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平岡委員 通産大臣の
立場においての
お答えならそれでけっこうですが、私がお聞きしたがったことは、近ごろ薬の広告でございますが、何ですか「クシャミ三回ルル三錠」とか、大体金利操作、公定歩合操作というものは、これはそういう兆候が出たらすぐ対処すべきであると思うのです。ところが何か弾力性を失ってしまって、
池田さんがおるうちはとても公定歩合を引き上げるなんということは絶対ないだろうと思われるほど固定的に
考え過ぎていはせぬのですか。そういう今までの
池田さんを初め
政府のとっておられる公定歩合操作に対する憶病なというか、そういうことはどうも工合が悪いのじゃないかと思うのです。そういうことでもっとおおらかに弾力性を持って処置さるべきだと思うのです。しかも
政府はそれにあまり介入してはいかぬのじゃないか。英蘭銀行なんか公定歩合を引き上げたときには、前に議論なんかしていません。上がるであろうあるいは下がるであろうというような議論は、
政府筋において、各閣僚がそういうようなことを発表することはとても
考えられないことです。結果だけ、しかも理由を付しております。これはこれで昨日十二時を期して公定歩合一厘を
引き下げましたということを結果として報告しているだけです。それで理由もつけてあります。そういうようにやはり音もなくそういう
経済の悪兆候に対して規制する処置として、ひそかにしかも決断を持ってやっておるわけです。しかし
年間に公定歩合の操作の数は、西独にしましても、イギリスにしましても、この数年来の平均にやはり三回を下っておらぬのです。三回か四回、きわめてイージー・ゴーイングに
——イージー・ゴーイングというと逆説的ですけれ
ども、行なわれております。やはりそうした態度は
日本としてもとるべきだと思うのです。
日本政府としてもそれで不当に
日銀に介入したりなんかしないような、そういうことこそ
政府のとるべき義務だと思っております。そういう意味でお伺いしたのですから、通産大臣的感覚でなしに、
経済のかなめにある大御所として、そうした
金融政策についての御配慮をお願いしておきたいと思うのであります。
話は少し理に陥りましたけれ
ども、実は
池田首相がきのう子供の日で子供と対談しておりました。きっと何か
考えるところがあったのだと思うのです。子供のことですから直感的に問題を把握しておりまして、純真な子供の目に映った
政府のやり口、そうした点に対して
池田首相が、何回でもこういう機会を持ちたいと言われているそうですから感銘するところがあったと思うのです。
実は私の最近の体験で、これは
政府筋特に
池田さんに対しましてはきわめて都合の悪い皮肉を与え子供から受け取りました。これも
国民が
政府をどんなふうに見ておるかという材料にはなると思うので、
一つ御披露しておきたいと思うのです。
昨年の秋のことであります。私が近所を散歩しておりますと、カメにあらず一匹の子犬をまん中にはさみまして、悪童三人が盛んに議論いたしておるのであります。聞きますというと、その子犬がシェパードの子でありまして、三人ともほしくてたまらない。見つけた者順もだめということになった。じゃんけんもだめということになった。そこで、だれがもらうかをうそ比べできめようというのだそうであります。
そこで私は、とんでもない、うそ比べなんかしてはいけない、そんなことをするやつがあるか、うそをつく者はろくなことにならぬぞということでたしなめました。
池田首相をごらんなさい、
池田はうそを申しませんと言っているではないかと言い聞かせたわけであります。ところが驚いたことには、異口同音に三人が、じゃあこの子犬は
池田総理大臣のものだ、とても
総理にはかなわない、おじさん国会に行っているのだから
総理大臣にこれを持っていって下さい、こういうわけです。これは私も驚きましたが、まさかそんな失礼なことを取り次ぐわけにはいきませんので、とどのつまり私がもらうことになりました。といって、私が一番のうそつきの適格者だということを意味するわけではないのであります。
この犬に後日談があるわけであります。最初これは一キロくらいのちっぽけなものでしたが、またたく間に十三キロくらいに
——何かの
数字にあったようですが、
成長したわけです。ほんとうにまたたく間に
成長いたしました。まさに
高度成長であります。ところで、気がついたことは、びっこを引き始めたのであります。どの足が悪いというのではなしに、言うなれば全体の四肢がすくんでしまって、何か歩行困難になったのであります。人に聞きますと、くる病だそうです。シェパードには往々ありがちな病気だそうであります。結局あまりに
成長が早いので、カルシウム分が不足して、そして
成長に呼応するところの食事を当然
考えてやらなければならなかったわけなんです。それから、鳥の頭だとか、牛の骨とか、それから値上がりをした豚の臓物などをあてがいまして、動物愛護の精神に徹しまして供給これ努めた結果、やっとくる病の
危機を脱して、あしなえにはならずに済んだわけであります。この犬は劣性遺伝のものであったらしく、そのために捨てられたと思うのです。シェパードの子はやはりシェパードでありまして、大きくなるにつれまして、耳もぴんと立ってきたし、目も鋭く、肩の張り等も出てきたわけであります。まことに堂々としておるのですが、しかしびっこの方はまだ必ずしもいえておらぬのでありまして、犬の品評会に出して一等を取るなんということはとても思いも及ばぬものであります。結局りっぱな犬というものは、すべて
均衡のとれた
成長をし、発育をしていなければ本物でないということをつくづく痛感したわけであります。
政府の信念ともなっておるところの、
池田総理の信念ともなっておるところの
高度成長が、耳だけがびんと立ち、目が鋭く、肩ばかりががんじょうに見えるというだけでは、
国民経済としては落第だというふうな感じをどうしてもぬぐうわけにはいきません。
国民自身は過去二回の
経済の起伏において、えらい経験を実際皮膚をもって体験したわけでありまして、そのつど
経済政策のあなた方の閣僚間の議論がどうあろうと、しょせんは、
神武景気にしろあるいは岩戸
景気にしろ、
国民大衆からは無縁のものであったということ、この点はやはり大いに反省していただかなければならぬと思うのです。ですから、
藤山さんがかなり率直に
政府自身の
政策に対しまして批判的態度に立ってきたということは、それはちっぽけな閣内の統一を乱すとかそういうことではなしに、
国民的な
一つの規模において
国民のための政治をするという意味において、そういう純真な立ち上がりということであるならば、私は非常にけっこうだと思います。ただ先ほど申したように、
池田さんそれ
自身も、過去二回の、蔵相をやめたり、
中小企業の一人や二人云々の言葉を残されたあの苦い経験は、実はおれに対する非難には値しないのだ、今度こそはそういうことの顧念なしに、あのときは失敗でないのだから、その失敗でないことを実証してみせるという、そういう気持で取り組んでおられるということであるわけなんで、確かにそういう
立場もあろうと思うのです。
きょうはじっくりその点につきましてよくお聞きをし、その
陰影を作ることによって
池田さんの所説
自身を浮き彫りにしてみるということで、
国民の
関心事である当面の
経済政策というものに対して、
政府自体の
立場がどうであるかということをぜひお聞きしたかったわけです。ところがかけ違いまして、
池田さんここにまだお見えになっておりません。そういうわけで、あとに同僚委員が控えておりますので、私はこの程度でやめますが、万機公論に決して大いに閣内で議論をしていただく、そういうことを大いにやっていただきたいと思うのであります。
以上をもちまして私の
質問を終わることにいたします。