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1962-03-22 第40回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十二日(木曜日)    午前十一時三十五分開議  出席委員   委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 神田  博君    理事 齋藤 憲三君 理事 始関 伊平君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 中村 重光君       藏内 修治君    白浜 仁吉君       中村 幸八君    南  好雄君       井手 以誠君    滝井 義高君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         建設政務次官  木村 守江君         労働事務官        (職業安定局長) 三治 重信君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      井上  亮君         通商産業事務官         (中小企業庁指         導部長)    影山 衛司君         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         自治事務官         (財政局理財課         長)      茨木  広君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  連合審査会開会申し入れに関する件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)  産炭地域振興事業団法案内閣提出第七七号)      ————◇—————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興事業団法案を議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 産炭地域振興事業団法の一、二の点について御質問申し上げます。  実は先般問題になりました第十九条の業務範囲でありますが、私どもとしては事業団の設立に期待することは、もちろん産炭地域における疲弊している状態から鉱工業振興させるための具体的な事業を行なう、しかも、その産炭地周辺にはおびただしい失業者停滞しておることは御存じ通りでありますので、従って事業団目的とし、あるいはまた直接事業団事業振興のための土地造成をする、あるいはまた工作物建設をするということが、一歩前進をして産炭地域停滞をしている人の雇用をどう拡大していくかが当然問題にならなければならないと思うわけです。そこで私は国会の決議から考えても、産炭地域振興というのは、当該地域鉱工業振興をはかることはもちろんでありますが、そのことを通じて、特にうらはらの問題として、停滞している失業者をどう吸収してくいかということが問題であると考えるわけです。従って、私は、労働省労働省としてこれらの対策について考えておるでしょうし、さらに前に通過をしました雇用促進関係法案の場合にも論議をしておるわけでありますが、特にこの事業団に、労働省としては失業者吸収についてどのような期待をしておるのか、その点についての労働省見解をまず承りたいと思います。
  4. 三治重信

    三治政府委員 その点につきましては、この事業団ができた場合に、いろいろ事業をおやりになるその具体的な事業は、今先生のおっしゃったような土地造成を中心としたとりあえずの事業というふうに聞いておりますが、その場合に、やはりできるだけ炭鉱離職者で現地に滞留している失業者吸収ということを、ある程度その事業実施上義務づけていただくようなことについても通産省側にも申し入れて、通産省においても大体そういうふうな方向で考えていくからというふうな回答を得ているわけでございますが、いずれにしましても、産炭地振興とともに、労働省としてはやはり絶対的に余剰の産炭地労働力を、広域職業紹介によって需要地の方に相当程度移動するということが相伴わないと、失業問題は解決しないというふうに考えております。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回出されている産炭地域振興事業団法目的の中には、いわゆる雇用の問題は直接うたっていないわけです。しかし産炭地振興法を論議した精神からいって、あるいは法の成立した精神からいって、あるいはまた今回事業団法を提出し、これを成立させるその目的が、やはり鉱工業計画的な発展をはかるという陰には、失業者吸収をはかり、雇用増大をはかるという問題が、非常に大きなウエートを占めておると思うわけです。それで私どもは、この目的に、特に雇用増大に寄与するという面をやはり強調的にうたうべきではないか、こういう主張をいたしておるのであります。この点、通産省見解では、事前にそういう通産省労働省のこれらの問題についての意見の交換があったかもしれませんが、なかなかそこまで行き切らぬというのが、今度の法案内容にもなっておるわけです。特に業務範囲においては、きわめて狭められておる。いわゆる土地造成し、これに関連を有する工作物建設する、これを管理し、譲渡するという程度のものであって、今産炭地域停滞をしている多くの失業者雇用を積極的にはかっていく、失業者吸収していく、こういう点から見ると、非常にほど遠いと思うわけです。私はやはり労働省政策からいっても、雇用奨励金も出すというところまで踏み切っておるわけでありますから、むしろ積極的にこの点は通産省打ち合わせをして、失業者吸収、そのためにより事業範囲を拡大していく、そういう具体的な計画を立案し、これを実施していく、こういう積極的な態度があってしかるべきだと思うのですが、この点についてどのようにお考えになっておるかをお伺いしたいと思います。
  6. 三治重信

    三治政府委員 そのような趣旨で、今後通産省と密接な連絡をとって、行政運営面をやっていきたいと思っております。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 炭鉱労働者雇用の問題でございますが、御存じ通り筑豊炭田は、さらに、それぞれ大手の山が終掘、閉山をするという情勢が最近特に濃くなってきておるわけです。三菱の場合においても、方城上山田でありますか、筑豊における二山を、来年三月一ぱいで終掘予定の山を、繰り上げて今年三月一ぱいで終掘、閉山として処置をする、こういう提案が実は会社からなされてきておるわけです。そういたしますと、筑豊炭田の場合には、ここ五年以内に、大手の山はわずか三、四の数えるほどしか残らないで、ほとんどが終掘、閉山、あるいはまた第二会社というような形に切りかえられることは明らかだと思うわけです。加えて増強群の場合においても、田川の千二百名を初めとして、それぞれさらに人員淘汰計画を持っておるということもまた明らかなわけです。また増強群の一番多い北海道においても、さらに積極的に大量の人員淘汰人員の削減ということを計画しておることも、これまた事実なわけです。ですから、当初合理化計画が組まれたよりも、予想以上に、人員淘汰による合理化の推進ということが私は最近顕著になってきたと思うのです。そういたしますと、当面労働省雇用対策として立てておる内容についても、再検討しなきゃならぬ時期にきておるのではないか。合理化計画そのものが再検討の時期にきていると同時に、炭鉱労働者雇用の問題についても、再検討しなきゃならぬ時期にきておるのではないか、こういう感じが実はいたすわけです。従って、経営者が単に合理化方針に基づいて、自分勝手にその企業都合だけによって人員淘汰をする、そのつどそのつど経営者意思によって人員淘汰されるということについては、何らか政府が、雇用について積極的な施策を打ち出す反面、規制をするというか、計画性を持たせるというか、そういう措置が今日私は必要ではないかと思うわけです。たとえば千二百名の解雇をするという場合に、これがなしくずしに、しかも安定した雇用先があって解雇をされるということでありますと、安定的な雇用転換ができるわけでありますけれども、しかしその当てがなくして、企業都合だけで解雇をしてしまうということになると、これはやはり労働行政の面からいっても、私は大きな問題ではないかと思うのです。ですから、この際労働行政立場からして、一歩踏み切って計画的な雇用転換を考えていく、こういう積極的な施策というものが要望されるのではないか、実は私はこういう見解を持っておるわけです。言うならば今の炭鉱合理化というのは、もちろん千二百円のコスト・ダウンで非常に苦しい、だからというので山においても、積極的に解雇が行なわれておるわけです。これは、いわゆる石炭企業間の競争が激化して、一つ企業解雇をしていく、しかも機械化をして合理化をする。極端なものの言い方をすると、三年先の合理化をしている。一方においては、企業がなかなか困難であるというふうな形で企業合理化を進めている。こういうアンバランスがやはり炭鉱企業間においてあることも事実なんです。そうすると、一方においては必然的に終掘、閉山になって、労働者が山からほうり出されてくるという面を考えてみますと、少なくとも現行の、やっていける態勢にある企業、こういうものについては、やはり計画的にこの人員の問題については考えていく。もちろんその場合に、合理化計画そのものが、では従来通り方針を貫いていくのかどうかという問題があるでしょうけれども、私は、それと関係なくしても、この計画的な転換ということをやはり労働者自体においても積極的に考えるべきではないか。そのために必要があるならば、労働省として積極的に立法措置を講ずるべきではないか、こういう考え方に立つわけです。どうも、通産省で立てた合理化計画、それによってはじき出されてくるものをどうしようか、こういう消極的な労働行政では、今日問題は解決しないと思うわけです。むしろ一歩進んで、雇用安定的転換をはかるという立場に立つ場合に、少なくとも現時点においてある程度余力がある場合には、計画的にそれを雇用転換をはかっていく、こういう立場を私はとるべきじゃないかと思うのです。もちろん本人希望でやめていくような場合、あるいはまた企業雇用先を世話をして、本人納得をしてやめていくような場合、こういう場合には、私は現在でも問題がないと思うのです。あるいはまたどういう意思があろうとも、終掘になれば、これはもう全労働者が必然的に離職する、こういう場合にはまたケースが別でしょう。しかしながら、合理化の線に即して、どうしても長い見通しに立って合理化をしなければならぬという場合に、一ぺんに千二百名なら千二百名の大量解雇をする、あるいは一割、二割に及ぶそれぞれの企業の規模に基づいた解雇をするという場合に、それは一ぺんに解雇をしなければならぬのかどうかということになってきますと、私は非常に多くの問題があると思うわけです。そうなって参りますと、やはりそういう場合には、労働省としては単なる行政というよりも一歩強めた形で、これらを計画的に雇用転換を考えていく、こういう施策が今日積極的に打ち出されなければならぬ時期にきておると思うのでございますが、この点の見解はどうでしょう。
  8. 三治重信

    三治政府委員 石炭鉱業合理化によって離職者が出る、それに対する対策として、御承知のようにいろいろの対策をやり、ことに来年度におきましては、先ほど御承認いただいた法の一部改正によって、非常に積極的な対策労働省としてはとったつもりでございますが、この合理化計画実施が事実上だめだ、しかも大企業の一部において一時に大量の解雇が行なわれるというふうな場合の対策ということにつきましては、われわれとしても非常に重大な関心を持ってそれに対処しなくちゃならないというふうに考えておりますとともに、やはり炭鉱経営者側に対してもわれわれの方として事前打ち合わせ、さらに、配転計画というようなものについても、今後関係行政機関とも密接に連絡して、それが処理のできない問題にならぬように善処していきたいというふうに考えております。また今、直接そういう問題につきまして、先日石炭局の方からの政府に対する申し入れにつきましても、そういう事情も一部聞いておりますので、至急労働省としても態度を検討し、そうして積極的に今後配転計画ができるように善処していきたいというふうに考えております。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般当委員会で、炭鉱離職者臨時措置法の一部改正を行なったわけですが、あの法案内容というのは、たとえば、いわゆる集中豪雨が降って、川の水かさが増してきて、そうして下流がはんらんをした、はんらんしたものをどう一体これを復旧するか、そのための法案であったと私は思うわけです。私は今日の石炭合理化のテンポから考えて、それでは十分ではないと思うのです。問題は、はんらんしないように堤防のかさを増すとか、そういう措置をして、やはり水の管理を十分コントロールしていく、ここまでいかなければほんとうの労働対策にはならぬではないか、こう実は考えるわけです。これを炭鉱労働者の場合にあてはめてみますと、企業の方は、極端なものの言い方をすれば、勝手に何名々々と切ってしまう。そうすると、はんらんをしてしまって復旧に非常に時間がかかるわけです。しかも時間がたてばたつほど、復旧してもなかなかきれいにいかない。また雨でも降れば、さらにそれがそれ以上の被害を増す、こういうことになっておるのではないか、こう思うのです。ですから少なくとも、山がつぶれるとか、本人希望でやめるとか、あるいは企業努力してそのために雇用転換をはかるという場合を除いて、大量解雇の場合、たとえば一割以上の解雇をする、三百人おれば三十名、五千人おれば五百名以上の解雇をするという場合には、政府もあれだけの対策を立てておるのですから、事前にやはりそれを労働省労働省で検討する、そしてそれが十分理由があるとすれば、これに対する対策を立てなければならぬ、企業として努力する余地があるとするならば、それはある一定の期間的に漸次計画的に雇用転換をはかっていくということを考えていく、ここまでいかなければ私は十分でないと思うのです。少なくともヨーロッパの炭鉱合理化を行なう場合、労働者淘汰されるという場合には、そういう一つの水路というものを切り開いてスムーズに転換されるという措置を講じておると思うのです。ですから単に打ち合わせをしておるというだけではなくして、それを正式の一つの制度化した形で、この合理化が終わるまである一定期間、そういうような点について労働者納得のできるような、しかも安心して働いておれるような体制にすることが必要ではないか、こう思うのです。というのは、計画的に転換してもらえるということになると、残っている労働者は安心して働けるわけです。やめる場合にも、ぽいと何千名と首切られることはない、そういう場合でもある程度計画的に転換できるのだ、そうなると、働いている者は安心しておれるわけです。われわれは、首を切ってはいかぬということを言っているのではないのです。そこまでやはり今回は措置をとるべきではないか。そういう措置をとるとすれば、特別立法の必要があると私は思うのです。こういう集中豪雨的に大量解雇する場合には、炭鉱企業合理化のような場合には、こういう態度が大事だと思うのです。これは石炭局長にも伺っておきたいと思いますが、そういう場合には、残っている労働者も、あまりトラブルも起こさないで、安心して働いておれる。転換する場合には漸次計画的に転換される、まあそう悲惨な状態にはならぬという感じがあれば、私は労働者というものは安心して、石炭産業生産性の向上のために大いに努力できると思うのです。こういう見解について石炭局労働省からお伺いしたいと思うのです。
  10. 今井博

    今井(博)政府委員 各炭鉱の実情によってやり方は多少違いますが、現在の大手炭鉱やり方は、実際に人間を整理する場合には事前協議制ということでできるだけ相談ずくで、やめてもらってはどうかということで、これが第一の原則ではないかと思います。その場合におきましても、これは会社によって違いますが、現状ではおおむね八割程度は一応関連会社なり、そういうところに就職あっせんをやっておりまして、三十六年度の実績はやはり関連企業相当就職あっせんに成功いたしております。なおそれは一〇〇%とまでいきませんので不十分な点があると思いますが、今日までのところは大手関係では職場転換というものについて相当努力を払ってきておると思います。なお今後もさらにその努力を続けるなり、あるいは政府としても、もっと職場転換のできるような職場造成について、炭鉱会社みずからが職場を考えていくということを勧奨いたしております。たとえば産炭地域振興事業団でお話がございましたが、これの融資機能を、これは今予算は少ないのですが、これをもっとふやして、炭鉱会社みずからが職場転換職場をむしろ積極的に造成していくという余地がだいぶあるんじゃないか。今までは関連企業財閥関係関連会社に主としてやっておりましたが、これもやはり限度がございますので、そういった面の措置が必要なんじゃないかということで、今それを勧奨し、大いに相談を進めておりますが、やはり基本は労使間の問題でございますので、そこにおいてできるだけ話し合いをし、就職あっせん努力する。政府としても、その労使間の問題に直接入るということは不適当でございますので、回りから大いに応援していくという措置が、今日では妥当なんじゃないか。それからさらに、閉山するという場合も、いきなり閉山するということでなく、やはり三年先とか、そういうことがあらかじめ予見されます場合は、できるだけお互いにそういうことを話して、人間の減少というものがスムーズに——先ほど御指摘がありました三菱上山田方城は確かに閉山計画を繰り上げております。約六カ月程度繰り上げておりますが、上山田については千五百人の人間が昔おりましたが、現在は二百人程度に逐次減っておるということでございまして、やはりできるだけ一挙にそういうことをやらずに、閉山というものも就職あっせんと並行してスムーズにやっていくという措置が必要だと思います。なお十分ではございませんが、やはりそういうふうな行政指導を今日までもやっておりますし、今後もやって参りたいと思っております。
  11. 三治重信

    三治政府委員 今石炭局長から言われたのと同趣旨のことを考えております。そういう点について労働省経営者側に強く働きかけるとともに、安定機関の足らざるところを協力してもらうという態勢をとっていきたいと思います。先日も石炭労務者雇用対策につきまして、経営者側それからさらに一般の経営者を含めた協議会を作りまして、その実施の面につきまして今後さらに推進するとともに、やはり求人開拓について各産業界に働きかけて、計画的に採用部面を広げていこうというようなことは話し合っておる次第であります。その点はやはり石炭産業から出るそういう離職者に対する産業界全体としての受け入れ態勢というものを、もう少し理解を深めて、しかもその吸収計画をできるだけ具体的に作っていこうじゃないか、これについては産業界安定機関と協力して、それに積極的に援助をするようにPRをしていくとともに、行動にも移るというふうな空気が出てきましたので、これをさらに広げていきたい。やはり安定機関だけでは力が足りませんので、そういう新しい求人開拓について経営者側も全体として盛り上げていくという態勢で進んでいきたいというふうに考えております。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういう行政上の指導をすることはけっこうなわけなんですが、問題は、現場で働いておる労働者にしてみれば、そういう行政指導をとっておるといっても、なかなか安心して生産に寄与するという態勢にはならぬわけです。個々の現場労働者としては、そういう場合にはできるだけ努力をするのではなくて、計画的な方向でやるのだ、政府としてもそのためにかくかく措置をする、経営者もそういう政府方針に基づいて、大量解雇の場合にはそういう考え方に立って進めていくのだということになると、相当労働者定着性も増してくるでしょうし、安心して働くことができるでしょうし、そのことを通じて石炭労使の安定ということもはかることができるのではないか、こう私は思うわけなんです。ですから、そういう意味ではある程度歯どめが必要じゃないか。単なる行政指導ではなく、一歩進めて——まあ、はっきりものを言えば、場合によっては解雇制限をする。制限をするというのは永久に制限をするということではなくして、その事情によっては計画的に転換をはかる、一定期間を限って転換をスムーズにはかっていく、こういう方針というものが出されれば、現在働いておる労働者も安心して生産に寄与できると思うのです。ところが今、一生懸命働いて能率が上がる、五千五百万トンに押えられている、従って自分能率を上げることは即自分たちのやめることを促進するようなものである、こういう状態に置かれておることが問題なんです。産業的に見て、石炭産業は不安定である。そこに雇用されている労働者心理状態も、非常に不安定な状態にあるわけです。だからせめて、産業の問題は産業の問題として合理化を進めていかなければならぬわけですが、働いておる労働者にそういう精神的な安定性を与えて、そうしてスムーズな雇用転換をはかるということは、今日もう考えなければならぬと思うのです。西ドイツのような場合には、初めから解雇については制限をして、政府計画的に雇用転換をはかる、こういう態度をとっておるわけなんです。これは日本炭鉱のような、一年に何万人と首を切るような計画ではないわけです。それでも、そこまではっきりした政策をとっておるわけです。日本のように非常にきびしい鋭角的な合理化をし、多くの労働者が首を切られるという場合においては、なお一そうその必要性を特に痛感をするわけです。合理化計画がもう一歩完成に近づきつつあるわけですから、全然海のものとも山のものともわからぬ状態ではないわけです。こういう事態においては、特にそういう点を明らかにする必要があるのではないか。ですから大量解雇については、単なる行政指導をするのではなくして、ある一つ審議会にかけて、そして一定期間の中で計画的に転換を進める。言うならば一つ解雇制限にもなるでしょう。こういう点について積極的に取り上げる意思がありますか。とにかく従来通り考え方を踏襲していくという考え方を変えないのですか、この点もう一度見解を承りたいと思います。
  13. 三治重信

    三治政府委員 結論から先に申し上げまして、やはりまだ立法措置をすぐとるというところまで労働省としては決定しかねるわけです。先ほど石炭局長並びに私がお答えしたような線を考えてやっていきたいというふうに考えます。ドイツ解雇制限立法は、確かにおっしゃるようにあるわけなんですが、これでもやはり法律上の建前としては、最大限二カ月になっております。そういうことから考えてみて、たとい立法してその二カ月をやってみても、実質上そう——労使それから政府が協力してやれば、実質上そういう方向でできるんじゃないかというふうな考え方を現在私たちは持っておりまして、ドイツ解雇制限立法も、まだわれわれの方で十分研究しておりませんけれどもドイツのいろいろな社会事情があってのことでありまして、やはり社会の進度または労働情勢というものがマッチしないと、法律やいろいろの具体的なものをきめてもその運用ができない。われわれとしてはもう少しそういうふうな部面について研究するとともに、実効ある行政措置で処置していきたいというふうに考えておるわけであります。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は具体的にお聞きしますが、今、炭鉱労働者が大量に解雇される場合、事前労働省か何かに話があるのですか。そういうシステムになっているのですか。
  15. 三治重信

    三治政府委員 たとえば一昨年の三井三池の争議の終息の場合におきましては、相当計画的にやったつもりでおります。そのほか、具体的な大量解雇の場合について今私は思い出せないのですけれども、現在ではやはり石炭合理化事業団並びに通産省から、労働省としては最大限に事前の情報を得てやっているつもりでありますし、先日の杵島炭鉱なんかの整理の場合におきましては、その終息前に安定機関を動員して相当就職相談をやりました。それから会社側の力も、従業員について希望、それから家族状態、経験年数、年令その他、そういう部面につきましての情報を相当キャッチして、事前に職業相談をして、配転計画について相当の協力をしてもらってやっております。これをさらに円滑に進めていくことができるというふうに私どもは考えております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 それはやはり、事前に協議をしているとか指導しているとかということじゃないと思うのです、経営者自分意思でやったしりぬぐいをしている。政治的に非常に大きな問題になればなるほど、それがただ置けずに、やらざるを得なかったということだと思うのです。私はやはりもうここまでくるとそれではいかぬと思うのです。事前にはっきりした処置をする。そのためには、やはり事前に、少なくとも労働省が、大量解雇する場合には、その人員なり、仕方なり、経営者考え方というものをはっきり把握をされ、政府としてもこれに強力な指導ができる、こういう態勢でなければならぬと思うのです。いろいろ質問しますと、われわれが聞いても非常に耳ざわりのいい答弁をいただくわけなんですが、裏を返すと、実際何もやっておらぬというのが、私ども考え方としては、実態ではないかと思うのです。ですから、これは経営者意思だけでやるのでなくして、やはり経営者に対しても行き過ぎはコントロールをする、こういうことでなければならぬと思うのです。今石炭の各企業は、無制限に、自転車競走のように競争させる段階じゃないと思うのです。合理化は達成しなければならぬけれども、無制限に競争させる段階じゃないと思う。ところが、今の場合には何ら規制措置はないから、やるところは一方的にやっている、そうして条件の悪いところはなかなかやりにくい、そういうことでどんどん格差がついてくる。だから、苦しくなると第二会社におろす、労働条件を下げる、あるいは人を首切って、安い労働者組を使う、こういう無原則な体制に炭鉱労働者雇用の問題というのは置かれているわけですね。ですから、むしろ私は事前労働省として、炭鉱労働者の首切りについては、出た者についてはしりぬぐいはするのであるが、政府としてもこれだけの措置を講じておるのである、だから雇用のスムーズな転換については協力してもらいたい、それが行政指導でできなければ、私はやはり立法措置をとらざるを得ないと思うのです。そういう態度でなければ、幾ら行政指導するといっても実際これは不可能だと思うのです。労使の間において結ばれた事前協議制あるいは労働契約だって、今一方的に破棄されているのです。労働契約に基づいてその通り実行しているわけではないのです。合理化は至上命令で、事情変更の原則によって、労働契約も協約の改定をしなくてもやり得る、緊急避難である、こう言って経営者はやっておるのが実態なんです。ですから行政指導するとするならば、今の労働省としておのずとやり得る限界というものは私はあると思うのです。局長かかわって新しい局長になられたのですが、やるとすればどの程度あなた方の権限内でできると思いますか。
  17. 三治重信

    三治政府委員 そう言われるとなかなか困るわけですけれども、これはやはり経営者側のそういう配転計画については、従来にも増しての協力がなければ、安定機関だけでなかなかできないと思います。そういう情勢については、やはり現在だんだん盛り上がりつつあると思います。また、そういうことの、配転の裏付けとなる予算措置も、労働省としては非常に大胆にとっているつもりでございますので、これをいま少し推進して、さらに、それでもどうにもならぬという問題になれば別ですけれども、とにかく今までない措置を一応とって、これで私たちの方は、労働省としてはやっていきたいというふうに考えて、何も対策をとっていないということでなくて、従来の処置に対して数倍ないしそれ以上の対策をとっていると思うのです。これをまずやってみることが先決じゃないかというのが、私の現在の立場でございます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 私先ほどから言っているように、離職者対策はなるほど前進はしておるわけですよ。しかし、これから大事なことは何かということです。これから大事なことは、今若い労働者がどんどん炭鉱をやめて、平均年令が三十八才になっておるということです。しかも、さらにこれが老化していく傾向にあるわけです。これから大事なことは、質のいい労働者を残して、石炭産業の将来にわたる安定をはからなければならぬ。わが国の最大のエネルギー源ですから、政府としてもこの点については特に、石炭産業の安定をはかる、こういう方針をとっておるわけですね。そうするとやはり今大事なことは、最低賃金制をしいて魅力のある職場にして、労働者を残していくことも一つの方法でしょう。しかし、それだけでは私は解決しないと思うのです。もう一つの方法は、一生懸命働いても、結果として解雇される場合には、少なくとも予告があり、そうして計画的にこれはやっていくということでなければならぬ。何か変動によってばさばさ首を切られるのではないというものがあれば、そういうものがあれば、労働者も安心して残るでしょうし、それが将来にわたる石炭産業の安定に大きく貢献すると私は思うのです。この点を今労働省が考えるべき時期ではないかと、私は思うのです。労働省は人がよ過ぎて、首切りはあなた方、自由主義経済だから勝手に切りなさい、私どもは国家の予算で、国民の税金を使ってしりぬぐいをしますということであっては、これは非常に片手落ちな労働行政だと思うのです。こういうことが慢性化すると、国民も納得しませんよ。企業家は企業家として努力していく、もちろん、それでできないものについてはある程度、でき得る限界内でいろいろ政府としても考えていく、こういう一歩進んだ積極的な面で、波打ちぎわでやはり問題をスムーズに解決する方向を築くということが大事じゃないかと思うのです。私はこれができれば、労使関係も安定すると思うのです。今大体労使関係で重大な紛争が起きるのは、賃金を中心にする労働条件の大幅な切り下げ、それから解雇ですね。日本の数多くの労働争議を調べてみても、大体解雇か大幅な労働条件の切り下げで、王子のようなああいう権利闘争というのは珍しい例なんです。その以外はほとんど企業合理化の問題なんです。しかも炭鉱は、労使の紛争を起こさしてはならぬ時期なんですね、非常に大事な時期なんです。そういう面からいっても、やはりもう一歩進んで考えていく。もちろん政府としてはそのかわり、この点について、労働者労働組合に対しては、協力してほしいということを大胆に出してもいいのじゃないかと思うのですね。やはりそういう態度がなければ、合理化というものは、むしろ紛争が起きて、逆に石炭産業企業力が不安定になる。そのことを遂行するために逆にマイナス部面が非常に大きくなって、実力行使、ストライキでも起きれば、今度は負債をかかえて、この赤字を処理するのに四苦八苦しなければならぬ、こういう悪循環が続いていくわけなんです。考えてもらいたいのは、ここなんですね。これは今、政府行政指導でできないわけでしょう。やるとすれば、法律的根拠が何もないわけですが、何かできる方法はありますか。たとえば援護法があるから援護法で、ある程度一部改正するなりしてもやる。首を切った者は引き受けるのだから、首を切る前に注文をつける、文句をつけるくらいの、そういうことも実際不可能じゃないですよ。御存じ通り炭鉱労働者雇用安定について、社会党としては法案も出しておるわけです、この点について労働省として、すでに国会に出されておるのですが、検討済みですか。
  19. 三治重信

    三治政府委員 この炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案につきましては、労働省として目下検討中でございます。その解雇前の事前の連絡、それから円滑な配置転換ということにつきましては、先ほど来答弁しておりますように、事業主側の協力を得るとともに、そういうものについて事前計画政府と協議し、そうしてできる限りそれを円滑に、スムーズにやれるように指導していきたいというふうに考えております。それは現在のところでは、ことに大手につきましてはこれができ得るというふうに考えております。
  20. 岡田利春

    岡田(利)委員 ぜひこれは労働省として検討してもらいたいと思うわけです。私はあらためて労働大臣にも出席を願って、炭鉱労働者雇用の問題について質問したいと思うのです。この法の精神が悪ければ悪いでけっこうなわけです。これはやりきらぬ面があるならば、やりきらなくてもけっこうなわけです。ただ問題は、こういう趣旨のことは当然やらなければならぬ時期に来ているという、意見の一致だけは見ることができると思うのですね。ですから、そういう意味で一つ十分検討してもらって、炭鉱のこれからの雇用転換に対しては一体どういうことが一番妥当なのか、合理化を進めていく重大な段階において、どういう方法が最も適切な方法なのかという点について私は見解を承りたいと思うのです。そこで特に今労働省と私の質問の中で、これは石炭局長にお聞きしておきたいのですが、石炭局としても合理化を達成するために——労使の紛争が起きて、それがマイナスになる。そのことによって、企業が不安定になる。極端なものの言い方をすると、企業の継続もできないというふうなこともなりかねないのですよ。こういうものを排除することが、合理化政策を進める場合に私は最も大手だと思うのです。もう一歩進めて言うならば、合理化を達成するまで労使の紛争を起こさぬというくらいの私は措置をすべきだと思うのです。通産省としては、労使は紛争を起こさないで、合理化を終わるまではとにかく労使休戦してくれ、率直に言えば、そういう考え方ではないかと思うのです。そうすると、そういう点についての適切な施策というものが大事だと思うのです。合理化臨時措置法に、人の問題については出てないわけですね。しかし合理化臨時措置法に流れるものは、人の問題が裏にはついているわけなんですから、この人の問題だけが全然法律的に放置されておるというところに、私は問題があると思うのです。ですから、これは労働省だけでなく、合理化をスムーズに達成するため、通産省立場としても、この点何らかの措置をすべき時期にきているんじゃないかと思うのですが、この点どうでしょう。
  21. 今井博

    今井(博)政府委員 今日までのところは、比較的年令の若い人はどんどんはけていく、そうして中高年令層、特に四十才前後の就職転換の非常にむずかしい人の問題が中心になってきているという点においては、従来のようなやり方でいいとは思っておりません。これは行政指導をやる場合においても、もっときめのこまかいやり方をやる、またもっと積極的な助成もする必要があると考えております。今回の雇用奨励金制度も労働省の方で特にお考えを願い、それからその他の措置についても、従来の対策を数歩進めて石炭対策というものを政府としても考えた次第でございます。ただ今日の労使間の現状からいいますと、やはり私はそれを法律でどうこうするということよりも、事前によく相談する労使の協議という問題が、現状では非常に形式的なもので血が通っていないというふうな実は欠陥があるわけでありまして、われわれもその点については、これにもっと血を通わせて、経営者にもっと精神的な教育をする——非常におこがましいですが、そういった態度が必要かと思います。ただいまドイツの例がいろいろ出ましたが、日本の現在の労使間がこういう現状になっておるということについては、もちろん政府施策も悪いし、経営者やり方も非常に欠陥があると思いますが、しかし私はやはり現在の労働者側にも相当反省してもらわなければならぬ点もあるんじゃないか、一挙にしてこういう関係になったのではなくて、やはり相当な長い年月を経てこういうことになったいろいろな歴史的な事情があると思います。そういうものを一挙にどうこうするということは、外国の制度を見習ってみても、日本の実情からするとなかなかうまくいかぬのじゃないか、現状ではやはり、現在の労使の協議の場というものにもっと血を通わせるというふうな措置が妥当じゃないかと、私は、非常に私見にわたりますが、そう考えておる次第でございます。今日までのところ、何人人間を整理するという場合も、経営者としてはこのくらいは就職あっせんが大体できるんじゃないかというふうなめどを考えて、たとえば何人やめてもらうとかいうふうなことをむしろ進めていくという、裏からいいますと、そういう実情もあるようでございまして、経営者の方も、先ほど三菱上山田方城の例であげましたように、逐次人間を減らしていって、閉山の時期には非常に少なくなっておるというふうなスムーズなやり方をやるべきでありまして、やはりできるだけ早く合理化計画というものを事前相談し合って作っていくということで今後の対策を進めるように、ぜひとも各経営者に勧奨いたしたいと考えております。
  22. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問は、これで終わりますが、問題は労、使が十分話し合うということがやはり大前提なわけです。しかしこういう社会環境のもとで、労使が十分話し合っても、納得ができぬ場合もあるわけですね。一方においては企業格差というものができてきておる、あるいは千二百円のコスト・ダウンをしなければならぬ、さらにそれ以上の合理化を要求されているという問題があるわけです。しかも、企業格差というものはどんどん大きくなってきているのです。企業格差があるから、勧奨するといっても、実際問題としてはなかなかむずかしいのですね。労使が十分話し合うことはけっこうですが、話し合ってもなおかつ、これは利害が違うわけですから、見解の相違が出てくる。そうして解決できないで必然的に紛争に発展をする、これは私は何とか解決しなければだめだと思うのです。せっかくやっても、そこで一回紛争が起きてしまうと、これは二年くらいちょっと回復ができぬという実例があるわけですよ。ですから政府はやはり、話し合いをさせるということはもちろん大前提でありますが、そこで意見の一致を見ない場合に、単に仲裁機関である中労委にたよるのではなしに、合理化が達せられる期間というものは、政府としてそういう場合についてはその意見を聞いて、この問題をスムーズに解決していく、こういうことは、私は現時点でもどうしてもやらなければならぬことではないかと思います。しかも実績から見ると、確かに私の調査でも、経営者相当就職あっせんをしている。極端な中小を除いては、ずいぶん努力しつつある。それでも解決できない問題もあるでしょう。年令とかいろいろあるでしょう。そういう点については、納得できるものまで何も解雇するなと言っているのではない。問題は、よりこれから先鋭化した状態が発生してくるので、労使が協議してできぬ場合には、政府方針である合理化を達成するという立場で、一体どう措置するか。何かそれを審議して、第三者の意見を聞いて、それに従ってもらうというようなものを考えるか。これは今の行政指導だけではとてもできる問題ではないと思う。しかもまた、大量に解雇する場合には、二カ月なり三カ月なり前に届出をする、こういうものはやはりある程度制度化しなければ、行政指導だけでは、実際問題として、今の石炭局の陣容ではなかなかできるものではないと思う。こういう必要があるかないか。今の時点でこれはもう必要がないというなら、話は別ですが、必要があるけれどもなかなかむずかしいということになるかもしれませんが、私は少なくとも必要があり、重大な問題として検討しなければならぬ事項ではないか、こう思いますが、これは石炭局労働省はどうですか。
  23. 今井博

    今井(博)政府委員 私は現状では、そういうものを制度的にチェックする、ことに法律的な措置を講じてそういうものを制度化するということは、日本労使間の今までの慣行、長い歴史的な事情から見て、かえって実情に合わないのではないか、そう考えている次第でございます。これはやはりいろいろ業者間の複雑な事情もありますし、やはり労使間の現在の協議会なり、そういうものに血を通わせるというためにはどういうふうにしたらいいかということをまず努力することが先決問題だ、そういうことによって私はそれは十分解決できる、実はこう考えておる次第でございまして、今日までのところは、もちろんそれはいろいろな例外もあるかもしれませんが、現在の経営者精神的な啓蒙というものをわれわれとしても極力やりますし、現在の石炭鉱業の置かれている立場から考えまして、やはり職場転換というものに極力努力をして、その方向で問題を解決していくということに、政府としてももっと大きな助成を考えていきたい、むしろその方向がそういう制度的な機関を作るということよりも実益があるものと考えております。
  24. 三治重信

    三治政府委員 そういう大量解雇の場合の法的措置につきましては、労働者としては実質的にそういう大量解雇をやる大手について事前に情報を得るとともに、そういう配転計画について協力していけば、法的措置をするまでもなく、できるんじゃないかという考えでおりますが、まだこの点につきましては検討中でございます。石炭局長が言われたように、労使の話し合いがまだ不十分だという問題も相当あるわけでございます。そういう点につきましては、われわれの方としても、新しい離職者対策をとったところでありますし、裏づけとなるような相当な予算措置もとっているわけでありますから、それを軌道に乗せる上からいっても、そういう事前の話、その配転計画についての協力というものについては、十分努力を払っていけるというふうに考えております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭局長は、今までの労使の慣行が悪いと言っているわけです。悪いというならば、これは変えなければならぬと思うのですよ。悪いとするならば変えなければならぬ。しかも至上命令で合理化をせねばならない、労働者には気の毒であるけれども大量解雇もせねばならない、こういう矛盾があるわけなんですね。だから、今までの労使の慣行が悪いとすれば変えなければならぬじゃないか。そして至上命令である大量解雇も当然やむを得ないというならば、やはり労使間だけではこれは解決せぬわけです。ただ経営者が、苦しいからやめてくれ——これは経営者が苦しいといっても、これは問題がある。炭鉱の場合には、労使の間で解決できない要因を含んでいるのです。政府合理化計画をやめて、千二百円の炭価の引き下げは中止をするというならば、話は変わってくる。そうであるならば労使だけにまかしておいてもいい。物価が上がろうと何しようと、とにかく合理化はやるんだ。だから、労使の中でもって解決できないわけですね。従来の慣行が悪いと言われるのだし、ここを何とか変えなければいかぬじゃないか、ある程度向きを変える必要があるのではないか、ここの問題なんですよ。これはもし立法措置が気に食わないならば、法律を作らぬでも、たとえば労使が協定をしたら政府はこれの保障をしてやるというような方法だってありますよ。おかしくはないですよ。だから単に石炭局として、通産省としてただ経営者に話をする、そういうものを期待するというのではなくして、行政措置なら行政措置でもけっこうだし、何か具体的にやっぱり対策といいますか措置をしなければならぬのではないかと思うのです。紛争を起こさないことを好むわけですからね。紛争を起こさないで合理化をやる、社会の期待にこたえて炭鉱合理化を進めていく、そして労働者も安心して能率をどんどん上げる。おれが能率を上げたら、四カ月後なり五カ月後には首を切られてしまうというようなことであっては、これは安定せぬわけです。ですからもう労使関係からはみ出しているわけですよ。そこをやっぱり具体的に何らかの措置を検討する必要があるのではないか、こう私は言っているわけです特別の立法をする必要がないとするならばそれでけっこうですが、そういう点についてどうですか。
  26. 今井博

    今井(博)政府委員 労使の慣行が悪いというふうには私は言わなかったのですが、労使の慣行が、労働者の方はいきなり何でもストライキをやる、経営者の方は事前に話さずに急に首切りの話をする、そういったふうな点において、日本労使のそういう協議の場に欠陥がある。協議会という制度があっても、形式的なやり方が比較的行なわれてきた、もっとそれに血を通わせて、もっと事前にお互いが話し合って問題を解決していくというふうに持っていく必要があるのじゃないかということを申し上げた次第でありまして、そういう現状では、法制的なものを考えるということはかえって弊害が出てくる。むしろそういう労使の現在の協議というものを、もっと血を通わせて、できるだけ懇談を重ねていくということが先決であろうというふうな見地から実は申し上げたわけであります。この点は政府としても、今後の行政指導にあたっては、もっときめのこまかいやり方を考えなければならないという見地から申し上げておるわけであります。その点は多少表現が不適当なところはおわびをいたす次第であります。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はあとまだ質問がありますから、この問題はまたあらためてじっくりやりたいと思います。  ただ、この際お願いしておきたいことは、労働省には、炭鉱労働者雇用安定といいますか、この点について十分一つ検討願いたいということと、石炭局には、企業の格差ですね、合理化を進めている大手十八社なら十八社でもけっこうなんですが、企業の格差というものを、合理化を進めていく場合に一体どう考えていくのか。いいのはどんどんよくなっていいのだ、話さえつけば首を何ぼ切ってもいいのだということであっては、私はどうかと思うのですよ。今そういうアンバランスな形が、何とかかんとか経営者が処置をして表面に出てこないものだから、石炭問題というのはあまり深刻な政治問題になっていないのですよ。これがもしある一定の線が引かれておれば、これは相当深刻な問題として、私は社会問題に発展しておると思うのです。これからがむずかしいところなんです。今まではこういうある程度の膨張もあったでしょうからここまできましたけれども企業内容の悪いものはこれは三倍もやらなければならぬ。よくても、昭和四十三年度くらいのことを考えて、四十年以降のことを考えて、今から合理化をやっております。これでは果てしがないですね。そうなって参りますと、これはどうしても紛争が起きますよ。こういう点について一つ十分に検討してもらいたいと思うのです。それで、雇用の問題については、合理化法の本格的な審議の中であらためて御質問したいと思いますから、きょうはこれで終わっておきます。
  28. 有田喜一

  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 まず中小企業庁にお尋ねいたしたいと思いますが、現在産炭地域においては、単に炭鉱労働者並びに離職者だけの問題でなくて、商店街においても著しい打撃を受けておるわけです。私昨日筑豊に帰りましたところが、うどんを夜とろうとしたら、うどん屋は店をしめておる。クリーニング屋が来ないと思ったら、クリーニング屋もやめておる。こういう惨たんたる事情で、山田市のごときは全市みな極貧層に落ちんとしておる状態である。ですから、どうしても産炭地域振興と同時に、円滑な労働力の流動化も必要でしょうが、商店街の指導ということも考えてやらなければならない問題です。購買力がほとんどないのですからね。ですから、今一番困っているのは、毎日赤字でありながら、やめるにやめられない、行くに行けないという商店が相当多いわけですね。これを一体どうして移転なり、次の生活の道を立ててやるか、これについて中小企業庁ではどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  30. 影山衛司

    ○影山説明員 お答え申し上げます。商店街の振興につきましては、ただいまお話のございましたように、産炭地域そのものの振興によりましてその地域の所得を増加いたしまして、消費購買力を増加していくということが根本的な問題なんでありますけれども、さしあたりまして、その産炭地域として衰退していく地方の商店街をいかにしていくかということは、非常にむずかしい問題でございます。商店街そのものの振興の方策といたしましては、いろいろ金融方面であるとか、あるいは共同施設の増加であるとかいうふうな一般的な制度はあるわけでございますけれども、個々の具体的な商店街につきましてどういうふうにそれをしてあげたらいいかということにつきまして、具体的に物事を考えていかなければなりませんので、それに対しましては、中小企業庁とそれから各都道府県の方で中心になりまして、企業の診断制度というものがあるわけであります。それはちょうどお医者様のように、この病人はどういうところが工合が悪いのかということを診断いたしまして、それに応じた処方を立てて指導していくという制度でございますけれども、それを活用いたしまして、産炭地域の商店街診断というのも非常に盛んにやっております。だからそこのところをまず診断をいたしまして、この商店街はどういうふうな方向にいったらいいのかということから始めていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 産炭地域振興によって、購買力の維持ができればけっこうですよ。産炭地域振興では、とても現状の維持は不可能です。ただそれをどの程度、最小限度に疲弊をとどめるかというにすぎない。幾らさか立ちしたって、できっこないすでよ。ましてや、この微々たる法案と予算ではできない。ですから労働力の移動もさすし、それから地域の振興もはかるし、いろいろな方法を講じて何とか円滑にいきたい、こういうんです。購買力の維持ができれば、それは企業の診断もけっこうですが、問題はそんななまやさしいことじゃないです。店舗付住宅があるでしょう。半分くらいあいているんですよ。それも建てたのが二、三年前ですよ。こういう事情に今なっているわけです。その地域は、炭鉱とともにどっかへ集団的に商店街を移したいという事情ですよ。ただ金もないし、行く先もはっきりしないから毎日が赤字だ、こういうんです。本来ならば、早く移動さした方がいいわけです。赤字の累積がないわけです。ところが、今のところは、ジリ貧にいっておる。ですから、企業の診断なんということじゃないと思うのですよ。経営がどうも君のところは思わしくないからこういうようにやったらどうか、あるいは店の飾りをこういうようにしたらどうか、あるいは電灯をどうしたらいいとか、帳簿のつけ方をどうしたらとかいう問題じゃないと思う。要するに、炭鉱離職者と一緒に町全体をどこかに移動させなければならぬという状態です、はっきり言うならば。一体これをどうやるか。土地の値段なんか今全国的にいいますと上がりつつありますけれども土地の値段はどんどん下がる、家はどんどん安くなる、こういう状態ですよ。ですから、炭鉱離職者臨時措置法があるならば、商店につていも何らかあなたの方において考えられてしかるべきではないか。少なくとも産炭地域振興が今日政治の日程に上って論議をされて、さらに事業団までできるという中で、中小企業庁は私は怠慢じゃないかと思うのです。少なくともあなたのような答弁では、これは全く実情を知らぬと同じですよ。産炭地域振興、それはけっこうです。振興とともにその店舗を維持することはできますけれども、実情はそういう実情ではない。とにかく四万ぐらいの市が、一万五千くらいになろうとしておるのですよ。そういう商店を幾らやっておっても、購買力がないんです。全く悲惨そのものです。もう八時を越えますと、おもな繁華街が全部店をしまうという状態です。一体どういう対策政府は立てておるのか、立てようとしておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  32. 影山衛司

    ○影山説明員 ただいま診断の話をいたしましたが、商店街の診断と申しますのは、個々の商店の診断ではなくて、商店街全体の行き方を診断するという意味でございますから、誤解のないように申し上げておきます。  ただいまお話のございますように、商店街だけではなくてその町全体が疲弊していっておるというふうな状態のもとにおいて、商店街をどういうふうにしてあげたらいいかということにつきましては、むろん先ほど申し上げましたような広い意味の診断も必要でございますし、移転対策等につきましても、正直申しまして、これから石炭局あたりとも相談いたしまして検討さしてもらいまして、適切な措置をとっていきたいというふうに考えております。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 例の台風常襲地帯は、どうにもならないから町、村を移転しようという話があるのです。率直に言うと、あれと同じですよ。中小の商店街が非常に困っておる。ですから、これは早急に対策を立ててもらいたい。そうしないと、これがだんだん財産を食いつぶし、しかもこの財産は売ろうとしても売れないのです。ですから店の価値というものがなくなる、こういう状態てす。今まで担保に入れておったけれども、その担保価値がなくなっていくのです。ですから店はどんどんあいていく、どうにもならぬ。本来ならばその担保を競売に付したら、若干手元に残るというのが常態でしょうけれども、そういう状態でないですね。ですから、どうしても資金の面において特別な配慮をしてやらなければならない、かように考えるわけです。これについて早急に一つ対策を立ててもらいたい。石炭局長の方からも何らか答弁を願いたい。
  34. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまの問題は、これは単に商店の経営を改善するとかいう問題ではなくて、むしろ根本的な問題であります。これは私見になりますが、山田市あたりで適当な事業が見つかれば別でございますが、なかなかそういうことも困難であるというような場合には、やはり、現在非常に予算が少ないということでおしかりを受けましたが、産炭地振興事業団の機能を一つ活用する、あるいは雇用奨励金制度というものを活用する、あるいは住宅確保奨励金制度というものをうまく活用する、あるいは開発銀行の機能を活用する、そこへ持っていって、その場合に中小公庫の金融措置というものをうまく活用するということで、一つのモデル・ケースとして何らか企業誘致なり、あるいは炭鉱会社がそういう関連事業を起こしてもいいと思います。そういうことで、そういうところに焦点を合わせて、乏しいながらもあらゆる施策を集中してやってみるという企画を持たなければならない。そういう企画を、われわれも一つ研究してみますけれども、やはり現地自体においても、そういう何かいい計画を真剣に考えていただいて、中小公庫の金融措置もそういうものに関連して応援していくということでないと、私は一商店街だけの問題じゃないと思いますから、根本的な体質改善、体力回復というものはできないのじゃないかと思います、実は私見にわたって恐縮ですが、そう思っておりまして、政府施策は非常に不十分ではございますが、この施策をできるだけ焦点を合わせて集中してやってみるという検討を急速に進めてみたいと思っておりまして、この点は一つ現地の実情に明るい多賀谷先生からもアドヴァイスをぜひとも得たいと思っておる次第でございます。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、オーソドックスなやり方としては、それは産炭地振興だと思います。しかし、現在炭鉱雇用しておる労働者雇用するぐらいの企業がくるかといったら、こないですよ。そうでしょう。現実は、五千人かつて擁しておった炭鉱が、二百人とか百五十人というような状態になっているのです。そうすると、今三千名なり四千名を雇用する工場を誘致するなんといっても、これは莫大な資金がかかるわけでしょう。ことに、炭鉱のように雇用吸収率がよくない一般の産業——ですから、それは産炭地振興をどんどんやらなければならぬけれども、商店街は購買力を対象として繁栄をしておるのですから、どう考えてもこれは過剰になることはわかっておるわけです。ですから、私は、炭鉱離職者臨時措置法があるように、商店街は、法律が適当であるかどうかわからぬとしても、特別の措置をとって、移転をしたい者は移転をさせてやるというような状態にしていかないと、商店街の場合は困るのじゃないか。私は、工場の場合とは別だと思うのです。生産工場はなるべくきてもらわなければならないから、生産工場については、産炭地振興と同時に体質を改善してやる、体力をつけてやる、そうして大きくしてやらなければならぬと思う。しかし、購買力を相手としている商店街については、もうすでにものすごく過剰の状態で、疲弊をして倒産の寸前にある、あるいは倒産をしていきつつあるわけですから、私は、早く手を打ってやる必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。この点やはり総合対策が必要だ。ですから、振興策は振興策でどんどん進めると同時に、商店街も、過剰な分については、本人たち希望するならばそれをなるべく分散する、こういうことも必要ではないかと思うのです。そのためにはやはり資金というものが一番肝心ではないか。ですから、資金については特別の措置をしてやる必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。一つ中小企業庁の方からもう一度答弁願いたいと思います。
  36. 影山衛司

    ○影山説明員 商店街の疲弊に対しまして、これを適当なところに分散させる、移転させる対策につきましては、先ほど石炭局長から御答弁がございましたように、よく総合対策として検討したいと思います。それで、移転に必要な資金につきましては、商工中金もございますし、また中小企業金融公庫もございますし、国民金融公庫もございますし、その計画に従いまして適当な措置をとっていきたいと考えております。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、従来の制度ではうまくいかないというのです。ですから、従来の制度をかえて特別な措置をしてもらいたい。従来の制度でいくならば、何もあなたをここへ呼んで質問することは要らないわけです。金利とかその他の面で、現在の制度ではなかなかうまくいかないのだ、こういうことを言っておるわけです。うまくいかないから困っておる商店が今、かつての売り上げを維持し、それから日々益金を出しておるような状態にはないわけです。ですから、これを早急に十分調査をして、総合的な対策を立ててもらいたい、こういうように思うわけです。
  38. 影山衛司

    ○影山説明員 お答え申し上げます。いずれにしましても、実態の調査をよくいたしまして、それに応じて適当な対策を至急打っていきたいと考えておりますので、御了承願います。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では、次に職安局長にお尋ねしますが、離職者が一人出ますと大体どのくらい費用がかかりますか。
  40. 三治重信

    三治政府委員 今そういう資料を持っておりませんが、大体失業保険が平均しまして現在のところ五・五カ月分、今度炭鉱離職者で給付延長になりますと、それが平均して六カ月以上になると思います。それと、それから今度の援護措置雇用奨励金を利用するというふうになっていきますと、すなわち、財政的に全部利用されることになると、離職者が再就職して安定するまでに一人当たりおそらく七、八十万、正確な二とは申し上げかねますが、予算措置だけでもそれくらいかかるのではないかというように考えております。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大体緊急就労に従事するだけでも、年間、千二百五十円といたしますと、三百日かけても三十七、八万要るわけです。ですから、いろいろな問題でやはり一人五十万円くらい一年間に要るのじゃないか。これがずっと継続しますと、相当の金額になるのではないか。そこで石炭局長にお尋ねをするわけですが、他の鉱工業、すなわち石炭以外の鉱工業振興もさることながら、石炭鉱業を安定さして吸収する。もう少し言いますと、深部開発をしたらどうか。スクラップになるような炭鉱は別にして、新しいビルドの方式で、しかも炭鉱労働者雇用する、こういう方式はないものだろうか、そういう経済的なことが考えられないかどうか、そういう条件がないかどうか、これをお尋ねいたしたいと思うのです。とにかく、一人離職者を出すと年間五十万円要るわけです。そのことを考えると、私は制度として考えられるものがあるのじゃないかと思うのです。しかも、あなたの言われる合理化の線に従って高能率炭鉱ができるのではないか。問題は私は資金だと思う。ペイするかどうかというのは、今資金コストですよ。ですから、政府において超高圧線の送電を考えられるくらいなら、炭鉱の深部開発というものが考えられてしかるべきではないか。私が今申し上げたいのは、直方地区における深部開発、これは大体千四百名くらい使うわけです。千四百名くらい雇用することができるとするならば、これを五十億かかるといたしましても、失対事業の観点と総合的に見ると、国の政策としては、むしろ深部開発をやった方がいいじゃないか、こういうように私は考えるわけです。これについてどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  42. 今井博

    今井(博)政府委員 直方地区を中心とした深部開発については、われわれの方で一応の調査——紙上調査でございますが、これでは、やはりそこまでの深部開発をやる場合の経済性について、手取りとコストというものから見て非常に疑問の点があるということに、現在の調査段階ではなっております。しかし、今多賀谷先生おっしゃいましたように、かりに深部開発に、大きな縦坑をおろして、その縦坑はいわゆるコスト計算に乗せないというふうな特別措置をかりにとったとした場合にどういうふうになるかというふうな、補助のやり方についてもいろいろあると思いますが、今失業者一人五十万ということで、そういうものをかりに深部開発に助成手段としてとった場合にどうなるかという計算は、確かにここで検討してみる必要があるのではないか。たとえば送電線を考えました場合も、発電所を考えます場合も、年々赤字補給みたいな、あるいは単に現状維持的な金を出すよりは、施設に金を出して、それでソロバンがとれる、恒久的態勢が維持できるということの方が、これは結局長い目で見てプラスだという見地から、産炭地発電とか、そういう問題を取り上げて議論しておるわけですから、それと同じような考え方でこの深部開発というものができないかという点は、私は確かに検討に値すると思います。この点は、そういう見地から一ぺん一つ試算をしてみたいと思います。ただ、現状では、たとえば現在の近代化資金制度あるいは開発銀行の融資をさらに大幅に拡大するというふうなことをやってみても、ソロバンに乗らぬという、そういう数字が出ておりますので、もう少し趣を変えた方法で試算は一ぺんしてみたいと思っております。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 たとえば千四百名雇用するということになりますと、一年間に緊急就労としたら、その他いろいろな財政援助をしますと、大体七億円くらい要るわけです。年間七億円といいますと、これだけ政府があまり経済効果の上がらない仕事をさしておるわけですからね、これは私はもう少し考え方があるのじゃないかと思う。そうして新しい産業を持ってきましても、必ずしも離職者とその工場が希望をする労働者とが合わないですね。ところが、炭鉱の場合には比較的合うんではないか。しかし、これについては既存の炭鉱のかなりの協力が要ると私は思うのです。労働者の場合でも、現在おる離職者が必ずしも新しい炭鉱に適合するかどうかは若干問題がありますから、付近の各炭鉱のいろいろな協力が必要ではないかと私は思いますが、何にしても、かつて試算されたといわれております内容も私たちは仄聞はしておりますけれども、第一、能率の点においても、その試算をされた当時よりも現在は飛躍的に高い能率が現実において考えられておる。ですから、こういった点もやはり検討が必要でしょう。それから金利の面についてもそうですし、その他の直についても、もう少し現時点に立って総合的な判断で考えられるならば、いくのではないか、私はこういう気持を持つわけです。今千四百名から千五百名の人々を吸収するといいますと、炭鉱以外の工場といたしますと、なかなか大へんな企業です。ですから、これらも十分考えていきたい。これはさらに石炭問題の基本的な問題と一緒に論議したいと思いますけれども、ただ産炭地振興の意味においても考えてもらいたい、こういうように考えるわけです。  そこで安定局長、あなたの方で、三十七年度の見通しとして、大体新規求職者が十三万人いる。すなわち、現在の三十七年四月に求職者として残っておるのが四万八千、新規求職者が八万三千、こういう数字がこの前示された。そうしてその中で、安定所を通じて就職をするものが三万六千、縁故関係が四万六千程度、それからその他が帰農あるいはその他だ、こういうことを言われたわけですが、私は、従来のように縁故就職というものは多くはないだろうと思う。なぜかと言うと、この縁故就職の大部分は炭鉱就職しているわけです。現在確かに中小炭鉱においては鉱員募集をしているところもある。しかし、今炭鉱で離職した人は、そういう不安定な中小炭鉱に行こうとしない。ですから、この数字は、先ほど岡田さんが指摘しましたように、閉山とか大量解雇が予想外に出てくるという要因のほかに、こういう期待が持てないのではないか、従来のような数字ではないのではないか。ですから、むしろあなたの方の御厄介になる、と言ってはおかしいのですが、いわゆる政策の対象になってくる労働者として現われてくるのではないかと思うのですが、それはどういう見通しでありますか。
  44. 三治重信

    三治政府委員 この新規求職者の八万余のものは、結局、失業保険の方で離職者を全部つかまえておるわけです。従って、そのケースで大体予測をしているわけでございまして、御承知のように、合理化による純減は二万人余ということでございます。従って、あとは流動性を持った、失業保険の関係の離職または再就職という関係になるわけでございます。ところが、炭鉱部面でそういう再就職が減ってくれば、この新規求職者の中の、従来そういうふうに中小炭鉱で移動されていた方々の数が減るという関係になるのではないかという感じを持っております。八万三千人幾らは固定的なもので、縁故就職が片方に出るということでなくして、縁故就職が減れば、片方やはり新規求職者も減る、その間にはそう大きな変動はないというふうに考えられます。その点についてのさらに具体的な現われ方については、まだちょっと見通しはつきかねますが、われわれの方で予定しておりました昨年十二月末の数字も、やはり四万九千人程度というふうに予定しておったのが、昨年末現在では四万五千人程度に減って、約四千人ぐらい予定の数字より減っております。滞留者が昨年末で四万五千人くらい、約四千人減っております。従いまして、資金計画とか生産計画のようには確かなものではございません。これはおもに一つの動きとして、従来の線でいくならばという前提の数字になっておりまして、この三月末の状況と、先ほど岡田先生から御質問があったように、企業合理化計画というようなものと見合い、さらに配転計画も私ども業界等を指導してやって参らせながら、この数字は実質上はもっとコンクリートなものを早く見通しとして作りたいというふうに考えております。先生のおっしゃるようなこともあるいは出るかもわかりませんが、その点についてはいま少し状況を見て、この数字は再検討してみたいというふうに考えております。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 縁故就職者が減れば逆に新規求職者も減るという理論ですが、なるほどそういう一面もあるかもしれませんけれども炭鉱をやめて炭鉱雇用されるという状態は、企業形態を変えれば別として、そう今後起こってこないのじゃないか。というのは、今まで長い間炭鉱にいてけがもしないで済んだのに、また炭鉱に行くこともない、こういう、ことに不安定な炭鉱についてはそういう感じをかなり持っています。その新しい雇用の場所に行っても、それが不安定であれば、また一年でやめなければならぬかもしれない。その不安定な炭鉱は、働きに行っても賃金をくれないかもしれぬ、こういう情勢ですから、私は今までの数字をそのまま移した状態では政策として十分でないのじゃないか、こういう気持を持つものです。これについては一つ十分検討をしてもらいたい、これをお願いいたしたいと思います。  午前中はこの程度にしまして、大臣が来てから……。
  46. 有田喜一

    有田委員長 それでは、本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十三分休憩      ————◇—————    午後三時三分開議
  47. 有田喜一

    有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人の出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案、勝間田清一君外二名提出、石炭鉱業安定法案及び炭鉱労働者雇用安定に関する臨時措置法案審査のため、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人の出頭の日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  49. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  50. 有田喜一

    有田委員長 次に、連合審査会の開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま商工委員会において審査中の、内閣提出、石油業法案は、本委員会といたしましても、総合エネルギー対策、なかんずく石炭産業との関連におきまして、きわめて深い関係を有する法案でありますので、この際、商工委員会に、同法案について連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、連合審査会開会の日時等につきましては、商工委員長と協議の上、公報をもってお知らせすることといたしますが、大体三月三十日金曜日の午後一時より開会する予定となっておりますので、御了承願います。      ————◇—————
  52. 有田喜一

    有田委員長 次に、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興事業団法案に対する質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  53. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大臣にお尋ねいたしますか、今度の国会で新産業都市建設促進法が出ましたし、さらに前国会には低開発地域工業開発促進法、さらに産炭地域振興法が出ておるわけです。東京とか大阪のように、現在いわば工場の集中化によっていろいろな社会的負担が増大をしておる。こういう大都市の問題については、政府としてはどういう考えであるか、お聞かせ願いたい。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 大都市の問題についてはどう考えておるのかというお尋ねでございますが、最近の経済の発展から見まして、産業が大都市に集中するというその形が望ましいことかどうかということで、実は問題になっておるわけでございます。一方、地方に必要な事業、それすらも大都市に集中する。そういう意味では、地方へ足どめをするような方法あるいはまた積極的に工場を誘致する方法をとって、大都市としてはむしろ、都市の発展もさることですが、集中の結果がすべての面で、たとえば工業用水が足らないとか、あるいは住宅が不足するとか、あるいは交通の面で非常な混雑を来たすとか、あるいは原材料の運搬なりその他が相当割高になるとか、いろいろの問題があるわけでございまして、経済的にもそういう意味ではこれはやはり対策を考えていくというのが必要だろうと思います。そういう意味で二、三すでに問題になっておる通産省としての問題は、たとえば工業用水の確保であるとか、あるいは沈下防止をそれに合わすとか、あるいは大気汚染、これについて特別立法をするとかというような意味で、過度集中を防除するという積極策はありませんけれども、この産業がもたらす公害等についての防止方策をとるとか、積極の面ではただいまのところは工業用水、さらにこれに必要な電力量あるいはガス、そういうようなエネルギーの整備、あるいは近くに対する港湾整備であるとか、交通問題とか、各般にわたって大都市の要求にも沿い得るような処置をとっておりますが、今後一そうそれを徹底さしていくという考えでございます。むしろこの程度で、もう大都市集中にしばらく足踏みしてほしいというような気持も一部にあるわけでございます。これが地方に対する産業分散計画、そういうことでどれだけ救われるという問題だと思います。これは大へんな、しかも都市経済圏に対する問題は、これはまた積極的に地方のものの振興より以上に焦眉の問題になっておる。これは見のがすことができません。あるいはお尋ねがそういう意味であったかどうか、ちょっと私聞きかねましたけれども、大都市の問題については、ただいま申し上げたようなことを工夫しておるわけでございます。
  55. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、工場自体は確かに関連産業を一カ所に置き、そうして消費地に近いところに工場を建てれば、現在のように日本産業のうちで、原料が国内になくて、外国から原料を買ってくる産業については、どこの地域でもそうコストは変わりませんから、消費地に集中する、こういう傾向にあると思うのです。ところが、その当該企業は確かにプラスになるかもしれませんけれども、それに即応する社会的負担というものが非常に大です。これは結局公共投資の面に現われた個人の負担になっておるわけです。すなわち個人の負担というのは、同じ八時間の勤務時間でも、電車にもまれて、あるいは十二時間も十三時間も家を離れて勤めに行かなければならぬという状態になっておるわけです。あるいは工業用水の問題でもその通りだし、これは結局工場がこうむる利益と、個人並びに社会的負担が受ける被害と、どちらが多いのか、こういう計数を一体どういうふうにはじいておられるか、もうそろそろこういう計数の仕方をしてもいいと思うのです。一体プラスになっておるのか、マイナスになっておるのか。むしろ非常に過剰人口の東京周辺に工場を持ってくること自体が、日本経済としてはプラス、マイナス、損益計算はどうなっておるのか、こういう点については内閣として一体調査をされておるのかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま言われる程度の、はっきりしたデータをつかんだものが内閣調査室にあるかどうか、私も実はまだ不勉強でそこまでつかんでおりません。しかし、ただいま御指摘になりますように、たとえば道路の整備であるとか、あるいは教育施設の整備であるとか、工業用水だとか港湾の整備、交通網の整備、各般にわたって、それが社会問題である、それが同時に政治問題であるということは言えると思います。しかして、そういう大都市をかかえておる自治体は、その出費負担が非常に大きいと考えてはおりますが、しかし、いわゆる富裕県として、そういう県は財政的には恵まれておるということもございます。そういうことを考えますと、その工場が来てそして過度集中したという表現——一体どこまでいったら過度ということに当たるのか、これは一つの問題だと思いますが、財政的な観点に立てば、そういう自治体は必ず富裕自治体になっておると思います。ただ問題は、過度集中した結果起こっておるいろいろの経済上の問題であるとか、社会問題であるとか、あるいはその他の政治上の問題まで、経済の発展に即応するような態勢ができておるかどうか、こういうことになりますと、これはまだ不十分だ。そういう意味においての社会投資を要求されたり、あるいは社会施設の整備を必要としておるというのが現状ではないかと思います。また生活態様から見ましても、富裕階級と貧困階級とが一緒になって生活している地域というものは、都市がその最たるものでしょう。ですから縮図的なものもここにあるわけです。そういうことを考えてみますと、都市の政治がうまくいくということは、おそらく国の政治がうまくいくゆえんでもあるだろう、かようにも考えるわけです。だから今多賀谷さんのお話がどの点を指摘してお考えになるのか、私、数字をもって説明すれば、多賀谷さんも納得がいくかと思いますけれども、常識的な見方は、ただいま申すようなことが言えるのじゃないかと思います。しかしあらゆる社会問題が大都市にあること、これは見のがすことができない、こういうふうに私は理解し、そういう意味で、ひとり経済の問題のみならず、都市の政治というものが非常に大事な意義を持つものだ、かように私は考えております。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、適正に企業が集中することは非常にけっこうだと思います。問題は、大臣がおっしゃるように過度に集中することによって社会的負担が、これは企業家自身は持ちませんから、むしろ国なり地方公共団体の負担になるし、それ以上に私は個人の負担というのが非常に大きいのじゃないかと思います。個人は黙って犠牲を背負っておりますから、これはなかなか金に換算することはできませんでしょうけれども、私はそういった面は、本来とは言いませんが、企業がある程度以上に集中した場合においては、むしろ企業の利益よりも社会的負担の方が多い、こういう場合が相当多いのじゃないか、こう思うわけです。それからさらに個人に転嫁されておる場合、交通難の問題はその優たるものですが、それは個人の負担になっておる。ですからやはりフランス等で産業転換をはかる、こういうものの考え方が必要な面が、日本にも出てきたんじゃないか、こう思うわけです。それは、すでにある企業のごときはみずから分散をしていく、こういうところもあります。しかし大体原料を国内に求めなくなってから、この輸送関係において、どこの地点に原料を運んでも同じだというので、どうしても消費地へ消費地へと集まる傾向がある。首をかしげられておりますが、そうでしょう。現実に今鉄鋼にしましても、みんな消費地に集まっておるわけです。かつて八幡製鉄は、中国の鉄鉱石と筑豊の原料炭で発足したわけですが、現在どうかというと、やはり消費地へと集まりつつある。それは戸畑の高炉の建設が終われば、あれで一段落してみんな東へ東へと行くわけです。ですからこういうことは、私は私企業立場からいえばやむを得ない、かように考えますが、しかし過度集中する場合においては、そこに公的な規制が必要ではないかと思うのです。そこで工場配置法というようなものが考えられたり、あるいはパリにある工場を分散するというようなものが考えられたりするのではないか。ですからおのずから都市には都市として適正規模があるのじゃないか。これを画一的にただ人口とかその他できめることはなかなかできないが、そういう感じがあるわけです。これに対して大臣はどういうようにお考えであるのか、分散方式あるいは過度集中を防止するという考え方があるのかないのか、ただ現在集中しつつある状態に対応するようないろいろな施設をしていくという態度であるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  58. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは基本的にはいろいろなやり方があると思います。非常に統制的な力を加えるということも一つの行き方でございましょう。しかし、一面自然的な条件というか、一つの制約があるわけでございます。ということは、まず第一に、工場を幾ら集めると申しましても、地域的にそれを全部吸収はできないでありましょう。あるいは立地条件ということでしばしばいっておる土地あるいは水というようなことは、必ず条件の中に入ると思います。もう一つは、やはり港といいますか、交通というか、これも立地条件の一つだと思います。ことにこれから先の産業が、原材料の輸送は大きな船でなければだめだ、もう十万トンとかいうことになりますと、十万トンの船ができても、十万トンの船が停泊する港というものは至るところにあるわけではございません。これは油についてすぐそういうことが考えられますが、油ばかりではない。鉄鉱石しかり、石炭においてしかり、またその他の原材料でも、大きな船で一ぺんに持ってくるということがいかに経済的であるかということは、これは私から説明するまでもなくわかるわけです。また陸上の施設にいたしましても、地盤のやわらかいところではこれまた制約を受けざるを得ない。大きな発電所を作り、三十五万キロワットあるいは五十万キロワットというようなものを据えつけるとなると、非常に強固な地盤がなければいかぬでありましょう。そういうことを考えると、そういう条件は至るところに実はあるわけでございます。この条件を克服して——採算性がない、かように見たら、そこに工場は絶対に来ないわけです。そういうものを利用するものがあり、そうしてまた未開発だが、そういうものが開発されれば、それだけの工場が来ても十分生産を続けることができるとなると、これはやっぱり来るだろうと思います。そういう自然的条件を政府が一応策定して、これはオーバーだ、こう言って切ることは、私はいかがかと思います。私どもの大体の建前から申せば、ただいま申し上げるような自然的条件があるのだから、その自然的条件の範囲内において工場も集中するだろう、それを越しては集中のしようがない。極端な話をすれば、土地がないのにどうして工場が来ますかということになります。来ても水がなければどうしようもないじゃないかということで、ここらが自由経済のあり方といいますか、一つの行き力だと思います。しかし私どもが、なるほどそういうことがあって、自然的な条件で制約は受けるが、自然の成り行きにまかすのもさることながら、やはり地方と都市との格差、これを是正するということを考えると、積極的に工場の分散が必要だろう、そういうことを考えますし、あるいはまた企業間の格差などなくするということを考えれば、そういう意味の行政的な指導、工夫というものが必要だろうと思います。だから比較の問題じゃない。都市交通が生産と消費が近接しておる、それは有利だと申しますが、有利な条件を利用し得るものは一つの限度がある。そうすると、少々不便だが、その他の場所を選ばざるを得ない。あるいはまたその場合に、国内の消費地と生産地を結ぶ交通が整備されれば、これはよほど変わってくるわけでございます。そういう意味のことが順次行なわれる。現に、生産関係することじゃございませんが、たとえば保険会社の調査室というようなもの、膨大なものを都市のまん中に持つ必要はないじゃないか。だから、たとえば第一生命が小田原へ本店を移すというようなことも、それはそういう意味では役立つわけですね。これは経済の原則から見て、その調査資料や何かを、非常に高騰している地代のそういう場所にそういう倉庫を持つ必要はない。これは政府が移りなさいと言うまでもなく、みずから進んで移している。産業自身もそうあってしかるべきじゃないかと思います。ただ新しい工夫がなかなかない。石炭を掘り出したら、もう万劫末代まで石炭山で終始するのだ、大へんりっぱでございますが、ときには新たなる方向で新天地を開拓してもらいたいというようなことを考えますが、ちょうど都市でも同様なことがいえると思います。都市で採算の点を越したようなところでは、そういう商売は成り立ち得ないのです。そういうふうな線に変わっていく。自由経済のもとでも、これは自然の条件のもとに整理されるものと、かように私は思います。一体幾らが過度なのか、東京などは今非常に膨大な都市であり、また大阪にしてもあるいは名古屋にしても、すでにそういう様相を来たしているのです。これは主として交通の面から来ているようですね。港が十分でないと、これは幾らそういうことをやっても、思うようにはいかないのじゃないか。今盛んに埋立工事があり、東京湾の湾岸、ことに横浜方面に向かっては、もうすでに工場が櫛比している。だから今度は千葉海岸だということで、千葉方面が今開拓されている。これなどは明らかに、ただいま申す土地の条件に限度があるということだと思います。それから今度は千葉の方の海岸になりますと、順次水だとかあるいはその他の点で制約を受けざるを得ない、こんなことになるのじゃないか、こういう感じがいたします。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも閣僚の中で考え方が違う。違うことはけっこうですけれども、公に発表される場合にはやはり統一しておいてもらいたいと思うのですね。私の聞いておるのは、新産業都市建設促進法のときに、新産業都市だけでは不十分ではないか、今の過度集中した都市の状態をどうするのだ、こういう質問をわが党の児玉君がして、藤山企画庁長官は次のように答えておるわけです。要するに、過大都市の防止については、これはこの法案では規定できないので、これは別の法体系によりまして、今日、過大化防止の方法を進めることに努力しております、こういうことを言っている。ですから、われわれの理解するところでは、新産業都市建設促進法の上にさらに過大化防止の法案を作るのだ、これは法案ということを言っている。こういうものの考え方があって、そうして総合的にこの産業都市に対する体系が政府自体としてはあるのだ、われわれはこういう理解をしておったわけですが、何か大臣の答弁によりますと、わかったようなわからないような、方向のわからないような答弁をなさっておられますけれども、もうちゃんと、しかも本会議で、国務大臣の一人が答弁をされておるのです。その前にはあなたが答弁をなさったのですね、ほかのことで。ですから、われわれが考えるのは、過大都市の集中を緩和していくという一つの大きな法案が出て、それに新産業都市建設とか、あるいは低開発地域とか、あるいは疲弊した産炭地域振興法案とか、こういうものが体系づけられておるのだ、こう理解したのですが、違いますか。
  60. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま申し上げた基本的な考え方は、私は間違ってないと思いますが、すでに皆様方の御審議を経て成立を見ている法律に、工場立地の調査等に関する法律というものがございます。これは昭和三十四年三月にできたもので、三十六年に改正しております。この法律で、やはり届出をしていただいて、そうして工場の立地調査に基づく観点から適正な指導をしている、こういうことでございますが、いわゆる過度集中を防ぐということは直接の目的ではない、その意味の立法ではないだろう、かように私はただいま理解しております。ただいまおあげになりました地方のものは、これは積極的な地方で作るということですね。これはもう自然的な現象でそういうものができてくるでしょう。これはここでいかぬと言うわけにいかぬと思います。そういうものはないだろうと思います。いかがですか。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総理もやはりその新産業都市建設促進法の質問に対して、人口の集中の防止と同時に低開発地域の開発ということをおっしゃっておる。それに続いて藤山企画庁長官は、「東京その他過大都市の防止について、この法案に規定がないじゃないかということでございますが、この問題は各方面重要な問題でございまして、この法の中には規定をいたしておりませんけれども、別の法体系によりまして、今日、過大化防止の方法を進めることに努力をいたしておるでございまして、その点は皆さん方の御了承をいただけることだと思います。」こう答えておるのですよ。ですから今の工場立地調査とは考え方が違うのですよ。しかも委員会で単に質問したということでなくて、本会議で堂々藤山さんの方から答弁されておるわけですからね。
  62. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただ、私の申し上げたことと企画庁長官の説明と食い違いがあるようですが、おそらく企画庁は企画庁でそういう点を研究している、かように私は理解をし、まだ具体的な問題としての相談は受けていないと思いますけれども、あるいは通産省企業局で相談にあずかっておるとは思いますけれども、重大な問題ですから、そういう方向であれば、私の耳にも入るはずですが、ただいまはそういうことは入っていない。しかし、おそらく企画庁は企画庁としていろいろ研究しているのじゃないかと思います。それは私の想像でございまして、そういう方向で研究しているというようにはっきり申し上げるようには、私の方にはまだ耳に入ってはおりません。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 企画庁長官だけじゃないのです。建設大臣も言っておるのですよ。建設大臣は続いて次のように答弁しております。「首都圏の既成市街地——東京及び川崎等の既成市街地につきましては、すでに工場、学校等の新増設に関する抑制の法律を作りまして、実施中でございます。」この法律というのは、おかしいので、条例か何かだろうと思いますが、「さらに、今国会におきまして、この抑制のワクをもっと強化いたしたい、かような立法措置を講ずるようにいたしたいと目下考えておるわけでございまして、この新産業都市建設関連をいたしました大都市地域、人口の過度の集中を憂えられておるような地域につきましては、この法律そのものとは別の角度で考慮すべきものではないか。私どもも、企画庁長官と同じように考えておるような次第でございます。」こう言っておるのですがね。
  64. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 この建設関係、いわゆる首都圏整備法、その関係のものは、私が申し上げるまでもなく、発動しておると思います。ただいまの地方開発促進法、その法律自身は、積極的に分散ということが望まれ、それが過度集中の防ぎになる、そういう意味なら理解できます。だから今の中村大臣の言っておるのは、首都圏整備法に基づくものだと思います。これはある程度すでに発動しているのですから、そういう意味のいろいろのお話をしておると思います。しかしこれはさように申しましても、実際にはそう簡単にはいかないと思います。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 簡単にいかないことは、事実問題としてはわかりますが、しかし建設大臣もこの法律、すなわち新産業都市建設促進法とは別の角度で考慮すべきものではないか、私どもも企画庁長官と同じように考えておる次第であります、こう言っておるわけですからね。このものの考え方はあるんじゃないですか。しかも産業担当の大臣が知らないというのは、おかしいのですがね。企画庁長官も建設大臣も同じ考え方を持っておられるようですがね。
  66. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 基本的にはいろいろ違っているかわかりませんが、今回できている新産業都市建設促進法、これは企画庁長官が主管にはなっておりますけれども、各省それぞれが合わして作ったものでございます。その際いわゆる低開発地域を整備するとかあるいは事前にその都市の計画も立て、そううして工場を誘致する、建設省はそういう言い方をしているし、また通産省通産省として、各地に産業が起こることは望ましい、そういう意味で、本来の立地条件に合うというか、産業都市というよりも、工場誘致といいますか、いわゆる適地適産とでもいうか、そういうような基本的方針をとっておるわけであります。だからその三者を一緒にして、ただいま御審議をいただいている立法ができておるわけであります。これはむしろ積極的な意味はどこまでも分散といいますか、地方に産業を興すというか、あるいは忘れられている未開発のところで、立地条件の整っているところへそういうものを持っていきたい、こういうことでございます。本来いろいろの議論があると思いますが、それはもう少し具体化したら思想の統一もできるでありましょうが、まだ具体化しないうちでございますから、構想の途上においていろいろ各大臣の間に意見が違っても、ちっとも差しつかえないと私自身は思っております。今の都市を制限する、かように申しますけれども、都市の使い方によってはまだまだ使える。第一あんな平面的な土地の使い方をしないで、もっと立体的な構想による使い方をすれば、まだ工場の入るというか産業の興る余地は多分にあると思います。ですから、ただ単に形の上で人口が一千万人になったから、あるいは五百万人になったからというだけでは、そういう問題は解決しない。だから産業に必要な条件を満たしているかどうか、また行政的あるいは社会的投資によってその要求にこたえ得るかどうか、こういうことを十分考える必要があるのではないか。私はむしろその方を積極的に考えるというのにまだ未定稿の状況でございますから、御批判はいかようにでもしていただきたいと思いますが、そういうことが言い得るのではないかと思います。
  67. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは日本だけではなく、やはり各国とも大都市の研究が行なわれている。最近ものすごく研究が行なわれている。いわば大都市研究ブームが起こっている。たとえば買いもの一つするにも、自動車でどこどこに行くにも、通勤をするにも、あるいは水一つでも、こういうふうにただ工場だけでなしに、個人生活に立ち入って、どちらがプラスになるか、マイナスになるかという研究すら行なわれている。ですから、こういったことが的確に数字が出るわけではありませんが、ものの考え方としては、科学的に調査をする必要があると思う。今藤山企画庁長官並びに建設大臣の人口集中の防止というのは、やはりそういう点じゃないか。これは別の法案で考えるべきだというのですから、若干大臣の考え方とは違うのではないか、こう考えるわけです。しかしこれは論議をしておりましても、産炭地域振興するわけではありませんから、一応この程度にとどめておきますが、やはり政府は、思いつきでなしに、新産業都市建設促進法を出されるならば、その全体的な構想を発表される時期がきているのではないか。単に部分的なものを出して、あるいは後に総合的に描かれるのかもしれませんが、私どもは、やはり総合的に初めから企画して、そうしてそれが法律になって現われてくることが必要ではないか、こういうように考えるわけです。  そこで、まずこの産炭地域振興事業団で大体どのくらいの雇用増を行なう計画なのか、そうして産炭地域振興法は時限立法ですから、一体どういうふうにしようとしているのか、これをお聞かせ願いたいのです。それはイギリスでも炭鉱地帯に対して工場配置法ができてから、ちょうど七百八十八工場が誘致されており、十七万人の人口を収容している。これは例のILOの石炭委員会に公表されたものですが、こういうように非常に集中的に、精力的に行なわれている。ところが今の事業団発足にあたって、御苦労はわかるけれども、どうもこれでは事業団を作ったというだけにすぎない。そうして一体どのくらい新しい工場が考えられるのか、そういう基礎データもない。これは地元の不熱心さもあります。また見通しのつかない点もありますが、一体この程度の予算と法案内容でできるかどうか、大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  68. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 一応事業団法を提案いたしますに際して、事務当局で作った資料がありますので、一通り事務当局から説明させます。
  69. 今井博

    今井(博)政府委員 今後の雇用吸収計画なり企業誘致計画、これは御指摘の通り全体としてはでき上がっておりません。しかし来年度土地造成と融資問題を通じまして、非常に大ざっぱでございますが、従来の鉱害復旧事業等の雇用吸収率等から考えまして、全体で一日当たり延べ二千人から二千五百人程度雇用吸収には役立ち得るのではないか、こう考えております。それから、融資といたしましては、これは金額もわずかでございますが、かりに中小企業あたりの誘致ということになれば、三十程度企業誘致は融資の対象としては考えられるのではないかという考え方でおります。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二千人から二千五百人も、土地造成だけで人を使えますか。
  71. 今井博

    今井(博)政府委員 土地造成ではそれほどに参りません。しかし、融資の関係離職者吸収というものを一つの条件にいたしておりますので、それらを合わせると二千人程度雇用吸収にはなるのではないか、こういう計算をいたしております。これは過去における鉱害復旧事業雇用吸収というふうな例から見まして、土地造成につきましては、一応今の計算としましては一日延べ千百五十人という計算が出ておりますので、その程度雇用吸収は可能だと考えております。
  72. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 今一通り御説明いたしましたが、なかなか御納得がいかないだろうと思います。ことに事業団がスタートするという際でございますから、私は事業団の仕事がうんとあることがいいのか、ない方がいいのか、いろいろそこにも迷いがあります。言いかえますならば、石炭産業自身がみずからの力というか、国の力と合わせて安定的な方向へ進むならば、事業団は大して働かぬでもいいということでございましょう。ところが現実の問題としては、事業団の手を借りて産炭地域振興せざるを得ない状況にあると思います。そういう意味で、私どもも一応工夫しておりますが、それぞれ関係各方面のいろいろの構想も取り入れて、そして独善にならないように、しかも十分効果を上げるようなそういう道を開いていきたい、かように思います。ただ事務当局が申し上げましたのも、全然めくらめっぽうにつかんだ数字ではなくて、一応は審議会等の意向をも打診し、そういうものが考えられるというような意味で作ったものでございます。しかし、さらに今後関係方面の御意向によりましては、私どもの構想もさらに拡大してしかるべきじゃないか、かように思います。
  73. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 衆議院の本会議で、石炭産業危機打開に関する決議案を決議していただいたわけですが、その際に、われわれは石炭特別委員会の審議の経過において、最初われわれが話し合っておりましたのはあまりに長文になるので、従来そういう例を見ないということで、ごく簡略に決議の案文は作る、委員長趣旨説明でそれを補足し、趣旨説明は決議案と同じ内容のものとする、こういう了解のもとで次のように述べてあるわけです。それは「産炭地域振興するために必要な土地及び水資源の確保、産業道路の開発等産業立地条件の整備、雇用増大に資する諸事業の経営及びこれに対する投資その他の助成等の施策実施する産炭地振興事業団を設立すべきである」こういうことを言われておる。そうすると、この中で、率直に言って、必要な土地だけが法律内容になっておる。これはあまりに委員会の決議を軽視されておるのではないかと思うのです。なぜその他の部分ができなかったのか。これは事務当局から何度も聞きましたから、一つ大臣から御答弁願いたい。
  74. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 いろいろやりたい仕事もあるわけでございますが、それぞれの仕事が、この事業団だけの業務に統一することが適当であるのかどうなのか。新たに特に必要なものは何か。先ほどお話がございましたように、たとえば低開発地域の開発、あるいは地方工業都市建設、あるいはまた団地構成であるとか、あるいは工業用水の確保であるとか、あるいは道路の整備であるとか、あるいは住宅の整備であるとか、それぞれの省でそれぞれやっておる事柄がございます。そういうものとあわせて産炭地振興の実をあげる、これが国として望ましい政策だと実は一応考えたわけでございます。従いましてそれぞれの目的で、それぞれの事業計画を各省持っておるわけでございますけれども、総合的見地に立ってこれを考えれば、また産炭地振興に役立つわけでありますし、具体的な相談を受けて進めていくならば、それで事は足りる、こういうことを考え、ただいま申し上げるような事業内容を一応整備いたしたわけであります。しばしばこの委員会等を通じて、社会党や皆様方からのお尋ねが出ております。これはまた将来の問題といたしまして、私どもも十分考えてもいいことではないかと思いますけれども、各省の施策をあわせ、総合的な上に立って産炭地振興を進めるべきだ、かように考えておりますので、最初でもありますから、一応の事業計画事業内容をお示ししたわけであります。これは別に、本会議における決議の趣旨を冒涜しておるものでもなく、むしろ私ども十分尊重し、そして国の行なう施策はやはり総合され、統一的な方向であることが望ましい、かように思っております。十分役立つ、実はかように存じておる次第であります。
  75. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は炭産地振興のために昨年調査費を計上していただきまして、その予算の主として多くの部分でダムの調査というのが行なわれたわけであります。ところがダムを調査しても、事業団がダムをおやりになるかどうかわからない。現在の法律ではできないことになっておる。いよいよ実施に近い状況にあるところもあるわけです。そこで本年は予算がつかないにしても、ダムを調査していただいておるけれども、どこへ持っていったらいいものか、だれがやってくれるものか、まだはっきりしないわけです。ですから産炭地事業団の発足にあたっては、私は全面的とは言いませんけれども、何が必要かと言えば土地と水ですよ。ことに土地は割合に早く建設が完了いたします。ところがダムの方は、着工いたしましてからもすぐに間に合うという状態にはありません。ですから水を先にやるべきだと私は思うわけですね。少なくとも同時にやるべきではないか、調査費も今まで産炭地振興でつけたではないか、だからその程度の中小河川の一部をせきとめて行なうダムは、ぜひ一つ産炭地事業団でやってもらいたい、こう考えるわけですが、これはもう大臣からでないと、局長に答弁を求めてもなかなか困難な問題のようですが、どうでしょうか。
  76. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 なかなか水の問題は所管省との関係で調整ができないで、今回はこの法律を出したわけでございます。ところで私、建設関係といろいろ相談をしておるわけでございますが、調査が完了し、取り上げるということになっても、この産炭地振興という事柄については、建設省当局も十分理解を持ってくれておりますので、やる場所が事業団であろうがなかろうが、十分建設省も好意のある処置をとろうということでは進んできておりますから、ただいまのような点が産炭地振興に支障を来たす、こういう事態が起これば、もちろん私の方も建設省とよく相談をいたしまして、問題の解決をはかっていく、こういう考え方でおります。建設省の政務次官も見えておりますから、なおその点において御理解のある建設省の方針一つ聞いていただければけっこうだと思います。
  77. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それでは建設省の方から……。
  78. 木村守江

    ○木村(守)政府委員 ただいまの多賀谷委員の御質問でありますが、初めから聞かなかった関係上、あるいは当を得ない答弁になるかもしれませんが、御了承願います。  御承知のように、産炭地振興事業団のやる仕事につきましては、この第十九条に示されてある通りでございまして、こういう点から考えますると、通産省並びに建設省のいろいろなる相談の結果、あるいは土地造成、それから幹線道路の取りつけとかあるいは側溝の問題、または排水路の問題というようなものがその中に入っておりまして、ダムの構築というなことはこの中に入っていないのであります。しかしながら、ただいま仰せの通り、ほんとうに産炭地域振興をはかるためには、工業用水は欠くべからざる要素でありまして、そういう点から考えまして、いわゆる工業用水のダムを作り得ないというようなことは片手落ちじゃないか、魂が入っていないんじゃないかというような御意見のようでありまするが、この法律の中では一応取り上げてはありませんけれども、もしもその地区におきましてダムの構築が必要であった場合には、あるいは県の方で調査をいたし、または建設省の地方建設局の方で調査をいたしまして、大きなものに対しましては国直轄工事として、またある程度のものにつきましては県の事業として施行することができるように相なっておりますので、そういうような場合におきましては、これは地方の産炭地域振興のためにできるだけの方法をとっていくことができると考えておる次第であります。
  79. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実はもうすでに必要であると認めまして、昭和三十六年からつきました産炭地域振興費、わずか三千万円ですが、調査費のうちの大部分がダム調査に使われておるのですよ。現実に三十六年度から使われているのですよ。ですから、すでに産炭地のいわば調査費の中からダム建設の調査が行なわれておるのですから、私はこれは大きな河川とかそういうのは別として、小さなダムの問題は、これは当然事業団で統一的にやられたらどうか、こう考えるわけですよ。ですから、今から県が必要であるから県が調査するとか、あるいは建設省が調査するという段階ではなくて、すでに三十六年から調査が行なわれておるのだ、しかもそれは産炭地域振興調査費の中で組まれておるのだ、こういう事情でありますから、これはむしろ事業団の仕事として、その業務としておやりになる方が適当ではないか、こういうことを聞いておるわけです。
  80. 木村守江

    ○木村(守)政府委員 ただいま、ダムの構築は産炭地事業団でこれを施行した方がいいじゃないかというようなお話でありますが、何と申しましても、ダムの構築には特別な技能を要するものでありまして、そういうような点から考えて、この法律を作る場合に、ダムの構築等は含まなかったのだろうと私は考えます。そういう点から考えまして、これは産炭地振興法に基づく調査費によりましてダムの構築の調査をしておるというようなお話でありますが、そういう場合に、その地方に必要があった場合には、その調査に基づきまして、県が国から補助をもらってダムの構築をすることができます。それから、大規模のものでありましたならば、先ほど申しましたように、建設省直轄でやることもできるわけでありまして、その調査は決してこれは水泡に帰するものではないと考えるのであります。ただ、ダムを作る仕事をだれがやるかというような問題であろうと考えますが、その点につきましては、必要に応じまして作ることができると申し上げたいと思います。
  81. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 低開発地域のように、ぜひ開発をしなければならないけれども今現在飯がなくて困っておるという状態ではない地域と、次官、その地域出身ですからよく御存じでしょうけれども、もうきょうの米がないという人々が多くある。ですから、緊急度が非常に違うと私は思うのです。そこで、今論議になっておりますことは、政府としてはむしろ、来年度のダム建設の予算がついていない、ですから予算のついている範囲業務を書いたのだ、ですから、将来にわたって予算がつけば業務内容にしたい、こういう考え方だ。われわれが言っているのは、ことしは予算がつかなくても、当然やる仕事として先に法律に明記した方がいいじゃないか、これが論争になっておるわけですよ。そこで、大臣の方では、将来にわたってこの種の問題は、緊急度の問題からいい、あるいは総合的にその地域を開発する意味からいって。事業団でやるべきである、こういうようにお考えであるかどうか、これを一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  82. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 先ほど申しましたように、産炭地振興は、これは通産省だけでできるものじゃございません。各省の協力を得ることが、まず第一必要だと思います。これは先ほどお答えした通りでございます。そこで、当該具体的のこのダム建設の問題、なるほど三十六年度に調査費を使っております。まだしかし、全部完了したという状況ではないようでございます。三十七年度は、事業団法案を今出しておる程度でございますし、予算はもちろんございません。ございませんが、これは今の調査が進行して結論が出た上で、そのやる場所がない、こういうことで振興計画に支障を来たすということのないように、調査を早目に完了して、そうしてそれから先の施行をどこでやらすか、そういうことを具体的に十分考えることにしたいと思います。そうして、これは事業団がやらなきゃならない、かようには私は思いませんけれども、そういう意味で産炭地振興に役立つ、それにかわるものがそれではあるかどうか、それを十分検討した上でお答えするのが筋だろうと思います。だから、まずその調査が完了し、そしてその施行は、順調に、県で施行する、あるいは国で直営するということがきまれば、おそらくそれで事足りるだろうと思います。ことに事業団で先に事業内容をやり得るようにいたしました場合に、やはり必要な人員をそこで整備しなければならないし、ただいま建設政務次官が指摘しておりますように、幾ら小さいダムと申しましても、ダム建築にはやはり特別な技術が必要でございます。だからそういうことを考えると、これは軽率に事業内容をきめるべきではないだろう。それよりもむしろ各省の協力を求めることが先であり、当該プロジェクトを具体化することが必要ではないか。そういう意味において私どもは皆様方の御要望を十分伺っておりますので、そういう立場に立って善処すべきじゃないか、かように私は思います。
  83. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうもまだ遠いお話のようにおっしゃいますけれども、現実に調査は三十七年度で完了するわけです。三十八年度からは施行しなければならない。と申しますのは、もう調査を二、三年やっておるわけですね。そういうダムはあるわけです。ですから今からゆっくり調査をしようという問題じゃなくて、もう施行にかからなければならぬ問題の地域もある。ですから、どちらの汽車に乗るかはっきりしてやらないと、事業主体としては困るわけですよ。それから当然地元負担が出てくるわけです。その地元負担の場合に、今疲弊しておる市町村へ負担をせよと言われましても、できない。こういう問題もからんできておるわけです。ですから、現状の保護世帯、あるいは失業対策事業に大わらわなところに、ダム建設ということまではちょっと手が回りかねるというのが実情ではないか。そうした場合に一体、これを放置することはできないが、だれがどうしてやってくれるのか、今までのような現在ある制度の補助率、あるいは地元負担の割合ではできないのではないか、かように考えるわけです。
  84. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私の申すのも、非常に先のことだというわけじゃなくて、今の筑豊の水道、工業用水確保のための調査、これが三十七年に完了する、こういう意味で、その処置をいかにするかという、それを関係各省で十分相談してきめましょう、そのように実は申し上げておるのであります。別に誤解はないだろうと思いますが……。いろいろむずかしい問題もあろうかと思いますが、よくお話を伺いましたので、そういう意味で一つ真剣に検討さしていただきたいと思います。
  85. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、調査が完了して、やるべきだという結論が出たら、そこに時間的な空白がなくて施行ができるように、大臣の方で十分責任を持ってやられるわけですか。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 その調査はおそらく通産省の予算でやっておることだと思いますから、そうするとその後をいかにするか、これを来年の予算編成までに片づけるということになるのじゃないか、かように思います。その関係省との連携を十分緊密にして、具体的に処置をとるようにしたいと思います。
  87. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、私は産業振興について、けさ方も質問したわけですけれども石炭の深部開発の問題を口では言われておるけれども、なかなか実行を見ない。現在の石炭合理化方向は、スクラップと、それからいわば日本の経済の後進性を利用しての低賃金政策に尽きておるのじゃないかと思うのです。それから産炭地における離職者対策といいましても、ことしこの程度の予算では、私は直ちに失業者吸収するほどの状態にはならない。そこで、筑豊地域における深部開発の問題を真剣に考えてもらいたい。先ほども労働省に質問をしたわけですが、今一人労働者解雇をして炭鉱離職者としてほうり出すと、緊急就労だけ例にとりましても、大体一日千二百五十円かかる。そうすると、これを三百日にしても三十数万円、年間かかるわけですよ。いろいろな国の援助等を入れますと、大体一人一年間に五十万円、離職者にかかる。そのことを考えますと——ここに具体的にあげますと、たとえば直方地区の三井あるいは住友の鉱区の開発ですね、これらを考えると、大体千五百人くらい収容できるというのです。そうして、それは弱粘結である原料炭である、こういう問題もある。そうすると、割合にその石炭は、政府のいわゆる合理化計画に沿う炭質であるし、そうして需要先もあるし、このコストも今のように高いコストではないんではないか。問題は、私はこの投資利子いかんによる、こういうように思うのです。そこで、利子を現在のままの利子で計画をしますと、私はなかなか困難ではないかと思うのですよ、利子コストがかなり高くなって。そこで、少なくともこの地域の労働者の移動が円滑に行なわれないというならば、一つ深部開発を計画したらどうか。従来の既成概念でなくて、新しい方式によってこれを開発するならば、なるほど五十万トン年産出れば、あるいは六十万トン出れば、五十億円くらいはかかるでしょうけれども、千五百人くらい吸収するためには、一年間に七億円くらいはかかるわけですから、その七億円の緊急就労というのは、必ずしも経済効率がよくないのですから、一つ政府としては、今の炭鉱離職者が最も適応した職場としての深部開発を考えられたらどうか、こう思うわけですが、大臣どういうようにお考えですか。
  88. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 一案として、そういうことももちろん研究の対象に十分なると思います。御承知のことだと思いますが、今までのところでは、大体経済的な深度は今程度のところじゃないかと思います。しかし、もちろんいろいろ技術も改善されますし、あるいはまた別途の処置をとれば、これは必ずしも不可能じゃないかもわからない。そういう点をもう少し総合的に検討する必要があるだろうと思います。だから、ただいままでのところ、事業家にまかしておけば採算がとれないといって閉山するわけです。これはよく実情を調べ、また経営者ともよく相談の上、何か特別方策がとれるかどうか、そこらにはまだ研究の余地があるかもわかりません。だから、そういう意味では一つ検討をさしていただきたいと思いますけれども、ただ問題は、非常な無理のかかる方法でその事業を続けていくことが可能か、ことに深部となりますと、山のことは地下の問題でございますから、なかなか地上のデータだけで決心のつきかねる場合もございます。これはあるとかないとかということがしばしば論議の対象になりますけれども、そういうようなものが十分見当がつき、そうして採算に乗るということなら、それはあながち捨てるべき筋のものじゃない、かように思います。ただそういう場合に、今具体的にはっきりは申されませんが、特別な長期低利資金というものが確保できるかどうか、そういうものをつぎ込んだらこれが可能だとか、こういうところの採算性を見ることが、技術的な問題になりますけれども……。十分誠意のある検討をすることにいたしたいと思います。
  89. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実はボーリングはかなりしてあるわけです。両炭鉱とも自分の鉱区についてはボーリングしている。ただ考えなければならぬ問題は、今から新鉱開発をして、新しいところに開発するというのは、もう金利の面からできませんよ。私は率直に言うと、金利の面からこれはできないんだ。今の炭鉱開発なんてとってもできっこない。これは私は合理化法のときに基本的な問題として質問をしたいと思いますけれども、できないですよ。どんな優秀な炭鉱でも今のような金利、しかも懐妊期間が長いわけでしょう。そうしてかなり開発にかかるわけですから、今のような金利を払っておって炭鉱を開発せいという方が無理ですよ。ですから私はほんとうにビルドをやるなら、やるような腰がまえでなければならぬと思う。そこで私は基本的な問題は別として、新しい方式として日々の採算なんというのは十分とれる。問題は金利をどう見るかによって、これが採算に合ったり合わなかったりするわけです。先般も四十四万ボルトの超高圧線の問題が出たでしょう。これも金利を特別に安く見るといういろいろな方式がなされたわけです。しかもあれは三百五十億円もかかっての超高圧線の問題が出た。これは大体五十億円くらいになるんです。ですからこれを特別な方式によって、政府においてある程度のめんどうを見てやるというならば、今の筑豊炭田に明るい曙光を見出すのではないか。政府がそれだけ援助をしたということは、炭鉱労働者に与える心理的影響も、他の労働者に与える心理的影響も非常に大きいですよ。ですから私はこれを一つ真剣に考えられたらどうか、かように提案をいたしたいと思う。ですから従来のベースでものを考えればこれはできない。しかし、特別な方式で考えるならば、これはできる。日々の採算が合わないというものではありませんし、石炭の炭質自体も一般炭と違って、これを売れないという性格のものでもないですから、一つそういう考慮を願いたいと思うのです。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 一つよく研究することにいたします。
  91. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 次に、今の問題とちょっと離れますけれども、午前中に質問をいたしましたけれども、実は中小商店街が倒産とかあるいは倒産前の状態にあるわけです。これは御存じのように、購買力がぐっと減っておりますから、これについて何らか対策はないか。そこで産炭地振興をしっかり行なえば必然的に購買力はついてくるわけですけれども、それがかなり時間がかかるだろうし、そうしてたとい政府相当努力をして産炭地振興をやりましても、私は炭鉱がかなり盛んなときのような購買力に維持できないと思う。人口が現実に減っているんですから……。ですからこれらの商店街に対してどういう援助をしてやるか。たとえば炭鉱離職者のように移動をしたいという商店街が非常に多いわけです。どんどんどんどん店を閉鎖しておる。閉鎖をしておる人はまだいいとして、毎日赤字になっておるのに、動くに動かれぬという実情にあるわけです。そうして土地の値段も下がり、家賃の価値も下がっていく。ですから売ってみても大した金にならぬ、こういうのが現状ですね。ですから商店街に対する援助というものも、炭鉱離職者と一緒に考えてやる必要があるんではないか、こう考えますが、大臣どういうようにお考えですか。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 このお話はもうしばしば私どもも聞き、これは大へんな社会問題だと実は考え、今日まで特別融資として国民金融公庫あたりの融資がどれだけ使えるかということも検討して参ったものでございます。しかし、こういう疲弊する産炭地の市町村、自治体の予算もまた大へんなことでございますが、そこに住んでいる市民、ことに中小企業の方々もこれは大へんなことだと思います。そういう場合に、自治体なり県あるいは市町村でもいろいろな計画がおありだろうと思います。そういう意味のものを計画に沿って私どもが金融的にどういうように援助できるか、具体的問題としてはそういう点を考えるべきじゃないか、ただいままでのところは、御承知のように、離職者に対して、あるいはまたその土地を去り、他へ再就職するというような事柄については、比較的めんどうが見られるといいますか、一応その考慮に入っておりますが、いわゆる自由職業としてやっておられる方々に対する処置というものは、ただいままでのところございません。この自由職業としてやられる者に対して、さらに政府なりが積極的な何か援助をしなければならないかどうか、これは程度の問題で非常にむずかしさがあるのじゃないかと思います。私ども、ひとしく中小企業者として全国一律に実は見ていくわけでありまして、産炭地であろうが、あるいは疲弊の都市であろうが、あるいは台風で損害をこうむろうが、あるいはまた大企業の中にある中小企業であろうが、これは一般的に見てやらざるを得ない。ただ、今御指摘になりますように、普通の状態における融資ということは、これはきわめて少額の場合なら貸し出しが楽でございますが、土地を去られるという場合に、実際問題としてどういう金融措置ができるか。これは私どももう少し首をひねらないと、普通の場合にはあるけれども、こういう場合には身元引受人がなかったり、あるいはおかしなことになると、なかなか少額の融資すら今の規定からできないだろう。だから特別な市町村等の裏書きによって何らかの方法等が考えられる、そういう意味のことをもう少し工夫すべきじゃないか、かように思います。とにかく地方の自由職業でやっておる方は非常に困っておられるだろう、順次その土地を去られるというような傾向があるだろうと思いますが、そういう者についても、将来の問題としてよく具体的な問題についての相談をする以外に方法はないだろう、かように思います。
  93. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 中小企業丘にお尋ねしますが、災害の場合に、中小企業に対して最初は行政処置で——諫早その他のときは行政処置で金利のめんどうを見られたと思いますが、現行はどうなっておるか、お聞かせ願いたい。
  94. 影山衛司

    ○影山説明員 災害対策等の場合の金融措置の問題につきましては、商工中金につきましては民間資金も入っておりますので、これにつきましては法律的な措置あるいは予算的な措置が必要でございます。
  95. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法律的には立法したことがあるかどうか。
  96. 影山衛司

    ○影山説明員 予算処置で今まで利子補給の補助金を出しております。
  97. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 金利の九分を六分五厘にした……。
  98. 影山衛司

    ○影山説明員 そうであります。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは私はその地域における一つの災害だと思う。市町村の話をされますけれども産炭地に依然として営業しようという店舗なら、大臣の言われるのはわかるわけです。ところが市町村から去るわけです。というのは、共倒れになるわけですよ。購買力がないのに商店がおっても——ものすごい人口の激変でしょう。四万人くらいいたのが一万五千人くらいになれば、当然購買力はがた落ちですよ。ですからこれは移動しなければならない。移動については、集団移動ということも考えられる。逆に業者が集団移動ということも望んでおる。あるいは個々ばらばらのものも考えられますけれども、何らかの方策をもってやらないと大へんな事態が起こる、こういうふうに考えるわけですよ。ですから問題はやはり金利、それから新しい店舗の設備資金の問題だと思うのです。炭鉱離職者のように雇用奨励金というようにはいきませんでしょうけれども、そういう問題が主ではないかと思うのです。ですから、これは特別な配慮をしていただいて、政府の方で御検討願いたい、このことをお願いして、一応質問を終わります。
  100. 有田喜一

    有田委員長 伊藤君。
  101. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 産炭地振興事業団法につきましては、明日採決をされるということになっておるようでありますが、それにつきましては、最後に二、三点伺いたいと思っておりますけれども、大臣と、建設省からおいでになっておる方も時間的に忙しいようでありますから、通産大臣に対してはその二、三点を明日質問することにいたします。ちょうど建設省からお見えになっておられますから、先ほど多賀谷委員から質問をいたしました件につきまして、ちょっとはっきり指摘しておきたいと思います。  北九州の方は、御存じのように工業用水関係は北九州水道組合というのがありまして、北九州の工業用水のそれぞれの大きな計画はこれが主体になってやっておるわけでございます。従いまして、先ほど多賀谷委員が質問いたしましたダム——ダムというと大へん大きなようですが、実は工業用水ダムというのは、今申し上げるように北九州水道組合がやっておりますが、私が聞こうとするのは、ダムというよりもむしろその地区における貯水池、ため池ということに考えられたらいいのじゃないかと思います。そういうものでございます。従いまして、そういうものをこの産炭地振興事業団で、地方がそれぞれの振興事業に応じて、あるいは工場なりあるいはその他やろうとする場合に、水が必要である。ところが炭鉱地区においては、すでに炭鉱を掘り尽くしておりますから地下水もない。それからその付近における水も、ほとんどもう泥水以外にないというところから、何か新興事業としてやろうとしても水がないわけです。そこで今のような貯水池なりため池なりを作らなければならぬという、きわめて切実な問題があるわけです。でありますから、こういうものを事業団としてやらなければならぬということは当然起こってくるのです。その場合に、これは工業用水だから通産省、いや、ダムだから建設省、そういうように役所のなわ張り争いで何のかんのと言われておったのでは実はできないのです。  そこで建設省に伺いたいのは、そういう性質のものでありますから、事業団の方でこれを必要なりとしてやる場合においては、建設省が取り上げるものではない、これは通産省事業団の方でやってよろしいということで、なわ張り干渉をされないで、それを当然事業団の方にやらすというようなことについて、建設省は了解できますか。それをなわ張り的に何のかんのと言われると問題が起こってきて、今日でもすでに事業団法の問題についてもとかくの争いになっておることは私も知っておるのであるが、その程度のもであれば建設省は横やりを入れないで事業団にやらすということについて了解できるか、この点を一つ聞きたい。
  102. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 建設省がお答えいたす前に私から一つ……。水の問題は実は簡単な問題でございません。御承知のように、河内ではかつてため池がはんらんをいたしまして、大へんな被害を生じたことがございます。事柄は農業用水、灌漑用水、そういう意味のため池も当時農林省がいろいろやっておったと思います。ところが、九州は台風の被害の相当多い地方でもございます。従ってどういう規模のものを作るか、やはりよく考えなければいけないと思います。先ほど多賀谷委員にお答えいたしましたように、まず調査が具体的に出て参りまして、そしてそれをいかにするかを関係省でよく相談すること、これが望ましいことではないか。容量も少ないし、また設備も簡単にできるんだということでは、水でありますだけに、ちょっと私は決しかねる。幸いにして三十七年度前半にでも完了する、あるいは三十七年度中には完了する、こういうことになると、大体予算編成期にいかにしたらいいか結論は出るだろうと思いますから、三十八年の予算編成のころまでに具体的な処置をきめる、こういうようにさせていただけば事足りやしないか。そうすることが各省の協力を得るゆえんでもある、かように実は思いますので、建設省は建設省でお考えがおありだと思いますけれども、私の感じを率直に申し上げます。
  103. 木村守江

    ○木村(守)政府委員 ただいまの御質問は、何か建設省と通産省がなわ張り争いをして事業の施行を遅延させておるかのような御質問でありますが、そういうことはないのであります。ただ問題は、ダムを作る場合には、あるいは工業用水、いわゆる利水の点から考えなければいけない、あるいは一方、治水の洪水調節の点からも考慮しなければいけない、それから灌漑用水等の問題もあります。それから飲料用水等の問題もありまして、こういうような治水、利水の点から考慮しなければならない関係上、通産省とも協議をし、また農林省、厚生省等とも協議をして施行するように相なっておるのでありまして、決してなわ張り争いをして建設省でこれを遅延させたということはありませんので、その点御了承願いたいと思います。  それから、先ほど来の多賀谷委員からの御質問でありますが、おそらく遠賀川の支流の問題であろうと考えるのであります。遠賀川の支流の問題でありますが、昨年三十六年度から調査をしておりまして、もう調査は済むのだ、だから早く事業を開始するような方途を講ずべきじゃないか。しかもこの事業を施行するにあたっては、疲弊する産炭地の市町村に負担をかけるようなことがあっては事業ができないから、負担をかけないような方法は何かないのかという御質問の趣旨であろうかと存じます。この問題でありますが、御承知のように、ダムを作ることに相なりますと、実は遠賀川の上流にダムを作りましても、ダムを作ることによりまして下流に流れてくる水の量も違います。それから水利権の問題もあります。それから洪水の問題等もありまして、実際におきましては、今までの統計上から申し上げますと、直轄のダムを実施するまでは大体六、七年、このぐらいの年数かかって毎年の洪水の量とか、あるいはその水量の計算等をいたして、これを実施しておるような状態でありまして、県の事業にいたしましても大体三年ぐらいはかかっておるのが普通でございます。これは御承知のように先ほど申しましたような利水の問題あるいは洪水の問題、あるいは水没するその土地の補償の問題、いろいろ水の問題にはありますので、なかなかそう一年ぐらいではできないということが実際の状態であります。しかしながら、多賀谷委員がただいま言われました明年度、三十七年度までには調査が終わるのだというようなことでありましたならば、これはほんとうに産炭地の実際の状態から考えまして、すみやかに産炭地振興の一助として、工業用水のようなものを作って参らなければならないと考えますので、そういうときにおきましては、これはほんとうに市町村に負担をかけないような方法で、工業用水がとれるようなダムの構築等も将来考えて参らなければならないのじゃないかというような考えを持っておる次第でありますので、実際問題につきましては、なお多賀谷委員の御意見等をしんしゃくいたしまして、考慮して、地方の振興のために資するようにいたして参りたいと考える次第であります。
  104. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今、佐藤大臣の意見を伺い、建設省政務次官の意見を伺っておりますと、問題をえらい拡大解釈して、あれだこれだ、あれだこれだと言って、非常にむずかしいように言われるのですが、私そういうむずかしいことを聞いているのじゃないのです。今建設省の方でおっしゃる遠賀川の下流の問題は、これは北九州水道組合がすでにその計画を立て、すでに水利権の問題等も問題がないものですから、立てた。これは通産省の方と話し合いして、その起債の問題についてのみ話が進行しておることであって、何もそう拡大解釈されて、ああだこうだと言われる筋はない。それからさらに多賀谷委員なり私が今言っておるのは、産炭地振興に対する、産炭地区が貯水池というか、水だめというか、そういうようなことを言っているので、何億もかかる問題で言っているのじゃないのです。きわめて少額な問題で、これはすでに石炭局長なり関係政府委員の方では御存じなんです。具体的に例をあげてもよろしいのですが、あげませんが、そういうことで、きわめて小さな問題なんです。小さな問題で、それほど何も大きく、いや何だかんだという問題でないのです。これは事業団がその必要に迫られて、きわめて小さな事業としてやれる程度のものなんです。だからそういうものをやる場合に、建設省が今のような拡大解釈をして何のかんのと言わないで、そして佐藤大臣のところで、あるいは石炭局長のところで、一応事業団の方に計画を立てさしてやられれば、きわめて容易に解決のできる問題だから、そういう問題をあまり拡大解釈して、なわ張り争いをしないで、事業団にやらすということで、能率を上げるようにしてもらいたいということを私は言っている。そういう程度のことです。だから、そう拡大解釈して煙に巻かぬでいいのですから、考えて下さい。
  105. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 伊藤さんのお話、よく伺っておきます。問題は、おそらく十数億くらいはかかるだろうと思いますので、今の事業団の予算全部をつぎ込んでも、そう簡単にはいかない。今の各省の関係は、もちろん私も官僚の出身ですからよく心得ております。今の調査が終了いたして、三十八年度予算編成前には取り扱い方も大体きまるだろうと思いますので、そういう際に結論を出して、そして産炭地域に御迷惑のかからないような方法を考え、結局どこかでやらせばいいのだと思いますので、そういう方法をよく相談してきめたい、かように一つ御了承いただきたいと思います。
  106. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あとは明日にします。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっと建設次官に問題点をはっきりしておきたいと思うのです。実は水利権の問題も、あるいは地元の補償の問題も終わっているのです。金はやっていないのですが、話し合いはついているのです。反対はないわけです。そして用水の使用についても、かなり関係町村で話し合っている。そして具体的に進んでいるわけです。あとはどの事業体でやってもらえるかということが問題になっているわけです。そういうことですから、一般的な話のようにいろいろ支障があるというような状態ではありません。そして事業体さえはっきりして予算さえつけば早くできるわけです。こういうことですから、ぜひ一つ促進を願いたい、こう思うわけです。
  108. 木村守江

    ○木村(守)政府委員 ただいまの御質問でありますが、水利権の問題に解決をしておる、それから土地の補償問題も解決しておる、しかも調査も三十七年で済むというような場合でありまして、しかもその土地でもって工業用水あるいは灌漑用水等の必要があるということでありましたならば、これは実際問題としてとりかかることができると考えます。ぜひともそういうふうにいたしまして、地方の開発のために協力いたしたいというような考え方を持っております。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 大蔵省は見えておりますか。——実は産炭地域振興事業団法案を最終的に審議しているわけですが、問題は予算が五億円程度では、これは全く微々たるものだ、こういうように考えるわけです。問題は非常に緊急性を要するわけです。低開発地域ですと、それは必要は必要だけれども、現状より悪くなるという状態はない。ところが産炭地の場合は刻々悪くなっていく。それをどの程度にとどめるかという問題です。ですから、きわめて企業としては急ぐ。だから、むしろ初年度においてかなりの予算を地元民もわれわも期待をしておったわけですが、一体五億円程度で何ができるか。土地造成と言いましても、それは土地はあるのですよ。ですから山を切り開くような考え方じゃないのですね。すでに今産炭地で最も疲弊している地区は平坦地なんです。ですから土地造成といっても、比較的技術としては容易にできるわけです。問題はやはり水がないということ。ところが、水の方は土地よりもずっと時間がかかるわけです。だから、一体五億円程度の予算をつけられて、何を考えられておるのか。これは大蔵省としてはどういうお考えであるのか、お聞かせ願いたい。
  110. 田代一正

    ○田代説明員 前もってお答えしておきますが、産炭地域振興事業団に対する一般会計の出資金は、お説の通り五億円であります。そのほかに、資金運用部から今のところは五億という融資をするということになっておりますので、従いまして全体の事業といたしましては十億円ということでございます。さっきは五億円と申されましたが、十億円くらいで何ができるかというお話かと思いますが、産炭地域振興必要性その他につきましては、私どもも三年がかりでお話を聞いておりますし、十分知っているつもりでございますが、何分にも産炭地域振興法に基づきます基本計画とか実施計画というものが、また十分に熟さないという段階でもございまして、それにまた事業を始めるという初年度でもございます。そういったところを勘案いたしまして、この程度ということで、実は通産省とお話ししましてきめました次第でございます。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 計画が出れば増額しますか。今問題になっておるのは、土地造成あるいはダムの問題のほかに、たとえば貸付金としても、実際今の炭鉱がそれに関連する事業をやろうとする。具体的に申しますと、炭鉱にはみな機械部門を持っておるわけです。修理工場その他の機械部門を持っておる。鋳物等もみな持っている。ですから日立製作所が久原鉱業の一工作所であったと同じように、みな炭鉱が機械部門を持っている。芽があるわけです。ですから、閉山をしましても、今日戦略産業と言われる機械といいますと、これは御存じのように今から政府としては積極的に応援をしようというわけです。今のうちに、工員が全部分散しないうちに次の計画に移るならば、かなり雇用吸収ができるのではないか。ことに機械産業というのは、雇用吸収度が非常に高いわけですから、水が比較的少ない、こういう港でない地域では、やはり機械産業というものは、非常に立地条件が悪いといいながら、恵まれた方です。ですからその場合に、私は企業家としてそういう資金の需要を求めるならば、今後政府としてはさらに預金部資金その他を増すかどうか、これはどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  112. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまのお話では、たとえば産炭地域につきましては、多くの場合そうだと思うのですが、特に水の便がない。従いまして工場の企業用地として、精密工業とか機械工業とか、水を使わぬでも済むような産業も非常にあると思うのであります。それからまた、今の段階で手を打つと非常に職員の分散その他がないから合理的ではないか、こういう御意見ですが、それにつきましては、なるほど今度産炭地域振興事業団へ融資をやります。しかしながらその融資といいましても、全部ではないのでございまして、別に国の制度といたしましては、開発銀行に地方開発別ワクがございます。これは昨年は昭和三十六年度で大体百七十億という額ですから、新年度には産炭地域振興をかねまして、約二百億円ということに増大いたしております。その金もそういうふうに使えるわけです。そういうふうに彼此勘案いたますと、決して不十分ではいとないうふうに私は考えております。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭合理化の方の開発銀行の資金を、ほかの雇用吸収するための機械産業の拡大に使うと、これはあなたの方は認めないでしょう。これは幾ら金額を言われても、私が言っておるのはそういうことではないのですよ。特に閉山をしつつある、あるいは閉山計画されておるその工場が、もう炭鉱としては必要はない。しかしながらこれを機械産業にして伸ばすためには非常に必要であるという部面が出てきておる。これを今問題になっておる近代化資金とか、開発銀行のワクから持っていこうとするならば、これは持っていけない。ですからこの新しい雇用吸収のための機械産業その他の建設に一体どのくらい予定されておるのか、これをまずお聞かせ願いたい。
  114. 田代一正

    ○田代説明員 ただいま私が申しましたことを若干多賀谷先生は誤解していらっしゃると思うのですが、開発銀行の金と申しましてもいろいろございまして、石炭の八十億というのは合理化資金でございます。それ以外に地方開発のワクというものが別にございます。これは地方開発のために特別に開発銀行が融資をするというわけでございます。そのワクの中で、ワクの運用によりまして産炭地域振興のために相当使えるのではないか、こういうことを私は申し上げたわけです。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、地方開発のワクは幾らあるのですか。大体筑豊あるいはその他の産炭地域にはどのくらい予定しておるのですか。
  116. 田代一正

    ○田代説明員 これは昭和三十六年度におきましては総額で百七十億円でございます。で、新年度には今のところ二百億の総ワクです。実行につきましては、いずれそのうち地区別につきまして開発銀行の方できめるということに相なろうかと思っております。
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三十六年度は一体産炭地域振興に幾ら使われますか。
  118. 田代一正

    ○田代説明員 ちょっと私データを持って来ておりませんので、的確に幾らということは申し上げられません。
  119. 今井博

    今井(博)政府委員 産炭地振興という趣旨で出したわけではございませんが、結果として産炭地振興になっておるという融資は、開発銀行は相当やった実績がございまして、ただ、金額は今ちょっと覚えておりませんが、相当なデータを開発銀行からいただいております。
  120. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それで、具体的に何ですか、産炭地域振興になったというのは……。
  121. 今井博

    今井(博)政府委員 いや、そういうものではございません。一切のいろんな、たとえば機械工業なり、そういった産炭地における企業に対する融資でございます。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一体どういう個所にやられたのか、われわれ寡聞にしてあまり聞かないのですがね。またそういう工場も知らないですよ。
  123. 今井博

    今井(博)政府委員 私現在手元に持っておりませんが、役所には開発銀行からいただいたものがございますので、差し上げてもけっこうでございます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これはやはり出資金それから預金部資金、開発銀行の資金というのは総合的に考えらるべき性格でしょう。ですから地方開発という大きなワクだけ二百億といわれましても、一体そのうちで大体産炭地はどのくらい予定されたか、三十六年度はどのくらいである、これくらいわかっておかなければ私は困ると思うのですよ。これはわかりませんか。
  125. 今井博

    今井(博)政府委員 金額につきましては、むしろ今後それぞれの地域別にワクをきめるわけですから、現在ある総ワク以外には何もきまっておりません。それから実績は、産炭地といっても相当広い意味での産炭地における企業に対する融資、こういうことで実績が出ておるわけでありまして、これがいわゆる産炭地振興法で議論されておるような方向で、それがはたしてそういう意味で実績が上がっているかどうかということは、これはよく調べてみないとわからぬのであります。だから、今度は産炭地振興ということも兼ねて増ワクされておるわけですから、これの融資のやり方については、開発銀行ともわれわれの方と今これを打ち合わせをしておるわけです。従って、これからこういう法律その他事業団で考えておるような産炭地振興という線に沿って、できるだけ実績が上がるような方向で融資をしてもらいたいということは、特に詰めてこれから相談するつもりでございます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では明日までに一つデータを出してもらいたいと思います。  それから自治省にお尋ねしたいんですが、たとえば今ダムの建設の話が出ましたが、これは地方自治体にめんどうをかけない方法でやると大臣がおっしゃいましたから、私も安心しているのですが、従来のような負担率でいきますと、これは地方自治体はとても負担し切れない、こういうように考える。そこで自治体としては、すでにダム等の話が出ているわけですから、一体どういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  127. 茨木広

    ○茨木説明員 ダムの問題でございますが、この場合は工業用水が主になるのであろうと思いますが、そういうことでありますれば、工業用水の方の、主として国庫補助があります場合と起債だけの場合とございますが、一応それで全額お世話されるということになります。しかしそれに利水の問題がからみますと、そのアロケーションがあるわけであります。利水の問題が入りますと、事業の主体といたしましては、やはり県等がおやりになるのが適当であろうというふうに考えております。特に上水道、工業用水ということになりますと、地域を相当広範に考えまして事業をやらなければならぬということになるだろう。そういたしますと、個々の市町村というよりは、県あるいは先ほど御意見がありましたような水道組合というようなものが主体になるべきではないかというふうに思います。そういたしますと、私の方の一般指導方針といたしましては、国の直轄事業なりあるいは大規模なものについては、なるべく市町村に負担を落とさないというようにいたしておりますが、個々の実際問題といたしましては、治水ダムにつきましても、県から市町村に負担を落とすという場合がございます。実際問題としてはそういう問題があるといたしますれば、個々の市町村は、今御意見のようなことになっておりますから、従ってそれについては別途当該団体の方に財源を考えていくというようなことをやらないと、うまくいかないという問題が出るのではないかというふうに考えております。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 県がやる場合には、これは地元負担はありませんか。
  129. 茨木広

    ○茨木説明員 県がやります場合には、指導方針といたしましては、できるだけ地元負担をそういうものについてはなくするようにということで、河川の改修とかそういう問題についてはやっているわけであります。しかし実際問題としましては、従来の慣例でありますと、先ほど申し上げましたように市、町村の方に負担をかけておる場合がございます。そういう場合については、個別的に当該市町村の負担に落とします額というものを検討いたしまして、当該市町村の方に別途財源を世話をするということを考えていかなければならぬだろうというように考えております。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、当該市町村の負担分は起債で全額見ているらしいですね。
  131. 茨木広

    ○茨木説明員 産炭地振興地域の市町村、ことに炭鉱不況のために財政が困難になっているという市町村につきましては、起債または特別交付税等で見なければいかぬような事態になると思います。今でも離職者対策等の問題については起債の方で七割、その残りの三割につきましては、その八割程度のものを特別交付税ということで今年も見たわけでございます。そういう炭鉱離職者対策事業と同じように見ていかなければならぬ事態が出ているのではないか。ですからその企業内容事業内容、負担の内容、こういうようなものをそれぞれ検討の上きめざるを得ないように考えます。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ダムの場合でも、普通の、ペイするような状態ではない、工業用水を安く確保できるような状態ではないのでありますから、一般に地方自治体において負担を実質的になくするというような、そうして県でもやはり従来の観念によって地元負担ということが起これば、離職者と同じように地方債並びに交付税で見る、こういうように理解していいわけですね。
  133. 茨木広

    ○茨木説明員 今お考えになっておりますダムがどのダムであるか、私にも実ははっきりいたしませんのですが、利用いたします企業の種類、それから関係市町村等の状況によって、現に今疲弊いたしております御意見のような町村に負担がかかりますような場合については、十分やはりこちらの方で、県等も見るようにお世話しなければならぬだろうと思っております。
  134. 有田喜一

    有田委員長 次会は、明二十三日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時八分散会