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阪上委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、
銃砲刀剣類等所持取締法の一部を
改正する
法律案につきまして
反対の
討論をなさんとするものであります。
今回の
改正は、およそ八点であります。そしてそのうち、第
五条並びに二十四条の二を除きましては、われわれ
社会党といたしましてもおおむね了承するところであります。しかしながら、特に二十四条の二につきましては、われわれは強く
反対をいたさなければならぬと
考えております。すなわち
審議の経過からいたしましても、二十四条の二につきましては、いわゆる提示させ、開示させ、そうして調べることができる、提出させて一時保管することができる、こういうようなふうになっておりますが、これにつきまして
多分にこういった
警察権限を設定するということは、
職権乱用のおそれが十二分にある。それと同時に、いわゆるこれが
任意であるか、あるいはまた
強制であるかという点で
審議が集中されたわけでありますが、
当局の
答弁によりますと、それは
任意と
強制とのちょうど
中間である、こういうような
答弁が出ておるわけであります。このことにつきましては、この
任意と
強制というものは常に相並行するところの姿でありまして、これがその
中間に落ちつくということ
自体は、これはきわめてむずかしい操作ではなかろうか、私はこういうように
考えるわけであります。哲学的に言うならば、これは絶対に矛盾するところのものを
一つにしていかなければならぬところの作用が十分ある、こういうことになろうと思うのであります。ちょうど自由と平等が
民主主義の要素である、しかも自由と平等は相反していく、相反するものを
一つにするためには、そこに何らかの
媒体が必要である、こういうことになろうかと思うのであります。それと同じように
強制と
任意という絶対矛盾的なものを
自己同一の形に持っていくためには、そこに何らかの
媒体が必要であろう、かように
考えられるわけであります。そこでそれは一体どういう
媒体になってくるかということでありますけれ
ども、その
媒体は、
警察官の民主的な
教養、それに基づくところの技術、こういったものが的確に行なわれなければならない、こういうように
考えるわけであります。そこで問題になりますのは、
任意であるか、
強制であるかということになりますと、結局こういったものは、
捜査をされる個々の
人間自身が、
警察官の
態度によって、これは
任意に提示を要求され、開示を要求されておるのだ、こういうふうに解釈するか、これは
強制的にわれわれにこの
警察官が現在要請しているのだ、こういうふうにとるかということによって、違ってくると思うのであります。繰り返すようでありますが、この二十四条の二につきましては、ただいま申し上げたように、非常にむずかしい問題であり、
警察官の
態度いかんによってはそれが
任意になり、
警察官の
態度いかんによっては
強制になるというところの問題であります。従って、こういったものが、
憲法の三十一条であるとか、あるいはまた十三条であるとかというものに抵触するかしないかの
問題点は、一にかかって
警察官の
態度にある、われわれはかように
考えるわけであります。そこで、現在の
警察官が、そういった高いところの民主的な
教養を、身に備えておるかどうかということによってのみ、これがあるいは
違憲のそしりを免れないような結果になり、あるいは合憲であるという支持を受けることができるようになる、こういうポイントじゃなかろうかと思うのであります。この
意味におきまして、われわれは、現在の
警察官がその
程度の
教養をたくわえておるかということにつきましては、はなはだ遺憾ながら疑問であります。従って、もっともっと
警察当局は
警察官の待遇を改善し、身分を保障し、生活に対しても十二分な
配慮を与えてやる、そのことによって
警察官が心のゆとりを持って、そうしてこのむずかしい問題を処理するだけの高い
教養というものを身に備えていく、そういった
段階においてこそ、こういった
法律の
改正というものが適当であろう。しかしながら、遺憾ながら現在そういう点の
努力は、まだきわめて
当局においても不十分だと私は思う。もっともっと十分な
措置を講じた後において、この
法律改正というものが初めて
合理性を持ってくるのではなかろうか、かように
考えるわけであります。さような
意味合いにおいて、われわれといたしましては、まず第一番に、現在の
警察官に高い
教養を備えしめるためのあらゆる
努力を
当局がいたして、それを待ってこの
法律を
改正すべきであった、かように
考えるわけであります。
いま一点は、これは
警察が行ないますところの
防犯活動の間接的な
法律であろう、こういうふうに
考えられるわけであります。たとえば、ただいま上程されておりますところの
質屋営業法であるとか、
古物営業法であるとか、あるいはまた過般来から問題になっております
道路交通法の問題であるとか、
未成年者喫煙禁止法とか
未成年者飲酒禁止法等と同じように、本
法案というものは
防犯に対するところの間接的な
措置であり、予備的な
法律である、かように
考えられるわけであります。従って、
警職法の
五条というようなものと
考え合わせてみましても、
警職法の方は、直接的な
犯罪がまさに行なわれようとする
段階におけるところの
警察官の
措置でありますので、きわめて明白、かつ現在の危険というものが確認されるという場合に行なわれる、直接的な
防犯行為である、かように
考えられますが、この
法案につきましては、それ
自体、今申し上げましたように、間接的な、予備的なものであります。従って、この
段階において、
警察官の
やり方いかんによっては
強制になり、
やり方いかんによっては
任意になるというものでありますならば、その
やり方いかんによりましては、きわめて
国民の自由、
身体等を拘束するところの、
違憲のそしりを免れないような
職権乱用的な結果に終わるおそれというものが、十二分に出てくる。そういった
観点からも、現在のこの
法案の
改正につきましては、われわれは疑点がある。
以上私が申し上げました二つの点について、われわれ
日本社会党は、過去においてもそういった事実があったので、他の
法案と異なりまして、この種の
治安関係法についての
改正等につきましては、きわめて神経質に
考えているわけであります。さような
意味合いから、こういった種類の
法律の
改正というものは、
警察権限を多少明確にしていくという点においては、納得できる面もあるにはありますけれ
ども、今、申し上げましたような二点から、さらにわれわれとしては危惧を持つ。そういう
意味で
反対せざるを得ない、こういうことであります。
以上、私の
反対理由を申し上げます。