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1962-03-02 第40回国会 衆議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二日(金曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       白浜 仁吉君    田中 龍夫君       中垣 國男君    原田  憲君       山手 滿男君    岡田 利春君       久保田 豊君    小林 ちづ君       中村 重光君    西村 力弥君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君  委員外出席者         参  考  人         (国民生活研究         所理事長)   奧井復太郎君         参  考  人         (国民生活向上         対策審議会委員         主婦連合会副会         長)      高田 ゆり君         参  考  人         (国民生活向上         対策審議会委員         日本生活協同組         合連合会専務理         事)      中林 貞男君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月一日  委員西村力弥辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山本幸一辞任につき、その補欠として西  村力弥君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十八日  北海道地下資源開発株式会社法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一〇七号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民生活研究所法案内閣提出第八一号)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民生活研究所法案を議題として審査を行ないます。  本日本法案のため御出席をいただいております参考人各位は、お手元に配付いたしました名簿の通りでございまするが、国民生活研究所理事長奧井復太郎君、国民生活向上対策審議会委員であらせられる、主婦連合会会長高田ゆりさん、さらに国民生活向上対策審議会委員日本生活協同組合連合会専務理事中林貞男君、この三君に御無理を願った次第であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用のところでもあるにかかわらず、本委員会法案審査のため御出席いただきまして、まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。  御承知のごとく、国民生活研究所法案は、国民生活実情動向を正確に把握するため、所得格差の問題、消費者物価の問題、生活環境問題等について、総合的な調査研究等を行なう国民生活研究所を新たに特殊法人として新発足せしめようとするものであります。参考人各位は、国民生活向上について、それぞれ深い御造詣をお持ちの方々でございますので、それぞれのお立場より、忌憚のない御意見をお述べいただき、もって本案審査参考にいたしたいと存じます。  参考人各位には、最初お一人十五分程度意見をお述べいただき、あと委員の質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは、まず最初社団法人国民生活研究所理事長であらせられる奧井復太郎君よりお話を伺うことにいたします。奧井君。
  3. 奧井復太郎

    奧井参考人 御紹介にあずかりました奧井でございます。私自身は、昨年の秋から社団法人国民生活研究所理事長かつ所長として勤務いたしております。何ゆえにこの社団法人研究所所長ということになりましたかと申しますると、いささか私の平素研究しておりまする研究領域というものが、国民と申しまするか、一般国民生活の問題にかなり関連があるということ、また私自身生活の問題に非常に興味を持っているということでございます。  ただいま委員長からもお話のございましたように、歴代の内閣と申しまするか、あるいは経済企画庁が、早くから国民生活の問題、その問題点に重要な関心を持たれ、そうして幾つか指摘されておられた。たとえば先般の生活白書に表われましたように、所得及び生活水準地域的な格差があるのではなかろうか、あるいは消費者物価というものが高まることによって、国民生活にどのような影響を受けるか、こういうようなこと、さらにまた最後にあげられました点といたしましては、生活環境施設公共施設というものが、生活にかなり重要な関係を持っているのではないか、等々の問題をあげられまして、そうして国民生活を一そう深いところから総合的に研究をしていこうという御趣旨のように承っております。私自身といたしましても、この観点につきましては、非常に賛成でございます。と申しまするのは、まことに簡単なような事柄というものが、かなり連鎖反応的に生活あり方影響を及ぼすということがございます。その連鎖反応的というところは、どうしてもただ一つ専門研究だけでなく、むしろいろいろの専門分野あるいは専門領域にわたって、問題を関連せしめながら考えなければならないところではなかろうか、こういうふうに考えます。  そうしてまた、一応いわゆる巨視的な観点から申しますると、しばしば言われまするように、地域的に、東京と鹿児島との間に倍あるいは三倍に近い格差があるということを申しましても、ただ地域が違うからそうだということでなくて、その地域にどういうなりわいが行なわれているか、そのなりわいがかりに第一次産業的でありましょうと、第二次産業的でありましょうと、第三次産業的でありましょうと、さらにその第一次、第二次、第三次のそれぞれの職業それ自身の中にありましても、業態の違い、規模の違いというようなことによっても影響するところに違いがあるのではないか。たとえば、先般静岡市へ参りましたが、あそこでは昨年の暮れの金融引き締め影響というものがほとんど即時には痛切に感ぜられない。約半年おくれているというのです。事、金融に関しまする問題では、かなりそれらのものが敏感に、右から左、東から西へと移って、影響があってもよかろうと思うのであります。にもかかわらず、そういったような状態、そういうようなところ、地域ということにそういう相違がありますが、地域における相違というものは、その地域がどういう産業を乗せているか、その地域におきまするところの人々の生活の、私どもでは構造というような言葉を使っておりますが、生活構造あるいは生活の裏面というようなことはどういうことか、なおこまかに内部的に分析しなければならないところが多々あるように思います。  第三点の、生活環境あるいは公共投資の問題になると、なお一そうそうでございます。これはしばしばジャーナリズムその他の方面におきましても指摘せられておりまするように、今日のレジャー・ブームあるいは消費ブームということから見ると、日本人の生活あり方というものは、全体にアンバランスじゃないかという御意見が出ております。ということは、高級の電気家庭用具というものは準備せられているにかかわらず、なお屎尿処理の問題、下水道の問題ということはどうた、たとえは住宅居住状況はどうだ、最も住生活においてのおくれというものが指摘せられているようでございます。さらにまた、生活の面を個人の家の中とか家庭生活だけに限りません、それを取り巻く生活環境の点から見ますると、すでに周知のごとく、日本国民生活環境整備の度合いというものはきわめて貧弱でございます。この意味におきまして、生活環境というものが整備せられることになりますと、これはどのようにわれわれの生活影響を与えていくか。生活向上というような点から見ますと、生活環境整備された場合にどうであるか、これらの点につきましても、いろいろの技術的な施設的な整備の問題というものは、かなりそれぞれに論ぜられておりましょうが、国民生活と申しますか、われわれ生活一つの集団的に取り上げてみましたときに、そういった環境施設整備の有無、あるいはそのあり方いかんというものが、われわれの生活にどのような社会的な関連を持ってきているか、こういう問題に相なろうかと思います。  なお、私ども考えたいと思いますのは、近ごろは単に地方公共団体あるいは国の施設でなくして、企業経営者自体がいろいろの仕事をしております。これもなかなか見のがすことのできない点ではないかと思います。つまりただ単に国民それぞれが生活のために用意をするということでなく、また市町村というような地方自治体が、居住者公共団体がそれを用意するということでなく、さらにその国民それぞれが属しておりまする職場の関係等においてのいろいろな施設というようなものは、やはりこれまたここで申し上げますように、国民生活向上あるいは国民生活の問題それ自体に深い関連を持ってくるんじゃないか。このような意味合いにおきまして、すでにそれぞれの個々の問題あるいは個々の場におきましては、すぐれた研究があると思うのでございます。どうしてもそれを総合する、集めていって、そうして一段とより深く、より広いところの国民生活問題点の究明をする、こういう場がほしいということは年来からの念願であったのであります。  たまたま昭和三十四年でございますか、国民生活研究協会というものが発足をいたしました。それがさらにだんだん経過を経まして、昨年社団法人の形をとって国民生活研究所というものに相なりました。前々からの直接、間接の関係でもって、私がその所長理事長の席を汚すことになりました。私は自分自身の建前から見まして、この国民生活研究というようなものに対する必要というものをそのように考えておりますことを申し上げて、私の陳述を終わらしていただきます。
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  引き続きまして、主婦連合会会長であらせられる高田ゆりさんにお願いいたします。
  5. 奧井復太郎

    高田参考人 私は国民生活研究所法期待を寄せております。  政府は、この一、二年消費者保護行政ということを打ち出されて、経済企画庁では国民生活向上対策審議会を設けたり、東京都では消費生活物資対策協議会というものを作り、国民生活環境の問題とか、巧みな販売戦術技術革新によって続出する商品の選択に非常に戸惑っている消費者が買いものをする場合の保護援助の手だてを考えまして、食料品家庭用品流通対策などが検討されるということでございますし、その上今国会には私どもがかねて主張し要望し続けておりました不当顧客誘引行為防止法案公正取引委員会から提出されるとのことでございますし、またきょうの新聞では、だいぶ難航するようではありますけれども各省物価安定対策が報道されております。そういうふうな政治の運びがおそ過ぎたきらいはございますけれども消費者保護行政が少しでも取り上げられてきた。ことに暮しを守る主婦立場から、これらに非常に注目している次第でございます。ただ、これが一時的なスローガンや選挙対策の手段に終わってしまわないように、私たち暮しに、打てば響く政治となって反映して下さるように、切望する次第でございます。  と申しますのは、消費者保護関係のある法律というのは、現在でも各省にたくさんありますのに、その法律消費者の役に立たなかったり、指導が徹底していなかったりして、私ども暮しを守っていない場合が多うございます。たとえば、昨年の行政管理庁の調査の御報告にもございましたように、食品衛生法しかり、計量法しかり、繊維製品品質表示法しかり、いろいろとまだ消費者を守ることをうたいながら、全然運用が不完全なものがだいぶございます。特に衛生立法に名をかりた環境衛生営業法が、これは経済立法ではないかというふうに私どもこの法律ができるときに大へん反対いたしたのでございますけれども、この環営法は、今非常に物価の値上がりの便乗値上げ一つの根拠になっているように考えられます。こういう法律不備というようなものも、私たち国民動向調査不備ということから来ているのではないかというふうにも考えられます。  それから、私どもの方では苦情相談の窓口を開いておりますけれども、その中に生活環境屎尿処理ごみ処理の問題が非常に多うございます。やはり私たち暮しの問題と生活環境の問題についての調査が不十分だというところに、それが起因しているのではないかというふうにも考えられます。  また、物価の問題にしても、私どもは最近の物価の高騰に非常に弱り抜いておりますけれども池田さんは卸売物価が下がっているから、横ばいだから大丈夫だ、大丈夫だとおっしゃっておられましたが、そうおっしゃるそばから、公共料金の特例のものの値上げが行なわれ、分べん料から墓地料、それから最近は役所の手数料まで上がって、私どもは大へん悲鳴を上げているのが現実でございます。昭和三十五年末に発表された政府経済見通しでは、三十六年の消費物価上昇率は〇・七四%と見込まれて、予算を編成する過程で問もなく一・一%くらいと手直しされました。そして実際は約九%の上昇率になっております。このような見通しと実際とのズレは、やはり調査なさる場合の基礎に何か問題があったのではないかというふうに考えられます。  また総理府統計局で出されております家計調査報告によりますと、昨年の二月の調査報告参考にしますと、都市別勤労世帯平均家族数が四・三三人で消費支出が二万八千三百八十七円で、その中に占める住居費が二千三百十六円という数字が出ております。現在公団住宅を借りるときに二千三百十六円という家賃は全然ないわけで、こういうところに実際と統計とのズレが出てきているのではないかというふうにも考えられます。  それから、これは生協婦人部調査なさった資料でございまして、あと中林さんからお話が出るのではないかと思いますけれども、だいぶ前に調味料調査をいたしましたところが、一カ月五人家族で千四百円という値段が出ました。ところが総理府統計局家計調査によりますと、一カ月七百円という数字が出ているわけなんです。そこいらにも現実調査ズレがあるのではないかというふうに考えられます。またいろいろの資料を調べますときに、ワイシャツを一年二、三枚使うとしますと、ワイシャツを使うのが木綿の場合には一枚五百円という計算で値段が出るかもしれませんけれども消費形態がだんだん変わって、テトロンのワイシャツを一年三枚使うということになりますと、その値段は倍になるわけでございます。そういう点に非常に私たち生活をしている者と、それから政治をなさる方々資料とする資料に何かズレが出ているのではないかというふうに考えられます。また池田さんが、先ほども申しましたように、卸売物価指数が安定しているから大丈夫だとおっしゃいますけれども消費者物価指数が上がっているのは、やはり卸売物価指数消費者物価指数の品目の取り上げ方が違っているのではないかというようなことも考えられます。こういうふうな調査不十分なために、国民生活実態調査ということが何か間違っているというのは大へん言い過ぎかもしれませんけれども、何かズレた結果が出ているのではないかというふうに考えられます。特に消費者物価は国の総合政策の現われで、もし五%も上がったら、ほかの国では大きな問題にされるのに、日本ではそれに対する科学的な分析報告もされないことが多いというのが現実です。私どもはこのようなことでは大へん困ると思います。  それで、国民生活実情動向を正確に、しかも迅速に把握して、それを行政面に反映させることが政治だと思うので、国民生活向上させるために、国民生活実情動向調査するという研究機関ができるということに非常に期待をしておるわけでございます。  この際、そのような機関がおもに産業保護育成する官庁のもとではなくて、経済企画庁の監督にあるというのもけっこうなことだと思っております。ただ、このような調査なり研究というのは非常に地味で、その効果をあげるまでには非常に費用がかかるのではないかと思われます。現在の一億円くらいの出資でどの程度仕事ができるか、今から私は心配しております。また、政府以外の出資を受けるということが法案の中にうたわれておりますけれども、もし政府以外の出資を受けるとすれば、その運営や事業の内容が、国民生活向上のためという本来の目的がゆがめられてしまうという懸念を持っておる次第でございます。ただいままでの社団法人国民生活研究所仕事内容を拝見しますと、経済企画庁及びほかの官庁からの依頼の調査と同時に、業界、おもに協会仕事も引き受けておられますようでございますが、財界出資も受けることになれば、業界からの仕事委託を受けるような形になるのではないかというふうに思われます。国家の手で特定業界のための市場を調査したり、特定業界の発展のための研究機関とならないよう、あくまで国民生活向上のための研究機関として運営されることを特に要望する次第でございます。  そこで、運営の面でございますけれども、第十九条に参与会を置く仕組みになっておりまして、学識経験者ということになっておりますけれども参与会には実際に消費者運動をやっている代表者をぜひ入れていただきたいと思います。最近はいろいろの団体を集めて、名前だけあたかも消費者の集まりのように見せかけているものもございますが、生活経験を実際に持って、暮らしに結びつく消費者運動をしている代表者をぜひ加えていただきたいというふうにお願いする次第でございます。  それから、二十三条に長官の認可を受けて委託調査ができることになっておりますけれども委託調査参与会に諮るようにしていただきたいと思います。それから、委託調査参与会委託と同時に、消費者組織からの委託も引き受けていただきたいと思います。消費者組織委託の場合には、大へん虫がいいと思いますけれども、無料で委託を引き受けていただくようにぜひお願いしたいと思います。そして物価調査生計調査はもちろんのこと、欧米各国消費者保護の今後の情報どももちろん、消費者意識向上消費者運動に役立つような調査をして、必ず情報国民に流すようにしていただきたいというふうに考えております。  で、三十五条にその報告の項が示されておりますけれど、経済企画庁長官が要請すれば報告するだけでよいように書かれてありますが、必ず経済企画庁長官を通じて国会報告を出して、国民全般に知らせていただくような仕組みにぜひしていただきたいと思います。それにしても、このような調査費用がかかることでもあり、ほかの影響を受けないで自主的に運営をするために、ほかの出資を仰がずに済むような仕組みにして国の予算を十分に出す必要があるのじゃないだろうか、その点を十分検討していただきたいと思います。  最後に、くどいようでございますけれど、この運営仕事内容があくまで国民生活向上のためのものになるよう切望いたします。イギリスでも消費者保護のために予算を計上し、政府援助のもとに有力な消費者保護機関を作るよう提案され、大蔵省のもとに独立の消費者保護委員会が作られたと聞いておりますし、アメリカでもケネディ大統領のもとに消費者諮問委員会ができたと聞いております。英米で共通して言えることは消費者公共利益を代表すべき有力な機関が必要であるということが議会で主張されており、消費者利益と教育のために、公平な立場から資料国民に提供されているということでございます。私は国民生活研究所を土台として、消費者保護する生活省というものが日本にも実現するよう要望して、私の意見を終わらせていただきます。(拍手)
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。引き続きまして日本生活協同組合連合会専務理事であらせられる中林貞男君にお願いいたします。
  7. 中林貞男

    中林参考人 私御紹介をいただきました中林であります。日ごろ生活協同組合仕事をやっておりまして、物価の問題その他のことといろいろ取り組んでいるわけでございます。そういう関係で消団連の仕事どもいたしているわけですが、そういうような立場で現在の日本の私たち消費生活のいろいろなことを考えてみました場合に、原則的にいろいろ問題もあるかと思いますけれども、私はこの国民生活研究所法案というものに、結論を申しますと、賛成をするわけです。ただ私は原則的になぜ賛成するか、どういう立場賛成をするかということを少しく申し上げまして、国会の御審議にぜひ御参考にしていただき、また法案が成立しました後における研究所運営に十分御配慮を願いたいという工合に考えるわけです。具体的ないろいろな点は今主婦連の高田さんが詳しくおっしゃいましたので、そういうことは重複を避けまして、私は簡単に私の感想を述べてみたいと思うのです。  今度この研究所法律によって特殊法人になるということ、最近消費者行政というようなこととか、消費者保護ということがいわれているけれどもほんとうにそのことが今高田さんがおっしゃいましたように、消費者のためになっているかどうかということを考えました場合に、われわれは非常に疑問を持たざるを得ない。むしろいろいろな品物を作っている生産者の側に立っての消費者行政というような面が非常に強いんじゃないか、そういう点は特に日本は、ヨーロッパ各国に比較しました場合に、消費者保護という見地に立っての消費者行政ということが、私は非常におくれているということを常に思っているわけでございます。特に最近の高度経済成長という中において、設備投資というようなことがどんどん行なわれて、方々に新しいコンビナートというようなものができたりしておりますけれども、その反面において、この法案提案理由の中にも書かれておりますように、一方においてひずみと申しますか、格差というものが非常にひどくなっていっている。この問題をやはり消費者行政ということを取り上げる以上は真剣に取り上げていかなくてはならない。また物価がどんどんと上がっていくということの問題とも、私は政府においてももっと真剣に取り組んでいただきたいというふうに考えるわけです。  それで、私ら物価が上がると物価値上げ反対だということでしょっちゅう反対運動とか、いろいろやっているわけですが、しかし、私ら反対を叫ぶ立場に立っていろいろなことを調べようと思っても、データとかいろいろな資料がないということで、やはり非常に考えさせられるし、またそういうような物価問題などについての研究ということが、ほんとうにどこでなされているのだといえば、私は日本においては非常に立ちおくれているというふうに考えざるを得ない。特に流通過程の問題というのは、日本においては非常に複雑であるし、従って、物価はどういう経過を経て、どういうふうにしてきまるのかというようなことなどについても、もっと科学的な研究ということがなさるべきじゃないだろうか、そういうような流通過程の面におけるところのいろいろな研究ということが日本において非常におくれている、これは私らがいろいろな仕事をしております立場から考えましても痛感しているわけでございます。従って、そういうような研究機関というものはぜひ作られなくてはならない。しかし、それを財界寄付だけでやるとか、財界寄付を集めてとかいうことになりますと、どうしてもひもがつかざるを得ない。従って、私はそういうような研究というものが、できるだけ政府予算によって、そして公正な立場でそういう研究がなされるようにしなくちゃいかぬと思います。従って私はこの研究所政府予算の裏づけによって、十分公正な運営がされるようにぜひしていただきたい。財界寄付というようなことも、現在の予算その他の点からやむを得ない点もあるかと思いますけれども、私はそこにあまり重点を置くのではなくて、やはり国会の先生方のお骨折りによって、できるだけ国の予算で、そして中立公正な立場でこういうものの研究がぜひなされるようにしていっていただきたいというふうに私は考えるわけです。そういう立場から、私は原則的にこの法案の成立ということに賛成をするわけです。  ただ、その反面において、やはり政府がやるということになりますと、とにかく官僚化していくんじゃないか、また研究そのものが非常にそういうような形になっていくんじゃないかということを一面において憂えるわけでございます。従って、そういうような点については、この研究所運営について十分御配慮を願わなくちゃいけないのではないだろうか。従ってそういうような点は、今高田さんがおっしゃいましたが、参与会運営なり役員の構成なり、そういうような点に十分配慮がなされるようにぜひ御審議をお願いいたしたい。  それから、研究所特殊法人としてスタートしました場合のその運営、あるいは調査研究の態度というものについても、ぜひ十分考えていく必要があるんじゃないか。現在大学は大学でいろいろな研究をやっておりますが、大学の研究は象牙の塔における研究であって、実際の役に立つものが——もちろん長い目で見れば大学の研究室というようなものも、私はできるだけ予算措置で強化していかなくてはならないと思いますけれども、やはり大学の研究室における研究というものと、今度できます国民生活研究所における研究というものとは、おのずと違ったものでなくてはならないのじゃないだろうか。あるいはまた現在、内閣統計局における統計というものは、かなり完備しておりますけれども、やはり統計ということになりますと、全部ならして平均をとるとか、いろいろなことになりますので、生活の実態にはたして統計というものがマッチしているかどうかといえば、統計の魔術と申しますか、そういうものによって実体がおおい隠されるという危険性もあるわけです。従って、そういうような点は、具体的な実態調査ということと並行して、この研究所運営がなされなければならぬし、特に最近のように生活構造なりその内容が急角度に変化しつつあり、一面においてそのアンバランスというものが拡大をしているという現状においては、できるだけその研究というものが、国民生活の実態と結びついた形においてなされなければならない。そういうような意味においては、婦人団体なり、あるいは私らのやっておる生活協同組合なり、あるいは農業協同組合なり、あるいは労働組合なり、いろいろのそういう国民生活と結びつきました組織がありますし、そういうような組織における調査研究というものも、最近は調査部とかいろいろなものがそれぞれの団体でもできて、いろいろな調査機能も整備されつつありますので、そういう大衆の実態生活と結びついた組織の調査研究というものとも十分御連絡をいただいて、この調査研究というのが、ほんとう国民生活の実態に即した調査が行なわれ、それが行政の面に反映されるようにぜひ御配慮をいただきたいということを、賛成するにあたって非常に強く私はお願いをいたしたい。  また、そういう調査研究というものが現在の日本において非常に大事である。従って、この調査研究というものは、一党一派とか、いろいろなところに偏することなく、実際の国民生活というものを十分掘り下げて研究がなされて、それが行政の面に反映されていくように私は御配慮をいただきたいというふうに考えるわけです。  最後に、これは研究所というものを私の友だちがやっておったりしますが、いろいろ見ておりまして、研究所一つの弊害ということを申しますと、とかく研究所は、研究をやる人の個人の嗜好と申しますか、好みによって研究がよくなされて、従って、やはり全体の広い立場に立っての研究ということが、とかくおろそかにされがちであって、これは奧井先生を前において非常に失礼なんですけれども、学者とか、こういう研究家の研究というものは、その研究当事者の嗜好と申しますか、好みによって研究がなされる危険性があって、それが広い立場においてのいろいろな実態と結びついていくかどうかということになりますと、なかなかそれはむずかしい問題だと思います。そういうような点についても、この研究がせっかく国の予算でやられることになるのですから、できるだけ諸先生方の御配慮によって予算がとられて、そうしてりっぱな研究所になることを希望するわけでございます。反面、学者と申しますか、研究者の個人的な嗜好によって、とかく研究所というものが運営されがちでございますが、そういうような点についてもぜひ御配慮をいただきたい。従って、そういうような点について申しますと、参与会の構成なり運営なり、あるいはまたこの結果に対する報告というようなものについても、できるだけ国会報告の義務を持たせるとか、あるいはそういうような点についても十分本来の機能が発揮されるように諸先生に御配慮をいただきたいということを強く私はお願いいたしまして、私のこの法案賛成する理由といたしたいと思います。(拍手)
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 ありがとうございました。  これにて参考人各位の御意見は終わりました。     —————————————
  9. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、参考人並びに政府委員に対して質疑の通告がありますので、順次これを許します。松平忠久君。
  10. 松平忠久

    ○松平委員 同僚各位の質問があるそうでありますから、きわめて簡単に一、二点御質問申し上げたいと思います。  奧井先生にお伺いいたしますが、今まであった研究所が今度特殊法人になるわけでありますが、企画庁からここにもあります国民生活白書というものが出ております。この生活白書内容のいろいろな資料とか、そういうものは、今日まであなたの方の研究所でどの程度この白書を作るのに資料を提供されたか、あるいは実質的にどの程度これに参画しておったかということを第一点としてお聞きしたいと思います。  第二点は、この研究所における調査の方法であります。この調査の方法はどういうようなやり方をしておられたか。つまり調査の方法というものはいろいろあると思います。新聞社の世論調査のような抽出的な方法もありましょうし、あるいは統計にたよってやる、しかもその統計の方法も、もっぱら政府統計にたよるということもあるように思いますし、いろいろな方法があると思いますが、主としてどういう方法で御調査をやられておったかということであります。  それから同時に、今後特殊法人になった場合におきましては、今までの方法を顧みてそれを続行していくのがいいか、あるいは何らか新しい構想のもとにやった方がいいかということについて、御意見があれば承りたい、かように存じます。
  11. 奧井復太郎

    奧井参考人 第一点は、先般企画庁から御発表になりました国民生活白書に対して、研究所はどのくらい資料その他において仕事をしたかということでございます。これは、ただいまの社団法人としての研究所の設立の経過を申し上げないとあるいはおわかりにくいかと思うのでありますが、実はすでに企画庁方面の方々との間で、生活研究の問題が重要だということが論議になりまして、三十四年に協会として発足したことはすでに申し上げた通りでございます。そうして三十六年になりまして、この協会において企画庁からの委託調査を引き受けたということでございます。従いまして、事前にいろいろな関連から私どもの方の研究について、企画庁の内部におけるそれらの専門調査あるいは研究担当の方々との間に話し合いというものはなかったと思います。この委託調査の結果が、研究所の正式の業績として報告せられるのが本年の三月になっております。その間に中間報告等において若干のコントリビューションというほどじゃないのですが、それはあったと思われます。しかし、むしろ双方企画庁自身もあの白書でもってこれからの問題を提供されているというような考えであると思います。ただ、三十六年度企画庁の委託調査費を約一千万円でございますか、これを協会として受け、さらにそのことがありますために、社団法人国民生活研究所と組織がえになったこと、これは先ほど申し上げた通りでございます。  なお、研究所研究の方法としましては、ただいま松平議員からの御指摘のあったような通りでございまして、あるいは直接に調査対象を選びまして、クエスチョネーアを渡しまして、アンケートを求めるということもございます。あるいは家計費、生計費等の問題につきましては、それぞれすでにそれらの調査をされておりますところの結論、結果というものを参考にさせていただく。それと同時に私たちの方でも自主的というのはおかしいのですが、自主的に家計簿記入を適正に選択せられましたサンプルによって書いていただくというような方法をとっております。あるいは先ほど高田参考人からの御意見もありました苦情処理というような問題になりますと、手前どもの方に窓口を置くというよりは、すでに窓口のあるところに現われたいろいろな苦情というものをどういうふうに処理していくか、その背景等々と、そういうようなことで、今までやっておりましたところでは、その問題々々によりまして、いろいろな調査の方法をとっていると思います。第二点はこれでお答えになりましたかどうか疑問でございますが……。  第三の点でございますが、これは私が今の社団法人国民生活研究所を引き受けるに至りました私の動機というものを端的に申し上げますと、ほんとう仕事がしたいということなんです。もちろんその仕事が国策の面に重要な影響を持つんだというものは、研究者としての当然の心がまえであろうと思います。受け入れられなくてもいいんだというようなものじゃないと思います。ただしかし、これは国策の観点から、またこれを一つの実際行政に上すという場合には、それぞれの行政的な立場という問題があろうと思います。そこで中林参考人がまことにいいことを言って下ったのでありまして、私は中林参考人とその点では同意見でございます。ほんとうに学者にこの研究所のための仕事をしてもらいたい。私どもは学界あるいはまことに経済的基礎、財政的基礎の貧弱な研究機関にタッチしております。それになぜタッチするかと言えば、自分の勉強になるからタッチする。手弁当で、ほとんど無報酬でタッチしておる。ですから、こういうもので今まで総合調査あるいは研究というものをやりましたときに、しばしばその責任者ともなっておりますが、責任者として会心のできだという成果を上げたということは全くない。これは中林参考人は学者が狭くて自分の畑へ持っていってしまうというふうにお話しになりましたが、これは自分の畑へ持っていかせないように、学者を職人として使えというのが私の意見なんでございます。この仕事をやるからお前こういうふうにやらないかどうかというんでなくて、先生の御研究にということになってしまう、こういうことで、今後の国民生活研究所を、ますます豊かな財政的基礎のもとに、思い切って、そういう効果のある仕事をしてみたいということであります。  あわせまして、私どもただいまの研究所では理事長という格好になっておりますが、理事長であるよりは研究所所長という方が私の本務だと思う。研究所所長としましては、仕事についての御批判を承りたい。仕事をどうやるかということの細目一々については、御批判を承りたくなくておまかせ願いたい、こういうふうに考えるのであります。  御質問の趣旨に合いましたでしょうかどうですか。
  12. 松平忠久

    ○松平委員 もう一点だけお聞きしたいのです。  今の奧井さんのお言葉の通りで、豊富な予算を持って、ほかの勢力にも何らの影響を受けない公正な立場において研究を完成されることが最も必要だと思うのですが、その場合におきまして、研究所としては研究の成果というものをどういうふうに国の政治に反映させるべきであるかということについて御意見もあろうかと思います。今日まではおそらくその成果を公表するとかあるいは政府報告するとかいうようなことをやっておられたのであろうと思いますが、今後特殊法人にした場合におきまして、研究の成果を国政に反映させる何らかのうまい方法というようなことについて御意見があるかどうか。  それを奧井先生にお伺いすると同時に、この研究の成果を国政に反映させるために、企画庁としては一体どういうことを考えておるのか。ただ単にこれを本か何か作って公表するというようなことであるのか、あるいはその重要なる部分については、政府に対して、一般の消費動向その他の生活はこれこれであるから、こういうところにもう少し力を入れてやるべきではないかという勧告みたいなものをするのか、何かそこに研究の成果が行政政治面において尊重されなければならない、そういう立場政府自体は立たなければならぬと思うのです。そこで、その点について、それぞれ奧井先生と政務次官のお考えを知らせていただきたい、こう思うのです。
  13. 奧井復太郎

    奧井参考人 研究所特殊法人となる、あるいはなったということの過程におきまして、研究所が、一応規定されております限りにおいては、特別に政府に対する建議とかあるいはサゼスチョンということはないようであります。  しかし、先ほども申しましたように、研究所は当該問題に対して十二分の研究調査をしてその結果を出す。ここにおきましては、研究所仕事というものは技師みたいなものであります。こういう問題をどうだと出せば、これはかようしかじかでああなる、こうなるという一つの型でお示しするより仕方がない。それをどのように採用なさるかというのは、やはり主体の方がきめることであろうと思います。ただ非常に心強く思いましたのは、また再び両参考人を私の助太刀に利用して恐縮でございますけれども、お二人とも非常に研究所期待を持っておられる。そのことで、研究所がかりに委託調査、あるいは独自の研究報告を出したということは、ただ報告書ができたということだけでなくて、たとえば生活協同組合方々の方にもあるいは主婦連合会方々にも、それが影響というと大きいかもしれませんが、とにかく向こうに行きます。そうしますればそれをプラスにもマイナスにもまた使ってやって下さる。ちょうど池の中に石をほうり込んだのと同じように、私の方を中心に申しますと、そこへ石をほうり込みますと、だんだん波紋を広げていくのと同じようなことになる。この意味合いにおきまして、PRと申しますか、そういう広報活動的なこと、そして諸団体との連携を密にするということ、これはやってみたいと思っております。
  14. 菅太郎

    ○菅政府委員 研究所研究がまとまりました成果は、直接政府もいただきまするし、また関係各省関係の官民それぞれの機関にも御配付を願いますと思うのでありますが、多くの場合は、その成果に基づきまして、国民生活向上対策審議会の議にのぼせることが多いと思うのでございます。審議会の方で、本研究所の成果に基づきまして、政府にいろいろ意見具申をしていただきましたり、あるいはまた政府側から出しました諮問に答えていただきましたり、多くの場合その手続を経ました上で、企画庁といたしましては、国民生活向上に関するそれぞれの各省の所管の権限がございますから、それぞれの方に連絡をいたしまして、それぞれ具体案を作っていただくように推進調整役をいたすつもりでございます。そうしまして、各省がそれぞれ動いていただきましたのを、企画庁として大いに総合調整推進をいたしたい、こういうふうに考えております。ただ、研究所研究の結果がむだにならないように、今申し上げましたように、審議会の活用なり、各官庁本来の活動なりというものを大いに盛んになるように推進調整していく決心でおります。
  15. 早稻田柳右エ門

  16. 西村力弥

    西村(力)委員 まとまりもなくお尋ねするようになって恐縮に思いますが、まず第一に奧井先生に伺いたい。  この研究所特殊法人に切りかえるということは、研究所の必要性からそういう工合になったのか、役所の側からそういうような方向を出して参ったのか、これは国民生活研究所を、真剣に、よい成果を生もうと努力せられまして、どうにもならない障害というものがあって、そしてこういうように切りかえざるを得ないという工合になったんだろうと思うのですが、その間のいきさつはどういうことでございますか。
  17. 奧井復太郎

    奧井参考人 その間のいきさつということを、一つ経過的な問題を申しますと、先ほども申し上げましたように、菅野和太郎氏が企画庁の長官であった時代から、国民生活の問題に企画庁としては重要な関心を持たざるを得ないという議があって、長官としての御意見であったか、あるいは菅野博士としての御意見であったか、それで動き出してきております。従って、私が昨年関係申し上げるに至ったのが私の関係最初でございます。それまでの間に、企画庁並びに国民生活研究協会、それから経団連というところには、かなり長い間の、それから以来の密接ないろいろの交渉があったように承っております。  そして、何よりも必要なことは、おそらくこの研究所の重要性を認識しました上において、どうやったらこれが立つか、ことに研究機関としての有力な基礎を持ったものとして成立するか、この点から、つまり研究所特殊法人にして、そうして政府のあるいは国の背景のもとにおいてこれを発足せしめることが、発足にあたっての一番重要な問題、こういうふうになったのではないかと、私流の解釈でございます。
  18. 西村力弥

    西村(力)委員 せっかく社団法人として、民間の創意を自主的に発揮して、よい成果を生もうとしていらっしゃるのを特殊法人という企画庁に直結する機関に切りかえる、こういうことはやはりそういう当事者の側からの要望ということが主になっていくならばよろしいのですけれども、企画庁側から、そういう工合に特殊法人に切りかえていくんだという行き方をとることは、少し逆ではないかという気がするのです。先生のお話を聞きますると、そうなったんじゃなかろうかという推測の域を出ないということでございますから、研究所側からの意思表示によって動いたのではないということでございます。私はその点、物の運び方としては少しいけないと思う。そういうところに、先ほどから参考人の御意見にありましたように、役人の監督下に厳重に縛られると、つまらぬところで一生懸命苦労をしなければならぬということになって参りまするし、ほんとうの自主的な自由な研究というものはむずかしいということになる場合が往々にしてあるということを考えますけれども、この切りかえる契機というものが問題であると思っておるわけです。ただ、相当膨大な費用を要するにかかわらず、社団法人という形式ではなかなか思うようにそれができないということから、資金面からやむを得ずそうなったんだろうという工合には推測しておるのであります。それで、この資金面は、政府が一応今後も出資をする予定のようでございますけれども、やはりどうも民間資金の供給というものに仰がなければならぬということであります。今までも民間からいろいろ委託研究をやった場合に、先ほど高田さんがおっしゃったような工合に、民間の資金を受け入れることによって縛られる、こういうことと懸念するということがありましたが、今までに、そういう工合に資金を仰ぐと、そこにひもつき的な苦労が現実としておありかどうか、その点はいかがでございますか。
  19. 奧井復太郎

    奧井参考人 ただいま、民間側の出資を求めることによって、研究所自身がひもつきになるということ、私は今までのところではその懸念はなかったと思います。ただ先ほども申しましたように、発足の当初にあたりまして、国民生活に密接な関係のある各種の企業団体を会員としております。従って、それらのものが、向こうではマーケット調査のつもりでそれを委託してくる、マーケット調査でございますから、一々品物の銘柄についてどうとかというようなことでなく、一般的にこういう品物はどうなっているか、たとえばお手元にも行っていると思いますが、絹織物でございますと、絹の需要測定及び需要動機に関する調査というようなものがございまして、これらのものがわれわれ国民の衣料生活の中において、これからの化学繊維というものが出てきたときに、絹というものがどうなるかという、そういう一般的なものであって、そのために絹を使わなければならないとか、あるいはそのためにどうという結論が曲げられていくということは、私はないと申し上げてよろしいと思います。  なお、今後につきましても、民間の出資が一応一億という数字になっておる、これはこの趣旨に御賛同を願うことと、私どもそれに基づきましてとういう報告書の結論に持っていくとか、あるいはこういうふうになるというようなことは毛頭念頭にもございませんし、またただいまの所長としての立場におきましては、極力そういうものは排除していきたい。なお、昨年来、もし会社、企業等におきまするところの営業部門の方の連中が関係することによって、ややともすれば会社のマーケッティングの手伝いをするというような疑いのあるものについては、ことごとく排除いたしております。
  20. 西村力弥

    西村(力)委員 民間の出資あるいは委託を受けても、それに左右されることはなかったということは、私たちとしては大へん心強く思うわけなんです。今後もそういう工合に、本来の消費者優先の立場に立つ研究所であるべく願いたいと思うのであります。  ところで、この研究所国民生活向上対策審議会の基礎資料を作るのだということのお話のように先ほど菅次官が申しましたが、それと直結するだけでないのですけれども、そういう場合に、国民生活向上対策審議会研究テーマとして掲げているのは、新しい生活の型とか、あるいはさまざまのそういう生活消費革命に伴う環境施設はどうあるべきかということが一つのテーマである。それから、消費者保護ということはどういう施策をとったらいいかということが諮問されたテーマだと言っております。そういうテーマを審議して、直接端的に消費者保護を推進していこうという場合なんですが、そういう場合に、研究所としては、それだけにこだわらず、なお日本の現状あるいは国民生活の現状からいいまして、一体消費者の経済的な地位をどう向上するかというような問題、——それにはいろいろあるでしょうが、私はこの前の委員会において一番最初に指摘した問題は、広範なる、層の厚い低所得者層という、こういうものの実態と、この引き上げ策をどうするかという、ここにやはり重点を置かないと、消費者一般を保護するというようなことは、現実からますます遊離するのではないか、こういう気がするのです。今消費額がどんどん上昇しておりますけれども格差がひどくなる、こういうことでありましたが、そういう低所得者層の格差意識というものはどういう工合に現われているか。これはまことにだんだんと深刻さを増してくる、こういう状態にあるわけであります。ですから、そういう問題については、研究所のテーマとしてどうしても取り上げられなければならないと思いますし、また産業構造の二重性というような問題、こういう問題も、やはり中小の小さいメーカーというものはあまり高いものでない、また優良品よりも、全部というわけじゃないけれども、粗悪品を作るという傾向がある。そしてその粗悪品というものを買うのはやはり低所得者である。こういうことになると、中小企業の産業の二重構造からくるそこの劣悪な条件にある労働者あるいは低所得者層、そういうものが悪循環を繰り返していく、こういうようなことになってくる問題さまざまのそういう問題があるわけであります。社会福祉の問題、これは国民生活向上対策審議会の速記録を見ますと、これは末梢的な問題だ。末梢的な問題というとなんだが、この対策審議会の本質的な問題じゃない。確かに社会保障制度審議会とかさまざまありますが、こういう問題もやはり消費者の経済的地位の向上、それが一番最初に低所得層の引き上げだとか、こういうような観点をとる場合においては、やはりいろいろな重要な問題として取り上げて参らなければならぬ問題じゃなかろうか、こう思っておるわけなんです。国民生活研究所において、こういうような行き方をとるということは、これは先生のお考えではどうでしょうか。消費者一般という立場だけとるか、今、日陰にあるという低所得者層というものを引き上げていくという立場で、消費者の経済的地位の向上に焦点を置くか、こういう方向をとることに対しては御意見はどうでしょうか。
  21. 奧井復太郎

    奧井参考人 研究所としては、こういう立場をとるのだという立場はございません。しかし、国民生活、ことにここでは消費面の生活、——広い意味でありますが、消費面の生活がこの研究所のテーマでございますから、先ほども申し上げましたように、簡単に地域差があるといっても、東京と鹿児島がこうだと言えない。鹿児島の中にも高いところがあれば、東京の中にも低いところがある。そういうことで、今御説のありましたように、消費者一般なりあるいは幅広いととろの大衆——という言葉でいいかどうか疑問と思いますが、大衆消費者層というものの問題として見ていく。これは私の方でもいたしますが、立場をとるという問題でなくて、こうとったらどうか、ああとったらどうかというような問題として、さらにその検討、掘り下げを深くしなければならない問題と思います。先ほどの中小企業者の場合はどうであるかというようなことも同様であります。従いまして、研究所の方では、厚生福祉の問題は、当面の問題としてはあるいは取り上げていないのじゃないかと思います。そとは私まだはっきりと申し上げられない段階でございます。  まず、国民生活研究所でいう国民生活というのは何だというた場合には消費生活の方で、低賃金とか何とかいう方はおのずからここの問題ではない。ただし、低賃金の人はどんな生活をしておるか、それが上がったときにどうなるか、あるいはどういう生活をするにはどれだけ所得がなければならないかという関連はあります。低賃金がいいか悪いか、あるいは中小企業、あるいは産業の二重構造がどうかという問題に対して立場をとるというよりは、そういうような実態に即して、さらにそういうところの上にはどんな生活構造が築かれ、あるいはそういう階層の人々は生活というものをどういうふうに考えておるか、たとえば千円札が  一枚よけい所得として入ったときに、どうそれをお使いになろうとしておるか、そういうような問題として取り上げていきたいと思っております。つまり実態ということでございますから、実態というものを当面の研究調査の対象ということにして、それによってどう生活というものが築かれて、あるいはこういう生活であるためには、そのために国民生活の基準というような毛の、標準、スタンダードというものを考えるという運びにもなっておるのであります。これは非常にむずかしい問題でございます。国民一般の基準というものがあるのかどうか、そこにも問題がある。しかし、当初に申されましたように、昨日も国民生活向上対策審議会の席上でも申したのですが、こういった場合の生活環境を含む国民生活というのは、やはりある意味で大衆的な問題ではないか、どういうふうに基本的には理解しております。
  22. 西村力弥

    西村(力)委員 その研究所を思う通りに運営するには、年間予算最低どのくらい要るとお考えでございますか。今年度の費用としては大体きまっておりますが、こんなものではとうてい十分なことはできぬ。たとえば、先ほどから言うように、外国の消費者保護行政、そういうような問題までいろいろ進まなければならないと思うし、また研究成果というものを国民一般消費者に周知するという手段もとらざるを得ないと思います。せっかくの研究でありますから、これは消費者が全部知るということでないと、実際には国民に直接好影響を与えるということにはなりません。そうなりますと、運営をやっていらっしゃって、予算がこれくらいついていればまずまずやれるというのは一体どれくらいでございましょうか。
  23. 奧井復太郎

    奧井参考人 三十七年度の予算といたしましては大体七千何百万円かを計上しているはずでございます。しかし、これは予算でございますけれども、一番私どもが心配しておりますのは、内部が、スタッフその他等々において十分にそろっていませんときに、膨大な予算だけを考えることは無理であろうと思います。従って、四千何百万あるいは五千万の予算というものは、一応今の内容を徐々に固めながら行ない得るところの予算が大体それくらいで、決して多いとは思いません。そこで、先ほど申しましたように、仕事について御審議を願いたいので、その仕事のやり方につきましてはいろいろ拘束を受けたくないというのが、もし研究所を引き受けます場合——研究に関する限りは私はそうだと思います。聞くところによりますと、政府官庁経理には一つのレートがあって、そのレートでやる。こういうのは、はたしてそれでいいのかどうかということの問題があると思います。こういう準官庁機関であり、あるいは準公共的なものでありますから、私はこれらの仕事というものはコマーシャルのベースに乗せる必要はない。しかし、その点で、先ほどから御意見もあり、御質問もありましたように、十分に人に働いてもらうためには、どれだけわれわれがそれに対して報いなければならないかというようなことを考えますと、四千万の予算というものは決して多いものと思いません。
  24. 西村力弥

    西村(力)委員 次に、中林さんにお尋ねしますが、先ほどの陳述で、現在の消費者保護という行政が各省にまたがっていろいろございますが、それが直接生活保護になっていない、ほんとうの意味でそういう効果をもたらしていない場合が多いという陳述がございましたが、その具体例を総まくり的に、各省保護行政がこういう矛盾をはらんでいるというようなことをずっとお述べいただいたらありがたいと思うわけであります。
  25. 中林貞男

    中林参考人 私は、きのうも企画庁の生活向上対策審議会で言ったのですけれども、やっぱり消費者行政消費者保護のいろいろな施策が非常におくれているという一つの原因は、今、西村先生が御質問になりましたように、各官庁の間で行政がばらばらになっている。たとえば、住宅の問題一つをとらえても、家を建てるのは建設省だし、水道とかそういうものは厚生省ということになるし、あるいは電気とかそういうものになればまた違うというように、国民生活向上について行政がまちまちになっているが、何かそこに統一的な計画というものがなされるようにしなくちゃならぬじゃないかということを私は言っておったのです。  とにかくそういうふうにばらばらであるし、それから物価の問題にしても、先ほど高田さんがおっしゃったように、環境衛生に関するものは、環境衛生法は厚生省の所管であって、私たちは、これは経済立法じゃないか、いろいろ物価の値上がりになるのじゃないかということで反対したのだけれども、いやもう環境衛生の問題なんだから厚生省だということだったのです。しかし、結果的に見れば、やはり今の物価の問題にそれが大きな関連を持っている。そして、物価の問題について消費者立場というものがほんとうに考えられているかといえば、ヨーロッパでは、物価をきめる過程において、やはり消費者の発言と申しますか、そういうものが大きな作用をしている。ところが日本では、物価はそれぞれの一番大きなメーカーのところで、しょうゆであれば、しょうゆの大きなメーカー三社の間できまるし、あるいは電気器具であれば、やはり電気器具の大きなメーカーのところで値段がきまって、そして末端の方は、いわゆる定価販売ということで、その値段消費者に押しつけられる。そして、その値段をきめる過程において、消費者は全然発言権を持っていないわけですが、こういうような経済構造は、私は日本に特有なものであって、消費者物価の決定に対して発言していく場が全然ないというところに、私はやはり現在の日本の流通機構と申しますか、そういう問題についてももっと検討を加える必要があるのではないかと思います。私は自分も生活協同組合仕事をしていて特にその点を考えますが、これは私たち自身の責任でもある。私はいつかの公聴会などでもそのことは申し上げたことがあるのですけれども、ヨーロッパでは、どこの国へ行っても、生活協同組合というものを、政府が、むしろ保守党の方で積極的に育成策をとっておる。イギリスやフランスで聞きましても、やはりそうしないと独占の大資本をコントロールしていくということが、保守党の立場に立ってもなかなかむずかしいんだ、そしてむしろ保守党が、大資本をコントロールしていくために、生活協同組合を育成する方針をイギリスでもフランスでもドイツでもみなとっているのだヨーロッパでは、生活協同組合は、生活必需品については工場を持って自己生産をしている。生活協同組合を自分で経営して自分で作っているのですから、そして生活協同組合消費者の組織ですから、そこの工場で作りました洋服にしろ、くつにしろ、あるいはいろいろな食料品にしろ、その価格の決定については、やはり合理的な利潤とか、経営が成り立つという形で合理的な価格の設定をやる、そしてその生活協同組合一つの経済的な力を持っているから、生活協同組合が合理的にきめた値段というものをやはり一般の業界では参考にしなければならないという形の経済的な仕組みになっている。そこに物価の問題などについて消費者の意思が反映されるような経済構造というものがヨーロッパ各国ではどこでも仕組まれている。近代国家において、そういうような物価の問題に対する検討、それを経済構造としてどう考えていくのかという点について、日本くらいおくれている、ゼロだという国はないんじゃないかと私は思う。これは政府を責めたり皆さん方を責めることではなくて、私のやっている、われわれ自身生活協同組合日本ではちゃちでだめだということをおしかりを受け、私も、その面では至らないところがたくさんあるので、私らも考えなければならぬと思うのですが、国の政策として物価の問題をどうしていくかということについては、そういうような見地から十分お考えをいただきたい。  そういう点について、とにかく消費者の自主的な意思というものが政治の面にも経済の面にも反映されるような仕組み日本においてはなっていないんじゃないか、物価問題一つをとらえても。そういう点において、消費者行政消費者行政と、消費者保護ということがいわれているけれども、もっともっとこれは、自民党の立場であろうと、また社会党の立場であろうと、何党の立場であろうとも、国の経済構造としてそういうものを十分考えないと、そこが日本の一番おくれているところで、われわれにとっても不幸な原因ではないか、私は、私らの仕事の面からそういうことを感じているわけです。とにかくそういう物価の問題一つをとらえても、消費者の発言する場というものが機構的に仕組まれていないということを私は最も痛切に感じているわけです。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して——ただいまの質問並びに参考人の答弁に関連をしてお伺いいたしたいのですが、今、中林参考人参考意見として述べたような、同じような意見を私持っております。日本においては、消費者行政を専管するところがないじゃないか、こういうことを当委員会でも何回かにわたって言って参りました。先日経済企画庁物価対策についての案を出した。それに対して通産大臣からちょっと横やりが入ると逆戻りして、きょうの新聞には各省案が出そろった。しかし、相当基本方針に食い違いがあるといったような意味の記事が新聞が出ております。そこで先ほど奧井先生は国民生活とはすなわち消費生活である、こういうようにおっしゃったわけですが、この国民生活の面といいますか、消費者行政専門に担当する部局が必要ではなかろうか、このように私、前から考えて、何回か当委員会でも取り上げましたが、まだ明確な回答をもらっていないわけです。  そこで、奧井先生を初め、各参考人の方々に、いわゆる消費生活消費者の上に立っての行政を専管するところが必要である、こういうことにつきまして何らか御意見があれば聞かしていただきたい、こう思いますと同時に、経済企画庁次官に、経済企画庁各省の調整をやるんだ、こう言っておるが、調整はあくまで調整であって、何らの権限を持たない、現に物価対策それ自体が現わしておるようなものなんです。もう少し強く各省の調整をやるならやれるように、あるいは消費生活の専管の部局を経済企画庁に置く、こういうようなことについての、これは次官じゃ無理かもわかりませんが、御意見があれば伺いたい、こう思うわけなんです。奧井先生にまず御意見を伺いたいと思います。
  27. 奧井復太郎

    奧井参考人 何かの機会にも書いておきましたのですが、日本では、生活というのはそれぞれのやることでもって、まことにつまらないこと、卑しいとは言いませんけれども、天下国家の大事じゃないというような考え方からして、非常に生活を軽く見ておった。それはあるいはアジア、東洋的といいますか、日本的というか、その間にありましていろいろの生活団体というものが、生活のそうでないゆえんを高く強調せられたということは、私大いにその功績をほめたいと思うのです。そこで今のお話のように、あるそれを専管するところの部署というようなものを設けるがいいか悪いか、私はこれは答弁できませんです。日本のような官僚組織においてそれができると、また一つ部門がよけいできたというようなことになるのじゃないかというようなことを考えまして、ほんとうにそういうことになるものなのかどうなんですか。また何かやると個々の諸官庁も何かの問題に顔を出さなければならない。今まで三つで済んでいたものが四つになり五つになるといろことになりますと、ちょっとにわかに御返事申し上げられないというのが偽らざる心境であります。
  28. 中林貞男

    中林参考人 非常にむずかしい御質問で、しかし、実際に私は仕事をやっていて、今田中先生の御質問を痛切に感じているわけです。ある面で言えば、消費者行政は、通産省は物価なんかおれのところの所管なんだという形に出るし、農林水産物は農林省だと言う、たとえば酪農の宣伝だと農林省が莫大な予算を組んでいる。そうしてそれは消費者に酪農製品を買わせるための宣伝費が農林省の予算の中で莫大に組まれているというようなことだし、また労働省はやはり労働者を相手にしているのですから、労働問題という一つの限られた範囲でしか問題を見ていない。厚生省へよく行って今のことを言うのですが、厚生省は社会局というものがありますけれども、やはりこれは貧しい貧乏人といいますかを対象にする一つの救貧政策ということだけれども、そういう格差ができないためのもっと前向きの積極的な消費者行政といろものは厚生省でやっているかといえば、やっていないのじゃないかと私は言った。予算編成の前に厚生省に行って、次官から局長にいろいろそういう点で、厚生省のやり方は時代おくれだ、これだけ生活革命とかいろんなことを言われておる中で、おかしいんじゃないかということを厚生省に言ったのですけれども、しかしまた下手すると、今、奧井先生のおっしゃったようなことにもなるので、私はやはり諸先生方に消費者行政というものが統一的に考えられるような何か仕組みを、従って私は国民生活研究所というものが現在できるということは、そういう意味においても何らかの、ここの研究所一つ実態に即したデータを作って、そうして行政の面に反映さしていただいたら、何か今の欠陥が補われるのじゃないかといろ淡い希望かもしれぬですが、実は持っているのです。そういう点ではあまり各省から突き回すようなことでなくて、先ほどから奧井先生が言っていられますように、やはり研究所に自主的にまかすところはまかしてやらないと、消費者行政といっても各省から横やりが出るということでは、これは研究所ができてもちっとも仕事ができぬということになりますから、私は奧井先生のおっしゃるように、研究所にできるだけ自主性を持たさなくちゃいかぬと思っているわけであります。とにかく消費者行政が非常にばらばらなんです。これは先生方に、何か今度行政審議会ですか、行政機構審議会ができたのですけれども、そういう中でか、あるいは先生方の御協力で何か消費者行政というものが一つのところで、各省を調整するということが企画庁の役割ですが、それを強力に行なわれるように、そうしてそういう実績の上に立って何かそういう特別のものが作れたら非常にいいのじゃないか。ただ下手すると、また方々でなわ張りばかりができるということになりますので、そういう点ぜひ先生方にお考えを願いたいということで、田中先生が御質問になったことをぜひ一つ国会においてお取り上げをいただきたいと思います。
  29. 奧井復太郎

    高田参考人 私は消費者利益保護するための生活省、名前はまあ生活省、何か消費者利益保護するための部局が必要だということを痛感しております。それは、一昨年の暮れに起こりましたにせカン詰め事件の、これは大へん有名なことでございますからまだ御記憶の生先方がいらっしゃると思いますけれども、あのときに、牛の絵がかいてあって、中身が鯨のカン詰めだということで、食品を扱っているのだから厚生省に私どもまず走りました。そうしましたら、厚生省の食品衛生法では、公衆衛生上危害を与えるおそれのある場合に取り締まることができる。牛の絵がかいてあって中が鯨で、おなかをこわしたり、下痢をしなければ、そこでは取り締まれないと言うのです。そこで今度は農林省へ参りましたらば、そういうふうに欺瞞表示があった場合には取り締まるというような何ら法的な規約というものはない。ただ、今考えていることは、そのカン詰めに農林物資規格法によってJASマークをつけるということを考えているのだけれども、大きなメーカーの反対にあっているので、なかなかそれが作れないで困っているところだ。ぜひ私たちに声をあげてほしいということなんです。それから欺瞞表示の問題だったらば、不公正な取引方法にひっかかるのじゃないかということで、公正取引委員会の方へ要望に参りました。公正取引委員会お話によりますと、やはり独禁法の中における一つ一つ特殊指定をしていかなければいけないというようなことで、それには時間がかかって、今の場合には間に合わない。私どもはカン詰め一つの問題でもって厚生省、農林省、それから公正取引委員会をげたをすり減らして歩いたわけなんです。結局消費者のために考えていてくれるお役所は何か、あなたたちが声をあげなければ、お役所は自力ではやらないというような形だということを非常に痛感したのです。前々からそういうことを、問題が起きるたびに痛感しておりますし、それからたとえば通産省で繊維製品品質表示法というのを作った。それはほかの法律と違いまして、消費者保護ということだけをうたっている法律なのにもかかわらず、それが昭和三十年にできまして、それ以来ずっと繊維製品の品質の表示は、行管の御報告でも御存じだろうと思いますけれども、任意表示のままで、混紡率の表示も、混紡ものには全然表示がなくて、販売会社が自分のところのものを売ろうということのためで、消費者のためということでなくて、純綿とか純毛という指定文字を使うということだけしかやっていないというような状態で、通産省の場合は産業保護育成するお役所だという関係もあるので、なかなかそれが強制できないのではないかということを痛感しているわけなんです。しかもその繊維製品品質表示法の中には、政令でもって強制することができるとうたってあるにもかかわらず、消費者保護のための強制をしない。技術革新に伴って新しい繊維が次から次へと出てきております。それなのにもかかわらず、昔のままの、化繊ならアセテートだとかナイロンだとか、それから純綿だとか純毛だとか、そういうものにだけ混紡率の表示をきせるということで、アクリロニトリル系の繊維だとかポリエステル系の繊維だとか、そういう繊維について、私どもは新しい繊維ができて、取り扱い法に非常に弱っているわけなんです。その場合に、混紡率の表示がしてあったら大へん取り扱いに便利なんですけれども、そういうものも指定文字にしようとすることを通産省ではして下さらないわけなんですね。してほしい、してほしいということを何度か要望したのですけれども、していただけなかった。そういう関連事項の積み重ねを考えますと、やはり生活省というような消費者利益保護するような部局がぜひ必要だということでございます。それが奧井先生や中林さん御心配の、お役人をたくさんふやして一つの部局をこしらえていろいろとわずらわしくなるということは、私も賛成しないのでございますけれども、行政調査会の今後の活躍に期待して、何とかして消費者保護する部局をぜひこしらえていただきたいということをほんとうに切望する次第なんです。  それから経済企画庁自身にしても、私ども物価安定対策をするという藤山さんの新聞発表は非常に期待していたのですが、そうおっしゃっているやさきに、独禁法を強化するとおっしゃっていながら、通産省から横やりが入ると、今度は強化と緩和を使い分けするというふうにおっしゃいました。そういうことができるかどうかということは、やはり企画庁のお立場の問題もあると思うわけなんです。そういうふうに物価安定対策を講じながら、片方では牛乳が一円でも二円でも上がる。これは国民の栄養物資として大へん必要なものだと思うのに、輸入で何とかして園児に栄養を与えようというような考え方ではなくて、いつも業界側の言い分を考えてやる。それでどこに物価安定対策があるのだということで、私どもはみんなきのう新橋や四谷の駅の前に立ってビラをまくような始末でございますが、そういうふうに消費者のことを考えて下さる部局があったらば、きっと私どもが運動しなくても済むような時代が来るのだと思うのです。ぜひそういう部局を作っていただきたいということが、私どもの願いでございます。
  30. 菅太郎

    ○菅政府委員 今お話がありましたように、確かに日本の行政機構を見てみますと、消費者立場を代表するといいますか、生活面を代表する組織が、全然ないとは言えぬかもしれませんが、非常に大きな穴があいているということは、私ども痛感いたします。今回国民生活向上審議会に消費者保護の問題の対策をいろいろ御諮問をいたしておりますが、ここでも一つその問題についてぜひ御意見を聞かしていただきたいと思っております。また例の行政調査会も発足いたしておりますので、こういう調査会でもぜひこういう問題についていろいろ御意見を聞かしていただきたいと思っております。そして何らかの意味で少し消費者保護の行政機構を強化せなければならぬと考えております。今、御承知のように、農林省には振興局に生活改善課というのがありまして、これは環境問題の整備もございましょうが、消費者立場もあわせてやっているのだと思いますが、そこらが唯一の消費者立場に立ち得るものではないかと思っております。そんなことで、まことに微々たるものであります。問題は経済企画庁の消費雇用課でありますが、そういう根本的に将来行政機構の整備をするまでのこととしましても、もう少し経済企画庁のこの課を強く働かせていきたいという考えは持っております。ことに単なる総合調整という消極的な意味でなくて、どの省もおやりにならぬということは、かなり企画庁が積極的に自分でやっておりますから、消費雇用課の活動は大いにこれを強化していきたいと考えている次第でございます。当面の消費者対策としましては、そうしながら、やはり通産省としても単なる物品別の生産、流通段階までしか考えぬという考え方を少し改めてもらいまして、消費者立場も織り込んでもらいまして、通産省を中心としてやはり品別にお考え願うように企画庁の方から要求するつもりであります。そうして、消費雇用課がもう少し活発に動くようにしまして、根本的には今申しました行政調査会なりあるいは今回の国民生活向上審議会の消費者保護対策をどうするかというようなことで、根本的に案を練りまして、ちょうど今からこういう問題を、ややおそきに失しますが、真剣に考えなければならぬ段階だと思いますので、大いに努力をいたしたいと考えております。  なお、物価の問題でお話がございましたが、公正取引委員会が協定価格の問題などについて強く出るように、物価対策の原案では相当その点を重要な問題として私どもは考えておりますが、通産省から横やりが入って、くじけたというのではございませんで、通産省が言われるように、自由化に備え、海外競争に備えて強化すべき面もあると思いますが、通産省もそういう点を忘れてくれるなということだろうと思いますから、私どもとしましては、そういう意味のやはり自分で公正取引委員会が十分意味のある活動をしてくれることも必要だと思いますし、同時にまた、今申したように、国内経済の面で価格つり上げにならぬように、また取り締まりを強化する面も必要だと思いますので、両面があるということは現実だと思います。従いまして、公正取引委員会の権限なり活動なりは、そういう点をやはり使い分けてやっていかなければならぬと思いますので、決して原案にありましたのが横やりのためにくじけたわけではございませんので、御了承願いたいと思います。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 もう一言だけ。これはむしろ質問というより希望あるいは経済企画庁に対する鞭撻となるかもしれませんが、きょう新聞が各紙とも大きく出している前に経済企画庁物価対策についての原案を出した、これが紆余曲折を経て、きょうまた各省物価対策が出そろった。これを見てみると、ほとんどの省がまたがっている。農林省から自治省までまたがっている。それの結局調整ということは、経済企画庁がやるのだと思う。ところが基本方針では結局くじけた、こういうことでありますので、これは一つ経済企画庁最初出した案——これがいいか悪いかは別として、最初考えていたこと、とれが消費者のためにいいなら、物価対策としていいなら、あくまでも勇気を持って各省に当たっていただきたい、こう思います。
  32. 菅太郎

    ○菅政府委員 御鞭撻をいただきまして、ありがとうございます。原案は、何といいますかかなり原則的、抽象的な面がありましたために、経済閣僚懇談会では、各省があの原則に従ってもう少し具体的な策をつけてくれということが一つの要望でございましたので、あの原案を具体化するということが、今回の各省寄せての作業の方向であります。ただそれをやっております間に、今申しました公正取引の問題であるとか、二、三の点に調整を要する問題があるのでございまして、これは全体の領域から申しますと、ごくわずかな部分でございますが、その調整の部分は今どうしても調整しなければ前にいけませんから、適当に調整をやるつもりでございます。しかし、全面的後退はいたしておりません。具体的段階でございますから、御激励をいただきましたお礼としてこのことを申し上げておきます。
  33. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 久保田豊君。
  34. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 一つだけお尋ねをいたしますが、私どもいろいろそういうことに関連をして終戦後はやって参ったのですが、消費者問題というのはなかなかむずかしい問題であります。政府あるいは資本家等の態度にもありますけれども、やはり消費者自体の団結なり力がなければ何もできないということが、一番最後のきめ手になるんだろうと私は思うのであります。  そこで中林さんと高田さんにお伺いいたしたいのですが、中林さんには、今の生活協同組合はどの程度の組織状況になっておるのか、当面生活協同組合を強化し発展させる上について、政府としてどういう政策をとったらいいかということであります。これはすぐに西欧的なところまではなかなかいかないと思いますが、そういう点でどういう点をお考えになっておるのか、国としてどういう保護政策なり補助政策を生活協同組合にとったらいいのかという点でございます。これは、現状と対比しながら、お考えがありましたならばお聞かせをいただきたい。  それから、高田さんにお伺いをいたしたいのは、今お宅が中心になって主婦の方が消費生活擁護の運動を相当強力にやられておるわけで、かねがね敬意を表しておるわけであります。しかし、もう一歩いきますと、やはり政府ないしは資本家等に対しましてそういう運動を起こすと同時に、自分たち消費者としての力を強めていくということもやはり必要ではないかというふうに思うわけであります。そういう観点から見て現在の生活協同組合運動に対して、主婦立場から見てどうあってほしいかという点でございますね。また現実にそういう点で両者が協力をされてやっておるのかどうかであります。私ども十円牛乳運動やその他農民の立場からいろいろやりましたが、どうもうまく参りません。途中でもって絶えてしまう。これは多くの場合大資本の妨害がおもでありますけれども、そうでない場合でも、実際にやってみましてなかなかうまく参らないのが実情でございます。そういう観点から、主婦立場から生活協同組合とどう協力していったらいいか、特に現在の生活協同組合主婦立場から見てどういう点に欠陥があるかという点を、もしお考えがありましたらお聞かせいただきたい、こう思うわけであります。
  35. 中林貞男

    中林参考人 今の御質問にお答えいたしたいと思いますが、現在生活協同組合政府の認可を受けたものが約千五百組合あります。そして約二百五十万くらいの組合員で組織しておりますけれども、実際一般の中小企業と同じく経営が不振で困っている生活協同組合がやはり三分の一近くございます。それで、なぜ生活協同組合日本においてヨーロッパのように伸びていかないのかという一番大きな原因は、やはり国の方針がはっきりしないということ、消費者利益を守るという、消費者の自主的な運動というものを伸ばすのか伸ばさないのか、たとえば生活協同組合ではいろいろな物資を扱っておりますが、そういう場合にやはり通産省あたりで立法されると、業界を中心とする法律によっていろいろな規制を受けるわけです。環境衛生法という一ものができたり、あるいは今度われわれが問題にしております中小企業基本法と生活協同組合関係をどうしていくのだ、私どもは何も生活協同組合オンリーで塗りつぶしてしまえというようなむちゃなことは毛頭思っておりません。一般の業界と自主的な消費者の経済組織と相互が競争して、いい方を国民が選んでやっていくということで、お互いが競争を通じて成長していくということです。ただ、日本では中小企業が非常に多いという産業構造の特殊的な問題はありますが、その問題についても、私は、中小企業の側においてどうしていったらいいかということは、私らも一緒に考えていったらいいと思う。しかし、いずれにしても、消費者の自主的な経済活動を業界側の考えによって規制をしていくということは、ぜひ避けていただきたい。これは各国では、私も何回か協同組合の会合に行って訴えますと、そういうことはとんでもない、日本の特殊事情だというふうにみんな不思議がって、ヨーロッパでは保守党がみんな生活協同組合を一生懸命育てるのだけれども日本では政府はどう思っているのだということで逆にいろいろ言われますので、そういう点はぜひ消費者の自主的なものを伸ばすという立場でお考えをいただきたい。  そういう点からいいますと、現在の生活協同組合法は二十三年に第二回国会において制定されたのですけれども、員外利用というものを禁止しているわけです。生活協同組合消費者の自主的な経済活動でありますから、生活協同組合を伸ばしていこうという場合に、員外利用を法律によって規制されておりますと、とにかくがんじがらめになっているわけです。私、前にあの法律のときに、国会で自民党の先生方、社会党の先生方に、生活協同組合にお入りになるときに、まず出資金を出して組合員になってから利用されますか、そうじゃなくて、生活協同組合がいいものか悪いものか確かめてみて、いいものだったら入るということになさいますかということをお部屋へ行って聞きますと、お一人の例外なく、いいか悪いかわからなければ入らぬよ、やはり自分で利用してみてよかったら入るのだと言われる。よかったら入るのだったら、組合員でない前からやはり利用ができなくちゃならないわけです。しかし、現在の法律では員外利用まかりならぬという、どんぴしゃり員外利用禁止規定になっている。国会の先生方も、生活協同組合に入ろうと思ったら、いいか悪いか自分で利用してみようと思っても、生活協同組合ではまず出資金を出さなくては利用ができないという法律でがんじがらめになっている。この点はどう思いますかということを聞きましたら、直さなければならぬなということを私は先生方に言っていただくのですけれども、実際に国会なり法改正の問題になりますと、いろいろな圧力で、当然の自主的な経済活動をやっている生活協同組合で員外利用を全面的に禁止するというような法律の建前で、生活協同組合という自主的な経済活動を伸ばすという考え方は全然ない。それをとにかくがんじがらめにしておくという考えしかないわけです。農業協同組合法などでも二割の員外利用ということはありますし、漁業協同組合法でもそうですし、ヨーロッパではそういう員外利用の規制というものではなくて、自主性にまかせるということになっているわけです。その員外利用規制の問題を何とか私は諸先生方によって——私個人的にお聞きすると、これは当然なことだということを各党の先生方は皆さんおっしゃるので、当然のことだったらそれを何とか法律はせめて農業協同組合のような形なり、あるいはもしも暫定的だったら、ウェイティング・メンバーというような形でためしの期間でも利用することができるようにぜひ法律を改正していただかないと、伸びようと思っても伸びることができないように現在の法律ではなっているということを私一番強く先生方にお訴えいたしたい。その他資金の面でも、農業協同組合なり漁業協同組合では、農林中金なりいろんな形によって政府が経済的にバックする形になっておりますが、生活協同組合ではそういうものが全然ないというような問題もあるわけです。私は、とにかく現在の時点においては、生活協同組合が、今先生がおっしゃいましたような自主的な活動というものを強めていかなければ、ただ物価値上がり反対だ、反対だけ言っておっても、一つもこれは力にもならないし、国の経済構造というものを改めていくためには、具体的にどうやっていくかということでなくてはならないので、日ごろ私が思っておりますことをぜひお考えいただきたいと思います。
  36. 奧井復太郎

    高田参考人 私たち主婦連合会生活協同組合を作っております。利用者はだんだんふえておりますけれども、やはり入ってみてああよかったということになって、それが口々に伝わって会員がふえていくという状況でございまして、やはり今、中林さんがおっしゃられたような数々の問題点が隘路になっていると思います。ですから、そういう隘路を取り除くような方向に向かわないと、主婦たちの消費組合運動、生活協同組合運動ということはなかなかやりにくいのじゃないかと思います。それと同時に、生活協同組合の意義ということのPRがまず必要だと思います。
  37. 西村力弥

    西村(力)委員 消費者が王様になるには自力でということでしょうが、それにつけても国全体の政治の方向ということが望まれるわけであります。  次に高田さんにお尋ねいたします。台所をあずかる主婦生活の苦労をいろいろ直接に体験しているわけですが、一体どのくらいの所得、年令層が一番生活上の苦情を訴えておりますか、それはどうでしょう。
  38. 奧井復太郎

    高田参考人 生活の苦情の性質によって年代が少しずつ変わってくると思います。私どものささやかなデータでは、やはり三十才代の方は経済的に非常につらいと思います。生活環境の苦情だとか社会道徳の苦情ということになりますと、年令を問わず、全般的にそういうものが出ております。それから物価問題はもちろん暮らしに結びついておりますので、年令を問わず一番切実な問題として起きてきております。それはその日その日のお野菜を買ったり、お料理をしたり、子供を教育したりする切実な問題ですので、物価の問題というのは、家庭を持っている主婦にとっては、年令を問わずにみんなの問題になっております。
  39. 西村力弥

    西村(力)委員 その次に、消費者の教育というか、こういう問題について、消費生活をより科学的に、合理的に、現代のいろいろな誇大の宣伝とかそういう渦中において、なおかつみずから消費生活を守っていける知識というものをやはり消費者に付与していかなければならぬと思うのですが、そういう面についてはどういう御希望なり御意見なりを持っておられるか。
  40. 奧井復太郎

    高田参考人 新しい商品についての知識というものは、私たちいろいろ勉強はしておりますのですけれども、私ども自身王様というようなことで、えらいのだというようなことでは追いつかない時代に来ていると思います。何か新しい商品が次から次へと出てきて、おばあさんのころから伝わった絹だとか木綿の使い方の知識は知っているけれども、最近の繊維の問題になるとわからなくなるとか、新しい電気器具が出てきて、一体どういうふうに扱ったらいいかわからない、そういう取り扱いの問題や何かはやはり消費者個々ではだめだと思うのです。やはり消費者の組織の中でそういう商品知識の啓蒙をすることが必要じゃないか。消費者がどこからもひもをつけられない一つの組織を持って、そこで商品のテストなり消費者の教育用のパンフレットなりを発行して、消費者にそういうものを配って知らせるということが必要になると思います。ただ、消費者だけがそういうことをするのではなくて、やはり消費者保護する行政が車の両輪のようにそれに並行していかなければ、日本経済全体の、私たち生活向上ということは考えられないのじゃないかと思っております。消費者が利口になるためには、消費者自身の持つ組織がそういう消費者の教育をするということが一番必要だと思います。
  41. 西村力弥

    西村(力)委員 それから、これはどなたでもけっこうですが、現在マスコミが消費者を惑わしておることはおびただしいものがあるわけです。この宣伝費が物価の中に占めるウェートはどれくらいかということになると、相当なものだろうと思う。私どもが全部かぶっていかなければならぬということは、疑いのないことです。私はイギリスに参りましてテレビをずっと見ておりましたが、チャンネルが二つか三つくらいでありますし、日本のように次から次にコマーシャルが入るということはほとんどない。日本のテレビから見ますと、ちょっと無味乾燥なような気がします。それはテレビに限らず、マスコミが消費者を振り回しておるという現状は是正しなければならないと思うのです。現状においては、全般的にはいいのですが、極端な例としてはどういう影響があるのですか、またそういうことに対してどういう工合に是正することを望まれるか、御意見のある方はどなたでもいいからおっしゃっていただきたい。
  42. 奧井復太郎

    高田参考人 マスコミに振り回されているというような例としましては、ある週刊誌がスピードくじを——マスコミといっては妥当じゃないかもしれませんけれども、千円のスピードくじをつけて売りましたら、大へん売れ行きが上がったというようなことがあるわけです。そうしますと、中身を検討して買うということよりも、くじを目当てにして買うような方の方が多くなっているという実情もございまして、その週刊誌は、くじで週刊誌を売るということは中身を売るのじゃなくておかしいじゃないかというので、編集者の方から横やりが入ってやめるようになったということを聞いておりますけれども、そういうくじに消費者が振り回されている例が多いと思います。  それから、欺瞞的な広告だとか表示、たとえは放射能が落ちる中性洗剤——核実験がございましたときに、放射能のちりがさらっと落ちるような広告が洗剤で出されますと、皆さん自分の子供を初め命が大事ですから、それを買います。しかし、放射能のちりというのは、一たん乾いてしまうと洗剤だけでは落ちにくくて、一度酸性にしてから中性洗剤で洗わなければならぬ。それなのに何も知識がないために、やはりそういう広告に振り回されてつい買ってしまうということがありますし、それからたとえば食品やたんかでビタミン入り、カルシウム入りという表示がありますと、それは栄養がその通り入っておると思ってつい買ってしまいます。先日の産経新聞かなんかに出ておりましたけれども、特殊栄養食品のマークのついていないもので、ビタミン入り、カルシウム入りと書いてあって、それに入っていないものがたくさんあったというような発表がされておりました。そういうふうに広告とか品物の表現につられて買う消費者が非常に多い。そのためにそういう盲点をねらってそういう販売対策をとる業者も非常に多いわけで、そういう点はぜひ取り締まってもらうようにしていただきたいということを公取にかねて要望しております。それは、今度公取の方から不当顧客誘引行為防止法案というような形で出るそうで、私どもは大へん期待しております。
  43. 中林貞男

    中林参考人 今、西村先生のお尋ねの点は、私も非常に痛切に感じていまして、去年の国会予算委員会のときに、日本における広告主は大体どうだということを何かの本に数字があったので、私はいろいろな数字を述べたことがあるのです。この間も岩波から出ました「日本の大企業」という岩波新書の中に、ヨーロッパ各国の大企業の中における科学技術の研究のために使っている経費と、広告宣伝のために使っている経費というものを統計的に分析して比較してありました。数字は忘れましたが、日本では問題にならない。科学研究費というものが少なくて、広告宣伝費というものが企業の経費の中に占めるウェートが、ヨーロッパ各国に比べて一番高いという数字があったことを私記憶しているのです。それでとにかく日本の町を歩いても、ネオンサインを初め、週刊誌、ラジオ、テレビというようなもので、今、高田さんがおっしゃいましたような、消費者を惑わすようなマスコミがはんらんして消費者を取り巻いている。マスコミの人海戦術のようなものの中に消費者はおぼれているんじゃなかろうか。私もこの間、去年だったか、日曜日にうちにいてテレビを見ていましたら、民間放送で電気洗たく機の広告があったのです。そうしましたら、新しい製品ができました、今までの古い電気洗たく機だったら、奥様方腰が痛い、肩がこったでしょう、その点今度の新しい電気洗たく機はこうだということを言っていました。そうすると、聞いている女房やみんな、腰が痛むのはやはり電気洗たく機が古いんだ、だから新しい電気洗たく機を買わなければならぬということで、聞きますと、そういうものを見ると、どこでも今度ボーナスが出たら電気洗たく機を一つ買わなければいかぬということになる。そうすると、電気洗たく機はまだ使えるんだけれども主婦はやはり新しい電気洗たく機を無理してでも買わなければならぬ。そうすると、少し余裕のある友だちに聞くと、電気洗たく機を三台も四台も持っていて、行ったら、持っていかないかという友だちも、余裕のある連中の中にはあった。あらゆる商品についてはそういうことはないだろうが、従って、言論統制ということには私は反対なんですけれども、ヨーロッパなどでもそういう誇大広告、欺瞞的な広告というものを抑制する措置——ドイツだったかどこかでテレビなんかは民間は認めていないという話を私は聞いたととがあるのですが、やはりそういう誇大広告、欺瞞広告は何とか抑制する必要があるんじゃないか。そうしてそれには研究費なり何なり、みんな物価にはね返っているわけなんですから、物価の面なりそういう面に回していかなければならぬ。そういう問題なども今度研究所一つ大いに御検討、御研究願ったら、私は非常におもしろいんじゃないかというふうに考えておるわけです。
  44. 西村力弥

    西村(力)委員 国民生活向上の尺度は、一つ主婦の家事労働の時間によって測定できるのではないかと思うのですが、それについて、高田さんは、現状から、家事労働に従事する時間の短縮、その目標をどういう工合にお立てになっていらっしゃるか。もう一つ日本生活の型としましては、耐久消費財なんかはうんと伸びておるけれども、食生活とか住宅というようなものはアンバランスの形であるということで、そういうものを埋めなければならぬことは当然でありますけれども主婦の家事労働の時間が国民生活向上の尺度として一つ言えるのではないかと思いますが、どういう工合にお考えでございますか。
  45. 奧井復太郎

    高田参考人 やはり家事労働の短縮ということは必要だと思います。私その調査表を持って参りませんでしたけれども、大体一日四時間から六時間を洗たくを含めて家事労働に使われているというデータがたしか出ていたと思うのです。ちょっと今はっきり覚えておりませんが、ただ家事労働の短縮ということは、生活向上させる一つのデータになるということだけは申し上げられます。
  46. 西村力弥

    西村(力)委員 日本が男性横暴の歴史にだんだん終止符を打ってきたわけですが、そういう意味で女性の地位の向上ということは、生活環境整備からそういう工合にいくことが日本ほんとうの近代国家になる道であると思っております。せいぜいわれわれもがんばって参りたいと思うのです。  そこで、最後に企画庁にお尋ねいたしますが、先ほど高田さんは、消費者運動を実際にやっている人を三、四人入れてもらいたい、中林さんは、いろいろなデータを、消費組合あるいは労組その他でも十分国民消費生活の問題について調査をしておるということでありましたが、そういう御意見は企画庁も率直に受け入れて、研究所研究の中に、あるいはそういう意見を直接言える機会を与える、そういうような方法をとるべきであると思うのです。それについて企画庁の確たる御答弁を願いたい。
  47. 菅太郎

    ○菅政府委員 研究所の参与の人選をいたしますときには、今お話しの点を十分考慮いたしたいと考えております。また審議会の委員中にもそういう有力な方が入っておりますが、参与のことはなおさらそのことを考えたいと思います。
  48. 板川正吾

    ○板川委員 一つだけ。これは奧井さんと企画庁の次官にお伺いします。  先ほど高田さんと中林さんからお話が出たんですが、民間の委託調査費は、そういう会の性格からいって、無料で奉仕してほしい、こういう希望があった。これは民間で持ってきたものを無差別に無料でやるということは繁雑になってなかなかできないと思うのですが、しかし、民間のそういう婦人団体とか生活協同組合なり、そういう団体で問題を出し、それが普遍的な内容を持っておる場合は、無料で研究をする、こういうことができるかどうかということ。  もう一つは、今の西村委員の質問にも関連をしますが、参与については、労働組合の代表あるいは婦人代表、生活協同組合の代表、その他実際に国民消費生活面のいろいろな問題をかかえるところの、そういう運動をしているところの代表もぜひ多数入れてほしい、こういう要望がありましたが、その要望は大体受け入れられる予定でいるんでしょうか。この法案によりますと、会長が企画庁長官の認可を受けて参与は指名する、こういうことになっておりますが、そういう要望は受け入れられるものというふうに理解してよろしいか、この二点だけお伺いします。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がありませんので、続けて質問だけをして、答弁をしていただいて終わりたい、こう思いますので、残余の質問は私も放棄したいと思うのですが、ただ一点だけ奧井先生に一緒に御答弁願ったらけっこうと思うのです。  この社団法人国民生活研究所案内書というのをいただいておるわけです。この中に調査研究の対象としていろいろあがっております。そのうちで、舶来品の購入の動機、これを調査研究する、こういうようにあがっておるのですが、貿易の自由化等との関係あるいは日本人の舶来品好み、こういった問題とかね合わせて、今日では相当、国際収支の赤字等々の問題から考えまして、国産愛用ということを通産省あるいは特に東京の商工会議所あたりが中心になってやっておるわけなんですが、この舶来品の購入の動機とか、あるいは国産品と舶来品との問題等について何か研究せられた結果がありますれば、これは簡単に一つ聞かせていただきたい、こう思います。
  50. 奧井復太郎

    奧井参考人 第一問が参与の問題だと思います。私ども参与の人選につきまして、お話がありましたように、今すぐここで何々組合、何々会ということについて御同意と申し上げることはできませんけれども、今申しましたように、あらゆる方面——学識ということがあったんで、あるいはと思いますが、これは経験ということを今度それに置きかえればよろしいかと存じます。われわれの学識というのは、必ずしも学問上の学ではなくて、生活学の学でけっこうなんであります。これは広く取り入れることについて、いささかもやぶさかではございません。私自身あるいは企画庁自身も、自分の方にこういう傾向があるからその仲間を引っぱってくるんだというようなことでありますれば、私はこれは絶対に反対でございます。これは申し上げてよろしいと思います。  第二問は、民間から委託されたものは無料で、これはちょっと、無料でお引き受けいたしますと、そのぐらいに申し上げたいのでございますが、御存じの通りの財政事情でございますので、非常に困難だろう。むしろ私たちは、もしそちらの方に調査費でもあったならば、それに便乗させていただきたいというのが本音でございます。本音で申し上げます。どこどこでかりにそういう調査をする、それでは私どもの方もスタッフを出すから、一緒にやらせていただきたいということでございます。ただ、お説のありましたようなことはよくわかるんでございます。たとえば、こういうことを調査したいけれどもというような御希望があっても、その団体その他については調査の方法もない、あるいはあれもないというようなこと、それで私は、官庁その他含めまして言うのですが、この調査とかいうようなものは、できるだけ事前に交付したいと思います。たとえば研究所はここでもってこういう調査をしたいがどうだ、そうすると、それにちょっと便乗すればそちらでも十分役に立つ個所があるのでございます。ところが、今のような式でいきますと、封鎖的になっておりますから、ここでこの調査をやる、そっちの部局であの調査をやる、向こうでその調査をやる。たまたま対象が一緒になってしまいますと、たとえば国民はしょっちゅう調査ばかりされて何にもならないじゃないかという、その調査を受けました対象の文句というのが多いのでございます。事実見てみると、ほんの一項目を加えるか、あるいはそれに一つ条件をつければ、そちらの方の調査にも十分にお役に立つというようなことがございます。こういう意味では、口だけではないかという御反論もあるかもしれませんが、そういう点考えてみて、今度われわれの方で調査をする、ほかの方でもそういうことと関連のあるものについてはどうか、こういう調査をするがどうだ、それじゃそれに便乗して一つこういう項目を入れてくれ、こういうところで調べてほしいというような御意見のあるような場合には、御協力は十分できると思います。  それから、ただいまの舶来品の問題については、やってはいないのでございます。しかし、この国民生活の問題というのが、今それに触れておりませんが、たとえば消費のアンバランスというようなことからして、もっと国民所得というものを預貯金の方、資本造成の方に向けられるんじゃないかという大きな流れが背後にあることは、私承知いたしております。そういうような意味で、国産を奨励しなくちゃいけないんだ、あるいは外国品でなくちゃいけない、あるいはそれは悪いんだということを当面の目標として出ずことなくして、どういう場合において国産品とそれから舶来品とが競合しているか、せり合っているか、あるいはどういう状況でもってそっちを選択しているかというようなことにつきましては、十二分に私ども調査の対象になると思います。多分その意味でもって、将来の希望と申しますか、あるいは現下の希望として、そういった面もやってみたいということが出ており、大きな流れとしては確かに国産愛用の問題があります。国内産業の育成という問題もございます。それからまた、先ほどもありましたように、あまり消費のアンバランス、レジャー・ブームというものをマスコミによってこう書き立ててしまって、はたしてそれでいいのかどうかというようなことは、逆にいえば、国内資本の造成というような大きな国策上の問題にからみ合って、私どもはそういう背景のあることは百も承知しております。しかし、それなるがゆえに、この結論が出るような調査というのはいたしかねるということでございます。おそらくいずれも、私どもがこれから調査しようというような問題は、そういった日本の国の経済及び文化の問題に非常に重要な背景があるという、その背景の上に、あるいはそれを背負って、科学的に調査をしていくということに相なっていると思います。
  51. 板川正吾

    ○板川委員 ちょっと委託調査の問題で——それじゃ、こういうふうになるのでしょうか。委託調査が三十六年度の現在の社団法人の場合には一千万ですか、それが今度三十七年度の予算が一千二百万、こういうふうになりますね。この委託調査の一千二百万というのは、これは主として財界調査委託されたものをやって、それから受ける収入ということなんでしょうか。  それからもう一つ、たとえば参与の中にそういう団体の方がおられて、調査の項目というのは、参与会なりで大体の基本方針というのを事前にきめて、まあ目標を定める、こう言われております。ですから、普遍的なもので−消費構造なり消費性向というのはどんどん変わってきますから、今までそれでやっていいと思ったけれども、新しい事態が生まれて、そうして研究所の方では、それを一応従来のしきたりでやる、これじゃどうも不十分だという場合には、実際大衆運動をやっておる人たちの方が一番最初に苦情を受けますから、そういう問題を持ってきて、参与会でこれを検討し、普遍的であって研究に値するというならば、それはそれに乗っかって研究所としてその結論を出していく、どういうこともありますね。そういう意味では、そういう大衆団体が、結果的には無料で委託調査をお願いし、その結果を利用する、こういうことになるんだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  52. 奧井復太郎

    奧井参考人 ただいまのお話の御趣旨よくわかりましたので、十分承っておきたいと思います。事実見ておりますると、先ほどお話もありましたように、いずれも専門の深い研究者、学者というものを動員しているせいでございますか、おそらくその人たちの考えていることと、それからこのお二人の参考人の方々が考えている生活ということと少し食い違い——食い違いじゃないのです。片一方が低くて片一方が高くて、えらいのだ、えらくないのだという問題じゃない。私は、この場で押えなければいけないのだと思っております。しかし、企画庁その他に対していろいろ意見を別にする場合であっても、やはり最終には方法が確定しませんと、いたずらに数字を集め、調査を重ねましても、一体これは何を意味するんだということになって、最後の結論を出すときにくつがえされるおそれがあります。その基本的なものを固めようというところに、今のところでは、研究所の主力が向いているようでございます。そういう意味で参与会等におきまして、そういった実際生活団体というのもおかしいのですが、実際生活団体が実際の問題をお出し下さるということですね、これは大へん歓迎いたしたいと私は思います。で、民間の委託調査をただで引き受けないかという問題でなく、そういうところから、何といいますか、発議、発案があって、研究所と、これはいいじゃないか、やろうじゃないか、そうして、研究所としても、今の民間の生活団体というようなものにしても、双方ともにそれで利益があるというようなことは今後重々あり得る問題と思います。門戸を開くことについては、決してやぶさかでないと御承知願いたいと思います。
  53. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 この際参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日はきわめて御多用のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会