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1962-02-27 第40回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十七日(火曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       神田  博君    齋藤 憲三君       首藤 新八君    田中 龍夫君       中垣 國男君    林   博君       原田  憲君    南  好雄君       山手 滿男君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       中村 重光君    西村 力弥君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         経 済 企 画         政 務 次 官 菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁         調整局長)   中野 正一君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月二十三日  委員小沢辰男君、首藤新八君、野田武夫君及び  西村力弥辞任につき、その補欠として山本猛  夫君、宇都宮徳馬君、花村四郎君及び山花秀雄  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員宇都宮徳馬君、花村四郎君、山本猛夫君及  び山花秀雄辞任につき、その補欠として首藤  新八君、野田武夫君、小沢辰男君及び西村力弥  君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十六日  産業雇用適正配置に関する法律案井手以  誠君外十八名提出衆法第一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民生活研究所法案内閣提出第八一号)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民生活研究所法案を議題といたします。  この際お諮りをいたします。  ただいま本委員会において審査中の本案について参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人出頭日時、人選等については、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、本案に対する質疑の通告があります。これを許します。西村力弥君。
  6. 西村力弥

    西村(力)委員 国民生活研究所法案に決して反対でもありませんけれども、まず私たちは、第一番目には、消費者保護立場行政を推進するとともに、それ以前に、日本国内における低所得者、低生活者、そういう人々をどう引き上げるか、こういうようなことがまず私たちの大きな関心になって参るわけなんであります。一体生活保護あるいはボーダーラインの要保護、準要保護、そういうような国民は大体どのくらいおるか、そういう点は十分に企画庁としても資料を持っていらっしゃると思うのですが、それはどういう工合ですか。
  7. 中野正一

    中野(正)政府委員 お答えいたします。厚生省の方の調査によりますと、大体厚生行政立場から見て、何か国として取り上げていろいろな対策を講じなければならぬ対象としては、正確な数字あとで調べて申し上げますが、約七百万人くらいいるんじゃないかということの調査になっておると記憶しております。
  8. 西村力弥

    西村(力)委員 生活保護を受けている数はどのくらいかということを明確にして、これは学校の修学旅行とかその他の場合は、生活保護を受けている人は当然ということでありますけれども、そのほかの準要保護というものを、大体全体の四%程度考えて、その予算をもって子供たち同志に引け目を感じさせまいというような保護措置をとっております。そういうことにしますると、大体九千万以上ですから、四%というと三百六十万、やはり四百万くらいになるということになって参るわけなんです。消費構造が変ってきたとか、消費水準が上がったとか、そういう問題が消費者行政を推進する必要を生んできた、こういうことになっておりますけれども、そういうような消費構造が変わったも上がったもないような、ほんとうの低い水準にある国民立場を引き上げていくことを、こういうようなことをなす前に、まずそういう点に手を打たれなければならない、私はそう考えるわけなんです。ですから、その数はどういう工合に押えられておるか。われわれは大体一千万近くあるだろう、こういう勘定をしておるわけなんです。そういうことを私が第一番目に論議していくことは、こういう消費者行政というものが、そういう人々立場に立つ消費者行政になるかという性格の問題に相当影響してくるのではないかと思いますので、その点についてまずお尋ねしておるわけなんです。こういう低所得者は、消費水準一般に上がってきたのに、置き去りにされてきて、現在の生活水準よりは少し上がったが、その格差がひどくなるということで、その心理的影響というか、これはまことに大きいものです。自分生活は少し上がったけれども、全体的にぐんと上がったということになれば、その格差意識というか、そういうものは非常に深刻なものがあるんです。そういうものはやはり底を上げていく、こういう立場が重視されなければならない、私はさように考えておるわけなんです。こういう点につきまして実態はどうなっておるか、それをどう持っていくのか、こういう点は局長にお尋ねしてもなかなかはっきりしないかと思いまするけれども、次官はそういう点に対して、現在行なわれている諸施策の中で、底上げ施策、こういう陥没地帯を埋める施策、そういう点に対してどういう施策が行なわれておるか、そうしてこれをどうしようとするのか、こういう点について次官の御見解を承りたい。
  9. 菅太郎

    菅政府委員 きわめて根本的な御質問でございますが、もとより低所得者所得を引き上げるという政策は、一方においてますますこれを強化しなければならぬと思うのであります。社会保障政策中心といたしまして、減税、ことに今回行ないました間接税引き下げ等税制政策から各方面政策に及びまして、低所得者所得を引き上げて、所得格差をなくするというこの政策は、一方において今後ますます強化しなければならぬと思っておるわけであります。先般提案いたしました国民生活研究所法案にかかわります国民生活対策は、そういうものが一方にあることを前提としながら、かつ一方においては所得倍増政策による所得向上というものをもにらみながら、その問にあって、全体としての国民大衆諸君生活向上対策として、たとえば消費者行政でありますとか、あるいはまた環境設備整備でありますとか、そういう生活全般のことを考えていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。低所得者対策並びに所得倍増政策は当然この前提となって、こういう政策考える次第でございます。
  10. 板川正吾

    板川委員 関連して——次官の今の答弁の中で、一つどうもふに落ちないのですが、今度の間接税軽減が低所得者に対して非常に恩恵がある、こういうのは何か勘違いじゃございませんか。たとえば今度酒税を下げたということですが、これは間接税検討してみると、大体中以上の人には大いに減税にはなるけれども、低所得者に対しては、酒もたばこもろくに飲めないというような人には、あまり間接税軽減というのは恩恵じゃないんですよ。その点がどうも勘違いをされておるんじゃないかと私は思うんです。その点は考え違いであれば、直してもらいたいと思います。  もう一つは、国民生活といっても、国民生活の高い人を基準にものを考えているわけじゃないと思うのです。要するに、低所得者国民生活というのがわれわれとしては一番問題だろう。低所得者階層といってもいろいろあるでしょう。何階層かに所得別階層が分かれて、その階層別物価値上がりがどういう影響を与えたかなんということは、今までどうもあまり統計が十分じゃないですね。たとえば、一万円以下の人には、昨年からの物価高がどういう影響をもたらしたか、あるいは二万五千円以下の所得者に対してはどういう影響をもたらしたかという、こういうような統計資料が十分じゃないのですが、こういう関係説明できるのでしょうか。それとも、この生活研究所なんというものができて、それで全部やらせようというのですか、そういう点を一つ伺いたい。
  11. 菅太郎

    菅政府委員 間接税引き下げにつきまして私が申しましたのが、多少用語不十分でございましたが、間接税引き下げは、国民大衆一般生活考えておることでございます。低所得者層諸君をも含めた国民大衆諸君生活費軽減ということをねらっておることは申し上げるまでもないのでございます。今お話しになりましたような、今回のこの国民生活研究所の問題にからみまする生活向上対策も、やはり低得者層を相当多くの部分といたしまして含む国民大衆生活と申しますか、特殊な上層生活者などは、そうこの恩恵にも浴しないし、またそんなに力んで対象とする必要もないと思うのであります。むしろそうした奢侈的傾向を戒める方が重要ではないかと思うわけでありますが、要するに、今回の国民生活対策というものは、低所得者層をも含めました国民大衆生活対象といたしたいと考えておる次第でございます。この所得別に、どういうふうにこの物価上昇影響しておるかという研究などは、今後特にこの生活研究所の重大問題として研究をしたいと考えております。若干の取りまとめはないではございません。御要求でございましたら出しましてよろしゅうございますが、ごく素朴な、五階級別に分けました程度所得者に対して、物価上昇がいかに響いておるか、大まかな結論を出したものはございます。案外に低いところにはかえって響いていないというふうな結果も出ておりまして、比較的平均的に響いておるという結果が出ておりますが、しかし、そういう調査がまだきわめて大まかでございます。御期待に沿い得るものという自信はございません。今後国民生活研究所あたりで、十分に研究したいと考えておる次第であります。
  12. 板川正吾

    板川委員 今、政務次官が、所得別階層別物価値上がり影響について若干の資料があるとおっしゃられておりますから、これを一つ早急に出していただきたい。この法案審議について一つ参考にいたしたいと思います。
  13. 中野正一

    中野(正)政府委員 先般、国民生活研究所法案を御審議願う際に、お手元に国民生活白書というのをお配りいたしてあると思いますが、これの三十五ページに、一応われわれの方の消費雇用課におきまして、三十年から三十六年一−七月まで、五分位階層別にどういうふうに響いたかという数字試算をしております。ただ、これは、今政務次官からお話がありましたように、一応三十四年の家計調査によりまして、各項目別食料費であるとか、住居費であるとか、そういう項目別のウエートによりまして試算をしたものでございまして、これによりますると、ここにもありますが、あまり上の層と下の層と物価の響きは大して違わないじゃないかという結論になっております。ただ、三十六ページのところに書いてありますように、低所得者層は、副食費であるとか家賃というような、必需的な費目の上昇影響を強く受けておる。これに対しまして、高所得者層では、雑費教育費であるとかそういうものでございますね、雑費価格上昇中心をなしておる。それだけに、低所得者層の方が切実に物価高影響を感じておるということは言えるという結論になっております。ただ、この程度のことでは非常に不十分じゃないかという、前々から国会方面からのお声がございまして、実は、今階層別消費者物価指数というようなものを作りまして発表すべきじゃないかということで、実は研究所の方にも、本年度の調査委託費といたしまして、研究を今命じております。それから、総理府の方でも、一応そういうことは非常に必要じゃないかということで、別途これは研究をしていただいておるわけであります。
  14. 西村力弥

    西村(力)委員 現在不十分ながらそういう低所得者層生活実態把握、そういう点について研究を進めておるというお話でございまするが、私がまず前提として、そういう低所得者層現状をどうするか、国民生活を云々するという場合において、まずそれを重点的に考えなければならぬということを申し上げました一つの意義というものは、まあそのことによってある程度満たされる。また、今後そういう点を一段と強化せられるということでありますので、ぜひその点は強力に、そういう低所得者層のいろいろ経済変動に伴う影響、それに対する救済策というか、そういうような問題についての検討並びに施策というものについて進めていただきたい、それをまず希望しておきたいと思います。  ところで、いろいろそういう問題についての御見解政務次官からもありましたが、それでは現在、厚生省の中にある国民生活向上対策審議会というものの研究方向というものは、政務次官の言われたような考え方に一致するような方向に進んでおるのかどうか、こういうことであります。それにつきましては、審議会発足以来まだ日が浅いのでありまするので、あまり確定した方向は出ていないかもしれませんけれども、現状について一応御説明を願いたいと思います。これは政務次官でなくても、事務当局からでもけっこうでございます。
  15. 菅太郎

    菅政府委員 ただいまお話しの、国民生活向上対策審議会は、厚生省でなくて経済企画庁の所管に相なっておりますが、発足以来すでに四回開いておりまして、ようやく諮問案が出まして、今二つの大きな諮問案に取りかかっておるところでございます。諮問の第一号は、経済成長発展に伴う生活水準向上消費者生活構造の変化などとの関連において、社会的生活環境施設整備基本方向はどうあるべきかについてというのでございます。これは公共設備その他社会環境施設の問題を取り上げたのでございます。諮問の第二号は、経済成長発展並びに技術の革新に伴う消費生活多様化傾向、新しい消費物資の出現、販売競争の激化などに対処し、消費者保護のためとるべき対策基本的方向はどうあるべきかについてというのでございます。要するに、消費者保護行政でございますが、これが第二号の諮問でございます。この両諮問について今審議をしていただいておるのでございます。  なお、これまで、従来ありました国民生活協会ですか等において、いろいろ問題を取り上げております、また、国民生活研究所ができましたならば取り上げたいと思っております主要問題もございます。そういう最近取り上げたもしくは取り上げんとしつつあります課題等につきましては、局長の方から御説明を申し上げたいと思います。
  16. 中野正一

    中野(正)政府委員 今政務次官からお話がございましたように、国民生活向上対策審議会というのを、三十六年度から予算をとりまして、委員三十名をもちまして発足をいたしました。これはもちろん学識経験者あるいは消費者代表あるいは生活協同組合の代表あるいは農村方面消費者代表、あるいは産業界代表、各方面委員が集まっておられます。  それから部会は、今次官が申されましたように、消費者保護のためにどういう対策をやったらいいか、これにつきましても、関係省からも人を呼びまして、いろいろ今まで審議会として聞いております。  それからもう一つは、生活環境整備基本的方向、この二つの問題をとりあえず取り上げようじゃないかというので、これは前後四回ほど審議会もやりますし、その間に特別の世話人会等を設けまして、どういう問題を国民生活審議会としてまず取り上げたらいいかということを数回にわたりまして御審議願いまして、これもあまり役所の方からこういうことでやったらいいじゃないかという押しつけがましいことはよそうじゃないかという大臣なり政務次官のお考えもございまして、主として審議会のメンバーの方々の御意向に沿ってわれわれは一つ仕事をやっていこう、またこの審議会がそういう問題を取り上げたならば、これは必ず一つ政府としてできるだけその方向実現には努力しようという大臣政務次官のお考えもございまして、非常に熱心に御審議願っておるわけでございます。  人選関係等でちょっとおくれましたが、今二つ部会が先般発足いたしまして、この三月一日と七日にそれぞれ部会の第一回の会合を開くという段取りになっておるわけでございます。
  17. 西村力弥

    西村(力)委員 今、国民生活向上対策審議会委員の中に農村消費者代表とするというお話がありましたが、それはどなたですか。
  18. 中野正一

    中野(正)政府委員 全国農協婦人組織協議会理事をしておられます臼井小浪さんという方を委員にお願いしてあるわけでございます。
  19. 西村力弥

    西村(力)委員 今この審議会諮問案というものはフリー・トーキングのあと、大体の行き着くところに行き着いて、二つ方向にきまった。一つは、この社会資本の投下というものと公共投資というものと経済成長というものの開き、これが非常なマイナス部面をもたらしておりまするので、その実態とその対策、そういうことを調査するのだろうと思うんです。第二点は、本来の消費者保護行政をどうするかということであると思うんですが、先ほどからの問題に直接はあれしないにしても、この二つのテーマの中で、低所得者層というものについての検討はどういう形でこの中で検討せられるか。この諮問案に基づいて、また専門部会が開かれてやるわけですか。どういう形で低所得者層底上げ研究対策というものは進められるのか、こういう点について伺いたい。
  20. 菅太郎

    菅政府委員 さきにも申し上げましたように、この審議会及び研究所で取り扱います生活向上対策というものは、特に低所得者所得を引き上げるということのみを重点といたすというよりも、国民生活大衆全体の生活問題全般と取り組むという姿勢でございまするので、ただいま御質問のような点には直接その結びついた点が少ないかと思いますが、間接的な意味で申しますならば、相当の関連があると思うのであります。たとえば社会環境施設整備では、端々に至るまで上下水道を普及するとか医療機関を十分伸ばしていく問題であるとか、あるいは清掃施設を十分すみずみまで行き渡らせる問題等々はこれは低所得者諸君生活にも相当深刻な影響はあると思います。対策自体は直接ではございませんが、間接的には相当効果があると思うのであります。  また、第二の消費者保護行政におきましては、できるだけ良質の大衆的ないい製品を安く、しかも広告やその他にごまかされないように、あるいは協定価格等のつり上げでごまかされないように、消費者保護していこうという建前でございますから、大衆諸君特に低所得者諸君のいろいろな消費物資の購入の上においても相当な利益の保護になるのじゃないかと考えまして、そういう間接的効果はある程度期待していいのじゃないかと考えておるのでございます。
  21. 西村力弥

    西村(力)委員 それは私は否定するわけじゃないですよ。また私の言うことが少し感情的になっているかもしれませんけれども、国民生活向上、その改善をはかる、それを保護する、こういうことになりますと、生活という名をつけられないような状況にある諸君をどうやって引き上げるかということは、現在喫緊の政治目標でなければならぬと思うのです。そういう点から、こういう施策が行なわれる場合においては、そういうところを置きざりにして、総体的にだけ問題を考えていくということは、私は、現状政治ほんとうに正しいあり方を求める者の立場からいいますと、それだけでは不十分だ、こういう考え方が強いわけなんで、消費水準がどれだけ上がったか、全体的に所得がどう上がったかということだけでは、あまりけっこうなことでない。日陰にたくさんの者を置いて、そうして全体的に上がってもだめだ。所得倍増計画といいましても、そういう趣旨の所得倍増計画というものに対しまして、私たちは相当批判を持つわけです。全体的に倍になったからといったって、それは上積みのところが十何倍か何倍かになりまして、下のところが二倍にも上らぬ、一・何倍しかならぬというような、こういう状態に放置されておいて、そうして、そういう工合にすれば、格差が出れば出るほど、格差意識というもので、決して自分たち水準が上がったとは思わない。人間の心理からいって、置きざりにされた意識だけが残ってくるのです。ですから、私たちは、そういう立場に立つ言い方をどうしても言わざるを得ない、こういうことになって参るわけなんです。そういうことを申し上げまして、国民生活向上対策審議会は、総体的な立場に立つということとともに、常に日本における一千万近い低所得者生活向上とその保護をどうするか、そういう面に向かって研究し、なおかつ意欲的な対策というものを考える、こういう工合にぜひやってもらわなければならぬ。これを私はこの法案審議にあたって政府当局に強く要請したいということが第一なんです。この点は、先ほど一つのモデル的な話といたしまして、物価上昇階層別にどういう影響があるかをまず調査してみよう、もっと的確に調査してみよう、こういうようなことでありましたが、そういう動きに対して私どもは賛意を表します。そういう形のものを強く進めていただきたい、こう考えるわけなんであります。だから、そういう言い方をしますと、国民生活研究所によって研究させるその目標というか、どういう国民立場を基礎にして問題を研究していくか、対策考えていくか、こういう問題です。もちろん低所得者層だけを中心としてこれだけに限定しろなんというのじゃないのです。そういう一般働く庶民の生活というものは、百円でも考えながら使うという生活であるわけなんです。納豆が十円から十五円に上がったことによって、非常な台所のあれに苦労しているのです。そういう階層というものが中心になっていかなければならぬ。全体的な国民生活考えていく、そういう無性格立場ではなく、一つ性格のはっきりとした、勤労大衆という立場に立つ、そういう消費をどう保護していくか、こういう立場に立つ考え方を持ってもらわなければならぬ。国民生活というのは、その国民の向け方、限定、指向の仕方をそういうところに置いてもらわなければならぬのじゃないか、これを強く要請したいわけなんです。それが第一番目の質問であります。  次に問題になりますのは、またこの法案とは直政関係しませんけれども、物価影響がどうだといいましたが、物価上昇ということ、これは今国民生活の大脅威になっている。これは各方面において盛んに論議せられておりまするけれども、まず国民生活研究所法案を通して、そしてこれから消費保護をやるんだ、こういう基礎的あるいは総合的調査ということでやられるのはけっこうでありまするけれども、今やらねばならぬ問題としては、物価上昇をどうやって阻止するか、これをむしろ引き下げるにはどうするか、これが今の私たち中心関心であるわけなんです。ですから、どうしてもやっぱりこの法案審議する前提としましては、物価対策をどうするのか、こういう点について論議を向けざるを得ないということになって参るわけなんです。この点につきましては、企画庁においても案を練ったりしてさまざまやっていらっしゃいますが、物価上昇というものを今年度は二・何%ぐらいにとどめよう、小売物価上昇をその程度にとどめよう、こういう工合に言っております。しかしこのことは、昨年度所得倍増計画池田総理が言った場合に、卸売物価は下がる、消費者物価は〇・八%しか上がらぬ、こういうことを言ったり、国際収支は五千万ドルの黒字になると言ってやりましたけれども、あけてみれば半年たたぬうちにそれが全部御破算になった、こういう前例があります。そして現実に自分の身辺に襲ってくる物価上昇の圧迫から、国民諸君は、政府が二・八%ですか、ことしはそれしか上げない、上がらないで済むのだ、こう言いましても、なかなかそれを信用しないということになっておるわけなんです。ですから、物価上昇をどうやって押えるか、これについては、はっきりとした確実性のある方針を明示して、強力な施策をやってもらわなければならぬと思うのです。一体政府における物価上昇阻止、そういう施策というものは現在どういう方向を方針として決定しておられるのか、これは大臣に伺う方がよろしいかと思いますけれども、政府一般立場から、次官なり、あるいは具体的な問題については事務当局なりから、その点について御答弁を願いたいと思います。
  22. 菅太郎

    菅政府委員 政府におきましても、所得倍増政策の遂行上、物価対策は非常に重視をいたしております。特に、最近におきましては、当面の最重点政策としてこれを取り上げておりますことは、御承知の通りでございます。この問題につきましては、三十七年度の見通しといたしまして、お話にありましたように、消費物価の若干の値上がりはやむを得ない、まあ二・八%程度のものはこれはまずやむを得ないと認めておるのでございますが、卸売物価におきましてはほぼそれと同じぐらい、二・四%の下落を見通しておりまして、この程度のワク内で何とか一つ大差なくおさめたいものだと努力をいたしておるのでございます。従来御承知のごとく、関係各省の局長級をもって構成いたします連絡会議がございまして、経済企画庁次官が主宰をいたしております。これはいわば官僚機構内部の連絡機構でございますが、これを連絡機関といたしまして、そうして経済閣僚がまたこの問題について随時打ち合わせをいたしております。経済閣僚懇談会の重要議題にも相なっておるのでございます。しかし、この程度ではいけないというので、最近もう少し積極的に強い対策を打ち出すべく、目下それぞれ打ち合わせ中でございまして、あるいは結論によりましたならば、もう少ししっかりした、官民打って一丸とした権威ある物価に関する調査審議会というようなものでも打ち出さねばならぬという結論が、あるいは出るかもしれません。目下のところそこまでの成案を持っておるわけではございませんが、閣僚懇談会その他の結果によりましては、あるいはそういうことに相なるかもしれません。いずれにいたしましても、機構問題は別といたしまして、全力をあげて物価問題に取っ組んでおるわけでございます。いろいろ対策の試案はございますが、大綱を私から申し上げまして、なお、詳細の点がありましたら、関係局長からお答えをいたしたいと思います。
  23. 板川正吾

    板川委員 関連——物価の問題ですが、企画庁次官議長とした対策審議会、まあ実はこれは大いに活用されておって大いに物価が上がってきておるのですが、それはそれとして、この物価というやつは、官民一丸となって何かをしたということで下がりますか、実際問題として押えることができますか。それは局部的な問題は、追っかけていって、やれ豚肉だやれ野菜だということはある程度はできますが、全体の物価を調整するというのは、そういうこそくな方法だけじゃ私はだめだと思うのですね。これはもう経済全般の影として物一価があるのであって、その経済の方はどんどん大型予算を組む、国全体として需要を拡大しておって、それで物価だけは安くしようなんということは、なかなかこれはむずかしい問題じゃないかと思うのです。どうです、物価対策でこれというきめ手がありますか。それは期待できますか。この点は私は政府はそういうことはある程度はわかっているのじゃないかと思うのですね。しかし、国民の目をごまかすために、去年は消費物価は一・一%しか上がらないと言っておったのですよ。卸売物価は〇・何%か下がると言っておった。池田さんは国会で質問をされるたびに、卸売物価は下がる見込みだから絶対心配はないと、物価といえば卸売物価のことばかり言っておったのです。ところが、横ばいないし若干下がると言ったその卸売物価でさえ、昨年三%か四%ぐらい上がっているじゃないですか。そして、一・一%の消費物価が実際は五・何%、六%近く上がっておるのですね。こういうことを経済の全体の仕組みと物価というものとを切り離して考えておって——実は切り離して考えてもだめだということを承知していながら、一応国民の目をごまかすために切り離して考えて、対策一つ一つ追っかけていって、影みたいなものを押えてしまえば何とかなりますよというような言い方をしているところに、私は問題があるのだろうと思うのです。物価問題で実際きめ手があるならそれを一つ伺いたいということを、局長でもいいですが、まず一つ真剣に話して下さい。
  24. 菅太郎

    菅政府委員 物価対策について、ぴしゃっといくようなきめ手はないかという御質問でございますし、あるいはまた政府として物価対策に自信のある態度がとれるかという御質問のようでもございますが、とにかく物価問題というのは、今お話しのように、経済現象の総合的な一つ結論がそこへ上がっているような問題でございますから、物価対策は、そうこれという、かぜにおける頓服薬のような、きわめてきき目のある一つの有効な手があるとは思いませんので、あくまで、これは表裏何十何手あるか知りませんが、総合的に組み合わせた対策をきわめて総合的に、微妙に運営していくよりほか道はないと考えるのでございます。ことに自由経済における問題でございまするし、卸売物価の基礎資材を対象としておりまする態度は、割合にまだ楽でございます。経済的現象がある程度合理的に左右して参りますからいいのでありますが、消費物価になって参りますと、経済法則以外の社会大衆心理といいますか、一種の大衆心理的作用が非常に働きますので、何といいますか、対策はきわめて微妙でございます。従って、物価対策に関する限り、各方面の御協力を得て、きわめて総合的な手を打っていくよりほかしようがない。しかも打った手がまたほんとうに現われてくるのが何カ月か後になるという問題もございますので、何か有効な手はないかという御質問に対しましては、遺憾ながらどうも考えつかぬのでございます。何ぼかの有効な手を添えてやるということは考えておりますけれども、また自信がある、純然たる社会主義経済における計画経済のようにも参りませんので、自信たっぷりに何か言ってみろと言われても困りますが、しかし、まあ官民共同で従来よりももう少し周到な、科学的な対策をじっくりとやっていくならば、そう大差ない結果を大まかながら期待できるんじゃないかと思うのでございます。特に、これから一番問題なのは、消費者物価でございます。消費者物価については、御承知のごとく、生鮮食料品という厄介な相手が一つございまして、これは生産の調整から、流通機構の整備から、貯蔵、加工をもっと近代化する問題から、中間利潤をどうするかという問題やら、また購買者の側における大衆心理の動き方をどう調節するかという問題やら、いろいろございますので、こういうむずかしい問題に、ことに今後はこの研究所なども一役買いまして、できるだけ対策を購じていきたいと考えておる次第でございます。まことに苦心粒々でございますが、あまり自信のあるお答えができませんので、大へん恐縮でございます。
  25. 板川正吾

    板川委員 卸売物価の場合は、政府の政策によってある程度調整が可能なんですね。ところが、卸売物価は絶対上がらない、やや下がりぎみだという去年の池田さんの約束、経済企画庁長官もそれは了承しておったのですが、それがとにかく三%程度上がっているんじゃないですか。卸売物価にしろ、消費物価にしろ、どうも池田さん、池田内閣の政策というのは、ケインズ理論から出ておる。大体ケインズは、供給過剰、そういう状態を前提に置いた経済理論なんですね。ですから、ある程度インフレ政策をとっても、供給過剰だから、物価を値下げする状態があるから、そうそごはない。場合によっては、物価が多少上がっておっても、完全雇用なり、そういった景気を吹き上げた政策の方がいい、こういう建前をとっておりますね。そういう理論で池田さんの経済政策の根本があると私は思う。ところが、今の日本経済じゃ、供給過剰よりも需要が過剰なんですね。設備投資を中心とする需要過剰なんです。だから、有効需要が過大になっておるところに、供給過剰の経済理論をもって考えているというところに、実はその大きな行き違いがあるんじゃないかと私思うのです。大体消費物価だって——中野局長はこの前、消費物価がことし一年横ばいであります。その横ばいが、昨年の平均から比較するならば、二・八%程度平均として上がります、こういうことなんですよ。ですから、中野説によれば——政府説かもしれないが、ことしの三月以降の消費物価というのは、とにかく上がらないということなんですね。こういうことは、実は二割四分予算を拡大して大型予算を組んで、需要を拡大しておいて、ケインズ理論からいえば、景気のいいときには公共投資を縮小して、不景気のときには公共投資を広げて調整しようというのですけれども、とにかく今好況であるにかかわらず、大型予算を組む、こういう形の中で消費物価がほとんど上がらないでいるなんということは、私は経済の原則からいったってあり得ないと思うのです。ところが、それをとにかく三月以降上がらないで、ことし一年間横ばいでいくのだというようなことは、いかに国会の答弁用の資料といっても、これはちょっとわれわれ国民立場からいえば、解せないと思うのです。しかし、これでいくというなら、私はぜひそれをやってもらいたい。しかし、去年の実績からいって、ことしの実績があまりしょっちゅう政府の見通しと狂うようならば、これは一つ責任をとってもらわなくちゃならぬじゃないですか。いつも国民の目をごまかすようなことばかりやっておったのじゃ、しょうがない。こういう点で、これは次官でも局長でもけっこうですが、所見を承りたい。
  26. 菅太郎

    菅政府委員 お話しのように、昨年は熱狂的な設備投資の増進がございましたし、一方消費水準も約一割以上上がっておりますし、貯蓄性向もかなり伸びておりますし、全体を通じてものを使う段階でございましたから、仰せのように、確かに有効需要というものが、かなりきつかったと思うのであります。一方、もとより近来における日本の生産力の状況は、相当なものがございますので、生産増もかなりな勢いでございまして、はたしてその需要と供給との関係がどの程度に参りますか、そこらの見通しが若干食い違ったかと思いますが、結果においては、率直に申しますると、設備投資が予想以上に暴走をしたということ、しかも、消費水準は依然として強く伸びた、貯蓄性向も下がらず等々の原因がからみまして、結局国内生産で問に合わず、輸入がああいうふうにふえたことは申し上げるまでもないことでございまして、まさにそういう現象であることは、御指摘の通りだと思うのでございます。しかし、根本的に見まして、その問に大きなバランスがくずれたということはございませんので、若干の調整をしますならば、ことにことしも、これだけの設備投資をいたしましたものが、逐次ずれては参りますが、生産力の増強となって現われて参りましょうし、一方におきましては、いろいろな調整策も進行いたしておりますから、ことに設備投資をことしはできるだけ押えて参るということでございますので、そこらの調整ができまして、要するに非常な勢いで増強します生産力に見合う範囲における需要の策定でございましたならば、たとえば国家の支出がそれだけふえるにいたしましても、わが国の生産力の増強の範囲内でまかなえるものでございましたら、必ずしもこれはそう心配することではございません。全体として見まして、まずまず、ただいま政府が立てておりますような範囲のことでありますならば、大過なく行き得る。ことに卸売物価は、若干の値下がり、消費物価は、今お話しのように、大体春の水準の横ばい程度に押え得る。これはあえて中野説という——中野君が説を立てておるわけじゃございません。これは謙虚なる見通しでございますけれども、そこらで一つ落ちつけたい、これならばいけるのじゃないかと、今のところ思っておるのです。ただ、御承知のように消費物価だけは、はや乾燥が続きますと、野菜が非常な値上がりをするということでございまして、あるいは機構の不備から、豚の卸値が下がっても消費市場はそう下がってこないというような、随意筋を動かすようにうまく動いてくれませんので、そこらの点がところどころ思わざる消費物価におけるはね上がりがございますが、しかし、そういうものをも克服して、全体としては一つ消費物価の若干の値上がりで押えたい。卸売物価の方は、最近ちょっと下げがにぶっておりますけれども、御承知のごとく、去年の年間を通じて、三十六年度三・四%上がったというその大部分の原因は、木材及び建築資材、これの値上がりでございますから、これを差し引きますと、まず一、二%の上昇程度かと思われますが、この卸売物価の方は、特に力を入れまして、ことしはぜひ二%あまりの値下げを実現したい。これには相当の自信を持っておるわけでございます。去年そういうふうに予測が誤りましたことは、全く申しわけないことでございまして、ことしはそういうことのないように、あまり狂いますと、責任問題云々というようなお言葉もございまして、まことに恐縮でございますので、せいぜい慎重に構えたいと思っておる次第でございます。
  27. 北山愛郎

    ○北山委員 関連して質問したいのですが、私は、物価問題一般についてこの機会に質問するつもりはありませんが、ただ問題は、政府はこういう国民生活に直接関連のある問題になってくると、非常に憶病なわけです。非常にむずかしいというわけです。そういうふうなきらいがあるのですが、この物価の中でやれるものをやっていくという心がまえもないのじゃないか。たとえば宅地の問題ですが、宅地の価格については、実は二年前の予算委員会だったと思いますが、当時の菅野企画庁長官に私が質問したことがあるのです。それで、それじゃ検討しましょうということになって、それから宅地の値上がり問題というのは、非常に各方面から関心を呼んで、政府としてもこれの対策を作るのだということを再々言っておるわけなんです。しかし、いまだにその対策が立っておらない。これはよその卸売物価あるいは消費財というようなものと違って、特殊なものでありますから、特殊な対策が必要だ、また可能だと思うのです。一体宅地の値上がりをいかにして抑制するか、こういう問題については、企画庁はその後どのような御検討をいたしたか、この機会に承っておきたいのです。
  28. 菅太郎

    菅政府委員 ただいまお尋ねの宅地の問題、もう少し広くいたしまして地価の暴騰の問題につきましては、実は経済企画庁におきましても、従来これが物価対策の盲点であったということを深刻に反省をいたしまして、根本的に取り組みたいという気持でございまして、今根本的な調査に取りかかる段階でございます。まことにのろいと言えばのろいのでございまして、しかし当面の対策として、宅地につきましては、建設省が宅地問題の審議会を作られまして、宅地の問題に関する限り、当面の対策としていよいよこれに取り組む態勢に相なって参りますので、しばらくその成果を見たいと思っておるのでございます。しかし、宅地も含め、工業用地その他全般を含めまして、非常な土地の値上がり、このもを放地するわけに参りませんで、しかも一たびこれに取り組もうといたしますと、実は調査も十分でございませんし、あるいは世界各国の立法例の調査なども不十分でございますので、そういう点につきまして、今全力をあげて資料をまとめ、従来の調査あとを追い、またそういう専門家が日本のどういうところにおるかということも調査して、人材も集結しつつある。そうしてことしの後半には、一つこの地価問題に対する相当な調査審議を進めたい。しかも、総合的にこれをやる対策を政府としてとりたいというので、今企画庁におきましてそういう方向に動き出しておりますことは、藤山長官からも機会あるごとに申し上げておる通りでございます。さしあたり建設省の宅地審議会が、最近いよいよ発足をいたしますことを申し上げておきたいと思うのであります。  それからなお最近、御承知のごとく、多少政府がこういうような姿勢をとり始めたことが影響し、及び金詰まりが影響いたしまして、東京周辺の土地の値上がりが多少ぐらつき出したといいますか、頭打ちの状態にありまして、一部の業者は北海道方面に転出を始めたというような情報もあるわけであります。でありますから、今お話のように、従来のごとくこういう問題をあまり漫然と放り出さないで、政府がしっかりした態度でもって乗り出すという姿勢で、すでに若干の効果がございますから、一つ今後は、この地価暴騰を抑止するために、画期的にこれから努力を集中して参りたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  29. 北山愛郎

    ○北山委員 とにかくだれが考えても、この問題を指摘したのは菅野さんの時代なんですよ。それから二年くらいかかっておるのですが、その間に何もしておらない。これから審議会を作るというのでは、だれだって納得しませんよ。しかも、そういうふうに地価の値上がりの原因というものは、大体わかっておる問題があるわけですから、たとえば一定規模以上の工場敷地の取得であるとか、あるいはゴルフ場の設置であるとか、そういうものについては許可制にするというようなことだって、すぐにとり得ることなんです。そういうことは何もとらないで、これから審議をやるというのでは、私ども納得できないわけです。  それなら調査の面でどうしておるかということをちょっとお伺いしたいのですが、一体地価というものは、市街地の価格ですが、それがどのような変動をしておるか。長期的に見て、十年なら十年、どんなに変動しておるか。これは例の清水馨八郎氏の論文によりますと、東京の市街地なんかは、三年に二倍になっておると言っておる。そうなりますと、東京だけでも、一年に一兆円くらいの地価の値上がりをしておるのではないか。こういう問題を民間の不動産研究所などの調査にまかせておいて、政府としていいのかどうか。企画庁としては一体どういうふうな調査をして、そうして地価の値上がりはどうなっておるのか。この際に明らかにしてもらいたい。
  30. 菅太郎

    菅政府委員 地価の値上がりに対する見解といいますか、過去の実績としてこれが正しかったと申すものをお示しするだけの自信は、まだないのであります。先般来、資料の収集はやっておりますが、資料もきわめて不確かでございまするし、いろんな研究をやっております機関もばらばらで、たとえば銀行系統の機関は、もっぱら抵当物件としての土地ばかりの目で見ておりまするし、宅地造成の方は、また宅地の方ばかりを見ておりまするし、みんながばらばらでございまして、総合した地価の過去の値上がりの実績をつかむだけでも容易ではありません。清水先生などなかなか近ごろ明快な結論をお出しのようでございますが、清水先生を呼びまして先般も御意見を承ったりしておりますが、正確な自信のあるそういう資料が十分整わないのであります。今、係の者を呼んでおりますから、若干のことは申し上げ得ると思いますが、要するにこの領域においては、きわめて調査が不十分である。ことに総合的な、統一的見解をだれも日本においては持つものがない。ただ、不動産研究所あたりが、適当な基準によって土地の値上がりを評しておりまが、これは厳密に見ますと、非常に疑問があります。はたして不動産研究所が示しておりますあの倍率だけほんとうに上がっておるのかどうか、これもかなり経済学的には疑問があるように承っておるのでございまして、そういう点、まことに従来調査が不行き届きでありまして残念でござりまするが、卒直に事実を申し上げますると、そういうことであります。おくればせながら今日、そういう問題の対策に取りかかっております。御質問の点、若干お答えはできるかと思いますが、今係の者が参りますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  31. 北山愛郎

    ○北山委員 関連質問でありますから、あとその機会に譲りたいと思うのですが、とにかくこの重要な問題について、一番調査の手足を持っておる政府自体が、そういう答弁では情けないと私は思うのです。それで、不動産研究所あるいは勧銀の論査が的確でないとするならば、一体政府は今まで的確な資料を作るためにどんな努力をしたかと言えば、これまたない。そういうことでは困ると思う。これは国民所得を計算する上においても重要ではないか。それから、土地の値上がりは、ある意味の資本所得なんです。何といいますか、キャピタル・ゲインといいますか。だから、不動産研究所のようなはなはだしい値上がりはないにしても、相当の値上がりであることは事実なんですね。そういうようなものを土地、不動産、宅地等にかけてみるということになれば、長期間には何兆円というような莫大な値上がりになる。そうなれば、その土地所有者に対しては相当な所得が出てくるわけなんです。そういう所得は、国民所得の中でどういうところに入っているのか。この国民所得統計の中には、そういう資本所得に当たるものがないんですね。同時に、株の問題もそうなんです。株は、ある人の書いたものによりますと、十二年間に十倍になっている、現在の上場株の時価総額は、何兆円ですか、六兆円、七兆円ぐらいになりますか。そういうものから生まれる所得というもの、一年に二〇%ぐらい平均して上がっていく株の値上がりによる所得というものは、少ないものじゃない。これを国民所得の計算の中でどう扱っていくのか。経済企画庁は、国民所得統計を作っているわけですから、少しばかりのものならば見過ごしていいけれども、莫大な値上がりのものを、そこから生まれてくる所得というもの、そこから生まれてくる消費購買力というものを、どういうふうに推計しているのか。これは直接に企画庁の仕事だと思うのですが、一体どういうふうに扱っているのか。
  32. 中野正一

    中野(正)政府委員 今の地価の値上がりあるいは株の値上がり等によって所得がふえるということ、それは株を売るなり土地を売った場合はそうなるわけでありますが、ただ、われわれの国民経済計算の上からいえば、AからBへ所得が移転したということになって、その間に相殺されるものです。国民所得の上で計算しておりますのは、要するに純粋に生産価値がふえた分を国民所得としてとらえる、そういう計算方式になっておりますから、その点が不十分じゃないかと御指摘になりますのもごもっともかと思いますが、私の方で発表しております国民所得統計の上には、その分は乗ってこないことになっておるわけであります。
  33. 北山愛郎

    ○北山委員 ちょっと疑問があります。そうなりますと、それ以外の所得についても、名目で計算をして、物価の指数で調整をしますね。そういうことが、やはり株なり不動産の値上がりからも、同じような問題が起きているのじゃないか。たしかキャピタル・ゲインというものが、国民所得計算の中で、調整項目の中に幾らかあって、やっているのじゃないかと思うのです。全然見てない、ただAからBにものが移転するんだ、商品が移転するんだから、その差額は同じだということじゃないと私は思うのです。どうですか、それは。
  34. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御説明いたしましたように、国民所得の方の計算では、要するに、その年に幾らものが生産され、それによって価値が幾らふえたかという計算をいたしておりますので、もちろん原料が上がり、製品が上がるという場合には、生産されたもののうちから、原料代なり何なりを引きまして、付加価値が幾らふえたかという計算をするわけでありまして、その過程においては、当然物価というものは影響してくるわけでございます。その年にどういうふうに付価値がふえたかということは、国民所得の計算としてやっているわけでございます。株価の上昇とかあるいは土地の上昇というようなものは、国民所得の上からは、その数字は入ってこないという計算になっておるわけでございます。
  35. 北山愛郎

    ○北山委員 しかし、実際に分配所得の場合には、大きな影響があるのじゃないですか。自分が持っておる土地が値上がりをした、それを売れば、それだけとにかく名目上の所得は出てくるのですよ、擬制的なものかもしらぬけれども。ものが値上がりしてそれを売れば、ほかの商品と同じですよ。そこに所得が生まれてくるのです。そういうものは一体計算上見ないのですか。そうすれば、ずいぶん大きな計数が分配所得の計算から脱落しているということになる。私も、去年の暮れ本会議質問したのですけれども、去年の七月までの過去一年間に六割上がっている。大ざっぱな計算をすれば、三兆五千億も値上がりしている。みな持っている人が処分するわけじゃないのですけれども、それを抵当にすれば、その値上がりをした分の金が実際に受け取れるわけですね。売ればそれだけの差額が出るわけです。そういう、名目上にせよ、とにかく所得があるわけです。それが計算上は無に等しいとするならば、分配所得というのはずいぶんおかしなものになるのじゃないか。三兆五千億という金は、一年間に六百万農民が得る農業所得というのが一兆二千億か三千億ですから、それの約三年分というものを黙っておって土地所有者は値上がりの利益を受ける、私は、こんなばかばかしいことはないのじゃないかということで質問したのですが、これは経済的に見て影響を与えておる。株についても、土地についてもそうなのだ。そういう経済的な影響という角度から取り上げないということは、私はおかしいと思う。ですから、御質問しているのです。もちろん地価の高騰というものは、終局においては地代が上がってくる、あるいは家賃が上がってくるということで、大衆消費生活影響を及ぼすのですから、それを計算しない、その経済的な影響を見ないというのは、しり抜けということになる。それでいいのですか。
  36. 中野正一

    中野(正)政府委員 確かに今御指摘にありましたように、個人からいいますと、そういう見かけ的な所得の移動ということは、非常に問題になるわけでございます。先ほど御説明しておりますように、国民経済全体として価値がどれだけ生産されているかということから国民所得の計算はやっておりますので、そういう点は、国民経済全体の計算からは出て参らないということになってくるわけでございます。ただ、御指摘のように、物価が上がってきたために、収入がふえても、そのうちの、去年でいえば所得が一割以上ふえたのに対して五%以上物価が上がっておりますから、簡単に計算いたしましても半分はふっ飛ぶじゃないか、そういう影響がございますので、その点は、先ほど来のお話のように、消費者物価の安定ということに力を入れますとともに、実質的にそれでは国民総生産がどれだけふえたかということは、あと物価影響というものは捨象しまして、実質的に国民所得が幾らふえた、あるいは消費水準がどういうふうに上がったかということは、そのつど計算して出しておるわけでございます。ただ、先ほども御指摘のような株価の値上がりあるいは土地の値上がりによる擬制的な価値の増加というようなものを、別に何か調査するなり、それの影響を調べにゃいかぬじゃないかということについては、御指摘の通りだと思います。国民経済計算の上からは、そういう扱いになっておるわけでございます。
  37. 北山愛郎

    ○北山委員 少なくともここでは国民生活のことを問題にしておる以上は、分配のあり方がどうか。分配に影響するでしょう。今のような問題は、物価値上がりだって平均して上がるものじゃないので、非常に上がったものを持っておる者は得をするにきまっている。ですから、一応国民所得の計算も、分配の内容を出す以上は、そういうものを入れてあとで修正する、そういうことでない限りはおかしいのじゃないか。非常に大きな誤差が隠されておるといわざるを得ないわけなんです。ですから、私は、当然だれもが疑問にする問題、いわゆるキャピタル・ゲインといいますか、そういうものをどう扱うかということが問題になっているので、そういう角度からお伺いしておるわけです。これはあとで、実際の地価の変動なりあるいは株価の問題なり、そういう問題の資料を出していただきまして、そしてまた別の機会に私はお伺いしたいと思いますが、ともかく物価の相当重要な要素を占めておる宅地の値上がりの問題、これは必ずしも対策としてはむずかしいものじゃない。私は、菅さんに対しても、もしやるという気持があるなら、方法は幾らもあるということを申し上げたいのです。やる気になればできないことはないのです。それをこれから宅地問題の審議会を作るというのでは、企画庁としては建設省の審議会にたよっておるということではいけないのじゃないかと私は思うのです。何かこの国会の中でも、具体的にこういう手段だけはとれるんだ、たとえば大規模な一定規模以上の工場敷地の取得については許可制にするのだ、あるいはそれの融資については規制をするのだ、あるいはゴルフ場の乱設を押えるためにゴルフ場の規制をするのだ、そういうやり得ることはやるのだということは、はっきりしてもらいたいと思います。ですから、その点についてまたよく政府、企画庁の方でも検討していただいて、この国会で部分的な結論でも示していただきたい、こういうことを要望して私の質問を終わります。
  38. 西村力弥

    西村(力)委員 物価上昇の抑止というものは、きめ手がないのだということでありますが、この点につきまして、そういう工合にきめ手がないままに、今年度の物価上昇を、卸売物価は下げる、小売はほんの少しの点で押えるというような、昨年と同じようなことを言っても、私たちは信用できないのじゃないかと思うのです。  藤山さんがおいでになりましたが、国民生活研究所法案審議に入っておるわけなんですが、そういう法案消費者立場を守る、こういう基礎的な調整、総合的な検討をしようということはけっこうでありますけれども、その前に、今国民生活を圧迫しておる物価値上がりをどう押えるのか、そういうことをやはり私たちはこの際問題にしなければ、便々とこんな法案審議に応ずることはできぬ、こういうわけで今論議になっておるわけです。ところが、菅次官からは、政府の方向としては、卸売物価は今年は下げるのだ、消費者物価は少ししか上げないのだ、これをやるのだ。ではどうしてやるのだといえば、きめ手はございませんということになる。こういうことです。ただいま北山君から、関連質問で、地価の暴騰それ一つだけでもやれるところからやったらどうか。この問題は二年前菅野和太郎さんが経済企画庁長官のときに私は指摘した。それで何とかやろうと言ったが、今に至っても何もやらずに、そして地価問題は調査会を開いていく、こういうことでは納得できぬ、こういう話に今進んでいるところなんです。  それで、きめ手はないと言いますが、企画庁では、新聞面を見ますと、ある程度試案のようなものを作っていらっしゃるのですが、これを大臣は目を通されたかどうか、これについてどういう項目をどうやって持っていくか、それを実際政府の方針として効果あらしめるために、藤山さんは一体どうするのだ、こういう点について一つ答弁を願いたいと思います。
  39. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価問題につきましては、私は本年におきます非常に大きな問題だと思います。本年ばかりではなくて、長期に考えてみましても、経済成長の過程におきまして、物価が安定して参らなければ、経済成長効果を減殺してしまうわけでありますから、この際経済成長政策を推進して参るとすれば、当然物価問題というものは重要な問題として取り上げて参らなければなりませんし、その関連におきまして国民生活研究所法案提出しておるようなわけであります。企画庁としてはこの問題に相当熱意を入れて取り組んで参るつもりでありますが、ただ御承知の通り、物価問題というものは非常に広範な関係を持っておりまして、何かたった一つのものだけをきめていけばそれで済むという関係のものではないわけであります。ことにその基底をなしますものは、やはり何と申しましても成長の速度というものが非常に大事であろうと私は思う。日本経済構造というものがまだ必ずしも同じような進み方をしてきておりません。そこへ、始終論議されます通り、構造上のひずみもございますし、あるいは経済伸展の速度の違いもございますし、そういうものが、非常に急激な成長過程においては、必ず強く現われてくるわけでございます。経常の貿易の収支の問題に現われたのもその一つであります。あるいは物価問題に現われたのもその一つだと思います。でありますから、そういう点について安定的な成長をはかっていくということが、基本的な問題だと思います。従って現在、かなり高度の成長を急激にやった結果として、物価問題も起こっておるわけでございますから、基本的にはやはり抑制的な政策によりまして、安定的な成長に戻って参りますように処置していくことが必要であろうかと思います。しかし、そうした基本的な立場に立って当面の諸般の問題を片づけて参らなければならないとすると、広範な各種の問題、各省の所管の関係の問題に関連して参るのでございまして、それは財政金融の面から生産の面にまで及んでいき、あるいは消費構造の面にも及んでいくわけです。そこで、企画庁といたしましても、物価を安定させていくためには、ただ単に一つの問題を取り上げますよりも、総合的な対策を立てて、そうしてその線に沿って各省に協力していただき、行政指導もしていただくということが必要になってくるわけであります。そこで、総合的な対策をただいま立案いたしまして、そうして経済閣僚懇談会等に諮って、各省の意見もまとめて一つの方針を打ち立てていき、そうしてその方針に従って各省にそれぞれ活動をし処置をしていただき、あるいは行政指導をしていただく、こういうことをして参りたいと企画庁としては考えておるわけでございます。そういうような点につきまして、われわれ施策をいたしておるのでありまして、ただいま、土地一つさえ二年前と同じようにちっとも進んでおらぬじゃないかということで、その点まことに遺憾に存じますが、土地問題もやはり物価問題のうちの一つの大きな問題でございまして、これをどう解決していくかということについては、いろいろな面から研究して参らなければならぬのであります。宅地の造成というようなことだけで済む問題では必ずしもないと私は思っております。そういう点についてただいま十分な検討をしながら進めていきたいというのが、私の考え方でございます。
  40. 板川正吾

    板川委員 物価問題でさっき次官質問したのですが、大臣一つ重ねて確かめてみたいと思うのです。今藤山さんは、国の財政政策経済政策結論として、それが物価というものに反映されるというふうに言われておるのですが、私どもも、実はいろいろ物価の問題を考えてみると、基本的にはやはり国の財政政策なり経済政策なりの答えが物価に反映する、こう思うのです。ですから、その基本的な経済政策、財政政策というものを抜きにして、やれあっちの物価が上がったというように対策を追っかけて歩いてやってみても、なかなか効果が上がらない。これは当然企画庁長官としてはそういうことはわかっておるだろうと思うのです。ところが、わかっていながら、国会の答弁用としては、ことしも三月以降消費物価は上がりません、卸売物価は若干下がり目になります、こういうことで当面を糊塗しておるのですが、しかし私はそういうことでは去年と同様に必ずボロを出そうと思うのです。この点は、私は、池田内閣の経済政策物価の問題は上がらないなんということを言うのが、実は根本的に間違っているんじゃないかと思うのです。御承知のように、池田さんはケインズの理論を中心にものを考えておる。大体第一次世界大戦後の不況の中で、供給があるが需要がないという世界の経済情勢を前提にケインズの理論というものは生まれたと思うのです。それはいわゆる有効需要を喚起して、そして完全雇用政策をとっていく。供給過剰ですから物価はどんどん下がる情勢にある。そういう中に、逆にこれを融和政策的な政策をとることによって、有効需要を作って均衡をはかろう、こういうのがケインズ理論の生まれた原因——あの当時のケインズ理論の立て方はそこにあると思うのです。池田さんはそれをとっておられる。ところが、現在の日本経済事情は、逆に供給過剰じゃなくて、自由化を前にして、いわゆる設備投資を中心に非常な勢いで有効需要が今度は過大になっているのですね。有効需要が過大になっているときに、有効需要はどんどんふやしてもいいんだ、経済成長を伸ばすことがどこが悪いんだ、こう言って、本来ならばそこを調整して均衡をはかるべきところを、有効需要の方だけは野放しに拡大して経済の成長をはかろうというところに、実は供給面が手薄になりますから物価が上がってくる、こういう形になっているだろうと思うのですね。ですから、そういう経済の根本的なハンドルの取り方、スピードの出し方は、ブレーキを踏むときにアクセルを踏んでいるようなものです。そこで、消費物価はことしも一年間三月以降上がりません。卸売物価は下がるでしょう。これは何年か先になって言えば、あるいは供給過剰になる可能性があります。生産過剰になる可能性がありますが、当面は逆なんですね。そういう中で物価を押えようというのは、ちょうど湯をわかしていて上からうちわであおいで、これはさめるから心配はない、物価は上がらない、温度は上がらないから心配ない、心配ないといって、うちわであおいでいるようなもので、実は物価が下がる可能性というのはない。特に今度の大型予算から見て、企画庁がうちわで一生懸命やかんの湯をあおいでいて物価は下がるようなことを言ったって、下がらないと思うのです。だから、物価という問題を政府がほんとうに真剣に考えるのなら、そういう経済、財政の影響等を考えずに物価が下がる、下がるなんということは、私は国民をごまかすもとじゃないかな、こう思うのです。どうですか。物価を上げないような方法は必ず講じられますか、今の政府の財政政策あるいは経済政策、こういう点から。
  41. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 物価の問題で、過度の経済の拡大ということは、先ほど申しましたように、日本経済構造の上から、あるいは過去におきます経済条件の整備が伴っておらない上に影響をして、そうして出てきたことは、これはもう明らかな事実だと思います。従って、ある程度経済の過度の成長ということを抑制して参らなければならぬことは申すまでもございません。そこで、そういうものがどういう面に現われてきたかと申しますと、たとえば需要供給の関係におきまして、供給が足りないから物価が上がったということ自体も考えられますけれども、しかし、今日の生産活動というものは相当に旺盛でございますから、必ずしも需給のバランスがくずれたからだけというわけにはいかぬと思います。ただ、消費が非常に旺盛でございますから、従ってその消費が旺盛なだけにやはり物価影響することは、これは申すまでもないのでありまして、その点はわれわれも認めておるのでございます。ただ、御承知の通り、今日のような状況でありますと、過度の成長をしました結果として、たとえば輸送の方面が十分に今の経済発展に対応していないということも一つでございます。それから、労働関係の移動というような問題、これが私ども必ずしも十分だとは考えておりません。むろん合理化をし、その他をする。一方では、その結果として余剰の人員が出てきておるにかかわらず、他方では、中小企業等でもって、高度の成長をし、新しく自由化等に対処するために技術的革新もやらなければならぬが、その技術者が得られないというようなこと、そして、そういう面における移動の円滑化を欠いておるというような点も考えられます。そうしたいろいろな理由をこの際ある程度是正して参ることを進めて参らなければ、長期にわたります——ここ二、三年のことを考えてみましても、物価を安定さしていくことにはならぬかと思うのでありまして、そういう意味においては、ある程度過去におきます財政投融資の関係におきましても、あるいは労働者の移動、再教育あるいは新職場に対する訓練等の設備等に対しても、十分な制度がこの際確立されなければなりません。そういう面について、やはりある程度予算措置もして参らなければならぬことは当然のことだと思うのであります。  でありますから、そういうような基本的な立場に立ちまして問題を考えて参りますと、一面御承知の通り農業基本法もできまして、農業日本の構造改革というものも考えていかなければならぬのでありまして、そういう点が総合的に考えられなければならぬことはもちろんでございます。そういう施策がおくれて参りますれば、二、三年で行き詰まってしまう状態が現出するのではないか。でありますから、そういう面については十分な施策を講じて参る必要があろうかと思います。ただ、それと同時に、当面消費者物価が上がっておるわけでございまして、これをどう押えていくかということは、今のような輸送対策とか、労働者の訓練とか、再就職の問題とか、実質教育をやるとか、そういうような問題だけでは必ずしも当面の対策は片づいていかないのであります。そこで、当面の対策として、やはりいろんな面において各省が指導をし、そうしてそれを進めて参らなければならぬ。その間に今申し上げたような条件を改善しながら進んでいき、あわせて数年のうちに安定した物価態勢のもとに進めていくという道をとらなければならぬのではないか、こういうふうに私は考えております。でありますから、若干本年度の予算の規模が大き過ぎる、それで国民消費の全体の消費の中で政府の消費が多過ぎるということも、議論にはむろんなります。しかし、ある程度これをやらなければ、今言ったような点についての欠陥が直ちに露出してくると行き詰まってしまう。都市交通そのものを考えてみても御承知のような状況でありますから、そういう面については、今後の貿易バランスその他のことを考えながら、弾力的に予算は運営していく必要はございますけれども、そういう面については力を入れていかなければなりませんし、その問の救済に対する、あるいは社会保障というものに対しても、できるだけ政府は力を入れて、そうして物価安定の進み得るような道を考えていかなければならぬ。そういうようなことで、総合的に考えながら当面の問題を処理していくということで、それではお前が言うようにこう横ばいでいけるのかということになるわけであります。私は、必ず横ばいでいけるということを実は申し上げているのではなくて、これは努力目標なんです。従って、その目標に向かって、あるいは目標以内に今後は全部をやっていかなければならず、またやっていくことが努力目標を立てました政府の責任でもあると思うのでございまして、そういう意味におきまして、いろいろな力を合わせていきたい。でありますから、総合対策数字的には政府として決定することはできると思いますし、その中においてとるべきものはとって施策に出していく。その一環として総合対策の中にもうたわれることでもございますし、また四月一日から施行しなければならぬことでございますから、間接税の引き上げ等に対する大蔵省を中心にした各省との連絡によります処置等についても、本日の閣議で、第一次総合対策ができます前に内容の一つとして決定したようなわけでありまして、逐次そういう面について強化をして、できるだけの努力をして参りたい、こう考えておるのでございます。
  42. 板川正吾

    板川委員 物価を上げたくないという努力目標だ——努力目標を立てて、その目標近くまでいくならば、それは多少の狂いがあっても、今の自由経済の中で一%、二%狂ったからどうこうということは申し上げないです。多少の差はやむを得ない。しかし、上げないといったものが大幅に上がったりしたのでは、努力目標というのが国会の答弁用、一応国会を乗り切るための努力目標みたいな数字になっちゃうんじゃないですか。ですから、多少の差というものはとやかく言うつもりはないのです。ただ、あまりにも違うから、問題にしているのです。池田さんがケインズ政策でいく限りは、それは物価というのはどうしても軽視するのですから、これは物価は上がらざるを得ない。それならそのように、物価は上がらねえなんて言わないで、多少は消費物価が上がったってやむを得ない、国民所得は多少ふえるじゃないかというようなことで、もっと正直に言ったらどうか、こういう感じがするわけです。  それから、もう一つ私が聞きたいのは、これは今の政府の資料によってですが、昨年度の農民の生活関連するのですが、農業所得というのは、大体前年度に比較して五%程度上がっている。ところが、農業経営の費用、農家の生活費用、これは六%上がっているのですね。一昨年の十月から昨年の十月を比較すると六%上がっています。そうすると、農民には所得倍増というのはないので、かえって生活が苦しくなっておる。また、労働者の月給を二倍にしろ、月給二倍が所得倍増の基本だというのですけれども、労働者の方を見ると、一昨年の十一月と昨年の十一月——資料がそれしかありませんから、それで見てみると、名目賃金は一四%上がっている。しかしその問に消費物価は九%上がっている。実質賃金は四%何がしか上がっていない。これは資料に出ています。総理府統計資料ですかね、これにありましたが、実質賃金四%では所得倍増十カ年以内ということにはなりませんね。計算してみたら十八年間ですね。十八年間たたないと、実質的に所得倍増にならない。どこから見ても所得倍増政策というものはくずれているような感じがしませんか。
  43. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま御指摘になりました物価が九%以上上がっているというのは、一昨年の十二月と昨年の十二月と、その月だけを比べますとそうなっております。これは実に大きな上がりでありまして、私どもこれは解消しなければなりませんが、年率にいたしますれば、五・八%程度いくと思いますが、それすら非常に大きい数字であるし、ことに昨年の国会におきまして政府が申し上げた数字から見ると、著しく大きな数字になっておるのでありまして、その点はまことに遺憾だと思います。それではお前が二・八%で努力目標を立ててとめられるかどうか、とめられなければ、お前に大いに責任があるぞという御指摘でございます。私も、それに対しては、できるだけの努力をして、むろんそれがわずかな変動なら、ただいまお話しのような御指摘がないでしょうけれども、二・八%の努力目標が立ったにかかわらず、それが五%も上がったということになりますと、それは私としても責任を痛感せざるを得ないし、私自身の努力が足りなかったということを申し上げなければならぬ。私も政界におるのでございます。皆さんとこうやってお話をしておって、逃げていくわけではありません。またもとの実業家に返るわけじゃございませんから、そういう点で来年企画庁長官として大いに皆さんから攻撃されたら閉口してしまうわけでありますから、そういう意味でできるだけの努力をして参りたいと考えておるのでございます。しかし、そうかといって、非常にむずかしい問題でございますから、私としても、各省の協力をできるだけ得、そうしてそういう面をほんとうに認識していかなければならぬのでありまして、その努力が結集しなければ、実際において国民にも呼びかけられない。国民消費を節約をしてくれ、貯蓄をしてくれと言っても、政府はこれだけの決心をもって物価政策をやるのだ、従って、皆さん方もそれだけ協力をしていただきたいというのでなければ、ただ政府は何もしないで、貯蓄して消費を節約してもらわなければ困るのだというわけには参らないと私は思います。また政治家として、それでは責任が相済まないことだと思います。ですから、そういう意味においてできるだけやって参りたい、こういう意欲に燃えておるわけでございます。
  44. 西村力弥

    西村(力)委員 努力目標を達成しない場合は、言うまでもなく政治的な立場考えられるだろうと思いますし、また国際収支の逆調にも当然問題もあるでしょう。もう一つの問題は、物価引き下げのために引き締め基調を堅持していって、このしわ寄せが中小商工業者などにいって、つぶれるならつぶれてもやむを得ない、あるいは農民諸君生活が窮迫するようなことになりますと、その反撃でつぶれざるを得ないということになるのじゃないかと私は思っているのです。ですから、政治責任云々ということをここで言ってもらおうとは思いませんが、ただその努力目標が成功を見なかった場合に、その責任の大半が国民にあるのだという言い方だけは、ぜひやめてもらわなければならぬ。こういう言い方をされたのではたまったものじゃない。ああいう言い方をされますと、政府というのは一体何だという国民感情が出て参ります。その言い方だけはぜひやめてもらわなければならぬと思う。聡明なる藤山さんは、お答えをいただくまでもなく、いろいろな点を十分にお考えになっておるだろうと思うのであります。  ところで、労働の生産性の向上が、現在どれだけ物価引き下げに回されておるか、その実態はどうなっているか。これはテレビが下がったとか、あるいは自動車が下がったとか、そういうことを言うでしょうけれども、もっと庶民の生活にぴったりしたところで、労働生産性の向上物価引き下げに回っていったという事例があるのかどうか。これは具体的には一体どういう工合にいっていますか。労働生産性の向上物価引き下げにどういうふうにやられておるか、そういうものがほとんど労働者の方にも回されないし、物価引き下げにも回されないで、ただいたずらに、自分たちの拡大の方向にだけいっておるように私たちには見えてならない。それは藤山さんでも事務当局でもけっこうですが、今私が指摘したような点、物価引き下げ一つ方向としては、企画庁は、生産性の向上に伴ってあるいは物価引き下げ方向に回そう、こういう考え方もあるだろうと思います。それは新聞にも相当出ております。現実にそういう問題が現われておるかどうか、これを一つお答え願いたい。
  45. 中野正一

    中野(正)政府委員 労働生産性が向上したために、それが物価引き下げにどの程度影響したか、これは数字的に調査したものはないと思います。ただ一般的に、今も御指摘がございましたが、耐久消費財のごときは徐々に下がっておるわけであります。それからまた、新しく出てきた合成繊維というようなものは、これはもちろん世界的な競争の関係もございますが、品物の質をよくして、同時に値段を下げるということでなければ、売れていかないわけでございます。そういう意味におきまして、企業家として当然、需要開拓といいますか、市場開拓といいますか、そういう努力を続けておると思います。  ただ、全般的にいいまして、今までの考え方そのものが、生産が上がると、資本の蓄積と賃金の引き上げという方へどうしても重点が置かれがちだったじゃないか。これは日本経済の今までの特色といいますか、戦後の非常に衰亡したときから立ち上がるために、どっちかというと、産業界というか、生産者の立場に重点を置いた政策が今までとられてきたのであって、それが一つの成長政策といいますか、過去十カ年間に所得が倍にもなったという結果にも現われてきたわけであります。今後は、先般来から企画庁考えておりますように、消費者あるいは購買者の立場国民立場に立った経済の運営、またすべての経済政策もそちらに向いていかなければならぬ。これは、もちろん経済界等においても、相当そういうことが言われておりますが、生産性の向上した分は、まずそれを社会に還元するといいますか、消費者なり国民大衆に還元するというような慣習を、これは政府においても考えるし、また民間においても考えてもらわないといけないのではないかと思っております。
  46. 西村力弥

    西村(力)委員 消費者というものがほんとうに王様であるという工合に今度は切りかえていかなければならぬ。今までは生産者をどう保護し、それをどう発展させるかということが重点であったので、それに対する経団連その他の自己反省は今お話がありましたが、生産性の向上した分を物価引き下げに定着させる政策を、それならば政府としては具体的にどうとるか。自己反省は今お話のようにあったかもしれない。そうしなければ資本主義の自己防衛ができないということになります。自己反省はあるだろうと思うのですけれども、これを政府の政策としてどういう工合物価引き下げに定着させていくかという点について、藤山さんからお答えをいただきたい。
  47. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在の状況下において、これを定着させていく、そういう慣習をつけていくということも必要でございましょうし、みんながそういう気持になって運営をしていくということも必要であろうと思います。同時に、政府としても、日本産業の発展について、無制限な発展ということは必ずしも適当であるかどうかということについてのある程度の指導もしていかなければならぬと思うのであります。資本がむだに使われておるという面が今日でもないわけではないと思います。たとえば石油化学のような部面について、はたしてあれだけ資本の過当投資が必要であろうかどうかという点についても、これは通産行政の面で十分お考えいただかなければならぬのじゃないかと思います。また物価というものを考えてみましても、物価そのものが安定し、定着するということは、労働者諸君の実質賃金が安定することでございますから、そういう面からも御協力を私はいただけるものだと思います。  なお、御承知のように、そういう面について独禁法その他の運用におきまして、価格形成の面で十分な運営をしていただなかなければならぬのじゃないかと思います。そういうことによりまして、今お話しのような点について、各界各方面の御協力を得ながら進めていくということが一番大事な点じゃないか、こう思うのでございまして、政府がことごとに権力を持っております時代とは必ずしも違いますから、政府の権力だけで何か指導し、命令するというわけにもいかぬ場合もありますので、そういう点については、やはり政府の施策に十分な御協力をいただくという点をあわせて考えながら、そういうことに進めていくということが大事なことではないか、こう考えておるのでございます。
  48. 西村力弥

    西村(力)委員 国民生活研究所の寄付金の募集なんかは、あなたの顔で相当集まるだろうと思うのですが、今のような重大な問題になると、顔だけで御協力願っても、なかなか思うようにいかぬのじゃないかと思うのです。だからこれは、統制は絶対に排撃される立場でありますから、それはそれとしましても、何らかもう少し方法はないものかという気がするのです。ただ御協力をいただいてというようなことでは、これは私たちとしては大いに期待するというわけには参りませんと申し上げざるを得ないのです。そしてまた独禁法の運用の強化ということになりますと、現実に独禁法というものがどういう経過を経て現在に至っておるのかということを考えた場合、それからEECに対する問題とか考えてみますと、独禁法の関係の運用の妙を得て、そして物価上昇というものを抑制するというような方法が期待し得られるものかどうか、そういう関係。独禁法の骨抜きになったのを少しもとに戻すという方法があるのかどうか。EEC対策として独禁法との関連性をどう調整していくのかという問題、こういう点については、藤山さんどうお考えになりますか。
  49. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、日本の輸出の競争というものは、残念ながら非常に業者間の競争がはなはだしいのでありまして、輸出価格というものも相当引き下げ、そして競争していく。そのために、相手方にもかえって迷惑をかけて、そしてむしろ輸出を阻害するということが考えられるわけなんです。ヨーロッパ方面考え方を聞いてみましても、たとえば、何も価格だけ安く、そして価格の競争だけで一体相手国の希望が達成されるかというと、相手国の商売人からいえば、むしろ、ある程度高い価格でも、安定した価格でもって売ってくれるというようなことが望ましいということを——これは皆さん方外国においでになってお聞きいただけば、外国の業者というのは大体そういう意見を言うわけです。そういう面もございますから、従って輸出関係で無理に競争をするというようなことについては、私はやはりある程度規制していくことも必要じゃないか。そうして外国に高いものを売って、その利益で国内のものはなるべく安くしていく——こういう言い方をいたしますと外国でもあれですが、実質的にはそういう心持あるいはそういう不当——不当と申しますか、むだな競争をしないような形というようなものも、私は必要な点があろうと思うのです。そういう面についての運営というような問題については、やはり相当考えていかなければならぬのじゃないか、こう思います。  ただ国内の場合におきまして、やはり価格問題については相当に今申し上げましたような点から見て、十分関与していって、そして不当な、あるいは何と申しますか、値上げ運動と申しますか、そういうものに便乗をしていくというようなことのないように取り締まりをしていきますことは、私は必要なことだと思います。しかし、輸出の場合にさような競争をしないように、ある程度は制限をしていく、そういうようなことは必要なことだと考えます。
  50. 西村力弥

    西村(力)委員 それでは次に、公共料金の抑制ということは、昨年の三月でしたか、閣議決定をなさいまして、当分の問、当分の間と言いのがれて、国会が終了したとたんに、東京電力でしたか値上げをした。ここにも公共料金の抑制ということがうたわれておりまするし、それは言われるでしょう。ところが、今度新聞面で拝見しますると、一社、二社ばかり上げるというのは、私鉄でしたか、バスでしたか、そんなものめんどくさいから全部上げてしまえ、こういうことをおっしゃって、上げるなら全部上げろとおっしゃったということが新聞面に出ておりましたが、一体公共料金というものは上げないのだ、上げざるを得ないような企業経営の状態であるならば、別途の方式でそれは考えるべきであるというように考えて絶対に上げない、公共料金は上げないのだ、こういう方針をはっきりこの際打ち出して、これは国民の信頼の置ける立場で貫き通す、こういう工合に今回だけはいかなければ、この大事な物価政策はまず完全にくずれてしまう。どんなうまいことを言っても、くずれてしまうと思われるわけです。一社、二社はめんどうだから、上げるなら全部をという真意、それから今度は、公共料金は上げないと言ったら政府は上げないのだというように、ここではっきり明言はできませんか。
  51. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 一社、二社はめんどうだから、すべて上げちゃうのだということを、私は実は申したわけではないわけでございまして、私鉄の値上げの問題に際しまして、ほんとうに経営上困っておるところがあるならば、これはある程度考えていかなければ、交通輸送の関係から申しましても、適当ではないという考え方から、いろいろ検討をいたしたのでございますが、しかし、それでは一社、二社というものと他のものとの差をどこで見つけるかというと、はなはだむずかしい問題でございます。従って、そういう面から考えまして、すぐにこの一社、二社がほんとうに困っておるのだという指定をいたしますことは、実は神様でもやりにくいような問題ではないかと思います。そこで、やはり検討するとすれば、全体を検討して見ることが必要じゃないかというふうに、私自身実は考え方が変わったということを申し上げたのでございまして、めんどうだから、うるさいから、全部上げちゃえと申したわけではございません。ただ、公共料金の問題は、御指摘の通り、昨年三月政府は当分の間抑制をする。そうして七月になりまして、やむを得ないものに限っては、事情を十分調査の上で検討をする、こういうことにいたしたわけでございます。公共料金の中には、過去数年相当の長期にわたって料金の引き上げをいたさなかったものもございます。またそういうものについて、今後の経済発展に対処するような施設に事欠くような状況も起こっておる面もあります。従って、そういう面からする単に経営のよしあしによっての赤字というようなことを申せば、ルーズな経営の人が値上げをしてもらって得をするというようなことであっては相ならないのでありますから、そういう見地よりも、むしろ将来の計画、そういうものに対して十分な必要性がある、その必要最少限度の中において、改善を条件にして、そうして運賃の問題を考えることの方が、−むしろ合理的ではないかというふうに私は実は考えております。ただ、しかしその場合において、何らかの形でもって運賃の値上げをできるだけ最小限に押えるということが必要であることはむろんでありまして、現状において最小限に——十分経理を検討して押えると同時に、やはり公共料金といわれるくらいでございますから、公的性格を相当に持っております。割引等の問題につきましても、相当な公共的な立場考えていかなければならぬ点もあるわけであります。そういうものについて、何らかの将来の建設資金等を、単に運賃値上げだけでなしに、何らか経費の融資をする方法等によって改善していくことができるならば、そういう方法もあわせて採用していって、そうして公共料金そのものの値上げを最小限に押えるということも、この際考慮すべきではないかと思うのでございまして、そういう点は、やはり今後大蔵大臣その他とも、総合対策ができました上で私ども十分協議をして、そうして公共料金の値上げ等に対処して参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。
  52. 西村力弥

    西村(力)委員 次に、間接税減税を今回行なわれるわけですが、その減税分を、料金もしくは物価にはっきりと確実に影響させるということ、これはぜひやってもらわなければならぬと思うのです。かつて入場税を下げた場合でも、興行界の諸君に来てもらって、これはもうぜひ下げろ、下げますと言ったけれども、問もなくそれは全部消えてしまったという体験を私たちは持っておるのです。今回はそれをはっきりしてもらわなければならない。いろいろ新聞なんかを見ますと、酒の関係は下げると言っているけれども、入場税関係は、そんなことはできぬ、設備改善とか従業員の待遇改善とかに食われてしまって、そんなことはできない、幾らかつき合いましょうという程度、内容が見えておりますけれども、しかし、間接税を下げたということを、そんな趣旨にとられたら本旨じゃないと思う。だから、これは何とかそういうことでかちっとやる方法はないのか、それはどう考えていらっしゃるか、効果的な方法をどう考えていらっしゃるか、こういうことであります。
  53. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この点につきましては、企画庁としても、今回の間接税引き下げに対して、それが消費者価格に全部影響してくるように希望をいたしまして、大蔵当局とも話をかねてからいたしております。今回の、近くできます総合対策の中にもうたわれますが、大蔵省もこの点については十分な努力を現在しておられまして、きょうの閣議で、先ほど申し上げましたように、あの間接税引き下げに対する大蔵省の方針、案というものの御説明がありました。いずれ発表されると思いますが、間接税引き下げについては、きょうの大蔵大臣説明によりましても、大蔵省関係の酒その他については、これは完全に実施ができますし、その他の通産省物資等についても、それぞれ御協力を願って、そして十分な引き下げを行なう、また、引き下げ価格の表示等もしてもらってやるということであります。  今お話の入場税の問題でございますが、これはスポーツ関係と、それから興行関係とあるようでございまして、厚生省と文部省関係にわたっておるようでございますが、今お話のような意見もあったけれども、逐次業者との話し合いで協力の態勢になりつつあるという御報告を実は承ったわけで、最終的になったとまではお話はございませんでしたけれども、なりつつあるということがございました。  ただ、その際、何か化粧品等について、一銭というようなものはどうするかというような問題があるらしいのでございまして、たとえば十一銭と申しますか、あるいは九銭ぐらいになった場合に、大蔵大臣の話では、一銭という貨幣がどっかに消えちゃうのだそうでございまして、それを九銭であったものを十銭にしてもらえないか、あるいは十一銭になるものを十銭に、思い切ってこの際一緒に下げないかというようなこともあるようでございますが、それくらいまでに大蔵省としては御努力をしておいでになるのでございまして、私どももそれを了承しておるわけでございます。
  54. 西村力弥

    西村(力)委員 それで、もう一つ私が指摘したいのは、物価は、値下げするにはやはり原材料の引き下げということが基本でなければならない。これはいろいろの方式があるでしょうけれども、この前久保田委員からいろいろなお話がありました貿易構造改善の問題ですね、そういう問題も、この原材料の引き下げという観点から相当考えなければならぬじゃないか、こう思うのです。原材料の引き下げということは、日本産業全体にとって、生産構造、価格形成の構造からいっても、ここはやはり重点を相当置かなければならぬじゃないか、こう私は思うのです。ところが、企画庁の案には、その点に関しては、ここには流通機構の改善なんかという点はありますけれども、原材料そのものの価格の引き下げという点については、あまりここには明示されていない。この点は私は、気がつかないのか、やれないからあげないのか。しかし、やれないと言わずにそれをやると言うことは、やはりこの物価引き下げばかりじゃなく、これは常態においてもぜひ必要な問題である、こう思うのです。そういう点についていかなる対策なり御見解なりをお持ちですか、それを最後にお聞きしたい。
  55. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 原材料の引き下げ等について、これを行ないますことは、むろん生産コストを下げることでございますし、それが消費者物価影響してくることでございますから、当然そういう面については考えて参らなければならぬことはもちろんでございます。従って、そういう総合対策を作りました上で、各省がそれぞれやります対策の中として、われわれとしても十分な関心を持って問題に当たって参りたい、こういうふうに考えておるのでございまして、決してそういう点をないがしろにしようとは考えておりません。
  56. 西村力弥

    西村(力)委員 まあそれだけではなく、私としては、日本産業は原材料を、国内産品ばかりではなく、海外に依存しておるという度合いが強いのですから、そういう面からも、原材料の引き下げということは、やはり政策的に取り上げて参らなければいかぬじゃないか、こういう点です。今各省との関係でと、こういうことでございますが、各省との関係で国内産品の原材料を引き下げるということだけでは、ほんとうの意味での日本のコスト引き下げ対策としてはならない。その点については、論議がいろいろ数字的にもなるでしょうし、また長くなりますからこの程度にしておきますが、この点をやはり強く大きな問題として、これは物価引き下げの恒久策の中に取り上げなければいかぬのじゃないかと思うのです。その点はどうやるかという問題になると対立するでしょうけれども、原則においては一致するのじゃないかと思うのです。それでだんだんのお話を長官からお伺いしましたが、大へんけっこうなお話をいろいろ伺いましたけれども、物が上がったのでは結局の話何にもならないのでありますから、上がらないようにしなければいかぬのだということになるわけですが、とにかく一つ池田政府は、経済見通しをまた誤った場合における政治責任の所在というものを、今のうちから腹の中に据えてかかってもらわなければならない、こういうことを最後に申し上げまして、私は終わります。
  57. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次会は明二十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時一分散会