○堀江
参考人 私は、この法案が賛成か、反対かということではなくて、これからこの
審議を進めていく場合に、どうしてもこれは必要だ、また私としても希望したいと思っていることについて、一、二
意見を述べたいと思います。
まず第一は、この法案の提案者である政府に対して、
幾つかの姿勢と行動と申しますか、そういうことを要請してもらう必要があるのじゃないか。と申しますことの第一は、どういうことかと申しますと、
地方公務員や
関係者に対して、
地方公務員の
年金制度から起きてくる一切の問題についてこれをよく知らせ、それから考えさせ、判断を持たせる、こういうことをぜひ政府に対してやらせる。こういうことをやはり大事な条件としてこの
審議を進めていただきたい。こう言うと、これは十分
審議したとおっしゃると思うのです。私はこういう
資料をいただいております。それからまた今、先に述べられた
方々も、三年にわたってこれは討議したとおっしゃるわけです。しかもこれは、今度いただいた
参議院の討議を見ますと、全体に知らされている、こういうとらえ方を政府はされているようです。ところが、私は決してこれは全体に知らしているという形にはとらえておりません。まず社会保険で
年金をやるといったような場合、出てくる社会保険がどんな働きを起こすかというと、一人々々が幾らかけて、何年になったら幾らもらうという一人々々の条件の問題が当然第一でしょう。それから
地方自治体の
方々が今まで自治体内で約束してきた自治体の条件がどう変化していくか、これも大事な問題だと思います。そういう働きを起こします。ところが、そのほかにより大きな働きを起こす。ということは、
地方公務員全体対政府の間でこれは非常に大きな働きを起こしてくるものであります。これを簡単に言いますと、あなた方の積立金が全部いわゆる中央政府の手のもとに管理される。ところが
資金運用部は四分の一で、あとは
地方自治体が自主的にということだ、従ってこれは非常に会心の作だと政府は
参議院で答弁しております。
地方公務員年金制度の中で一番会心の作は何だといったら、
資金運用の問題が一番会心の作だ、こう答えておる。ところが、今までの
日本の社会保険の
やり方を見てみますと、
資金運用部に入れないという金は、一銭一厘だって
自分たちがほんとうに自主的に使っているものは
一つもないのです。これは一銭一厘だって大蔵省の指示のもとに動かさなくちゃならぬような仕組みになっている。だから
島田の
市長さんが言われましたように、自主的に
地方の自治体内部に使えると思ったら、私はそうじゃないのじゃないかと思っている。もしそうならその証拠を具体的に示す必要があると思いますが、とにかくそういったように非常に大きな積立金が中央に掌握される、支配される。ところが
掛金というのは貨幣です。貨幣というのは、資本主義社会における一切の経済活動を媒介しているわけです。だから、言ってみるなら、
地方公務員の皆さんが一年に六百億から六百五十億中央の支配のもとに置くということは、三井、三菱といった大きな財閥を
幾つも作り上げるということです。あなた方の
年金制度の中からそういう大きな働きを一面には作っていく、こういうことになるわけです。そういう金は御存じの
通り、
資金運用部や財政投融資によって全部
国民の利益のために使われている、こう説明しております。ところが、そう簡単に受け取っていいのかどうか、これは私は問題だと思う。と申しますのは、
資金運用部や財政投融資を通じて流される金というのは、
日本のあらゆる産業に対して、さらにまた
地方の自治体の一人々々の台所のすみずみまで影響するような使われ方をしております。従って、ただ簡単に国会で報告されておるように、ほとんどが
国民の利益に還元している、こういう形で受け取っては十分じゃない。少なくとも皆さんの場で
審議していただく場合は、実際に
自分の
生活の一切が影響を受けている、そういう
地方の住民の
生活の上から出た
意見をまとめさせるようにして、それを聞くようにして、では、はたしてそれが言うがごとく
国民の利益に還元されておるか、あるいはまただれのための利益に使われておるか、こういうことをはっきり見届けるという中で、やはりあなた方の
年金の起こしてくる機能を判断していただきたい、これが私は重要だと思うわけです。こういうことは必ずしも十分じゃないと私は思っております。このことはただあなた方の積立金だけの問題ではなくて、私は、
日本の
社会保障の金というものの一切に通じていると思う。と申しますのは、たとえば岸さんが三十五年度予算を組むとき、前の年よりは二百七十六億円多く
社会保障で
国庫負担をした。そしてこれを非常に大きく宣伝をされました。ところが、
社会保障を
実施している金というのは、一般会計から二百七十六億多く出したといっても、実際に動いていく過程は、特別会計を一緒に調べていただく必要がある。特別会計の場合を調べてみますと、岸さんは二百七十六億多く国の持っておる貨幣を出したぞと言いますけれども、実は特別会計を合わせて計算してみると、労働者や
国民のふところから一千億よけい金を中央政府が預かった、こういう結果が出ております。この
国民のふところから預かった
掛金というのは、実は
国民の
生活費そのものを預けるわけですから、これは貨幣には変わりはないわけです。だからこれは、岸さんは二百七十六億多く
負担したぞと言っても、実は一千億近い金をよけいあなた方から、
自分が思うように使えるような形にして
社会保障を通じて預かった、こういう結果を出しておりますよ。ところが、池田さんが今度三十六年度予算を組むときに、岸さんより六百三十六億よけい組んだぞと、こうおっしゃっている。ところが、特別会計の方と合わして計算してみますと、池田さんはみごとに岸さんの二倍の二千億以上、
国民の
生活費の一部分を
自分の手に握られた。まさにこれは池田さんの所得倍増じゃないが、収入倍増ですか、一番早くそれを
社会保障の場を通じてやっておられると言ってもいいのじゃないかと私は思う。こういうことは、やはり
国民の一人々々の
生活費を岸さん、池田さんに渡すわけですから、しかもそれがどういう形に使われるかということになるわけですから、従って私は、これは非常に複雑でわかりにくいなんというようなことを言ってないで、そういうことは積極的にそういう住民の
生活の
立場からの
意見もまとめて出さしていく、こういう姿勢でもって、そういう判断を持たせるようにやらせる。これが何といっても
地方公務員の
年金を討議していただく場合のまず
一つの条件になる。そういうことをしていただく必要があるのじゃないかと考えます。
次の問題は、皆さんが国会で討議していただく場合に、その前において、いわゆる労使間において、どういう考え方なり
やり方なり水準について討議して結論を出していいのか、こういう問題を重視して、いわば国会
審議の前に、必ず労使の間で、
地方公務員の
年金制度の考え方や、
やり方や、どういう水準にするということを一応の結論をつけるようにして、国会
審議の場に持ってこい、こういう
やり方をしていただく必要があるのじゃないか、こう思っております。なぜそういうことを申しますかというと、これはやはり社会保険という形でこういう
年金をやるとかいう場合の本質だと私は思う。これはあまり長くなると悪いですが、とにかく社会保険の
財源というのは、一応あなた方の受け取った賃金の一部分を出す。それからそのほかは当局が
負担しますね。ところが、実は
負担する金というのは、賃金と同じように労働力に対して社会保険の支払いとして払われたものだ、こういう本質を持っております。これは私が言うだけじゃなくて、国際的に統一しております。従ってこれは、いわば賃金は一人々々に払う、社会保険の支払いというのは集団的に支払う、これだけの違いでしかないわけです。従って、当然そういう労働力に対しての支払いであるならば、ここで当然一切のことが労使の間で話し合われる必要があるわけです。幾ら払うのか、払った金でどういうことをやるのか、どういう
やり方をするか、これは労使の間で当然話し合われるというのが、社会保険の場合の国際的な本質であり常識だと思います。ところが
日本においては、一貫して社会保険の中における労使
関係の話し合いを拒否しております。拒否しているという中において非常に奇妙なことが出てきた。私は
参議院の
審議をずっと読んでみて感ずるわけですが、政府側の答弁の中で、いろんなことを
議員の
先生方が言われますと、いやそれは
相互救済制度だ、それから
保険数理に基づいている、それから
国家公務員の
共済制度のあれに準じている、こういうことをきめ手として押されているようであります。
相互救済というと、お互いが助け合うためにやっている、こういう工合な概念です。しかし、決してこれは
相互救済ではなくて、いわゆる支払いだ、働いた労働力に対して社会保険的な支払いをすることなんだ。決してわれわれが
相互救済をやっているものではないわけですから、非常にこの点は私は奇妙な押しつけだと思う。それから
保険数理ということを言う。
保険数理だから仕方がないのだと。また一般にそういう受け取らせ方をしています。ところが、私はこれも非常に奇妙だと思うのは、
保険数理というのは、大体十万人の集団の中で、みんなが一緒に病気になったり死んだりやめたりするわけはないのですから、十万人の人の中で病気になる人、やめる人、次々と出てくるわけですが、十万人の集団の中で一定の
年金をやるためには幾らの
財源が必要なんだろうかということを計算するのが
保険数理でしょう。ただそれだけでしかない。非常に技術的なものである。ところが問題は、そういう計算したものをどういう
負担の仕方をするか、たとえば労働者がかりに五を出したら向こうが五を出すということは労使間は交渉の問題です。労働者が四出して資本家が六出すべきだ、いや
全額資本家の方が出すべきだ、こういうことは当然労使間において出てこなくちゃならないものである。結局は、そういう労使間のルールがないと、これは
保険数理によって仕方がないのだという形で押えられていくといったような奇妙な状態が出てくる。国際的にこういう形できているというのは
日本くらいのものじゃないかと私は思う。一方の必要経費というのは
保険数理で計算します。だが、あとどうするかということは労使間の問題なんです。従って、世界各国の社会保険の
負担金の割合は全部違っている。そういうのに比較するならば、
日本はまず労働者としては最低の状態だ。というのはそういうルールを拒否しておりますから。だからこの辺が問題だ。それから
国家公務員共済組合に準じていると簡単に割り切って言われますが、
国家公務員共済組合の諸君は、実は
国家公務員の法ができるときに非常に大きな問題を提起して反対しました。しかも、それを
実施してきている中において
国家公務員の方はまだ承知しておりません。われわれの了解するようなことを答えろ、やれということでたくさんの問題を出している。しかも
国家公務員の場合は三カ年の実績を持ってそれを要請しています。ところが実を言うと、それに対してはほとんど答えてはいません。そういう状態になっている
国家公務員共済組合法に準じてということ、これが
一つのきめ手として使われているようですが、もしこれをきめ手に使うならば、
国家公務員共済組合法の中において労使間が現在これをどう受け取っておるか、国会で説明されたようなことが事実労使
関係として実践されているか、こういうことを明らかにする中で、やはり
国家公務員共済組合法に準じてということ、ほんとうにそれでいいのか悪いのかということの判断をここではっきりつけるように
審議していただく必要がある、こう考えます。
それで今
加藤さんが述べられた減額退職
年金の問題ですが、やはりこういう労使
関係を否定して、ただ
保険数理だ、相互扶助だ、
国家公務員共済組合でやったのだからそれに準じてという形で押しつけてくるのではなくて——そういう姿勢がとられるからこそああいう減額退職
年金なんというものが、ただ政府の考え方で出てきている、こう私は考えるのです。従って、そういう問題では何といっても皆さんの討議をする場合に、その基礎として、労使間にどういう折衝や取り組みが行なわれたかということを特に原則として重視しながら討議を進めていただくことが必要じゃないか。
ここで、よく問題になっている管理
運営の問題を言っていますが、私の見る限りでは、今出ている
組合会とか
運営審議会は労使
関係からいえばごまかしだと思う。これは正しい労使
関係のもとに行なわれているならば、ああいうことにこだわる必要はないわけです。管理
運営の問題の本質は何かというと、やはり社会保険としての本質である支払いなのです。そしてまず一番大事なことは、労使間において一切のことがきめられるようにしておかなくてはならない、そういうルールがなくてはならない。そういう原則の上に立って管理
運営の問題が考えられる必要があると思います。
もう
一つの問題は、私は、皆さんの
年金の問題は、特に中央政府それから
地方の自治体と
地方の住民の
関係の中で新しい問題を起こしてくるということをはっきりつかまえるという形でこの
審議を進めていただきたいと思います。これは時間が超過しますから
内容は略します。
今言ったように、
三つの点をあげてみますと、これは単に
地方公務員が幾らの
掛金をかけて幾らもらうようになるかということだけの討議ではなくて、非常に大きな
日本の経済問題です。これは
日本の社会労働問題、非常に大きな
日本の政治問題じゃないか、そういう角度から実は
地方公務員の
年金制度を検討していただきたいということです。ところが、単に
日本の経済問題それから社会労働問題、政治問題としてとらえるだけでは十分じゃない。それは国際的な政治問題という形でとらえていただきたい。と申しますのは、
日本の
年金の積立金というのは、
資金運用部なりあるいは財政投融資なりを通じて動きます。実は最近ずっと力を入れられている
日本の海外経済援助という
資金がこれと非常に大きな
関係を持っている。衆議院で問題にされたいわゆるガリオア、エロア、タイ特別円の問題と非常に大きな
関係を持っている。ところが、現在世界の資本主義体制の全般的危機の中で行なわれている海外援助計画というものは、世界において新植民地主義政策と規定されております。そういう傾向を持っている。海外援助計画というのが新植民地政策なら戦争政策と一体のものだと思います。そういう
財源を
地方公務員の
年金というものの中から非常に大きな部分を
負担してくるような政策が行なわれるとしたならば、それは
日本だけの問題じゃなくて、いわゆる東南アジアの平和の問題にも非常に大きく
関係してくるわけです。従って、私はこれからの討議を進めていただく場合には、国会のお都合もあるかもしれませんが、ぜひそういうことをはっきりしていく、
全国民に対してそういうことに対する疑問を解明してやるというような取り組みの中でこの
審議を進めていただくということが必要じゃないか。もちろん、私としてもそういうことを希望いたしたいと思っております。
以上で終わります。(
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