○藤井
委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま採決になりました
酒税法等の一部
改正法律に対しまして、附帯決議をつけることを提案いたしたいと思うのでございまして、案文はお手元に配布いたしております。
大へん簡単でありますから読みあげます。
酒税法等の一部を
改正する
法律案に対する附帯決議
政府は、清酒およびしょうちゅう等の
製造に当る中小企業者に対し融資のあっせん等につき万全の措置を講じて、その経常の安定をはかるとともに、現在政令に委ねられている酒類の原料米使用
割合等については来年度中にこれを法律化するよう措置すべきである。
このような附帯決議の提案をいたします
理由につきまして、いささかお時間を拝借いたしたいと思うのでございます。
第一点は、清酒、しょうちゅう、みりん等の中小企業者に対する金融措置の問題でありますが、この問題につきましては先般来数次にわたって私は当
委員会でもいろいろ
お話をした通りでありまして、清酒等の業者は中小規模のものが圧倒的多数を占めておるのであります。例を清酒にとってみますと、
製造数量二百キロリッター以下のものが全業者の八八%を占めており、その一業者当たり平均生産量は百三十二キロリッターにすぎないことになっておりまして、しかもこの平均量よりも少なく
製造しているものが全業者の七四・五%にも上っておるわけでございます。一般には清酒業者というと、いずれも相当の資産を有し、地方でも有力者であって、一般の中小企業者に比較いたしまして困窮の度合いが少ないかに思われておるようでございまして、先般の大蔵大臣の御答弁の中にもそのようなことがちょっとうかがわれて、いささか心外に思うわけでございまして、確かに終戦前はそうであったと思うのでございますが、しかし終戦後は
事情は一変して参りまして、財産税の施行、農地解放の実施などによって、清酒業者が先祖から伝承して参りました資産の大半は失われるに至ったのでございまして、いわゆる斜陽族に入る人たちが多いのみならず、清酒等の販売
価格は長い間マル公制度のもとにおかれまして、低利潤に押えられていたために、資本の蓄積をする余裕もなく、毎年の生産にあたっての原料米購入等の資金は、そのほとんど大
部分を銀行融資に仰いでいることは、お世話をなすっておる大蔵当局自身よく御
承知の通りでございます。
このような次第でありますから、その生産設備、機械の後進性が特に最近目立って参りまして、多くの父祖より受け継いだ機械装備のこと
ごとくは、老朽化がはなはだしくなって参っておるわけでございます。一方業者の労務
事情はどうかと申しますと、機械装置の水準の低さは、生産にあたりまして労働力への依存度を大きくし、その熟練度に依存する度合いを大きくいたしておるにもかかわりませず、良質の労働力の確保を困難ならしめておる現状は御
承知の通りでございます。同時に清酒醸造工員の大半は、冬期農村からの季節労務者によってまかなわれておるのでありますが、最近諸工業の地方分散に伴い、この季節労働者の求人難がはなはだしく、賃金コストの上昇が年を追って目立って参っておるわけでございます。従いまして、最近の清酒の増産に即応し、コスト・ダウンをはかり、市場における競争にたえていくためには、好むと好まざるとを問わず、設備装置の近代化ないしは合理化に迫られている状態におかれておるわけでございますが、前に述べました通り資本の蓄積がございませんので、これら設備資金等は大
部分を他人資本に仰がなければならないわけでございます。
しかるに大蔵省の融資準則によりますと、酒類
製造業に対する融資順位は丙と相なっておるわけでございます。毎年の仕込み原料用資金は特別のはからいで甲並みの取り扱いになっておりますが、設備等の資金は依然丙扱いとなっているわけでございまして、他の基幹産業に比べ、はるかに後順位となっておるわけでございます。このようなことでありまして、酒税一千億の確保ということも、だんだんむずかしい状態になるのではないかと憂慮いたすものでございます。そこで
政府は、これらの中小規模の清酒等生産者に対して、中小企業振興資金助成法の融資
対象としてすみやかに指定するとともに、開発銀行または中小企業金融公庫に対しても、長期低利の資金を放出するような特別の措置を講じられまして、設備の近代化を促進するとともに、中小企業保護育成の立場からぜひ善処されんことを切望するわけでございまして、特に先般私はおけ取引の話をいたしました。おけ売業者の現在の苦境はきわめて困難な状況に置かれておるわけでございまして、これに対する長期運転資金の早期手当を要望いたす次第でございます。
第二点は、酒類業界において、大企業と中小企業との関係において、昨年来大問題になっております清酒と合成酒との問題についてでございます。御
承知のように、この問題は
合成清酒側において、酒
税法改正の機会に名称を
日本酒と変更するとともに、原料米の使用限度を現行の二十度換算
合成清酒の重量の五%以内というのを、一〇%に変更してもらいたいということを
政府に陳情したのが、その発端であるわけでございます。これに対し清酒業界においては、名称を
日本酒と変更することは、
消費者に対して、清酒と合成酒の区別をあいまいにし、その
選択を迷わすことになること、また原料米の増量についても両者の区別が容易につかなくなりますのと、
合成清酒業界では、これを機会に大資本にものをいわせて大宣伝をなすであろうから、このようなことで資本力、宣伝力の大きな
合成清酒業界と、中小企業をもって組織されております清酒業界とが、同じ市場で競争することに相なりますと、おのずからその帰趨は明らかであるとして、猛烈な反対をいたして今日に参っておりますことは、各位の十分御
承知の通りでございます。
そこでこの問題につきまして、私は公平な第三的な立場で冷静に判断を加えなければならないと思うのでございますが、その判断のかぎは、もちろん
消費大衆の立場を考えることは当然でございますけれども、同時に中小企業基本法を制定しなければならぬという現在の政治的背景も十分考慮しなければならないわけでございます。
合成清酒業界は、百億になんなんとする大資本の業者が十社で、約七〇%の市場を占有いたしておるわけでございますが、しかもこれらの業者は新式しょうちゅう、原料用アルコールの
製造をそれぞれ兼業いたしておるわけでございますから、非常に強大な力を有しておるわけでございまして、これを合計いたしますと、
合成清酒全業者の一業者当たり平均生産量は、十五度五分換算にいたしまして約三万石に達するのでございます。これに反しまして清酒業界の方は、さきに申しました
ごとく十五度五分換算で一業者当たり平均生産量千百石程度でありますから、名称をまぎらわしいものにして、中身を今の倍の米を使って近似させ、両者を競争させるということは、中小企業の保護の立場から考えましてもきわめて重大な問題を含み、慎重に取り扱わなければならぬと考えるものでございます。従いまして、名称はもちろん、原料米の使用限度は現行のままに据え置くことが、総合的政治視野に立って至当かと存ずる次第でございます。
ところでこの原料米の使用限度をきめたところの規定は、政令である酒税法施行令第三条第二項であります。これを言いかえますと、
合成清酒の原料米使用限度のきめ方は、法律で、これを大蔵大臣に委任するという形をとっておるわけでございまして、大蔵当局は、このように中小企業の存立に重大な影響があり、国民の権利義務にも至大な関係のある規定を、いつにても変更し得る建前になっておるわけでございます。大蔵当局の説明によりますと、この原料米使用制限の規定が政令にゆだねられておる
理由は、戦後において、米穀
事情の窮迫から清酒が極度に不足した際、代
用品である
合成清酒に若干の米の使用を認めることとし、清酒の不足を補ったのであるが、元来
合成清酒は米を使わない建前で出発したものであって、戦後米の使用を認めたのは、いわば臨時的措置であるから、いつまたもとの姿に返るかもしれないという配慮から、政令をもって規定されたという説明があったのでございます。しかしながら、戦後二十年近くなる現在、この規定は
合成清酒の定義に関する帯本的規定でありまして、酒税の
税率にも関係し、また罰則規定も伴うものであり、いわば国民の権利義務に重大な影響がある規定であり、なお先ほど申し上げましたように、大企業対中小企業の問題として重大な政治的課題でございますから、いつまでも政令のままに置くことは妥当ではないと思うのでございまして、
政府はすべからく、政令できめられた現行の制限規定を酒税法に組み入れることを要望するものでございます。こういたしますことによりまして、清酒の定義規定におけるアルコール等の使用制限規定が、酒税法に定められておりますのと初めて肩を並べることになり、法
体系といたしましてもすっきりした形になるのでございまして、先ごろ本
委員会におきましての私の質問に対する大蔵大臣の御答弁とも和マッチし、これを実行するゆえんでもあると思うのでございます。
以上が、ただいま朗読いたしました附帯決議を付する提案
理由の説明でありまして、金融措置に関しては特に可及的すみやかに対策を講ぜられんことを要望いたしますとともに、以上申し述べました
合成清酒に関する政令事項を法律に書き改めることは、次の通常国会までに必ず措置されんことを要請いたす次第でございます。
何とぞ
委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第でございます。