○永井
参考人 私、永井でございます。
いろいろ
先生方に申し上げまして御理解と御援助を得たいと思いますが、その前に、今日大へん当
委員会のお仕事が御多端のおりから、特に陶磁器の問題を取り上げられまして、私
どもに皆様にお訴えをする機会を与えていただきましたことを、まずもってお礼を申し上げます。いずれ陶磁器生産の
状態につきましては、今日一緒に参っておりまする加藤さんから
お話があると思いますので、私は、大体陶磁器の輸出の概況について
お話を申し上げたいと思うのでございます。
わが国の陶磁器の総生産は、約七百五十億くらいございます。これは私
ども日本の欠陥でございまするが、こういった数字はなかなか正確にとらえられない欠陥がございますので、これは大体の数字でございますが、七百五十億くらいの生産がありまするが、その中で半分が輸出に向けられておるというのが大体常識の数字であります。これを具体的に申しますると、一昨年の三十五年でありますが、との三十五年におきまする輸出総額というのは、一億四百万ドルの実績をあげております。しかもこれは御承知のようにほとんど大部分の原材料が
日本でまかなえますので、いわば外貨の手取り
産業と申しても過言ではないと思うのであります。この一億四百万ドルの中で、アメリカ市場へ出ておりますのが約五割ちょっとであります。
〔
委員長退席、
中村(幸)
委員長代理着席〕
これは陶磁器をアメリカへ輸出をいたしました最初は、大体八十幾年の昔からでありまして、約一世紀にわたっておりまするが、この間に順次ふえて参りまして、三十五年度におきまして、今申し上げましたように一億ドル余の五三%くらいを出しておるわけなんであります。その他はいわゆる世界各国の市場へ出しておるのでありますが、最近アメリカにおきまして、
日本品とは特にさしてはおりませんけれ
ども、輸入品の防遏運動を始めまして、御承知のように関税問題が起きたのであります。陶磁器は、先ほど申しましたように、八十何年の対米輸出の経験を持っておりまして、その間いろいろのトラブルが起こっております。最初に起こりましたのが一九三〇年であります。それ以来今日に至りまするまでに七回の関税問題が起こっております。いずれも事前に多少の兆候といいますか、前兆があったのでありまするが、今度は全く抜き打ち的な関税
委員会への業者の提訴でありまして、私
どもといたしましては非常にろうばいをいたしたのであります。
今度対象品目になっておりますのは、陶器及び磁器のテーブルウェアとキッチングウェア、すなわちこの陶磁器の食器類全般をカバーいたしております。これがもし公聴会におきまして黒と出ますと、その及ぼす
影響は非常に大きなものがあります。そこで、私
どもはさっそく生産者団体の中央団体でありまする
日本陶磁器工業協同組合と私の方の
日本陶磁器輸出組合との合同の
対策委員会を開きまして、この
対策に腐心し、かついろいろの
対策をいたしております。ところが、何を申しましても、われわれの業者だけではなかなか手に負えない問題でありますので、
政府御当局はもちろんでありますが、政界におかれましても、あるいは財界におかれましても、あるいはPRの
関係からジャーナリズムの方面におきましても、これはできるだけ御理解と御援助を得なければならぬというので、われわれ合同
委員会におきましていろいろと
陳情等をいたしております。
まず合同
委員会でやりましたことは、私
ども陶磁器は幸いにアメリカの現地に輸入商の組合がございまして、この輸入商の組合と提携をいたしまして、まず弁護士を雇うことにしたのでございますが、今度は大へんに事が重大性を持っておりますので、弁護士を二人雇うことにいたしました。そして代表を三名向こうへ送ることにいたしまして、一名はすでに現地へ行っております。また近く一名参りまして、次いで三名全部行くという手はずになっておるのでございます。いずれにいたしましても、なかなか金のかかる仕事でありまして、これはあとで御理解を得たいと思っておりますが、なかなか思うように参らぬ次第であります。
それから、公聴会が開かれまする公聴会の法廷におきまして、われわれが反駁しなければならぬ資料を目下鋭意製作中でありますが、これはおかげで長い
歴史を持っておりまする陶磁器の団体がありますので、これでいろいろのデータといったようなものの作成に遺憾なきを期しておる次第であります。かようにいたしまして、私
どもはこの問題を非常に重要視いたしまして、業界あげてこの問題の好転、具体的に申しますれば公聴会において勝つということに全面的な努力を集中いたしておるわけであります。
ここでちょっと御
参考までに関税問題の
内容を申しますと、今度提訴いたしましたのは、磁器の向こうの組合でファイン・チャイナ・ギルドという組合がございますが、これは組合員数が五名であります。非常に少数でありますが、非常な大工場ばかり加入いたしております。これが輸入磁器の食器のために
国内の
産業が非常に打撃を受ける、でありますから、一九三四年度、これは一番アメリカの輸入関税の高いときでありますが、この一九三四年度の税率の五〇%を今度上げろ、こういう提訴の
内容であります。次に陶器の方はU・S・ポッターズ・アソシエーション、こういう向こうの製造家の組合がありますが、これは非常に急進的で、非常に強烈でありまして、輸入品に対して関税を上げるくらいではとうていだめだ。これはおそらく
日本品もさしておるのでありましょうが、輸入関税を上げるなんということはやぼなんだ、これは
一つ輸入クォーター制をとれ、こういう提訴の
内容であります。磁器につきましては五月四日、陶器につきましては五月の二十四日に、関税
委員会にいずれも今申しました
内容でもって提訴いたしまして、関税
委員会ではこれを受理いたしまして、七月の二十四日、五日、この両日にわたりましてヒヤリングを開催することになっておりますので、これに対処いたしまして、先ほど申しました私
どもは業界全体の合同
委員会でもって
対策をいろいろやっておる次第であります。
今申し上げましたように、そういう情勢でありまして、このヒヤリングにおきましてもしも黒と出たというような場合は、これはまた大へんなことでありますが、もう今まで私
ども七回目の公聴会を迎えますが、かつて黒と出たことはありません。私
どもの先輩各位の努力によりまして、戦後におきましてもかつて黒と出たことはありません。昨年の十一月タイルについて公聴会をやりました。この場合は関税
委員会の決定は黒でありましたが、幸いにして大統領の拒否権によりまして無効になっております。かようなわけで、現在陶磁器全業界といたしまして当面いたしておりますのは、この関税問題であります。そこでもし関税問題が黒と出たというときには、これは大へんなことになるわけであります。
次に、しからばどういう輸出振興策があるか、こういう問題に入るわけでありますが、これはあとでいずれ御
質問があると思いますので、やめておきますが、私
ども今までの経験からいろいろこの公聴会に対する見通しを持っておりますが、しからば一体今度の提訴はどういう
理由であったろうかというようなことをいろいろ研究しておるわけでありますが、大きく申しますならば、いわゆる現アメリカ政権の自由貿易主義に対する保護貿易主義の反撃ではないか。これは大きなことを言うようでありますが、そういう感じを持つのであります。またこれを業者の側からいきますと、数回戦ってきたけれ
ども、結局不利に終わったのだ、幸いにして御承知のように新しく
通商拡大法というものが制定されつつありまして、旧法であります互恵
通商法というものはすでに六月三十日をもって失効になっております。この機会に、いわゆるチャンスをとらえると申しますか、そういったことで、もしだめでももともとだ、うまくいけばもうけものじゃないかというような業者の
気持があるのではないかと実は
考えるわけなのであります。もう
一つ、最近向こうの業者からの通知によりますと、今度の公聴会は
相当政治的な含みがある。と申しますのは、
皆さんはよく御存じだと思いますが、ケネディ政権発祥の地は例のウエスト・バージニアと聞いておりますが、陶産地も・ウエスト・バージニアとオハイオなのであります。これらのことを
考えますと、はたして現政権が自由貿易主義を貫くかどうか、ここに私
どもは政治的な大きな不安を持っておるわけなのであります。過日私は、加藤さんも御一緒でありましたが、合同
委員会の者と一緒に各方面を
陳情いたしましたが、アメリカ大使館に行きました。私
どもは今まで自主的統制を絶えずやってきておる。昭和十一年以来私
どもは自主規制をやっておる。特にその最も明確なのは、アメリカの製造業者の一番ドル箱の製品は、皆様おわかりにならぬと思いますが、ホテルだとかあるいは料理屋で使う厚い食器なのであります。これはアメリカの業者のドル箱なのでありまして、これを私
どもがもし作って出すならば非常に向こうと衝突する、元来私
どもの自主規制というのはアメリカ品と競合しない、品質におきましても価格におきましても衝突しない、その中間のところへ輸出しようというのが伝統的な自主規制のやり方、
基本的な
考え方でありまして、現在陶器にいたしましても磁器にいたしましても、そういった向こうと競合しないところへ
日本品を出そうということが
基本になりまして今までやっておったのであります。その上に一番はっきりしているのは、向こうの一番大事な製品であるホテル・ウェアというものは出すまいということに決定して、現在までこれは何ら協定なしに今まで進んできておるわけであります。ところが昨年向こうのホテル食器の製造業者と
日本の製造業者とで技術及び資本の提携をいたしまして、こちらでホテル食器を作りまして向こうのメーカーのブランドで輸出をするという話が持ち上がったのでありますが、これは生産者団体と私の方でいろいろ協議をいたしまして、依然として中止をいたしておったのであります。昨年また、今度はほかのそういったケースが起こりまして、今度はいいだろうというような
意見が
国内にもありましたので、いろいろ向こうに人を派しまして打診をいたしましたが、その結果もやはり向こうはノーという返事でありました。そこで先方のホテル食器の業界の代表者を四人、私の方で招請いたしまして、この四月にいわゆる一米会談をいたしたのでありますが、その結果、今度また会談をするまでこの問題はベンディングにしようじゃないかということで延ばしました。しかし、この両方は非常な親善
関係を結びまして帰ったのであります。これは私は過日アメリカの大使館に行って申し上げたのでありますが、右の手ではそういった工合にこちらの業者と向こうの業者とシェーク・ハンドをしているのだ、しかるに公聴会に提訴するというようなことは、左手でもってわれわれの頭をぶんなぐるものだという話をしたのでありますが、まさにこれは大きな目から見ましても、アメリカの自由貿易主義に相反することを敢然としてやる。しかも右手で握手をして左手で頭をなぐるといったようなことははなはだ遺憾であると申し上げたのでありますが……。