○村山
政府委員 税制
調査会の答申の各事項のうち、ただいまお述べになりましたことで今度の提案からは除外してあるのはお説の通りでございますが、実は税制
調査会の答申がありまして、その後われわれがいろいろ研究して、どうもまだ時期尚早であるという
意味で、これを削除するにつきましては、税制
調査会に諮っております。これこれしかじかの理由で、これはまだ時期尚早と思うということを実は断わっておるわけであります。その将来の
見通しは、今度見送った理由からいたしまして、若干ニュアンスの違いはございます。
一つの形は、まだ何分にも判例、学説その他があまりにも統一を欠いておる。従って、抽象的な
規定あるいは一般的な宣言
規定を設けたときに、その限界はどうか、その限界をめぐってかえって紛争を起こすという問題、そういう
意味でもう少し、いつになるかわかりませんが、全体の判例、学説等が帰一してくるという時期まで待たねばならぬ、待った方がいいであろう、こう考えられる事項、あるいはたとえば記帳義務の問題等につきましては、国民の方の納税者一般の記帳慣習がそこまで慣熟しなければ無理である、こういう
意味で待たざるを得ない問題、それから今の守秘義務であるとか、守秘義務と検査権との
関係の問題等につきましては、これはもっと本質的に守秘義務の内容が何であるか、それからこれは刑法との
関係もございます。そういった
意味でもっと研究を進めなければならぬ問題、相当広範囲に詰めていかなければならぬ問題でございますので、これも早急にはなかなかむずかしい問題であろうかと思うわけでございます。
まずその
一つの例といたしまして、もう少し判例を待たなければならぬという
意味は、実質課税の原則あるいは租税回避行為の一般
規定がまさにそうであろうと思います。行為
計算否認
規定の方は、初めから予定は各税法に設けておきまして、ただ各税法の定めるところによってできるというような通則法の形だけを整える案でございましたので、これはあってもなくても実際的には変わらない、そういう
意味で別でございます。今のたとえば実質課税の問題
一つ考えてみましても、現在いわゆる実質課税の原則と言われておる
規定といたしましては、たとえば所得税で、信託財産から生ずる所得は、受託者が
法律上もちろん所有権を持っておるわけでございますが、その人には課税しないで、委託者が当該財産を有する者として課税いたします。こういうのがいわゆる実質課税の典型的な
規定でございます。そのほかに国税徴収法で、納税者が譲渡担保に付したものがございます。これは担保の目的で譲渡したほんとうの譲渡じゃない。これには滞納処分でかかっていけるという
規定があります。これもいわゆる実質課税の典型的な
規定と言われております。また所得税法の三条の二で、
法律上権利が帰属すると見られるものと実際の収益の享受者が違う場合には、実際の収益の享受者に課税いたします。そういう
規定、これもそうだと言われております。そのほかに、たとえば同じように譲渡担保した場合に譲渡所得税をかけておりません。これは
規定はありませんが、扱い上、当然実質課税上そうである。譲渡所得になるはずはない。こういうのをわれわれは実質課税の一般的原則の適用である、こういうふうに言っているわけであります。かりにこれらのものが実質課税の
規定であり、取り扱いであるといたしますと、今度通則法に設けらるべき
規定というものが、どんな形が考えられるかによるわけでございますが、もしそれを一般的の宣言
規定として国税に、これは昔、やるとすればこんな案がると作文したものがございますが、「国税に関する
法律の解釈及びその適用に係る要件たる事実の判断については、その
法律の
規定の趣旨に従い、その事実の
経済的利益及び適用に即して国民の税
負担の公平をはかるように行なわなければならない。」こういう宣言
規定を入れたときに、はたして一体どこまでこの
規定でいけるかという問題を新たに生むだろうと思います。もしこの
規定なかりせば、現在いわゆる各税法で入れているところの実質課税の原則といわれる
規定が読み切れるのか読み切れぬのか、ここに非常に問題があるわけでございます。そういう
意味では、
規定を入れても入れなくても非常な問題のある事項でございます。そういう
意味では、まだ実質課税の原則がどこまでいくのかということにつきましては、個々のケースについて判例なり学説がおおむね帰一するまで待たないといたずらなる紛議を起こす、こういう判断で今度は延ばしておるわけでございまして、租税回避に関する一般
規定でも同様でございます。現行法でもそれぞれ典型的な
規定はございますが、もし
国税通則法に考えられるような一般
規定を入れれば、これらの個々の税法の実体
規定なくして読めるかどうかということになりますと、非常に問題である。問題であるとすれば、入れたことによって新たなる紛議を生ずる、こういう
意味で延ばしておるわけであります。