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広瀬(秀)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、今回
提案をされております
租税特別措置法の一部
改正に関する
法律案に対して反対討論をいたしたいと思うわけであります。
租税特別措置法は、すでに十年有余にわたって行なわれているわけでありますが、たとえば近年の例を取り上げましても、
昭和三十一年には八百八十五億円の減税、三十二年には六百九十三億円、三十三年八百四億円、三十四年一千二億円、三十五年一千四百七億円、三十六年一千四百九十五億円、三十七年一千六百九十五億円、このような工合に大きな減税を、特に大
企業にきわめて集中傾斜した形で行なわれてきているわけであります。その間における一般減税は三十一年二百二十九億であります。
租税特別措置における減税は八百八十五億であります。三十二年には一般減税がやや多く千二百七十六億円でありまして、この際における
特別措置の減税が六百九十三億、三十三年には一般減税はわずか二百九十五億しかない場合に、
措置法による減税が八百四億円にも達しておるわけであります。三十四年も四百七十九億の一般減税に対して
特別措置法による減税は一千億をこえました、こういうような状態にあるわけであります。しかも中山
税制調査会長が先般この
委員会で発言をされたのでありますが、大
企業にこれが八割方は集中しておるだろうということを明確に言われておるわけであります。このような
特別措置を実施することによって、今日の高度
経済成長というものがある
意味においてはささえられてきたと見ることも当然だと思うのであります。しかもその結果今日
設備投資の行き過ぎというような事態まで起きて、
国際収支がきわめて危険な状態にまで陥っておるという現実、あるいは物価の高騰、過剰生産、圧迫が内在しているのじゃないか、所縁
格差がいよいよ開くばかりだ、あるいは
経済の二重構造というものが解消の方向をたどるどころか、むしろ深化していくというようなことも、私はこの
租税特別措置のきわめて悪い血がこういうところに出ているのじゃないかと思うわけであります。もはやシャウプ
税制において、戦争によって失われた資本の蓄積あるいはまたインフレによって失われた資本の蓄積というのを早急に取り戻すのだというために、きわめて時点を限ったものが大
部分だという形で発足したものが、今日もうすでに長期にわたり、しかもこれが
企業にとっては完全に既得権化するような形で、そういうような血からの圧力によって、これが整理改廃を幾たびか
税制調査会からも言われながらも、きわめて当面を糊塗する
程度の整理改廃にとどまって、抜本的な整理改廃が行なわれないままに参りました。従って
税制の基本である公平の原則というものを著しく犠牲にしながら、大
企業だけを肥え太らせてきたという現実が今日出ておるわけであります。しかもそのこと自体がもう
政策目的を達成して、すでに行き過ぎがきてしまったという今日においては、これに対してほんとうに抜本的なメスを入れて、大幅な整理改廃というものを行なうべき段階だと思うのでありますが、そのようなことをなされずに、次々に新しいものを――もちろんその中には必要欠くべからざるものもあろうと思います。しかしながら今日貯蓄増強の名における貯蓄奨励に関する減税特典の問題にいたしましても、もうすでに本
委員会においても論じ尽くされた問題でありますが、これらの面についても、なおもう一年延期をするという
改正案が出され、さらにまた内部留保の事実の中にも、きわめて損金性の高いものも確かにあるでありますが、そういうものは基本
税制の中に当然取り入れていくべきだし、しかも損金性の薄い
企業の利益を保護するというだけにとどまるような性格のものもあるわけでありますから、こういうようなものを大なたを振るって整理すべき段階だと思います。さらに
特別償却制度の問題につきましても、今日まで大
企業を著しく発展させるという
意味においてはもう
制度の役割を果たしました。こういうものを整理して、今こそ
中小企業なりあるいは農業なり、そういうものの発展と近代化のために重点を完全に移行した形にしなければならないと思うわけであります。しかもこの
租税特別措置法の第二のいけない点は、
政策の
失敗というもののしりぬぐいが常に安易に税の公平の原則というものの犠牲の上に押しつけられているということであります。そういった点から考えまして、この今回の一部
改正案というものが、そういう根本問題に触れないで、当面の緊急の
政策の
失敗のしりぬぐいをするというようなことで出ていることは、非常に遺憾な点であります。従って私
どもはこの
租税特別措置法の一部
改正という問題について、今申し上げたような見地から、どうしても納得することができないわけでありまして、この今回の一部
改正案につきまして、社会党を代表して反対をいたすものであります。すべからく
政府は英断をもって次の機会にはこの技本的な改廃というものに踏み切られるように強く要望いたしまして、反対討論を終わる次第であります。