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和田参考人 日本伸銅協会専務理事の
和田でございます。本日ここに
国会におきまして、初めて
伸銅工業の
実情につきまして所見を申し述べる機会をお与え下さいましたことを、
委員長初め
委員の諸
先生方に衷心より感謝申し上げます。
伸銅工業は圧延、押し出し、抽伸等によって、銅及び
銅合金の板、条、管、棒、線を作る
工業であります。現在主として作っております
銅合金は
亜鉛との
合金であります
黄銅、すず、燐との
合金であります、
燐青銅、ニッケル、
亜鉛との
合金であります
洋白等、それらの
伸銅品は
完成品として使用されるものはきわめて少なく、ほとんど他の
製品を作る
材料として加工して使われております。
伸銅品は
展延性、
切削性、
耐蝕性、
導電性、
熱交換性がよく、しかも色がきわめて美しい
特徴を持っております。銅のこれらの
特徴のうち、
導電性のよいことを利用して
電気を伝える用途に使われておるものに
電線がありますが、最近は
伸銅品も直接
間接に
電気機器関係に大量に使われ、その
使用量は
伸銅品の全
需要量の約四〇%ぐらいになるのではないかと思われます。このほか最近は
自動車、
生活用品等にもだいぶ伸びております。また
雑貨工業に使用される
伸銅品の量も少なくありません。
雑貨工業は御承知の
通りそのほとんどが
中小零細企業でありますが、その
製品は多量に
輸出され外貨の獲得に大いに貢献しております。このほかいろいろな方面に使われておりまして、
金属材料としては鉄に次いで大量に使われております。
もともと、
わが国の
伸銅工業は古代より非常に古い歴史を持っておりますが、
明治初年以前はいわゆる
手打ち伸銅の
時代であり、
明治三十七、八年の
日露戦争を契機として、近代的な
機械化伸銅の
時代に入りました。その後
わが国の
発展、軍備の拡充に伴って
軍需物資として次第にその
生産を拡大しまして、
昭和二十年の
終戦を迎えたのであります。その間の
最高生産は
昭和十九年の十二万九千七百七十八トンであります。
終戦によって、それまでの
軍需一辺倒であった
伸銅工業は
需要面において全く壊滅的な
打撃を受けました。しかし、
昭和三十六年の暦年においては、三十一万五千四百三十三トンの
生産を上げ、
世界第四位となったのであります。そしてこれは
昭和十九年に比べて二・五倍に当たるのであります。これには
軍需品はほとんど含まれておりません。その全部が
一般産業、
生活用品等に使われておるのであります。全く昔
軍需今民需ということであります。今日の
伸銅品の
需要がこのように一変しておるということは、
終戦までの軍部、つまり
国家資金による
国家目的のための
生産消費と比べまして、今日の
銅価格の
あり方を考える場合に重要な
ポイントであると思います。
現在
わが国の
伸銅メーカーの数は百七十社でありまして、そのほとんどが
中小企業であり、三百人以下の
企業数は百五十二社で、全体の約九割を占めております。
従業員数は二万七百十人であります。工場は東京、埼玉、大阪、京都に特に多く、そのほか
全国に散在しております。
次に、
競合品との
関係であります。最近の銅の
競合品の
伸び方には目をみはるべきものがあります。すなわちアルミニウム、ステンレス、
合成樹脂等、
価格が安く、しかも
技術的進歩が著しいために急速に大量に
生産、普及されつつあります。銅を主体とする
製品で
競合品との
競争に最も多くさらされているのが
伸銅品であります。
次に
伸銅品の
コストでございますが、
伸銅品は銅、
亜鉛並びに銅及び
銅合金の
スクラップを溶解してまず鋳塊を作り、それを圧延加工して所定の
製品寸度に仕上げるのでありますが、でき上がったものは
地金のままのまる裸であります。従って
コストの中に占める
原料費の割合はきわめて高く、最も
生産量が多くかつ
製造メーカーの多い
黄銅棒において八四%を占めており、銅板八〇%、
加工度の比較的高い
銅管においても七三%を占めております。従って
伸銅品の
需要の
増大をはかり、かつ
競合品との
競争に打ち勝つためには、何よりも
価格の安いことが要請されるのであります。
価格を安くするのには、
加工費の低減をはかることはもちろんでございますが、何といっても
原価の約八〇%を占める
原料費が安くならなければどうにもしようがありません。かりに
原価の八〇%が
原料費、二〇%が
加工費の場合においては、
原価の二〇%を占める
加工費を一割下げましても、全体の
原価ではわずかに二%下がるだけであります。これが
原料費が一割下がれば、全体の
コストが八%安くなるのであります。従って、今後
わが国の
伸銅工業が生きていけるかどうか、またさらに
発展するかどうかの重大なキー・
ポイントを握るものは、
原料価格であるといっても過言ではないと思います。
次に、
伸銅品の
流通機構でありますが、
メーカーの
生産した
伸銅品の約七割は、
伸銅品問屋を経由して売られております。
伸銅品問屋は
全国にまたがっており、その数は
問屋組合加盟以外のものを合わせますと、約一千店に及ぶものと思われます。また、
伸銅メーカーが
原料として使用する
スクラップ——スクラップの大部分は
伸銅メーカーが消費するのでありますが、その
スクラップを扱う故
銅問屋の数は約一千店あります。このほかに集荷、
建場等を入れますと、約一万店を数えるのではないかと思われます。これらの
製品、故
銅問屋は、そのほとんどが
中小、
零細企業であり、これらの
問屋は、
伸銅メーカーを中核として、日々の
営業活動を行なっておるのであります。従って、これらの
問屋は、
伸銅工業の
浮沈盛衰によって大きな
影響を受けるのでありまして、それらの
方々の
生活の安定をはかることも、また重要なことではないかと思います。
以上、
伸銅工業に関する概要を申し上げましたが、次に
自由化の問題について少し申し上げてみたいと思います。
今日の
世界の
情勢において、国内自給自足的なアウタルキー経済をとるべきでないことは、明らかであります。特に国際商品である銅、亜
鉛等においてしかりであります。たといそれがいかに物として存在していても、経済性を伴わないものは、しょせん商品と呼ぶことはできないのであります。それは単なる物にすぎないということは、経済社会の常識であります。そのために経済性のすぐれた商品が各国間に
輸出または
輸入され、各国互いにそれぞれ長所を発揮して、
産業、文化の進展に貢献し、それによって人類の
発展向上があることは、今さら私が申し上げるまでもないことであります。
銅、亜
鉛等の資源は
世界的に幾分偏在するとはいえ、今日の
世界の
需要に対しては十分な供給力を持っております。
また、今日
わが国における銅の
需要は、もっぱら民需で、軍事目的を持つ
軍需はゼロであります。従って、銅の
価格は
わが国産業経済の
発展、国民
生活の向上のために、できるだけ安いことが必要であります。また
世界には膨大な銅資源を持ち、しかも民度の低い低
開発国があるということは、この際
わが国の銅政策を考える上において、銘記すべきことであると思われます。
次に、
わが国の最近の銅の需給状況でございますが、
昭和三十六年度の銅の需給計画を見ますと、
電気銅の
輸入量九万五千トン、
輸入鉱石によって国内で
生産される
電気銅の量が十一万八千トン、これに
輸入スクラップによると思われる
電気銅生産を加えますと、
輸入による
電気銅は約二十五万トンになり、
電気銅の
需要量三十八万トンに対して、実に六六%の多きに達するのであります。このほかに銅くずの
輸入量一万トン、
銅合金くずの
輸入量が、
銅分で約九万トンありますので、それらの
輸入の
電気銅、鉱石、くずを合わせますと、
銅分で
輸入しているものは約三十五万トンの多きに達するのであります。これは三十六年度における
わが国の全
銅分の
需要量の約五二%に
当たります。この場合の国内鉱石による
電気銅の割合は、わずかに一三%にすぎないのであります。この事実は、今日の
わが国がいかに大きな銅の
輸入国であるかということを雄弁に物語っており、今日
わが国がいかに銅を安く
外国より買う必要があるかということを示しているものであります。
さて、銅の
価格の点でありますが、今日銅の国際相場のおもなものは、米国大手三社の
建値、ロンドン金物取引所相場、すなわちLME相場とE&MJの発表するもの、米国買鉱製錬業者の
価格等であります。そうしてこれらの
価格は互いに密接な
関連を持っております。このうち米国大手三社の銅は、米国内においてほとんど売りさばかれておりますので、
フリー・マーケットで取引される
銅価格の基準は、LME相場と買鉱製錬業者
価格であります。
今日米国に次ぐ大手の
電線、
伸銅品の
生産国である
英国、
西独は、主としてこれらの
価格を基準として銅を購入しております。そうして両国とも
電気銅、
スクラップに対する
輸入関税は
無税でありますので、
電線、伸銅業者の入手
価格は、
わが国に比べて大幅に下回っておるのが
実情であります。それらの安い銅によって製造された
電線、
伸銅品は、さらに
電気機械器具、
自動車、機械、
生活用品等の
価格を有利に形成しておるのであります。
英国、
西独とは、
わが国の伸銅、
電線のみならず、銅を使用した
製品においても競合
関係にあるのであります。
原料が
無税で、しかも合理化された優秀な機械で、
わが国より大量に
生産しておる
英国、
西独等を相手として
国際競争場裏に立たされる
わが国伸銅メーカーとしては、少なくとも
電気銅、
スクラップの
関税は、
英国、
西独並み、すなわち
無税にしていただきたいと衷心より切望する次第であります。
また、
わが国の国内
銅価格が、
国際価格に比べて高く維持されることは、
輸入スクラップの
価格もまたそれにつれて割高に買わされることになり、現に
海外においては、フォー・ジャパン・プライスというありがたくない相場が作られております。そのために無益に
海外に流失する外貨は、
昭和三十六年度において約一千万ドルの多きに達するものと思われます。
このような
国内価格が高いための貴重な外貨の流出は、戦後
わが国が
スクラップの
輸入を始めてより今日まで続いており、
わが国銅価格をすみやかに
国際価格にさや寄せする必要が痛感されるのであります。またさらに不利な買付を助長している
電気銅等のFA制を改め、すみやかに
自由化することの必要もまた痛感されるのであります。このことは銅のみならず、
亜鉛についても同様であります。
現在のように、国内において採鉱、製錬された銅の
価格が、
国際価格に比較して高い限り、それを
海外に
輸出することは不可能であります。また精銅はそのままでは
原料としてしか使えませんので、それを加工して、
電線、
伸銅品、鋳物にし、
伸銅品の場合には、これを
材料としてさらに加工して、初めて
完成品となるのであります。従って、銅の
価格が高いということは、これら
関連産業の
製品の
コストをすべて高くする結果になり、銅を使用した商品が
自由化された暁においては、その
影響するところは、はなはだ大きいのであります。従って、
電線、
伸銅品並びにそれを使用した
製品が、
海外において、また国内において、
銅価格の割高のためた
海外品との
競争に敗れ、あるいは国内の他の
競合品に置きかえられたならば、
わが国の鉱山はたちまち、その
需要先を失い、存立が危機に見舞われることは、火を見るよりも明らかであります。よって、
わが国鉱山の維持、
発展をはかるためには、銅を使用する
産業が
海外との
競争、国内の
競合品との
競争に負けないように、銅の
価格を設定することが、ぜひとも必要であります。このことはまた
伸銅品電線のみならず、二次、三次
製品の
輸出の
増大をはかるべき
わが国にとって大きな問題であります。国破れて山河ありと言いますが、わが
国産銅業においては、
需要家滅びて産銅業なしということであります。
わが国の銅
コストの高いのを国がめんどうを見られることはけっこうでありますが、それをわれわれ
需要家が負担させられることは絶対に困るのであります。
私は門外漢でありますので、よくはわかりませんが、いわゆる産銅業といわれる鉱山、製錬業はその
生産過程等より大別して採鉱、製錬に分けて考えるのが至当ではないかと思われます。
まず製錬でありますが、
わが国の製錬技術は、
関係者の熱心なる研究努力によって
世界的水準に達し、きわめて優秀であり、また製錬能力も年を追って向上し、
コストも
海外と大差なきまでに合理化されつつあるやに仄聞しております。
次に、採鉱、すなわち鉱山でありますが、これは
わが国の資源の賦存度が低く、量も少なく、また品位もあまり高くないようでありますので、この点が
わが国の銅
コストを高からしめ、
海外との
競争、
自由化に際してのネックになっておるのではないかと思われます。
横道にそれますが、これに比べて本来銅の
国際価格が基準である
輸入鉱石による
電気銅の
コストは安いはずであり、今の銅の
価格はおかしいのではないかと思われるのであります。
さて、
海外の割安な鉱石に対して、国としてどうしても国内鉱山を守り、しかも
電気銅価格を上げないためには、国内鉱山が稼行できるように国家が保護を加えるべきであろうと思います。それを行なわないで、
需要者にその割高分をしわ寄せし、負担を転嫁することは、大切であるべき
需要家に逆に不当な圧迫を加えるものであり、妥当な措置とは申せないのであります。また少なくとも今後新しく内外で開発される鉱山、製錬所等については、必ず
国際価格を基準としてこれに見合うようにやっていただくことを希望いたします。
また今日の
わが国の製錬業の実態は、国内鉱出三二%、
輸入鉱、
スクラップ出六八%に達し、買鉱製錬業者的色彩がきわめて濃厚であり、今後もこの傾向はある
程度続くものと思われます。これは国内で自分で鉱山を持って稼行している
鉱山業者と立場が非常に違うのであります。今日全体の
銅需要量に対して、わずか二二%の供給源にしかすぎなくなった国内鉱石のために、
国内価格を高く設定し、それによってさらに
スクラップを含めた
わが国全体の
銅価格を高くすることは、国民経済上大きな不利益をもたらすものであり、国としてとるべき方策ではないと思います。そのためには銅の
関税は
無税もしくはきわめて低率に抑え、経済性のない国内鉱に対しては別途国において十分保護対策を講じていただくことが、結局国民経済上利益であり、また国内
銅価格の割高による貴重な外貨の流出を防ぐことにもなるのであります。この辺のことを十分お考え願いたいと思います。
次に、
自由化の時期についてでありますが、最初に今回
国会に提出されております
地金の
輸入関税の決定するまでのいきさつについて申し上げてみたいと思います。今回の
自由化にあたって、
電気銅、
亜鉛について山側から出されました
輸入税額、及び暫定期間等はわれわれ
伸銅メーカーにとっては
実情よりしてとうてい認めがたいものでありましたが、今後次第に
国際価格にさや寄せし、その格差を縮めていくことを強く
要望いたしまして、涙をのんで了承した次第であります。またその税率、暫定期間ともに山側の当初出されましたものそのままをのんだのであります。
さて
自由化の時期でありますが、私
ども伸銅メーカーとしては、
伸銅品を使用したものは逐次
自由化され、本年十月にはその大部分が
自由化される予定になっておりますので、今日の状態はまことに困ったものであります。
地金と
伸銅品等の
自由化の時期については、かねてより過渡的な混乱を避け、スムーズに
自由化に移行するために、
伸銅品の
自由化より少なくとも半年以前に
地金が
自由化されるように当初より
当局にも
要望しておったのであります。さらに望ましいのは、
伸銅品を使用した
製品の
自由化は、
伸銅品の
自由化よりも、後にずらしてもらいたいと考えていたのでありますが、現実は御承知のような状況で、
完成品からの
自由化が進みつつあるのであります。従って、今日においては、
電気銅、
亜鉛の
自由化はぜひとも本年十月からやっていただくことを切望してやみません。今後は
海外より安い銅を使った
伸銅品並びに二次、三次
製品が
輸入されたり、またはオファーがくることは明らかであります。その場合に、
原料が
自由化されておらなければ、ますます
原料高の
製品安となり、われわれは
自由化以前において赤字経営による倒産のやむなきに立ち至ることを心からおそれている次第であります。この点からも、
電気銅、
亜鉛の
自由化はぜひ本年十月にお願いいたしたいと思います。
なお、
電気銅等の
自由化以前において
伸銅品を
自由化するなどのことがあれば、暴挙この上もないことであります。
また現在のFA制のもとでは、
伸銅品の
輸出は、諸
外国に比べて幾多の不利に立たされ、
輸出が阻害されておりますので、
輸出の増進のためにも早期
自由化がぜひ望ましいのであります。
以上
伸銅工業の概要並びに今回の
自由化について所見の一端を申し上げたのでありますが、もう一言申し述べさしていただきたいと思います。
私
どもは、国内で採鉱や製錬が行なわれることには少しも反対するものではありません。しかし、率直に申し上げまして、今日の
現状では、われわれ
需要家にとってそれがどれだけ役に立っておるかということについては、少なからず疑問を持たざるを得ないのであります。つまり
需要家に対してうしろ向きのことがたくさん行なわれておると思うのであります。こんなことでは、いっそ
わが国に山がなければよいとさえしばしば感じさせられるのであります。口には出しませんが、こんな気持は
需要家のだれもが心に持っている偽わらざる気持ではないかと思います。それを
海外の銅の供給は不安定で、国内の山が安定供給者であるとか、鉱石で買えば外貨が節約されるとか、
電線、伸銅を初め、
関連産業の健全な
発展を期するためには、われわれの手でコントロールできる供給
地金を確保する以外に道がないとか言われますと、それでは
終戦後ストのなかった年が一体何年あったのか、
銅価格が高いために
輸入の
スクラップをどれだけ高く買わされたか、それによる貴重な外貨の流出がどれだけあったか。別に山でコントロールされる
地金を確保していただかなくとも、幾らでも入手の道はありますと言わざるを得ないのであります。そこで山があることによるプラスよりも、山の
値段が高いために、
伸銅品はもちろん二次、三次
製品まで
輸出が阻害されておるのであります。
伸銅品の
生産の伸びにブレーキがかけられている、
競合品との
競争に不利な立場に立たされている、山を保護するためにFA制がとられ、そのため入手の不便を煩瑣な手続にわずらわされております。そのために今まで申し上げましたようなことを言いたくなってくるのでありますが、そうしてこういうことでは、山は
需要者の犠牲の上にあぐらをかいておられるのではないかとさえ感じられるのであります。これは何も山があることが悪いということではなくて、今までのやり方が悪いのでありまして、あしたからでも
国際価格並みで銅を売っていただけるなら、こんな不平は一ぺんに吹っ飛んでしまいます。つまり
価格の高いことがすべて原因であります。そのためには、
関税の引き上げによらないで、画期的な国内鉱山の保護策を講じていただくことがぜひとも必要であると思います。
なおローデシア・セレクション・トラストのプレイ会長が最近
世界の銅
生産者が買手に売り渡す
生産者の
価格と一九七五年までの銅の需給と
価格の見通しについて興味のある発表をしておりますので、簡単にそれを要約して申し上げますと、
世界の銅
生産高の約五〇%の
コストは十七セント半ないし二十セント、つまり十四万円から十六万円である。全体の平均
コストは約十九セント半、つまり十五万六千円である。次に一九七五年までの銅の長期見通しは明るい。消費の増加と同一歩調で供給が増加することは間違いないと確信しておる。銅の
価格が三十セントの場合には
需要が伸びるが、三十五セントの場合には成長率のいかんにかかわらず
需要は減退する。銅の
価格と消費成長率の
関係については、
銅価格は
生産量、
消費量を左右する。国連推定の三・五%の成長率では、一九七五年まで需給はバランスを保つであろう。三十五セントの場合には、消費成長率のいかんにかかわらず、供給過剰となるであろう。また政情不安定な地域では、
生産は増加しないという前提で見通しを策定することは非現実的である。消費成長率は三・五%ないし五%の中間と思われる。将来の
銅価格は三十セントから三十五セントの中間を予想しておる。IMEが一九五三年八月再開以来一九六二年一月までの平均
価格は三十二セントであったというようなことを言っております。あるいは御
参考になろうかと思いまして申し上げた次第でございます。
また今さら申し上げるまでもないのでありますが、銅
産業は鉱山だけでは成り立たないのでありまして、それを使う
需要業界があって初めて成り立つのであります。従って、採鉱、製錬の面のみならず、われわれ
需要業界のことも、少なくとも同等に考えてやっていただきたいのであります。幾ら山で
電気銅などを作っても、特に
わが国の場合には、
現状では、
電気銅は
海外に
輸出することは、
価格的に不可能でありますので、国内
需要家あっての鉱山であるということを十分にお考えいただきたいのであります。その
需要業界が
海外より割高のために伸びなかったり、あるいはつぶれたら、幾ら
日本で銅を作っても、一体だれに売るのかということであります。私
どもは今日まではいたしかたなく高い銅を買ってきたのでありますが、ほとんどの
製品が
自由化された暁には、いつまでもそうはいかないのであります。その辺のところを十二分にお考えいただいて、十分な
施策をとっていただきたいと思います。
また私
ども伸銅メーカーのほとんどが
中小企業でありますので、特に
中小鉱山の苦衷はよくわかろうかと思います。私
どもは
中小鉱山がつぶれることを決して望んでいるものではありません。ともに生きていくのにはどうすればよいかを日夜考えておる次第であります。しかし、また、われわれ
伸銅メーカーにも、
自由化のきびしさはひしひしと身に迫っておるのでありまして、山を救うことには賛成でありますが、それを
需要者の負担においてやることは、われわれにとってとうてい耐えられません。山のことについては、国民経済上必要な限度において国が十分めんどうを見ていただくことを切望いたします。
最後に、
電気銅、
亜鉛の
自由化はぜひとも本年十月からやっていただきたいということをお願いいたしまして、私の話を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。