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八木(一)
委員 ただいま
議題になりました
国民年金法の一部を
改正する
法律案に対する修正案につきまして、日本社会党を代表いたしまして、その内容の大綱並びに事由につきまして御説明を申し上げたいと思います。
政府の方で、今度
国民年金法に対する
改正案をお出しになりました。その中には、当社会労働
委員会で
論議をされ、あるいは附帯
決議をつけられた事項について実現を見た部分を含んでおります。ことに免除者に対する国庫負担というような点の実現を見る
改正案になっておる点について、かなりの満足を示したいという
気持はあるわけでございまするけれ
ども、しかしながら、これだけではまだ足りない。非常に
年金自体についてあらゆる点で不十分であり、またその組み立てにおいて、社会保険の思想がまだ多分に残存をしておりまして、
社会保障の
精神に徹底をしておらない点がございます。わが党といたしましては、この
改正案では満足できませんので、それに対しての修正案を
提出いたしたわけでございます。
以下その内容についての柱について、できるだけ簡単に、かつまた、できるだけ明快に御説明を申し上げたいと存じます。
その部分のうちで、おもに
福祉年金の方から申し上げますると、現在の
福祉年金は、老齢
福祉年金、母子
福祉年金、
障害福祉年金、すべてについてその
支給金額が非常に少ない、条件が過酷であるという点がございますので、これを具体的に書いて、今、
改正案に盛られておる
改正点にこの点をプラスいたしたいと考えているわけであります。
具体的な点を、老齢
福祉年金から申し上げますると、まずその
金額につきましては、七十才以上について現在年一万二千円の
支給金額でございますが、これを七十才以上は三万六千円にいたしたい。六十五才以上は、六十才台については
現行法並びに
改正案においては
支給の規定がないわけでございまするが、六十五才以上は年二万四千円の
支給をいたしたい。六十才以上は年一万二千円の
支給をいたしたいということが一つの柱であります。それとともに、現在の
国民年金法並びに
改正案においては、各
所得制限中に本人
所得制限並びに配偶者
所得制限、世帯
所得制限の三制限があるわけでございまするが、この中の配偶者
所得制限は、いかなる
意味をもっても
意味がない制限でありまして、具体的な例をもって御説明申し上げますると、世帯
所得制限で、五十万の
所得のあるところで、むすこさんがりっぱに働いておられるところの老人夫妻は老齢
福祉年金をもらえるけれ
ども、子息が死去して非常に悲運な
状態にあるおじいさんが働いたならば、その妻であるおばあさんの方には老齢
福祉年金がいかないというような、非常に不合理な点があるわけであります。ことに二十万円をこえた
所得があったらもらえないというわけでありまするから、非常にこの点で不合理でありますので、このような配偶者
所得制限というような
社会保障に適さない条項を削除いたしたいと考えておるわけであります。この点につきましては、六十六条の
改正でこれを実行いたしたいと思っております。
先ほど申し忘れましたけれ
ども、
金額改定は五十四条の
改正でこれをいたしたいと思うわけであります。
さらに、現在一世帯の中で、夫婦とも
ども七十才以上で老齢
福祉年金をもらい得る条件である
方々の場合、年下万二千円、月一千円の
支給金額が一人当たり二五%削減せられて、月七百五十円しかもらえない。二人で一人半分しかもらえないという、これも非常に奇妙な制限規定があるわけでありますが、その夫婦受給制限を撤廃することをこの
改正案に入れたいと考えているわけであります。それも六十六条の
改正で実行いたしたいと考えております。
次に、
障害福祉年金でございます。
障害福祉年金につきましては、現在
一級障害について年一万八千円の
支給という条件になっておりますけれ
ども、これははなはだ少額であります。
社会保障論から見れば、特に
福祉年金の場合においては
障害者に最もたくさんの
金額を
支給すべき条件にあるということは、
社会保障のことを知っている人の通念であります。しかるにかかわらず、一級に対しても少ない。二級、三級は
支給しないというような過酷な条件がありますので、これを改めまして、
一級障害に対しては年四万八千円、二級
障害に対して三万六千円、三級
障害に対して二万四千円の
障害福祉年金を
支給したいというのがその一つの点であります。それとともに、
内科障害について一切の
支給がないという不合理の点を改めるために、一級、二級、三級に従って、
内科障害者に対しても必ず
障害福祉年金を
支給するというように改めたいと考えているわけであります。
さらに、
障害福祉年金には家族に対する加算の
制度がございません。母子
福祉年金において多子加算という
制度があることを考えますときに、
障害者の世帯にそのような家族がおるときに、このような家族加算は当然実行されなければならないことであるのに、
現行法で実行されておらない。
改正案にもそれが
提出をされておらないことは、はなはだ遺憾であります。従って、この修正案でこの点をカバーしようとするわけであります。配偶者及び二十才未満の子供については、一人当たり年七千二百円の加算をつけ加えて
支給をしたいというのがこの一つの内容であります。
次に、母子
福祉年金の項に移ります。準母子
福祉年金につきまして、
現行法及び
改正案においては年間一万二千円の
支給が基本
金額になっておりますが、これもはなはだしく少額でありますので、三万六千円の
支給に改定いたしたいと考えておるわけであります。さらに現在、多子加算は
現行法においては年二千四百円、
改正案においては年四千八百円ということになっておりますが、これも少額でありますので、これを七千二百円に引き上げたいと考えておるわけであります。さらに私
どもの
考え方では、この母子
福祉年金においてあらゆる同様の人を含めたい、いわゆる生別母子世帯の人を、この
国民年金法の母子
福祉年金の項目に含めてこのような
支給をいたすべきものと考えておるわけであります。その
意味におきまして、私
どもは、
児童扶養手当法案の方は、これを重視いたしておりませんで、母子
福祉年金の方でこの
対象者をほとんどカバーしていきたい。児童扶養手当の方につきましては、何というか、
ほんとうの制限されたものではなくて、全
国民の家族について、そのような
制度が確立する本筋の発展を見ることを期待しているわけでございます。
次に、このような三種、四種の
——現行法では四種類の
福祉年金になっておりますが、このような
福祉年金が、
現行法及び
改正案では
拠出年金のいろいろの諸
要件、あるいは登録であるとか、あるいはある程度以上の
保険料納入というような諸
要件が果たされておらないと、このような
福祉年金が
支給されないことになっておりまして、後々非常に、不幸な人が出てくるおそれがある。また、現在でも非常に不合理なことが起こっておるという点にかんがみまして、この
福祉年金の
制度を
拠出制年金から切り離しまして、いかなる場合でも、あるいは老齢であるとか、あるいは
障害であるとか、あるいは
遺族であるとかいう条件、それからまた、ある程度以下の
所得という条件を果たしておりさえすれば、どんな場合でもこの
福祉年金は
支給されるというような
方向に変えたいと考えておるわけであります。ただし、例外といたしまして、
拠出年金の方でおのおの対応する老齢、
障害あるいは
遺族の
年金、それ以上のものをもらっているときに重ねてダブって
支給することは認めておりませんけれ
ども、
拠出制のそのような
年金が
支給されないときは、必ず
福祉年金が
支給されるというように変えたいと考えております。これについては、五十三条、五十六条、六十一条等の条文を
改正してこれを実行しようというのであります。
次に、
拠出年金及び総体的な、根本的な法の
改正点に移りたいと存じます。
その第一は、
国民年金の
金額を遅滞なく増大させる。まれに貨幣価値が十倍くらいになったときに減少することもあり得ますけれ
ども、全体的に遅滞なく
国民年金の
金額を増大させるという規定が非常に欠けておりますので、その点について根本的な
改正を加えたいと考えておるわけであります。現在
国民年金法の第四条におきまして、「
保険料の負担を伴うこの法律による
年金の額は、
国民の
生活水準その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるための調整が加えられるべきものとする。」という条文に相なっております。政府の説明によれば、これで大体対処ができるというふうなことを言っておられますけれ
ども、政府の数年前のやり方、あるいはこれから
担当者が変わるというようなことを考えますときに、このような
答弁だけでは理解ができませんし、
国民感情として、戦後のインフレ
状態を過ごした
国民としては、積み立てた金が、貨幣価値が激減して実際に役に立たなくなるという心配が非常に強くて、
国民年金に対する期待も協力もそのような点で大きく減殺されておるという点がございますので、このような点を改めるために、はっきりした規定に変えたいと考えておるわけでございます。
その方法は二つございまして、条文といたしましては、差し上げてございます資料の修正案の通り、「
保険料の負担を伴うこの法律による
年金の額は、生計費又は消費者物価の水準が十分の一以上増減した場合又は
国民の
生活水準その他の諸事情に変動が生じた場合には、これらの変動に適応するように改訂しなければならない。」そういうふうに改訂しようとするわけであります。まず、この改訂の意義は、「しなければならない。」というふうにきっちりと縛った点に一つございます。必ず政府はそれをしなければならないということであります。もう一つの点は、
現行法の方では、「
生活水準その他」ということで、物価の変動ということが明記されておりません。「その他」の中に入っているということでございますけれ
ども、それでは非常に不確かでございますので、消費者物価の水準が十分の一以上増減した場合には、必ず改訂しなければならないというようにこのスライド規定をはっきりいたしまして、
国民の不安を解消いたしたいと考えておるわけであります。それとともに、このような物価の変動だけで
年金額が改訂されるのでは、これは非常に不十分であります。政府の方針もそうではありません。
生活水準が上がったならば、健康で文化的な相当の
生活という水準が流動するものであって、逐次ぐんぐんと増大するものであるという認定のもとに「
生活水準」というものが入っているわけであります。従って、その条文ははっきり生かし、
現行法の方で、
生活水準その他の著しい変動があった場合という「著しいを除きました。そのようなことで実際問題が進まないことをおそれて、「著しい」をはずしまして、
生活水準その他の変動に応じこれを変えなければならないというふうに、はっきりとしたものにしたいと考えておるわけであります。その他「これらの変動に適応する」というのは、もちろんその割合に応じてという
意味でありまして、十上げなければならないところを五つ上げてそのままにするということは許されないというふうに、はっきりと規定をいたしたいと考えておりますのが、この第四条第一項の
改正であります。
次に、それに応じまして第四条の二の項目を入れまして、
福祉年金についても同様の趣旨、さらにそれ以上積極的な趣旨の条文を入れたいと考えておるわけであります。その条文は第四条の二、第一項の規定は、「
福祉年金は、その
年金額及び
支給要件がなお不十分である実情にかんがみ、毎年、必要な
改善措置を講ずべきものとする。」ということで、必ず
年金額や
支給要件を
改善するために、毎年やっていかなければならないというふうに積極的に第一項をもって縛りまして、その次に、第二項において、「前条第一項の規定は、
福祉年金について準用する。」と定めました。
拠出年金についての
生活水準による向上、物価変動による変動、そういうものは
福祉年金においても必ず実行しなければならないというふうに規定をいたしたいと考えておるわけであります。
次に、国庫負担の点について申し上げます。これは第八十五条の
改正規定が現在の
改正案に載っておりますが、それを改めまして、この点を新しく前進させたいというわけであります。現在の総体的な国庫負担は、
保険料に対する五割、
給付金額に対する三分の一の国庫負担という
基準になっております。それを
給付額について二分の一、
保険料について十割、その
保険料と同額というような国庫負担を確定をいたしたいというわけで、八十五条の第一項をこのように規定したいと考えておるわけであります。それとともに、今度幾分前進しました免除者に対する措置でありますが、免除者に対して国庫負担をするということは今度実行を見ましたけれ
ども、その免除者の
保険料の部分も国でカバーをして、免除を受けなければならないような貧困な人、その人こそ、老齢になったときに、あるいは
障害、
遺族の場合に最も
年金の必要の度が多い人であるから、本来から言えば、全部
保険料を払い得た人以上の
年金を確保しなければならないけれ
ども、少なくとも当面において、それと同額だけは確保しなければならない。その
意味で、たとい四十年間、全期間免除であって、一文も
保険料を納めることができなくとも、六十五歳になれば月三千五百円、現行の規定ではそれが確保される。さらに、これから説明する諸条文でその
金額が上がりましたならば、それは五千円になろうと、七千円になろうと、一万円になろうと、はたまた三万円になろうと、五万円になろうと、同額のものが確保されなければならないというふうに規定したいと考えておるわけであります。
その次に、附則の第二項の
改正であります。附則の第二項の
改正は最も大きな
改正であります。と申しますのは、このような
年金を、
年金の名に値するような十分なものにするために、さらに
社会保障的なものにするために、いろいろの
年金額、あるいは
支給の
開始年令、あるいはその諸条件を
改正していかなければなりません。しかしながら、政府の現行の
国民年金法の方は実にこまかく区分がしてありまして、これは政府の全機関の協力を得ません限りにおいては、数日間でこの修正案を条文にうたうことは神わざでも不可能なことであります。従って、このようなことをちゃんと、たとえば
福祉年金はこれだけ
金額がふえた、老齢
福祉年金の
開始年令が六十才になったということとあわせて、
拠出年金の老齢
年金も六十才から開始だ、
年金も上がる、諸条件も変わるというようなことをもって、必ず政府の全機関を総動員して、昭和三十七年九月三十日までにその点に応じた
改正案を出さなければならないという規定を、この修正案の中に盛っておるわけであります。
以上が
改正点の大要でありますが、修正案の内容は、お手元に配付されております修正案には全文が載っております。どうかこの
社会保障の主軸である、
所得保障の一番の柱である
国民年金について、
ほんとうに
国民の要望にこたえてこの内容を十分なものにし、
社会保障的なものにし、
国民に喜んでいただくためにこれを出したわけでございまして、この
金額は、年間にして現在の政府予算にプラスすること一千六百億円の
金額を要することを御報告しておきたいと思いますが、一千六百億円という金紙に
委員の
方々はびっくりなさらないと思います。このような
金額は、毎年の自然増収を充てれば簡単にできることでございますし、あるいはゴルフ税等の税金をかければ、この半分くらいは一ぺんに出てくる。
ほんとうに貧しい人あるいは老人、われわれの親たちを大事にするという
精神で、千六百億円のごときは少ないというような気魄を持って、この修正案をぜひ通していただきたいと思うわけであります。また私
ども日本社会党としては、この修正案は現時点における修正案であって、これをもって満足するものではございません。
福祉年金はさらにもっと急速に前進をされなければならないし、
拠出年金ももっと条件が徹底的に
社会保障的に
改善をされて、この内容が増大をしなければならないという意見を持っているわけでございますが、本年度のこの時点において、少なくともことしからはこれを
即時やるべきであるという
意味でこの修正案を出しましたことを御了解を願いまして、
社会保障に非常に熱心であるこの社会労働
委員会の皆様の、満場一致の即決の御可決あらんことを心からお願いを申し上げまして、私の趣旨説明を終わります。