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1962-04-13 第40回国会 衆議院 商工委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十三日(金曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員   委員長 早稻田柳右エ門君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       齋藤 憲三君    始関 伊平君       首藤 新八君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中垣 國男君       中川 俊思君    南  好雄君       村上  勇君    岡田 利春君       多賀谷真稔君    中村 重光君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小沼  亨君  委員外出席者         議     員 相川 勝六君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    加藤 悌二君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月十三日  国土調査促進特別措置法案相川勝六君外五名  提出衆法第四〇号)本委員会に付託された。     ————————————— 四月十三日  国土調査促進特別措置法案相川勝六君外二名  提出衆法第二七号)委員会許可を得て撤回  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一三〇号)  国土調査促進特別措置法案相川勝六君外五名  提出衆法第四〇号)  国土調査促進特別措置法案相川勝六君外二名  提出衆法第二七号)の撤回に関する件     ────◇─────
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  この際、議案撤回許可の件についてお諮りをいたします。  相川勝六君外二名提出国土調査促進特別措置法案につきましては、提出者より成規手続をもって撤回の申し出がなされておりますが、本案はすでに委員会において議題とした議案でありますので、委員会許可が必要であります。  同案撤回許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、同案撤回許可することに決しました。      ————◇—————
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、新たに本委員会に付託になりました相川勝六君外五名提出国土調査促進特別措置法案議題といたします。
  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 まず提案者より趣旨説明を聴取することといたします。相川勝六君。
  6. 相川勝六

    相川議員 本案は、ただいま撤回許可されました議案にかわりまして、日本社会党及び民主社会党の賛同を得まして、三党共同提出案件として新たに提出いたしましたものでありまして、その内容は前案と同じでありますが、以下提案理由を御説明申し上げます。  わが国経済伸長発展と民生の安定向上をはかることは国策の基調をなすものでありまして、これがためにはまず国土実態を的確に把握し、これが開発保全効率的利用に資することが前提的要請であるといわねばなりません。  政府はここにかんがみまして、昭和二十五年本院の決議にこたえ、去る同二十六年国土調査法制定し、本事業本格的実施推進をはかることといたしたのであります。  さらにまた、特に本事業基本となる地籍調査推進につきましては、昭和三十二年、同法の一部を改正いたしまして、特定計画の確立並びに事業実施に伴う国庫補助率の引き上げを行なう等の措置を講じたのでありますが、次いで昭和三十四年、本院においてあらため国土調査推進に関する決議を上程し、満場一致これを可決いたしました。  しかるに、翻っておもんみるに、本事業調査法制定以来今日すでに十歳をけみするにもかかわらず、業績遅々として進まず、なかんずく、最も緊急を要する特定計画に基づく事業においてすら、五カ年間においてわずか計画量の一割にすぎない実情でありまして、かくのごとくにして遂行せんか、本事業の完成はまさしく百年河清を待つのほかなく、輓近のわが国経済情勢の急速度の進展に比し、牛歩遅々たる著しい立ちおくれを余儀なくいたしている次第であります。  特に、さきには農業基本法、低開発地域工業開発促進法、さらにまた、目下本院において審議中の新産業都市建設促進法等一連経済立法制定に伴い、農業構造の改善、適地適産による産業立地の適正化等緊急の課題に即応いたしまして、土地質的実態を科学的かつ総合的に把握する土地分類調査必要性がますます重きを加えて参りましたにもかかわらず、この種の分類調査が、いまだに机上の試験的段階にとどまり、調査法に基づく準則規程すらなおいまだ成案を得ざることは、まことに心外のきわみといわねばなりません。  かくのごとき客観諸情勢推移動向にかんがみまして、国及び地方公共団体を通じ、国土調査業務劃期的推進をはかることは、刻下喫緊の急務であると思うのであります。  すなわち、これがために、新たに本特別措置法制定いたしまして、これにより昭和三十八年度以降、十カ年計画を確立するとともに、これに必要な行財政上その他特段緊急措置を講ぜんとするものであります。  以上が本法案提案する理由であります。  次に本法案について若干の説明を申し上げます。  すなわち、先ず第一に、本法案目的とするところは、国土の効率的な開発利用に資するため、緊急かつ計画的に国土調査事業実施推進をはからんとするものであります。  第二に、この法律にいう国土調査事業の定義を規定しているのでありますが、この法律に基づく事業内容は、地籍調査基礎となる基準点の測量、土地分類調査基準決定等国機関が行なう基本調査と、これを基礎といたしまして、地方公共団体または土地改良区の行なう細部調査との二本建といたしております。  第三に、国土調査事業十カ年計画の策定について規定いたしました。すなわち、十カ年計画は、国土の総合的な開発、低開発地域における工業開発農地利用高度化等、当面緊要な施策を講ずる区域において所要の調査を行なうことといたしまして、昭和三十八年度以降十カ年を目途として、実施すべき事業量を明らかにすることといたしております。  計画決定手続といたしましては、内閣総理大臣が、国土総合開発審議会並び関係都道府県の意見を聞き、さらに関係行政機関の長に協議して計画案を作成し、特に閣議の決定を求めるべきものといたしました。  なお、土地分類細部調査にありましては、これが前提となる基本的地籍調査の進行と相待って、逐次緊急を要する地域について選択的調査に限定いたしました。  第四は、十カ年計画に基づく、国土調査事業実施について、この法律において特に定めるもののほかは、国土調査法規定適用がある旨を規定いたしております。  最後に、国土調査実施を促進するため行財政特段措置を必要とすることにかんがみまして、政府においてこれを行なうことを規定いたしました。  なお、本法は、公布の日からこれを実施することといたしております。  以上が本法案提案理由でありまして、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  7. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、内閣提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。中村重光君。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案に対して、公取委員長質問をいたします。  この法律案は、親企業下請企業との取引関係を、下請に一方的にしわ寄せされている現状を打開して下請を守っていこう、こういろ考え方でありますので、その点に対しては異議はないわけでありますが、ただ、改正点がここで若干出されておりますけれども、この程度改正下請代金支払い遅延が防止されるかどうかということに対して、実は疑問を持つわけであります。さらに現行法律でもっていたしましても、遅延を防止するため勧告といったような点が実はあるわけでありますが、第七条によるところの勧告、これが現実に行なわれておるかどうか、まずこの点に対して一応伺ってみたいと思うのであります。
  10. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 勧告につきましては、ただいまお話しのこの法律の第七条に規定があります。私の方といたしましては、この法律は、その目的の示す通り下請企業保護でありますからして、その保護を達するために必要な限度において勧告をするわけでありますが、その勧告につきましては、従来の実績を見ますと、親企業者が不当な取り扱いをしておったという場合に、これを是正するため勧告であるとかあるいは事実上の勧告というようなことが行なわれるのでありますが、法律上の勧告は、昭和三十二、三十三、三十四年度におきまして若干行なわれております。しかし、最近におきましては行なった例はないのであります。と申しますのは、いろいろ親事業者の方の資金繰りその他を調べてみますと、非常にむずかしい点もあるので、親事業者がもう少し努力するならば下請に対する支払いが円滑に行なわれるというような場合に、こちらからいわゆる非公式な勧告と申しますか、行政指導と申しますか、そういうことをやって大体その目的を達しておりますので、法律上の勧告をする必要がなかったというのが最近の事情でございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 そうしますと、最近は実は行なわれていない、こういうことでありますが、私ども高度経済成長政策の中から、御承知の通りに、国際収支の悪化、これに対するところの調整という形において非常に下請企業というものが圧迫を受けておる、それは最近において特にはなはだしい現象である、このように実は考えるわけであります。ところが、前は勧告をしなければならないことがあったけれども、最近はないのだ、最近は行政指導という形においてその点がうまく行なわれておる、こういったようなことは、現実の問題としていささか不審に考えられるわけであります。今回の改正案にいたしましても、やはり最近の状況からして、法律を強化していかなければならぬ、下請を守っていく、こういう考え方からの改正案である、このように考えるわけであります。ただいまの御答弁は抽象的でありますので、要を得ないわけでありますが、どうして最近はその必要がないのか、さらに今度改正しようとするものとの関連というようなものが納得できませんので、まずその点を詳細にお答えを願いたいと思います。
  12. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 親事業者下請事業者関係がいわゆる下請事業者立場において悪化してくるということは、多くの場合経済動きによるものと思います。昭和三十二年ころが非常に不景気だった、そういうときには下請事業者に対しまして親事業者企業上の困難のしわが寄ってきた。ところが、その後経済が成長いたしましたので、下請事業者が不当にいじめられるということがだんだん少なくなってきております。ところが、最近、法律の七月ころから金融引き締めも行なわれまして、その引き締めがだんだんと強くなってきた。そこで、親事業者も非常に資金繰りが苦しくなって、苦しくなると、そのしわ下請事業者にだんだん及んでくるという心配が濃厚になってきております。われわれの方の調べは非常に古いものでありますから、まだ下請事業者が非常に困っておるということはそれほど感じておりませんけれども、現在の金融情勢からかんがみますと、下請事業者が困るということはますます多くなってくるだろう。そこでこれに対しまして、どうしても、われわれといたしましても、下請事業者保護するため施策を講じなければいかぬ。その施策の方法として今度法律改正しようとするのでありますが、改正せられない現行法適用につきましても、遺憾ながらと申しますか、経済動きに応じまして、親事業者に対する規制を強めざるを得ないことになると思うのであります。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 そこで具体的な問題に対して質問に入ってみたいと思うのでありますが、今回の改正では、第四条で著しく低い下請代金の額を不当に定めるという場合、あるいは正当な理由がある場合を除いて自己の指定するものを強制して購入させる場合、第三点としては下請事業者公正取引委員会または中小企業庁長官に対して、親事業者の第四条第一号から第六号に該当する行為について、その事実を知らしたことを理由として、不利益取り扱いをすること、これが主要な改正点であると思うのでありますが、まずここで、「著しく低い下請代金の額を不当に定める」、こういった抽象的なことでは、実際に法を運用していく場合において、幾多の問題点にひっかかってくるのではないか、このような感じを持つのであります。「著しく低い下請代金の額を不当に定める」、この点に対しては、その不当性というものは、どういう場合を想定をしておられるのか、その基準というものも非常にむずかしいと思うのでありますが、まずこの点に対しての考え方を聞かしていただきたいと思います。
  14. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 お話し通り、この買いたたきの規定は抽象的であります。それでありますから、具体的に運用する場合には、そのときどきの事情をよく考慮して、健全なる社会通念に従って処理すべきでありますが、たとえばたくさんの注文を出すということで値段をこれだけにしてくれという協定をしておる。それで、それじゃその値段でいい、ところがいざとなると、たくさん注文をするような値段でわずかしか注文しない、そうすると、下請業者の方ではすっかり採算が狂います、そういうふうな場合であるとか、あるいはまた発注に際しまして、単価もきめないで、下請業者の給付を受領して、あとになって、物ができ上がってしまってから、親企業者の方で勝手に不当に安い値段をきめる、そういうふうな事例もありますので、それらにかんがみまして、この法の運用をしていこうと思うのでありますが、具体的に幾らが著しく安いのか、あるいはまた不当なのかどうかという問題は、個々の場合に当たらぬと、抽象的に申し上げることが非常にむずかしいと思います。今申しました例なんかは、おそらくこの法律に書いてある今後の運用の場合に問題となる点だと思います。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまの御答弁からも判断できるわけでありますが、著しいというのが非常にむずかしい問題になって参ります。さらには親企業下請企業との置かれておる立場といったようなものも非常に問題となって参りましょう。さらには市価のない物品というものがあるわけであります。それらのことから考えてみまして、抽象的には一応ここへ表現ができるといたしましても、具体的な場合に、これを当てはめていくという場合には、非常にむずかしい。絵に描いたもちというか、現実にはこの法律が生きてこないという点があるのではないか、このような感じがいたします。  そこで、私どもはこの親企業下請企業関係というものを、現場で、体験と言うと少し言い過ぎというのか、そこまでは参りませんが、実際にいろいろと研究してみたわけでありますが、その研究の中から、この改正案あるいは現行法律というものをながめて参りますとき、これではどうにもならないのだという感じを深くいたします。  まず、この法律でもって感じる直観的なものは、親企業下請企業が対等でないということなんです。まずその根本となるものは、親企業下請企業関係、これを対等に置くということ、この点を直していくのでなければ、どのような法律を作ってみましても、これは実効が上がらないのではないか、こういう感じがいたすのであります。下請企業というものは、まず受注苦労します。これが第一難関です。非常に過当競争をやっている。一つ親企業に対して、数十あるいは数百という下請企業がある。競争入札で落札する場合も、あるいは親企業が特命で下請企業に渡す場合も、それぞれ非常な苦労があるわけです。この苦労一つ突破いたしまして受注したとします。ここで親企業との関係において、この品物はいつでき上がる、検収は大体いつごろだということがまずきめられる。それに向かって下請企業仕事をやって参ります。さてでき上がった、検収をしてもらいたいと言いましても、親企業はなかなか下請企業との当初の話し合いというものを実行してくれない。親企業都合によって、だらだらとその検収が引き延ばされて参ります。親企業都合によってあとから受注を受けたものが先に検収され、納品が行なわれる、こういうことが現実の場合においては非常に多いわけです。そこで第二の関門といたしましては、検収で非常に苦労をいたします。ようやく検収が行なわれた。それによって納品がなされた。ところが、その次に起こって参りますのは、下請代金の受領で、これでまた苦労をするわけであります。こういったような関係現実の姿として行なわれておるということであります。しかも独占禁止法条文等からいたしましても、検収が行なわれた、そして納品がなされた、この納品がなされてから三十日以内に代金が支払われるということにはっきりなっております。しかし、現実にはそういうことが行なわれていない。独禁法違反になるということで、先ほど私が申し上げました脱法行為が行なわれる。検収をしたならば、それによって代金を払わなければならぬということになりますから、親企業はなかなか検収に応じない。こういう現実の姿というものを公取委員長の方でも十分把握されて、その認識の上に立って法律制定し、運用していくということでなければ実効は上がらない。その現実の姿、なまなましい、状態というものをまず先にしっかりと把握されることが大切だと思うのでありますが、これらの点に対してはどのようにお考えになっておられますか。
  16. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 ただいまのお話ごもっともでありまして、われわれの方といたしまして、親事業者がどういうふうにやっているか。製品を受け取ってからいつ検収するか、検収してからいつ金を払うかというようなことを調査いたしまして、その調査の結果によって、これは親事業者が不当ではないかということになりますと、いわゆる精密検査といいまして、親事業者についてさらに詳しく調べまして、その結果、不当であるという場合には、下請法律によりまして勧告なりあるいは勧告に準ずる行政指導なりをしておるわけです。それによりまして私どもといたしましては相当の効果を上げておるものと考えております。もちろんこれはさらにしなければならぬと思いますけれども、若干の効果は上げておるというふうに考えております。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 私は、公取が何もやっていないのだ、何らの効果も上げていないのではないか、こうは申しません。それは当然職分でありますので、公取としては努力をしておられるでありましょう。そのことは、やはり一つの成果というのか、効果が上がっておるということはありましょう。しかし、現実とあまりにかけ離れておるということであります。先ほど来委員長がこの改正案に対してお話しになりました、最近はあまり勧告というものもないんだ、行政指導という形において大体うまくいっている。しかし、最近の非常な金詰まり、こういうことからこの程度改正をしておく必要があるんだ、こういうお話でありましたが、私はこの改正案は、これは適当でないとは申しませんけれども、実際あまりに概念的な点からこの改正案が出されたという感じがいたします。現実ほんとうに、何と言っていいか、あまりにもなまなましい現状にある、こういうことなんです。まずその点に対しては、先ほど私が申し上げましたように、親企業下請企業は対等でありませんから、この今度の改正案の中にあります公取委員会に対してこれに何か報告した、そのため不利益取り扱いがなされた、こういったような場合に対しての措置もここで明らかにされておりますけれども下請企業が、検収の日にちを守ってくれなかったとか、あるいは代金支払いがおくれた、こういう場合に、親企業に対しては非常に金詰まりで困っておりますから、何とか一つ早く検収をしてくれませんか、仕事はでき上がったのですから、労働者に対する賃金を払わなければなりません、こう言って親企業のところに行って頭を下げて頼みはします。しかし、実際に約束を守らなかったからといって、これに対して開き直って文句を言うとか、あるいは公取に、あるいはその他の関係の場所にこれを報告する、そうして何らかの処分を求める、こういうことをいたしましたならば、お前はもうだめなんだ、取引はさせぬ、これでただ一回で取引停止になってしまうということ、この親企業下請企業のネックを直していくということでなければ、私はどういう法律を作ってもだめだとは申しませんけれどもほんとう親企業下請企業関係がなめらかにいくという、こういう考え方に立っておられるならば、あまりにも現実離れした考え方だ、私はこう申し上げたい。この点に対してどうお考えになりますか。
  18. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 親企業下請企業関係は、お話し通り概して片一方は資本力も大きい、経済力も強い、一方は経済的に非常に弱い地位を持っている。強いものと弱いものの取引でありますから、どうして本弱いものが押えられるのはやむを得ない。そこで弱い下請企業者が圧迫されないように対等の地位に立って、いわゆる民主的に話し合いができるようにするということは、これは経済としては、政治としては望ましいことであります。そういうことは非常に望ましいことでありまして、政府もできるだけ努めておられるものと思いますけれども公取といたしましては、そういうふうな根本問題を公取の力でどうこうしようということはちょっと荷が重過ぎると思うのです。われわれの方といたしましては、とにかく事業者下請事業者が、強い親事業者が弱い下請事業者をあまりいじめては困る。そのいじめるという弊害を除去していこうというのが、公取立場であります。その限度において、いわゆる優越した地位の乱用と申しますか、それをできるだけ防止しよう、こういうつもりでこの法律運用し、また今度の改正案についてもそれらの点について若干つけ加えた、こういう次第であります。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 今の中村委員質問の件ですが、これは、公取とすれば、そういった答弁のような態度でいいと思う。問題はやはり中小企業庁にあると思うのです。中小企業庁が一体どのような観点に立って指導しておるかということです。今日のように下請企業親企業封建的隷属関係にある場合、いかに報復禁止規定を置いたとしても、何にもならない。それより先にやはり下請企業親企業からの独立制、これを確保しなくてはならない。そういうような面において中小企業庁はどのような努力をしてきたか、それを一つお伺いします。
  20. 加藤悌二

    加藤説明員 今、田中先生がおっしゃいましたように、下請はどうしても弱い立場にございますので、なかなかそれをほったらかしておいては、親企業に対して対抗できないということでございますので、私どもといたしましては、一つにはできるだけ下請関係企業につきましていわゆる組織化推進する。組合の力によって親企業に対抗するようにというふうな指導をいたしております。  それからもう一点は、やはり弱い立場にある下請業者ため役所が直接お手伝いをする必要がある。つまり役所の力によって親企業に対する立場の弱い中小企業立場を少しでも強くしようじゃないか、そういうことで仕事を進めて参っておるわけでございますが、具体的に申しますと、この下請代金支払い等の問題につきましては、私どもの方では主として下請事業者から四半期ごと支払い状況等調査をとっております。その調査の結果がまとまりますと、全部公取の方へも資料を出して、同時に地方の通産局にも流しまして、特にこれはひどいと思うようなものについては法律に基づきます中小企業庁長官の請求だとか、あるいは公取委員長勧告というふうなことではなくて・事前の行政指導といたしまして、私ども通産局長がそういうひどい場合にはみずから先頭に立ってそういうひどい親企業に対して特別に注意をするとか、そういうことで事実上だんだんよくなるように指導しておるということをやっております。現に最近におきましても二月に公取委員長と連名で各親企業の団体に対して、しわ寄せが来ないようにということでお願いいたしましたが、それと同時に、各通産局長等にも通牒を流しまして、今申し上げましたような趣旨で行政上の指導によって少しでも弱い立場におられる中小企業下請業者ために力をかしてあげるようにというふうにいたしておるわけでございます。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうように努めておるというが、これは一片の通牒だと思うのですよ。具体的に出かけていって、そうして親企業に対して強くやったような事例がありますか。それから本法第六条による中小企業庁長官公正取引委員長に対して請求権を発動したのが過去五年間に何件あったか、お伺いいたします。
  22. 加藤悌二

    加藤説明員 第二点でございますが、直接親企業に出かけていってと申しますか、私の手元こまでまだその報告は参っておりませんが、現にそういった例が二、三ございます。その後非常に支払い状況がよくなっておるというふうな例が、これは四国の通産局の管内でございますが、そういう事例が二、三最近にはございまして、その後大へんよくなっておるという事例がございます。  それから、あとの御質問でございますが、これは先ほどもちょっと申し上げましたが、私のあるいは記憶違いかもしれませんが、最近においては公取委員長に対する六条の規定による請求ということをした例はございません。私ども考え方としては、そういう法律的な権限で物事を取り運ぶ前に、行政官庁としてもっとやるべき仕事があるのじゃなかろうかということで、先ほど申し上げましたような措置をやっておるわけでございます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的に出かけていってこわ談判をやって指導したというような事例について、具体的にまだ報告を受けていない。そう努めておるということは、一片の通牒、通達、これでできると思うのですね。そう考えて、そういうことで指導しております、こう言っておる。さらに本法六条による請求権の発動がなかったということは、あなた方自体が法律を作っても、ほんとう下請企業立場からこの法律を守らすのだという熱意に欠けておるという証拠なんだ。そういうことだから、幾ら法律を作ってみても、窓口を担当しておる中小企業庁がいまだかつて法律にきめられておる請求権を発動したことがないという、そんならそういうことをしなくてもいいような状態かというと、そうじゃないのだ。あなた方は一体法律を作って、法律を守らないというのはどういうことなのか。行政指導をしてやるのもけっこうだ。そんなら足をもっていってやったかというとそうじゃない。一片の通牒、通達によって事が済むと考えているところに、官僚主義の悪いところがあるんだよ。  それから、この、ころでは手形を検収してから支払いまでどの程度のものが多いか、これを聞かせてもらいたい。法律によると「遅滞なく」ということであるが、こんな抽象的なことでは何にもならない。従って、どの程度のものが多いのか。指導にあたっては、検収から何日間くらいの余裕を置いて支払うべきが必要である、こういう立場に立って指導しておられるか。すなわち本法四条二号の「遅滞なく」という抽象的なものを実際の行政の場においてどのような具体的なものとして指導しておるか、お伺いいたします。
  24. 加藤悌二

    加藤説明員 私ども先ほどお答えをいたしましたように、四半期ごとに一応数字としては二千工場ばかりを対象にしておりますが、期によりまして回収の率が多少違いますので、実際に報告の参るのは二千の六〇%の千二、三百とか、あるいはもっと少ない場合もあるわけでございますが、そういうもので一応平均的な手形のサイトあるいは手形支払いの割合というものが出ておるわけでございますが、それに比べて特にひどいものをマーク工場というふうな考え方で、そういうリストを実は通産局の方へも渡しておるわけでございます。最近の調査によりまして——これはやはり親企業との関係において、おそらくケース・バイ・ケース、あるいは過去がどうであったかということにもよると思いますが、手形の受け取り割合が全体として大きくなっておるということは事実でございますが、しからばどの程度の割合が平均的であるかということになると、個々の具体的ケースについて見ないとわからないのではなかろうかというふうに考えております。たとえば、昨年の第三・四半期までしか今資料がございませんが、全額現金払いというのが去年の三月以来だんだん低下いたしておりまして、昨年第三・四半期では、われわれの調査によりますと、全体の二五%しか全額現金払いというのはないわけでございます。それから傾向といたしましては……
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 そんなことを聞いているのじゃない。四条二号の「遅滞なく」は、あなた方はどの程度に解釈しておるのかということです。
  26. 加藤悌二

    加藤説明員 簡単に申し上げますと、経済情勢の全体の推移によって、先ほど公取委員長からお話がございましたように、親企業の方のやむを得ない事情もあるのではなかろうかということで、一律に、機械的に、何日以上は絶対まかりならぬのであるというふうな基準は立てにくいのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、だめだと言うんだよ。法律は抽象的に「遅滞なく」と書いておるんだ。それでケース・バイ・ケースで云々と、こう答えている。今から作るんじゃないんだよ。五年前にこの法律は作ってある。その間において、少なくとも五年間の実績の上に立って、平均どのくらいが「遅滞なく」という概念になるのかくらいのことは持っていなければうそなんだ。今そういう答弁をしておるということは、中小企業庁自体が下請代金支払遅延等防止法なんという法律があることを忘れておったのと違うのか。少なくともまず一定の社会通念によって何日くらいということは一応目安を持つべきだ。そしてそれを越した場合は何らかの処置をとらなければいかぬ。親企業事情もあると思いますがと言っておるが、そんな態度だからだめだと言っているんだ。きょうは大蔵省はいないけれども、税金でも何日までに納めろ、こういうことだ、それを越えたら延滞利子を取るんですよ。親企業検収後百日も二百日もほっておいて、その間に支払わずに、一方は賃金も払えないという状況、その間の利息を考えてみても大へんなものなんだ。そういうことまで考えて君たちは行政指導しておるのかね。少なくとも一定期間、遅滞なくというのはこの程度だ、こういうことは過去五年間の実績において考えるべきだ、そしてそれを越えたときには、延滞利息くらいとるような指導をするんだ、これは法律がなければできないのだけれども、私の方は修正案を出しますよ。そのために六十日でいいのか九十日間待たなければいけないのか、実は平均どの程度のものが多いか、常識として中小企業庁はどの程度考えておるかという日数を聞きたかったのです。ところが持っていないということは、仕事をやっていないということなんです。だめだ、従って長官に出てきてもらおう。
  28. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 今の田中さんの御質問に関連して申し上げますが、私の方といたしましては、この法律に書いてある遅滞なく支払えという、それを具体的にどうやっておるのかと申しますと、この法律のできたときからでありますが、納品締め切りから支払いまで大体一カ月半くらいならばやむを得ないのではないか。それ以上延びるというのはおくれておるのだから、正当な理由があれば別であるけれども、おくれておるものはどんどん是正するような方針でやっておるのです。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 大体公取のこの法律の四条二号に対する観念はわかりました。中小企業庁の観念を聞きたい。私は関連質問ですからこのまま質問を続けずにおきますが、資料だけを要求しておきます。これは答弁が済んだものがあるかもしれませんが、一応全部出して下さい。  まず本法案提案説明のときに、三十三年に改正考えたが、その後改善されたのでやめた、今日また悪くなったから出すのだ、こういうことが書いてある。従って三十三年をまん中に前後の下請代金支払い状況。それからこれは答弁があったけれども、法第六条による中小企業庁長官から公取に対する請求権を発動した分はなかったというが、なかったならばそういうことは具体的にやる必要がなかったのかどうか、そのことについて資料を出してもらいたい。そしてその請求権の発動が中小企業庁調査によるものであったのか、下請企業の側からの申請によるものであるのか。なかったということでありますから、こういうことは出ないと思うが、結局中小企業庁はどのような調査をしたか、下請企業からはどのような申請ないしは申告があったかということ、公取に対しましては法七条に基づく勧告権を、毎年報告があるけれども、この際まとめて最近請求権勧告をやったことが何回ほどあるか、その内容及び経過、それが中小企業庁長官からの請求によるものか、これはなかったということであるが、あるいは公取自体としてやったのであるか、その中に下請企業からの申請によるものが幾らあるか、それからこれに従って公取委が独禁法の発動をした件数が幾らあるのか、その内容はどうか、経過はどうか、それから法八条によるすなわち勧告に従った場合、独禁法の適用除外を受けたものは何ぼあるか、こういった資料をまとめて火曜日までに出して下さい。これが出なければ採決はできません。双方よろしいですか。
  30. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 けっこうです。
  31. 加藤悌二

    加藤説明員 ちょっと念のためにお伺いしておきたいと思います。一番最初の調査でございますが、三十二、三年ごろの支払い状況、これの資料を出せということでございますか。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 提案説明によると、三十二年ごろに悪くなった。だから三十三年に出そうと思っていたらよくなったからやめた。今度悪くなったから出すのだ、こういうことなんです。だから、その動きを示すところの資料。いいですか。そのあとのやつはわかりますか。——これはなかったというのだが、私は当然一件くらいは請求しておると思ったんだが、これがないというなら、なぜなかったかという理由、及び下請企業者が、そういうことについて中小企業庁長官の方へ申し出るというか請求というか、そういうことがあったかなかったか。あったら、何件で、その内容はどんなものであって、どう処理したか、そういう点です。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 私が質問することは、公取委員長並びに関係中小企業庁その他で御答弁を願いたいと思うのですが、ただいま公取委員長は、私の質問に対して、公取としては荷が重過ぎる、従って公取がやることは報復禁止の規定、こういうもの以上はちょっと無理なんだ、こういう御答弁がありました。確かに政策的な問題ということになって参りますと、これは公取としては多少無理があるかもしれません。しかし現実には、先ほど私が申し上げましたように、公取に対して、この法によって親企業の報復を何とか禁止してもらわなければならぬという行動をとりますと、下請企業というものは成り立たない。ですから、報復禁止というなら——これが私は一番根本になると思う。そういうことに対しては、今度提案しておられるような改正案では、特に現行法律をもってしては、どうにもならぬということです。やはりこの点に対しては、根本的な問題ですから、これを何とか直していかなければならぬと私は思う。ですから公取委員長として、この程度以上の改正案というのは無理なんだ。これは政策的な問題なんだから、どうしても通産省の中小企業庁等において立案してもらわなければならぬというようなことをお考えになるならば・そのようなことの話し合いをやっていって、下請親企業関係をなめらかにやっていく、ともかく経済民主化ということが根本でなければなりませんから、そういうことをやるということでなければならぬと私は思う。ですから、そういう面からいたしますと、先ほどの委員長答弁はどうしても私は納得いきません。私が申し上げたことは、報復禁止が根本である、この考え方の上にお立ちになるならば、今度お出しになります改正案よりも、もっとより根本的な改正案ということをお考えにならなければならないんじゃないか。おそらくあなたは、もっともっとこれは根本的に直さなくちゃならぬ、こうお考えになった面もあるだろう。そういう面から、委員長として今日まで遂行して参りました経験の中から、一つここで御答弁を願いたい、こう思います。
  34. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 親企業下請企業関係は、お話し通り一方は非常に強い、一方は非常に弱い。従って、いわゆる対等の地位に立って、民主的に経済の運営に寄与するという点においてはよほど問題があると思うのです。そこでこの問題につきましては、政府において、今中小企業対策としていろいろなことを考えておるわけでありまして、私の方といたしましては、御承知の通り下請代金支払遅延等防止法というのは、独禁法の付属法令でありまして、親企業者が優越した地位を乱用するということを防止するという限度において、親企業中小企業関係を是正する。それ以外の問題につきましては、政府が大きな政策から考えられてしかるべきものだ、こういうふうに思います。われわれの方といたしましては、独禁法に書いてある優越した地位の不当の乱用と申しますか、これを防止するという限度において、親企業下請企業との関係の是正に当たりたい、こう思っております。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 その範囲で御答弁願ってけっこうです、優越した地位の乱用。そこで先ほど私が申し上げましたいわゆる発注する、そこで検収という段階になる。ところが現実には、下請企業がその仕事を仕上げても検収をしない、そうですね。親企業の利益、親企業都合、こういうことによって、でき上がった品物が、十五日も一カ月も延ばされている。こういうことは親企業の優越した地位の乱用とはお考えになりませんか。
  36. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 お話し通りでありまして、親企業が製品を受け取った。受け取ってから、先ほど申します通り、原則として四十五日内に代金を支払わないというのは、これは遅延だというふうに考えます。従って、その代金を支払わぬ理由が、たとえば検収を不当におくらせるという場合もありましょう。そういう四十五日という期間が守られないことについて不当性があるならば、われわれ是正する立場にあるわけであります。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 それは先ほど私が申し上げたように、例外がありましょう。四十五日になって金が払われているというのが現実には例外なんですよ。親企業都合で、検収をするから早く仕上げろ、こういうこともあります。しかし、検収は物ができ上がってからですよ。今あなた、代金支払いが四十五日とおっしゃった。検収は一カ月ないし四十五日くらい延ばされることがある。それから二カ月ないし三カ月あとに金は支払われるのです。ちょうど優越した地位の乱用ではありませんか。こういうことが、この改正案のどこで直されますか。私が申し上げるのは、こういう問題を直さなければならぬのだということです。
  38. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 今の代金支払いがおくれるという問題は、今度の改正でなしにむしろ現行法でありまして、現行法の励行が足らぬかどうかという問題と思っております。われわれの方としては・できるだけやっておるつもりでありますが、それは親事業者の方でも、いわゆる支払いの能力がありながら、支払いの意思がない、こういうのは非常にけしからぬ話でありますけれども、支払う意思もあるのけれども、いろいろな関係で能力がない、非常に経営が詰まってきた。その詰まってきたのを不当に下請業者しわ寄せするのは、これは非常にけしからぬじゃないか。自分のところでできるだけやっても支払えないという場合には、よほどその事情考えてやらなければならぬ、こういうふうに考えます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 改正案だけで質問するのじゃありません。改正は、現行法ではまずいから改正するはずなんです。改正案でなくて、現行法が実行されていないというならば、これは改正しない方が悪いのです。ですから、私が質問を申し上げている点は、現行法はどうなんだ、こういうことにも関係して参りますから、そのつもりで御答弁を願わなければなりません。今私はあなたを攻撃して申し上げておるのじゃありませんけれども、この現実が、今あなたがお考えになっておることとはあまりにも違うのですよ。だから申し上げているのです。今あなたの御答弁では、親企業は一生懸命やるのだけれども、これはどうしても仕方がないのだ、これはできないからそういうことを親企業がやっておるのだ、こういうことになって参りますれば何をか言わんやです。それじゃ法律もなければ、どんないい改正案を作り上げても、親企業金詰まりとか何とか言って、払いたいけれども、これは金がないから払えぬのだ、早く検収もしたいけれども検収をすると支払い日が一応独禁法でも三十日以内という程度になっておるのだから、それじゃ困るというので脱法行為をやる。それは悪意があってやったんじゃないけれども、金がないから仕方なしにやるのだということになれば、どうにもしようがないじゃありませんか。ですから、私が申し上げているのは、この種の改正というようなことでは足りないから、もっと何か下請企業を守るというやり方、方法があるのじゃないか。いわゆる報復措置の防止、こういったような範囲の中においても考えられる点があるであろう。検収の方法もあるだろうと私は思う。さらにはこの独禁法において検収を一カ月以内、こういうことが一応支払いとしてはきめられておる。またあなたは四十五日程度が望ましいと言われた。ところが今私が申し上げたように二カ月、三カというのが普通常識になっているのです。ですから、そういう点を何とか直していかなければならぬ、こういうことになるじゃありませんか。まずこれらの点について総務長官、御答弁を願えれば幸いです。
  40. 小平久雄

    ○小平政府委員 先生の卸主張は、現在の下請代金の支払遅延防止法、これは実情に沿わない欠陥があるのじゃないか、そういう点であろうと思いますが、確かにこの法律が現在の親企業下請企業との関係、その間の取引等の実情に必ずしも満点に合致をいたしまして、下請企業者が何らの不利益も受けずに取引が円滑に行なわれておるというわけには参っていない、私どももさように考えます。ただ、しかしながら、この法律ができましてから以来、公正取引委員会におきましても非常な努力を払われまして、少なくともあまりはなはだしい不当な下請代金支払い遅延等については、従来から勧告等も相当行なわれておるようでありますし、この法律法律なりの役目を今日までおそらく果たして参った、さように私どもも実は考えておるのでございます。問題は、何と申しましても取引関係でございますから、しかも経済事情が刻々と変わる、こういう環境下での取引でございますから、そのあらゆる場合をとらえて、全部公正な取引ができるように法の方も完備しておくということは、実際問題として不可能に近いことでもあるのじゃないかと考えるのであります。従って、この法の足らぬところは、もちろんそのとき、そのときの経済情勢に応じて、これを補完していくということは当然でございますが、せんじ詰めれば、この親企業者と下請企業者に対する心がまえと申しますか、そういうところが根本になるのだろう。親企業下請企業というものが相協力して、両者が関係する事業を発展させていく、こういう基本的な立場に立って親企業下請企業を困らせぬように、不当な要求、不利益を与えないように、そういう立場でいくように、これは全体として政府としても指導をいたしていくべきであろう、かように考えるのであります。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 言葉じりはとらえませんが、この法律の中から親企業下請企業との関係が満点に行なわれていないというようなことは、これはもう満点というのじゃなしに、たまたま先ほど来公取委員長答弁されたようなことが例外として行なわれているということですね。それでただいま総務長官の御答弁になりましたもろもろの経済情勢の中でいろいろな事情、そういうことから、下請企業が非常に圧迫されておるというようなことが起こってくる、そういう点はそれは私もわかります。しかし、やはりネックは親企業下請企業との力関係の問題です。この法律の一番中心である、親企業が優越した地位を乱用するということです。これがやはり根本なんです。親企業下請企業しわ寄せをして、自己の立場を守っていく、こういうことを直していくのでなければならぬということです。ですから、総務長官は不可能であるといったようなお話もありましたが、方法はあなたの方でお考えになればあると思う。とにかく企業下請企業関係を対等の立場に置くということで、いわゆる経済の民主化をはかっていくというような方法を考えるならば、いろいろあるでしょう。たとえば団体交渉といったようなものが行なわれるようにする。今の団体組織法ということでは、これは問題になりません。もっと強い立場の上に置くいわゆる団体交渉をやって、そして両者においてまとまらないという場合は、三者構成か何かの調整委員会というようなものを作って、こういう形で運営していくならば、よほど現在の親企業下請企業との関係というものは直されてくると私は考える。そういったようなことを何かお考えにならなければならないじゃないか。この点に対してはどうなんですか。
  42. 小平久雄

    ○小平政府委員 私の承知いたしておるところでは、あるいは間違っておったらごかんべん願いますが、経済上の優位というものを利用したり悪用してはいかぬという種のことは、独禁法自体のうちにもうたってあると思います。ただ、実際問題として、先生のお話のように、親企業下請企業との力関係というものは、一般的に申せば、言うまでもなく親企業が優位に立っておる。従って経済民主化と申しますか、そういう見地から、あるいは取引を公正にするという見地から、団体交渉等もできるようにしたらどうか、こういうことでございますが、私の聞き及んでおるところでは、親企業の理解のあるところでは、下請業者が協同組合法による協同組合等を作って、単価その他取引条件等について十分話し合って、きわめて円満にいっておるというところもあるように私どもは聞いております。これは先ほど私の申しましたように、結局業者自体の心がまえということが根本ではなかろうかと思うのですが、そこであらゆる場合にそういうことをやるように法律でもってやるかということになりますと、これはなかなか取引の複雑性、多様性、こういうところからいたしまして、そこまで、たとえば義務的に団体交渉的な方途によらなければならぬということまでいくのはどういうものであろうか。そこまで踏み切った考えには今のところなっておりません。しかし、事実問題として、先ほど申します通り、協同組合等によりてきわめて円満な取引が行なわれておるという実例もあるようでありますから、そういう方向に政府も相協力し、走るいは指導をいたしていくという方法がむしろ実際に合うのではなかろうか、かようにただいまのところ考えております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 今、総務長官のお話がありまして、うまくいっているところが全然ないとは私も申しません。しかし、私がこう申し上げているのは、観念的に言っているのじゃないのです。私はそういう関係の業界の経験を持っているのです。私は自分の体験の中から申し上げておりますので、そう現実と遊離した指摘はしていないと思うのです。参考までに申し上げておきますが、ひどいのがあります。発注係が一つの窓口になって、この業者、この業者と適当に発注するということがある。それによって検収する。納品はいつごろしてもらいたいというのでやる。でき上がった。ところが親企業の方が必要がないということになれば、いつまでも受け取らないんですよ。極端なことをいうと、でき上がってから二カ月くらいというのが多いんですよ。それから三カ月くらいの手形を切るのですよ。それは実にひどい。しかもその次、今度納品ですから購買に回る。前に代金はきまっておったのに、購買で値切るんですよ。購買で値切るというのはそうたくさんはないでしょうが、しかし、このくらい親企業が優越した地位を乱用して下請企業を苦しめるようなことがあってはならない。しかし、現実にはこれがあるということです。ですからこういうことを十分御承知になって、何とか一つ親企業下請企業との間を直していこうということでなければならぬのではないかと私は思う。そこでやはり受注方法を制度化するということが必要なんです。公正な競争入札ということもありましょうし、あるいは今総務長官がお話になりましたように協同組合等を作って、これによって共同受注、配分こういう形が一つ行なわれなければなりません。それから検収というものは初めからはっきり受注したときに奨約をして、いつが検収日だということをきめる。下請ももちろん約束の日にちを守る、そういう努力をしなければなりません。親企業はきめられた日にちに検収をやる、そして納品させる、そして代金支払いは三十日なり、今、公取委員長が御答弁になりましたように、あるいは長くとも四十五日なり、こういう形で支払われてくるということでなければなりません。こういうことを守られなかった場合、いわゆる親企業がみずから優越した地位を乱用してこういうことが守られなかった場合に対しては、やはりこの法律一つ規定が作られなければならぬ。しかもこの法律は訓示規定だけではどうにもならぬ。強制規定でなければならぬと思う。ところが今度の改正案の中におきましても、ほとんど重要な点は訓示規定になっている。こういうことでは私は実効が上がり得ないという考え方を持っておるわけです。私がただいま申し上げましたようなことについて、総務長官、公取委員長としての御答弁を願いたいと思うのです。
  44. 小平久雄

    ○小平政府委員 先生も体験からというお話ですが、私も若干そういう体験がありますので、今お話しのような事実が世の中にあることも私も承知いたしておりますし、体験をしたこともございますし、万事——万事といっては語弊がありますが、大体は承知をいたしておるのであります。ただ私先ほどから申し上げますように、そういういろいろな優位を乱用していると思われるような取引状態は確かにございます。ございますが、それらがなかなか多種多様でありますししますから、一方においては親企業者の自覚と申しますか、そういうことを促していかなければなりませんし、また一方においては下請業者の間におきましても、これがまた御承知のようにお互いにやむを得ない事情とは考えながら、競争的な立場に立つ場合が概して多い。そこで今先生お示しのように、共同受注といったような方向に行き得ますならば、しかもそれの配分等も自主的に行き得ることが最も望ましいと存じますが、実際問題としては、これもなかなかそこまで行き得ない状態が多いのだろうと思います。しかしながら先ほど申しました通り、逐次実情に応じつつそういうことができ得るように、やはり当局において指導をしていくという方向が一番現実に即して妥当な線ではなかろうか、さように考えておるのであります。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 佐藤公取委員長に申し上げるのですが、私が先ほどあなたに言ったときには、公取下請代金の不当な支払い遅延に関する認定基準というものを作っておられるということを見ないで発言したわけです。同時にあなたは一カ月半、こういうようなことを言われたが、あなたの方でに三十日ときめておられるのです。十日以内に検収をして、それから三十日以内にきまっておる。私は中小企業庁に聞いたわけですが、あなたの方は十日以内の検収、それから三十日以内という下請代金の不当な支払い遅延に関する認定基準というものを出しておられると思う。あなたの答弁は直しておかないといけないんだな。基準と違うことを言っている。
  46. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 私の申したのは、現在そういう方針でやっているというので、その書物に書いてあるのは独禁法時代にやっていたというふうに聞いております。だから現在それは改正になった、こういうふうに御承知願いたいと思います。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 これは下請代金支払遅延等防止法が出る以前、昭和二十九年三月十日までのやつであって、これはもう現在ではないのですね。従って下請代金支払遅延等防止法が出てからは、今おっしゃったように、四十五日以内の基準で臨んでおる、そういうことですね。
  48. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 さようでございます。
  49. 板川正吾

    ○板川委員 今の独禁法の認定基準は、下請代金支払遅延等防止法が出る前までそういう基準でやっておった、今はその後新しい法律制定されたから、それに従ってやった、というと、この独禁法の検収が十日、その後三十日というのは消えて、なくなってしまったということですか。その点念のため伺います。
  50. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 さようでございます。現在におきましては、支払遅延等防止法の運用基準として四十五日ということを一応の標準としております。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 手続としては、支払遅延等防止法が出る以前、独禁法を適用するにあたっての基準としてきめておった。従って支払遅延等防止法ができたから独禁法のやつを消したのだ、それはいいのですけれども、ところが支払い遅延防止法が出るまでは期間が短くて、遅滞なくということが出てきてからの方が、かりに十五日間でも長うなったということはちょっと不思議だ。しかし、四十五日という基準を今とられておるならそれでけっこうです。われわれは基準をどこに定めるかをちょっと聞いてみたかったので、あなたの方の四十五日の基準と、それから中小企業庁との間はどういうようになっておるのか、この問題が出てくると思います。それを見てわれわれとしても一つの修正を考えたいということを実は考えておるからお聞きしたのです。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 先ほどお尋ねしましたが、今度の改正点は第四条が主になって、さらに第七条の勧告改正になっておりますが、いずれも訓示規定になっているわけですね。強制規定ではない。ところがこれはやはり罰則を何か伴うもっと強い規制というものがなければならぬと思うのですが、この点どうなんですか。
  53. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 強い規制という点から申しますと、親企業者が優越した地位を乱用するということは、独禁法の問題になると思います。独禁法の方で始末がつく。しかしながら、独禁法で始末をつけるにはずいぶん時間もかかることでありまして、その以前の段階におきまして適正な措置がとれるなら、その方がいいんじゃないか。そこで下請代金支払遅延等防止法によりまして、勧告あるいは行政指導等の方法を講じて、大体目的を達し得るものと考えております。もしそれでできなければ、独禁法の本則に返りまして、独禁法で不公正取引として審査手続をとりまして、排除措置を講ずるということになると思います。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 どうも答弁を聞いておると、支払遅延等防止法でやれないという点は、やはり母法である独禁法の発動によるのだ、こういうことになるのですが、いかにもそういうことでうまくいくように思うのですけれども現実には独禁法はなかなか時間が延びるということが一つ問題でありましょう。さらには親企業の優越した地位をそのまま乱用してやる行為を、独禁法を発動して処分をするといったようなことは、現実にはなかなか行なわれていない。そこでこの支払遅延等防止法ということで下請企業を守っていく。要するに、そうした親企業の優越した地位を乱用していくのを押えていくことができるかということは、私が先ほど来指摘いたしましたように、なかなかうまくいかない。委員長も御答弁になりましたように、ないよりましだというお言葉は、あなたはお使いになりませんでしたが、私はそういうことを申し上げたい。そういうことではどうにもならないと思うのですが、私がいろいろと先ほど申し上げましたような、一つ制度化する、これもあなたの御答弁になりましたように、要するに親企業地位を乱用するというそのうち内に私は入ると思うが、そういうことでいろいろと指摘いたしましたようなことに対して、何かお考えになる点はありませんか。
  55. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 下請企業保護する方法は、いろいろ考えられると思いますけれども、やはり親企業下請企業現実の姿というものを前提として漸次締めていこうという考えで、今度の法律においての改正も、これによって全部目的を達するということは言えないかもしれませんが、だんだんにやっていこう。将来研究すべき問題も相当あるように聞いております。
  56. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 岡田利春君。
  57. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 まず私は本法の本題に入る前に、いわゆる公正取引上の問題として一つの問題を御質問したいと思うわけです。  それは現在、石災産業が、非常な技術革新あるいはまたエネルギー構造の革命の中で、非常に困難な状態にあることは御存じだと思うわけです。しかも最近の傾向として、いわゆる租鉱炭鉱が非常に増加をしておりますし、しかもこの租鉱炭鉱の許可基準については、合理化臨時措置法に基づいて、坑口の許可基準というものが定められて、最近は漸次安定的な租鉱炭鉱が許可をされる、こういう傾向になっておるわけです。しかしながら、大体日本の鉱区というものは、ほぼ大手が独占しておる。あるいは中小の炭鉱で比較的に鉱区を持っておるところもあるわけでありますが、そういう大手が租鉱契約々結ぶ場合に、大体こういう契約が最近目立ってきておるわけです。それは租鉱契約によって石炭を掘る、当該会社は、掘り出した全量の石炭を、租鉱認可をしておる鉱業権者の会社いわゆる親会社に対して納入する、こういう契約が結ばれておることが非常に多くなってきておるわけです。しかも掘り出した原炭もしくは精炭について一トン当たり三千円なら三千円というように、価格についても長期的に協定をしておる。もちろん価格の問題は経済変動その他によってお互いに協議できるという条項もありますが、その買い上げの一トン当たりの炭価についても協定をしておる。しかもそれらの石炭は、大手の会社の選炭機を通ずると、北炭、住友、三井、三菱といういわゆる代表的銘柄として販売せられる、こういう形態の租鉱契約の内容が非常に多くなってきておるわけです。ですから租鉱権者は掘り出した石炭の販売の自由な権利がない、こういう実態にあるわけです。私はこの問題は、独禁法の第二条七項の四号、五号の「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること。」、「自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。」、この項に違反するのではなかろうかと考えるわけでありますが、見解を承っておきたいと思います。
  58. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 租鉱契約の問題につきましては、私どもの方ではまだ実は問題にしておりません。よく存じません。お話でありますからして、十分研究いたしたいと思います。
  59. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は石炭産業の現状にかんがみて、石炭産業の将来にわたる安定、しかもそれぞれの企業が自由に採掘した石炭が販売できるという体制が望ましいし、しかも消費者の立場に立ってもそのことが望ましいと考えるわけです。従って、これらについては、実は当面の政策の中心課題でもあるわけでありますから、この面について特に調査を進められることを強く要望いたしておきたいと思います。  まず私は、第一点として、本法で規定をいたしておりますいわゆる第二条の定義にある製造委託もしくは修理委託をされておる下請業者——これは中小企業庁になるのじゃないかと思いますが、全国で現在どの程度あるわけですか。
  60. 加藤悌二

    加藤説明員 はなはだ恐縮でありますが、今手元に資料がございませんので、調べましてお答えいたします。
  61. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この下請代金支払遅延等防止法昭和三十一年六月一日に施行されておるわけでありますが、この法律適用を受ける親会社というものは、これはほとんど全部親会社は該当するだろうけれども、しかしながら、純粋に中小企業の場合には、これは大体大まかな数字も発表されておりますが、本法の適用を受ける下請業者の大体の数がわからないのでは、私は本法の運用上問題があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  62. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 正確な数字はわかりませんが、本法の適用を受ける親事業者は、私どもの方では大体七千五百と考えております。それで毎年その親事業者支払い状況を調べるために、上期、下期に調査をしておりますけれども、三十六年度におきましては七千五百のうち千五百について調査をいたしております。
  63. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど公取委員長は、大体下請代金支払いの一応の行政的な基準として、一カ月半、四十五日のサイトを考えておると言われましたが、これは独禁法自体に定められた基準のいわゆる検収について十日を認めておる、これを含んでおるのか含んでいないのか、お伺いしたい。
  64. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 検収を含んで四十五日、ただし検収は、私の方の調べによりますと、通常五、六日ぐらいというのが大多数であります。もちろん特別なものにつきましては検収で非常に時間がかかるというのもありますが、これは例外でありまして、一般は五、六日くらいでございます。
  65. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 下請業者がその労務者に対する賃金の支払いについては、これを労働基準法の適用を受けて、親会社がその直接使用している使用人に賃金を払うことも、下請業者がその雇用している雇用者に対して賃金を払うことも、基準法上は差別がないわけですね。しかも賃金の支払いについては、厳格な罰則規定基準法では制定をされておるわけなんです。私はやはり下請代金支払い遅延を防止するという大きな柱として、下請業者が雇用している者の賃金の支払いに重大な影響を及ぼす、こういう問題を大きな柱としてこの防止法ができたのではないか、このように思うわけです。下請業者は、賃金は払いたいのであるけれども、親会社の方でいわゆる下請代金を払ってくれないから必然的に賃金が払えない、こういう傾向が最近非常に多いわけです。この場合、親会社に物を納めて、その代金がもらえない、代金がくれば賃金を払いましょう、そうすると、基準関係ではこれはちょっと微妙な問題になるわけです。その下請業者事業主の責任になるのか、しかし、間接的に見ると、その代金がもらえない、そういう事情が明らかになるわけです。ですから、基準法を適用する場合に、そこに微妙な関係が起きて、なかなかこれらの問題を処理できないというのが、賃金遅払いもしくは不払いに対する基準法の監督上の実際困難な問題になっておるということであります。この下請代金が四十五日を越えるということ、自動的に賃金が払えないというような傾向を持つことは、何人も否定できないと思うわけですね。そういう面から見て、特にわが国の産業構造の二重構造をより深めているといいますか、非常に格差があるというこういう特殊な事情においては、基準法で賃金の遅払いには罰則があるのですから、当然下請代金の遅払いについてもその裏づけとして罰則規定を持たない限り・これらの問題はとうてい解決できないのではなかろうか。もちろんこれだけでも根本的な解決はできないでしょうけれども、賃金の遅払いにはああいう罰則規定があるわけですから、当然この下請代金の支払遅延等防止法についても、ある程度一定期限を越えて下請代金を払わない場合には、ある種の罰則規定を設ける、あるいは遅払い分についてはある程度の損害賠償の請求として、それに相当する利子相当分が請求できるというような裏づけがなければ、実際この法律案というものは骨抜きではなかろうか。しかも公正取引委員会の能力からいって、あるいは中小企業庁の現在の体制からいって、実際の活動範囲というものが限定されてくるわけです。ですから、やはり法律で一般的にその問題をある程度積極的に規制するという態度がなければ、実際この法律は生きてこないと思うのでありますが、この点の見解を承っておきたいと思います。
  66. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 親事業者下請事業者に対する支払いがおくれておる、そのため下請事業者は自分の使っておる労務者に賃金が払えない、おくれるという問題、そのお話はよくわかりました。私どもといたしましても、下請業者保護する立場から、親事業者代金支払いがおくれておる場合、これを促進する方法を講じておるわけでありますが、これを法律で一率にきめるということは非常にむずかしいので、思想としてはよくわかりますけれども、それを幾らにきめたらいいかというような点がなかなか結論が出ないので、そこまでこの法に規定する段階に達しておりません。もちろんお話はよくわかりますので、われわれとしても重要な研究問題としておる次第でございます。
  67. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 もちろんなかなかデリケートな面もあろうかと思うのであります。しかし、現行基準法の運用自体がやはりすっきり行っていないのではないですか。基準法の賃金遅払いに対する罰則、これ自体もスムーズには行っていないですよ。経営が非常に困難で、実際払う意思があっても払えぬというような場合、あるいはまた親会社から代金をもらえないために賃金が支払えぬというようなケースが出て参りますと、基準法そのものは罰則規定を持っておるのですけれども、実際にそれを厳格に適用し、運用することは困難であるというのが今日の実情だと思うのです。しかしながら、やはり基準法は、賃金遅払いに対して、むしろより一そう法の効果を上げるような運用について努力をしておるというのが基準運用実態だと思うのです。そういう面からいいますと、確かにデリケートな問題が賃金の場合でもあるのでありますから、下請代金の場合にもむしろそういう積極的な面を持つことが、ある程度親会社もそういう裏づけがあるのでありますから、払わなければ罰則の適用を受けるということになりますと、やはり下請関係は親会社の場合と違って雇用率が高いという傾向が強いわけでありますから、そういう点で相当の効果を上げると思うのです。しかし、今基準法の賃金遅払いに対する運用実態等を考えてみる場合に、それと同じような状態になるとは思いますけれども、そういうことであっても、この点は積極的に必要だと考えるわけです。これは公取中小企業庁として、特に下請中小企業の経営を保全するといいますか、しかもそこに働いておる労働者の賃金をスムーズに支払い得る態勢を保障する意味において、見解を承っておきたいと思います。
  68. 加藤悌二

    加藤説明員 先ほど田中先生の御質問にお答えしましたように、個々の下請工場の協力者として支払いを促進させるということを、各地方の通産局を中心にしまして仕事を進めていきたいというふうに考えております。ただ下請事業者の数が非常に多うございまして、遺憾ながら現在の人員でもって十分な仕事がやれないということは、先生御指摘のように事実でございます。少ないながらもできるだけ努力をいたしまして、下請事業者の協力——先ほど申しましたが、通産局の仕事のやり方といたしましては、私どもの方で四半期別に二千を調査対象にいたしておりますが、その調査の結果のリストを全部通産局に送りまして、特にその中で悪い支払い条件等の親工場に対して、行政指導でそれを是正するようにすることと、それから通産局自体で、これも定期的でございますが、下請工場の実際の現地におもむきまして、引取調査をやっておるわけでございますが、その結果特に悪い親工場等については、やはり同じ方法で注意を喚起し、指導するということでやっていくつもりであります。
  69. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、先ほど申し上げました基準法の賃金遅払い等に対する規定と相関連して、ぜひこの問題は深く検討してほしいと思うわけです。単に罰則規定を設けるというよりも、やはりある一定期限を越えて下請代金を支払わない場合については、今日の中小企業に対する金融の一般的な標準になる金利といいますか、六分なら六分、七分なら七分という標準になるべき金利相当分については、それが一定期限を越えた場合には累増されていくというようなことでもしなければ、下請業者というのは実際自分では賃金が払えない。しかしながら企業が崩壊するから、相当無理をして金融をつけて、親業者の代金が来ないのに、かわって賃金を雇用者に払っておるというのが実情なわけでありますから、むしろ私は効果を上げるということになるならば、単なる罰則をつけるよりも、そういうような標準金利相当分くらいについて、ある一定基準を超過する場合には、その越える日数について累増していくというくらいにしなければ、私はこの問題は解決しないと思うのです。日本の産業経済というのが非常に寡占の態勢に入り、独占の傾向を強めておるということ、あるいは中小企業と大手の格差が増大しつつあるというような面から見れば、どうしてもそういう措置をすみやかにとらなければならないのではなかろうか、こう私は考えるわけですが、そういう点、積極的に検討してもらえる意思があるかどうか。また、今私が申し上げました一つの案については、委員長としてどういうお考えか、承っておきたいと思います。
  70. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 下請事業者を含む中小企業対策というのは、これは大きな政治問題でありまして、政府でも十分御研究のことと思います。私どもの担任しておる下請代金支払遅延等防止法の範囲におきましても、ただいまお話しのような問題がたくさんありますので、順次研究しております。ことに検収を何日間にするか、検収から何日目までに払わなければいかぬかというようなことを法できめるということについては、いろいろ問題もあるので、十分検討いたしたいと思います。
  71. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今度の本法の改正要点である第一点の親事業者の順守事項に、不当な買いたたき、自社製品手持ち現在量等の購入の強制、報復措置という三つの事項を追加いたしておるわけでありますが、提出された資料を見ますと、昭和三十六年度で、予備調査数が一千五百十四、検査対象数が八十七、申告件数が九、勧告等が五十八、不問が三十二、措置対象数計九十と「年度別調査、検査および措置対象数」というのに出されておるわけであります。この調査の中から、この三つを追加しなければならぬという事由がどの程度あったのか。あるいはまたこの三つの事由に該当すべき最も顕著な例は、どういう例であるか、お伺いしたいと思うわけです。
  72. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 買いたたきにつきましては、先ほどもちょっと触れましたが、たくさん注文するということで、それじゃ単価幾らで引き受けるかという見積もりをさして、いざ出す場合には、安い単価で少ししか出さないとか、あるいは発注の際に単価をきめないで、契約してしまって、でき上がって物を持ってきてからこれだけにしろというような例であるとか、あるいはまた自分のところでは自動車を作っている、そこでその自動車を使え、そうしなければおれの方は注文を出さぬ、そういうふうな若干の例はあるのでありますが、それらを考えまして、どうしても少なくとも今度の改正をすることが必要だというふうに考えたわけでございます。
  73. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近の調査、検査では、そういう本法の改正で三点の項目を追加をしなければならぬ件数はどの程度あったわけですか、概数でけっこうです。
  74. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 新しい項目でありますので、この項目に関する調査というのはやっておりません。ただ現在、代金が不当に遅延しているというようなことを調べる際に、付随的に、こういう今申しましたような例が見つかってきた、そういう関係で今度の改正をする、こういうことになっております。
  75. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうすると、そういう調査の結果判明した件数というのは、別に集約はしてないわけですね。しかし、そういう傾向が非常に強いから、これは追加をするということで出されたんだと思います。そこで、特に私がここで最大の関心を持つのは、報復措置の問題なんです。こういう点については、やはり公正取引の問題として、単にこの下請代金支払遅延等防止法以外の、別の独禁法、公正取引に関する法律の問題に関連してくると思うのです。こういう点は、もしあるとすれば顧著に出ておると思うのですが、そういう顧著に出ておる実例がありますか。
  76. 小沼亨

    ○小沼政府委員 独禁法上の具体的な事例というのはございませんが、今後こういう金融引き締めで苦しくなって参りますと、報復措置ということが考えられるということで、この第七号にこういうふうに書いたわけであります。
  77. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第四条の追加の第五号でありますが、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。」ということでありますが、このいわゆる基準となるべきものが非常にむずかしいのではないかと思うのです。というのは、同種といっても地域的な影響というのを非常に強く受けるわけでしょうから、私はおそらくそういう地域的な、ある限定された範囲内における同種または類似の内容の給付に対し、こういう二とにこの運用はなるのではなかろうか、こう考えるのですが、その点についてはどうなんですか。  それから、具体的にこの法を運用して判定を下す場合に、特に何か行政的な基準を設ける意思があるのかどうか。この点、文章としてはわかるのですが、これを運用する場合には非常にむずかしいと思うのですが、この点についてはどうお考えになっておりますか、承っておきたいと思います。
  78. 小沼亨

    ○小沼政府委員 具体的には、やはり同種のもので、その地域で同じ親に対して同じような下請業者が多数入れておるということで、一般的な標準のようなものがあるのじゃないか。そういうものに比較いたして著しく低いかどうかということでやるようになっておると思います。  従いまして、第二問のお尋ねでございます一般的な基準というようなことは、こういう業種については、大体この程度が一般的な基準だというものをあらかじめ作るということはならないのじゃないかと思います。
  79. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 問題はこの当、不当というのは、言葉では当、不当ということは観念的に言えるわけですね。しかしながら、当、不当の判定になる基準というものは私は非常にむずかしいと思うわけです。実際類似をしておるというけれども、なかなか類似をしておっても、たとえばある程度機械を部分的に入れておる下請業者と、全然手工業的な場合とは、契約内容が違ってくる。おそらく同じようなケースでも、そういう下請業者内容は違うと思うのです。ですから、こう書いてみても、単に注意を喚起する程度に終わる問題であって、表面上こういう不当な下請代金の額が設定をされておるということに対する問題として、行政官庁が強く干渉しなければならぬ問題として浮かび上がってこないのではないかと私は考えるのですが、この点の認識はいかがですか。
  80. 小沼亨

    ○小沼政府委員 やはり下請業者が特別に、自分の方ではこういう事情で納入するという場合に、他より非常に安くできる、みずから進んで低い単価でとるような場合も、これは正当にやる場合もございますが、そうではなくて、先ほど来問題になっておるように、親から小さい下請に発注するわけでありますので、いやがるのを無理に押しつけて、やらなければほかに回してしまうということで、従来取引のあったものもそういう理由で低い単価を押しつけるということになると、これは一つの例でございますが、やはり不当であると考えております。
  81. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本法の運用は実際労働政策の面に負うことが非常に大きいと思う。たとえば今の場合についても、契約単価なりそれだけで判定することは実際問題としてなかなか困難だと思うのです。しかしながら、そこに雇用されている労働者のいわゆる賃金水準が一体どういうところにあるかということは、非常にこれらの問題に対する判定の大きな要素になるのではないかと思うのです。ですから、賃金水準が極端に低いのは、別に中間的に利潤を大きく吸い上げておるのではなく、実際に契約単価の面からいって、この程度の賃金より払えない、そうすると同種もしくは類似をした業者に比較すれば、二割、二割五分も差がある。しかも、それが強い親会社の場合にそういう傾向が特に強いのではないかと思うのです。会社が強ければ、ある程度自由に操作できますから、独占的にやらしておる。いうなれば、一つの関連企業というか、つながっている部門を受け持って下請業者が存在しているという場合は、特にそういう傾向が強いのじゃないかと私は思うのです。ですから、賃金の面でいいますと、最低賃金がある程度保障されて、同種の業者がその最低賃金について協定をして、最低賃金法の適用を受けて給与を支払っておって、ある程度企業が正常に運営をされておれば、——これは逆に見るわけですが、大体問題のない請負契約ではなかいと思うわけです。ですから、こういう面の判定については、労働政策の面とむしろ結合させ、そういう面から見ていくという見方の方が最も現実的であり、妥当なものではないか、こういう気がするのであります。そういう点についてはどういう見解を持っておるか。またそういう業種別あるいは地域別の最低賃金の協定というものについて、特にこの項を追加するにあたって何か考えられたことがあれば、その見解を承っておきたいと思う。
  82. 小沼亨

    ○小沼政府委員 先生の御指摘の下請業従事の労務者の賃金とこの条項と特に関連せしめて研究はいたしませんでしたが、ただいま御指摘の点は確かに非常に問題がありますし、結局不当に買いたたかれるために・それがもとで労働者の賃金も低くせざるを得ないということになると問題がございますので、非常に慎重に検討させていただきたいと思います。
  83. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは追加項目の六号ですが、「下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させること。」という条文が追加されたわけです。この「正当な理由がある」ということと、「強制して購入させる」ということの関連性の問題です。強制して購入させる場合に、正当とか不当とかいう判定が実際どうなるかという問題です。もし特殊な装置なり設備をしなければならないという場合には、契約内容に含ますべきものじゃないか、それは実際問題として正当、不当のらち外の問題じゃなかろうかという気がするわけです。それが「正当な理由がある場合を除き、」そして「強制して購入させる」という関連性がどうも私にはぴんとこないわけです。ですから、「正当な理由がある場合を除き、」という項は、立法上の建前からこういう文句が入ってきたと思うのですけれども、本条でないのですから、号の場合には別に必要ではないのじゃないかと思うのですが、この点についてはどういう見解ですか。
  84. 小沼亨

    ○小沼政府委員 これはやはり親事業者の方でこういう製造委託をするという場合に治具とか工具とかで、既設のいろいろな機械なんかとの関係でどうしてもある種のものを使って納品してもらわなければならぬという例がございますので、そういう場合を正当な理由ということに考えておるわけでござ  いまして、そういうことに関係なしに、ただ自分の方で発注したものを納める場合には、自分の方で売っておる自動車に積んで送っていかなければならぬというような全然意味のないものになりますと、正当性がなくなるということで、そのところへ「正当な理由がある場合を除き、」ということで入れたのであります。
  85. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は今言ったような答弁であれば、「その改善を図るため必要がある場合を除き、」ということでいいのではないかと思うのです。立法上そういういろいろなことが予想されるから、「その他正当な理由がある」という表現にしたのだろうと思うのですが、少なくとも今のあなたの答弁でいきますと、「その他」ということは実際あり得ないのじゃないか。むしろこういう条項を置くことによって、範囲を大きく及ぼしていくことによって、この点の規制が実際問題として効を奏しないことになるのではなかろうか。ですから、「下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合を除き、」それ以外に何かありますか、お伺いしたいと思います。
  86. 小沼亨

    ○小沼政府委員 今直ちに実例を申し上げる用意はございませんが、これは実は現場に参りまして、公正取引委員会の者が認定いたすわけでありますし、その認定の際に、これは正当な理由でないというものを正当と認めるわけはございません。そういうことで運用上十分やっていけると思いますし、やはりここで実例をあげておる以外に、どうしても正当な理由で認めざるを得ない場合もあるのじゃないかということでこの字句を入れたわけであります。運用上十分注意いたしたいと思います。
  87. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は特にこれが本条であれど、これは立法上の建前としていいと思うのです。しかし、これは各号ですから、できるだけぴしっとしておいた方が、こういう趣旨で項目を追加して本法を改正する趣旨に沿うのではないか、こう思うのですが、今の答弁であれば、特にこの面については質問しておる趣旨に基づく運用を期待をしたいと思うわけです。  次に、先ほど田中委員から質問があったわけですが、中小企業庁長官の第六条の請求というものは本法施行以来あったのかないのか、先ほどちょっとあいまいだったと思うのですが、あったケースがわかれば、それをお知らせ願いたい。
  88. 加藤悌二

    加藤説明員 先ほど田中先生の御質問で、火曜日までにその資料を提出申し上げたいと思います。
  89. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは非常に大事なところになるわけですよ。実際より法を強化する必要があるという面で、今回の改正案が出されておるわけですね。運用上これが困るから改正をするということではないんで、より強化していくという面から三点の改正点が追加されたと私は考えるわけです。そうすると、肝心の本法の運用が、はたして本法の規定に定めるところにより、むしろこの本法が期待しておる通り運用されておるかということが、やはり非常に大事なポイントになると私は思うのです。特にこの点について先ほど資料を提出していただくという約束でありますから、その面でさらに私は質問をいたしたいと思うわけです。  次に、第七条の勧告でありますが、これは先ほど実は資料が出ておるわけです。そこで、この場合、予備調査は大体二千を対象に今後やっていきたい、こういう方針であるということが説明をされたわけです。しかし、このような場合、特にその下請業者から直接公正取引委員会にこれらの点についての処置を積極的に報告をして善処を要望するとか、あるいはまたその雇用されている労働者が、その下請代金を支払われないことによって賃金の受理を受けることができないという状態において、当該労働者がこの面について個人の資格で、何か組合なら組合でもけっこうなんですが、労働組合なら労働組合という名前で公正取引委員会に善処方を要望する。それに基づいて公正取引委員会勧告をするという実例があったかないか。ありましたら、その点について伺っておきたいと思います。
  90. 小沼亨

    ○小沼政府委員 いわゆる下請業者からの申告はございましたが、労働者なり労働組合の方からの申告は一件もございません。
  91. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本法の罰則が十条、十一条、十二条と規定をされておるわけでありますが、本法が施行されて以来、この十条、十一条、十二条による罰則が適用された実例がありますか。
  92. 小沼亨

    ○小沼政府委員 この罰則の適用の実例はございません。
  93. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 罰則の適用がない方がこれはよろしいのでありますが、しかし、この罰則の適用をした実例がないということは、やはり現在の公取の機能なり、あるいはまた先ほど私が質問した第六条の中小企業庁長官の請求というものが積極的になされていないということを逆に裏書きをしておる、非常に遺憾な面ではないか。本法の持つ性格なり、客観的な実情から判断すれば、こういうことを積極的にやれば、当然罰則適用をしなければならぬ面が非常に多いと思うんですね。そういうことはわれわれが日常新聞紙上その他の面を通じて、なまで、からだで感じて知っておるわけなんですね。だからそういう意味で罰則の適用がない方が本来はいいのでありますが、少なくともこの本法の持つ性格から、今日の社会情勢から見ると、その点非常に本法の適用というものが消極的に運用されておる。どうも日本は法律はたくさん作るけれども、ずいぶんいろいろな法律を作って、諸外国から見ても、これだけ法律を作っておる国はないと思うのです。どれもこれもマスターベーションの法律が多くて、実効を上げ得ない法律が非常に多いと思うのです。これなんか私は一つの例、それの範疇に入る法律ではないかという工合に私自身感じておるわけなんです。いずれにしましてもわれわれはこれでは不十分であり、積極的なこの法案の精神の実効が上がるような運用ができるように期待をしておるわけでありますが、だからといって今回の改正案について別に反対の意思ではないわけです。従って、より一そうこの点についての運用について許される範囲において積極的に運用をはかって、本法の実効を上げるように期待をしまして、質問を終わりたいと思います。
  94. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次会は来たる四月十七日、火曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十五分散会