○菊地
参考人 全
石油の菊地でございます。時間もありませんので、要点をかいつまんで申し上げたいと思いますが、特に私
どもは労働組合でありますので、労働組合の
立場から、いろいろな
企業の
関係とか、そういうものを離れて、この業法をどういうふうに見ているかということを申し上げたと思います。それと関連しまして、この業法が出てくるきっかけになったいろいろな施策の経緯について、われわれも若干考えるところもありますので、付帯して申し上げていきたいと思います。
まず第一点に、現在行なわれようとしている
貿易自由化との関連というものが、この
石油業法の中にあるのではないかというふうに私
どもは考えました。ところで全
石油としましては、
貿易自由化については、見方の相違があれば御指摘をいただきたいと思うわけですけれ
ども、いろいろの資料に基づきまして見聞するところによりますと、大体アメリカのドル防衛
政策の押しつけ、それから一部それと結びついた大
資本の要請によって
貿易自由化が促進されていく、こういうことは二重構造をますます増大させて、労働者の生活の安定をもたらさない、こういう観点から、私
どもは
貿易自由化を促進していくという
立場には、現状においては反対せざるを得ないという考え方に立っております。従って、そうした考え方を中心として、
政府の
石油政策についていろいろ考えているわけですが、先般
アラビア石油等の問題について、
参考人として呼ばれました際にも申し上げましたように、私
どもは
石油業法を提出する前に、まず
政府として抜本的な総合
エネルギー対策が必要ではないかというふうに考えております。そのことなくして、
石油業法とかあるいは
関係業法を作って参りましても、結局は今日一部において批判をされているような、ざる法的な
状態になっていく危険性というものはかなりあるのではないかというふうに考えられるわけです。
総合
エネルギーの対策を立てる面において、私
どもは何を考えなければならないかという点について申し上げたいと思います。まず私
どもが考えておりますのは、
国内資源の最大限の有効活用を基礎として、その上に
石油なりあるいは
石炭なりあるいは
電力、原子力、こういうものが総合的に発展をしていくという形で、計画的な施策がなされていかなければならないというふうに考えておりますし、同時にそういうことは再三にわたって私
どもが要望して参ったところであります。あるいは、いろいろ説明の中では現在
政府の行なわれております長期経済成長計画の中において、
エネルギーの
政策というものは織り込まれている、これによって十分ではなかろうかという
意見もあるかと思いますけれ
ども、先ほど各
参考人並びに諸
先生方の御
意見の中にもあったように、
石炭産業は五千五百万トンという
一つのワクの中で固定したものの考え方をしておられる。ところが、
石油の方は次第に増大をして、
昭和四十五年には一億トンにも及ぶ
需要があるだろうという見通しが立てられている。こういうものがはたして均衡のとれた、片方は縮小
生産をやり、片方はいわゆる拡大
生産をやっていくというような形での
エネルギー政策というものが正しいあり方であろうかと考えた場合に、残念ながら私
どもの
立場からはそういうふうに考えられない。従って、もう少し突っ込んだ
政策というものをお願いしたいと思うわけです。
第二の、
エネルギー政策を立てる場合の基本としては、労働者の生活の安定、いわゆる雇用の拡大安定の問題と、生活水準の向上の問題というものを考慮しながら考えていただきたい。このことがない限りにおいては、私
どもは
総合エネルギー政策の基本的な施策があるというふうに申し上げるわけにはいかないと思うわけです。現実に、
石炭産業においては、十三万の労働者が職場から首を切られて、いわゆる失業のちまたに追いやられようとしておる。
石油鉱業の中では、伊藤さんからも触れられるかと思いますが、私
どもの見た範囲では、やはり
精製労働者と比べて非常に苛酷な労働、低賃金の中で働いておられる。同時に、いわゆる全油鉱に所属されている労働者はまだましにしても、帝石なり、そういうところから下請化され、あるいは売山をされて、中小に落ちていった労働者は、非常にみじめな生活をしております。具体的には、
企業合理化の中で、やはり炭鉱と同じように首を切られるという事態さえも出ておる。あるいは、そうでなくても非常に苦しい
事業運営の中で、労働者は非常な低賃金にあえいでおる、こういう
状態が出ておるわけでありますので、これらの問題を総合的にお考え願いまして、
総合エネルギー政策の樹立をお願いしたいと思うわけであります。こうした見地に立ちまして、
石油業法案について私
どもの考え方を申し上げたいと思うのであります。私
どもは、詳しい内容について当事者からいろいろ御説明を伺う
機会を十分に得ませんでした。そのために、いただいた資料を中心にいたしまして考えておりますので、内容等のとり方について誤りがあれば、いろいろとお教えを願いたいと思うのであります。
私
どもは、「
日本石油業のあり方」、「
石油業法はなぜ必要か」というパンフレットを拝見いたしました。この資料から察しますと、現在の
石油業法がなぜ必要かということがこの中に盛られているわけでありますが、
一つは、国際的な行き過ぎの
競争をやめさせたいということがあると思います。もう
一つは、
原油購入の自主性を確立していきたい。そうして結果的には、低廉にして安定的な
石油製品の
供給ということを目ざしていきたい、こういうことを目的としておるようでありますけれ
ども、私
どもは、このことを行なうためには、今の
石油産業における
外資の支配態勢をくずさない限りできないだろうと考えておるのであります。このためには、
政府がアメリカの
方向に向かった一辺倒の
政策を改めて、中国なりソ連なり、あるいはアジア、アフリカの国々と友好的な連帯の中で自由な
貿易を行なっていくというふうに姿勢を正さなければならないと思うのであります。こうした
石油産業の態勢をとってこそ、
政府が考えておられる
ひもつき原油の排除という問題も可能になってくるのではないか。現状のままでは、七大独占といわれる国際カルテルに対抗して、
日本の
石油産業がこの
ひもつきを排除していくことには、非常に困難な問題が横たわっているのではないかと考えております。
第二の問題として
設備投資とかあるいは
生産計画に基づく許可制の問題が出ておりますが、今の
政府の見通しなりそういういった中において、
設備が過剰であるか、あるいは過剰
生産であるか、過剰
投資であるかという問題は、いろいろ議論のあるところであろうと思います。従って、その中でこういう許可制をとって調整をする場合、この業法の内容では非常にむずかしいのではないか、端的に結論を申し上げますと、できないのではないかというふうに考えております。たとえば、新しい
企業を起こそうとして、大
資本なりがこの業法の中に盛られております条件を満たして申請をされた場合に、これを拒否する理由というのはあまり見当たらなくなってしまって、結局認める。そうして一カ所認めますと、二カ所も認めざるを得ない。だんだん増大していって、結果的にはやはりこの内容というものは骨抜きになってしまう危険性があるのではないかと考えておるのであります。
第三点に、われわれ労働者の
立場から最も危惧しておるのは、
価格調整の問題であります。なぜ
価格調整の問題をおそれるかと申し上げますと、たとえば、
標準価格を決定する場合、
企業コストの問題が当然出てくるだろうと思います。そうなった場合に、
企業コストの中に含まれるわれわれの賃金なり福利厚生費なりといった人件費が必ず制約されてくるだろう。こうした中で
標準価格に付随して標準賃金的な、賃金
統制的なものが出てくるだろう。これは
政府が意図するとしないにかかわらず、
企業はこれを利用しながら、われわれ労働組合の賃上げ要求を押えてくる危険性を内包していると考えられるわけです。さらに、この法の
運用いかんによっては、
石油産業というものが
エネルギーの重要な地位を占める。そういう観点から、その社会性を背景として労働運動それ自体にもかなり大きな制約が加わってくるのではないかという心配をしておるわけです。従って、この
価格調整なり業法の運営にあたって、私
どもの組織の中にも賛成、反対いろいろありますけれ
ども、口をそろえて主張しておることは、この心配をどうしてもらえるか、このことが私
どもの
立場から申し上げたい点であります。
また、この
法案は中小
企業なり民族
資本を擁護するものだというような
立場で立てられておるようなところもありますけれ
ども、私
どもはこの
法律は必ずしも中小
企業なり民族
資本を擁護する
立場のものではないというふうに考えております。今までこれに類似したいろいろな業法なり
統制なりがしかれた例が幾多あるのですが、その際に中小だけは別にして、民族
資本だけは別にしてというような形での取り扱いは、大
資本の大きな反撃の中でできないのが
実情ではなかろうかと思われるわけです。その場合に、結局画一的な
統制なり調整なりというものが行なわれて、そして中小の方は結局保護されない、伸びないままで終わってしまうのではないか、こういう危惧をどうしても持たざるを得ないわけです。しかしながら、この業法についてはゆるやかであっても、ざる法であっても、ないよりはましではないかという
意見もかなりあるようであります。私
どもは、こういう心配を持った
法律は、こういう危惧が払いぬぐわれないままでは、ないよりはましだということで受け入れることには賛成いたしかねるものであります。従って、私
どもは現段階においては、この業法については反対ということを言わざるを得ないと思います。しかしながら、将来私
どもが念願をしております
エネルギーの総合的な
政策が確立をされて、われわれの生活安定なりあるいは産業の成長発展なりがこの
法律のもとで約束されていくという場合には、あらかじめその時点で私
どもの態度を出していきたい、こういうふうに考えているわけであります。
従って、私
どもの希望することは、最近社会党の方針なんかを見ましても、
エネルギー基本法の骨子などが発表されておるようでありますが、こうしたものを基礎としながら、やはり全体的な
エネルギーの均衡発展の上に立って、労働者の生活安定を保障する、こういう確信のある、約束のできる
政策を明らかにされてわれわれの
意見を徴していただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたいわけです。
以上が全
石油としての考え方であります。