○
上子参考人 ただいま
小畑参考人、三巻
参考人から、それぞれの
立場に立ってきわめて具体的な御
意見の開陳がありましたので、私の方はごく大ざっぱに、今度の
改正案について
感じたことを申し上げたいと思っております。ただ同じような問題がありますので、多少重複するかもしれません。それはあらかじめ御了承を願いたいと思います。
まず今度の
地方税の
改正案に含まれる
減税の
規模について、私の
意見を申し上げたいと思います。
今度の案では、平
年度の
減税額は今までしばしば出ました
通り四百二十二億円、初
年度は二百七十三億円ということになっております。これは最近までの
地方税の毎年の
減税の
規模から見ますと必ずしも少ないものではない、むしろ多いという
感じはするのであります。実質的な
減税額を調べてみますと、
所得税の一部
地方移譲で道
府県税が
増税される、それから
たばこ消費税の
税率を
引き上げて、これも
増税になる、こういう点がありまして、
入場譲与税が減りましても、実質的には初
年度でわずか百九十一億円の
減収にしかならない。平
年度では三百十七億、これは少し少な過ぎるのではないかという
感じを持っております。
その理由といたしましては、第一に三十七
年度の新しい税法でやった結果の
地方財源の
増加というものを考えてみますと、最近
自治省から発表された
地方財政計画によりますと、三十七
年度の
増加財源は税収で千六百八十九億、交付税の
増加が八百八億、国庫補助の
増加が千二百十億、これは
増加財源といえるかどうかわかりませんが、
地方債で百九億、雑収入が二十億、それから
地方譲与税の
減収の百十二億という分を
差し引きますと、実にその合計三千七百二十四億円という膨大な
増収があるのでありますが、私
どもが
税制調査会において
地方税の
減税を審議いたしました際は、
地方税の
自然増収が一体幾らあるのかという点ははっきりいたしておりません。そこで結局
減税額も平
年度三百六十三億、それでやろうということになったのですが、いざふたをあけてみたところが、これだけ膨大な
増加財源があるという点から考えまして、もっと
減税してもよかったというふうな
感じを今持っております。
この
財源とは別に、
住民負担という点から考えましても、
国税の場合は過去に毎年、たまには一、二年抜けたことがありますけれ
ども、
相当な
減税をいたしております。三十六
年度の例で申しますと、
所得税の
納税者の数は大体千四百万人、これは概数でございますが、就業者総数の三割ということになっております。また間接税のうちでも、物品税などについては
課税品目の選択上、それから免税点
制度などで、
大衆負担は割合軽くなっておるということがいえると思うのですが、
地方税の場合は
住民税の
所得割の
納税者の数は約千五百万人、これは就業者総数の三五%に当たります。また均等割の方では二千七百万人、実に就業者総数の六割がこれを納めておる。そのほかに固定資産税の
納税者が約千八百万人おります。
電気ガス税では千四百万世帯が納税対象になっておりまして、きわめて
大衆負担が多いというふうに
感じられるのであります。今後
国民の
税負担をさらに軽くするというためには、
国税ももちろんでありますけれ
ども、特に
地方税の面において、零細
負担を排除するというふうな
方向に持っていくべきではなかろうかと思っております。これに対しまして、
地方財政上、いろいろ困難が多いという
意見が、先ほど
小畑参考人からも出ましたけれ
ども、それはなるほ
どもっともな御
意見であると私は思うのです。しかし最近の
地方財政の状況を見ますと、
府県の例だけを申し上げますが、二十九
年度には
赤字団体は実に三十四の多数を数えておりました。そして決算収支全体で二百四十七億円の
赤字を記録しておったわけであります。ところが三十五
年度には
赤字はわずか二
団体になっている。決算収支も四百六十五億円の黒字であります。財政再建債の償還残高も順調に減少しているといっていいと思うのであります。今
地方団体の側では、道路とか、あるいは上下水道、あるいは塵埃処理施設といったふうなものが非常におくれている。それで
住民が非常に困窮しているから、現在の
段階ではこれをまず整備するのが先だ。
減税はあとでもいいということでもないのでしょうけれ
ども、それよりもこの整備が先だという考え方をとっているようであります。この
意見は私にもわからないわけではありませんが、明
年度のように大幅な
増収が期待される機会には、もっと
減税額をふやすのが当然ではなかろうか。また
地方団体相互間において財政力の均衡をはかる、あるいは財政運営の合理化をやる、そういうことで
行政水準の
引き上げはやれるのじゃないか。たとえば
地方財政の三七%を占めている給与費、これは新しい財政計画では三七%に下がっておりますけれ
ども、これは
地方税収入の大半を食ってしまっておる。いわゆる投資的経費と申しますか、
地方単独で
事業をやる、あるいは国庫の補助による
事業をやるという場合の金は、全部交付金その他の国からの
財源にたよっているという形は必ずしも正常な形ではないと思っております。現実に来年は
地方選挙が多く行なわれますけれ
ども、今度の
地方予算の編成にあたって、いわゆる選挙目当てにいろいろなことが考えられているということをわれわれはときたま耳にするのでありますけれ
ども、こういうつまらない——つまらないと申すと怒られますけれ
ども、そういう不急不要の工事をやるということはやめてもいいのじゃないか。もっと必要なところに使った方がいいのじゃないか、そういうふうな問題が
一つあると思います。
それから、私は
地方のことはあまりよく知りませんが、東京都の例なんかを見ますと、東京都職員の給与ベースは国家公務員よりもはるかに高い。私は正確な数字を持っておりませんが、平均大体四千円くらい高いのじゃないか。それから大阪の場合も同じであります。これは富裕
団体に限りまして、貧弱な財政しかない
地方ではむしろ低いところもありますけれ
ども、どうもこういうふうに一部で突拍子もなく高い給料を払っているという例がありますと、どうも
地方財政はルーズではないかという印象を持つわけであります。必ずしも全体がそうであるとは申しませんけれ
ども、そういう点も気をつけていただきたい。
それから道路の掘り返し、ガスとか水道とか、いろいろな工事をばらばらにやって、一ぺん舗装した道路を何回も掘り返して、実にむだづかいをやっておる。これもまたしかられそうですけれ
ども、成人式とかあるいは老人の日なんかを作っていろいろ催しをやっておる。ところが私の住んでいる地域では、ごみとりに来るのは、東京都の清掃局へ問い合わせますと、週に二回が
原則であるというわけです。それが十日に一回くらいしか回ってこない。なぜそういうことになるかといえば、これは
予算が不足だからという返事をするのであります。しかしこれもつまらないところに金を使わないで、もっと必要なところに使うことによって
改善できるのじゃないか、そういうふうに考えるのであります。
これらの点から見ると、今度の
改正案というのは、どうも
地方公共
団体の
財源保障というか、
財源強化という面に重点が置かれて、
減税が少しあと回しにされているのじゃないかというふうな印象を持つわけであります。三十六
年度の
税制改正のときは、
国税減税で
地方税が大きく減らないようにということで、
課税方式の整理統合が行なわれました。その結果
住民税の
減税は完全に見送られたのでありますが、今回も
国税である
所得税の
減税と、
地方税である
道府県民税の
増税を組み合わせて、同時に行なうという方法をとっておりますが、その結果どうなるかと申しますと、われわれのような給与
所得者の標準家庭の例を申し上げます。これは夫婦、子供三人、五人家族でございますが、年収五十万円の場合
所得税は前年より三千四百七十七円減る、これは三七%でございます。ところが
道府県民税の方は九百九十一円、これは
金額は小さいのですが八二%の増になる。これを差引すると二千四百八十六円の
減税、これは二四%しか
減税にならないという仕組みになっております。この場合の
減税額は月にするとほぼ二百円ということになるのですが、一方では年収二千万円以上五千万円以下の金持の場合は、総合した
減税率は〇・六から八というふうに非常に低いのですが、
所得税も
道府県民税も
減税される、結果的にはこういう方式でいきますと、低
所得者の
住民負担の方が重いということになると思うのであります。この不公平はなぜ起こったか、私
どもも
税制調査会の審議の際にこの点は大いに追及したのでありますけれ
ども、結局今まで十三
段階に分けられておった
道府県民税率というのを、年収百五十万を境にしてそれより下は二%、それより上は四%というふうに
税率の簡素化をはかったというための結果であります。
税率の簡素化ということは、私も大賛成でありますけれ
ども、その
原則にとらわれているということによって低
所得者に不公平な
負担をかけるというやり方は、今度の審議の際によく皆さん方に
検討していただきたいと思う点であります。役所関係の方ではよく
調整してあると申しておりますけれ
ども、その点をもう一度よく見ていただきたい、こういうふうに考えております。
大体大ざっぱな
意見はそれで終わりまして、あと簡単に二、三問題点だけを取り上げて申し上げたいと思うのであります。
その第一は、
入場税の
国税移管の問題であります。これについてはいろいろ反対がある。特に
地方団体の側では
意見もあるということを聞いておりますが、
入場税収入というのは最近はテレビその他の
影響でだんだん減る
方向に行っております。将来もぐっと先細りするであろう。こういうものを
財源にしておるよりも、
所得税を移してもらった方が
地方財政としては安心して、しかもこれは後々ふえる可能性のあるものだという点で、この
措置には私は賛成であります。
それから
たばこ消費税を上げたという点は、貧乏県でもかなりの税収がありますし、全体としてもやはり今後ふえる見込みがありますので、これも賛成しております。
また
法人事業税の
分割基準の
改正ということを行ないまして、富裕
団体が貧乏
団体——これはどうも言葉が悪いので工合が悪いのですけれ
ども、ほかに適当な言葉がないものですから貧乏
団体と申し上げますけれ
ども、これに平
年度で二十億ばかり
財源を移譲するというのは、いわゆる富裕
団体と貧乏
団体の格差を是正するという点は非常にけっこうなことだと思っております。ただ貧乏
市町村に対する
財源移譲というのには、あまり具体的な
措置が講じられていないのではないか。貧乏
市町村は個人の
市町村民税について、低
所得者の
税率を緩和した、それから
扶養親族の
課税控除の標準額を法定した、
電気ガス税の
税率が
引き下げられた、さらに非
課税品目が拡大したというふうなことで、かなりの
減収になっております。その穴埋めは、わずかに
たばこ消費税の
配分の仕方を改めて有利にしただけだということであります。この点もよくお調べ願いたいと思うのであります。
それから
住民税につきましては、
市町村民税で
所得割のただし書きによる
負担は、本文方式より過重だということは今までもわれわれ申しておったのでありますが、さしあたって扶養人員に応ずる
課税控除の標準額の法定にとどまったということはどうもあまりうまくない。この点は今後優先的に
負担が軽くなるように努力していただきたい。
それから
個人事業税の問題は、来
年度税収の二割とかなり大幅に
軽減されておりますのは、
中小企業者にとって非常にけっこうなことだと思うのであります。これに対していわゆる給与
所得者の
負担というものも、せめてそれに近い
程度に
財源の許す限り
軽減していただきたい。
それからこれは悪名の高い
電気ガス税の問題でありますが、
電気ガス税を消費者に対してかけるのは、これは米や水にかけるようなものだというのは、かつて池田総理大臣も国会で申しておられます。従ってこれを
廃止した方がいい。それから生産者に対してかけるのも、これはいわば原料にかける。原料にかけるというのはコストに響くわけであります。物価高を招くという点でもやはりあまり賛成できない。だからこれははずしていただきたい。諸外国の例を見ても、
電気、ガスに対して高率な
課税をやっている国は
一つもないと私は聞いておる。しかしこの
電気ガス税の税収は五百億近い
金額に達しておりますので、これを一挙にはずした場合は、一体かわり
財源があるのかという問題が当然起こってくるのでありますが、今のところ一体これにかわる何がいいかということまでは私は考えておりません。これから皆さん方に考えていただきたい。それで将来は
廃止してもらうという
方向に持っていっていただきたい。
それからもう
一つ、これは三巻さんもおっしゃいましたけれ
ども、料理
飲食税、それから自動車税の問題であります。今度の
改正で料飲税は
場所区分をやめて、一人三千円以上あるいは三千円以下ということで、一〇%と一五%の区別をつけましたけれ
ども、これはどうもおかしいのじゃないか。われわれが最初
答申したときは二千円で一応区切りをつけたのですけれ
ども、そのときも
金額で区切りをつけるというのは脱税を奨励するようなものじゃないかというふうなことで、いろいろ議論があった。ただ、いろいろ時間の関係もありまして、二千円という区分で通したわけでありますけれ
ども、どうもこれを三千円に上げるということになりますと、こういう席で申し上げるのはどうかと思いますが、芸者をあげてどんちゃん騒ぎをする人と、同窓会あたりでささやかに飲む人あるいはお祭りやお葬式で飲む人もほとんど変わらない、同じ
税金をかけられるという不合理があると思うのであります。しかも納付期が今までは翌月の十五日までだったのを月末までに延ばした。これはどうも業者に対して一方的に有利過ぎるという点も問題になります。それから自動車税の場合もやはり
答申とやや違っておりまして、もっと
軽減されております。この二つが政府案が調査会原案と変わった点で、料飲税では十三億円、自動車税では十億円
減税分がふえている。こういう点の不必要な
減税をするくらいなら、これを
住民税とかその他のもっと必要な
減税に回すべきであるというのが私の考えであります。
だいぶ時間も
たちましたけれ
ども、あと
一つ、二つ申し上げますと、これは直接
税金の関係ではありませんけれ
ども、
税外負担の問題が
一つあると思います。これは
地方によっては税と同様に、強制的に非常に重い
負担になっているという
実情でありまして、今度の
地方財政計画でも百億円を計上してこれを解消するということをいっておりますけれ
ども、この前も、私の記憶がはっきりしませんが、たしか二百億円くらい計上して、そうして
住民負担がはたして減ったかというと、あまり減らなかったということも聞いております。従って
税外負担の
実情というものをよく調査して、
住民に
負担をかけないような方法を講じていただきたい、こういうふうに考えております。
大体今回の
改正は、
税源配分についても、その根本である国と
地方の財政関係の
改善という点、それから
地方の財政運営の合理化、それから国と
地方の
事務の
配分あるいは費用の
適正化、あるいは
地方行政機構の
改善といったふうないわば非常に重要な問題でありまして、簡単に言うわけに参らないのです。この点があまり突っ込まれていない。従って、今の
段階ではやむを得ないと思うので十けれ
ども、今後はこの点まで深く突っ込んでやっていただきたい。特に
地方制度については、明治以来、交通通信の発達した現在、いまだに同じ
府県制度をとっております。アメリカの一州ぐらいの面積しかない日本で、はたしてこれだけの県が要るかをどうか、これは私個人の
意見でありますが、あるいは道州制、もっと大きく統合することによって、先ほどほかの方からも話の出ました
地方公務員の過剰問題、これは過剰と一口には申し上げられませんけれ
ども、少し多過ぎるのじゃないかという
感じもいたします。これも自然に何かできるのじゃないかというふうな
感じを持っておるのです。まあ、このところまでいきますと少し問題が大きくなりますので、一応この辺でとめさしていただきたいと思います。