○山口(鶴)
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となっております
地方税法の一部を
改正する
法律案につきまして、
政府提出法案に
反対をいたし、わが
日本社会党提出にかかるところの
地方税法の一部を
改正する
法律案に
賛成の
討論を行ないたいと思います。
まず、
政府提出法案について指摘をいたさなければならない第一の点は、
国税、
地方税を通ずる
国民税負担の
割合の問題でございます。
昭和三十七
年度の
税負担率は、実に二二・三%に達しておるわけでございまして、
昭和三十五
年度当初の二〇・五%、
昭和三十六
年度当初の二〇・七%をはるかに上回っておりまして、戦前の平均でありました一二・九%
程度の
税負担に比較をいたしますならば、実にその倍額に達しておる状況でございます。これでは池田
内閣の政策は、所得倍増ではなくて税金倍増政策であると言われても、反駁しようがないのではなかろうかと思うのであります。さて、この二二・三%の
税負担は、かつてドッジ・ラインが実施をせられまして、MPを使い、警察を使って
徴税強化を行なった、かの
昭和二十四年以来の重税ということになっております。当時の
大蔵大臣は、振り返ってみますと池田
大蔵大臣でございまして、現在の池田首相が政権を担当しておるわけでございますが、結局、池田首相が、
経済には弱いが税には強いというような性格を端的に現わしている。こういうふうに私
どもは受け取らざるを得ないのであります。しかも
税制調査会は、その
答申にあたりまして、
国民の
税負担の
割合は二〇%
程度で押えることを基本目標といたしておるわけでございます。
政府が、真に諮問機関を尊重するという態度をとるといたしまするならば、
税制調査会の
答申の枝葉末節の個々ばらばらな点を取り上げて、基本目標を捨て去るということでは、全く諮問機関軽視でありまして、選挙
制度審議会の
答申を無視した態度と全く同一である、かように私
どもは考えざるを得ないのであります。
さて、第二の問題点は、
税負担の強化というものが、主として
地方税において非常に激しいという点であります。昨年の
住民税改正におきまして、従来とは異なりまして、
所得税の
減税を
住民税に持ち込むということについては、遮断をいたしたのであります。でありますから、本年の市町村民税について考えてみますと、
所得税における専従者控除あるいは基礎控除というものをやりましても、これが
住民税に
影響がない、こういう格好でございまして、結局、本年の
住民税は、非常に過酷な形にならざるを得ないのであります。
次の問題点は、先ほど
提案者の
二宮委員も強調せられました
府県民税の問題であります。今回
政府は、長い間の懸案でございました中央
地方を通ずる
税源配分をすると称しまして、
所得税の一部を
府県民税に
移譲いたのでございますが、しかしこれは全く不徹底でありまして、
税源全体としては大した効果を上げておらないわけでございますけれ
ども、振り返って、それでは個個の
住民がどういうふうな
負担をこうむるかという点を考察してみますならば、従来
府県民税は最低〇・八%から五・六%に至るまでの十三段階の累進
税率でございました。しかるに、今回これを百五十万未満及び百五十万超の二段階の
比例税率制度を採用いたしたのでございます。従いまして、個々の所得階層における
税負担を考えてみますと、七十万あるいは百万という所得階層におきましては、実に
府県民税が昨年に比べて八〇%ないし四〇%というふうに非常な
増税になるのであります。しかるにこれに反しまして、所得二千万以上のいわゆる超
高額所得者につきましては、かえってこれが
減税になる、こういった非常に不
均衡な形をとっております。これは明らかに累進
税率を改めて
比例税率を採用した結果によるわけでありまして、このような税の徴収の仕方に、まさに悪平等そのものである、かように私
どもは断ぜざるを得ないのであります。
次は、
入場譲与税の
廃止の問題であります。本来、
入場譲与税は、
地方の独自の財源でございました。
政府が入場税そのものを
廃止するというのならけっこうでありますけれ
ども、入場税は取るのでありまして、
政府がそのままふところに入れ、
地方にはやらないということでありますならば、これは
地方団体の本来の固有の財源であった
入場譲与税を、
廃止をするということでありまして、全く本末転倒と言わざるを得ないと思うのであります。特にこの
入場譲与税につきましては、人口比率で
配分をするというような形から、
実態といたしまして、比較的後進県に対して多く
配分をせられ、特に後進
府県の財源の強化に役立っておったことを考えてみましても、この
入場譲与税制度廃止という問題は全く遺憾であると言わざるを得ないのであります。
次に第四の問題点は、これまた
二宮委員が指摘せられた点でありますが、大
企業独占資本に対する特恵的ないわゆる税の
減免措置の問題であります。
国税におきましては、すでに一千七百億円に上る不当な税の
減免が行なわれておるわけでございますが、
地方税におきましても
固定資産税の
減免が百八十六億円、
電気ガス税の
減免が百五十九億円、その他のものを含めまして三百八十九億円に達しており、さらに、
国税のはね返り部分を含めますならば、実に合計八百二十三億円に上っておるのであります。昨年の
実態が七百億円でございましたから、本年はさらにこれよりも百数十億円増加しているという状況であります。
税制調査会におきましては、特権的なこの
租税特別
措置については、これを
整理合理化の
方向に進むべきだということを強調いたしておるのでありますが、
政府のやり方を見ますと、
整理合理化どころか、
増額合理化というような形になっておるわけでございまして、全く
税制調査会の
答申を無視するものである、かように断ぜざるを得ないと思うのであります。
さらに、この
電気ガス税の
減免等について見ますと、従来は
減免をしておらなかったところのレーヨンであるとか、あるいはパルプであるとか、こういった産業に対して、本年新たに
減免を行なおうといたしておるのであります。レーヨン、パルプ等につきましては、これは長い間の歴史ある産業であり、今回あらためてこれを加えなければならぬという
理由はごうまつもないと思うのでありますが、こういうものを新たに加え、そして特に大
企業に奉仕をする、こういう姿は全く遺憾と言わざるを得ないと思うのであります。
このような
政府提出原案に対しまして、わが
日本社会党提案法案は、先ほど
前田委員が、これは非常に
減税が多くて、
地方の独自財源な侵すものであり、
地方の
財政を圧迫するものだというようなことを申されたのでありますが、これはよくごらんをいただけば全く偽りでございまして、わが党は
大衆課税の
軽減は大いに行なうわけでございますが、反面、先ほど
意見として申し上げましたように、特権的な
減免税の
復元と
自主財源の充実を、特に強調いたしておるわけでございまして、
電気ガス税の大
企業に対する
減免措置の二割
復元でありますとか、あるいは大
企業の
法人事業税の
引き上げであるとか、こういう形において相当の税の増徴を考えており、さらにまた
たばこ消費税の
税率の
引き上げ、あるいは
入場譲与税の
廃止の取りやめ、こういうものによって、差し引きまして実に三百六億円
地方財源は強化されるという結果に相なるのでございまして、この点は、一つ誤解のないように御理解をいただきたいと思うのであります。
さらに、先ほど
内閣を代表いたしまして、
安井自治大臣が
政府としての考え方をお述べになりました。それを拝聴いたしますと、すでに
昭和三十七
年度の予算案はもう衆議院を通っておる、そして改府の
財政運営を考えた場合に、
入場譲与税制度の
廃止を取りやめること、及び
たばこ消費税の
税率を
引き上げるということは、国の
財政運営に大きな支障を来たすから、これはどうも、
政府としては
賛成できぬ、こういうようなことを申されておるのであります。しかし私は、この言は全く遺憾であると言わざるを得ません。それは、わが党は、かねがね予算に
関係する各種法律は、予算案と同時に
提出をして、並行的に
審議を進めるということを、絶えず主張いたしておったのであります。しかるに、予算案は早く
提出をせられました。昨年ほどおくれはしませんでしたが、
地方税改正も相当予算よりはおくれて
提出をされた。従って、これが並行的に
審議をされますならば、
政府の言われるような
理由は全くないのでございまして、むしろ
政府の怠慢をわれわれの出しました
改正案の
反対理由に押しつけるごときことは全く筋の通らぬ話ではないか、私はかように言わざるを得ないのであります。
以上のような点を申し上げまして、ぜひとも、自民党の各位を含めまして、わが
日本社会党が
提出いたしました
地方税法の一部
改正案に
賛成をいただきたいのでありますが、私は最後に、従来の
地方税に対する
減税の歴史を振り返ってみたいと思うのであります。
われわれ社会党は、毎年々々
地方税改正を国会に
提案をいたしました。残念ながら、そのつど否決をせられました。しかし、その後一年ないし二年たちますと、わが党
提出の
地方税法の
改正が、いつの間にやら
政府の受け入れるところになりまして、
政府提出の形をとって現われて参っているのであります。これは
電気ガス税の問題についてもそうでありますし、あるいは白色専従者控除の問題についても同様であります、でありますから、いつも一年おくれにやるというのでは、幾ら何でもまずいのでありますから、ことしは一つ一年おくれということでなくて、従来ともいつもわが党の
修正案が、一年後、二年後には尊重せられるという結果を十分御考察いただきまして、ことしは一つすみやかに、わが党
提出の
地方税法の一部を
改正する
法律案に、満場
一致御
賛成をいただきますことを特にお願いを申し上げまして、
日本社会党を代表いたしましての私の
意見にいたしたいと思う次第であります。(拍手)