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1962-03-29 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十九日(木曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    大石 武一君       加藤鐐五郎君    佐伯 宗義君       中山 マサ君    永山 忠則君       八田 貞義君    松山千惠子君       米田 吉盛君    渡邊 良夫君       赤松  勇君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    田中織之進君       田邊  誠君    滝井 義高君       中村 英男君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     今村  讓君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    細見  卓君         厚生事務官         (児童局企画課         長)      武藤琦一郎君         厚生事務官         (児童局養護課         長)      鈴木  猛君         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君         厚生事務官         (年金局国民年         金課長)    高木  玄君         厚生事務官         (年金局福祉年         金課長)    鈴木 正信君         労働事務官         (労政局福祉共         済課長)    坂本 一衞君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二十九日  委員淺沼享子辞任につき、その補欠として田  中織之進君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  淺沼享子君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第三二号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七二号)  臨時医療報酬調査会設置法案内閣提出第一〇  一号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)  医療法の一部を改正する法律案滝井義高君外  十一名提出衆法第二八号)      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案臨時医療報酬調査会設置法案八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案滝井義高君外十一名提出医療法の一部を改正する法律案、以上六案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。永山忠則君。
  3. 永山忠則

    永山委員 国民年金法の一部を改正する法律案に関連いたしましてお尋ねしたいのでございますが、ただいま国会において審議中の地方公務員共済組合制度に準じて、地方自治関係団体職員共済組合長期給付を制定する関係について共済組合を作りたいと、こう言っておるのでございますが、これに対して厚生省の所見を承りたいのであります。
  4. 小山進次郎

    小山政府委員 地方公務員退職年金制度を早く整備するという要望は、かねてから出ておったわけでございまして、その意味におきまして、今ばらばらになっておって、相互の地方公共団体間における通算なりあるいは連絡が十分でないこの年金制度を、とにもかくにも地方公務員という一つグループにおいてまとめていこうとする今度の考え方というものは、十分考えられていい、そういうような気持厚生省側も相談に乗って参ったわけであります。ただ、これについては、社会保障制度審議会のその方式においては一応わかるけれども、いずれ総合調整の際において、いろいろ調整しなければならない問題もあり得る、その意味において、できるならばその総合調整結論が出るまで待ったらどうか、こういうような意見を述べられているわけであります。その点も政府部内において論議されたわけでありますが、総合調整の際に出ました意見によって将来調整すべきものは、地方公務員退職年金制度に限らず、すべての年金制度においても十分考慮する、こういう前提で取り扱うということであるならば、一応現段階としては、この地方公務員制度をこういうふうにまとめることは適当であろう、こういうようなことで同意もし、現在御審議を願っておる、こういう実情でございます。
  5. 永山忠則

    永山委員 それで、その際、地方自治関係団体職員共済組合もあわせてこれを実行してもらいたいという要望等もありまして、自治省関係では、それを併置することも差しつかえないだろうという意見を持っておったようでありますが、厚生当局は、これに対しては賛成しがたいという御意見のようでございまして、原案からそれを削除されておるというように承っておりますが、その間の事情なり、また理由を承りたいと思います。
  6. 小山進次郎

    小山政府委員 地方公共団体に勤務しております地方公務員について、退職年金制度を作るという場合に、いわば準地方公務員とでも言うべき感覚で考えられている地方公共団体外郭団体と申しますか、あるいは関係団体職員も、この中に入れてほしいという要望が非常に強かったことは先生仰せ通りでございまして、その点の事情については、私どもの省においても理解できないわけではないものでありまして、先ほど来申し上げましたように、将来の年金制度の姿を考えた場合、何と申しましても、なるべく単純であることは望ましいわけでありまして、被用者については厚生年金制度、それ以外のものについては国民年金制度と、できるならばこの二本でいくことが望ましいわけであります。しかし世界各国の例を見ましても、たとえば公務員の場合には、そのほかに特別な年金制度があるというようなことで、特別年金制度があるわけでありまして、そういう意味合いにおいて特別に設けられる年金制度の幅というものは、どちらかと言えば狭い方が望ましい。また、明瞭に特別の扱いのできるものだけを入れることが望ましい。この点は、厚生省のみならず、先ほど申し上げました社会保障制度審議会においても非常に強い意見なのであります。特に将来の総合調整ということを考えた場合において、その際そういう性質の必ずしもはっきりしないものまで入れておくということは、将来の年金制度の姿を考えた場合に取り扱いに苦しむことになる。こういうような考えを非常に強く持っているわけでありまして、そういうような事情からいたしまして、厚生省側といたしましては、自治省に対してその意見を申し述へ、自治省はそういうことを理解いたしまして、両方合意の上で、それでは今回は純粋な意味における地方公務員だけをこれに含めることにしょう、こういうことであのような案に落ちついた、そういう事情でございます。
  7. 永山忠則

    永山委員 純粋が純粋でないかという点に多少議論がございますけれども、実際上は、地方自治関係団体職員というのは、地方公務員に準じて取り扱うのが至当ではないかというように考えられるのであります。決してその性格が不明朗であるとかいうようなものではないので、完全に地方公務員にほとんど一体であるというように考えられるのであります。すなわち、地方自治関係団体職員は、地方公共団体事務の能率的な運営に資するため、その職員給与に要する費用というのは、実質的に地方公共団体が出しております。そうしてその仕事も、地方公共団体事務能率運営に資するために設けられておるのであります。さらに、実質において、この都道府県並びに市町村議会関係職員は、実際は市町村吏員や県の吏員という肩書きを持って人事交流をしているわけですね。ですから、事実上そういうように人事交流をして吏員になったり、嘱託になったりしてやっておるということなんで、全然別個の存在ではない。だから準じているとか準じてないとかいっても、実態は一つになっておるのですね。  それから今度、国民健康保険連合会職員関係について申しますと、これは国民健康保険法の第八十三条の規定に基づいて、保険者が共同してその目的を達成するために設立された公共団体でありますから、もちろんその給与もみんな保険者、すなわち市町村関係が出しておるのであります。そうしてその業務の内容は、国民健康保険制度の趣旨の普及徹底事務能率の向上に関する研究助言、病院、診療所経営に関する研究助言診療報酬請求書審査及び支払い運営資金短期融資雇用施設経営、要員の養成等、各般にわたって、全く市町村が処理すべき固有事務の一部を処理しておるものでございまして、いわゆる地方自治法における一部事務組合性格をなして、市町村不離一体関係にあるのであります。そうしてその地方自治関係団体業務に専念している職員年金制度は、給付率が非常に貧弱な厚生年金保険でありますので、市町村職員に比してきわめて不公平な処遇に悩まされておるのであります。それはすでに一般に知っておりますように、厚生年金老齢年金共済組合老齢年金を比較してみますと、高校卒業生が二十年間で退職した場合におきまして、退職時の給料が三万五千三百六十円でございますと、厚生年金では受給年金額が五万五千六百八十円でございますし、共済関係では十六万一千七百六十円でございます。短大の出身で、やはり二十年間で退職した場合におきまして、その退職時の給料が平均四万八百三十円でございますが、それで厚生年金受給年金額が六万一千四百四十円でございますが、共済組合を作ったら十八万七千三百四十四円になるのであります。大学出身でございますれば、やはり二十年間勤めて退職したといたしますと、退職時の給料が四万五千二百五十円でございまして、厚生年金は六万四千三百二十円でございますが、共済年金の方は二十万五千九百六円ということになっておるのでございまして、いずれも三倍以上であるということだけではないのです。厚生年金では五万円ないし六万円という程度では、やはり二十年もたって、自分老後生活安定ということができない。少なくとも共済組合の十五、六万ないし二十万というのが、現実の場合において最低生活が安定する線なのでございますから、それで職務に専念していくというのには、最低化活を保障することもできない厚生年金ではどうすることもできないということで、実際といたしましては、職員が非常に腰が据わっていない。こういう時期に、しかもまた、他の力で優秀なる人材不足等が起きましたので、どんどんと誘惑を受けまして、事実上においては、連合会においては人材を引き抜かれてその事務を執行するのにも困るという現実面に直面をされておるのでございますので、ぜひ一つ共済組合制度を作るということに対して、当局考えを再考願いたいという熾烈なる声があるのでございますが、これに対するお考えはいかがでありますか。
  8. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほど申し上げましたように、社会保障の将来の姿をきめるときが目睫の間に迫っておるのであります。その意味において、社会保障制度審議会としては、とにかく地方公務員退職年金制度発足そのものをできるだけ待ってくれ、むしろ今発足することには賛成しかねるという答申をしておるわけであります。そういう事情でございますから、今発足することに同意できるのは、どこから見てもこれは地方公務員として間違いないというグループのもの、だけにとどめたい、またとどむべきであろうというのが、厚生省自治省両方の最後の一致した考え方なのであります。従って、社会保障制度審議会総合調整答申が出まして、地方公務員退職年金については、今の退職年金制度の中に、先生がおっしゃったような、いわゆる関係団体というものを含めることも考える余地がある、こういうようなことになりますならば、それはそのときにおいて、十分ゆとりをもって考えていきたい。とにもかくにも、今日このときにおいて発足するという場合には省かなくてはならぬ、こういうことで省いているというのが現在の結論でございます。  それから年金の面において確かに相半大きい違いができている、これはもらおっしゃる通りでございまして、そういう事情がありますればこそ、すでに当委員会でもたびたび厚生省側から申し上げておるように、次の年金における最大の問題として、厚生年金年金額の飛躍的な引き上げをするということを考えたい、こういうことを申し上げているわけであります。年金が高いという反面におきまして、当然納めている保険料が非常に高いわけでございまして、その意味において保険料は高くなっても年金を多くしたいという、この考え方は私ども非常に健全な考え方であって、いずれにしても年金額の飛躍的な引き上げを望むならば、そのことについては労使ともに腹をきめなくてはいかぬという点から見ますと、先生仰せ関係団体人々が、雇っている団体の側も、また雇われている団体従業員、ともに今の二倍半なりあるいは三倍足らずの保険料によってもそういう年金制度に移していきたい、そういう気持は将来大いに推進助長していきたい、こういう考えでございます。
  9. 永山忠則

    永山委員 現在国家公務員地方公務員でない関係のもので私学共済組合もございますし、また先般議会通りました農林漁業団体職員共済組合法もできておるのでございます。さらにまた、この議会におきまして、所得税法の一部改正によりまして、企業年金が飛躍的な伸展を児ようとしておる状態でございますから、ひとり地方自治関係団体職員共済組合だけがやり玉に上がって、犠牲的に足踏みをされるということに対しては、非常に弱いものだけをいじめるのじゃないか、ことに国民健康保険連合会など、ほんとう厚生関係医療保険の中核をなしてやっており、厚生省一体動きをしておるものに対して押えられて、私学関係農林関係は抑えがきかずにそのまま野放しにする、あるいは企業年金のような大会社、大資本の方へは手も及ばないというような状態で、ほんとうに声の小さいものだけが下積みになるのではないかという非難の声が非常に強いのでございますが、これらに対しての考え方はいかがでありますか。
  10. 小山進次郎

    小山政府委員 私学共済農林漁業団体退職年金制度厚生年金制度と別にできているということについては、確かに先生仰せのようにいろいろな議論があるところであります。ただこれは、何分にも国がまだ国民年金という大方針を打ち立てる前の問題であります。現に農林漁業団体退職年金制度を作りますときに、実はあの当時の要望としては、年金だけではなくて、医療部門一緒にやりたい、またやるという計画として取り上げられたのであります。ところが、当時すでに国民保険の大方針が打ち立てられておりましたので、医療保険については、これ以上分散させることはしないという強い考え方で、これはやらないということになったわけであります。その意味におきまして、今の問題はちょうど国民年金の大方針が作られた後において登場した、こういうことになるわけでありまして、決して一部特定のものに対してだけ、ことさら冷たくしているという気持は毛頭ないわけでありまして、むしろそういう団体を含めて、厚生年金そのものを次の段階において大きく取り上げて、国庫負担もより多く入れるようにしたい、こういう考え方で、それを行なうことによって問題をさらに発展的に解決をして参りたい。こういうわけでございまして、むしろ国民健康保険関係団体のように社会保障推進役をやっておられる団体も、厚生年金など、この制度が大きく育つように働いていただきたいというのが社会保障関係者のすべての希望であると思うのでありまして、こういう工合に逃げられるというふうな考え方はしたくない、こういうことでございます。
  11. 永山忠則

    永山委員 そこで非常に問題になっておるのは、国保の被保険者は、健保の方へどんどん持っていかれているわけですね。   〔委員長退席柳谷委員長代理着席〕 ところが、この共済年金の方向へ進まんとすれば足を引っぱってやらないということになって、厚生省行政に非常に矛盾があるわけです。ということは、国保年金総合調整して大飛躍を見ようというときに、健保の方へ国保の被保険者を持っていかれますと、資産力のあるものが逃げていくわけです。そうすると、国保はますますボーダーライン層だけをかかえていかなければならぬということになって、いよいよ国保保険経済は弱体化するわけです。それでも国保の被保険者健保の方へ移動することを認めるという原則でいくのなら、やはり年金の方も厚生年金から共済組合へといい方へすべっていく方は、これはもう奨励こそするけれども、足は引っぱらぬという原理で進まなければいかぬと思うのです。あるいは総合調整をやるのだから、待つなら待つということなら、国保から健保へいく分も、これは総合調整をやるまではできるだけやらないようにする。すなわち五人以下の者は任意加入ですね。ですから、国保から健保へ移動することは医療保険を総合的に調整するまで行政指導で押えていくというようにやらなければならぬわけです。ところがその逆に、本省の指示じゃないでしょうけれども、地方は五人以下の関係会社に対して、健保の方へおいでなさい、非常に右利ですよといって健保へ移動することを勧めているのであるということは、国保保険料最高五万円までとられるわけです。健保保険料最高一万九千で二万円以下です。そうすると、社長を加えて三人おります会社では、健保に入れば最高でも保険料二万五千ぐらいで済むわけです。ところが国保なら、社長一人で保険料を五万円以上かけなければならぬわけです。そうすると、健保なら二万五千で保険料は済みますよ、国保なら保険料五万円以上かけなければなりませんよ。しかも健保は、世帯主は十割給付です。国保は五割給付じゃないですか。だからして、健保の方へむしろいくべきだといって、奨励して歩いているんですよ。そうして今日国保の層から健保の方へ逃げるのは、皆保険になってから今日までの間に、健保その他の有力な他の保険へ移動した被保険者は一割くらいになっておるわけです。そこで国保はいよいよボーダーライン層をかかえていかなければならぬというところに追い込まれているわけですね。そこで厚生省基本方針というものがまちまちなんです。総合調整をやるからこれで待っておれというのではなくして、医療保険でも条件のよい方へ移動するのはやむを得ぬじゃないか、むしろ奨励しようというようになさっておるのである。そのため町村のやっておる町村管掌国保財政はどんどんと弱体化されてくる、政府が握っている分だけは、すなわち政府管掌だけはどこまでも離さぬようにしようというような考え方で、自分のなわ張りを拡大しようという官僚的な行き方ではないかという非難が非常に強く出ておるわけであります。  そこで今お聞きいたしたいことは、やはり一番大きな問題は医療保険年金です。この二つは総合調整して、ILO百二号ですか、これに即応するような文化国家へ持っていこうという考え方があるならば、これは両方ともやはり総合調整まで待て、そして総合調整はいついつどういうような計画でやるのだからという希望を持たすべきである。その総合調整が、いつどういうようになるかということもわからずに、ただ足踏みをしろということでは、非常に厚生行政に対する国民的信頼を失うということになるのですが、この点に関してどういうようにお考えになっておりますか。また、医療保険の方は総合調整はどうやるのだ、年金総合調整はどういうようにするのか、だから待てというのか、あるいは総合調整の結果では、先刻お話しのように、地方公共団体関係職員共済組合は、あるいは認めるかもしれぬという言葉もあったのですが、そういうような総合調整をやってみなければどうなるかわからないが、ただ待っておれというようなお考え方であるか、一つ承りたいのです。
  12. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほども申し上げましたように、総合調整考えます場合に、いずれにしても被用者については厚生年金という制度基本になって、なるべくそれ以外の制度を作らないようにしたいという考えは当然出て参ると思います。ただ、その場合でも、世界各国にも例のあることでありますが、国家公務員関係グループを一まとめにした年金制度を別に考えるとかあるいはそれとほぼ性質を同じゅうするものとして、地方公務員関係人々を一グループにした年金制度考えるかという考え方は、当然これは出てき得る考え方であろう。これを今日否定する人はあまりないと思うのであります。その点は、社会保障制度審議会も、およそそういうふうに考えるべきものであろうという前提に立って議論をしておられるわけであります。ただその場合に、関係団体というものを、それぞれ国家公務員なりあるいは地方公務員グループに入れるか入れないかという問題については、総合調整の際の区画割といいますか、その引き方あるいはその考え方というものによって相当動きがあり得るわけであります。厳格に考えれば、厳格な意味国家公務員地方公務員だけの制度になるという考え方に落ちつきましょう。それに似通った程度のものはそこへ入れてもよいじゃないかということになれば、一定の基準を考えて、そういうふうな区画割調整するというようなことになるだろうと思います。ただ、いずれにしても、これは総合調整基本がきまらないと、そこまで弾力的に扱うかどうかということについての腹がまえがきまらない。むしろ今の段階考えれば、それは厳格な考え方をもとにしておくということでないと、あとの調整が困難になる、こういう考え方が、現在においては関係団体地方公務員退職年金制度の中に持ち込むことが適当でないという、そういう判断になったわけであります。
  13. 永山忠則

    永山委員 被用者関係厚生年金の問題ですけれども、地方公共団体関係職員というものの雇用者地方公共団体なのですから、その方がみな金を出しておるわけですから、それでやはりこれは地方公務員共済組合へ併置するということで、ほとんど異議ない問題だと思うのです。総合調整をしましても、これは地方公共団体が実質的な雇用君であるという点において、当然に地方公共団体職員共済組合の中へ一緒に持ち入れるということになってよろしいとわれわれは考えておるのですが、しかしそれにしても、いつまでこれは持てばよいのかという問題です。今のところではほとんど五里霧中で、総合調整がいつ結論が出るのか、また総合調整の結果、厚生年金に踏みとどまれば、ほんとう老後生活の安定ができるようになるのであるか、どうか、これが全然不明なんです。不明というよりは、ほとんどもう厚生年金ではとても老後の安定をするようなことへ持っていくようなことはおおよそ困難ではないか、言うべくして行なわれないんじゃないかということが非常に不安を感ずる。ということは、今回所得税法の一部改正の中で、企業年金をむしろ推進するという態度になったことが、もう非常なる不安を生んできたということですね。ですから、厚生年金総合調整どころの騒ぎではない。厚生年金は、もう分断されてしまうのではないかということが非常に不安を感じるわけでありますが、ちょうど国保と同じように、力のある大きい会社保険組合を作って、政府管掌から離脱して、家族まで十割給付の方へどんどん入っていく。しかも、その方向はますます強くなってきているというような状態と同じように総合的に調整されて、これが合理化されるということとは逆に、企業年金の方へどんどん入っていく。企業年金へ入ってきますと、そうすると厚生年金との調整問題が起こってくるでありましょうが、厚生年金の定額部分の引き上げということが非常に困難になってくるわけですね。それは厚生年金の報酬比例部分というものも、あるいは加給部分も、企業年金の方へむしろ吸収してしまうという調整が強くなってくるかもしれません。のみならず、企業年金の方をどんどん進めていけば、厚生年金保険料率を上げるというようなことは、これは二重になりますから、労働組合も反対だし、また資本家の方も反対する。だから企業年金を推進するような今の税法の改正でいかれるということは、厚生年金が飛躍的に発展しよう。あるいはむしろ好ましい姿で発展的な統一をしていこうというようなこととは、およそ逆になる。だから厚生年金によって老後の安定を得るというようなことは、ほとんど考えられないのじゃないかというような不安感が一そう増してきておるわけですが、この総合調整の時期と方法とまた考え方企業年金を税法上の優遇によって推進していこうという行き方、これらはどういうようにお考えになっておりますか。
  14. 小山進次郎

    小山政府委員 今先生企業年金についておっしゃったような心配といいますか、そういうようなものが全然ないとは言えないということは、私どもも同じように考えております。その意味において、企業年金というものを将来どういうふうに発達さしていくか。それと公的年金基本である厚生年金をどういうふうに関係づけるかということが、今後における非常に大きい問題だと思います。ただ結論を申し上げますならば、今回法人税法の改正で行なった企業年金に対する取り扱いで、もう公的年金基本である厚生年金が伸びられなくなったというふうに考えるのは、これはやはり思い過ごしだろうと思う。問題は、むしろこれからどうするかということです。また、だれが考えても、公的年金基本である厚生年金を充実させるということが基本でなくちゃいかぬのでありまして、それとの関係において効果があるように、補足的な役割を持たせるというのが企業年金でございますから、そこのところは今後の問題であろうと思います。  ただ、先ほど来、社会保障の推進に多年中心的な役割をしておられた永山先生から、厚生年金についてすこぶる悲観的なお話を聞くのは大へんさびしいのでありまして、むしろいかにして厚生年金というものを充実さしていくかという御議論先生からお聞きしたいわけなのでありまして、私どもは、次の段階は、厚生年金国民年金を実施するということで一応日本の年金制度も第一段階が終わって、いよいよこれからほんとう年金制度らしい年金制度に公的年金を持っていく機会がきた、その場合の中心は厚生年金だ。厚生年金の問題を片づけて、それとの関係において国民年金を解決していく、こういうふうにみんな勢い込んでおるときなのでありまして、大いに御鞭撻をいただきまして、この問題が発展的に解決されるようにいたしたいというのが、私どもの念願でございます。
  15. 永山忠則

    永山委員 総合調整をどういうように持っていくか、いつごろまで待っておれば大体結論を得て、関係職員団体共済組合問題は解決するか、一つ見通しをお聞きしたいのです。
  16. 小山進次郎

    小山政府委員 総合調整結論は、おそらくことしの秋ごろまでには出るだろうと思います。社会保障制度審議会としても、そういう考えでやっておるわけであります。その後において、さっきから申し上げておるような問題が検討される可能性はあるというわけであります。ただ、技術的な問題になりますので、ことさら申し上げなかったわけでありますが、なかなか問題は技術的にはむずかしいのだ。たとえば今国には、いろいろな公庫とか事業団というのがございます。これは法律でそれぞれの設置がみんなきまっておるわけでございまして、その公庫なりあるいは事業団の職員についてさえも、現在は国家公務員共済組合法をそのまま適用するということをしないで、厚生年金保険法を利用しておるわけであります。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕 そういう事情もありまして、この問題についてとにかくあらゆる角度から論議を尽くしまして、これなら間違いがないという結論が出たときに、初めて弾力的な扱いをするならする、こういうような筋合いになるわけでございまして、そこいらの点は、先ほど来繰り返して申し上げておるように、今後の問題としてあり得るわけであります。
  17. 永山忠則

    永山委員 そうすると、ことしの秋ごろ大体見通しがつくということになると、一年ぐらい待てば、どういうような方向へいくかということが、大体見通しがつくというように解釈をいたしてもよろしいわけですか。
  18. 小山進次郎

    小山政府委員 おそらくは、そのころになれば、いろいろな条件をはっきりした上で議論することができるようになると思うのです。
  19. 永山忠則

    永山委員 そこでわれわれの方は、今新聞紙上に伝わっております厚生省年金に対する将来の青写真といいますか、社会保険の総会調整と発展的な飛躍というような問題を拝承いたしておるのでございますが、これによりましても、今新聞紙上でいっておるのは、厚生年金保険は一年繰り上げて、昭和三十八年四月から大幅な給付改善を行なうべく目下鋭意準備中であるということが、最近の新聞に載っておるわけでありまして、ここで現在厚生年金は、平均の給付額が月額三千五百円でありますが、この水準を、昭和四十五年には――今から九年先になりますが、勤続二十年の老齢独身者に対する給付水準を月額八千円ぐらいまでやろう、現在最高が四千三百円でございますが、おおよそ倍ぐらいのところへ持っていこうというように考えられておるのです。この考え方から見ましても、とても八年先や九年先で今の倍の八千円に給付水準が伸びましても、やはり年々ベース・アップされて生活水準は向上しているわけですから、今と少しも変わらぬということなんですよ。そうすると、やはり共済組合制度でなくては――企業年金をやっている会社はいいですね。そうでなしに、厚生年金だけではどうしても生活安定を確保することはできない。厚生省考えておられる飛躍的な考え方だと、新聞で報道されているところから見ましても、とても及びもつかない、共済組合制度にとても比較することのできない情勢ではないかというように考えられて、われわれは悲観的であってはならぬと思うのですが、積極的に支援いたしたいと思うのですけれども、こういうような厚生省の旧来の惰性的な、一歩前進主義の行き方では、これはもう厚生年金生活安定を得るということができない。企業年金をやっている会社は別ですが、公共団体もしくはこれに準ずる公庫及ば事業団関係職員団体、こういうようないわゆる公共団体、これに準ずるものから給与をもらっているものは、これは企業年金がないわけですから、企業年金という補完的なものを推進していくという立場に立った以上は、やはり共済組合制度というものを確立していくということに持っていく以外は、どうしても行く道はないのじゃないかということが一般に強く考えられるのですが、そのことがどうでも、今岡の地方公務員共済組合法が出るならば、やはりこの関係団体職員共済組合も付随して出すということが当然でなければならぬ、こういうように言っておるのであります。  そこで、厚生年金企業年金との調整を一般会社の方ではやるわけですけれども、雇用者が準公共団体等の公団あるいは事業団、こういうような関係あるいは地方公共関係団体で実質的に給与をいただいている者というものに対しては、企業年金にかかわるような、何らかの考え方を持っておられるかどうかという点をお伺いしたい。
  20. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 永山先生の御意見、だんだん承っておりまして、おっしゃるところ、私どもよく拝承いたしましてわかるのでありますが、ただ、今先生申されましたように、新聞紙上で厚生年金の改正問題につきまして、おっしゃられましたような中身につきましては、これは新聞報道として一部伝えられた程度のものでございまして、厚生省が、そういうふうな考え方のもとに今作業を進めておるというふうな決定的なものでは一つもないのでございます。私どもの方で現在やっておりますのは、あらゆる面を全部想定いたしまして、こうなればこうなる、どのくらいの料率を上げるというふうないろいろ複雑な作業をやっておる段階でございまして、厚生省としてこういうふうにしたいというふうな正式なものは、何も現在固まっておらないような状況でございます。ただ、先生御指摘のように、厚生年金の今後の改正をどういうふうにするかという問題については、非常に困難な問題がたくさんあると思います。はたしてわれわれが期待しておりますように、現在の厚生年金の大幅改正をやりまして、たとえば国家公務員共済、各種共済と同程度のところまで持っていくというふうな線をどこまで実現していくかということにつきましても、非常にむずかしい問題があると思いますけれども、しかし私どもとしましては、せめてそのくらいのところまでは給付内容をやっていくということを目標にしまして作業を進めておるようなことでございまして、それにからみまして、先生のおっしゃるような、たとえば地方関係団体職員の方々をどういうふうにするかという問題も、私どもは今考えております。そういうふうな作業の中に取り込んでそれで検討していきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  21. 永山忠則

    永山委員 非常に頼もしい話は聞いたのですが、要するに、厚生年金も現在の共済組合と同じような給付へ持っていくという構想のもとに進みたいという、この考え方に対しては全く賛成でありまして、そういう飛躍的な結果を招いていただくことを期待するわけであります。その限りにおいてはわれわれは了承するのですが、実際上の問題としてそれがいつごろできるか、むしろそう言っても、事実はできないのじゃないかという方の不安感が非常に強いということですね。それを一そう強くしたのは、今回の所得税法改正による企業年金の特別税の措置を認めていったというところに、さらに一段と不安を感じたのです。ということは、新聞紙上でも御存じのように、厚生年金給付率引上げをせんとすれば、どうしても保険料率を引き上げなければならぬのですね。この引き上げることに対して日経連は根本的に反対をしておる、労働組合もまたこれに対して反対をしておる。旧来標準報酬をまだ三万六千円に抑えておるわけですが、これを、頭打ちを排除するということさえも実際できないのですよ。問題は、やはりこの標準報酬主義を排除して給与所得基準でいく。頭打ちを排除するというところまで踏み切らぬと、ただいまのお説の実現は、これはなかなか困難です。そのことが、医療保険においても厚生年金において、旧来給付内容の改善はほとんどやろうとしても不可能に属する状態になっておるという状態でありますので、この点に対して、お言葉は非常に勇敢で賛成ですけれども、事実上において可能でないという点が、強く国民に不安を感じさせているわけです。従って、理想は理想だが、実際はそこへ行かれぬのだから、やはりこの企業組合を認めるようになったのだ。一方、共済組合を認める。現在厚生省社会保障総合調整はむしろ簡素な姿で、筋の通ったもので一元化していこうという考え方よりは、分断の逆なコースへ進んでいきよるのであって、そのことが、われわれは悲観的に見ざるを得ないのです。決してそういうことを悲観しているわけじゃない。実際はそういうことをやめてもらいたいということなのです。従って、今回でも企業年金に対する税の特別措置法ということは大問題なんです。厚生年金の積立金を保険会社と信託会社が使うということですが、そのお金が政府の方に蓄積されれば、国民生活の安定とかあるいは社会保障とか、あるいは中小企業とか農村とか、あらゆる面において民生安定に必要なる資金の方へどんどん持っていかれるべきものです。そういうものを、むしろ大資本家の方面へ集中するという逆コースの方へ追い込まれていることは、今のお言葉より逆になっているのではないかと感ぜられておるわけです。国保でも、もう政府管掌にして、健保と発展的統一をするという方河へ持っていく以外にないのではないか。しかるに、力のある会社の方は、どんどんと保険組合を強化して、そして医療施設を拡充していく。給付率は家族まで十割にしていくという方へ行って、発展的統一ということはおおよそ考えられぬ状態になっておる。従って、今の厚生省考え方は、発展的な統一をしていこうということよりは、力のあるものだけはそのグループで、力のないボーダー・ラインだけを政府はかかえていく以外にない、今の医療保険年金制も、そこへやむを得ず追い込まれようとしておるのではないかと非常に心配をしておる点なのです。従って、厚生省方針は発展的統一の方へ向かうのか、力があるものだけはそれによって統合してやって、力のないものだけを政府はかかえる、そして政府は、それに対して大幅な補助金を出して救うという方向に行くという方がいいのであるかどうか、それらの基本的な考え方を承りたいと思います。
  22. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 いろいろ厚生年金制度につきましての先生の御注意、まことにごもっともだと思います。申すまでもなく、私どもとしましては、先生が後段に申されましたように発展的な方向で給付内容を大幅に改めていくという方向で、この問題を真剣に取り組んでいくつもりであります。
  23. 永山忠則

    永山委員 企業年金は、日とともにどんどんと非常に推進されてきておるわけですが、これに対しては、厚生省方針はどういうようにお考えですか。
  24. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 先ほど年令局長が申し上げましたように、このたびの税制改正で企業年金につきまして優遇措置がとられておる問題と、それから厚生年金保険企業年金を今後どのようにやっていくか、調整していくかという問題は、別個の問題ではなかろうかと存じますが、しかし企業年金厚生年金との総合調整をどういうふうにするかという問題は、先生御指摘のように、厚生年金保険法の改正の際に十分考慮しなければならない問題だろうと思います。今ここで、その調整をどういうふうにするかということを直ちに申し上げる段階では私はないのじゃないかと思いますが、しかし、いずれにしましても、企業年金制度というものがとうとうとして大企業において行なわれておる現状におきましては、この制度を無視するわけには参りません。その辺は、次の年金保険法改正の際にどういう方向で調整していくかということを、関係方面とよく相談した上で、また先生方の御意見も十分拝聴した上で、慎重に検討して参りたいと思います。
  25. 永山忠則

    永山委員 それじゃ最後に申し上げたいのでありますが、地方公共団体関係職員団体共済組合関係を本年見送るというのなら、やはり企業年金の税の特別優遇措置による推進力もことし見送って、そうして総合調整の際にともにやるというのなら、これは非常にみんながやむを得ぬなと思うのです。企業年金はどんどん進んで、力のある方はやっておるから、仕方がないからこれを認めてやる、そうして総合調整はあとから考えるという行き方が、いかにも厚生省は弱いんだ、もうこれじゃ年金制は分断されてしまうんだという不安感を一そう増す状態に置かれておるのでありますから、政府はすみやかに総合調整を確立されて、先刻お話しのように、厚生年金老後生活の安定ができるように、共済給合と同じような程度まですみやかに引き上げて、発展的な統一に向かって前進するという強い意思でもって一つおやりにならなければならぬと思うのでありますが、政府の所見を承りたいのであります。
  26. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来永山さんの御質疑を拝聴しておったわけでありますが、問題が、今回の自治団体関係職員共済組合に対して縁の深い諸団体職員を加入せしめるかどうかという問題が発展いたしまして、広く社会保険全体の総合調整の問題にいったように思うのであります。社会保障関係総合調整の問題はきわめて大きな問題でございます。御指摘のように、いろいろアンバランスがある。しかも、このままの状態でいけば、そのアンバランスが一そう拡大するようなことになるんじゃないか、こういう御心配があると思うのであります。私もまたその憂いを同じくするものでございます。この問題については、前々から申し上げておりますように、何らかの調整の方法を考えなければならぬという段階として、現在いろいろ検討いたしておるわけであります。どういった種類の結論が出るか知りませんが、日本の経済構造、産業構造にも関係する問題として、非常にむずかしい要素を含んでおると思うのでございます。   〔委員長退席柳谷委員長代理着席〕 それはそれとしてまたお知恵も拝借して、われわれも十分検討してなるべく早く結論を得て、どの程度のところに持っていくかということを考えたいと思うのであります。問題の発端になりました国民健康保険関係団体職員、その他これと似たような職員の問題であります。この問題は、最初にお答え申し上げましたように、どっちにも理屈のある議論ではないかというように私は思うのであります。永山さんのおっしゃるような観点に立って、現在の事態に対処するというのも一つ考え方と思います。同時にまた、そういうことで何か、いい方へ、いい方へとみんな行かれてしまえば、残った者が非常にさびしくなる。できることならば、大きく考えて、被用者保険被用者保険として考えるとか、あるいは国民保険国民保険としてやっていく、こういうような考え方が、一つの大きな筋として私はあると思うのです。そこいらの関係一体どういうふうに考えたらよろしいか、今日ただいまの問題に立脚して考えれば、永山さんのおっしゃることも私は理由のある御意見だと思うのでありますが、また今後のことを考えてみますと、すぐそこに踏み切っていいものかどうかという点についても考えなければならぬ要素があると思うのでありまして、一口に言えば、少なくとも、理屈はいろいろあると思いますけれども、私としましてもまだ決断のしかねる問題でございますので、この点は、御趣旨はよくわかっておるわけでございますので、さらにまた検討をさしていただきたいと思います。今日の場合、さようなお答えで御了承いただきたいと思います。
  27. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 大原亨君。
  28. 大原亨

    ○大原委員 それでは私から国民年金法の一部改正に関連をいたしまして、今いろいろと議論になったと思うのですが、共済年金やあるいは大改正に直面いたしております厚生年金、そういう問題を統一的にとらえながら、一つ御質問いたしたいと思うのです。主として、時間をかけるのは厚生年金についてであります。私は、先般の船員保険法の一部改正等におきましても質問いたしたいと思っておったのですが、この問題は、国民年金に関連をして質問をするということで問題を保留いたしておきました。それから国民年金厚生年金に関連をしておる問題は、積立金の運用の問題であります。それらの問題を、きょう一つ時間のあるだけ質問をいたしたいと思います。  今もいろいろ議論があったようでありまするが、公務員共済年金の組み立て方と、それから厚生年金の組み立て方と、国民年金の組み立て方、それぞれ違っておるわけでありますが、今皆さんのお手元に資料があれば政府委員の方から御答弁をいただきたいのですが、共済組合の修正賦課方式といわれているそういう方式によって、一つのその結果として現われるのは積立金の金額であると思います。共済年金では大体どのくらい積立金があるのですか、わかっておったら一つお答えいただきたい。
  29. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 共済組合関係の力は大蔵省の方で所管しておりまして、私の方では、現在数字についてはわかっておらないのであります。
  30. 大原亨

    ○大原委員 保険料給付の内容についての比較はそれぞれ資料があるわけでありますが、時間がかかるからこの点はあまり質問しません。共済年金では修正賦課方式を採用しながら、国民年金やあるいは厚生年金については積立方式を採用しておる。こういうことが給付の内容や保険料に影響いたすと思う。そういう問題について、やはり官尊民卑ということではいけない。一元的にこの社会保障をやらなければならない。働いておるうちは最低賃金制、家族に対しては家族扶養手当、そして老後やその他の障害に対しては、事故に対しましては所得保障、こういうことが完備して参りませんと、社会保障ということはできないと思う。従って、そういう組み立て、賦課方式とか積立方式について、従来の例は、恩給ということで公務員共済年金が今日できておりますが、そういうことで厚生年金やあるいは国民年金を賦課方式に変えていく、こういう大きな方針を立てるべきじゃないか、こういうふうに私は一つの問題としては思うのでありますが、これに対していろいろ五カ年計画その他について御計画になっておるようでありますけれども、社会保障として中身を改善していくことから考えてみまして、そういう点について厚生年金の問題を含めて御研究になっておりますか、あるいはどういう見通しを持っておられるか、一つお答えいただきたいと思います。
  31. 小山進次郎

    小山政府委員 お答えする前に申し上げたいのでありますが、現在、国家公務員にしましても公共企業体にしましても、その退職年金の財政方式で、賦課方式あるいは修正賦課方式といわれるものをとっておるということはないと思います。いずれもこれは積立方式をとっておるという前提でございます。ただ率直に申しまして、国家公務員の場合も公共企業体の場合も、積立金が完全積立式という点から見ると若干不足しておる。どういう部分が不足しておるかと申しますと、過去の勤務に対するその後の引き上げに対応するだけのものが、その後において十分に積み立てられていない。そういう意味において、積立式をとりながら、完全積立式に立った場合に必要とされるだけの積立金を現実に持っていない、こういうような意味であろうと思います。従って、国家公務員の場合におきましては、そういう過去の勤続期間に対応する分の積立不足の分を、ある程度将来国庫から補てんをするとか、あるいは公共企業体の場合でありますと、自然の結果として、公共企業体の一般歳入の中から何らかの継ぎ足しをするということを前提とするか、あるいは必要を生じた場合にその分だけ保険料引き上げをするかというようなことで、帳じりを合わせなければいかぬ問題があるということであると思います。  それでその問題は一応その問題といたしまして、先生仰せになった財政方式として賦課方式を取り入れることを検討するということは、十分これは論議に値する問題だと思っております。これまで日本では、特に公的年金については財政方式といえば積立方式、それとも完全積立方式というものをとることが非常に手がたい、まともな態度であって、それからちょっとでもはずれると、非常に不健全な、俗に申します不健全財政になってしまうのだというような感覚が強かったわけでありますが、国民の経済発展というものが継続的に行なわれる限りにおいては、将来のそういった発展というものを見越した財政方式というものは十分その可能性はあり得る、こういうことでありますが、ただ問題は、一体どういう原則でどの限度までこれを取り入れていくかということについて、今のところまだ完全な定説というべきものが固まっていないわけであります。それで、厚生省としては、すでに二年来になりますけれども、厚生科学研究賢の中に賦課方式に関する研究の項目を設けまして、今研究をしてもらっているわけであります。この研究の結果がまとまりましてから、さらにこれに基づいて検討する、こういうことでありますが、ごく大まかに申しますと、賦課方式を取り入れる可能性は、厚生年金にはある程度あります。加入者が将来ともプラスの方向において発展していく、これはもう確実な可能性があります。それから加入者の所得、従って保険料というものが確実に伸びていく可能性がある。そういう前提がある限りは、厚生年金については、その問題は十分論議に値する。あるいはこの問題の検討の結果によって――厚生年金を昭和二十九年に制定しました際に、本来ならば、保険料率は、あの当時で千分の四十一にしなければならないのを、一時的に千分の三十ということで発足をし、この間の改正の際にこれを千分の三十五まで引き上げたわけであります。従って、完全積立式という前提に立ちます限りにおいては、単に収支を合わせるためだけでも、さらに千分の五ないし七ぐらい引き上げないと収支が合わぬというのが、現在の厚生年金の収支の仕組みであります。しかし、この問題も、財政方式について賦課方式的な考えを取り入れることによって、あるいはもうこれで収支を合わせるという問題は片がついた、あとはもっぱら給付内容を充実するためにどうするかという問題だけを考えればいいというふうなことに論議を発展させる可能性があるかもしれない、こういう問題があるわけでありまして、これは今度の厚生年金の改正のいわば柱をなす問題の一つとして現在着手をしている、こういう状況であります。  それから国民年金について申し上げますと、これは賦課方式を取り入れる可能性は、今のところ非常に限られております。ちょうど厚生年金と反対に、将来とも、これは被保険者が増加することが非常に少のうございます。それから対象である農民について、一般的に地すべりの傾向があるといわれておるように、若い世代が雇用者に変わっていく傾向があって、厚生年金と逆に、国民年金の場合は、被保険者の年令が、どちらかというとやや老齢化――と言うとちょっと言葉が適当でないのでありますが、比較的年寄りに傾く傾向がある。こういうようなことからして、国民年金の場合は、賦課方式の取り入れというものが、なかなかむずかしい議論になってくる。しかしこれも、ただいま申し上げたように、厚生年金とともにここ二年来、どういう形で、どの限度で賦課方式を取り入れていくかということを研究している、こういう事情でございます。
  32. 大原亨

    ○大原委員 それで、国民年金の場合は、今のような問題があるから、税金をつぎ込むということだと私は思うのです。やはり税金によって給付内容を改善していくということを大きな中心点として考えなければ、そういう保険数理だけでは、安定ということはないと思う。今の御答弁で、純粋の意味の賦課方式も採用してない、純粋の意味の積立方式も採用してない、そういうことでそれぞれ修正しながらやっておるけれども、各年金の間にはアンバランスがある、こういうお話もあったわけであります。現在政府が、厚生省でやっておりますが、厚生年金の大改善に直面をして、やはり国民年金についても考えていく面が非常に多いと私どもは思うのです。これは当然相関的に考えていく。そこで、やはり生産手段を持っておる自営業社と雇用関係にある人々、生産手段のない人、すかんぴんであって失業したら終わり、こういう人々、私は大まかに二つに分けて、体系としては考えて整備していく必要があると思う。しかし、その議論は別にいたしまして、厚生年金につきまして、政府は現在どのような予定で、そして社会保険審議会に対しまして、どのような具体的な中身の内容を持った諮問をしておられるかということについて、現状を簡単に報告してもらいたい。
  33. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 厚生省といたしましては、現在正式の諮問というふうな形は何らとっておりません。ただ御承知のように、社会保険審議会の中に厚生年金部会というのがございまして、厚生年金部会の方で、厚生年金の大幅改正につきまして今後どのようにやっていくかということについて、懇談会形式で話を逐次進めていくという方針によりまして、現在各種の要素をそれぞれ集めまして、どのような方法でどういうふうになるかというような財源計算を含めた計算の作業中でございまして、懇談会形式で進める予定にいたしております。
  34. 大原亨

    ○大原委員 今のお話は当たりさわりのない話ですが、問題点を出しながら懇談会形式で審議会でしぼっていこう、こういうことだと思うのです。なかなか当たりさわりないやり方ですが、大体いつごろこの答申をお出しになるのか、時期的に見ますと、何月ごろに結論をお出しになるか、この点を一つ……。
  35. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 私どもの予定といたしましては、厚生年金法の改正を次の通常国会に予定しておりまして、従いまして、次の通常国会に改正を準備いたしますとすれば、予算措置その他につきましては、大体秋ごろまでにはおおむねの見当をつけなければならないということでございますから、さかのぼって考えてみまして、大体秋までには一応のめどをつけたいという考えを持っております。
  36. 大原亨

    ○大原委員 先般の委員会におきましていろいろと御質問いたしましたが、給付内容を改善していくという場合に、やはり一つの問題は、平均報酬月額の制度をとるか、あるいは公務員共済制度のように退職する最終年度の報酬をとるのか、あるいは外国のいろいろな立法例にもありますように、出来高払いの賃金制においては同一労働同一賃金が大体常識化しておる、そういう国におきましては最高給与の何年かをとってやる、こういう方法があると思うのであります。そういう柱になるような問題、給付保険料や積立金運用その他について柱になるような問題については、厚生省が、政府部内、大蔵省等の関係において、考え方をぴしっと一つ確立していただいて、そしてこの内容改善について考えていただきたいと思うのであります。そういう意味からお尋ねするのですけれども、現在の平均報酬月額を基礎にして給付内容をきめていくという方式は、私はやはり改善すべきであると思うのですが、これに対しましては厚生省当局はどういうお考えか、お聞かせ願いたい。
  37. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 先生おっしゃるように、現在の報酬月額制度の改正問題も含めまして、いろいろと私どもの方は検討いたしておるわけでございますけれども、しからばどういう方法でいくのがいいかということにつきましては、まだこれから相談しなければならない問題でもございますので、そういう点も含めまして今後の検討を続けていく、こういう作業予定にいたしておるわけでございます。
  38. 大原亨

    ○大原委員 そこで、この前の質疑応答でもいろいろやりましたけれども、現在の平均報酬月額を基礎として給付内容をきめるという制度でも、最低が三千円で最高が三万六千円、これは明らかに不合理であります。この不合理な点について、どういう点が不合理かという点をやはり明確にしてもらわぬと、次の政策は出ないと私は思う。その点についてもし御研究の結論があれば、一つお聞かせいただきたい。先般船員保険法の一部改正がございましたけれども、その点について具体的な問題点として指摘するような内容があれば、お聞かせをいただきたい。
  39. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 現在の最高報酬額が三万六千円で低いことは、私どももこれを何とか上げなければならないということは当然考えておるわけでございますけれども、しかしそれならどの程度まで引き上げていくか。たとえば船員保険法の改正で五万二千円の改正案を出したわけでございますけれども、そこまで持っていくか、あるいはそれ以上に持っていくか、あるいは先生先ほど申されましたように、現在の平均標準報酬制度そのもの自体に手をつけるかという問題もございますので、今直ちに、それではこういうふうにするということをここで明確に申し上げるわけには参らないと思います。
  40. 大原亨

    ○大原委員 その中で問題点は、三千円というのが昭和十七年から始まりまして、三千円以下の月額の収入の場合には三千円まで引き上げるというので、いかにも引き上げたようでありますが、百円を三千円に引き上げれば、こういうようなことですが、しかし実際には、現在の三千円相当額で過去の戦争中、戦後の給付生活はできなかったわけでありますから、少なくともそれは、当時の実質的な給付からいえば低いわけであります。それを平均報酬月額の基礎とするというようなことは、これは非常に間違いで、低くなるような結果になると思うのであります。最高について頭打ちという制度一緒に、この問題は抜本的に改善をしなければならぬと私は思いますが、いかがですか。
  41. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 私どもとしまして、最低の分までも含めて検討いたす予定にいたしております。
  42. 大原亨

    ○大原委員 最低の、いわゆる底を含めまして改正するということになりますと、上限を取っ払うという問題と一緒考えてみますと、平均報酬月額をどういうふうにとっていくかということは、私が最初質問の中で申し上げたが、公務員共済年金は、最後に退職するときの俸給を基準として、一、二年か幾らかをとっておるわけであります。従って、そういう点から考えてみまして、現在やはり賃金の内容がだんだんと日本においても質的な変化を遂げつつあり、同一労働同一賃金の考え方も、法律だけでなしに相当浸透しつつある状況なのでありますが、それらの問題を考えまして改正をしていく必要があると思う。  それと、私念のために、お聞きしたい点は、私も詳細な資料がないのですが、外国の立法例の中で、たとえば日本が常に競争的な関係にあるEECの中の重立った国々における被用労働者の年金のそういう報酬月額のとり方、これについて資料があれば一、二御説明いただきたいと思います。
  43. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 今直ちに御説明できるような資料を持ってきておりませんので、後刻いずれ資料を整えまして差し上げたいと存じます。
  44. 大原亨

    ○大原委員 私は、下と上を含めまして、日本のような制度をとっておるところはないのじゃないかと思う。日本には各種年金にスライド制もないし、たとえば公務員でありましたら、ベース改定ということで過去の公務員の恩給についてもやるわけです。しかし厚生年金ではもうだんだんと受取人がふえておるわけでありますが、それに対するベース・アップもないわけです。国民年金についても抽象的なものしかないのです。これは後刻また質疑応答で問題になる点でございますが、ないわけなんです。公務員共済年金、恩給だけにあるわけです。従って、おそらくそういう点においては、日本のような制度をとっておる国は、極端に言わしむれば、戦争中における強制貯金の制度であって、積立金を運用するためにやったのが厚生年金である。国民年金もそうじゃないかという議論も出てくるわけであります。従って、厚生年金につきましては、給付の改善について平均報酬月額をどうとるかという問題については、日本のような例ば外国にはないのじゃないか。おそらく外国にはないでしょう。日本のような例がありますか。
  45. 小山進次郎

    小山政府委員 先生がおっしゃっておるのは、おそらく、たとえば国家公務員の場合は、最終奉給の三年をもとにしてやっておる。従って、勤続期間が二十五年なりあるいは三十年なりの場合において、過去の給与の低い時代は入らない、一番最近の時代の給与がもとになっておる。その何割かということできめられるので、これは比較的アップ・ツー・デートの感覚の年金である。ところが、厚生年金の場合は、古い二十年なり二十五年なりというものを全部算出の基礎に入れて平均してしまう。おまけに、その中には昔の非常に貨幣価値の高かった時代、言いかえれば給与が低かった時代のものが入ってきて、これを一律に三千円というふうにしてしまった。そういうことを含めておっしゃっておいでだと思うのでありますが、過去の期間を全部入れて計算するというのは、これはむしろ外国の普通の例のようであります。これは日本のように年功序列型の賃金をとっておりますと、年をとってやめるときは、必ず一生のうちで一番有利な条件になるわけであります。そうでない場合が外国には非常に多いわけであります。そうしますと、一生のうちで一番有利な時期が必ずしも最後にこない、あるいは勤続期間のまん中ぐらいにくるかもしれない、そういうような事情がありまして、年金については、過去の長い期間の平均でやっていく、こういうことなんでありまして、その点に関する限りは、大体日本の厚生年金の形と同じようなやり方をしておる、こういうふうに考えていいと思います。
  46. 大原亨

    ○大原委員 外国では最高をとったり、最終をとったりするということもあるわけですか。日本みたいなところはないでしょう。
  47. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 スエーデンにおきましては、今ここに資料が見つかったわけですが、最高をとっておる制度がございます。
  48. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと大きな戦争がありましたら、貨幣価値が変動いたしますから、その平均報酬月額を基礎としてどういう倍率をかけるかということによって違うのですけれども、しかし私は、その点については逐次国家公務員ともバランスを考えて、だれも納得のできる措置をとってもらいたい、厚生年金の改正については、その点は基礎にして考えてもらいたい、そうしなければいけないのじゃないか、こう思います。この点は一つ意見として強く主張しておきます。  それから給付の問題につきまして、大蔵省もお見えになりましたから御質問をいたします。最近企業内年金――今もお話がありましたが、企業内年金の問題につきまして、いろいろと大蔵委員会等におきまして滝井委員あるいは平岡委員の方からもお話があったのであります。その企業内年金の問題については、厚生省といたしましても、今議論があったように非常に大切な問題で、この問題は総合的な観点からやはり政策をきめておいてやるべきだ、現在問題になっておりますのは、大蔵委員会にかかっておりますけれども、企業内年金に対しまして、課税措置について特別の措置をとるということが問題になっておるようであります。その問題についていろいろと議論があったわけですが、現在大蔵省の方針はどうなっておるか、こういう点について、税制第一課長がお見えになっておるようでありますから、御説明願いたいと思います。
  49. 細見卓

    ○細見説明員 昨日大蔵委員会を通していただいたので、おそらく原案通りといたしまして御説明いたします。  御承知のように、現在企業は、退職の際に一時金支給というのが圧倒的に多いわけでございますが、だんだんそれを一時金というのではなくて、年金式に支給していきたい。なお、そういたしまして年金式支給ということになりますと、年金支給に伴ういろいろな事務等もございまして、できるならばそれを社外の一定の機関に委託してやりたいというような要望がございまして、現に一部の企業では、会社外に退職金を積み立てておるというような制度もいたしております。  まずその方の現在の課税上の制度を申し上げますと、社外に積み立てる年金基金の場合でありますと、会社従業員分をその基金に拠出いたしますと、現在の税制ではめいめいの従業員がそれぞれ給与として受け取ったということになって、そこで給与所得税が課税になりまして、その残りを積み立てると申しますか、一たん会社給与を支給しまして、その中から従業員が積み立てると申しますか、結果は同じでございますが、そういうことになっておるわけであります。それに反しまして、一時金の形態で支給いたしますものは、これはあくまでも会社の引当金ということになっておりまして、会社現実にだれだれに幾ら支給というような計算でなくて、従業員自分の都合で、会社の都合でなくて退職したといたしました場合に、会社はいろいろ労働協約あるいは就業規則等で退職金を支給するということになっておりますが、自分の都合でやめました場合の退職金の要支給額の合計額の半分までを限度として、社内留保引当金として取れる。ただその場合、全部社内において運用するということについては問題もございますので、そのうちの引当金の四分の一たけを特定預金――定期預金その他でございますが、特定預金として、一定の資産に限って運用を制限されるということになっておるわけであります。  それに反しまして、今回法人税法の方で措置いたそうとしておりますことは、今申しましたように、社外に年金なりあるいは退職金の原資というものが積み立てられることは、従業員の立場からいたしましても、より安全性が確保されるわけでありますので、制度としては望ましい方向であろうと考えますが、その場合に、もし支給時に――会社が支給するときに会社の方で支給するものが全部給与になるということでありますと、これはなかなか、現在すぐそれだけの金ならばもらいたいというようなこともありまして、年金の形というものが育ちにくいという点も考えまして、一定の契約に基づきまして、要支給額が定まったものを、会社がその要支給額に対して、年々平均的に保険数理等に基づきまして適正な金額を算定したその標準保険料を拠出いたす場合には、会社の場合は損金といたします。また、もらう方といいますか、従業員側は、現実給与として受け取るわけではありませんので、本来、先ほど申しましたように、現在の制度会社が支給するときには給与所得がかかるということになっておりますので、その課税を繰り延べる分に相当します利子相当分といいますか、繰り延べ利息相当分を企業の社外に積み立てました年金基金に対してかける。現実には信託会社あるいは生命保険会社に対して、その運用基金、具体的には会社が拠出いたしました金額、それからそれの運用利益、それに対して千分の十二を課税する、こういうことにいたしておる。もちろん給与所得として現実従業員年金を受けるときには、給与所得にいたしております。あるいは途中で一時金として受け取った場合には退職金といたします。こういうことにいたしておるわけであります。
  50. 大原亨

    ○大原委員 ちょっと私今聞き漏らした点があるのですが、社内保留の年金積立金ですね、社内保留の年金積立金に対しての税制の措置、これにつきましては、やはり今回新たに特例を設けた点はどういう点ですか。今のお話は、社外における年金の目的を持った信託やその他の積み立てだということになりますが、社内の年金積立金についてはどういう措置をとったのか。
  51. 細見卓

    ○細見説明員 社内に積み立てました場合は、原則として会社の債務性がある引当金ということで考えておるわけでありまして、それが一時金の形で出ようと、あるいは年金の形で支給されようと、税の上では取り立てて差別をする必要はないわけでございます。ただ現実には、一時金で支給するものが非常に多くなっておることは先ほど申し上げた通りでありますが、年金で支給いたします場合に、会社の債務性引当金ということにいたしておるわけでありますので、従来は、たとえば十年なら十年という有期の年金でありますとその金額が幾らになるということが計算てきますから、その要支給額のトータルに見合う額の債務性引当金として引き当てることを認めるということになっているわけですが、しかし考えてみますと、終身年金というような形でかりに年金が支給されるといたしますれば、一定の余命年数というようなものは大勢的には把握できるわけでありますので、理論的には終身年金の形で支給するという労働協約等がありました場合に、その金額も理論的には算定可能だ、従って引き当ての対象にできるではないかということを理論的には考えたわけでありますが、衆議院の法人税の御審議段階で、そうしたところまで認めることは現在の厚生年金との将来の調整について問題もあるから、いましばらく理論の問題として、そういうことを言い出すことは待てというお話で、われわれも、現実にはそうした終身年金というものが積み立てられておることもございません、そういうことも考えまして、当分現状の通り、有期で金額が確定できるものだけを引当金の対象にいたしましょう、かようになっております。
  52. 大原亨

    ○大原委員 退職一時金を引き延ばしたのが有期年金である、こういう考え方から、社内の保留については同一の税制上の減免税措置を講ずる、こういうお話ですが、終身年金制度は、大きな会社等においては実態はどうなっておりますか。ありますか、ないですか。
  53. 細見卓

    ○細見説明員 詳しく全部について調べたわけではございませんので、あるいは不正確な点もあろうかと思いますが、ごく一、二の会社で、終身年金制度を、自己都合の場合にも、つまり自分でやめますと言った場合にも支給しますという形になっているものがあるようでございますが、多くの会社は、終身年金とは言いながら保証期限を、たとえば定年の以後、六十才以後たとえば十年とかいうような保証期限をつけておりまして、文字通りの終身年金というような形で年金現実に支給されておるのは、あるといたしましても一、二の会社に限られておる現状であります。
  54. 大原亨

    ○大原委員 これはあとでお尋ねしようと思ったのですが、厚生年金の相当主計官にお尋ねするのです。私どもが、これから一番大きな社会問題になる一つの大きな問題は厚生年金である。国民年金は大きな社会問題であるが、厚生年金が加わってくると思うのです。それで厚生年金の仕組みを考える場合に、今の税法上の特例措置を、いろいろ政府が今回議論いたして設けましたが、私どもきわめて不満足な点があるわけでありますが、このことがやはり厚生年金の積み立てに影響を及ほして、国庫負担や財政上、たとえば大蔵省の中におきましては、そういう点については、主計局関係その他が将来大きな制肘を加えるということになる――既成事実に照らしましてなると思うのですが、そういう点について、やはり大蔵省としては何か意見統一をしてこの問題を扱っているのか、あるいは単なる退職一時金の形を変えたものであるとして、一時金の問題に税制上の措置があるから、このことを大蔵省としても一応だけ認めていこう、こういう考えなのか、大蔵省として現在統一的な見解を持っておられるのかどうか、こういうことを担当主計官の方からお聞かせ願いたいと思います。
  55. 細見卓

    ○細見説明員 先にちょっと……。その点は、私どもの方は、社会保障制度という大きな問題よりは、先ほど申しましたように、現在一時金の形で支給されておる退職金が年金の形で支給されたときにも、税制上それがそういうふうな制度になることをじゃまするといいますか、税制が障害になるということがないようにするだけの最低の――最低と申しますか、最小限度の手当をした、そのようにいたしております。
  56. 岩尾一

    ○岩尾説明員 年金制度にからみまして、最近企業年金というものが出て参ったわけでありますが、そういうものを含めて、将来の社会保障体系の中でどう考えるかということについての大蔵省の態度でございます。主税局といたしましては、今申し上げましたように、単なる退職金の問題、それが年金化していく問題として取り上げておるわけでございますが、主計局といたしましては、今後の予算問題もございますので、社会保障全体の問題としてある観点は持っておるわけでございます。現在、私企業によるこういった企業年金というものが非常に拡大をしてきたというのは、言ってみれば、社会保障制度全体の骨幹である厚生年金制度というものが、やはり低いからではないかということだと思います。そこで、そういう場合に、低いからどんどん企業年金というものがふえた方がいいというのか、あるいは企業年金をふやすのはとめて、そうして社会保障厚生年金の拡大だけをやるのか、こういうことになるわけでございますけれども、ちょうど厚生年金につきましても、三十九年に五年目の再計算をやる時期になっております。三十八年には、おそらくその準備態勢といたしまして、いろいろな改善措置が講ぜられることと想定しております。その際に、今申しました企業年金の方向につきましても、簡単に企業年金というものを全部阻止するというわけにはいかないけれども、そうかといって、企業年金だけふやしておいて、今の厚生年金はそのままでいいかというと、そういうわけにもいかない。やはりその辺の関係は、将来の労働者の実際にもらう給付額というものをどういう形で、どれくらいの額を保障したらいいかということを中心に検討しなければならぬと思っております。それで、ことしの問題につきましては、先ほど答弁のありましたように、これによって厚生年金というものが少なくとも三十七年度において影響を受けるということはない。そこで、三十八年度あるいは三十九年度において新しい社会保障厚生年金の底上げということを考えるときに、この企業年金というものをどうするかということをやはり真剣に検討する機会があろうということで、今回の税制改正の措置については賛成したわけであります。
  57. 大原亨

    ○大原委員 総合的には、大蔵省としてのはっきりした統一見解は、厚生年金の中身が充実、具体化するに従って出てくる、こういうことだと思うのです。しかし基本的には、企業年金に重点を置きますと、企業年金を出せないような中小企業があるわけです。それから中小企業の退職金法案が通過いたしまして、特殊法人までできておるわけです。そういう点からいたしますと、大きな企業に対しまして免税措置等をどんどんやっていく、企業年金を実施するところだけやっていくと、税金の額が減ってくるわけです。税金の額が減ってくると、税金をつぎ込んで厚生年金をよくしていくという税源が減ってくることになる。だから、今の問題は非常に大きな問題である。税金調整の問題、税金の減免税の問題は、一つの大きな既成事実になるのじゃないかという点も私どもは指摘いたしますけれども、この問題を主としてきょうは議論するのじゃありませんが、この点は、今も岩尾主計官から御答弁がありましたけれども、厚生年金の改善の内容を待ってやるということである。私どもが一番注意しなければならない点は、主計官にいたしましても、今の大蔵省の課長にいたしましても、四十から五十ぐらいになりましたら、どんどん出世なさいまして大きな会社の重役になるということである。大体そういうことである。そういたしますと、自分は恩給、いわゆる共済年金をもらっておいて、そうしてその上にりっぱな俸給を取れるということであります。そこまで到達しているのは、何名に一名あるかということはわからないのでありますが、大体そういうことである。そういうことになりますと、やはりここには、社会全体の社会保障の行き方としては、所得の再分配という観点からも、あるいは公務員共済年金を非常によくしていって厚生年金が悪くなっているということからも、いろいろ問題が出てくるわけでありまして、これは社会問題になる可能性はあるわけであります。その点を十分お考えいただいて、厚生年金が、所得保障としての最低賃金制やその他賃金体系につながる厚生年金としての意味を持つように、これは厚生大臣その他も十分主体性を持ってお考えになっていただきたい。この点は、一応衆議院の大蔵委員会で問題となって、一部を保留いたしまして通っておりますけれども、これは参議院の段階あるいは全体を通じて大問題であるという点を、私は問題点としてだけ指摘しておきますが、大蔵省においても、そういう点については、少なくとも厚生年金改善に対してブレーキをかけるなどのようなことは絶対あり得べからざることだと思う。その点については強く意見を表明いたしておきます。この問題は、問題点といたしまして表明いたしておくのであります。  それから厚生年金給付の改善の内容なんですが、定額部分について、現在の厚生年金はどういう経過をたどって現在一人月額幾らになっておるか、こういう点を一つ簡単にお話しいただきたいと思います。  なお、これにつけ加えておきますが、どういうふうに改善する方向をたどろうとしているのか、そういう御見解があれば、問題点として出していただきたい。
  58. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 定額部分の改正がございましたのが二十九年でございまして、それ以前は、先生御承知のように、平均標準報酬の四カ月分プラス二十年以上の年数という計算になっておりましたのを、二十九年の改正の際に、定額部分二万四千円プラス平均標準報酬月額の千分の五、かける被保険者の月数にして、その千分の五を三十三年の改正の際に一を加えたわけでございます。従いまして、定額部分が入りましたのは二十九年の改正、こういうことでございます。
  59. 大原亨

    ○大原委員 定額部分の金額は幾らでございますか。平均幾らですか。
  60. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 二万四千円です。
  61. 大原亨

    ○大原委員 その基礎ができたのはどういう根拠ですか。どういうことを根拠にして月額二千円が出てきたのですか。
  62. 小山進次郎

    小山政府委員 ちょうど私が関係しておりましたので申し上げますが、実はこれは一つの原理ではないのであります。二つの考え方が適当にかみ合わされてできたという、こういう経緯でございます。その一つ考え方は、あの当時の生活保護の基準が、一人当たりにしまして大体千五百円から二千円ちょっとというところだったのであります。立案にとりかかった昭和二十七、八年ごろの基準でございます。従って、定額部分としては大体そういうふうなものであればいいなということが、一つ考え方にあったわけであります。それからもう一つは、これは財源の方からきた考え方でありまして、納めた保険料のうち少なくとも勤労者自身が納めるもの、つまり保険料の半分だけは、これは比例報酬部分として考えなくてはいけない、残る事業主負担分というのは、これは広い意味でなるべく所得再配分の効果を持たせるようにしようというので、事業主負担分の半分とそれから予定されました国庫負担分、こういうようなものを頭に置いてはじいてみましたところが、ちょうど千五百円程度ならこれで出せる一もう少しそれは上まで出したのであります。そういうようなことで、一応最初の案としましては定額部分を千五百円というふうに置いて立案をして、実は衆議院で御審議を願ったときは千五百円の上に報酬比例部分は千分の五、こういう案で御審議を願ったわけであります。ところが国会でいろいろ御審議を願っている間に、定額部分についてはもっと引き上げようじゃないかということになりまして、これは与党、野党すべての方の一致した御意見で、この千五百円というものを二千円に引き上げた、こういうことで現在の二千円というものに落ちついた、こういう経緯でございまして、必ずしも一つの原理できめたものでないというのが、現在の定額部分のきまり方のいきさつでございます。
  63. 大原亨

    ○大原委員 そこで今の問題にたくさんの問題があるわけですが、一人の生活保護費の一定額を、定額部分として厚生年金を組み立てているということになると、開始年令にも問題があるわけです。定年制と開始年令の問題がある。たくさん問題があるわけですが、定年制は大体五十五才でしょう。ほとんどの企業では五十五才です。そういたしますと、五十五才になりますとやはり子供も教育を受ける、教育費も盛りである、社宅を追い出されて住宅も建てなければならぬ、こういう人も相当たくさんおる。あるいは就職の場所を変えなければならぬということもある。そういうことで、しかも厚生年金の、一人の生活保護費を基礎にして、そして比例報酬部分をそれに盛っていくというような程度では、全然所得保障方式としては中途半端である。だからこれは、比例報酬部分ともあわせて考えるべきですけれども、これは抜本的に改正しなければならぬ。大体どのくらいにこれを引き上げるというお考えを持っておられるのか、こういう点について方針があればお答え願いたい。
  64. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 御指摘のように定額部分が現在のところ非常に低いということは、被保険者側からも方々から私ども常に言われておるところでございまして、定額部分を上げなければならないという前提は、第一の前提としてとっておるわけでございます。しかし、定額部分をどの程度上げるかということは、いろいろの財源計算をやります関係上、今すぐ幾らまで上げるということは考えておりませんが、しかし次回の厚生年金法改正の際には、主体はどうしても定額部分を相当程度上げるという方向で、これを主体にして考えるということに考えていただいてもまず差しつかえないのではなかろうか、こういうふうに思います。
  65. 大原亨

    ○大原委員 定額部分と比例報酬部分のかみ合わせについては、総合的にどういうお考えなんですか。
  66. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 御承知のように、現在一般男子の場合をとってみますと、定額部分は全体の三四%ぐらいでございまして、報酬比例部分の占める割合は五三%、あと残りの一三%が加給年金、こういうことになっておるわけでございます。これは率を結局どういうふうにかみ合わせるかという問題も、今直ちにお返事申し上げるわけにいきませんので非常に恐縮に存じますけれども、こういう現状の率をやはり検討いたしまして、社会保険審議会の年金部会等で十分検討していく。
  67. 大原亨

    ○大原委員 その定額部分を、たとえば言われているように四千円なら四千円に引き上げましても、比例報酬部分がやはり相当上がって参りませんと、養老年金、所得保障の意味がないと思うのです。その点について言われているように、比例報酬部分について、たとえば国庫負担とかその他は加えない、そういう御見解もあるやに聞くのですが、この点については、端的に質問いたしますが、どうですか。
  68. 小山進次郎

    小山政府委員 これはまだ厚生省部内では結論を出しておりませんけれども、社会保障制度審議会で現在審議をしております総合調整の方向では、今先生仰せになった意見が非常に有力なんであります。思い切って国庫負担は各制度についてふやせばよろしい、ふやす方法としては各制度に定額部分に相当するものを考えて、それに注ぎ込む、報酬比例部分というものには注ぎ込まない、こういうふうな考え方の論議は非常に強いわけであります。厚生省としては、とにかくそういう総合調整結論等を十分得ましたときに考えたい、こういうことで今いろいろの材料を集めている、こういう状況でございます。
  69. 大原亨

    ○大原委員 それで先ほどから申し上げておしますように、働いているときには食えるだけの最低賃金を保障していくということが、国あるいは企業主の社会的責任です。それから退職した場合におきましては、これを社会保障で保障していくということなんですから、やはり相当年数勤続いたしまして後にやめる場合において、定額部分と比例報酬部分をはっきり分けまして、定額部分については国から持ち出すけれども、比例報酬部分については持ち出さない、こういうことでやって参りますと、やはり私は問題が出てくると思う。この点については、厚生省といたしましてはそれに対する方針をはっきりと早急にきめていただきたい、このことを私は強く要望いたしておきますし、さらに、後の機会にこの問題は一つ質問を申し上げたいと思う。  それから給付の開始年令についてお尋ねをするのですが、給付の開始年令は六十才ということになっておるわけです。しかし、経過的に現在五十七才かと思います。これは定年制との関係考えてやっておられるのかどうか。将来の改正については、定年制との関連をお考えになっているかどうか。労働省の福祉課長今お見えになりましたけれども、定年制との関係考えないのかどうかという点を一つ問題点として出して、これに対する見解があれば伺いたい。
  70. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 ただいまのところ六十才の年令を変えるという考え方は、厚生省の方としては考えておらないわけでございますが、定年制との関連は、必ずしも全然ないとは申し上げません。しかし、現在のところは大体六十才くらいで適当じゃなかろうかという考え方で、これを動かすつもりは今のところないのであります。
  71. 大原亨

    ○大原委員 今の厚生年金でやはりこれはすぐ改めるべきであると思いますのは、一定の年限に達しましても、自分が一生をかけて働いた職場を、定年で五十五才ぐらい、六十才ぐらいでやめていく、やめまして後に、厚生年金では食えないから他の職場で働くという場合に、厚生年金をくれないわけです。その職場へ行きましたならば、強制適用でありますから年金をかけておる。年金の掛金をかけているうちは厚生年金はくれない、こういうことになると厚生年金も中途半端である、社会保障も中途半端、雇用の問題にも影響する。死ぬまで零細な収入で、職場にあって掛金をかけている。掛金をかけたかと思うと、最後には積立金をとられる。ほとんどとられるのと同じことだ。国庫に納めて、積立金を利用するのは大きな資本家だということで議論になるわけですが、そういうことになる。公務員共済年金のように若干停止その他の問題はあるが、一定年令がきたら年金を支給する。一生をかけた職場でありますから、そういうことについては、私はぜひとも早急に改正しなければならない、こういうふうに思うのです。一定の年令に達しましたならば、当然支給する。本人の意思によって支給できるような、そういう制度に変えなければ、だんだんと受給者が多くなってくるわけですけれども、大きな社会問題になる。こういう点を指摘いたすのですが、その点、改正の方向について一つ所見を明らかにしてもらいたい。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 先生御指摘のように、現在の厚生年金保険老齢年金は、職場が変わりました場合には支給されないというのが法律の建前になっております。それがわが国の実情から必ずしも適当でない、職場を変えましても低い報酬に甘んじて働くというふうなことで、実情に沿わない点があることは、面々私ども承知いたしておるわけでございます。この辺やはり制度の改正の際に十分検討しなければならない問題だろうと考えておりますが、その場合にどういうふうな方法でやるか、結局任意脱退みたいな形をとって、それで一定の年令に達すれば老齢年金を支給するというふうな方法も、方法としては考えられるわけでございますから、そういった点を含めまして、十分今後慎重に検討して参りたいと思っております。
  73. 大原亨

    ○大原委員 その任意脱退の場合におきましては、定額保障部分や比例報酬部分、そういうものに関係なしに、一定の制度年金額を保障するという制度にしなければいかぬと思うのですが、これは今度労働大臣がお見えになっているときに私は質問したいと思います。官庁その他を含めまして、とにかく定年制が五十五才というふうなことは、七十才が平均年令ですから、これはあり得ないと思うのです。それで給付の開始年令が、公務員と民間とに差があるのはどういうことか、こういうことが一つある。それから定年制の問題と所得保障の問題がある。これをやはりつながなければ、社会保障制度といたしましては、完全に社会的な任務を果たさぬということになる。雇用問題その他において、悪循環を来たすということになる。だから労働省においては、そういう点について、雇用の立場からも、あるいは公務員年金厚生年金との関係の立場からも十分考えなければならぬと考えておられると思う。国民年金給付開始年令は、現在、たとえば日々雇用人々等を含めまして国民年金を適用しておるわけですが、しかし自営業者、生産手段を持っている人の給付開始年令が若干おくれるということは、これは社会的にも理解できる、少しの差があるということは理解できるが、しかし腕一本、すね一本で働いておる人の社会保障制度について、給付の開始年令をどうするかという問題は、雇用や定年制その他の問題と密接な関連をつけて、やはり統一的にやってもらわなければいけない。労働省においては、そういう点は十分検討してもらいたいと思うのだが、準備がなければ準備がないということでいいのですが、そういう点について見解があれば一つお聞かせ願いたい。
  74. 坂本一衞

    ○坂本説明員 その問題につきましては、私所管いたしておりませんのでお答え申し上げかねるのでございます。
  75. 大原亨

    ○大原委員 この点は、あとで労働大臣にも雇用や賃金の問題について一つ究明していきたいと思う。  小山さん、あなたは年金の権威者だが、国民年金の中に生産手段を持つ人、自営業者以外の人を入れておくというふうなことは、社会保障制度としてはどうですか。日々雇用人々雇用関係が明らかでない人は制度上むずかしいと思うのですが、これはどういうことでしょう。
  76. 小山進次郎

    小山政府委員 これは今までにもお話に出ましたように、むしろ当然入れるべきだから入れるというよりも、ほかの方にそういう人々がおさまるような制度が現在ないという事情から、国民の残る人を全部対象として吸収するという建前の国民年金制度に入れるという事情でございます。
  77. 大原亨

    ○大原委員 ところが、医療保障には日雇い健康保険もあるわけですよ。だから私は、やはりそういうふうにしないと問題としては解決しないのじゃないかと思う。これはあとでまたいろいろと議論いたしますけれども、一つ問題といたしまして指摘をしておきます。日本の完全雇用ができていないということが一つの中心ですけれども、しかし老齢保障その他の社会保障をする場合においては、やはり腕一本、すね一本で一生働いた人に対しては、被用者年金に準じたものを適用するということが私は必要ではないかと思う。  それから給付については若干問題がありますが、保険料についてお尋ねしたいのです。やはり原則としては所得の能力に応じてやるということで、生活費に食い入るような、税金に準じた料金といいますか、そういう取り方はしないということを私は原則とすべきだと思うのですが、保険料について、国庫負担の割合の問題を含めて、現在厚生省ではどういう問題を御検討になっておるのか、労使の負担、国庫の負担、そういう原則上の問題につきまして、一括一つ御答弁をいただきたいと思います。
  78. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 いろいろと財源計算をやります関係上、いろいろな要素を考えまして、種々計算を現在継続中でございまして、あらゆる場合を想定しなければならないものですから、ただいまのところ、どういう中身でいくということは、まだ少しここで申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  79. 大原亨

    ○大原委員 まあそれは一割五分の国庫負担を、二割にします、三割にしますと言うたら大蔵省に怒られるから、そういうことは言われぬだろうが、しかしこれは零細な中小企業その他を含めての問題でありますから、そういう点、税金でとるところをとらぬで特別措置しておいて、そして中小企業その他については社会保障的なものも均霑しない、こういうことは国の施策としてはきわめて不合理です。今まで言われておる非難議論が当たるわけですから、これは国庫負担は十分入れていくという方針で、一つぜひとも改正の方向に持っていってもらいたいと思います。  それから私、問題点だけを申し上げるわけですが、スライド制について五年ごとに年金の改善をやるというのだが、スライド制については、国民年金厚生年金を含めて、たとえば公務員恩給、軍人恩給等にはやはり過去の人に対するベース改定もあるわけです。厚生年金のスライド制についてまずお尋ねしたい点は、現在の時点で改正以前の厚生年金をもらっている人に対しまして、貨幣価値が変わったのですから、やはりベース改定の措置を講ずべきじゃないか、こういう点をどうお考えになっておるか、一つお聞かせ願いたい。
  80. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 厚生年金の加入者で、戦後インフレの時期に加入しておられた方に対しては、最低三千円ということになっておることは先生御承知のところだろうと思いますが、やはり最低の部分につきましては、今後の厚生年金の改正の際にも、その辺は十分考えて善処していかなければならないと思っております。
  81. 大原亨

    ○大原委員 そういうような点は、過去にもらっている人に対しましてもスライドをしていく、金額を上げていくという措置をとる、こういうお考えのもとに検討いたしておるというふうに考えてよろしいですね。
  82. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 そういうような方向で検討いたしたいと思います。
  83. 大原亨

    ○大原委員 これは年金局長にお尋ねしたいのですが、このスライド制を検討する際に、国民年金も――福祉年金につきましてもあるいは拠出制の年金につきましても、やはりスライドということが一つの問題になるわけです。これをやらぬと、四十年後に五年間ほど保留しておいて、四十五年後に幾ら出すんだといったってこれはいけないし、それから実際上それを具体的に政府はスライドしていくんだ、その際には物価についても考えるし、貨幣価値の問題についても考えるし、あるいは生活水準の向上ということも考える、こういうことで、やはり現在の時点における年金のシステムを、過去の問題はもちろんですが、現在の問題を含めてはっきりやっていかないと、どうもずっと後のことを考えて貨幣価値がどうなるかわからぬということでは、これはやはり収奪方式だということになる。そういう点については、国民年金については福祉年金制度もある。だからそういう問題を含めて、やはりスライドについての厚生省としてのはっきりした方針を確立しなければならぬ。端的な質問としては、福祉年金なんかもう少し上げてはどうか、こういうことです。そうすると、将来拠出制の年金についても問題の理解の仕方が変わってくるわけです。これは私は最大限努力して上げるべきであると思うのでございます。厚生年金についてもそれはもちろん同じですけれども、国民年金について関連して、いかがですか。
  84. 小山進次郎

    小山政府委員 国民年金については、かねがね申し上げているように、必ずこれを調整していくという原則が法律にきまっているわけであります。それで具体的な内容は、国民年金の将来計画の中で明らかにするわけであります。基本的な考え方は、国民年金審議会の委員といろいろ御相談をしている際に、ほぼ固まっているわけであります。一つは、五年ごとに改定をしていくとしましても、これは必ず、年金額引き上げがあれば、それまでの期間についての問題が出るはずであります。それまでの期間については保険料の積み立てが不足しているわけでありますから、この部分をどうするかという問題があるわけでありますが、この部分については、かりに既往の分について保険料の積み立てが少なくとも上がったものとして年金額を計算する。従って、被保険者である期間については、常に一番最後にきめられた年金額というものをもとにして年金を出していく、こういうふうな原則をとるということがきまっているわけであります。  それからもう一つの問題は、先ほど先生が明瞭に区別しておっしゃったような、すでに年金受給権が発生して年金をもらっている人々が、その後における年金引き上げとの関係においてどう処理されるか、こういう問題であります。この問題については、やはりできるだけその後における引き上げに対応して上げることが望ましいと思いますけれども、この点については、財源をどうするかということが一つの大きい問題になろうと思います。ただ大まかに言えますことは、私どもこの問題は何か積極的に考えていきたい、しかしその場合の財源の始末を、そのときの被保険者集団に全面的に負わせるということはどうも無理がある。少なくとも国家公務員について、過去の分についての引き上げを国が全面的に見るということであるならば、国民年金厚生年金についても、一般の国庫負担と違った一つの理屈というものが、これに適用されていっていいのじゃなかろうか、こういうふうな考えを持っておりますけれども、どういうふうな原則でそれをまとめていくかということについて、まだはっきりした考えがまとまっていないので研究をしておる、こういう状況であります。  それからスライド問題については、先生方にしょっちゅうおしかりを受けるわけでありますが、私どもの率直な気持を申し上げれば、厚生年金についても、国民年金についても、実はまだ日本の年金制度は、スライドをどうのこうのという論議をする以前に、もっと根本的に解決しなければならない問題があるのじゃないかという気持が非常に強いのであります。スライド問題というのは、元来どうやら体をなす程度年金額が引き上がった場合において、その価値を維持するという非常に大きい意味があるわけであります。ところが先生御指摘のように、厚生年金にしても国民年金にしても、まだそこまでいっていない。その意味において、まずこの厚生年金国民年金も、たよるに値する程度年金額引き上げ、それに応じてスライド問題もさらに技術的に考えていきたい。このスライド問題は、先生も御承知のように、非常にむずかしい問題でございます。世界のどんな国の年金制度におきましても、これを技術的にきれいに解決しているというところは非常に少ないわけでありますが、そういう意味で研究して参り、それから福祉年金の問題については、先日大臣も申し上げたのでありますが、一つ積極的に引き上げの方向は頭に置いて検討をいたしたいというつもりで、いろいろ準備を進めておるという状態であります。
  85. 大原亨

    ○大原委員 厚生年金のスライド制について、過去に給付が開始されて現在もらっておる、そういう人のスライド制を考えるということでございますが、しかし厚生年金について、制度としてスライド制をもう少し具体的に保障するということをやらなければいけないのじゃないかと思うのです。厚生年金は安定しているいないといったところで、年金局長も言われたように、これはだんだんと雇用労働者が拡大をしていく一方なんです。日本の産業構造の変化から見ても、その一方なんです。だからそれは大事を踏んで、できるだけ積立金を多くして、それの活用まで考えてやるといえば別なんです、そういう収奪方式なら別です。目的が別なら別だけれども、この問題は、スライド制を当然考えていかなければ、やはり厚生年金といたしましては制度的に不備である。この点を一つ改正にあたっては十分考えていただきたい。過去のスライドと一緒に、制度的なスライド制を保障するようにしていただきたい。この意見を申し上げておきます。  その次には積立金の問題でありますが、現在厚生年金の積立金、国民年金の積立金は幾らありますか。三月末の推定でけっこうです。
  86. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 厚生年金が五千四百億円であります。
  87. 小山進次郎

    小山政府委員 国民年金の方は、大体今二百六十億程度になっておると思います。
  88. 大原亨

    ○大原委員 厚生年金は五千四百億円という莫大な積立金でありますけれども、厚生年金国民年金とも、この積立金の自主運用ということを前大臣以来強く主張しておられたわけであります。その自主運用についての厚生省方針は、基本的にどうなっておりますか、お伺いいたします。
  89. 小山進次郎

    小山政府委員 厚生省がこれらの年金制度について自主運用を主張いたしましたのは、中身の方から申し上げますと、こういう年金というものは、国民生活に直結した使途に活用されなくちゃならぬ。それからこういう年金の運用に、それぞれの制度の立場というものが十分反映されなくちゃいかぬ、こういうことが基本になって自主運用を主張したわけであります。そういう考え方に沿いまして、大蔵省その他関係省とここ二年来いろいろと協議を重ねまして、方向としては、そういう方向への改正を行なってきたわけであります。財政投融資計画を作ります場合において、使途別分類を制度的に明瞭にするということを、法律を改正いたしまして、これはすでに昭和三十六年度分、三十七年度分について実行しているわけであります。また、そのうちで特に還元融資の趣旨をはっきりさせるという意味におきまして、一部は地方公共団体を通ずる地方債に、一部は直接貸付をするという意味で、年金福祉事業団を作りまして、そこを通じて資金を運用していく、こういう方向でやっているわけでございます。  なお、残った問題としては、こういう趣旨をさらに一段と進めるために、資金運用部の中に年金特別勘定とでもいうべきものを設けて、この仕組みをさらにはっきりするようにしょう、こういうような考えを持って、大蔵省と技術的な点についていろいろと研究を続けて折衝しておる、こういう事情でございます。
  90. 大原亨

    ○大原委員 厚生年金の五千四百億円の運営の内訳がわかっておりましたら、その点を御答弁願いたい。
  91. 小山進次郎

    小山政府委員 この五千四百億全部についての中身というのは、今のところ特に取り分けがたいのでありますが、先ほど申しましたように、昨年から使途別分類を明瞭にすることにいたしまして、毎年、厚生年金の積立金の増加分と、国民年金の積立金の増加分と、これに国家公務員共済組合の委託金の増加分、これを合わせまして年金資金としてくくって明らかにしておるのであります。昭和三十七年度におきましては、これが千八百五十億の予定でございます。このうち、厚生年金が千三百二十億、国民年金が四百億、その他が国家公務員共済組合年金分と船員保険が若干ございます。これら全部を合わせましたのが千八百五十億であります。この千八百五十億のうち、千四百十一億が住宅、生活環境整備、厚生福祉施設、文教施設、中小企業、農林漁業というような、国民生活に直結をした使途に使われることに予定されておるのであります。  内訳を申しますと、住宅が三百二十八億、生活環境整備が二百四十億、厚生福祉施設が二百六十三億、交教関係が四十六億、中小企業が三百六十億、農林漁業が百七十四億であります。それから、残りの四百三十九億が国土保全とか災害復旧、道路、運輸、通信、それからおくれた地域の地域開発、これに充てられているのであります。従って、明年度においても、厚生年金国民年金の積立金は、われわれ制度関係者から見て、十分納得のいく使途にだけ使われるということが、制度的に保障されるということになっているのであります。
  92. 大原亨

    ○大原委員 これはこまかい問題のようですが、たとえば運輸、通信というのはどういうことですか、どういうところに使われるわけですか。
  93. 小山進次郎

    小山政府委員 これは鉄道とか通信関係、電信電話、そういう方面でございます。
  94. 大原亨

    ○大原委員 私どもは、この問題については前の厚生大臣のときにもしばしば言っておりましたが、これだけは全然別途な会計でやる。まあ公務員共済年金の方は、全体の金額からいえば、ここに出てきている年金勘定からはきわめて少ない、これは各省においてそれぞれ自主運用をやっていると思うのであります。厚生年金国民年金もこういうことでどんどんやる、間接的にいえば、社会保障関係に全部還元するのだということになるわけでありますけれども、しかし、できるだけ直接的な還元の方向に中身を改善する、一歩譲って特別勘定にいたしましても、そうすべきだと思うのであります。これは自主運用という基本線についてはさらに強力に進めてもらいたいと思いますが、厚生大臣の御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  95. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 資金の性質から申しましても、被保険者を初め、国民に密着した施設の方にこの資金を運用いたしたいと思うのでございます。その趣旨でもって今日までやってきているわけでございますが、私は、大体その方向において物事が決定せられておるように思うのであります。直接被保険者関係するものというふうなお考えでございますが、もちろんこれを優先すべきものであると私ども考えます。ただ、全体の資金を、そっくりそのままそちらに向ける必要も現段階においてはないのではないか、かようにも考えておる次第でございます。できるだけそういう方向に活用いたしたいと存じております。  なお、前から問題になっております特別勘定の設定の問題は、今政府委員が申しましたように、大蔵省との間でいろいろ検討をいたしておりますが、現実の面におきましては、大体私どもの考え方の方向で物事が決定せられておるように存じております。
  96. 大原亨

    ○大原委員 今の年金福祉事業団の運営ですが、それは本年は幾らで、大体事業といたしましてはどういう方面に使っているのか。こういう年令福祉事業団のそういうワクと大まかな点について、御答弁をいただきたい。
  97. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 年金福祉事業団の本年の資金ワクは五十億になります。そのうち病院関係につきましては資金ワク十七億、それから厚生福祉施設関係ということで、資金ワク三十三億を予定してやるようになっております。
  98. 大原亨

    ○大原委員 来年度はどういう計画ですか。
  99. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 三十七年度の計画につきましては、総資金ワクは百五十億、そのうち住宅関係につきまして七十億、病院につきましては三十五億、厚生福祉施設が四十五億、こういう内訳になっております。
  100. 大原亨

    ○大原委員 その住宅関係で、前々からいろいろ議論になっておりまして、いろいろと御協力いただいておったと思うのですが、労働者住宅その他の問題につきましても、これは当時議論されました方向で処理されておると思うのですが、来年度はどういうふうに大体扱っておりますか。労働金匠その他を通じてやった……。
  101. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 現在まだ建設省の方とも相談をいたしておることで、最終的な結論には達しておりませんけれども、大体従来の先生方おっしゃっておったような方向で処理するようになると思います。
  102. 大原亨

    ○大原委員 この点も御協力いただいておるのですが、日雇い労働社福祉協会という福祉法人を設立いたしましてやるということの要望が出ていると思います。その点につきましていろいろ議論があったところだと思うのですが、この点につきましても、還元融資の精神に従って十分理解を持って運営してもらいたい、こう思いますが、いかがですか。
  103. 小山進次郎

    小山政府委員 この問題につきましては、私かねがね最も心も使い、悩んでいる問題の一つであります。何とかこういういい計画は助長したい。しかし何分信用という点になると、いろいろこれは金融上の問題がある。これは率直な話でございます。いずれにしてもよく研究をして運びたい、かような考えでおります。
  104. 大原亨

    ○大原委員 やはりこれは積立金の運用でありますから、借り倒れをしていいというわけはないわけです。しかし、とかく事業体ということになりますと、いろいろな点を考慮し過ぎまして、目的を達しないということもあるわけであります。従って、この問題については、相当御理解の上で御協力いただいておると思うのでありますが、今後とも一つこの点につきましては、国民年金の零細な人々から出ている――あるいは免除の制度がありましても、やはりそれに対しては国庫の負担を盛る、こういう精神から、一つの社会問題に対しましては公平な立場でやっていくというこまかい配慮をする、そういう精神から、さらにこれにつきましても御協力いただきまして、そういうようにやることが政治を偶々まで浸透させることでありますから、その点につきましては御理解をいただきたいと思うのです。この点は私、特に要望しておきます。  それから大臣に、総合的に一つ……。厚生年金の問題につきましては、これは非常に大きな問題です。かりそめにも官尊民卑とか、役人やその他お互いが手盛りでいいことをしているということであってはならぬ。それから雇用問題や賃金制度の問題や、非常に大きな関係の問題であります。一ぺんに飛躍するということは、いろいろむずかしい点はあると思うのですが、しかし、この問題については相当大きな問題として、厚生年金の改善は、国民年金の改善とともに大きな問題として、一つ大臣といたしましても留意していただいて――これから改正問題が議論されます最も大きな問題になるわけであります。最も重要な時期でありますが、この点につきましては、前回並びに今回いろいろと指摘をいたしましたので、これらの議論等も十分お考えいただきまして、一つ厚生大臣といたしましても最大の努力をしていただきたい、こういう点を要望いたしたいと思いますが、御決意のほどを……。
  105. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話の通りだと私も思うのでございます。厚生年金の改善をし、充実をする時期が参っておると思うのでございますので、そのつもりでこの問題と取り組んで参りたいと思います。お話のようになかなか問題点を含んでおります。一つ一つの問題点が重要な、しかもかなり困難な問題ではないかとも思うのでございますが、各方面の御意見等も十分参酌いたしまして、妥当な結論を得てこれを推進いたしたいと思います。
  106. 大原亨

    ○大原委員 この際私は関連してお聞きいたしておくのですが、御承知のように、国民健康保険連合会職員地方公務員共済年金を適用してもらいたいという要望があるわけです。これに類似いたしました制度といたしましては、農協の共済年金や私立学校の共済年金等があるわけでありますが、これはやはりいろいろな問題があると思います。しかし、同じ職場で国の事務を委託を受けたような格好でやっている人が、厚生年金があまりにも貧弱なために職場が安定しない。賃金についても公務員並みあるいはそれ以下、こういうことでありますから、それでは職員要望にこたえるゆえんではないと思う。今まで例がある特別の立法をされる等いたしまして、一つ改善の措置をとっていただきたいと思うのですが、これにつきましてはいかがですか。次長、あなたに答弁してもらうと反対の答弁をするから、だれか自治省……。
  107. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 前々から、この問題、非常に御要望が熾烈であることは、私ども十分承知いたしております。いろいろと検討いたしておるわけでございますけれども、しかし現実に――地方公務員共済制度といいますのは、厚生年金に入っておらない方々が、つまり現在恩給条例その他でやっておられる方々が、地方公務員共済という一つの総合的な制度としてまとまるという話でございますので、これはこれなりにまた理由はあると思いますけれども、現実厚生年金に入っておられる方が、その制度から抜け出してほかの制度に移るということになりますと、先ほど来申し上げましたように、厚生年金保険の充実と改善の強化ということを当面の目標として厚生省としては馬力をかけてやっております関係上、やはり制度的な根本の問題にぶち当たる問題でもございますので、厚生年金給付内容の改善をやるという中で、ぜひ解決をしていきたいというふうな考え方を持っております。特別な制度を作るということにつきましては、現在厚生年金に入っております他の関係の方々とのバランスもございますので、私どもとしては、にわかに賛成するということはできないわけであります。
  108. 大原亨

    ○大原委員 今のような答弁では困るわけであります。厚生大臣、その点は現実的な配慮をしなければならぬ。決してブレーキをかける意味じゃなしに、現実的な配慮をするということも必要であります。やはり職場やそういう周辺の事情に応じて、現在あなたが意気張っているように、厚生年金をやりますというようなことを言って、それで全部逃げてしまうということは不届きしごくでありますが、厚生大臣、その点は国務大臣として配慮して、現実的な解決の方向をとっていただくようにやってもらいたい、社会保障の前進のために、これはいかがですか。
  109. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、前の質問者の永山さんからも非常に熱心なお話がございまして、御主張になるお気持はよくわかるのでございます。ただ、今政府委員からお答え申し上げましたように、実は厚生省としては、率直に私の気持を申せば、ジレンマに陥っておるような気持がいたしております。今後の社会保障制度の前進、また現在の各種の保障制度の間の総合調整ということが、厚生省の大きな課題になっておるわけでございます。その関係において考えます場合に、たとえば国家公務員でありますとか地方公務員でありますとかというふうな、一つのはっきりしたグループについての保障制度というものとの間の総合調整という問題が、一つ残されておるわけでございます。これが大きな課題でございます。ところが現在、厚生年金に入っております人たちが、市町村共済組合ができるということで、抜けて出るということになりますと、これは現実厚生年金そのものがもっとよければ、こういう問題もあるいは起こらずに済むという問題でありますので、そこに私どもも悩みを感ずるわけでございますが、似たようなことだということであれこれ出ていくということが、だんだん拡張して参りますと、結局いい方へ何とか理屈をつけて入っていくということになる。そういう気持が起こるのももっともだと思います。思いますけれども、そうなって参りますと、せっかくこれからよくしていこうという厚生年金制度の方が非常にさびしいようなものになってくる。そこにジレンマに陥っているようなわけでございまして、先ほど私は永山さんのお尋ねに対しましてお答えしたのでございますが、実は私としてまだ決断がつかないような心持でおるわけでございます。お話しになるお気持もよくわかるわけでございますが、同時に、こちらの気持一つお察し願いたい、こういう気持もあるわけでございます。要するに、私としまして、まだどちらに踏み切るかという結論を持っておりませんので、さらに検討さしていただきたいと思うのであります。
  110. 大原亨

    ○大原委員 気持はわかるのですけれども、気持だけで納得できない点は、持っていったから厚生年金の方が悪くなるということはないわけですし、そういう理屈はないわけです。厚生年金の方もよくするし、現在ある年金に対して、それに類似した集団に対しては、同じような機会の均等を与えるということも矛盾ではないわけでございますから、これは意見といたしまして申し上げておきます。まだ幸か不幸か決断されておりませんから、一つその点をお考えいただくように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  111. 中野四郎

    中野委員長 田中織之進君。
  112. 田中織之進

    ○田中(織)委員 今議題になっております児童扶養手出法案に関連をいたしまして、伺いたいと思うのであります。  児童扶養手当も、昨年度に比べれば六倍の増額になっておりますし、児童保護費その他の関係についても若干の増加を見ていることは非常にけっこうなこと、だと思っておるのでありますが、時間の関係もありますので、端的にお伺いをいたしますけれども、聞くところによりますと、厚生省の方では、神奈川県の田奈の旧陸軍の火薬庫跡に、中央児童厚生施設と銘打って、子供の国というようなものの建設計画が進められておるということでございますが、元の陸軍の火薬庫でありまして、終戦後占領軍の火薬庫として最近まで使用して参りましたものを返還された直後で、かなりの火薬類というようなものもまだ付近には残っているのではないかというような物騒な地点に、中央児童厚生施設と銘打ってこれらの施設を進めるという場所の選定についても、私、問題があろうかと思うのであります。その計画を進められておりますが、その予算関係は、私は手元には三十七年度予算説明の主計局からのごく概括的なものだけしか持っていないのでありますが、児童福祉施設整備費の五億四百八十三万円、この中にその関係の費用が含まれているのかどうか、その点をまずお伺いをいたしますと同時に、田奈の子供の国計画というようなものが、どういういきさつで、今日どの段階まで進展してきているか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  113. 黒木利克

    ○黒木政府委員 中央児童厚生施設につきましては、一昨年七千万円の予算化ができまして、明年度におきましては一億円の予算を概算要求中でございます。この内容はおもに土地の整備費及び外さくの費用等でございまして、これは児童福祉施設とは別途に予算の費目を設定いたしております。  なお、進捗状況でございますが、一応先ほど御指摘がございました、神奈川と東京にまたがる田奈地区の弾薬庫の跡が三十万坪程度ございまして、子供の施設としては最もふさわしい、特に自然の風致から見まして、都会の雑踏を免がれて、子供のすこやかな遊びの場所としては最も適当であろうというふうなことで、土地の選定をいたしたのでございます。しかし、御指摘のように弾薬庫の跡でございますし、弾薬の埋蔵したものもあるというような事情から、これが整地と弾薬の処理につきましては最も重点を置いたのでありますが、先ほど申しました今度の一億七千万円の予算のうちで、相当部分を弾薬の発掘及び処理の費用に充てるというようなことで、現在弾薬処理を進めておる最中でございます。大体明年の五月までには一部の施設を整備いたしまして開放するというようなことで、現在工事を進めておる最中でございます。
  114. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私もある程度事情を調べてきたのでありますが、昭和三十五年に七千万円計上したということでありますけれども、発端が、厚生省としてこういう中央児童厚生施設として作らなければならぬということから出発をしたのではないのでしょう。われわれの聞くところによると、これは先年皇太子が結婚されて、その皇太子の御成婚記念事業として、民間でこういうものを作ろうという計画で若干寄付金が集まった。当初は相当ばく大な寄付金が集まる予定であったが、案外金が集まらないので厚生省に持ち込んだのだ、こういうことが言われておるのですが、その点のいきさつはいかがですか。
  115. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は岸内閣の当時、児童の健全育成を積極的にはかる必要があるというような意味の名目で、児童の健全な育成のための厚生施設を作るというようなことで予算が七千万円計上されたのでございます。その後土地の選定等でいろいろな案がありまして、結局田奈に落ちついたわけでありますが、その間皇太子の御成婚の記念のいろいろな事業がありまして、それをこちらの方の中央児童厚生施設の設置に合流をして子供の国を作ろうということになったのでございまして、発端は児童の健全育成のための厚生施設ということでございます。
  116. 田中織之進

    ○田中(織)委員 児童局長はそういうふうにお答えになるわけなんですけれども、これは皇太子の御成婚記念事業として民間の寄付が発端だった。ところが番付金も思うように集まらないということで、厚生省で国の施設としてやるということに持っていったということが、関係者の間でもっぱら評判になっておると思うのです。皇太子はやがて憲法による国の象徴になられる人でありますから、その結婚の記念事業をやられることはあえて反対はしませんけれども、しかしそれはそれで、民間の人たちが、たとえば皇居前に噴水を作るとかいうことも、産経新聞関係者を中心に多額の寄付金を集めてやられた。ところが国の児童のための施設だということでやるということになれば、そういうような特定の人の結婚記念事業などと結びつけた形でやることになれば、これは天皇家が政治に関与しないという憲法の建前から見ても、天皇家自身御迷惑になることじゃないかと思うのです。そういう点から見れば、私はこの事業の発端そのものに相当疑問を持っているのです。ところが一部開園は来年の五月五日だということでございますけれども、この完成するまでの費用はどの程度予定されておるのか。聞くところによると、今この児童厚生施設の整備費とは別に、三十七年度は一億円を計上しておる。三十六年度のことについてはまだ承っていませんけれども、三十五年度が七千万円なら三十六年度も何がしか計上しておるのだと思う。それは何のための費用かということの御説明もいただきたい。来年の五月一部開園というのはどの程度のものが開園するのか、そのための費用は一億円の予算で十分なのか、また最初の振り出しになったような形で民間からの寄付を――何でも雪印乳業が幾らだとかあるいは明治が幾らだとか、これも必ずしも厚生省に無縁ではないような事業会社が、相当多額の掛付金をいたしたというのが世間へのふれ回りなんです。実際にやられるかどうかわかりません。そういう不確定なものを見込んだ関係で、国が大枚一億という金を入れて国の卒業としてやるということになれば、そういう民間からの野付は内部の施設の備品とか、そういうようなものに振り向けても、やはりこれは国の事業だという形で、すべての国民に――その意味で、地域的には東京なり神奈川なりの子供たちに限定されるかもしれませんけれども、あるいは関東における名所の一つになって、地方から来る子供たちも遊びに行くとか、出かけられないことはないと思うのです。そういう事業予算の関係というようなことについて、もう少し詳しくお聞きしたい。
  117. 黒木利克

    ○黒木政府委員 子供の国は国民的なものにしたい。従って、政府はもちろんのこと、都道府県及び民間の団体、広く国民に呼びかけまして、国民的な事業として完成をしたいという方針でございます。そこで、政府の担当する部門は、土地の整備あるいは基礎工事的なものに主眼を置きまして、屋上のいろいろ子供の利用する施設等につきましては、自治体なりあるいは民間の団体なり、あるいは市民一般の協力を仰ぐというような構想で進めておるわけでございます。なお、本年度予算措置はないのでありますが、これは土地の選定等に手間がかかりまして、土地の選定がようやく昨年の末にきまりました関係で、本年度の予算措置はとられていないのであります。なお、明年度の一億円の内訳でございますが、主としてこれは土地の整地工事、外さくの工事及びその他の付帯工事等が主でございます。
  118. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そういたしますと、三十六年度は予算措置を講じていないということでありますが、これを完成するためには、大体どの程度の費用がかかるというお見込みでございますか。
  119. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これが構想につきましては、中央児童福祉審議会の中に中央厚生施設の部会を設けまして、各専門家の方あるいは民間の方たちにお集まりを願いまして、いろいろ検討したのでありますが、一応十年くらいかかってもりっぱなものを作ろうというようなことで、大体二十億くらいの総経費が必要であるというような構想がまとまっております。
  120. 田中織之進

    ○田中(織)委員 全体で十年計画くらいで二十億円くらいをかけて作られる以上、りっぱなものを作られることは賛成します。ところで、その二十億円のうちで、局長の答弁を伺っておりますと、国が負担する部分は土地の整地、この土地は大蔵省から何か一時借用という形で約三十万坪を借り受けてやるということのようでありますが、整地及び基礎工事の部分だけでということになると、三十五年度の七千万円、それから三十七年度の一億円ということになると一億七千万円程度で、あとは、今の御答弁によりますと、地方公共団体あるいは民間の一般寄付、先ほど大原委員からもなにしました厚生年金事業団からの借り入れ、こういうような関係で約十七、八億円のものをまかなう予定ですか。
  121. 黒木利克

    ○黒木政府委員 さようでございます。
  122. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そのうちで、来年の五月五日の一部開園というのは、どの範囲のことを計画されておるのか。その関係の費用は、今までの一億七千万円を国から支出するほかに、たとえば厚生年金事業団から三十七年度において幾ら借り入れる、あるいは地方公共団体の負担してもらう部分がどれだけで、来年の五月五日一部開園するまでの費用は、二十億円のうちで五億円になるのか、ないしは十億円になるのか、その点は一億円の予算をつけた以上は、計画の輪郭というものがあるだろうと思うのですが、その点はどうなっておりますか。
  123. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これが計画の推進につきましては、政府と民間の合同の建設の推進委員会というものを作りまして、ここでいろいろな具体的な計画なり、あるいは民間なり自治体との協力の問題についていろいろ作業をやっておるのでありますが、この地区はA、B、C、D地区というふうに分かれておりまして、目下A地区とC地区の整地工事をやっておるのであります。これが五月末日までには大体においてめどがつくであろう、そのうちC地区につきましては、ここを牧場的なものにしようということで、ある会社からの申し込みがありまして、先ほど申しました建設推進委員会でいろいろ御審議を願いました結果、これが寄付の受諾はしてよろしいであろうというような決定を見まして、大体一億程度の寄付によりまして、C地区の整備が来年の子供の日までにはでき上がるということでございます。それからA地区の方が主としてこの地区の中心になるわけでありますが、ここに先ほどお話の出ました皇太子の御成婚の記念の寄付金がありますので、これを中心にいたしまして何か集会場的なものを作ろう、これもまだ設計なりあるいは必要な財源措置は十分にはできていないのでありますが、大体の構想としては、少なくとも今年じゅうには、これが集会場等の構築に着手をしようというようなことでございます。従いまして、C地区の一部開園ということは来年は期待ができますので、そこを開園の中心に来年度はしようというような計画でございます。
  124. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大体来年の五月五日までに一部開園するという構想はわかったのですけれども、開園するまでの関係の事業経費というか、そういうような関係の予算的な数字的なものが、御答弁では明確に私にはつかめないのであります。一部は国の費用あとは厚生年金事業団からの借り入れ、地方公共団体の寄付金あるいは一般からの寄付金、またおっしゃるようにC地区を牧場にするという関係から、何かそういうような関係のある会社から、一億円ですか、何か寄付金を受けるというような関係でやられるという形については、国民的なものにしたいという点から、国民各階層からのそういう経費の負担というものも、そういう意味から見れば理想的なものかもしれませんけれども、やはり国が主体になってやるという形では、半ば半官半民的な形だけれども、どうも割り切れぬものが実はあるわけなんです。そういうことであれば、これはたまたま児童関係でありますけれども、ほかの関係においても、かりに民間でそういうような計画を立てれば、やはり厚生省なりその他の政府機関が、それに相当な予算の裏づけをしてこういう事業が進められる。いつかこの委員会で部落対策の問題について質問をしましたときに、所管が違いますけれども、文部省関係で、西本願寺の関係で同和教育センターというものを作った。これは、いわば憲法では、宗教団体には補助金等は出せない建前なんですね。ところが財団法人というものができている。これは同時に、たとえば私学に対しても、国が補助金は出せないのですが、しかし私学直接じゃなしに、私学振興会という新しい法人を作って出しているという実態がありますけれども、この場合には、政府と民間と一体になった事業主体というものも、まだ明確ではないんですね。今の予算書の関係から見ると、国が主体の関係ですから、そういう事業主体については、何か別に法律でも出して、今はやはりの事業団というようなものをまたお作りになる考えなんですか。その点はどうなんですか。
  125. 黒木利克

    ○黒木政府委員 いろいろ将来の内部的な計画はございますが、まだ発表するまでの段階には至っていないのであります。しかし、とりあえずこの土地の管理事務がございますので、この管理事務は、当分の間横浜市に委託をするということは決定をいたしております。将来の問題としましては、特殊法人でやるか、あるいは国が直接やるか、あるいはそのような自治体に管理を委託するか、まだはっきりした方針は、政府としてはきまっていないわけであります。
  126. 田中織之進

    ○田中(織)委員 もしここに新しい事業団でもこしらえてやるということであれば、私は、やはり一億という意味から見れば、予算書の概要の説明の中には出てきていませんけれども、千万単位の金でも、たとえば児童保護費の関係等においては、たとえば産休代替保母費というようなのは二千五百四十万円です。それでもやはり一項目として抜き出しているのです。ところが中央児童保護の厚生施設の関係は、大枚一億という金でも概要の中には出てないのです。もちろん明細の要求の中には、二十九番目の項目の中に出てきていますけれども、そういうことになると、やはり事業主体というものを明確にさせなければ――この予算は衆議院は通って、一両日中に成立するわけなんですけれども、そういう点から見て、私、ちょっとあいまいだと思うのです。  そこで、先ほど御答弁になりました建設推進委員会というのは、委員長はどなたがやって――何でも、聞くところによると、これに国会議員も若干関係しているようなことと聞くのですけれども、そういうような関係があるのですか、どうですか。その推進委員会のメンバーというのは、どういうことになっておるのか。
  127. 黒木利克

    ○黒木政府委員 委員長が商工会議所の会頭の足立正という方であります。なお委員の方は、それぞれ財界なり言論界なり子供の関係のことに関心のあるいろんな団体の代表の方たちでありまして、国会議員の先生方は委員にはなっていないと思います。
  128. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それでは後ほどまた伺いますが、この推進委員会を民間の人をわずらわしてやっているということになれば、私が申し上げるように、これの管理運営のための事業主体については、予算を少なくともこれだけのものをつけるのですから、やはりその構想は国会の方へお出しになって、その上で予算の承認を求めるということの方が正しいと思う。  そこで伺いますが、最近この子供の国の関係で整地事業か何かだろうと思うのですけれども、入札をなさったということを聞いておりますが、それはこの推進委員会が主体になってやっておられるのですか、それとも、いわゆる基礎工事の部分に属するから、厚生省の直営の事業というか、そういう関係のものとして入札にかけられたのか、その点はどういう事情でありますか。
  129. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほど申しましたように、将来の問題はともかくとして、当分の間は厚生省が直轄の事業としてやる、ただ土地の管理等につきまして、事務を横浜市に委託するという格好で予算を要求しておるわけでございます。なお、土地の整地につきましての入札の関係は、官房の会計課で直接やっておりますので、詳細はあとで会計課長から申し上げますが、厚生省で直接入札事務をやっております。
  130. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほどの御答弁では、三十六年度は予算がついていない、三十七年度の関係は一億ついていますけれども、これはまだ成立していないのです。そうすると、最近会計課でやられた整地事業関係の予算というものは、何年度の予算の分について入札をやられたのか。
  131. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほど申しましたが、七千万円の予算がすでに一昨年できておりますので、それを繰り越しておりまして、その繰り越しの費用で入札をやったものと思います。
  132. 田中織之進

    ○田中(織)委員 三十五年度のやつを三十六年度に繰り越すということについては、国会には成規の手続をとってやられておるのですかどうですか。
  133. 岩尾一

    ○岩尾説明員 大蔵省の主計官であります。三十五年度に成立いたしました予算につきましては、経費の性質上ということで明許繰り越しをとっておりまして、それによりまして三十六年度に繰り越しております。
  134. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうすると、会計課長も御出席願うように伺っておるのですが、いつ入札されて、厚生省の直轄事業だということになりますれば、直轄事業に基づいての正規の工事請負人というような資格を具備したものに基づいて入札をやられたことだと思うのでありますが、そういう点は、たとえば指名入札に参加したところの建設業者の名称、そのうちでも大手の五社とか七社とかいう関係はわかりますけれども、そうでないところも入っているように伺うので、そういう関係一つ会計課長からでもけっこうですから……。
  135. 中野四郎

    中野委員長 田中委員に申し上げますが、会計課長は今外出中で連絡がとれませんので、ただいま契約係長がこっちへ来るそうですけれども、本会議が御承知の通り二時からでありますので、本会議散会後に委員会を開きますから、冒頭御継続願ってけっこうだと思いますが、契約係長まだ来ておりませんので、その点は留保しておいていただいたらいかがでしょう。
  136. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点が明確になれば、あとの点は、先ほど来の質問の形で私の方も意見を申し上げておるので、それではここで保留して、本会議のあとで再開後冒頭に若干の時間をいただきまして、御質問申し上げたいと思います。
  137. 中野四郎

    中野委員長 了承いたしました。  本会議散会まで休憩をいたします。    午後一時五十一分休憩      ――――◇―――――    午後三時十四分開議
  138. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。松山千惠子君。
  139. 松山千惠子

    ○松山委員 私は児童扶養手当改正法案に対して、二、三簡単に御質問申し上げたいと思うのでございます。何分にもふなれで、不勉強な未熟者でございますので、質問点の重複の点などがございましたときは、一つよろしく御了承いただきたいと思います。  本改正案は、率直に言って、他の年金改正案と全く同様に、所得制限の十三万円が十五万円に、月手当児童二人の場合千二百円が千四百円にといった、いわゆる支給制限の緩和と月手当の増額がその全部でございますが、その内容はまことにけっこうというべきでございましょう。しかしそれは、あくまで現行法に対してけっこうだというべきでございまして、その内容には幾多研究すべきものがあるのだと存じます。本委員会でも、すでに先輩諸先生方から、過去幾たびか取り上げられました生活基準の問題、すなわち憲法にいう健康にして文化的な生活というのは、はたしてどのような生活をいうものでありましょうか。これは厚生省はもちろん、専門の学識経験者の方々が、いろいろな社会情勢あるいは財政事情、物価状況など、こまかいデータから割り出された結果、一つの基準が出るということはわかっておりますが、しかしそれが出たといたしましても、国全体の予算から、社会保障にのみ満足が与えられないということもわかるのでございます。しかし、それでほんとうによろしいのでございましょうか、非常に疑問に思うものでございます。少なくとも生きるための最低生活だけは保障されなければならないと思うのです。  そこで、まず厚生省が最近調査なさった一世帯基準家庭、夫婦二人に子供二人とか、あるいは夫婦と子供一人の生計費、第一級地と全国平均、さらには、義務教育課程通学中の児童一人を含むいわゆる母子世帯の最低生計費がもしおわかりでございましたら、御教示をいただきたいと思います。
  140. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御質問にぴったりした資料はございませんが、たまたま昭和三十五年に厚生行政基礎調査というのをやりまして、これで世帯類型別支出階層と世帯人員別に見た世帯の分布の調査がございます。それによって母子世帯と一般世帯の支出の関係の――これは大体収入にある程度見合うと考えてもいいと思いますが、比較を申し上げますと、一般世帯で、たとえば夫婦に子供一人の三人世帯を考えました場合に、千九百九十九円未満の支出が〇・一でございます。それに対して、未亡人の世帯、母子世帯は〇・三でございます。それから三千九百九十九円未満二千円までの同じような数字が、一般世帯では一・四、未亡人の世帯では三・四でございます。それから五千九百九十九円未満四千円までの同じ数字で、一般が四・〇、未亡人の方が一三・六、それから七千九百九十九円未満六千円までのが、一般で六・〇、未亡人の方で一八・九というようなことで、一般世帯に対しまして母子世帯の支出の金額というものは、従って収入というものは非常に少ないということが予想されるのでございます。
  141. 松山千惠子

    ○松山委員 ただいま御答弁いただきましたことによって割り出していきますと、大体の標準家庭の生計費も了解できると思うのでございますが、その生計費は、実はいろいろ個人々々の場合違うと思います。たとえば設備の整った母子寮などに入っている方は、家賃も安くて済むでございましょうし、また普通の間借りなどをして高い家賃を払い、自己の就業のために保育所に子供を預かってもらっているような母子家庭など、その個人々々によっていろいろ生計費も違っていることもわかるわけでございます。  また、母子福祉資金の貸付、自営業の奨励とか、母子福祉センター、母子寮入所など、福祉事務所あるいは民生委員、児童委員、母子相談員等の活躍でもって、それによって比較的恵まれた家庭も中にはあると思いますが、昨年度厚生白書で拝見いたしますと、各種年金別及び使途費目別割合を見ると、母子福祉年金と老齢福祉年金とに区別いたしまして見た場合、母子福祉年金では、飲食費中食糧費が三六・五%酒が〇・一%、これに比べて老齢年金では食糧費が二・三%、酒が三・四%以下母子年金住居費が三・二に対して〇・六、光熱費が母子の〇・九に対して老齢の〇・三、被服費一九・九に対して一二・九、保健費三・七に対して一一・六、教養娯楽に至っては母子の場合にはゼロでありまして、老齢年金の場合が八・九、教育費一五・二に対して〇・六、生業資金三・七に対して一・九以下となっておりまして、これは死別家庭の母子福祉年金でございますが、これが生別の場合は、一般的に死別に対する世の中の同情と生別に対するそれの見方とは、比較にならないものがあると存じます。その生活が、生別母子世帯の場合、いかに苦難に満ちたものであろうかということは、容易にうなずけるのでございます。また、年金別に見た受給世帯も、一万円以下及び一万五千円以下の家庭が圧倒的に多く、もとよりそれらは公的年金もしくはここにいう児童扶養手当をいただいている家庭でございますが、なおかっ、先ほど御説明いただきました最低生活費から割り出していきますと、その生活がどんなに奇しいかということがよくわかるのでございます。  そこで私は、本児童扶養手当に関連して、一言児童手当制度について御質問いたしたいと思うのでございますが、前国会で扶養手当法案が可決いたしましたときに附帯決議をいたしました。その一つに「政府は、児童手当又は家族手当につき、世界の諸情勢を研究しながら将来これが実現につき努力すること。」とございましたが、それを今ここですぐに実現するということではなくても、少なくとも母子家庭はこれをぜひ前向きに検討し、この母子についてだけでも児童扶養手当にかわる児童手当を実現し、いわゆる所得制限を全廃してもよいのではないか、このように考えられるのでございますが、御当局のお考え方はいかがでございましょうか。
  142. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほどの御質問で、母子世帯の生活が非常に苦しいということを前提にしてのいろいろな御意見がございましたが、実は昨年全国母子世帯調査というのをいたしまして、その結果がわかっておりますので、御参考までにちょっとつけ加えさせていただきたいと思います。  現金収入が月額一万円未満の世帯が、昭和三十一年、五年前には四八%でございましたものが、昨年の調査では二三・七%に減っております。それから現金収入が一万円以上の世帯が、三十一年は五一・三%であったものが、昨年は七五・三%にこれはふえておるというようなことで、いろいろ所得倍増計画の効果もあったと思いますが、母子世帯のいろいろな努力、あるいは政府の母子施策の進展によりまして、このようないい数字が出ておるということを申し上げておきます。  それから御質問の児童手当の問題でございますが、児童扶養手当の御審議のときの附帯決議の趣旨もございまして、できるだけ早くすべての児童に対してすこやかに育つにふさわしい手当制度を実施したいというようなことで、昨年の六月にこのための特別の部会を中央児童福祉審議会の中に設けまして、今までに九回ほど御審議を願っておるのでありますが、近く何らかの成案を得て御検討に供したいと存じます。
  143. 松山千惠子

    ○松山委員 ただいまの御答弁によりましても、関係者の皆様の御努力によりまして、次第にその生活状態が向上しつつあることは、ほんとうに喜びにたえないところでございます。この児童手当制度は、雇用対策の問題や、あるいは大中小企業の相違とか、賃金制度の問題であるとか、あるいは所得保障の問題でございますとか、そういったことから最近さらにいろいろと重要な面を加えてきておるわけでございますが、ただいま御説明いただきました中央児童福祉審議会においてもその児童部会を設けて、それについて御審議を進めておられるとかねて聞いておりましたけれども、すでに今までに九回にもわたって審議がなされているとのことで、この点非常に御同慶にたえない次第でございますが、これに対して、まだ何か具体的な御発表をいただけるようなところまではいっていないのでございましょうか。
  144. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は児童手当の問題というのは、非常に関係するところが広いのでございます。たとえて申しますと、現在いろいろ児童に対しまする施策がございますが、たとえば賃金における家族給との関係をどうしたらいいか、あるいは現在やっております母子福祉年金国民年金との関係をどうしたらいいか、あるいは最低賃金制度との関係をどうしたらいいか、児童加給を対象とする厚生年金とかいろいろな制度がありますが、その関係をどうしたらいいかとか、いろいろ各般の制度との関連がございまして、これをやはり一々解明をしなければ制度の立案はできないわけであります。それから肝心の児童手当制度の目的を一体どこに置くかということにつきまして、外国の例でもいろいろございまして、特にわが国では賃金の形態がだんだん年功序列型から職務給に移行していく、従ってそれに応じてやったらどうかという意見、あるいは子供が多くあるということが貧困の原因であるから、子供が多くなればなるほど生活が苦しくなる、そこでそれを解決するために児童手当制度をやるべきではないかとか、あるいは児童の権利宣言と申しますか、児童の福祉のためにすべての児童に対してそれをやるべきであるというような、大きく分けまして三つの目的があるのでありますが、それぞれの目的に意義がございますが、わが国では一体何を主たる目的として手出制度を立案すべきかという目的に関しまして、なかなか意見が一致しないのでございます。  そこで第一に、この児童手当制度の目的をどこにきめるかということをまずきめていただいて、その後におきまして、他のいろいろな現行の制度あるいは将来のいろいろな関連制度との調整をどうするかということをめどをつけまして、立案に当たりたいと思っておるわけでございます。しかし、先ほど申しましたように問題が非常に複雑でございますから、こういうことをいろいろ徹底的に解明しておる間には相当な時間がかかる。そこで一応たたき台として検討する一つの手段として、何らか一応事務的な案でも作って、それに基づいていろいろ目的をきめたり、あるいは諸御度との関連を調整していくというような作業の方が、進め方としてはいいのではなかろうかということになりまして、近く私たちだけの事務当局案というものを作りまして審議を進めて参りたい、進捗して参りたいというような手はずにいたしている次第でございます。
  145. 松山千惠子

    ○松山委員 外国における例をちょっと拝見いたしますと、一九五八年までに、すでに三十八カ国もこの児童手当あるいは家族手当が実施されていると聞いております。それから今日までに、各国においてば、またさらにその面で拡張充実されたと想像されるのでございますけれども、少しも早くわが国におきましてもこうした制度が確立せられまして、生別、死別を問わず、よりどころのないこの母子家庭に、少しでも明るい将来をもたらすことができるような制度の実現を心から――私自身も、物質的には幸いそうした立場にいないのでございますけれども、精神的にはそうした家庭の方々と同じような状態にあるものでございまして、一日も早くそういう明るい将来を望むことができますような制度を、関係当局の御努力をわずらわして実現していただきたいと思っております。それを御要望申し上げて、簡単でございますが、私の質問を終わります。
  146. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ちょっと関連して。この児童扶養手出が初めて創設されましたときは、離別された子供たちということがねらいでございましたが、最近になりますと、いろいろな雑誌に、この児童扶養手当は二号さん奨励かというような、少し皮肉な記事も見かけるのでございます。もちろんそれが二号さんの子供でございましょうとも、その子供に罪はないのですから、これはあたりまえのことだ。社会保障という大きい面から見ましたら、そういうことは、子供という立場からは私は問題はないと思うのでございますが、そういうふうな非常に皮肉った記事を見ますと、何と申しましても戦後日本のそういうふうな、いわゆる性的な解放というものが非常な勢いで、私ども年のいった者から見ますと、おそろしいような状態ではんらんをしておるわけでございます。それでございますから、それがそういうふうに広げられていきましたゆえんのものを、ほんとうに子供本位でやっているのだということをぜひ一つPRしていただきませんと、とんでもない放らつな生活をしても、今までならおろしてしまうとか、あるいは捨てるというような方法でそういう人たちが対処しておりましたものが、何だか公認されたような格好になって参りますと、若い女性たちを指導する上にある意味では困る面も出てきはしないかということを私はその記事を読んでちょっと感じたわけでございますので、これが実際に行なわれますときには、生まれ出た子供の側には何の責任もない、その子供たちに対してほんとう社会保障という意味でやるのだということをはっきりと知らせていただきませんと、妙な混乱が起きると非常に困ることがある。今より以上にそういう面における混乱ができることは私ども希望いたしませんので、ぜひ一つその点をお願いいたします。それで児童手当に切りかえますればその面は完全に消えると思って、私はこういう御処置に対して満腔の感謝と喜びを持っておるものでございますので、この点だけを私の老婆心といたしまして、若き女性指導の上で特にここで御了解を得ておきたい、こう思っております。
  147. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに御指摘のような点もありまして、これは社会保障運営につきまとう一つのむずかしい問題でございますが、御意見に従いまして行政指導のよろしきを得たいと思っております。
  148. 中野四郎

    中野委員長 田中織之進君。
  149. 田中織之進

    ○田中(織)委員 午前中からの質疑に続いて、最近にというか、三月二十日ごろ、午前中御質問申し上げました子供の国の、多分整地作業だろうと思いますが、そのことについて入札が行なわれたように伺うのでありますが、この関係は、予算的には三十五年度の七千万円が繰越明許費で三十六年度に繰り越されておるので、この関係の実施に伴う工事契約のことだという点は、主計官の答弁で了解できたわけなんですが、その二十日の入札に参加したのはどこどこで、この参加したところは、いわゆる建設省その他の官庁が行ないます公入札の形式に基づいて、入札参加者の資格条件というようなものが当然具備された者によって行なわれておることと思うのでありますけれども、入札参加者の中にそういう適格条件の点について云々される人もあるやに聞いておりますので、この間の事情を担当の会計課長からお答え願いたいと思います。
  150. 今村讓

    ○今村政府委員 この前行ないましたのは、三十五年の予算を三十六年度に繰り越しまして、その部分の入札でありますが、参加者は、大成建設、清水、鹿島、間組、佐藤工業、富士電興株式会社、東起業の七社でございます。これはいわゆる大手だけを掲げますといろいろむずかしい問題があるので、大、中、小取りまぜてというような格好にして選んだものであります。それからいずれも都道府県知事の登録というものをとっております。経歴書、資本金、そういうようなものも調べてあります。それでいわゆる正規の競争入札ということをやって、一回、二回、三回といずれも相当金額の食い違いがありまして、四回もやりましたところが、大手五社全部が辞退して中小の小さい方に固まったわけであります。
  151. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そのうちで、大成、鹿島、清水、佐藤、岡、これは土建業界でも大手と騒がれているのでありますけれども、東起業と富士電興は本省登録なんですか。今の御答弁では神奈川県での知事登録ということですが、建設業者は、御承知のように本省登録業者と知事登録の二種類があるわけなんですけれども、本省で通例やる競争入札の場合の条件は、いわゆる建設大臣登録業者だけのように官庁入札の内規はなっているように伺っているのですが、その点はお調べになったのかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  152. 今村讓

    ○今村政府委員 正規には、本省のいわゆる建設省登録というのは、二県以上に事務所を持っているものを言い、事務所を一カ所しか持っていないというのは、都道府県の知事登録である。ただし登録をしておればいいのであって、他府県どこへ行っても建設業そのものはやれる、こういうふうに私は記憶いたしております。それで富士電興につきましては、これは東京都の登録で三十五年に始めたのでありますが、二年更新ですから三十七年三月二十一日に正規に登録してございます。東の方は、今調べますと、これも登録の手続はしてございます。
  153. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうすると、昭和三十五年三月二十一日に東京都知事の登録を受けておられるとおっしゃる、そういう意味でございますか。
  154. 今村讓

    ○今村政府委員 三十五年三月二十一日に、東京都知事の登録(ヘ)の二万四千四百十一号、それから二カ年後の三十七年三月二十一日、(ヘ)の二万一千四百四十一号ということで登録の更新をしておりまして、現在有効期間であります。
  155. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうすると、会計課長の御見解では、そういういわゆる本省関係の直轄の専業の工事入札参加に、東京都知事あるいは神奈川県知事の登録があれば、いわゆる大手の本省登録と同じような形で入れて差しつかえないという、これは当然法的な、行政上の取り扱いの根拠があっておやりになっておることですか。
  156. 今村讓

    ○今村政府委員 法的な根拠は、実はそこまで――都道府県知事認可のものは排除するという規定にはなっていないというふうに記憶しております。ものによりけりで、何億というような大工華を行なう場合においては、大体建設省登録のうちから選ぶというのが慣例だというふうに聞いておりますけれども、まあ二千万、三千万というような、仕事の種類によりまして、状況によっては必ずしも建設省登録でなくとも差しつかえないというふうに考えております。
  157. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点はやはり法規の点で私は疑義があると思うのです。しかもこの富士電興は、私の調べたところでは、何か防衛庁関係から推薦された。しかも、これは三十六年度にやったのか三十五年度にやったのか知りませんけれども、午前中にも伺ったのでありますが、この敷地がもとの火薬庫でありますから、弾薬などの清掃関係の工事をやらせるのに防衛庁の方で推薦されてきた、こういう事情を聞いておるのであります。その点は、私が申し上げるような、そういういきさつなんでしょうか。
  158. 今村讓

    ○今村政府委員 お答えいたします。  実はそういう弾火薬の取り扱いは非常に危険でありますので、契約というよりも、厚生省事務次官の方から防衛次官の方に、自衛隊でやってくれぬかというふうに最初に申し込んだわけです。ところが返事がありまして、それには応じかねる、従って、掘り出しました弾火薬につきましての処理、いわゆる焼却とか投棄というようなものについては自衛隊で引き受けるが、掘り起こしについては、今の作業の都合上その他で協力はできないというふうに断わられたわけです。それで事務局長なり会計の方なりで、防衛庁の方と何とか再三やりましたが、うまくいかない。ただ、特殊な技術を要しますので、どんな会社でもいいからということで弾火薬の掘り起こしというようなものを競争入札させるというわけにはいかぬ。どの業者が一番いいだろうかということを、厚生宿の方から防衛庁に聞いたのであります。そうしたら防衛庁の方から、直接業者を指名するわけにはいかない、それで、自衛隊の退職者で作っております隊友会という会があるから、一つそこに相談してみたらどうかという返事がありまして、そこに聞いたわけであります。聞きましたところが、この富士電興というのが、弾薬の処理に経験のある自衛隊員が退職して入って、比較的多い数を擁している、従ってそこがいいのじゃないか、専門的な技術も持っているはずである、こういう御推薦といいますか、隊友会の方からの回答がありましたので、それと契約を結ぶということにしたわけであります。
  159. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その隊友会の会長さんが参議院の木村篤太郎さんだというふうに伺っているのですが、その点は御存じですか。
  160. 今村讓

    ○今村政府委員 私は存じておりません。隊友会の存在そのものも実は知らなかったわけでありますけれども、そこで事務局長あてに文書を出したような次第であります。
  161. 田中織之進

    ○田中(織)委員 この点が特に厚生省として――特に子供の国というか、平たい言葉で言えば子供の遊び場ですから、火薬庫跡をやるということになれば、火薬等が残っておって万一事故等があってもならぬという点で、火薬原の跡でありますから自衛隊に火薬等の清掃を頼んだ、これは当然のことですし、きわめて時宜に適した厚生省のやり方だと私は思うのでありますが、しかもそれが、こういう社会的にも、午前中の御答弁によりますると、国民的な真心のこもったものとして作ろうというものに対して、自衛隊としての受けとめ方がきわめて不親切だと私は思うのであります。災害等の場合には、これはもちろん自衛隊法の規定もありまして、要請があれば出動もして、ある意味からいえば、そういう面においてこそ自衛隊の活動が感謝されておるという現実の上に立って、特に厚生省からこういうことについての要請があったのを、自衛隊としては引き受けられないからという形で、自衛隊の退職者でもってこしらえている建設会社か何か知りませんけれども一ここは大体建設関係は本業でないように私どもは伺っているのです。もちろん自衛隊におった人はあるいは扱った経験がおありかもしれませんけれども、富士電興という会社の名前から見まして、どうも普通の建設屋さんはそういう名前はつけないと思うのです。たとえば、電気工事に付随する建設工事等をやられるという例は聞いておりまするけれども、そういう点で、この富士電興というものが子供の国の建設に指名業者の中に入って――厳密にいえば建設大臣の登録ではないのでありまして、ことに東京都外の神奈川県における工事をやる。しかもその点は、厚生省が自衛隊に、専門家に頼まなければならぬような関係の仕事から登場してきておるというところに、たとえばその富士電興という会社と自衛隊との間に、何か特殊な関係があるのではないかということを勘ぐられてもいたし方のないような状況にこれはあるわけなんですね。しかも、先ほどの今村会計課長の御答弁によりますと、それは二十日からかどうか知りませんけれども、四回入札をしたけれども値段が合わなかった。もちろん予算との関係もあるだろうと思うのですけれども、しかし、値段が合わないから入札が取りやめになったということについても、これはもちろん最低値入札という公入札の例だと思うのですが、たとえば当初の第一回、二十日の入札の関係から見れば、あるいは最終的には二十四日に大手の五社が辞退をしたので、残っている二社で、一期、二期の工事に分けて落札をされた形になっているようです。けれども、その第一回の入札は、現在落札をした東起業なり富士電興よりも低い値段のところもあったようにも聞いているのですけれども、それがどういう関係か、予算と合わないからということで、入札は、課長の御答弁では、四回目にようやく大手五社が辞退をしてそういうことになったということから見ても、どうもやはり特定のところに落とすために、やはり回を重ねたのではないかという疑いも、私は実は建設業界のことは全然のしろうとですけれども、われわれしろうとなるがゆえに、そういう内幕だということを聞くと、これはどうもおかしいのではないかという実は疑惑を持つわけです。今後二十億のうちで相当の部分を民間からの寄付、あるいはは地方公共団体の分担、あるいは厚生年金事業団からの借り入れ等によってまかなっていかなければならぬということになると、ことに基礎工事の関係で、やはり建設業者の選定について私が今申し上げておるような事情があるということは、いささか明朗を欠くのではないかと思うのであります。その点は、厚生省が直轄事業の入札等の関係をやられるということはまれなことで、官庁の関係のなには、大てい建設省の営繕なり管財でやるのが通例なんです。これは現在直轄事業としてやられることは私差しつかえないと思うのですけれども、経験がないだけに、どうも特定の業者に、極端な言葉でいえば引き回された、実はそういう感じを受けるのですが、その間の事情は、私どもが心配するようなことは万あるまいとは思いますけれども、もう少し詳しくその間の事情一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  162. 今村讓

    ○今村政府委員 これは今おっしゃいましたように、二十日にやりましたのは七社でありまして、これは完全に入札のルールに従ってやるということで、別に入札はもっと低いのがあったけれども、引き延ばしてやったということはございません。第一回が何万円、第二回が何万円ということで、資料を持ってきておりますけれども、結局私の聞きましたところでは、大手のものは、二千万、三千万というのは中途半端だということで、あまり乗り気でなかったような気がするというふうに担当官は言っておりました。四回目に辞退をいたしまして、最後に二社が残って、一番下の東起業というのが、三十六年の残りの繰り越しの分を担当するということになりました。それから三十七年度のものにつきましては、これは予算が通っておりませんから、正規の入札という格好にはなりませんけれども、工事を急ぐ関係上あわせて見積りを出しておいてくれ、こういう格好でありますが、そっちの方は一番最低値が富士電興、しかもそれはいずれもこちらの予定額に達しませんので、あとは随意契約ということでするわけでありますけれども、こっちの思う通りに予算の許す範囲内まで値段を下げさせた、こういうことでございまして、四回まではあくまでも正規の競争による、低いものの方から落すという大筋は一つもくずしておりません。ただ先生おっしゃいますように、厚生省が直轄でこういう土木工事の入札をする経験は割に少ないのです。しかも今度のやつは、子供の国というふうな問題であるから、あくまでも厳正にやれ、厳正といいますか、法規上も手続も何も守るようにやれ、非常に注意をいたしまして実行してきたような次第であります。
  163. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大体の事情はわかりますけれども、先ほど今村課長もお答えになりましたが、弾薬の処理についての関係は富士電興がおやりになったようでありますが、この関係は工事費の予算は幾らで、この関係はやはり三十六年度繰り越しになった七千万円という予算の範囲内でおやりになったのでしょうか。何か当初は相当多額の見積もりが出たけれども、予算の予定というものもあって、最終的には大体予算とつじつまが合うような形で工事をやられて、これは無事完了しているということでございますけれども、これは予算は三十五年度から繰り越しになった七千万円の分から処理されているでしょうか。
  164. 今村讓

    ○今村政府委員 さようでございます。
  165. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これで私の質疑を終わりますけれども、問題は、午前中にも大臣にもお聞きいただいたわけでございますが、国の事業としてやられる関係に皇太子の御成婚記念事業というものをかぶせる、そのために寄付金は千七百万円程度集まっている、それに一昨年でありますか、七千万円の国の予算をくっつけて、中央児童厚生施設という形で、厚生省の直轄事業として計画をされたいきさつを聞いていると思うのです。言ってみれば、千七百万円のこれは寄付金でありますから、ほんとうの浄財だと思いますけれども、それは予算二十億といたしますれば、全くその一%にも当たらない零細な金額なんです。従って、大部分のものは国費または一般の寄付金なり、あるいは地方公共団体の負担でやるということになるとすれば、むしろこういうことについては、非常に閣内で政治力を持っておられる厚生大臣でおられるわけですから、この点については、子供の国の中央におけるモデルみたいになるわけですから、思い切って国の費用も、もちろん事業団の資金等で一ぺんには参りませんから、そういうようなものの借り入れで建設を進められて、あとで予算をつけていくということもなんだと思いますが、できるだけ一つ、民間の寄付というようなことになりますと、どうしても、たとえば今第一期に完成しようという牧場も、そういう意味で、厚生省行政には関係はおありかもしれませんけれども、たとえば酪農製品を作っているような関係会社から多額の寄付をもらって牧場ができるというようなことになると、なかなかそういう事業家というものは、自分たちの方の商売上のPRということが先行するものですから、せっかく国民の費用でできているものだって、そういう特定の寄付した人の名前が前面に出るというようなことでは、私は先ほど児童局長のお答えになった、国民みんながこぞっていいものができたし、またこんなものを全国各地に作ろうというようなモデルの子供の国を作るという点から見たら、ちょっと趣旨に合わない運営のやり方ではないか、こういう点を懸念しますので、この点は一つとくと十年計画でおやりになるということで、当面三十七年度には一億円の予算がついているようでありますが、あと一つ格別に、このための審議会もおありのようでありますけれども、お考えをいただきたい。  それからもう一つは、これの管理、運営を当面横浜市におまかせするということも、これは適宜なことかもしれませんけれども、あまりそういうことで事業団ばやりで感心しないのでありますけれども、できればやはり民間のそういう方面のエキスパートにも参加してもらえるような、小じんまりとした専門的な管理、運営の主体的な条件は、少なくとも億という予算を要求される以上は、皆さん方がやはり行政の片手間でやられるというようなことでは、私はせっかくの趣旨を生かすことにはならないと思うので、管理、運営はやはり建設途上からでも確立した方がいいのではないか、このように考えますので、この点の最後の部分は私からの要請でありますけれども、特に厚生大臣にお考え置きをいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  166. 中野四郎

    中野委員長 小林進君。
  167. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、免除の内容についてお伺いをいたしたいのでございますが、三十七年度において、拠出の国民年金において免除されるものを大体どのくらい予定せられておるのか、承りたいと思うのです。
  168. 小山進次郎

    小山政府委員 来年度においては、一応一〇%程度のものが免除を受ける、そういうことで一応収支を見込んでおります。
  169. 小林進

    ○小林(進)委員 一〇%といいますと、大体何人になりますか。
  170. 小山進次郎

    小山政府委員 およそ百六十万人程度になると思います。
  171. 小林進

    ○小林(進)委員 百六十万人の中に、法定免除と申請による免除があるわけでございますが、その内訳をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  172. 小山進次郎

    小山政府委員 法定免除は、そのうちおよそ五十万程度でございますが、残りが申請免除でございます。
  173. 小林進

    ○小林(進)委員 法定免除と申請免除を含めて、免除をされる人たちの職業別、階層別の内容をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  174. 小山進次郎

    小山政府委員 特に免除を受けておる人々の職業別、階層別の調べをしておりませんので、ちょっと手元の資料ではお答えしにくいのでございます。
  175. 小林進

    ○小林(進)委員 三十七年度の予算の折衝において、厚生省は大蔵省と折衝されましたときの免除される人の推定人員と、折衝の後に確定をされた免除者の数量には、相当大きな開きがあるわけでありますが、最初厚生省がお出しになった数字と、確定せられた数字と、両方お聞かせを願いたいのであります。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  176. 小山進次郎

    小山政府委員 最初私どもは、二百六十万程度免除があるものという推定で、それに必要な費用を要求したわけであります。その後、いろいろ折衝いたしました結果、さしあたり今年度の免除の実績をもとにして考えますと、大体一〇%くらいのところに落ちつくであろう、こういうようなことで、ただいま申し上げましたおよそ百六十万程度というものを計上することになったわけであります。
  177. 小林進

    ○小林(進)委員 申請に基づく法定免除の五十万は、厚生省、大蔵省の間でそういう数字の違いはあまりないと思うのでございまして、二百六十万から百六十万に落ちたこの数字の差というものは、主として申請に基づく免除者の数に差があったと思うのでありますが、どうして一体百万もこういう狂いが生じたのか、お聞かせ願いたいのであります。
  178. 小山進次郎

    小山政府委員 結局、将来免除者がどのくらいになったら落ちつくかということについての見通しの違いであるわけであります。私どもは、この予算を組むときに出て参りましたところの免除の数字というものは、必ずしも出るべき免除が完全に出切っているというふうに考えるわけにはいくまい。これは相当ふえる可能性があり得る。この予算を組みました当時の免除の実績は、ちょうど八%程度であったわけであります。それで、その当時の実績をもとにして見まして、大体全国ならして一五%くらいまでいくことを、一応覚悟しておかなければいくまいというので、一五%程度の数字を頭に置いて、先ほど申し上げた数字を算出したわけであります。これに対しまして、実際に組んだのは、それはあるいはそうなるかもしれない、しかし何分今八%しかいっていないのだから、一〇%くらいのところを見ればいいのではないかということで、こういう数に落ちついたわけであります。  なお、申し上げる必要があると思うのでありますが、これはしょせん義務費になるわけでありまして、両方とも免除の線として描いております線は、全く同じなのであります。現在、実務上使っておりますあの免除基準を使って、実際にやった結果出て参りました免除者に対して、国庫負担をする措置を講ずる。従って、あの当時のものさしでも一番出ておったのが高知県でございますが、高知県は、すでにあの当時二〇%をこえる免除者が出ております。そういうものさしを使って、実際上出てくる人間に対する国庫負担として幾ら要るか、こういう見積もりを一〇%程度と見てそれに必要な費用を計上しておくか、あるいは一五%として見てそれに必要な費用を計上しておくかというだけの違いでございまして、その数字を一五%として見ておけば、実際上免除が非常にゆるくなる、一〇%と見ておけば、免除が非常にきつくなる、こういうような違いはないわけであります。
  179. 小林進

    ○小林(進)委員 実は私の申し上げたいのは後段でございまして、予算要求の数字として一五%をお用いになろうと、一〇%をおとりになろうと、それは私ども一向差しつかえないのであります。不足になったら追加すればよろしいのでありますから。ただ、おっしゃいましたように、やはり一つの予算の範囲に百六十万という数字が現われてくると、その中で免除者を押えようとして、過酷な審査といいますか、算定をされるのではないか、この点を非常におそれているわけでございまして、今もおっしゃるように、細則だか規則だか知りませんけれども、基準というものをお持ちになって、その基準に当てはめて免除者を、申請免除の方方をおきめになるというのでありますが、この点を私どもは非常におそれているわけなのでございまして、昨年度の通常国会でも私はこの問題をお尋ねいたしました。あなたは、その心配はないとおっしゃいました。ところがある。実情に即しましては非常にある。われわれが町村別に見て歩きましても、当然免除になるべきような人々も免除にならない、あるいはその手続を知らずして、やりくり財産の中から、どうも世間体をおもんばかったり、隣近所をおもんばかったりして、いやいやながら、ない財布を払って年金料を払っておるという方もあります。この点を私は非常に懸念するのであります。一体全国公平にいくという自信がおありになりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  180. 小山進次郎

    小山政府委員 小林先生が御心配になっておられます点は、実は私どもも最も意を用いて運用に当たっておる点でありまして、現に出てきている免除は、本来出るべきものが出切っているかどうか、何かそこに実際の仕事の進め方の上にゆがみがありはしないかということは、常に検討をしているわけであります。今のところ、私ども各県の実績を見ておりまして、大体出切ったと思われる県と、まだまだどうも出切っていないと思われる県と、そういうニュアンスの違いは若干ございます。しかし、全体の姿として見まして、これを、生活保護の保護率の分布の状況、あるいは各府県の貧富の状況等を勘案して比べて見ておるわけでありますが、傾向としては思ったより工合よくいっておる。たとえば先生の一番御関係の深い新潟県等について見ますと、今一五%免除が出ております。私の感じからいいますと、新潟県はもうちょっと、一%か二%ぐらいふえることがあると思いますが、まあ一五%ちょっとというぐらいのところへいけば、まずあの県としては、現在の免除基準で引いたのではほぼ妥当なところにいっておりはしないか、こういうふうに思っておるわけでございまして、これは常に実態に即するように努めていかなくてはならぬ問題でございますが、御注意のような気持でやっておりますので、この点は御了承願いたいと思います。
  181. 小林進

    ○小林(進)委員 これは全社通の広報出版部で出している「ねんきん」という雑誌ですが、この中には小山さんのお書きになっている原稿も載っております。それによりますと、三十八年一月末の都道府県別の検認率が載っているわけでございますが、その中では、新潟県は一月末の検認率が六六・八%になっておるわけでございまして、この六六・八%の中の一五%が免除になっているとおっしゃるのでございますか。
  182. 小山進次郎

    小山政府委員 新潟県について申しますならば、新潟県の二月の被保険者は、強制加入で五十一万八千人おるわけであります。このうち免除を受けておる者が七万七千人、従って、免除を受けておる者は、強制加入被保険者の一五%に当たる、こういうことになるわけであります。
  183. 小林進

    ○小林(進)委員 強制加入者の総数に対する比率ということになるわけですね。
  184. 小山進次郎

    小山政府委員 さようであります。
  185. 小林進

    ○小林(進)委員 ほかの県も同様でありまするけれども、新潟県は、主として農村県でありますから、先ほどから質問しておりますように、免除者の職種別、階層別の内容をお聞かせ願えるというと、さらに私は質問がしやすくなるのであります。同じことを繰り返すようで、まことに政府側は聞き飽きていらっしゃるのかもしれませんが、何といってもあの零細な日本の農村地帯においては、農村の零細な所得から国民健康保険保険料国民年金を取り上げられることは、現在の段階においてはどうしても過酷過ぎると思っておるわけであります。従いまして、やはりその保険料の問題に質問を移さなければならないのでございまするが、われわれの知る範囲においては、現在、農村において納得ずくで月百円、百五十円の保険料をお出しになっておる者はまずございませんな。ないと言ってはまことに言い過ぎた言葉かもしれませんけれども、三十年、四十年先の富くじにしてはまことに当たる率か――富くじを買うよりもばかばかしいという感じが実際は強いようですけれども、時の権力の政府がおやりになって、末端の権力機関がこれをバック・アップして、隣組まで動員されて金を集めに来るから、隣近所のつき合いで金を出していこうかという、こういう気持がどうしても強いと私は判断をしておるのでございますが、政府の方では私のこの見方が間違っていると思うかどうか、これは大臣の所見をお聞かせ願いたいと思うのでございます。
  186. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の保険料が高いか安いかということについては、いろいろ御議論があろうと思います。われわれといたしましては、日本で国民年金制度を始めるのにつきまして、この程度の負担はそれほど無理ではないのではないか、なお、これが負担しかねる向きについては免除するという道も開いておるのでありまして、この程度ならば負担可能なりという前提のもとに出発しておるわけであります。ただ、小林さんのおっしゃるように、年金の額にいたしましても、また、それをもらう時期にいたし癒してもだいぶ先のことであります。額も少ないし、もらう時期も先だということで、関係の向きの方が、進んで飛び込んでこの年金に入ってこようというようなお気持になりにくいような面もなきにしもあらずということは、私どももある程度認めざるを得ないのであります。しかし、今申しましたようなことでございますので、私は負担能力という点から申しまして、それほど過重な負担をしておるとは考えない、また、年金の内密につきましては、しばしば申し上げておりますように御協力を得て漸次改善をして参りたい、こういうことを考えておる次第でございます。だんだんと御理解もいただけることではないかと思うのでございます。なおまた、こういうふうな制度をしきますと、やはり当初は、今お話しになりましたような感じ方をなさる向きも少なくない。最初に健康保険を始めました当時におきましても、少なくとも出初は、保険料だけとられて病気にかからぬ場合にはどうなんだという意味のいろいろお勘定をなさる向きもありました。この点はかなり保険も進んで参りましたので解消したと存じますが、国民年金につきましても、われわれも努力いたしますし、また皆様方の御協力を得て、やはり日本でこの制度をしき、そしてまた、さらに将来発展をさせるという意味におきましては、国民の皆様方の積極的な御協力をぜひお願いしたいと思っておるようなわけでございます。現段階におきましてはお話しのような点もあろうかと存じますが、これは私ども一そう努力をいたしまして御理解を深め、また内容等の改善につきましても誠意を持って努力いたしまして、喜んで加入していただけるようなものにいたしたい、かように考えておる次第でございます。負担の額そのものにつきましては、私は今のような免除の制度もあることでもございますし、それほど過重とも思いません。さらにまた、今回の改正が御賛成をいただきますならば、免除を受けました人たちに対してましても年金給付をするということにもなりますれば、一そう入りやすくなっていただけるのじゃないか、かようにも考えておる次第であります。
  187. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣は上手なお言葉でおっしゃいました。御協力によりましてなんというようなお言葉がありましたが、実は社会党は実際は協力しなかったのであります。この政府国民年金には終始反対をいたしまして、福祉年金の方は別といたしましても、拠出年金の方は私どもは反対をいたしまして、実は登録拒否という運動をしてきたわけでございまするが、なかなか政府側の巧妙な指導といいますか、圧力といいますか、権力に基づく指導によって、私が調べただけでも二十数種類の登録をせしめる方法、手段を講じておいでになる。あの手この手で実に巧妙なそのときの状況に適合した方法をお出しになって、残念ながらわれわれの反対闘争もだんだん先細りの形になってきたわけでございまして、われわれの側からすれば、これは実に本意ない次第でありまするが、やはり実情に即してこの運動を展開していかなければならないわけでございます。といって私どもの反対運動を直ちに賛成運動に持っていくというわけにも参りません。なぜならば、このたび御修正をいただいた点は、若干われわれの希望要望もいれてはいただいておりますけれども、まだ全面的に賛成に打ち変わるほどりっぱな内容のものではないのであります。従いまして、われわれ党の立場では、今後は反対運動のやり方を、登録拒否という戦いのやり方から免除申請運動に一つ切りかえていこう、こういうふうに考えているわけでございます。その免除を戦い取るということも、何も私どもは、生活があり余って暮らしの楽な者までも政府の政策に反対をせよという、そういうがむしゃらな反対運動をやろうというのではないのでありまして、十円のコッペパンが十五円になっても直ちに生活に響いてくる、十円のとうふが十五円になっても生活に響いてくるという零細な国民年金の対象者があふれているのでございますから、そういう方々が隣近所やあるいは末端の権力機構の圧力に屈服して、不本意ながらもこういう年金を納めていくことだけは、私はやめさせなくちゃいけない。こういう人たちのために、やめさせなくちゃいけない。こういうことで運動を進めていくという考え方に立っているわけでございます。幸いにして池田内閣の施策が当を得て、今も大臣がおっしゃるように、月百円なり百五十円ずつ納めてもちっとも苦痛ではない、喜んで納める、そういう環境になれば、私ども喜んで政府のお先棒をかついで、年金を納め、保険料を納めるように指導もいたしましょうけれども、今のところは、どうしても私どものアンテナに響いてくる調査の段階においては、そういう零囲気がまだでき上がっていないのであります。従って、その立場から、政府に反対をする立場からお尋ねをするのでありますが、しゃくにさわったらお答え下さらぬでもけっこうでございます。この免除を申請するときに、どの程度の所得のあります者が、一体申請によって免除の恩恵を与えていただけるか、その基準を一つお聞かせを願いたいと思うのであります。
  188. 小山進次郎

    小山政府委員 免除の基準の問題については、もう先生には繰り返し繰り返し御説明申し上げたわけでございまして、それを繰り返すようなことになるわけでございますが、さしあたり問題になっておりまする農業の世帯について申し上げますると、大体五人世帯でいろいろな費用全部控除した残りの課税上の所得がおよそ十七万円未満程度であるならば、それは免除する。それからそれをこえて十八万五千円くらいまでの間に位する場合には、申請の内容を検討した上で免除する。それからそれをこえました場合、つまり十八万五千円をこえました場合は免除をしない。大体そういうふうなおよそのものさしで、これはものさしを適用した結果を数値に表わしたわけでありまして、それで現在取り扱いをいたしておるのであります。
  189. 小林進

    ○小林(進)委員 それから町の場合、労働者の場合ですね。
  190. 小山進次郎

    小山政府委員 それから勤労者の場合におきましては、十六万五千円未満程度でありまするならば免除をする。それから十六万五千円から二十万程度の間に位するものは、申請の内容を検討した上で免除をする。二十万をこえたならば免除しない。大体こういうふうな結果になっております。
  191. 小林進

    ○小林(進)委員 農業世帯十八万五千円と二十万円、一万五千円の開きはどういうことでしたか。
  192. 小山進次郎

    小山政府委員 これは課税総所得金額に把握されまする実際の所得と、それから課税総所得金額との関係において、勤労世帯の方がそういうふうな結果になっておる、たまたまそう現われておるというわけでありまして、基準で申し上げますと、両方とも全く同じ基準を適用しているわけであります。
  193. 小林進

    ○小林(進)委員 ここで私は一つ大蔵省にお尋ねしたいと思うのですが、この前も私は時間がなくて質問を半分にして終わったのですが、これは国民健康保険においても国民年金においてもそうなんですが、国民年金は強制ですから結局税金だし、国民健康保険保険税ですから税金だが、私は税金というものはやはり体系は一本にしていかなければならぬのではないか、こう考えるのであります。私はあまり税法のことも税の種類も知らないのですけれども、たくさんある税金の中に、この国民健康保険税のように、世帯割だの所得割だの均簿割だのという形で所得があろうとなかろうと税金をかけるやり方、国民年金の方は、御承知のように費層にかかわらず一律に百円、百五十円というものを一もちろん免除の規定はありますけれども、それ以外は所得に関係なしにこういう課税をなさるというやり方が一体理論的に正しいものかどうか、こういう税制のあり方が妥当なものかどうか、大蔵省の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  194. 小山進次郎

    小山政府委員 大へん大きな問題でございまして、最初の税の体系の問題でございますが、私も主税局でございませんので、そう詳しく知っておるわけではございません。しかし、社会保障制度という全体の制度考えてみた場合に、どこまでを税金をもってまかない、どこまでを各自の拠出をもってまかなうかということには、おのずから沿革的に、あるいは現在の日本の状況におきまして限度があるわけであります。従来租税というのは国の一般費用をまかなうという意味で徴収される、そして国の一般行政費というものは時代によっていろいろ変わってきております。昔、警察国家といわれました時分には、本年軍備とかそういうものにしか使われなかったけれども、だんだん福祉国家になって参りますと、国の予算をもってまかなう部分がふくれてくる、そこでそれに応じて税金も取っていく、その目的を中心に税法というものが考えられておるわけであります。そこでだんだん近代的になりますと、国家の機能の中に所得の再配分という機能が要求をされて参りまして、租税の中でもその部分に充てるものが出てくるわけであります。その部分が、現在いろいろと予算上問題になっておりますような国庫負担の問題として考慮されている。一方、社会保障制度全体からしますと、昔からの世帯の連帯という古い思想がございまして、たとえば小さく申しますと老人というものは家族が扶養しなくてはならぬということで、年をとられた者については子供がめんどうを見るというところから、だんだん近所に発達して参りまして、それから近所のものから広く全国民が、社会が共同してそういった事故を保険しようじゃないかというような思想が出て参りまして、その方から参りますと、お互いに自分から金を出し合ってそういう事故を保障しようという思想が出てきておるわけでございます。そこで今申されましたような非常に苦しい人に対して、貧富に応じて掛金を取るようにしたらいいじゃないかというお気持でございますが、税金というものを一歩そこに構いておいて、掛金の問題として取り上げます場合には、年金の場合におきましては、ある一定の免除基準以下の人につきましてはこれはもう全然取らない、それ以上の人につきまして貧富にかかわらず百円、百五十円というのを取っておりますのは、そういった最低の人を基準にいたしましても定額の百円、百五十円というのは非常に少ない額であるので、これならば保険料としても負担できるであろう、なおまた、所得その他の問題はございますけれども、現在の状況においては、実際上所得の把握という点が技術的に困難かと思いますので、実際的に社会保障ということで、最低線を基礎に百円、百五十円というものを考えたということでございます。  それから国保につきましては、やはり所得に応じた取り方になるわけでございます。まあ均等割については、先生のおっしゃいましたようにそういうものに関係なしということになるわけでございますが、やはり保険の持っておりまする掛金、いわゆる自分の事故というものはみんなの掛金をもってまかなっていこうという思想から出てくる掛金であるので、そういった点に所得再配分の思想を持ってくるべきではないかということになるわけであります。以上のように私としては考えておるわけであります。
  195. 小林進

    ○小林(進)委員 私は今の御説明では納得がいかないのです。それでは八種類も九種類もあります各年金の、せめて年金だけの間においては一律の年金料がかけられているというならばよろしいけれども、国家共済はもちろん、厚生年金においてもそうですが、他の年金においてこういう一律の百円、百五十円というような掛金の制度がありますか。これくらいばらばらの保険料制度はないと思う。これは学問的に見ても、筋から見ても矛盾じゃないか、それを私はお尋ねしているのであって、こんなものは、全く思いつきで掛金をきめている実にイージー・ゴーイングなやり方で、私はけしからぬと思っておる。税金の建前は、所得があればかける、所得のない者には税金をかけないというのが、税の原則じゃないですか。一体なぜこういう国民年金だけにその税の原則が用いられないのか。先ほどあなたのなかなか高邁なる御説明がありましたが、高邁な点は別といたしましても、その中の一つの理由に、査定がむずかしいからとおっしゃったけれども、国民年金をかけなくなちゃならない階層の所得の査定がむずかしいから百円、百五十円の一律でいくなどというのは、私は無責任きわまる答弁だと思うのでありまして、それほどむずかしいなら所得税もおやめなさればいいし、あるいは住民税も市民税もやめたらよろしい。そっちの方にはちゃんと一個々々の収入がわかっていながら、国民年金に関する限りは、その人の所得を押えることが困難だから一律の掛金でいくなどということは、私は通らないと思うのであります。その点についてお聞かせ願いたいと思う。
  196. 岩尾一

    ○岩尾説明員 保険という言葉が使われますと、やはり日本では生命保険の概念が非常に強く頭に響いてくるわけであります。しかしながら、現在考えられておりまする年金については、むしろ生存保険の概念であります。生存保険というものは、やはり自分で掛金をかけて、そしてそれに見合う給付老後においてもらうという思想でございます。生命保険のように、掛金をかけておいて早く死ねばもうかる、たくさん返してもらうという思想とは全く逆な思想であります。しかし、従来日本では、生命保険というような思想が普及しておりますために、その辺が、同じ保険という言葉を使いますと、やや混乱を生ずるわけでございます。そういった点があると思います。そこで、実際上共済組合あるいはその他の組合におきまして、標準報酬によりまして各所得に応じて掛金をかけて、そうして給付をもらうという場合には、自分の掛金の額に応じた給付をもらうということで保険方式がとられているわけであります。従いまして、年金につきましても、今申しましたような意味においては、所得に応じて掛金を納めていただき、そうしてその掛金に応じたような給付を将来において出すという思想は、十分あり得るわけでございます。しかしながら、現在は制度の最初でもございますし、私が事務上非常に困難であると申し上げましたのは、現在所得税につきましては、全国的にある均衡の線をもって課税をやっております。しかしながら、地方税におきましては、地方税の取り方に方式の違いもございますし、実際上地方税の課税標準というものが、そのまま全国平等のものとして取り上げる段階に至っておらないわけでございます。幸い本年度の改正によりまして二方式がとられました。従来四方式であったのが二方式になったわけでありますけれども、この方式におきましても、若干各都市において違いがあるわけでございます。やはり楽な都市はすぐ取るというような結果になるわけでございます。それを法準にいたしますと、所得比例といたしましても掛金が安くなるところも出てくる、高いところも出てくるという結果になるんで、その辺が、所得税と同じように、所得税課税以上の人は取れるのですけれども、以下の人についてはなかなか技術的に困難だということを申し上げたわけであります。それから、それ以外に、やはり現在の均一逓減保険料というものを基礎にいたしますと、均一給付ということになるわけでございます。もしこれを所得に応じて保険料を納めていただくということになれば、将来は給付額につきましてもそれに応じた給付ということになるであろう、そういう改正を考えたわけでございます。その辺が検討の一つの問題だと思います。
  197. 小林進

    ○小林(進)委員 若干あとの方は聞き落としましたけれども、前の方の生命保険の概念からこの徴収方法が生まれているという、これは実に貴重な御意見なんですが……。
  198. 岩尾一

    ○岩尾説明員 いや、生命保険じゃなくて、生存保険であるというふうに申し上げたのです。
  199. 小林進

    ○小林(進)委員 前の方を聞き落としましたが、それではいま一回答弁を願いますか。
  200. 岩尾一

    ○岩尾説明員 どうも恐縮でございますが、私の申し上げましたのは、日本では生命保険というものが非常に普及しておりましたために、保険と申しますと生命保険という概念が国民の中に普及しておるのではないか。そこで生命保険というのは掛金を納めて、悪く申せば、早く死ねば保険料がもらえるということになるわけなのですが、今発達しております、かつ議論になっております年金というのは、生命保険ではなくて生存保険でございますから、従って、自分で掛けた掛金を、老後に、積み立てたものをもらうという思想になっておるわけであります。掛金が給付一つの根源になるわけでございます。そこで、そういう意味からいって、掛金が多くなればそれだけ給付も多くもらわなくてはいけないという思想になりますので、年金についても今のような思想が入ってくる、こう申し上げたのであります。
  201. 八木一男

    八木(一)委員 関連。先日質問のときに、厚生省当局にも大蔵省の当局にも申し上げたわけでございますが、そのようなことは、この前申し上げた過程から、年金をやるのに社会保険という概念を技術的に使うということから、それからあとにできてきたものでなければならない。年金はあくまでも本質的には無拠出年金が至当である。ただし、無拠出年金では、国家財政との関係年金額は低きに失した工合にしかできない。またもう一つは、大ぜいの対象者に支給ができないので、そのことを勘案して現在の国民の直接の拠出、それを加えて国庫負担とともに財政の基礎を作って、それで拠出年金制というものを作ったということになろうと思います。そうなれば、それをやる具体的な方式として民間の保険に似ており、またそういう徴収の点については保険という言葉をほかの制度でも使っておりますので、社会保険と称し、年金保険料と称し、そういう言葉を使っただけであって、もとの根底の意義は、大ぜいの所得保障を必要とする人に所得保障を十分にあげたい、その財源のために、一般国民から面接的な負担をしてもらおうということから始まっているわけです。ところが途中ですりかわってしまって、保険だから、たとえば今の単一の保険料、同額の保険料に対して同額の給付ということは、普通のしろうと――しろうとでなくても、くろうとも含めて、算術計算でそういうことはすぐわかりやすいけれども、そんなことでは金持が楽をし、貧乏人は苦しんでもかまわないということと同じである。社会保障はそうでなしに、貧乏人は貧乏をする、金持はぜいたく三昧しているのを、その分を幾分分けなければいけない。所得再配分からいっているのだから、同じ保険だから同じ給付をもらうというような昔の概念では、この社会保障は論ぜられないということになる。保険の概念からいけば、たとえば所得比例方式の保険料システムに変えたならば、たくさん出した人はたくさんもらうのがあたりまえじゃないかということは、これは民間保険の精神がそのまま変わっただけであって、何の役にも立たない。やはり出したものが多くても少なくても、所得保障の必要な人に必要な給付がいくということに、この制度内の所得再配分が行なわれなければならない。それをほかの例で見ますと、国民健康保険では非常な納入の差がある。私自身、年間四万円ほどの国民健康保険料を納めておる。しかし病気をしなければ、これは医療保障のあれですから一つも――病気をしたときでも、飛び切り三倍の給付や十倍の給付をいただくわけではありません。これは医療給付だから技術的に困難だというような考え方でなしに、あくまでも病気のときに心配をしないで必ず対処できるような制度であるから、そういうことができたと思う。特に医療給付だから、ひん曲がった考えの人がそれをねじけようと思っても、あなたは生きてよろしい、あなたは半分死んでもよろしいということはできないから、すぱっと入っているんで、病気のときのそれに対処する方法も、老齢者に対して所得保障をして生活の安定を期すということも、社会保障概念から言えば同じでなければならない。従って、年金保険料が所得比例方式に変わった場合も、多少のことは、技術的にとにかくのことはあるかもしれませんが、本則としてやはりその概念は、たくさん払った人も少ない人も、まぜた金額によって、所得保障を必要とする人にその給付がいくという所得再配分の方式がとられなければならないと思う。そういう意味厚生省当局も大蔵省当局も十分おわかりと思うのですけれども、世の中で社会保障の意義をてんで知らない人、知っているように見えても社会保険社会保障だというような、半分の理解しか持っていない人、そういう人が世の中の識者の中にもかなりあるので、そのような同一、同額の保険料だから同額の給付をしなければいかぬ、変わったら変わらなければいかぬというような俗論が横行するわけです。少なくとも政府で、厚生省当局が中心になり、大蔵省当局はともにその問題について一生懸命に考えてやるといった方々が、そのような間違った議論にとらわれないで、前向きな姿勢でこの問題を考えていただく必要があると思う。それについてお答えを承りたい。
  202. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先生の御意見は前の委員会でもよく拝聴いたしまして、御説明したつもりでございますが、私らは、もちろん先生のおっしゃいますように所得の再配分ということを念頭に置いておりますし、そういうことが大きな一つの柱であるということはよくわかっております。しかしながら、やはり年金として考える場合に、所得再配分だけの思想をもってこれを組み立てていく方がいいのかどうか。これはちょうどあのときに谷村次長が御説明いたしましたように、現在の国民年金制度というものは、他の公的年金制度をもっては救済できない農山漁村の方に対しまして、やろうということで発足をしたわけでございます。従って、現在の公的年金が、先ほど申しましたような形で運営されているわけでございますが、どうしても老後年金は掛金で支払うという思想がここに盛り込まれなくてはならない。しかし、あのときもお話しいたしましたように、もし国民年金国民全体のベーシックなものに考えて、国民全部が最低国民年金だけはもらうんだ、そしてそれは国家の再配分思想から出てくる税金でまかなってもらうのだということになれば、それ以上のものはそれぞれの労働形態、給付形態に応じて出ていくんだというような思想になりましたら、それはそれとして考えようがあるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  203. 八木一男

    八木(一)委員 この前厚生省当局にも大蔵省当局にも、その問題について私は質問をしましたので、それ以上重ねてあまり詳しく申し上げませんけれども、小林委員に対する答弁について、根底について十分な御説明なく、部分的にだけされますと、所得再配分の精神について政府が非常に考え方が足りないようになっては政府に対する誤解になりますし、また、問題の推進の逆になりますので、再度重ねて申し上げたわけであります。基礎的には、私の申し上げたような方向がとらるべきであるということは、原則的に厚生省も大蔵省も理解しておいでになる。ただし、この前も申しましたように、たとえば労働者年金によって、生産手段を持たない人があった場合に、また労働者以外でもそういう状況があるかもしれませんけれども、個人的な努力の分についてのプラス・アルファというようなことは、現行法にすでに各種年金にそれがございますから、それは無視もできないし、また年金額の絶対額が少ない場合に、その方法によってこれを奨励する、老後のことをみずからの力も加え、社会的にも加えて、これを確保するための努力をするということを奨励するというような意味のことも、現時点としては十分に配慮されなければならないと思うのです。ですけれども、それが先になって、一番困った人たち、基礎的なものが確保される道がおそくなったり、遠くなったらいけないと思う。第一義的には基礎的なもの、それとあわせて、現時点におけるそういうようなプラス・アルファの努力、それが行なわれなければならないと思うわけですから、それについてもう一つ……。
  204. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先生のお気持はよくわかりますので、十分検討いたします。
  205. 小林進

    ○小林(進)委員 私の方はさっぱりわからないのでありまして、先ほどからお尋ねしておるのであります。どうして一体年金の中でも、所得に基づいて年金料を納める人たちと、所得にかかわりなしに強制的に取り上げられる、こうあるのはどういうわけかということをお尋ねしているわけなのでございまして、私は税を担当せられておる大蔵省当局としては、その矛盾をお考えにならないのかどうか、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  206. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先ほど申し上げましたように、まず国民年金につきましては、所得比例ということが確かに考えられるわけでございます。しかしながら、現状では事務的な問題、それから先ほど申し上げましたような定額保険料定額給付という問題をどう扱っていくかという問題、この二つがございますので、所得比例制という姿をとっておりません。しかしながら、その保険料は免除基準――これは一般の地方税、あるいは低い階層の方にとりましてはやや高めのところに線を引いて、これ以上であれば大体百円というのが拠出できるんではないかという最低線のところから考えて、百円というものを決定をして定額にしておるわけでございます。それから国保につきましては、同じような掛金の意味から考えまして、もちろん再配分的な思想から国としても負担をしておりますが、所得割に応じて出しでいただく以外に、均等割に応じて――ちょうど地方税で均等割をとっておると同じように、均等割に応じて出していただく分については、いわゆる医療保障の掛金という形でいく、こういうことでございます。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 小林進

    ○小林(進)委員 どうもあなたのお話を聞いておりますと、所得税以上の方々は、税金を取るにも査定が容易であるから取れるけれども、低所得の、所得税も納められないような方々の収入の査定は困難だから、一律のものでいくんだ、こういうお話ですが、私はこれは実に安易な答弁じゃないかと思うのです。そういう理屈が通るのですかな。任意の制度ならいいですよ。その人の嗜好とか好みに基づいて、年金に入ったり入らなかったりするのならいいけれども、これは強制的に、いやおうなしにやらせるのですよ。それで入らなければ罰金をかけるという罰則の規定まであるのです。それくらいにおやりになるならば――しかも、あなたがおっしゃるように保険という概念があるにしても、本質は保険じゃないのです。これは社会保障です。再配分です。もし所得の再配分という原則で、社会保障という原則でいくならば、こんな国民年金の該当者の、低所得者の中のこまかいもののやりくりをしないで、もっとそれ以外のものから大きな金を持ってきて、この年金財団にぶち込んで、そうして低所得の範囲を潤す、こういう基本的な考えに立たなければならない。それから見たならば、今の保険料の半分の国庫負担なんというものは、実に小ばかにした国庫負担ですよ。一番貧乏な、一番気の毒な階層だけを集めて、お前の六十五才からの晩年を保障してやるということで金を集めて、そうして政府でおやりになるのがその掛金の二分の一だ。集めた金は一体どこへ使うんだ。それは年金事業団をお作りになって、納めた人たちに融資されるというけれども、これもなかなか大衆は納得しないのです。われわれは一生懸命に説得にかかるけれども、今血の出るような金を取られて四十年、五十年、世の中はどう変わるかわからぬ。今でこそこの百円が値打があるので、四十年、五十年たったら、この金がどう化けるかわからない。木の葉に化けるかもしれない。そうして、集めた金は還元するというけれども、実際はやはり大企業の方へ回っていくんじゃないか、こういう考えなんです。だからこの言葉を左翼的な言葉でいえば、大資本の収奪だ。国民年令に名をかりた、実に巧みな独占資本の収奪が行なわれているから、われわれは反対なんだ、こういうことを言う人があるのでありますが、しかしそれを納得させるだけの理論がないじゃないですか。納得させるだけの理屈がありますか。あなた方の方は納得しておるだろうけれども、われわれの方はどうも納得できない。所得があれば税金を取るんだ、こういうことを盛んに言われた。ところが現実に所得がないじゃないですか。今、たとえて言いますけれども、――先ほどから私は資料で申し上げているが、今小山さんは、大体申告で十八万五千円程度の課税所得のある人々には、申請によって免除するとおっしゃった。一体日本の六百万の農家の一年間の所得は幾らですか。この前は個人々々に分けて論争して、八万五千と言ったら、あなたは目の色を変えてそんなことはないと議論せられたが、今度は世帯でいこう。一世帯にして農家の平均所得は幾らですか、お聞かせ願いたい。
  208. 小山進次郎

    小山政府委員 正確には記憶しておりませんが、おそらく二十五万前後だと思います。
  209. 小林進

    ○小林(進)委員 農業による所得は二十一万円ですよ。粗収入で二十一万円ですよ。これは資料が少し古くなりますから、あなたの方もお調べ下さい。三十六年度の自治省の資料です。私は、今持ってきませんでしたけれども、総合計いたしまして、そのときの農家の所得は、全国で一戸平均四十一万円です。その四十一万円のうちの、端数は省きますが、五三・三%が農業所得です。それから四六・六%は農業外の収入だ。季節労働に出たり、日雇いに出たりという収入。だから、もしあなたがおっしょるように、農業所得とおっしゃるならば二十一万円前後ではありませんか、十八万五千円まで免除してくれるというならば、それをこすことまさに一万円か一万五千円が農家の所得なんですから、ほとんど免除に該当するすれすれだと言って間違いないじゃありませんか。みんなすれすれですよ。それは免除してくれますか。
  210. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほど私が申し上げたのは、農業を主としている五人世帯の場合にはあの程度のものを免除しておりますと、こういうふうに申し上げたのであります。従って、農業収入のほかに農業外の収入があれば、もちろんそれを合わせましたものをもとにして判断をするということになるわけであります。なお、収入の金額等につきましては、小林先生非常に正確で詳しい知識をお持ちで、今お教えいただいたわけでございますが、それによって判断すれば、やはりあの程度の扱いというものがちょうど今現われているような姿になってくるように私も思います。
  211. 小林進

    ○小林(進)委員 私は今ちょっと意地の悪い質問をしましたけれども、あなたは農業の収入とおっしゃいましたから、農業の収入は全国平均で二十一万何がしじゃないかと言った。世帯負は四・八人ですよ。大体五人とおっしゃった。そして二十二万そこそこなんですから、そういうような農業の所得でとてもやっていけないから、ふるさとを石をもって追わるるごとく捨てて、そっちで働きこっちで働き、一番苦しい都会における低所得の労働者、一番末端の仕事を分担しながら働いているそういう人たちに、今均一の国民年金の百円、百五十円をかけることは、どうしても私は合理的なやり方じゃないと思う。こういうことばかり議論してはなんですから、そこで一つ妥協して私の方で発言をいたしますが、その救済の規定として、せっかく福祉年金は、あれは発足しましたのは三十四年の十一月からですか、二年も前から発足して、あれには相当低所得者の大衆は政府に感謝しているわけだ。その陰には小山さんにも感謝しているわけです。だから、この気持はやはり尊重してやっていいと私は思う。だからこれは存続していったらいいじゃないか。老齢福祉年金も、障害福祉年金も、母子年金も、遺児年金も、私は福祉年金は持続したらいいじゃないかと思う。せっかく喜んできているものを、今度の拠出年金によって、いわゆる登録をして、申請をして、今までは三年間、今度は改正で一年にしてもらいましたけれども、一年の実績がないと、二年前ならば当然もらえるはずの障害年金も母子年金も、いわゆる拠出年金の仲間入りをしなかったからということで、事故が起きて条件ができても、もらえないという建前ができ上がっておる。それはあなたの方に言わせれば、拠出年金が主であって、福祉年金は補完的措置だから仕方がない、こうおっしゃるだろうけれども、せっかく喜びを与えて今日まできたものを、そういう形で将来もないようにするのは、私は弱者の背中を石をもって打つ残酷なやり方だと思うが、この点はどうですか。法改正をおやりになる意思があるかどうか。これをやっていただくならば、私も二つ考え直してその方に賛成をしてもいいと思いますが、いかがですか。
  212. 小山進次郎

    小山政府委員 ただいま先生が御指摘になった問題は、結局日本の所得保障のそれぞれの分担をどうするかという問題になるわけであります。それにはそれぞれ制度がきまり、対象がきまって、それぞれの制度自分の対象の分について守りを固めていく、こういう仕組みをとっておるわけであります。ただいま先生は、これは当然国民年金の対象だという前提でお話しになっておりますが、むしろ問題はほかにもあるわけでありまして、たとえば国家公務員という制度に入っておっても、十年にならないうちに夫が死んでしまうということがありますと、今のところ、あそこでは母子年金に相当する遺族年金は出ないわけであります。これはやはり今までの年金制度における一つの穴になっておるわけであります。そういうふうな穴をどういうふうに埋めていくという問題は、これは総合調整の問題としてあり得るわけでありまして、国民年金としては、少なくとも自分の分担としてこれだけは守らなければならぬということで、きまった対象については最善の守りをしていくというのが、今の仕組みになっておるわけであります。
  213. 小林進

    ○小林(進)委員 私の申し上げておるのは、その意味において国民年金は、低所得のすれすれの、免除を受けなければならぬような、しかも収入の査定もできないような、そういう気の得な方々に指向されておるこういう制度だから、せめてそういう恩典をせっかく与えたのだ、今まで与えておった制度なんだから、それくらいは存続しておいてくれてもいいじゃないか。あなたは、今の国家公務員年金と比較されたけれども、比較すれば掛金からみな違ってくるのだから、そういう都合のいいところだけはあっちの方から例を持ってきたり、こっちの方から例を持ってきたりして比較対照して、だから国民年金にはやれない、こういう理屈を言われる。そうだったら保険料の方も、こちらと同じに取ってくればいいじゃないかと言えば、それは査定するのがむずかしいから強制的にふんだくった――これではあまり前後のロジックが合わな過ぎるのじゃないかと思います。特に私どもが方々を歩いてみますと、あなたたちから強制があったかどうか知りませんが、命令を受けた未端の町村長その他で盛んに年金保険料の徴収をいたしておりますが、そのときに言う語りぐさはいつもこれだ、保険に入りなさい、国民年金に加入しなさいと言っているのにとうとう入らなかったために、その間に事故が起きて――あそこのおっかさんは、あそこのせがれさんは年金に入れ入れと言っているのにとうとう入らなかった、そのうちにおとっつあんが死んでしまった、入っておれば当然あの未亡人も、あの子供も母子年金をもらっていけるものを、私どもの勧誘通りに入らなかったから母子福祉年金ももらえない、障害年金ももらえないで、あのようなぶざまな格好になっておる。これを見ただけでもあなたは入らなくちゃいけない、こういうことで勧誘をして、そうして強制的に入れているというのが実情です。大臣、これが実情なんです。もしこの拠出年金制度というものがなければ、二十四年の十一月から発足した福祉年金だけであってくれれば、今の夫をなくした未亡人と子供のこのケースは、当然収入がないのでありますから、これは母子福祉年金に該当していく。ちゃんともらえるのだ。ところが、三十六年の十一月からこの拠出年金が発足したために、そうしてそこへ金がないから加入できなかったために、福祉年金の恩典までも権利を剥奪されている。しかも剥奪したことを得々としてよき例にして、こういうことがあるからあなた方は入らなくちゃいけない、加入しなくちゃいけないという勧誘をして歩いているがごときは、まさに柳の木に首をつって自殺する人の足を一生懸命に引っぱっているのと同じようなやり方じゃないか、それほどまでにしてこれを勧誘しなければならないものであるかどうか、政治というものは、行政というものは、それほどまでに残酷にやらなければならないものであるかどうか、これを私は大臣にお尋ねいたしまして、あなたの偽らざる気持をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  214. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ものは考えよう、あるいは見方というものもかなり影響するかと思うのでございますが、国民年金制度国民のいわば福祉のために創設いたしたわけでございまして、また諸外国に比べてみましても、日本の制度が内容的にも、また時期的にもおくれておるわけでございます。われわれとしましては、なるべく早くりっぱな年金制度に仕上げたい、こういう心持でやっておるわけでございます。従って、これに該当する方々はぜひ加入を願いたい、また法は加入という、言葉は悪いのでありますけれども、強制をしておる、こういうことでございますから、あらゆる努力を傾けまして加入を進めていくというのは、当然なことじゃないかと思うのであります。ただ、おっしゃるようにいかにも残酷だ、いかにも過酷だというようなことになりますと、われわれの本旨とするところではございませんけれども、しかし法の、求めるところは、すべての人に一つ加入していただきたい、あるいは多少気が進まぬでも、日本の年金制度のためにぜひ加入をしていただきたい、かようにお願いする次第でございます。個々の取り扱いにつきまして、行き過ぎの点があれば是正をして参らなければなりませんけれども、小林さんのおっしゃるように、何もかも引っぱり込もうというためにあらゆる術策を弄しておる、こういうふうにお考えにならすに、ぜひ気持よく加入してもらいたいものと私どもは念願しております。
  215. 小林進

    ○小林(進)委員 そこでものは相談でございますが、三十六年度十一月からともかく発足いたしまして、実際この年金のありがたみ、必要性というものを被保険者は感じていないのですから、その意味において、政府の方で強制、罰則の規定を発動されないで、もっぱら宣伝PR活動に努めて、納得づくで入ってもらうことに重点を置くという、これは私は非常にけっこうなことだと思っておりますが、なかなか国民の一人々々に納得せしめるといってもそう急にはいきませんから、当分の間、三年か五年、この福祉年金、母子年金と傷害年金を存続せしめておいて、一生懸命に拠出年金に加入してもらう、そういうことに努めながら、もし加入をしていない人の中にそういう事故が起きたときには、福祉年金を発動いたしましてちゃんとめんどうを見る。それは永久にというわけではありません。この保険制度が徹底するまで三年か五年でよろしい。しかし悪意はいけません。年金制度への加入を妨害したり、意識的に反対運動をして入らないという悪質の者までやる必要はないけれども、うっかりして入らなかった、そのときに金がなくて入らなかった、入ろう入ろうと思っているうちに入らないで今日まできたという、いろいろの事情の人が事故を起こした場合には、福祉年金でめんどうを見てあげる、こういうふうな改正をおやりになる意思があるかどうか、やっていただきたいのでありますが、私の方でこれはお願いするのであります。おやりになる意思があるかどうか、お聞かせを願いたい。
  216. 小山進次郎

    小山政府委員 すでに今日までのところで十分にPRに努力しておりまして、加入すべき者のほとんど九割くらいが入っておるわけであります。それで入っておるわけであります。それで入っておる人々につきましては、免除を受ける手続をとる場合には、いろいろな事情があって、あらかじめとるべきものがとれなかったというような人々の場合、実情を調べてさかのぼって免除をするという点等、相当弾力的に扱っておるわけであります。そういうような風情でございますから、実際問題として非常に同情すべき事例については、私は表立って議論をしなくても、自然にしかるべき処置をされておると思うのであります。ただ制度として考えました場合に、明らかに制度に入っていない人々を、制度の定めるいろいろな措置の対象にするということはどうもしがたいことでございますので、これはやはり現在の建前通り進むより仕方があるまい、かように考えておるのであります。
  217. 小林進

    ○小林(進)委員 私どもの要求するような御回答を得ないことはまことに残念です。事実の面においてそういうふうなものの救済措置が行なわれておるとおっしゃいますけれども、行なわれていればけっこうですが、今のところはそれをもって勧誘する有力な武器にされておる。一番言いたいのはそれです。いま一つは、末端の市町村の還元融資を、加入しなければしないという、この二つがきめ手になっておるのでありますが、還元融資の問題は別としましても、こういう年金を納められないで事故を起こした気の毒な人たちに対して、お前は加入しなかったから福祉年金ももらえない、いい気持だという、ばり罵倒の材料にされておるということだけは一つおやめになっていただきたいと思うのでありまして、もし法律改正がどうしてもできないというのなら、これは私どもと意見の相違でありまして、(「がんばれ」と呼ぶ者あり)いやがんばっているのであります。どうしても要求されないというならばけんか別れで、これ以上話を進めるわけにはいきませんけれども、この点も修正をしていただかない限りは、われわれは政府国民年金に御同意申し上げるわけにはいきません。あくまでも免除をお願いするという闘争を中心にして、個々のケースについて太鼓をたたき、鼓を打って対決していかなければならないのであります。まことにわれわれの不幸とするところであります。これは大蔵当局一つお尋ねしたいのですが、こういう所得のいかんにかかわらず均一の保険料を取るという、この問題はしばらくおくといたしまして、そのものずばりで、今農家といいますか、低所得者にはいろいろの公租公課があるわけでありまするが、大体所得税なんかは全農家の六・五%しか納める農家がないのでありまして、あとはもう町村においては全部均等割である。その均等割と保険税と国民年金が、現在の低所得者に対する一番大きな税負担です。その税負担の中で、そういう市町村民税等と健康保険税、国民年金と比較対照しました場合、どれが負担として一番重いか、どれが一番軽いか、順次序列をお聞かせ願いたいのであります。
  218. 岩尾一

    ○岩尾説明員 御質問でございますが、私、的確な資料を持っておりませんので、記憶で申し上げますので、その点御了承いただきたいと思います。  姿といたしましては、現在では年金が一番重いのではないかと思います。それから保険料が大体全国平均七百円から八百円ぐらいのところでありますから、そういいますと、月百円という国民年金が一番高いのではないか、あと均等割ということになっておるのではないか。これは市町村によって非常に違いますが、大体そういう形だろうと思います。
  219. 小林進

    ○小林(進)委員 私は的確な御答弁だと思います。それはやはり年金が負担にして一番重いです。気分的にも重いし、事実の上においても重い。その次は保険料です。その次はやはり税金です。しかしそれは所得税においても――あなたがおっしゃるように地方税においても四つの方式があった、それが今年度から二つの方式に改められた。その四つの方式も私も調べてみましたけれども、それは大同小異で、内容においてはそれほど大きな開きがあるわけじゃない。しかし日本の税制度というものは、いろいろの矛盾を含みながらも、やはり多くの経験と試算の上にでき上がった合理的なものじゃないかと私は思っている。思っておりまするから、そのものずばりではないけれども、そういう形のものがいわゆる被用者年金被用者保険にもみんな適用されているわけです。それを一体――また同じことを繰り返すけれども、なぜ国民健康保険国民年金だけにこういうことをやるのかということが、何回繰り返しても納得できないのです。そうしてその結果が安くなっているならよろしい、低所得だからほかよりも安いというならいいけれども、その結果は、ほかの税金やそのほかに比較して一番高いという結論が出ているのですから、これだけはどうしても修正をしてもらわなければならない、収入をふやしてもらうなり、さもなければ、この課税方式はどうしても改めてもらわなければ私は納得できない。  そこで一つ、また私は御相談申し上げるのでありまするが、これは制度審議会で八木さんあたりはあまり御賛成じゃなかったそうでありますけれども、一律の百円と百五十円の中で、免税点の間にいわゆる減額徴収といいますか、減税といいますか、減額の保険料といいますか、百円の半分の五十円、百五十円の七十五円という……(八木(一)委員「僕も賛成だよ」と呼ぶ)八木さんも賛成だそうでございまするが、そういう制度を設けて、やはり低所得者の中にも若干収入の格差があるのですから、その格差に基づく保険料のいわゆる差額徴収というものか、減額徴収という制度を設けたらどうか、こういう答申もなされているようであります。この点、一体政府側はどのようにお考えになっておるか、お聞かせを願いたいと思います。
  220. 小山進次郎

    小山政府委員 私どもがこの前まで保険料の減額というものに同意しがたいという気持を申し上げておりましたのは、今の制度のままで保険料の減額を認めるにしましても、国庫負担保険料の半分というふうにきまっておれば、結局自動的に国庫負担も減っていく。それでは減額することの意味がないじゃないか。従って、減額を考える前にとにかく免除というもの、納めたものと同じ程度国庫負担がつくという条件が一つ出てこなければ減額問題は意味がない、こういう意味において、あの当時必ずしも賛成しがたいということを申し上げておったのであります。もし八木先生が同じようなことを言っておられたとすれば、やはりそういう条件のない減額はあまり意味がないということで言っておられたに違いないと思うのでありまして、これは実態がそうであったわけであります。現にこの説については、実情はあまりお考えにならない学識経験者はそういうことをおっしゃいましたけれども、むしろわれわれに対して国民年金の反対運動を展開してきた人々は、御自分たちの実感からして、その点に関する限りは、お前たちと全く実態は同じに考える、こういうふうな意見であったわけであります。幸いにして保険料の免除というものが実現したわけでありまするから、減額というものにある程度意味ができるわけであります。これは現在の制度でも、一年間百円の場合には千二百円、百五十円の場合は千八百円になるわけでありますが、免除の仕方によりまして、一年間免除というもののほかに、三カ月間免除あるいは半年間免除という工夫をいたしますならば、結果において減額するのと同じことができるわけであります。この点は運用面において十分考慮して参りたい、こういう考えであります。
  221. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると、運用面において免除の規定を生かしながらやっていこうとおっしゃることで、五十円とか百円とかという減額徴収の制度は、これは法律改正をおやりにならないということですね。こういうお考えと承りますが、間違いございませんか。大臣、おやりになったらどうですかな。
  222. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今政府委員のお答え申し上げました通りに、制度を活用して参りたいと考えております。
  223. 小林進

    ○小林(進)委員 しかし、保険料の半額国庫負担の問題は、もう解消したのでございましょう。その点においては、何も減額制度を設けても不便はないはずでございますが、いかがでございましょう。
  224. 小山進次郎

    小山政府委員 ただいま申し上げましたように、現在の制度で免除を半分するとか、あるいは四分の一する、あるいは四分の三するというやり方をしさえすれば、まさしく先生のおっしゃる減額ができるわけでございます。むしろきまった金額をきめてしまうよりも、その方が運用に弾力性を持たせることができるわけであります。その意味において、私はおっしゃることと全く同じことができる条件ができたので、その点は御期待のような結果が出て参ると思っております。ただ私ども、どちらかと申しますと、免除の問題についてはあまり深追いをして、無理やりに取り上げるというようなことをしたくない、無理があったならば、少なくとも所得がついて納められるだけのゆとりを相手方に与えるような扱いにして参りたい、こういう気持が現在強うございますので、あまりこまごました徴収を無理にしないというふうに現在までは指導してきましたので、あるいはそういう扱い方が全然できないんだといったような印象を第一線で持っておった向きがあるかもしれぬと思いますが、その点は今後十分趣旨を徹底させるようにいたしたいと思います。
  225. 小林進

    ○小林(進)委員 百円とか百五十円とかいうこまかい金を、さらにさらに刻んで半分とか三分の一とかに減額して徴収するということは、事務の繁雑を来たすから困難だというお考えもあるだろうと思いますが、私も政府考え方に賛成ではありませんが、この問題は一つ誠意を持って御研究願うことにいたします。  次に、私は実情について若干御質問いたしたいと思うのでありますが、青森県が四一・八%しか検認率がないのは、一体どういうわけなんでございましょうか、原因を一つ承りたいと思います。これは一月末の数字です。
  226. 小山進次郎

    小山政府委員 青森県は、その後だいぶ進んで参りましたけれども、やはり今のところ、まだ全国では一番下の五五%強程度のところでございます。これはやはり青森県が、いろいろな面において実施の態勢がおくれているということが根本の原因でございます。それからもう一つは、青森県ではもう少し免除が出てきていいはずの地域であります。ところが免除がまだ十分出切っていない。従って、青森県は免除の方も出るべきものが出てきてないし、徴収の方も納めるものが納めるようにいってない、こういう事情が青森県の情勢を今非常に悪くしておるわけであります。
  227. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると、徴収の行政能力がないということでありまして、その住民の生活環境とか経済状況は、この年金の徴収成績のいかんには関係がないということになるのでございましょうか。私はやはりその土地の経済状況あるいはその他物質上の条件がこの成績を低下せしめているのではないかというふうに考えているのでございますが、いかがでございましょう。
  228. 小山進次郎

    小山政府委員 そういうふうな関連も、大きい意味においてはもちろんあるわけでありますけれども、ただ現在の状態は、まだまだそういう関連のために出ているところまでもいっていない。そういう意味において、全般的にあの県の情勢がずっとおくれているということが原因だと申し上げたわけであります。
  229. 小林進

    ○小林(進)委員 大阪がずいぶん成績が悪いようでございますが、これは一体どういうわけでございましょう。
  230. 小山進次郎

    小山政府委員 大阪は、大阪市以下衛星都市、軒並みに今のところ実施態勢が非常におくれているわけでございます。ここはどちらかというと、先ほど先生が仰せになって府民の所得の状態からいえば、決して現在見られるような状態であるところではないのであります。ただこの府は、全般的に社会保障の態勢というのがとかくおくれがちのところでございまして、たとえば国民健康保険について申しますと、全国の市町村の徴収率というのは今九二から九三くらいのところにいっておるのでありますが、大阪府は、ならして八一ないし八三というふうに非常に低いところにいるわけであります。何と申しますか、府民のものの考え方、あるいは大阪におけるいろいろな行政のやり方というようなものが、一般にこういうものの受け入れを非常におくらせており、これを正常の状態に持って参りますには、ある程度時間がかかると思っております。たとえば加入率等も昨年は非常に大阪は悪かったわけで、たとえば大阪市のごときはわずかに一五、六%程度だったのでありますが、今は六五くらいにきております。そういうふうに、いつでもおくれるという傾向を持っておるわけであります。
  231. 小林進

    ○小林(進)委員 結論を急ぎますけれども、先ほどから申し上げておりますように、十重二十重の機構で心ならずも年金を納めておるというのがわれわれの知る範囲の実態なんですが、大阪は俗に商人の町といわれて、利益を中心にして動く、利なきところには乗っていかないというような形で、この大阪の成績の悪いのは、やはり国民年金国民の評価というものをそのまま形に現わしておるのではないか、かように私は考えます。今あなたのおっしゃったように、何も経済的に大阪は参っておるわけではない、納めようと思えば納められるくらいの状況にあるのですが、実績が上がらない、おそ過ぎるというのは、これ自体が、政府国民年金の実態を国民が正しく評価しておる真の姿ではないかというふうに私は考えるのでございますけれども、それ以外に何かおそい理由がござまいしょうか。いま一度深く掘り下げたお話を承りたいと思います。
  232. 小山進次郎

    小山政府委員 先ほどのお話にも出ましたように、もともとお金を集めて制度を実施するということは、非常にむずかしいことであります。特に各地に散在しておる人々からお金を集めて、一つ制度を作り上げていくことが実際上成り立つかどうかということは、実を申しますと、三年前の私ども実務者の最大の問題でございまして、従来から社会保険の仕事をやって参りました実務者は、とてもそれは成り立たぬだろうという感じを持っていたわけであります。そういう事情がありましたので、当時、先生方の党も与党も、一刻も早く全国民的な年金制度というお考えでありましたのに、実務者は、どちらかというと、ややためらいぎみの態度で検討して参ったわけであります。そういう事情でございますから、この制度が軌道に乗ってしまうには、ある程度の時間がかかるのは、もう初めから覚悟してかからなければならぬという気持でおったわけであります。これはやはりいい意味において、なれてくると申しますか、国民がそういうものに対して教育されていくということがどうしても必要であろうと思います。その意味において、そういったことを受け入れがたいような条件があるところは、どうしてもおくれがちになる。大阪が現在非常におくれておるのは、先ほど申し上げたような事情でございまして、福祉年金のときも、どちらかというと、大阪はややおくれた地域であります。しかし先ほど適用の例で申し上げましたが、一年の間にかなり追いついて参りましたので、適用問題も、やがて一年たてばほかの地域のところまで追いついて参る、かように考えておるわけであります。
  233. 小林進

    ○小林(進)委員 そろそろ私も結論を急ぎたいと思いますが、福祉年金の所得制限を、所得倍増に即応して今度も上げていただきましたけれども、もう少し上げていただくことができないものか。これは実情に即していないと思うのでございまして、この点が一つと、いま一つは、同じことをまた繰り返すのでありますが、農村と勤労者に対する申請免除の最低の基準を、せめてもう二万円ばかり上げていただけませんか。五人家族で、年の課税所得十八万五千円以下の者は免除してやるが、それ以上の者は納めるというのは、私はどうしても実情に即していないと思うのでございまして、生活扶助法は五人家族で東京で一万三千二百円、法定免除は生活扶助者で十六万円ですから、申請免除は、そうするとほとんどボーダーライン層で、生活扶助者と同等の生活程度の者が、辛うじて免除の適用が受けられるということですね。これではどうも私は少し納得がいかないのであります。どうですか、申請免除は、農村では、今のところは一町以下の耕作反別の農家は一律に免除――喜びますね。これくらいやっていただいて、都会においても、今勤労者の平均償金は幾らでしたか、ちょっと忘れましたけれども、そういうことから勘案をいたしまして、都会は二十万円ですからそれを二万円オーバーして二十二万円ですか、勤労者の家庭には二十二万円でも少な過ぎますけれども、一挙に飛びつくわけにもいきませんから、これを上げていただけないかどうか。私どもせっかく政府に御協力をいたしまして、きょうじゅうにも、十二時までかかっても法案をお上げしようかという協力態勢を作っておるのでありますから、何らか少しぐらいはおみやげもちょうだいしなければ、しゃべりっぱなし、答えっぱなしというのはどうも感心したことじゃないのでありまして、幾らかでも時勢に適応した、少なくとも法定免除と申請免除の間の差額というものは五万円や六万円くらいの差まで見ていただかなければ、私は、法定、申請両免除の格差を設けられた理由がないと思うのです。これだけは何としてもお願いいたしたい。いかがでしょう。
  234. 小山進次郎

    小山政府委員 最初の所得制限の緩和の問題につきましては、前回先生の御質問に対して大臣がお答えになりましたように、年金額引き上げの問題も含めて、とにかく早急に検討を開始せよという指示を事務当局に下されまして、私ども目下検討に着手しておるわけでございます。おそらく御期待に沿うようなものが今後の作業として進められると思います。  それから免除の問題については、先ほど来申し上げましたように、現在の免除基準というものは、先生がお考え以上にゆるやかに運用されておるのであります。さっきも申し上げましたように、生活保護の適用を受けている者に該当する者がちょうど五十万円程度、それ以外に申請によって免除を受けております者が百十万ありまして、現にそれだけ免除を受けておるわけであります。二倍以上であります。この貧困線の引き方としましても、生活保護の階層を含めて、その三倍程度というところに今引かれているという実情になっておるわけでありますので、私は先生が御心配になるような無理な運用になっていないとは思っておりますが、もともと、繰り返し申し上げましたように、実情に即して運用していくということを基本にして定められているものでございますから、先生のお話もさらに研究させていただきまして、免除基準の時勢に応ずる調整ということについては常に積極的に努力を進めて参ることにいたすつもりでございます。
  235. 小林進

    ○小林(進)委員 第一番目の所得の制限の問題は別といたしまして、免除の基準の引き上げの問題は、法律でもないのでありますから、いわゆる行政的なあなた方の規則、細則でできる仕事でございますから、どうか――百十万人が、一応最初の予算的処置においては二百六十万も予定せられたのでありますから、それが一五%を一〇%におろしたからといって、何もこの免除の資格を強めるわけではないという御答弁がありましたから、この点においては私ども一応安心しておりますけれども、どうか一つできればこの基準を引き上げて、より多く、大ぜいの人たちが免除の恩典に溶せるように、あたたかい行政的処置をやっていただきますことを切望いたしまして、私の質問を終わります。
  236. 中野四郎

  237. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金法を中心に御質問を申し上げたいと思います。いささかくたびれておりますので、あまり大きな声を出すことを控えようと思っておりますが、一生懸命にやろうという気持は変わりませんから、低い声でもよくお聞き取りいただいて、いいお返事を願いたいと思います。  一番最初に、各種年金の金額を大幅に引き上げるべきであって、その考え方については、生活保護では、健康で文化的な最低限度の基準ということになる以上、それよりも積極的に老後生活あるいはその他の生活を確保しようという制度は、少なくとも健康で文化的な相当程度という考え方をもってこれを考えていかなければならないと考えますということにつきまして、厚生大臣の前向きの御答弁をいただいたわけであります。その次に、社会保障的に問題を考えていただく点について、いろいろと厚生省に御質問を申し上げましたところ、厚生大臣の方で、これまた前向きにお答えをいただいたわけであります。厚生大臣におもに御質問を申し上げたいわけでございますが、その中のあとの方の部分については、大蔵省にいろいろと御質問を申し上げましたが、前の方の部分について大蔵省にまだ御質問を申し上げておりませんので、厚生大臣、年金局長には大へん失礼でございますが、前の方の関連がございますので、大蔵省の方に、その問題についてちょっと御質問を申し上げたいと思います。  年金額の問題でございます。大蔵省の岩尾さん来ておいでになりますが、今の国民年金法の六十五才、月三千五百円という設定は、社会保障制度審議会において種々討議をしまして、結果として、制度審議会の答申、勧告としては一番お粗末なものになっておりますが、結局あの審議をした時点において、経済成長を二%と設定いたしまして、それに、何といいますか、警戒をして、予備をとって、こういうような生活水準は一・五上がればいいというような推定で、その出時の五大都市の生活保護水準の一人当たり平均二千円をもとにして、一・五をかけ、四十年後に三千五百円という金額を設定して勧告を出したのがもとになって、三千五百円という金額になっております。ところが、それ自体も変わっているわけでございますが、この国民年金法は、四十年間保険料の払い込みを建前とし、それから五年後に支給開始としたわけでありますが、結局、制度審議会の勧告を少し値切っておって、四十五年後に三千五百円ということになっておる。その五年間値っ切た点は、また政府ははなはだけしからぬわけでありますが、そのほか、この設定が間違っておることは明らかであります。経済成長議論は、簡単に申し上げますと、明治以後の経済成長は四%平均である。終戦後の平均は一〇%をこえている。昨年度は一三%。今、経済について少し対処することで経済成長の推定が減っておりますけれども、少なくとも二%などとは非常にかけ離れた経済成長ということが推定されているわけであります。これを二を四にし、四を六にした場合を設定すると、複利計算になりますから、何十年ということでは非常に猛烈な違いが出てくるわけであります。これを二を四として設定して計算をしたならば、三千五百円などという金額は出てこない。いますぐ的確な金額は出せないにしても、これの二倍、三倍という金額が妥当であるという設定になるわけであります。その意味で、最初国民年金法案が討議されました場合に、はなはだ不十分であるという徴底的な追及が行なわれまして、時の内閣総理大臣の岸さん、それから厚生大臣の坂田道太君、それからここにおられる小山年金局長が準備室長で大いに防戦これ努められましたけれども、それについては妥当な答弁ができないで、結局これは今年できるのだから、こういう問題はあとで徹底的にすぐ改正をするから、とにかくこの時点においてはこれを了承願いたいということで、社会党はこれを了承いたしませんでしたけれども、与党の議員の方々は了承をせられまして、その限度において国民年金法の第一回が通った。この点だけではありません、あらゆる点について不十分、不合理な点が指摘をされたわけであります。その後部分的には幾分直っております。政府の誠意もその点については認めるにやぶさかではございません。しかしながら、この根本的な点において一つもまだ対処がされておりません。それについて厚生大臣や年金局長に前から御質問をいたしておりますし。また前には、今の総理大臣である池田さんにも御質問をいたしました。前向きに取り組むという前向きの御返事をすべての方々からいただいているわけであります。おそらく厚生大臣は、来年度において非常にりっぱに国民のためにいい引き上げをなさる原案を出されるだろうと私どもは期待をし、また信じておるわけでございまするが、そこで厚生大臣がそういう原案を出されて、制度的には国務大臣の方々がおきめになることであって、大蔵省の事務当局制度的には権限をお持ちになっておられませんけれども、その問題を討議される国務大臣たる大蔵大臣が、事務当局意見を相当に参酌して強力な意見を発言されることは、具体的の例として明らかである。従って、大蔵大臣にここに来ていただいて、その問題を直接御質問申し上げるべきでありますけれども、いろいろ御都合があって参っておられないことは非常に遺憾であります。ちょっと委員長、大蔵大臣の出席を要求いたします。要求は前にしてあるのですから、一つ連絡をして下さい。来られないまでの間は、ぜひ主計局の方に聞いておいていただいて、一つ勇敢な御答弁を願いたいと思います。  そういうわけで、少なくとも金額を、省はその原案を作られる限度においてもこれは七千円、八千円、一万円というような金額にならなければならない、その後所得倍増計画ができ、生活水準が上がった、その上がった生活水準と対比してまた上げるべき要件がある、それならばさらにそれから上げなければならない。物価という問題はまた別に申し上げますけれども、そのような単純な問題でなしに、根本的に上げなければならない要件がある。  それからその効果の点であります。根本的に上げることによって、老後なり障害者なりの生活が保障をされる、また遺族の生活が保障をされるということで、労働力の新陳代謝を非常によくする、国民年金は当然厚生年金にこのバランスが移っていくべきものである。また労働者階級でありながら、不幸にも厚生年金の適用を受けないで、国民年金の適用をしいられている段層もあるわけであります。そういうことで労働力の新陳代陳が行なわれる。また狭義の労働ではなしに、大きな労働で、かつまた経営の部門を考えますと、たとえばそのようないい年金が確保されましたならば、農家の方々が農業の経営権に固執をして、年とった人は経営権を固持するというのでなくして、年金老後を確保されるから、農地の経営権は、ほんというは実際二十なり三十なり四十なりのむすこさんに実質的に渡すというようなことによって、農業の近代化あるいは共同化が促進される。中小企業またしかりということになる積極的な意義を持つわけであります。  それからもう一つ、そのような所得再配分が進むことによりまして、購買力の増大と安定を示して、そのことが景気の変動の差を少なくする、そして雇用の増大安定を来たすという面があるわけであります。あらゆる面でこれは積極的に勇敢に取っ組まなければならない。厚生省はこのことを熟知しておられまして、一生懸命によい案を出される。そこをただ普通のバランス、この前から再三申し上げましたからまた詳しくは申し上げませんけれども、防衛庁や何かと同じようなバランスで、五〇%で何か押えるというようなことで非常に大事なこの進み方がにぶくなったならば、これは非常に大へんなことになると思います。そのような意味で、年金額引き上げに対して厚生省の出される原案について、大蔵省は、これはまだ少ないのではないか、もう少し出されたらどうですかというくらいの勢いで、強力に激励をされる、そうしてそれを実際的に実現しようとの決意を固めていかなければならないと思います。それについてのお考えを伺いたいと思います。
  238. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先日の御質問に対しまして、谷村次長から御答弁したかと思いますけれども、小山さんも非常に練達の方でございますし、厚生大臣も熱意を持っておやりになっておるようであります。われわれの方も、決して社会保障の後退ということは考えておらないので、できるだけ適正な国民最低水準というものは維持され、そうして国民全体に社会保障が行き渡るということを願っておるわけでありますから、十分検討はいたしたいと思っております。
  239. 八木一男

    八木(一)委員 当面の担当者である厚生大臣をあと回しにして大へん恐縮でありますが、厚生大臣は十分それを理解して下さって取っ組んでいらっしゃると信じまして、あと回しにいたしたわけであります。閣議でございますから、内閣総理大臣も理解をしていただかなければならないと思います。本日おいでにならないことは非常に残念であります。これまた要求をいたしておりますので、内閣総理大臣の要求を一つ……。それまでの間に、今申し上げたことを繰り返しはいたしませんけれども、どうか厚生大臣から内閣総理大臣に、そのことを十分御理解になって総理大臣自体も厚生大臣とともに御推進になるように、お伝えを願いたいと思います。それについての厚生大臣の答弁を求めます。
  240. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、社会保障制度を充実いたします上におきまして非常に大きな問題でございます。従いまして、事務当局にはしっかりとした勉強をしてもらいまして、確実な計算の上に立っての制度を立てていかなくちゃならぬ。そういう意味におきましては、厚生省事務当局ないしは大蔵省事務当局の非常な御協力をいただきたいと思っております。しかし問題を決するのは閣議でありますので、仰せまでもなく、大蔵大臣あるいは総理大臣には八木さんの御決意のあるところも十分お伝えいたしまして、私としてもできるだけの努力をいたしたいと考えておるのであります。
  241. 八木一男

    八木(一)委員 それでは具体的な問題を、全部関連をいたしてはおりますが、金額の問題からほかの問題に一応移したいと思います。  今度は開始年令の問題であります。今拠出年金制度は、全部六十五才となっております。障害、母子は別になっておりますが、老齢年金に関しては六十五才、福祉年金は七十才ということになっております。基本的な問題ですから、拠出年金の方の老齢年金から申し上げるわけでありますが、この六十五才開始ということでは、非常にこれは不十分だと思うわけであります。この点につきまして、諸外国の中で六十五才の例もあることは存じております。しかしながら、諸外国の社会保障がある程度進んだと称せられる内容にかかわらず――日本の人たちは外国にばかりあこがれておりますけれども、外国必ずしも十分ではないわけであります。そういうようなところもありますが、六十才の例もあるわけであります。この年令のことにつきましては、日本の今までの国民は、非常に経済状態が悪かったので、外国よりも短命であります。最近年令が引き上がって参りましたけれども、短命であります、また生存中であっても、全体的に短命であるということの一つの続いた現象として、老衰が早かった。そういうことで、現在改善はされておりますけれども、社会保障を実行している北欧諸国あるいはイギリスあるいはニュージーランドというような国に対しては、あくまでもこのような老衰が早い、あるいは平均寿命が短いという状態にあるわけであります。従って、このような国がたとい六十才で開始しておろうとも、このような国が五十五才あるいは六十五才で開始をしておった場合でも、日本においては六十才ということが、その面からは至当ではないかと思う。ただし、これから延びてくるというけれども、今まで貧乏した三十の人が六十になるまで、貧乏による、あるいは苦労による健康の障害ということはやはり残るわけであります。ですから、諸外国よりも健康状態が悪いという状態は、十年、十五年は解消しないと思いまするので、その意味で諸外国以上に早く老齢年金を開始しなければならないという要件が、現時点においてあるわけであります。  その次に将来の見通しでありまするが、これにつきましては、いろいろの産業がオートメーション化をいたしております。これはたとえば機械産だけではありません。農業もそうであります。商売上もそういうオートメーション化が始まるわけであります。そうなれば労働力が、今みたいに急激にやったときには労働力不足という問題が起こりますが、総体的に労働力が少なくて済む、そういういわゆる文明の進歩があるわけであります。そのようなときに雇用問題に対処するためには、ある程度の年令に達した人は年金をもって生活を確保し、そうして生産点の第一線を次の世代の人に譲るということをしなければなりませんし、また年少労働者が今働かされるというようなことをなしにして、たとえば高等学校を義務教育化して、その後に働くというくらいに、そちらの方も詰めないと雇用とのバランスがとれなくなる。そのような見通しをもし持ちますと、当然六十才開始ということになろうかと思う。一般的に、あるいは諸外国が六十五だからということを言う方がございまするけれども、そのような北欧諸国や、あるいは西欧諸国やニュージーランド等の社会保障は、このオートメーション化が始まらないときにその制度が作られたわけであります。現在の日本の国民年金制度は始まってから作られた、そうして今改造をされているところであります。従って、欧米諸国がどうであろうとも、日本としては最もいい考え方でやるべきであり、また欧米諸国をこれにならわせるくらいの勢いでやっていかなければならない。その両時点から、六十五才開始ということははなはだ不十分なものであります。これを六十才に低下せしめることが最も必要だろうと思う。また具体的に今までの例で六十才というようなものがないために、たとえば失対事業において老齢者でも働いて、そうして生活を営まなければならないという事例があるわけであります。そういうようなことで六十才を基本とした拠出年金制度にたよるべきでありまするし、しかしながら、基本をそこに定めましても個人差があります。全般的にはこのようなところで老齢が適当であっても、個人的に早く老衰をする人もあります。個人的に元気の人もあります。従って、政府が社会党の考え方をお取り上げになって、繰り上げ減額年金、繰り下げ増額年金という制度が出てきたことはいいことでありますけれども、繰り上げ年金で六十才で開始するということは不十分であります。基本を六十才にして、繰り上げ減額年金を五十五才から開始する、繰り下げ増額年金は六十五才までにする、そのようなところに変えていただく必要があろうかと思う。その問題について厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  242. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと八木委員に申し上げますが、総理大臣は別として、大蔵大臣については先ほどから呼んでおりますが、参議院の予算委員会がきょうはあれだそうですから、こちらへ出られませんので、まことに恐縮ですが、主計官がありますので、ごしんぼう願いたいと思います。
  243. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民年金制度の改善ということを考えます場合に、私もまだ勉強不十分でございますので、一体どことどこをやったら一番いいのかというふうな点につきましても、結論は得ておるわけではございません。これから勉強さしていただきたいと思うのであります。八木さんは、この方面の実は国会において権威著と申し上げてよろしいと思います。十分な御検討をお積みになっていらっしゃると思います。また八木さんの頭の中には、あるべき年金制度というものが、すでにでき上がっておるのじゃなかろうかというふうにも私は想像するわけであります。非常に問題点はたくさんあるのではないかと思うのでございますが、今お話しになりました年金の開始年令をいつにするかというようなことも、確かに問題点としては大きな問題ではなかろうかと思います。ただわれわれが考えてみましても、六十五才をかりに六十才にした場合あるいは五十五才にした場合においては、ごく事務的に考えても計算が大へん狂ってくるのじゃないか。少なくとも計算はやり直してみなければならないというようなことは、大きな問題であろうかと思います。同時にまた、この問題はひとり年金制度だけでなくて、これをめぐる諸般の情勢というものと非常に関係が多いと思います。国民の平均年令の問題もあります。あるいはまた、雇用状態の変化ということもございます。あるいは賃金形態の変化ということもあろうかと思います。これから先いろいろ情勢が変化して参りますことでもあろうかと思いますが、研究すべき問題としては確かに大きな問題でございますけれども、今直ちに年令を、六十五才を、特別の例を除きまして六十才に切り上げる、原則として切り上げるあるいは原則を五十五才に持っていくというようなことについての結論は私は持っておりませんけれども、問題点としてはきわめて重大な問題と思いますので、今後の改善充実の内容の一つとして検討さしていただきたい。ただ、これを一番先にやるべきことであるかどうかというふうなことになりますと、もちろん一挙にすべてを解決すればいいのでありますけれども、一番最初にやるべきことであるかどうかということになりますと、これまた考えなければならぬ点もあるのではなかろうかと想像いたしておるような次第でございます。
  244. 八木一男

    八木(一)委員 今の問題について、大蔵省の方でお考えがあったら一つ……。
  245. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいま大臣のお話しいただきましたようなことでございますが、何と申しましても、やはり年金でございますから、全体の収支というものを考えなければなりませんので、そういった点を厚生省でもよく御検討いただいた上で、私どもの方でも検討したいと思います。
  246. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣の積極的な前向きの御答弁をいただきまして、非常にその点でうれしく存じます。ぜひ一つ推進に御努力をいただきたいと思います。  昨年の実は附帯決議の中に、根本的な方の附帯決議に、各年金の年全額を大幅に引き上げることが第一項であります。第二項、老齢年金、老齢福祉年金支給開始年令を引き下げるということがあるわけであります。これは満場一致の可決であります。自由民主党の方々、民主社会党の方々も、ともに熱望をせられましてでき上がった問題でありまして、厚生省が勇敢に一生懸命取っ組まれましたならば、それを実際的にいろいろの協議をすれば、与党の方はきん然として賛成をされる状態にあるわけであります。その意味一つ急速に、熱心にお取り組みを願いたいと思います。一言でけっこうですから……。
  247. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本委員会の御決議というものは、私ども十分承知いたしておるわけであります。またこれを尊重すべきであると考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、国民年金制度の改善ということは、なかなか一朝一夕にはできない。従って、できるものからやっていくというつもりでおるわけでございますから、今申しましたように開始年令を繰り上げるとか、あるいは給付の金額を引き上げるとかいう問題につきましては、ただわれわれがばく然と上げたり下げたりというわけには参らぬと思います。十分検討をいたしました上で、自信を得た上で、これは自信のある案を皆さんにお目にかけて、そうして御審議を願わなければならぬと思います。さような意味におきましていろいろ検討いたしておるところでございますから、御了承いただきたいと思います。
  248. 八木一男

    八木(一)委員 ちょっともとへ戻って恐縮でございますが、金額の点、この間は半端のところで委員会が途中で打ち切られましたので、もう少し重ねて申し上げますと、検討をしてりっぱな金額を出されること、これは大いにやっていただきたいと思いますが、ただ検討の時間を要してある程度の、たとえばここまで引き上げることの結論が出るまでに、今ここであれば、そのまん中くらいのものを先に出すということもぜひ考えていただく必要があろうかと思うのです。というのは、現在の拠出年金制において理解がまだ十分に行き渡っておりません。それから目先のことを考える人たちもありますので、将来の三千五百円というならばつまらない、大したことはないじゃないかというような、といって、老齢になってみればそれがあってよかったということになろうと思いますけれども、しかしながら、現在働いている人にとっては、もっと収入があるからこれっぽっちの金じゃ魅力がないというようなことで、理解が少ない点もあるわけであります。従って、今拠出年金が開始されて、理解を浸透させておられるところでありますから、根本的にここまで上げるということを討議されるのに時間がかかるものであれば、少なくとも間違いのないところまで出しておいて、それから一両年後にまた積み重ねるということをされても、事務的にはめんどうくさいかもしれないけれども、国民ほんとう年金のことを理解させるためには、そのことが必要であろうと思うものであります。そういう面を含めて、一つ前向きの御検討をいただきたいと思いますので、重ねて恐縮でございますが、一言でけっこうでございます。
  249. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の金額については、私も政府側ではありますけれども、八木さんがしょっちゅう仰せになりますように、これで決して十分であるという気はありません。生活保護の基準にいたしましても御承知のように年々引き上げておるわけでございます。かりに三十年先の生活状態がどうあるかというようなことを考えましたときに、生活保護基準よりは少なくとも上回ったものでなければならぬものであると心得ておりますので、今の基準が三十年先でそのまま適用になるものというふうには、現段階においては私は考えておりません。従って、これは相当引き上げるということは当然のことだと思うのでございます。それをやるにいたしましても、やはり国力なりあるいは国民の負担能力なりを考えて進んで参らなければなりませんので、現段階におきましては、事務当局のところで、このくらいにすればこうなる、このくらいにすればこうなるだろうということをいろいろ検討いたしておる段階だろうと思うのでありまして、あまりまた軽はずみなことを申し上げるわけにも参りませんので、決して私どもお気持のわからぬわけじゃございません。またそのお気持の中には、国民年金に対するむしろ愛情のこもったお言葉があるということにも考えますけれども、そう簡単に、また何ぼにするということを申し上げるわけにいきませんので、さような意味で、いろいろケースを考えて検討して、そうしてまた皆さん、各方面の御意見によって、妥当だというところで御審議を願うというふうに持っていきたいと思っておるわけであります。
  250. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、福祉年金の点でありますが、老齢福祉年金であります。老齢福祉年金は七十才開始になっておりますが、これはいかに考えても開始年令が高過ぎると思うわけでであります。ことに先ほど私が申し上げましたように、今の六十代、七十代の老人は、過去の異常な政治の貧しさとか、それから特に戦争のときの苦労、そういうようなことで非常な打撃をこうむっておる人たちであります。老後に備えて営々としていささかの貯金をしたけれども、これはほとんどふいになってしまった。そういう人たちの七十才以上にしか支給されないということになると、そこの中で運よく生活状態がよかった、あまり苦労しなくて済んだ人だけが、生き残ってもらえる。特に苦労を重ねた人は、六十七か六十八ぐらいで死んでしまって、年金をあこがれながら、もらえないで死んでしまうという人がずいぶんいるわけであります。老衰の度も、そのような非常に痛ましい生活を送った六十七、八才の人と、それから比較的恵まれた生活を送られた七十二、三才の人を見れば、実態的に体力や何か逆な場合が多いわけであります。一がいに年令でこれをやることも非常に問題だろうと思いますし、そういう点で、七十才のところはこれは下げていただきたいと思うわけであります。これが検討をしてからということになると、その後に、今の時点で六十八才、六十九才というような年金をあこがれている人が、その間に命数が尽きて、政府の善政に均霑しないで死んでしまう人もありますし、これはあまりに長いこと御検討になると、ほんとうに対象者に気の毒なことになろうかと思いますので、この意味で至急に、私の希望では少なくとも来年度から、私どもは六十と思っておりますが、それが無理なら六十五でもいたし方がありませんから、来年度から下げていただくということをぜひ考えていただきたいと思うわけです。それについての厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  251. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 福祉年金と一般の老齢年金との関係については、これは釈迦に説法で、よく御承知のことと思いますので、かれこれ私は申し上げません。この金額が、この前の国会でも御質問がございましたが、私も現在の金額で十分過ぎるものとは考えておりません。しかし、これはこれなりにかなり喜ばれたのではなかろうかというふうには存じております。これでもって多過ぎるという気持は、さらさら持っておりません。できることなら、将来引き上げていくということについて考えていかなくちゃなるまい、こういう考え方をいたしておるわけであります。従来は、御承知のように、この年金につきましても、制限となるような諸条件をだんだん緩和していくという方向で努力して参っております。今後の問題といたしましては、年金額引き上げという問題について私どもとしましても検討をしなければなるまいか、かように考えておる次第でございます。逃げ口上を申し上げるわけではございませんけれども、財政その他の点も勘案いたしまして、この点についてさらに検討を進めて参りたいと考えております。
  252. 八木一男

    八木(一)委員 総体的に老齢福祉年金を中心として、ほかの福祉年金についても給付引き上げのお気持を持っておられることを非常にうれしいと思います。ただ、今御質問申し上げたのは、全部の問題についてこれから逐次及ぶわけでありますが、金額の点、それから対象者全体の所得制限の点、それから年令制限と私ども呼んでおりますが、この点なんであります。年令制限の点で申し上げたわけでございますが、さっき申し上げた理由によって六十才からしていただきたいれどども、せめて六十五才からでも来年度から推進をしていただきたいと思います。実は社会保障制度審議会で、私、委員の一員をいたしておりまして、特に年金問題については、微力でありますが、一生懸命取り組んでおります。総合調整は、今総合調整審議をいたしておりますが、一番弱い意見で六十才――六十五才に福祉年金をしなければならないという意見であります。さらに審議をして、それを六十才という答申、勧告が出るかもしれませんけれども、少なくとも六十五才から老齢福祉は開始しなければならないという答申が出ると思います。善政であれば、答申を持つ必要はありません。そういう状態でありますから、ぜひ六十五才から老齢福祉年金を支給せられるということについて、来年度にそのような改正を提出されることについて、今即答は御無理であることはわかっておりますが、最善の前向きの御努力を一ついただきたいと思うわけでございます。これについての……。
  253. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どうも八木さんと私とは、こういう問題になりますと基本的にあまり違わないので、非常に答弁がしづらいのでありますが、自由な気持を率直に出せば、もっと早くしたらどうだと言いたくなるような問題でございますれども、しかし政府としては諸般の制度関係もございます、財政の関係もございますので、無責任なことを言うわけにも参りません。お気持はよくわかっております。私どもとしましても、いろいろ検討をさらに重ねまして、できるだけ御期待には沿いたいと存じております。しかしながら、今申しましたように、一つやればすぐにお金を食う問題であります。また他の制度との関係もあるいは出てくるかと思いますので、そういう点を十分勘案いたしました上で、結論は出さしていただきたいと思います。
  254. 八木一男

    八木(一)委員 何といいますか、非常に慎重な御答弁をされる灘尾厚生大臣であられますので、今の御答弁は前向きで、ある程度慎重でございますけれども、ほかの性格の方であれば、断じてやりますというくらいの気持であろうということを推察をいたしまして、そういうことでぜひお願いをいたしたいと思います。これは釈迦に説法でありますが、その中にはいろいろと他の制度との関連があって、それをしておけば生活保護に落ちないというような問題もあって、金額は思ったほど大したことはないと思うわけでありますので、ぜひ一つ御推進を願いたいと思います。  次に、拠出年金制度に戻りまして、この前附帯決議で「保険料年金額給付要件、受給対象等すべての面において社会保障の精神に従って改善すること。」という要件があるわけであります。その中の保険料というものは、先ほど小林委員が御質問になった所得比例制の問題を含んでいるわけです。大事な問題ですから私も御質問申し上げたいと思いますが、時間もないので、今は一応ここを抜いて申し上げます。その次に、さっきのからみにおいて年金額もふやすということと、もう一つは、負担をした度合いに応じてくるというような社会保険的なことでなしに、必要な人に必要な給付がいくというような意味で、社会保障的に改善をしなければならないという考え方でございます。従って、先ほど小林委員と大蔵省の岩尾主計官の間の話にありました、これも両方意思は相通じておりますけれども、普通の社会保険……   〔「外務委員会で質疑を打ち切ったので、やめて下さいよ。」と呼ぶ者あり〕
  255. 中野四郎

    中野委員長 八木さん、もう少しやって休憩したらどうですか。
  256. 八木一男

    八木(一)委員 そういたします。  そういう意味でございますので、保険料をたくさん払ったらたくさんだとか、低額だったら低額ということではない、社会労働委員会の意思で社会保障の精神に従って改造するという意味であることを、大蔵省の方も一つ御銘記を願いたいと思いますし、厚生大臣はこの趣旨に従って問題を進めていた、だきたい。  そこで、この社会保険的な中にはいろいろな要素を含んでおります。たとえば、障害者の問題については、当然保険料を払ったからどうかという問題とは違った要件があるわけです。手がない、足がないという人には、二十才の加入年令に達すれば、保険料を払っていなくても、そのときには一級障害の所得保障の必要があるわけです。だいぶ改善されておりますけれども、障害者については、そのような要件があって渡すということでなしに、その年令に達したら即時渡すというふうに改善さるべきだと思います。その点についても前向きで御検討を願いたいと思います。  それからもう一つ、遺族年金基本額が、老齢年金と同額の方式各種保険でとっておりますが、それがいいかどうかは、これまた検討を要する問題であります。生活の問題でありますから、そういう点についても前向きで御検討をいただきたいと思います。  それからもう一つ、遺族年金基本額が、老齢年金と同額の方式各種保険でとっておりますが、それがいいかどうかは、これまた検討を要する問題であります。生活の問題でありますから、そういう点についても前向きで御検討いただきたいと思うわけでまありす。  その次に、特に社会保障的でないと私どもが考えておりますのは、障害について三級障害に支給がない。また内科障害が障害として同じように判定をせられながら、年金給付を受けないということは非常な間違いだろうと思います。これについて技術的な審査のことで検討中で、数年間延ばされておりますけれども、そういうことでは国民がたまったものじゃないのです。その障害が一級障害、二級障害であれば、内科障害にも適用することは議論の余地はないことだと思いますので、そういうことをやっていただくということが一つの要件であります。  その次に、そういう問題について、すべて大幅な国庫支出を行なうことというのが基本的な問題になっているわけでありますが、どうかこの問題について前向きに御検討を下さって、委員会の方でも提議をいたしますし、自民党でも社会党でも民社党でも提議をいたしますから、厚生省自体も十分御検討いただいて、また諸審議会の前向きの意見をお取り入れいただいて、このような方針で積極的にお取り組み願いたいと思いますが、それについての厚生大臣の御答弁をいただきたい。
  257. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまお尋ねになりました事項は、すべて前の国会においてもお話にあったことであり、また当委員会の決議に含まれておる事項ではないかと私思うのでございます。従って、私どもの方では、これをおろそかにしようとは存じておりません。十分検討いたしまして、適切な結論を得たいものと考えておる次第でございます。
  258. 中野四郎

    中野委員長 この際、暫時休憩をいたします。    午後六時二十七分休憩      ――――◇―――――   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕     ―――――――――――――