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1962-07-10 第40回国会 衆議院 商工委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年七月十日(火曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木秀世君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       田中 榮一君    中垣 國男君       中川 俊思君    野田 武夫君       林   博君    原田  憲君       南  好雄君    山手 滿男君       岡  良一君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中嶋 英夫君       中村 重光君    山口シヅエ君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  委員外出席者         外務事務官         (経済局長)  関 守三郎君         大 蔵 技 官         (関税局関税調         査官)     木谷 忠義君         農林事務官         (農林経済局経         済課長)    枝広 幹造君         農 林 技 官         (振興局園芸課         長)      石井 一雄君         農 林 技 官         (林野庁林政部         林産課長)   楠  正二君         通商産業事務官         (通商局次長) 宮本  惇君         通商産業事務官         (通商局農水産         課長)     吉原平二郎君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川出 千速君         参  考  人         (石川小松市         市会議員)   深田善九郎君         参  考  人         (石川県県議会         議員)     竹内 伊知君         参  考  人         (日本陶磁器輸         出組合理事長) 永井精一郎君         参  考  人         (日本陶磁器工         業協同組合連合         会理事)    加藤 壽保君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 七月十日  委員岡田利春辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡良一辞任につき、その補欠として岡田  利春君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  通商に関する件  鉱業に関する件      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  鉱業に関する件について調査を進めます。  本日は、金属鉱山の問題について参考人として石川小松市会議員深田善九郎君がお見えになっております。  この際一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ御出席をいただき、まことに御苦労様でございました。参考人の方には、最初十分程度金属鉱山の現状について御説明及び御意見をお述べいただき、あとそれぞれ委員からの質疑に答えていただきたいと存じます。深田参考人
  3. 深田善九郎

    深田参考人 今御紹介にあずかりました石川小松市の尾小屋鉱業所地元から参りました深田でございます。  尾小屋鉱業所が創業いたしまして以来八十年の星霜を経ておるのでございます。この間盛衰は多少ありましたが、一時は非常に盛んな鉱山であったのでございます。その間、私ども地元民にとりましては、先代、先々代の時代からこの鉱山とともに生業をいたして参っておるのでございます。しかしながら今回貿易の自由化並びに金融引き締め等によりまして、鉱山採算がどうしても成り立たないという理由のもとに休山を余儀なくされました。成績ふるわず、六月一日をもって休止通告を受けたのでございます。従いまして、私ども地元民といたしましても予期に反した突然な通告でございましたので、鉱山従業員はもとより、地元民といたしましても、非常に大きな衝撃に際会いたしました。とるものもとり得ない状態に陥ったのでございます。従いまして、私どもは以来寄り寄り今後の処置につきましては鳩首心配をいたしておるものでありまして、鉱山日鉱本社からお見えになりましての説明のときにも、町民あげてこれがどういう内容であるかということにつきまして、心配のあまり、いろいろとたくさんの地元民鉱山の事務所に押しかけまして、その事情の探求に切なるものがあったのであります。だんだん今日に至りますと、鉱山は依然として休止の一線を曲げる様子もなく、この尾小屋地下資源開発事業はどうしても成り立たないという理由になっておるのでございます。私どもは、祖先伝来、この地に生まれ、鉱山生業を一にいたしまして八十年の歴史を持ってきたのでございます。その間親子三代にも及んでおる状況でございまして、今や鉱山休止によりまして全く生活の前途がまっ暗やみになった次第でございます。  この事情は、申すまでもなく、長年の歴史におきました鉱山なるがゆえに、鉱山の周囲の山々は全く無立木地帯となり、全くはげ山と変わってしまったのであります。太古の時代は、私ども祖先はこの山間の畑地を耕し、あるいは山の倒木をまきや炭にかえまして生活を営んでおったのでございますが、現在に至りましては、山ははげ、木は全く生育を阻害されまして、どうにもそういう昔の生活状態に返ることもできない状態になっておるのでございます。今鉱山従業員初め、ここに生活していくことのできない環境に追い詰められた私どもは、どこかに職を求めて立ち去るかしなければならないというような状況に陥っておるのでございます。私どもはこの苦しい境遇に立たされまして、これを生き抜くために、またこうした荒廃に陥りました結果によりまして、私ども地元民といたしましても、ここを立ち去るという余裕は全くないのでございまして、何とか皆さん方のお厚い御同情によって私どもの生きていく道をお考えを願いたい、かように思って参りました次第でございます。  いろいろ数字的な問題は、この委員会皆さん方に一々お願いの書類を提出いたしましたので、それによって御参考までに見ていただけばわかると思うのでございます。  はなはだ口がまとまりませんし、山から出てきたばかりでありまして、皆さんに納得のいくような御説明もできませんが、意のあるところを十分おくみ取り下され、何とぞこの窮状をお救い下さるように切にお願い申し上げたいと思うのでございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御苦労様でございました。  ただいまの参考人意見に対して質疑通告がありますので、これを許します。松平忠久君。
  5. 松平忠久

    松平委員 参考人にお伺いしたいのですが、ただいまの説明は少し抽象的でありまして、わかりにくい点がかなりあるので、質問申し上げたいと思います。  まず第一に、尾小屋休山は九月三十日ということになっておるように思うのですが、現在までにすでに休山準備をして、どこかへ配置転換その他をやられたということになっておるわけですか。
  6. 深田善九郎

    深田参考人 本年の四月一日に尾小屋鉱業所製練所が廃止されまして、その当時八十四、五名の人だったと思いますが、よそへ配置転換をされたのでございます。その当時の鉱山当局者お話では、製練は廃止しても山の将来はますます盛んにやるのだというようなお言葉であったのでございます。それ以来私ども地元民はそれを信じて安んじておったのでございますが、さきに申し上げましたような通告を受けた次第でございます。
  7. 松平忠久

    松平委員 今まで尾小屋鉱山に従事しておった従業員の数はおよそどのくらいであるかということ、それからその鉱山で飯を食っておる、直接鉱山従業員ではないけれども鉱山によって生活をしておる住民はおよそ何世帯くらいありますか。
  8. 深田善九郎

    深田参考人 一時は鉱山の直接従業員は千二百名ほどおったこともございますが、昨年は八百三十何人かと思います。それからその家族並びに関係事業に携わっておった人等を合わせますと、この鉱山によって生計を維持して参った者は、三千五、六百になったかと思います。
  9. 松平忠久

    松平委員 家族は別としまして、私の聞いておるのは、小売商とかあるいはいろいろなものをそこへ納めるとか、そういうことで生活しておる人は尾小屋町の人口の何割くらいを占めているかということです。
  10. 深田善九郎

    深田参考人 鉱山の直接従業員は現在七百何名かであります。それからそれ以外の、この鉱山を目当てに商業を営んでいた人が四十四店かございます。それからその他の人が二百五十戸ほどございます。
  11. 松平忠久

    松平委員 承ると、小松市の市長あるいは石川県が、鉱山休止ということで非常に心配をして、日本鉱業本社鉱山休止しないようにしてくれ、こういう陳情をしたようなことを聞いております。そこで陳情した結果は、小松市長に私が直接会って聞いたところによると、会社側は第二会社のようなものを作ってやっていこうというような話がある、こういうことで地元の動揺を一時防ぐというようなことを陳情団が聞いてきたように思うのですが、それは間違いございませんか、そういうことですか。
  12. 深田善九郎

    深田参考人 お尋ねの通りでございます。  小松市長並びに県の経済常任委員長あたりが日鉱へ参りまして、その真相をお聞きになった由でございます。その結果は、お説のように第二会社を作って、何とか今後の山のあり方考えていきたいというような御意向のように聞いております。
  13. 松平忠久

    松平委員 そこでもう一つ伺いたいのは、小松市なり石川県というものは、そういう要望を会社に出す一方において、地元の何らかの方策というようなものを寄り寄り立てられたことがあるわけですか。たとえば閉山するということであれば、あるいは第二会社を作るということであれば、いずれは縮小されるんじゃなかろうか、その場合には、今のうちにどこかへ一部の業者を移すとかなんとかいうことも考えられたかどうか知らぬが、そういったような対策が今までのところ何かあるわけですか。
  14. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りをいたします。ただいま審議中の問題につきまして、いま一人参考人をおきめいただきたいと思います。石川会議員竹内伊知君であります。よろしゅうございますか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。
  16. 竹内伊知

    竹内参考人 それでは今の問題につけ加えさせていただきます。  その決議が具体化されるということに大きな期待をかけておるということと同時に、いま一つは県も市も尾小屋が何の産業もないから、何とかして新しい産業でもって救う道を考えなければならないというので、皆さん方にお配りをさせていただきました資料等にも幾らか載っておりますが、いろいろと各地の家内工業を視察したり、あるいはまた今後起こるであろう災害に対する防災の準備をしたり、そうしたことをやっておるというのが今の状態でございます。
  17. 松平忠久

    松平委員 皆さんにお聞きしてもわからぬと思いますが、この鉱山の面積はどのくらい広いのですか。
  18. 竹内伊知

    竹内参考人 わかりません。
  19. 松平忠久

    松平委員 この鉱山小松市ですか。
  20. 竹内伊知

    竹内参考人 そうです。
  21. 松平忠久

    松平委員 小松市の人口はどのくらいありますか。
  22. 竹内伊知

    竹内参考人 九万余りあります。
  23. 松平忠久

    松平委員 鉱山局長にお聞きしたいのですが、これは日本鉱業の四月における八鉱山休止一つではないかと思いますが、聞くところによると、多くの場合において第二会社日本鉱業は作ろう、こういう考え方であるようでありますが、この点について通産省としては、日鉱がどういう考えを持っておるかということを御存じだったら、ここで聞かせていただきたいと思います。
  24. 川出千速

    川出説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  先般日本鉱業が八鉱山閉鎖するという発表をいたしまして、鉱山関係を所管しております通産省といたしまして、非常に心痛をいたしまして、日本鉱業からもいろいろと話を聞いておるわけでございます。現在の段階では、閉鎖問題につきまして、会社内部で労使の間で話し合いをしておるように聞いておるわけでございます。会社の方の考えも完全に山を全部閉鎖をしてしまうという気持ではないようでございまして、ただいま先生からお話がありましたような第二会社を作って、独立採算的にやっていく方途はないかというようなことを中心に今話し合いを進めておる段階だと思います。
  25. 松平忠久

    松平委員 今度の八鉱山休止というようなこと、あるいは三菱鉱業あたり休山をするというような話を聞いておるわけでありますが、自由化を前にしていろいろ自由化対策というものをこれからとっていく、その中には通常国会において今、国会で持たれておる小委員等意見参考として本格的な対策をこれから講じるその前に突如として大手が、いわゆる鉱山閉鎖をするというようなそういう挙に出てきたということ、そういう手段をとるに至った大きな原因というのはどこにあるのですか。
  26. 川出千速

    川出説明員 原因はいろいろあろうかと思いますが、直接的な原因といたしましては、最近の国内引き締め影響鉱山が非常に強く受けて、経営面にその影響が現われておるということが一つございます。  それからこれは銅の場合ではございませんが、鉱物の種類によりまして海外相場が予想以上に下がっている毛のがございます。従って、それが国内相場にも反映をしておる。引き締め影響海外相場がものによっては下がっているものとの影響が競合している面があるかと思います。  それから、いずれにしましても近く自由化をするという方針がきまっておりますので、長期的な展望から見ますと、合理化を進めなければいけないだろうという経営する立場からの考え方があるかと思います。そういうようないろいろな問題が重なりました際に、従来採算の——これは自然的な条件が大きく作用しておると思いますけれども採算の悪かった、あるいは悪い山を縮小をしよう、あるいは整理をしようというような動きではないかと考えております。
  27. 松平忠久

    松平委員 そういういろいろな原因で閉山に踏み切るということになったが、その中で第二会社的なものを考えておる、こういうことなんです。そこでお聞きしたいのは、第二会社というものを作れば現在の状況でもやっていけるのですかね。これは言葉をかえていうならば、結局縮小再生産ということになるわけだけれども、そういう場合には労働者はやはり首切らなければならぬでしょう。それから同時に保安設備その他についても手を抜くということにならざるを得ないと思うのです。そうすると、これは大問題になりはせぬかというふうに思えますが、それを何かそこまでいきなりやるということではなくて、何らかの措置を講じなければならない、こう私は思うわけですよ。そこで四月ごろから鉱業界におきましてもいろいろ考えて、そうしてたとえばいろいろな補給金制度とか、補助金制度というもの、そういうものをとりあえず考えてもらわなければ大へんなことになる、こういう結論が当時出ておったように思うのです。  それから、たとえば探鉱補助金にしても、探鉱へのための特別の奨励金というようなものを交付してもらいたい、こういう陳情があらためて四月末には出ておるわけであります。そういうところから見てみると、やはり今までやっている、これからやろうとする自由化対策というものの前に相当手を打ってもらわなければだめだという要素がかなりあるのではなかろうかと思うのですが、先般の決議に基づく国会決議を実施するというためのただいまの審議会におけるいろいろな研究ということにプラスその前につぶれていく鉱山、しかもそれは金詰まりもあるでしょう、ほかの原因もあって、そういうことになるわけなんだが、そういうものに対して鉱山局はただいまどういう手を打とうとしておるのか、これをお聞きしたい。
  28. 川出千速

    川出説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  この前の衆議院の決議がございましたが、それを中心テーマにいたしまして、現在鉱業審議会を開きまして、鉱山対策の今後のあり方、その対策審議をしているまっ最中でございまして、そこの審議会の中でもただいま御指摘のような問題がございまして、審議会でやっております主たるテーマは、予算上は来年度の問題になるのですが、その前にもいろいろな問題があるのではないかということでございまして、たとえば雇用転換問題等現実の問題にすでになっておるのではないかというような御指摘もございました。  それから、これは当面の問題でございますけれども、最近の金融の圧迫が鉱山に特に影響を与えておるようだけれども、その対策をどういうふうに考えているかというような質問もございます。金融問題につきましては、これは現在滞貨金融と申しますか、価格安定のための金融と申しますか、そういうことで市中銀行中心話し合いを進めておる段階でございます。  それから、そのほかの問題につきましては、これは今審議会議論をしておりまして、結論が出るところまでいっておりませんですけれども、私どももこれは非常に重要な問題だと思いまして、それに今後取り組んでいくつもりでおります。
  29. 松平忠久

    松平委員 その対策に、自由化に伴う対策というやや恒久的な対策というものがある。と同時に、今言う応急対策というものは、これは足元から鳥が立つように必要になってきちゃったんだな。これをやっていかなければ、恒久対策をやる前にばたばたつぶれてしまう、こういう状況が今日の金属鉱山には出ておるのじゃないかと思うのですよ。そこで、これに対しては、今あなたが言われたように滞貨金融、これも一つでありましょうし、現実につぶれるということであるならば、これは労働問題をどうするかというところに、結局そこへも行かざるを得ない。それからそれをつぶさぬようにするために、今言う応急対策も必要であろうし、あらゆる点で援助政策というものを確立していって、そうしてその出血を最小限度にとめていくということを考えていかなくちゃならぬと思うのです。  そこで、今かなりたとえば銅なんか二万トンくらい滞貨があるということを聞いておるけれども、その滞貨融資の問題は、大蔵省なり、日銀なりと話をしておられると思うのだが、どの程度これは見込みがあるのですか。
  30. 川出千速

    川出説明員 これは実はその滞貨の問題は閣議でも話題になったそうでございまして、これは短期資金の問題ですから、政府が直接どうこうという問題であるよりも、これは日銀なり、市中銀行金融ベースで話し合うという問題でございますから、現在企業と金融機関との間で話が進行中でございまして、今後その影響なり、効果が現われてくる問題だろうと思っております。現在具体的にどういうふうに影響が出ておるか、どれだけの融資がどうなったかというようなことはまだ聞いておりません。
  31. 松平忠久

    松平委員 それから恒久対策というものの中にも、直ちにやってもらわなければならぬような対策もこれは応急一つとしてやらなければならぬものもあると思うのです。それから、あの国会決議の中には、石炭における場合のごとき、いわゆる労務対策というか、そのことは触れておらなかったように私は思います。そういうことをせずに、鉱山の体質を改善してうまく直せというのがあの趣旨なのです。ところが、その前にすでに、ほかの原因もあって、今日のような事態を来たしておるということであるならば、これはやはりそれ相当の労務者の対策考えなければならぬと思う。そこで、それは結局予算が必要となるのであって、このことは通常国会まで待てないと思う。これはもう臨時国会補正予算を出して、そしてそのことの万全を期するということに政府当局考えてもらわなければならぬと思うが、その用意と覚悟はございますか。
  32. 川出千速

    川出説明員 鉱業審議会でその問題を取り上げることにしておりまして、その審議状況に応じてわれわれも勉強しているところでございます。
  33. 松平忠久

    松平委員 勉強しているというのは、勉強じゃなくて、底に迫っているのだから、少なくとも補正予算くらいは組むという考えにならぬと、これは解決できぬですよ。どうです。
  34. 川出千速

    川出説明員 私その方の責任者ではございませんが、そういう必要があれば、これはやらなければいけないだろうと思っております。
  35. 板川正吾

    板川委員 これは鉱山局長一人が全責任者だというわけではないですよ。しかし、鉱山局長は当面の責任者じゃないですか。それで三千何百人という人の死活の問題ですね。実は前回のこの商工委員会のときに多賀谷委員から再三こういう閉山問題を取り上げられて、特に生きることができるような滞貨融資考えてほしいということを言われた。その際も言を左右にして押し問答であったわけです。しかし、そういう実態は、何も審議会に諮らなくたって、当然わかっておると思う。ですから一カ月半ばかり前の議論から言っても、この間に何らかの対策鉱山局長として打ち出すかどうかという考え方くらいはないとおかしいのじゃないですか。責任者じゃないから、審議会に諮るとか皆さんと相談してというのじゃ、これから全く食うに困って死んでしまうほかないという人たちはどうするのですか。それは真剣に対策考えるべきじゃないですか。
  36. 川出千速

    川出説明員 私の答弁のあれが非常にまずかったと思います。申しわけないと思います。責任は非常に強く感じておりまして、この前の金融の問題につきましても閣議でも話題になりましたように、現在手を打ちつつあるわけでございます。それから雇用問題につきましても、これはまじめに取り上げて研究しておるところでございます。鉱山については、石炭のような対策現実にとられていないわけであります。予算措置もないわけでございます。一般措置はございますけれども特別措置はないわけでございまして、石炭鉱山と同じであるかどうか、その転換問題の実態内容、あるいは特殊性があるかどうかという問題も含めまして、現在具体的に検討しておるのです。
  37. 板川正吾

    板川委員 鉱山問題は前回通常国会でも重要な対策だというので、本会議決議にもなったのですから、当然今のように雇用の問題、要するに閉山して配置転換する、職種転換する、こういう雇用の問題ばかりで議論するのは私はおかしいと思います。雇用の問題は最悪の場合で、その前に日本鉱業政策として、これは保護政策をとるなり、あるいは自由化を遺棄するなりということをして、当然閉山してつぶれていくというような人の対策、閉山してその後の雇用対策考えるのではなく、閉山しない方の鉱業対策鉱山局長考えるべきで、閉山しない雇用問題は労働省だというのではおかしいじゃないですか。私らが言いたいのは、閉山した後の雇用問題を労働省にまかせるというのではなく、閉山しないような対策鉱山局長通産省として講ずべきだということを再三議論しているのじゃないでしょうか。それをこれから対策考えるというのでは、あまりにも無責任な態度じゃないでしょうか、どうですか。
  38. 川出千速

    川出説明員 鉱山対策基本は、ただいま御指摘がございましたように、鉱山が今後発展していく前向きの対策が根本の原則であろうかと思います。しかしながら、そういうことで国会決議もできており、われわれの対策もそういう点に重点を置いてきたつもりでございます。ただし、その内容につきましては、きわめて不十分な点があったかと思いますけれども、そういう気持で来たわけでございます。しかし、現実の問題としまして、先ほど松平先生から御指摘がございましたような事態が起きておりますので、これに対する措置も放擲しておけないという気持でおるわけでございます。あくまで鉱業対策基本は、前向きの振興発展の対策でなければいけない、かように存じております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 自由化に直面する金属鉱業危機打開に関する決議という本会議における決議は、これはあくまでも三十八年度の立法並びに予算を予定しているのではない。これは「政府自由化実施までに抜本的な金属鉱業対策を樹立し、」ということを書いておる。自由化を最大限延ばしても、今政府考え方は三月三十一日でしょう。ですから、自由化を延ばすか、しからずんば三月三十一日までに実施しなければならぬ。三十八年度の予算というのは四月一日から実施するんですから、予算の時期は今度の通常国会になるにしても、これは何を言っても補正予算です。予算としては補正予算です。三十八年度の一般会計の予算じゃないのです。そういうことが前提になっておる。自由化までにこういう対策をしなさいよということになっておるんですよ。ですから、その恒久的な問題を取り上げるにしても、これは私は当然十二月から始まる通常国会にいたしましても、これは補正予算の性格なんです。ましてや今起こっている問題は、きわめて緊急な問題、これは必ずしも自由化だけの問題ではない。今のいわゆる不景気政策、政府のいう景気調整策によるものです。ですから、この対策をやはりやらなければいかぬわけです。これは当然臨時国会で出して予算化しなければ、実効は上がらないと思う。あらゆる面においてこれは臨時国会でやらなければ、もう手おくれになってしまう。手おくれになったとき、一体どうしますか。人は生きているんですよ。しかもこういう手を打っておればよかったとあとから悔んでもだめですよ。鉱山局長石炭の話をして申しわけないけれども石炭は全部後手々々ですよ。そうして対策ができたときには、次の波が来ているわけですね。ですから、法律が実情に合わないということになってきている。ですから、やはりこれは経済不況に処する対策を早く樹立する。そのためには幸いにして臨時国会があるのですから、臨時国会に間に合うようにやられたらどうですか。昨年の十二月に政府が出しました雇用促進事業団における臨時の使用者に対する給付というものは、一月一日から実施というので、十二月の国会で作った。こういうように緊急にできるわけです。今まで例があるわけです。ですから、政府の決意いかんによって実行できると思うのです。ですから、早く準備をして、そうして臨時国会にあらゆる政策をかけるように、しかも当面する政策はすぐかけるように処置をとっていただきたい。
  40. 川出千速

    川出説明員 御趣旨の通りに努力したいと思います。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 議事進行で発言します。  相当重要な問題ですから、これは局長にだけ言っても僕は無理だと思うのです。従って、大臣の出席を求めます。これは今局長に臨時国会で緊急処置を立てよとか、あるいは特別な予算を作れとか言っても、これは局長の段階では無理かもしれませんから、大臣の出席を要求します。
  42. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お答えいたします。  大臣に出席方を要請しております。御承知のように、閣議に次いで外人との会見があるそうでございまして、おくれておりますが、手がすき次第来るように要求しております。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、大臣が来るまで他の議案にかかってもらいたいと思います。
  44. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 それでは、大臣のこられるまでこの問題は留保して、他の問題に移ります。  参考人の方には御苦労さんでした。      ————◇—————
  45. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、通商産業基本施策に関する件及び通商に関する件について調査を進めます。  本日は、陶磁器の輸出問題について、日本陶磁器輸組合理事長永井精一郎君と、日本陶磁器工業協同組合連合会理事加藤壽保君が参考人として出席せられております。  両参考人の方には、御多忙中にもかかわらず御出席をいただきましたことを厚くお礼を申し上げます。忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  参考人の御両君におかれては、最初陶磁器輸出業界の現状について御説明及び御意見をお述べいただき、あとから委員質疑にお答えをいただきたいと存じます。  まず、日本陶磁器輸組合理事長永井精一郎君から御意見を伺うことにいたします。永井参考人
  46. 永井精一郎

    ○永井参考人 私、永井でございます。  いろいろ先生方に申し上げまして御理解と御援助を得たいと思いますが、その前に、今日大へん当委員会のお仕事が御多端のおりから、特に陶磁器の問題を取り上げられまして、私どもに皆様にお訴えをする機会を与えていただきましたことを、まずもってお礼を申し上げます。いずれ陶磁器生産の状態につきましては、今日一緒に参っておりまする加藤さんからお話があると思いますので、私は、大体陶磁器の輸出の概況についてお話を申し上げたいと思うのでございます。  わが国の陶磁器の総生産は、約七百五十億くらいございます。これは私ども日本の欠陥でございまするが、こういった数字はなかなか正確にとらえられない欠陥がございますので、これは大体の数字でございますが、七百五十億くらいの生産がありまするが、その中で半分が輸出に向けられておるというのが大体常識の数字であります。これを具体的に申しますると、一昨年の三十五年でありますが、との三十五年におきまする輸出総額というのは、一億四百万ドルの実績をあげております。しかもこれは御承知のようにほとんど大部分の原材料が日本でまかなえますので、いわば外貨の手取り産業と申しても過言ではないと思うのであります。この一億四百万ドルの中で、アメリカ市場へ出ておりますのが約五割ちょっとであります。   〔委員長退席、中村(幸)委員長代理着席〕 これは陶磁器をアメリカへ輸出をいたしました最初は、大体八十幾年の昔からでありまして、約一世紀にわたっておりまするが、この間に順次ふえて参りまして、三十五年度におきまして、今申し上げましたように一億ドル余の五三%くらいを出しておるわけなんであります。その他はいわゆる世界各国の市場へ出しておるのでありますが、最近アメリカにおきまして、日本品とは特にさしてはおりませんけれども、輸入品の防遏運動を始めまして、御承知のように関税問題が起きたのであります。陶磁器は、先ほど申しましたように、八十何年の対米輸出の経験を持っておりまして、その間いろいろのトラブルが起こっております。最初に起こりましたのが一九三〇年であります。それ以来今日に至りまするまでに七回の関税問題が起こっております。いずれも事前に多少の兆候といいますか、前兆があったのでありまするが、今度は全く抜き打ち的な関税委員会への業者の提訴でありまして、私どもといたしましては非常にろうばいをいたしたのであります。  今度対象品目になっておりますのは、陶器及び磁器のテーブルウェアとキッチングウェア、すなわちこの陶磁器の食器類全般をカバーいたしております。これがもし公聴会におきまして黒と出ますと、その及ぼす影響は非常に大きなものがあります。そこで、私どもはさっそく生産者団体の中央団体でありまする日本陶磁器工業協同組合と私の方の日本陶磁器輸出組合との合同の対策委員会を開きまして、この対策に腐心し、かついろいろの対策をいたしております。ところが、何を申しましても、われわれの業者だけではなかなか手に負えない問題でありますので、政府御当局はもちろんでありますが、政界におかれましても、あるいは財界におかれましても、あるいはPRの関係からジャーナリズムの方面におきましても、これはできるだけ御理解と御援助を得なければならぬというので、われわれ合同委員会におきましていろいろと陳情等をいたしております。  まず合同委員会でやりましたことは、私ども陶磁器は幸いにアメリカの現地に輸入商の組合がございまして、この輸入商の組合と提携をいたしまして、まず弁護士を雇うことにしたのでございますが、今度は大へんに事が重大性を持っておりますので、弁護士を二人雇うことにいたしました。そして代表を三名向こうへ送ることにいたしまして、一名はすでに現地へ行っております。また近く一名参りまして、次いで三名全部行くという手はずになっておるのでございます。いずれにいたしましても、なかなか金のかかる仕事でありまして、これはあとで御理解を得たいと思っておりますが、なかなか思うように参らぬ次第であります。  それから、公聴会が開かれまする公聴会の法廷におきまして、われわれが反駁しなければならぬ資料を目下鋭意製作中でありますが、これはおかげで長い歴史を持っておりまする陶磁器の団体がありますので、これでいろいろのデータといったようなものの作成に遺憾なきを期しておる次第であります。かようにいたしまして、私どもはこの問題を非常に重要視いたしまして、業界あげてこの問題の好転、具体的に申しますれば公聴会において勝つということに全面的な努力を集中いたしておるわけであります。  ここでちょっと御参考までに関税問題の内容を申しますと、今度提訴いたしましたのは、磁器の向こうの組合でファイン・チャイナ・ギルドという組合がございますが、これは組合員数が五名であります。非常に少数でありますが、非常な大工場ばかり加入いたしております。これが輸入磁器の食器のために国内産業が非常に打撃を受ける、でありますから、一九三四年度、これは一番アメリカの輸入関税の高いときでありますが、この一九三四年度の税率の五〇%を今度上げろ、こういう提訴の内容であります。次に陶器の方はU・S・ポッターズ・アソシエーション、こういう向こうの製造家の組合がありますが、これは非常に急進的で、非常に強烈でありまして、輸入品に対して関税を上げるくらいではとうていだめだ。これはおそらく日本品もさしておるのでありましょうが、輸入関税を上げるなんということはやぼなんだ、これは一つ輸入クォーター制をとれ、こういう提訴の内容であります。磁器につきましては五月四日、陶器につきましては五月の二十四日に、関税委員会にいずれも今申しました内容でもって提訴いたしまして、関税委員会ではこれを受理いたしまして、七月の二十四日、五日、この両日にわたりましてヒヤリングを開催することになっておりますので、これに対処いたしまして、先ほど申しました私どもは業界全体の合同委員会でもって対策をいろいろやっておる次第であります。  今申し上げましたように、そういう情勢でありまして、このヒヤリングにおきましてもしも黒と出たというような場合は、これはまた大へんなことでありますが、もう今まで私ども七回目の公聴会を迎えますが、かつて黒と出たことはありません。私どもの先輩各位の努力によりまして、戦後におきましてもかつて黒と出たことはありません。昨年の十一月タイルについて公聴会をやりました。この場合は関税委員会の決定は黒でありましたが、幸いにして大統領の拒否権によりまして無効になっております。かようなわけで、現在陶磁器全業界といたしまして当面いたしておりますのは、この関税問題であります。そこでもし関税問題が黒と出たというときには、これは大へんなことになるわけであります。  次に、しからばどういう輸出振興策があるか、こういう問題に入るわけでありますが、これはあとでいずれ御質問があると思いますので、やめておきますが、私ども今までの経験からいろいろこの公聴会に対する見通しを持っておりますが、しからば一体今度の提訴はどういう理由であったろうかというようなことをいろいろ研究しておるわけでありますが、大きく申しますならば、いわゆる現アメリカ政権の自由貿易主義に対する保護貿易主義の反撃ではないか。これは大きなことを言うようでありますが、そういう感じを持つのであります。またこれを業者の側からいきますと、数回戦ってきたけれども、結局不利に終わったのだ、幸いにして御承知のように新しく通商拡大法というものが制定されつつありまして、旧法であります互恵通商法というものはすでに六月三十日をもって失効になっております。この機会に、いわゆるチャンスをとらえると申しますか、そういったことで、もしだめでももともとだ、うまくいけばもうけものじゃないかというような業者の気持があるのではないかと実は考えるわけなのであります。もう一つ、最近向こうの業者からの通知によりますと、今度の公聴会は相当政治的な含みがある。と申しますのは、皆さんはよく御存じだと思いますが、ケネディ政権発祥の地は例のウエスト・バージニアと聞いておりますが、陶産地も・ウエスト・バージニアとオハイオなのであります。これらのことを考えますと、はたして現政権が自由貿易主義を貫くかどうか、ここに私どもは政治的な大きな不安を持っておるわけなのであります。過日私は、加藤さんも御一緒でありましたが、合同委員会の者と一緒に各方面を陳情いたしましたが、アメリカ大使館に行きました。私どもは今まで自主的統制を絶えずやってきておる。昭和十一年以来私どもは自主規制をやっておる。特にその最も明確なのは、アメリカの製造業者の一番ドル箱の製品は、皆様おわかりにならぬと思いますが、ホテルだとかあるいは料理屋で使う厚い食器なのであります。これはアメリカの業者のドル箱なのでありまして、これを私どもがもし作って出すならば非常に向こうと衝突する、元来私どもの自主規制というのはアメリカ品と競合しない、品質におきましても価格におきましても衝突しない、その中間のところへ輸出しようというのが伝統的な自主規制のやり方、基本的な考え方でありまして、現在陶器にいたしましても磁器にいたしましても、そういった向こうと競合しないところへ日本品を出そうということが基本になりまして今までやっておったのであります。その上に一番はっきりしているのは、向こうの一番大事な製品であるホテル・ウェアというものは出すまいということに決定して、現在までこれは何ら協定なしに今まで進んできておるわけであります。ところが昨年向こうのホテル食器の製造業者と日本の製造業者とで技術及び資本の提携をいたしまして、こちらでホテル食器を作りまして向こうのメーカーのブランドで輸出をするという話が持ち上がったのでありますが、これは生産者団体と私の方でいろいろ協議をいたしまして、依然として中止をいたしておったのであります。昨年また、今度はほかのそういったケースが起こりまして、今度はいいだろうというような意見国内にもありましたので、いろいろ向こうに人を派しまして打診をいたしましたが、その結果もやはり向こうはノーという返事でありました。そこで先方のホテル食器の業界の代表者を四人、私の方で招請いたしまして、この四月にいわゆる一米会談をいたしたのでありますが、その結果、今度また会談をするまでこの問題はベンディングにしようじゃないかということで延ばしました。しかし、この両方は非常な親善関係を結びまして帰ったのであります。これは私は過日アメリカの大使館に行って申し上げたのでありますが、右の手ではそういった工合にこちらの業者と向こうの業者とシェーク・ハンドをしているのだ、しかるに公聴会に提訴するというようなことは、左手でもってわれわれの頭をぶんなぐるものだという話をしたのでありますが、まさにこれは大きな目から見ましても、アメリカの自由貿易主義に相反することを敢然としてやる。しかも右手で握手をして左手で頭をなぐるといったようなことははなはだ遺憾であると申し上げたのでありますが……。
  47. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 参考人の方に申し上げますが、時間が非常に短いので、ごく簡略にお願いいたしたいと思います。
  48. 永井精一郎

    ○永井参考人 御注意を受けましたので……。そういう工合で、私は、どう考えましても今度の問題は向こうへそれ相応に外交的に交渉を申し込むべき筋合いだと思っております。  いろいろ申し上げたいことがありますが、ともかくも政府御当局と非常な連絡をいたしまして、今日御出席の各局長に非常に御努力いただいており、感謝しておる次第でございます。どうぞ本委員会におきましてもこの情勢を御理解いただきまして、ただ陶磁器界だけの問題でなくて、日本の大きな問題として取り上げていただきたいと思う次第であります。
  49. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ありがとうございました。  次に日本陶磁器工業協同組合連合会理事加藤壽保君から御意見を伺うことにいたします。加藤参考人
  50. 加藤壽保

    ○加藤参考人 私御紹介を受けました加藤でございます。生産の状況につきまして簡単に御説明申し上げます。  陶磁器産業は、愛知県、岐阜県、三重県、この三県にほとんど集まっておりまして、全体の九〇%以上だと思っております。企業数は関連産業を合わせますと約四千、陶磁器だけで二千四、五百で、約四千の工場がございまして、そこに働いております労務者は、陶磁器オンリーのものに従事しておりますのが約十二、三万、関連産業を合わせますと二十万ないし二十二万くらいではないかというふうに言われております。今、永井参考人から申し述べられたごとく、内地ものとそれから輸出品との構成は、大体において半々でございます。戦前は、輸出地につきましては、たとえばシナ、満州あるいはインドその他東南アジアの諸国でございましたが、戦後はこれらの市場はほとんど出荷がございません。東南アジアにいたしましても、慢性的な外貨不足のために、ほとんど見るべきものがございません。従って、だんだんとアメリカに対する輸出の比重が高まって参りました。今日におきましては全輸出額の約五〇%というものをアメリカに出しております。大体生産者側の問題といたしましては、御承知のように中小企業でございますので、慢性的な資金難であります。それから最近におきましては労働問題これは御承知のように最近の経済の急激な成長に伴いまして一般雇用数が非常に大きくなりましたために、従来狭き門でありましたいわゆる大企業の方へも容易に入っていけるという形になりましたので、中小企業の方へは行くのがだんだん減りまして、昨年あたりはほとんど探すのに困った、こういうような状況でございます。従いまして、労働賃金も非常な勢いで上昇して参りまして、今日におきましては大企業と中小企業との初任給の格差というものは表面的にはほとんどございません。しかしながら、こういう状況でございますので、われわれのところへ参ります労務者は、どうしても大企業は受け入れない人たちばかりである。従いまして、質的には非常に落ちる、学校の成績で申しましても、通信簿で見ますと大体一、二というような人が大部分でございます。それでもそういう労務者でも集まればけっこうだというわけでやっているようなわけでございます。ところが、陶磁器の問題は、先ほど永井理事長から御報告があったように、特にアメリカにつきましては何回も何回もいろいろな問題がございましたので、この問題を警戒しつつ、かつは業界の過当競争を防ぐ、二つの意味におきまして、大体自主規制ということをば今日まで不完全ながらやって参ったのでございます。それは、一つは、アメリカの方へラッシュのごとく毎年出ることを防ぐという意味と、もう一つ国内におきましてあまりに自由放任のために業者が次から次へとできたりつぶれたりしておりますが、そのために新しくできる業者は非常に零細でございますので、従来、月給を取りにいくことを思えばいいじゃないかというほどの利益でありますから、だんだん利益が下がってくるわけでありまして、それを防ぐ意味でいろいろの問題と取り組んで参りました。ところが、これには中小企業団体法等がございますけれども、なかなかアウトサイダー規制とか、そういう問題がいよいよの段階にたりますと公取の問題になりましてなかなかきめ手がないという状況でございますので、これも再三陳情申し上げて、何とか少なくとも輸出産業に対しましてはもう少し弾力的な方策をとってもらいたいということをお願いしておるわけであります。そうでない限りは、なかなか過当競争ということは防げないのであります。  それから、なお一つ、業界といたしましては、共同積立金をやりまして、こういう非常時とか、あるいは自分たちの力において設備改善ということは困難でございますので、共同積立金を少しずつやりまして、ある期間がたちましたらそれによって設備の改善をしていこう、それから販売価格の協定等も実効のあるようにしていきたい、あるいは労務者に対する厚生施設なんかも完備したい、こういう考えでやっております。これは今雑貨輸出振興推進連盟を通じまして政府御当局にこの共同積立金に対しては課税を一つ考えてもらいたいということをお願いしております。  大体そういうことでありまして、一番当面の問題といたしましては、アメリカの関税の問題でございますが、これがもしも向こうの言うように一九三四年の五〇%アップということになりますと、現状に比しまして約三倍になります。三倍になりましてはとうていアメリカに輸出ができるということは考えられませんような状況でございますので、内部的には、今申し上げましたような方策を講じまして、いろいろ苦労いたしまして改善をし、対策を講じておりますが、万一これが実行される場合には、もう陶磁器産業は壊滅にひとしいというような状況でございますので、輸出組合と生産者団体と相提携いたしまして、先ほど永井参考人からお述べになりましたような対策を着々とやっております。しかし、何にいたしましても、これは政府の方の御助力なくしてはできることでございません。どうか一つ格段の御助力をお願い申し上げたい、かように存ずる次第であります。
  51. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ありがとうございました。  以上にて両参考人の御意見は終わりました。  質疑通告がありますのでこれを許します。早稻田柳右エ門君。
  52. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 時間がありませんので、ごく簡潔に要点だけをお尋ねいたします。  まず参考人に伺いたいのですが、先ほど、業界はかねて自主規制を行なっておる、米国の陶業界を刺激しないようにしておる、こういう話だったのですが、具体的に一体どんなことをやっているか、伺いたいと思います。  それからもう一つ、先ほどホテル、レストラン等の食器類について輸出の自粛をしておる、こう言っておりますが、これはかねがね日米企業提携等についてそれぞれ苦心しておられるように聞いておりましたが、具体的に説明をいただきたいと思います。
  53. 永井精一郎

    ○永井参考人 業界の自主規制でありますが、先ほど申しましたように、昭和十一年から自主規制をしておりまして、現在の段階におきましては、大体アメリカにいきまする食器のうちの大宗を占めておりまするディナー・ウェア、ディナー・セット——これは食卓用の正餐用の食器でありますが、これに対しまして、輸出価格にいわゆるチェック・プライスというものを決定いたしております。それと、生産者の団体の方では、生産の総ワクというものをきめまして、これを的確に生産業者に割り当てるという状況なんであります。  それからホテル食器の問題については、先ほども申し上げましたように、ホテル食器は戦前から一品も出さないということを不文律にいたしております。現在においても出しておりません。それから企業提携の話でありますが、これは二件ございまして、具体的に申しますとイロコイ・チャイナという向こうのメーカーがあります。これが鳴海製陶と技術及び資本の提携をしてだいぶ準備をいたしたのでありますが、これも中止をした。それからシェナンゴという向こうのメーカーと金沢にあります日本硬質陶器株式会社と技術、資本の提携をして、日硬で製造してシェナンゴのトレード・マークをつけて出そうということでありましたが、これも現在においては自粛をしてもらいまして出しておりません。
  54. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 よくわかりました。  そこで政府にお尋ねいたしますが、参考人説明では今回の米国陶業界からの提訴がきわめて唐突で、その真意の了解に苦しんでいるような話がありますが、外務省当局はこれをどう解しているか。また通商拡大法の制定を前にしての今度の提訴でございますが、出先機関からは何ら通告がなかったのかどうか。また、あったとすれば朝海大使あたりからの情報はどんなふうに入っておるか。なお、本提訴に関し、政府当局はどんな対策を講じているかという点を伺いたいと思います。これは外務省からお願いしたいと思います。  それから通商局長または軽工業局長に伺いたいのですが、先ほどお話のうちに、業界の自主規則に関連して、アウトサイダー規制はなお不十分な点が多いと言っておりますが、当局はこの点についてどう考え、どんな対策を講じつつあるか。それから日米企業提携について当局はどんな指導方針をとっておるかということを伺いたい。それから日本の陶磁器は米国の一般大衆の需要にこたえて相当大きな貢献をしておると思われますが、この意味でもっと米国の国民大衆に日本の陶磁器に関してPRする必要があると私ども考えておる。こういう点に対してどんな考えを持ち、どんな措置をとっておるか。  以上の諸点について御答弁をいただきたいと思います。
  55. 関守三郎

    ○関説明員 お答え申し上げます。  この問題が提訴された時期を考えますと、これは五月でございますが、おそらく四つほどの理由考えられる。これはワシントンからの報告に基づきますと、そういうことになるわけでございますが、まず一番大きな原因として考えられますものは、五月に提訴されて、しかもきわめて唐突に提訴されたということについては、その当時は今かかっております通商拡大法がエスケープ・クローズによって関税を引き上げるということが非常にやりにくいような状況に条文が、つまり原案のままであったわけであります。その原案がエスケープ・クローズを適用するのに都合がいいように修正されるかどうか見通しがついておらなかったわけでございます。そこでいわゆるかけ込みの提訴と申しましょうか、このままで、原案のままに通商拡大法がいきますと、関税の引き上げが今後非常に困難になるだろうということを心配いたしまして唐突に提訴した。つまり時間のあるうちに提訴したということが一番の理由ではなかろうかと考えております。  それから第二に考えられますことは、やはり通商拡大法というものをかかえておりますので、アメリカの政府もいろいろな保護を求めてくる産業に対してある程度腰が弱い、こういうことを見きわめまして、一つのプレッシャーとして通商拡大法があまり進む前に出してきたというととが第二の点ではなかろうかと考えられます。  第三点といたしましては、これは四月にアメリカの労働省が、オハイオ州、それからバージニア州の陶磁器業界が外国品の輸入によってどのような影響を受けておるかというような調査をいたしまして、その発表をいたしておるわけでございますが、その中に、高級品だけでなく、中級品、下級品も輸入品の競争による影響を受けておるということをうたってあるのでございます。これもやはり一つのきっかけとして出したのではなかろうかということが考えられます。  それから第四の理由といたしましては、この前、たしか一九五〇何年かと思いますけれども、ガットで譲許いたしまして、つまり中下級品に対するガット税率というものを定めてからかなり時間がたっておりますので、またそろそろ提訴して問題を蒸し返してもいいのではないかというようなことを業界として考えたのではなかろうか。  こういうふうに四つほどの理由考えられるということが報告で来ておるわけであります。そのうちのはたしてどれがどれだけのパーセンテージを持っておるのかという点につきましては、これは推測の域を脱しないということでございます。ただこの前、ホテル。ウェアのことで日本に四人ばかり、四月でございましたか、参りましたが、あのときその連中もすでにこの問題をやりたいというようなことを言っておりましたから、業界としてはかなりそういう空気が前からあったというところに、いろいろなタイミングを考えてこれを出してきたということでなかろうかと考えます。従いまして、もし最初に申し上げましたような第一の理由で向こうが出してきたといたしますならば、六月に通商拡大法は御承知の通り修正を受けまして、エスケープ・クローズ適用に関する条項は現行の互恵通商法と同じように簡単になりましたから、そうあわててやることはなかろう、向こうも最後のとことんまで騒ぐことはなかろうというふうに考えております。  それから通商拡大法に対するプレッシャーとしてこれを持ち出すということでありますれば、通商拡大法はこの間も御承知の通り、アメリカの国会で、下院でございますが、圧倒的に現在のアメリカの政府が勝っておりますので、その点から考えますと、これも大したことはなかろうということに考えるわけであります。  あとの二つの方は、どっちかと申しますと、われわれの推測といたしましては、二次的なものでございまして、必ずしも非常に強いという理由はわれわれとしてはちょっと見当たらないことになっておりますが、しかし、できるだけこれは努力をいたしまして阻止するということに努めて参りたい、かように思います。
  56. 倉八正

    ○倉入説明員 三点御質問があったのでありますが、第一番のアウトサイダーに対する規制をどう的確に行なうべきかという御質問であります。現在こういう貿易の問題で一番困りますのが例の過当競争でありまして、これをどう秩序立てるかというのが技術振興の一番問題でありますが、ただ、いろいろアウトサイダーのいわゆる行儀よく輸出をするという方法はございますが、結局現状におきましては、最後に法的規制を用いるという一つ準備を整えなくてはならないと思うのでありますけれども、現行法においては明らかにそれが欠けておる次第でございます。これは、各先生方御存じのように、いわゆる輸出入取引法を昭和二十八年に作りましてから、たびたび例の五条の三という有名な規定で、いわゆるアウトサイダーの規制を外貿易については行なってほしいということを通産省はたしか四回出したと思いますが、これが現在に至るまで通っておりません。このアウトサイダー規制がありますと、いろいろのフラットの問題、あるいは過当競争が非常に目に余るものがあった場合は規制しやすいのでございますが、これが欠けておるというのが一番の欠点だろうと私は思います。従いまして、これをどういう法体系に持っていくか、あるいはそれにかわるほかの法体系があるかということになりますと、ほかの団体法でもいろいろございますが、アウトサイダーの規制というようなものは非常に厳重な条件がございまして、貿易のようにタイミングを要する事項につきましては非常にかけにくい。従いまして、今規制をやるとすれば、問題はただ一つしかないのでありまして、管理令に持っていって、一切をひっかけるかというだけの問題でございますが、これはあまり政府としましても事務の多忙を来たしますし、それから業界とされましては非常に複雑になるということで、われわれとしましては取引法の五条の二ないし三という改正を行なった方が一番いいではないか、こう考えております。  それから第二の企業提携でございますが、この企業提携の問題としましては、法的に言えば、外資法の許可の問題になりますし、実質問題としましては、さっき永井参考人からも申されましたように、向こうとの話し合いによってやるということでございますが、われわれ政府が受けて立つ場合は、日本産業影響を与えないで、しかも輸出の振興になるという条件で許可していきたい、こう考えております。  窮三の米国の国民大衆に大いに日本の陶磁器というのをPRすべきではないかということでございますが、これはもっともでございまして、そのPRの対象としましては、ただ日本の商品を多量に売るんだというPRよりも、日本の陶磁器産業というのは決してアメリカで言うほどの低賃金ではない。それから十分に輸出規制をしておって、アメリカの産業のことも考えておる。こういう意味のPRを大いにすべきであるということは全く同感でありまして、通産省としましても、あるいはジェトロを使い、またある場合には直接業界からこういうアッピールをしたい、こう考えております。
  57. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 今、関経済局長のお説だと、アメリカの今度の関税問題についてはそんなに強いとは思わぬ、こういうことのようでございまするが、私ども考えまするに、米国大統領が通商拡大法を制定しようとしておるその目的は、自由貿易の拡大にあることは申すまでもございません。しかし、今回の関税問題はアメリカの通商政策に逆行するものであり、しかもその提訴者がケネディ大統領の出身地であるオハイオ州その他から出ておるということを勘案いたしますると、底は深いように思われる。従来のように軽々に扱われては失敗を招くおそれがあるのじゃないかと憂慮をしておる次第でありますが、米国の国務省、あるいは商務省等の連絡は、ワシントンにおける大使館はやっておるかどうか。またワシントン側からどんなふうな、今お説のような点だけか、もう少し深みのある情報等が入っていないか、その点重ねてお尋ねをしたいと思います。
  58. 関守三郎

    ○関説明員 当然朝海大使はアメリカの国務省、商務省に対しまして、こういうことは自由貿易の精神に反するのではないか、また現在非常に高い関税をかけていて、これをさらに上げるということはおかしいじゃないかというようなことは十分に指摘いたしまして、また日本の実情もある程度説明いたしまして、重大な関心を持っているということを申し伝えております。ただこれは時期的に、関税委員会に提訴されまして、これがある程度公聴会をやり、関税委員会に報告するという段になってほんとうの勝負が始まるわけでございます。従いまして、今からあまり表面だって騒ぐということは必ずしも適当でないのではなかろうかと考えられますので、まず普通の定石に従いまして、公聴会でまず十分に意を尽くしてわが方の立場を説明し、そうして相手方の出方を見まして、さらに強い手を打っていくというふうに考えております。また現地におきましても、米国の大使館におきましては、こういうことをやられては政府の立場がなくなるということをきわめて端的に申しまして、わが方の立場を明らかにして申し伝えております。
  59. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大蔵省の関税調査官が来ておられますが、大蔵省の見解を伺います。
  60. 木谷忠義

    ○木谷説明員 ただいまも外務省並びに通産省側から詳細にお話がございましたけれども、このお話によって大体の話は尽きておりますが、私の方でもこの件については非常に関心を持っております。輸出陶器のうち対米輸出が二千二百万ドルで大量に出ております。この問題についてわが方の輸出が阻害されるようなことがあると非常に困るということで、私の方では非常に関心を持っております。今後関係者と十分打ち合わせいたしまして、貿易増進に善処したいと思っております。
  61. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 時間がありませんから、次に移りますが、陶磁器の輸出振興について伺いたいと思います。まず参考人に尋ねますが、従来陶磁器の輸出市場は米国がほとんどであった。これに次いでインドネシア、東南洋市場、あるいは中南米、欧州等であると思いますが、これら諸国に対する市場開拓についてはどういう考えを持っているか、この点々伺いたいと思います。
  62. 永井精一郎

    ○永井参考人 大へんけっこうな質問をいただきましてありがとうございました。五割を依存しておるアメリカに事が起きますと大へんな打撃になりまするので、他の市場にどうしてもより多くの力を注がなければならぬと思いますが、見渡したところ実はアメリカ以外の市場でいわゆる完全なフリー・マーケットというのはございません。今アメリカの次に出ておりますのは豪州それから東南洋、近東、アフリカ、ヨーロッパということになっておりますから、いずれを見ましても輸入許可制あるいは輸入クォーター制、あるいは混合関税、EECのごときは混合関税を陶磁器にかけております。そこでヨーロッパ、いわゆるEECだとかあるいは豪州、中南米といったようなところはこういった輸入制限を緩和させるより手はないのでありまして、これには一に外務省御当局の方のいわゆる経済外交をやっていただかなければならぬ、こういうことを常々局長あたりにも陳情いたしておるわけでございます。これは一生懸命やっていただいておりますが、もうこの手より私どもはないと思います。またこれは特殊なことでございますが、日本式な、いわゆる一般にオリエンタルデザインと言っておりますが、こういったものを考案して進むより仕方がないと思います。  それからジャワを初めといたしまして、東南洋諸国あるいは中近東、これは御承知のように外貨事情がときどき変化いたします。でありますので、これはもう一番いい手は、向こうから第一次品を買って、その見返りに出していくというような手しかないと私は考えております。
  63. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 今の問題について政府にお尋ねしたいが、米国を除いてこれにかわる市場は少ない、こういう参考人の意向のようでございますが、豪州、カナダ等、その他の市場について当局はどんな考えを持っておられますか。また開拓法等について見解を伺いたい。また、欧州共同市場の伸展に伴いまして、日本の陶磁器の同地方への輸出並びに英連邦諸国との関連性についてどんな考え方をしておるか、どんな方策を考えておるか、この際伺っておきたいと思います。
  64. 倉八正

    ○倉入説明員 お答えいたします。この輸出品というものが一国に集中するというのは、産業政策からいってもあまり好ましいことではありませんので、できるだけ分散をはかりたい。その場合に市場開拓の方法としてはいろいろあろうかと思いますが、今、永井参考人からも申されておりましたように、何といいましても人為的に課せられた相手国の関税制限あるいは割当、そういうものを撤廃するというのがわれわれとしてのまず第一の仕事だろうと思います。班に陶磁器につきましては、今の数量割当ないし関税ということで非常に差別待遇を受けておりますのが大体七カ国ないし八カ国ありますが、これにつきましては、その制限を撤廃するということに努力を続けるべきであろうと思いますし、それからその他の地域ないし今制限を受けておる国におきましても、なるべく現地と競合しない、たとえば製品の高級化、あるいは過当競争を排しまして秩序ある輸出をもって進んでいく、こういうことがまたきわめて必要な措置ではないか、こう考えておりますし、それから未開発地域に対しましては、最近の国内産業の非常な育成保護という流れがとうとうとあるわけでありますから、こういう国につきましては、たとえば企業の新設、さらにその設備の日本からの援助、いろいろ地域によりまして手分けして進めたい、こういうふうに考えております。
  65. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大臣がお見えになりましたので、大臣にあとで一言お願いをしておきたいと思いますが、その前に簡単でいいから加藤参考人から伺っておきたいと思います。  近年労務者の不足がはなはだしく、その労賃の値上がりがコストに大きな影響を及ぼしておると思いますが、その実情はどうかという点、それから労務不足から必然的な課題となろうが、企業体質特に設備の改善を行なって生産性を高める必要があろうと思いますが、この点はどう考えておるか、それから過般来の設備投資抑制から一般に金融相当強い引き締めを見ているわけでございますが、輸出陶磁器業界における現況はどうか、すなわち一般に陶磁器業界の企業形態は依然として個人企業的な色彩が多く、資本構成がよくない、そのために体質改善のための資金を増資に求むることはきわめて困難である。この面からも金融的な援助が必要ではなかろうかと思うが、そういう点はどう考えていらっしゃるか、この点について加藤さんから伺いたいと思います。
  66. 加藤壽保

    ○加藤参考人 お答えをいたします前に一言私おわびをして訂正いたしたいと思います。私先ほど用語が違いまして、政府と申しましたが、これは私の大へんな用語の間違いでございます。あくまでも商工委員会の諸先生方にお願いしたいと思います。  御指摘の点でございますが、一般的にこの二、三年で非常に急激に労力が不足したということが一つの問題になっておると思いますが、その理由は、非常な経済の急速な成長のために雇用数がふえたということが一つ、もう一つは上級学校への進学がふえたということ、特に愛知県の場合は例の中部経済圏の異常な発達と伊勢湾の臨海工業地帯の伸展のために非常に労力が不足して、そのためにこの高騰する労務費をいかにして吸収するかということも御指摘の通りでございます。  大体状況を具体的に申し上げますと、率直に申し上げた方がよいと思いますが、あの地方におきますいわゆる雇用賃金と申しますものは、三、四年前までは新卒業生大体百六、七十円というのが普通でございましたが、今日におきましては三百五、六十円と申しますから、三年か四年でこれに関する限りは所得倍増をなし遂げたわけでございます。しかし、コストの上にそういう高賃金が影響しないようにいかにこれを吸収していくかということにつきましては、設備の改善以外にはないと思いますが、これも中小企業の宿命でございまして、慢性的な資金難でございますので、根本的な改善はなかなかできません。業界におきましても、中規模以上の業者は、ここ数年間のうちにある程度の改善は行ないました。たとえて申しますならば、従来の単独かま焼成から連続かま焼成に切りかえたものが相当ございます。しかし、ただ焼成を変えただけでありまして、その他の生産施設とか生産設備、生産方式におきましては今なお非常に旧式なものが多いのでございます。何とかこれを改善しなければならぬ。賃金の上昇ももう一般的な傾向でございますから、これはできるだけ多くお払いして、なおかつ原価に影響しないようにするには設備の改善以外にはございませんけれども、長い間の資金難のためになかなかできない。とりわけ、最近の引き締めのためにこの点が非常に困難である。そこにもちまして、昨年は一昨年の好況のあとを受けまして輸出が減った関係で、一般的に業者も仕事の減少というような点につきまして、金融難に陥ったわけでございますので、特に最近はそういう点につきまして非常に苦労いたしております。どうかその点につきましても、御考慮をお願いしたいと思います。   〔中村(幸)委員長代理退席、岡本(茂)委員長代理着席〕
  67. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 大体業界の実情はわかりましたが、そこで大臣に一つお尋ねやらお願いをしたいと思います。  わが国の経済が高度成長に伴いまして、陶器の輸出もぐんぐん伸びて参りました。設備も改善されつつあります。本年度の陶磁器の輸出目標は、政府の強力なる要請等もあり、一億一千万ドルと策定をせられております。業界をあげてこれが達成に努力をいたしておりますから、ここに不測の事態が発生しかけております。それは申し上げるまでもございませんが、アメリカ合衆国はわが国輸出陶磁器の最大の市場でありまするが、従来しばしば関税引き上げあるいは割当制の採用等を契機といたしまして問題をかもしたことがあります。今回また同国の生産業者は関税引き上げに関して提訴をいたしております。申し上げるまでもございませんがケネディ大統領は通商拡大法を制定いたして自由国家との貿易を拡大せよという政策をとっておりますが、これに逆行するような今回の陶磁器輸入関税引き上げという措置をとろうとしておる。これはきわめて重大なことでございまして、ひとり陶磁器の問題のみならず、これがもし提訴が通るといたしまするならば、日本の輸出産業全般に影響を及ぼす結果になるんじゃないかと憂慮をいたしておるのであります。そこで本日参考人を招きまして逐一実情を聞いたわけでございますが、業界といたしましても戦線の統一をいたしまして、これに対処する万般の準備をしておるようでございます。しかし、これは業界のみでやりましてもとうてい及ぶものではございませんので、わが国の政府はもとより、政界、財界あらゆる方面の援助を得てこの難問題を打開せなければならぬ、かように私どもは確信する次第であります。今伺いますると、外務当局あたりは非常に甘く見ていらっしゃる。またいつものことだというようなお考えがうかがわれるわけでございますが、私は今回は非常に重大な意義を持つものであると思いますので、政府におかせられましては、強内な対策を講じていただきたい。それについては原局でありまする通商産業省においてさらに調査を進められ、万全の対策を立てて業界の伸展をはかっていただきたい、かように思う次第であります。  この一億一千万ドルという輸出額はきわめて少ないわけですが、陶磁器産業はいわゆる外貨まる取りでありまして、国内資源のみによってやっておる産業でございます。しかし、今までややもすると、何とかしていくからということで通商産業省の援助がきわめて少なかった。例をあげますると、先ほど来お話のありまするように、労務問題等についても何らの措置をしておられない。体質改善等につきましても、きわめて享受するところが薄い。それから業界が自粛して共同積立金制度などを立てまして、輸出振興をはかっておりますが、こういうものにまで課税をするというような措置をとっておる。しばしば免税措置を懇請いたしましてもいれられない。それからさらに技術改善等につきまして研究助成金を要請しても、なかなかこれが認められない。金融引き締め等につきましても、輸出産業に対しての特別の措置がとられていない、こういうような参考人からのいろいろな陳述があったわけでありますが、こういうような問題についても一つ特別の御措置をいただきたい、かように思う次第でございまするが、わが国の輸出振興については常に格段の留意をしていらっしゃいます佐藤通商産業大臣の陶磁器産業に対する御見解並びに今度のこの関税引き上げに対する御所信を伺いたいと思います。
  68. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま早稻田さんのお尋ね、ことに御意見に関する部分につきましては、大へん私も共鳴するものでございます。私は、最近国際収支が悪化して輸出振興あるいは輸出増強、こういう言葉が使われるようになって参りましたが、どうも日本産業実態等から申しますると、いわゆる輸出国是と申しますか、基本の問題として輸出を進めていかなければ日本産業自体の健全な発展はない、こういうような考え方をいたすものであります。この見地に立って今までの税制、金融その他諸施策等考えてみますると、今までのところはまだ不十分な点が多いんじゃないか。いわゆるどうも国際収支が悪くなったから輸出を伸ばすんだ、そういう便宜といいますか、あるいは一時的な処置のように考えられると、私ども考える輸出国是というその気持から見ると、どうも考えが徹底しないんではないか。だから一そう金融なりあるいは税制等の面におきましても、諸制度等につきましても、輸出国是というようなこの基本的な立場において、今後さらに内容を充実していくべきではないか、かように思います。ただいまお話にありましたように、ことに業界自身が戦線を統一してというお言葉がございましたが、この点が私は特に必要なことではないかと思いますので、私どもいわゆる政府がどうこうするという前に、業界自身が自主的に輸出国是という国の方針に一つ御賛成いただいて、そうしてむだな競争を排除し、お互いのむだを省く、そういう処置をとっていただきますならば、必ず目的を達するだろう。ただ、業界自身が戦線を統一していろいろ活動をなさいます場合でも、政府が外交的にいろいろ交渉を持ち、そうしてわが産業界の進出を容易ならしめる、それについての努力は絶えずいたさなければならないと思います。ことに陶磁器産業において最大市場であるアメリカが、自国産業保護の見地から保護関税を設けるというような処置に出る、これは他の産業にもそういう前例があります。十分当方の実情も理解してもらい、また相手方に対しましても十分の措置考えていただく、これなどは当然外交の措置の問題だろう、かように思いますので、官民一体となりまして輸出の国是を確立し、増強をはかっていきたい、かように考えております。
  69. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員 輸出国是の確立についてかたい所信を伺いまして、敬意を表します。重ねてお願いしておきたいことは、この輸出産業振興の建前から、今回の米国の関税引き上げ問題につきましては、政府はあらゆる調査を進め、万全を期してこの問題が悪化しない最善の措置をとっていただくことを懇請いたしまして、私の質問を終わります。
  70. 板川正吾

    板川委員 関連して、蛇足かもしれませんが、一、二お伺いをいたします。  永井さんに伺いますが、この陳情書を一読しまして、関税委員会で公聴会を持っておる。これが黒と出た場合には、大統領にそれを答申して、大統領が認めるか、場合によっては拒否権を発動する、こういうことになっておりますが、黒と出ても大統領の拒否権でそれがつぶれればけっこうな話だ、こういうことになります。しかし、最悪の場合に大統領がこれを認めたという場合、向こうの両団体の予想通りの黒となって通った場合には、非常に輸出に影響を与えるということはわかりますが、どういう程度影響の度合いというものを予測されておるのか。これが全産業に壊滅的な打撃を与えるものと、それからやや輸出不振を来たす程度と、こういうものではわれわれの心がまえが違いますが、その点はどういう程度の被害を受けるものと考えておるわけですか。
  71. 永井精一郎

    ○永井参考人 今の御質問、的確に実はお答えできませんけれども、もし関税委員会で黒と出まして、大統領がこれにサインするということになりますと、磁器の方で提訴いたしました関税はどのくらいになるかと申しますと、現行は大体日本品に対しましては六〇%と一ダースについて十セントの税金をかける。これが提訴のごとく一九三四年の最高のときの五〇%アップとなりますと、一〇五%にプラス・ダース十五セントということになります。それから陶器の方は現在四〇%の従価に十セントのピース税をかけております。これが提訴の結果になりますと、七五%プラス一五%のピース税ということになります。もしこうなりましたときを考えますと、一〇〇%以上になりますと、相当に輸入が困難になる。絶対いかぬとは言いません。しかしこれは具体的にどのくらい減るだろうということはちょっと言えませんけれども、大きな打撃であるということは言えます。一〇〇%以上になるということは大へんなことであります。それからもし最悪な場合、陶器について輸入割当制をしくということになりますと、これはまた重大なことになりまして、おそらくこれは低賃金国家からのものは、クォーターを減らすというようなことになりはしないかと思っておりますので、そういうことになりますと大へんなことになると思いますが、具体的にどれだけ減って、どれだけ影響があるということは、ちょっと私ここで申し上げかねます。
  72. 板川正吾

    板川委員 的確にどういう程度と言えないが、四〇%が七五%になり、六〇%が一〇五%というふうになると、まさに業界に壊滅的な打撃を与えるだろう、こういうふうに予想しているわけですね。
  73. 永井精一郎

    ○永井参考人 そうですね。
  74. 板川正吾

    板川委員 それから陶磁器の対米輸出は、最近六〇年度を山として六一年度は若干二割方下がっておりますが、本年度の予想というのはどういう程度ですか。ここに数字が一億一千万ドルというふうに書いてあるのですが、通産省の資料によると大へんこの数字と違うのです。たとえば三十六年度の対米陶磁器輸出は四千四百七十八万ドル、こういっておりますが、政府の資料によると二千九百五十万ドルですね。これは通商局の通商白書にありますが、大へん違うのです。この点は一体資料がどこから出ておるのか、業界の方は山かけして水増ししてあるのか、通商局の方が正しいのか、でたらめな数字では困るので、どちらが正しいのですか。
  75. 永井精一郎

    ○永井参考人 今の問題はアメリカに対する全品目の輸出額と今度関税委員会の対象品目になりまする食器との統計の違いでありまして、四千何百万ドルというのは全品目を網羅した対米輸出の額であります。その中で約半分ちょっとというものが今度問題になりました食器類でありまして、別にその点は違っておりません。  それから今年度の見通しでありますが、先ほど申しましたように、三十五年度が一番よけい要りまして、一億五百万ドルになっておりますが、今年度は先ほど早稻田先生もおっしゃいましたように、一億一千万ドルの目標でありまして、非常に期待をかけておったのでありますが、現在のところ伸び悩みというような状態であります。
  76. 板川正吾

    板川委員 そうすると三十六年度は、業界の資料によると、四千四百七十八万ドルが対米向け全陶磁器の輸出総額で、これを今年は一億一千万ドルというように大体二倍余にふやそうという予定なのですか。
  77. 永井精一郎

    ○永井参考人 一億一千万ドルというのは全世界に向けての輸出額なのです。
  78. 板川正吾

    板川委員 わかりました。それではあとで、この資料と通商局の通商白書の資料とが違いますから、どちらが正しいか一つ御検討を願います。  それからもう一つだけ倉八軽工業局長に、これは答弁は要らないのですが、先ほどあなたの答弁の中で、関税でやると手数がかかる、輸取法を改正してアウトサイダー規制を設ければこういう心配がないのだ、輸取法を改正しなかったのはけしからぬというようなものの言い方をしておるのでありますが、輸取法の改正を提案はされたが、最終的には国会の意思で全会一致をもって修正されておる。そういう国会の意思も尊重しないと、おれの方が通らなかったからけしからぬというような考え方は、けしからぬと思います。特にその考え方は、この輸出関係の五条の三は、国内販売業者と生産業者でしょう。これにアウトサイダー規制をかけたら、これは全国内製品にアウトサイダー規制をかけるのと同じことになるのじゃないですか。なるほど陶磁器の場合にそれをかけたとしたら、ほかの業種が、陶磁器にかけてなぜおれのところにかけないのだというようなことになったら大へんなことになるのじゃないですか。だからそういうことを審議した結果、アウトサイダー規制は国会の意思としてやめさせたのだから、そのやめさせた精神を尊重してもらわなければ困りますよ。それに文句を言うのはけしからぬと思いますので、以後慎んでもらいたいということを要望して、私の質問を終わります。
  79. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員長代理 この際、参考人御両君に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、長時間にわたり本委員会の調査に御協力を賜わたり、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。  本問題についての質疑はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  80. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員長代理 次に、先刻中断いたしておりました金属鉱山の問題についての質疑を続行いたします。松平忠久君。   〔岡本(茂)委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 松平忠久

    松平委員 佐藤通産大臣にお伺いいたします。先ほど来実は日本鉱業株式会社の八山の休山問題に関連いたしまして、その地元である石川小松尾小屋鉱山関係者を参考人として呼んで、その実情を調査したわけであります。  そこで問題は、国会における決議が先般採択されたわけでありますが、自由化に直面する危機を突破するという考え方の中には、いわゆる恒久対策応急対策があったわけであります。しかるに今回の日本鉱業株式会社の八山の休山あるいは三菱鉱山等における休山の問題もうわさされておりますが、そういうことは自由化に直面するという一つ原因もあったでありましょうけれども、いわゆる景気調整政策、金融引き締め、そういうことにも関連があって金融難になったとか、あるいは国際的な非鉄金属の相場が下がったとかいろいろな原因があって、自由化をする前にすでにもう参ってしまったという実情であるようであります。従って、先般の国会決議の中における緊急を要するものは、この際早急にそれを具体化していかなければならぬと同時に、あの決議以外のことについても応急策としてもろもろのことを考えていかなければならないのじゃないか。その一つは、たとえば滞貨融資の問題について、政府のあっせんというようなことを現在考えられておるようでありますけれども、それも強力にやっていかなければならぬであろうし、また労務者の対策についても、石炭産業の轍を踏まないようなことを今から十分用意して、補正予算も組んでいくということにしなければならぬだろうと思う。同時に業界の方からも補給金であるとかあるいは特別のいわゆる生産維持のための炭鉱奨励金であるとかいう要望が出ておるようであります。従って、これらも勘案するとすべて金が要ることなんです。でありますがゆえに、これは通常国会まで待つということになりますと、結局来年の四月になってしまう。その前にみんな伸びてしまう。こういうことになって、陳情書を見ておっても、ほとんどこれは壊滅的な打撃を与えやせぬか、日本の非鉄鉱山はほとんど五割以下になってしまう、こういうようなことが業界の声として伝えられておるわけであります。従いまして、先ほど来の議論の中では、補正予算を早目に組んで、そして臨時国会に提出すべきであるというのが議論の焦点だったわけであります。局長の答弁はそこまでいろいろ検討しておるというような程度でありまして、これは局長だけの責任ではなく、むしろ政府全体の責任として早急に解決をしなければならぬ問題でありますので、大臣の出席をお願いしまして、大臣の所信を伺うためにただいま私が質問の形式で申し上げたようなわけであります。臨時国会で早目に予算措置を講ずる必要があるとわれわれは思っておるわけでありますけれども、それに対する大臣の見解を一つ伺っておきたいと思います。
  82. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 結論的に申し上げれば、必要のある措置政府責任を持ってとるべきだ、かように思いますから、ただいま臨時国会において何らかの措置をとるか、こう言われれば、その必要度によりまして私やります。かように申しますが、ただいままでの合理化計画の進み方、この全般を見ますと、いろいろ問題を分けてみないといかぬのです。尾小屋の問題にいたしましても、山自身の問題とそれから町の問題と二つあるようです。御承知のように、この山自身はもう八十年間も掘っておりまして、大体掘り尽くしたという山のようであります。これは探鉱すればこの山がさらに生きるか、新しい鉱床にぶつかるか、こういう問題もあろうかと思いますが、大体技術的に見ましてもう掘り尽くしたという感の方が強いようであります。だから、この山自身の問題はそういうことで処理を考えていかなければならない。そうして残る町の問題をいかに処理するか、いわゆる産炭地振興というようなことが一方石炭の場合には考えられておる、こういう場所においてそういう措置考えられるか、こういう問題もあろうかと思います。こういう具体的な問題についての措置は、そういう意味で実際の問題をもう少し検討してみないと、石炭の場合と非鉄の山の場合とではだいぶ町の形成等も模様が違っておりますので、同様にはなかなかできにくいだろう。ただ急激に変化を与えない措置が可能かどうか、そういうことを検討してみる必要があるのじゃないかと思います。と申しますのは、御承知のように非鉄の山はほんとうの山奥、その谷底にできておる町が多うございますから、そういう意味でこの山自身が見込みがないとなりますと、この山相手の町というものがどういう形になるか、これは大へんな問題だと思います。そういう意味で取り組んでいかなければならぬだろうと思います。ただいま松平さんが言われましたように、非鉄鉱山自身——日本の非鉄鉱山というものは見込みがないんじゃないかというお話に対しましては、これはもう一部の業者も申しておりますように、政府探鉱奨励金等が予算的にも十分計上され、またそれが十分使われるようになればまだまだ見込みがあるのじゃないか。私もつい先立って日立市における日立鉱山を見て参りましたが、この山などは非常に将来に期待をかけるというような実情でありますし、また秋田県下の山等もなかなか有望な山があるようであります。そういうことを考えると、今までのような経営方法ではなしに、もっと積極的なやり方も可能じゃないかという結論も実は持っております。ただ最近の問題といたしまして、大きい事業体に対する探鉱の資金確保という問題は、政府はなかなか出しかねるとか、小さい山に対してはということはございますけれども、これなどはさらに政府はその探鉱奨励金などをもっと積極的に、予算ども計上すべきではないだろうか、かように思います。ことに国内資源の貧弱な日本におきましては、そういう新鉱床の発見に一そうの力を入れるべきだろうと思います。ただいま当面いたしまして非常に問題になりますのは、国際価格の変動、国際価格が安くなった結果、日本国内産銅等に対する影響、これは銅ばかりではございません。その他のニッケル、鉛、亜鉛等も同様な影響を受けておるようでございますが、そういう意味から私ども一つ価格の安定の措置をとるべきだろう、こういう意味で特別融資などを計画いたしておるわけであります。ただ政府自身が積極的にということでなしに、業界と金融界の話し合い政府があっせんする、あるいはこれを援助するというような形で、大体その目的を達しつつあるかに私実は見受けておりす。国内の非鉄金属の原材料の価格が一定に安定するようになって参りますと、それを基準にしての合理化計画が進んでいくのじゃないか、その合理化計画が進みます場合に、前国会におきましても皆様方からの御要望等が出ておりますから、それに対応しての恒久対策を講じていくということで、ただいままでおそらく局長から御説明申し上げたのではないかと思います。この事柄があるいは自由化影響ではないか、そういうような御心配も一部あるやに見受けております。もちろん自由化国内非鉄鉱山事業あり方は関連をしておりますが、ただいま尾小屋の問題などから発展しております社会問題なり労働問題そのものは、いわゆる自由化そのものではなくて、山自身の命脈そのものに実は深い関係があるのじゃないか、かように考えますので、これは自由化の問題とは別に考えていくべきではないだろうか。  ただ石炭産業に対しての諸対策というものがよほど進んで参りまして、非鉄金属はやや力が十分でない、対策がおくれておる、こういうような感なきにしもあらずでございます。そういう意味から前国会で当委員会でも強い決議をいただいたと思いますので、政府もその線に沿って、ただいま強力に対策を立てておるという次第であります。従いまして、いろいろの措置がございますが、事業状況いかんによりましては実態に対しての必要な措置は必要なときに実施すべきだろう、だから冒頭に申し上げましたようにもう少し実情に対する状況を十分判断するに足るだけの資料を集め、そうして結論が出れば、それは臨時国会に対しまして所要の措置をとる、これはもちろん、私ども当然なすべきことだ、かように考えておる次第でございます。
  83. 松平忠久

    松平委員 ただいまの大臣の答弁は、いわゆるきめのこまかい措置をとっていかなければならぬ、石炭産業とも若干違う点がある、こういうことで、実情をよく把握して、つまり調査を早くして、それによって必要な措置をとる、こういうのが大臣の答弁の結論のように思います。日本鉱業株式会社の八山の休山の決定は、たしか五月の初めごろじゃなかったかと思います。従って、もうすでに七月になり、二ヵ月過ぎておるわけですが、私は原局としては調査も十分しておるのではないか、こう思います。尾小屋の問題につきましても、私も行ってみましたけれども、命脈の尽きたような山もありますけれども、非常にいい山もまだ残っておるというような状態であります。そこでこの対策は、今大臣が言われたように、鉱山自体の対策というものもあると思います。もう一つは、現地におけるそれによって間接に生きておる住民の対策、それから何らか鉱山縮小再生産というようなことになりますと、そこに災害の問題というものが伴ってくるのではないか、こう私は思うのです。炭鉱の場合もそれはあった。その三つの点から強力な対策を進めていかなければならぬわけなんです。ところが、これは九月三十日を待たずして、今大臣も言われたように、直接自由化という問題でなくして、ばたばたといってしまう。しかもそれはやはり自由化ということが目の前にちらついていますから、今のうちに何とかと、こういうことに考えているのじゃないかと思うのです。でありますがゆえに、これはひとり日本鉱業だけではなくて、ほかの鉱山にも心ず波及してくるのではないかと思います。そこで、これは調査はしなくちゃなりませんけれども、その調査をなるべく早くしてもらって、そして早い対策をしていかなければ、石炭のときのような後手々々の対策ができてしまうのじゃなかろうか。労務者の関係にいたしましても、石炭の場合を見ましても、それは現在のような産炭地振興の事業団を作るとかいろいろなことが今日はありますけれども、初めはそういうことではなくて、公共事業等に吸収するのだというようなことで、政府予算措置はあるという当時の説明だったけれども、実情を調査してみると、ちっともそれは解決になっていないのです。たとえば公共事業で鉄道に幾人幾人、五百何人収容するんだといってわれわれが行って調査してみると、結局三名ぐらいしか転換してないというようなことで、石炭の場合にはちっともマッチしてないのです。そういう苦い経験を持っておりますので、この経験を今度逆に生かしまして、鉱山に対しては十分な措置を早くとらなくちゃならぬ、これがわれわれの要望なんです。  それから同時に最近の探鉱状態を見ますと、昭和三十年ごろから、あるいは二十七、八年ごろから比べますと、各社の探鉱の費用というものはかなり上がってきております。それだけ各社が一生懸命探鉱をやっているのじゃなかろうかと思うのです。ところが今日のように赤字になりますと、探鉱ができない。今大臣も言われたように、たとえば秋田の同和の小坂ですか、あれは十年間探鉱をやって初めてできた山だということを聞いておる。それは大へんな費用をかけて探鉱をしておるわけです。中小に三億円ことしは探鉱奨励金を出すようになりましたが、大手は現在全部を集めますと、おそらく五、六十億の探鉱費を使っているのではないか、こう思います。それが今度は全然出せないということになると、結局ジリ貧になってしまう。だから相当思い切った予算措置というものを講じなければならぬ。この思い切った予算措置というのは、これは結局は通常国会じゃないかと思います。しかしながらその前にみんな参ってしまうのがあるのだから、その応急措置というものは早く講じていかなければならぬ。その応急措置を早く講ずるということについての大臣の考えはどうですか。準備状況は……。
  84. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは準備状況、実情の把握がまだ少しおくれておりますから、今どうするということは、ちょっと申し上げかねます。しかし、今言われました秋田県下の山にしましても、日立の山にしましても、探鉱の結果は、将来相当有望な山だということになっております。ただいま日本鉱業お話が出ておりますが、日本鉱業も、持っている山のうちには有望な山があり、また命脈の尽きたようなところもございますが、そういうもののいわゆる鉱山労務者自身の移動には、私はそういう心配は要らないのではないか、こういう感じを、ちょうど先月ですか、日立に参ったときに一応持ったわけです。ただ問題は、そういう鉱山を相手にしている町といいますか、そういう町の問題がなかなかむずかしい問題ではないか。石川県下に参りまして、知事さんあたりの陳情も、そういう意味のお話を強く実は伺いました。それは政府なり、また県なり、総体にその対策をやはり考えていかなければならぬのではないか。これはもう御承知のように、いわゆる山の中、谷合いの町でございますので、これは新しい事業を設けるということは、なかなか困難でございます。ただ、それを急激に移動することも非常に困難さがある。そういう意味の社会問題あるいは政治問題だろう、こういうように思いますので、そういう見地から対策を立てるべきだろう、かように思います。山自身の問題は、いわゆる中小の散在しているものについては、なかなか対策が困難であります。しかし、大きな経営者のもとにおける労務者の移動といいますか、尾小屋が工合が悪くても、日立に行ける、あるいは秋田県下に移れる、こういう問題は、最近労務者不足の観点から見ると、同一商売、同一事業に従事するほど、これはやはり経験者を生かすという意味において、まず会社自身も必要に感じておるのではないかと思います。しかし、何にいたしましても、社会問題なり、あるいは政治問題に発展することを非常に懸念いたしますので、そういう意味の対策を十分考えていかなければならない。しかし、これは通産省だけの問題でも実はない。これは臨時国会等が、参議院選挙後にすぐ開かれるのが非常に期間も短いだろう、こういうようなことでありますれば、そういう機会には対策は出ないにいたしましても、あるいは通常国会前に一般の審議をするような国会が開催されれば、そういう際には、私どもも十分のデータをもって対策に対する応急措置の必要のものを計上すべきだろう、かように考えております。
  85. 岡良一

    ○岡委員 私は、最後に大臣に強く要望をいたしたいと思います。それは先ほど来尾小屋を代表する地元の諸君の参考意見に対しましての質疑応答において、当局の御答弁は、私はきわめて不親切な感じがいたします。なぜかと申しますと、たとえば尾小屋というものについては、すでに大臣自身も現地に来られまして、県から実情をお聞きになった。県も先月の十九日には議会で与野党一致の決議でもって強く要請いたしました。ところが、この要請書には、ちゃんと資料も添えて実情が書いてございますが、これを当局がどの程度注意をもってお読みになったか、私は先ほど来の御答弁では、その点非常に無責任だと思います。今大臣自身も言われましたように、この山はとにかく八十年の伝統を持っている。しかも鉱山で鉱毒のために木はほとんどはえていない。田畑も二、三町歩しかない。ですから米は全部小松市からあげている。そして山の中にこつ然としてパチンコ屋があり、飲食店があり、あるいは生鮮食料品店があるというようなことで町ができている。この資料を注意深くお読みいただけばおわかりの通り、なるほど日鉱は大きな会社でございましょうけれども地元においておじいさんの代から鉱山に勤めて、ネコの額ほどのところでも地面を持って、家を建てている人がある。社宅にいる人は動けるかもしれないが、この諸君は事実上動けない。いわんやこの鉱山を相手にして物を売っているお店にすれば、この統計にもはっきりと出ておるように、ほとんど七割五分、八割というものはもう生きる道がないというように県の調査がなっておる。こういうような調査に対しては、先ほど来の御答弁によれば、日本鉱業と労働組合との間に再建についての話し合いが始まるから、その推移を見守っておるということだが、組合と会社側との間にどんな協定ができ、解決策が生まれても、先ほど私が申し上げた事実を解決することにはならない。それから鉱業に関する審議会ができて、審議会が必要なる時点においては取り上げて問題にし、あるいは解決策を講ずる、こうおっしゃいますが、審議会にデータを出すのはあなた方なんじゃないですか。してみれば、あなた方自体が山の実態をもっと自分から出かけていって調、へなければならない。これがない。これではいつの日に一体この問題が解決できるか。今、松平君も申しましたように、この問題は決して尾小屋だけの問題では私はないと思う。でありますから、この尾小屋に現われたいわば氷山の一角としてのこの事態に対しては、政府としてはもっとすみやかに責任ある実態調査をやっていただきたい。労働組合との協定で何とかなるのじゃないかとか、あるいは審議会の方で結論を出そうというが、審議会の方にその調査の実態のデータを出さなければならぬ、この責任はあなた方にあるわけですから、これをやっていただけるかどうか、この点をまずお伺いしたい。
  86. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私も小松市に参りまして、小松市長それから組合の方にも会いました。私は、組合の方もさることですが、町の実態、その方が実は問題じゃないか、かように思いますので、ただいま岡さんの言われる通り、これはやはり現地について十分実態を調査して、一応この陳情書には、閉山で影響を受けない世帯数というものも出ておるようですが、これはきわめて少数でございます。大部分がその影響を受けるということでございますので、実態を十分考えて、そういう人たちが他に移動する場合の資金の融資その他について政府がまためんどうを見る方法があるんじゃないか、そういう点を十分考えて、その対策を立てるべきだろう、かように思います。だから、ただいま御指摘になりますように、私の答弁でも御理解がいただけるだろうと思いますが、山自身の問題と町自身の問題と、その二つをやはり分けて対策を立てるべきだろう、かように思います。御協力を願います。
  87. 岡良一

    ○岡委員 最後にお願いをいたします。大臣のおっしゃった通り、町の問題として石川県民が全部非常な関心を寄せておる問題でありますので、御趣旨の通り善処をお願いいたしたい。これは直接自由化影響にはないものだといたしましても、何と申しましても自由化の余波を受けての現象であることはまぎれもない事実であります。そこで自由化気圧配置の抵抗線の弱いところへ集中豪雨が降って、山津波が起こってのまれようとしておるのがこの山です。ところがこれは全国あちこちにあるわけであります。そこでこういう観点から、実態の調査についてはできるだけすみやかに善処してやっていただきたい。その上で審議会の方にもデータを出していただく。また大臣の御説のように通産行政だけの問題ではない。厚生省、建設省、農林省も関係する問題が含まれておりますので、各省間の連絡も緊密に講じまして、大局的に善処していただきたい。このことを強く要望いたしまして質疑を終わりたいと思います。      ————◇—————
  88. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に農産物の貿易自由化に関する問題について質疑通告がありますので、これを許可いたします。松平忠久君。
  89. 松平忠久

    松平委員 大臣に一言だけ質問します。貿易の自由化について九〇%十月一日からやるのだ、こういう政府の決定であります。そして最近私は新聞で大臣の所信のようなものも伺いましたが、そのときにも十月一日に既定方針通り九〇%やるのだ、こういうことを言われておったのですが、ほんとうにやるのですか。あるいは検討して少し延ばすということをするものもあるのか、そこらのところは政治的な答弁となるかもしれませんが、よほど考えないと——たとえば農産物についても原料油脂の関係、これは延ばしてくれと言っておる。トマトの加工品のごときも、トマトの生産県並びにそれに関連しておる産業は延ばしてくれと言っておるわけです。政府自体は、農産物については大豆以外はやらないのだと言っておるけれども、今度のリストを見ると農産物並びに関連のものが五品目ばかり含まれておる。それに対して業界から、関係者から、あるいは生産者から、その代表者から延期をしてくれということを強力に言っております。それに対してただいまのところどういうお考えか、一言だけ大臣の所信を伺って各論に入りたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 御承知のように、政府自由化大綱というものをきめて進めて参っております。それによれば、ただいま御指摘のように十月に九〇%自由化しよう、こういうことであります。もう少し正確に申しますなら、まず十月から来年三月までの間に残っておる九〇%を仕上げよう、こういうことでございます。早いものは九月末までに準備ができる、来年の三月末までにいわゆる九〇%完了ということにしたい。これについていろいろ準備を進めておるわけでございます。本来から申しまして、自由化基本方針といいますか、これは経済を拡大していく本来の姿だ、この考え方にはいろいろ議論があると思いますが、政府はそういう考え方基本方針をきめておるわけであります。また先ほど早稻田さんの質問に答えましたように、輸出国是というような観点に立てば、もちろん自由化を積極的に進めるべきである、かように私ども考えておりますので、そういう意味からその準備を続けておるわけであります。  もちろん国内産業に国際競争力が十分ない場合、そういう場合においての自由化は大へんな危険がございますから、今日まで自由化をおくらせておるのは、いろいろ政府の施策なり指導なりによりまして国際競争力を培養する、その期間が今日まで産業によっておくれてきておる、こういうように御理解をいただきたいのであります。いわゆる国際競争力という観点に立つと、総括的に申せば農産物というものはまず自由化する場合でも最後になるだろう、まずやれないだろう、こういうような気持であります。農産物といっても一がいに申すわけではございませんで、その中のものによりましては国際的な競争力十分あり、かように考えると、これは自由化品目に取り上げていく、こういうことであります。具体的な場合の問題をどういうようにお考えでございますか、先ほどの非鉄金属等にいたしましても、九月末、十月ということを申しておりますが、正確に申せば来年の三月までの間、こういう期間であります。その間に業界の協力なり政府の指導なり、万全の対策を立てる、こういう考え方でございます。
  91. 松平忠久

    松平委員 本年の四月までに自由化するのだという品目の中で、自由化対策が間に合わなくてだらだらとおくれてきておるものがかなりあるということを聞いておるのですが、その通りですか。しからばそれはいつまでに自由化するのですか。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 私も正確には記憶いたしておりませんが、いわゆるだらだらとおくれておるという表現はあまり当たらないかと思います。たとえばパイナップルというものがございます。これなどは沖繩のパイナップルというような問題があるので、これは特別な考慮をしておるわけであります。それに該当するもの、それに準ずるようなものでしょうが、レモン、こういうようなものは国産レモンも相当出ております。最近はミカンからレモン栽培に変わってきておるようなものもあります。今しばらく待ってほしいというような意味で、これなどは数量を制限するとか、やはりその対策がそれぞれあるわけでございます。今、松平さんから御指摘になりますのはどういう問題でございますか、私もそれより以上にあまり存じ上げませんけれども、そういうような状態であります。
  93. 松平忠久

    松平委員 政府自由化対策ですね、これは国際競争力を持たせるのだというのでもって、だいぶいわゆる高度成長という名前のもとに自由化対策の方針でやってきたわけです。ところがこれが行き過ぎて、現在は引き締めておるということで、自由化対策準備というものは政府のやり方によって少し頓挫を来たしているというのが現在の状況じゃなかろうかと私は見ております。それは自由化対策を早くやるのだといって、わっといろいろやったところが、これは設備投資でいろいろ問題があったというのでもって、一時押えたというのが今日の状態なんです。ところが自由化の方は十月一日からやるのだといって、この方は政府の面子もあるから、延ばすということは今日あまり言わぬわけです。ところが、それに対する準備の方は、ともかく準備をしたところが水をぶっかけられたような格好で今日まで来ておるというのが実情なんです。従って、中小企業はこの準備もできずにおって、かなり打撃を受けるところもあるのじゃなかろうか。それから中小企業の人たちとも会っていろいろ聞いてみますと、足元へ火がついてこなければやらないような考え方の者がかなりあると思います。だから、啓蒙もなかなか足りないということでもって、さて十月一日になっていよいよやったのだということで、あとになってあわててどうしたものかこうしたものかという議論がたくさん出てくるのじゃないか、私はこういうふうに見ておるわけです。従って、さっきの答弁で、来年の三月三十一日までに準備のできたものからやるのだ、こういうことでありましたので、今後は自由化に対する準備に対しては政府金融その他の措置も十分そういうものにはつけてやる、その点はこういうお考えなんですか。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 これは今の松平さんは誤解はないだろうと思いますが、産業自体の国際競争力にたえるかどうかということと、産業を形成している具体的な会社が国際競争力を持っておるかどうかということとはやや違うわけでございます。私どもの見方はいわゆる産業部門として実は見ておるということでございますので、誤解のないように願いたいと思います。今日までの経済成長あるいは自由化対策として、これは相当設備の増強が要求されて参りましたが、これは現状においては、見方によっては設備の競争を惹起している、あるいは二重投資になっておる、こういうようなものも実はあるように思います。従って、一がいに自由化対策だから全部認めるか、こういう議論はちょっと困るのです。産業自体は一体どういう状態にあるのか、それを見きわめて必要な措置を進めていく、こういう考え方丈ございます。先ほど来のお話にいたしましても、たとえば非鉄金属なら非鉄金属ですが、これも銅の山自身は、電気銅を作るそれまでの過程では非常に国内では困っておりますけれども、その電気銅を使って電線を作るとか、あるいは伸銅をやるとか、こういう方から見たら材料は安いほどいいのですから、メーカーの方から見るとさらに自由化を進めろ、こういう議論も実はあるわけです。ですから山の場合と、さらにそれを材料に使う場合とは立場が違うわけですね。それを調整するところに政府の努力があるわけです。電気銅で申せば、価格を安定させ、それから外国から入る電気銅の価格もそれに合わすように関税措置その他をとっていこう、こういうことで安くなり、安い産銅で、それを電線にする、あるいは伸銅にする、こういう措置をとらせれば、産業自身とすれば国際競争力を持つということにもなるわけです。それをあらゆる産業部門について工夫して参りますと、なかなか簡単に設備が過大だからこうなったとか、あるいは自由化がこうなったというその議論にはちょっと賛成しかねる。ことに中小企業の面は、専門に輸出産業に従事している場合がなかなか多いのです。日本の場合は、大企業自身は、材料は作るが輸出品そのものは中小企業がやっておる場合が非常に多い。だから材料自身が安くなり、中小企業の扱う製品自身が、同時に国際価格にも十分たえ得るというか、国際競争にも勝ち得る、それをやるためには、中小企業の設備改善というものが必要であり、同時にまた中小企業の労務の確保ということが問題になる。そうして、しかも労務者の賃金はどんどん上がって参りますから、中小企業の付加価値額が一体どういうところにいくかという、これが私どもの指導の一つの目標でもあるわけです。そういう意味から、中小企業の設備改善に対しては、今日まで金融の面では特別なめんどうを見てきた、また今後も見るであろう、こういうことが実は言えるだろうと思います。ただ一がいに、自由化のための設備投資だ、こういう名目だけでは、実際には今の経済の調整段階ではちょっとのみ込めないものがありますが、十分実情に対しての対策、適切な措置、効果のあるような金融をつける、こういう考えでございます。
  95. 松平忠久

    松平委員 これから少し各論に入りたいと思いますが、大臣に対する質問者ございますか。——ないなら、大臣は帰っていいです。  第一番にお聞きしたいのは、農林省の方来てますね。——トマトは、加工品は現在外国から若干入ってきておりますか。
  96. 枝広幹造

    枝広説明員 今外国から輸入しているかという御質問でございますが、トマトペースト及びトマトピュレにつきましては、三十五年に六百五十トン、それからトマトジュースにつきましては百四十八トン輸入しております。
  97. 松平忠久

    松平委員 そこでトマトの加工品は九十品目の中に入っておりますね。そうすると、外国のものがかなり日本へ入るのではないか、こういう心配をしておる生産者並びに製造業者があることは御承知の通りであって、本年一月ごろからそれらの業者つまり経済連とかあるいは製造業者、加工業者の代表からトマトの加工品の自由化は延期をしてもらいたい、こういう要望が出ておるように聞いておるのですが、事実ですかどうですか。
  98. 枝広幹造

    枝広説明員 私の方は、直接経済局の方は存じませんが、現局の振興局の方には出ておるようでございます。
  99. 松平忠久

    松平委員 通産省の方へ出てますか。
  100. 宮本惇

    ○宮本説明員 私は直接は聞いておりません。
  101. 松平忠久

    松平委員 振興局ですか、出ておると言ったのは。政府部内におきましては、そういう要望が出ておるときに通産省といろいろ協議をしたりいろいろして検討を加えなければならぬと思うのですが、今までそういうことはしておりませんか。
  102. 石井一雄

    ○石井説明員 お答え申し上げます。この陳情を私承りましたのは、この春だったと思いますが、私の名あてでございまして、それぞれ関係のところには別途に陳情するというお話でございましたので、私はそれなりに事情は伺ったわけでございますが、その措置につきましては内部で検討はいたしておりますけれども通産省と私直接御相談申し上げたということは実はなかったわけでございます。
  103. 松平忠久

    松平委員 ちょっと伺いますが、日本でトマトを生産している農家というのは何万戸ございますか。つまり加工用の製品として生産している農家です。
  104. 石井一雄

    ○石井説明員 私、今戸数の資料は持ち合わせがございませんので、後日調査いたしましてお答え申し上げます。
  105. 松平忠久

    松平委員 私の推計によればやっぱり百万戸はあるんじゃないかと思います。そこで、もし外国から安いトマトの加工品が入ってくるとすると、どこの国から一番よけい入ってくるんですか。
  106. 石井一雄

    ○石井説明員 今まで入ってきております実績から見ますと、アメリカが一番多いようでございます。これは三十五年の通関統計でございますが、これはトマト・ペーストでございますけれども、六百五十五トンのうちアメリカから六百四十一トンでございますから、大部分がアメリカでございますので、そういう点は今後のことを考える場合には考えなければならないと思います。
  107. 松平忠久

    松平委員 イタリアのものが非常に入ってくるという可能性はございませんか。
  108. 石井一雄

    ○石井説明員 今のトマト・ペーストでございますと、先ほどアメリカから六百四十一トンと申し上げましたが、イタリアはその三十五年に十トンでございますので、目下のところは大へん少ないわけでございます。
  109. 松平忠久

    松平委員 われわれが生産者に聞いておるところによりますと、自由化をしますとイタリアからかなり安いものが入ってくるのではないか、こういう懸念をしておるようであります。まあその点は別としまして、日本の加工業者の加工技術というか、そういうものと外国とを比べて、生産者も含めて日本のトマト・ケチャップなりジュースというものは十分国際競争力を持っておるのですか。私はまだ持っておらないということを聞いておる。まだ二年ぐらい準備がかかるということを聞いておるのですが、その点の把握の仕方はどうですか。
  110. 石井一雄

    ○石井説明員 私ども承知しているところから申し上げますと、たとえばアメリカと比べました場合に、アメリカでは、加工用の専門品種と申しましょうか、そういうものが割合に普及いたしておるというふうに聞いております。ただし、私ども国内でそれらのものの試作等もいたしております限りでは、現在日本で普及いたしております品種と比較いたしますと収量が低い。そこで、アメリカにおきましては経営規模が非常に大きいわけでございますから、その経営規模で収量の少ない点をカバーいたしまして加工用の専門品種を作っておる、こういうふうに伺っておるわけでございます。日本におきましても、この加工用の品種の品質改良は現在進めてございます。それから若干出ておるものもございますが、なお収量が従来の専門品種と比べまして必ずしも十分でございませんので、その普及は必ずしも早くない状態でございますけれども、そういうふうに、品種の点からは一つそういうふうなことが考えられると思います。  それから今度は加工の設備、それらの規模の問題でございますが、私どもそう具体的にこまかく掌握いたしておるわけではございませんけれども、当然アメリカの方が規模が大きいということは考えておるわけでございます。従って、それらの加工に要する経費という点から見ますと、かなり合理化されて安い、こういう想定はつくだろうと思います。
  111. 松平忠久

    松平委員 それでは、トマトについての最後の質問ですが、これは業者や生産者から延ばしてくれということを言ってきているけれども、それは無視してどんどんやっちゃうという今、方針なんですね、そういうことですか。
  112. 枝広幹造

    枝広説明員 トマト加工品につきましては現在米国とイタリアにガット税率がございますので、われわれとしましてはこれと交渉いたしまして、関税率を調整いたしまして十分競争できる関税率まで引き上げまして、それから自由化する、こういうことになっておりますので、現在のところその関税率の成果を見ているわけでございます。
  113. 松平忠久

    松平委員 次に伺いたいのは、クルミはすぐ自由化をやるのですか。
  114. 楠正二

    ○楠説明員 十月にできれば実行いたしたい。まだはっきり確定をいたしたわけではございませんが、林野庁といたしましてはそういう案で今進んでおるわけでございます。
  115. 松平忠久

    松平委員 その場合には中共のクルミが入ってくるということになりますか、それともインドシナあたりから入ってくることになりますか。ほかの国から来るとすれば、どこから来るのですか。
  116. 楠正二

    ○楠説明員 中共だと思います。
  117. 松平忠久

    松平委員 この点は、かつて中共からクルミを輸入したことがありますが、品質的には日本の方がよくて問題にならぬ。だから値段だろうと思いますがね。自由化をした場合の値段と、それから、自由化をした場合には値段について今までのようないわゆるコントロールができないんじゃないですか。言いかえるならば、日本のものを先に売っちゃって、足りなくなったら中共のものを入れろ、こういうことを今までやっておったわけです。ところが自由化になればそれができなくなると思うのですが、あなた方は何かそこに一つの方法を考えて、そうして日本の生産業者が損をしないような内面指導というか、そういうようなことは考えておられますか、どうですか。
  118. 楠正二

    ○楠説明員 長野県の信濃クルミと中共のものとは品質的に非常に差がございますので、その格差は当然私は維持されていくものと考えております。  なお輸入に伴います御指摘の今まで若干の調整をとっておりました点につきましては、生産地の団体、問屋、あるいはまた輸入業者、こういう三者のそれぞれの団体において行政的な指導によりましてある程度成果は上げて万全を期して参りたいという考えでおります。
  119. 松平忠久

    松平委員 それ以上は追及しません。  シイタケは国際競争力はかなりあるように思うのですが、この点はどうですか。
  120. 楠正二

    ○楠説明員 十分あると考えております。
  121. 松平忠久

    松平委員 それではこれは問題はないわけです。  その次に伺いたいのは、最近騒いでおります植物油ですね。大豆油とかあるいは大豆の油をしぼったかすとか、その他たくさん植物油がございますが、これが自由化になる場合には、日本の製油業者はだめだ、困るというので、猛反対をしておるような状態なんですが、これに対しては通産省なり農林省はどういう態度をとって臨もうとしておるのですか。
  122. 枝広幹造

    枝広説明員 ヤシ油、大豆油その他の予定品目は、現在いろいろ事情を調査して、検討しておる段階でございます。
  123. 松平忠久

    松平委員 しかし、それは十月一日にその中のある品目は自由化になるわけでしょう。そうじゃないですか。
  124. 枝広幹造

    枝広説明員 現在のところ、昨年の九月にきまりました自由化促進決定によりますと、食用油脂は関税率を引き上げまして自由化するということになっております。それを非常に陳情がございますので・現在食糧庁において種々検討しておる段階でございます。
  125. 松平忠久

    松平委員 それからその次に伺いたいのはホップですね。ホップは自由化ですか、現在。あるいはこれは自由化品目になるわけですか。
  126. 石井一雄

    ○石井説明員 これはすでに自由化されております。
  127. 松平忠久

    松平委員 自由化されておるホップは現在一キロ当たり千四百円くらいだそうですね、ドイツのものが。アメリカのものがそれより安いかどうか知りませんが、日本のホップの生産者はビール会社と契約を結んで、そうして長期契約みたいになっておって、現在のホップの日本の値段はキロ当たり六百円くらい、外国のものは千四百円だということになっておるそうですね。ところが、最近聞くと、生産業者が七百円なり八百円に上げてくれと要望しておるそうですか、一体政府は、自由化をしたけれども、外国から品質がちっとも変わりがないものを千四百円で買わして、日本のものは六百円で押えていくという政策はどうしてとっておるのですか。
  128. 石井一雄

    ○石井説明員 特産課長が海外出張中でございますので、私かわりましてお答え申し上げます。  今、先生から御指摘の、最近輸入品の価格が上がっておるというお話でございますが、この輸入品の価格の値上がり状態は実はまだ掌握しておりませんのでわからないのでございますが、昨年の価格でいいますというと、六百円前後というふうに統計上からは出て参っております。  なお、御質問のございました国内の価格でございますけれども、この価格につきましては、昭和三十四年以来でございますけれども、生産者の団体と、それから購入者でございますところのビール会社でございますが、そことの間で価格の算定方式が一応取りきめられてございまして、それはパリティ指数によりまして、それが前年から上がった場合にはその上がった比率によって前年の価格にかける、実はこういうやり方で現在まできておりますけれども、この場合に、それではそのもとになります価格、これが適正かどうか、こういう議論はあるわけでございまして、目下その点につきましては、その生産者の団体と、それからビール会社との問で検討いたしているというふうに私ども聞いております。若干上がるのではないか、こういうふうな、またできるだけ上げるようにいたしたいということで、双方でその具体的なことにつきまして相談しておる、こういうふうに聞いております。
  129. 松平忠久

    松平委員 昨年の価格は外国ものが六百円程度、ことしは千四百円にはね上がっておるということであります。そこで今あなたがおっしゃったように、ビール会社と生産者団体との間の価格の決定はパリティ方式できめておるわけです。ところがこのパリティの基礎になるものがうまくいっていないというために、現在の状況は、大体反収八万円くらいの収入があるけれども、支出が八万円くらいかかる、だから差し引きずると、労賃も何もない、こういうのが大体のホップの状態だろうと思う。だからどんどんやめていってしまって、従って、しようがないから外国から高いものを買うというのがビール会社の現在のやり方だと思います。そこで農林省はその中へ入って適当な値段にあっせんをしておるという状況だろうと思う。ところでビールの中のホップの値段というものは、一本のビールの中でおそらく一円くらいでしょう。だからこんなものは一円三十銭になったところで大したことはない。そこで外国から千四百円もする高いものを買ってきて、日本の値段を押えておいて、それでホップを作った者はどんどんやめていくというようなことでは、これはどうかと思うのだ。最近の状態は、東北でもあるいはその他の地域でもやめていく方が実は多いくらいになっている。だからビール会社にあまり肩を持つということをやめて、それもやっていないだろうと思うけれども、もう少しこれは外国並みといかなくても、とにかく採算が合うくらいに上げてやるという考え方をもってやってもらいたいと思うのだけれども、今聞けば特産課長が外国へ行っているというわけだから、あなたにかわりになってここへ来てもらっているので、特にそれを申し上げて特産課に、——この問題は何も大きな問題じゃないと思うのだ、だから課長限りでも突っぱればできる問題だと思うのです。ぜひ一つそういうことを特産課によく申し伝えてもらいたいと思うが、いかがですか。
  130. 石井一雄

    ○石井説明員 ただいま御指摘がございましたが、確かにホップは非常に労力のかかる作物でございます。従いまして、結局労働報酬ということではじいて参りますと、あまり高くない作物でございます。従いまして、農林省特産課といたしましては、その間何らか労働力を省いていくようなそういう生産の仕方があるかということも一つの問題でございます。たとえば、これは花を収穫するわけでございますが、その花をつむ機械、こういったものが適当なものが出て参りますと、これは非常に役に立つと思われるわけでございます。いろいろ試作品もあるそうでございますけれども、まだ適格なものが出てこないということで、なお今後の改造考案に待たなければならないということでございます。そういう面の促進を進めていく必要があろうかと思います。  なお、御指摘のビール会社の肩を持っているつもりでは決してないと思います。なおこの点はよく特産課長に話しまして進めていくように努力いたしたいと思います。
  131. 松平忠久

    松平委員 パリティ方式というものに非常に問題があるのじゃなかろうかと思うのです。農産物の価格について、数年かかって、米については生産費及び所得補償方式でいったのだが、その他のものはあの当時パリテイカ式を採用したわけです。そこでこれが惰性で続いているけれども、やはりそういった場合において米の基準米価を決定する方式ですね、そういうフォーミュラに漸次改めるようにしていかなければならないのじゃないか。ことに今のような特産物は、これは大会社との間にそういった契約によって栽培しているのですから、少しくらい上げても向こうの方はへでもないのです。だからそういう点では私はパリティ方式を漸次改めていくべきだ、こういう見解を従来から農産物の価格については持っているのだけれども、そういうことも一つあわせてだんだんと念頭に入れておいてもらいたい、そういうことを特に要望しておきます。  以上です。
  132. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十九分散会