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1962-04-04 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月四日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 八木 一男君       伊藤宗一郎君    浦野 幸男君       加藤鐐五郎君    海部 俊樹君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       中山 マサ君    永山 忠則君       楢橋  渡君    早川  崇君       松浦周太郎君    松山千惠子君       渡邊 良夫君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         大蔵事務官         (主計局次長) 谷村  裕君         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (保険局長)  高田 浩運君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君         労働政務次官  加藤 武徳君         労働事務官         (職業安定局         長)     三治 重信君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         厚生事務官         (年金局国民年         金課長)    高木  玄君         厚生事務官         (年金局福祉年         金課長)    鈴木 正信君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 四月四日  委員安藤覺辞任につき、その補欠として海部  俊樹君が議長指名委員に選任された。 同日  委員海部俊樹辞任につき、その補欠として安  藤覺君が議長指名委員に選任された。 同日  理事澁谷直藏君同日理事辞任につき、その補欠  として井村重雄君が理事に当選した。     ————————————— 四月二日  国民健康保険改善に関する請願栗原俊夫君  紹介)(第三一九一号)  同(笹本一雄紹介)(第三二四八号)  同(山口鶴男紹介)(第三二四九号)  同外一件(福田赳夫紹介)(第三四八七号)  同外二件(東海林稔紹介)(第三五八一号)  同(田邊誠紹介)(第三五八二号)  国立医療機関の医師、看護婦増員等に関する請  願外一件(栗原俊夫紹介)(第三一九二号)  同(笹本一雄紹介)(第三二五〇号)  同(山口鶴男紹介)(第三二五一号)  同外二件(福田赳夫紹介)(第三四八九号)  同外一件(東海林稔紹介)(第三五八三号)  同(田邊誠紹介)(第三五八四号)  生活保護法基準額引上げ等に関する請願(栗  原俊夫紹介)(第三一九三号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三一九四号)  同(笹本一雄紹介)(第三二五二号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第三二五三号)  同(久保田円次紹介)(第三三四一号)  同外一件(福田赳夫紹介)(第三四八八号)  同外二件(東海林稔紹介)(第三五八五号)  同(田邊誠紹介)(第三五八六号)  結核予防法改正及び予算増額に関する請願(  栗原俊夫紹介)(第三一九五号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三一九六号)  同(笹本一雄紹介)(第三二五四号)  同外一件(山口鶴男紹介)(第三二五五号)  同外二件(福田赳夫紹介)(第三四九〇号)  同外三件(東海林稔紹介)(第三五八七号)  同(田邊誠紹介)(第三五八八号)  結核回復者対策確立に関する請願外一件(栗原  俊夫紹介)(第三一九七号)  同(田邊誠紹介)(第三一九八号)  同(笹本一雄紹介)(第三二五六号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第三二五七号)  同(久保田円次紹介)(第三三四二号)  同(福田赳夫紹介)(第三四九一号)  同(東海林稔紹介)(第三五八九号)  同(田邊誠紹介)(第三五九〇号)  国立病院療養所給食費引上げに関する請願  外一件(田邊誠紹介)(第三一九九号)  同(山口鶴男紹介)(第三二五八号)  同(久保田円次紹介)(第三三四三号)  同(福田赳夫紹介)(第三四九二号)  同(田邊誠紹介)(第三五九三号)  引揚者給付金等支給法改正に関する請願(広  瀬秀吉紹介)(第三二〇〇号)  同(山田長司紹介)(第三二六〇号)  同(尾関義一紹介)(第三四七〇号)  同外五件(松本俊一紹介)(第三四九四号)  同(神田博紹介)(第三五二五号)  看護人名称改正に関する請願飛鳥田一雄君  紹介)(第三二四〇号)  引揚医師特例受験資格に関する請願小澤佐重  喜君紹介)(第三二四一号)  同(園田直紹介)(第三三一四号)  同(柳谷清三郎紹介)(第三三四六号)  同(宇田國榮紹介)(第三四三八号)  同(藤本捨助君紹介)(第三四三九号)  同(岸本義廣紹介)(第三四九六号)  同外一件(小澤佐重喜紹介)(第三五二〇  号)  同(田澤吉郎紹介)(第三五二一号)  元南満州鉄道株式会社職員の戦傷病者戦没者遺  族等援護法適用に関する  請願外三件(小沢辰男紹介)(第三二四二  号)  同外三件(永山忠則紹介)(第三五七九号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願大村清一紹介)(第三二四三  号)  同(黒田壽男紹介)(第三二四四号)  同外一件(和田博雄紹介)(第三二四五号)  同外一件(橋本龍伍紹介)(第三三三九号)  同(藤井勝志紹介)(第三三四〇号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三五七六号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願片山哲紹介)(第三三三八  号)  健康保険改善に関する請願笹本一雄君紹  介)(第三二四六号)  同外四件(山口鶴男紹介)(第三二四七号)  同(久保田円次紹介)(第三三四四号)  同外一件(福田赳夫紹介)(第三四九三号)  同(東海林稔紹介)(第三五九一号)  同(田邊誠紹介)(第三五九二号)  原爆被害者援護法制定に関する請願重政誠之  君紹介)(第三二五九号)  離島及び無医村の医療対策に関する請願小澤  佐重喜紹介)(第三三一二号)  同(園田直紹介)(第三三一三号)  同(柳谷清三郎紹介)(第三三四七号)  同外一件(小澤佐重喜紹介)(第三五二二  号)  同(田澤吉郎君外一名紹介)(第三五二三号)  同(中野四郎紹介)(第三五二四号)  療術の制度化に関する請願池田清志紹介)  (第三三一五号)  同(田中彰治紹介)(第三三八八号)  同(有田喜一紹介)(第三四一二号)  同(大上司紹介)(第三四一三号)  同(岡田修一紹介)(第三四一四号)  同(池田正之輔君紹介)(第三四一五号)  同(金丸信紹介)(第三四一六号)  同(神田博紹介)(第三四一七号)  同(黒金泰美紹介)(第三四一八号)  同(小島徹三紹介)(第三四一九号)  同(河本敏夫紹介)(第三四二〇号)  同(佐藤虎次郎紹介)(第三四二一号)  同(重政誠之君外一名紹介)(第三四二二号)  同(鈴木善幸紹介)(第三四二三号)  同(砂原格紹介)(第三四二四号)  同(關谷勝利紹介)(第三四二五号)  同(田邊國男紹介)(第三四二六号)  同(富田健治紹介)(第三四二七号)  同(竹山祐太郎紹介)(第三四二八号)  同(渡海元三郎紹介)(第三四二九号)  同(中川俊思君紹介)(第三四三〇号)  同(中野四郎紹介)(第三四三一号)  同(中村幸八君紹介)(第三四三二号)  同(永田亮一紹介)(第三四三三号)  同(西村直己紹介)(第三四三四号)  同外一件(濱田幸雄紹介)(第三四三五号)  同(八木徹雄紹介)(第三四三六号)  同(山田彌一紹介)(第三四三七号)  同(永山忠則紹介)(第三四七二号)  同(滝井義高紹介)(第三五七七号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三五七八号)  国立病院療養所看護婦増員に関する請願(  戸叶里子紹介)(第三三四五号)  同(片島港君紹介)(第三四七一号)  栄養士法改正に関する請願臼井莊一君紹  介)(第三三八七号)  緊急失業対策法改正に関する請願(瀬戸山三  男君紹介)(第三四四〇号)  業務外外傷性せき髄損傷患者療養給付等に関  する請願田原春次紹介)(第三四七三号)  同外六件(田原春次紹介)(第三五九四号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願松本俊一君  紹介)(第三四九五号)  同(前田榮之助君紹介)(第三五八〇号)  全国一律八千円の最低賃金制確立に関する請願  外二十八件(五島虎雄紹介)(第三五二六  号)  同(石村英雄紹介)(第三五六六号)  同(稻村隆一君紹介)(第三五六七号)  同外七件(小松幹紹介)(第三五六八号)  同外一件(田邊誠紹介)(第三五六九号)  同(永井勝次郎紹介)(第三五七〇号)  同(二宮武夫紹介)(第三五七一号)  同外一件(松原喜之次紹介)(第三五七二  号)  同外三件(村山喜一紹介)(第三五七三号)  同外三十六件(森島守人紹介)(第三五七四  号)  同外十件(山口鶴男紹介)(第三五七五号)  建設労働問題に関する請願赤松勇紹介)(  第三六一二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  参考人出頭要求に関する件  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第三二号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七二号)  臨時医療報酬調査会設置法案内閣提出第一〇  一号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)  医療法の一部を改正する法律案滝井義高君外  十一名提出衆法第二八号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りをいたします。  理事渋谷直藏君より理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、同君の理事辞任を許可することに決しました。  つきましては、理事に一名欠員を生じましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、補欠選任につきましては、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、井村重雄君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 中野四郎

    中野委員長 児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案臨時医療報酬調査会設置法案八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案及び滝井義高君外十一名提出医療法の一部を改正する法律案、以上六案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出があります。これを許します。八木一男君。
  6. 八木一男

    八木(一)委員 議題になりました国民年金法の一部を改正する法律案中心に御質問を申し上げたいと存じます。  前から幾分御質問を申し上げておりまして、国民年金のまず金額の問題、開始年令問題等について大まかな御質問を申し上げました。きょうはそれに続きまして、一番大綱的な問題について最初、具体的な問題についてあとから、順次御質問を申し上げたいと存じます。  この前の最後にちょっと触れたわけでございますが、前回の国会で大綱的な付帯決議に「保険料年金額給付要件受給対象等すべての面において社会保障精神に従って改善すること。」という項目がございます。これを抽象的にこの前申し上げました。そういう方向について、前向きに検討していきたいという厚生大臣の御答弁をいただいたわけでございます。その具体的内容について、逐次御質問を申し上げたいと思います。  まず保険料の点でございます。小林委員からもお触れになった問題でございまするが、保険料は今定額保険料になっております。非常に財政的の余裕のあるお金持ちの人も、その日暮らしの人も、同じような保険料をとられるということにつきましては、社会保障精神から見ましたところ、これは非常に当を得てないと思うわけであります。まず一番前段に厚生省と私どもの意見の一致を見ましたことは、拠出制をとりましたことは、いわゆる保険会社のような私的保険という意味で取り入れたものではない、年金というものを、その所得保障の必要な人に十分に支給できるような体制を作るために、無拠出だけでは、一般財政から負担するのには、なかなか十分なものにいくまでに困難な状態があって、従って十分なものになりにくいので、国民方々が、自分の老後を、あるいは障害の場合を、あるいは死んだ場合の遺族の場合を考えて、貯蓄する精神を総体的に生かして、その方々から拠出をしていただいて保険料という形でとっておりますが、いわゆる掛金というものを総体的にいただいて、一般財政から出たお金と合わして原資を豊かにして、それで多くの人に十分な所得保障をしようという意思から出た問題であるということの意識の統一ができたわけでございます。そういう観点に立ちますると、保険料というものの性質も、定額保険料ということではなしに、やはり負担能力の多い人からはたくさんとり、それから少ない人からは少なくし、あるいはできない人は、現在制度がございまするけれども、もっと拡大をした範囲内において免除という制度をとり、しかも、そのような保険料の納入の多寡年金額多寡には関係しない、その中で所得再配分が行なわれて、年金支給額が特に必要な人にたくさんいく、少なくとも特に必要な人に、必要度の少ない人と同額にいくというような精神に従って、年金を逐次改善していかなければならないわけであります。そういうような意味で、社会保障精神に従って改善するということが、本委員会の満場一致の決議になっております。厚生大臣としても、そういう方向についてのお気持を御披瀝いただいたわけでございます。その意味で、保険料というものが定額であるという点が一つの大きな矛盾であろうかと思いまして、収入比例制というようなものを、当然前向きに考えていっていただかなければならないと思うわけでございますが、それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  7. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの問題につきましては、厚生省として十分検討すべきものであるということを前にもお答え申し上げました。ただいまもさように考えております。
  8. 八木一男

    八木(一)委員 小林委員の御質問についての御答弁もあったようでございますし、今、前向きの厚生大臣の明確な御答弁がございましたので、ほかの質問点もございますから、この問題については前向きの御努力を強くお願いをいたしまして、一応おくことにいたします。ただし、先ほど私の質問の中の説明に申し上げましたように、収入比例制にすることを実施する場合に、保険年金額を変えるというような社会保険的な考え方を入れないで、収入比例制を必ず前向きに考えていただくというふうにお願いいたしたいと思います。  その次に、いろいろの給付要件でございますが、たとえば障害年金給付要件につきましては、かなり改善を見ておりますけれども、やはり絶対的な改善にはなっておらないわけであります。たとえば、十八才ぐらいで一級障害を不幸にして受けた方が二十才になる、その場合に即時障害年金は受けられないし、また一級障害年金は、現行法では、この年金制度対象者になってから一級障害を受けないと、一級障害のものが完全にはこないわけであります。これはやはり、最初の組み立てのときに私的保険の思想が間違って入ったために、こういうような状況になっておろうかと思います。一級障害に対して十分な年金支給しなければならないということは、社会保障所得保障の中の原則であって、何人も否定する人はないわけであります。しかるにもかかわらず、十八才で対象年令に達していないときに一級障害を受けたならば、これは今の福祉年金対象になるだけであって、拠出年金の方の高い方の——十分ではありませんけれども、幾分高額の方の障害年金をもらえることがないということであっては、大きな盲点になろうかと思います。そういう意味で、いかなる年令において一級障害を受けようとも、これは二級、三級にも通ずる話でありますが、そういう障害を受けようとも、少なくとも生産年令人口である二十才、親から養ってもらうという状態でなしに、障害者であろうと一木立ちして生活をしなければならない年令に達したならば、即時一級障害金額——前の障害であるとか、保険料を払ってからどのくらい待たすとか、そういう要件なしに即時一級障害年金を払うように、そのように改善をしていただくことが必要であろうかと思うわけであります。この点について、厚生大臣にぜひ前向きに取っ組んでいただきたいと思います。お答えをいただきたいと思います。
  9. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘の点は、確かに問題となるべき事項だと思います。これについては、またいろいろ考え合わさなければならぬ問題もあろうかと思いますけれども厚生省で取り上げまして検討いたしたいと思います。
  10. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、拠出年金の方と福祉年金とも関連ございますが、拠出年金の方を伺っている際に申し上げておきますが、前々から再三申し上げております内科障害の点であります。一般的に障害基準として、とにかく外から見える障害と同じく労働能力を喪失し、所得能力がない、極端に言えば同じく介護を必要とする、ただ能力がないだけでなくて、何分介護してもらわなければ生活ができないという程度の人まであるわけでありますが、そういうような内科障害について支給の道を開くべしということは、年金論議が始まった最初から行なわれておったわけでございます。それに対して厚生省の方では、非常にそれを考えていかなければならないと言いながら、その問題を具体化するのに非常におくれているわけでございます。非常に遺憾でございますが、どうしてこんなにおくれているかにつきまして、実情をお教えをいただきたい。
  11. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この点については、政府委員からお答えいたします。
  12. 小山進次郎

    小山政府委員 前々から申し上げておりますように、この問題については、専門家によっていろいろ基本的な問題を研究してもらっております。作業は大体八分通り進みまして、おそらく五月一ぱいにはほぼ中間答申が得られると思います。中間答申が得られましたならば——中間答申は主として結核関係精神障害関係についての分でございます。しかし、これでもって大体内科障害の大勢はきまるわけでありますから、それについての一通りの整備ができれば、これをほかの内科疾患にも及ぼしていくというようなことにもなって参りますので、おおよその心組みとしては、五月一ぱい中間答申を受けましたならば、これをもとにしていろいろな問題点の整理をやります。おそらくことし一ぱいには、一通り案はまとまると思います。ただ、これは八木先生から繰り返し、御鞭撻というより御叱責をいただいておる問題でございますが、実はそう簡単な問題じゃない——というよりも、むしろ専門家筋の間では、私がこの問題で何とかしようという態度をとっていることについてさえも、お前はほんとにそういう気持であるかと言われるくらいに、いろいろむずかしい問題を含んでいるわけであります。従って、これがはたしてうまく軌道に乗った制度にできるかどうかという点については、なお十分な成算を持っておるわけではありませんけれども、しかし、とにかくこの機会に問題点を十分に整理して、われわれの段階で解決しなければならない問題で解決のつかない問題は、どういうふうな事情で解決しないか、どういう条件を与えれば解決することができるかというようなことを明らかにするところまでは、ことし一ぱいにぜひ持っていきたい、かように考えておる次第でございます。もうしばらく御猶予をいただきたいと思います。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 この問題について、数年間非常におくれておりましたことにつきましていろいろと追及をして参りました。去年あたりから厚生省の方も非常に本腰になられて、そのような審議会調査会、そういうところの審議を促進する要請をされて準備をされている御努力は、おくればせではございますけれども、けっこうだと存じます。今小山さんのおっしゃったように、非常に、そういう学者筋では困難な問題があるということを言っておられます。これは結局、そのような技術的な判定と政治との断層によるものだと思います。学者は、その国民年金というものが、所得保障に値する人に所得保障をしなければならないという観点は二の次、三の次にいたしまして、学者的な考え方に固着して考えておられるのではないかと推定するわけであります。ところがこれを、大体のところでほんとうの実際の行政に移すのは、その主管官庁である厚生省推進役でなければならないし、そのことをきめるのは、国民大衆の、真の意味世論に従った政治の場できめなければならないと思うわけであります。この学者方々論議の詳細は私存じませんけれども前々から御質問申し上げましたときに、この問題の一番の中心担当者である小山さんの、ずっとこの任に当たっておられます御答弁の中では、小山さんも、これはしなければならないと思うけれども学者の中で、この障害が固定しているか移動するかということが問題になるということであります。私ども政治の場であれば、ほとんど十のうち九、あるいは百のうち九十九まで固定しておっても、学者間では、あるいは何らかのことで機能を回復するかもしれないというような純学術的な心配を持たれて、それでこれは医療保障の範疇ではないかというようなことを言われるわけです。医療保障の方で、そういうものを治療する問題について、機能回復について考えていただくことは当然考えなければなりませんけれども医療保障に付加した所得保障というものが、ほとんどないか不十分であるときに、そのようなからだの状況所得能力が不足していましたならば、所得保障という面で考えなければならないことは、政治の面では明らかだろうと思う。学者の諸君の中に、厚生大臣立場になって考えた人はいないのではないか。実際に障害者になった対象者としての国民立場に立って考えた人はいないのではないか。また、その問題で、ほんとう政治国民世論に従って実現しなければならないという政治家立場に立って考えた人も少ないのではないか。そういう点で、学者間に多少の異論があろうとも、政治的に見て、その問題が、障害が続くという実情を判定される場合には、学者が何と言おうとも踏み切っていただくことが必要ではないか。例といたしまして、たとえば、よく前から申し上げましたけれども、結核の治療法に肺切除という治療法が一般的になっております。大体において、そういうことで切除いたしましたならば、そこに再生はいたしません。ただ、学者の中には、ほかの機能はふくらむなんということを言う人がいるかもしれませんけれども、現実に片肺全部を切除いたしますれば、機能は大体半分になるわけであります。たとえば目が見えなくなれば耳の勘がよくなるというような、人間の生物としての自然の原理で一%や二%はほかの機能がこれを補う作用は相対的にあるかもしれませんが、肺を半分とってそこに肺が半分はえてくるという現象は、今のところ全然予想されないわけであります。肺の機能が半分になれば、運動能力がなくなるだけでなしに、残りの肺の中に肺の疾患があって、そこの機能が低下しておる人が多いわけでありますから、そうなれば肺活量が千くらいになる。千くらいになれば、ちょっとかぜを引いて、二十時間、三十時間肺炎状態を起こせば、現在千の肺活量が、そのときに一時的に四百か五百になる。これは死亡の状態であります。赤ん坊の四百ならば持ちますが、成年の四百なら、どんなに安静にしておっても、首を締められたと同じで死ぬわけでありますから、そういうことについても用心をしなければならないし、階段は昇進ができない、いろいろなからだを動かす作用はできない。一般的な場合は、今言ったように死ぬような状態が強いから、介護を要する。そういうことになってくると、当然両足のない方、両手のない方、同様な状態にあるわけであります。そういうような方に対して、このようなほんとうに机の上の算術みたいな、学問的な考え方でチェックされたならば、国民の不幸これに過ぎるものはない。学者の趣味で国民が不幸に陥れられるということがあってはならないと思う。たとい機能がちょっと回復したからといって、そういう人たちに障害年金をやってはならないという理屈はどこにもないと思う。ただ程度が少ないから、このくらいの年金を上げるのは、今の国家財政上少しもったいないじゃないかという非常にけちな財政計画を考える人ならば、そういう観点がわずかに成り立つだけであって、やるのはとんでもない方向違いだということには絶対にならない。そういうことでございますので、学者諸君が学者的良心で、学問の範囲内だけにおいていろいろの審議をされることはけっこうでありますけれども、それを扱う者としては、審議会学者的な偏向を来たした答申その他を出しましても、それに対しては行政上の責任者として、あるいは政治家としての判断をされて、その問題は政治的に踏み切るというような勇断がいただきたいと思うわけであります。また学者諸君も、今何か、あなたはということを学者は言っておられたということですが、その学者については、事実を知らないながらばく然と心外に思っておるわけでありますけれども、しかし、小山さんあたりの、このような年金制度社会保障制度としてのいろいろの立場の説明によって、学者方々も、その純学理的な、偏狭な態度ではなしに審議されるだろうと私も期待をいたしておりまするが、不幸にして偏狭な結論が出たときには、政治的な勇断をもって厚生大臣がこれにお当たりになる、偏狭でない非常に的確な前向きの結論が出たら、もちろんその通りでけっこうでありますけれども、そのようにぜひしていただきたいと存じまするけれども、一つ厚生大臣の御答弁をお願いいたします。
  14. 小山進次郎

    小山政府委員 私の申し上げ方が、ちょっと先生の誤解を受けたようでありますが、現在検討している学者諸公は、この問題については非常に熱心なんであります。ある意味においては私ども以上に、結核関係の人は、ぜひ結核関係の人に障害年金が出るようにしてやってほしい、また精神関係の人は、ぜひ精神障害者年金を与えてほしい、そういう気持で、いわば学界の中堅一流の人々に検討していただいているわけであります。ただ問題は、そういう気持でいろいろ考えてみても、たとえばこの点をどうする、あの点をどうするということになったりすると、なかなかこれはむずかしい。じゃこれはこういうふうに考えるというようなことを繰り返していくようなことに時間をかけている、こういうことであります。決して学者一般が、そういうふうな、いわば冷たい気持で考えておるという趣旨ではないのであります。一般論として、私に対して、主として社会保障に詳しい人々の間に、お前本気でやれると思っているのかということはときどき言われる。これは先生御想像おつきだと思いますが、そういうような事情でございますので、かりにも私の申し上げ方のために学者諸公に思わざる誤解を持っておられるとしたら、これはぜひ取り消さしていただきたいと思います。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっと認識が食い違ったようでございますが、食い違ったことを非常にうれしく存じます。その学者方々が熱心に取っ組んでいただくことは、ほんとうに千万の援軍を得たような気がいたします。一般論としてそのようなことを言っておられる方々は、これは社会保障の本義を知らない人でありまして、そのようなことは、どんな人が言おうとも、そういうものから消極的な影響を受けずに、一つ厚生大臣が前向きで取っ組んでいただくようにぜひお願いをいたしたいと思います。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの問題についての経過は、今政府委員が申し上げました通りでございます。皆さんそれぞれ熱心に御審議を願っております。その結論を見ました上で判断をいたしたいと思うわけであります。問題は、そういうふうな状態にある人に対する所得保障をいかにするかというような問題、抽象的に言えばそういうことになろうかと思いますが、私、その結論を見まして、ただいまのいわゆる国民年金制度というものとにらみ合わせてみて、国民年金制度の範疇において解決することができる、あるいはそれを適当とするというような場合においては、その判断をしなければならぬと思います。あまりにも原則の食い違ったことをやるわけにもいかぬと思いますけれども政治的な判断においてこれが適当であるということになりますれば、その判断をしたいと思います。また、客観的な冷静な御研究の結果に待って、その上で政治的な判断を必要とすればそれをやりたいと存じます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど少し食い違って理解をいたしましたけれども、そういう学者方々の御意見でしたら、その審議会ですか、調査会ですか、その結論は前向きの結論が出ようと思います。もし万が一少しゆっくりした、少し曲がった結論が出ましたら、そこは厚生大臣の勇断で進めていただきたいと思います。それにつきまして今調査の段階を小山さんから伺いましたので、少なくともこの問題について、来年度一つ改正案に——急速に急いでいただいて、大体の結論が五月について、事務的にまた年内にいろいろなことが見当がおつきになるような段取りらしゅうございますから、それがほかのことでおくれないように、ぜひそれ以上に促進をしていただいて、来年度の法律の改正提出に間に合うように御努力を願いたいと思います。厚生大臣も、ぜひ来年度そういう具体的な案を出すために最大の努力をされるということを、一つお答えをいただければしあわせだと思います。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 制度改善につきましては、あくまでも積極的にやりたいと思っておりますので、ただいまのような問題につきましても、できるだけ早く結論をいただきましてその上でやって参りたい、かように考えております。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 次に、これは福祉年金にも関連がございまするが、母子年金の方に多子加算という制度があります。これは母子年金にも、母子福祉年金にも、あるいは準母子年金にも、準母子福祉年金にもございまするし、それからまた、児童扶養手当法の方にもそれに準じたことがあるわけでございます。ところで、私どもは、この多子加算という制度は、内容がまだ非常に不十分である点は遺憾といたしますけれども、そういう制度自体としてはよい制度だと考えております。また政府の方も、そうお考えになっていただいていると思います。与党の方々も、当然そうお考えであろうと思っているわけであります。ところが、これが母子の方にございますけれども障害者の方には、たとえば配偶者とかその子供に対する加算がないわけでございます。加算というのは、結局母子のときには多子加算という名前になっておりますのは、母子という名前ですから、母親と子供一人で一組になっております。ですから、母親と子供一人に母子年金というものが支給されておりまして、そうして二番目の子供さんがございますと、生活の困難の度が多いからということで、この加算というものがあるわけであります。障害者の場合には、加算の制度がないと私は今理解しております。小山さんの方で何かそういうことで関連のようなものがあるかどうか存じませんが、ないと思います。そうなると単身の障害者——福祉年金では残念ながら一級障害だけでございますし、それから拠出年金は一級、二級ということになっておりますが、とにかく単身の障害者所得能力がないから、それでこの金額は非常に乏しくて、少な過ぎると思いますけれども、そういうものが支給されることになっているわけでございますが、その人に子供があった場合、配偶者があった場合、やはりそれだけ生活の費用がよけいかかるわけであります。そういう点について、母子の方に多子加算があって、障害者の方に加算がないということは、非常にこれは矛盾をしていると思います。矛盾の点を追及するわけではありません。追及したところで始まらないので、早くこの矛盾がないようバランスをとられるように、この障害者の家族に対する加算という問題を解決していただきたいと思うわけであります。それについて厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 母子の問題については、八木さんも御承知の通り、年来母子福祉の問題として取り上げられてきておる問題でございます。その一つの現われとしては、年金制度の上においても母子家庭という特殊の状態をとらえてやっているのでありますが、障害者関係につきましては、そこまで制度がまだ進んでおらない状態であります。障害者生活状況によりましては、おっしゃったような問題もあり得ることと思います。この点については、前にも御要望のあったところでございます。私どもとしても、もちろんこの問題についての検討を進めていくことにやぶさかではございません。十分検討をさせていただきたいと思いますが、沿革上母子の問題とこの問題とは若干取り上げ方がおくれておるということと、それから障害者生活の実態というものが、いわゆる母子その他とはまた違っている面もあるわけでございまして、その辺を一つよく検討させていただきたいと思います。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 非常に前向きな御答弁で、ありがたいと思います。ぜひ急速に実現していただきたいと思うわけであります。何といいますか、障害者には、やはり不幸にして家族の少ない人に重度の障害の人が多いですけれども、それは根本的に、非常に何とも言葉で表現できないような状況にある。たとえば十五、六才でそういう障害を受けた、そして家族を扶養できないからということで、人間として一番重要な要素である結婚、それから子孫を残すというようなことまであきらめている方があると思うのですが、それが基本的人権の最も大きな侵害の一つであろうと思う。それからまた、前に結婚して奥さんもあり、子供さんもある人が、後に交通事故その他いろいろな条件で障害を受けた、この方は結局家族を作っておられるわけでございますが、ほんとうは当然所得保障で十分に生かしていかれなければならないのに、今制度が少ないのですね。基本の障害年金はもらっているが、ほかは少ないので、これば人によっては、かわいい子供であっても、こういう障害を受けるのだったらこういう子供を作らなかったらよかったというような、自分の人権を全然なしにした考え方をしなければならないような気の毒な方もあると思う。そういうように非常な人権を侵害された方について、国の方があたたかい配慮で、そういう方々がそのような悲しい思いをしないでも家族とともに生活できるように、また今単身の方もそういう制度があるので、やはり家族と生活をするというような人間の一番大事な生活に望みを持たれることができるように、ぜひそういうことを一これは障害年金をふやすということが一番基本でございますが、それとともに、この家族加算のこともぜひお考えをいただきたいと思います。非常に前向きな御答弁をいただきまして、うなずいておられますから、そのように最大の御努力を願えるものと理解をいたしまして、前に進めたいと思います。  それから次に、母子年金の方でございますが、母子年金、準母子年金等の問題であります。この問題について、遺族年金というわけでございますが、寡婦年金、母子年金、それから遺児年金というような形になっております。この遺族年金総体について、子供の男性の場合は別ですけれども、おとなの男性の場合の遺族についての配慮が一つもないわけです。大体において男性の方が所得能力を持っておりますから、遺族年金の必要の度は女性の場合よりは少ないと思いますけれども、必ずしも全部がそういうわけでありませんで、結核の療養を長くしていた人が、そうして働いて自分を扶養してくれた奥さんをなくした場合というような場合も、かなり例があるわけであります。一つの例でありますけれども、ほかの例もずいぶんあるわけであります。ですから、やはり男性の遺族、鰥夫または男性の遺族とその子供、父子というような場合に対しても、このような年金支給される道を開いていただく必要があろうと思うわけであります。そういう点につきまして一つ厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題については、政府委員の方からお答えいたさせます。
  23. 小山進次郎

    小山政府委員 確かに遺族年金という考え方をとりますれば、先生がお考えになっているような問題が当然出てくるわけであります。これも沿革を申し上げますと、社会保障制度審議会がこの問題を検討いたしました際に、一応ここまでは広げまい、こういうような考えで現在の制度を作ったわけであります。私どもも、結局国民年金で今後やらなければならぬ仕事がたくさんあるわけでありますけれども、そういう仕事の手順なりあるいは順序から見て、この制度をそういうふうに男性に対しても広げるというふうに、これは確かにきめのこまかい配慮ではありますけれども、そうすることが年金制度の発展のために本筋なのか、それよりも、かねがね仰せになっているように、もう少したよりに値する程度の内容に、もう少し早く今の制度をしていく方が本筋に近づくかということをいろいろ検討したのでありますけれども、どうもやはり現在の段階としては、もう少し年金の内容の充実を考慮することに全力を尽くしたいと考えておるわけでございます。従って、こういう問題については、そういう問題についての目鼻がついてから手をつける、そういう問題として、従って、将来十年くらいの間隔でものを考える場合には当然登場をしていい性質のものでありましょうけれども、十年間の後の時期に登場するような問題として考える、こういうふうにいたしたいということで今研究を進めておる、こういう状態でございます。
  24. 八木一男

    八木(一)委員 今、年金局長の言われましたように、国民年金の本筋の点で改善すべきことが猛烈にたくさんありますから、本筋に打ち込んでおらるること、これ自体の努力やお気持につきましては、敬意を払いたいと思うわけであります。しかしながら、考えなければならないことを、片一方を先にして片一方をあとにするということは、これは十分な努力とは言えないと思う。やはり最初ですから、たとえば年金局の方々の人員が足りないという点があって、そういうことができないという要件もあろうかと思いますし、また大蔵省の方が来ておられるかと思いますけれども——見えておりますか。
  25. 中野四郎

    中野委員長 まだ来ていません。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 大蔵省の方から何といいますか、これは何回も前から申しておりますから申し上げませんけれども年金がこれだけ本筋でぐっと伸びなければならない、枝の方も、小さなつややかな葉を出さなければならないという制度であるのに、ほかの、もう何十年も前からできた制度と同じように扱って、ちょっとふやせばいいのだというような認識不足がありますので、厚生省努力しても——こっちの幹の方を努力したら、こっちの葉っぱの方が努力できないという実情、努力はしても実現がしにくいという状況があると思うが、この状況はいけないことだと思う。大蔵省の人が十分な理解をそこまで持たれないことは、これは不勉強であります。厚生省の人が、幹を伸ばすので葉っぱの方を忘れることも、これは努力の不足であります。ただ、それには人員の点もあろうと思います。閣議のこの問題の取り上げ方はやはりひんぱんでもなく、十分でもない、ただほかの既成の制度のちょっとした改正と同じ程度に扱われておるという点もあろうかと思います。そういう点を直して、やはり大きなものを確立するとともに、きめのこまかなことも同時に確立をするという方向へ進んでいただく必要があろうかと思います。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 年金局長年金に非常に熱心でおられますから、年金局長自体、あるいはまた、今、年金局の担当の人がなまけていると申し上げたら、これは気の毒であろうかと思います。気の毒であろうかと思いますけれども、今の少ないスタッフであっても、また無理解な人が関係の交渉する相手におろうとも、やはり勇を鼓して幹をぐっと伸ばすと同時に、きめのこまやかな、つやのある葉も伸ばすという方向にしていただかなければいけないのではないかと思います。その点で男性に対する父子年金あるいは鰥夫年金ということも、ほんとう厚生大臣も本腰で取り組んでいただいて、また年金局も本腰で取り組んでいただけば、並行して当然実現できるものである、また、しなければならない問題だと思う。その点について一つ厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  27. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木さんのお気持とわれわれの気持と、そんなに違っているとは実は思わないのでございますが、ただ、大蔵省がけちで何とかできないのかというふうにのみ片づけるわけにも参らない。厚生省としましては、もちろん制度の完備を期して努力することは当然のことでございます。なかなか一度には現実問題として解決いたしにくいから、いろいろの問題を持ち出すことによって、本筋の問題を見失うようになっても困る問題であります。その辺の緩急をはかりつつ進んでいくということにしなければなるまいかと思うのであります。年金制度のいわゆる幹だけではなくて、葉を茂らせるとか、あるいは花を咲かせるということについて、私どももちろんその考えで進んで参るつもりであります。一挙に解決し得ないというところは、必ずしも大蔵省の無理解なためにと言いますよりも、全体的な見地からそこまでなかなか片づけにくいというような場合もあることでございますので、その辺は御了承をいただきたいと思います。
  28. 五島虎雄

    五島委員 関連して。ただいま八木さんから触れられました父子年金の問題について、もう少し明らかに態度を聞いておきたいと思うのです。もちろん児童手当の問題については、お父さんと子供というようなことについての子供さんにも今度は手当がつくようでございますが、しかし、経済的に、社会の通念上からは男子が経済の根拠をなす、従って母子、母親は経済的に微力であるというところから、社会保障の一環としては、母子手当とか母子年金とかが優先的に考えられておる。その内容いかんを問わず、その点については何ら異存はございませんが、経済的に、社会通念上男子は経済力があるのだという観点の中から、その子供に対して、あるいはいわゆる父子家庭というところに思いをいたさないということは、社会保障の万全が期せられていないのじゃないかというように考えられるわけです。全く卑近な例でございますけれども、私の知る人で、かつて戦前は割方生活がよかった。しかし戦後、家庭経済の変動を来たしながら、そのお父さんは奥さんに死なれて、娘さんを一人持って、職業がないものですから日雇いに入られた。そうすると、お父さんはわずかな日雇い賃金の中に、あぶれあぶれて子供を養育しなければならない。そうして焼け出されたものですから家がない。共同住宅などに入らなければならない。子供を放任しながら、自分は一生懸命仕事をしなければ生活ができない。だんだん年をとるごとにお嬢さんも年をとられて、そうすると、女の子を共同住宅の中に置くということは、監視の上においても教育の上においても思わしくない。そのうちに、親一人子一人の娘はだんだんぐれ出した、こういうようなことです。従って、その本人が、母子問題には政府も非常に力を注ぐけれども、父子問題はゆるがせにしている、それは自分は経済力がないから仕方がないけれども、これは全国で非常に多数に上っておる、こういうようなことを言っているのを聞いたことがある。そのうちにその娘さんは、ある種の犯罪を犯してしまった。それでお父さんは精神異常を来たしてしまった。こういうようなことからするならば、私たちはやはり経済力では男性が優位にあろうとは思われますけれども、いろいろの状況の中に、父子問題はゆるがせにすることはできないのではなかろうかと考えます。従って、母子年金と並列して父子年金というようなものに重点を注がなければならないのじゃないか。幸い今八木委員からこの問題を提起されましたから、私は具体的な例をもってこれを厚生大臣に訴えながら、今後の問題としてどう考えられるかということについて、ただ一点お聞きしておきたいと思います。
  29. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御例示になりました問題のごときは、まことにそのままにはほっておけないというような重要性を持っておる問題だと思うのでございます。ただ年金制度とかなんとかいうよう々関係から申せば、先ほど八木先生にお答えいたしましたように、母子世帯であるということに着服せられての諸施策が漸次進められてきておるその一環として、これが年金制度の中に取り上げられておるという問題だと思うのであります。一般的に申しまして、母子年金ができたらそれでいいのだというようにも解決せられない、いわゆる母子問題のごときも、もっともっといろいろな施策を講じていかなければならない問題だと思うのです。父子の問題にいたしましても、ひとり年金だけの問題でなくて、やはり親一人子一人というような家庭におきまして、その子女を一体どうするかという問題は、同じくもう少し広い視野に立っていろいろな施策を講じていかなければならぬ。それが、あるいは現在においてはまだ不十分だと申されても、いたし方のない現状であるかと思うのであります。そういうもっと広い立場に立った問題を考え、諸施策を講じていくことが必要ではないかと思うのであります。  なお、私がよけいなことを申し上げるようなことになるかもしれませんが、しばしば皆さんがおっしゃるいわゆる児童手当の問題でありますとか、家族給付の問題でありますとかいう問題として解決をすべき点も多々あるのじゃなかろうか、かようにも考えておる次第でございます。その意味におきまして、問題が重要であるということは私も全く同じように考える次第でございます。これに対しまして、年金立場においてどうするかというふうな問題につきましては、先ほど局長のお答えいたしましたようなことでございますが、私どもとしましても、さらにまた一つ検討を進めさせていただきたい。皆さんの御希望のある点はよく私ども伺っておるわけでありますので、決しておろそかにするつもりではございませんけれども、問題としてはかなり広い範囲で考え、また単なる所得扶助とか金銭保障という問題でなくて、いろいろ社会的な施設という問題についてもあわせて考えていかなければならない問題じゃなかろうか。おっしゃるように、さような家庭において子供がとかく放置されがちになってくる、そのために大事な子供が妙な方に曲がっていく、こういうことがあることは、いろいろな意味において日本としても考えなければならぬ問題でございますので、さような点については、十分また御教示もいただいて検討させていただきたいと考えます。
  30. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 関連して。母子に関する今の問題でございますが、同時に、男女同権の建前と言うと事があまり大きくなるかもしれませんけれども、今日女性が経済的に非常に進出しておるということは、もう世間一般が認めておるのでございます。婦人が仕事をしてだんな様がそれを補助しているような、たとえば美容関係の仕事とかいうようなことが今日非常に多いのでございます。私はそういう立場から見まして、母子にこういう手当をするならば、やはり父子にもやってあたりまえであろうということを、もう二、三年前から主張しておるのでございまするが、見ておりますと、そういう婦人が進出しておる経済界におきましても、東京あたりでも婦人経済連盟というのができておりますし、大阪あたりでもやはり婦人の経済連盟というのが大きくでき上がっておりまして、非常に婦人がそういう面でやってきておるということは、私どもとしては喜ぶべきことでございまするけれども、男子の方でそういう立場にあって、その妻に死なれてあと困っていらっしゃるという面を私も見受けております関係上、そういうことを主張したこともあったのでございます。こういう人は、あるいはたくさんはないかもしれません。その経営の面におきまして、妻が死んだあとで、また美容師を雇ってやっていくという方法もあるかもしれません。しかし、妻と夫という場合にはうまくいくけれども、そうでない場合に、あるいはその夫があまり年をとり過ぎておったりしましたら、そういうこともできない立場にあるわけであります。つい最近、これはアメリカの問題でありますけれども、日本でもそういう例があるかもしれませんが、妻が夫と子供を置き去りにして出てしまったというようなケースもございまして、その場合にその婦人が経済力を持っている場合は、あとに残った人は非常に困っておるという場合も実際問題としてあるのでございます。そういう数は、あるいは母子世帯ほどそう大きくないかもしれませんけれども、母子関係についてこれだけ前進していただきましたので、一つ次の段階として、こういうほんとうにどん底にあえいでいる父子世帯というものにつきましても、私はぜひ一つお考えを進めていただきたいということをお願いいたします。少数であればまことにけっこうでございますが、少数であればあるほど、それに要ります予算もそう多額ではないと思いますので、どうぞ厚生省におかれましては、こういう問題も、ことしはもうむろんだめでございますけれども、次の段階としてお考え下さいまして、せめて御調査なりともいただいて——調査費でもとっていただいて始めていただければ、私は非常にいいと思うのです。  私どもは、よく共産主義と戦うと申しますけれども、共産主義と戦う最もいい道は、そういうどん底の人をやはり見てやるということが、共産主義との最もいい戦いである。結局共産主義が入ってくるところは、そういう最下底の今いう経済の問題——私も大阪で直面したことがございましたが、ある事件のときに、もう自民党でも何でもいいんだ、この苦しみから助けてくれるものならば共産党でもいい、もうイデオロギーじゃないという面を私は直接見た体験を持っておりますので、そういう面を吸い上げてやるということに——まあ男の方々ですから、男尊重の意味においてそんなことを男にしてやらないでもいいとお考えになるかもしれませんが、三十七年度は三十六年度から見ても、社会、経済あるいは政治、外交の面で非常な激動の年であると、三十六年度の厚生白書ではっきりとお書きになっておるのでありますから、この経済の激動の中では、男と言わず女と言わず、私は底に沈んでいく人も相当あろうかと思いますので、その看板を厚生省はおかけになった以上は、一つ男、女という差別を撤廃していただきまして、私、女で男のことをえらい主張するのは何か逆転したような格好になるかもしれませんけれども、ぜひ一つこういう面で、せめて次の年の予算の中には、そういう人があるかないかという調査だけでもしていただきたいということを私はお願いしたい。調査費をぜひとっていただきたいと思います。(拍手)
  31. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 委員会の皆さん方、各方面から拍手が起こっておりまして、皆さんおそろいでさようなことについての御要望であろうかと私も伺うのでありますが、この問題については、先ほど申し上げましたところで尽きると思いますが、御承知のように、いろいろな施設がいろいろな面において講ぜられておるわけでございます。従って、父子の場合といえとも——こんなものは例にならぬとおっしゃればそれまでですが、子供さんをかかえて労働をしにくいというような場合には、たとえば保育所の施設とか、一例として言えばそういうものがある。そういうふうにいろいろな施設が各方面で講ぜられておるわけでございますので、そういうものがあるということは、一つ前提としてお考えをいただきたいと思うのでございます。ただ実際問題として、髪結いの亭主さんの場合はどうかと思いますけれども、髪結いの亭主で甘んじておられるのでは困るので、大いに外に出て働いてもらいたいというふうに私は思うのでありますが、実際問題として母子世帯と何ら選ぶところがない実情にあるという家庭は、これはなきにしもあらずと考えられるのであります。そういうような問題につきましては、私どもといたしましてもそのつもりで対処していかなければならないということは、これは申し上げることができると思います。従いまして、かような問題の実態等につきまして、なお厚生省としましても、すべての施設が整備することを一番望んでおるわけでございます。その心持でもって実情等につきましてもなおよく検討もいたしましょうし、また、同じような事態に対しましてはやはり同じように処置することは、これは当然だと私も思いますので、その考えをいたしたいと思います。まあ一般的に申せば、いわゆる母子世帯と父子世帯とは相当違っているところがあるのじゃないかと思いますけれども、部分的に今おっしゃったようないろいろな場合もあり得ると思うのであります。それはそれとして一つ検討させていただきたいと存じます。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 今同僚の五島委員から実例をあげてお訴えをいただきましたし、また女性の元厚生大臣から現厚生大臣にいろいろ御要望があったわけであります。非常に前向きな御答弁をいただいてけっこうだと存じますので、どうか御推進を願いたいと思います。  実は大蔵省の方で、この問題は御答弁要りませんけれども、今鰥夫または父子という問題に対して、全部じゃありませんけれども、母子世帯、準母子世帯と同じようなものについて考えるべきであるということを申し上げましたところ、厚生省で非常に前向きで御検討下さるということになっておるわけであります。これは特に前厚生大臣の自由民主党の中山先生も強力に御主張になったことを今聞いていらっしゃいましたので、一つ厚生省のりっぱな原案、それにも輪をかけた勢いで大蔵省はバック・アップをお願いいたしたいと思います。  その前に、簡単に、おもに厚生大臣に御質問を申し上げたのでありますが、御出席がおくれて非常に遺憾でありましたが、障害者の家庭に、母子世帯に対する多子加算と同じようなものを考える必要があるということを申し上げました。これについても前向きで御検討いただくことになったわけで、理由はすぐおわかりだと思いまするが、所得保障をしなければならない人が家族をかかえている場合には、やはりその度が多いということで、結局母子の多子加算があるわけであります。それと同様な意味で、障害者にやはりその必要があるということであります。障害者といえども、当然結婚をし、子孫を残す、家族生活を楽しむという基本的な人権は当然尊重されなければならないという観点で、そういう問題が今前向きで御検討、御努力をいただくことになったわけであります。そういう問題についても、ぜひ一つ大蔵省が、厚生省の原案に全面的な御協力をしていただく必要があろうと思いますが、抽象的で簡単でけっこうですから、一つ御答弁をいただきたいと思います。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 谷村裕

    ○谷村政府委員 出て参りますのがちょっとおくれまして、失礼いたしました。  ただいまいろいろ社会保障のお話が出ましたように、母子家庭あるいはその母子家庭と相類似するような状況にある、同様なものがある場合についても、いろいろ手を尽くしたらどうかというお話でございます。もとより私どもといたしまして、個々の具体的な問題になりますと、いろいろなお検討を要することもあろうかと存じますが、全体の方向といたしましては、できるだけ、程度の問題はもちろんあると存じますけれども、わが国の社会保障の充実ということには手を尽くして参るという方向において同じように考えておりますので、ただ単に社会保障のみにならず、いろいろな問題が多方面にわたってございますけれども、それこれ彼此権衡を考えながら進めて参るという点で、あるいはいろいろバランスを見たり何かいたしますが、方向といたしましては、逐次そういう方向を考えて参りたと思います。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 方向として、部分的に、半分はいいのですけれども、ほかのものとのバランスは困るのです。ほかのものとのバランスの中で——ほかのものはすでに完成に近い、完成した制度が大部分であって、それに少しずつ時代に適応していくという制度。ところが国民年金なんという制度は、これは二、三年前にやっと芽が出ただけで、ぐっと幹を伸ばさなければならぬのですから、ほかのもののバランスというのは、形式的、表面的バランスではほんとうのバランスにならない。ほかのものをこのくらいにしておいて、これは天井ぐらいにして、これでほんとうの実質的バランスがとれることになるということで——首を縦に振っておいでになりますから、御理解をいただいたとして前に進みます。  その次に、少し技術的な問題になりますが、障害の問題にちょっと戻りまして、障害の等級がいろいろの制度によって違っております。これは厚生省でももちろんお考えだと思います・が、関係者一同非常にわからない問題が多いわけです。それからそれを担当しておられる中央、地方の方々も非常に困られると思うのです。これが統合調整の機会に改悪されては大へんでございまするが、その中の一番いい方向に水準を合わせて変えていただくということが必要であろうかと思います。中心官庁である厚生省においてこのようなことを進めていただきたいと思いまするが、一つ年金局長から……。
  35. 小山進次郎

    小山政府委員 先生仰せのような問題が現にありまして、実務上いろいろな面において困っておるわけでありますが、これを調整するという点非常に必要だと思います。幸いに現在御審議を願っております厚生省設置法の一部改正が成立いたしましたならば、新しい年金の一番先の仕事としてぜひこれに手をつけていきたい、かように考えております。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 調整はいいのですが、一番いいところに悪いものを合わせるというような、いい方向で調整をしていただく必要があろうと思います。厚生大臣年金局長もそのお気持であろうと思いますけれども、念を押しておきませんとうっかり一部でも改悪になると大へんでございますので、前向きに、いい方に合わせて調整するというふうに一つ御努力を願いたいと思います。厚生大臣一つ……。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だいぶ専門的なことになりましたので私もよくわかりませんが、厚生大臣としては、制度の改悪というようなことは夢にも考えておらないわけであります。一歩でも二歩でもよくしたいという方向でやっていくつもりでございます。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 聞いておいでになったと思いますが、厚生大臣の前向きのお気持に従って、年金局長はいろいろ研究、御準備を願いたいと思います。どうぞ局長から一言……。
  39. 小山進次郎

    小山政府委員 いかなる場合でも大臣の御指示の通り動いております。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 今度は通算の問題に入ります。年金の通算の問題については一応制度ができたわけでございまするが、厚生省でお出しになったものとしては、程度の低い方の年金国民年金、厚生年金等の通算については、なまいきな話ですけれども、外側である程度こういう問題を研究している者から見れば、百点満点の九十点ぐらいは差し上げてもいいというようなものであったと思います。ところが少し高い方の年金については、これは百点満点の四十点か五十点というような内容であったと思うのです。これを全面的に、せめて九十点ぐらいになるように一つ御検討願いたいと思います。特にその中で、全般的に通じてあまり合格点じゃない点があるわけであります。これは通算調整のために悪くなったわけではなしに、もとの制度が悪いわけです。というのは、たとえば厚生年金というような制度で二十年の受給資格要件に達した人は、非常に乏しいものではあるけれども、ある程度の年金が確保される。ところが十九年の場合には、がさつと落ちるおけです。これは今も脱退手当金という名前で呼ばれておりまして、その脱退手当金というものは、国庫負担分はもらえない、使用主の負担分ももらえない。自分の納めた保険料の中から、同期間中に同じ人たちの中で障害者が出て、あるいはなくなって遺族年金支給する人が出たという人の部分、これは精密な計算を要しますが、それを省いた残りの保険料を、五分四厘の予定利率で年金計算されたそのものが脱退手当金としてもらえるということになっておったわけであります。それをもとにして通算調整が行なわれましたから、もうちょっとで受給資格要件に達する人、あるいはまだかなり時間がかかる受給資格要件に達しない人の利益が、非常に侵害をされているわけであります。これは年金の通算調整の法案によって侵害をされたのではない、そのもとの脱退手当金という制度がまことに不合理であり、非常に冷酷な制度であったからであります。これはほんとうのところ、途中で職業をやめなければならない人、転換しなければならない人は、そこでずっと勤める人よりは大体において非常に不幸な人であります。からだの調子でそこの会社をやめなければならない、あるいはまた、親の看護のために場所を変えなければならないからやめなければならない、いろいろなそういうような条件で変わる人ですから、非常に不幸な人です。ところが不幸な人が、自分は当然使用主の人から保険料を負担してもらっているわけです。保険料を入れた場合にはその分を人に持っていかれてしまう、それから国庫負担の分も、一番不幸な人はもらえないという制度になっているわけです。今までの制度にずいぶん欠点があるわけです。昔ふわっといいかげんに作られた点がありまして、声の大きい残った現在の人の声は取り上げられるけれども、途中で失業する、途中でやめるという人の声は抹殺されてしまう、そういうふうになっているわけです。その脱退手当金の制度、このまずい制度から横すべりしましたから、通算調整の制度についてもかような欠点がぐっと残っているわけです。これを変えていただかないと、通算制度があるから、通算制度があるからということで、かなり——これは通算制度自体が緩和されますけれども、やはり非常に問題が残るから、完全なものにならないわけです。こういうような通算制度のへこみ、これを直していただく必要があろうと思います。といって、二十年以上の権利を侵害してもらったらとんでもないことになる、これはそういうことで初めから約束して国として強制適用をしているわけでございますから、当然の権利であります。そのほかの人たちは、強制適用を受けながら、あるいは私は十八年でこの会社をやめなければならない羽目に陥るがということがわかった人であっても、強制適用で保険料をとられる、それでそういう目にあう。こういう点は、国のその制度に対する考え方が非常に不十分であったわけでございますから、当然このような調整資金は国が特別に考えて、そのような不幸な人々に対する措置を考えなければならない、それについての厚生大臣の御意見を伺いたい。
  41. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 通算の問題は、なかなか込み入った問題で、この前御審議をお願いいたしまして、一応でき上がりましたけれども、そこまでくるのにはずいぶんいろいろな議論が行なわれて、ようやくあの程度で一応まとまったということであろうと思うわけであります。問題点としてはいろいろ残っておる面があろうと思いますが、さような問題につきましては、厚生省としまして、先ほど申しましたように制度改善になることならできるだけの努力はしたいと思っておりますが、その間の経緯なり詳細につきましては、政府委員から一つお聞き取りを願いたいと思います。
  42. 小山進次郎

    小山政府委員 先生も問題を全部御存じの上で言っておられますので結論だけ申し上げますと、ほかの制度においても、二十年という受給資格期間を満たさない者についての待遇をよりよくすることが望ましいという感じは、私どもも同じように持っておるわけでございます。ただ先生がその解決の方法として申された、そのために特別な国の負担を入れろ、こういう御主張については、もしそこにそれだけの負担を入れるならば、同様に私どもとしては国民年金や厚生年金にも入れてもらいたい。なぜかといえば、先生おっしゃったように、そういう人々の待遇を悪くしている反面において、それだけ受給資格期間に達した人々の待遇がよくなっているわけでございます。そういうところに国庫負担を入れるということの当否についてはもちろん議論があると思いますが、入れるならばやはりバランス論として、より庶民的な感覚を持って私ども年金制度の方にはぜひ入れてもらいたい、こういう感じを持つわけです。
  43. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣年金局長も、御答弁大体それでけっこうだと思いますが、年金局長のあとの方の御答弁、悪くはないのですが、少し消極的なんです。そんな消極的なことじゃなしに、年金制度に自信を持っておられて日本で有数の年金制度の権威者ですから、年金制度についてはもっと勇敢にぐっとほかの方を上げる、不合理なものは直す、谷村さんがいらっしゃるからといって、こっちはもらったけれども、あっちはだめだというのではおかしい。こちらはもちろんとらなければいけないし、これもとらなければいけない、これもこれもこれも、全部出してもらわなければ困るというふうに、勇敢に取っ組んでいただきたいと思うのです。そういうことで、そのほかの点はけっこうであります。  谷村さんに申し上げるのですが、今聞いておいでになったと思いますが、全般に全部出していただかなければいけません。しかしながら、今申し上げたような点については非常に不合理な面が多い。気の毒な人に対して国の金を出すということは、当然大蔵省としては——大蔵省は、僕は金を減らすことが任務ではないと思う。谷村さんのような練達な主計局の方は、財政資金をふやして、どんどん上げるという考えであろうと思う。いろいろな点がありますから、総体的にはほかの点に悪影響が及ばない範囲で、できるだけ国の財政資金をふやして、そういう必要なところにはうんと上げるという気持であられると思うし、主計局というものはそういう気持でないといけない。ただ、なたをふるうことが職業みたいな大蔵省ではないと思う。りっぱな主計官はなたをふるおないで、少なくとも、原局の要求がこれではいけないじゃないか、五割増したらどうかというくらいな主張をされるのが、主計局であろうと思うのです。そういう意味で、今のようなことを前向きで考えていただけると思いますが、御答弁を願いたいと思います。
  44. 谷村裕

    ○谷村政府委員 非常に主計局というものに対しての過大な御期待をお寄せ下さいまして、まことに面はゆいのでございますが、一般的に申しまして、決して国としての大きな政策の方向を予算でもって削り取ってしまって、芽を伸ばさないようにしてしまうのがわれわれの任務とは私は思っておりませんで、むしろ逆に考えております。ただ、全体としまして、どこに参りましてもいろいろお話の出ておりますことが一番大事なことであって、それの芽を伸ばすことがとにかく一番大事だというお話が、文教の方に行けば文教で出て参りますし、公共事業に参りますれば公共事業の方に出て参りますので、国力と相応じてそれぞれの伸ばし工合——伸ばすにも、先ほどお話のあったような意味における伸び工合は考えなければならないと思いますが、そういう点を、全体を考えた上で私ども立場は見て参ることだと思います。  それから前段でおっしゃいました点で、いろいろ今の年金全体についてのでこぼこがあったりする、それを彼此調整しながら、しかもできるだけいい水準に上げていって、その足りないところは国の一般の税金で補っていく方向で、いわば社会保障の基盤としての年金制度全体の姿を考えていったらどうかというお話でございます。私も非常に具体的にこまかい点はよく存じないのでございますが、確かに現在の国民年金、あるいは一番最初から出発しておりますような厚生年金、あるいはまた、途中から切りかわりましたわれわれの共済年金、いずれを見ましてもいろいろな意味ででこぼこもございますし、また今お話のありましたように、どこかで年金をつける区切りをつけなければならないものですから、その間になだらかな線ができないという面もございましょう。そういったことを全体としてどう調整していったらいいかということは、ただただ全体を高いところにし、それに対しては国費を入れるということだけで片づくことではなくて、やはり全体の姿を描いてみて、そこにおける被用者の負担あるいは使用者側の負担、そしてまた、国の負担という全体の姿のバランスを描いてみることも必要じゃないかと思います。私どもは、国費が何でも出ることは決していやだいやだと言っておるわけではないのでございますけれども、やはり全体としてのそういう姿、バランスというものを描いた上で根本から検討さしていただきたいと思うわけでございます。
  45. 八木一男

    八木(一)委員 それから次に、前から申し上げました年金額を飛躍的にふやさなければならぬという問題、それから年金開始年令を低下させなければいけないという問題、これは一番根本であります。さっき小山さんが言われましたように、根本のところに一番熱意を注いでおられる、これは非常にけっこうなことであって、これを一つぐんと伸ばさなければいけないわけでございますが、それの実現のためには、当然国庫負担の大幅な増大をしなければならないと思うわけであります。あらゆる面で国庫負担が必要でございますが、その国庫負担について、支給金額を上げなければならないという一つの要件がありますし、それから今の率は支給金額の三分の一、法律の書き方は違いますけれども、ああいう書き方よりも支給金額の方がいいと思います。支給金額の三分の一の国庫負担であります。これは少なくともこの一両年の間に——一両年じゃない、来年でも二分の一までは持っていかなければ、年金制度を政府が熱心に考えたとは言えない。すでに社会保障制度審議会の総合調整の中の年金部会の中で、一番国家財政を心配し過ぎる学者の先生方も、二分の一という主張をしておられる。私どもはそれ以上の主張をしておるわけです。一番国家財政のことをこまかに心配する先生方が二分の、でありますから、二分の一以上の答申が必ず出ると思います。二分の一というものは、現行法でいえば、保険料の十割ということになるわけです。厚生省としては、当然それ以上のことを強力に進めていただきたいと思います。大蔵省はそれについて、きん然として御賛成になっていただく必要があろうと思います。一つ厚生大臣の御覚悟のほどを聞かしていただきたい。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 きわめて一般的な議論として、現在の年金額を漸次引き上げるということについては、私もそのつもりで努力いたしたいと思います。これを今どのくらいにするか、来年どうするかというようなお話でございますけれども、前から申し上げておりますように、われわれとしましても慎重に検討する必要がございます。また一般の各種の年金とのいわゆる総合調整という問題もございます。これは問題としてはきわめて重要だと思いますけれども、われわれとしましても、それだけに慎重な検討をした上で結論を出したい、かように考えておる次第でございます。  なお、よけいなことを申し上げるようでございますが、大蔵省の方を前に置いて申し上げるのもどうかと思いますが、実は私かつて役所におりまして、予算の編成をやったことがあります。その当時大蔵省にしばしば出入りして、大蔵省と予算編成をお互いに一緒にやって参ったわけでありますが、谷村君を前にして恐縮でございますが、やはり人間というものはおかしなもので、厚生省に来れば厚生省の予算を一番ふやしたい、だれでもこう考えます。大蔵省では、厚生省担当をやっていらっしゃる方は、何といっても部内においては自分の担当の予算をふやしたいという気持を皆さん持っていらっしゃると思う。従って、ずいぶんやかましいことを言われましても、その点については、私よくお気持はわかるような気がする。結局厚生省として合理的ないい案を持っていけば、それだけ大蔵省の担当の諸君も、部内において主張がしやすいという立場になるわけでございます。そういうふうな心持を皆さん持っていらっしゃる。現に私も文部大臣として、あるいは厚生大臣として予算の折衝をいたしましても、その辺の心持はよくわかるような気持がいたしておりますので、要は国民の皆さん方の世論に従い、そしてまた、財政全般との振り合いにおいて、まずこの辺だというふうな相当強い根拠を持っての予算を持ち出せば、それだけ大蔵省の諸君も御協力がしやすいだろうというふうに考えますので、こういうふうな問題については、特に財政負担に関係する問題でもございますし、私どもとしましても慎重に検討いたしまして、できるだけ希望を達成するように努力をして、また一回で片づく問題ではもちろんないと思います。将来ともにこの問題を考えていかなくてはならないと思いますが、そういうふうな心持でおるということで、一つ御了解をいただきたいと思います。
  47. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の前向きの御答弁で、非常にけっこうだと思います。実はこの問題を中心にして徹底的に、ぶっ続けでやりたかったのですが、委員会のいろいろな事情で三回にぶち切れてしまいましたので、同じことを繰り返しているようです。しかも、ぐっと私どもにぴんとくるようなところまで討議を——時間も少なくなってしまって非常に恐縮でありますが、厚生大臣は、年金額を引き上げる、あるいは開始年令を引き下げる、あるいはそれについての国庫負担を大いに増大するということに、前向きに考えていただいているということを今の御答弁で伺いましたので、この問題を急速に、十二分に達成していただくことをお願いをいたしまして、その問題は一応おこうと思います。また、厚生大臣の御答弁で十分でありますが、大蔵省の方も、今厚生大臣が御説明になったような状況だろうと思いますので、ぐっと取っ組んでいただけると思います。やはり小山さんが、厚生大臣が決心をされたことを実行される準備をする最高の責任を持っておられるわけで、勇敢に、この問題が進むように猛烈な信念を持っておられると思いますが、早く十分に強力に進むように、厚生大臣に対して十二分の補佐をされるということの決心のほどを聞かしていただいて、この問題は一応打ち切りたいと思います。
  48. 小山進次郎

    小山政府委員 最善の努力をいたします。
  49. 八木一男

    八木(一)委員 それからもう一つ、忘れておりました大事な問題があります。  この前の附帯決議の中で、こういう案件があります。第2項で、「年金受給要件に達しない者の実納保険料がその被保険者のものとして確保されるようにすること。」ということがあるわけです。   〔委員長退席、井村委員長代理着席〕  これについては、現行法改正法ともにいまだ不十分なんです。その問題、ちょっと確かめておきたいと思いますので、年金局長にお伺いをいたします。  今度の改正案が——ども修正案を出しますが、修正案が通りましたならばこういうことは解消するわけでございますが、不幸にして政府の改正案のみが通った場合、その場合においては、一番フルの、全期間の場合で申しますと、四十年間のうち二十年間保険料の納入があり、また免除の適用を受け、以上の場合には年金がもらえるということになるわけでございまするが、十九年の場合には改正案でどのようなことになっているか、私知っておりますけれども、一応伺っておきたいと思います。
  50. 小山進次郎

    小山政府委員 四十年間のうち十九年だけ保険料を納め、残り二十一年、保険料拠出能力があるにもかかわらず納めていないというような、およそ想像できないような事態を続けるという者がありますれば、その人は年金は受けられません。
  51. 八木一男

    八木(一)委員 その方は福祉年金をもらえるかどうか。
  52. 小山進次郎

    小山政府委員 福祉年金も同様に受けとれません。
  53. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣にお聞き取りをいただきたいと思って、その点答弁を求めたわけでございますが、そういう状況になっております。厚生大臣年金局長はほかの点では非常にいいことを推進しておられますけれども、この点は非常に欠点がおありです。りっぱな人でも、百に二つ、三つは欠点がある。これは厚生大臣、ぜひお考えを願いたいのですけれども、そのままお聞きになって、これは絶対によくないことだと思うのです。私からもう一回申し上げましょう。実は四十年間の満期間の間で、二十年間以上保険料を自分で納めるか、あるいは免除申請をして免除になったという期間があったら、年金はもらえるのです。ところが十九年間保険料を実納して、そしてそれからあと二十一年間は、免除申請はしたかしないか知らぬけれども、しても免除に当たらないという認定を受けて保険料を払おなければならない、法律上で強制適用ですから払わなければならない立場、その人が、何らかの事情で二十一年間払わなかった、これは断続してもそうですね、ぶっ続けでなくて、断続しても、四十年間のうち十九年——年四回ですか、ですから百六十回納めなければならない。うち七十九回納めて、八十一回は納めなかった場合に年金がもらえない。ですから、年金を六十五才から月三王五百円ということで、はなはだ低額の年金であって、少ない年金でありますけれども、それを残存余命で計節すると、相当の実額になるわけです。それの半分ぐらいのもとになる金を納めておって、同じ国民でありますから国庫負担をもらう権利を持っていながら、それが全然ふいになる、しかも、今過渡的にそういう話で、たとえば二、三年前は、こういう年金に入ろうが入るまいが、貧乏であって、障害があって、老齢であって、それから母子家庭であったらもらえた福祉年金すらもらえない、そういう人たちは、全然年金制度から、ずいぶん先になってほうり出すようになる。こういうことがいいかどうか。これはいろいろな理屈上の制度の立て方、あるいは今の年金制度を理解させようという考え方、協力させようという考え方から持ってこられた点は、もちろんわかりますけれども、現象として十九年納めた人が一文も返ってこない、別の面の福祉年金ももらえない、それが実際の国民社会保障所得保障をするという立場に立っていいことであるかどうか、これは年金局長には聞いていただかないで、厚生大臣の御判断だけで、すぐ御判断がつかなかったら——的確な判断でそれがいいと思うという御返事があったら大へんです。ところが年金局長の義理で、仕方がないと思うという御返事をなさったら工合が悪いので、そういうことではなしに、実感としてそういうことがいいことかどうか、また、それは極端であれば十分な制度であると言い得るかどうか、それに今すぐ御判断がつけば一つ言っていただきたいと思いますし、的確な御判断が今すぐおつきになりませんでしたら、非常に問題点であるということはお考えがいただけると思いますけれども、それについて一つお答え願いたいと思います。
  54. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だんだんお話を伺っておりまして、一体そういう場合が現実に相当あるのだろうかというような気持も私はするのであります。ことに国民年金制度をしいて、そして全国のこれに該当する諸君には入っていただくというような建前をとり、またいわゆる免除の関係等も活用する、また活用しなければならぬと思うのであります。そういうふうな事態におきまして、今御設例になりましたような場合は、一体どの程度あるのだろうかという気がちょっと私はするのであります。なかなかむずかしい点もあるようでございますので、これはお話がございましたから、ここで一つお答えすることは御容赦願いまして、なお年金局長等からよく実情等につきましても伺いました上で、何かの機会にまたお答え申し上げたいと思います。
  55. 八木一男

    八木(一)委員 実は今第一回目の御答弁について、その程度でけっこうですと申し上げただけで、あとの御答弁質問に応じていただきたいと思うのです。年金局長の御返事はあとで伺うかもしれませんが、今のところけっこうですから、大臣だけに一つ、それに谷村さんによく聞いていただきたいと思うのは、実は年金局長も言うことがあったら御答弁あってけっこうでございますが、現行法をいたずらに弁護するような、そういう御答弁だったら積極的に御答弁はいただきません、必要でありませんから。  それでこういうことで二つ問題があります。そのもとで百六十回のうち七十九回を納めているのは、相当納めていることになるわけです。相当なものですよ。日本の家庭では、むずかしいことはみんなわからないから、御主人の言う通り聞いてしまうことが多いですから、御夫婦の場合でも夫唱婦随で、大体だんなさんがこうしようと言えば奥さんはそういうことになってしまう。そうすると、夫婦の場合、結局百五十円の場合だったら月に三百円の割合ですから、年に三千六百円。一回分は四分の一ですから九百円、小千円。千円という金は、物価騰貴で値打ちがなくなったかもしれないけれども、それだけに貧困な家庭では物価騰貴でほかのものに金が要るから、それだけの現金を、たとい国家の強制的な制度であろうとも、払うのに非常に困難な事態が多くなっているわけです。そういう困難なものを八十回近く、七十九回も払って年金をもらいたいという努力をしている人がおるわけです。年金制度にめちゃくちゃに無理解で横意地を張っているわけではなくて、七十九回も払っている。その人が八十一回払えないということは何らかの事情があるわけです。たとえば前の年の算定で、これは免除に値しないと厚生省が判定をされても、そこのうちの家庭としては、どろぼうに物をとられたとか、子供が病気になったとか、そういうようなことで困る。たとえばこれは人情的にいって、そのうちの家庭だけでいっても、遠縁のおばさんがころがり込んだということになれば、やはり一月いられても食事ぐらいは上げなければならない。そうなれば、ぎりぎりの家庭だったら予算は狂います。そういう千円の金も払えないことになる。昔お世話になったおばさんでも来れば、ときどき卵でも上げたいと思って使ってしまって払えないことが起こる。理屈で考えれば払えない事情はないと言えるかもしれませんけれども、そういうことが起こるわけです。そういう事情が起こったときに、年金をもらいたいと思って一生懸命七十九回も納めた人がもらえない。これはあまりにひどいことではないか。年金をもらえないだけではなしに、保険料も返してもらえないのですよ。たとえば私のところは、今、年金がほしいから、拠出年金に期待を持って払いたいという気持を持っているけれども、うちは貧乏だし、小商売だから、金の入るときもあるし、入らないときもある、払えるときばかりでないという心配を持っている人がおる。ところが政府の強制保険ですから、いやおうなしに払わされる。私は払えないこともあるかもしれないから、かんべんしてもらいますということは言えない。無理やりに入れられる。無理やりに入れられてそういう事態が起こったときには、あるいは払えると思って一生懸命努力したことがふいになる。これは生命保険会社がいろいろとやってきた一つの悪例です。生命保険では、保険契約に入れるときに、外務社員に多くの費用を渡し、月給を払って、それでやるから、ちょっと入られてやめられたら元が取れないから、三年間くらい保険料を納めても、解約すれば解約返戻金はもらえません。そういうことは商売だから彼らはやっている。これは任意保険だからいいのです。任意保険だから、そういう約款を説明しない人たちがいて、あとで二年目に解約して、おれは金を払ったのに一文も持ってこない、けしからぬといって憤慨をする被保険者も世の中にいますけれども、少なくとも建前としては保険約款にそういうことが書いてある。そういうことを熟知せしめないで勧誘することは悪いことですけれども、少なくとも建前としてはできている。ところがそうことでなしに、政府の方の年金は強制保険で、無理に入れて無理にとるわけです。それで、そういう人たちが、そういう事情で払えない場合には年金がもらえない。払った保険料も一文も返ってこない。それは小山さんに言わせれば——僕も年金のことを知っています。そうは言っても、二、三年目のときにその人がなくなったら遺族遺族年金がくるじゃないか、それからその人が、その間に不幸にして障害にあわれたら障害年金がくるから、その人の権利の部分は満たされているんだとおっしゃるかもしれません。年金や保険の原理としてはそういうことがあります。しかし、老齢年金が大部分である以上、障害遺族に対する年金の方に割り当てられる部分の金は少ないのです。全部そっちの保険料がなくなっておるということは、どんな観点からも計算上は出て参りません。その金は残っておって、その金がほかの人に回される。それではあまりひどいことになろう。少なくともその保険料分は返す、それでは積極的ではありません。ほんとうは、そういう人たちにももちろん満額の保険料をやらなければならないけれども、今の体制であれば、その半分とか、たとえば百六十回の七十九回だったら、四割九分くらいは今の建前として支給するということにしなければ、バランスが合わないわけです。これは制度が経過的、補完的福祉年金という制度をとっておるがために、その建前を順守しておられるがために、そういう人たちは福祉年金ももらえないということになっておる。その組み立てられた建前は、僕らは知らないけれども、わかります。わかりますけれども、そういう人たちに、せめて福祉年金がいくということを考えられなければならないと思う。これは非常に重大な問題であります。それだけ今御説明申し上げた段階において、厚生大臣は非常に不合理である、矛盾点があるということをお考えいただけると思いますけれども厚生大臣の率直なお考えを伺いたいと思います。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は今お話を伺ったところでは、直ちに不合理であるとか、不都合であるとかいうふうな結論にまでまだ到達しかねるのであります。この年金保険を作るにつきましては、いろいろな計算をやってできてきたと考えられるわけであります。その計算に際して、どんな影響を与えるかというような技術上の問題も一つあろうかと思います。八木さんは、強制保険だから無理に入れたので、いやいやながら入ったというような御表現もなされましたが、私はお気持はまさかそうじゃなかろうと思います。こういう制度をやりました場合に、進んで気持よく入られる人もおりましょうし、当座はあまり気が進まぬという人もおりましょうし、いろいろあろうと思いますが、やはり強制保険というふうなものの性質上、ある程度やむを得ないことだと思います。だんだん年月を経過するにつれまして、皆さんの御理解も深まっていく問題ではないか。無理に入れたんだからどうだというのでは、いかがであろうというようなことも考えられます。それから具体的なケースを考えました場合に、一体——ここのところが私にもよくわからぬのでありますが、そういう場合がそうたくさんあるものとも実は考えられません。結局国民として何かの保険に入っていなければならぬ今日の状態でございますし、そういう場合が一体どういうふうに起こってくるか。免除というような問題にからんで、あるいは問題が起こってくるのではなかろうかというふうにもちょっと想像するのでありますが、そういったふうの問題でありますれば、またその問題として考究してもよろしいというようなこともあろうと思いますが、卒然として今直ちにどちらが合理的である、どちらが不合理であるとかいうような結論は、私ども出しかねるのであります。先ほどお答え申し上げましたように、もう少しこの問題は研究させていただきたいと思います。
  57. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、いやいやとおっしゃいましたけれども、私はいやいやと言ったわけじゃない。そういう例もあるかもしれませんが、さっきの例は、年金をもらいたいから掛金をかけて、一生懸命に努力する。しかし、自分は小商売をやっていて、金の入るときもあるし、入らないときもある。金が入らないときは払えない。免除制度もあるそうだけれども、前年度のことや何かを調べられるので、的確に適用してもらえないこともある。それからまた、商売の方はうまくいっても、いなかのおばさんがころがり込んできて、そっちの方を飢え死にさせることはできないから、金を使ってしまって払えないというようなことが出て参ります。まかり間違って大事な金を持っておって電車の中で落としてしまったとか、どろぼうにとられてしまったとかいうことで、保険料を用意しておったけれどもだめになったとか、子供が非常にねだって、親としては、年金保険料のためにいかぬと言ってしかりつけなければならぬときでも、そういう貧困な家庭で、子供が修学旅行費がない。これは文教問題ですが、完全に出てない。ほかの子供は修学旅行に行くのに、うちの子は準備がなくて行けなくてはかわいそうだ、自分の老後のことも心配だが、目の先の子供の方が心配だからということで、うちの子供が修学旅行ができるように、そっちに充てようということもあると思う。家庭の中でも、何十年の間にはそういういろいろなことがある。そういうことのために、年金をもらいたいからかけておっても、時期々々にかけられないことが起こる。そういう羽目になったらその人の年金がもらえないことは、非常に冷酷である。もらえないだけでなしに、その人が今まで年金のために納めたもので、年金がこの場合もらえないのなら、せめて掛金くらい返してもらってあたりまえじゃないか。また、そういうことで拠出年金制度からはずれたならば、福祉年金ぐらいもらえるのがあたりまえだ。今補完的という名前で縛っておられるけれども、そういう福祉年金というものを土台に赴いて、たとえば拠出年金と併給ということであったらバランスがくずれるという考えもあるだろうが、拠出年金がもらえないなら、くれてもかまわないはずだ。けれども拠出年金福祉年金は六十五才開始と七十才開始とで条件が違います。だから拠出年金がもらえるということにしておかなければいけないと思う、強制保険ですから。僕は年金制度は不十分限りないとは思っておりますけれども年金制度自体はよいことだと思っております。ですから、その内容がすべてよくなって、そういう問題がすべてよくなれば、強制保険だからいけないとは言ってないわけです。強制保険である以上は、そういうごくわずかな人であっても、強制的に入れられたことによって不幸になるという人がない制度でなければいけないと思う。任意制度であればかまわない、選択しますから。ですから、それだけに全部そういう欠点を直していかなければいけないと思う。そういう点で拠出年金がそういう人たちももらえるというふうに、それを一番考えていただきたいし、二番目には保険料が返る、それからもう一つ、現実に一番大事なものとしては、福祉年金というものが最低限度どんな人にでもいくというふうに考えていただく必要があろうかと思う。その中で一番手っとり早いところからでもしていただきたい。手っとり早いことは、福祉年金制度については、これは登録しなければいけないということをやっておられる。それで登録のほかに、保険料は幾らくらいなければいけないということもやっておられる。そういう保険料を幾ら払わなければ福祉年金をもらえないという条件を、ぜひはずしてもらいたい。僕は年金小山さんと同じように愛しております。また、拠出年金についても前向きな考え方を持っております。しかしながら、これは厚生大臣にも小山さんにも考えていただきたいことは、欠点のあるもの、それからまだ不十分なものを無理やりに押しつけるのじゃなしに、年金制度自体をすばらしいものにして、みんなすばらしいものをもらいたいから、もちろん形式は強制ですけれども喜んで納める、ほかのものを無理してでもこういう大事なものだから納める、そのような年金に仕立てていただいたら、今の不十分なまま一部無理解な人があったり何かしたものを抑えつけるよりも、もっとずっといい行政で年金自体の問題については国民に期待が高まる、それでいろいろ末端の事務的な人たちを一時点あるいは特定地域で悩ましている問題、そういう問題も解消すると思う。そのような前向きの姿勢でやっていただきたい。そのような意味において拠出年金がよくなれば、そんなものよりも福祉年金をもらいたい、福祉年金のみに依存するという、そんな気持は起こりません。ですから、今のところ、福祉年金を条件付じゃなしに渡すということをされても、予算しほとんど関係ない。予算上は、そういう条件を全部法律的に果たしたならば、出さなければならないことになっておりますから、大蔵省の方は心配要らないわけですけれども福祉年金を出すというふうにぜひ一つやっていただきたい。  それと、現在の年金制度に、去年、おととしにいろいろな批判が起こった。そうして批判の中に非常にりっぱな批判もあります。また、当たらない批判のあることも私知っております。必ずしも批判が全部百パーセント筋通りであるとは言いませんけれども、非常に当たっているりっぱな批判が多い。それから当たらない部分も少しあります。しかし、年金制度というものは非常に組み立てがむずかしい。国民がその理解を完全にするまでには、ずいぶん時間がかかるわけです。ですから、理解の程度が少ないために年金制度をいい面として理解せず、あまり魅力がないものと思って、あとで三年、五年したら気がつかれて、これはいいものだったと思われる点もあるかもしれませんが、不十分は不十分ですよ。不十分ですから、そういうことがあっても過渡期として非常に理解しにくいところがある。その人に対してそういう筋、机上で考えた筋で押えつけて、一部こぼれ落ちて年金がもらえないような人がないように、ぜひしていただきたいと思います。これは年金制度を確立するために、歴代の厚生大臣あるいはずっと続けて苦心、苦労しておられる小山さんが、努力しておられることを否定するものではありません。この努力については、十分に敬意を表する気持はあるわけであります。しかしながら、こんな膨大な、こういうまだ年金制度がなかったものを始めたときには、国民の中には理解の程度に差があり、 いろんなことが起こるわけです。それについて、いろんな点で具体的に配慮をしていただく必要があろうと思います。ぜひ一つ福祉年金を、拠出年金の条項によっていろいろの条項を満たしたときに福祉年金がもらえるという制度をはずして、福祉年金としてこれを別に独立したものにして置くということを前向きに一つ考えていただきたいと思いますが、厚生大臣のお考えを承りたい。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、八木委員のあげられました例について、別に否定的な御返事をしているつもりはないのであります。むしろ非常に国民生活について詳しい八木委員の御注意として伺っているわけであります。ただ、よけいなことをそれ以上申し上げる必要はないかと思いますが、先ほどお答えいたしましたように、なお十分研究もしてみよう、こういうことを申し上げているわけでありまして、だから私はやはり八木委員と同様に、この年金制度というものが、日本の福祉国家の非常に大きな要素をなすものだという考え方をいたしております。従って、これの堅実な発展を心から期待しておるのであります。将来りっぱな年金制度を日本国民が持つようにしたいというつもりでやってきているものでございます。そういうことにおいても、八木さんの御了解をいただけるものと思っております。今お話しになりました問題は、決して私は否定的な御返事を申し上げたわけでも何でもない、むしろ一つの御注意として考えておるわけでありますが、ただ私としましては、国民年金制度というものを完全に実施して参ります上において、今のお話のような場合が一体どうあろうかというような気持がするのであります。言葉は非常に悪いのでありますが、国民年金には脱退制度はあり得ないと思います。脱退制度というものはあり得ない。ですから、すべての国民が、何らかの形において、国民年金の中において所を得ていくようにしていかなければならぬ。さような問題として、今のお話は一つの御注意として伺いまして、研究をさしていただきたい、こういう気持で申し上げておるのでありますが、さように御理解をいただきたいと思います。
  59. 八木一男

    八木(一)委員 御答弁いただいてけっこうであります。小山さん、さっきは大へん失礼なことを申し上げましたけれども、大臣から積極的に御答弁をいただいてけっこうでございますので、一つ大臣の趣旨に従った御答弁をしていただけると思います。  それから大臣が、さっき一つの解決の方法として免除ということを言われました。これは非常に大臣の卓見であろうと思います。小山さんも同様の御意見であろうと思いますが、この四十年間のうち二十年以上納められないという要件の中には、ことにそういうことをなくするために、やはり免除ということが有効に働くことだと思います。たとえば、その免除ということが有効にもし働き得ない状態であるとするならば——免除自体は非常にいいことである、しかしながら、免除の基準が少しく実態に即さない。免除の基準がもう少し広がっていたならば、そういうおそれがないということにつながっているわけであります。そういう意味で、この間小林委員も言われましたけれども、免除の基準をさらに拡大せられるようにお考えをいただきたいと思うわけであります。小山さん、どんどん御答弁いただいてけっこうでございます。
  60. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど、なるほど免除ということについて私申し上げました。つまり免除の規定が活用せられれば、お話しになりましたような場合に救済していく道もあるいはあるかもしれません。そういうことも考えられます。それから御説明のような場合について見ますと、そう長い期間にわたっての問題でもなさそうにも思うのであります。個々具体の場合について、もしこれが一時的に免除に該当しないというようなものであれば、その処理して何かそこにお互いに工夫する余地が、必ずしも制度の問題として考えなくても、そこのところの急場をどうしのぐかというような意味合いにおいて工夫することもあり得るのじゃなかろうか。そしてまた免除の引き上げの問題でございます。これはやはり国民生活の実情というものによって動いていかなければなるまいと思うので、組織が非常に高くなったときに相変わらず同じような免除でいくというようなことは、実質的には免除の額が下がったということになるわけでございます。それで必ずしも固定すべきものでもなし、これは実情に即して将来ともに考えていかなくちゃならぬ問題でございますから、いろいろ考えれば、お話しになりましたような事例について、何かそこに工夫する余地はあるのではなかろうか、実はかようにも考えている次第でございます。ここで今どうする、こうするというようなことは申し上げかねますけれども、一つそういう場合もあるという御注意として私は伺っておきまして、いろいろ検討さしていただきたい、こう思っているわけであります。
  61. 八木一男

    八木(一)委員 大へん御理解のある御答弁で、ありがたいと思います。免除については、私、次の質問で申し上げようと思いましたが、厚生大臣の方から先にそのことをおっしゃっていただいて、御理解の深いことを特に認識いたしました。生活事情が変わって免除の基準が当然変わる。物価の水準についても変わらなければならない。ことに免除基準の大体の基準を定められましてからも物価の高騰も起こっておりますので、ずっと将来にわたって、当然そういう状況について免除の基準を変えていくということをお考えいただきたいと思いますし、現時点においてもそういうことも起こっておりますので、さらにごく短期間の間で一つ前向きに御推進をいただきたいと思います。  それからもう一つ、扱いの問題でございますが、これは厚生大臣とその衝に実際に当たっておられる小山さんに一つお願いがあるわけです。これはお願いでありますから、一つ前向きに御答弁を願いたいと思います。というのは、厚生省としては非常に熱心に取っ組んでおられたので、批判運動の中で、当然私どもとしてはりっぱな批判運動の部分があったと思いますけれども、その現象として、厚生省としては幾分批判運動がきつ過ぎたという感じを持っておいでになるのではないかと思います。そういうようなことで、いろいろと末端の方の担当をしている方々が非常にお忙しかった事情もあるかと思いますけれども、それと別に、そういうような状態において、年金制度について正しい批判はもちろん私たちりっぱなことだと思いますが、幾分理解の少ない点で年金制度についての意欲も少なくなって、そして少なかったがために、たとえば登録がおくれ、保除料納入がおくれておるという人があろうと思います。これは、そういう人たちの理解が高まるに従ってそういう現象は解消していく状態にあろうと思いますが、過渡期で現在は、ああこれはというふうに考えておられても、その数カ月計あるいは一、二年前においては、それまでの理解に達しておられない、それでいろいろの問題が起こっておる点があろうと思う。たとえば登録問題、たとえば年金保険料の納入をしなかった問題、たとえば保険料の免除申請ということをすることを忘れた、そういうような問題が起こって、現実にいろいろの傷害事故が起こる、あるいは死亡事故が起こるというようなことがあって、非常に困った状態が起こっている部分もあろうと思います。いろいろな法規、規則等がありまして、ある程度の制約があることは私どもも存じておりますけれども、それを実態に即して最大限に弾力的に、あたたかい配慮をもって個々の問題について対処していただきたいと思います。  一つ一つの問題について具体的に例をあげて申し上げようとは、私今の時点においては思いませんし、また具体的の問題について、こういう規則だからこうだというような御答弁を別に求めているわけではございません。ほんとう年金を必要とする人が、年金制度という、こういう膨大な、また非常にりっぱなものであるけれども難解な制度が施行される過渡期において、幾分の理解不足のために、いろいろな不利益な処分をこうむらざるを得ない羽目に陥った人がある、そういう人たちに対して、できる限り弾力的に、あたたかい配慮をもって行政措置でこれに対処していただきたい、そのような考え方を持っているわけです。そういう点について、厚生大臣の非常にあたたかい御答弁をぜひお願いを申し上げたいと思います。年金局長も、ぜひあたたかい御答弁をいただければ私はしあわせだと思います。
  62. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この種の制度は、日本といたしましても、全体の国民からいえば新しい制度を実施するわけであります。それには、先ほどもちょっと申しましたように、喜んで飛び込んでくるというふうな気持になかなか急にはなれない人もあろうかと思いますし、また、年金制度それ自身についての理解が不十分のために、目先のことでいろいろお考えになる方もいらっしゃるかと思うのであります。そういうふうな点については、厚生省としましては将来に大きな期待を持っておる制度でございましただけに、やはり国民の皆さん方の理解ある御協力をぜひいただきたい、こういう考え方をいたしておりますので、建前としましては、どこまでも理解と納得のもとに制度を進めて参りたい。冷ややかな態度あるいは冷酷な態度でもって望むというような心持は毛頭持っておりません。できるだけ皆さん方にも御協力をたいだきまして趣旨の徹底に努めて、また、あわせて将来だんだんとよくして参りまして、御協力いただくようにやって参りたいと思う心がまえに何の変わりもございませんので、そのまま一つやっていきたいと考えます。
  63. 八木一男

    八木(一)委員 どうか一つこの点よろしくお願いいたします。前向きな御答弁をいただいて、非常にありがたいと思います。  それでは、今度おもに福祉年金の方に移りたいと存じます。まず老齢福祉年金から申し上げてみたいと思いますが、今度の改正案の前に、厚生省で御準備になりましたものとして、実現を見なかったものが少しあるわけでございまするが、夫婦の方が、七十才以上で老齢年金その他の適用条件を満たしておられる場合に、普通であれば月にして一人千円ということでありますけれども、夫婦がダブっているということで、七百五十円という支給しか受けられない状況になっておるわけであります。これは大へん不合理なことでありまして、与党の方々もそのように考えておいでになって、これを改正するために熱心に推進をしておられるわけであります。政府の方も、そういうお考えである程度御推進になったわけでございまするが、残念ながらこれが今度の改正案に盛られておらないわけであります。どのような事情で盛られておらなかったか、大臣でも局長でもけっこうでございますから、御説明願いたいと思います。
  64. 小山進次郎

    小山政府委員 やりたいことがいろいろたくさんあったわけでございますが、ことしやりたいことのうちで、これだけが次回に持ち越さざるを得ない、こういう事情でございまして、将来ともこれの実現に努めたいと思います。ただこれについては、八木先生よく御存じでありますが、実はいまだに社会保障に詳しい人の一部に、若干異論を唱えている人々があるわけであります。そういう意味におきまして、私どもこれを実現したいという熱意には変わりございませんけれども、異論は異論としてやはり社会保障審議会の中で十分討議をしてもらって、それは筋の通った結論まで持っていってもらうということが必要であろうと考えているわけであります。
  65. 八木一男

    八木(一)委員 何といいますか、観念論で百分の一くらいそういう人がいるらしい。そういう人は社会保障を論ずる資格はないので、何々大学の博士なんというのは、そういうような形式的な資格を持っていても、それはもう論外だと思います。そういうような異論を言う人は、これがたとえば月に一万円くらいの年金であれば、それは二人合わせたら二万円になる。おじいさん、おばあさんといったら、同じ世帯にいるから経費が少ない、もうちょっと減らしてもいいのではないかということは、実態論としてちょっとくらい、耳を傾けなくても、そっちに向けて見てもいいんですけれども、たった千円の金で二百五十円も減らすということはほんとうに話にならぬ。話にならぬと思うことには厚生大臣年金局長も御同意であって、従って、これを直すために予算折衝までせられたわけでございます。一つことしははずれたけれども、断じて来年は、もう絶対にこれは通すというような御決意になっていただかなければいけないと思うのです。またそうだと思います。ぜひ一つこれは、ほかのものもたくさんやっていただかなければならないけれども、こんなものは、これはもう厚生大臣が職を賭すなんということを言わなくても、厚生大臣が指を一本動かせばこれは来年実現することだと思うのです。絶対に一つやるという、はっきりした御答弁を願いたいと思います。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省としましては、これは宿題の一つと心得えております。宿題はだんだん片づけていきたい、かように考えております。
  67. 八木一男

    八木(一)委員 谷村さん、岩尾さんがおられますが、これは谷村さん、岩尾さんもいいことだと思っておられると思うのです。この予算は大した予算ではなかったのです。ほかの面では、国庫負担というようなりっぱなものを入れていただいたことは非常にいいんですが、これくらいのものは、二兆四千億くらいのところで、依然ことしは入らなかったということは、だれが見てもはなはだ遺憾なんです。もちろん来年は厚生省が要求したら——もちろんほかにたくさん出ますけれども、こんなものはぴたりと文句なしに、だれか異論を言われても問題外だというふうにして通していただけると思うのですが、谷村さん、岩尾さんも形式的にはそういう権限はなくて、内閣でぱっときまるわけですが、厚生大臣が指を動かさなくともきまるくらいな御協力を主計局へお願いしたい。主計局の御意見を一つ。
  68. 岩尾一

    ○岩尾説明員 夫婦の受給制限の問題でございますが、いろいろ先ほど年金局長がお話しいただきましたように、年金につきましては種々の改善点があるわけでございます。もちろん全部一ぺんにできれば一番いいわけでございますが、やはり年金の伸びていく順序を追いまして、逐次改善をしていくということでないといけないと思います。そういう意味で、われわれといたしましては、やはりできるだけ年金というものが一般の国民に普及していってほしい、そういう意味対象がふえていくというような改善が先ではないかということで、優先的に取り扱おう、そういう気持がございます。そういういろいろと折衝をいたしました結果、また先ほど年金局長のおっしゃいましたようなそれ自体に対しての議論もございますし、まず重点は、年金額というような給与自体の引き上げということよりも、制度の普及のために、もらう人をふやしていきたいというふうな点に重点を置いた、そういう意味で折衝したわけでございます。来年の問題につきましては、いろいろと御議論もございますので、十分よく厚生省と毛打ち合わせをいたしまして、検討したいと思います。
  69. 八木一男

    八木(一)委員 厚生省に先に伺わなければならないことなんですが、質問の経過で大蔵省に先にお伺いいたします。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕  対象がふえるということはけっこうです。けっこうですが、それだったら、厚生省はどういう案を出されるかわからないけれども、まず第一に対象がふえることはけっこうだと言ったけれども、全部がけっこうなことではない。いろいろな刻みがむずかしいわけですね。たとえば今世帯所得五十万——五十万という言葉にぴっちりと当てはまりませんけれども、大体概略そういうふうにいわれております。五十万といわれております。本人所得や何かを除いて、たとえば十一万くらいしかない。二十万くらいしかない老人に対して、五十万所得世帯と同額なのかという問題があるわけです。これは対象者をふやす問題とは別な問題です。ところが、五十万の所得の老人までふやすのより、二十万所得の方に二千円、三千円、四千円とふやすということ、これを考えておいてもらわなければならない。ただべらぼうに、のべつまくなしにふやすだけではいけないわけです。  それから現在五十万以下になっていますから、五十万以上よりは低所得者の方に千円でいいかどうか。片一方が千円だから、千円とゼロという区切り方でなければならないかどうかということになる。底を千円にして、あとはゼロということも考えられる。貧乏な人をうんと金額を上げるということも、これは要素として考えていただけなければならぬ。ただしまた、全体に境目がありますから、千円なり二千円なり三千円のものを、今五十万の人を七十万に広げる、こういう要素も考えてもらわなければならぬ。今一本調子に全部千円を住友吉左衛門まで広げていいかどうかという問題があります。松下幸之助に千円上げても国費のむだづかいであるし、松下さんはそんなに喜びやしない。そういう問題もあるわけです。広げるといっても限度がある。そういう点で広げることもやはり考えなければならないけれども、広げるとして考えるならば、金の方で広げるよりか、年令で広げる。七十才以上を考えておるが、個人差がある。老衰をした個人差があって、金持ちの七十一才と貧乏人の六十七才では、貧乏人の六十七才の方が、ずっと腰が曲がっておるということもあるわけです。そういうこともありますし、金持ちも六十七才の中に入ってしまうという反論もあるかもしれぬが、少なくとも貧困の人は、今までに経済状態が悪かったので、生活に苦労していたので早く老表して、早く死ぬという非常に悲惨な現状がある。そういう人たちに対する方が、年金としては具体的な効果があるわけです。また、そういうふうに指向をすべきだと思う。そうなれば、六十七、八才で死ぬ人のことを考えれば六十五才の方に広げる。そういうことがまず第一義的に考えられなければならない。それを住友さんまで千円広げればいいというような、これは選挙対策なんです。一人残らず上げるといった方が言いやすいわけですから、境目のちょっと上の人が、おれにはくれないのかと言えば説明しにくい。われわれでも言いにくいでしょう。われわれだって一律に上げるような法律を作りますといったら言いやすいけれども、それとこれとは別問題であって、国で所得保障を貧困な人にするというならば、まず七十才以下の人にするということと、それから五十でいいとは限っておりません。五十でいいか、四十九でいいか、四十八でいいか、五十一でいいか、これは当てずっぽうですから、物価も上がっているし、給与も上がっているから、前にもらった人が今度もらえなくなるという点もあります。拠出を上げるということも、絶対にいかぬということは言いませんけれども、重点としては年令を下げるということ、もう一つは千円ということでなしに、そのうちの貧困の人、五十万円以下の人を全部四千円にしてもいいし、それだけ金が出せなければ二十万の人を四千円にして、三十万の人は三千円にしていくということ考もえなければならぬ。一本調子ではなしに、一番必要な人に対してその金はうんとこさ注ぎ込んでよくやる。拠出年金の方が根幹ではあるが、福祉年金の方が現在政治にすぐ役に立つのですから、その点に重点を置いて考えていただかなければならぬと思う。これは一つ意見として谷村さんと岩尾さんに聞いておいていただきまして、ほんとう厚生省の方に話すのですが、今度は厚生省の方に向き直りまして、そういうことで、結局さっき言いましたけれども、とにかくそういうふうな意味年金額を上げるということ、総体的に全部上げなければなりません。それから総体的にぐっと上げるほかに、そういう貧しい人に段階をつけるという考え方を今したわけです。千円という安っぽい年金のまま置いておこうというから、そういうことになる。二千円になったら、当然前向きの姿勢でなくても、あと向きの姿勢でも全部二千円に上げるのはもったいないから、そこから下は千円に、ここからは二千円にしろというような考えも生まれてくるのですが、そういうようなことで、貧乏な人には千円では常識的におかしいというけれども、今一律になっておる。そういうような固定した考えを直して、四千円、五千円にうんと上げる。そして貧しい人には厚いもの、中くらいの人にはまん中のもの、上の人には薄いものというようなことが、当然発展として考えられなければならない。もう一つの重大な要件は、七十才ではいけない、六十代から支給しなければならぬという考え方になろうと思うわけですが、そういう問題について、一つ厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 福祉年金の額を中心としてのお話だと思います。福祉年金の額が現在千円あるいは千五百円——千円という額が多いか少ないか、こういう議論になりますれば、私は一般に感ずるものとして、千円が多いと考えている人はまずいないだろうと思います。だれが考えてみましても、もう少し上げたらどうだというお考え方もあろうと思います。また、福祉年金の額が千円でなければならないという規則があるわけでも何でもない。これは千円がかりに動いたところで、それで福祉年金の本質を失うものじゃもちろんないわけであります。千円というものに何も固定化して考える必要はもちろんないと存じますけれども、今福祉年金をそれで上げるかどうか、こういう問題になりますと、にわかに結論は得られない。この前も申し上げましたが、一般の感覚から言えば、千円が高い、多過ぎると考える人はいないといたしましても、これをそれではどうするかということになりますれば、年金制度としても考えなければなりませんし、同時にまた、いわゆる低所得層に対する問題として、もっと広くいろいろ考えなければならぬ点があろうと思います。福祉年金だけで片づけられる問題ではもちろんないわけです。そういうことでございますので、この問題につきましては決して検討を惜しむものじゃございませんけれども、今直ちに千円の額をどう上げるとか、こう上げるとかいうことは、具体的に申し上げる段階に至っておらぬわけであります。先ほどお話のありました支給要件の点について、まだ千円のものが相当残っておるとすれば、あるいは妥当な線において支給要件を緩和して、これを受ける人たちの額をふやすことも一つの考え方、この必要もまだ残っておると思います。金額を上げるという問題につきましても、この前の臨時国会のときにも私の感じ方を申し上げたと思いますが、私は何もこれで固定しなければならぬと思っておりませんけれども、これを変えるということになりますと、政府といたしましても相当の検討を必要とする、かように考えます。同時に、低所得層対策としていろいろなさなければならぬこともたくさんあろうと思うのであります。それらの一環としてこの問題を考えていかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。直ちに御満足のいくような答弁とも実は思いませんけれども、この問題については十分検討させていただきたい。この程度で御了承おき願いたいと思うのであります。
  71. 八木一男

    八木(一)委員 そういう意味でこれは老齢年金、すべての福祉年金に通じますけれども金額の引き上げとか要件とかの緩和をしていただかなければならないと思いますが、具体的な問題を時間を急いでどんどんやっていきますが、配偶者所得制限という問題がある。これはまことに不合理きわまる制度です。今の老齢福祉年金所得制限の要件としては、本人所得制限、配偶者所得制限、それから世帯という名前で呼ばれているが、実際は違いますけれども、世帯所得制限というものがある。それで大体において制度の関係で異同はありますけれども、本人所得制限が十五万円、それから世帯が二十万、配偶者所得で二十万ぐらい、それから世帯所得制限が五十万。そうなると、五十万の収入のある世帯、息子さんがれっきとして健在をしていて、親孝行されておる。楽隠居されておる。楽でないかもしれないが、ある程度楽隠居しておる老夫婦には老齢福祉年金がくる。ところが片一方は配偶者所得制限があるので、息子や嫁が死んでしまって、年寄りが腰を曲げて働かなければならないというときに、その年寄りが腰を曲げながら働いて二十万の収入があったならば、おじいさんの方は本人に所得がありますからこなくても仕方ないけれども、おばあさんにこない。こういう所得制限は実に不合理きわまって、小山さんみたいな頭のいい人が、何でこんなばかなものを考えたかというふうにしか思えない。これはいろいろな御苦労があって、金が足らないので、いろいろな制限をつけて少なくしようというところからきているのではないかと私は思います。そういう不合理な制度であってはいけない。配偶者所得制限については、来年度の改正案では削除する法案を出すということをぜひともお答えを願いたいと思います。
  72. 小山進次郎

    小山政府委員 これは先生の最も御主張のうちの強い部分でありますので、多年検討しておるわけであります。なおまだいろいろ論議の尽くさないところもありますので、研究さしていただきたいと思います。
  73. 八木一男

    八木(一)委員 検討して論議を尽くさないというのですが、これをいけないというような論議をする人は、社会保障を語る資格はないのであります。どこの地位にあろうとも、どこの圧力があろうとも、そういうばかな連中の意見は踏みつぶして実行していかなければいけないと思う。そういう論議を堂々と言える人があったら、自分があほうか気違いかということを示しておることになろうと思います。そういう意味で、そういうようなつまらぬ俗論は打破して、配偶者所得制限は削除した法律案を来年度出すという御決意をぜひ承りたいと思います。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 年金制度につきましては、まだいろいろお互いに検討しなければならぬ問題があると思います。前からの御主張でございますが、今年金局長も申しましたように、部内においてもよく検討いたしたいと思います。来年出すということは、厚生大臣として、今の場合、そういう具体的なことまで返事をすることはできないことを御了承願いたいと思います。十分検討いたします。
  75. 八木一男

    八木(一)委員 一つ前向きの御検討を願いたいと思います。  その次に、老齢福祉年金の方で、本人所得制限が十五万円になりましたけれども、あれは去年からの懸案であって、それ以上にも発展を見ていないし、世帯所得制限もそのまま固着されております。ところが賃金その他の水準が上がりまして、前の年には適用になったけれども、今度はそれをオーバーして、適用にならなかったという部分があるわけです。これは非常に不合理でありますので、私としては、所得制限、世帯所得制限を野放図にして、金持ちまで福祉年金を上げるということを、将来はしてもいいけれども、現在としては貧乏な人にたくさん上げる、あるいは年令を引き下げて上げるということに重点を賢くべきだと思いますけれども、過渡的にその境目においては、これはそのままにとどめ置いてはいけない状態にことしくらいには達したと思う。こういう問題については、やはり来年度あたりに考えていただく必要があろうと思う。所得制限のその意味における緩和、世帯所得制限の緩和、本人所得制限は老人が働いておるのですから、うんと大幅に緩和していただくということが必要であろうと思いますが、ぜひ一つ前向きに取っ組んでいただきたいと思います。
  76. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも八木さんの御質問を聞いておりますと、みなごもっとものような気がするのでありますが、こういったような制度につきましても、多少は実績を見なければならぬと思うのであります。毎年々々追いかけて変えていく必要がある場合もありましょうし、また、ものによりましては、やはりせめて一年や二年はやってみて、状態によってまた考えていくというふうなことも考えなくてはならぬと思いますので、御趣旨は決してわからないということを申し上げているわけではございませんが、厚生省としましては、実績というふうな点についてもある程度の資料を持ち、そしてまた影響するところもいろいろございましょう。そこらの点も考えつつ検討をさしていただきたいと思うわけでございます。
  77. 八木一男

    八木(一)委員 次に、母子福祉年金に移りますが、これが千円では足りない、三千円か四千円に上げていただかなければならないことはむろんであります。それについても前向きに一つ取っ組んでいただきたいと思いますが、簡単に一つ前向きに取っ組むと御返事がいただきたい。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 前の臨時国会でもお話があったと思うのであります。母子福祉年金金額が、先ほど老齢福祉年金について申しましたように、これでもって十分過ぎるというふうな考え方はいたしておりませんけれども、いろいろやはり検討を要することもございましょうから、その意味において一つ検討をさしていただきたい、かように私はこの際としては申し上げておきたいと思います。
  79. 八木一男

    八木(一)委員 現在母子福祉年金要件が、子供が十六才未満ということになっております。これははなはだしく年金が低過ぎると思います。この年令を引き上げるということを一つ前向きで進めていただきたいと思いますが、それについての厚生大臣のお考えを承りたい。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 これもあわせて検討さしていただきたいと思います。
  81. 八木一男

    八木(一)委員 それでは障害福祉年金に移りたいと思います。障害福祉年金については、たくさん申し上げることがあるわけでございますが、できるだけ簡明に申し上げます。  今一級障害、二級障害、三級障害、四級障害といろいろあるわけでございますが、福祉年金については一級障害しかない。月に千五百円だということになります。一級障害になると両手あるいは両足あるいは両眼、そういうものが工合が悪いという人であって、これは非常な所得能力の喪失であります。でございますから、これは五十万の所得を持ったむすこさんのいる老齢者よりも、はるかに所得保障必要度が多いわけです。千円に対して千五百円というようなことでは、これは話にならないわけであります。わが党のように即刻七千円を出す、経過的な人であっても四千円にするというところまで、政府としてはわが党以上に積極的に考えていただく必要があろうと思います。千五百円を引き上げることを急速にやっていただきたいと思いまするが、これについてのお答えを願いたいと思います。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 年金の額につきましては、老齢年金にしましても母子年金にしましても、またただいまお話しの障害年金にしましても、われわれといたしましては、もちろん検討の対象といたしておるわけであります。ただちに結論を得られるかどうか問題でありますけれども、決してこの程度で、いつまでもいつまでもほっておいて差しつかえないというような冷淡な考え方はいたしておるわけではございません。実情に即して十分検討いたしたいと存じておるわけであります。拠出年金とのいろいろの関係もございましょうし、財政の関係もございましょうし、われわれとして検討すべき点は多多あるわけであります。おろそかにはいたしておりません。御了承願いたいと思います。
  83. 八木一男

    八木(一)委員 それでは障害福祉年金については、二級、三級の人に拡大するように御配慮を願いたいと思います。社会保障観点から見れば、私は福祉年金の場合に、障害が一番所得保障の必要の度が多いと思う。その次に母子であろうと思う。これは準母子も入りますけれども、とにかく母子。それから老齢になるのではないかと思います。それがある意味では逆転をいたしております。片足がだめ以上の二級障害というような障害者に対して、全然出ておらぬ。先ほど拠出年金で申し上げましたが、内科障害では一級も出ておらない。これははなはだしくバランスを失しております。そういう意味で、私どもはこの年金を選挙年金だと考えざるを得ないわけであります。年寄りについては、年寄りが多い、その家族も多い、従って、それを喜んだ人については選挙の札がかなり確保される道が強い。そういう意味の配慮であってはいけないと思う。非常に与党の方に失礼でございましたけれども、私は、どうしても障害年金をもっと拡大する、金額を上げるということをしていただかない限りにおいては、これは選挙年金のにおいがあるということを忘れ去るわけにいきません。私は自民党がそういう選挙年金を作られる政党でないことを望みたいと思います。そうでないようになるために、ぜひ障害年金金額が上がり、それが拡大されるように推進を願いたいと思います。政府は自民党内閣でありますけれども、政党とはまた別であります。政府としては、社会保障の本旨に従って、所得保障必要度の多い障害者に対する年金額を引き上げ、その対象者の拡大に猛烈な努力をお願いしたいと思います。それについてごく簡単に御答弁願いたいと思います。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 福祉年金は、申すまでもなく、この点については御議論はあろうと思いますけれども拠出年金の補完的な制度として福祉年金制度が設けられておるわけであります。その立場でもっていろいろのことは考えて参りたいと思います。現在、福祉年金支給の条件というものがきびし過ぎるかどうか、こういうような点につきましても、年金領の問題と同様に、政府としましては研究もさせていただきたいと思いますし、調査もさせていただきたいと思います。
  85. 中野四郎

  86. 滝井義高

    滝井委員 あとに八木先生とほかの方がいらっしゃるようですから、簡単に私聞きたいところだけ、国民年金法児童扶養手当法の関連についてちょっとお聞きしたいのです。まず、児童扶養手当についてですが、中央児童福祉審議会で部会を設けて、現在の児童扶養手当法を欧米諸国の児童手当のような形にしようという検討が行なわれておることを新聞その他で見ておるわけでございますが、政府としては、今の児童扶養手当、国民年金の中における生別母子世帯に出すものを、そういう方向に拡大をしていく積極的な意図があって中央児童福祉審議会にそういう諮問をしておるのかどうか。もしそういう積極的な意図があるとすれば、一体政府の腹づもりというものはどういうことになっておるのか、この機会に一つ明らかにしておいていただきたい。
  87. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 児童手当制度についての検討を政府といたしましても開始いたしているところであります。この点は前々から申し上げているところでございます。現在御審議を願っております児童扶養手当制度についても、この児童手当制度にもちろん関係のある問題でございます。これが一つの芽であると申し上げてもよろしいかと存じますけれども、児童扶養手当制度を拡大強化するというふうな考え方と申しますよりも、新たに一つ児童手当制度というものを立案してみたい、こういう考え方になっております。児童扶養手当制度その他いろいろ児童に関する諸施策の中に将来の児童手当に対する芽となるものがいろいろあろうかとも思うのでございまするが、今考えておりますものは、いわゆるILO条約等でもいわれておりますような児童手当制度というものを考えてみよう、こういう考え方をいたしておるところでございます。この問題につきましては関係するところもかなり広いと思うので、またその制度の趣旨、目的等についてもいろいろ研究しなければならぬ点もあるように考えられるわけでございまして、当委員会におきましても、すみやかに児童手当制度を確立するようにという趣旨の御要望もかつてございました。それらの点も尊重いたしまして、何とかいわゆる児童手当制度というものを確立してみたい、かように今考えておる次第でございます。中央児権福祉審議会等におきましても、前にも申し上げましたが、児童手当制度をすみやかに作るようにというふうな要望もございました。ただいまの段階におきましてはこの審議会に児童手当部会というようなものを設けまして、いろいろな観点から御検討を願っておる最中でございます。政府としましても、日本の社会保障制度の中で一つの欠けた点といたしましてこの問題を取り上げまして、何とかいい制度を作り上げたい、こう考えておるような次第でございます。現段階におきましては趣旨とか方法とか目的とかいろいろございましょうが、そういう点についていろいろな角度から検討をしてもらっておる最中であります。
  88. 滝井義高

    滝井委員 政府としては、児童扶養手当という、生別母子世帯に出した年金制度の一環をなすこの児童扶養手当法と申しますか、こういう一つの芽を出したのだから、従って将来はILOの条約百二号関係ですか、そういうものとの関連もあるので、児童手当法というようなものを検討をしてみたいという、何かちょっとぼやっとしておるのですが、そういうぼやっとしたことでなくて、現在の日本の客観的な雇用の情勢、人口構造、そういうようなものから見ると、この際欧米諸国における児童手当というようなものが積極的に必要になった、だから中央児童福祉審議会に意見を聞いて、積極的に一つこの際やろうという腹は固めておるわけではないわけですね。そこらを、積極的な政府が腹を固めておるかどうかを聞きたいわけです。りっぱな答申さえ出れば、その答申をもとにして、児童手当というものを、政府は客観情勢は必要としておるという認定のもとにやっているかどうかということなんです。政府にその積極性ありやなしやということを聞きたいわけです。
  89. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどお答え申しました中に、児童扶養手当制度もいわゆる児童手当制度の一つの芽であるということを申し上げましたのですが、御承知のように、児童扶養手当制度国民年金の方の母子福祉年金というふうなものの欠陥を補うといいますか、足らざるところを補うような趣旨をもって作った法律でございますので、さような申し上げ方をしたわけでございますが、もちろん今日私どもが考えましても、社会情勢、経済情勢あるいは労働の状態というものもいろいろ変わってきております。家族の構成等につきましてもだんだん変わってきておる、あるいは賃金の制度等につきましても変化がだんだん進んでおるようにも思います。ことにまた人口構造の上から申しましても、児童の問題というものを真剣に取り上げなければならない状態になってきておるようにも思いますので、それに対する社会保障制度といたしまして、児童手当制度というようなものを考える必要がある、こういう認識のもとにこの制度と取り組んで参りたいと思っているわけでございます。御承知のように、今日までにもいろいろな面において児童の問題が取り上げられて参っております。関係するところもいろいろございますので、にわかに制度を立てるということもなかなか困難な点もあろうかと思うのでございますが、十分検討を尽くしまして、社会保障制度としてりっぱな児童手当制度を作っていくべく努力したいと思っておるような次第でございます。
  90. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、相当政府は積極的にこれはやりたいということがわかってきたのですが、これは大臣でなくて児童局長でもいいと思いますが、雇用審議会、あれは内閣だったか労働省だったか知りませんが、雇用審議会が家族手当制度を作る必要があるという主張をしているのです。最近における日本の中高年令周の再就職というものが非常に困難になってきた。その原因は一体どこにあるのだというとやはり賃金問題ですね。扶養家族が多いから賃金を高くしてやらなければならぬということで問題になってきているわけでしょう。従ってその賃金問題をある程度円滑に解決して、中高年令層の就職を促進をしていく、こういうことのためには家族手当が必要なんだ。それから年功序列賃金を是正して、労働の生産性を高めるというようなことで家族手当制度が必要だ、こういうことを言っているわけです。そうすると、厚生省の方は児童手当を検討する、労働省の方というか内閣の方では家族手当制度をやる、こうなりますと、これは交錯をすればいいのですが、その立論の仕方、その他が、大臣は社会保障政策の見地から児童手当を検討する。そして厚生省の中の児童局の所管の中央児童福祉審議会でやる。一方は、今度内閣の方なり労働省の方で雇用政策の立場から家族手当制度を検討していくというと、これはだいぶ角度が違ってくるわけです。この調整の問題をほんとうに今後実らせようとするならば、有無相通じて意思統一した検討が行なわれておらないと、あとになって所管の問題その他が起こってくると思うのです。こういう点、中央児童福祉審議会は部会を設けて児童の養育費なんというものの基礎資料を集めるために調査を開始しておるとかいうのを新聞で見たことがあるのです。そういういろいろのものをおやりになる場合に、雇用政策との関係、こういう点どうお考えになり、どう調整連絡しておやりになっておるのかという点を、これは大臣でも局長でもかまわないのですが……。
  91. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御案内のように、児童手当制度に関しましては、昭和二十二年に社会保険制度調査会からまず答申がございました。この答申は孤児に対し児童手当金を支給するという意味の答申でございましたが、その後アメリカの調査団のワンゲル報告というのがございまして、ここにはいわゆる家族給付と申しますか、本格的な家族給付の必要を勧告しておるのでございます。その後社会保障制度審議会では昭和二十四年に、社会保障国民全部を対象とする必要があるという観点から、家族の扶養及び教育の責任並びに最低賃金との関連を勘案して、家族手当をこの制度に包括すべきであるということを覚書として出しておるのであります。それから中央児童福祉審議会では、先ほど大臣が申されましたように、昭和三十五年に児童福祉行政の刷新強化に関する意見の中で、わが国の経済の二重構造に基因する賃金格差とか、低所得階層の増大等々というものが家族就業というものを必然化しておる。そこで、こういう低所得者に対して経済の成長に伴って心理的な圧迫を加え、社会的緊張の原因となっておるから、こういうことが原因して家庭の崩壊とか、非行児とか、長欠児童というものが生まれてくる。そこで、児童権利宣言にのっとった児童手当というものを諸外国におけると同様にやったらどうだというようなことを述べられておるのであります。  それから三十五年には、先ほど申されました経済審議会で特に年功序列型の賃金制度の是正を促進する意味で、一律に児童手当を支給する制度の確立を検討する要があるというようなことを言われて、この児童手当制度が本来はビヴァリッジも言っておりますように、収入と家族との不均衡というようなことからこういう制度が必要であるということが言われておるのでありますけれども、わが国におきましてはそういうようなことから、さらに先ほど申されましたような賃金のいろいろ形態というものが変わってきつつあるし、またそれを促進しなければならぬというような意味、いろいろな意図から児童手当制度ないしは家族手当制度というものが論議されておるのでございます。従いまして、このような目的がいろいろあるわけでございますが、わが国の現実に即応するような制度というものは一体何を主たる目的にしたらいいかというような、児童手当制度の目的に関して一つ意思の統一をはかる必要があるということが、現在特別部会の審議中心でございます。御指摘のようにいろいろ労働省の関係もありまして関連するところが広いものですから、一体主たる目的をどこに置くかということに眼目を置いて、まず意思の統一をはかろうということを今政策の重点にして御検討願っておる最中でございます。
  92. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この中央児童福祉審議会には労働省その他の労働政策、雇用政策の専門家も入っていないと問題が出てくると思うのです。これを社会保障的な見地から児童手当なり家族手当を検討する場合と、雇用政策的なニュアンスを強めて検討する場合とは非常に違ってくる。社会保障的な見地からやりますと、必ず年金につく所得制限その他がぎらついてくるわけです。ところがこれを労働の生産性を上げるのだというような面まで入れた検討をしますと、雇用審議会が三十六年の八月に言っているのは一律児童手当です。差別をしていないのです。社会保障的な面からいくと何も高い賃金をとっているものにやる必要はない、こういうことになって、年金のように所得十五万円までとか、十三万とかいう制限が必ずついてくる。それは制度のあり方としては非常に違ってくる。   〔委員長退席、小澤(辰)委員長代理着席〕  従って、この際あなたの方で労働省なり内閣の方にできているいろいろな審議会に率先しておやりになろうとすれば、その委員の構成というものを相当底辺の広いところに置いておかないと、大所高所から論議しておかないと間違いが起こってくると思うのです。間違いというか、その制度が非常に局限的なちゃちなものになるというおそれがある。それでは労働階級の要望にこたえることができないということになって、中高年令層の雇用が依然として促進されぬということになるわけです。ですから、もう少し児童局長の方の考え方というものをある程度幅を持たせるためには、中央児童福祉審議会委員自体の問題にもなってくるのです。そこから今の目的の意思統一をはかっていっていくと、私は非常に問題が発展性を持つと思うのでありますが、そこらあたりはどうですか。
  93. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御指摘のような点も考慮いたしまして労働行政、ことに賃金の問題の権威者である金子美雄氏を児童手当部会の委員に御委嘱申し上げております。なお、人口構造との関係もありまして、人口問題研究所長の館稔氏、慶応の中鉢正美氏等、労働行政に関係のある人たちの意見を広く聞きたいというので、そういう人選をしております。
  94. 滝井義高

    滝井委員 金子さんというと経済審議庁の何か調整局長か部長だったのですね。——金子さんも必要だと思いますが、もう少し雇用審議会あたりの雇用問題を専門におやりになる有力な学者その他、ここで名前をだれだれと言っても工合が悪いのですが、そういう人等を少し入れて、雇用審議会との意見の調整を私はぜひやっておいていただきたいと思います。  時間がありませんから具体的な内容は触れませんが、これはこれまでにして、今度年金です。
  95. 吉村吉雄

    ○吉村委員 関連して。この前児童扶養手当法案で若干時間の関係で残っていましたので、残っている点をお聞きしておきたいと思います。この前の質問の際に児童局長の方から、中央児童福祉審議会の方で具体的に検討する素案というものを先月の末ごろにやる、こういう答弁があったわけです。それは開かれたのか、開かれたとすればその経緯はどういうふうになっておるのか、一つ聞いておきたい。
  96. 黒木利克

    ○黒木政府委員 委員の先生の御都合で今月の十日までに開くことにいたしまして、なお試案については目下作成中でございます。
  97. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は、何といいましても、児童手当を早急に作り上げていかなければならないというのが、今の日本の社会保障制度にとって非常に大きな問題になっておると思うのです。そこで、この児童手当を制度化するのにあたって、現在提案をされ、今一部改正されようとする児童扶養手当法というものが、本来の意味での児童手当制に対してむしろ障害になるのではないかということを非常に危惧をする、こういう立場に立ってこの前も質問をしておったわけでありますけれども、政府の方としては、今滝井先生の方からもいろいろ質問があったのに対して、相当熱意を持ってやっているという話はございましたが、その具体的な作業を担当されておる審議会の方が、あなた方の予定をしたときになかなか開かれない。今回は十日ころということでございますけれども、こういう状態のままでは私はますます遷延をされるだけになっていくのじゃないかということを心配せざるを得ないのです。その根本をなすものは、先ほども申し上げたように、児童扶養手当法ができたことによって、児童手当法というものを作る熱意が減殺されていくという傾向を感ぜざるを得ないし、先月末のものがまた延びるということでは、この心配をますます私としては深くせざるを得ないので、こういう点については促進をするという立場に立ってやっていかなければ、児童福祉審議会からの勧告というか、その意見にも沿わないことになるだろう、このように考えます。この点は一つ十分作業を進めるという積極的な立場で事に当たっていただくように強く要望しておきたいと思うのです。  次に、いま一つは、児童手当法を制度化するということに関連をして、今政府の政策の中心をなしております所得倍増計画、この中での社会保障の内容を見てみますと、この中で児童手当についてはどういう位置づけがなされ、どういう計画がなされておるのかということを見たわけでございますけれども、これについては大体十カ年計画の後半において検討を始める、こういうことがあの所得倍増計画の中に盛られておるわけです。としますると、今までの政府側の、児童手当制を発足させるために福祉審議会等で現在作業を進めてもらっているという答弁と、所得倍増計画の中に書かれておるところの後半において検討を始める、この時間的なズレというものは一体どういう関連を持つのかということについて私は疑問を持ったわけでございますけれども、この点はどういうふうになりますか、大臣の御見解を承りたいと思います。
  98. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 吉村さんは、今回の児童扶養手当制度が、児童手当制度の促進の上からいうとあるいは障害を来たしやしないかというような御心配をお持ちのようでございます。この前も申し上げましたように、児童扶養手当制度は、国民年金の中の母子福祉年金という制度がありますので、それとの見合いにおいて考えられた制度である、この程度に御了解をいただきたいと思いますというような考え方で事に当たっておるわけではございません。私どもの考えておりますといいますか、目途といたしております児童手当制度というものは、児童扶養手当制度式のものをただ少々伸ばしていく——いわゆる本格的な児童手当制度として考えて参りたい、こういうふうな気持を持っておるわけでございます。  なおまた、滝井委員から適切な御発言がございましたが、先般もある委員会で私はお答え申し上げたのでありますけれども、この問題を考えるのについては、少なくとも現段階におきましては、かなり広い視野に立ってものごとを考えていきたいと思っておるわけであります。いわゆる家族給付というような制度もございますので、そういう問題についても私はやはりあわせて考えていかなければならない問題じゃないか。従って、この制度を確立するに際しましては、かなり広い観点に立って、いろいろ関連した事項等につきましてもよく検討を加えました上で結論を得たいと思っております。どういう形のものが出てくるかというようなことを今から私はにわかに予想するわけにも参らないと思います。一つの一括した制度ができるのか、あるいはまた一つ以上の制度でもって考えていかなければならないか、あるいは給付対象をしぼるかしぼらないか、こういうようないろいろの考え方が現実問題といたしまして出てくると思うのであります。今日の場合としましては、各国の制度等を十分取り調べもいたしたいと思いますが、わが国の制度といたしましても、単なる貧乏な子供を助けていくというだけのものではなくて、関連したいろいろのものをあわせて検討して参りたいと思っておるわけであります。そういうことでございますので、これが検討をいたしますのについても、相当の時間を必要とすると思います。また結論を得るのにいたしましてもよほど慎重な配慮を必要とすると思うのでございますから、今からその検討を始めましても決しておそくはないという考え方をしております。ただ問題は、しっかりした児童手当制度あるいはこれを家族手当制度と呼びますか、名前はどういうことになるか存じませんけれども、この種の制度社会保障制度の重要な一環として今後つけ加えていくということになりますと、これは私は速急に結論を得て速急に実施するというふうにはなかなかいきにくい、従って、われわれといたしましては、所得倍増計画の十カ年計画というのがございますが、その後半においてこれが実現を期して参りたい、こういう考え方のもとにやっておるわけでございます。一両年の後に結論が出ればけっこうでありますが、なかなかそう簡単に結論は得にくいものではなかろうか。同時に、問題は大事な問題でありますけれども、非常に慎重な配慮を必要とする。せっかく作りながら、あまりちゃちなものは作りたくないというような気持もいたしておるわけであります。多少の年月はかしていただかなければならぬ、また所得倍増計画が順調に進んで参りまして、国民の経済力、国の財政力というようなものが相当ついたところで、実施に移すのが適当ではないかということであります。具体的に制度化して参りますのは、倍増計画の上から申せば、後半期に入ってくる、かような一応の考え方をもって進んでおるわけでございます。それをやるにいたしましても、すみやかに検討を開始いたしまして、広くかつ深くこの問題についての検討を重ねた上で、何とか日本の国情にも合い、しかも諸外国に比べてみましてもあまり見劣りしない、いいものを作って参りたい、その気持で現在検討を進めておる、こういうふうに御了解をいただきたいと思います。
  99. 吉村吉雄

    ○吉村委員 関連ですから、これで終わりたいと思うのですが、私は、今までの質問の過程に明らかになったことは、児童福祉審議会の方ですでに現実に適するような素案をもって検討を始める、こういう答弁がございましたから、従って、これは相当促進する熱意を持っておるというような理解に立っておる。ところが厚生省発表によるところの長期計画の基本構想によりますと、児童手当の制度化については、倍増計画の後半期において検討をするという趣旨のことが書いてありますから、そういたしますと、現在進めておるという答弁の趣旨と、それから後半期に検討を始めるという趣旨からすると、食い違いがあるのではないか。そういう点から考えてみますと、現在進めている作業というものは、単に時間をかせぐということになるというふうに考えられてもやむを得ない。そういう一例といいますか、今回先月末にやるというものがまた延びる、こういうことになってきたというふうに実は考えられたので、この点を心配をして質問をしたわけです。  私の願っていることは、一般的にはいろいろな論説等を見てみましても、児童扶養手当制度というものができたことによって本来の児童手当というものを制度化するための熱意というものが関係者の中に薄れていくということがいろいろ批判をされておるわけです。私もそういう危惧を持っておる一人なんです。それはいけないと言われるかもしれませんけれども、現実に児童扶養手当という名称が与える印象というものは、非常に安堵感を与える危険性を持っていますから、そういう点については、厚生省の計画というものと現在進められている作業というものがあまりラップをしないで、そして現在の作業というものを促進するという立場に立っていかないと、倍増計画の後半期に検討を始める、これではとても大へんなことになるのじゃないかというふうに考えるのです。先ほど厚生大臣も言われましたし、私もその通り考えていますけれども、今の児童扶養手当法というものはもちろん国民年金法の補完的なものとして出されたんだ、このことは十分わかっています。わかってはいますけれども、大臣の答弁の節々にも見られるように、それはやはり児童手当の萌芽的な意味も持っておるということも答弁をされておるわけですから、従ってその限りでは、全然別個のものというふうには大臣も考えていないだろう。まして一般的にはそういうふうに考えられていないというところに問題がある。このように私としては考えているところなんです。言うまでもございませんけれども、日本の幼少人口というものは、減少していくという傾向にありますから、こういう場合にどう国が対処するかということについては、国として児童の権利——児童を人間としてどういうふうに育成をし、その能力を発揮させていくか、そういう観点に立ったところの児童手当制度というものを早急に作り上げていかなければならない、こういうように考えておるわけで、その立場に立っての質問でございます。だから大臣が明快に答弁をされるように、この児童扶養手当法というものが本来の児童手当法というものを作り上げるのに決して障害になるようなことはない、そういう立場に立って厚生省全体が進められるとするならば、私はこれに越したことはない、このように考えています。  ここで、どうか児童手当制度はそれだけの問題に限らず、日本の社会情勢全般に大きな影響を与える問題であろうと考えますので、積極的にILO一〇二号の精神に基づいたようなりっぱな児童手当制度というものを、厚生省が真剣に進められるように強く要望しておきたいと思います。終わります。
  100. 滝井義高

    滝井委員 次は、国民年金ですが、要点だけ質問します。  最近における日本経済の急激な変貌のために、当初われわれが昭和三十三、四年ころに国民年金対象者として考えておった農業なり中小企業の数というものは相当急激な変化をしつつあるわけなんです。従って当初われわれがこの程度の対象者国民年金にはあるであろうと考えておったその対象者は、おそらく急激に減少しておると思うのですが、一体政府としては、現在の国民年金の加入対象君というものをどう見ておるか。強制加入対象者、任意加入対象者を一つ説明してもらいたい。
  101. 小山進次郎

    小山政府委員 現在の国民年金対象者たるべき者については、昨年の八月、実態に基づいて調査をし直したのでありますが、それによりますと、被保険者の総数で二千二百十一万、このうち強制加入の被保険者たるべき者が千九百二十六万、任意加入の被保険者たるべき者が二百八十五万、こういうことになっております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは当初あなた方が見積もったときの数に比べて、どの程度変化が起こっていますか。それをちょっと教えて下さい。
  103. 小山進次郎

    小山政府委員 大まかに申しまして、総数で約二百万程度減っております。当初は、総数でおよそ二千四百万程度というふうにつかんでおったのでありますが、実際に当たってみますと、二千二百万程度にこれが減っておる、こういう事情であります。
  104. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その二千四百万とつかんだのは、昭和三十三年の終わりか三十四年の初めくらいですね。
  105. 小山進次郎

    小山政府委員 実を申しますと、昭和三十三年当時は、さらにもう少し多い数を計算上は出しておったのであります。最初は二千六百万程度と申し上げておる。だんだんその後数字を詰めて参りました結果、二千六百万は少し下るであろうけれども、二千四百万よりはもう少し多いような数を申し上げておったと思います。二千四百万という数は、今からちょうど一年半ぐらい前に申し上げておった数であります。
  106. 滝井義高

    滝井委員 問題はここから出発してくるわけです。  そこでこの二千二百十一万の三十六年八月に把握した数の中で、強制が千九百二十六万、任意が二百八十五万、これを現在あなた方はどの程度、私は保険に加入したいといっているのを登録させておるかということですね。任意と強制と分けて一つ……。
  107. 小山進次郎

    小山政府委員 強制保険の被保険者千九百二十六万のうち現在加入の手続を終わっておりますのが千六百七十万、およそ八七%程度でございます。それから任意加入の被保険者二百八十五万のうち加入の手続を終えましたのが二百六十万、およそ九一%程度でございます。
  108. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、現実に強制で約二百五十万、それから任意の方は非常に成績がよくて二十五万そこそこ加入していない、こういうことになるわけです。一応ここに二百五十万という盲点が出てきたわけですが、次は、この千六百七十万の手続をした人の中で今度——これは手続をしただけではだめですから、保険料を納入しなければならぬわけです。一体保険料の納入者というものはどの程度——もちろんこれは一回、二回納入してもあとやめておる者もありますが、とにかく現実に保険料を一回でも納入した人はいいことにして、一回も保険料を納めたことがないのが強制加入の千六百七十万の中に幾ら、任意加入の二百六十万の中にどのくらいあるか。
  109. 小山進次郎

    小山政府委員 簡単な方から申しますと、任意加入の被保険者は、全部納めております。それからこの加入の手続を終えました者のどれだけが保険料を納めておるかというその調査は、実のところ私どもの手元にないわけでございます。この人たちが納めた保険料の集積が納めるべき保険料に対してどのくらいの割合にあるかというのがあるわけであります。これは一月の末で、当時は約七割程度、それから三月末の分がもうすぐわかると思いますが、おそらく七割六、七分程度になっていると思います。
  110. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一応任意のものは成績がいいですから横に置いておいて、千九百二十六万のうちに加入手続をとったものが千六百七十万でございますから、とにかく二百五十万盲点ができておるわけです。さらに今度は千六百七十万のうちに四百八十万程度、約五百万というものは保険料を納めていないわけです。こういうものが出てきた。そうすると、保険料を納めていないということは、保険ですからこれは資格がないことになるが、まず保険料を納めていない約五百万の中で免除の申請をしたものが幾らあるか。
  111. 小山進次郎

    小山政府委員 免除の取り扱いをいたしましたものが二月の末で百六十五万八千人でございます。これは強制適用の被保険者に対して九・九%、それからなお先ほど申し上げましたのは進行途上の数字でございまして、国民年金保険料は四月の末日というのが初年度の納入期限になっているわけでございます。この月にどのくらいになるかというのが問題でございますけれども、今のところでは八割をこえていることは確実だと思っております。予定の八割五分までには、あるいはひょっとすると手が届かないかもしれない、こういうような見通しを立てております。
  112. 滝井義高

    滝井委員 今の免除申請をした者が保険料を納めていない約五百万人程度の中で百六十五万八千、これは当初の見積もりよりもずいぶん免除申請をした人は少ないわけですね。あなた方は初めはおそらく三割くらい出るだろうという見通しだったのです。ところがそれが九・九%と、意外に農村なり中小企業者というものは、これだけから見ると、財政負担力がある、こういう気持がするわけです。これはこういう気持だけにとどめておいて、そうしますと、問題は、強制加入者の中で全然加入手続をしなかった二百五十万人と、それから五百万人の中の免除申請をしなかった約三百五十万人、この二百五十万と三百五十万と足した六百万というものが盲点になってきたわけです。これに対して、老後を保障する政策は一体どうするかということが問題なんです。この中小企業なり農村における六百万の国民が、全然年金について関心を示さなかったという、この六百万人を一体政府は今後どう指導し、どうしていくかということをここではっきりしてもらわなければならぬことだと思うのです。
  113. 小山進次郎

    小山政府委員 先生のお言葉でありますが、盲点でも何でもないのでありまして、われわれは絶えずそれを意識しているので、いかにしてすみやかに組織の中に繰り入れ、そして制度の仕組みに乗ってもらおうかという努力をしておるわけであります。現に、強制加入の被保険者も、一年前に比べますとずっと適用が進んでおります。一年前におきましては、先生にもときどき御指摘をいただきましたが、京都とか大阪というような大都市は加入者わずかに一〇%内外というような時期もあったわけであります。これはいずれも現在は六〇%をこえるところまできておるわけであります。そういうふうな工合にこれからその仕上げにかかっていく。むしろ私ども気持から言えば、全国に散在するこれだけ多くの被保険者から保険料を徴収してやるという拠出制度が成り立つだろうかということが大きい問題であったわけです。おそらく先生なんかもそういう問題については、どちらかというと、私どもと同じように非常な非観的なというか、あるいは慎重なお考えをお取りになっておったと思うのでありますが、とにもかくにもここまでこられた、残るのはこれくらいであれば、これからこれを調整をして、軌道に乗せていくということは、思ったよりも早い時期にできるようになる、こういうような気持で最後の追い込みにかかっておるわけであります。
  114. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、一体六百万人の人間を保険に加入させようとすれば、この人が保険に加入をするときには、前の未払分を払わなければ加入さしてくれないでしょう。
  115. 小山進次郎

    小山政府委員 加入は当然してもらわなければいかぬおけでありますから、前の分を納めなければ加入させないといったようなことはございません。とにかく加入の手続はしてもらう。それから、納める分については納められるものからまず解決をしていく。そうして逐次さかのぼって解決をするというように、いずれにしても当人にとって一番有利な道をとりながら軌道に乗せていく、こういうことに考えております。
  116. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、現場と少し違うから確認しておきますが、滝井義高が三十七年の四月一日から加入をします。そうしますと、拠出制年金は去年の四月一日から始まっておるわけですから、私でいえば、一年分の千八百円の保険料を延滞利子もつけてほんとうは納めなければならぬことになるわけですね。ところがそれは納めなくても、四月一日がきょうとすれば、きょうからの三十七年度分の保険料を納めればここから被保険者としてやってくれるので、前は納めておらぬから、被保険者でないわけですから、その一年分だけは先にやります、私は先になってから、五十九才まで納めるのを六十才まで納めます、こういうことになればいいのですが、それでここが問題なんです。実はわれわれが加入をしようとすると、市役所、町村役場は前の分も納めて下さい、こういうわけなんですね、そう言われて納めたのもあるのです。ここらあたりに一つ問題が出てくるのです。これは今まで一年ぐらいだから、千二百円か千八百円ですから大した問題ではないかもしれない。しかし貧しい人にとっては千二百円でも千八百円でも大した問題です。しかし、あなたがきょう、四月一日から御加入になるならば、三十七年度分だけでよろしい、こうなるとだいぶ問題の解決がしやすくなるのですが、それでよろしいですか。
  117. 小山進次郎

    小山政府委員 ある部分はそれでよろしくて、ある部分はそれではいかぬわけであります。今先生がおあげになった例で申しますと、やはりその人が被保険者になるのは三十六年の四月一日であります。従って三十六年の四月一日からの保険料は納めてもらわなければならぬわけであります。ただ実際の問題として、現に加入の手続をとろうとしておるのが三十七年の四月一日であった、その人はいわば過去の一年分の保険料を払え、それから新たな保険料を払わなければならぬ、こういうことになるわけであります。その場合に、できるだけ初めにさかのぼって納めてもらうようにいたしますが、これは借金の解決の場合常にとられる方法でありますが、まず現在の分を解決しておいて、逐次さかのぼって解決をしていく、そういう意味の御相談は現地において十分応じさせるようにしているわけであります。ただその場合に、加入の時期を三十七年の四月一日にすることはいけないわけでありますし、また三十六年度分の保険料は、それだから未来永劫ほうっておくというわけにはいかぬ、これはやはり何とか納めてもらうように双方努力していく。ただそこのところを性急に、それを納めなければ次の分も扱わないということは、しもしませんし、またさせない、こういうことを申し上げたわけであります。
  118. 滝井義高

    滝井委員 あなたの気持はよくわかるのです。しかしそれは六百万人です。十万や二十万じゃないのだ。しかも六百万という人たちはおそらく貧乏であったか、この政府の出した国民年金制度は悪くて気に食わないのでレジスタンスを持った人たちなのです。悪い言葉で言えば、あなた方から言えば少しへそが曲がっておるのです。私たちから言えばへそが曲がっておるとは思わぬ。その人を今度は加入をしてもらうのですから、そこで一年前のものは取るものから先に取ると、借金の高利貸しみたいなことを言わずに、では先で納めなさい、三十七年度からでよろしい、加入させましょう——何もあなたは三十六年の四月一日にさかのぼって被保険者にしなくても、加入いたしますという意思表示をした三十七年の四月一日から被保険者にしたらいいでしょう。そして先になって取ったらいい。あなたは一年だけ納めが足りませんから、五十九才で終わるところを六十才までですよと、これだったら話はするっといくのですよ。今はまだ一年だからいいけれども、六百万人全部いくのには二年も三年もかかると思う。二年、三年になると四千円、五千円、六千円となって、そうなってくると、もうあなたの理論は通らなくなってしまう。なしくずしに毎年払いなさいということになると文句が出てくる。ここらあたりを一つどうですか、大臣踏み切ってもらう必要があると思うのです。そうしますと割合問題はうまくいく可能性が出てくるのです。それを毎年取るんだ、借金取りのように性急には取らぬけれども、まあなしくずしにいただきましょうということでは、問題があると思う。これは法律上何か大きな支障がありますか。
  119. 小山進次郎

    小山政府委員 法律上の問題としては当然納めてもらわなくちゃならない保険料でありますから、それを全然取らぬというわけにはいかぬ。それから被保険者になる時期は、その人が被保険者の資格を備えた時期からでございますから、前の一年間は全然被保険者でなかったという扱いはできないわけであります。ただ総体の問題の扱い方につきましては、こういう非常にりっぱな場所で議論をいたしますと問題はなかなかむずかしいわけでありますが、それは何といっても行政の第一線の諸君が実情に応じた取り扱いをするという点については、多年の経験を持っているわけでありますから、被保険者の生活の実態を見、一番当事者にとって有利であり、しかも制度の趣旨にかなった解決をするにきまりきっていると御信頼を願っていただいて、これはそう間違いないと思います。
  120. 滝井義高

    滝井委員 第一線におまかせをするのにはあまりにも人数が多過ぎるのです。三万か五万の数ならばそれでいいと思うのです。これが六百万人になりますと、政府管掌の健康保険に該当するくらいのものになりつつあるわけです。もっと長くなると、あるいはもっとふえるかもしれません。所得倍増計画で農村と中小企業が倍増のレールにうまく乗れないと、もっとふえる可能性が出てくると思うのです。従って、この際法律的にはなかなか無理だろうと思うのです。強制加入をせしめて、三十六年四月一日から保険料を納めていただかなくちゃならぬのだときめておるものを、三十七年四月一日でもよい、三十八年の四月一日でもいいのですよと言えないので、何か法律の附則か何かで、六百万人もおるのですから、経過規定を設けて、三十六年の四月一日から三十八年の四月一日なら四月一日までに加入した者については、その加入した時点において被保険者になった者とするとかなんとかいう弾力規定をこの際年金制度はやらなければ、この制度の恩典に浴さない相当の国民が出るのじゃないかという感じがするのです。それは今言ったように六百万も七百万もおるのですから、それを今のような行政だけの措置で、第一線の諸君はそういうことについては甘いもすいもかみ分けておる、裏も表もよく知っておるから御心配ないということでは、ちょっと問題が大き過ぎるという感じがするのでありまして、私おくれて来て質問をするのだから、もう少し早かったら、何かそういう経過的な修正を入れて、この年金を、できれば六百万人の人が快く入られる形を作ることが必要だと思うのですけれども、時間的な余裕がないからこの次の機会にもう一回状態を見てやってもいいと思います。そういう問題点だということを大臣記憶にとめておいていただきたいと思います。  次は、一体あなた方は、今後の農村人口の減少の仕方をどういう工合に見ておるかということです。これはやはり今後の年金制度を運営する上において非常に重要なところです。現在厚生省の人口問題研究所ですか、そこでの調べでは、三十四年十月から三十五年九月までだったと記憶しますが、一年の人口移動が五百十九万です。そのうちA県の故郷からB県というように他県に移動したものが二百五十八、九万であります。約半分は他県に移動しておる。他県に移動したということはどういうことかというと、農業をやめて、中小企業をやめて、雇用労働者に転換しておるということ。従って、国民健康保険の被保険君も、あなた方は昨年の予算でも四千九百万くらい出しておる。ことしは四千五百万人出しておるわけですが、だんだん減ってきておるわけです。その裏づけとして、政府管掌の健康保険と組合管掌の健康保険には、両者合わせて約二百万の被保険者の増加があるわけで、そのことは何を意味するかというと、そのことは同時に厚生年金にぐっとふえてきておることを意味するわけです。従って、今後日本の技術革新が進めば進むほど農村における就業人口は急激な減少を来たしつつあるのが現実の姿です。これは三割を割って二割九分になったのですが、そうすると、この国民年金と厚生年金とが、これは通算はありますよ、通算はあってもあまりにも開きが大きいということは、やはり労働力の順当なる流動性を阻害することになる。これは一つの阻害の要素になる。だから日本における所得倍増計画を順当にやろうとするならば、労働力の流動化というのが政府の重要な政策になってきておるわけでしょう。そうすると、年金もやはりその流動化に即応する姿を作らなければいかぬわけです。まず小山さんの方としては今後厚生省の五カ年計画をお作りになる。一体五カ年間で国民年金の被保険者がどの程度減少するか。そうして高田さんの方の厚生年金にどういう形でそれが受け入れられてくるか。もちろん高田さんだけじゃありません。国家公務員の共済組合にもいきましょうし、いろいろほかのものにもいきましょう。いきましょうけれども、一体あなたの方の厚生年金の方の増加の見通しは最近の情勢から見てどういう伸びになるのか。小山さんの方はどういう減少状態になってくるのかということです。
  121. 小山進次郎

    小山政府委員 なかなかむずかしい問題でございますので一言で申しにくいのでありますが、先ほど申しました二千二百万の内訳を見ますと、そのうち約四二%程度が農業でございます。従って、ただいまの御議論に関係する部分は四二%の人々に関するものになるわけであります。これについてかなりいろいろなデータに当たって検討いたしました結果、およそ重年後には、最初の計画を立てましたときよりも、国民年金の被保険者が、農業関係において二五%減るであろう。これは実数で減るということでなくて、予定しておったよりもそのときにそれだけ少なくなる。言いかえれば七五%程度の実数になる、こういうことでございます。それから二十年後には約四〇%見込みより減るであろう。大体そこで当初の計画と同じような姿で横ばいをするだろう、一応の見込みはこんなことになったわけであります。これを実数で表わした場合にどうなるかということは、これはかなり複雑な資料でございますので、いずれ別に書類をもってお届けしたいと思いますが、そういうような結論になっているわけであります。
  122. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これはだいぶ国民健康保険と違ってくることになる。国民健康保険は現在、これは私が何かで見て、はっきり覚えておるのですが、七割一分が農業、農村なんです。そして二割九分が鉱工業ですか、中小企業ですね。農業以外のものなんです。そういう形になっておるのです。そうすると、問題はこの六百万人という加入の届出をしなかったもの、保険料を納入しなかったものは、おそらくほとんど大部分が農村じゃないかという感じがするわけです。そうしないと数が合わないことになる。国民健康保険の方で七割一分ぐらいでしょう。
  123. 高田浩運

    ○高田政府委員 ちょっと材料を持ってきておりませんけれども、それよりも少ないはずでございます。
  124. 小山進次郎

    小山政府委員 私、先ほど資料の場所がよくつかめなかったので、概数だけ申し上げましたが、議論を明らかにする意味で申し上げますと、現在私どもが二千二百十二万という国民年金対象者たるべきものとして押えておるものを内訳別に申し上げますと、これは先ほど先生との間に質疑応答した数字でございますが、農業世帯に属するものが九百十九万、内訳を申しますと、このうち業主が二百三十四万、家族従業者が六百九万、無業者が百三十三万、合わせて九百十九万でございます。それから非農業である自営業世帯、これは小さい商人や何かがこれに当たるわけでございますが、これが六百四十三万、内訳は業主が二百九十五万、家族従業者が百八十七万、無業者が二百一万、合わせて六百四十三万です。それからこのほかに雇用者の世帯、これは零細企業の従業員でございますが、これが六百五十万、内訳は業主が三百十六万、無業者が三百三十四万。もう一回繰り返しますと、総数二千二百十二万のうち農業世帯が九百十九万、非農業の自営業世帯が六百四十三万、雇用者の世帯が六百五十万、これがまず現状でございます。この二千二百万のうち九百十九万ですから、これは四二%程度、こういうことになるわけでございます。  それから先ほど、私うっかり、われわれが見込んでおったよりも十年後に二五%減り、二十年後に四〇%減ると申し上げましたが、これは大へんな間違いでございまして、新規に加入するものと見込んでおりましたものが十年後にこういう姿になる、こういうような見通しでございます。
  125. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、こういうようにとにかく新しく加入する人は、人口移動で移動するものは中学、高等学校を卒業した若年なんですよ。だから、従って将来の加入者はずっと急激に減少していくわけです。急激に若者が減少していくということはどういうことかというと、特に四二%を占めるここの層の労働力というものは、若者がいなくなるわけですから、主として老人と婦人になるわけです。従って、それだけ保険料の担税能力というものは減少してくるわけです。このことを十分われわれは頭に置いておかなければいかぬことになるわけです。そうしますと、この国民年金と厚生年金というのはたえず関連をするわけですから、そのパイプをよほどうまく通しておかぬと労働力の流動化に対してうまくいかない。そうすると、国民年金は最小限われわれ常識で考えても、今の月二千円、二万四千円のフラットを、今の労働組合その他の強い要望から考えても、どんなことがあったって最低四万八千円、月四千円程度にはフラットはしなければならぬ客観情勢は私はあると思うんです。私はこの前そのことで大蔵委員会質問したのですが、そうしますとフラットだけを問題にしても、これは今四千円になるのですから、少なくとも来年か再来年四千円になる。こちらは四十年かけて五年据え置いて六十五才から三千五百円ですか、これはもう月とスッポンの違いがあるわけです。これは通算をしてくれるといっても、国民感情としてやはり許されぬと思うのです。今のようにこんなに人口交流が激しくなる時代においては、やはりパイプをすっと通す形にしておかないと工合が悪いと思います。一体、担税力が少なくて、だんだん女と老人になっていくというこの農業が半数を占める国民年金というものを、どういう工合に厚生年金と近づけていくかというこの宿題ですね。これはある程度財政上の裏づけも持ったもので考えなければならぬと思うのです。これを一体政府としてはどうするのだということです。私はこの前国民健康保険についてもその問題を提起しました。時間がないから少し一緒にやっていきますけれども国民健康保険についても、七割給与を実現していくために今のままの二割五分と五分の調整交付金というような形でやっていくという場合に、今よりも保険料は四倍にしなければならぬということでしょう。約七百円ちょっとの保険料を三千二円にしなければならぬという御答弁があった。四倍にしなければならぬ。国民健康保険を七割にするために四倍の保険料を出す。そうすると、この年金を一体厚生年金——今のままの厚生年金でもいいと思うのですよ。今三千八百円です。これを現実に三千八百円にするためには——三百円くらいの違いは大した違いがないと見て、三千五百円でいいです。現実に今から四十五年の後に実現する——二十才のものならば四十五年後ですから、そのときに実現する段階を今の段階でした場合には保険料をどう変化させなければならぬかということです。ここの問題だと思うのです。同じ七割給付にするために四倍の保険料に上げなければならない。そうすると、一体こちらの方を厚生年金と同じ程度に引き上げるということは、現実に三千五百円とするためにはどの程度の負担を増さなければならぬか。この二つをきちっと合わしたもので農村や中小企業が負担ができるという形になれば、これはうまくパイプが通っていくわけです。ここをやはり詰めてみる必要があると思うのですが、国民年金はわかったのです。国民年金は三千二円にしたら七割給付ができますということがわかった。そうするとあなた方の方としては、現実に厚生年金と同じように四十五年の後のものを今三千五百円と拠出制のものをやった場合には一体どうなるのかということです。これは当然やらなければならぬですよ。同じ国民にこんなに大きな差別をつけるわけにはいかぬから、当然やらなければならぬと思うのですが、それは一体どうなりますか。
  126. 小山進次郎

    小山政府委員 国民年金給付水準を上げるということについては、私ども、先生仰せの通りぜひともそうしたいと思っておりますが、ただ御議論の前提になっているパイプ云々の議論はちょっと私理解しかねるのでありまして、すべての生活条件が農業に従事しているということよりも、それ以外の二次産業、三次産業に従事していく方向にいく方が有利だという場合に、相互交通はあるはずはないのでありまして、交通は一方交通であり、しかも条件が、雇用者側の条件がすべてよくなっているということであれば、それでその流れは流れるわけであります。私がここで申し上げたいことは、かりにその問題だけから考えれば、そうならないとしても、それとは別にしても、とにかく給付内容をよくしなくちゃいかぬという意味においては、先生仰せの通り私もぜひそうしたいと思うのであります。  それから、すぐに三千五百円くらいにすることになったら、どの程度に今の保険料その他を上げなければならぬかという問題でありますが、これはちょっと私今思いつく試算はありませんが、この試算から考えてみますと、それは十年先に十年間の拠出で一番低いものが二千円になって、多いものが五千円になるという計算をしました場合に、保険料が今のおよそ八割増程度になるのであります。従ってそれをもとにして考えますと、おそらく今の三倍程度の保険料を必要とすることになりはしないか、つまり十年間の拠出で三千五百円ということにすれば、そうなりはしないかと思います。もっともその場合には、四十年の拠出でありますならば、おそらく一万数千円のものになる、こういうことになると思います。
  127. 滝井義高

    滝井委員 従って、まあ十年でいいです。三倍ですね、大臣。そうすると国民健康保険が四倍です。七割給付というのは、これは最低の給付だと思うのです。そうしますと、これは一体それだけのものを政府は今の農村からとる自信があるかどうかということです。これはもうあなた方は公約でお掲げになっているのですよ。七割給付というのは、自民党は選挙のときに掲げていますよ。そうしますと、選挙のときに七割と掲げたものを、池田さんはうそは申しませんと言っているから、うそは言わないと思いますが、それを実行するとするならば、今の農村に担税力があるかどうかということです。ないとすれば、何かかわるものを見つけざるを得ない、こういうことになるわけでしょう。割合に今までに景気のいい議論を相当してきたけれども、やはりじみに詰めていって、ぎりぎりのところは一体何だということになれば、その保険料を出し得ないとすれば、やはり何か別の方法を考えなければならぬ時期がくると思うのですよ。そうすると、国に出せと言ったって国が出すことはできませんよという論も一方には出てきつつあるわけですが、しかし国民としては、これは国にやってもらわざるを得ないという形に結論的にはならざるを得ないのですが、そこらあたり、五カ年計画とかいろいろ発表したのじゃないとこの前御答弁されたのですが、ああいう御構想を出されたのですからね、古井さんなんか十カ年計画を出しているし、それから社会保障の長期計画なんという長期構想を出されているし、やっぱり、あなたは十年と言われたけれども、これは十年では困るのだけれども、何かそこらあたりもう少し大臣、完全年金とまでいかなくても、歩調を合わせるということだと思うのです。  それからさいぜん、むしろ農村からと言いますけれども、実はわれわれの炭鉱地帯では、炭鉱をやめまして、一ぺんみんな農村へ帰ってしまう。そうしてしばらく状態を見てから神戸とか大阪へ行く。それでややこしいのです。そして勤め人はこりごりだというので、退職金で何か自営業をやるのです。しかしやっぱり店がうまくいかぬので、また雇用労働者に返ってくる。だからこれは三角形の二辺を通らずにむしろ一辺を通ればいいのだが、そうしない。必ず三角形の一辺を通る。一ぺん炭鉱をやめて、農村に帰り、何かして今度はまた東京や大阪に出る。そしてまた炭鉱に来る。こういう形態が相当あるのです。だから三角形の二辺を通るので、何かここらあたりをもう少しはっきり政府の見通しをしてもらわないと、いつも、この前も言うように、アドバルーンを何カ年計画でお上げになるけれども、ちっとも地に足がついていない、理詰めの具体案が出てこないということです。やはり理詰めの具体案を出してもらわなければいかぬと思うのです。これは高田さんの方だって相当のものがどんどん入ってくるわけですから、その入ったものについての、やはりよりよきものにしようとする意欲はあるわけでしょう。そうすると、これはあんまり格差がつき過ぎて問題だと思うのです。ここらあたりを一体どうされるのかということが一つです。  それからもう一つ、年金その他に対する国庫負担のものの考え方ですね、これが統一されていないのです。厚生年金は一割五分でしょう、それから国民年金は納入した保険料の半分でしょう、これは給付の三分の一になりますね。ところが今度失業保険は三分の一だったのを四分の一に政府は減少させたんですよ、それから国民健康保険は二割五分と五分だから三割ですが、こういうようにまちまちなんです。厚生省の中のこういう社会保障の長期のものと短期のものについては、やはり何かそこに一つの原則というものをお立てになってやる必要も出てくるのではないかと思います。このことはさいぜんの対象の被保険者の担税能力その他もあるいは関係するかと思いますけれども、何かそこらに国庫負担の原則、長期、短期の所得保障医療保障に対する国庫負担の原則というようなものを、一貫したものを何か考える時期にもきておると思います。そういうものもばらばらなんですよ。今度の地方公務員の共済法というものも一つも出さないでしょう。結局全部交付税でやって——交付税は一般財源ですから、一つも出さぬものもあるわけですけれども、出ている。厚生省の足元の国民健康保険の職員でさえもがあいそをつかして逃げようとしている。そして自治省の所管にいきます。こういう点も厚生省は自己反省をする必要があると思います。昔から飼い犬に手をかまれたと言うけれども。こういうのを言うのではないかと思いますね。しかしあれは国庫負担はないのですよ、自治体はありますけれども。公費の負担はあるけれども、国は出していないという形でしょう。だからこういう長期のものと短期のものについて、この際やはり厚生大臣がイニシアチブをとっておやりになる必要があると思いますが、そういう二点についてどうお考えになりますか。
  128. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 むずかしい御質問であったと思うのでございます。わが国の所得保障制度にしましても、また医療保障制度にいたしましても、御指摘通りの現状にあると私は思います。この現状を何とか直さなければならぬというのが私どもに対する課題であります。どれをとらえてみましても、なかなかそう簡単にはいかない問題だと思いますけれども、一方においては制度の内容を改善しなければならぬし、またある面においては他の制度との間の格差をいかにして是正するか、こういうような課題があるのであります。また今御指摘のように、国庫負担等につきましても、いろいろな沿革はあったと思いますけれども、現実において諸制度間においていろいろな扱い方がされている。かような状態でございますので、これを何とかすっきりしたものにしていくということが現に私どもに課せられておる大きな課題である。いわゆる総合調整というような言葉で申しております中に、かような問題がすべて含まれて検討しなければならない事柄であろうと私も思うのであります。長期保険についてはどう、短期保険についてはどうというようなことも一つのお考えだろうと思います。今申しましたように諸制度についてまだまだ足らざるところもたくさんありますし、しかも並立する制度間におけるアンバランスというものもある、こういう事態でございますので、これを改善するということがもちろん望ましいのでございますけれども、これが実現ということはまた同時に非常に困難を伴う問題だと存じます。私どもはこれらを一括いたしまして、ひっくるめて、やはりいわゆる総合調整というワクの中で何とか改善をして参りたいという考え方をいたしておる次第でございます。慎重にかつまたなるべく合理的な結論を得られますように努力をいたしたいと存じます。
  129. 滝井義高

    滝井委員 やはりこれは非常に具体的な問題ですから、もう少し具体的にきちっとした計画を一ぺん厚生省は練って、特に国民年金国民健康保険については出してもらわないと、今後の本格的な審議はできぬと思う。その場その場に、大臣がかわるごとに答弁が違って、それから長期計画の十年が五年になってみたり、五年が十年になってみたり、ネコの目が変わるようなことでは困ると思う。大蔵省の方だって計画が立たぬと思う。あとでまた指摘するところがありますけれども、ぜひそうやってもらいたいと思う。  ちょっと一、二点だけ具体的質問に入ってやめますが、今度の保険料の免除者に対して、国は納めた保険料の半分だけしか負担してくれないわけですね。これでは給付は三分の一になってしまう。これはやはり最小限、本人が納め得ないので免除したのですから、本人の分も納めてもらいたいと思うのです。従って二十才から三十四才までは本人が百円納めるのですから、百円をやはり国が納める、あるいは百五十円を国が納める。それを五十円と七十五円ということでなくて、やはり本人のかわりの分を納めなければならぬと思うのです。そうしないと免除者に対する肩がわりにならぬと思う。免除いたしますということは国が許したのですから、国が責任を持って免除したわけでしょう。それを国の持ち分だけしか出さぬというのではこれはおかしいと思う。これは一体どうしてそういう弱腰になったのかと思うのです。老後を保障する制度でしょう。保険料を納め得なかった人だけに対しては三分の一老後の保障をしますというバナナのたたき売りみたいな精神では社会保障は前進しないと思う。これは当初三割あるといったのがわずか九・九%、一割ですから、あなた方の見込みの三分の一しかない。だからこれは当然ほんとうは全部納めてもらって、その上同じようにやってもらいたいところだけれども、そんな無理はなかなか言えないので、けちなことを言わずに、本人の納める保険料だけは国も出しますよということにならないと肩がわりにならないのではないか。一体三千玉百円の三分の一では話にならぬと思う。三千五百円でも食えないというのに、その三分の一で食えと言うなら餓死しなさいと法律で言うようなものですよ。ここらあたりを一体あなた方は大蔵省なりと交渉するときにどう考えたのかということです。大蔵省の方もこういうところであまりけちを言わなくてもいいのじゃないかということなんですが、これは岩尾さんの方にも聞かなければならぬところなんです。一体三千五百円で老後の保障ができるかというと、できないということははっきりしておる。できないもののまた三分の一で、納めなかったからといって——納めなかったのじゃない。納め得なかったのです。だから将来になれば当然そういう人は国が生活保護なり何なりで見てやらなければならない。同じことなんです。金を生活保護で出すか、それとも生活保護よりか総体的に言えば権利としてもらうものとしてもらうかということ、生活保護も権利だと思うのだけれども、やはりわれわれの幾分ひけ目を感ずる点でいったら、生活保護よりか年金の方がひけ目を感じないですよ。ここらあたりあまりしゃくし定木過ぎると思うのです。これは大臣と大蔵省の見解を伺いたいのです。
  130. 小山進次郎

    小山政府委員 今回の免除の国庫負担は、考えの基本がもともと、納めた者も免除を受けた者も制度の中で同じ扱いをするというところから出てきたわけでありまして、従って納めた者に対して五十円なりあるいは七十五円の国庫負担をするのであるならば、免除を受けた者にもそれは当然すべきじゃないかということになったわけでございます。金額が三分の一になりましたのは結果としてそうなったわけでありまして、初めから三分の一とかあるいは四分の一というふうにきめておって、それに見合う国庫負担云々としたものではないわけであります。  それから、この金額をもっと上げることが考えられないかどうかという問題でありますが、今の制度のように拠出、均一給付という原則をとり、しかも年金については納めた保険料に対応してきめていくという仕組みをとっております以上、免除線の上と下で、ある者については国が百円負担をし、免除をちょっと上回るところではもう国は半分の五十円しか負担をしないという扱いは事実上もできないわけであります。それほど免除の基準の上と下に決定的な違いがあるわけではないわけであります。従って一部には、先生おっしゃるように多くしたいという議論もあります。反面、ほかの方にはもう少し少なくてもいいじゃないかという議論もあり得るわけでありますから、そのいずれにもくみしないで、初めからこういうことで案をまとめたという経緯でございます。従って大蔵省との間ではこれをやるかやらぬかということについてはずいぶんと論議をいたしましたけれども、やるということになれば、この内容以外には考えようはあるまいという点は、終始厚生、大蔵両省は一致しておった、こういう事情でございます。
  131. 滝井義高

    滝井委員 保険主義なら、営利会社のやる保険ならいいですよ。しかし社会保障でしょう。しかも強制加入です。そして国が、あなたは貧乏だから納めなくてもよろしいですよと言っているのです。それだったら何のために免除の申請をしてミーンズ・テスト的なものをやって、よろしいと言うかということです。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 強制加入ならば、納めようと納めまいと国がその昔の保険料を出すことは原則です。その者は免除をしてよろしいと認定をしたからには、その者の出す保険料もかわって出してやらなければならぬわけです。そうでなければ効果がないと思うのです。私はここらあたりからもどうも政府は社会保障でない保険主義を貫いているという感じがするのです。  もう一つ、簡単にいきますが、福祉年金では母子年金も老齢年金も同一に月千円です。身体障害者は千五百円ですが、これは他の年金も同じです。ところが遺族年金は老齢年金の二分の一になっておるのですね。これは一体どういうことなんだということです。大臣、これを私は同額にすべきじゃないかと思うのです。これは今までのしきたりがそうだからそうしておりますとあるいは言うかもしれません。しかし福祉年金は老齢年金と同じなのです。過渡的なものであろうと何であろうととにかく同じです。ところが一般の年金はそうでないのです。  立ったついでにもう一つ言いますが、これは岡田さんの方になるのですが、厚生年金は四十才以下の妻には遺族年金をくれないのです。四十才以下はおそらく再婚ができるからということかもしれません。しかしこれもおかしいことだと思うんですよ。主人をなくして、お前若いから遺族年金はやらないんだ、こういう制度になっておるのですね。ところが国民年金はそんなことないでしょう。若くたって何だってくれるのでしょう。国民年金は四十才以下だったらくれないですか。ここらあたりがどうも私納得いかないのです。どうして二分の一にしなければならないのか。福祉年金も同じなんです。これはおそらく長年の慣習がそうなっているから、われわれが空気のありがたさがわからぬように立法上麻痺しておるんじゃないか。遺族年金は、老齢年金の二分の一だから機械的に二分の一にしておるかもしれないけれども、ここらあたりが私は間違いじゃないかと思うのです。これは全額——全額が悪かったら少なくとも八割ぐらいは出すという形をとらないと遺族が大へんですよ。その二点に対する考えを向いたい。
  132. 小山進次郎

    小山政府委員 前段の点につきましては、社会保障制度審議会の総合調整の場面においてそういう考え方を現在検討しておるようなことを私ども聞いております。従って伝統的には扶養者年金としては半分だということは、おっしゃる通り、これはいわば昔からやってきているやり方でありますが、それをそのままにしていくかどうか、変える余地はないのかということが論議されておりますので、そういうことで今後さらに検討が進められていくということになっております。  それから四十才未満の寡婦年金につきましては、これは国民年金でも子供があればもちろん年令を問わず出しますし、厚生年金でも子供があれば年令を問わず出すわけであります。子供のない寡婦については、厚生年金だけでなく、大体世界の年金制度が、おおむね四十ぐらいのところに線を引きまして、それより若い人の場合には病気であるとかあるいは特別な事情でどうしても働けぬというような者についてある程度寡婦年金を出すという事例はございますけれども、丈夫でぴんぴんしている者に出すというのはほとんどないわけでございます。そういう問題として今後検討の余地があるという事情でございます。
  133. 滝井義高

    滝井委員 今、御存じの通り有権者でも二百万婦人が多いのですよ。一体三十七、八ぐらいで夫に死に別れて簡単に結婚できる情勢にあるか。東京のキャバレーその他お調べになってごらんなさい、ほとんどみんなああいうところへ行っておるのです。これが堕落の根源になり、麻薬その他をはびこらせる根源にもなるわけです。これが夫に死に別れたら今度再婚するまでの間は年金をやるということになると、もっと社会の秩序というものはよくなってくると思うのです。世界がどうあろうと、世界の通りに日本がやるならば私は文句を言わないけれども、しなければならぬことを日本はやっていないのだから、いいことは言わないで悪いことだけは世界がこうでございますからとなかなかうまいことを言っておるが、一つぐらいは世界がやらぬことを日本もおやりになってみるといいのだ。だからこういう点はやはり私は検討してみる必要があると思うのです。この年令を一挙にできなければ、たとえば三十才以上だとか、中高年令だったら三十七、八になったら男でも職がないのですから、もう少しここらあたりは御検討願いたいと思います。  それから最後になりますが、今後の厚生年金なり国民年金の積立金の趨勢です。これはこの前の岸さんの時代に二割五分の還元融資は必ず国民の福祉のために出しますと約束してくれたわけです。しかし財政投融資の現状を見れば、もはや郵便年金とか簡易保険が頭打ちになって——それは当然頭打ちになりますよ。それは企業年金を作り、国民年金を作り、厚生年金がよくなってくると、もろ郵便年金とか簡易保険で老後を保障してもらわなくてもよろしいという気持が出てくることは当然です。そうしますと国の財政投融資の財源というものは、強制貯金的なにおいの強い国民年金なり厚生年金の金がずっとふえてくるわけです。これを一体今まで通りにずるずるという工合にやっていくのか、それともここらあたりであなた方が言われておった特別勘定でも作るということになるのか、やはりきちっとした方針を出すときがきていると思うのです。そういうように財政投融資の原資の内容が変わってきつつあるのですから、しかもこの金の使い方が今までの状態を見ていると、もうどこでも病院でも建てるとか体育館でも建てるとか、そういうこと以外に仕事がないのですね。ところが病院だって体育館だってすぐできてしまうのです、何兆という金がたまってきてしまうんですからね、だからここらのはっきりとした見通しを——これは一ぺん議論をしましたけれども、あなた方が負けちまってその通りになっていないわけです。何か分類表みたいなものを出しておりますけれども、そんなことだけではこの問題は片づいたことにならないんですよ。あれは当面お茶を濁しただけのものなんです。それで国民年金と厚生年金とそれぞれ分けてやっておるけれども、結局その金を分けて年金福祉事業団とか特別地方債とか分けておるけれども、その分けた内容を見ると、みんな住宅であり病院であり厚生施設なんですよ、そんなものなら何も分ける必要はない、どこか一本でおやりになった方がいい。分けるだけ手間が要って、お役人の数がよけい要って、国民の税金をむだに使うだけ損です。このようなことがこれからだんだん多くなるのですよ。小山さんの方は必ずしも急激な大きな伸びは、人数が減るのですから当初の見通しほどはないかもしれぬけれども、それにしても今四百四、五十億あるのが一年ぐらいしたらたまる金がすぐ千億くらいになっちまうんです。こちらの高田さんの方は、働ける雇用労働者がだんだんふえてくるのですから、その伸び方は激しくなる。そうするとその二つの金の使い道が住宅であり病院であり厚生施設であるなんということでは、こんなものはすぐ行き詰まってしまいます。住宅も個人に多数貸せばいいのだが、そこまでなかなかいかぬ。企業の住宅ということになると、そんなに企業の住宅ばかりもやれぬからやる仕事がすぐなくなってしまう。この使い道に対する長期の計画、見通しというものもはっきりしてもらわなければならぬことになる。そうすると今までの二割五分も、古井さんのときはぎゃんぎゃん言っているけれども灘尾さんになったら黙っているんですね、何か二割五分で落ちついたような格好になっているんですが、それで落ちついていいのかどうかという問題もある。ここらの問題に対して、一体あなた方はどう考えて、将来どう具体的にやっていくか、これはもう具体的に仕事の計画を出す必要があると私は思うのです。思いつきで、その場その場のところで全国から募集してやるということでは話にならぬと思う。そういう形にしておると郵政省からやられてしまう、郵政省でもやるんですから。だからやはり先手を打って厚生省が、全国的に老人ホームというものはどういう程度に建てるのだ、病院はどういう配置でやるのだ、体育館はどういう配置でやるのだという厚生省の十カ年計画を立てたならば、今度は成人病の施設については全国にこういう計画で建てる、そうすると群馬県と埼玉県は郵政省がおやりなさい、福岡県と兵庫県は厚生省がやりますというように、その資金が一貫して使われてくる計画をやらぬと、厚生省厚生省の道を行く、郵政省は郵政省の道を行くというので、郵政省の病院を勝手に建てるというのでは困るのです。だからそこらあたりをきちっと、全般の福祉厚生関係の施設の全国的な計画、それに見合う資金計画というものがやはり各特別に出てこなければならぬと思う。そういうことが全然ないでしょう、ばらばらですよ。だからどこが何をやっておるのかさっぱりわからぬ。地鎮祭をして建物が建ったときに、この建物は何ですか、あれは体育館です、そうですが、どこから金を借りて建てたのですか、あれは厚生年金から借りた、いや地方起債から借りて建てた、こういう形になってくるのですね、厚生大臣がちっとも知らぬうちになってしまうのですよ。だから社会主義の国でなくても、資本主義の国だって計画経済をやらぬでも経済計画はやらなければならぬのです。今度これだけの金があなたの足元からどんどん出てくるのです。打ち出の小づちで金を出すように出てくるのですよ。ほんとうに打ち出の小づちで出すように金が出てくるのですから、こういう点をもう少しわれわれにわかりやすく、あなたがきちっとものを握るような、一目瞭然たる形にしてもらいたいのですが、その点どうですか。
  134. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生年金あるいは国民年金等の積立金の問題でございますけれども、御指摘の通りに、確かに年々これはふえて参るわけであります。いわゆる二割五分、これも何も永久に二割五分でなければならぬものでもないのでございます。積立金のふえる状況あるいはまた、国民生活状況等を考えまして、この積立金を適当に被保険者あるいは一般国民、結局みんな被保険者ということになると思うのですが、被保険者なりに直接、間接ほんとう国民生活に役立つ方向に汎用するという本旨に変わりはないと思います。従って政府の方で何か計画を持ってこれを活用するという場合も、今後大いに検討しなければならぬと思います。御趣旨につきましては、私ども非常によくわかります。私ども十分積立金の活用ということについては検討して参りたい。そうしてできるだけ国民全体の生活、福祉の向上に役立つようにやって参りたいと思いますので、さように御了承願います。
  135. 滝井義高

    滝井委員 これでやめますが、さいぜんからいろいろ私は言っておるけれども、あまりにも厚生省は計画がなさ過ぎます。だから少し大臣、各局長をお集めになって、もう五年とか十年とかいったってなかなかむずかしいから、三カ年計画ぐらいにして、これなら必ず厚生省は実行していくのだというものを一ぺん長期と短期の保障、医療保障なり所得保障を作ってもらいたいと思うのです。それに対する財政的裏づけはこうなるのだというくらいのことをぜひやってもらいたいと思います。  これで最後にしますが、厚生保険特別会計の中の健康保険勘定、これに毎年十億ずつ金を入れるということをこの前から問題にしている。それは法律を出しておりますけれども、実は出していない。当然これは、あなたの方は大蔵省から、三十四年以来毎年十億ずつもらわなければならぬのに、もらっていないでしょう。実はこれは予算のときに問題にして、参議院へ言って予算を出すまで通さんぬようにしたいと思ったけれども、そうもいかぬので実は黙っていた。しかし、これは当然出さなければならぬものなんですが、これはどうしてもらっておらぬのかということです。これは法律事項ですよ。今まで出さないので、いつも私はやかましく毎年言い続けてきた。そうして言い続けてくるたびごとに、法律を大蔵委員会にかけて、そうして十億の納入を延ばしてきたのですが、厚生省が大蔵省——と言ってはおかしいが、大蔵省に六十億貸しておるようなものじゃないですか。これはもらわなければならぬわけでしょう。小山さんはうんと言っているけれども小山さんが保険局の次長のときからそうです。ところが安保のときにもめて、この法律がつぶれた。つぶれたから、そのときすぐ出さなければならないのに、自来怠慢で出していないけれども、当然もらわなければならぬ。三十四年、三十五年、三十六年、四十億もらわなければならぬのに、ことしも出していないでしょう。だからこういうように、もらうべき金ももらわぬというのがあなたの方ですよ。これは私は、きょうもらえなければ、あしたでももらってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  136. 高田浩運

    ○高田政府委員 この問題につきましては、滝井さん初めから御存じの通りでございまして、お話しの点は、私どもとして十分理解できることでございますけれども、しかし一方、その後保険経済が非常に好転をいたしましたので、その点ともにらみ合わせ、保険関係全般の予算の配分ということも考え合わせまして、実は現状のようになっている次第でございます、理屈としてはおっしゃる通りでございますけれども、実際問題として保険経済の好転の状況等をにらみ合わせまして、現在のようにいたしておるのであります。
  137. 滝井義高

    滝井委員 保険経済とにらみ合わしてというが、法律があるのですからね。法治国家ですから、法律で入れることになっておるのですよ。そうして毎年入れることになっているのを延ばしてきたんです。十億入れるのを延ばしてきた。それは保険経済が少し好転し始めたから延ばしてきた。一回は入れて、あと延ばしてきている。だから当然これは、法治国家で法律で動いている役人が忘れておったわけです。長いこと忘れておった。従って、当然これはさかのぼって入れてもらわなければならぬと思う。これは私は予算委員会で言うつもりだったけれども、そんなことはあまりと思って黙っていたのですけれども、この前言ったら、岩尾さんから、それは毎年法律で出しておりますと言った。ところが、まだ出していない。今から出してもおそくないですよ。これは大事なことです。四十億健康保険の会計に入れるかどうか。四十億入れてもらったら、百円の一部負担も要らなくなる。そうして六十億はまだ払っていなければいいのだけれども、借金はみな払っているのですから、借金を払って取るべき金を取らないというのは、ちょうどタイの特別円と同じです。取るべきものは取らぬで、九十六億も気前よくやるというのと同じです。それは法律で出すということになっているのに、法治国家として、われわれ国会議員としての名誉にかかわる。だからこれは大臣が、次の通常国会に必ず四十億、今まで法律で出していないものは出しますと言うのなら別です。法治国家で今まで法律で延ばしてきたものが、一体いつの間に国会の承認を経て、延ばさぬでいいのかということです。
  138. 谷村裕

    ○谷村政府委員 繰り入れることを得と書いて、四十億まだ繰り入れないで残っておるというお話でありますが、その後における保険経済は、今お話しの通り、すでに借りましたものを返して、十分積立金もあって、今入れる必要があるかどうかという点については、入れないでもよろしい状況になっております。そういうわけで、たしか昭和三十四年以降というものは現実に組み入れをしておらないわけでありますが、それがはたして滝井委員のおっしゃるように法律に違反するかどうかという点は、それまでの間は毎年、三十四年、三十五年と繰り入れることを先に先にと延ばす法律を出しておったわけです。それが御指摘のようなお話で、必ずしも法律を出して延ばさなくても、現実の繰り入れば行なわないという姿でここ三年間続いておるわけであります。昨年度も——昨年度でありましたか、それも継続審議になって終わったままになっておりまして、別に法律はなくても繰り入れないという実態がここ両三年続いておるわけでありますから、それをまたあらためて法律を出してその始末をするという必要性があるかどうかということを検討した結果、しいて出さないでも、十億繰り入れないでもよろしいという姿が現に出てきておりますから、その姿において現実にやっておるわけでございます。別に法治国家として法を犯しておるというような状況ではないと私どもは思っております。
  139. 滝井義高

    滝井委員 それはだれが一体そういうことを出さぬでいいときめましたか。国会の意思は、あの法案を流したのはわれわれの意思で流したのです。金を出させるために、大蔵委員会でわれわれの意思で流した。われわれの意思で流したのに、役人が勝手に法案が流れたから出さぬでいいということじゃない。法案が流れ、延期の法案がなくなったのだから、出せということです。延期しますということで、法律を今まで年々出してきた。その出してきた実績がなければ、こんなことは言わないのです。出してきておって、それをわれわれがストップさして流してしまったのです。だから延期の法案がなくなれば、当然自動的に金が出なければならぬ。たまたま私は昨年それを忘れておっただけです。毎年私はそれを言ってきたのですから、みんな知っているでしょう。ここにも証人がいますよ。毎年言ってきたのですから、三十四年以来三十五年、三十六年、三十七年と、四十億出さなければならぬ。もしこれを出したくなければ、ことしも法律を出さなければいかぬのです。今からでもおそくはない。あなたの前の先輩はみな出してきた。今中小企業金融公庫総裁の森永君というのは、これを予算委員会でやられて困ったのです。こういうように、政府というものは、その法律さえも無視するということなんだから困るというのですよ。取るべき金も取れぬ。だから大臣、これをどうしますか。法治国家で法律であるものを忘れておったと言う。私も去年、正直に申しまして忘れておった。しかし、ことし思いついたのです。思いついたからこの前質問をしたら、いや法律を出しているという失言です。出していると言うから、調べてみたら全然出ていなかった。だから出ておるという答弁をしたことは、岩尾君の良心としては、おそらくこれは出しておかなければならぬということは、どこか心のすみにあった。あるいは間違いであったら間違いであってもいいという点を言っておる。きょうは年金で急ぐというなら、私は勝負をつけなくてもいいのです。しかし、これはやらなければいかぬ。法治国家だから法律を作ったかいがない。
  140. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの問題につきましては、滝井さんの御意見はそれでよくわかりました。政府の方ではまた政府の方での意見もあることでありますので、私なおよく取り調べました上で、私の判断を定めたいと考えております。
  141. 中野四郎

  142. 八木一男

    八木(一)委員 今同僚の滝井委員の御指摘になったことは非常に重大な問題でありまして、私も追及をいたしたいと思いますが、後の厚生大臣の即刻の御回答をいただいた場でまた追及をいたしたいと思います。  午前中から質問を申し上げておりましたが、時間が切迫して厚生大臣はお食事も召し上がっておられないので、その状態で、非常に大綱的な点については、討論やあるいはそういうところに譲ることにいたしまして、こまかいことでも質問をしておかなければならない落ち穂がございますので、その点について敏速に御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、免除の中の部分でありますが、今任意適用の人について免除の適用がないわけであります。任意適用といっても、厚生年金の被保険者の場合に、結局その家族が任意になるわけでございますが、非常に小さな零細企業の場合に、貧困な生活の条件下にある人があるわけでありまして、このようなときに免除の適用がないということは、非常に均衡を欠いているわけでございまして、その点で労働者の家族、労働者の婦人だけが差別待遇をされているというような状態にあるわけであります。この点について、非常に不合理でありますので即刻改めていただきたいと思いますが、この点について厚生大臣から……。
  143. 小山進次郎

    小山政府委員 その点については、今のところ改める考えはございません。
  144. 八木一男

    八木(一)委員 理由をおっしゃって下さい。
  145. 小山進次郎

    小山政府委員 任意加入は、もともとそういう条件で加入するものでございますから、従って免除は適用しない、こういうことになっているわけであります。
  146. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことならば、もとにさかのぼらなければならないと思います。国民年金というのは、国民全体に年金を確保するために創設されたはずの制度であります。労働者の婦人であるから強制適用がない。それに対する一つの方法として、任意適用という方法をとっておられる。とっておられた以上は、それを適用するのが至当であります。ただ逆選択というような技術的なことを考えておられると思いますけれども、それについては、逆選択を防ぐ条件は、頭のいい人なら、特に小山さんのような明晰な人なら考えられるわけであります。原則的な考え方としては、労働者の婦人であろうとも、国民年金の老齢年金所得保障対象者として考えなければならないと考えた場合に、他に免除制度があるならば、それについても考えなければならないということが先だつべきであって、それについてそのような逆選択が現われないような考え方を、あとからつけ加えればいいわけです。あとの問題を先にして、逆転して、そういう考えはないという考え方では、問題の発展がございません。その問題について前向きに検討されるならばともかく、今のところございませんというにべない返事では承服ができないわけです。厚生大臣の御答弁を願いたい。
  147. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 問題のある事項につきましては、制度改善という意味におきまして、もちろん検討はやぶさかではございません。ただ、国民年金だけをとらえて制度の完成をはかるという立場ではなくて、すべての年金制度というものもあわせ考えまして、その間に国民の福祉を増進するようにしたい、かような考え方をいたしておるわけであります。現在の国民年金の建前の上から申しますれば、政府委員答弁はにべない答弁だということでございますが、そういうことになろうかと存じますが、もっとよく考えまして、厚生年金についてもその他の年金についても、いろいろ検討すべき点はあろうと思うのでありますが、すべてさようなものを考え合わせました上で制度全体が前進するようにいたしたい、また、国民生活を保障するようにいたしたい、こういう考え方のもとに研究を進めて参るつもりであります。急速な結論を直ちにここでやれとおっしゃってもそうも参らぬと思いますが、現在の国民生活保障なり生活福祉の上に欠陥がありとせられることにつきましては、日にちはかかりましても逐次改善していくというのがわれわれの考え方でありますので、その辺において御了解願いたいと思います。
  148. 八木一男

    八木(一)委員 労働者の妻の場合については、労働者年金の方で考えるべきか、国民年金の方で考えるべきかという、一つの大筋の議論があることを私十分知っております。ただし、その議論の前に大事なことは、すべての国民に対して所得保障をするために、年金という制度を作ろうという意欲で国民年金ができた。そのどちらがいいかということは御論議になってけっこうでありますけれども、労働者の妻が所得保障からはずれるということは間違いであります。そんな欠陥を置いておいてはいけないと思います。その欠陥を埋めるために、任意適用というものを今のところやっておられるわけです。任意でありますから、強制でありませんから、免除の適用を受けるであろうという人が先に入ってしまって、免除の適用を受けないような人は入られないというような、保険的な逆選択の心配があることも私は知っております。そこで親切な気がありましたならば、何年間か保険料の実際の納入があった場合に、状況変化で免除を受けるべきような財政状態になったときにはそのようなことを考えるというような前向きの姿勢が必要であろうと思います。小山さんは年金に愛情を持っておられますし、さっきの御答弁は簡単過ぎたと思いますけれども、そのような配慮のもとにそれが進めらるべきであろうと思う。ただ私がすぐ免除を適用しろと単刀直入に言うかと思って警戒的に言われたと思いますけれども、そういうことは私は考えておりませんから、そういうことを考えられないで言ってけっこうだと思う。そういうことで、厚生大臣は前向きにお考えになる御答弁でありますので、年金局長としても、厚生大臣を補佐するために、この問題を前向きに考える努力厚生大臣の趣旨に従ってやるというふうな御答弁をしていただきたいと思います。
  149. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 年金制度とかそのほかいわゆる社会保障につきましては、逆行するということは厚生省としては少しも考えておりません。常に前向きで考えておるつもりでございますが、ただそれが実現につきまして、日本の国情なり、財政的な問題なり、国民気持なり、あらゆる点を勘案いたしまして漸次実行のできるものからやっていくのだ、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  150. 八木一男

    八木(一)委員 御努力を願うと信じまして、その次に進みます。  実は今度はもっときめのこまかいことでございますから、年金局長からのお答えでけっこうでございます。国民年金の、おもに福祉年金が現状として多いだろうと思いますが、その適用をしてもらえると思ったら適用にならなかったことに対しての不服申し立ての機関には、審査官があり、審査会があるというふうになっております。それについては、そういう国民立場でものを考え、参与という人が参画して、かなり公明に民主的に、前向きに行なわれておるという事情を知っておりますから、一々そういう事情であるということは、時間の関係上省略をいたしますが、かなりの成果を上げておられます。そこで第一回の、第一審の審査官の方では、申請のうち三五%ほどが適用になっておりますし、再審の方の第二回の方でも、申請のうち三五%のものが適用になっているわけでございます。これはそういう歩どまりが非常にいいわけでございますが、それにつきまして、こういう制度があることが通知書の裏には書いてあるそうでございますけれども、非常にむずかしい制度でございますから、対象が老齢者、未亡人、障害者であって貧困者であるということになるので、そのような書類だけでは、そういう制度があるということを知らない人が出てくるわけであります。従ってその紙に書くだけではなしに、個々の説明を必ずつけ加える。異議申し立てをする期間が切れる前、六十日の前、たとえば四十日とか五十日のときに、そういうようなことについて、こういうことがあるけれども、しなくていいのかというようなことを再通知をするなり、そのようなきめのこまかい親切な扱いをしていただきたいと思います。それについて年金局長の御答弁を願います。
  151. 小山進次郎

    小山政府委員 この制度の活用については、今日までもずいぶんと意を用いたつもりでございますが、御注意のような点から考えまして、一そう知らしめ、機関を活用したいという気持努力して参りたいと思います。
  152. 八木一男

    八木(一)委員 続いて、このようにいろいろと審査の結果適用になるものがあるわけでございますが、その適用になるとならないとが、もうほとんど同程度のすれすれのものがかなりあると思います。そこで、たとえば老齢の年令というような点だったら、これはかちっとした年令ですからあれですけれども、たとえば障害の程度の認定あたりは、そのときの委員気持でちょっと変わるようなところもあると思います。おまけに福祉年金の方は、二級、三級ありませんから、これは小山さんたちの御努力で必ず作っていただけると思いますけれども、ない間は、特に一級とゼロということになりますから、そこのところをできるだけ弾力的に、あたたかい範囲でできるように御配慮を願いたいと思いますが、これについて……。
  153. 小山進次郎

    小山政府委員 仰せの通り、現実に出てきております申し立ても、障害福祉年金に関するものが圧倒的に多うございます。全体の七割五分程度がそうでございます。事実認定の非常にむずかしい問題でございますし、認定の結果が当人の利益に非常に関係するところでございますので、御注意のようなことは十分考慮して、今後とも運用して参りたいと思います。
  154. 八木一男

    八木(一)委員 前向きの御答弁で非常に満足であります。  次に、この問題も含めまして、年金関係も含めまして、その他の社会保険の審査が、実際の決定までにずいぶん時間がかかっているという点があることは、他の社会保険でも指摘されておりますが、この年金でもそうであります。それではこの問題の性質上非常に工合が悪いので、人員をふやすなり、それから事務局をふやすなり、いろいろの方法をとられまして、この審査の決定が早く——早くといっても粗雑であってはいけませんけれども、それに親切である状態でなければ困りますけれども、とにかくできるだけ早く処理されるように御努力をいただきたいと思いますが、それについての御答弁をお願いいたします。
  155. 小山進次郎

    小山政府委員 仰せのような点は、常に私ども督励をして努力しているところでございますので、今日までの経緯から見ますと、概して申しますと、長くかかっておりますのは何とかして申し立てを容認してやりたい。簡単に結論を出そうとすると、どうもこれは棄却ということにならざるを得ないような気がするけれども、相手方の立場に立って何とか有利な論点を見つけたいという気持で検討している間に思いのほか時間がかかる、こういうのが多いようであります。なお全体的に審理のスピード・アップについては十分努力をしたいと思っております。
  156. 八木一男

    八木(一)委員 大へん満足であります。そこで、親切になるたけ適用してやりたいという気持を貫いて、そうして時間が早くなるように一つ御配慮願いたいと思います。  それから審査会については、国民年金はこの制度に入っておりますけれども児童扶養手当法制度の適用がなかったかと思います。それから生活保護法もありません。私ども社会党としては、もっと抜本的な苦情処理機関を考えておりますけれども、しかし政府としても、今適用のないこの児童扶養手当法あるいは生活保護法について、こういう制度をさらによくして適用していただきたいと思います。そうなれば、社会保険という言葉とはずれますから、社会保障審査会というような名前に変えていただくことが必要であろうと思いますけれども、そのようなことを進めるような御検討を願いたいと思いますが、これについて……。
  157. 小山進次郎

    小山政府委員 ただいまのお考えは、十分研究に値することだと私ども前から思っております。現に児童扶養手当につきましては、あるいは第一審の審査を社会保険の審査官にゆだねるかということも省内でいろいろ検討をしたのでありますが、どうもそれはいろいろの点で必ずしもよくない。しかし、実際努めて応援をして、そこはうまくいくようにしよう、こういうことにしておるわけでありますが、将来の制度化についてはなお研究を続けたいと思います。
  158. 八木一男

    八木(一)委員 今度は問題を離れまして、来年度厚生年金が近く改定される時期にあって、今御検討中でございますが、厚生年金についてぜひりっぱな改善をされるように一つ前向きに取っ組んでいただきたいと思いますが、厚生大臣の概括的な御意見を伺いたいと思います。
  159. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生年金改善のために、ただいまいろいろ検討しておるところでございます。事情の許す限りいいものにいたしたいと考えております。
  160. 八木一男

    八木(一)委員 それに関連いたしまして、たとえば企業年金というような思想が一部の実業家の方に現われております。私どもとしては、このような方向は、社会保障制度考え方としては邪道であると考えております。厚生年金自体を拡大するという本方針にまっしぐらに進んでいただくことが必要であろうと私どもは考えておりますが、私どもと同じような御意見の御答弁を賜われば非常に幸いだと思います。
  161. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なかなかむずかしい問題が、厚生年金の前途にはいろいろあるのだろうと思います。財政的の而もありましょう、今おっしゃったような面もございましょうが、できるだけ調整を遂げまして、各方面ともに御納得のいくようなものを作りたい、かような考え方のもとに努力いたしておるわけであります。
  162. 八木一男

    八木(一)委員 企業年金というような考え方は、社会保障の大きな要件である所得再配分ということを全然排除した考え方でございます。そこに国家的の援助を与えるということで、ほんとう社会保障の方の金を持っていかれるようなことがあってはとんでもないことでございまして、その本筋に従って厚生年金をぐんぐんよくする、国民年金をぐんぐんよくするという方向にぜひ進んでいただきたいと思います。私この問題につきましては、また詳しく論議をさしていただきたいと思いますが、そういうことであります。  国民年金質問はまだたくさんございますけれども、与党との時間のお約束もあり、厚生大臣のからだの御状況もありますから、残念ながら割愛をいたしたいと思います。討論その他で申し上げたいと思いますが、この前からずっと論議をされましたことにつきまして、厚生大臣としては、勇敢に年金の諸条件をよくする、このために国庫負担をつぎ込む。生活保護が健康で文化的な最低基準であれば、年金というものは健康で文化的な相当の基準でなければならないという考えのもとに、一つ国民のために急速な、十分な前進を遂げるために最大の御努力を願いたいと思いますが、それについて、ぜひとも前向きの強い御決意を承らしていただきたいと思います。
  163. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現実政治を担当いたしまする者といたしまして、現実を通じて現実の上に出て参りたいと考えておりますので、御了承を得たいと思います。
  164. 八木一男

    八木(一)委員 今の御答弁だとちょっと——前向きに最大の御努力を願いたいと思いますので、ちょっと聞き取りにくかったので、もう一回一つ力強く御発言願いたいと思います。
  165. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 社会保障の整備充実ということは、私としましても、朝にあると野にあるとを問わず、努力しなければならぬと思っておる一つの大きな項目でございますので、いわんや現にこれを担当しておる者といたしましては、できる限りの努力はもちろんするつもりでございますが、現実政治でございますので、現実を通じて現実の上に、その心がまえをもってやって参りたいと存じております。
  166. 中野四郎

    中野委員長 ただいま議題になっておりまする六案のうち、児童扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案について、質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  168. 中野四郎

    中野委員長 ただいま委員長の手元に、八木一男君外十一名より、国民年金法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。
  169. 中野四郎

    中野委員長 修正案の趣旨の説明を聴取いたします。八木一男君。
  170. 八木一男

    八木(一)委員 ただいま議題になりました国民年金法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党を代表いたしまして、その内容の大綱並びに事由につきまして御説明を申し上げたいと思います。  政府の方で、今度国民年金法に対する改正案をお出しになりました。その中には、当社会労働委員会論議をされ、あるいは附帯決議をつけられた事項について実現を見た部分を含んでおります。ことに免除者に対する国庫負担というような点の実現を見る改正案になっておる点について、かなりの満足を示したいという気持はあるわけでございまするけれども、しかしながら、これだけではまだ足りない。非常に年金自体についてあらゆる点で不十分であり、またその組み立てにおいて、社会保険の思想がまだ多分に残存をしておりまして、社会保障精神に徹底をしておらない点がございます。わが党といたしましては、この改正案では満足できませんので、それに対しての修正案を提出いたしたわけでございます。  以下その内容についての柱について、できるだけ簡単に、かつまた、できるだけ明快に御説明を申し上げたいと存じます。  その部分のうちで、おもに福祉年金の方から申し上げますると、現在の福祉年金は、老齢福祉年金、母子福祉年金障害福祉年金、すべてについてその支給金額が非常に少ない、条件が過酷であるという点がございますので、これを具体的に書いて、今、改正案に盛られておる改正点にこの点をプラスいたしたいと考えているわけであります。  具体的な点を、老齢福祉年金から申し上げますると、まずその金額につきましては、七十才以上について現在年一万二千円の支給金額でございますが、これを七十才以上は三万六千円にいたしたい。六十五才以上は、六十才台については現行法並びに改正案においては支給の規定がないわけでございまするが、六十五才以上は年二万四千円の支給をいたしたい。六十才以上は年一万二千円の支給をいたしたいということが一つの柱であります。それとともに、現在の国民年金法並びに改正案においては、各所得制限中に本人所得制限並びに配偶者所得制限、世帯所得制限の三制限があるわけでございまするが、この中の配偶者所得制限は、いかなる意味をもっても意味がない制限でありまして、具体的な例をもって御説明申し上げますると、世帯所得制限で、五十万の所得のあるところで、むすこさんがりっぱに働いておられるところの老人夫妻は老齢福祉年金をもらえるけれども、子息が死去して非常に悲運な状態にあるおじいさんが働いたならば、その妻であるおばあさんの方には老齢福祉年金がいかないというような、非常に不合理な点があるわけであります。ことに二十万円をこえた所得があったらもらえないというわけでありまするから、非常にこの点で不合理でありますので、このような配偶者所得制限というような社会保障に適さない条項を削除いたしたいと考えておるわけであります。この点につきましては、六十六条の改正でこれを実行いたしたいと思っております。  先ほど申し忘れましたけれども金額改定は五十四条の改正でこれをいたしたいと思うわけであります。  さらに、現在一世帯の中で、夫婦ともども七十才以上で老齢福祉年金をもらい得る条件である方々の場合、年下万二千円、月一千円の支給金額が一人当たり二五%削減せられて、月七百五十円しかもらえない。二人で一人半分しかもらえないという、これも非常に奇妙な制限規定があるわけでありますが、その夫婦受給制限を撤廃することをこの改正案に入れたいと考えているわけであります。それも六十六条の改正で実行いたしたいと考えております。  次に、障害福祉年金でございます。障害福祉年金につきましては、現在一級障害について年一万八千円の支給という条件になっておりますけれども、これははなはだ少額であります。社会保障論から見れば、特に福祉年金の場合においては障害者に最もたくさんの金額支給すべき条件にあるということは、社会保障のことを知っている人の通念であります。しかるにかかわらず、一級に対しても少ない。二級、三級は支給しないというような過酷な条件がありますので、これを改めまして、一級障害に対しては年四万八千円、二級障害に対して三万六千円、三級障害に対して二万四千円の障害福祉年金支給したいというのがその一つの点であります。それとともに、内科障害について一切の支給がないという不合理の点を改めるために、一級、二級、三級に従って、内科障害者に対しても必ず障害福祉年金支給するというように改めたいと考えているわけであります。  さらに、障害福祉年金には家族に対する加算の制度がございません。母子福祉年金において多子加算という制度があることを考えますときに、障害者の世帯にそのような家族がおるときに、このような家族加算は当然実行されなければならないことであるのに、現行法で実行されておらない。改正案にもそれが提出をされておらないことは、はなはだ遺憾であります。従って、この修正案でこの点をカバーしようとするわけであります。配偶者及び二十才未満の子供については、一人当たり年七千二百円の加算をつけ加えて支給をしたいというのがこの一つの内容であります。  次に、母子福祉年金の項に移ります。準母子福祉年金につきまして、現行法及び改正案においては年間一万二千円の支給が基本金額になっておりますが、これもはなはだしく少額でありますので、三万六千円の支給に改定いたしたいと考えておるわけであります。さらに現在、多子加算は現行法においては年二千四百円、改正案においては年四千八百円ということになっておりますが、これも少額でありますので、これを七千二百円に引き上げたいと考えておるわけであります。さらに私ども考え方では、この母子福祉年金においてあらゆる同様の人を含めたい、いわゆる生別母子世帯の人を、この国民年金法の母子福祉年金の項目に含めてこのような支給をいたすべきものと考えておるわけであります。その意味におきまして、私どもは、児童扶養手当法案の方は、これを重視いたしておりませんで、母子福祉年金の方でこの対象者をほとんどカバーしていきたい。児童扶養手当の方につきましては、何というか、ほんとうの制限されたものではなくて、全国民の家族について、そのような制度が確立する本筋の発展を見ることを期待しているわけでございます。  次に、このような三種、四種の——現行法では四種類の福祉年金になっておりますが、このような福祉年金が、現行法及び改正案では拠出年金のいろいろの諸要件、あるいは登録であるとか、あるいはある程度以上の保険料納入というような諸要件が果たされておらないと、このような福祉年金支給されないことになっておりまして、後々非常に、不幸な人が出てくるおそれがある。また、現在でも非常に不合理なことが起こっておるという点にかんがみまして、この福祉年金制度拠出制年金から切り離しまして、いかなる場合でも、あるいは老齢であるとか、あるいは障害であるとか、あるいは遺族であるとかいう条件、それからまた、ある程度以下の所得という条件を果たしておりさえすれば、どんな場合でもこの福祉年金支給されるというような方向に変えたいと考えておるわけであります。ただし、例外といたしまして、拠出年金の方でおのおの対応する老齢、障害あるいは遺族年金、それ以上のものをもらっているときに重ねてダブって支給することは認めておりませんけれども拠出制のそのような年金支給されないときは、必ず福祉年金支給されるというように変えたいと考えております。これについては、五十三条、五十六条、六十一条等の条文を改正してこれを実行しようというのであります。  次に、拠出年金及び総体的な、根本的な法の改正点に移りたいと存じます。  その第一は、国民年金金額を遅滞なく増大させる。まれに貨幣価値が十倍くらいになったときに減少することもあり得ますけれども、全体的に遅滞なく国民年金金額を増大させるという規定が非常に欠けておりますので、その点について根本的な改正を加えたいと考えておるわけであります。現在国民年金法の第四条におきまして、「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、国民生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」という条文に相なっております。政府の説明によれば、これで大体対処ができるというふうなことを言っておられますけれども、政府の数年前のやり方、あるいはこれから担当者が変わるというようなことを考えますときに、このような答弁だけでは理解ができませんし、国民感情として、戦後のインフレ状態を過ごした国民としては、積み立てた金が、貨幣価値が激減して実際に役に立たなくなるという心配が非常に強くて、国民年金に対する期待も協力もそのような点で大きく減殺されておるという点がございますので、このような点を改めるために、はっきりした規定に変えたいと考えておるわけでございます。  その方法は二つございまして、条文といたしましては、差し上げてございます資料の修正案の通り、「保険料の負担を伴うこの法律による年金の額は、生計費又は消費者物価の水準が十分の一以上増減した場合又は国民生活水準その他の諸事情に変動が生じた場合には、これらの変動に適応するように改訂しなければならない。」そういうふうに改訂しようとするわけであります。まず、この改訂の意義は、「しなければならない。」というふうにきっちりと縛った点に一つございます。必ず政府はそれをしなければならないということであります。もう一つの点は、現行法の方では、「生活水準その他」ということで、物価の変動ということが明記されておりません。「その他」の中に入っているということでございますけれども、それでは非常に不確かでございますので、消費者物価の水準が十分の一以上増減した場合には、必ず改訂しなければならないというようにこのスライド規定をはっきりいたしまして、国民の不安を解消いたしたいと考えておるわけであります。それとともに、このような物価の変動だけで年金額が改訂されるのでは、これは非常に不十分であります。政府の方針もそうではありません。生活水準が上がったならば、健康で文化的な相当の生活という水準が流動するものであって、逐次ぐんぐんと増大するものであるという認定のもとに「生活水準」というものが入っているわけであります。従って、その条文ははっきり生かし、現行法の方で、生活水準その他の著しい変動があった場合という「著しいを除きました。そのようなことで実際問題が進まないことをおそれて、「著しい」をはずしまして、生活水準その他の変動に応じこれを変えなければならないというふうに、はっきりとしたものにしたいと考えておるわけであります。その他「これらの変動に適応する」というのは、もちろんその割合に応じてという意味でありまして、十上げなければならないところを五つ上げてそのままにするということは許されないというふうに、はっきりと規定をいたしたいと考えておりますのが、この第四条第一項の改正であります。  次に、それに応じまして第四条の二の項目を入れまして、福祉年金についても同様の趣旨、さらにそれ以上積極的な趣旨の条文を入れたいと考えておるわけであります。その条文は第四条の二、第一項の規定は、「福祉年金は、その年金額及び支給要件がなお不十分である実情にかんがみ、毎年、必要な改善措置を講ずべきものとする。」ということで、必ず年金額支給要件改善するために、毎年やっていかなければならないというふうに積極的に第一項をもって縛りまして、その次に、第二項において、「前条第一項の規定は、福祉年金について準用する。」と定めました。拠出年金についての生活水準による向上、物価変動による変動、そういうものは福祉年金においても必ず実行しなければならないというふうに規定をいたしたいと考えておるわけであります。  次に、国庫負担の点について申し上げます。これは第八十五条の改正規定が現在の改正案に載っておりますが、それを改めまして、この点を新しく前進させたいというわけであります。現在の総体的な国庫負担は、保険料に対する五割、給付金額に対する三分の一の国庫負担という基準になっております。それを給付額について二分の一、保険料について十割、その保険料と同額というような国庫負担を確定をいたしたいというわけで、八十五条の第一項をこのように規定したいと考えておるわけであります。それとともに、今度幾分前進しました免除者に対する措置でありますが、免除者に対して国庫負担をするということは今度実行を見ましたけれども、その免除者の保険料の部分も国でカバーをして、免除を受けなければならないような貧困な人、その人こそ、老齢になったときに、あるいは障害遺族の場合に最も年金の必要の度が多い人であるから、本来から言えば、全部保険料を払い得た人以上の年金を確保しなければならないけれども、少なくとも当面において、それと同額だけは確保しなければならない。その意味で、たとい四十年間、全期間免除であって、一文も保険料を納めることができなくとも、六十五歳になれば月三千五百円、現行の規定ではそれが確保される。さらに、これから説明する諸条文でその金額が上がりましたならば、それは五千円になろうと、七千円になろうと、一万円になろうと、はたまた三万円になろうと、五万円になろうと、同額のものが確保されなければならないというふうに規定したいと考えておるわけであります。  その次に、附則の第二項の改正であります。附則の第二項の改正は最も大きな改正であります。と申しますのは、このような年金を、年金の名に値するような十分なものにするために、さらに社会保障的なものにするために、いろいろの年金額、あるいは支給開始年令、あるいはその諸条件を改正していかなければなりません。しかしながら、政府の現行の国民年金法の方は実にこまかく区分がしてありまして、これは政府の全機関の協力を得ません限りにおいては、数日間でこの修正案を条文にうたうことは神わざでも不可能なことであります。従って、このようなことをちゃんと、たとえば福祉年金はこれだけ金額がふえた、老齢福祉年金開始年令が六十才になったということとあわせて、拠出年金の老齢年金も六十才から開始だ、年金も上がる、諸条件も変わるというようなことをもって、必ず政府の全機関を総動員して、昭和三十七年九月三十日までにその点に応じた改正案を出さなければならないという規定を、この修正案の中に盛っておるわけであります。  以上が改正点の大要でありますが、修正案の内容は、お手元に配付されております修正案には全文が載っております。どうかこの社会保障の主軸である、所得保障の一番の柱である国民年金について、ほんとう国民の要望にこたえてこの内容を十分なものにし、社会保障的なものにし、国民に喜んでいただくためにこれを出したわけでございまして、この金額は、年間にして現在の政府予算にプラスすること一千六百億円の金額を要することを御報告しておきたいと思いますが、一千六百億円という金紙に委員方々はびっくりなさらないと思います。このような金額は、毎年の自然増収を充てれば簡単にできることでございますし、あるいはゴルフ税等の税金をかければ、この半分くらいは一ぺんに出てくる。ほんとうに貧しい人あるいは老人、われわれの親たちを大事にするという精神で、千六百億円のごときは少ないというような気魄を持って、この修正案をぜひ通していただきたいと思うわけであります。また私ども日本社会党としては、この修正案は現時点における修正案であって、これをもって満足するものではございません。福祉年金はさらにもっと急速に前進をされなければならないし、拠出年金ももっと条件が徹底的に社会保障的に改善をされて、この内容が増大をしなければならないという意見を持っているわけでございますが、本年度のこの時点において、少なくともことしからはこれを即時やるべきであるという意味でこの修正案を出しましたことを御了解を願いまして、社会保障に非常に熱心であるこの社会労働委員会の皆様の、満場一致の即決の御可決あらんことを心からお願いを申し上げまして、私の趣旨説明を終わります。
  171. 中野四郎

    中野委員長 この際修正案について質疑の申し出がありますので、これを許します。井堀繁男君。
  172. 井堀繁男

    ○井堀委員 社会党の修正案は、きわめて私どもは高い関心を持ち、かつその実現を念願しつつあるのでございますが、そういう意味で一、二私どもの理解のしがたい点がありますので、短い時間でありますが、ごく簡単にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  修正案全体の点で、たとえば各年金額を大幅に引き上げた点については、敬意を表するほかはありません。全くその実現をこいねがうものでありますが、ただその場合に問題になりますのは、今日の国会勢力から判断をいたしまして、問題は、最後に強調されました法律八十五条の規定であります国庫の負担にかかってくると思うのであります。この点については、われわれ在野党は要求がいかに正しく、そして世論の支持を受けましても、予算編成の権限というものは政府に握られておりますし、かつそれを動かす政党政治、すなわち与党の協力を待たなければ実現困難ではないか。ことにその金額が問題になると思うのでありまして、この八十五条の保険料総額の二分の一をどういう工合にはじいておるかということが、各年金の増額によって積算されてくると思うのであります。これは社会党さんにお尋ねするよりは政府にお尋ねを先にして、それからあなたにお答えいただいた方が親切だと思いますが、この社会党の修正案によりますと、国庫の負担額というものは相当に予定されなければならぬと思いますが、政府は、この社会党の修正案をこのまま実現すると仮定すると、どのくらいの国庫負担を増額しなければならないというふうにお見込みであるか、おわかりならちょっと伺っておきたいと思います。
  173. 小山進次郎

    小山政府委員 福祉年金の増額分については、ただいま修正案の御説明の中にあった、大体私どもあの数字に近いと思います。拠出年金の分につきましては、保険料の修正を特に今回は予定しておられないようでございますから、ごく客観的に申しまして、現在組んであります百二十億相当分の二倍程度、それに免除の分が加わりますから、およそ二百七十億程度ということになるだろうと思います。ですから、現在のものとの差額は、大体百五十億程度あればよろしいということになると思います。
  174. 八木一男

    八木(一)委員 今の小山年金局長の御答弁の通りであります。差額の百五十億、これは両方入っております。国庫負担率が五割が十割になった点と、免除者の保険料の部分をカバーするものと両方入りまして、現行の国庫負担分にプラスすること百五十億という計算で私ども考えております。福祉年金の方は千三百九十億ほど予定しております。
  175. 井堀繁男

    ○井堀委員 厚生大臣にちょっとお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、私どもも、今の数字が、政府並びに事務当局並びに社会党さんの方から御説明がありまして、数字の上では大へん開きはないようであります。問題は、冒頭にも述べましたように、この際国民年金保険法の実をあげようとすれば、私はこういう修正案に近い思い切った改正国民の要望でもありますし、また社会保障制度の一角を、要するにこの点から推進していくという点については、きわめて時宜を得た処置だと考えるのでありますが、政府はまさか社会党案にそのまま御賛成にはならないといたしましても、こういう方向というものが、今日の要請にこたえる一つの行き方ではないかと思われるのであります。厚生大臣は、社会保障制度に対しては非常に情熱を傾けておいでになりますので、この点に関するお考えをこの際伺っておきたい。
  176. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日本社会党の御提案になりました修正案の問題とせられている事項につきましては、政府といたしましても今後検討すべき問題がたくさんあるように存じておりますので、さような意味合いにおきまして、社会保障国民年金法前進のためにいろいろ検討を重ねて参りたいと思っております。
  177. 井堀繁男

    ○井堀委員 もう一つ社会党に大事な点で伺っておきたいと思いますが、それは修正案の中の第四条の規定であります。現行法でも、御存じのように国民生活水準その他の諸事情が著しい変動を生じた場合には調整を加えるということになっているのですが、社会党の場合はこれはやや積極的に主張しておるのでありますが、問題になるのは、生計費とか国民生活の実態ということについてであります。これはあなたも強調されているように年金でありますから、その年金によって被保険者の最低の生活がまかなわれなければ、この保険の精神は結局五十歩百歩になる。そういう意味で、この点は非常に重要な役割を持つことになると思うのであります。これは政府案のところでも、ここでもそう違いはないのではないか。ただ問題は、生計費とかあるいは生活の実態を法律が規定して、自動的に法律の効力が発生するかにあると思うのです。この点に対するあなたの方の強い主張はありましたけれども、問題は、今のあれで言いますと、実態生計費とか理論生計費の場合はある程度方式もありましょうし、目安もあると思いますが、実態生計費ということになりますと、これは他の方法をもってしなければいけないと思うのであります。こういう点に対する、やはりわが国のようないろいろ客観的な悪い条件の中ではこれ以上捕捉できないのではないか、この点に対するお考えはどうか、一つだけ伺っておきたいと思います。
  178. 八木一男

    八木(一)委員 井堀委員の非常に大事な御質問でございまして、この御質問の趣旨に敬意を表したいと思います。早々の間の修正案でございますから、そこまで具体的な機関について書き入れる時間的余裕がございませんでしたけれども、そういうものを十分に民主的に審議をする機関がほしい、またそれを十分調査するだけの人員を加えた事務局を置いて、十分な実態調査をして、そしてそれがほんとう年金として役に立つような基準を出せるような最大の強力な権限を持った機関、あるいは行政審議会というようなものを作る必要があるのではないかと思うわけであります。そういうような点で進めていけばよいのではないかと考えております。
  179. 井堀繁男

    ○井堀委員 まだいろいろお尋ねいたしたいのでありますが、時間の制約もあるようでありますので……。たとえば老齢福祉年金の額などについても、この刻み方に問題があると思うのであります。たとえば六十才から六十五才というきめ方、あるいは六十五才以上七十才、こういうように刻まれるのは、財政余力が問題になる場合にできるだけ小さく刻んで、そうして実態に沿うようにという場合にこういう苦心が必要なのであって、しかし、社会党全体の改正案の趣旨からいいますと、こういうときにはこういうように刻まれないで、六十才とかあるいは六十五才という境を置いて、それ以上はというふうにきめらるべきではないか。あるいはまた、特に私どもは、障害福祉年金の場合などを一、二、三に分けて、それぞれ一級、二級、三級、こういう刻み方などについても、こういう社会党案の全体のような点からいきますと、こういう刻み方でなしに、もっとやはり素朴な縛り方の方が実際的ではないか。あまり芸が小さいということは、こういう制度が成長する過程において、いろいろな補いをするという場合に配慮をすべきではないか、そういう点についても、実はお尋ねしていきますと、もっと今日の政府を激励し、また与党の皆さんの同意を得られるような方向を指向していこうとする改正でありますならば、今のような点をもっと全体に広げて工夫をしていかなければならない。そういう点は、わが党はこういう提案をする機会が得られませんものですから、あなたの案に便乗してわが党の立場を述べることになるのでありますが、私ども、二つのやり方があると思う。今日のような政治勢力あるいは政府の全体の政策の中から、やはり国民の要求を結びつけていく過渡的な提案の仕方というものは、もう少し、今言うように刻まれたような点を全体の中で配列をしていくべきである、そうでなくて、一つの目標を掲げてここまで来いという意味で提案する場合とがあると思うのです。そういう点はもう少し整理をしていただけたらという考えがありましたので、実はそういう意味に立ってここの問題をお尋ねすると明確になったと思うのでありますが、残念ながら時間が与えられませんので、私ども考え方を一部述べて、社会党さんのそういうものに対するお考えがどうであったかということを伺いたいと思います。
  180. 八木一男

    八木(一)委員 大へん具体的な御質問でございまして、この点十分敬意を表したいと思います。ただ社会党の方の、特に老齢の方は今度は対案を出しませんでしたけれども、数回にわたって出しました対案で御承知の通り、その対案では基本的に全部六十才から縛っております。ただそれまでの年金税納入の要件を達しない過渡的な面について、このような段階的な考え方を持っているわけであります。しかも、この段階的なものをしないで、たとえば六十才から三万六千円にいたしたいわけでございますが、このようにしぼっても千三百九十億というふうになりますので、そこまでいきますと三千億から四千億ぐらいになりますので、与党の方や民主社会党の方が、いかように年金に熱心になっても、老齢福祉年金だけで四千億ぐらいになるならばちょっと首をおかしげになると思いますので、そういう点で具体的な点をしぼったことを御了承願いたいと思います。  次に、障害福祉年金につきましては、これは私どもはやはり段階があっていいのではないかと思います。一級、二級障害、三級の障害、境目のちょっとしか違わないという点があっても、両足が不自由な方と片足が不自由な方においては、やはり労働能力にかなりの差がある、所得能力に差がございますから、全体的に十分にすることを進めたいと思いますが、このような段階は、障害の場合には特に必要ではないかと思うわけであります。  さらに、国民の運動としての面の井堀さんのお話、これは傾聴に値しますし、私どももそのような考え方に立っております。国民運動の場合にこのようなこまかいことをやってもなかなかすぽっと入りませんから、そういう面で全体的に年金をよくしたいという運動を進める場合には、もっとあっさりしたことでなければ通用しないと私どもも考えるわけであります。
  181. 中野四郎

    中野委員長 これにて本修正案に対する質疑は終了いたしました。  本修正案は、国会法第五十七条の三の規定に該当するものでありますので、この際、内閣の意見があれば聴取をいたします。灘尾厚生大臣
  182. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま日本社会党から御提案になりました国民年金法の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、現時点、現段階におきましては実施困難と認められますので、賛成いたしかねます。     —————————————
  183. 中野四郎

    中野委員長 次に、児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  184. 八木一男

    八木(一)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出国民年金法の一部を改正する法律案児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、政府提案について反対し、わが党の修正案について賛成の討論を行ないたいと思うものであります。  現在の国民年金法並びにそれとつり合いのとれた児童扶養手当法現行法としてあり、それについての改正案が出されたわけであります。その改正案の中には、当委員会決議の趣旨を盛り込まれた点もありまして、ある程度前進を見ていることは、私ども認めるのにやぶさかではございませんけれども、現在国民年金法ほんとうにその程度が非常に少ない、あるいはまたこの組み立てが社会保険的であるという、この大きな間違った点がまだ改正をされておらないわけであります。まず国民年金法というものが、社会保障であって、社会保障的に組み立てられなければならないのに、その保険料というものが現行法では定額保険料であって、非常に金持ちもそれから非常にぎりぎりの生活をしている人も同じ保険料を徴収するということになっておりますから、人によっては払いにくいことがある、払い得ないことがある。その払い方が足りないと年金がもらえない、二十年以上払っていないと年金がもらえないというようなことになっているわけであります。これでは金持ちが保険料をゆうゆうとして払って年金を確保できる。年金が最も必要な貧困な人たちは、年金をこいねがいながら保険料を納入し切れないために年金がもらえない、あるいはもらえる年金が少なくなるというようなことになっております。これでは社会保障ではなくて、保険の一種である社会保険であるといわなければならないと思います。そのような状態を変えるために、このような状態に対処するために、現行法で免除という規定がございます。しかしながら、この現行法の免除という規定は、その免除を受けたときに保険料徴収を免れるというだけであって、これが年金を増大する要件には一切なっておりません。このような免除は意味がないものであります。その点について社会労働委員会でどんどん追及をされまして、少なくとも免除について国庫負担をつけなければならないということで、今度はその点について改正案が出されたことは一歩前進ではございますけれども、それではまだまだ不十分であります。と申しますのは、このような階層の人には、保険料を十分に払える人より以上に年金支給しなければならないという要件が一つあります。その次に、少なくとも保険料を払い得る人と同様の年金くらいは支給しなければならないというものが、第二階段として言えると思います。ところが、これでは三分の一の程度を支給されるだけで、同額までに達しておりません。その点で免除者の保険料の分も国庫でこれを負担いたしまして、少なくとも六十五才から三千五百円。現行法では金額はまだ上げなければなりませんけれども保険料全期間納入の人と同額の年金を確保する必要があろうと思うわけでございます。そのような意味で、現時点で与党の方々も御賛成できるであろうという範囲内において、ただいま御説明申し上げましたような修正案を出したわけでございます。おそらく与党の方々も大賛成で、政府改正についての修正案が可決をするであろうと確信をするものでございますが、私はそういう意味で修正案に賛成の討論をいたしているわけであります。  その次に、年金額全体が少ない。これはぐんぐん上げていかなければならない。その場合に当然国庫負担を今よりはるかにつぎ込んでいくといたしまして、今の給付金額に対する三分の一、保険料額に対する五割というような程度のものではなしに、給付金額に対して半額、保険料に対して同額程度の国庫負担率は少なくともこれを確保しなければなりませんし、この負担率だけではなしに、金額改定を当然しなければなりませんから、負担率だけの国庫負担増ではなしに、改定についての国庫負担増も考えてこのような前進をはかっていかなければならないと思うわけであります。このような点で、修正案は後に年金額引き上げを指令いたしておりますが、現在とにかく率を引き上げる点を、この修正案の中にはっきりと盛ってあるわけでございます。少なくともこの程度の改正即時実行をしなければならないと考えるものであります。  次に、スライドの問題でありますが、年金額が当然改定をされなければならない。改定された時点においても、改定されて納入をしておる保険料額は、非常に貨幣価値の高い現在の金額で納入をする。しかし少々物価が上がって貨幣価値が変動して低落をした場合に、四十年後にもらえる年金額は、実質上ほとんど問題にならない使用価値のないような金額になってしまうというおそれが非常に国民の間に多いものでございますから、今の四条のあいまいな規定を明確なものにして、十分の一以上の消費者物価の増減があった場合には、必ず年金額を改定しなければならないというふうにしぼる必要があると存じます。このような修正案がまさに妥当であると私どもは考えている。それとともに、生活水準に従って積極的に年金額を将来ともに引き上げていかなければなりませんが、現行法及び政府の改正案のように「著しい変動」があるというような制約をつけておきましたならば、このような前向きの改定がおくれるおそれがありますので、このような「著しい」をはずして、どんどんダイナミックに年金額がよくなるというふうにすべきものと私どもは考えております。福祉年金についても同様、毎年々々その金額あるいは諸条件が改善されていく、また物価の変動によってそれが改善されていく、二段がまえのそのようなことが必要であろうと思います。現在福祉年金についてはそのような規定がございませんので、修正案に第四条の二を加えましてこのようなことを明確にし、そしてそれが推進されるように、その修正案について絶対にこの程度は必要であると考えているわけであります。  次に、福祉年金につきましては、福祉年金が現在拠出年金と関連を持たされておりまして、保険料額をずっと二十年以上納められないときにはその拠出制年金がもらえない、しかも保険料が返してもらえない、しかも福祉年金はもらえないというようなむざんな状態になっておりますのを、こういうのは改めなければならない。また現在の年金制度についてのいろいろの説明が不十分である、またそういう点で現在不利益処分をこうむっている人もいる、そういうことではならないので、そういう拠出年金の条件とは別に福祉年金支給することとして、最低の福祉年金があらゆる国民に確保されるようにしなければならない。そうでなければ、この福祉年金社会保障的でないというように考えまするがゆえに、このようなことを盛った修正案に絶対的に賛成したいと思うわけであります。  次に、福祉年金の額が非常に少ない。現在、老齢福祉年金七十才以上で年一万二千円、このようなものでは問題になりませんので、六十才以上が一万二千円、六十五才以上が二万四千円、七十才以上が三万六千円という金額に即刻改定し、それからさっきの第四条の二において、それ以後もっとぐんぐんと伸ばしていくということにしなければならないと考えているわけであります。そのような意味で修正案は絶対に必要であろうと思います。  さらに、配遇所得制限の撤廃、それから同一世帯における夫婦受給制限の撤廃、このようなものはもう言わなくてもわかり切ったことであって、こういうことが実行上入っていない改正案はまことに不十分であろうと思うわけであります。  その次に、障害福祉年金につきましては、一級障害一万八千円というものでははなはだしく不十分でありますので、一級四万八千円、二級三万六千円、三級二万四千円程度に即刻引き上げる必要があり、即刻上げて、さらに引き上げていく必要があろうというふうに考えるわけであります。そして母子福祉年金の多子加算みたいに、子供について配遇者並みのこのような加算は絶対に必要である、二十才未満の子供、配遇者について年七千二百円くらいの多子加算は必要であるというような観点に立って、この点においても修正案に賛成いたしたいと考えているわけであります。  次に、母子福祉年金につきましては、現在十六才未満の子供が要件になっておりますが、これも二十才未満の子供と親の場合の母子、準母子年金というふうになるようにしていかなければならないと存じておりますし、この基本金額の一万二千円は過小にすぎますので、三万六千円にすることは最小限度必要であると思いますし、多子加算も現行二千四百円、改正案の四千八百円では少なく、七千二百円には少なくとも即時上げなければならぬと考えているわけであります。  さらに、生別母子世帯については、この母子福祉年金の条項において、生別母子世帯について全部一万二千円という標準でなしに、三万六千円という標準によった、そのような生別母子世帯に対する年金支給をすべきである。その意味児童扶養手当法改正点は意味がないと思っております。そういうふうに考えております。  このように実行するような修正案、さらに年金額を、全部具体的にそのような福祉年金の改定に対応して、あるいは国庫負担の増大に対応してふやすようなことを、厚生省を督励してやらさなければなりませんので、昭和三十七年九月三十日までにこのような改正案を出すということはまことに妥当であろうと思うわけであります。わが日本社会党としては、このような修正案ではまだ非常に微温的であると思いますけれども、現時点において最小限度このくらいは必要であると考えるわけでございます。改正案の中に幾分の改正点があることは存じておりますけれども、この程度では社会保障の進展の速度を強めることにほとんどなりませんので、修正案に絶対賛成をし、このような不十分な改正案には、残念ながら国民年金法の方も児童扶養手当法案の方も、賛成できかねることを非常に遺憾に存ずるわけでございます。どうか満堂の委員諸君には、私どもの、短い時間ではありましたが、一生懸命申し上げましたことを御理解いただきまして、自由民主党の方も、民主社会党の方も、全員そろって修正案に賛成という態度をとっていただくことを心からお願いいたしまして、私の討論を終わる次第であります。(拍手)
  185. 中野四郎

    中野委員長 井堀繁男君。
  186. 井堀繁男

    ○井堀委員 私は、民主社会兄を代表いたしまして、ただいま議題に供されております児童扶養手当法の一部を改正する法律案並びに国民年金法の一部を改正する法律案に対して討論を行ないたいと思います。  まず第一に、児童扶養手当法改正でありまするが、本案は、わが党は残念でありまするが、次の理由を付して賛成の意思を表示いたしたいと思うのであります。  申すまでもなく、児童扶養手当法は、児童福祉法、ひいては児童憲章の精神に基づいて補完されていくものでありまして、そのことは国の責任であるし、また地方公共団体の責任が法律にもきわめて明らかに規定しているところであります。すなわち同法第二条によりますと、国及び地方公共団体の責任は、児童の保護者として、児童の心身ともにすこやかに育成する責任を負うと明らかにされているのであります。これは説明するまでもありません。このことは、民主社会における国家なり地方公共団体の責任のいかに重いかを明らかにしたものでありまして、この精神を貫いてこそ本案の精神が生きるのであります。しかるに、今回の政府の改正案を見ますると、わずかに扶養手当を児童一人につき第二子から二百円を引き上げた程度であります。すなわち、従来四百円でありましたものを六百円に引き上げたのであります。このことは、言うまでもなく五十歩百歩という言葉が全く当てはまるのでありまして、この手当の金額というものは、以上述べました第二条の精神を生かすことに役立たなければ意味をなさないのであります。でありますから、こういう金額というものは、その児童の最低の保護が行なわれる金額であってこそ初めて意味をなすのであります。わずかの金額を増すことによって、その精神に近づいたという主張をなされるかもしれませんけれども、なるほど接近はしたことになるのであります。しかし、本質的に論じまするならば、五十歩百歩であります。こういう改正の仕方というものは、要するに世間を惑わせることになるのであります。こういう改正案はもっと高い金額を盛り込むべきでありまして、その金額が、わが国予算を左右するような莫大な金額でありますとか、あるいは日本の財政力を動揺させるような大きな金額である場合においてはまた別であります。この金額はきわめてわずかの金額によって法第三条の精神を満たすことができるものでありますから、こういうものから完備をしていくということは、社会保障制度を口にする政府としては当然の責務であるかと思うのであります。まことに遺憾しごくであるのであります。しかしながら、そういう方向に前進しようとする意欲のある点について、われわれは特に賛成するものであります。でありますけれども、特に前回の第三十九回国会における附帯決議におきましても、その意味のことを要請しておったはずであります。こういう点から参りまして、私はきっと次の予算にはこの精神が盛り込まれてくるであろうことを予測いたしまして、本案の政府原案に対しては、非常な不満を持ちまするけれども、以上の見解を述べ賛意を表する次第であります。  さらに、国民年金法の一部を改正する法律案と社会党の修正案でありまするが、さきにもわが党が質問して明らかにいたしましたように、政府原案それ自身は、今日、国民年金法の本質を疑われる、いわば羊頭を掲げて狗肉を売るようなやり方であるという点を再三指摘いたして参っておるのであります。われわれは、こういう年金制度というものをもって、もし国民年金制度をもって国民皆保険の一助とするという主張をするならば、それは許しがたい背信行為であるとすら考えるのであります。少なくとも年金制度は、さきに残念ながら遺憾の意を表しながら賛意を表しました児童扶養手当法などのものとは、本質的に異なるのであります。国民年金保険というのは、この法律にもうたっておりますように、国民の掛金によって、すなわち保険制度であるのでありますから、要するに掛金と見合うように保険制度の財源を整える、その負担能力に問題があるとするならば、その暫定期間国庫の負担金を増額するなりするという保険制度の本質に触れてこなければならぬと思うのであります。要するに、掛金の点で問題があるとするならば、それは前にもわれわれが主張して参りましたように、保険でありますから、その掛金が多額でありましても、反対給付である年金がその国民生活を補うに足る内容のものでありまする場合には、その掛金が高いという主張は要するに私はある程度解消されてくるし、また負担能力のない人たちに対しては、無拠出すなわち福祉年金でもって補うという道が開けておるのでありますから、その点では私は、保険制度としてもその本質を、要するに乱しておると言わなければなりません。こういう意味におきましては、社会党の修正案ははるかにすぐれておるという点を認めるのであります。ただ、社会党の案に無条件に賛意を表することはできないのであります。  さきにも質問して明らかにいたしましたように、要するに、理想を高く掲げて進もうとするのであるか、あるいは現実に立脚してある程度の促進をはかろうとするのであるか、こういう点については、私は今日の時点における社会党の提案としてはそのいずれにも明確を欠いておる、あるいはその合理性なり、あるいは年金あるいは無拠出等の関係においても全く首尾を一貫していないので、そういう点については非常に不満を持つのでありますけれども、政府原案に比較いたしますと、はるかに高い立場に立っての分析でありますけれども、現実性に欠けますので、多少われわれは不安を感じますけれども、この際社会党の修正案に賛成をいたしまして、なお原案に反対の意思を表明いたす次第であります。  以上をもちまして討論を終わります。
  187. 中野四郎

    中野委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより各案について順次採決をいたします。  まず、児童扶養手当法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  188. 中野四郎

    中野委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  次に、国民年金法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決をいたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  189. 中野四郎

    中野委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  190. 中野四郎

    中野委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  191. 中野四郎

    中野委員長 この際、松山千惠子君、八木一男君及び本島百合子君より、児童扶養手当法の一部を改正する法律案及び国民年金法の一部を改正する法律案に対し、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。松山千惠子君。
  192. 松山千惠子

    ○松山委員 私は、ただいま議題となっております両案に、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、その趣旨の御説明を申し上げたいと存じます。  それでは朗読いたします。    児童扶養手当法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、児童手当制度が世界の多くの国で実施されている状況にかんがみ、同制度につき可及的すみやかに検討を終え、これが実現につき努力すべきである。    国民年金法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は国民年金制度の重要性にかんがみ左記事項につき、すみやかに検討すべきである。      記  一、左の大綱に従って改善を行なうこと。   1 各年金年金額を大幅に引き上げること。   2 老齢年金、老齢福祉年金支給開始年令を引き下げること。   3 福祉年金給付制限を緩和すること。   4 保険料年金額給付要件受給対象等すべての面において社会保障精神に従って改善すること。   5 右の実現のため大幅な国庫支出を行なうこと。  二、特に左の事項については可及的すみやかに適切な措置を講ずること。   1 各種福祉年金額を大幅に増額すること。   2 老齢福祉年金、母子福祉年金、準母子福祉年金障害福祉年金等の本人所得制限額をさらに引き上げること。   3 夫婦とも福祉年金をうける場合の減額制度を廃止すること。   4 老齢福祉年金における配偶者所得制限を緩和又は廃止すること。   5 母子福祉年金、準母子福祉年金については、身体障害者又は精神薄弱者を扶養する場合は、二十才に達するまでこれを加算対象とするよう努力すること。   6 障害福祉年金障害年金の受給者の子について、母子年金同様の加算制度を設けるよう検討すること。   7 内科疾患に基づく障害に対しても障害年金障害福祉年金支給すること。   8 保険料の免除を受けた者の年金給付については、さらに優遇措置を講ずるよう検討すること。   9 拠出年金について物価変動に対応する年金額のスライド規定を設けるよう検討すること。   10 年金加入前の身体障害については、広く社会福祉施策の全体系のうちでその保障を確保する途を考究すること。   11 年金受給要件に達しない者の実納保険料がその被保険者のものとして確保されるようにすること。  以上であります。すみやかに皆さん方の御賛同をお願いいたしたいと存じます。(拍手)
  193. 中野四郎

    中野委員長 本動議について採決をいたします。  本動議の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  194. 中野四郎

    中野委員長 起立総員。よって、両案については、松山千惠子君外二名提出の動議のごとく、それぞれ附帯決議を付することに決しました。  この際、灘尾厚生大臣より発言を求められておりまするので、これを許します。灘尾厚生大臣
  195. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま満場一致をもって御決議になりました附帯決議につきましては、それぞれその御趣旨を十分尊重いたしまして、誠意をもって検討いたして参りたいと存じます。(拍手)     —————————————
  196. 中野四郎

    中野委員長 ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  この際、暫時休憩をいたします。    午後四時三十四分休憩      ————◇—————    午後四壁三十八分開議
  198. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。五島虎雄君。
  199. 五島虎雄

    五島委員 駐留軍問題に関しまして、前々週から労務管理や、それから基本権の確立の問題や、麺本権の侵害の問題、あるいは諸機関労働者失業対策の諸問題について、関係当局の考え方を明らかにして参りましたが、きょうまた駐留軍離職者対策について質問が行なわれるわけであります。しかしこれらの問題に関連いたしまして、去る三月二十日の午前十時ごろ、米軍佐世保基地針尾弾薬庫の正門で、第二のジラード事件ともいうべき傷害事件が発生いたしておるわけであります。従ってこの件について、短時間ではございますが、中にはさんでもらって、当局の見解を明らかにしておきたいと思います。  さいぜん申しましたように第二のジラード事件となぜ言うか。すなわちジラードがママさんちょっとおいでと言って発砲して殺したり、あるいは学生を営門から発砲して殺したりした事件と同様な事件が、ただいま申しましたように起きております。すなわち、ノーマン・G・ラング二等兵がピストルの点検をして、車の方向に向けて引き金を引いたところが、暴発して中尾さんに当たったというような事件であります。これは当時だれもいないで、運転手の中尾正という人が——今年三十四才ですけれども、公務中招かれて、そうしてそばに自動車を寄せたところが、その前方のガラスを突破して、そうして鼻から右あご下に貫通銃創を受けて危篤である、こういうような事件がわれわれに入手されておりますけれども、この点について調達庁あるいは防衛庁は御承知かどうか。
  200. 林一夫

    ○林(一)政府委員 佐世保基地におきますところのこの事故につきまして、今まで当庁において知り得ました経過について御報告いたしたいと思います。  三月二十日でございますが、佐世保の海軍基地におきまして、米兵のピストル暴発によりまして、駐留軍従業員が重傷を負うというような事故が発生しましたことは、まことに遺憾に思っておる次第でございます。長崎県からの報告によりますと、三月二十日午前十時二十五分ごろですか、佐世保米海軍の針尾弾薬庫の前におきまして、立哨中の米兵が用便のため交代兵を要求した。その中尾正運転手(三十四才)が、交代兵をジープに乗せて正門前に到着しまして、立哨兵を車に乗せて約五百メートル先の控室に送りました。用便後再び正門のところの哨舎に引き返し、哨舎の前で車中に待機しておりましたが、米兵のピストルの暴発によりまして、同運転手の左鼻翼から右の耳の下を貫通して重傷を負わせたものでございます。被害者はさっそく佐世保市の共済病院に収容され、一時重態であったのですが、その後快方に向かい、生命には別状のない模様でございます。  本件につきましては、三月二十一日、長崎県知事から現地司令官に対し、事故の発生原因の究明その他について申し入れをいたしましたところでございますが、調達庁といたしましても、三月二十七日付をもちまして、在日米軍司令部参謀長に対しまして、事故の発生原因をすみやかに明らかにし、かっこの種の事故が再び起こることのないよう、適切な措置を講ずるよう要望いたしますとともに、本件が基地内で働く従業員に対し大きな不安を与えておること、また地元民の感情に与える影響も大きいものがあると考えられる点を強調いたしまして、被害者本人に対する療養その他の点についても、特別の配慮方を申し入れた次第でございます。なお本事故につきましては、軍側は正式に調査官を任命いたしまして、また日本側におきましては、佐世保地方検察庁の検事、地元の警察署長などが責任者として、目下合同調査を進めておる次第でございます。さらに真相が判明次第、遺憾のないよう処置したい所存でございます。以上が経過でございます。
  201. 五島虎雄

    五島委員 ただいまの説明によると、用便に行った人を運転手がジープに乗せて、五百メートル先の用便を済まして帰る途中に、車中から暴発したということでありますが、われわれの聞くところによると、交代勤務中の兵が中に実弾が入っているかどうかということを調べる際に、暴発してガラスを突破した、こういうようなことであるかのような報告を聞いております。しかし当時は日本人の証人というものがおりましたか。
  202. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私どもの聞くところによりますと、当時日本人の証人となるべきような方はいなかったようでございます。この暴発は車中で暴発したということではないようでございます。車外において暴発したというように伺っております。
  203. 五島虎雄

    五島委員 暴発というのは、まあ暴発ですから、どういうはずみかでたまが飛び出て、間が悪く運転手の中尾さんに当ててしまったということになるわけです。ところが交代勤務中にもしも起こったことであるならば、交代の兵の監視のもとに実弾を抜くのか、抜かぬのか。あるいはアメリカ軍では軍規によって兵器取扱規程等々があるはずです。そしてたまを改めるときでも、銃口を空に向けて引き金を引くというような措置が完全に行なわれているだろうと思う。あるいは調達庁長官が言われるように、交代勤務の者を運んで車外で暴発した——ピストルは手に持ってぶら下げているわけでしょう。ぶら下げておれば、銃口は下にいっているはずなのに、斜め上に弾道がきているわけですね。そういうような暴発が一体あるだろうか。従ってアメリカ軍そのものが日本の労務者を蔑視する差別の観念によって、こういうような問題が起きたのじゃないだろうかというようなことで、今長官が地元の意向もどうあろうかということでいろいろ措置を行なったと言われますけれども、われわれが聞いた報告によっても、非常におかしい、けしからぬ、こういうように思うわけです。アメリカの軍規というものは規律正しいというようにも考えられますけれども、ただいまのような点を点検するとき、人の方向を向いて引き金を引くというようなことはないと思うのです。だからこういうようなうわさもあるようです。交代の際のピストルの点検では、弾丸装填を見るだけで引き金は引かないのだ、それを引き金を引いたからたまが当たった、それをだれも証人がいないから、暴発だというように言いくるめようとするアメリカ軍側の故意的な表現ではないか、こういうように言われております。だから最初に申しましたように、たとい引き金を引く場合でも、たまを改める場合は空を向いて引き金を引くのが軍人としてあたりまえのことなんです。それを人間の方向を向いて引くということは、不届き千万ではなかろうかと考えております。  もう一つは、十時二十五分にこの事件が発生して、そうして当日の午後には、業務命令として米軍の責任者から、外部にこの事件について漏らしてはならないという通達を全従業員に出しておる。外部に漏らしてはならないということ自体がもちろんおかしいではないですか。こういうようなことを平気でアメリカ軍はやるのです。鼻から目、あごの下まで撃ち貫いて、そうしてたとい暴発であろうとも、日本人を傷つけて、病院に収容したのはいいけれども、こういうことは外部には漏らさないようにと、それを正式な文書をもって通達した。こういうようなことを前々週から、駐留軍問題の基本的問題あるいは労務管理上の問題として、われわれは重要視して取り上げてきた。こういうような一貫した質問をしているさなかに、こういう事件が現われるということ、こういうようなことがあるのかないのか、どういうように考えられますか。こういうような通達をあなたたちは確認されるのですか。
  204. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お話の外部に漏らさないようにというような通達を出したという事実は聞いておりません。なお本件はきわめて重大なる案件でございますので、現在佐世保の地方検察庁、地元の警察署において慎重に調査いたしておりますので、その結果真相が判明すると思います。そのときまた御報告いたしたいと存じます。
  205. 五島虎雄

    五島委員 私の質問に対するあなたの答弁としては、真相が判明しなければ、それはいろいろ答弁はできないでしょう。しかし二十日から今日、四月の四日まで大体二週間になっておるのです。二週間になっておるが、いまだその真相が発表されないというようなことについては、一段とすみやかに努力して、真相を究明されるようにお願いを申し上げたいと思う。ところが問題は、負傷をした従業員、労務者は、これこそ故意で殺人をされようとする殺人未遂なのか、あるいはほんとうに、いわれるように暴発事故であるのかということは、これは真相が究明されなければわかりませんけれども、最も悪いくじを引いたのは運転手である。公務中に暴発事故によってそれだまが当たってしまった。これは暴発といいましたけれども、これは故意かもしれません。そうするとこの人に対するところの十分の処置が必要ではなかろうかと思うのです。だからこの真相をすみやかに明らかにするとともに、本事件の発生に対する責任——もちろん責任の所在というものは明らかになるだろうと思いますから、調達庁はこの責任を今後十分明らかにしてもらいたいと思います。そうして全軍、全基地において同様事件の再び発生しないように、さっきは厳重に申し入れたと言われておりますけれどもほんとうに具体的に、今後こういうような日本人労務者がこのような事故の災難にあわないように、アメリカ軍に再び厳重に申し入れをしてもらいたいと思うわけです。  それから被害者中尾正君の家族は、奥さんと、五才、一才の二人の子供がおります。もしも重態で仕事につけない場合、あるいは死亡ということも想定されます。こういうような場合の補償というものは日本政府からされるのか、アメリカ政府からされるのか、この点についてはどうでしょうか。われわれは、さいぜん調達庁長官が特別の加療の手当を要求しているのだ、こういうように説明されましたけれども、それはそれなりに了承するとしましても、特別の措置が行なわれていいはずだとわれわれは考えます。この点について御見解を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  206. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申し上げましたように、現在それが過失による事故であるか、あるいは故意に基づく事故であるか、事重大なる案件でございますので、地元の検察庁、警察署において慎重に調査をいたしておる現状でございます。これによりまして真相が判明いたしますれば、補償等につきましては十分に考えたい。またさらに軍側に厳重申し入れる点がございましたならば、再び厳重に申し入れたい、こういうように考えております。
  207. 五島虎雄

    五島委員 この問題については、なおわれわれも側面的に事情を調査します。また委員会では、内閣委員会でもこの問題がさらに詳しく検討されるでありましょうから、従って私はこの程度にとどめますが、今調達庁長官が、積極的に事情を調査し、そうしてその補償の面についてはより万全にこれを措置するというような答弁をしたのに対して、今後われわれは見守っていきたいと思います。なおその基地におけるところのあらゆる機関が、現在如上の事件の究明に参加されておりますから、その点の明らかになるときを待って再び質問をするかもしれません。この点については、家族の問題、本人の今後の問題、それを十分考えるとともに、こういうようなほんとうに故意的な殺人、あるいは暴発たりとも、そういうことの起きないように、今後十分防衛庁も調達庁もこれを努力してもらいたいと思います。防衛庁長官の意見を聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  208. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいま御指摘になったようなこと、ごもっともなことなんでございまして、十分真相も調査いたしますと同時に、こうした事件が米軍の施設内で再び起こるようなことのないような処置につきましても、米側と十分な打ち合わせをいたしたいと存じます。
  209. 中野四郎

    中野委員長 関連質問を許します。島木虎三君。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 林調達庁長官にちょっと伺っておきたいのですが、今の御答弁によりますと、これは証人がいないということである。撃たれたのは日本人では運転手にあたる中尾何がしがただ一人であるという。それがまた戒厳令ならざる箝口令がしかれて、一切こういうようなことは外部に出さないような処置を講じたということで、いろいろな点から、これは今も長官が御心配なさっておるように、十分調査の上でこれに善処できればいいが、あやふやになったら大へんなことになるのではないかという点がちょっとおそれられるわけです。日本人がただ一人しかいなくて、こういうような事故が起きて、証人が幾ら探しても出てこないというような場合には、これはどのようなことにならぬとも限らないのです。そういうような場合でも、今後日本人はただ一人でも、こういうような中で就労させるような態勢で続行するつもりなんですか。こういうことをもとにして、駐留軍労務者に対する新たな考えなり処置なりがおありですか、この点を伺っておきたい。
  211. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、この事故が故意によるか、過失に基づくかは、現在調査いたしておるのでございます。これに基づきまして補償の措置その他保安の措置等は十分講じたい、こういうふうに考えております。もちろんこのような事故が再び起こることはまことに遺憾に存じますので、このような事故が再度起こらないように厳重に軍の方には申し入れております。今後もこのような点については、十分に軍側と話し、再びこのようなことが起こらないように勧告いたしたい、こういうふうに考えております。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 ただそれを聞いている範囲ではいいのです。十分それはやると言っても、この前の私どものいろいろな基地に対する質問の御答弁でも、それを伺って、私はその誠意のあるのはわかっている。誠意は十分わかっておるのですけれども、残念ながら、あなたの誠意だけでは現場の方に直接通じないのじゃなかろうか。具体的な措置が必要なんです。その場合には一人だけでその中で就労させるような方法は、今後是正させなければならない。またそういうような場合には全面的に、今後の補償の点においては全額を見てあげるとか、または家族に対して何らか将来において絶対困らないように、その対策はこういうように講じてありますとか、こういうようなことがあって安心できるのだ。ただ誠意を持って当たるだけでは、今後再び起きる可能性がないということもわれわれは信じ得られないし、起きた場合の補償等においても、これは完全であるということに対してもわれわれまだ十分な了解ができないわけです。具体的にどういうようなことを考えているかということを聞いているのです。この点いかがですか。
  213. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、真相が判明次第、補償等についてはできるだけのことはいたして参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。もちろん軍に対してもこのようなことのないように、十分に勧告いたしたい、こういうふうに考えております。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 そのことじゃない。就労している場合に、証人が全然なくて、そういうような状態になっているという不安がある。ただ日本人一人で就労させることについて危惧される問題はないか。そういうような場合には、今後三名やるなり、就業規則をちゃんとしておくなり、また国体協約を実施するなりということをやっておけば、こういうことはなかったかもしれない。あなたの怠慢かもしれない。この点を聞いておるのです。
  215. 林一夫

    ○林(一)政府委員 それらの点につきましては、この真相がはっきりしまして、どういうような状態においてこのような事故が起こったかということが判明いたしました場合、十分検討して、改むべき点がありましたならば申し入れをいたしたい、こういうふうに考えております。
  216. 島本虎三

    ○島本委員 どうもわからぬのだ。最後に一つだけ言っておきますが、その真相がわかってやる場合にはいいのです。そんなことは、あなたが言わなくても、それは当然やらなければならない。それによって万全の措置を講ずるということは、当然その衝に当たる人の義務です。そういうようなことを聞いているのじゃないのです。子供じゃないのですから、そういうように同じような答弁を何回も言わないで下さい。この前からあなた、十分その点は委員長からも注意を受けているでしょう。一人でやることに対する不安があるから、そういうような場合には、今後二人ずつぐらいにして就労させるような点を十分考慮して、こういうような、証人がなくて困るなんということのないように考えるかということなんです。これは当然すべきでしょう。一人であることによってわからないということになった。わからないおそれがあるのですよ。これを日本人で見た人はだれもないのでしょう。一人だからこういうふうになっている。今後やはり一人だけでそういうふうに就労させるつもりなんですか。この点一つだけはっきり言って下さい。
  217. 林一夫

    ○林(一)政府委員 一人で勤務するところを二人勤務させるというようなことにつきましては、やはり今後、真相がはっきりしまして、どういうことにしたらいいかということにつきましては十分協議しまして、二人にした方がよろしければそのようにするように十分協議して進めていきたい、こういうように考えております。
  218. 中野四郎

    中野委員長 小林進君。
  219. 小林進

    小林(進)委員 私は先週のちょうど水曜日ですから一週間前に御質問いたしまして、そこで御答弁をいただけなかった問題をきょうお尋ねするというお約束をしていたわけでございます。一週間もたったわけでございますから、十分御調査をいただいたと思いますし、しっかりした資料も、もうお持ちになっていると確信をいたしますから、前回のようなあいまいなお答えにならないように、一つお願いいたしたいと思います。何しろ社会労働委員会も忙しいので、駐留軍関係だけでもう三週間も日にちを費やされておるのは、みんなあなた方のおかげでございまして、国権の最高機関たる国会を、皆さんの不手ぎわのためにあまり時間を浪費するようなことのないように、一つ御注意をいただきたいと思うのであります。  第一の問題は、御存じの通り昨年の十一月二十七、八の両日、立川基地で基地の従業員を一室に軟禁して、数時間にわたって思想調査を行なわれたというこの事件について、一体事前に了解があったか、その後の経過も了承しておられるか、それに対して日本政府側は一体どういうような態度で臨まれておるかということを御質問いたしましたら、長官自身はあまりよく知らない。けれども、東京都の渉外労務部長の山下さんがもっぱらその交渉に当たっている。落度のないように連絡をとっておられるはずだ、こういう御答弁でございましたから、それでは次の労働日には、山下さんに一つおいでを願って諸般の事情を詳しく承ることにいたしましょう。こういうお話でたしかそのときには社労の委員長も了承されていたはずでございます。あるいは山下さんがおいでになっているか、山下さんにかわるもっと詳しい事情を知っておられる方がおいでになりますならば、官姓名を名乗られた上で、事の状況を明確にお述べをいただきたいと思います。
  220. 小里玲

    ○小里政府委員 この事件に関しまして、私の方で現在まで調査をいたしました内容なりあるいは現在までの経緯について、若干御説明をいたしたいと思います。  この事件が起こりましてから、昨年の十二月七日に立川労管が全駐労の立川支部と団交の際に、組合から、鈴木文子が最近二回にわたってOSIに呼ばれて思想調査された事項がある。これは人権じゅうりんのおそれがある。労管は軍側に厳重抗議せよという申し入れを受けたわけであります。労管といたしましては、事案の性質上、本庁と相談の上労管の態度をきめると回答して、なお組合に対しまして文書及び資料の提出を求めた経緯もございます。三十六年の十二月十五日に組合との団体交渉の際に、組合側は鈴木文子事件については、近く正式文書要求をする旨の発言があったわけであります。団体交渉後に立川労管は軍側と折衝して、調査事実の有無、あるいは関係資料の提示を求めましたが、立川の契約担当官代理者は、OSIに関することはよく承知しておらないということで、ノー・コメントというような返答であったわけでございます。越えて三十七年一月十七日に、やはり団体交渉の際に本件について協議が行なわれましたが、労管としては組合側からの要求書の提出を待って上部に申達する旨を組合側に通知いたしました。三十七年の二月二十四日に、やはり団体交渉の席上で、組合側から本人の陳述書を添付した基本的人権侵害排除に関する要求書の提出がございまして、労管といたしましては、本庁を通じ、本件取り扱いの指示を求めるとともに、さらに細部折衝を行なう旨を回答いたしました。  以上の間に立川労管といたしましては、昨年十二月十五日、本年の一月十一日、それから一月二十二日の三回にわたりまして、立川の空軍基地人事部長の契約担当官代理者と本件に関して折衝しております。越えて三十七年の三月七日に、都の渉外労務部長は立川基地の契約担当官代理者と折衝して、本事案の真偽をただすとともに、調査の内容いかんによっては、日本法例または労務管理上好ましくない事態発生のおそれのあることを指摘し、軍側の回答を要望いたしました。これに対しまして軍側からは、本件については目下調査検討中である、並びにOSI機関は契約担当代理者の権限外にあるという事情の説明がありました。  それから三十七年の三月十日に、都の段階としてはなかなかこの解決がうまくいかないということのために、都庁が調達庁における事案の検討を依頼して参りました。三十七年三月十六日に、日米連絡協議会の席上で、東京都の渉外労務部長から、再度この事件について軍側に対して具体的な回答を求めております。それから三十七年の三月二十六日に、調適庁の労務部長から都の総務局長に対して、OSIの調査状況の実情調査の依頼をいたしました。三十七年三月三十日、調達庁と都の渉外労務部並びに立川の労管の共同で、立川基地の人事部長から本件についての事情を聴取いたしました。つい最近でございますが、四月の二日に調達庁及び都の渉外労務部の係官が、OSIの地方局長のコックス空軍大佐に面接をいたしまして、本件についての事情を聴取いたしました。以上が大体今までの経緯でございます。  そこでこの事件の内容について御説明をいたしますと、本件の調査の動機は保安の関係でございます。鈴木文子の保安に関します情報を立川の基地司令官が得まして、司令官は立川のOSIの支部に調査を依頼をいたしました。OSIとしては、太平洋空軍司令官、ハワイからの許可を得て立川支部に調査を命じたわけであります。そこで直接本人を調査をいたしました理由としましては、立川の司令官が入手いたしました情報では、短期間にこの調査をする必要があり、また本人のためにも速急に黒白をはっきりさせる必要がありましたので、基地司令官のこれに関しまする判断を容易にするために、本人について直接調査をすることが最良の方法であるということで、本人について直接調査をいたしたわけであります。  それで調査の日時、場所、それから調査者でございますが、調査の日時は昭和三十六年の十一月二十七日、午前八時五十五分から正午まで、それから昼食をいたしまして、昼食後二時五十分に質問が終了いたしております。そういたしまして午後の二時五十五分から、本人の申し立てましたことについての調書の作成を始めまして、三時二十分に調書の作成を完了いたしました。それを四時五分に調書について本人の署名をさせたわけであります。それが二十七日でございますが、二十八日には、ほんの短時間だけ本人に面接をいたしております。場所は立川基地のOSIの事務所であります。それから調査者はOSIの係官が二名と通訳でございます。そこで調査にあたりましては、本人が女子でございますることを特別な考慮のもとに、丁重に親切に調査をいたしました。そして本人が答えたくなければ答えなくてもよろしいというようなこともつけ加えて、調査を開始いたしております。それで本人も協力的な態度で、こちらの質問に応じておるということでございます。そこで勤務時間中に調査をいたしましたことにつきましては、この保安の調査等につきましては、本人の直属の上司の了解を得て、勤務時間中に調在するのが普通のようでございますので、この際もそういう手続をとったわけであります。  それから調査事項の内容でございますが、これは履歴書の再提出を求めまして、その履歴書の記載事項について前歴でございまするとか、あるいは家族の状況でございまするとか、あるいは履歴書に記載してあります加入団体のことについて等、そういうことを中心にして調査をいたしております。またその際に軍事上の秘密の漏洩を、他から強要されたような事実があるかないかというような点についても触れておるようであります。内容は大体そういうことでございますが、本件を調査いたしまする根拠は、これは基本労務契約にも保安上の調査は軍においてもすることができるようになっておりますので、契約に基づいて調査をいたす、こういうことでございます。大体以上でございます。
  221. 小林進

    小林(進)委員 ただいまの御報告に先だちまして、あなたの氏名、官姓を聞いておきたいのですが、あなた山下さんでいらっしゃいますか。
  222. 中野四郎

    中野委員長 小林君にお答えしますが、委員長は先ほど名前をあげております。小里労務部長ということは、名前をあげておるのですが、お聞きになっているはずでありますから……。
  223. 小林進

    小林(進)委員 私、それを聞き漏らしたのでありますが、あなたはどこの労務部長ですか。本庁ですか、東京都ですか。
  224. 小里玲

    ○小里政府委員 本庁でございます。
  225. 小林進

    小林(進)委員 そういたしますと、この前は山下さんをおいで願うというふうに私は了解したのでありますけれども、今のあなたの御報告は、そうすると山下君から得られた情報でいらっしゃいますか。
  226. 小里玲

    ○小里政府委員 山下部長を含めまして東京都からの報告と、東京都と調達庁で共同して、この事態の真相を明らかにするために共同調査をいたしましたから、それを合しまして御報告申し上げたわけであります。
  227. 小林進

    小林(進)委員 こういう重大問題ですから、一体これに対して米軍側とこの問題についてだれが交渉しているのですかと、この前は林さんに聞いた。そうしたら調達庁長官の林さんは、東京都の総務局渉外労務管理部長山下というのがもっぱらこの交渉をいたしております、こういう御返答がありましたから、それでは山下さんに直接になまの交渉の状況をお聞きしましよう、たしか、よろしゅうございますということで話が行なわれたと思うのでありまするが、そのときには小里さんもいられたはずです。あなたもそのときにはそこにすわっていられて、黙っていられた。今ここに唐突に現われて、こういう回答をしていられる。前後のつじつまが合わぬじゃないですか。あなたはなぜあのときに答えなかったのですか。長官のそばにいられたのに、今おこがましくも現われて返答する。防衛庁長官、あのとき答えないで、今ぬけぬけと答えさせるというのはどういうのですか。
  228. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 先般の小林さんの御質問の当時は、こういう問題を調達庁として入手をいたしましたので、直接の責任者である東京都を通じて調査を依頼しておったわけでございます。その調査の依頼と、ただいま小唄部長がお答えいたしましたように、本月になりまして事の重大性にかんがみまして、東京都と調達庁が一緒になって調査をいたしましたということをお答えしたわけでございます。従いまして、当時は東京都に依頼して調査をしている最中でございます。その後東京都の調査並びに本月に入りましての調達庁との共同調査の結果を、小里部長からお答えしたわけでございます。
  229. 小林進

    小林(進)委員 そういう経緯を先週明らかにしていただけば、私はそれで了承するのです。先週に、調達庁が責任を持って東京都と交渉して、直接山下君なり都の関係者と話をして、本日明快な回答をいたしますという話があるならば、私は了承しますけれども、私どもは知らぬと言うのだ。東京都がもっぱらやっているから、東京都に答弁せしめるがごときことを言っておられるから、私どもは、それならば山下君を呼んで話を聞こうじゃないかと言っておるのです。実際いけませんよ。そういうことをやっているからいかぬのだ。ここにのほほんとしているが、せめてそのとき、私調べて参りまして、この次には一つ御納得のいきますような回答をいたしますという返事をしているなら、それでよろしいのです。だれが一体話をしているのか、私には責任がないというような顔をしていて、とんでもない無責任なことです。  それでは私はお伺いしますけれども、今話を聞いて驚いているのです。事案が起きたのは、昨年の十一月の二十七日にこの問題が起きておるにかかわらず、十二月の七日に立川の労管と組合との交渉の際にこの話が出たのです。そのときに労管は、本庁と交渉するという返事をしてきた。これでは解決できないから交渉する、その後十二月の十五日、それから一月の十七日、二月の七日、三月の十日、三月の十六日、三月の二十七日、こういうふうにこの問題で繰り返して組合関係あるいは関係者の間に話をしているけれども、問題の調べたOSIに対して一つもその間話は通じていない、そうでしょう。一つも通じていない。全然関係のないところをうごうご動いていて、ようやくその調査をした本部隊に話が通じていったのが、驚くなかれ四月の二日じゃないですか。初めて地方局長の何とか大佐に会っている。なぜ一体こういう問題が起きたのですか。これが一体ノーマルな状態ですか。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 本人が調べられたのが十一月二十七日ですよ。それは調べた者と調べられた者の立場は違うのですから、どんな検察庁へ行ったって、警察へ行ったって、昔の警察なんか、頭をなぐっていびつにして、息がとまるようにしていたって、そんな強制なんかしたことはありません、力なんか加えたことはありません、丁寧に調べました、お茶も飲ませました、本人のからだに手なんか触れないで調へました——私も経験があります。けれども、調べられる本人にすれば、言葉を知らない米軍の中の、しかもOSIの事務所の中で、目色の変わった、毛色の変わった大きな軍人二人、通訳から、個室の中に入れられて、午前の八時三十分から——あなたは八時五十五分と言われた。二十五分の時差はあるにしても、終わったのが三時だ。これだけの長時間調べられて、普通の状態でいられますか。そういうものを、実に親切に調べて、本人も協力的で、なごやかに調べたなどという、そのままの言葉を受けて、あなた方はオウムのようにさえずっているのじゃないですか。そのさえずり方自体、私どもは、一体どこの国の労務部長なんだか問いたくなりますよ。本庁だとおっしゃった。一体どこの本庁なんです。日本の本庁なのか。アメリカの本庁なのか。全くそれはあぜんたらざるを得ない。どうして一体、十二月の七日に労働組合がこの問題を直接に立川の労管に申し入れたにもかかわらず、それが四月二日にならなければ、その調べたOSIの支部まで話が通じないで、あとは権限がないの、本庁に連絡中だの、そういうような話にじんぜん日を過ごしてきたかという、この問題だ。この事情をいま一回一つ具体的にお聞かせを願いたいと思います。本庁が悪いのか、立川の労管が悪いのか、あるいはアメリカの立川の空軍司令部が責任を回避しているのか、どこに一体、こういう効果のないところをぐるぐるめぐりをしておいて、じんぜん日を過ごしていなければならない理由があったのか。
  230. 小里玲

    ○小里政府委員 十二月七日に団体交渉の席上でこの問題が提起されましてから、なるほど御指摘のように、直接の調査をいたしましたOSIとの接触が長い間できなかったということにつきましては、本来労管が軍と接触いたしまする機構上の窓口として、軍の契約担当官と絶えず接触をしておりまして、労務関係の事柄はほとんどそこを窓口にして日本側との交渉が行なわれておるわけでございまして、そういう関係から、一応この契約担当官代理者を通じて話し、事態を明らかにするという手段をとっております間に日にちが経過をしたということが一つと、なるほど十二月七日に提起はされておりますけれども、組合から正式な文書によるはっきりした要求書の提出がございましたのが二月二十四日でございますので、そういうはっきりした文書に基づいて交渉する方が効果的であるという判断のもとに、その前においてはやはり本格的な折衝ということができなかった事情はあるかと思います。いずれにいたしましても、こういうことに日にちをとりまして、OSIの直接の担当者に接触ができなかったということは、私といたしましても適切ではなかったというふうに考えておるわけでございます。そこで東京都の報告だけではやはり事態の真相を明らかにすることが困難だということで、調達庁と両者の共同調査というようなことにしたわけでございます。
  231. 小林進

    小林(進)委員 実際あなた方は、アメリカの軍と、OSIでも米空軍でも、交渉するときになれば日本政府を代表するのでしょう。あなた方のやる仕事は、政治的な高度の仕事になれば長官がやるだろうし、あるいは日米の何とか合同委員会なんかでやるだろう。あるいは総理大臣が出るかもしれないけれども、こういう事務的な問題はあなた方がやる。仕事の質と量によって違うだろうけれども、対外国関係では日本政府を代表することに変わりない。総理大臣であろうと。それがあなたたちが雇用し、あなた方が契約を結んだあなた方の日本の労務者が、いやしくもか弱い女の身の上で、そういうような軟禁みたいな形でこれほど人権をじゅうりんされる——とわれわれは推定しておる。内容はわからぬけれども、そういうようなひどい目にあわされておるものを、あそこの窓口がこうだ、ここの窓口がこうだのと言っている。アメリカのOSIに行ってこい、ロンドンのOSIに行って交渉してこいと言うのではない。日本の基地だ。独立国家としての日本の基地の中で婦女子が恥をかかされている。何のための契約担当官です。窓口でなければ話ができない、調達庁と共同でなければ話ができない、そんなことで一体日本の名誉を保っていけるとあなたは考えるのですか。繰り返して言うように、よく月給をもらって何々部長などという地位についていられると思っている。   〔「失敬なことを言うな」と呼び、その他発言する者あり〕
  232. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 お静かに願います。
  233. 小林進

    小林(進)委員 しかもその窓口に行って、それはあなたから直接受ける窓口でないから、権限外だからやめてくれといって断わられてきたというなら別だが、あなたの方できめているじゃないですか。アメリカの方では、契約担当官の窓口以外にOSIへ来てはいけないという契約がありますか。そういう禁止の規定がありますか。あなたが交渉に来ちゃいけないといってはねられた実績があるのですか。あるならば教えていただきたい。
  234. 小里玲

    ○小里政府委員 そういう規定はございません。一応労務管理事務所が折衝いたしましたり、都が折衝いたします場合の普通の場合におきましては、向こうの契約担当官代理者とやるということで今までもやっております。事態によりましてもちろんOSIとも会うこともできますし、その他の人たちとも接触はいたし、交渉いたしますけれども、二月の二十四日になりまして組合からの正式の文書が出されてきたというような事情もございまして、その間に日にちがかかっておったという事情があるかと思います。いずれにいたしましても、こういった事件の真相を確かめるという意味におきまして、本庁と東京都が共同してOSIともあるいは立川の契約担当代理者とも面接をして、真相の究明に当たったということでございます。
  235. 小林進

    小林(進)委員 あなた方は日本の労働者と労働協約を結んで、その人たちの対外国関係はその身分を保障しあるいは権利を守り、あるいは国内的な問題についてはあなた方がいわゆる労務担当者になって、労使対等の立場に立って労働者と労務協約を結ぶ。就業規則を結ぶ。そのためのあなた方の仕事じゃないか。それを何にもやっていない。失敬なことを言うなと言うが、何も失敬なことじゃない。労働者の権利を一つも守っていない。やるべき仕事を一つもやっていない。そして今だって、裏返して言えば、こういう勤労者の人権が侵された——その官庁へ初めて交渉したのが四月の二日だ。勘ぐっていえば、われわれが先週水曜日に初めてこの話を出して、今度の水曜日にその回答を持ってこいと言われたからこそ、何とか話をつけなければならないといって、あわてふためいて行ったとしか考えられないじゃないか。四月二日といえば、きょうは四日だからおとといの話だ。おとといあたりに初めて問題を起こした事件の官庁にかけつけて行っている。もしわれわれが先週この問題を取り上げなければ、まだ問題の役所にも行かないで、じんぜんと日を過ごしていたとわれわれが推定しても、弁明の余地があるまい。そういうぶざまな格好をしておいて、怠慢もはなはだしいです。一片の良心があるのかないのか。これで憤慨しなければわれわれは国民に対してかんばせがありませんよ。われわれだって五万、六万の選挙民から信頼を受けてきているのです。君らのように月給をもらっているのじゃないのです。信頼を受けなければこの次の選挙には首を切られるのです。君らは何とかごまかしていれば、定年まで月給をもらっていられるじゃないか。われわれはそんな甘っちょろいものじゃない。われわれの行動が悪ければ、万民が認めてわれわれの首を切ってくれる。つまらぬことは言わぬでくれ。僕の言うのが間違っているか、君が怠慢であるか。いずれ選挙民の前で勝負しようじゃないか。  それで林長官、あなたは直属の長官として、防衛庁長官も調達庁ばかり見ていられないだろうから、これは直接あなたの責任です。あなたの責任で、四月の二日までOSIまで話を持っていけなかった。一週間あなたは何をしていられたのです。あなたは部下にどういう的確な命令を下したのです。お聞かせ願いたい。
  236. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁長官としましては、部下に対しては、処理にあたってはなるべく早く処理しろということは、平素から申しておることでございます。本日御報告申しました事案につきましても、事柄は至要な問題でございますので、相当時間をかけて調査をして参っておるのであります。もちろんこういう事柄は早く調査をしまして、真相をはっきりさせなくてはならぬ事案でございます。今後ともこういう点は十分注意いたしまして事の処理に当たりたい、こういうように考えております。
  237. 小林進

    小林(進)委員 この問題はまた同僚諸君も質問いたしますから、私はこれでとどめますけれども、しかしこれで質問を終わったわけじゃありませんので、あなた方は今後も部下を督励して、すみやかに問題を解決するように話をつけて下さい。督励を受けた部下が、驚くなかれ十二月七日に真相を知ってから、四月二日までこの問題を起こした官庁に話もしないで、四カ月間空々ばくばくと暮らしてきた。しかしあなた方は将来責任を持つと言われたから、われわれもわれわれの常識の許す期間を償いて、あらためて結論をお聞きしましょう。どういうふうに処置されたかお聞きすることにいたします。  それではこの問題は将来に残して、いま一つお尋ねしておきますけれども、この前もお尋ねいたしましたいわゆる二名の暫定出勤停止の問題であります。ある東京の地図局に勤務する職員が、九月二十八日付でいわゆる保安の出勤停止を命ぜられた。この問題に対しましてもあなた方は平均四カ月ぐらいかかっておるのだという御答弁がありましたが、これはすでに六カ月有余経過いたしておるのであります。なぜ一体こういう不確定な状態に置くのかと言ったら、これも早急に善処すると言われた。一週間の日にちが経過いたしました。どういうふうに一体この問題を具体的に処置していただきましたか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  238. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在この二名の出勤停止の問題につきましては、陸軍司令部において厳密にまた慎重に調査中でございますので、軍に対して早くこの調査を完了するように申し入れております。
  239. 小林進

    小林(進)委員 そういう御答弁は先週もありました。先週から今日まで具体的にどういう申し入れをし、どういう回答がありましたか。申し入れの書類があったら、その書類も一つお見せをいただきたい。
  240. 小里玲

    ○小里政府委員 陸軍の保安関係の係官に、この問題の処理を早急にするようにということを申し入れてあります。
  241. 小林進

    小林(進)委員 その回答はどういうふうにございましたか。
  242. 小里玲

    ○小里政府委員 軍としては至急にやるという方針については変わりはないけれども、やはり慎重にこれは取り扱う必要があるということで、こちらからの申し入れについては了承しております。
  243. 小林進

    小林(進)委員 それは何月何日の申し入れでございますか。
  244. 小里玲

    ○小里政府委員 三月の中ごろでございます。
  245. 小林進

    小林(進)委員 私があなたに具体的にこの問題を処置していただきたい、これをお願いいたしましたのは、先週の水曜日でありますから、三月二十八日であります。三月二十八日に私はこの国会のこの委員会において、あなたもいられた、防衛庁長官もいられた、労働大臣もいられた、そこで私は林さんにお願いいたしました。あなたは早急に処置しますとおっしゃった。三月の半ばとは何です、三月の半ばというのは。私がお願いした三月の二十八日以後の、この委員会で私に回答をせられたことを、どう具体的に処置せられたかということの答弁を求めているにかかわらず、三月半ばとは何です。愚弄するもはなはだしいじゃないですか。何ですかこれは。これは愚弄じゃありませんか。長官、これは愚弄じゃありませんか。国会議員をこういうふうに愚弄してもよろしいのですか。長官、愚弄じゃありませんか、言って下さいよ。
  246. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、その後陸軍司令部において厳重、慎重に調査中であるから、それを督促する意味において申し入れをしたと申し上げたのでありますが、その申し入れた日はおっしゃる通り先日の委員会の後ではなく、ただいま労務部長から答弁がありましたように、三月の中旬ということでございます。私が少し勘違いをして期日を誤った点はおわびをいたします。
  247. 小林進

    小林(進)委員 私は繰り返し申しますように、三月中旬のあなたの回答は先週の水曜日に聞いているのです。三月の二十八日に聞いている。そのあなたの回答に基づいて、そんなスローな行動ではいかぬから、いやしくも停止を命ぜられて、不安定な状態の中で妻子眷族と暮らしている労働者の身の上になってみなさい。しかも六カ月以上も不安定な形にしてあって、まだ白を白ときめないことは、かえってこれは白だという実証になるのじゃないですか。なぜこれを明確にして、働く者の気持になって処置をしないのかと言ったら、早急に処置しなさいと言ったら、処置すると言った。私は三月二十八日、この委員会で言った。しかるに私のこの要求に対してどういう行動をとられたかという、具体的な行動に対する御報告を求めたにもかかわらず、三月中旬という先週以前の回答をせられるということは、これは単なる言いのがれじゃありませんか。言い過ごしじゃありませんか。いかに私どもが声を大にして叫んでも、私ども質問をあなたたちは腹の中で軽視している。国会議員なんかは委員会のとき、ちゃらんぽらんの答弁をしておけばいいのだという、これは国会議員の軽視ですよ。一小林進個人に対する軽視じゃない。国会に対する軽視ですよ。私はひがんだものの言い方をするのじゃないのだけれども、大体そういう傾向がある。だから私はこの問題は了承できないと言う。三月二十八日以後この国会で、私は早急にこの問題を具体に措置をして、来たるべきこの委員会の会合のときに回答をもらいたいということを、私はあなたに要求した。やったか、やらないのか。その後どういう行動をやったか、お聞かせを願いたい。
  248. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、三月の中旬に軍に申し入れをしたということでございまして、それを私が勘違いしまして、先週の委員会の後においてそのようなことをしたというようなことを申しましたことにつきましては、おわびいたしますが、もちろんこういうような問題は早く解決しなくてはならぬ問題であります。これは調達庁全員とも、こういうことに関しては平素から注意しております。こういうようなことにつきましては、今後必ず早急に解決するように注意いたしたい、こういうように考えております。
  249. 小林進

    小林(進)委員 そうするとあなたは三月二十八日、先週の水曜日に私があれほど強くお願いしましたことを、何もおやりにならなかったということでございますな。それで間違いありませんね。
  250. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、この問題について軍に申し入れしましたのは、三月中旬でございます。先週の委員会の後においては、この問題については具体的に注意はいたしておりません。
  251. 小林進

    小林(進)委員 重ねて聞きますが、何も具体的におやりにならなかったということですね。
  252. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通り、この問題につきましては具体的に行動はとっておりません。
  253. 小林進

    小林(進)委員 そういたしますと、この国会で私とあなたとお約束したことは、個人林、個人小林の約束じゃありません。私も国会議員として国民を背景にして、必要があったればこそあなたに要求したのだ。あなたもまた調達庁長官の地位において約束された。それをお約束を守らなかったというのは、国会議員なんかに対する約束は軽視してよろしいと、こうお考えになっておやりにならなかったと思いまするが、さようでございまするか。そう解釈してよろしゅうございますか。
  254. 林一夫

    ○林(一)政府委員 申し上げるまでもなく、国会は国の最高の機関でございまして、国会議員の方々の御発言は十分尊重しておるつもりでございます。先週の委員会において、なるべく早くこの問題については軍と交渉するということを申し上げておったわけであります。そのお約束に従いまして、一つ早く軍に申し入れをいたしたい、こういうふうに考えております。
  255. 小林進

    小林(進)委員 防衛庁長官にお伺いいたしますが、あなたは一体こういう問題を早急に調査せよと言われて、それを早急に調査せよとかりにあなたが林長官に命令されたとすれば、その早急は常識的に考えて——時期によって違いますけれども、何日を一体あなたは早急と解釈されるか。
  256. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 何日というようなことは、事案によっていろいろございますので、何日が早急で何日以上は早急でないというようなことをお答えするのはいかがかと存じます。私も先週の小林さんの御要求については聞いておりましたわけでございます。まあお言葉を返すようでございますが、本日その結果を御報告するというような意味で、調達庁長官がお答えしたとは考えておらなかったのでございます。もちろんこういう問題、早急にやることが妥当なのでございまして、たまたま本日までにはそうした具体的な措置がとられなかったことは、はなはだ遺憾でございます。ただいまの御意見もございますので、十分督促をいたしまして解決を早めたいと存じております。
  257. 小林進

    小林(進)委員 一緒におられた長官が、そういう一週間の期限を切ってこの問題を早急に解決すると答えたとは解さなかったとおとりになるならば、一応その点を私は認めてもよろしいです。しかし私の方は来週の次の労働日には必ずまたこの問題に対して質問するからということを、そうしてきょう開くことも予告したのでありまするから、私自身はきょうまでにちゃんと具体的な行動を起こして、その回答をいただけるものと考えておったのでありまするけれども、長官がそばにいられて、一週間の期限を切ってその行動をとるものと解さなかったとおっしゃるならば、私はその点一歩譲りますが、あらためて一つここで約束していただきたい。一つ早急にこの問題は調査をしていただいて、明確な回答をいただきたい。しかし私はあなたの直属長官じゃありませんから、期限を切ってどうせい、こうせいという命令権はありません。しかし私は国会の監督権の範囲内において、また適当なる時期に私はお伺いすることにいたします。  まだ私は質問はたくさんありまするけれども、あまり私だけで独占するわけにいかないのでこれで終わりますが、私は実に情けないと思う。もう十七年もたっているにもかかわらず、あなた方は政府なんだ。労働基本法も労働立法もみんなあなたたちが正式にきめたのだ。そうして一番正しく守らなければならない日本政府の代表者が、労働法も守らなければ、労働協約もしなければ、就業規則も作らない。何にもこれをやっていない。しかも独立国家といいながら、そういうような形であなたたちと同じ同胞である日本人を外国の基地の中へやっておいて、そうして人権をじゅうりんされたり、あるいは休憩時間に仲間と話し合いもできない、組合の話もできない、あるいは組合費の徴収もできないという悲惨な状態に投げ込んでおきながら、なおかつ一室に入れられて、大の男三人に五時間も六時間も尋問を受けるような形に置きながらも、その問題一つ相手方に話もできないという。私の言い方に無理がありますか。三十二年の九月から三十七年の今日まで、労働協約一つできないじゃないですか。それをそのまま放任しておくことはまことに遺憾だ。これが民間の中小企業や零細業者の不当労働行為ならば、まだわれわれはどこか経営者の立場に立って問題を取り上げる立場もあります。労働委員会ですから、何も労働者の立場だけを守ろうとはしない。経営者の立場もわかりますけれども、国を代表する国家機関が、最も法を正しく守らなければならない国の代表者が、労働法一つ守れないで、多くの労働者を外国の基地へぶち込んで泣かしておくなんということは、これは対労働者と経営者の問題じゃないです。国辱の問題ですよ。民族の名誉に関する問題ですよ。もはや戦後でもない、日本は独立国家だなんて、どこに一体独立があるのです。あなた方の立場から言えば、ちっとも日本には独立の形がない。まだ半独立ですね。まだ植民地の形でそのまま残しているじゃないですか。まことに私はこれは残念にたえないですけれども、しかしあなた方も精神を入れかえてやってもらうか、さもなければ何とか一つ問題を基本的に解決をしていただきたいと思う。今まで私は、先週から今週まで話を聞いておりますけれども、納得する理由は一つもない。たった一つの軍事基地という特殊な理由から、労働協約は結べないのだ、あるいは休憩時間も自由を与えられない。十五分の休みにそういう組合活動もできないとおっしゃるが、軍だという特別理由は今日初めて起こったことではない。あなたたちが日米合同委員会を設けて労働協約——日本が労働者を送り込むその以前にわかり切っていることだ。そのわかり切っていることを、十年も十五年もたった今日、新たなる特別の理由のような理由にして、労働者の権利を一つも守ってくれないという、こんなぶざまな形が独立国家と銘打つ国でどこにありますか。慎重に考えて一つ善処していただきたい。私はこれで質問を終わります。
  258. 澁谷直藏

    澁谷委員 関連して。この駐留軍の労働問題をめぐりまして、当社会労働委員会で数回にわたって熱心な質疑応答が繰り返されました。私は終始、政府とわれわれの同僚委員との間の質疑応答を、非常な関心を持って拝聴しておったのでございますが、これの印象といたしまして、私はまことに遺憾な感じを持たざるを得ないのであります。  言うまでもなく駐留軍の基地の問題は、非常に特殊な状況下にあるわけでございまして、そういった特殊な労働条件のもとで働く労働者を、政府の責任において保護して、正しい労働関係というものを作り上げていくということは、きわめて大事なことであります。言うまでもなく日米の友好関係というものは、わが国の外交の基本の路線であります。この日米の正しい友好関係、外交関係というものを推し進めていくためにも、とりわけこういった日本の内地における基地、そのもとで働く日本の労働者を正しく保護していくということは、大きな意味で日米の友好関係を推し進めていく上においても、きわめて重要な案件であると私は考えます。  ここでいろいろと具体的な問題をめぐっての質疑が取りかわされたのでございますが、調達庁におきましても、それぞれの立場で真剣に取り組んでおられるのでありましょうけれども、遺憾ながら実際に出たその結論は、われわれを満足するような結論を生み出しておりません。これはまことに遺憾であります。小林委員のただいまの非常な熱心な御質疑あるいは御意見がございました。私も同感であります。どうぞ一つ、防衛庁長官もおられますが、やはり占領から継続しておりますから、ややもすれば米軍の気持の底に何か日本を占領しておった当時の気持が残存しておるのじゃないか、もしもそのようなことでこの態度を継続するならば、これはまことに日本とアメリカとの正しい友好関係の上にとっても大きなマイナスであります。日本政府、その一環としての調達庁は、そういう意味におきまして、日米の外交関係の非常に大きなキー・ポイントを握っておるわけでありますから、今後いろいろな案件を処理される場合に、あくまでも日米対等の立場に立って、独立国日本の代表としてのきぜんたる態度と勇気を持って、一つ事の処理に当たっていただきたい。衷心より私からもお願いを申し上げておきます。
  259. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 吉村吉雄君。
  260. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ここ何回か、駐留軍労働者の労働基本権の問題について審査が進められておったわけでありますが、今もそうでありますけれども、駐留軍労働者が置かれている姿というものは、私は今の日本の政府が遺憾ながらアメリカの政策に従属をしておるその縮図的な姿であるということを感ぜざるを得ないわけです。そしてまた今の澁谷委員の発言を含めて、わが党の各委員が今日までいろいろ質問中心として意見を発表した。その真意というものは、日本の民族がほんとうに完全独立をしていきたい、こういうような真心から言ったところのそういう意見が出されておった、こういうふうに私は今までの質疑の過程で感ぜざるを得なかったわけでございます。今も澁谷委員の方からも特に与党議員として発言があったごとく、この点につきましては、単なる労務管理というような問題を離れて、日本の民族が将来どうあるべきか、そういう立場に立って対処をしていく、この心がまえが当事者であるあなた方にない限りは、いつまでたっても問題は解決しない、前進をしないであろう、このように私は考えざるを得ないわけです。今まで駐留軍労働者の労働基本権の問題について多く触れられたわけでございますが、私はその権利の問題から派生をいたしまして、今駐留軍労務者がどういう実態にあり、将来の生活設計がどういうふうに不安な状態にあるかということを、実情を明らかにしながら、雇用責任者であるところの政府の考え方を明らかにしていきたい、このように考えます。  私が申し上げるまでもございませんけれども、日本では今公務員あるいは公共企業体の労働者を含めて、労働基本権というものは大幅に制限をされております。たとえば交通労働者あるいは郵便の労働者、こういった方々を含めて労働者としての基本権を制限されておるのでありますが、日本の政府が常に民主的な国家であると言って、模範とすべきだという宣伝をしておるところのアメリカを初め欧米の諸国においては、交通労働者といい、あるいは郵便の労働者といい、日本ほど労働者の基本権というものは制限をされていない。こういう状態の中で考えてみますと、労働者の権利というものを認めている社会と、認めていない社会とがある。認めている社会ほど、どちらかといえば民主的であり、文化的である、こういうことは一般的に言い得ることだと思います。特に駐留軍関係の労働者の皆さんは、先般来指摘をされておりますように、基本権というものが非常に制限をされておる、こういう状態にありますから、これらの問題につきましては、特に雇用主であるところの日本の政府が特別の配慮をもってやっていかないと、日本が民主的な国であるというようなわけにはとうていいかない、こういうことになってくるのではないかというふうに考えます。  そこでまず申し上げたいと思いますのは、駐留軍関係の労務者は、他の産業に従事をしている労働者と異なりまして、守るべき産業がない、こういう特殊な条件下に労働をするところの労働者であるわけです。しかも日本の今日の政治的な立場、国家的な政策という観点からするならば、アメリカの駐留軍は、できるだけ漸減をしていった方がいい。国内に外国の基地があることは、それだけその国の独立が阻害をされるわけでございますから、独立を念願とする以上は、当然に外国の基地というものは小なくなっていった方がいいというのは、これは政府を含めて日本民族全体の宿望であろうと思うのです。こうなって参りますと、この駐留軍が少なくなれば、駐留車のもとで働いておるところの駐留軍関係労働者というものは、当然離職を余儀なくされるという関係になってくる。そこでこれらの人たちの将来というものは、日本の国の政策的な観点からも、あるいはアメリカの軍事上の政策という観点からも、その将来の生活設計というものは、常に不安に脅かされておる、こういうことに相なるわけでございますが、この点に関して、離職がいつくるかわからない、これほど不安な生活を送らなければならないということはないと思うのです。こういう特殊な労働者に対して、政府としてはまず基本として、どういうふうにしてこれら該当者の将来の生活を守り、その生活設計というものを各人が立てられるようにするか、これは非常に重要な点であろうかと思いますので、その根本となる方針について、調達庁長官の方からお伺いをしておきたいと思います。
  261. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この駐留軍従業員というのは、特に三十二年の岸・アイク声明以来、米軍の施設の閉鎖が多くなりまして、離職者が非常に多く出て参ったのであります。最近におきましても、毎年千二百名ぐらいずつ離職者が出ておるというような状況でございまして、これらの離職者に対して将来の生活の安定の道を講ずることは、ぜひ必要であるというような観点に立ちまして、政府におきましても、御承知のように内閣に駐留軍関係離職者等対策協議会というものを設けまして、駐留軍関係離職者等臨時措置法という法律を中心としまして、各種の離職者対策を講じてきておるのでございます。その対策の効果と申しましょうか、これは十分ではないのでございますが、統計等によりますと、だんだんと成績を上げてきておるようであります。もちろんこれでは十分とは考えられないのでございます。今後この離職者等対策協議会を中心としまして、政府全体としまして、十分各省庁省議を開きまして、この離職者対策については、万全の措置を研究し、検討して参りたい、こういうふうに考えております。
  262. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいままでの各委員の質疑、これに対する答弁等から考えてみまして、遺憾ながら私は、今の調達庁長官の話をそのまま信用するわけにいかないことを、きわめて残念に思うのです。十分対策を考慮していきたい、これだけでは問題は解決していないところに、今日幾つかの問題が出ておる。  そこで一番問題なのは、何といいましても日本とアメリカとが対等の立場に立ってものを論じ、事を決する、こういう基本的な日本の政府としての権利が認められなければ、今あなたがいかに努力をすると言っても、私は実情としてはその努力は実を結ばない、こういうことになるのではないかと思うのです。今長官の答弁の中に、毎年千二百人前後ずつ減少をしている、こういうことでございます。減少をしていくということが大体明らかに予測をされ、しかも駐留軍は少なくなった方がいいということは、よもや否定をしないと思いますから、そうしますとこの数はふえることはあっても減ることはない、こういうふうに相なるわけでございます。しかし当面私どもが問題にしなければならないと思いますのは、こうして毎年何人かの人たちが離職を余儀なくされていく。この離職というのはどうして起こるのかというならば、主としてアメリカ軍の軍事的な関係、こういうものから起こってくるというふうに考えられるわけです。この基本労務契約と称するものの中に、次のようなことが書いてあるわけでございます。「A側は、人員整理すべき従業数及び職種を決定する場合には、できる限りB側にその理由を通知し、雇用の安定を最大限に確保するために、十分な事前の調整を図るものとする。人員整理要求はA側が発議し、B側が実施するものとする。」こういうふうになっておりますから、人員整理の要求というものはアメリカ側がする、これを実施をするのは日本側だ、こういうことに相なるわけです。この場合最も大切なことは、ではここで働いておる駐留軍関係の労働者の将来の生活というものを考える場合には、たとえば年度別にどういう計画をアメリカ軍としては持っておるのか。もっと欲を言えば、長期の計画はどうかというようなことを日本側において明らかにしなければ、これはいつ何どき首を切られるかわからない、こういう不安な生活を送るということになるだろうと思うのです。従って今あなたの答弁された離職の問題については十分の措置を講ずるということにつきましては、できるだけこの将来の生活設計というものが各人に樹立をされる、こういうような期間、こういうような余裕というものを与えていかなければならない。このようになるだろうと思うのです。そのためには人員整理を発議するアメリカ側の長期の計画というものを、むしろ積極的に日本側から引き出していく、こういうことが必要ではないかというふうに考えられますけれども、今まではそういうような年度計画なりあるいは長期の展望に立ったところの計画について、アメリカ側と交渉をしたという例はあるのですか。
  263. 林一夫

    ○林(一)政府委員 長期にわたる人員整理の計画というようなことにつきましては、米側も持ってはいないのであります。当方で知り得る範囲におきましては、その年度内の大体の予定数というものは、推測できるような情報を得ております。やはり人員整理ということは、予算等の問題、あるいは部隊の移動、閉鎖というような問題に関連しておるのでありまして、長期の計画は米側においても立っていないようであります。調達庁といたしましてもなるべく先の見通しを知り得て、それに対する離職対策を考えていくことが一番合理的であり、効果的であると思っておるのでありますが、長期の整理計画というようなことについては米軍も持っておりません。もちろん私どもも知っておりません。大体その年度、あるいは翌年度程度の計画でございます。
  264. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうしますと、その年度あるいは翌年程度のことについては、調達庁としてはアメリカからその資料の提示を受けて、大体計画全貌についてはわかっておるということでございますか。
  265. 林一夫

    ○林(一)政府委員 正確な数字はもちろん入手できませんが、大体の数字はこちらでもいろいろの資料によって推測できるという程度であります。
  266. 吉村吉雄

    ○吉村委員 推測といろことは往々にして間違いが出ると思います。私の申し上げておりますのは、特殊な労務者でありますから、その労務者を雇用しておる責任者である日本の政府としては、労働者の将来の生活の安定という観点からも、将来労働者がどうなるかということを明らかにする義務と責任があるべきだ、こういうふうに考えるわけです。そのことにつきましてはもちろん軍の関係でございますから、いろいろ機密にわたることもあるでありましょう。しかしそれは向こうの都合ということなんですし、しかも民主主義を常に口にしておるアメリカの政府が、労働者の多くの人たちが常に不安な状態に置かれておるというようなことを、黙って見ておるはずはないと思うのです。問題は日本の政府の方でもっと強腰に労働者の立場を考えて、その生活の将来を考えて、そして毎年度ごとの計画、労務の雇用計画というものにつきましては、むしろ政府に積極的に相手側からその資料の提示を求めていく態度がなくては、この問題は本質的に解決しないと思うのです。ですから推測であるとか、あるいは情報であるとかいうことだけでは。どうしても問題の解決にはならない。そこで今までのように幾つかの問題が起こっておるというふうに相なるだろうと思うのですけれども、今まではそういうことで情報あるいは推測程度という話でありましたけれども、これからはでき得ることならば長期の計画が提示さるべきだ、提示を要求すべきだというふうに考えますけれども、少なくとも年度ごとの計画程度のことについては、アメリカ軍も責任を持ち、日本の政府も納得のでき得るようなそういう資料の提示を求めていくというのが、労働者に対する雇用主としての責任じゃないかと思いますが、これからそういうことをやる意思はございますか。
  267. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御意見の点はまことにごもっともなことであると存じます。私どもといたしましてもこの離職対策というようなことを考えていく上については、このような長期の人員整理の見通しというようなものを知る必要があるのであります。従来もそのような立場に立ちまして米軍側と折衝して、なるべく長期にわたる計画を示すように求めておるのであります。現在のところは年度内あるいは翌年度の程度の、それも正確な数字ではないのでありますが、概数を知り得ておるような状況であります。これはどうしても離職対策上必要でありますので、今後はさらに長期にわたるそのような計画について十分連絡をとって報告を受けたい、こう考えております。
  268. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これからそういう努力をしてもらうことはどうしても必要だと思うのですが、言葉じりをつかまえるつもりはございませんけれども、今報告という話がございました。報告を受けて、はい、そうですかというだけでは、私はこれはどうにもならないと思います。問題はたくさんの労働者の生活上の問題なんですから、やはり労働者の生活というものを将来にわたって——労働者ばかりでなしに、その家族の生活をどういうふうに保護していくかという責任があるはずなんです。そういう点からすると、向こうからの報告というものをそのつどまるのみにされておったのでは、その責任を果たしたということにならない。先ほど申し上げましたように、日米対等という立場に立って、アメリカ側の言い分というものが労働者の生活に非常に悪影響を与える、こういう場合には当然にその延期を求めるとか、あるいはその変更を求めるとか、こういう対等の心がまえとその行動というものがなくては、本質的な解決にならないと思うのです。私は先ほども言うたように、言葉じりをつかまえるつもりはないけれども、その報告を求めるというその言葉、そういう態度の中に、非常にアメリカに対して従属している姿というものがあるような気がしてならない。そこに問題があると思いますから、そういうような資料はむしろこちら側から積極的に提示をさせる、そうして事前の協議を行なっていく。同時にでき得ることならば、これは当事者であるところの労働者の代表、こういうものを含めて、それらの問題について検討をしていく、こういうシステムを確立をしていくということが、より大切だというように考えるのです。どうですか。
  269. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が報告という言葉を使いましたのは、まことに適当な言葉ではなかったのでございまして、もちろん米側と折衝しましてその提示を求めるというところでございます。提示を求めるのにさらに努力いたしたいと思っております。  その後段の御質問の点でございまするが、人員整理等につきまして、その他一般の団体交渉というような点についても、やはり米側も参加して協議をするという態勢はきわめて大事なことであるので、そういうような、何と申しましょうか、労使慣行というものは漸次作っていかなくてはならない、こういうふうに私は考えております。最近も米側と折衝し、団体交渉のときはぜひ出席するように強く要望いたしておるような次第でございます。早い機会にぜひ出席するように、現在強く要求をいたしておるというような次第でございます。
  270. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は冒頭に申し上げましたように、問題は日本とアメリカの関係というものが、対等の立場で口をきいているのかどうかというところにあると思うのです。ところが先ほど澁谷委員が指摘をしましたアメリカ駐留軍が占領当時のような考え方を持っている、そういうふうに感じられるからという話がありましたが、私は逆に日本の関係当事者が、占領治下のようなそういう気持というもの、そういう残滓というものがあって、その気持で交渉しているというところにむしろ問題があるのじゃないか、このように考えざるを得ないのです。従って要望をするとか、あるいは懇請をするとかいうようなことでは、本質的な解決にならない。日本の国民の何人かの人たちが、アメリカ軍の考え方一つで失業をするのです。飯が食えなくなるかもしれないのです。そういう場合に、日本国の代表であるところの政府としては、そういうことをできるだけ少なくするという立場に立って、対等なものの言い方をする、これがどうしても必要だと思うのですよ。そういうことをアメリカ軍が拒否するのだとするならば、私は澁谷委員の言葉ではないけれども、日米友好とかなんとかいうことはこれはもう飾り文句にすぎない。支配と従属の関係だけだというふうに言わざるを得ないと思うのですよ。そういうものを断ち切っていくものはだれかというならば、それは国民全体の努力はもちろんでありますけれども、当の交渉に当たるあなた方の態度の中に、一番それが顕著に現われるはずだと思うのです。従って、非常に友好関係ということを強調しておるところのアメリカ側が、労働者の権利の問題について、労働者の生活の問題について、あなた方が真剣に発言をした場合に、それを受け入れないということは私は信用できない、こう言わざるを得ないと思うのです。ですからこういう点については、もっと日本の国民の権利と生活を守るという観点に立って、要求するものは徹底的に要求をする。そうしてほんとう意味での、今あなたが言われましたけれども、ともに平和的にやっていけるという労使関係のいしずえというものを、あなた方の努力の中で作っていく、こういうことが大切だと思うので、私はここであなたが約束をする、あるいは答弁をするというだけではなしに、真剣にそのことについてはやってもらわなければならない、このように考えるのでありますけれども、通り一ぺんの答弁ならば私は求める必要はないのです。必ずそれを実現するような努力をしてもらいたい、このように考えますが、どうですか。
  271. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍との折衝の態度でございますが、これは従来からしばしば申し上げておりますように、私どもは対等の立場に立って堂々とやっておるのであります。何しろ米軍も当庁も対等の立場であります。向こうは向こうでなかなか自説を主張する、当方も駐留軍労務者の利益を考えて強く主張するということで、折衝が始まるのでございます。すべてが満足には解決されていないのでございますが、だんだんと改善方向に向かいつつあると私は信じておるのであります。態度としましては、どこまでも対等な立場に立って常々と折衝をしていく所存でございます。
  272. 吉村吉雄

    ○吉村委員 まあ努力をされているという答弁ですから、それを信頼するしかないということになるだろうと思うのですが、現われた具体的な現象は、その言葉を信頼できない幾つかの問題があるのですよ。たとえば日本の国内法の中で、労働法としては最低だといわれるところの労働基準法が守られていない。先般来問題になっておりまするように、就業規則が作られていない、こういうようなことが何年も続いているというのは、これは努力をした結果というわけには私はいかぬと思うのですよ。あるいは労働協約等についても数年来これが結ばれていない。これで一体努力したというふうに言えるか、こう言わざるを得ないのです。ですから私は問題は、言葉や文章ではないと思うのですよ。あなた方のほんとうの態度の中で相手を動かしていくという、そういうものがないのじゃないかというふうに疑わざるを得ない。この点については前にも話がありましたから、深くは私は追及しようとは思いませんけれども、就業規則はいずれにしてもこれは作らなければならないものなんです。それがないというのは、なくて今日まで放任をされているというのは、どう見ても怠慢と言わざるを得ないのです。労働省は一体こういう点について、積極的な指導をしたのかどうか。大臣はいないようですから、次官、一つ答弁願います。
  273. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 御承知のように、労働省は働く方々立場を守る、かような考えを中心に行政を担当して参っておることは御承知の通りでございます。そこで労使間対等の立場に立っての話し合いで労働協約を結ぶことが好ましいことであり、また就業規則の制定も好ましい、かように考えるのであります。労働省といたしましては、所管の官庁に対して、労働協約の締結あるいは就業規則の制定を申し入れておると私は理解をいたしております。
  274. 吉村吉雄

    ○吉村委員 加藤さん、就業規則があった方が好ましいという話ですけれども、そういう認識は少し困ると思うのです。就業規則はなくてならないものだというふうに考えてもらわなければ……。その点についてはこの前の委員会でやりとりがありましたから、私は深く追及しようとは思わないけれども、長いこと基準法できまっておるところのなくてはならない就業規則すら作られておらない。そうしてなおかつ努力しますという言葉を聞いたけれども、私はどうもそれは信用できない。だから問題は、アメリカの政府が労働者の基本権というものを認めないという話はない。労働組合法にせよ、あるいは労働基準法にせよ、アメリカの占領軍の当時の占領政策の一端として、日本の民主化のために作られた、そういう制度なんです。そういう点から見ますると、日本側の積極的な態度、こういうものが欠けておるところに根本的な問題があるのじゃないかというふうに私は思うので、この点は特に留意をして交渉に当たってもらいたい。この項についてはそういうように考えます。  そこで先ほど調達庁長官が言われましたけれども、私はなお明確にしておきたいと思うのですが、この駐留軍労務者の雇用問題について、年度ごとに計画をアメリカ側から提示をさせる、そのことについて対等の立場に立って交渉をし、その結論というものを労働者の代表である、労働者の団体であるところの組合に提示をする、そうしてできるだけ長期な方がいいのでありますけれども、とりあえずは年度ごとにそういうようなものをやっていくことが、前提として最も大切な点であるというふうに思うので、この点はお約束ができますね、先ほどの答弁からしますと。
  275. 林一夫

    ○林(一)政府委員 離職者対策等を考える場合においては、やはり人員整理の長期にわたる計画があれば非常に有効であるのでございます。できるだけ先を見通したそのような計画の提示を求めたいと思っております。ただそのような計画については、やはり軍とよく協議しまして、公表するのが適当かどうかということについては、十分協議して決定したい、かように考えております。
  276. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それではやはり問題は前進しないのですね。それは従来と同じことになると思うのです。私が申し上げているのは、そして調達庁長官も先ほど来、この駐留軍労務者の問題について、生活安定ということを考えているというその趣旨は、何と申し上げましても、離職を余儀なくされるようなそういう特殊な労務者である、しかしいつ一体離職するかわからないという不安の状態に置くことは、あなた方としては無責任な態度になるわけですから、それらの方々に、将来の生活設計というものを作る、そういう時間的な余裕というものを与えることが次善の策だというふうに思うのです。そういう点からすると、相手側の意向によってどうなるかわからないというだけでは、これはもう労働者はいつ首になるかわからないということを放任するようなものなんです。だから最小限度大切なことは、少なくともある一定の見通しのできる期間というものについては、労務者の雇用計画というものを提示をさせて、これについて日本側は交渉し、そうして一致点を見出したものについては、労働者側にこれを明らかにする。これももちろん労働組合は団体交渉権があるわけですから、当然交渉の上でその計画というものを認め合う、こういう基礎的な立場というものをとる必要があると思うのです。これをやらなくては、私は、あなた方が真剣になって駐留軍労務者の生活というものを考えているというふうに言われても、これは言葉とやることが違う、どうしてもこのようになると思うのです。これはぜひそのことについてはやってもらわなければならないと思いまするし、やる義務があると思うのですが、再度お伺いします。
  277. 林一夫

    ○林(一)政府委員 従来もこの人員整理についての将来の計画を米側に提示を強く求めてきたのでございまするが、人員整理の計画というようなことは、先ほども申しましたように予算の関係、あるいは部隊の移動、縮小というような問題に関係しておるのでございますので、長期にわたる真の見通しをした人員整理計画というものは立たないということであったのでございます。そういうようなことで、その年度あるいは翌年度の計画につきましては、概数は大体知り得ておったのであります。このような数はもちろんきわめて概数でございまして、そのようなものを組合側に知らせるかどうかというようなことにつきましては、十分考えまして、知らせる方が適当と考えますならば知らせますし、知らせない方が適当である、こういうように考えますならば知らさないというようなことで、十分一つ考えて参りたい、こういうように考えております。
  278. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それは一方的な見解だと思うのですよ。労働組合は労働者の生活の問題について、あなた方と交渉をし、協約を締結する権利が与えられているのです。それをあなた方の都合によって、これは知らせた方がいい、知らせない方がいい、そういう独断が許されるように考えておるところに問題があるのですよ。生活上の問題であるのですから、当然対等な立場に立って主張をして得たところの結論については、組合側に明示をして、そうして組合側と協議をして、労働者がほんとうに将来に向けて安定した、不安ではあっても、その中でも将来こうするとかああするとかという、生活設計が立てられるような措置をしていくというのが、どうしても必要だというふうに思うのですよ。それをあなたが、自分の考え方で、これはこうした方がいいとか、言わない方がいいとか言うことは、労働者の権利、労働組合というものを否定をした考え方じゃないかと思うのです。そういう考え方をやめて、そうしてその得たところの資料、結論というものは、組合側と協議をして、平和的な関係を樹立をしていくというのが、これは基本的にいい方針だというふうには私は申し上げませんよ。しかし駐留軍労務者という特定な、非常に将来について不安な状態にある労働者に対しては、次善の策としてとられるべき措置である、このように言わざるを得ないと思うのです。どうですか。
  279. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そのような数字の発表につきましては、関係するところもございますので、十分に協議して、もちろん従業員の利益というようなことを中心としまして考えて参りたい、こういうように考えております。
  280. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その点はこの委員会で再三、善処をする、誠意をもって対処するという言葉が何回となく使われていますから、しかも駐留軍労務者についてもう三週間にわたってやっておるわけですから、誠意を持ってやったといっても、私は遺憾ながら今までのことについてはどうも信用できない、このように考えます。これは限りがございませんからこの程度にしたいと思うのですけれども、特にわれわれとしては今あなたが再三にわたって言明をしたところの事項については十分監視をして、そうしてそれが実効が伴ってこない場合にはさらにその責任を追及していく、こういうふうにしていきたいと思うのです。  次に第二番目にお尋ねしたいのは、これは同じように第一項とも関連をするのですけれども、防衛庁長官、自衛隊が増強をされていくということになれば、駐留軍は減少していくのですか。
  281. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 これは必ずしも自衛隊が増強された分だけ、在日米軍が減るというような相関関係ではなく、日本を取り巻く各種の条件等もあろうかと思います。御承知のように岸・アイク声明以来、陸軍部隊等は急速な撤退をいたしまして、その後もちろん移動はございますが、割合に動かないで今のところはおります。しかしこれはやはりわが国の防衛努力とも関連をいたしまして、将来に向かっては減少をすることもあろうが、ただ今御質問のように自衛隊の増強されただけ米軍が減るかというと、そういう相関関係ではないと御理解いただきたいと思います。
  282. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いずれにしましても、自衛力というものは漸増をしていく。自分の国は自分の力で守るという政府の方針からすれば、在日米軍というものは減少をし、自衛隊というものは増強される——これはまあ直接の関係がないにしても、そういう関連性を持つということにはなるのでしょうね。
  283. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 もちろん私どもとしては自衛力の漸増というものを考えておりますが、また二面において日米安保条約の関係もあり、米軍としては日米安保条約の米国の義務を果たすだけの兵力を、日本またはその周辺に持たなければならぬというようなこともございます。従いましてただいまお答え申し上げたように、直ちに相関関係があろうとは思いませんけれども、在日米軍が日本の自衛力の漸増に見合って、いろいろその数等を考慮されるということはあり得ると存じます。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  284. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、申し上げるまでもなく駐留軍というものは漸次少なくなっていく、そこで働いておる労務者もそれに伴って減少していく、こういうことになるわけです。その場合の離職者対策につきましては、駐留策関係離職者等の臨時措置法ということで具体的には措置をされておるわけですけれども、その駐留軍関係離職者等の臨時措置法というものが、あなた方の当時期待したほどの効果を今上げているのかどうか、こういう点についてはどうですか。
  285. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 御承知のようにこの臨時措置法は、岸・アイク声明によります在日陸軍部隊の大量な撤退等によりまして、急速に離職者が多量に出たということを中心にして制定されたものでございます。非常に多量な方々が解雇されたという関係から、十分な離職者対策が講じられたとは言い切れないと思います。しかしながらこの法律、並びにそれに伴ってできておりまする中央離対協あるいは地方の離対協等の活動によりまして相当数の者が、適当な対策が立てられたということもあると存じます。なお今後につきましても、この法律並びに離職者対策協議会等を中心にいたしまして、十分に活用をして参りたいと考えております。
  286. 吉村吉雄

    ○吉村委員 駐留軍労務者というのは、先ほど来指摘をいたしておりますように離職というものが余儀なくされるという特殊な条件にある。ですから離職をした場合には、雇用主であるところの国が、その生活というものを保護していくという責任が与えられておると思うのです。そのために臨時措置法の中にはいろいろなことが具体的にとられておるわけです。特にこの中で私が強調をし、当局の見解をただしておきたいと思いますのは、職業訓練の問題でございます。駐留軍労務者が離職をした場合には、職業訓練というものを特別に行なっていくという方法がとられておるのでありますけれども、私はこの駐留軍労務者に限っては、むしろ在職中に何らかの職業訓練をやっていくということが、この場合特に必要ではないか、このように考えるのです。離職が余儀なくされる労働者であるから、そのような措置が必要だというふうに考えるのですけれども、こういうことについてはどのようにお考えになっておりますか。
  287. 林一夫

    ○林(一)政府委員 在職者の離職対策と申しまするか、離職した場合にすみやかに転職できるように、在職中から施設内の職業訓練はいたしております。
  288. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それは勤務時間中、いわゆる給与を与えた中でやっているということですか。
  289. 小里玲

    ○小里政府委員 勤務時間外でございます。
  290. 吉村吉雄

    ○吉村委員 勤務時間外ということになりますと、どうしてもそれぞれ家庭の事情なりいろいろな用件というものがあるわけですから、もちろんそういう環境下にあるのだからやむを得ないと言ってしまえばそれまでだと思うのですが、しかし何といいましても離職を余儀なくされるという特定な職種でもあり、しかも国が雇用しているわけなんですから、この点については国の費用の中で、勤務時間中に職業訓練をしていくという対策がなくてはならぬのじゃないか、またあってもいいのじゃないか、このように考えるのですけれども、そういう点についてはどうでしょうか。
  291. 小里玲

    ○小里政府委員 お話しのように、離職を余儀なくされるという運命にある労務者の方々でございまするから、できるだけ便宜をはかって、在職中から基地の中で訓練をするということで、従来からこれは純粋な政府の予算でもって実施をして参っております。ただ米軍から資材でございますとか、あるいは施設でございますとか、そういうものの利用について相当な便宜をはかってくれておりまするけれども、これを勤務時間中にやるということになりますと、米軍との仕事の関係で必ずしもそういうことが実現できないということで、従来から勤務時間外にやっておるというのが実情でございます。
  292. 吉村吉雄

    ○吉村委員 勤務時間外にやっているところの職業訓練によって、実際の離職した以降の再就職の状況というのはどういう工合ですか。
  293. 小里玲

    ○小里政府委員 調達庁でやっております基地内の訓練、それから離職をいたしましてから基地の外で職業補導をやりますのは、これは労働省の関係でございますが、そういうものを通じまして、離職後の生活安定のための職業訓練をやっておるわけでありますが、それによってどれほどの労務者が職を得たかということは、私の方でももちろん統計をとって調べておりまするけれども、離職をいたしますると従業員の方々も相当散らばりますから、必ずしも私の方で調査をいたしましても確実な数字はつかみ得ないのが実情でございます。ただ労働省の職業安定所の窓口を通じての求職を申し出た者の就職率は、大体五〇%前後だと思います。
  294. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労働省の職業安定局長、駐留軍労務者の離職後の再就職の状況というのは、他の一般の離職者に比較をしてみてどういう工合ですか。
  295. 三治重信

    ○三治政府委員 他の産業との特別の比較は、私の方としては今手持資料はございませんが、昨年じゅうで安定所の紹介によって就職された方が五千八百人ほどございます。それから先ほどの訓練施設で訓練を受けられた方の就職は、自己の都合で特別な事情がない限り、大体その職種の就職は確保されております。ただ従来職業訓練を受けられた方が非常に熱心であったのが、昨年から今年も訓練施設へ入られる人が少なくなってきておる。その他軍の方へまた再就職される方もありますし、大体そう言っては悪いかもわかりませんが、特別な年令とか、特別なものを除いては、現在のところ就職の上において困られる方はそうないのではないかというふうに考えております。
  296. 吉村吉雄

    ○吉村委員 駐留軍労務者の離職者について、他の産業と特別に区分けをした資料というものはないという趣旨の答弁だと承りましたけれども、私はそれでは大へん冷淡なやり方だと思うのです。御承知のように駐留軍関係の労務者の年令というのは、非常に高いはずだと思います。おそらく四十をこえておるでしょう。中高年令者の再雇用の問題については、特に今問題になっておる。しかもここでは離職を余儀なくされるという、そういう宿命的な状態にあるところの労働者の問題なんでございますから、調達庁においても、離職をしてしまって以降どうなったかわからないというような無責任な答弁では、これは真剣にやっておるということにはならない。またその雇用問題について特に責任のあるところの労働省が、そうした特殊な環境にあるところの駐留軍労務者の離職について、特別の目をもって資料の整備なり、その対策なりというものについて重視をしていないということは、離職対策としては私は不完全きわまりないというふうに考えるわけです。こういう点については、特にこれから十分連携をとって、そうして駐留軍関係労務者というものが特別の状態にあるのだ、従って離職後といえども特別の目をもってこれを再就職できるような措置、こういうものを率先してやっていかなければならぬと思うのです。その一環として、特にこの基地内におけるところの勤務時間中の職業訓練というものを重視して、そうして再度これをアメリカ側なり関係の向きと交渉しながら実施をしていく、こういうような熱意を持った対策というものを研究してもらいたい、このように考えるのですが、どうですか。
  297. 小里玲

    ○小里政府委員 先ほども申し上げましたように、軍の方からの援助は、資材でありますとか施設でありますとか、いろいろな便宜をはかってくれておりますが、勤務時間中に米軍の作業と全然関係のない訓練をやるということにつきましては、なかなか困難な事情もあるかと思います。また軍の基地の閉鎖というようなことで仕事が減少をいたしましたり、その他事情によって、そういう成規の勤務時間中に食い込んで訓練をやるというような事情の許しますところにつきましては、軍とも折衝してそういう措置を講じたいと考えております。
  298. 吉村吉雄

    ○吉村委員 アメリカ軍側にそのくらいのことをやはり要求してやっていくという必要があると思うのですよ。いずれにしても、これは何回も言うようですけれども、あなた方もおわかりのように、いつやめなければならないかわからぬという仕事なんですよ。そういう労働者なんです。ですから、やめた場合には直ちに仕事に困らないようにという対策を、間接的な雇用主であるところのアメリカ側だって考えてもいいはずなんです。それを言い出すか言い出さないかがむしろ問題だ、このように考えるので、もし現在まで実施をしていないとするならば、この点は特に必要な事項ではないかというふうに思いますから、検討されて善処をしてもらいたいということを強く要望しておきたいと思うのです。よろしいですか。
  299. 林一夫

    ○林(一)政府委員 そのような点につきましては、検討しまして善処いたしたいと思います。
  300. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次に、同じく臨時措置法の中に、昭和三十二年の六月の岸・アイク共同声明当時に出たところの離職者については、特別の加給金というものを支給した、こういう制度があるわけですけれども、これはその当時在職をしていた者だけに適用されるのがこの法の趣旨だと思うのですが、この点については、当時のこの条件というものは、多数の人が同一地域内において離職を余儀なくされるからという趣旨で、この臨時措置ができたということについては了解はできます。了解はできますけれども、しかし事の本質というものは、多数であるか少数であるかは別にして、労働者の生活というものが脅かされ、従ってその点については、できるだけ雇用主であるところの政府として、何らかの措置をしてやりたいという、そういうのがこの臨時措置法の立法の趣旨だと思うのですが、その観点からすれば、当時いた者にだけ適用するということについては、非常に問題があるのじゃないかというふうに思うのです。ここはその後に就職をした者についても、適用するごとき法の改正なり何なりというものを考えておるかどうか、一つお答えを願いたい。あるいは特に法の改正ということが困難だとするならば、行政的な措置として運用の面で同じような方法をとるという、そういう考え方はございませんか。
  301. 林一夫

    ○林(一)政府委員 特別給付支給の趣旨は、ただいま先生御指摘のように、これは岸・アイク共同声明による国の政策転換によりまして、大量の人員整理ができたということで、この時点において在職していた方で、予期し得ないところの事情で解雇された、こういう方々に対して、国が雇用主の立場からこの給付金を出すということになったのであります。従いまして岸・アイク共同声明の時点以後に駐留軍従業員として就職した者は、この制度の趣旨から申しまして、特別給付金の支給対象とするということは非常に困難な問題である、こういうふうに考えておるわけであります。しかしいずれにしましても、駐留軍労務者の利益という点を考えまして、将来関係各省とも十分協議して、検討をして参りたい、こういうふうに考えております。
  302. 吉村吉雄

    ○吉村委員 将来ということになりますと、長い将来もあるし近い将来もあるわけですが、毎年千二、三百、そういう答弁でありますけれども、それらの人たちが離職を余儀なくされているわけですから、長くなれば、額は大したことはないのでしょうけれども、問題はその雇用主であるところの日本の政府が、このような特殊な労務者に対して、気の毒だという気持の現われが具体化されたものだと思うのですが、私はこの数の多い少ないにかかわらず、三十二年六月以降に就職をした人といえども、この加給金制度というものの適用を受けるということが正しいと思うのです。またそうでなくてはならないというふうに考えるのです。今までそのことを放置されておったというのは、私はどうも合点がいかないのですけれども、これは一つ来たるべき最も近いところの国会に、時限立法ですから、あとで触れていきますけれども、同じような措置というものを、あなた方の方としてはとる意思がある、こういうふうに理解していいのですね。
  303. 林一夫

    ○林(一)政府委員 もちろん駐留軍労務者の利益のことを考えますれば、このような措置をとることは望ましいことであるのでございます。こういうようなことを進めていくについては、関係各省の意見もありますから、十分関係各省と協議して参りたい、こういうふうに考えます。
  304. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労働省の見解はどうですか。
  305. 三治重信

    ○三治政府委員 特別支給金の関係につきましては労働省は直接関係しておりませんので、何とも意見は申し上げられませんが、駐留軍離職者対策について、そういういろいろの施策が考えられるに越したことはないというふうに考えますが、先ほど調達庁長官からお話があったように、そういう問題につきましては、やはり関係各省協議してでないと、そういうことにつきましてどうこう言うことはなかなかできないと考えます。
  306. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは長官も考えられておるように、職安局長も話されたように、私は再三申し上げますけれども、これは量の問題じゃない。質の問題だと思うのですよ。そういう考え方で措置をするということがこの立法の趣旨だ、このように考えますから、時限立法の関係はありますけれども、当然法の改正をしていくという態度で臨んでもらわなければならない。それから、それまでの間についても何らかの措置をとって、そうしてこれらの方々が離職をしていくときに、国としての同情金というのですか、見舞金というのですか、そういうようなことぐらいはやっていかなければならない義務が私はあると思うので、この点は労働省も調達庁も、一つ熱意をもって取り組んでもらう、こういう言明を得ましたから、積極的にその実現のために努力をしてもらいたい、このように考えます。  時間も制限されていますから、大へんあるのですけれども、しぼっていきますが、特に非常に重要だと考えられましたのは、三十六年の九月二十四日に駐留軍労務者の離職対策について閣議決定が行なわれておるわけです。幾つかありますけれども、この中で返還当地への企業誘致によるところの就労対策の確立、こういう項がございます。これは当時としてはきわめて時宜に適した処置だというふうに私は考えます。この結果が一体どうなっているのかということが非常に問題だと思うのです。返還された基地にいろいろな企業誘致をして、離職を余儀なくされた大量の労働者というものをその企業に吸収する、こういう政策でございますから、時宜に適した措置だというふうに考えるのですけれども、その閣議決定によって、返還基地ごとに具体的に誘致された企業に対する駐留軍労務者の再就職の状況、こういうものについてはどうなっておりますか。
  307. 中野四郎

    中野委員長 吉村君、それは総理府の方の関係で、総理府の係の者はおりませんから、ちょっと答弁がいたしかねるのですが……。
  308. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それは担当の官庁じゃないのだそうですけれども、たくさんの人たちを今まで雇用しておって、雇用主がやむなく離職をさせた。その離職をさせる一環として、これらの人たちの生活をどういうふうに見ていこうかという政府の政策としてきめられたものなんですね。だから当然その雇用主であった調達庁としては、その後閣議決定が一体どうなっておったのか、どのように再就職なされておったのか、このくらいのことを調べておくのが私は親切な態度であると思うのです。国務大臣としてもこういうことについては責任があると思うのです。担当の人がいないというのでは、これ以上聞いても仕方がないと思うのですけれども、わかっている範囲ではどうですか。全然わかりませんか。
  309. 小里玲

    ○小里政府委員 おもな返還の施設とそれの離職者の吸収状況でございますが、まず群馬県のキャンプ尾島、ここには現在三菱電機が操業中でございます。従業員数は三百名でありまするが、その中で駐留軍の離職者は約四十名でございます。それからやはり群馬県でキャンプ・ベンダー、旧中島飛行機の太田工場でありまするが、これは富士重工が現在操業中であります。離職者の吸収状況は、離職者の家族を含めまして約百名であります。  次にキャンプ苦竹、これは一括利用する企業を誘致することが実現困難であったために、地元の意見等を徴しまして、三十五年の八月に最初の処理方針を変更いたしまして、細分割転用を行なったような事情もございまするが、現在大洋漁業が操業を開始しておりまするほかに、三社ほど操業を準備中でございます。  次に神奈川県の追浜基地でございますが、追浜基地につきましては公共施設用地を除きまして、日産自動車を主たる会社といたしまして、ほかに四十五社が決定をいたしまして、うち二十九社はすでに操業中であります。その他は操業準備中でございます。なおこの地域には離職者による企業組合等も七社進出をいたしております。離職者の吸収人員は約六百名、そのうちで離職者による企業組合等の従業員は三百五十二名ということになっております。  それからキャンプ小倉、これは旧小倉の陸軍造兵廠でございまするが、これもいろいろ計画の変更等がございまして、四分割あるいは五分割して企業を誘致するというような方針になっております。
  310. 中野四郎

    中野委員長 答弁は簡潔に。
  311. 小里玲

    ○小里政府委員 この地域の離職者の吸収状況は、この数字は六百九十五名となっておりますが、これはちょっと多いような気がいたします。あるいは何らかの間違いであるかとも思います。  それから福岡県の芦屋基地、この基地では昨年六月末にこの飛行地区の百万坪が返還になって、大部分は防衛庁が使っておりますが、一部一般産業の利用に充てるということについては、防衛庁の使用計画との調整をはかって、できるだけ地元の意見を聞いて取り入れ、実情に即して処理をするということでござい度して、この地域では自衛隊員として三十五名が就職をいたしておる。  おもなところは以上であります。
  312. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その中で特に神奈川県の追浜といいましたか、そこで四十五社が誘致されて、二十九社が操業を開始した、こういうことでございますけれども、二十九社の操業を開始した企業の総従業員数というのはわかりますか。総従業員数に対して駐留軍離職者がどのくらいの割で就職したかということです。
  313. 小里玲

    ○小里政府委員 その数字は持ち合わせておりません。
  314. 吉村吉雄

    ○吉村委員 やはり調達庁自体は担当外かもしれません。しかし非常に特殊な労務者として解雇をされていって、その離職者に対して閣議決定をして、できるだけ労働者を吸収しよう、こういう政策を政府としてとっているわけです。そのために四十五社もそこに企業が誘致をされた、こういうことですから、それ自体は私はいいと思うのですが、問題はそこに本来の目的であるところの駐留軍の離職者がどのくらいの割合で入っているのかということがわからなければ、これは一体だれのための政策なんだ。経営者自体の政策になりかねないと思うのですよ。そういう点をもっと真剣に考慮してもらわなければならないというふうに思うのです。  今幾つかの問題の中から私が感じられるのは、いろいろ熱意を持って云々というふうに言われておりますけれども、残念ながら具体的な跡始末をよくしていない、そういうところに駐留軍の離職者が政府に対して、あるいは調達庁に対して不信な気持を持つ。その不信な気持というものは、現在雇用されている人たちにとってはさらに倍加された形になって現われている、こういうところに非常に問題があると思いますから、十分あとのあとまで留意をして善後策を講じてもらうように、特に強く要望しておきたいと思うのです。  最後に、今回炭鉱の離職者につきましては、国として特別な措置を幾つかとっているわけです。もちろん駐留軍労務者は炭鉱労務者とは性格的には異なりますけれども、しかし離職を余儀なくされていくという点については、むしろ炭鉱労働者より非常に苦しい状況下にあるというふうにも、一面からは言えると思うのです。今回炭鉱労務者にとったような技能習得手当とか、企業に対する雇用奨励金とか、あるいはまた別居手当とかいったものを、少なくとも炭鉱労務者並みにこの際駐留軍関係の離職者についても考えてやるべきではないか、このように考えるのですけれども、どうですか。
  315. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいまお話のように、炭鉱労務者について種々の方策をとっております。これは吉村さんただいま御指摘のように、炭鉱労務者の特殊性と駐留軍労務者の離職者の間には、いろいろ違った点もあろうかと思います。従って炭鉱のように非常に地域的に片寄り、しかも身につけた技術等も片寄っておる人と、駐留軍労務者の離職者のようにいろいろ職種の違う場合においては、非常に役立つ技術も持っておるという方々との違いもあろうかと思います。従いまして必ずしも炭鉱労務者通り、ことに炭鉱労務者というものについての特殊性というものがございますから、それはいかぬかと思いますけれども、全体の考え方としては、先ほど来御指摘のような問題もございますので、この駐留軍労務者の離職者の特殊性というものも十分考えて、今後の施策は考慮して参りたいと思います。先ほどもお話がありましたが、この臨時措置法は、この制定の趣旨そのものは、当時のああいう非常に大きな政策転換から出ました大量の解雇者に措置するものでございますので、今後の問題としてはそういう観点よりも、むしろ駐留軍労務者の置かれた、先ほど来御指摘のような点を考慮しつつ、適切な処置を考えていきたいと思います。
  316. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その点は特に早急に検討されて、非常に不安な状態にある労務者の将来について、熱意を持ってその対策を検討してもらいたい。その間にもちろん立法措置をとらなくても、雇用促進事業団の中ででき得る措置もあるはずですから、そういう点については十分検討されて、できるだけ早い機会に、この特殊な条件下にある駐留軍労務者について、国が真剣になって考えているのだ、その考えていることが具体的に現われている、こういうものを一つ実現をしてもらいたいというふうに考えます。  僕の時間が制限されてその点は不満なんですけれども、最後になりましたから少し急がざるを得ないのですけれども、若干賃金の関係についてお尋ねいたします。聞くところによりますと、駐留軍労務者の賃金は、職種別償金の体系をとっているというふうに聞きます。相当勤続年数も長い、しかも年令も高い、新しい人は採用が少ない、こういう関係でございますから、当然他の諸官庁に見られるように頭打ちの人たちが非常に多いと思うのです。この頭打ちということを解決しなければ、昇給制度があったとしても何の役にも立たない、こういうことになるだろうと思うのですが、昇給制度というのは、駐留軍労務者の場合には大体年に何回で、どういうふうにして上がっていくのですか。
  317. 小里玲

    ○小里政府委員 半年に三百三十円ずつの定期昇給をやっております。
  318. 吉村吉雄

    ○吉村委員 半年に三百三十円ということに制度としてはさまっておっても、職種別賃金で最高額に達している者は、有資格者にならないということになりますが、その割合はどのくらいになりますか。
  319. 小里玲

    ○小里政府委員 頭打ちになっておる数が約六割くらいあります。
  320. 吉村吉雄

    ○吉村委員 としますと、これは政府の雇用人でありながらも、もちろん公務員ではないのです。けれども政府が雇用主であることに変わりはない。他の官庁の労働者と異なって、六〇%以上もこの昇給制度に恵まれないという状況は、これは異常だと私は思うのです。これを根本的に解決していくことが必要じゃないかと思うのですけれども、何か具体的にその対策はとられておりますか。
  321. 小里玲

    ○小里政府委員 この問題につきましては、調達庁あるいは米軍といたしましても頭を悩ましておる問題であります。また労働組合の方からも頭打ちの解消の実現方を強く要求をいたして参っております。そこで調達庁、軍といたしましては、従来の職種別の賃金制度を根本的に改めまして、公務員に準ずるような制度を採用したい。もちろん駐留軍従業員の特色は生かして参りたいと思いますが、基本的には公務員の給与制度に準じた制度に改めることによって、この頭打ちを解消いたしたい、こういう米軍並びに調達庁の管理者側としての意見でございまして、その線に沿って米軍とただいま意見の調整中でございます。また労働組合とも協議を続行中でございます。
  322. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は公務員の給与制度というものに必ずしも賛成はしません。しかしながら駐留軍労務者の今置かれておる賃金体系からすれば、公務員労働者の方はややいい、こういう立場に立って話をいたしたいと思うのですけれども、何か組合と協議をしておるということについて、調達庁側としては三月の中旬ですか、三月の二十日ころまでに、現在の給与体系の変更について、雇用者であるところの調達庁としての結論を組合に提示をするという約束があったという話を聞いておるのですけれども、その約束はあったのですか、その約束は守られたのですか、どうなんですか。
  323. 小里玲

    ○小里政府委員 新しい給与体系を実施に移します目標の期日として、一応今年の七月一日を予定しておりましたので、そういたしますと労働組合との交渉も大問題でございますので、相当な期間を要するということから、少なくとも三月の二十日ころまでには組合に案を提示いたしまして協議に入らなければ、七月一日の実施がむずかしい、こういう観点から軍と調達庁といたしましては、三月の二十日ころまでには案を示そう、こういう線で参ったのでございますが、米軍と調達庁の意見調整の段階も最終段階にきておりまして、そこで組合に案を提示する、その案を決定いたしますのに、予算の問題が重要な問題であることは当然でございますが、その見通しをつけるということについて、管理者間で多少の意見の相違はございます。しかし組合に案を提示する。その案をきめますのにつきまして、どうしてもある程度の予算の見通しをつけてからでないと、管理者の経営者がやっていけない、こういう情勢になりましたので、三月の二十日にはどうしても提示ができない、こういう最終段階になって参りました。従って七月の一日という実施期日をそれにつれて延ばさざるを得ない、こういうのが現在の段階でございます。
  324. 吉村吉雄

    ○吉村委員 もちろんアメリカ側の意向というものもあるのでしょうから、あなた方もなかなか容易じゃないでしょう。容易じゃないことはわかるのですけれども、組合側と何月何日から実施をする、それを目途としてやる、こういうふうになった場合には、これを最大限、約束は履行しないと、これは団体交渉の当事者としての資格なしというふうに言われてもやむを得ないのです。そういうことから不信感というものがだんだん増大していく。私はこの給与体系の問題は聞いてびっくりしたのですけれども、とにかく昇給の有資格者であっても、ありながら実質的に昇給ができないというのが六〇%以上もあるというようなことは、とんでもない話なんです。そういうものを早く改善をしてもらわなければならないという労働者側の要求というものは、これまた当然のことなんで、これはいろいろ事情があっておくれているそうでありますけれども、七月実施ということについてはまだ間があるわけですから、その七月実施を目途としてやるということについては、その努力目標については変わらないのでしょう。
  325. 小里玲

    ○小里政府委員 給与制度全般にわたる根本的な改正でございますので、組合と協議をいたしまして、案がかりにまとまりましてからも、準備期間に相当な日数が要るということからいたしまして、組合との十分な協議期間を考えますと、三月中旬ごろまでに組合に提示できなければ、やはり七月の実施を延ばさざるを得ないというのが私どもの見方でございます。
  326. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうすると、今の見通しとしてはいつごろ実施できるのですか。
  327. 小里玲

    ○小里政府委員 七月一日の実施目標が狂ってくるというのは、先ほど申しましたように予算的な見通しをつけるということにかかっておりますので、予算的な見通しについての一応の見通しが立ちました上でないと、七月一日を八月にするとか九月にするとかいうような、はっきりした見通しが現在のところ立たない。従ってその見通しをつけるべく、今軍と調達庁で意見の調整をしながら作業を進めておる、こういう状態であります。
  328. 吉村吉雄

    ○吉村委員 事は労使の団体交渉の内容の問題ですから、これ以上ここで私が云々することは差し控えたいと思うのです。しかし問題は、この労使関係を正常に維持していくためには、約束を守るというそのことが一番大切なことなんですから、だからその点を十分に考慮されて、七月一日にどうしても実施がむずかしいとするならば、できるだけ早い機会に作業を促進されて、それに合わせてやっていく、こういうふうにしていただきたい。それはまた当然やるべき義務があるだろうと思います。賃金の問題については非常に異例な状態にある、しかも非常に劣悪な状態にある、こういうふうに言わざるを得ないと思うので、積極的にこの改善のために急速に努力してもらうことを要望しておきたいと思うのです。  以上で私の質問を終わりたいと思うのでありますが、大体駐留軍労務者の離職対策を中心に私は話をいたしましたから、非常に具体的な問題が多かったと思うのです。この具体的な問題が前進をしない限りは、他は前進するはずがないと思うので、問題は抽象的な論争を繰り返してみても私はしょうがない。一番問題なのは離職を余儀なくされるという特殊な労働者でございますから、その離職せざるを得ないような人たちに対して安心感を与えていくという、そういう前提に立つためには、冒頭にあなた方もお約束をいたしましたように、アメリカ軍との間に、できるだけ年度ごとにこの雇用計画というものを明示をさせて、そしてこれを労働組合との間に協定化して、そして、長期の安定した気持にはなれないとしても、一年ごとあるいは二年ごとには生活設計が樹立でき得るような措置をとってもらうということが一つと、それから幾つかの離職者に対するところの次善の対策、しかも先ほど防衛庁長官も答弁がありましたように、炭鉱の離職者に対するそれと同じようなものではないにしても、離職を余儀なくされるという問題については、それよりももっと深刻な状況下にあるとも言えるわけですから、この点については大体見合ったような対策というものをできるだけ早く立法化していく、同時に立法化の過程においては行政上の措置としてこれを実現をしていく、こういうようなことを特に強く要望して、そして基本的には対等の立場でものを言っていく、こういうことを一つ貫いてもらいたい。その態度の中から必ず、私は一つ一つ今労働者が心配しておるようなことが解消していくのじゃないかというふうに考えますので、そのことを強く要望いたしまして私の質問を終わります。(拍手)
  329. 中野四郎

    中野委員長 河野正君。
  330. 河野正

    ○河野(正)委員 駐留軍の労働者の問題に対します質疑について、貴重な長い時間が費やされたわけでございます。そういう質疑、論議を集約いたしまして、この後には委員長が当委員会を代表して、決議的な意思表示を行なっていただくことになっておるわけでございますが、その中で示されます五つの項目を表明願う前に、私はぜひとも一つ、防衛庁長官もそこにおられますけれども調達庁長官等の認識を改めていただかなければならぬ点がございますので、そういう点について簡単に意見の開陳を行なって、所信を表明願っておきたいと思います。  と申し上げますのは、決議的な意思表示をされる中で約五項目ございますけれども、この五項目のいずれもが非常に拙速をとうとぶ、急を要する問題でございます。ところが相手もあることでございますので、たとえば日米の労務管理の問題、あるいは労働協約の問題、また完全雇用の問題等、いろいろございますが、その中でも調達庁なり防衛庁なりが誠意を持って直ちに実行しようとされるならば、実行できる点がございます。今日まで委員会論議の中でも、いろいろと万全を期すとか、あるいは誠意を持って対処したとか、けっこうな答弁がございましたけれども、私はそういう点において欠ける点があったのではないかということを、まことに残念でございますけれども御指摘せざるを得ない。たとえば私の手元にも日本国じゅうから、数千名の方々から陳情、請願が参っておりますが、そういう方々が指摘しておりますように、今日の駐留軍労務者の地位というものは、非常に不安定な地位に置かれておる。いろいろ委員会でも論議されて参りましたが、その中でもたとえば政府機関に、これは直用でございますが、現在諸機関労務者、こういうMLCにいたしましてもIHAにいたしましても、いずれにいたしましても今日では昨年十月以降政府雇用となっておる。ところが政府雇用といわれながら、一方におきましては財政上の問題で馘首される、こういう状態が発生しておるわけであります。その場合に国が、いわゆる政府雇用であるならば政府雇用としての責任をとる、こういう姿勢が今日まで欠けておる。この点は残念でございますけれども、指摘せざるを得ないし、また今吉村委員からもいわゆる炭鉱労務者との関係が述べられたのでございますが、この中でも明らかでございますように、たとえば炭鉱労務者につきましては、郵政省の職員で百名を吸収する、こういう具体的な努力が行なわれておる。ところが実際に、駐留軍労務者の場合には、具体的な努力が行なわれたかどうか。私はまことに残念でございますけれども、そういう点につきましては、遺憾の意を表せざるを得ないということが、今日の情勢ではなかろうかというふうに考えます。あるいはまた地方団体に対して、どういうふうな身分の保障についての行政指導を行なってきたか、この点についても私はまことに残念でございますけれども、非常に欠くる点があった。こういう点を指摘せざるを得ない。そういう点について、今日まで具体的にどういう御努力をなさって参ったか。やっておらないなら、やっておらないということでけっこうでございます。一つ時間がございませんから、簡明率直にお答えを願いたい。
  331. 小里玲

    ○小里政府委員 離職者を特定の機関に就職をさせるというようなことにつきましては、たとえば防衛庁に対しまして駐留軍離職者から優先的に、あるいは条件を緩和して採っていただくというようなことの措置をとった事例がございます。それから地方の公共団体に対しましては、人員整理が発生しました場合には、できるだけ犠牲者の少なくなるように、軍の内部あるいは地方の離職者対策協議会等を活用して、できるだけこれを救済するようにという指導方針でやっております。
  332. 河野正

    ○河野(正)委員 単発的にそういうことをされたか知らぬけれども、御承知のように駐留軍の離職者というものは次から次へと続出してきておる。そこで単発的にそういう努力をされても、それをもって事足れりという工合に考えるわけにはいかない。ところが今私が指摘を申し上げましたように、たとえば炭鉱離職者については郵政の職員として吸収する、そういうような問題も起こって参っております。あるいは地方団体に対する適切な指導をやったということでございます。ところが私ども最近指摘してきたことでございますけれども、駐留軍関係で最も関係の深い労管事務所、こういう労管事務所に駐留軍の離職者が入るのでなくて、他の離職者が入っておる、こういう事実がございます。これを私ども指摘いたしましたら、地方団体でも非常に遺憾であったという意を表しておりましたけれども、そういう点で非常に欠くる点がございます。そこで私は過去の点については問いません。少なくともそういう努力調達庁長官ないし防衛庁長官の方で誠意を持って御努力していただければ、すべてが完全に解消するというわけには参らないにいたしましても、かなりそういう問題は解決し得る。そこで後ほど委員長から御指摘がございます五項目について、直ちにそれぞれ実現するように努力してもらわなければならぬことは当然でございますけれども、その中でも今そういう姿勢で臨めばやれることがある、そういう案件につきましては、誠心誠意をもって直ちに実行してもらいたい。私ども今日までの審議を見て参っておりますと、どうも委員会では適当な御答弁をなさるけれども、なかなかそれが実行に移されておらない、これはまことに残念でございますけれども、率直に指摘せざるを得ない。そこで過去について問いません。少なくとも今度五つの項目についての決議的な意思表示がございますから、そういう五項目については直ちに、しかも誠心誠意、積極的に着手されますことを特に要望いたしますとともに、それに対する防衛庁長官、調達庁長官の御所見を伺って終わりたい。
  333. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 私は先般来御質問のありました点につきましては、私どもも可能なものからどんどんやっていくという気持を持っております。ことにただいま御指摘のような点は、十分関係方面とも連絡いたしまして、実施をいたして参りたいと考えております。
  334. 中野四郎

    中野委員長 先日来より本問題に関する審議の経過にかんがみ、締めくくりとして、この際委員長から、自由民主党、日本社会党及び民主社会党各委員の総意に基づきまして、駐留軍従業員の労働条件及び雇用の安定に関する件を政府に申し入れたいと思います。  その内容を朗読いたします。    駐留軍従業員の労働条件および雇用の安定に関する件   政府は左に掲げる事項について最善の努力をすべきである。  一、日米対等の立場に立って、共同管理の適切な運営をはかること。  一、労働法を尊重し、労働協約、就業規則をすみやかに制定すること。  三、雇用安定については、最大限の努力を払い、やむを得ず離職せざるを得ない者の雇用と生活の安定につとめること。  四、諸機関労働者の労働条件の改善向上につとめること。  五、良好なる労使関係、交渉慣行を確立すること。  以上でありますが、本件に関して政府の所信を伺っておきたいと存じます。
  335. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいま委員長を通じて、委員会の総意として御要望のありました点につきましては、従来も私ども努めてこの方針に従いましてやって参った所存でございますが、なお先般来御指摘のありましたように、なお足らざる点もあったかと存じます。この御要望につきましては、十分この実現に最善の努力をいたしたいと存じます。(拍手)      ————◇—————
  336. 中野四郎

    中野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、日本赤十字社関係の参考人から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  337. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  なお、日時及び参考人の選定につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  338. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明五日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会をいたします。    午後七時四十八分散会