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天野政府委員 ただいま議題となりました
物品税法案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。
政府は、
昭和三十七年度における税制
改正の一環として、さきに提案いたしました通行税法の一部を
改正する
法律案等に引き続き、この
法律案を
提出いたす次第であります。
以下この
法律案について、その概要を申し上げます。
この
法律案は、最近における物品税負担の状況等に顧み、その軽減合理化をはかるとともに、税体系の整備合理化を行なうため、物品税法の全文を
改正しようとするものであります。
第一に、税負担の軽減合理化について申し上げます。まず、現行課税物品は七十品目に上っておりますが、これらの課税物品のうちには、最近における消費の態様や企業規模の零細性等から見て、課税することが必ずしも適当でないと認められるものもありますので、この際、紙・セロファン等十六の品目について課税を廃止することとしております。
なお、飾り物及び玩具につきましては、製造者の規模がきわめて零細で、税務執行上の難点もありますので、課税最低限を大幅に引き上げた上、これを製造場課税から小売課税に移行することとしております。
次に、税率につきましては、現在製造従価課税の税率が三%から五〇%までの八
段階にわたっておりますが、これを二〇%を基本税率とし、その上下に四〇%及び三〇%の加重税率と一〇%及び五%の軽減税率を設けて、税率構造の整備をはかることとし、これに伴い、最近における消費の態様等に応じて、電気冷蔵庫等二十一品目について、それぞれ軽減を行なうこととしております。
なお、以上のほか、政令におきまして課税最低限の
制度を設けておりますが、これにつきましても、最近における消費水準の向上や企業の零細性等を十分考慮いたしまして、引き上げを行なうことを予定いたしております。
第二に、このような税負担の軽減合理化に伴いまして、同種の課税物品に比べて物品税を課さないことが著しく不均衡になると認められるパッケージ型のルーム・クーラー、カー・クーラー等若干の物品につきましては、これを新たに課税対象に取り入れることとしております。なおこの点につきましては、関係
業界に及ぼす影響等を考慮いたしまして、その適用の時期等につき所要の配慮をいたしております。
第三に、課税体系の整備につきましては、納税方法を申告納税
制度に改める等のほか、課税済物品を輸出したような場合には新たに物品税を輸出
業者に還付することができる道を開くとともに、現行の物品税法にはかなりの不備も見受けられますので、物品税法の全文を書き改め、税法の簡易平明化をはかることとしております。
なお、この
改正案は本年四月一日から施行することとしておりますが、以上申し述べました軽減
措置による減収額は、
昭和三十七年度において約百七十二億円、平年度において二百二億円を見込んでおります。
以上、
物品税法案につきまして、その提案の理由と内容の大要を申し上げました。
次に、
関税定率法及び
関税暫定措置法の一部を
改正する
法律案につきまして、提案理由を御説明いたします。
現行関税率表は、昨年全面
改正されたものでありますが、その後、貿易自由化の繰り上げに伴い、主として自由化の繰り上げが予定された品目を中心として、関税率について所要の調整を行なう必要が生じたのであります。このため、
政府は、昨年十月に関税率
審議会に
諮問し、同年十二月十四日、その
答申を得ましたので、これに基づきまして、
関税定率法及び
関税暫定措置法につき、
改正を行なうことといたした次第であります。
関税率の
改正を行なった品目は、
関税定率法及び
関税暫定措置法を通じ、百三十八品目でありまして、その内訳は、税率を引き上げる品目六十九、引き下げる品目三十二、従価税率から従量税率に切りかえる品目二、税率を実質的に引き上げて従量税率に切りかえる品目十、従量従価の選択方式による品目九、従量従価の併課方式による品目一、関税割当
制度を採用する品目十四及び季節関税による品目一となっております。
関税率の調整にあたりましては、単に自由化の衝撃から国内産業を保護するのみでなく、需要産業、一般消費者等に及ぼす影響をも十分に考慮し、広く
わが国経済の
強化という観点から
検討を加えたのであります。
また、自由化の国内産業に及ぼす影響について必ずしも見通しが容易でない場合及び国内産業の合理化予定を自由化の繰り上げに応じて早めることが困難な場合等につきましては、
関税暫定措置法において、所要の期間を限り、暫定税率を定めることといたしますとともに、基本税率の引き上げを行なった品目中二十一品目については、自由化の実施までの間、需要者の
立場をも考慮し、従前の税率を据え置く
措置を講じております。
このほか、本年三月三十一日で適用期限の到来する重要機械類、給食用脱脂粉乳、農林漁業用の重油、肥料製造用原油及びガス製造用原油の暫定免税並びに
関税暫定措置法の品目の暫定税率中、国民
経済上、継続の必要があると認められるものの適用期限を、それぞれ一年間延長することといたしております。
製油用原油につきましては、現在、
関税暫定措置法により、一キロリットル当たり三百二十円の暫定軽減税率が適用されておりますが、石油と競合するエネルギー源としての石炭産業に対する諸施策が緊急を要することにかんがみ、この際、軽減税率を廃止し、一キロリットル当たり五百三十円の基本税率に復することとし、これにより石油と石炭の価格差を縮小し、もって石炭産業の安定に資することといたしました。ただし、石炭の長期引取契約を行なう電力、製鉄等については、この税率の引き上げにより過重な負担をこうむることとなる面もありますので、これらの
業者が消費する重油については、今回の引き上げによる負担増分に見合う金額を還付することとしたのであります。
また、
わが国において最近著しい発展を遂げつつある石油化学工業については、その原料について諸外国ともおおむね減免税を行なっており、石炭との競合の懸念もありませんので、輸入原油から精製した揮発油及びガスで石油化学製品の原料となるものにかかる原油の関税を全額還付することといたしました。
このほか、
関税定率法及び
関税暫定措置法の別表の品名の表現等につき、所要の規定の整備を行なうことといたしております。
以上がこの
法律案の提案理由及びその概要であります。
最後に、
国際通貨基金及び
国際復興開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律の一部を
改正する
法律案につきまして、提案の理由並びにその概要を御説明申し上げます。
近年、世界主要国の通貨がほとんど交換性を回復するに至りました結果、短期資本の国際的移動は大幅に自由になって参りました。これがため、これら主要国は、短期資本の流出により国際収支の安定を脅かされるという問題に当面しております。かかる現状にかんがみ、国際通貨
制度の維持を目的とする
国際通貨基金の資金的基礎を充実し、その
機能を一そう
強化する必要性が痛感されるに至り、このための具体的方法として、
国際通貨基金協定第七条第二項(1)に規定する資金補充のための借り入れに関する一般的取りきめが、本年一月五日の
国際通貨基金理事会で決議されたのであります。
この取りきめは、
わが国を含む主要工業国十カ国が、国際通貨
制度の安定を維持するため
国際通貨基金の資金補充が必要と
考えられる場合には、直ちに一定金額を限度として各国の自国通貨を
国際通貨基金に貸し付けることを約束するということを骨子とし、その貸付の諸条件を定めたものであり、貸付限度額の総額は、六十億ドル相当額となっております。
わが国といたしましても、主要工業国十カ国の
一つとして、九百億円を限度として、この取りきめに参加することが期待されているのでありますが、この期待にこたえまして取りきめに参加することの意義はまことに大なるものがあると申さねばなりません。すなわち、
欧米の主要工業国と並んでこの取りきめに参加いたしますことが、国際
経済社会における
わが国の地位を一そう高め、これら諸国との関係をより密接なものとすることに資するのみならず、この取りきめにより国際通貨
制度の安定が維持され、特に取りきめに基づく補足資金は参加国だけが利用できるとされていることは、
わが国にとっても利益があると
考えられるのであります。また、この取りきめの運用にあたっては、参加国の国際収支事情は十分考慮されることとなっておりますので、この取りきめに参加しても
わが国の外貨準備に過重な負担が加わるおそれはないのであります。
このような諸般の見地から、
わが国としてもこれに参加することが望ましいと
考え、そのための国内
措置として本法案を
提出いたした次第であります。
本法案におきましては、
国際通貨基金及び
国際復興開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律に、
大蔵大臣が
国際通貨基金に対して
国際通貨基金協定第七条第二項(1)に規定する貸付を行なうことができる旨の規定を設けますとともに、外国為替資金特別会計法に、外国為替資金に属する円資金をこの貸付に充てることができる旨の規定を設けることとし、その他これに伴って必要な規定の整備をすることとしているのであります。
以上、
物品税法案外二
法律案につきまして、提案の理由並びにその概要を申し上げました。
何とぞ御
審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願いいたす次第であります。