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1962-03-29 第40回国会 衆議院 商工委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十九日(木曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員   委員長 早稻田柳右エ門君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    佐々木秀世君       齋藤 憲三君    始関 伊平君       首藤 新八君    中垣 國男君       中川 俊思君    林   博君       原田  憲君    南  好雄君       岡田 利春君    加藤 清二君       北山 愛郎君    久保田 豊君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    山口シヅエ君  出席政府委員         通商産業事務官         (鉱山局長)  川出 千速君  委員外出席者         参  考  人         (日本鉄鋼連盟         専務理事)   葦澤 大義君         参  考  人         (日本石油精製         株式会社副社         長)      新井  浩君         参  考  人         (全国石油鉱業         労働組合中央委         員長)     伊藤 誠光君         参  考  人         (国民経済研究         協会会長)   稲葉 秀三君         参  考  人         (全国石油産業         労働組合協議会         委員長)    菊地 清一君         参  考  人         (日本石炭協会         専務理事)   佐久  洋君         参  考  人         (電気事業連合         会専務理事)  中川 哲郎君         参  考  人         (石油連盟副会         長)      南部 政二君         参  考  人         (石油鉱業連盟         会長)     三村 起一君         専門員     越田 清七君     ――――――――――――― 三月二十九日  委員中嶋英夫辞任につき、その補欠として加  藤清二君が議長指名委員に選任された。  同日  委員加藤清二辞任につき、その補欠として中  嶋英夫君が議長指名委員に選任された。      ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石油業法案内閣提出一二二号)      ――――◇―――――
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石油業法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため参考人としてお手元に配付してあります名簿通り九人の方々出席されることに相なっております。すでに石油連盟会長南部政二君、石油鉱業連盟会長三村起一君、日本石炭協会専務理事佐久洋君の三君がお見えになっておられます。  この際参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、まことに御多忙中のところ、委員会の要求に応じて御出席を賜わり、ありがとうございました。  申すまでもなく、本案エネルギー源の最も重要な石油について新たに基本的な法律を定めようとするものでありまして、来たる十月に行なわれまする予定貿易自由化を控え、業界はもとより国民全部が深い関心を寄せている重要な法案であります。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。ただ本日は九人の方々をお呼びいたしておりますので、名簿にあります九人の方々を三人ずつ三つのグループに分かれていただき、一グループにつきおおむね一時間ずつ陳述を願い、質疑を行なう予定になっております。まことに恐縮でございますが、さような関係でお一人十分程度の御意見をまずお聞かせをいただき、引き続いて質疑を行ないたいと思うのであります。  では、以上の三人の方々の御意見をまず伺うことにいたします。石油連盟会長南部政二君。
  3. 南部政二

    南部参考人 ただいま委員長から御紹介いただきました石油連盟会長南部でございます。石油業法案の御審議にありまして、参考人として意見を申し述べます機会をお与えいただきましたことを厚く御礼を申し上げます。  今年の秋から自由化されまする石油の問題につきましては、その影響がきわめて深刻広範なものがあろうか考えられるのでありまするが、これに関しまして、その影響の度合い並びに自由化に対してとるべき方策等に関しましては、業界内におきましてもまちまちの意見に相なっておるのであります。とかく石油業界はまとまりの悪い業界だという世評を耳にいたすのでありますが、これは昭和九年以来石油業法の施行があり、かつ配給並びに価格統制が実施せられ、昭和二十七年に至るまでそれが継続し、かつその後は外貨割当制という一本の柱によって秩序を維持せられて参りました関係上、石油業に関する政府影響力はまことに大きいものがあったわけでありまして、これにたよるくせがついたと申しましょうか、それぞれの意見がありまして、なかなか一致した見解が出ておらないのであります。ある者は、自由化にあたりまして、ほんとうに自由化すべきであって、何らの法的規制を必要としない、自由に放任しておけば落ちつくところに落ちつくであろう、それが全体のエネルギー政策として当然の方向である、かようの意見もあるのであります。また一部におきましては、強力なる国家統制下にこれを置き、その生産輸入等に対して十分な法的な規制を行なうべきであるという見解もあるのであります。しかしながら、大勢といたしましては、かねて御存じでありましょうが、経済団体連合会等において議論のいたされましたように、需給調整設備制限等を加えた五年程度時限立法で処置していただき、自由化に伴います混乱をその暫定法によって処置し、日進月歩の技術革新に伴うエネルギー源の変化に対処して、そのときの状況によってさらに石炭電力原子力等を総合した立場において法的規制をあらためて考えればいいではないかという意見大勢であろうかと、かように私判断いたしておるのでございます。  かくのごとき意見のもとで、今般御審議に相なっております政府提出石油業法案は、自由貿易あるいは自由経済のもとにおいてきわめてふさわしい、法体系といたしましてはまことに新しい法律の形態を持っておるものではなかろうか、かようにも考えられるのでありますが、法律全体を通じて、率直に申し上げれば、きめ手がないわけであります。従いまして、かくかくしろという命令その他がないと、かように考えていいのではないかと思うのであります。従いまして、この法律全体として、これが運用にあたりましては、ある場合においては相当国家的統制の色彩が濃くなり得る可能性もあり、ある場合においては全くゆるやかなる法規的な統制を行なうにすぎないという運営の仕方も成り立つのではないか、かように考えられるのであります。この運用にあたりまして、私どもは、でき得る限り政府においては大きな方向をつける、石油産業エネルギー全体の立場から大きなレールを敷くという程度政府指導行政を行なっていただき、個々の企業自主的活動を阻害しないように運用していただければいいのではないか、かように希望いたしておるわけであります。  具体的な例を申し上げまするならば、たとえばアラビア石油の産油について、政府が、法の第三条に基づいて重要なる石油供給に関する事項として、何百万トンはアラビア石油を使うのだということを通産大臣がおきめになったとかりに仮定いたしましても、業界においてそれをそのまますなおに受け入れ得る数量とちょうどマッチするかどうかというような問題があるわけであります。あるいは政府の定められました石油供給計画に対しまして、各石油会社法律第十条の規定に基づきまして、石油製品生産計画政府に届け出る、その届け出た数量は、現在の状況からしますと、各会社とも自己のシェアを、自分業界における占拠率を一%でも多くしたいということでございますので、あるいは届け出ました石油製品生産計画政府のきめた供給計画を上回るという可能性は十分にあると思うのであります。かくのごとき場合に、その生産計画を、法律に従いました勧告をもってこれを政府供給計画にマッチさせるのかどうか、あるいはいかなる方途で各会社別にこれをマッチするように調整するかというような問題が存在する、また必ず起こってくるのではないかと予想せられるのでございます。かくのごとき場合に、この法律運用にあたりまして、業者全体の空気をなるべく調整し得るような寛大にして忍耐強い行政一つといっていただきたいものだ、それぞれの売手、買手の話、あるいは業界における生産競争実情にかんがみまして、十分に業者同士の話し合いという場を尊重していただければけっこうである、かように考えておるわけでございます。  なお、標準価格を公示する等の場合におきまして、相なるべくんば、今後の石油需要伸びに伴いまして、再投資ができるように、設備投資に事欠かないように、標準価設を設定せられる場合においてはお考え願いたい、かように考えておるわけでございます。  なお、この法律と直ちに関係はないわけでありまするが、石油業それ自体、今日に至るまで、国家財政資金によるところがきわめて少ない業種でございまして、今日に至るまでほとんど自己資金、あるいは外資を導入する、あるいは借入金等におきましても、政府のいわゆる国家財政資金にたよっておることがきわめて少ない業種でございます。一方税金におきましては、本年度はおそらく関税、揮発油税軽油引取税等を合計いたしますと、二千五百億程度でございます。お酒の税金二千七百億を、おそらく三十八年度には凌駕するような納税額になるのではなかろうか、かように考えておるのであります。あえて戻し税をお願いするわけではございませんが、今後伸び行く需要にマッチさせるための設備投資は、おおむね年々一千億を必要といたしておるのでございます。これらの資金の調達に関して格別政府の援助を私どもはお願いしたい、かように考えておるのであります。  今日までの状態で考えますれば、石油業はとかく外資によっておるということでございますが、国内資本を調達いたしかねる、あるいはまた一面から申しますと、いずれ外国から原油を買わなければならない。買うならば、安定した供給源を求める、五年、七年というような契納をするわけであります。その際はるかに国内金利より安い金利資金供給してくれるということであるならば、やむを得ずそちらへおもむくのが私企業として当然の結果だ、かように考えるのであります。しかし、これとても、世間から見ますと、どうもひもつきなり何なりで、外資ばかりにたよってけしからぬ業界だというようなことも、私どもたびたび耳にいたすわけでございますが、この点につきまして、さらに政府並びに先生方格別の御考慮をお願いしたい、かように考えておるわけでございます。  なお、この法律におきましては、石油審議会はきわめて重大なる権能と申しますか、機能を果たさなければならないように考えられるのでございます。生産なり需要の想定なり、あらゆる事項に関して石油審議会意見通産大臣は徴せられることに相なっておるのであります。この審議会構成人員に、十分に私ども業界意見が反映いたしますような人選政府に特にお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。  以上要約いたしますれば、スムーズに自由化に移行するためには、自由化対策として設備規制を伴った需給調整を五年程度時限立法として制定すべきではなかろうか。しかしながら、すでにここに法案が提出されておりまするので、この法案が成立いたしました場合につきましては、行政当局は、自主的な企業活動を阻害しないよう、大筋を法律運用によってきめていくような行政をやっていただきたい。設備投資に関して格段のめんどうを見ていただきたい。石油審議会では、石油精製業の意思が十分に反映するような人選をお願いいたしたい、かように考えるのでございます。  直接本法案関係はございませんが、この機会に諸先生格段の今後の御高配をお願いしたい問題は、石油は、申し上げるまでもなく、本年四千万トン近い需要数量であり、近い将来に一億トンにもなろうとしておるときでございます。このほとんど全部と申し上げていいくらいの数量を国外から輸入いたさなければならないわけでございます。日本は、御存じのごとく、かなり離れた島国でございます。パイプ・ラインで送るわけにも参りませんので、やはりタンカーにたよらなければならないと思うのでございます。このタンカーの積み取り比率は、過去数年来、おおむね五〇%程度邦船による積み取り比率でございますが、今の政府造船計画その他から見ますと、年々増加して参ります石油輸入数量に対しまして、船腹の増強がこれに伴わない、かように考えるわけであります。一方輸出船は、御存じのごとく、最近造船所で受注いたしますのは、トン当たり百十四ドル程度であります。これに対して輸出入銀行はきわめて安い輸出金融を行なっておるわけであります。日本船舶会社が建造いたします場合においては、今度開発銀行から格段資金供給があるやに承っております。金利についても特段の政府の御配慮があるように存じておりますが、それにしても、輸出船よりなお高い金利を負担しなければならないというのが実情でございます。一方石油需要はどんどん伸びて参ることは明白でございます。そのほとんど全部を運ばなければならないタンカーの建造がその増加数量に追いつけないということに相なりますと、国際収支の面から見ますと、貿易外収支において大きな外貨のロスを明らかに予想せられるわけでございますので、今後の石油需要増加に伴う輸送問題について、海運の政策として特に御留意を願いたい。また総合エネルギー政策立場からも、供給安全性立場からも、この船舶に関する政府の方針は、重大なる影響を持っておる、かように考えておるのでございます。あわせて諸先生格段の御高配をお願いしたいと存ずるわけであります。  以上、私の陳述を終わります。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  次に、石油鉱業連盟会長三村起一君にお願いいたします。
  5. 三村起一

    三村参考人 御指名になりました私が石油鉱業連盟会長三村起一でございます。本日は、石油業法案に関しまして参考人として意見を述べる機会を与えていただいたことは、石油鉱業連盟としてまことにありがたく、御礼を申し上げます。本論に入る前に、わが国石油採掘事業につきまして、一言簡単に申させていただきます。  従来わが国では、石油会社といえば、外国から原油を買って、それを工場で精製するという会社が、いわゆる石油会社というふうに世間一般には見られておりますが、しかしながら、申し上げるまでもなく、外国はどうかといえば、これは採掘から精製、輸送、販売、一貫したところの総合的な仕事をしておるのが外国石油会社状態でございます。わが国がこういう特殊の事情であることは、戦後の占領地下において太平洋岸製油所を再開するにあたって、資本技術原油供給の面で外国石油会社と提携するように指導されたことに由来するのではないかと思われます。その効果はりっぱな効果を上げて、設備においても自由世界においては米国に次ぐ第二位と言われておるし、また多量の精製油が出ておるわけでございますので、その効果はりっぱに上がっておりますが、同時に、外油系のいわゆるひもつきという点もこれに伴った次第でございます。  これに対しましてわれわれの連盟の方はどうかというと、帝国石油は、戦後南方から引き揚げて参りました多数の人員をかかえたまま、自来十数年間幾多の苦難を乗り越えまして、国内石油生産の維持、石油採掘技術の向上に努力して参ったのであります。ただ、残念なことには、探鉱に対する原資が十分でなかったために、ここで十分な開発が望めないということで、昭和三十年には国内石油資源探鉱開発を急速かつ計画的に促進するというために、新たに第二十二国会において皆様方によって制定されましたる石油資源開発株式会社法によって、石油資源開発会社が生まれたことは御存じ通りでございますが、さらにこの帝国石油会社石油資源開発会社の三社によってつちかわれましたる技術陣を動員いたしまして、昭和三十三年にアラビア海のまん中に、わが国として初めての海外石油利権を手に入れまして、アラビア石油が生まれ、さらに翌年インドネシアとの経済協力の第一歩といたしまして、東南アジア経済開発の第一着手として、北スマトラ石油開発に協力するために、北スマトラ石油開発協力会社が生まれたのでございます。この四社は内外の石油資源自分たちの手で掘って、これをわが国に安定した供給をなして、また貴重な外貨の節約に資するという共通の重大な使命を達成するために、昨年の暮れに連盟を結成したような次第でございます。  そこで、ちょっとここで石油鉱業連盟四社の事業が一体現在どうあるかということを簡単に申し上げますが、わが国原油生産量は、戦前の一番盛んなときでも五十万トンをこしておりません。石油わが国の歴史といたしましては、わずかばかり手で掘ったというときは別といたしまして、まず本格的に始めたのが、明治の初めから九十年間に百万トン級の油田というものはわずかに六カ所しか発見しておりません。八橋を第一に、黒川、東山、西山、新津、院内等の六カ所でございます。いわば十五年間に百万トン級の油田一つしか発見しておりません。ところが最近五カ年間において石油資源開発会社並びに帝国石油会社探鉱努力並びに従業員の情熱によりまして、最近の技術を駆使いたしまして、巨大な油田をすでに四カ所発見しております。秋田県の申川、あるいは新潟県の見付、頚城並びに大陸だなを開発いたしまして、土崎沖に大油田を発見しております。このような油田を四カ所も発見いたしまして、生産量も急激に上昇しております。国内石油天然ガス資源開発本格化が、初めて前途に光明を見たように思われます。またアラビア利権地では、開発着手以来三年間で埋蔵量は約八億トン。今年は六百五十万トンの予定でございますが、来年度から年間一千万トンの、世界有数の大油田となるという成果をおさめておりまするし、さらにまた北スマトラ油田におきましても、わが国技術家わが国国産機械設備等を輸出いたしまして、そうして現在までに三本の井戸を掘り、そのうち二本が成功いたしておりますし、あとは本年四十六本を掘る予定でございます。  しからば、今自由化を前にして国内石油事情はどうかというと、私は自由化の場合には相当混乱に陥るおそれがあるのじゃなかろうかと思っております。われわれ四社の石油採掘事業は最近このように相当の目ざましい成果を上げておりまして、わが国の必見なる石油相当部分安定供給源として自主的に円貨で入手するという国家的念願の実現を目前にして進んでおるのでございます。しかし、当面する重大問題をここに皆さん方に申し上げたいと思うのは、すなわちわれわれ四社はみずからの製油所を持っておりません。またみずからの販売機構一つもございません。従って、全部これは石油精製会社の方にお願いしておるような次第でございます。  つきましては、ここにわれわれの出しておる石油引き取りについて一言申し上げたいと思いますが、まず国産原油は高いから引き取らないのじゃなかろうかということがございますが、まさにその通り、ちょっと異様に聞こえるかもしれませんが、私は国産原油は高いからお引き取りにならぬというのはその通りだと思います。しかしながら、高いというのは、海外から輸入する石油に比べて高いのであります。ですから、それにさや寄せしろという声は、これは商業ベースを基礎としておられるところの石油精製業者としては当然のことだと私は思います。ただ、われわれは、日本国産石油が高いということについては、世界的に見て、それじゃはたして高いのかというと、絶対そうではございません。米国石油が一キロリットル当たり山元手取りが六千五百円前後であります。また英国におきましても、西独においても、フランスにおいても――フランスは九千六百円くらいでありますが、英国西独はみな一万二千円くらいに当たっております。しかるにわが国国産石油はどうかというと、昭和三十三年、三十四年までは九千五百五十円でございましたが、わずか二年の問に数回の値下げを要求されまして、現在では六千六百五十円――去年の十月から八百五十円下げられて六千六百五十円になっておりますが、さらにこれを二千円下げるようにということを精製業者の方から言われておりまして、四千五百円ぐらいの手取りになるということは、実はわれわれとしては耐え切れない状態でありまして、これでは国産石油が成り立つことはきわめて困難であると私は断言せざるを得ないと思います。これは結局外油輸入が安いからでありまして、外油欧米諸国におきましては大体六千三百円くらいで輸入されておりましょうが、日本は五千円くらいで輸入されておる、こういう状態がこういう結果になったわけであります。またアラビア北スマトラ原油は、価格の面では同じ地方から輸入されておる原油とほぼ同様でありますけれども、これから生産本格化しようというやさきに、わが国精製会社外国石油会社との特殊な関係から、全額引き取るということはきわめて困難でありましょう。できるだけ引き取るように御努力は下さるで、ありましょうが、そういう特殊事情からこれを十分に引き取ることは困難だと思われます。また、電力及び鉄鋼等のユーザーの方からも、できるだけ引き取るように考えて下さっておりますけれども、これも全額を引き取ることについては非常に困難であります。三十七年度の原油輸入予想は四千万キロリットルの中で、その六〇%ほどは外資系会社に対して、その親会社が一手に供給しておる油でございます。なおその上に二〇%程度は最近急増した外国石油会社からの莫大な借金の見返りとして長期購入を約束した油でありまして、これらの合計は八〇%前後でございましょうが、従ってフリーハンドの油というものは、わずかに二〇%前後だと思われます。石油精製各社は、上述の輸入面では、先般佐藤大臣もおっしゃったし、また今、南部会長からもお話がありました通り原油輸入についても、シイアの分野におきましても、また販売分野におきましても、相当激甚なる競争が行なわれておる状態であります。  それではいよいよ最後に、この石油業法をわれわれはどう考えるかという点をここで申し上げたいと思います。  このように石油業界においては、各種の問題が山積しておるという一言で尽きると思いますし、かつまた日本石油産業の重大な転換期に今はあると思います。今日この自由化目前にして、自由化に何らの規制なく入った場合には、相当混乱が予想されることでございますので、自由化延期論などが飛び出すのも、また無理からぬ点があったと思います。あるいは世間では自由化しても自主調整すればいいじゃないかという説がございます。これは私は願わしいことだと思います。しかし、現実にはたしてこの激烈な競争下自主調整に一任してそれで安心ができましょうか。これは私はきわめて困難だろうと思います。ゆえに、自由化を前にして、国全体の利益という大局的見地から、石油事業全体の秩序を維持することができるように、この際石油業法の制定を政府が考えられましたことは、私は当然であるし、またぜひ必要であるということをここに申し上げたいと思います。なお、石油業法に対するわれわれの希望を二、三申し上げます。  以上申し上げました見地に立ちまして、現在提案されております石油業法については、われわれの立場から申しますと、第一に、生産輸入供給等の国の計画を規定しております第三条及び業者生産計画に対する勧告を含んでおります第十条の運用を通しまして、国産並びに海外開発原油の適正量の引き取りが安定して行なわれますようにしていただきたいと願うわけであります。これらの油の引き取りは、業法がなくても行政指導だけで事足りるという説もございましたけれども、私はこれは従来の実例から見ましても、とうてい容易でないことであると思います。  またこの業法は暫定立法でよいとの意見も聞いておるのでありますが、業界秩序が自主的に維持されるようになったときには、再検討するという規定があるのでございまして、無条件に恒久化するというおそれはないと思います。このままで私はよいと思います。  さらにこの業法は官僚統制の始まりであって、他の産業にまで悪影響を及ぼしはしないかという声もあるやに聞いておりますけれども、欧米各国でも、石油輸入につきましては相当規制をしております。われわれとしましても今提案されておる石油業法は、本質的に統制法とは異なると考えます。なおその運用にあたっては、もちろん官僚独善というような事柄については、これは政府当局もそういうことはせぬということを確言しておられるのでありますから、われわれはそれに信頼してよいと思います。これらを総合いたしまして、石油業法は、自由化突入を前にして、その混乱を防ぎ、戦後初めてわが国石油業の、統制でなくして、調整基準として、ぜひ私は成立を望むものであります。  なお、最後に一言だけ加えさせていただきますが、われわれ国産原油並びに準国産原油系のものといたしましては、二つの点にしぼってお願い申し上げたいと思います。  第一は、国産原油の保護育成と、第二は、その原油の確実な引き取り体制の確立でございます。この業法だけでは十分であるとは絶対に申せません。昨年六月五日及び十月三十日のこの皆さん方の商工委員会において、石油天然ガス資源の開発促進について、国際的視野に立たれて、わが国エネルギーの将来を憂えてなされましたる石油業及び天然ガスについての指導的なりっぱな御決議というものがございますが、われわれ国産原油のものといたしまして、これによって一般の認識が非常に高まり、かつ再認識をしてもらったという点について、われわれ一同心から各先生方に対して感謝しております。その御趣旨に沿いましてわれわれも日夜努力してきましたが、 ついては、この業法の成立後、引き続き国産原油の保護育成と特殊法人の原油買取販売機関の設立のこの二点をぜひともお願い申し上げたいと思っております。昨年暮れ、エネルギー懇談会が石油関税の値上げを答申したのは、石油関税収入をエネルギー政策に充当することを前提としておりますが、三十七年度の石油関税収入予想二百四十億円のうち、石炭産業に百三十億円持っていかれますが、これは私は今のわが国の情勢としてやむを得ぬと思っております。しかし、石油及び天然ガス開発に一体どれだけ出されたかといいますと、われわれの政府に対する投資要求額は十四億円のところ、実際実現されたのはわずかに五億五千万円しか計上されていなかったのであります。この上さらに原油価格の大幅な値下げを要求されておりまして、原油引き取りが不安定でありますときには、満足な探鉱を遂行することもできません。  また、アラビア北スマトラ原油は、先に述べましたような精製業界の特殊な状況のために、私企業問の話し合いだけでは、十分な引き取りがむずかしいと思います。  以上のごとき諸問題を円滑に解決するためには、国策的な特殊法人の原油買取販売機関を設立していただく以外にないのではないかと思います。このような機関ができました場合には、国産原油の保護育成策もこの機関を通じて行なうことができますし、また国として必要とされる原油の備蓄の問題も、この機関を利用されれば妥当ではないかと思われます。  われわれは昨年十二月、通産大臣あてに、また諸先生あてに業法の制定とこの買取機関の設立のぜひ必要であるという意見書を提出いたしましたが、ただいま提案されておりまする石油業法が、この国会で成立することを心から念願いたしておりまするが、それと同時に国産原油の保護育成と買取機関の設置につきましては、一に皆さん方の何分の御高配、御高導のほどをお願い申し上げまして、私の意見を終わります。ありがとうございました。
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  引き続きまして、日本石炭協会専務理事佐久洋君にお願いいたします。
  7. 佐久洋

    佐久参考人 ただいま御紹介をいただきました日本石炭協会佐久でごごいます。本日特に石炭業界意見を申し述べる機会を与えられましたことに対して、心から御礼を申し上げます。  先ほど来石油業界方々から本日の議題であります油業法についていろいろと御意見がございましたが、私は同じエネルギー供給者の立場から、石炭産業がどういう状態にあるのか、またエネルギー全体の中で石炭のあり方はどうあるべきであるかといったような点について、冒頭に若干申し述べたいと存じます。  まず、総合エネルギー政策に盛り込んでいただきたい石炭の基本的なあり方を、業界としては次の通り考えております。エネルギー需要が急激に増加しつつある中におきまして、エネルギー使用について消費者の自由選択ということを原則とすることは当然でありましょう。しかし、国内資源の活用、エネルギーの安定的な供給及び社会的な側面等を考慮した場合、この基本原則は国民経済的な一定の制約を受けざるを得ない面が生ずることになると思います。これを石炭について申しますると、たとい石炭価格がある程度割り高についても、約束された炭価千二百円引き下げという一定の条件が満たされる限り、一定量の需要需要家の協力と政府の指示、指導によりまして当然確保されるべきものと考えます。もしも石炭と重油との価格差が大きいために一定量の需要確保が脅かされるような場合には、国家はその価格差を埋めるなり、あるいは需要を直接確保するなりの方法によりまして、石炭の安定を期すべきものと思うのであります。これが国民経済的視野に立って考えられる石炭の地位であり、総合エネルギー政策を確立する際に盛り込まれるべき石炭の基本的なあり方であると確信しておるのであります。幸いにして、この考え方の大要は、今日消費者の側においてもほぼ了承されておりまして、石炭と油との自由な価格競争は一応回避されております。  かかる現状でありますので、今回当委員会に付託されております石油業法案石炭対策のためでないことは提案理由を見ても明らかでありますし、また各条文を見てもその点ははっきりしていると思います。本法案が提出された理由は、もっぱら石油業界秩序化にあると思います。石油需要は今後急激に増加することは明白であります。それがある整然たる秩序を保ちながら生産増加を実施できれば、何ら問題は起こりません。しかし、現実はそういいうことが期待できない状態と聞いております。もしそうだとすれば、斜陽産業と普通呼ばれております石炭鉱業に秩序を与えるために、石炭鉱業合理化臨時措置法があるごとくに、立場石炭と反対にますます日の当たる石油産業ではありますが、やはり秩序を保持するための法律があっても不思議ではないと考えられます。  もちろん自由主義経済の原則からすれば、企業規制する法律がなくて済むのが一番いいと思います。しかし、それは産業自体が種々の問題をすべて自分で解決できるということを前提とした場合に限られる。しかるに現在の石油業界には、提案理由にもありますが、自主的に解決できそうもない困難な問題をかかえているということであります。たとえば石油設備の拡張競争石油製品の過当な販売競争、特殊原油引き取り等がそれであると聞いております。設備が大いに拡張され、生産量が増して、その結果販売競争が激化して、価格が大いに下がるということは、石油消費者にとっては喜ばしいことかもしれませんが、しかし、その喜びは長く続き得るものとは思えません。そういう状態を続けておれば、いつの日か石油産業混乱に陥って、かえって産業全体のバランスをくずし、石油消費者は直接間接の被害を受けることになると思います。かく考えますので、本法案は必要であると思います。  そこで、その内容でありますが、以上述べました事情から見て妥当のものと考えます。すなわち石油精製事業及び設備についての許可制、石油輸入業及び販売業の届出制生産計画輸入計画の届出制等は、秩序保持のためには当然必要であり、標準価格価格が不当に高騰したりあるいは下落した場合に公表するというのでありますから、その点もかなり控え目な行き方と思われます。  経済界には本法を時限法とすべきだという意見があります。法による規制はない方がいいという自由主義経済の原則論からいえばその通りでありますが、本法案石油業界秩序化を目的とするものでありますから、時限法たらしめるためには、業界自体がいつになれば自主的に秩序維持ができるということを明確にすることがまず必要であると思われます。石油産業石炭鉱業ときわめて密接友好的な関係にありますので、一日も早く石油業界が安定して、この法律の必要がなくなることを期待するものであります。  なお、アラビア石油北スマトラ石油等を含む広い意味の国産原油の扱いについては、本法案には条文の形ではうたっておりませんが、貴重な国内資源としてこれを扱うべきものと思います。その開発に要する資金面の助成、原油の円滑な処理等に行政上特別な配慮を払うべきものと思われます。そうすることが国内資源の活用ということだけでなく、同時に技術人の養成、保持という点からも必要であると考えられるのであります。  以上をもちまして私の陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  以上で三人の方々の御意見陳述は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 質疑の通告がありますので、順序これを許します。板川正吾君。
  10. 板川正吾

    ○板川委員 まず第一に南部さんにお伺いいたしますが、石油連盟としては、これを限時法にしてほしい、こういう建前を今なおとっておるのであります。この法律によって精製設備の許可制をとった場合、許可をもらってから、大体物色しておるかしれないけれども、土地を見つけて、そして新しい精製工場を作る、こういう期間はまあ二年ないし三年くらい要するんじゃないかと思うのです。そうしますと、限時法で三年か五年にしてくれという要望もわれわれ聞いておりますが、それは実質的にはこの法律を作らないでくれ、こういうことになってしまうのじゃないですか。だから私はその他のことでやむを得ないと了承されるならば、五年くらいの限時法にしてくれというのはどうも当を得ないと思うのですが、この点に対してどう思いますか。  それから標準価格を設ける場合、再投資可能な、いわば拡大再生産のできるような状態にしてほしい、こういうのであります。しかし、御承知のように、十五条では勧告程度です。これは罰則もございません。従って、それは望ましいという意思表示にすぎないのでありますから、実際守らない場合がありますね。そうしますと、再投資、拡大再生産が可能なような価格を維持してほしいということはなかなかできないんじゃないか、しかし、その考え方は自由化してくれということと若干矛盾するのじないか、法律は要らない、自由化でやらせろということと矛盾するんじゃないか、こう思うのです。この二点をまず南部さんにお伺いいたします。  それから、時間がありませんから一緒に三村さんに質問をいたしますが、石油鉱業連盟の要望としては、国内油の引き取り、準国産油であるアラビア、スマトラ油等の引き取りをぜひ一つ確保してほしいというのが御主張の一番大きい線だろうと思うのです。これは重要な問題です。現在のこの業法によると、三条と十条、これで調整するということを政府は考えておるのですが、これで業界としては、特に一番量の多いアラビア石油引き取りが可能だとこの法律では考えておられるかどうか、これで大丈夫だという考え方をとっている人がありますが、業界ではそれは不安を持っていると思うのですけれども、その理由を一つ伺いたいのです。  それから佐久さんに質問をしたいのですが、石炭の一定量の生産を保証してほしい、こういうことが冒頭にございました。この一定量、最低どの程度石炭業界として要望しているか。たとえば所得倍増計画によりますと、昭和四十五年度においても産炭五千五百万トンベースということを予想しておりますが、こういう程度でいいのか。最低量を実はもっとベースを引き上げてもらいたいかどうか、どういう程度を希望されておるか。それから私は前から、エネルギーの安定的確保というのは重要な問題であると思っています。しかも安定的確保のために、できればフランスやイタリアのごとく、相当量の備蓄義務を国家なり業者なりが負うことが必要だと思うのです。しかし、当面この石油業法にはないし、今それをやるとなると非常なコスト高というようなこともあり、急に一足飛びにいかない。そのためには石炭の一定量生産を保証する、こういう国の政策が、エネルギー供給の安定性を確保するということに通ずると思うのです。そういう意味から最低量四十五年度五千五百万トンベースではたしていいのかどうか。石炭の比率というものが非常に下がってきますが、そういう点で希望があれば伺いたい。  それから、これは私はちょっと新聞で見たと記憶するのですが、石炭業界として総合エネルギー政策をこうしてほしいという案が出たやに聞いておる。どういうふうに出たか実は伺ってないし、資料ももらっていませんが、その点について説明をされ、場合によってはあとで資料をいただきたいと思うのです。以上です。
  11. 南部政二

    南部参考人 板川先生からの御指摘の点についてお答え申し上げます。  第一点は、時限法でいいじゃないかという御説明はいいんだが、しかし、工場建設その他を考えると、二年ないし三年は少なくともかかる、五年というようなことは事実この法規を作るなという意味に通ずるではないかという御質問でございます。  第二点は、価格政府が公示せられる場合に、拡大再生産ができるような価格をきめていただきたい、こういうことだが、これは一応守る、守らないはそちらの方の業者の側に責任があるので、そういうことを言うのは自由にせいということと相矛盾する考えではなかろうか、こういうことと了承いたしました。  先ほど陳述の際に申し上げましたように、石油連盟自体の意見は、あるものは全く自由にしてほしい、あるものはもっと強い統制色を置いてもらいたい、大勢としては五年程度時限立法、こういうことでございますが、五年と申しますと、おおむね新しい工場計画は御指摘のように二、三年は少なくともかかると思われますが、そこで二、三年という時限法は五年ぐらいのところがどうかという意見が多い、こういうことで御了承願いたい、かように思います。  それから標準の価格を公示せられる場合でございますが、これは非常に値段が下がったので表示をせられる場合と、高くなったので表示をせられる場合と、こういうふうに両方予想せられるわけであります。その表示価格をせられる場合、できれば業界といたしましては政府の表示価格に従うように持っていきたい。そういたしますと、たとえば石油審議会で消費者の意見が非常に強い場合には、安くきめられるおそれもある。そういう際にでき得ればとことんまでの値段ではなく、一割なり一割二分なりの石油会社が配当できるような程度価格をその際は御考慮願いたい。おおむね運用等について愚見を申し述べましたごとく、すでにかくあるべし、時限法であるべしというのはもう論議し尽くされております。今後は法の運用に弾力的な運用を願いたい、かように考えておる次第でございます。御了承願いたいと思います。
  12. 三村起一

    三村参考人 先ほどのお話の点でありますが、先ほど申し上げました通り、民間の自主的な方法によって、たとえばユーザーとしての電力会社あるいは鉄鋼業者等ができるだけ取る、ことに数年後においては、特にアラビア石油についてはできるだけの量を取り得るように、相当量を取り得ることになるであろう、今は半分程度だが、相当量のものを取り得ることになるだろうというお話も、責任者の方から懇談会等でございました。また精製業者の方でもできるだけ取るようにするが、しかし、外資系関係のところでは、いろいろ外国の方の要望もあって、商業ベースだけで考えなければならない点もあるので、そう簡単にいきかねるということもおありでありますが、できるだけ取ろうというお話はあります。しかしながら、それだけでは足りないので、やはりこの法の第三条及びで第十条もって、計画の中に国産、準国産石油をはめていただいて、そうして全量を取っていただくように、これは欧米諸国が全部国産石油は全額精製業者の方で取って精製しておるという現状でもありますので、日本でも一つそういうふうにしてもらいたい、これはまたそういうふうに運んでいただけるものだろうと私は思います。しかしながら、なおそれでもいかなる事情がまた起こるかもしれないので、われわれは安定した供給、安定した引き取り、安定した価格、このいつも言うておる三安主義でもって、ぜひ一つ買取機関を作ってもらって、その機関を通してそういう調整をはかる一助にしてもらいたいと思っております。買取機関については、まだ具体的にどういうふうな内容にするかということについては――われわれはそういう希望を大臣並びに参衆両院の各位に対しても要望書として御参考に出しておりますが、そういう意味において買取機関はぜひ一つ作っていただいて、今あなたのお話の点を調整したいと考えております。
  13. 佐久洋

    佐久参考人 ただいまの合理化計画のもとでは五千五百万トンということになっておりますが、これを将来もっとふやす希望があるかどうかという御質問のように伺いましたが、今三十三年度に比べて価格を三十八年度に千二百円下げるというその合理化の途上にありまして、この五千五百万トンの消費確保さえ非常に困難な状態に追い込まれておるわけであります。私どもとしては五千五百万トンは最低線としてどうしても確保したい、こういうふうに考えておりますし、将来さらにコストあるいは流通経費の引き下げによって消費者にサービスをしながら、それ以上の石炭の消費というものを消費者の協力を得て拡大していきたい、こういう希望は持っております。  それからもう一つ総合エネルギー政策の問題ですが、これは新聞にいろいろなことを書いてあるようでありますけれども石炭業界自体で総合エネルギー政策が完成されたという状態にはなっておりません。関係エネルギー、つまり電力とか石油関係者と寄り寄り相談をして、何か三業界まとまった考え方が出ればということで検討をいたしておる状態であります。
  14. 板川正吾

    ○板川委員 時間がございませんからこれでやめますが、石油連盟南部さんにお伺いいたしますが、従来のアラビア石油引き取り自由化になったら一つごめんをこうむる、こういうことが新聞等でしばしば報道されております。なぜ自由化になるとごめんこうむるかというと、アラビア石油も民間会社じゃないか、わしの会社はアメリカと資本提携をしておりますから、従って、資本提携の際の契約によって、外貨割当制度で政府から押しつけられた場合はやむを得ないが、自由化になった場合にはよその会社の油を買うことはできないということがしばしば報道されておる。事実それが実際じゃないかなとわれわれは思っておるのですが、現在でもそういった考え方には変わりないかどうか、今のままでいけばアラビア石油の配給は十月以降はごめんこうむる、こういう態勢でおるのかどうか、これを一つお伺いいたしたいのです。  それから佐久さんにお伺いしますが、一体石炭産業として最低これ以下じゃ困る、これじゃ致命的に打撃を受けちゃうから、これ以下じゃ困るという最低の線というものは、どの辺を考えておられますか。これが実は聞きたい。  それからもう一つ、どんどん石油がふえて参りますと、その場合に、特に北海道とか九州とかの産炭地に大きな製油所ができる可能性もあるでしょう。北海道の石炭の場合には比較的能率がいいということで、競争力も強いようでありますが、たとえば九州地方に大きな製油所ができたような場合には、石炭業界に与える影響というのも重要じゃないかと思うのです。九州石油ができるとかいうことも聞いておるのですが、こういう点について石炭業界としてどういうような考え方を持っておるか、この点を一つお伺いします。
  15. 南部政二

    南部参考人 アラビア石油引き取りは、今日に至るまで、あるいはことしの六月までは順調に各社ともそれぞれ引き取っております。自由化になった場合にどうか、こういう御質問でございますが、業界全体のムードといたしましては、でき得る限り引き取らねばならぬという考え方を持っておるわけでありますが、今御指摘のように、アラビア石油もやはりプライベート・カンパニーと申しますか、私設の普通の株式会社ではないか、ですから外国会社と差別をする理由は別に何もないじゃないか。アラビア石油をなるべく使おうということについては、十分善意ある考慮を払う、基本的にそういう考え方は今日に至ってもある、かように考えてよろしいと思っております。ただ引き取ります量でございますが、たとえば今大体月間十四万キロリットルないし十五万キロリットル程度でありますが、これが七月は三十万、八月は四十万、九月は五十万、十月以降八十万というようなことに相なって参りますと、年問いわゆる一千万キロリットルベースになります。その場合に最大限どの程度引き取り得るかという問題がおのずから出てくる、かように考えております。業界全体として最大限どれだけ引き取れるかという線は、まだ出ておりません。品質上の問題もございますので、この点については目下検討中であります。しかし、できるだけ引き取ろうというムードにはなっておるのでありますが、御指摘のような点はなきにしもあらず、今後問題の起こる可能性はあるということでございます。
  16. 佐久洋

    佐久参考人 石炭生産量の最低量というものは、絶対的な単一的なものはないと思います。ただ与えられたいろいろな条件によって最低線というものがおそらくきまってくるだろうと思います。現在の状況価格条件、あるいは一番大きく支配されるのは炭鉱の整理によって生ずるいろいろの社会問題、こういうものをどこまで処理できるかということによって、最低線というものはおのずから変わろうかと思いますが、私どもは現在の五千五百万トンというものが最低線というふうに一応考えております。  それから産炭地の製油所の問題でありますが、これは確かに九州でも現にその計画があるやに聞いております。また、北海道でもそういう計画をしておるというふうなうわさも聞きますけれども、産炭地において油の消費がどんどんふえていくということは、九州と北海道が産地でありますから、それだけ打撃が非常に大きいわけでありますが、今石炭計画がしておる価格条件からいえば、それが円滑に計画通り進めば、大体競争ができるのではないかというふうに考えております。
  17. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 齋藤憲三君。
  18. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 石油界のエキスパートがおいでになりましたから、参考のために一つ簡単にお伺いをいたしておきたいと思います。ただいま御陳述を承りましたお三方は、相異なった立場においていろいろ御意見の御開陳をされたのでありますが、南部参考人の結論は、統制をやる意味における法律でない限り、時限法程度ならばやむを得ないというようなお考えのように承ったのであります。また三村参考人の御開陳は、大いにやってもらわなければいかぬ、これでも弱い、特に国内石油資源の保護育成及び民族石油の将来に対しては大いに行政指導を強化していく、あるいは将来においては買取機関の強力な設備等をやって、あくまでも国内石油資源及び民族石油資源の保護育成をやってもらいたい。また佐久参考人の御意見は、石炭というものを総合エネルギー立場において将来立ち行くようにやってもらいたい。そういう意味においては石油業法は当然あってしかるべきだ、こういう御意見のように承ったのでございますが、これはおのおのの立場において当然の御意見だと思います。ただ、立法措置としては、これら相異なった御意見一つ法律にしぼって効果あらしめようというのでありますから、法律といたしましては、きわめてむずかしい作業であると思うのであります。通産当局もずいぶんこれに対しては頭を悩ませてこの法律案を作ったんだろうと思うのでございますが、自主統制でいけるならば最も望ましい形であるということは、私も自由主義経済の今日において肯定するのであります。ただし貿易自由化に対処いたしまして、昭和三十六年度四千万キロリットル、あるいは十年後には一億にも達せんとする膨大なエネルギー源、しかもその九〇数が輸入に待たなければならないというような状態において、政府といたしましては、何らかの処置を講じなければならないという立場において、この石油業法を立案したんだということはお認め願えると思うのでありますが、通産当局も、絶対官僚統制をやらない、こういうことを言明しておりますので、私たちもそれを信じておるわけであります。同時に、この法律は、御承知の通り、罰則規定がきわめてルーズでありまして、これを犯しても別段大した罰則があるというわけではありませんので、こういう法律案はこの国会において審議をして、いろいろ意見は出ましょうけれども、結局通過するといたしましても、私といたしましては、やはり業界の自主規制というものが根本となって、この法律というものが運行されなければならないんだ、またその自主規制を行なうだけの石油業界における良識というものはりっぱに存在する、こういうふうに私は考えておるのでございます。  南部参考人にお伺いいたしたいのでありますけれども、このいわゆるざる法を作っても、これは一体何にも効果がないんだというふうにお考えになりますか。それともやはりこういう行政指導を加味したところのよりどころがあれば、石油業界としては、自主的に大いに日本の産業及び将来の繁栄というものに思いをいたして、りっぱに、市場混乱を来たすことなくやり得るという御自信をお持ちになっておりますか。そういう点に対して一つ御高見を拝聴いたしたいと思います。
  19. 南部政二

    南部参考人 ただいまの齋藤先生の御質問にお答え申し上げます。この法律はきわめてゆるやかなる法律であるが、お前はこの法律の運行にあたって、業界の自主的なる規律、自主的なる秩序確立を期する自信ありや、こういう御質問と存じ上げるのであります。はなはだ微力でございまして、自主的な秩序確立に自信があれば、二の法律はおそらく役所でもお考えにならなかったことを、かよう考えておるので、その点まことに遺憾にたえないのでございますが、今齋藤先生、上げたり下げたりで、だいぶ閉口するのでありますが、業界が、先ほど申し上げましたように、昭和九年以来、石油業法あるいはそれに引き続く価格統制、配給統制、あるいは一部専売を行なわれたこともあるのであります。その後昭和二十年から二十五年、五年間のブランクは、おそらく輸入原油を処理する工場は、占領軍としては許可せざる方針ではなかろうかと私ども思っておったのでございますが、これが国際環境の変化に伴って、二十五年に許可せられ、その当時の状況から見ますと、原油の長期安定確保ということが今日の状況と全く異なった面があったわけでございます。長期安定したる原油の確保をまず第一に経営者としては考えなければならないという状況で発足したわけであります。今日は世界的な原油の過剰でございます。しかも日本の経済成長は、御存じのごとく、目まぐるしいほど、また世界が驚嘆するほどの経済成長を示しておる。その精製能力において、自由陣営においては、アメリカに次ぐというような膨大な石油精製設備を現に保有しておる。しかも日本の経済は将来信頼するに足りるということでありますので、日本は各石油産業国から絶好の市場であるということで、目下買い手市場に相なっておるわけでございます。従いまして、製品の販売におきましても、相当苛烈なる競争を現に行なっておるのであります。私どもはでき得る限りこの法律のワク内において、かつ自由化に突入するにあたりまして、何らかの法的規制を必要とするということには、私ども異存はないのであります。この法律のワク内におきまして、でき得べくんば、それぞれその分によって自主規制をでき得るような規律が今後できまするように、十分の努力を、微力でございますがしていきたい。そうでないと、この法律運用はまことに困難な状態になり、また最も私どもいやだと思われます官僚統制に動かざるを得なくなるのではないか、かように考えておるわけであります。この点については、将来にわたりまして、微力でございますが、業界人としては、その責任の重大さを痛感いたしまして、十分の努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  20. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 だれが読んでみましても、この石油業法で市場の撹乱を防止したり、あるいは過当競争を防止して、整然たる石油業界の姿を現出しようとするには力が足りないので、もっとやるならば、徹底した統制を意味したところの法律を作るということになれば、業界の一番きらいな統制に移行していく、そこに私は業界の自主的な態度を強く要望するのであります。一つ石油連盟の重鎮におられる南部参考人におかれましては、十分その点を留意して今後善処されんことを私からもお願いしたいと思いますけれども、とにかくこの石油エネルギー的価値というものは、日本においてはもうすでにオールマイティであります。そこで一つ参考のために伺っておきたいのは、これはとにかく売れるときにはどんどん売るが、しかし、一朝事あるときにぴたっととまってしまったら、日本の産業というものはそれでお手上げであり生ます。いかに外油が安く入ってきて、日本の産業を育成しつつあるといっても、いつか支障がきて油が入らなくなってしまうと、日本の産業はお手上げになるということは、ナショナル・セキュリティという立場から見ますと、一まつの不安がどうしても残るわけであります。そこで私の考え方といたしましては、そのランニング・オイルは別といたしまして、今日の事態において何らかの善後措置を講じ得る期間、二月ないし三月というものは、いかなる支障がきても、日本の産業エネルギーとして石油は事欠かないという態勢に持っていくということが、国家の施策として、また業界一つの責任と言っては語弊がありますけれども日本に対する務めとして、ここに備蓄というものをやる必要があるのではないか。ただ売れるからどんどん売っていくのだ、それで工合が悪かったらさっととめるのだ、とめられた日本というものは一体どうなるかというと、みんな産業が麻痺してしまうというようなことでは、ほんとうの日本の堅固なエネルギー対策というものの確立はないということになるのです。こういう点に対して、大きな備蓄政策というものをやらなければならぬのじゃないかというふうに考えるのでありますが、この点に関しましては、南部参考人はどうお考えになりますか。
  21. 南部政二

    南部参考人 石油供給を安定せしめるために備蓄が必要と思うかどうかという御質問と思うのであります。現在のところ、製品としておおむね一カ月分、原油といたしましてランニング・ストック約一カ月分程度のものは、これは通常の経営において保有いたしておるわけでありまして、このほかに有事の際の備蓄ということに相なりますと、戦前行なわれました石油業法は、各石油会社が、その精製工場において精製する原油の六カ月分の貯油の義務を課しておったのであります。その貯油の義務に対しては、その貯油施設の建設費、償却並びに原油貯蔵に対する経費負担というような点は、国家が補助をして行なわせておったわけでございます。当時の状況と今日の状況と異なりまして、今日におきましては、おおむね一カ月分と申しましても、四百万キロリットル近いわけであります。これを貯蔵するということになりますと、大体四百万キロといたしますと、五万トンのタンクの八〇%を働かすといたしまして百基必要とするというようなことになりまして、最近の消防法の規定によりますと、防油堤その他敷地面積の規制等ありまして、五万トンのタンクですと、一基についておおむね五千坪ないし六千坪の敷地を必要とする。そこへ一基建てるというようなことでございますので、相当膨大なる敷地と膨大なる建設費を必要とする。百万キロといたしましておおむね三百億近い経費を必要とするのではなかろうか、かように思うのであります。しかしながらこの件に関しましては、ヨーロッパ諸国においても、最近パイプラインが相当発達しておるヨーロッパにおきましても、多少の備蓄を必要とするではないかという論議が目下戦わされておるやに聞いておるわけであります。この備蓄問題につきましては、私どもといたしましては、現在のようなボタン戦争の状態に相なっておるときに、そう手間ひまの要るような輸送せられる状態はもうない。なおその他に供給支障を生ずるおそれありということになりますと、これはもう自由主義国家群に日本がおります限り、自由主義国家相互の国家間の信頼の問題でありますので、ちょっとその辺のところは――たとえばスエズ運河の問題が起きましたときに、やはり自由主義国家群はベネズエラの増産を行なって、中東の原油がヨーロッパに供給できない場合は、ベネズエラから供給するという非常態勢を英米はとっておるわけでございまして、当時日本としても万一のことを予想して、英米に対してはおそらく政府は、万一の場合は配分計画の中へ日本も忘れないで入れろということを話されたことと、私当時のことを想起しておるわけでございます。そのことで一つ、あるいは備蓄を必要とするといたしましても、せいぜい百万トンとか二百万トンとかいうようなところではなかろうか。敷地の問題その他からいたしましてもきわめて困難な問題だと思うのであります。〔田中(武)委員「議事進行」と呼ぶ〕
  22. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ちょっとお待ち下さい。委員諸君にお願いをいたしますが、時間に制約がございますので、一問一答形式でなく、質疑事項をまとめて発言下さるように御協力をお願いいたしたいと思います。
  23. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私の言わんとするのはそれだったのです。それに参考人の方から意見を聞くのが目的なんで、こちらが演説をぶつべきではない。従って、まとめて参考人の方に聞きたいことを言ってしまって、そして参考意見を聞く、一発主義でいってもらいたい。そうでなかったら、こんな一問一答の形式でやっておったら、今晩夜中までかかります。参考人の方にも御迷惑をかけますし、二時から本会議ですから、そのようにお願いしたいと思います。
  24. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 簡単に願います。
  25. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 それではまとめて一つ御質問申し上げます。  ただいまの備蓄の問題は御意見として承っておきます。  もう一つ南部参考人にお伺いいたしたいのは、外油の引取契約であります。これは外資導入によって製油会社を作りますというと、その裏には外油の引取契約がある。これを、今後製油工場を拡張していくために外資導入してきたときに、この引取契約というものを従来通りやらないで、今後広がっていくところの取引の二〇%、三〇%というものだけを外油に割り当て、あとはフリーな契約に持っていくということができるかどうかということです。  それから、次に三村参考人にお伺いいたしますが、なるほど国内石油資源の保護育成というものは、われわれも年来の念願としてやってきたわけでありますが、今日のように貿易自由化が行なわれて、そうして外油がどんどん入ってくる。国内石油というものはパーセンテージにしてわずか一%か二%、悪い言葉で言うと、あってもなくてもいいじゃないかという議論さえあるわけなんですが、この際今までの石油資源開発会社の業務のあり方を徹底的に変えてそして探鉱専門の国策会社に切り変えていく。そうして財政投融資でなくて、政府出資によってあらゆる有望地点にボーリングをやって、そして出てきたならば全部これを埋蔵せしめておいて、いわゆる国内におけるところの石油埋蔵量を的確に調査をしていくという業態に変えていって、そうして一朝何か支障があった場合に一挙にして採油の方向に変えていくということが、私は将来日本国内石油資源というものを有効適切に使う方法としては、一つの方法ではないかと考えておりますが、それに対して一体どういうふうにお考えになっておりますか。もちろんこの問題と並行いたしまして、天然ガスの埋蔵調査ということも、申し上げるまでもなく同列であります。  最後に佐久参考人にお伺いいたしたいと思うのでございますが、日本石炭のあり方、これは何と申しましても、石炭というものは、日本においては非常に大きなエネルギー源であろうということには間違いないと思うのであります。それは二百億トンの埋蔵量があるというのでありますから、日本の資源という立場から申しますと、総合エネルギー立場においては、石炭というものは依然として大きなウエートを持っておると思うのであります。そこで、これは一つのお考えを伺うのでございますが、この石炭対策に関する抜本的な方法といたしましては、今五千五百万トンの量と千二百円のコスト・ダウンというものが考えられ、そして石炭の合理化が行なわれておる。もちろんこの五千五百万トンの量と千二百円のコスト・ダウンということは、これはさまったことでございますからやる。石炭の合理化もやる。しかし二百億トンの石炭というものは、まだまだ探鉱すべきところのものがたくさんあると私は思うのであります。そこで石油資源開発会社と同じように、探鉱を国家の力でやるような特殊会社を作って、新しいりっぱな近代的な炭鉱として育成のできるような山をどんどん見つけて、そしてこの作業には合理化によって余ったところの労力を使っていく、そしていつか石油というものが支障を来たしたときに、また新しい石炭の消費の道が見つかったときに、これを開発していくということが、私は石炭を抜本的に将来性を持たせる一つの考え方じゃないか、さように思っておるのでありますが、これらに対して簡単でよろしゅうございますから、御所見を承りたいと思います。
  26. 南部政二

    南部参考人 外資を導入する場合等を含めまして、外国からの原油輸入契約の場合、義務として、契約条項として入れるパーセンテージを制限できないかという御質問と承りました。外資を導入する際、その他を含めまして、外国から原油を買う場合――御存じ通り日本は九八%、九九%まで外国から輸入いたさなければならないものでございますが、その原油購入契約の一条項として金銭の長期貸借が伴っておるということでございます。これは私契約上の問題でございますので、私企業としては全体の利害判断に立ってやることでありますが、これを何パーセントにということは、経営者としては総合判断の上から考えるよりいたし方がない。ただ国としてこれに対してどう考えるかということは、おのずから別問題である、かように私は考えておる次第でございます。
  27. 三村起一

    三村参考人 ただいま齋藤先生から、調査探鉱の方に改組したらどうかということでございます。これはそういう議論もあるし、またわれわれも考えました。大体石油資源開発会社ができたときに調査探鉱を主にするものだと思っておりまするし、私たちも現在でも調査探鉱を主にして、そうして国内の隠れたところの地下資源を開発するということが主であると思っております。しかしながら探鉱公社みたいなものになってしまって、掘ったものはそのまま閉めておくのだ、ガスも閉めておくのだということを考えた場合に、一番問題は、全国にわたって調査探鉱をやるということが大事であると思うのです。ところが全国にわたって調査探鉱をするといえば、鉱業権の問題がはたしてどうであるか、これは大へんなことだろうと思います。今でも調査探鉱をしようと思っていくと、すぐにそこになわ張りを張ってしまって鉱業権を設定してしまう。まだわれわれがやらぬうちから鉱業権を設定するから、われわれは極秘のうちに地震探鉱なり基礎調査なりをやっていくということになっておりますが、こういうことについて鉱業権を全部買い取ってしまうとかということでもなれば、これは大へん莫大な金がかかるのではなかろうかと思っておりますが、その資金源はどうするか。現在でも調査探鉱費は微々たるものであります。われわれはこの第二次五カ年計画で百十九億円の調査探鉱費を要望しております。第二次計画として通産省でお作りになりました省議決定でもそうなっておりまするが、しかしながら第一年度においてわずかに政府出資は四億円にすぎません。来年度はどうであろうか、おそらくその前後でございましょう。そうすると百十億ぐらいの金というものは、われわれ会社でみずから作らなくてはならない。それは何かというと、要するに売った金でやれということである。こういうふうな状態になっておる現状から見て、調査探鉱費として政府が全国にわたっての鉱区を自由に掘ってよろしい、自由に調べてよろしい、そうして、できたらば、そこに鉱床があるならばそれを掘ってよろしいということにするならば、これは資金面が大へんなことだろうと思いますが、その点がどうだろうか。私よくわかりませんが、齋藤先生は最もお詳しいと思いますので、その辺はかえってお伺いしたいと思うくらいでございます。  それともう一つは、発見したものはそれを掘って出すというところに情熱がわいてくるのであって、発見したがそれをほおっておけというと、台所で年中奥さんは働いておるが、うまいものは主人公が食うということになるとおかしなものでして、やはりそういうふうなことがありますから、発見したならばそれを自分が売るのだというところに情熱もわいてくるのではないかと思うので、そういう人間の機微な気持もありまするし、ですからその辺のところは理屈ばかりでもいきかねると思っております。しかし、あくまで調査探鉱に主力を置くという点はきわめて御同感でございます。しかしながら、それを実行する上においては非常な困難があるだろうと思いますので、われわれは抜本的なことはむしろほかに方法ができてから考えていい。ではなかろうかと思っております。従って私は、その買取機関のようなものをまず第一に考えていただきたいということをつけ加えてお願いを申し上げる次第でございます。
  28. 佐久洋

    佐久参考人 石炭について、国が出資をした特殊会社探鉱をするというような、そういう規模の大きな形では現在探鉱をやっておりませんが、新しい炭田地区のボーリング調査というものは、政府の年々の予算で現在でもやっております。ボーリングというのは、数量と同時に炭質の調査も入っておるわけでございます。ただ、今すぐにそういう地点に開発の手が伸びるかというと、立地条件がいずれもだいぶ悪い関係で、探鉱会社も手をつけないという地域でございますので、開発そのものはやはり将来の問題だと思います。
  29. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 もう一つ、御議論を申し上げるわけではございませんが、誤解があるといけませんので一言だけ申し上げておきたいと思います。私の申し上げました探鉱を主としてということは、これは私がドイツに参りましたときに、ドイツは全部国内石油資源探鉱して、みんな伏せてある。そうして大体全国の調査が終わったときに計画生産をやっておる。でありますから、もちろん掘ってたくさん出てきて時価で十分間に合うものは自由に売ってもいい、間に合わないやつをわざわざ損して売ることも私はいかがかど思う。そこで私が申し上げたのは、核燃料物質の探鉱臨時措置法があるように、石油埋蔵調査臨時措置法というようなものを作って、鉱区の所有が何人てかかわらず、国家の力で埋蔵量の調査をしていく。そうすると、日本の地下に埋蔵しておるところの石油が全部わかるから、計画生産ができるんじゃないか、そういう意味におけるところの考え方は、将来の国内石油を保存する意味においてどんなものであろうかという御質問を申し上げたわけであります。
  30. 三村起一

    三村参考人 よくわかりました。非常にエキスパートの先生のお話でございます。十分にまた考えさせていただきたいと思いますが、先ほど申し上げたような次第でございますので、さしあたりすぐに私の方はこれをどうというわけにはいかないと思う。よく一つ慎重に考えさせていただきたいと思います。
  31. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 田中武夫君。
  32. 田中武夫

    ○田中(武)委員 さっきの発言に従いまして再質問はいたしません。従って簡単に要領よくお答え願いたいと思います。  まず南部参考人にお伺いいたします。あなたの御意見は、個々の企業活動規制せずにほうっておいてくれ、こういうことがその土台であったようであります。そこで、現在の石油業界のあり方、すなわち国際資本にあまりにもたより過ぎておる、日本が自由に選択し得るものは、大体一五ないし二〇%くらいである、あとは全部外国のシェアがついておる、こういう状態の現在の石油業界のあり方についてどう考えておるかという点が一点。  もう一点は、先ほど板川君も問題にいたしましたが、十五条、これは標準価格の問題でありますが、これは、あなたは暴騰したり下落したりと言っておりますが、法律の解釈は若干違います。それはそれといたしまして、この法律がもしできたとして、販売価格の標準額が指示せられた場合は、どういうように業界としてやっていかれようとしておるか、それをお伺いいたしたい。というのは、著しく「下落するおそれがある場合」ということにかかるわけですが、これは不況カルテルの問題と関連をしますのでお伺いをしておきたいと思うわけであります。  それからさらに、先ほどの齋藤委員の質問に対する答弁、いわゆる外資導入に対する長期引き取り契約、購入契約についてのあなたの意見と私の意見は違います。しかし、これはここで論議をいたしません。あなたの御意見は独禁法から見ておかしいと思いますが、それは議論はいたしません。  次に三村参考人にお伺いいたします。あなたは、先ほど鉱業連盟傘下の四社いずれも製油所を持たないと言われる。現実はそうでございますが、将来製油所を持つというような計画があるのかどうか。それは、たとえば石油資源開発株式会社法律によって業務の範囲がきまっておる。従って、第七条の業務の範囲をどう解釈するかということになるのだが、これは製油を含まない、こういうことで、できない、あるいはまたアラビア石油はサウジアラビアとの利権協定の五条、この一貫操業という問題からこれは持たない方がいいのだ、こういうような考え方の上に立っておられるのか、それとも、この四社の中では将来製油所を作ろうというお考えがあるのかどうか、それをお伺いいたします。  佐久さんに対しましては、あなたがおっしゃったように、この法律石油だけを考えて、石炭対策というものを考えずにやっておる、そういうことは事実でございます。しかし、政府は三条三項において、他のエネルギー源とあわせて供給計画を立てることによって石炭を考えるのだ、こういっておりますが、これは考えられていないことは、あなたのおっしゃる通りであります。そこで現在本院におきましても、当面の問題として石炭対策特別委員会を設けて石炭の問題をやっておるのであります。しかし、石炭石炭だけで解決するものでないと思います。従いまして、総合エネルギー政策、この上に立って業法をながめたところの意見を聞きたい、このように思うわけであります。
  33. 南部政二

    南部参考人 田中先生の御質問はフリー・ハンドが全原油輸入総数の二〇%程度くらいしかないではないか、それに対してお前はどう考えるか、こういうことと了承いたします。フリー・ハンドは今日のごとき買手市場に相なっております状況下においては、なるべくフリー・ハンドの方が望ましい。ただし原油供給の長期安定という観点からいたしますならば、コンペティティブ・プライスで、競争価格であるならば、私はあえて非難するにあたらない。特に先刻申し上げましたように、建設資金関係もございまするので、建設資金を得るがためにローンをする、ローンの一条項として原油を買うということで、その価格が不当である場合は、これは私はいかぬと思うのであります。まあ通常の商業ベース価格であるならば、これもまたいたし方がないが、しかし、買手市場であります今日、なるべくフリー・ハンドが多いことが望ましい、かように考えております。  次の第十五条の公示価格でございますが、公示価格政府が示した場合に業界はそれをどう受け取るか、こういうことでございます。私はでき得る限り、公示価格が出た場合においては業界はそれに従うように、それを尊重するように業界の態勢を作りたい、かように考えております。公示価格の出た場合においてもなおかつ不当の競争を行なわないように自粛いたしたい、かように考えております。
  34. 田中武夫

    ○田中(武)委員 それのやり方によっては、不況カルテルの関係はどうですか。
  35. 南部政二

    南部参考人 これは独禁法との関係は私よくわかりませんが……。
  36. 三村起一

    三村参考人 ただいま田中先生の御質問でございますが、連盟としては製油所を持つという考えは今ございません。それから石油資源開発会社としては法律に急速かつ計画的に国内の資源を開発ということでありますので、今お話の通り、あそこの事業の中には製油所を持つということはございません。またあくまで調査探鉱に主力を置く、そうして国内の地下資源の開発ということでありますので、わが社としては皆様方なり政府なりがまた法律案をお出しになって改正されるとなれば別ですけれども、われわれの方として今そういう考えはありませんです。  それからまた同時に先ほど申し上げました通り自由世界において第二位の製油施設を持っているという日本であまりよけいな金を使わぬようにするのがほんとうじゃないかと思っておりますので、二重投資にならぬようにできるだけお互いにもっと調整していかれる必要があるだろうと思っておりますが、増産するに従ってやむを得ぬということはありましょうけれども、われわれとしては今のところそういうことは考えておりません。アラビア石油としましては、これは私もよく知りませんけれども製油所を持ちたいという気持を聞いております。大阪と静岡に製油所を持ちたい。しかしそれはあくまで別会社にするというふうに聞いております。
  37. 佐久洋

    佐久参考人 石炭政策が一応合理化計画で定まったことは御承知でありますが、今までは年々の外貨の割当をやる際に、その年の総エネルギー需要額がこのくらい、その中で石炭生産がこのくらい、油の輸入がこのくらい、それに基づいて外貨を割り当てる、こういう方法で一つの全体の計画というものが立ったわけでございます。ところがこれが自由化されますと、その方法が立たなくなる。この石油業法自体は石炭対策でないということを説明されておりますが、私もそう思いますが、それの法律ができる効果、この点はやはり石炭立場から見て相当私は重大だと思います。従いまして、年々の石油精製計画とか、あるいは輸入計画というものがどういうふうに定められるかということは国内石炭の消費がどこまで確保されるかということと大きな関係がありますので、そういう石油計画をきめる際には、やはり総合エネルギーの見地に立って既定の石炭が侵害されないような、数量的に侵害されないような計画を立てていただきた  い、こういうふうに思います。  それから同時に価格の問題も、石炭の場合には消費者が今千二百円下げるということで一応大口の消費者は了承いただいておりますけれども石油がむちゃくちゃに下がるということになりますと、その一応の了承さえ私はくずれるおそれなきにしもあらず、こういうふうに思いますので、価格もある合理的なところで石油価格がきまっていくということが望ましい、こういうように考えております。
  38. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 久保田豊君。
  39. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間がありませんから、四点だけをお伺いいたしたいと思います。  南部さんに第一にお伺いいたしたいのは、国民全体の経済の観点から見て、各産業ともに原材料を入れると同時に、やはりその製品なりなんなりの輸出というものを考えて、産業ごとの輸出入のバランスを確保するという観点がなければ、これからの日本の経済、特に外貨が非常に窮屈になった際では、私は非常に困難だと思うのであります。もちろん原油というものはほかの原材料とは性格が違いますから、すぐそのままというわけには参らぬと思います。そういう観点から見て、自由化にせよ、この法律ができる場合にいたしましても、私は、業界としては、その観点からの発言はほとんど今日のところは考慮がないように思いますが、少なくとも外貨の節約なり、あるいはエネルギー、特に原油輸入に見合った――これは輸出を直接であれ、あるいは二次製品であれ、三次製品であれ、あるいはそれをエネルギー源としたものの製品であれ、何かの点を考えていくことが、国民全体の経済の点からいって、一番基本の考え方の土台にならなければならぬ、利はこう思うのであります。この点についてはどう考えられるかということが一点。  それから第二点は、日本石油資本として考えた場合には、この程度の、この法案に考えて規制されておる程度運用というものは、日本石油産業それ自体から見てもぜひ必要だ、自主性を確保する上に必要だ、この程度規制がなければ日本自体の石油資本の自主性というものが遠からずほとんど外国資本に全部やられてしまう。もう入体外国の一〇〇%の会社はもちろんでありますが、フィフティ・フィフティの会社にしてもそうであります。そうでない会社にしましても、ローンがどんどん来る。それからひもつきが出てくる。それからどんどん施設をしていかなければならぬ。その施設の金はほとんど外国資本によらざるを得ない、しかもその裏にはひもつきが来る、こういう場合に、日本石油資本家としては、どういう心がまえで政府と一体になってやるか、もちろん不必要な官僚統制はいけません。いけないが、少なくともその点については国家の意思と結びついて、私は米英系を中心とする外国石油カルテルを防衛していくことの基本の観点がないことには、この運用も私はうまくいかないと思う。要するに外国資本の各社の重油が、そういっては失礼ですが、外国資本のエージェントみたいな格好でものを考える、ものを言うようになったら、こういう法律があったって、これはうまくいかないと思います。この点はどういうふうにお考えになりますか、この点が一一点。  第三点は、これは過渡的な問題でもあり、長期的な問題でもありましょうが、アラビア石油なり、あるいはスマトラ石油なり、こういうふうなものが現在のところでは製油の施設がないわけであります。販売の施設もシステムもないわけであります。国内原油につきましては、コストが合わぬという問題もありましょうが、これらのアラビア石油なりなんなりをいわゆる石油業界各社が引き受けない、つまり製精を引受けない、引き取らないという基本の原因はどこにあるか。設備がもう受け付けるだけの能力がなくなっておる、あるいは比較的高いから引き取れないのか、あるいはバックになっておる外国資本のいわゆる競争上からそうなるのか、ここらの点の御事情はどうなのかという点、そうしてそれをどう改良したら、あるいは国の力なり、各社の努力によって改善したならば、スムズーにこれは引き取れるかという点についてのお考えがありましたら、それをお漏らしをいただきたい。  それから三村さんにお伺いいたしたいのは、国内原油については、これはさっきもお話がありましたように、非常にコストが高いから、国家の特別の援助がなければだめだということになりましょうが、これの原油引き取りの国策会社みたいなものを作り、国内のものはごくわずかでありますが、あるいはアラビア石油なりスマトラ石油なりソ連油なり、こういうものを引き取る会社ができた場合に、その運用をどういうふうにやるか、もっと具体的に言えば、割高なものについての損失というものを国家の負担で、国家機関で調整するということが根本のねらいなのか、あるいはどうなのか。業界のねらうところは、どこがこの買取機関に対するねらいなのか。これは国内原油についてかりに買取機関ができても、特殊な処置を講じなければ、これはすぐにはアラビア石油なりあるいはスマトラ石油と同じ立場で買取機関に対して関係をすることはできない、こう思います。この点は別といたしまして、国家的な買取機関ができた場合に、それは何をねらいにしてそういうことをするのか。価格面での調整を期待しておるのか、あるいは価格面の調整は、一般の市況において、あるいはこれも非常に弱いようですが、公示価格なり何なりによってやりながら、そこで出てくる生産会社のマイナスを国家的な責任においてカバーをしていくという立場でいくのか、どっちかということをお伺いいたしたい、こう思います。
  40. 南部政二

    南部参考人 久保田先生の御質問の第一点は、いかなる産業も、原材料を輸入したら、今度は輸出に努力すべきである、外貨の面からいって当然ではないか、こういうことでございます。石油製品、これは宿命でございまして、日本国内産品の全所要量に占めるパーセンテージが非常に低い、資源が貧困である、これも宿命的で、ほとんど輸入しなければならぬ。その輸入したものを製品にして輸出したらどうかということで、これは私どもでき得る限り輸出に努めております。これは輸出も、卑近な例をとりますと、外国船舶日本の港湾において燃料を補給する、これなども輸出の一つの形態でございます。なお在日米軍その他の用に供するものを輸出いたしますとか、あるいはアメリカの石油製品の消費構成と申しますか、ガソリンが非常に多くて重油の場合は非常に少ないのでございますが、日本と逆なものですから、なるべく北スマトラ等で取りました軽いような部分をアメリカへ売るというようなこと、これについては、それぞれ各社の間で努力をいたしております。ただ、悲しいかな、これまで製油所がありません。たとえばフィリピンでありますとか、あるいはマレーでありますとか、その近所隣りへ目下どんどん石油施設を建設せられつつある状況でありますので、石油製品の第三国への輸出はきわめて困難と申し上げるよりいたし方がない、かように考えております。  次は、一体石油会社はみんな外国の出店みたいになって、自主性がなくて困るじゃないか、こういう御意見であります。今日、先ほどから繰り返し申し上げますように、買手市場になっております。今日日本は最も魅惑的な市場でございますので、非常に有利な立場に立っておりますので、でき得る限り自主性を持たなければならぬ。かつ外国から金を借りましても、直ちに主体性を失うというようなことはないようにいたしたい、かように考えておるわけでございまして、でき得る限りローンその他につきまして、先ほどから申し上げたような事情もございますが、御説のように自主性を尊重しなければならぬので、むしろ石油に関する国の一貫した政策が、今から考えますとわれわれも責任がございますが、おそきに失した感がなきにしもあらず、かように考えられるわけでございますが、一つ御了承願いたいわけであります。かつこの自主性を持つがためには、今後膨大なる設備費を必要といたしますので、先ほど陳述申し上げましたように、設備資金等について国家から格別の御高配をいただければ、自主性確立に寄与するところきわめて大きい、かように考えておりますので、また先生方の御高配をお願いいたしたい、かように存じます。  アラビア石油、スマトラ石油引き取りを、お前らさっさと引き取ったらよさそうなものだ、こういうことでございます。この引き取らない原因があるのかということでございますが、今日まではスマトラ石油につきましては、私ども石油業者がそれぞれ出資者、株主でございますので、これはかく申し上げると三村さんにどうかと思いますが、北スマトラ油田は、御承知の通り、八十万キロをこえて増産せられた部分の四〇%が入るわけでございます。従いまして、この輸入数量は、かりに二百万キロ出るようになりますと、八十万キロ引いた百二十万キロの四〇%でございますので、大体五十万キロ程度のものでございます。これは数量的にも大した問題もございませんし、私どもも出資者として考えなければなりません。  アラビア石油でございますが、これは先ほど御指摘になりましたように、ひもつきその他があるのではないか――この点も確かにあるわけでございますが、もう一点お考え願いたいのは、これは相当に硫黄分が多いのでございます。大体一七、八%ガソリンを取りますと、残りは全部重油に相なります。その重油の硫黄分の含有率は相当高いので、これは発電用には、現在の規格ではお使い願えない。何かはかのものと調合して、そして規格品を作らなければならないという技術上の問題が伴っているわけでございます。従って、一面からはフリー・ハンドがないということと一面からは品質上の問題がある。従って、出るだけすべて取れということになりますと、一千万トンでどんどん、消費にかまわず、出たものを全部引き取れということになりますと、そこであるいは何百万トン引き取り得るか、その辺がまだ業界全体としての趨勢がまとまっておりませんが、先刻申し上げましたように、できるだけ引き取ろうというムードができているわけでございます。今日まで大体百五、六十万キロを、無難に、トラブルなく引き取っている現状でございます。ただ月間五十万キロ、七十万キロという数字になりますと、相当数量でございますので、多少その辺に引き取り得る限度が出てくるであろう、かように考えているわけでございます。御了承願いたいと思います。
  41. 三村起一

    三村参考人 私からお答え申し上げます。  買取機関の運用のことでございますが、第一の問題は引き取りの問題であります。これは北スマトラは今のように量が少ないし、国内においてこれを大体引き取ってもらえると思います。アラビア石油でございますが、実はああいう大量のもの、ことしは六百五十万トン、来年は一千万トンというのは、先ほど私が申し上げましたように、容易ではないだろう。そこでアラビア石油一つの商業会社である。従って、外資系から申しますと、同じベースに立って競争の相手方であるという点から、完全引き取りについては難色があるということでございます。完全引き取りというと語弊があるかもしれませんが、引き取りについては、そう楽ではない。そこでやはり国策的な会社からの話であれば、その点が大いに緩和されて、英米系の外油会社もまたやむを得ず引き取るであろう、こういう話でございますので、ワン・クッションを置くという意味において、買取会社を作った方がいいという点をわれわれ考えましたし、また石油連盟の方においても、そういうものについてはあえて強硬な反対はなし、むしろある程度御賛成であるように思います。そういう点から買取機関を作って、一応そこに引き取るというふうにして、それから売るということにしたい、そうして全量引き取るということにしたいと思っております。しかし、私は前もって申し上げたいと思いますが、この買取機関については、まだはなはだ不十分でございまして、内容については十分に考えておりません。そういうわけでございますから、ただそういう気持だけを申し上げておきたいと思います。  それから、その次に値段のことをお話しでございましたか、アラビア石油は高いから、あるいは北スマトラ石油は高くはないかという憶測が世間でありますけれど、北スマトラはFOBで二ドル十三セントでもってお渡ししておりますが、これも決して高くはなく、ああいう特殊の石油でありますので、それだけの値打がするわけでございます。またアラビア石油は一ドル三十セントでお出しになっておりますが、これもまた決して高くはございません。他国の同質の油と比べて高くはないのでございます。従って、価格の点においては決して差しつかえないと思っております。また国産石油は高かろうという点は、先ほど私も申し上げましたが高くはなくて、それは輸入石油にしわ寄せする意味において非常に困難を感じております。輸入石油が欧米に比べて安いから困っていますが、しかし、それについては、むろんみずからもやりますけれども一つこれから国家の御補助、御援助をお願いしたいというつもりでおるのでありまして、探鉱資金として百十九億の金は、その売り上げの一割ないし二割はみずから出してもよろしいが、残りは一つ政府の方でお考え願いたいという気持を持っておりますから、買取機関において一応買い取ってもらって、その点は補助していただきたいと思っておるわけであります。大体そういう次第でございます。
  42. 早稻田柳右エ門

  43. 中川俊思

    中川委員 もうすでに大半議論が出尽くしたようですが、私は議論するわけではございませんけれども南部さん及びほかの方々にちょっとお尋ねしてみたいと思います。  まず、この石油業法政府が立案をしなければならなくなった動機なんですが、これがどういうところにあるかといえば、年々増強していく流体エネルギーに対して業界が自主的な調整ができなかったということも一つの原因じゃないかと思います。同時にまた政府も、外貨なんか割当をしておりながら行政指導をやり得なかったという点にも大きな責任があると私は思うのです。しかし、まあそんなことを今さら責め合ってみたところでしようがない。  そこで、業界政府もどちらも相当反省すべき面がございますので、今後そういう点に大いに留意していただきたいのですが、この業法の十五条の公示価格の問題で、先ほど田中委員からの御質問に対して、南部さんから、政府から公示価格があった場合には、大いにそれを尊重するというお言葉があったわけです。むろん尊重していただかなければならないし、また尊重されるだろうと思うのですが、しかし、私はざっくばらんに申しますと、はたしてそういう場合に、業界として一糸乱れず政府の公示価格を尊重する態勢ができるかどうかということに非常な疑念を持つのです。それができるぐらいなら、今日までも自主調整ができたのではないだろうか、こういう点も私は一つの疑念を持つのですが、これは議論にわたるといけませんから、今日までのことについて私は別にとやかく言うわけではございませんが、もし南部さんがおっしゃったように公示価格の尊重は十分するということでありますならば、その場合にはどういう方法でなさろうとするのか。業界ではどういう連絡をおとりになり、どういう自主的な方法で公示価格を尊重しようとなさるのか。そういうときには、公示価格を尊重するとはだれも言う言葉なんですが、ただ、なかなか言いやすくして行ないがたい点じゃないかと思うのでございます。この点をもしお示しを願えればけっこうだと思います。  それから三村さんにお尋ねしたいのですが、先ほど齋藤委員その他の方からのお尋ねで探鉱費の非常に少ないことについてお話がございました。これは全くその通りで、私は昨日も通産大臣にこの点について少しいやみを言ったわけなんですけれども、金を出さずにおって、けつをたたいている形なんです。だから大いに金を出せ、探鉱費にこんなけちな金を出している国はもう世界にないんじゃないか。日本の産業の大御所である、産業を育成しなければならない総本山であるところの通産省が一体そんな態度でどうするのかというのです。フランスは四カ年計画でしたか、サワラ油田を発見するに至るまでに五十億の莫大な金を出した。日本の金にすれば一兆八千億もの探鉱費を出した。イタリアにしても、ドイツにしても、相当探鉱費を出しておるにかかわらず、今年の予算をごらんになりましても、探鉱費というので、これはたしか天然ガスだろうと思いますが、わずかに一億五千万円、ほんとうに鼻くそほどの金を出しておる。それでもって大いに国内の資源を開発してもらいたいなんて、ちゃんちゃらおかしい、言葉は悪いけれどもそういうようなことになるわけなんですが、そこで私はお願いしたいのですが、業界一つ声を大にして政府に迫っていただきたい。泣き言ばかり言っておられないで、政府に迫ってもらいたい。われわれも政府を鞭撻して、そういう金を出すように努力をいたしておるのでございますから、業界もいたずらに泣き言ばかり言われないで、そういう金をうんと出せということに積極的な御意見を発表を願いたいと思うのです。  それから買取機関ですが、先ほど南部さんのお話を聞いておりますと、たとえば百万キロリットルの石油を貯蔵しようと思えば、大へんなスペースも要するし、費用も要するということなんです。しかし、一カ月分くらいの備蓄をやろうと思えば、大体三百億ぐらいの金を要する。これは通産省当局もそう言っておる。そんな金は業界で出そうと思っても出せないのですから、政府が出せばいいのです。だから、そういうものは政府に出させるような方法を講じてもらわないと――備蓄しなくても今日は自由主義国家群でだいぶ交流しておるのだから、そんなことは必要ないとおっしゃるが、私はある程度の備蓄は必要じゃないかと思うのです。現にスエズの問題、これはヨーロッパの問題を先ほどお話しになったけれども、ヨーロッパはスエズに近いのです。日本はそうはいかないのですから、やはり距離もこのくらいあるのですから、ある程度の備蓄も必要じゃないか。備蓄するのに、その金まで出して、あなた方に備蓄をしなさいということは無理です。だから政府に、積極的にそういう金を出してやれというふうな意見を、これは民族資本系の会社外資系会社もございません、一体となってやっていただきたいということを私は強く要望したいのですが、三村さんは一体そういう問題について、どういう御意見でございますか。  それから佐久さんにお尋ねいたしますけれども石炭業界は五千五百万トンということをまるで金科玉条としておられるように私は思う。しかも石炭業界では、自分石炭というものをみずから斜陽産業と卑下していらっしゃる。これは一体何ごとですか、斜陽産業とは。今日まで石炭わが国の産業、経済の発展に尽くした功績というものは非常に大きい。同時に、この石炭を育成してこそ、私は日本の産業は今後の発展の過程をたどるにおいて非常な貢献をする道だと思うのですけれども、これは先般来石炭産業特別委員会へ出てこられたあなたの方の会長さんにしても、それから原君にしても、斜陽産業でございますと泣き言ばかり言っている。これは石炭をもう一千万トン使ってもらいたい、さらに将来、エネルギー需要が急ピッチで伸びておるのだから、その伸びておるのを石油だけにまかせないで、もっと石炭を使ってくれという運動をなぜなさらないのか。一千万トン使いますと、外貨にして約一億ドル以上の節約になるのじゃないかと思うのです。さらに離職者七十七、八万人の救済になるのじゃないかと思う。いずれの点から申しましても、国策に沿う結果になる。そういう積極的な運動をどうも石炭協会もしていらっしゃらないのじゃないか、これは私の間違いかもしれませんが、私はそう思います。ですから、もっと石炭を使わせるように政府に積極的な――今炭労がたくさん来ておりますけれども、あの連中に石炭をうんと使えという政策転換、そういう運動も中にはやっておられるだろうと思いますけれども、どうも熱がない。賃上げばかりやっている。君は賃上げばかりやっておるじゃないかと、この間、原君に言ったのでございますが、そういう石炭の将来について佐久さんは一体どういうお考えをお持ちでございますか。
  44. 南部政二

    南部参考人 中川先生の御質問にお答え申し上げます。  これは釈迦に説法みたいでございますので、一つ衷情をお察し願いたいと申し上げたいのですが、田中先生の御質問に、十五条の標準価格業界は尊重いたしたい、そんなおざなりな返事ではだめで、石油業界はなかなかまとまらないのじゃないか、いかなる方法で尊重するか、こういう私にとってはまことにつれない御質問で非常に苦しいのでございますが、これは法律もいずれ成立することでございましょうし、公示価格政府がお出しになることもないと存じます。業界も、価格について政府から公示されるまでみずからのことを律し得ないようでは、まことにこの石油産業の前途思いやられる次第でございますので、十分相はかりまして、衆知を集めて、一つそういう線に持っていきたい。万一公示価格の出るような場合には、その方途に関しましては十分に検討いたしまして、独禁法等におしかりを受けないいかなる名案があるかということで、十分に衆知を集めたい、こう考えておりますので、一つ御賢察を願いたいと思います。
  45. 三村起一

    三村参考人 ただいまの中川先生の非常に情熱のこもったお話に対して、非常な共感を禁じ得ないものがあるのであります。  政府は金も出さずにしりばかりたたいている、われわれも政府に対して全然何も言わなかったというのではなくて、毎年の予算の請求については、できるだけのことを申し上げておるのであります。しかし、残念ながら棒ほど願って針ほどかなうという実情でございます。でありますから、このやり方でなくて、買取機関を作っていただいて、行く行くはそこに石油産業の基金を持たれて、そういう必要なる国家の地下資源の開発についての探鉱資金というものはそこから出せるというふうにしてもらったらどうかと思っておりますが、具体的なことはまだ詳細に考えておりません。これは慎重に考えなければならぬと思っておるわけであります。  なお、備蓄についてお話がございましたが、これはまことに同感でございまして、現在精製会社の持っていらっしゃるタンクは、全部で八百万トンくらいだと思っております。そのうち原油タンクが四百万トン、製品タンクが二百五十万トン、残りの百五十万トンくらいが半製品タンクだと思っておるわけであります。これは私が間違っておるかもしれませんが、私の記憶ではそういうふうに考えております。でありますが、今のお話では、大体一カ月くらいだということでありますけれども、われわれといたしましても、どうしても備蓄の必要は考えますので、買取機関ができれば、先ほど申し上げました通り、備蓄のためにタンクを作るということも買取機関を利用されることが妥当じゃなかろうかということを申し上げたのであります。どれだけのもを持つかといえば、私は少なくとも四、五百万トンのタンクを持つべきじゃなかろうかと思っております。いわゆるナショナル・セキュリティという言葉がございましたけれども、国が戦争に巻き込まれることは絶対に避けなければならぬ。しかし、スエズ・キャナルがとまったというような場合には、ナショナル・セキュリティというか、ナショナル・エマージェンシーの場合を考えて、備蓄はぜひ必要だと思う。そういうときに全然なしにじっと手をこまねいておるということはいけませんので、中川先生のおっしゃったように、どうしても備蓄タンクを持ちたいと思っております。それは、できたならば、買取機関のごとき国家機関を通してやっていただいたならばどうだろうか、今のところはそう考えておる次第であります。以上であります。
  46. 佐久洋

    佐久参考人 ただいまの中川先生のお話のようにいけば非常に私もうれしいのであります。結局、われわれ石炭業界努力が足りないといえばそれまでの話でありますが、三、四年前には国内石炭というのはもう三千万トンもあれば十分だ、それ以上は要らぬというような非常に強い、しかもそれは消費者のエネルギー選択の自由、こういう原則を強く押し出して、支配的な意見があったわけであります。それに対して石炭業界としては、それではとてもいかぬというので、ねばり強く、しかもしつこく消費者に頼みまして、やっと一通り了解を得たのが五千五百万トンということで、その間の努力が足りたか足りなかったか、あるいは能力があったかなかったかということは別の議論になりますが、われわれとしては最善の努力を、それだけの時間と骨を折ってした、こういうふうに思うわけであります。将来の問題は、もちろん価格その他で消費者との話し合いの問題でありますから、そのときになってみなければはっきりわかりませんが、一応現在の合理化計画の遂行をして、そこで一つの安定を見出して、その先にやはり数量をふやしていくという努力を――これは消費者にいたずらに犠牲をかぶせるということでは話はつきませんので、その点で売り値の引き下げという努力もしながら、数量もふやしていきたいというふうに考えております。
  47. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 なお質疑の通告が多数ございますが、時間の関係もあり、予定の時間を非常に超過いたしておりますので、三参考人に対する質疑はこの程度にとどめさせていただき、引き続いて他の参考人の方の御意向を伺いたいと思います。三参考人方々には、貴重な御意見を開陳いただきまして、感謝にたえません。厚くお礼を申し上げます。  では、お引き取りをいただきとうございます。     ―――――――――――――
  48. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 引き続きまして、本日おいでを願っております電気事業連合会専務理事中川哲郎君、全国石油鉱業労働組合中央委員長伊藤誠光君、日本鉄鋼連盟事務理事葦澤大義君、日本石油精製株式会社副社長新井浩君、全国石油産業労働組合協議会委員長菊地清一君、国民経済研究協会会長稲葉秀三君より御意見を伺うことにいたします。まことに恐縮でございますが、先ほど申し上げたような時間の関係もあり、本会議開会の時間も迫っておりますので、十分以内で御意見を御開陳いただき、あとは質疑に答えていただくようにお願いをいたしたいと思います。  きょうは御多忙中、御無理を願いまして、感謝にたえません。では、どうぞよろしくお願いいたします。  電気事業連合会専務理事中川哲郎君。
  49. 中川哲郎

    中川参考人 電気事業連合会専務理事中川でございます。本日は、太田垣会長出席いたしまして意見を申し上げるはすでございましたところ、やむを得ない事情出席いたしかねましたので、私がかわりまして電気事業連合会としての意見を申し上げたいと存じます。  今日、石油は世界的に見まして生産過剰状態でございまして、こういった傾向は今後とも相当長期にわたって続くものと予想をいたしております。  一方、わが国エネルギーは、国内資源である石炭生産にも経済的な限界もございまするし、水力資源も必ずしも潤沢ではありませんので、今後のエネルギーの主流はどうしても石油ということに移って参る次第でございまして、いろいろの方面で作成しておられますエネルギーの長期予想を見ましても、いずれも石油に対する需要が将来飛躍的に増加していくというふうに推定されております。  こういう状況でございますので、わが国石油市場は、今後非常に大きくなって参りまして、世界的に見ましても好個の市場となっていくものと思っております。こういうような状況でございますので、今後の石油エネルギーをできるだけ低廉にかつ安定した形でこれを確保して参るというためには、石油政策というものも、基本的には、自由主義経済体制というものを骨子にいたしまして、生産者の自由競争、消費者の自由選択、この原則の上にいろいろな施策を講じていっていただきたいと思っております。  こういう点からいたしまして、私どもとして第一に希望いたしますことは、石油業界の自主的な努力によりまして、適正な競争関係を保持して参られ、設備の容量の大きくなりますること、あるいは企業規模の拡大なとを通じまして、できるだけ石油産業の健全な発展をはかっていっていただきたいということであります。  第二には、消費者の立場からいたしますと、自由選択の原則が徹底いたされまして、安い石油を大量に入手して、エネルギー・コストをできるだけ低く持っていっていただきたい。そういたしますことによって、わが国経済全般の国際競争力を強めることができようかと思います。  第三番目の問題といたしまして、石油政策を実施していく上におきましては、ほかのエネルギー、たとえば石炭の安定供給ということのために、石油の経済性を犠牲にしていただくようなことは絶対避けていっていただきたいと存じます。石炭対策は、石油とは別個に合理化の推進ないし長期の安定引き取りというような線で進んでいっていただきたいことをお願いするわけでございまして、関連業界としても、石炭石炭といたしまして、できるだけの協力はいたしておる次第でございます。   〔委員長退席、中村(幸)委員長代理着席〕  こういった観点からいたしまして、石油業法案につきまして意見を申し上げたいと存じます。  第一点は、本案の性格、あるいは存続期間の問題についてでございます。この法案は、本年秋に予定されておりまする石油自由化に対処をいたしまして、業界混乱を防止し、需給秩序の維持をはかるために一応考えられたものでございますが、先刻も申しましたように、日本石油市場が今後急速に拡大して参る事情からいたしまして、原則的にはこういった法的規制がない方が望ましい次第でございまして、できるだけ業界自主調整によるのが、自由化の趣旨から言っても本筋であろうと考えます。しかしながら、いろいろその後の実情につきましてお伺いいたしますると、現実問題といたしまして、アラビア石油などの引き取りを円滑に行なっていくためには、不幸にいたしまして、今日の事情からいたしまして、業界問の自主調整ということも困難な実情があるようでございますので、ここ当分の問は何らか法的措置を講じまして、こういった関係を調整していくことはやむを得ないかと思うのであります。しかしながら、こういった場合におきましても、この法的規制はあくまでも当面の過渡的措置という意味で、数年間を限りました時限立法といたしまして、規制の内容におきましても、できるだけ石油需給調整ということを主眼にいたしました最低限度の規制にとどめておいていただきたいのであります。政府原案におきましても、再検討条項があるから暫定立法と同じではないかという意見もあろうかと思いまするが、私どもといたしましては、石油が将来は自由経済を基調としていくというその基本的な理念が徹底いたしていないのではないかと思うのでございまして、恒久立法の形でございますると、どうしても再検討条項がございましても、現実問題としてこれを廃止するというようなことは困難でございます。時限立法でございますと、その時限内に関係業界が協調いたしまして、法律の廃止後の事態に対処いたしまして、できるだけお互いの協調を考慮いたしまして、比較的早期に、本来の姿である自由経済の形に戻っていけると思うのでございます。私ども自由経済と申しましても、決して供給業者の過当競争によるダンピングとかあるいは一部企業が市場を独占するといったような事態は心配することはなかろうと思っております。また石油の安定供給という点につきましても、当然これは消費業界としても真剣に考慮いたすべきでございまして、たとえばアラビア石油の将来の市場というようなことも、需要家としても当然考慮すべき要素でございます。幸いわが国石油の消費量は今後相当大きくなって参る関係がございまするから、時間さえこの問にかしまするならば、十分消費者、生産関係業界の協調によりまして自主的に解決し得る問題だろうと思っております。従いまして、その問を処する意味合いで、当面の処理につきまして、時限立法ということを切望いたす次第であります。  さらに二点といたしまして申し上げたい点は、この法案に盛られておりまする設備の新設の許可についてでございますが、本法案の第七条では石油精製設備の新増設については通産大臣の許可が要るということになっております。石油については、将来大口の需要者であります電力あるいは鉄鋼等におきましても、自家精製ということが出て参ろうかと思います。直接自家精製いたしません場合でも、ある程度これに準じたような形のものが作られて参ろうかと思いまするが、こういった場合は、一般の販売を業とする精製業者の場合とは趣を異にすると思っておりまするので、その設置は、できますれば、許可の対象からはずしていっていただきたい。諸種の関係からいたしまして、これをどうしてもやはり許可の範囲に入れておく必要があります場合には、一般の精製事業の場合とは違って、許可の基準等につきましては、実情に沿った考慮をお願いいたしたいと存じます。最後に、第三点といたしまして、石油審議会についてでございます。石油業法が暫定の立法であります場合におきましても、これを民主的に運用していく意味合いで、この石油審議会という機構はぜひ必要でございまして、また非常に重要性のあるものと思っております。従って、この審議会のために石油界あるいは石油の消費産業その他の関係業界意見を十分反映できますよう、審議会委員あるいはその構成等につきまして、実情に合いました御配慮をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  以上簡単でございまするが、電気業界意見会長にかわりまして申し上げておきたいと思います。
  50. 中村幸八

  51. 伊藤誠光

    ○伊藤参考人 全国石油鉱業労働組合の伊藤であります。時間の制限もありますので、ごく簡単に意見を申し上げます。  まず石油政策全般についてでありますが、エネルギーの消費構造の流体化は非常に決定的であります。従って、今後このエネルギーの源になりますのは石油と天然ガスであろうと考えます。ところが、石油は御承知の通り輸入の依存度が非常に高いのでありまして、その低廉かつ安定的な供給を確保するということは非常に重要な問題であります。そこで西欧主要国はその国の経済的あるいは資源的な条件に応じていろいろなエネルギー政策をとっておるのでありますけれども、総じてエネルギー産業すべてその国の影響下に置いて低廉かつ安定的な供給をいかにはかるかというところの調和をするためにすべての努力を払っていることであります。こういうふうに考えますというと、わが国エネルギー政策というものは非常に総合性あるいは具体性に従来欠けておりますのでありまして、この際エルネギー総合政策を明確にして、消費構造の変化に対応したエネルギーの調和をはかっていくことにこの政策の基本を置いていただきたいと思うのであります。  特に十月から実施される予定にあります石油輸入自由化がこのままでいきますというと、精製十七社のうちで有力な九社は直接、間接的に国際石油資本と提携しておりまして、提携関係にない石油会社であっても、その多くは原油ひもつきローンを受けておる現状でありまして、フリー・ハンドで買える原油は、先ほどの参考人の方も申し上げておりましたようでありますけれども、大体一五%程度しかないというふうな特殊な事情にあると思います。従って、他の産業の場合と違いまして、業界の内部で自主的に調整をはかるということは従来の経緯からも考えまして、きわめて困難であろうと思います。そうしますと、このままでいきますと、過当競争というものは一そう激しくなるのは必然的でありまして、その結果巨大な国際石油資本の系列化が進みまして、その親会社だけから原油を買うという拘束が強くなって参りまして、わが国石油市場というものは完全に外国資本の手によって独占されるということにほかならなくなると思います。従って、だからそういう場合に安い原油輸入しようといかに努力をしても、そういうことができない事態ということが生ずる憂いがありますし、これは経済全体にとってもゆゆしい問題になると思います。こういうふうな観点から考えますというと、その需給と価格面にわたって強力な政策が必要であるというふうに考えます。従って、石油業法案が上程されたのもそういうふうな点から理由があると思いますので、基本的に私はこの石油業法案に賛成でありますけれども、この業法案だけで今申し上げたような安定的な供給がはたして可能であるかどうかということに対しては、非常にその実効を疑っておるものであります。特に上程されるまでの経過において、この法案に対して非常に批判が――大手石油精製会社あるいは一部の需要者側から反対があったようであります。その反対の理由は自由経済の原則に反するとか、あるいは官僚統制の復活であるとか、そういう点にあったようでありますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、あるいは欧州に調査に行かれました方々の報告によりましても明らかなように、エネルギー政策というものは、そういう今の前提から非常に強力に各国とも実施しておるわけでありまして、その国の産業に非常に寄与いたしておるわけであります。従って、こういうふうな批判というものは無益でもあり、場合によっては有害な議論でもあると思わざるを得ません。従って、そういう点を御考慮になって、大胆かつ強力に総合的な施策を講じていただくようにお願いをしたいと思います。そこで次にこの法案の内容と、法案では期せられない問題について数点意見を申し上げます。まずこの法案の第三条に規定してあります通産大臣が策定する石油供給計画と、第十条に規定する石油精製業者が作成する石油製品生産計画との問に、国産原油並びににアラビア北スマトラ原油などの特殊原油の受け入れ数量に差異が生じた場合は、法案では、なし得ることは、これは勧告でこれを調整するということになっておるように理解されます。しかし、先ほど申し上げました通り、はたしてそういうことで石油精製業が持っておる性格からして可能であるかどうかということは、非常に疑問であります。そこで、そういう場合には、そのままで放置しておくのではなくて、さらに非常に強い処置が必要であると考えます。結論的に申し上げて、その場合には引き取りを命令し得るように処置にすべきが妥当であると私は考えます。  次に、この引き取りの保証についてであります。西欧主要諸国は、先ほども申し上げました通り、安定的な供給を確保するために、石油市場の一定割合を国の影響化に置くことをその政策の基本にしておるわけでありますが、そう考えましてみますというと、現在の日本の特殊原油、先ほど言いました国産原油はもちろん、アラビア北スマトラ石油は三十七年度以降の国産百万トンを加えて優に一千万トン以上に達すると考えます。しかも、それは漸次増加していく見込みでありますので、国がここで抜本的にその引き取りを保証すると同時に、さらに精製販売までこれを進出させて、一貫して生産から消費までこの保証体系をつけていくということが必要であると考えます。従って、そういうことを前提にして、当面過渡的な処置としてこの引き取り機関を制定しまして、それはいろいろな内容によると思いますけれども、国だけで引き取り機関を作るか、あるいは国とある一部民間資本を導入することによって行なうかは別問題でありますけれども、そういうふうなことでこの引き取りの保証処置を講じていただかねばいけないと思います。そのために法律的な、あるいは財政的な処置をすみやかに講ずべきであると考えます。なおこの引き取りの問題に関連しまして特に問題になりますのは、国産原油価格の問題であります。国産原油はここ数年間非常に精製業側から価格の引き下げを要求されまして漸次下げて参っておりますけれども、現在大体山元で六千五百円程度になっておるわけですが、これを非常に高いと言われております、また言っておるわけです。しかし、これは諸外国の例を見ても決して高いものではありません。米国においては六千円程度でありますし、イギリス、西ドイツ、フランス等においても、関税その他の処置によって、九千円ないし一万一千円程度価格を維持しておるわけです。しかし、わが国においてはわずかの関税で入って参りますので、その値開きは若干あるとは思いますけれども、そういうことを考えますと、ここで国産原油の保護についてお考えをいただかないといけないと考えますので、その引き取り機関を設立した場合でも、それから設立するまでの間でも、この国産原油の値段の保護をぜひしていただくように、特別な配慮が必要であると考えます。  第二点は、探鉱活動の積極化とそのための必要な資金を安定的に確保するということが必要だと考えます。これは西欧の主要諸国の例を見てもわかりますけれども、直接的にあるいは間接的に、その国が一定の方式によって多額な探鉱費を投入して、自国あるいは海外において、自国の企業によって、このエネルギー石油及び天然ガスを確保しておることは明確にされておるわけです。これは将来生ずるかもしれないエネルギーのいろいろな価格の問題なり、あるいはまた供給の不安定さを予防するためにそういうふうな処置を講じて、安定供給の基本原則にしておるわけであります。ところが日本の場合には、わずかに石油及び天然ガスに財政的措置を講じておるわけでありまして、非常に弱い政策になっております。特に三十七年度を第一年度とします天然ガス及び石油資源開発五カ年計画が通産省において省議決定されておりますけれども、それに裏づけられます探鉱資金というものは非常に少ないものでありまして、現在非常に困難な事態になっておるわけです。申すまでもなく、わが国探鉱活動の積極的な推進という目的を分解して考えますと、四点に集約されると思うのです。第一は国内に賦存する推定一億ないし二億トンの石油と、天然ガス推定五千億立方、原油換算で五億トンに相当するわけですが、それを積極的に開発をするという目的、第二にはそういう探鉱活動を通じて、低開発地域の国内のすべての地域に対しての寄与をはかって関連産業ないしその地方の産業を振興させていく、こういうふうな意味合いを持っておるわけです。第三にはもちろんその成果によって外貨が非常に節約になって、国民経済に非常に寄与することになるわけです。第四は、これはわれわれの立場からも言えるわけですが、雇用の安定と探鉱開発技術の温存育成ということを通じて、海外油田開発に非常に貢献する、こういうことにあると思います。特に日本探鉱開発技術は、ここ数年間、アメリカ、ドイツ、フランス、イタリア、ソ連――これは最近ソ連からも技術輸入をいたしましたけれども、こういうふうな技術を吸収いたしまして、飛躍的に向上をいたしております。この探鉱開発技術は、私は世界的な水準以上にあると考えます。特にこの証明は、国内探鉱開発成果を量的に見るのではなく、質的に考察していただけば明らかでありますと同時に、現実にアラビア石油並びに北スマトラ石油開発成果は、日本技術によって行なったという事実を御賢察願いたいと思います。過日の本委員会アラビア石油の菅野参考人もその意義を強調されましたし、その点は明確にされております。
  52. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 参考人に申し上げますが、お約束の予定の時間がだいぶ超過しましたので、結論を急いでいただきたいと思います。
  53. 伊藤誠光

    ○伊藤参考人 ただ私たちはアラビア石油の問題を国産石油と同じように民族資本と考えてその発展を願っておるのでありますけれども、現在行なわれております具体的な掘さくの現場部門に対してだけは、菅野参考人がこれも日本技術によって行なうということを申し上げたように記憶しますけれども、現在その点がございません。アメリカの請負によって行なわれておるわけでありますので、本委員会ないしは政府においては、そういう点を御考慮願って、完全に日本的なものにすべきことがこの政策の具体的な措置ではなかろうかと思います。従って、この際探鉱資金といたしまして、その意味から当然御賢察いただいて、探鉱資金計画による二百三十五億円は、大部分国の資金を投入してこれを実施されるよう、この際石油関税の収入の一部をこれに充当するなどの措置によって実施されますようにという強い意見を持っておるわけです。  以上申し上げましたことによって、私の意見といたします。
  54. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ありがとうございます。  次は日本鉄鋼連盟専務理事葦澤大義君。
  55. 葦澤大義

    葦澤参考人 葦澤でございます。  鉄鋼の立場から意見を言えという御趣旨でありますが、電力中川参考人からお話がありましたように、私ども石油の消費者の立場でありますが、ことに鉄鋼といたしましては、石油のうちの重油がその重点になっておるのでございまして、漸次増加の趨勢にもあるわけでございます。  従って、本法案政府の方において御計画になりましたころから、われわれ業界でも寄り寄り協議をいたしましていろいろ検討をいたしました。のみならず関連産業全体にわたる一つの大きな問題でもありますので、経団連においても、この法案に対する一つ見解審議の上打ち出されております。われわれはその経団連に加入いたしております傘下のものでございますので、法案に対する考え方は経団連の意見として皆さん方のお手元に届いておると思いますが、その通りでございます。  業界といたしまして当初意見の出ましたところは、需給を基本に規制をする法三章的な簡素な姿の法律改正で問に合うのではないかというような意見も出ておったことは事実であります。また、そういった趣旨は、通産大臣が各関連産業の方をそれぞれお呼びになりまして、意見をお聞きになりました際にも業界から申し上げておりまして、通産省におかれても、いろいろの意見を配分して本法案ができておるのではないかというふうに思います。  私の聞き及ぶところによりますと、大体本案につきましては、弱過ぎるという意見と強過ぎるという意見と二つあるようでありますけれども法律そのものはこの際絶対に必要でないという意見は、私寡聞にして聞いておりませんので、国会においての御審議がどうなるかわかりませんが、その内容は御審議の結果いろいろ違うかもしれませんが、とにかくこの法律は通るのじゃないかというふうに、失礼かもしれませんが見通しております。ただ法律ができまして、この目的にありますような安定的かつ低廉な供給の確保をはかるという目的を明示いたしておりますが、従いまして、法律通りました暁の運用において、この目的が十分に達成せられるようにぜひお願いをしたいということを申し上げまして、大へん口下手で恐縮でございますが、要点だけ申し上げまして、陳述を終わらしていただきます。
  56. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 どうもありがとうございます。  次は、日本石油精製株式会社副社長新井浩君。
  57. 新井浩

    ○新井参考人 新井浩でございます。石油業法の問題に関しましては、業界石油連盟というものがありまして、その石油連盟の副会長南部さんが、ただいま参考人としてこちらに御出席になっていろいろお話しになったと思います。時間の制限もありますので、ごく簡単に私の結論だけ申し上げさしていただきます。  先ほど南部参考人からのお話――私途中で入りましたので、最初の方はわかりませんですが、後ほどのいろいろの質疑の問題からしんしゃくいたしますと、結論的にはわれわれ石油業界の多数意見であるという設備規制を伴っている需給規制というところで話があったんだと思います。特に時限立法ということを強調されたんではなかろうかと思っております。参考人としまして、私は日本石油でありますが、日本石油としての考え方も多数意見に賛同をいたして参っております関係上、こういう席では、その点について日本石油もその通りであると申し上げておきたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、石油業界というのは、やはり将来のことを考えますと、いろいろな問題があるにせよ、完全な自由化ということが、石油業界自体が健全なる石油業界であるということであるためには、必要ではなかろうかと考えております。従ってどういうふうな業法が通りますにせよ、その間における政府の御指導はぜひこの業界が将来完全なるからだになるということを目途にされまして、業界自体が自主的にやっていけるように御指導を賜わりたいのであります。  その具体的の方法としましては、今後この業法によって、もし通過しますとすれば、政府の御指導がある場合には、日本石油産業のあり方ということに対する大局的な見地で御指導を願うことを目的にされまして、個々の企業に対するいろいろな活動に対しては、干渉をできるだけ避けていただくようなことによりまして、五年なりあるいは三年なりということになりますかよくわかりませんが、この先において一人で歩けるような石油産業に育てていただきたいということをこの際つけ加えてお願いを申し上げておきます。私から申し上げることは簡単でありますが、これで終わります。
  58. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ありがとうございます。  次は、全国石油産業労働組合協議会委員長菊地清一君。
  59. 菊地清一

    ○菊地参考人 全石油の菊地でございます。時間もありませんので、要点をかいつまんで申し上げたいと思いますが、特に私どもは労働組合でありますので、労働組合の立場から、いろいろな企業関係とか、そういうものを離れて、この業法をどういうふうに見ているかということを申し上げたと思います。それと関連しまして、この業法が出てくるきっかけになったいろいろな施策の経緯について、われわれも若干考えるところもありますので、付帯して申し上げていきたいと思います。  まず第一点に、現在行なわれようとしている貿易自由化との関連というものが、この石油業法の中にあるのではないかというふうに私どもは考えました。ところで全石油としましては、貿易自由化については、見方の相違があれば御指摘をいただきたいと思うわけですけれども、いろいろの資料に基づきまして見聞するところによりますと、大体アメリカのドル防衛政策の押しつけ、それから一部それと結びついた大資本の要請によって貿易自由化が促進されていく、こういうことは二重構造をますます増大させて、労働者の生活の安定をもたらさない、こういう観点から、私ども貿易自由化を促進していくという立場には、現状においては反対せざるを得ないという考え方に立っております。従って、そうした考え方を中心として、政府石油政策についていろいろ考えているわけですが、先般アラビア石油等の問題について、参考人として呼ばれました際にも申し上げましたように、私ども石油業法を提出する前に、まず政府として抜本的な総合エネルギー対策が必要ではないかというふうに考えております。そのことなくして、石油業法とかあるいは関係業法を作って参りましても、結局は今日一部において批判をされているような、ざる法的な状態になっていく危険性というものはかなりあるのではないかというふうに考えられるわけです。  総合エネルギーの対策を立てる面において、私どもは何を考えなければならないかという点について申し上げたいと思います。まず私どもが考えておりますのは、国内資源の最大限の有効活用を基礎として、その上に石油なりあるいは石炭なりあるいは電力、原子力、こういうものが総合的に発展をしていくという形で、計画的な施策がなされていかなければならないというふうに考えておりますし、同時にそういうことは再三にわたって私どもが要望して参ったところであります。あるいは、いろいろ説明の中では現在政府の行なわれております長期経済成長計画の中において、エネルギー政策というものは織り込まれている、これによって十分ではなかろうかという意見もあるかと思いますけれども、先ほど各参考人並びに諸先生方の御意見の中にもあったように、石炭産業は五千五百万トンという一つのワクの中で固定したものの考え方をしておられる。ところが、石油の方は次第に増大をして、昭和四十五年には一億トンにも及ぶ需要があるだろうという見通しが立てられている。こういうものがはたして均衡のとれた、片方は縮小生産をやり、片方はいわゆる拡大生産をやっていくというような形でのエネルギー政策というものが正しいあり方であろうかと考えた場合に、残念ながら私ども立場からはそういうふうに考えられない。従って、もう少し突っ込んだ政策というものをお願いしたいと思うわけです。  第二の、エネルギー政策を立てる場合の基本としては、労働者の生活の安定、いわゆる雇用の拡大安定の問題と、生活水準の向上の問題というものを考慮しながら考えていただきたい。このことがない限りにおいては、私ども総合エネルギー政策の基本的な施策があるというふうに申し上げるわけにはいかないと思うわけです。現実に、石炭産業においては、十三万の労働者が職場から首を切られて、いわゆる失業のちまたに追いやられようとしておる。石油鉱業の中では、伊藤さんからも触れられるかと思いますが、私どもの見た範囲では、やはり精製労働者と比べて非常に苛酷な労働、低賃金の中で働いておられる。同時に、いわゆる全油鉱に所属されている労働者はまだましにしても、帝石なり、そういうところから下請化され、あるいは売山をされて、中小に落ちていった労働者は、非常にみじめな生活をしております。具体的には、企業合理化の中で、やはり炭鉱と同じように首を切られるという事態さえも出ておる。あるいは、そうでなくても非常に苦しい事業運営の中で、労働者は非常な低賃金にあえいでおる、こういう状態が出ておるわけでありますので、これらの問題を総合的にお考え願いまして、総合エネルギー政策の樹立をお願いしたいと思うわけであります。こうした見地に立ちまして、石油業法案について私どもの考え方を申し上げたいと思うのであります。私どもは、詳しい内容について当事者からいろいろ御説明を伺う機会を十分に得ませんでした。そのために、いただいた資料を中心にいたしまして考えておりますので、内容等のとり方について誤りがあれば、いろいろとお教えを願いたいと思うのであります。  私どもは、「日本石油業のあり方」、「石油業法はなぜ必要か」というパンフレットを拝見いたしました。この資料から察しますと、現在の石油業法がなぜ必要かということがこの中に盛られているわけでありますが、一つは、国際的な行き過ぎの競争をやめさせたいということがあると思います。もう一つは、原油購入の自主性を確立していきたい。そうして結果的には、低廉にして安定的な石油製品供給ということを目ざしていきたい、こういうことを目的としておるようでありますけれども、私どもは、このことを行なうためには、今の石油産業における外資の支配態勢をくずさない限りできないだろうと考えておるのであります。このためには、政府がアメリカの方向に向かった一辺倒の政策を改めて、中国なりソ連なり、あるいはアジア、アフリカの国々と友好的な連帯の中で自由な貿易を行なっていくというふうに姿勢を正さなければならないと思うのであります。こうした石油産業の態勢をとってこそ、政府が考えておられるひもつき原油の排除という問題も可能になってくるのではないか。現状のままでは、七大独占といわれる国際カルテルに対抗して、日本石油産業がこのひもつきを排除していくことには、非常に困難な問題が横たわっているのではないかと考えております。  第二の問題として設備投資とかあるいは生産計画に基づく許可制の問題が出ておりますが、今の政府の見通しなりそういういった中において、設備が過剰であるか、あるいは過剰生産であるか、過剰投資であるかという問題は、いろいろ議論のあるところであろうと思います。従って、その中でこういう許可制をとって調整をする場合、この業法の内容では非常にむずかしいのではないか、端的に結論を申し上げますと、できないのではないかというふうに考えております。たとえば、新しい企業を起こそうとして、大資本なりがこの業法の中に盛られております条件を満たして申請をされた場合に、これを拒否する理由というのはあまり見当たらなくなってしまって、結局認める。そうして一カ所認めますと、二カ所も認めざるを得ない。だんだん増大していって、結果的にはやはりこの内容というものは骨抜きになってしまう危険性があるのではないかと考えておるのであります。  第三点に、われわれ労働者の立場から最も危惧しておるのは、価格調整の問題であります。なぜ価格調整の問題をおそれるかと申し上げますと、たとえば、標準価格を決定する場合、企業コストの問題が当然出てくるだろうと思います。そうなった場合に、企業コストの中に含まれるわれわれの賃金なり福利厚生費なりといった人件費が必ず制約されてくるだろう。こうした中で標準価格に付随して標準賃金的な、賃金統制的なものが出てくるだろう。これは政府が意図するとしないにかかわらず、企業はこれを利用しながら、われわれ労働組合の賃上げ要求を押えてくる危険性を内包していると考えられるわけです。さらに、この法の運用いかんによっては、石油産業というものがエネルギーの重要な地位を占める。そういう観点から、その社会性を背景として労働運動それ自体にもかなり大きな制約が加わってくるのではないかという心配をしておるわけです。従って、この価格調整なり業法の運営にあたって、私どもの組織の中にも賛成、反対いろいろありますけれども、口をそろえて主張しておることは、この心配をどうしてもらえるか、このことが私ども立場から申し上げたい点であります。  また、この法案は中小企業なり民族資本を擁護するものだというような立場で立てられておるようなところもありますけれども、私どもはこの法律は必ずしも中小企業なり民族資本を擁護する立場のものではないというふうに考えております。今までこれに類似したいろいろな業法なり統制なりがしかれた例が幾多あるのですが、その際に中小だけは別にして、民族資本だけは別にしてというような形での取り扱いは、大資本の大きな反撃の中でできないのが実情ではなかろうかと思われるわけです。その場合に、結局画一的な統制なり調整なりというものが行なわれて、そして中小の方は結局保護されない、伸びないままで終わってしまうのではないか、こういう危惧をどうしても持たざるを得ないわけです。しかしながら、この業法についてはゆるやかであっても、ざる法であっても、ないよりはましではないかという意見もかなりあるようであります。私どもは、こういう心配を持った法律は、こういう危惧が払いぬぐわれないままでは、ないよりはましだということで受け入れることには賛成いたしかねるものであります。従って、私どもは現段階においては、この業法については反対ということを言わざるを得ないと思います。しかしながら、将来私どもが念願をしておりますエネルギーの総合的な政策が確立をされて、われわれの生活安定なりあるいは産業の成長発展なりがこの法律のもとで約束されていくという場合には、あらかじめその時点で私どもの態度を出していきたい、こういうふうに考えているわけであります。  従って、私どもの希望することは、最近社会党の方針なんかを見ましても、エネルギー基本法の骨子などが発表されておるようでありますが、こうしたものを基礎としながら、やはり全体的なエネルギーの均衡発展の上に立って、労働者の生活安定を保障する、こういう確信のある、約束のできる政策を明らかにされてわれわれの意見を徴していただきたい、こういうふうにお願いを申し上げたいわけです。  以上が全石油としての考え方であります。
  60. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ありがとうございました。  次は、国民経済研究協会会長稲葉秀三君。
  61. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 私は、エネルギーまたは石油問題の専門家ではございませんが、実はここ数年間、政府エネルギー政策の立案に協力させていただいておりました。また昨年からは特に石油政策の確立という問題について御協力を申し上げ、エネルギー懇談会の委員でもございますし、またヨーロッパ石油調査団の団員でもあったわけであります。その後エネルギー懇談会の答申に基づきまして、今度の法案が出ているというふうに聞き及びますが、しかし、私は別に特定的な立場にこだわるものではございませんで、一応私個人の考え方を申し上げ、またそういう考え方を取り入れて大いにエネルギー政策の前進に一つ役立てていただきたい、こう思う次第であります。  まず、申し上げたいことは、昨年ヨーロッパに春と秋と二回、石炭問題、石油政策の調査に通産省から委嘱を受けて参りまして、石油政策につきましてはすでに中間報告がお手元に届いておると思います。今、本報告を取りまとめておりますが、私個人は向こうで次のような四つの点について非常に興味ある印象を受けてきた、こういうことを率直に申し上げたいと思います。  その一つは、エネルギーにつきましては、やはり安価な供給供給の安定性、こういったようなものが、やはり基本的に各国を通じて考慮をされております。  その第二点といたしましては、経済性はもとより考えなければならないけれども、このエネルギーの問題につきましては、多元的な配慮が行なわれている、こういう点を申し上げたいと思います。   〔中村(幸)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、たとえばそこからきます問題といたしまして、石油政策エネルギー石炭政策との調整、また今後どのように石油石炭、原子力を位置づけるか、こういったようなことが各国並びに各国を通じての総合体としての大きな考え方でありますし、また石油につきましても、そういった意味から、国々によって相違はございますけれども、国際石油資本との関係をどう調整をするか、こういったような問題が起こっております。  その三として申し上げたい点は、大体私の感じましたところ、ヨーロッパにつきましては、フランス、イタリア型とドイツ、イギリス型がある。フランス、イタリア型は、特に石油につきましては、この際強力に国家統制的な措置をとる、強い石油業法も作る、また国が相当力をを尽して公社的なものを促進をしていく。さらに国内海外におきまする石油資源、天然ガス資源の開発を行なっていく、そして国際資本とはもとより協調するけれども、だんだん自分の方のいわゆるイニシアテヴィを強くしていく、価格についても強い措置をとっていく、こういう見方と、もう一つはドイツ、イギリス型に象徴されるものは、どちらかと申しますと、自由主義的な考え方である。しかし、その自由主義もやはり一方では保護関税的な考慮あるいは消費税的な配慮を行なっている。それと同時に、設備その他につきましても、間接にやはり国の利益に合致をする、こういったようなものを誘導するような形になっている。日本の一部で言われているような自由放任型ではなさそうだ、こういう感じを受けました。  第四に感じましたことは、各国を通じまして、一定限度のエネルギー、また石油というものについては、自国でコントロールをしていこう、こういったような色彩が非常に強い。詳しく御報告いたせばきりがございませんので、簡単に私が特に強く、感じて参りました点の四つを申し上げたいと思います。  さて今度は日本エネルギー政策の問題、石油政策の問題ということになりますが、ヨーロッパは今御報告したようなものだ。そのほかにアメリカのこともございますし、ソ連のこともございますし、また他のいろいろの国々のこともございましょうけれども日本はやはり日本立場で考えるべきだ。しかし、その際重要なことは、日本エネルギーの伸びが非常に大きい。そうしてまた現在において予測をされまするところによりますと、石油に依存をする度合いというものが非常に強い。たとえばヨーロッパでは平均六二・三%が一九六〇年で石炭に依存しておる。ドイツのようなところでは七五%強が石炭に依存をしておる。しかし、その石炭の現状維持をできるだけはかりながら、ほかのエネルギーとどういうふうに調整をしていくかということが問題でございます。日本はすでに石炭の比率が四〇%を割っておる。さらに十年後には二二%見当になろうとしておる。これは一方ではエネルギーの伸びが非常に強い。特に石油需要が非常に強い、こういう点にかんがみて、一体総合エネルギーの位置づけ、また石炭石油のバランス、特にこの石油についてどういったような秩序を確立するかということがやはり大きな問題である。  その次に私はでき得る限りやはり安定的なエネルギー、特に石油供給というものを長期にどのように確保をしていくかということも大きな問題であると思う。  それに加えまして、私は次の点が当面石油の問題について大きく予想をされるのではないか、こう考えます。その一つは、いろいろ見方がございましょうけれども、かりにこの十月以降原油引き取り自由化というものが行なわれますと、自由化に伴うところの引き取り混乱というのは、相当予想されるよりも大きいように思うということであります。その二つとしては、国際的な関係もございましょうし、日本の場合においては国際資本との関係というものについてはより大きな問題があり得るのではなかろうかと思います。その三つとしては、今後日本石油事業が伸びていく、そのためには、もっと国際的に競争のできる、すなわち能率のよい石油精製プラントあるいは石油化学プラントというものを、でき得れば国内資本によって作っていく、こういったような必要が、一般的な傾向にプラス・アルファとして日本の場合においては予想されるのではなかろうか、これが大体国際的にいいまして、また国内のこととも結びつきまして、私は当面のエネルギー、特に石油政策を立案するについての基本的なあり方ではなかろうか、こういうふうに考慮をいたしております。さて、そういったような判断に立ちまして、すでに御存じのように、私たちの関係をいたしましたエネルギー懇談会は、多数的見解といたしまして、石油政策方向というものを通産大臣に参考意見として具申をしたのであります。私はその多数的見解の支持者の一人でございますが、多数的見解の中にも、いろいろニュアンスの相違があったということは、率直に申し上げてよかろうと思います。しかし、これらの国際的、国内的な条件を集約をして言えることは、また日本石油精製業の実態とか、あるいは日本の産業の条件とか、また自主調整に対する私たちの評価とか、こういうことを考えますと、私は今度の石油業法によって提示されました方向は、やはり必要最小限度ではなかろうか、このように感じるわけであります。もう一つ、それについて時限立法にしてはどうか、こういう御意見も出ておりまするし、またそれについて主張の根拠が全然ないとは言えません。  そこで、もう一つこの産業について時限立法が行なわれております繊維工業設備臨時措置法と今度の法律関係ということについて簡単に私見を最後に具申をさせていただきますと、この繊維工業設備規制につきましても、私実は立案の当初から今日まで約八年間御協力を申し上げております。それで私個人は繊維工業設備措置法というものは早くなくなってほしい、こういうふうに思っておりますけれども、繊維工業設備措置法の基礎は、需要供給がアンバラスだ、だから供給の方を一応押えておいて、そして需要が伸びるまである程度規制をしていけば、その次の段階においてはもう一ぺん平常の状態になっておる。しかし、私の石油業法について考えまするのは、むしろ当面をする産業の実態というのは、繊維の場合と石油の場合とは相当違うのではなかろうか。さらに今度の場合においては、やや恒久的な姿にはなっているけれども、やはり四年、五年たってみて、もう一ぺん情勢を考え直して、繊維ははずすということで措置法になっているのだけれども、もう一ぺんこれを強くしていくということが必要になるかもしれないし、弱くするということが十分でき得る状態になるかということがまだはっきり予見せられないといたしますると、関係業界の中に時限立法にしろという御主張もございまするけれども、再検討条項をつけたぐらいでお通し願えるかというのが合理的ではなろうか、このように感じます。なお、引き取り機関の問題とかいろいろございますが、もう時間が参りましたのでこれで終わります。
  62. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  以上で六人の方々の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  63. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に質疑の通告がありますので、順次これを許します。長谷川四郎君。
  64. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 稲葉先生と伊藤君にちょっと一言お聞きしたいのですが、稲葉先生のただいまのお話の中に、安価であり安定性というお言葉があったのでございますけれども、今度の法案に対して、安定性というものが私には何としても見出すことができないのでございます。というのは、私の立場は、政治を行なっておりまして、業界ではないのでありまして、国民に安定を与えるということが私たちの使命でなければならないのだ、こう考えるわけであります。御承知のように、石油は全世界ともに過剰の状態にあり、また御多分に漏れずわが国も現在は同様な状態であります。しかし、日本という国自体、先生は各国を歩いてみてよくわかっていただけると思うのでございますけれども、陸続きであり、またパイプ・ラインを海中に引いても自国へ石油が持ってこられるというような国の状態ではないのであって、要は周囲が全部海に囲まれている小さい国であるのでございますから、そこで安定性というのはどういうことか。いろいろな事件があると、たとえばスエズの問題がありますと、御承知のように石油が途絶する。特に今日の世界の情勢というものは、そう簡単に私は判断をすべきものではないと思う。いかにわれわれが世界に平和を呼びかけていても、われわれの理想をさらに踏み越えていつどういうような事態が起こり、またどんな小さなトラブルがあったとしても、日本石油を運ぶことができない状態がいつ来るか、あす来るか、私にも、皆さん方にも想像することはできないのじゃないだろうか。そういうときに立って、つまり電気はとまらないということがまず一つの条件でなければならないし、また先生のおっしゃる通り、それだけ産業の石油に対する依存度というものは非常に高まってきておる。さらに日本の産業が著しく発展をして、世界の中でも奇跡だと唱えられておる産業の状態である。日本国民が、つまり石油から離れた生活はおそらくできないのじゃないだろうかというのが現実の姿だと私は思うのであります。こういう上に立って、要は、安定ということは、どういうことがあっても電気がとまらない、産業はそのまま継続できる、国民よ心配するなよ、これがすなわち安定性というものであろう、こういうふうに私は考えるわけであります。そういう上に立った安定性ということになれば、業者ではないので、先生もわれわれと同じようなお考えであろうと私は考えるのであります。しかも先生は指導的な立場にあるわけでございますから、そう考えるのでございますけれども、そういう点についてせっかく九千万の国民をつかさどるところの政府が出す石油業法というのに、そういう安定性のないものを業法として認めることができるであろうかどうかということについては、私は大きな疑問を抱かなければならないと思うのであります。従って、安定性という言葉は、要は業界の人たちが、安定することで、御承知のように、石油業法を出すぞといったら、もう石油の小売価格は高くなってきておる。この業法ができたならばどういうことになるか、安くなるはずがない。それはつまり安定ではないのであって、業界だけの安定であって、九千万国民に対する安定性というものに欠如しておるということを私は指摘しなければならないと思うのであります。従って、これに対して先生のおっしゃる安定性というものは、どういうところから見出しておられるか、その一点をお聞かせ願いたいと存じます。  もう一つ、伊藤君にお聞きしたいことは、つまりわが国の血一滴とも称する、一番大事な資源でありますその会社にあなたは所属をしております。そのあなたの会社の出る石油価格は、御承知のように高いのでございます。こういう業法が出てきて、政府が指導するといっていても、はたしてその価格で引き取っていただくことができるかどうかということ、それに対してあなたは賛成であるという御意見でありますが、そういう点も私は大きな疑問を持たなければならないと思う。あなたの会社というものは、われわれ九千万国民が安定性を求めようとして、血税をあなたのところに投じ、血一滴の石油を一滴でもよけい採掘してもらいたい、こういう大きな望みを持って、あなたのところに一身を捧げて、私は今日まで参ったつもりでございます。しかるに、この業法ができたとして、あなたの会社の今日の方向はどういうふうに展開していくだろうか、私は大いに心配しておる。一番早くつぶれるのはあなたの会社だといわなければならないと私は思う。それだけの競争力のある会社か、それだけの低コストに持っていくだけの力があるかどうか、海外のこれだけのカルテルを相手にして、あなたの会社がこれと太刀打ちできるかどうかということも、私は大きな疑問を持たなければならないと思うのでございまして、あなた方の、国民の血税を投じて石油採掘をやって幾らでも出ている、また五カ年計画は予定よりも出ている、さらにこれをやってもらわなければならない、こういう上に立って、たとえば、出たものは、少なくとも日本で言うならば、自衛隊であるとか官公庁であるとか、国内のそういうものはあなたのところから出る石油でなければならないと限定すべきものが石油業法の中になければならないのではないかとも私は考えるわけでございますが、そういう点についてあなたはどういうようにお考えになつておられるか、その点を一点お聞かせ願いたいと思います。
  65. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 今の長谷川先生の御質問に対してお答えを申し上げますと、安定性というのは、総体的な安定性以外には考えられないというのが私の立場であります。つまり、日本はやはり国際貿易をしながら、自由化を進めながら、その中においていかにエネルギーの安定性を確保するか。またもう一つ供給の安定性と同時に、チープネス、つまり安価なエネルギー供給との間をどのようにバランスをせしめるかという問題が大所高所から見て一番大切だということであります。従って、私たちが提起をいたしました問題は、もしも自由化で野放図にするということになれば、日本石炭需要というのは二千万トンとか二千五百万トンとか、そういったような形になってしまう。それではどうも不安定じゃなかろうか。従って、国の力で合理化を前提として五千五百万トンは一つ掘っていけるような態勢を確保したい。もっとも五千五百万トン以上掘ってはいかぬということではないので、五千五百万トンまでは一つ国民が協力をいたしましょう、こういうような線を確保する。  それからさらに安定性の第二の条件といたしましては、そういうふうにしても、自由市場では長期に見るとなかなか石炭が売れないということもあり得るから、今度は一つ石炭の長期引き取り契約というものをその線に従って推進をしていこう、そうすることによって一つ国内エネルギーといったようなものをより強くしていこう、また石油供給についても、やはり国際資本国内資本とのバランスをだんだん確保していこう、こういう意味のいわゆる政策国民経済における安定性の確保であります。あなたのおっしゃることを言いますと、どんなに高くても、予想される事態を考えれば、少なくとも七〇%なら七〇%は一つ国内石炭を掘れということになるかもしれませんが、そうした場合においては安価な供給でなくてもよいのか、たとえば今のお米のようにやはりそれだけの保護をするということになりはしないか。そうすると結局産業の発展とか、全体の雇用の問題とか、国民経済の将来にもマイナスの影響が起こるから、相対的な安定ということでお考えになっていただくのがよかろうではなかろうかと考えます。こういう立場で私は申し上げておる次第で、先生のおっしゃる意味とは安定ということがだいぶ考え方が違いますので、その点は一つ申し上げておきたいと思います。
  66. 伊藤誠光

    ○伊藤参考人 長谷川先生から今だいぶおしかりを受けまして、この業法案国産石油というものが保護されないんじゃないかという点についておしかりを受けたわけですけれども、私らとしては、この石油業法案という今の問題だけで全部が完全であるとは考えておりません。おりませんけれども石油の安定供給を確保するという意味で一歩前進する体制として、これを賛成としておるわけです。ただ、従って、この法案だけでできないと思われる部分をさらに政策とか処置によって明確にしてもらいたい。その点は第一に先ほど申し上げました通り国産原油というものは直ちに外国系の輸入原油価格に同じにするということは不可能でありますので、これは当然政策として国産原油価格安定をさせるためにこれに処置をしていただきたい。特にこれは金銭的な問題だけではなくて、アラビア石油等も含めて、国産原油を含めて、引き取り機関等を作って安定した形にしていただきたい。それと同時に価格だけではこれはできないわけでありますので、抜本的に、従来先生たちにもやっていただきました探鉱の活動というものを広い意味で取り上げていただいて、国の中と海外とにおいて日本の力によって探鉱を積極的に行なって、それによって安定供給に非常に寄与していくということを体制づけてもらいたい、こういうふうな考えでおりますことを申し上げておきます。
  67. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 稲葉さんにちょっと――私の考え方と稲葉さんのはちょっと違うように思います。私の言うのは、国民の安定というものは要するに備蓄という義務づけられるものが何もない。業界がやらないなら国がつまり備蓄しなければならないじゃないか。それでつまりどういうことがあっても、一滴日本に船で運ぶことができなくても、国民よ心配するなよ、これだけの備蓄がある、少なくとも三カ月、六カ月あるんだぞ、これを私は申し上げるわけなんであって、あなたのおっしゃる相対的なものであるとするならば、九千万の国民というものの心の中に安定がないのに安定性を生み出すことはできないのだ、こういうふうに私は考えておるわけです。でありますから、ただ備蓄というものをどこにも見出すことができないので、それではそういうトラブルがあったとき、一滴も石油が来なくなったときにはどうするんだ、それはつまり政治を行なうもののわれわれの責任ではないか、考えなければならない立場にあるんではないか、これを私は申し上げるわけでございます。時間がないから申し上げられませんが……。
  68. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 お手元に差し上げましたヨーロッパ調査団の資料にもございまするように、フランスとイタリアではその問題を行政的、法律的に出しております。ただ、私たちが現地で聞きました限りにおいては、そういうふうになりましても、なかなかそういうことを効果的に進めるというのは、ヨーロッパみたいに非常に国際的にむずかしいようなところでもできにくい。従って、私は今先生のおっしゃった問題を排除するものではございません。やはり日本の中においてはその点を考慮すべきだと思います。しかし、それについては国が全部やるというわけにもいきませんから、やはり国とそれから業者方々と、それからさらに消費有の方々が協力をして、でき得る限り一つ経済的にたくさん持っていくということを今後一つ話し合いで進めていただく必要があるのではなかろうか、まあこのように感じる次第であります。しかも備蓄は積極的な備蓄ではなくて消極的な備蓄だと、こういうふうに申し上げたいのであります。
  69. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 板川正吾君。
  70. 板川正吾

    ○板川委員 時間がございませんから簡単に質問します。稲葉先生に第一番にお伺いしますが、稲葉先生エネルギー問題でいろいろと御尽力下さっておるのですが、その観点から日本エネルギー情勢を見ますると、先ほどお話のように非常に海外の依存度が強い。従って、この海外依存度の強いエネルギーというのは非常に重要だと思うので、今までもこのエネルギー懇談会あるいは伝えられるように通産省の中に産業構造委員会ですか、調査委員会、ここの小委員会とするという、こういうふうな意見もありますが、私は産業構造調査委員会の中では、原子力の問題が離れておるのではないかと思いますが、従って、政府として私はもっと総合エネルギー政策というために機構を整備すべきだ、こういう考えを持っておるのですが、これに対するお考えを伺いたい。  第二は、稲葉先生は再検討条項やむを得ない、こうおっしゃられるようであります。将来強化すべきか、弱化すべきか、今のところ不明だ、だが再検討条項でやむを得ないのじゃないか、こうおっしゃられたのですが、この法律によると、再検討条項には条件がございます。緩和または廃止の目的をもって再検討するというのであります。逆にこれを今言ったようにまだわからないのですから、強化すべき状態が出た場合には、この条文はまことに不都合な条文になるのです。こういう点をどうお考えになっておるか、これが第二点です。  それから第三は、外国へおいでになって、どこでも、フランス、イタリア等で民族系といいますか、国の影響を受けた石油資本がだんだんと影響化を拡大しておりますが、それでも外国資本と、いわゆる国際石油資本と子会社で提携しておるようであります。資本提携をしておる。五〇%資本提携して、一〇〇%ひもがついているというような例が海外にあるだろうかどうか。日本は実際五〇%の資本提携をして一〇〇%のひもつきになっておるのですが、こういう例が一体外国にあるだろうかどうか、これが一つ。  それから、この安定か、安価かという、今、長谷川委員の質問にもありましたが、原則として安価であり、安定が次に出ておるのが普通のエネルギー懇談会の報告等にもありますが、この石油業法では、安定かつ安価というので、安価の方が次に出ております。まあフランスとかイタリアとか石油エネルギーの比較的資源のない国が国家統制を加えて安定性を確保しておるのですね。供給安全性といいますか、安定性を確保するために、国家統制をしておる。日本なんか、フランス、イタリアなんかに非常に似ておって、ドイツとかイギリスとかとにかく石炭エネルギーの大半を確保している国と違うんですけれども、やはり安定が主であり、安価が従であっても仕方がないのじゃないか。もちろん経済性は無視していいというわけではございません。どちらが重要かといえば、もちろん安定的条件の確保というものが私は重要じゃないかと思うんですが、先生の御見解を承りたいと思う次第であります。  それから、次に、新井参考人にお伺いをいたしますが、これは簡単に質問をいたします。きょう私ども参考人に御意見を承りたいと思ったことは、石油連盟ですと多数の意見しか言えません。日本石油ということになりますと、外資と提携しておる代表的な会社ですから、その点で外資提携の代表的な会社という意味でお伺いをいたしますが、この外資提携の立場から国内油、準国内油――国内油は非常に割高でありますし、準国産油はある意味では競争相手でありましょう。こういうものに対する資本提携会社としての基本的な態度というか、これをまず承りたいと思います。  第二は、率直に申し上げまして、アラビア石油を引き取れないということをしばしば私ども聞いております。新聞等でも読んでおりますし、御意見を承ったこともございますが、このアラビア石油が引き取れないという理由は一体どこにあるのか。たとえば、外資提携の際のひもつきによるのが原因であるか、それから品質にも問題があるから、引き取れないというのか、価格が問題であるから引き取れないというのか、この引き取れないという理由、原因について承りたいと思います。  それからもう一つ中川さんに燃料関係についてお伺いいたしますが、第一次エネルギーから第二次エネルギーに変わりつつあると思うんです。将来はこれは石炭石油も原子力も、結局第二次エネルギーである電力が中心になり、窓口になって国民エネルギー供給するようになる方向だと思うのであります。ですから、あらゆる第一次エネルギーをまとめて、電力の窓口からそれを供給するという形に将来移行されるのじゃないか、こう思うんです。そういう場合には、私は当然国内資源をまず第一に優先に考えていくべきじゃないか、そうでないと、将来問題があるし、国の方針もそういう方向になっていると思うのでありまして、こういう点に対して一つ将来のお考え方について御意見を承りたいと思います。時間がございませんから、以上でございます。
  71. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 まことに恐縮でございますが、本会議関係で要点だけをごく簡潔にお答えいただきたいと思います。大体二時十分ごろに終わりたいと思いますので、お願いいたします。
  72. 稲葉秀三

    ○稲葉参考人 まず第一のエネルギーは、原子力も考慮をして総合政策を立てるべきではなかろうかという点につきましては、私は全的に同感いたします。  第二に、五〇%の資本参加で一〇〇%ひもつきになっているという例は外国にあるかということ、私は寡聞ながら全部の例を知っておりませんが、まああるかもしれないけれども日本のような形にはなっていそうもない、こういうふうにお答えいたします。  それから、安定か、安価かということでありますが、私個人としては、やはり双方を考えるべきだ、こういう立場で、安定が第一で、その次が安価だというふうにエネルギー政策を考えるのは、長期的に見るとやはり問題じゃないか、双方を考えていくのがよい、こういう考え方に立っております。それから再検討条項につきましては、確かに先生のおっしゃる通りで、これは御存じのようにいろいろな問題があってこういう言葉になっているのじゃないかと思いますが、もしも四年あるいは五年後についてなかなかやはり情勢がむずかしい、ことにエネルギーは、初めに申し上げましたように、国の経済そのものを動かす原動力ですから、場合によっては強い意味で御考慮願わんならぬこともあり得る、方向としては、それが緩和をされて、政府と民間ができ得る限り密接に協力をされて、自主調整でいくということが望ましいと思いますが、そうでない場合も、あり得るので、そういうときには、やはりそのときの情勢に合った御配慮を願いたい、こう申し上げたいと思います。
  73. 新井浩

    ○新井参考人 簡単にお答え申し上げます。  ただいま日本石油日本における外資提携の最も尤なるものであるというお話であります。この点について一言申し上げますと、日本石油自体は外資と提携はしておりません。それで日本石油精製という子会社を作りまして、その子会社が五〇%外国資本が入っております。その点一つ御了承を願いたいのであります。  それから、もう一つの御設問であります国内国産原油引き取り問題につきましては、御承知の通り、もう長年の間裏日本国産原油をわれわれ製油所といたしまして引き取っておるわけでありますが、これも先ほどからお話がありましたように、国際製品の値段――国際価格国内原油価格とは大へんな違いがありますので、その違いがある、非常に不利な点を忍びながら今日参っておるわけであります。裏日本国産原油を引き取っておる会社は、日本石油昭和石油日本鉱業でありますが、その半分は日本石油が引き取って今日まで参っております。今日まで全然引き取らないということは一度も起こっておりませんから、この点も一つ御了承願いたい。  なお、アラビア石油の問題につきましても、先ほど話がありましたように、品質の問題その他の点などもあります。また今までの関係どもありますので、スムーズに引き取れるかどうかという問題については、むろん将来とも懸念はありますが、本日までのところでは、スマトラ原油にしろ、アラビア原油にしろ、引き取っております。  以上申し上げます。
  74. 中川哲郎

    中川参考人 二次エネルギー電力として国内資源を優先的に使うことになるのか、こういうお尋ねでございますが、私ども将来の第一次エネルギー源としては、同じ価格あるいは同じ価値のものであれば国内資源を優先して使うのは、当然そういうふうであるべきだと思っております。
  75. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 なお質疑の通告もございまするが、先ほど申し上げました本会議関係で、本日の質疑はこの程度にとどめます。  参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明三十日は午前十時より理事会、十時三十分より委員会、午後一時より石炭対策特別委員会との連合審査会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時九分散会