運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-22 第40回国会 衆議院 地方行政委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十二日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 阪上安太郎君 理事 野口 忠夫君       宇野 宗佑君    小澤 太郎君       亀岡 高夫君    久保田円次君       田川 誠一君    津島 文治君       永田 亮一君    前田 義雄君       山崎  巖君    安宅 常彦君       川村 継義君    田邊  誠君       二宮 武夫君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  出席国務大臣         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      木村 行藏君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (大臣官房長) 柴田  護君         自治事務官         (財政局長)  奧野 誠亮君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         保安課長)   小野澤知雄君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君     ————————————— 三月二十二日  委員安井吉典辞任につき、その補欠として田  邊誠君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田邊誠辞任につき、その補欠として和田  博雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  地方公務員共済組合法長期給付に関する施行  法案内閣提出第一三六号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  辺地に係る公共的施設総合整備のための財政  上の特別措置等に関する法律案内閣提出第一  二三号)  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第四二号)(参議院送付)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  辺地に係る公共的施設総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律案議題といたします。  前会において本案についての質疑は終了いたしております。     —————————————
  3. 園田直

    園田委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、通告もありませんので、直ちに採決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  採決いたします。  辺地に係る公共的施設総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律案賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  5. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  6. 園田直

    園田委員長 この際、宇野宗佑君・太田一夫君及び門司亮君より本案に対し附帯決議を付すべしとの動議提出されておりますので、本動議議題とし、その趣旨説明を求めます。宇野宗佑君。
  7. 宇野宗佑

    宇野委員 ただいま議決せられました辺地に係る公共的施設総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律案に対しまして、この際、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党共同提案による附帯決議を付したいと思いますので、便宜私から、その案文提案趣旨を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。  一、政府はすみやかに辺地振興をはかるため、本法実施と併せて、更に強力にその総合的計画的な振興措置を講ずるよう努めるべきである。  二、辺地に関する現行諸法令内容について検討を加え、更にその充実改善をはかるべきである。 右決議する。  次に、決議案趣旨について簡単に御説明いたします。  申すまでもなく、最近におけるわが国経済の発展と生活水準の向上は、きわめて急激なものがありまして、これに即応する公共投資の早急な充実強化が進められている現状でありますが、これらの激しい動きのワク外にあって、依然として日の目を見ない谷間に取り残され、相対的にはいよいよその辺地性を深めている地域が、わが国全土にわたって少なからず存在することは、おおいがたい事実であります。もとより、これらの地域の一切に対しましては、古くは離島振興法等、また最近には、農山漁村電気導入促進法へき地教育振興法等による若干の施策が行なわれて参りましたことは事実でありますが、これらの施策は、いずれも辺地性解消という総合的、計画的な見地から行なわれていないうらみがあるのであります。今次提案されました本法案は、これら取り残された辺地について、文化国家国民として生活するため、最低限度必要な公共的施設を総合的に整備し、これによって辺地性解消に資そうとする趣旨でありまして、その意図する方向には賛意を表するにやぶさかでありません。ただ、われわれが懸念することは、本案内容に盛られた程度の措置で、はたしてわが国全土に数多く、かつ根深く横たわっている辺地から、その辺地性解消し得るかということであります。もちろん本法による措置のほか、他の施策が相並行して、あるいは相関連して行なわれることを予期しているものとは思うのでありますが、これらの諸施策が、辺地解消ないし辺地振興という明確の目標のもとに、総合的、計画的に進められる可能性があるかについては、危惧の念を抱かざるを得ないのであります。診療所が設置されても、その維持費が捻出できないとか、医師の確保が困難であるとか、医師はいても部落民診療を受ける余裕がないという事態が起こらないであろうかということであります。  われわれは、本法施行にあたっては、その実施効果を判定しつつ、これが適正化をはかるとともに、これとあわせて、他の辺地対策が一そう強化されるよう期待してやまないのであります。辺地振興の問題は、国民のすべてに健康で文化的な最低限度生活を保障するための福祉国家文化国家としての任務に通ずる問題であって、このような見地からは、単に公共的施設のおくれを取り戻すというようなこそくな施策であってはならないのでありまして、さらに一歩を進めて、辺地住民の産業の振興や雇用の推進等を通ずる所得の増大にまで及ぶべきものであります。辺地に関する現行諸法令内容についても、このような観点からの再検討が必要であると信ずるのであります。  以上が、本附帯決議案趣旨であります。各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  8. 園田直

    園田委員長 本動議について採決いたします。  本動議通り決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案宇野宗佑君外二名提出動議のごとく、附帯決議を付するに決しました。  この際、安井自治大臣より発言を求められておりますので、これを許します。安井自治大臣
  10. 安井謙

    安井国務大臣 辺地に係る公共的施設総合整備のための財政上の特別措置に関する法律案につきまして、当委員会におかれまして御賛同をいただきまして、政府といたしましては厚く御礼を申し上げます。  なお、この際、附帯決議と相なりました、さらに総合的な計画を立てて推進をするように、また現在あります法律制度をさらに検討して合理化するように、この二つの決議に対しましては、私どもまことにその通りだと存じまして、今後この御趣旨を十分に尊重いたしまして、さっそく具体的な事柄を進めて参りたいと思っておる次第でございます。
  11. 園田直

    園田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  13. 園田直

    園田委員長 次に、銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑に入ります。通告がありますので、これを許します。松井誠君。
  14. 松井誠

    松井(誠)委員 この法律案は、前国会提案に一、二の点で修正が加えられておりますけれども、この修正はいわば枝葉末節修正でありまして、従って、われわれが前国会反対をした基本的な態度警察官の現在の、特に日本の状況からいってこの法律案が持っておる危険な性格というものは、依然として変わっておりませんので、われわれの態度も、やはりこの法律案には反対だという基本線にはもとより変更がないわけであります。この法律改正案のかなめである二十四条の二は、警職法のいわゆる職務質問規定と実際の運用において非常に密接に密着をした相互関係があるわけでありますけれども、その職務質問規定そのものが、その運用が現在非常に乱用されておる。われわれの約束を全く無視するような形で乱用されて、そういう乱用現状のもとに、この法律改正案も直接くっついてつながっていくわけであります。従ってそういう点からいいますと、この法律案に対する乱用の危険というものは、単に杞憂ではなくて、まさに今までの警察法規運用の実態から、具体的な見通しとして当然出てくる危険性だと思うのです。そこでそういう点につきましては、この前の国会でいろいろお尋ねをいたしましたので、私はそういう基本的な点は省略をいたしまして、そとからいわば派生をしてくる問題について、一、二お伺いをいたしたいと思うのです。  お伺いをしたいのは、二十四条の二の七項の「返還しない」というこの性質であります。つまり任意提出を求めて、それを保管をして、そしてその保管をしたあとで、その銃砲刀剣類等所持を禁止されておる者から提出された場合には、これを返還しないものとするという規定意味でありますけれども、この返還をしないというのは、それまでのいわば返還義務を伴っておる一時保管から性質が変わるわけでありましょうけれども、これはもう永久に所持を奪ってしまう、そういうことになろうと思いますが、その通りなんでしょうか。
  15. 木村行藏

    木村(行)政府委員 この規定趣旨は、本人がもともと不法所持になるものでありまして、それをさらに本人返還することによって不法所持をさらに続けさせることになりますので、返還が適当でないので返還しないのであります。ただしかし、これは売却いたしまして、その売却した代金本人に交付いたします。
  16. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると行政措置としての没取という処分とは違うのでしょうか。
  17. 木村行藏

    木村(行)政府委員 没収とは違います。
  18. 松井誠

    松井(誠)委員 没取ですよ。刑事訴訟法の、没収ではなくて没取ですね、それとは違うのでしょうか。
  19. 木村行藏

    木村(行)政府委員 いわゆる没取は全然本人に返さないわけでありまして、従って先ほど申しましたように、売りました代金など本人に交付するということは全然あり得ないわけであります。
  20. 松井誠

    松井(誠)委員 これは一時保管をさせるときにはあくまでも任意保管をさせて、その後返還をしないということに性格が変わる。これは刀剣類等所持することが禁止されておるということは、結局この法律違反をして所持をしていたという、従って犯罪を組成をしたといいますか、そういう物件になるわけであると思うのです。従って、もしこれが刑事事件として起訴されて、普通ならば没収をされるということにおそらくなる物件であると思いますけれども、その際、すでに返還をしないという処分をしてあった場合に、刑法上の没収との関係はどういうことになるでしょうか。
  21. 小野澤知雄

    小野澤説明員 実はこの制度現行法でも第二十七条にありまして、その没収の方はあくまでも刑事処分でございますけれども、こちらの方は行政措置でございまして、そういうそのもの自体犯罪に用いられて証拠になりまして、そして没収された、あるいは没取されたという場合は、これは全然別のことでございまして、そういう場合でなくても、そこまではっきりしなくても、たまたま一時保管の結果はっきりいたしまして、その持っている本人があるいは欠格条項があって持てないものであるとか、あるいはその品物が拳銃等でありまして、現行法ではその性質からおのずから一般に持てないというものにつきましては、これは裁判あるいは判決でもって没収される場合は別でございますけれども、そういうことまでいかない場合でありましても、現行法の二十七条のいわゆる「裁判により没収する場合を除くほか、都道府県公安委員会は、総理府令で定める手続により、その提出を命ずる」、それが本人に返されないという場合には、十一条の方にさかのぼりまして、取り消す場合でございます。取り消す場合には、取り消したあとでも、前でも、この銃砲刀剣他人に持たせるようにする、あるいは他人に持たせられないというふうなものは、これはやはり売却いたしまして代金本人に返すという措置が二十七条あるいは十一条の方から出てくるわけでございますが、それはこの際もやはり同じような場合であるということで準用いたしまして、それと同じ措置をするわけでございます。
  22. 松井誠

    松井(誠)委員 ただこの場合、私ちょっと疑問に思いますのは、とにかく提出をされるものは任意であったのが、その後いわばこういう強制的な性質、一時保管というものがこういう性質に変わってくる。本来ならばやはりその前項の規定によって返還を——非常に形式的な議論かもしれませんけれども、返還をして、そしてそれが刀剣類所持することが禁止されておるというそういうもの。その所持者が禁止をされておるのだという、そういう建前からあらためて仮領置なり何なりという処置を元来は講ずべきであるのに、何かそういう手続省略をして任意提出から、こういう一種の強制処分だと思いますけれども、そういうものに移る。一ぺん返してもう一ぺん取るというそういう手続省略したというように考えるべきものなのか。
  23. 木村行藏

    木村(行)政府委員 先ほど保安課長が申し上げました仮領置などの関係におきましては、これは公安委員会がありまして、提出を命じて、さらにそれの関係許可の取り消しの前においても仮領置を命ずるという制度があるわけでありますが、今回のこの措置現場において危険予防のために他人危害を加えるおそれがあるという場合に、現場措置として一応一時保管して、その一時保管も原則としてすみやかに署長に引き継ぎ、さらに五日以内に返すというような、できるだけ返すという建前根本でありますけれども、ただいま申し上げたような事例からいいますと、本人に返すことが適当でないという場合には、やむを得ずそれを売却する、あるいはその代金を返す、こういうことになるわけでありまして、根本制度建前現場とあるいは現場でない、若干の余裕のある公安委員会措置とは、建前が違うと思います。
  24. 松井誠

    松井(誠)委員 この二十四条の二の、提出をさせて一時保管という規定は、先ほどもちょっと言いましたけれども、実際上は警職法職務質問規定密着をした手続であるわけなんですが、そして任意にそれを提出をさせて、この結果この法律違反をした所持であるということがわかれば、いわばこの法律違反現行犯として逮捕するということになれば、その物件そのものもやはり押収するということになるわけであると思うのですけれども、そういう具体的な運用の場合を考えてみますと、この法律違反所持違反だという、そういう現行犯であって、しかも逮捕をしなくて、従って刑事訴訟法上のそういう強制は、押収という形ではできない。そういう場合に、この任意提出という形でこういう行政上の措置で一応やるということになるわけでしょうけれども、この前のときにもお伺いをいたしましたように、ほんとうにこれが強制力を持っていないということが相手にわかれば、刑事訴訟法上の処分として強制処分はやらないのだ、そういう建前で、つまり強制処分じゃないのだということになりますと、ほんとうにその危険な人に対して、いわば職業的な暴力団というようなものに対しては、おそらくはこの法律というものは役に立たないのじゃないか。そうじゃなくて、善良な、この法律強制力がないのだというそういうことを知らない者に対する心理的な効果として、提出をさして一時保管をするという規定は、罰則はありませんけれども、あたかも罰則があるかのごとき心理的な強制というものを伴ってくるのじゃないか。そういうことを考えますと、との法律運用で、一体具体的に警察当局はどういうものを期待をしておるのか、これでほんとうに悪質な、職業的な暴力団というものをやろうとするならば、刑事訴訟法上の現行犯逮捕ということで、それに伴う押収ということでやり得る余地がおそらくは非常に多いと思う。ところがそうじゃなくて、一般の人に対してこういうものが適用されるということになると、そういう刑事訴訟法上の強制処分がない場合でも、何かあるかのような形でこの法律が実際上運用される、そういうことをやはり期待しておると考えなければ、この法律そのもの提案した理由がないと思うのですけれども、この法律運用の結果、具体的にどういうものを期待しておられるのか、そういう点を伺いたい。
  25. 木村行藏

    木村(行)政府委員 ただいまお話しの通り、開示させて調べるとか、あるいは提出さして一時保管するとかということは、強制権でないことははっきりいたしておるわけであります。しかし単に提出を求めるということでなくて、相当繰り返し、繰り返し本人提出するように督促するという手段でありますので、確かに心理的にある種の影響を与えまして、結局提出していくような方向に督促するということでありますが、しかし最後には、本人がどうしても出さぬということになりますと、その意思に反して実力を加え、提出強制するということはできないわけであります。しかし、督促によって提出してくる場合が、求める場合よりも相当ふえてくると思います。しかし強制手段ほどには、全部が全部提出するということにはなりませんので、それほどの効果はありませんけれども、求めるよりは相当効果があります。従いまして、相当悪質な不法所持者なり、あるいは危害を加える不法の目的を持った者が携帯しておる場合に、それを提出させるというような効果をねらい得るということであろうかと思います。
  26. 松井誠

    松井(誠)委員 こまかいことを一、二点お伺いしたいのですが、二十四条の二の六項の返還相手でありますけれども「本人の親族又はこれに代わるべき者」というのは、あるいはもうすでにどなたか御質問があったかもしれませんが「これに代わるべき者」というのは、具体的にどういうことを考えておられるのですか。
  27. 小野澤知雄

    小野澤説明員 未成年者のような場合は、それの親とか兄弟とか、あるいはまた先生とか。また施設に入っておるような場合にありましては、その施設の職員とかいうようなものを考えております。
  28. 松井誠

    松井(誠)委員 もう一点お伺いしたいのですが、これは現行法規定にあるわけですが、許可しない場合の規定としまして五条の一項の六号に「人の生命若しくは財産又は公共の安全」という言葉がありますけれども、そのあとの、たとえば二十四条の二の場合にはその公共の安全という言葉はなくなっておりまして、「生命又は身体」というふうに書いてあるわけですが、この許可しない場合の公共の安全というのは、そういう銃砲刀剣類所持などを許可をすることが、生命財産に対する危険のほかに、何か独立の公共の安全を害するということが考えられるのか、考えられるとすれば具体的にどういうことをお考えになっておるのか、お伺いしたい。
  29. 木村行藏

    木村(行)政府委員 現行の第五条公共の安全を害するおそれの具体的な例を申し上げますと、直接的には人の生命または財産に対して危害を加えませんが、ふだんゆすりをやりましたり、たかりをやりましたり、脅迫を行なっておるような者が、近隣の者に相当畏怖心を起こさせておるという場合があるわけであります。そういう言動から見て、これは公共の安全を害するおそれがあるもの。それからテキ屋や博徒の親分が、自己の勢力を保持するために、子分をしていやがらせをやるような癖のある場合、あるいは酒乱の癖のある者が、そのことを意識しながらあえて飲酒をして乱暴を繰り返すような場合、こういうような直接本人生命身体危害を加えるという具体的な内容ではないけれども、そういう公共の安全を害するおそれのある条件の整っておるものを考えておるわけであります。
  30. 松井誠

    松井(誠)委員 それから、二十四条の二の場合には「他人生命又は身体」となっておって、財産というものは入ってないわけですが、五条の一項の六号には財産というものが入っておる。その財産というものは二十四条の二で抜けておるというのはどういうことですか。
  31. 木村行藏

    木村(行)政府委員 二十四条の二の第二項の今回の改正案内容現場における措置でありまして、しかもそれが危害予防のためにする必要の措置でありますから、現場の事情から見まして、抽象的な標準では不十分で、直接他人生命身体危害を及ぼすおそれがある場合に限って条件をしぼった方が適当と思いましてしぼったわけであります。      ————◇—————
  32. 園田直

    園田委員長 次に、警察に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。川村継義君。
  33. 川村継義

    川村(継)委員 ただいま委員会の審議に入っております銃砲刀剣等所持に関する法律の一番重点をなしておるものは、やはり警察権の行使というのが前国会からいろいろ大きな問題となってきているわけでございますが、私はただいま委員長にもお願いいたしまして、同様の意味警察官職務権限問題等につきまして、警察庁長官お尋ねを申し上げておきたいと思います。  それは、御存じでございますが、今、群馬県の沼田市で起こっておる事件でございまして、現地では沼田警察署スパイ事件というような名前で大きな問題になっており、地元の新聞にも大きく取り上げられておりますし、県会の問題にもなったようであります。私もせんだって現地に参りまして、沼田警察署長及び群馬県の県警本部長等ともお会いいたしまして、いろいろ事件てんまつを聴取いたして参ったのでありますが、警察署長並びに本部長のお話によりましても、まだまだわれわれとしてたくさんの疑問を持っておりますので、この際事件を明らかにするとともに、当局の見解を承っておきたい、このように存じて、以下数点にわたって御質問申し上げたいと存じます。  まず、御存じでもございますけれども、事件の概要でございますが、それは昨年の十二月七日に、活版屋に勤務しております某青年窃盗容疑逮捕されております。そしてこの事件は、十二月二十日に仮釈放になっておりまして、二月末判決が下っております。懲役一年執行猶予三年という刑だそうでございます。窃盗事件とは一体何であるか、その内容はつまびらかにいたしておりませんが、この問題にからみまして、同じ仲間でありました製材所に勤務しておる某青年沼田署に勤務する渡辺刑事が呼びまして、以後相当長い期間にわたってこの事件の捜査に当たっておるわけでございます。  このような発端と経緯を示しておる事件でありますが、問題は、渡辺刑事製材所に勤めておる某青年を捜査するにあたって——捜査するという言葉は当たらないかもしれません。情報を集めるにあたって、非常に問題となる行動をとっておる、これが強く指摘されるわけであります。この点をまず初めに申し上げますと、活版屋に勤める窃盗容疑逮捕されたその青年が起訴をされました十二月七日の晩に、渡辺刑事は、同僚である製材所に勤める某青年を呼びまして、事件についていろいろと情報を聞いているわけであります。翌日の十二月八日に、渡辺刑事は自宅にその青年を呼びまして、いろいろな情報提供を求めております。十二月の十三日に、同様に自宅に呼びまして情報提供を求めております。十二月の二十七日に、同様自宅に呼びまして情報提供を求めております。十二月の二十九日には、渡辺刑事の知人でありますげた屋の割田という人の離れ座敷で、その青年を呼びまして情報をとっております。こえて一月九日、一月十六日、やはりこのげた屋さんの奥座敷で同じように情報を集めておる。以後大体一週間に一回程度、あるいは自宅あるいは割田というげた屋の奥座敷で、その青年と会合いたしておるわけであります。そして二月二十七日渡辺刑事の自宅において情報を集めておるというのが大体最後の段階でありますが、この間渡辺刑事は、その青年に第一回目は二千円、それからは毎回五百円あるいは千円等々の金を渡しております。しかもその間、自宅に呼んだときにはお酒を飲ませたり、あるいはリンゴやたばこを提供したり、あらゆる接待を尽くしておるわけであります。  そこで、私たちがこの事件についてどうしても皆さん方の見解を聞いておかなければならない一点は、活版屋に勤める青年の窃盗横領にからむ事件の捜査のためにとの製材所に勤める某青年をこのような形において取り調べたということは、しかも活版屋に勤める青年はすでに十二月二十日に保釈をされた。それなのに情報の収集はその後長い間続けられておるという点について、私たちは警察官が一体何の目的でこういうような服務の執行をやったのか、これが一つの疑問となってくるわけであります。この私が申し上げました日にちについて、あるいは金の提供について、こういうことについては沼田警察署長も、その通り渡辺刑事から話を聞いております、このように事実を確認をいたしております。  まず一点お伺いいたしたいと思いますことは、一体捜査にあたって、このような情報をとるためにあるいは金銭を渡したり、酒を提供したりするような方法をとるべきかどうか、そういうことをやらねばならないのかどうか、その必要が一体この事件についてあるのかどうか、こういう点が第一の疑問として出て参ります。この点、まず長官から御見解を承っておきたいと思います。
  34. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 沼田に起こりました事件につきまして、詳細は、間もなく警備局長が見えますので、それからお答え申し上げることにいたしますが、私の聞いておりますところでは、この窃盗容疑青年がある団体に加入をいたしておって、この窃盗容疑にからんでいろいろと参考人、関係者から事情を聞こうといたしましても、なかなか協力を得られぬ。そこで渡辺巡査と前から知り合いであったところの今お話しの青年から、渡辺が事情をいろいろと聞くということに相なったと聞いておるわけであります。その情報をとることにつきまして金を出した、またこうしばしば会合するということが適当であるかどうかということにつきましては、本人とこの青年との今までの関係で、単に刑事事件の捜査以外の親しみというものがあってそこまでいったのか、その辺は私も確認をいたしておりませんが、おそらくそういうような事情があって今お話しのように酒を出した、あるいはごちそうを出したというようなこと、また金をときどき出したというようなことについては、何か特にそういう個人的な関係があってしたことではなかろうかというふうに思うのでありまして、あらゆる場合において、この種の窃盗事犯について、そこまでしばしば会合しあるいはひんぴんと金を出すということは、通例の方法とは私も考えておらぬわけでございます。詳細は警備局長からお答えいたさせることにいたします。
  35. 川村継義

    川村(継)委員 警備局長お見えになりましたが、実は御存じのことでございますから警備局長に申し上げる必要はありませんが、私は今大体事件の概容を申し上げて、今、一点長官からお聞きしたわけであります。そこでお尋ねいたしますが、私が沼田署長さんに、こういうことはよくやっておりますかと、こう聞きましたところ、こういうことは必要によってはよくやっておる、こういうお話でありまして、その署長言葉の言外には、大体通例として行なわれておるという印象を受ける発言を得ているわけです。そこで合計いたしますと、約一万円に上ると思うのですけれども、この金がどうして支出されましたかと、こう聞いたのであります。そうすると署長が、大部分は警察の報償費から出ておる、いわゆる捜査関係のその費用から出ておる。しかし渡辺個人として渡した分も相当あるようだ、こういうお話であります。  そこで今の点についてまず第二点としてお聞きしなければなりませんことは、こういうような捜査上必要な刑事が使った費用というものは、報償費と申しますか、いわゆる県の予算に組まれる費用の中から出ていくことがあるだろうとわれわれも考えております。ところが個人がこういう捜査にあたって金を出すということは一体あり得るか、もしも個人がそういうような金を何千円か使ったということになれば、同様にこれは捜査報償の費用として、当然公費として負担すべきじゃないか。しかし個人のことでございますから、そういうものは本人から請求がないとなかなかやれません。ところが金額ははっきりわかっておるじゃないか、こういう点をただしたのでありますけれども、非常に御答弁があいまいであります。この辺のまず金の使い方について、どのようにお考えになっておられますかお答えをいただきたいと思います。
  36. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 この事件の聞き込みにつきまして、御指摘のように何回か金が出ておるのでございます。本件では刑事部のそういった捜査に使います金で、捜査費——他の県では報償費と組んでおるそうでございまして、報償費の中に他県で申しますと捜査費に当たる部分があるわけでございます。従いまして聞き込みに必要といたします相手方に、あるいは電車賃をかけてきてもらう、あるいは働く時間をさいてもらうというようなことがございますので、そういうような費用が必要であれば、これは公費の捜査費、本件で申しますと報償費から出すのが当然なわけでございます。私の聞いております中で、最初に渡辺部長が御本人のお宅へ参りましたときに、御本人の弟さんが来ておりまして、いろいろ何か親御さんにおねだりをしておったということでございます。これは余分なことのようでございますけれども、この弟さんの素行の問題で警察も補導したことがあるというようなことでございまして、その話を御本人と渡辺部長といたしましたときに、御本人も非常に困っておるというようなことがあり、そこで渡辺部長としては、その弟さんにやはりいい方に導いていかなければならぬというような趣旨で二千円、これで何とか当座はしのぐ、変な気を起させぬようにしてやったらどうかということを言って渡したことがあるということを聞いております。お話のように、かりに自費を使いましても、それが捜査のために必要であるということでありますならば、これは本人の請求によって公費から出すべきものと思うのであります。ただ、個々のケースについてみますと、今のように、もちろんそういう弟さんに対するそういった意味の金を出すことが、捜査のその後の進展にいい影響を与えるということはございましょうけれども、そういったケースでございますと、まことに個人的な配慮ということが強くなりますので、これを公費で出すかどうかということは、個々のケースでその上司が判断を必要とする場合があろうかと思うのでございます。一般的に申しまするならば、本人が捜査のため必要と思って使いました金は、本人の請求を待って、あるいはなかなか請求しにくうございますので、むしろ上司からそういうことを言い出させて公費でこれを補てんしてやることが当然と思うのでございます。
  37. 川村継義

    川村(継)委員 こういう費用の出し方の見解について、私は皆さん方の見解を支持したい。これは沼田署長の見解は私はどうも賛成できません。それから今、警備局長のお話で、渡辺さんが本人の家庭並びに弟との関係で大へん同情的に出したというような見解も述べられました。しかしこれはよほど注意をしてお考えをいただかなければならぬ。そういう金の出し方を通常間違えて人情論的に、この金の使途というものを正当化するということは、私はいけないと思う。これはもしも、渡辺刑事ほんとうにその家庭的に何か問題があって同情に値する、何か援護の手を講ずべき家庭であるというようなことであれば、これは別途の方法でお世話をして差し上げるのが当然であるし、また家庭が困っておれば、こういう捜査をする場合に、自宅に呼んで、その場所で、情報収集上それの交換みたいな形で金を出すのではなく、あるいは母親等に渡すというようなことであったならば、あなたのおっしゃる人情論も成り立つと思いますけれども、私はそういう形でこの金の授受というものを解釈してはいけない、このように考えます。今だんだんお話でございますけれども、皆さん方の方にはそれぞれこういう見解であったという連絡があっていると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、某青年窃盗容疑事件は、すでに早く逮捕され、すでに保釈をされ、二月の末日には判決も下っておる事件である。それなのに、渡辺刑事は一月から二月末にかけて、というのは、本人が、この該当の青年がついにたまりかねて、もうそのような会合に出ていくのが耐えられなくなって漏らして、公になってから渡辺刑事との会合をやめておる、それまで続けられてきておったということについては、初めのいわゆる活版屋に勤める某青年の窃盗並びに横領等の容疑事件とは別途の考え方で行動しておると解釈せざるを得ない。それが一つの問題と考えねばなりません。  しかもこの間、この渡辺刑事とそれから製材所に勤める当該の青年は、すべて偽名をもって連絡をし合っておる。渡辺刑事青年が連絡するときには、前田さんという名前を使え、そのように約束をして連絡をとらせて、某青年渡辺刑事が連絡するときには宮田という形において製材所等に連絡をする、こういうことであるし、知人の割田というげた屋さんのところに会合する場合にも、渡辺刑事は前田という名前で入っているし、その青年は宮田という名前で入っている。こういうような偽名を使ってお互いに会合して連絡をするということは、先ほどの事件の経過とあわせ考えて、活版屋に勤める某青年の容疑を固めるとか、あるいはそれに付随しているところの横領事件と見られるような何かささやかな問題があったということ、それを捜査するということについてはあまりにも大げさと申しますか、いわゆる行き過ぎた方法ではないか、こう思われてならないのであります。この点はいかがでございましょう。
  38. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 御指摘のように、活版屋に勤めております某青年窃盗事件につきましては、事件が完結をいたしておるのでございます。なお、その窃盗の捜査の過程から、これがある団体の会計係ということで、その会計を扱っております中で金を横領したという疑いが十分あるというようなことが出て参りましたけれども、聞くところによりますと、その窃盗事件につきましても、それぞれカメラその他の被害届が出ておりますわけですが、これがその某団体に属します活版屋青年が被疑者であるということになりましてからは、被害者の御協力が全く得られない、あるいは被害届も全部取り消すのだというようなお話があるというようなことで、この団体の金の横領につきましても実は御協力はとうてい得られないということから、その会計係の前任者でありますこの製材所青年に協力を求めるということになったと聞いておるのでございます。  そこでまず第一に、偽名を使ったというようなことが非常におかしいではないかという御指摘でございます。私の聞きますところでは、これは本名は別でございますけれども、製材所ではお話のように宮田、宮さん、宮さんというようなことで通称されておって、むしろ本名を言ってくるというのはややあらたまったときでかえっておかしいから、通称でやってもらった方がいいというようなことがあったように聞いております。また場所の問題もございますけれども、結局その青年が非常に悩んだといいますものも、自分たちの同僚の犯罪関係をいたすことでございますので、そこで警察の者と接触することをはばかるということがあったことは十分想像ができるのでございます。そこで自身の名前をそういうふうに言ってくれという機会に、部長の方も前田ということにして連絡をすることにいたし、最初はお宅にたずねましたけれども、お宅では工合が悪いということで、部長の自宅もしくは懇意なそのげた屋のところを使ったというふうに聞いておりまして、これはよくあることでございますけれども、全く関係のないことならともかく、その組織に関し、同僚に関係する犯罪のことで警察に自分が連絡をしておることを明らかにしたくないというような気持から、希望もありまして、そういうふうに連絡をしたと私は聞いておるのでございます。
  39. 川村継義

    川村(継)委員 偽名の問題は、本人の希望等もあったやのお話でございまして、なるほどそういうこともあり得るかもしれぬと思うわけでありますが、初め活版屋に勤めた青年窃盗事件については、今お話に出て参りましたように、横領事件という問題も付随して捜査されておったようであります。その横領事件というのは、その団体の会費が幾分行方不明だというようなことらしいとわれわれは承っております。なるほどそうなれば、当然これも捜査の対象になるだろうと思います。ところが警察署としては、これを検事局に送り、検事局から告訴になる場合に、横領事件は全然問題になっていない。問題になっていないということは、おそらくその証拠がつかめなかったのじゃないかということも思われぬでもありませんが、窃盗並びに横領という容疑があったならば、私はやはり警察庁としてはただ単に証人が得られないからということでなくて、それがある点確信を持って捜査線上に浮かんできたのであったら、当然それもあわせて送検の手続をとるべきである。そうしていわゆる裁判所の取り調べの機関において、あるいは証人等の尋問をいたして、この横領事件も固めていくということがなし得られるのじゃないか。私はその方は専門じゃありませんから知りませんけれども、そういうことがなし得られるのじゃないか。ところがそちらの方は一応取りやめて、いわゆる窃盗容疑でもってこれが事件となって裁判に付せられたわけであります。そうなると渡辺刑事も一応この青年との会合等は中止すべきじゃないか。しかも先ほどからるる申し上げておりますように、お金の提供にいたしましても、会合のたびに千円なり五百円なりというような提供の仕方をするということは、ただ単に、警備局長の言葉にもありましたように、身の上に同情した、わざわざ夜出てきてくれたとか、それについての謝礼としては、心づかいとしては私は納得できない金額である。小さい市であります、青年が渡辺さんのところに出ていくには簡単で、時間はかかりません。そうなると千円なり二千円なり五百円なり、毎会合のたびに提供したということは、これは青年を買収する目的でやったとよりほかに解釈する方法がないじゃありませんか。そういう点についてどうお考えでございますか。
  40. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 第一の、盗犯の窃盗の容疑と同時に、横領も大体見当がついたとすれば、それを同時に送るべきではないかという点でございます。これはその通りでございますけれども、実は盗犯の届け出がございまして質屋に盗品があるというところから、その質入れをしたものを発見をして捜査をいたしまして、これは実は十一月には見当がはっきりついておるわけでございます。ところがそれを捜査している中で、実は横領の容疑が出て参りました関係で、先ほど申しましたことの繰り返しにもなりますけれども、窃盗の捜査の際に、その組織の方々から御協力が得られないというような状態であったために、この横領の捜査についても全く御協力は得られないであろうということで、この横領それ自身を捜査いたしますために、初めてこの製材所青年に協力を求めたということを聞いておるのでございます。従いまして、そのときにすでに横領について検事局に送り、さらに起訴されるというような十分な材料がございますれば、御指摘のように同時に送ったであろうと思うのでございます。窃盗はきわめて簡単なことでありましたので、早くケリをつけて送ったということを聞いておるのでございます。またその後の会合について、何回か会うたびに金を五百円、千円、出したのは大げさではないかということでございます。これは一般論といたしまして、この種の捜査に、会うたびに金を出すということが通例であるかどうかというと、私どもの考えによってもそうでないことの方が多いのではなかろうかと思います。ただ、この小さな署で、しかも盗犯の検挙の月間でありました事件、あるいはその横領——非常にささいなということでございましたけれども、その団体としては必ずしもささいでないように私は聞いておるのでございますけれども、そういう問題として今取りかかる、署としては相当大きく取り扱っておったように思うのでございます。従いまして、一般的にこの種の事件ということで全国的なものさしを使いますと、お話のように、これはいささか大げさではないかという御批判もあろうかと思いますけれども、この当該の署の当該の事件に対する考え方としては、あるいはそういうこともあったであろうかというふうに考えるわけでございます。   〔委員長退席、太田委員長代理着   席〕
  41. 川村継義

    川村(継)委員 なかなか、いろいろ御解釈もあるようでありますけれども、要するに事件の実態というものを考えた場合、署としてはある点、大きく考えたかもしれませんけれども、事件は一応十二月の二十日に保釈になっておる。そしてあと裁判を待つばかりです。そういうときにまた続けて一月、二月とずっと毎週会うて金を贈るなんて、こういうやり方、こういうような情報のとり方というのは、どうしても少しやり過ぎじゃないか、言葉をかえていうならば、行き過ぎじゃないか、そう思われてならないのです。皆さん方は、行き過ぎではない、通例としてはどうも少し合点がいかぬけれども、こういうこともあり得るだろう、そういうようにお考えでございましょう。私は、警察官としてはこういうような知人、どれくらい知っておったか知りませんけれども、知人であれば、自宅を訪問したとき、それはお菓子の一つもお茶菓子として出すこともありましょう。しかし、そういう大ごちそうした上に、あるいは毎回千円贈ったり五百円贈ったりしておるということは、適当な方法じゃない、何としてもやり方がひどい、行き過ぎだ、こう言わざるを得ないのじゃないかと思うのですけれども、皆さん方はそうお考えになりませんか。
  42. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 お考えの点は私もよくわかるのでございますが、ただ一つ前段といたしまして、事件が済んでからまた相変わらずやっておるじゃないかという点は、これは一つ御理解をいただきたいと思うのでございます。先ほど申しましたように、窃盗事件はなるほど解決をいたしたのでございます。ある刑事事件を捜査いたしまして、その事件としては完結いたしますが、その捜査の過程で他の犯罪があるということでございますならば、これは別な刑事事件として捜査をいたすわけでございます。時期的に接着いたしておりますれば、あわせてこれは裁判をされるということはありましょうけれども、これは事件が別個なのでございます。従いまして横領も含めて十二月に完結をし、いわば、もう用が済んでからこの者に会ったというふうなもし前提でございますならば、その点は、これは一つ御理解をいただきたいと思うのでございます。  なお、酒を与えたとかいうようなことも出ておったようでございますけれども、私の聞いておりますのでは、一月の十六日でございましたか、初めて自分のうちに来たときに、正月でもあり、自分と二人で自分のうちの酒をちょうし二本くらい飲んだということで、その後も自宅で時分どきに一緒に一本、二本飲んだことがあるというような程度で聞いておりまして、これはそういった地方の都市の警察とその町の知人との間の関係ということは、私ども理解ができませんけれども、そういうような範囲と考えてやっておったということを聞いておるのでございます。  金が多い、少ない、また大げさではないかという点につましては、先ほどお答えいたしましたように、一般的に申しますならばそうでないことが多かろうと思うのでございますけれども、あるいは今回のような小さな署が、今回のような事件につきましてやるということになったら、そういうこともあり得るのかというふうに考えますとお答えいたしたわけでございます。
  43. 川村継義

    川村(継)委員 こまかな点を、えげつなくお聞きしたいと思いませんけれども、今、警備局長の現地からの連絡によりますと、もてなし方の情報等は相当誤差があるようであります。あなたは、今正月だからお酒を出したということでありますけれども、正月の初めは自宅では会うてないのですね、げた屋さんで会うておる。自宅で会うたときには、大ていお酒が出ておる。しかも初めて正月お酒を出したというのでありますけれども、実際は十二月十三日にたくさんのお酒を出した。そのほか大ていたばこを持たせてやるかリンゴをみやげに持たせるか、あるいはたばこ代として五百円、千円のお金を持たせてやる、そういうような方法をとっておる。これはぜひその点をお考えいただかなければならぬ。なるほど今、警備局長のお話のように、他の問題が付随しておるのであります。それは沼田警察署長さんも県警の本部長さんも同様なことをお話しでありました。まだほかに捜査すべき横領事件がある、だからしてこれに手をつけておるのだ、こういうことでありまして、もちろんその内容について、捜査の途中であるならば、われわれがつまびらかにするわけに参りません。その点、内容は聞こうとは思わないけれども、一体どういう事件なのか、ただ単なる口実じゃないか、こういうふうに聞きますと、いややはりこういう団体に関係のある問題だ、こういうふうに言っておられます。この問題は、今のところどうしてもわれわれとしては内容を聞くわけにいかないし、あなたたちのおっしゃるようなことを一応伺っておくほかに方法はないと実は思っております。その点はわからぬではありません。  そこで問題は、次の問題をお聞きいたしますけれども、この十二月の初めから二月の終わりに至る間の大体一週一度の渡辺刑事青年との会合で、青年から情報が集められた点は一体何か、実はこの活版屋に勤めるところの問題、あるいは横領事件関係あるところの問題、そういうのはほとんど話題になっていない。話題になっておりますのは、われわれから今ここで申し上げますならば、渡辺刑事製材所に勤めるその当該の青年から情報を集めたものは何かといいますと、大体十項目ばかりに私の方で分類できると思います。その一つは、日ソ、日中、日朝各協会の会員氏名、住所、これらの者に配付された印刷物、それから会誌、そういう会合の発行されておる読みもの、そういうものを集めてある。第二は利根うたう会、沼田わかもの会、民青の会員及び会の動向、会の印刷物等が集められてある。その次に民擁連の主要メンバーの住所、氏名それから会議で発言したところの内容会議で討論されたところの結論、その次に婦人のつどいの会の会員の主要メンバー、それから青年会議提唱者、そういうものがいつできるかという見通し、地協文化祭、つまり地区労働組合の文化祭の写真を見せて、そしてそれに出ておる氏名を確かめておる。働く者の教研集会の司会者、提案者、発言者等の氏名、地協労働者学校の参加者氏名、そういうものを提出をさせておる。社会党、共産党の党員名を確かめておる。教組婦人部主催の母体保護の学習会に出席して、お前もそれをよく調べておくようにということが申し伝えられておる。日中友好協会主催の訪中報告会の参加者数、それらの会合の主要メンバー、報告内容、そういうものが聞かれておる。  そこで、渡辺さんが、このような点をいろいろとその青年に聞いたということは、あるいは集められるものを集めたということは、十二月から二月にわたるこの青年との会合が、主目的は、団体に嫌疑がかかっておりますところの横領事件というようなものじゃなくて、こういうものが主目的じゃなかったか、こう思われてならないのであります。もしそうだとすれば、一体警察官としてはそういうことをやるべきかどうか、この点が問題だと私は思うのですが、いかがでございますか。
  44. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私どもの聞いておりますところでは、先ほど申しましたように、ある団体、今御指摘になりました中にも入っておるわけでございますが、ある団体の会計といたしまして横領容疑があった、それから入ったということでございます。この会には、ここに出ております幾つかの会からの、いわゆるカンパというものがあり、そのカンパが、本来はその組織の収入になるべきものを、収入に入れずして着服をしたという容疑もあるというようなことで、そういった金の流れを伺ったということを聞いておるのでございます。これまた、まことに言いわけじみたことを申し上げるようでございますけれども、捜査の過程でいろいろ聞きますのに、こちらの容疑点を、そのままずばりですぱっと聞くということができれば、きわめて簡単にわかるわけでございますけれども、現実の捜査の際にも、いろいろあれを聞きこれを聞きいたしまして、こちらの聞こうとする趣旨を確かめるというのが、通常行なわれる聞き込みといいますか、取り調べの場合でさえも、そういうふうに相なるものであるわけでございます。そこで、先ほど来申しておりますような目的で、渡辺部長が御本人に会っておるわけでございますが、その中で横領そのものずばり、それだけのものを聞くということでなしに、これに関連をいたしまして、つまりカンパをし、金が流れてくる各種の問題につきまして、広く話がいったということはあり得ると思うのでございます。ただ、今のような各種の氏名あるいは印刷物、そういうものを全部提供を求めて、これを入手したということについては、何と申しますか、これまた一般論といたしますと、この種の捜査にどれだけ必要であったかということは、具体的な事件に即して判断をいたして、こまかく判断をしてみないと、今私わかりませんけれども、捜査の際に、それに関連する事柄を広く聞くというととは、一般にあり得ることでございますので、そのように御理解をいただけないかと思うのでございます。
  45. 川村継義

    川村(継)委員 今の御答弁は、どうも私はっきりしないのです。ある団体の会費あるいはカンパ等にわたって、どうもいかがわしい点がある、横領されておるような容疑がある、こういうことであれば、その団体を中心にしてたぐっていけば、ベテランの刑事諸君ですから、私は見当がつくと思う。また、捜査はそうやるべきだと思います。何も婦人団体から教組関係から、いわゆる沼田市に存在するあらゆる労働団体、あらゆる民主団体にわたって、こういう情報の収集の手を伸ばすということは、私はそのまま納得するわけにいかない。警備局長もそうお考えになりませんか。あなたがもしも第一線の刑事で横領事件を調べるというときには、その横領されているだろうという団体の資金を集めた状況、これはどの団体がどれだけカンパしたか、だれがどれくらいカンパしたか明らかになりますよ。その範囲内にわたって捜査すべきであって、また皆さんの力をもってすれば、これは事実を明らかにすることができると思う。それだのに、そういう言いわけをいかになさろうとも、私が申し上げたような広い範囲にわたる捜査ということは、私は行き過ぎじゃないか、こういうふうに考える。この点重ねていかがでございますか。
  46. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私、一番最初に申し上げました通り、盗犯の事件につきましても、こういう会に属します方々からの御協力が、全く得られなくなったということでございます。そこで当該の団体につきまして、あるいはその当該の団体にカンパとして出しておられる他のここにあげられたような一部の団体につきまして、そのものずばりで、そこの責任者からお伺いすることができれば、これは非常に明らかになると思うわけでございます。また、かりにまっ正面からいって令状を取るということになりますためには、これは念には及ばぬと思いますけれども、相当に明らかな材料がありまして、疎明資料といえるものがなければ、公式に令状を取ってまっ正面からいくことはできないので、それまでは、いわば聞き込みであります。関係者の御協力を得て、聞き込むほかないのでございます。御協力がいただけないということでございますと、これは協力をしていただける方から、広い範囲のことからいろいろ伺い、その中から、さらにまた他に御協力をいただける方を発見して聞くということは、やむを得ずあろうかと思います。ただ、一つの横領事件があり、それに関して聞くということであれば、あまりにも大げさではないかということにつきましては、先ほどお答え申しました通り一般的に申しますと、もう少し要領のいい調べ方があったのじゃなかろうかというふうに私も考えます。
  47. 川村継義

    川村(継)委員 皆さんが、末端の第一線の警察官諸君の立場に立って、ものをお考えなさっているということもよくわかります。皆さん方の解釈もあるだろうということも、よくわかります。しかし、初めに指摘いたしましたように、毎週々々金銭を贈って、青年と会合しているというような事例から考えても、その間に実に広大な、沼田市に存在するほとんど全部の労働組合あるいは民主団体等にわたって、情報が取られたということについては、これはただ単に一つの横領や窃盗や、そういう事件についての捜査であったとは私は断言できないと思う。首脳部の皆さん方は、やはりこういう行き過ぎがないように、常に指導をしておられると私は信じます。信じますけれども、やはり末端の警察官諸君は、善意に解釈するならば、自分の職務に忠実のあまり、あるいは逆に考えるならば、皆さん方の指示であるか、あるいは公安調査庁からの指示であるか、どこからの指示であるか知りませんけれども、今日このような、どう考えても逸脱するような警察権の行使が行なわれておるということを考えねばなりません。そこで、事は沼田市に起こった問題でございますから皆さん方は狭い範囲においてこれを解釈して御答弁なさっておられますけれども、実はこのことは決して沼田市だけの問題ではないと思うのです。と申し上げますのは、もう一つの例を申し上げますと、私の地域において労働組合の組合役員の選挙があった。ところが一方のA君は書記長に立候補して破れた。このA君は非常に不平満々であったに違いありません。いつの間にか警察署の人がこのA君に近づいて、あるいは喫茶店でお茶を飲む、あるいはバーで一ぱい傾けるというような交わりを重ねながら、やがては労働組合の問題その他をいろいろと聞いておられる。これを、幸いにして書記長がはっと気づきまして、そういうことを話したので、警察官と交わりをすることは悪いことだ、何かの場所で労働組合の問題等をあれやこれや分析して話をすることはよくないというようなことになって、その後そういう交わりが中止されておる。そういう事実があるのですね。類推して考えるならば、こういう事件が各地に行なわれているのじゃないか。まだそのほかたくさんある。今度の問題でも、この製材所に働いておる某青年が、実は二月二十七日、その後三月七日、三月八日と渡辺氏から呼び出しがかかっている。ちょうどその七日の日にもうこの青年が、実は本人の真からの弁明でありますが、どうしてもああいうことを次から次に聞かれるので、自分としては耐えられなくなった、だからどうすべきかというようなことで一友だちにそのことを話して、もうそういうことはやるべきでない、一体どういうことがあったのだということで表面に出てきた問題であります。そういうような本人の——早かったかおそかったかわかりませんけれども、本人がそれぐらい考え直さなければいつまで続いておったかもわからぬと思われても仕方がないような実は動きであったわけです。そこでやはり第一線の警察官警察権の行使については、決して何もかも悪意に解釈してはいけませんと思いますけれども、捜査の、情報のそのやり方、手段において、あるいは調べる範囲において、この事件を中心に分析していくなら、何といっても穏やかでない、これは絶対に行き過ぎだと指摘されてもしようがない。私が申し上げるまでもなく、民主団体であろうと労働組合であろうと、集会、結社、そういうものの自由はもうちゃんと保障されておる。こういうものをこういう形で警察権を持っておる人たちがやるということは、それらの自由をやはりうしろから脅かしている結果になりますから、これは事簡単に警察権の諸問題でなく、問題は人権に関係がある事件だと考えられるものであります。そういう点から、これはやはり今後皆さん方は、率直にいけないところはいけない、だからこういうふうに今後われわれは末端警察官を指導するのだというようなお考えを持っていただくことが至当であって、第一線の警察官の立場を考えて、あまりにそれを弁護しておられますと、こういうような事件が今後また起こった場合にどうなるか、また起こりかねない問題をはらんでおるということなどを指摘せざるを得ないと思うのです。この点について重ねて長官から御見解を承りたいと存じます。
  48. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 事件の関連におきまして三輪局長からいろいろ申し上げましたが、承りまして、御注意の点は十分に今後第一線に対して注意を与えていく必要があるというふうに私どもも考えるわけでございます。今度の事件につきまして、渡辺部長が捜査の方法あるいは範囲という点について、はたして適切であったかどうかという点はよく検討いたしたいと思いまするけれども、事、人権に関する問題でもありまするし、また警察国民からの信頼というような点からいたしましても、事案につきましては、やはりそれに必要な相当な方法、範囲というものがあろうかと思うのであります。そういう点を逸脱することのないように適正な捜査が行なわれるように今後とも十分に指導して参りたいと考えております。
  49. 川村継義

    川村(継)委員 私、もう一点お聞きしておきたいと思いますが、警備局長にお願いと申しますか、そういう言葉になるかと思いますが、実は、私が先ほど読み上げました各種の労働団体、民主団体についていろいろな情報がとられておる、それは事実か、こういうことについて署長並びに警察本部長にいろいろとただしましたところ、本部長はこういうような答弁をしておられる。私が聞くところによると、向こうの方からこういう話を持ち出してきたのであって、大部分は向こうから提供された話である、何も渡辺氏がこれの提供を求めたわけじゃない、こういう話がありました。これは一つ長官も警備局長も、県警本部長あたりによく御注意していただきたい。片方はりっぱな沼田署の警備部長、今度調べている渡辺さんというのは、これは実は警備担当部長だ、刑事部長ではない。この人が特にこういう仕事に当たったということ、警備部長さんが当たったということについては、署のいろいろの事情もあったと思いますので別にお聞きいたしませんが、そういうような本人から提供をされたものであると弁解しておられる。ところが、りっぱな警備部長がこういうふうに言って、片方は若い背の小さい青年、そういう者を相手に、いや、おれが強要したのではない、本人が提供したのだと言う。そういう言いわけは本部長あたりはなさらないように、これはやはり一つ考えていただかなければちょっとおかしくなります。  それから最後にお聞きするのでございますけれども、今もう一つの事件があるから調べておると言われるのでありますから、これは私は、先ほど申し上げましたように内容を聞くわけには参らない。また、向こうも言うことができない。一体事実なのかどうかわからないのでありますけれども、組合関係の、いわゆる幹部等の横領事件だとするならば、これは労働組合法にいわゆる基金の流用というような条項がありまして、いろいろと法律違反を構成するわけです。そのときには民法上の不法行為もあるはずであります。あるいは刑法上の背任罪、横領罪というものが成立する場合もある。一体今調べておるのは、これは皆さんの方から御見解が聞けると思うのでありますが、いわゆる組合としての背任罪にかかるところの捜査であるのか、あるいは個人として考えられるところの横領罪の犯罪容疑なのか、その辺のところはおわかりになっておりませんか、これを私は最後にお聞きしておきたい。そうしてこの後の事件の推移というものを見きわめて参りませんと、本部長が言うところの事件が、口実なのかあるいは事実なのかわからない問題になるのじゃないかと思っておりますので、お答えをいただきたいと思います。
  50. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私の聞いております限りでは、個人の横領になる容疑が非常に濃いのでございます。前段にお話しになりました組合の機関が組合法によらないで流用したとか、そういう種類のことではございません。
  51. 川村継義

    川村(継)委員 それでは個人の横領容疑ということになりますと、先ほども指摘申し上げましたように、もっと範囲を狭めて調べる方法があるのではないか、ありとあらゆる団体の何もかも情報を集めて調べる必要はないのじゃないか、どういう見解が成り立つと思うのですが、この点はどうですか。
  52. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 何べんも同じことをお答えするようで恐縮でございますが、その団体に属する金の横領、その金というのが本来の会費のみならず、他の幾つかの団体からのカンパもあるというように聞いておるのでございますが、そういうものの横領容疑でございますけれども、きわめて明瞭な窃盗容疑の捜査につきましても、これがその団体に属するものであるということになって以来、全く御協力が得られなかったという従来の経験から、できる限り御協力をいただけるものから広く資料を求め、さらに他に御協力をいただけるものを発見をするというふうなことで疎明できます資料が集まりましたならば、これは公式に刑事訴訟法に基づいていくということに相なることと思うのでございます。しかしこれだけのものを、全体が必要であったかどうかという点につきましては、先ほどお答えいたしました通り、もっとたくみな方法があったろうかと思うのでございます。
  53. 川村継義

    川村(継)委員 それではきょう確答というわけにはいかないと思いますけれども、ただ渡辺刑事がやりましたいわゆる情報を探るための方法、あるいは取り調べたところの範囲というようなもの、これは通例として適当でないと考えられる部面が非常に多い。具体的な問題として、現地の問題としてはそれはいろいろの事情が考えられるけれども七何月何日自宅に呼んで、酒を飲ましたり金を出したり、各種の民主団体等を取り調べたり、そういうものの情報を集めたりというようなやり方は、この種の犯罪を捜査する一つのやり方としては、通例としてこれは決して妥当なものでない、こういうようなお答えである、このように理解をして私の質問を終わりたいと思います。
  54. 太田一夫

    太田委員長代理 田邊誠君。
  55. 田邊誠

    田邊(誠)委員 ただいま川村委員から概括的に質問がございました群馬沼田で起こりました労働組合等から各種の情報を提供さしたという問題は、今いろいろと政府当局からお答えがございましたけれども、私はやはり警察の適切にして民主的な行政の執行と運営があくまでも必要だと考えておる立場から言いますならば、どうも今お答えになったような形の中でこの問題が起こり、これが世間を騒がしておるという状態ではないかと考えておるわけであります。時間が経過をいたしておりますから、ごく簡明に、川村委員の御質問に重複しない範囲で、二、三点質問をいたしたいと思います。  その前に、長官にお伺いをしたいのは、今の御質疑にもありましたけれども、警察の民主的な運営をわれわれは望む立場のものでありますが、それはたとえばいろいろな捜査をし、いろいろな調査をされる場合においても、その差があってはならぬことはもちろんのことでありますけれども、しかしまた一方において、戦後におけるいわゆる憲法に保障された団結権あるいはその他の言論、結社の自由、こういった基本的な権利があるわけでありまするから、こういった各種の保障された人権あるいはまた団体の行動、それに属する人々に対するところの取り扱い、こういったものはやはりより慎重でなければならぬし、またその限界というものが、おのずから警察権の行使にあたっても私はあろうと思うのでありまして、そういった点が厳格に守られることが、最も必要であると思うのでありまするけれども、日常の警察権力という一つの権力の施行にあたって、その点が下部まで浸透されて厳格に守られておるかどうか、長官はそういう立場で事に処されておるかどうか。まずその所見を承りたいと思います。
  56. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話の警察権の民主的な運営ということにつきましては、私どもかねてから強く指示をいたし、指導をいたしておるところでございます。まだまだ十分に徹底しておるということを言明するだけの気持は持ちませんけれども、できるだけそういう方向で指導をしていくという基本の態度には変わりはございません。
  57. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そういう長官のお話というものが、私は今度の事件と関連をして考えてみまするならば、やはりその間に幾らかのそごなり、幾らかの行き過ぎなりというものが認められるのではないかと考える一人であります。今までお話がありました中で、いろいろと問題になる諸点がございます。その一番重要な点は、今私が申し上げた民主的な団体に対して事に処される場合に、警備局長の御答弁にもありましたように、これに関連をする問題が、個人の横領事件だというお話でございましたけれども、それにしては、先ほど来の川村委員の御指摘にありましたような、きわめて広範な民主団体、労働組合あるいは政党、そういったものに対しての、情報の提供を求めておる事実がございます。これは当該の署長もある程度認めておるのであります。ただその範囲の厳格な——こちら側の主張と現地署長なり、県本部長のお話とには、幾らかの違いはありまするけれども、そういう話が出たことは認めておるのであります。ところが今お話のありましたように、この某警察官情報をいろいろと提供をしてもらったという、それに関連をするのは横領事件だとおっしゃるのでありまするけれども、群馬県の警察本部長が、群馬県の議会で答弁をいたしておりまするところの速記録を拝見をいたしますると、団体からカンパしたあるいは集められた金が着服されておるというその両方の容疑のために、これに関連をする話が出たというのであります。ところが、この某青年が属しておる団体というのか、きわあて限られておる。私はこの青年からも直接聞き、また現地警察もその青年の現在の状態というものをよく熟知されておると思いまするけれども、労働組合以外は、わずか二つばかりの団体に属しておるだけの青年であります。そして二十一才という若い年令の青年でございまして、いわば民主的な運動をやる活動家といたしましては、決してその中枢におるところの人間ではないのであります。その人間に先ほど来の御指摘のような広範な組織の動向というものを聞くというととは、これはきわめてその間に無理があるし、そしてまたそれをあえてしなければならなかったという点は、これはやはりその青年をつかまえたならば、その青年情報の提供者ということで対象にした以上は、一つとことんまでこれを実行させよう、こういう警察本人との接触の間に、かなりの無理があったというように私は認識せざるを得ないのでありまして、そういった点が、はたして守られておったかどうかといいますと、私はやはりかなり行き過ぎた聞き込みを強要したのではないか、こういうふうに考えざるを得ないのであります。   〔太田委員長代理退席、渡海委員   長代理着席〕  しかもこの横領事件に関連をするという団体がいずこの団体であるかは存じませんけれども、今の青年の所属する団体の知識、範囲、そういった面から言い、——われわれの関知したところでは、この民主的な団体のカンパに関係をするところの横領事件というのは、そんなに多額の横領事件でもない。あるいはまたそれほど金が集められるところの実は団体でもないということを、われわれは現地の各種の民主団体の状態をよく知っておりますから、そういうふうに考えざるを得ないのであります。そういたしまするならば、やはりこの簡単な、たとえばそれが横領事件があったにいたしましても、簡単な内容の、あるいは簡単でなくても、額の面ではそれほど多額のものを取り扱う対象となるような団体のカンパなり基金ではないという、こういう状態から推しまして、この青年に対してそれらの広範な情報収集というものをやったということは、何といってもその間に無理があったとわれわれは確認をせざるを得ないと思いまするけれども、警備局長から一つ御答弁をいただきたいと思います。
  58. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは先ほどもお話し申し上げたところでございまするけれども、この横領の捜査をもっとうまく単刀直入にやればやれたではないかという意味の観点に立ちますと、もっとやる方法があったろうということは、繰り返しお答えをいたしておるところでございます。  ただ窃盗事件につきまして、これはある人の物が盗まれて、質入れされて、それが出たということの筋道であるにかかわらず、実際はなかなか、どういうことで盗まれ、あるいは被害届を出すというような意味での犯罪捜査にとっての必要な御協力がいただけないという関係から、この青年が属します団体の、今容疑をかけられております青年の前任者として会計を扱っておった、従ってその会計につきましては、今聞き得るとすれば本人以外には一番明らかになる人というようなことで、その関係を主張する、しかもその団体が、なるほど事情を御存じの方は大した金額が集まる団体じゃないということでございますけれども、他の団体からも、この団体にカンパが集まっておるというようなことで、その一部を着服をしたというような容疑もあるやに聞いておるのでございます。そういう意味で、関係のある団体について尋ねたということは、これはあり得ると思うのでございます。これもたしかまだ田邉委員おいでの前にお答えしたかと思いますけれども、調べる際におきましても、実はそのことを聞き出しますために、いろいろ広く聞いてはその中から聞こうとすることをつかむということは、しばしばあることでございますので、その事件に必要な材料、それを一歩でも出るということはおかしいではないかということであるならば、これはなかなか無理と思うのでございます。ただ今回のこの横領事件に、今御指摘の材料を全部かりに集めたといたしますと、それは多過ぎるではないかというお言葉に対しましては、先ほど来申し上げておりますように、一般的に申すならば適当を欠いたのではなかろうかという感じがいたすのでございます。
  59. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私は正確を期する意味で、当該県の県会の本会議における県の警察本部長の答弁の速記録を土台といたしまして質問をいたすのでありますけれども、最初は県の本部長は、事は窃盗事件に関連をいたしまして、その参考になる事情を聴取し、さらにある団体の内部の横領事件の捜査に必要な協力を受けた事実はございます。こう言うのであります。ところが、それがだんだん聞いて参りますと、いや、窃盗事件の方はすでに終わってしまった。これはもう十二月の七日に起訴になって、十二月の二十日には保釈になった。こういう事件でありますから、それとは関連を持たすことはきわめて無理だということが判明をいたして参りましたので、主体は横領事件だというふうになって参ったのであります。それならばいろいろと民主団体の動向を聞くということはあり得る、こういうお話ですけれども、本人をしていろいろな会合に出さしめ、あるいは積極的にその会合の中に加わり、そういう中でもって司会者の氏名や、発言した内容や、その結論を聞き出すという積極的な行動を本人に強いるということは、今までの御答弁とやはり若干の違いがあるのではないかと思います。やはり現状を聞くというのと、さらにお前はこういうような行動をして、それに対するところの結果を知らせろということは、これはまた私は違うと思う。前者の場合であれば、今警備局長のお話のようなことが私は一応通用するかもしれませんけれども、百歩譲って私がそれを承認いたしましても、さらにそういう積極的な行動をさせるということは、これはあくまでも本人の自発的な協力の限界を越えた、ある種の強要に属する行き過ぎがあったのではないか、私どもは常識的にこう判断をいたすのでありますけれども、その点はいかがでありますか。
  60. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 ある会合にぜひ出席をして、その議論をとってこいということを強要したということが、先ほど来の答弁からいって行き過ぎではないかということのようでございます。これは本人がそういう強要を受けて行ったというふうに言っておられるのかもしれませんけれども、私どもの聞いておりますことでは、こちらから積極的にある団体の会合に行ってその結論を聞かせろというふうな強要をしたとは聞いていないのでございます。これまた一般的に申しまして、犯罪捜査に協力を得るということは、その人の知っております知識をこちらがちょうだいするというのが通例の限度であろうと思うのでございます。さらに進んで自分もそういう犯罪を捜査することに協力しようということで、自分の意思で進んで協力を得られる場合もそれはあろうかと思いますけれども、一般的に申しますならば、これは本人の持っておられる知識をこちらがいただくというのが、これが通常のことであろうと思うのでございます。
  61. 田邊誠

    田邊(誠)委員 従って今私が質問した中で申し上げたように、一般的にはやはり現状の中でいろいろな事情を把握するということが通例の場合であろうと思うのであります。この問題が特に問題になっておりますのは、先ほど来の指摘のように、そういう積極的な行動まで強いたのではないかというところが、やはり民主団体に対するこれは一つの非常な抑圧にもなるし、民主的な運動に対して、最終的にはこれは非常に影響を与えることではないか、こういうふうに言われておる原因であります。しかも本人は民青の同盟員だと言うのでありますけれども、渡辺刑事は、どうだ、共産党に入らんか、そうしたら手当は倍額にしてやる、こういう話をしたというのです。ところが警察署長さんなり県の本部長は、それは本人が自発的に渡辺刑事に対して、共産党に入りたいと思うのだけれども、どうでしょうかと聞いたのだ。それに対して刑事は、いや、そういうことは本人の判断でもってやるべきだ、こういうふうに答えたというのでありますけれども、いかがでしょうか。警察の刑事さんと二十一才の若い青年が隠れるようにして会って、その中でもって警察官にいかに親密になったからといっても、現在のところいわゆる警察当局がいろいろと調査の対象にもされておるであろうところの政党に入る、こういうことを警察官に聞くというようなことが常識で判断ができましょうか、われわれはこのことの経緯から見ますならば、やはりそこまで問題が広がってき、いろいろと情報を収集する、さらにそれを突っ込みたい、そうするならば、外部におるよりも政党に入党して、その内部事情も確かめてもらえないか、こういうふうにだんだんと深く追い込んでいったというのが常識的に考えられることではないかと思うのでございますけれども、これはどちらがどう言ったかということは言い争いになるでしょうけれども、大体われわれがそのことの運び工合を見ておって考えまするならば、やはり渡辺刑事の、そのやりとりの中におけるところの深入りをし過ぎた結果というものが、こういうことを言わしめる原因になっておるのじゃないか、こういうふうに私は判断をいたしまするが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  62. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私が聞いております限りは、今御指摘の本部長の答弁以上のことを聞いておるわけじゃございません。一般的にこういう場合に、警察が警戒しているであろう共産党に入ることを相談にいくというようなことは、常識的に考えられないじゃないかということでございます。そのこともそうでございまするけれども、同時にまた全然そういう意思のない者に共産党に入ったらどうかということを警察が言い出すということも、これまた常識的でないと思うのでございます。従いまして、その両者の言葉のやりとりがどうでございましたか、これは田邉委員の方はその当該の青年からお聞き及びだと思うのでございまするし、私は警察から聞くほかないのでございまするが、そういう点は私はなかったものと信ずるのでございます。
  63. 田邊誠

    田邊(誠)委員 渡辺刑事言葉の中で、非常に重大な問題は、おれたちの関係がばれると自分も沼田にいられないし、お前も沼田にいられなくなるぞというようなことを言ったというのです。そしてどんな会合に積極的に出ても、その身辺には自分が変装して近くで監視しておる。これはおどかした言葉でしょうか、一生懸命にやってもらいたいという励ましの言葉に属するのでしょうか、どちらでしょうかわかりませんけれども、身辺を見張っておるから大丈夫だ。従って、自分の言う通りに積極的にいろいろと行動をしてもらうことが最も望ましいことだぞ、こういうことを言ったというのでありますけれども、ここまで至っては私はやはりどうしても情報収集という横領事件に関連をする問題としての警察の行き方としては、これは明らかに人権問題にも発展をする言葉ではないかと思うのでございまするが、もしこれが真実であるとするならば、やはり望ましい姿でないというふうにお考えになると思いますが、いかがでしょうか。
  64. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 その言葉が真実であるとするならば、望ましくないというお尋ねはその通りお答えをするほかはございません。ただ私どもは、私どもなりの一方的な判断だ、こうお考えになるかもしれませんけれども、事柄は相対の二人がありまして、一方は警察に今強要されたという立場、皆さんに訴えるという立場になっておられる方でございますから、警察官の言う方にも、これは身びいきという点もあろうかというふうな御叱責も十分承るといたしまして、一方当事者の発言をその通りと、こう前提をしていただきますと、またやや一方的になることがあるのではなかろうかと思いますので、よけいなことでございますけれども、御理解を賜わりたいと思います。
  65. 田邊誠

    田邊(誠)委員 そのやりとりがほんとうならば、当該の渡辺刑事さんや青年に、当委員会でも証人しておいで願って、一緒にお話を聞いてもらえば一番いいわけなんですが、そこまで私もきょうは言いません。時間がございませんから簡明に次の問題に入ります。  偽名を使ったのは、何か先ほどの三輪警備局長のお話では、職場における通称だというのですけれども、そんなことはございません。私ども職場に行きましたけれども、宮田というような姓を使っても職場で通用するような符号ではないということは、これは明らかであります。渡辺刑事が職場に電話をかけてきまして、これは十二月十三日であります。ところがその某青年はその電話に出て、私は宮田ですけれども前田さんですかと言ってしまった。ところがそばにおった女事務員が、その青年に、あなたは自分のことを宮田なんというのはどういうわけですか、こういうふうにけげんな顔をして聞いたのです。従って、その青年が宮田というような符号なり通称が、職場でもって通用されているというようなことは、これは全く事実と相反するのでありまして、その点は警察がお調べになればおわかりの通りであります。私はこれは何らか使う目的なり使う考え方でもってこの偽名をお互いに使うということを二人がしめし合わせたのではないか、こういうふうに思うのでありまして、その点は先ほどからの局長の御答弁は、これはいささか事実と相反する、こういうふうに思うのですけれども、いかがでございましょう。
  66. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私は現地について見ておりませんので、あるいはお話の通りかもしれませんけれども、しかしその意図は、私は通称だからというよりは、先ほどもお答えいたしましたが、本人警察と連絡をしているということを知られたくないという意図であったということはわかるのでございます。ただ、今もお話の中にありました通り、ただ職場の中で宮田ということを答えたのでありますから、その職場の中でかりにこちらから宮田と電話をかければ通ずるということを前提といたさなければ連絡のしようがないわけでありますので、それはやはり通称ではなかったかもしれませんが、宮田といえば通ずるくらいのことはあったのではないかと実は私も想像をいたしたわけでございます。そうでなければ自分で宮田といことを名乗るということはちょっと理解ができないのでございます。しかしいずれにいたしましても、これは通称というのは言い過ぎであったかどうか、私は事実を知りませんのでお言葉に従うほかはございません。ただ本人といたしましては、警察にそういう連絡をしているということは、いずれにしても仲間内の犯罪関係することでもありまするし、そういうことを知られることを避けたいと思ったことはこれは事実である、こう思うのであります。
  67. 田邊誠

    田邊(誠)委員 それは三輪さん、電話がかかってきたときには宮田さんをお願いしますと言ってないのですよ。それはその本人が電話に出たときにうっかり言ったというのでありまして、あなたはそこまで言われるのはそれは間違いです。そういうことではありません。あくまでも電話はその青年の正式な名前でもってかけられてきた。それに応答した際にうっかり口から出た言葉が今言ったようなことで、職場では大へんけげんに思われた、こう事実を私は指摘をしなければならぬ。従って、この偽名をそういうことの中で使ったということは、これは事実と相反することでありまして、後段に御答弁されたようなことであるかどうかは、これは私の方としては一がいに了解をしかねますけれども、偽名まで使ってやらなければならぬという事情がその中に伏在しておったのかどうか、大へん実は疑問に思う点であります。  金を払ったんですね。最初二千円渡したというのは、弟に対する補導の意味を含めて本人が渡したというのですね。そうするとこの最初の二千円は何ですか、これは渡辺刑事本人負担ですか。
  68. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これも先ほどお答えいたしましたように、きわめてむずかしい問題だと思うのでございます。二千円出しましたことが自後の捜査に役立ったという面から見れば、これは捜査に必要だったということも言えぬこともございませんけれども、しかし本人のそのときの気持とすれば、その弟さんに更生の機会を与えたいという気持であったようでございまして、本人としてこれが捜査上心要だったんだということを上司に請求するのは、おそらくちゅうちょするであろうと思うのでございます。この二千円が県費からあとで補てんされましたかどうか、あるいは補てんされるものかどうか、私確かめてございませんけれども、きわめてこれは限界のむずかしい問題で、おそらく本人といたしましては、まあ自分のポケット・マネーから出したという気持でやったかと思うのでございます。
  69. 田邊誠

    田邊(誠)委員 金の渡し方がいろいろありますけれども、これは当該の署長さんも県の警察本部長さんも警察当局も、これは県費の方の実費弁償——報償金を含めてですか——だというのですが、月ぎめにして三千円くらいだった。わしもふところが苦しいから三千円くらいでどうだやってくれないか、こういうようなことを渡辺巡査は言っておりますけれども、そんなことが、大体実費弁償ということで通用しますか。共産党に入れば倍にするということを、あとで言ったというんですけれどもね。あとの話はいずれにいたしましても、大体実費弁償なり、協力してくれたことに対する報償だというのですが、月ぎめで三千円という額まで出して金の取りきめをするということは考えられますか、どうでしょう。
  70. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 犯罪捜査についての御協力でございますから、御協力が得られて、犯罪が送検されるに至ればいいわけでございます。従ってその話を聞き、事件を捜査いたしますのに今後何カ月もかかるという前提ではなかったろうと思うのでございます。従って月ぎめ幾らということは、この場合に理解に苦しむのでございます。あるいは三回あった、それをまとめてというような意味で言ったのかどうか、あるいはそういう言葉を事実上言ったのであるかどうか存じませんけれども、そういう犯罪捜査の場合に、月ぎめでというような言い方はちょっと理解に苦しむのでございます。
  71. 田邊誠

    田邊(誠)委員 しかも金を渡すのに、報償費だから、それは偽名を使ったり、会う場所はいろいろでも、警察としてはこれをあげるのは堂々と渡していいんでしょう。これはあなたの情報提供ということに対するお礼なんです。最初は弟さんに対する補導の意味を含めてということは、個人的な意味もあるでしょうけれども、それ以外とするならば、これは堂々と渡すべきものでしょう。こたつの中でもって手に握らしたというのです。これは当該署長も否定しておりません。いかがでしょうか。実費弁償をこたつの中でそっと渡さなければならぬという、こういうようなことを警察は慫慂しているのですか。そんなことはないでしょう。われわれはやっぱりそこに何か相手方に対する印象として、君には情報を提供してもらっている、警察もそれに対する協力の意味でもって一つこの実費弁償をおあげするのだ、こういうようなことでもって事が始まり、金が授受され、協力を求めている、こういうような格好ではないと思うんです。どう見ても何かこそこそ本人に対して知らず知らずのうちにいろいろな物事を聞き出したいという、こういった当初の目的が那辺にあったか私は知りませんけれども、だんだんだんだんと、あるいは当初の目的は善意であり、横領事件に関連するものであるといたしましても、渡辺刑事が一たん踏み込んだためにそういった状態というものが次から次へと重ねられていく、こういう一つの証拠ではないかと私は思いますが、どうでしょうか。そんなことはあり得ると思いますか。
  72. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 それも私どうもよくわからないのでございますが、おそらく、他人のいる前で、かりに報償費だといっても、実はこれは報償費だ、受領書を出しなさいという筋の金でないことは、御理解いただきたいと思います。おそらく相対でのときに渡したと思うのでございます。相対であるとすると、これはどう渡すとしても、渡す方と渡される方しかいないのでございますから、これはお礼だといって渡すのが普通であって、どう渡しても相手には渡されたことがわかるということで、そんなふうな渡し方をするということは、はなはだどうもわからないのであります。冬で、こたつがあったということで、こたつでもらったということでありましょうが、こたつの中で渡すということは、これはちょっとどうも考えられないことでございます。
  73. 田邊誠

    田邊(誠)委員 しかもそのつど額が違いますね。報償の程度というのがそのつど違うのでしょうけれども、会うのは大体火曜日か水曜日にちゃんと会う。夜七時から大体八時なり九時までの間に会う。情報の提供の工合がうんとよければよけい出しているのですか。五百円になり、千円になり、また五百円になる、こういうふうに違っているのです。ある情報提供なり、そういう間接的な捜査のために実費弁償するということであれば、これはやはり本人に対して出すところの額というのは大体きまっておるべきものじゃないか、こういうふうに私は思うのであります。   〔渡海委員長代理退席、委員長着   席〕  そういうふうな工合にちぐはぐに渡した。そのつど、リンゴを渡したり、酒を飲ませたり、こういうこともつけ加えてやっておるということは、これは一貫をしたその青年に対するところの実費弁償なり報償費として渡したという、こういう感覚ではないと私は判断するのですけれども、いかがでしょう。
  74. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 報償費は、先ほど申しました通り、他県で申します捜査費に当たるものがここでは報償費というのでございますが、これは実費弁償と申しましても、ある作業をやってそれに日当を払うというような、きっちりしたそろばんに必ずしも乗らないものでございます。あるいはそこに至ります車賃というものを含む場合もございましょうし、あるいはひまをつぶしたということで、通常考えられるひまつぶし代というものもあり得ると思います。あるいは一日働かないで来てくれたということで、その日当にかわるものも含めなければならない場合もあるだろうと思うのです。また協力をしていただきましても、相手の経済状況から、いや、そんなものをもらう筋はないといってお断わりになる方ももちろんございますわけで、従いまして、これはいわば契約をしてだれが幾らといって出すような形にならないのはある程度やむを得ないことと思うのでございます。この場合に、どういうときが千円で、どういうときが五百円であったかはっきりわかりませんけれども、この犯罪捜査に協力していただきました限度で、おそらく全体としてこのくらいというあるいは目算があったものでございましょうか、あるいはそのときに特に時間が長かったということでございましょうか、そういう意味の差が若干はできたのかというふうに思うわけでございます。
  75. 田邊誠

    田邊(誠)委員 私のところに、この事件が出てきてから、ある人から電話をかけてくれまして、私もある事件でもって警察に非常に長い間協力をしていろいろと情報を提供したのだが、一銭も報償費だとか謝礼だとかをもらったことがない、一体警察というのは、どういうときにこういった金を出し、実際にほんとうに協力をしているという者に対してはナシのつぶてで何にも出さないという、そのつどの御都合主義でもって金を払うのですかという問い合わせがありました。私はもっともな話だと思うのであります。自治大臣おりませんけれども、一体これは県費で出したのですか。国から地方の県に渡すところの金の中から出したのですか。県費でしような。
  76. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 県費報償費ということを聞いております。
  77. 田邊誠

    田邊(誠)委員 われわれは実は第一線の警察官は非常に御苦労をされて、たとえば問題になっている交通整理にしても、歳末警戒にしても、実は大へん少ない給与や手当の中で働いていてくれることに感謝をいたしておる一人です。しかし、その県費も非常に少ない、なかなか思うような手当もできない、たとえば警察に協力をしてくれた人たちに対してもなかなか思うような報償ができない、これが私は実情だろうと思うのであります。ところが、今指摘をして参りましたようなこういった事件に対しては、かなりの額を出しておる。その間に私は何といっても矛盾と、何か一貫性を欠いたやり方、金の支出の仕方があるのじゃないかと思いますけれども、大所高所からながめてどうでございましょう。この種の問題に対してこういった支出がなされていることが、客観的に見て妥当であるとあなたはお考えですか。
  78. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これは、先ほどもちょっと申しました通り警察に御協力いただく範囲が大へん広いのでございまして、多くの方から御協力をいただいておるわけでございます。ただ、その中で、こちらから事件が済みましたときに物を持ってお礼に行くという程度のものもございますし、あるいはその方の生活が非常に困窮しておられるというような場合に、この方にひまをつぶしていただいたという意味で、協力をいただいたつど、この場合で言えば報償費で出すというときもあり得るわけでございます。相なるべくは、御協力を願った方には何らかの形で全部お礼を差し上げるということになればいいのでございますけれども、一面は予算の制約もございますし、一面はまた国民感情からいたしまして、警察犯罪捜査あるいは交通取り締まり、交通の安全というようなことに協力をして警察から金をもらう、物をもらうということは——社会のためであって、そんなものを警察からもらうのはおかしいというようなお考えの方も非常に多くあるわけでございまして、御協力をいただいたつど、どなたにも同じように差し上げるということにはなっておらないのでございます。
  79. 田邊誠

    田邊(誠)委員 警察官の個人負担というのは奨励をしておるわけではありませんね。今度のこの支出の中には、かなり渡辺刑事の個人負担が含まれておるというふうに警察当局は県でも当該署でも言われる。従って、そういったことが望ましくないとするならば、この金の授受についてはあなた方の言われる点を前提として信頼をいたしましても、個人の負担を含めてそのつど払いでもってやられ、酒を提供したり、渡し方もどうも隠密に渡しておる、こういったことは署長も否定いたしておらないのですから事実でございましょうけれども、これはやはり一般的に言って望ましい姿であるというふうにはお考えにならないと思いますが、いかがでしょう。
  80. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 この種の犯罪捜査で、こういった形で金がそのつど出るということは、一般の尺度から申して通例でないということは、先ほど来お答えいたしておる通りでございます。
  81. 田邊誠

    田邊(誠)委員 この問題、実は当該の本人が非常に苦しんで、最終的に公にしたということになっておりますので、その点から言いますならば、自発的な協力で情報を提供したというふうには見受けられないわけです。しかし、これは一種の論争であります。また別の機会に譲らなければなりませんけれども、私は沼田という土地の事情もよく知っておる。またあそこの民主団体等の動向もよく知っておる。それから来るところの私の推察もあると思いますけれども、しかし、それは一応抜きにいたしまして、こういったことが公にされたことによって、一つは人権問題として警察権乱用ではないか、こういうふうに言われ、もう一つは、労働組合等の民主的な運動に対する有形無形の抑圧あるいは心理的な影響、こういったものを与えたということは否定できない。従って、そういうようなことを十分勘案をして、これに対するところの結末をつけなければならぬ段階に私は好むと好まざるとにかかわらず来ておると思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。この問題を通じて、そういった各種の運動に対するところの影響をお考え合わせいただいてこの種の問題に対処すべきである、こういうふうに私は考えるのでございますけれども、長官の所信を伺いたい。
  82. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、警察の運営につきましては、できるだけ民主的であり、また、必要な限度を越えないようにするという基本的な考え方を持っていかなければならぬと思います。今回の事件についていろいろと御意見がございましたが、いろいろ御注意の点も私ども十分施策の上に取り入れまして、反省すべき点は十分反省して参りたい。この問題だけでなしに、全国的に警察運営というものについてさらに注意を喚起して参りたいと考えております。
  83. 田邊誠

    田邊(誠)委員 事実の認定の仕方や、あるいは私どもが今まで調査して参りましたものと御答弁と食い違いもあり、まだ判明をしない点もあるようでございます。警備局長の先ほど来説明の金の問題、偽名の問題、場所をどうして提供したという問題、言葉のやりとりの中にあった積極的な民主団体の動向をさぐるというような問題、政党への入党を強要したといった問題がございますので、正確を期する意味において——また川村委員からも御指摘があったように、民主的な正しい警察権の行使と相反したようにとられるととは、警察当局にとっても遺憾であろうと思いますので、十分御調査を積み重ねられた後、また別の機会にこれらの問題を取り上げて真意のあるところを確かめることにして、きょうの私の質問は終わります。
  84. 松井誠

    松井(誠)委員 今の問題に関連して一、二点お伺いいたしたいのであります。お話を伺っておりまして、どうも私はふに落ちないのであります。この問題は犯罪捜査の行き過ぎという形でやりとりされております。しかし、根本的な疑惑は、これは川村委員や田邉委員も同じだと思いますけれども、単に犯罪捜査の行き過ぎという建前で取り上げておるのではなくて、これがいろいろな民主団体の調査、そういう形で行なわれておる、そういう疑惑が非常に強い、そういう意味からこれを問題にしておるわけであります。しかし、今はあくまでも犯罪捜査の面からお答えになっておりますので、いわば前提がはっきりしないで、もたもたしていると思いますが、こういう事件が今までも何度か明るみに出る。そうすると、警察の方では、いや、そういう事実はございませんということで否定する。しかし、そういう事実がはっきりして参りますと、そういう調査が破防法その他で当然必要なんだという形でむしろ開き直ってくる、そういうことで今までは終わっておったように思うのです。ところが、この問題はそこまではいかないで、犯罪捜査の行き過ぎかどうかということでもたついておるので、お話を伺っておりましてもふに落ちないことが多いのであります。この事件そのものは、客観的に見ますと単なる犯罪の捜査の行き過ぎではなくて、思想調査であり、いろいろな民主団体の調査である、そういうように考えざるを得ない条件が非常に多いわけであります。そういうことから一、二点お伺いいたしたいのです。  まず報償という制度のことですが、これは犯罪捜査にもあるいはそうでないいろいろな調査にもこの報償という制度はあるわけですか。
  85. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 ございます。
  86. 松井誠

    松井(誠)委員 その報償金というものの出所は、犯罪捜査の場合と、破防法その他のための調査の場合とでは、違いますか。
  87. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 先ほどのお尋ね、やや私誤解しておりましたけれども、報償費という本件の場合は、他県で申しますと刑事の捜査費と、それから交通その他のいわゆる報償そのものと、幾つかの項目に分かれて報償費というものが出ておるわけでございます。今のお尋ねのある特定の団体を調査をするというようなことに使われるのは、国費の捜査費というのがございます。従って、国費の捜査費でやる場合があるわけでございますけれども、本件は県から私聞いておるところによりますれば、県費の刑事の報償費ということで聞いておるのでございます。
  88. 松井誠

    松井(誠)委員 刑事の報償費というのは、各県どこでも同じ制度があるわけですか。
  89. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 性質は同じでございますけれども、多くの県は捜査費ということで組んでおるところが多いと思います。
  90. 松井誠

    松井(誠)委員 刑事の捜査の報償にしても、あるいは今言われた国費で捜査費から出る調査その他の報償にしましても、やはり渡した場合には相手から受領証を取る、そういう形式を踏むわけですか。
  91. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 受領証を取るのが建前でございますけれども、しかしそれは今回のように、御本人警察に協力をしたということが他に出ることが望ましくないと思われるような場合でございましては、かりに本人の受領証を取りましても、公式にいたしませんで、支払い証明書と申しますか、本人がこれだけ払ったということの証明書を公式につけまして、これに本人の受け取りというものがございますれば、県の会計のところにそれを回すというような措置になっておるかと思います。
  92. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、本件の場合、本人からは一度も受領証というものは取っていない、そういうことになるわけですか。
  93. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 確認をいたしておりませんけれども、あるいは取っていないかもしれないと思います。
  94. 松井誠

    松井(誠)委員 この報償というのは、たとえばそういう県費の報償という場合に、具体的にどういう金額を支給するかということは、何か条例とかそういうもので基準がきまっておりますか。あるいはまた国費の報償というものについても何かそのような基準でもございますか。
  95. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 条例、法令等に基準というものはございません。先ほど来申しますように、捜査でございますとか、あるいは調査でございますとか、そういうものに協力していただきます場合の実費弁償、あるいは調査の場合では、その調査に日数もかかるということでございますれば、そういうものを含めまして、また相手の人にもよりまして、金額というものがおのずときまると思うのでございます。
  96. 松井誠

    松井(誠)委員 いろいろな団体の調査というような場合には、これは継続的なものですから、先ほど田邉委員からお話がありましたように、月幾らというような形で報償が与えられるということもあると思うのですけれども、犯罪捜査の場合には、常識として月ぎめのそういう報償ということは事柄の性質上あり得ないのじゃないかと思いますけれども、一般論としてその通り考えてよろしいでしょうか。
  97. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 一般論としてその通りでございます。
  98. 松井誠

    松井(誠)委員 ところが本件では、田邉委員の言われたように、いわば月ぎめという申し出があったという本人の言うことが真実であるとすれば、そのような事実があったということになるわけです。  それからもう一つふに落ちませんのは、この渡辺という警察官は、先ほども話がありましたけれども、警備係だという。その前の窃盗の捜査のときには、この渡辺という警察官は関与しておったのかいなかったのか、御存じありませんか。
  99. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 窃盗のときには関与していなかったように聞いておりますが、もう一ぺん確認をしなければなりません。  なお、警備係がこの種の犯罪関係するのかどうかというお尋ねかと思うのでありますが、これは警視庁のごとく、それぞれの組織が多くて自力でやれますような場合には、もちろん刑事で扱います事件、警備、公安で扱います事件というのが非常にはっきりするわけでございますけれども、地方の警察署というものは、駐在を入れましても八十名程度という実情でございます。そういうところにおきまして、防犯一斉月間をやりますとか、交通取り締まりの一斉旬間をやりますとかいうことになると、特にそうでございますし、あるいは事件が大きくなった場合には署をあげてやる、これが行なわれるわけでございます。本件でなぜ警備が扱ったかということでございますけれども、これは先ほど申しましたように、ある組織に属しておる人の犯罪であるということになりまして以来、窃盗事件についても全く御協力がいただけないという状態でありました。そこでこの横領事件について御協力いただけるという一番密接な関係のある、この当該の青年にかねてよく面識のあった者が扱ったということでございまして、いなかの小さな署にあってはままあることかと思うのであります。
  100. 松井誠

    松井(誠)委員 この横領事件はどの程度の規模のものかよくわかりませんけれども、いわば帳簿の経理を調べなければならぬ。そういう意味ではやや特殊な知識も要る犯罪で、従ってたとえば県警なら県警あたりでも、そういう経理の専門、経理に特に詳しいという警察官がいて、少しめんどうな事件にはそういう者が出向いていって捜査をする。そういういわば特殊な専門知識の要る事件だと思うのですけれども、警備という犯罪捜査とは縁の薄い、そうして刑事事件の中でそういう特殊な知識の要る横領事件のような犯罪の捜査に、この警備係が長い間当たったということ自体がふに落ちないわけなんです。そこでこれは何もただで頼むわけではございませんから、もし報償という制度を活用するということになれば、特別にそういう知識、情報を提供してくれそうな人に対して、警察の中で必ずしも顔見知りがあるとも限らない。しかもこの警備係が情報の提供を求めた範囲というものはあとでお伺いしますけれども、まさに警備係の管轄の範囲にある事柄がほとんど全部です。しかも話に聞きますと、この人は主として警備畑をずっと歩いてきた人だというように聞いておりますけれども、単に情報提供者と顔見知りであったという、そういう便宜のためにその人を出向かせたことは、犯罪捜査の能率の点から適当であるかどうかということも、私ははなはだ疑問だと思うのです。  そこで先ほどちょっと警備局長は、犯罪捜査の場合には、横領なら横領の問題についても、そのものずばりで情報の提供を求めないで、あるいはそれに関連するいろいろな他の情報を求める場合もあり得るのだということを申しましたけれども、これは情報を求めるときに、たとえばこういう事件について捜査をしたいのだ、だから一つ協力してくれという形で協力を求めるというのが普通の形式ではございませんか。
  101. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 こういう捜査について協力を求めるという形でいくのが通例でございます。  それから通常の場合、横領事件というのは、特殊な警察官がやるという御指摘でございましたが、県下で大きな会社の事犯でございますとか、営団、公団の事犯でありますとかいうものは、もちろん特殊の二、三の専門家というものをわずらわさなければ、なかなかむずかしいのでございますが、通常の規模の横領事件というものは、大体それぞれ各署で扱っておるのが通常かと思います。  それから繰り返し申し上げるわけですけれども、ただこの事件につきましては、きわめて明瞭な窃盗の事件につきましても、被害者その他の御協力がいただけない、こういう状態でございましたので、これに入ります糸口として、一番そのことに詳しい前任の会計をやっておりました方と、よく知っている者が入ったということでございまして、この者一人でこの事件をやっておるということではもちろんないと思いますけれども、一番入りやすい口とすればそういうことしかないと判断したのではなかろうかと思うのでございます。
  102. 松井誠

    松井(誠)委員 それは今、捜査中の事件がかりに処分がきまって、起訴なら起訴ということになった場合には、具体的に何の事件であったかということについては県警で発表するという約束がございますので、いずれそのときにはもっとはっきりすると思いますけれども、しかしわれわれの常識で考えてみましても、過去の過ぎ去った横領事件というものを捜査するのに、具体的にこれからどこの会合へ出ていけというようなことが——これはあくまで一般論としてお伺いするよりほかないと思うのですけれども、過ぎ去った過去の横領事件というものを、そういう形で捜査をするということが、常識的に必要かどうか。それが一体過去の横領事件と具体的にどういうつながりがあるということになるのか、われわれは想像もつきませんけれども、どうでしょうこの点。共産党に入れと言ったかどうかということについては、先ほどのようにあるいは両方の言い分に食い違いがあるかもしれませんけれども、そういう民主団体に入っていろいろな情報を集めてくる、そういうことがすでに過ぎ去った横領事件の捜査に必要だというようにお考えになるのでしょうか。最後に一点だけお伺いしておきます。
  103. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 これも先ほどお答えいたしましたが、通常の場合御協力をいただきますのは、持っておりますその方の知識をこちらにいただくということでございます。そこで、積極的に、ある会合に行って、その状態を調べろというような積極的なことを求めるというのは、それは通常の場合例のないことと思います。この場合、ただそういうことを本人が強要したかどうかという事実につきまして、御見解と違いますので、一般論としてお答えいたしますならば、一般的な協力を求める態様ではなかろうかと思います。
  104. 園田直

    園田委員長 二宮武夫君。
  105. 二宮武夫

    ○二宮委員 先ほどからこの問題についての答弁を聞いておりますと、三輪さんにしましても、長官にしましても、警察官の立場というものをはっきりいたしまして、部下を擁護すると申しますか、どうもそういう点が感じとれるものが、答弁の中にたくさんあるのですね。皆さん方が、そういう感じを持っておることがやはり具体的な捜査の中にも出てくるんじゃないか。と申しますのは、別府で後藤という巡査が何者かに拉致されたという事件があったのですが、その拉致された事件が起こってから警察署長にわかったのは四時間後なんです。そして県で捜査本部を作ったのはなおさらに四時間後。結局八時間後です。なぜこのようにおくれたかということを分析してみますと、個人的な問題でやはり同僚を擁護したい、こういう気持で、あるいはもしこれを届け出て変なことが起こったのでは困るという間違った友情から、こういう問題が非常におくれたという事実が具体的にあるわけです。これは私はよほど改めないと、あなたの御答弁を聞いておりましても、やはりそういうニュアンスが非常にたくさん見受けられるのです。率直に調査すべきものは調査してお答えする。想像のもとに、仮定のもとにこういう答弁をするということではなくて、具体的な事実を聞いておるのですから、具体的に調査をして、あるいは間違っていることがあれば間違ったこととして、やはり自己反省をしなければいかぬと思うのです。  そこで柏村長官に一点だけお尋ねいたしますが、こういうような行動というのは、これは決して各県まちまちにやっておる問題ではなくて、これは警察庁の方でこういう問題についての講習なり、地方の警察本部の警備の中の若手の連中を集めて、革新団体やそのほかに対する日ごろ捜査すべき問題、調査すべき問題等についての講習会をやっておるはずなんです。そういう事実はございませんか。  私が一例を申し上げますと、一番親しい某巡査から——私が日朝協会の問題で北鮮に行くんだということが新聞に発表されましたところ、一番先に飛んできたのは一番親しい巡査だった。何のためにどのような目的でいつ行かれるのですか、先生が行かれちゃ困りますよという話を聞いて、裏返して尋ねてみると、こういう問題は、かねがね警察庁の方から実は東京に集まって講習を受けているんだ、従来の特高と同じような性格を持った憲法とは相反するところのこういうような捜査、調査というものをやるような指示が行なわれておるのではないかというように思うのですが、これは驚察の皆さん方は、やはり警察法ではっきり示されておりますように、そういうことを隠蔽せずに、正確に、こういうことをやったのだ、やらないのだということを、わからなければわからないで調査すればいいのですから、そういうふうに御答弁をいただきたいと思いますか、そういう事実はございませんか。
  106. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警備活動に限らず、警察活動につきましては、必要に応じて随時講習会等を開いております。これはこの事件との関連はございませんが、警備関係の調査活動におきまして、特に共産党等の破壊容疑団体というようなものについては、日ごろから詳細にこれを調査して、その動きを見ておるということが必要であるということで、共産党、共産主義者の活動ということになりますると、そういうものがどういうふうに分布され、どういうふうな意図を持って動いておるかというようなことまでかなり詳細に調査するようにいたしておるわけでございます。そういうことがあるいは一般的な民主団体についての不当な干渉であるというふうに受け取られるような場合があるかと思うのでありますが、私どもの警備活動の目標といたしましては、そういうところにはないのでございまして、あくまでも破壊的分子についての調査ということを考えているわけでございます。もっともいろいろ調査の仕方等につきまして、本件につきましても御指摘のありましたように、未熟なためのあるいは行き過ぎ、いろいろそういうこともあるかと思います。そういう点につきましては、再々申し上げておりますように、十分人権を尊重し、民主的な警察運営をはかるように努めて参りたいと思うのであります。ただ、今度の沼田事件につきましては、私の聞いておる範囲におきましては、窃盗事件から横領事件というものが浮かんできて、その横領事件についての捜査ということで警備係の渡辺巡査部長が一部これに当たったというふうに聞いておりますので、先ほど私または三輪君から御答弁申し上げたのもそういうふうな観点からお答えを申し上げておったわけであります。
  107. 二宮武夫

    ○二宮委員 私は、共産党ではございませんから、共産党は破壊分子であるという断定については反論を申し上げませんけれども、そのようなおとり捜査的な問題をやって有名になりました菅生事件というのがあったわけです。そしてこれは最高裁で差し戻しになりまして、この問題は警察、検察庁の行き過ぎであるということが、明確に第三者によって公平な判決が行なわれたという事実があるわけでございます。先ほど三輪さんの話を聞いておりましても、許欺、横領の問題に協力をしてもらうためには幅広い問題からいろいろ質問をしていった——この問題を裏返して参りますと、やはり今、柏村長官が答弁されましたお話でも共産党という問題をあなたは一つ目標に具体的に出しましたけれども、末端におきましては、第一線の警備の仕事をやっておる人たちにとっては、やはりそこが幅広くなりまして、実はあなたがおっしゃるような考え方ではなくて、もう地方において今や特高が復活しているということを、世論として認識しておらないような地方はないのではないかというくらいに、非常にこの点については神経質になっておるのです。それは皆さん方の今の答弁を十分総合いたしますと、よく警察庁の態度というものはわかってきておるのですが、今の問題も決して私はこの例から漏れる筋合いの問題ではないのではないかというように考えておるので、これは何という刑事か知りませんけれども、忠実に警察庁の方針に基づいて、この問題を契機にして日ごろの指示に従って行動をやったのにすぎないのだ、こういうように解釈するのが私は一番正しい解釈じゃなかろうかと思うのです。従って、民主的な団体や民主的な政党に対する地方におけるいろいろな規制、弾圧、干渉という問題が具体的に出てきておるという実情を、警察庁の方では十分自己批判をしながら把握をしなければならない。この場でもっていろいろと曲がりなりの答弁をしてみたところで、具体的な事実は厳然としておる。そういう点は一つはっきり把握をして善処していただきたいということを要望しまして質問を終わります。
  108. 園田直

    園田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会