○栗原委員 ただいま議題となりました
簡易保険郵便年金福祉事業団法案に対し、私は、日本社会党を代表して、これに反対の意を表明するものであります。
わが党がこの法律案に反対する理由は、まず第一に、この
法案によって設立しようとする
簡易保険郵便年金福祉事業団なるものは、
簡易保険あるいは
郵便年金の
事業の上から、これがなければどうしてもやっていけないという確固たる理由があって設立するものでなく、
事業そのものとは別個の
目的のために、しいてこれを設けるべく
計画されたものと見られるからであります。
以下これを具体的に論証して参りたいと思いますが、まず生命
保険事業において、長期
契約者に対して利益配当を行なう場合、現金配当と現物配当の
二つの
方法があり、剰余金の分配の公平という見地からするならば、
福祉施設の供与という現物配当的な
方法よりも、現金配当、すなわち長期
契約に対する還付金という形をとる方がはるかにすぐれているということは明らかであります。すなわち、
福祉施設の場合には、その数、収容人員、
設置場所等の
関係から、これを利用したくても利用できない
加入者が非常に多くできてくるのでありまして、利用の不平等からくる
加入者間の不公平を免れることはできません。ざっと
計算しても、簡保
年金の
契約件数が現在約四千七百万件をこえておるのに対し、現在の
福祉施設の利用人員は、診療所が年間五十万人程度、
加入者ホームに至っては、フルに利用しても十万人程度でありまして、この割合からいうと、
加入者のわずか一・二%程度が利用しておるにすぎないのであります。これに反して、現金配当の形をとれば、このような不公平が一掃されることは言うまでもないところでありまして、換言すれば、簡保
事業において
福祉施設というものは副次的の意義しか持っていないということがいえるのであります。
もっと具体的に言うならば、郵政当局といえ
ども、簡保
年金の
福祉施設の整備にはおのずから限度があり、これに投ずる資金は、毎年の
収入保険料の一%以内、剰余金の五%以内に押えなければならないということを認めているのであります。言いかえれば、
福祉施設は、これを全面的に否認しないまでも、むやみにこれに金を投じて際限なく拡充していくべきものではないことを明らかにしているのであります。この見地に立って見ますと、簡保
年金の
福祉施設は、現在診療所はすでに二十九カ所が開設され、今後の増設
計画はなく、
加入者ホーム、
保養センターも、建設中のものを含めて十カ所がすでに軌道に乗っており、今後十カ年間に増設するものも毎年平均五カ所ぐらいでありまして、この程度の建設規模ならば、
郵便局を何十局も作る
郵政省の営繕能力で十分やっていけるのであって、ことさらに
事業団という新しい組織を打ち立てる必要がはたしてあるのか、大いに疑問とするところであります。
次に、
政府は、
事業団設立の
一つの理由として、管理
運営面の
能率化をあげておりますが、これまたそのままには受け取れない議論でありまして、現在の管理
運営が非
能率であったりお役所式であったりするならば、国営方式のものにおいてもこれを改善刷新する
方法は幾らでもあるはずであります。
事業団方式でなければ
能率が上がらないというなら、極端な言い方をすれば、
福祉施設だけでなく、本体の
保険年金事業まで
事業団方式にしなければならないという
結論になってくるのであります。
加入者ホームや診療所程度の管理
運営が国営方式ではうまくいかないという理由は、これまた
理解に苦しむところであります。
これを要するに、今回設立しようとする
福祉事業団は、
保険年金事業がこれを必要とするのではなく、他の
目的、すなわち郵政官僚のうば捨て山を作る意図をもってこれを設立しようとするものではないかという疑いがきわめて濃厚でありまして、
事業団の
理事長、
理事、監事、本部の高級
職員の地位が、
郵政省の一部官僚のために設けられるというのであれば、
事業団は、
加入者福祉のためではなく、官僚の福祉のために作られるということになるのでありまして、わが党としてはかかる純粋ならざる動機によって設立される
事業団には決して賛成することはできないのであります。
念のために申し添えておきますが、簡保
年金の
福祉施設の拡充と管理
運営の刷新を要望した第三十八回国会の当委員会の決議にはわが党も賛成しておりますが、この決議はそのままに
事業団の設立に結びつくものではなく、むしろこの決議が
政府によって他の
目的のために利用されたところに問題が存するのであります。
さらにまた、
事業団の設立に伴って四百五十名以上の
職員が
郵政省から
事業団に移しかえられることとなるのでありますが、これら
移行職員は国家
公務員たる地位の喪失に伴う種々の不利益をこうむるわけであります。この点に関し、郵政当局は、まず本人の意思に反して強制
移行は行なわないと言っておりますが、医師、看護婦その他の特殊な職種のものは、実質上強制移しかえとなるのではないかと考えます。また、
給与、
年金、その他の不利益については種々救済措置が講ぜられていることは認められますが、
事業団の
職員となった場合は、国家
公務員が受けている各種の身分
保障の利益が失われる点は救済する道がないのでありまして、
政府の一方的措置によって多数
職員が不利益をこうむることは、これまた軽々に看過することができないところであります。
よって、
結論として、以上申し述べたようないろいろの不備
欠陥を包蔵しておる本法律案に対しまして、日本社会党は反対の態度を表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)