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1962-05-11 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月十一日(金曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長代理 理事 毛利 松平君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       伊藤 五郎君    大久保武雄君       岡田 修一君    金子 一平君       久保田藤麿君    田澤 吉郎君       藤井 勝志君    古川 丈吉君       吉田 重延君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    春日 一幸君  委員外出席者         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    佐竹  浩君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月七日  一、国民金融公庫法の一部を改正する法律案(   内閣提出第一三一号)  二、国民金融公庫の農地被買収者等に対する貸   付けに関する臨時特例法案綱島正興君外六   十九名提出衆法第三三号)  三、国の会計に関する件  四、税制に関する件  五、金融に関する件  六、証券取引に関する件  七、外国為替に関する件  八、国有財産に関する件  九、専売事業に関する件  一〇、印刷事業に関する件  一一、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、指名によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  金融に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤委員 銀行局長に質問する予定になっておったのでありますが、きょうも何か都合でお見えにならないというので、まことに残念でございますが、前回もヨーロッパに飛び立つ前の日に、銀行局長時間をだいぶおくれて来て、今回はまた一週間も前に通告をしておいたにもかかわらず出席をしないということは、まことに残念でございます。今後そういうことのないように十分委員長の方からもお伝えを願いたいと思います。  最初に原則的なことから佐竹財務調査官お尋ねしておきたいと思いますが、主としてこれからお尋ねしようとする点は、預金者保護の問題でありますが、現在の銀行法あるいはその他の政令、規則、そういうようなものの中に預金者保護規定というのは具体的にどの程度までが保護されるような規定があるか、具体的にその条章などがありましたらお答えを願いたいと思います。
  4. 佐竹浩

    佐竹説明員 お答え申し上げます。この銀行法という法律は、昭和の初めに制定されたものでございますが、その立法の精神はことごとくこれ預金者保護ということに集中されておりまして、銀行法の全条章はこれことごとくつまり預金者保護ということでございます。
  5. 武藤山治

    武藤委員 その銀行法規定がことごとく預金者保護だと申しますが、それは非常に大ざっぱな、銀行経理内容財産、そういうようなものの基準とか、ほんとうに個々の預金者というものを保護するような事務取り扱い規定みたいなもの、そういうようなものについてまで銀行法規定しておりますか。
  6. 佐竹浩

    佐竹説明員 この場合預金者保護と申しますことは、つまり預金者が非常に大事なお金銀行に預けておりまして、その預けましたところの大事なお金にいささかなりともきずがついてはならぬということにあるわけでございます。従いまして、この預金を受け入れて、それを運用しておりますところの金融機関資産が常に健全な姿であること、かりにそこに若干の貸し倒れ等が何らかの事情によって起こったというような場合にも、これは自己資本をもって補てんをするということが確保されておらなければいかぬわけでございます。そういう意味におきましては、銀行法条文の中で、特にそういう自己資本充実について規定をいたしておりますのは、銀行法第八条——はなはだ恐縮でございますが、条文で申しますと、銀行法の第八条でございまして、これはいわゆる法定準備金積み立て規定でございます。御承知のように今日の銀行制度は、いわゆる株式会社組織でございまして、原則としては商法原則によっておるわけでございます。そのうち特に商法原則に対して例外を設けておりますのが、この第八条でございまして、これによりますと、「銀行ハ資本総額ニ選スルハ利益配当スル毎ニ準備金トシテ其利益ノ十分ノ一以上ヲ積立ツベシつまり先生先刻御承知のように、商法では、資本の額の四分の一に達するまで毎期利益の二十分の一を積めということだけを明示しておるわけでございますが、それに対して銀行自己資本充実要請が特に強い関係から、特にこの積み立てについて強い制約を設けておるということがまず第一点でございます。  次に、この資産内容がいろいろ悪化をするというようなことを防止いたしますためには、銀行法におきまして種々の規定を置いておりますけれども、なかんずくその中で注目されますものは、銀行法の二十二条、二十三条、それから二十四条、大体この三カ条によりまして資産健全性を確保するための規定を置いておるわけでございます。すなわち、二十二条におきましては、「主務大臣ハ銀行業務ハ財産状況ニ仏リ必要ト認ムルトキハ業務停止ハ財産供託命ジ其ノ他必要ナル命令ヲ為スコトヲ得」という規定があります。さらに第二十三条に参りますと、「銀行法令、定款若ハ主務大臣命令ニ違反シハ公益害スペキ行為ヲ為シタルトキハ主務大臣ハ業務停止ハ取締役監査役改任命ジハ営業免許取消スコトヲ得」ということを規定しております。さらに二十四条におきましては「主務大臣ハ業務停止命ゼラレタル銀行ニシ其ノ整理ノ状況ニ依リ必要ト認ムルトキハ営業免許取消スコトヲ得」、つまり資産内容悪化を防止いたしますためには、業務停止でありますとかあるいは財産供託ということによって被害がそれ以上に及ぶことを押えると同時に、いろいろと銀行検査をいたしまして、その銀行不良資産改善について必要な措置をとっていく、その措置が十分にとられないというような場合には、役員の改任を命ずるとか、場合によってはいよいよ改善の実が上がらないということになりますと、営業免許の取り消しということもできるというようなことで、非常にきつい規定が二十二条から二十四条にあるわけでございます。これらの規定に入ります前提として、銀行に対しては常時厳重な検査をいたすということになっておりまして、銀行法の中では大蔵大臣銀行に対する検査権限規定いたしますとともに、各種調査監督権限を与える規定を設けておるわけでございます。  なお、さらに申しますならば、預金者に対して不測損害を起こすおそれのあるということは、単に不良貸付をするとかなんとかいうことに限りません。過当競争等から生ずるいろいろな弊害がございます。そういう意味で、過当競争を防止するために各種規定を設けておるわけでございまして、支店設置の制限でございますとか、あるいは営業所の位置の変更等についてまで、厳重な大蔵大臣認可事項とするというようなことで、銀行の間に過当競争が起こってそのために無理な貸し出しをしたりなんかすることがないように、ひいては預金者に迷惑のかかることのないようにという意味規定を設けておるわけでございます。
  7. 武藤山治

    武藤委員 だいぶ御丁寧な御答弁でありますが、さらに具体的なこまかい問題に入りたいと思いますが、銀行保管をしておる手形保存期間でございますね、これは何カ年でございますか。
  8. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいまお話の点は、つまり決済が済んで、落ちたその手形銀行に残る、あるいは小切手が残る、そのつまり保存期間と申しますか、そういうものが何年くらいになっておるかというお尋ねかと思います。それにつきましては、銀行法上は特に規定を設けてはおりませんが、これは銀行間におけるいわば自主的な慣行として行なわれておるところでございまして、五年なり何年なりという期間、それを保存しておるということであります。
  9. 武藤山治

    武藤委員 五年とか何年とかいうあいまいな年数でありますが、これは各銀行によって保存期間は違いますか。
  10. 佐竹浩

    佐竹説明員 これは大体銀行協会等におきまして、いろいろ業務上統一的な運営をやっておる面が多うございますので、申し合わせ等で、十年ということに一定しております。
  11. 武藤山治

    武藤委員 十年ということに大体全国的に統一されておるようでありますが、十年間という保存期間を置く目的ですね。何のために十年間もそういうものを保存するかというねらいは何だと考えますか。
  12. 佐竹浩

    佐竹説明員 これはもともとそういう決済済み手形小切手等というものは、本来であれば振出人手元に戻っていくべき実は性質のものでございます。従いまして、アメリカ等においては、御承知のように、先生もいろいろ諸外国をお歩きになりまして非常にお詳しいと思うのでありますが、アメリカ銀行等では、これが全部振出人に戻る仕組みになっております。従いまして、銀行手元にはそういうものは全然残っていない。ただ日本の場合にはそれが多年の慣行として銀行にとどまるようなことになっておるわけです。本来ならこれは当然振出人に戻してしかるべきものが、たまたま銀行に残っておる、これはいろいろ商慣習等アメリカ日本とで違うようなことから出てくるのかとも思うのでありますけれども、従って銀行としてはそういうものを手元に置いておくということは、本質的なものではない。従って、銀行法上特にそれを規制して保存させるというような、保存義務を命ずるような性質のものでは実はないわけです。今日でも銀行がそれを振出人の方に戻していって少しも差しつかえないわけですが、たまたまそれをいたしますと、多額の費用を要するとか、いろいろな点があって、結局やむなく保管をしておるというような状況でございます。しかし、さればといって全然無目的にただ積んでいるというわけではございませんので、決済済みのものが後日いろいろ問題が起こってくるというような場合に、やはり当然それは調査をするという問題も起こりましょう。そういうものに備えて一定の期間それを保管しておくということかと思います。
  13. 武藤山治

    武藤委員 後日何か問題が起こったときの資料にそういうものを保管しておる、そう考えられるという点は大体同感です。そこで具体的な一つ事件に触れたいと思うのでありますが、御承知大阪銀行島興産株式会社取引関係で、この手形振出人自分の振り出した手形閲覧させてほしい、こういう要請をした場合に、当然振出人に戻してもしかるべきだと思われるような手形銀行が見せなかったおけですね。そういう銀行態度というものは、あなたの方の監督上から見て好ましい態度でございましょうか。その点はどうお考えになりましょうか。
  14. 佐竹浩

    佐竹説明員 これは島興産関係手形を見せてくれという要望銀行に対してなされたわけでございますが、それに対して銀行は断わったということはないというふうに聞いております。
  15. 武藤山治

    武藤委員 断わった覚えがないと申しますが、その点は銀行閲覧をさせてくれと、証人まで立てて再三にわたって出頭しておるわけです。そういう証拠書類も出せといえばございますが、そういう申し立てを何回もして、とうとう閲覧をさせないので、銀行局長あて土申告書が出ておるはずです。その上申書が出ておるという事実については財務官は全然知らぬですか。
  16. 佐竹浩

    佐竹説明員 何分にもだいぶ以前のことでございますので、私当時直接関係をしておりませんでしたものですから、正確な話は自己の体験としては実はないわけでございます。その後いろいろと当時の関係者から話を聞きますと、そういう書類が出て参りました。当時の検査部長のところへ関係者の方がお見えになって、いろいろと虚構を御説明の上、薄処方の御要望があったということは聞いております。そこで私はその話をいろいろ聞いてみまして、どうも話に食い違いがあるのじゃないかという気が実はするわけでございます。つまり島興産の側は自分関係手形を見せてくれということでいらっしゃったわけでございますが、銀行の側としてはもちろんそれはお見せするにやぶさかでないわけでございますが、何分にも決算期直前か何かのことで非常に多忙をきわめておったというような事情があって、島産関係部分を抜き出してお見せするのに時間がかかるから、少しお待ち願いたいということで応待をいたしたやに私どもも聞いておるわけでございますが、その後結果においては、やはり高雄からの御要望通り取引関係を証する一連のいわば証明書のようなものを銀行としては出しておるようでございますから、その意味においては島産の御要望に沿った処理が行なわれておった、かように実は承知いたしております。
  17. 武藤山治

    武藤委員 そこに銀行局の調べに大へん手落ちがあるようでございますが、だいぶ古い話だと申しますが、銀行局長にぜひ閲覧をさせてもらえるようにという上申書が出たのは昭和三十三年十月でございますから、そう古い話ではないのであります。ところが事件の起こったのは二十八年でありますから、五年間も閲覧要請に対して銀行はこたえようとしなかったわけであります。結果においては五年もたってから閲覧をさせてくれたから、今から見れば何のことはないじゃないか、手落ちはないじゃないかとお考えになるかもしれないが、その五年間に事件内容がどう推移したかということが重大な問題であります。もっと具体的に申しますと、裁判に係争中の事件になったときに、証拠書類として閲覧したものをそっくり裁判所提出すれば実害を受けずに済んだかもしれないという状況だったわけです。ところが銀行はとうとうそれを言を左右にして、弁護士の相談を受けなければ見せられないとか、あるいは証人を連れていっても、忙しいからといって拒否をしておるわけです。そういうような振出人に当然見せるべき、あるいはアメリカ銀行法などでは返すべき性質振出手形決済済みのものを見せないというその態度が妥当であるかどうか、一般論として、あなたが銀行監督する立場上、そういうものをすなおに見せられないという銀行態度は妥当であるかどうか、そういう点はいかがですか。
  18. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいま武藤先生お話でございますと、二十八年ころからの話があったのは五年もたってようやく見せたというような話でございますが、その点私どもが聞いておりますところと、若干の食い違いがあるようでございますので、申し述べさせていただきたいと思います。いわゆる黒鳥さんが自己関係支払い手形について、つまり交換回り支払い手形について見せてくれというふうにお申し出になったのは三十三年の九月でございます。その後証明を出しておりますのは三十四年の十二月でございますので、そもそも手形を見たいというお話が出たのは三十三年でございまして、二十八年というのは、当時預金取引が行なわれておって、それがそもそも終わりかけたころの時期でございますので、その点はちょっと今のお話と食い違っておるかと思います。  それからなお銀行がそういうものをすなおに見せないというような態度をとったのに対して、銀行局はどう考えるかというお尋ねでございますが、私どもの聞いておりますところでは、銀行故意にそういうものを隠すと申しますか、見せるのを拒んだと申しますか、というようなことはなかったと聞いております。だからこそ明細書も出しておるわけでございまして、たまたまそのときいろいろ事務都合がありますので、少しお待ち願いたいということを申して応待をした、それを拒否したというふうに先方の方がおとりになったかもしれませんですけれども、結局はちゃんと出ておるわけでございますから、従って私どもとしては銀行故意にそういうものを隠すというような意思がないものと見て、それについては別に問題にする必要はない、かように考えております。
  19. 武藤山治

    武藤委員 その辺はだいぶ銀行の一方的な説明銀行局はそのまま受け取っておるようでありますが、銀行局長あてに出した上申書をお読みいただけば当時の模様がわかると思うのです。ちょっと読んでみますると、大阪地裁における審理中の事件証拠として提出せんとして滑川健三という人を同伴して十月七日に出頭、閲覧方を申し込んだところ、菅原某なる者は、太平石油株式会社に迷惑をかけることはできない云々と言って閲覧を拒否した。そこでまたその次に閲覧方をしつこく要求したところが、元帳なれば見せられるが、手形現品都合が悪い云々と言って拒否されておる。その後元帳では都合が悪いのだが、一応帰宅してから法律家に相談してあすまた返事をするという回答なので、翌日また行ってみると、やはり現品閲覧都合が悪いから断わる、こう言って銀行は断わっておるのであります。こういう再三にわたる単なる閲覧振出人からの要求に対してすら銀行先方に、いわゆる太平石油に迷惑がかかるからといって直接の関係者には見せないで、第三者を保護するような言辞を弄しているわけですね。ここらに非常に何かおかしなものがあったと私は思うのです。もっとフリーな立場で、あなたが銀行監督する立場、私はあなたがどっちに味方しているかとか全然そういう偏見を持たずに質問しておりますから、銀行一般取り扱いとして振出人がそういうものを見せてくれと言った場合に、もっとすなおに、法律家に相談して見せるとか、現品都合が悪いとかあるいは相手方に迷惑がかかるとかという言辞を弄さずに、当然取引をしておった本人には見せるのが銀行態度じゃなかろうかと思うのです。その点はどうでしょう。
  20. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいま武藤先生がお読みになりました部分はもっぱら事実に関するところでございまして、問題はそういう事実があったかなかったかということによって、その上で議論が進むべき性質のものだと思います。その点につきまして、この事実関係を私どもの方の検査部でいろいろ調査をいたしました。銀行側申し立てによりますとそういう事実は全くございませんということでございます。
  21. 武藤山治

    武藤委員 だから銀行側申し立てではそういう事実がないというのは、銀行側だけの言い分をあなたは聞いておるからなんです。もし事案関係を、あなたが銀行はこういうのだということを主張するなら相手側立場なりあるいは一緒に行ったと称する弁護士なり立会人なり、そういう人まであなたの方で探して行き会って、こういう上申書に書かれておる事実はほんとうであるかどうかということを確認した上でなければ、そういう事実関係が間違っておるとか、僕の方の主張は違っておるとかいうことは言えないわけです。銀行立場だけが正しいという立場に立った答弁をするのは私はおかしいと思う。ただ私が聞いておるのは、私の方の主張をする立場に立った場合には銀行側としての取り扱いが妥当であったかどうかという答えを聞いておるのです。すなおに見せなかったというこの態度はどうですか。
  22. 佐竹浩

    佐竹説明員 ですから、先ほどから申し上げておりますように、そういう手形関係のものは当然それは見せるべきものでございますから、そういうものを銀行が拒否するということはまず第一に考えられないことでございます。そこで今の問題は、そういう断わったという事実があるかないかということでございます。その点は私どもとしては銀行側調査をいたしまして、そういう事実がないとこう申しております。一方武藤先生の方は、申立人の方の御主張をお聞きになって、そういうことがあるとおっしゃっておる、実は私どもの方は裁判所でないので、これ以上の事実関係調査ということになりますと、これは私どもワク外の仕事となります。私どもとしては本来そういうことはあるべきはずのないことと思っておりますがゆえに、銀行にいろいろ問いただしてみますとそういうことはありませんと言っておりますので、一応この問題はその段階にとどめておかざるを得ない、かように実は考えておるわけであります。
  23. 武藤山治

    武藤委員 あり得べからざることがあったからこそ今事件になって訴訟が起こっておるわけです。しかも銀行のそういう態度によって本人は現在の時価にしたら二億円近い財産を取られてしまったわけです。しかも商売は倒産をさせられてしまったわけです。その背後に、銀行の責任じゃないけれども太平石油なるものと銀行との連絡が非常に密接で、本人名義人なり権利軒主張というものが聞き入れられなかった、そこに問題があるわけです。当然本人決済済み手形や、そういう返してもいいほどの品物を、本人が見せてくれというのにすなおに見せないからこそ、銀行局長に対してまでこういうぎょうぎょうしい上申書を出したのでしょう、すなおに見せるといって裁判所資料として出せるならわざわざ銀行局長あてにこんな上申井を出す必要はないわけです。そういう点から見ても、今日の大阪銀行主張しておる点は、どうも事実を曲げて皆さんの方に伝えられておるような気がするのです。しかしそれは事実関係でありますからここで議論してもしようがない、調査会でも作ってもらって事実関係は調べるよりほかに手はありませんが、とにかく銀行としては当然見せるべきものを見せなかったというこの業務の運用の仕方というのは、どうも正当な銀行業務のやり方でないと思う。それは、先ほど佐竹財務官は当然見せるべきもので見せなかったということは考えられないと言っておりますが、そういう点でまず大阪銀行取り扱いというものが非常に手落ちがある、こういう点を一つはっきりお認めをしてもらわなければならぬと思うのです。その点では、あなたは先ほど当然それは見せるべきものだ、しかし事実関係がどうであるかわからぬということで逃げておりますが、とにかくこういう上申書まで銀行局長あてに出したという背後には、見せなかったから出したのだということがはっきりしておるわけです。さらに証人もおるわけです。その人をここに呼んで、一緒に行って見せてくれと言った人がだれとだれで、連れてこいというなら私は連れてきます。銀行局としてはそういう事実をもっと両方の立場をよく見て、銀行瑕疵瑕疵で徹底的に追及をしていくという勇気がなかったら預金者保護はできないじゃないですか。私はそういう点を非常に心配するのです。  それからもう一つ、との事件銀行局指導態度というものをお尋ねしておきたいのでありますが、そういう手形銀行が見せなかったために権利者不測損害をこうむったという場合に、何か銀行法関係あるいは法令通達等銀行損害賠償の責を負いますか。そういう点はどうでしょう。
  24. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいまの御設例のような場合でございますが、これは全く仮定の話でございますが、かりに何らかの銀行行為または不作為によって取引者が何らかの損害をこうむったということでありますれば、これはいわゆる民事上の問題でございまして、訴訟等によって争われる。裁判所で解決するというようなこともございましょうし、結局民事賠償請求の問題としてそれは処理さるべき性質のものと思います。ただいまおっしゃったような意味で私は設例そのものがちょっと今の現実と離れておると思いますけれども銀行局は見せないということは全然言っておりません、しばらくお待ち願いたいということは言ったようでございますが、全然見せないということは言ったことはない。そこでかりにそれを先生がおっしゃったごとく、見せることは見せたけれども時間がおくれたために損害が起こったらどうかというお話であれば、これはあくまでやはり民事上の関係として処理さるべきものと考えます。
  25. 武藤山治

    武藤委員 今の法規その他規則等では何らそういう場合の補償の規定というものはないようでございますが、こういう問題がもし起ったとすると、将来ほんとう預金者保護のこまかい規定を私は作る必要があるような感じがするのです。そういう点を全部民法や商法にまかせてしまって、銀行そのものの損害賠償責任というものは規定する必要は全くないと考えるのか、その点はどうでしょう。
  26. 佐竹浩

    佐竹説明員 武藤先生お話は、もっぱら銀行がそれを見せなかったために損害が起こった、見せるべき義務のあるものを怠ったために損害が起こったのだから、そういうことは一般の私法上の問題ではなくて、いわば銀行法上の特別な規定を設けてでも押えなければならぬ、おそらくそういう趣旨かと思うのでございますが、まずその出発点のところで私どもは全然そういうことはない、まず事実関係において違っております。そこでさらに言えば、かりに事実関係銀行側の言う通りでないかもしれません、しかしいずれにしても本件はすでに訴訟係属中の問題でございますから、その間の事実関係はおのずから裁判の進行に従って明らかになるべき性質のもので、結局私どもとしては裁判の結果を待ってそこで初めて確定した事実を知るということになろうかと思っております。今おっしゃったようなことで預金者保護に欠けるというお話でございますけれども、私の見るところによりますれば、銀行はそういうものをはっきり見せておりますし、あとからこまかい明細書まで出しておる、少しも頭金者に対して迷惑になっておらぬと思うのであります。これは預金者つまり交換回り手形の明細を見せるか見せないかという問題であって、その人がはたして銀行に預けた預金において何らかのきずがついたかということになりますと、その点は全然きずがついておりません。預金はもうすでに二十七年から始まって一年間にほとんど全部引き出し済みでございまして、そういう意味において預金損害をこうむったことは全然ない。さらに現在訴訟係属中の事件については、これはいろいろ両者の言い分があるようでありまして、その両者の言い分がどちらが正しいかということがはっきり裁判上確定してみないと、ほんとうにどっちが損してどっちが得したかよくわからないわけであります。今の段階においてこれについて軽々に何らかの決定を一方的にきめるということは私どもとしてはもちろんできません。従って、裁判の結果を待ってその上での話であります。
  27. 武藤山治

    武藤委員 だいぶ佐竹さん自信のある答弁をしておりますが、今裁判をやって、実はこの黒島さんの方が太平石油に対して六千三百万円の過払いになっておる。債務でなくて逆に債権者だったわけです。その債権者だった黒島さんが二億円の財産を取られてしまったわけです。この人がすでに無一文になり、非常な逆境に入ったために、太平石油とか日本石油とかいう大会社でございますから、頭から押しつぶしてしまえという形で、全く詐欺、横領にひとしいような行為をなされておるわけです。現に六千数百万円の過払い請求で、今こちらから逆に今度は請求をされておるようでありますが、あなたは全然損害を受けなかった、銀行が見せなかったことによって実害は受けなかったようだと言いますが、何を証拠にそういう確答ができますか。
  28. 佐竹浩

    佐竹説明員 それは私どもが今までいろいろ調査したところによりますれば、そういうことはないというふうに見ておりますけれども、しかし最終的にはあくまで裁判において決定さるべき問題でございましょう。従って、私どもとしても、裁判の判決を実は待っておるわけでございます。現在、おっしゃったように六千万円のもし過払いがあるということであるならば、これがもしも裁判上はっきり立証されて、黒島さんの方が勝訴になったという事実がはっきり判決の上で示されましたならば、私どももなるほどと納得いたすわけでございますが、現在何分にも訴訟継続中でございまして、その点の結論が出ておりません。従って、この点については、あったともなかったとも私どもとしては言えないでしょう。ただ私どもの調べたところでは、どうもそういうことはないんじゃないかと思いますが、最終的な決定は裁判の判決に待ちたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  29. 武藤山治

    武藤委員 先ほどの答弁とだいぶニュアンスが違いますね。先ほどあなたは、見せなかったことによって実害は全然加えてない、こう断定したわけです。ところが実際にはそうなると——私は事件の中にはできるだけきょうは触れまいと思ったのです。この前課長さんとも打ち合わせをして、事件内容に触れないで、きょうは原則論だけ聞こうと思った。ところが実害を加えてないといえば、それは事件内容ですから、事件内容に入りますけれども、それは課長さん、承知して下さい。  そこで一つお尋ねしたいのは、たとえば黒島さんが、自分の抵当権を設定されたのは不当であるから、その抵当権を解除するために百万円持ってくれば解除してくれると言われたので、大阪の信用保証協会から百万円借りて銀行に持っていった。そうしたら銀行本人主張を聞かずに、太平石油からの申し出を優先的に取り上げて、その金百万円は取っちゃって、太平石油日本石油に対する債務にぶち込んでしまって、抵当権は解除しない。これなどは、はっきり太平石油の専務と銀行の支店長がぐるになっているやり方です。そういう事件の内君まで今度は裁判にどんどん出てきました。しかし、そういう銀行の支店長と特定の会社との個人的な親交関係から不正が起こり得る可能性があるわけです。そういう事件というものを全然頭に置かずに、全然実害はなかったのだという断定をするのは、ちょっと軽率じゃありませんか。その点いかがですか。
  30. 佐竹浩

    佐竹説明員 それは私のあるいは言葉が足りないために、若干誤解をいただいたのかと思うのですが、私はあくまで事実関係の認定については、やはり裁判上の判決に待つ以外にない。ただ私どもが今まで調べたところはどうかとおっしゃられれば、調べたところによれば、どうもそういうことはないように思いますけれども、しかし決して断定するわけに参りませんということを再三申しておりますので、その点どうぞ誤解のないように願います。
  31. 武藤山治

    武藤委員 実は私の調べた範囲内では、この閲覧をすみやかにさせてくれなかったために、抵当権の設定をしたものまで全部競売に付して、しかも日本石油や太平石油関係者の名義にこれがかえられた。おまけに帳簿や印鑑までも全部太平石油で管理するような格好で借りていって、委任状まで全部偽造して、黒島名義の預金通帳に副印がなければこの預金通帳は自由にいじれないという形まで作られたわけです。しかしこれは事件内容でありますから、そういう印鑑不正使用とかあるいは委任状偽造とかいう問題はここで論議しても始まらない問題であります。私はその内容については一応避けて、問題は、黒島某という預金名義になっているものを、取引しておる太平石油が割印を押さなければ下げられないという委任状を銀行提出したわけです。その委任状というものは、権利の点は権利者とどの程度違うのか、割印者の権限は、全く権利者名義人と同じ権限を持つのか、これは銀行取り扱いとしてはどうでしょう。   〔毛利委員長代理退席、平岡委員長代理着席〕
  32. 佐竹浩

    佐竹説明員 預金者預金をいたします場合に、複数の人の印鑑をもっておろしたいという届けをしてきて、それに対して銀行がそういうお約束でお預かりしますということは、これは取引でございますから、契約自由の原則で幾らもあり得ることでございます。問題は、ただいま先生御指摘になりましたように、副印の問題のほかに、黒島氏の方から委任状を出しておられる点でございます。この委任状によりますと、島興産の代手のかわり金というものは普通預金口座に入りまして、その入りましたところの普通預金は畠興産が太平石油に対して負っておるところの債務の担保でありますので、その預金を引き出すことについてその権限を委任いたしますという趣旨の委任状でございます。この委任状は島興産の代表取締役たる黒島さんの名義で出されまして、正式の印鑑も押されておるわけであります。  そこでこの法的効果は一体どうかというお尋ねであったかと思うのでございますが、これはまさにこれでもって一つのはっきりした権限委任の形になっておるわけでございます。従って、なるほど割印がなければ出せないとかなんとかいう話のほかに、この委任状を持っておる人であれば、その人のいわば単独印鑑でも預金はおろせるわけでございます。なお明確に申し上げれば、その副印の内容は、一つ島興産の方の印鑑、もう一つ太平石油側の印鑑、こういうことになっておる。それで太平石油の側に、これは自分の方の債務の担保なんだから、預金引き出しはあなたに一切おまかせしますという委任状を島興産の方が出しておるわけです。ですからこの形でいけば、つまり太平石油の方は自分の印鑑だけでその預金をおろしても、少しも島興産から文句を言われる筋はないとも思われるわけでございます。しかしながら、その点は取引者は非常に慎重を期したものと見えまして、最初にその副印でもって預けて出しますという約束をしている関係と思いますが、常にその預金の引き出しのときには島興産の方の印鑑も押され、それから太平石油側の印鑑も両方押されて、そして引き出しが行なわれておる、こういう事実関係になっております。従いまして事実がそういうことでございますので、実際問題としてはこの委任状というのはいわば使われていなかったと見られるかと思います。そういう意味で、これ自身は一つの委任状として体をなしておりますけれども、現実にはそれが使われておらなかったということでございます。
  33. 武藤山治

    武藤委員 副印がなければおろせないという委任状が偽造で作られておった。偽造であるかどうかということについては、お宅の方では事実関係は別としてこれは裁判で明らかになりますが、そういう偽造の委任状が作られて下げられておるので、黒島がこの普通預金は解約してくれということを申し出ても、そういう解約をすなおに銀行は聞かずに、一たん委任状ができたのだからといって、名義人主張を聞き入れない態度というものは、銀行として妥当でしょうか。
  34. 佐竹浩

    佐竹説明員 その点につきましては、これまた事実関係に属することでございますけれども、黒島さん側から預金の解約を申し出られたという事実はないというふうに銀行側は申しております。もしかりにそういう事実があったとしたらどうであろうかということでございますが、その場合には、預金者から解約したいという申し出でございますから、銀行としては当然そのお話に応じて御相談に乗っておったと思います。しかし、そういうお話はなかったということになっておりますものですから、その点どうも行き違いがあるようでございます。
  35. 武藤山治

    武藤委員 それではその副印の効力というものは、名義人と全く同一の権限を持つ、通帳の名義人と、副印者の井村という人は、名前は書いてないけれども、判だけ押してあるわけですね。その両者の権限は全く同じですか。
  36. 佐竹浩

    佐竹説明員 それはつまり井村さんの判と黒島さんの判と両方で届けておきます。そうして引き出すときには両方の判で出します。こういう話でございますから、その面だけ見ますと、それは両方全く対等な形、両方そろって押した場合に完結する、こういう形だと思いますが、委任状は、つまり黒鳥さんの方は自分の引き出す権限は井村さんに一切おまかせしてあります。こうおっしゃるのですから、そうなりますと、二つの印がかりにあるとしても、実際は井村さんの判だけで出せるわけですね。そういうことになりませんでしょうか。だけど実際はそういうことはしていないわけです。黒島さんの判も、井村さんの判も、両方の判を押して出しておる。井村さんの判だけで出した例はありません。
  37. 武藤山治

    武藤委員 事実は全部井村さん一人の判だけで出している。ただあとで伝票二十枚なりを集めて黒島さんの判を支店長がべたべた押したというのが事実だ。これは事実関係が違うようですが、裁判で明らかにしつつあるようですから、その問題はさておいて、問題はほかの銀行の常識的な取り扱いと、大阪銀行取り扱いの仕方というものは大へん違うんですね。私は、ほかの銀行を二、三当たって、こういう場合にどういう取り扱いをしておりますかというととを調べてみると、名義人一人の預金通帳を二人の判を使う場合には、その中の金額なり取り扱い額なりを別な通帳に分けて下さいと普通銀行は言っているようです。あとでトラブルが起こったり、どうも問題が起こると困るから、銀行としてはそういうトラブルの中に入りたくないから、別な通帳にしてくれ。それで入ってきた手形をいつのはどちらへ入れてくれということで取り扱う。普通銀行はトラブルが起こらぬようにそういう取り扱いをするというんです。あなたの方の指導方針はどういう方針ですか。後者の銀行のような常識的な運用をするか、それとも今大阪銀行がやっているような取り扱いをいい指導だとしてやっておりますか、そこら辺はどうですか。
  38. 佐竹浩

    佐竹説明員 その点は、つまり個々の預金取引のいわば具体的な受け入れの形の問題かと思いますが、今おっしゃいますように、その態様は銀行によって区々であろうと思います。武藤先生がお調べになったようなやり方をしているところもあろうかと思いますし、あるいは大阪銀行がやったような形のものもあると思います。しかし、これはあくまで預金者銀行との間の契約でございます。預金者の方で特にそういう注文を出して、こういう方式で一つやってくれと言われますと、よほどそれが弊害、問題等がない限りは、銀行側としてはそれに応じて、お客様に対するサービスということでございますから、お断わりするわけには参らぬだろう、かように思います。従いまして、そういうこまかい点については、私どもの方として具体的な指導を行なうておることもございません。もっぱら銀行の自主的な運営にその辺はまかしておる、こういうふうに御承知いただきたいと思います。
  39. 武藤山治

    武藤委員 しかし、やはりその名義人が、何か問題が起こって、どうもこの取引は正常でない、だから解約をしてくれ、そういう申し出を支店長にしても聞き入れない。そういうトラブルが起こってきたら、当然両者を呼んで、内容はどうなんだ、これだったらやはり通帳を二つに分けてくれぬか、あとで銀行が問題の中へ巻き込まれるような形では困る、そういう注意をするのが、預金者の金を預かったり貸したりする銀行の当然の態度じゃないでしょうか。しかもこの事件の場合、谷町支店長と太平石油の専務というのは親しいんですね。かつて朝鮮銀行かどこかに一緒に勤めておったことがあって、親友なんですね。従って、そちらの方の連絡なり言い分を銀行がかなりウエートを置いて聞き入れて、他の黒島の方は、逆に太平に融通手形を六百万も出しておいて、権利者なんですね。ところが融通手形自分の方でたくさん借りておるものですから、もっとほかへ融通手形を書かれては大へんだというので、印鑑まで全部太平が一時預かっておる。品物を出しておる手前、そうしないと融通手形でも出されてつぶれてしまっては大へんだというので、うまく本人をだまして判まで預かっておる。そういう関係から考えてみると、どうもこの副印を押して、本人主張というものを聞き入れないでばたばた井村という太平だけの主張を聞いておるという点は、銀行業務運営として私はどうも手落ちじゃなかろうかと思うのですが、その点はあなたたちの調べではどうですか。
  40. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいま御指摘になりました預金の解約を申し出た、にもかかわらず銀行はそれに応じなかったということは、銀行態度としてはなはだ適当でないのじゃないかということでございます。なお、銀行としては、そういうときには当然もう一方の当事者を呼んで、今般黒島さんからこういう申し出があったが、あなたの方も了承済みかということでその話をあっせんするのが筋ではないか、こういうお話でございます。私は、その点は、もしそういう事実がほんとうにあったのだとすれば、それはまさに先生のおっしゃるようなことがあるいは筋合いかなと思います。しかし、それは銀行がそこまでやる義務があるかどうかという冷たい議論をいたしますと、そこは必ずしもそこまで義務づけられておるとは言えないかもしれませんけれども、しかしそうかといって冷然として突っ放すというのも本意ではございません。やはり金融機関、サービス機関として、そこは親切に預金者の御便宜をはかるという意味で、当然相手方も一緒に連絡をつけるということは私どもとしても考えられることだと思います。しかし、何分にもそういう申し出がなかったということでございますので、どうもそういう事実がないとすれば、せっかくの先生の御論旨も実はそれ以上進めようがない、私どもとしてもお答えしようがない、かように実は考えるわけでございます。
  41. 武藤山治

    武藤委員 私はどうも大阪銀行のやり方というのが常識では考えられない悪質な取り扱いの仕方をしておると判断をしておるのです。そこはだいぶ認識の違いがありますから、将来法廷において明らかになると思いますが、もう一つ、あなた方は、委任状が出ておるから、委任状でばたばた井村個人の判で下げても別に差しつかえない。しかし、この場合はあとで黒島の判も押してあるから、銀行としても手落ちがないと言われる。形式的な表面だけを見ればそうかもしれぬが、もっと慎重な銀行であるならば、その委任状に印鑑証明を添付してくるのが最も確実な取引証明する、なるほどこれなら本人承知しておるのだという証拠になると思うのです。委任状に印鑑証明はついておりますか。
  42. 佐竹浩

    佐竹説明員 委任状には印鑑証明はついておりませんでした。そこでただいまの先生の御質問にお答えするわけでございますが、全く何と申しますか一見の客が現われて、未知の人だ。そういう人と新たに取引を始めるということになりますと、やはりその人の印鑑証明をとらないと、この委任状がほんとうかどうか——印鑑証明本人の実否を確かめるわけですね。そういう意味で、必要でございましょう。しかし、黒島さんはすでにその前から大阪銀行に対して当座取引を開いておられました。当座預金勘定を持っておられたわけでございます。そこでその黒島さんの印鑑も銀行には届けられておったわけでございますし、銀行としては、当然従来のお取引先の黒島さんであり、かつその印鑑は届けられておる印鑑と一致するということで、当然黒島さんの委任状と解釈した、かように、私どもから見ましてもその点は無理のないところではなかろうか。従って、この場合に印鑑証明がないからといって、直ちにとの委任状は無効であるという議論ははたして成り立つかどうか、これは厳密な法律論でなにしないといかぬと思いますが、ただいまの先生の御質問に関する限りは、そういう事情背後にございますということだけを補足させていただきます。
  43. 武藤山治

    武藤委員 私は委任状が無効だと言っておるのではないのです。ただ一年間に何億円という、とにかく一億円からの金の出入りがしておるわけですね。受取手形を入れたり落としたり、それを代金を払ったり、かなり膨大な金額が動くわけですよ。油の取引、ガソリンの取引ですから非常な膨大な金額になっておるわけです。私もその貯金通帳をこの間まで持っておったわけですが、今裁判所の方に証拠として提出しておるのでここにはありませんが、そういう膨大な取引をするのに、この委任状が偽造であるか、あるいは印鑑証明がついてないのを、ばたばたおりるようなものを銀行が不思議にも思わぬし——当然印鑑証明をつけてきてくれくらいなことを言うのが私は慎重な銀行の管理責任だと思うのですが、普通銀行取引する場合に、そこまで注意を払う必要は、銀行局として監督上ないと考えておりますか。でき狩ればそういうものはみな印鑑証明まで添付することが適当である、そう考えますか。その辺どうでしょうか。   〔平岡委員長代理退席、有馬(輝)委員長代理着席〕
  44. 佐竹浩

    佐竹説明員 預金取引を始めます場合に、先生も多分に御経験かと思いますが、銀行の窓口で一々印鑑証明をとるということはいたしておりません。つまり銀行としてはこういう印鑑で届け出られたもの、こういう印鑑で払い戻しますという約束を、つまりお客との間でやっております。その印鑑が印鑑証明と特別な関係を持つものではございません。従って、それはたとえば武藤先生預金なさる場合に、一々印鑑証例をつけて印鑑証明の出ている印鑑でなければ預金できないとなったら、預金者としては非常に不便なことではないかと思います。そういう意味で通常お使いになっておる名字だけの通常の判だけでも何でもとにかくその方の判であれば、それを届けてさえあれば、その届け出の判と引き出しのときの判が一致しておるかどうかということが銀行としては一番問題でございます。届けてない判でおろしにきた人がおれば、もしこれに対して払い戻しをしたとすれば、これは銀行として重大な手落ちになります。ところが届け出た通りの判でこれを引き出すということであれば、これはもう全然問題はないところでございます。
  45. 武藤山治

    武藤委員 それは届け出た判でおろすなら問題はないのです。ところが届け出た判でない井村の副印でおりるようにして——おりるようにした唯一の証拠は委任状なんですね。その判は全部相手の太平が持っておったのですから、何でも作れるわけなんですね。そこでそういう重大な金を、多額の金を出し入れする場合の委任状というものは——通帳じゃないですよ、委任状というものは当然十分な注意を払って印鑑証明を添付してくるのが、私は注意責任者としてその程度のことは当然じゃなかろうかと思うのです。委任状ですよ。通帳は確かに最初の名義人の判と同じであればばたばた下げてもいいと思うのです。しかし今度の場合は福印で下げられるのですからね。しかもその副印で下げられるという委任をした証拠書類に印鑑証明をつけてくることは私は当然じゃなかろうかと思う。そこまでの注意は必要でないでしょうか。
  46. 佐竹浩

    佐竹説明員 ちょっとお話内容が少し入りまじってしまいましたものですから、少し整理さしていただきますと、ここに印鑑をめぐって二つの問題があるわけでございますね。一つ預金をいたします。ついてはその払い戻しをするときにはこの印鑑とこの印鑑を押して出しますよ、といって銀行に届けたものがあるわけです。それは黒島さんの印というものが一つ、それから井村さんの印が一つでございます。黒島さんの印はすでに従来から当座取引をしておられました。その当座取引をしておられたときに使っておられたと同じ印鑑を今度もまたお届けになったわけでございます。まずそういうように預金引き出しの際の、つまり届け出印鑑というものがそこにあるということ。  それからもう一つは、先生御指摘の点は委任状の方の問題、つまり黒島さんの委任状が本人が出したものかどうかということ。それで黒島さんの委任状に押してありますところの印鑑が、これがまた当座取引に使われておる印鑑と同じ印鑑が押してあるわけでございます。それで先生は、なるほどそれは同じ印鑑を押してあるかもしれないけれども、しかしその委任状は黒島氏の意に反して出されたかもしれないというあるいはお疑いをお持ちになっていらっしゃるのではないかという、これは推測でございますけれども、そうだとすれば、これは確かに本人が発出したものであるという確認は何か、それは印鑑証明をとって確認になるかどうか私は多少疑問だと思いますけれども、何らかの方法で本人が出したものに違いないという確認をすべきではなかったかということでございます。その点は私もおっしゃるように、念には念を入れるとすれば、あるいはそういう点もう一ぺん黒島さんにこの委任状は確かにあなたお出しになりましたか、といってお確かめになることは、それはもう万全の策かと思います。しかしその点は、それをしなくてもすでに当座取引でお使いになっている判を現に押しておられるし、しかもこの委任状を持ってこられた方が全然第三者が突然として持ってきた、あるいは相手方であるところの太平石油の人が勝手にこれを持ってきたということだとすると、そこに一脈のいわば疑いを抱くチャンスがあるわけでございますね。ところがそのときに話しにこられたのは太平石油ももちろん来ましたけれども、同時に黒島さん側の方が一緒見えて、そうして銀行と話し合ってきめておられるわけであります。してみれば、銀行としてはそれ以上突っ込んで、これはあなたほんとうですか、うそですかということまで言うのはあるいは黒島さんに対して礼を失することになるかもしれないという感じもいたします。しかしこの辺は、かりに委任状というものを非常に重視した場合の議論でございまして、実際上は先ほどから申し上げておりますように、預金の方はちゃんと正規に届けられたこの二つの印が押されて、そして出されておるわけでございまして、従って、表向きとしては委任状を使って井村さんだけの判でおろしたという事実は全くないわけでございます。そうだとすると、この委任状の効力をめぐっての論争というものは、本件預金引き出しに関する限りは全然出てこないわけでございますね。また議論をする必要が出てこないような事態に実はなっております。それを先生のおっしゃるように、初めは井村だけの判でおろしておいて、あとから何冊かまとめて   〔有馬(輝)委員長代理退席、毛利委員長代理着席〕 黒島さんの判を勝手に押したのだとおっしゃいますけれども、それは、それこそほんとうに事実関係が問題でございます。どういう証拠をもってそういうことをおっしゃるのか私どもわかりませんけれども、少なくとも預金を扱っておった銀行側に言わせれば、そういう事実はございませんと言っております。従って、ただいまの委任状についての印鑑証明をめぐるお話は、少なくともこの預金の引き出しに関しては一応関係がない話であります。その点一つ御了承をお願いしたいと思います。
  47. 武藤山治

    武藤委員 そうすると委任状は黒島さんが直接銀行へ持って行ったのですか。何月何日にだれが委任状を銀行側提出しましたか。
  48. 佐竹浩

    佐竹説明員 二十七年五月の八日、島興産の山本専務と太平石油の井村常務が大阪銀行の支店にお出かけになって、そこで普通預金取引の契約を行なわれた、こういうように聞いております。
  49. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、黒島名儀のものを同じ会社の常務が行って委任状を提出した。黒島さん自身は委任状提出のときには参加してませんね。
  50. 佐竹浩

    佐竹説明員 五月八日、大阪銀行支店における預金契約が行なわれた、その場には黒島さんはおられなかったことは事実でございます。
  51. 武藤山治

    武藤委員 太平石油に副印でおろせるような委任状を提出したときには黒島さん自身はそれに参加していましたか。
  52. 佐竹浩

    佐竹説明員 委任状は山本専務がお持ちになって、そうして井村さんとともにこれを銀行に見せた。従って、その場には黒島さんはおられなかったということを私は申し上げました。
  53. 武藤山治

    武藤委員 大体概要はわかりましたが、その事実関係というものはやはり裁判で明らかにする以外に手はないと思いますが、とにかく私はこの事件内容をいろいろ調べてみて、これが資本主義社会の矛盾から金、金、金で世の中をごまかして渡る、そういう連中の手に引っかかって、非常に巧妙に不動産を取引の条件として担保に取り、しかも融通手形を書かしておいて、その融通手形が落ちないという状況にみずから追い込んでおいて、品物をぴたっととめて、一挙にそれを競売で手中に入れる。しかも以前の太平石油の会社状況というものを調べてみると、ほとんど財産らしい財産はなかった。それがこういう手口で無知の者を、弱い者を自分の傘下に入れるからと称して次々と財産を競売している。このやり口を見て、私は、今日の法の欠陥というか、このごまかし方というものに対して憤りを感じている一人です。しかし、その是非の問題については、裁判で明らかにする以外にないのでありますが、銀行局としては銀行監督をする際には、こういう問題は偏見を持たずに、やはり両方の関係というものをもう少し具体的に、徹底的に、私は調査をする必要があると思う。きょうは大体十一時二十分ごろまでに終わらしてくれという最初の予定でありますからやめますが、との議事録を読んで、私の方で考えておる事実が間違っておるかどうか、そういう点を銀行局としては十分調べてもらいたい。それに基づいてもう一度ゆっくり今度は銀行局長に、こういうような銀行取り扱いの仕方というものに対しては納得できぬから、質問したい。  しかもこの事件について、大阪銀行から銀行の頭取、営業部長、三人ばかりの偉い人が銀行局に顔を出していろいろ調べられておる。私は、銀行側のそういう主張だけを銀行局証拠にしておったのでは、この事件の核心に突き当たることはできないと思う。やはりこの内審を、銀行の元帳も十分調べて、二重払いになっているものや、あるいは銀行で抵当権を解除するといって持っていった金を人の借金に穴埋めをしてしまうというようなことを一回の通知で銀行が済ましてしまう。こういう銀行取り扱いの仕方というものに対しては、十分警告を発する必要があると思う。そういう点を今後十分検討して、この事件内容についてもこの次にはお答えを願いたい、かように思います。
  54. 佐竹浩

    佐竹説明員 ちょっと補足さしていただきたいと思います。  武藤先生御指摘の本件は、私どもとしては竜に銀行側調査をいたしたばかりではございません。いろいろ当事者双方の言い分も聞くべきである。これはあるいは銀行局として多少出過ぎたことであったかもしれませんけれども、しかし万一ほんとうに御迷惑がかかっておるということであっては、銀行局としても申しわけないという気持から、実は黒島さん御本人に直接私どもの方の関係課長がお目にかかりまして、二度にわたって詳細に事情を伺っております。さらに、黒島さん側の弁護人でありますところの張本さんその他の関係の方からも、再三実はお話を伺っておるわけであります。決して、単に銀行側の一方的言い分を聞いて、そうして冷然として事を処理しておるようにお考えいただきますと、その点ははなはだ不本意でございますので、どうか一つ御了承をいただきたい。
  55. 武藤山治

    武藤委員 しかし両者の言い分を聞いておって、やはり平行線であるということをある程度感じておると思うのですね。だからその平行線であるという部分をどの程度までやったらもう少し内容の事実関係がつかめるか、そういう点も、出張旅費など惜しまず、銀行局長一つ大阪に人を派遣して十分谷町支店の状況を調べてもらいたい。
  56. 大月高

    ○大月説明員 この問題は個々の取引の問題で、しかもその間に委任状の効力がどうであるとかあるいは印鑑の使い方が粗雑であるとか丁重であったとか、いろいろ問題があると思います。それから黒島さんと太平石油との間に、裏にどういうような実体関係があったのか、これはいわば銀行と無関係の喪の出来事でございます。そういう問題を、銀行のサイドからだけ見ましても実は事態の糾明ができません。それと、われわれが持っております権限は、銀行法によりまして銀行について調査をしあるいは検査をするという権限でございますが、この権限法律的には任意調査、任意検査が建前でございまして、決して強制的な権限は持っておらないわけであります。これはわれわれ行政当局に与えられた妥当な限界であろうと思うわけでありまして、今お話のような問題になりますと、民事関係になりますれば、双方弁護人が最善の術を尽くしまして裁判所において証拠をもって争う。今お話がございましたように、陰謀をもって人の財産をかりに乗っ取ったというような問題になりますれば、刑事訴訟法によりまして検察当局が強制捜査権をもってこの事実を明らかにされるべきだと思います。そういう観点から考えますと、本件は銀行局が幾ら徹底的に中に入りましても、それは隔靴掻痒の感だと率直に言って考えるわけでありまして、こういう問題は今訴訟が進行中でございますので、その結果によりまして、はたして銀行側に非違があったのか、あるいは黒島さん側に若干の落度があったのかということははっきりいたしますので、その結果によって、われわれはまた行政当局としての判断を下すというのが適当かと存ずるわけでありまして、われわれとしましても、これだけ問題になりました事件を、そう軽率に扱う気持はございませんけれども、事実問題に関しましていろいろ中間的に、今の段階では立ち入って調査をしろという御要望に対しましては、われわれとしてはもう少し時間をかしていただく方がいいのではなかろうかと率直に考えております。
  57. 武藤山治

    武藤委員 十分時間を一つお与えいたしますから、十分調べてもらいたいのであります。行政指導以外にできないとおっしゃいますが、銀行法第二十三条の中にも「公益ヲ害スベキ行為ヲ為シタルトキ」とか、あるいは第三十四条で「公衆ヲ欺罔シタルトキ」そういうような場合は当然主務大臣の監督権限というものが十分発動できるわけでありますから、そういうものがあるかないかという疑いを、やはり今後長い時間をかけてけっこうでありますから、検討していただきたい。すでに検察当局も手を入れて太平石油の捜査は始まったようでありますから、一つ銀行側手落ちがあるかないかも十分検討していただきたい。そういう要望をして終わります。
  58. 毛利松平

    毛利委員長代理 次会は来たる六月五日午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開催することとし、本日はこれにて散会いたします。  午前十一時五十七分散会