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1962-05-06 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年五月六日(日曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       宇都宮徳馬君    大久保武雄君       岡田 修一君    金子 一平君       久保田藤麿君    藏内 修治君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       古川 丈吉君    坊  秀男君       吉田 重延君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    澄田  智君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 四月二十八日  在外財産補償に関する請願増田甲子七君紹  介)(第五一三四号)  同(中澤茂一紹介)(第五二四五号)  同(井出一太郎紹介)(第五二四六号)  同(下平正一紹介)(第五三三四号)  同外七件(上林山榮吉君紹介)(第五三五五  号)  同外十一件(宇田國榮紹介)(第五三八四  号)  旧令による共済組合等からの年金制度に関する  請願外一件(鈴木仙八君紹介)(第五二一五  号)  同月三十日  在外財産補償に関する請願外七件(中馬辰猪君  紹介)(第五五八九号)  同外二十一件(床次徳二紹介)(第五五九〇  号)  同外一件(江崎真澄紹介)(第五六六二号)  同外十二件(浦野幸男紹介)(第五六六三  号)  同外一件(加藤鐐五郎紹介)(第五六六四  号)  同外五件(海部俊樹紹介)(第五六六五号)  同(松平忠久紹介)(第五七五六号)  神戸税関長遠藤胖外三名の罷免等に関する請願  (田中武夫紹介)(第五六六一号) 五月一日  在外財産補償に関する請願外一件(池田清志君  紹介)(第五七九八号)  同外二件(佐藤觀次郎紹介)(第五七九九  号)  同外二十五件(江崎真澄紹介)(第五九一五  号)  同(山中貞則紹介)(第五九一六号)  同(中島巖紹介)(第五九五一号)  同外二件(春日一幸紹介)(第六〇六四号)  神戸税関長遠藤胖外三名の罷免等に関する請願  外五件(松平忠久紹介)(第五九一七号)  米子市に国民金融公庫出張所設置に関する請願  (足鹿覺紹介)(第六〇六三号)  演劇入場税撤廃に関する請願志賀義雄君紹  介)(第六〇六五号)  嗜好飲料清涼飲料物品税撤廃に関する請願  (志賀義雄紹介)(第六二三六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十八日  在外財産補償に関する陳情書  (第七八八号)  同  (第七八九号)  同(第九〇〇  号)  国の会計年度変更に関する陳情書  (第八〇四号)  国の会計年度暦年制に改正の陳情書  (第八〇五  号)  たばこの小売価格引下げ等に関する陳情書  (第八二三号)  農林業用ガソリンの免税に関する陳情書  (第八六一号)  会計年度変更に関する陳情書  (第九〇一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇〇号)(参議院送付)  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 お見えになっている藤山経企庁長官にお伺いをいたします。  実は一昨日でございますか、参議院大蔵委員会におきまして、わが党の木村禧八郎議員質問いたしまして、直接聞いておったわけではございませんが、新聞紙上報道されるところによりますと、質問の要旨は次のごとくであったようであります。  政府の一枚看板として掲げておる、今秋には国際収支均衡するんだということを言われていますが、木村さんはこれに対しまして、その均衡を達成するためには、強力なデフレ政策をとらなければならないはずだということを指摘しまして、もしそうでないならばこの金看板をはずして今秋の国際収支均衡をはかるという目標は、これを一応取り下げるべきではないかという質問であったと思います。それに対しまして総理大臣お答えは、デフレ政策はとらないということ、それから、直ちに経済見通しの修正を行なうことはないということ、第三番目には金利引き上げより日銀窓口における資金量規制措置などが必要だということを答えておられます。それに対しましてあなたは、三十七年度の見通しは改定を要するのではないかということ、それから今秋に国際収支均衡をはかるという目標をおくらせるのはやむを得ないではないかということ、第三番目に、池田さんとは対照的に、金利政策経済に占める比重が重いのだから重視しなければならぬということをお答えになっておられます。私どもは、率直に言いましてあなたの立場の方が正しいのではないか、かように考えております。ところが片や首相、片や経企長官それ自体お答えがまるで違っておるのでありまして、これは府民としても大いにとまどうところであろうと思います。  そこで私どもは、本日この大蔵委員会におきまして、池田さんをお呼びして、そしてあなたと一緒にこの席に並んでいただいて、国民の前に率直にその所信を表明していただきたい、そういう機会にしたいと思っておったわけであります。ところが都合上そうした運びにはまだなりかねておるわけですが、今申したことは、単に議会関係のわれわればかりでなしに、国民ひとしく関心を持っておるところなので、もう一回木村禧八郎氏の質問に対してのあなたのお答えは、今私が申し上げた通りであるかどうかの御確認をいただきたいのであります。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今御質問のありました木村禧八郎氏の質問に対する私の返事というものは、大体今御指摘のようなことでございまして、私の見方だけが正しいとは申さない。いろいろな見方がございましょうから、そういうものは十分検討はいたしますけれども、私としてはそういう見方をいたしております。
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員 結論的なような質問にいきなり入ってしまって、そのお答えをいただいたのですけれども、これは国民関心を持っておることですから、経過的に多少問題点を指摘しながら、なお深くお伺いしたいと思っております。  まず経済閣僚の頂点にあられる池田総理経済政策とか所信それ自身を一応ここで振り返ってみる必要があると思うのです。池田さんは、四年ごとの景気の起伏の急転時に経済閣僚として対処せられる責めに任ぜられてきたわけです。第一回目は昭和二十七年から二十八年にかけての変転時、第二回目は昭和三十一年から三十二年にかけての神武景気とその反動的不況の時点においてであります。第一回目のときは中小企業一つ二つは云々の有名な言葉を残されまして、第二回目は蔵相の職をなげうたれたのであります。ところがいずれも一年そこそこで不況上昇に転じましたので、それ見たことか、おれにまかしておけば間違いはないとの所信でおられる様子とわれわれは了解いたしておるのです。今度こそ強気一点ばり日本経済高度成長によってゆるぎなき基盤に一気呵成にのし上がらせてみせるという意気盛んな闘魂を燃やしまして、それで経済のことは池田にまかしておけと仰せられておる様子であります。結局過去二度の失敗を反省して、三度目の正直というのではなく、過去二回の自分の強気論正当性を、今度はだれにもじゃまされずに実証しようとなされておるものと私どもは了解いたしております。そういうことなので、きょうは池田総理にぜひかたい決意、執念とも言うべきその所信についてただし、そうしてこの批判勢力と申しましょうか、あなた自身のお考えも聞きまして、問題点を明らかにしたいと思っておるわけです。近ごろ造形美術手法として、陰影をつけることによって主要のテーマを浮き出させるという手法があるそうですが、私は池田首相所信を明確にするために、あなた自身陰影の役割をしていただこうかと思っておった。といっても陰影が本体を食っても私は一向差しつかえない。そういう意味では私はきょうはあなたに存分の所信をお伺いしたいわけなんです。  それで今言ったように、池田さんの所信はぜひ聞きたいところなのですが、私どもはいろいろの資料によりまして、あるいは池田さんの国会における諸答弁をとりまして、その考え方を次のように要約いたしておるわけです。池田さんにとりまして何よりもまず成長政策であります。生産性向上であり、自由化に耐え得る競争力の増強を主軸としておる。これは池田さんの立場であります。そのために設備投資は第一義的に位置づけられておりまして、よって生ずべき国際収支危機は、でき得る限り外資導入によって切り抜ける、公共投資の繰り延べとか金融引き締め等政策は、これまたできるだけおくらせようとしています。いやしくも成長のスピードを外貨危機によって制約されることのないよう、外資導入という国際的借金主義を是認しておられます。本日議題になっておるところのIMF関係法案、これが一連の布石であると言っても過言ではないと思うのであります。また物価につきましては、卸売物価欧米各国に比しまして長期的に安定しておる。問題は消費者物価上昇だとして、限定的に物価問題を考えられておりまして、しかも消費者物価上昇につきましては、それは生産性の上がらない部門賃金上昇の反映であって、成長経済のもとでの必然的な部分的現象であるとしまして意に解せず、高度成長に基づく生産性の増大が完成されたとき物価は下落するというオプティミスティックな、無政策主義に貫かれておるように思います。言うならば下村理論の勇敢な実践者である。こうした池田さんの強気的な立場に対しまして、これは客観的にはどうも事態が怪しくなってきておるわけです。池田さんの成長政策は結局国際収支の面と物価騰貴の面において崩壊されようとしておると私どもは判断いたしておるわけであります。これは池田さんにお聞きしなければならない点ですが、具体的にはそうした二つ要素に大きな蹉跌が出ておるということは、次のような数字から明瞭なんです。国際収支は三十六年度末におきまして、借金のおかげで資本取引を含めた総合収支では三億七千四百万ドルの赤字にとどめ得ましたが、経常収支では十億ドルの大幅な赤字となっておるということ。そしてしかも黒字基調への変転の気配は今のところはないと私どもは判断いたしておるわけです。そういうことから、政府金看板的な政策目標であるところの今秋の国際収支均衡はだれの日にも達成不可能と映じておると思うのです。そこで、強力なデフレ政策政策転換をするならいざ知らず、それもせずというならば、今秋の国際収支均衡目標達成という金看板中身がわれわれは疑問になってきます。ですから、これは総理にお聞きしなければならぬことですけれども総理のお気持の中には、木村禧八郎氏の質問に対するお答えの中で、デフレ政策はとらぬ。しかも達成すべき目標をずらすというような政策は今すぐとるべきではないというお答えの裏を見ますと、結局総理の言われる均衡というのは、資本取引を含めた国際収支での均衡であるのか、それとも経常収支での均衡達成なのであるか、この点を明確にしなければならぬと思うのです。資本取引を含めた総合収支での均衡ということであるならば、これは外国からの借金ということでバランス・シートを合わせることはできる。ところが経常収支での均衡達成ということは、われわれ国民がみんな危ぶんでいるところであります。目標措定において両者の間には月とスッポンほどの差があるわけなんです。国民とすれば、常識的に経常収支均衡、すなわち輸出入貿易外収支との合算での均衡池田経済政策の成果として期待しておるわけなんです。ところがもし資本取引を含めた総合収支での均衡だということであるならば、これは一種のペテンであると私は考えておるわけなんです。  そこで藤山さんは、国民、われわれの常識通り、これは経常収支における均衡だということを正直に考えておられるから、とてもこれはできた相談ではないのだということをおっしゃっておられます。池田さんがおれば、いやそれはそうじゃなしに、資本収支も含めてものを言っているのだということが明らかになるかもしれぬのですが、少なくとも国民とかわれわれの常識考え経常収支均衡というものは、とても秋までに回復するものではないと思うのですが、あなたのこの間の参議院でのお答えの趣旨も、当然この経常収支における均衡ということであろうと思うのですが、念のためにその辺の点も明らかにしていただきたいのです。  なお、あなた自身総理から、なに、この均衡論はやはり資本取引を含めた総合収支ということで考えているのだというようなことを仰せられたことがあるかどうか、その辺のところをお示しをいただきたいと思うのです。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般三十七年度の経済見通しを立てましたときに、輸出四十七億ドル、輸入四十八億ドル、そうしてそれが年間一億ドルの差でいく、しかし十一月には均衡を達成する、しかし年間では一億ドルの赤になる。これが当時の努力目標であったわけでありまして、従って、輸出入通常貿易収支目標として私どもはそれを策定いたしたのでございます。またそれが達成できませんければ、国際信用の上で借金政策をやるという場合におきましても、必ずしも十分じゃないという点が考えられやしないかということも心配いたしておったわけでございます。ところが三十六年度の結果というものが数字に現われたところを見ますと、著しく食い違いをいたしました。その点については、私自身が、一応の努力目標にいたしましても、努力目標を立てたのでありますから、その食い違いについては十分責任を感じておるのでございますが、それらの食い違いの上に立って考えて参りますと、十一月通常貿易黒字年間一億ドルの赤字経常収支を済ますということは非常に困難でなければならないというふうに今考えております。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 藤山さんのお答えは明瞭であります。ここに総理がおられませんが、私は、総理均衡論、実は資本収支を含めて、伏線的にいろいろの悟り入れの施策を講じて、そうして均衡するのだということではないのかということを思っておるわけです。普通の事業会社において複式簿記の資産はイコール資本と負債ということで、そういう均衡を国の経済の場合においてそのまま当てはめようとすること自体があまり健全ではないと思うのです。そのことはおきまして、藤山さんは、高度成長政策なるものが国際収支物価問題を無視し、ないしは軽視して国民経済的に存在し得るのかどうか、この点はどうお思いでございましょうか。私が特に国民経済的と申し上げたのは、高度成長政策特定階層に奉仕する跛行的な政策ではなくて、文字通り国民経済高度成長を目ざすものとするならば、物価問題あるいは国際収支の問題を無視してかかることは許されないと思うのでありますが、この基本的な問題提起の仕方なんです。あなたは、私の言う国民経済的な高度成長政策物価問題と国際収支を無視して存在すると思うのかどうか、この点につきまして御見解を御披瀝願います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経済が高度に成長いたしますことが望ましいこと、これは申し分ないわけでございますけれども、それぞれの国におきましてその置かれております経済状況で限度があると私は思うのです。たとえば日本の工業を成長さしていくという場合に、一つ限界がございます。と申しますのは、かりにごく単純な例で申しますれば、日本は鉄にしても綿花にしても石炭にしてもあるいは非鉄金属類にしても、多くのものを輸入して参らなければなりませんし、食糧、麦その他も輸入して参らなければならぬのであります。ここでたとえば百万円の輸入をして、そうして八十万円だけはその原料輸出に使って、かりに五割の加工賃をもうけるとすれば、百二十万円の金が入る。そうすれば百万円の代金の支払いを済まして二十万円だけは国内消費あるいは経済規模の拡大をはかっていくというのが正常な形であろうと思います。それが百万円の原料を入れて、かりに六十万円しかその原料輸出しない。加工賃を半分の三十万円もうけたとして、九十万円といえば十万円だけ外国に払う金が足りなくなる。そうすれば必ずしも国内消費——消費と申しましても個人消費設備投資その他を含めて申しておるのですが、そういう限界がくる。従って、外貨払い影響を及ぼす。従って、そのときにおきます経済状況から見てある程度の限界がある。その限界内でできるだけ成長をいたして参らなければならない。その状況のいかんによってはかなりな高度の成長ができ得る場合もありましょうし、あるいは非常な高度な成長ができない場合もあろうと思います。ここ数年非常な高度の成長を続けてきた結果として、今申し上げたような現象国内消費景気あるいは国内設備投資に非常に大きなウェートがかかりましたので、そのバランスが破れて今日のような貿易の上に一つ影響が出てきた。従って、数年来高度の成長を続けてきた、その場合には大して影響がなかったかもしれませんけれども、それが積み重なってきておりますような一昨年から昨年にかけての高度成長というものは行き過ぎであって、その結果がそこまで出てきたというふうに私は考えております。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 次にもう少し具体的なことをお伺いしたいのです。  三月の初めの物価安定総合対策中身が何であるかをお示し願いたいのです。この総合対策では日銀が主張しておるところの投資抑制政策、つまり全体としての有効需要削減政策ではなしに、各省のその所管とする問題につきまして個別的に物価の安定をはかろうとするものであると聞いております。たとえば通産省卸売物価には問題はない、問題は消費者物価であるという、従来の政府がとってきたと同じ見地に立ちまして、消費者物価上昇を抑制すること、つまり消費者物価上昇が、同業組合カルテル的行為によるものが多いところから、これを取り締まること、それから独占禁止法のこの部門での強化を要求しています。この反面におきまして大企業が比較的多い卸売物価については、従来まで生産性向上によってその価格が安定してきておるので、独禁法などは無用であり、この分野ではかえって自由化に対処するために、企業の合併とか価格の協定その他の行為が必要であり、独禁法の適用を緩和すべきであると主張している。これは公取委員会独禁法を全体として強化適用しようとするのと全く対照的であります。それからまた農林省は流通費引き下げを初め、公共料金引き下げを強く主張いたしておりまして、公共料金上昇やむなしとする従来の政府見解あるいは通産省物価対策と正反対な主張をいたしております。結局名前は総合政策でもその実は個別的であり、個々ばらばらのものの総合であるにすぎないと私ども考えておりますが、経企長官はこれをいかに把握し、有機的関連においていかなる方途を講じようとなさっておるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この消費者物価の問題でございますが、過度成長が行なわれました結果として、私は基本的に消費者物価影響すべくいろいろな要素がそこに出たと思います。従って、物価水準というものをやはりある程度押えて参ります上においては、現有の過程においては著しい高度の成長ということを基本的には押えて参らなければ、こういうひずみと申しますか、ゆがみと申しますか、物価の上に現われてくる、それが昨年著しく現実に出て参ったと考えておるのでございます。たとえば労働賃金関係におきましても、急激な過度の膨張の結果として、求人求職というようなものの上にアンバランスが起きたのであります。従って中小企業人手不足だというような面も起こります。急激な賃金上昇ということもあわせて考えなけばならぬ。そういう面から見まして、消費者物価に直接の影響をもたらしていたわけでございます。また輸送関係その他につきましても、過度成長の結果として輸送力の非常なアンバランスが起きた。でありますから、基本的には、過度成長がそういう面を起こしている個々物価対策になりますと、ある場合には天候による需給対策の変調、集中豪雨のあった後の野菜が高くなるというような側々の問題、あるいは農村におきます流通機構の整備といったようなものも、これは個々対策を立てることによって、私はその時自体解決することはできると思います。やはり物価水準そのものを全体として考えた上においては、現在起こっております状況というものは、非常に過度成長に原因があると考える。それを安定的成長に切りかえることによって——しかしその中で手は打って参らなければなりませんけれども、やはり必要な手は打ちながら、そういう状況に持って参らなければ、全体の水準を安定させ、あるいは安定させた水準を全体としてできるだけ維持していく、あるいはさらに望ましいことはこれを下降させることでございますが、それは非常に困難だ、かように考えております。
  11. 平岡忠次郎

    平岡委員 結局景気調整の現段階に対処するために、各省考えているような行政指導だけではなまぬるいということ、当然政策強化を必要とするというお考えのようであります。私も当然かくあるべきだと思っております。その点はあとからまた触れることにいたしますが、もう一つ、今まで政府といたしましては物価問題は消費者物価に限定して考えていますけれども、置き去りにされている卸売物価、そうした点の掘り下げが必要ではないかと私は考えます。  そこでこの際お尋ねをしてみたいのですが、政府は秋の九〇%の自由化に対処するために独占価格管理価格についてはむろんのこと、卸売物価現状維持を是認する立場にはないと思っております。生産性向上に見合って卸売物価水準が下がって、ひいては消費者物価を下げ、国際競争価格が出なければ、成長政策そのもの終局的目標が達成せられるわけはないはずであります。消費者物価論と同じウェートで現在の卸売物価が検討されなければならないはずだと思います。  そこで、まずお伺いしたいのは、卸売物価昭和二十七年以降長期的に安定していた理由は何であるか、これにつきましてお答えいただきたい。長期的に安定していたがために、政府問題外に置いたものではありますけれども、では何がゆえにこの長期安定が可能であったか、そのことを解明する必要があると思います。問題はその辺に伏在している事柄が大いにあると思うのです。この二十七年以降安定しておったというのはどういうことかを一つ御所見を承りたいのであります。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 過去におきます卸売物価の比較的安定しておりましたことは、いろいろな耐久消費財だけとは私は申しかねると思いますが、しかしやはり耐久消費財等につきましては、生産力の拡充がある程度行なわれて、生産数量も増大いたしております。それから一面において技術的な革新も行なわれた、また大きなオートメーション化も行なわれ、また労働者諸君の生産性向上してきたというようなことによりまして、一応卸売物価が著しく高騰するということが避けられたと思います。今後の情勢からいって、それじゃそういう状況が続いていくか、続いていくことは望ましいことでありますが、続いていくかといいますれば、やはり過度成長をいたしますれば、私は卸売物価にも影響が出てくるのじゃないかということを心配はいたします。しかし現状においてまだそこまでいっておりませんので、消費者物価に対する影響が非常に大きくはまだ出てきてないということなんでございますから、従って現状においてこれを安定させていくことが必要だろうと思います。一方におきましては、公共料金等につきましても一定期間かなり据え置かれたものもございます。そういうことがやはり卸売物価の安定にも相当な効果を上げたと思います。ただ今日におきまして、今の高度成長のひずみが非常に出てきておりますので、そういう面から見て、私から申せば、やはりそのひずみだけは直していかなければならぬだろう。しかし直した上では、物価水準全体としてそれを維持しあるいは下げるような方向に持っていかなければならぬのではないか、その点については卸売物価等についても同じことが言えるのじゃないか、私はこういうふうに思っております。
  13. 平岡忠次郎

    平岡委員 今のお答えはきわめて常識的なことであります。今までの安定を是認しておられる。ただし、卸売物価もこの一月以降二月の中旬にかけまして少し反発気勢がきたから、これは警戒しなければならぬという御説であろうと思いますが、私はそういう御解釈より前の事柄として、やはり注目しなければならぬことがあると思うのです。長期的に二十七年以降日本卸売物価が安定しているということは、実は日本卸売物価が国際的に見てすでに上昇をとり得ないほど高水準にあったのではないかという疑問があります。と申しますのは、朝鮮動乱によりまして、欧米各国は一割ないし二割の卸売物価上昇を見たにすぎなかったのでありますが、わが国におきましては七割の高騰を見たわけでありまして、二十七年にやや下落したとはいうものの、朝鮮動乱の前に比べて卸売物価はなお六割の騰貴を示しておったわけであります。政府のいう二十七年以降の卸売物価の安定は結局高水準の安定であって、これが可能となったのは、一つには為替管理によって国際競争を人為的に遮断したためであったわけでありまして、為替管理を解きました三十六年の半ばごろから日本輸出競争力が急速に悪化したことは、この辺の事情を物語っておると私は判断いたしておるのであります。従いまして、十一月以降自由化率九〇%となる場合におきましては、国際競争力の大減退が見込まれるのではないかということであります。ですから、卸売物価水準維持ということは、裏返して言うならば、国際競争力の総体的減少を政府が是認している態度にほかならないと思っておるのであります。物価論は消費者物価論に終始すべきではなく、国際競争という観点から、特に九〇%の自由化を控えまして、卸売物価について政府の責任ある解明を今なす段階にあろうと私は考えております。御所見を承われば幸いだと思います。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 卸売物価が、いわゆる為替管理その他貿易自由化ということが問題になっておらぬような状況下に、ある程度競争力がないと申しますか、そういう関係でもって維持されてきておるということも、これは言えると思います。しかし今日までの卸売物価の維持というものは、ある程度やはり日本の生産活動が活発になって、そして特に耐久消費財等の問題については生産の合理化、生産活動の旺盛、生産性向上というようなものにささえられていたこともまた事実でございます。そこで問題は、卸売物価が安定していればいいのじゃないかということにのみとらわれますと、いわゆる消費者物価の問題がないがしろになるわけでございまして、卸売物価全体の水準を下げますことはむろん必要でございますし、あるいは卸売物価の安定ということだけに関心を持って参ると、結果は他の面に出て参ることもあるわけでございます。そういう意味からいいまして、卸売物価の問題を決して軽視をいたすわけではございませんけれども、何か卸売物価が安定さえしていればもう物価問題は解決したのだという一面もございますので、私としてはやはりそういう意味からいいまして、卸売物価と同時に消費者物価の問題をもう少し考えなければならぬと思います。特に日本の場合におきましては、御承知の通り外国と違いまして、社会保障制度その他必ずしもまだ完璧ではございません。従って、消費者物価の高騰自体国民大衆に与えます影響というものは、外国におきます消費者物価の高騰よりもよけいに影響が現われてくる階層が出て参ると思うのであります。そういう面を考えますと、やはり卸売物価の安定ということも必要でございますが、同時に消費者物価の問題もあわせ考えて参らなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 平岡忠次郎

    平岡委員 次に、金利政策についてお伺いしたいのでありますが、昨春来金利政策が、私どもに言わせますと証券業界などから制約されまして、弾力性を失って、政治的に過ぎたきらいがあるわけであります。預金金利引き下げを含む金利政策の是正の必要があると思うが、どういうものでしょうか。あなたの御所見は大体わかっておりますけれども、その点につきまして特にこの際明確にお示しいただければ幸いであります。私自身も、インフレ抑制の景気対策として金利政策が有効なものと考えておる一人であります。経済の安定成長をはかるきめ手は、財政と金融政策二つがあります。そこで、その金融政策の中心が金利政策にあることは間違いのないことと思っております。当面の物価政策、ひいては国際収支の重要課題も、金利政策を無視して完全なものとは言えないと思っておりますが、その辺どうお考えでございましょうか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の産業の国際競争力をつけていくという場合に、いろいろな問題が伏在しておるわけでございますが、産業自体を合理化してオートメーション化する、あるいは機械化する、そうして生産の設備の更新をして能率を上げていく、また一方では、労働者諸君が生産性向上させていくということによってコストも下がっていくという状況とあわせ考えますと、そうして低コストになって参ります場合に、国際競争力をさらに強めるために何が必要かといえば、低金利であることはもう申すまでもないことであります。国際水準に近い金利に日本国内の金利がなりますことが望ましいことでございます。ただそれでは日本の金利そのものが、あるいは金融全体が、過去において正常化いたしておったかといいますと、私はいたしておらなかったのではないかと思います。いわゆるオーバーローンの問題も石橋内閣当時にもずいぶん議論がございました。解消の方法等についていろいろな問題も論議されましたが、その後はそういう問題も論議されませんし、オーバーローンその他の問題も現にございます。いろいろな意味において金融界そのものが正常化しておらないと思います。そして日本のそういう状況において必ずしも資本の蓄積が——これは個人及び会社を含めてでございますが、法人を含めて資本の蓄積が必ずしも十分でない。従って、金利が国際水準に達するということは、やはりそういう金融界の正常化によっておのずから資本の蓄積ができて、自然的に国際水準に達するような金利になるような方策をとって参って金利が下がることが望ましいことでございます。これはどうしてもそういうふうに持って参らなければならぬと思いますが、先ほど申しましたような、必ずしもそういう正常の状態にない場合に、しいて低金利政策をとりますことは、金融の上に混乱を起こす、そうして低金利政策そのものは景気刺激の一つ要素でございまして、やはり不景気になれば金利を下げる、あるいは公定歩合を下げる、あるいは景気が過熱をすれば公定歩合を上げるという一つの金利操作をすることによって、自由主義経済の中では操作をすることが必要なわけでございます。従って、低金利政策そのものはかなり景気を刺激するものだと思います。従って、金融界が正常化しておりません場合に、しいて——国際水準に達するのは望ましいことではありますが、その条件のそろっていないときに無理に低金利にするようなことをとりますことは、必ずしも適当ではないというふうに考えるのでありまして、そういう点について、われわれも一ぷん反省をしてみなければならぬ、こう思っております。
  17. 平岡忠次郎

    平岡委員 おっしゃることは、国際金利水準へのさや寄せの議論は、傾向的指標としては、抽象的な議論はまさにその通りであるけれども、ただし景気行き過ぎをあおる資金需要その他の段階において金利を上げて抑制することが最も合理的な対策だと思うという御趣旨であろうと思います。私どももさように考えております。ですからこの際は、日銀に不当なブレーキをかけずに、自由潤達にこの金利操作を行なわしめることが、政府にとっての義務だとすら私は考えるのであります。池田首相のにらみで山際さんがすくんでおるようなことは、日本経済の真の発展のために喜ばしいことではないと思っております。むしろ公定歩合操作ですね。この引き上げというようなことは、現在のごとき景気過多の状態において発動されないことの方がおかしいと思っておるわけであります。大義名分は国際金利水準へのさや寄せということですが、それでは国民はだれも納得はしないと考えるものであります。特にその理由といたしまして、昨年の一月国際収支の悪化の徴候が出たときに、わけのわからない公定歩合の一厘の引き下げを政治的に行なったきらいがある。株価の人為的な露骨な引き上げ政策として、いまだ記憶の新しいところであります。その当時の金利政策が続きまして、昨年七月、九月のしぶしぶ引き上げの経過にかんがみまして、池田さんの金利政策国民経済全体を考えてやっているのではないんじゃないか、どんずばりで言うとこれは兜町向けの金利政策ではないかと勘ぐられるほどおかしなかじとりをやっているように私どもは思えてなりません。公定歩合操作は、もう日銀の自主性にまかしておくべきであると考えます。ケインズ流に言うならば、これは政府にすべて責任があるんだから、財政ばかりではなしに金融それ自体政府の所管のもとに置くんだという議論が一つあります。これも一つの行き方かもしれぬけれども、どうもそういうケインズ理論を少し悪用し過ぎてはいまいかと思うのです。これと対照的なのは、西独におきまして、財政、金融はおのずから別個の使命と性格があるんだということで押し通して、そしてチェック・アンド・バランスによって上手な運用をしておる事例が現実にあるわけであります。そういうことを抜きにして、ケインズ流ですべて政府が買って出ているんだというようなそういう名分の立て方で、その実何をやっているかわからぬような金融政策金利政策は、国民にとって迷惑しごくだと考えざるを得ません。英国の例を見ますというと、昨年七月に国際収支危機に直面いたしまして、日歩にして五厘五毛、年利二%ですから五厘五毛の大幅引き上げを行なっております。その効果がてきめんに現われましたので、十月、十一月、それからことしの三月にかけまして引き下げを行ない、もとの五%に戻しております。日本は公定歩合を、先ほど申したように昨年の七月に一厘、九月に一厘と小刻みに上げましたが、まだ日本経済の病状がはっきりしないのに、この有効な良薬である金利政策を忘れまして、そうして日銀窓口規制を主とする資金量の規制とか、また佐藤大臣がおられますが、通産行政面から新規設備投資を認めないとか、それから業種別の設備や生産の調整、その他主として行政指導による景気調整を打ち出しておるわけでありますが、こうしたいわゆる金利政策、公定歩合操作というものの裏づけのないやり方というものは、部分的な手術としては是認されるかもしれませんが、しょせんは、公定歩合操作というようなことになれば、漸進的な薬の効果というものが現われますけれども、そういうことをなぜかきらって、そうして何というのですか統制的な手術を部分々々にそれぞれ勝手なところに適用しているということで、先ほど申したような総合物価対策はまるで個々ばらばらな形になっている、こういう事態は決して望ましいことではないと思っております。私は、池田首相自身だってこれはもうわかっていることだと思うんですね、実際は。だけれども、わかっちゃいるけどやめられないというようなことで、そういうスポンサー筋の変なものがつくわけですね。そういう点はどうも総理としては大いに反省してもらわなければならぬと思うのです。総理がおらぬのですからたなおろしはこのくらいにいたしますけれども……。  そこでここに佐藤通産大臣がおられますので、行司役的に一つお答えいただきたいと思います。ただし佐藤通産相は、どういう思惑か推しはかれないわけですが、二十六日の経済閣僚懇談会後の記者会見で、金融機関の足並みが乱れており、政府が関与せざるを得ないと統制的な意図を表明されております。それから設備投資の急増原因を低金利政策によるものとの意見は、金利の機能を過大に評価したものであるから、これはとらないとおっしゃっておられますが、あなたはほんとうに日本経済の現段階の危機におきまして、金利引き上げによる景気抑制の必要を認めておらないのでありますか。一つ御所見を承りたいのであります。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお尋ねがございましたのでお答えをいたしたいと思いますが、御承知のように今の経済段階は非常に微妙な段階に来ております。むしろ非常に困難な状況ではないかと思います。先ほど来金融機関のお話が出ておりますが、金融機関のあり方というものは、これはもう大蔵省あるいは日本銀行がその関連において考えられてしかるべきものでございますが、私の忌憚のない批判を許していただくなら、金融機関もやはり一つの産業としてお互いに競争しておりますから、その競争の関係が現在のような微妙な経済情勢に対処するのには必ずしも適当でない、こういう意見を率直に私は表明したことがございます。新聞記事に書いてある通り、通産大臣が金融機関を統制するとか、そういうことはできることではございません。金融機関自身がみずからの姿を正しくするこが望ましい。ちょうど金曜日でもありましたが、全国銀行協会長がかわられたのであいさつに見えましたが、宇佐美新会長にもそういう話はいたしました。銀行自身もそういう意味で十分注意するというような気持があるように見受けた次第でございます。  第二の問題は、金利の問題について、これを設備投資にすぐ結びつけて云々したことはございません。これは新聞記事があるいは私の意思をそのままに伝えておるものとは私は考えません。設備投資の抑制の問題にいたしましても、いわゆる役所でこれを抑制するという——これは一つの軌道といいますか、一つの方向を示し、業界の自主的な協力をお願いする、そういう意味におきまして各産業界別にそれぞれあっせんし、またお話し合いを続けております。大体私ども考えるような方向に資金量の見当をつけつつあるというのが実情でございます。  それじゃ金利そのものがどういう影響になるか、ただいま企画庁長官がお答えになりましたように、ただいまの設備投資が、たとえば貿易自由化、こういうような意味で進められる、そのためにおくれをとらない、こういうことでございますなら、これはもう原則的な意味においても国際金利水準にさや寄せするといいますが、そういう形が望ましいことだと思います。ただ今の過熱の状況から見まして、金利を左右することによって実際にこれにさらにブレーキをかけるかどうか、これは理論だけの問題じゃなしに、十分一つ検討しないと、影響するところが非常に大きい、そういう意味で現段階においての処置としての慎重さというものは必要じゃないか。これはもちろんやらないとかやるとか、かような結論を出すこと自身について慎重であるべきだと思います。これは私の個人の意見でございます。  御承知のようにただいま製品在庫も相当ふえておりますから、そういうことを考えると、なかなか金利の問題は簡単に結論を出しにくい。しかしながら当然十分検討すべき問題である、これは間違いないことであります。ただ右にするか左にするか、いきなり簡単にはやれない、こういう考え方でございます。
  19. 平岡忠次郎

    平岡委員 通産大臣の立場においてのお答えならそれでけっこうですが、私がお聞きしたがったことは、近ごろ薬の広告でございますが、何ですか「クシャミ三回ルル三錠」とか、大体金利操作、公定歩合操作というものは、これはそういう兆候が出たらすぐ対処すべきであると思うのです。ところが何か弾力性を失ってしまって、池田さんがおるうちはとても公定歩合を引き上げるなんということは絶対ないだろうと思われるほど固定的に考え過ぎていはせぬのですか。そういう今までの池田さんを初め政府のとっておられる公定歩合操作に対する憶病なというか、そういうことはどうも工合が悪いのじゃないかと思うのです。そういうことでもっとおおらかに弾力性を持って処置さるべきだと思うのです。しかも政府はそれにあまり介入してはいかぬのじゃないか。英蘭銀行なんか公定歩合を引き上げたときには、前に議論なんかしていません。上がるであろうあるいは下がるであろうというような議論は、政府筋において、各閣僚がそういうようなことを発表することはとても考えられないことです。結果だけ、しかも理由を付しております。これはこれで昨日十二時を期して公定歩合一厘を引き下げましたということを結果として報告しているだけです。それで理由もつけてあります。そういうようにやはり音もなくそういう経済の悪兆候に対して規制する処置として、ひそかにしかも決断を持ってやっておるわけです。しかし年間に公定歩合の操作の数は、西独にしましても、イギリスにしましても、この数年来の平均にやはり三回を下っておらぬのです。三回か四回、きわめてイージー・ゴーイングに——イージー・ゴーイングというと逆説的ですけれども、行なわれております。やはりそうした態度は日本としてもとるべきだと思うのです。日本政府としてもそれで不当に日銀に介入したりなんかしないような、そういうことこそ政府のとるべき義務だと思っております。そういう意味でお伺いしたのですから、通産大臣的感覚でなしに、経済のかなめにある大御所として、そうした金融政策についての御配慮をお願いしておきたいと思うのであります。  話は少し理に陥りましたけれども、実は池田首相がきのう子供の日で子供と対談しておりました。きっと何か考えるところがあったのだと思うのです。子供のことですから直感的に問題を把握しておりまして、純真な子供の目に映った政府のやり口、そうした点に対して池田首相が、何回でもこういう機会を持ちたいと言われているそうですから感銘するところがあったと思うのです。  実は私の最近の体験で、これは政府筋特に池田さんに対しましてはきわめて都合の悪い皮肉を与え子供から受け取りました。これも国民政府をどんなふうに見ておるかという材料にはなると思うので、一つ御披露しておきたいと思うのです。  昨年の秋のことであります。私が近所を散歩しておりますと、カメにあらず一匹の子犬をまん中にはさみまして、悪童三人が盛んに議論いたしておるのであります。聞きますというと、その子犬がシェパードの子でありまして、三人ともほしくてたまらない。見つけた者順もだめということになった。じゃんけんもだめということになった。そこで、だれがもらうかをうそ比べできめようというのだそうであります。  そこで私は、とんでもない、うそ比べなんかしてはいけない、そんなことをするやつがあるか、うそをつく者はろくなことにならぬぞということでたしなめました。池田首相をごらんなさい、池田はうそを申しませんと言っているではないかと言い聞かせたわけであります。ところが驚いたことには、異口同音に三人が、じゃあこの子犬は池田総理大臣のものだ、とても総理にはかなわない、おじさん国会に行っているのだから総理大臣にこれを持っていって下さい、こういうわけです。これは私も驚きましたが、まさかそんな失礼なことを取り次ぐわけにはいきませんので、とどのつまり私がもらうことになりました。といって、私が一番のうそつきの適格者だということを意味するわけではないのであります。  この犬に後日談があるわけであります。最初これは一キロくらいのちっぽけなものでしたが、またたく間に十三キロくらいに——何かの数字にあったようですが、成長したわけです。ほんとうにまたたく間に成長いたしました。まさに高度成長であります。ところで、気がついたことは、びっこを引き始めたのであります。どの足が悪いというのではなしに、言うなれば全体の四肢がすくんでしまって、何か歩行困難になったのであります。人に聞きますと、くる病だそうです。シェパードには往々ありがちな病気だそうであります。結局あまりに成長が早いので、カルシウム分が不足して、そして成長に呼応するところの食事を当然考えてやらなければならなかったわけなんです。それから、鳥の頭だとか、牛の骨とか、それから値上がりをした豚の臓物などをあてがいまして、動物愛護の精神に徹しまして供給これ努めた結果、やっとくる病の危機を脱して、あしなえにはならずに済んだわけであります。この犬は劣性遺伝のものであったらしく、そのために捨てられたと思うのです。シェパードの子はやはりシェパードでありまして、大きくなるにつれまして、耳もぴんと立ってきたし、目も鋭く、肩の張り等も出てきたわけであります。まことに堂々としておるのですが、しかしびっこの方はまだ必ずしもいえておらぬのでありまして、犬の品評会に出して一等を取るなんということはとても思いも及ばぬものであります。結局りっぱな犬というものは、すべて均衡のとれた成長をし、発育をしていなければ本物でないということをつくづく痛感したわけであります。  政府の信念ともなっておるところの、池田総理の信念ともなっておるところの高度成長が、耳だけがびんと立ち、目が鋭く、肩ばかりががんじょうに見えるというだけでは、国民経済としては落第だというふうな感じをどうしてもぬぐうわけにはいきません。国民自身は過去二回の経済の起伏において、えらい経験を実際皮膚をもって体験したわけでありまして、そのつど経済政策のあなた方の閣僚間の議論がどうあろうと、しょせんは、神武景気にしろあるいは岩戸景気にしろ、国民大衆からは無縁のものであったということ、この点はやはり大いに反省していただかなければならぬと思うのです。ですから、藤山さんがかなり率直に政府自身政策に対しまして批判的態度に立ってきたということは、それはちっぽけな閣内の統一を乱すとかそういうことではなしに、国民的な一つの規模において国民のための政治をするという意味において、そういう純真な立ち上がりということであるならば、私は非常にけっこうだと思います。ただ先ほど申したように、池田さんそれ自身も、過去二回の、蔵相をやめたり、中小企業の一人や二人云々の言葉を残されたあの苦い経験は、実はおれに対する非難には値しないのだ、今度こそはそういうことの顧念なしに、あのときは失敗でないのだから、その失敗でないことを実証してみせるという、そういう気持で取り組んでおられるということであるわけなんで、確かにそういう立場もあろうと思うのです。  きょうはじっくりその点につきましてよくお聞きをし、その陰影を作ることによって池田さんの所説自身を浮き彫りにしてみるということで、国民関心事である当面の経済政策というものに対して、政府自体立場がどうであるかということをぜひお聞きしたかったわけです。ところがかけ違いまして、池田さんここにまだお見えになっておりません。そういうわけで、あとに同僚委員が控えておりますので、私はこの程度でやめますが、万機公論に決して大いに閣内で議論をしていただく、そういうことを大いにやっていただきたいと思うのであります。  以上をもちまして私の質問を終わることにいたします。
  20. 小川平二

    小川委員長 堀昌雄君。
  21. 堀昌雄

    ○堀委員 今金融問題その他でいろいろと藤山長官お答えを願って、同感なところが多いわけですが、問題を少ししぼって考えてみたいと思います。  経済見通しの問題でございますけれども、これは私この前も予算委員会の分科会でも長官に伺いました、それから一般質問のときにも伺いましたけれども、どうも私の予想通り生産はなかなか下がりません。設備投資は三兆七千五百億とおっしゃっておったものが、どうやら四兆に近くなっておるのではないかというような感じがいたします。そこでこの設備投資がこのように高い原因ですね。この前佐藤通産大臣は、生産の面には問題があるが、しかし在庫率等もだんだんふえてきておるから、その面で早晩下がるだろうというようなお答えもありました。しかし実はどうもなかなか下がらない。  最初に、これはちょっと事務当局にお伺いいたしておきますが、四月の発電端の電力量大体わかったと思いますが、それを推計してみると大体どのくらいになりますか。四月は三月横ばいか、少し弱含みくらいではないかと私は思いますが、その点をちょっと先にお伺いします。
  22. 中野正一

    ○中野(正)政府委員 お答え申し上げます。  四月の鉱工業生産がどの程度になっておるか、これは二十日過ぎでないと実ははっきりした数字通産省から発表されませんが、一応四月の電力消費量は数字が出ております。これで見ますと、四月の電力消費量は三月に比べまして九四・八というふうになっております。昨年度の四月が三月に対してどうだったかと言いますと、一〇九・四でございます。季節的に見ますと四月は対前月で大体上昇するというのが普通なのでございますが、本年度は逆に九四・八というふうに下がっておる。これから見ますと、だいぶ生産は下がっていくのではないだろうかというふうに考えております。ただこれは季節的な修正の問題がございまして、通産省でも実はできるだけ新しい実績に基づきまして季節修正値を作りまして今月から二つ数字を発表しておりますが、これを一応一、二、三月という電力消費量と鉱工業生産の関係がどうなっておるかということを御参考のために申し上げますと、一月は一年前の一月に比べまして電力が十三・一%上がっております。生産の方は一九・五%上がっております。それから二月は、電力の方は一年前に比べて一二・五%上がっております。それに対して鉱工業生産の方は一七・五%上がっております。それから三月は、電力は一年前に比べて一一・三%上がっております。鉱工業生産の方は一六・三%上がっております。この関係はちょうど電力の消費量と鉱工業生産の水準とが、弾性値が〇・七になっておるわけでございまして、この弾性値をそのまま使うのがいいかどうかは非常に問題でございますが、かりに今の段階でほかに推定のしようがございませんので、鉱工業生産と電力の伸びの弾性値を〇・七というふうに置いて考えてみますと、四月の鉱工業生産は先ほど言いましたように、電力の方が一年前に比べて三・一%上がっておる。そうすると生産の方は一年前の四月に比べて〇・七で計算しますと、四・三%くらいしか上がらないのじゃないか、こういう数字になりまして、これで見ますと、相当これは生産が下がっておるのじゃないかというふうな数字が出ております。ただこれはまだ通産省の方から正式に発表されたものではございませんので、四月は季節修正したところで相当程度下がるのじゃないかというふうにわれわれは考えております。
  23. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話で、私が見ております指数で見ると、もう少し発電端の電力消費総合損出率で引いて、前年度の状態をずっと並べてみた感じでは、私は需用電力で見ると九七・八%くらい前月比で下がってはおりますが、そのくらいですからそう大して下がっていないのじゃないか、これは五月二十五日ころになればわかると思いますけれども、そういう感じがいたします。そこで、この際一番問題になっております点は、一体鉱工業生産がなぜ下がらないのかということの原因だと思います。在庫率はすでに一〇九くらいにきておりますから、これまでの去年の九月からの在庫率の上昇率というのは大体四・二五%くらいでありますから、これでいけば過去におけるピーク、昭和二十七年、三十二年のピークくらいになるのも、このままでいけば二月の在庫率ですから、三月、四月で、おおむね四月ころは過去におけるピークと同じところにくる。大体ここらでそろそろ下がるだろうということはいろいろな状態から見て感じられますけれども、しかしその下がり方が今後やはり問題があるのじゃないか。  そこで、通産大臣は十五分ころにお出かけのようでありますから、ちょっと先に伺っておきたいのですが、この鉱工業生産はなかなか下げようたってこれは行政指導では下がらないと思います。下がるべきものでもないでありましょう。しかしこれが下がらないと、設備投資はやはり依然として高い水準になるのではないか。私、新聞で拝見したところでは、通産大臣は通産省所管分の大きい分について、大体本年度は一兆五千百億に押えたい、こういうようなお言葉が出ておるようですが、昨年度が一兆五千六百億くらいだったと思います。しかしそれもずっと資料を拝見して見て、はたしてこれが一兆五千六百億であったのかどうか、ちょっと私は疑問だと思います。昨年度のいろいろ問題について、産業合理化審議会の資金部会へお出しになっておる資料を拝見してみたのですが、どうも二月にお取りになったいろいろな状況を見ても、はたして私はそれがその通り守られておるかどうかよくわかりませんので、通産大臣は去年の一兆五千六百億というものは守られたものと考えられておるか、どうか、それをちょっと先に伺っておきたい。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 守られたものとは実は考えられません。大体八百億くらいふえておるのじゃないかと思います。従いまして、ことしの一兆五千百億というのは支払いベースで考えておりますから、実際の工事量はいわゆる八百億を引いた額であります。相当きつい縮減をしないと一兆五千百億にはならない。ただいまの八百億かあるいは一千億前後になるか、それから考えましても少し引き締めの方はきつくなる、こういう状況であります。
  25. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、昨年すでに景気の過熱問題が論議をされて、あるいは通産省でもいろいろお調べになって、何回か、十一月にいろいろと調整をされたと思います。大蔵大臣は、大蔵省の十月の調査では大体八%下がったのだ、——これはあとで大蔵大臣に伺いますけれども、大蔵省がおとりになっておるこのとり方はよく私わかりません。大蔵省でおとりになった三十五年度の実績と、それから通産省での三十五年度の実績と比べて、三十五年度の実績が合わないのですから、カヴァリッジがどうなつておるかということのほかに、何%下がったとか下げたということだけは私よく国会で御報告を受けますが、実態はどんどん一方的に走っておるというふうな感じがしますので、一体そこへ持っていくためには、どうすれば持っていけるのか、一体金融でやるのか統制でやるのか、何でやるのかを通産大臣に伺いたい。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、私どもは統制経済をやっておりません。従いまして、ただいまの計画目標数字というものを実施するにあたりましては、財界といいますか、民間の協力、これは絶対必要でございます。従いまして、産業界自身並びに金融機関、その両者の協力がない限り、なかなか進んで参るわけのものではないのであります。今回も一兆五千百億という数字を一応検討いたしておりますが、これなども、各業界の出された数字についていろいろ実情を話をし、また業界自身の自主的な調整の結果その数字を押えてきておる。ただ問題は、しからば一兆五千百億については全部金融が完全につくのか、こういうことになると、いわゆる統制経済でございませんから、一応の目標数字だ、その意味においての金融機関の協力がなければならないということになるわけであります。先ほども平岡さんからいろいろお尋ねがございましたけれども、今の銀行自身がみんなオーバーローンである、また日銀から一次、二次の高率適用の金まで借りている、こういう実情、そのことをお含みの上で金融並びに産業界の協力という点を御了承いただきたいと思います。だから金利そのものにいたしましても、実質金利は相当動いているというのが現在の状況である。これまた念頭に置かれて結論を出していただきたい、かように思います。
  27. 堀昌雄

    ○堀委員 結論は私の方が出すのじゃなくて、通産大臣の方でお出しにならなければ物事は運ばないのじゃないかと思います。そこで、いろいろ言われておりますけれども、昨年度ですらこういう状態で、今度の要求額は一兆八千七百六十三億、これを一兆五千百億に縮めるということになると、この前ちょっと何かで拝見いたしましたが、たとえば鉄鋼については新規投資は一切認めないというくらいにしなければならないだろう、こういうことがお話にあったようであります。なるほど、それをしてもなおかつ一兆五千百億におさまるのかどうか、電力とかセメントはある程度やむを得ないだろうという状況もあるだろうと思います。そこで通産大臣御自身考えで、今いろいろ話し合いによってやるということを言っておりますが、話し合いによってはいっていないということが私はわかっただろうと思います。それは昨年度の例でわかります。一兆五千六百億というのが、おっしゃるように八百億なり——これは支払いベース、工事ベースで差はありますが相当ふえておる。昨年度も相当ふえておるのに、なおかつ今の一兆五千百億にはどうやってこれを押し込まれるのかがよくわからないのです。それのやり方をちょっと伺いたい、それだけです。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 各事業別にいろいろ相談をいたしまして、大体ただいま申し上げるように支払いベースで一兆五千百億、そういうところへ各産業別の話を詰めて参っておるわけであります。これは先ほど申しますように、工事額は先ほどもお話しのように、一兆五千百億をさらに下回るという結果が出る——各産業別にそれぞれの要望が出ておりますけれども、それを話し合いの上でそこまで圧縮を願っております。大体この数字は業界の了承した数字にただいままとまりつつあります。
  29. 堀昌雄

    ○堀委員 昨年の資料の関係で拝見して、電力からずっとほとんどの業種は減ったことに、実は通産省にお話が出ておりますが、電気機械だけは約一〇%ぐらい修正よりはふえておるわけですね。私はこれを見て痛感しましたのは、どうも電気事業界が一番正直だったのじゃないか。よそは、ふえているにもかかわらず、みんなふえておるものを減ったとして通産省に出しておる。ところが電気業界だけは、一〇%ふえたものをふえた形で出している。こういうことが現実にあるのです。私はそういう点で非常に感ずるのは、どうも今の状態はうそを言った方が得だとか、政府の言うことにさからった方が結果として企業は得だという実態が、どうも全体としてあるのじゃないか。そこで逆に私に言わせるなら、正直者にばかを見させないような政治をやっていかないと、今後政府の統計なんというものは、われわれ拝見してもあてにならないということになってくると思います。  そこで、電気の問題でも、かなりいろいろ問題があると思います。たとえば東芝あたりでも、最近新規投資をだいぶ要請しておる向きがあると私は感じておりますが、三菱その他に対しては相当な話し合いをされておりることになっておるにもかかわらず、東芝はどんどんまたやろうとする。あるいは鉄の問題にしたところで、住友金属はたしか世銀との借款の関係で、財務比率やら何かを変えなければならないというところへきていると思いますから、これは増資を認めなければならないだろうし、増資を認めることになれば、その分はやはり設備投資を認めてやることに結果としてはならざるを得ないのではないか。どうも、今通産大臣のおっしゃったように簡単な問題ではないような感じがしますけれども、そこら、正直者がばかを見る問題とあわせてちょっと……。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お説の通りなかなか足並みは揃いかねるということであります。その実情をつかむことが行政府としての当然の責任だ、かように実は思うわけであります。数回交渉を重ねてこないと、なかなか数字がおさまらない。そういう場合に、また一律に抑えるということも、事務的には、一番可能な方法で圧縮するなら、全部一割とかあるいは一割五分圧縮してその数字が出るということになるのでありますが、そういう方法はとりたくない。だから実際の実情に合うように、そこを話を詰めていく、非常にむずかしさがあるわけです。ことに会社の今日までの設備投資状況は、相当早いものというか進んだものもありますし、おくれたものもあります。すでに新聞等に出ております、同じ鉄鋼部門でも、たとえば鋼管だとかあるいは車軸などを作っておる住友なり日本鋼管は実績が十分なかった。だから過去の実績だけで今回の圧縮をしてもらっても困る、そういう実情に合うことを考えるということであります。また電力の問題になりますと、これは最近の産業拡大から見まして、非常に需要がふえております。そういうことを考えると、大体四十二年までは、年間通じて四千億ないし五千五百億程度、膨大な設備資金を必要とする。これは大蔵省とよく話をし、その設備資金の手当を考えてやらないと、いわゆる料金の問題に発展したり、ひいては一般物価影響する重大な結果を生じますので、必要な設備はやはり確保してやる、こういうことでなければならぬので、 ここらに、形式的なものでなしに、非常な行政上のむずかしさが実はあるわけであります。堀さんが今御指摘になりますように、業界自身も一案、二案、三案ぐらい、実際のところは持っておるようです。その一案、二案、三案というものをどうして私どもが引き出すか、その引き出し方が行政上の手腕の問題になるんじゃないか、こういうことでございますので、相当時間もかかりますが、よく話を詰めて、しかる上でその結論を出したいと思うのです。しかもこれは今日、製品在庫がふえているという産業だけについてとやかくも言えないものがありますし、将来の発展というものに対する今日からの基礎固めでありますから、非常に複雑なものだろう、これは御指摘の通りでございます。これを一つ克服をしてみる、ここに私どもの決意もある次第でございます。
  31. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に一言だけ、今の問題に関連してお伺いいたしますが、さっき通産大臣は、金利問題というのは確かに考えなければならない問題だ、ただ右するか左するかというのはもう少し慎重に考えたい、こういうお話でございました。私もそれはよくわかります。ただそこで、問題はこういうことになってくるんじゃないか。皆さんのこれまでおっしゃっておった、本年度の下期に国際収支均衡させるという前提がはっきりしておるならば、もう一、二カ月してなおかつ諸条件が整わざるときは、私はこれは統制でやるよりは、やはり金利で処理をされる方が財界は好むんじゃないか、こういう感じがするのです。ですから、今私はお答えを、右するか左するかは伺いません。しかしあと四、五、六月の変化というものによって、本年度の年度中に国際収支均衡するかどうかというのは、これは大体の見通しは立ってくると思います。そこで均衡しにくいというときには、それは均衡しなくていいんだ、とにかく金を借りて——池田さん流に、金を借りて問題を先にずらしてもいいのだということなのか、やはり均衡さすことが必要だということになるのか、必要だということになるならば、次は統制か金利問題ということに結果としてなってくると思いますが、そこらについてのお考えをお聞きしたい。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 結論的に申しますと、統制はしたくない、これはもうはっきりいたしております。経済の正常化ということですか、あるいは所得倍増計画とか経済拡大計画、これは、当然考えなければならないのは金融政策あるいは財政政策物価政策——賃金をも含めての物価政策、さらに貿易の拡大計画、そういうものをあわした総合的な観点に立たなければならぬ、これはもう申し上げるまでもないところであります。その一つだけの責任で処理がなかなかできるものじゃない。あるいは国内における消費節約の問題であるかというように、非常に複雑なものだと思います。ただいま御指摘になりました通り政府自身は年度内——年度内じゃなくて、正確に申せば本年末までに国際収支バランスをとりたい、こういうことを申しておりますが、その形の上から見ると、今の段階から見ればすでに私ども見通しとやや時期的なずれもある、これは指摘するまでもなくあるわけでございますから、そうすると、当初の数字自身も、あるいは国際収支均衡をとるという面から見れば、これは今のままに動いていけばある程度変えなければならないかもわかりません。しかしながら、御承知のようにただいま年度が始まったばかりでございます。従いまして今の、この四月の数字も出ない状況のもとに結論をどうするということは、これは実は早いんじゃないかと思います。しかし国際収支をできるだけ早目にバランスをとる、そういう政策総合的に立てて進めることが、やはり国の経済の健全性、同時に国際的信用を確保するゆえんだ、かように実は思います。そういう意味の努力をしていく必要がある。そういう場合に、統制経済をやらないで、政府が関与する範囲というものはおのずから限られるといたしますと、やはり大きな面は金融と財政の面ではないか、かように考えるわけであります。ただいままだ結論としてどうするというところまではいっておらない。ただいま申し上げるようなあらゆる要素総合的に十分検討して、しかるしでその結論を出すべきだ、かように思います。
  33. 堀昌雄

    ○堀委員 お約束の時間ですから、通産大臣けっこうです。  そこで、企画庁長官にお伺いをいたします。先ほどから企画庁長官がおっしゃる金利問題については、私どもはおっしゃる通りのことを昨年一月来言ってきましたけれども、実はそういっておりません。私はやはり社会主義者でありますけれども、資本主義というものが現状である中では、やはりここでは一つの自由競争がなければ、消費者大衆といいますか、国民大衆は決して資本主義社会で恵まれた条件にこないと思います。資本主義は資本主義らしくなければだめであります。そこで、私は何もその議論をするわけではございませんが、現状は確かに資本主義社会における中途半ぱな統制経済ということだと思います。そこで伺いたいのは、現状に対して金利政策を変えなければならぬ。変える部分はいろいろあると思います。長期金利の問題もあります。公定歩合の問題もあります。預金金利の問題もあります。これは全部を一つのセットとして見る場合もありましょうし、個々に問題を取り上げる場合もあると思います。その点について、当面はどういうところから金利は手をつけていくのがいいというふうにお考えになりましょうか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、まず今日の段階におきましては、やはり金融の正常化、資本蓄積ということが非常な急務じゃないかと思っております。これは長期にわたる問題にも関連いたしますけれども、やはり貯蓄を推進して参って、そうして金融の正常化をはかっていかなければならぬ。そこで、頭金金利の問題というのは、私はやはり非常に重要だと思います。そこで公定歩合の問題になりますと、これは今後、十一月に均衡するのか、あるいは若干その時期について別個な考え方でもっていくのか、そういう状況を見て、金利、公定歩合の効果を現実に現わすような問題として考えなければならぬ。私は預金金利と公定歩合と、すぐ直結して今言っておるわけではない。預金金利をいじります場合に、長期の各種の金利、これをやはり地ならしをしなければならぬ。単純に預金金利の引き上げということだけでは調整がとれないのではないか。従って、現状におきましても、たとえば預金金利でも特利という問題も大口預金者にはある。小口にはそれがない。貸出金利についても別に両建の問題もある。必ずしも金利そのものが正常化しておらぬと思います。やはり資本蓄積をいたしながら、その過程において、そういう全体のものを調整をし、平常化していくように持っていく、また社債、証券等の関係もございますから、それらのものとの調整もはかっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  35. 堀昌雄

    ○堀委員 実は最近の金融機関の状態をちょっと調べた資料をいただいてみたのですが、これで見ましても、全国銀行で見ると、個人でございますが、三十五年九月の決算期では前期増加率が八・三%あったものが、三十六年三月には七・六%に下がり、三十六年九月決算では五・五%に下がってきている。これは大蔵大臣は御自分の御所管ですからよくおわかりだと思うのです。これはあらゆる部分を調べてみましたが、最近になって個人預金が上がってきたという月はないのです。この三月決算もおそらく下がりつつあると私は思う。そうすると、これはやはり今おっしゃったように、預金金利というのはこの実勢から見たらこれは当然上がらなければならぬ、こういうふうに私も考えます。それから、さっき通産大臣は、今非常に微妙な段階で、在庫も非常に多くなっているので、ここで金利が上がることは影響きわめて甚大だ、こういうふうにおっしゃったんです。私もそう思いますが、ここに、池田さんや水田さんとそのほかの方の中に意見の食い違いがある感じがするのは、片方では金利の効果というものは大したことはないのだという議論が——水田さんもよくおっしゃるし、池田さんもそういう形の発言をしていらっしゃる。私はやはり、金利の効果があるかないかというのは、だんだんこういうような状態になってきたときにこそ金利の効果があるので、もっと非常に金融がゆるんでおるときには逆に金利の効果はない、そういうのが本来だと思います。だから急激なことをやれということを私は言うわけではありませんが、方向としては、現状での金利の効果というものは、各種の設備投資なり生産、そういう状態に直接相当に影響がある、こういうふうに判断をしますが、長官はどういうふうにお考えですか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 民間の産業人が設備投資をいたします場合に、金利負担というものを相当考慮に入れてやるわけでありまして、従って、新しい機械を購入しようという場合でも、それに対する資金の問題を考えないでいたすということはないと思います。ですから、金利というものは設備投資の意欲をある程度考慮されるということは当然のことでありまして、そういう意味において、長期にわたって国際金利水準にさや寄せすることはこれは望ましいことでありますが、現実の問題としてはやはり実情に即したような金利でなければ、政府の指導、勧奨だけではなかなか設備投資の抑制はできない、そういうものはやはりあわせて行われることが必要だ、こう考えております。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 その点は私も同感であります。  次に、今の問題の矛盾は、窓口規制をやることによって量的規制をやろうとしておる。このことは資金供給面を押えておるだけで、需要の側としてはこれは、コントロールが今おっしゃったようにないわけですから、供給面だけ押えて需要が拡大するということになれば、当然ここに私は矛盾が起きてくると思う。矛盾の一つの現われは、御承知の含み貸し出しが三千億をこえるようなものがある、あるいは最近大蔵省でやかましく言っていらっしゃる外資導入の問題、自由円を一つ取り入れることによって結局抜け穴を作ろうとしておる。いろいろな形で片方にひずみがあるからそれを調整しない限り結果としてもひずみが出てくる、こういうことになると思いますが、こういう今の含み貸し出しの問題、自由円等の短期外資を借り集める問題等はやはりそこに問題があるような感じがいたしますが、これに対して長官はどのようにお考えですか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日のような状態で窓口の指導というものも決して悪いことではないわけでありまして、私どもも窓口指導をやめるような考えは必ずしも持っておりません。ただ窓口指導から起こります欠点というものがあることは事実でありまして、たとえば系列融資というような銀行の問題を考えてみましても、窓口融資の規制によって系列融資をやめるということはなかなかむずかしいのではないか。むずかしいばかりでなくて、むしろ窓口規制があればそのことを助長することさえ考えられる。従って大きな産業でも、金利が高いから設備投資をできるだけ繰り延べていこうという態度に出ますれば、資金量から申しましてやはり緊急を要する中小企業に少しくらいやるということもありますから、系列金融、窓口規制の強化ということを私ども決して否定はいたしません、こういうときにやっていってしかるべきでありますけれども、窓口規制から起こる弊害というものもこれはまたわれわれは考えておかなければならないのじゃないか、こう思います。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 あとの方もありますので、もう二、三点だけ長官に伺っておきますが、鉄鋼公販価格の問題が今相当問題になっております。通産大臣がおいでになるときに伺いたかったのですが、時間がありませんので……。そこで、実は私非常に問題があると思いますのは、市況買いささえのために、今度は大手商社を通じて買い上げが行なわれるということで、大体公取と通産省との間に今話をして、四月分については、大体そういうことが行なわれそうだ、このことは独占禁止法関係とか、いろいろ問題がありますが、この点は、今時間がありませんから触れませんけれども、これは明らかに私は一種の滞貨金融だという感じがいたします。滞貨金融は最近水田さんも非常に熱心に、御承知の、社債の滞貨金融をやりたいと、この間からこの話が出ておりますが、どうも私はこの際、滞貨金融ということがいいのかどうか、その資金というのは一体どこから出てくるのか、大手の商社四社くらいの名前も出ておりますが、ここがやはりいろいろな意味での、長官が、総合対策が少ししり抜けになっているのじゃないか、不十分だとおっしゃる一つのこれは現われじゃないかという気がいたします。この公販の問題、特にこの買いささえの問題についてはどういうふうにお考えになりましょうか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 貿易の面から見まして、ある程度日本卸売物価と申しますか、そういうものが安定しておりませんと、輸出の伸びというものは必ずしも思うようにいかないということは当然考えて参らなければなりません。従って、各種のものにつきまして、急激な価格上昇あるいは下降ということが起こらないように、ある程度輸出の面については考慮をせざるを得ないと思います。それが滞貨金融かどうかということになりますと、そのものの性質によって判断せざるを得ないと思いますが、ただ、この春以来の生産がずっと伸びてきております状況から見て参りますと、結局製品在庫が一般にふえてきております。これが全部外国輸出されれば、もう問題は解決するのでございますが、しかし、製品在庫自体が必ずしも思うようにいかない。そこで、これが国内に売れるということになりますと、やはり非常に生産が落ちていくという状況でなしにいくことになると思います。従って、輸入も必ずしも思うようにいかないという点も心配されます。そこで、国内にも売れないということになってくると、ある意味において滞貨金融をせざるを得ない状況になる。しかし、滞貨金融そのものを考えて参りますと、これは非常に重要な金融界の問題でございまして、無制限に滞貨金融をするとなれば、今後の経済に非常に大きな影響を与えるのではないか、従って、やむを得ざる範囲内においての滞貨金融というものは一また滞貨金融することによって価格を安定させる、外国輸出に向けるというだけの努力をあわせて行なわないで、滞貨金融というものを無制限に考えますことは、これは非常に危険なことが起こってくるのじゃないか、こう思うのでありまして、その辺のかね合いを考慮しながら今後十分な、政府としての考えをきめて参らなければならぬのじゃないかという段階に今ある、こう私は考えております。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 一問だけで終わりたいと思いますが、最後に設備投資の問題であります。実はこの前の予算委員会の分科会でも申し上げて、長官は、必要によっては財政の弾力的な取り扱いも必要であろうし、経済見通しについても変更せざるを得ない場合もあるだろうとおっしゃった。すでに新聞で拝見しておるところでは、調整局長総理に対して三十六年度の実績の概数の報告をされておるようであります。問題は、機械的には、今の前年度と今年度のものを並べて、前年度のものが高くなれば今年度のものは下がる、これはあたりまえのことですが、これは経済見通しを変えるということじゃないと思うのです。五・四%のものを固定して考えるならば、前年度が上がれば本年度は下がる、これは経済見通しを変えるというふうに私は理解しないのです。経済見通しを変えるというのは、前年度の関係で五・四%というものをどうするかということならば、私は経済見通しを変えることになると理解しますけれども、五・四%固定したままで、ものが並んでいくということならば別じゃないかと思う。ただ分析が非常に間違っておった、だから五・四%の問題も一応白紙に返してみないとものは考えられないのだということならば別でございます。  そこで長官にお伺いしたいのは、三十六年度の実績見込みが非常に狂って参りました。これは生産も二〇・九%でございますし、いろいろな点で非常に狂って参りましたから、当然変えなければなりません。変えるのは機械的に変えるということではなくて、一応白紙に返って、三十六年度の新しいベースの上に立って前を見た場合に、国際収支均衡するためにはどういうふうにすべきかということで変えるのか、そこらの点についての長官のお考えを聞かしていた、たきたい。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三十六年度の見通しが著しく狂って参りましたので、従って、その狂って参りました状況の上に立って、三十七年度の予想をいたして参らなければなりません。また経済を改善する方途を見つけて参らなければならぬと思います。そこで、この前の見通しを作りますときも、私はそういう考えであったわけですが、成長率そのものよりも、経済の実態に即して、今後どうあるべきかという姿を描いていく、その結果として成長率が何%にならざるを得ないということで、見通しを立てて参るのが一番適当なんじゃないか。と申しますことは、一番大事なことは、何と申しましても外貨のバランスを合わせていく、それと物価を安定さしていくというこの二つ。これがやはり目標である。ただ今度は、新たに起こってきた問題としてはどの時期にそういうことをするかということによりまして、政策自体が変って参りますし、従って、見通しもその基礎の上に立っていく。それでありますから、三十七年度の見通しというものは、それらの三つのファクターを入れまして、その結果としても出てくるべきものが何%になるか、こういう結論にならざるを得ないし、またすべきである、こういうふうに思っております。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 今はちょっと問題がはっきりしないからということでございましょうが、そこでもう一つだけあのときにお答えになった財政の弾力的な取り扱い——金利の問題についての考えは私も大体同じでございます。財政も私はこの前申し上げましたように、本年度の成長率の中に寄与率が大体五〇%も占めておる、非常に大きなあれになっております。この点については、年度が始まったところでありますから、急にどうというわけにはいかないと思いますが、基本的にはこの問題は今後私は相当重要な問題になってくると思いますが、それについて伺いたい。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 三十六年度の見通しが、数字が狂いまして、その結果が出てきて、三十七年度をその基礎の上に立って予測して参ります場合に、先ほど申しましたように、一つ、十一月目標にするか、あるいはそれを延べるかというようなことが問題になろうと思います。従って、財政の弾力的運営というものも、あるいは公定歩合の引き上げ問題も、そういう点にかかってくると思うのでございますが、しかしいずれの場合におきましても、やはり民間設備投資を押えて参ります場合には、政府の予算の執行にあたっても、これを相当弾力的に考えていく、ただ今申し上げたような時期等の問題、ぜひともこの時期に合わせるか合わせないかという問題によっては、それがさらに強められるかあるいはゆるめるといっては語弊がございますけれども、この運用に対して違った面が出てくる、こういうふうに考えておるのでございます。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 今ちょっとおっしゃった中で、結局本年度の下半期に均衡するかもうちょっと先にひくか、二つ考え方がある、それによって変わるとおっしゃったわけです。長官は一体どちらがいいとお考えになるか、それ、たけを……。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだ最終的にどちらがいいということを申し上げる段階でもないと思います。私は、それぞれ有力な御意見がございますから、十分伺った上それを考えていくのが適当だと思います。ただ、十一月を目標にしてぜひともということになりますと、かなりドラスティックな方法をとらなければならぬのじゃないか、そうなると、国内経済秩序というものに対して非常な影響が起こるのじゃないだろうか、それは今後の生産の自然的な減退その他から見て、状況判断をしなければならぬことでございますけれども、私はそういう考え方のもとに、皆さんの御意見を伺って、私の意見が間違っておれば訂正するのでございますが、ある程度非常にドラスティックなことをやらなければならぬ。しかしそれでは延ばした場合に、外貨の借り入れでそれをつないでまた延ばして参らなければなりません。それに対する問題もございます。従って、そこらを単純に延ばしたからといって、世銀の借款を返済しなければならぬという問題もございましょうし、そういう問題に対する見通しも立てなければならぬ、従って、そこら非常にむずかしい問題で、私としてもまだ結論はつけておりませんけれども、しかし私は、十一月中には無理だろうから、なるべく諸般の情勢を考えながら、無理一のないように、国内経済に非常な影響が起こらぬように、かつ外貨の上におきましても、手当ができ得るならば、相当延ばすべきじゃないかという考えのもとに皆さんの御意見を伺っておるわけでございます。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 これで終わりますが、あとで私、事務当局に少し質問がございますので、各大臣がお立ちになったあとで続けたいと思います。
  48. 小川平二

    小川委員長 横山利秋君。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 あまり時間がありませんから、端的に、いささか失礼に当たるかもしれませんけれども、両大臣、一つ率直にお答えを願いたいと思います。  私の記憶するところによりますと、佐藤通産大臣が一番最初に、設備投資の抑制を初めとする景気調整的なことを言い出したのですが、しかし世間にアピールいたしましたのは、藤山さんが、政府に反省の要ありと言ったところに、私は問題の焦点が浮かび上がったと思うのです。それで、今ちまたでうわさをしておりますところを聞いておりますと、藤山さんがいろいろ言うておられるけれども、結果としてはこうなるのではないかという判断がちまたにうわさされておる。その結果というのは、預金金利の引き上げが、一年定期ものくらいが多少行なわれる、財政投融資は、政府の財政支出は多少引き締めが行なわれる、まあこの程度にとどまるのではないか、なぜかといって聞きましたら、いろいろ原因がある、一つは、藤山さんの人柄で、おそらく泥をかぶらないであろう。一つは、経済企画庁長官という役職柄、実際の仕事は通産大臣、大蔵大臣が握っているから。一つは、参議院選挙があって強い引き締めを行なうことはできないだろう。一つは、あなたも警戒されておるように、派閥的な問題には入りたくないというあなたのお気持がある。一つは産業界が反発する。こういうような点を並べて、藤山さんはああ言っているけれども、結果としてはまあまあというところになってしまうのではないか、こういう観測がちまたでしきりに行なわれておるのであります。私どもは私どもとして、藤山さんの意見に半ば賛成し、半ば不徹底なこのような情勢に対して、いささかどうなることかという考えを持っておるわけであります。妙な言い方をするのですけれども藤山さんは一体自分の上げたアドバルーンに責任を持ってどういうふうに御推進をなさるおつもり千あるか。端的にいえば、第一は、経済閣僚懇談会が一画、二回、三回とだらだら行なわれて、しまいにしり切れトンボに終わってしまう、こういうことになるということは、あなた予想されないか。  第二番にお伺いしたいのは、藤山さんは、そういう抽象的なムード的なことを言っているけれども、一体何をやりたいんだ、どこまで自分の政策の範疇を持っておるのかという点について少しぼやけておる。ぼやける原因は、あなたが、派閥的にはとられたくない、政治的にはとられたくない、話し合いの余地はある等々ということをこのごろ盛んにおっしゃっているからだ、こういうふうに感ずるわけです。具体的なことはあとでお伺いしますが、あなたは、自分の言い出された点について、これからどういう決心でお進みになるのか、その点をお伺いいたしたい。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は純粋な経済の概論をいたしておるつもりでございまして、他のものに関連して議論をいたしておりません。従って、私が経済の議論をいたす場合に遠慮して言うということはないわけでございますし、過去におきましても、私の議論がいれられたこともございますし、従って、必ずしもいれられないと断定するわけでもございません。ただ経済の問題は、私はタイミングが非常に重要な問題だと思いますので、そういう点については、今後の話し合いをいたす上において、純経済論としてもタイミングの問題は大事であるという立場に立って私の意見を申し上げることにしたい、こういうふうに考えておるのでございまして、過去においても若干タイミングを失った結果私の申したようなことになったものでございます。そういう点が経済ではタイミングの問題が重要でございますから、そういうつもりで純経済論として私は申しておるのでございまして、純経済論を申しております限り、私が一人正しいとだけ言えない、いろいろな議論もありましょうから、それには十分耳を傾けていくということはむろんであります。しかし、その結果私の議論がはたして正しいか正しくないかということは、議論をした末でないとわかりません。私としては、私の申しておることが現状においては適切なことではないかという確信のもとに経済論争を展開いたしておるわけであります。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 重ねてお伺いしますが、あなたは学者でもなければ雇業人でもない、日本経済の全体の企画を担当せられておる経済企画庁長官である。従って、人の話を聞かぬというふうに私は申し上げているのではない。あなたは、少なくとも今日フット・ライトを浴びて藤山発言として問題にされている以上は、それに対して政治的責任を感じておられるはずである。正しいと思って主張されておるはずである。しかし、それについて閣内で意見が多少違う——多少どころではないかもしれない。大いに違うとも感ぜられる。その違いが焦点に差しかかっておる。そしてある人たちは、その違いを参議院選挙まですらそうという考え方がきわめて濃厚である。参議院選挙まで延ばせば、あなたの主張は、あなたの立場をもって私に言わせれば、ますます危険が濃くなるばかりである。そうでなければあなたの主張はおかしいと思う。そうなった場合に、伝えられるところによれば、藤山さんはこの主張が十分にいれられなければ、日本経済というものは非常に問題がある、そういうかたい信念を持っておられるから、場合によってはおやめになるかもしれない、こういう話が伝わっておる。その点についてあなたはどうお考えですか。これはやめるかやめないかということを聞いているのではない。あなたの政治的決心のほどを聞いておるのですから、そのつもりでお答え願いたい。
  52. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、やめるとかやめないとかいうことを別にしてただいま経済論争を展開いたしておるのでございまして、私の過去の経験と企画庁長官という職に在職しております立場から申しまして、私の意見というものは必ずしもそう間違っている意見ではないという立場に立って私は議論をいたしておるのでございます。しかし、むろん私だけが独善的に、おれの意見が一番いいのであって、他の意見は全部悪いのだというように断定するのは経済論争として差しさわるところがいろいろございます。従って、反対意見にも十分私は耳を傾ける必要があるのであって、独裁者的に、おれの意見だけが一番正しいのだという立場は、むろんとるべきでないと考えております。しかし、私が今日までの自分の体験から見、また見ておりますところから見まして、相当私の意見は正しいという確信のもとに私はこの論争を展開いたしていきたい、こういうふうに考えて、説得していくべきものは説得していきたい、こう考えておるのであります。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの意見は、要するに見通しの修正をしろ、金利政策を検討をしろ、そうでなければ均衡の時期をずらせ、私はこの三点に要約できると思うのですが、一歩進んで私がお伺いしたいのは、国内政策に焦点が置かれておるように思うのです。あなたの所見をいろいろ聞いたり見たりいたしておりますと、その背景になりますものは、日本経済に大きな、重要なウェートを占めるアメリカの経済が中だるみである。そして昨年のアメリカの国際収支も二十四億ドルの赤字である、明年の均衡も不十分だ、かりに均衡がとれたとしても、日本貿易収支に大きな好転を直接なまでもたらすとは思われぬ、こういうような考え方が背景であるように思う。私は、あなたが国内政策を引き締めようと言っておる立論の趣旨からもう一歩進んで、貿易収支の改善について、アメリカの経済がこうであり、日本経済に与える影響があまり好転するとは思われないならば、一歩進んで貿易の転換についてもある程度の政治的な御所見をお持ちではないか。端的に言えば、中国貿易についても一つのお考えがあってしかるべきだ。うしろ向きのないしは内向きの問題だけでおっしゃっているのではないかという考え方を持つのでありますが、これは私の考えであって、あなたは何もそういうことはお考えにならないのか、全体の規模としてお考えになっておるならば、その角度についても御所見を伺いたい。
  54. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 貿易の振興ということは、国際経済の推移にも影響されますし、特に日本ではアメリカの景気動向いかんによるわけでありまして、その点についてはわれわれも慎重にアメリカの景気動向というものを検討して参らなければならないと思います。むろん昨年の夏からいわゆるリセッションから回復して参りまして、ある程度の景気上昇傾向をたどっておりますけれども、昨年日米箱根会談におきまして、私は、ヘラー経済諮問委員長と二人で三日間お話しいたしました。同氏のような方々は、必ずしもアメリカの景気を無条件で過熱させることが望ましいとは考えておりません。従って、ある程度リセッションから回復した以上、それをなるべく過熱しないように押えながら永続的にアメリカの経済が安定していくと申しますか、過ごしていくことが望ましいというような意見でございました。そういう点から見ますと、アメリカのドルの立場等から考えまして、もう無条件でアメリカの景気が回復し、日本輸出が無条件で伸びていくというふうには必ずしも考えられません。従って、日本は、アメリカに対する貿易が今日非常な勢いで伸びておりますけれども、それのみにたよるわけに参りませんし、ことに日本の生産規模というものは非常に拡大をいたしておるのでございまして、設備投資が歴年三兆五、六千億積んで参りますし、先ほど通産大臣も言われましたように、鉱工業においても一兆五、六千億というものが積み重なって参るわけでありますから、日本の生産力は拡大しておる。従って、貿易市場を広く世界に求めることが必要でございますし、後進地域開拓に持って参らなければならないとともに、やはり共産剛に対しましても貿易の問題については積極的に開拓していく、政治的問題を別にして開拓していくべきだ、こう考えております。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 政治的な問題は別にしましても、共産圏との貿易を拡大すべきであるという御意見を承ったのでありますけれども、しかしそれができるぐらいだったら今もうとっくにできておるわけです。それができないところに問題がある。そこを突破しなければならないのが今の政治的課題である。ところが今藤山発言を境にして、共産圏との貿易も拡大すべきであるとおっしゃる以上は、今の中国を焦点といたしますそれらの諸国に対する貿易拡大の穴をあけるという熱意をお持ちなんですか。その具体案を何かお考えなんでございましょうか。
  56. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今私は、当面の国内経済の問題を主体にして話もいたしておりますし、私の考えを述べているわけでございまして、共産圏との貿易をどういうふうに改善するかというような具体的な直接の問題については、利としてもまだ検討を要する問題もたくさんあると思いますので、この機会にそこまで発言するよりも、当面の経済問題等について十分な考慮を払っていくことが必要だと考えておるでございます。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 当面の問題がなぜこんなに議論されるのか。それはここしばらく半年、一年についての日本経済に対して不安があるからである。それが半年、一年たったら、それでは非常に飛躍的な改善が予想されるのか、それもされないのであるか。だから今のあり方について相当深刻な議論がされておると感じなければなりません。あなたの意見が国内政策だけに焦点が置かれておるということに私は少し疑問を持っておる。何か将来を望んでさしあたりこうしなければならぬからというふうに私は理解をしておるのですが、貿易政策の転換なり拡大なりという点について、あなたは積極的な御意見をお持ちでないのですか。私が先ほどお伺いしたのは、アメリカの貿易が改善される見通しがないから、内々だけで解決するのではなかろう、何かあなたとしても貿易拡大の道というものをお考えなのではないかといってお伺いしておるのですが、そういうお考えは具体的にはお持ちにならないのですか。御希望だけ、御意見だけなんですか。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、貿易バランスを合わせることが当面必要でございまして、当面の問題としては、現状における国際情勢下において輸出を拡大していくということが当然必要なことだと思います。しかし今申し上げましたように、設備投資等も累年重なって参りまして、そうして生産規模は拡大しております。また生産能率も上がってきておりまして、生産性向上しております。従って、それらのものを国外に輸出していくという道は、やはり十分な輸出先を確保してだんだん参らなければならぬことは当然でございまして、その場合におきまして、アメリカあるいは自由主義国、その他の諸国と十分な貿易拡大をはかって参りますことは当然でございますが、共産圏といえども貿易の面におきましては拡大をして参らなければならぬと思います。ただその具体的な方法としてどうするかというような問題については、今後の問題としてわれわれも検討いたしていく必要があろうかと思います。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの意見がどれほどシビアに引き締めなり調整なりを行なわれるお気持か、まだはっきりいたしませんけれども、しかしながら、たとえば伝えられるように、鉄鋼の工業生産を二%、経済成長率を三%以下にかりに押えるといたしましたならば、三十二年の引き締めよりもさらに深刻になる、それをあなたが妥協して、まあまあそれでは今度はこのくらいにしようかということをすれば、あなたの所見によれば、さらに深刻の度が続き、期間も尺度もふえる、こう思われるわけです。そういうふうにいたしますと、これは産業界の一部にありますように、非常に衝撃が大きくなるわけです。中小企業にも労働者にも影響があるだろう。また与党の中にありますように、参議院選挙に影響があるだろうという不安があるわけです。そういう不安に対してあなたは、まあそれはそういうことにならないようにというようなお答えをなさるかもしれませんが、私はあなたの政策実現に対する熱意という意味においてお伺いしておるのですけれども、ある程度それは忍んでもやらなければならぬ、今やらなければだめなんだというふうなお考えをお持ちで推進をされようとなさるのですか、あなたのおっしゃっておられる政策のいい面ばかりをあなたはおっしゃるような気がしてならぬのですが、悪い面に対してどのくらいの決意と熱意をお持ちなんですか、それを伺っておきたい。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日の段階におきまして、経済全体の過熱を抑制して参りますれば、将来の安定的な経済の道を進み得る利点と申しますか、あるいは改善の点がございます。しかしその過程においてある程度衝撃を受ける場合もございましょう。従って、その衝撃をできるだけ少なくしながらそれを改善していくということが、一番の問題になるかと思います。従って、全然無衝撃でいけるとは思いませんけれども、その衝撃というものをできるだけ少なくして、そうしていくべきことはこれは政治の要諦だと思います。私はこの問題について参議院選挙というようなことを考えて言っておるのではないのでありまして、国民に正直に現状を伝えることが、むしろ自民党の信用を博するゆえんだと思っておるのでございまして、社会党の方には御迷惑かもしれませんが、私はそういう意味でいきたいと思っておるのであります。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。皮肉な言い方をして恐縮なんですけれども藤山さんの御意見を聞きましても、佐藤さんの御意見を聞きましても、焦点となるのはどうも金利政策、あなたの所管のお仕事です。私がかつて大蔵委員会でお伺いをいたしましたときに、あなたは三月、四月の状況をまず見てくれ、その三月、四月の状況を見たらと、こうおっしゃっておられたのですが、今もう五月のメーデーも過ぎて半ばになろうといたしておるわけであります。ほんとうならば、かかる問題については、大蔵大臣がみずからの所管の問題として責任を持って金利を上げるべきであるないしは現状にとどめるべきである、もちろん慎重にならなければならぬけれども、所管大臣として明確になさる段階であったと私は思う。あなたは今もなおかつもうしばらく待ってもらいたいという御意見なのか。ここ二、三日の間に開かれる経済閣僚懇談会におきまして、あなたみずからの責任を持ってその御提案をなさるおつもりであるか、その点はいかがですか。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 金融政策というものは、金融政策それ自身が目的ではございません。目的を達成するための手段としてどういう政策をとるかということがございます。その目的としたところは、私どもは去年のああいう現状から見まして、設備投資抑制政策をとって、今年度の下半期までに国際収支を改善する、したいという目的からいろいろの総合政策をとったわけでございますが、それではこれらの政策がどれだけ効果を今示しているか、それによって国際収支の先行きはどうなりそうかという問題を私どもは今慎重にこれを見ているときでございまして、そういう問題について、御承知の送り超楽観主義者というものは現在の日本ではございませんし、そうかといって超悲観論者というものもない、非常に国際収支の先行きについての問題は慎重ではございますが、御承知のように、たとえば三月の信用状を見ましても、あの反動はやはり四月に現われるという見方も当時多かったのでございますが、実際の四月の状況を見ますと、信用状ベ−スにおける動きも、昨年の四月のときとは全く変わっております。そしてそれでは五月、六月にどういうふうにつながって出ていくかという見方についても、いろいろ今見方が出て参りまして、たとえばくず鉄というようなものが今後どういう方向をとるかといいますと、国内の産業構造の変化によって、去年と同じような急激な輸入方法というものはここではとらぬという一つの分析、見方も出て参りましたし、また一般の原材料にしましても、当用買、ここで臨時買というようなことで済まそうという機運も非常に出て、いろいろなところを見ますと、輸入期である四月−六月の動きというものは去年と非常に違うという方向の分析がここで多く出てきているということから見ますと、政府が最初予定した上半期、第一・四半期の輸出入の動向というようなもの、これを正確に見通すわけにはいきませんが、政府部内は、政府部内としての見方を今固めつつある。もしこれが、当初私どもの予定したよりもあるいはよくなるだろうという見方もあるのですが、そうなりますと、七月−九月の今度は輸出期に入った場合との関係がどうなるかということを見ますと、これは七−九月の輸出期は去年と相当変わりまして、ことによると、これは総合収支だけでなくて、経常収支均衡も七−九月の間にはあり得るという見方も、これは一番慎重に見ている日銀自身でも、そういう見方の者が一部に出てくる。はたしてそういう見方がいいか悪いかということについて、私どもも役所側としては今慎重にやっているときでございまして、こういう国際収支の動向がどうなりそうかというような見方に対応して、初めてそれに即するいろいろな措置というようなものも私ども考えなければならぬ、これは当然でございますが、今この見きわめについていろいろな部内でやっておるときでございますので、やはりこの見きわめを、ある程度自信を持った見きわめをつけるということが私どもの一番先にしなければならぬ仕事でございます。従って、それに対する対策というものはあとからいろいろ考えられるべき問題だ、まずその目標に対する分析、見通しというようなものを三月、四月、五月、ここらの傾向を見て大体の見当がつくという時期に今きておるときでございますので、私どもはそれを中心の論議をこれから政府部内においてもいろいろする、した結果でないと具体的な問題は出てこないと思いますが、今はほかのことを考えるときじゃございませんので、この見通しをどう見て、それに伴った政府政策をするかという新しい段階に今入っておるときでございますから、私どもはそういう方針で今後善処すればいいというふうに考えます。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、こうお考えになりませんか。あなたのおっしゃることは二と二を足せば四になる、従って今計算をしておるんだというお話でありますけれども、われわれは学校で勉強しておるわけではないので、政治をしておるわけなんです。そうでなければ、池田総理大臣が所得倍増計画を発表したときに、ちゃんとそろばんが二と二を足せば四になったはずなんです。それがそうならないところに問題が生じておるのですから、今私どもはなるほど資料の収集や計算もしてはならぬというわけではありませんけれども、判断の時期が迫っておる、またその判断をしなければならない時期ではないか、閣僚不統一を、そろばんをはじいて計算をしてから計算の答えであろうというようなことではいかぬのではないかというのがあなたに加えられている批判なんです。大蔵大臣としてもうこの辺であなたの所信のほどを明確にされて、そしてこれでやってもらいたいというふうに言うべき段階ではないか、こう私は痛感するのです。多少の数字の誤差があろうと、これは私ども一つの政治的なムードを作るのですから、それによって鎮静するものは鎮静する、そろばんの答えだけでは鎮静しないと私は思う。ところが決断をされる時期が今のお話だといつのことか私には想像つきかねる。経済閣僚懇談会は二、三日でもうそれではさようならパーティにしようというお話を大平官房長官がなさっておるのですが、そうするとあなたはそういうお気持はない、ずっと問題をずらして、六月になり七月になりその様子を見てやろう、こういうふうに私は受け取ってよろしいのですか。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そんなに長いことは必要としないと思います。大体五月中には私どもは動向の見通しというものはできると思っております。これはそろばんをどうこうという問題、数字にこだわっているというような問題ではございません。今あなたも御承知の通り見方についてこれが確定しておるんなら問題はございませんが、経済は生きものでございますので、常に動く、動く方向が大体この五月一ぱいでわかるというふうに私は思っていますことと、もう一つは、もし事態がむずかしい方向へいくという場合なら、なおさら金融政策自体だけではこれは対処できない問題でございますので、私はやはり金融一点張りでこの見通しの問題を扱うというよりは、今までの行政指導力が足らなかったということを認めますが、これが統制とかいうような問題でなくして、民間もすでに自主的な体制を整えてこの問題には真剣に取り組まなければならぬという方向にきているときでございますので、政府行政指導関係である程度これが加わって、それと金融政策等がマッチしない限り、そう期待する効果というものは私は出ないと思います。じゃその行政指導をどういうふうにやるかということは、御承知の通り通産省が現在やっておりますし、私ども日銀と一緒に金融機関を通じた仕事を今始めておって、まだ最終の結論をつけておりませんが、すでにここに入っておりますので、五月中には当然私どもの態度もきまりますので、そういう一連の見通し行政指導のあり方、こういうようなものとからんだ政策でなければ意味がございませんので、そういう意味で今私どもは相当慎重な態度でこの見通しをつけているわけでございますから、今の段階でそう具体問題を——政府は責任者でございますから、私どもが批評家の立場経済に臨むことはできない段階であるということは、十分御了承願えると思います。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは金利政策が焦点になりつつあることはようやくお認めになっておるようでありますけれども、今の政府の言う低金利政策というものは、実態はもうくずれておる。法定金利はともかくとして、実勢金利はどんどん上がって、町の金融業者の金利なんてものは驚くべきものになっている。実勢金利はもうくずれてしまって、あなたが表では表面的に言っているにもかかわらず、裏面ではどんどん高くなっておることは、あなたは御存じではないのですか。私はものの考え方にはいろいろあるけれども、今の大銀行の責任者なるものにとどき会って話を聞きますと、政府は何かかにか言っているけれども、銀行のオーバーロンを目のかたきのようにしているけれども、しかし実際問題としてこれだけの金利をつけなければ預金が集まらないじゃないか、それをどうしてくれるのだということを公言しているわけなんです。預金金利の問題だって、話はもう古いんですね。そういう点からいいますと、私は何かあなたが金利政策について我を張ってお見えになるような気がしてしようがない。それだって毎日々々新聞を見ると、証券金融について池田さんは強い要望があるかもしれないけれども、これだけがどんどん進んでいくような気がいたします。中途半端な金利政策が実際問題として進んでおるという気がいたしますが、あなたはそうお感じになりませんか。金利の問題はもうここで判断を、あなたのオーソドックスな御意見を承れる段階だと思うのですが、金利はな、ふらないというのがあなたの根本となるお考えですか。もう少しあなたも率直に、具体的に、この際明らかにしていただきたい。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は決して金利だけの問題を切り離して考えられる問題ではございませんので、今の段階でそう簡単にこれはどうこうということはできないと思います。
  67. 横山利秋

    ○横山委員 しかしながら、すでにこの大蔵委員会で同じ席を並べて通産大臣と経済企画庁長官が金利の問題についてお触れになっており、新聞も毎日それを伝えておるときに、また町の実勢金利がどんどん上がって、あなたの言っていらっしゃることと全くうらはらのような状況のときに、あなたの御意見が全然ないというような点は、私は納得いたしかねるのですが、どういうことですか。もう少しあなたの所見のほどをお伺いいたしたい、重ねてお願いします。
  68. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何度も言うように、金利の調整機能を否定しているわけではございませんし、需給の関係で実勢金利が上がるというようなこういう現象が起こっていることは当然でございますし、起こっていること自身がまたどれだけの調整力になっているかというようなことについても、私どもは実態は十分今持っておりますが、これについて今どうこうする、低金利とか高金利というようなそういう範疇で問題を論ずることでは——簡単に論じられる問題ではございませんので、要するに今申しましたような目的とした事態がどういう方向へ動いているかというものについての正確な考えを持つことが、まず政府としては先でございますので、私どもは今その問題の見通しからいろいろの具体的な問題を考えればいいという態度は今もって私は変わっておりませんので、もう少し事態を見たいと思っております。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 あなたがそう言っておる間に、もう一つの問題として最近外資導入がもうあらゆる全国のすみずみまで、おかしな外資まで含んで盛んに論議されておるのをどうお考えか、ちょっとお伺いしたいと思う。この間も名古屋の商工会議所に行って聞きましたら、もう全くインチキな外資から、あるいはきちんとした外資からさまざまなものが入り込んで相談に乗ってくれ、こう言っておるそうです。私もちょっと調べたところによりますと、外資の最近の動きというものは、こちらから外資と言わなくても向こうから言ってくる状況で、しかも相当の金利ともこのごろは言われておる。これもひとえに日本の金利が高いからということも言えましょう。しかしながら、こういうような金融引き締めのときに外資がどんどん入ってくる。そして政府資金は、私どもがやあやあ言うて中小企業に出すようにしておるのでありますけれども、結局はこの間本委員会で私は明らかにいたしましたように、下請の手形をおくらせる、そしてその手形を商工中金なり、どこかに持って行く、ところが実はそれは大企業のために使われておる、こういう状況が各所に散見をされるわけであります。従って、この間金利政策と同時に総合的な権威のある資金委員会の設置をもって、そして官民の資金、外資の問題と総合調整をしなければならぬ、こう思われるわけであります。最近ネコもしゃくしも外資導入外資導入というて、政府の方もいささか制限を強められるような雰囲気もあるのでありますが、そういう外資の傾向について、今まで政府外資は歓迎すべきものというふうな方向でたいこをたたいておられたようでありますが、最近の傾向をどうお考えになるか、同時に私の申します総合的な資金委員会の構成をお考えになる必要がないか、この二点をお伺いをいたします。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 必要な外資導入する方針に変わりございません。しかし最近の状態は、あなたも指摘されましたように、外国に対して特に短資あさりが多くなっておるというような実情は好ましい方向でございませんので、これについては先般政府が通牒を出しまして、今後勝手にこういう行為のないように事前に連絡をつけて、一応の了解を得た線における行動はいいとしても、そうでない行動についてはかりにこの交渉がまとまったにしても許可しないというようなきつい達しをして、あさる方向については私どもは押えるつもりで今やっておりますけれども、必要な外資は当然入れていいので、この点は押えようという考えは持っておりません。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 必要な外資は押えない、必要でない外資は押えると蓄えばそれまでの問題ですけれども、全体的に私は政府がこれもたいこをたたいて外資導入を歓迎する、日本外国資金が入ってくるようにベ−スを作るということで進んできたためと、それから最近の金融の問題から今度は向こうが売り込んでくる、こういう状況になっておるのですから、ただ必要なものは入れるというだけでは、今日のベ−スに合わないように思うのですが、あなたとして特にそういう点についてお考えになって手を打たれるお気持があるかということはいかがですか。
  72. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 現に手は打っておりますが、日本の高金利という有利性に目をつけまして、外国からそういういろいろな交渉がたくさんきておるということも事実でございますし、また、まとまった例はあまりございませんが、そういう効きが活発でございますので、私どもとしましても、こういう動きに対しましても日本政府はこの一定の条件は私どもは堅持しておりまして、それにはまらないようなものは、どこからきてもこれは許可しないという方針で、条件の悪いいろいろなそういう交渉については全部押えるという措置を今現実にとっておりますので、相当私どもはそういう点は防げるのではないかと思います。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、外資法を改正して外資導入がしやすいようにするというのが今までの政府のお考えであったような気がいたしますが、今のあなたの御意見によれば、そういうような外資法改正をして受け入れ態勢を整えるというお気持はもうなくなった、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは外資の性質、質の問題もございますので、今見られるようなものについての抑制手段はとっておりますが、そうでない、好ましい外資導入というものを押えるというような方向は考えておりません。むしろそういうものはもう少し国際自由化の線に沿った策も考えなければならぬじゃないかとすら思っております。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、どういうことなんですか。やはり外資法は改正して外資導入がしやすいようにするという方向で今御答弁になったというふうに理解をすべきですか。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは貿易自由化とうらはらの問題でございまして、全体としての為替の自由化という方向も当然ある程度考えなければならぬ段階にきております。現に去年、おととし相当私どもはこの問題はやりましたが、まだ今後そういう方向でいき得る余地があるかどうかも今検討しておる最中であります。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんけれども、先ほど通産大臣の意見を聞いておって私確かめたかったわけでありますが、いささか所管が違うかもしれませんが、こういう経済情勢が逼迫して、あなたにしても何もやらぬということではなく、慎重に手を打っていこうというふうに理解するのですけれども、その上に十月から貿易為替の自由化という重荷が加わってくるわけであります。この点についてあなたはどうお考えでありましょうか。計画通り十月から自由化をやれというような立場をおとりになるのですか。世間では、このような状況では少し自由化をおくらせるべきだという声が次第に強くなりつつあるわけですが、どうお考えですか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この計画は日本経済自体にとっても変更すべきものではない、むしろ積極的に自由化はやるべきものでありますので、今政府のきめておる自由化計画は私は予定通りにやりたいと思っております。日本の業界においても、四、五年前は自由化の問題を出したときにはこれは大へんだという気持でございましたが、もうすでに業界においてもこの自由化の大勢ということは十分承知しておりますし、政府の方針も一、二年前からはっきりさせておりますので、これに対応するような措置が自主的に現在もうとられておるときでございますので、この計画は変更すべきものではないと思っております。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 先ほど堀君の質問一つあなたのお返事を聞き漏らしたのですが、公社債の担保金融も、証券だけ特別対策をすべきではないという声が強い。私どもは終始一貫そういうことを言ってきたのですが、これはどうなさるおつもりですか。今の全般的な金融の再調整の段階に、証券市場だけこういうふうな対策をおとりになるというお考えですか。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全体の経済調整策の一環として私どもはこれを考えるべき問題でございますので、そういう方向で考えたいと思っております。しかしこの公社債の流動化の問題は、前にも申しましたようにやはり一つの制度的な問題がございますので、一挙に流動化を解決するための市場育成ということは非常にむずかしい問題でございますが、全く流動化の道を制度的にも閉ざされておるということは、これはやはり大きい問題でございますので、この問題の解決は当然私はすべきだろうと思っております。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 時間がなくなりましたので、私の質問はまたあしたに譲りたいと思いますが、いささか大臣に苦言を呈しておかなければならぬと思うのであります。私の意見はなるべく避けて、時間の関係上あなたの御意見だけ伺ったのでありますけれども、やはり私は、前にも申しましたけれども、大蔵大臣として、もう少し端的に、御自身の所管のさまざまな問題について、積極的に御意見を明らかにされ、方向を示唆され、それによって経済政策を推進されることを私は特に望みたいのであります。私ども大蔵委員会として重ねて申しますけれども、前にも申しましたけれども、所管大臣として大蔵大臣が、その政策の衝に当たられる方として、金利政策にしても、あるいは経済政策にしても、まず方向を示唆され、それによって全般の誘導政策を立てられて誘導されるように希望しておるわけであります。どうも今回のことに関しましては、大臣の慎重さが後手に回っているような気がして仕方がありません。結果としてでき上がるものは、最初私が申しましたように、藤山さんもまあまあということになり、みんなまあまあということになって、ぬるま湯に入ったような引き締め政策が行なわれたのでは、これは政治としての効果が半減してしまう。まあそんなものかということになってしまって、政策効果が上がらなくなってしまう。計算づくは二と二を足して四になるかもしれないけれども、その効果としては私は半減してしまうということをおそれるわけであります。従いまして、もう時期をずらせばずらすほど問題の所在というものが深刻になるばかりで、政策の効果が上がらずに、時期がずれるばかり、こういう結果になるということを私は心配をいたすのであります。その点についてあなたに最後に御意見を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今またあとからいろいろ御注文があるようでございますが、まあこれではいかぬから金融をもう少しどうこうしろということをみんな言ってくる時期でございます。しかし私どもは当初の目的を達するまでは、これをゆるめないということで、金融引き締め政策も、一般の想像するよりは、実務に携わっておる私どもとしてはけっこうやっているつもりでございますので、これを実情に合わせたやり方を私どもはすべきだと思って、現にやっていることが、たとえば四月の生産にも私はもう見えてくると思いますし、引き締め政策というものは、相当私どもが抜けているというふうに見ることは、これは疑問でございまして、私どもとしては実情に合った相当強い引き締め政策をやっているつもりでございますので、これをむしろ皆さんの手によってくずされることを私どもはおそれておりますので、その点は十分私どもが慎重にやっていることについては、それはその通り一応実際を御了解願いたいと思っております。
  83. 小川平二

    小川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  84. 小川平二

    小川委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  85. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決されました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  87. 小川平二

    小川委員長 中小企業金融の積極化のための措置に関する件について、横山利秋君より発言を求められております。これを許します。横山利秋君。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 中小企業金融の積極化のための処置に関する三派共同の決議案を提案いたしたいと存じます。御賛成を願いたいと思います。  まず、案文を朗読いたします。    中小企業金融の積極化のための    措置に関する決議(案)   景気調整の進行と金詰まりの激化  が中小企業に及ぼす不測の衝撃を緩  和するため、昨年来実施された民間  金融機関に対する中小企業向特別賞  オペ並びに政府系三機関に対する追  加措置としての短期貸付金の処理に  ついては、政府は、必要に応じ、こ  れが売戻し及び回収の延期又はこれ  を補足するための再買オペ及び再貸  付を考慮するとともに、特に商工中  金に関しては、金融債消化の不円滑  の実情にかんがみ、速やかに資金運  用部等による金融債引受枠の拡大を  考慮すべきである。  簡単に御説明を申しますが、先日の大蔵委員会でいろいろと中小企業金融状況について質問をいたしました。政府側のこれに対する答弁は私どものきわめて不満足な状況でございまして、しかも本日の委員会において明らかにされましたように、政府内部におきましても意見の相違はございますけれども、しかしそれをもってしても、なおかつ今後の金融が緩和される状況になく、特に中小企業に対するしわ寄せが非常に強化されるというふうに私ども考えるわけであります。  案文の中に申しましたように、商工中金の実情に関しましては、商工中金は一体金を貸すところか、借りるところかというような議論さえちまたに起こっておるときでございますから、皆さんの御賛成を得て、中小企業金融の積極化のために政府に対して格段の措置をとられるように要望いたしたいと考えまして、三派共同の決議案を提出した次第であります。
  89. 小川平二

    小川委員長 ただいま横山利秋君より中小企業金融の積極化のための措置に関する件について、本委員会において決議を採択されたいとの動議が提出されました。  本動議について細田義安君より発言を求められております。これを許します。細田義安君。
  90. 細田義安

    ○細田(義)委員 ただいま横山委員より動議として提出されました中小企業金融の積極化のための措置に関する決議案に対し、私は賛成の意見を述べたいと存じます。  昨年九月以来、本格的な景気調整策がとられまして、これに伴い、金融引き締めの影響中小企業に不当にしわ寄せせられることを防止するため、昨年末に民間金融機関に対する中小企業向け特例買いオペ三百五十億円、政府系三機関に対する財政投融資の追加四百五十億円が実施されまして、また本年二月にも、重ねて特別買いオペ百五十億円と財政投融資追加百十億円が実施され、さらに二、三月の両度にわたり第四・四半期の財政揚超緩和対策として千四百億円の一般買いオペが実施されまして、幸いに伝えられたような三月危機も回避されまして、中小企業の倒産等も大事なく済んだことは同慶の至りと存ずるところでございます。  しかるところ、四−六月の金融情勢を見ますと、四月は季節的に一千七百億円くらいの大幅の散超でありましたが、五、六月の情勢は一変いたしまして、それぞれ七、八百億円程度の揚超が予想されるわけであります。のみならず、その上、二、三月に実施されました千四百億円の一般買いオペの売り戻しや昨年末に実施されました中小企業向け特別買いオペの売り戻し等も行なわれることとなっておりまして、すでにその一部は実施に移されているところでございます。こういう金融情勢下にありますので、今後景気調整の進行とともに、ますます金詰まりの激化が予想され、世上では六月危機説さえ叫ばれておるのであります。従いまして、金融の逼迫が中小企業に及ぼす不測の衝撃を緩和し、かつ不況時における中小企業金融を積極化するため、中小企業向け特別買いオペや財政投融資の追加措置の処理につきましては、政府は売り戻しまたは回収の延期等の措置を必要に応じ配慮することがきわめて緊要であると考えるのであります。  以上述べまするような意味合いにおきまして、私は本決議案に対し、双手をあげて賛成の意を表するものでございましす。(拍手)
  91. 小川平二

    小川委員長 お諮りいたします。  横山君提出の動議のごとく、本委員会において決議をするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本決議は大蔵大臣及び通商産業大臣あて参考送付いたしますから、さよう御了承下さい。  ただいまの決議に対して政府より発言を求められております。これを許します。水田大蔵大臣。
  93. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 経済調整をするために、私どもはただいま金融引き締め政策をとっておりますが、しかし設備を押えるというための一つの目的を持った金融引き締め政策でございますので、これが中小企業にしわ寄せされるというようなことは避くべきであるという考えから、資金量の確保と、それから貸し出し金利も、公定歩合が上がっても中小企業には金利を上げないということまでとって、いろいろなこまかい配慮をして今日まできております。幸いにしまして、いわゆる三月危機も、中小企業部門においてはある程度円滑に切り抜けてこられたと思いますが、今後もこの円滑化は、私どもは慎重にはかって参りたいと思います。なかなか金融問題は、行政としては機械的な措置はとれない、理屈通りのこともやれないというような微妙な問題がございますので、中小企業の実情に応じた金融政策は、今後弾力的に随時私どもとって、御要望に沿いたいと考えております。本決議の通りのことをやれるかやれないかは、これは今申しました経済情勢の推移とにらみ合わせて考えるべきことでございますが、方針としてはそういうような方向で私どもやって参りたいと思います。
  94. 小川平二

    小川委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十二分休憩      ————◇—————    午後三時二十四分開講
  95. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。春日一幸君。
  96. 春日一幸

    春日委員 池田内閣の高度成長政策、所得倍増論などというようなものが、わが国産業、経済の随所に行き詰まりを見せておりまするが、しかしながら特にこのことが、中小企業金融にしわが寄せられて参りまして、現在中小企業は、中小企業金融自体の極寒もさることながら、大企業に対する金融引き締めのはね返りもまともに受ける形になりまして、二重、三重の苦しみを受けておると思うのでございます。従いまして、本日、本委員会中小企業金融の積極化のための措置に関して一個の決議を行なったのではありますけれども、これは大臣の政府を代表しての見解表明に徴しましてもまことにあやふやでございまして、どの程度の措置をとるのか期待が持ちかねる状態にあると思うのでございます。従いまして、本日特にこの中小企業金融議題といたしまして、当面いたしておりまする重要なる諸問題について政府の善処を求めつつ、なお政府見解をお伺いいたしたいと存ずるのであります。従いまして、私の質問は糾弾的立場ではなくしてむしろ起党派的に、しかも政府との了解のもとに全面的な建設の方向に向かって話をまとめていきたいという考え方で質問をいたしたいと考えますので、特に政府を代表されて天野政務次官に一つ十分話をお聞き取りをいただいて責任ある御答弁をいただくと同時に、お聞きいただいて天野政務次官の御納得のできましたことはぜひとも大臣との間に十分話し合いを取りつけていただいて、政府をしてこのことを実施せしめるという重大な御決意のもとに質疑に応じていただきたいと存ずるのであります。  まず第一点は、五、六月危機中小企業金融に対する施策についてでございます。先刻の中小企業金融積極化のための措置の決議の賛成意見開陳の中で細田議員から若干述べられておったと思うのでございまして、若干重複があるかもしれませんけれども一つその窮状を十分認識いたしますことのためにお聞き取りをいただきたいと思うのでございます。すなわち、唱えられた二月、三月の危機は現実には大きな破局、破綻というようなことを見ることなく四−六月にずれ込んだといわれております。けれども、このことはどういうような状態の中でずれ込んでおるかと申しますると、事もなくすべり込んだということではないのでございます。私どもが調査をいたしておりまするところによりますと、中小企業の不渡り手形の件数は昨年の十月以降相当増加をいたして参りまして、本年に入って一月のそれを前年同月対比率で見ますると実に四二・一%の件数増に相なっております。金額にいたしましては七三%増ということに相なっております。二月には若干の減少を見ておりまするが、三月、四月とまたその起伏があるのでございます。特に企業整備件数は昨年十一月より同様に増加の傾向にございまして、わけて繊維業、建設業というような景気影響を直接的に受ける業態におきましては、人員整理が三十六年十二月において繊維において前年対比率にいたしますると三・七倍、建設において前年対比率二・一倍、こういうようなことになっておるのでございまして、これは事もなくすべり込んだとか、大したこともなくその峠を乗り越えたというものではない。現実にそんなにもうたくさんの整理が行なわれておる。破産倒産が現実に昨年の何倍か起きている。手形の不渡り件数も金額もこんなに大きくふえているんだ、このような事態を一体何と見ておられるのであるか、この点について、この事実に基づいての認識を天野政務次官よりお述べをいただきたいと存じます。
  97. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいまお話がありましたように、中小企業金融につきましては、昨年から政府としてもいろいろな手を尽くして今日に至っておることは御承知の通りであります。従って、中小企業金融というものが今までそうひどいあおりを食わないでどうやらきたということは、客観的な意味で、今日まですらっときたという意味でなくて、いろいろな苦しい場面を中小企業がどうやらこうやら切り抜けながら今日まできているということについては先生のお話と同じ観点に立っているわけであります。そこで、不渡り手形の問題でございますが、数字につきましては銀行局長より御報告いたしますけれども、そうひどく不渡り手形が激増しているという数字は出ておらないわけであります。若干、幾らか昨年度よりもふえておるということが見取られるというところでございます。それから一、二のいわゆる不況産業のうちに数えられる面におきましてなかなか著しい場面も出ておることは御指摘の通りでございます。従いまして、先般大臣がここでも答弁されておりますように、今後の問題といたしましてはいろいろ苦しい場面に対しましては適切ないろいろな措置をとらなければならないということは言うまでもないところでございまして、今後実情によく見合いまして弾力的に措置をいたし、中小企業金融が何とかこのむずかしい時期を切り抜けることができるように配慮して参りたいと思う次第であります。
  98. 大月高

    ○大月政府委員 不渡り手形の問題につきまして数字的なお話がございましたので御説明申し上げますと、ことしになりましてからの不渡り手形の手形交換高枚数に対する比率は、昨年に比べまして若干ふえておりますことは仰せの通りでございます。しかし現実の実数から申しますと、必ずしも過去における不渡りの率に比べまして高いという数字にはなっておらないわけでございまして、具体的に申し上げますれば、この一月の不渡りの比率は〇・八一ということになっております。これは昨年一月の〇・七〇%に対して若干ふえておる。それから二月におきましては〇・七九%でございまして、昨年の〇・七〇%に比べまして若干ふえておる。それから三月におきましては〇・八三%でございまして、昨年の〇・七五%に比べて若干ふえておる。それから四月でございますが、〇・七九%でございまして、昨年の〇・六五%に比べて若干ふえておる、こういう実数でございます。しかしただいま申し上げましたように〇・七%から八%という数字は過去におけるいろいろな数字に比べましてどちらかといいますとまだそう高くない。たとえば昭和三十二年の平均で申しますと一・〇八でございます。三十三年の平均におきましては一・〇六でございまして、三十四年〇・九八、三十五年〇・八八、いずれもそういうような数字に比較いたしましてはまだ低いわけであります。そういう意味から不渡りの枚数が非常に多いということは数字的には申されないのじゃないか、こう思います。
  99. 春日一幸

    春日委員 私は特に大月局長に御注意を申し上げたいと思うのでありますが、あなたが銀行局長に就任されまして以来、私も機会をそれほど得がたいままに金融問題について論じ合うことはこれでかれこれ三回くらいしかないと思うのであります。しかしあなたはわれわれが警告的に警戒的な立場で、心配する心でいろいろと質問するのに対しまして、あなたの答弁はいつも心配ない、大丈夫だというような、いわば楽観論と申しましょうか、そういう中小企業者に心を砕いたという立場での御答弁がないことはきわめて遺憾であるのでございます。御答弁がいかがあらんとも結果がそのようになっておればこれは差しつかえございません。あなたが銀行局長になられた昨年の春でありましたが、われわれが中小企業金融はこの秋ごろには大へんなことになるでしょう、従って、政府関係の三公庫の原資の手当というものは相当の規模で増大しなければならぬと思うが、少なくとも今からその準備をなすべきにあらざるや、こういう質問をしたのに対して、その心配はございません、大体において計画の範囲内において需給のバランスははかり得るものと思う、こういう趣意の御答弁があったと思うのでございます。これは速記録をお調べになれば明らかであると思います。結果はどうなっておるか、問題はそこでございます。結果において相当額の三公庫に対する原資の増大をはかる措置をとらなければ中小企業の年末が越し得なかった。与党の理解、政府の了解のもとにあのような原資増大の措置がとられておることは御承知の通りであります。われわれはとにもかくにもよくて普通であります。悪くなったときに一人でもそのような犠牲者を出すことのないように心を配って、言うならばある程度は神経質過ぎるほどの心づかいをすることによって破局を未然に回避するための必要な万全の措置をとらなければならぬと思うのでございます。従いまして、こういうような委員会においてあなたが答弁されることは、政府の施策に対してもとより重大な根本的影響を与えるものでありますから、十分その点にも心を配られて御答弁を願わなければならぬと存ずるのでございます。ただいまあなたがその対比率をいろいろお示しになりました。昨年の同期に比べてその交換総数に対する不渡り件数の対比率を言われておりますが、私はそんなことを言っておりません。昨年一月同期における不渡り件数、それから本年の一月における不渡り件数、その実数を比べると何割増しになっておるか。私は昨年一月の不渡り件数の実数と本年一月の不渡り件数の実数とを比べると四二・一%ふえておるという数字を明記しております。またその金額が七三%ふえておる。なるほど発行件数もふえておるであろうし、経済成長に伴うてその経済活動の度合いに応じて、その規模が大きくなっておる、だから私の言う面におけるこの対比率は、金融恐慌、中小企業金融恐慌を直接に把握するためにはあるいは的確な資料たり得ないかもしれませんけれども、私がその立場において昨年よりこれだけ不渡り手形の件数がふえておるのだ、金額がふえておるのだといったら、その面においてはその通りふえておる、そういうふうに言われて、事実は事実としてこれを認められて——われわれは不実なことを針小棒大に言っておるのではございません。万全を期するというためにいささかたりともあやまちをなからしめんことのためにこういうことをやっておるのですから、逆に楽観論の論証になり得るような、そういう対比率のあげ方は適切ではない、むしろこういうような、一般的に先行き不安が見込まれておりますときには、その不安な面を生ぜぬようにお互いにこれを取り扱っていくのでなければ、われわれが別々の心で問題を論じておってもだめなんです。ところが春のとき中小企業金融については将来心配がないと言っておきながら、秋においてはやはりかれこれ一千億近い特別の手当をするにあらざれば年を越すことができなかった、そうではありませんか。だから、そういうような意味合いにおいて、事実は事実として十分その把握、認識をしながら、問題を取り扱っていかなければならぬと思います。こういう意味で、私が申し上げました昨年一月の不渡り手形の件数と、本年一月の不渡り手形の件数とは、その対比率において四二・一%増大しておるという、この実績を何と見られるか、この立場において御答弁を願いたいと思います。
  100. 大月高

    ○大月政府委員 私の過去における中小企業金融に関する答弁の態度が、中小企業の皆さんにはなはだ不親切であったというおしかりでございますが、そういうことがございましたら今後十分に注意いたしたいと思います。ただ私といたしましては、経済の現実を見まして、現実の数字をもってお答えいたしたつもりでございまして、私が銀行局長に就任いたしまして以来、中小企業金融に関しましてとりました施策は、あるいは世間において中小企業金融対策をやり過ぎたために、経済の中だるみを生じたのではあるまいかというような批判を受けておるような問題もあるような次第でございます。私といたしましては、誠心誠意中小企業金融のために努力いたしておるつもりでございまして、今後におきましても十分注意いたしたいと思っております。  先ほどお話のございました不渡りの枚数の問題につきましては、実数につきましてはお話のようなことになっておるかと思います。現在私の持っております数字から申しまして何上がっておりますか、ある程度実数は上がっておることは仰せの通りでございます。ただわれわれが手形交換の問題について見ておりますのは、経済全体におきまして不渡りの率がどういうようになっておるのか、不渡りの原因にも非常にいろいろございますが、全体として経済の動きを大観いたしますときには、経済が大きくなりますれば枚数も金額も大きくなることでありますので、全体の交換高に対しまして不渡りの比率がどの程度になっておるかということを大数観察して見ておるわけでございます。それを先ほど申し上げたような次第でございます。実数につきましてふえておりますことは仰せの通りでございます。
  101. 春日一幸

    春日委員 いずれにいたしましても、かくのごとくして企業整理の件数もはなはだふえておりますし、現実に中小企業の不渡り手形の件数、金額も増大の傾向にある。その中には中小企業が倒れていく、こういう悲しむべきむざんな事態が起きておることを心して対策を講じてもらわれなければならぬと存ずるのでございます。  こういうような背景の中において、この四月、五月、六月、いかなる金融状態になっていくかということをここで先見いたしてみますならば、今ここで予測されておりますだけでも、ただいま細田君から賛成意見の開陳の中で述べられておりましたが、四月には千七百億の財政の散超があるけれども、五月は八百億の揚超、六月は七百億の揚超、それから一−三月に行なわれた日銀の買いオペ千四百億の売り戻し、それから昨年十月−十二月に行なわれた中小企業向け三百五十億の特別買いオペの売り戻し、これが四月−六月に行なわれていく、こういうことになりますと、五月、六月の金融ははなはだ深刻になってくる。従って、新聞でもまた業界でも、さまざま論じられておるのは五月、六月危機ということでございます。それに対処するための委員会であるわけでございますが、一方においてはこういうような揚超、また一方においては買いオペの売り戻し、こういうことで、中小企業向きの原資というものは、相当ここで減少を見ることになると思うのであります。これに対する政府の施策は何でありますか、どのように準備が進められておるのか、その点を一つお述べを願いたいと思います。
  102. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいまお話がありましたように、四月から七月ぐらいの間におきましては、特に揚超、こういうところに対する対処の方策が非常にむずかしいし、また前の売り戻しという問題も加えまして、いろいろな悪条件と申しますか、そういう点があるやに見受けられるわけでございます。先ほど春日先生のお話のように、われわれといたしましても、中小企業者の方方が一軒も脱落することなく、とにかくこの難局を切り抜けられていかれるようにというつもりで、大蔵省としては一体となってこれに対処して参ってきておるわけでございます。と申しまして、全部中小企業金融だけをこれまたしり抜けにさせるというわけにも参りません。このむずかしい揚超期に対処いたしまして、実情をよく把握しながら、弾力的な対策を講じていかなければならないと思っております。
  103. 春日一幸

    春日委員 その弾力的ということでありますけれども、言うならばそれでしょうが、この際は、具体的にこの売り戻しを中止するとか、あるいはこの面に対する、他に見返える何らかの反対施策をとるとか、この具体的施策を御明示願いたいと思います。具体的に言って下さいませんか。この売り戻しの延期であるとか、あるいは別に買いオペをやるとか、あるいは三公庫に対する原資の増大を措置するとか……。
  104. 天野公義

    ○天野政府委員 今直ちにこの席で売り戻しをやめるということを言明するわけには参らないわけでございます。実情をよく把握して、そのときの情勢に応じました適切な処置を講じなければならないという腹がまえで今後進んでいきます。
  105. 春日一幸

    春日委員 それは、かれこれ概算いたしましてこの揚超が千五百億、それから日銀買いオペの売り戻しが千七百五十億、こういうことですから、言うならば三千数百億というものの原資がここで圧縮されてくるということになるのですね。何らかの措置をとるにあらざれば、五月、六月の危機というものはさらに深度を加えてくると思うのです。だから弾力性ありというのは一体どういうことなんですか。売り戻しを繰り延べるのか、あるいは新規に買いオペを行なうのであるか、それとも三公庫に対する何らかの政府の預託を行なうのか何かでなければ格好がつきません。われわれはここで政策を論じておるのでありまして、抽象論をやりとりしておるのではございません。やはり国民が五月、六月に対して、政府がこれこれの措置をとるであろうからこうだというめどを持って、そうして安心してその事業に携わることのできるように、本院はその責任を持つと思うのであります。そういう意味で、この質疑を通じて大体政府の施策の方向を明らかにお示しになることは、むしろ必要な事柄であろうと思うのであります。いかがでありますか。
  106. 天野公義

    ○天野政府委員 先ほど委員会でも大臣から御答弁申し上げておりますように、現在の段階といたしましては、国際収支見通しの問題から、また設備投資のスロー・ダウンの問題から、いろいろとむずかしい転換点に立っていると考えられるわけであります。また反面、春日先生のおっしゃるような金融のむずかしい面もそこにあるわけです。そういうむずかしい転換点という観点からいたしまして、現在売り戻しをやめるとか、また金融をこういう方面にうんとゆるめるんだとか、こういう措置をとるんだということは、ちょっと申し上げられない段階だと思うのでございます。しかし先ほどから申し上げておりますように、できるだけ落後者のないようにいろいろと配慮していかなければならないと思っているわけであります。
  107. 春日一幸

    春日委員 本委員会はそういう問題を具体的に触れておりませんけれども、そのような措置政府に求めて委員会の決議を行なっておるのであります。従って、本委員会は、国際収支の実態が何であるか知らないでこの決議をしておるのではございません。物価高の問題があり、国際収支の逆調悪化の問題があり、さまざまな問題があるけれども、そのような情勢の中においても、なおかつ中小企業の問題についてはこれこれの措置を考慮すべきであるということも、委員会が院の決議をもって政府にこのことを求めておるわけです。議会制民主主義においては、あなた方の行動の限界というものは、国会の意思に基づいて、その限界の中において、あるいはその方向に向かって執行することが許されておるのであって、国会の意思に逆行したり、あなた方の独断専行によって問題を処理することを許してはいけない。天皇制であるとか、ファッショのときであるとかいうならば、これは別でありますけれども、議会制民主主義においては、議会の決定した方向に基づいて、あるいは決定したところに従って、あなた方がその通り忠実にやるわけなのであって、失敗があれば国会がその責任を負うのです。だから国会の決議が何であろうとかんであろうと——思い上がった越権のさたであります。そういう意味で、この質問はここで的確な御回答は得られないといたしましても、現実の問題として中小企業金融がこのように梗塞をし、さらに三千数百億の原資を借りてくるというようなことであるならば、国際収支が何だろうがかんだろうが、そのことはそのこととして別途に処理しなければならぬ。血がしたたっておったら、この血をとめなければならぬ。この血をとれば国際収支がどうなるとか——血が出るのをそのまま見捨てておくなんという、そんなばかなことは許されるはずがないのは申し上げるまでもございません。国会の決定したその意思に基づいて、その方向に向かって善処されることを強く要望いたしておきます。  次は中小企業向け貸し出しシェアの確保について、特に大蔵省の銀行指導を強化してもらいたいと思うのであります。三十六年十二月末の金融機関の貸し高残十三兆八千九百七十二億、これを大企業中小企業に区分いたしますと、大企業が八兆二千六百五十七億で大体六〇%、中小企業は五兆六千三百十五億で大体四〇%です。中小企業がわが国産業経済の中に占めております度合いは、事業数が九九%とか、雇用が八五%とか、生産取引が六五%とか、圧倒的な大部分を中小企業が占めておる。占めておればそれに見合うだけの原資が必要であるはずであります。しかるに大企業の方が六〇%で、中小企業は四〇%、こういうことは厳に戒めていかなければならぬと思います。特に中小企業金融のうち、貸し出し額の割合が最も多いのは全国銀行でございまして、五二%を全国銀行から導入いたしておる。従って中小企業貸し出しシェアを四対六に逆転せしめるためには、全国銀行の中小企業向けの貸し出しを積極化する、これ以外に道はないと思われるのであります。このことは、昨年秋の臨時国会においても、中小企業金融公庫や国民金融公庫、商工中金に何がしかの財政投融資の増加をはかってみても、それは結局資金の絶対量において大したことはない。結局中小企業金融問題解決のきめ手になるものはこれらの金融機関、すなわち全国銀行を中心とする地方銀行その他の金融機関の貸し出しシェアを、いかに中小企業向けにこれを改善していくかということにある。このことは大蔵大臣もよく認めて、そういう方向へ努力すると言っておられます。こういうことでありまして、現在全国銀行の総貸し出し残高が三十六年十二月に九兆六千九百億、ここの中で大企業向けが六兆六千七百億が六八%、中小企業向けで三兆何がしで三二%、こういうことでありますから、これは何といっても中小企業金融の問題を根本的に解決するためには、まず都市銀行の大企業中小企業との貸し出しシェアというものの均衡をはかっていくの措置をとらなければならぬし、またとることによって初めて問題の根源に触れ得ると思うのです。解決がはかり得ると思うのです。この点について政府のとっております措置は何でありますか、またどういう方向へ向かって処置しようとされておりますか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  108. 天野公義

    ○天野政府委員 昨年金融をいろいろと引き締める政策をとるに伴いまして、中小企業向けの各銀行の貸し出し比率の確保ということをいろいろと行政指導でやって参ったわけでありますが、その建前は現在でも堅持をされておりまして、総貸し出しに占めます中小企業向け貸し出しの割合というものは、大体現在のところ四二%ちょっとのところで確保されておるわけであります。特に全国銀行の方におきましても、三〇%余の比率をもちまして、その貸し出し比率の姿というものは堅持されております。しかしながらその反面、中小企業向けの相互銀行、信用金庫、信用組合、また政府関係三公庫、そういう方面の資金の量というものはだんだんふえております。そういう面から、中小企業の占めます比率というものはだんだんとふえてきております。従いまして、先ほど申し上げましたような、全国銀行の方は三〇%余でありますが、全体で四二%をこえておるという結果が見られるわけであります。今後におきましても、いろいろと指導、また中小企業専門金融機関の育成をはかりまして、中小企業の融資比率をもっと増大するような方向に進めていきたいと考えております。
  109. 春日一幸

    春日委員 中小企業金融のうちで、貸し出し額の割合が一番多いのは全国銀行——中小企業の借り受けておる全額の工二%を全国銀行に依存をいたしておる。従って、今申し上げたように、この全国銀行なるものは、全国銀行自体としてどんな工合に金を配分しておるかというと、大まかにいって、大企業七〇、中小企業三〇−三二ということもありますが、かりに三〇と押えて、こういうことになっているのですね。だから今三公庫に千億や三千億や五千億出したところで、問題の根本の解決にならないのですね。だから五〇、五〇か、あるいはかりに四〇、六〇か、そういうような形にこれが中小企業に貸し出していけるように指導していく。大企業の産業資金については、社債の発行、増資によってこれを調弁していく、金融に長期産業資金を依存していくという、こういう問題は、すでに長年本委員会で論じられております通り、これは変則のあり方、変則の資金調弁のあり方である。だからわが国の産業経済金融の実態を根本的にため直しつつ、すなわち長期産業資金は社債によりあるいは自己資本による、そうして設備は金融による。運転資金なんというものは、やはりこういうような長期に、巨大に金融に依存すべきでないというオーソドックスな考え方の上に立って指導されていくならば、この三〇対七〇の対比率は大きな改善の余地があるし、そうしなければ日本の産業はいつまでたっても奇形、二重構造なんです。大企業は大きく中小企業は小さくという形になってしまうのです。ここで百ぺん論じたって問題は解決いたしません。中小企業金融公庫に幾ら金を出したってそんなものは問題になりませんよ。言うなれば陽動作戦みたいなもので、われわれの注意をそちらにそらしておいて、そうして大銀行が預金者の金でも足らざれば、日銀から借りて国家の金をどんどこどんどこ大企業に流して中小企業に流さない。私はこういう点について強力な行政指導行政指導でいかなければ法的措置もとらなければならぬ段階ではないかと思うのです。その点どう考えておられますか、天野さん。
  110. 天野公義

    ○天野政府委員 中小企業向けの融資比率をだんだんふやしていくという点については、これは当然そういう方向でいかなければならないであろうと思います。しかしながら、全国銀行のうち、大体三〇%余のものが中小企業向けに直接向いているわけでございますが、しからば残りの七〇%が大企業だけでストップをして、それから、中小企業の方に回ってこないかというと、日本経済はそういう産業形態ではございませんで、大企業の下には全部中小企業が末広がりにくっついているというのが日本の産業形態でございます。従いまして、全国銀行から大企業の窓口を通しまして中小企業の方までずっと浸透して広がっていくということを見まするならば、実際の手元に中小企業者が受けるその方の金というものを考えますと、もっとこれは広く勘定はできるはずであろうと思うのでございます。しかしながら、それは理屈というか、ちょっと窓口としては分かれておりますので、先生のおっしゃることもよくわかりますが、現在のところ、急激に全国銀行の比率をそれでは四〇にしよう、五〇にしようというわけにはちょっと参らない点があるのではないかと思います。
  111. 春日一幸

    春日委員 きわめて遺憾に存じます。失礼でありまするが、次官は金融の実態を不十分把握されていないのではないか。大企業が都市銀行から借りた金だって、中小企業に払うんだ、人件費として労働者に払うんだというようなことなら、何も問題になりませんよ。そんなことぐらいわかっております。だから、そんなようなやり方であってはならないのだ。大企業の窓口を通じて中小企業がもらうんだとかなんだとかいうことは、これは論理の外なんです。やはり独立して経営しておるんだから、下請であろうと何であろうとやっておるんだから、その事業の運営するに必要なる原資というものは、やはり金融機関というものの公共性にかんがみて、この配分比率というものは適正に措置されなければならぬという論点から私は論じておるのです。それに対して、大企業がそれだけもらったって中小企業に払うんだ、大企業がもらったってそれは全部貯金したり自分の配当にするんじゃないから、中小企業から下請関係、労働者の労働賃金に払っていくんだから、そんなことは問題になりませんよ。だから問題は、これは私が言っておるのではない。学者も評論家もみな論じておることは、この貸し出しシェアというもののアンバランス均衡あるものとするには、すなわち中小企業者というものの占めておるわが国産業経済における地位というものが、総雇用においてあるいは総生産において、総輸出において、こういう圧倒的な地位を占めておるんだから、そういうものに必要な原資というものを供給するの任務が金融機関にあるのだ。ところが今日金融独善で、結局金融機関がどこにでも、どんな工合でも融資できるという体制になって、このような偏向をもたらしたのだ。だからあなたの方の田中政調会長も、かつて新潟において、金融のこの偏向を是正することのために何らかの規制が必要だということを記者発表されたこともあるほどに、このことはわが国金融界における一つ常識にすらなっておるのですよ。そのことを今指摘しておるのです。だから、今三〇%対七〇%、正確には三二%対六八%かもしれませんが、これを四〇%対六〇%とか、四五%対五五%とか、漸を追うてあるべき姿に正していくのが大蔵当局に課せられておる使命ではないか。それをやらなければだめだ。われわれがこれを強く論ずることによって十年前に二六・五%くらいのものが三〇%、三二%に高められてきた。だから漸を追うて高められておるが、本日中小企業の置かれておる立場、さらに為替貿易自由化を迎えて、さらに中小企業においても設備の改善や、様々な原資を必要とする。だから、いろいろな意味においてそういう資金を供給せなければならぬが、それは政府並びに国会において適切な措置をとらなければならぬのだ、こういう意味でこのことを論じておるのであります。だから、今唐突に私がここで思いつきのことを話しておるわけではない。歴史がある。経過がある。だから、それを今やこの際強力な行政指導——行政指導で効果が上がらなければ、思い切って社会党の言われておる資金委員会のような制度を法律で作ってみるか、あるいは中小企業の資金確保に関する特別措置法というようなものを作って貸し出しシェアを法定するか、幾つか方法があるだろうが、とりあえず行政指導でその貸し出しシェアを高めていくための強力なる措置をとらなければならないのではないか、このことを言っておるわけです。
  112. 天野公義

    ○天野政府委員 先ほどから申し上げておりますように、中小企業向けの融資比率は、だんだんと高めていく方向で指導いたしております。特に中小企業専門金融機関の育成ということには力を入れておりまして、そういう方面の比率の高まることによって中小企業向けの、また全体の比率も高まるような考え方で進んでおるわけでございます。
  113. 春日一幸

    春日委員 時間が迫られておりますので早く参りますが、しかし大月さん、今申し上げましたように、中小企業金融問題の解決のきめ手はここにある。大企業の資金は増資や社債の発行によって補うべきである、一方社債流通市場をさらに確保したりなんかして、総合施策の中においてこの問題の解決をはからねばならぬが、長年にわたり自民党政府は、そのことをあえてしょうとはしない。大企業金融機関と保守政権が三位一体の詰託によって、本日金融天皇が依然としてわが国産業界に君臨しておる。これをすみやかに是正するのでなければ、やがて中小企業のふんまんは、どういう形で爆発するか、さらにはまた、わが国の産業経済がいびつになって、さらに不健全な形を随所に現わしてくると思うので、十分配慮あって適切な措置をとられたいと思います。  次は、中小企業向け一人当たり貸し出し限度の引き上げについてお伺いしたいと思うのであります。このほど銀行局の指導で相互銀行、信用金庫について四月から同一人に対する貸し出し限度、これは従来一千万円であったものが三千万円、それから相互銀行融資対象について何がしかの改善措置こういうような弾力条項が三つばかり定められてやられておるようでございます。これは、わが国の経済規模が拡大し、中小企業経済活動も高められてきたことにかんがみ適切な措置であろうと思いますが、だといたしますると、この際政府系三機関についても、やはりこれに歩調を合わせた措置をとれないと片手落ちになると思うのでございます。たとえば国民金融公庫は、今原則が、個人が二十万、法人が五十万、ただし書きによって製造業外幾つかの業種について、個人百万、法人二百万、こういうようなことになっておりまするが、国民金融公庫については、この際ただし書きの中に、サービス業などについても相当のものを加えていくべきではないかと思われるのであります。現在はただし書きの適用を受けておるものが洗たく業のほか六つのようでありますが、このサービス業の中でも、少なくとも理髪業だとかその他のもので、客観的に見てこれは妥当だと思われる業種が幾つかあると思う。そういうようなものはやはりこのただし書きの中に加えて、国民金融公庫の融資対象としての政策の恩恵を受けられるように改善措置をとるべきではないかと思うが、これはいかがでありますか。
  114. 大月高

    ○大月政府委員 相互銀行、信用金庫の中小企業向け貸出につきまして、最高限の一千万円を三千万円に引き上げることといたしまして、去る四月一日からこれを実施いたしたわけでございますが、これと並行いたしまして、政府関係の中小金融機関、つまり国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫につきましても、それぞれこれに準じた措置をとる方針でございます。中小企業金融公庫につきましては、まず原則一千万円でございまして、業種によりまして三千万円のもの、その他特に公共事業でございますとかあるいは炭鉱業でございますとか、特殊なものにつきましては五千万というような限度が定められておりますが、その三千万円の貸出限度に属するものを業種において追加いたしまして、民間の金融機関とつり合いをとりたいということでございます。それから商工組合中央金庫におきましても、同じく限度千万円という原則になっておりますのを三千万円に改訂いたしたいと存じます。それから、今お話のございました国民金融公庫におきましては、現在サービス業は限度三十万、五十万ということでございますか、その中には、やはり今回の措置に準じまして、限度を引き上げてしかるべき業種があるというふうに考えております。現在どの業種についてその措置をとるか検討中でございまして、検討が終わりましたならば実施いたしたいと思っております。
  115. 春日一幸

    春日委員 やはり経済成長に見合った引き上げ措置をとられることが適切であろうと思いますが、その前に伺っておきたいと思いますのは、中小企業向け個人原則三千万、この引き上げはいつごろ実施される見込みでありますか。
  116. 大月高

    ○大月政府委員 商工組合中央金庫につきましては、この五月に総代会がございますが、総代会の決定事項でございますので、それによって実施いたすつもりでございます。それから中小企業金融公庫につきましては、来週中にも実施いたしたいと考えております。
  117. 春日一幸

    春日委員 わかりました。そういたしますと、この際特に政府に要望しておきたいことは、そういうふうに個人当たりの原則、マキシマムが高められて参りますと、結局原資をある程度その点において食う面がふえると思うのでございます。従って、一千万円以下の貸出というもの、これの現在の実績が少なくとも維持できるように原資の増大を同時並行的に行なっていただかなければ、そちらでどんどん食ってしまって、小さい人は借りられなくなる面があろうと思うのであります。わが党は、特に零細業者に対しまして、商工中金にしろ中小公庫にしろ、その総資金量のうちの一定のワクを確保する何らかの法的措置をなすべきではないかと言っておりますけれども、しかし、国会はまさに終わろうとしておりまして、その機運も成熟いたしておらないようでありますから、この際は、一つ行政指導によりまして、大まかに一千万円以下の現在の貸出が大体において確保できるという態勢、当然にして原資の増大を必要とすると思うのでありますが、あわせて一つ御配慮を願いたいのであります。  次は、両建、歩積みの禁止について、これは大いに銀行局の御努力に待たなければならぬと思います。極度の金詰まりでございますために、各金融機関が両建、歩積みを白昼公然、大いばりみたいな形でまたやり出しました。河野さんが銀行局長時代に本委員会できびしく論じ、一たびは強硬な通達を出されて、これが収束したとは言いませんが、相当自粛のあった時代もございましたが、現在は市中銀行が高率適用の日銀貸出、これに依存をしましたり、ときには高利のコール・ローンを導入しておる。そうしてまた、市中金利が低いままにありますので、従って預金の吸収が困難というようないろいろな状態が重なっておりますのか、とにかく両建、歩積みということが堂々と行なわれておる。こんなことは金融機関の悪徳行為です。とにかく銀行で金を借りる。そのときにその中の何がしかを定期に承けるというばかなことが許されてよろしいか。借りた中の一定割合を預金にとるということは、明らかに彼らの自己調整によるインチキ行為にほかならない。こんなことが許されておってよろしいか。私がこの間うち二、三見聞いたしましただけでも、三千万内金を借りて定期が二千五百万円あるというのです。自分の金を金利を出して使っているようなものである。銀行の金はわずか五百万円しかない。それに三千万円の金利を払っている。こんなことでは中小企業がやっていけるはずはありません。これは明らかに悪徳行為です。これは銀行の監督というか、指導というものがよろしきを得ざるもはなはだしいものである。この点どう考えられておりますか、実態調査をされたことがありますか。
  118. 大月高

    ○大月政府委員 両建、歩積みにつきましては、従来から厳重に取り締まる方針をとっておりまして、検査のつどこれを指摘いたして是正させるように努めております。ただ、残念ながら最近のように金融が詰まって参りますと、ややもすれば両建とか歩積みとか好ましからざる事態が出る向きもあるわけでありまして、そういう点につきましては、今後とも十分に注意して参りたいと思います。
  119. 春日一幸

    春日委員 今大蔵大臣は、中小企業の金利というものは、昨年二回公定歩合を上げた、また金利を引き上げたときにもこれを据え置いたと、何か恩きせがましく特別の措置をとっているように言っておりますけれども、中小業者は金を借りるときに両建、歩積みをとられる。歩積みは大したことはないにしても、両建をとられている。こんなものは、一厘、二厘金利が据え置かれても何にもなっていない。三千万円のうち二千万円が定期で、そうして銀行の金は事実上一千万、三千万円の金利を払っておるというようなことであるならば、今低金利政策だとか、中小企業の金利の引き上げは、これを据え置くように特別措置をとったとか恩きせがましいことを言ったところで、こんなものは全然実効がありません。そういうような心配りで中小企業の金利々低位に押しとどめてあるとするならば、銀行局は当然そのような両建預金、歩積み預金を厳禁するのでなければ、政策目的というものは何ら達成されてはいないではありませんか。いかがです。
  120. 大月高

    ○大月政府委員 両建、歩積みの問題は実は非常にむずかしい問題でございまして、一般に両建、歩積みは従来慣行として行なわれておるものでございます。ただ、われわれが禁じなければならぬものは、債務者の意思に反した強制的なものでございます。そういたしますと、はたしてこれが債務者の意思によるものか、あるいは金融機関の強圧によるものかという判断は個別の問題としてなかなか判定がむずかしい、そういう点からいたしまして、実は取り締まりが非常にむずかしいわけでございます。しかし、この問題につきましては、各地に金融懇談会を設けまして、特利の問題、両建、歩積みの問題、そういう問題を含めましてお互いに自粛してもらうように、かつ先ほど申し上げましたような検査のつどこれを監督するというように極力努力をいたしておる次第でございます。
  121. 春日一幸

    春日委員 そういうことを言われておりますけれども、そんななまっちょろいことで、また銀行局長が答弁されるような筋合いの問題じゃないのですよ。たとえば借り受けた者の自発的意思によって預金するなんていいますけれども、そんなことは、貸す方と借りる方と、みずから優位な立場にある者が、預金してくれれば貸そう、さもなかったらどうということになれば、借りたいことのあまり、みずから不利になることを泣く泣くしんぼうして、そうして膨大な定期を預かっておるのが現実なんです。この間総理参議院で答弁されておったと思うのでありまするが、今、問題は、この金利の問題ではない。資金量の問題なんですね。現実に中小企業者はある一定の限界金額を借りたい、それだけの金を借りるためにはこれだけの定期をやらなければならない、だからこれだけの定期をやるためには貸出総額というものはこれだけ膨張せざるを得ないということで、とにかく必要の度を越えて大きな金を借りて、そうして必要限界までこれを定期で差っ引かれてしぼられておって、そうして金利だけはその表面金額を対象として支払わされておるのです。現実に金融機関が金を貸す場合において、当然中小企業者からは担保をとっております。担保の過大徴求、過小評価、これはすでにここで論ぜられておるところです。その上、この両建をとっておるのです。これはあなたの方が銀行調査、検査で云々と言っておられますけれども、そのときこれが本人の自発的意思か、あるいは強制のものか、どうしてこれを見分けることができますか。担保をとっており、担保の実体を評価してそうして貸出金額と比べ合わせて、そこに別に定期があったならば、これは明らかに両建預金である。そういうようなものはどんどん手きびしく処置したらどうですか。しかし、あなたの方では、処置する何ら権限がないのじゃないですか。法的根拠はありますか。何もないとすれば、これは何らかの法的措置を講じなければならぬと思う。全然実効が上がっていない。中小企業に対する低金利政策なんというようなことを言ったって、あれはめちゃくちゃですよ。両建預金と歩積み預金で、そんなものは日歩二銭六厘だとか、二銭六厘五毛だとか、いったって、三銭、三銭四厘、三銭五厘、幾らもあるですね。みんな担保を出しておる。担保は担保として、定期は定期として中小企業経済力をこの面において拘束しておる。私はこの金融機関のあり方は非常に悪らつだと思う。これは今にして本委員会がこれを粛正するにあらざれば、日本経済というものは萎縮しますよ。中小企業というものはいつまでたっても伸びることができません。大企業との間のこの格差はさらに増大していくばかりです。いかが考えられますか、天野さん。
  122. 天野公義

    ○天野政府委員 先ほどから銀行局長が申し上げておりますように、両建、歩積みはできるだけやらないようにという指導をいたしておるわけでございます。しかし、最近そういうような傾向が小しふえておるということも事実でございます。今後も両建、歩積みはできるだけないように検査も厳重にし、よく行政指導もして参りたいと思います。
  123. 春日一幸

    春日委員 伺いますが、それは行政指導か何かで、両建はいかぬ、歩積みはいかぬという何か権限が銀行局にありますか。法的根拠ありとすれば、御説明願いたい。
  124. 天野公義

    ○天野政府委員 両建、歩積みはいかぬという勧告をいたしておるわけでございます。
  125. 春日一幸

    春日委員 あなた方、そういう勧告をする権限がありますか。法的根拠がありとすれば、その法律の名前を……。
  126. 大月高

    ○大月政府委員 行政指導でございますから法律上の強制力はございませんが、銀行行政としては、その他いろいろ指導をやっております。その一環としてやっておるわけでございます。
  127. 春日一幸

    春日委員 問題は各位もお聞き取りの通り、その権限がないのです。要するに金融無梗塞といって、金融機関というものは、やりたいと思うことは何でもやれる態勢になっておる。ここにこのような、何と申しましょうか、経済道義というものをじゅうりんした悪徳が白昼横行しておる余地が、そういう規制を行なわないことによって確保されておる。まことに悲しむべき状態でございます。これは大蔵委員会のむしろ盲点とも称すべきものであろうと思います。われわれは、この点について何らかの規制をしなければならぬということを強く提唱しておるのでありますが、なかなかそこまで政府が歩んでこない。遺憾しごくに存じますが、これはいずれ世論の喚起と相待って、何とか処理をしなければ、歩積みはいかぬ、両建はいかぬといって行政指導するというけれども行政指導などというものは、少なくとも行政機関に法律の根拠がなければ執行し得るものじゃない。執行しようと思ったって相手が聞きやしません。現に聞いておりません。だから借りれると思うのです。幾らでも借りられる。大企業とそして金融機関との結託によって、系列融資、偏向融資がかくのごとく大きく行なわれておる原因の根源はここにございます。これは各党が十分にこの点御注目願っておるところであろうと思いますけれども一つすみやかに適切な措置をとって、このようなインチキ行為が許されることのありませんようにお願いしたいと思います。  次に、相互銀行の金利について申し上げます。これはまた、大体法律によりますのか、業務方法書の許可、認可によりますのか、とにかく貸出金利は三百万をこえる部分は三銭以内、五十万以上三百万円以下は日歩三銭二厘、五十万以下が三銭四厘あるいは三厘になっておるそうですけれども、これは非常に問題が多い。特に相互掛金契約に基づく給付利回り、これは実際的には二割以上になる、あるいは三割近くなるのではないか、こういうことがいわれておるのでございます。中小企業が二割何分というようなばかげた金を使っておっては成り立つはずはありません。だから中小企業は、相互銀行で要するに相互掛金契約に基づく給付利回り、こういうもので大へんな金利負担をやっておるのです。だからこれはすみやかに残債式に切りかえなければならぬと思う。これは一体どうですか。われわれはここでこの問題を三、四年前にも強く論じておった。今なおこの問題の処理がなし得ていないということはどういうことですか、伺います。
  128. 大月高

    ○大月政府委員 相互銀行の金融機関に比べまして、相当高いということは事実でございまして、これが社会的にもやはり相互銀行の金利は高いというようにいわれております。これは相互銀行業界自体としても、競争上必ずしも有利でもございませんし、われわれ、中小企業金融立場からいたしましても適当でないということで、逐次貸出金利の低下をはかっておるわけでございます。現に昨年の金融の引き締め以降におきましても、相互銀行、信用金庫の貸出金利は逐次低下の趨勢にございまして、合理化によりまして、その金利を下げるよう努力をいたしておるわけでございます。それから残債式の問題につきましては、お話のように、大蔵省といたしまして、全部これを残債式に切りかえるという方針のもとに指導いたしておるわけでありまして、現に大多数の相互銀行がこの切りかえを終わっております。残りのものにつきましても経理の許す限り、早急に切りかえるという方針で全部をこの制度に切りかえたいという方針で進んでおるわけでございます。
  129. 春日一幸

    春日委員 相互掛金契約に基づく給付利回り、これは今申し上げましたように年二割五、六分、もっとになるかと思うのです。これはもう合法的な両建制度みたいなもので、こんなことでは、とてもとても中小企業の経理採算が保ち得るものではございません。幸いにだんだんと切りかえが行なわれておるようでございますが、すみやかに一つ的確に処置されることを強く要望いたします。  次に相互銀行と信用金庫とがコールにめちゃめちゃに金を出しておるようです。いろいろ調べてみますと、相互銀行では四百十七億、これはコール・ローンの二百四十億、金融機関貸付、コール・ローンにおぼしきものが百七十七億、それから信用金庫ですとこれがさらに大きくなって千三百十六億、その内訳はコール・ローンが四百十八億、金融機関貸付八百九十八億、これは一体何ですか。中小企業金融が梗塞しておるといってやかましく訴えられておるときに、こんなコールに金を回したり、金融機関にコールに見合うような形で金を貸し付けたりしているのは一体どうしたことなんですか。一体どういうわけなんですか。銀行検査の中でこれをどのように把握されておるのですか。
  130. 天野公義

    ○天野政府委員 おもな部分は支払い準備金でございます。
  131. 春日一幸

    春日委員 むろん支払い準備金はそういうふうに回しておるのですけれども、そういうものを回すならば、もう少し的確にこれを早期に回収し得るような流動性のあるもので、これをやはり中小企業金融本来の使命を果たすことのための原資として活用すべきじゃありませんか。短期の貸付だってできるだろうし、そういう契約のもとに多多ますます弁ず、中小企業だって、一カ月で返してもらいたいとか、あるいは三週間で返すという条件なら借りる人だってあるでしょう。コールや、コールに見まがう金融機関の貸付というところにこんな巨大な金を流しておいてようございますか。大きな金額だ。両方で千五百億以上だ。こんなものは中小企業金融の原資として活用すべきだ。
  132. 大月高

    ○大月政府委員 現在相互銀行及び信用金庫からコールに出ております計数は、先ほどお話のございましたように、相互、信金合わせまして千億程度のものが出ておるわけでございます。しかしこれは現在、金融機関といたしまして大蔵省の指導のもとに支払い準備を充実さすということをやっておるわけでございます。支払い準備はコール、それから預け金、有価証券、こういうようなものに運用されておるわけでございまして、この支払い準備が欠けるということになりますと、金融機関の預金の支払いに支障を来たす、こういう意味で、むしろわれわれといたしましては、支払い準備を充実するという指導をいたしておるわけでございます。逆に、それでは中小企業金融機関としての金融に支障があるではないかということだと思いますが、御存じのように最近信用金庫、相互銀行におきましては貸出限度を引き上げましたほか、支払い準備率については若干これを縮減してもいいという指導をいたしまして、中小企業金融の方に重点的に金を回すように指導をいたしておるわけでございます。そういう意味で、一般にこのコールに出ておる金を中小企業金融に回したらどうかという御意向がございますけれども、ある程度の支払い準備は確保せざるを得ないという立場から申しますと、特に不当に多額のコールを出しておるというようにも見ておらないわけでございます。現に相互銀行の資金量が一兆四、五千、信用金庫におきましても一兆をこしております。そういたしますと、合計いたしまして二兆五千くらいの資金量を持っております中の千億でございまして、そういうような関係からわれわれは見ておるわけでございます。
  133. 春日一幸

    春日委員 支払い準備率を低めたり、いろいろな方法によって、さらに改善の措置がとられるとのことでございますが、いずれにいたしましても、今信用金庫や相互銀行がそういう巨大な金をコールに動かして、またコール・レートを相当かせいでおるというこの事実は、事実として重視しなければならぬ。そういうような方向へ半長期にまたがって金が出ていっておるのでありますから、そうだとすれば、それは何らかの特例を開いて、流動性のある運営の仕方によって本来の使命を果たし得るような措置をはかることが必要にして当然の措置だと思うのです。これは大いに御検討の上、そういうような非難に彼らが身をさらしておくことのないように、そしてそういうような行為によってばかげた金利かせぎをするようなことのないように、十分指導に完璧を期してもらいたいと思う。  それから最後に、日銀資金を相互銀行、信用金庫に導入する道を開け、これは数年来私どもが強く主張したことでありますが、現在市中銀行は、金融が逼迫したときには日銀の金を導入しております。ところが信金や相互銀行がその道がないということは明らかに片手落ちです。資金量でも、今お話しのように一兆数千億という膨大な資金量のワクの中において、こういう金融活動をしておるといたしますならば、これはもはや明らかに国家の機関である。そういうような公共的性格を的確になっております金融機関に対しては、これはやはり国家として、これに対する助長育成の措置というものが同時並行に講ぜられていいと思う。市中銀行は日銀から金を導入できる。同じ金融に携わっておって、相互銀行や信金がその措置がない。私はある一定のワクを設定して、やはり機会均等の措置をとるべきであると思うが、この点について政府の方針はいかがですか。
  134. 天野公義

    ○天野政府委員 日銀から金を借りるという取引は今のところやっておらないわけでございますが、日銀に預金をいたしましたり、日銀と取引しますと、国庫業務ができますから、そういう意味合いの日銀取引はだんだんと広げつつあるわけであります。そういう判断は大体信用の問題でございまして、日銀にこれを御判断願うことになるのではないかと思います。
  135. 春日一幸

    春日委員 当然それは日銀の自主的な判断ということに最終的には相なるではありましょうけれども、しかし国庫業務の取り扱いだって、本委員会でしばしば論じ、世論を高めることによって日銀をしてそのことを踏み切らしめたり、いろいろな経過もあるわけです。ですから、中小企業に対する特別ワクを日銀で設定し、これらの金融機関に国家的性格の資金を導入するの道を開くべしとの世論が、日銀をしてそのような決定をなさしめる大きな要因になると思うのですよ。だから、大蔵省は日銀としばしばそういう金融政策について話し合われる機会が多いのであるし、わけてまた大蔵省から日銀政策委員も送られておるのだから、日銀がやることだというようなしろうとじみたことを言わないで、そういうものを通じて中小企業金融機関を育成強化していく、そしてその課せられておる使命を完全に果たし得るような保護育成の道もあわせて講じていく。悪いことは断じてこれをやめさしていくが、いい面は助長していく、こういうことをやってもらわなければだめじゃありませんか。そんなことは日銀がやることだからわしらは知らぬというとぼけたことを言っておっては、何のために日銀政策委員を送っておるのか、わけのわからぬことになってしまうのではないのですか。もっとしっかりやってもらわなければいかぬと思うのですが、いかがですか。
  136. 天野公義

    ○天野政府委員 先ほど申し上げましたシステムにおける日銀取引の窓というものは最近広げまして、日銀がいろいろ調査をされまして、信用金庫なり相互銀行等の信用のあるものから、取引をどんどん今やっておる段階でございます。いずれ先生のおっしゃるような方向にこれが成長していくのではないか。また私どももそういう方向が助長されることを期待をいたしておるわけであります。
  137. 春日一幸

    春日委員 以上、私は当面いたしております中小企業金融に関する重大とおぼしき数点について、政府に適切な政策を要請いたしました。特にその資金量を増大し、これを確保するための措置、特に六月ごろには相当の危機が迫るであろうと予測されておるから、楽観しないで万全の措置をとれということ。ないに越したことはございません。あったときには、犠牲者が出るのでございます。  それから、両建、歩積みの問題は、ほんとうに目に余るものがあるのです。私はこの際全国の財務局を通じてとにかく一ぺん調べていただきたい。私は本委員会が国政調査によって金融機関を調べることをむしろ提唱したいくらいです。銀行検査官がどういう調査をされておるか知りませんけれども銀行局長の答弁によると、大したことはないようなことで、まことに案外なんです。今市中で中小企業の怨嗟の的は、両建預金のことに全く集約されております。よくこの点について実相をきわめられて、中小企業金融が円滑に事が運ぶように、こういうような問題についても金融機関の横暴を是正することのための、悪徳行為を排除するための適切な措置をとられたい。同時に、今申し上げましたような特別融資ワクの設定なんかは、これは当然あり得ていいことだと思います。これは機会均等の原則が当然これらの中小企業関係金融機関にも適用されてしかるべきである。私はこれらの事柄を強く要請いたしまして私の質問を終わります。
  138. 小川平二

    小川委員長 次会は明七日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      ————◇—————