○大久保
参考人 地域格差の是正を中核とする
産業の
発展を期するための基盤確立上、
都市の持つ役割はきわめて重大であり、かっこれが
立地は緊急に決すべき時期に、新
産業都市建設促進法案が持つ
意義はきわめて重大でございます。従って、この
法案の意図する
目的に関しましては一応賛成でありますが、私はこの施行にあたりまして、重要なる付帯
意見を申し述べ、先ほど
静岡県知事からお申し出になりましたような点は、私
ども同
意見でございます。しかし、積雪寒冷地帯というような
都市の立場から二、三の点にしぼりまして強い要望を申し上げ、
委員各位の法の御
審議について、私の
意見を申し述べたいと思うのであります。
まず賛成とする
理由は、大ざっぱに申し上げますと、地方
都市における
雇用を増大して、そして子弟に職場を与えたいということでございます。今日御
承知の
通り、市と称するものが五百五十六ございます。そのうちで二十万未満の
都市は何と五百十五でございます。従って、二十万以上の
都市はわずかに四十一しかございません。私は、東北内陸部の中心
都市、山形市の市長でありますが、本年三月、具体的に申しますと、市内の中学校卒業者のうち就職を希望する者が七百名、そうして県外に就職する者は四五%に及んでおるのでございます。かりに山形県立の
工業学校の卒業生は、本年
一つの学校で三百名ございます。そのうち
県内にとどまる者がわずかに二十数名でございます。こういう状態でございまして、山形市は
昭和三十年から三十五年までの間に、山形県で最も人口が増加した市でありますけれ
ども、県全体を見ますと、県では五カ年間で三万人の減少を見ておるのでございます。今日の山形県の人口はわずかに百三十二万八百人でありますから、こういう調子に人口が減るといたしますと、百九十九年たちますと、笑い話のようでありますが、人口ゼロになる、こういうことでございます。すなわち人口輸出県というのが山形県の立場でございます。従って、山形県といたしましては、農業県といわれておりますけれ
ども、第二次
産業の発達をわれわれは大いに希望いたしておるのでございます。それで先ほど申し上げました
通り、全国五百五十六の市の中で山形市と大体同じようなところは、正確な数字はわかりませんけれ
ども、まずまず四百程度でなかろうかと思っておるのでございます。いわゆる過大
都市というものとは比較にならない状態に置かれておるのであります。従って、社会生活にも幾多の矛盾と欠陥が露呈しまして、こういう
地域においてこの子供を送り出すということに、非常にわれわれ関心を覚えておるのでございます。そこで前段に申し上げました
通り、地方
都市における
雇用を増大して子弟に職場を与えるというのが、
一つのわれわれが賛成する
理由でございます。
第二は、御
承知の
通り、農業構造改善を進めるにあたりまして、地方
都市に第二次
産業を
振興して、離農者に
雇用の場を与えなければならない、こういうことでございます。私は東北、北海道の農業
会議の代表といたしましても、農業構造の改善は、経営
規模の拡大や機械化を伴わなければならない今日、農業人口の一部の兼業化または離農という
事態もやむを得ないと考えております。しかも簡単に祖先伝来の家を捨てて郷土を去るということは、農民感情としてはなかなか困難なことであり、しかも重要視すべきことであります。この点農民は、農業構造改善の必要性を是認しながらも、自己の将来に対して大きな不安を感じておるのであります。国の経済構造の大改革は、こそくな療法では不可能であります。いわば思い切って外科手術によらなければなりません。先ほど
静岡県知事の申された
通りでございます。しかし、メスの入れ方いかんによっては、多数の農民を混乱に陥れまして、大きな社会不安を招来するでございましょう。かって農民は戦時中あるいは戦後を通じまして、国民の食生活
確保のために誠実と勤勉をもって田畑の耕作に励んだのでありまして、十年にしてその彼らの生活の基盤が大きくゆれ動いておるのでございます。今にして彼らの不安を静めるに国が誠意と努力をもってしなければ、正直者がばかを見るというなことになりはしないかと、私は非常に不安を覚えておるのでございます。
以上、子弟に職場を与え、農民に安定感を与えるためにも、地方
発展の中核となるべき新
産業都市建設の急務を痛感し、本
法案に多大の期待をかけるものでございます。
次に、本
法案に対する私
どもの深く憂慮する点を申し述べたいと思うのでございます。ただいま
静岡県知事の御指摘になった点などはもちろんそうでございます。その
一つといたしまして、区域指定の要件に関してでございます。第五条第三項には「区域の指定は、工場の
立地計画がすでに進行し、
産業の
立地条件及び
都市施設の
整備が緊急に必要である区域から順次しなければならない。」こうありまするが、「すでに進行し、」というのはどの程度をさすのであろうか、順次指定するというが、先ほど私が申し上げました農業地帯の中核
都市は、はたしていつごろ取り上げられるのであろうか、これらの点に疑問なきを得ないのでございます。これまでの
各省の
構想を承りますと、たとえば、東北にはまず仙台、塩釜、石巻を中心とした百万
都市を作り、東北の経済
発展の拠点とするといわれております。次に三十万ないし五十万の中
規模の
産業都市を作ると解されますが、この方針は
基本的には大へんけっこうでございます。しかしながら、その数が東北全体で
一つあるいは二つにとどまりまして、しかも臨海地帯に限られるといたしますれば、農業構造改善を前にいたしまして不安におののいておる農民の大部分とは結びつきがたく、国が心の底から真剣に農業問題を考えているとすれば、まず農業地帯の中心地区はできるだけ早く指定するように十分留意を願いたい。もし雑な言葉で申しますれば、一体われわれはいつ
産業都市に指定されるのか、五百五十六の市のうちで二十万未満の
都市が五百十五あります。しかも積雪寒冷地帯、人的資源の輸出のみに努力しておるような状態に置かれているときに、われわれは一体どうなるのか、こういうことに非常に私
どもは重大な関心を持つのでございます。
さらに同条第一項第四号には、「道路、鉄道、
港湾等による輸送が便利であり、かつ、これらの
施設の
整備が容易であること。」とありますが、これらの輸送のための
施設は、むしろ先ほどの御指摘のように、国の
責任によって
確保さるべきであって、東北、北陸のごとく積雪寒冷地帯の未
開発の原因の大部分が、道路、鉄道、教育、
上下水道、環境衛生等の不備に帰せられる
地域には、この際国の
先行投資を十分に行なうことによって、第四号の
規定をする条件を国みずからが
整備すべきも・のであると確信いたすのでございます。
今回の
法案につきまして、
提案理由とその
要旨の
説明書をいただいておるのでございますが、この
説明は、「この対策は、既成大
都市の過大
都市化の誘因を減殺し、地方の
産業や人口が既成の大
都市へ流出するのを防いで、そこに定着させ、また新
産業都市が中核となってその地方の
開発に大きな波及的効果をもたらすという点で、
地域格差是正の有効な手段たり得るものと考えるのであります。」と書いてございますが、
現実の問題は、なかなかこれが足が地を離れておるという感でございます。こういう点をぜひ
一つお考えをいただきたいと思うのであります。
第二点は、第十七条の
施設の
整備についてであります。これまで国土総合
開発法を初めとする一連の後進
地域開発の施策においても、そのねらいとするところは
地域格差の解消であり、そのための具体的施策を明記しております。それにもかかわらず、大
都市と地方
都市の格差はますます激しいものがあり、今日過大
都市の問題さえ起こっているのは、これらの施策が不徹底であり、いわゆる仏作って魂を入れなかったのではなかろうか、こう考えるのでございます。そこで、後進
地域における新
産業都市の
建設促進をはかるには、思い切った国の財政
資金を、すなわち全額国庫
負担または高率補助を行なうべきものであろうと考えます。
次に、第二十一条の地方税の不均一課税に伴う
措置の対象となる土地、建物並びに機械等の基準については、全国画一的ではなく、指定区域の
開発の度合いに応じて、
開発のおくれている
地域には基準を低くし、地区の中小
企業もこの恩恵にあずかって
発展し得るよう、きめのこまかい配慮が必要であろうと思うのでございます。
以上私は、東北の未
開発地域の特に農業地帯の中心
都市の市長といたしましての立場から、三点につき
意見を申し上げ、本
法案のすみやかなる具現を望むものでございます。
最後に私は、
産業と
雇用の
適正配置に関する
法律案について申し述べたいと思います。
この
法案の
趣旨はまことにけっこうであります。立案に当たられた方々の御努力に対しましては、深い敬意をささぐるものであります。ただ、このような細部にわたっての施策というものは、ともすれば重点を失っておる、いわば総花的国土
開発で、また、これを
実施するにつきましては、国の
財政負担能力が非常なるものであろうと考えられます。その実現は、これこそ私は目がどこにあるかわからないようなことになりはせぬか。これまでの後進
地域開発の諸施策において私
どもが抱いた幻滅の感を免れ得ないのではないかという疑問を禁じ得ません。しかし、この
趣旨につきましては、新
産業都市建設促進法案の御
審議に際しましても、十分高く評価されて、参考とされるべきものだろうと考える次第でございます。
いずれにいたしましても、この
法案というものをいかに具現するかということは、相当いろいろの角度から検討されるべきものだろう、こう存じます。ことに、温暖地方、積雪寒冷地帯、二十万未満の
都市、こういうものがこの新
産業都市建設促進法案とは非常に遠いもののごとく考えられますが、しかし、一段々々やっていただかなければならぬことでありまして、自分の
都市がひっかからないからといって、他の
都市のひっかかるということに対してあえてそねみを持つようなことは全然ございません。徐々にやるべきだろうと思いますけれ
ども、しかし、かえって格差を増大せしめるようなことのなきように、いろいろの欠点のあるところは、これを
一つ是正していただきたいものだと存ずるのでございます。ことに、人的資源というようなもののみを移出する県に関しましては特段の御配慮を賜わりたい、こう存ずる次第でございます。(拍手)