○山口(鶴)
委員 社会党を代表いたしまして、ただいま
議題になりました
地方交付税法の一部を改正する等の
法律案に反対の
意見を申し上げたいと思います。
今回、〇・三%の
臨時地方特別交付金を廃止をし、二八・九%の
交付税率といたしたわけでございますが、しかしこれによって
交付税が
地方自治
団体に幾ら配分せられるかと申しますと、国税三税の二八・九%に加え精算分百七十三億円、繰越分八十九億円を合計いたしましても、四千五百八十一億円にすぎないわけでございます。そしてこの四千五百八十一億円を
地方自治
団体に交付いたしますために、
単位費用につきまして若干の引き上げを行なっているわけでございます。
内容といたしましては、都道府県に対しまして公共投資の増加に伴いまして道路費でありまするとか、あるいは農業行政費でありますとか、林野行政費でありますとか、こういった費目の
単位費用を引き上げております。また
市町村につきましても、公共投資の
増額あるいは社会保障の
経費、こういうものを
考えまして若干の引き上げを行なっているようでございますし、また
税外負担の解消として若干の
経費も見、また同時に退職年金制度の創設によりまして、これまた若干の
費用を組み込んでいることも事実であります。しかしこれらの
経費を通観いたしまして、私どもが本
委員会の質疑等を通じまして、その実態を次々に明らかにしていったわけでございまするけれども、まず、この公共投資の面でありまするが、まず
指摘をいたさなければならない点は、国が
地方自治
団体に補助をいたしますところの補助金の
積算基礎、
算定基礎というものがきわめて不十分であるという点であります。この点につきましては、たとえば諸
学校の建築費の
単価につきまして、木造については坪当たり三万二千五百円でもって建築ができる、こういうような
経費を見込んでおります。しかしこの点については自由民主党の諸君からも発言があったのでありまするが、三万二千五百円で建てられるというならば、
一つ地方自治
団体ではなくて国が直接
学校を建ててみてくれ。
地方自治
団体が建てる場合には、どうしても坪当たり四万円かかる、こういった御
指摘もあったのでございます。この点は政府当局もお認めになるだろうと思うのであります。また、たとえば公営住宅の建築について
考えてみましても、土地の購入費が全国を平均いたしまして、坪当たり二千円で買えるというのであります。これまた奇想天外な
単価であることも皆さんのお認めになるところだろうと思います。また建築費につきまして、
学校建築、公営住宅についても同様でありますが、大工さんの一日当たりの日当を、全国平均九百円として組んでおる。これも現実にそぐわないことは皆さんも十分お認めのところであろうと思うのであります。従いまして、このような
現状を無視したきわめて不適切なこの国庫補助金が見込まれております結果、
地方自治
団体は、これらの公共事業を消化いたしますためには、膨大な
一般財源の充当を行なわなければならない。そういう面からいって、
地方自治
団体の
財政力というものはきわめて弾力性に乏しいものにならざるを得ない。こういう点もこれまた皆さんのお認めになるところだろうと思うのであります。
また
市町村に対して、社会保障
関係について若干の
単位費用を引き上げたと言っておるのでありますが、現在の国の生活保護基準がきわめて低いものであり、また国の直接の事務であるべきところの国民年金あるいは
地方自治
団体の現在重要な仕事になっております国民健康保険、こういうものにつきましても、
地方自治
団体がいかに
一般財源をこれらの
経費に充てざるを得ないか、こういう点についても政府当局の十分認めるところだろうと思うのであります。そういう点から
地方自治
団体は幾らこの今回の
地方財政計画を策定し、
交付税の
単位費用を作成するにあたって、この公共投資に必要な
単位費用を引き上げたというふうに言いま圧しても、現実にはそれがきわめて不十分であり、
地方自治
団体の
財政を迫している。こういう点だけはここではっきり
指摘をいたしておかなければならぬと思うのであります。
次に、
税外負担の解消として、若干の
単位費用の引き上げを行なったと言っておるのであります。しかし
税外負担解消について、
財政計画にいわゆる基準
財政需要として組み込まれておりますのは百億円であります。
自治省が控え目に見積もりました
税外負担の額は、三百五十億円と言われておるのでございます。この三百五十億円も、われわれといたしましては、きわめて
実情を十分に把握しておらない数字であると
考えておるのでございますが、かりに
自治省の言われる三百五十億をとったといたしましても、百億円の基準
財政需要に対する組み込みでもって
税外負担が解消できるということは、絶対にあり得ない。この点もこれまた
指摘をいたさなければならぬと思うのであります。
特にこれに関連して申し上げたい点は、高等
学校の
急増対策の問題であります。この点につきましては、本日も
川村委員より具体的な数字を上げていろいろと御
指摘があったわけでございますけれども、とにかく全国の都道府県が、現在開かれております都道府県会に対して
提案をいたしております高校
急増対策の
経費は、五百億に達しておるのであります。そのような事態があるにかかわらず、政府当局が高校
急増対策の
経費として計上いたしましたのは、起債において五十億、補助金十三億、残りの九十一億円を
基準財政需要額に
算定をする。計百五十四億円の
財源措置しかいたしておらないのであります。従ってこのような
措置が行なわれておりまする結果、どういうことになるかといえば、都道府県は苦しいから
地方財政法の建前をくずして、
市町村に対してその
負担をかける、こういう結果になるわけでございまして、現在全国市長会あるいは全国町村会等から
財政秩序を確立してもらいたい、
地方財政法の建前を堅持することによって、少なくともこういった膨大な高校
急増対策に対する
市町村負担は解消してもらいたい、こういう声が大きく上がっておることは、
自治省当局も十分御存じのことだろうと思うのであります。従って
税外負担解消の
経費きわめて不十分であります。かてて加えて高校
急増対策の問題もございまして、今年は
税外負担が解消するどころか、むしろこれはふえていく、具体的にはどこの都道府県に行っても今年は授業料が引き上げられる、あるいは
川村委員も
指摘いたしましたように、高等
学校に入学するにあたっては、一人当たり三千円、四千円、はなはだしいところでは五千円というような入学金を取る、こういう事態が起こっているわけでございまして、
税外負担は解消するどころかますますふえつつある。こういうことが現実であるということを、この際明確にこれまた御
指摘をいたしておきたいと思うのであります。
次に、
地方公務員の退職年金制度に関する
措置の問題であります。この問題に関しまして、〇・一%
交付税率を引き上げて、十五億円
程度の
財源措置を
交付税において行なったというのでありますけれども、しかしこの
地方公務員退職年金制度については、従来から
自治省は事務費は国が持つべきである、また一割の国庫補助を出すべきである、こういう態度で大蔵省に折衝しておったことは事実でございます。しかるに昭和三十七年度の
地方財政計画の策定にあたって、もろくも
自治省の
考えはくずされ、事務費は一銭の
負担もいたしません。また国庫補助一割もこれは実現をいたしませんでした。全くみじめな姿で
地方公務員の退職年金制度は圧縮せざるを得ない、こういうことを
考えましても、この退職年金制度の姿が、そのままやはり現在の不十分な
地方財政計画の姿を象徴しておる、かように
考えざるを得ないのであります。
また弱小
市町村に対する
財源の傾斜的配分の問題については、従来からこの
委員会で問題になった点であります。これに対して渡海
委員が言われましたが、態容補正を若干改正をしているくらいで、現在格差が拡大しつつある。弱小
市町村の
財政力の是正ができるなどと
考えることは、そもそもナンセンスでございまして、こういう点から見ましても所得倍増計画によって所得格差が開くと同じように、自治体におきましても
財政力の格差がますます開きつつある、こういう点を率直に
一つ御認識をいただきたいと思うのであります。
以上、今回の
地方財政計画及びそれをもとにして
提案せられました
地方交付税法の一部を改正する等の
法律案の問題点を
指摘して参ったのでありますけれども、結局は
交付税率が二八・九%にしかなっておらぬというところに問題の根本があるやに
考えるのであります。従いまして私ども社会党といたしましては、先ほど
太田委員が
提案をいたしましたように、
交付税率を三〇%に引き上げる、これによって約百六十四億円の
交付税が
増額になる勘定になるわけでございます。この百六十四億円を先ほど
指摘をいたしました高等
学校の
急増対策あるいは
税外負担の解消、あるいは弱小
市町村の
財政の強化、あるいは公共投資によって、むしろ弾力性を失っておる
地方財政を強化いたしまして、
地方行政水準の
向上をはかる、こういうことが適切であると
考える次第であります。
以上、いろいろ理由を申し上げたわけでございますが、そういう観点に立ちまして、現在は少なくとも
交付税は三〇%必要である、従って、現在二八・九%の
交付税率をもとにいたしまして
提案されておりまする
地方交付税法の一部を改正する等の
法律案につきましては、きわめて不徹底でありまするので、また、先ほど御
指摘を申し上げたような
地方財政を圧迫し、
地方自治の本旨をそこなう具体的な問題を含んでおるということを
考えまして、ここに反対の意思を表明いたす次第であります。(拍手)