運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-04-19 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十九日(木曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 平岡忠次郎君    理事 堀  昌雄君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       大久保武雄君    岡田 修一君       金子 一平君    久保田藤麿君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       永田 亮一君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    古川 丈吉君       坊  秀男君    吉田 重延君       井手 以誠君    大原  亨君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       廣瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       横路 節雄君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         食糧庁長官   大澤  融君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         日本開発銀行副         総裁      平田敬一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十九日  委員久保田鶴松君及び武藤山治辞任につき、  その補欠として井手以誠君及び横路節雄君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補欠として大  原亨君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大原亨辞任につき、その補欠として武藤  山治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十八日  演劇入場税撤廃に関する請願鈴木茂三郎君紹  介)(第四一〇三号)  在外財産補償に関する請願池田清志紹介)  (第四一九〇号)  同外八件(久野忠治紹介)(第四一九一号)  同(加藤高藏君紹介)(第四二五六号)  同外五件(橋本龍伍紹介)(第四二五七号)  同外九十一件(上村千一郎紹介)(第四三〇  六号)  同外十件(浦野幸男紹介)(第四三〇七号)  同外六件(江崎真澄紹介)(第四三〇八号)  同外四件(小澤太郎紹介)(第四三〇九号)  同外二十四件(海部俊樹紹介)(第四三一〇  号)  同外七件(佐伯宗義紹介)(第四三一一号)  同外十二件(田中伊三次君紹介)(第四三一二  号)  同外二件(田中龍夫紹介)(第四三一三号)  同(竹内俊吉紹介)(第四三一四号)  同(中垣國男紹介)(第四三一五号)  同外九件(丹羽兵助紹介)(第四三一六号)  同(船田中君紹介)(第四三一七号)  同(森下國雄紹介)(第四三一八号)  同外二十一件(早稻田柳右エ門紹介)(第四  三一九号)  同外四件(中野四郎紹介)(第四三七九号)  同外十二件(藤原節夫紹介)(第四三八〇  号)  同外三件(増田甲子七君紹介)(第四三八一  号)  同外七件(愛知揆一君紹介)(第四四二〇号)  同外十件(大村清一紹介)(第四四七七号)  同外七十六件(橋本龍伍紹介)(第四四七八  号)  同(木村俊夫紹介)(第四四九三号)  同外四件(長谷川峻紹介)(第四四九四号)  同外三件(小沢辰男紹介)(第四四九五号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第四五九三号)  国税通則法制定反対及び所得税控除額引上  げ等に関する請願北山愛郎紹介)(第四一  九二号)  国税通則法制定反対に関する請願横山利秋  君紹介)(第四一九三号)  同外八件(佐野憲治紹介)(第四三〇三号)  国税通則法制定反対に関する請願湯山勇君  紹介)(第四一九四号)  旧法による共済組合年金の増額に関する請願(  広瀬秀吉紹介)(第四一九五号)  国税通則法制定反対及び減税に関する請願外  四件(佐野憲治紹介)(第四三〇四号)  同(西村力弥紹介)(第四三〇五号)旧令に  よる共済組合等からの年金制度に関する請願(  臼井莊一君紹介)(第四四七六号)  同外九件(辻寛一紹介)(第四五〇四号)  大村水田住宅一、二区等の無償払下げに関す  る請願金子岩三紹介)(第四四九二号)  公認会計士法の改正に関する請願愛知揆一君  紹介)(第四五九二号)  農業用ガソリンの免税に関する請願外四件(床  次徳二君紹介)(第四五九四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会  議に付した案件産業投資特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出第五七号)   ────◇─────
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、産業投資特別会計米国の対日援助見返資金特別会計から継承した資産は二千二百九十四億、こうなっておりますが、今度四億九千万ドルの金を返す、利子を入れて五億七千万ドルを返す、こういうわけですが、これは予算委員会並びに外務委員会政府の方から、総体の援助額の約三分の二を切り落として三分の一に見合う金額だ、こういうように言われておるのですが、この米国の対日援助見返資金特別会計以前の金は幾らだったのですか。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 貿易会計時代金額でございますか。
  5. 横路節雄

    横路委員 二十四年三月以前のものです。二十四年三月以前にも政府の方ではガリオア・エロアについては、相当多額の援助資金がきている。こういうわけだから、見返資金特別会計から産投への継承だけははっきりしているが、その前は一体幾らだったのか、その金額を聞いているのです。
  6. 宮川新一郎

    宮川政府委員 見返資金積み立て以前の援助額は八億四千五百五十三万二千八百六ドルであります。
  7. 横路節雄

    横路委員 この金は全然産投に積み立てられていないのですが、この金はどこへ行ったわけですか。
  8. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の三月末におきまして、貿易資金特別会計の現金上の収支は約四億円の赤字になっておりますが、そのほか資産推定いたしますと、約三百八十億でございます。これは二十四年三月末の貿易資金特別会計で持っておりました援助物資あるいは債権というようなものでございまして、これはその後できました貿易特別会計事業費勘定に引き継いでいる。従いまして、その後二十五年にできました見返資金処理特別会計の方には入っておらぬことになっておるわけでございます。
  9. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今のお話貿易特別会計の金は二十五年ですか、できました米国の対日援助物資処理特別会計には入っていないわけですね。二十四年三月以前のものは今、宮川局長お話によると八億ドルという。これは日本の金に換算して幾らになっているものでしょうかね。その点が一つ。  それから八億何千万ドルという金が今伊藤次長の話によると、推定三百八十億だという。一ドル幾らに換算するか、これから聞かなければならないが、その差額はどこに行ったものですか。その点について一つ宮川さんから……。
  10. 宮川新一郎

    宮川政府委員 ドルで八億四千五百万ドルでございますが、当時レートがいろいろございまして、単一レートでございませんので、円で幾らになりますか、非常にこまかに計算いたさなければ出てこないわけであります。
  11. 横路節雄

    横路委員 それでは恐縮ですが、産投特別会計の最終的な審議の段階で、この金の中から二十四年三月以前のものを払わないのならばいいですよ。二十四年三月以前のものを払わないならば私は聞きませんが、二十四年三月以前のものも払うわけです。八億四千五百万ドルが一体幾らの金になっているのか。当時円とドルとの関係は複雑だからと言うのですが、複雑でもかまいませんから一体どれだけの金になっているのか、これはぜひお聞かせいただかなければ、この審議はちょっと進められないのですね。ぜひ一つお聞かせいただきたいと思います。
  12. 宮川新一郎

    宮川政府委員 御指摘のように見返資金積み立て以前の援助額もございますけれども、これらを合わせまして、援助債務といたしましての四億九千万ドルといたしまして、その支払い財源を見返資金が設置以後積み立てました金をもって支払う、こういうことにいたしておりまするので、ただいま横路先生指摘円換算額そのものは、支払いには直接関係ないと存じております。
  13. 横路節雄

    横路委員 しかし宮川さん、大蔵大臣もお聞きいただいているのですが、二十四年三月以前のものについて今度の四億九千万ドル、二分五厘の利子を入れて五億七千万ドル、二千八十五億ですか、その計算基礎が二十四年三月以前のものについて計算がなければいいのですよ。前には今の農林大臣河野一郎氏は二十四年三月以前のものはこれは打ち切るべきだ、こう言っておるのです。当時の吉田総理もそうだと大体同意をしているのだから、そのことがきょうここで確認されれば、私は聞きませんけれども、二十四年三月以前のものも払うのですよ。それなのに八億四千五百万ドルというのは円に換算して幾らなんですか、こう聞いたら、それにお答えしていいじゃないですか。複雑なら複雑でいいです。複雑なように答弁していただければいい。私の方はゆっくりお聞きします。これはぜひお聞かせいただかなければならない。複雑だからなんと言ったって、われわれだって複雑だって聞いていますよ。
  14. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の四月に一本レート三百六十円が決定されるまでは円・ドル交換レートはございませんので、それ以前につきまして八億四千七万ドルが何円になるかということは計算はできないと思います。当時の軍票と円との交換レートもございますけれども、これは実勢を反映するものでありませんし、また為替レートが一本化されておりませんので計算することはできないと考えております。
  15. 横路節雄

    横路委員 そんなことはないんじゃないですか。去年の予算委員会でたびたび問題にしましたが、あなたの方から私の方に——今ここにも資料を持っていますよ、「主要品目円ドル比率——ドルに対する円価値」というのです。あなたの方の八億幾らという計算は何でやったんですか。一々あるじゃないですか。私のところに出していますよ。読んでみますか。二十四年一月末、繊維のみ二月一日現在、輸出繊維製品綿糸二百五十円、生糸四百二十円、人組織物三百円とずっと出ているじゃないですか。これでやったら当然八億四千五百ドルというのは、輸出入の関係からいって、ドルと円との関係でどうなるかということはわかるはずじゃないですか。私の方に去年出してあるんですよ。あなたお出しになって、去年前の通産大臣のとき立ち往生して、あなたよく御存じのはずだ。私持っているんですよ。ただ私の方でも一々この数量は何の品目について何だということはわからぬまま——あなたはこの間から何べんも答弁しておるのじゃないですか。大きな倉庫の中に入って、何十万冊だかあるのを一々全部調べたという、八億四千五百万ドルというのは一体どれだけの円になるのか、一つ一つ品目の円とドルとの関係が、複数レートにしろ全部きまっておるじゃないですか。だから幾らであったのか、こう聞いているんです。
  16. 伊藤三郎

    伊藤説明員 この二十三年八月あるいは二十四年の初めの資料でございますが、当時は先ほど申しましたように為替レートはございませんが、輸入物資につきましては、国内で売却しましたものの値段というのは、輸入したドル建とは関係なく、当時の公定価格基準として決定いたしております。また輸出につきましても同様に円、ドルレートはございませんので、輸出物資につきましてはマル公基準とした価格で買い上げをいたしております。それとFOBドル建価格を比較すると、今横路先生の言われたような数字が出てくるわけでございます。また輸入につきましても、輸入物資CIFドル建価格国内販売価格計算いたしますと、今横路先生の言われたような数字になるわけであります。一品ずつそういうようにやればあるいは出るかもしれませんが、相当な労力、時間を要することと思うのであります。当時の参考としましては、当時二十四年の三月以前に国内輸入物資につきまして売り払いました金額が約千四百九十五億円になっております。これは援助物資だけではなく、当時の商業物資も含めたものでございます。当時の数字でございますが、これは司令部経済科学局の統計であります。十七億四千万ドルになっております。十七億四千万ドル物資輸入いたしまして、それを国内に売り払って千四百九十五億円になったということが言えると思います。
  17. 横路節雄

    横路委員 今の伊藤次長の御答弁の中でちょっとふに落ちないことがありますね。それは相当時間がかかるからちょっとやれなかったというお話だが、これは今国会で証認を求めて、とにかく国の金をもって二千八十五億を払うのですから、相当な時間がかかっても詳細な資料を出してもらいたい。八億四千五百万ドルというのは、円にすると幾らかは計算はしてないわけですね。今お話は、二十四年三月までの輸入が十七億四千万ドルあった。しかし、あなた知っておるように、当時のドル勘定円勘定とは別なんですから、円がないのですから、円とは縁もゆかりもないということですよ。縁もゆかりもないものをあなたの方で無理にこじつけて出すからこういうことになるのです。十七億四千万ドル輸入された。それが貿易資金特別会計に千四百九十五億円積み立ててあったといっても、それはドルと円との関係にはならない。こんなことでもってここで答弁して、円とドルとの関係がいかにもあるようなことを言われては、ちょっとうまくないですよ。八億四千五百万ドルについては全く緑もゆかりもないというのか、そこはどうなんですか。それとも時間をかければ出せるというのか、その点はどうなんです。
  18. 伊藤三郎

    伊藤説明員 八億四千七百万ドルに相当する物資国内売払代金計算いたしておりません。先ほど横路先生言われましたように、十七億四千万ドル国内での売払代金の千四百九十五億円というのは、円・ドル比率という意味では関係ないわけでございますが、先ほど申しましたように、十七億四千万ドル相当の物資輸入いたしまして、それの売払代金が千四百九十五億になるということが言い得るというふうに申し上げたのであります。
  19. 横路節雄

    横路委員 そこで、産投特別会計から支払いをするというのに、二十四年三月以前のものも含めて払うわけですね。その二十四年三月以前のものが一体円に換算して幾らになるかということが全然不明のまま支払いをしていくというのはおかしいじゃありませんか。その点、この産投について二十四年三月以前のものをも含めて支払いをするということについては、かりに政府の立場に立っても、これは国民の理解を求めることにはならないと私は思う。  その次、八億四千七百万ドルというのは、大蔵大臣、これはどう聞いても私よくわからぬからきょうはあらためて大蔵大臣にお聞きをしたいのですが、日本に来た指令書というのですか、仕切書というのですか、品物の通知書というのですか、これには数量も書いてなければ金額も書いてないわけです。数量は書いてあるのもあるし、ないのもあるようですが、金額は全然響いてない。その金額が全然書いてなくて、しかもドル勘定円勘定とは全く縁もゆかりもない。今お話によりますと、十七億四千万ドルで千四百九十五億だというのですが、八億四千七百万ドルならば七百億を割るわけですね。こういうようなものについては全く仕切書には金額が書いてない。円とドルとは全く関係がない。日本政府には何ら知らせられていない。しかもそのものは、政府政府との間できちっとそういう書類についての受け渡しをしたものでもない。言いかえたならば、向こうが勝手に投げていったものだ、御丁寧に政府の機関は、その倉庫に入って、払おう払おうと思って一生懸命になって相手方のそれに合わせている。円とドルとは無関係なんです。日本が受け取った指令書その他には金額は書いてない。政府政府との間にも、そういう指令書についての受け渡しの確認をしていない。こういうものをどこでどう探したのかわかりませんが、八億四千七百万ドルというのは、それはどういう計算でやったのですか。それを一つ大蔵大臣にお尋ねしたいのです。
  20. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはもう横路さんが御承知の通り最初貿易を一本で管理しておりませんでしたために、商業物資援助物資の区別はついていないという管理の仕方をやっておりましたので、日本側に正確なことがわからなかったのは当然でございますが、しかしこのガリオア・エロアの最後の解決ということになりますと、一応米国からの援助総額がどのくらいあったかということを私どもは確認する必要はどうしてもございますので、そのために向こうの言う援助総額というものと、こちらはそれを商業物資との混同もございましたので、ほんとう援助物資向こうの言う通り総額になるかどうかということを、私どもとしては確認する必要がございますので、それで司令部が残しておいた資料を、これは非常に時間をかけて一つ一つ点検して、これは援助物資である、これは商業物資であるという伝票そのほかによってみんなこちらで仕訳をして、そしてこの金額は大体幾らかという推定も、国際価格そのほかから推定をして、大体自分たちが確認できる援助総額はこれくらいだということをまず私どもはきめて、これを交渉の基礎にしたということでございますので、やはり私どもとしては、額の推定はこれはやむを得ませんが、ほんとう援助総額幾ら日本は見るのが至当であるかというこの作業だけはやらなければなりませんので、相当年数をかけて、これをきょうまでやってきたということでございます。
  21. 横路節雄

    横路委員 今の大蔵大臣お話によりますと、二十四年三月以前のものは推定金額ですね。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは事実は通産省がやってくれましたから、私の答えが間違っておったら訂正をしていただきますが、今申しましたように、円とドルとのそういう関係はございませんから、物資によってこれを幾らと評価したら至当であるかということは、通産省としては、これは推定で大体やったのではないかと考えられます。
  23. 横路節雄

    横路委員 それでは、日本側会計は、貿易資金特別会計の内容はどうなっていたのですか。これは伊藤さんですか、宮川さんですか。
  24. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の三月末でございますが、収入決算が三千七十九億六千万円余でございます。それから支出の累計が三千七十五億一千九百万余でございます。
  25. 横路節雄

    横路委員 ちょっと数字がふに落ちないですね。伊藤さん、あなたは先ほど二十四年三月までの、いわゆる貿易上の商業輸入援助物資を入れて十七億四千万ドル日本の円に換算して千百九十五億ですね。そうするとこれは二十四年三月までの輸入総額を円に換算してでしょう、貿易資金特別会計も、これは国内に対する売払代金あるいは今度は輸出代金、支出した代金ということになるが、円との関係は三千七十九億ということになると、あまりにも違いませんかね。今ちょっと聞いているだけでは非常に数字が合わないじゃないですか。もう一ぺん言いますけれども援助物資代金商業物資代金も入れて十七億四千万ドル日本の円に換算してあなたは先ほど千四百九十五億だと言った。今それが三千七十九億になるのはどういうわけでしょうかね。
  26. 伊藤三郎

    伊藤説明員 ただいま申しましたのは、貿易資金特別会計収支でございます。そのうちに含まれております輸入物資の売り払い収入は千四十億でございます。従いまして、先ほど申しました千四百九十五億との差がございますが、これはまだ当時の貿易公団で手持ちしておる物資あるいは売掛金になっておるようなもの、これを含めまして、実際に物資として売り払いましたものの金額を言ったわけでございます。さらに三千億との差でございますが、輸出物資関係で、輸出物資輸出ができなく、国内に売り払ったものの収入とか、あるいは貿易外収入もございますので、そういうものを全部トータルいたしますと、三千七十億になるわけでございます。
  27. 横路節雄

    横路委員 その中には日銀からの借入金だとか、その他もあるわけでしょう。それは幾らになっておりますか。
  28. 伊藤三郎

    伊藤説明員 借入金が四百三十五億円ございます。
  29. 横路節雄

    横路委員 これはなおあとでよくお尋ねしますが、大蔵大臣、今お聞きのように貿易資金特別会計のときの収支決算で、日本銀行からの借入金が四百三十五億ある。この日銀の四百三十五億はどういうように始末しましたか。
  30. 伊藤三郎

    伊藤説明員 四百三十五億と申しましたのは、借入金が何回もございますので、その累計でございます。二十四年の三月末の借入金の残は二百六十二億円でございます。これは二十四年以降にできました貿易資金特別会計事業費勘定から返済をいたしております。
  31. 横路節雄

    横路委員 そうすると、それは貿易特別会計から返済している。  それじゃ一つ大蔵省に聞きたいのですが、どうも私たちドルと円との関係がはっきりしない。そこでアメリカが遺留していった一つ一つ指令書を見て、その全体の金額計算して推定が含まれているが、それで八億四千七百万ドルときめたようですが、アメリカの総司令部の中にはちゃんとドル勘定があったわけでしょう。アメリカ司令部の方にある勘定はどうなっているのですか。もう一ぺん申し上げますが、あなたの方で遺留した一枚々々を計算したと言うが、アメリカの総司令部の中には外貨勘定があるわけですね。その外貨勘定についてはお調べになったのですか。見せてもらったのですか。全然それにはノータッチなんですか。
  32. 伊藤三郎

    伊藤説明員 当時米側で管理しておりました外貨勘定の内訳は見ておりませんが、ただ当時司令部が管理しておりましたのは日本側商業物資輸出勘定でございます。援助物資日本側の持つべき外貨からは支払わないわけでございまして、米国陸軍省予算から支弁されております。援助物資はその外貨勘定とは関係がないというふうに考えております。
  33. 横路節雄

    横路委員 そうじゃないでしょう。これは大蔵省が一番最初に出しました昭和二十四年度の「国の予算——その構造と背景——」です。今の総理池田さんが、これはまことにりっぱなものだとほめて書いてある。これは伊藤さん、あなたの関係でなければ何もあなたが全部答弁しなくてもいいのですよ。宮川理財局長でもいいし、この勘定銀行局長になるのかあるいは大蔵大臣になるのか。今あなたは、商業勘定、いわゆる民間貿易というようなそのものだけを取り扱っていたと言うが、そんなことはないですよ。宮川さん、あなたは専門家だから、総司令部の中にあった外貨勘定の方はどうなっていたのですか。おわかりですか。
  34. 宮川新一郎

    宮川政府委員 当時私も関係しておりません関係もございまして、司令部外貨勘定がどうなっておったかということは、つまびらかにいたしておりません。
  35. 横路節雄

    横路委員 あなたの方でもお持ちのようだから、伊藤さん見ていて下さい。二百九十八ページに「外貨勘定は概ね次のとおりと伝えられる。(1)商業勘定米国及び英国の5商業銀行に設定せられたGHQ名儀の預金勘定であり、民間貿易が再開して後外貨勘定の主流をなすものである。即ち弗及び磅領域に対する輸出代金は(政府貿易民間貿易を問わず)本勘定に振込まれ、之に依ってGHQの直接調達にかかる輸入物資買付代金を賄う。本勘定ドル勘定とポンド勘定に分れるが、後者は年2回の決算期にその貸借尻をドル勘定で清算する。」こうなっている。当然十九億四千七百万ドル輸入総額なんです。八億四千七百万ドルというのは輸出の分を差し引いてのことだろうと思うのです。これはただ私の推測するだけです。そうすれば当然総司令部の中に商業勘定というのがあって、輸出代金は本勘定に振り込まれているというのだから、今度の総額十七億幾らかとやった場合にはどうなっているのか、これが一つ。  それから、その次(2)には「オープン勘定」(3)には「綿製品勘定輸出入回転基金、貿易代表食糧回転基金等がある。(4)更に、米国政府の対日援助勘定としてガリオア及びエロアの再勘定がある事は周知のとおりである。」こうなっているわけです。そこで、私はこの前から政府側の答弁を聞いていると、膨大な資料倉庫に入って一枚ずつ調べた、そのことも大事です。しかしそれをするならば当然総司令部の中における商業勘定その他の勘定についてどうなっているのか、こういうことでなければ私は政府側の答弁としては当を得ていないと思う。今、大蔵大臣が言ったように、あくまでもこの十七億幾らというのは推定なのですから、当然、あなたの方で私たちの方にこの間出してきた、アメリカ側としては日本に十九億幾らだというが、その中におけるそれぞれの外貨勘定はどうなっていたのかという点については今までお聞きもしていませんでした。私この間聞こうと思っていたのですが、機会がありませんでしたから、きょうあらためてお聞きをしたいと思うのです。総司令部内の外貨勘定。特にわざわざ大蔵省でお出しになっている「国の予算」昭和二十四年度「その構造と背景」の中に詳細にわたって書いてある。だからアメリカと折衝されたのでしょう。その詳細の内容についてここで明らかにしていただきたい、こう思うのであります。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 今の問題は最も事情に詳しい者からお答えしてよろしゅうございますが、私どもが折衝に当たった場合の態度でございますが、この間外務委員会でちょっと述べましたように、とにかくはっきりしておるのは、この見返資金勘定が設定されてからでございますので、その以前の問題にはいろいろな問題があるために、債務を確定する場合に、もしも見返り資金勘定が設定される以前の援助にまでこの返済が及ぶというようなことがあったら、これは私どもとしても問題でございます。従って、私どもの交渉態度は、全体の債務性は認めるにしても、これを確定債務にする場合には、少なくとも見返資金に積み立てられている金額以内において解決するというのがやはり私どもの考え方でございましたし、同時に米国側もこの点は十分に承知しておりまして、やはり交渉の両方の態度が一応そういうことになっておりました関係で、私どもはまず援助の総額をとにかく確定していくこと、向こうが十九億幾ドル、私どもとしては推定も入っておりますが、十七億何千万ドルまでは大体確認するというので、日本側の確認数字基礎に交渉して、しかもそういう計算の上ではいろいろ差引がありますし、日本の債権も差し引くというようなことではございますが、全体としてこの以前の問題に日本の債務が及ばないという態度の交渉で妥結したのでございますから、私は今いろいろはっきりしない要素を持ったこの以前の問題の検討というものは、このガリオア協定についてはそうえらい意味を持っていないというふうに考えておりますので、この点を長くやっておっても、これは実際にこちら側の資料がある程度推定であるということはもう外務委員会でも真相がはっきりしておるのでございますから、その点は御了承願いたいと思っております。
  37. 横路節雄

    横路委員 今の大蔵大臣の御答弁は、今まで外務委員会予算委員会総理並びに外務大臣または大蔵大臣が御答弁されていたのとは、著しく内容が異なるわけです。私は、今、大蔵大臣の御答弁を聞いていて、考え方が総理や外務大臣とは非常に違う、こう思った。それは今あなたはどういうふうにおっしゃったかというと、二十四年三月以前のものははっきりしていない、そこでこの支払いをするにあたっては、二十四年四月以降積み立てた見返資金特別会計のワクの中で支払いができるようにおさめたのだ、だから二十四年三月以前のものについてとやかく言うことはおかしいではないか、こういうお話であった。そうするとあなたのお話は、総額幾らあったが、それぞれ意見は違うが、とにかく支払いは二十四年四月以降の見返資金特別会計に積み立てたもののワクの中でやるようにしたんだ、こういう意味は、二十四年三月以前のものはどうもはっきりしないから、あれは切り捨てたのだ、総額だけは乗せたが、返済のときには切り捨てたのだ、こういうようにも受け取れるわけです。ところが外務大臣は、今まで西ドイツの例をとられて、総体の金額で三分の二を切り落としたのだ、こう言う。この点はずいぶん違う。この点ははっきりしておいていただかないと……。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 いや、それは違いません。日本側が確認できる総額というものを基礎にして、外務大臣の説明されたように日本の債権と見らるべきものの差引、それから西独方式をも考慮した切り捨て方というような、あの方式によって妥結したのでございますが、私どもの方の妥結の腹がまえについて、これは御承知のように向こうの返済についての要求というものはもっと大きい数字でございましたが、私どもはどこまでこれを支払うということにして交渉するかという、交渉のただめどとか態度とかいうようなものは、この交渉とは別に——外務大臣の説明したような形の交渉で妥結したのですが、妥結するにしても、私どもはやはり一定のめどというものは、方式いかんにかかわらず、これはいろいろな意味から持ってもいいものでございますから、従ってこれ以前に及ぶような金額のものには応じないというような一つのめどを持って臨んだということを言っているだけでございまして、外務大臣の交渉によって、ああいう計算によって確定したということは事実でございますので、これはそれによってきまったことでございますが、今度はわれわれ財政当局としましては、同意する額についての差引の性質上の問題とは別に、いろいろのことを考えておりますので、私どもがこれに臨むときの腹がまえというものをただ述べただけでございまして、それが実際にはそうなったのだということでございますから、そういう観点から見ますと、この以前の問題というのは、それほど重要性のない問題じゃないだろうかと私どもは考えております。
  39. 横路節雄

    横路委員 二十四年三月までのものがはっきりしないという場合の交渉に基づいてやれば、かりに確定してあるのは、二十四年四月以降の対日援助見返資金特別会計の八億四千幾らですか、これがよく政府が自慢する三分の一方式でやれば四億九千万ドルでなくて、二億八千万ドルぐらいで済むかもしれない、あるいは韓国の輸出代金その他を引けば、政府側の計算によっても、これは四億九千万ドルでなくて二億ドルを割るかもしれない。だからそういう意味で、私はこの産投特別会計法の一部改正の法律を審議するにあたっては、二十四年三月以前のものは、政府側の言い分によっても、はたしてこれは確定した債務かどうかということは、非常に大きいのですよ。だから二十四年三月以前のものを私が今ここで論議をすることは、何かいたずらに審議だけ延びるといったような——大蔵大臣は必ずしもそうおっしゃったわけではないでしょうが、われわれにはそういう印象として受け取れるお話ですが、この点は、政府の立場に立ってやっても、二十四年三月以前のものは、私どもは債務ではないと思っておる。債務ではないという法的なものについてはこれからやります。  そこでこれはどうしても大蔵省にお尋ねしなければならぬ。倉庫に入って、別に契約したものでもない、引き渡しの覚書を交換したものでもない、遺留していったものを自分が一生懸命調べて、これだけあるのだというならば、一体総司令部の中にあった外貨勘定はどうなっていたのですか、こういうことぐらいは明らかにしていただいていいと思うのです。今私の方でも出所を明らかにしたのだから、司令部の中のそういう勘定についてはどういうようになっていたのか、この点については国会にぜひ明らかにしていただきたい。まだだれも聞いていないのです。
  40. 宮川新一郎

    宮川政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、外貨勘定は、司令部が管理いたしておりまして、その実態につきましては不明でございます。しかし昭和二十四年の十二月に三百六十円換算で七百三十四億円に相当する外貨が蓄積されておりまして、当時新設されました外国為替特別会計に繰り入れられております。
  41. 横路節雄

    横路委員 私が聞いておるのは、とにかく二十四年三月以前のものについては、政府の方でみずから倉庫に行って一つずつ当たった、それほど調べたというならば、司令部の中の外貨勘定はどうなっていたのですかということを聞いておるのです。これはぜひ産投審議にあたって出していただきたい。それを全然しないで、向こうが勝手に遺留していった、残していった、ぶん投げていったものを、それを御丁寧に調べてこれだけある、これだけあるというならば、向こう外貨勘定はどうなっていたのか。わからなかったら、大使館を通じてアメリカの国務省に問い合わせてもらいたい。アメリカだって返してもらうのだから、それくらいのことは日本の国会に、大蔵省か外務省を通じて明らかにしてもいいのです。大蔵大臣、私たちの方で要求をすれば出すのですよ。あなたの方も、一体アメリカでは幾らなのだということをやっとこの間予算委員会で出したのです。いつ出したのかと聞いたところ、昭和二十九年に出してある。アメリカの方から日本政府は、昭和二十九年六月に受け取っておる。それをやっと大使館から向こううの国務省を通じて了解を得たんだから、そうすれば、この外貨勘定についてもぜひアメリカ大使館から国務省を通じて当時の外貨勘定の内容について出してもらいたい。きょうおいでなのは大蔵大臣だけですから、大蔵大臣、どうでしょう。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっきお話ししましたように、約二億ドル外貨の引き継ぎはやりましたが、帳簿の引き継ぎをしてなかったということでございます。
  43. 横路節雄

    横路委員 ですから大蔵大臣、協定が衆議院を通って参議院に行ったからといって、産投特別会計法の一部改正が通らなければ、金の支払いができないのだから、ですからアメリカの方だって、日本政府に対して十九億四千万ドルですかの内訳について出した、それも私たちが何べんも要求してやっとこの間、三月の国会で出してきた。政府に聞いてみたら、二十九年六月にアメリカから渡されているという。それをアメリカ大使館から国務省の了解を得てやっと出すことになったというのだから、これは最後の段階ですから、ほんとうは私この前からお尋ねしようと思っていたのです。それはぜひ一つ大蔵大臣からアメリカ大使館を通じて国務省に、このときの外貨勘定について出してもらいたい。そうでなければ、円とドルとは無縁なんですよ。そのことが国会の審議を進める上で大事じゃないですか。また政府みずからとしても、当時の総司令部内における外貨勘定がどうであったのかということを全然知らないで、やみくもにただ遺留してあった資料で、ただ一枚ずつ計算してみたらそうなったというだけでは、私はだめだというのです。
  44. 小川平二

    小川委員長 この際、三十分間休憩いたします。    午後零時八分休憩    ────◇─────    午後三時十八分開議
  45. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  先刻の横路委員の御質問に対し、政府より答弁を願います。福田為替局長
  46. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 調査いたしました結果をお答え申し上げます。昭和二十四年十一月一日に貿易特別会計におきまして仮受外貨口として司令部より引き継ぎました金額が、ドルで一億三千五百万ドル、ポンドで千九百万ポンドでございます。これを円に検算いたしますと、ドルについて三百六十円、ポンドで千八円で換算いたしますと、四百八十五億円でございますか、これはすべて預金の形で引き継いだものでございます。その内容でございますが、何勘定とか正確ではありませんが、大体商業勘定に属すると認められますものと、それからテキスタイル・アカウント、繊維勘定と認められますものとからなっておるのでございます。従って、ガリオア・エロア口というものは円でございまして、また引継ぎの対象とはなっておりません。その後におきまして、この六百八十五億円はかりに仮受外貨口として引き継いでおったので、その後司令部におきますあとの事務処理の結果、かなり出入りがございまして、たとえばオープン・アカウント等につきましては、相手国の承諾を得た上で逐次引き継がれて参りました。それらをプラス・マイナスいろいろ経過がございまして、七百三十四億円というものがこの関係の最終の処理に相なっておる次第でございます。
  47. 横路節雄

    横路委員 私がお尋ねをしたのと今のお答えとではだいぶ趣旨が違うわけです。今のお話は、いろいろ出入りがあったが最終的には七百四十二億というのですから、約三億ドル近いものです。ところが先ほど宮川理財局長からのお話ですと、二十四年三月までにガリオア・エロア援助物資資金が八億四千七百万ドルだという。私の方でお願いをしたのは、八億四千七百万ドルというのが、それは一体どうしてわかったのだ、こう聞いたら、伊藤企業局次長の方から、向こうが遺留したものについて一枚々々当たった結果だ。それならば、ドルと円とは、円については貿易資金特別会計ドルについては総司令部の中にあったわけだから、一枚々々仕切書について計算をしたというのであるならば、当然相手方アメリカ政府に対しても、二十四年三月までの総司令部内にあったいわゆる外貨勘定について明らかにされなければならないのだ。そこで八億四千七百万ドル援助したというが、一体どういう勘定の中にどういうようになっていたか、一体アメリカに対してそういうものを要求したのかどうか、要求したことがあるのかないのか、あったとすればなぜ国会にそれが出ていないのか、こういうことを先ほど午前中にお尋ねをしたわけです。そのことをお尋ねをしたので、今の為替局長のような御答弁を実は期待をしていたのではないのです。その話はまるきり違うのです。どうして大蔵省の方でそういう御連絡をなすったのか、ちょっとおかしいじゃありませんか。
  48. 宮川新一郎

    宮川政府委員 先ほどお答えいたしましたように、司令部が管理しておりました外貨勘定商業物資輸出入等を処理いたしておったものでございまして、商業勘定の出超分が司令部外貨勘定として日本側に引き継がれたわけであります。その額が、先ほど私が答弁し、また次長が答弁いたしましたように、七百三十四億でございます。これはガリオアとは関係ないわけであります。しかしながら、外貨勘定がどういう内訳になっておったかという御質問でございましたので、日本銀行と打ち合わせいたしまして、ただいま為替局長が答弁いたしたような結果になったわけであります。なおアメリカとの交渉につきましては、外務大臣から御答弁があろうかと思いますが、累次根拠になるような資料の提出方を求めたのでありますが、援助額全体を返してもらうのじゃないのであるから、まあ一つ資料の提出は勘弁してもらいたいということであったようであります。
  49. 横路節雄

    横路委員 午前中から私がお尋ねをしているように、二十四年三月以前のものは、総司令部内における外貨勘定と、それから当時貿易庁でございましたが、貿易資金特別会計円勘定とは関係ないわけです。だから私は、政府の立場に立っても、二十四年三月までのものは——これはほんとうは法理論的な話はあとで外務大臣にちょっとお尋ねをしますが、返済すべきではないのではないか。それを政府の方で、一一御丁寧にアメリカの遺留したものについて、一万冊ですか、どんなにか若労しただろうと思うのですが、一々当たってみて十七億幾らだというならば、またアメリカ昭和二十九年六月の第一回の交渉のときに出した、この間私ども予算委員会で要求をして出しました一九億ドル幾らというものについては、そういうアメリカ司令部内におけるドル勘定の中に——先ほど引用しました二十四年の大蔵省発行の「国の予算」によりますと、いろいろその中に書かれている。だから遺留した資料について計算をしたならば、確かめるという意味からいっても、総司令部内におけるガリオア・エロアの両勘定というものはどうなっていたのか、そういうものについては当然政府の方でアメリカ政府資料の提出要求なり何なりをすべきであったろうと思うわけです。そこで、午前中お聞きをして、あなたの方で調べるからというので待っていたのですが、私どもの希望したのと違うわけです。この点は外務大臣どうなっていたのですか。全然交渉なされなかったのか。交渉しても向こうで拒否をしたのか。今宮川局長の話によると、どうせお前らは全部返すのではないだろうから、適当に返すのだろうから、そのものは出さなくてもいい、こう言ったように今答弁をしておりますし、その点はどうなっておりますか。
  50. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 このガリオアの問題は、他の機会に申し上げたように、何回かアメリカ側から督促があったわけでございます。これは昭和二十七年から始めまして、御承知のように、二十八年の池田・ロバートソン会談、それを受けて二十九年の交渉、これは五月から十月までやったわけでございます。そのときも、こちらとしては非常に公式な立場から資料要求したのでありますが、なかなか資料が出てこない。その後事あるごとに督促を受けまして、やはりこういう問題を長くほうっておいたのではいけない。しかも督促があったのでやむを得ず日本政府の方が折れて払うというのではいけない。むしろわれわれから積極的に払うべきものと考えておったのでありますから、幾ばく払うかということを一つ交渉してきめようということで話を出したのであります。そこでわれわれの方としてはあくまで資料を要求したわけでございますが、アメリカの方は、総額が十九億五千四百万ドルになるのだ、こういうわけでございます。しからば、資料が出ないならわが方でやった資料を認めるかと言ったら、それは認めますというので、十七億九千余万ドルというわが方の計算したものをアメリカが認めたのであります。その他いろいろな資料も督促したのでございますけれども、またこれは大蔵省宮川局長から申し上げた通りでございます。先方が言いますには、その資料要求はわかるけれども、あなたの方の資料を全部われわれは認めておるのだ、しかもそれ以上のものをわれわれは要求しないということにしているのだ、そこで意味がないじゃないですか、またそうおっしゃっても、どうしてもわれわれが出さなければならぬということになると、アメリカのカンサス州にある陸軍の倉庫に入っておった、それは大へんな手数なんだけれども、それを一々突き合わせると日本の言い分が不利になるかもしれない、だったら、日本の言い分をまるまるのむのですから、資料の提出はかんべんして下さい、こういうことだったので、私どもはそれに応じまして、今御提示申し上げ御審議願っているような四億九千万ドルというものをはじき出した、こういうことになっております。
  51. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、午前中おいでにならなかったから、大蔵大臣のこの場所における御答弁をお聞きにならないのでそういうお答えだと思うのですが、大蔵大臣は午前中こう言ったのです。二十四年四月以降の金額、それが産投が受け継いでいる。その中でガリオア・エロアにおける返済ができる。言いかえたら、二十四年三月以前のものについては——大蔵大臣のお答えもはっきりしませんでしたが、二十四年三月以前のものについてはまああまりこまかく言わない、こういうことで二十四年四月以降のものの中で返済できるようになったのだ、こう言っているわけです。この意味は二十四年三月以前のものは、これは大蔵大臣、あらためて御答弁していただいていいのですが、大蔵大臣の御答弁だとわれわれの推測するところによると、二十四年三月以前のものはどうもあまりはっきりしたものではない、まあ二十四年四月以降のものの産投に継承しているもので払う、そのワクの中にとどまったから、こういう意味のことだった、二十四年三月以前のものについてはあまり確定したものではないのだ、こういう大蔵大臣のお考えと、二十四年三月以前のものも全部ひっくるめて確定した債務なんだということでは、だいぶ違うわけなんです。それで私の方ではお尋ねをしたわけなんです。これはもう一ぺんお尋ねしますが、外務省としては正式に二十四年三月以前のものについて、総司令部の中にガリオア・エロアについての両勘定、あるいは輸出代金についての商業勘定——今の為替局長の話だと、どうも輸出代金の方の関係商業勘定のようにしか受け取れないが、ガリオア・エロア等の総司令部内にあった勘定等については、その明細等について外務大臣からアメリカ大使なりに出すようにという要求をなすったのかどうか、全然まだしたことがないのかどうか、その点についてお答えをいただきたい。
  52. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 交渉の過程でいろいろそれを申しましたわけでございます。しかし、先ほどお答えしたように、自分の方はこれは非常に大へんなことであるし、日本が出してこられたものをのみます、こういうことでございますので、さようなことに落ちついたわけでございます。何かこれは通産省の御関係と思いますけれども、私ども伺っておりますのは、通産省のお考えは二十四年以前が八億何がしかだというのですが、アメリカはその期間が十一億何がしだとこう言っておるわけです。しかし通産省の考え通りにしたわけでございます。まあ私の方としては通産省で調べられ、また大蔵省で言われるそれをまとめまして、先方に交渉するわけでございます。その立場からは十分いたしたつもりで、先方には資料要求もいたしたわけであります。
  53. 横路節雄

    横路委員 今の外務大臣の御答弁でちょっとはっきりしない点は、アメリカ政府としては日本政府の十七億幾らでもってこれをのむ、こういうふうに言うのであるならば、当然これは、すでに参議院に回っていますが、ガリオア・エロアの返済協定については総額十七億幾らと明記しておかなければならぬ。これが明記できなかったということは意見の一致を見なかったからではありませんか。今私がそれをとやかく言うわけではありませんが、そうすると外務省としては要求したけれどもアメリカ側としては出さなかった、こういうわけですね。この点だけははっきりしておいてもらいたいと思います。
  54. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 その点はさようでございます。はっきり申し上げておきます。ただ一言申し上げますのは、アメリカ側は十九億五千四百万ドルと言い、わが方は十七億九千十万ドルと言っておったわけであります。その点ははっきり向こう資料が出てくれば、あるいはわが方はふえたかもしれません。しかし結果的には向こうの言い分から見ると、最終的にきまった四億九千万ドルというものは、先方の言い値の四分の一で払って、あとは引いてもらった、こういうことになったわけであります。
  55. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私がこのことをお尋ねしているのは、先ほども午前中にここで話をしましたが、二十四年三月までの貿易関係は、たとえば輸出については、板ガラスであるとか鏡であるとか、セルロイドであるとかいうものは一ドル六百円の換算なんです。こういう換算で輸出品がいわゆる買いたたかれているわけなんです。だからそういうわけで、私は総司令部内におけるドル勘定というものが一体どういうものであったかということは、本来からいえば、この交渉に当たって当然私は資料の要求をして、その提出を求めておやりになるのが当然である。こういうように思ってお尋ねをしたのです。特に数字が十九億幾らと十七億幾らで違うのですから、こういう点は特に、複数レートというよりは、一つ一つ品目について、こういう違いがあるわけであります。ですから当然資料要求をなすったその上でやられることが私はしかるべきであったとこう思うわけであります。  次に、これはどなたにお聞きをしたらいいのか、宮川さんがいいのかもしれませんが、このアメリカで十一億ドルともいい、日本で言えば八億ドルともいうこの金が、実際には先ほどお話のように、残った金は幾らでしたかね、三百四十何億でしたか、先ほど数字をちょっと忘れましたが、一体十一億ドルといえば、一ドル幾らの換算になっておるか。この膨大な金が一体どこに使用されているのか、極端に言えば全然なくなっている。こういう点は伊藤さんの方ですか。
  56. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年の三月末の貿易資金特別会計資産は約三百八十億円であります。このほかに、外貨勘定としての出超分の残があるわけでございます。円としては一応三百八十億円の資産があったわけであります。それにしましても八億ドルなりあるいは十一億ドル相当の物資については、形の上では相当分が残っていないではないかという点でございますが、当時の日本の物価体系がどういう形であったか、御承知の通り食糧品あるいは基礎資材というものについては割高に輸入物資を売り払っておりますし、また輸出品が雑貨とかそういうものが主でありまして、どうしても手間がよけいかかるというようなことから、貿易公団が買い上げます場合に、比較的割高に買い上げをいたしております。そういうことから貿易資金特別会計輸出入について価格調整の作用をしてきたというふうに言えるだろうと思います。一体何億円が輸入補給金になりあるいは輸出補給金になったかということは計算上非常に困難で、できないと思いますけれども、ただ一例として申し上げまして、一ドル三百六十円のレートがきまりました面前の昭和二十四年の二月二十一日の例でございますが、貿易庁が農林省の食糧管理局に売却した小麦、これを幾らで売っておるかと申しますと一石当たり二千二百二十四円二十六銭で売っておるわけでございます。これを今回通産省援助総額を算定するにつきましては、二十三年度の小麦は一ロングトン当たり百一ドル、一石当たり十三ドル六十五セントという計算をいたしておりますので、それを両方の比率をとりますと、一ドル百六十二円九十七銭ということになるわけでございます。従いまして、当時の貿易資金特別会計としましては、小麦を一ドル当たり百六十二円の換算で売っておるということになるわけでございます。あと数カ月しますと三百六十円のレートがきまったわけでございます。かりに、ちょっと早いのですが、三百六十円というレートがあったとすれば、百六十二円ということで、二百円近くのものを貿易資金特別会計で負担をして、これが輸入補給金の働きをしたということになるわけでございます。こういうふうに、具体的にある程度のものを、しかも三百六十円のレートのきまります直前のものを出すことはできるのでありますが、全体についてどういうふうな作用をしたかということを数字的に出すことは、実は非常に困難でございまして、できないのではないかというふうに考えております。
  57. 横路節雄

    横路委員 二十四年三月までの日本からの輸出総額は一体幾らになっておりますか。それからあなたの方で計算をした輸入総額幾らになっておって、その輸入総額のうちで、商業輸入幾らで、ガリオア・エロア援助資金による輸入幾らなのか、ちょっとその数字をお答えいただきたいと思います。
  58. 伊藤三郎

    伊藤説明員 二十四年三月以前の輸出入の数字でありますが、これは司令部経済科学局の統計によるわけでありますが、輸出が六億五千四百万ドル輸入が十七億四千万ドル輸入のうち商業物資輸入が五億四千三百万ドル援助物資が十一億九千七百万ドルでございますが、十一億九千七百万ドルに相当する通産省計算が八億四千七百万ドルになるわけでございます。
  59. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣に私は産投会計の問題でここで一つ申し上げたいのですが、今お話がございました二十四年三月までの輸出は六億五千四百万ドルである、これはこの前外務委員会でわが党の井手委員から質問しましたように、当時の国際価格の大体二分の一から三分の一の間で買いたたかれています。これは具体的な数字井手君から外務委員会指摘した通りであります。私も前に予算委員会指摘した通りであります。これを二分の一で買いたたかれるとすると、これを約二倍にしてみると約十三億ドル輸出になる。三分の一で買いたたかれた。何も日本からべらぼうに高くは買ってないでしょう。普通の値段で買って、売るときは二分の一ないし三分の一の価格で売っているのです。それから輸入について今十七億六千万ドルというお話がございましたが、しかしこれは援助十一億ドルのうち約八億四千万ドルというのですから、これは会計年度などの違いかもしれませんし、いろいろ物資の違いかもしれませんが、これは、今この金については、貿易資金特別会計のときの約八億ドルになる金については、輸入輸出価格調整金といいますか、補給金に使ったのではないか。大体これは非常に高い中間マージン、運賃、それから国際価格を上回っておる価格、これはおそらく八億ドルというのは通産省の方で当時の国際価格をはじいた数字だろうと思うのです。十七億ドルというのは、だから援助資金十一億ドルが八億ドルになったのです。これは私も全部ははじきませんでしたが、一つずつ当たってみて、アメリカの当時の価格というものは司令部で出してきた価格が当時の国際価格よりも高いです。だから十一億ドルが八億ドルになったのです。だから十七億ドルについては大体これは七割程度に見るのが正しいのです。そうすると十七億の七割ですから、そういう意味では、まずこの二十四年三月までの輸出代金六億五千四百万ドルが大体十三億ドルくらいの価値がある。それから輸入の十七億六千万ドル政府みずからはじいた援助物資資金十一億ドルが八億四千七百万ドルとはじいたように、大体これは七割くらいの見方をするのが正しい。七割から七割五分、そうするとここで輸出輸入はとんとんになっているのです。もしも正常な貿易であれば、輸出輸入はとんとんなんです。だからこのときとんとんで一応アメリカもちゃんと得しておる。特にこの場合は片貿易なんです。だから、輸出輸入はそういう意味では正常な国際価格を両方ともとればとんとんなんです。だから二十四年三月までのものは、そういう意味でも払うべきではない。これが今回は四億七千万ドル利子を入れて二千八十五億ですか、こういう基礎計算の中に入ってくるということは、まず、産投特別会計から払うことが二重払いかどうかという前に、二十四年三月以前のものについては、そういう意味でこれが正常な貿易、正しく国際価格を使っておるならば、これは輸出輸入とんとんであった。この輸出輸入の差額を持ってきて、これを二十四年三月以降の八億ドルにプラスをして十九億ドル幾らだという、私は少なくともそういうアメリカ政府日本政府に対する要求というものは不当です。そういう意味で私ども産投から払うことは、二重払いだという前に、二十四年三月までのものは正常貿易であればとんとんなんです。これをここでとりわけアメリカの要求の十一億ドル——日本政府としてはこの点について八億四千七百万ドルを少なくとも援助物資資金として入れておることは大きな間違いなんです。——この点はぜひ一つ私の方から明らかにしておかなければならぬ、こう思って大蔵大臣お話を申し上げておるのですが、何か大蔵大臣、私のそういう考え方について、いやお前の方が違っておる、こういう点があれば伺っていいですし、これは私の意見ですから、お前の意見として聞いておこうというならそれでけっこうです。それでは次に移ります。この考えは産投から払うことが二重払いだという前に、すでに二十四年三月までのものが正常貿易であればこうでないのです。この点は私は少なくとも外務省がもっと冷静に判断をしてやるべきだったと思う。通産省でさえ十一億ドルは八億ドルとはじいたのだから、それは全部向こうの不当価格について国際価格に合わせてやった計算なんです。それは今まで予算の分科会その他を通じて明らかなんです。  次に小坂さんに、どうしても一つお尋ねしておきたいのですが、私は政府——話は産投のちょっと前に戻りますが、私はどうもあなたがガリオア・エロアについてこれは債務なんだということについてアメリカははっきりしておるというのはどこかというと、あなたがよく引用するスキャッピン、一八四四−A、食糧輸入について一般指令に関する総司令部覚書、その一番最後に、支払い及び経理の条件は後に決定するものとする。小坂さん、これはあとに決定する。払えとは書いてない。棒引きにもします。われわれが人に金を貸した。しかしこれは取らないかもしれない、取るかもしれない、ということがあるかもしれない。しかし、あなたの方はこれをもってただ一つの手がかかりとしておる。これだけですよ。今までのあなたの国会の答弁を私もたんねんに調べてみたが、これだけでもって、あなたの方は支払い及び経理の条件は後に決定するというこの一九四六年七月二十九日のスキャッピン、一八四四−A、食糧輸入について一般指令に関する総司令部覚書、これだけをもとにしておる。きょうは私に与えられた時間はだいぶ前でたっておりますから、私の方では意見を言って、あなたの方から答弁をしてもらいたい。この支払い及び経理の条件はあとに決定する。だからこれは債務なんだということにはならない。あとには要らないというかもしれない。これだけをもってあなたの方は債務だといっておることが非常に間違いなんです。さらに連合軍最高司令官としての、こういう覚書を出したのであるならば、当然これは平和条約のときに講和会議のときまでが有効であって、講和会議が終わってから、なお、支払い及び経理の条件は後日決定するというのはいつまでも生きているものではない。これがあなたの言う通り債務であるというならば、連合軍最高司令官としてのいわゆる絶対的な命令書であるというならば、なぜ講和会議のときにこれがきまらなかったか。講和会議のときにこれがきまらないものが、なんで一体これがあとになって債務ということに、これが有効であるということになるのですか。この点はみんな言っているのですよ。外務省は払いたくてしようがない。小坂さん耳が痛いことでしょうが、みんなが言っていることです。外務省は払いたくてしようがない、大蔵省や過疎省は何とか手控えたい。外務省だけがとっとこ、とっとこ先にいって払いたい、これだけをあなたの方でまるで後生大事にしてこれだけが絶対有効な債務であるというような考え方は間違いです。もしあなたの方でこれが有効であるとしても、講和会議のときにこれが最終的な決定がなされるべきであって、講和会議のときに最終決定がなされない。先ほどあなたの答弁でも池田・ロバートソン会談はたしか昭和二十八年十月ですから、講和会議よりはるかあとになっている。この辺の経緯を、あなたはこれだけを引用している。この点についてあなたの方からもっとはっきりその間のいきさつを明らかにしてもらいたい。
  60. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 債務性のある援助であったということについては、予算委員会でもいろいろ申し上げたように、今お述べになりましたスキッャピンのほかに先方のいわゆるガリオア予算を組みますときの証言というようなものもあげたり、あるいはわが方としては昭和二十四年において国会で阿波丸協定をなされまする際に、付属了解事項として決定されております戦後の対日援助すなわち日本に対する借款及び信用は日本に対する有効な債務であって、アメリカ政府の決定によってのみ減額し得るものと了解するというこの了解事項、すなわち債務であると了解する、こういう事項等について申し上げたわけでございます。  そこで講和会議のときなぜ決定されなかったかということでございます。この点に対しましては横路さん御承知の通り、講和会議というのは日本アメリカの間のみでなくて、五十何カ国を相手にして日本と結んだ講和会議でございます。その間において日本アメリカの問題のみを処理するということは適当でないということが一点。それから日本としましてはあの講和会議が行なわれました当時の経済状況からすれば、どういう金額を決定されるかもわからぬ、しかもわれわれの方において十分な、独立した国としての交渉能力がないその時代において、その決定を交渉するということは不利であるということ、そういうようなことから、講和会議には出さないけれども、あとでこれを始末をつけようということになっておったわけでございます。従いまして、講和会議の終わりました直後に、マーフィ・アメリカ大使から岡崎当時の外務大臣にあててこの決定を申し入れがございました。今申し上げたようにそれを受けて池田・ロバートソン会談があり、そして交渉したわけでございます。その当時、これは参議院の委員会でも申し上げたのですが、アメリカが言っているのは七億二千万ドル程度のものであったわけです。その後いろいろ経緯がございまして、アメリカは六億四千万ドルというのよりおりてきたことはなかったわけでございます。そういうようなことで、アメリカはただという気持は終始言っておりませんし、のみならずそういう六億四千万ドルということを主張しておったわけでございます。  そこで私ども考えまして、これはいつまでもこっちが逃げておると——これはある方に言わせれば出世払いという御議論もあるようですが、日本も相当出世したのでありますから、この際、いつまでもいろいろな人が行くたびに言われて、この問題は日本国内で非常に影響の大きい問題だからその話は伏せておいてくれというようなことで逃げ回っておる、これではどうもこれから日本アメリカとの間にいろいろな対等な交渉をしていかなければならぬという場合に、これはガンになるおそれがある、やはり払うと約束したものについてはずばりと払って、しかもこちらから申し出て、そしてこちらの金額で大いに先方に譲歩せしめて払う方が、どうせ払わなければならぬということであるならば有利である、かようなことが私どもの判断であったわけでございます。従来からこれは話し合いによってはゼロになるというきっかけでも多少でもあるならまだしも、六億四千万というのが向こうの最低だということがずっと出ておった問題でありますので、私はこの際これをケリをつけた方がよろしい、こう判断したわけであります。
  61. 横路節雄

    横路委員 あなたの方で、去年の四月ですか、あなたが外務委員会で初めてスキャッピンの一八四四−Aを出して、食糧輸入についての一般指令に関する総司令部覚書、その一番最後に支払い及び経理の条件は後に決定するものとする、とあるから、債務と心得ているのだ、こういうようにあなたがこれのみを引用している。今阿波丸について私から言いますが、これは今言ったように、支払い及び経理の条件はあとで決定するというのは、あれはただなんだよ、こういうことだってあり得る。個人関係だってそうじゃないですか。これを使っておきなさい、こういって、使った、そうしたらそれじゃただですよ、こういう場合もあるでしょう。そのうちの十分の一だけ返してくれという場合もあるでしょう。これだけをもってあなたの方で後生大事に、総司令部が覚書でこのことを言ったから、これが有効な債務なんだということは、明らかに私はあなたの方の言い方としては間違いであると思う。特に今あなたから阿波丸の問題を出されましたが、阿波丸についてもう一ぺん言います。  阿波丸のどこにそんなことがありますか。阿波丸を日本の債務であるということを言うのは、法理論的にも非常な間違いです。この了解事項のとき——読んでみますと、昭和二十四年四月十四日了解事項「占領費並びに日本の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国が米国政府に対して負っている有効な債務であり、これらの債務は、米国政府の決定によってのみ、これを減額し得るものであると了解される。」なるほどそうなっている。一体ここで借款というのはどうなんです。借款は、協定を締結して総額を明記して、返済方法を明記してやるのではありませんか。だからこのときの日本に領されている当時の借款というのは約三億八十一万ドルで、このうちには農務省の占領地物資計画、二番目には輸出入銀行借款、財務省の余剰資産、復興金融会社占領地物資計画、こういうようになって、当時の金ですでに元本の回収で利子を含めて二億八千九百四十一万四千ドルになっている。返済したのですよ。三億八十一万ドルのうちで、この借款については、今私が申し上げた二億八千九百四十一万四千ドルは返還した。そうして残の千百三十九万二千ドルについては、五十一年のたしか六月になって事実上返している。だから今あなたの言う阿波丸におけるところの「占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款」借款はそういうことになっている。事実、協定をして返している事実、五一年六月には返している。何もこれはガリオア・エロアの援助ではない。  一体信用とは何ですか。信用とは延べ払いではありませんか。一般に債務と弁済との間に隔離の存する取引により生じた関係または取引自体、こういうことになっているではありませんか。そうするとこれは、信用とは延べ払いなんです。一般に債務と弁済との間に隔たりのある取引により生じた関係または取引自体だから、どこに一体——この信用についてはっきりと債務であると確定して、それが延べ払いになっているからあとで払うんだということになるのですよ。これははっきりと、借款はきちっとなっている。こういう点について、ただ吉田さんが国会でガリオア・エロアについては払うんだ、こう言ったからそうなんだということにはならない、この協定からだけでは。  こういう点を、阿波丸の協定の了解事項のそれのみをもって、これが日本の有効な債務である、こういうことにはならないのです。だからこの間私の指摘をしたように、何でしたらここにありますから、もう一ぺん読んでもいいですが、二十四年の四月、たしか十四日、対日援助見返り資金特別会計法案がこの大蔵委員会にかかったときに、今の総理大臣の池田さんは、当時大蔵大臣として答弁している。そのときにこれは債務であるとか債務でないとかいうことは何にも言ってない。一言も言ってない。逆にこれは無償になるかもしないという期待を述べている。これは大蔵大臣ばかりではない。そういう点から、私はこの阿波丸事件に対する請求権放棄の了解事項、しかもこれは道義的に言ったつておかしい。阿波丸については請求権がある。だから当然本来から言えば、阿波丸についての請求権を放棄したということは、当然相手方の了解事項からすれば、あなたの方も放棄したのなら、私の方も放棄しましょうというのが道義的な話なんです。あなたの方は放棄しなさい、おれの方は取りますよなんて、そんな了解事項はあるものですか、道義的に。そうして了解事項の借款というのは別なんです。それをあなたの方では何をさしているのか知らないが、ガリオア・エロアについては、この阿波丸の了解事項に基いて、これが債務なんだと言うことは明らかに間違いですよ。これによってわれわれが債務であると心得ているということは間違いです。この点は何としても、きょう私は外務大臣に明確にしてもらわなければならぬ。あなたの方で、そのスキャッピンの一八四四−A、支払い及び経理の条件はあとで決定する、これだけだ、その阿波丸事件は、与党の中だってこんなものは了解していませんよ。私は名前をあげないけれども、この間から、あなたの党でも、この阿波丸の了解事項について、これによって債務と心得ているのですかと聞いたら、そんなことはないと言っている。これは小坂さん、あなたがこの阿波丸事件の了解事項をもとにして、これが有効な債務なんだとおっしゃることは、これは間違いだと思う。
  62. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 どうも予算委員会の再現みたいになりまして恐縮ですけれども、私が横路さんから援助を受けて、その金額及び支払い方法について、追って決定しましょう、こういうことを約束した。そこで私は、こう書いたのだから、これはみんな負けてくれ、こう言うことは私の自由ですが、横路さんの方で、あれはただで負けてやる、こう言われなければ、やっぱりこう書いてあるのなら、何がしかの解決をしなければならぬと思うのです。アメリカはこれはただだとは言わないのです。先ほど申し上げました通り、ここにこの問題があるわけであります。  それから阿波丸の了解事項の問題ですが、これも繰り返すようになりますけれども、当時政府の答弁として、「これは当り前な話でありまするが、併しこのクレジット、或いはいわゆるガリオア、イロア・コアンド、費用と言いますか、或いは日本に対する棉花その他のクレジットをいゆうようなものが、恰かもアメリカ政府から日本が種々常に無償で以て貰っておるような誤解を与えておりまするから、この機会に了解事項として附加えたのであります。」こういう答弁がございまして、日本政府としまして、やはり借款及び信用の中にガリオア・エロア・ファンドが入っておるということを言うておるのでございます。また政府としまして、歴代の政府がこれを債務と心得る、こう言っておりまするので、やはりこれはできるだけ安いにこしたことはないということも、私もそう思っておりますのですけれども、またその意味で交渉したわけでございますけれども、ただだという議論は、先方がただだ、こう言わぬ限りは成立しない議論かと心得ております。
  63. 横路節雄

    横路委員 私が言っているのは、もっと具体的なんです。米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は日本国が米国政府に対して負っている有効な債務である、こう言っておる。  そこで、それならば借款についてどうなっているかというと、日本に利用された借款は私どもの調査で約三億八十一万ドル、このうちには農務省の占領地物資計画、輸出入銀行借款、あるいは復興金融会社占領地物資計画、そしてこれは、当時措款については二億八千九百四十一万四千ドル返している。なお千百三十九万二千ドルが残っている。これは借款だから、一九五一年の六月に事実上返している。私はその内容についてそう言っている。  そこで信用です。信用は延べ払いなんです。それが、いわゆるガリオア・エロアについては延べ払いなんだ、あとで返してもらうのですよ、こう言っても、延べ払いについては一般に債務と弁済との間に隔離の存する取引により生じた関係または取引自体だから、そうすると、当然これは債務と心得るでなしに、債務として明確にやっておかなければならぬ。当時マッカーサー元帥というのは絶対の権力者であり、絶対の権限を持っている人である。だからそういう意味でこれは債務と確定したものであって、そしてこれはあとで時期的にはずれるのだ、こういうような状態であるならば、阿波丸の了解事項はそう言えるでしょうが、そうでないのですから、この阿波丸の了解事項をもってこれがガリオア・エロアについての、いわゆる債務であるというように政府が心得ているのであるというのは間違いである。これが私の見解なんです。これはここで小坂さんと何時間やっても、ああそうか、横路君の言うのが正しいと今さらあなたがここで言うわけにもいくまいが、しかしここの文章は、どうも小坂外務大臣の答弁、外務省の答弁は、私は間違いだ、こう思うのです。特に吉田さんが当時総理大臣として言っていることだけを引用して、そう言い方をしていますというのは、これは明らかに違うのでありまして、池田さんは何もここで言ってないのですよ。ここに私資料を持ってきておりますが、二十四年四月十三日の共産党の野坂参三氏の質問に対して、米国対日援助見返資金特別会計法案に関してこう言っている。最後に池田さんは大蔵大臣として、「野坂委員もおわかりのように、実質上今きめられない問題だと思います。ただイタリアその他の西ヨーロッパ諸国におきましての例を見ますと、講和条約でこれは贈与になった例もあるのであります。私からはそれ以上のことは申し上げかねます。」どこをたたいて、答弁のどこから債務であるということが出てきますか。債務と心得るなんということはどこからも出てきていない。だから先ほど私が引用した昭和二十四年、「国の予算」、この中の対日援助見返資金特別会計の中において、大蔵省が自分でこの中に注釈をつけているが、これも全部西欧におけるところの贈与、見返勘定を設けての贈与、こういうものを期待している。どこにだって債務と心得ているなんということが、当時の大蔵委員会の会議録を一つ残らず全部読んでみたってそういうものはない。だからこういう点については、債務であるということが阿波丸の了解事項の中から生まれてくるのであるとか、こういう点は明らかに私は間違いであると思います。  それから今お話の食糧輸入についての一般指令に関する総司令部覚書は、支払い及び経理の条件を後日決定する。だから債務だ、とんでもない話だ。しかも講和会議のときに最終決定さるべきものがされないで、後日になって、なおそれが占領軍最高司令官として生きているなんということも、いわゆる講和会議で一切の占領状態が終わっているという点からいって、この点は間違いであると思います。  その次に、小坂さんにもう一つ——あと井出さんから産投の内容を詳しくやってもらいますが、あなたはマッカーサー元帥のアメリカの予算議会に対するメッセージの中に、あれは慈善でない、こういうことを言っているが、私もいろいろ記録を調べてみました。ガリオア・エロアについて、一九五一会計年度対外援助予算に関しまして、米国下院のヒヤリングでヴォルヒーズ陸軍次官補の証言を中心にしたものの中でいろいろ大事な点がございます。この中の一つを申し上ぎますが、ヴォルヒーズはこう言っています。「われわれがこの予算をもったことにより、非共産主義のドイツと日本をつくりあげ保護することが可能になった。これらの食糧輸送に共産主義の進出に対する最良の抵抗であり、きわめて有効なものであった。」これがヴォルヒーズの証言です。このヴォルヒーズ陸軍次官補の証言は何をさしているかというと、当時日本の占領のもとにおいて食糧その他日本について援助をしたというのは、援助をして日本を共産主義の脅威から守っていこう、ドイツと同じに、将来アジアにおける強力な、いわゆる防衛体制の防壁にしていこうということは、われわれ日本国民の知ったことではないのです。当時の日本政府の、日本の国会の知ったことではないのです。アメリカ占領軍としてのある特定の意図に基づいて、日本と西ドイツは一つ非共産主義の国を作り上げて、アメリカの防衛体制のための壁を作っていこうという、アメリカのそういう占領目的から発したものである。アメリカの占領目的から発して、日本に対してそういう、いわゆるガリオア・エロアの援助をしたのだ。このことをもって、どういう国にしよう、将来どういう防衛体制にしようというアメリカ占領軍の目的から出てきたこのガリオア・エロアについて、日本がこれを債務である、こういう考え方は私は筋が通らぬと思う。この点は、私は政府部内でも意見の不統一があるのじゃないかと思う。たとえば水田大蔵大臣は二十四年三月までのものはどうも無償であると言われている。水田さんばかりではない。河野農林大臣は、二十八年、二十九年の予算委員会で、二十四年三月までは無償であると言った。この点ははっきりしているのです。この点きょう私もたくさんの時間をいただいてやればいいのですが、問題の中心になるところだけははっきりしておかなければならぬ、こう思っている。ところがマッカーサーの予算議会に送ったメッセージのみをもとにしてやっている。もう少し広くとれば、ヴォルヒーズの証言のように——ヴォルヒーズは言っている。二十四年三月までのものは救済が中心なのだから無償と考えられるのが至当ではないか、そういう意味の証言をしています。だからこの点はあなたとはだいぶ意見が違うわけなんです。
  64. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいまのヴォルヒーズ氏の証言は、おそらく旧敵国に対して援助をするということに対して、アメリカ国民には当時としては反発があった。それをなだめて、その予算を議会を通過せしむるために言われたことだと思いますが、同じヴォルヒーズ氏の証言を二、三拾ってみますと、二十四年五月十八日、ヴォルヒーズ氏はガリオア資金を議会に要請するにあって、「われわれはこれがすべてドイツ経済に対する貸金となると述べたが、これは日本についても同様である。」すなわち日本についても貸金になるのだという証言をしております。また二十五年の二月二十八日に、やはりヴォルヒーズは「ガリオア援助は米国が別段の意図を表明しない限り平和条約の際に日本側に請求するという了解で行なわれている。」すなわち同じ人がはっきりと貸金であり、請求するんだ、こういうことを申しているわけでございます。  なお今水田大蔵大臣からつぶやきがありまして、自分はそんなことを言っておらぬ、こういうことでございます。討論会ではございませんからなにでありますが、この程度に……。
  65. 横路節雄

    横路委員 水田さんは正直な方で、この間加藤勘十氏の質問に等えて、国会議員のときはよもやこれが債務だなどとは思ってもいなかった。大蔵大臣になって初めて聞かされてびっくりした。これは正直な話です。この点については、今のお話で、あなたの方では債務と心得るという立場に立って、あなたの方に有利なというか、それを選んでいる。しかし私たちはヴォルヒーズが言っているように、これは明らかに共産主義の西ドイツと日本を作るという占領目的なんだと言っている。この中でも、二十四年三月以前のものについては、これはいわゆる救済資金である、難民救済である、占領軍としての当然の義務である、こういうように言っているわけです。この点についてはあなたの方で国会に出してきた——債務であると心得るという点についての証言をいろいろ言っているが、私の手元にございます「日本占領及び管理重要文書集」これは外務省特別資料部編というので、この中にもたくさんございます。たとえばこの前も指摘をしましたように、初期の基本的指令の中に「占領軍を危うくするか軍事行動を妨げるような広範囲の疾病又は民生不安の防止に補充が必要な限度においてのみ、輸入物資の供給に」責任を持ってやりなさいと言っている。これは占領軍としての当然なやり方であり、それが後に今言ったように非共産主義の日本、西ドイツを作るためにやった措置なんです。  私は債務性についての問題は、他の方がもう少しおやりになるだろうと思いますからこの程度にしておきますが、阿波丸の了解事項をもとにしてやるということは全くの誤りである。どこから押したって出てこない。与党の諸君だって、聞いてごらんなさい、そんなことを言わぬ。それから一般食糧に関する司令部覚え書の「支払条件及び経理は後日決定される。」これを唯一のものとしてやっているということも、私は全く当を得ていないと思うのです。  宮川さんにお尋ねしますが、あと一つ二つだけお尋ねしておきます。宮川さん、これを産投特別会計から払うことは二重払いでないということはどういう意味なんです。産投特別会計から今度のガリオア・エロア援助資金について返済することは二重払いでない、二重払いでないとよく言うが、二重払いでないというのはどういうことなんですか。
  66. 宮川新一郎

    宮川政府委員 終戦後アメリカから援助を受けまして、その援助の物資を払い下げまして積み立てております金は、御承知のように通貨財政の安定、経済の再建に使われたわけであります。従いまして、当時本来ならば税金で負担すべきものを見返資金でやっておったわけであります。従いまして、今回返済するにあたりまして、一般会計から負担いたしましても決して二重払いとは言われないと思うのでありますけれども、この際国民が一応代金を払っているにかかわりませず税金でもって払う、従って、一般会計から払うということになりますと、二重払いの懸念もあるだろう、こういう観点に立ちまして、援助物資の売り払い代金を、援助物資に見合う価格を積み立てました見返資金の運用資産でもって払う、そうすれば二重払いの誤解もないであろう、こういうような観点に立ちまして、産業投資特別会計から支払うことにいたした次第であります。
  67. 横路節雄

    横路委員 宮川さん、しかしその二千二百九十四億ですか、あの中には一般会計から入れた金があるでしょう。一般会計から入れた金は幾らでしたか。
  68. 宮川新一郎

    宮川政府委員 見返資金が、援助物資特別会計と申しますか、貿易特別会計から援助物資に見合う価格として入れました金は三千六十五億であります。そのうちからいろいろ使用分を差し引きまして二千二百九十四億という数字があるわけでありますが、三千六十五億という積立金は、法律の規定によりまして援助物資ドル価格に相当する円金額を積み立てたものでございまして、見返資金特別会計には直接一般会計からの繰入金はないわけであります。ただ横路先生指摘のように、援助物資特別会計のあるいは貿易特別会計から三千六十五億をば見返資金特別会計に繰り入れるにあたりましては、国民に対して売り払いまして得た売払代金のみならず、資金繰りといたしましては、一般会計から繰り入れられました五百八十六億だったと思いますが、これる使っておりますけれども、あくまでも見返資金に積み立てられました金は、援助物資ドル価格に相当する円価格でございます。広い意味で言うならば、百ドル物資を受けまして、それを価格差補給と申しますか、国民生活安定あるいは物価政策上、二十ドルというものを税金で負担して、八十ドルというものをば売払代金として買い入れた国民が払うというふうにいたしたわけであります。価格としてはあくまでも百ドルでありまして、国民が払ったのは百ドルだ、かように考えるわけであります。
  69. 横路節雄

    横路委員 見返資金特別会計から産投に受けた場合に、今言ったような長い説明がありましたが、価格調整補給金として一般会計から五百八十六億を受けているわけです。二重払いでないということが——いわゆる一般会計から受けないのだ、国民の税金から払わないのだから二重払いでないと言うならば、見返資金特別会計から産投に受けた中には、一般会計から五百八十六億受けている、だからこれはどうしても二重払いになるじゃありませんか。この点は前にも同僚の委員の諸君から質問されているところです。  そこで大蔵大臣にお尋ねしますが、大蔵大臣産投には今後は絶対に一般会計から繰り入れをしませんか。二重払いでないといって産投の方から払っていった。払っていったが、資金量が減ってきたからといって一般会計から入れたら、結果的には二重払いになるのじゃないですか。十五年間にわたってこのガリオア・エロア援助資金について返す場合に、二重払いであるという印象を避けるために、絶対に一般会計から十五年間入れません、こういう確約はできますか。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 金繰りの問題として、一定期間不足するというときに、これを他の資金で立てかえをするということは一向差しつかえないことでございまして、そういうことはあり得ると思います。  それから今の問題ですが、かりに百ドルのものが来て、国民には百ドルで売っておいて、なおかつその特別会計の維持か何かのために別に税金の金を入れているということでしたら、これはいろいろ議論があるかもしれませんが、一般会計から入れた分だけは国民に安く払い下げているものですから、この分だけは国民全体としては安い価格物資を得ているということになりますので、この点は今おっしゃられるような二重払いというものには当然ならないと思います。それだけ、自分たちの金を入れている分だけ安くしているのですから、これを入れてなおかつ高いものを買わされているということでしたら問題があるかもしれませんが、一般会計から入れた分だけは、国民全体が安い価格のものを手に入れているということですから、この点は問題なかろうと思います。
  71. 横路節雄

    横路委員 これはどうしても政府の方で、ガリオア・エロア援助資金についての返済は二重払いであるという印象をなくするというならば、なぜあなたたちの立場に立って別途の特別会計を設けなかったのですか。産投資金量が減ってきた。だから一般会計から入れている。返さなければ資金量は減らない。返すから資金量が減る。減ってくるから一般会計から入れてくる。また資金量が減る。また一般会計から入れてくる。これであれば、産投に一般会計から毎年々々入れてくるということは、結局ガリオア・エロアの援助金を返済していくために資金量が減るから入れてくるということは、一般会計から産投に返済をするため資金量が減るから一般会計から入れてくる。そのことは二重払いになるじゃないですか。  もう一つは造船利子の補給です。これこそ出世払いになるようですが、この前私は銀行局長にお尋ねをしたところが、来年からですか、年間五十億円ずつ五年間二百五十億円をしなければならないのではないかと思う、こういう話です。そこで、今の資金量が減ったから一般会計から入れれば、それはいわゆる二重払いになることになりはしないかという点が一つと、造船利子補給について来年から五十億ずつ五年間二百五十億やるのかどうか。第三番目、この前私は理財局長を呼んで、詳細に来年から返す金の中身について聞きましたが、もしも五十億ずつ五年間造船利子補給をやるということになれば、当然これは穴があいてくる、と言うとちょっと言葉が過ぎますが、当然これは操作が困難になって、そのために一般会計からさらに入れてこなければならぬ。だから、そういう意味で造船の利子補給というのはやるのかやらないのか、やった場合に、五十億ずつ五年間の二百五十億というものは、そういう意味では資金量がますます減ってくるが、そういう場合はどうするのか。この点についてあわせてお答えいただきたいと思います。
  72. 水田三喜男

    水田国務大臣 造船対策の具体案がまだきまっておりません。かりに、利子のたな上げをやってやらなければいけないという事態になるとしましても、どれだけのたな上げをするかということもまだきまっておりませんので、従って、何十億、開銀からの納付金が減るかというようなこともまだただいまのところ未定でございます。それから、もしかりにそういう措置をとらなければならぬという事態になったとしましても、私どもがこのガリオア・エロアの債務の返済をしようとする計画は、見返資金関係の予算の運用によってしようという方針でこの計算は立っておりますので、その通りの返済はできるということと、そこに別途の政治的な施策の必要が起こって出てきた問題との関係はまた別でございまして、ガリオア・エロアを返済しようとしまいと、それとは無関係に、新しい出資要求があった場合とか、あるいは今言ったような開銀の納付金が減るというような事態が起こったという場合でも、これは新しい政府の施策的な要望によってできたことでございますので、それに対処する方法は別個にやればよいということになりますので、このガリオア・エロア問題と切り離して考えていい問題だと思っております。
  73. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣に、私、最後に申し上げて終わりたいと思います。今、日本経済は国際収支の赤字で非常に困っておる。政府部内でもこの点は非常に議論がある。この国際収支の赤字の最大の理由は、やはり貿易上の仕組みというものが一方的に片寄っている。去年の一月から十二月までに貿易上の赤字は十六億ドルなんです。そのうち、アメリカとの貿易だけで赤字が十億ドルなんです。これが今月の、日本の国際収支における赤字の大きな理由です。貿易上の一つのゆがみ、そういうものが、今日の国際収支の赤字をなし、日本経済が不況だ、こういうことになっておる。なぜ一体アメリカとの貿易が十億ドル赤字になっておるか。これは戦後からずっとガリオア・エロアの援助という形を通しながら、あげて日本貿易アメリカに全く従属させたからです。戦前において、対中国全体の貿易は、日本貿易全体の約三割から三割三分を占めていた。こういうように、ガリオア・エロアによって、形の上は初めは恩恵である、ただなんだ、そのうちに、何分の一かで返せ、そういうことで先ほど私が言いましたように、まず二十四年三月までのああいう貿易で、アメリカ側としては莫大な利潤を上げている。そうして今日、日本の国際収支が赤字になっておる。こういう状態は、ガリオア・エロアの援助を通して日本貿易が対米従属したところに原因があるのです。産投から払うことは二重払いでない。産投から払うことは四重払いくらいになる。私はそういう意味で、外務省はただアメリカに頭を下げて返すということに一生懸命であったでしょうが、大蔵大臣としては当然——今日の国際収支の赤字、日本貿易日本の経済の不況、こういうものがあげて援助であるという形で行なわれたこの対米従属の貿易に原因があるのです。そういう意味で、大蔵大臣がもっとしゃんとして、ガリオア・エロアについては返すなんていうことは——これはやむを得ず同意をしたようであるけれども、そういうことははなはだ遺憾である、こう思う。この点、国際収支の赤字、日本経済の不況は、大蔵大臣としては一番御心配になっておる点だから、その意味で、こういう状態でアメリカドル防衛に協力するという形で、これを返済するということは、外務大臣はいざ知らず、大蔵大臣としては、この考え方は直していただかなければならぬ、こう思うのです。  もっとお尋ねしたいのですけれども、同僚の諸君の質問もありますから、以上で私終わります。
  74. 小川平二

    小川委員長 大原亨君。
  75. 大原亨

    大原委員 私は、先般の四月四日のガリオア・エロアの問題に関連をして、外務委員会におきまして総理大臣あるいは外務大臣が御答弁になりました問題の中で、産投特別会計の一部の改正の中で、これに関連をして、ぜひこの機会にお聞きしたい、こういう問題点を一、二しぼりまして簡潔に質問いたしますから、一つ明快な答弁をいただきたいと思います。これはぜひこの際私の方でお聞きしたいという点だけに限定いたして質問いたします。  この四月四日の田中幾三郎委員が質問いたしました事項に総理大臣が答えまして——田中委員の質問は簡単に言えば、原爆被爆の戦時請求に関連をして、日本政府はもう少しはっきりした態度で、この際日米関係について明朗な関係を確立すべきである、こういう議論であります。そういう質問に対しまして、これは池田総理大臣にお聞きしたいことですが、聞き捨てならぬ御答弁があるわけであります。どういう御答弁かといいますと、その答弁の内容は、第一は、つまりアメリカがこのような措置で原爆を投下したことはまことに遺憾である。こういうことですが、その投下した事実に基づいて以心伝心の形で、こういう対米関係の戦争の跡始末という問題について、あちらもこちらもそのことについては十分念頭に置いておった、こういうことが第二。第三として、結論といたしまして、こういう事実——事実という言葉がありますが、事実に基づいてガリオア・エロアの債務とかあるいは外資の導入その他の問題についてアメリカ側は、この問題については慎重な配慮をしているということについて確信をしているというふうな答弁であったと思うです。これは法制局長官も出席でありましたからお聞きであったと思うのです。その際問題となりますのは、このガリオア・エロアの返済債務の金額の決定あるいは外資の導入その他の問題で、原爆の投下という、そういう国際法に違反をした事実、被害者の実際上の要求、そういものに関連をしてそういう点が考慮をされているという点をはっきり言う以上は、これは原爆を受けた被爆者の戦時請求権の問題について、法律的にも、政治的にも、道義的にも、私はこの際そういう立場を明確にしておくことが、これが内外の政治の上において大切なものではないか、こういうふうに考える。総理大臣の答弁に——きょうは総理大臣いらっしゃいませんが、それに類似した小坂外務大臣の答弁もその前の記録にありますが、私はこれをたとえば被爆者国民の立場で聞いてみますると、そういう問題について政府がそれでは被爆者の立場についてどういう考えを持っておるのかという点について明快に聞きたいところであります。私はその点につきまして、小坂外務大臣の方からまずお聞きしたいのですけれども総理大臣の答弁についてそういう問題があるけれども、政治的あるいは法律的にどのように被爆者の戦時請求権の問題についてお考えになるか、こういう点を一つ逐次質問いたして参りますが、まずお考えをお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  76. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 原爆が投下されたということは、もう実に残念なことでありまして、私どもああいうことが再びないようにということで強く国際世論に訴え、国際世論もまたさように支持しておるわけであります。さればこそ国連におきまして、しばしばの決議が日本を中心として行なわれておることは御承知の通りであります。しかしながらこの問題とガリオア・エロアの問題と直接関連させて考えるということは、これは私はまた別の問題だというふうに思っております。法律的に申しますと、平和条約の第十九条で、日本は戦争から生じまたは戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する請求権というものを放棄しているわけでございますから、これは直接のそのことのゆえにガリオア・エロアをまけろというようなことを言うのは筋が違う。ことにアメリカの側におきましてもこのことは深く遺憾としておりますようでありますし、これは全般的に大きな国際政治の流れの中で、先方の遺憾と思っておる点は十分われわれとしても認めることがきでるということであります。
  77. 大原亨

    大原委員 この平和条約の十九条の(a)項に関する問題、これはガリオア・エロアの協定の第三条にもこれを再確認をしたような条文がございますが、しかしそのあなたの御答弁を、これはまああとで若干時間をとりまして議論するといたしまして、この前法制局長官が田中委員にお答えになりました中で、この被爆者というものは、たとい平和条約の第十九条の(a)項で放棄をしても、被爆者の個人としての、国民としての請求権というものはなお存続しておるのだ、こういう御答弁がありました。これは間違いございませんね。
  78. 林修三

    ○林(修)政府委員 まず第一番の前提として、いわゆる戦争中における原爆の投下、これは非常に日本として遺憾なことでございましたけれども、これがいわゆる当時における国際法のはっきりした違反かどうかという問題、これはなお問題でございます。それでこれはこのときの、今御引用になりました総理大臣の答弁の前に、だいぶ私もあるいは条約局長もいろいろ答弁いたしております。前提としてそういう問題がまずあるわけです。直ちに、いわゆる違法行為に基づく損害賠償請求権があるかどうかという問題がまずある。その問題自身がまず一つの問題であります。いわゆる不法行為に基づく損害賠償請求権があるということには必ずしもならない。かりにありとしても、そういう問題も問題でございましょう。そういうありとしての前提に立つクレームも、実は十九条(a)項で放棄しておるということでお答えしてある。それからこの十九条(a)項の文言につきまして、これはこのときもお断わりしてございますが、必ずしもこれが連合国側が御指摘のように解釈しておるかどうかは問題であるけれどもという前提を置いて私言っておりますが、私どもの考えといたしましては、十九条の(a)項と(c)項とは多少書き方が違っておるので、(a)項は要するに日本政府日本政府及び日本国民の戦争中に生じた請求権を一切放棄する、こういうことをうたってある。(c)項の方は「日本国民のために」云々ということが入っております。その言葉の違いから言いまして、いわゆる国民が個々に持っておる請求権、これはいわゆる個人的な請求権を、もちろん日本政府としては主張はできません、はっきり放棄しておりますから。しかしそれを個人的に、たとえばアメリカの裁判所に行って請求するということが必ずしも不可能かどうかということについては問題が残っておる、そういうことを申し上げたわけでございます。
  79. 大原亨

    大原委員 つまり、その前の議論につきましては、私が昭和三十四年に社会労働委員会で藤山外務大臣と高橋条約局長との間の質疑応答、それと先般の質疑応答とを比較いたしまして、またあとで議論いたしますが、法制局長官はお急ぎだということで、先にあなたにお尋ねいたします。いろいろな質疑応答がありまして、つまりサンフランシスコ条約におきまして、十九条で政府が放棄しているのだけれども、しかし被害を受けた、戦時国際法に違反をするそういう攻撃によって被害を受けた国民の戦時請求権については、これはあなたの議論は肯定をしておられるわけです。そこで私は、この議論をずっと発展さして参りますると、つまり戦勝国でも戦敗国であっても、戦時国際法に違反をしたような事態に対しましては、これは被害者は、戦敗国であるがゆえに泣き寝入りをしなければならぬということはないわけであります。それだったら、戦敗国にだけ国際法が適用にならぬということになりますと、これは人道の立場から戦争の必要性と調和しようとする国際法からいいましてもおかしいのであります。だから、あなたが答弁になっていることは、そういう意味ではなかったけれども、国民のたとえばアメリカの裁判所に起訴するとかという例まで引いて御答弁になっておるけれども、そういう権利はあるわけであります。それはそうでしょう。
  80. 林修三

    ○林(修)政府委員 いや、はっきりあるといえるかどうかは問題でございまますけれども、少なくともそういうものまではっきり放棄したかどうかということについては、この読みようとしては問題があるということを申し上げたわけであります。実際にアメリカの裁判所にそういう訴訟を起こしてみて、アメリカの裁判所がそれを受け付けるかどうか、これは私も保証できません。保証できませんけれども、多少そういう余地が残っていないわけでもない、そういうことを申し上げたわけであります。
  81. 大原亨

    大原委員 それで今の点は一つ問題があるわけですが、外務大臣、こういうことです。私が池田総理大臣の御答弁を引用いたしましたが、つまり原子爆弾を投下して国際法上議論があるという問題について、そういう国際的な、あるいは日本国内におけるそういう意見は、ガリオア・エロア金額の決定とか——御答弁によると——あるいは外資の導入その他の問題に、この問題が大きな影響を及ぼしているということを実証し得るというふうな御答弁ですよ。その問題を私は問題にいたしておるわけですけれども、そういう立場に立って考えてみますると、これはこちらのささやきもあるけれども、これはガリオア・エロアとか、あるいはこの産投特別会計の問題に関係ないことじゃないわけです。総理大臣自体が関係あると言うのだから。特に私が考えなければならぬのは、国民の立場に立って考える場合に、政府ガリオア・エロアの問題について、道義的な債務とか、債務と心得るというふうなことでしょう。しかし、債務と心得るとか、あるいは道義的な債務以上のこの問題は問題じゃないか。田中委員指摘いたしておりましたけれども、そういう問題じゃないか。そういう場合に、三十数万の人が一瞬のうちに広島、長崎で死んだ。現在三十万の人が被爆者で困っておる。放射能の影響は造血機能や増殖機能や、あるいは遺伝的な影響すらある。これは毒や毒ガス以上の非人道的な兵器です。これは国際法の百年来の基本原則と基本精神に違反をしているということは、私は前の藤山外務大臣の答弁と小坂外務大臣あるいは条約局長の答弁を比較いたしまして、その点については最後に申し上げますけれども、そういう問題について、一方においては債務と心得るというふうなばく然たる問題をここに置きながら戦争の跡始末をするのだということから、この際すっきりするのだということですけれども、国民の立場に立って見ると、池田総理大臣の答弁にもあるように、もしそうであるならば——あの人は正直なんですから正直なことを言ったと思うのだけれども、この問題は国民といたしましても納得できない問題です。だから個人の立場に立って考えてみまして、個人としてはアメリカの裁判所に対しても提訴する、そういう訴訟を起こすという方法があるというような法制局長官の意見だけれども、そういうことは、個人々々の国民の利害を代表するのが政府の対外関係における任務ですよ。そういう点から考えてみまして、政府がそういう問題について、個人としてやりなさいと言うことは、手続上からも、費用からいったってできぬでしょう。そういう問題については田中幾三郎委員は一人二百万、三百万ということで一兆円の数字をあげられたけれども、そういう問題はともかくといたしまして、私はそういう立場に立って考えた場合には、債務と心得る、道義的な債務、それ以上の問題として国は十分責任を持つべきではないか、法制局長官の答弁を引用いたしましたけれども、私は政治的にも、道義的にも、法律的にも、この問題は外務大臣にお答えいただきたいのですが、外務大臣、その点は私は当然日本の国の政府といたしまして、国民の利害を代弁する際に、この問題の主張をすることは何らとっぴなことではないと思う。外務大臣、いかがです。
  82. 林修三

    ○林(修)政府委員 さっき私が申し上げましたことを、ちょっと誤解があるといけませんから、申し添えますが、十九条(a)項で日本政府ははっきりと日本国及び日本国民のクレームを全部放棄している。従いまして、かりに個人が個々的にアメリカ政府に対してそういうクレームを請求することができるとしましても、日本政府としてそういうことは援助することはできない立場でございます。これは条約上はっきり放棄しておりますから、そういう意味の臣民保護権と申しますか、そういうことについて日本政府が口を出すことはできない、そういう立場にあることを一つこれは申しておきます。
  83. 大原亨

    大原委員 その点は条約上、法律上は十九条(a)項で放棄していることは知っているのですよ。知っているのですが、その問題は戦敗国であるがゆえに国際法違反の犯罪行為を国民の立場に立ってこれを黙認することは問題があるということはしばらくおくとして、政府ガリオア・エロアの返済について、いわゆる道義的な債務とか債務得るというようなばく然たる立場に立って四億九千万ドルの国費の支弁をきめているわけです。これはそれ以上の、道義的な債務以上の問題ではないかということです。法律では、条約ではそういうように規定してあるけれども、それ以上の問題が、ここには人道上の問題がある。そういう問題、ましてや池田総理大臣は、この問題は以心伝心の中に大きい日米間の交渉、問題解決のために、この問題が関与しているのだ、と言っておられる。この問題は三十万の現在生きている被爆者なり人々が聞いたならば、納得できない問題ですよ。これは今の十九条(a)項で、法制局長官の御答弁はそういうことについては一応はそのことは筋が通っておりますよ。しかしながら今申し上げたような債務と心得るというような問題について、この際戦争の跡始末をしようというふうな段階において債務と心得る、道義的な債務以上の問題ではないか、私どもは国民の立場に立ってそう考えるべきではないか、そういうように思うのです。これは外務大臣、どうですか。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 このガリオア・エロア返債は今まで法律的な債務として確定していたものではなかったけれども、今回債務を確定する、国会の御承認を得て確定する、こういう問題なんです。先ほど来の問題は池田総理大臣の答弁もあるし、私も先ほど申し上げた通りであります。
  85. 大原亨

    大原委員 それは、私も申し上げた通りというのはどういうことですか。
  86. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほど申した通りであります。
  87. 大原亨

    大原委員 それではもう一つ前に返りまして一つ質問いたしますが、昭和三十四年十一月に、藤山外務大臣とそれから高橋条約局長に御出席をいただいて原爆被爆者の援護の問題について現在は援護法は公務に限定をされている。日本の軍人、軍属、あるいは準軍属等に限定されている。そういう立法から考えてみて、国が非常に大きな責任を持っているという観点から原爆被爆者の救援問題、援護問題についても国として考えるべきではないかという議論のときでありました。そのときにいろいろ議論をいたしたのであります。この議論が先般の田中幾三郎委員との質疑応答とはその質疑応答の内容が違うのであります。そのときの質疑応答を時間がございませんから端的に申し上げますと、つまりヘーグの陸戦法規の二十三条やあるいは二十五条、二十六条等に、二十三条には国際的に戦時国際法において禁止している条文として具体的に毒や毒物を禁止しているし、不当な若痛を与える投射物等を使ってはならぬというようなこと等もあるわけです。そういう条約に違反するかどうかという議論をいたしたわけであります。私どもは毒ガスやその他いわゆる毒物あるいは非人道的なるそういう被害を与える問題につきましては、これは国際法の精神から考えて戦時国際法違反の犯罪行為である、こういうことを主張いたしました。藤山外務大臣は、高橋条約局長もそうでございましたけれども、この戦時国際法の精神に違反をしておるという点を答弁されたのであります。従って、精神ということがついておるから実定法云々という問題があるのですが、この問題はさらに、当時その問題だけを議論するのではなかったので詰めなかったけれども、しかし実定法は抽象的ではあるけれども、法律を純粋に解釈する際に毒ガタとかダムダム弾と原水爆の熱風あるいは放射能とを比較いたしましてどちらが非人道的であるということは、常識を持ったものなら判断できるわけです。だから世界でただ一つの被爆国である日本の外務大臣、日本政府の見解として、これは田中委員指摘をいたしておりましたが、一九四五年の八月十日スイスを通じてアメリカに抗議をした文書にはっきりあるように、これは陸戦法規戦時国際法に違反をする行為であるという点については、秋は常識を持っておれば当然これは解明できる問題だと思うのです。この問題についていろいろな質疑応答があったことは外務大臣や中川条約局長は御承知だろうと思いますのでその点には触れませんが、当時の藤山外務大臣、高橋条約局長はいろいろな質疑応答の結果そういう答弁をいたしておるのであります。その点につきまして、外務大臣といたしましてはどういうふうなお考えをお持ちになっておるか、お答えいただきたいと思います。
  88. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 原爆というものはおそろしい惨禍を与えるものであって、これが戦時国際法の精神に反するということは私も何かの機会に——前の国会でしたか、さようなことを言ったと思っております。しかしこれが実定法的にどうかということについては私どもそれを主張いたしまして、御承知と思いますが、アジア法律諮問委員会においてこの問題を提起しておるわけであります。しかしアジア諸国、ことに原爆に対しては強い反対を持つアジア諸国における法律諮問委員会においても、まだこの結論が出ていないのであります。従ってそこに問題があるわけであります。そういうことを申しております。
  89. 大原亨

    大原委員 今の外務大臣の御答弁ですが、中川条約局長も、うしろの方で藤山外務大臣の記録をごらんになっておるようだけれども、その終わりの方にある質疑応答に対して見解は同じですか。
  90. 中川融

    ○中川政府委員 昭和三十四年に藤山外務大臣と高橋条約局長が社会労働委員会で申しましたこと、私も全く同じに考えております。
  91. 大原亨

    大原委員 あなたは普通の戦闘行為と国際法違反の戦闘行為につきまして、いろいろと田中委員との間に質疑応答をしておられましたけれども、そのことは端折りますが、この点は非常に否定的な答弁をしておられましたので私は念のために聞いたのです。  そこで私は今の点から考えてみましても、こういう戦時国際法の精神に違反をする、実定法の問題については確かに議論はあるのですが、しかし戦時国際法の基本原則と基本精神に違反をするということについては、これは特に日本の外務大臣や政府の見解といたしましては明快でなければいかぬ。そういう明快の上に立って、今の段階ではほんとうの意味における日米親善のために初めてこういう問題について私どもも国民の立場に立って主張すべき点は明確に主張すべきではないか、そう思います。その問題は実際上、池田内閣総理大臣がこの前答弁になりましたことも関連をいたしておるわけであります。そういうことを聞きました場合に、実際上道義的に後悔をいたしておるというような問題を含めまして、日本はそういう点をはっきり主張いたしまして、そうしてこの問題を処理すべきじゃないか、あるいは今後の問題も含めて処理すべきじゃないか、こう私は思います。外務大臣いかがですか。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この問題に対する私の考え方は先ほど来申し述べておる通りでありまして、実はあなたが私の意見もよく聞かれないで本会議で不信任案を述べた。そのときに、私があたかもあなたがきめつけておるがごとく考えておるように言われたことは、非常に不愉快に思っておりますので、この際申し上げておきます。しかし私が先ほど言うように、こういうものは戦時国際法の精神に違反しておるように私は思っておりますけれども、実定法上にはまだそういう規定がなされておらない、しかもこの平和条約十九条の既定によってわれわれが戦争から生ずる請求権を放棄しておるわけであります。従って、ガリオア・エロアの交渉と直接に結びつけて、これがあるからただにしろというようなことは交渉の対象にはならないということを申しておる。しかしながら、そういうことは総理大臣の答弁にもありますように、アメリカ側としてはまことに遺憾に思っておるので、今後いろいろな部面においてその考え方はにじみ出てくるのである、こういうことであります。
  93. 大原亨

    大原委員 それでは外務大臣に一つ質問いたしますが、つまり国際法の精神に違反をするということは、実定法にぴたりと原水爆がないということはその通りですけれども、抽象的にきめたその条約の内容には抵触しておるのだという意味で、そういう質疑応答をいたしたわけです。今の外務大臣のような答弁でありましたならば、そういう点についても御理解がないように私には見えるのだ。前のときの答弁とはやっぱり違う。つまりそのときの質疑応答は、政府の行為によって放棄をしたために、被爆者の方が非人道的な措置によって苦しむ場合においては、国としても政治上の大きな責任があるという問題まで議論が発展をいたしておる。だから、国の行為によって、これは直ちに全部ではないけれどもその一部を、サンフランシスコ条約の十九条(a)項やあるいはガリオア・エロアの協定の第三条において放棄したことは再確認いたしておりますが、この問題は範囲が違うけれども、しかし百歩譲ってそういう問題からいけば、政府の行為によってやったのだから、そういうふうに考えた場合においては当然国としてやはり責任がある。だから道義的な問題で、法律的な債務についてはほとんど問題がないわけです。今日までほったらかしておいてそうして今日債務を確定しようというのでありますから、そういう法律の問題につきましては今まで論議された通りです。私は時間がないからここでむし返しませんけれども、そういう精神から考えてみまして、当然やはり債務以上の道義的な問題ではないか、政府はその点について、こういう段階において責任を持って処置すべきではないか、あるいは見解を明確にすることが必要ではないか。ましてや、特にこの交渉の取引に使われたとは私は思わぬけれども、あたかも取引に使われたような池田総理大臣の答弁でありますから、私はこの問題だけは将来問題を発展させるために看過できない、こういう点で速記録に残したいために、この一点だけに関連いたしまして質問いたしたのであります。大蔵大臣、今までの質疑応答を聞きまして、産投の問題をこれから処理されるわけでありますが、この問題について所見があれば——なければよろしいけれども、あればお聞きいたしたい。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 所見ありません。
  95. 大原亨

    大原委員 それでは最後です。私が申し上げた趣旨について御理解ができないようでは、私は普通の常識ではないと思う。ここらが不信任になるところだけれども、これは日本人としての自主性やプライドの問題である。池田総理大臣のその答弁をそのまま被爆者やあるいは国民が聞いたならばどう考えますか。口には言わないけれども、以心伝心という表現があるが、交渉上に非常に大きな影響を及ぼしておるということを確信しておる、実証できるということを言っておる。そういう法理上の問題について議論するならばたくさんの問題があるじゃないか。だからこの問題については私は将来別の機会において納得できる論議を十分したい。この問題は原爆被爆者の問題だけでなしに、一本の外務大臣としても総理大臣としても、戦時国際法に違反をしておるということをはっきり主張してこれを国際的な定説とみなすことが、世界に原水爆の貯蔵や実験をも含めて平時においてもこれをなくする一つ基礎になる、私はそういう観点に立ってそういう見解を明確にすべきである、そして国内においてもそういう問題の処理は明確にすべきであると思う。特に余談の問題を言うわけではないが、大蔵大臣にお聞きいただきたい点は、たとえば旧地主補償なんか、一たん支払った問題について、五千億とか六千億とかあるじゃないですか。しかしこの問題について、三十数万の人が死んで、三十数万の被爆者が苦しんでいる今日、結婚もできない。就職もできない人がたくさんあるのです。あるいは不具の子が生まれるかもしれない、そういう危惧を持った人がたくさんある。そういうときに、こういう国際法上の議論においても十分主張すべき問題について、私は政治の公平の原則からいいましても明確にしなければならぬと思います。この点を明確にすることが私は政治の姿勢を正すゆえんである、外交の姿勢を正すゆえんである、こういうふうに思うのであります。外務大臣はちょっときげんが悪いようだけれども、私の見解ははっきりいたしたと思いますので、私は以上の点を将来の問題として保留する、こういう点だけを明らかにいたしまして、私の質問を終わります。
  96. 小川平二

  97. 井手以誠

    井手委員 本日は産投会計が議題でございますので、いわゆる見返資金の元本の問題と、それから今後の産投会計の運用を中心にお伺いをいたしたいと思います。時間もだいぶたっておりますが、戦後十七年の長い間の問題でございますので、いましばらくごしんぼうが願いたいと思います。  内容に入ります前に、二、三大蔵省と外務省にお伺いをしておきたいと思います。  大蔵省、そこに二十四年の「国の予算」をお持ちでしょうな。先刻お持ちのようでしたから今もあるでしょう。昭和二十四年三月以前の問題で先刻横路君から十億ドル援助物資売払代金の円の換算は幾らかと聞いたときに、あなたの方でお答えにならぬようでした。一つこれを見ていただきたいと思いますが、ちょうど三百ページの中ほどに「貿易資金の総決算」というのがあります。その受け入れの数字一つ読んでいただきたいと思います。受け入れの数字だけ、貿易資金幾ら借入金幾ら、雑収入幾ら、計幾らくらいということを一つお示し願いたい。
  98. 伊藤三郎

    伊藤説明員 昭和二十四年度「国の予算」の三百ページでございますが、「貿明資金の総決算」「資金収支」の「受入」でありますが、合計が千三百四十三億八千六百十六万円、「支払」の合計が同じく千三百四十三億八千六百十六万円でございます。
  99. 井手以誠

    井手委員 消えてなくなった十億ドルの円換算が国の一般会計から出した二百七十三億を含めて千三百四十三億八千六百万円であるということが、池田大蔵大臣推薦の「国の予算」で明らかになったわけですね。  続いてもう一言確かめておきたいのは、三百一ページの右の方の欄の上から十行目くらい、「従って」というところから十行ばかり(2)の最後まで、一つこの際勉強されていただきたいと思います。
  100. 伊藤三郎

    伊藤説明員 「従って貿易資金の欠損総額は為替差損三千六百十八億八千六百三十一万四千円、その他百十六億三千八百二十九万六千円、計三千七百三十五万二千四百六十二万円となる。このように資金設置以来三年余の間に殆ど四千億円にも近い巨額の欠損を生じたのは、主として貿易資金が前述した価格調整的役割を演じた結果であり、本来ならば資産として確保せらるべき入超見返円資金が、ことごとく貿易上の補給金として支出され資産の面から消失して了ったことを意味する。」。
  101. 井手以誠

    井手委員 どうもありがとうございました。  もちろん終戦から昭和二十四年三月までのものを一ドル三百六十円で計算するわけには参りません。従って、私どももこの通り四千億近い欠損を免じたとは考えておりません。しかし今度お払いになろうとする二千億円以上の金が、先般外務委員会でお尋ねいたしましたように、日本の私どもの商品が半値以下でたたき買いされた結果であることはもう明らかでありますから、私は本日その点は繰り返しません。ただ確認だけしておきたいと思って読んでいただいたわけであります。  次に外務省にお伺いいたします。この前外務委員会でお尋ねしたときにお答えがなかったようでありますので、この機会にお聞きしますが、第一は「国の予算」でも説明がしてありますように、終戦以来朝鮮、中国などに坑木——石炭代については、四千七百万ドル、これはあとでお伺いいたしますが、朝鮮、中国に対する坑木代はどういうふうに計算されましたか。これは外務省の所管であろうと思います。
  102. 伊藤三郎

    伊藤説明員 朝鮮に対する坑木の輸出額でございますが、私ども資料では木材として整理をいたしておりまして、特に坑木としては出しておりませんが、その木材の金額を申しますと、一九四七年が百六十三万五千ドル、一九四八年が十二万五千ドルとなっております。木材の輸出額です。
  103. 井手以誠

    井手委員 中国に対しては。
  104. 伊藤三郎

    伊藤説明員 実は韓国に対しましては日韓オープン・アカウントの残高の問題がございましたのでこまかく整理をしておったのでわかったわけでございますが、中国については今一つ一つ調べるというのはちょっとできかねるので、数字は出しておりません。
  105. 井手以誠

    井手委員 もちろんこれは数百億円に上るとは考えておりません。しかし「国の予算」にも書いてある。私はほかにも確たる資料を持っております。この「国の予算」にも書いてある中国に対する坑木代、これはやはり見返資金援助物資の清算にあたっては当然処理されなければならぬ問題であると考える。そうでしょう。
  106. 伊藤三郎

    伊藤説明員 特に中国に対する坑木という点……。
  107. 井手以誠

    井手委員 中華民国です。
  108. 伊藤三郎

    伊藤説明員 中華民国に対する坑木の点でございますが、特別の取り扱いはいたしておりませんので、通常の輸出としまして二十四年の三月、二十四年の外貨引き継ぎまでは、司令部の管理は日本商業物資勘定に繰り込まれておるというふうに承知しております。
  109. 井手以誠

    井手委員 それは今度は朝鮮の石炭代と同じように支払いから控除すべき性質のものだと思うのですよ、そうでしょう。石炭と坑木を日本から売っておるのですよ。わからないならわからないでけっこうです。  それじゃ、次にお伺いをいたします。これは先般伺いましたが、終戦当時に日本が持っておった金、銀、米ドルを中心とした日本輸出入回転基金になった約一億五千万ドル、これはどう処理されましたか。どの方に会計は引き継がれましたか。
  110. 伊藤三郎

    伊藤説明員 中華民国向けの坑木、石炭でございますが、輸出手続としてやっておりますので、その分だけの決済未済ということはないと思います。やはり決済をされまして、最後はオープン・アカウントの残高としまして、日本と中華民国間の全体の貿易の帳じりとして引き継がれておるというふうに承知いたしております。
  111. 井手以誠

    井手委員 朝鮮に対する四千七百万ドル、これははっきり出ているのですね。坑木は出ていないのです。これは幾らですか。
  112. 伊藤三郎

    伊藤説明員 朝鮮の四千七百万ドルと申しますのは、日本と韓国との輸出入の差、日本の出超分でございます。  坑木としては、先ほど申しましたように出ておりません。
  113. 井手以誠

    井手委員 「国の予算」の二百九十七ページにも出ているのですよ。私はほかにも資料を持っておりますが、これはあなたの方の署名入りではございませんから、私は私の資料として、ここでは申し上げません。  それじゃ、先刻私がお聞きしました一億五千万ドル前後の、いわゆる綿花を買い入れた、あの例の回転基金、この金はどう結末がついたのですか、その点をお伺いします。
  114. 宮川新一郎

    宮川政府委員 昭和二十二年十二月十一日に金八十三トン五百五十五キログラム、銀二千四十四トン四百四十四キログラムを担保といたしまして、一億三千七百万ドルの基金を設置いたしました。昭和二十四年十二月一日に回転基金が廃止になりまして、廃止後は担保となりました金銀は、他の管理されていた——と申しますのは、輸出入回転基金の担保になりました金銀は、いずれも総司令部の金庫管理官の管理下にありましたものですから、その管理下におりました他の金銀と一緒に合併されて、昭和二十六年六月二十一日に日本政府に移管されております。移管されました総額は三十四年六月の価格によりますも七百九十一億円に相なっております。
  115. 井手以誠

    井手委員 その七百九十一億円に相当するものは、その移管されたものの管理は今どうなっておりますか。
  116. 宮川新一郎

    宮川政府委員 他の接収貴金属と一緒に、接収されました貴金属の所有者に返還するように目下手続中でございます。
  117. 井手以誠

    井手委員 どうもそこに不審な点があるようですが、私まだたくさん問題が残っておりますから、あとにまたお伺いいたしましょうす。  韓国の例の四千七百万ドルといわれる石炭代、これは今度の債務から差し引かれておりますが、国内の業者には幾ら払いましたか。私の当時の調査では二百億円払ってあると思うのです。今度控除された石炭代の四千七百万ドル、それに対して日本の業者には二百億円払ってあるはずだと思う。そうすると幾らになりますか、一ドル五百円幾らかに相当するだろうと思います。また不良品として返ってきたものもあると思うですが、これもやはりこの機会にきちんとしておかなければならぬからお伺いをいたしておきます。
  118. 伊藤三郎

    伊藤説明員 韓国との輸出入の残でございますが、四千七百万ドルと申しますのはオープン・アカウントの差引勘定でございます。そのうち輸出につきましては、石炭が昭和二十年から二十四年まで約三千九百十五万ドル、坑木は先ほど申しましたように木材のうちに入っていると思いますが、木材が百七十五万九千ドルばかり、そのほかに機械器具とか肥料等がありまして、輸出総額が七千二百四十六万八千ドルになっております。一方、輸入がノリその他で九百八十三万二千ドルばかりでございます。差し引きますと六千数百万ドルでありますが、この差額のうち千五百五十八万ドルは現金決済をされておりますので、それを引きまして、四千七百万ドル余がオープン・アカウントの残高になるわけでございます。この分が今回の返済額から控除になったわけでございます。
  119. 井手以誠

    井手委員 それはわかりましたが、その分に相当する国内の業者に対する代金支払い幾らであったかということを聞いておるのです。
  120. 伊藤三郎

    伊藤説明員 その分の国内から買い上げた価額が幾らかという点でございますが、当時石炭関係は配炭公団で買い上げておりまして、それを、輸出するものについて貿易資金特別会計が配炭公団から買い上げたわけでございます。どこの業者にどういうふうに払っておったかということは、現在手元に資料がございません。
  121. 井手以誠

    井手委員 個々の業者のことはかまいませんが、四千七百万ドルが正しかったかどうかということは、やはりこの債務が生ずるときにははっきりしておかねばならぬからお伺いしておるわけですよ。  それではその前に外務省にお伺いいたします。四千七百万ドルは内容はどういうふうな交渉になりましたか。その内容をお伺いいたしたい。
  122. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 たびたび御説明申し上げたかと存じますけれども、この対韓オープン・アカウントの残高四千七百万ドルは、従来の交渉の経過においても種々問題になってきたわけでございます。それでこの問題につきまして、このオープン・アカウントが引き継がれます際に種々こちらからも返済申し出たわけでございますが、事の起こりは御存じの通りアメリカが……(井手委員「その辺はいい。」と呼ぶ)そこでマーケットが声明を出しまして、このオープン・アカウントの残高の処理については、対日援助物資のいわわゆるガリオアの処理のときに一緒に処理するということを申しまして、自来公式の交渉の過程におきましてずっとこの問題を交渉してきたわけでございます。この際はいわゆるネットから控除することになったわけでございます。
  123. 井手以誠

    井手委員 それでは時間がたちましたから——通産省御存じでしょう。その四千七百万ドルに相当する石炭代の配炭公団その他から出した代金は石炭業者その他に幾ら払っておりますか。これは債権ですからね。
  124. 伊藤三郎

    伊藤説明員 貿易資金特別会計が配炭公団に支払いました額は、五十一億五千九百万円程度でございます。
  125. 井手以誠

    井手委員 それが朝鮮に売った全部ですか。もう一つお伺いしますが、不良品がだいぶ戻ってきたわけでありますが、その点はどうなっておりますか。
  126. 伊藤三郎

    伊藤説明員 これは朝鮮に売った石炭についての全部の額でございます。不良品が戻ってきたという点がございますが、そういうような話はございますが、これは配炭公団と当該業者の間で整理がついておるというふうに承知いたしております。
  127. 井手以誠

    井手委員 どうも不審なことが多いんですけれども……。  次にお伺いいたします。これは先般外務委員会でもお伺いいたしました、例の昭和二十四年のいわゆるスキャッピンによる占領軍家族住宅の二千戸建設の緊急指令、それがあなたの説明によると連合軍住宅建設費二千万ドル、これに該当するわけですね。安藤さん、そうでしょう。  それからもう一つお伺いしますが、昭和二十一年スキャッピンによって第八軍から指令されて朝鮮などに送った占領軍家族住宅千五百八十二戸に相当する分は、この前の説明によりますと五千五百万ドル、こういうふうに承ったようでございますが、その通りですか。
  128. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 さようでございます。なおこの件につきましては外務委員会に御提出申し上げました資料3にも明記してございます。
  129. 井手以誠

    井手委員 そこでお伺いをいたしますが、朝鮮に対する石炭売払代金は四千七百万ドル、これは債権として支払額から控除されております。そうすると片一方のあの、終戦直後非常に困難であった日本の材木を買い上げて朝鮮に一千五百戸分送ったこの代金、これは石炭と材木とは性格が違うんです。もう少しわかりやすく申し上げますと、援助返済額五億四千三百万ドルから石炭代については全額四千七百万ドル差し引いてございます。ところが一方朝鮮で占領軍の家を建てた材木代の五千五百万ドル、これについてはいわゆる三分の一に削られておるんですよ。これも当然五億四千三百万ドルから、石炭代と同様に五千五百万ドルは全額を差し引いて支払わなくちゃならない理屈のものだと私は思うのです。これは事務当局よりもむしろ外務大臣にお答え願った方がいいと思うのです。  もう一ぺんわかりやすく言いますと、石炭代については援助支払額から全額差し引いてございます。ところが家を建てた材木代については三分の一ぐらいしか引いていないことになるわけですね。どういうわけで違いますか。
  130. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まずこれは、われわれ非常に努力して交渉をした点でございますので申し上げたいと思うのでございまするが、この資料で申し上げておりまする連合軍家族住宅建設費、これは資産として日本へ残るわけのものでございます。従って、これは日本といたしましてはこの分だけ残るのですから、三分の一といってもわが方に相当有利であるというように考えておるわけであります。それから韓国、琉球向けの建設資材費、これも実は終戦処理費において処理しておりますので、講和条約の規定によりまして終戦処理費はこちらが払う、負担するということで、五千百億何がしの中へ含まれておるわけでございまするが、しかしこれは適用地域が韓国であるということで、先方を説き伏せ失してこの控除項目の中に入れさしたようなわけでございます。この日韓関係のオープン・アカウントのしりの問題は、これは純粋に商業勘定のしりであるということで、全体の経済額差引で計算したもののあとから、いわゆるネットから引いた、こういうことでございます。当初この勘定項目もむしろ一般の控除項目に入れろという主張もありまして、ずいぶんこの点争ったわけでございますが、わが方の主張を入れさした、こういう関係になっております。われわれの主張をした根拠は、これは商業勘定である、いわゆる対日援助の性質とは違うものであるということで、かように結末をつけたのであります。
  131. 井手以誠

    井手委員 少し勘違いなさっておると思います。占領軍住宅については二回ございます。第一回は第八軍の指令によって二万戸建設されようとする際に、二万戸のうち千五百八十三戸分——これは実績です——は韓国で建てられておるのですよ。それから第二回のものは昭和二十四年の緊急住宅二千戸分、これは日本国内で建てられております。その点についてのあとの清算はまたあとでお伺いをいたしますが、あとに財産が残っておるから三分の一くらいでいいではないかとあなたはお答えになったのですが、それは違うのですよ。韓国に今建っておる建物が日本の財産であるならよろしゅうございますが……。その辺外務大臣は何か私の言うことが舌足らずでわかりにくかったかもしれませんが、国内にあるものじゃございませんよ。石炭については全額支払額から控除されておる、家を建てた材木については三分の一に削られておる、これをなぜ別々に取り扱われたか、こう聞いておるのです。
  132. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の答弁が舌足らずでございまして、誤解を招いたかとも思いますけれども私は両方同じ意味で言っておるわけでございます。すなわち、一九四六年から一九四七年までに韓国、琉球向けに出した資材——今、後段に仰せられました五千五百万ドルこれは終戦処理費として処理しているわけでございます。従って、これは条約上十九条において、われわれはこの請求権を放棄している問題でございます。放棄しているのだから、これは差し引かなくたっていいじゃないかというのがアメリカの主張であったわけでございます。しかし私どもの主張は、日本でない韓国に対して行なわれたものである、従って、これは終戦処理費から支払ったのは事実であるけれども、これは戻してもらうべきものであるということで、この援助総額から差し引かせるということに合意したわけでございます。  それから、前段の一九五〇年から五一年まで、公社へ見返資金から出資した分、これは見返資金から公社へ出たもののだから控除すべきであるということで控除さした、こういうことでございます。しかしながら、私がつけ加えましたのは、こういうふうに差し引かしておるのは、住宅そのもの日本にあるのだから、これは使わなくなれば日本に移譲されるものであって、日本に残るものであるからさらに有利である、こういうことを申し上げたのであります。
  133. 井手以誠

    井手委員 だからあとの分はあとでしますが、昭和二十一年、二十二年に建てた二万戸建設の千五百八十三戸韓国で建てられたもの、これはアメリカの解釈が間違っているのでしょう。終戦処理費から出すべきものじゃございません。これはだれが何と言おうと明確です。国内で、米ソ冷戦が激化した場合に、どんどん基地が拡張された、それは言い分があるでしょう。きょうはその点は多くは申し上げませんが、しかし、日本の占領、そのための終戦処理費、ところが韓国で建てた住宅の費用を終戦処理費から出すべきでないことは明らかですよ。これはどんなにひいき目に見ても、そうである。石炭代と同じじゃございませんか。それは、あの苦しい日本の終戦直後の状態の中から無理に千五百戸分の材木を持ち出して韓国で家を立てた、その分は当然やはりそれは石炭代と同様に支払い総額から全額差し引くべきじゃございませんか。三分の一に差し引くなんというのはけしからぬですよ。あなたの交渉がまずかったのでしょうか、どうですか。
  134. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは、私は実は逆だと思っておるのでございまするが、とにかく終戦処理費でこの金額を認めておるのです。すでに講和条約ができますときに、こういうものをひっくるめて五十四億ドル、邦貨にしますと五千百億円何がしというものを認めておりますので、すでにわれわれは支払っておるのです。しかしながら、私ども今度この交渉の過程におきまして、これは今井出さんのおっしゃるように、日本国内に建てられたものじゃないじゃないか、こういうことで主張いたしまして、先方はわが方の主張を正当と認めて合意したわけでございます。そういういきさつで、大体、これは商業勘定の場合とは違うわけでございます。
  135. 井手以誠

    井手委員 それはいきさつはあったかもしれませんけれども、筋を立てて折り目を正す、これがあなたの仕事でしょう。それをあなたが筋を立てて相手を納得させるところに小坂さんの手腕があるのでしょう。外務大臣の腕があるはずです。それはいきさつはあったでしょう。間違えて、誤って、アメリカの方は出すべきものでない終戦処理費から出しておった。その終戦処理費の問題であったから、三分の一くらいならしようがないじゃないかというあなたのお話のようですけれども、それは石炭代と何ら変わりはございませんよ。日本が出すべきものじゃございませんよ、韓国で家を建てたものは。それはあなたの交渉がきわめて不十分であったと私は心得ておきます。  そこで、よくあなたがおっしゃるこの支払い総額の四億七千万ドル、これは援助物資の返済額から日本の持っておる債権を差し引いた残額が支払い額の四億九千万ドルになっております。だから四千八百万ドルというのは、日本アメリカに対する債権でございますね。それはお認めになりますか。
  136. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 この韓国に対するオープン・アカウントのしりと、琉球に関するオープン・アカウントの勘定じりと二つを加え出した四千八百七十五万四千ドルというものは、わが方の持っている債権、こういうことで合意いたしまして、ネットから引いたわけでございます。
  137. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、あなたの方で先般衆議院をお通しになったあの協定の援助物資支払い額というものは、四億九千万ドルではなくて、五億四千三百万ドルというのがあなたの方の資料によれば正しいことになりますね。あなたの方はいつも四億九千万ドル、四億九千万ドルとおっしゃいますけれども援助物資支払い額、返済領というものは、これは五億四千三百万ドルが正しいでしょう、あなたの方の資料通りに。
  138. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ガリオア問題の最終的な決着といたしまして、従来いろいろもやもやしておったものを、最終的に債権をアメリカはどれだけ取るか、どれだけ債務を負担するかということになりますと、四億九千万ドルというお答えになるわけでございます。当初このオープン・アカウントのしりも、こういうネットから控除するということもなかなか不可能であろう、こういうような状況もあったわけでございますが、種々交渉の結果、さようなことにいたしまして、結論的には今申し上げたように、要するに最終的な債権というものは四億九千万ドル、債権債務の関係というものは相殺した、こういうふうに処理したのであります。
  139. 井手以誠

    井手委員 差引四億九千万ドルになった、その間非常に努力したということをあなたはおっしゃいます。アメリカにも行かれ、こちらでも会議をなさった。その努力は私ども認めましょう。しかし、金額について私どもは意見が十分にあるのでありますが、私どもがお伺いしておるのは、差引幾ら支払うかということでなくて、アメリカでいえば十九億ドル日本側でいけば十七億ドルのこの援助物資、それに対する支払い額、返済額というものは五億四千三百万ドル、これは間違いないでしょうね。援助物資に対する日本の債務、アメリカに対する日本の債権、こう別々にあるのですよ。そして差引して金を向こうに払うのですけれども援助物資に対する日本支払い額というものは五億四千三百万ドルでしょう。そうでしょう。
  140. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはいろいろ考え方がございますけれども、債権と反対債権と相殺した、従って最後はこうなったということで、その前をおとりになれば、井出さんのおっしゃる通りであります。
  141. 井手以誠

    井手委員 別にあなたこだわることはないのですよ、債権は債権として私ども認めておるのですから。援助物資の返済額は五億四千三百万ドルアメリカに対する債権が四千八百万ドルある、こうして差引四億九千万ドル金は支払うことになります。こういうことになりますから、私がお伺いしておるのは、その援助物資支払い総額は五億四千三百万ドル、これは間違いないでしょうねと、こう聞いておるのです。それだけでいいのです。
  142. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 まあさようなことかと思います。要するに、種々計算いたしまして、三三・一七八をかけた結果は五億四千三百万ドル、それから反対債権を引いたものが四億九千万ドル、こういうことであります。
  143. 井手以誠

    井手委員 だから金額が少ない方があなたの方は都合がいいような気がなさるでしょう。けれども、その点は明確にしておかなくちゃならぬと思う。日本アメリカに対する債権は幾ら援助物資に対する日本の債務はこうなのだ、だから差引はこうなった、それははっきりしておった方がいいのです。  それでは先刻外務大臣がおっしゃった日本国内に残っておる家屋というもの、これは当時の金で幾らになっておりますか。昭和二十四年度スキャッピンで建てられました占領軍家族の住宅。
  144. 宮川新一郎

    宮川政府委員 昭和二十五毎度並びに二十六年度、両年度にわたって住宅公社に貸し付けられまして二千戸の住宅が建設されたわけであります。先ほどお答えいたしましたように、ドルにいたしまして二千万ドルでございますけれども、円にいたしまして七十四億九百二万八千円であります。
  145. 井手以誠

    井手委員 それでは次に、大蔵省から出されました返済財源などについてお伺いをいたしますが、その前に、通産省でけっこうですから、対日援助等特別会計から見返資金の方に入りました金額売払代金価格調整金と別々にして、年度別にここでお示しを願いたいと思います。
  146. 伊藤三郎

    伊藤説明員 援助物売の売払収入でありますが、昭和二十四年度が八百九十九億六千万円余、価格調整補給金の受け入れは四百五十億円余、合計いたしまして千三百五十億二千万円余。二十五年度は、援助物資の売払収支が千二百八十六億円余でございます。価格調整補給金の受け入れが百三十三億円余、合計千四百十九億円余、昭和二十六十年度援助物資の売払収入が五百二十六億八千万円余、価格調整補給金受け入れが三億二千八百四十万円余、合計五百三十億円余。昭和二十七年度は、援助物資の売払収入が六億九千百万円余、価格調整補給金の受け入れゼロ。それから昭和二十八年度の援助物資の売払収入が一億五千百万円余、価格調整補給金の受け入れゼロ、合計いたしまして、援助物資の売払収入が二千七百二十億九千二百万円余、価格調整補給金の受け入れが五百八十六億八千九百万円余、合計三千三百七億八千百七十万円余でございます。このうちから米国対日援助見返資金特別会計への繰り入れ額が三千六十五億円余でございます。
  147. 井手以誠

    井手委員 ありがとうございました。三千六十五億円を見返資金特別会計に受け入れられておる。それが運用益金を加えられて今日に至っておるわけですが、それじゃ、先刻外務大臣がお話しになった二千戸分の七十四億円という金はどこから出ておりますか。
  148. 宮川新一郎

    宮川政府委員 見返資金特別会計より支出といたしまして出ております。
  149. 井手以誠

    井手委員 それはわかっておりますが、あなたの方の資料なり一切見ましても、全然出ておりません。予算にも何にも出ておりませんよ。
  150. 宮川新一郎

    宮川政府委員 見返資金特別会計が、ただいま通産省からお答えいたしましたように、受入金に三千六十五億円でございまして、それに雑収入等を加えまして三千三百四十三億の資産になるわけであります。そのうち使用いたしました金が千四十九億、これは電気通信事業特別会計でありますとか……。
  151. 井手以誠

    井手委員 ちょっと待って下さい、時間がないから。その七十四億円は予算書のどこに出ておりますかと聞いておるのです。
  152. 鈴木喜治

    鈴木説明員 見返資金特別会計の経済再建及び安定費から出ております。
  153. 井手以誠

    井手委員 今その住宅はどういうふうになっておりますか。住宅公社は解散になって、今その住宅はどうなっておりますか。七十四億円に相当する二千戸のものはどうなっておりますか。
  154. 宮川新一郎

    宮川政府委員 その後住宅公社が廃止になりまして、資産、負債は一般会計に引き継ぎまして、現在一般会計資産として管理中であります。
  155. 井手以誠

    井手委員 もう少し詳しいところをお聞きしたいと思うのです。その七十  四億円の中に若干家賃が入りましたね。残ったのが七十一億円だと思います。その七十一億円に相当する家屋は今どうなっておるか。どういう方面にどう貸して、どういう家賃を取って、どこの収入になっているかと聞いておるのです。
  156. 宮川新一郎

    宮川政府委員 行政協定によりまして、現在連合軍に貸し付けておりまして、無償になっております。
  157. 井手以誠

    井手委員 私非常に不敏でございまして、よくわかりません。出発は家賃を取って償還に充てるということでしたろう。国の一般会計のものであれば、これは国の財産でございますね。それを行政協定でどういうふうになりますか。そういうことができますか。少しわかりやすく法律上、財政上説明を願いたい。
  158. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいま理財局長が御説明いたしましたように、当初作りましたのは二千三戸でございますが、その後この連合国軍人等住宅公社が廃止されまして、その資産、負債は全部一般会計に承継されましたわけであります。そこで、資産自体も国がこれを一般の国有財産と同じように管理をいたしております。国有財産を米軍に貸しますときには行政協定によって無償になっております。従いまして、無償でこれを貸しているわけでございます。なお、そのうち一部不用になったものは調達庁におきまして適宜処分をし、歳入に立てておるということも聞いておりますが、詳しいこと、集計その他はできておらないわけであります。
  159. 井手以誠

    井手委員 国の一般会計の財産でしょう。一般会計の財産を無償で貸す場合にはどういう手続がございますか。調達庁のものだとおっしゃいますけれども、管理は大蔵省でしょう。国有財産を無償で貸すときにそういうことでいいですか。第一家賃をアメリカから取ることに初めからきまっておるのですよ。
  160. 上林英男

    ○上林政府委員 家賃をとるようにきめられましたのは、実は連合国軍人等住宅公社を作りました経緯にからみました問題でございます。昔はこれを終戦処理費等でまかなうことを命ぜられておったわけでございますが、それでは家質収入が入らない。従って、米軍が住宅手当を出して家賃収入を返さしていった方がいいであろう、こういうようないきさつがございまして、当時、昭和二十五年でありましたか、連合国軍人等住宅公社法を制定いたしまして、その建設資金は見返資金から出し、この返済は当初、その当時は米軍が住宅手当から出したもので家賃として払い、これを償還していこうという計画であったわけでありますが、その後そういう計画がなくなりまして、二十七年に連合国軍人等住宅公社法が廃止されたわけでございます。その後行政協定——ただいまでは地位協定でございますが、それによりまして、国の財産を米軍に貸しまするときには無償とするということによりまして、調達庁がこれを貸しまするときには、無償で貸しておる、従って貸料が入って参りませんということになるわけでございます。
  161. 井手以誠

    井手委員 調達庁が貸すという場合、そんなことは国会は知りませんよ。これは大蔵省の仲間で出したもので、大臣が出したわけではないのですが、これにはこう書いてある。「総額は約七四億円で、貸付条件は、利率年五分五厘、ただし、家賃収入から元金返済の残額を充当することとし、貸付期間十五年」「しかしながら、その後対米債務の返済についての日米交渉の経過から、元連合国軍人等住宅公社の借入金については、対米債務から除外される見込がついたので、昭和二十九年九月三十日以降、一般会計から産業投資特別会計への元利金の繰入れを停止することにした。」こう書いてある。これはその通りだと思う。そうでありますなら、最初は家賃で借入金を返済する約束だった。それをその後どういう事情か、国会では何も私らは説明を聞いておりません。国の財産をただで貸すことについても何も聞いておりません。占領軍との約束は、家賃をとるものをその後になってただで貸す、そういう事態になっておるならば外務大臣はそれを三分の一くらいにまけてもらうようなことをせぬでも、なぜ全額引いてもらわないのですか。初めは家賃で返済することになっておった。今日では二千三戸ただで貸しておる。そういう事実であるなら、なぜ全額五億四千三百万ドルのうちからこの分を石炭同様に控除しませんか。当然でしょう、日本のものをただで貸しているなら。あなたは日本に財産が残っておると言うのでしょう。日本国民はどこに使っておりますか。
  162. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは交渉の問題でございますが、要するに先方から幾ら幾ら援助があった。その場合、ドイツではそれを三分の一にして返済額をきめた。そこでわれわれは三分の一にする前の金額を、こちらが当然通り抜け勘定と思われるものとか、あるいはこれを控除すべきものと考えるものというようなものを差し引きまして、それを三分の一にした、こういう考え方でございます。結論から言いますと、今井出さんのおっしゃいまするように、三分の一返したということになりますけれども、大体こういう項目を認めさせるということそのことが、非常に先方と言い分がいろいろ食い違うことになるわけでございます。そこで、先方の言い分でございますと、もともとこういうものは終戦処理費で出すべきものであって、日本の負担に属すべきものであるということであります。しかしながら、それにしても見返資金から出ておるのであるから、これは引くべきであろうという当方の主張に先方をして左祖させたわけでございます。さような経緯でかようになっておるわけでございます。しかしながら商業勘定の場合は、これはこの援助と関係ないじゃないかということで、ネットから差し引いたということになっておるわけでございます。
  163. 井手以誠

    井手委員 二千戸の住宅を建てるときにはいろいろないきさつがあったことは記録に載っておるのですよ。そうして見返資金も積み立てるようになったのだから、だからその分から借りてやろうじゃないか、日本に無理をさしてはいかぬというようなことで、見返り資金の方から金を借りて二千戸建てることになったんですよ。そうしてその家賃から見返資金の方に金を七十四億円戻そうということだったのです。その後朝鮮動乱のために、その家に住む人が少なくなって住宅公社は解散になった。日本に返ってきたかと思うとそうでなくて、全部ただで貸しておるのですよ。それはいつ戻りますか。あす戻りますか、あさって戻りますか、この協定が発効したならば戻るならば話はわかるのですよ、いつ戻るかわからない。ただで貸しておる。それを三分の一しか引いてもらえぬというそんなばかげた交渉はございませんよ。家というものは一年々々古くなって、最後には役に立たぬようになってしまうのですよ。初めは家賃を取ると言っておる。ただで今住まっておる。それじゃ事務当局にお聞きしますが、そういう国の財産をただで貸していいのですか、勝手に国会の承認もなく。
  164. 上林英男

    ○上林政府委員 ただいまの協定によりますと、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協定及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」というのがございまするが、その第二条及び二十四条によりまして、「合衆国は、相互協定及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。」というような規定がございまして、その区域施設には「当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。」ということになっておりまして、こういうものを合衆国に提供する義務を日本側が負うておることになっておるわけでございます。従いまして、そういうものをこの連合国軍人等住宅公社の持っておりましたような住宅につきましても、合衆国の方に無償で提供する義務を課せられておるということになるわけでございます。
  165. 井手以誠

    井手委員 何も二千戸分を提供しなければならない義務は書いていないじゃないですか。ただ包括的に、二千戸分を出せとは書いてないじゃないですか。まあその解釈はともかくとして、ただで貸すのが今でもあるのですか。これは協定と同時に何か処理しなくちゃならぬことですよ。ただで二千戸分も借すなんてことがあるものですか。これは何とかしなさいよ、外務大臣。この際あなたはこの協定を成立させようというのですから、初めは家賃を取ると言っておるのに、ただで貸すとはけしからぬ。日本の財産ですよ。
  166. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 お答え申し上げます。平和条約発効後は旧行政協定第二十五条によりまして無償で提供するということになっております。その後ずっと引き続いてそれが行なわれておるわけでございます。
  167. 井手以誠

    井手委員 アメリカ局長、行政協定を私はそう今深くは知らんです。この二千戸分というのは日本のものになるから三分の一に負けてもらったのだと外務大臣は言っておる。今度日本アメリカに対する債権を差し引いて援助総額の三分の一を払おうというときですから、この問題も清算しなくちゃならぬ時期に来ておるのですよ。それをどうなさるのですか。大蔵大臣にお聞きしますが、大蔵大臣水田さん、あなたはこういう出たらめなやり方でいいのですか。国の財産を管理しなくちゃならぬ。国の財産については非常に厳格な規定がある。開拓者なんかの場合はどうです。わずかの何千円、一万円の金でも、とてもひどい取り立てもしている。この七十四億円にも相当する家をただで貸しておるなんて、これは許されませんよ。こんなときこそ、協定を成立させるこのときこそ、そういうものは解決すべきだと思うのですが、どうですか、大蔵大臣
  168. 水田三喜男

    水田国務大臣 財産権がこちらにあって、協定によって無償提供するという協定があるのですから、これに対してはさっき外務大臣が言われましたように、向こうから見ますと、この種の住宅の提供というようなものは終戦処理費で処理してもいい性質のものだったというようなこともございますので、これをグロス控除の対象にするということ自身も、外務省の折衝においては外務省も相当苦労して認めさせたといういきさつもございます。向こうが、当初はこういうものを除外して、それを何分の一にするというような主張をしておったものを、グロス控除の中に入れることに外務省が骨を折ってようやく実現したというのですから、交渉の過程を知っております私どもからしましたら、まあこの問題は、ますますこの辺の解決が妥当じゃなかったかという気がしております。
  169. 井手以誠

    井手委員 それじゃあらためてお聞きします。外務大臣、そういういきさつがあって建てられた二千戸は、このままでずっとただでお貸しになるお考えですか。
  170. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは安保条約そのものに対する考え方にもよりましょうと思いますが、われわれはあれは必要だと考えております。そこで、安保条約に基づきます地位協定によって、これは双方で対等の立場でものを出し合って、そしてこの条約を遂行していく、こういうことでございますので、われわれ、地位協定の第二条によってこうした住宅は無償で提供する、こういうことにしているわけです。従って私どもは、それが妥当であると考えております。  それからなお、これを三分の一しか払わぬという点に非常におしかりがあるわけでありますが、これも同様の項目を、資料として差し上げておりますその次の次をごらんいただきますと、学童給食費四百九十二万八千ドルというものがあるわけでございます。これは一九五〇年から五二年の間に学童給食を行ないまして、これは無償にしたわけです。無償であるものをそれじゃ三分の一払っていることになるじゃないか、こういう議論になろうと思うのでございますが、要するに無償であると考えたものは全体から引かして、引いたものに三分の一をかけておる、こういうことになっておるわけであります。
  171. 井手以誠

    井手委員 三分の一になった、三分の一になったといつもおっしゃいますが、この前お聞きしたときには、石の入った麦や腐りかけたトウモロコシ、普通では三分の一あるいは四分の一、ただでしか売れないもの、そういうものがあったから三分の一にしてもらったとおっしゃった。あれもこれも三分の一に入ってしまう。これはおかしな話ですよ。  大蔵大臣、私が先般外務委員会で質問いたしましたときには、あいにくあなたは所用のために御出席願えませんでしたけれども、この際一言あなたに申し上げておきたいと思います。マッカーサー元帥は、占領というものは三年ぐらいが適当であるということを何回も申しておりました。従って、昭和二十四年ごろにおける基地の拡張というものについては疑義があると思う。しかし、それは占領軍の絶対命令でございますから、それをいろいろと私は本日は申しません。しかし朝鮮動乱が起こってから、九州を中心として、次々に相次いで飛行場その他の基地が拡張された。その費用は莫大なものです。あまりひど過ぎるという非難から、わずか百八十三億円の需品費だけを日本に戻しているのです。それを考えますと、これは占領目的というものをはるかに逸脱しておる。安保条約は別問題です。昭和二十五年、二十六年、その間における朝鮮動乱に関連して基地拡張が行なわれた、その費用というものは占領目的に反しておる。それによって私どもは、援助物資代金は、莫大な終戦処理費によって一回は払っておるわけです。それが第一回。続いて昭和二十四年三月以前の、先刻横路君がいろいろと質問いたしましたある問題。援助物資の払い下げ代金というものは、残っていなければならないはずです。十億ドルの金は残っておるはずです。それはあなたの方の、大蔵省の統計によると千三百四十億円。それには私どもの税金から出した、一般会計の金が二百七十三億円含まれているのですよ。売り払い代金だけでは足りないから、一般会計から出しておる。それはなぜそうなったか。あなたの方は、価格調整金だとおっしゃいますけれども日本の品物をアメリカに売る場合に、二分の一、三分の一、ばかげた値段でたたき買いされたその結果です。これは明らかです。若干は輸入補給金にも使っておるでありましょうけれども、私の計算では、八割五分から九割はアメリカからたたき買いされた結果である。そうなりますと、消えた十億ドルというものを、日本の金で二百七十三億円、その金によって、すでに私どもは、アメリカ援助物資というものは二回目に払いが済んでおるものと考える。続いて私が今お聞きしておるのが見返資金の問題になるわけです。そういういろいろな条件がございますから、見返資金からのこの問題の返済については、慎重でなければならぬ。そういう意味で私は大蔵大臣に申し上げたわけであります。  それでは続いてお伺いをいたしますが、先刻通産省の答弁によって、価格補給調整金が見返資金の中に五百八十六億円入っておることがはっきりいたしました。一般会計から入った金はそのほかではございませんか。この価格調整補給金のほかに、入った金はございませんか。三百六十五億円の見返資金の元本、その中に五百八十六億円の価格補給金が入っておることが明らかになった。そのほかにあるはずですが、あなたの方ではございませんか。
  172. 伊藤三郎

    伊藤説明員 貿易特別会計事業費勘定には一般会計から入っておりますけれども貿易特別会証の援助費勘定、それから援助物資処理特別会計、これには一般会計からは価格調整補給金のほかは入っておりません。
  173. 井手以誠

    井手委員 大蔵省通産省、農林省、外務省にお伺いをいたしますが、ほかにはございませんか。  重ねてお伺いをいたしますが、五百八十六億円の価格補給調整金は承りました。そして貿易特別会計に四百億円。そのうち二百五十億円は、昭和二十四年三月以前の貿易資金特別会計借入金に返済されておる。百五十億円は、その後の貿易会計の運転資金に充当されておる。これはわかっております。そのほかに、私どもの税金から見返資金の方には入っておりませんかと聞いているのです。
  174. 石野信一

    ○石野政府委員 お尋ねの五百八十六億のほかに、一般会計の金が間接的に見返資金特別会計に入ってないかというお尋ねでございますが、食料に関しまして、二十六年度以降は価格差補給金を計上することになりまして、これは一般会計から直接に食料管理特別会計に繰り入れることになっておりまして、この金額が二十六年度以降で三十六億円余となっております。従いまして、五百八十六億のほかに三十六億円、間接的に一般会計から食糧管理特別会計における食料の価格補給ということで入っておるわけであります。
  175. 井手以誠

    井手委員 こういうふうに聞いていけばぼつぼつ返事なさるのですが、そういったものは、もっとはっきり最初に説明願えぬものですか。いかにも国民の負担にならないような説明ばかりであって、価格調整補給金も、私の方から問い合わせた結果五百八十六億がわかって、そのほかにありはせぬかと思ったら、三十六億円の食糧管理特別会計から入ったものがあるのです。そういうものを洗いざらいなぜ説明できないのか、不思議でたまらないのです。  そうしますと大蔵大臣、三千六十五億円の中で、五百八十六億円と三十六億円の六百二十億円というものが、私どもの税金から払われておる。これは間違いでございませんね。それだけを簡単に御返事いただきたい。
  176. 水田三喜男

    水田国務大臣 間違いありません。
  177. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、これは外務大臣は何回もおっしゃった。私の言うのは白昼横行の暴論のごとくおっしゃった。二重払いの論議が白昼横行しておるとおっしゃった。そうすると、今回払おうとなさる見返資金の元本の中には、私どもの税金が入っておるということになります。宮川さん、そうですね。
  178. 宮川新一郎

    宮川政府委員 その点は、先ほど横路委員の御質問にもお答えいたしましたように、援助物資ドル価格に相当する円価格が三千六十五億円でございまして、その資金繰りといたしましては、ただいま通産省からお答えいたしましたように、援助物資売払代金のほかに、一般会計から受け入れた価格差補給金、並びに食糧管理特別会計から援助物資特別会計に入りました三十六億円が入っておりますけれども、国民といたしましては、たとえば百ドル相当額のものを買って、その代金を払わねばならぬところを、当時の価格政策上、国民が売払代金として払うのが八十ドル、税金で負担するのが二十ドル、こうしたわけでございまして、国民としては百ドル相当の分を代金として、税金と売払代金という形で支払っておるわけでございますから、あくまでもこれは私、二重払いにならないと考えます。
  179. 井手以誠

    井手委員 二重払いの問題はあとからいろいろと論議しなければなりませんが、この三千六十工億円の中に私どもの税金が六百二十億円入っておることは事実ですね、こう聞いているのです。いろいろな政策問題は別だ。
  180. 宮川新一郎

    宮川政府委員 資金繰りといたしましては、三千六十五億円の中に、その資金の源泉といたしましては、伊藤次長が申されましたように、売払代金のほかに、御指摘のように価格差補給金も資金源として入っております。
  181. 井手以誠

    井手委員 大蔵大臣が先刻おっしゃった百円のものを八十円で売ったんだからいいじゃないか、宮川さんもそれに右へならえしてそういう答弁をなさっておるが、税金で二十円負担したのだからいいじゃないか、しかし百円のものを八十円で売った——百円のものを八十円が正しかったか、九十円が正しかったか、七十円が正しかったか、それは別です。しかし、かりに八十円といたしましょう。ところが税金をそのために二十円よけいとったなら、同じことじゃありませんか。  私がさらに聞きたいのは、二十円税金をとったほかに、さらに二十円も三十円も税金をうんととったのじゃございませんか。昭和二十四度には、百円の品物を八十円で売るために、税金を五十円もよけいにとったのじゃございませんか。この前もちょっと聞いたのですが、昭和二十四年の国民所得に対する租税負担率というものは二八・五%になっております。カキの木三本に税金がかかったのがこのときです。このときは所得税をかけたんですよ。だから百円の品物を八十円で売って、税金で二十円とったとおっしゃるが、三十円よけいとっておるならば同じことじゃないですか。しかも、二十円ではなくて、三十円も四十円もよけい税金をとっておるんですよ。百円の品物を八十円で売った、三十円安く売ったけれども、税金の方はよけい二十円とりました、こうおっしゃる。同じことじゃないですか。
  182. 宮川新一郎

    宮川政府委員 その点は同じことであります。大体見返資金特別会計に積み立てろという指令が参った金額は、援助物資売払代金を積むということでなくて、援助物資ドル相当額を積む。だからドル相当額は百ドルであって、その百ドルの中で売払代金が八十ドル、税金が二十ドル、こういう計算になるわけであります。
  183. 井手以誠

    井手委員 だから、安く売ったという理屈にはならないということを私は申し上げておるんですよ。それだけははっきりしておきます。  それから開発銀行、お急ぎのようですから、ちょっと開発銀行にお伺いしますが、今後の産投資金の運用の問題です。今夜で運用資金はどういうふうになっておりましたか。その原資ですね。今年は六百何十億かと思いますが、内訳はどういうことになっておりますか。
  184. 平田敬一郎

    ○平田説明員 お尋ねの趣旨は本年度ですね。
  185. 井手以誠

    井手委員 三十七年度の計画です。
  186. 平田敬一郎

    ○平田説明員 三十七年度においては、政府から借り入れますのが五百七十億、これはもっぱら資金運用部からの借り入れであります。それから自己資金が四百十五億円、そのうち自己資金と申しましても。開発銀行が外債といたしまして借り入れる予定の分が百億、それから回収金が三百二十四億円、それから内部留保、これは積立金でありますが、七十五億円、それに対しまして借入金の返済を百五十五億円差し引き、さらに資本支出、前年度からの繰り越し等を全部整理いたしまして、合計で九百八十五億円を貸付の原資といたしまして予定いたしておる次第でございます。
  187. 井手以誠

    井手委員 私、ここに三十七年度予算の説明書を持っておりますが、それによりますと、運用収入が百九十六億、それから特定物資納付金の方が三十億、それから資金運用部と一般会計からの受け入れが三百八十億、前年度剰余金三十億、合わせて六百三十七億になっておりますが、その通りですか。産投の方ですが……。
  188. 宮川新一郎

    宮川政府委員 産投会計については、ただいまお述べになった通りでございます。
  189. 井手以誠

    井手委員 そこでお伺いしますが、そうしますと、このうち運用収入は百九十六億になっておりますね。今後支払いになりますのは、毎年百五十八億ですか。
  190. 宮川新一郎

    宮川政府委員 百五十八億であります。
  191. 井手以誠

    井手委員 運用収入の百九十六億から百五十八億を引きますと、残った金は三十億弱になりますね。運用収入というのは、大体今後は三十億に達しないわけですね。そうすると、あとの金は今後どうなるのですか。
  192. 宮川新一郎

    宮川政府委員 私、先ほど百五十八億と申しましたが、これは平年度でございます。三十七年度は七十九億でございます。
  193. 井手以誠

    井手委員 平年度を聞いているんですよ。そうしますと、もう一つあなたに聞きますが、最近五カ年間ぐらいで、一般会計から産業投資特別会計に毎年どのくらいずつ入れておりますか。
  194. 宮川新一郎

    宮川政府委員 年度ははっきりいたしませんが、三十七年度を入れまして千五十億になっております。
  195. 井手以誠

    井手委員 三十二年度が百五十億入れておりますね。三十三年度が三百億。年度別に総額を言って下さい。
  196. 宮川新一郎

    宮川政府委員 二十三年度が三百億、三十四年度が五十億、三十五年度が四百七十億、三十七年度が二百三十億、合計千五十億でございます。
  197. 井手以誠

    井手委員 それは一般会計から繰り入れた分ですか。
  198. 宮川新一郎

    宮川政府委員 さようであります。
  199. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、今後産投会計運用収入はもう三十億足らずになります。今までは二百億ばかりあったもの、が、三十億足らずになってくる。その分は、今までのような運営をやって参りますと、その分だけよけいに一般会計から資金を出さねばならぬという結論になるわけでしょう。その点はどうですか。
  200. 宮川新一郎

    宮川政府委員 その点は御説の通りでございまして、今までありました運用収入が対米債務の返済のために使われまする以上は、その分だけは運用収入が減ります。従いまして、もしかりに政策上他に出資あるいは融資をしなければならぬといたしまするならば、それだけの原資は、何らかの方法をもって調達しなければならぬことは御指摘通りであります。
  201. 井手以誠

    井手委員 開発銀行にお伺いいたしますが、開発銀行としていろいろ各方面に資金を融通なさっておりますが、こういう事態になって参りますと、あなたの方の資金運用に——あなたの方が納める納付金ですね、百三十億のうちに見返資金相当のものは百十四億ですか、それと、貸付金は回収してまた貸すことができましたけれども、今後は総額三百五十億円か三百四十五億円、これは戻ったものは全部アメリカに返さなくてはならぬ。結局百五十八億円というものは減ってくるわけですね。そうすると、あなたの方の運用は非常にお困りになるだろうと思います。私は非常に御同情申し上げておりますが、差しつかえございませんか。
  202. 平田敬一郎

    ○平田説明員 最初に申し上げておきますが、実は私ども開発銀行の経理なりその他につきましては、今回のガリオア・エロアの返済後と、実は全然変わりがないのでございます。と申しますのは、従来から開発銀行は資本金二千三百余億、それに対しまして百七、八十億の利益をおさめまして、そのうち三、四十億の積み立てをいたしまして、百三十億前後の金を従来とも実は産投会計に納付しておる、一種の配当をしておるわけでございまして、これは前も、それから今後も、同じ関係になるのでございます。  なお、ただそのほかに、産業投資特別会計からお借りしている分がございますが、これは従来ともやはり元金は返済し、利息は払うということになっておりまして、その三者によりまして、ガリオア・エロアが今後返済できるという大蔵省の御説明のように承っておりますが、この関係は、今度の条約を結ぶことによって従来と実は変わることがございませんので、どうも開銀としてはちょっと文句の言いようがないといいますか、そういう状況でございます。  なお、最近は、資金といたしましては、大体新たな資金は資本金二千三百余億でございまするので、これ以上増資をすぐお願いするというのもどうかと思いまして、主として、主として回収金とそれから積立金、それから資金運用部からの借入金並びに外債等の方法によりまして資金調達に努めまして、銀行としての使命を果たしたい、こういうふうに考える次第でございます。
  203. 井手以誠

    井手委員 あなたは大蔵省にいらっしゃったんですね。貸付金の方はどうなりますか、返ってきたものは。変わりございませんか。
  204. 平田敬一郎

    ○平田説明員 この見返資金から引き継ぎました分は実は二千四百億、二千三百億幾らの資本金になっておるわけでございます。資本金になっている分は、納付金の形でその利益は産投会計に納めっぱなしでございまして、これも実は内部留保に認めていただきますと原資がそれだけふえるわけでございますけれども、これは開発銀行法ができました初めから、約八割は納付するという規定になっておりますので、それに納付いたしておるわけでございます。今までも約千億以上の金を産投会計に納付しているのでございますが、この関係は今後も同じでございます。従いまして、その分の納付を少なくするということでございますと、自己資金はふえますが、その関係は従来と同じでございますので、どうも率直に申し上げまして、非常に御同情ある御質問でございますけれども、開銀としては何らの変更がないということでございますものですから、何とも言えない。ただ産投は、今お話しの通り、私どもの払いました納付金や元利金がガリオアの返済資金に回るということになりますと、産投会計自体の資金は、それだけ従来よりも窮屈になるということかと理解いたす次第でございます。
  205. 井手以誠

    井手委員 納付金はお話通りです、あなたの方が当然納められるものを……。産投会計の方に穴があくわけですから。私の聞いておるのは、返済の財源になっておる三百五十四億円のものはどうなるか、それも産投の方に納められる金ですか。
  206. 平田敬一郎

    ○平田説明員 産投から借り入れておる分は、現在までも元利ともに払っておりまして、順次減少いたしてきております。この分は、今後とも順次借入金が減少という形になって出てくる。ただ、見返資金を引き継ぎましたときに、資本金に負債勘定を引き継いでいる分がございます。この分は減資をいたす必要もございませんので、ずっと引き続いで運用されていって、それが年々百七、八十億の利益を生み、さらにそのうち百二十億前後を産投会計に納めている、それが返済財源の一つになっている、こういうふうに私理解しておるわけでございます。
  207. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、結論としては、開銀から貸したものは、その運用益金は産投会計に入るから、また貸付金の回収の分も産投会計に入るのだから、私の方には影響ございません、こういうことですね。
  208. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今回の措置によりまして、別に従来と変わりはないということだけ申し上げておきます。
  209. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、開銀には関係ないが、産投会計にその分だけは穴があく。そうなれば、百五十八億というものは新たに一般会計から——同じ経済状態、同じ資金融通の、いわゆる金融の補完措置として産投会計が必要であるということになりますと、その分が従来と変わらないことになりますと、大体百六十億前後の金をよけいに産投会計の方に一般会計から払い込まねばならぬ、繰り入れねばならぬ、こういう結論になりますね。
  210. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは別個の問題でございまして新たに産投会計からどうしても出資しなければならぬというような必要が今後どういうふうに起こるか、これはまだわかりませんが、従来の程度のものでいくとすれば、支払いを済ましたあとは出資財源が明らかに減りますので、それは一般会計から埋めるか、あるいは産投会計自身で別個の資金調達を考えるかという問題だろうと思います。
  211. 井手以誠

    井手委員 今お話しのように、金融補完の産投の機能を発揮するとすれば、それがまた今までと同じような情勢であるとするならば、一般会計からその分だけはよけいに繰り入れなくちゃならぬか、あるいは産投自身が何らかの資金の調達方法を考えなくちゃならぬ、こういう答弁でございますね。  それでは大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。一部では産投公債を発行なさるという意見も情報も流れておるのでありますが、今後いずれをお選びになりますか。これはもうすでに前からの問題でございますから、大蔵大臣としては腹の中には結論が出ておると思うのです、そうでなくては三十八年度の予算も組めなくなりますから、一つこの機会に、あなたの方は、二重払いでない、二重払いでないとおっしゃるから、この際あなたの意見をお聞かせ願いたいと思います。
  212. 水田三喜男

    水田国務大臣 まだ産投公債を発行するというような構想を今持ってはおりません。今後検討する必要があるかどうかわかりませんが、今のところまだそこまで考えておりません。
  213. 井手以誠

    井手委員 産投公債の発行は考えていないということになりますと、百六十億円前後のいわゆるあいた穴の穴埋め分は、よけいに一般会計から補給しなければならぬであろう、こういうことでございますね。
  214. 水田三喜男

    水田国務大臣 産投会計の出資によらなければならぬという必要に迫られたものは、やはり一般会計から産投会計資金を練り入れるということが一番簡単でございますし、従来からこういう方法をとられておるので、今後もそういうことになろうかと思います。
  215. 井手以誠

    井手委員 開銀の方、どうもおそくまで引きとめましたが、お引き取り願いたいと思います。  それでは今後の運用はさらにあとに回すことにいたしまして、次に、見返資金の元本についてさらにお伺いをいたしたいと思いますが、債務償還の六百二十五億円、これは昭和二十四年度に一応——一応も何も、はっきりと見返資金資産からは落とされておりますね。
  216. 宮川新一郎

    宮川政府委員 見返資金を経理上運用と使用に分けておりまして、ただいまお述べになりました六百二十五億は、いわゆる運用の資産を構成しないものとして、使用として掲示いたしております。
  217. 井手以誠

    井手委員 使用済みとして資産から落としてあるわけですね。
  218. 宮川新一郎

    宮川政府委員 使用済みと申しますよりは、運用と使用に分けまして、運用は、私企業に対する貸付あるいは輸銀、開銀への支出をもって運用としまして、資金運用部の特別会計資産として経理されるものを掲げてある、使用は、学童給食用ミルク等、国民に無償で使用いたしたほかは、原則として、国または国の機関の資産になっているわけであります。一応経理上使用と運用と、こういうふうに分けているわけであります。
  219. 井手以誠

    井手委員 復金債に振りかえた、これは使用済みとしてきちんとなっているんですよ。使用と運用というふうに分けたのではなしに、一応分数は使用となにに分けて、それが使用済みとして資産からは落としてあるわけですよ。何も使用済みと御答弁なさったから、それを種に今申し上げように、そんな意地の悪いことはしませんから……。
  220. 宮川新一郎

    宮川政府委員 御指摘のように、復金債を償還いたしますために、交付公債として六百二十五億を一般会計から支出いたしましたが、この一般会計資産として残っているわけであります。見返資金としましては、これを現金で償還しまして、債務償還費として使用として掲示いたしましたので、形式上は見返関係資産としては掲示いたさない、しかし一般会計資産として掲示いたした、かようなわけであります。
  221. 井手以誠

    井手委員 それからいろいろありますが、その六百二十五億円の中に、いわゆる炭住を中心とした炭鉱の貸付四十八億円が相当残っていると思うのです。この前の説明では、全部が不良貸付で、償還が絶望だとはおっしゃいませんでしたが、石炭局長の答弁によりますと、大体三十億くらいは、もう炭鉱主が行方不明になったり、つぶれたりして見込みがないでしょうということでしたが、大蔵省もそういうお考えでしょうか。
  222. 宮川新一郎

    宮川政府委員 復金貸付金のうち石炭関係は、全部で三十七年三月ごろで四十二億、そのうち炭住が十七億でございますが、このうち延滞しておりますのが元金で、五億九千七百万円、利息が六千二百余万円であります。
  223. 井手以誠

    井手委員 そうじゃないですよ。それはもう炭鉱がつぶれたり、債務者が行方不明になったりして、大体半分以上、六割くらいは全然だめだということを私は石炭局長から承っているのです。そうでしょう。それは帳面上は工合が悪いから、延期々々をしているでしょう。しかし実際は、半分以上はだめなんでしょう。
  224. 橋口收

    ○橋口説明員 日本開発銀行が、昭和二十七年の一月に復興金融公庫の債権債務を承継したわけでございます。このときにおける炭住向けの貸し出しの金額は百五十四億円でございます。その後逐次回収をして参りまして、昭和三十六年十二月末現在におきましては、二十二億円の残があるわけでございます。ただいま理財局長が御答弁になりましたのは、三十七年の二月末におきまして、二十二億円が十七億円になっておるわけでございます。
  225. 井手以誠

    井手委員 それを聞いておるのじゃないのですよ。今の答弁では四十二億幾らか残っておるでしょう。そのうちの半額以上はもう不良債権、回収不能じゃないかと聞いておるのです。
  226. 橋口收

    ○橋口説明員 先ほど理財局長がお答え申し上げましたのは、復金から承継いたしました石炭関係総額が四十二億ということでございます。そのうち炭住関係資金が十七億ということでございまして、炭住の延滞金額が、先ほど申し上げましたように元本で五億九千百万円、石炭全体といたしまして、四十二億円の残高に対しまして元金の延滞分が十一億四千九百万円となっております。
  227. 井手以誠

    井手委員 いろいろな疑問がありますけれども、時間がたちますのでこの辺で石炭問題を打ち切りますが、相当の金額が不良貸付で、回収不能になっていることは事実なんです。従って、その分は資産から落とすべきじゃないですか。いつまでも返らない金を資産として置いておくべきものじゃないじゃないですか。
  228. 宮川新一郎

    宮川政府委員 復金の貸付金は、現在開銀に承継されまして、復金に対する出資金になっております。従いまして、六百二十五億は資産となっておりますけれども、開銀に対する出資金になっておるわけであります。なるほど御指摘のように不良貸付はございますけれども、個々の貸付とは全然別でございまして、出資金として残っておりますので、それを減資する必要はないものと存じております。
  229. 井手以誠

    井手委員 理財局長、そんな答弁をするものじゃないですよ。復金債を引き継いだその貸付金は出資金に振りかえたのですから、貸し付けた金額が回収不能になるならば、これは損失じゃございませんか。出資になっておるからいいんだという、そんな子供だましみたいな答弁は僕は聞きたくないですよ。  それでは、まだありますけれども、食糧庁から見えておりますから、お伺いいたしますが、昭和二十六年度の米価は、いわゆる低米価、低賃金政策のために、アメリカからきた食糧よりも石当たり千円くらい安かったと思いますが、そうですか。
  230. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 確かな記憶がございませんが、安かったと思います。
  231. 井手以誠

    井手委員 外務大臣いらっしゃるから、ちょうどよかったのです。大蔵大臣、今お聞きになったでしょう。先刻あなたは、百円の品物を八十円で売ったから、安売りしたから税金はとったけれども、いいじゃないかとおっしゃったけれども国内の農民からは低米価で安く供出させたのですよ。だから、その負担というものは農民にしわ寄せされておるのですよ。このことだけは、私は申し上げておきたいと思います。安く売ったからそれでいいんじゃないかとよくあなたはおっしゃるけれども、その安く売るのには、農民から供出させた米価というものは、石当たり千円くらい安かったのです。そういう犠牲が農民に負わされておるということは、外務大臣も一つ記憶しておいてもらいたい。
  232. 水田三喜男

    水田国務大臣 ちょっと誤解があるといけませんから申し上げますが、安く売ったからいいじゃないかというのではございません。百ドル援助物資向こうからきたら、そのドル価格に相当する円を積み立てるということになっておりますので、本来ならば百ドルのものは百ドルで売るべきであって、その通りに売られておれば、見返資金は一般会計から金を入れる必要もなく、そっくりそのまま積み立てられておるわけでございますが、そのときに、あのときの生活状態そのほかから見まして、やはり価格差補給金的なものを一般会計から入れても国民に不足分だけ補給して、安くしてやろうという政策的な考慮で安く売られたのであって、安く売らなくてその通りの対価で売れば、見返資金勘定はぴったり合うということを言っておるわけでありまして、安く売った、安く売ったというのではないので、本来積み立ててあるべきものを値段通りに売れば何にも問題はなかったが、安く売っておるからその分を補給して、援助物資ドル価格と同じ円を積んだということを説明しただけであります。
  233. 井手以誠

    井手委員 その説明は了承いたしましょう。ただ、八十円に安く売ったからいいじゃないかと今までよくおっしゃいましたから、そうではなくて、二十円、三十円の税金をよけいとったじゃないか、その上に、八十円という安く売った金額に相当するように国内の百姓からは安く買い上げたのだ、こう私は説明を申し上げておるのです。食糧庁の方はそれでけっこうでございます。お引き取りを願いたい。  あなたの方の言われた三千六十五億円の見返資金資産、元本、その中には国民の税金が六百二十億円入っておる。それから債務償還の中には、不良資産として資産から落とすべきものも、二十億か二十五億か、そこらははっきりいたしませんが、ある。そうなりますと、利子だけで払う、元本にはびた一文も手をつけませんという、今までのあなたの方の説明は間違っておるようですね。外務大臣にお伺いいたします。大蔵大臣はなかなか利口ですから、見返資産の方は三千何億円の積み立てがあるから、これで払いますとおっしゃいますけれども総理大臣なり外務大臣の小坂さんは、国民にはびた一文も税金は負担されません、元金にも一文も手をつけません、利子だけで払うことができますとおっしゃる。見てごらんなさい、外務大臣、そうでしょう。ところが、実際今大蔵省なり通産省なりのいろいろの説明を聞いておりますと、国民の税金はりっぱに六百二十億円も入っておるのです。三千六十五億円の元本の一部である債務償還の中には、もう焦げついて資産から落とすべきものも入っておるのですよ。そうなりますと、二千億円という総額においても狂いが出てきた。その金額の中には税金が入っておる。利子だけでは払うわけにはいかぬでしょう。小坂さん、あっさり言って下さい。
  234. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私をばかと見込んでの御質問で恐縮でございますが、私、従来申し上げておりますのは、開銀の回収金あるいは納付金とで払いますということを申し上げておるわけでございます。運用収入で払えるということを申し上げておるわけでございます。
  235. 井手以誠

    井手委員 それはわかりますよ、運用収入で払うことはわかります。しかし、運用収入になる親の血の中には、国民の税金がりっぱに入っておるのですよ。そういう説をなすものは白昼横行する暴論なんて、あなたはおっしゃるわけにはいかぬでしょう。その点だけ、私はこの際はっきりしておいてもらいたいと思うのです。運用収入から払うことはわかりますよ。わかりますけれども、運用される親の方には国民の税金が入っておる。全部ではありません、六百二十億、それだけは認めて下さい、外務大臣。
  236. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 いわゆる親の方に五百八十何億ですか、さっきの三十六億を入れますと六百二十五億、そういうことになりますが、そういうものが入っておる、これはその通りでございます。ただそれは、しばしば大蔵大臣もここで説明しておられましたように、要するに、さもなくば百ドルとすべきものを八十ドルで国民に売り払って、他の二十ドルは税金でやる、こういうことであるわけであります。しかし、その見方はいろいろあるわけでございますから、私は井出さんがそうおっしゃるということについては、井出さんは井出さんなりにおっしゃっておる、私はそう思わないというだけのことであると思います。
  237. 井手以誠

    井手委員 それじゃいかぬ。あなたは元金にはびた一文手をつけません、国民の方には負担はかけませんとおっしゃるのでしょう。三千六十五億円のその利子だけで払うことができますから、国民に負担はかけませんとおっしゃっておるのですよ。それは間違いじゃございませんかと私は聞いておるのです。
  238. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 大蔵大臣が他の機会にもおっしゃっておられますることは、要するに、産投資産というものは四千億近くにふくらんでおるということでございます。そのうちから、複利計算をしまして二千八十五億払うということでございますから、やはりそこに残るものは二千九百十九億円以上のものが残る、こういうことだと存じます。
  239. 井手以誠

    井手委員 そうじゃございません。見返資金の三千六十五億円、それに運用利益が加わっておる。それを使用済みと引き継ぎ資産に分けてある。引き継ぎ資産の中に、開銀に対する千四百十億円が入っているのですよ。その運用利益と使用済みの債務償還の六百二十五億を加えたものが元本になっているのですよ。その元本の中に国民の税金が入っておることは、あなたもお認めになったそうであるならば、親の方に国民の税金が入っておるならば、そのできた子供も税金が加わっておるわけですよ。それを聞いているのです。
  240. 水田三喜男

    水田国務大臣 井出さんの言う通りでございますが、そこで問題は、一般会計から入っておることは確かでございますが、それがいいか悪いかという問題になると、さっきから答えておりますように、それでいいんだと私ども言っているわけでございまして、早い話が、向こうから援助物資がきたドル相当額だけ積むということになっていますが、この場合、国民に一時払い下げをただで貸しておく、政府が全部立てかえて積んでおきます、あとからこれは国民に払ってもらいますよという措置をとったという場合を考えてみたら明らかでございまして、政府が立てかえて全部ここへ積んでおいた、その運用資金が、こういう運用の結果、現在この政府の立てかえの資産がこれだけになっておるというので、もしその中で政府が払うべきものを払ってもまだ残るのですから、それだけは国民からとってもいいということになると思うのですが、これと同じように、最初政府が立てかえるんじゃなくて、ドル価格のものを積むときに、国民に一部安くしただけは政府から出しておくという形で、とにかく援助物資ドル相当額をここへ積み立ててあるのですから、これが援助されたものの総額と見ていいんで、この数字基礎にした返済方針を立てるというのが筋なんでございますから、この中に一般会計の金が入っていようがいまいが、それは後にいってこれが二重払いとかいうような問題を起こす性質の補給金ではございませんので、その点を私ども言っておるわけでございますが、そうではなくて、事実としてこの中に入っているということでしたら、その通りでございます。
  241. 井手以誠

    井手委員 あなたの説明ならば、意見は別にいたしましても、わかります。しかし、外務大臣なり総理大臣の言っておることは、利子だけで払うことができるのだから国民にびた一文も負担にはならぬじゃないか、特に外務大臣は、そういう議論をするものは白昼横行の暴論だなどとけしからぬことをおっしゃっておるから、私は申し上げておるのです。その言葉は取り消せばいいじゃないですか。そうすると、私はあまり文句は言いません。
  242. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 白昼横行の暴論が悪ければ取り消します。
  243. 井手以誠

    井手委員 悪ければじゃ困ります。
  244. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの点につきましては、お気の済むように、私は取り消します。
  245. 井手以誠

    井手委員 それでは、もうだいぶ時間がたちましたから、私はここで結論を申し上げたいと思いますが、結論の前に、もう一言外務大臣と大蔵大臣に聞いておきたいのです。  二十四年三月以前のものについては、大蔵大臣がよく御存じのように、これはわからないのです。また、先刻申し上げましたように、日本の品物がたたき買いされておるという事情などを考えますと、これは返済の対象にすべきものじゃない。少なくとも二十四年見返資金創設以後のものを対象にすべきものである。その交渉をどうして外務大臣がされなかったのか。この委員会であなたの方は、何とかして答弁はなさるにしても、国民が納得してこの協定に協力するような態勢を持つことが、政府の責任だろうと思うのです。何かわけがわからぬで払わせられるじゃ困るのです。先刻答弁があったように、百六十億円というこの産投会計の穴があく分は、一般会計から今後よけいに出さなければならぬ、そういう結末になるのですから。私は、二十四年三月以前のものは、これはいろいろな問題があるから全部消してしまって、二十四年見返資金創設以後のものを対象にすべきである。あるいはまた、ガリオアについては、これは占領地救済資金でございますから、オーストリアとか韓国などの例のように、われわれとしてはこれは切り捨ててしまう、復興資金については何とか考えよう——どもはまた別の点から反対でございますけれども、少なくとも復興資金につい考えていこうじゃないか、そして復興資金から韓国の石炭代金などを差し引くという交渉が、少なくとも自由党内閣においても、池田内閣においても、私はされないはずはなかったと思うのです。それが私は国民を納得させる協定の方法じゃなかったかと思うのですが、この点に対する外務大臣の意見を聞いておきたいと思います。
  246. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ガリオアというのは、ガバメント・アンド・リリーフ・イン・オキュパイド・エリアズでございますが、十一項目ばかりございまして、そのガバメントに属するものが十項目ある。最後のそのリリーフという問題があるわけでございます。それが一九四七年の陸軍予算できまっておりますが、四九年になりまして、エロアという勘定を考えた。しかし、これはガリオアという項目からそのエロアというものも出ておるので、その意味においては、同じ扱いを受けておるわけでございます。そこで、この政府勘定というものは、最初から差し引いてございます。アメリカの言い分によりましても、アメリカ政府支払い、これは十九億五千四百万ドルの中に入っておらぬ、こういうことを言っておるのでございまして、全体それを一括して計算するということは、西独の場合にもさようでございますし、わが方としても当然そうする、日本だけは別だという議論は通りにくいのだと存ずるのでございます。さらに、オーストリアとかイタリアあるは韓国、これらの場合は、旧連合軍に対する敵国であったということではないわけでございます。イタリアは終戦前にバドリオ政権が寝返っておりまして、そんな関係で、日独の場合とは別にみなされておりますので、これは参考にならぬ、こういうのが先方の言い分でございます。私どもはそれを納得せざるを得ないかと思っておるわけでございます。それで、二十四年見返り資金設定前の分についてヴァウチャーがないじゃないかということは御指摘通りで、私どもそういう話は申しましたです。申しましたが、しかし、あの金というものは、いろいろな機会にるる申し上げておりますように、やはりわが国の民生安定に寄与しておる。あれを国民に売り払ったその金がなければ、国民はもっと——あの補正予算を三回も四回も組んで、当初予算よりも補正予算の方が額が大きい、ああいうふうな予算を組まざるを得なかったあの時代に、それがなかりせば非常なことになった。それに対して、これをいやした効果というものをわれわれは認めなければならぬのでございますので、先方がどのくらい出したか、その期間にはアメリカは十一億何がしを出した、こう言っておりますが、わが方の調べによりますれば八億四万ドルである。従って、わが方がこれだけ受け取った、こうみなしておるものについてはやはりこれについて計算をする、こういうことにせざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。
  247. 井手以誠

    井手委員 私は先刻も申し上げましたように、また横路さんもここで最後に申し上げましたこの対日援助が、日本をどういう立場に追い込んだかということ、これはこの議案なりあるいは協定の正面の論議の対象にならぬかもしれません。けれども、実質は、日本アメリカに従属させられるようなことに追い込んでしまっておるわけです。このことは、アメリカは十分利益を得ておるわけでありますから、その証拠には、マッカーサー元帥のあの証言にあるように、アメリカは一ドルの損もしないではないか、ダレスもまた同じようなことを言っておる。私が先刻申し上げたように、終戦処理費ですでに一回払っておる、二十四年三月以前において。アメリカの業者は、生産者も利潤を加えて買い上げてもらうし、日本の商品は安く買ってずいぶんもうけておる。これで二回目は払った。しかも三回目のこの見返資金というものも、その元本には国民の税金がかなり入っておる。いろいろ考えて参りますと、私どもはこの支払いのために産投会計に穴が大きくあくということ、なお加えて、どうしても私は賛成するわけにいかぬことを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
  248. 小川平二

    小川委員長 堀昌雄君。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとだけ、先ほど横路さんが時間を急いでおられてはっきりしなかった点がありますので、外務大臣にお伺いをいたします。  阿波丸の協定の了解事項の中で、借款と信用の問題でございますが、外務大臣は、何か国会の答弁でこうなっておる、こういうお答えがございましたけれども、そうしますと、ガリオア・エロアは、その文章の中の借款に該当しておるのか、信用に該当しておるのか、いずれに該当しておるのかをお答えいただきたい。
  250. 中川融

    ○中川政府委員 お尋ねの点でございますが、阿波丸協定の了解事項で、占領費及び借款及び信用ということがあげてあるのでございますが、ガリオア・エロアがこのどれに入るかということは、実はこの協定と申しますか、了解事項の条文からは、はっきりしていないのでございます。しかしながら、これがこの年の四月二十六日に、その当時の吉田総理大臣が国会で御報告になりました際に、先ほど外務大臣の言われましたように、ガリオア・エロア等が無償のものであるというふうに誤解しておる向きもあるので、特にこれをはっきり言ったのだということを言っておられますので、このいずれかにガリオア・エロアが入っておるということがその当時の政府の考え方であったということは、はっきりしておるのでございますが、それではこれがそのどれに当たるか、大体吉田総理大臣のそのときの御発言によりますと、借款及びクレジットとして今のガリオア・エロアをあげておられますので、借款及びクレジットの中に入れておられた、こういうふうに考えるのでございますが、借款に当たるかクレジットに当たるかということも、はっきりしておりません。しかし、借款と申しますと、何と申しましても条件等がはっきりしておる場合が大体借款でございますので、ガリオア・エロアはこのうちの信用の方にむしろ入るというのが、そのときの政府の解釈であったかと考えるわけでございます。信用という場合に、先ほども御指摘がありましたが、債務は確定していて返す時期がおくれておる、その間に時間的の間隔がある場合が信用であるという御意見がありましたけれども、この信用という言葉は、必ずしも一定の意味をもった言葉であるというふうにもきまっていないと思うのでございまして、例の一九四六年の覚書一八四四号、あれで返済の条件等はあとできめるという、あの覚書に書いてあるあの条項、あれはまさしくこの場合の信用、クレジットという意味にその当時解釈していたのではなかろうか、こう考えておるのでございます。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これはあなた方の方が適当に解釈するということだと思いますが、しかし私どもは、それでは今後そういうことで、常に信用というものは、クレジットというものは金額等が設定をされなくて、何となくあるものも政府はクレジットと理解するというふうに理解してよろしいですか。
  252. 中川融

    ○中川政府委員 これはどういう場合に、どういう状況のもとにクレジットという言葉を使ったかということによって、やはり判断しなければいけないと思うのでございます。普通の場合でありますと、クレジットと申しましてもはっきりした債務である、しかしながら、おくれて弁済されるというような場合がクレジットであろうと思います。阿波丸協定覚書のようにはっきりしない、要するに、債務と心得るというような状態のものをクレジットという字句で表わすということは、普通の場合はあまりないのじゃないか。あの場合は、あのときの吉田総理大臣の御説明で、その政府の意思がはっきりしておるということで考えられるわけでございますが、通常の場合は、クレジットと申しますと、やはり確定した債務の場合にクレジットというのが通常であろうと考えます。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 今のお話なら、ではなぜ、通常の場合にはクレジットというものに該当しないことをこういう文字を用いたのか。必要があるならば、総理大臣はここに、債務と心得える部分は何々と書いたって、ちっとも差しつかえないのじゃないか。にもかかわらず、それを書かなかったというのは、裏返して言うならば、小坂さんのおっしゃるようなこれが一つの理由になるという点は——私は何も債務と心得るという論議をしておるわけではないのであって、これがその理由になるというのは私は、先ほど横路さんとのお話の中で、いささかこじつけに過ぎるのじゃないかという感じがしましたから伺っておるのであって、あれですか、私十分そういう点調べておりませが、ドイツとアメリカとの間のガリオア・エロアに関する部分について、これはクレジットだという格好の言葉が、支払いをされる前に用いられておりますか。
  254. 中川融

    ○中川政府委員 西独の場合は、実は二つこの協定があるわけでございます。一つは、一九四九年に協定というものができておりまして、これにはアメリカからのドイツに対する経済援助はクレームを構成する、従ってデットを構成するとは言っておりません。クレームでありますから、請求権と訳します。そういうことを言っております。それから一九五一年に、また四九年以前のいわゆるガリオアに相当する部分についての協定ができましたが、これには原則として債務である、これはデットと言っております。原則としてデットという言葉を使っております。従って、このいずれの場合も日本の債務と心得るということと言葉は違いますが、確定した債務とまではどっちも言っていないのじゃないか。片一方はクレームと言っております。片一方は原則としてデットと言っておりますので、まあ似たような状況ではなかったかと考えます。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 これは日本語で信用と書いてありますが、これは英文と両方になっておるわけですか。英文はクレジットになっておるのですか。
  256. 中川融

    ○中川政府委員 英文はクレジットでございます。
  257. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、同じ問題についてアメリカと西ドイツでかわした分は、クレームがあるとかあるいは貸しがあるとか、こういう表現を使っておる。そのあれは、いずれも請求権があるということが、両方が一体として明らかになっておる。ところが、これについてはクレジットと書いておる以上は、あなた方はこれについて同じ問題を含めると言いますけれども、これは含まっていないと考えるのが至当ではないですか。もしそういうことであるならば、そこにクレームを要求するなら、そういうことをここへ書くのがアメリカ側としては当然であって、言葉の解釈としては、あなたは通常クレジットはそういうものと理解しないというのならば、アメリカだってそういうふうに理解していない。あなた方が勝手に日本側だけで理解したのであって、アメリカがそういう意思であるならば、西ドイツと協定を取りかわしたような請求権があるとか貸しがあるとか、こういう表現に当然なって、それについては債務として考えるということになるのなら話がわかるけれども、その点からして、小坂さんのお答えになったお答えの仕方は理由にならない、そういうふうに考えます。日本と西ドイツと違うわけはないですから、小坂さんどうですか。
  258. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 阿波丸協定の解釈は、債務と心得る一つの理由であるという意味で、先ほど三つばかり事例をあげた中の一つに申し上げたわけであります。西独の場合は、御承知のように、西独は四つばかり地区が分かれて占領されておったわけで、従って、地方政権であったわけです。一九四九年にアデナウアー政権ができましたときに、前のクレームを引き継ぐという意味で、そこではっきりさせて、五三年の協定のときには、原則的に債務ということをいっておるわけです。日本の場合は、私どもも実はそういう御意見のようなことを先方とやり合ったことはあるのですが、先方は、先ほど申し上げたようなスキャッピン——これは日本政府は統一政府であって、社会党も含めていろいろな政府があったけれども、みなその政府はああいうスキャッピンを了承して、輸入食料を懇請したじゃないか、また品物を受け取っておるじゃないか、従ってこれは明らかです。それからなおガリオア資金ができ上がるまでの過程を幾つかあげて、そのことの一つといたしまして、私は先ほど阿波丸協定の事例をあげた、こういうことでございます。阿波丸協定については、その解釈として、当時の内閣総理大臣兼外務大臣が、参議院でございましたけれども、はっきりとガリオア・エロアはこの中に含まれておるということを言ったわけであります。
  259. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は、両者の協定でありますから、われわれだけが勝手にそれを心得たりする必要はないのです。私どもはその当時おりませんし、吉田総理大臣の言われたことを今から言っても仕方がありませんけれども、しかし、これをさらっとこのままで見るならば、あなたは今、吉田総理がそう言ったから、これは信用がその中に入っておるだろう——これは推測であって、日本語の使い方としても適当ではないし、さらに今の西ドイツとの関係から見ても、クレジットという言葉の中にそれを含めるということは、私はどうしてもおかしいと思う。だからその点は、あなた方は衆議院を通して、自然成立をする条件は作っているので、今さらこれをわれわれがどうこう言うわけではありませんけれども、私はただものの道理で伺っているだけです。これはもう常識的に見て、勝手にそういうふうに理解したということはたてにはならない。こっちで理解しただけであって、これは相互関係にある問題だから、そういう言い方はちょっとこじつけに過ぎると思いますが、どうですか。今はそういう過去の歴史を離れて、この条文だけを読み、西ドイツとの協定の内容を読むならば、この点に関してだけは、それを信用の中に入れたいと言われることは問題があるし、さっき横路さんもいろいろ言っておられましたが、時間がないからこの点はそのまま通られましたけれども、これは何も外務大臣にあやまれとかあやまれぬとかいう、そんな問題ではないので、この条文についてはそれはおかしい、常識論として成り立つことじゃない。西ドイツもクレジットとなっておりましたというのなら、私は黙って引き下がります。しかし、今お話しのように、西ドイツでは請求権がある、原則として貸しておるのだという表現になっておる。クレジットという言葉は使ってないというのにクレジットの中にこれが入ることは、同一のガリオア・エロアに対しての問題で、それが地方政権であれ何であれ、最終的な公文書の中でそういうふうに書かれておるなら、当然その中には入らないと理解するのが常識的な結論だと思います。だから外務大臣、これは常識的にそうだということをおっしゃるなら、私はそれでいいと思うのです。何もわれわれは、今これが債務の条件であるとかないとか、そんなことを言っておるのではないのですよ。今あなたがお出しになったが、それは常識的に考えれば信用というものの中には入らないじゃないか、こういうことを申し上げるだけなんであります。
  260. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 阿波丸協定を作った当事者である吉田総理大臣が、その解釈を国会において明らかにしたのでありまして、自分はこう思うというのではなく、こうである、言うまでもないことであるがと言って、そう言っておるわけであります。ですから、これは明らかだと思います。さらに西独の場合は、今申したように、地方政権がやったことを統一政権ができて、そこでこれを確認するという意味で、はっきり書けぬということだったろうと思います。日本の場合は一貫した日本政府があって、この政府の当事者、しかも政府の当事者、しかも阿波丸協定を作った当事者が、日本の国会においてさような解釈を下しておる。そうして国会においては、その後何もそれについての問題がなかったということで、これはそういうことになろうと思うのであります。ただ今後、そういうことをやるのがいいのかどうかということは、また別の問題だと思います。
  261. 堀昌雄

    ○堀委員 納得できませんけれども吉田さんがしゃべったことを今さらここでどうこうできませんが、どうもこの協定を作ったときは、私は別建の問題ではなかったと考える。あなた方は借款ではないとおっしゃるから、これは明らかですけれども、クジットなどというものの中に入れるというのは、さっき条約局長ですか、どなたかの言うように、通常はそういうことはないということになっておる。通常ないことをやるということは、国の問題として非常に重要なときにそういう言葉を使ったということは、あとの問題としては、それは古田さんがどう思ったか、契約の当事者がどうだからこうだということになるならば、率直に言うならば、言葉なんてどうでもいいということになる。どういう言葉を使っていても、この契約については私はこういうつもりでやりましたと言ったら、それが契約の内容を構成するなどということだったら、今後あなた方が条約を結ばれるときには、一つ一つ言葉の解釈を国会で問いたださなければならぬということになる。やはり日本の言葉は、通常解釈される範囲——おそらく英語でもそうだろうと思いますが、通常解釈される範囲で使われるから、われわれはそれを一つの共通の概念として受け取っておるだけであって、そういうような共通の概念として受け取れないようなことまでもある特定の言葉の中に含まれれば、やはりそれはそういうふうにこっちが理解をしておったからそれでいいのだというようなことは、非常に重要な問題だと私は思います。ただ過去の過ぎ去ったことでもあるし、今さらこれを蒸し返したからどうということにもならないから、本日はこれでやめますけれども今後そういうようなことが行なわれるということになれば、これは外交上非常に重大なことになると思いますので、その点については常識の範囲内での処理をお願いしたいということを要望しておきます。
  262. 小川平二

    小川委員長 次会は明二十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十八分散会