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1962-03-14 第40回国会 衆議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 岡本  茂君 理事 白浜 仁吉君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       神田  博君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       中垣 國男君    中川 俊思君       原田  憲君    南  好雄君       村上  勇君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       多賀谷真稔君    中村 重光君       西村 力弥君    山口シヅエ君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         経 済 企 画         政 務 次 官 菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (重工業局長) 島田 喜仁君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         通商産業事務官         (企業局立地政         策課長)    馬場 一也君         参  考  人         (静岡県知事) 齋藤 壽夫君         参  考  人         (山形市長)  大久保伝藏君         参  考  人         (東播地方労働         組合連合会会         長)      小田 英一君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十四日  理事小川平二昭和三十六年九月二十八日委員  辞任につき、その補欠として白浜仁吉君が理事  に当選した。     ————————————— 三月十日  自転車競技法等廃止する法律案田中武夫君  外十一名提出衆法第一七号)  競輪等廃止に伴う特別措置に関する法律案(  田中武夫君外十一名提出衆法第一八号) 同月十三日  石油業法案内閣提出第一二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  新産業都市建設促進法案内閣提出第五五号)  産業雇用適正配置に関する法律案井手以  誠君外十八名提出衆法第一五号)  石油業法案内閣提出第一二二号)  自転車競技法等廃止する法律案田中武夫君  外十一名提出衆法第一七号)  競輪等廃止に伴う特別措置に関する法律案(  田中武夫君外十一名提出衆法第一八号)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についてお諮りをいたします。  昨年九月二十八日に理事であった小川平二君が委員を辞任せられましてから理事の欠員が生じておりましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、この補欠選任につきましては、委員長より指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。よって、白浜仁吉君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、内閣提出石油業法案議題とし、まず通商産業大臣より趣旨説明を聴取することといたします。佐藤通商産業大臣
  5. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石油業法案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  石油は、国民経済上必要欠くべからざる基礎物資であり、今後ますますわが国エネルギー源としての地位を高めていくものと考えられます。このように重要な意義を有する石油につきましては、総合エネルギー政策の見地に立って、安定的にして低廉な供給をはかることが、国民経済上最も強く要請されるところであります。  わが国石油供給現状を見まするに、石油資源国内に乏しく、原油の大部分はあげて輸入に依存しなければならないという事情にありますので、石油産業につきましては、国際的な協調関係を維持しつつ、その健全な発展をはかるべきことは申すまでもないところであります。  石油をめぐる内外経済環境は、近年著しく変わりつつありますので、今後新しい角度から考えなければならない面が出て参ったのであります。すなわち、国内におきましては、石油需要は急速に増大しており、また近く輸入自由化が行なわれることとなっておりますので、石油設備拡張意欲が旺盛となっております。また海外におきましては、新油田の開発などにより、世界的な原油供給過剰傾向が生じ、原油販売競争が激しくなってきております。  このような内外情勢から、今後国民経済的に見て問題が生ずることが考えられます。たとえば、石油供給上における過当競争の問題であります。これまで申し上げましたように、国内における石油設備拡張競争海外からの原油売り込み競争とが結びつきまして、石油製品の行き過ぎた販売競争がさらに一段と激化するものと思われます。これは石油業の性格から見まして、いわゆる業界内部の自主的な調整のみによって解決することは困難な事情にあります。  もちろん、自由な競争による低廉な石油供給は歓迎すべきことではございますが、事態をこのままに放置しておきますと、かえって石油需給の混乱を招き、石油産業の健全な発展が阻害されるのみならず、国内エネルギー産業を初め、その他の関連産業に対し悪影響を及ぼすとともに、消費者の利益をも害するなど、国民経済上望ましくない結果を招来するおそれがあると考えられます。  政府といたしましては、これまで貿易為替面調整措置によりまして、石油供給上の諸問題に対処して参ったのでありますが、輸入自由化によりまして、石油業は新局面を迎えることとなるのであります。自由化後におきましては、わが国石油業が自主的な創意を一そう発揮し、自由公正な競争を通じて石油の円滑な供給をはかることが基本的なあり方であることは申すまでもありません。しかしながら、これまで申し上げましたような問題につきましては、国によるある程度の法律上の調整はやむを得ないと考えるのであります。現に欧米各国におきましても、石油業の健全な発展のため、それぞれの国情に応じて法律上その他の措置を講じているのであります。  この法律案は、以上のような考え方をもととし、石油業事業活動を必要な最小限度において調整するための規定を定めたのであります。  この法律案のおもな点につきまして大略を申し述べます。  第一に、石油供給数量設備能力等石油供給に関する重要事項内容とする石油供給計画を作成公表し、この法律の運用の基本といたすこととしております。  第二に、石油精製業を行なう者は、その事業計画が適当であり、かつ、的確な事業遂行能力を有する者とし、石油設備石油供給計画に即応するようにするため、石油精製業事業及び設備について許可を要することとしております。また石油輸入業及び石油販売業につきましては、事業者実情を的確に把握し、輸入及び販売の秩序を確立するための基礎とするため、事業届出を要することとしております。  第三に、石油精製業者及び石油輸入業者は、その生産計画及び輸入計画について届出を要することとし、当該事業者届出をした計画に基づいて自由公正な競争を行なうことを期待しております。国は、その計画内容が全体の石油供給計画実施に重大な支障を生じ、または生ずるおそれのある場合に限り、勧告を行ない、企業社会的責任の自覚に訴えることによって石油供給計画実施確保をはかることとしております。  第四に、石油価格につきましては、石油業が正常な競争を行なうことによって形成される価格基本とする建前をとっておりますが、特に異常な事態によりまして、価格が不当に高騰したり下落したりする場合には、標準価格を定めて公表し、石油業が自発的にこの価格を尊重することを期待いたすこととしております。  最後に、この法律案では、各方面の学識経験者で構成する石油審議会を設け、石油供給計画作成等基本的な事項はもちろん、その他の事項につきましても諮問することといたしており、いやしくも行き過ぎた規制が行なわれることのないようにいたしております。  また再検討の規定を設け、内外石油事情その他の経済事情の推移に応じまして、緩和または廃止の方向で再検討する旨を明文をもって定めることとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、御賛同下さいますようお願い申し上げます。
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案についての質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、田中武夫君外十一名提出自転車競技法等廃止する法律案及び競輪等廃止に伴う特別措置に関する法律案の両案を議題といたします。     —————————————
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 まず提案者より趣旨説明を聴取することにいたします。提出者田中武夫君。
  9. 田中武夫

    田中(武)議員 ただいま議題となりました自転車競技法等廃止する法律案並びに競輪等廃止に伴う特別措置に関する法律案について、提案者を代表して、その提案理由を御説明申し上げます。  まず自転車競技法等廃止する法律案について申し述べたいと思います。  この法律案は、自転車競技法小型自動車競走法及びモーターボート競走法廃止する法律案でありまして、以下法律案提出趣旨について、その概略を御説明申し上げます。  御承知通り自転車競技法小型自動車競走法及びモーターボート競走法の三法は、自転車工業及び小型自動車工業振興に寄与するとともに、地方財政健全化をはかることを目的として、射倖的事業であります競輪、オート・レースモーターボートレースを公然と行なうことができるようにした法律であります。しかしながら、両法の立法当初の経緯及び三法審議中の経過から見ましても、限時的性格を持った臨時措置であったことは否定できないところであります。  このことは、昭和二十九年六月九日、当該産業振興に限定せず、広く機械工業振興をはかることをおもな内容として成立いたしました自転車競技法等臨時特例に関する法律が、当初一年間の限時法であったことからもいえるところであります。  しかるに政府は、今日に至るまで延長に次ぐ延長を重ね、さらに今回、即時廃止を強く叫ぶ世論を無視して、延命策を提案しているのでありますが、このことは立法当初の精神にも反するというのが、廃止を提案する第一の理由であります。  第二の理由は、これら一切の射倖的事業に対する国民消費は、年に一千億円をこえ、年間約百億円が地方財政に寄与し、若干が機械工業振興費その他に充てられているのが現状でありますが、地方財政がこのような不健全な事業にたよらなければならぬことは、好ましくないのであります。また、機械工業振興にいたしましても、当然国のなさねばならぬ施策でありまして、ギャンブル収益に依存すべき段階は過ぎたのであります。しかも立法当初の戦災都市復興目的も、今やその目的達成しているとき、もはや存続意義は全くなくなったと見るべきであります。  第三の理由といたしまして、特に強調したい点は、これらの賭博事業が、幾多の深刻な社会悪をもたらしていることであります。政府大衆娯楽理由として、その存続をはかっているのでありますが、年に二百人以上もの自殺者を出し、一家心中等家庭悲劇から、殺人、詐欺、横領といった社会犯罪に至っては枚挙にいとまがないのであります。開催地にはボス、暴力団が横行し、八百長による騒乱事件の続発は、常時、官憲の厳重な警戒がなければ開かれないのが、これら賭博事業の今日の実体であります。こうした社会悪をもたらす賭博事業が、どうして大衆娯楽健全娯楽の名に値するでありましょうか。  すでに京都市、大阪府、神戸市等、多くの都市が相次いで即時廃止に踏み切るに至りました。これ以上、賭博事業存続をはかることは許されないのであります。  以上、二、三の廃止理由をあげて、自転車競技法等廃止する法律案提出した次第であります。しかしながら、現下の情勢において、即時廃止することは、これらの事業に働く従業員や選手のその後の生活の問題もありますので、今回廃止は一年後としたのであります。  次に、競輪等廃止に伴う特別措置に関する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、競輪等廃止に伴い離職することとなる者に対する離職手当支給その他の措置について定めたものであります。すなわち、日本自転車振興会に対して、売上金額一定割合交付し、これを財源として離職者に対する離職手当支給求職活動生業資金あっせん等の業務を行なわせて、競輪等廃止が円滑に行なわれるようにしたのであります。  また、総理府に、競輪等廃止対策審議会を置き、総理大臣は、同審議会意見を聞いて、離職者に対する離職手当の額の決定及びその支給方法離職者転業対策競輪場小型自動車競走場またはモーターボート競走場施設のうち、償却未済のものに対する交付金の額の決定及び交付方法、その他必要な事項について計画を定めることとした次第であります。  以上が、両法案内容の概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  なお、この際一言申し上げておきたいと思いますことは、この両案は、ともに題名に「等」という字句を付しまして、一方で自動車競技法小型自動車競走法及びモーターボート競走法の三法を廃止するものでありますが、御承知のように、この三法は、法体系内容ともにほとんど同一のものであり、これを廃止しようという一つ目的のための法律案でありますので、先日当委員会で問題になりました商工組合中央金庫法等改正法案とは、その内容が異なるものであることを御了承願いたいと思います。  これをもって、提案説明を終わりたいと存じます。(拍手)
  10. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  11. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、内閣提出、新産業都市建設促進法案及び井手以誠君外十八名提出産業雇用適正配置に関する法律案の両案を議題として、審査を行ないます。  本日、両法案審査のため御出席をいただいておりまする参考人の御氏名は、お手元に配付いたした名簿の通りでございます。すなわち東播地方労働組合連合会会長小田英一君、山形市長大久保伝藏君、静岡県知事齋藤壽夫君、この三方に御無理を願った次第であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず、本委員会法案審査のため御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  御承知のごとく、本委員会におきましては、目下、内閣提出、新産業都市建設促進法案及び井手以誠君外十八名提出産業雇用適正配置に関する法律案審査を進めておるのであります。  この際、参考人各位には両案についてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。参考人各位には最初二十分程度の御意見をお述べいただき、あとで委員質疑に応じていただきたいと存じます。  それではまず最初に、静岡県知事齋藤壽夫君から御意見を伺うことにいたします。齋藤君。
  12. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 私は現在御審議中の新産業都市建設促進法案につきまして、若干の意見を申し上げたいと存じます。  京浜あるいは阪神等人口及び産業の過度に集中いたしておりまする地域とその他の地域とのいわゆる地域格差なるものは、政府におかれてはもちろんでありましょうが、私ども地方知事といたしましても、最も重大な関心を持っておるものであります。これが解決に日夜努力をいたしておるのが現状であるのであります。私ども静岡県におきましても、近年工業化へと急速に移行しつつあるのでありまして、最近におきまする工業県内進出は著しいものがあるのであります。県内におきまする各地区の立地条件等十分勘案いたしまして、県内の恵まれた立地を整えるために、これら工業進出と在来の地域計画というものとを一致させるために、従来の狭い市町村区域を越えていわゆる広域都市計画あるいは広域地域開発ということを、県内においても数点あげて計画実施いたしつつあるのであります。しかしながら近来におきまする工業規模は相当の大きな規模を持っておるのであります。しかもまたこれらが単独でなく、相関連して進出をいたしておる現状にかんがみまして、地帯の各種施設各種整備というものを私ども先行して実施をいたしていかなければならないし、現実にこれが先行投資を懸命に努力しておるのが現況であるのであります。こうした事態に対応いたしまして、御承知通り港湾整備なり、工場用地整備あるいは工業用水道事業を初めといたしまして、住宅あるいは上下水道文教施設あるいはまた鉄道の引き込み線等について必要な先行投資的事業を具体的に作り上げ、策定をして、今実施をいたしておるような段階に立ち至っておるのであります。  しかしながらこの膨大な経費というものを、現在の財政制度のもとでは、私ども幾らがんばっても、なかなか思うようにはいかないのであります。企業立地が先に進んで、先行すべき公共投資の方は十年もかからなければ整備できないというのが現状であるのであります。こういうように短期間に急速に、しかも巨額な公共投資を先行せしめて一つ都市作りをやろうという場合には、やはり特別な立法によって強力な財政措置、その他の特例を開くということでなければどうにもならないという考え方であるのであります。  こうしたやさきに今回の立法を見ようといたしておるのでありまして、従いまして、私といたしましても、この法案構想する新産業都市建設に私ども静岡県としては、すでに数年前から乗り出しておるのであります。従って、法案趣旨とするところは、全面的に賛意を表するものであるのでありますが、その法案内容をしさいに検討いたして参りますと、財政措置その他若干の点におきまして、きわめて不十分な点があるのでありまして、以下感ずるところを申し上げてみたいと存じます。  第一点は、財政措置がきわめて不完全であり、国の財政措置がきわめて不十分であるということであります。この法案の核心ともいうべき新産業都市建設基本計画達成のために必要な財政措置につきましては、法律案の十九条、二十条あるいは二十一条に規定されておるのでありますが、これらの規定は、配慮するものとするとか、あるいは何々に努めなければならないといったいわゆる訓示規定であり、あるいはまた精神的な精神規定に終始しておるのでありまして、せっかく国において取り上げられたこのいい企図なり趣旨というものは、結果的にはさなきだに貧弱な地方財政にのみ負担がかかるということになることをおそれておるものであります。特に第二十条に至りましては、全く政府の意図せられておるところの意味が私ども了解いたしかねるのであります。地方団体に対して関係企業資金確保を義務づけておるということは、一体どういう方法地方団体が大きな企業資金需要に援助できるのか、むしろその方法等についてお教えを願いたいと思っておるくらいであるのであります。  さらに何よりも大事な国と地方団体との間の経費負担の条項が全くないということは、どういうことであろうかと考えておるものであります。この法案は先に成立を見ておりまする低開発地域工業開発促進法と異なりまして、企業に対する特別措置よりも公共投資を先行して、産業立地条件及び都市施設整備をはかることをおもなねらいといたしておるように理解をいたしておるのであります。従って、工場用地住宅用地の造成あるいは工業用水道建設、道路、港湾等輸送施設整備住宅、学校、病院、公園等建設から上下水道屎尿処理施設の充実に至るいわゆる都市作りに要する経費は莫大な額に達するものであることは、私どもの県がすでに具体的問題として悩んでおる問題であるのであります。この法案日本経済の均衡ある発展に資するという国家的必要から生まれ出た趣旨からいたしましても、財政負担はあげてこれを地方財政に依存するというような考え方一つ捨てて、よろしく国庫は適当な負担を行なうべきである、かように考えるのであります。さもなくばせっかくの新産業都市建設もいわゆる絵に描いたもちにひとしいものとなるおそれがあるのであります。  私は、この点に関連いたしまして、具体的な方法一つ提案いたしまして、ぜひ御採択を願いたい、かように考えるのであります。まず建設基本計画のほかに、公共事業については事業実施主体別、国とか県とか市町村等、すなわち実施主体別及び年度別事業実施計画を策定いたしまして、内閣総理大臣の承認を得るということがその第一点であるのであります。  第二点は、この事業実施計画が承認された場合には、地方団体はもちろん政府各省庁を拘束するものとして、国は優先的にその事業に対しては財政措置を講ずることとするということであるのであります。しこうして、この負担率につきましても、高率とするよう措置願い、また単独事業に該当するものにつきましては優先的に起債の許可を行なうよう、別途資金ワクをやはり設定するということであるのであります。  第三点には、二十条に規定しておりまする企業に対する資金確保につきましても、国はその具体的な方法を明確にしていただきたい。こういうような措置を講ずることによって、従来この種の仕事が住々にして計画倒れになる、あるいは膨大な計画書各省のたなの上にちりをかぶって積み上げられているだけに終わるというようなことがなく、計画実施が確実に、以上申し上げましたような三点を明記することによって、実施が保証されるというふうに考えられるのであります。  それから、政府窓口の一本化をはかる必要があるというのであります。この法律実施にあたりましては、政府窓口がきわめて多岐に及んでおるのであります。六省にも及んでおるのでありまするが、本来こういう問題は主管省を定めて窓口を一本化しませんと、責任の所在がきわめて不明確になる。共同責任ということはかえって結果は共同無責任となりかねないというのが現状であるのであります。今まで私どものやって参った仕事自体がさよな実情にあるのであります。あるいはこの法案作成の過程から推測いたしまして、どこか一つ主管省を選ぶのはなかなか困難な実情は考えられますが、少なくとも主管省があるのと同じぐらいに各省庁間の連絡調整が緊密に行なわれるように、運営にあたって細心の配慮をお願い申し上げたい。また各省問連絡緊密化と関係いたしまして、この計画達成が容易になりますように、この計画に載っておるものにつきましては、たとえば農地の転用の許可とか、水利権許可とか、各省の権限に属しておる事項につきましては、優先的に許可がなされるようにこれを義務づける規定一つ入れていただいておくことが必要と考えるのであります。  また、地方団体実施機構といたしましては、事業庁という構想が適当であると考えるのであります。この計画実施にあたっての地方団体の組織といたしまして、かねて自治省が構想しておりました事業庁方式は、私ども現実にこの種事業を現場でやって参りました経験からいたしましても、この事業庁という考え方が適当な構想であると考えますので、御考慮をいただきたいと考えておるものであります。  また、地域の指定にあたりましては、総花的に流れることなく、ほんとうに国家百年の大計に立って、全国的視野において、客観的に見ても最も開発効果の高いものについて重点的に行なうべきであると考えるのであります。低開発地域と異なりまして、相当巨額の費用を要する事業でありますので、全国各府県に一つか二つを——総花的に、政治的にただ持っていくということでは、今までの国土開発とかいうようなことになりかねないのであります。この点につきまして、ほんとうに開発効果の高いものを重点的に、国家的な立場で御選定を願うことが肝要である、かように考えておるのであります。  これらに関連いたしまして、もう一つはこの法案実施に対応して、やはり既存の大都市の一そうの過大化を抑制する措置が必要であると考えるのであります。この法案の意図することを達成するためには、大都市におきます人口、産業のこれ以上の過度集中を抑制する積極的な施策を打ち出さなければならないと考えておるものであります。これにつきましては、工場立地の調査等に関する法律の一部改正によりまして、一定の地域における一定の工業立地については、事前に届出を求めて、その工業立地が適切でないと認めるときは、国が所要の勧告を行なうということになっておるのでありますが、これをさらに強力にするため、単なる勧告にとどまらず、制限規定を盛り込むことも必要でありましょうし、また首都圏の既成市街地における工業等の制限に関する法律も、この際この法案との関連において強化するような改正案が同時に用意されるべきであると考えておるものであります。  その他伝えられまする政府機関の一部を疎開させるというようなこと、あるいは大学等の疎開もこの際強力に推進すべきであると考えるものであります。何といたしましても大都市集中に対しまする強力な抑制なくしては、せっかくの新産業都市建設構想も、この方面からくずれてくるというおそれがあるのであります。  なお最後に、こまかくなるのでありますが、国鉄とかあるいは電電公社等の公共企業体も、この新産業都市建設計画に協力してもらうような義務規定を設けることが肝要であると存ずるのであります。また国有財産も、この新産業都市建設計画の必要に応じて貸し付けるとか、または低廉な価格で譲渡できるような法律規定をされたいのであります。これらはいずれも新市町村建設促進法には規定をされておるのでありまして、これが非常に役に立った過去の実績等もありますので、この点を御配慮願いたいと考えるのであります。  以上、この法案につきましての私の考え方を申し述べたのでありますが、最後に繰り返し申し上げたいことは、国の財政措置が、この法案のままでありますならば、新産業都市といっても、全くもって絵に描いたもちであり、私に限らず、地方団体の首長としてははなはだしく不満なものであると実は考えておるのであります。ぜひ私の申し上げました点を御勘案いただきまして、所要の改正を加えることによって、本案の制定の趣旨の実現をお願い申し上げたい。しかも私どもは、この法案の意図する実際の新産業都市建設現実に今実施をいたしておるのであります。なるほどこれは基本法という考え方もあると思うのでありますが、実際は、地方の大きな四苦八苦の負担のもとに、現在先行投資が行なわれつつあり、しかもこれが幾らがんばりましても、静岡があるいは富裕団体といわれておりますが、この力をもちましても、一つ計画に十年とか——今のテンポをもってしますれば、今の建設省なり通産省の水道とか、そうしたものの起債の手当なり、いろいろなことを考えていきますと、十年とか、あるいは十何年を要するのが実情であるのであります。しかも企業は先行して参っておるのであります。基本的な計画公共事業として先行しなければならないのに、むしろそれが逆にいっておる。私ども事業を遂行いたしますのに、財政的な積極的な措置がとられなければ、全然手も足も出ないというのが現況であるのであります。基本法に即応して、各種の今申し上げたような実際的な具体的な措置がとられなければならないということを、身をもって痛感いたしておるのであります。  以上申し上げまして、御参考に供した次第であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  13. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  次に、山形市長大久保伝藏君から御意見を伺うことにいたします。大久保君。
  14. 大久保伝藏

    ○大久保参考人 地域格差の是正を中核とする産業発展を期するための基盤確立上、都市の持つ役割はきわめて重大であり、かっこれが立地は緊急に決すべき時期に、新産業都市建設促進法案が持つ意義はきわめて重大でございます。従って、この法案の意図する目的に関しましては一応賛成でありますが、私はこの施行にあたりまして、重要なる付帯意見を申し述べ、先ほど静岡県知事からお申し出になりましたような点は、私ども意見でございます。しかし、積雪寒冷地帯というような都市の立場から二、三の点にしぼりまして強い要望を申し上げ、委員各位の法の御審議について、私の意見を申し述べたいと思うのであります。  まず賛成とする理由は、大ざっぱに申し上げますと、地方都市における雇用を増大して、そして子弟に職場を与えたいということでございます。今日御承知通り、市と称するものが五百五十六ございます。そのうちで二十万未満の都市は何と五百十五でございます。従って、二十万以上の都市はわずかに四十一しかございません。私は、東北内陸部の中心都市、山形市の市長でありますが、本年三月、具体的に申しますと、市内の中学校卒業者のうち就職を希望する者が七百名、そうして県外に就職する者は四五%に及んでおるのでございます。かりに山形県立の工業学校の卒業生は、本年一つの学校で三百名ございます。そのうち県内にとどまる者がわずかに二十数名でございます。こういう状態でございまして、山形市は昭和三十年から三十五年までの間に、山形県で最も人口が増加した市でありますけれども、県全体を見ますと、県では五カ年間で三万人の減少を見ておるのでございます。今日の山形県の人口はわずかに百三十二万八百人でありますから、こういう調子に人口が減るといたしますと、百九十九年たちますと、笑い話のようでありますが、人口ゼロになる、こういうことでございます。すなわち人口輸出県というのが山形県の立場でございます。従って、山形県といたしましては、農業県といわれておりますけれども、第二次産業の発達をわれわれは大いに希望いたしておるのでございます。それで先ほど申し上げました通り、全国五百五十六の市の中で山形市と大体同じようなところは、正確な数字はわかりませんけれども、まずまず四百程度でなかろうかと思っておるのでございます。いわゆる過大都市というものとは比較にならない状態に置かれておるのであります。従って、社会生活にも幾多の矛盾と欠陥が露呈しまして、こういう地域においてこの子供を送り出すということに、非常にわれわれ関心を覚えておるのでございます。そこで前段に申し上げました通り、地方都市における雇用を増大して子弟に職場を与えるというのが、一つのわれわれが賛成する理由でございます。  第二は、御承知通り、農業構造改善を進めるにあたりまして、地方都市に第二次産業振興して、離農者に雇用の場を与えなければならない、こういうことでございます。私は東北、北海道の農業会議の代表といたしましても、農業構造の改善は、経営規模の拡大や機械化を伴わなければならない今日、農業人口の一部の兼業化または離農という事態もやむを得ないと考えております。しかも簡単に祖先伝来の家を捨てて郷土を去るということは、農民感情としてはなかなか困難なことであり、しかも重要視すべきことであります。この点農民は、農業構造改善の必要性を是認しながらも、自己の将来に対して大きな不安を感じておるのであります。国の経済構造の大改革は、こそくな療法では不可能であります。いわば思い切って外科手術によらなければなりません。先ほど静岡県知事の申された通りでございます。しかし、メスの入れ方いかんによっては、多数の農民を混乱に陥れまして、大きな社会不安を招来するでございましょう。かって農民は戦時中あるいは戦後を通じまして、国民の食生活確保のために誠実と勤勉をもって田畑の耕作に励んだのでありまして、十年にしてその彼らの生活の基盤が大きくゆれ動いておるのでございます。今にして彼らの不安を静めるに国が誠意と努力をもってしなければ、正直者がばかを見るというなことになりはしないかと、私は非常に不安を覚えておるのでございます。  以上、子弟に職場を与え、農民に安定感を与えるためにも、地方発展の中核となるべき新産業都市建設の急務を痛感し、本法案に多大の期待をかけるものでございます。  次に、本法案に対する私どもの深く憂慮する点を申し述べたいと思うのでございます。ただいま静岡県知事の御指摘になった点などはもちろんそうでございます。その一つといたしまして、区域指定の要件に関してでございます。第五条第三項には「区域の指定は、工場の立地計画がすでに進行し、産業立地条件及び都市施設整備が緊急に必要である区域から順次しなければならない。」こうありまするが、「すでに進行し、」というのはどの程度をさすのであろうか、順次指定するというが、先ほど私が申し上げました農業地帯の中核都市は、はたしていつごろ取り上げられるのであろうか、これらの点に疑問なきを得ないのでございます。これまでの各省構想を承りますと、たとえば、東北にはまず仙台、塩釜、石巻を中心とした百万都市を作り、東北の経済発展の拠点とするといわれております。次に三十万ないし五十万の中規模産業都市を作ると解されますが、この方針は基本的には大へんけっこうでございます。しかしながら、その数が東北全体で一つあるいは二つにとどまりまして、しかも臨海地帯に限られるといたしますれば、農業構造改善を前にいたしまして不安におののいておる農民の大部分とは結びつきがたく、国が心の底から真剣に農業問題を考えているとすれば、まず農業地帯の中心地区はできるだけ早く指定するように十分留意を願いたい。もし雑な言葉で申しますれば、一体われわれはいつ産業都市に指定されるのか、五百五十六の市のうちで二十万未満の都市が五百十五あります。しかも積雪寒冷地帯、人的資源の輸出のみに努力しておるような状態に置かれているときに、われわれは一体どうなるのか、こういうことに非常に私どもは重大な関心を持つのでございます。  さらに同条第一項第四号には、「道路、鉄道、港湾等による輸送が便利であり、かつ、これらの施設整備が容易であること。」とありますが、これらの輸送のための施設は、むしろ先ほどの御指摘のように、国の責任によって確保さるべきであって、東北、北陸のごとく積雪寒冷地帯の未開発の原因の大部分が、道路、鉄道、教育、上下水道、環境衛生等の不備に帰せられる地域には、この際国の先行投資を十分に行なうことによって、第四号の規定をする条件を国みずからが整備すべきも・のであると確信いたすのでございます。  今回の法案につきまして、提案理由とその要旨説明書をいただいておるのでございますが、この説明は、「この対策は、既成大都市の過大都市化の誘因を減殺し、地方の産業や人口が既成の大都市へ流出するのを防いで、そこに定着させ、また新産業都市が中核となってその地方の開発に大きな波及的効果をもたらすという点で、地域格差是正の有効な手段たり得るものと考えるのであります。」と書いてございますが、現実の問題は、なかなかこれが足が地を離れておるという感でございます。こういう点をぜひ一つお考えをいただきたいと思うのであります。  第二点は、第十七条の施設整備についてであります。これまで国土総合開発法を初めとする一連の後進地域開発の施策においても、そのねらいとするところは地域格差の解消であり、そのための具体的施策を明記しております。それにもかかわらず、大都市と地方都市の格差はますます激しいものがあり、今日過大都市の問題さえ起こっているのは、これらの施策が不徹底であり、いわゆる仏作って魂を入れなかったのではなかろうか、こう考えるのでございます。そこで、後進地域における新産業都市建設促進をはかるには、思い切った国の財政資金を、すなわち全額国庫負担または高率補助を行なうべきものであろうと考えます。  次に、第二十一条の地方税の不均一課税に伴う措置の対象となる土地、建物並びに機械等の基準については、全国画一的ではなく、指定区域の開発の度合いに応じて、開発のおくれている地域には基準を低くし、地区の中小企業もこの恩恵にあずかって発展し得るよう、きめのこまかい配慮が必要であろうと思うのでございます。  以上私は、東北の未開発地域の特に農業地帯の中心都市の市長といたしましての立場から、三点につき意見を申し上げ、本法案のすみやかなる具現を望むものでございます。  最後に私は、産業雇用適正配置に関する法律案について申し述べたいと思います。  この法案趣旨はまことにけっこうであります。立案に当たられた方々の御努力に対しましては、深い敬意をささぐるものであります。ただ、このような細部にわたっての施策というものは、ともすれば重点を失っておる、いわば総花的国土開発で、また、これを実施するにつきましては、国の財政負担能力が非常なるものであろうと考えられます。その実現は、これこそ私は目がどこにあるかわからないようなことになりはせぬか。これまでの後進地域開発の諸施策において私どもが抱いた幻滅の感を免れ得ないのではないかという疑問を禁じ得ません。しかし、この趣旨につきましては、新産業都市建設促進法案の御審議に際しましても、十分高く評価されて、参考とされるべきものだろうと考える次第でございます。  いずれにいたしましても、この法案というものをいかに具現するかということは、相当いろいろの角度から検討されるべきものだろう、こう存じます。ことに、温暖地方、積雪寒冷地帯、二十万未満の都市、こういうものがこの新産業都市建設促進法案とは非常に遠いもののごとく考えられますが、しかし、一段々々やっていただかなければならぬことでありまして、自分の都市がひっかからないからといって、他の都市のひっかかるということに対してあえてそねみを持つようなことは全然ございません。徐々にやるべきだろうと思いますけれども、しかし、かえって格差を増大せしめるようなことのなきように、いろいろの欠点のあるところは、これを一つ是正していただきたいものだと存ずるのでございます。ことに、人的資源というようなもののみを移出する県に関しましては特段の御配慮を賜わりたい、こう存ずる次第でございます。(拍手)
  15. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  次に、東播地方労働組合連合会会長の小田英一君から御意見を伺うことにいたします。小田英一君。
  16. 小田英一

    小田参考人 ただいま御審議されております法律案につきまして、本日兵庫県の東播地方労働組合連合会会長として出て参りました小田であります。  今回政府におかれましては、大都市における人口及び産業の過度の集中を防止し、全国的な視野に立った適正な産業配置を考え、地方に相当規模による産業都市建設することによって、地域格差の是正と地域開発を含めて経済の発展をはかるために新産業都市建設促進法案なるものが提案されておりますが、この法案を一読いたしまして、労働者の一員として、なおまた労働運動を進めている立場から、率直に感じたままを述べさせていただきたいと思うわけであります。  今日、新聞の社会面を毎日のようににぎわしている大都市における交通地獄、火災、犯罪等を見ますときに、この種の問題が何とかならないものだろうかと四六時中神経をとがらせながら、生活難を切り抜けるために働き続けているのが私たちの姿であります。大都会に行けば諸施設が完備しているし、大企業があるから生活は安定すると考え、地方から労働者が集中してくる。労働力が集中するためにあらゆる産業が興って参ります。産業発展をすればますます人口がふえていく。以上のような悪循環によりまして、今日のような大都市、マンモス都市ができ、社会面をにぎわしておるものと考えるものであります。私の住んでおります加古川市からも毎日多数の労働者が京阪神地方にすし詰めの列車、電車で苦労しながら通勤をしております。そのことは、地方にある会社に勤めるよりも都会の方が条件がよいからであります。このまま高度成長が続くならば、地域格差はいよいよ拡大をし、大都市は膨張して参り、経済の不均衡を来たしてくるものと思います。今日ほど国の思い切った行政措置の必要なときはないと思うわけであります。  政府提案によりますれば、区域の指定を受けようとする場合は、関係市町村は内閣に申請をしなければならないということになっております。なおまた完全に指定をされるには、新産業都市建設審議会の議を経なければなりません。このような消極的な考えでなく、立地条件等を考慮し、政府において開発計画を立て、全国的に産業経済の発展がはかられ労働者の生活が安定するようお願いをいたす次第であります。  現在私どもの地方で起きております状態を若干御説明申し上げ、皆さん方の御参考にしていただきたいと考える次第であります。  昭和三十二年に播磨臨海工業地帯として指定されて以来、急速に工場誘致が進められて参り、農地の転用がされておるわけであります。そのために土地ブローカーが暗踏し、地価はものすごい勢いで値上がりを示しております。工場が建設されますと、当然労働力が必要になって参ります。そのためには住宅の問題、教育、ガス、上下水道の完備、環境衛生の問題等が十分でなければなりません。昨年以来、私たちは住宅の問題を解決するために、公営住宅の不足から、労働者住宅協会による住宅団地を加古川市平岡町に建設を進めておりますが、これに着手するときに問題になりましたのは、土地の購入であります。抵所得労働者の住宅難緩和のためにこの建設を考えたわけでありますが、そのためには安い値段で分譲をしなければならない使命を帯びておるわけであります。農民の方にはその趣旨を理解してもらいましたが、たまたま隣接地に大企業の工場が建設されることになりました。地価が競合し、会社と同値段で買い上げなければならない羽目に陥って参りました。住宅ができれば——現在分譲を六十一戸いたしたわけでありますが、これを買い上げできる方は月収四万円以上の高所得者でなければ分譲できないような状態であります。加古川職業安定所管内では現在大小取りまぜて七十数社の誘致が行なわれ、昭和四十年ころより各社とも操業が行なわれる予定であります。そうすれば現在の約二倍の労働力が必要になって参ります。管内の新規労働力のみではとうていまかない切れません。労働力の需給を考える場合、国の抜本的な政策によらなければ、条件のよい阪神地方に人が集まって行ってしまいます。  現在加古川市に誘致された若干の工場のために、三十五年度以来地元負担として約一億の資金が道路の改修、新設等に使用されております。そのために住民は税金の増徴なり税外負担の増なりで生活はますます苦しくなって参っております。  今日私どもは大幅賃上げと全国一律八千円の最賃制の確立と、播磨地方から一万以下の労働者をなくすための運動を展開いたしております。大企業ではすでに中卒で初任給一万円以上になっております。中小企業ではこういう事情でありますので、地元から労働力を求めるわけにはいきませんので、遠く、ただいまおっしゃっておられました山形の方なり九州地方からやむなく三十五年度で六五%もの労働力を求めておるわけであります。  以上申し述べました中で、政府提案によります法案を進められる場合に、静岡県の知事さんもおっしゃっておられましたが、やはり財政の問題なり、私ども労働者の側からいたしますれば、厚生福利施設の問題等がやはり重点的に考えられるものであります。  最後に一言申し上げておきたいのは、私どもの地方でもすでに新しい産業都市建設に向かっていろいろな施策が進められておるわけでありますが、これらの一般行政を阻害することなく、むしろ育成強化する立場から、産業をささえている労働者の立場をまず安定させ、経済の発展に見合うべく地方都市建設のために積極的な政策を望むものであります。  以上、愚見を述べさせていただきましたが、ただいまの趣旨から、政府提案になっております今回の法案については、今直ちに私どもが賛意を表せるような状態でない。なおまた産業雇用適正配置に関する法律案に盛られました、特に私たちの立場を、都市建設する場合に擁護するものを十分にお考え下さることを切望いたしまして、私の意見といたす次第であります。(拍手)
  17. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。これにて参考人各位の御意見は終わりました。     —————————————
  18. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ただいまの参考人の御意見に対して質疑の通告がありますので、これを許します。  なお、齋藏静岡県知事より、県会開会中につき、なるべく早く失礼をいたしたいとの申し出がありますので、最初に齋藏参考人に対する質疑を行なっていただきたいと存じます。  田中武夫君。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは他の参考人に対する質疑はあとにいたしまして、他の委員からも齋藤参考人に御質問があると思いますから、その点だけを先にいたします。  今、齋藤参考人は、特に第二十条の資金確保、こういうことにつきまして何を規定しておるかわからぬ、こういうように言われたわけであります。まことに私も同感でありまして、国は法律を次々と作っていくけれども、金を出そうとはしないんです。そしてそのすべてを地方に押しつける、こういうのが今日の国のやり方であります。  そこで、この政府案に対してわれわれが提出しておりまする産業雇用の再配置法は、御承知のように、大中小の工場、産業拠点を設けて、大拠点に対しては国の責任において整備する、そういうようにいたしておるのでありまするが、そういうような考え方についてどういうようなお考えを持っておられるか、その点を一つお伺いいたします。  さらにもう一点は、先ほどの御意見の中にもありましたが、大都市のこれ以上の過大化を抑制する、こういうことで二、三の御意見がございました。その中で産業立地調査法の改正という意見もございましたが、実は御承知と思いますが、昨年当委員会におきまして産業立地調査法を改正いたしたのであります。そのとき私はこの題目をも変更して、産業適正配置法とでも申しますか、そういうものにして、ただ消極的な勧告でなく、積極的に産業事業場にそこへ行け、こういったような指示ができるように持っていきたい、こういう意見を述べたのです。そういうような点について、先ほど産業立地調査法について御意見がありましたが、そういうように改正していきたいというふうに考えておる点について、何か御意見がありましたらお伺いいたします。  さらに、これは市長さんにもお伺いしたいと思うのですが、知事さんという立場で、実は二十一条の地方税の不均一課税に伴う措置といたしまして、工場誘致に対して特別減税を行なったときには、地方交付金においてカバーをしてやろう、こういう趣旨ですが、これは前の低開発地域開発促進法にも同じような趣旨があったわけであります。私は地方交付金の本質からいって、ちょっとおかしいんじゃないか、地方交付金はそういうような性格のものでないのだという考え方を持っておりますが、地方税を取られると申しますが、課せられておる立場から、あるいは地方交付金政府からもらっておる立場からいって、地方交付金の性格はどうあるべきか、こういう点について御意見があったら承りたいと思います。
  20. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 お答え申し上げます。ただいまの、特に二十条の、進出企業に対する資金のあっせん、資金確保ということを地方団体に義務づけてある規定、こういう規定は、私ども法案自体——今たくさんの法案がありますが、初めてであるのであります。政府が、財政投融資なりあるいは日銀を監督する立場でいろいろな強力な指導をいたしておる実情は私ども承知をいたしておるのでありまするが、知事という立場で資金確保をはかるというふうなことは、全く考えられない。もちろん地方銀行もありますので、地方銀行に対して私ども要請はいたし、行政的な指導ということは、これはもうできるのでありまするが、資金確保法律でもって義務づけるということは、何を意図しておるか、その意図が私には了解できないということであるのであります。私ども地方団体、特に静岡県は富裕団体、こういうことをいわれておるのでありまするが、決して富裕団体ではないのであります。比較して富裕というのでありまして、決して豊かなものではないのであります。私ども、地方の万般の仕事をいたしまする持ち前の、ほんとうの固有の資金というものは、実は二割くらいしかないのであります。私のところで四百億の予算を組みますが、六十七、八億——知事が考えておる、地方の県会議員また地方住民のほんとうの意図するところ、中央のひもつきでない事業、特色を出していく仕事、教育から衛生から道路から、あらゆるものに対して、いわゆる単独事業というものは二割しかないのであります。いわゆる府県の財政というものは、結局二割自治である。憲法に保障されておる、自治といっておりまするが、実質的には二割が静岡県においてもほんとうの意味の自治である。いわゆる二割自治とはこれをいっておるのであります。従って、資金確保などは私どもとうてい考えられないし、これらの仕事を進めていく上におきましても、従来の公共事業なら何パーセントとか一しかもこれは全国的に分けられておる。道路なら五カ年計画ですでにきまっておるのであります。それからやはり集中的に、しかも急角度に進歩していくことを要請されるこれらの新産業都市にどれくらい割り当てられるかというと、少しの配慮もないのであります。この法律が出ても、訓示的な規定だけで、そこには何もないというのが実情でありますので、私は、この法律に当然伴ってくる個々の施策なりというものが、農業基本法における各種法案がこれにつながって出てくると同様に、これを確保していく条文なり法案というものが当然付属してこなければ、これはムードだけを出していくにすぎないので、こういう構想なんだということを一応、まあ時勢も時勢でありますので、所得倍増とか、そういう一つの形で、しかも地域格差ということを国民から叫ばれておるので、これを一つカバーしていこうということでただムードを出していく、構想をただ打ち出したということで、今の一連のこの法案に現われた条項では、何らそれを進めていく具体的措置というものは一つもされておらぬというところに、趣旨はけっこうであるが、実施段階において全く従来とは何ら変わらぬということが御質問の第一点であり、私もさように考えております。  それから、交付税の問題でありまするが、自治省等の考え方、特に中央の考え方は、企業が来たからこれに特別減免をするということは本来の姿ではないんだ、減免をせずに、むしろその企業が来ることによっていろいろ要請される各般の整備というものを積極的にやっていくべきだということを、自治省を初め中央の政府機関では言っておるのであります。私はその通りであると思うのです。考え方としてはその通りであるが、現実はさようなものではないのであります。私どもももちろん企業が来ることによって雇用が増大し、地域社会の大きなレベル・アップになるのでありまするから、みずから耐え得るものは積極的にこれは出しても誘致すべきである、あるいは企業の大きな負担の一部について公共事業等あるいは単独事業等、これをプラスする意味において積極的に金を出し、あるいは負担すべき税の一部をこれは負けてやる、一年なら一年、二年なら二年ということで減免していくということは私は現実の問題としては当然な行政措置である、こういうように考えておるのでありまするが、割り切った建前からいって、理屈からいってそうあるべきではないか、企業企業負担すればいいんだ、負けてやらぬでもいいんだ、従って負けてやる部分については基準財政収入には見ないのだ、見る分については、今度は法案を作った手前もあるから多少見てやれというような規定がありますが、こういう考え方でこの大きな国家的事業というものはとうていやり得るものではないと思うのです。従って私は、低開発地域についての規定がありまするが、あれもきわめて不徹底である、すべきことは、やはり同じく国家的な大きな使命を持った新産業都市建設であるならば、地方において減免措置を一これは非常に行き過ぎた問題は中央で十分審査すればいいのでありまするから、当然考えられるべき減免については交付税でもって措置すべきであるということは交付税の趣旨からいっても当然であるというふうに、全く御意見通り考え方を持っております。むしろ積極的にそうしたものは交付税でもってカバーしていくべきである、かように私は考えてをります。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一点、答弁が落ちたのですが、実は本日は政府案のみでなく、われわれ社会党の提出いたしております工場及び雇用の再配置法についても御意見を聞かしていただきたい、このように実は思っておったわけなんですが、その点に触れられなかったので、先ほどちょっと申し上げたのですが、大体の考え方法案要旨で言っておると思いますが、産業立地拠点を大中小に分けまして、大拠点については国が全額を負担して、国の責任においてやるんだ、こういう考え方を打ち出しておるのですが、そういうような点について何か御意見があったら聞かしていただきたい。
  22. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 落としましたのですが、私も地方の大きな前進になることでありまするし、地方も現実企業進出によって取得すべき税というものの増収は当然考えられるので、地方においてできるだけのやはり負債なり、起債なりそういう借金をいたしまして、これの促進に寄与をしていかなければならぬ。またできるだけの力を地方自体も出すべきである。従って、大都市建設、大中小を分けてのいわゆる大、これは国でやるべきだというふうには考えております。もちろん国で十分な措置をすべきであろうが、地方としてもできるだけの私は措置をすべきである。各段階においてはいろいろな御意見もあろうと思いますが、実は私は新産業都市の方の法案について勉強をいたして参りましたので、その方の勉強はあまりやっておりませんので、御了承を願いたいと思います。
  23. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 齋藤さんに御質疑の方はございませんか。
  24. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それでは二、三齋藤さんにお伺いいたしたいと思うのです。齋藤さんも御指摘になっておりましたけれども、私どもはこの法案はこのままの形じゃ困ると思います。と申しますのは、政府の見解は、これは基本法だという見解であります。それからあとの具体的な実施法は逐次出していくのだということでありますけれども、ともするとこの法案ができますと、あとは大体において政令でまかせる。つまり中央のお役人にまかせるということになりがちであります。これでは私はこの法案実施された場合におきましては、弊害はうんと起こすけれども、どっちにもプラスにならぬ、こう思うのであります。政府としては、もしこれを基本法というほんとうに考えがあるならば、ちょうど農業基本法等の場合に行なわれましたように、これと連関のある、いわゆる具体的な実施法を、必要なものは当然これを同時に出して、一緒に審議するというのがほんとうの態度だと思うのです。こういう点について斎藤さんはどう思われるか。それがついておらない限り、このままの法案をこのままで多少の修正等をして通しても、これはあとで国としても大へんなことになるし、特に地方団体や地方住民、またそういうところへ行った企業等もえらい目にあうというのが実情になろうかと思います。すでに現在地方へ出ていった企業が、公共投資が伴わないがために、道路ができないとかなんとか言って、工場のいわゆる能率を発揮できないというところがぽつぽつあちこちに出始めておるのであります。こういう段階において今お話のありましたように単なるムード作りみたいな、こういうためにだけ役に立つこういう法律を作るということは、私は非常に弊害が多いというふうに思います。が、この点はどう思うかという点が一点です。
  25. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 先ほども触れておいたのでありまするが、この法案だけでは、全く無意味とは私は申し上げません、ムード作りには一つの役割をすると思います、構想はこういう構想なんだという政府の意図は私も了承するのでありまするが、これが少なくとも新産業都市建設促進法だということには、まことに私も受け取りかねるのであります。どこに促進の条項があるかということである。資金を世話をしなければならぬとか、努めなければならぬとかいうようなことを言っておるのでありまして、何ら具体的な手段、方法について規定がないのであります。私は絵に描いたぼたもちとは、これを言うのではないかと思います。ないよりもましであります。ないよりもましでありまするが、おっしゃる通り一つ一つ基本法に関連してやはり実施法というものが打ち出されてこなければ、また少なくとも現実に進んでおるのであります、これからぼちぼち考えてやるということの段階ではないのであります。もうすでにどんどん行なっておるのであります。その事実を、私は現実に即応してこういうふうな法律が出るならば、同時に用意さるべき一連の施策というものが少なくとも出てこなければならぬ、同時に審議さるべきでなければならぬ、これはもう全く久保田委員の仰せの通りであります。ぜひ一つそういうふうに御促進を願いたいと思うのであります。
  26. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点、この法案基礎になっています考えは、これは新産業都市ですから、どうしても産業が中心になるわけであります。またそうでなければ意味をなさぬ法案であります。その企業がどこへ行くかということについて、企業を呼んでくることについては、これは知事なり市町村長に責任を負わしているわけですね。私は、こんなことは、これからの産業情勢から見てできる仕事ではないというふうに思うのです。と申しますのは、現在まで日本で始めておりまするのは、御承知通りコンビナートが約十一カ所です。いわゆる工業団地が約百カ所です。こういうものが現在すでに始められておるのであります。これらはいずれも現在までの段階では、ほとんどが企業そのもののイニシアチブによって行なわれておるのであります。しかし、これからは国際的な環境その他を考えてみた場合において、これに何らか大きな意味での法制的な規制というほどではないにいたしましても、何らかの規制を加えて、そしてこれを効果的にやっていかなければ、これは国際的にも太刀打ちのできないというふうな、内外情勢がそうなってきておるというのが、一つの新しい情勢です。  それからもう一つは、工業の構成自体が、御承知通り、大体において鉄と石油と電気、この三つを中心にして重化学工業ないしはこれと連関する工業というもので、一地帯に大きなコンビナートを作るというのが世界的な大勢であります。それに日本の特殊事情としてのいわゆる原材料あるいはエネルギー等を海外から持ってくる、こういうことがひっかかりまして、臨海でなければだめだ、こういうふうなことが問題になるわけであります。こういう新しい産業の動向といわゆる地方の所得格差解消という仕事とを、そういう条件を整えておるところはともあれ、今山形の市長さんのお話のありましたようなところであって、これは次元といいますか、性格の違うところである、これを一緒くたにこういうふうにしてやって、しかもその責任を知事に背負わせる、こういうこの法律基本的な考えは、私は必ずうまくいかないというふうに思うわうわけです。こういう点についていろいろ手がけておられるようですが、どんなふうにお考えになるか、この点も一つお伺いいたしたいと思う。
  27. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 この点は非常にむずかしい問題であると私は思うのであります。現在の国のとっておられる方針と  いいますか、しかも企業の自由というものが保障されておる現在の法制下におきましては、何としても企業自体の選ぶところにまかせるという建前が原則であるように考えられるであります。従いまして、私は法制的な措置として資本導入の措置が欠けておるのではなかろうか、その点を御指摘と存じますが、もう一つ進んで、新産業都市建設ということを円滑にやるためには、やはり政府措置として資本導入に何らかの積極的な施策というものが立てられなければならぬ。現在の経済の建前からいいまして、企業の自由と企業の選択にまかせておるのが現状であると思うのです。従いまして、できるならば、資本導入の措置一つ積極的に施策として打たれてほしい。そういたしますれば、ここが臨海工業地として石油コンビナートに適当な土地であるというふうなところに、やはりそういうものを導入する政府措置を打っていただきたい。製鉄なら製鉄に適当な土地であるならば、その土地を一応適地として、そういう企業進出、導入について政府として法制的あるいは行政的な施策というものをとっていただく、そうするならば非常にスムーズにいくというふうに私は考えております。
  28. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう二点だけお伺いいたします。  その次の大きな基本的な問題としましては、これは私個人の考えですが、こういう問題は、いろいろの点から見て、国自体がどこをいわゆる新産業都市に指定するか、どういうものを建設するか、そこにどういう企業を誘導していくかということをきめて、そうして実施責任も国が持つ、それに対して、知事なり市町村長なり、こういうものが協力をするという形がなければ、これが円滑なる実施というものはできないというふうに思うのであります。もちろんその過程においては、地方の知事なり市町村長なりあるいは議会なり住民の意向を十分に入れなければならぬと思います。そういう観点から見て、この法案はさか立ちしていやしないか。知事が申請して、国がこれを認可してやる、しかも基本方針なり何なりは国が与える、しかも国が責任を持たない、こういう行き方では、これはまさに本末転倒ではないかと思うのであります。  そこで、これは仮定の問題でありますが、かりに新産業都市について国がみずから責任を持って実施するということになりました場合に、知事なり市町村長なり地方団体はどういう程度に行政上これに協力したらいいかということと、その場合において県なり市町村なりがどの程度の財政負担をするのが適当か。もっとはっきりいえば、現在いろいろな事業についての補助金がありますが、それらのうち新産業都市を作っていくために必要な基本的な施設については、これは国が全額を持ってやるのが当然である。付随する町作りに連関する問題については、これは従来とは多少違った法律の適用なり何なりする。そうして地方の団体の財政負担をこのために——特にその場合における住民に対する生活投資といいますか、いわゆる社会福祉的な投資を地方団体の創意によって相当やれるという余地を残すような国の負担方法というものをやることがぜひ必要だというふうに思うのですが、そういう点について、内容的に見てどの程度の責任を国が持ったらいいか。どの程度は県なり市町村が責任を持つのか。そうしてそれを統合する場合のコンビネーションというか、発言権というか、そういうことについて、国がやる場合において、地方団体がどの程度それに参与でき、あるいは発言のできる機会を確保し得るか。こういう問題についてお考えがありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  29. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 非常にむづかしい問題でありますが、国が責任を持って計画実施するということは、むしろ実情に即さぬのではなかろうか。むしろ地方の自治体、特に府県知事、関係市町村長というものがこの実施責任を持って一向差しつかえない。ただこの際、これらを実施するについての国と地方との負担分任、責任の分野というものをもう少し特別に措置しておくべきではなかろうか。もちろん公共事業においては三分の一が地方負担、道路によっては、港湾によってはいろいろな区別がありますが、少なくとも新産業都市建設に関連する各種公共施策というものについては、やはり国と地方との負担というもの、責任分野というものを法律ではっきりと作っておくということが建前であろうと思うのです。将来大きな税源にもなりますし、大きな地方の開発になるのでありますから、私ども地方としても十分負担をしていく用意を持つものでありますが、現在の地方の財政制度のもとにおきましては、決して大きな負担をいたしていくわけには参らぬのであります。ちょうど私どものところへ石油コンビナート等が進出してくるという話がございまして、会社自体は最終的な意思決定はいたしておるのでありますが、いろいろの関係上まだ現実の問題になって着手いたしておりませんが、その間におきまして、私ども工業用水とかいろいろなものを今積極的に展開いたしておるのであります。ここに投ぜられる公共投資なんというのは、大体百二、三十億実は要るのであります。それに、十年かかったとしても一年に大体十何億が出ていかなければならぬ。こんな金は府県には一つもないのであります。どうするかというと、将来この企業から入ってくるであろう固定資産税その他の税金を一応考えまして、これを五年なら五年免税するという建前で、その分を一応企業から借りてくるのであります。もちろん八分五厘なら八分五厘の利子をつけて借りてきて、これの先行投資を同時にいたしていくという苦しい工夫をいたしておるのであります。また、県がこれだけの金を金融機関から借りてこようと思いましても、自治省の許可なくしては一銭も借りられないのが現在の地方財政の建前になっておる、やみ金融というものは地方団体には一銭もないのであります。従って、私ども立てかえてやっていくというふうな状態であります。私もこれは一向差しつかえないと思っております。地域の大きな開発のための、将来大きく伸びていく、将来の大きな税というものを担保にして投資していくことは、一向差しつかえない。従って、経費を国ですべて持てという建前には私は同調できないのでありますが、はっきりとこういう施設については三分の一なりあるいは三分の二なりというものは政府で出すのだ、新産業都市建設各種施設についてはこういうふうに出すのだということを、責任を明らかにする規定をこの際やはりはっきりと作っていただくということが先決であろう、そうでなければとてもこの仕事現実にやっていけないというのが実情である、かように考えております。
  30. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 もう一点は、齋藤さんは、地方団体特に県がこの事業実施するについては県に事業部というものを作ってやったらいいじゃないか、大体こういうお考えのようでありまして、先ほど御提案しておられますが、これも大へんおもしろい案だと思います。ただ、今一般には公社ないしは公団という形で大体この事業をやろうというのが、国の規制はありませんけれども法律はないが、そういうものであります。これで私どもが一番心配されますのは、公社なり公団というものはどれだけの財政責任が持てるのか、これと地方団体の関係がきわめて不明確であります。すべてがうまくいって、たとえば工場誘致ができて、そこに計画通り企業が出てきて、そして一たん投資をしたものが計画通りに回収ができれば、これはよろしゅうございます。しかし、そうでない場合には、金額が大きいだけに非常にいろいろの弊害が出てきて、その結果、これは結局知らぬ顔はできませんから、私は地方団体なり何なりで負担しなければならぬというふうなことになろうかと思うのであります。そうなってくれば、そのはね返りとして、当然地方の福利厚生といいますか、そういう方面のサービス業務がぐんぐん落ちるということにならざるを得ないと思うのでありますが、かといってあなたのおっしゃる事業部という構想は、単なる起債で済むのか、あるいは民間資本もこれにある程度導入してやられるようなシステムになるのか、そこのところが非常に問題だと思うのですが、この辺についてはどういうお考えですか、この点も一つ聞かしてもらいたい。
  31. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 公社、公団の問題でございますか、中央にそういうものを作るという……。
  32. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 いや、地方です。
  33. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 地方の——私の考え方はかようなことであります。私の方にも公社その他が二つばかりあるのであります。これは現在の地方の自治体におきましては、起債をするには一々自治省に許可を得なければならない。しかも少ないワクでもういろいろな競争をやって、ようやく割り当てられるので、必要資金の五分の一とか六分の一とか与えられるのがせいぜいであるのであります。要するに、自治法の手前、全然融資の道が今はないのであります。従って、県にかわるべきその事業の執行機関として公社というようなものを作っていく。これなら公社の名前で銀行とか民間資本からそういう金を借りてくることができます。また県の職員はほとんど出してありますが、県の監督下に、別に、県の別働機関で実施をさしております。私は事業庁というのは、そうでなくて県の機構として——今静岡県なら八部なら八部というものしか作ることができない。自治法でちゃんと部の制限ができておる。二百万以上は何部とか百五十万以下は何部であるというふうに部の設置も縛られておるのであります。しかも官庁の機構で、小さいながらも府県にいきましても一つ一つ中央へみんな各部がつながっておるのであります。これを一応切って別働隊として公社を作るか、それともはっきりとした事業庁というもを県庁とか地方機構のうちに確立をして事業実施に当たっていく。道路は土木部とか、あるいは上下水は衛生部とか、こういうふうに分かれておるのを一つにまとめて事業庁のような構想でこれを進めていくのが適当ではなかろうか。その一つの道路だとかあるいは一つの埋め立てだとかいうものは公社組織でいいと思いますが、全体を進めていく公社組織とは私は考えておらない。むしろ官庁機構として事業部というものをしっかり確立をして進めていくべきだ、かように考えております。
  34. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今の点は、公社、公団は要するに民間資本なり何なりを入れるわけですから、事業が、うまくピントが合って、テンポが合って計画通りいけばいいが、いかない場合のしりぬぐいをどうするかという点を実はまだ聞きたかったわけです。それからもう一つ、大体今までのコンビナートその他の経験から見ますと、最初行く場合は、その地方の労働力を十分優先的に確保する、あるいは使う、こういうことであっても、実際にはなかなかそういっていないという場合が、その労働条件等も必ずしもよくはないというのが、今までの実情です。最近は労働力が非常に少なくなりましたから多少事情は変わってきましたけれども、その地方の住民からいえば、たとえば百姓なり漁師をやっておる者が、今度工場ができる、あるいはそういう大きなコンビナートができる、そのために百姓がやれなくなった、あるいは漁師がやれなくなったという場合には、そこへできる企業に——これは年令的にもいろいろ問題はありますけれども、少なくとも条件が合ったときは、しかも特別にサボるとかなんとかいうことでない場合は、必ず就職ができるのだという保証をどこかでしてやる。その保証を具体的に生かすための職業訓練等もするという保証がないと、なかなかこの事業はうまくいかないと思うのであります。ところが、現在のところは大体行政官庁と進出会社とが一応協定をしますけれども、この実施を保証するところはどこもないのが実態であります。だからそんなことを約束しても、いざというときになってそれぞれの人間が、会社に雇ってくれと言っても、実際には雇われないというのが実情であります。この就職保証の方法、それに即応する技術訓練の方法をどういうふうにして現地々々で——県なり市なり、まとまったものとしては県、市町村がやるよりほかにないと思いますが、これを何らかはっきりする措置というものが私はぜひ必要だというふうに思うのですが、この点についてはどんなふうにお考えになりますか。
  35. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 先ほどの公社の問題でありますが、公社をやるにつけても、公社自体は何らの信用力はないのであります。結局県なり当該地方団体の全面的な保証をするという議会の議決があって初めて公社の信用力がつくのでありますから、これは非常に大きな問題であると思う。大きな仕事をするにつけ、やはり大きな責任を公社自体でなく県自体がかぶってしまうということで、この限度なりを私どもは非常に憂慮いたして、現実になるべく少なくしてやろう、これだけは現地としては間違いない、しかし、こういう方法でも使わないとなかなか急テンポな開発にはついていけない、むしろ先行しなければならないのにとてもそれはできない、しかも現在の情勢では、官庁としてはいろいろな制約がありますのでなかなかできないから、こういう方法が適当な事業については必要である、その裏づけは府県である、府県の一切の信用と保証においてこういうものは成り立つ、従って慎重にこれをしなければならぬ、かように考えております。  それから新しい進出工場につきまして、そこに土地が取得されれば当然離農しなければならぬ。あるいは港湾にいろいろな施設ができますれば、漁業の形態が変わって参りますし、漁業から離れて新しく営農なり、漁業者の行く場を考えなければならぬ。しかも最近における進出工場というものは、非常に高度の技術が必要であります。しかもオートメーション化している。従って比較的広大な土地は要りますが、人間は比較的少ない、雇用が非常に少ない。高等学校を出たとか中学卒などの若い者ならばちょっとした訓練で十分通用いたしますが、困るのは中高年令層です。これをどういうふうに適応させていくかということに、現実の問題として私ども非常に若労しております。従って、三十代、四十代くらいは一応再教育、再訓練ということを短期でもしていかなければならぬ。それは会社の負担において職業訓練所に収容して、一年なり半年なり給与を与えつつ職業訓練をしていかなければならぬ。そうして少しでも適応させて会社に出していかなければならぬ。こういうことで現在四千万円とか五千万円とかかけて職業訓練所を新設しつつあるのであります。これでもなかなか思うように吸収されないのが、中高年令層における離職者と会社との受け入れの問題であります。これには私ども非常に若労しておりますが、第一次産業だけでなく、二次、三次の関連産業等に極力収容するようなあっせんを強力にいたしておる次第であります。もちろん契約には当初から、離職する者については雇用は完全にとるという約束でありますが、何といっても中高年令層以上は雇用ができないというのが間々ある現実であります。それならば、生業保証をどうするか。営農を続けていく代替地等を求めていかなければならぬというふうに、いろいろなことを私ども考えておるのでありますが、これはおっしゃる通りなかなか重大な問題であり、解決いたしておりません。部分的には非常に不合理なものも出ておりますし、現実には処置をいたしかねておるところもあるのでありますが、逐次これには工夫をして、国にもこういう職業訓練とかいろいろな施設についての積極的な助成をお願いしなければならぬ。こういうことが裏づけられて初めて地域全体の各種の施策がほんとうに実施できる、こういうことが望ましいことである、かように考えております。
  36. 松平忠久

    ○松平委員 齋藤参考人に伺いたいと思いますが、先ほど政府窓口を一本化してくれというようなお話があったわけです。この法律の所管官庁は経企庁でやっておるわけでありますが、しかし、今のような法案の条項から見ますと、窓口はなるほど経企庁であるかもしれぬけれども、実際は建設省なりあるいは農林省にお百度を踏まなければならぬ、こういうことになるのじゃないかと私は思うのです。従って、窓口を一本にしてくれということは、むしろ首都圏整備委員会のようないわゆる行政委員会か何かである程度きめられるものはきまるんだ、こういうようなことにしないとだめじゃないかと思うのです。その点についてはどのようにお考えになっておるかということが第一点であります。  それから第二点は、新産業都市というものができますれば、その辺の労働力雇用というものは近県の農業県からやはり持ってくるということにならざるを得ない。そういたしますと、さっき山形の市長さんが言われた通り、だんだんと付近の農業県の方の人口が減ってしまう、こういうような結果になるおそれがあると思う。従って、これは先ほど齋藤知事も申されましたけれども、大都市、マンモス都市に現在あるものを押える、のみならず、むしろ今あるものをある程度地方に移す、そういうような考え方にならぬと格差がますます出てきちゃうのじゃないか、こういうように私たちは考えておると同時に、現在のマンモス都市における生活面におけるいろいろな困難というものもなかなか解消できない。であるがゆえに、たとえば静岡県なら静岡県に新産業都市ができるという場合には、東京の一部の工場を移す、あるいは能率の悪いこっちの工場をやめて新しい工場を作る、こういうような方向でいかなければならないのじゃないか。そういたしますと、産業に関する立地条件工業立地条件の調査に関する法律をもう少し規制を強くしてもらいたいという意見があったのですが、イギリスのごときはいわゆる産業配置法というようなものを考えて、そして適正配置というものをそこである程度規制できるようにしていって、同時に新産業都市を育成する、こういう二つのものがあわせ行なわれていかなければ、地域格差というものはますます出てしまうのじゃないか、こういうふうな感じを持つのです。この二つについて御意見を伺いたいと思います。
  37. 齋藤壽夫

    齋藤参考人 窓口の一本化でありますが、地方行政をあずかっております知事といたしましては、それが今までの仕事をやるにつけてもいつも切望しておる一つであります。ましてや、こういう法律が出まして、六省にもまたがって仕事をするということでありますれば、これの調整等に本省でも御苦労なさると思いますが、私どもは全く奔命に疲れるというか、この法案を見てため息が実は出るのであります。しかしながら、この法案のでき上がってくるまでの経緯等もあります。従って、一本化するということがはたしてできるかどうかということは、今までの長い経験からいってなかなかできないのが中央の役所だろうと思うのです。それならば窓口を一本化するのと同じような効果のある強力な、経済企画庁なら経済企画庁が全部の責任を持って、これらの運営、調整に当たっていくというだけの御覚悟と何らかの措置がぜひ望ましいのであります。審議会であるとかいろいろなものがもちろん中央でも設けられるようでありますが、そういうところに大きな権限がありますれば、これもけっこうであります。しかもそれが経済企画庁のもとにあるということならば、事の性質上からいっても望ましいことである、これは賢明な委員でありますので、十分御想像ができることと思うのであります。  それから、京阪神とかあるいは京浜地区とかには、事実企業のいろいろな隘路がありますが、こういうところへ集まってきた方が、消費地とかいろいろな関係で便利であり、また財政力も豊かでありますので、地方団体の協力なんというものも、やはりこういうところに集ってきた方が企業自体もやりいいのであります。私ども府県といたしましては、立地条件はありましても、立地整備というものはまだこれからやるのであります。従いまして、前後いたしましたが、いろいろな点からいって、なかなか企業自体が出てきにくいのが事実で、結局大きな都市に集中して、今過度に集中しておるのが現実であるのであります。最近の姿においても、私ども箱根を越えてだんだん出て参りましたが、やはり東京周辺に殺到いたしておるのは、こういうふうな事情に由来しているのではなかろうか。従って、首都圏整備に関するあの法律なり立地等に関する法律なりを、届け出とかいうことではなくて、強力に、これはいかぬ、勧告なんという軽いものではなくて、この地帯はこういうものはできないのだという強力な制限規定を設けていっていただかなければ、結局交通、教育、いろいろな社会環境が一応整っておる、また整いの早い大都市周辺に集まってしまう。またこれらの力は非常に大きいのでございますから、会社に対する便宜供与も非常に積極的であります。これから地方にだんだん新しい産業都市を作るということになりますと、さなきだに負担力の小さい地方団体については、それぞれ政府が積極的な手を打ち、これらの事業を進める上に大きな積極的な施策を進めますと同時に、今おっしゃったような既存の過度に集中しつつある大都市に対する工業等の制限というものを強力にこの際法政的に打ち立てていかなければ、同じ結果になってしまうというふうに考えております。
  38. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 齋藤さんには、御多用中、まことにおそれ入りました。貴重な御意見をお述べいただきまして、感謝にたえません。厚く御礼を申し上げます。——では、どうぞお引き取りいただきます。ありがとうございました。  続きまして大久保、小田参考人に対する質疑を行ないたいと思います。田中武夫君。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶ時間も過ぎておりますから、簡単に御質問いたしたい、このように思います。  参考人に御質問する前に、菅政務次官に一言お伺いをいたしたいのは、この地区の指定ということは、この法律が通ってからなされるのでありますけれども、すでに何省においては何カ所とか何省においては四十とかというような予定もあるようです。そこで、先ほど来の参考人の御意見は聞いておられたと思うのですが、いわゆるこの法律実施していく上において、公共投資、たとえば道路、港湾あるいは工業用水等々、こういう公共投資に必要であろうという金額を大体どのように見積もっておられるのか、その点をお伺いいたします。  次に小田参考人にお伺いいたしたいのですが、新しく進出をして参ります工場、事業場、こういう中には、大企業が来るために、それに付随してくるいわゆる下請関係とか中小企業等も多いと思います。そういうような、新しく地区に出てきました工場、事業場等において労働組合を作るような場合に、その使用主が妨害をするとか、あるいは労働組合を作らすことを好まないといったような風潮があるのかどうか。また既存の工場における労働組合あるいは労働者と、新しく進出して参りました工場、事業場の労働者との実際の面における交流等を、これは地方労働組合の一つの任務といいますか、運動の中において考えねばならぬことだろうと思うのですが、その新しいところと古いところとの労働者交流といいますか、そういったことについて実際どのようなことをやられたか、あるいはどういうことを望まれるか、そういう二点についてお伺いをいたします。
  40. 菅太郎

    ○菅政府委員 ただいまの御質問でございますが、まだ研究中の分野が非常に多いのでございまして、各省と打ち合わせた正確なものというのはまだないわけでございますが、大体の予定として、一つのモデル地区、一産業都市について約一千億程度の公共投資は見なければならぬのではないか、これくらいの腹づもりで寄り寄り話し合っておりますが、これが何カ所になりますか、相当の数に上りますから、かなりな公共投資の費用になるわけでございます。今のところその程度の暗中模索で勉強をいたしておるところでございまして、まだ責任あるお答えはできぬ段階でございます。
  41. 小田英一

    小田参考人 労働組合を作る場合に、経営者の方から何らかのものがあるのかないのか、こういう御質問でありますが、私どもの方で現在労働組合を作ってはならないというような経営者の考えを露骨に表わしておるようなところはございませんが、私自身も青年商工会議所あたりへ行きまして、いろいろ懇談をいたします。趣旨につきましては、それらの方も御了解をしていただけるわけでありますけれども、さて労働組合を作っていただけるのかどうかということになりますと、やはり言を左右にいたします。そういうかげんで、最近は、特に顕著に現われておりますのは、福利厚生施設を完備をする、そういうことで労働者が不満を起こさないような方策を立てておる、そういうことであります。  それから新しい企業の関係の労働組合の方と交流しておるか、こういうことでありますけれども、まだ大企業は、加古川地域、高砂の方にも、東播を含めて、若干進出をしておられますが、労働組合の役員の方はまだ来ておられません。既設の方面からいろいろと私の方でやっておりますのは、−自治体に対しまして、やはり会社独自でできないたくさんの問題があります。教育の問題なり、労働者の福祉の問題なり、施設の問題、こういうものにつきましては、やはり自治体に負うところが非常に多うございますので、その面につきましては、勤労者福祉対策協議会というふうに銘を打って組織を作りまして、そういう面から、労働組合のセクトを離れて、労働者の地位、また生活条件をよくするために、諸般の運動なり自治体に対する要請を行なっておるような活動をいたしておるわけであります。  以上、お答えになるかどうかわかりませんが……。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 もう時間がありませんから、これでやめますが、先ほどの菅政務次官の答弁ではまだ了解できませんが、それは次の機会に譲りたいと思います。
  43. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 西村力弥君。
  44. 西村力弥

    ○西村(力)委員 まず菅次官にお尋ねしますが、今この法律に基づく新産業都市、一都市について公共投資一千億程度考えておる、こういうことでございましたが、まあやってくる企業自体が設備投資その他に要する費用を一カ所に対してどのくらい見積もっておるか、これはどうです、暗中模索ですか。
  45. 曾田忠

    ○曾田政府委員 私からお答えいたします。  いろいろ私どもといたしまして新産業都市の大体の構想というものの案を練っておるわけでありますが、御承知のように、それぞれの地区に応じましていろいろ特殊事情があるわけでございます。先ほど菅政務次官のお答えいたしましたのは、大体工業用地といたしまして相当程度の鉄鋼、石油等のコンビナートの団地を考えます場合、臨海関係で約四百万坪、それに関連いたしまする関連事業の団地といたしまして内陸に二百万坪程度、六百万坪程度の工業団地を作るという想定のもとにいろいろ試算しました結果の一応の数字が大体一千億程度というのが出ておりまして、目下関係各省と最終的に詰めておるところであります。そういう場合におきまして、大体六百万坪の工場敷地に対しまして投資されまする設備投資は大体六千億円くらいというふうに考えております。
  46. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは何年でやる計画ですか。
  47. 曾田忠

    ○曾田政府委員 一応十カ年という考えでございます。
  48. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうしますと、少なくとも内陸関係の先ほど大久保参考人が言われたような希望、願望というものは十カ年間は満たされない、こういうことに相なるだろうと思うのですが、それでこの法律の第五条の区域の指定にあたりましては、工場の立地計画がすでに進行しておる、こういうところから順次これを指定しなければならぬということになっておりまするが、こういう条文に適合しそうと思われる全国的な先行してそういう計画が進められておるところは、どういうところがありますか。これは具体的に言うといろいろ差しさわりもあるかもしれませんけれども、かりに一かりにという言葉で表現すれば、どういうところがそれに該当するか。
  49. 曾田忠

    ○曾田政府委員 かりにという前提の御質問でございますから、そういう前提でお答えいたします。  御承知のように、九州方面で申し上げますと大分鶴崎、中国方面で申し上げますと、いわゆる水島、玉島地区、そういうところでございます。
  50. 西村力弥

    ○西村(力)委員 先ほどからの話から見ますと、臨海工業地帯コンビナート方式、それが今企業の意欲によってだんだんと手をかけられておるところ、そういうものをまず区域として指定していこうという方向だということは、これは間違いないことだろうと思うのです。そうしますると、何としてもこれはやはり全国的に見ましてごく少数の地域というものが指定されることになる、こう見なければならない。で、先ほど大久保参考人が申されましたが、私も大久保市長のもとの一市民でありますから、町の事情はよくわかっておりまするが、そういう状況に置かれてだんだんと人口は減る、所得格差はますます拡大する、こういう状況下にあって、それをいかにして発展させようかとすることは、お互い市長を中心として苦心をしておるところなわけなんです。ところが地域格差を解消するのだという方向をスローガンとしては出しながらも、現実にはどんどんと拡大していく。先ほどの話によりますると、少なくとも十年間以上は置き去りにされて、なおかつ地域格差はますます拡大していく。これは新産業都市建設によって自治格差が解消するなんということは、私たちは考えられない。ますますこれは拡大していくのだ、こう思わざるを得ない。ですから、市長は賛成だということでありまするが、私たちとしては、やっぱり新産業都市というものは所得倍増計画が悪い姿で進行していく、現実にその通りになっていることはあらゆる資料の示すところなわけなんです。地域格差というものはだんだんと拡大していく。そういうのがこれからなお十数年にわたって継続されるのだという、それをやはり考えなければならぬと思う。ですから、私たちとしては、そういう置き去りにされる地域、そういうものに対して一体どうするのか、これをはっきり打ち出してもらわないと、これはやはり困ることであると思うのです。その点に関しましては、昨年できました低開発地域促進法というような、ああいう意味のないような法律だけで、それでちょんにしておく、こういうことではこれはやはりわれわれとしては満足はもちろんできませんし、これから進行するであろう地域格差のこれ以上の拡大ということを阻止するという道は、いかにして生み出そうとするのか。これは大久保参考人及び企画庁側から伺いたい。大久保参考人からは、一体この法律のどこにそれを期待するか、それから企画庁としては、政府側としてそういうゆがみというものをどう是正するかということ、それについて一つお答えを願いたい。
  51. 大久保伝藏

    ○大久保参考人 私はこの法案に賛成だと申しますのは、少なくとも過大都市の誘因を減殺するということをうたっておるのであります。従って、人口流出の防止、こういうことをうたっておる趣旨においては賛成だということでありますが、相当重要なる付帯事項を私は申し述べたはずであります。このままでいきますれば、所得格差が、いよいよ地域格差というものがひどくなるということは私は十分申し述べたのであります。従って、われわれはいつ一体こういう恩恵にあずかれるのかということが私どもの非常なる期待をするところであります。先ほど申し上げました通り、自分の市が、地域がひっかからないから他の地域がひっかかるということにそねみを持つような考え方でなく、われわれもこれの適用を一日も早めてもらいたい、こういう考え方でございます。それとともに、われわれはやはり子孫のためによき祖先となるような心がけを持たなければならぬのでありまして、多少の欠陥はあるのです。ありまするけれども、やはりやらねばならない問題です。そこで私が望むのは、人口流出ということが大きなる一つの構成要件になっておりまするから、人口の流出する県にこういうものを持ってくることに主眼を置かなければならぬ。なぜこれに置かないのか、といいますのは、こういうことを考えますると、ただいま御指摘のように過大都市というものが必ずしも防止することにならぬ。いわゆる人口流出県に持っていくことが、私はこれは抜本的な一つの問題を解決するものではないか。ですから、先ほど申し上げました五百五十六の市のうちで二十万足らざる人口が五百十五あります。なぜこの点を重視されないのか、港湾であるとか、あるいはまた河口であるとかというようなところの設備をしていただいて、こういう恵まれざる地、すなわち人口流出する県に重点を置くことを考えていただきたい、これが私のこの法案に対する賛成の一つ理由なのでございまして、全面的に賛成だというのではないのでございます。この点は誤解下さらないように願いたいと思います。
  52. 菅太郎

    ○菅政府委員 この法案は、御承知のごとく第一条の目的にもありますように各地方の——地方と申せばいろいろな意味がございましょうが、一番重点に置かれますのは、いわゆる各ブロックでございましょうが、その地方の発展の中核となる都市建設する、そのことによって四大工業都市に集中しておるものを牽制して、逆に分散しようという考え方であります。従いまして、その見地からいきますと、これは段階は二段にも三段にもなりますが、ある時期までに各ブロックに新産業都市一つ、二つ、三つとだんだんふえていくわけでございます。それで四大工業センターに次ぐ大工業の性格を持つという順番だけで、私どもは指定していこうとは思っておりません。やはりその順番だけでなくて、各ブロックの中心になるという意味で選びますから、たとえば東北なら東北の中心となります一カ所、二カ所、三カ所ととって参りますから、他の地区の産業都市候補市の方が大工業都市としては有力な立地条件を備えておる場合でも、東北なら東北の中心としてものを選ぶつもりでございますから、そういう考え方でやはりかなりブロック的に新産業都市が適正に分散されていくということになると思います。ただ問題は、いろいろな財政の資金事情がございますから、急速には参りませんが、従いまして、厳選主義で出発はいたしますが、長い目で見ていただきますると、逐次こういうふうに新産業都市が地方別に適正に分散されていく、この形をとるつもりでございます。そのことによって四大工業都市がむやみにこれ以上あまり病的にふくれないということをまず牽制をしていくということを第一に念願するつもりでございます。  それで、そんなことをやっておって、まだもう一つほかにあるじゃないかというお話でございますが、それは低開発地域工業開発のあの法律によりまして、その方面からも、一定の要件を備えた、どっちかというと農業地帯的なところの中心の地方工業地区はそれによって開発をしていく。内陸地区の中都市以下のところは、むしろそれによって工業開発をやっていく。この二本立てで進めていこうという構想であります。  しかし、それのみで私は工業の適宜地方分散というものは全面的にカバーできるものとも思いませんので、その間のギャップというものをどう埋めるかという問題は、これから両法案実施しながらいろいろ考えていきたいと思うのであります。のみならず、この低開発も含めました両法案というものは、いわゆる総合開発計画の拠点開発主義を実行する有力な二つの方法ではありますが、すべての方法がこれに尽きておるとも思いませんので、従いまして、全国総合開発計画ができ、それに基づく府県計画ができます際には、やはりこの二つの法律にカバーされない部分の開発計画もいろいろ立つと思います。そうしてこの二つの法案によらない部分が全然手がないかどうかというと、手がないのではありません。それはそれで、たとえばこの後進地区の開発につきましては、公共事業の保助率アップの体系もございまするし、それからまた開発銀行系統から特別融資をする道もございまするし、あるいは東北においてはああいうふうな、目下おしかりを受けてはおりますが、特別な開発会社の活動というものもございまするし、いろいろな手を加えておりますので、従いまして、この二つの法案以外にも、いろいろ地方の後進地域工業発展を促進するものはないではございません。まあ、あの手この手を総合いたしまして、この地域格差の是正に努めたいと考えておる次第であります。
  53. 西村力弥

    ○西村(力)委員 まあ私たちこの法案審議にあたりまして一番問題とするのは、もちろん市長の言われるように、自分のところが該当しないからけしからぬというような立場はとりません。とりませんが、今現実に問題になっておるのは、地域格差あるいは業種別格差とかそういう格差拡大をどうするかということが、われわれの立場からいいましても当然考えなければならぬ。そういう立場に立って、そういう内部的な、あるいはそういうようなところがますます置きざりにされるということをどうするか。これは当然個人的なセクト的な立場でなくて考えなければならない問題である。これをどうするかということが、私たちの真剣な問題になっておるわけなんです。これは、現実に所得の格差が拡大し、また人間は流出し、あるいは農業から離農しなければならぬという人々が、どうやって構造改善の現実の施策というものに自分のからだを、方向を合わせていこうかということで、苦慮しているようでありまして、事は急がなければならぬわけなんです。ですから、そういう場合に、先ほどの御答弁によりますと、過大都市ではどうにもならぬから新しいところを求めていくという大きい資本の希望にこたえる法律ですよ。たとえば水島地区にどんどんと大企業進出して、過大都市でもうどうにもならぬからそこにいくのだ、そこにいきやすいようにしようというのがこの法律なんだ。ですから、そういうことだけに集中する法律というものは、原則からいいまして、私どもは決して好ましいものではないと思うが、それはそれとして、それに付随して、それに置き去りされる地域をどうするかということを、具体的に実効あるようにこれは仕組まれなければならない、こういうことを私たちの希望として強く要望するわけです。それで、まあ私たちそういう地域なんかを考えましても、ちょっと道路をつけてやるとか、直してやるとか、あるいは上水道のあれにちょっとした手を加えることによって、工業誘致が非常に可能になる。ちょっとしたことで可能になる解決策というのは相当あるのです。そういうところなんかもきめこまかくやっていくということも出てこなければならないのじゃないかということも考えておるのですが、いずれにしても同時並行的にそういう方法を立てていくということは、はっきりしてもらわなければならぬと思うのです。そういうことを一つ希望しまして私の質疑を終わりたいと思います。
  54. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 久保田君。
  55. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 時間がありませんから簡単にお二人に、大久保さんの方には三点、小田さんの方には二点だけ要点についてお伺いいたします。  大久保さんにお伺いいたしたいのは、東北のようなつまりああいう農業県ですね、お話がありましたが、これは私はこう思うのです。日本の農業のいわゆる構造改革、これを本気にやるには、農民の数を少なくする、これはどうしてもやむを得ないことだと思うのです。今のように農村から勤めに通ってくる、うちの方では三反百姓をやるなんという格好は、この格好にとらわれる限り、日本の農業が工業に太刀打ちすることは、どんな政策を持ったって、できませんよ。極端に言えば、今、五百万、六百万ある農家を、十年先、二十年先には二百万から百五十万に減らさなければ、日本の農業は世界の農業に太刀打ちできるような農業になりません。しかもこれからの自由化なり何なりの中でもってやっていくには、そうせざるを得ない。ただ、そうなるには、今のように政府があとは野となれ山となれで追い出すような行き方では困る。そういう観点から見て、私はそういう基本的な考え方でないと、この産業都市の問題は、かりに地方に持っていっても、山形なら山形で、農民の数は依然として現状と同じように確保していくんだ、そして子弟の就職の場を作るんだという考えでは、農業の構造改革はできない。協同化であれ機械化であれ、機械がどんどん入ってこなければならぬ。機械がどんどん入ってくれば能率が上がるのですから、上がってくれば人間が要らなくなるのはわかり切った話だ。そういう基本の原則を否定した農業の基本的改造なんというものは、できるものじゃない。ただ、今そういう人たちがうまく農民以上の生活ができるような保証はない、そこに問題があると思うのであります。こういう点についてあなたのいろいろ今までお述べになりました点と、少しどうも基本考え方が私ども違うように思いますが、この点を一点基本問題ですからお伺いいたします。  それから第二点としては、具体的な問題としてこの広域都市、新産業都市をやるには、どうしても町村合併ということが必要になって参ります。さしあたりは事務組合でやりましても、計画は統一的にやらなければならぬ。しかしながら、事務組合でやった場合には、市町村の財政力に非常なアンバランスがある。それを事務組合でカバーできるものじゃありません。その財政力に応じたような計画を立てておったら、工場や新産業都市はできません。こういう基本的な矛盾をこの案は持っているわけです。この矛盾を統一的に解決するためには、やはり町村合併ということを、この法案の二十二条以下に書いてあるようなちゃちな考えではなくて、私は国が相当積極的な援助なり何なりを加えて、町村合併をやり得るような政策を立てなければならぬと思う。この点はあなた方どういうふうにお考えになっているか。特に新産業都市をやる場合に、必要な町村合併をする。あれは今ほとんど町村合併についての特別の国の援助というものはないわけです。しかも、これは非常に複雑な中で早急にやらなければ、この事業の遂行はうまくいかないということになる。そのためには、国がもっと思い切った町村合併のしいいような施策というものを講じなければできるものじゃありません。この点どういうふうに具体的にお考えになっているかという点が第二点。  それから、第三点は、これを市町村がやる場合には、市町村の負担するものはどの程度になるかはっきりいたしませんけれども、今のあれでいきますと、ほとんどやれる。事業の大部分、少なくとも区画の整理、道路あるいは水道その他いろいろの問題、大部分は市町村の負担になります。しかもそれに対する補助率というものは今までと変わらない。起債はつけない。公社であれ公団であれ、何の形でやるにしても、市町村の負担がよけいになって、負担に耐え得ないということになる。そうすると、逃げ場はどこかということになると、工場を含めたあるいは工場を含めないいわゆる区画整理、都市計画に逃げていくのは当然です。その場合に、今問題になるのは、都市計画のいわゆる公共減歩なりあるいは事業減歩なり、これをよけいにとらなければつじつまが合わないという関係になる、それでも追っつかないという関係になる。これは悪循環であって、土地の値上がりをさせる、減歩をどんどんとる、こういうことで、しかも住民には何にもプラスにならない。ですから、私は、これを実行する以上は、今の都市計画法に対して、その点についての大きな規制をするよりほかにはこれは現地の住民の利益にはならない、その面からだけ見てもそう思うのですが、この三点についてどのようにお考えになるかお伺いしたい。  それから小田さんについては、いろいろ労働者の立場からいうと問題があります。しかし、長期の問題ではなくて、一番現実の問題として出てくる問題は、そのところにできます新産業内容なり規模なりにもよりますけれども、これからは大体重工業が中心になるだろうと思いますから、従って、今までの軽工業中心のところよりも賃金その他のレベルは高いわけです。しかも急速になるのですから、新しくできた工場は比較的高賃金です。しかも建設については非常に労力が不足するという関係で労働賃金がその地域だけでは非常に上がるのであります。そこでもって一番問題になってくるのは、従来の中小企業がこの高賃金についていけない、しかも上がりますから、労働者の方はそれを目標としてやっていくということになります。むろんここに非常に大きな格差が出てくる。これはもちろん大きな方に統一するのは当然です。しかし現実の問題としてはそこに大きな格差が出て、中小企業者や労働者と、今度新しく進出した労働者との間に非常に断層が出て参って、労働者の統一を阻害する一つの大きな要件になります。こういう点を労働組合運動としてはどう調整していくかということが、私は大きな問題だと思います。この点についてのお考えがあったら、これを特に運動としてどう措置するか、同時に行政的に国の施策としてどうやるか。結局産業別の最低賃金制の問題になってくると思いますが、この点について、はっきりあれしなければいかぬというふうに思うわけです。  第二の問題は、おっしゃるようにいろいろ労働者の福利厚生の問題、その中で一番差し迫った問題は住宅の問題です。住宅ができないために、しかも最近の構想の中では、農村から通う労働者にすれば住宅が助かるということが半面にあるわけです。この住宅をどうして早急に新産業都市——特に労働者の人たちの住宅を早急に、安いしかもいい住宅を——希望すれば集団的に施設の整った住宅をどうして早くやるかということが大きな問題になろうと思う。これについての施策等も、今の公営住宅なり公共住宅なり住宅公団方式では不十分だ。ここにもこういう新産業都市に即応するはっきりした住宅政策なりそういうものが必要だと思うのであります。いろいろあなたの方でもそういう問題を取り上げてやられておるようでありますが、経験の上からいって、どういう施策が必要であるか、具体的にお考えになっておったらお伺いしたい。この二点だけ、時間がないからお伺いいたします。  それでは、一つ大久保さんから先にお願いいたします。
  56. 大久保伝藏

    ○大久保参考人 農村構造改造及び農業近代化ということになりますれば、当然農業人口というものは余剰が出るはずであります。ですから、ただいま御指摘のように、今までの農業人口を確保すべしというようなことは当然考えられないことでございます。なぜ農民人口が県外に就職をするか、移出するかということになりますれば、結局所得格差、それだけです。すなわち受け入れ態勢がないから出ざるを得ない。そこで、この新産業都市は、受け入れ態勢のないところに重点を置いて、しかも労働力が十分あるところに置くべきではなかろうかという考え方を持っていただきたいというのが私のねらいでございます。ですから、御指摘のように、農業県であるがゆえに、現在までの農民人口を確保しなければならぬというようなことは、旧体制だと思います。まさしく近代化によって減さなければならぬ。ですから、くどいようでありますが、流出する人口を押えるために、そういう港湾があるとかなんとかいう便利なところばかりでなく、そういう点に新産業都市というものの考え方をいただきたい、こういうねらいでございます。  それから、そういう新産業都市をするのには、合併はどうであろうか、今までは一応一段落のついた合併でありますが、これから再編成、合併しなければならぬと思います。大体四万程度の人口で市だなんていうことはおこがましいのでありまして、それはとうてい市ではございません。全く死滅の市です。財政的にきわめて貧困です。ですから、ほんとうに新産業都市というものをこしらえるならば、少なくとも五万程度のものは合併促進を再度やるべきだろう。しかも、御指摘のような財政のきわめて貧困なるところでありまして、かりに山形県の一例を申し上げますと、一本の道を通ずるに、十数年かかってもまだできないというような市があるのですから、こういう市では、町ですから、この際はあらためて再編成すべきだろう、これは同感であります。ただし、財政のアンバランスに対しましては、政府は十分特別交付税を見てやらなければならぬと思います。再編成、私は大賛成です。  それから町村の負担が今の程度においては可能であるか、これはなかなか楽でもございません。ですから、少なくとも都市計画をやるというようなことで、都市計画税を取っておる市は、東北ではそうございません。山形市が今度ようやくやったというようなことでございます。それで、こういう問題をやるときには、起債のワクが狭くてなかなか大へんなんです。ですから、こういう問題に対しましては、長期、低利というような——年六分以上の利子では地方財政は楽ではございません。少なくともこういうところでは、願わくは三分ぐらいのところに願いたいと思いますが、そんなことができないのでしたら、五分から六分ぐらいの程度で、三十年から五十年というぐらいなことにしますると、地方でも大体可能ではなかろうかと私は思うのでございます。いずれにしましても、地方は財政の負担力がだんだん困難になって参る。ことに山形県のごときは、山形市以外に人口のふえる市町村がございません。あるとすれば酒田が一年に八十人、米沢がほんのわずか、山形がやっと一千人です。だから山形市というものは、一つの区域を入れますと一応低開発には触れるのです。しかしながら、もう少したちますともう触れなくなる。そうすると低開発には触れない。いわんや産業都市なんというものには思いもよらざるところだ。そうすると宙ぶらりんになりまして、一体われわれはいずこに行くのか。五百十五あるそれを一つ考えていただきませんと、先ほど西村委員の御指摘になったように、われわれのような非常に困る市ができまして、格差を是正せしむるという表看板で格差を増大せしむるようなことになりまするから、せしめないように、政府において十分これは考慮していただきませんと、羊頭狗肉になると思います。この点は大いに考えていただきませんと、弱小五百十五の市は、これはさまようような姿になるのではなかろうか、この点を一つ重視していただきたい。ただし趣旨において私は賛成だというのは、人口流出を防止する、マンモス都市を防止するという点において、しかも将来の日本の産業というものに対する非常なるみがきをかけるということにおいては賛成をいたします。私の条件がつくのはこういう点なのでございます。
  57. 小田英一

    小田参考人 それでは、御質問になられました点につきまして、お答えを申し上げます。  確かに、第一点におっしゃっておられますように、大企業と中小企業の賃金格差というものにつきましては、生じ得る問題であります。私どもの方では、現在中小企業と大企業との格差は、人を集める面から考えまして、非常に縮まっております。昨年で九千円というのが大体初任給であります。それで、そうなって参りますと、やはり地元では採用できませんので、三十五年では中小企業の方は県外から六五%依存をいたしております。なお、そういう関係が今後とも続いていくかどうかということ自体は非常に疑問点であります。ただいま申し上げましたように、すでにできております業者間協定による最低賃金、すでにああいうもののワクを乗り越えたものでないと、人が採用できないという現実の姿であります。そういたしますと、やはりここで、ああいう法律でなくして、全国一律の賃金を、地域的な問題、産業別の問題を考えますと、早期に成立をさせていただかないと、これは中小企業の経営者としては参ってしまいます。非常に現在困難で、経営が苦しくとも、人を集めるためにそういう措置を講じておるわけでありますから、そういう面を一つよろしくお願いいたしたいということと、なお労働運動を進める上からいたしますれば、やはり厚生の問題が生じて参ります。厚生年金の問題だとか厚生資金の問題があるわけでありますが、この面につきましても、格段の御配慮をしていただきたい。そういう二点につきまして、私どもは、私たちの賃金闘争を進める場合に、統一をした問題として運動を進めておるわけであります。  なお、福利厚生施設住宅政策でございますが、私がさきに申し上げましたように、現状の姿で住宅を建てるということになりますと、土地の問題に非常に困ります。どんどん大企業進出して参りますと、企業はやはり採算に見合ったもので土地を購入をされる。そういうことで、やはり土地の値が高い方が、農民からすれば、売り手の場合ですから非常によろしいということになりますから、この面については格段に国なり地方自治体の方で強力な策をしていただかないと、土地の問題に困る。  なお、家の問題でありますが、賃貸方式がいいのか分譲方式がいいのか。この問題につきましては、それぞれの立場によりまして問題が異なるわけでありますが、私どもといたしましては、いろいろ地域意見を聞き、職域で意見を聞く中によりますと、青年がこれから結婚をして独立をしていくという、こういう新規需要の面が非常に多いというふうに思うわけであります。そういたしますと、やはり低家賃の賃貸方式が望まれるわけであります。そういう場合には、やはり今の県なり市がやっておられるようなものを広げていただくということしか手がないのじゃないか。それにいたしましても、私どもの方でいろいろ賃貸の要求をいたしました関係で、兵庫県におきましても、本年度から加古川市にそういう県営住宅を建てるという計画が進められておるようでありますけれども、そういう施策をどんどんやっていただかないと、今日もう企業の中で独身寮を作ったり社宅を作るということについては、企業経営の上からは非常に不自然だということがいわれておるわけでありますからから、これは特に国なり県、市というところの積極的なその面の施策がなければ、労働者というものは成り立っていけない、こういうふうに考えておるものであります。
  58. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、長時間にわたり、本委員会審査に御協力を賜わり、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。重ねて御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時九分散会