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1962-03-14 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       岡田 修一君    金子 一平君       久保田藤麿君    正示啓次郎君       田澤 吉郎君    高見 三郎君       津雲 國利君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       坊  秀男君    吉田 重延君       岡  良一君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 齋藤  昇君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      谷川  宏君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 廸郎君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君         中小企業庁長官 大堀  弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    岡田 覚夫君         農林事務官         (農林経済局経         済課長)    枝広 幹造君         通商産業事務官         (通商局輸入第         二課長)    大石 敏朗君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  高橋 末吉君         郵政事務官         (大臣官房電気         通信監理官)  松田 英一君         日本専売公社職         員部調査役   剣持 愛吉君         日本国有鉄道参         与         (厚生局長)  八木 利真君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七八号)  外国人等国際運輸業に係る所得に  対する相互主義による所得税等の非  課税に関する法律案内閣提出第一  二八号)(予)  法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五二号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一  部を改正する法律案内閣提出第七  九号)  公共企業体職員等共済組合法の一部  を改正する法律案内閣提出第六二  号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  外国人等国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等非課税に関する法律案議題といたします。
  3. 小川平二

    小川委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。天野大蔵政務次官
  4. 天野公義

    天野政府委員 ただいま議題となりました外国人等国際運輸業に係る所得に対する相互主義による所得税等非課税に関する法律案について、提案理由を御説明申し上げます。  政府は、最近における国際運輸業の実情にかんがみ、外国企業国際運輸業にかかる所得に対する相互主義による非課税制度を整備することを必要と認め、そのため外国船舶所得税等免除に関する法律の全部を改正することとし、ここにこの法律案を提出した次第であります。  以下この法律案についてその概要を申し上げます。  第一に、従来は、外国企業国際運輸業にかかる所得のうち、船舶運航から生ずる所得についてのみ相互主義により免税を認めておりましたが、今後は、航空機の運航から生ずる所得についても、船舶の場合と同様に、所得税法人税等所得課税標準とする租税を課さないことができることといたしております。  第二に、船舶運航から生ずる所得につきましては、従来相手国船籍のある船舶にかかる所得について免税することとしておりましたが、今後は船籍のいかんを問わず、相手国にある企業運航する船舶にかかる所得について非課税とすることができることといたしております。  第三に、地方税についてでありますが、従来は事業税についてのみ規定を置き、住民税については国税免除に応じて免除されていたのでありますが、今回の改正におきまして、事業税のほか道府県民税及び市町村民税をも含めて相互主義により非課税とすることができることを明らかにいたしております。  以上、この法律案につきまして、提案理由とその概要を申し上げました。  何とぞ、御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたします。
  5. 小川平二

    小川委員長 これにて提案理由説明は終わりました。      ――――◇―――――
  6. 小川平二

    小川委員長 次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 租税特別措置法について若干質問をいたしたいと思います。  まず主税局長にお伺いしたいのですが、今度の改正法の中に、国または日本銀行外資を借り入れる場合、それから民間ベースで借りる場合のいずれについても、前者はその利子について非課税、それから後者の分については一〇%の分離課税適用する、こういうことになっているわけであります。私ども、これはもちろん租税条約との関係でもあろうと思いますが、それとの関連をまず一つ承っておきたいし、それからもう一つは、今日の外貨危機といいますか、国際収支危機というような政策上の失敗のしりぬぐいはいつでもこの租税特別措置法が引き受けるというような形になっている、この租税特別措置全体を通じて常にそういうような傾向が見られる、この点について、非常に公平の原則の支配を受けなければならない租税の中に、政策失敗のしりぬぐいというようなことを持ち込むということは、非常にけしからぬことだ、これでやるのが一番簡単にできるものですから、政策失敗を安易に常にそういうところに逃げ込む、こういう傾向としてこの問題を私どもとらえるわけなんですけれどもあと部分については天野政務次官お答えをいただきたいと思うのです。いかがですか。
  8. 村山達雄

    村山政府委員 今度の特別措置法では、お話しのように、国または日本銀行外貨事情緊急性のために借り入れた場合の利子につきまして免税することにいたしているわけでございます。これは、本来から申しますと、外国税制がどうなっておるかということによってかなり違って参ります。応募した国の税制で、外国税額控除する制度を持っておるところもございますし、それから全然控除制度のないところがございます。控除のあるところでは、そういうものについては、引き切れるか引き切れないかという問題があるわけでございまして、引き切れれば、それはそれでいいじゃないかという理届もあるわけでございます。しかし引き切れない場合、外国税額を引くという制度のない国、これはたとえばフランスとかイタリアとかたくさんございますが、こういうところでは、もしそういう場合に、日本に対して外貨を与えようといたしますと、それだけ向こう税負担がよけいかかることになりますので、必ず資金コストをそれだけ上げてくるわけでございます。はね返って日本の不利になるわけでございます。そういう問題がございますが、もう一歩考えてみますと、もともと今度提案いたしましたのは、日銀に入れておりますけれども政府資金でございます。従いまして、政府が借り入れているときにこれを免税にしないということにいたしますと、それだけ金利負担が上がるわけでございます。そういう意味がございまして、こういうものについては、実質上政府が借り入れる外貨資金利子については非課税にした方が便利といいますか、手数の省略でもあり、また税の理屈の通りになるのじゃないか、実は戦前は、これは全部どこでも非課税にしておったわけでございます。ただ、各国制度が、外国税額控除制度がそれぞれ国内法に入ったために引かなくてもいいという理屈が出まして、今までやらなかった。しかしよく考えてみますと、たまたま今度の場合は、アメリカから借りているわけでございますが、将来そうでない場合も考えられます。相手国の方でいいますと、わが方の税制外国税額控除制度があろうがなかろうが、日本の必要があって貸すのじゃないか、しかも国じゃないか、それに何で税を取るんだ、こういう理屈があるわけでございます。そういう点を考えまして、政府それから日銀の借りる分については免税、ただここに書いてございますように、しかしその場合、貸しているものが、たとえば外国銀行東京支店日本支店のあるものが貸しておるということでございますと、これは単なる借入金利子所得だというふうには、日本税制で見てないわけでございます。その支店があって、支店が貸し付けておりますれば、それはその支店の業務から生ずる所得である。これはほかの製造業をやっていようが金融業をやっていようが、それにちっとも変わりない。要するに事業所得に属するというものであれば当然課税すべきだ、こういうことではずしているわけでございまして、外国法人あるいは非居住者が貸した場合の外貨債利子に限って免税にしているのは、そういうような理由からであります。  それから第二の、日本法人なり日本人が外国金融機関から借り入れた場合あるいは外貨債という形で発行したその利子については、現行の二〇%の税率を一五%にしておるわけであります。これは何といっても支払い利子について二〇というグロスでとっているわけでございます。ネットの利益にいたしますと一体幾らになるかという問題があるわけでございますが、この場合、資金コストがかかっておりますので、相手方金融機関の場合には通常引き切れないという問題があるわけでございます。いろいろ計算いたしますと、一〇程度にすれば大体とんとんくらいにいく、引き切れるところまでいくわけでございます。そういう意味で、たとえばアメリカ金融機関が貸した場合に、こちらで今条約がございますので、アメリカの場合は一五でございますけれども、一五では向こう法人税から引き切れないという問題が起きるわけでございます。そういたしますと、その分ははね返ってわが方の金利をそれだけ上げることになるわけでございます。これは全然意味のないことでありますので、それで一〇にしてある。外貨債でございますと、これは一体だれが持つかわからぬわけでございます。転々流通するものでございますし、従いまして、その所有者の属する国の税制によりまして外国控除制度があるところもございますし、ないところもございます。外国控除制度のないところの人が持とうとする場合には、大へんな負担になるわけであります。そういう意味で、外貨債については同じように一〇にいたしているわけであります。  租税条約との関係を申しますと、これらの相手国あるいは所有者と全部租税条約を結んであると、まだこの点ある程度条約でもって緩和できるわけでございますが、租税条約を締結していない国もあるわけでございます。またありましても、先ほど申しましたように、引き切れないという問題が金融機関等についてはあるわけでございますので、国内法で、租税条約とは関係なしに、国内法一つの路線といたしまして、こういう規定を設ける必要があるということでございます。
  9. 天野公義

    天野政府委員 政府経済政策のねらったところは正しいねらいであったと思うのでありますが、経済の方がどうも行き過ぎまして、そこにいろいろなひずみを生じたわけでございます。その一つの現われが国際収支赤字という面で現われたわけであります。国際収支赤字という面が大きくクローズ・アップされまして、これを何とかしなければならぬというところで、この二億ドルの借款というような措置を講じまして、外貨繰りの円滑をはかったわけであります。その国際収支改善につきましては、御承知のように、財政金融いろいろな面を通じまして、国際収支改善に向かって現在政府は努力いたしておるところでございます。従って、こういう措置のとられたことはあまり好ましいことではないわけでございますけれども、こういう措置をとりながら国際収支改善をはかっていく、日本経済の健全な成長をはかっていく、こういう考え方に立っておるような次第でございまして、すみやかに国際収支改善されまして、この借款も返せるような事態にしたいものである、かように考えておるわけであります。
  10. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今政務次官からほんとうにやむを得なかったことなんだという御説明がありました。そこで例の日銀アメリカ市中三行から二億五百万ドルですか、借款をいたしております。これは今度の法律によって利子非課税になるわけですが、今までの取り扱いはそれについてどうだったのか。今までそういう例が、日銀あるいは国が外国銀行からそういう金を借りたことがあったのかなかったのか、その場合は、今度初めて設けたわけですから課税をされておったと思いますが、もちろん租税条約でそれがされておったかどうかはまた別問題であります。それから農産物借款といわれるアメリカ輸出入銀行から一億二千五百万ドル、これは大体一〇%の分離課税適用を受ける、それから今村山さんが説明をしました堺港について大阪府が外貨債西独で発行するもの、これは一五%の軽減税率適用される、具体的にはこういうことになるわけですか。その点実例に照らして一つ説明をしていただきたいと思います。
  11. 村山達雄

    村山政府委員 これは今まで必要のつど単行法で処理しております。最初はIMFからの借入金につきましてこれを免税にするという単行法を出しております。それから輸出入銀行相互間の借款、これも免税にしております。それから先ほど御指摘のありました西独マルク借款、これはたしか昨年の臨時国会単行法免税にしたと覚えております。今度お話のあります日銀借入金の分は、現在までのところは二口ございまして、お話のような三行借款の二億一千万ドルと、七行借款の一億二千五百万ドル、これが適用になるわけでございます。それから民間の方の例といたしましては、現在までのところ外貨債を発行しておりますのが、住金、川鉄、三菱化成の三社がございます。それから外国金融機関からの借り入れにつきましては、これまた神戸製鋼以下われわれがわかっておりますのは七社で、相手方銀行九行くらいの実例があるような次第でございます。
  12. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 アメリカからの外資が非常に多いと思いますが、アメリカでは利子課税総合課税になっておりますし、州その他の地方団体の発行する債券利子免税されている、その他きわめて特殊の債券利子について免税措置がとられているだけだ。これは税調の資料にあるわけです。大体国際金利の差が二%程度のところで資金の移動があるだろうということが経済学上の通説のようですけれども日本金利は世界的に非常に高い、むしろ二%以上になっているのじゃないかと思うのです。今度の日銀市中三行から借りる借款は、金利は一体幾らになっておりますか、その点を伺いたいと思います。
  13. 村山達雄

    村山政府委員 昨年の十一月二十四日の調印にかかる分、すなわち三行借款の二億一千万ドルにつきましては、金利は四・五%でございます。それから七行借款の分につきましては、ことしの一月三十一日に調印が行なわれておりますが、これも金利は四・五%でございます。
  14. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この四・五%というものは、アメリカ国内における金利から見れば少し高目のものじゃないかと私は思うのですが、その点いかがですか。
  15. 村山達雄

    村山政府委員 金利が高いか安いかというのはどうもよくわかりませんが、十分交渉の上で借りているものですから、特に高いことはなかろうというふうに推定しております。後ほど為替局あるいは銀行局方面の意見を聞きまして、どういうことになっておるかということをお答え申し上げたいと思います。
  16. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 主税局長がそういう答えをされるということはけしからぬと私は思うのです。主税局が結局はこの提案責任主管局になるわけでありまして、その打ち合わせの過程において、こういう制度を取り入れるにおいては、そういう点について十分吟味された上で、この免税措置は、非常に緊急的な外資を入れるという必要性はあるにしても、やはり金利ベースという問題からいけば、免税することによって不当に優遇しておるという結果が出るのではないかと思うのです。今日の国際収支が非常に窮迫をしておるという点では、それは若干理解される面はありますけれども、そういった点についての確信というものがなければならないと思うのですが、それはその程度にいたします。私どもの見解からすれば、国際収支窮迫から、こういうことまでして当面を切り抜けなければならないという政策失敗そのものが問題であると思いますし、そういうもののしりぬぐいを、常にいいかげんな形といっては語弊がありますけれども、そういういろいろな条件というものの考慮はされたのでしょうけれども、完全な形で説明ができない状態の中でこういうものが出されてくるという点について、十分戒心をしていただきたい、かように思うわけであります。  中小企業庁長官がおいでになったようでありますから、問題をそちらの方に移したいと思いますが、租税特別措置法昭和二十六年あたりからずっとやられておるわけでありますが、今日まで日本経済が非常に高度の成長をずっと逐げてきて、中小企業と大企業との格差というものが、所得倍増計画によってもむしろいよいよ増大の傾向にある今日、中小企業の置かれておる現状というものは、もうだれよりも中小企業庁長官がおわかりになっておると思います。生産性の問題あるいは機械の老朽の度合いだとか、あるいは一人当たりの資本率だとか、いろいろ二重構造、格差というようなものを証明する材料はあると思いますが、こういう中で、企業庁長官として、税制の面において、中小企業に対してどういうような要求を今日まで大蔵省に対して出されてきたかというようなことについて、一つ総括的にお伺いをいたしたいと思うのです。
  17. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいま御指摘のように、中小企業につきましては、大企業に比べて生産性が低い、所得格差があるということは数字的にも明らかになっておりますので、私どもの仕事はこの格差を縮小していくということが目標になっておりますが、その意味では税制面金融面あるいは予算の面、経営の指導の面、各般の対策を講じておりますが、税制の面につきましても、やはり中小企業税負担をできるだけ軽減するということが私どもの立場から言うと望ましいことでございますので、今日までも、これは要望としましてはいろいろございますれども、税全体の問題につきましては、国税当局において取り扱っておられますから、われわれとしましてはできるだけ改正の中にこの趣旨を織り込んでいただくように、各面につきまして今日までお願いして参っておるわけであります
  18. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど私の説明がちょっと足りなくて、金利の問題に触れられたのかもしれませんが、金利が商い低いによりましてこの措置には影響がないわけでございます。第七条の二の方は、貸しているところが引き切れないというところに問題があるわけでございます。御案内のように、各国税制は、通常、住所地所在地国では総合課税を行ない、他方、所得源泉地国ではその国に源泉のある所得について課税を行ない、二重課税の調整は住所地国における外国税額控除制度によっているのであります。しかして先進国ではお互いに控除制度を持っているわけであります。しかし、ない国があるわけであります。かりに二重控除制度がありましても引き切れないという問題につきまして、ダブル課税をしているということではないのであります。その点を調整しようとするのが第二項でございます。それは金利の高さにはよらないわけであります。もしこの措置がなければ、結局相手方は二重課税を受けるわけでありますから、金利を要求してくるのは当然なわけであります。それに理由がないということで、この措置をいたしているわけであります。一方は、そうではなくて、国が借りているんだということでございます。同じように相手金利負担を要求してくるだろう、そのことに意味がないではありませんかということを申し上げて、この措置を講じているわけであります。金利は、それは安いに越したことはございません。その金利幾らにするかということについては、当然主管官庁折衝折衝を重ね、妥結するまでにはいろいろ検討の上その金利をきめたのであろうというふうに推定しているわけでございますが、この措置は直接には金利の高さとは関係がないということを申し上げているわけであります。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その点は追及いたしません。  具体的に中小企業庁として、租税特別措置法、特に中小企業合理化機械問題等、総じて、いわゆる中小企業近代化促進、その中小企業年産性を上げるための諸施策から言って、どういうように具体的に今日までなされてきたか、こういう点で特別措置をとってこられたということがたくさんあったろうと思うのですが、そういった点について、もうちょっと詳しくお願いしたい。
  20. 大堀弘

    大堀政府委員 設備近代化の面に関しましては、特に特別償却制度につきまして、これは昨年の改正になっておりますが、一億円以下の中小企業に対して特別償却制度改善いたしまして、現在私どもとしましてもこれができるだけ中小企業の内部に蓄積をふやすという意味において役に立ちますように、運用面においていろいろ検討いたしておるわけであります。従来ちょっと利用度が低かったのではないかという面もございますが、最近かなりこの面についての認識も深まって参りましたし、府県当局の証明の制度も、窓口ができましたので、最近は非常に利用が上がってくるのではないかというふうに感じておるわけであります。そのほか私どもとしましては、設備近代化補助金を交付いたしておるわけでありますが、この補助金の対象になる設備についての税の取り扱いについて、特別措置を今回講じていただいております。その他こまかい面でいろいろございますけれども、大きな点といたしましては、そういったことを現在やりつつあるわけであります。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今いろいろお答えになったわけでありますが、この租税特別措置法は、去年大体千四百九十五億減税がされておるわけでありますし、ことしも千六百九十五億という膨大な数字になっておるわけであります。中小企業庁長官は大体これだけの減収の中で、これは利子所得等のごとく個人に帰属する面も相当あるわけでありますが、相当大きな部分が、この特別償却を認める制度というようなこと、あるいは産業助成というようなことで、やはり一千億に近いような数字というものがあるわけでありますが、中小企業でこの恩恵に浴しているのは非常にパーセンテージとしては低いのじゃないか、せいぜい二割もあったらこれは最高で、あとの八割は大体大企業のものだろうと思うのですが、そういった点について、どんなふうにお考えになっておられますか。
  22. 大堀弘

    大堀政府委員 中小企業設備自身が非常にこまかいものが多いものでございますから、現実的にはなかなか特別償却適用を受けるケースが割合に少ないものでございまして、実績も、はっきりした最近の統計は実は私どもとしても入手いたしておりませんが、比較をいたしますれば、確かに少ないんじゃないかと思います。私どもとしましては、できるだけ対象機械を合理的な範囲においては広げていくように努力をして、しかもまた数が多いものでございますから、制度利用する方がなかなか気がつかないで利用されないという面もございますから、そういった面についても十分指導をいたしまして、できるだけ特別償却制度の恩典に浴するように指導して参りたい、かように考えております。
  23. 岡田修一

    岡田(修)委員 関連して。ただいまの中小企業に対する租税特別措置についてちょっとお伺いしたいのですが、中小企業関係から、設備近代化のためには特別積み立てをする、それに対する免税措置あるいは損金算入を一つ制度化してくれ、こういう強い要望が出ておって、中小企業庁から大蔵省の方に申し入れがあったと了承しているのですが、その経過を一つ中小企業庁長官からお答え願い、またこれに対する主税局の見解をお伺いしたいと思います。
  24. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいまの御指摘の点は、民間の団体から特に強い要望がございまして、組合の内部に設備近代化のための金を積み立てて、これについては税法上特別の取り扱いをしてもらいたいという御要望がございました。確かに中小企業設備近代化がおくれております、あるいは私の判断では再評価が非常にずれてきまして、その意味で償却面で妥当な線以下になっているという面もあろうかと思いますけれども、新しくこういった組合に金を積み立てて、その金に対して免税するということは、税法の技術的には非常にむずかしい問題があるということから、私どもとしましては何とかこういった制度がやってもらえないかということを御要望いたして参りましたが、今日までのところ、これは後ほど大蔵当局からお話があろうかと思いますが、技術的には非常に困難がある、ということで、今回のところは実現になっていないわけでございます。
  25. 村山達雄

    村山政府委員 ある事業年度なり、ある暦年内に所得が出ました場合に、それを将来の資産を買うために引き当てる場合に控除するということは、要するに利益に出ても課税しないということと同じでございまして、税は所得のあるところ課税するという建前から言いますと、全く税制としては受け取りがたい制度になるであろうと思います。もろもろの引当金がございますが、いずれかは損金になる性質のものでございます。その損金の時期を、あるいは金額をどういうふうに出すかというところが問題であるわけなのでございまして、いずれ資産を取得しましても全然関係がないわけでございます。普通資産の振替だけの話でございまいまして、税金が資産になる。そこで損金制を認めるということは、所得課税を建前にとっておる税制ではどうしてもこれは受け入れがたいということで、この和の引当金制度は、中小に限りませんで、いろいろございますが、税制としてはこれはお断わりする。これは大企業でも同じでございまして、どんなにそれが望ましい機械でございましても、もともと資産の振替にすぎないものについて、損金制を認めるわけには参りません、こう申し上げておるわけです。そうでなくて、取得したあとで減価償却という問題は、もちろんございましょう。そのときに一体加速度償却をどの程度認めるか。これは実は非課税にしているわけではなくて、償却を繰り上げて行なうだけの話であります。そういう問題につきましては、これはいろいろ主管省とも相談の上、現在妥当と認められる耐用年数をきめる、こういう方向は考えられる筋があるわけであります。ただいま申したような筋では、所得課税を建前にとっておる税の上では乗りがたい制度であるというふうに考えておるわけであります。
  26. 岡田修一

    岡田(修)委員 税の建前から言いますと、主税局長お答えの通りかもしれませんが、中小企業設備改善を促進する上から言いますと、相当の設備を持っておれば償却できるのですが、中小企業というのは、もうけたときにたくわえておいて、それで設備をどんどん新たなものにしていきたい、こういうのが相当多いと思うのですよ。だから中小企業の実態から言いますと、もうかったときに特別積み立てをさせて、それを将来に充てさせる、これが非常に効果があるのだと考えるのです。それでアメリカには、私は船のことしか知らないのですが船のために、将来新造船を作るのに、いわゆる建造留保金制度というのがありまして、その留保金に対しては、たしか損金と認めるか、免税措置にしているかよく知りませんが、とにかくそういう制度がある。これがただいま中小企業庁がしようとしている特別積立金制度と類似したものなんですよ。税法の理論は私はよくわかりませんが、何とか理屈をつければ、中小企業にこういう制度を認めてやるということは、非常に今の中小企業の実態に適しているんじゃないか、かように考えるものですから、大蔵省当局の再考をお願いいたしまして、質問を終わります。
  27. 村山達雄

    村山政府委員 御案内のように、中小企業所得が小さいというところにあるいは実際の問題はあるのだろうと思うのであります。税の問題に限らず、やはりそこは所持格差是正の問題かどうかということであります。少ないなら少ないなりの所得に対して基本税法でとっておる負担は、国税地方税を通じてそれが過重であるかどうかという問題になるのだろうと思うのでございます。たとえば近代化の要請があるときに、それが可処分所得でもってうまくいくかどうか、ここに問題があるのじゃなかろうか、やがてはその問題は税制一般に通ずる問題ではなかろうかという気がするわけでございまして、特に所得所得でないと規定しろというのは、所得課税の建前をとっているところでは少し無理ではないかという考えでございます。
  28. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今岡田委員からも質問がありましたように、私どもは、現行の租税特別措置法関係、これは非常に大企業に傾斜をしているということは、今日何人も認めておるところでございますから、そういうものを相当思い切った整理をして、しかもこういうことがあることによって、むしろ今日の経済危機というようなものも醸成されたというような関係にもあるんじゃないか。そこまで来れば、そういう大企業設備投資といいますか、そういうようなものを非常に刺激したようなものは、もう今日行き過ぎまで出て、その点は、そういう政策目的は相当達成されていると見ていいと思う。これから租税特別措置法の存在価値がある部面というものは、やはり今日の日本経済のガンになっている中小企業と大企業との格差を縮めていく、二重構造を解消していくというような新しい立場に立って、若干の――税の原則というものは、今主税局長が言われましたように、租税上はそういうことは筋が通らぬ、筋の通らぬことが今日、もう十年にわたって行なわれてきたわけでありますから、そういうことで政策目的というものを優先さしておるわけですから、従って中小企業を振興させるというような立場に立てば、ある程度そういう問題についても、政策目的がはっきり上がるというようなものについてはやっていくべきだ。これは特に今われわれが考えられることは、中小企業に対して傾斜的に、設備近代化というようなことを中心とする、それにドライブをかけるような税制があるならば、これはやはり正しい方向じゃないかと思う。今までのような大企業にだけ偏重して、中小企業にはほとんど冷い税制というものが、――今日、だれしもそう思っている姿になっておるわけでありますから、そういった面で、今の問題なども含めて、中小企業全体についての税金面における優遇措置というものを、画期的に増大さしていくというような考え方は、私は当然生まれていいと思う。これは高度経済成長をささえるためにも、そういうことが必要な段階に来ているのじゃないかということを痛感するわけであります。こういった点について、主税局長の見解、それから政務次官の見解を承りたいと思います。
  29. 村山達雄

    村山政府委員 われわれも、基本的の考え方といたしまして、中小の方に傾斜をつけて軽減していくというのは、全く同感でございます。去年、ことしにわたりまして、所得税で中小の方に傾斜をつけて減税をやっているのは、全くそこにねらいがあるわけでございまして、特別措置という名前はつけませんが、今の方向はまさにそういうことが要請されているということで、所得税の減税自体、あるいはそのやり方自体、税率の盛り方、この辺が中小に強く響いていくというところをねらっておるわけであります。特に昨年におきましては、そのほかに、法人企業につきましても、中小については相当の考慮を払っておるわけでございまして、御案内のように耐用年数の一律大体二割短縮というところを、中小方面の機械につきましては三割程度短縮をやっておる。あるいは三年、五割増しの制度が従来ありまして、それを全部耐用年数の一般短縮の中に織り込んだわけでございますが、中小の分につきましては、それを三分の一の特別償却の方に拡大して持っていったわけであります。そういう問題であるとか、それから昨年機械企業振興法に関する特別措置――中小であっておよそ筋の乗ることであれば、できるだけ取り入れて参っておるつもりであります。ただ、おっしゃるように、金額としてどらであるかということになりますと、もともと元ワクが小さいものですから、出てくる答えもおのずから小さくなるという点は、いかんともしがたい点でございまして、その所得が大きくなれば実は中小でなくなるわけでございます。ですから、われわれといたしまして、できるだけの配慮は加えているつもりではございますが、この上とも、今のような情勢にあることはわれわれも全く同感でございますので、これはやって参りたい、かように考えております。
  30. 天野公義

    天野政府委員 中小企業の発展につきましては、前々からいろいろと研究もし、また努力もし、ただいま主税局長が答弁しておりますように、いろいろな施策を講じておるわけでございますが、今後におきましても中小企業の育成助長ということは、日本経済を伸ばす意味におきまして、一番重要な点でございますので、今後とも中小企業の育成助長、こういう点につきましては、いろいろな面から施策を講じていきたいと思っております。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 ぜひ一つそういう方向に進んでいただきたいと思うわけであります。それからやはり中小企業政策全般にわたっても、中小企業庁の発言力が今日なお弱いような気がするわけです。税制の画においても、あるいはその他万般の中小企業政策の面においても、中小企業は一番たよりにしておるわけでありますから、そういうところはもっと積極的にすべての面で御努力をいただきたいという要望をいたしておきたいと思います。  それから次に住宅関係の問題でございますが、政府の住宅政策は非常に貧困であります。今日おそらく二百六十万戸くらいの住宅不足があるというわけでありますが、昭和三十六年度が二十四万六千戸ということで、三十七年度は二十五万八千五百戸、わずかに一万戸ばかりふえているわけでありますが、そのうち公営住宅、公庫住宅、公団住宅が二十万八千、あとは自分で建てるということを予想して、そういう計画を立てておるわけであります。そういうようなことから、政府の住宅政策の貧困ということで、いつになったら解消するかわからぬということで、政府の方でもできるだけ自分で建てられるような方向と、あるいは民間の住宅に対する投資といいますか、貸家住宅の新設というようなものを民間にやらせよう、民間資金を活用してやらせようというようなことから、新築貸家住宅に対する特別償却というようなことも認めておるのだと思うのです。その限りにおいて、幾分でも住宅を民間資金で建てようということも、若干の誘いにはなるだろうけれども、これなども、やはり先ほど申し上げたような政策の貧しさを、税制がしりぬぐいしてやっているというようなにおいがまさに一番ぴんとくる問題であります。これはやはり、住宅に投資する民間業者というようなものを優遇するだけであって、税の公平の原則というようなことから言えば、相当これは問題じゃなかろうか、ちゃんと税金をとっておいて、公営住宅なり、あるいは政府の責任における公庫住宅なり、公団住宅等の建設促進ということにいくのがやはり筋じゃないか、そういった点で、こういう税制でこういうことをやって、民間の住宅投資を促進するというようなやり方というものは、筋としてはやはり間違いではないか、税制において間違いを犯すと同時に、そういうことによって政府の住宅政策をサボらせるという二重のエラーを犯すものじゃないか、かように思うわけですけれども、この点については天野政務次官から御答弁をいただきたいと思います。
  32. 村山達雄

    村山政府委員 われわれの手元にある資料によりますと、これは建設省の資料でございますが、三十四年でなお二百二十八万戸程度住宅は不足しておるのでございます。ただ二十年から三十五年まででございますが、政府の施策としてできました住宅が二百二十万、それから民間自力でできましたのが四百六十八万、合計で、終戦後から約六百九十万戸できておるわけでございます。政府はやはり住宅公団、住宅金融公庫等を通じてやっておるわけでありますが、何分にも不足の状況にある、こういう施策はひとり歳出の面のみならず、税制も相協力してこの住宅不足の状況を解消する必要がある、こう考えているわけでございます。政府の分については問題はございませんが、民間自力のものに相当多く期待しなければならぬ現状、それからなお不足住宅のこの程度ある現状におきましては、税制の面からも協力することも当分の間はやむを得ないのじゃないか、かように考えてやっておるわけでありまして、税制だけでこの問題を解決しようなどとは、ちっとも私ども思っていないわけでございます。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 住宅政策全般の問題になるから、ここではあまりその点申し上げませんけれども民間ではこういう税制上の優遇を受けても、決して家賃を安くするというようなことはないわけであります。そうすれば、やはり最終的には家賃を負担する勤労階級が、そういうものを負担していくわけです。しかもこれがどんどん高騰しているということは、今日特に大都市においては大問題になっておるわけであります。こまかい数字は一々あげませんけれども、これをやられたからということで適正な家賃、低廉な家賃というようなことが今日行なわれていない。民間の場合にどんどんもうつり上がっていく。新しく建つものは今まで建ったものよりみんな高くなっておる。こういうようなことが現実に出ているとすれば、やはり民間の協力を得るということも、これはやはり政府の責任において、とるべきところからは税金をとっておいて、そしてそれに対して主として、政府の責任における住宅の建設を飛躍的に増大させるという方向をとるべきが筋であって、先ほど申し上げたように、私はそういう面では、税の公平を堅持しながら、ちっともこれでは住宅政策の前進にはならない。特に家賃の面でそういうことに何らの担保がされていない、低家賃にするというようなことがされていない。それと同時に、そういうことをやっているので、お前たちにそれだけやっているんだから、民間ですっかりおやりなさいということで、これは政府の逃げ口上になる。そしてそのことは、政府の責任における住宅政策をぼかしてしまう、薄めてしまう、熱意を希薄にさしてしまうというような、二つの面での問題点がこういうところにもありやしないか、そこでこういうことを問うておるわけでありまして、それらの問題について、一つ政務次官から今度はお答え願います。
  34. 天野公義

    天野政府委員 先ほど主税局長から答弁申し上げましたように、政府といたしましても、住宅緩和対策といたしまして、いろいろな措置を講じておることは御承知の通りでございます。しかしながら、政府関係のもしくは公営のいろいろな住宅だけでは住宅事情は解決しない。やはり民間の協力を得なければならないわけでありますが、民間の住宅建設につきましても、今御審議願っております法律にありますように、いろいろな措置を講じておるわけでありますが、しかしながらこの税制措置だけでこの問題は解決できないわけでございます。それからまたアパートとか貸家住宅とか、そういうものを作る場合におきましても、作るものが鉄筋である場合と木造の場合と原価が全然違うわけでございます。またその内容等においても、民間でございますから、単価等も違ってくるわけであります。高いのもあれば安いのもあるというようなことはいたし方がないところだと思います。しかしながら今後におきましても、そういうような民間のアパートなり貸家住宅ができたり、また個人にもいろいろな住宅が建設できるような、そういう方向で今後いろいろなことを考えていかなければならないと思います。
  35. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次に農政課からおいでになっておるようですから農業関係で……。農業基本法もできて、農業を大いに発展させなければならない、生産性を高め、所得を上げなければならないということで、特にこれから政府の言葉で協業、あるいはわれわれの方では共同経営というようなことを言っておるわけでありますが、そういうようなものを中心にして、農業構造を改善していく、こういう立場の中で、いろいろ最近でも二千五百カ所くらいでもう共同経営をやっておられるところがあるわけであります。そういう実態はもうもちろん承知だろうと思うのですが、これは主として地方税の問題かと思いますが、たとえば共同の畜舎あるいは共同の乳牛の購入あるいは機械の購入、こういったものなどに対する、これはもちろん税制だけで達成せられる問題ではございませんけれども、そういうものに対する何らかの税制上における優遇と保護、助長政策というようなことについて、農林省では何かお考えになっているようなことはないですか。
  36. 岡田覚夫

    岡田説明員 ただいまの御質問の協業の促進につきまして、税制上の優遇策といたしましては、主として地方税関係になるわけでございますが、共同利用いたします不動産の取得税につきまして軽減の措置をとるということで、地方税法の改正が行なわれる予定になっております。
  37. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 不動産取得税ということだけですね。そのほか不動産でなしに、これから農業の機械化、近代化の中で、機械は特に河野農相なんかは技術農業だ、機械農業だというようなことを言っているわけですから、そういうようなものについて、これから協業が進んでくれば、かなり大型機械というようなものも導入される。それから共同施設、こういうようなものは、これは施設は不動産に入りますけれども、それから乳牛等も、これは相当大量に共同で買うとかいうような場合のいろんな処置、あるいはそこから上がる所得に対する税制上の措置、こういうようなものに対して何らかやはり税制面からも優遇措置を講じてやるというようなことがなければ、この飛躍的な発展というようなことは遂げられないのじゃないかということを私ども考えるわけです。今まで大企業がこれだけ行き過ぎてしまうほど発展してきたという一つの原因に、こういう特別措置法があるとするならば、やはりきわめておくれている農業を引き上げて、近代的な資本装備率の高い近代農業に仕上げていくというようなことのために、農林省としてこれらの問題についてまだその検討を進めておられないのかどうか。あるいはまたそういう検討を進めて、大蔵省にやがて要求するというような気持があるのかどうか、この点を一つ伺っておきたい。
  38. 岡田覚夫

    岡田説明員 先ほど不動産取得税の点について申し上げましたが、なお固定資産税につきましても、農協等の所有するものにつきまして、固定資産税の軽減措置をはかられるということになっております。今後構造改善なり生産の選択的拡大ということでいろんな施設がなされて参ると思うのでありますが、これらにつきましては今後の発展の実態に即応いたしまして軽減の措置をはかりたいということで、農林省としては検討をいたしております。
  39. 岡田修一

    岡田(修)委員 今の広瀬君の質問に関連して。実は先般私いなかに帰りまして、農村の人たちと懇談をした。その際に、これは主税局にも関係があるのですが、今度の国税の減税で納税者の範囲が狭まった。従って、市町村民税をとる対象が狭まったものですから、その穴埋めを固定資産税を増額することによって、結局国税では対象が狭まったものだから、固定資産税の負担が非常に多くなって困っているのだと、こういうふうな不平を聞いたのですが、その点どういうのか御説明を願いたいと思う。
  40. 村山達雄

    村山政府委員 今お話しを聞いただけではちょっとわかりかねますが、こういうことかとも思います。所得税は今度減税になります。それから所得税が減税になりましても、今度は自動的に住民税が減税になるわけではございません。ただ、住民税は、それぞれ減税案を今、国会へ提案をしておるわけでございます。お話から察しますと、それらによって財源が減るので、固定資産税の税率を上げようという声がある、こういうように承ってよろしゅうございますか。そうだといたしまして、第一に申しますと、御案内のように今交付税の交付がございまして、これは基準財政需要と基準財政収入のその差額でいっておるわけであります。基準財政収入の見方は、固定資産税の場合でいいますと、今度法定いたします標準税率を全部はじくわけでございます。ですから、交付税は当然いくわけでございますから、まあまあそこのところの交付税の回し方は全国公平に行なわれていくのではないかということだろうと思います。それにもかかわらず当該市町村の財源が減る――ちょっと考えられませんけれども、もしそういうことがあって財源が減るということになり、新たなるその市町村独自の何らかの歳出需要があって、その分として固定資産税を上げるがいいかどうかは、その使途の内容によって違いましょうが、上げるということであれば、固定資産税の税率は標準税率でありますから、これは現在地方税法で許されておるわけでございまして、それはいわば自治団体の自治によって上げるわけでございますから、差しつかえないのだろうと思うわけであります。ただ、今のようなことに直ちになるとは考えられない、と申しますのは、地方の地方税収入あるいは地方交付税収入というのは、今度の減税後におきましても、全体としては、経済の伸びで非常に上がっておるわけであります。その分は結局基準財政需要から基準財政収入を引いた残りで大部分は交付する、もちろん特別交付税はございますけれども、これは六%くらいでございますから、そのために今度の減税の結果地方が非常に困るに至るというようなことはちょっと考えられないのでございますが、お話がそういうことであれば、あるいは特殊の歳出需要があるのではないかというふうに想像するわけでございます。
  41. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 農政課長にお伺いいたしますが、今国会に農業機械化促進法案が出ておるわけでありますが、これなども機械化を促進するというような反面の問題として、当然これに対する特別償却なり特別の措置等が必要になってくるのじゃないかと思うのですが、そういった点について具体的な要求を出しておられますか。
  42. 岡田覚夫

    岡田説明員 ちょっとはっきりいたしませんが、出してないと考えております。
  43. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 農林経済局なりあるいは農政課長なりで、そういった今私が聞いたような問題についてまだ全然検討もしてないわけですか。何かそういう特別な措置をしてやるというようなことは、機械化を促進するにあたっても非常に必要ことであり、現状は農村あたりではやはり機械を入れなければ長男も百姓はやってないというような状態で、苦しまぎれに相当な無理をして――これはそういう点では今度の機械化促進法で若干の前進はあるのでしょうけれども、しかし無理算段をして機械を買う。これが別に税制上の償却というような問題についてほとんど大した考慮はされていないはずであります。そういうようなことで、さらに今度は共同化というようなものが進むに従って大型機械が入るということになりますと、これに対する特別償却というのは問題が非常に大きな問題になってくると私は思う。そうでないと、これは相当な負担だけを農家に押しつけて、結局機械利用する農家の経済機械のためににっちもさっちもいかなくなり、それの支払いやら金利の支払いやらあるいは購入代金支払いやらで、むしろそれで失敗するというようなことがあるわけです。酪農振興酪農振興ということで牛を導入した。十頭を入れた。そのうち二、三年たったらほとんど牛を売り払って借金を返して、それでなお借金が残ったというようなことが、機械の面でも出てくるのじゃないかということも真剣におそれられ、またそういう点での配慮というものがなされなければならないと思うのですけれども、そういう点についてもっと真剣に考えてもらわなければならぬと思うのですが、何らの検討もしてないということなんですか。
  44. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 答弁の前に、今の広瀬委員からの質問に関連いたしまして……。先ほどお話のありました農業機械化促進法の一部改正提案されておるわけでありますが、農政課長も御承知のように、現在農村では機械化貧乏というようなことがいわれております。これはもちろん日本の農業の場合に耕作反別の狭いことあるいはその地域ごとの農業ということで、ただ一律的に機械化いたしましても実態に即応しない。そういうような形が出ていることとともに、先ほど指摘のありました、農村における蓄積が少ないために、その金融の面において十分な手当がなされていないところに負担の多い機械化をやっておる。いろいろ原因はあろうと思うのでありますが、私はある機会に本委員会におきまして、農業基本法に基づくところの施策を推し進める際には、ただ農業の形態からだけ見るのではなくて、金融、税制の面からも手当をしていかなければ、なかなか思うような成果は上げられないのじゃないか。こういう点についてお話を申し上げたことがあったのでありますけれども、当然この農村における現在の機械化貧乏ということについては、実態を把握しておられると思いますし、その上に立って今度の農業機械化促進法の改正案というものも提案され、今までのひずみを直す意味においての法案の提案だと思いますので、その際には当然今広瀬委員から指摘のありました税制面等における検討も加えられておるものだと私たちは期待しておったわけであります。それと同時に、大蔵省におきましても、農林省がいろいろ農政についての新しい視野から問題を取り上げようとするのに対して、農林係の諸君は非常にお詳しい。そしてこれはだめだ、あれはだめだという意味においてお詳しいわけです。そういう意味で、今私が指摘いたしました点等について、主税局長として取り上げる余地はないのかどうか。これは広瀬委員の質問に関連いたしまして、農政課長と局長の方から答弁をしていただきたいと思います。
  45. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど来申し上げるような趣旨におきまして、農業機械特別償却制度については、これは筋も十分通るし、その線でいくべきものであるというふうに考えておるわけであります。いずれ農林省から具体的に機械設備等のお話がありますれば、これは今告示でもって指定することになっていますので、両省協議の上で慎重な検討を遂げて、必要があれば指定したいというふうに考えております。この問題につきましては、われわれいつでも前向きの方向で考えているということだけを申し上げておきます。
  46. 岡田覚夫

    岡田説明員 農業近代化に即応しまして、特に機械の問題が大きな問題になっているわけでありますが、そのほか相当大型の機械が入るという形にだんだんなって参っております。機械につきましては、零細な農業のところへ大型な機械を入れるというふうな問題で、過剰投資というような問題もありますので、農業機械につきましては、それに即応した共同的な利用の形ということを考えておるわけであります。これに対しましては、御承知のように近代化資金等によりまして融資をいたすという融資措置も講じておるわけでございますが、税制面につきましては、そういう新しい施設につきまして、全般的にどのような措置をとるかということで検討はいたしておるわけでありますので、その検討に従いまして、大蔵省に御相談申し上げたいというふうに考えております。
  47. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今度の特別措置法改正が国会に提出をされまして、その間に運輸省関係の船の運賃に対する税の問題が漏れておったとか、いや故意に大蔵省が抜いたとかいう問題が起きまして、途中から出しかえたような経過があって、運輸省は大へん税金に弱いというようなことがいわれておるのでありますが、農林省も同様に、税金には弱いのではないかと思う。そういうようなことのないように願いたい。農業基本法では、やはり農業を企業として成り立つ農業とするということを池田さんが口をすっぱくして言っているわけであります。企業として成り立つためには、まず金融の問題があります。これは一部でありますし、また不満足なものではありますが、近代化資金助成法というようなものができた。これも逐次具体的な方向に向いておるが、税制の方では何ら手をつけられていない状況にある。税制と金融というものは企業の発展のために非常に重大な関心事でなければならない。そういう立場から、農林省も、単に農業技術というようなことだけにきょくせきしないで、そういう企業として成り立つ農業だとするならば、やはり施策というものもその方向に向かって前進をしていかなければならぬ。新しい局面を開いていかなければならぬ。そういう面から、やはり税制に弱い農林省であってはならないと思うのです。そういうことを要望いたします。  また主税局長は、常にその点では前向きにやっていきたいということを言っておりますから、その通りに一つ実現をさせていくように、農林省からもしっかりした資料をそろえて堂々たる要求を出してもらいたいし、大蔵省としてはこれを受け入れることにやぶさかではあってはならない。そういうような要望をいたしまして私の質問を終わります。
  48. 小川平二

    小川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたします。     ―――――――――――――
  49. 小川平二

    小川委員長 続いて討論に入ります。  通告がありますのでこれを許します。広瀬秀吉君。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、今回提案をされております租税特別措置法の一部改正に関する法律案に対して反対討論をいたしたいと思うわけであります。  租税特別措置法は、すでに十年有余にわたって行なわれているわけでありますが、たとえば近年の例を取り上げましても、昭和三十一年には八百八十五億円の減税、三十二年には六百九十三億円、三十三年八百四億円、三十四年一千二億円、三十五年一千四百七億円、三十六年一千四百九十五億円、三十七年一千六百九十五億円、このような工合に大きな減税を、特に大企業にきわめて集中傾斜した形で行なわれてきているわけであります。その間における一般減税は三十一年二百二十九億であります。租税特別措置における減税は八百八十五億であります。三十二年には一般減税がやや多く千二百七十六億円でありまして、この際における特別措置の減税が六百九十三億、三十三年には一般減税はわずか二百九十五億しかない場合に、措置法による減税が八百四億円にも達しておるわけであります。三十四年も四百七十九億の一般減税に対して特別措置法による減税は一千億をこえました、こういうような状態にあるわけであります。しかも中山税制調査会長が先般この委員会で発言をされたのでありますが、大企業にこれが八割方は集中しておるだろうということを明確に言われておるわけであります。このような特別措置を実施することによって、今日の高度経済成長というものがある意味においてはささえられてきたと見ることも当然だと思うのであります。しかもその結果今日設備投資の行き過ぎというような事態まで起きて、国際収支がきわめて危険な状態にまで陥っておるという現実、あるいは物価の高騰、過剰生産、圧迫が内在しているのじゃないか、所縁格差がいよいよ開くばかりだ、あるいは経済の二重構造というものが解消の方向をたどるどころか、むしろ深化していくというようなことも、私はこの租税特別措置のきわめて悪い血がこういうところに出ているのじゃないかと思うわけであります。もはやシャウプ税制において、戦争によって失われた資本の蓄積あるいはまたインフレによって失われた資本の蓄積というのを早急に取り戻すのだというために、きわめて時点を限ったものが大部分だという形で発足したものが、今日もうすでに長期にわたり、しかもこれが企業にとっては完全に既得権化するような形で、そういうような血からの圧力によって、これが整理改廃を幾たびか税制調査会からも言われながらも、きわめて当面を糊塗する程度の整理改廃にとどまって、抜本的な整理改廃が行なわれないままに参りました。従って税制の基本である公平の原則というものを著しく犠牲にしながら、大企業だけを肥え太らせてきたという現実が今日出ておるわけであります。しかもそのこと自体がもう政策目的を達成して、すでに行き過ぎがきてしまったという今日においては、これに対してほんとうに抜本的なメスを入れて、大幅な整理改廃というものを行なうべき段階だと思うのでありますが、そのようなことをなされずに、次々に新しいものを――もちろんその中には必要欠くべからざるものもあろうと思います。しかしながら今日貯蓄増強の名における貯蓄奨励に関する減税特典の問題にいたしましても、もうすでに本委員会においても論じ尽くされた問題でありますが、これらの面についても、なおもう一年延期をするという改正案が出され、さらにまた内部留保の事実の中にも、きわめて損金性の高いものも確かにあるでありますが、そういうものは基本税制の中に当然取り入れていくべきだし、しかも損金性の薄い企業の利益を保護するというだけにとどまるような性格のものもあるわけでありますから、こういうようなものを大なたを振るって整理すべき段階だと思います。さらに特別償却制度の問題につきましても、今日まで大企業を著しく発展させるという意味においてはもう制度の役割を果たしました。こういうものを整理して、今こそ中小企業なりあるいは農業なり、そういうものの発展と近代化のために重点を完全に移行した形にしなければならないと思うわけであります。しかもこの租税特別措置法の第二のいけない点は、政策失敗というもののしりぬぐいが常に安易に税の公平の原則というものの犠牲の上に押しつけられているということであります。そういった点から考えまして、この今回の一部改正案というものが、そういう根本問題に触れないで、当面の緊急の政策失敗のしりぬぐいをするというようなことで出ていることは、非常に遺憾な点であります。従って私どもはこの租税特別措置法の一部改正という問題について、今申し上げたような見地から、どうしても納得することができないわけでありまして、この今回の一部改正案につきまして、社会党を代表して反対をいたすものであります。すべからく政府は英断をもって次の機会にはこの技本的な改廃というものに踏み切られるように強く要望いたしまして、反対討論を終わる次第であります。
  51. 小川平二

    小川委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。      ――――◇―――――
  54. 小川平二

    小川委員長 次に、法人税法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。武藤山治君。
  55. 武藤山治

    ○武藤委員 主税局長に少し勉強する意味お答えをいただきたいと思いますが、税制調査会の資料によりますと、資本金別の会社数なども調査対象として二千百七十社を調査しておられますが、まず最初に、今日日本にどれくらいの法人数があるかをお尋ねいたしたいと存じます。それからその法人と名のつくもので、さらに課税対象に入っておる法人がどのくらいあるか、まずその点からお尋ねをいたします。
  56. 村山達雄

    村山政府委員 課税法人数で約四十三万三千程度でございます。非課税法人を入れました正確な数字あとで調べますが、六十万見当であろうと思っております。
  57. 武藤山治

    ○武藤委員 課税法人が四十三万三千と仮定をして、資本金百億以上の会社はどれくらいございますか。
  58. 村山達雄

    村山政府委員 今手元にある資料では五十億以上のところで切ってございますが、それで会社数が六十九となっております。これは三十四年の実績でございます。
  59. 武藤山治

    ○武藤委員 五十億以上はわかったのですが、今度は十億から四十九億まではどのくらいございますか。もし十億がわからなかったら、その切ってある数字でけっこうです。
  60. 村山達雄

    村山政府委員 十億以上で二百九十五でございますので、それから六十九を引きますと、二百二十六という数字に相なります。
  61. 武藤山治

    ○武藤委員 一億から十億まではどのくらいございますか。
  62. 村山達雄

    村山政府委員 千六百八十八でございます。
  63. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、今度は下位の方ですが、百万以下の資本金の法人はどのくらいありますか。
  64. 村山達雄

    村山政府委員 今すぐ計算しますが、二十万未満が二万六千三百十五、二十万から五十万までが十万六千五百十七、それから五十万から百万までが十五万四千三百八十八、この合計数が、今おっしゃった百万以下の法人数に相なります。計算は今直ちにやっております。
  65. 武藤山治

    ○武藤委員 それから、百万以上五百万を一つの区切りにして、五百万まで、それから五百万から一千万までの資本金の法人はどのくらいございますか。
  66. 村山達雄

    村山政府委員 百万から五百万までの会社数でございますが、十八万四千百二十一、それから五百万から一千万まででございますが、これが一万七千二百七十七ございます。
  67. 武藤山治

    ○武藤委員 それから、まだもう一つ一千万以上一億までが残っておりますが、これはどのくらいございますか。
  68. 村山達雄

    村山政府委員 その間を全部申し上げます。一千万から五千万までのところで切ってございますが、これが一万七百六十九、それから五千万から一億のところが千五百九十五、この合計がおっしゃった数字になります。
  69. 武藤山治

    ○武藤委員 そこでお尋ねをいたしたいのは、二十万未満の十万六千五百十七社の課税所得金額が幾らで、税額幾らになるか、まず二十万未満の小さい方から伺いたい。
  70. 村山達雄

    村山政府委員 二十万未満でございますか。これは所得金額だけしか出ておりませんが、比例税率でございますので、大体同じですが、少し軽減税率の割合が大きいとごらんいただきたいのでございますが、二十万未満が五十三億三千六百万円でございます。それから二十万から五十万までのところが百七十九億二千九百万円、それから五十万から百万までの資本階級でございますが、四百二十七億七千五百万、それから百万から五百万までのところでございますが、千四百八十六億四千三百万、それから五百万から一千万までのところが五百三十七億三千五百万、次に一千万から五千万までのところでございますが、九百九十八億七百万円、それから五千万から一億までが四百七十九億七千六百万、一億から十億まで千八百三十一億七千五百万、それから十億から五十億までのところが千九百九十六億九千万、それから五十億超でございますが、千七百八十一億八千三百万、合計いたしますと九千七百七十二億四千九百万、これは三十四年度の実績でございます。
  71. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで、百万以下の税率が現在三三%になっておりますね。この百万以下を全部三〇%にすると、来年度実績と比較してどのくらい減収額が見積もられますか。
  72. 村山達雄

    村山政府委員 一億八千万程度になるかと思います。
  73. 武藤山治

    ○武藤委員 十八億じゃないですか。
  74. 村山達雄

    村山政府委員 今ちょっと計算しております。――今ちょっと聞き違えたかもしれませんが、百万以下の所得に対して、今の三十三というのを三十という、もう一歩税率を置くと、こういう意味でございますか。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう意味でございます。
  76. 村山達雄

    村山政府委員 それじゃ違います。ただいま私が引きましたのは、今二十万以下のものについて、そうしたらどうなるかという計算を申し上げたのでございます。新しく全部税率を置く、だから、上の法人にも全部響くような段階税率を作る、こういう意味ですね。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 そうです。段階税率を作った場合の増減を、これから聞こうというのです。
  78. 村山達雄

    村山政府委員 約三十億の減収になるのでございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 さらに百万から五百万までの所得に対して、これを三十六に税率を落とした場合、現在三十八%になっておりますが、二%税率をダウンするわけですね。そうしますと、これは幾らになりますか。
  80. 村山達雄

    村山政府委員 今のは、ずっと上積みの関係になっていきますので、少しこまかい計算をしないと出ないかと思います。
  81. 武藤山治

    ○武藤委員 それは後ほど、社会党の考えている税率一つ算出してみていただきたい。百万以下は大体わかりましたが、これを三〇%の税率で計算してもらう、それから二百万以上五百万までを、現行の三三%で計算をしてもらう、五百万以上一千万までを三六%で一応計算してもらう、それから一千万以上を四〇%で計算をしてもらう、それから五十億円以上の六十九社に対しては、これは個々に当たらぬとよくわからぬわけでございますが、これも一応四〇%で計算をしてもらって、全体の増減がどういう関係になるかを一つ出してもらいたいと思います。  そこで、主税局長一つお尋ねいたしますのは、二十万未満の資本の会社が全国に二万六千もある。しかもその所得がわずか五十三億円ですね。全体から見たらほんのわずかな分です。こういうわずかな所得しかない。一戸当たりにしたらほんのわずかです。こういう人たちに対して個人事業者との関係あるいは青色申告個人事業者との関連から税率をダウンするのは好ましくない、こういうような考え方で、おそらく今回の国会にも改正案を出さなかったのじゃなかろうかと思うのですが、税制調査会のあれを読んでみると、どうも納得がいかぬ理由なんです。こういう零細法人に対する税率というものはもっと引き下げてもいいんじゃなかろうかと思うのだが、主税局長の見解はどうでございますか。
  82. 村山達雄

    村山政府委員 御指摘のように、中小法人に対する段階税率の問題は、直ちに個人事業者とのバランスの問題、ひいてはすぐそれが事業所得者と勤労所得者の負担のバランスの問題、こういうふうにつながる問題でございます。わが国におきましては、ほかの国に見られないようなことでございまして、先ほど会社数を申しましたが、そのうちの約九割くらいは同族会社になっておるような状況でございます。しかも解散新設はございますが、年々個人から法人になるのがふえており、最近では約五万程度ふえております。御案内のように、個人でありますと、その一人の人の経営者の所得として所得税がかかるほかに、事業税がかかってくる。法人になりますと、それが給与とか配当とかいう形に分かれております。しかも家族も従業員になってくる。そうなりますと、会社に残るものと個人に残るものがございます。個人になるものは全部分割されてしまう。基礎控除は受けられる、累進課税は免れる、しかも事業税はかからない。この問題がございまして、非常に複雑な問題でございます。そういう見地で、特に法人を不利にすることはございませんけれども、法人を個人よりも不当に有利にするということは好ましくないという、税のためだけに法人成りを促進するということは考えていないわけでございます。そういう見地から、実は昨年もこの問題が所得税あるいは企業課税の問題の最大のポイントの一つになって論じられておるわけでございまして、昨年の留保所得に対する課税取り扱いの問題あるいは個人の専従者控除の金額のきめ方の問題、それからひいてはその場合の扶養親族の控除の金額を上げました、あの上げ方の問題、それから給与所得について一万円の定額控除をいたした問題、これは全部それらの問題に関連をしているものでございます。従いまして、今度のような改正にとどめざるを得なかった場合において、またこの段階税率に手を触れるということは、せっかく均衡を得たものに対して、またアンバランスになってくるということでございますので、ことしは不適当だと考えております。もし将来問題になるとすれば、先ほど申しましたような事柄につきまして、あらためて全面的に検討した上でないと、早急には結論が出ないという性質のものであろうと思います。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 今主税局長お答えになったようなことは、やはり税制調査会の答申の中にも書かれておるのでありますが、その資料によりますと、二十万とか百万以下の零細な会社の所得ですね。こういう場合を個人と比較をいたした表がございますが、百万までのラインを引きますと、法人の方が個人よりも重いのですね。そういう数字がはっきりこの七十三ページに出ておるわけです。上積み実効負担率からいっても、百万までは個人と比較した場合に約一%方法人の方が重い。さらに五十万円以下の所得者と比較すると、個人は一八・三一、上積み実効負担率が法人の方は三七・二四ですから、約倍も法人の方が重いという数字がこの積算の資料には出ておるわけです。従って百万以下の法人所得に対しては、もっと税率をぐっと下げても、決して私は個人所得とのバランスを破るということにはならぬと思うのですが、その辺の見解はいかがですか。
  84. 村山達雄

    村山政府委員 これはなかなかむずかしい問題でございまして、単に上積み実効税率だけで計算できない問題でございます。総税額の比較、それから上積み実効税率、両方の角度からにらんできめる必要があろうと思います。詳細の問題につきましては、非常にむずかしい資料でございますので、私の方でもう一ぺん読み直してお答え申し上げたいと思います。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 非常にむずかしい問題だから、もう一度検討するという局長の率直な答弁でありますから、私もそれ以上質問はしないつもりでございますが、ただ社会党の立場からすると、五十万、百万という非常に同族会社で小さい所得というものが、大法人と比較して平均をしてみた場合に、いかに一会社当たりの負担が重いかということが明らかなんです。だから法人同士の中の公平という立場からも、さらに個人所得とのバランスという面から見ても、百万以下の税率をもっとダウンするということは当然認められていいような気がする。こういう点を十分に一つ御検討をいただきたいと思うのです。今主税局長の、上積み実効負担率だけではあまり論ぜられない、もっと多面的に見なければいかぬという主張はわかります。しかし税額で見ましても、法人の方は十八万六千円、個人の方は九万一千五百三十四円、さらに百万以下を見ても、十八万と十七万五千というように、やはり法人の方が負担が重くなっておるわけでありますから、こういう点は十分検討して、今回の改正の中に入れるべきであったのではなかろうか、そんなように私は感ずるのです。  そこで別の問題ですが、同族会社の場合の適正な給与額というのは、どういう基準で税当局は徴税をしておるのでしょうか。たとえば売上金何千万円までは同一家族というものの総額は何%までとか、あるいは作業別、種類別、いろいろな基準で何か通達を流して、同族会社の場合の給料は幾らとという限度をきめて給料を否認をする、こういう形で非常に零細な業者が困っている。そういう点で何か基準をきめた通達というものを零細法人に対して出しておるのですか。
  86. 村山達雄

    村山政府委員 先ほどの前段の問題にちょっと触れておきますと、上積み実効税率の考え方は、留保所得に対する課税率を幾らにしたら個人とバランスがとれるかというための資料でございます。むしろ個人換算所得で総合負担がどうなるかというところが実は個人と法人の税の問題なのでございます。そういうことでございますので、この表からは直ちに論ぜられないと申し上げておるわけでございます。昨年の調査会で検討いたしましたのは、家族構成、年令構成を考え、その場合に法人になった場合にどのくらいの給与を取るか、資本参加はどのくらいの割合でいくか、配当はどうであるか、賞与はどうであるか、それに対する国税地方税を通じての総合税負担がどうなるかというところで均衡をとっておるわけであります。そういう意味でわれわれは、現在のところバランスがとれておると考えておりますが、なおこまかい御質問がございますれば、あとで読んで調べてお答え申し上げたいと思います。  それから第二段の問題でございますが、これは国税庁の執行の問題でございますが、私の承知している限り、格別の通達は出てないと思います。ただ考え方としては、給与が過大であるかどうかという問題は、これは結局常識的に非同族会社の場合と比較して考えざるを符ない。端的にその労働能力だけを評価して、その金額が高いとか安といかいうふうに論じても論じられないものでございますので、一方におきましては、実際の労務提供の状況、常勤であるか臨時であるか、どういう役についているか、それから非同族会社でもそういうことがあり得るかどうか、こういう点を中心に考えていくものであろうと思います。実際問題としては、給与の否認ということは非常に少ないというふうに聞いております。実際のあれはどうなっているかということは、この答申に出ておると思いますけれども、その年令により、その地位によってだいぶ違うようでございます。その辺の同族会社の現在の支給状況、この辺から見まして、青色の最高限度額十二万円、九万円という金額を割り出しているわけでございます。法人としては、実際問題としては否認を行なったということはごくまれのように承知しております。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 先ほどの答弁では、直ちに個人事業者との比較は即断できない。その主張は私も認めます。だが調査会のこの文章のほかのところを読んでいくと、はっきりこう書いてあるのです。「法人所得二百万円のところで、法人形態の負担のほうが軽くなっている。」百万以下になった場合には、法人の方が重いということがはっきりうたわれておるわけです。だから、さっきの表だけではそういうことは言えなくとも、所得百万あるいは百万以下の法人と個人とを比較した場合には、法人の方が重くなっているということは、ほかの部面でもはっきり言っておるわけです。そこで今後「中小法人と個人事業者の負担のバランスを図ることに重点をおいて検討する必要があると考えた。」こう書いてあるわけです。だから、さっきの表だけでは即断できないにしても、答申全体を流れておる精神から言うと、零細法人というものに対する何らかの十分考慮しなければならぬ点があるという点だけは、一致した見解のように私は受け取っておるのであります。だから、現状においてはバランスがとれておるから何ら考える必要はないという考え方は、答申の前向きの受け取り方じゃなくて、零細業者に対する思いやりというものがあまりない。今回の改正案に考慮しなかったといううらみがあると私たちは思うんです。そういう点を非常に遺憾に思うわけであります。  さらに同族会社の給与の否認というものはあまりないというけれども、私たちが今ずいぶん苦情を持ち込まれておる問題の多くは、お父さんや奥さん、子供が給与をとっておると、これは過大給与であるといって否認をされておるわけです。そういう否認をする根拠、理由が非常に薄弱なんですね。そこで税務署へ行くと、いや局の方からいろいろ通達があってうるさいことを言われるから、こういうものは否認せざるを得ない、こう言って逃げておるわけです。それがほかの産業との比較、ほかの産業との比較、ほかの業種との比較、そういうようなもので否認をしておるのだ、この程度しか説明しないわけです。だから業者は、納税者は全く納得できないのです。ただあなたのところは多過ぎるというのですから……。そういう点で、私はやはり税務当局が何か通達を出して、給与の否認の基準というか、原則みたいなものを流しておるような気がするのですが、そういうものは全く流しておらぬでしょうか。
  88. 村山達雄

    村山政府委員 前段の問題ですけれども、どこで均衡点を求めることが妥当であるかということに尽きるのだろうと思うのであります。去年の答申では、青色と個人のバランスを、個人換算所得二百万円のところで均衡を求めておる。それ以下は個人の方が若干有利になる。全く一致させることは、税制の仕組みでありますからできませんが、だからどこで一致させる均衡点を求めるか、この問題だろうと思います。そういう意味で、現行二百万のところで均衡点を求めておるわけであります。もし今言ったような軽減税率を設けますと、この均衡点が変わって参りますので、個人全部を御破算にしなければならない、こういう問題になると思います。こういうことを論理的な問題として申し上げているわけであります。  それから同族会社の給与の否認の問題でございますが、私の承知している限り、これはなかなか労働の評価がむずかしくて、一般的に金額的な基準は何も出していない。ただ同族会社の行為計算の否認規定の、その規定解釈については、当然これは出ているわけであります。従いまして、われわれが実際第一線におった経験から申しましても、非同族会社とのバランスの問題、これが中心になって動いているわけであります。実際問題としては否認は非常に少ないように私は記憶しております。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 今のは公平という言葉から税率を軽減したらどうかという論拠に立って御質問したのでありますが、調査会の資本構成あるいは資本蓄積という面から考えたり、あるいは今日の企業の近代化という、先ほど与党の方の要望がありましたような観点から零細業者というものに対する施策を考えた場合、今の数から見て言っても、百万から五百万、つまり五百万以下の納税対象法人というものは一番多いわけですね。しかもこれが一番零細で、資本蓄積なんかほとんどできないわけです。もしこれをもっと具体的に御質問するならば、五百万以下の階級別に租税特別措置の利益を受けておる金額、これをまず一つ出してみる。それから総売り上げなりあるいは資本金なり、そういうものとの比較をして金利負担の割合というものを出してみる。そうしてみると、五百万以下の小刻みの百万単位の階級別に比べると、それ以上の大会社と比較した場合に、私は税率を引き下げてもいいのではなかろうかと思うのです。さらに参考のためにちょっと伺っておきますが、青色申告法人と白色申告法人と、どんな比率になっておりましょうか。五百万以下の階級別の青色申告と白色の数の比較、さらにその中で特別措置を受けておる金額、そういうものを全部出してみないと、これは主税局長にうまく逃げられて、その表だけでは対象にならないということになりますが、ただ時間がかかると思いましたので、簡単な一例をもって先ほど質問したわけですから、できるだけそういう数字を出してもらいたいと思います。
  90. 村山達雄

    村山政府委員 おそらくその統計にないのではないかと思います。われわれのとり得る統計は、今の税務統計でどこまでとっておるかという問題で、あとはそれをもとにして推計するというような操作でございますが、こまかい資本階級別に青色申告状況があるかどうか、あとで調べてみますが、税務行政の方を見ないとわからないと思います。国税庁で調べないとわかりません。  先ほどの、租税特別措置による利益が大法人に傾斜しているのではないかという点は、おそらくそうだろうと思うのでございます。きのうも堀委員からの御質問に対してお答えいたしましたが、一億以上の法人が、特別措置による損金算入あるいは益金控除の額で言いまして、大よそ九割見当に及ぶであろうということは、申し上げたわけでございます。ただ、その絶対額だけではなかなか比較はできません。と申しますのは、もともと大法人の方が所得割合が非常に高いものですから、普通の所得の比例とその利益の構成、その差額がおそらくそう言われることになろうと思います。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 だから、ほんとうに政策的な見地に立って零細企業を保護しようとか、あるいは零細企業も近代化ができるように促進をしてやろう、そういう思いやりがあるなら、こういう資料がないなんということは私は言うのがおかしいと思うのですよ。納税対象人員はちゃんとわかっておるのだし、そういう資本別あるいは所得別に税務当局は一切資料は持っていて、各税務署からそういうものを集めているのですから、統計はできるはずですから、そういう中でほんとうに前向きの姿勢でこういう零細業者に対してはこういう方法がとれるかどうかという検討をするためにも、そういう資料は当然あると思うのです。今ここにないというならば別ですが、主税局にはあると思う。あるならば、それを午後にでも出してもらって質問をしたいと思いますから、その点を伺っておきたいと思います。
  92. 村山達雄

    村山政府委員 青色申告法人、これはわかります。それから全体のうち、休業法人を除いて九割くらいが青色申告だと思います。ただ資本階級別に青色法人という観点から統計をとっておるかどうか、それが今のところわからない、こう申し上げたわけであります。手元に資料がないのでありますが、多分そこまではとっていないではかろうか、こう申し上げたのであります。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 法人の第一線のスタッフが取り扱っておるのに、青色と白色の区別が本局に届出されてないということはありませんよ。私も税務署に勤めておったことがあるのでよく知っておりますが、白色と青色と毎月何件件数があって、所得別にどうというような報告はちゃんとやっておりますから、ほんとうにこういう零細業者というものに思いやりのある施策をやろうとするならば、そういう資料にできるだけ目を通して――調査会では二千百七十の会社だけを基準にして、会社の資本蓄積がどうだ、内部留保がどうだとかいうような統計だけでは、氷山の一角見ていないのではないか。もっと政策的な見地からでも、こういう資料を十分集めて一つ検討する必要があるのではないか。これは午後青色申告の階級別の資料を出してもらうことにいたします。  次に、この間、堀先生が予算委員会でも少し質問をいたしたようですし、本委員会でも質問をしたようでありますが、法人税の伸びですね。本年の見積もりというものと、これから実績になるであろう伸びとの食い違いの率、あるいは数値でもけっこうですが、そういう点で少し検討してみますと、どうも今の見積もりがちょっと根拠が薄弱で、実際の経済の推移とマッチしないような計算になっておるのではなかろうか、かように考えるのでありますが、その点法人税について、主税局長どうお考えになっておりますか。
  94. 村山達雄

    村山政府委員 今の見積もりの根基になった数字は今調べて申し上げますが、考え方といたしましては、実績がわかっております。予算編成時までにわかっておりますのは、九月決算までの分がわかっております。一方経済の見通しがわかっておるわけでございます。生産物価が大きく響く。法人の場合は、卸売物価が大半でございますが、これの数値はわかっておる。月別の動きがどうなるかというのは、年間ある伸びが想定されておりますので、平均でそこにいくように伸びると仮定するわけであります。過去の実績の数値はわかっておるわけであります。従いまして、今度は、今の経済見通しの数値は、年度対年度の数値でございます。法人の計算でいくとそうはならないわけでありまして、決算べースで二一べースになるわけであります。しかも事業年度で見ますと、六カ月法人で六カ月延びるわけであります。その六カ月間の所得発生の割合は均分的に出るというのが一つの前提であります。そういうふうにして今の指標に全部所得をくだいていくことは可能であります。こういうふうにして今の経済見通しをそのまま機械的に適用した場合にはどうなるかという数値は、課税所得としては出て参るわけであります。問題は、こういう見通されるような経済のもとで、生産物価だけで所得はきまるわけではございません。そのときの利益率あるいは所得率と申しますか、対前年利益率はどうなるであろうかというところが一番むづかしい読みになるわけでありまして、御案内のように、物価がもし上がるということでございますれば、そこは期首、期末の在庫だけでもそれだけ出るわけであります。逆にダウンするということでありますれば、それだけ所得としては減るわけであります。そのほかに、今の売り上げと経費項目のズレがあります。もし稼働率が下がるということでありますれば、それだけ単位当たりの原価は上がるわけであります。それから売り上げの伸びよりも給与の伸びが強ければ、それだけ利益率は下がるわけであります。こういう要素を織り込みまして実際のことを申しますと、なかなか計算的には出て参りません。われわれは過去の幾つかの統計がございますが、そのときにどれだけ利益率が下がったかということを見てございます。それらから勘案いたしまして、来年度は、今年度の所得率に対して一〇%くらいダウンするであろうという見方をしておるわけであります。そこまでで、いわば申告税額が出るわけでございますが、実際の税収としては、御案内のように一期に納めるわけではございません。申告月に半分納めて、残りの半分は残り三カ月に納めるわけでございます。経験によりますと、これもおよそ分納率がそれぞれきまっておるようでございますが、それらの数値を使うということでございまして、われわれはこの経済の見通しが当たっておるならば、われわれの見積もりは過大でもなければ過小でもないというふうに考えておるわけであります。法人税でございますが、七千二百十二億程度、決算見込みはその辺を考えておるのでございます。それに対しまして来年度は六千九再九十九億と多少減ると見ておるわけであります。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 そこでこの租税及び印紙収入予算の説明によりますと、生産が一二・八%、物価が一・二%、所得率自体による調整が九一%、こういう数値を出されて、総合で三・九という数字をわれわれの前に示しておるわけですが、これの根拠を一つこの資料に基づいてちょっと説明してもらいたいと思います。
  96. 村山達雄

    村山政府委員 一々の計算過程がもし必要であれば出しますが、基本的な考え方としては、先ほど申し述べましたような意味機械的に出してあるわけでございます。ですから、もちろん幾つかの前提がございます。もう一ぺん繰り返しますと、生産物価の来年度の伸びは、各月別均等にその割合で伸びていって、年度を通じて経済見通しになるであろうという前提でございます。過去の指数は出ております。その実績値によっておりますということを申し上げておるわけであります。その場合税にはウエートがございます。単純に月別ではありませんで、たとえば三、九月決算の税収が多いということでございますから、そこは三月決算、九月決算という分が多いということでございますので、それ以前六カ月のウエートが非常に高いということはございます。ですから、全部それは税収によるウエートをかけてございます。そのウエートによる前提としては、今の過去の経済指標にウエートをかけるわけですが、過去六カ月における所得発生の月別のウエートは均一である。これが前提であります。そういうふうにいたしますれば、おのずからウエートのかかった経済指標に還元されるわけであります。経済指標対経済指標でもってどれだけ伸びるかということが出てくるわけであります。かけられる元額は実績でわかっております。ですから、言いかえれば、それだけの前提を置けば、すべて過去の実績であり、経済見通しの資料をそのまま使っておるということでございます。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 過去の実績の上に本年の経済推移を見積もって計算しておる。そうすると、従来の法人税の見積もりの仕方と来年度の見積もりは、方法としては同じ方法でやっておるわけでしょう。
  98. 村山達雄

    村山政府委員 そこまでは同じでございます。ただ利益率の見方はもちろんその年々で違います。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、去年もその前年もみな同じような方法で実績を基礎にして見積もっておる。ところがその実績を基礎にして見積もっておる税収入が、実際の決算になった場合には非常な食い違いがある。過去五年間も六年間もやって、大体ぴったり同じ数値に落ちついたということはないんですね。非常に伸びているわけです。そういう点から言って、今までの五年間の見積もりと実績との食い違い率というものをどう勘案してこの税収を見積もっておるか。たとえばもっと具体的に申し上げますなら、三十五年度の食い違いの率だけでも三〇・六%法人税で食い違いが出ておる。それから前の年、三十四年度が一四・六%の食い違いが出ておる。こういうような自然増の伸び率ですね。そういうようなことをどうこれに加味しているかということを考えると、これはただ実績で、昭和三十五年の十二月から三十六年十一月までの申告税額はまずわかっておりますから、きちんと出して、それにいろいろ先ほどの操作を加えていって税額が出てきておる。そういう方法を例年同じようにやっておっても、ただいま申し上げましたような数字の食い逢いが出ておるわけです。実際はもっと伸びた自然増があるわけです。おそらくことしもこういうふうに経済が推移するならば、多からず少なからず、適正な税額だと思うという主税局長の答弁は、過去五年間の推移から判断をすると、どうも当たってないような気がするのです。そこらはどうでしょうか。
  100. 村山達雄

    村山政府委員 その見積もり方の方法論は、過去と全く同じでございます。なぜ当初予算の数字が決算のときの現れてこないか、これはその大部分は、当初予算当時にこちらが読みました経済見通しが大きく変動しておるということにほかならないだろうと思うわけでございます。その経済指標の見積もりというのは、対前年伸び率で出していますけれども、実際のことを申しますと、対前年の前年が実は当初予算の段階ではまだ実積見通しなんですね。それが決算の段階ではまた動いてくるわけです。ですから二重の意味をもって動いている。ちょうど誤差率で見ますと、経済見通しの誤差率というのは、実績から申しますと前年も動く、それから本年の見通しも動く、その動いた相乗積だけが動いた。つまり今の物価指数は、対前年で出しておりますけれども、ポイントで出した場合は、ちょうど相乗積だけが動いておるわけでありますが、それで過去の経済指標がどれだけ動いたかということを見て参りますと、かなり動いております。三十五年度は一三・九%動いております。それから三十四年度は一五・七%、この辺に非常に大きなズレが来たということが言えるわけでございます。三十三年度は一・三%でございます。このときには、補正予算後税収は若干見込みを切ったわけでございますが、ほとんど予算通りだ、こういうことが出ておるわけでございます。ですから、この変動は、経済見通しがいかにむずかしいかという問題と、われわれの立場として、やはり政府と同じ経済見通しの数字を使う、それが動くというところに大きな問題があるのだろうと思いますが、それで主税当局が今度の経済見通しは幾ら誤差率が出るだろうかということを計算するわけには参らないというわけでございます。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 それは主税局長として、誤差率がどのくらい出るとか、自然増が表面に出ないのがこのくらい出るだろうという言明は、おそらくできないだろうと思います。それを聞こうというのは、意地の悪い追及の仕方でありますから、私もそこまでやろうとは思わないのですけれども、ただ政府経済の見通しというものは、国際収支の逆調を改善しようという立場をあまりにも大きく前提にして、五・四%という急激なスロー・ダウンをがばっとやった。しかし実際の経済はそう数字通りにダウンできないのです。これは経済理論の原則からいってもできっこないのです。それだけやったら、それこそ工場閉鎖が一ぱいできてきてどうにもならない、失業者の群れが出るということになってくるわけです。今拡大された経済をそれだけ急に縮小するなんというのはできないわけですから、従って法人所得というものも、そう急激に政府の本年立てた経済見通しのようにダウンはできないわけです。だからおそらく去年もおととしも狂いが出たと同じように、本年も狂いがかなり出るぞ、こういうことを私たちは主張しておるわけなんです。しかしそれがどのくらい出るかということを主税局長から聞くことは、なかなか主税局長の立場上言えないことでもあろうと思いますが、ただ五年間の平均の食い違い率というものを――これを平均するということはいけませんけれども、一応五年間平均の狂い率を出してみると大体一九・四%も見積もりより、も決算の方が狂いが出ておるのです。   〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  だからおそらく本年もかなり法人税の場合も隠し財源が出てくる。そういう立場から言うと、もっと法人税の減税をしてもいいのだ、こういう立場から私ども政府に質問をいたしておるわけです。  最初の約束が十二時半までという約束でございますから、また午後にでもお尋ねをすることにして、一応午前中の質問はこの程度にしておきたいと思います。
  102. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩をいたします。    午後零時三十六分休憩      ――――◇―――――    午後一時五十一分開議
  103. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。芳賀貢君。
  104. 芳賀貢

    ○芳賀委員 関税定邪法並びに暫定措置法について、若干質疑を行ないたいと思います。  第一に政務次官にお尋ねしますが、今回の定率法の改正の主たる目的は、貿易自由化の促進に備えて、それに対応するために関税の定率是正を行なうということが、相当大きなねらいだとわれわれ考えておるわけです。結局政府はことしの十月までに九〇%の自由化を実施するという方針で、相当無理を排除してやっておるようですが、今回の定率法改正の中で、現実に自由化に対処して行なう品目、主たるものでいいですが、それらの点についてまず政務次官からお伺いたします。
  105. 天野公義

    天野政府委員 今度御審議をお願いいたすことになりました関税定率法及び関税暫定措置法の問題は、おっしゃられますように、自由化に対処してやっていこうという基本原則に立っているわけでございます。その基本原則に立ってどういう品目がどうかという点につきましては、関税局長からお答え申し上げます。
  106. 稻益繁

    ○稻益政府委員 今回御提案申し上げております私どもの改定案によりますと、もちろんねらいは自由化の繰り上げに伴います国内産の競争力の弱いものにつきまして、ある程度必要最小限度の保護関税を設けたい、そういう趣旨であります。  おもな物資について申し上げますと、たとえば農林物資では、一応自由化を予定いたしておりますものでは、バナナでありますとか、あるいはオレンジでありますとか、そういった物資がございます。それから農林物資以外で申し上げますと、非鉄金属、銅、鉛、亜鉛、この関係、それからマンガン、タングステン、モリブデン鉱といったような鉱産物関係、そういったものがおもな物資でございます。
  107. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これに関連して、御承知の特定物資輸入の特別措置法がありまして、これが六月で時限が切れるわけですね。そうなると、今度は特別措置法がなくなるということになると、結局関税定率法の中でこれらの問題を処理していくという必要性というものが当然出てくると思うわけです。そういう点についても、今回の改正の中では、内容を見るとある程度考慮されておるように考えられる点もありますが、この関係はどういうふうに判断して行なおうとしておりますか。
  108. 稻益繁

    ○稻益政府委員 お説のように、特定物資輸入臨時措置法が本年の六月四日で期限が切れるわけでございます。政府といたしましては、一応この法律は期限延長しないという建前で考えております。従いましてこの特定物資輸入臨措時置法で対象となっております物資、すなわち現在ではバナナ、パイナップルのカン詰、スジコがあるわけです。これらにつきましては、一面におきまして先ほど申し上げましたような自由化との関連で税率を再検討いたしまするとともに、特定物資につきましてはこの輸入の臨時措置法が廃止になった場合に、これを関税でどう吸収すると申しますか、関連して処理するかという問題を検討いたしたわけであります。その結果、現在の適用物資になっておりますバナナにつきましては、十月一日から一応自由化ということを政府としては予定いたしておるわけでありますが、その際の関税率を一応五〇%に――現行は二〇%でありますが、これは差益が相当ございますので、自由化いたしました際にそういった意味の差益と合わせますると、現在では約一〇〇%近くになっておるわけであります。これを急激に二〇%という低い関税に戻すことはいかがであろうか、そういう考慮を払いました結果、一応一年限りでありますが、五〇%というような税率を決定いたしたような次第であります。ところでこの五〇%でありまするが、本来でありますと、自由化との関連で税率を改定いたします際には、実施時期を自由化と合わせておるわけであります。従いまして旭常の例によりますると、この引き上げました五〇%の関税率も十月一日からの実施ということが至当なわけでございますが、一方先ほど御説明申し上げましたように、特定物資の差益徴収の法律が六月四日になくなるということをあわせ考慮いたしまして、実施時期を六月五日からということで改定案を策定いたしたわけであります。  次にパイナップルのカン詰でありますが、これは御承知のように国産と申しましては、、実は今の国内では生産はないわけなんでありますが、例の琉球の特産ということになっておるわけでございます。従いまして現在では琉球のこれらの産品につきましては、全部特別の処遇をいたしておりまして、免税扱いといたしております。これを国産同様に保護するという見地から、琉球以外の、つまり大部分は台湾その他の地域でありますが、そういうところから参りますパイ・カンにつきましては、輸入の割当をやって参っておるわけであります。これは現在のところ自由化が非常に実はむずかしいわけなのでございまして、自由化しないということがまだ決定的ではございませんが、十月一日からの自由化は非常に困難であるという情勢であります。従いまして今回の改正におきましては、現行の税率がガットの協定税率が二五%でありまして、差益が三〇%ほど徴収されております。従いましてこれも差益の徴収に関する臨時措置法が廃止になる六月五日以降、これにつきましては現在の実効税率であります二五%と差益の三〇%、これを合計いたしました五五%というものを新しい関税率として設定いたしたわけであります。  第三のスジコでありますが、これは従来も差益が出て参っておりますが、自由化いたしましてもそれほど――何と申しますか、カナダから入って参るわけなんでありますが、向こうの供給力が非常に限られておりまして、国産のものに大きな打撃を与えるといったような点はないようであります。かたがた国内のスジコのメーカー、これも大きな水産会社の副業的なものでありまして、そちらの方からも、採算的に絶対困るといったような問題もございませんので、一応関税率は現行のままで据え置きまして、そして自由化いたしたい、かように考えておるわけであります。
  109. 芳賀貢

    ○芳賀委員 国民経済的に見れば、たとえば日常生活に付随した果実類等が、低率な関税で輸入されるということは、これは決してはばむ必要はないことなんですが、ただ問題は、従来も特定物資に対して、特別の超過利潤の吸収を行なってきたということは、これと競合する国内の産業、あるいは生産の保護というところに重点が置かれておったわけですが、たとえばバナナが十月から自由化になるということになれば、現在より自由な状態で、大量に買付が行われるということは予想されるわけです。そういう場合、今の政府は、たとえば農業の分野においては、畜産農業あるいは果樹農業の振興とか、選択的拡大を盛んに唱えておる時期に、これらの果実が相当低廉な価格で、あるいは自由な条件のもとに国内に入ってくるということになると、国内にはバナナの生産はないが、競合する果実は、相当強い影響を受けるということは、これはどうしても避けられないと思うわけです。そういう実情をわきまえておりながら、特定物資の臨時措置法が、期限が経過をすればこれを単純に廃止する。しかし一部は、関税率の引き上げで対処するという程度では、非常に対策としては消極的でないかとわれわれは考えるわけですが、こういう点については政務次官は、政府の立場で一体どういうような判断をしておりますか。
  110. 天野公義

    天野政府委員 物資が自由化されるという前提で関税を操作いたしまして、この法律の方は、一応期限が切れるそのままという措置にしたい、そういう考え方で進んでおるわけでございます。関税の方でこれを処理したいという基本的な考え方に立っているわけです。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 処理してないじゃないですか、この新旧対照表によっても。ただいま関税局長から説明もありましたが、バナナについては、六月五日から昭和三十八年の九月三十日までを期限として、現行の二〇%を五〇%に引き上げる。ところが一方特定物資の差益金吸収の方では、CIF価格に対して大体八〇%の徴収を行なうことになっているわけですね。そうなると、これは二〇%に八〇%を加えれば、局長が言った通り一〇〇%をこえるような徴収率ということになる。今回の改正によると五〇%ということになるのですからして、実質的には五〇%の差が出てくるわけですね。結局それだけ安く入ってくるということにもなるわけです。それから自由化になれば、大量に入ってくるということが予想されるわけでありますけれども、そういうことになると、今までとは事情が違ってくるわけです。だからそうなると、結局日本の果樹農業に対する思わざる影響とか圧迫というものが、急激に出てくるのじゃないか。この点を私は尋ねておるわけなんです。それで心配ないというのですか。そうなっても日本の果樹農業については、微動だもしない、影響はない、不利益はないという確信があれば、一つその点を理由をあげて述べてもらいたい。
  112. 天野公義

    天野政府委員 特定物資輸入臨時措置法によるものは、外貨の割当をやっていたわけでございまして、そういうところからも、相当利潤の幅が広がったのじゃないかと思うわけであります。今回お願いいたしておりますように、自由化になると、これはある程度入る数量もふえたり、また値も少し下がるというような面もなきにしもあらずと思うのでありますが、やはり全般の関係から、こういう措置をとっていくことがいいというふうに考えておるわけであります。果樹産業全体に対する措置といたしましては、また財政措置その他をいろいろと講じて、果樹の振興をはかっていかなければならないということは、言うまでもないところと思います。
  113. 田澤吉郎

    ○田澤委員 バナナの関税に関連して質問いたします。その前に、政務次官にお願い申し上げたいのでありますが、先ほど芳賀委員からもお話がありましたように、九〇%の自由化が行なわれてきて、それに対応する一環として、関税の引き上げ政策を行なっているわけでございますが、ヨーロッパ共同市場においては、関税を引き下げようとする行き方、またイギリスにおいても、農業を犠牲にしても関税を引き下げようとしている傾向にあるわけです。そういうあり方は、ブレトン・ウッズ協定という精神に基づいて、そういう傾向に世界的な趨勢があるわけです。ところが、日本の前近代的なこういう国内産業を維持するために、関税を引き上げていこうという、この二重構造をどういうように考えるかということをまずお答え願いたいと思います。
  114. 天野公義

    天野政府委員 欧州共同市場その他で関税を引き下げて、そしてお互いの市場を拡大していこうという世界的な傾向にあることは、おっしゃられる通りであります。日本もできるだけ早い機会に関税を引き下げて、国際的な市場の仲間入りをして、うんと伸びていかなければならないという基本的な原則はよくわかるわけでございますけれども、現時点におきまして、日本の関税を引き下げるということをいたしますと、とたんに日本産業で非常なしわ寄せを食って、苦しい場面が相当現われるようなものがあるわけでございます。そういうものにつきましては、そういう産業が成長して、国際的な競争力をできるだけ早く作るように努力し、また努力をしていただくという前提のもとに関税を引き上げまして、一定期間その産業を保護しようという考え方に立っておるわけであります。ただいまお話のありましたような農産物の面も、できるだけ関税を引き下げて、安いものをどんどん国民も食べられるようにし、また日本の産物も海外に出せるような方向に進まなければならないと思うわけでございますが、現段階では、今お願いしているような案に基づきましてやるのが適切な措置ではないか、こういうふうに考えているわけであります。
  115. 田澤吉郎

    ○田澤委員 そういう精神はよくわかるわけですが、農業基本法の成長作物としての果実、これはどうしても国内でこれを助長していかなければならない。ところがバナナの関税でございますが、五〇%の最高限度を課しておりますけれども、たとえば、私は青森ですからリンゴに例をとりますけれども、これは三百万箱出ているわけであります。他のミカンなりあるいは桃なりを合わせたならば、かなりの数になるわけでございます。この国内の果樹産業というものを伸ばすためには、今のバナナの影響というものは非常に大きいと思うわけでございます。そういうときに五〇%という関税を、国内の果樹産業を伸ばすために、これをもっと上げるとか、あるいはまた下げるとかいう弾力性があるのであるかどうかということを、一つ局長に伺っておきたいと思います。
  116. 稻益繁

    ○稻益政府委員 バナナの関税率を説定いたします際に、私どもといたしましては、これによってバナナが一応自由化されるということを前提にいたしております。その自由化された際に、いかなる関税率が妥当であろうかということを検討いたしました際に、通常の物資でありますると、国内で生産がある同種のもの、そういう場合には国内において生産されます同種の産品の国際的な競争力、国際比価というものを調べまして、これによってその後の合理化計画なりそういうものを織り込んで、適正な関税率を設定するというのが通常のやり方なんです。ところがバナナの場合には、自由化を一応予定いたしまして、その際国内のバナナというものは直接ございません。いかなる産業が、果樹が、これによって影響を受けるであろうかということを、実はいろいろ検討いたしたわけなんであります。その結果、これは何としましても、はっきりとリンゴなりあるいはミカンなり、国内では今最も多く作られております果実、こういったものといかなる価格の比率の場合に適正であるかという比価が、数字的になかなか算定が実は困難なわけだったのです。従いまして先ほども申し上げましたが、現行では関税率は二〇%でありまして、ただ外貨割当制のもとにありますために数量が限られておる。従って希少価値として輸入の差益がはっきりしておる。これが現在では約八〇%程度である。そこでこれを土台といたしますると、自由化をしない建前で参りますると、今のところ差益とそれから関税率の合計で一〇〇%ということに相なるわけなんでありますが、自由化いたしますると、いわゆる輸入の差益、希少価値からくる差益というものは相当落ちて参るわけなんであります。これがまたはたしてどの程度差益がしからば自由化した場合に落ちるか、これもやってみませんと実はなかなか算定が困難なわけです。いろいろな角度から検討いたしました結果、現行ではとりあえず関税は二〇%、差益は八〇%、合計いたしますると一〇〇%になる。従って自由化して差益が相当減るであろうと思われる。そういうことを織り込みましてなおかつあまりに急激な、そういった関税あるいは差益を合計したものと申しますか、そういうものが下がるということになりますると、おそらくリンゴなりミカンなりといったものに対する打撃もかなり深刻ではなかろうか。一面におきまして、現行の日本の関税率を申し上げますると、たばこでありますとかあるいは砂糖でありますとかは、非常に特殊な財政的な見地からとっておりますが、そういったものを除きますると、大体奢侈的なものでありましても五〇%が最高であります。酒にいたしましてもあるいは化粧品、そういうものが五〇%見当でありますが、一応五〇%が最高である。そういった観点も考慮いたしまして、とにかくこの際一応最高と思われる五〇%の関税率を設定いたしまして、それで十月に自由化する。その自由化の結果によりまして、これは私ども税率審議会におきましても五〇というのは局過ぎるのじゃないかという議論も相当出たわけであります。諸外国の例を参考までに申し上げますると、高いところ低いところかなりございます。アメリカなんか無税であります。それから西独も無税であります。フランスが二〇%、イタリアが三六%といったようなところでありまして、EECの共通関税を調べてみますと二〇%といったようなところで、私ども税率体系としまして、こういったくだもの類というものを考えまするときは、二〇%程度が妥当であろうか。しかしバナナについては先ほど申しましたような差益が非常に膨大であったといったようなこともありますので、この際はわれわれとしては五〇ぐらいの最高税率を盛りまして、そうしてとりあえず一年くらいは様子を見たらどうだろう、かような配慮の結果、実は五〇%というのが出て参ったわけであります。
  117. 田澤吉郎

    ○田澤委員 将来国内果実に影響のあった場合には、それを直す気持であるかどうか、五〇%をさらに引き上げる気持があるかどうか、その一点だけ。
  118. 稻益繁

    ○稻益政府委員 国内の果樹産業に非常に大きな打撃が出るといった事態でありますと、当然再検討いたすべきであろう、かように考えます。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 結局現在の国内の果実の価格の趨勢を見ると、外国との競争がなくて、毎年の生産の豊凶の度合い等によっても非常に価格が不安定なわけであります。また一方において現在の市場機構等が非常に原始的なために、生産者が相当の努力をしても、それが所得となって確保されない、こういう欠点があるわけです。これはすべて現在の保守党政府の行政上、政治上の無責任と貧困さに由来しておることは、その通りなのですが、今度は自由化をやり、関税と差益徴収を合わせて現行のものを半減するという二重の措置を直ちにとるということは、非常な悪影響があるということは否定できないでしょう。ですから、たとえばやるにしても段階があると思うのです。今までは関税と臨時措置法と二重で操作して、そうして国内の果実に対して圧迫を加えないような配慮が行なわれておった。今度は臨時措置法は廃止する、自由化も行なうということになると、相当急激な影響を受けると思うわけです。だから賢明な策としてやるのであれば、関税率だけでこれを処理することはもちろんできないでしょうが、その場合には、やはり関税の改正を行なって臨時措置法の方は廃止する。そうして自由化に持ち込まないで、一年とか二年その推移を十分判断して、これでもう自由化を行なっても国内果実に対して差しつかえない、その段階になってから自由化を実施してもバナナは差しつかえないと思うがどうですか。
  120. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいまのお話の中で一点、こういう問題があると思うのであります。実は特定物資輸入臨時措置法によりまして八〇%の差益が出ておると申しますのは、要するに自由化しないで外貨割当を非常にきつく締めておるものですから、その関係で、これはだんだんワクをふやしますと差益がだんだん減って参っておるのでございまして、そういった関係で、要するに自由化しないために希少価値として起こっておる差益でありまして、これは八〇%でもって国内産業を保護するといったような趣旨のものではないわけであります。そういう超過利潤と申しますか、異常な差益を吸収しよう、国庫にこれを納めさせよう、こういう意図に出ておるわけであります。従いまして、今後自由化の時期がバナナについてどうであるかということは別個の問題でありますが、一応自由化するということになりますると、これはほうっておきましても差益は非常に小さな幅におそらくなるだろうということは予想されるわけであります。そういたしますると私どもとしましては、それが幾らになるかという算定は困難でございまするので、自由化された姿において国内の果樹産業に大きな打撃を与えないようにするには、どの程度の関税が適正であろうか、かような観点から実は先ほど来申し上げましたような五〇%を設定したということであります。自由化自体は、何と申しますか、特定物資輸入臨時措置法廃止の実は前提になっておるということでございます。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことはわかっているのです。ただこの際、急激にどうしてもこれを十月までに自由化しなければならぬという必要性はないでしょう。そういう情勢は何もないじゃないですか。われわれは関税をよけい取れと言っておるのじゃないです。あなた方は関税局だから関税はなるたけよけい取りたいでしょうが、国民経済的に見れば、関税という制度の中に国民がそれを負担するということはなるたけ避けなければならぬ。しかし国内産がそれによって大きな影響を受けるということはやはり防がなければならぬというような、関税の本来の意義というものがあるわけです。だからわれわれとしては、今一番大事な時期なわけです。果樹農業なり畜産農業の発展を大いに促進しなければならぬと言ってやっておるときに、いきなり自由化になって、今度は大量にそういうものが入ってくるということになると、この影響を避けられるということはあなた方も言えないと思うのですよ。そういう配慮は、やはりこの法律制度改正する場合に十分判断をしてやってみて、悪ければまたもとへ戻すなんということは愚策だと思うのです。バナナだけに時間を費やすわけにいかぬと思いますが、一つの事例として、問題点として指摘しておくのです。ほんとうは大臣が来てくれなければ話はつかないのですけれども、これはどうですか。
  122. 天野公義

    天野政府委員 農林当局から御説明いたさせます。
  123. 枝広幹造

    枝広説明員 バナナの自由化につきましては、芳賀先生の御指摘のように、われわれも非常に考えたわけでございますが、現在の価格関係を申し上げますと、戦前に比べましてバナナ価格が非常に高くて、現在大体リンゴの約四倍になっております。ミカンの二・八倍、これは差益をとった場合でございますが、差益をとらなかった場合、八〇%の差益を差し引いた場合でも一キロ当たり百円になりまして、リンゴやミカンの大体倍以上になります。それから現在の輸入量は大体戦前の九、十の平均の三割程度でございますが、これを自由化した場合に台湾から三倍程度のものが入ってくる。そういった場合に、価格の関係についてどのくらいになるかといいますと、現在二〇%の関税で差益をとらない場合でも、キログラム当たり相当高い値段でございまして、国内産の果樹に対する影響は非常に少ないのではないかということを考えたのでございます。さらに関税を五〇%にしまして、価格の関係の推移を見て検討したいというわけでございます。それで自由化に踏み切ったわけでございますが、自由化した場合に非常に大量のものが入りまして、国内の果樹農業に非常に影響があるというような場合には、関税定率法で緊急関税の制度もございますし、外国為替管理法で緊急輸入制限をすることもできますので、そういう対策をとりたいわけであります。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林省はそういう誤った判断をしておるとすれば、それはまた後日十分論議する必要があると思うのですが、これに関連して、特定物資の臨時措置法がもう時限で失効になるということになると、この指定品目の六品目は自由化に移行するわけですが、これにあわせて、この臨時措置法成立のときの附帯決議でもって、たとえば輸入外車であるとか雑豆については、ジェトロの一種の業務として差益吸収をしてやらせておるわけですが、当然雑豆や外車の差益徴収はやらないということになるのですか。
  125. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいま御指摘の自動車でありますとか、雑豆でありますとかいうものは、今のところ一応十月からの自由化は困難な物資であるということで、自由化しない建前になっております。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 自由化しない場合も差益徴収をやらないのでしょう、この本法である臨時措置法の差益徴収をやらぬ根拠がなくなるから。この附帯決議を根拠にして、外車、雑豆等は差益徴収をやっておるわけです。その肝心な根拠が失われるから、ジェトロで何でもやれるということになれば別ですよ。当然これはやらないということになると思うのですが、どうなんですか。
  127. 稻益繁

    ○稻益政府委員 この特定物資輸入臨時措置法そのものは通産省の所管でございますが、法律のできますときにはそういう附帯決議がございまして、その趣旨を尊重いたしまして、自動車だとか雑豆について現在やっておるということでございます。現在のところ通産、農林両当局におきましても、自動車、雑豆それぞれまだ割当制度でやって参りますので、ただいまのような差益の徴収、この法律に直接根拠があるわけではございません。現在やっておりますことをおそらく続けてやって参らざるを得ないだろう、かような見通しであります。
  128. 天野公義

    天野政府委員 この間の委員会で、芳賀先生の御質問に対して、この問題についてはお答えしたところでございますが、これは特定物資輸入臨時措置法の特定物資としてやっておるわけではないわけでありまして、変則的な措置でございますが、雑豆等がガットの譲許品目であり、これを特定物資として差益を国庫に吸収することについては、ガットの規約に反するおそれがございますので、この間お答えを申し上げたような観点に立ちまして、そういう措置をとっておるわけでございます。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そうじゃないですよ。前回の委員会であなたはこれを沈み上げたでしょう。雑豆や外車の差益徴収をやっておる根拠は、これは特定物資輸入臨時措置法が成立したとき、参議院においてかかる附帯決議が付せられておるので、その附帯決議の趣旨に従ってジェトロの業務の中のその他の業務という、そういう足がかりを求めて、そして現在ジェトロが外車と雑豆については、差益徴収をやったということを、政府を代表してあんたが読み上げたのですよ。私はそれを記憶しておる。結局臨時措置法が時期が経過して廃止になった場合には、その法律に附帯された決議というものは、おのずからこれは消滅するわけですね。そうなれば附帯決議を根拠にして、ジェトロ差益吸収をやらす、そういうことはできなくなる。ただ問題はジェトロの事業として外貨割当を行なう、非常に利益の多い物資についてはジェトロの当然の業務として、今後任意にこれを選定してやる、そういう方針であればこれは別であるが、今まではそうではなかったわけです。これはむずかしければ通産大臣が来てからでもよろしいです。きょうに限ったことじゃないですから……。
  130. 天野公義

    天野政府委員 この間御答弁申し上げた中で、今のことについてもう一ぺん申し上げますと、先ほど申し上げましたように、「特定物資輸入臨時措置法の特定物資といたしまして、同法の規定によって国庫納付をさせる筋合いのものであるわけでありますが、」というのは、差益をとるという建前からすると、そういうのでやるのが筋合いでありますけれども、そういう意味合いでありますけれども、「雑豆がガットの譲許品目であり、これを特定物資として差益を国庫に吸収することは、ガットの規約に反するおそれがあるわけでございますので、そういうような措置をとったわけでございます。」というのは、ジェトロの方でそういう措置をとったわけであります。「そこで法的にいいましても、ジェトロの日本貿易振興会法の第二十一条の第八号に「前各号に掲げるもののほか、第一条の目的を達成するため必要な業務」その次に2といたしまして、「振興会は、前項第八号に掲げる業務を行おうとするときは、通商産業大臣の認可を受けなければならない。」というようなことに基づいて、こういうことをやっている」こういうふうに申し上げておるわけでございまして、特定物資臨時措置法でこれをやっているというわけではないわけであります。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはわかっているのですよ。それは協定物資の指定品目であるということはわかっているのです。それ以外の臨時措置法で指定しないで、ジェトロから差益吸収をやらしておる外車と雑豆については、差益吸収をやられるのだという根拠は、臨時措置法の附帯決議に基づいてやっているということを政府が主張しておるのですよ。われわれ野党がそう言っているというのではなくて、政府のあなた方がそう言うから、なるほどそうやっているのかというふうに理解しておるのだが、それでは今までの政府説明はすべて間違いだったわけですね。これは通産省も来ておるが、一体どうなのです。ジェトロ本来の事業としてこれは今後もやるというのであるか伺いたい。
  132. 天野公義

    天野政府委員 芳賀委員のおっしゃいますように、附帯決議の精神を尊重して、そういう措置をとったわけでございます。それで臨時措置法がなくなりましても、そういう基本的な考え方は当然尊重してよいと思うわけであります。従ってそういう措置を今後もとるわけでございます。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこの附帯決議を参考までに読み上げてみると、「政府は本法」、これは臨時措置法をさすわけです。「本法第一条の政令を定める場合においては、一定の基準を設けこれに該当する物資は通商協定等による特別の事情あるものを除き必ずこれを指定するよう措置すること。なお通商協定等による特別の事情のあるものについても、一部の者に不当なる利益を与えざるよう適宜の措置を講ずること。」ですからこの前段は、現在措置法で指定しておるような品目は前段の趣旨に基づいて指定しているわけですね、バナナとかパイ・カンとか腕時計とか。それから後段の方はガットの協定とかそういう国際的な事情のあるものについても、やはりこれは不当の利益を取り扱い業者に与えているという場合には、適宜な処置を講じなさい。後段のこの趣旨に基づいてガットがやっているということになるわです。それで一番肝心な臨時措置法はもう要らない、必要がないということで、これは廃止するわけですね。必要があれば年限を延長するということは国会の改正幾らでもできるわけですから、政府の判断はこういうものはもう必要がなくなったという場合に、付帯決議だけ必要があるということにはならぬのです。これは大事な問題ですから、政府の見解を十分整理して、たとえば通産大臣からでもいいですから当委員会で明らかに、臨時措置法が消滅した後におけるガットの差益吸収の取り扱い品目等についてはいかなる措置をするかということについては、これは後刻でいいですから政府の見解をまとめて、佐藤通産大臣から当委員会へ答弁してもらうよう、これは委員長にお計らい願います。
  134. 天野公義

    天野政府委員 ただいまの問題は主体は大体通産省でございます。御説のように政府の見解を統一いたしまして、次の機会に申し上げさしていただきたいと思います。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、石油関税の問題ですが、これは昨年以来石炭政策転換の問題等について、国会でも相当重点的に施策を進めておるわけです。特に昨年の臨時国会においては、各党一致の国会決議さえも行なっておる事情でありますが、そういう対策の一環として、方向としては石油関税については相当程度の引き上げを行なって、その石油の関税収入については政府はこれを石炭対策のために用うべきである、こういう方針になっておるわけですが、今度の改正案を見ると、単に関税の暫定措置法の軽減率だけを排除して、定率の本義に戻すというだけの改正では、これはやったことにもならぬと思うのです。せっかくやるのであれば、相当積極的に暫定措置法からはずすことはもちろん当然ですが、定率法の中においても、この趣旨を十分尊重いたしまして、国会の決議の趣旨等をも尊重して、政府改正案というものを作るべきでなかったかと思うわけですが、この点はいかがですか。
  136. 稻益繁

    ○稻益政府委員 御説のように石炭産業の保護という観点のみに立つということになりますと、関税率の引き上げも相当高くなければならないわけでございます。ただ一方におきまして、石油、重油といったものがエネルギー源としまして、非常に重要な地位を占めておるわけであります。従いましてこの関税を相当大幅に引き上げるということになりますと、いろいろな廃業のコストに影響するところが非常に大きいわけであります。従いまして一面の要請としましては、こういったエネルギーを使う側、たとえば鉄鋼、電力を初め、もろもろの産業がございますが、需要者側としましては、むしろこういうものは無税にしてくれという強い要請があるわけであります。ただ石炭産業の現状といいますか、非常に芳しい事態になっておる。これをいろいろな措置で対策を講じて参るということになりますると、その一環として関税も引き上げてしかるべきではなかろうか、こういった観点から実は関税問題が取り上げられたわけであります。従いまして私どもとしましては、一方で無税にしてほしいという非常に強い要請があります際に、これを引き上げるわけでありますので石油と重油との価格の開きというものを、メリット換算したあとでの価格の開きというものをできるだけ近づけまして、なお足らざる点はいろいろな財政措置なりその他の措置をとって、極力石炭廃業の保護をはかりたい、かような考えで、実は暫定措置法で重油が約六%、従量税で昨年キロリットル当たり三百二十円ということにいたしておりますが、これを撤廃いたしまして、確定税率でありますので一〇%相当の五百三十円まで戻したい。これによりまして石炭と重油との価格差がぴったり埋まるということはとうてい考えられません。ただ少しでもそれを近づけまして、両方の要請がございますので、石炭産業の要請と、一方エネルギーを使う側の要請、これを何と申しますか、両々勘案いたしまして一〇%の特定税率に戻した、かような次第でございます。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 理論的に言えば、局長の言われたようなことなんです。総合的なエネルギー資源を、低廉なエネルギー資源を確保するということが、近代産業を進める大きな原効力ということは言うまでもないが、しかし現在の石炭産業の置かれた窮状というものは、やはり度外視することはできないと思うのです。しかも歴史的には石炭エネルギーによって、今まで日本の産業というものが大きく伸びてきておる。今度は外国の重油が非常に安い価格で入ってくるから、もう石炭はどうなってもかまわぬ。貧欲な企業者や資本家としてはやはりそういう考えを持つであろうが、しかし国として政府としてまじめに考えた場合には、そういう資本家だけの貧欲な考え方だけに偏するということはいけないと思うのです。だから、石炭合理化の計画を見ても、たとえば十一万人の首切りを行なうとか、石炭コストをトン当たり千三百円引き下げるとか、これは容易ならぬことなんです。ですから一番石炭産業を圧迫している大きな原因というものは、やはり重油による圧迫だと思うわけです。だから、重油を使った方が企業的には非常に利益も上がるわけですからして、重油の関税だけを無税にしろとか、安くしてもらうようにしなければいかぬということでなしに、そういう有利なエネルギー資源が輸入され、その影響を受けた犠牲産業については、長期的ではないが、一定の期間に石炭産業が立ち直りを示すまでの間は、やはり保護政策の一環として石油関税等に対しては、この際相当積極的な配慮を加えるということは当然なことなんです。こういうところがやられていないわけです。これは関税局長の責任ではないが、今の政府の考え方も曲がっておるのです。間違っているからそういう案が出てくるのですが、こういうことについては政務次官はどう考えるのですか。関税をよけい取ればいいと思っていながら、この石油関税だけはあまり取らないというのはどういうわけですか。
  138. 天野公義

    天野政府委員 先ほど関税局長が申し上げましたように、石炭産業をできるだけ保護をしなければならないという観点に立ちまして、石油関税を上げたようなわけでございます。そしてそれと見合いました、たしか五十億と記憶しておりますが、それを石炭産業のいろいろな施策の方に投入するような措置も講じておるわけでございます。今後におきましても、石炭産業の保護という面は一面考えていかなければならないし、また二面エネルギーという面から考えまして、できるだけ安い方がいいことも当然考えられるわけでございまして、そのバランスを見合いながらこの問題を処理していきたい。そして石炭産業も立ち直れるように、そしてエネルギーをできるだけ安いような方向にいろいろと指導していかなければならない、そういう考え方でこれを処置していくつもりであります。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかも今度の改正案によると、この引き上げ措置の中で、鉄鋼、電力用の重油関税については、大体三十七年度で十一億の還元をする、そういうことになっておるわけです。そういう一番大切な基幹産業の面に対しては、関税の還付さえも行なうということにするのであれば、やはり関税率というものは、この際たとえば長期的でなくても、相当程度政府案よりも引き上げるということが妥当ではないかと思うのです。しかも今次官が言われた通り、三十七年度わずか五十億円でしょう。平年度で五十七億円程度の収入しかこれはないわけです。それを向けるということですが、これは少なくとも百億円をこえるそういう関税の増収額等を確保して、石炭対策の方に向けるのが至当であるというふうに私たちは考えるわけですが、その点はどう思うのですか。これで十分だ、これだけで石炭対策は十分やれる、そういう確信があるのですか。
  140. 天野公義

    天野政府委員 石炭産業に五十億といいますのは、今度ふやした分だけでございまして、合わせますともっとたくさんの金が行っているわけでございます。しかしながら今後におきましても石炭産業が立ち直れるようにこの関税の見合いで、財政資金を投入するばかりでなくて、その他いろいろな施策が講ぜられておりますし、今後も講じていかなければならないわけでございます。この石油関税との関連において考える場合には、いろいろ総合的に考えて処理しなければならない問題でありまして、この関税の分だけ石炭にというような考え方では、ちょっと処理できないわけでございます。いろいろな面で考えていかなければならないと思います。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、今回の関税定率法改正によって、ガットの協定に基づいて譲許表の修正をするような必要も出てくると思うわけですが、予定される品目はどういうものになっておるか、あるいは今回の改正の場合にはその必要がはたしてないのか、その点はどうか。
  142. 稻益繁

    ○稻益政府委員 今回の改正によりまして、ガットの譲許税率を修正ないし撤回する必要のある物資は、一応私どもの方で現在予定しておりますものを申し上げますと、パインナップルのカン詰、それから石膏、モリブデン鉱、アンチモン鉱、それからしんちゅう、青銅の管、絶縁電線、今回の関税率改定に伴って再交渉の必要のある物資は、以上の通りであります。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この場合相手国は大体どこになりますか。
  144. 稻益繁

    ○稻益政府委員 大部分が米国でありまして、一部ドイツ、それからアンチモン鉱のようなペルーといったものがございますが、大部分は米国でございます。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ただいま説明のありました譲許品目等については、たとえば国内法で関税率を引き上げても、譲許の交渉によってそれが実現できないということに、これは今までもしばしばなっているわけです。これに関連して一つ指摘しておきたい点は、昨年関税定率法の全面改正が行なわれたわけですが、それによってこの譲許税率の修正も相当大幅に行なわれたわけです。その中の一つに輸入大豆、これは自由化との問題にからんで、われわれもたとえば大蔵委員会と農林委員会が連合審査をした経緯もありますが、この定率法によると、大豆についてはこれは従量制でキロ四円八十銭ということになっているわけです。現在はそれはどういうことになっておりますか。譲許税率によると一三%ということになっておりますが、これは輸入価格の変動によって、従量税をとる場合と従価税をとる場合と運営上あり得るわけですが、最近はどっちを採用してやっておるか、伺いたい。
  146. 稻益繁

    ○稻益政府委員 本来特定税率を従量税率に改めましたのは、先行きだいぶ大臣の国際相場が下がりそうだということで、国産大豆を少しでも保護したいという趣旨から、従量税に改定いたしたわけであります。ところがガット税率を改定する交渉の際に、アメリカとしましてはどうしても従価税でなければ困るということございまして、こちらとしましても御承知のように相当物資の代償を出さなければなりませんので、代償に十分な手当も非常に困難な情勢でございましたので、終局的には一三%の従価税ということで妥結をいたしたわけであります。その後、中共の不作等が原因だと思うのでありますが、大豆がずっと値上がりしておりまして、実際の実効税率は現在では従量税率の方が適用されておる、かような状態であります。従いまして国際価格が相当下がって参りますと、逆に一三%の従価税率の方が安い税率になる、そこでそれが実効税率になる、かようになって参ろうかと思います。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで大豆の自由化が行なわれたのは昨年の七月一日ですが、自由化後の輸入大豆の通関実績はどういうような趨勢をたどっておるか。それから輸入価格、たとえばCIF価格たとえば価格は最近どういうような動向を示しておるか。その点について今説明ができれば説明してもらいたい。
  148. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ちょっとただいま御質問の点、こちらで資料がございませんので、後刻作成いたしましてお手元に提出いたします。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではあとでそれは提出してもらえばいいです。  そこでこれは大蔵省の主計局の所管と思いますが、だれか来ていますか。――その点は政務次官にまずお尋ねしますが、昨年大豆の関税定率の改正が行なわれ、その後自由化が行なわれたわけですが、自由化による国内産大豆の圧迫を排除するために、大豆なたね交付金法というものが成立して、これは今実施中でありますが、この交付金法ができる前――昨年の国会においても問題になった点ですが、三十五年に生産された国内生産大豆について、法律によらないで、行政措置として交付金を交付するという方針で、予算が成立しておるわけです。ところが三十五年産の大豆について、現在においてもまだ国から交付金が交付されておらない。ですから、関係農民としては、どういうわけで交付金がいまだに交付されないかということで、非常に不信感が高まっておるわけです。こういう事情については、農林省並びに大蔵省の主計局当局が一番よくわかっておるのですが、一体三十六年度の予算で三十億円も確保しておきながら、全然交付金の支出をしていない。農林省がしていないのか、大蔵省が交付をさせないで置いておくのか、こういう点に対しては率直な答弁をいただきたい。
  150. 天野公義

    天野政府委員 ただいまの点につきましては、当方と農林省といろいろ話を詰めておるわけでございます。そのうちに結論が出ると思います。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 冗談じゃないですよ。私にそんな答弁は通らぬですよ。一年も一年半もかかってどこが煮詰まらぬところなんです。
  152. 天野公義

    天野政府委員 技術的にまたいろいろな面で話を詰めておるわけでございます。そうおそくないときに結論が出るように思っております。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀委員 では天野さん、その事情わかっているのですか。政務次官、そういう事情がわかっておって、もう少しで煮詰まるとか煮詰まらぬとか言っておるのか、わからないでただそう言っているのか、どうなんです。
  154. 天野公義

    天野政府委員 こまかい点まで知っているわけではございませんけれども、アウトラインを聞いているところによりますと、こまかい技術的な面やいろいろありますので、そういう話し合いを今詰めている段階でございます。そのうちに結論が出ると思います。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたに答えてもらうのは突然だからちょっと無理ですが、事務当局からでもいいです。
  156. 天野公義

    天野政府委員 こまかい点は後刻担当官が来て御説明申し上げます。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これはこまかい点じゃないですよ。昨年農林大臣周東さんと大蔵大臣の水田さんとそれから外務大臣の小坂さんと三人が出席して、関税の問題とこの譲許の問題とあわせて、国産大豆については自由化に備えてこういうような方針で進みます。これは細目にわたって委員会で言明しておる点ですから、それ以外にこまかい点というのはないのです。ただ交付金をわれわれが予算を認めておきながら、三十六年度予算で予算が十分確保されておるのを、いまだに支出していないわけなのです。これは農林省が支出しないのか、大蔵当局が支出させないのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  158. 天野公義

    天野政府委員 こまかい点と申し上げましたのは、大豆の問題がこまかい点だというわけではないので、大豆の問題が大きな問題であるということは承知しております。そのいろいろな各省間の折衝であるとか、今どういうふうになっているとか、具体的な詳細な経緯につきましては、後刻担当官から申し上げます。こういう意味です。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは委員長、主計局長を呼んでおいてもらいたいと思います。その出席を待って大豆問題を尋ねたいと思います。  次にお尋ねしたい点は、関税の暫定措置法の改正の問題についてです。今回の改正の中にも、いわゆる第二条の重要機械の指定については、さらに一年間延長するということになっておりますが、この重要機械の政令による指定あるいは削除とかいう作業というものは、何を基準にして判断して追加したりあるいは削除したりするか。重要機械の重要度に対する認定の基準というものは、今まで当局としてどういう方法でやっておりますか。
  160. 稻益繁

    ○稻益政府委員 暫定措置法で一年ずつ延長して参っておるのでありますが、大体これを実施いたします際の政令は年二回ほど改正しております。と申しますのは、従来外貨予算が年二回に分かれております。これに基づきまして大部分機械外貨割当を受けまして、その際に外貨の割当を受けました輸入業者の方から、重要機械免税該当と申しますか、そういう申請が出て参るわけであります。私どもとしましては、この法律の趣旨にございますように「国民経済の健全な発展に資するため」ということであります。従いましてその詳細な点は「国民経済の健全な発展に資するため設備の緊急な近代化を必要とする事業又は特に育成を必要とする事業で政令で定めるものの用に供される機械類のうち、次に掲げるもの」ということで、「新式又は高性能の産業用機械類で、本邦において製作することが困難であること。」第二は「事業の主要な作業工程において欠くことができないものであること。」これが基本的な認定の基準でございます。従いまして具体的な機械につきまして、いろいろ詳細な資料の御提出をいただきまして、こういう観点からはたして免税が妥当であるかどうか。特に最近問題になりますのは、国産がかなり進んで参っておりますので、国産業者につきましてもメーカーから詳細な資料をいろいろとりまして、国産が可能であるかどうかの認定をいたしておるような次第であります。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今説明がありましたが、この重要機械の指定は来年まで一年限りですが、最近の国産機械の性能とか生産の実情というものは、将来大体大まかに何年くらい先にいけば、主要な生産機械についても国内で間に合うという段階になるのか、なかなかそういうことにならぬとか、判断はあると思うのですが、いかがですか。
  162. 稻益繁

    ○稻益政府委員 本来は一年限りの暫定措置を、実は相当期間ずっと延長して参っておるわけであります。当初のこの法律を作ります際の趣旨から申し上げますと、非常にこういった機械類の技術水準が劣っておるというようなことで、追いつくまでにはかなりある期間は必要であろうということは実は想像されたわけでありますが、何分にもかなり急速に国内のそういった技術のレベルも上がって参っておりますし、輸入される機械につきましてもいろいろ変わって参っておるわけであります。従いましてこれをたとえば二年あるいは三年後には、完全にこういうものの技術水準が追いつきまして、免税の必要がないという時代が必ずくるかどうかということになりますと、これはまた海外での技術の進歩が非常に激しいものであります。従いましてなかなかその差が詰まらないというようなことで、逐次整理はいたして参っておりますが、現在でもまだかなり重要機械の指定をせざるを得ないというような状態になっておるわけであります。今後これが何年くらいはたして必要であろうかという点、これを期間的に区切って考えるということは実ははなはだ困難な情勢でございまして、とりあえずは従来通り一年限りのものという形で延長をお願いして参りたい、かように考えております。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第二条の目的の中にもうたわれておるのですが、国民経済に寄与するという、そういう目的をこれにしょわせているわけですね。一体従来の経緯から見て、こういう重要機械免税が行なわれた、免税機械が導入されて、それで相当量産も行なわれるし、コストも逓減している、そういう結果というものは一体国民生活、国民経済の面に、ほんとうに寄与しておるかおらぬか。単にそれが企業者の利潤としてただ確保されることに終わったということになると、この制度というものは問題があると思いますので、その判断はむずかしいと思うが、貢献しているのですか。寄与しているのですか。
  164. 稻益繁

    ○稻益政府委員 私どもとしましては十分そういった国民経済の発展に寄与いたしておる、かように考えております。
  165. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでこれは政令によって指定することになるわけですが、先般新聞に、政令で新たに指定するものとか、削除する内容等がちょっと出ておりましたが、この法律が成立すれば、指定する機械の品目はもうすでに当局において最終的な案が用意されておるのかどうか。あるいはこれが通ってから十分慎重な検討を行なって指定をやるのか、その点はどうなっているのですか。
  166. 稻益繁

    ○稻益政府委員 先ほど申し上げましたように、年二回ということで一応政令で改正いたしておるわけであります。ごく最近のものは、実は若干作業が遅延いたしまして、ついせんだって三月に入りまして政令を改正いたしました。実はこれは年度内に入るものというのが、本来は法律に忠実にやるということになりますると、法律は一応この三月末まででございますので、三月末までに入るような予定のものというのを重点的に取り上げているわけであります。ただ何分にも外国に発注しておる機械のことでもありまするので、場合によりましてこの法律がもし延長が遮らないということになりますと、今度一応政令の中で指定いたしたようなものが四月になって入って参った場合に非常に困る、混乱するという事態も起こって参ろうか、かように考えております。私どもとしましても、できるだけ一つ申請も早く出していただいて、そうして年度内に済むものをもっと早目に政令で指定いたしたい、かように考えております。今回またこの延長の法律が幸いに法律になりました場合には、私どもとしましては、また四月以降できるだけ早い機会に、新しい申請に対しまする検討を進めまして、できるだけ早い機会に政令の改定を行ないたい、かように考えております。
  167. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この種以外の関税の定率あるいは国内の税法による、たとえば物品税等においても、その品目が全部法律の中にうたわれて、この物品や品目に対してはこうするということが税制上現われてくるが、この重要機械の点については、もうすべて事務当局にまかしてあるわけですね。だから本来からいえば、こういう法案の改正とか審議の場合は、やはり政府の立場から内容はこうである、これが通った場合にはどういうような政令案を実は用意しておる、そうした資料というものは、こちらから要求がなくともこの委員会に提示して、そうして参考資料として審議を促進するための利便に供したらいいではないか、それが当然であるとわれわれは考えておるのですが、この点はいかがですか。
  168. 稻益繁

    ○稻益政府委員 実は本来でありますと、前にはっきり法律に書くことができますると一番いいわけでありまするが、何分にもどういう機械が入って参りますか、具体的なそのときになりませんと実ははっきりしないわけであります。従いましてこういった大きな基準を設けておるということでありまして、また御審議をいただく際にそういった、具体的に政令でどのようなものを取り上げたか、非常に具体的な個個の機械部分的なものを指定しているわけでございまして、本来はお出しして御審議をいただくべきであろうと存じますが、おくればせながらさっそく用意してお手元に差し上げたい、かように存じます。ただ今後一年延長された場合に、四月以降においてどういうものを予定しているかという点は、まだいろいろ申請が出ておりませんので、従来の実績につきましてお手元に差し上げたい、かように思います。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は委員長から資料の提供を求めて、各委員に配付せられた方がいいかと思います。  次にお尋ねしたい点は、これに関連がある点ですが、最近農業の近代化あるいは共同化を促進するために、機械化が非常に進んでおるわけであります。また国会においても農業機械化促進法が、これと直接の関係はないが、現在農林委員会等において審議中であります。従って暫定措置法においても、営農用の輸入トラクター等については、従来一部この法律適用を受けておるものがあるわけですが、こういうものについては従来通りの扱いを続けていく考えであるか、これを削除する考えであるか、その点はどう考えておられますか。
  170. 稻益繁

    ○稻益政府委員 営農用のトラクター等につきましては、従来とも政令で指定をいたしております。ただその範囲につきまして、先ほど申し上げましたように法律でも、本邦において製作することが困難であることという基準がございますので、本邦のメーカーである程度国産化されておりますものは、逐次これを除いて参るということでやって参ったわけでございます。過去数回にわたりましてそういった意味での整理をいたしまして、ついせんだっての、三月六日でありますか、施行いたしました政令によりますと、従来のものを若干幅を狭めまして、国産可能と思われますいわゆるトラクターでも、馬力で申し上げますと、従来十八・五馬力未満のものというものは国産化されておりました。最近では二十馬力未満のものが国産化されておる。それから逆に五十馬力以上のものになりますとまた国産化されておる。そういう事態も判明いたしましたので、そういった国産化されたものを除外するということで、現実には二十馬力から五十馬力までのもの、これを前回の政令では指定しておるような次第でございます。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀委員 トラクター等についても、国産で十分性能が高度のものであれば、何も無理に免税措置で輸入しなければならぬということもないわけですが、われわれの経験からいうと、営農用のトラクター等について国産と輸入を比較すると、まだ非常に性能が違う。耐久力が違う。ですから農業経営上、この法律が従来営農用のトラクター等に適用されておったということは、農業の生産者の立場から見ると非常に歓迎されておる点なんですね。こういうものぐらいで、たくさんないですわけですから。まあ関連としては配合飼料とか、あるいは製粉施設であるとか、あるいはてん菜糖の製造機械であるとか、マッシュ・ポテトとか、いろいろありますが、農家が直接恩恵を受けるというものになれば、トラクターしかないと思うのです。もちろん国産の奨励とか育成というものも大事でありますが、現在農業の発展、特に機械化を中心に進めるという、これも大事な時期ですから、そういうような農業の置かれた事情というものを十分判断して、今後の運営のためにも消極的にならぬように、こういう点は積極的でも私は反対しませんから十分これは検討していく必要があるのじゃないか、そういうふうに考えるわけですが、その点はいかがですか。
  172. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいま芳賀先生仰せの通りだと存じます。今後も十分そういった点を検討いたしまして、私どもとしても国産化されないものにつきましては十分――特に農業方面につきましては、こういった免税措置の恩典が少ないという点もございますし、十分慎重に配慮をいたしたい、かように考えております。
  173. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、この改正には出ておりませんが、たとえば砂糖関税等については、これはしばしば貿易の自由化等の声が、政府部内から実は出ておったこともあるのです。砂糖の自由化並びにその関税問題等については、現在内部で全く検討していないのか、検討しておるのか、そういう点について……。
  174. 稻益繁

    ○稻益政府委員 かつて、昨年でありましたか、一応自由化を前提にして関税を改定するということを、部内で検討いたしたことはございますが、その後その問題は、自由化も関税率の検討も取りやめということになっておりまして、現在は全然検討いたしておりません。
  175. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは局長の立場から、私見でもかまわぬのでありますが、一昨年の秋、関税六%引き上げをして自由化を進めるという方針が、南条農林大臣か周東農林大臣か、そのころの時代ですね、われわれの承知しておるところは。この点は非常に大事な点であって、たとえば国内の甘味資源の育成の上から見ると、現在の輸入糖の買い入れ価格とか、関税の現行率、これをもってしては、国内のたとえはてん菜糖等が、市場において相当不利な立場に置かれておるわけです。てん菜糖が不利で輸入糖が有利だということは、その間に相当大幅な超過利潤をあげておるということが実証されたわけですね。この利潤追求を放置しておいて、関税も検討しないということになると、長期的に精製糖業者に多額な利潤を与えることを政府が容認して、国産糖の生産の増強を阻止するという結果が生じてくるわけなんですけれども、これはやはり真剣に考える必要があると思うのですが、政務次官、それは検討したことはあるのですか。
  176. 天野公義

    天野政府委員 先ほど関税局長が申し上げた通りでございます。また私の方といたしましても、これは今後研究していかなければならない大きな問題だと思います。
  177. 芳賀貢

    ○芳賀委員 具体的な答弁がなければないでいいです。それで昭和三十四年に、砂糖の関税の引き上げと消費税の引き下げを同町にやったわけですね、そういう経過があるわけです。大蔵委員会でこれはやったわけです。そのときに国内における、たとえば精製糖の上白糖とてん菜糖の標準卸売価格というものを、一キロ百二十一円六十七銭ということにきめてあるわけですね。その場合の基準となるものは、結局ニューヨークにおける砂糖の相場、それから輸入価格ですね、CIF価格、そういうものの平均価を求めて、そうして押えて、そうして国内のてん菜糖と輸入糖の標準価格というものは、大体キロ当たり百二十一円何がしが妥当であるということで、関税及び砂糖消費税の改正を行なったわけです。ところが今になると、この輸入価格も非常に変わっておるわけです。当時の輸入価格よりも相当下回っておるわけです。当時は三セント四五くらいのニューヨーク相場であったのが、現在は大体一セントくらい価格が下回っておるわけです。ですから、輸入価格が大幅に下回って、標準価格だけ据え置きということになると、結局その差額というものは国民には均霑しないで、特定の業者だけが利潤を占めておる。大体トン当たり一万円ぐらいの超過利潤があがっている。そうなると百二十万トン輸入すれば、百二十億という超過利潤を認めておるということになるわけです。これを是正するためには、やはりこの際関税の面において検討するか、あるいは関税、消費税の操作によってこういう弊害を除去するか、あるいは関税だけではもうこれ以上やれぬとすれば、何らかの恒久的な納付金制度等を設けて、これを処理していくという必要性はあるわけです。こういう事情というものは政府が一番わかっているのですよ。わかっておりながら、承知しておりながら、今回のこの関税の改正等についても、あるいはこの超過利潤の吸収措置等についても、何ら砂糖問題というものは取り上げていない。一体どこに取り上げない理由というのがあるのですか。
  178. 稻益繁

    ○稻益政府委員 関税で措置しないかというお尋ねの点につきまして私はお答えを申し上げますが、お説のように実は国際糖価が、かつて今の国内の糖価ベース百二十一円六十七銭、これを決定いたしましたときから見ますと、非常に大幅に下落いたしておるわけであります。ただあの際に計算いたしましたところの根拠であります国内のいわゆる砂糖メーカーのいろいろな経費と申しますか、コストの面も変わって参っております。従いましてニューヨーク相場、三セント四五がぴったり今でも合うということではないわけなんでありまして、一面国際糖価が非常に下落いたしておりますか、これが将来とも続くものであるかどうか、この見通しが実は非常に困難なわけでございます。これがずっと将来とも続くような相場であるということになりますると、お説のようにこれは関税である程度考えるべきではないか、かように実は私ども考えておるわけなんでありますが、何分にもこの糖価べース、国際糖価がどういうふうに動くかという点の見通しが実ははっきりいたしませんために、関税としては、そういう措置をこの時期におきまして、関税の操作でそれをやるということがいかがであろうか、かような考えを持っておるわけでございます。その国際糖価が下がっておりますために起こりますいわゆる超過利潤と申しますか、そういったものの措置は、別途考慮されるしかないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  179. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは政策上の問題ですから、また別な機会に論議したいと思います。  先ほど保留にしておった問題ですが、相沢主計官が出席されましたのでお尋ねいたしますが、昭和三十五年産の大豆に対する国の交付金がいまだに交付されておらないのです。それで先ほど政務次官にも尋ねたのですが、これは農林省が交付しないのか、大蔵省が交付させないのか、その事情がどこにあるのかということをお尋ねしているわけです。これに対して答弁を願います。
  180. 相沢英之

    ○相沢説明員 御案内の通り大豆輸入の自由化対策としまして、国産の大豆、菜種に対する保護措置をするということにきめまして、三十五年産の大豆がその第一回の例になるわけでございます。そこで、これはそう申してはなんでございますが、取り扱い団体の事務能力の点もございまして、三十五年産の大豆を売れ切りましたのが八月でありますが、その計算がまとまったのが十二月ごろになっております。当初当方に農林省から話がございましたのは、従って年が明けてからということになりまして、現在まで交付金の交付がおくれておりまして、農家の方に御迷惑をかけておる点は遺憾に思いますが、問題は、事務的な細部につきまして農林省と当方と若干見解を異にする点があって、それを詰めている段階であります。もうことしもあまり日がございませんので、早急に農林省と話をきめたい、こういうふうに思っております。
  181. 芳賀貢

    ○芳賀委員 農林省と大蔵省の方の事務的な話し合いが完全につかないという、残された問題というものは一体どこにあるのですか。
  182. 相沢英之

    ○相沢説明員 その一番大きな問題は、その中でも大きな問題は、結局一俵三千二百円というものを保証する、それから作り加工費の百五十円を別途団体の流通加工経費として見る。この点については農林省の方にも私の方にも別に見解の差はないわけですが、ただその一俵とは何か。作り加工する前の規の一の一俵か、作り加工後の規の二の一俵か。俵数にしまして六%程度違うという数字があがっておりますけれども、その点が一つ問題点である。  それから例の大豆なたね交付金法案を作りました際における交付金の対象数量としての一俵は、これはあくまで全販が買って販売しました一俵になっております。ですから法律の解釈としましては、それは規の二を基準とするというふうに考えざるを得ないわけであります。ところが農家手取り一俵三千二百円を保証するというお話がありまして、その農家手取り一俵三千二百円とは規の二の一俵をいうのか、規の一の一俵をいうのかという点について、意見が分かれたのであります。私ども法案を作りました経緯におきましても、農林省と大体規の二でやるということに見解は一致しておったわけでありますけれども、その点、農家手取りが減るといったような関係がありまして、意見が合わないということが一つございます。  それからもう一つは、この調整保管をいたしておりました全敗の流通経費の問題でございますが、これには加工費、それから手数料、保管料、金利、運賃その他がございますが、遺憾ながら、たとえば運賃その他にいたしましても、実際にどの程度かかったかという実績がつかめないわけであります。それから金利にいたしましても、どの程度かかったかということもつかめていない。これは建前としましては、あくまでも調整保管団体に対して、実際にかかった経費を基準にして定めた金額を交付することになっております。従いまして実績が明らかになりませんと、交付金の額が算定できないわけであります。そういった点について、農林省を通じまして全販にも資料を求めているわけでありますけれども、いまだ何ら資料の提出がないといったような状況でありまして、私どもとしましても正直に申しまして困っているわけであります。
  183. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは問題を整理しますが、三十五年産については、いわゆる生産者手取り価格という原則の上に立って、生産者に対して六十キロ一俵三千二百円に達するように交付金を支出する、それから規の二については、加工経費として百五十円それに加算することにするわけですね。それはもう完全に了解ができたということなんですか。
  184. 相沢英之

    ○相沢説明員 問題は、その農家手取り一表とはどの一俵をいうかということであります。その法律を作りました際には、とにかく交付金の対象数量は、あくまでも全敗が売った、従いまして買った数量になっております。規の一と焼の二の差は、これは私が申し上げるまでもなく御案内かと思いますが、結局商品として流通する形が、規の二になっております。そこで規の一から規の二に至る一側に、七%ないし一〇%のくず豆とかごみとかいうものが出るわけであります。私どもの見解といたしましては、そういったくずやごみまで三千二百円で渡すというふうに法律はできていないという解釈を従来とっておったわけであります。
  185. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは昨年もいろいろ議論した問題ですが、結局は生産者手取りということ、これは政府が言い出したわけですから、生産者手取り、ということは、生産者の庭先価格一俵三千二百円ということを歴代の農林大臣が宣伝してしまったのですね。私たちがそうせいと言ったのではなくて、政府自身がそういう宣伝を行なったものですから、それでは今相沢さんの言った通り、どの一俵に対して三千二百円を保証するかということに、事務当局の議論はそこへ行ったわけです。それで結局こういう表現でおさまったと私は確認しているのです。農家が大豆を生産してみずからの手でそれを選別して、検査法に基づく包装をして、そうして食糧事務所で生産検査を受けて、そして売り渡したそのもの、その姿の大豆ということにこれは落ちついたわけです。そうなると、それは大部分が規格の一ということになるのですね。それを今度は農協とかあるいは雑穀業者が生産者から買い受けて、そうしてもう一回改装して、今度は荷姿の変わったものにして販売をする、そういう加工費をかけても、その方が取り扱い業者は利益を得るからそういうことをあえてやるわけであって、それは生産者の意思でそうしたということではないわけですね。これはだれにもわかりやすい単純な表現で、そういうことでいくべきであるというふうに、これはもうおさまっておるというふうにわれわれは信じて、これは三十五年の扱い、三十六年は交付金法が成立したことによって、三十六年の大豆、それから三十七年以降の菜種の適用ということになるのですが、どの大豆か、どの菜種かということになると、やはり生産者が生産してみずから選別、包装して検査を受けて販売するもの、あるいは委託販売するものということになるのであって、この出発点には何も議論は残っていないというふうに考えてくると、交付金法ができてから今度は一が二になるとうら変化が生ずる理由もわれわれは認める余地がないのですけれども、そういうことなんですか、どうですか。
  186. 相沢英之

    ○相沢説明員 三十五年産の大豆につきまして、農家手取り一俵三千二百円ということを保証するということを、歴代の農林大臣が言われましたこと、それは私も十分承知しております。それでそのことも一つ根拠になり、かつまた昭和三十一年から三年までの三カ年間における農家の経済調査によるところの平均の販売価格が三千二百円であるということも根拠になりまして、一俵当たり三千二百円ということになったというふうに承知しております。その際に農家手取り一俵三千二百円というのは、これは何といいますか、ごく通俗的な言葉でいわれておりますので、そうこまかい点まで、規の一か二かという点まで詰めた話では、実はなかったわけでございます。そこで私どもの法案を作っております際の考え方としましては、とにかくこれは従来流通しておった大豆に対する保護対策であるから、これは流通している数量を基準に考えるべきであろう。三十五年産の大豆につきまして、当初四十万トン生産のうち二十万トンをこの交付金の対象にするようにしようということをきめました際の二十万トンも、これは流通する大豆で言っております。従いまして一俵三千二百円というのも、これは内地、北海道つっくるみの価格になっておったわけであります。それで当時大豆の専門家の意見としまして、平均三千二百円であって、これは内地、北海道つっくるみである。しかも北海道の大豆は調整加工した後にそういう価格になっておる。内地の大豆はそのままの形で流通する。つまり規格で言いますと規の二に該当するものが相当多い。従って北海道の規の一の大豆は、むしろ三千二百円から調整加工費の百五十円を差し引いた三千五十円が、大体内地の三千二百円に見合うのだという説明もあったことであります。そういうような点からしますと、三千二百円というものは、当然調整加工後における、つまり規の二の規格における大豆であるというふうに当方は了解をしておりましたし、現に――そう申しますと語弊があるかもしれませんが、食糧庁が通知を出しました中にもそのことは明記してあったわけであります。その後農家手取りの一俵三千二百円という言明との関係が問題になりまして、現在それがまだ問題として残っておるという形になっておるわけであります。
  187. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題は少し専門的なことになるので、関税定率法の審議で時間をかけるわけにはいかぬのですが、ただ今言われた北海道については、規の一で生産され、出荷されておるが、内地においてはそうでないというのは間違いですよ。長野県は、これは県の条例等によって最初から規格二で農家が出荷しておるわけです。それ以外は農家が出す場合は規格二というのではない。その点はあなたの判断と事情が違うのです。だから農家が生産したものを買い取りするとか、委託を受けるという場合は、当然これは規格一で農家の手から離れるわけですね。それを取り扱い業者が利益目的で、相当の数量を調整、改装することによって扱っておるのであって、改装によって品質が極端に向上するわけではない。同じ規格のものを量的にそろえることができる、そういうところに取引所の利点があるとしても、大豆そのものが調整したことによって質的に変わるということではないと思うのです。ですからもし一と二に分かれた取り扱いをするのが不合理だとすれば、一でもいいし二でもいいですから、その形で生産検査を受け、そうして市場に出しなさいという指示をした方が、政府としては温情味のあるやり方だと思う。ただ盲点だけついて、これだからということで農林、大蔵両当局が、そういう議論とかかけ引きだけに終始して、そのしわ寄せが農民に転嫁されるということは、これは相沢さんとしても好ましくないと思っておられると思うのです、特にあなたは良心的な人ですから。問題は、これを早く処理してもらうということと、急ぐことによって農民に不利を与える急ぎ方ではいけないと思うのです。それで三十六年はまだ若干ひまがありますから、後日また十分審議したいと思いますが、三十五年については、原則は先ほどあなたが言ったことに変わりないわけですね。三十五年産については、農家手取り三千二百円ということで、これは当然行政措置でやるわけですから、この分についてはいわゆる規格からいえば規の一について三千二百円ということで、農家に交付金を渡す。規の二については加工経費というものを、たとえば百五十円なら百五十円加算した形で支払いを行なう、これは間違いないでしょう。
  188. 相沢英之

    ○相沢説明員 御意見の最初の部分の、内地の大豆についてこれは大体規の二であるということを申し上げたことがもし間違いであれば訂正いたしますが、私の聞いております範囲で、確かに長野県は規の二の規格でやっておる。その他の県につきましては、大かたの大豆が畑におろさない、あぜ豆というような形で植えられている。従って一農家当たりの平均の生産量が非常に少ない。取引の形としましても、みそ、しょうゆ、そういうものにそれぞれの地域において消費されるという形、従って県外移出も非常に少ない。そういった形でありますので、まあ正直に申しまして、商品としての大豆は大体北海道か長野、そういう一部分に限られて、ほかの県についてはあまりはっきりした形がない。従って取引の価格形態につきましてもはっきりしない。そういった点で、三千二百円というのがはたして内地において規の一なりや二なりや、どうもあまり実態がよくわからないというのが実情ではないかというふうに私は聞いております。後段のポイントの一俵三千二百円が、農家が出した規の一について三千二百円であるというふうに考えておるかという点につきましては、先ほどから申し上げました通り、当方といたしましては、調整加工後の規の二の規格一俵について三千二百円であるという了解でおったわけでありますけれども、なお農家手取り一俵三千二百円という言明との間におきまして調整を要する点があるものでありますから、食糧庁と話を詰めております。いずれにいたしましても、おっしゃる通りいたずらに遷延いたしますと、農家の方々に御迷惑をかけますから、できるだけ早急に話をきめたいと思っております。
  189. 芳賀貢

    ○芳賀委員 三十六年度はまだもう少し時間を置いてもいいわけですが、三十五年については、あなたの冒頭の説明は、当局としてはそういう考えでおったけれども、歴代の大臣が手取り三千二百円と言明した、そういう事情もあるので、だから手取り三千二百円ということにして、規の二については加工経費として百五十円を加算するような処理でいくことにしたと、最初あなたは述べたはずなんですが、これは何か間違いですか。三十五年のところですよ。
  190. 相沢英之

    ○相沢説明員 三十五年産の大豆につきましては、私最初から、規の二の規格一俵について三千二百円というふうに当方は了解しておるということを申し上げました。
  191. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは三十五年についても規の二でいかなければならぬというふうに今でも考えておられるわけですね。それであなたの考えが変わらない限り、今後何年たっても、農林省が譲って、規格二でよろしゅうございますといえば、あすの日にもきまるが、やはりこれは生産者手取りだから規格一でなければならぬということであれば、これはまだ数年かかるわけですね。あなたが主計官をやっている限りは支払いできないということになるわけですか。
  192. 相沢英之

    ○相沢説明員 それは規の一の三千二百円か、規の二の三千二百円かということになりますと、その間に全然右か左か道がないように見えますけれども、とにかく話をつけて金を出さなければならぬわけですから、私もどちらがおりるということでなくて、話は早急につけたいと考えております。
  193. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は根拠のない議論をすることを実は好まない。空理空論で時間だけを費やしたくないが、ここで明らかにしておきたい点は、たとえば農林委員会だけでわれわれが議論をして、農林大臣がそうしますということであれば、あなた方は所管が違うから、それは農林大臣が国会で言った言葉で済ませるが、私が言うのは、ガットの協定に基づく譲許の承認について、外務委員会と農林委員会の連合審査を昨年行なったわけです。これは三回にわたって行なったわけですが、特に大豆の貿易自由化を政府が無理に進めるその保護措置として、交付金を交付することにするという問題にからんで、特に外務委員会を中心にこれを扱ったことがある。これは六月の二日ですが、この日は外務大臣、大蔵大臣、今の水田さんです。農林大臣の周東さんと三大臣が出席して、大豆の自由化を行なう場合においても、必ず農家に対しては不利益を与えない。しかし今後ますます大豆の消費量が国内で高まって、たとえば百二十万トンの需要のうち二十万トンが国産で自由化になれば、今度は輸入が百万トンないし百二十万トンにふえるという趨勢にあるので、この際関税定率の引き上げを行なって、しかし譲許の関係で十分なことはできないけれども、大豆の国内生産に対しても、国としては責任を持って進める、こういう三大臣から言明が行なわれて、その価格については歴代の農林大臣が国会で言明した農家手取り三千二百円というものは、これは同様に確保する方針でありますということを言明しているわけです。なおそれに付随して、社会党あるいは与党の委員からも、一体手取りというものはどういうものを言うかということで、今相澤さんの言われた、――現在の検査制度からいうと、農家はおおむね規格一で生産検査を受けて、それを販売しているという実情にあるから、結局実情に適合させるということになれば、やはりその姿を対象にするということで、これは一致しているわけです。それをもし大蔵事務当局や主計局が、いや、そういう無能な大臣の言うことは、これはとるに足らぬ。われわれ役人がやはり方針をきめてやるのが、今の国の行政の実態であるということでがんばってやるのであれば、それも一つの方法でしょうが、しかしかりそめにも、無能であっても、無策であっても、一国の大臣として政治を担当して、しかも国会の場所で、政府の責任において三人の大臣が頭を並べて、国会において言明した方針というものは、これは有能な役人といえども簡単にこれをくつがえすということは、いささか問題があるのではないかと思うわけです。われわれはそういう理解の上に立っております。ですからあなたの言う説が、これが正しくて、大臣の連中は内容をわからぬで、でたらめなことを言ったということであれば、これはきょうに限りませんから、主管大臣にも出席を求めて、そこで事態を明らかにしても、これは差しつかえない点ですが、それはどうなんですか。
  194. 相沢英之

    ○相沢説明員 私は別に大臣がどういうことを答弁しようと関係なしにやるというような、不遜な考え方は毛頭を持っておりません。農林、外務の連合審査の委員会がございましたが、そのとき私も出席して、御意見を拝聴しておりました。その際の農家手取り一俵三千二百円を保障するのだという話は承知しております。ただその前に申し上げました通りに、国会における大臣の答弁でございますから、またこまかい規格の規の一とか二とかいう問題は、これはごく一部の関係者でないと、なかなかわからない問題でありまして、そこまで詰まった話であるというふうには確かになっていなかったと思います。そこで大豆、菜種の交付金法の第二条の第二項に、交付金の金額の算定方法が書いてございますが、これには結局基準価格から標準販売価格を控除した金額に、生産者団体が大豆、菜種の生産者から売り渡しの委託を受けて販売した数量に相当する数を乗じて得た金額を、交付金として出すのだということになっております。従いましてあくまでも数量としましては全敗なら全販が売った数量が交付金の対象数量になる。従いまして一表幾らかという基準価格は、あくまでもそれは全版が売った一俵についてきめるというふうに考えるのが、法律の解釈としては当然であるし、この点については農林省も別に異論はなかったようであります。そういった観点から申しまして、私どもは少なくとも基準価格については全販が売った数量一俵についてきめるべきものだというふうに了解をしておったわけであります。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 交付金法に基づく扱いは、国会で社会党が政府案を修正して、生産者団体に対する買い取りは対象にしない。これは全販連、全糧連、全集連という行政団体も取り扱いは認めておるが、いずれであっても委託販売に限るというふうにわれわれは限定したわけです。ですから買い取り販売とか、末端でも直接取引で売り渡した大豆は三十六年産は対象にならぬことは、これは生産者もわきまえておるわけですが、三十五年度の場合には、法律がなくて行政的に自由化対策として三十億の予算を国が確保してそうして行なった扱いですから、今ある交付金の場合と三十五年産の扱いはいささか異なるわけです。しかしたとえば五万トンなら五万トンの実態というものは、全販の扱い分は九〇何%が全部が北海道産の大豆ということになっておるのです。対象はほとんど北海道産大豆ということに三十五年は限定されるわけです。そうなると扱いについても一も二もないのですよ、北海道の場合は全部生産検査は規格一で検査を受けて販売をしておるわけですから。ですから実情の上に立って三千二百円を保証するということになれば、特に三十五年産の場合には議論の余地が絶対にないのですよ。それにもかかわらずじんぜん日を過ごしておるということは、われわれとしてはまことに不本意な点なんです。国会において大臣が言明し、あるいはわれわれが了解したそういう自由化政策の一環として、そうして大豆生産者に対して国が当然の責任として交付金を与える。これは恩恵を与えるのじゃないのですよ。犠牲に対して補償するような意味所得補償をするわけですから、何も国が恩恵を売って、お前らにこれをやるのだという、そういう意味のものではこれはないわけです。特に関税引き上げによって、おそらく三十六年は二十億円以上の関税の大豆だけの増収になっておると思うのです。三十五年の場合には三億円くらいあれば五万トンについて間に合うのでしょう。三十億円を用意して三億円もあれば間に合うことを、いまだにやらないというのはけしからぬじゃないか。一年置けば一割の利子としても三億円別に浮いてくるわけですから、くどいことを言うのは、いやですが、これは速急に筋の通った趣旨で、十分農林省と話し合いをつけて善処してもらいたいと思うのです。大体いつごろまでにそれはきまるのですか。
  196. 相沢英之

    ○相沢説明員 年度内に交付いたしますと、交付手続その他がありますから、いずれにしましても数日中にこれをきめませんと、金が出ないことになる。それを目標にしてやりたいと思います。  なおお話の前段の、三十五年産の大豆はこの法律の対象ではないではないかということですが、おっしゃる通り確かにそれはそうでございます。しかしその取り扱いに関しましては三十六年産の大豆に準ずるということで、大体の要領はそういった方針でやるということに、事務当局同士の間では話がなっており、またそういった趣旨の通牒も実は出ておったのであります。そういった点で問題はなかろうと思います。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ではきょうはこの程度にしておきますが、どうも最近見ておると、これは農林省だけでは問題の処理ができない実情にあるのですね。基本的な実施法等は農林省にあるが、特別会計とかあるいは交付金の交付なんということになると、やはり大蔵省の主計局が了承しないと支出もできないという仕組みになっておるわけです。農政を一方が進めようとしても、こっちの方が今度ブレーキになって進まぬということもあるのです。今後は大蔵委員会において農業政策上の問題をある程度処理していかぬと、なかなか解決ができない点があるので、今後も食管特別会計の問題とか、あるいは農産物価格安定の取り扱いの問題であるとか、今提起しました交付金の交付とか、こういう問題については当委員会においてもわれわれ随時取り上げて審議をしなければいかぬと判断しておるので、相沢さんの方でもそういう心がまえで一つ今後出てきてもらいたいと思います。
  198. 小川平二

  199. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 公共企業体職員等共済組合法の一部改正に関する法律案について運輸大臣にまず質問いたしたいと思います。  公共企業体の共済組合法に移行する際に、恩給公務員と旧令の共済組合員とあったわけですが、恩給法による国庫納金というものは全額国庫に入ったままで、公共企業体の職員等の共済組合が抜けましても、これには国の方から、恩給納金としてとっておった分についても、これを公共企業体の共済組合に交付するというか、そういう措置は何らなされなかったわけでありますが、こういった点について一体大臣はどのようにお考えになりますか。
  200. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 私当時のいきさつをよく存じておりませんから、今おっしゃいますように公共企業体等の共済組合に移行の際にそういうことで解決をしてしまったということでございますので、その後そういう問題をさらに過去にさかのぼって考えてみようという問題については私まだ聞いておりません。検討いたしておりません。もう過去に済んだ問題だ、かように考えておったわけであります。
  201. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 確かにそれは過去においてそういうこととして出発したということはあるのでありますけれども、次々に内容の充実なり改善なりという問題が起きてくるわけであります。これは恩給法の改正あるいは国家公務員の共済組合法の改正といったものとバランスをとるという面でも、やはり公共企業体共済組合の方はいつも後手後手に回って、それの給付の内容の充実を追いかけるというような関係にあるわけであります。国家公務員の方は国庫が控えておるわけでありますから、政府負担分がきめられてどんどん出していける、しかしながら公共企業体の方ではやはり一つ企業体としてやっておる、しかもこれに対する国からの援助というものは今の状態では何もないわけであります。そうなりますと、また国鉄の場合には去年の運賃値上げにもからまってくるでありましょうし、あるいは電電公社等におきましても電報料金の問題などともからんでくるのじゃないか、こういうようなことがおそれられるわけであります。一たん解決ついたような問題ではあるけれども、これは公共企業体の共済組合員に対しても何らかの形でその事務費を国の費用で補助するとか、いろいろな措置が将来とられてもいいじゃないかという気が私どもするわけでありますが、こういう点について、将来の展望に立ってどうお考えになりますか。
  202. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 今申し上げましたように、当時そういうことで出発いたしたという前提で今まできておるわけでございますが、過去にさかのぼりまたその後の運営にかんがみまして、公共企業体の共済組合の方が国家公務員の共済組合よりも酷な扱いを受けておるというようなことであれば、これはやはり是正をしていく必要があるのじゃないだろうかという感じがいたします。ことに国庫納金の扱いが当時非常に公共企業体の方には酷であって、そういう影響が今日においてもきておるということであれば、やはり過去の歴史をたずねてさらに是正すべき点は是正をしていかなければならない、かように考えております。国家公務員共済組合に対する国の援助というものは、ただ、それらの公社が使用人の立場において負担をするものよりもより多いものを、一種の社会政策として出しているということであれば、考えなければならぬと思いますが、それらの点につきましては、よく数字等を調べまして、もしそういうことがあれば問題として提起をいたさなければならない、かように考えております。
  203. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その点は将来にわたって掛金率の引き上げというような非常に深刻な問題ともぶち当たる可能性もあるわけでありますので、大臣の特段の御検討をわずらわしたいと思うわけであります。  ところで、今回の改正案の問題について御質問をいたしたいと思いますが、まず短期給付の問題で、健康保険法の一部改正に伴いまして、出産費及び配偶者出産費について最低保障額を三千円から六千円に引き上げた、これはその限りにおいては倍に増額されたわけでありまして、けっこうなことでありますけれども、今日の実情からすると、もう非常に低いものになっていて、実際の出産費をまかなうに足りないのじゃないかというような条件にあるわけでありまして、現実の動きといたしましては、そういう失態に即して公共企業体の中で、たとえば国鉄では付加金を出して一万円にしている、あるいは電電等におきましても基準賃金の〇・三くらいを増額しているというような措置が現に行なわれているわけです。だから、そういうような実態にある以上、やはりこれは法律でそこまで最低保障額を高めていくことが必要ではなかろうかと思うのですが、その点いかがでございましょうか。
  204. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 実情から申しますると付加給付でまかなっているわけでありますから、これを法定の中に入れるということが至当ではないかとおっしゃる御議論は私はごもっともと存じますが、ただ法体系といたしましては、国家公務員の共済組合、健康保険の給付というものとやはり今までばつを合わしてきておるという関係もありますので、従って法定をいたしまするにつきましては、やはり国家公務員の共済組合や、ことにそのもとでありまする健康保険給付の問題と一緒に検討をいたすべきものではなかろうか、またさようにいたしたいと考えます。
  205. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 公共企業体の場合に、掛金率はたしか公務員よりも若干高率の掛金をしていると思うのです。公共企業体の共済組合がやはり国家公務員と全く同列でいいかという問題になりますると、むしろ公共企業体の方が若干いい面があっていいのじゃないか。たとえば国鉄の場合等に見ましても、相当長時間労働をやったり、あるいは屋外労働をやったり、あるいは風雨にさらされての仕事があったり、電電等におきましても、施設関係の人たちはそういうような状態にありますし、また専売におきましても機械と取り組んでいわゆる現場作業をやっておる従業員が大部分であります。そういった特殊事情を考えますならば、やはり若干の前進があっていいのじゃないか。そうしてまた日本の社会保障制度全体もやはりこういうものに近づこうというような形で、これが一つの理想といいますか、理想からまだ遠いわけでありまするけれども、これが一つの前進を示す牽引力になって、それでだんだんほかがよくなってくるというようなことにもなろうと思うのであります。下ばかり見てこれに歩調を合わせるという考えはこの際とるべきではないのじゃなかろうかというような気がするのですが、そういう点についてさらに御検討をする気持がありますか。
  206. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 組合の給付をだんだんよくしていくということは、やはり職員、従業員の福利厚生の面から考えましても福祉国家として進んでいく過程において当然そうあるべきだと考えるわけであります。しかしながら、公共企業体の職員の法定の給付は国家公務員の給付よりもよくしなければならぬということになりますと、そこに問題があろうかと私は思います。業態が違うことによって給付の内容も若干変わってくるということもあろうと思いますが、また給付の支給の度合いというものもこれは業態によって変わってくるわけでありますから、従って、掛金等も若干違ってくるということになろうと思います。しかし同じ事態に対する同じ条件についての給付も、国家公務員とそれから公共企業体と比べて、公共企業体の方をよくしなければならぬという立て方は、これはどうであろうか、検討する要があるのじゃなかろうか。せっかくの御意見でございますが、私はその点はにわかに賛成いたしがたい、かように考えます。
  207. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣、非常に慎重な答弁をなさっているわけですけれども、その点についてはもう少し三公社の関係の共済組合法の提案担当の大臣として、もう一歩前進した見解を示されることを強く希望したいと思いますが、きょうはその点で論争する気持はございませんので、やはり特殊な事情――そうでなければこれは何も国家公務員と同じような形でいけばいいのであって、やはり何らかの企業の特殊性と一般公務員との間の差というものが、これは一つの公共企業体というものが社会的な存在として果たすべき役割というようなもの、それから労働条件、こういうもの等を総合的に勘案しますならば、もう少し大臣は一つこの点について前向きの姿勢をもって対処されるように希望しておきたいと思います。  それから今回の改正によりまして、この企業体の更新組合のうちに日本医療団あるいは外国政府の職員期間が資格期間として通算をされるということになったわけですが、これをやはり実期間として通算をしてもいいのじゃないか、こういうことを申し上げたいわけであります。もちろん実期間として計算をいたしましても、その期間公共企業体に対して掛金をかけているわけではございませんから、従って百分の〇・九というような減額措置というものはあっていいと思いますが、しかし期間を通算してやろうというところまできたならば、ついでにこの実期間としての通算まで高めるのがやはり至当ではないだろうかと考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  208. 高橋末吉

    ○高橋説明員 今回の改正法案の調整段階におきまして、いろいろそういう点につきましても検討を行なったわけでございますが、この問題はただいまお話にもございましたように、恩給法等の改正を受けまして国家公務員法等の関係もこれありまして、調整を今後の問題として残してあるわけでございます。今後この問題につきまして十分検討を加えなければならぬというふうに思っております。ただ私どもの方の今回のあれでも、年金に必要な部分のところにつきましては、実期間というふうに入っているわけであります。その点は資格期間だけでなしに、実期間というふうになっておるわけであります。ただ全部入らないという点がございます。
  209. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今さらに前進的に検討をされるということでありますから、その点をぜひ一つそういうような方向で検討をしていただきたいと思います。  次に、職員として再採用された場合の期間の通算が今度全面的に認められておるわけです。年金を受けるに至る人はこれで解決がされたわけであります。これは国会の附帯決議等を尊重されたことで大へんけっこうでありますが、ただ両期間を通算いたしましても、年金を受給するに至らない、退職一時金でまた退職しなければならぬ。いろいろな事情でそういう方があるわけでありますが、その際には何らの考慮がなされていないということになりますと、この面で若干バランスの問題として考慮されるべきじゃないか、これは当然筋としてもそうではないかという問題があるわけです。この問題についてもどのようにお考えになって善処されるか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  210. 高橋末吉

    ○高橋説明員 ごもっともなことと存じますが、申し上げるまでもなく、共済制度そのものの本質から考えまして、年金制度、いわゆる老後の安定というふうな点がこういった社会制度全般の一つの大きな目標というふうに考えるわけでございます。給付の点につきまして、年金というものにウエートが非常にかかっているわけですが、一時金というものについても気の毒だからということでこれにもやはりある程度考慮すべきじゃないかという場合に、財源としてやはり一つでございますから、年金ということでこの制度が考えられておる場合に、一時金という方にウエートがかかって参りますと、年金の方がウエートが少し薄くなるというふうな関係もございますので、一時金というものに、こういった一連の制度の中で公共企業体共済組合法なんかよりも一時金にもう少し有利に見ておる制度も御承知のようにございます。この場合は年金者の方から見ますれば、年金の方に少し不利と申しますか、そういうようなことで影響がくるというふうな点もございますので、非常に検討しなければならない問題と存じますが、年金と一町金という相互の関係、こういったものを、組合員全般の意思その他をよく反映した姿で今後大いに検討いたしたいというように考えております。
  211. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今申し上げた具体的に適用される事例というのは比較的少ないんじゃないかと思うのです。その資金面から見るならば、これはほとんどネグリジブルくらいな小さなものじゃないかと思うのです。そういう点から考えて、やはりこれはあくまでも年金が主体であることはその通りでありますけれども、国民年金の場合も非常に問題になりましたように、掛損や掛捨てというようなものをなくそうというようなこともあって、当初の国民年金の問題が相当前進をした解決が一応なされるようになっておるわけであります。そういうようなものも考えれば、やはり年金にウエートを置くという考え方は私どもわかるわけでありますが、バランスとして何らかの配慮がこの辺にあっていいんじゃないかという気がするわけであります。この点については特に具体例としては女子職員を多く持っておられる電電なりあるいは専売公社等にむしろこの問題の適用を受けるものがあるんじゃないかと思うのですけれども、もしおいでになりましたら、電電公社関係あるいは専売関係の考えもちょっと承っておきたいと思うのです。
  212. 松田英一

    ○松田説明員 お答え申し上げます。ただいまの問題、確かに電電公社は女子職員をかなり持っておりますので、非常に関心を持っているところでございますけれども、何分この公共企業体法を制定されましたときに、公共企業体である以上はなるべく長く勤めてもらいたいのだというようなことで、一時金だけに終わる者にとりましては、年金になった場合に比べてどうしても不利な条件が出てくるということで全体の制度ができておりますために、ここで通算をするということだけで直ちに年金と一時金のバランスをかえるというわけにも参りませんので、この点は制度自体の大きな問題といたしまして、私どもの方でも十分検討さしてみたい、こういうふうに考えます。
  213. 剣持愛吉

    ○剣持説明員 専売公社におきましても、ただいま松田管理官のおっしゃいました通り、非常に女子職員が多いわけでございます。大体四万三千名のうち半分程度が女子でございます。ただいま松田管理官のおっしゃったような実情があるわけでございます。むしろそれ以上の女子職員がおるわけでございます。同感でございますが、ただいまの専売公社といたしましての考え方は松田さんと同じような考え方でやっております。
  214. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この問題も今直ちにきっぱりした結論を伺うことは無理かと思いますけれども、十分検討に値する問題だというように私ども考えますので、御検討いただきたいと思うのです。  次に地方鉄道職員、これは買収鉄道ですが、もう施設ぐるみ、職員ぐるみ国鉄が買収した地方鉄道職員の期間、それから日本電信電話工事株式会社あるいは日本電話設備株式会社、国際電気通信株式会社、こういうところに在職した期間、それから旧令の共済組合の職員であったもの、現在の現行法でもこの共済組合の職員は共済組合法の適用を受けておりますが、その旧令組合の組合員であった期間というようなものについて恩給公務員であった者とか、あるいは旧令共済組合員であった者とか、こういうものはもうすでに在職期間の取り扱い改善をされております。それに伴って当然これもバランスの問題として、これと同じような取り扱いを期間通算、その他の面でこれに見合う措置というものが必要だろうと思うのですが、この点についてはいかがでしょう。
  215. 高橋末吉

    ○高橋説明員 この問題につきましては、今回改正法案を取りまとめる準備段階におきまして、いろいろと検討を加えた点でございます。いろいろ検討をしたのでございますが、附帯決議の御趣旨に沿って、今国会にぜひその分だけでも法律改正案を出さなければいかぬというふうなことで、時間切れになったような実情もございますのですが、そのときいろいろ議論が出ましたときの考え方の一つといたしまして、今回改正の中に通算に入りました人々は、たとえば台湾鉄道におきましても、陸海軍の工廠の方におきましても、それぞれ勅令によりまして共済組合というものがあったわけでございます。ここでその組合員でありました段階において掛金もあったわけでございますし、将来に対する期待というものもあったわけであります。期待権を持っておるわけでございますが、今回入ってない人人につきましては、そういった点が欠けておるわけでございます。将来に対する期待権ということも、この在職中におきましては、今の旧令関係と比較いたします場合になかったわけでございます。今回その点につきまして、一線を画して今後の検討に待つというふうなことで今回の改正法案になったわけでございます。  なお先ほどのお話の中で旧令共済組合員の職員、この職員は通算できるようにいたしておるわけでございます。
  216. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでは旧令共済組合の職員期間というのは解決がついたということですから、これはけっこうですが、この附則の第十一条第三号にあります地方鉄道職員期間、それから先ほど申し上げた国際電気通信、日本電信電話工事、それから日本電話設備株式会社、こういうものの職員期間というものも、これはやはり関連した同じような条件のものと比べてみまして、やはりこれだけが残っているということはバランス上どうしても納得できないわけです。この問題についても一つ十分改善の方向で検討していただきたい、このように考えるわけであります。  次に外鉄職員です。南満州株式会社等、そのほかには満州電電等あるわけでありますが、これの職員期間の問題等についてこれは参議院でも問題になりました。前回の通常国会のときだと思いますが、前回この一部改正提案されたときに、当時の小金郵政大臣にも私が質問をいたしまして十分検討いたしますということを約束されておったわけであります。この点は齋藤運輸大臣にも小金さんから申し送りがあったものと思います。これは私特に念を押したのであります。小金さんも大臣をやめられてあともう楽になってしまって、その申し送りを忘れてはいけません。必ずきちっとその点は検討するようにということを次の担当大臣に申し送ってくれということを言っておったわけであります。その通りいたしますということだったので、相当この点については検討をなされたと思うのですが、これはもちろん完全な実期間として通算することが望ましいことでありますが、若干の制限がついてもこれを何とか、しかも当時満鉄におって戦後国鉄等に採用された、あるいは満州電電から電電公社に採用された、こういう人たちは向こうで相当技術もみがいてすぐに国鉄に入ってきて使える相当の経験というものはもう入ったときから前の経験というものが生かされて、公共企業体としても、そういうずいぶん長い期間にわたってそれぞれの経験を経たその労働の価値というものを、そのまま使えるような立場にあったのだし、またその会社の性格といいますか、こういうものが、たとえば満州国政府の職員期間を通算する、日本医療団の職員期間を通算するというような状態になって参りますと、これとの均衡では当然通算すべき理論的なはっきりした筋というものが出てきたと思うのです。そういった角度から、この問題について検討された結果についてお伺いをいたしたいと思うわけです。
  217. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 ただいまの点はかねがね承っておる点でございます。早晩解決をしなければならぬ問題だ、かように考えておるわけでありますが、今回の共済組合法の改正にあたりましては、国家公務員の共済組合法にまず追いつくということを第一義といたしまして、国家公務員共済組合法と同時に改正をしなければならぬという点につきましては、国家公務員の方と十分話し合う時間がまだ持てなかったというようなわけでございます。従いまして、なるべく近い機会にその他の点もあわせて国家公務員法あるいは三公社の共済組合の方と歩調を合わせまして、さらに改善をすべき点を実現して参りたい、かように考えておるわけでございます。
  218. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 この共済組合法は非常にこまかい、わかりにくい、めんどうくさい法律ですから、大臣があまりこまかいところまでわからないのは当然でございますけれどもでも、もう少し私の質問にピントを合わした答えをしていただかないと困るわけであります。もうすでに満州国政府等におった者の期間通算は、国家公務員の共済組合法においては解決済みの問題です。そういうことになって参りますと、国鉄の場合あるいは電電等の場合において、あるいは専売公社でもそのようなあれがあるかと思いますが、そういう場合において、これとの見合いにおいてこの満鉄等の在職期間を取り上げて、やはり何らかの通算の措置をしていく、こういうところに踏み切られてもいいんじゃないかと伺っておるわけであります。その点について、もうすでに一年近くおくれている、それを今追いかけるところに来ているわけであって、これは参議院において附帯決議も付されて本院に送付されている問題であります。参議院でも満場一致で通算の措置について検討すべきだということが付されてきておるわけであります。この点について一つ大臣から決意のほどを聞かしてもらいたい、このように質問をいたしておるわけであります。
  219. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、満鉄職員あるいは満州電電公社等の職員で国家公務員になった者については、まだ国家公務員の共済組合法の中で通算を認めておらぬのであります。従いまして、国家公務員になっている人も相当あるわけでありますから、国家公務員の共済組合法の改正と一緒に公社の共済組合法の方もやりたい、かように考えておるわけであります。私がつけ加えて申しましたのは、国家公務員共済組合法の中にも、それ以外の点でまだ改正をしなければならぬ点がございますから、それらを合わせて国家公務員法の改正をやり、同時に公社の共済組合法の改正をやりたい、かように考えております。
  220. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大臣の考えはわかりました。しかしながら、満鉄と国鉄の関係、満州電電と電電の関係というようなものは、国家公務員におけるそういう関係とはやはり濃淡の度合いはまるきり違うと思います。やはり終戦処理の一還として、満鉄職員は国鉄にできる限りの採用をいたしましょう、引き受けましょう。はっきり覚えませんが、政府措置として当時そういう措置がなされて引き受けが行なわれたわけです。そういう関係があって、運輸省でしたか鉄道省でしたか、満鉄職員の場合あるいは満州電電の場合、それぞれ国鉄なり電電なりに入った者が大部分であります。公務員の中にも若干はおるでありましょう。それとの均衡をとるという大臣の立場はそれはそれなりに正しいのですけれども、まず三公社においてそういう方向に踏み切っていかれて、初めて公務員の方もこれについていく関係ができるんじゃないか。そういう面ではむしろ実態的な職員の中におけるバランスの問題としても、まずこちらが先に踏み切っていく、こういう態度が望ましいと思うのですが、その点についてもう一度お答えいただきたい。
  221. 齋藤昇

    ○齋藤国務大臣 おっしゃる通り、実態的にはこちらの方が非常に多いわけであります。従いまして、われわれの方から一つ熱意を持ちまして国家公務員の方に寄びかけて、一日も早く実現をするようにこちらの方で主導権をとって参りたい、かように考えております。
  222. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その点、今大臣も熱意を込めてということを言われましたので、非常に期待しているわけです。  次に質問を移します。長期給付の原資として積立金があるわけです。今責任準備金の積み立てを、たしか五%ずつ積み増しをしているという形になっていると思いますが、最近における三公社の積み増し状況というものは、予定した積み増しが確実に行なわれておりますか、この点をお伺いしたい。
  223. 高橋末吉

    ○高橋説明員 本席に三公社それぞれ出席いたしておりますので、それぞれ御答弁申し上げさしていただきます。
  224. 谷川宏

    ○谷川政府委員 専売公社の共済組合の関係を御説明申し上げます。ただいまの御質問は追加費用の積み増しの状況がどうなっておるかということであろうと思いますが、昭和三十一年度におきまして俸給総額の千分の十七でございました。これは共済組合法が施行された年でございますが、その後三十二年に千分の二十三、三十三年度は同じく二十三、三十四年度が二十八、三十五年度も同じく二十八、三十六年度が五%積み増しまして千分の三十三、三十七年度におきましては千分の三十八と五%増がされることに予算上はなっております。
  225. 松田英一

    ○松田説明員 電電公社のものについてお答え申し上げます。電電につきましては、昭和三十一年度が千分の六・五、三十二年度が千分の八・九、三十三年度が千分の十一、昭和三十四年度が千分の十六、昭和三十五年度が同じく千分の十六、昭和三十六年度が千分の二十一、三十七年度は現在予算で審議されておるところでありますが、千分の二十六になっております。電電公社といたしましては、当初あまりこの教字がなかなか認められなかったのですけれども、いろいろと交渉いたしまして、最近におきまして五%増しの要求数字となっております。
  226. 高橋末吉

    ○高橋説明員 国鉄におきましては、三十一年が千分の二十四、三十二年が千分の三十、三十三年が千分の三十一、三十四年度が千分の三十六、三十五年度が千分の三十六、三十六年度が千分の四十一、来年度の予算におきましては千分の四十六を予定しております。
  227. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 たしか前回の一部改正のときにも、私この問題を伺ったのですが、大蔵省はこの追加費用の積み増しを大体五%ずつというのが当初予定されたものだったと思うのですけれども、途中で停滞し、ぽつりぽつり全然積み増しをしないで推移する年があったり、あるいは一%くらいしか積み増しをしなかったりというようなことがあるわけなんですが、いろいろ内容的に充実をし、改善をされてくる。これについての追加費用は全部公社負担になっておるわけでありますが、その積み増しは五%くらいずつ確実に積み増しをするという数理の上に立っておると思うのです。この点について大蔵省はどうお考えになっておられますか。
  228. 平井廸郎

    ○平井政府委員 大蔵省の当初の考え方が、五%ずつ毎年度積み増しをしていくというような御指摘のところにあったということも伺ってはおりますが、途中におきまして、経理上の理由その他によりまして、御承知のように同じ率で推移したり、あるいはきわめて少ない率で増加するというような事態があったことは私ども承知いたしております。ただ、今後の考え方といたしまして、毎年度五%ずつ増加していくという方式が妥当であるかどうかという点は必ずしも一がいには言えないのじゃないかと申しますよりは、こういう五%積み増しという方式自体は一つの考え方ではございますけれども、必ずしも数理に基づく計算でもございませんし、整理資源の負担方式といたしましては、将来どういう方式でいくべきかということをもうそろそろ確定していかなければならぬであろうというふうに私ども考えております。そういう意味におきまして、昭和三十七年度の予算要求がございました際、本年度については従来の方式によりまして、五%積み増しという方式をおとりになることはけっこうである。ただ、同時に三十八年度の予算要求の段階にくるまでに、各公社として、整理資源の負担方式をいかにするかという点について御検討いただきたいということをお願いいたしてございます。整理資源の負担方式につきましては、先生も御承知と思いますが、たとえば永久債務方式であるとか、あるいは修正賦課方式であるとかいうものがございまして、いろいろな方式についてそれぞれ利害得失がございますが、そういった問題について、この制度も本格化した現段階において、根本的に考えていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  229. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 追加費用の積み増しが、まだまだ永久負担でいくか、修正賦課方式でいくかというようないろいろ方法もあろうということでございますが、これはたしかこの前の答弁では三年に一ぺんくらいずつこういうものを変更する機会を持つのだということが言われておったわけでありますけれども、それをやられるつもりですか。
  230. 平井廸郎

    ○平井政府委員 こういった方式を検討する機会――実は私前任者がどういうことを答弁しましたか詳しくは存じておりませんが、制度といたしましては皆勤率の問題その他も含めまして、五年に一回くらいは検討するのが妥当であろうというふうに考えております。御承知の通り公社につきましては、三十一年度からこういう制度が全般的に実施されたわけでございます。大体もう五年も経過いたしておりますので、そういう問題を含めて、来年度あたりあるいは御検討いただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  231. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その点わかりました。それで、もちろんこの間における職員の給与、組合員の給与と関連がございますから、そういう検討というものは常時必要だと思います。経済事情等の変化によって、著しくその予想を上回ったような場合、あるいは下回るような場合、いろいろあると思いますから、そういうことをやって絶えず検討されて、少なくとも給付にいささかの支障もないという形の積み増しが保証されれば要はいいのでありますから、そういう検討を続いてお願いしたいと思います。  ところで、資金の運用について大蔵省から一定の基準が示されておるわけであります。この基準について、もう少し運用の幅をそれぞれの公社の特殊事情に応じて認めてもいいんじゃないかということを私ども痛感するわけであります。たとえば、私、国鉄出身であるからといって、国鉄にだけ水を引くような気持は別にないのですけれども、三公社とも職員構成が非常に違うわけであります。先ほども専売、電電両方からお話があったのですが、女子職員の比率が非常に高い、半分あるいは六割、七割に近い女子職員がいる。従って年令構成等においても国鉄、それから電電、専売と違うわけであります。いわゆる世帯主という職員の比率というものは非常に差があることも考えられるわけであります。そうしますと、職員に、組合員に相当長期にわたる資金を貸し付けるというような、貸付ワクの問題等につきましては、需要の度合いというものがやはり違うわけであります。たとえば国鉄等におきまして、私、これは現場職員から直接訴えられることなんですけれども、共済組合の貸付のワクがないものだから、住宅資金等を何回申し込んでも借りられない、何とかしてもらえないかというような訴えを聞くわけであります。多かれ少なかれ、専売でも電電でもそういう事情はあろうと思いますけれども、やはりそういう点で一番深刻なのは国鉄じゃないかと思う。国鉄なりそれぞれのところにみんな運営審議会があるわけであります。この運営審議会において大蔵省から示されておる運用の基準よりも、この部分をもう少しふやしても、これは十分やっていけるんだというようなことで、そういう修正等が大蔵省にあった場合には、若干のゆるみというものを認められて当然ではなかろうかという気持がするわけです。大蔵省の方としては、とにかく資金運用部にその資金を供出させないで、それぞれの公社に使わしておるだけでもいいんだからおれの言うことを聞けということ、これはよく言うことでありますけれども、もうその議論としては解決済みだと思うのです。従って、そういう立場じゃなしに、やはり同じ資金を運用するということについて、あそこまできちっとした基準通りにやれということを押しつける理由には、私は乏しいのじゃないかと思うのです。運営審議会もあることですから、そこで、その資金の運用については、やはり一番効率的な、しかも職員共済という名にふさしい方向というものをそれぞれ論議するのでありましょうから、そういうことについては、弾力性を持った資金運用というものに大蔵省も協力をすべきじゃないかと思うわけなんですが、この点、給与課長、いかがですか。
  232. 平井廸郎

    ○平井政府委員 御承知の通り、共済組合の資金は、半分は職員の拠出する部分であり、半ばが国ないし公共企業体の拠出部分であるわけでありまして、その限りにおきまして、職員の福利厚生にできるだけ活用したいという気持は、私ども同感であります。ただ同時に、短期的に見て職員の利益になるということでなしに、長期的に見て、組合自体が健全なる経理を維持していけるということが前提となることは言うまでもないことでございまして、その限りにおきまして、現在の構成割合というものは、必ずしも短期的にのみ論議されるべき問題ではないと私どもは考えております。もちろん、先生御指摘のように、各組合によって事情の差もございますし、その限りにおいては、若干の差があってしかるべきだという御議論もわからないではございません。ただ現在の、たとえば御指摘のような「組合の行う事業に対する前号以外の貸付金」というようなものもございますが、これが住宅貸付等に充てられるわけでございますが、これらにつきましても、現在のところは、三二%というような、かなり高い率に達しております。これは国家公務員の場合はいかがであるかと申しますと、十分の二というふうになっておりまして、その限りにおいては、かなり優遇されていると申しますか、かなりそういう点の特異性も考えられておるようでございますので、直ちにこれを上げることが妥当であるかどうかということについては、幅の広い、いわば長期的な視野に立って検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  233. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 幅の広い長期的な視野に立つということは、これはその通り、非常に長期にわたって、しかも責任のある重要な長期給付の原資となる資金の運用でありますから、そういう観点というものは必要であることはわかります。ただ、非常に抽象的にお答えになったので、たとえば職員の住宅資金部分をもう少しふやしてやっていいんじゃないかというような問題について、これをふやすということが、長期的な視野に立って幅広くいろんな諸条件を考慮の上に立ってということにどの程度の支障になるのか、もう少し具体的に、それがなかなかやれないんだ、これでも公務員よりは若干比率はいいんですよというだけの理由なのか、そのほかにもうちょっと具体的な理由があるのか、納得できるように聞かしてもらいたい。
  234. 平井廸郎

    ○平井政府委員 若干率はいいというだけでいけないということを、私ども申し上げるわけではございません。ただ、何と申しましても、長期的な観点に立って資産の配分を考えなければならないということ、並びに現在の段階は、共済組合になってからの本格的な給付が行なわれる段階までまだ至っていない。いわば五年後でございますけれども、これからまだまだ、給付と積立金の増加と、これに対する給付原因の発生というもののバランスが変わってくるわけでございます。従いまして、そういう点を考慮して、今直ちに、これらの三二%という比率を変えることが妥当であるかということについては、十分検討いたさなければならぬという考え方でございます。
  235. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 もしそういう議論をなさるのだったら、追加費用の積み立て等においても本格的にはむしろそこでチェックすべき問題じゃないかと思うのです。一年間全然積み増しなくていいというようなことをやっておきながら、わずかばかりの職員に対する住宅資金の貸付で資金が固定してしまっておったのでは工合が悪いからというようなことは、論理的には若干矛盾があるのではないかと思うのです。やはり運営審議会においても、今あなたがおっしゃったと同じような見地に立って、資金の運用について支障のないようにということも当然考慮に入れた上で適正な線というものを出して、大蔵省に若干このワクは広げることを認めてくれというようなことを言うだろう。そういうことは、やはりお互いにもう少し意思疎通したならば解決の方向に向くのではないか。今給与課長のおっしゃったことは非常に原則的なことで、原則的な立場というものはわかりますけれども、一方において追加費用の積み立ての問題で大体五%ということが――当初確かに千分の十七とか千分の六・五というように各公社とも出発点は違いますけれども、ただ、積み増しは五%くらいやっていこうという方向でないと確実な給付ができないというめどに立っておった。それを押えてきた。あるいは三公社の経理上なかなか積み増しはできなかったという事情もあろうけれども、そういうことをやっておきながら、この運用の面だけで何か資金が固定しては工合が悪いというような言い方をされることは、ちょっと問題の本質とずれているのではないかと思うのですが、いかがですか。
  236. 平井廸郎

    ○平井政府委員 先ほどの整理資源の積み増しの問題について、大蔵省が押えて停滞したということがあったかどうか私存じませんけれども、実際問題としては、むしろ経理上の事由が主たるものではなかったかと私ども考えております。それから、この問題につきましては、同時に、整理資源を今いくらの金額を入れるのが妥当かという、先ほど申し上げた長期的な負担方式の考え方の中で議論していただく必要があるのではないかと考えております。  それと、個々の共済組合が行なうところの資産の運用につきまして、どの程度の幅でなければならぬかという問題は、もちろん組合の健全性というところからいえば同じだという御議論もありましょうけれども、この問題はこの問題でやはり健全性の原則に立って処理していかなければならぬと考えております。  なお、ちょっと技術的な話になりますが、整理資源を今現在幾ら入れるかということが直ちに組合の経理を危うくするかどうかという問題はかなり議論のあるところでございまして、たとえば永久債務方式というような形におきましては、一応支払うべき金額について公共企業体なり国はその利子相当額だけを入れるというようなやり方もあるわけでございまして、そういう限りにおきましては、元本相当額については公共企業体なり国は一応追加的には金は出さないというような格好もあるわけでございます。その場合においては、非常に極端な考え方からすれば、共済組合にとって不利ではないかという御議論もあるかと思いますが、そういったものも十分保険数理の上で計算しての、国なり公共企業体というものは少なくとも日本の国が続いていく限り永続的に続くものだという前提に立って、そういう方式も考えられるということからいたしまして、整理資源が本年度における、たとえば三八%は妥当かどうかという問題も、そういった観点から考えていただく必要があろうと考えております。
  237. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 一般的な社会保障制度全部の資金の運用等についても、還元融資という問題が非常に大きな形で今進められつつあるわけであります。国民年金にいたしましても、あるいは厚生年金の問題にいたしましても、その組合員の厚生福祉といいますか、そういう方向に還元融資をどんどんワクをふやしていこう、こういうようなことで、政府においても私どもの要求を逐次入れて、そのワクはどんどん拡大をいたしておるわけであります。そういう直接的に掛金をかける組合員に還元融資をする。やはりこれは全体の立場から一つの正当性を持って、そういう方向に進められておるわけです。そういった場合に、その流れの中で、この問題をやはり原理的に、考え方として、そういう方向というものはとっていっていただきたいと思うのです。いろいろ五年に一ぺん永久債務方式でいくか、あるいは賦課修正方式でいくか、いろいろな議論はその点であろうかとは思いまするけれども、今の基準そのものが何も私は絶対ではないと思う。しかも相当権威者が集まって、大蔵省の考えていると同じような立場で運営をはかっていこうということで、それぞれの単位組合にも運営審議会があるわけでありまして、そういうものの言ってくることについては、これはある程度は――これはもちろん無制限というわけにもいかぬし、もちろんそんな無制限で、全体の永久的に存続するであろう、そしてまた確実に給付を保証していくというような立場からのある程度保険数理的な計算というようなこともあるでしょうけれども、そういうようなものをやった上で、なおかつもう少し弾力ある幅を持ったそういう点での処理というものは、これは認めていいんじゃないか、かように思うわけです。これらの点についてもう少し一つ前向きで検討をしていただきたいと思いますが、いささかも今の基準をもうこれ以上はゆるめる気持はないということですか。運営審議会等で十分慎重に考慮して、こういう事情だということで、そのワクの弾力的運用について申請等があったら、ある程度条件付であっても、そのワクを弾力的に解釈し、基準を若干ゆるめてもいいという考え方であるか、それとももう今の基準通りにあくまでいくんだというお考え方であるか、その点一つポイントですから聞かしておいていただきたい。
  238. 平井廸郎

    ○平井政府委員 先生からのお話のございましたように、たとえば資金運用部等につきましては還元融資という方向がかなり行なわれておる、そういった点から見ても共済組合の運営資金を組合員に還元していくべきじゃないかという議論もごもっともであると思います。ただ同時に私どもから申しますならば、これは地方公務員の共済組合法をことしお出しになるというときに論議した点でもございますが、ある程度資金運用部に預託をして、さらにその中からたとえば二五%というワクが現在ございますが、そういったもので考えていく御議論であるならば、これは当然一般の社会保障の体系の中で考えられる問題であり、従って、そういった点については十分御協議を仰ぎたいというふうに考えております。
  239. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大蔵省は、私どもがそういうきわめて実態に即した要求をいたしますと、すぐそこへ持っていくという悪いくせを持っておるわけですけれども、もうそういうことについては論外にして、これはいわば公共企業体というものの特殊性というようなものからそういうことになっておるのでありますから、この点についてあなたがやはり触れるということはきわめて遺憾なんです。その点はそのようにしておきながら、なおかつ差しつかえない限度でそういうことをしてはどうかということを言っているのであって、そこへあなた方は議論を逃げてはいけないと思うのです。もう一ぺん一つ……。
  240. 平井廸郎

    ○平井政府委員 そこへ議論が逃げてはいけないという先生の御意見も確かに拝聴に値すると思いますが、私どもの立場といたしましては、全体の社会保障の体系の中でこういった公共的な資金、いわば公共資本というものがどういう形で運営されるのが妥当であるかということを全体的に考えてみたい、その一環として議論をいたしたいというふうな考え方でございます。
  241. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そういう点についても私は非常に不満でありまして、政府管掌のいろいろな健康保険とか世羅い健保とか厚生保険とか、あるいは失業保険、国民年金、国民健康保険、いずれもこれは国が相当の負担をいたしておる。公共企業体に対しては国はちっとも負担をしてないわけです。しかも公共企業体といえども、やはり企業体です。しかも最近では公共という方よりも、むしろ企業体としての性格が非常にいろいろな面で重視されてきておるというようなこともあって、そういうような点を忘れて議論をされたのでは私ども全く困るわけです、全く納得できない。そういう点で、たとえば健保に対しては事務執行費用は全額国が負担する、あるいは健保組合に交付する負担金もあります。さらに七十条の三による国庫からの補助もあります。あるいは厚生年金でも第八条で保険給付の経費の百分の二十あるいは百分の十五という工合の負担がある、こういうように全部述べれば全部資料があるわけですけれども、そういうことをしないで、みな企業体の負担になっておるのです。国が負担すべき部分一つもない。それについてその資金まで全部吸い上げる。しかも百分の四十五、五十五ということで企業体と組合員が負担しておるわけですから、その点についても、みそもくそも一緒にしておるということはどうかと思いまするけれども、そういうようなことを全部たな上げしておいて、すぐにそこへ持っていって議論をそらすという態度は、私は前向きじゃないと思う。そういう点もあなたたちに十分配慮してもらって、そうしてささやかな、現実の運用面において困っておる問題をいささかも変えられないという硬直した態度というものは、私は改めていただきたいと思うのです。もう一度一つ……。
  242. 平井廸郎

    ○平井政府委員 確かに先生御指摘のように、新規の追加経費を国が持っていないということも事実でございます。また私どもが同時に現在の段階で申し上げておるのは、資金運用部に預託しろということをお願いしておるわけでもございません。従いまして、そういった点もございますが、十分今後この問題については検討さしていただきたいと思います。
  243. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 給与課長最後の答弁でいささかでも前進があるものと期待をしましてきょうの質問を終わりたいと思います。どうか一つ、先ほど大臣もお見えになり、担当部長の高橋さんも真剣に熱意を込めて検討するということを約束された諸点につきましては、これを十分一つ将来の法改正の足がかりとして、必ずこれが近い将来に実現されるように強く要望を申し上げたいと思う。  最後に一つ担当大臣からお答えをいただきたいと思います。――大臣いらっしゃいませんから、かわって……。
  244. 高橋末吉

    ○高橋説明員 ただいまの諸問題につきましては、今後誠意をもって関係各省庁とも連絡を十分とりまして御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  245. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  246. 小川平二

    小川委員長 次会は来たる十六日午前十時より理事会、十時十五分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会      ――――◇―――――