○久保田(豊)
委員 私はその点について、実は
政府のそういう点についてのいろいろな検討なりあるいは準備なりは不十分じゃないかというふうに思うわけです。と申しますのは、特に本年度もそうでありますけれども、来年度以降も
日本の貿易つまり
輸出なり
輸入を決定していく環境というものは、最近では非常に変わってきているのは御
承知の通りであります。一方におきましては、共産圏地域の経済発展というものは、
アメリカも認めておる通り、順調な
——いろいろ中国の不作のようなああいう問題もありますけれども、それにしましても、全般としては資本主義国よりははるかに高い。少なくとも三倍程度の比率で、しかも計画的に順調に伸びておる。それが単に共産圏だけの問題ではなくて、最近ではどんどん貿易面その他にも出てきている。特に低開発地域の貿易や経済援助については、
相当の積極性を持ってきておるという事実があります。それに連関して、おそらくこのままでいきますれば、数年後においては、ルーブルが共産圏のいわゆる国際
共同通貨だけではなくて、資本主義世界まである程度進出してくるという
可能性もないわけではない、こういう
一つのあれがあります。それからさらに今度
アメリカの方を見れば、御
承知の通り、ドル防衛というものは、少なくとも今後数年間は、今の
アメリカの世界的な反共世界戦略とでもいいますか、こういったものが後退をしない限り、ドル危機というものは当然深化する。従ってドル防衛はますます強化する。そういう中で欧州のEECとの接近、結合ということが今問題になってきておるという
状態であります。さらに欧州の方は、御
承知の通りEECが発展の第二段階に入ってきた。さらにそれに連関して、イギリスがEECの参加の表明をしておる。観測筋によりますと、本年度内くらいにはこれが実現するのじゃないか、ということになれば、来年度あたりになりますと、そのほかのEFAT諸国がまた今EECに参加をする、あるいは準参加をするという問題が起きて、ここに
一つの大きな経済ブロックが出てくるという
状態です。さらに今度低開発地域を見ればどうかといいますと、ここじゃ、御
承知の通り、非常な開発意欲はありますけれども、銭足らずということ、そういう中で経済危機が進んでおり、そういう中でしかも、これは私がそう言うとあなたはおそらくそんなことはないと言われるでしょうが、私はある
意味においての社会主義的な要素がだんだん強くなりつつあるのが実情だと思う。その型にはキューバ型があります。また
インド型の民族資本なり国家資本主義を中心とした社会主義的な傾向、こういういろいろの型があろうと思います。しかし、そういう型によって経済開発がだんだん進むという事態があって、ここでも資本主義経済面と社会主義経済面とのある
意味での分裂というものが進み、それらがある程度の大きな
意味ではブロック化を促進しておる、こういうのが今の実情だと思います。こういう中で
日本は、
国内においては、今後少なくとも年百億ドル程度の経済成長政策を続けていかなければ、ここに産業循環の中断が起きてくる心配がある。そういう
意味においては続けていかなければならぬ。しかもその内容は重工業化する。重工業化してくれば、
輸出の
品目といえども、従来のように軽工業ないしは軽機械を中心とした
輸出では進まなくなってきて、どうしても重工業製品中心のものになってこざるを得ない。こういう中で
日本の現在の貿易政策なりなんなりでは不十分ではないかというふうに思うのです。
特に私が申し上げたいのは、現在の貿易政策というものは、今も
お話がありました通り、主として
アメリカを中心にした
輸出入、これを主軸にして、それから量的には少ないが、今後はEECの欧州諸国ということでしょう。それから東南アジアを中心とした低開発地域でしょう。それから最後に来るのは、共産圏貿易ということになりましょう。これは
政府の所得倍増計画の七〇年を見ましても、はっきりそうなっております。一番大きく伸びるのは
アメリカでありまして、これが一九五六年−五八年の平均の六億一千万ドルが一九七〇年には二十七億八千六百万ドルになるとかずっと出て、特にこの中で注意すべきは、共産圏貿易というものが非常に軽視されておるということであります。基準年次の八千一百万ドルが一九七〇年に四億七千九百万ドル、伸び率では一番大きいが、ウエートからいきますと、わずかに一九七〇年になっても五%程度の伸び率しか持っていないのであります。要するに、
アメリカ一辺倒、共産圏軽視、こういう格好の貿易の地域構造、こういうことです。こういうものと、今までの軽工業から重工業中心に移行していく
日本の貿易の商品構造とがはたして合うのか合わないのかということ。さっき申しましたような最近の世界の経済動向といったものとあわせて、基本的に貿易の商品構造がどう変わっていくか、また変わらなければならないのか、それに応ずる貿易の地域構造はどうなるか、それを裏づけていくというか、規制をしている最近の、共産諸国も先進諸国もあるいは後進諸国も含めた世界全体の経済動向というものがどうなっているのかという点の基本的な検討なくして、従来と同じように
アメリカ一辺倒の地域政策では、私は
輸出を直そうとしても伸びないと思う。それで
輸出と見合った原材料の
輸入もうまくいくはずがないと思う。これはある
意味においては、今日の経済の行き詰まりは、
政府のいわゆる無統制な設備投資の奨励策も
一つの原因であります。しかしながら、
アメリカ一辺倒のいわゆる貿易構造といいますか、こういったものがもう限界に来ている。この点私は明確に認識すべきじゃないかと思う。というのは、
アメリカは、御
承知の通り、
日本からいえば、毎年貿易面では大幅な入超です。その穴埋めとして何をしているかというと、要するに、CIFの買付と特需の買付あるいは各種の
資金や資本の導入とか、あるいは短期の
資金の借り入れとか、こういうことで穴埋めをしてきた。ところがその穴埋めがドル防衛にひっかかって、だんだんと細ってしまってない。だから、むき出しに貿易面のいわゆる赤字が出てこざるを得ない。これが今日の貿易、
日本の外貨危機ないしはそれに連関する経済の停帯といいますか、構造的停帯をもたらしている最大の原因じゃないか。少なくとも直接的にはそう見て差しつかえないと私は思う。そういう
意味では、今日の段階では、
アメリカの経済とその
アメリカのドル防衛その他の諸要素を
考えた場合に、
アメリカ一辺倒の貿易構造というものは限界に来ている。これを再検討することなくして、この所得倍増計画において、今の
お話でも、ことしもそうだが、来年も、おそらく
政府の言いたいことは、再来年も
アメリカを中心として貿易の拡大、
輸出の拡大をはかっていくんだ、こういうことでしょうが、この点は私は根本的に間違っておると思う。なぜかと言うと、
アメリカは、御
承知の通り、
日本よりもはるかに進んだ重工業国です。
日本が今まで入れているものは何かというと、軽工業品か、しからずんば軽機械です。これは向こうでは要らないものです。必要不可欠なものじゃありません。なくても済むものです。
日本と競合する産業があるのです。だから、入れ過ぎればすぐ向こうから反対が出るのは当然です。しかも今度は、重工業はどうかといったら、
アメリカに対しては、これは限界
輸出ではないかと思うのです。つまり、鉄鋼の
輸出がふえるといったって、これは向こうに鉄鋼ストとか何かがなければふえっこありませんよ。しかもきわめて伸び率は少ないし、しかも不安定です。何か特殊な事情がなければ、
日本の重工業品は向こうに行かないじゃないですか。こういう
状態になっておる。しかもその基準になっておるところのドル防衛は、少なくとも
アメリカのこれは世界的な、何と言いますか、反共政策の反映がこういうふうに現われてきたと思うのです。ですから、これは慢性化している。ことしもすでに総合収支の赤字は、年率にして五十万ドルだ。しかも手持ちのドルは百七十億ドルを割って、百六十八億ドルになっている。このままいけば、もう一そうドル危機がひどくなることは明らかです。その上へもってきて、EECの攻撃があるから、これはたまらないというので、防衛的な
意味でケネディは、今度の政策を立てて、EECとの間に少なくとも関税を共通に一律に引き下げて、少なくとも
アメリカの対欧州の
輸出を減らさないようにしよう、そのかわり、ある程度欧州のいろいろの品物が
アメリカへよけい入ってくることは認めよう、その方が得だというので、御
承知のような方策を出した。つけたりみたように、そういうあれが、EECと
アメリカとの間に貿易の相互一律引き下げができれば、その恩恵も
日本に及ぼすといっているが、しかし、これは及ぼしっこありませんよ。私どもはそう見ている。そんなに甘くはありません。そんなに甘くないことは、あなたが箱根会談で百も
承知のはずじゃありませんか。八〇%は少なくともおれの方の
輸出をふやしてくれと言ったら、断わられた。そうじゃなくて、
アメリカの方からいえば、何よりも自由主義諸国、資本主義諸国全体としては、
アメリカのドルの強化が一番中心問題だから、それに協力する
意味において、力をかせといわれたじゃないですか。そういうのが事実でしょう。そういう言葉で言ったかどうか知りませんけれども、あの経過を見るというと、そういうことになる、こういうことです。ですから、私は、
アメリカという市場は、重工業化して、しかも原料を
国内に持っておらず、
輸入するという
立場からいいますと、これは
日本の市場として、
輸出市場としてあるいは
輸入市場として、基本的に私は、決してこれにばかりたよっていくということが間違いではないか。重工業の市場は、
アメリカに開拓はできません。これは多少ふえるくらいのものはできるかもしれませんけれども、向こうに何かの特殊な事情がなければ、開拓できるはずはないと私は思う。現実の今までの実績もそうであります。向こうとこっちの技術水準の違いやら、その他いろいろのことを
考えてみれば、いかにこっちが低賃金で切り込んでみたところが、そう簡単にはいかない。しかも主要なる軽工業品というものは、向こうに競合産業があり、しかも今度は欧州から入ってくる。この二つから追い出される危険性が多い。多少伸びても、少なくとも
日本の年々百億ドルの設備投資をまかなうための
輸入を必要とするだけの伸びというものは、これは困難でしょう。しかもその上へもってきて、ドル防衛だ、EEC
関係だなんという、ある
意味においては政策的な、政治的な要因が加わっておって、これは単に
日本が安い、いい品物をよけい作って出せば、
アメリカへよけい入るというものじゃ、もう今日ではありませんよ。ある
意味においては、経済外的な制約を食っておる、こういう段階でしょう。こういう情勢をあなたはどう認識されているか。特に
アメリカの、
日本の貿易市場としてのいわゆる性格なり発展性というものについて、どんなふうに
考えておられるか、この点を
一つはっきり聞いておきたいと思います。