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大月政府委員 それでは、最近の
金融情勢、特に
中小企業の
金融関係を中心にして、御
説明申し上げます。
まず
日本銀行券の
関係でございますが、昨年末一兆四千八百億円に達しました
日本銀行券は、一月以来順調に
還流をいたしまして、一月末におきましては二千百五十億円の
減少を示しました。前年におきましてはこれが千八百四十億円の
減少でございますので、
還流の
状況は順調であるわけでございます。その結果
日銀券は一月末におきまして一兆二千六百億円になっております。二月中におきましては、七十数億円の
増発でございまして、昨年の二月中の
増発が百二十七億円でございましたのに比較いたしますと、若干
増発の
程度が少なくなっておりますので、そういう意味におきましても伸び過ぎの調整が行なわれておると思うわけでございます。三月中も同様の足取りで
推移いたしまして、この
年度末の
通貨は大体一兆二千七百億円から二千八百億円
程度で
推移するものと見られております。この
日本銀行券の今申し上げましたような
推移を、毎月の
平均残高について対前年同期比をとってみますと、昨年七月におきましては、対前年比二六%の増でございました。このときが
増加率のピークでございます。その後
金融の
引き締めに伴いまして、逐次
増加率は低下いたしまして、去年の十二月におきましては二一%に下がっております。また本年に入りましてからも順調に
増加率は低下しておりまして、一月にはさらに若干下がりまして、二〇・七%の増でございます。それから二月におきましてはさらに下がりまして二〇%を割りまして、一九・三%の増、こういうように
増発率が次第に低くなっておるということでございます。これは
金融引き締めの効果が逐次
通貨面に現われておる姿であると存じます。
日本銀行の
貸し出しでございますが、引き続く税収の好調を反映いたしまして、ことしに入りましてからも
財政の
揚超が非常に大きいわけでございます。それで一月におきましては、昨年の一月に比較いたしまして
揚超は千億円余分になっております。それから二月は去年に比較いたしまして七百億円多い。こういうようなことで、
揚超の幅は非常に大きいわけでございます。三月を含めました全体の第四・
四半期、この一−三月の
見通しでありますが、大体
財政において四千八百億円
程度の
揚超を示すものと予想されておるわけでございまして、昨年の
揚超が三千三百億円でございましたということに比較いたしますと相当大幅な
揚超だというのが
一つの特徴であろうと思います。こういうような
財政上の理由もございまして、
日本銀行貸し出しは一月末におきまして二百五十億円を
減少いたしましたが、二月、三月ともに相当ふえるであろうという
見通しであったわけでございます。そのために二月に七百億円、三月に七百億円の
日本銀行による買い
オペレーションを実行いたしましたことは
御存じの
通りでございます。その結果、
日本銀行貸し出しの面におきましてはその分が相殺されることになりますので、比較的
日銀貸し出しの
増加としては低くとどまる
見通しでございます。そういうことから、二月中における
日本銀行の
貸し出しが約六百億円の
増加でございまして、昨年二月の日銀貨し出しの
増加八百三十億円に比較いたしますと若干少ない。それから三月におきましても、昨年は約千億の
貸し出しの
増加があったわけでございますが、本年は三百五十億
程度にとどまろうか、こういうように
考えておるわけであります。こういうような
推移を総合いたしまして、この三月末、
年度末の
貸し出しの
見込みは、大体におきまして一兆三千五百億円
程度になろうかと思います。昨年三月の
日銀貸し出しが六千四百六十一億円でございましたので、おおむね
倍程度になろうかと思うわけであります。それから
全国銀行の
頭金、
貸し出しの動きでございますが、
全国銀行の
実勢預金は、一月に約千九百億円の
減少を示しました。これは例年一月は
減少を示す月でございまして、昨年も一千百億円の
減少でございますが、昨年に比べてさらに
減少の度合いは大きいわけでございます。それから二月は、昨年におきましては千二百億円の
増加があったのでございますが、ことしは
金融の
引き締めの
影響等もございまして百八十億円の
減少でございます。一方
貸し出しの面におきましては、一月に約三百三十億円
増加いたしました。昨年の一月の
増加が四百五十億円の
増加でございましたので、そういう面からいくと
引き締めの態勢は続けられておるということを示しております。また二月におきましては、昨年の千百億円の
増加に対しまして本年は九百億円の
増加でございますので、そういう点からも
金融は
引き締め基調において
推移しつつあるということを示しておると思うわけであります。
こういうような全体の
金融情勢でございますが、
政府の
施策といたしましては、こういうような
金融引き締めの
状況下において
中小企業に対する
金融に支障がないようにというような
配慮をもちまして、
中小企業金融対策としての
財政資金の
放出を実行いたしておりますことは
御存じの
通りでございまして、昨年の秋以降、
合計千六十億円に上る
放出を実行中でございます。そのうち五百億円が
市中金融機関保有の
金融債等の
資金運用部資金による買い上げ、いわゆる
中小向けオペレーションといっておりますが、これが五百億円ございます。あとの五百六十億円が
政府関係三
機関に対する
資金の
追加でございまして、これは今手元にお配り申し上げております二枚目の表をごらん願いますとその
実績が出ておるわけでございます。
国民公庫に対しまして三回に分けて
合計百五十億円、
中小公庫に対しまして同じく二回に分けて百六十五億円、
商工中金に対しまして同じく三回に分けて二百四十五億円、こういうことでございます。
合計五百六十億円でございます。
そういうような
資金の
追加をいたしました結果、第三・
四半期及び第四・
四半期における
貸し出しの
実績及び
見込みは、その下の表にある
通りでございまして、
国民金融公庫におきましては、第四・
四半期、昨
年度の
実績百五十三億に対しまして、三十六
年度の
実績見込みは二百七億でございます。約五十億ばかり
増加いたしておりまして、三割近くの
増加となります。それから
中小公庫におきましては、昨年の
実績百三十四億に対しまして、本
年度の
見込みは二百十億でございまして、これも約五割の
増加でございます。
商工中金におきましては、昨
年度の
実績八百三十四億に対しまして千百九十六億でございまして、これもやはり三割
見当増加ということだろうかと存ずるわけであります。こういうような
政府関係機関に対する
政府資金の
追加と、それから
行政指導による
中小企業金融への
配慮ということと相待ちまして、
中小企業に対する
金融は、
引き締めの
基調下におきましても、総体的には比較的問題なく
推移したであろうかと
考えるわけです。その
実績が、最も新しい
数字といたしまして、第一表、一枚目の表に出ておるわけでございます。一月の
実績によりますと、全体の
金融機関の総
貸し出しが十四兆一千億足らずということでございまして、そのうち
中小企業向けの
貸し出しが五兆九千三百億くらいになっております。この
比率は、この表にございますように、四二・〇七%でございまして、大体昨年の秋口ごろから四一%ないし四二%というようなベースで
推移いたしておりますので、おおむね同
水準で
推移しておるかと
考えるわけでございます。こういうような全体の
金融情勢及び
中小企業金融の
推移から見まして、全体の
中小企業に対する
影響は、若干、
手形期間あるいは
検収期間等が延びるというような問題もございますけれ
ども、大過なく過ごしつつあるのではなかろうかと
考えるわけでございまして、第三枚目の表をごらん願いますと、
東京手形交換所における
不渡り手形の発生の
状況の表がございます。一月が、枚数におきまして〇・八一%、昨年の〇・七〇%に対し若干ふえております。それから二月が〇・七九%、これは昨年同じく〇・七〇%でございますので、若干ふえておりますが、個々の
数字を全体として過去の計数に比較いたしますと、必ずしも
水準は高くはない。一番上の方をごらん願いますと、三十一年中の
比率〇・九四、三十二年中で一・〇八、三十三年中一・〇六、その他、こういう
数字でございますので、必ずしも最近の
不渡りの率が多いわけではないということを示しておるわけでございます。われわれが全体として通観いたしております感じから申しましても、特に
中小企業の問題について非常に深刻な問題が起きておるというようにも見ないわけでございまして、
一般に言われておりますように、若干あるいは
経済が中だるみではないかというような批評もあるくらいでございまして、問題は、あるいは四月−六月というところに起きるかもしれないということを
一般に言われておる
状況でございますが、これに対しましては、われわれといたしまして、十分、また慎重に、
推移を見ながら
対策を
考えて参りたいというふうに
考えておるわけでございます。