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1962-03-01 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月一日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       岡田 修一君    金子 一平君       藏内 修治君    篠田 弘作君       正示啓次郎君    竹下  登君       津雲 國利君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       古川 丈吉君    坊  秀男君       吉田 重延君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       滝井 義高君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         国税庁長官   原  純夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    有吉  正君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十七日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  濱地文平君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員武藤山治辞任につき、その補欠として中  嶋英夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中嶋英夫辞任につき、その補欠として武  藤山治君が議長指名委員に選任された。 三月一日  委員武藤山治辞任につき、その補欠として滝  井義高君が議長指名委員に選任された。 同日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として武  藤山治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号)      ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 私は、きょうは所得税法の一部を改正する法律案について、大蔵当局に質問をしたいと思いますが、それは退職年金に関する問題でございます。  実は、日本民間企業退職年金が非常に普及をしてきた原因というのは、国内的に見ますと、企業自身が相当に大資本を擁して健全になってきたということ、それから労働組合自体内部に、福祉特に老後の問題についての認識が高まってきたことが、国内的に企業年金発展をする一つの原動力をなしてきておると思います。国際的に見てみますと、米国に特に退職年金制度が普及してきた。そのほかに、ILOの鉄鋼業における補足的年金制度に対する結論というのが一九五四年に出たのですが、こういうものが影響を与えまして、一九五二年ごろから本格的に退職年金制度への胎動が見られるようになった。特にここ数年は予想外退職年金制度発展を見ておりまして、いろいろ私も調べてみましたが、企業によってそういうものをやっているかどうか外部的にほとんどわからないものが多いのですが、内実はやっている。ある人は千あるいは二千の会社がやっているだろうと言うし、ある人は、いや、それは二百四、五十だといろいろ説があるのですが、こういう新しい制度法人税に設けようとする大蔵当局は、現在日本企業で、一体どの程度のものがこういう退職年金制度というものを企業内部に持っておると把握しておりますか。
  4. 村山達雄

    村山政府委員 ただいま先生の御指摘の通り、この制度は、民間におきまして比較的最近の発達にかかるものでございまして、従いまして、また、その税制上もまだ制度としては乗っかっていないわけでございますので、実はわれわれの方でも、あまり詳細にはわかっておりません。ただ、この制度を作るにあたりまして、できるだけ調査したわけでございますが、これもいろいろなところの調査でございまして、あまりつまびらかじゃございませんが、わかっている限り申し上げます。  これは三十六年四月の、日本団体生命保険調べでは、現在適用しておるのが二百四十社だと申しております。三十六年十二月、これは去年の十二月ですが、関東経営者連盟調べでは、今度の制度ができるというので準備を完了した会社数は約五百社である、こういう発表をしております。いろいろございますが、われわれがそれらの数字調べ、あるいは直接いろいろ聞いて調べましてはっきりしておりますのは、二百八社ぐらいについては若干その内容がわかっています。今のところ大体その程度でございます。業種別規模別資本別階級別もある程度わかりますが、総体の数そのものが、そのようなことで調べるところによって若干違っておりますが、まあ三百から五百くらいの間ではなかろうかというのが、大体われわれの観測でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 この退職年金の種類というのは、退職一時金というのが、大体多いと思うのです。ところが、最近終身年金制のものも出始めてきているのですが、そこらの推移は一体どういう形になりつつありますか。
  6. 村山達雄

    村山政府委員 われわれが調べ範囲では、大体今の、第一に退職給与引当金制度がございますが、これとの関係で、併給するもの、それから年金単給のもの、それから選択制のもの、こうありまして、しかも、それぞれ併給なり単給なり選択制のものについて、観念的には有期のものと、それから終身のものが考えられますが、われわれの調べ範囲では、終身制度というのはまだ見当っておりません。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その場合における掛金事業主側だけが拠出をしておりますか、労働者側拠出をしておりますか、あるいは両者併用のものが多いのですか、その傾向はどういうことになっていますか。
  8. 村山達雄

    村山政府委員 大部分事業主負担しているようでございますが、一部従業員掛金を持つという形のものも若干見受けられます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、大体掛金は、大部分事業主で、一部従業員がかけているのが見られるということですが、その場合の年金支給額ですね、年金支給額は、一体、月にしたら最低のものでどのくらいで、最高のものがどのくらいになっておりますか。たとえば大学卒と中学卒くらいに分けていただければけっこうだと思います。
  10. 村山達雄

    村山政府委員 詳細なことはまだわかりませんが、今私の手元にありますのは、無拠出制選択制をとっているところでございますが、これは千円単位で月五千円から二万五千円まで任意である。これはつまり退職給与一時金ですね。現行退職給与引当金制度も同時にとっておりますし、それはそれでももらえるわけですが、選択制でございますから、月五千円から二万五千円まで。これは有期で十年、十五年、二十年とございますが、これは随意にとっていく、そうしたら、その分はその支給時の現在価値に還元いたしまして、それで支給すべき退職一時金からそのつど差し引きます。こういう方法をとっているのでございます。従いまして、先ほどの選択制の例でございますので、これが単給の場合にははたしてどうなるかというのは、ちょっと形が違うのじゃないかと思います。もしあれでございましたら、後刻単給制のものについて調べまして御報告申し上げたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 できれば資料として、今の、どういう会社がやっているということと、それから掛金併給単給選択制の実態、それから事業主だけがやっている場合と、事業中も労働者両方掛金でやっている場合、それから今の支給金額を、単給の場合と、併給の場合と、選択制の場合と分けて、その全貌と、一番典型的な例を一表、表にして出していただきたいと思うのです。
  12. 村山達雄

    村山政府委員 ただいま御注文の点はさっそく出しますが、わかっている限り今申し上げます。  ここでの調べは二百四十九社でございますが、そのうち併給をとっておりますのが百九十三社、単給が二社、選択制が五十社ということになっています。  それから拠出、無拠出関係でございますが、拠出制が八十七でございます。これは一部拠出でございます。それから無拠出制が百六十二という数字になっております。  それから年金支給期間、だいぶ終身のものもあります。これで見ますと、同じく二百四十九社のうち四十一社が終身有期五年が五十一社、十年が八十社、十五年が三社ということになっております。今わかっているのは大体その程度でございますが、詳しいことは後ほど調べた上で御報告申し上げます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 大体今の御説明で、現在行なわれておる私的退職年金の概要を御説明いただいたわけです。  そこで少し本質論に入ることになるわけですが、税務当局は、今度新しい退職年金制度に、その積立金については法人税を課することになるわけですが、この制度民間企業政府と契約をしている厚生年金に一体どういう影響を及ぼすと判断されるかということです。御存じ通り退職年金制度というのは、私が一番初めに指摘したように、何としても労働者老後に対する自覚というものが大きな呼び水となったことは確実です。従って、それと同じような制度である国の厚生年金——現在厚生年金に加入しておる人は千五百八十二万四千人程度昭和三十七年度の予算ではその程度の被保険者の数を見ているわけです。この制度を実施することによって、これに一体どういう影響がくると判断されておるかということです。
  14. 村山達雄

    村山政府委員 現在の時点でこの制度を起こすことは、現行厚生年金制度には直接の影響はないものと私は思っております。ただこの制度を作るに際しまして、厚生省当局ともいろいろと打ち合わせたわけでございますが、将来この厚生年金制度の拡大を特に金額的にはかっていき、それを社会保障制度の一環としてもっと基本給付金額を上げるとかいうことになって参りますと、そこには関連がある。しかし、現状ではすでに今の厚生年金制度は強制実施されておりまして、すべてがそれを履行しているわけでございます。従って、その方が下積みということになりまして、余裕のある者がやるわけでございます。その点につきましては、現在の退職給与引当金制度と全く同じでございまして、それぞれ労使でもって御相談なさって、厚生年金はもちろんあるわけでございますが、そのほかに退職給与引当金というものを作るか作らぬかということは任意でございます。余裕のあるところは作っているわけでございますが、それのかわりに今度は年金制度にするか、さらにあるいは併給にするかという問題でございます。従って、これらの制度下積み厚生年金制度があると考えますれば、直接には関係はないということが言えるかと思います。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そこらが少し認識が違うわけです。そこで認識の違う点を明らかにしていきますが、現在民間給与支払い総額の中で、退職金の占める率というのはどの程度ですか。
  16. 村山達雄

    村山政府委員 今ちょっと意味がとりかねたのでございますが、おっしゃいます点は、民間会社なら会社従業員に支払う給与、賞与、それから退職資金がどれくらいか、そのうち全体を一00とした場合に退職金は・・。これは今ちょうどその資料を持ってきておりませんので、いずれ午後からでもわかっている限りお出ししたいと思います。
  17. 滝井義高

    滝井委員 実はここがこれから論議するポイントになるわけです。これは専門家村山主税局長御存じ通り、総給与支払額の中で退職金給与支払いを非常に圧迫するかしないかということが問題なんです。これは企業が今まではこういうものを一時金としてやっておったものを、年金でいくにしても、終身年金にしても、やるということは、簡単にいえば分割払いになるわけです。これは三才の童子といえどもわかる。今までのように百万とか二百万とか一時に払うよりも、それは企業経営にとっては重圧にならないわけです。だから、私が年金の月の支給額は幾らですかとお尋ねするのはそこなんです。これは五千円とか二万五千円ならば、企業は割合簡単に支払っていけるわけです。これは私は、午後はちょっとおらぬからあるいは次回になるかもしれぬが、資料として出していただきたいと思います。留保しておきます。これは非常に重要なことになるわけです。ここから厚生年金関係が出てくることになるわけです。御存じ通り企業における労働者は全部厚生年金に加入しているわけです。五人以上の事業場厚生年金強制加入ですから全部加入しています。法律で除外された者以外は全部加入している。現在厚生年金保険料の半額は事業主持ちです。最近における日本雇用構造というものがどういう工合に変わってきているかというと、独立自営業というものは少なくなってきている。農村から都市に向かって一年に約五百万以上の人が移動するわけですから、これはほとんど雇用労働者になる。雇用労働者の形でふえるのは、たとえば政府管掌健康保険組合管掌健康保険を見ると一年間に約二百万ふえる。そのことは何を意味するかというと、厚生年金にその数が大体ふえてきていることを意味する。そうすると、企業のこの保険料——特に企業というものは厚生年金健康保険失業保険、労災は全部自分持ちです。こういうものをしますと、千円について百二十円程度、ちょっとそこははっきりしませんが、百二十円前後払うわけです。これは企業にとっては大へんなことです。そこで今後厚生年金掛金が問題になってくる。なぜならば事業家にとっては出て行く財布は一つですから。そうしますと、これは村山さん御存じだと思いますが、厚生年金は五年に一回計算のやりかえをやるわけです。現在厚生年金定額部分報酬比例部分がございます。定額部分は月二千円、年間二万四千円、それに報酬比例部分を加えてもわずかです。  ちょうど岩尾さんが来ましたから尋ねることになるのですが、今、厚生年金のことをちょっと尋ねている。岩尾さん、今の厚生年金は、あなた御存じ通り定額部分報酬比例部分があるのですね。これは今平均したら、あれは二十年でもらえますね。鉱内夫が十五年、一般の勤労者厚生年金を二十年掛けてもらう月額の手取りは、一体今はどの程度ですか。
  18. 岩尾一

    岩尾説明員 こまかい計算をしていませんけれども、大体三千円ぐらいでございます。
  19. 滝井義高

    滝井委員 今証人が来ましたが、三千円ですよ。わずかに三千円です。そこで、今世論はどういう世論に向かいつつあるかというと、日本老人人口が非常に増加をした、急激な増加です。これは短期のいわゆる健康保険疾病保険よりか老齢年金に対する輿望が非常に強くなった。今日の紅顔の美少年も、これはもうすべて例外なく門口は白髪の老人になるのですからね。病気はそうしょっちゅうはならないのですよ。これは例外があるのです、死ぬときはみんな病気で死にますが。とにかく老人にならない人はいないでしょう。ここにこれだけおられるが、これは全部老人になる。確実です。これは真実なんです。従って、これに対する熱望というのが非常に強くなって、今若尾さんが御説明になったような三千円程度厚生年金ではだめだからこれをふやしてくれという要望が強いのです。これはやはり今五千円から六千円にしてくれ、少なくとも七千円にしてくれという要望が強い。そうしますと、これは企業負担が飛躍的に増加するのです。昭和三十四年に一回改定をやりまして、今度三十九年です。ところが、三十九年にこれの改定を実施しようとするならば、年金は非常な積み重ねの計算が要りますから、一年半から二年完成までにはかかる。そうすると、ちょうど今作業中です。作業が今本格的になろうとしているときです。その前に、今度は企業内部で、こういう退職年金私的年金を奨励するような制度が出れば、一体どういう結果が出てくるかというと、厚生年金は進まないのです。それはすでに殷鑑遠からず、例があるのです。どういう例があるかというと、健康保険組合政府管掌健康保険を見てごらんなさい。これは医療の内容で貧民と貴族の差がある。一方は付加給付があって、家族までほとんど無料で見てもらえるところがあるのです。そうして大企業は、保険料事業主負担分というものはほとんど全部出すのです。たとえば一番典型的なものは、銀行のごときは、労働者側は千分の六十五のうち十か十一、はなはだしいところは十以下しか出さないのですよ。そして事業主側がほとんど全部持つわけです。こういう形になっているわけです。ですから、これはこういう制度になれば、年金に金を出すことは事業主はいやになるわけです。なぜならば給与総額における退職金の占める比率は非常に増加してきつつある現状で、これをまた三千円のものを六千円にすれば、今の倍は出さなければならぬことになるのです。そうすると、企業は一方においては世界的な傾向としての私的年金と国が強制的に適用する厚生年金との板ばさみにあうわけです。これがこの法案を提出した理由だというのが私の断定です。私の見通しです。そうすると、一体大蔵当局は、日本の貧しい九千四百万の国民老後保障するこの厚生年金制度というものを、春秋の筆法をもってすれば、大蔵省は、この法人税を制定することによっていわばじゃまをすることになる。だからこういう点に対する認識というものが今の村山さんの答弁は欠けておるのですね。もう一つ、二つ、三つ先のところをやはり考えていただかなければならぬ。厚生省はちょうど作業中ですよ。これをもしあなた方が今度の国会でお通しになってしまえば、もう厚生年金は来年岩尾さんがいかにがんばってやろうとしたってだめです。この点に対して私はるる御説明申し上げましたけれども、これを立法をしたのは、そういう厚生年金との関係は直接関係がない、間接的にはいろいろあるかもしれないけれどもという答弁だったけれども、それではちょっと納得しない。
  20. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど申し上げましたのは、厚生年金改定する場合にどういう影響を及ぼすかということを申し上げたわけではございません。現在の厚生年金はこのままである。ここでスタートした場合には、もっぱら現在の任意退職給与引当金との間に振りかえが行なわれるか、あるいはプラス・アルファ、——それは一番下積みに強制されておる厚生年金があり、その上に任意退職給与引当金があるわけでございます。ですから、現状ではそこで振りかえになるであろう、そういうことを申し上げたにすぎないわけでございます。  それから先ほどの企業に対する圧迫という問題でございますが、そのためにこそ、その一時金も支払わないように退職給与引当金損金勘定で毎年毎年現在引き当てを認めているわけでございます。それで先ほど申しました三十九年にこの厚生年金規模を拡大する計画があるということは、これは厚生省の方からるる承っております。従いまして、われわれといたしましても、現在のようにだんだん平均寿命が延びていく場合に、老後保障としてこの社会保障制度がだんだん拡大していくということは望ましいことでございますので、その切りかえの際には、この年金のうちどこまでくるかわかりませんが、この発達したであろう私的年金と当然そこに振りかえがあるものというふうに考えておりまして、そのときの制度の切りかえ方等についてはだんだん打ち合わせ中でございます。ただ今のところ、聞いたところでは、厚生省の方で今の厚生年金制度を具体的にどう切りかえるのかというところまでまだ案ができておりません。聞くところによりますと、先ほどお話のありましたような定額の二万五千円分、これを六万円にするとか、あるいは報酬比例部分、これも相当上げるとか——しかし報酬比例部分になりますと、御案内のように、大企業中小企業とは相当違います。それにしても大体すべての企業をまかなう報酬比例部分だけは、厚生年金に持っていく、そうすると、大企業の方で報酬比例部分上積み分が出てくる。これを一体どうするか、こういう点までの話でございますが、何分にもまだ厚生省作業の途中でございまして、まあそういういろいろな御構想があるから、そのときには切りかえてもらいたい。そのときに、同時にそれがもし厚生年金に移り変わるようであれば、税の方の制度としても同時に移り変わるようにしてほしい。税の方のことを申し上げますと、現在のところ社会保障制度につきましては、本人の掛金は全部所得から控除いたします。それからそのかわりにもらったものは、一時金でございますれば退職所得にいたしますし、年金であれば給与といたします。その場合、運用益に対しては課税いたしておりません。それだけの税制上の違いがあるわけでございます。それで掛金について給与所得課税は行なわない。これだけの違いでございますので、その切りかえ措置だけを考えておけばこれは決してマイナスになることはなかろうというふうに考えております。  それからもう一つ申し上げておきますが、今度の制度は、税法の上から申しますと、これは別に恩典でも何でもございません。要するに掛金を出す法人の経理上損金であるか損金でないかという問題にすぎないわけでございます。従いまして、条件を縛りまして、それが最終的に企業からの支配を離れる掛金である。もっぱら従業員の将来の年金原資に充てられて、それが再び企業に還流することはないという保証がありますれば、これは当然法人税計算損金たるの性質を持つわけでございます。ただ、その場合問題になりますのは、その運用掛金について非課税にいたしますと、そこに税金のかからない膨大なる資金が出るわけでございます。それは御案内のように、今日の状態から言いまして、現在この制度というのは、ある程度今のところ残念ながら大企業に限られるのじゃないか。中小もあるかもしれませんが、比較的大企業に限られる。そこにその運用益課税しないということは、いかにも不穏当だということで、今度ここに提案してございますように、その運用益につきましては、所得税に対する課税留保分遅延分といたしまして、いわば所得税遅延利息に相当するものを単に法律技術の上で法人税という名前でとっておるというにすぎないのであります。従いまして、これはそういう意味で、税の方では優遇でも何でもないのでございまして、こういう形を持ってくれば当然損金になるというわけでございます。  なお先ほど申し上げましたように、繰り返して申し上げますと、社会保障制度の拡充の場合には、われわれも厚生省十分打ち合わせの上、この制度が円滑に移り変わるようにという研究は、目下両省で共同的に進めておる、こういう段階でございます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 今度の改正が一体企業に何ら恩恵のないものならばあわててやる必要はないと思うのです。これは逆説的に言えばそうなる。厚生年金はもうすでに今作業中だし、次の通常国会には提出されます。次の通前国会にやらなければ、三十九年から変わるのですから間に合わない。だから次の通常国会といえば、三十七年の終わりか三十八年にできるわけです。そしてそれが実施されて三十九年から動くことになるわけです。ここ一、二年のことだからあわてることはないのです。  それから恩典がないとおっしゃいましたが、これは今までは有期年金退職引当金対象になりますけれども、終身のものはならないのでしょう。今度は終身のものも引当金対象にするのじゃないですか。
  22. 村山達雄

    村山政府委員 やや誤解があるかと思いますが、現在、退職給与引当金で引き当てた場合に損金になるのは、今直ちにやめても、もらえるであろう金額つまりその意味でもって、会社からいえば債務の確定しておるもの、従って停年退職ではございません、今すぐやめた場合には、自己の都合による退職一時金はベースが違います。そういう、やめてもすぐもらえるであろうというもの、同時に会社の労働協約その他におきましても、いつやめてもくれるということははっきりしている一時金に限って損金にしているわけでございます。問題は、会社の中には、すでに現在二十年勤めておる人がやめれば年金を差し上げますという、そういう労働協約を結んでいる、年金としてやるというものがあるわけでございます。しかもその場合に、まだ在職十年の人についてはその債務は企業側から見まして確定しておりません。ただ二十年たった人については債務が確定しているはずでございます。従いまして、われわれの方でもそういうものについては、もちろん現在の退職給与引当金の中で損金として計上しているわけでございます。その場合、有期であればすぐ計算が単純にできるわけであります。今もすでに受給資格が発生していますから、そうするとあなたは何年ということで計算ができます。できますが、無期のものについては法律にその規定がなかったというにすぎぬわけでありまして、それは計算ができないことはなかったわけであります。はっきり申しますと、平均余命で将来の期間を計算することは可能だったわけですが、それをやっていなかったということにすぎぬわけでございまして、今度はしかもそのことは、法律の規定はなくても、おそらく税務の取り扱いにおいても、無期のものについては平均余命で計算するのが普通でございます。それを今までやってなかったのをやろうというにすぎぬわけでございます。ですから、おっしゃったようなこととはやや違うわけであります。
  23. 滝井義高

    滝井委員 私の質問は、今までは有期年金しかやっていなかったはずですが、今度この法律終身のものをやることになるでしょう。こう言っているのです。これは当然やることになっておったのだが、法律ではそういう仕組みになっていなかったから、こうおっしゃるけれども、これは終身のものをやることになるのでしょう、やらないのですか。
  24. 村山達雄

    村山政府委員 ちょっと、あるいはまた私の説明が足りないために言われるのかもしれませんが、現在の退職給与引当金というのは、実は内部留保なんです。内部留保にもかかわらずわれわれが損金性ありと認めているゆえんのものは、債務性が出たというところなんです。ですから一時金であろうが年金であろうが、債務性のあるものは引かねばならぬわけでございます。ところが実際の労働協約その他においては、ほとんど退職一時金について労働協約が結ばれておりますので、その限度において債務性が確定しておる。ただ中には、すでに在職二十年たっている者については、年金支給するという労働協約その他の定めがあるものがございまして、すでにその個々の従業員を見た場合に、二十年たっている人については債務性があるわけでございます。従って今度の制度を待つまでもなく、そういう人たちについては、現在の内部留保の方法による退職給与引当金制度の中で運用できるはずだ、こう申し上げておるわけです。しかしその場合、そこが問題でございますが、無期の場合といえども、終身といえども余命計算できたはずのところをしていなかった、こう申し上げているのです。これはいわば税務当局の方が気がつかないか、あるいは極端にいえば若干不親切であったか、こう申し上げておるのです。今度やろうというのはそうではなくて、内部留保ではなくて外部拠出で持っていこうというのです。そこの方は今度は有期であろうが終身であろうが当然やるわけでございます。
  25. 滝井義高

    滝井委員 それはわかっている。退職給与引当金制度に当たるものは内部留保のものなんですから。しろうとだけれどもそれは勉強してきていますから、そこはあまりくどく言わぬでもわかっている。あなた方はバランス論でいっているのですよ。今までは税法有期のものしか認めていなかったのですよ。無期のものをみんな損金にしてやりましたか、やっていなかったはずなんですよ。今度はこの法律の改正でそれができることになるところに私は問題があるというのです。なぜかといえば、厚生年金とここで関連が出てくるのです。ここでますます出てくるのです。だから、これは一国の社会保障全体に関連をするから、バランスだけでいかないということがここにあるわけなんですよ。税法というものは、バランスばかりではなくて、ある程度政策なんですね。これは自由民主党の政策として出てくるわけです。バランスだけでいくというならば、与党の税制制度なんというのは要らぬわけです。これはやはり一つの政策として出てくるわけですから、今まではそれはやっていなかった。ところが今度は、あなた方は債務性がある、なるほどそれは債務性があるでしょうけれども、債務性だけでいきますと、各種の準備金や引当金なんというものは、利益の留保たる性格を持っているものがたくさんあるのです。債務性がないものはうんとある。租税特別措置法なんかごらんになりますと、その理論を貫いていくとやめなければならぬものがずいぶんありますよ、今の債務性の理論で一貫していくということになれば。これは明らかに、各種の準備金や引当金の中で、利益の留保たる性格を持っているものはうんとある。それは債務性は退職給与引当金が一番ある、そういう点では私は意見の一致を見るわけです。あの今までやっていなかった無期の年金にまで今度の制度を拡大することは、厚生年金がはっきりするまで待ったらどうだというのが私の意見なんです。外に積む社外の方はこれからやります、今は社内のところの、そもそもの根本をやっているのですから。そこで、その論をもう少しわかりやすくやるために、今一体企業内部でこの退職給与引当金として積み立てられておる、内部留保されておる金額は一体どのくらいありますか。そうしてしかもそれが一年にどの程度増加しつつあるのか、これを見てみればすぐわかるのです。
  26. 村山達雄

    村山政府委員 今おっしゃっているのは退職給与引当金だけでありますか。
  27. 滝井義高

    滝井委員 そうです。内部留保です。
  28. 村山達雄

    村山政府委員 三十六年度予算でございますが、三千七百九十八億円になっております。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、最近一年に大体どの程度ずつ内部留保が増加しつつありますか。
  30. 村山達雄

    村山政府委員 あまり古いところを申し上げてもなんでございますが、三十三、四、五、六とございますが、三十三年では三百四十三億、三十四年三百三十億、三十五年四百五十四億、三十六年五百九十億でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 ごらんの通りですね。飛躍的に増加をしてきているわけです。今度この措置ができるために五百億をこえますよ。あなたがさいぜん御説明になったように、すでに関東経営者連盟で準備完了五百社こう出てきておるわけです。終身のものを認めれば、これはウナギ上りです。現在すでに三千七百九十八億に、年間五百億から六百億、これが加わっていけば、内部留保は飛躍的に増加するわけです。この内部留保の金はどういう工合に資本内部では使われておりますか。
  32. 村山達雄

    村山政府委員 今ちょっと前段のお話ですが、今度の企業年金ができますと、これは内部留保にはなりません。外部拠出でございまして、企業の支配下を離れるわけでございますので・・。
  33. 滝井義高

    滝井委員 それは全部外部にならないです。
  34. 村山達雄

    村山政府委員 いや、それならば、従来の退職給与引当金の中でやるという問題でございます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 今、退職給与引当金のことを議論している。外のことを議論してはおらぬ。外を言わぬで下さい。外はあとで尋ねますから・・。
  36. 村山達雄

    村山政府委員 この運用は何に使っても自由なわけです。ただ御案内のように、特定預金として、この二割五分相当額は政令で指定する預金とか、そういった換価容易なもの、確実なものに運用しなければならぬということになっているわけでございます。それ以外の制限は税法上ではございません。
  37. 滝井義高

    滝井委員 何に使ってもよろしいということは、——企業の運転資金に使うわけです。ここが重要なところなんですよ。そうしますと、あなたの今の議論をそのまま借用すれば、労働者老後保障するために、当然支払わなければならぬと債務が確定しておるのです。そうでしょう。その確定をしておるものを企業は自由に使うわけですよ。そうしますと、これはアメリカでも日本でもパニックが一九二〇年から三十年に起こった。このときに一体アメリカの私的年金はどういう運命をたどったかということです。あるいは日本厚生年金は、国が保証しておったにもかかわらず、どういう状態になったかということ、これを考えなければいかぬのです。これを税制で、退職給与引当金ということで終身年金が今度は拡大をするような形をとっていくということになれば、これは増加をする。二割五分ですから、その四分の一はなるほど社外に特定預金として持っていっておりますけれども、残りは自由に使われるわけです。そうしますと、スライドを一体確実に認めてくれるのかどうか、それから企業が倒れたときにだれが保証するのか、こういう点から見て債務の確定しておるもので、しかも恩典として税法上の損金算入を一部認めるというような、こういうものを奨励をすることがいいかどうかということです。今のこの日本の脆弱な動揺ただならざる経済のもとでいいのかどうかというこです。当然こういうことをやる前に、そういう金をどしどし税金でとらなければいかぬと思うのです。どしどし税金で取って、今度はそれを国の厚生年金の国庫負担に回すのです。今国庫負担は一割五分しか出ていない。零細企業を中心として、平均したら一事業従業員の数が二十五人以下の企業労働者が、あそこに千万集まっております。そういうところにこれを税金で取って回すべきだと思うのです。年間二百何十億の金が集まるのですからね。今の日本の段階では、こういうところに恩典を浴させる必要はないのです。ところがこういうものが先行し、まかり通って、そうして零細な中小企業の層にはちっとも行かぬのです。ここでまた岩尾さんにお尋ねすることになるわけですが、今零細企業のために中小企業退職金共済制度というものができて、中小企業退職金事業団というものができているわけです。そうしてこれはたぶん一口千円きざみで、二百円以上、二口以上千円までで事業主がそれに見合った掛金を積むと、労働者がやめたときにその退職金をくれることになるわけです。これだってわずかしか国が出しておらぬわけです。いわゆるバランス論からいけば——何も税法上だけのバランスが問題じゃないのです。日本国全体のバランスがどうなんだということです。池田内閣所得格差をなくそうという政策をおとりになるからには、こういう厚生年金とか中小企業退職金共済制度というものが先行されなければならぬ。その先行するための財源はどこから持ってくるかということ、こういうところの企業から税金を取り上げる以外に日本には方法がないのです。ところがこれが税のバランス論だけで、狭い範囲のいわゆる井蛙の見ですよ。井戸の中から天井をのぞくような見解で、バランスだけでやっておったら、とてもこういう岩尾さんの方のそういう政策を進める財源なんか出ないのです。ふえやしないのでしょう。これは社会保障を担当する主計官として、こういう制度が一体まかり通っていいのかどうかということです。これは大蔵省の内部問題だから、まず井戸の中で先に見解を統一してもらう必要があるのです。こちらは局長さんだし、向こうは主計官ですから、なかなか心に思って口まで出ておっても言えぬと思うのですが、そういう立場がある。そこでどうせこれは大臣に一ぺん来てもらわなければならぬのです。本の社会保障制度の根本論ですから、大臣に来てもらわなければならぬので、ちょっと岩尾さんに答弁を求めるのは気の毒だと思います。そこで積立金現状というものはウナギ登りに増加をしてきているわけですね。ここで今度関連が出てくるのは、しからばこういうようにウナギ登りに上っておるということは、それだけ退職金企業内部では積まなければならぬという事態が起ってきているということを意味するわけです。積まなければならぬけれども、今度は岩尾さんの方の所管の厚生年金保険料率を上げると、ここの金がこれに回ることになるのですね。ここの金が回ることになることは経営者にとっては一大苦痛なんです。なぜならばこっちに回ったんでは自分の企業内部でこの金を使うことができない。使うことができないばかりでなくて、厚生年金積立金が回ると——企業はこの金を借りております。この金を借りて、企業の住宅を建てたり病院を建てようとすると、六分なり六分五厘の利子を払わなければならぬ。ところがこれを社内に留保さえしておけば、利子を払わなくて自分で自由に使えるのですから、大蔵省や厚生省に頭を下げなくていいんですよ。天下泰平ですよ。この制度の中にはこういうからくりがあるのです。ここまでみな気がついていない。こういうからくりが単なる税法の中の一行か二行でまかり通ったら大へんですよ。いかにそれは、日経連が力が強い、あるいは自由民主党を力で押えつけるといったって、こんなことがまかり通られたら大へんなことですよ。だから私はこれはやめてもらわなければならぬ。社会党は断然これは削除だというのですよ。私は党内で強硬な主張をします。削除しなければいかぬ。こんなものを許しておったら大へんですよ。  そこで今度岩尾さんにお聞きすることになる。今の厚生年金掛金の中で、比例部分定額部分と家族付加給付部分がありますね。これは遺族年金その他をやりますから。この厚生年金保険料の中で、比例部分のパーセンテージが幾らで、定額部分が幾らで、付加給付部分が幾らであるということをお調べになったことがありますか。これはあなた方が保険料の想定をなさる場合には当然これが基礎になるのですよ。そうしなければ年金のあれが出てこないのですから。
  38. 岩尾一

    岩尾説明員 御質問は今の厚生年金保険料の中でどういう配分になっているかということかと思います。計算の方は保険料全体で考えておりますので、こまかく分けては計算しておりません。
  39. 滝井義高

    滝井委員 それは計算しないとあれが出てこないのです。たとえば定額部分は二万四千ときまっておるのですから、これに見合う保険料は幾ら、こうなるのです。そうならなければうそです。これはあれだったら一ぺん次会までにはっきりしていただきたい。  そこで今質問をしましたけれども、この質問部分がちょっとはっきりしない。これがまた重要部分なんです。一体比例部分がどの程度占めているかによって事業主負担が違ってくるのです。そこで村山さんにお尋ねしますが、今あなた方がこういう制度をおとりになろうとしておるが、一体ヨーロッパ諸国はどうなんだということです。これが大事なところなんです。また日本年金というのはヨーロッパ諸国を相当まねしてきているのです。だからヨーロッパ諸国ではこういう退職年金制度というものはどうなっておるか。これはあなた方の方の税制調査会の討議ではちゃんとやられていますよ。
  40. 村山達雄

    村山政府委員 いろいろ御質問がありましたが、最後のところの外国の制度でございますが、これは外部拠出しか認めないという国と、それから外部拠出内部も、内部においても債務確定したものについて認めるというように、併用している国とがございます。前段の外部拠出しか認めていない国は、全部調べたわけではございませんが、米国、英国がその方でございます。ドイツは、どちらも債務性があるということで、任意にどちらを選んでもけっこうだということになっております。  それから先ほどお話がございましたが、今の退職給与引当金について有期にとどめないで無期を認めると非常にそれがふえるというのは、どうも私は実感として出ないのであります。つまり現在でも受給資格のあるものについては債務性があって、税法には損金に認めておるわけです。損金であるものを税法上特にほかの政策の必要上損金性を否認しろというお話であれば別でありますが、それは税務の方の執行上の手落ちだ、はっきり申しまして、私はそう思っておりますが、有期について債務性があるのなら、無期についても債務性を認めてちっとも差しつかえない問題である、そのことによって、それならどのくらいふえるか、ふえるふえないは二の次の問題でありますが、実感からいって、私はふえる気がしないのであります。と申しますのは、今のように内部留保制で、現在そもそも年金制を認めているところが非常に少ないわけでございます。今度のものは受給資格が生じなくとも、外部に拠出すれば認める。従って、企業にとっても、もらう方にとっても、あらかじめ積み立てるという利益があるわけでございます。内部留保の方はいつでも受給資格のすでに生じているものでなければ債務性なしということでございますので、そういうことはほとんどないわけでございます。おそらく従業員相互のバランスからいいまして、すべてのものについて掛け込めということになるにきまっておると思うのです。だから、なかなか年金制というものが内部留保の場合にはいかれない。それは税法の方で債務性のあるものも認めていないということのためだろうと思うのです。今度のはそうではなくて、受給資格がなくても、その支配権を最終的に放棄するなら損金性があるのじゃないか、ここにあるわけでございますので、おっしゃるように、現在の内部留保制の中に現在の有期のほかに、無期についても一定の計算方法で——その計算もただ計算方法を示すというだけにいかぬわけですが、その計算方法を示したからといってそれが急にふえるということは、われわれには考えられないわけであります。
  41. 滝井義高

    滝井委員 有期は今まで手落ちであった、当然やるべきであったと言うけれども、何ぞ気づくことのおそかりしや。もうこれは一年、二年じゃない、ずいぶん言っているのです。口というものは重宝なもので、そのときそのときでどうでもできる。根本論のところはどうも保険局にもちょっと来てもらわなければいかぬところにきております。そこで、税法の根本論のところは次会に譲って、今度は税法の各論のところに入っていきます。  この企業年金税制整備による国税の減税額は一体初年度幾らで、平年度幾らになりますか。
  42. 村山達雄

    村山政府委員 初年度七億、平年度二十三億程度と見ております。
  43. 滝井義高

    滝井委員 なかなか莫大な額です。今、政府管掌健康保険に一千万の中小企業労働者が入っておるのですが、これは一体事務費以外に国の予算を幾ら出しておりますか。
  44. 岩尾一

    岩尾説明員 三十六年度は八億、三十七年度は五億。
  45. 滝井義高

    滝井委員 ごらんの通りです。わずかに五億ですね。この二十三億の減税がありましたら、もう健康保険は天下泰平ですよ。こういう実態なんです。もう少し大蔵省内部の討議をやる必要があるのです。活発な省議を開いて、そうしてやはり均衡論、バランス論でいくなら、国民全体のバランスをとらなければいかぬ、税法だけのバランスでは、こういう大きな上手の手から漏れてざるになってしまう。そこで今度は、今、内部留保の問題をやったのですが、外のものについて少し質問します。今度この改正で社外留保をやる。その場合に保険会社やら信託に預けることになるわけですね。社外に留保できる機関というものはどういうところだけになっておるのですか。
  46. 村山達雄

    村山政府委員 今考えておりますが、何分にもこれは外部拠出でございまして、その運営については会社は責任はないわけであります。しかもそれは従業員年金原資になるわけでございますので、確実安全に運用するものでなければならぬと考えます。この制度のスタートにおきましては、それに適するものとして信託会社、生命保険会社だけに限定して参りたいというふうに考えておるわけでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 私、何か本を読んでおったら、銀行は今まではサービスといえばカレンダーかマッチ箱、それからまあ手ぬぐいというのがサービスの限界だった。ところが最近は銀行のサービスのニュー・フェースが出てきたというのを読んだことがある。それは何ぞやと思ったら、最近国民年金ができて、国民年金貯金というものをやっておるのです。たとえば、あなた四万円預金して下さい、そうすればあなたは国民年金保険料を払わなくてもよろしい、私の銀行が一切責任を持って払います、こういう制度が出てきているのです。これは今のこれと関係してくるのです。これは貯金の形で私、滝井義高個人の一切の保険料支払いの責任を持ってくれるわけです。信託と生命保険は今度は退職金の責任を持つけれども、しかし同時に保険料支払いの責任を持つ。今度は退職金の方に当たる年金の給付は国が責任を持ってくれておりますから、非常によく似たことになるわけですが、そういう年金保険料支払い責任を銀行が持った貯金というものに対する考え方、それは現実に行なわれておりますか。どんどん勧誘して回っております。厚生省の役人のかわりに銀行が保険料の納入の事務をやることになるわけです。そうすると、ある意味では、市町村に、今厚生年金の事務費をやって保険料の徴集をやっておる。今度銀行にその事務費をやらなければならぬことになるのじゃないかと思うのです。これは岩尾さんにも関係してくる。これに対する銀行局長の見解をお聞きをしておきたい。
  48. 大月高

    ○大月政府委員 銀行預金につきましては、特別の特約を設けまして、いろいろな条件をつけることを認めております。従いまして、今御質問の趣旨がどういう点にあるのかちょっとわかりかねるのでございますが、具体的な例をお示しいただければお答えいたします。
  49. 滝井義高

    滝井委員 滝井義高国民年金の被保険者になるわけです。そうすると、私は二十才から三十四才までは月額百円、三十五才から五十九才までは百五十円の保険料国民年金法で納めることになる。これはすべて強制加入です。現在約千七、八百万人の中小企業者ないしは農民が加入しています。労働者の妻というものは任意加入ですから、これが加入すると実際の加入の数は二千四、五百万くらいになると思うのです。あるいはそれ以上になるかもしれません。現在千七、八百万の人が加入しておる。そうすると今度私が自分で国民年金印紙を買って、国民年金手帳に張るわけです。張って市町村に行ってスタンプをもらうことになるわけです。ところが今度は銀行が私のところに来て、私どもの方で今度年金の預金を作りました。だから一つあなたもこれに加入して下さいという、多分四万円ですよ。そうすると、ちょうど年に六分程度にすると二千円か二千四、五百円のあれが出てくるわけですから、それで年金支払い事務を銀行がやってくれるという形だと思うのです。これは保険料を徴収することが、日本年金制度の推進の一番むずかしいところです。これを銀行が特約することになるわけです。私の言いたいのは、そういう制度というものは銀行としてはどうでしょうか。そうなると、これは市町村は、銀行に全部やれば、市町村の事務というものは半減することになる。そうすると今度国は、銀行に年金保険料徴収の手当を出さなければならぬことになるのではないかという問題もそこに出てくる。これは岩尾さんの方の問題になるわけです。こういうものが現実にある。だからこれをある人はサービス過剰だと言って皮肉っておった。そうして今度はもう一つ問題が出てくるのは、そういうことをやる銀行の指定が行なわれるわけです。A銀行、B銀行、C銀行は、一つ厚生省のこういうものを取り立てる銀行になってくれぬかという指定を、今やっているかどうか知らぬが、やる可能性が十分出てくる。なぜならば、そういうものを扱わせる銀行は、信用のある銀行でなければ大へんなことになる。取付をされるような不安定な銀行では大へんです。そうすると指定を受ければ、特定の銀行だけがそういう業務をやるという可能性が出てくるわけです。こういうことが一体銀行行政上いいのか悪いのか、あるいは社会保険の岩尾さんの方は、こういうことをやった場合に、三十七年の予算の事務費の関係というものは一体どういう関係になるのかということです。そのことが今度村山さんの方にも関係が出てくる。
  50. 大月高

    ○大月政府委員 今の問題は、多分ある個人が預金いたしまして、その預金を目的預金としてどういう目的に使うかという主観的な問題じゃなかろうかと思います。たとえば家を建てたいというために貯金をする。それから今納税貯蓄組合というような問題がございますけれども、これは普通の預金でございまして、税法上も預金の金利も優遇いたしておりますが、これは御本人が納税に充てるという目的で貯金しております。そういう意味から申しますと、今の国民年金保険料に充てるのだ、そうすると四万円を貯金しておけば、ちょうど利子でもって払えるという主観的な問題でございます。そういたしますと、今のお話をこまかく分析してみますと、御本人は四万円の貯金をして、一年たつとその利息が何千円かもらえる、それを引き出して、それを本人が保険料として払い込む、これが法律上の性格だと思います。それをやるために銀行がどの程度お手伝いするかということでございまして、預金の本質には反しない。具体的に私その事例を存じませんが、どの程度までお手伝いしておるかということは、非常に具体的な問題で、デリケートであると思います。それでわれわれといたしましては、いわゆる過剰サービスということでございまして、本来の銀行の仕事は、預金をある個人から預かりまして、それを安全に保管いたしまして、約定の利息をつけてお返しするというのが仕事であって、いろいろな余分なことはしない。それがある一定の範囲に参りますれば、付随業務として認められる範囲かどうかという法律論になって参ります。われわれの行政指導の方針としては、余分なことには極力手を出さないように、こういう指導をいたしておりますので、今のお話の具体的な事例は、どの銀行がどうやっておるかということをもう少し検討してみないとわからないかと思います。従いまして、国民年金制度一つの代行機関として銀行を使っていくというようなことは、非常に問題であらうかと考えております。現にただ付随業務といたしまして、たとえば株式の払込金の取り扱いというようなことはやっておるわけでございますが、これは当然ある会社の新株募集をいたしますれば、ある個人の名前で払い込む。しかし払い込みますとそれは会社の金になるわけでございます。それは当然ある払い込み銀行の会社の預金になる、そういう性質のものでございますので、現に慣習としてやっておりますけれども、今お話のございましたような、国民年金保険料を取り扱う問題とは性質が違うのではなかろうかと考えております。
  51. 滝井義高

    滝井委員 多分東京都の保険部か何かから、ある銀行が指定を受けるような形になっているというようなやり方をしておったと、「金融財政事情」かなにかにも出ておったと思いますし、私も実は現実にそれにぶち当たっている。そうしますと、これは銀行からいえばそれだけサービスをする形になるでしょうが、今度市町村側からいうと、非常に事務が省けることになる。そうすると、市町村には印紙の売りさばき代として、その三%なり四%の手数料をやるのです。三%、四%かその数字は覚えませんが、国でやるのです。そうしますと、その銀行が今個別に回っております。市町村の回るかわりに銀行が回る、銀行が回ると預金がふえる、これは今度は事務費を銀行にもらいたいという主張ができる可能性が出てくる、それはどうしてかというと、特別のあれを結べばいいのですからね。都なら都の国民年金保険料を扱うところと結べばいいことになる。私の言いたいのは、そういうことは銀行が現実にやっているとすると、今言った社外に退職年金の特定預金としてあるいは運用をしてもらうということで出す場合に、銀行を除外した事情と、国民年金企業私的退職年金の均衡の問題、バランスの問題が出てくる。銀行だけなぜ除外したのだといって銀行から反論が起こる可能性も出てくる、現実にそれをやっているのですからね。だから現実に具体的な例として国民年金が出ているわけですから、これは今大月さんよくお知りにならないようですから、もう少しこれを一つ具体的にお調べになって、そしてこれは岩尾さんの方の事務費とも将来は必ず関連が出てくる問題だと思うのです。そうすると、四万円預金をしておけば、一生保険料の、とにかくめんどうな支払いがなくて、そして四十年先、五年の据え置きをしておいたら、今度三千五百円の年金をもらえるということになれば、この銀行の行き方というものは、アイデアとしてはサービス過剰と言うかもしれないが、アイデアとしては相当のアイデアだと思うのです。アイデアを買いましょうというので買うためかもしれませんが、相当なアイデアだと思います。そしてこれによって、とにかく農民、中小企業者の二十才以上から五十九才までの者は全部入るのですから、これをとって回ればいい。そしてこれを厚生省年金局と特定の契約を結んでやれば、非常に預金が伸びることになる。今のように、民間の銀行の預金が停滞傾向にあるときには、非常にこれはいいアイデアですよ。ところがこれはアイデアはいいけれども、しかし確実に年金の被保険者が預金をしたものの保護が同時にされておかないとこれは困ることになるわけです。この問題が今度は村山さんの方の生命保険なり信託とも関連する。生命保険なり信託というものは、長期のいろいろな運用をされているということで、おそらく指定されていると思うのです。ところが一方今度銀行でそういうことをやっているということになると、銀行を加えなければならぬということになる、それを除外しているというのはちょっとおかしいぞ、こういう発展の仕方になる可能性があるのではないかと思うのです。実態を見て、じかに一つそこから快刀乱麻、明快な御答弁をいただきたいと思うのです。
  52. 大月高

    ○大月政府委員 今の国民年金のお話と企業年金のお話とは面が全然違いますので、問題を混同しないようにする必要があるのではないかと思うわけであります。現在議論になっております企業年金の問題は、企業が委託者あるいは信託者になりまして、信託銀行が受託者になりまして、従業員のために、この財産を管理運用いたしまして、処分をいたしますときには、これを約束に従って年金の格好で支払う、こういうものでございます。従いまして、銀行預金の場合にはある会社が自分の金を預金をする。ちょうど社内の積立金を預金をしておるのと同じでございまして、これは銀行として扱えるものでございますが、今の企業年金の問題になりますと、第三者のために管理運用をいたしまして処分をするということでございます。これが信託の性格の魔的なものでございまして、銀行預金と本質が異なる。そういう意味から銀行はこれはできないものでございます。先ほどの国民年金の問題は本人が預金をいたしまして、本人がもらう利息で本人の保険料を払うということでございますから、それを銀行がどの程度お手伝いするかという、非常にデリケートな問題でございますが、私的年金の話になりますと銀行としては全然介入の余地が制度上ない、こういうように御了解願いたいと思います。   〔「心臓で入ってくる」と呼ぶ者あり〕
  53. 滝井義高

    滝井委員 制度上はなくても心臓で入ってくると言っておりますけれども、やっぱりサービス過剰ということもあるので、そういう問題がとにかくあるということです。すでに銀行は年金にまでサービスをし始めておるのですから、こういう運用にまでサービスができないことはないわけなんですよ。まとまった団体できて処置をしてくれるか個人でやるかということは大して私は変わりはないと思う。もちろん、いろいろ筋道を立ててみると幾分違っております。けれども、その資金を確実に運用してもらえばいいわけですから。  次は、信託なり生命保険会社に委託をする。そうすると今度はその銀行なり会社に千分の十二の法人税がかかることになるわけですね。この千分の十二というものは一体どういう理論的な根拠から出てきたか、こういうことが問題になってくる。
  54. 村山達雄

    村山政府委員 先ほどもちょっと触れたかと思いますが、現在は退職給与引当金でしかも年金受給資格のある者について、これをそれについては引き当てできるわけでございますが、引き当てますと損金になるわけです。そういたしますと、一方で損金になったものは当然だれかの収益になるわけでありまして、これは現在のところ年金の場合は給与所得として課税しております。それから、一時金の場合には退職所得として課税いたしまして、税引き後で積み立てておるわけでございます。今度はそうではなくて外部へ出します所得税は、そのかける段階では課税いたしません。この点は現在の厚生年金と全く同じ建前をとっておるわけでございます。ただ、その間に無税の期間が続きます。その運用利益並びに掛金は将来の給与の原資でございます。年金が将来出ました場合には税の方では給与所得として扱います。一時金の形で出ました場合はそれは退職資金として扱います。ですから、考えてみますと、それが課税上猶予になっているということでございますので、それに見合う税額に対する遅延利息だけはちょうだいしなければいかぬというわけでございます。  そこで、その場合一体幾らの所得税がかかるであろうかという計算が基礎になるわけであります。こまかいことはあとで申し上げますが、給与の平均上積み税率は大体百分の十五であります。これに対しまして地方税が住民税として別にかかります。これが現在府県民税と市町村民税を合わせまして国税に対して百分の二十八でございます。従って、十五かける一・二八となるわけでございます。利息を幾らに見るかという問題でございますが、利子税は現在国税では日歩二銭にしております。従って年利にいたしますと七分になるわけでございます。それに百分の七をかけたもの、これでいいわけでございます。これを今度は国と地方が分け取るわけでございます。現在の法人税と住民税の分け取りの仕方は、法人一に対しまして一三・五%。法人税一〇〇に対しまして一三・五というのが府県税、市町村民税を通じた住民税の税率でございます。従いまして、さき言ったようなものをもう一ぺん繰り返しますと、一五%かける一・二八かける百分の七、それを割り返していくわけです。割る一・一三五分の一というふうな計算をいたしますと法人税が出るわけでございます。それに対しまして一三五があとで住民税で取り返しますから、ちょうど法人税の形で取り返す中味は所得税遅延利息分を国と地方で分け取る形になってございます。そのうちの国の分け取る分の税率だけがきめられまして千分の十二という数字になっておるわけでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 まず今の計算でいきますと、どこに問題が出てくるかというと、給与の平均上積み税率百分の十五ですね、ここに問題がまず出てくるのです。給与の平均上積み税率の百分の十五というのは、どこでどういう工合にして出してきたのですか。
  56. 村山達雄

    村山政府委員 これは課税になります給与所得者の平均上積み、実効税率でございます。
  57. 滝井義高

    滝井委員 平均上積み実効税率はわかるのですが、一体どういう根拠から百分の十五というものは出てきましたかと言っている。いいですか、まず第一に減税がここ数年来しょっちゅう行なわれてきているわけです。そうすると百分の十五というものの上積み税率を計算しなければならぬですが、一体それはいつの時期をとって計算をするかということがまず第一に問題です。それからどういうことを対象にするのかということが問題ですよ。失業保険なんかを計算をするときには、三十人くらいのところを計算をしたり、十人のところを計算したり、百人以上とったのを計算したのと、ずいぶんアンバランスが出てくるわけです。日本というものは給与の格差が非常に激しいですから、従って、一体どこをとったかによってあなた方の千分の十二が正しいか正しくないかということになる。まず時期はどういう時期をとって、しかもどういう層をとったのか。
  58. 村山達雄

    村山政府委員 もちろん給与所得者全体の平均の実効上積み税率でございます。それで三十六年分をとってございます。なるほど減税はやっておりますが、給与は一方伸びております。従いまして、今までのところでいきますと、平均の上積み税率はほとんど移動ございませんので、給与はどんどん上がっていきます。そういうわけで上積み税率そのものはそれほど年によって変わりございません。
  59. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日本の全給与の平均をとっておるのですか。そういうとり方は統計上なかなか簡単にできぬですよ。さいぜん私は、あなたの方の給与の全体の中で一体退職金は幾らになっておりますかと言うと、その計算はちょっとわかりません、こう言っておって、ここのときは給与全体だと言うし、また三十六印のものをとれるなんと言う、日本にはそんな統計ないですよ。
  60. 村山達雄

    村山政府委員 それはもちろんその課税者だけでやっております。所得税課税にならなければ問題にならないわけでございますので、課税者の平均上積み実効税率をとっております。それから三十六年の予算を組む場合には、もちろん給与所得者の階級別を組んでおります。従いまして、それぞれの平均上積み実効税率は予算上は出てくるわけでございます。実績がどうなるかという問題は若干の狂いはあると思いますが、それほど大したことはない。しかし、なるほどおっしゃるように若干の狂いはあるかとは思います。しかし、ここで日歩二銭というところを、それも切り捨てて七分にしておるというあたりが、掛け算でございますので、その辺が相当安目にはなっておると私は思っております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 どうもその百分の十五について、なかなか数字がはっきりしないんですね。これは一番大事なところですよ。百分の十二の法人税をとる、その十二の根拠というものが正確であるかどうかということは、問題はまずこの上積み税率のところから始まるんですよ。これは一つ資料を出してみて下さい。
  62. 村山達雄

    村山政府委員 後刻出したいと思います。  なお、先ほどお尋ねのございました給与所得支払い給与総額退職所得はどのくらいになるか、これは今わかりましたところは、国民所得上の計算でございますが、三十五年分について申し上げます。普通の給与それから賞与を含めまして五兆七千六百億、これに対しまして退職所縁千四百四億になっております。ですから、その他の給与に対する退職所得の比率は二・四%ぐらい、かようになっております。
  63. 滝井義高

    滝井委員 これは、今は二・四%ですが、三十六年、七年、八年となると、ずっと上がっていくと思うのですが、そのカーブはどういうカーブになっていますか。
  64. 村山達雄

    村山政府委員 今計算しましたのは三十三年、三十四年、それから三十五年でございますが、三十三年が二・三%、三十四年が二・二%、三十五年が二・四%、〇・一ばかり異同があるようであります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 それから、今のところにまた返ります。一五・四ですか、百分の十五についてはあとで数字を出してもらいます。  次は、日歩の問題です。延滞利子を、日歩二銭を七分に見積もられた。ところが延滞利子というのは、税金を納める人が自分で納められないか、故意か何かで納めずに、延滞利子をとられるというのでしょう。ところが、これは納めませんぞと言ってするのじゃないんですね。制度上こういう制度が出てやるわけです。これは延滞利子を取ることはおかしいです。だから、もしあなたの方で今まで——私は、これは次善の策だと思うのです。私、この前の社会労働委員会でちょっとやったのですが、あなたのところの審議官、植松さんともう一人どなたか審議官がいらっしゃったのですが、ちょっと名前を忘れましたが、やったのです。私はそのときから、これをしばらく今のままで行ってもらうのが理想だけれども、どうしてもこういう制度が必要だというならば、やはり社外で、もう社内の留保は認めない、全部社外だ、これならば労働者も安心できるわけです。そうしますと、そういう社内留保をできるだけ否定して、社外を奨励するということになれば、これを取り扱うものに法人税をよけいにとると、これは伸びないのです。これは今言ったように、社内の方が資金の運転を自由にできるのですから、どうしても社内にする。ところが最近の大月さんの方のあれと同じように、もしそういうもので預金がふえるということになれば、銀行が一生懸命になると同じように、信託会社も生命保険会社もこれは自分の法人税が少ない、しかもこれをよけいに取れば営業成績が上がるということになれば、各企業を回ってでも社外にしてくる、こういうことになると思うのです。私は次善の策として、社内よりか社外の方が望ましい。そうすると、特定預金というのが、結局あれは八分の一ですね、二分の一の四分の一になるのですから。特定預金のときにはそうなっておるわけです。特定のときにはそうでしょう。引当金のときには、積立金は二分の一でいいし、それから二分の一の四分の一を特定預金にすることになっておるわけです。だから、こういうものも一括して、もう年金に関するものは全部社外だ、これならばりっぱな債務性が客観点に保証されるわけです。社内では、これは社内に入ってみなければわからぬ、ガラス張りじゃない。だから全部外にやるという形にしてもらう。それはもう終身年金も何も全部一つ外でやる、こういう形になってくると、これはある程度理想的な形になってくるわけです。そうしますと、これに対して、今言ったような延滞利子ではなくて、私はこれはもうちょっと安くしなければいかぬと思うのです。これを安くしますと、さいぜんの百分の十五の問題と関連をして、千分の十二が下がってくるのです。問題点はこの二つです。私いろいろ検討してみたけれども、これをやれば、おそらく千分の八か九でいい。そうすると、千分の八か九だけ、千円について八円か九円だけの法人税ならば、生命保険会社、信託会社は全部の会社を回りますよ。こういう形が私は出てくると思うのです。ここらあたりの制度というものを私はやはり考えなければならぬと思うのですが、そこの七分のところが、今の延滞利息をそのまま適用することについては、どうもちょっと納得がいかないのです。
  66. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど、延滞利息の観念で利子税の日歩を適用いたしますと申し上げました。延滞税の日歩を適用いたしておりません。延滞税の日歩は現行は六銭でございます。今度の国会の提案で四銭を提案してございますので、いずれにしても改正になったとしても四銭でございます。利子税と申しますのは、たとえば相続税の場合で急に相続が起きました、死ぬことを予定しなかった、現金化できない、納期は法律できまっておる、こういう場合には、十年間の延納ができます。ただ、この延納というものはやむを得ないものである。それにしても利息は若干ちょうだいいたします。あなたの方に責任はないでしょうけれども、しかしやはり延ばしてもらう利益はあるんだから、普通延滞税は六銭でございます、しかし二銭納めていただきますという二銭でございます。これは改正法においても、同じ二銭を適用して参りたいと思っております。その二銭を適用したということでございまして、延滞税ではございません。  それから、先ほどちょっとお話の出ました八分の一というのは、実はそうではございませんで、あれは積み立てる累積限度は、計算したものの二分の一しか積み立てられない、そこに二分の一が働くわけです。額がきまりますと、そのきまった総額のうち四分の一は特定預金になる、合わしたら八分の一にはならぬわけです。それは全部支払う額からいえばそうでございますが、税法上積み立て得る額からいいますと四分の一でございます。こういうことでございます。それと内部の運用につきましては、もう御案内のように、普通の法人税が全部かかっております。三八%、そのほか事業税が最高一二%、それから住民税が法人住民税でございますから一三・五%かかっております。事業税は、経費になるやつがございますから、最高上積み実効税率を出しますと、実に四九・二二という税率がかかっておるわけでございます。ですから内部で留保いたしますと、その運用利益に対して実効上四九・二二の税率はかかります。それから、今度出しましたものについては、百分の一・二の税率でよろしゅうございます、これだけの違いが出てくるわけでございます。
  67. 滝井義高

    滝井委員 ところが、今企業が一番当面しているものは何かというと、金を借りることができないということですよ。炭鉱なんか金を貸していないですよ。今炭労と大手八社が交渉しておるのは退職金問題です。退職金がきまらない、だから炭労はストライキをやることになるでしょうが、みんな金詰まりで金がないのです。だから、今企業は一体どういう形をやっておるかというと、社内預金の奨励でしょう。はなはだしいのはボーナスを郵便貯金にする。それからボーナスの分割払いですよ。これは、現金がないからざらですよ。その次に労働者なり従業員に社内貯金をさせて、利息を九分も一割もつけておるでしょう。つけてもこれは得なんです。どうして得かというと、銀行その他に借りたら、交際費その他がよけいに要って、とても八分や一割で借りられるしろうものではないのです。そうすると、自己の従業員に社内預金として一割でも八分でも出した方が、自由に運転できていい、こういうところがあるわけですよ。そこで、企業の金詰まりのときに、親心でこういうことをやることもいいかもしれぬけれども、その親心というものは、日本の社会保障の前進を非常に妨げるので、私は、やはりこの際こういうものをおやりになろうとすれば、信託なり生命保険に、いわゆる企業の外にやらせる、こういう形が非常に望ましいと思う。私、寡聞にして欧米諸国の制度を十分見ていないのですが、欧米の諸国は、大勢は社内留保でしょう。そして、私がさいぜんちょっと言ったのですが、厚生年金のフラット分とそれから報酬比例分と、こうあるわけです。このフラット分については国が責任を持とう、しかし報酬比例分については私的年金の社外留保された分、これをもっと補っていくわけです。こういう制度がヨーロッパ諸国ではだんだん行なわれようとしているわけです。私は、今度のこの改正は、日本でもそういう制度を作る方向にいくと見ておるわけです。この改正が、そういう萌芽を持っておるとするならば、私はそれも一つの方法として悪くはないと思うのです。悪くはないと思うのだが、もう少し厚生年金をじっくり検討をして、そういう方向にいった方がいいという、これが簡単に言うと私の結論です。そうでないと、村山さん御存じ通り、まず第一に、これは私今度社会党の立場で言うわけですが、労働者企業と運命を共にしなければならぬ。社外留保ならばそうではない。このことは、昭和二年に健康保険法ができたときに、この健康保険法というのはどういう形でできたかというと、ビスマルクの「あめとむち」の形でできている。これはあめですよ。すなわち、この制度ができれば労働者は、あなたは外に預けた方がわずかに百分の一・二だ、企業内部だったら百分の四十九取られるのだから、それの方が損だ、こうおっしゃるけれども、今言ったように、莫大な交際費を使わなければ金が借りられない時代ですから、社内にしておった方がうんと得なんです。そんなものは見向きもしない。だから、日経連から税制調査会に出した要望書をごらんになって下さい。みなどの企業も望んでいる。どの企業も、自分の企業内部でやりたいとみな望んでおる。そうなると、これは労務管理に利用されるわけです。こうなると、労働者は哀れなものです。ようやく今終身雇用制の体系がこわれて、同一労働同一賃金という新しい体系が日本に芽ばえようとしておるときに、こういうものでまた昔の封建的な——いわばこれは昔の退職手当法です。日本退職手当法から今の厚生年金発展してきたのだから、また逆戻りを意味するのです。歴史の歯車を逆に回そうというのはよくないのじゃないかというのが一応私の結論です。今の村山さんの熱意はよくわかるのですが、理論的に、もう少し大局的な見地から再検討をしてもらいたいというのが私の最終的な意見です。いろいろくどいことを言いますと長くなりますから、そういう点についてのあなたの見解を伺いたい。政務次官の御意見も同時にあわせて伺いたい。
  68. 村山達雄

    村山政府委員 われわれが今この問題について、税制上の措置を講じておりますのは、優遇とかなんとかいうことでなくて、実際の社会の需要に応じてもろもろの現象が起きてくる、それを、どの程度については損金と認めざるを得ないか、その場合の課税の公平を維持するためには、どういう手当が加えられなくちゃならぬか、もっぱらそういう角度でやっているわけでございます。おっしゃるように、これは税の問題を離れて、やはり老後保障からいえば、それは社会保障が一番望ましいと思うのです。それから外部拠出する私的年金がその次に望ましかろう、その次に今の内部留保であって、しかも運用を制限するというのは、税法じゃ少し行き過ぎですけれども、ある程度税法でやっております。そういうことは、一応われわれの立場を離れては言えると思いますが、しかし、実際にこの制度ができた過程を見ますと、社会保障制度退職給与引当金、今度企業年金、こういう形で受けているわけであります。従いまして、われわれは税法上やはり損益の計算理論の立場からいたしまして、当然公平に扱わなければいかぬのでありますから、認めるものは認めざるを得ない。その点、それに伴って手当をせざるを得ないものについては手当を加える。しかし将来、先ほど私が述べたような方向で物事が進むということに対して、チェックしてはいかぬだろうという点は、十分考えられるわけであります。従いまして、先ほど申しましたように、もしこの社会保障制度というものが幸いにして拡張してくるならば、この制度も、それが社会保障制度の中に、全部または一部が吸収される場合には、税制上における転換の措置をあらかじめ検討しておけば足りるのじゃないか、こう申し上げているわけであります。
  69. 滝井義高

    滝井委員 この次のこともありますけれども、きょうもう二点ばかり尋ねておきます。  運用の利回りですが、これは七%にしているわけでしょう。七%を下回ったら大きな問題なんですよ。これは現在七%を下回り、六%くらいのときはざらですよ。こういう場合には一体どうするかという問題もあるわけです。これは千分の十二に関連して、七%を下回る場合だってあるわけですよ。それから、上回ったものについては、それを今度また事業主に返すでしょうが、これもおかしいですよ。労働者のものだといって債務性を発揮しておったものが、今度利回りをして上回ったら、上回った分は返すことになっているでしょう。こういうこともおかしいですよ。こういう点に対する疑問というものは、ちょっと私には解けないですよ。
  70. 村山達雄

    村山政府委員 七分の方の計算は、要するに一・二という税率を出す過程の理論的の問題でございます。かけるのは一・二でございます。しかもかけられる基準は、ここに書いてございますように、期首における退職企業年金積立金でございます。それはずっと掛け込んできた元本、企業主の持った分、それから年金として支払われたものは、これは引いていくわけです。一方掛け込んだ分については、今言ったように運用利益が出て参ります。この運用利益が幾らになるかということはわかりません。これからの問題です。一方その利率は予定利率でやるつもりだから、おそらくきまるでしょう。今度は払い出していく上においても、同じように両建で計算をいたしますから、同じように予定利率で引いていくわけです。そういうふうにして計算した計算上の退職年金に対しまして、一・二の税率で課税いたします。七分と申しますのは、要するに一・二を出す一つの理論的の過程でございまして、運用の予定、幾らで回るかということとは関係ないわけでございます。幾らに回すかという問題は、これからの問題でございまして、おそらく契約当事者間で幾らにいたしますか、保険でございますと、これはおそらく運用利率を約定せざるを得ぬと思います。ですから保険数理に乗っけまして、どういう年令構成になっており、それからその人たちがどういう年金支給事由を持つに至るか、その掛金がきまってきますから、それでおそらく保険数理で予定利率というものを立ててこれで扱いましょうということできまるだろうと思うのです。信託についても同様でございますが、信託の場合は、おそらくはこれは法律上は約定予定利率をどうしても実行しなければならぬという責任はないから、保険よりは若干高目になるのじゃないかと思うのです。そういうことで、実際上の運用はそれできまるということでございますので、先ほどの七分とは、これは直接の関係はないわけであります。
  71. 滝井義高

    滝井委員 これは適格要件その他、次会にもう少し聞かしてもらいますが、掛金及び運用益は原則として事業主には返さぬことになっておるわけです。ところが予定利率以上の運用益があると返すことになるわけでしょう。建前は返すことになっておるのでしょう。ここが問題です。一体、何で返さなければならぬかということです。労働者掛金をAとし、事業主掛金をBとする。AからはA’の運用益が出てきます、BからはB’の運用益が出てくるわけです。この運用益を足したものを、予定利率を上回ったから事業主に返すということはおかしいことになる。私はこういうものを返してはいかぬと思うのです。それはやはり、というものは継続的なものでありますから、回っていきますから、いつか損になるときもあるかもしれないから、留保しておくべきだと思うのですね。その点一つ疑問点がある。
  72. 村山達雄

    村山政府委員 これは二つの観点から問題になるわけでございまして、一つ年金原資をそこにとめておいた方が手厚くいくということは、まさにその遮りでございます。ただ、税の観点からいいますと、ある予定利率というものを頭に輝きながら、今の税率をきめるわけですね。ですから、国の税率のきめ方との関係がどうかということで若干疑問があるのですが、これから詳細をきめていく問題でございますが、今のところ返すことを強制させる考えは持っておりません。しばらくこの制度は、何分にも初めの問題でございますので、やってみまして、三年なり五年たった上で、さらにまた銀行当局とも共同的に研究いたしまして、その辺の扱いをどうするか。当事者は三者あるわけでございます。四者と申しますか、従業員会社と預かる人の問題でございます受託者、それから国の利益、この四者を考えまして、三年ぐらいやった上でその実績を見、その辺を検討したいと思いますが、さしあたりは、もしそれを上回ったら返させることを強制するようなことは考えてございません。
  73. 滝井義高

    滝井委員 それから、従業員掛金ですね、従業員掛金というものは、これはもう税金を取られたものをかけるわけですから、何でもないわけです。ところが従業員掛金というものは——われわれが生命保険の保険料をかけるときには、税金を取られたあとから生命保険料をかけても税の免除を受けるわけです。ところがこれについては、それは抜けているのですね。これはどうしてですか。当然こういうものをやろうとすれば、これこそバランス論でやらなければならぬことになるのです。それも落ちているでしょう。
  74. 村山達雄

    村山政府委員 御案内のように、今、生命保険料所得税から控除しておりますのは、これは租税特別措置だ、明らかに貯蓄優遇政策によることであって、税の理論からいえば理由のないことだということを申し上げておるわけであります。従いまして、今のようなものがかりに保険制度をとって保険に乗っかったからといって、それをすぐ適用ということにするのはどうであろうか。それから同時に、もしそうだとすれば、信託会社に対する掛金も見なければいけないのじゃないか。それから先ほど先生がおっしゃったように、現在この制度を利用できるのは比較的大企業だと思う。この制度をさらにそういったバランス論でやりますと、結果としては大きな企業従業員だけが受けるということにもなってくる。だから、そういった意味でこの点は理論的にはもちろん引く必要はないことだと思います。そういう意味で、今回はその分は引きませんということをはっきりさせておるわけであります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 租税特別措置だ、こうおっしゃれば、そもそも退職給与引当金制度自体が租税特別措置の範疇の中のものです。なかなか理論的に通らない。それから大企業のあれだとこうおっしゃると、なるほどそうです。資本金一億円以上のところが多い。それでは中小企業においてはほとんどこういうものはできない、中小企業退職共済金制度さえもなかなかできないのですから・・。ここらあたりは議論すれば村山さんと私とは行き違いになって、違うところがなかなか多い。きょうは一応これくらいでやめておきます。大体私の意のあるおもなところは御質問申し上げました。ただ二、三適格要件その他もうちょっと聞かせていただきたいことがありますが、二時間くらいやりましたから、あともう一回——答弁を整理して、それからいろいろお願いをした点の資料もお出しいただいて、できれば一日くらい前に私の手に渡るようにしていただきたいと思います。
  76. 小川平二

    小川委員長 藤井勝志君。
  77. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は与党委員の立場でありますので、審議を急がなければならないと思いますので、ごく簡単に質問をしてみたいと思います。答弁は明確にはっきり願いたいと思います。  このたび提案されております法人税法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、銀行局長にお尋ねをいたしたいと思います。このたび公的年金の補完的な意味をもって、企業年金制度が発足を見ましたことは、福祉国家建設を目ざす近代政治の前進として、まことに喜ばしいことであると思うのであります。従って私はそういうふうな考え方からして、何とかしてこの企業年金を将来発展拡充させていかなければならない、このように思うわけでありまして、そういうためにはこのたび企業年金として積み立てられる基金の取り扱い機関というものを、日本経済全般の立場において一つ適正に考えるべきである。先ほど当委員会においての御答弁において、銀行局長は、制度上普通金融機関では取りり扱うことができないというお答えであったようでございますが、一応制度上そういうふうになっておることを私は承知いたしておりますが、それはどういうような理由によるか、どのような事情によるかを一つお答えを願いたいと思います。
  78. 大月高

    ○大月政府委員 現在の金融の制度におきましては、それぞれの業務の性格に応じまして、別個の機関を立てておるわけでございます。たとえば保険に関しましては保険会社、これは保険会社法というもので規制いたします。それから銀行につきましては銀行法、その中で長期の資金を扱う銀行については長期信用銀行法、それから為替業務を主としておりまする銀行につきましては外国為替銀行法、それと同じような建前におきまして、信託業務につきましては現在信託業法がありまして、特別の信託という仕事をする機構を立てておるわけでございます。現在信託は銀行が兼営するという法律構成になっておりますが、行政の方針といたしまして、今申し上げましたように、各機関の性格を明確にするという意味におきまして、信託は信託らしい仕事に重点を置く。銀行は本来の商業銀行的な預金業務に重点を置くという方針をとっておるわけでございます。そういう意味で、今般問題になっております企業年金は、法人税法におきましても、生命保険及び信託契約にかかる企業年金、こういうことになっておりまして、保険は当然保険でございますが、信託に関しましては少なくとも信託業務であるという明確な観念をとっておるわけでございます。そういたしますと現在の機構上どこで扱うかということに関しましては、信託業務をやっておる信託銀行以外では取り扱えない、こういうことになるわけでございます。特にこの制度に関連いたしまして、銀行に特例を設けまして扱わす積極的な理由はないのではなかろうか。また法制上から申しましても、もし取り扱わすといたしますれば特別の立法をもちまして、銀行にもこれを扱わすということを明確にいたす必要があるわけでございます。そういたしますと、これが金融機構として特別の性格を持ったものは特別の性格を持った機関に扱わすという方針に逆行いたし、むしろまた銀行に信託業務を兼営さす方向にいくのではなかろうか、こういうような基本的な考えがございますので、われわれといたしましては信託銀行に限定いたしまして取り扱わしたい、こういうように考えております。
  79. 藤井勝志

    ○藤井委員 一応局長の御答弁は、現在の法律制度の建前からのお話でございまして、その意味においては十分わかるわけでございますが、私の申したいことは、このたびの企業年金が生み出される状態というものは、広く中小企業全体を含めておる。そのような原資が生み出される機関と密接な関係を持っております。実際問題として、地方の中小企業者の金融は、長短を問わず一般の市中銀行がこれをやっておる、こういうふうなつながりから考えましても、同時に先ほど国民年金の取り扱いの実際の話が出ておりましたが、普通銀行の窓口を通じてこのような企業年金を取り扱うことが、企業年金が伸びる意味においても必要ではないか。なるほど先ほどお話しのように、金融機関それぞれの特徴があり、信託銀行はそれ固有の法制の上に立った銀行業務をやっており、しかもこれは長期金融機関としての使命がある。短期金融機関と長期金融機関との分離、こういったこともいろいろ専門家の議論の焦点に相なるかと思うのでありますけれども、私は経済の絶えず進み行く実態に沿うていろいろ法律制度が生まれてこなければならない、そういう観点から考えますと、これは研究に値する問題であるというふうに考えておるわけでございますけれども、その点について、一応現在の制度、法制の上に立って、銀行業務をやる総監督の銀行局長という立場のみならず、現実を知っておられます銀行局長として、あるべき姿はどうであるか、こういうことについての御所見を一つ承りたいと思うのであります。
  80. 大月高

    ○大月政府委員 現在の金融機構及び業務の分野は、固定的でないことはお話しの通りでございまして、経済の実態が変わって参りますれば、金融機構もそれに応じてそれぞれ性格を変えていくのが、私はむしろ当然であろうかと思います。そういう意味で、単なる現行法でこうなっておるという議論ではなしに、今の信託の問題につきましても十分検討の余地はあると思うわけでございます。特に最近の普通銀行につきましては、御存じのように本来商業銀行としての性格を持っておりますが、ある意味では興業金融の分野にも相当入り込んでおる。そういたしますと、現在あります日本長期信用銀行及び日本興業銀行というような長期金融機関との分野をどのように分けていくか、どの程度ダブっておってもいいかという問題もあるわけであります。為替銀行自体につきましても、国内業務と外国為替業務は分離するなど、いろいろございます。そういう意味で、全体の金融機構につきましては、われわれは常に現在の経済情勢に合うように常時検討いたしておるわけでございまして、御存じのように金融制度調査会がございまして、こういう問題について常に研究を願っておるわけでございます。先般日本銀行の制度をどうするかというような点につきまして一応の答申を得まして、現在は金融の正常化をはかるにはどうしたらいいかという点を重点に御研究願っております。この問題に深く入って参りますと、金融の機構はどういう姿がいいのか、あるいは証券市場と金融市場とのつながりをどうするかということになりますと、長期、短期の金融分野という問題にもあるいは必要に応じて触れる、こういうことであろうと思います。そういう意味で、われわれといたしましては固定的な観念をもってこの問題を考えるつもりはございませんけれども、今の段階でわれわれが見ておりまする観念では、むしろ行政指導の方針として、信託銀行と銀行とは次第に分離していく方がいいのではなかろうか、これが大蔵省のここ十年来にわたる一貫した方針でございまして、今のところこの方針を特に変える必要はないのではなかろうかと考えております。
  81. 藤井勝志

    ○藤井委員 今の局長の御答弁は、前半はいろいろ将来に向かっての改正、あるいはいろいろ検討を要するというようなお話でありましたが、後半、最後においては、十年来の鉄則を堅持する、こういうことで、私は率直に感想を申し上げますと、まことにちぐはぐの感を受けるわけでございまして、ここ十数年来の日本の金融構造の変わり方というものが、一番はっきり現われてきたのが証券界の姿であり、証券対策を抜きにして金融政策を論ずることはできない、こういう時代になっておることは御承知の通りであります。従ってそういう具体的な現われとして、理財局にも証券部が設置され、行政指導もしかるべくやろう、こういうことに相なっておるわけでございまして、ここにわが国の経済の実情に即した金融形態というものが、絶えず、従来の行きがかりにとらわれないんで検討さるべきである、こういう観点に立てば、今申されましたような理由は一つ白紙に返して、一ぺん再検討していただくということが必要ではないかというふうに思うのでありまして、現在年金制度というものが、公私を問わず、福祉国家の建設を目ざしていろいろ伸びてきております。その金を預かる金融機関が、相関関係で持ちつ持たれつ日本経済全体の健全な発展を確保するわけでございまして、ここに私が一つ考えますことは、世の中はなかなかむずかしいので、確実な線という一つの建前からいけば、現在信託会社は五社専業の業者がある。しかしここら辺は大企業の金融しかやっておらない。中小零細企業の金融というものは、そういった銀行の手が届かない。しかも私的年金の原資をかせぎ出すところは中小企業である。こういった因果関係を考えますと、やはり取り扱う金融機関に対しても、総合的な見地から御判断を願うのが筋ではないか。ただ形式論、観念論的な割り切り方で、従来こうやっておるのだからこの線でいきますという考え方は、この際は一ぺん白紙に返して御検討いただきたいと思うのでありまして、この点は大蔵大臣でなければ御答弁がしにくいと思うわけでございますが、銀行局長も意を体して、一つ大蔵大臣に御進言のほどをお願い申し上げる次第であります。  ところで、私はそれでは先ほどの御答弁の中でもう一つ触れておきたいと思うのでありますが、別々に分ける方がいい、信託業務と銀行業務というものは分離すべきだということをおっしゃいましたけれども、欧米の例をとるまでもなく、現に日本は今を去る昭和十八年でありますか、十八年に法律第四十三号におきまして、普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律というものが施行された。これはやはり兼業をやってよろしい、こういう法の精神は、ただ単にあの大東亜戦争が始まった、この臨時立法としてのインスタント的な法律の性格ではなくして、やはり現実に経済活動をやるためには、やはり兼業の方向へいかざるを得ない。欧米の例もまさにその通りでありまして、それを超える方向に大いに日本の金融形態も進んでいくことを示しておるわけでございまして、むしろ分離することは時代の逆行に相なるというふうに考えられるのでございますが、これに対して銀行局長の御答弁を得たいと思うのであります。
  82. 大月高

    ○大月政府委員 普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律は、これは戦時立法でございます。昭和十八年の立法でございまして、当時戦前金融機構が非常に明確な長短分離、それから信託につきましても、これは信託会社という制度でございまして、預金業務は一切扱っておらなかったわけでありますが戦争になりまして、あらゆる資金を戦争に集中するために、平時の業務の分野を守っておったのではとてもむずかしいということから、あらゆる金融機関の特性をある意味で払拭いたしまして、全部を軍需融資に動員した。そのために軍需金融等特別措置法というような法律までできまして、軍需会社に対する金融は一行取引に限るというような極端な制度をとったわけであります。そういたしますと、業務分野を分けておきますと、今の一行取引というような問題も現実上できなくなるというようなことから、この特例が出ておるわけでございまして、本来の戦争以前の制度は、銀行と信託会社というものは完全分離の思想であったわけでございます。戦争が終わりまして、御存じのように非常にインフレが進行するということになりますと、長期の金融機関はなかなか金が集まらないという現実が生じたわけでございます。その意味で長期の金を扱っております生命保険会社が、経理上非常に芳しい立場に立ったわけでございまして、当時の生命保険会社の状況を見ますと、今とは格段の相違があるわけでございます。それと同様に、長期の金融機関でございます信託銀行というものにつきましても、いわば戦時の金融機関であるというような面からも、総司令部の勧奨もありましたけれども、やはり長期の金がなかなか集まりにくいというようなことで、一時長期金融機関の制度が廃止になりまして、全部単なる普通銀行になったというような時代もあるわけでございます。そういう時代に至りますと、銀行自体も長期の信託資金はあまり集まらない。そうすればむしろ銀行預金もとれるようにして、とにかく命をつなげなくてはいかぬというので考えられたのが、昭和二十三年ごろの兼営でございます。こういうように経済が正常化して参りますれば、その後長期信用銀行も為替銀行も、その他の法律は逐次整備されて参りましたが、いずれもこれは業務分野を明確にするという方向において立法されてきておるわけでございます。経済がこういうようになって参りますと、一緒になるということよりも、むしろ分離するという考え方が正しいのではないかと思います。ただ特性を発揮するにつきまして、どういうグループをこういう一つ制度として包括するかというような問題はあるかと思います。しかしあらゆる金融機関は何か一色に塗りつぶしてしまって、何でもできるというようにするのがいいかどうかという点は、非常に問題ではあるまいかというふうに考えておりまして、特にこの企業年金の問題は、本来信託の制度として扱うべきものである、こういうものをやるためにこそ信託の制度があるのだというくらいに考えているわけでございますので、これをほかの単なる預金銀行に扱わせていくということは、少なくともわれわれの金融を見ております常識からいたしまして、非常におかしいのではないか。しかしこういうような考え方にとらわれるというのではありません。金融制度調査会でいろいろ御検討願っておりますから、虚心たんかいに御意向は承りたいと思っておりますけれども、基本的な日本の金融機構の流れというものは、最近はいずれにしても、分化の方向に向かっているというのが事実であります。
  83. 藤井勝志

    ○藤井委員 私はまだ金融方面はそれこそインスタント知識のしろうとでありますので——しかしわれわれは常識で動いていると思うのであります。経済は常識で動かされていると思うのでありまして、先ほどいろいろお話を聞きましたが、それではなぜ——話が次へ関連しますが、銀行業務を分離しなければならないか。分離する利点、私は分離しないで兼業の利点をいろいろ考えている。従って局長の方で分離しなければならないという積極的な理由を、しろうとの私に一つお示しを願いたいと思います。
  84. 大月高

    ○大月政府委員 あらゆる銀行はそれぞれの特性に応じてやるべきだというのが基本だと思いますが、特に銀行の制度におきましては、普通銀行はあらゆる預金者に対しまして、支払いの要求に即座に応じる態勢にあるべきことが必要であるということが、基本的な考え方であろうと思うのでございます。そういう意味で、歴史的に銀行というものは、つまり固定的な仕事には手を出さない、そういうような意味で、長短金融の分離ということがいわれておったわけでございまして、たとえば長期信用銀行のような銀行が多くの預金をとる。これは短期のものでございますので、それがたとえば三年、五年というような長期の貸し出しをいたしますと、預金の払い戻しの要求を受けましたときに、それはまだ金が貸してあって流動性がない、払い戻しに応じ切れない、こういうことになりますので、これはやはり長い金融債をもって長期の金で長期の貸し出しをやる、こういう機構の方がいいのではあるまいか、資金源の長さと貸し出しの長さとつり合いをとらせるという意味において、まず普通の銀行と長期の信用銀行が分かれた、これがまず理由だろうと思います。  そういう意味でわれわれはこの二つが分かれる理由が大いにあると思うわけでありますが、それでは信託と銀行はどうか、こういう問題になりますと、信託は御存じのように、今の年金におきましても何十年先の話でございまして、一つの金が入りますと、計画的に長期的にこれを管理運用する、こういうことになるわけでございます。そうすると、先ほどのように、預金を預かりましてすぐに出し得る金がないわけでございますので、やはりそういう職能の面から分離してある方が本来の立場からいってもいいのではないか、そういう意味で現在銀行業務と信託業務を兼営しておりますけれども、この勘定は完全に分離いたしまして、信託勘定と銀行勘定というものは截然と別になっている。法律上も、信託勘定というものは信託の受益者のものであって、信託銀行のものではないという厳格な建前がとられているわけでございます。ということは、ある意味では銀行と信託というものは両立し得ない。やかましくいいますと、し得ないようなものでございますが、今度経済の実態から申しますと、信託取引をしている人がたとえば信託報酬を受け取る場合に、ちょっと預けておきたいというようなことの場合に、ほかの銀行に持っていくのも取引の実態に合わない、そういう意味で信託取引のある人の預金ぐらいは預かってもいいのではないか。どちらかといいますと、控え目に世の中の便益をはかる意味において、若干の余裕を認める、こういうような思想になっているわけでございまして、あくまで預金銀行というものは短期の運用をし、短期の払い出しに応ずるという、有事即応の体制にあるということがポイントでありまして、これと信託との性格には差がある、これが基本的な考え方であります。
  85. 藤井勝志

    ○藤井委員 基本的なお考えはよくわかるのでありますが、どうもあまり専門に入り過ぎて、私は全般的なもう少し実際的な立場で、御判断を願えることが好ましいのじゃないかと思います。形式論理的な割り切り方をすれば、おっしゃる通り、信託法という法律からいえば、三者が関連してくる。銀行の場合は二者の関係においての取引、こういうことになるわけでございますけれども、実際の経済の結びつき方というものは、そういうふうに割り切れないという事実をわれわれは考えていかなければならぬ。と同時に、そういうふうな一般的抽象論ではなくて、ほんとうに実際主義に立っておる英米、特にアメリカあたりの資料を私は手に入れておりますが、信託と兼業が大体大半ですね。まあ十九社ぐらいが専業、これは二、三年前の資料のようでありますが、こういう実際になっておるというこの現実を、どのようにお考えでありますか。これはやはり経済活動の便利のために、または経済発展に都合のいいために、そういう金融形態になっておるのではないかというふうに私は実証的に考えるのです。従ってこれに対して、私先ほどの御答弁では十分納得がいきませんので、もう一ぺん御答弁をいただきたいと思います。
  86. 大月高

    ○大月政府委員 それぞれの国の金融の機構には、それぞれの特性があると思います。企業年金についてのいろいろな各国の例も違っておるようでございますが、金融の機構におきましても、大体においてイギリス的な考え方と、ドイツ的な考え方と、二種類あるのではなかろうかとわれわれは考えておるわけでございまして、日本の金融機構は英米流の考え方を主といたしまして、それに若干フランス的な感じが入っているのではなかろうかと歴史的にも思います。その流れから申しますと、銀行というものは、本来商業銀行に徹しておるわけでございまして、フランス等はそのほかに長期の信用銀行があり、最近のもう一つの流れといたしましては、そのほかに政府金融機関がございまして、日本でいう開銀とか輸銀とか、ああいうふうな政府機関の三段がまえになっておるのが大体の体制でございます。ただ信託の問題におきまして、アメリカあたりにおきましては、兼営のものがあるようであります。つまりアメリカの制度は、イギリスほどはっきりした体制をとっていないというのが実態でございます。と申しますのは、長期の金融と短期の金融が比較的混在いたしておる。デパート式の経営になっておるわけでございます。先ほど申し上げました金融の考え方といたしましては、これはイギリス的な考え方として非常に明確な態度をとっておるわけでございます。アメリカはむしろ日本の経済と発展の段階を異にいたしておりまして、たとえば金が集まりましても融資先がないというのが悩みでございまして、日本では金がなくてどうか貸してほしい、オーバー・ローンになっておりますが、アメリカにおきましては、各企業とも内部蓄積が非常に多くありまして、金を貸してくれとは言わない。預金ばかりできるわけでございます。そうしますと銀行としては、何か運用しなければ金融が成り立たないということで、歴史的に消費者金融その他個人の方に入っていく。ある程度ゆとりがある預金でございますから、そう急に引き揚げられるということも逆にないわけでございます。常に余っておる預金でございます。そういう意味で、ある程度同定的な貸し出しもできるというようなことで、長短金融の分離の思想がややぼけておる。しかし制度として、アメリカの制度がほんとうにいいかどうかということになりますると、御存じのようにアメリカは一九二九年パニックがございまして、大騒ぎをしたことがありましたことは御承知の通りであります。ところがイギリスにおいては、金融機構としては微動だにしない。ドイツはあのときはパニックをかぶった、こういうようなことがあります。アメリカでも、これはいろいろな仕事に一つの預金から回すということは適当でないということで、まず証券業務と銀行業務を完全に分離してやるように、いろいろな施策を講じたわけであります。預金と証券業務を分離するとか、その他の制度を実行いたしたわけでありますが、思想としては、いざという場合の備えとしては、やはり分離しておいた方がいいというのが、アメリカにおける考え方であります。ただ、今の経済の発展の段階がそんなようなことでございまして、比較的長短混在していても弊害がない。日本等の状況とは、若干その辺のところは違うのではなかろうかと考えております。
  87. 藤井勝志

    ○藤井委員 短時間で、しかも当方も深い研究をした上に立っての話し合いでないわけでございますから、きょうこの問題について早急に、どちらがいいかというような結論を私は急ごうとは思いませんけれども、長短金融分離論というものは、長年業界においてはいろいろ問題になっておる。大蔵省の方針では、先ほどお話があったような一つの線で来ておりますけれども、現実の日本のどんどん移り変わってき、成長していく段階において、長期金融の道は長期信用銀行がありますけれども、これはとても地方の中小企業の金融として、長期の金融を預かる機関としての機能は全然発揮されておらない。こういったことが一面にありますし、同時にいろいろ年金がかせぎ出される大部分は、零細な中小企業も含まれておる。こういった相関関係を考えて、一つ全体的に経済が健全に発展をするためには、その点、法理論では割り切れないようなことが、かえって現実には沿うゆえんであるというようなこともありますので、この点はとくとお考えをいただきたいと思うのであります。  次に、これは具体的な問題になりますが、私は今のような大前提を持っておりますから、そこに見解の相違があろうかと思うのでありますけれども、現在信託専業の五社ですね。ここら辺を中心にやられるのか、あるいはまた主として銀行業務をやっておるもの、あるいはまた兼業というように、いろいろ内容のニュアンスの違いはあろうかと思うのでありますけれども、少なくともそういう信託業務を法的に認められておる金融機関におきましては、この際この年金取り扱いの金融機関として認めるべきでないか。窓口が多いほど、私が最初申しましたような考え方から言えば、一そう効果的であり、暫定的措置としても、そのような対策が考えられてしかるべきではないかというふうに思うのでありまして、これに対してはどのような御方針でありますか、局長の考えを承りたいと思います。
  88. 大月高

    ○大月政府委員 ただいままで申し上げました考え方及び従来の行政指導の方針から申しますれば、信託業務は逐次専業化して参るのが適当であろうかということでやって参っておるわけであります。そういう観点からいたしますと、個々の私的企業年金のように、まさに信託としてやるべきそのものであるというようなものにつきましては、やはり専業信託を中心にしてやるのが適当かと実は考えておるわけでございまして、御存じのように現在の信託銀行の非常に大きな部分を占めておりますものは、貸付信託業務でございます。これが大体全体の業務の半分である。その他一般の合同運用信託等があるわけでございます。これはいわゆる専業の信託銀行だけがやっておりまして、兼業の信託銀行はやってない。これも制度発足の当時から、われわれは今御説明申し上げましたような考え方を持っておりますので、金融界の御協力を得まして、兼業の銀行には御遠慮願ってきたいきさつもございます。そういう意味で、考え方といたしましては、企業年金の問題も、それと同じような考え方の方がいいのではないかと考えておりますが、これはまたある意味から申しますれば、個々の信託銀行の利害に非常に密接いたしておる問題でもございますので、取り扱いについては慎重に検討いたしたいと思っております。
  89. 藤井勝志

    ○藤井委員 大体私の質問はこれで終わりたいと思うのでありますが、最後に、繰り返すようでございますが、この企業年金制度のみならず、公的年金のこういった基金を取り扱う金融機関の選定にあたっては、私は単なる法理論的な形式的な割り切り方でなくして、総合的な判断の上に立って、一つ善処していただきたいというまず前提の上に立って、いわんや信託をその業として許されておる機関というようなものについて、私は一般の市中銀行まで一応銀行法によって、信用組合とか、信用金庫とか、そういった中にはいろいろまだ健全な内容になってないところもあるかと思うのでありますけれども、しかしほんとうに零細な金融機関としての使命を果たし、それが企業年金のもとを作り出すという、そのもとにもなっておるような経済の実情、実態を把握すれば、ただあるべき一つの形式論で割り切る、こういったことは不適当である。同時に、長短金融の分離の是非については、根本的な検討を要するという意見が、大蔵省の方針はどのようにあろうとも、絶えず業界においてくすぶっているというこの事実は、やはり現実がこれを要請しておるというふうにわれわれは考えざるを得ないと思うのでありまして、銀行局長も、別にこだわらないでよく検討するというお話でございますので、私はこれ以上この場において質問を続けることは差し控えたい。私もこの問題については、今後もよく勉強いたしますが、要は日本の金融が経済発展の一番動脈であり、しかも絶えず大きく飛躍し、成長している過程においては、なおさら実態に即するように、しゃくし定木な形式論に終わらないようにやってもらわなければ、日本経済の健全な成長は確保できないというふうに考えますがゆえに、お願いを申し上げ、自分の所見を申し述べた次第であります。特に今、今度取り扱う基金の問題についてはいろいろ検討する、信託銀行そのほかいろいろ銀行の利害にも関係があるというようなお話もございましたが、私はそういう単なる一銀行の利害という観点ではなくして、大所高所からいい線を出してもらいたい。こういう線でいかなければいけないというはっきりした理由を一つ発表していただいて、これは行政指導の面に入りますけれども、今申しましたような総合的な見地から、今度の企業年金について、取り扱う銀行金融機関としては、こういう線をきめた事情はこういう事情だということを、また機会を得てお知らせを願いたいと思うのであります。
  90. 大月高

    ○大月政府委員 今の問題は大蔵省といたしまして、実は従来から見解を機会あるごとに公にいたしておるわけでございまして、毎年の銀行大会その他大蔵大臣の演説等におきましても、考え方は明確にいたしておるつもりでございます。そういう意味で、われわれといたしましても金融界に対して、そういう考え方について御協力を願いたいということを常に呼びかけておるわけでございまして、私の感じといたしましては、金融界の大勢は、もっともだというように考えていただいておると思いますが、一部に相当強硬な反対の御意向があることも承知いたしております。この取り扱い銀行の問題につきましては、今まで申し上げましたような基本的な考え方と具体的な問題との調整の問題でございまして、私は、なぜこういう銀行が扱って、こういう銀行が扱わないのだというようなことを、個別の行政について一々理由を公にするということは、適当でない場合の方が多いのではないかと思いますけれども、ただ具体的な結論については極力公正な判断をいたしまして、世の中にも納得していただけるような措置をとっていきたいと考えております。
  91. 小川平二

  92. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 昼食の時間でしょうけれども、私の聞きたいことはもう私の方の広瀬委員が十分聞いていますので、非常に簡単に済むと思いますから、私もおなかがすいていますけれども、局長さんも一つ十分がんばっていただきたい。  お聞きしたい一つのことは、第一回の答申、第二回の答申とございますが、その答申によりますと、今度国民貯蓄組合の限定額を三十万から五十万にふやされるということに対して、第一回の答申も第二回の答申も、今の情勢でこれは賛成すべきじゃない、じゃないというふうなことを申しているのです。むしろ三十万でいいので、五十万にすることは適当でないということが第一回、第二回の答申で出ている。これは単に所得がふえたからということだけでなしに、もっとほかに意味があるだろうと思います。そういう意味で、どうしてこれを三十万から五十万にしなければならなかったかという理由をお聞きしたいのです。
  93. 村山達雄

    村山政府委員 たしかこの問題を相当突っ込みまして検討したのは、実は第一次答申のときでございます。これは二つの大きな問題がございまして、国民貯蓄組合の今の課税最低限を引き上げるという問題は、郵便貯金の預入限度の引き上げの問題と一方においてつながって参ります。他方におきまして、国民貯蓄組合の運用について従来必ずしも適切でなかった、その適正化の措置が前提にならなければ、その問題は単独に引き上げを考慮することは不適当である、こういうような趣旨で従来反対が唱えられておりましたし、また現にわれわれもそう思っておったわけでございます。しかるところ、その郵便貯金の問題につきましては、長年この三十万の預入限度が据え置かれおったのですが、そういった見地と、同時に最近におきます経済情勢からいたしまして、この預入限度を引き上げるべきであるという空気になって参ったわけであります。言うまでもなく、郵便貯金の利子に対しましては、この制度創設以来非課税にしておるわけでございます。われわれはその問題を考えました場合に、郵便貯金についてある程度引き上げはやむを得ないのではないかというふうに考えたわけでございますが、そういたしますと、どうしてもそれとのバランスの上で、国民貯蓄組合についても同じ程度の引き上げは認めざるを得ない。しかしそのためには先ほど申しましたとかくいわれておる乱用は、適切な防止の手を打たなくちゃいかぬ、こう考えたわけでございます。今回それらの両方の措置をあわせ講じまして、今度引き上げをしたらどうかという提案をするに至ったわけでございます。
  94. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 それでは郵便貯金を引き上げなければならぬ理由もお伺いしたい。どうして郵便貯金の限度額を三十万から五十万に引き上げなければならないかという、その理由を聞きたいと思います。ただ所得が上がったというだけでなしに、ほかにも理由があるだろうと思います。それは経済問題もございますので、そういう点でもはっきりした、そう上げなければならぬほんとうの理由を教えていただきたいと思います。
  95. 村山達雄

    村山政府委員 われわれが郵政省から聞いたところでは、またわれわれもあれでございますが、最近もちろん所得も上がり、預金額もだんだん上がっておる。三十万円では頭打ちの限度にきておるものも若干出ておるという問題でございます。国民貯蓄組合の方におきましても現在三十万、これはだいぶ分割してあるという事実が出ております。分割を認めておるわけではございませんが、実際は乱用を防止すればある程度相当締まるわけでございます。そうだといたしますと、やはり従来の三十万に置くというのは、これは少しまたきつ過ぎるという関係もございます。郵便貯金の方はだいぶ限度オーバーが出てきておるということ、ほんとうは大いに力を入れて郵便貯金を獲得する方向でいきたい、そのときにぜひとも何か一つほしいというのも、おそらく郵政省の中には相当あったのだろうと思うのです。直接には頭打ちが相当出てきておるということでございます。
  96. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 郵便貯金がふえますと、財政投融資の原資がふえてくるので非常にけっこうなことなんですが、今のお話の相当頭打ちが出ているということには了承ができないのです。と申しますのは、税制調査会の方で出しておる資料によりますと、四百四十二ページですが、そういうことになっていないのです。というのは、郵便貯金の方を見ますと、大体五万円以下の貯金が大部分を占めている。それから二十五万円以上の貯金はわずか一・五%だという。まさかこの調査会の資料はうそじゃないと思うのです。そうすると今お話しの頭打ちしておるということにはなってこないのです。この資料が信憑性のないものだと言われますと別ですが、もし信憑性のあるものだとすると、どうも頭打ちだと思えないのです。
  97. 村山達雄

    村山政府委員 もちろんこの資料はその通りだろうと思うのであります。若干言葉が不足いたしましたが、あれは地方官庁で原簿を集めているわけでございまして、全部内容に接しているわけではありませんが、事実上二口になっているものもあるらしいとか、いろいろの話もございます。また現にそうだという人もあるわけでございます。そういう違反があることは望ましいわけではありませんけれども、それらのことを通じて考えてみますと、大体預金の額というものは、これらの利用される方々においてもふえつつあるということだけは言えるだろうと思います。最近における情勢を考え、またこの制度が過去数年間据え置かれたというような情勢も考えまして、この際引き上げるということは、決して税制上どうしても受け入れられないことではない。しかしその前提としては、乱用の防止について適切な手が打たれねばならぬ。こういうことでその手を同時に打つことによりまして、そちらの方面の要望にもこたえるという意味でございます。
  98. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうも納得がいかないのですが、この資料通りでいきますと、三十万でいいのじゃないかということなんです。二十五万以上の郵便局の貯金が約一・五%だとしますと、そうして五万以下がほとんど大半だということは、私は今資料は持っておりませんし、ただここの調査会の資料だけなんですが、どれくらいのパーセントか知りませんが、大部分だということは半分以上だということなんでしょう。おそらく大部分だというと、あるいは七〇%ぐらいになるかもしれない。そうすると郵便貯金というのは、そんなにふえていないわけなんです。頭打ちにならないわけなんです。それから今二重に出ていると言いますけれども、銀行の窓口よりも郵便局の窓口の方が割合に二重、三重、あるいは口を分けてするという人が少ないのじゃないか。  そこでもう一つ聞きたいのですが、農村と都市との比例が四百三十二ページに出ております。それから見ましても、農村の方は五十万以上の預金者はわずか七%だという表を出しています。都市の方は分ける率が多くても、農村の人は比較的まじめですから、分けてするというふうな人は少ないだろう。郵便貯金の方は、現実に二十五万以上がわずか一・五%ぐらいしかないということになりますと、頭打ちはそれほどでもない。それから一般の国民の気持は、銀行の方は口数を分けたり何かするが、郵便局は役所の仕事だという感じがしておりますので、比較的そういう人は少ないのじゃないか。だからこの点で、どうも郵便貯金が頭打ちをして、三十万から五十万になったということの理由にはならないと思うのです。何かまだ理由がおありじゃないですか。これを伺えればいいのです。
  99. 村山達雄

    村山政府委員 その統計の読み方についてはいろいろあると思うのです。ここに出ております御指摘になった答申は、おそらくその通りだ、ただ二重加入というようなものがないとは言えないということだけを申し上げておるわけであります。かりに話をこの答申通りだとしていいわけでございますが、郵便貯金を非課税にしておりますのは、三十万の預入限度だから非課税にしておるとは、必ずしも言い切れないわけでございます。郵便貯金を利用されるような階級、こういうものを大体考えまして、比較的零細な人たちであり、零細預金を優遇するという意味で、その金額の三十万円にアクセントがあるのではなくて、郵便貯金をするような零細貯金というところでございます。従いましてこの預入限度というのは、税と直接に関係がないわけでございます。最近における状況から見て、われわれ預入限度を別に税の観点からしいて反対することはないのでございます。五十万というのが適当であるならば、これは税の方では別に反対を唱える理由はないと思うのです。ただ問題は、その場合に国民貯蓄組合の方もあわせて上げるかどうかというところが、ほんとうは税制の問題なんでございまして、その場合の乱用を防止しなくちゃならぬということでございます。
  100. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 私のお聞きしたいことは、郵便貯金は三十万でもいいじゃないかということです。五十万にする必要はないということなんです。ほかの方ではなくて、郵便貯金が現実に二十五万以上の者がわずか一・五%なんというと、百人で一人半ですよ。その人たちのために特に今度は三十万を五十万にしなければならないその理由がどこにあるのか。もっとも国民貯蓄組合の方を上げる便宜上、郵便貯金を上げていったというのだったらこれは別です。その理由だけをはっきりさせてもらわないと、どうもはっきりしないのです。
  101. 村山達雄

    村山政府委員 これはむしろその問題を上げられることは、税とは関係がない問題なんでございます。税はこの国民貯蓄組合とのバランスを通じて、そこの国民貯蓄組合の限度のところで問題になるわけでございます。郵便貯金のようなものについては、われわれは課税をしなくてもいいと現在でも考えておるのですが、その預入限度をどうするかという問題は、これはおそらく郵政省の問題であり、あるいは金融当局全体の問題だろうと思います。ですから、税としては、今の国民貯蓄組合の方を上げるところに焦点がしぼられてくるわけでありまして、預入限度をどうしてお前上げるのかと言われてみても、これはわれわれいろいろ説明を承ったけれども、われわれも上げた方がいいというので、税務当局がとやかく言う筋合いのものではないわけでございます。
  102. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 よくわかりました。実はあなたの方で郵便貯金の例が出たので、郵便貯金のことを、どういうわけだかということを質問したのです。同時に今度は郵便貯金も上がるから、あるいは国民貯蓄組合の方も上がるというふうにしまして、私自身は、郵便貯金は三十万でも今頭打ちしていないのだからいいのだという感じを持っておる。こういう理由でこっちが上がるとしますと、今度は国民貯蓄組合の方の三十万を五十万にする必要も私はないだろうと思っておるのです。と申しますのは、国民貯蓄組合も、これも調査会の三十六年度の答申の中を見ますと、年所得八十万から九十万までの人たちの貯蓄が二十七万だといっている。そして年所得が九十万から百万までの人が三十七万だといっている。そうしますと、これをわざわざ五十万に上げるのはどういうわけなんですか。
  103. 村山達雄

    村山政府委員 これは貯蓄動向調査による所得階級別の貯蓄の状況を出しておる数字でございます。しかしすぐ一つ前に返っていただいて、国民貯蓄組合の設立及び加入状況、この辺をずっと読んでいただいて、それともう一つは、実際われわれの執行当局でいろいろ監査をしております監査の実績等から見ますと、はっきり申しますと、この両方の統計を見ますと、どうもおかしいということなんです。この統計は、われわれは作為して作ったわけではございませんので、いずれも各官庁の統計をそのまま整理したものでございます。そういうことを考えてみますと、この表からだけ見て、実態がこれだから必要がないとかいうようなことでなくて、二重加入その他もありまして、はなはだ遺憾なことではありますが、現在の国民貯蓄組合法が予定しているような、一人一組合主義というのが徹底していない。その意味では、一人の人が実際多額に預金しているという状況が見受けられたわけでございます。従って、この表からだけで三十万を五十万に上げる必要はないのだ——この表だけに信憑性を置いて押えつけるという態度をあえてとらなかったということでございます。
  104. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうもこの統計が、信憑性はあるのでしょうが、これによらなかったと言えば別ですが、ただここに、年間七十万をこえる所得者が全体の納税者の中の七%くらいしかないということが、三十五年の方の二百七十一ページに出ているのです。年間七十万から九十万までが二十七万くらいの貯金だ、それが七%くらいしかないということになりますと、わざわざ上げなくてもいいのじゃないですかね。私はやはりこの統計によるより仕方がないから、よっているのですが・・。
  105. 村山達雄

    村山政府委員 ですから、二百何ページでございますか、あれは総所得ではなくて、課税所得の階層別の人員構成比が出ておるのだろうと思いますが、それはその通りであります。これはわれわれの方でやっている統計でございます。一方、先ほど申しました統計というのは、貯蓄動向調査の統計でございます。こういうことになっているが、これがほんとうであるかどうかという点については、今の国民貯蓄組合への加入状況から見ますと、全体の窓口だけで五千何百万という加入数があるという事実、それからわれわれが監査をやったときに、極端なものは三十口以上になっているという事実、それらのことを考えてみますと、それがいいということを言っているわけではございません。実際には相当程度一人の人が預入しているということを言っているわけであります。問題は、現によけい預入しているから限度を上げるという問題ではなくて、今言いましたように、郵便貯金の預入限度を五十万まで上げるのであれば、国民貯蓄組合の方も五十万にして、同じバランスをとるということはやむを得ないことであろう。ただそのときに、前提として、乱用を防止する十分な措置はとられなければいかぬということであったわけでございます。
  106. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうも私には納得がいかないのですよ。郵便貯金の方の限度額がふえたから、国民貯蓄組合の方もつり合い上という言葉で説明しておるのですが、実は郵便貯金は、統計によると上げるほどのところにはきていないということが言えるのです。そこで今度は国民貯蓄の方も、たとえば三十六年の報告によると、年間七十万以上の所得の人が全納税者の中の一二%、年間百万以上の所得の人が四・一%しかないということが出ている。そうしますと、この年間百万以上の所得の人が四・一%ということと、今度の五十万が二口というと百万円になる、そういうことと何か関係があるようで——国民貯蓄組合そのものの趣旨も、郵便局の方の趣旨とあまり変わらないで、零細な金を集めてそういう人たちの便宜をはかることにあるのだろうと思うが、そういう意味からすると、今の一二%の人、四・一%の人たちのために、その人たちに貯金させるために、三十万から五十万にしたという感じしか持てないのですが、ほかに何かもっと理由がございましょうか。
  107. 村山達雄

    村山政府委員 先ほどから申し上げているように、こういうことでございます。なるほど現在の制度制度でございます。それをいわば適正に運用していない、俗な言葉でいえば流用といいますか、現状はそういうことであると思います。そこで問題は、五十万に上げて適正化した場合と、そうでなくて三十万に据え置いて現状で置いた場合と、全般的にどちらが貯蓄の奨励になり、かつ税の最後の答からいって不公平が除去されてくるか、ここの判断が最終的な問題でございます。ですから、この統計からはこう読めるから三十万に据え置くとかいうことではございません。そこを総合的に考えてみて、現状に対してこれら二つの措置をとった場合に、答としていい答が出るか、悪い答が出るか、ここの見通しになるわけでございまして、われわれは今度の措置によって、一方において貯蓄奨励という効果を相当程度達し得る。と同時に、税の面においても必ずや適正化をはかり得る、その面で実質的には公平になるものと考えたわけでございます。
  108. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 その税の面で適正化をはかられるのだというお考えに対しては、またもう少し別の面からも聞いていきたいが、私がこれを見て感じたことは、ほんとうの零細な低額所得者の人たちのための方法ではないということと、これは結局高額所得者の人たちのため、悪い言葉でいえば脱税させるために、わざわざ三十万を五十万にお上げになったのだという感じしかとれない。特に農村では五十万以上も貯金している人はわずか七%、百人中七人しかいない。都市でも二一%しかいないという統計が出されている。そうすると、あとの人たちは非常に零細なものである。これは数も金額も、つまり三十万以下の人たちの数が多く、その総計の金額も多くなっているのじゃないかという感じが持てる。そうすると、わざわざこれを今度二口ですから百万円にすることは、よほど大きな所得者のために便宜をはかったということであって、結局は一種の脱税と見られる。そこで、今あなたのおっしゃるように、税の面と貯蓄の面とのバランスと言われるが、税の面でいくと高額所得者の脱税になることだけが出てくる、それとバランスをとっていってどうなるか。これから先のことだからわからぬが、あるいはそのためにバランスがよくなってくるかもしれない。税がかえってふえて、貯蓄もふえる結果が出るかもしれません。けれども私の想定では、なかなかそうならぬだろうと思うのです。それはほかの方の三十五年度の統計から見ましても、そういうようにならぬように感じられる。もう一つは三十万から五十万にふやしたので、これらは分割するのに、一千万を三十に分けなくて五十に分ければ二十口になります。百万に分ければ十口になるというふうな、そういうようなことしにかなっていかないだろう。今これを三十万から五十万にふやしたからということで、貯蓄組合に入る組合員の人たちが、急にものを改めるとは考えられないのですよ。この点どうもはっきりしないのです。ですから私はほかに理由があるのだと思う。それは高額所得者のための一つの脱税のはけ口を見つけてくれたのではないかと、こういうふうにしか考えられないのです。これは実際にはそういうふうな理由であったのではないですか。そうでもないのですか。
  109. 村山達雄

    村山政府委員 われわれはこの貯蓄組合の実際の運用状況を見まして、乱用があるということは、これは認めざるを得ないところでございます。なぜこの乱用があるのかというところに問題の本質があると思うのでございますが、現在われわれの感じでございますが、これは現在の制度そのものが乱用を防止し得ないような制度になっておる。普通の現状ではと申しますのは、お互いに率直に言って納税者の方は二重加入というようなことを利用される。それで金融機関の方々も今まではその点に比較的関心が薄くて、いわば預金競争の渦中の中でその問題を消化しようとしておられる。これではとてもその乱用は防止できないわけであります。たとえば一つの銀行は大いに二つに分けることを黙認するというときに、他の銀行はそれを押えるというわけには遺憾ながらなかなかいかぬということでございます。そこでやるからには、一斉に納税者にもその気持になってもらい、それから金融機関もそのつもりでやれば、相当程度防止できるというふうにわれわれは考えております。それで現に監査いたしましても、金融機関は幾つかの口があるときに、その人が同一人であるということを承知している場合が多いわけです。これは金融機関がその気があればできるわけです。ただ金融機関が今その気にならない現状のもとにおいて、その気になれと言っても、これは実際問題といたしまして預金過当競争がお互いにあるでしょう。それはなかなかできないことである。やはり新しい制度の切りかえの際に、そのつもりになってくれば大部分は防止し得るのだ。また今度の新しい制度はそういうものだということを、政府の側も預金者側にPRすることによって、納税者の協力を得れば、相当その点は防止できるのだ、こういうことで踏み切っておるわけでございます。御指摘のような、これは大口のものに今度の制度はいわば合法的な脱税の道を開いたのではないかというあれでございますが、それは私はそう思ってないのでございます。この統計が、先ほど御指摘になった統計の信憑性は別にいたしましても、先生のおっしゃったような小さな人は現在でも免税であるわけであります。そこで問題は大きなものが現状よりよくなるかどうかという問題にあると思いますが、極端な例を申しますと、一千万円のものを三十口に分けるというようなものさえあるわけであります。こういうものこそいろいろなバランスはございますが、この制度の上でわれわれは最も残念なことだと思っております。そういう意味では今度かりに五十万にいたしましても、金融機関がその気になっていけば、どんなにやってみても二口だということになります。それでもちろんいろいろこの場合でもぎりぎり、税務署がやろうと思えばいつでも資料が自動的に集まる制度をとっておりませんから、それはやり方によっては多少抜け穴があるかとも思いますが、金融機関にその気になってもらえば相当程度は防止できる。問題はこれを利用する側、特にそれをあっせんする側の窓口の態度にあると思っております。こういう適正化の措置を講ずる際に、その趣旨を十分に金融機関にものみ込んでいただけば、われわれは従来の駐用の実情から言えば、相当程度防止できるものと思っております。
  110. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そうしますと今のお話ですと、五十万円にすることによって防止ができるという御意見がございました。それでそういうふうにせられるということなんです。実は三十万、五十万と貯金をする人は高額所得者なんです。その人たちが結局は分割したり、二重にしたりしてやられるので、ほんとうに貯金をしておる人たちはそんな二重にしたり、分割したりしていないと思う。その人たちのやっていることは、それを利用して脱税しているというような、税金を安くするのだというような、本質的にそういうふうなものがあってやられるのだと思う。それが今度五十万にすることによってどこまで防げるかという、これは今後の問題でしょうが、今後の問題として一応残しておきます。  次にもう一度お伺いしたいのは、今度のあれで有価証券の問題が出ておるのですが、社債その他の有価証券が今度扱えるようになるのですが、有価証券はどういうふうな範囲のものでしょうか、それをちょっと教えていただきたい。
  111. 大月高

    ○大月政府委員 現在の制度におきましては、国債、地方債、社債、というように限定されておるわけでございますが、今度の改正によりまして、命令で定める有価証券を扱えることにいたしたわけでございまして、今想定いたしておりますのは、社債と信託、いわゆるボンド・オープンを加えるかどうか、ただいつ、どういう格好で加えるかという問題は、いろいろ問題がございますので検討いたしたいと思いますが、それを加えようと思えば加えられるような制度にいたしたわけでございます。
  112. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そうすると今ボンド・オープンの問題が出ておりました。これは命令によってやられるので、今後それよりふやされる予定がありますか。
  113. 大月高

    ○大月政府委員 今のところ命令で定める有価証券として考えられるものは、ボンド・オーブン以外のものはございません。
  114. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 その次にもう一つ伺っておきたいのです。先ほどから分離するとか、あるいは分離しないでも二重にするとかいう問題が出ていますので、その分離したり、二重にしたりすることのそういう調査や何かのことは、どういうふうにせられるようになっておりますか、これは広瀬君も聞いたと思いますが、もう一度伺っておきたい。
  115. 村山達雄

    村山政府委員 これは両方の面がございまして、国民貯蓄組合法の適正な運営という面、その組合法の監督官庁の面では、それはそれとして監督があるわけでございます。一方におきましてこのあっせん者は多くの場合、窓口組合の場合は所得税法上の源泉所得税の徴収義務者でございます。この人たちが税法でお願いしてある徴収義務を適正に履行しておるかどうかという問題は、また別の税法に基づいて監査しておるわけでございます。御案内のようにこの問題は相当乱用の向きもあるやに見受けられまして、その点昨年国税庁において相当範囲にわたりまして監査をしたわけでございます。その実績はすでに国税庁長官から御報告になっておると思いますが、相当程度のものが出まして、最初たしか税額でサンプル調査を入れまして二、三千万円くらい、その後自主的に納めてもらいたいということで二十五億くらいの追加が進んで出て参った。別に加算税も相当ございまして、合計して三十億くらいのものが出ました。その問いわゆる乱用の実態等も相当範囲出て参ったわけでございます。そういった点を十分考え合わせまして、また現在における金融情勢の微妙な点も考えまして、両方の要請を満足するようにするにはどうしたらいいかということで、今度提案いたしておるわけであります。
  116. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そうすると窓口でそれが二重になっているか、あるいは分割するか、分割はないかもしれませんが、そういうふうなことを調査する人はだれですか。
  117. 村山達雄

    村山政府委員 ですから、ただいま申し上げましたように、両方からできるわけでございます。所得税法上の監査権は、それぞれの所轄税務署にあるわけでございます。それから組合法上の指導監督、これが適正に、これは税だけの問題ではございません。組合が適正に法律に従ってやれるかどうか。それはそれぞれそこの財務系統の機関が監督官庁になるということでございます。
  118. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 ちょっともう一つ伺っておかないとはっきりしないのは、たとえば銀行の窓口で組合ができます。そうするとそれが二重になっているか、あるいは分割、窓口では分割はしないかもしれませんが、二重になっているかどうかということを窓口はどうして知ろうとするのですか。
  119. 大月高

    ○大月政府委員 今度の法律改正によりまして、まず非課税の貯蓄組合の預金をしようとする人は、非課税貯蓄申請書を、これは銀行あてに出してもらうことになっております。それを銀行の方では整理いたしまして名簿を整備しておる。それから銀行の側におきまして、この人はほんとうの人であろうか、偽名とか架空名義であろうかというような疑いがございましたときには、本人であることを証明してもらうという権限を、この法律で与えてあるわけでございます。現在の郵便貯金法におきましても同様の規定がございまして、それと同じような権限を与えまして、窓口でまず真正な貯蓄組合預金者であるということを確認できるような手順をこしらえたわけでございます。
  120. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そうすると申請書が要るのと、それから確認という二つのことですね。それでもし万一そういうふうなものがそれでもやった場合は、その組合員の方には、預金者の方には何か処分があるのですか。
  121. 大月高

    ○大月政府委員 現在の国民貯蓄組合法によりまして、これは過料を課し得ることになっております。
  122. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そうするとそれは申込者の過料はあるのですが、今度は情を知りながらやった銀行の窓口の方はどうなりますか。それにも過料があるのですか。
  123. 大月高

    ○大月政府委員 同じく銀行の側にも過料を課し得ることになっております。
  124. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 それは一体どれくらいの額が過料になっているのですか、本人の場合、窓口の場合・・。
  125. 大月高

    ○大月政府委員 これは昔からの金額で、はなはだ金額は小さいのでございますが、三百円ということになっております。
  126. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 一体これはいつから、三百円というのは時代はいつからですか。
  127. 大月高

    ○大月政府委員 この貯蓄組合法ができましたのが昭和十六年でございまして、その当時から据え置きになっております
  128. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうもおかしいですね。ほかの方は二十万か三十万になり、今度は五十万にしようという。一方は上げていっておるのに、こちらは昭和十六年から相当たっているがちっとも変わらない。それは一体どういうことなんですか。
  129. 大月高

    ○大月政府委員 実はこの刑罰の関係は法務省の関係でございまして、これは率直に申し上げまして、われわれの金融行政の立場以外に横の関係でいろいろな法律がございまして、それの均衝をとっておきめ願っておるわけでございます。この法律の問題につきましても、いろいろ罰則関係で不均衡は常識的にはあるかと存ずるわけでございますけれども、何かやむを得ない事情もあるのかと承知いたしております。
  130. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 三百円にしましても、違反一口あれば三百円ですか。
  131. 大月高

    ○大月政府委員 一件につきまして三百円でございます。
  132. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうも法務省の方の問題でありますと、これはやむを得ません。またそっちの方に行きます。さっきの郵便局の方は郵政省の問題ですから、そっちに聞きに行くよりしようがないでしょう。  もう一つお伺いしたいのですが、昨年の七月二十二日の新聞、これは何新聞でしたか、それによりますと、「近く証券会社を監査」というので出ておりますが、これは先ほどの局長さんのお話で、お調べになったようですが、そのときにこういうふうに言われております。大蔵省の大月銀行局長村山主税局長が全銀協に対し、国民貯蓄組合取り扱い適正化を申し入れた際、全銀協側から、証券会社の投信収益金支払い報告義務違反も取り締まるよう要望せられたそうですが、この事情を少し聞かして下さい。
  133. 村山達雄

    村山政府委員 そのとき今の不良貯蓄組合の適正化の現状等はどうであろうか、それからほんとうはどういうところを望んでおられるか、どうしたら防止ができるか、いろいろ懇談があったのですが、あるいはそういうことがあったのかもわかりません。記憶にございません。
  134. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 記憶がなければ仕方ありませんが、これは記憶にあるでしょう。昭和三十七年二月二十三日からそんなにたっていない。貯蓄組合指導も強化という大蔵省の方針の中に出てくるのですが、今度信託会社も同じように窓口になるわけですか。
  135. 大月高

    ○大月政府委員 信託銀行は従来から窓口になっておりまして、今後も同じでございます。
  136. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 信託ではなく、証券会社です。
  137. 大月高

    ○大月政府委員 今度の法律改正によりまして、証券会社の窓口も窓口組合にできるようにいたしたいと存じております。
  138. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 どうも昨年のはわからないという話ですから、御記憶がないでしょうが、簡単にちょっと読んでみますと、「大蔵省、国税庁は証券会社に対し官から正確な受領書を受け取るよう警告してきたが、最近国税庁が一部の証券会社に対し実施した調査でも収益金受領書の八割以上が架空名義という結果が出ている。」もっと前を読みますと、「投信収益金については一 〇%の源泉課税後の総合課税のため証券会社が収益金支払いのさい客から受領書を受け取り、一人の客に対する収益金支払いが年間四万円以上になったとき証券会社は税務署に支払い調書を提出することになっている。ところが従来証券会社が客から受け取る受領書には架空名義のものが多く事実上脱税が自由となっていた。」と出ておりまして、それに対して八〇%以上が架空だと証券会社のことが出ておりますが、これを取り締まれということを銀行側から言っておるのですが、これはそうでしょうね。
  139. 村山達雄

    村山政府委員 今聞いておりまして、そのときその話が出たという記憶はございませんが、問題は、今の投資信託の受益に対しましては、源泉で一 〇%の税率で課税しているわけでございます。これは現在の所得の分類では配当所得として扱われておるわけであります。従いまして、法律の最後の形は配当と同じように総合して、そのかわり今の配当控除を適用するわけであります。ところが御案内のように投資信託については無記名式であるために、現在やっておりますのは、利子を受領する際に住所氏名を書いた一つの告知書を出していただきたいと言っておるわけでございます。その出した告知書を実際監査しましたところが、大部分が架空であったということであろうかと思うわけであります。これは無記名のものに対して、この無記名をどうするか、税制上どう扱うかという問題は、非常にむずかしい問題でございます。無記名の一般につきまして、なかなか総合の道がないという点でございます。
  140. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そこが私ちょっと聞きたいところです。こういうふうな一種の脱税を奨励しておる証券会社を、今度は国民貯蓄の方の窓口にする、これはどういうことですか。
  141. 大月高

    ○大月政府委員 現在貯蓄組合の運用におきましては、預金につきましても無記名という制度があるわけでございますが、これは貯蓄組合には入れないということになります。従いまして貯蓄組合に入る人は、真正な名義をもって入っていただきたい。具体的に架空かどうかということがわかるかという問題でございますが、これは率直に申しまして、そう簡単にはわからないと思います。これはもっぱら預貯金者あるいは証券を持っていだたく方の良心に待つわけでございます。しかし先ほど申し上げましたように、窓口における一つの厳重な手続も今度こしらえるわけでございますので、乱用は相当程度減るのではないかと考えております。
  142. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 私重ねてもう少し質問したいと思うが、ちょうど大臣が来ておられますので、私の方のほかの人も大臣に質問したいことがあるようですから、それが済みましてからまた続けて質問させていただきます。
  143. 小川平二

  144. 武藤山治

    武藤委員 大臣がせっかくお見えになったところですから、大臣にお尋ねする点だけ一、二お尋ねをしておきたいと思うわけです。  来年度の所得の伸びの問題でございますが、経済指標の伸びと税金の方の伸びの関係について、どういう指数に基づいてどういう算定をしたか。経済の成長の伸びと税金の伸びの間にどうも大へん食い違いがあるような気がするのですが、そういう点について大臣の見解を聞かしてもらいたいと思う。
  145. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもは、歳入を見込みます際には、今までの実績を基礎にして、そして政府が見込んだ経済の伸び率をその資料としまして、推定を入れた品目ごとに積み上げ計算をやって、大体の歳入の見込みをつけておるわけでございます。その積み上げ計算の過程で、翌年度の経済見込みをどういうふうに中に織り込んでいるかというようなことの詳細は、局長の方から説明いたします。
  146. 村山達雄

    村山政府委員 ただいま大臣からお答えがありましたように、閣議決定による経済見通し、それにそのままよってございます。たとえば生産物価、こういったところは全部そういうものによっております。雇用賃金、それらを参考にし、実際は課税者の分は違いますので、適当にアジャストしておる。それから間接税になりますと、これはずっと業界ごとの積み上げ計算がございますので、それを十分参酌いたしましてわれわれの方で吟味して、それらしいという数字をもとにして計算したわけであります。  ただここで所得について申しますと、国民経済上の所得計算税法上の所得計算は、かなり違っているわけであります。御案内のように、たとえば法人をとってみましても、法人の場合は、経済指標では四月から三月までの経済の伸びでやっております。これに対して法人税の方は二カ月後に申告が延びます。従いまして二月から翌年三月までのベース、決算期ベースで二−一べースによらない。特に一番大事な点は、法人のウェートは九月決算、三月決算にあるわけですが、国民経済計算では翌年の三月まで入るわけであります。それが入っていない。しかも計算のあれでいきますと、決算期で押えておりまして、実際の経済活動は六カ月くらいの期間が普通でございますので、六カ月ずれるわけです。ポイントで押えますと、約半分としまして三カ月伸びる。そういたしますと、決算期で押えても平均五カ月ずれる。その上に半分は徴収猶予になります。従いまして伸びが全く違うという点。  それからもう一つ、その計算対象になるもの、これは国民経済計算では全法人でございます。欠損会社もそうでないものも突っ込みで計算しております。税務計算ではもちろん法人税対象になる利益法人が中心でございます。しかもそのうち欠損法人ははずされるということがございます。個人につきましても同様のことがございまして、一方は会計年度計算でございます。片方は所得計算、暦年計算でございます。しかも対象になるものは、非課税所得は全部除いてあるというようなこと、それから課税所得だけを見ております。全体の所得者のうち、課税者の割合は割合で言うと少ないということがありますが、閣議で発表になります数字その他は全部その通りよっております。
  147. 武藤山治

    武藤委員 時間がありませんから、大臣に重要な点だけ聞いておいて、今の経済の成長率と税金の成長率との食い違いは、本会議後、数字に基づいて具体的にお尋ねをしていきたいと存じます。  大臣に一つお尋ねをいたしたいのでありますが、日本の非課税限度というものは非常に低い、そう思うのですが、現在の非課税限度というのは、諸外国並みでそう引き上げる必要はないとお考えですか、その点いかがですか。
  148. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 非課税限度は、各国に比べて今非常に低い状態でございます。
  149. 武藤山治

    武藤委員 低いということを御承知でおりながら、なぜ非課税限度をもっと上げようと努力をしなかったのですか。
  150. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはその国の所得水準、生活水準にもそれぞれ違いがございまして、金額では簡単に比較するわけには参りません。この非課税の限度というものは戦前にもございますし、戦後の状態を見まして、戦前よりも戦後の方が実質的には低くなっておりますので、そのためにこそ私どもは毎年々々減税をやって、御承知のように三十五年から見ましたら、五人の標準家族で見ましても、非課税限度が三十二万円から四十一万円、約八万七千円くらい三十五年に比べたら上がったように、徐々にこの限度を上げておりますが、まだアメリカ、イギリス及びその他に比べれば課税限度は低いのでございますから、今後とも減税に努力するよりほか仕方ないと思います。
  151. 武藤山治

    武藤委員 政府の経済政策の失敗から、国際収支の逆調あるいは所得格差の拡大あるいは潜在失業者が生れようとする生産過剰の顕在化、そういうような問題が今端的に現われておる。特に私たちが憂慮しなければならぬのは、物価の非常な上昇であります。そういう状態のときに、非課税限度をできるだけ上げてやって、低額所得者に対する思いやりのある減税をすべき段階であると思う。もちろん税というものは、短期の景気調整にそれほど敏感ではありませんから、所得税においてそれほどいじるということには、いろいろな問題点はあろうと思うのです。しかし今大臣がおっしゃいましたように、日本の非課税限度が非常に低いということは、列国の先進国家と比較した場合にも明瞭なんです。たとえば大臣は、比率からいって日本はそう低くないということを前の委員会では再三主張しておりましたが、邦貨換算で諸外国と比較した場合の国民所得の税負担割合というものも、すでに答申の中にはっきり書いてあります。時間がないのでほんとうの結論だけを聞いておきたいのですが、わが党は五十万円以下は一切非課税にせよということを主張しておるわけです。自民党政府はそれをようやらぬのですが、五十万円以下には税金をかけない、それぐらいのことを思い切ってやるべき段階だと思うのであります。今世界の先進国家で五十万円以下の課税をしている国はありますか。おそらくないと思うのです。先進国家ではアメリカですら——まあアメリカは例にはならぬと思いますが、標準世帯で二百万円までの所得者は非課税です。日本の場合は、月給一万円ちょっともらうと、もう税金がかかるのですから、独身者で着物も買いたい、たばこも吸う、たまにはちょっとお小づかいも使いたいという、ほんとうの最低のサラリーマンまで税金を取られているのです。これではちょっと私は非課税限度が低過ぎると思うのです。従って、アメリカ、イギリス、西ドイツにしても五十万以下は一切非課税なんですが、そういう点で減税の仕方が低所得者に対して思いやりがあるとはどうも考えられないのです。大臣のお考えはいかがですか。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから毎年私どもは減税をやっておるのが実情でございます。問題は、やはり生活水準の問題でございまして、日本所得をふやし、生活水準を上げるということに伴って、この非課税限度を引き上げていく、これは関連した問題でございますので、結局所得水準の上がることに従ってこれを上げていくという方向で、均衡を得たやり方でやっていくより仕方ないだろうと私は思います。
  153. 武藤山治

    武藤委員 生活水準と申しますが、それを各国の一人当たり国民所得数字でちょっと申し上げますと、日本は十万七千円、アメリカは八十万九千円で七倍ですよ。イギリスは三十六万六千円で三倍ですよ。さらに西ドイツは三十三万二千円、フランスが三十一万六千円と、一人当たりの国民所得が相当高いのです。しかも五十万円までは非課税なんです。日本の場合は一人当たりの所得が一万七千円で、五十万円以下にも重い税金がばっとかかるわけです。さらに地方税を見ていったら、私は非常な重税だと思うのです。そういう点の認識をもっと深めて、確固たる信念を持って、よし低所得者には先進国並みの税率に大いに近づけよう——ことしの減税なんというのは、大いに近づいておりません。私はそういう点、全く不満な減税です。しかしとこで論争しても仕方ありません。だからそういう点を一つ大蔵大臣は、なるほどそう言われて見れば——日本国民所得というのは全く低いのだから、単なる租税負担だけで、日本のパーセンテージは低いのだから、この程度でいいのだというような考え方は間違っておると私は思う。間違っておらぬと思いますか。他の何か政治的な考慮、政治的な配慮でやむを得なかったのだとお答えしますか。ちょっと心境をお聞かせ願いたいのであります。
  154. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政治的な配慮と申しますか、今の国の財政が果たすべき役割は、ますます大きくなっております。社会保障を初めとして、社会投資という差し迫って要望されている需要が多いときでございますから、これはできるだけこの際強化することが必要だという政治的配慮をしたことは事実でございます。それとの関連において、減税の範囲もある程度調整されておるわけでございますが、それでもなおかつシャウプ税制以来、昭和二十八年のときと並んだ初年度千億円の減税というものは、過去の日本の減税の仕方から見ましても相当大幅な減税で、私どもとしましては予算委員会を通じましても、皆さんから怒られているのは、なぜここに金を出さぬかということで、それだけで年じゅう怒られている。その要望にすらわれわれは沿えないで苦しんでいるときでございますが、せめてその何分の一かの要望に沿いたいというので、その財政需要に対処するために若干減税の制限を受けたという点はございましょうが、ここらは、そういう事情から見ましたら、相当大幅な減税だと私は考えております。
  155. 武藤山治

    武藤委員 大幅な減税と主張しますが、その減税の中身も、あるいは景気調整の観点から考えたり、あるいは国民所得の向上という立場から考えたり、第三には公平という見地から考えなければならぬと思う。幾ら財政需要があるからといって、その需要がどうもあまり緊急でないものにまで支出をしようとしたり、非常にむだがあるのです。今日の財政需要というのは、非常に政治的考慮が多過ぎるのです。私は、そういう全体のバランス、公平というものに立って予算支出がなされておるなら、それほど減税の問題も強く主張しないのです。そういう点を一々申し上げるにいとまがありませんが、たとえば私が大臣にぜひ考えてもらいたいのは、この事業所得の場合でも、青色申告と白色申告の場合の差というものは大へんなものだということです。現行の両者の差を金額で申し上げましても、標準世帯で白色と青色の差額は六千七百十四円です。今度の改正法でも五千七百六十一円という税額の違いがあるわけです。ところが、実際に青色申告をできないような零細事業家というのは、どういう生活状態の人でしょう。とうふ屋さんにしても、あるいは子供商い屋にしても、学用品を売っているちっぽけな未亡人の商店にしても、とても青色申告をするような労働力がないのです。白色申告をしている人はそんな余暇がないのです。そういう零細なほんとうに気の毒のような事業家に、青色申告をしないから、お前のところはまあ専従者控除で七万円だということで、自家労賃という部分のもっと実際にかかる費用も見てやっていない。こういう点なども、もっと国民の生活をゆとりあるものにしてやるという立場からも、さらに同じ事業家の公平という立場からいっても、片方は帳簿をつける人間がいる。税理士を頼める余裕がある。そういう人たちは、まあ税理士の分だけは減税で何とか恩恵があるからというので、税理士を頼めるでしょう。ところが、それを頼まれないような困っている業者が、よけい税金を負担するという矛盾があるわけですね。だから私どもは、こういう白色申告者に対しても、当然自家労賃的な考えから十二万円の専従者控除というものははっきり認めていいと思う。そうでなければ、自家労賃控除という形で十二万円ぽんと認めてやってもいい、こう考えるのですが、そこらの見解はどうですか。
  156. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう点の均衡を是正して、体系的な改正をやりたいというのが、税制改正の私どものねらいでございまして、そういう問題を三年間にわたって検討した結果、今のような形にしたわけでございまして、もとから比べたらこれは非常に均衡がとれた形になっていると思います。青色申告の方には、記帳義務というようなものもございます。それとのつり合いというようなものもやはり考えなければ、一方に不公平ということになりますし、そういう意味で点検していただいて、いろいろな要素を勘案して、相当均衡化にけっこう今の税制でなっている、そう私どもは考えております。
  157. 武藤山治

    武藤委員 私は、今の減税では、大衆の期待にこたえるような公平化というものはなっていない、そういう結論であります。特に今、青色申告の場合は記帳義務があるから、十二万円の専従者控除を認めていいということだが、十二万円以外に、青色申告の場合は、貸し倒れ準備金だとか、価格変動準備金だとか、いろいろ恩典があるわけですね。記帳役務を負っているために恩典というものがほかにあるのです。ところが白色申告の場合は今言ったように記帳義務を果たすような労働力もなければ、ほんとうのもう貧乏な零細企業なんですよ。また税理士を頼んで記帳してもらうような、税理士の費用も払えないような事業家なんですよ。そういうものの特殊性というものを考えたら、自家労賃として十二万円を認めてやることぐらいは、思いやりのある政治としたら、私は当然だと思うのです。公平だと思うのです。公平の理論に反しないと思うのです。その点、大臣のお考えはいかがですか。
  158. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一方は現実の支出があろうとなかろうと、専従者控除というものを置いてあるのだし、これが青色申告の全額と全く同じだったら、かえってそこに不公平ができるので、その間は私どもは非常に研究してきめた問題でございまして、同じようにする方が実際は不公平になると思います。
  159. 武藤山治

    武藤委員 どうも大臣の認識は違いますね。青色申告というのは、専従者控除以外にまだ恩典があるわけですね。貸し倒れ準備金だとか、価格変動準備金だとか、いろいろあるわけですが、そういう恩典がすでに記帳義務に対する一つの報いと受け取ってもいいのじゃないですか。白色申告のもっと小さい人たちは、そういう記帳をしたり、税理士を頼んだりできないほど、生活程度が低いのですから、労働力がないのですから、自家労賃という形で当然十二万円くらいぽんと認めてやっていいのではないですか。それは公平の原則に反しないのではないですか。公平の原則に反しますか。
  160. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今言いましたように、われわれはいろいろ十分検討いたしましたが、家計と企業が分離しているかいないかというような問題、いろいろな問題を考えまして、若干区別がある方が私は公平だと思っております。
  161. 武藤山治

    武藤委員 大臣の答弁は全く承知できない答弁ですが、本会議も始まりましたから一その企業企業としての分離ができないと言うのが、保留にして主税局長にまた聞きますから、その回答がはっきり出ない限り所得税は、われわれは採決に加わらぬつもりでやりますから、一つよろしくお願いします。
  162. 小川平二

    小川委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、本会議散会まで休憩いたします。    午後二時十三分休憩      ————◇—————    午後三時五十四分開議
  163. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案及び国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。藤原豊次郎君。
  164. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 もう先ほど大体伺いましたので、残りのことを簡単にお伺いしておきます。  ボンド・オープンを今度入れられるというのですが、いつごろから入れられる予定ですか。
  165. 村山達雄

    村山政府委員 今の問題は、目下大蔵省部内でもいつまでにやったらいいかということを銀行局で相談中ということで、まだきまってないそうでございます。
  166. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 先ほどボンド・オープンを有価証券に入れるということはきまったようですが、ボンドを入れるのはどういう理由なんでしょう。
  167. 村山達雄

    村山政府委員 御案内のようにボンド・オープンの投資のもう九割九分ぐらいまでは公社債でございまして、実質において公社債の利子と何ら変わりがない。現在国民貯蓄組合の対象に入れておるわけでございます。また税の取扱いにおきましても、すべてボンド・オープンからの利子につきましては公社債と同じにしているわけでございます。従いましてこの国民貯蓄組合においても同様の取扱いをする。ただおそらく時期の調整というのは、金融上のいろいろな点を考えまして、その時期の調整について目下検討している段階ではないかと思います。
  168. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 そこでもう一つ続いてお伺いしたいのですが、郵便局にはほとんど二重加入というのはないだろうと思うのです。ところが銀行は二重加入なり小口に割ったりします。ところが銀行よりも証券会社の方がもっとそういう点はひどいのじゃないですか。それはどうなんです。今度三十万から五十万にすればそういうことをなくすると言われますが、銀行でも現実に預金獲得のために幾つかに割ったり二重加入をそれとなしにやっていたのですが、今度証券会社にこれをさせるとそういう行動がもっとひどくなるのじゃないか、その方の見通しはどうなんでしょう。私は銀行よりもっとひどくなるような気がしてしようがない。
  169. 村山達雄

    村山政府委員 これは現在御案内のように、今までは証券の方は地域組合でしか動くとすれば動けなかった。これを今度の改正を機会に窓口組合にしまして、同時に銀行と同じような規制をしたいというのがねらいでございます。銀行だとどうかということになりますと、その点は同じようなものではないかと思うのでございます。ただ心がまえとか、それから本店は支店その他にどういうふうに統制をとっていくかという問題で、これからのそれぞれの証券会社なりあるいは銀行の心がまえいかんによるので、証券の方が特にあぶないということはないのじゃないか。これはもちろん公社債でございますが、預入申込書を出すときには住所氏名を出さなければならないということになりますから、その際はやはりあなたははかに入っておりませんかとか、それから住所氏名確認の手続をとるという点は同じでございますから、しっかりやれば同じようなことになるのだろうと思います。
  170. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 私は銀行でもそうだと思うのです。預金を集めることは重大なことなのですね。公社債がボンド・オープンをやった初めのときよりこのごろ割合に売れていないからこういうふうなことをやって、銀行よさようなら、証券よ今日は、というのをここでまた繰り返すような感じがするのです。同じようなことになりはせぬか。それと同時に脱税も多くなってくるのじゃないか、それから銀行も証券の方も局長さんの考えていられるほど税金のことに夢中になるのじゃなくて、金を集めたり物を売る方が主体なんで、それから一方組合員の方も、結局はそういう脱税——脱税が目的であるわけではないかもしれませんが、そういうことが主体になってくる。ですから、実際に三十万を五十万にして希望通りにいくかどうかということに対する見通しはどうなんですか、ほんとうにやっていけますか。
  171. 村山達雄

    村山政府委員 私、先ほどお話がございましたように、昨年銀行協会といろいろ懇談したとき、頭取さんあたりのお話をいろいろ個人的にも承ったのですが、やはり問題の今の乱用の中心点というものは、一斉にそのつもりになってやれないというところにあるのだというお話でございました。私もそうだろうと思うのでございます。おそらく今の預金獲得といっても、Aの銀行の預金をBが集める、Cが集めるという問題なんだろうと思う、問題の本質は。そうだとすれば、そこは同じ競争条件であるなら別にひどいことをしなくてもいい、ほかがひどいことをやっているからこっちもひどいことをやるのだろうと思います。ですから銀行が同じルールに立って、このルールのもとで競争をやろうという気がまえさえできれば、私は大部分の乱用は防止し得る、かかってその気持になってもらえるかどうかという点にあると私は思うのであります。
  172. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 もうこれ以上言いましても観念の問題ですが、銀行にせよ証券会社にせよ、そう向こうがやらぬからこっちもやらぬというわけにはいかぬでしょう。あれは競争で預金を集めなければならないのが銀行の本質なんで、向こうが集めませんからこっちも集めませんというわけにいかない。選挙と同じことだと思う、問題の本質は。ですから局長さんの希望するようにいきますか、どうもそういう点が納得ができないのですが、局長の方でぜひともそういうふうにやっていって、そうして正しくやっていけるというのなら一年やって結果を見るよりしようがない。  それから、そういう場合に、もう一つは昨年の七月調査せられて三十億ほどの金が入ったということを言っておられますが、そうすると、今後はやはり絶えず取り締まり——取り締まりというと語弊があるかもしれませんが、調査は主税局の方でやられる、こういうことになりますか。
  173. 村山達雄

    村山政府委員 これは今度は新しい制度のもとにスタートするわけでございます。それを扱われる銀行におきましても、今度の法に盛られている趣旨をよく御理解いただいて、御協力を願えるものとわれわれは期待しております。もちろん、その国民貯蓄組合を監督する官庁におきましても、この新しい制度が適正にいくかどうかということについては、その立場から十分監督はあるものと思います。税の執行の問題はもちろん国税庁の問題でございますが、おそらくその執行の状況を見て、必要があれば、その必要の限度においておやりになることと思いますし、そこまでやる必要もないとお考えになれば、それはいろいろお忙しいことでございますから、ほかに手を回すということも十分考えられる。それらの状況を見ておそらくいくのではないかというふうにわれわれは想像しております。
  174. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 大体この辺で質問を終わりますが、それから同時に、去年七月ごろですか銀行の関係をお調べになったですね、あれはこれまで一年に何回ぐらいおやりになっておったのですか。この前の委員会で広瀬委員に答えられていることから見ますと——局長の方はこういうようなのがあることは知っておるだろう。この答えから見ますと、これまでそういうふうな調査、二重とかあるいは分割するとかいう調査は毎年何回ぐらいやっておられたのですか、これまですでに。
  175. 原純夫

    ○原政府委員 それまでは実はほとんど行なわれていないのが、実情であります。それはそのとき申し上げたように、毎回税制改正のときに問題になりまして、大蔵省は銀行局も一緒だものですから銀行局と相談いたしまして、銀行検査の際に締めるというお約束をいただき、銀行局からは相当厳重な通達を金融機関に出していただいたわけです。それがどうも何度も——二度ばかりそれがありましたけれどもうまくないというので、第一線でもほうっておけないというので、監査が始まったのが一昨年の秋だったと記憶します。これは第一線がとてもほっておけないというので始めたような感じであります。それでそういうようなものが、昨年の春夏にかけまして私の記憶では五、六件出て参りました。やはりそれぞれ脱漏といいますか間違いが非常に多い。これでは庁としても全国的な取り仕切りをしてやらなければならぬというので、計画を立てて、夏の終わりごろだったと思いますがやりました。そして全国的に見当をつけて、その見当によって銀行協会その他に話をして自主的な納付を勧めるということをやった次第でございます。
  176. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 この二重加入と、それから分割をするというふうな話は、相当前からあったんですがね。私たちも前から聞いていたんですがね。私たちが聞いていたより、私なんか勧められた方なんです。それは三十万ずつにすればこんなに取られないんだから、三十万ずつにしなさいと銀行から勧められたものです。そういうふうな時代のあったときに、あなた方の方の耳に入らぬとは考えられないんですがね。その時分はちっとも調べられないで、ここへ来て調べられたということになるのですかね。それでは少し怠慢だったと思うんですね。相当あったと思うんですよ。ですから今後十分そういうことを指導すると言われるならばそれでけっこうですが、どうも私はこの全体が、結局は高額所得の人の脱税のためのもののような感じしか持てないので、そういうふうな感じのしたまま私の質問を終わります。
  177. 小川平二

    小川委員長 堀昌雄君。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 国民貯蓄組合の減免のことで少し伺っておきたいと思います。  今度大蔵省で貯蓄資料をいただいた中で、国民貯蓄組合あっせん、貯蓄利子の免税について、昭和三十五年は特別措置として大体百億円落ちておる。三十六年百二十億円、三十七年百五十億円が落ちるという資料をいただいたわけです。そこで、この落ちていく落ち方を見ますと、その以前は資料がありませんからわかりませんが、三十五年から三十六年に対しては二〇%、三十六年から三十七年に対しましては約二四、五%になります。こういう年率でこの落ちる分がふえていくわけですが、一体これに該当する貯蓄の増加というものはどういう格好で伸びておるのか、これが出てきた経緯をちょっと伺いたいと思います。
  179. 村山達雄

    村山政府委員 こまかい計数はあとで申し上げますが、考え方としましては現在の預金、残高の総体でございます。このうち法人の預金分が幾らございます、個人の分が幾らございます、それから国民貯蓄組合の元本が幾らございます、差引課税分は個人として幾らございます、こういう数字があるわけでございます。国民貯蓄組合の元本分が毎年報告に出て参ります。それでそれをもとにいたしまして、その利子額を計算しているわけでございますが、それによりますと、ここに手元にありますのは三十六年分と三十七年分でございますが、利子額の総額が三十六年で個人分二千五百三十九億、三十七年見込み二千七百七十二億、うち国民貯蓄組合分が三十六年千八百七十九億、三十七年二千五億、従って課税分はそれを引いた、三十六年分につきましては六百六十億、それから三十七年分につきましては七百六十七億、こういう数字でございます。
  180. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、さっきから問題になっておるところは、やはり一番肝心なことは不当なる取り扱いをされないかということです。これは銀行局の方に伺いますが、一般の法人の預金は別ですけれども、個人預金の今の伸び方とこの伸び方は、今こまかい資料は私もありませんからあれですが、大体並行しておりますか。この方が私はどうも線の上では角度が高くなっておるのじゃないかと思うのです。
  181. 大月高

    ○大月政府委員 個人と法人に分けて申しますと、全国銀行の昭和三十年度末の個人の預金が、一兆六千百二十五億、そのときの法人の預金が二兆三百五十億、それが三十六年九月現在におきまして個人預金が三兆七千七百十億、それから法人預金が五兆五千百七十八億、従いまして法人預金の伸び率が若干いい、こういうことになっております。
  182. 堀昌雄

    ○堀委員 私が伺ったのはそういうことではなくて、個人預金が伸びてくる、国民貯蓄にかかわらず総体として個人預金が伸びてくる伸び方とこの国民貯蓄の中の特別措置で落ちてくる落ちるカーブとは並行になっているのなら、不当な取り扱いは比較的ないんじゃないか。ところが国民貯蓄で落ちる方がどんどん落ち方が激しくて、一般の個人預金の伸びの方が低いということになるならば、その中にはやはり問題が残ってくるではないか。  そこで私が言いたいことは、きょうは時間がありませんから特に銀行局にお願いをしておきたいことは、あなた方は税務署が銀行に来たりいろいろすることを非常におきらいになる。けれどもわれわれはあなた方自身が十分に監理をして、こういう問題において疑惑がなくなるならば、何もわれわれは正当な形で国民貯蓄組合が運営をされることにおいては、片方に郵便貯金の制度もあることですから、ある程度の問題はやむを得ないところがあると思いますけれども、事実はそうなっていないというところに先ほど来の問題が出てくるわけです。ですから、その点が銀行局として一般の貯金の全体の伸び率というものと、そういうものの中で恩典を受けるものが同じカーブにあるのならば、これはマクロ的なものですけれども、比較的問題は少ないのではないかと思います。その点は、やはりそういう資料を整えて、十分監督をしてもらわなければならないと思うのですが、今後の監督に対するかまえはどうなりますか。
  183. 大月高

    ○大月政府委員 従来貯蓄組合の乱用がございましたことは、われわれ遺憾に存じておる次第でございまして、これはわれわれとして、ここ数年来非常に率直に申しまして、頭の痛い問題であったわけでございます。それで小額貯蓄は優遇しなくちゃいかぬ、また貯蓄者心理に非常に水をかけるようなことをするわけにもいかない。そうかといって、税の適正化という点から申しますと、やはりまともに保護すべき預金を保護するというふうなことにいかないといけないと思います。その三つの矛盾したものをどこで調整するか。具体的には非常にむずかしい話でございますので、国税当局ともいろいろお話し合いをしつつ、われわれの方で金融界に対しましてもしばしば警告を発しましたり、協会自体といたしましても、それぞれ自粛の措置をとって、いろいろ参ったのでございますが、何分この問題は、金融機関の心がまえの問題でもあると同時に、預金者自体の問題でもあるわけでございます。それからわれわれ監督官庁の問題でもある。これもまた三つの立場がございまして、この辺の呼吸が完全に合わないと、この制度はうまくいかないというような非常にむずかしい問題でございます。それでいろいろと努力して参りましたが、先ほどからお話がございましたように、国税庁の方で直接臨検検査をいたしました結果は、まだそういう努力にもかかわらず、非常に課税漏れがあるということがありまして、税の御当局ともいろいろ相談いたしまして、やはり制度としてできるだけ適正化をはかる必要があるのだろうというのが今回法案として御提出いたした趣旨でございます。そういう意味で、まず窓口におきまして、金融機関の側で本人であることを確認してほしい。そのために本人に対して、本人であるところの証明を求めることができるという権限の規定を入れたわけでございます。これは郵便貯金におきましても、たとえば本人に行ったはがきを見せろとか、あるいは米穀通帳を持ってきてくれとか、あるいは定期券とか身分証明書を出してほしいということは言える建前になっておりますので、それと同じ建前にする。それから貯蓄組合で非課税の預金をしたいという人に対しては、非課税貯蓄の申込書というものを出してもらうということを、これも法律で明記いたしまして、その申込書に基づきまして、銀行の内部におきまして、名簿の整理をする、それによって二重認可というようなものがないように、まず窓口自体において交通整理をするということをいたしたわけでございます。そういたしますと、預金者自体の自粛、金融機関側の心がまえと相待ちまして、われわれといたしましても金融検査あるいは証券検査、それから一般の貯蓄組合に対する監督権としての調査権もございますので、できるだけ金融サイドからする監督を強化することによりまして、この制度の適正化をはかりたい。従来のように単に申し合わせであるとか、あるいは監督通牒であるとかいうことでは、なかなか一般の心理に及ぼす影響も大した期待を持てませんので、五十万円に全部引き上げますと同時に、法律改正ということによって、適正化に一段と足を踏み出すのだという姿勢をはっきりいたしておるわけでございます。そういう意味で、われわれの理想といたしましては、国税当局が直接窓口でいろいろ臨検調査される必要がないという状況にわれわれの金融行政でもって持っていきたいというのがわれわれの希望でございます。もちろん百パーセントというふうにいくかということは、率直に申しまして自信がございませんけれども、われわれの心がまえとして、あるいは法制上の制度として、今般の改正は相当有効な期待ができるのではあるまいか、実際の行政面においても相当腰を入れて取り組んで参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  184. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで銀行局として一つ十分おやりいただきたいのですが、今度の問題で、改正になっても、甲の銀行と乙の銀行、たとえば大和銀行と富士銀行、それから三和銀行、住友銀行、三井銀行と、こういうふうに五十万円ずついろいろ出して、それが一体同一のものになっておるかどうか、銀行局側で把握できますか。
  185. 大月高

    ○大月政府委員 これは現実には全部を網羅して見るということは、率直に申しまして相当むずかしいと思います。これは郵便貯金におきましても原簿所管庁というものがございまして、そこへ全部名前は集まってくる、ここで五十万円の問題を審査できるということになっておりますけれども、そうかといって所管庁でそれを全部見ておるわけじゃないというような現実もございます。それと同じでございまして、制度としてございましても、これが百パーセント十分だということは、私は税の立場から見ましても、やはりこれは期待もできないのじゃないかと率直に思うわけでございます。しかし少なくともある一カ店の中における分割その他の問題は、少なくともこの制度を整備することによりましてほとんどなくなるであろう。そういたしますと、今のお話の、ほかの店を通じてどうなっておるかという問題は、われわれの今考えておりますところでは、抽出検査によってこれはできるのじゃあるまいか。具体的には、たとえば東京都と静岡県というようなことは絶対にないと思いますので、やるとすればある地域の問題だということになります。そういたしますと、ある特定の地域につきましてアならアという人の名寄せを金融検査としてやるということはできるというようなことでございますので、われわれとしては随時そういうような方向で金融検査の際に十分この問題の運用の適正化をはかるということに関心を持ちまして検査を続けて参りたい。従来は検査という手段をもってしてはこの問題は取り扱っていなかったわけでございますが、こういうように問題が非常にむずかしくなって参りましたので、金融検査あるいは職権検査、こういう問題も扱いまして、やり方も相当研究いたしまして、名寄せのできるように、店の異なるものについてもうまく把握できるように十分考えたいと思います。
  186. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでもう一つ今度は国税庁の方に伺っておきたいのですが、これまでもやりたい、やりたいと思っていたけれども、なかなかやれなかった。しかし思い切っておやりになった。やってみたら案の通り——案の通り以上の結果が出たということだと思うのです。そこで銀行局はああいうふうにおっしゃっていると、これは国税庁の側としてしばらく見ていないと、せっかく銀行局がやるというのに、横から顔を出すわけにもいくまいかということになりかねないと私は思いますが、その点が私やはり今後重要な問題になると思うのです。というのは、何かどこかでチェックをされるということになっていかないと、銀行局の方は、これは内部的なものでどうしてもそれは手心をされるとは思いませんが、されやすい可能性のある方向だと思いますが、そういう点、この問題は税金の問題なんですから、最終処理はやはり国税庁の問題になろうかと思うのですが、今度法律が改正をされた後に、国税庁はどういう態度でこれに臨まれますか。
  187. 原純夫

    ○原政府委員 貯蓄組合預金は総体的な計数をたしか三月と九月だったと思いますが、まとめてその統計が出て参ります。それを見るというのが一つの方法だろうと思います。  それから随時税の調査に際して銀行預金を調べるということがあります。そういう際に、裏預金と申しますか、というようなものが出て参る。その中に貯蓄組合預金を非常に悪質に分割して使っているというようなことがあるかないか、これが今後どう動いていくかというあたりが、私どもが特にこれの源泉監査はやらないでも知り縛るところです。こういう制度になるわけですから、一応銀行側の自粛といいますか、同町に銀行検査の方でもいろいろやっていただくというのに期待したいと思いますが、ただいま申しましたようなわれわれの知り得るデータ、銀行側で調べたデータももちろん出て参りましょうが、それを見て不満足だと思いますれば、私どもはやはり源泉監査をやるというのが当然の義務だろうと思います。昨年ああいうふうにやって自粛をお願いしておりますが、その後の経過で私としましてはまだまだ自粛が十分いっていないというふうに見ております。大へん遺憾な事件が今年に入りまして、これは新聞でも報道されておりますが、査察事案で大へん遺憾な事案が出ております。こういうようなものは今後跡を絶つようになるかあるいはどうかというようなことは、やはり態度をきめます場合に相当重要なケースになるだろう、それらを見まして、必要ある場合はやはり監査をやらしていただくというつもりでおります。
  188. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今度は、主税局長に伺いたいのですが、さっき触れましたように、実は百二十億なり百五十億なりが減免をされておるというような推計が成り立っておるわけですが、実は昨年はそれによる乱用として、それを十八億ごらんになって、二十億出たということですけれども、私はこれは今の国税庁長官のお話ではないけれども、まだまだ実はあるのだと思います。  そこで私は、この委員会で、この問題はこういう格好でずっといつまでもやるわけにはいきませんから、きょうの質疑で一応は打ち切りますけれども、この問題は、この改正が行なわれたからそれで済むわけではないのであって、今後一年間については一つ銀行局は銀行局として、主税局は主税局として、国税庁は国税庁として、この問題について十分一つ誠意のある態度で一ぺんこの疑惑になっておりますもとを明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。銀行局は銀行局の立場がありましょう。主税局は主税局の立場がありましょうから、おのおの独自の立場でいろいろ御調査になったところはかくかくしかじかであるということを、今後に開かれる委員会において私ども随時、少なくとも一・四半期に一回くらいはお伺いして参りたい。そういう中で来年度についてはこの問題はいかにあるべきか、もう少しわれわれこれを詰めた時点でものを考えて参りたいというふうに思いますので、それについて主税局としてどういうふうにやれるかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  189. 村山達雄

    村山政府委員 今、堀委員が申された通りでございまして、われわれも今後の運用につきましては、先ほど長官もおっしゃいましたような銀行局のデータ、それからおそらく国税局の方のデータもありましょう。それぞれのデータを見まして、制度としてこれが十分であるかどうか、その点どの辺がまたネックになって出てくるか、それに制度的に対処する道はほかにないか、そういう点を真剣に検討して参り、必要があれば次の措置を検討して参りたい、かような心組みで今後これに対処して参りたいと思っております。
  190. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで最後に政務次官にお伺いをいたしますが、実は私はきょう予算委員会で、ちょっと税収関係の問題に触れましたが、時間がありませんから取りやめにいたしました。しかし、そのときの大蔵大臣の答弁は、ちょっと、何か思い違いがあったかの感じで、私、すなおに受け取れない点がありましたけれども、大体国民所得で三十七年度を例にとりますと、百五十億円減免されるのです。それから利子の分離課税で百二十五億円というものが減免をされました。合わせて都合これが二百七十五億円、一般減税の方は、ちょっと資料を手元に持っておりませんが、ことしの初年度における源泉所得、勤労所得税関係は三百五十億でしたか、何かそのくらいだったと思うのです。そうしてみると、まことにどうも、額に汗して働いた人から減税する分が今年度三百五十億、そうして預金のことで預けてある分については二百七十五億も負けてもらえるのだということは、いかにもわれわれ勤労者という立場から、働く者の立場から見ますと、減税のあり方としてはいかがかという感じがいたすわけです。ですから、特にこの問題は、なるほど銀行局なり、それは政府全体としては貯蓄を増強することが日本の経済の伸長に役に立つという点はわからないでもないけれども、そのことはそのこととして、しかしものの性格としては、相当慎重を要するものがあるということだけは間違いがないと思うのです。その点で、今各局に対しては一つ十分、今後の問題について監視をするといいますか、お願いしたのですが、大蔵省の責任者として、今後この問題についてはどう対処されるか、一つ責任ある御答弁をして下さい。
  191. 天野公義

    ○天野政府委員 利子課税の免税措置につきましては、今まで国民貯蓄組合でやっていたわけでございますが、貯蓄組合の三十万円以下の免税措置というものは、勤労者が全部入っておらないというわけではないのでございまして、勤労者もみな預金を納めておるわけでございますから、減税になっている大半は勤労者の方々の預金利子というのが減免されているわけでございます。私どもの一番ねらっておりますところは、多額の預金をやっておりながら、法の網をくぐって、この国民貯蓄組合の免税措置によって免れよう、こういう高額預金者の所得をこの際切りたい、そして一般大衆の預金者の利子は減免したい、こういう考え方で基本的に進んでいるわけであります。なお、利子の免税措置の金額は、これは勤労者の方々の方が大半でありまして、高額所得者の方は少ないというふうに判断をいたしております。また先ほどこの委員会におきましても、大体の数字においてそういう資料になるようなことを事務当局も述べておりますので、この点御了承を願いたいと思います。
  192. 堀昌雄

    ○堀委員 今、次官がおっしゃった通り、なるほど勤労者に還元される問題でもあります。ありますが、勤労して得た収入に対する減税と、それから貯蓄に回って、これはまあ、とにかく何にもしないでいても利子として出てくるものに対する減税というものは——私が言うのは、こっちを減らせと言っているのじゃない。これは制度としてできているなら、一般の減税をもうちょっとやらないとバランスがとれないのじゃないですかということを実は言いたかっただけです。その点ははき違えのないように、一つ御理解をいただきたいと思うのです。  そこで、今おっしゃるように、あなたも一つ責任者として、多額なる貯蓄が不当にこれによってのがれることのないようにしたいとおっしゃったわけでありますから、もし著しくそれが、今後四半期ごとにいろいろ御報告をいただきながら検討していってどうも制度として問題があるし、そうなると運用の面でも問題があるという両建の問題が出てきた場合には、確固たる態度を大蔵省としてはとるというふうに一つお約束がいただけるかどうか。
  193. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいまの御審議を願っております法案によりまして、預金者の方もまた金融機関の方もいろいろと自粛をされて、われわれのねらっている線にいくと思います。それがまた乱用ということになりました場合におきましては、これは検討せざるを得ないということは言うまでもないところでございますが、私どもは今度の法律でねらっております線が出るであろうということを善意をもって期待しておる次第であります。
  194. 小川平二

    小川委員長 芳賀貢君。
  195. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一昨日の当委員会で財産税の審議の際、政府側から答弁が保留された点について再度質問します。これは国税庁、長官にお尋ねしますが、国税庁の年次報告書によると、三十五年の財産税、贈与税の徴税成績が非常に上がっておる。そのおもなる原因は、大口納税者に対して実地調査を強化した結果、そのために徴税成績が上がったということが特に報告されておるが、一体徴税上いうところの大口納税者というのは大体どのくらいから上が大口というのか、別にきまった定義というものはないと思いますが、この点について説明を願います。
  196. 原純夫

    ○原政府委員 昨年相続税の実地調査に力をうんと入れようという際に、どの程度以上のものをやるかということを考えました場合の額は、遺産相続でいって、千万円以上と認められるものというものを境としてやられたのであります。
  197. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その結果が、大体前年に比べて二〇%あるいは三〇%上がったわけですね。そうなると、それ以前は非常に大口に対しては手ぬるい態度で臨んでおったということが立証されると思うんですよ。まじめにやった結果がそういう成績が上がったのですからして、それ以前は特に大口に対しては手心を加えて、非常になまぬるい徴税をやったということになるわけですか。
  198. 原純夫

    ○原政府委員 見ようによっては、そういうようなそしりを受けてもいたし方ないような面があると思います。御案内通り、経済がだんだん進歩して、世の中が豊かになりますと、毎年々々の所得というだけでなくて、それが蓄積されて財産になる、財産の方の収益もありますし、財産自体の動きというものが経済の中で大きなウエートを占めるようになります。それで年がたち経済がそうやって進歩するに従って、資産税系統、つまり相続税それから贈与税、譲渡取得ですね、そういうようなものに関する仕事のウエートがだんだんふえて参るという傾向がかなり顕著であります。私どもといたしましては、人員の純増はなかなか望めないというので、総体の人員の中で極力やりくりしまして、資産税系統に人員をふやしております。昨年度もたしか二百人近くだったと私記憶しますが、ほかからさいて投入したというようなことであります。そういうかまえで資産税系統の仕事の重点をねらってはやっていくということで、見ようによってはおっしゃる通り、その前はなまけておったと言われると大へん心外でありますけれども、やはり手が回らなかったという点はあると思います。ただ十分そういう点に気を配りまして、毎年重点的にやっておるということでございますので、今後ともそういうそしりのないように努めていきたいと思いますから、御了解いただきたいと思います。
  199. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実務上から見れば、少額は財産の把握はこれは容易にできることですが、何千万、何億ということになると、やはり向こうも非常に知能的にいろいろ税をのがれようとするようなことを特に専門的に研究してかかっておるからして、そういう階層に対しては、今後も十分な態度をもって臨むということは、長官の言われたように大事だと思うわけです。ですから、大きな所得者に対してとかく手ぬるくやっている、小額所得者に対しては厳重な態度で臨むという、そういう非難が国民の中から起きないように、今後も配慮してもらいたいと思います。  次にお尋ねしたい点は所得税法関係であります。これと関連して法人税に及ぶわけですが、農業法人の最近の実情はどういうことになっておるか。たとえば農業基本法の関係とか、今国会で継続審議になっておる農地法あるいは農協法の改正の中にも、農業生産法人法律の根拠で設立できるという案の内容になっておるし、数年前からこの農業法人、特に一家一法人に対する国税庁の態度等についても、国会においてしばしば問題になった点でありますが、この農業法人の問題に対して、今日主税局あるいは国税庁としてどういうような態度で対処しておるか、その点に対して長官並びに主税局長から御答弁を願います。
  200. 原純夫

    ○原政府委員 数年前、農業法人問題が起こりましたときには、農地の貸付といいますか、そういうようなものが農地法上許可が受けられない。それを押して、農業法人ということで課税の上でも法人でやりたいというお話がありましたが、それはいかにも解せないというので、そのときそういう角度で議論いたしました。その後、その当時のものではなお訴訟の係属しているものが二件あると思います。それから、そういう態度で実質的には個人であるというて個人の課税をしたものが相当ございます。その後、農業法人の問題につきましては農林省の態度もだんだん変わってこられて、たしか昨年でしたか、一昨年の終わりでしたか、新しい態度が出たように記憶いたします。農地法で禁止された、認可を受けられない所有権の移転というものをのんでの税の扱いはとうていできないということでありましたので、農林省の方が変わってくれば、私どもの方も当然変わっていくべきだという考え方でやっております。ただいま、その変わられたときの具体的な農林省関係の通達なり、私の方の資料等は持ち合わせておりませんが、態度としてはそういう態度でやっております。
  201. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは最近における農業あるいは零細企業の血の一家一法人的なものの設立の状態は、全国的に見てどういうような状態に置かれておりますか。
  202. 原純夫

    ○原政府委員 法人が非常に新たにできる、数が相当多いということは御案内通りで、毎年平均しましたら、五万まではいかないと思いますけれども、四、五万と言ったらよろしかろうと思いますが、できておるのが実情でございます。そして、その大部分が小さい個人的な企業であるということも事実だと思います。総体の法人が今六十万程度になっておりますけれども、この中でいわゆる同族法人というものが九三、四%に至っておると記憶いたしております。毎年できるものについての一々の比率は私承知しておりませんけれども、おそらく九割以上は個人的な法人ではなかろうかというふうに思っております。
  203. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この個人企業から、たとえば同族法人であっても共同化に発展するということは本来的に見れば意義があると思いますが、これを税務行政の側から見た場合には、目的が本来のものに置かれていなくて、特に税に対処するためというような場合も決して少なくないと思うわけであります。ですから、そういう考え方だけで法人化をやるということになれば、この発展や成長の将来というものは限界があると思うのです。だから、目的がそこにあるとすれば、現在の所得税法の中において、たとえば個人企業の青色申告の取り扱い等について十分な配慮を行なうことによって、そういう第二義的な法人化というものはある程度処理できるのではないかと思いますが、その点についてはどうお考えですか。
  204. 原純夫

    ○原政府委員 かなり税制面の問題になりますが、お話の続きでありますから、私の考えを申し上げたいと思います。  税制の中でもおそらく一番大きい問題点の一つだろうと思います。その問題にアプローチするのに、芳賀委員の言われるように、個人であっても法人であると同じような扱いをするというやり方が一つあると思います。逆に、法人であっても個人であると同じ扱いをするという行き方もあると思います。おそらく、私の感じでは、どっちの極端がいいということではなかろうという感じがしております。最近では、前者の例として、つまり個人であっても法人的にというのにぴたっといくかどうかは知りませんけれども、白色申告者にも専従者控除を認めるというようなことは、やはりそういう角度の改正だろうと思います。同時に、法人であっても個人的にというのは、まるきり個人的にやるというのは技術的にも非常に大へんですけれども、数年前の税制調査会の答申の中にあったことでありますが、そういう税のために、法人にする場合に税を一番適当にかげんする要素は、家族従業員に対する給与をどうするかという点が大きいのです。数年前の調査会の答申では、この給与を何らかの基準で規制するというようなことをしたらよろしいという答申があったことを記憶しております。これは諸般の関係法律化するに至っておりませんけれども、今申し上げましたように両面のやり方がある。おそらく、これは私の個人的な意見ですが、その中間的なといいますか、それら両面の考え方をまぜ合いながら、常識的に妥当な線を発見するというあたりが大事なところではないかという感じがいたしております。非常に安易に考えますれば、所得税を軽くして、法人にならないでも所得税でやる、これでけっこうだというようなことになってくると、法人になるのは少ないというような考え方があって、実際問題として所得税の減税というものはこの十年間相当進みましたから、そういう意味では、その影響はかなりある程度は出ているだろうと思いますけれども、それだけではなかなか徹底した解決にはならないであろう。かなり個人的な感想が入りましたが、そのような考えであります。
  205. 村山達雄

    村山政府委員 ただいま長官がおっしゃったこととほとんど同じでございます。と申しますのは、去年やりましたのは実はそのことなんでございます。御案内のように、シャウプが参りまして青色申告という制度昭和二十五年にできたわけです。そしておそらくシャウプが考えた点は、日本所得税制あるいは所得課税制度は、これはどうしても近代税制の中核をなすべきものだ、その場合にはどうしても記帳が要るのだ、記帳なくして申告納税制度が発達するわけもない。極端に言えば賦課課税であろうが何であろうが、所得課税制度が民主的な方向へ発達するわけもない。一方見ますと、当時は非常に混乱した事情でしたけれども、ほとんどどんぶり勘定であった。家計と企業の会計というものは分離されていないという点に着目したのだろうと思います。その悪循環を切り離すために、まず第一に企業会計というものを個人の中に打ち立てよう、もしそうなったら、それに対応するだけのメリットを与えていこう、その中にもし企業会計に属する家族の労働に対してその個人が給与を出したら、それはそれとして損金性を持つではないか、その辺に中心を置いたものだと思っておるわけでございます。しかしもちろんこれは一種の擬制でございまして、私法上から見ますと、明らかにこれは法人とは違うわけでございます。その意味で大体法人とのバランスもとりながら、しかし最高限度は置きますというのがその辺だろう。ところで去年やりましたのは、ただいま長官が言われたように、さらに百尺竿頭一歩を加えまして、白色についても専従者控除を認める。しかもそのときの考え方は、やはり客観的なバランス論でございますが、給与を出しているといないとにかかわらず、つまりその従業者の労働が事業に向かっていようといまいと出しましょう、その事業に向かう部分がどの程度であろうとも、その事業に従事していなければいけませんから、事業に従事しておるということであれば、現に出していなくても、またその程度がどうであろうとも一律に認めていきましょう、しかし、あまりひどいものはいかぬから、外形標準でこれ以上のものということはもちろんございます。こういうことにいたしまして、今言ったような個人企業の中におきます家計と企業のある分離の方法、おそらく将来の日本企業はそっちに向かうだろうということで法人形態に近づけておる。しかしおのずから程度がございますので、それぞれ現状に即しまして違う扱いをしておるというのはまさに——日本はその現状を見まして、一方に法人を個人とみなすとかあるいは個人を法人とみなすということではなくてそのニュアンスの中でそのニュアンスのままにとらえていく。しかも将来の発展の方法も考えつつ、現実的に税制というものを処理していくのだ、現状はようやくここまで到達したというのが今の姿だ、こういうふうに考えておるわけであります。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題を提起したのは、私ども社会党としては、たとえば農業の場合の法人化にしても、小企業の共同化にしても、決して一家一法人的なものは考えていないわけです。農業の場合には数戸の経営体の共同化あるいは小企業の場合にも同様の条件の数戸の小企業が共同体を形成する、そうしなければ企業の近代化、共同化というものは発展しないわけですが、政府の考え方、これは与党もそうですが、たとえば農業の場合には農業生産法人を二つに分けまして、一つは農協法の中で、農事組合法人、これは五名以上で作れるわけですから、大きな家族、従業者を持っている場合は一家法人が十分できるわけです。もう一つ会社法人の場合には、合名会社、合資会社あるいは有限会社等を生産法人として作る。これでいけば二名以上で法人ができるということになるわけです。ですから政府やあるいは与党の考え方というものは一家法人を基礎にして進もうとしておる、そういう点は同じ政府の中でも大蔵当局の官僚諸君の考え方と相当基調の上において懸隔があるわけです。ですからこういう点は、単に税に対する一つの対策的な法人化というものは、本来の共同化あるいは社会化を進める場合にはむしろブレーキ的な作用をする場合もある、われわれはそういうふうな判断の上に立っておるわけですが、それはどうですか。
  207. 村山達雄

    村山政府委員 税の方は御案内通り、その税の方から法人……。
  208. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あなたは税金のことしか知らぬから税金のことだけを……。
  209. 村山達雄

    村山政府委員 ですから今言うように、法人化をチェックするとかあるいは促進するとか、そういうことはいたしておりません。もちろん望ましい方向というものはありましょう。ありましょうが、当面の税制はいつでもその現実の場面で、法人であれば法人のようにいたしますし、個人であれば個人のような損益計算をいたすということでございます。ただそれはほかの法律との関係法人化が困難な場合があると思うのです。それからまた法人化にいたしましても、各種の制約がある問題だと思うのです。たとえば農業について見ますと、その辺こそ農業の基本問題その他農業を近代化するという方向でずんずん推し進めていただく、それがいわば税法の基礎法の中に形になって出てくる、税はそれに合わせまして損益をはっきりきめていく、こういう形ではないかというふうに考えているわけでございます。
  210. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今度の所得税法の改正の中で、第八条の九項ですか、寄付行為の損金算入の規定が新しく出てきておるわけですが、この寄付行為の点については法人税法の中では本法の第五条の規定か何かで寄付の損金算入の制限規定が出ておるわけです。今回の所得税の場合には、これは当然個人企業対象になると思いますが、寄付の目的について法律で明らかにしておるわけです。教育、科学の振興であるとか、文化の向上とか、社会福祉のためとか、あるいは公益的な寄付で命令で定めるもの、そういうような明確な目的に基づいて寄付行為をしたものが一定限損金として認められるということは、これは一つの前進ですが、個人企業法人の寄付行為を比較した場合には、その目的とするところが非常に違うわけです。こういう点は法人であろうと個人企業であろうと、寄付金を一定の限度損金として認めるという場合においては、その寄付目的というものは同じ条件のもとにおいて制限を加えるべきものであるというふうに考えるが、この点が非常に違っておるわけです。なぜ個人企業の場合には明確な目的と制限を与えておるのか、法人の場合にはただその支出の限度だけを認めておるのか、その相違点について改正上の意図された点はどこにあるか、明確にしていただきたい。
  211. 村山達雄

    村山政府委員 実は法人と思想統一した意味で今度の損金算入の規定を設けたつもりなんでございます。と申しますのは、個人の方の寄付でございますと、いわば必要経費になる寄付というもの、厳密に寄付と言えるかどうかわかりませんが、通常寄付と言われるもののうち、必要経費と認められるようなものはございます。こういうものにつきましては今度規制しているわけではございません。これはもちろん従来からその経費性を持っているものについては、これは経費にいたします、こう言っているわけでございまして、これは今度の法律対象外でございます。その点は法人はほとんどこれは事業をやるのが目的でございます。従って事業の目的以外に出すという法人の場合は例外でございます。ですから一々調べてもよろしいのでございますけれども、税の執行その他を考えまして、所得の百分の二・五、資本金の千分の二・五の範囲内、その合計額の二分の一以内であれば必要経費と認めてしまう、これがおそらく法人の方の事業に関連する必要経費だろうと思うのです。そこでバランスをとってある。しかしそうでなくて、明らかに事業とは関係のない公益の目的に出した寄付金、いずれも厳密の意味では会計学的には損金性のないものでございます。その点については使途についても同じにいたしましょうというのが今回の改正でございまして、法人については例の指定寄付と去年設けました別ワクの寄付がございます。これらはいずれも法律で、あるいは政令で使途をはっきり定めておりまして、こういうものに対するものは法人の場合は損金に算入します、こう言っておるわけです。個人もその場合同じようにいたします、こう言っておるのですが、ただ個人の場合ごらんになっておわかりになりますように、法人と違いますのは、一つは税額控除があるということと、それからもう一つは上の方で最高限が押えてある、この二つがあるわけでございます。税額控除の方は、もうおわかりのように、個人は累進税率でございますので、もしこれを無制限に——所得控除で言いますと、実は寄付というものの大部分が、もし寄付をしなかった場合においては、当然国の収入になるべき税金で納めたということにもなるわけでございます。最高でいきますと、今度は七十五であります。その上に地方税が二八%かかって参りますので、最高は八十くらいにいってしまうわけですが、せいぜい実際には二割くらいしか寄付しない、あとは税金を振りかえたという結果になります。そういう意味で税額控除方式によっておるわけでございまして、これは累進税率から来る一つの技術上の面だと思っております。  それから限度を押えるという考え方でありますが、これは個人の寄付の場合、それが一体所得から支払われるものなりや、あるいは財産から支払われるものなりや、その分界がないわけでございます。本人は所得から払ったと言うでしょうし、場合によりますと、いやそれは財産だ、財産からの寄付でございますと、これは実は所得税体系の問題ではなくて、贈与税の方の問題になるわけでございます。贈与税につきましては、別途手が打ってございまして、一定の目的の場合にはその贈与に対しては課税しないという規定があるわけでございまして、おのずからその財産と所得の限度が必要になってくるわけでございます。そういう意味で一0%という最高を置いたわけでございます。  まず制度を始める最初にあたりましては、各国の制度その他をいろいろ参考にいたしまして、その辺からスタートするというのが、まず常識ではなかろうかということでございます。実は法人と個人とのいわゆる寄付金といわれるものの取り扱いについては、一応バランスをとって提案したつもりでございます。
  212. 芳賀貢

    ○芳賀委員 個人企業に比べて、法人だけが事業をやっているというのはおかしいじゃないですか。個人の企業でも事業でしょう。  そこで具体的にお尋ねしますが、それでは法人の制限額ですか、資本金が二十億円ある、年間の利益が十億円あったという場合には、限界の金額というのはなんぼになるわけですか。
  213. 村山達雄

    村山政府委員 その計算は今すぐやりますが、個人は事業をやってないと申しておるわけではございません。同時に生活をやっておるわけでございます。その家計があるわけでございますので、いわゆる出費というものが企業負担に属すべき寄付というものと、そうでない家計上の寄付というものがどうしても観念的にあり得るわけでございます。郷里の学校に寄付をいたしますというようなもの、これは明らかに家計に属する寄付でございまして、これに対しまして、たとえばどこどこの組合に入っております、ここである組合費をとっております、こうなると非常に必要経費そのものに近いわけでございます。たとえば商工会議所で何か特別に会館を建てて、それに対して特別寄付があった、経費の割当があったというような場合、そこは個人のところは飛んでしまうわけです。家計から事業というふうに。そういう意味でどちらかと申しますと、事業上の寄付金と家計上の寄付金と、必ずしも事業上の寄付金が多いということは言えないだろうと思います。これに対しまして法人の方は、事業目的がその存立の基礎でございますから、まず出せば通常は事業目的だというふうに推定するのが通常だと思うわけでございます。ただ実際にはそうでない場合がございますので、限度が置いてあるということでございます。  それからただいまのお話で資本金二十億、所得十億という会社でございますと、三千七百五十万円が損金算入の限度であります。
  214. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは法人の場合はその行なう事業を順調に発展させるために、あるいは経営が順調にいくために、そのための目的で寄付をやる場合には、それは何でもかまわぬわけですね、理由がそこにあれば。そうすると、たとえば政治資金的な寄付行為というものは、やはりこの寄付をすれば会社経営がうまくいく、ピンチを脱却できるという場合があると思う。そういうのは当然の寄付として容認できるわけですね。
  215. 村山達雄

    村山政府委員 これはあるいは税法以前の問題かもしれませんが、損益の問題でございます。現在そういう意味でこうやったら事業がうまくいくであろうといって、政治献金に限らず、特定の人にやる場合には損金算入は認めておりません。
  216. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この三千七百五十万円の範囲内でもそれは認めないのですか、そういう場合には。
  217. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど数字がちょっと違いまして、三千七百五十万円と申しましたが、これはだいぶ大きくて、千五百万円でございます。今のお話しで千五百万円の範囲であれば何に出してもその限度までは一々調査いたしませんということでございます。資本金の千分の二・五、所得の百分の二・五でございますから、金額としてはそれほど多くもないし、またそれほど少なくもなしという大体のところを押えておるわけでございます。この範囲でございますと、企業を目的にしておる会社について、一々使途を調べるという必要もないし、またかえって事務能率も阻害するであろう、この点まではまず事業上出したものと推定する、こういう趣旨でこの限度をきめております。
  218. 芳賀貢

    ○芳賀委員 しかし国民の側から見ると、これは金額のいかんにかかわらず納得のできないことなんです。法人の場合にはそういう範囲まで寄付を出しても、これは許容限度内だから何に出してもかまわないというようなことで、やはり大資本と政治との腐れ縁というものはいろいろな形で出てくると思う。われわれとしては、とにかく大蔵省の主税当局で作った税の制度やその内容というものは、百パーセント信頼できるということはできないのですよ。二十年も三十年も年期をかけたんだから、おれのが一番権威があるというわけにはいかないわけです、内容を分析すると。ですからこういう点に対しては、やはり寄付行為等に対しての税法上の制度というものはやはり法人であると個人であるとにかかわらず、同一目的のためにこれが使用されるとか、こういうものについてはこれは損金として認めるということにしなければいけないと思う。これは政務次官はそう思わぬですか。
  219. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいままで主税局長答弁している通りであります。
  220. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、所得税の改正の中で、たとえば基礎控除や配偶者控除や寡婦控除等がささやかに一万円程度引き上げになっておりますね。どうして改正のたびに、たとえば事業控除の中心をなす基礎控除等について、九万円が十万円になったとかいう、そういうささやかな引き上げしか実際はできないものであるかどうか。そういう点はいかがですか。
  221. 村山達雄

    村山政府委員 なかなか一挙にはいろいろな関係があって参りかねるということが一つでございます。しかし、それにいたしましても、課税最低限は平年度で四十一万四千円程度になります。これは昭和十五年の最低限——これは昭和十五年ですから、ちょうどシャウプ以前の最大の改正のあったときでございます。そのときの課税最低限を今日の物価で換算いたしますと、価幣価値で換算いたしますと、たしか二十七万円くらいだろうと思います。それよりも相当上がっておるということで、ささやかにささやかにやってきたのが積み重なりますと、相当なところにきておるということが言えるだろうと思います。  なお、シャウプの勧告による税制改正後今日まで、国税におきまして平年度約八千億の減税をやっております。そのうち七千億程度のものが所得税でございます。しかもそのうちの三分の二は控除で上げておりまして、税率はその三分の一程度でございます。控除でございますが、これは基礎控除とかあるいは配偶者控除とか、いろいろございますが、これはいろいろな家族構成を考えまして、それぞれその控除を上げれば、多少の差はございますけれども、全体の基礎控除、それから配偶者控除、それから扶養親族、家族構成の生計費等をにらみ合わせまして、それでバランスをとりつつ上げておる、こういう実情でございます。先ほどもちょっと触れられたのですが、外国に比べて低いじゃないかというお話でございますが、確かに絶対額は低いわけでございます。アメリカは同じ標準世帯で百二十万円程度でございます。それから英国、西独あたりでは七、八十万円になっております。ただ、これは絶対額はもちろん低いわけでございますが、平均所得に対して課税最低限がどの辺にくるか、何%のところへくるかということになりますと、これらの国と比べますと、日本の場合はずっと高いところにきておる、平均所得に対してたしか五八%くらいのところにきておると思うのでございます。一番低いのはもちろんアメリカでございまして、平均所得は一世帯で四百万円をこしております。そういうことで、なかなか一挙には参りかねますが、逐次いろいろな御指摘を受けまして、でき得る限り減税に努めて参り、今日ようやくここまできたという実情でございます。
  222. 芳賀貢

    ○芳賀委員 だからこういう問題は、やはり経済の成長の度合いとか、あるいは最近の物価の騰貴の状態とか、それから国民生活の実情とか、そういうものを十分総合的に勘案して行なうべきは行なうということでいかないと、わずかずつ上げているからまあかんべんしてくれということではいけないと思うのですよ。たとえば、先ほど同僚委員諸君が触れられた国民貯蓄の控除の問題等にしても、やはり本質的には、基礎的な控除というものをどう引き上げてこれを均霑させるかということの方が、むしろ重要性があるとわれわれは考えておるわけですが、たとえば基礎控除を一万円引き上げた場合には、税収入に及ぼす影響は幾らになるのですか、一万円ずつ上げていった場合。
  223. 村山達雄

    村山政府委員 基礎控除で上げますと、三十六年度税収で百六十億減収でございます。
  224. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから、税の自然増収等からこれを見合わせた場合、減税々々なんて言っても、国民の側から見れば取られ過ぎで、皆さんの側から見れば取り過ぎということになる。ですから一万円上げてわずか百六十億円しか減税にならぬということでは、これは問題にならぬと思うのです。十万円上げたって、千六百億でこれはおさまるじゃないですか。実行可能ですよ。千六百億くらいなら、やればやれる問題なんですよ。こういう税制の改正などは、大蔵省の事務当局だけでやっているものであるか、あるいは与党の意思というものがいささか加わって改正等が行なわれるものであるか、その内部事情は一体どういうことなのですか。これは政務次官にお尋ねします。
  225. 天野公義

    ○天野政府委員 与党と政府側とよく連絡をとりまして、日本国民経済や国民生活の状態、また翌年度の予算等をいろいろ検討いたしましてきめているような次第でございます。
  226. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしておきたい点は、前回もいささか触れた問題ですが、専従者控除における青色と白色の取り扱いの問題と、今回の場合においても専従者控除というものは是正されていないわけですね。年令的な引き下げがちょっと行なわれただけです。それでこの点については、先日の相続税の審議の場合に主税局長は、個人企業の場合には、財産の帰属あるいは所得の帰属は、これは経営者ということに割り切っておるという、そういう明確な答弁が行なわれたわけです。ですから、たとえば所得の帰属が経営者であるということになれば、同一事業の中における従業員、家族に対する控除あるいは支出というものは、これは給与というふうに、白色であると青色であるとにかかわらず、そういうふうにこれは規定して差しつかえないわけですね。
  227. 村山達雄

    村山政府委員 そこが非常にむずかしい問題だとこの前申し上げたわけでございまして、青色でもなかなかむずかしいわけでございますが、これは一応企業会計と家計を分離してございます。その間紛淆がないようにしているわけでございます。もしその間間違った経理をしておりますれば、当然是正さるべき問題でございます。しかし、そうでなくて、両方が一緒になっておるというところについては、どうぞ一つ分けて下さいというのだけれども、記帳能力がないから分けられぬというところが実情なので、そこが非常にむずかしいわけでございます。家族がその経営者に協力しておるという一つの形がある一方におきまして、それらの人の生活のめんどうを見ておるという形が一つあるわけであります。そこで、給与を出したとか出さぬとか、あるいは扶養義務を遂行したとかしないとか、こう申しましても、いずれにしても会計が分離してないわけでございますので、はっきりしないわけでございます。どちらの経費になるべきものなりや、そういう点がございますので、税制の方で踏み切って、そういうことを言わないで、かりにその人が給与を出していなくても、もう無条件で七万円までは引きましょうということを言っているのは、その白色事業者の経営の実態、事業と家計が分離してないという実態を直視して考えているわけでございます。従いまして、そういったところで出てくる財産、そういう中から形成される財産がだれのものかということになりますと、これは通常の私法の領域でございます。おそらく今、仮装名義は別でございますが、そうでなければ、その名義のあるものにつきましては、それぞれ名義者が所有権者といわざるを得ないわけでございます。またその所得の主体からなる財産と見られるものは、要するにその所得の変形である、こう考えざるを得ないわけでございます。しかし、そういうこともございますので、相続税その他の場合におきましては、扶養親族一人当たり幾ら引く、こういうところで実際は調整しているわけです。所得税におきましても、扶養親族はどうだ、専従者控除の場合は特に幾ら、こういう面で実際的な解決をはかるように税制は持っていくということ以外にはないのじゃないかとわれわれは考えるわけでございます。
  228. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長から注意してもらいたいのですが、われわれはできるだけ質問を、要点だけを簡潔に質問しておるのですが、特に主税局長の場合は非常に答弁が長過ぎる。われわれは学校の生徒じゃないですよ。問題がわからないから聞いておるというふうにとったら大間違いです。問題点や欠点を指摘してわれわれは質問しておるのであって、何も生徒が先生にものを聞くような、そういう思い上がった態度で答弁をすると非常に時間がかかる。ですからこれは、委員長から一つ注意して下さい。
  229. 小川平二

    小川委員長 主税局長御注意を申し上げますが、答弁が懇切に過ぎるようでありますから、簡略にお願いいたします。
  230. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そこでお尋ねしたい点は、専従者の場合は、たとえば農業の経営から見た場合も、営業の経営から見た場合も、原則には相違はないわけですね。これは所得税法の中あるいは施行規則の中に明確になっておるのであって、たとえば農業の専従者の場合は、年間を通じて六カ月以上もっぱら農業に従事した者が、いわゆる農業の専従者ということになっておって、これが根本規定です。それが今度は税の申告の形式の上で、青色と白色に分かれておるだけではないですか。青色が給与であって、白色が給与でないというような、そういうでたらめな答弁というものは訂正する必要があると思う。
  231. 村山達雄

    村山政府委員 青色の場合は、給与として支払わなければ認めません。それから白色の場合は、給与として支払わなくても認めます。
  232. 芳賀貢

    ○芳賀委員 支払えばどうなんです。白色の場合、支払った場合は給与でしょう。支払わなくても認めるから給与でない。実際に支払った場合は給与でしょう。
  233. 村山達雄

    村山政府委員 支払っても支払わなくても、その要件に該当しておれば七万円を限度——七万円を認めます。控除したものは、専従者にとりましては給与所得とみなして課税上取り扱います。
  234. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは白色の場合であっても、事業主が、専従者である家族専従者に給与として支払ったものは、これはあくまで給与である。税法上いうところの給与であるということになるわけですね。
  235. 村山達雄

    村山政府委員 少し、そこで長くなるのですが、企業から払った、払わぬという紛議が絶えませんので、そういうことをやることがいかにも無理であるということで、払う、払わないにかかわらず専従者控除として七万円を引きます。その分は、あとで給与所得とみなします。こういう規定にしているわけであります。
  236. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは後日問題点になる点ですが、そこで個人企業の青色と白色の実態は、これは聞くまでもない点ですが、農業の場合には、全体の課税対象者のうちの六%くらいが青色申告をやっておる。営業や商業の場合は、これは全体の四五%程度ですね。ですから、そういうことになると、農業の場合は九四%が白色申告の状態に置かれておる。営業の場合においても五五%が白色申告ということになっておる。この実情というものは無視するわけにいかぬと思うのですね。明らかに青色申告を実行できない階層というものは、所得の階層から見れば、青色申告よりまだ下の階層ということに当然なるわけです。ですから、そういう実情の上に立った場合には、専従者控除というものをやる場合は、やはりあまりにも大きな差額を設定するということには間違いがあると思うのですよ。一方は十二万円、一方は七万円ということになるし、地方税においては八万円、五万円ということになるわけでしょう。ですから、この格差というものは当然今回の税制改正の場合には是正すべき点であったと思う。しかも今回の所得税の税率改正によって、たとえば源泉徴収あるいは事業所得等を通じ、課税の最低額というものは今度は相当引き上がったのでしょう。それは去年と比べてどういうふうになったのですか。
  237. 村山達雄

    村山政府委員 これは収入金紋でございますが、独身の場合、給与が改正前で十二万九千三百三十八円、改正後十四万二千五百三十六円、これは平年度でございます。標準世帯でございますと、改正前が三十九万八百七十円、改正後半年度四十一万四千六百九十三円、これくらいになるわけでございます。
  238. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今、局長が言われた通り、たとえば独身の給与の場合、十四万二千円以下は課税対象にならないということになりますね。事業の場合はどうなんですか。
  239. 村山達雄

    村山政府委員 事業の場合、これは必要経費を引いたあとの所得で逆に計算しております。従って、ちょっとベースは違いますが、独身者、白色現行九万一千九百十六円、これに対しまして改正後平年度十万一千九百十円、同じく五人世帯の場合、現行三十五万一千百十一円、改正後平年度三十七万一千三百十二円でございます。
  240. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ですから現行の場合には、青色専従者に対して、これは二十五才以上だが十二万ですね。現行給与所得の場合は十二万九千円ですから、大体十二万、十二万というのは、農業の専従者であっても青色は専従者給与ということになっておるが、そこに一つの水準を合わてしおくわけですね。だから今度の改正によって、給与所得の独身が十四万ということになれば、その点から見れば、青色専従者給与の控除額というものは十四万まで上げてもこれは何も不思議はないということになります。それを年令だけ二十五才を二十才にしてお茶を潤している。こういうことをそつのない主税局長が見落とすというばかなことはないと思う。ですから事業の場合にも、独身者の場合九万円が十万円になっておる。だから白色の場合であっても現行七万円を少なくとも十万円くらいまで引き上げるということは当然なことです。公平の原則、公平の原則といっても、わざわざ不公平な改正を行なって、何か言うと、それは公平の原則に照らしたときにはなかなかむずかしくてできませんということばかり言っておるでしょう、あなたは。こういう点はもう少し専門的に検討し直す必要があると思う。改正の問題全般について述べれば、質問を簡単にしても数日間かかるからきょうは控えておきますが、一、二の問題を取り上げてもこういうことになっておる。こういう点を与党と十分相談してやりましたということになると、一体与党自局党というものは、農業であるとか中小企業に対して、特に法人以外の所得税については全く冷酷きわまる態度を持っていると言って当然であるわけですね。そうでしょう。そういう点については、今からでもおそくはない。控除の場合には、何も計算機を回す必要ないでしょう。こういう点は、やはり当委員会等においても全会一致の修正案ぐらいは少くても出す熱意というものがなければ——これはまあ内輪なことを言うわけですが、そう思うわけです。政務次官並びに主税局長は、こういう点に対して、一体どう考えておるか。今は直す気がないが、後日すみやかに直すつもりがあるとか・・。
  241. 天野公義

    ○天野政府委員 政府も与党も、農業等に関しましては、できるだけ有利になりますように、また、うんと伸びて参りますように、こういう考え方で進んでいるわけであります。芳賀委員の今のお話は、ちょっと的はずれな、誤解ではないかと思う次第でございます。  ただいまの点につきましては、主税局長より答弁をいたします。
  242. 村山達雄

    村山政府委員 申し上げますが、この課税最低限は、これは必ずしも所得金額で出ておりません。給与の方は収入金額で出した方が実感が出るというので、従来から収入金額で出しております。従って、収入金額所得金額の違いでございます。給与の方は、御承知のように経費というものを引かないで、給与所得控除でやっている。ですから、今の差額が、こちらが多いというのはそこの関係でございまして、バランスがとれているわけでございます。
  243. 芳賀貢

    ○芳賀委員 政務次官が今的はずれと言われたのは、どういう点が的はずれなんですか。その点だけを……。
  244. 天野公義

    ○天野政府委員 政府と与党が農業に関して冷酷無比だというお話がございましたけれども、政府も与党も、農業関係者の利益の増進、生活の向上、成長等につきましては、立党以来、また多年にわたって心をいたしておるところでございまして、この点は誤解のないようにお願いをいたします。
  245. 芳賀貢

    ○芳賀委員 申し合わせの時間ですから、最後の一点だけで終わります。ただ問題は、この農業やあるいは中小零細企業の、企業そのものの実情というのは、これはもうほとんど個人企業ということになっておるわけです。企業所得税の申告をやる場合も、農業の場合には青色申告が六%で、白色が九四%、営業等の場合においても、青色が四九%、白色が五五%、それから農業の場合には、ほとんど一〇〇%がこの不利な税制下に置かれておるわけですね。それから中小零細企業の場合にも、過半数が不利な状態に置かれておるというこの実情は否定することができないと思うのですよ。しかも、農業や個人企業の場合のこの専従者控除の場合においても、たとえば十二万円としても、これは給与者に比較すれば基本給が月額七千円ないし八千円でしょう。それに諸手当がついて、大体月額にすれば一万円という程度ですからね。だから、所得倍増なんてえらそうなことを言っても、実質的な、実際に業に従事しておる人たちに対する所得の上昇率というものは、実質はそこまでいかなくても、税制の面においては、これだけ高まっておるというような計算の上に立って控除等が行なわれるのは、当然なわけなんです。そういうことが全然行なわれていない。白色の場合にも、十二万の分を二十五才から二十才に引き下げただけにすぎないですね。白色の七万円というものはそのまま据え置きになっておる。こういう点をなぜこの改正の機会に、あたたかい人間性のある配慮をしなかったかということを私は指摘しているのですよ。それが私の質問の的なんですからね。何もはずれていないじゃないですか。これは答弁は要りませんが、非常に大事な問題であって、事務的な問題じゃない。こういうのはいわゆる政策的な高度の政治配慮の問題であるということを最後に指摘して、きょうは時間切れですから質問を終わります。
  246. 小川平二

  247. 武藤山治

    武藤委員 大体通告では三時間の予定をもらっておりますが、皆さんが静かに聞いてくれればもっと短縮をいたしますから、答弁の方も要領よく御答弁をしていただきたいと思うのです、  最初に自然増収の見通しでございますが、先ほども大蔵大臣に質問をした際に、どうも減税が少な過ぎるという立場からの質問をしたわけでありますが、過般、中山税制調査会長が本委員会において、減税規模は何を基準にきめたかという質問に対して、実は審議会で、千億円、さらに三千億円減税の主張というものがあって、それの中間の千五百億円程度というものをめどにして実は減税案を作った、こういう答弁をいたしております。議事録からはっきりそれを読みとったわけでありますが、どうもそういう目の子勘定で減税額をきめて、そこから税金の内部にわたっての積算をしておる、そういう感じを私たちは持つわけです。そこで、来年度の自然増収あるいは税の見積もりというものが、事実の徴税額とは大へん違うのじゃなかろうか、私たちはそう考えるのです。その点主税局長の見通しとして、予算書に計上してある税収見込みにはさほど事実と狂いはないという確信のある答弁ができるかどうか、それをまず第一に伺いたい。
  248. 村山達雄

    村山政府委員 現在企画庁初め政府が見通しております経済見通しがあの通りでありますれば、おおむね今の見積もりに近いものであろうというふうに思っております。
  249. 武藤山治

    武藤委員 経済の見通しが狂わなければという前提の上に立って、実収とそう違いはないだろうとあなたはおっしゃっておりますが、過去の実績、過去の日本経済の成長率と税金の成長率、そういうようなものを十分検討した際に、五・四%という成長率の想定と実収というのがやや近い数字にいくだろうとあなたはお考えになりますか。もし数字がなければ、昭和三十年から全部数字をあげて、その違いを私どもは指摘したいと思うのでありますが、時間を詰めるために数字を申し上げないで、あなたの確信を聞きたいのですが、いかがですか。
  250. 村山達雄

    村山政府委員 過去の当初予算の当時の見積もりと、それから実績でございますが、これとの比較で、政府の経済見通しが、当初と最後の実績でどれだけ狂っているかというのを見ますと、ほとんど経済の方の見通しは大きく狂っております。その税収の狂いのうち、それがどのくらいあるかというと、なかなか読みがむずかしいのですが、ほとんど相当部分——全部はもちろんわかりませんが、相当部分はこの経済見通しの違いからきたものであろうというふうにわれわれは考えております。
  251. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、過去の経済見通しに基づいて積算をいたしました租税収入というものは、大へん狂っておる事実はあなたは御存じでしょうか。その点いかがですか。過去の、三十年以後のことですね。
  252. 村山達雄

    村山政府委員 経済見通しが違った結果、税収も大きく当初予算の見通しと違ってきた、ここまでははっきりわかっております。それ以上のことは、あとはもう推定の分野に属するわけでございます。
  253. 武藤山治

    武藤委員 推定の分野と申しますが、昭和三十年度以後の経済の見通しの、当初の見込みと実績の食い違い、さらに税の当初の見積もりと実績の食い違い、それをここに具体的にちょっと数字で、今私が質問をいたそうとしておる所得税関係だけで申し上げてみましても、昭和三十年は実績と見込みがやや一致した。昭和三十一年は一二・四%狂いが出ております。三十二年は一七・四%、三十三年は二八・七%ふえておる。三十四年度が四・七%、三十五年が三四%の、見込みよりは税収の実績が多かったわけであります。この狂いというのは非常に大きい狂いです。三十五年度のごときは三十四%も当初予算の見積もりよりは実績の方が伸びておる。こういう形でいきますと、政府の経済見通し五・四%というものを基礎にして、本年度の税収見込みを積算しておるようでありますが、私は大へん過小見積もりだという印象を受けるので、その点、じゃ国民総生産の伸びなり所得の伸びなりで言えといえば、数字もありますので申し上げますが、そちらの狂いを言わないで、時間の節約をして、税金の伸びだけで見ても、本年の税収の見積もりは非常に過小である、こういう感じがするのですが、その点いかがですか。
  254. 村山達雄

    村山政府委員 経済見通しが過去においてかなり狂ってきたということは、経済見通しそのものの数字でわかるところでございます。それから当初予算の税収の見積もりが各税目とあるいは総体で、決算ベースで相当狂ってきているということも事実でございます。その狂う割合は、それぞれの比較をとることはできます。だが照応関係は非常にむずかしいもので、原因がよくわからないということなのでございますが、たとえば個人業種所得一つとってみますと、国民所得計算ではこれは会計年度でもって計算しております。一方は暦年で計算しております。しかも国民所得計算では失格者を含む全所得者でございます。一方、半数以上が失格者でございます。のみならず申告所得税の場合、国民所得計算では業種所得に入っていない、賃貸所得です。それから国民所得計算では、その中に含まれていない資産所得を含んでおります。キャピタル・ゲインの関係所得、それから給与所得もまた含まれております。それぞれ総合でもって申告するわけでございます。あとで源泉して差し引きます。その差し引きの答えが中背所得税に出ておるわけでございます。従いまして、大きく狂っているとは言いますけれども、そのうちどれだけが経済見通しの狂いに照応する部分であるか、それから見積もりの固有のものがどれだけであるかということは、実は非常にむずかしい問題でございまして、これからの検討の分野でございますが、非常にむずかしいということだけは言えるのじゃないかと思っておるわけであります。われわれはこの数字を見まして、いろいろ試算してみますと、今の時期のズレとか、そういったものを推定すると、それほど大きくならないように思っておりますが、まだ確信のある数字を出すところまでは至っておりません。
  255. 武藤山治

    武藤委員 今、主税局長は、資産所得とかあるいはその他の利子所得、そういうようなものをみな合算されて、経済成長は見られておるからと言われましたが、私が今ここに持っておる資料では、個人事業所得、それのすべての伸び、それと申告の所得税の伸び、これの数字だけを見ましても、たとえば一例を申し上げますと、昭和三十四年の個人事業所得とこれの当初見込みと実績では一・三%の狂いが出ておる。それから三十五年度は四・一%狂いが出ておる。ところが税金の方ではどうかという、申告納税所得の方では、三十四年が四・七、三十五年は三十四%も狂いが出ておるわけです。そこで常識的に考えて、そういうこまかいデータを全部並べなくて、五・四%の成長率で積算をいたしますと、大狂いが出てくると思われる点を一つ申し上げますと、大体日本経済が三十七年度においてどの程度の生産の伸びを持つかということは、これは経済学の原論だけを読んだだけだって、どの程度目安としては伸びが出てくるかということは出てくるはずであります。その一つは、投資金額が三十七年度にどの程度算出効果になって現われてくるか、国の総生産量になって現われてくるかというようなことを考えた場合に、企画庁が予算委員会で正式に答弁しておる数字だけでも、投資金額の六割は算出効果として翌々年に現われてくるという答弁をしております。下村理論などを読むと、投資金額そっくりが翌々年の生産量に出てくる、こう言っておる。そうなると三十七年度の国民総生産の金額は、最低限一兆五千億円以上の伸びがある。ところが五・四%の伸びということはわずか九千億円しか国民所得率はふえないという結論になっておる。九千億円しか国民所得が伸びないという中で税収を考えていくから、全体の税収の見込みというものも非常に低いところに数字が出てくる。そういう点から考えて、ちょっと検討しただけでもこれ以外にかくし財源が相当出るという見通しが、私は正しい見通しとして出るのじゃななかろうかと思うが、そういう見通しの考え方というものは全くの間違いでしょうか。それともあなたは、いや、われわれの積算の基礎は絶対事実とそんなにも違いがないんだ、先ほど、確信のある答えはできないとおっしゃっておりますが、事実とそんなにも狂いがあったという、そんなにもというパーセンテージの比率が五%違うあるいは一〇%くらい違うものか、まあ大した狂いはないということになるのか、その大した狂いがないというその振幅の度合いは、どの程度まで考えておられますか。
  256. 村山達雄

    村山政府委員 政府の今見ております自由企業の伸びなり、あるいは生産の伸びなり、あるいは物価の伸びなり、これについてわれわれが税を見積もるときに、別の見解を立てていないということでございます。それが当たるか当たらないかということはわかりません。わかりませんが、政府といたしまして、税を見積もる場合も経済の見通しの場合も同じ見通しに立っておるということにすぎません。もちろん、それはいろいろ過去はこうでなかったということはございますが、見通しといたしましては同じ前提の上に立っておるわけでございます。ですから、その点はおっしゃられても、われわれはその立場で計算してあると申し上げるよりほかはないわけでございます。ただ、先ほど申しましたのは、国民所得計算上の個人業種所得と申告所得税の伸びをお比べになるときに、国民所得計算上は賃貸所得だとか——今の賃貸所得は別建になっております。これは申告所得税では入ってくるわけであります。それから、今の国民所得計算上、個人業種の所得に入っていない資産所得が、申告所得税では入っておるということを申しておるわけであります。最近は、今の土地の譲渡所得が相当非常にふえておりますので、この伸びは非常に強いということを申し上げたわけであります。さらには給与所得がこの中に入っておるということを申し上げておるわけであります。それから国民所得計算上は業種所得者につきましては、全所得者でございます。しかしこちらの方は事業所得に限りましても、有資格者だけの分を計算してございます。それから大体今の計算期間が会計年度と暦年の違いがございます。それから、納期の関係でだいぶズレがございます。ですからその辺どこまで違うのかというのをわれわれが部内で検討いたしましても非常にむずかしいので、なお検討の段階だ、ただかなり違う要素があるので、これが一致しなければならないという目でごらんになると、その限りにおいてはかなり違う要素はあるということを申し上げておるわけであります。
  257. 武藤山治

    武藤委員 違う要素があるのは私も承知しておるのです。質問するときからわかっておるのです。しかしその辺の幅があまりにも激しいのです。三四%も当初予算の見込みと実績が違うというようなことは、これはあまりにも違い過ぎるわけです。もしそういうことで反駁なさるのでしたら、もっと具体的に聞きますが、たとえば主税局長、この租税及び印紙収入予算の説明書の九ページに、配当所得に対する税額というものがございますね。この配当所得に対する税額が三十六年度と三十七年度を比べて一銭も税額がふえないという根拠、その見積もりの算定の基礎、どういう理由で配当所得税が一銭もふえないのですか。経済は伸びていくのに配当所得が一銭も伸びないというその理由は何ですか、はっきり数字に基づいて説明してもらいたい。
  258. 村山達雄

    村山政府委員 こまかい数字はあとで確かめて申し上げますが、大体今私の検討しておるところでは、増資額そのものは、平均的に見まして——これは平均で計算しますが、前年度より若干ふえている。しかしながら、配当率は落ちるであろう、こういう計算をしております。それから配当所得として出て参りますのは、投資信託もまたそうでございます。オープン式、それからクローズ式、それぞれ計算しております。大体似たところに結果的になったものと思います。詳細につきましては、必要がありますれば御説明申し上げます。
  259. 武藤山治

    武藤委員 減配が多いとかあるいは配当率が落ちると申しますが、日本の経済が、とにかく一四・二%も一カ年間で成長していくという過程で、急に金融引き締めをしようが、あるいは急に投資を制限しようが、それが三十七年度内に、全然配当が総金額としてふえないなんていうことは考えられないことなんです。これは必ずふえるのです。だから、これ一つ見ても、税収入の見積額というのが非常にいいかげんなものだということの一つの証拠だと私は思うのです。さらに税金の方がそれほど狂いがないというのでしたら、たとえば源泉所得の場合でも一〇・三%の伸びだ、総支払い金額において一〇・三%来年は増加する、これを積算の基礎にして、一人当たりの給与が六・一%ふえる、こういう計算をいたしておりますが、これらの計算でも、逆算をして、減税額を先にきめてから、所得税でどの程度とろう、法人税でどの程度にしようかという、けつからの計算をして比較しておると思うのです。上から、確実に、日本の経済がこういう工合だからこうだという数字を押えて、そして税額が出ておるのじゃなくて、大ざっぱな減税の規模をきめて、けつから各税目別に計算をしておると私は思います。そうでないですか。
  260. 村山達雄

    村山政府委員 今ちょっとわかりました。現行と改正が変わらないというのは、予算の説明書の九ページのところをおっしゃっておるわけでございますか。——これは三十七年度の税収見積もりで、改正前と改正後は変わりません。それは同じ三十七年度についていっておるわけでございます。と申しますのは、何もこの点について改正をいたしておりませんので、その点を変えるわけはない、そういう数字を出したにすぎません。ですから、去年と同じだと、私は今はっきり確かめないで申したのですが、ことしは五百六十四億、去年が四面六十一億でございます。予算が四百五億、実績見込みで四百六十一億、従いまして、予算に対しましては約百六十億ふえるわけでございますし、実績に対しては百億ふえる。  なお、今の計算の基礎も若干わかりましたので申し上げます。  平均資本で大体一八%くらいの伸びと、その配当の基礎になりますものを見ております。ただこれは無配、有配の平均率でございますが、配当率は一一・八%から一〇・八%くらいにダウンするであろう、こう見ております。同じくオーブンにつきましても、残存元本は一三七・九%くらい伸びるであろう、ただ分配率は若干落ちるであろうというような見方をしております。追加方につきましても、一二二・幾らというふうに、それぞれ積算の根拠がございます。先ほど同じだと指摘されましたが、その点は違っております。
  261. 武藤山治

    武藤委員 それでは先ほどの申告所得税の方へ戻りますが、営業が八・九、農業が二・八、その他の事業が一四・七、その他一一・五%の伸び率を基礎にして計算したと書いてありますね。農業の成長が二・八%、あるいはその他の事業の一四・七%というのは、三十六年度の実績と比較して実際にはどの程度開きがありますか。
  262. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど申しました営業八・九、農業二・八、その他事業一四・七、その他一一・五、合計九・八というのは、三十六年度の実績見込みに対する比率でございます。農業につきましては、これは農林省、企画庁ともに計算しております来年度八千五百四十三万石、これが一番大きなものになっておりますが、同じ見積もりによってございます。それから営業につきましては、過去のいろんな統計を調べてみたのですが、どうも生産の伸びと物価、それから個人の消費金額というもの、この辺の相関関係から見て参るのが、過去の経験でいうと一番当たるようでございますので、その相関関係から見てございます。
  263. 武藤山治

    武藤委員 大へん与党の皆さんから時間をせかれておるので、この問題は所得税法案が可決されたあとでも、じっくり質問したいと思います。  そこで一つだけ——皆さんに迷惑になるから、あと五分間だけでやめたいと思いますが、先ほど、生計費には課税しないという原則を私ども社会党は主張しておるということを申し上げました。そうしたら、やや生計費には課税しない程度に改善されてきた、そういう答弁があったようでありますが、ここに企画庁の出しておる統計資料によりますと、現在の消費支出というものは月どのくらいになるかということが出ておりますが、主税局長の見解ではどのくらいになっておると思いますか。
  264. 村山達雄

    村山政府委員 われわれは課税最低限を計算する場合には、いわゆる最低生計費との比較をとっているのでございます。生計費の数字調べました上でまたあとで申し上げたいと思いますが、それを毎年計算しているわけでございます。一つの方法は、それぞれ年令構成に応じまして、最も経済的な食糧を求めてきた場合に、それが一体飲食費で幾らかかるか、それからあとはエンゲル係数でそれを割り返しますと、最低生計費は幾らになるか、こういうマーケット・バスケット方式による計算方式、それからもう一つは、家計の方の統計から出しまして、ある消費金額と飲食費の比較をとってみます。それでだんだん飲食費の割合は・・。
  265. 武藤山治

    武藤委員 家計費の、現在あなたが認識している月別の金額は幾らになるかということを聞いている。そんなことを言うと、また質問をやり返しますよ。
  266. 村山達雄

    村山政府委員 四・三人で三万四千円だそうでございます。
  267. 武藤山治

    武藤委員 標準世帯で三万四千二百九十円、総支出が三万七千二百六円というのが、皆さんと同じ政府の機関の公式な統計の数字であります。年間に四十四万六千円は消費者の標準世帯の生計費としてどうしてもかかっておるということが出ておる。そうだとすると、現在の非課税限度というのは、日本の場合にはまだ低過ぎる。もっと引き上げてもいい。アメリカなどはとにかく二百万円まで標準世帯で免税なんでありますから、日本の場合は最低五十万程度までを非課税としても、決して安い税金だとは言えない、そう私は思うのです。そこで今日の減税は、そういう国民生活の立場から見ても、消費生活の立場から見ても、減税がまだまだ少な過ぎる、もっと思い切った減税をしてもいいという立場に私どもは立って質問をいたしておるわけであります。そういう点で、消費支出の必要限度以上に非課税限度というものを引き上げるように検討すべきだと思いますが、そういう点についての局長の見解はいかがですか。同時に自民党の政務次官としての見解はいかがですか。
  268. 天野公義

    ○天野政府委員 大体税金もだんだんと非課税限度が高まって、税金の負担の点も、過去の生計その他から見ると軽くなっていることは御承知の通りでございまして、われわれとしては、今後とも国民負担の低減に向かって大いに効力を傾けていきたいと思っておる次第でございます。
  269. 武藤山治

    武藤委員 最後に、五十万円までを非課税にした場合の減税額は大体どのくらいになりますか。大体でけっこうです。
  270. 村山達雄

    村山政府委員 ちょっと今計算できませんが、さっき言ったように一万円やりますと百六十億でございますが、これは累進がききますから、もっとその割合以上にふえるだろうと思います。
  271. 武藤山治

    武藤委員 一万円で百六十億ですか、そうすると現在四十一万、あと九万足した場合ですね。累進で計算して、大ざっぱに本職の皆さんが計算して何百億くらいになりますか。
  272. 村山達雄

    村山政府委員 おそらく千五百億から二千億近くになるんじゃないかと思います。
  273. 小川平二

    小川委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたします。     —————————————
  274. 小川平二

    小川委員長 これより順次討論、採決に入ります。  まず所得税法の一部を改正する法律案について討論に入ります。  通告がありますのでこれを許します。武藤山治君。
  275. 武藤山治

    武藤委員 ただいま上程になりました所得税法の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党を代表して反対の討論をいたしたいと存じます。  今回の所得税法の改正は減税が中心でございますが、その減税の幅が非常に少ないということが私どもの承服できない一点であります。特に経済成長の見通しと税収入の見通しが、実際の徴収の際にあたってかなり幅があるということを、私どもは過去の例に徴して認識をいたしております。そういう関係から、明年度の自然増収というものは今日公表しておるものよりもかなり多額の自然増収になると思われます。従って、もっと思い切った大幅減税を断行し、特に生計費には課税をしないという原則を、減税の中に実現をすべきであるという点が、本改正案に対する不満の第一点であります。  第二は、税の公平の原則を貫くという立場から見て、今日日本の経済を高度成長せしむるという理由で、独占資本に非常な恩恵を与えておき、大衆には、その能力や産業の特殊事情から恩典を受けられないような、農業、零細業者に対しては、あまり思いやりをしないという税法ではなかろうかと思われるのであります。私どもは公平なる税を実現するために、もっと中小、零細商工業者に対する思い切った減税措置を断行すべきだと主張をいたすものであります。特に自家労賃の控除あるいは借家住まいをいたしておる勤労者に対する家賃控除なども新設をすべきである。あるいは過当競争の宣伝費用などもかなり使われておるが、これらの過当宣伝費用、広告費用に対しては課税すべきであり、これらの税の不統一を統一的なものに改めてこそ真の減税と言えると思うのであります。私どもはさような点を強く痛感いたしまして、本案に対しましては、社会党をあげて反対せざるを得ないということを申し述べまして、反対討論にかえたいと思います。(拍手)
  276. 小川平二

    小川委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  277. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  次に、国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案について討論に入ります。  通告がありますので、これを許します。藤原豊次郎君。
  278. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案につきまして、社会党を代表しまして反対意見を申し述べます。  第一の理由は、年間所得が八十万円から九十万円の人で二十七万円くらいの貯金しかない、あるいは九十万円から百万円の人で三十七万円の貯金しかないという、この一つのことと、しかも年間所得七十万円以上の所得者は全所得税納税者の約一二%だ、こういう点からみますと、国民貯蓄組合の限度額を三十万から五十万に引き上げることは、高額所得者の減税のためであって、国民貯蓄組合の精神に反しておるのではないか、こういう点を反対の理由の一つにしております。  もう一つは、高額所得者が、国民貯蓄組合を乱用して、そうして組合への二重加入とかあるいは分割方法で、結局は脱税しておるのだ、その脱税することを防止するのに、当局の方では納税者の善意とかあるいは金融機関の善意とか協力とかいう精神面だけにたよろうとしておる。しかし、これを精神面にたよろうとすること自体が不可能である。なぜなら、加入するその人自体が脱税ということを考えておること、また銀行にせよ、証券会社にせよ、税務署に協力するよりも、銀行は預金を集め、証券会社は公社債の売買をする方がよほどいい、そのために違反したってわずか三百円の過料しか取られない、こういう状態では、幾ら精神面を説かれても、銀行なり、あるいは組合に入る人なり、証券会社なりの本質が違いますので、とてもこういうふうなことで防止はできない、こう考えますので、この二つの点から本案に反対いたします。(拍手)
  279. 小川平二

    小川委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  280. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は明二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十分散会