運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-07 第40回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)    午前十一時五分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       田中 榮一君    田中 龍夫君       中垣 國男君    中川 俊思君       野田 武夫君    南  好雄君       村上  勇君    岡田 利春君       北山 愛郎君    久保田 豊君       小林 ちづ君    中村 重光君       西村 力弥君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      樋詰 誠明君  委員外出席者         通商産業事務官         (重工業局次         長)      熊谷 典文君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民生活研究所法案内閣提出第八一号)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の、内閣提出、新産業都市建設促進法案及び井手以誠君外十八名提出産業と雇用の適正配置に関する法律案について参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人出頭日時、人選等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認め、さよう決します。      ————◇—————
  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 内閣提出国民生活研究所法案を議題として、前日に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  6. 田中武夫

    田中(武)委員 質問に入ります前に、一言要望を申し上げておきます。本日は本法案について質問するにあたりまして、経済企画庁長官外関係者に当委員会に来てもらうように連絡しておりました。ところが、当法案主管大臣である経済企画庁長官法案審議のときに姿を見せない。ほかにいろいろと所用があるであろうと思いますが、少なくとも自分の所管の法案審議するのに、しかも最終的な段階にあるのに大臣が出てこないということは、はなはだ遺憾であります。今後このようなことは絶対に前例としない、こういうことで私大臣に対する質問は保留をしながら質問に入りたい、このように思います。  大臣が留守ですから、それでは政務次官にまず最初にお伺いいたします。国民生活研究所というのですが、国民生活というたら一体どんなものです。
  7. 菅太郎

    菅政府委員 ここで国民生活といいますのは、生産者とか流通面に携わっておる面以外の消費に関する国民生活の面とか、あるいは国民がいろいろな生活文化生活をいたしますその生活面をとらえた面を主として称しておると思うのでございます。従いまして、このいろいろな生産流通面などを除きました消費者としての立場、あるいは文化生活をいたします国民立場、そういう面で国民生活をとらえまして、その面を主として研究をいたしたい、こう考えております。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 そうするといわゆる消費生活、こういうように理解していいのですか。
  9. 菅太郎

    菅政府委員 財貨を伴ないます面から見ますと消費生活でございますが、必ずしも物資の消費を伴いませんでも、いろいろな消費生活があります。その面も含んでおるのでございます。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 現在の社団法人である国民生活研究所も同じような趣旨でありますか。
  11. 菅太郎

    菅政府委員 根本の趣旨は同じでございます。その大綱におきましては、現在の研究所の延長とお考え下さればいいかと思いますが、ただ特殊法人になりました関係で、多少その意味の変更が加わると思いますが……。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 僕は形式的な社団法人特殊法人でこのことを言っているのではないのです。国民生活研究所というものの目的その他は変わらないのか、こう言っているのです。
  13. 中野正一

    中野(正)政府委員 昨日ちょっとお答えした関係がございますので、私からお答えしたいと思いますが、従来ありまする社団法人国民生活研究所目的は、今政務次官からお話がありましたように大綱においては変わらないのでございますが、ただ一見非常に違っておることろは、「国民生活調査研究して、国民生活向上産業発展寄与することを目的とする。」ということが従来の定款に書いてございまして、もちろん今度の特殊法人におきましても産業発展ということは当然考慮に入れて考えていくわけであります。その点は今度の特殊法人と従来の社団法人を読み比べていただきますとはっきりいたしておりますが、「産業発展寄与するを目的とする。」ということは書いてございません。そういう意味で「国民生活の安定及び向上寄与することを目的とする。」ここに重点を置いて運営されるというふうにお考えになっていいのじゃないかと思います。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 局長一つの穴に気づいたようです。先ほど私がお伺いしたのは、現在の社団法人国民生活研究所と、今度これによってできるものとのいわゆる組織的な形式は違うが、実態は同じか、こう尋ねたところ、政務次官は、同じだ、ところが局長は気づいて言われました。その通り。現在の社団法人定款の二条には「産業発展寄与するを目的とする。」と示してあるわけです。これこれは手段であって、目的産業発展なんだ。今度はそれが抜けて「国民生活の安定及び向上寄与する。」こうある。従って、当然今までの社団法人と今度できる特殊法人である国民生活研究所とは、目標なり目的なり性格は変わるべきであろうと考えておりますが、いかがでしょうか。
  15. 中野正一

    中野(正)政府委員 従来あります社団法人国民生活研究所は、昨年の九月にできまして、そのときには、今度の特殊法人になる、政府出資をいたしまして、相当政府の力を入れた特殊法人的なものになるということを予想いたしまして、実はでき上がったわけであります。実はその当時すでに政府予算要求はきまっておりまして、政府としては、特に経済企画庁としては、少なくとも政府出資二億円程度は出さなければこういう仕事はうまくいかぬのじゃないか、民間の財界から金を集めて、財政的基礎を作って仕事をやるというようなことはうまくいかぬのじゃないかということで、実はその前にありました国民生活研究協会を解散いたしまして、新しく社団法人生活研究所を作ったわけであります。その当時から当然やはり国民生活向上なり安定というようなことに重点に置いて、従って、今、政務次官が言われました消費者生活というようなものに重点を置いた研究のとらえ方をしたいということを考えておったわけで、その意味では、大綱において今度できた新しい組織目的なり何なりは変わってなかったというふうにわれわれも解釈しております。ただ、今申し上げましたように、一応純粋の民間社団法人でありまして、一般経済界から相当基金を集めるということにもなっておりましたから、それはどうしてもやはり産業界から金を出してもらう、またこういう国民生活研究するということは、当然産業界にとっても広い意味で非常に関心の的になっておるわけでありますから、そういう意味で「国民生活向上産業発展寄与するを目的とする。」というふうに書いてあるわけであります。だから今度の特殊法人は……。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 変わっておるのか、変わってないのかを聞いているのです。
  17. 中野正一

    中野(正)政府委員 その点ははっきり変わっておるわけです。ただ趣旨がここに書いてあるからといって、根本的に従来の社団法人特殊法人が違うというふうにもわれわれは考えてないわけであります。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 変わっておるのか変わってないのか。書いてあるのは目的が違うのですよ。一方は定款において目的を書いておる。今度は第一条において目的を書いておるわけです。それが違うわけなんです。しかも国民生活とは何ぞやといえば、次官はまず消費中心とする生活である、こう言っているのです。ところが今までの国民生活研究所は、もって産業発展寄与するのだ、だから従来の国民生活研究所と同じものを看板を塗りかえるのだが、中身は変わるのか変わらぬのかと言っているのです。変わっていなくてはいけないのです、目的が違うのだから。それを変わっているようにも言い、実際には変わっていないような、こういう答弁ですが、変わっているのか変わってないのか。
  19. 菅太郎

    菅政府委員 ちょっと誤解があるようですが、前の定款は「国民生活向上」と並べて「産業発展寄与する」と、二つ目的を並べて書いてあるわけであります。今回の法案によりますと「産業発展」ということは落ちております。この点は明らかに変わっております。しかし、従来の運営といえども、やはり生活向上問題を中心運営をいたしておりまして、それが間接的に産業発展寄与するという実情でございました。要するに、実態といたしましては、研究活動はやはり生活向上中心にやって参りました。でございますから、実態の上から申しますと、大綱においてはあまり変わらないということを申し上げましたので、規定の仕方は変わっております。これははっきり申し上げます。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 私は大綱において変わらなかったらいけない、変わるべきだと思ったので、そういう観点に立って質問しておるわけです。そもそもいわゆる消費生活面から必要であるからメーカーなり産業がこれを作るという格好なのか、あるいは産業生活を合わすのか、どっちなんです。生活に合うように産業がやっていくのか、産業生活を合わすのか、どっちなのです。
  21. 中野正一

    中野(正)政府委員 従来の社団法人におきましては、第二条にありますように、「国民生活向上産業発展寄与する」ということを直接の目的にしておったわけでありますが、今度はその点が直接の目的から明らかに明文上除かれておりますから、その点は当初の目的が変わったということは言えると思います。ただ、こういう研究をすることが一般産業界にとっては非常に関心の的であるし、また御承知のような国民消費支出の動向は産業界から見ましても非常に大きな問題でございまして、その意味では間接的には産業発展にも非常に関係があるわけでありますが、今度できる特殊法人では、その点は明らかに直接目的としては除いておりますので、変わったというふうに申し上げた方がはっきりするのではないかと思います。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 だから目的が変わるのかどうかと聞いたときに、初めから、変わりますと言うておけばいいのです。そうでなかったら、われわれはこれはちょっと疑問を持ちます。なぜならば、今までの国民生活研究所定款でもいっているように、それはただ書いてあるのかどうか知りませんが、「産業発展寄与」ということが一つの大きな柱であったということは間違いなかった。しかも出しておるところの月刊機関誌は「産業生活」なんです。すなわち生活面からの必要に応じて、それのためにメーカーが物を作って提供するというのではなく、メーカーがまずいろいろなものを作る、そしてどんどんマスコミを通じて宣伝する、それによって消費をかき立てる、これが今までの日本消費生活でなかったかと思うのです。そういうあり方についてどう思っておるのか、こういうことが質問中心なんですが、いかがですか。
  23. 菅太郎

    菅政府委員 ただいま御指摘のような点もございますので、今回法案を作るときには産業寄与するという項は落としたのであります。私が申し上げたのは、従来の実際活動から見ると実績は大して変わりはないということを申し上げたのであります。体系の上では項目を一つ落としましたので、明らかに変わっております。
  24. 北山愛郎

    北山委員 今の質疑が私はこの法案で一番重要な問題だと思うのです。問題は政府がこういう機関を設けて、そして国民生活研究するという場合に、生活アンバランスとかまずい点を直していくというような指導的な方向調査研究するのか、あるいは生活実態の実際の流れあるいは消費者需要流れというものをとらえて、それが企業に役立つようないわゆる市場調査マーケットリサーチに役立てるというような角度でいくのか。従来のやり方では、田中君の意見は、この際法律によってこういう研究所を制度化する以上は、ただ追随的な調査ではまずいのであって、国民生活のいろいろな面におけるアンバランスを直すような指針を、この調査研究によって求める、ここに中心が置かれなければならぬということです。こういう方向でなければ、私はこの研究所法を作り、研究所を作って、政府出資するという意味が非常に薄いと思うのです。政府は両様に答えておりますけれども、私はその点ははっきりしてもらいたいと思うのです。ことに実質上、当初は国が二億円の出資をするという予定であったものが、それが大蔵省か何かの関係で一億に削られて、結局民間出資が大半を占めるということになれば、やはり運営の内容についても影響を受けざるを得ないし、また、あとで議論になると思うのですが、研究所の役員もことさらに議員であるとか地方公共団体の職員を除いておる、なぜそういうものを除くのか、私どもはその積極的な意味がわからぬのです。要するに民間に奉仕するような機関になったのでは、せっかくの研究所法意味をなさないのじゃないか。私どもから言うならば、衣食住の、生活実態方向調査も必要でありましょうが、その調査の場合に、生活アンバランスを認めていく、あるいは消費生活の中で、最近貿易の自由化などの結果現われておる国産品で間に合うようなものを舶来品を使うという消費性向、こういう実態をとらえて施策の中でこれを直していくというふうに、生活の部面についてこれを調査する、こういう方向でけなれば、私は研究所を作っても、従来と同じように産業界に奉仕をする市場調査あるいは企業設備計画販売政策のお手伝いをするということで終わってしまうのではないかと思う。私は政府答弁はその点どうもまことにあいまいというか、心もとないような感じがするので、この点は一つ根本的に改める。もし本法案の中でその点が明確を欠くというのであれば、これを明確にするという方向でなければ、せっかく作っても意味がないと思うのですが、重ねて関連して企画庁の御答弁を願いたい。
  25. 菅太郎

    菅政府委員 さきにも申し上げましたように、今回の法律国民生活安定向上一本にしぼりました趣旨は、今言われましたところに沿うておると思うのでございます。あくまで国民生活中心として、消費生活本位にして、その面からいろいろと研究をしていく。今お話しのように、生産者ないし流通部門を担当する人のための市場リサーチをやるとか、そういう産業の面から生活の面を調べるというよりも、この法律にありますように、あくまでも生活中心として消費者立場安定向上という意味から、すべての研究を進めていく、このことはもうはっきりいたしております。私が劈頭に答えましたことが大へんあいまいであったからと思いますが、私が申し上げたのは、従来の実績が、従来の定款はそうございましたが、実績生活問題を主として研究をして参った、その実態は変わらぬということを申し上げたのであります。建前上から申しますと、今申し上げましたように変わっておりますから、生活本位にやって参ります方向に行くことは、なおさら当然のことであると思います。決して生産者のための市場リサーチに使うというようなことはやらないつもりでおるわけでございます。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 建前というか、定款目的はそうであったけれども、今までも国民生活という側に立ってのことをやってきた、これからも変わらないんだ、こうおっしゃるわけですね。ところが、今まで定款なり月刊機関誌を見ると、必ずしもそうでない。今までこの社団法人である国民生活研究所は何をしてきたか。  もう一つは、国民生活研究所組織を見ますと、調査第一部というのがあって、「国民生活及びその政策樹立に関する諸調査研究」、こうなっている。国民生活研究所調査結果が政策にどのように現われてきたか、具体的な事例があったらお示し願いたいと思います。
  27. 中野正一

    中野(正)政府委員 お手元に国民生活研究所案内書なんかも資料としてお配りしてございますが、本年度の仕事といたしまして今最も力を入れておりますのは、実は経済企画庁からの調査委託費が約一千万円ございまして、これは現在最も問題になっております消費者物価長期変動研究、あるいは一番最近問題になっております階層別消費者物価がどういうふうに変動しておるか、これの分析日本では一番足りていない、こういうことを中心にいたしまして一つやる。それから国民の苦情・不満等調査、これは主として新聞社あたり投書欄ですね、そういうようなものを集計して、そういう実態をつかもうということもやらしております。それからもう一つ生活構造モデル作成方法論研究、これは、将来のわが国の生活構造モデルというのがどうあるべきかということは、もちろん階層別職域別地域別にいろいろ作成していかなければいけません。ただ従来のように消費水準がこうなったとかああなったとかいうことで、国民生活がはたして向上したとかしないとかいうようなことを判断するのはどうもいかぬじゃないかということで、これは相当長期的な研究になるかと思いますが、そういうことを今やらしておるわけであります。それ以外にも消費生活中心としたいろいろな資料統計等収集分析をいたしましたり、大体そういうことを主としてやっておるわけであります。決して特定の企業のためのマーケットリサーチというようなことに重点を置いてやっておったわけではございません。ただ……。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 だから具体的な政策として何が出てきたんだ。国民生活白書というようなものを作るのに寄与したぐらいでなしに、具体的政策にどれだけ寄与をしてきたか。一体具体的にどんな政策調査の結果答申なり、出したのかということを聞いておる。
  29. 中野正一

    中野(正)政府委員 具体的な政策にどういうふうに取り上げるかということは、経済企画庁中心といたしました関係各省が、そういう意見調査の結果というものを十分研究しまして、それを取り入れていくわけでございます。この研究所は何も政府政策に、直ちにこうやれというわけではございませんので、今申し上げましたようないろいろな調査研究の結果というものが——調査中でございまして、実はまだ完成はしておりません。昨年の九月に発足いたしまして、われわれの方としても今言ったような委託金を出しまして、関係の学界の人も動員をして鋭意研究いたしておりますが、その研究成果につきましては、われわれの方は第一に、別に企画庁で持っております国民生活向上対策審議会と非常に密接な関係を持ちまして、そこにいろいろデータを出して、政策審議のベースにしていただこうということで、これからそういうふうにしたいというふうに考えております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは国民生活研究所調査に基づいて具体的にこれをやりましたというものは、まだないのですね。どうですか。それともう一つ、この機構の中に調査第一部というのがあって、今言ったように政策樹立に関する云々ということを仕事にしておるのですけれども、九月か十月か知らないが、何にも今までやらなかった。ただ調査したかもしらぬが、具体的な政策としてまだ何も出ていない、そういうことですか。
  31. 中野正一

    中野(正)政府委員 ただいままでのところは、まだ調査研究の結果を政府が取り入れて、具体的に政策にこれをこうしたということはございません。それから調査第一部の「国民生活及びその政策樹立に関する諸調査研究——調査一部、二部と分かれておりますが、一部の方は由として経済企画庁、あるいはそのほかの関係官庁委託調査研究する部ということで、こういう名前がついておるわけでございます。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ何も具体的なところにまでいっていないというのならそれでよろしいが、それなら組織の中に、いわゆる委託調査ということにしたらいいと思うのです。政策樹立なんということを書いておるから、大げさなことになるからいけないのです。まずこういうものは訂正すべきです。  それから、今度のものでも二十二条の三号、いわゆる一号、二号にこれこれができるということがあって、そして「前各号に掲げる業務に係る成果普及すること。」こうあるが、普及ということは一体どういう方法で何をするのですか。
  33. 中野正一

    中野(正)政府委員 これは一つ資料室というものを作りまして、諸外国消費生活のいろいろなデータ等がございますので、もちろんこれは国内のデータも集めますが、そういうものも集めまして、資料室というようなものを作らして、皆さんの閲覧に供する。それからもう一つは、機関誌中心とした定期刊行物を頒布するというようなことであります。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 外国等資料を集めて資料室を作る、定期刊行物を作る、一体その資料を見に行くのはだれですか、その日その日に追われている消費生活者がそんなものを見に行けますか。
  35. 中野正一

    中野(正)政府委員 これは資料室を作る、あるいは刊行物を出すというようないろいろな方法で、ここに書いてある成果普及するということは、一つ方法であろうと考えております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、さっきから言っているように、だれのために鐘が鳴るのかと言っているのです。あなたが今言うように、資料室を作って、わざわざ国民生活研究所まで出かけていってその資料を検討するという人は一体だれかというのです。それよりか、ここで研究したものが、実際の具体的な政策にどう結びつくのか、その接点はどこですか。
  37. 中野正一

    中野(正)政府委員 この研究所研究された成果というものは、もちろん経済企画庁あるいは関係省等にこれを頒布いたしまして、行政の参考資料にしていただくわけで、これは当然のことでございます。ただそれ以外に、先ほど申し上げておりますように、われわれの方で設置いたしております国民生活向上対策審議会では、国民生活関係があるいろいろの方面消費者代表労働者代表、そのほか学識経験者産業界方々がいろいろ集まって御審議を願っておりますので、そういうところには直接にデータとして御提出して、非常に参考になっているのじゃないか、また審議会方々もそういうふうに希望しておられるわけであります。それ以外に、資料室等の利用につきましても、たとえば主婦連であるとか、あるいはそのほかの消費者のいろいろな団体もございますから、そういうところでいろいろ運動をされ、あるいは調査をされるような場合は、そういうところとの連携等については十分考えていきたいというふうに考えております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 調査をした結果を資料等にして関係方面へ出す、これは普及だと思うのです。そうしたら一億円ですか国が出して、また今後も出資がふえるかもわからぬと思う。それをした結果、一体どこで具体的な政策として現われるか。言いかえるならば、この国民生活研究所が、経済企画庁なりあるいは関係主務大臣に、研究の結果こういうことが必要であるというようなことを建議できるとか、あるいはそういう建議を各省大臣は尊重しなければいけないとか、そういった規定がなければ、ただ普及だといってあなたが言うように関係方面資料を出す、資料室をこしらえて資料を閲覧に供するといっても、よほど物好きな人か、あるいはそのようなことによって自分の産業に直接関係を持つ者、こういう人は別ですが、ほんとうに消費生活者がそんな資料なんか見に行きませんよ。問題は、そういうふうな人たちのための研究所を作るというなら、その研究の結果が、そういうようなその日その日の消費生活に追われている人の上に現われてくるという具体的な方法が示されなければならないと思うのですが、そういうことはこの法文のどこにありますか。
  39. 菅太郎

    菅政府委員 今の御質問は、この研究所そのものの根本的性格に関係して参りますが、はっきり申し上げますけれども、この研究所は、政策立案機関審議機関や建議機関ではございませんで、研究が主であります。しかし、研究成果を遊ばせてはおきません。各種の方法普及はいたすつもりでおります。しかし、それをいかに政策に取り上げるかということは、政策の立案、審議に当たる機関の責任でございます。研究所といたしましては、まじめに科学的に研究した結果を普及するという程度で、もうそれ以上には出な い性格なのです。そこはやはり研究機関政策の立案、審議機関あるいは建議機関仕事の分担だと思いますから、その程度で私はよいのじゃないかと思います。ただ普及方法については、今お話しがございましたように、資料室を作り、出版物を出し、講演会をやる、あるいはその他マスコミに乗せての若干の宣伝をやるということもありましょうが、直接消費大衆がこの資料を読まないから、この研究意味はないということは言えぬと思います。どうせそういう専門の資料でございますから、見にくる人は専門家が多いと思います。その専門家は、政策の立案機関の専門家であったり、あるいは消費者団体の人々であったり、あるいは主婦連の運動団体の人であったり、そういう人がこの成果を利用してくれまして、これを大衆に宣伝する、あるいはまたマスコミ機関がこれを利用して宣伝してくれる。要するに、この権威ある総合的な国民生活研究成果というものは、今まであまりないのですから、ここがこれを作って、さあ利用して下さいと普及して、それをマスコミがどう利用し、政策立案者がどう利用するかということは、それぞれの機関がやってくれることであると思うのであります。そういうものがなるべく大衆に普及するように、あるいは実現するように、それぞれ努力してもらわなければならないと思います。その結びつきをできるだけ有効にするように、成果普及をはかりたい、こういうように考えておりますので、御了承を願います。  〔「それが正しいのだ」と呼ぶ者あり〕
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 正しいか正しくないかは知りません。研究所という建前に立てばそうかもしれません。私の言っておるのは、たとい一億でも、税金の金を出してこういうものを作る以上は、もっと効果があり、実際の政策に具体的に結びつき得るようなものでなければならぬと言っておるのです。正しいとか正しくないとかいうことではない。これはもう少し強い性格を持たせてはどうかと思うのです。何も知らぬで、そんなことを言うな。
  41. 菅太郎

    菅政府委員 これは法案として研究所研究所としてという限界で一応りっぱに仕上げまして、同時に国民生活安定向上のための研究所を作ったらそれでおしまいというわけではありませんから、研究所はこれで作り、それから今申し上げました経済企画庁に移されております国民生活向上対策審議会のごときは、政策審議機関、建議機関として大いに活躍してもらい、政府の各行政の部局は、それぞれ国民生活安定向上のために、こういう資料なり審議なりに基づいてどんどん活動していく、その総合的な活動は大いにやらなければならない。政治の問題となってくると思いますが、それを決してやらないというわけではございませんが、本法案に関するところは、研究所をりっぱに作るということで一応とどめておいたら、こういうふうに思うのであります。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、せっかく金を出してやるのだから、しかも特殊法人として作るのだから、単なる象牙の塔であってはいけない。その研究結果を、この法律によると「普及」ということになっておるんだが、それだけでは足らぬのだ、もう少し強いものにして、この研究調査の結果が具体的政策に結びつくような何らか一つの条文がほしいのではないか、こういうことを言っているわけです。
  43. 菅太郎

    菅政府委員 国民生活安定向上全体を考えます上においては、そのことは非常に必要と思いますが、研究所法案としては、成果をきちんと出し、それを有効適切な方法普及する、その普及方法は、田中さんがおっしゃったように、これはあまりアカデミックな、高くとまった姿勢ではいけませんから、あるいはまた専門家への伝達だけでは困る、大衆への直接の普及ということもございましょうから、そういうことは十分考えていいと思いますが、まずまず成果普及程度でこの法案そのものは一応打ち切って、ほかの部面で今おしったようなところを大いに力を入れるのが政治の筋としてはいいんじゃないか、こういうふうに考える次第でございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 この研究所法案を修正するかどうかはあとで相談いたします。少なくともあなた方がそういう観点に立って法案提出したんだということは認めましょう。しかし、せっかくその社団法人特殊法人にするんだ、しかも血税一億円を入れるんだ、それならもうちょっと気のきいたものにしたらどうか、こういう意見なんです。先ほどから変な雑音が入っておるから、その人と委員会が終わってから修正について話し合いたい、こう思います。  次に資本金の今のことに関連してですが、これは二億と言っておったのが一億になって、従来の一億と合わして二億で出発する、こういうことなんですが、四条の三項、四項を見ますと、将来ふやしていこうということなんです。法律のきめ方はこれでいいのかどうか知りませんが、「研究所は、必要があるときは、経済企画庁長官の」云々となって、まず研究所の方からこれだけ必要だということが出てから、逆に政府が予算でこれをきめるのだ、法律上はこうなるのですが、実際問題は、予算がきまって、そして出資ということになるんじゃないですか。三項、四項の関係はどうです。
  45. 菅太郎

    菅政府委員 お話しのように、この法文の建前は、そういうふうに研究所が発動して、企画庁長官が認可を与えて、増資ということに相なっておりますが、これは実際将来政府出資民間出資は均衡をとりたいと思います。あまり民間が大きくなるのも、さっきお話しのようにいろいろ弊害もありましょうから、そういう意味で増資をいたしますときには、大体実際上はあなたのおっしゃいます通り、予算の獲得のめどをつけつつ増資をすると思います。ただし、それまでに民間出資が非常におくれておりまして、ある年度においては政府出資はしない、民間の足らぬ分を少し募集を進めていくというような段階もあるかと思いますが、根本におきましては、今の御趣旨のように実際運営することになると思います。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 この「研究所は、必要があるとき」ということは、民間政府両方にかかるのですね。そして四項は、三項のいわゆる民間の「とき」でなく、政府出資について企画庁長官が認可を与えた場合にかかってくるのですか。
  47. 中野正一

    中野(正)政府委員 四条三項の方は、民間政府と両方含めて資本金を増加するというときは認可が要るということを規定しておるわけであります。四項の方で、これは当然予算できまるわけでありますが、政府は、「予算で定める金額の範囲内において、研究所出資することができる。」この書き方は、ちょっとこれは読みようによってはおかしいじゃないかと言われますが、これは大体こういう前例になっておるのです。こういうふうな書き方にしておけば、政府出資した場合に、一々法律改正がなくても、予算で御審議願うわけですから、政府が出す金はそれにプラス民間の出す金があるわけでありますから、その意味合いで第三項が規定してあるわけでございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 第五条、第六条にいう「持分」とは一体何ですか。
  49. 中野正一

    中野(正)政府委員 「持分」というのは、普通出資者として有する財産的地位というふうにお考えになっていただきたいと思います。ここで具体的には、出資の払い込みをし、また書類の送付を請求したり、また一番大きな財産的なものは、残余財産を分けるときにその分配を請求する権利がある、このようなことになっているわけであります。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 現在の一億円は、いわゆる会員制度で会費として納めているわけですね。それを今度持ち分として一口幾ら何口というふうに改めるのですか。  それから出資者のいわゆる地位というか、そういうことですが、ここで「質権の目的としてこれを受けることができない。」こういうことですが、それは一体民法上でいうどういう権利になるのですか。
  51. 中野正一

    中野(正)政府委員 特殊法人ができます際に、これは附則の方に書いてあったと思いますが、政府からの出資とそれ以外に民間からの出資を受けて設立することになるわけであります。そこで、従来社団法人でやっておりまして、今金を集めているのは、これは基金ということで金を集めておりまして、これは附則に規定がございますが、現在の社団法人がかりに幾ら集めますか、今のところまだはっきりめどがついておりませんが、今一億円の金を集めておりまして。大体半額程度は、この新法人ができるまでに集まるのではないかという見込みでございます。これはそのまま社団法人の財産として引き継ぐわけでございまして、これは持ち分には実はならぬわけでございます。どういう扱いをするかというと、資本準備金という形で受け入れたいというふうに考えております。  それから、持ち分としての権利というのは、先ほど申し上げましたように、解散する場合に、残余財産の分配の請求を受ける権利があるのが、これが持ち分の権利ということでございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 一億民間というのは、新たに出資するということですね。それを一口幾らということにして何口も持っている、これが持ち分ですね。それでは一口幾らくらいにして、どういうような募集を考えているのかということが一つ。  それから、質権の目的としない、こういうことになっているが、これはその特殊法人たる性格からいっているのだと思う。しかし、質権ということを特にうたったのは、質権の対象はいわゆる物権なんですね。それでは持ち分に対して、いわゆる株券のようなものを出す、それが普通ならば物権として取り扱われるのですが、そうでなかったら、わざわざ「質権の目的」云々というふうにうたう必要はないですよ。この質権とはしないということは、一体どういう権利なのですか。質権の対象は物でしょう。それではその持ち分は、物の観念でいくのですか、無体財産ですか、どっちですか。
  53. 野木新一

    ○野木政府委員 途中から入ってきまして、御質問の点はこちらの係官から聞きましたが、第五条の「研究所は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。」この規定に関連した御質問のようでございますが、持ち分は持ち分それ自体としては所有権とか何とかいう物権的なものではないわけでありますが、民法においては、質権は権利質という制度がありまして、民法三百六十二条ですが、「質権ハ財産権ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得」「前項ノ質権ニハ本節ノ規定ノ外前三節ノ規定ヲ準用ス」そうしまして、以下にいろいろな財産権が質権のことを書いてありますが、これに準じて持ち分というのも考えられるのではないかと存ずる次第であります。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、もう一つ前提がある。出資にあたって持ち分をどうするのか。たとえば一口幾らというようなことにして、株券のようなものを出すのかどうか、それが前提なんですよ。法制局のあなたが言われたが、なるほどその規定は知っております。しかし、ここで断わる以上は、やっぱり対象となるべきいわゆる株券のようなもの、何口出資という出資証券といったようなものがなくてはいけないと思うのです。質権というものは、それをいわゆる取り上げるところに、留置するところに、質権の質権たるゆえんがあるわけです。だから何かなければいかぬわけですよ。そうでなかったら、わざわざここで質権の目的ということをうたわなくても、当然質権の目的にならないんですよ。
  55. 菅太郎

    菅政府委員 法制局からいろいろ法律的な御見解のある前に申し上げますか、一口幾つかというふうにやる気持はないのでございます。適当な額の出資を求める、そのかわり出資証券毛出すつもりはございません。原簿を備えておきまして、それに登録をいたしまして、これが一つの対抗要件であります。つまり株式会社のような営利会社ではございませんから、営利の目的で証券が転々としてということはないわけです。出資をした人は大体動かない。特殊な事情でもあって譲ることがあるかもしれないが、そういうときには原簿の書きかえをやりまして、それが対抗要件になるわけでございまして、そういういわゆる証券の転々移動ということは、実は考えておらぬのでございます。それだけは申し上げますが、法律的解釈は一つ法制局の方から……。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 それならわざわざ質権についての断わり書きは要らぬと思うのですよ。登録名簿があって、そこに登録しておるのだから、それに基づいて金を貸せというようなことはあり得るかもわからぬ。しかし、質権云々という観念はそこからは出てこないですよ。何のために質権の目的としてはならないという規定をわざわざ入れたのですか。ということは、裏を返して見れば、なければ、質権の目的になるから、これを入れたんでしょう。今おっしゃるのでは、質権の目的にならぬですよ。
  57. 菅太郎

    菅政府委員 これは質権で転々することはないのですが、この研究所自体が出資者の持ち分を取得をしたり、自分が質権の目的としてこれを受けてはならぬので、これはつまり資本充実の原則と申しますか、株式会社その他における団体が、自分の株なり持ち株なりをとったり、質の目的にしてはならぬという原則でございますから、これで他が質を設定するという意味のものではないのでございます。ただ法律的性格につきましては、法制局の方からお答えいたします。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 研究所出資者の持ち分を取得するということは、あなたの言う通り、そういう性格からいって、これはわかるのです。「質権の目的」とわざわざうたっているのがわからぬというのですよ。
  59. 野木新一

    ○野木政府委員 質権の目的として規定いたしましたのは、これによって他の者に優先してこれを処分してそれから弁済を受ける、そういう点が非常に大きい点ではないかと存ずる次第であります。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 他の者に先立って云々というのは、どういうことです。持ち分というのは、今の雑則にあるように、登録簿を作って、その名簿に登録するだけなんです。そのことがどうして質権の目的になるのか、質権の対象になぜなるのかということです。何でわざわざここへそういう質権ということを入れたのか。それは、これがなければ質権の対象になるということが前提になっているはずです。
  61. 野木新一

    ○野木政府委員 財産権は、民法の規定によっても、質権の目的とすることを得るので、この出資者の持ち分も一種の財産であると見得るわけでございますから、その意味においては権利質の目的となり得るものと存じます。しこうして、証書が必要かどうかという点につきましては、民法三百六十三条によりますと、「債権ヲ以テ質権ノ目的ト為ス場合ニ於テ其債権ノ証書アルトキハ質権ノ設定へ其証書ノ交付ヲ為スニ因リテ其効カヲ生ス」で、「証書アルトキハ」でございますから、証書あるときはその証書の交付によって効力を生ずる。証書がない場合もおそらくあるわけでありまして、証書があればそれを交付するというだけでありますから、必ず証書があるということを前提にしているわけではございませんから、その点は差しつかえないのじゃないかと存ずる次第であります。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 これは第三者間、いわゆる持ち分を持っている人と第三者の関係をうたったのと違うのです。これは研究所と持ち分を持っている人との関係をうたっているわけですね。そのときに、なぜ質権云々とわざわざ断わる必要があるのか。あなたの言っているように、もちろんいわゆる持ち分を持っている者と第三者の間には、その持ち分を質権の目的とすることは、財産権だからできるだろう。しかもそれは必ずしも民法が予定しているようにいわゆる証書等を必要としない場合もあるかもわからない。これはわかるのだよ。ところが、これは研究所出資者との間の関係ですね。
  63. 野木新一

    ○野木政府委員 この第五条第二項「研究所は、出資者の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。」、この趣旨は、株式会社の方で自己株式を禁止しておるというような制度がありまして、やはり株式会社なり——ここでは研究所ですが、研究所がその出資者の持ち分を自分で取得するということになると弊害もあるし、また質権の目的としてこれを受ければ、結局質権の実行によって質権そのものを研究所も取得し得る状態になりますから、結局「出資者の持分を取得し、」云々でそれを禁止した趣旨は、質権をとり得るということを許しておくと、そこに穴があいてしまいますので、同じ目的からこの五条二項は「受けることができない。」そう規定しているのだと存ずる次第であります。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 この「持分を取得し、」はわかるのですよ。「質権の目的」ということを、なぜこういうことをわざわざ書いたかということを言っておるのです。あなたの言っていることで大体出てきたと思うのですが、こういう書き方の前例は何かほかの法律にありますか。
  65. 野木新一

    ○野木政府委員 これは今具体的にどれかということはちょっとわかりませんが、一種の型の条文になっておりますから、おそらくあると思います。趣旨といたしましては、出資の持ち分を取得することはできないということで足りるのじゃないかといいまするが、もしそれだけだとしますと、質にとって、質権を実行したといったようなことにいたしまして、その結果持ち分を取得するということになるから、質で自分が取得して足りるのじゃないかという議論もありますが、やはり同じような趣旨で、自分の持ち分は自分で取ってもいけないし、質として自分の方でその支配権を認めてもいけない。そういう趣旨で、理屈は持ち分の取得じゃない、そういう思想と相通ずるのではないかと存ずる次第であります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、持ち分は取得したらいかぬというだけでいいんじゃないかということを言っているわけです。多分紋切り型の文章だから、ほかにはあるだろう、こういうことですが、これは私ちょっと研究さしてもらいます。保留いたします。
  67. 中野正一

    中野(正)政府委員 ちょっと御説明いたしますが、ほかに例文があるかということですが、ここに資料がございますから申し上げますが、先般、昨年でしたか、通りましたアジア経済研究所でございますね。これは全然同じ規定であります。アジア研究所は全然同じ規定で、研究所法の五条の二項にございます。それから今度できました農業機械化促進法の中で、農業機械化研究所というのを今度御審議願っておると思いますが、これも同じ規定であります。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばアジ研の場合、何か持ち分についてどういう扱いをしておるのですか。
  69. 中野正一

    中野(正)政府委員 持ち分の関係については、アジ研と今度の国民生活研究所と同じ規定になっております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、出資証券とかいうものは出してないんですね。
  71. 中野正一

    中野(正)政府委員 アジ研の場合は、今度出しております法律と同じでございます。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 だから出資の場合に、やはり登録だけでやっておるのか。証券を出していないのか、出しておるのか。
  73. 中野正一

    中野(正)政府委員 それは確かめないとわからないのですが、出してないと思います。規定は全然同じ規定になっております。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 だからこれはもうちょっとこっちも勉強さしてもらいます。  それから七条に定款の規定がありますね。それから八条に登記の規定がありますが、「政令で定めるところにより、」云々となっておるのですが、この登記に必要な事項は、七条の定款の必要事項のほか、どういうことが考えられておりますか。
  75. 野木新一

    ○野木政府委員 八条の「研究所は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。」この政令で定める事項でございますが、これこそ例文になっておりまして、普通設立登記とか、変更登記とか、事務所移転登記とか、一連の大体定型的の政令の型ができております。大体十カ条内外ぐらいの政令になっております。たとえばアジア研究所の登記がありますが、これは登記すべき事項、それから事務所移転の登記……。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 それはわかっておるんだ。七条の定款記載事項は全部登記事項なのか、その七条の定款記載事項のほかにまだ登記事項を政令で定めようとするとどんなものを入れようとしておるのか。
  77. 野木新一

    ○野木政府委員 今ここに持っておりますのは、アジア経済研究所関係のあれでありますが……。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 アジアは聞いていな  い。
  79. 野木新一

    ○野木政府委員 同じになると思います。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 政令というものは原局が作るんだろう。法制局が出しゃばった答弁はやめておけよ。
  81. 中野正一

    中野(正)政府委員 今政令によって必要な登記事項と考えているのは、目的、業務、名称、事務所、資本金、役員の氏名、住所というようなことでございまして、定款に定める事項の一部になるわけでございます。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 だからそのほかにどんなことが、たとえば政令で定められるかということです。だから七条の定款記載事項は全部登記事項でしょう。そうじゃないのかね。そのほかにどういうことを政令で定めるのか。
  83. 中野正一

    中野(正)政府委員 定款のうちで、ずっとありますが、目的、名称以下こういうものは当然登記しなければならぬわけです。七の会計に関する事項、九の定款の変更に関する事項、こういうことは登記事項から落ちるわけで、従って定款以外にあるかと言われますと、定款のうちの一部が落ちる、必ずしも必要でないものがあるということになるわけであります。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 これは法制局にちょっと尋ねるのですが、いわゆるこういう法人登記の場合、定款変更は登記事項じゃないんですか。
  85. 野木新一

    ○野木政府委員 定款の変更、たとえばこの定款変更のうちの目的の変更とか、名称の変更とか、事務所所在地の変更とか、そういう意味での定款の変更、これはさっきの条文からそっちの方で登記事項になります。大体登記は第三者に公示して対抗要件の関係がありますから、そういう点で必要な点は網羅しているということになるんじゃないかと存ずる次第であります。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 登記の効果は、これは第三者の対抗要件であることはわかっておる。従って、定款の変更についての第三者に関係のあるところは、やはり僕は登記事項だと思うのです。従って、今の局長答弁ではちょっと足らぬ。  それから、この本条の二十一条では個々の役職員に、刑法上の公務員たる負担を負わしているわけです。公務員として扱っているわけです。そうすれば、刑法の上では公務員と同様に扱っておるが、給料その他はどうなるのですか。
  87. 中野正一

    中野(正)政府委員 給与につきましては、規定を作りまして、これは認可を受けることになっておりますが、大体公務員に準じた——これは公務員のようなそんな窮屈な規定にはならぬかと思いますが、特に研究員等につきましては、その待遇等については特別にいろいろ考えなければならぬと思います。公務員に準じた待遇をするようにしたいというふうに考えております。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 給与その他をきめる場合、経済企画庁の長官の認可が必要ですね。そして今言っているように二十一条では、刑法上の扱いは公務員と同じようにしている。そうするなら、待遇の上においても、認可にあたってはもっと考えねばならぬ点がある、こういうことを申し上げているわけなんです。
  89. 西村力弥

    ○西村(力)委員 給与の計画の説明を見ますと、役員の手当は七万五千円、十四カ月ということになっております。二カ月増して十四カ月としたのは、期末手当や何かの関係でこうしたのかと思うのですが、ところが職員の場合ですと、諸手当関係は通勤手当、扶養手当、超過勤務手当、特別手当、これだけが出ておるわけですが、期末手当の項目はない。特別手当として本俸計の十二分の二、これだけは出すということになっております。これがすなわち期末手当の関係であるかどうか。しかし、これは十二分の二ですから、六分の一しか出ないわけですが、そうすると期末手当の予算項目がどこにも見当たらぬように思うのですが、これはどういうことになるか。普通の公社とか何かの関係と違います。役員の手当は七万五千円と非常に控えております。これだけでは学者諸君は研究に従事することは相当困難性があるのではないか。役所関係から行くなんということは、あまり好ましいことではない。一般的にそうであるし、ことに研究業務であるから、そういう関係から転出するということは好ましいことではない。だから、より多くやはり相当専門的な学識経験を持つ、そういう人が役員に就任してもらわなければならぬと思うのですが、それが七万五千円となると、一般に比較して、これでは学者諸君の研究を満足に行なってもらうということは不可能ではないか——そう不可能ではないかもしれぬけれども、相当困難ではないか、こういうふうに思う。だからそういう点、一般的に低目に給与を見ている点は好感を持てるけれども、実際の仕事にほんとうに専門的な人々が耐えられる給与というような工合には言えないのじゃないか。それから、職員の期末手当はどういうように考えておられるか。
  90. 中野正一

    中野(正)政府委員 研究所の方で作りました一応の支出の計画について、先生が御指摘になったと思うのです。確かに役員の給与等につきましても、これは平均でいっておりまして、これは発足当初でございますが、もちろん理事等につきましては、専門の相当有能な方を招聘しなければいけませんから、相当考えなければならぬと思います。実はこれはまだはっきりしたことは申し上げられませんが、役員についても、会長あたりは当分——相当仕事の性質も違いますが、アジ研あたりの例を見ましても無給でやってもらっておるという例もございます。しかし、確かに専任の研究者につきましては十分な待遇をしないと、なかなか人を得られないというととは御指摘の通りであります。期末手当につきましては、特別手当というところで考えておるのであります。
  91. 西村力弥

    ○西村(力)委員 特別手当で考えているとおっしゃいますが、百六十万円ですね。これが二十四人に分割されると一体幾らになりますか。これが毎月期末手当として十二分の二出るということになれば、ちょうど一年間で二カ月分は出るということになります。そうすると積算の基礎というのは、本俸かける十二分の二かける十二とならなければ、それは二カ月分は出ません。そうでしょう。二十四人で百六十万の期末手当をもらったってどうなりますか。こんなものはとんで毛ない話ではありませんか。それでは一人当たり何ぼになりますか。幾らにもならないのではないですか。七万円弱になりますか。そうすると、これが期末手当の予算項目という工合にいえるのですか。これは特別手当という名称ですから、僕は研究業務に対する特別手当という工合に見ておったのですが、これはどうなんです。あなた方の試算した収支予算案ですね。
  92. 中野正一

    中野(正)政府委員 研究所の方でこういうものを作ったので、われわれの方ではまだ十分これの検討も済んでおらないわけでありますが、大体二十四人の職員だけの特別手当、これは期末手当のことだろうと思いますが、一人八万円程度、本俸の計に対して二カ月分の特別手当を出そうという計算になっております。こういう給与等の点につきましては十分われわれの方でも検討いたしまして、職員が仕事がよくできるようにいたしたいと思います。
  93. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それについては、これは特殊法人になったのですけれども企画庁の監督があまりこまかくきびし過ぎておるのではないか。この研究所の業務の内容からいいまして、その他の研究業務をやるときは企画庁の許可を得なければならぬとか、研究調査に対する許可認可の権限まで強化する方向をとっているということ——この前奥井さんが参りましたときの話でも、研究そのものに対する監督はごめんこうむりたいということがありましたが、確かにそういうものであるだろうと私は思うのです。金は大したことはない、監督は厳重だということになってくると、一般にこういう特殊法人あるいは政府関係機関というようなものは、一々あなた方にお伺いを立てなければならぬというところに非常な障害があるのです。今問題になっておる東北開発一つを取り上げましても、ほんのつまらぬことでもあなた方の許可を受けに参らなければならぬ。企画庁の認可を受けに参らなければならぬ。だから採算性というもの、企業性というものを発揮しようとしてもなかなかできない。公共性に名をかりた金縛りだけかけられておる、そういう矛盾がますます深刻になってきて、それの独立性、企業性がくずれていくということになるのです。それとちょっと性質は違いますが、研究という本来のあり方からいいまして、もっともっと監督というものは、可能な限り排除していくという方向をとっていくべきじゃないか、私はそう思うのです。まあそれは意見になりますがね。
  94. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ続けて質問をいたしたいと思いますが、本法三十九条、四十条に、罰則を設けておるのですが、そこに「役員又は職員」、役員と職員を同列に置いて、同じような資格において罰する、こういうことになっておるのです。まず四十条の方を見て下さい。一号から五号までありますが、職員が犯すであろうのは何号ですか。予想せられるのは何号ですか。
  95. 中野正一

    中野(正)政府委員 第三号は、要するにこの業務の範囲がきまっておりますから、それ以外の業務を勝手にやっちゃいかぬということになっております。そういうことを職員が案外やりかねない。どこかの会社に頼まれて、個々の会社の利益のための研究をやるということは規定違反、法律違反でございますから、そういうことをやっちゃいかぬということで、これははっきり規定違反になります。それから、四番目の業務上の余裕金を運用するというのも、これは三十条によってなかなかめんどう過ぎるくらいなことになっておりますが、余裕金はこういうところにしか運用しちゃいかぬということがありますから、これはそれに違反して職員がそういう金銭の経理上の責任者あたりがやることをやる。まあそんなことはないと思いますが、しかし、法律の規定ですから、そういうことを予想して書いてあるというものであります。それからその次は、経済企画庁の監督命令が出ますから、そういう命令に職員は実際問題として従わなくちゃならないというようなことも考えられる。それから第一の、この法律によって各種の認可、承認を受けなければならない、たとえば事業計画とかそういうようなものも認可、承認を受けなければならないということになっておりますから、これは当然役員の責任においてそういうことはやるわけでありますが、従って、あとは実際問題としては内部問題ということになると存じます。しかし、それも全部書類ができて、役所へ届けるというような場合に、それを怠ったとか、どこかへというようなことも考えられないことはない。それから第二番目は、登記することを怠った、これは登記するということは、実は別の規定で会長の責任になっておるわけでございますから、これはもう役員以外に責められることはないと思いますが、これがずっと同じような考え方で一から五まで並んでおるわけでございます。  それで、三、四あたりは非常にはっきりしておるのでございますが、ほかの方は大体役員の責任ということに実際問題としてはなるというふうに考えております。
  96. 田中武夫

    田中(武)委員 私も、実は、この条文を見て、職員が犯すであろうと思われるのは一号から五号まででどれだろう、私はまあ三号ぐらいではないかと思う。これもあとで申し上げますが、一、二とか四とかいうのは、これは職員でなくして、当然役員の仕事なんです。それから五にしてもやはり役員ですよ。それから、三の業務外の仕事をしたとかなんとかいうことは、これは内部の、いわゆる職員に対する役員というか、使用者との関係の業務命令の問題だと思うのです。そうするなら、何もここで職員に、役員と同様の処罰をもって臨む必要がどこにあるのか、こういう感じが実はしているわけです。一、二とかなんかは、当然これは役員の責任においてやるべきです。四にしても、そうですよ。余裕金の運用を勝手に職員がやることはないと思うのです。もしやったとしたら、その金をほかに使ったら横領罪です。これは何も、業務上の余裕金を三十条の規定に反して云々というのは、これは役員の仕事ですよ。こうしてみると、まあ三号の場合にしても、これは内部の命令、業務の関係だと思う。そうするなら、必要ないじゃないか、こういう感じを持っておるのです。どうでしょうかね。
  97. 中野正一

    中野(正)政府委員 いや、確かに、私もいろいろこれは勉強してきたのですが、なかなかいい例が見つからないで何ですが、やはりここに書いてありますように、次の各号の一に該当する場合は、その違反行為をやった役員とか職員が罰せられるわけですから、想像される場合も——これは実はそういうことを申し上げると説明にならぬのですが、これはみんな長い間いろいろ研究されてこういうふうになってきたもので、実は十分そういうことまで研究せずに法案提出した点は何ですが、これは違反行為をした役員、職員というふうにありますから、一応職員まで網をかぶせておくことの方が筋道が通るのじゃないかということで、こういう規定になっておるのだろうと思います。実際問題としては、職員まで及ぶということは、実はあまり適切な例を考え出せないくらいなというふうに申し上げていいと思います。
  98. 田中武夫

    田中(武)委員 この法案を立案した責任局の局長がそうであろうと思うとかということなんです。私は、いろいろなこまかいこういう規定でこんなつまらぬ議論というか、罰則の何条の何号だとか、質権がどうだとか、そんな議論は実はしたくないのです。ただし、今言ったように、前例によってこれを入れたのだ、何らの検討をせず、前にこんな例があるからそのまま入れるのだという、こういう態度、これを直さすために、私は何回かいろいろなこまかい問題について質問したわけです。それもはっきりして、一応こういうことが予定せられるということはないのですよ。あるであろうというくらいのことで、結局は、ほかの法律にこういう条文があるからそれをそのまま写したのだ、こういうこと。法制局の答弁もおそらくそうだと思うのです。そうするなら、どこに進歩があるか。前の型をそのままやっておるじゃないか、実はこれが問題なんです。そこで、こういう問題をあえて申し上げておるわけなんです。
  99. 野木新一

    ○野木政府委員 ただいまのことでお答えいたします。  御質問の点は、まことに立法論として一つの見識を示すものだろうとは存じます。しかし私ども、原案にいたしました趣旨を一応弁明いたしますと、この四十条の過料の書き方につきまして、大よそ二つの型といいますか、大づかみに言いまして型があります。一つは、民法や商法などに出ているようこ、発起人とか理事、取締役あるいな清算人が、次の各号に掲げるような行為をした場合には、過料に処する、そういう言い方と、この四十条のような、次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした研究所なりあるいは法人の役員、職員は過料に処する、大まかに言ってこういう二つの書き方があるようであります。これは大体ずっと、私が担当する以前からそういう踏襲はあるわけです。しかし、これを考えてみますと、やはりこれには一つのそれぞれの理由があるわけでございまして、民法、商法の流儀は、まず発起人なり理事なり取締役なり、そういう重要な責任者をとらえて、それを過料に処するといったような書き方であるわけであります。ところが、この四十条の書き方は、さらにそれよりも広く過料の制裁を科するということにしておるわけであります。これはどういう理由かと申しますると、私は、法人罰とかその営業者の罰、いわゆる両罰規定、あれがずっと発達してきたあの過程とあるいはうらはらな関係になるのではないかと存ずるわけであります。と申しますのは、この研究所法案におきましては、研究所は法人でありまして、すべての法律の義務は研究所という法人に向かっておるわけなんです。ところが、厳格にその点だけとらえますと、義務違反というものは法人にしかない。役員を何も義務違反にすることはないじゃないかというような議論も起こりますが、それでは今度は、法人があるといっても、それは観念的な存在でなくて、社会的な実在といたしましては、それぞれの自然人が活動してそれが法律上法人ということになるわけでございますから、その法人に課した義務を最も厳正に励行確保しようと思うものならば、その法人を動かす自然人に対して、その義務が及んでいる、そういうふうに考えなければならないのではないかと思います。そういう場合におきまして……。
  100. 田中武夫

    田中(武)委員 法人の行為能力を聞いているのと違うんです。それをやるなら、法人の不法行為能力の問題までさか上って論じなければならない。民法四十四条というものがあるんです。それは法人の不法行為能力はどうなのかという新しい学説までさか上って論議しなければならぬ。私が言っているのは、そういうだらだらしたことを言っておるのじゃないのだ。あなたは、私が担当する前からあると、こう言っておるんですよ。この法制局のマンネリズムが、私はどうにもがまんできないと思うんです。前にこういう規定があるから今度も入れました、その行き方が僕は気に入らぬと言うんです。新しい進歩がどこにあるのか。ここできめる場合には、一応役員の場合はこういうことが想像できる、職員の場合はこうだ——たとえば一号、二号なんというのは、完全に職員が犯そうとしても犯されないものですよ。四号にしたってそうだ。そういうのを、前にあったから入れておるというこのマンネリズム的な法制局の考え方はがまんがならぬと言うたんですよ。
  101. 野木新一

    ○野木政府委員 前にあったから入れたというのではなくて、やはりずっと長年やってきたのは法理的な理由があるわけでありまして、これは、一号につきましても全然論理的に違反行為が成立しないかと申しますと、先ほどの続きになりますが、これは法律は法人に義務を課している、義務には禁止義務と作為義務とがあるわけでありますが、そうすると、たとえば三号のような業務以外の業務、これは法人に対して義務が課してあって、これについてはなにはあるかもしれないということになると、これは禁止規定……。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 役員のことじゃなく、職員の方ですよ。
  103. 野木新一

    ○野木政府委員 職員についても三号あたりは……。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 三号はまあわからぬこともない。
  105. 野木新一

    ○野木政府委員 それと同じように論理的にそれは禁止義務違反ですから、今度は不作為義務を課しているそれについても、論理的には会社に義務を課している、禁止義務が付されておる場合に、職員について違反行為が成立するというならば、会社に不作為義務が課されておる場合でも、職員について同時に違反行為が成立するわけです。しかもこれは職員まで含まなければ、この会社へ課した法律の義務、この履行が十分励行、確保することができないのであります。そういう趣旨でやはりそういう厳正な態度で職員まで入れていこう、そういう趣旨なのがこの立法の趣旨でございます。ただ、そこまでやる必要はないじゃないかといえば、それはやはり一つの立法論としてあるかもしれません。それは理事とか何かで押えればいいじゃないかということは、これは一つの立法論でございまして、それが論理的に全然マンネリズムで、昔のものを踏襲しているという意味ではなくて、それを廃すなら廃すで一そう深い検討が必要だということを申し上げておるわけでございます。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 前にこういう型があった、それが何年か続いてきたから、それ自体が法理を持っている、こういう上に立ってあなたは言われている。ところが、新たに立法する場合には、個々のケースにあたって僕は検討の必要があると思うんですよ。原局の局長自体が、まあそんなことはないと思いますがとか、そうであろうと思います、こういうことなんだ。たとえば一号なんというのは、どう考えても職員に課すべきなにが出てきますか。もしあなたの言っているようなことになるなら、それは背任罪とかいろいろなほかのケースが出てくるんですよ。業務に対する違反、それはもっと大きく言えば背任罪です。そういった作為義務あるいは不作為義務、こういうことに対して、負わされた義務をやらなかった、あるいは放棄した、こういうことなら背任の問題になってくる。こういう行政罰をわざわざ役員または職員にまで及ぼす必要があるのか。役員だけでいいじゃないか。職員には職員として犯すであろうと思われる面があって、なおかつ本法運営上すなわち国民生活研究所運営上必要だという部面だけにとどめたらどうなんです。だから、これは一つの見解の相違になると思う。あなたも立法論としては認める、こういうことです。私の言っておるのは、具体的ケースにあたって、一々検討せずに、前にあるからこれを入れておこう、こういう行き方はどうもがまんならない。今までの質問、全部そうでしょう。前にこういう規定がありますからこういうことなんだ、前に規定があったからといってすぐに入れるということ、私はこれがどうもいかぬと思うのです。そのつどそのつどにもう一ぺん検討すべきだ、こういうことを主張しておる。従って、これ以上は立法論としての意見の対立でありますので、この点は検討することを保留いたします。  三十九条。これは一体どういうことです。これと刑法九十五条の公務執行妨害との関係はどうなります。
  107. 中野正一

    中野(正)政府委員 三十九条と刑法九十五条の公務執行妨害の規定との関係でございますが……
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 上の虚偽報告は別です。後段のことです。
  109. 中野正一

    中野(正)政府委員 「検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合」、これですね。これは、公務員の職務執行等について、暴行とか脅迫によってその職務の執行を妨げたというような場合には、研究所の役職員は当然公務執行妨害の九十五条の罰則を受けるわけです。そうでない、暴行とか脅迫によらない場合はこの三十九条の規定の適用を受けることに相なります。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的にいえば、調べに来たときに逃げてしまうというようなことがこれに入るのですか。なるほど九十五条の公務執行妨害は成立要件として「暴行又ハ脅迫」ということがある。従って、積極的に妨害した場合はこれであって三十九条は消極的な場合、こういうふうに解するのですか。
  111. 中野正一

    中野(正)政府委員 今の逃げ回っている、これは忌避に入るので、三十九条の適用になるのだろうと思います。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、積極的に拒んだ場合は刑法でいくのだ、そうでない場合が三十九条と解するのですか、そうじゃないのですか。この件、いわゆる公務執行妨害と三十九条との限界はどの辺です。
  113. 野木新一

    ○野木政府委員 刑法の方は、「公務員ノ職務ヲ執行スルニ当リ之ニ対シテ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘ」とありまして、昔から判例で、暴行、脅迫という要件に該当する場合は刑法になります。この「拒み、」というのは、暴行、脅迫に至らない程度で積極的に拒む場合もあり得ますから、そういう場合には刑法によらずにこれを適用する場合もあり得る、こういう解釈でございます。暴行、脅迫ならば刑法にいく、これは最高裁判所の判例もございまして、確立いたしております。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 最高裁の判例を待つまでもなく、公務執行妨害は暴行、脅迫が要件になることはわかっておる。ただ三十九条でいくのか刑法九十五条でいくのかということの限界はどの辺になるのか、逃げ回っておるときは忌避、これはわかる。脅迫に至らない態度、こういうことですが、脅迫に至らない態度とはどういうことか、これは学説に待つより仕方はない、こういうことになるのだろうと思うが、黙ってどっかとすわっておるということも、これは相手方の問題になるわけだね、脅迫を受けたかどうか、犯意の問題がそこに出てくると思うのですが、刑法の場合はもちろん犯意を必要とする。この場合はともかく、脅迫するという意思はなくて、検査を拒むということだけで、相手が脅迫と感じた場合も三十九条、こういうことになるのですか。
  115. 野木新一

    ○野木政府委員 普通黙ってそこにすわっているというくらいだったら、とても暴行、脅迫にならないと思います。たまたまそこに行った公務員がおそれたといっても、それは公務員の憶病な人がおそれた場合であって、やはり通常の状態において通常の公務員に対して非常に威怖感を与えた、こういうような場合でなければ暴行、脅迫になりませんから、ただ黙ってこわい顔をしてすわっておるという程度では、拒むという程度に該当しないと思います。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 これは法制局、一つこの三十九条と刑法九十五条との限界をはっきりして下さい。今できなければ、あとで文書で出してもらってもけっこうです。
  117. 野木新一

    ○野木政府委員 三十九条は単に拒み、妨げ、忌避した場合、それから暴行脅迫を用いて拒み、妨げた場合には刑法でいく。刑法の犯罪が成立する場合には、それに吸収されてしまう、そういうのが通説だろうと思います。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ暴行、脅迫でない拒み、妨げというのはどんな態度になりますか。
  119. 野木新一

    ○野木政府委員 先ほどおっしゃったように、口で検査を拒みますと言ったり、あるいは妨げというのは物を隠してしまったり、そういうようなことがあるわけで、暴行、脅迫に至らなくても、こういう場合は幾らもあると思います。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 私は暴行、脅迫以外にあることは認めておるのです。しかし、限界はどこか。隠してしまったり何かすることは忌避だと思うのです。拒み、妨げという行為で、暴行、脅迫との限界はどこだ。おそらくこれもそういう前例があるからだ、こうだと思う。  これ以上やりません。結局これは委員長に申し上げておきますが、すべてがこの通りなんです。前にこういう規定があるから入れるんだ、こういうことで出てくるからがまんならないと言っておるのです。大臣の来る時間もだいぶ約束が違うておるし、ここで休憩していただいて、こういう問題について委員間で一つ検討したい。  それでほかにたくさん来ていただいておりますが、これは大臣質問に関連して、たとえば公益事業局だとか、あるいは農林省、公取等にお伺いしたいと思ったのですが、せっかく来ていただいて、今まで待っていただいたことは、私の責任でなくて、来なかった藤山さんにあるのですから、その点は御了承願いたいと思います。
  121. 野木新一

    ○野木政府委員 ちょっとお許しを得まして、当初御質問を受けました質権の点について、ちょっと御説明いたしたいと思います。  私、先ほどは入ってきたばかりでありまして、多少質問のまっ正面からぶつからなかったきらいがありますが、この規定は、これまた前例を追うとおしかりを受けるかもしれませんが、たとえば資本団体の典型である株式会社があります。それにおきまして、二百十条で「会社ハ左ノ場合ヲ除クノ外自己ノ株式ヲ取得シ又ハ質権ノ目的トシテ之ヲ受クルコトヲ得ズ」、これを援用するわけであります。これはなぜとういう規定があるかといいますと……
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 それは株券というものがあるのですよ。
  123. 野木新一

    ○野木政府委員 それと違います。これは資本の維持の原則という点から来るのでありまして、会社は一定の資本金をどうしても維持しなければならぬ。そこで自分の株式を取得する、その金が出るわけです。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 だから取得はいいと言っているんです。
  125. 野木新一

    ○野木政府委員 質権をとるためには、金を貸すということになりますから、自分の金が出てしまうという点においては、自分の資本として持っている金がそういう形として出るのは資本維持の原則上から好ましくない、そういう精神から出ている規定でありまして、今言った第三者対抗云々とはちょっと形が違うんじゃないかと存ずる次第でございます。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 第三者対抗とは……。
  127. 野木新一

    ○野木政府委員 質権の問題は第三者対抗云々という点で、私初め説明しましたが……。
  128. 田中武夫

    田中(武)委員 それはわかっておるのですよ。
  129. 野木新一

    ○野木政府委員 今のような説明を初めすればよかったのですが、この説明をまっ正面からいたしませんでしたから、釈明するわけです。
  130. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、資本維持というか、そういう点で自己資本を使うことは、こういう法律の上からいって忌避すべきである、これはわかるのだ。だから私は持ち分の取得については何も言っていない。質権の質問について言っておるわけです。あなたが来る前かどうかわからぬが、金を貸す融資のことと違うか、こう言っておったのです。それをこういうぎょうぎょうしい質権の目的とあげておるところに何かあるのかと聞いておったわけです。結局のところ、あなたの言ったことも私の言っておることも同じなんです。質権として金を貸してはならない。そんなことを言わなくても、質権とかハチの頭とか大きな規定を大上段にかふるから、いろいろの問題が起こっておるから聞くと、これは前にこういう前例がありますと言う……  もう一つ法制局に聞くのですが、資本金の四条三項、四項との関係、これはあなたの来る前に言ったが、前例がこういうことになっておるからこういうことになるので、前例々々でそのつど、そのつどの目的に照らして検討せずに入れておるという感じがするのです。そこに法制局のマンネリズムがある、あるいは原局は法制局まかせという無責任さがある、こういうことを指摘しておるわけです。従ってこれは検討いたします。
  131. 菅太郎

    菅政府委員 だいぶおしかりを受けましたが、精密な御研究には敬意を表する次第でありますが、他の類型のあるものは類型によっておりますが、安易に、マンネリズムというのは大へんいけないと思いますが、大体ほかの研究所の性格とこの性格、目的と照らし合わせてみて、この研究所も大体前例を踏襲していいのだという判断からもちろん書いておるのでございまして、たまたま局長答弁が偏狭かつあいまいでありましたけれども、その検討を経てわれわれとしては——法制局もそうでありますが、この前文を引用しておるのであります。漫然としてではありません。本研究所におきましても、との型にならうのが妥当であると考えてこれをやっておる次第でございますから、その点御了解願いたいのであります。  なお一言蛇足のように思いますけれども、三十九条、四十条の罰則の問題でございますが、職員にはこれを適用することがあまりないというお話がさっきから出ておりましたが、むしろ四十条のごときは、こういうことを励行すべきであって、これに違反する行為は役員であろうが職員であろうが、過料を受けるのだという積極的意味があるものと私は解しております。たとえば、一号の認可承認を受けなければならないという場合に、受けないという場合は、役員の責任ではございますけれども、役員からそういう命令を受けて職員がその職務を怠ってそういう手続をしなかった場合、あるいはまた登記をすることに役員会できまったが、さて担当の者が登記をしなかった、あるいは役員がうっかりしておるということに乗じて登記を怠っておるということもございますし、全般を通じて役職員ともに違反をやることはあるわけでございます。役員も職員もこれによって戒めていく姿勢だろうと私は考えるのであります。ただ、その場合、おっしゃるように、職員の場合は上司の役員の監督不行き届きという点がございますから、役員の方で団体運営の責任を負われるでありましょうが、やはり下僚たる職員の義務違反ということはあるわけでありますから、役職員ともにこの励行にあたるというのが建前だと私は考えておるわけであります。  背任のお話がありましたが、背任ということになりますとまた特別の条件が加わりまして、自己または第三者の利益にするとか、この団体に害を与える目的をもって行為をなして、現実にこの団体に害を与えたときでなければ背任になりませんので、刑罰の何といいますか、構成要件は全然違いますから、背任があるからいいじゃないかとは言えません。もちろんこういう職員の義務違反がありましたならば、団体の規定によりまして上司からのおしかりを受け、あるいは人事上の処分をしたりするかもしれませんが、のみならず、同時にそういう職員はやはり過料の制裁を受けるんだという建前をとっておるものだと思いますので、私はこの四十条のごときは相当積極的意味がある、そういう意味をもってやはり前例を踏襲した方がいいという判断でこれを採用したのだと考えておりますので、みな答弁になれませんので多少何がございましたかしれませんけれども、ただマンネリズムで前例があるからという意味には私は解しないのであります。蛇足ではありましたが、一言申し上げた次第でございます。
  132. 田中武夫

    田中(武)委員 政務次官、あなたが言わんとするところによると、それじゃ職員に、たとえば四十条の各号による、大臣の認可を得るとかなんとかという義務があるのですか。役員でしょう。
  133. 菅太郎

    菅政府委員 これは義務があると言えば法人自体にあると言えるかもしれませんが、同時にそれは自然人たる役員及び職員の義務を追求するという規定なんですから、やはり役員にこういう責を負わせるのみならず、職員にも負わせようという趣旨でこれをとっておる、こういう立法論でありますが、この立法論を支持する理由を私は申し上げたのでありまして、たとえば届出を怠るとか認可承認手続を怠るということは、役員が怠ることもございますけれども、役員から命ぜられて、それを実際怠っておるということもございましょう。それから役員の意思にかかわらず違反をすることがあります。三号、四号のごときは、黙って業務以外の調査をやってみたり、あるいは会計課長が預けるべからざる銀行に金を預けて何かそこで利益を得たり、そういうことがございます。利益を得るということは別でありますが、そういうことはあり得ないことではありません、役員とはまた独立に。でありますから、役員も職員もともにこれらの五つの項目の重要な事項につきましてはやはり励行の義務がある。怠れば職員といえども過料を受けるのだ、こういう建前だろうと思いますから、私はさきに法制局が申しました立法論を支持して、こういうような意味からこの前例を踏襲したと考えておるのでございます。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば、僕は三号あたりにはあり得るかもしれぬ、こう言うておる。しかし、その場合もこれであるのが適当かどうか。いわゆる業務命令違反である、あるいは背任である、こういうことが考えられる。ところがあなたは一号とか二号とかの法人自体が認可を受けなければならぬ問題、やらなければならぬ問題についても、職員にまで及ぼすことが妥当であると考えているんですね。それでは民法四十四条を見て下さい。民法四十四条をこれは適用していますね。法人の不法行為能力の問題ですよ。その場合には職員にまで処罰が及びますが、それは担当する役員、それを協議した役員でしょう。それとの関係はどうなります。
  135. 野木新一

    ○野木政府委員 これは法人の不法行為能力でございまして、法人はこういう場合に不法行為になり民事上の責任を負うということでございます。自然人の、その従業者なり何なりの不法行為云々という点はここでは言ってないわけです。ところが、従業員の場合は、民法のおしまいの方の不法行為の章で……。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば登記義務なんかだ。
  137. 野木新一

    ○野木政府委員 法人の犯罪能力ありやいなやということと関連しまして、今不法行為のことを申し上げましたが、非常にむずかしい問題があるわけでありまして、先ほどの問題は、それとは別に個々の場合についてそこに触れないで事を処理するという関係になるのではないかと存じます。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば登記の問題にしても、民法からいっても、登記の義務違反は役員だけでしょう。認可を受けるという義務は役員なんです。あるいは三十条の規定によって余裕金を運用するということも役員に課せられた、法人に課せられた義務なんです。職員にその義務はないのですよ。その義務なきところに犯罪が起こりますか。義務なきところに罰則が必要ですか。言わんとするところは、この書類を持ってこいと言われて登記所へ持っていく道でその書類を捨ててしもうた、こういう場合があり得るということだと思うのですよ。この趣旨はそういうこととは違うんでしょう。
  139. 野木新一

    ○野木政府委員 民法の不法行為の点が引用されましたが、これは刑法で法人に犯罪能力ありやという議論と関連するわけでありますが、法人に犯罪能力ありやいなやという大議論は別といたしまして、たとえば法人罰の規定を見ますと、法人の役員、職員その他従業者が違反行為をした場合は云々というような規定があります。そうすると、先ほどの法人なり役員だけに義務があるということになりますと、従業者が違反行為をするなんということはないじゃないかというような——刑法の場合そういうようなことになります。あるいはやはり……。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと待って下さいよ。刑法の場合というのは、そこに犯意とか特別な行為なんでしょう。この場合は認可を受けなければならぬとかなんとかいう問題で、そのことに関して職員に義務があるのですかと言っておるのですよ。自然人として違法行為をやった場合は当然ですよ。
  141. 野木新一

    ○野木政府委員 やはりこの法律といたしまして法人に義務を負わしていて、この罰則の規定と前の規定と相待ちまして、この法律が法人にこうした義務の励行を確保するためには職員にまでもこれを及ぼす、義務違反と言えば法人の義務違反のみがあるように見えますが、それが役員に及ぶということを認めるならば、それをさらに広げ職員たる自然人も結局法人のために行動するわけですから、法人のために行動いたしました場合に、法人に課せられた義務にその職員が違反した場合には、ある場合にはそれに刑罰を課し刑罰を課さない場合には過料を課するということも考えられるわけだと存ずる次第であります。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣が来たから大臣質問に移りたいと思うのですが、今のあなたの、この前の条文と相待ってとこう言うのだが、前の条文に義務を課せられておるのは法人なんですよ。法人の意思を決定するのは理事なんですよ。役員なんですよ。いいですか。その法人がやらねばならないことをやらなかったことに対して職員が罰せられるということがあり得るのかどうかということ、これを言っているわけなんですよ。自然人が云々ということは、その自然人職員が不法行為をしたら当然罰せられますよ。だから刑法のあれとは全然違うわけです。もう一つは、民法上の問題としても表見代理の問題とかそういうことは別なんですよ。僕が言うのは、たとえば一号、二号の場合に職員に違反があり得るかどうか、これは当然義務という上に立って出てくるのです。義務があるのかということです。企画庁長官の認可を受けなければならぬ、登記をしなければならぬという義務が職員にあるのかどうかということですよ。
  143. 野木新一

    ○野木政府委員 その点は先ほど第四十条の三号と四号、こういうのについても、義務は法人にあって、その義務違反は役員についてしか考えられないとの論法を用いれば、この場合、職員などは意味がないじゃないかということになるわけであります。しかしながら、他の同種の法律やこの法律案でこういうように書いてあるところを見ますと、そういう無意味な規定を置いておるわけではありませんので、三号、四号などは職員についても考えられる。それは禁止義務違反の場合ですが、他方作為義務違反についても、論理的に見ましてやはり同じように考えられるのじゃないかということを申し上げたわけであります。実際の運用上はまず役員が問題になることはその通りだと存じます。ただ、法理念的には先ほどから申し上げておるようなことになると思います。ただ、もちろんおっしゃる通り、いろいろの見方があるとは存じます。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 ともかく一号から五号まで、三号あたりは私もあり得ると思うのです。一号、二号なんかない。あなたは全部に網をかぶせておるということで、そういう行き方が過去の例からここに上がっておるのはいけない。一々検討して何号と何号についてということにすべきじゃないか。しかも義務のないところにこういう行政罰が起こるのかどうか。本人の不法行為というものは別ですよ。認可を受けずに云々したとか、あるいは認可を受けるのに金を使ったとか、この認可を受けるもの自体法人なんです。この国民生活研究所なんですよ。その意思決定機関は役員ですよ。理事ですよ。従って、一号とか二号とか四号とかいうような法人自体の義務にあるものは、これはこれでいいじゃないか、こういう意見なんです。それをまた蒸し返してきたから言ったわけで、あなたがそうおっしゃるなら、あとで一号々々検討しましょう。  それで、大臣が見えたから大臣質問したいのですが、二月二十一日ですか、経済企画庁庁議で物価安定総合対策というものをおきめになった。ところが、ほかの大臣から物言いがついて、まだでき上がっていない、こういうことでありますが、いつになったら総合物価対策というものははっきりできるのかということ。それから最初お立てになったものに対して物言いがついたというが、それはどういう点か、それをどう考えておるのか、そういう点をお伺いいたします。
  145. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御答弁申し上げます前に、エカフェの議長を引き受けておりますので、やむを得ず御審議に支障を来たしておりますことをおわび申し上げたいと思います。  物価の総合対策ということには、各省の意見を聞きまして、われわれとしては作ったわけでございます。むろんそういう総合対策というものが、一ぺんの会合で決定するとはわれわれも考えておりません。従って、先般経済閣僚懇談会をやりまして、さらに経済閣僚の方々の御意見を伺いまして、そうしてその御意見も考えながら作ったわけでございまして、実は明日午後経済閣僚懇談会をやりまして、最終的に決定した案をかけるつもりでおるわけでございます。その上でさらに閣議の承認を得る、こういう段取りをただいまいたしております。大筋において、各省が物価対策に対して何か消極的な間違った困るような意見を言っておるわけではありません。みんな協力してくれておるわけでございまして、そういう意味から十分意見を聞いた上で十分な案を作りたい、こういう趣旨で先般の経済閣僚懇談会は終わったわけでございます。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば、最初の案では消費者保護の立場に立って独禁法の運用を強化する、こういうことが確かにあったと思うのです。実は佐藤通産大臣と藤山長官並べてお伺いしたがったのですが、新聞等によると、佐藤通産大臣から独禁法の強化について何らかの意見があったようです。そういうふうに聞いております。ところが、佐藤通産大臣は、予算の分科会で私も質問したのですが、独禁法については改正とかそういうことは考えていないと言っておる。だから、この独禁法の適用についてどのような意見が出たのか、それに対して佐藤公取委員長はどう考えておるのか、お伺いいたします。
  147. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 独禁法の物価の面に及ぼす影響の大きいことは、これはむろんでございます。従って、独禁法を十分に運用して参ることが必要であることは申すまでもございません。その意味におきまして、佐藤通産大臣から特別に反対の意見が出たことはございませんし、ただいまお話しの通り、佐藤通産大臣も独禁法を何か弱く改正するという意思がないことを御答弁になっておると伺いましたが、その通りだと思います。
  148. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 ただいま独禁法の強化の問題についてお話がありましたが、私どもといたしましては、御承知の通り、委員長委員というものは、その権限を独立して行なうものでありまして、他からとやかく言われる筋合いではないのであります。しかしながら、私どもといたしましては、最近の消費者物価等の値上がりにかんがみまして、その原因がもしも独禁法違反によって起こるものなら、どこまでもこれを律しなければならぬ。独禁法違反と申しますのは多くの場合カルテルの問題でありまして、そういう意味において従来も常に目を光らしておりますし、今後におきましても同様にやっていきたい、こう思っておる次第であります。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 目を光らしておられるのはけっこうだが、たとえば紙、セメント等にすでに独禁法違反のような事態があることは、御承知の通りだと思う。そういうことは別にあなたにお伺いするつもりでありますが、私の伺っておるのは、物価安定対策には独禁法が大きな役割をする、こういう上に立って経済企画庁は独禁法の改正、運用を強化すると言っておる。そうすると一方は、産業という立場に立ってあまり運用を強化せられたら困る、こういう意味が出たと聞いておる。そういうことについて佐藤公取委員長はどう思うかと聞いておる。なるほど格好の上においてはおっしゃる通り独立官庁であります。独立行政委員会であります。他からとやかく言われるものではないとおっしゃるのですが、ほんとうにそうですか。
  150. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 ただいま申し上げました通り、われわれといたしましては常に独禁法の立場において、ことに消費者の利益というものが最近問題になっておりますので、そういう見地から適正な運用に努めておる次第でございます。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 佐藤通産大臣からそういう意見が出たことは遺憾に思うというようなことは、佐藤さんはよう言わぬだろうと思う。言えば首が飛ぶ。あなたは七月が改選で任期がきておりますから、そこは言いません。独禁法の問題、公取のあり方については、また別の機会にやりましょう。  そこで藤山大臣にお伺いしたいのですが、物価安定総合対策、これは新聞で見た程度ですが、見たところいろいろ書いてあるのです。物の値段については比較的敏感なんです。ところが内容です。たとえば肉なら肉が百グラム何ぼ上がった、一割上がったということなら敏感にくるわけです。ところが、百グラムのものが九十何グラムであったというような場合、いわゆる量目についてはあまり敏感ではないわけです。そういうことは物価対策の中にどういうように考えておられるのか。さらに品質の問題です。値段は変わらないが、中身が悪くなる、品質、量目の問題がやはり大きな物価問題だと思うのですが、この物価総合対策とあわせ、ここではどういうふうにうたわんとし、また考えておられるのか、お伺いいたします。
  152. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、企画庁としては、この時期におきまして、物価対策をぜひとも立てなければならぬという考え方で、総合対策を立てたわけでございます。従って、この総合対策自体の中に個々の問題が必ずしも入ってはおりません。従って、総合対策が閣議の了解を得ますれば、それに従いまして、各省からただいまお話しのようないろいろな各種の問題解決すべき問題、あるいは解決を必要とする問題、そういうものについて、私としてはある時期を限って、そして各省からそれぞれ出していただく、その内容となるような進み方にできるようなものを出していただきまして、それを逐次やっていく。先般間接税の引き下げに対して大蔵省がとっていただきました措置、ああいうのをつまり各省からその総合対策の趣旨に応じて出していただきたいと思うので、あれが第一号というようなつもりでおるわけでございます。そういう意味で、しかもこれは期限を限って、との前の貿易のときの総合対策も期限を限って出しておる、そういうことにいたして参りたい、こう思っております。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的にはそうなんですが、総合対策の中に量目とか品質ということについて、何らかうたわれておるのか、うたわれていないのか、いないとするなら、私はうたう必要がある、そういうことを言っておるわけです。
  154. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 これは各省の施策として、たとえば生鮮食料品等の問題あるいはカン詰等の問題、——カン詰等についても内容等にいろいろ問題がございますし、またその取り締まり方法というものもあるわけでございまして、企画庁としてはそういうこまかい問題にまでは入らないで、それぞれの監督官庁がそういう内容を出していただく。また出さなければ、そういう内容について、われわれは今のような御趣旨に沿って十分警告もいたしていきますし、あれもやっていくつもりでおるわけであります。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 おっしゃる通り、それぞれの所管があって、そこでやる、これはわかっておるのです。総合物価対策と見る場合に、何々をどうする、何をどうするという中に、全般的にやはり品質と量目の問題を抜いては考えられない、こう申し上げておって、従ってあす決定になるそうでありますが、その中にも品質と量目についてはうたってもらいたい、こういうように思っておるわけなんですが。
  156. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 具体的問題としては、ただいま私が申し上げた通りでありますが、なお今の御意見等につきまして、十分考慮して参ることにいたします。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、量目の問題でございますが、去年の九月に行政管理庁から勧告というか出ておりますね。それは一部が量目関係、二部が品質、そして計量行政は別に出ておるわけですが、そこにもいろいろとうたつてあるわけです。そういう勧告に対して、計量行政の上からどういうような措置をとり、また今後もどういうような措置をしていこうと考えておられるか伺いたいと思います。
  158. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 お答えいたします。ただいまお話がございましたように、昨年十月行政管理庁から勧告が出まして、御承知のように、この勧告の内容は非常に広範囲にわたっております。現在検討いたしておりますが、場合によりましたら、法律制度自体にも触れなければならないような問題もございます。またそういうことなしに個々にやれるケースの問題もございます。そういうように整理いたしまして、検討いたしておりますが、法律制度全般にわたる問題もございますので、本年の五月に計量行政審議会を開く予定にいたしております。それまでに具体的に検討いたしまして、できるだけの解決をはかりたい、かような心組みで今作業を進めておる段階でございます。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 この消費者行政、いわゆる消費物資の流通、これにおける計量というものの持つ意味は大きいと思うのです。従って、毎年にわたって行管からの勧告も出ておると思うのです。十分に一つやってもらいたいと思うのですが、それはめくら取引をしておるのがたくさんあるわけです。その一例にプロパン・ガスがあるわけです。都会の都市ガスのあるところは別として、そうでない地方はほとんどプロパンです。ところがあれは充填するときにはかっておる。持って来た。こういうことでいわゆる信用取引、全部入っておると思うから受け取っておるだけで、中に一ぱい入っておるかおらないかわからない。あまりこちらが使い過ぎたと思おないのに、前に一カ月であったのに今度は二十日しかもたなかった、こういう場合がある。定期的に検査員が回って来て、プロパンのボンベを動かしてみて、わかるのかどうかしりませんが、動かしておしまいですなと言って持って帰る。そのときにはたしてゼロになっておったのかどうか、どういうのは量目という上に立ってはこれはほんとうにめくら取引なんです。これに対してどういうような措置が必要であるか。たとえば一個々々にメーターをつけるという方法もあるでしょう。そうすれば高くつくということもあるでしょうが、何かそういうメーターが今あるそうですが、何かそういった目に見えないものの量目をはかるということについては、これは計量行政の立場からの重工業——プロパンを具体的にあげたので、いわゆるガス・プロパンというようなことについて、両方からお答え願います。
  160. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 計量行政の関係からお答え申し上げます。  今、御指摘になりましたプロパン・ガスは、おっしゃる通り最近非常に普及しております。これを売ります場合毛、あるいは使います場合も、どの程度あるかという点は非常に問題になります。われわれもこれはできるだけ使う消費者の便利になるように行政を進めたい、かように考えております。御承知のように、これを解決いたします場合にはメーターをつけるということが、売る場合においても、あるいは使う家庭におきましても非常に大事な問題に相なるわけです。現在こういうものをはかりますメーターといいますのは、普通のガスについてはあるのですが、プロパン・ガスについては、残念ながらいいメーターがないわけです。ありましても非常に高いという関係になっております。ところが、たまたま安く小型のものを作るということを研究されておる業者がございまして、われわれといたしましても、これはいいことであるということで、大阪の検定所に依頼をいたしまして、その研究をできるだけ早く完成するように研究指導を行なっていただいておるわけであります。現在のところまだ多少精度とか、あるいは安全度というような点について問題があるわけでございますが、半年あるいは一年間の間にはこの器具も世の中に出てくる、かように考えております。そうなりますと、販売業者も従来と違いまして、負担が安くなりますので、できるだけこれをつけて販売するような指導をやって参りたい、かように考える次第であります。
  161. 倉八正

    ○倉八政府委員 私が呼ばれたのは筋違いであったと思いますが、今のプロパンの行政は、鉱山局——私は高圧ガス取り締まりという取り締まりの面だけを所管しておりますが、今、熊谷君から申しましたように、計量を通じまして、量目の取引なんかが適正に行なわれるようにわれわれも応援をいたしたいと思いますのは、今、高圧ガスの生産、販売すべてこれは許可事業になっておりますから、その場合に許可の対象工場というのが全国に一万七、八千ありますが、そういうことははっきりわかっておりますから、そういうことを通じまして側面から御援助申し上げたい、こう考えております。
  162. 田中武夫

    田中(武)委員 それは結局重工業の方できめられることなんですか、そういうことで取引についてもっとはっきりさせるということは。それともこちらの企業局なんですか。
  163. 熊谷典文

    ○熊谷説明員 どういう機器があれば非常にいいか、この機器は正確であるかどうかということは、これは計量行政の今のあれとしては問題でございます。ただ、それを強制的につけさせるとか、あるいは強力な指導行政をやりますとかという問題は、これは販売関係の問題になりますので、今の計量法のワクにはちょっとはまりませんので、鉱山局の問題になってくる、かように考えております。
  164. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは鉱山局に来てもらっておいてよかったのですが、要はめくら取引でなく、はっきりとこれに全部入っております、持って帰るときにはもうなくなっておりますと、こういうことがわかるような措置をとってもらいたい、こういうことなんです。プロパンだけでなく、まだほかにもいろいろあろうと思うのです。  ガスが出たついでですが、東京ガスが最近盛んにPRをやっております。十月から熱量変更をして、現在の三千六百カロリーを五千カロリーにする。値段を上げないかどうか知りませんが、そういう関係について、値段についてはまだそれはもちろん申請は出てないと思うんだが、そのいわゆるカロリーを上げることによるガス料金の問題と、それからそのことによって器具を何とかしなければいかぬと思うのですが、それは無料でするとかなんとか言っております。さらにカロリーを上げることによって毒性の関係はどうなるのか、こういう点について公益事業局にお伺いいたします。
  165. 樋詰誠明

    ○樋詰政府委員 今御指摘のように、会社といたしましてはこの十月から現在の三千六百カロリーを五千カロリーに上げたいということの計画を持っておるようでございます。まだ正式には申請書類も出ておりませんし、まだ内諾というようなことで、資料というものも具体的に出してきておらないわけでございます。われわれといたしましては、公共料金、これは国民生活あるいは産業に非常に大きな関係を持っておりますので、企画庁の方の御方針に沿ってできるだけ今後も抑制するという方向でいきたい、こう思っております。御承知のように、最近、電気、ガスともに非常に需要がふえてきておりまして、固定費がかさむ。特にガスの場合には、新しい導管を布設するということになりますと、非常に膨大な金がかかる。それで今回カロリーを上げることによって現在の導管で今後ふえていく需要もまかなっていこうという計画も立てておるわけでございますが、その料金につきましては、われわれも非常に関心を持って、早く資料を出せということで促進しているところでございます。また会社の方から五千カロリーに上げたいという意思表示以外に、その結果こういうような金がかかってこれだけの収支の予想でございますといったような書類が出てきておらないわけでございます。今月中にはおそくとも出てくるだろう。大体今のわれわれの聞いておりますのは、先生の御指摘になった範囲を出ないわけでございます。大体六百六十万個ばかり、今ガス器具が東京ガスの管内にある。それをガス会社の負担で、五千カロリーに変えるというために、器具を若干改修すると申しますか、直さなければいかぬ。それに二十億ぐらい金がかかるようでございますが、それはもちろん会社が自分の方の金でやりますということを言っております。大体今月中くらいにこういう計画だという具体的な収支計算その他を持ってきて、従って、料金は据え置きにするかあるいはどう動かすかということについても、会社側からの希望が表明されるのじゃないか。われわれとしてはそれの出てくるのを待って慎重に検討したいと思っております。
  166. 田中武夫

    田中(武)委員 料金なりそういう熱量変更は、全部許可事項でしょう。ところが、テレビ等を見ておりますと、十月一日からこういたします、こういう宣伝をしておるわけです。これは別に公益事業局関係で言うのでないが、公取の立場からいって、今度出てくる法律との関係あたりが出てくるのではないかと思うのですが、今そういうことは聞きません。  それから許可、認可にかかわる問題を、許可、認可を受けず、あるいは申請もしない前からわんわんとPRするということ、これは国民消費生活に大きな影響を持っているので、そういうような点についてはどこが取り締まるか。結局それぞれの主務省だと思うのだが、この点についても、むしろ公取あたりでの感じを一つ聞かしておいていただきたいのです。
  167. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 ただいまのお話は、われわれの方の感覚から申しますと、いわゆる不当誘引行為に該当するかどうかの問題でありますが、あの法律のできた暁において、十分研究いたしたいと思います。
  168. 田中武夫

    田中(武)委員 どうせ法案が出るそうですから、そのときにいろいろな問題に触れたいと思います。  藤山長官に質問を戻すのですが、大体今度のこの物価安定総合対策というのは、ともかく物価を上げないように、安定させよう、こういうことに出たと思う。ところが、きのうの記者会見で、大臣は、私鉄料金は値上げを認めるというようなことを言われたように新聞で拝見いたしました。その一方においては安定をやろうという。一方においては、これは公共料金になると思うのですが、認める、こういうようなことの矛盾はどうですか。
  169. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題は非常に大事でございまして、総合的にこれを押えて参りまして、そうして来年の物価、特に消費者物価を安定させていきたい、しかも二・八%という上がりを見て安定させるのは実ははなはだ私も残念なんですけれども、その範囲内に、努力をしてやっていきたい、こういう目標で今極力やっております。ただ御承知のように、経済の非常な動きというようなものからして、消費者立場に立ちましても、若干今後の、設備の改善なり輸送力の改善なりあるいは道路、港湾を初め、そういう点についての改善をやらなければならぬ状況も加わっております。そうでなければ、将来何と申しますか、お歳暮のサケのように、電車の中で詰め合って立っていくというようなこと、あるいは踏切を改善するというような問題もございますので、そういう点も、この際あわせて若干考えておりませんと、将来の問題としては大きな問題になる場合があるわけでございまして、そういう点を考慮しながら公共料金については慎重に考えて参りたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  170. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、私鉄運賃を上げると言ったことについて……。
  171. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私鉄料金につきましては、それでございますから、今言ったような立場から見て、必要やむを得ない場合がありますれば、最小限そうせざるを得ないんじゃないか、こういうことでございまして、現在の、こういうような経済の変動の状況下におきまして、物価を安定する場合になかなか苦労のありますことは一つ御承知を願いたいと思います。
  172. 田中武夫

    田中(武)委員 去年も、これは、大臣は閣僚でなかったのですが、やはり池田内閣で、公共料金は上げないのだ、こう決定したのです。そのあとからすぐに次々許可していたと思うのです。たとえば電力料金等です。一方において物価安定総合対策を考える。そうしておいて、片方において、これとこれとはやむを得ないだろう、こういうことであるならば、その対策の一角がくずれてくる、一角がくずれてくるならば全部がくずれる、こういうことになろうと思うので、少なくとも安定総合対策という以上は、僕ははっきりとした態度を堅持してもらいたい、このように思うわけなんですが……。
  173. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん物価を安定させるという趣旨と対策については私ども堅持して参るつもりでございます。ただ、今申し上げましたような理由で、若干訂正しなければならぬものがあり得るかもしれぬ、あった場合には考えなければならぬのではないか、そしてそういうものを考慮しながら物価の安定をやって参らなければならぬので、その意味においては実は今の経済状態のひずみの一つでもあるわけでありまして、はなはだ困難な状態でございます。従って、私どもはただ単に赤字だからというだけでなしに、将来のそういうことに対処する道を開いていくという意味から考えて参りたい、こう思っておるのでございます。
  174. 田中武夫

    田中(武)委員 これは大蔵省になるかと思うんだが、先ほど大臣は、映画の入場料金が物品税等の関係で云々と言われた。この値下げをする前に、映画なんかでは近いうちに上げるところがある。上げておいて下げるのはもともとなんですがね、そういうのがあります。それから、たとえば市場のせりなんですね。こういうせりによって価格が決定するということは、せりをする人の性格といいますか、落ちついた人とせっかちな人、あるいはそのときのムードで、最終処理に至るときの価格が変わってくるわけなんです。だから、こういうような制度について企画庁長官と農林省とに、ああいうせりのあり方についてはどういうふうに考えておられるかお伺いしたいと思います。
  175. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 せりのあり方というのは大へんむずかしい問題だと思いますが、一般的なムードが何かせりで普通の場合よりも高くするというようなことは、御指摘のようにある場合もあるかもしれませんけれども、価格決定の場合に、需給関係というものが一つの大きなファクターであることは言うまでもないのでございまして、それが端的に現われてくるのはやはりせりの関係から出てくるということになると思います。従って、そういう意味で、にわかにせりを否定するというわけには参らぬのじゃないかと思いますけれども、これらの点については、農林省御当局も十分にいろいろ御研究をいただくことと思うのでありまして、あまりしろうと議論をしない方が適当かと思います。
  176. 田中武夫

    田中(武)委員 この国民生活研究所というのは、先ほど次官の答弁によって消費生活中心研究していくんだ、そういうなら今言ったようないわゆる価格決定のあり方、これがせりというような格好で行なわれる場合に、それは先ほども言ったような、いわゆるムードで値がきまるということなんです。そういうこと等についても一つ研究をしてもらわなければならぬと思うのです。  もう時間がだいぶ——これは長官が来なかったからおそくなったのですが、それでもう締めたいと思うのですが、最後に大臣にお伺いしたいことは、この国民生活研究所はどっちを向いて研究をするのかということなんです。今までの社団法人研究所は少なくとも産業立場から国民生活研究してきた、従って産業にというか、作られたものに生活を合わすという状態だったと思うのです。ところが特殊法人としての国民生活研究所は、私はそうであってはならないと思うのです。国民生活の面からものを見ていくことが必要だ。消費者の方を向いての研究態度、そしてそれを普及する、こういうことでなくちゃならぬと思うのです。  もう一つは、その研究結果を政策にどう結びつけていくのか、これは大臣留守のときに触れたのですが、十分でなかったのです。それが政策にどういう格好で具体的に上がっていくのか。  さらにもう一つは、それと関連するのですが、今日の国民生活のあり方というものはアンバランスだ、片ちんばだ、これはいろいろな面でそうであります。これをどういうように是正していくのか、こういうことなのですが、企画庁長官として物価安定総合対策等々とにらみ合わせまして、このアンバランスのあり方、ということは、たとえば六畳一間に数人の家族が住むといったような状態でありながら、一方においてはテレビがある、こういう状態でいいのかどうか、そういった面について私は地域的な格差とか、地域的なアンバランスということだけでなく、そういう国民生活の内面における、消費の面におけるアンバランス、との是正はどういう方向でどう取り上げていこうとしておるのか、そういうような点をお伺いいたします。
  177. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 消費者行政の面というのが、私企画庁に就任しまして非常に重要なことだと思うのでございまして、従って、今回の研究所法案も提出をいたしたようなわけでございます。従来の研究所産業のこともあわせて考えておりましたけれども、今回の場合においては国民生活立場から、はっきりした立場をとって、そして研究をしていくということでやって参りたい、こう存じております。  なお、ただいまお話のありましたような問題につきましては、実は昨年の秋国民生活向上対策審議会というものを企画庁に設けて、東畑さんに委員長になっていただき、ただいま二つの部会を置いて、国民生活のあり方等についていろいろ御検討願っております。従って、そういういろいろ御検討の結果を消費者行政の上に出して参りたいと思います。この国民生活研究所の方はそこまですぐに手が広がらないと思います。またある意味からいえば、もう少し学問的に実態調査をいたしたい、あるいはあり方を検討したい、あるいは統計等の数字を整備したりして参るというふうに考えておるのでございます。私としては、この国民生活研究所を作りますと同時に、今申しました、新しく昨年十月から発足しております国民生活向上対策審議会、この二本立で今後の消費者行政というものを十分やって参ると同時に、国民生活のあり方というものについても十分な企画庁としての検討を続けていきたい、こういう趣旨でございます。
  178. 田中武夫

    田中(武)委員 まだお伺いしたい点は多数ありますが、時間の関係もありますので、最後に要望を申し上げておきたいと思う。  その第一点は、先ほども申しましたように、特殊法人として今度できる国民生活研究所がどういう姿勢で研究に臨むかということ、これは先日参考人も来てもらって意見を聞いたのですが、そこの役職員といいますか、あるいは学者等の好みによって、その好みの研究をやるとか、あるいは今までのような、産業ということを通して国民生活を見るといったような態度は改めてもらいたい。あくまでも国民消費生活という点に戻って研究をやってもらいたいということ。  第二点は、その研究の結果を、法文によると「普及」ということになっておる。国民生活研究所はそれでいいかもわかりませんが、その結果を具体的政策に、そうして国民消費生活にどう反映していくか、そしてどう向上発展さすかという政策との結びつき、との点について十分な配慮を望みます。  第三点といたしましては、そういう観点からいうならば、少なくとも消費者立場に立ってものを見る人を多く使わねばならない、こういうことになろうと思います。従来の国民生活研究所社団法人であり、会員制度であるから、財界等の寄付、会費等が主要であった。従って、理事等を見ましても、大手の財界が多いと思います。今度は理事というようなものはこんなに多くなく、少なくなりまして、その長は企画庁長官が任命する、あとはあなたが承認を与える、こういう格好であります。しかしあとに参与というのを二十名程度置くことになっている。その参与に、現在では、消費生活協同組合、生協から中林君が入っておるようでございますが、もっとそういった消費の実際の経験者あるいはそういう立場でものを言う人、こういう人を参与にもっと入れてもらいたい。もうすでに人事が終わっておるのか知りませんが、そうであったら、法案が通らぬうちに人事が終わっておったらけしからぬので、それはないと思います。従って、今から考えられるのなら、参与にそういう人たちを入れてもらいたい。なお、法案はどうするかということは別にいたしましても、成立しましたあとにでもせよ、参与にどういう人を入れたということは、われわれに報告願いたい。このことを要望いたしておきます。
  179. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 暫時速記を中止して、懇談することといたします。   〔速記中止〕
  180. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 速記を開始して下さい。  藤山大臣より発言を求められておりますので、これを許します。藤山経済企画庁長官
  181. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま田中委員より四点の御質問、御意見がございました。その第一点は、国民生活研究所調査研究の態度は、消費生活者の側に立っての観点からやるべきであるという御意見でございますが、私どもも全く同様の観点でございまして、今度の定款等につきましても、その意味の改正をいたしておるわけでございまして、そういう運営をいたして参りたいと思います。  第二の御質問は、今の一の立場よりする研究の結果を具体的な政策に反映させるように要望されておるのでございます。もちろんこの研究自体はある程度学問的な研究でございますけれども、しかし今日消費生活の一番困っておりますのは統計等の不備もございます。そういうようなものが直ちにそれを利用して政策に反映することが必要なんでございまして、従ってお説のような、この研究所研究の結果を政策に反映さして参りたい、こういうふうに考えております。  また理事並びに参与の人選については、一、二の観点から消費者及び労働者の代表を入れるようとの御要望がございます。むろん消費生活中心にいたしましてやって参りますものでございますから、理事、参与等の人選につきましては、十分この点に留意をいたして人選をいたしたいと私ども考えております。  理事及び参与の人選の結果を当委員会に報告せよということは、当然発表して差し支えのないものでございますから、御報告いたします。
  182. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  183. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより本案について討論に入るのでありますが、討論の通告がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  184. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十九分散会      ————◇—————  〔参照〕  国民生活研究所法案内閣提出第八  一号)に関する報告書  〔別冊附録に掲載〕