろえて、現地の調査を行なったり、また、商工会議所の会頭さんなどを出して日韓会談を進められておるのは、いわゆる経済協力の具体的な内容について、いろいろと日本の国として韓国政府と折衝しておるものと私は考えなければならない。この民間投資は、あくまでも政府考え方とは何ら関係がないのだということがはっきり言われるわけですか、その点を一つ説明しておいていただきたい。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今、日韓会談の代表に杉道助氏が出ておることをさしておっしゃるのかもしれませんが、これは現在商工会議所の会頭ではございませんわけで、私ども考えでは、あざなえる縄のごとく非常にこじれにこじれた問題をほぐすには、やはり民間で非常に苦労した、ああいう幅の広い、もののよくわかる人にやってもらうのが非常にいいのじゃないか、こういう個人的なことでございまして、杉さんが出たから商工会議所がどうこうというのは全然関係がないので、彼は全権として日韓会談に携わってもらっているわけでございます。  あとの経済協力の問題は、これは実際話してみないと何ともわからぬのであります。まだ話がそこまで出ておりません。韓国側は、経済協力の問題は日韓会談成立後と言っておりますし、日韓会談妥結後と言っております。日本の池田首相も同様のことを言っておられるので、これはまた会談の終わったあとに考えていくことで、現在いろいろな話を想定しての御質問に答えるということは、時期尚早であるということでございます。
  27. 緒方孝男

    緒方委員 そういたしますと、この日韓会談のいわゆる中心目標は、これはあくまでも財産権の請求である。こういうことが一番問題になっておりますが、池田さんは公式の席上でも言われたと思いますが、このことは、できるだけ金額を押える、他は経済協力一つカバーをしていきたい、こういう内容のように私は聞いております。先般、経済協力の内容とは一体何かということをお伺いしたときに、それは技術協力である、ときには資本貸与もある、無償ということは、これはタイ国と——いや、どこだったでしたか、なにを除いては、例外であって、他は考えておらないというようなことなんですが、そうすると、池田総理の言われた経済協力ということは、あくまでも技術協力だと、こう解釈してさしつかえないわけですか、その点の御見解をお伺いしたい。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どういう機会にそういう話があったのか存じませんけれども、一般的に経済協力という場合は、経済技術協力も含めて言っておるのが例でございまして、経済的な協力または技術のノー・ハウその他について協力するという場合も入っているわけでございます。韓国の場合の問題については、先ほど申したように、そこまで話がいっておりませんので、とやかく今私から申し上げる段階でないわけでございます。
  29. 緒方孝男

    緒方委員 どうも私は、話がいっておるとかいってないとかいうても、現在の状態大臣の御答弁とには相当開きがあるように思います。五台山地区開発問題やその他、具体的にすでに名目まできめての計画が進められておるということは事実である。これらの調査や折衝には政府の方々も参加しておるといううわさも私は聞いております。こういう話は全くないと言われるなら、これはあくまでも答弁を避けておるということしか私には考えられない。私はきょう一々の問題をお伺いしょうとは思いませんが、日韓会談の中において経済協力ということが盛んにいわれておるのだが、経済協力とは一体何だろうか、こうわれわれがせんじ詰めて考えてみれば、それはこの資本の投下であろう、韓国の民業を日本資本の手で引き上げるように協力いたしましょう、こういうことだとわれわれは解釈せざるを得ないわけです。韓国の民度を高めていこう、ヒューマニズム的に、貧乏をそのままにしておくわけにいかないと外務省自身がおっしゃるなら、どういう形で経済協力をするのかという問題に触れざるを得ないです。どういう形で経済協力をしていくかというならば、今のところ、私は民間企業の進出、民間資本の投資という以外にないだろうと思う。そのことは、政府経済協力のワク内に入っておらないというのは、これは私は詭弁にすぎないと思いますが、その点をもう少し明確にしていただきたい。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどからいろいろ、五台山ですか、そういう問題をあげて、経済協力が進んでおるというお話がございましたけれども、これは全然われわれは関知しておりません。実は私の個人の考え——これは政府考えでもいいですけれども、やはり韓国との間に経済協力の問題が当然起きると思いますけれども、それには調査をすることがまず必要だろうと思います。政府としてはまだ調査しておりませんけれども民間の方がいろいろものを考えられる場合に、やはり調査が前提でしょうということを私は常に申し上げております。その意味での調査というものはどのくらい進んでいるか、これは私は存じませんけれども、あまり進んでないのではないかというふうに、率直にそうお答えいたすほかないと思っております。いろいろ考えをお述べになりましたけれども、だいぶあなたの思い過ごしがあるのではないでしょうか、どうもそういうふうに思います。この問題は、私どもも十分よく調査して、協力ということを考えます場合には、有効な経済協力でなければならない、そういう観点からやって参りたいと思っております。
  31. 緒方孝男

    緒方委員 外務大臣考え方と民間の動きとが必ずしも一致しておらないのだといえば、それまでだと思う。しかし、一たび池田・朴会談が行なわれた直後から、日本経済協力という言葉が世間の表面に出て以後、日本の財界において韓国に対する資本投下ということが真剣に考えられ、かつまた、計画は進められているということはいなめない事実であろうと私は思います。してみれば、政府自身民間にそういうことを要請したかどうかは抜きとして、現実経済協力の一翼をにのうて、韓国資本投下が行なわれつつあるという現実を否定することはできないだろうと思います。それに対しては、政府は全く私たちの関知せざる問題だとはっきり言えるのかどうか、その点をもう一度明確にしてもらいたい。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先般来の新聞に出ておりました保税加工の問題、あるいは経済協力の問題などは、まだいずれも民間べースの問題でございまして、政府は全然関知しておりません。政府にその問題を持ってこられました場合は、政府としてはこれを審査いたしまして、ケース・バイ・ケースでいくということで、慎重に考えてみたいと思っております。どうも非常に膨大なる民間投資がすでに韓国に行なわれておるようにお話がございましたけれども、まだこれはないようでございますね。私はそう思っております。
  33. 緒方孝男

    緒方委員 もちろん、現実に工場が建ったとか、工事にかかったとかいうことは、まだ私も聞いておりません。しかし、すでに五台山地区開発はもとよりのこと、その周辺における工業立地条件の調査やその他に、湯川さんあたりはおいでになっており、あなた自身一つ十分にやってこいという——あなた自身が旅券を出したかどうかは知りませんが、外務省からは喜んで旅券は出されておるはずであります。まして、それに符節を合わせるごとく、建設省やその他の関係機関の方からも調査員が行ったとかいう話でありますが、そこまで私はわかりませんが、そういう事実をあくまでもない、ないと言われたのでは、私は審議にならないと思います。大きな声で言われぬなら、もう少し小さな声ででも言ってもらいたい。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ない、ないと言っておるとおっしゃいますが、あなたの方はある、あるとおっしゃるんで、これはどうも平行線になりますけれども、これは政府の責任者としてお答えしておるのでありまして、私の言うことには全然うそ偽りはございません。  それから旅券を喜んで出したとおっしゃいますが、旅券法の定めるところに従いまして、国家の利益に合致せざるものがあると認めざる場合は当然出すのでございまして、私は、湯川さんという方の顔も知りませんし、口をきいたこともないわけでありまして、私の関知せざるところであります。
  35. 緒方孝男

    緒方委員 あるとないとの違いならば^これは後日の問題に譲る以外にございませんが、かりに今後そういう問題が起こった場合にはケース・バイ・ケースで考えるという御答弁でありましたが、現実民間の方でそういう形が進められて、政府に対してその許可なりまたは協力要請が民間企業の中からきた場合には、政府はこれをどういう形で扱うか、その点の方針があれば承っておきたい。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ないので、まだ方針も立てておらぬわけでありまして、さましたら、そのケース、ケースについて、どういう性質のものか、よく調べまして判断したいと思います。
  37. 緒方孝男

    緒方委員 どうもつかみどころのないような形になるわけですが、韓国との国交正常化をはかるためには、懸案事項の解決とあわせて、経済協力という形でもって交渉が進められておる。その経済協力の中には、技術指導もあるでしょうし、資金の貸与もあるでしょうが、日韓関係の中においては、政府として公式な技術指導と、民間に移譲した資本投下という両面から、これを経済協力の中に含めて考えられておるものと私は考えるわけです。ところが、今の大臣の答弁では、民間の問題はあくまでも政府の関知せざるところ、こういうことでありますが、もし将来民間の中でこの計画が具体的に進められ、そして一般基準に基づいて韓国資本投下が許可された場合、政府政策としてやったのではなくて、あくまでも民間企業の自由意思、自由投資であるという形で問題が処理され得るものかどうか、その点について、念のためもう一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  38. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民間から話がございまして、政府もそれを適当なものであると認めて、政府経済協力のワクの中に——これは将来の問題ですから、どういうことになるかわかりませんが、かりにそういうものの中に入れたということになりますれば、それは政府としての全体の経済協力のワクの中に入る場合もあり得るわけであります。ただいまのところは、まだそういうものが全然出ておりませんので、はっきりとこれはどうだということを申し上げる段階にはございません。
  39. 緒方孝男

    緒方委員 あり得る場合の問題について、私は思い過ごしの一つの心配をしますが、その場合、もしその投下した資本に危険が生じた場合は、どうするおつもりなのか、その点を一つお伺いしておきたい。
  40. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 世の中で一番憶病なものは資本だ、こういうことになっております。投資環境が悪いと、資本は逃げちゃうわけですね。そこで、民間の方でも、そこに危険と知りつつ行く資本というものは、そうたくさんあるわけのものではないわけでございます。かりに政府として全体の経済協力の中で考えるという場合には、投資保障協定というようなものがかりにできますれば、そのワク内で考えるという場合もあり得るわけでございます。
  41. 緒方孝男

    緒方委員 いろいろお伺いしたが、われわれが一番心配するのは、今後日本の国内におけるいわゆる投下資本というものに限界が出てくれば、必然的に資本というものはどこかに進出をねらおうというのが当然なことである。今一番注目されておるのが韓国の投資ということである。韓国に、この膨大な労働力を利用する目的資本が投下されていく。しかも、それが、一方においては日韓会談正常化、こういう姿の政治的な動きの中で、資本投下が現実に進められていくということになりますと、やがてこれは将来韓国における投下資本が具体的に実現した場合には、必然的にこれは日本の権益ということにならざるを得ないと思います。かつての満州に投下した資本中国における事件、一切のものが日本の国の利権という形に転嫁されて、あの戦争を起こした経験をわれわれは考えざるを得ないわけですが、今後経済協力という姿のもとでもって外国に投下した資本は、政府みずからが責任をもってこの損失を補償するというものがない限り、やがてはこれは利権という形でもって、政府みずから日本の国の名においてこれを守っていかなければならぬと思いますが、その点についての御見解を承っておきたい。
  42. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国に限りませんで、今までインドネシア、あるいはフィリピン、あるいはビルマ、それぞれ経済協力をやるという約束をしておるわけであります。それで、どうもこれはさっき申し上げたように、投資環境の悪いところになかなか資本は出ていかない、従って、経済協力が動かない、こういう問題はあるわけでございます。私どもは、経済協力がわれわれのいわゆる権益である、これを守るために戦争も辞せぬというようなことは、毛頭考えないことでありますし、出ていった資本をあくまでも国の財政によって保護するということは、そのケース・バイ・ケースでありますけれども、一般的には、そういうことは原則として考えるべきではないというふうに思っております。
  43. 緒方孝男

    緒方委員 ケース・バイ・ケースという形で何しますと、将来それぞれの企業が今行なっておる調査の結果に基づいて申請を出してきたときに、原則として、投資環境はよろしくないという外務省の判定の上に立って、問題の処理に当たるのか。その点の考え方が、今ここでは大臣は、投資環境がよくないから行き手はないだろう、やり手はないだろうと言っておられるが、現実に出た場合、はたして外務省としては投資環境が好ましくないという判定の上に問題を審議されるのか、これはどうも御苦労様でございましたという形でやられるのか、そこに一つの大きな疑問が出て参ります。あなた方は、あくまでも韓国に対する投資というものは危険であるという見解の上に立たれておるかどうか、その点を一つお伺いをしておきたい。
  44. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 環境というものはしょっちゅう変わるものでございますし、また、その環境に対する事業の性質、これもいろいろ適合する性格のものもありましょうし、非常に不適格な事業の性質のものもあろうと思うので、これは一がいには言えぬことだと思います。私は、先ほどからケース・バイ・ケースということを申し上げております。それぞれの時点において、それぞれの事態に応じて判断すべきものである、こう思っております。
  45. 緒方孝男

    緒方委員 大臣は、先ほどの答弁の中で、韓国だけでなく、インドネシアやその他の地域にもそういうことが行なわれておる、こう言われておる。むろん、世界各国いずれのところに投下しようとも、日本の立場としては、邦人の財産擁護という原則の上に立って問題は処理されなければならぬが、しかし、そうであればあるだけ、なおかつ、政情不安なところには、あくまでもこれを避けさせるのが政府の務めであろうと私は考えるわけなんです。大臣の御見解では、今は軍事政権であるけれども、やがては民政に移して、韓国も政情の安定化が得られるだろうというふうな御見解のようでありますが、われわれの見解からするならば、非常な危険な状態の中に立たされておるということを考えるがゆえに、韓国への投資に対しては一そう神経をとがらせざるを得ないわけなんです。前会も申し添えたわけですが、あなた方の日韓会談を進める基本の問題は、あくまでも今の朴正煕政権の永続化をはかり、今の政治体制では困るけれども、形式的には民政に移したような形にして、あくまでも反共のとりでとしての国柄を守ってもらいたいし、そうあるべきであるし、そのために協力をしていかなければならないというところに、一切の出発点が置かれておるだろうとわれわれは推測せざるを得ないのでありますが、現実にそういう形で、私は、民主政権の永続でなくて、反共の軍事的な力の政権の存続のために協力態勢が作られておるというふうに考えますが、大臣はそうじゃないという証拠があるならば、御説明願いたい。
  46. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほども申したように、韓国日本は非常に近い国である。ところが、韓国の李承晩大統領時代以来反日の政策をとってきておる。ところが、それが変わってきた。そこで、われわれの方も胸襟を開いて、近い国でもあるし、これと仲よくしたい、これが基本理念でございます。そこで、お前は反共であるというお話ですが、私も確かに反共でございます。同時に、私は、緒方さんもやはり反共じゃないかと思うのであります。いかがでございましょう。質問は許されませんから、私の推定で申し上げます。共産主義でない方がいい、韓国は共産主義にならぬ方がいい、これは緒方さんもやはりそうお考えではないかと思っておる次第であります。
  47. 緒方孝男

    緒方委員 共産主義でよいやら悪いやらは抜きにして、その一つ政治理念のもとに、二千万近い国民に銃剣を突きつけておるのは好ましい姿ではないのです。共産主義がいい悪いの問題でなくて、問題はそこにあるのです。それは反共の旗のもとに住民を圧迫し、貧苦のどん底に落とし込んでおるという姿が、われわれは好ましくない。そういう好ましくない姿をささえていくということには、好みだからやむを得ませんが、非常に危険が伴っておる。その危険の判断に、私は、真剣に考えなければならない問題がありはしないかということを憂えておるわけです。反共なれば弱かろうと強かろうと、弱ければおれたちが加勢してやろうというような、簡単な問題ではないと私は思う。今の朴政権がとっておる政治のやり方に対しては、国民の中には、あなた方が出しておる資料の中から見ましても、容易ならざる事態が考えられておると思うのです。それを安定政権というような形にして日本資本の投下を許す場合、先は一体どうなるかということを心配するのが、日本国民として当然な義務ではないかと私は思う。はたしてそういう政情の安定というものが、あなたの目から見て確信が持てるのかどうか、もう一度念のためにお伺いしておきたい。
  48. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 朴正煕が政権をとりましてから、非常に熱心に不正腐敗を剔決するということに努力しておりまして、その第一段階を終わって、今度は経済再建の段階に入った、こういうことを言って、一生懸命やっております。クーデターというものは、好みからいえば私も決して好きではありません。しかし、これは他の国の事情にわれわれが容喙して、いいとか悪いとかいってみても、その国の事情なんでございますから、われわれの希望としては、民主的な政権の方がいいと思っております。しかし、朴正煕政権もやはり来年の八月には民主的な政権に切りかえると言っております。国連憲章は尊重する、日本との関係はよくしたい、こう言っておるのでありますから、やはり先方がそういう気持であるなら、われわれも胸襟を開いて大いにこれと交わって、そして韓国がりっぱな民主国になるということが一番いいのだと思います。
  49. 緒方孝男

    緒方委員 これは論議を繰り返してもやぶ医者同士になろうと思います。この病人はあと一年持てるのか、三カ月しか持てないのかという議論をしてみても仕方がありませんが、あなたのおっしゃるより、この病人はまだ相当長持ちがするという前提の上に立っても、私は、これは正直にいえば、いつかは死ななければならない病人じゃなかろうかと思う。そのときに、跡を引き継ぐであろう国民の側を敵にするような協力態勢をとっておくということは、非常に大きな危険が考えられる。アジアの諸外国、いわゆるインドネシアその他において日本資本が投下されておるというが、ここには急激な変化は予想されないだろう、変化をしても、一定のルールに基づいて変化するだろうという一応の見通しがつくのですけれども韓国における状態考えるというと、今、朴政権政治のもとに協力態勢をとって日本資本を投下した場合、一たんこの病人が死んだときに、この病人に加勢したのは一体何者だということでもって、この投下された資本に対する敵意というものは、除去することが困難であろうと思う。そうしてみると、いかなる通商条約を結んでおいたからといって、その資本の安定ということは保証できないわけです。これは見方が違うといえばそれまでですが、もし危険が起こった場合には、大臣はどうなさるおつもりか、(「そんなに大臣をしておりませんよ」と呼ぶ者あり)その点を一つお伺いしておきたい。
  50. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そのクーデターの問題で、私ども東南アジアの国でクーデターの起きておる国をかなり見ておるわけです。たとえばビルマで一九四八年にネ・ウインがクーデターを起こして政権をとっており、日本はその政権との間に国交を回復しておるわけです。あとできたウー・ヌーの政権とも仲よくやっておるわけです。タイはピブンがクーデターを起としており、そのあとにサリットがまたクーデターをやっておる。この政権とはずっと仲よくやっております。それから憲法云々の問題になりますと、スカルノが一九四五年の憲法に戻しておりまして、われわれの言っておる実際上の議会活動はないわけです。エジプトではナギブがやって、そのあとでナセルがまたクーデターをやっておるわけです。そういうふうに、クーデター政権ができたということとそのあとのつながりということは、あまり問題になっておらぬのでございます。この点を考えなければいかぬ。  それからことのついでに、せっかくの御質問でございますから、私、大臣をやっておる間にお答えしますと、実は東南アジアの国の民主政治クーデター関係について、私に非常におもしろいことを言ってくれた人があるので、その学者の説を御紹介しますと、東南アジアの国の民主政治は、いわゆる近代的なデモクラシーではないところが多くて、議員が政活をやっておるわけですが、議員の間には公私の別がない。たとえば大臣になるというと、それが自動車を買って、でかい家を建てる。そうすると、一般の会社の社長が自動車を買って、家を建てたのと同じように、あれは大臣にもなったのだから、政府の金を使ってやるのもあたりまえだというふうな感じを持っている。そうすると、そこに一方にはインテリ層がある。そのインテリ層は、官吏あるいは軍人の中から出てくるわけです。これは西欧流の公私の別のわかる教育を受けておる。そうして、これは見ておれぬ、不正、腐敗だということでクーデターをやる。国の近代化の過程としてそういうものが行なわれておるので、あながち日本の軍隊が政権を支配したような、そうしてまた、無謀な戦争をやったようなのとは少し違うのではないか、こういう説を私に言って下さった学者があるので、私も非常におもしろい見解だと思っておるので、御披露させていただいたわけであります。お前は責任を持つかというのでありますが、もちろん、私としては、この際日韓国交を回復するのがよろしいと思ってやっておるわけでございます。
  51. 緒方孝男

    緒方委員 あまり長い時間引っぱるのは約束に反しますから、適当に打ち切りますが、今、諸外国でクーデターが起こって、そのあとの利権に何ら侵害を行なわれていなかったとか、平穏無事に済んでいっているというような大臣のお考えですが、それによって韓国を見てはならないと思う。今韓国の中におけるところの民衆の動きは、あなた方には届かないかもしれませんが、われわれのところでは幾多の新聞を見ることができます。それらの新聞から見ましても、日本の反動家と韓国朴政権とが結託して、こういうことをやろうとしているというような鋭い論文が幾多出ております。それは共産主義者がやったのだろうとお考えになるかもしれませんが、張都暎やその他張勉あたりのような、かつて平凡な反軍部的な人に対してまで弾圧が下されておる。そういう人たちの中からですら、すでにこの朴政権の打倒運動が——こんなことは朴さんに聞こえては悪いかもしれませんが、やはり韓国の動きの中に、今日顕著に現われてきておる。してみますと、アジアの諸外国の中におけるクーデターとは違って、今の韓国の民衆の中には、おれたちを苦しめておるのは朴であるし、一緒に結託しておるのは日本政府だというふうな感情すら、今日ある状態であります。もし万一韓国朴政権が倒れたということになれば、朴政権に対する憎しみと日本に対するところの憎しみとは、並行して行なわれてこなければならないであろうことをわれわれは憂えざるを得ないのです。そういう場合に、アジアの諸地域のクーデターで安全だったから、韓国においても安全だろうというふうな見方は、非常に皮相な見解と言わなければならないだろうと思います。大臣が安全度の上に立って発言をされるのですから、それ以上言っても仕方がありませんが、かりに日本のいわゆる国策として民間投資が從慫慂され、それが一年後か、二年後か、三年後かはわからないが、いつかは危険に瀕した場合に、やがてかつてのごとくに日本の権益擁護という名目に隠れて、韓国の内政の干渉になったり、かつまた、自衛隊の出動すら促さなければならないような状態になりはしないかということを非常に危険に感じておるわけです。民間資本が投資するのは民間の自由意思だ、いかなる損害があろうとも、危険を覚悟でもって投下したものは、その危険がきたからといって、政府の保障でないということをはっきりこの際言われるのかどうか、その点を明確にしておいていただきたいと思います。
  52. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、非常に自分では自由主義な人間かと、お話を承って思うのですが、今どき韓国にそういう企業進出をして、そうして、それを奇貨として、権益擁護の名において韓国の内政に干渉していったり、あるいは自衛隊まで出動させるようなことを考える人がいるのかと思って、実は非常に驚くような気がするのでございます。われわれはそういうことは全然考えておりません。
  53. 緒方孝男

    緒方委員 しかし、あなたが考えておるとかおらぬとかいうことにかかわらず、現実資本が投下されたら、そうならざるを得ないじゃないですか。その必然性を、われわれは、あなたがそれまで外務大臣のいすにおるかおらぬかの保証がつかないときに、私はあなたに、どうですかこうですかと言うのもおかしいかもしれないが、しかし、あなたがやっておることが、そのまま将来にどういう姿になって現われてくるかということが心配であるから、私は、今のそういう作業を進めておるあなたに対して反省を促しておる。それを、そういう軍隊まで出してどうじゃこうじゃということを考えるような者がおるかと一笑に付されるけれども、これが先になって現実になれば、そうならざるを得ない必然性を持っておるということを考えるならば、あくまでも経済協力という姿でいくならば、技術協力は議題に載せても、その他一切政府のあずかり知らないことだということを、厳然として、日本資本家諸君、そういう動きをしておる諸君に警告を発してもらいたいと思いますが、警告を発するだけの御意思があるかどうか、一つその点をお伺いしておきます。
  54. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まだどの程度進んでおるか、実は私と緒方さんの見解がだいぶ違いまして、私はそんなに行っていないと思うので、この段階において警告を下すことは考えておりませんが、なお、せっかくのお話でございますから、検討いたしましょう。
  55. 緒方孝男

    緒方委員 これで終わります。
  56. 中島茂喜

    中島委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  57. 中島茂喜

    中島委員長 次に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず最初に、本案に関連して、政府より、昭和三十七年度防衛庁関係予算について説明を聴取することといたします。防衛庁長官藤枝泉介君。
  58. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 昭和三十七年度防衛庁予算につきまして、その概要を御説明いたします。  昭和三十七年度の防衛庁の歳出予算の総額は千九百九十三億九千八百四十七万九千円でありまして、これを昭和三十六年度の歳出予算額千七百四十八億八千九百十七万八千円(補正予算を含む)に比べますと、二百四十五億九百三十万千円の増加となっております。  このほか、国庫債務負担行為として、航空機の購入について百四億四千六万五千円、器材の整備について三百九億七千二百五十万円、弾薬の購入について二十一億五千五百七十九万二千円、施設の整備について十四億四百十九万円、艦船の建造について十九億千五百十三万二千円、計四百六十八億八千七百六十七万九千円を計上し、さらに継続費として、昭和三十七年度甲型警備艦建造費三十億五千五百六十六万二千円を計上いたしております。  なお、昭和三十五年度甲型警備艦建造費につきましては、建造計画の変更等に伴う建造費の増加と建造費の一部を後年度に繰り延べるため、総額、年限及び年割額を改訂し、昭和三十七年度は六億五千九十万円を歳出分に計上し、また、昭和三十五年度潜水艦建造費についても建造工程の変更に伴って建造費の一部を後年度に繰り延べるため、年限及び年割額を改訂することといたしております。  また、職員の定数につきましては、防衛庁の昭和三十七年度の予算上の職員定数は、自衛官二十四万三千九百二十三人、自衛官以外の職員二万七千百七十九人、計二十七万千百二人でありまして、これを昭和三十六年度の予算上の職員定数に比べますと、自衛官千九百十四人、自衛官以外の職員において八百五十四人、計二千七百六十八人の増加となっております。  次に予算案の内容について申し上げます。  まず基本方針といたしまして、三十七年度予算案はさきに国防会議において決定された第二次防衛力整備計画の初年度として、この諸目標を円滑に達成することに主眼を置くとともに、長期的観点から計画達成の基盤の確立に努め、あわせて現下の諸情勢に対応し得るよう努めており、特に以下の諸点に留意いたしております。すなわち、  第二次防衛力整備計画の基本方針にのっとり精鋭なる部隊建設のため装備の近代化を推進するとともに所要の人員の充実確保に努め、その基盤となる国防意識の高揚をはかっております。  災害派遣能力の強化及び航空交通管制機能の増強による民生協力を進めることといたしております。  基地問題対策の一環として、航空基地周辺の騒音防止対策の強化をはかることといたしております。  以下組織別に予算の内容につき申し上げます。  陸上自衛隊につきましては、歳出予算におきまして七百九十五億千三百三十七万千円、国庫債務負担行為におきまして百六十三億千三百八十二万六千円となっており、職員定数におきまして自衛官十七万千五百人、自衛官以外の職員一万三千四百五人、計十八万四千九百五人となっております。  その主要な内容につき申し上げますと、昭和三十六年度に引き続き、北部、東北、西部方面隊の二個管区隊、三個混成団を五個の師団に改編し、十三個師団態勢を完成し、防衛力及び警備力の向上をはかるとともに、既存部隊の改編によってナイキ一個大隊等を編成することを目途としてその準備業務に着手し、また、前年度に引き続き第七混成団の機甲化の推進と全般装備の充実改善を行ない、一方予備自衛官二千人の増員を行なっております。  海上自衛隊につきましては、歳出予算におきまして四百七十四億六千六百五十三万二千円、国庫債務負担行為におきまして百六十二億八千四百六十万九千円、継続費におきまして冒頭に申し上げた通りであり、職員定数におきまして、自衛官三万三千二百九十一人、自衛官以外の職員四千五百二十二人、計三万七千八百十三人となっております。  まず、三十七年度就役艦の海上要員、航空機の増強に伴う航空要員、並びに後方補給及び教育関係要員確保のため、自衛官千百九十四人、自衛官以外の職員五百十八人を増員しております。  次に艦船につきましては、第二次防衛力整備計画の初年度として計画した甲型警備艦一隻二千トン、駆潜艇一隻四百八十トン、中型掃海艇二隻六百八十トン、高速救命艇一隻四十五トン、雑船七隻千二百三十トン、総計十二隻四千四百三十五トンの増加を予定しております。  これにより昭和三十七年度末の保有艦艇は、四百八十隻十四万六百九十一トンとなる予定であります。また、昭和三十七年度に増加する航空機として、昭和三十三年度より国内生産を開始いたしましたP2V7対潜哨戒機十五機の生産を行なうとともに、新たにP2V7六機の新規継続生産を開始し、また対潜ヘリコプター十一機、練習機十八機を購入することにしておりますので、これらにより、昭和三十七年度末の海上自衛隊の就航航空機は二百四十四機となります。  航空自衛隊につきましては、歳出予算におきまして六百六十三億六千九百十万四千円、国庫債務負担行為におきまして百三十三億八千六十四万四千円となっており、職員定数におきまして、自衛官三万九千五十七人、自衛官以外の職員五千三百五十八人となっております。  その主要な内容につき申し上げますと、まず、防空警戒態勢の基盤を造成し、あわせて教育体系の確立をはかるため、F104J飛行隊及び術科教育本部、補給処の編成等に要する自衛官七百二十人、自衛官以外の職員八十三一人、計八百二人を増員することといたしております。  次に航空機につきましては、実用機について前年度に引き続きF104J及びジェット中間練習機の生産を行なうとともに、救難ヘリコプターの購入をはかりますので、昭和三十七年度末の航空機総数は実用機五百六十三機、練習機五百二十九機、計千九十二機が就航することとなります。  内局、統合幕僚会議及び付属機関につきましては、歳出予算におきまして六十億四千九百四十七万二千円、国庫債務負担行為におきまして九億八百六十万円となっており、職員定数におきまして自衛官七十五人、自衛官以外の職員三千八百九十四人となっております。  その主要な内容につき申し上げますと、技術研究本部におきましては、前年度に引き続き、研究開発の充実促進をはかっており、その他付属機関におきましても所要の職員を増員し、合わせて二百五十三人の増員を行なっております。  次に、昭和三十七年度調達庁の歳出予算要求額について、その概要を御説明いたします。  昭和三十七年度の調達庁の歳出予算の要求総額は八十七億九千百三十六万三千円で、これを昭和三十六年度の予算額八十二億四千五百十五万七千円に比べますと、五億四千六百二十万六千円の増となっております。  これを項別見ますと、調達庁十六億九千七百八十八万二千円、施設提供等諸費六十億七千三百八万六千円、調達労務管理事務費六億七千六百四十六万七千円、国際連合軍等関係補償費三億四千三百九十二万八千円、であります。  次に各項別について御説明いたしますと、  調達庁  この項より支出するものは調達庁の業務遂行に必要な人件費及び物件費でありまして、この要求額は十六億九千七百八十八万二千円であり、前年度の十六億二千二百万五千円と比較いたしますと七千五百八十七万七千円の増額となっております。  増額のおもなるものを申し上げますと、人件費の給与ベース引き上げに伴う八千五万四千円、外国旅費一百一万七千円、光熱水料一百七十九万三千円、自動車交換差金二百二十五万円、各所新営一百十万二千円、その他一百四十五万四千円、計八千七百六十七万円であります。一方減額のおもなるものは、返還物品処分費九百三十二万九千円、職員旅費九十一万四千円、委員等旅費九十六万八千円、その他五十八万二千円、計一千一百七十九万三千円でありまして、差し引き七千五百八十七万七千円の増額になったものであります。  施設提供等諸費  この項より支出するものは行政協定及び地位協定により、在日合衆国軍隊に対する施設区域の提供に伴って生ずる経費及び駐留軍の行為に基づき生じた損失の補償等に要する経費であります。  要求額は六十億七千三百八万六千円でありまして、これを昭和三十六年の五十六億六千二百三十七万七千円と比較いたしますと、四億一千七十万九千円の増額となっております。  増額のおもなるものは、施設提供等管理費のうち、借料関係一億一千九百八十六万九千円、不動産購入費一千四百二十八万七千円、施設提供等関連補助金のうち防音工事五億七千三百五十八万三千円、新規提供関係五千五百六十万七千円、各省施行予定分八千五百七十四万五千円、施設提供等補償費のうち、新規提供関係二千百四十九万八千円、漁業補償六千九百三万二千円、その他に四千百二十六万一千円、計九億八千八十八万二千円の増額となっております。  減額のおもなるものは、施設提供等管理費のうち、各省執行予定分一億一千八十四万二千円、施設提供等関連補助金のうち、防災工事八千六百八十九万二千円、返還道路関係一千六百七十五万三千円、施設提供等関連補償費のうち、中間補償一億一千八百八十五万一千円、返還財産関係一億一千六百五十四万円、特損関係六千四百六十一万三千円、事故補償一千八百八十二万五千円、その他に三千七百二十五万七千円、計五億七千十七万三千円の減額でありまして、差引四億一千七十万九千円の増額になっております。  調達労務管理事務費  この項より支出するものは、駐留米軍及び歳出外資金諸機関の使用する従業員の労務管理事務を処理するため必要な経費であります。  この要求額は、六億七千六百四十六万七千円でありまして、これを昭和三十六年度の六億八千七百三十二万七千円と比較いたしますと、一千八十六万円の減少となっております。減少のおもなる理由は、退職見込み従業員数の減少に伴う特別給付金及び職業訓練地方公共団体委託費の減額によるものであります。  国際連合軍等関係補償費  この項より支出するものは、国連軍協定を実施するため及び旧連合軍に提供した土地等の返還にかかる各種補償、並びに占領期間中の人身被害者に対する事故給付金に要する経費でありまして、この要求額は三億四千三百九十二万八千円で、昭和三十六年度の二億七千三百四十四万八千円と比較しますと七千四十八万円の増額となっております。  増額は事故給付金七千三百二十七万二千円であります。  減額のおもなるものは、返還等補償費二百四十九万二千円、その他三十万円、計二百七十九万二千円でありまして、差し引き七千四十八万円の増額になっております。  以上が、防衛庁並びに調達庁の予算の概況でございます。      ————◇—————
  59. 中島茂喜

    中島委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  この際、政府当局より発言の申し出がありますので、これを許します。防衛庁小幡教育局長
  60. 小幡久男

    ○小幡政府委員 P2Vのその後の事故調査の中間報告と、昨日起こりましたメンターの事故について御報告申し上げます。  P2Vにつきましては、その後、警備艦、掃海艇あるいは施設艇等、自隊の艦艇並びに航空機、それから地元所在の漁船等の協力を得まして、ずっと機体の捜索を続けておりますが、今日までに発見いたしましたものは、翼の破片とか、あるいは外翼のタンクとか、あるいは右の翼の方の主輪といいますか、車輪のついた足でございます。それから前輪、レーダー、アンテナといったものが、断片的にあがって参っておる状況でございまして、機体の本体は現在まだ的確につかめておりません。現在大体の推定位置は六、七十メートルの海底にあると思われまして、潜水夫を入れればわかるのでありますが、何分海底が深いのと、寒中でありますので、日本にそういう潜水夫がおりません。やむを得ず施設艇、掃海艇を利用しまして、ロープによって掃海を実施しながら海底の捜査をやっておる状況であります。なお、二十日には、「つがる」がジュラルミン製の相当大きなものらしいという実体を電波で探知したということは入っておりますが、これが当該の機体であるかどうかははっきりいたしません。  その後、これと並行しまして、P2Vの当時の遭難場面を実際に再現いたしますために、二月八日に所在の航空機を飛ばしまして、当時の目撃者であります巡視船あるいは漁船等の乗組員の現場の証言を得つつ、同じ飛行状況を実験したのでありますが、その実験をした結果、今まで事故原因と推定されていますのは次のような状況であります。  まず、天候の変化とか、管理、支援上の過誤とか、指揮、指導上の過誤はまずなかったようである。しかし、当時やはり上空に雲がございまして、高く飛翔することが困難な状況であった。従って、機長はおそらく上空を避けて、訓練計画を変更しまして、低空に訓練を持っていったと思われる節があります。そういたしまして、低空で非常に高速で旋回をしております。大体  一番低空で五十ないし六十メートルのところを相当急速で右旋回をしております。そのときにおそらく何かの過誤があったと思われますが、その過誤の原因は、現在の推定では、操縦上の過誤かあるいは方向舵——方向を決定するかじでございますが、あるいは昇降舵——尾翼に通じまして、飛行機が上昇するかじであります。こういう方向舵あるいは昇降舵の欠陥であったか、あるいはエンジンが突発的にどうこうしたとか、大体この三つしか原因が推定されない状況であります。操縦につきましては、当時の機長であります余田二査は、御承知のように、P2Vをアメリカから回航して参った非常に練達堪能の士でありますから、よほどのことがないと考えられないと申しておりますので、公算といたしましては、方向舵あるいは昇降舵の故障、あわせて何かエンジンの若干の事故があったのではないかというふうに、事故原因の範囲が現在狭まっている状況であります。  現在のところ、中間報告としましては、右のような次第でございます。  それから次に、昨日起こりました小月飛行部隊の所属のメンターの事故につきましては、当該飛行機は学生の教育中であります。学生は三十五時間メンターで教育を受けまして、一人前になって次の段階へ進むというコースを習っておったのでありますが、三十五時間のうちで三十二時間教育を終えまして、あと三時間でメンターを卒業するという直前でございました。八時五十五分離陸して、九時四十分に日本海側寄りの角島と本州との中間におきまして、現在判明しておりますととろでは、高圧線に触れて落ちたものであるということであります。直ちに飛行機、ヘリコプターあるいは掃海艇、巡視船を派遣いたしまして、ようやく機体と死体とは収容いたしました。  なお、教官の技能という点から申しますと、T34は百二十六時間、T6は百二十三時間、T33は百十七時間、計三百六十六時間の航空実績を持っておりますので、教官としては資格がございます。最近この種教育訓練中の事故がいろいろ多うございますので、われわれとしましても、教官が適当に学生の練度をつかまえて、その練度に応じて相当の安全度を見越して訓練をしておったかどうかという点に重点を置きまして、現在事故調査委員会を督励して原因の究明に当たる一方、監察官を急派いたしまして現地調査をやっておる状況であります。  簡単でありますが、御報告申し上げます。
  61. 中島茂喜

    中島委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。石山權作君。
  62. 石山權作

    ○石山委員 予算のことは、日を改めて、来年度の国防計画とあわせて論議の対象にしなければならぬと思いますが、当面の飛行機事故の問題について、私の方でやってほしいという点を二、三申し上げておきたいと思います。  この前、P2Vの場合も、その優秀性とコメット機を対象にしたわけでありますが、コメット機は器材の耐久力の認定に欠点があった、こういうことが発見されて、それ以来、コメット機は世界的に名誉を回復して、優秀な成績をおさめているわけであります。いろいろ苦労があると思いますけれども、一番優秀だといわれており、金額にしましても七億円をこえておるP2Vでございますから、やはり整備をちゃんとなさって点検をしてみる、こういう労苦をこの際いとうてはならぬということです。どうも国会が始まると、問題が起きて、お互いさま恐縮に思ったりなんかしているわけですが、この前も申し上げたのですが、この際、やはりもう一ぺん訓練の度合いを再検討してみる必要があるのじゃないかとつくづく思うわけです。訓練の過剰と申しますか、そういうことに原因があったのか、今言ったような器材に欠点があったのか、あるいは整備者の立場、そういう点が落ちておったのか、この三つです。器材の未調整か、練習過度かへこういうことだと思うのです。そういうところを見きわめないと、やはり事故が絶えないだろうし、ひんぱん度が多いのではないかというように思うのです。これはこの前も私資料を見せていただいて、漸減の方向をたどっておることは確かのようでございますけれども、それにしても多過ぎるという感じがするのでございます。これはまたあとで報告していただけるだろうと思うけれども、練習日程、こういうようなものをもう一ぺん再検討して、ここに誤りがなかったら、そういう格好で報告していただきたい。調べてみたら、ここに欠点があったので、練習の場合にこういうふうに変えてみました、戦闘実務についた場合もこういうようなことをやってみました、検討したならば、こういう報告が出るのではないかと思うのです。そういう事故をまず防ぐ。器材の場合、皆さんの方で調べろと言っても、これはなかなかむずかしいし、時間もかかるだろうが、これもそれぞれ時間をかけまして、在来の機種を調べたり、耐用年数等も十分勘案する必要があるのではないか。最も気になるのは、例のP2Vの問題でございますが、これはやはり根本原因がどこにあるかということは、この際しつように追及していただかないと、今年度の予算で見ますと、またふやすようでございますし、これも、しかも国産化されるという前提に立っているわけでしょう。そうすると、その欠点はいち早く探しておかないと、今度、日本の業者自体も、いろいろ非難の的にならざるを得ないというような関係になると思います。部品は、あるいは向こうからくる。しかし、こっちで使う器材もあるわけでしょう。その器材に対応していかなければならぬのではないかと思うので、その点はやはり研究機関等を通じて至急に体制を整えなければ、予算は盛られる、国産化は進んでいく。しかし、それは自信がないような過程の中に進んでいくとすれば、それはまた低空五十メートル——いつももっと下がってやるのでしょう下がって練習するはずですね。そうすると、なおさら危険性を感じて、われわれはそれを黙認した形でその練習をよろしいというように見ておくことはできないと思うのです。そんなに低空させてはいけませんよということを言わざるを得ないのではないかというようになるのでありますから、きょうは、質問というよりも、そういう点を要望いたしまして、事故が起きないように、その欠点を追及していただく。その練習過程の問題は、また後ほどの中間報告の中で承ることができるのではないかと思うので、教育関係としては十分注意をしていただきたい。
  63. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 御指摘の点は、まさにその通りなのでございまして、事故原因、ことにP2Vにつきましては、目下その本体の引き揚げに全力をあげて——もちろん、まだ帰らない遺体七体あるわけでございます。その遺体の収容と本体の引き揚げに全力を注ぎまして、そうして、事故原因の究明をどこまでもやって突き詰めて参りたいと思っております。  また、ただいま教育局長から申し上げましたように、最近練習生、学生による事故等が相次いでおりますので、練習の方法あるいは教官の学生に対する把握の仕方、その他についても十分究明をいたしまして、改むべきものは改めたいと思いますし、また、それらの中間的御報告をできる段階になりましたならば、当委員会にも御報告申し上げたいと存じます。
  64. 中島茂喜

    中島委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる三月一日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十四分散会