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中林参考人 私御
紹介をいただきました
中林であります。日ごろ
生活協同組合の
仕事をやっておりまして、
物価の問題その他のことといろいろ取り組んでいるわけでございます。そういう
関係で消団連の
仕事な
どもいたしているわけですが、そういうような
立場で現在の
日本の私
たちの
消費生活のいろいろなことを考えてみました場合に、原則的にいろいろ問題もあるかと思いますけれ
ども、私はこの
国民生活研究所法案というものに、結論を申しますと、
賛成をするわけです。ただ私は原則的になぜ
賛成するか、どういう
立場で
賛成をするかということを少しく申し上げまして、
国会の御
審議にぜひ御
参考にしていただき、また
法案が成立しました後における
研究所の
運営に十分御配慮を願いたいという工合に考えるわけです。具体的ないろいろな点は今
主婦連の
高田さんが詳しくおっしゃいましたので、そういうことは重複を避けまして、私は簡単に私の感想を述べてみたいと思うのです。
今度この
研究所が
法律によって
特殊法人になるということ、最近
消費者行政というようなこととか、
消費者保護ということがいわれているけれ
ども、
ほんとうにそのことが今
高田さんがおっしゃいましたように、
消費者のためになっているかどうかということを考えました場合に、われわれは非常に疑問を持たざるを得ない。むしろいろいろな品物を作っている
生産者の側に立っての
消費者行政というような面が非常に強いんじゃないか、そういう点は特に
日本は、
ヨーロッパ各国に比較しました場合に、
消費者保護という見地に立っての
消費者行政ということが、私は非常におくれているということを常に思っているわけでございます。特に最近の
高度経済成長という中において、
設備投資というようなことがどんどん行なわれて、
方々に新しいコンビナートというようなものができたりしておりますけれ
ども、その反面において、この
法案の
提案理由の中にも書かれておりますように、一方においてひずみと申しますか、
格差というものが非常にひどくなっていっている。この問題をやはり
消費者行政ということを取り上げる以上は真剣に取り上げていかなくてはならない。また
物価がどんどんと上がっていくということの問題とも、私は
政府においてももっと真剣に取り組んでいただきたいというふうに考えるわけです。
それで、私
ら物価が上がると
物価値上げ反対だということでしょっちゅう
反対運動とか、いろいろやっているわけですが、しかし、私
ら反対を叫ぶ
立場に立っていろいろなことを調べようと思っても、データとかいろいろな
資料がないということで、やはり非常に考えさせられるし、またそういうような
物価問題などについての
研究ということが、
ほんとうにどこでなされているのだといえば、私は
日本においては非常に立ちおくれているというふうに考えざるを得ない。特に
流通過程の問題というのは、
日本においては非常に複雑であるし、従って、
物価はどういう
経過を経て、どういうふうにしてきまるのかというようなことなどについても、もっと科学的な
研究ということがなさるべきじゃないだろうか、そういうような
流通過程の面におけるところのいろいろな
研究ということが
日本において非常におくれている、これは私らがいろいろな
仕事をしております
立場から考えましても痛感しているわけでございます。従って、そういうような
研究機関というものはぜひ作られなくてはならない。しかし、それを
財界の
寄付だけでやるとか、
財界の
寄付を集めてとかいうことになりますと、どうしてもひもがつかざるを得ない。従って、私はそういうような
研究というものが、できるだけ
政府の
予算によって、そして公正な
立場でそういう
研究がなされるようにしなくちゃいかぬと思います。従って私はこの
研究所で
政府の
予算の裏づけによって、十分公正な
運営がされるようにぜひしていただきたい。
財界の
寄付というようなことも、現在の
予算その他の点からやむを得ない点もあるかと思いますけれ
ども、私はそこにあまり重点を置くのではなくて、やはり
国会の先生方のお骨折りによって、できるだけ国の
予算で、そして中立公正な
立場でこういうものの
研究がぜひなされるようにしていっていただきたいというふうに私は考えるわけです。そういう
立場から、私は原則的にこの
法案の成立ということに
賛成をするわけです。
ただ、その反面において、やはり
政府がやるということになりますと、とにかく官僚化していくんじゃないか、また
研究そのものが非常にそういうような形になっていくんじゃないかということを一面において憂えるわけでございます。従って、そういうような点については、この
研究所の
運営について十分御配慮を願わなくちゃいけないのではないだろうか。従ってそういうような点は、今
高田さんがおっしゃいましたが、
参与会の
運営なり役員の構成なり、そういうような点に十分配慮がなされるようにぜひ御
審議をお願いいたしたい。
それから、
研究所が
特殊法人としてスタートしました場合のその
運営、あるいは
調査研究の態度というものについても、ぜひ十分考えていく必要があるんじゃないか。現在大学は大学でいろいろな
研究をやっておりますが、大学の
研究は象牙の塔における
研究であって、実際の役に立つものが——もちろん長い目で見れば大学の
研究室というようなものも、私はできるだけ
予算措置で強化していかなくてはならないと思いますけれ
ども、やはり大学の
研究室における
研究というものと、今度できます
国民生活研究所における
研究というものとは、おのずと違ったものでなくてはならないのじゃないだろうか。あるいはまた現在、
内閣統計局における
統計というものは、かなり完備しておりますけれ
ども、やはり
統計ということになりますと、全部ならして平均をとるとか、いろいろなことになりますので、
生活の実態にはたして
統計というものがマッチしているかどうかといえば、
統計の魔術と申しますか、そういうものによって実体がおおい隠されるという危険性もあるわけです。従って、そういうような点は、具体的な
実態調査ということと並行して、この
研究所の
運営がなされなければならぬし、特に最近のように
生活構造なりその
内容が急角度に変化しつつあり、一面においてそのアンバランスというものが拡大をしているという現状においては、できるだけその
研究というものが、
国民の
生活の実態と結びついた形においてなされなければならない。そういうような意味においては、婦人
団体なり、あるいは私らのやっておる
生活協同組合なり、あるいは農業協同組合なり、あるいは労働組合なり、いろいろのそういう
国民の
生活と結びつきました組織がありますし、そういうような組織における
調査研究というものも、最近は
調査部とかいろいろなものがそれぞれの
団体でもできて、いろいろな
調査機能も
整備されつつありますので、そういう大衆の実態
生活と結びついた組織の
調査研究というものとも十分御連絡をいただいて、この
調査研究というのが、
ほんとうに
国民の
生活の実態に即した
調査が行なわれ、それが行政の面に反映されるようにぜひ御配慮をいただきたいということを、
賛成するにあたって非常に強く私はお願いをいたしたい。
また、そういう
調査研究というものが現在の
日本において非常に大事である。従って、この
調査研究というものは、一党一派とか、いろいろなところに偏することなく、実際の
国民生活というものを十分掘り下げて
研究がなされて、それが行政の面に反映されていくように私は御配慮をいただきたいというふうに考えるわけです。
最後に、これは
研究所というものを私の友だちがやっておったりしますが、いろいろ見ておりまして、
研究所の
一つの弊害ということを申しますと、とかく
研究所は、
研究をやる人の個人の嗜好と申しますか、好みによって
研究がよくなされて、従って、やはり全体の広い
立場に立っての
研究ということが、とかくおろそかにされがちであって、これは奧井先生を前において非常に失礼なんですけれ
ども、学者とか、こういう
研究家の
研究というものは、その
研究当事者の嗜好と申しますか、好みによって
研究がなされる危険性があって、それが広い
立場においてのいろいろな実態と結びついていくかどうかということになりますと、なかなかそれはむずかしい問題だと思います。そういうような点についても、この
研究がせっかく国の
予算でやられることになるのですから、できるだけ諸先生方の御配慮によって
予算がとられて、そうしてりっぱな
研究所になることを希望するわけでございます。反面、学者と申しますか、
研究者の個人的な嗜好によって、とかく
研究所というものが
運営されがちでございますが、そういうような点についてもぜひ御配慮をいただきたい。従って、そういうような点について申しますと、
参与会の構成なり
運営なり、あるいはまたこの結果に対する
報告というようなものについても、できるだけ
国会に
報告の義務を持たせるとか、あるいはそういうような点についても十分本来の機能が発揮されるように諸先生に御配慮をいただきたいということを強く私はお願いいたしまして、私のこの
法案に
賛成する理由といたしたいと思います。(拍手)