○佐藤国務大臣 これは基本的にはいろいろな
やり方があると思います。非常に統制的な力を加えるということも
一つの行き方でございましょう。しかし、一面自然的な条件というか、
一つの制約があるわけでございます。ということは、まず第一に、工場を幾ら集めると申しましても、地域的にそれを全部
吸収はできないでありましょう。あるいは立地条件ということでしばしばいっておる
土地あるいは水というようなことは、必ず条件の中に入ると思います。もう
一つは、やはり港といいますか、交通というか、これも立地条件の
一つだと思います。ことにこれから先の
産業が、原材料の輸送は大きな船でなければだめだ、もう十万トンとかいうことになりますと、十万トンの船ができても、十万トンの船が停泊する港というものは至るところにあるわけではございません。これは油についてすぐそういうことが考えられますが、油ばかりではない。鉄鉱石しかり、
石炭においてしかり、またその他の原材料でも、大きな船で一ぺんに持ってくるということがいかに経済的であるかということは、これは私から説明するまでもなくわかるわけです。また陸上の施設にいたしましても、地盤のやわらかいところではこれまた制約を受けざるを得ない。大きな発電所を作り、三十五万キロワットあるいは五十万キロワットというようなものを据えつけるとなると、非常に強固な地盤がなければいかぬでありましょう。そういうことを考えると、そういう条件は至るところに実はあるわけでございます。この条件を克服して
——採算性がない、かように見たら、そこに工場は絶対に来ないわけです。そういうものを利用するものがあり、そうしてまた未開発だが、そういうものが開発されれば、それだけの工場が来ても十分
生産を続けることができるとなると、これはやっぱり来るだろうと思います。そういう自然的条件を
政府が一応策定して、これはオーバーだ、こう言って切ることは、私はいかがかと思います。私
どもの大体の建前から申せば、ただいま申し上げるような自然的条件があるのだから、その自然的条件の
範囲内において工場も集中するだろう、それを越しては集中のしようがない。極端な話をすれば、
土地がないのにどうして工場が来ますかということになります。来ても水がなければどうしようもないじゃないかということで、ここらが自由経済のあり方といいますか、
一つの行き力だと思います。しかし私
どもが、なるほどそういうことがあって、自然的な条件で制約は受けるが、自然の成り行きにまかすのもさることながら、やはり地方と都市との格差、これを是正するということを考えると、積極的に工場の分散が必要だろう、そういうことを考えますし、あるいはまた
企業間の格差などなくするということを考えれば、そういう意味の
行政的な
指導、工夫というものが必要だろうと思います。だから比較の問題じゃない。都市交通が
生産と消費が近接しておる、それは有利だと申しますが、有利な条件を利用し得るものは
一つの限度がある。そうすると、少々不便だが、その他の場所を選ばざるを得ない。あるいはまたその場合に、国内の消費地と
生産地を結ぶ交通が整備されれば、これはよほど変わってくるわけでございます。そういう意味のことが順次行なわれる。現に、
生産に
関係することじゃございませんが、たとえば保険
会社の調査室というようなもの、膨大なものを都市のまん中に持つ必要はないじゃないか。だから、たとえば第一生命が小田原へ本店を移すというようなことも、それはそういう意味では役立つわけですね。これは経済の原則から見て、その調査資料や何かを、非常に高騰している地代のそういう場所にそういう倉庫を持つ必要はない。これは
政府が移りなさいと言うまでもなく、みずから進んで移している。
産業自身もそうあってしかるべきじゃないかと思います。ただ新しい工夫がなかなかない。
石炭を掘り出したら、もう万劫末代まで
石炭山で終始するのだ、大へんりっぱでございますが、ときには新たなる
方向で新天地を
開拓してもらいたいというようなことを考えますが、ちょうど都市でも同様なことがいえると思います。都市で採算の点を越したようなところでは、そういう商売は成り立ち得ないのです。そういうふうな線に変わっていく。自由経済のもとでも、これは自然の条件のもとに整理されるものと、かように私は思います。一体幾らが過度なのか、東京などは今非常に膨大な都市であり、また大阪にしてもあるいは名古屋にしても、すでにそういう様相を来たしているのです。これは主として交通の面から来ているようですね。港が十分でないと、これは幾らそういうことをやっても、思うようにはいかないのじゃないか。今盛んに埋立工事があり、東京湾の湾岸、ことに横浜方面に向かっては、もうすでに工場が櫛比している。だから今度は千葉海岸だということで、千葉方面が今
開拓されている。これなどは明らかに、ただいま申す
土地の条件に限度があるということだと思います。それから今度は千葉の方の海岸になりますと、順次水だとかあるいはその他の点で制約を受けざるを得ない、こんなことになるのじゃないか、こういう
感じがいたします。