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田原委員 最近の新聞によりますと、たとえば松竹あたりも赤字続きでストライキなどをやっておるようであります。これはいろいろ
理由はありますが、外国映画に押されていると思う。では外国映画はどんな映画かというと、アメリカからのが八五%以上あるのじゃないかと思います。アメリカの映画がそんなに来るというのは、講和
会議の前後に
吉田・シーボルト協定があって、それまでに入った国のものを実績にするということに、とうとう押しまくられてアメリカものが入っておる。われわれとしては、アメリカよりあまり行かないヨーロッパのものを見たいにもかかわらず、割当が不公平であったわけです。力で押しまくられたためずっとアメリカのものを見せられているわけです。もちろんアメリカのものにもいいものがあります。しかし大半は、あなた方が見ればわかるように、底に流れているものはホワイト・スプレマシー、白人優越というものが入っている。あるいは西部劇のインディアンの映画等を見ても、ほとんど現住民の利益を尊重するのでなくて、アメリカの大陸進出を指示するようなものが中心になっている。はなはだしきは太平洋戦争中の日本軍の状況などをアメリカ側からとったような映画を日本の輸入業者は金を払って買って、そして日本人はだめだ、アメリカ人が優秀だということを金を払って鑑賞している、実にばかげたことだと思う。貿易の面においても、北鮮との貿易が再開されて強制バーターになっておりますが、この機会に
吉田・シーボルト映画協定などを破棄して、日本独自の映画産業を育てる、この意味においては映画産業に限ってはあまり融資はありませんが、輸銀の融資を貿易を盛んにするというようなことでとってもらいたい。第二は無制限にアメリカの映画を入れることをやめてもらいたい。たまたま子供がアメリカに行っておりますから、私昨年アメリカに行っておるときに、見るともなくテレビを見ていると、七本の反日映画をやっておる。見ていると、それは戦時中日本討つべしという反日排日映画を作ったやつをテレビで上映しておる。終戦直後上映しておったのが、在留日本人の反対で一時やめておったのですが、昨年また上映しておる。これは「新日米」、「ニュー・ジャパニーズ・アメリカン」というロスアンゼルスで出ている新聞で、社長は城戸三郎という戦時中兵隊に行っていた二世です。そして全米市協、オール・ジャパニーズ・アメリカン・シティズンズ・リーグというアメリカ生まれの二世の団体で、御承知でもありましょうが、その団体の前の会長で顔は日本人であり、日本語をしゃべりますが、考え方も権利もみんなアメリカ人だしその城戸君が社長をやっている「新日米」の昨年の十月十二日号にトップ四段抜きで出ております。どういうことを書いておるかというと、ここには六本の反日排日映画をテレビに上映しておることに対するアメリカ生まれの二世の抗議の状況があります。第一は「ビトレーアル・フローム・ザ・イースト」——東方からの裏切りとでも訳しますか、RKOで製作しております。スタンフォード大学のフットボールの応援団長が実は日本の海軍将校であって、そして反米行動をやっておるというような筋なんです。第二は「エア・フォース」——空軍、これはワーナー・ブラザースで製作しておる。ハワイにおける日系人の残虐行為を取り扱っております。いかに日系人が残虐であるかということをアメリカ人に知らせる映画です。第三は「アクロス・ザ・パシフィック」——太平洋を越えてとでも訳しますか、これもワーナー・ブラザースの製作です。これは日系人が日本のスパイとなってパナマ運河を爆破するという筋です。第四は「リトル・トーキョー・イン・ユーナイテッド・ステーツ」——米国の小東京、 これはカリフォルニアのロスアンゼルスの東一街、あの中心に日本人が多いので、普通リトル・トーキョーというのですが、そこで日本人グループが日本の前線として残虐行為をやったということを映画でやっておる。それから第五は「ブラック・ドラコン」——黒い龍あるいは黒龍、これは有名ならざるプロデューサーですが、サム・カズマンの製作となっておる。そして日系人で構成されたスパイ団がニューヨークを砂壊するという筋書きです。第六は「ビハインド・ザ・ライシンク・サン」——旭日旗の裏にてといいますか、そういうような題になっておる。これはコーネル大学の学生が日本に行って日本軍に入って、中国に行って残虐行為をやるという筋です。そのほかに私が見たのは「ビーチ・ヘッド」——橋頭堡というのがあります。こういうふうにアメリカでは昨年八月から九月にかけて七つの反日映画をとったのをテレビでやっておる。さすがの全米市民協会の二世の諸君も憤慨にたえなく、抗議運動を起こして署名連動をやっておった。それが十月十二日の「新日米」に載っておる。私は残念ながら旅行者ですから何にもできなかったのですが、アメリカには日本の外交官が百二十何人行っております。その中には大蔵省も入っておる。中南米全部で五十何人おる。実にアメリカ偏重の布陣でございますが、彼らは一言半句もこれに対して文句を言わない。しびれてしまっておる。この間大映で「釈迦」という映画を作ったときは、ビルマ、セイロン、タイ、インド、ほか何ヵ国かの東京の大使が
政府に抗議を申し込んだ。まだ「釈迦」が公開されていない前に抗議を申し入れた。そんなものを作ることは反対だ、われわれの目に入れることは反対だというような強硬な抗議を申し込んだ。その後どうなったか知りませんが、そのくらい外交はぴちっとやっておる。ところが戦争中に百五十本からの反日映画を作り、日本討つべし、日本は残虐な行為をやっておったということを頭に入れてしまって、終戦後それをテレビに出しておる。そこで向こうで生まれ、向こうの市民で兵隊に行った全米市民協会の人が怒ってとめさせた。ところが数年たって去年またやっておる。これに対して日本の外交官は初めからしびれてしまって何にも抗議をしない。これは別の機会に外務省にお聞きするつもりでありますが、それよりか大蔵省の方々にお伺いしたいのは、こんなに反日映画を作っておるようなアメリカから、 ホワイト・スプレマシーを基本として製作した映画を何で何千万ドルの損をかけて入手しなければならぬか、われわれ日本人として今考えることは、日本民族はりっぱな民族であり、世界のどこの国とも仲よくするという自主独立の考えを持たなければならぬ。しかるに戦争中にどんどんアメリカが作った映画を占領中に輸入した冠を輸入基準として押しつけられたままの
吉田・ウイリアムズ・シーボルト協定をそのまま守って何の改定もしない。アメリカ本国では日本討つべし、日本人は疑わしいというようなことを——全米二億の民衆に、そのサロンにテレビが入っている。そういろアメリカから何で映画を買わなければならぬか。これは特にソ連から買えというのじゃない。外国の映画もいいでしょう。優秀な映画もありますから、もう少し自主的な判断をしてやってもらいたい。ところが大蔵省は、特に
為替局長のもとに外映審議会か何かあって、もっぱら金の面で見ているというのだが、そのこと自体がおかしい。金の面で見るならば輸出を奨励したらいいじゃないか。松竹でもいいし大映でもいいから輸出できるように、金を貸して優秀なものを作らしたらいい。それをしない。それで今度は外国から、特にアメリカから入ってくる映画に対しては全く無批判にやっている。これはいかぬと思う。だから、確かに
為替局長の所管に、外国映画の輸入審議会とかいうのがありますよ。もう少し腹をきめて、為替の面から見るならばお断わりしたらいい。内容から見るならばむろんわれわれは反対しますが、為替の面で見ればバランスをとって輸出を奨励すべきではないか。輸入に対して何らの制限もせぬ。もっと言うならば、最近は改まったそうでありますが、その輸入した映画のドルをどんどんアメリカに送り返した。そんなばかなことはない。もう少し腹をきめてやってもらいたい。映画製作の面から
為替局長としてやられる最大のことは、強制バーターか何か、北鮮並みにアメリカを扱って、日本のものを十本買ったらアメリカのものを十本買う。これくらいにやればいい。わしらは北鮮とアメリカとを同等に見るくらいの、それだけの度胸があってほしい。いささか政策論になるけれども、
為替局長として今日最大のことを国民の前に示してもらいたい。