運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-02-20 第40回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十日(火曜日)    午後三時六分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 齋藤 憲三君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 中村 重光君       倉成  正君    藏内 修治君       中村 幸八君    南  好雄君       井手 以誠君    滝井 義高君       渡辺 惣蔵君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君  委員外出席者         通商産業技官         (大臣官房審議         官)      久良知章悟君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      井上  亮君     ————————————— 二月十三日  産炭地振興に関する請願木村守江紹介)(  第九六四号)  石炭産業危機打開に関する請願外一件(島本  虎三紹介)(第一〇〇四号)  石炭政策転換に関する請願岡田春夫君紹  介)(第一一九一号)  同外三十九件(島本虎三紹介)(第一一九二  号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一一九三号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一一九四号)  同(岡田利春紹介)(第一二二四号)  同外四十九件(島本虎三紹介)(第一二二五  号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一二二六号)  同外七件(坂本泰良紹介)(第一二六三号)  同外六十九件(島本虎三紹介)(第一二六四  号)  同外八件(芳賀貢紹介)(第一二六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)  産炭地域振興事業団法案内閣提出第七七号)      ————◇—————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興事業団法案を議題とし、質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に関連をして二、三の基本的な点について御質問したいと思いますが、それは三十八年度までに五千五百万トンの出炭を確保して、同時にトン当たり単価千二百円を引き下げるというこの政策というものは、物価値上がり、あるいは賃金値上がり運賃値上がり——運賃は今度のこの合理化法で保証されておるようでございますけれども、そういう関係で必ずしもその所信を確実に貫くことができない情勢が出ておるようでございます。しかも現在出炭状況を見てみますと、一月のベースで見ますと、昭和三十七年度においては優に六、七千万トンをこえる出炭が確保できるというような情勢にも一方あるわけです。とういう情勢の中で政府は依然として、昭和三十八年度に五千五百万トン、千二百円引き下げの今までの石炭鉱業合理化計画というものを貫いていくのか、それとも客観情勢の変化に対応をして新しい合理化計画でも立てる意思があるのかどうか、そこらあたり政府の基本的な考え方を、一つこの際明らかにしておいていただきたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 五千五百万トン、千二百円下げ、これは一応の、私どもの第一段目標数字でございます。ただいま五千五百万トンより以上ことしなど出るのじゃないかというようなお見通しもございますが、いわゆる雑炭等を入れてのトン数ということでなしに、今までの大体七割程度確保できる、その炭の質等を見ましての五千五百万トン、ということを考えますと、まだその数字までには上がっていないように実は考えております。従いまして、その五千五百万トンというものを安定供給できるような態勢は、ぜひともとりたいと思うのであります。同時にまた、千二百円下げ——いろいろ予想しない事態が起これば、もちろん千二百円下げというものが不可能になって参ります。しかし、ある程度賃金の引き上げは予想を立てておりますし、また、物価の正常な推移の状況のもとにおいては千二百円下げは可能だろう、こういうことでその目標も今なお堅持いたしておるわけでございます。ただ時期的の問題から見まして、四月に炭価を決定すること、ここらにはやや無理があるやにも見受けますので、実施時期などについてはよく関係の向きと相談するつもりでございますが、まず、第一の目標の千二百円下げの五千五百万トンを達成することが第一にやるべきことだ、かように実は考えております。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府方針としては三十八年度までの、五千五百万トン態勢の確立と千二百円の引き下げ基本方針というものは変わっていない、こう確認をして差しつかえございませんか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 さようでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、最近、石炭鉱業合理化審議会基本部会ですか、何かああいうところで、昭和三十七年から四十二年までの六カ年の石炭鉱業合理化計画を立てて、そして石油等の値下がりが非常に早いので、千二百円ではだめだ、やはりこれは千六百円か千七、八百円ぐらいの引き下げをやらないと、とても石炭産業というものは重油等液体燃料に対抗していくことができないという、そういう意見新聞等にちらほらと載っておるようでありますが、これは政府は全く関知せざるところであって、政府としては三十八年度までのこの目標というものは金科玉条のものである、こういうことになるんですか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん石油の値段の変遷というものは、これはいろいろ本筋と申しますよりも、需給の関係等で最近は特に安くなっておるようなこともございます。この特殊な原因に基づいての価格、これに石炭をマッチさせていく、これは大へん困難なことでございます。私ども、まず第一段が達成していて、さらにその産業自体合理化なり、あるいは内容の検討ができる、こういうような状態でございますれば、業界においてもさらに御努力願いたいと思いますが、ただいまの段階におきましては、国内物価あるいは賃金との関係等から見まして、千二百円下げることもなかなか容易ではない、そういう実情である。一方石油は、ただいま申し上げるように、特殊な理由からこれが非常に安くなっている。これと無理やりに均衡をとるということは、これは私本来無理だと思います。しかし、御指摘になりましたような意見が一部にあることも事実でございます。しかし、政府自身がただいま基本的な考え方を修正しているというものはございません。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一応五千五百万トン、千二百円態勢というものを政府は貫くことを確認していただきましたので、次の質問に入ります。  実は、先日もちょっとここで質問をしたのですが、現在、たとえばわれわれの田川炭田状態を見てみましても、出炭トン数というものは二百二、三十万トンが依然として出てきているわけです。これは今から数年前と同じ形です。しかし、炭鉱の数は非常に急激に減ってきているわけです。炭鉱の数が減って、そして出炭態勢が同じだということは、一人当たり出炭能率というものが非常に上がってきていることを意味するわけです。かつては十三トンかそこら出しておったものが今二十五、六トンから三十トン出るから、労働力は非常に減っておる、山の数も減っておるけれども出炭量は大きくなっている、こういうことが言えるわけです。この場合に特に注意をしなければならないのは、出炭量が同じであるということはどういうことを意味するかというと、相当多くの労働者がそこで首を切られてしまっている、こういうことです。それじゃその首を切られた労働者が、他の能率の上がる山に全部雇用されておるかというと、そうではなくて、その能率の上がっている山の労働者も急激に少なくなってきている、こういう形が起こってきているわけですね。そうしますと、今後政府近代化資金をつぎ込んでいく場合にどういうことになるかというと、非常に特殊の、能率のいい炭鉱にしか金はいかないことになるわけです。これは当然のことだと思う。資本主義原則、弱肉強食の原則は、自由競争というそういう形になってくるわけですね。そこで、そういう形になっておりますから、五千五百万トン態勢を確立していこうとせられるならば、この際雇用労働者もある程度やはりお互いに、人生計画というものを立てなければいけないわけです。今自分が一生懸命に働いておる山の運命というものは、一体どの程度だろうかということを考えるのが人情です。それは子供も大きくなりますし、学校にもやらなければならぬ、あるいは、自分もやがて定年が近いから、家でも建てて、子供をまた自分あとに入れようか、こういうお互い人生計画というものがあるわけです。ところが山の運命が一体どの程度あるかというおよその見通しさえわからないということくらい不幸なことはないわけです。そこで、出炭態勢は同じだけれども、どんどん山がつぶれていくという事態の中で、これは自治体も望んでおるわけですし、産炭地振興事業団にも関連してくるわけですが、今自治体なり労働者の諸君が要望するのは、一体この自分の働いておる山はどの程度まで五千五百万トン・ベース、千二百円引き下げについていけるでしょうか、この質問なんです。自治体もまた、この山はどの程度ありましょうかという要求ですね。これは住民とそれから労働者自治体炭鉱地帯の者すべてが今それを知りたがっておるわけです。これを明らかにしなければいかぬ時代がきていると思う。ところがこれを明らかにすると、資本主義の世の中で、大企業運命というものはもらあと一年じゃ、こう言われると——きのうわれわれも議論したのですが、お前は胃ガンだと言われたりすれば大へんなことと同じです。  われわれの学生の時代に、こういう話がありました。これは余談だけれども、つながりますから……。実は、非常に修養をした禅宗のお坊さんがおったのです。そして若い大学を出たての医者が、そのお坊さんの担当になっておった。そのお坊さんいわく、先生、わしはどんな病名をつけられようと絶対に気落ちすることがないと言って、若い医者を弁舌さわやかにごまかしてしまった。教授からは絶対にお坊さん病名を言うことはまかりならぬと言われておったけれども、その若い卒業したての医師がお坊さんに向かってこっそりと、実はあなたは胃ガンだと言ったら、翌日からこのお坊さん飯が食えなくなって、一年くらい寿命があるだろうと言われておったのが、二カ月くらいで死んでしまった、こういう話があります。それと同じように、お前の山は一年じゃと言われると、なかなか金の貸し手もない、品物の入れ手もないと思うのです。しかし、そうかといって、言わなければ労働者は大へんです。自治体も大へんです。そこでこれはやはり政府が、半年くらい前に、この山はもうだめです、だめだから買い上げます、銀行その他へは、金を貸す場合には、この山の出炭というものは月に一万トン、六カ月で六万トンしか出ませんよ、との範囲でおやりなさい、こういう山の出炭とその山の出炭に見合う借金力といいますか、こういうものをやはり政府がきちっと言ってやる方がいいと思うのです。胃ガンの患者でも、あなたは六カ月だ、こら言ってもらった方がかえっていいのじゃないかと思うのです。この炭鉱は六カ月だ。それはどうしてかというと、一人の人間の場合ならば、六カ月と言うことは大へんだけれどもあとにたくさんの大へんな者がおるわけです。一人の炭鉱主運命を予告しないために、五百人あるいは自治体の何万人という人の運命がこれにつながっておるとすれば、一人の炭鉱主を犠牲にすることはやむを得ないと思う。しかし六カ月の猶予期間政府責任を持ちますよ、六カ月だけはその炭は政府が必ず長期契約のルートに乗せて電力会社に入れる世話をしますよ、こういう方法をとる必要があるのじゃないかと私は思うのです。それを今やらぬところに非常に問題があると思うのですが、この点については非常に自治体も、そこに働く労働者も困っておるのですから、これについて何か政府は考えておることがあるのかどうかということです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの寓話のお話、滝井名医でありましたら、問題は解決するのかもわかりません。しかし、ただいま私ども政府として考えること、これは石炭産業そのもの寿命が一体どうなのか、個々の山ということでなしに、石炭自身は千二百円下げて、そして五千五百万トンはとにかく確保できるのだ、との産業としての安定的なもの、それからそれが基幹産業であるということ、これだけは国民に十分植え付けたいと思います。そういう意味で私どもは実は政策を立て、そしてそれを強力に推進している。ところが、さらにその五千五百万トンのうちの、この山は一体どうなるのだ、こういう問題になりますと、これは通産省自身、この山の寿命幾らだということを具体的に知らしてくれとおっしゃれば、現在データを持たないわけでもございません。しかし今日の石炭技術あるいは探鉱技術等から見て、一応推定するだけで、必ずしもそれが当たるわけのものでもございません。やはりこの山の寿命というものは、一体だれが一番よく見当がつくのかというと、これは経営者だろうと思います。そして経営者自身は、その山の寿命というものを知り、そしてその経営に従事しておる。しかも、組合との間には絶えず交渉を持っておる。そういうことを考えますと、政府からこの山の寿命幾らあるのだとか、あと何年あるのだということを申すまでもなく、これは労使双方が、自分たちの従事しておる山の実態というものについては、政府より以上に深い認識を持っておるのではないかと思います。ただ一つここに問題になりますのは、経営者経営を続けていきたい、労働者もその職場にいたい、しかしいろいろ工夫してみても、薄い層であるとか、あるいは非常に深度が深いとかいうことで、なかなか採炭ということが技術的にも困難で、いわゆる他の競合の燃料と比べてみて採算がとれない、市場性がない、こういうようなものがあるだろうと思います。これはいろいろな意味において市場性がない、あるいは将来が枯渇しておる、そういうものに対して、事前にそれが発表できるかどうか。これを全然知らぬ顔をしておるわけにもいかない。ことにそういう山だと、経営者経営の意欲が非常に鈍っておりますから、保安等も十分できておらない。そういう危険な山をそのままの状態で掘らすわけに参りません。そこで政府といたしましては、せっかくスクラップの方策もあり、またその法律もある、こういう意味で、これに対しては事前に勧告なりあるいは十分な相談をして、それで山の寿命をきめていくということは可能だと思います。けれどもそれ以外の場合だと、なかなか容易なことではないし、また、これは経営者組合の人が一番よく知っておるだろう。また政府買い上げたいといっても、これを公表する時期はよほど気をつけないと意外な摩擦を生じやすいのであります。ただいまいい例をとって申されました。いかに大悟徹底していると申しましても、聞かされれば非常に動揺する。これが私どもが一番苦労しておる点でございます。私はもちろん名医でもございませんし、相手もまた大悟徹底していない。その状況のもとにおいて、君たちの山はあと三カ月だとか、あるいは半年だとか、こういうことを申すことは、これはよほど気をつけなければならないことだ、かように考えます。今までもいろいろスクラップ対象になる山を事前に公表しろと言われましたが、これはなかなか社会問題、政治問題等もございますので、そういう意味では非常に慎重を期しておるというのが現在の段階でございます。御了承いただきたいと思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 私が言わんとするところは、大臣が今言われたように非常に広範なものを私は言っておるわけではないのです。現在の実例でいえば、買い上げを申請している六十七万トン分ですね。それから政府が今後計画をしておる六百二十万トンのうちのことしこの新しい方式で買い上げようとしておる百二十万トン、それから保安の四十五万トンですね。保安のものは、金を入れてよくすれば、その必要はなくなるわけです。こういうものに私は限局をして議論をしたいと思うのです。石炭鉱業合理化臨時措置法も、御承知のように、出炭量とかあるいは炭価とかいうようなものは一応おきめになるわけです。ところが石炭鉱業合理化計画というものは、人間の問題については、私はいつも指摘しているのですが、何も言っていない。石炭を掘ろうとするならば、一人当たりなんぼにしなさい。二六・二トンと言っておる。その場合に、その山に労働者幾ら必要なんだ、これくらいは雇用しなければならないということはちっとも言っておらないのですよ。だから人間の問題は、さしみのつまよりかもっと悪い状態で放置されておるわけです。私はやはり合理化計画法律でこらして政府が金を出しておやりになるならば、それに伴う人間の問題についても、これは労働省が立てることになるかもしれませんが、立てる必要があろう。それがやはり親切だと思うのです。石炭鉱業を守るためには、その鉱区買い上げてやりますよ、鉱害も見てやりますよ、未払い金利も見てやりますよ、ころ言いながらも、一体その運命はいつなんだ、いつになったらこれを買上げるのだということを労働者に言わないのは、不親切だと思います。そうして事業主だけに、鉱業権者だけに、申請しておけば、君の番がきましたから来なさいと言って、呼び出して金の相談をする。そうすると自治体もつんぼさじき、労働者もつんぼさじき、一体鉱業権者幾らにこれを売ってもらったかということは全然秘密にしておるのですから、鉱害を受けた被害者もわからないし、そこの鉱業権者に金を貸しておる坑木屋さんも、それから機械屋さんもみんなわからないわけです。そうして、もらった金は銀行に返したり何かしておれは無一文だと言われる。泣こうにも泣けないわけです。今そういう実態は、中小企業鉱業権者にはざらです。だから、この運命をやはり知らせてもらわなければならない。特に、人間運命については知らしてもらわなければならない。  私が言うのは、六百二十万トンのこれからの計画を全部言ってくれといろわけではないのです。まず、六十七万トンです。六十七万トンは、これは、私の山をつぶして下さい、買い上げをして下さいというのですから、順番がくれば必ずなるものです。だからその順番のうちから、半年のものは公表してしまうのです。そうして労働者には、安定職場を求める準備をさせなければならないと思うのです。あるいは職業訓練所に今度は自分はどこへ志願しようというような予備の申し込みくらいはさせなければならないと思うのですが、これが今ないのです。だからどっと労働者が出てくると、職業安定所はこれを収容するだけの能力はないのです。たとえば、これはあとでも出てきますが、私のところで大峰が第二会社を作る。これが七百人。三井が千十二人の希望退職を募っている。この三井の千十二人と大峰の七百人が出てきますと、田川職業訓練所では入れる余地が全然ない。だから、合理化計画とこういうものとがちっともマッチしておらないのですね。一番のしわが労働者にきて、追っぽり出される。そして日雇い労働にいく。緊就にいこうとするならば、七千人のワクがあって、順番がいつくるかわからない。日暮れて道遠しの感なんです。こういう状態では、とても分散政策はできない。だからわれわれは、これは合理化計画なんですから、少なくとも合理化という名がついたら、やはり人間の問題まで合理的に処理をしなければならないという問題だと思うのです。私たち石炭鉱業合理化法には反対です。しかし大臣御存じの通り、今度の炭労の政策転換の闘争というものは、今の段階で、石炭がなくなって、その山は来年の三月につぶれると言われればやむを得ない、これには反対できない、よろしい、それでは山をつぶしてもいいから、来年の三月になったら一つ私の安定職を見つけて下さい、こういうところで話が進んできておるわけですね。だから来年の三月にはお前の山はつぶれるぞということを六カ月くらい前に言ってくれれば、安心立命ですよ。いわば安心立命を与えるようなものですよ。技術的に考えればそういうことは可能だと思う。すでに鉱業権者は満足した、それが風の周に間に全労働者にはわかっておる。わかっておるけれどもお互い人間だ、お前はガンだと言われればおそろしいと同じように、何か問題がある。しかし今度は、労働者が新しい職場転換をしていくための心の準備を与えるためには、六カ月は必要です。子供学校の入学、転校の問題についても考えなければならない。あるいは人生計画をスームズに立てさせるためには——この六十七万トンのうち、半年くらいに買い上げられるものがどのくらいあるか知りませんけれども、二十万トンや三十万トンくらいは半年くらいで処理できる、そういう山は、運命はきまっておるわけですから、心の準備はできかかろうとしているわけです。それをはっきりして、政府が次のあたたかい手を差し伸べ、同じ企業の中で安定職場にしてあげるということをするのが、当然石炭政策責任だと思うのです。幾ら私企業だといったって、人間を使って、弊履のごとく捨て去ることは、ヒューマニティが許さぬと思うのです。この点で六十七万トンとことしの買い上げの百二十万トンについて、大臣はどうお考えになりますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 滝井さんの御注意はしごくもっともでございます。そこで実際にはどうしているのか。もちろん書面でいろいろ調査して大体候補をきめる、しかし、候補をきめて直ちに整理の対象になるわけでもございませんし、やはり事業団に移してから、事業団がそれからかかっていく、こういうことになります。現地を調査しないでやるわけでもございませんし、現地調査というのが大体今言われる問題の前に行なわれるものだ、実際はそういうようになっておるように思います。なお詳細は事務当局から説明させます。
  13. 今井博

    今井(博)政府委員 滝井先生非常によく御存じの問題でございますが、事業団が実際に山を買い上げます場合は、事業者から買い上げの申請を受けてからいろいろ審査をいたしまして、現地調査をいたす段階一つございます。この現地調査をいたす段階に入りますと、大体この山は買い上げ得るのではないかという見通しを立ててやっておるのでありまして、現地調査をやるときには組合の承諾を必要とするということになっておりますので、現地調査をやりまして実際の買い上げの手続が完了するのが、大体平均すると半年ぐらいかかっておるようでございます。今お話しになりました半年前ということに、偶然の一致か知りませんが、合致するような順序に相なっておると思います。
  14. 滝井義高

    滝井委員 半年ぐらい前になっても、今のは半年後に買い上げられるのかどうかわからぬ。一番早いので半年です。とにかく買い上げ評価額の内示をするのが、鉱害調査を今全部やらなければならぬから、それが一番早いのが六カ月。われわれのところで、豊国炭鉱のような大手でも、スタッフをそろえてやっても一年かかってようやくなるという状態です。今鉱区が幅湊して、鉱害が複雑になってきておる、破断角その他の関係があって、簡単にはいかぬわけです。どうせこの山は動いておるわけです。何ぼか石炭を出しておる。出しておる石炭を、国が電力会社その他にきちっと六カ月間、一定の国のいう出炭をすれば保証するという形になれば、坑木業者その他も、この山は六カ月後につぶれますよといわれたって、いいということになる。労働者も、それまでにきちっとした態勢ができてくると思うんですよ。何かかゆいところに手が届くような親切心というものが、この合理化法には欠けておるのです。それは、鉱害とか未払い賃金みたいなものは割合熱心に討議をせられますけれども、やはり次の雇用というような問題、住宅という問題までも考えるところまで、やはり総合的にいかなければいけないと思うのです。そのためには六カ月ぐらいの余裕を置いてやらぬと、その間に金がなくなってしまうのです。現実には、御存じの通り、ほんとうに買い上げが行なわれるのは、山が閉山をして半年か一年してから買い上げることになるから、労働者はその間もう退職金もなければ、何も金がないのです。だからみな生活保護にならなければならぬ、こういう形になるわけです。何かここらあたり、特に今年度新しく買い上げられる百二十万トンについてはそういう方式を出して、そして炭労なり全炭鉱に、それがそういう組合に所属しておるならば皆さんの方からお示しになって、そしてそこらで労使協議をして、きちっとした跡始末をしてもらうと、私は非常にスムーズにいくというふうに思うのです。特に雇用対策等がうまくいくと思うのです。そういう点どうですか。そこらあたりもう少し合理的な、秩序正しい、労務政策も加味した合理化政策というものをおやりにならなければ、やはり今の状態では、今井さんが非常に骨折られておるが、成果は結局まだ遠い、労働者が残っちゃう、こういう形になると思うのですがね。
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の現地調査に出かける、それから半年はいろいろな調査でかかる、長くかかれば一年かかる、こういうことですね。ところが現地調査に出かけて半年の間でも掘り続けてくれれば非常にいいが、現地調査に出かけるときには、もうほとんど閉山寸前というか、また、現地調査に来たのだからこれは閉山だ、こういう形では混乱を来たすのではないかと思う。だから実際問題として、ここはどちらがよろしいのかわかりかねるのです。たとえば現地調査に行く、現地調査をする際には組合の承諾を必要とする、そのときに組合とじっくり話をして、残存期間というか、その間の継続作業の取りきめができれば大へんいいですが、それができない状況が今の姿ではないか。そうすると、現地調査に行くときにはもうすでに閉山しているというような場合の現地調査があったり、あるいはまた現地調査に行ったら、もう逃げる方が先で、あとの残存期間掘るということよりも、いよいよやめるのだということで、浮き足立つというのが今の実情じゃないかと思う。そこから何かうまく経営者組合、双方で責任を持つような態勢ができるかどうかです。これは私どもも、もう少しよく実際の場合について指導してみたいと思います。思いますが、さっきのガンの病名発表と同じような形になっているのじゃないか、ここを非常に心配します。これは実際問題として、私ども取り細める余地があれば十分取り組んでみたいと思います。
  16. 滝井義高

    滝井委員 実は、炭鉱買い上げの申し出をしたときというのが、私は一つの転機だと思うのです。今、買い上げの申請をしたときに、すぐには行かないのですね、順番が後になっているのですから。これが問題なのです。どうしてこういうことになったかというと、結局、当初通産省が法律を作ったときにお考えになったのは、おそらく評価額を内示するのは二カ月か三カ月でできるだろうというので、あれは二、三カ月の余裕しかとっていませんよ。初めのうちはそれぐらい早いと思っておったのですよ。われわれもそうだと思っていた。初期に買い上げ申請した炭鉱というのは、問題なくすっといっていますよ。非常に早くいっているのです。ところが、その後被害者なり鉱業権者なりがだんだん賢くなり、合理化事業団の方も賢くなって、これは大へんだ、用心しないとごまかされるぞということになった。一番典型的なものが真岡炭鉱です。これで合理化事業団はうんと出血したのです。令部鉱害が終わったと思って買い上げたところが、次から次へと鉱害が出てくる。そして、おそらく今事業団が岡崎林平さんに対して裁判をしておるはずですが、次から次に出てきた。そこで、あつものにこりてなますを吹く形になって、これはすみからすみまで全部調べてみなければだめだ、鉱業権者の持っておる炭住まで、鉱害の登録をさせなければ、一切炭住については買い上げぬということになってしまった。猫額大の土地に至るまで、すべて鉱害を片づけてしまわなければ買い上げぬ、こういう形になって、今のような形になったわけです。だから、これは非常に事務が渋滞をしておるのです。これはこの前も申しましたが、そういう形があるので、問題はやはり申請をしたときに、その時点で、もうこれは鉱業権者が明らかに閉山の意思表示をしたのですから、それから六カ月以内に買い上げの事務を何らかの形でやるという、そこには労使双方を、政府の方なり事業団が呼んで、きちっと処理をさせるという形で内示をする、これは組合の幹部に内示をする、絶対に口外してはいかぬというような形で……。口外するかもしれません。申請したら、風の間に間に、あの炭鉱は何月何日に申請したらしいということがわかるかもしれぬ。それくらいのことなら、ガンかもしれぬし、胃かいようかもしれないというわけですから、半信半疑ですからいいと思います。何か組合自身、鉱業権者自身には、労務者の今後の運命について考えるだけの余裕を与えるということが必要じゃないかと思うのです。だから問題は、申請をしたときの時点をとらえなければいかぬのじゃないか。そうして同時に、今までの事務のやり方をもっと改革して、そうして促進をしていく、こういう形を私はおとりにならなければ、今後の新しい合理化事業団の六百二十万トンについても、やはり同じことが出てくると思うのです。これの方がなおむずかしい問題が出るのじゃないかと思う。というのは、これではおそらく合理化事業団は、鉱業権者というものに責任を持たなくなる。ですから、その飛ばっちりはどこに行くかというと、通産当局の鉱害部に行くのです。鉱害部が今度はその調停をやるのに、おそらく人数をうんとふやさなければ片づかぬ問題が出てくる。鉱業権者は逃げてしまう。そうしておそらく無資力の形でうんと国に持ち込まれてくるという形が出てくることは、火を見るよりも明らかです。だから無資力の形で鉱業権者の跡始末をするというならば、申請をしたときにきちっと押えるものは押えるという形を私はとらざるを得ないのじゃないかと思うのです。そういう点はどうですか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん実際についての御意見を述べられまして、私ども勉強させていただきました。私どもの知らない点が多々あるようでございます。これはもう少し私どもの方も十分、適宜処理方法をもっと整備する必要があるのじゃないかと思います。いわゆる申請の線全部が全部取り上げるということをきめるということは、まだ少し私は危険のように思いますが、ものによりましては、もうそのときにきめ得るものも相当あるだろうと思います。何かもう少し事務的にスムーズに処理ができるように、一つ工夫さしてみたいと思います。
  18. 滝井義高

    滝井委員 次は、二百三十二万トンについては、何らかの形で、少なくともやはり半年くらい前が必要だと思いますが、事務的に研究していただいて、そうしてそれをまあ秘密でいいですから、労働組合鉱業権者にきちっと——鉱業権者は今でも内示をしているわけですから、内示をする形をとって、はっきりぜひしていっていただきたいと思います。ところが最近は、主としてこれは大手にあるのですが、私たちは今度の政府合理化計画というものは、ことしの予算に現われた二百三十二万トンというものが一応政府合理化計画だ、こう思っておったわけです。ところが最近になりますと、たとえば古河大峰、それから三井あるいは大正鉱業というようなケースが出てくるわけです。全くことしの六万何がしの離職者対策のワク外のものがぽっと出てくるわけです。これは私は政府は防がなければいかぬと思うのです。それは政府が五千五百万トン態勢を作って、千二百円の炭価引き下げるためには、ことしは二百三十二万トンはつぶさなければいかぬ、この程度が大体適切だという計画をお立てになって——これはあるいはそうなると自民党の方が、統制経済で困ると言われるかもしれないけれども、これはやはり労働者を捨て去るからには、事業についてもある程度の手かせ足かせ、小さなひもでいいから、はめてもらわなければならぬと思うのです。それで、二百三十二万トンのワク外でもし労働者の首を切ろうとする場合、あるいは閉山をやろうという場合、形態を変えようとする場合は、やはり政府の許可を得なければならぬという態勢が必要だと思うのです。それをやらないと、これはもう全く計画が立たなくなってしまう。さいぜんから申すように、わずかに六十人なら六十人を募集する職業訓練所を作って、そうしてこれを六カ月で回転をしていこうと思った。今のその訓練所のある地域の炭鉱離職者というものは、これだけの訓練所があればいいと思って予算をとって、科目をきめて収容しようとかかった。ところが突如として七百人とか、千人とかいうものが例外的に割り込んでくるわけです。そうすると、雇用計画というものはむちゃくちゃになるし、それから出炭計画についても、やはりこれは問題が出てくるわけです。こういう点に対する規制というか、チェックというか、何かそういうものを政府は考えたことがあるのかどうか。
  19. 今井博

    今井(博)政府委員 現在は、合理化計画を立てます場合に、地域別に離職者の数がどの程度になるかということを押えまして、労働省の関係の予算はこれを基礎にしていろいろ計画を立てていく、こういうことになっております。  ただいまおっしゃいました二百三十何万トン、三十七年度は二百三十数万トンの一応計画を立てておりますが、これは計画経済じゃございませんので、景気のよしあし、あるいはそういういろいろな経済関係の変動によりまして、相当な出入りが実はあることはやむを得ないのじゃないか。たとえば事業団が初め店開きをいたしましたときは、なかなか予定の整備数量に達しなかったという事情もございまするし、それが何年かたちましたうちには、大体予定された計画通りに山の整備が進んで参った、こういう事情でございます。来年度二百三十万トンを立てましたのは、これは割合はっきりいたしておる数字でございまして、現在買い上げの申請の残りの三十七年度の六十七万トンのほかに、保安の方の買いつぶしの炭鉱、ニュー・スクラップ方式による百二十万トン、こういう予定の数字でございますが、この場合に従来の買い上げの数量とか、保安数字、これは割合にはっきりしておりますが、ニュー・スクラップ方式の百二十万トンにつきましては、これは一応われわれはこういう推定をいたしまして予算を立てておるわけでございまして、これが実際問題として、もっと希望がふえるかもしれないという、実は予想もいたしております。従って、そのワク内できちっと押えるという問題につきましては、さらにそれよりも希望がふえ、もっと整備をしなければならぬということになりますれば、これはまあやはり追加予算の問題になるし、あるいはその場合には労働省関係もそれに応じて離職者対策の方の予算もふやしていく、そういう関係に立つわけでありまして、若干のその辺の出入りはやむを得ないのじゃないか。ただ、御指摘になりました田川の例とか、あるいは大峰の例は、これは実際の百二十万トンという場合の計画とはこれは別の問題でございまして、今百二十万トンと申しましたのは、これはむしろ山を整備する、山をつぶす方でございますが、このほかに離職者の問題としましては、現在の割合に能率のいいという炭鉱でも、実際はどんどん機械化を進めて参りますと、人間が若干減って参りますから、そういった山を買いつぶす以外の、現有の、あと残りの炭鉱につきましても、人間がある程度減っていくという計画を立てておりますが、その計画の中には数量は多少違いますが、大峰の場合とか田川の場合は、ある程度数字は入っておりますから、この辺は突如としてそれが新たに加わったものというわけではないとわれわれは考えております。
  20. 滝井義高

    滝井委員 そうすると大峰田川のようなものは、六百二十万トンの中に入っておるわけですか。
  21. 今井博

    今井(博)政府委員 六百二十万トンと申しますのは、ほんとうに山を事業団買い上げる、今度ニュー・スクラップ方式で山を整備する、こういう炭鉱でございまして、との中には今の大峰の例はわれわれとしては一応予定はいたしておりません。これはむしろ現有の残る炭鉱の中で、能率を上げるために人間を減らしていく、こういう部類の炭鉱としてわれわれは予定しておったわけでございまして、いわゆる六百二十万トンと申しますのは新鉱群、増強群、維持群、非能率炭鉱群、この四つに分類いたしまして、非能率炭鉱群が三十四年度には約千三百万トン程度ございましたが、これが三十九年の終わりに一応なくなるだろう、こういう推定ではじき出した数字でございますので、大峰炭鉱は一応残る炭鉱に入れておりましたので、その中には一応入っておりません。
  22. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大峰のようなものは、維持群の中に入っておるはずですね。それから三井だって今度は維持群に入っておるんじゃないですか。
  23. 今井博

    今井(博)政府委員 田川も維持群に入っております。
  24. 滝井義高

    滝井委員 大臣、今お聞きの通り、新鉱群、増強群と維持群、それから能率の悪い、スクラップにする炭鉱と、こう四つに分けて合理化計画を立てていった、ととろがその一段上の維持群の中から、まだ六百二十万トンが片づかぬうちに、先に回ってやるというわけです。おれはもうやめるんだ。たとえば、三井の六鉱なんかそうです。まだあるわけですが、これをやめるわけです。そこで、私がさいぜん指摘したのはこうなんです。これは一体どうしてそういう炭鉱がやめるかというと、三井のようなところは銀行からも金が借りられるし、三井は一年で六百万トンとか九百万トン出るのですから——三井のような九百万トンも出る山はほかにない。九百万トン出れば、これに太刀打ちできる炭鉱はない。だから他の炭鉱は全部どんどんつぶれてしまう。従ってこれだけ残るわけです。私がさいぜん言ったように、田川炭田では前から二百二、三十万トン出ておった、今も出ておりますが、労働者は三分の一に減っておる。残るのはどこが残るか、三井しか残らない。これはどうしてかというと近代化資金もみんなそこに行って、他のものには行かない。だから三井と、三菱、住友、同じ財閥系の炭鉱でも、うんと開きが出てくるのです。これは鉱区をどういう工合に持っているかによっても違ってきますが、安い金が入ってくるのです。無利子の近代化資金が入ってくれば勝つにきまっておる。コストが安いからどんどん伸びる。合理化されて、労働者は首切りされて出炭は上がっていく。他のものはこれに追いつけないから、今言うように先回りしなければならぬ。先回りするときに、どういう形で先回りしてくるかということです。これは日本の、特に筑豊炭田における炭鉱というものは、もはや近代化資金をつぎ込んで機械化する段階にはないのです。やはりこれは人間労働力によって出炭率を上げる以外にない。そうすると、石炭の原価の五割も六割も人件費が占めておる現段階では、結局賃金下げる以外にない、賃金下げることによって高能率炭鉱と太刀打ちする以外に方法はないのです。  そこで新しい方法として生まれてくるのは何かというと、第二会社です。そういうように先回りをしてくるのを、どうして通産省は阻止することができないか。資本主義だから、企業自分の独立採算を見て、損ならば労働者を首切って能率を上げるということは、資本主義原則ですから、資本主義社会におけるこの原則は、社会党といえども認めざるを得ないと思うのです。しかし行政というものはやはりチェックするところ、何かコントロールするところがなければ無秩序になってしまう。それでは石炭合理化政策なんというものは要らないことになる。わざわざ国のとうとい税金を入れて、私企業の、何の役にも立たない取り尽くした鉱区買い上げてやるということは、やはりある程度のコントロールを国が石炭産業にやらなければならない、秩序を守らなければならないという上から金を出すわけですから、そうしますと、たとえば今典型的なものとして大峰の例が出たので、大峰の例で参りますと、今千二、三百人の人を使っており、そうしてこれを今度は第二会社にやるわけですよ。第二会社にやった場合に、これは私しろうとなりに考えるのですが、今度第二会社を作っても、坑口を許可しなければいいと思うんですよ。これは大峰炭鉱は閉鎖して、そうして別な新しいBならBという第二会社ができてやるわけですから、やる場合は何でやるかというと、昔の坑道を使ってやるわけです。これはおそらく、坑道に金を投資しないのだから坑道を使ってもいいだろうという理論だろうと思います。ところがそのときに、施業案ももとの通りに持ってくるかもしれませんが、もとの通りの施業案というものが新しい会社に当てはまるはずはないので、そこで新しいものがもとの坑道を使うときに許可をしなければ、会社は先回りをすることができない。このくらいなことは、今の行政で当然やるべきだと思います。またできなければならぬと思うのですが、その点はどうですか。
  25. 今井博

    今井(博)政府委員 大峰の例は、第二会社になりまして、これは坑口使用許可ということで当然許可の処分の対象になると思います。第二会社が従来の坑道を使ってそのままでやるというわけには参りません。これは保安臨時措置法による坑口の使用許可ということに当然ひっかかってくると思います。  それから、先ほど田川の例でいろいろお話がございましたが、田川の場合も坑口を若干閉鎖するという計画を持っておるのでありまして、これは維持群の中でも、山そのものをつぶす場合は別といたしましても、そういう坑口を二、三閉鎖するということで存続する維持群といろものは相当ございますので、これは一応いわゆる非能率炭鉱というものとは範疇が違うと思います。
  26. 滝井義高

    滝井委員 大峰の方は、これは非常に珍しいケースというよりか、ニュー・フェースのやり方ですから、十分一つ御検討を願わなければならぬと思うのです。そうすると大峰の場合は、今の局長さんの御説明では、大峰の今までの坑口を使ったのでは施業案は許可にならない、こう理解して差しつかえないのですか。
  27. 今井博

    今井(博)政府委員 それは、保安臨時措置法によりますと、坑口使用の許可を得たければならないわけであります。
  28. 滝井義高

    滝井委員 そこらあたりちょっと不勉強なんですが、大峰炭鉱が出しておったその坑道を使う場合には、許可をとる、許可がなければ使うことができない、こういうことになっておるわけですね。私はそこらがおかしいと思うんですよ。大体坑口というものは、能率が上がらなければ許可しないことになっておるんですよ。それで当時便宜措置として、小型坑道というものを作らせて全部やってしまった。正常の坑道を作ってはいけないということで、みんな小型坑道を作って、それで体よくのがれた。そうしてそれが保安の問題にひっかかって、今爆発を起こしておる。今小型坑道は禁止したわけでしょう。
  29. 今井博

    今井(博)政府委員 坑口の使用許可制度を非常に強化いたしておりますので、そういうものは許可いたさぬことになっております。
  30. 滝井義高

    滝井委員 そういうものは許可をしない、こうなりますと、今度は第二会社を作れば、それは新鉱開発ですね。新鉱の開発をやる場合に、これは私は能率だけではだめだと思うのです。労働者の待遇が前より極端に下がったものは、これは能率が上がったことにならぬと思うのですよ。賃金も少なくとも前と同じ程度でなければいかぬだろうし、それを極端に引き下げて、残業をさせて能率を上げるのでは、一人当たり出炭を上げるのでは話にならぬと思うのです。だから私はここらだと思うのです。先回りをして、利己的に、政府計画をしたこういう秩序ある合理化政策というものを、大手の炭鉱が、みずからの経営のみを考えて、労働者自治体を犠牲にして、第二会社に切りかえてやるというような、こういう行き方は、私は許すべきでないと思うのです。これを許したら、合理化政策というものに国の税金を出すべきでないと私たちは思う。労働者を犠牲にして、資本家だけがもうけるようなことなら、これはわれわれの税金ですから、出すべきでないと思う。しかも、その石炭はおそらく古河が買い取るんでしょう。第二会社というのはみなそうなんですよ。自由にその企業に売らせるなら、まだ話はわかる。ところが出た石炭の販売権というものは、会社がとってしまう。だから今大きな会社は、石炭の生産会社じゃなくて、販売会社になっている。斤先にやって、あるいは第二会社を作って、販売権は自分が握る、こういう形をとっている。資本主義の典型的な搾取の形をとっているわけです。こういうことが白昼公然と許されるならば、もうこれは強い者勝ちで、弱い者は哀れなものですよ。どうですか、この大峰。非常に重要なところですが、もしそういう大峰の場合に、古い坑道は許さない——向こうが労働者賃金もきちっとするし、能率は上げてくるというなら、新しい坑口の開設の許可の基準に従って許すことはいいかもしれぬが、そこでなければ私はこれは許すべきでないと思う。
  31. 今井博

    今井(博)政府委員 坑口の開設の許可並びに使用の許可の条件としましては、能率、技術的な能力、経理的な能力、こういう点を基準にしましてそれの許可を審査する、こういうことになっております。従ってただいまの大峰の例についても、もちろんこういう観点から審査いたすわけでございます。これは賃金が非常に切り下げられた極端な例は別としまして、全体としていろいろな要素を勘案して総合的に判断すべきものと思われますので、ただいま非常に極端な例をあげられましたが、その辺はもう少し大峰の実際の状況を見まして、われわれとしては態度をきめたいと思います。
  32. 滝井義高

    滝井委員 これは、政府の態度のきめ方がおくれてしまうと、どんどん進む。会社は三月一日からやると言っているんですからね。かつて私は、籾井鉱が鉱区を分譲して新しいものを作るときにも反対をした。ところがあれは炭政課か何かが、審議会か何かに諮って坑口を開設するかしないかきめるわけでしょう、いつの間にかしておったんですね。そして今のような状態になってきているわけですね。これも同じだと思うのです。第二会社をしばらくやって、第二会社でもうからぬようになると、今度は必ず租鉱権へ落としますよ。租鉱権をやるか、組夫をやるわけです。こういうように次から次に落としていって、最後は一体どうなるかというと、これは私のところの例で申しわけございませんけれども、たとえば今私の家のあるところの鉱区というものは、四代目です。一番初めには神戸の鈴木商店が持っておった。それを今度は麻生鉱業に譲った、次に野上鉱業に譲った、それから籾井鉱になって、四代になってきているんです。そうすると、初めから鉱害を徹底的にやったものはない。一番最後のどんじりになってから鉱害をやることになる。それは私が生を受けて以来だから、四十年の長きにわたって、水の不便から、家の傾きから実に莫大な損害です。しかし、その鉱害を必ず私がやりますという一筆を前の鉱業権者に渡して、それを安く買ってやる、次の者がまたそれをやる、次の者がやる、孫子の末まで鉱害は直らぬという形なんです。これは結局、政府石炭政策が第二会社を許し、租鉱権を許し、組夫を許しておるというところにあるのです。まるで天賦人権みたように、明治の初めに、これからこれまでの土地はおれの鉱区であると宣言をして、そして財産税を納めて、これを人に分けてやっていくという形なんです。まさに土地というものは天下のものなんです。ところがその天下のものである土地、その地下に埋蔵する石炭をおれのものだと宣言をして、税金を払った人がみなやっていくという形、そして下を掘って、無過失賠償だといってなかなかやらぬ。次から次に譲ってしまう。こういう形は、今にして防がなければもう大へんだと思う。そういう意味でまず第一の防ぐ方法は、第二会社のときに防ぐ以外にない。これで坑口を許可しなければいいのです。今言われたように、経理の能力、技術の能力、出炭能率というようなことでおきめになると言うけれども、これはまた千差万別で、現実には小さな炭鉱まで許しておるというのだから、第二会社で、しかも古河がバックした会社だということになれば、すぐ許すことになってしまうのです。ところが今度は石炭政策転換期にあたり、新しい買い上げ方式をやって日本の石炭政策合理化を、これから石油と負けないようにやろうという段階で、こういうものをもし政府が許しておるならば、石炭政策合理化政策はくそくらえということになる。だから佐藤さん、困難かもしれないけれども、かつての財閥会社の古河のようなところから、きちっとえりを正してチェックしていくべきだと思うのです。これは将来あの地区の住民は大へんな損害を受けるのですよ。第二会社から次々に必ず譲りますよ。この前僕は萩原さんが来たときに言ったけれども、大手がそういう悪例をみんな残しておる。三井、三菱、住友がかつて、天賦人権のごとく、これはおれの鉱区だと宣言して、自分がいいところばかり掘って、悪くなれば租鉱権に出す、あるいは第二会社を作り、販売権だけを自分が掌中に握っておるという形ですから、これを断ち切る以外にないと思うのですが、どうですか。当然こういうものは許すべきじゃないと思うのです。こういうことを鉱業法は予想していないんですよ。閉山する炭鉱の坑口を使って新しく第二会社を作ってやるというようなことは、予想していない。そういう予想していない、立法者の意思の盲点をくぐってやるようなことは、この際石炭政策として許すべきじゃないと思うのですが、これはどうですか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大峰鉱の話は、私も聞かないではございません。ただいまのところでは、大峰鉱はおそらく組合と話し合いの段階ではないかと思います。ことに埋蔵量がどのくらいあるか、あるいはそれが薄層であるかどうかというような点の調査が完了しないと、今後どういうようにすべきかということはきまらないと思います。ただいまの大峰鉱の処置々々ということでなしに、一般的に山の経営者が変わって第二会社的性格を持つ、あるいは租鉱権者に移る、こういう事柄が許されるかどうか、こういう問題についての私の感じを一通り申し上げてみたいと思います。  いわゆる第二会社というものは、ただいま言われるように、おそらく掘るだけであって、人員等も新しい雇用関係に立ってやる、あるいは販売権を持つ場合と持たない場合といろいろあるだろうと思います。けれども、これは結局組合との話し合いがつかないと、そういうことができる筋でもございません。当方で一方的に、申請があったから山は閉山した、第二会社でやっていくことを承認する、実はこういう簡単なものではないと思います。また地下資源そのものを全然放棄という形も、これも残念なことでありますし、とれが掘れる方法があるならば、やはり地下資源も開発すべきだと思います。だから、非常に極端な説を、いずれか一方に片寄った説を申しますと、これは少し議論が極端に走り過ぎて、実情に合わないのではないか、そういう際に行政官庁としての指導的立場が必要なのだろうと思います。言いかえまするならば、関係者が了承し、地下資源の開発ができるなら、その条件がある程度悪くなりましても、これは許してしかるべきじゃないかと思う。しかしながら、もう最初から本来の責任を遂行する意思なしに、そして責任者をかえることによって自分たちの義務を免れようとする、こういうような無責任な行為は、これは許されてはならないものだろう、こういう点を十分行政官庁としては透徹した頭でこれを見ていくのが筋だろう、かように私考えます。だから、一がいに右だとか左だとか、これはやめろ、こう言われましても、極端な説には私賛成しかねます。十分実情に合うように処理して参りたい、かように考えます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 実は私は、今大臣がそういう答弁をするのはきわめて遺憾です。というのは、大峰というのは維持群だということははっきり言われているわけです。維持群というのは、非能率スクラップをする群には入っていないのです。だから、こういうところは政府が資金計画なり雇用計画でコントロールする道はある。たとえば、こういう炭鉱については経営者は金をつぎ込んでいないのですから、そういうところにこそ、近代化資金というものを貸してやるべきだと思うのです。そうすれば、これは何とか息がつけるわけですよ。ところが、こういうところへは近代化資金はいかないのです。どうしてかというと、三井のような能率のいいととろにいくことになるわけです、極端な例を言えば。そういう点で、もう石炭資本が金をつぎ込んでやる気がないんですね。さいぜん申しますように、能率のいいものは残っておる。ちょっと悪いもの、維持群というのは、金をつぎ込んでやるだけの価値がない、それならいっそのこと人間をうんと働かして、石炭を上げた方がいい、こういう気持なんですよ。問題は私はここにあると思うのです。従って、犠牲は一切労働者にきているわけです。従って、そういうところはどうせこれは買い上げるのですから——買い上げるということは、ただで金をやるのと同じですよ。鉱区というものは、掘ってしまったあとは役に立たないんですから、そういうところへは、五年なら五年あるならば、最小限度の近代化資金というのを無利子で貸してやる。これは大手だから、返さぬことはないと思うのです。あるいは、鉱区買い上げるときに差し押えしておいてとってもいいのですし、大手ですから、炭鉱でなくても、どこからかほかのもので金は持ってこられると思うのです。だから、そういう金を貸してやって、資金的なコントロールをしながら、雇用の方のコントロールが、私はやりようによってはできると思うのです。今大臣は、極端なこと、どっちだ、左だ右だということは言えないとおっしゃいますけれども、新しい形としてこういう形が出てきて、すでに同じ古河系でも、ちょっと上にある峰地はそれをやったのです。結局、賃金を切り下げてよけいに働かして、出炭をよけいに出した。その経験というものを、今度は大峰に適用しているわけですよ。だから、こういうことはやはり社会正義——社会主義じゃなくて、社会正義の立場から、私は政治というものは処理をしていかなければならないと思うのです。これだけ言っておけば、あなた方もやられるのは慎重におやりになるでしょうから、一つぜひ慎重に——発祥の地の峰地炭鉱の坊ちゃんがここにおられますが、ぜひ一つ考えてもらわなければならぬと思うのです。  それから次は、同じような三井の問題です。これだって、今六鉱の閉鎖をやります、そして同時に、千十二人の希望退職ですよ。これは希望退職といったって、これだけやめてもらわなければ困りますというからには、これは首切りと同じです。希望退職というのは、体のいい首切りです。ただ変形にすぎないわけです。と同時に、自転車置場とかいうようなところの身体障害者、未亡人等のしているところは、みな直営からはずしてしまう、そうして別会社か何かにするのですよ。こういう形態で、石炭山というのは、掘る方はどうするかというと、掘る方は組夫を入れておるわけです。そうして病院その他もずっと縮小してしまう、こういう形をとってきておるわけですね。こういう形の経営で、組夫を入れる、それから自転車置場その他身体障害者でやっておった、あるいは御老人を使っておったところは、自分会社とは別にする、それから少し能率の悪い山というのは切り離す。それでは、切り離した、閉山をした、終掘をしたところを他のものにやらせないかどうかということです。全部、たとえば三井は大浦炭鉱というようなものを作ってやっております。そして販売権はやはり握っているのです。これは第二会社とはちょっと形態が違っておるけれども、同じことですよ。これはただ第二会社といわないだけです。こういうことが、大会社、かつての財閥会社によって公然と行なわれる、そうして一方では、中小の山というものはスクラップ化されていく、こういう二つの線でずっとやられたら、全く石炭政策というものは、あなた方の計画というものは、ここでわれわれと論議をしたこと以外のものが、大手の炭鉱によってずんずん進んでいっているのです。とれが結局労働省の雇用計画というものを大きく阻害してしまって、滞留労務者を作っておるのです。現在たまっておるのに、さらに千人か七百人が先回りしてくるのです。それでは広域職業紹介をやってみたって、それだけの能力もなければ何もないのです。こういう点を、義を見てせざるは勇なきなりでこういった大手にわれわれが刃向かえば、牛車に刃向かうトウロウにひとしい。しかし、実力者の佐藤さんがやるならば、これは三井さんだって、古河さんだって、ちょっと顔色蒼白になるだろうと思う。これがやはり私は必要だろうと思うのです。まあ佐藤さんは将来自由民主党の総裁になられ、総理大臣になられる地位にあるわけですから、義を見てせざるは勇なきなり、あわれみの心は仁の端なりというので、やはり仁の端を発してもらわなければならぬときだと私は思うのです。そうでないと、失業の町だといっておるのに、大手がどんどんやっておるのですからね。では三井は損しておるかというと、三井の株はどうでしょう、二十円か三十円だったと思うのですが、今では百円こえているじゃないですか。九百万トンも出るのです。五山もあって、一つの山が苦しいからといって、それの千何百人の労働者をやるというのならば、——明治以来三井鉱山というものは、実に政府から恩恵を受けているはずです。まあそれは営利会社だから、株が下がれば困るでしょうけれども、そこはやはり政府から何ぼか近代化資金等ももらっておるはずですから、何とか政府政策に協力をして、ことし切らなければならぬものを順番がくるまでは待つというのが、私は話としては無理がないのじゃないかと思う。それを永久に私は六鉱なら六鉱閉鎖をしてはいかぬとは申しません。しかし、これはまず順番は待ってもらわなければならぬ。少なくとも維持群は非能率炭鉱と通産省から烙印を押される程度まではお待ち願うことが必要じゃないかと思うのです。それを、力があるから、おれは政治を圧迫することができるからといって先回りをすることは困るということだと思うのです。これは私はちっともおかしくない、正論だと思うのですね。こういう点どうですか。三井についてはなかなか言いにくいでしょうが、やってもらわなければいかぬと思うのです。三井は、御存じの通り、三池で実に政府に迷惑をかけている。政府ばかりではない、国家に大へん迷惑をかけております。あれだけ騒がして、それから警察の金も何億と使わしておる。それを今度は田川までやってこういう迷惑をかけるということは、これはやはり三井としては考えてもらわなければいかぬと思うのですが、どうですか。
  35. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいま滝井先生のおっしゃいました中でいろいろ誤解があると思うのですが、一つは、われわれとしては、全体の生産構造を考えました場合に、維持群と非能率炭鉱にすその方は分かれておりますが、その場合に、維持群の方が先につぶれて、非能率炭鉱の部類に入れたのがあるいは成績がよくなって残るということも、これは実際問題としてはあるわけですから、一度そういう格づけをしたから全部それでいくのだということは、ちょっと無理じゃないかと思います。それからもう一つ大峰にしても田川にしても、一応維持群の中でわれわれは考えておりましたが、それが石炭のピットを整理するということは維持群でも当然あり得るわけでございますので、小口の一つ二つをやめたからといって、それが非常に先回りした、こういうことは、われわれとしてはそうは考えていないわけでありまして、維持群でも増強群でも、機械化をやり、近代化資金を出した場合におきましては、能率が上がって、人間が相当減っていくということは、初めから予定いたしておりますから、田川の例が、非常に先回りして、順番を待てということは、これはそういう順番は初めから予定いたしておりませんから、ちょっとその辺は実際問題としてむずかしいのじゃないかというふうに考えます。それから大峰の場合も、決して先回りして六百二十万トンの中へ入ってきたというわけではございません。人間を整理して別の会社にするという問題はございますけれども、六百二十万トンの中へ先回りして入ってきたという例ではございません。その点はちょっと誤解があるのじゃないかと思います。
  36. 滝井義高

    滝井委員 六百二十万トンに入るという意味でなくて、つぶすという点については、労働者が七百人入ってくるわけです。労働者を中心に考えれば、七百人の労働者が、今まで失業計画に載っていないのが入ってくるわけです。そうでしょう。それから三井だって、もしおやめになってその鉱区を人に譲ったらやらせないかというと、やらせるわけです。やらせて石炭自分が売るのですから、販売権は取るのですから、販売権をお取りになるなら自分でおやりになったらいいでしょう。そこなんですよ、資本主義のからくりというものは、自分がやったら能率が上がらぬ、しかし、人にやらせたら、その石炭はおれが取るんだぞという約束でやらせるのですから、こんな虫のいいことはない。極端な言い方をすれば、お前働けといって働かせて、働いた給料はみんなおれが取るんだ、持ってこいよというのと同じなんです。第二会社にやらせたら、独立をして自由に販売権を持ってやれる、石炭の販売競争の中に入れるというのならいいのですが、そうじゃないのです。だから、ここに問題があるわけです。  それからもう一つ、私は別な面から問題を提起していいと思うのです。それは御存じの通り、たとえば炭鉱労働者を四万人雇用する場合には、その四万人のうちの七割五分と阿具根君は言うし、そのうちの五割五分とこの前政府は言ったが、五割五分というと、二万二、三千人というものがまた新しく雇用されるという形になっていく。かつて働いておった炭鉱労働者を、五割五分連れてきて働かせておるのです。その場合の雇用形態はどうなっておるかというと、失業の期間が長ければ長いほど賃金が下がっておるのです。かつては三井におり、三井よりはちょっと小さいAという炭鉱に行く、それからさらに小さいBという炭鉱に行き、さらに小さいCの炭鉱に行っている。この間通算すると炭鉱労働者としては二十年、こういう形になってきている。今度Cに行ったときは、よわい四十をこえておるのです。だから、一番初めに働いたときの賃金——炭鉱というものはどういうことになっているかというと、必ずしも年功序列ではなく、請負給ですから、年をとっておる人ほど賃金は安くなっておるわけです。ちょうど保険の医療と同じです。われわれは、保険医療をプロレス医療だと言っている。スクーターに乗った若い医者の方がいい。年をとっている医者はよくない。それと同じ形が炭鉱に出てきている。若い筋骨隆々たる二十二、三の人の方が、よけい金が取れる。四十か四十をこすと、だんだん金が取れなくなってきている。そういう形になって三つ、四つと変わってきた人がみんな入ってきておるわけです。入るときはどこに入るかというと、みんな中小炭鉱能率の悪いところに入る、すなわち、斤先鉱あるいは第二会社に入っていくわけです。だから今炭鉱労働者の平均年令を見ますと、大手だって三十八になってきている。若い労働者は、魅力がないから炭鉱に来ない、こういう形になっておる。だから、私たち炭鉱能率を上げて安定産業安定職場にして、安定賃金を与えようとするならば、これを防がなければいかぬと思う。すなわち、炭鉱で首を切られてやめた者がまた半分以上炭鉱に行って、また二、三年してその第二会社能率が上がらぬようになると、租鉱区に前より低い賃金で行く、こういう断層というものができておるのが今の形態ですよ。それは大手のこういうものをお許しになるから、そうなる。それは結局、スクラップ化を早くしなければならないものを、スクラップ化を依然として停滞せしめ、災害が起きて初めてスクラップ化するという、何人かの犠牲の上において初めてスクラップ化の運命をたどっていく、こういう状況ですから、私は、少なくとも石油業法で佐藤さんがおやりになる程度の規制は、石炭産業におやり願わなければならぬ時期がきておると思う。こういう点をあなた方はどうお考えになるかということです。あなた方は、行政の面だけで、なるほど、第二会社三井のそういうものはやむを得ないとおっしゃるけれども、しかし、人間の面から見ると、そういうように、かわるたびごとに過酷な労働が激化していっておる。これをどこかで防がなければならぬ。それを許可しなければ、その労働者は若いうちに安定職場転換をしていくわけです。ところが、非常に能率の悪い炭鉱まで第二会社その他で残していけば、人間能率を上げる以外にないから、低賃金で働かせるということになる。だから、人間の上から見てこれを防ぐためには、租鉱権その他をチェックする方法を講ずる以外にない。そうすると、能率のいい増強群、新鉱群、維持群の上部のものが残って、能率が上がってくる、あとのものは計画的にきちっとした職場を見つけて安定賃金を与える、こういうことになると思うのですが、今それがないのです。だから、あなた方が一生懸命に炭鉱を整理されるけれども炭鉱の数はちっとも減っておらない。総数は五、六百から七百くらいあるのです。それはまるっきりさいの川原の石積みと同じです。局長が石を積む、がらがらっとくずれる、また積むという格好です。夕べに一山がつぶれたけれども、あしたにはまた二鉱ができる、こういう形になっておる。そのできた二鉱というのは、つぶれた一山よりもっと労働条件の悪い、もっと過酷な状態で出てきておる。ここらあたりの悪循環を断ち切る方法は、第二会社を許さない、租鉱権を許さないということです。これは政治がほんとうに人道主義の立場に立てば、できないことはないのです。そこらあたりをもうちょっと考えてもらわなければならぬ。いかがですか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん専門的なお話が出て参りました。ただ、経営の基本に関する問題でございますから、その点についての滝井さんのお考えも聞きたいし、私も意見を述べたいと思います。  資本主義経済のもとにおいてという言葉がしばしばございますが、能率が上がらない場合にそれが一体どうなっていくか、これはおそらく、資本主義経済だろうが共産主義経済だろうが、能率が上がらない山を無理やりに助けていく方法はないだろうと思います。ただ、その場合に、その山が一体どういう形になるのか、第一段の場合といいますか、大企業経営には不適当だが、小企業の場合には存続される、こういう場合も実はあり得るんだ、そういう形態が許されるのは、資本主義の建前ばかりじゃないだろうと私は思う。おそらく、規模を小さくして経営するということは、共産主義の場合でもあるのだろう、かように私は思います。全部が国だから同じことだと言われるかもわかりませんが、おそらく、生産規模の大きいものと小さいもの、そこの力の入れ方は、共産主義の国でもやや力が変わってきはしないか。これはそれぞれの経済行為として見た場合には、共産主義もなければ資本主義もありません。また、自由経済もなければ、統制経済の差もないと私は思います。そこで、しからば非能率の場合は一体どういう形に進んでいくのか、ただいまの炭鉱経営の場合だと、労使の間のバランスがとれておるなら、これは双方で話し合いがうまくついていくはずであります。もし一方が強かったら、その強い方の主張が通る。あるいは過去も現在も資本家が強いという御主張があるかもしれませんが、私は率直に言いまして、資本家がいりも強い状況じゃない、問題は、労使が同じ立場に立って、双方がひざを突き合わせて話し合う、ここに解決の道があるのではないか。先ほど大峰のお話が出ました。峰地鉱のお話が出て、これが悪い先例だということを言われておる。しかし、私の聞いたところでは、これは聞き方があるいは不十分であるかわかりませんが、峰地鉱の場合には、前の古河が退職金を支払って、その退職金を運用することによって、新会社で働いておる人たちもその運用等で必ずしも収益は下がっておらない、こういう話をされております。おそらくこういう点が、新会社を設立して、そこで引き続いて採炭する、こういう点の話し合いがついたゆえんだろうと私は思います。もし話し合いがつかないのなら、第二会社など絶対にできるはずはない、こういうふうに思います。どの程度まで組合経営者との間での話し合いがついたか、大事な鉱害の復旧はそれじゃできておるのかどうか、あるいは保安の問題はどうだ、こういう問題が私ども行政官庁としては非常に気になる問題であります。鉱害復旧の問題は、新経営者が一応形の上で引き継いでその責任を負うといっても、これを実際に負わないなら、これは私の方が行政指導する点があるだろう。また、第二会社になったために前よりも保安が非常に悪くなった、こういうことでありますならば、もちろん監督官庁として、生命に関することですから、責任を持ってこれは整備しなければならない。そういう事柄が会社経営の負担になって、経営ができなくなる、こういうことがありましても、これは仕方がないことだと私どもは思います。そういう場合には、その山をやめていただく以外には方法はないだろう、しかし、それが一通りの基準にかない、そして一応済んでおり、同時に、双方で話し合いがついておるなら、これは私は、特に労働条件が過重になったとかなんとかいうだけで、形式的な労働条件で云々するわけにはいかぬだろう、ただ、もちろん、今の労働基準法にも、これが非常な過重労働、こういうことになることについては、法規がございますから、賃金は安くなりましても、労働時間なりはやはり法規を守らざるを得ないから、それまでの搾取はないだろうと私は思います。さらに進んで、第二会社が今度租鉱権者に移るとか、さらにどうとかいう場合に、ただいま申し上げました行政官庁として責任をとる点、これを強く堅持していくことが一つ、もう一つ、私どもが最終的にこれだけは絶対にやらしてはならないと思いますととは、政府買い上げた山を再び掘らすということは、これは絶対にさせない、今度はこの点だけは非常に明確になったようでございます。だから、この点は一歩進んだと思います。この問題は、いろいろの鉱区の問題のお話が出ておりますが、なるほど、今地下資源としては一部残っておる、隣の鉱区とこれが一緒になればその山が掘れるという話をしばしば聞いて、鉱区の譲り受け等を希望した向きもあるようであります。これなども法律でやはり規定をしていて、保安上そういう掘り方はいかぬ、その鉱区を譲ることはいかぬというような問題もあるようでございます。これも、経営者同士だけでは鉱区の譲り渡しはなかなかできないと思います。組合が必ず了承しないと、鉱区の譲り渡しをやっておらない。  また、滝井さんの先ほどの従業員の転職の話、七万人のうち、あるいは五万人が再就職するというお話がありました。だんだん小さい会社に行くというお話がございました。私は、小さい会社に行く例ばかりでもないだろう、大きい会社にも移るのではないかと実は思います。炭鉱労務者ぐらい、離職が多くて再就職の多いものはない。これは先ほどのような実例だけでお話しにならないで、総体の大量観察をしてみると、必ずしも不都合ばかりではないのではないかと実は思います。ただ、私が先ほど来のお話で一番気になります点が一つございます。それは、私どもが今日まで五千五百万トンの数字を申し上げた。それで、滝井さんがお聞きになりますように、五千五百万トンの数字にこだわる限り、離職者、退職者はどんどん出てくるのではないか、この点でございます。この点は、私どももうすでに御披露いたしましたように、五千五百万トンを絶対それよりふやさないと申しておるのではございません。だから、採算がとれる方法があるならば、それは五千五百万トンが六千万トンになったって、六千五百万トンになっても、これは大丈夫でございます。けれども、ただいまのところ、まだ五千五百万ンの炭が出ていないのだから、今から、六千万トン掘るのだとか、六千五百万トン掘るのだとか、そうしてそれが千二百円下げ石油とも太刀打ちができるのだということは、いかにも先走り過ぎるという感じがいたしますので、私は、ブレーキをかけておるのでありまして、千二百円下げができたり、あるいは千三百円下げができるというような状態のときに、五千五百万トンにくぎづけにする要はないと思います。従いまして、石炭産業というものを、国内資源である石炭は引き続いて掘っていく、こういう立場に立っております限り、これはぜひとも盛り立てていくつもりだし、そうするならばおそらく能率が上がり、そうして新鉱が開さくされるならば、これは従業員自身が離職するといううき目を見なくても済むのではないか、かように思います。本来の姿はそういう方向であってほしい。ただいまの段階では、やむを得ず、合理化が進まない、こういう立場から、ある程度労働者の数が減る、こういうことになる。これは本来望ましい姿ではございません。私ども、そういうことを避けたいと思います。しかし、なかなか合理化が進んでいかない、ここに実は悩みがあるのであります。いろいろお話がございましたが、私は、経営者自身のわがままは許すつもりはございませんが、しかし、経済的なあり方としての労使双方の話し合いというものがやはり中心をなす、政府、役所が関与する範囲はおのずから限定されるものだということを御了承いただきたいと思います。
  38. 滝井義高

    滝井委員 実は、昭和三十七年度に二百三十二万トンの合理化を一応やっていく、ところが、二百三十二万トンの合理化以外に、維持群の中から相当多くの失業者が出てくる客観情勢がある。その具体的な例として、たまたま私の郷里に起こっている三井の問題と大峰の問題をあげたわけですが、この二百三十二万トン以外の、維持群の中から出てくるものを、やはりある程度予測をすることが必要なんですね。大峰の七百人など、まさにわれわれが予測をしていなかったものが出てきたわけです。私もその付近に住んでいて、三井が千人か二千人くらいはやるだろうということは聞いておりました。けれども大峰がそういう形になるとは夢想だにしなかった。これはおそらく労働者も同じだろうと思うのです。こういう二百三十二万トン以外のプラス・アルファというものが、五十万トンなら五十万トンというものが出るのだという把握は、少なくとも監督官庁であるあなた方としてはしておかないと、話にならないわけですよ。労働省とのかね合いも出てくるでしょう、あるいは自治省とのかね合いも出てくるでしょう、そういうものが突如として出てくると、そこの自治体は全く予算が組めないのです。それはどうしてかというと、ことしの予算を組むのに、たとえば鉱産税が出るであろうと思って組んでおったのに、第二会社にかわって七百人の労働者が首を切られた、そうすると、まず市民税が狂ってしまう、鉱産税が狂ってしまう、固定資産税も狂ってしまう、そうすると、地方自治体の財政計画も立たないという問題が出てくるわけですよ。こういう予想をせざるものについては、あなた方がそれぞれ鉱業権者に向かっても、昭和三十七年度の計画はどうだ、三十八年度の計画はどうだ——五千五百万トンを維持し、千二百円下げるためには、それぞれの会社にはそれぞれの専門家がおって、自分自身の山の計画というものはみんなお立てになっておるはずですよ。それを出させることは、あなた方の権限でできることですよ。だから、その場合に出てくる以外のことをおやりになる場合には、それは困る、そういうことをやるのならば、私は資金面でコントロールしますよ、政府政策に協力しないような炭坑には、無利子の近代化資金は貸すことはできません、これでいいのですよ。今の炭鉱屋さんは、ただこの一言で参ってしまう。そういうことをするところの労務者については、あなたの方の雇用計画責任を持ちませんよ、これでいいのですよ。そうすれば、労働者は、政府責任を持たぬような山をどうしてやるのだと事業主に言うのです。そんなものはわけないですよ、政治権力を握っておるのですから。それだけを言ってもらえばいい。ところがそれを言わずに、まあまあそれじゃ何とか考えましょうということになるから、むちゃなことをやって、われわれがここでこういう話までしなければならぬことになるのですよ。だからそこらあたり、何か資金面と雇用の問題からある程度——これは一般論として例をあげたので、政府計画以外のことをやられることは非常に秩序を乱す——政府は最近新しく、民主的秩序の保持に関する法律案をお出しになろうとしているが、むしろ私は、炭鉱業の民主的秩序の保持に関する法案というものが、国会より先に今必要だと思うのですよ。そういうものを一つ出してもらう必要があると思うのですが、そういう一般論としてぜひこれは大臣、いろいろ思いつきの質問をして申しわけなかったけれども、思いつきといったって私の常日ごろ考えておるところですけれども、何かきちっとした、少なくとも仁丹を十粒飲んだくらいのすっとする気持くらいはさせてもらわぬと、どうも何かもやもやしたものがあっていかぬと思うのですよ。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だんだん話が詰まって参りまして、滝井さんの御指摘の点も私わかってきたようでございます。御承知のように、労務が不足する場合は、経営者から政府に対して労務確保の要求が必ず出ます。これは最近中小企業基本法を作ろうといえば、中小企業の労務の確保が必要だというような話があります。労務が過剰になった場合の連絡が全然ないといったら、今のような問題になるわけです。ことに石炭が今の合理化を進めていく段階におきまして、年当初においての一応の計画を、場合によれば大企業からもとってしかるべきであろうという感じが、お話を通じて私にして参ったのであります。私はしばしばお答えしたと思いますが、スクラップになる山の従業員が離職することは非常にはっきりわかるが、そればかりが離職じゃない、今残る、あるいは開発する場合にいたしましても、能率のいい山といっても、今の従業員そのままをかかえていくのにはいかにも規模が小さいというものがあるのだ、だから、その出炭規模を維持しておる限り、そういう山でも離職者が必ず出るだろうということを、しばしば指摘して参っております。そういう意味から申せば、そういう山についての事業計画なり、離職者の、労務の必要数というものの計画をやはり会社は持ってしかるべきだ。そういうものについて通産省なら通産省が事前に指導することができれば、今御指摘になりましたような摩擦は、幾分でも緩和させることができるのじゃないか。そういう意味で、これは私どもも大へん啓蒙されたのですが、いわゆる計画経済ではございませんが、ただいませっかく合理化を進めておる最中でございますから、もう少し実情に沿うようなデータを私どもも把握して、不用な摩擦を各方面で起こさないようにしたい、かように考えます。
  40. 滝井義高

    滝井委員 これで終わりますが、できれば一つ六百二十万トンとは申しませんが、二百三十二万トンの、山の名前をあげるといかぬと言われると工合が悪いから、地域的な資料ですね、今言った三井大峰のような維持群、これは近代化資金をつぎ込んで能率を上げれば、当然労務者は少なくていいわけですから、そういうものの資料ができれば、あわせて一つ作ってみてくれませんか。これは合理化法が上がるまででけっこうです。
  41. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまの二百三十二万トンについての地域的な見通しというものは、一つできるだけ作っていきたいと思いますが、山別になりますと、その辺は、現状ではまだちょっと困難かと考えます。  それからちょっと今誤解がありましたので申し添えますが、スクラップ二百三十二万トンというものからの人員減は、われわれとしては一万六千人程度を予定いたしております。三十七年度は、全体としては、労働省との話し合いで今やっております数字は二万七千五百人ということで、離職者の対策を講じておるわけであります。大峰の人員減につきましては、この二万七千五百人のうちで、ある程度はもちろん考えておったわけでございますが、最初から、第二会社みたいな、ああいう形を予想して考えておったわけではございません。ある程度の人員減は、田川の場合においても大峰の場合においても、一応考えておったのであります。
  42. 有田喜一

  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 あすからの審議に必要な資料を要求したいと思います。できなければできないではっきりしてもらいたいと思います。  まず第一点は、コストの関係なんですが、合理化法が施行されて今日までの合理化進行過程の中で、公共料金、資材代が値上がった、全国平均でばく然と資料が出ておるわけですが、これを地域別に、公共料金の値上げあるいは諸物価、諸資材の値上がりによって、一体コストにはどういう影響を及ぼしておるか。  それから第二点は、合理化の反転現象として、たとえば首切り、退職資金がどんどん出ておるわけです。それに関連して、企業を切り離せば、それに対する実績も当然出て参るわけです。そういう合理化を進める反転現象としてコスト高という面があるわけですが、これの趨勢はどうなっておるかという資料です。  第三点は、消費構造が変わってきておるわけです。長期の展望に立つと、電力用炭がどんどんふえて、今までのほかの需要が減ってくるわけです。ところが、電力用炭の場合には石炭の価格が、比較的大口消費のために安いわけです。従って相対的に、売り上げ炭価の手取りが下がってくるわけです。一体その趨勢はどういう状態であるか、長期の見通しは一体どう考えられておるか、こういう点が、コスト上問題になってくるわけです。それと、大きな問題として賃金の趨勢、これは合理化計画によれば、三・八%の賃金アップを一応認めておる。ところが、その後変更して、大体製造工業の平均である四・六%の賃金アップを認めるということに変わってきておるわけです。従って、それらの賃金の趨勢はどうなってきておるかという点がコスト関係に対する資料です。  それから次の問題としては、現在の炭鉱会社の短期、長期のいわゆる借り入ればどうなっておるか。特に開銀あるいは昔の復金、炭住関係などがあるわけですが、それは今日一体どういう実態になっておって、その支払い金利、返済はどうなっておるか。特に政府関係、財投関係を中心にして、長期、短期の借り入れの趨勢はどうなっておるかということを、資料として提出願いたいと思うわけです。  それから次は、近代化資金が貸し出しをされておるわけですが、これは四割政府が出すわけです。五年間利子をたな上げにして、五年後から返済に入るわけですが、との近代化資金と自己資金、さらに開銀から当然あとの四割が出て参るわけですが、これが今日、近代化資金を投入したけれども、それがその山で一体コストにどういう影響、どういう形になって出ておるか、利子はトン当たり一体どういう形になっておるか、近代化資金を貸したが、それはどういう状態になっておるか、この点に問題があるわけです。これから近代化資金を投入するためには非常に大事な問題で、この点に関する資料の提出を願いたいと思うわけです。  次は、労務構成の問題なんですが、合理化を実施する場合と今日の労務構成とは、一体どう変わっておるのか。これは、従来炭鉱職場であるべき常識的な範囲も漸次狭められる、こういう傾向に実はあるわけです。従って直轄、組夫と臨時夫を加えて、福利厚生、鉱害関係を第二会社に切り離す、こういう実態、趨勢はどういう形になって、どういう変化をもたらしておるのか。この点は将来の労務構成の安定の面から非常に大事な問題でありますから、中小炭鉱の場合は無理でしょうけれども石炭協会の関係はぜひ出してもらわなければ、合理化法の首切り資金の保証なんですから非常に問題点があると思うのです。これを一つ的確に出してもらいたい。特に、先ほど大臣が言っているように、組夫の場合はむしろ炭鉱関係は求人難に陥っている。そうして直轄の方は余っておる。こういう現象が実は出ておるのですが、その点はどうなっておるか、こういう点についての資料の提出を願いたいと思います。  次に、炭鉱会社の関連企業が最近ずんずんふえてきておる。これに対して出資をしておるわけです。従って直接五〇%以上の資本金を出資している関連企業というものは、合理化法が施行されて今日まで、どういう趨勢で一体増加をしておるか、それだけの額が一体関連企業に投資をされたか、そういう趨勢について一つ資料を提出願いたいと思うのです。  最後に、これは北海道に特にその声が強いのですが、坑木の問題がまだ未解決の状態にあるわけです。九州の場合には比較的問題がないようですが、北海道の場合には国有林が非常に多いので、坑木の入手の問題で非常に保安上の問題も冬あたりには惹起しておる。まだそれが改善されていないで、北海道では坑木協会というものが作られて、坑木の需給安定に努めておる。これはまだ解決されていないわけです。従って解決するとすれば、これは国有林の関係、やはり国の施策として解決しない限り、北海道の場合には民有林が少ないのですから、解決できないわけです。従って、その点についてはどういう実態にあるのか、それを一体どう解決していこうとするのか、いずれにしてもそういう坑木関係の資料を出していただきたいと思うのです。  時間のかかるものもあると思うのですが、でき次第一つ早急に出してもらいたい。できれば、あすあたりまでにできる資料がこのうちあればお知らせ願いたいと思うのです。
  44. 今井博

    今井(博)政府委員 これはすぐできるものもございますし、ちょっと時間をかけなければできないものもございますので、できるものからそろえて出します。
  45. 有田喜一

    有田委員長 次会は明二十一日午後一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会