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1962-03-28 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十八日(水曜日)     午前十一時五十二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       大石 武一君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       中山 マサ君    永山 忠則君       八田 貞義君    松山千惠子君       渡邊 良夫君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    楯 兼次郎君       中村 英男君    広瀬 秀吉君       山内  広君    横山 利秋君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         議     員 勝間田清一君         議     員 五島 虎雄君         労働事務官         (労政局労政課         長)      久野木行美君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金課長)    東村金之助君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     中村  卓君         日本国有鉄道参         事         (職員局労働課         長)      長沢小二郎君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合書記         長)      山田 耻目君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十八日  委員赤松勇君、淺沼享子君、島本虎三君及び中  村英男辞任につき、その補欠として楯兼次郎  君、横山利秋君、山内広君及び広瀬秀吉君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員楯次郎君、広瀬秀吉君、山内広君及び横  山利秋辞任につき、その補欠として赤松勇君、  中村英男君、島本虎三君及び淺沼享子君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議付した案付  参考人出頭要求に関する件  最低賃金法案勝間田清一君外十二名提出、衆  法第一六号)  港湾労働者雇用安定に関する法律案五島虎  雄君外十二名提出衆法第二二号)  労働関係基本施策に関する件  労使関係に関する件(日本国有鉄道における労  働問題)      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  勝間田清一君外十二名提出最低賃金法案及び五島虎雄君外十二名提出港湾労働者雇用安定に関する法律案の両案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。澁谷直藏君。
  3. 澁谷直藏

    澁谷委員 私は、社会党から提案されました最低賃金法案につきまして、若干の質疑を行ないたいと思うものでございます。  近来文明諸国におきまして、賃金政策の中核をなすものとして最低賃金法というものの重要性につきましては、あらためて申し上げる必要がございません。わが国におきましても、数年前に、現行最低賃金法案が成立をいたしまして施行を見ておる実情でございまして、ただ、現行最低賃金法が、いわゆるILOの最低賃金に関する条約あるいは勧告において行なわれておりまする最低賃金法というものと比較してみた場合に、若干いわゆる業者間協定重点を置かれた変則的な賃金法であるという事実は、これは否定するわけには参らぬと思います。しかしながら、若干変則的な点は包含はしておりますけれども、とにもかくにも最低賃金法というものが制定されまして、そうして着々とその効果を上げておる、この事実もまた私どもは率直に認識をしなければならないと思うのであります。今回社会党におきましては、現行最低賃金法にかわるものといたしまして、全国一律十五才月八千円というものを根幹とする法律案提案されたのでございますが、私は、わが国に非常に賃金の低い労働者が多数存在をしておるというこの現実の中におきまして、その労働者賃金をできるだけ引き上げていきたい、その軸として今回提案されたような法律案を出された、そういう社会党努力に対しましては、私は率直に言って敬意を表するものであります。しかしながら、この政策というものは、あくまでも現実に根をおろしたものでなくちゃならぬ、いかにりっぱな考えであり、理想としては正しいものでありましても、それが現実法律となり、政策となって作用する場合に、日本現実とそれが正しくマッチするかどうかという点を、私どもは慎重に検討しなければならないと思うのであります。  そこでまず最初に、私は労働省の方からでもけっこうでございますが、現在のわが国労働者賃金の実態につきまして、適当な資料があればお教えをいただきたいと思うのでございます。社会党案基準が十五才月八千円ということでございますので、その八千円を一つの境といたしまして、八千円以上の労働者、八千円以下の労働者、でき得れば規模別年令別地域別にこれを教えていただければ一番けっこうでございますが、とうていそういった詳細な資料はないと思いますから、大ざっぱな数字でけっこうでございますから、八千円以上と八千円以下に分類いたしまして、大よその見当でけっこうです。労働者分布状況がどの程度になっておるかを、まずお伺いいたしたいと思います。
  4. 東村金之助

    東村説明員 お答えいたします。  ただいまの八千円未満労働者状況はどうなっておるかというお話でございますが、昭和三十六年三月の臨時労働力調査、これは総理府でやっておるものでございますが、これによりますと、全労働者が二千二百十三万人おります。このうちで、三百七十九万人が八千円未満労働者と推定されております。従いまして、その割合は一七・一%ということでございます。なおこれを規模別に見るとどういうことになっているかという問題でございますが、一人から四人という規模で見ますと、その労働者が二百四万人でございますが、そのうち八千円未満が九十三万人、従いまして約四五%が、一人から四人の規模では八千円米満ということになっております。同じくこれを二十九人未満、つまり一人から二十九人のところで見ますと、約三〇%が八千円未満、こういう数字が出ております。
  5. 澁谷直藏

    澁谷委員 全体で二千二百十三万人の労働者のうちで、その一七%に相当する三百七十九万人の労働者が、現実に八千円以下の賃金で働いておるという数字が示されたわけでございます。  続いて私は、これも政府側でけっこうでありますが、わが国経済の特徴といたしまして、いわゆる二重構造ということがいわれておるわけでございますが、大企業中小企業との間におきまして、生産性の非常に著しい格差が存在する、従って、その生産性格差の結果といたしまして、賃金の上においても非常に著しい格差があるということがいわれておるわけでございます。これも適当な数字があればけっこうでございますが、大企業中小企業と、その代表的な規模別でけっこうでございますから、賃金の点におきましてどの程度の差があるかをお教えいただければけっこうでございます。
  6. 東村金之助

    東村説明員 規模別賃金格差でございますが、これは製造業現金給与総額というものでみますと、昭和三十六年におきまして規模五百人以上を一〇〇といたしますと、規模五人から二十九人、この程度のもので四九・三%、さらに規模三十人から九十九人で六一・七%程度になっております。
  7. 澁谷直藏

    澁谷委員 欧米の先進諸国におきましては、規模別の差によりまして、賃金の上でこのように著しい開いた賃金格差はないわけでありまして、これはわが国経済のいわゆる二重構造というものの特質からくる、きわめて特徴的な違いであるわけでございます。そこで私は、社会党提案されました全国一律の最低賃金制というものは、これは確かに今後わが日本労働政策として進めていく目標であることを、私は率直に認めたいと思うのであります。しかしながら、今質疑で明らかにされましたように、現実に八千円以下の賃金で働いておる労働者が三百七十八万人おる。しかもそれは、ただいま規模別数字で明らかにされましたように、大体五人から三十九人の規模賃金が、五百人以上のそれに対しまして約半分であります。従いまして、この八千円以下の三百七十八万人というものは、大体五人から二十九人の規模事業場において働いておる労働者であると推定して間違いはないと思うのであります。とにかくこのような現実です。こういう現実の上に立って、社会党提案されました全国一律十五才月八千円という法律案が実施された場合に、この八千円以下で働いておる三百七十八万人の労働者は一体どういうことになるでありましょうか。さらにまた、五百人以上の企業に対しまして半分程度賃金しか払っていない。中には相当自分のもうけを多くしてふところへ入れてしまって、そうして自分のところで働いておる労働者には低い賃金で酷使しておる、こういう不心得な事業主もおると思います。しかしながら、最近におきましては、特に中小企業において労働力不足ということが非常にいわれておる。ある意味におきましては、今後の中小企業発展の大きなネックがこの労働力の問題にかかっておることは、勝間田さんも御承知だと思います。そういう状況下におきまして、大部分中小零細企業事業主というものは、自分だけもうけて労働者を酷使しておる、支払い能力があるにもかかわらず、八千円以下といったような低い賃金で使っておるという事業主は、比較的数は少ないのじゃないか。払いたい、しかしながら、いかんせん事業生産性が低いために支払い能力がない、こういうことで、やむを得ず非常に低い労働条件労働者を使っておるというのが大部分じゃないかと私は思うのであります。こういったような状況で、この社会党提案最低賃金法が実施されました場合に、この支払い能力のない零細事業主というものは一体どうなるのでございましょうか。この点についての勝間田さんの御見解をお伺いいたしたいと思います。
  8. 勝間田清一

    勝間田議員 お答えいたします。  最低賃金に対する私ども提案をさしていただいた基本というものが、支払い能力という点に一体重点を置くのか、そうでなくて、憲法で定められたる、あるいは労働基準法の第一条で定められたように、人間としての生活が営めるかどうかというその基本において、やはり非人間的な雇用というものをすべきでないのだ、この立場を確立することがやはり必要ではないだろうか。別な言葉で申しますると、中小企業対策というものと最低賃金政策というものとは、別個の観念から生まれてくるべきものだと考えるのであります。すなわち、かつて奴隷制度が廃止されたときに、奴隷制度というものは社会的に正しくないのだということで、奴隷制度は廃止されたわけであります。今三百何十万の諸君がちょうど日本労働人口の三〇%に当たるわけでありますけれども、それらの諸君を雇う場合に、非人間的な条件でこれが雇い入れられてはならない。その最小限度をきめるのが、すなわち最低賃金制度精神である。その意味で、私どもとしては、この憲法二十五条あるいは労働基準法の第一条の精神にのっとるところの最低負金制度を作るということに主眼を置きたい。これが法律の主目的でなければならぬ。しかし、澁谷委員のおっしゃいます通りに、これが中小企業、特に零細企業皆さん相当影響のあることも事実でありますし、その意味におきましてこれらの諸君に対する配慮というものがなされなければならない、かように実は考えるわけであります。  そこで、私どもとしましては、今の八千円の賃金アップをした場合に、経営者にどの程度影響を及ぼすかということについても、十分調査を実はいたしたわけであります。今労働省の方から答弁がございましたように、二十九人以下だと三〇%の労働者に関係しておりまするし、それから一人ないし四人というような程度のものでありますると、一七%程度諸君にこれが影響を持つものであります。日本労働の総体から申しますると、案外私は、八千円というベースは過酷な条件ではないように実は考えられるわけであります。しかしながら、依然としてこの一七%なり三〇%の皆さんに直接関係し、またその経営者に関係する問題でありますから、どうしてもこの際に私ども中小企業基本法というものを作りまして、中小企業対策としてこの問題を大きく取り上げよう、これを最低賃金制という問題とからましたくない、これは中小企業基本法の方で扱うべき問題である、かように考えましたものですから、この国会中小企業基本法をわが党として提案をさしていただいたわけであります。これを澁谷委員の方でもどうか一つ御検討いただきたいと考えておるわけでありますが、これが大きな柱とするところは、一つは大企業からの圧力というもの、すなわち多くの場合、これは下請企業でありますから、下請企業への圧力を何とかして対等な、合理的なものにしてあげたい、また同時に、この中小零細企業と称せられるものについては、何とかして組織化をしてみたい。この点で、共同化中心として私どもは案を立てたわけであります。  それからまた、下請に対する支払い代金というような問題も、従来皆さんの御審議を経て、その下請代金支払い保護をするような処置も実はもっと強化していかなければならぬのではないか、また最近、非常に大切な問題でありますけれども、大企業零細企業にまで手を出していく傾向が、非常に強いということが言えるわけでありますから、何とかして中小企業仕事を確保してやる方法はないだろうか、そういう面で私どもも諸外国の例などを調査いたしました結果、やはり国家需要の何割かを中小企業に直接発注をすべきである、あるいは大企業の進出について一定の制限を加えるべきである、中小企業についての仕事一つ確保してあげるべきではないだろうか。  それから今、労働生産性ということが澁谷委員から話がございましたけれども、この点についても、中小企業基本法としてわれわれが取り上げていきたいというのは、たとえばイギリスその他の地域において行なわれている通りに、中小企業近代化機械化が行なわれる場合においては、資金上の処置を講ずるだけでなく、税法上の処置も講じてよろしいのではないだろうか。また、ある場合においては、やはり国家貸与制度というものを設けるべきではないだろうか、機械設備を国が貸与してあげる、こういう制度も設くべきではないだろうか、こうした諸問題を内君とする中小企業対策の確立ということとにらみ合せていきまするならば、私は、この非常にお気の毒な三百数十万の皆さんに対して、少なくとも生活最小限度保障されるという体制ができるのではないだろうか、かように考えて私ども提案をさしていただいたわけであります。なお、こうすることが、澁谷委員のおっしゃった通りに、これは労働力が非常に不足で困っている工場でありまして、雇い入れることができない状態でありますから、こういう処置をとることは、同時に私は、中小企業労働難を緩和する政策になりますから、中小企業としては、かえって今は最低賃金制を望んでおる時代ではないか、かように考えておるわけであります。
  9. 澁谷直藏

    澁谷委員 ただいまの御答弁をお伺いいたしまして、私は、社会党最低賃金に対する考え方が非常に現実的になってきておるということで、その点について敬意を表したいと思うものであります。御承知のように、最低賃金法制定の問題は、十年前からわが国で各方面から叫ばれた問題であります。総評が十八歳全国一律八千円というものを中心とする最低賃金を叫び出しましたのは、おそらく十年前程度だったのではないかと思います。これに大体歩調を合わせて、社会党から数次にわたって最低賃金法案国会提案をされたのでありますけれども、これも詳しい記憶はございませんが、おそらく五年ないし六年前から、全国一律十八歳月八千円という法律案社会党から提案されておったのではないかと思うのであります。御承知のように、わが国経済がすばらしい経済成長を示しましたのはここ五年間であります。この五年間を通じて、わが国経済は、まさに世界が驚嘆するような成長発展を続けて現在に至っておる。この間におきまして、労働生産性の上昇に応じて、全般としてわが国賃金水準相当高い率で上昇してきておることも、これは数字の示すところであります。そういった目ざましい発展を遂げた現在においてすら、先ほども数字で明らかになりましたように、八千円以下の労働者が約四百万人おるという現実であります。従いまして、これが五年ないし六年前の日本現実にさかのぼった場合、この八千円以下の労働者の数というものは、おそらくこれの倍近くおったのではないかと思うのであります。そういった現実の上で、なおかつ全国一律八千円の最低賃金法案提案された。しかも、ただいま勝間田議員の御答弁によりますと、確かに気の毒な零細企業実情がある。従って、これに対しましては中小企業対策という面から、各般にわたるてこ入れをやっていくのだという御答弁でありますけれども、当初社会党から提案されました当時は、そのようなてこ入れ考えというものも、これは全然用意なしに打出されたのであります。私はその当時からこの問題には関心を持って注目をしておったのでございますが、このような中小企業対策てこ入れといったような準備もなしに、しかも現実に数百万人の労働者が八千円以下の賃金で働いておる。しかも、これを雇っておる企業主というものは支払い能力がないのだ、そういう現実の上に立って、しかもてこ入れ、裏づけの政策準備なしに、全国一律八千円の賃金法案提案されておった社会党態度というものは天下の公党として、国民に対して責任を持つ政党としては、きわめて軽率な態度ではないかと考えておったのであります。しかしながら、今回の提案は、この数年前の社会党態度と比較した場合に、ただいまの答弁で明らかにされましたように、きわめて現実というものを直視して、しかもこの法律案を実施した場合に相当しわ寄せが必ず出てくる、そのしわ寄せに対しましては中小企業対策として別な面でこのてこ入れをやっていくのだ、そのための中小企業基本法案というものも準備して今度の国会提案されておる、こういうことを拝見いたしまして、私は、社会党という政党がその点進歩しておるということを率直に認めたいと思うのであります。  そこで、わが国中小企業対策というものは、社会党基本法案提案されておるのでございますが、わが自由民主党といたしましても、今後の自由民主党経済政策の最も焦点となるべきものは、言うまでもなく中小企業の問題であります。従いまして、わが党におきましても現在そのために非常な勉強を重ねておりまして、でき得れば政府提案として中小企業基本法案をこの国会提案いたしたいということで努力を重ねておるわけでございますけれども万が一政府提案という形ができなかった場合は、われわれ自民党の議員提案として中小企業基本法案をこの国会提案する、こういう計画で現在進めておるわけでございます。このわが党の中小企業基本法案におきましても、ただいま勝間田さんからお話のございましたような、いわゆる資本、装備の近代化の問題あるいは金融、税制の問題、さらにはまた労働の問題、社会保険の問題、あるいは福祉施設の問題、こういうふうに総合的な立場から、わが国の脆弱なる中小、特に零細企業に対しまして総合的なてこ入れをやっていきたいということをあわせて考えておることを、申し上げておきたいと思うのであります。  次に、もう一つ勝間田さんにお伺いいたしたい点は、わが国のこの経済の二重構造企業規模別によって非常な賃金格差があるということは事実でございますけれども、もう一つわが国の特色といたしまして、地域別によってその賃金格差が非常にはなはだしい。東京のような大工業地帯に住む労働者と、東北とかあるいは鹿児島というような末開発の地域に住む労働者賃金との間には、これまた非常に大きな賃金格差があることは、勝岡田さん御承知通りであります。こういった地域間の賃金格差をいかにして解消していくか、これまた全国一律の最低賃金制というものを実施していく場合に、当然これに対する対策考えていかなくちゃならないと私は思うのでございますが、この点について社会党のお考えがございましたならば、お伺いをいたしたいと思います。  〔委員長退席小沢(辰)委員長代理   着席〕
  10. 勝間田清一

    勝間田議員 地域格差の問題は非常に重要な問題でありまして、あらゆる総合政策というものがとられていかなければならぬわけであります。特に私どもとしては、今回まで一つの大きな問題点としては、積雪地帯に対する対策はどうするか、あるいは北海道開発の政策はどうするか、あるいは東北地帯、あるいは砂丘地帯、あるいはその他の経済条件の恵まれない地域に対する政策はどうするかというような個別的な政策に、これは与野党とも努力をして参ったのであります。この段階ではもうすでに解決がつかないように私ども考えるのでありまして、もう一歩突き進んで産業配置を再検討すべきときではないだろうか、こういう考え方に基づきまして、私ども、この国会工業立地配置法というものを提案さしていただいたわけでございます。この工業立地配置法の一番のねらいとするところは、何と申しましても工場を誘致するにふさわしい条件を国が作って上げる。たとえば工場敷地、それからもう一つ工場用水、もう一つは交通の便利、それからもう一つ港湾その他の設備、こういう動力、水、土地等々の諸設備を整えると同時に、それを国家が援助して計画する。なお、それに工場配置に必要な助成の処置も講じて、そうしてそこに労働配分を完成していくということが正しいのではないだろうか、かように考えてこの法律案を実は出しておるわけであります。  なお、このことは、今澁谷委員からお話しの通りに、労働力雇用とを分散さすということは、労働面から見て非常に合理的になると同時に、現在の住宅問題を解決する場合においても、私どもはやはり非常に重要な意味を持っておるものだと考えるのであります。  それからもう一つ大事なことは、地方財政を今補給金で何とかして、アンバランスを是正するという処置をとっておることは御案内の通りであります。金のあるところから金をとって、貧乏府県にその金を分けてやる。この制度というものは決してノーマルな制度ではございません。従って、工場配置を適正に行なうということは地方財政を健全ならしむる根本であろう、かように考えるものですから、ここに住宅、雇用地方財政、この三点を考えて、工場配置の分散法というものを私ども提案をさしていただいておるわけであります。これによって、澁谷委員の言われる通りに、この賃金の地方格差というものを是正することができるであろう。  なお、これは直接関係がないように思われるかもしれませんが、私どもとして皆さんの御共鳴を得たいと思っておることは、貿易が一面に傾いて参りますと、どうしても表日本だけが栄えて参りまして、裏日本が文字通り裏という形になって参ります。従って、やはり大陸との貿易が開かれるということが、日本海沿岸の後進地域に対して産業が分散することになるのではないだろうか、かように考えておりますので、どうしてもやはり大陸貿易というものを開いて裏日本発展をはかっていくということが必要だろう、こういうことも申し添えておきたいと考えているわけでありまして、私どもそれらの処置から地域的な格差をなくしていこう、かように考えるわけであります。
  11. 澁谷直藏

    澁谷委員 御答弁を伺って参りますと、だんだんと社会党考え方の全貌が明らかになってくるわけでございますが、ただいま御質問申し上げました地域的な賃金格差の是正ないし縮小の問題につきましても、社会党の方におきましてもいろいろな角度から慎重に検討を加えておるという点につきましては私も全く同感であり、敬意を表するものでございます。わが党におきましても、御承知のように、先般の通常国会におきまして低開発地域の工業開発促進法というものを制定して、現在実施を見ております。この法律のねらいは、ただいま勝間田さんが言われましたような工業配置法のねらっておるところと大体同工異曲であると申し上げて差しつかえないと思います。さらにまた、今度の通常国会には新産業都市法案を提案いたしておるわけでありまして、この法案のねらっておるところも、まさに過度に集中いたしております日本の工業を、できるだけ低開発地域に分散していきたいということをねらっておるわけでありまして、それらの点につきましては、わが党と社会党考え方というものは大体同じような線の上で、同じ方向を目ざして進んでおると申し上げていいのではないかと思うのであります。たしかイギリスにおきましては、七、八年前から工業配置法というものを作って、計画的な工業の分散をやっておる。わが国の政治が、これを取り上げるのがむしろおそきに失しておると私はかねて考えておったのでございますが、ただいま問題にしておりますこの地域的な格差縮小の問題は、今後日本のバランスのとれた国作りという観点から考えました場合に、私は非常に重要な問題であると考えておるわけでございまして、これは与党、野党といわず、ほんとうに均衡のとれた新しい日本を作るという観点に立って、お互いに提携をして、一つこういう方面に政策を推進していきたいと考えるものでございます。  そこで、私がもう一つお伺いいたしたい点は、わが国労働組合の組織の現実の姿は、言うまでもなく企業別組合が支配的であります。欧米の先進国におきましては、言うまでもなく産業別組合が支配的な形になっておるにもかかわらず、戦後十六年間、組織率におきましても大体欧米先進国並みになっておりますわが国労働組合でございますが、にもかかわらず、依然としてその支配的な形といたしましては、企業別組合が中心になっておる、これが現実であります。従いまして、総評なりあるいは社会党も当然そういうお考えでありますけれども、これをできるだけ産業別の組合の方向に助長していきたいということで御努力をされておると思うのであります。しかしながら、それがなかなか思うように進まない。その進まない原因というものを分析して参りますと、それは直ちに、ただいま私が質疑を申し上げておりますような諸点において、欧米先進国において支配的となっております産業別組合というものがなかなか実現できない。その原因が、まさにこの全国一律最低賃金制というものの実施をはばんでおる。従って、この規模別賃金格差の縮小の問題、さらには地域的の賃金格差の解消の問題と並びまして、企業別組合で産業別組合に進んでいかないその壁というものを、いかにして払っていくかという点についても、私は今後大いに検討を要する問題がひそんでおるのではないかと思うのでございます。  時間がだいぶたって参りましたので端折っていきたいと思いますが、私の考えといたしましては、全国一律の最低賃金というものは望ましい。しかしながら、日本現実は、先ほどから申し上げた点で明らかにされて参りましたように、その実現をなかなか困難ならしめておる要因というものがあるのだ。従って、その実現を困難ならしめておる要因に対しまして、それぞれの角度から総合的な、全般的な対策を進めていかなければならない。いわゆる非常に起伏の多いこの状況を、できるだけなだらかな状態に持っていく。この現実の事態がなだらかな状態になっいけば、全国一律の最低賃金制を実施した場合、きわめて摩擦が少なくて、その法律の効果を上げ得る条件がおのずからそこにでき上がってくると私は思うのであります。この点につきましては、やはりわれわれ保守党の立場社会党立場とは、政策全般の進め方について違いがあるわけでございます。おそらく社会党のお考えでは、ねらうところは同じだと思うのであります。しかしながら、その全般的な地ならしをいろいろな政策でやっていくということについては、非常に時間がかかる。それを待っておれない。その地ならしをする一つのブルドーザーと申しますか、そういう役割を全国一律の最低賃金法によって進めていくのだというお考えがそこにひそんでおるのではないかと思うのでありますが、今のような日本現実、きわめて起伏の多いこの日本の土壌の上において、直ちに一律的な最低賃金制を実施した場合に、そこに生じてくるいろいろな社会的な摩擦、こういうものはむしろ結果から見てマイナスの面が多いのではないか。全国一律最低賃金制は、私は賛成であります。望ましいと考えております。しかしながら、問題はそれを実施するタイミングの問題、これを受け入れる社会的な体制の整備の問題、そういうものとのかね合いにおいて、政策というものは決定されなければならないと私は考えておるわけであります。われわれ保守党の立場におきましては、ただいま繰り返し申し上げましたように、この起伏の多い現実労働対策の面から、あるいは中小企業全般の対策から、さらにはまた地域的な格差縮小の対策、そういった全般的な政策というものをバランスのとれた状態において推し進めて、この起伏の多い土壌というものをなだらかな状態にしていく。少し時間がかかるようでございますけれども、私はその方が、実際においては効果のある政策の進め方ではないかと考えるものでございます。  そこで次にお尋ねいたしたい点は、法案の第二条、最低賃金額の決定の基準を拝見いたしますると、「最低賃金額は、生計費、一般賃金水準その他の事情を考慮して、定めるべきものとする。」とうたわれておるのであります。これは現行最低賃金法の第三条に相当する条文でございますが、これと比較した場合に、現行の第三条におきましては、最低賃金の原則といたしまして、「労働者の生計費、類似の労働者賃金及び通常の事業賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」とうたわれておる。としてこの最低賃金を決定する場合に、労働者の生計費と一般の賃金水準企業支払い能力というものの三者を考慮してきめるというのは、ILOの最低賃金に関する条約においても、大体標準化されておる原則だと私は承知いたしております。しかるに、今回の社会党提案のこの第二条におきましては、最低賃金決定の原則の一つの重大な柱である企業支払い能力という項目を意識的に落としておると私は拝見するのであります。これは一体いかなるお考えに基ついておるのであるかをお尋ねいたします。
  12. 勝間田清一

    勝間田委員 お答えいたします。  先ほど私が答弁申し上げた通りに、最低賃金というものと中小企業対策というものとは別個なものだと実は考えておるわけであります。最低賃金というのは、支払い能力という問題によってきめられるべき問題ではなくて、人間として一体生活をすることができるかどうか、労働基準法の第一条というものが根本でなければならぬと私は考えておるわでありまして、人間としての生活ができ得る条件を備えねばならないという、労働条件としてこれは考えていくべきものだと考えておるわけであります。従って、このわれわれの最低賃金法におきましては、生計費あるいは類似の産業の賃金、この点に私どもは一番重点を置いて考えておるわけでありまして、この点は日本の今までの制度からみますと、逆に支払い能力ということに重点が置かれております。その根本はどこからくるかといえば、業者間協定法律だということであります。業者間協定が大数を占めておる最低償金では、支払い能力という点に重点が置かれてくる。そうすると、最低賃金制度そのものがねらうところは最低の生活保障でなければならぬという精神に反してくる。これが現行法に対する私どもの非常な不満なのであります。でありますから、私ども、この基準といたしましては、あくまでも人間として生活ができる条件でなければならないということを最低賃金としてきめる、ここに焦点を合わせたわけでありまして、これは憲法二十五条にも当たることだと私ども考えておるわけであります。  なお、最低賃金のこの問題に現在の労働組合の諸君が非常に不満を持っており、これに反対をいたしておるのも、ここにあるのではないだろうかと私は考えておるわけであります。また、労使対等でなければならないという考え方は、むしろILOの二十六号条約の精神だろうと実は私ども考えておるわけであります。その面から考えてみましても、一方的に業者間協定できめていくという考え方が現に行なわれておるということについても、実は私ども非常に遺憾に考えておるわけでありまして、現に行なわれております今日までの事例を労働省の調査によって見ましても、大部分が、業者が一方的にきめたのが、それが最低賃金だという形になっておるようであります。こういう点などを考えたときに、最低賃金精神というものは、人間としての生活ができる、その条件でなければならない、これをきめるのが最低賃金法だ、こういう考え方に基づきましたから、御質問のような点につきましては、われわれは、明らかに最低生活を維持する、これを重点に置いて本法案が提案をされておる、かような理解をいただきたいと思います。
  13. 澁谷直藏

    澁谷委員 勝間田さんの最低貧金についての考え方は、私は理論的には正しいと思います。二十六号条約におきましても、労使対等という原則が、最低賃金を決定するにあたっての法本的な原則であります。その基本的な原則が、現行最低賃金法においては十分に生かされておらない、私が冒頭に現行最低賃金法が若干変則的であるということを申し上げたのは、実はこの点を私は言っておるわけであります。そういう点で、私は勝間田さんの考え方は理論的には正しいと考える。しかもまた、労働者があくまでも一個の人間として、そうして憲法第二十五条でうたっておりますような、健康で文化的な生活を営み得るような状態にいくということが、政治の目標であることは申すまでもないわけであります。その点において私は反対はいたしませんけれども、問題は、現実憲法でいかにうたっておりましても、現状におきましては、生活保護の手当を受けて、国の補助によって辛うじて生活の最低線を守っておる国民が数百万人おる。しかもまた、先ほど申し上げましたように、月額八千円以下の非常に低い労働条件のもとで働いておる労働者が約四百万人近くおる。この現実を無視して政治はあり得ないのも、これまた事実だと思うのであります。  そこで二十六号条約を見ましても、企業がそれだけの賃金を支払い得る力があるかどうかということが、最低賃金決定の重大な一つの柱だということは、条約でもはっきりと認めておる。従いまして、言うまでもなくわが国は自由企業の建前をとっておる国でありますから、労働者がこれでりっぱな生活ができないじゃないか、それを払わなければいかぬという法律を強制した場合に、それを支払えない事業は一体どうなるか、これはつぶれる以外にないわけであります。そういう荒療治を実施することが一体実際の政治として望ましい態度であるかどうかということについて、私はその点において勝間田さんと見解が分かれてくるわけであります。私は、あくまでも労働者最低賃金というものは、その労働者がその生活を営み得る、まかない得るに足るものでなければならぬということについては全く同感であります。しかしながら、それを担保するだけの力が現実にない。この現実を無視して、それを無理やり強制することはいかがなものであろうか、そういう点において、生計費、一般賃金水準と並んで企業支払い能力というものをあわせて決定するという現行法の原則の考え方については、私は社会党にもう一回御反省を要請いたしたいと思うのでございます。  その他実はいろいろ聞きたい点があるわけでございますが、最後に、法律案の第八条におきまして、労働協約に基づく地域最低賃金の条項がございますがこれは、現行法の相当条文と対比いたしますると、この法案第二条におきまして企業支払い能力というものを意識的に落としたと同じ考え方が、この第八条にも現われておるわけであります。つまり、現行法におきましては、一定の地域内の事業場で使用される同種の労働者及び使用者の大部分がこの労働協約の適用を受ける場合と、こういうことになっておるのでありますが、この第八条におきましては、労働者の大部分労働協約の適用を受ける場合ということでありまして、使用者の大部分という条項をこれは意識的にはずされておると思うのであります。しかしながら、ただいまの第二条について申し述べたと同じ立場におきまして、使用者というものの支払い能力があるかないかということが、最低賃金がスムーズに作用する重要なファクターでございますから、やはり私は、この点におきましても現行法の考え方が正しいと考えておるわけでございますが、この点について勝間田さんの御見解をお伺いいたしたいと思います。
  14. 勝間田清一

    勝間田議員 澁谷委員の御質問を聞いておりますと、理論的には賛成をしてくれておるわけであります。ところが、現実的にどうもまずい、こういうところが御趣旨のように私は見受けられるのでありますけれども、先ほど来申し上げております通りに、むしろ私ども現在の実情を調べた結果、やはりこれが具体的に現実的であると実は考えておるわけでございます。一言申し上げておきたいと思いますが、たとえば自民党の皆さんは所得倍増計画をお立てになって、一昨年は一三%の成長率、また最近は九%の成長率、その所得倍増計画をお立てになっていっておるにかかわらず、なおかつ三百何十万の人たちが、こうした非常に貧しい賃金で一体甘んじていなければならぬかということになりますと、私は中小企業対策に対する、あるいは所得の格差に対する政府の施策というものがないということが、むしろこの結果を招いておるのではないだろうか。でありますから、日本経済全体からこれを考えてみますと、三百七十万の諸君に月八千円の賃金を支払い得る能力は日本経済にあるのだ、私はかく感じておりますから、日本経済の負担能力という経済全体をながめてみますと、私はこの八千円というものは、まだ日本の水準からいけば、諸外国に比してきわめて恥ずかしい次第だと考えるのでありまして、所得倍増計画自体から考えてみても、私は、一能だと思う。  もう一つ大事なことは、この三百何十万という皆さんの働いている事業主の方たちでありますけれども、今労働力不足に悩んでおります、おれのところ働き手がないのだ、そこで自分としては、もう少し金を出してもいい職工をほしいのだ、ところが、親工場がその労賃を見積もってくれないのだ、早く言えば単価の見積もりを許してくれないのだ、そこでむしろ最低賃金を八千円なら八千円ということにきめてくれれば、これは法律できまったことであるから、われわれは親工場に対して、賃金は八千円いただきます、これは国の方針によっていただきます、こういうことで現在の親工場に対して子工場が債金を主張する有力な根拠が出てくる。現状のままでありますと、工賃を上げてくれということが主張できないと言うのです。でありますから、私もこれはごもっともだと思うのでありまして、むしろこの際、最低賃金を八千円に引き上げてやることが、中小零細企業が親企業に対して工賃の値上げを要求していける有力なてこになると実は考えておりますから、この際八千円は、むしろ中小企業のためになるだろうと私は考えておるわけでありまして、そういう意味から、非常に現実的にこの問題を実は私は考えたわけであります。  なお、今最終的に、労働者の大多数ということでこれがきまってしまって、経営者の大部分ということについての配慮がないじゃないかという御質問でございますけれども、たとえば八幡製鉄、それから八幡市というところを考えてみましてもよくおわかりでありましょう。われわれはやはり、その労働者の大部分がここで協定を結ぶという場合においては、それに従うべきだと考えておるわけでありまして、支払い能力というものを考えるのは、私は賃金法考えるべきではなくて、中小企業対策考えるべきことだ、こういうように実は考えるわけでありますから、この点を貫くわけでありまして、理論的にも私は一貫しておるものと考えるわけであります。  最後に、せっかく澁谷さん御賛成をいただいたわけでありますが、もうちょっとのところで、どうも肝心かなめのところで若干意見が違うようでありますけれども、今申しましたような理由で私は絶好の機会だと思いますから、これはぜひ真剣に一つ御討議願って、特に中小企業基本法と一緒に御審議を願うくらいの気持でこの問題を解決していただきますと、非常におくれた三百数十万の低賃金労働者を救済することもでき、また労働の異動性を非常に進めることもでき、対外貿易に及ぼす影響も非常によくなるのではないだろうか、私はこう考えますから、自民党の皆さん一つ真剣にこの問題と取り組んでいただけば、一律八千円というものはもう時代おくれでないのだということになろうかと実は考えるのでありまして、その点はかえって希望を申し上げて、私の答弁にかえさしていただきます。
  15. 澁谷直藏

    澁谷委員 勝間田さんのお考え、非常にはっきりとわかったわけでございますが、賃金を定める最低賃金法支払い能力というものは別個の問題だという理論的な割り切り方であります。まことにこれは観念的にはきわめて明快であります。しかしながら、企業というものは労働者を使って仕事をやっていく。その賃金というものは、当然その企業生産性から生まれてくる。つまり支払い能力の中から賃金というものが生み出されていくわけでありますから、観念的には二つを分離することは十分に可能でありますけれども現実賃金を決定する場合といたしまして、この両者は別個の問題だということは、どうもいささか観念的過ぎるのじゃないか。まあこの点は私ども勝間田さんの深い考え方の相違から出てくるわけでありまして、これは幾ら議論しても平行線だと思います。従って、これ以上私は質問することをやめますけれども、最後に、現在の日本経済は八千円の質金の支払い能力があるという勝間田さんのお話でありますが、確かに日本経済全体としては、それだけの力を持つようになってきていると私も思います。従って、中小企業に対する配慮、地域的な格差縮小に対する配慮が十分でないという点も同感であります。  〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長   着席〕 こういう点に、もっともっと日本の政治というものは粘力的に努力を重ねていかなければならないと思うわけでありますが、ただ一つ、実際問題といたしまして、中小零細企業において人が得られない。そのために、中小企業においての質金の上昇率は、ここ約一、二年非常に高まってきておる。そういった高まりを見せてきた一番の根本は、言うまでもなく、わが国の高度経済成長にあるわけであります。従いまして、わが池田内閣が経済政策基本として考えておりまする高度経済成長という考え方は、あくまでも正しい政策考え方であるということを私は確信しておるわけでありまして、この点を申し上げまして一応私の質問を終わりたいと思います。
  16. 中野四郎

  17. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま澁谷委員からの御質問、またそれに対する社会党の御答弁によりまして、私が質問しようとする大半は聞かれたようでございますので、時間も時間でございますから、簡単に御質問いたしたいと思います。  私、ちょっと遅刻して参りましたので、労働省側にお尋ねいたしますが、一人から四人程度事業所に働く労働者は、いわゆる四千円未満労働者が一七・七%、六千円米満の者が一八%、八千円未満の者が一七・五%、八千円未満が総計して五四%、こういう状態に調べておりますが、これは間違いございませんでしょうか。——そうすると、結論的に申しますと、八千円未満労働者が現労働者の五四%を占めておる、こういう結論になるわけでございますけれども、大体そういうふうに見てよろしいわけでありましょうか。
  18. 東村金之助

    東村説明員 先ほど私どもの方で申し上げましたのは、昭和三十六年三月の総理府でやりました臨時労働力調査という調査でございますが、これによりますと、全労働者が二千二百十三万人でございまして、その中で八千円未満労働者が三百七十九万人、従いましてその割合が一七・一%。それからこれを規模別に見ますと、一人から四人のような零細企業では、その全体の労働者が二百四万人おるところ、八千円未満が九十三万人おります。従いまして、その割合が約四五%であるということを申し上げたわけであります。
  19. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、その計数の中には潜在失業者も完全失業者も入っておりませんね。その点はどのぐらいに見ておられましょうか。
  20. 東村金之助

    東村説明員 その数字は、働いた人が賃金としてもらったものの割合でございます。
  21. 本島百合子

    ○本島委員 それはわかります。だから完全失業者と潜在失業者をどの程度に見ておられるかということ、これは賃金別で聞いておるわけです。——わかりませんでしたら、あとでけっこうでございます。  そこで勝間田先生にお尋ねいたしますが、先ほどから産業の二重構造の解消ということが大きな問題になってくると思うのです。私どもも田党時分から、最低賃金法の確立ということは非常な熱望で今日まで参っておりますし、民社党も独自の最低賃金法提出しておるわけでございますが、何といっても、この問題の最終決定をするということになれば、当然完全雇用というものがまず出てこなければならない。それから完全雇用と同時に、今日の日本のいろいろな進歩発展の面から見ると、教育問題がどうしても関連してくると思います。年令的に十五歳ということになれば中学卒となりますね。そういたしますと、この中学卒の人に対しての労働というものを私どもはできるだけ避けたい、今日の高等学校の生徒も含めて、義務教育制に切りかえていくべきじゃないか。こういう観点に立って参りますときに、私どもは、この年令が十五歳ということではどうかという疑問を持つわけです。ということは、もう幼年労働者というものをなくしていかなければいけない。別な角度から言えば、高賃金という形において労働者が食えるだけの賃金をもらうということになっていけば、当然この問題も解決していくのじゃないか。今日、大体中学生の為校への遊学率は八割といっておりますが、それももう少しふえて参ってきておる、これが現実なんです。そうした場合におけるこの決定の仕方というものは、どういうふうにお考えになっておきめになったのか、それを伺いたいと思います。
  22. 勝間田清一

    勝間田議員 本島委員の御質問の第一の、完全雇用という問題がやはり前提になるのじゃないだろうか、私はその通りに実は考えるわけであります。ただし、最低賃金と完全雇用という問題は、私は直接には結びつかない概念だと考えておりまして、完全雇用政策というものは別にとるべきものだと考えております。  それからもう一つ大切な問題は、完全雇用といった場合に一つわれわれが非常に大事に思いますのは、生活保護世帯内容を本島委員も御検討になったことがあられると思いますが、労働をしながら生活保護世帯に加わっておる者が、おそらく半数くらい私はあろうと思います。ごく最近の統計を私見ておりませんけれども、これは従来と変わりがないのではないだろうかと思っております。もし最低賃金制が確立をすれば、今の生活保護世帯の中で、相当部分が解決されるという面が私は出てこようかと考えております。その意味で、潜在的失業という問題に大きな影響を持つものだと私は考えておりますから、本島委員のお考えについては、私は同感であります。  それからもう一つの御質問は、十五歳にしたのはどういうわけかということでございますが、もとより私どもは、教育政策として、高等学校にも完全の入学ができるように今高校全入学運動もしておりまするし、またそのための法律案も私ども用意して、この国会提出いたしておるようなわけであります。従って、これらの諸君にどういうふうにして勉強の機会を均等に与えるかという問題は、そちらの方で私どもとしても解決していきたい。しかしながら、現に中学校を卒業して、十五歳から働いている労働者があることを私ども考えて参りますと、ここに十五歳の労働者の場合には一つ八千円だぞ、こういう基準をきめておくことは、決して本島委員の御主張と矛盾するものではないと私たちは考えておりますので、こういう十五歳八千円という最小限度基準としたのでありまして、その点を御了承いただきたいと思います。
  23. 本島百合子

    ○本島委員 多分そういうことであろうとは想像いたしておりましたが、これは現実を見詰めていけば、勝間田委員の御答弁通りであろうと思います。私どもも、そうした線はできるだけなくしながら、なおかつ、そうした児童に対する将来への希望というものもどこかの面で与えなければならない。教育の改革についても、もろん私どもの党におきましても提案をさせていただくように準備をいたしておりますが、こういう点については私どもがほんとうに考えなければならない。中学卒業という年令は、肉体的にも非常に不完全の時期であって、重労働あるいは超過勤務等によって阻害されるし、知識の面においても勉強しなければならない最中だという時代でございますので、人間完成の立場からすれば、できるならば中卒の労働というものは、労働基準法の改正等に基づいてでも改正していって、労働力というものを別な角度から私ども増加させなければならないというふうに考えるわけであります。ということは、先ほども言われておりましたように、低賃金にあえいでいる零細業の中で働いている人たちは割合に高年令層が多い、それから未亡人が多い、それからただいま言っておりますようないわゆる若年の労働者だ。こういう現実を見ますときに、理想を高く掲げる最賃の社会党案ということになれば、この問題をやはり第一に考え願わなければ割り切れないものが出るのじゃないか。現実は働いておるからそれに対する八千円だ、こういうことになるのですから一面いいように考えられるけれども、そうしたものがなくなるということが、私どもの理想でなければならぬというふうに考えて、実はこの点をお尋ねしたのですが、それは御答弁でも、理想と現実がちゃんぽんに最賃法の中に入っているようですから、それはまあやむを得ない、こう思うわけであります。  そこで、先ほども澁谷委員が指摘されましたように、私どもは一カ月最賃八千円ということで主張して参りました。そうしたところが、御承知通り物価が非常に上がってきておる。こういう段階になって依然として八千円でいいのかという問題なんです。そこで、八千円基準というものをどこから求められ、今日提案されます段階においても、八千円でよいというその根拠はどこにあるのかということを承っておきたいと思います。
  24. 勝間田清一

    勝間田議員 八千円の根拠でありますが、私ども、十五才の年令層における最低の生活の水準、こういう点で出したわけであります。これは私どもとしては、実はかなり現実的な考え方処置していったわけであります。もとより、これは十五才八千円という基準でありまして、産業の格あるいは年令層、あるいは教育の程度といったのによって、たとえばお互いに一万円の生活をしようじゃないかという協定が結ばれることも、決して私どもは排除するわけでもなく、またむしろそれが正しいことと実は考えておるわけでありますが、われわれはあくまでも、十五才の労働者の最低生活の水準八千円として想定した、これが最低の基準だ、こういうように御理解をいただければよろしいのではないだろうか。これを九千円、一万円あるいは一万二千円というようにお考えの向きもあろうかと思いますけれども、そのような措置をとったわけでありまして、この点は本島さんの御了解をいただけるのじゃないか、かように思います。
  25. 本島百合子

    ○本島委員 現実面で参りますと、最近は労働力不足しておるということで、中以下の企業体においては、八千円ではとても人が得られないというので現実には一万円をこえておる、そして引っぱりだこだ、こういう状態が今日の現象として起こっておるわけなんです。働いておる君たちに聞きますと、その多少の余剰でもって自分たちが教育を受ける、夜間に行きたいというのが、こういう労働者の希望のようであります。そういたしますと、八千円未満労働者が四百万に近いという数であるのですから、現実問題として、その数の全般を考えれば引き上げなければならぬけれども、また大会社等では、自分のところの労働力を充足するために、そういう高賃金を払っておるわけであります。そうしますと、そこに大きなギャップが出てくるわけです。従って、零細業であれば労働力を得ることがますます困難になってくる、こういう結果であろうと思いますが、この場合において、たとえば八千円の最賃制が確立しましたときに、先ほどからも言われておるように、現在の零細業、小企業、こういうものをどのように改革していくのか、どう改造していくのか、これが大きく出てくると思うのです。なぜかと言えば、現在の状況の中では、やはりこれは相当影響を持つと思うのです。そこで、先ほどの勝間田さんの御答弁の中に、支払いということについてのお話があったようでありますけれども、結局支払能力がなければ、零細業というものは、法律できめられてもどうすることもできない。労働力は得られない。そうすると、今日はやっておるような家族労働で、御主人と奥さんと子供が協力してやるなんという四人未満企業というものが、ほんとうに零細化されていく傾向がますます出てくるのじゃないか。そうすると、ここで零細業なり小企業に対する施策というものが出てこないと、この法律を完全に通過させたならば、すぐそれが、実施されていくことになるし、そうした場合においては、倒産していく企業というものがかなり出てくるのじゃないか。一面、日本の産業というものを考えてみますとこういうにない手が非常に多い。かりに五四%も賃金の側から見ればあるということになれば、実態がそういうふうになっておるからだということにもなり得ると思うのです。従って、二重構造に対する社会党としてのお考えは、どういう構想を持っておられるかということをお尋ねしておきたいと思います。
  26. 勝間田清一

    勝間田議員 先ほど澁谷委員にも実はお答えをいたしたところでありますが、党の二重構造の是正という問題については、中小企業基本法を私ども別個に提案さしていただいておりますので、これをごらん願うとよくわかると思うのでありますが、もう一度申しますならば、一つは大企業からの圧力をコントロールして、小企業を守ってあげる処置が必要だと思います。もう一つは、事業の分野を明確にすると同時に、国家の注文の何ぼかを、中小企業に直接発注するような制度が必要である、あるいは近代化を進める上において、機械化等の諸施設に対しての国家の積極的な助成が必要である、あるいは逼迫されがちな金融に対して特別な金融を確保することが必要である、あるいは中小企業を、これらの仕事を推進する上において組織化する必要がある、それはやはり共同化の線である、こういう意味から、また私どもは、中小企業組織法というものをこの国会提案もいたしておることもつけ加えておきたいと思います。こうした処置によって、中小企業基本法というものが基本法として成立した場合においては、非常に二重構造の是正に役立つのではないだろうか。また、この基本法の制定という点については、日本が一番おくれているということは、本島委員もおそらくお認めだろうと私は思います。そういう点から考えてみて、三重是正についてのわれわれの積極的な施策を、この最低賃金法と並行してこの国会提出しているということを、どうか御理解いただきたいのであります。  そして先ほど、もう一つ、物価の問題との関係がございましたが、これは諸外国などの例を見ますと、最低賃金が物価とスライドするという制度もあるようであります。私は最低賃金を物価とスライドするという精神は賛成でありまして、実はスライドする点はこの法案にも出ております。そういう状態でありますから、先ほどの物価の問題についての質問は、法案によってお答えができるだろうと考えているわけであります。
  27. 本島百合子

    ○本島委員 聞きたいことが一ぱいあるのですが、時間を迫られておるので簡単にします。今のスライドの問題は、今まではこれである程度よかったけれども、今回の提案説明を承って、なぜスライドされなかったのだろうか、こういうふうに思ったものですから質問したわけです。  それから、中小企業基本法の問題については、わが党もいち早く成案を見たのですが、御承知通り党の代議士が少ないものですから、非常に苦慮をいたしているわけです。そこで、三党ともその成案を見ておりますが、何とかこの三党が話し合いの上に立って、一日も早くよりよきものを出してほしい、これが私の願いです。今回の国会では、自民党は政府提案としても出さないというようなことがちょっと新聞に出ておりましたが、これは非常に残念なことだと思います。最低賃金法がこうして出されてきても、一方その問題の解決を見なければ、この理想的な案を出されてもその実施は困難になってくる、こういうことは現実を見て言えることだと思いますので、委員長は、所属されております自民党の方々にも促進方を願って、車の両輪とも言いたいこうした法案については、かりに野党が最賃法を出した、あるいは中小企業基本法を出したからといって、政府はそれに伴ってこないということじゃ、世の中の要望をになって立たれない、こう思うわけであります。こういう意味で、かりにわが民社党が数が少なかろうとも、提案しているような実情を御了察いただいて、いち早くこれと取り組んでいただいて、三党共同提案というような形でも作り上げていただきたいことを、これは私個人として要望しておきます。  今の答弁の中で、もっと聞きたいものがございましたし、準備もして参りましたけれども、あとの時間に差しつかえるそうでございますので、最後に、結論といたしまして、私どもこの最低賃金法は長年の夢であったし、この要求は強かったわけなのです。そこで今回自民党の質問に対しまして、自民党の方が逡巡しておられるという点が見受けられるわけでありますので、こうしたことは、中小企業基本法と同じようにお互いに話し合いの場を持って、できるだけ早い期間にこういう問題の解決ができるという方向づけで、せっかく提案されました社会党の方にお願いするわけなのです。そうしなければ、この社会党案に基づいても自民党が乗ってこないということになれば否決の運命になって、それではせっかくの考え方労働者の要望も達せられないことになる。私は婦人の立場から特にこういう点を常日ごろ考えさせられておるわけでありますので、今後のこの法案に対する操作を考えていただきいと思うわけであります。なおかつ最低賃金に対する審議会等もあるわけでございましょうし、また、なければこれを強化する。そして今日の資本主義自由経済のもとにおける政府・与党の考え方ということで参りますならば、この問題の解決もむずかしいだろうということが感じられるわけですから、そういう審議会等を持って、もし順次法律が施行された場合を考えて、そうした場合にしわ寄せがどっときて、零細業がそのために閉鎖していかなければならぬということが起きないように、そうした制度を作る必要があるのではないだろうか、このように考えるわけなのです。その点はどういうふうに考えておられるか。  なおかつ何カ年計画という形の中で、これを順次変更していくという考え方か。たとえば、私もかって中国に参りましたときに、一番気になって聞いたのがこの問題なのです。零細業や小企業をどのようにして社会主義的な機構に変革していくのだということを尋ねた場合に、一挙にはできない、また政府も金がない、だからそれは将来そういう方向をさせるというので宣誓書を出させておる。なおかつ支払い能力がないとか、あるいはその企業体が十二分に活動できない、こういう場合においては、労働者、資本家、政府と三者中に入りまして、三者共同経営という形で、政府がその企業体の設備なりあるいは賃金の支払いなりというものを大きく役割を持ってやって、そしてたとえば十カ年計画とはいっても、十カ年たたないうちにこの切りかえをやってみせるんだ、こういうことで言っておったのです。私はこれを聞きまして、日本でも法律的には零細業や中小企業に対する融資も認められてやっておるわけなのですが、それが、中共との比較をした場合に、積極的な政府の施策というものが加わってこないところに日本の弱点があるし、なおかつ中小企業発展の余地もあるし、またこれが経営難に陥る危険性もある、また経済不調ということになってくれば、まっ先にその犠牲になってくる、これは日本法律の欠陥だということを言ってきたことがあるのですが、こういう点になってくれば、当然将来を見通して考えていくと、こういう企業体は順次計画性を持ってやらなければならない。それに乗っかって労働者に対する保障も完全なるものになっていく、こういうふうに考えておるわけなんです。そういう移行の仕方、そういう点では、現行法の中ではこれが赤日遅々として進まないという格好ががんとしてあるわけなのです。こういう点については、もう少しく大胆に変革をさしていこうというようなお気持はないものかどうか、最賃法の御提案の趣旨をずっと見て参りましたが、それがどこの条文から見ましてもうかがい取れないのです。ですから、そういう点を非常に不満に考えて御質問しようと準備したわけでありますが、それをこまかく申し上げる時間がありませんので、簡単に要約して申し上げたわけなのです。その点のお考え方はどんなものでございましょうか。
  28. 勝間田清一

    勝間田議員 お答えいたします。  日本経済済全体の問題について、最低賃金法そのもので解決を与えていくことは無理だと考えます。やはり最低賃金は、先ほど来申し上げた通りに償金の最低、すなわち人間としての生活を営むその最低の賃金としてきめていく、この点に賛金法というものの性格があろうと思います。でありまするから、私どもその一点に集中したものの考え方をいたしておるわけでありますが、しかし、これが日本経済にどういう影響を及ぼすかということも当然配慮の中にあるわけでありまして、この及ぼす影響が二重構造の是正に大きに役立つだろう、こういう考え方を持っておりますから、本島さんの御趣旨から申しますと、何か賃金法そのもので大きな改革ができないかという御期待かもしれませんが、私は他の諸政策というものがあって初めてそれができるのではないだろうか。すべてをこのおわんの中に盛るということは、私は不可能ではないかと実は考えておるわけであります。しかし、御趣旨の点につきましては十分考えていくべき事柄でありまして、御趣旨については大いに賛成であります。  それからもう一つ大切な、自民党さんも民社党さんもそれぞれ関心を持っておるんだが、これを何とかして成立させるような話し合いの場を設ける必要がないか、こういうお話がございましたが、最低賃金一律八千円というこの精神、それから業者間協定でなくて、ILO二十六条の労使対等であるという考え方、この考え方皆さんに御了解をいただくことができますれば、私は十分に話し合う余地があろう、かように考えるわけでありまして、あとスライド制の問題について、若干私間違っておりましたから、五島さんから補足さしていただきたいと思います。
  29. 五島虎雄

    五島議員 時間もございませんから、私から補足的に答弁することは不満足かもしれませんけれども、ごかんべん願いたいと思います。  ただいま質問されたことに対しては、勝間田議員から答弁したことで万全だと思います。しかし、本島委員の言われるのは、なぜ物価が上がっているのに八千円でとどまったか、これは不満足だ、もう一つは、現在の実情に応じて何か新規な考え方はないか、こういうような二点について御答弁をいたしておきたいと思います。  新規な考え方としては、さいぜんから澁谷委員からも、本島委員からも質問をされましたように、われわれ社会党も非常に真剣に考えました。そうして企業家の立場はどうだろうか、あるいは労働者側の立場はどうだろうかというようなことについて真剣に考えたわけですけれども、どうしても労働者生活を、憲法に基づいて、あるいは労働基準法に基、ついて考えるのならば、新たにやはり奥さんを持って生活するということを基本にして考えた方がいいのじゃないか、そこで妻帯をし得るところの賃金最低賃金として考えた方がいいのじゃなかろうかということで、真剣にわれわれは作業いたしましたけれども、二万一千円以上になるというようなことですから、これをあれすると、理論ではあるけれども現実にそぐわないということが大きく出まして、この法律案が通過されないというような面が出るだろうということを考慮するがゆえに、八千円は現実としては妥当である、そうして企業家にとってもまあ文句はなかろう、低いけれどもこれで全国一律の賃金制を作った方が、より労働者の幸福であろうという立場から八千円という最低の線を作りました。それで、さいぜん勝間田議員から説明があったように、それぞれ労働組合の話し合等々で一万円であれを約束をしたら、それが最低賃金になるんだ、それから地域的には、そういうような労働協約が獲得されて、過半数の労働者にこれが適用されるというような場合は、その地域あるいは地方あるいは国全体においても最低賃金になり得るんだという方式をとったわけです。それで今日のように物価政策が不十分な場合は、どんどん物価が上がっていきますから、それに沿うてやはり労働者生活基準というものは移動しなければなりませんから、社会党提案の第七条によって、審議会とかあるいは労働省側から勧告とか報告とかがあって、そうして物価が上がれば、五%上下するというような場合には、その最低賃金額もそれに従ってスライドするということをうたっておいたわけです。そこで新しい考え方をわれわれは打ち出したい、しかし、現実実情に基づくというようなことも、現在の政治情勢では最も必要ではなかろうかということで、不満ながら八千円ということを提案したわけであります。どうぞよろしくお願いします。
  30. 本島百合子

    ○本島委員 要望いたしておきます。  こうした最低賃金の問題等については、すべての労働者が要望しておることでありますので、先ほど勝間田議員から、自民党の方々が業者閥協定に基づくところのいろいろの線で社会党の案に同調されるならば、こう言われますが、それで参りますとこれはなかなかむずかしいだろう、今日の議会勢力の中でそれはむずかしいということになれば、やはり私が申し上げるように、三党の話し合いの場というものを持っていただいて、できるだけ早い期間に成立させることが私たちの願いでなければならぬと思います。こういう観点に立って、今まで例がないかもしれませんが、一応こうした法案の内容についても、三党共同で議員提案の場合においては三党話し合いの場というものがあるわけですから、そうしたものを活用しながら、できるだけ早い期間に——私、多少不満な点もございますけれども、しかし、こうした問題が一日も早く実施されるようになることは、労働者にとってしあわせなことですから、そういう点をお考え合わせの上、この法案がすみやかに通っていくような準備をなさることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  31. 中野四郎

    中野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国有鉄道における労働問題について調査のため、本日午後三時三十分より、国鉄労働組合書記長山田耻目君に参考人として御出席いただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時二十三分休憩      ————◇—————    午後二時二十分開議
  33. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  34. 小林進

    ○小林(進)委員 私は駐留軍の労働者の権利の問題について、関係当局にお伺いいたしたいと思うのでありますが、一体駐留軍労働者労働基準法は適用されているかいなか、適用されるように調達庁との間に一体契約ができているのかどうか、その点を所管の大臣にお伺いしたいと思います。
  35. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 地位協定その他におきましても、在日米軍に使用される労務者について日本労働法規が適用されることは明記されておるわけでございまして、適用されておるものでございます。
  36. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは防衛庁長官にお伺いいたしますが、労働基準法の第三十四条が、駐留軍労務者に適用されておりますか。今のお話によりますれば、基準法は適用になっているとおっしゃるのでありますから、当然三十四条も、法律のごとく適用されているものと了解いたしますが、いかがでございましょう。
  37. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 お尋ねの点は、駐留軍労務者の休憩時間における労働者の自由と申しますか、そういう問題について現実にどうかというお尋ねだと思います。申し上げるまでもなく、一定の施設内におけるこうした活動は、施設の管理者の管理権と調和をされた形で行なわれなければならぬことだと思います。ことに軍のような厳正な規律あるいは機密の保護というような必要を持っておる駐留軍の管理をいたしております施設につきましては、その面からの制限はあろうかと思います。そうした範囲においては、当然組合活動の自由というものは許さるべきものと考えております。
  38. 小林進

    ○小林(進)委員 私は現実の問題をお伺いしたのではないのでありまして、第三十四条が正しく適用されているかどうかという法適用の問題をお伺いいたしたのであります。防衛庁長官にお伺いしておるのであります。
  39. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 ただいま申し上げましたように、基準法三十四条の面につきましても、管理者の管理権との調和というものは当然はかられるべきものだと考えております。そうして軍のような特別の規律の維持あるいは機密を保護しなければならないところでは、その管理権が相当強く働くということは考えなければならぬと思いますが、しかしその範囲においては、当然組合員の自由というものは許さるべきものと考えております。
  40. 小林進

    ○小林(進)委員 私はここで足踏みをしているわけにはいかないのでありますが、第三十四条が正しく適用されるかいなかという問題について、軍という特別に規律や秘密を要するようなところに勤める労働者に対しては、三十四条がその範囲において適用されていくならば、これは条件付適用であります。条件付適用であるならば、こういう労働者の権利に関する重大問題は、こういう契約を取りかわすときに、当然その条件というものが付されなければならないと私は思う。一体この三十四条を適用する場合、軍という特別の制約の中にあるのであるから、これは条件付の一つの適用である、こういう契約なり申し合わせなり誓願の交換なりをおやりになったことがありますかどうか、これは調達庁長官にお伺いいたしましょう。
  41. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま大臣から御答弁がありましたように、労働基準法の規定というものは、地位協定によって、これに定めるところによらなければならないことになっておるのでありまして、労働基準法の規定というものに従わなければならないことになるわけであります。ところが一方施設内におきましては、やはり施設内のいろいろの秩序がございまして、その施設内の秩序に従わなければならないというのが一般の原則でございます。特に軍の使用する施設内におきましては、一般の企業に比べまして特別の規律の維持が必要であるということは、またやむを得ない点があると思うのであります。そのような観点で、施設内の組合活動というものも、この規律に従わなければならないことになるのでございます。そういたしますと、この法令との関係が出てくる、その間の調整ということが非常にむずかしい問題になってくるのでございます。そういうことにつきまして、従来もいろいろと米側と協議して参ったのでありますが、その限度等については、まだ軍側との意見の一致を見ていないのであります。昨年締結いたしました諸機関労務契約の締結の際におきましても、この限度をどの程度に定めるかということについて協議いたしたのでございますが、まだ意見の一致を見ていないのであります。ただ諸機関労務契約の中には、施設内におきますところの団体の活動につきましては、合衆国の関係当局により、個々の場合について許可を得た上でのみ行なうことができるという協定をしたのであります。これはやはりこういう施設内におきましては、秩序維持上こういうような趣旨の規律があるのでございます。このように、施設内において活動するときにおいては、個々の場合において許可を得て行なうという協定をいたしたのでございます。
  42. 小林進

    ○小林(進)委員 これは労働省側に私はお伺いいたしたいのでありますけれども、第三十四条は申し上げるまでもなく休憩時間だ。休憩時間においては、使用者は労働者に休憩時間を自由に利用させなければならないということになっている。先ほどからやれ管理権との調和だとか、あるいは軍の機密だとか、施設の制限だとか、いろいろどうもかた苦しいようなお話を述べておられますけれども、内容は労働者の与えられた休憩時間、自分の時間を自分が自由に使うか使わぬかというだけの問題であります。そういう問題について三十四条で規定している。それを制限をしたり、自由に使用できる時間を使用させないということが、労働基準法三十四条違反になるかならぬかということを私はお聞きしているのでありますけれども、それによると管理権の調和ということをおっしゃられます。もし管理の調和という言葉によって三十四条が自由に規制できるものであるならば、あえて軍だけではありません。どこの工場だって、どこの会社だって、みんなその会社の秘密もあれば調和もあれば、あるいは制限しなければならない幾多の管理上の問題もありましょう。こういうようなことが一体許されるかどうか。管理の調和と称して会社や工場や一般の労働者を雇っている施設において、今覆うような制限が許されているか許されていないか、労働省一つお伺いしたいのであります。
  43. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 一般的に申しまして、民間事業等におきましてもそうでございますが、休憩時間はその事業場内の労働から解放された時間でございます。これについては自由時間と見なければならないという規定もございます。しかしやはりそれは拘束時間内における休憩の自由利用の問題でございますので、その利用につきましては疲労から回復するという目的に合致する範囲内におきまして、事業場の規律保持という立場から、最小限度の必要な制限を加えることは差しつかえないというふうに考えます。
  44. 小林進

    ○小林(進)委員 自由に利用させなければならないという自由は、しからば制限付の自由ですか。
  45. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 やはり始業から終業の拘束時間内における労働からの解放でございまして、その専業場におきます規律の保持という点は、ある程度制限が可能であろうというふうに考えます。
  46. 小林進

    ○小林(進)委員 それではお伺いしますが、その始業から終業に至る間の労働からの解放だとおっしゃる。その間の自由だとおっしゃる。しからばその自由につけられる制限というものは一体どんなものか、具体的に一つお聞かせを願いたいのであります。
  47. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 現在までいろいろの具体的な問題がございますけれども、私どもの方で今までにある程度の制限はつけ得るというふうに見ておりますのは、休憩時間中に労働者事業場の外へ外出するというような場合には、これを許可制にするという程度については、制限可能というふうに解釈いたしております。
  48. 小林進

    ○小林(進)委員 それ以外にありませんか。
  49. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 今のところ具体的な事例は忘れました。
  50. 小林進

    ○小林(進)委員 それではお伺いしますが、駐留軍労働者に対しましては、米軍側は一方的にブラッドレー書簡なるものを出して、休憩時間中でも組合の話をしてはならないと禁じている。これが三十五年四月であります。あるいはまたブラッドレー書簡の第六項においては、「労働者の大会、示威運動、祝典、政治的又は一般的な会員の会議又は集合は、正式あるいは非公式の招集、集会の如何にかかわらず、日米行政協定第三項に従って司令官の管理下にある施設内においては、労務者の昼食時間、休憩時間を含む日常時間又は基地内にある間許可されない。」こういうふうになっているのでありますし、第七項目には、「労働組合又は従業員団体から掲示板に展示するため提出される印刷物又は書類は適当な一定の場所、しかも司令官又はその許可された代表者の許可を前もって得た場合のみ展示しうる。この種刊行物は米国又は日本政府の個人、機関又は活動を非難する宣伝物或いは性質上政治的であると考えられる問題を含まない。」これは主観的に当局が政治的だと思えばだめなんだ。あるいは「労働組合又は従業員団体からの会員に対する報告資料は在日米軍施設内で配布することはできない。」こういうふうに限定をせられているのでございますが、なお第八項は「各司令官は規則的に計画されている勤務時間及び昼食時間、休けい時間が組合員の定期的又は組織的な陳情、労働組合又は他の従業員団体の会費、割当金又はその他の資金の徴収のため施設内において使用されないことを保証しなければならない。」何ですか、これは。組合や会員に対する報告事項も休憩時間中にやってはいけないし労働組合の会費、組合費を徴収することも昼飯の時間にも休憩中にもやってはいけないという、こういう十重二十重に休憩時間、解放された自由の時間を制約せられていることが、労働基準法三十四条の違反にならないかどうかということを、これは労働大臣にお伺いしたいと思います。人間の基本権の問題であります。
  51. 福永健司

    ○福永国務大臣 御指摘のごとく労働基準法三十四条は、できるだけそのままの姿で守られていくことが望ましいと私は考えます。ただ特殊の事業場、特殊の職場にあって、先ほどから話が出ておりますようなある程度の制約、これを全面的に否定するわけにも参らないと思うのでございます。具体的にいろいろ事例をおあげになりましたが、これらにつきましてはよほど詳細に調べませんと、そのままそれが三十四条に全く違反するものであるかどうかということについて、直ちには申し上げがたいのでございます。精神といたしましては、できるだけそこに吾かれているままのことが行なわれることが望ましい、こう考えているわけでございます。
  52. 小林進

    ○小林(進)委員 私はブラッドレー書簡なるものを一言も粉飾しないで、そのまま技粋したものを読み上げたのであります。その読み上げた中に、こういう昼食の時間、休憩時間といえども、組合の報告もしてはならない、紙を張ってはならない、あるいは陳情してもならない、会費、割当金その他の徴収もしてはならないというふうな制限が加えられている。  それでは事務当局にお伺いしましょう。これは外出の問題ではありません。こういう問題は三十四条に抵触しませんか。
  53. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 ただいまお読みいただきました書簡の内容で、組合活動全般の問題について相当広範ないろいろな制約があるわけでございます。この事実自体が直ちに基準法違反になるとは考えられませんが、先ほど申しました管理権との調和の問題で、個別に具体的な問題について慎重に検討しなければ、違反かどうかはわからないわけであります。
  54. 小林進

    ○小林(進)委員 それではお伺いしますが、三十四条は、個別的に検討しなければ一体これの適、不適はあなた方は考えられないとおっしゃるのですね。各所に、日本には何千何百の卒業場がありましょう。その事業場における労働者一つ一つの生態を見なければ、三十四条の自由が与えられているか与えられていないかわからぬとおっしゃる。もしあなたの御説が正しいならば、これは労働者に与えられた休憩時間、自由時間というものは空文だ、そういうあなたの御答弁というものが正しいとお考えになりますか、いま一回明確な御答弁を伺いたいと思う。
  55. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 今出て参りましたそれぞれの組合活動に対する個々の事案につきまして、管理権との調和の問題で内容、事実がよくわかりかねるところがありますので、その点については個々に慎重に検討してみなければ、違反かどうかということはわからないというふうに思います。
  56. 小林進

    ○小林(進)委員 わからないところはどこですか、一つお伺いしたいと思います。それは今に始まったものじゃない。(「具体的認定じゃない」と呼ぶ者あり)私の方は具体的に、休憩時間中にポスターを張っちゃいけないとか、組合費を集めちゃいけないとか、負担金を集めちゃいけないとか、具体的に述べているじゃありませんか。こういうような規定で休み時間中の労働者の自由時間を拘束しているのが、一体間違っているかどうかを聞いているにもかかわらず、あなたは調べる必要がある。一体どこを調べる必要があるのですか、その疑問とされる個所を一つ私の方でお伺いしたい。
  57. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 ブラッドレー書簡の内容が、その個々の事業場におきますところの管理権との調和の問題で、その点の具体的なことを見て参りませんと、にわかに違反ということは申し上げられません。
  58. 小林進

    ○小林(進)委員 そういたしますと、あなた方はその施設の中に住んでいる労働者の実態を見なければ、この通知が適法か、法に違反しているかということは判断できないとおっしゃるのでありますか。これはそれでは大へんなことですよ。
  59. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 管理権と申しますか、職場の規律保持ということがどの程度その事業場において許されているかどうか、なお休憩の目的が、いわゆる疲労回復という目的がどの程度まで達成されておるかどうかという点につきまして、やはり調達庁の方からいろいろ御意見を聞いて判断するということが必要かと存じます。
  60. 小林進

    ○小林(進)委員 それではいま一回お伺いしますが、この駐留軍関係は別にいたしまして、日本の国内における事業場において、こういう休憩時間を制限された前例が一体ありますかどうか。
  61. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 私の知る限りにおきましては承知しておりません。
  62. 小林進

    ○小林(進)委員 ありませんね。
  63. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 私の知る限りにおいて、そういうことは承知いたしておりません。
  64. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたの答弁はそれでしっぽが出ています。その通りなんです。もし日本の国内のどこかの事業場において、こういう休憩時間の制限が行なわれるなんということは、天下を沸き立たせるような重大問題です。しかもわが日本に敗戦と同時に民主主義を教えてくれた、一番民主的だと思わせられていたアメリカ、そのアメリカの駐留軍の中に、おそらく日本国内のどんなわからず屋の事業場においても経験したことのないような、こういう非民主的な労働者圧迫の行動が行なわれているというこの事実は、しかも駐留軍が最初から日本に駐留した当時からこういうことをやっていたというのであるならば、それはまた話は別であります。ところが労働協約のあった当時は、こういうことを認めていた。事実認めていた。ちゃんと駐留軍労務者にも休憩時間の自由が与えられていた。それが三十二年の九月三十日ですか、この労働協約の期限が切れると同時に、無協約状態にしておいて、そうして一つ一つこの休憩時間における自由を剥奪していった。だれが悪いか。私をして言わしめれば、アメリカは決して非民主的になったわけではないだろう。そのアメリカにかわって労働協約を締結する調達庁自体が、労働行政を知らぬから、労働者の権利をとうとぶことを知らぬからと私は考えるが、調達庁は日本の国内のどの労働者もやられていないような、こういう圧迫を受けておるのに対して、なぜ一体これを三十二年九月から今日まで黙認をされてきたのか。なぜこれを放任されてきたのか。これはもう調達庁長官じゃありません。阪衛庁長官、大臣の責任です。こういう国内の一番民主的であるといわれる、一番話がわかるといわれる、特にあなた方の一番尊敬をしておられるそのアメリカの駐留軍の中で、日本労働者のだれもが受けないようなこういう非民主的な、権力のもとに圧迫を加えているのを、しかも黙って見ておられるということは、人道上も大へんな問題です。長官、一つ大臣としての御返答をお伺いしたい。
  65. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 繰り返すようでございますが、軍という特別な関係からくるところの管理上の必要と、労働者の自由の調節の問題であろうと思います。従いまして、少なくとも休憩時間において組合活動を全面的に制限する、あるいは禁止するというようなことについては、これは問題があろうかと思います。そういう意味で、先般もお答え申しましたが、一方において労働協約の締結に努力をいたしますと同時に、いかなる範囲で施設内における労務者の休憩時間の自由を享受できるかという問題については、調達庁を督励いたしまして、米側とも話し合いを進めさせておるわけでございます。遺憾ながらまだその妥結に至っていないのでございますが、それが早急に妥結するようには努力をいたしたいと考えております。また現実の問題の起こりましたものにつきましては、目下各方面について調査をいたし、そうしてその事実に基づいて労働省とも御相談をいたしまして、米側との交渉に当たりたいと考えておる次第でございます。
  66. 小林進

    ○小林(進)委員 私は先ほどからも繰り返しておりますように、休憩時間において自分たちの仲間に仲間のことを報告する、あるいは休憩時間に仲間から会費を徴収する、そういうようなことは、軍の機密や軍の管理の制限に抵触するものとは私は考えられません。そういう大臣の理屈は、私は詭弁にすぎないと思う。納得できない。これが一つであります。  それから第二番目は、先ほども言うように前から規律や機密があるならば、最初から禁止すればよろしい。制限すればよろしい。三十二年の九月までちゃんと許しておる。許していたことを、今度三十三年の九月から無協定にして、同時にこういう制限を加えなければならなかった理由が一体どこにあるか。これがいささかも御答弁の中に明白になっておりません。  それから第三番目は、一体日本労働者が全部与えられている自由を、いわゆる調達庁は、法律上もあなた方は御存じでしょうが、調達庁だけが日本の働いている大衆にこれほどの不便を与えている事実、この事実に対して何ら反省されていない。努力します努力しますと言うけれども努力の跡がないじゃありませんか。何もない。じんぜん日を過ごしておる。努力というものは一年か二年か、半年か四カ月で成果を見る努力をしなければならぬ。じんぜん歳月を経ること五年有余じゃありませんか。五年間も放任しておいて、努力という言葉をもって事を紛飾するような、そういう卑怯な行為は私は許されないと思う。調達庁長官、私があなたの立場でしたら、国会でこれだけのことを言われたら、帰ってすぐ辞表を提出します。むろん出しますよ。それは日本の役人ならば、それくらいの度胸を持たなければ行政ができはしない。しかしそういうことをてん然として恥じず、のほほんとして五年も六年も努力してきましたなんて言われるから、われわれから言わせれば、何だ、調達庁は日本の政府の役所なのか、アメリカのエージェントなのかアメリカの軍隊の代理店じゃないのか、こういうふうなことを疑わざるを得ないのであります。アメリカ軍の代理店にあらずして、日本労働者を雇っている雇用主であり、日本労働者の地位を守るという崇高なる自覚が一片あるならば、いま少しへなへなしないで、一つきちっとした骨のある交渉ごとをしてもらわなければならないと思うのであります。三十二年の九月三十日に切れた労務協約を、今日まで締結せられていない理由は一体何ですか。この前もお尋ねしましたけれども、いま一度納得のいくように、これは一つ調達庁長官にその理由をお聞かせ願いたいと思います。
  67. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほどからいろいろ御意見がありますように、日本の法令に従わなければならないことは当然でございます。ただ軍という特殊な性格を持った施設の中においては、やはり厳格なる規律があるということも、またこれは自然なことでございます。従いまして施設内における組合活動とこの規律をどういうふうに調整するかということは、やはり非常にむずかしいことでございまして、今までずっと細部の点について協議をいたしてきたのでありまするが、いまだに意見の一致を見ていないのであります。先ほども申しましたように、昨年諸機関従業員の労務協約を結ぶときに、やはりこの問題で折衝したのでありますが、その結果施設内の組合活動につきましては、個々の場合について米側の許可を受けるという協定をいたしたのでございます。今後はさらにこういうようなこまかい点についても十分検討いたしまして、労働省等の御見解も聞き、問題点については軍側に強く申し入れて、意見の調整をはかりたい、こういうふうに考えております。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 軍だから特別に規律を要するとか、そういう理窟は昔の軍国主義の軍はなやかなる時代ならば通りますけれども、民主主義下の今日において、どこどこだから特別な規律を要する、一般だから規律を要しない、そういう理屈はわかったようで、これはちっとも理屈じゃないのです。規律というものはどこの職場においても、どこの施設の中においても規律は必要です。軍なるがゆえに休憩時間にかくかくの規律をしなければならないという、労働基準法三十四条を規制するような特別の規律を必要とするなどという理屈は、これは子供だましですよ。こけおどかしの理屈です。そういうような理屈で、いわゆる民主主義下の筋の通った論理をごまかすようなことはやめて下さい。そんなことはだめですよ。むしろあなたは相手から軽べつを受けるだけです。あなたの知能の軽べつを受けるだけですよ。そんなことはやめた方がいい。それより一体労働協約は軍の承認を得なければならないという、おそらくその承認を得るために、雇用主たるあなた方は駐留軍当局と話をされていると思いますが、そこで今日までじんぜん労務契約を更新できない駐留軍側の具体的な障害点は一体どこにあるか、お聞かせを願いたいのであります。
  69. 林一夫

    ○林(一)政府委員 施設内におきますところの組合活動につきましては、先ほどから申し上げるように、繰り返しますが、軍の特殊上、軍の内部には厳格なる職場規律、軍規律というものがございまして、その規律とこの組合活動との調整ということになるのであります。これをどういうふうに調整していくかということが大きな問題でございまして、そのような意見の調整を今までやってきたのでございます。その結果諸機関労務協約におきましては、個々の場合においては米側の許可を得て団体活動ができる、こういうことに相なったのでございます。なおいろいろの具体的な事例については、今後とも十分検討いたしまして、また労働省の御意見もよく聞きまして米側と折衝したい、こういうふうに考えております。
  70. 小林進

    ○小林(進)委員 私は願わくは、これはあとの理事会でも一つお願いしてみようと思うのでありまするけれども、もし日本国会において、許されるならば、アメリカの駐留軍をここに呼んで、参考人とか証人とかという意味ではなしに、私は自由な気持で一つ真の駐留軍の意見をここでお聞かせを願いたいと思う。どうも私の推測によれば、民主主義を日本に植え付けてくれたあのアメリカが、こういうような労務協約を拒否したり、あるいは労働者の休憩時間を制限するような、こういうばかなまねはやる道理がないと思っている。その中間に介在している調達庁という庁は、労働者とアメリカの間をうまい工合にあやつって、と番えば言葉は少し悪うございますけれども、それこそ両者の間を綱渡りをしながら、うまいお芝居をおやりになっているのではないか。さもなければどうも越が弱過ぎて、こう言ってはアメリカにしかられるのじゃないか、こう言ったらアメリカ軍に怒られるのぢゃないかという、昔の占領軍政策、いわゆる敗戦後の占領軍当時と同じような、幽霊見たり枯れ尾花、枯れ尾花を幽霊とみなしてものおじして驚いたという、そういうへっぴり腰の結果じゃないか。そのいずれかでないかと私は思う。アメリカがこんなばかなことを日本労働者にやらせる道理がないと私は考える。いかがでございますか。アメリカの軍隊が、日本の国内における労働者に与えられている、その権利を与えないというもとは、やはりアメリカの軍隊にあるとおっしゃいまするかどうか、諸般の点を明確にお聞かせ願いたいと思います。
  71. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁としましては、従来この点については強い態度で米軍と折衝してきておるのであります。御指摘のような卑屈な態度あるいは弱い態度をとっておるわけではございません。対等な立場に立って堂々と折衝はいたしておるのであります。何しろ軍の組織の中には市特別の規律があり、これとの調整の問題でございまして、いわば軍としても規律保持上強い立場、当庁としましては権利保護の立場から強い態度をとるというようなことで、意見の調整が今までできなかったわけであります。今後十分検討しまして、問題点についてはさらに強く折衝を続けて参りたい、こういう考えでございます。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんからこれで終わりたいと思いまするけれども、今のあなたの答弁によりまして、いよいよこういう労働者のわずかな与えられた休憩時間の自由な時間までも奪っているものは、日本の調達庁でない。アメリカの軍隊で、アメリカの軍が規律に名をかりた厳格な強い態度でそれを与えないのであるという、ここは明白になりました。これはもしあなたの答弁通り間違いないものとするならば、われわれは今まで信頼をいたしておりました、アメリカの民主主義というものに、一まつの疑いを持たざるを得ない。持たなければならなくなったことは、非常に残念であります。これから私はこの問題を通じて、アメリカの労働政策なり、アメリカの労務対策基本人権の与え方などに対しては、考え直さなければならなくなってきていることは、われわれは国会を通じて、非常に不幸で悲しい現実であることを考えなければなりませんが、時間がありませんので、あなたのお言葉に信頼しまして、どうか一つ堂々と、さらに勇気を持って、これが事実とすれば、アメリカからもと通り日本労働者のために権利を取り返すように御努力を願いたいと思う。いずれまたあらためて御努力を願ったその結果は一つ御報告を受けるといたしまして、次の問題に入りたいと思うのでありまするが、それは昨年の十一月の二十七日、八日の両日、立川の基地で女子従業員を一室に監禁をいたしまして、数時間にわたり思想調査を行なったという事件を一体御存じになっておりますかどうか。これは大臣にお伺いしたいと思います。
  73. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 立川の空軍基地勤務の女子従業員が、米軍によって調査されたということにつきましては、存じております。
  74. 小林進

    ○小林(進)委員 本人の陳述書より判断いたしますると、この陳述吾はお手元に配付いたしますから、読んでいただきたいと思います。本人の陳述書より判断いたしますると、憲法第十九条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」第二十一条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」という、この憲法両条違反の調査とわれわれは考えまするが、そのような行為を日本の政府は承認をしておられるかどうか、お伺いをいたしたいのであります。
  75. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この問題につきましては、調達庁としても承知しておるのであります。問題は昨年、立川基地内の女子従業員の履歴書が紛失したということで、履歴書の再提出を依頼しまして、履歴書の再提出をいたしたのであります。その後、その履歴書について米側はいろいろ調査をしたのでございます。そのことにつきまして、これがこのような憲法に保障されておるところの人権を侵害するかどうかというようなことでございまするが、私どもの知る限りにおきましては、アメリカ側は人車管理上やはり、履歴書に記載する事項について調査をするのはやむを得ないことであり、また軍の利益を保護するために必要なる調査をするということも必要だと思っております。でありますので、現在のところは私どもは、これがこのような基本人権を侵害するというふうには考えておりません。いずれにしましても、現在所轄の東京都を通じて詳細に調査しております。調査の結果を十分検討いたしまして善処したい、こういうふうに考えております。
  76. 小林進

    ○小林(進)委員 履歴書が紛失をしたから、そのために本人も承知をして調査をすることは、基本人権を侵しているものとは考えない、こういうあなたの御答弁でございました。東京都を通じて調べているというのは、これは付加的なお答えであって、どうも基本的な人権を侵していないというのが、あなたの答弁の真意らしいけれども、これは私をして言わしむれば、FIC書式一六九番というのだそうでありますけれども、そういう書式が人事課の係の人が知らないうちに紛失をしてしまったというところにも、何かの作為があるのではないかという推定も成り立つわけでありますが、これは証拠がないことでありまするから、あまり悪意の推定はしないことにいたしましても、すなおに考えても、米軍の基地の中で女の子一人を一室の中へ入れて、監禁したとは私は言いませんけれども、入れて、そして大の男が三人してそれを調べるという、そういう尋問といいまするか、調査の仕方、一体これが正常な履歴書の再調製のための調べ方であるとあなたはお考えになりますか。  〔委員長退席澁谷委員長代理着席〕 しかもその時間は二日にわたっております。第一日目は十一月の二十七日、朝出勤をすると、本田監督からOSIに出頭するようにと言われた。そこで調査時間はその日の八時三十分から午後の三時まで、それで終わったのかと思ったら、今度は翌日また八時三十分に出頭を命ぜられて、十二時十五分まで調査をせられた。調査人はミスター・ウィリアム、ミスター・ブラドレイ、通訳はミスター・小林、こういうふうに三人がかりでやっているのでございまするが、これが正当な女子、婦人に対する調べ方であるとあなたはお考えになりまするかどうか。
  77. 林一夫

    ○林(一)政府委員 それが調べ方につきまして、行き過ぎた調べ方をやっておるか、あるいは通常の調べ方をやっておるかというような詳細な点については、現在東京都を通じまして詳細に調査をいたしておる次等でございます。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 調査の中間報告は参りましたか。
  79. 林一夫

    ○林(一)政府委員 まだ承知いたしておりません。
  80. 小林進

    ○小林(進)委員 東京都のどなたでありますか。何長の何の何に一体それを依頼されていますか。
  81. 林一夫

    ○林(一)政府委員 東京都に労務管理事務所がございますが、その労務管理事務所を通じて調査を依頼しております。
  82. 小林進

    ○小林(進)委員 労務管理事務所の所長さんを通じてでございますか。現実に交渉されている方のお名前を一つお聞かせ願いたい。
  83. 林一夫

    ○林(一)政府委員 東京都の労務の所管の労務管理部長に…。
  84. 小林進

    ○小林(進)委員 どなたでございますか、お名前を。
  85. 林一夫

    ○林(一)政府委員 山下部長でございます。
  86. 小林進

    ○小林(進)委員 こういういやしくも思想、信条の自由に関する問題をお調べ願っているのでございまするから、これは当委員会においても山下さんに早急御出傾いただきまして、今までの交渉の経過をお伺いいたしたいと思いまするが、委員長において早急御処置を願いたいと思いますが…。
  87. 澁谷直藏

    澁谷委員長代理 後刻理事会で相談をいたします。
  88. 小林進

    ○小林(進)委員 理事会と言わないで、これは質問の時間がかかりすので、今委員長独断において直ちに御処置願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  89. 澁谷直藏

    澁谷委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  90. 澁谷直藏

    澁谷委員長代理 速記を始めて下さい。
  91. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは私はきょうのうちに駐留軍の問題は全部上げようと思ったのでありますが、時間の関係でだめとおっしゃいますから、この問題を含めていま一回大臣以下長官に御足労願うことにいたしまして、その節山下さんにも今までの交渉の経過をお尋ねすることにといたしまして、次に進めたいと思いますが、そういう思想の調査をおやりになった中に、共産主義に関することをお尋ねになっているのでごいますが、駐留軍の労務者と共産主義とはどういう関係があるのでございますか、これは長官にお聞かせを願いたいのであります。
  92. 林一夫

    ○林(一)政府委員 駐留軍と共産主義がどういう関係があるか、私ちょっと存じません。
  93. 小林進

    ○小林(進)委員 駐留軍に採用せられるときには、あなた方が雇用主になっていて、その採用をなさるわけでありますが、共産主義者や共産党に入党されている者は採用されません。あるいはまた採用して後日共炭主義に共鳴した者、または共産党に入党した者は、これを馘首する、こういうようなことになっているのかどうか、這般の事情を一つお聞かせを願いたいと思うのであります。
  94. 林一夫

    ○林(一)政府委員 基本労務契約に保安の規定というものがございまして、その規定の中に、具体的に申しますと情報の漏洩の防止とか、スパイ活動の防止とか、あるいは妨害行為の防止というようなことのために、安全に関する規定というものがありまして、その規定には合衆国軍隊に対して有害な破壊的活動を防止するために、そのような破壊的活動をする団体に属しておると困るという基準がありまして、このような基準によりまして人事管理を行なっておるのであります。
  95. 小林進

    ○小林(進)委員 そうすると保安解雇ですか、基本労務契約の中には共産党は破壊的活動をする団体に該当する、こういうわけでございますね。
  96. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍が店本労務契約によりまして保安上危険であるとみなしておるものは、正確に言いますと、「A側の保安に直接的に有害であると認められる政策を採用し、または支持する破壊的団体または会の構成員である」ということになっております。要すに米平の安全を保護するために、その保安上直接的に有害であると認められるような政策を採用しておる、またそのような政策を支持する破壊団体ということになっておるのであります。その団体がどういう団体であるかということは、軍におきましては機密事項になっておりまして、申し上げることは差し控えたいと思います。
  97. 小林進

    ○小林(進)委員 米側の保安上に直接有害であるという団体は軍の機密かもしれませんが、あなたたちは人を採用されて軍へ送り込まれるのでございますから、やはりあなたの方にもちゃんと一応の基準がなくちゃいけないのでございます。軍の秘密をそのままここで教えて下さいとは言いませんが、大体のアウトラインはわれわれに教えていただかなければ、今後われわれは駐留軍行政を論ずるわけにはいきません。お差しつかえのない程度一つお聞かせを願いたいのであります。
  98. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁において意見を提出する場合においては、どこまでもこの規定によりまして、その団体が保安上軍に対して有害であるかどうかという点、またそういうような政策を採用し、また支持する破壊的な団体であるかという点を基準にして調益して、意見を述べるということになっております。
  99. 小林進

    ○小林(進)委員 それではこの鈴木文子という人の陳述君の抜粋によれば、この事項の中に「共産主義に関することでお尋ねします」と言っているから、まず共産主義は今あなたの言われた米側に直接有害なる団体である、こう判断してよろしい。私はそう判断して間違いがない思いますが、いかがですか。次に「日中友好協会の会員ですか」と聞いておるのでありますから、これも軍の機密に関することですけれども、まず日中友好協会は米軍には、害をなす団体であると判断してよろしい。次には「あなたは社会主義入門、毛沢東全集、中国史、共産党宣言、アカハタを読んでいるかどうか」ということを聞いてますから、「社会主義入門」、これも駐留軍に直接有害なる書籍、団体に該当するものとまず判断してよろしいと思いますがどうか。それから「貴女、及び家族が共産主役国の人々と交友又は文通していますか」と言っていますから、あなたの今の話の裏を返せば、兄弟、身内とか眷族の中に共産党員が一人でもいるか、あるいは中国側と文通している者が一人でもいれば、これは破壊的思想を持った者の一族一党として、駐留軍に勤める資格がない者とまず判断してよろしいものと言わなければならない。この点は一体どうか。それから「貴女は共産党又はその影響を受ける諸団体から加入を勧められたことがありますか」、加入を勧められた者は、加入を勧められただけでも危険なる者として、まずまずこれは駐留軍労務者たる資格を失わせるもの、安定雇用条件のいわゆる欠格者になるということと判断していいかどうか。特に言うけれども、「次の諸団体に加入したことがあるかどうか、又は寄附したことがありますか」この中に「社会党、平和を守る会、原水協、助け合い、民主青年団等」、こうなっておる。今あなたの説明の裏を聞くと、社会党もいわゆる米側の保安に直接危害及ぼす有害な団体であるということになるでありますが、そのように判断してよろしいかどうか。余分なことは要りません、そのものすばりで一つ答弁を願いたい。
  100. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この履歴書の記載事項のうち、この人事記録の中に加入団体ということがあるのであります。そのような関係で、共産党に入っておるのか、あるいは日中友好協会に入っておるのかというようなことを、履歴書について調査いたしたのでございます。米軍の保安上の危険とみなしておるのは、米軍の安全を保護するために、米軍の利益に直接影響のあるような、あるいはそれを破壊するような政策を支持しまたは援助しておるというような団体に所属しておる場合にのみ、保安上の出勤停止とかあるいは保安上の解雇というような事態が起こるのであります。どこまでもこの保安上の危険の有無について調査をいたしたというふうに私ども考えておるのであります。米軍としましても、人事管理上、履歴書の人事記録について調査をする必要はあるのであります。また一方合衆国軍隊の安全上の利益を保護するために必要なる調査を行なわなければならないということは、やむを得ないことでございまして、そのような見地からこのようなことについて調査をいたしたものと私は考えております。
  101. 小林進

    ○小林(進)委員 抽象論はよろしゅうございます。社会党は米側の安全に直接危害を加える有害なる団体であるかどうか、お聞かせを願いたいのであります。
  102. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私の考えを率直に申しますと、社会党はりっぱな政治団体であると考えます。
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 私はあなたの意見を聞いているのじゃないのです。米側が危険なる団体、危険なるグループと言っている、機密にしているその団体の中に日本社会党が入っているかどうか。そのものずばりで教えて下さいと言っているのです。
  104. 林一夫

    ○林(一)政府委員 入っておりません。
  105. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは私はお伺いしますけれども、基地反対闘争をやる団体は、アメリカの保安に直接有害なる団体であると考えていいはずでありますが、この点はいかがでありますか。
  106. 林一夫

    ○林(一)政府委員 基地反対闘争ということはやはり一つの政治の動きでございます。別にこれは破壊的団体であるというふうには考えておりません。
  107. 小林進

    ○小林(進)委員 社会党は日米安保条約に最も勇敢に反対する団体であります。基地には最も反対闘争をする、その先頭に立つ政党であります。これがアメリカの保安に直接有害な団体ではないとあなたは言われるのだけれども、それはアメリカ側の意向とあなたの意向が相反しているのではありませんか。間違いではありませんか。取り消される必要はありませんか。
  108. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍が保安上の危険を判断する基準は、先ほども申しましたように、米側の保安に直接的に有害であると認められる政策を採用し、または支持する破壊的な団体ということになっております。このような判断のもとに保安上の危険の基準を解釈しております。
  109. 小林進

    ○小林(進)委員 私どもはアメリカの軍隊が日本に駐留するのにまっ先に反対する団体であります。しかるがゆえにむしろアメリカの軍隊から、アメリカの保安に直接有害なる団体であるというふうな御承認を得ている方が、今後の行動をするに楽でいいのであります。あなたの方から決してそういう言いわけじみた御答弁をちょうだいする必要はないのであります。率直に御意見をいただきたいと思います。現にこの彼女の調書の中にも、社会党、平和を守る会、みんな危険な団体であることを裏づけするような調査が行なわれているのであります。これはアメリカ側としては私は当然だと思います。願わくばアメリカの危険視するものの見方が、アメリカ本国において行なわれることの一日も早からんことをわれわれは要望するのであります。われわれの郷土、われわれのふるさと、われわれの祖先が血を流したこの日本の本土において、アメリカの駐留軍によって危険視され、有害視され、保安を害するものというふうに判断されることは、私はうたた世の無情を感ぜざるを得ないのでありますけれども、もう時間もありませんから、この問題は一つあなたもいま少し日本人の立場から判断をしていただきたい。アメリカ軍の立場に立ってアメリカ側を擁護するという、そういう気持ではなしに、日本人の魂を呼び戻して、一つ日本人の気持になってこういうスパイ問題を扱ってもらいたいと思います。今まだこのスパイ事件の調査中だということでございますから、次の機会にその中間報告をいただくことにいたしまして、この問題を終わります。  次にこれに関連しまして、最近一年間の間に保安解雇、あるいは保安出勤停止の事案が一体何件あったか、お聞かせを願いたいのであります。
  110. 小里玲

    ○小里政府委員 昭和三十六年の一月から十二月までの一年間に、保安上の要因で出勤停止を受けました件数は五件でございます。人数は五名、保安解雇になりました件数は一件もございません。
  111. 小林進

    ○小林(進)委員 その五件五名の中に、解雇はないにいたしましても、保安の出勤停止を受けて五カ月もこしている者がありますにもかかわらず、これがそのまま放任をせられている。六割の休業手当があるといたしましても、将来まっ暗であります。労働者生活権を無視するもはなはだしいといわなければならないと思いますが、あなた方は雇用主の立場であります。雇用主としてこういう不安定な状況労働者を投げ出すということに対して、責任をお考えにならないかどうか、お聞かせを願いたいのであります。
  112. 林一夫

    ○林(一)政府委員 このような事案につきましては、公正慎重に調査をする必要があるのであります。そのような意味におきまして比較的長期間かかっているのであります。当方といたしましては、米軍側に対してはできるだけ調査を完了するように折衝いたしております。
  113. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた方の答弁を聞いていると、私も早く質問を打ち切りたいのだけれども、いや調査中だ、いや交渉中だ、いや何々中だ、こういうのでみな逃げている。そういう答弁は実に無責任きわまる。これは大臣になって政治的にものを答介されるならともかく、あなた方は事務屋なんだ。その事務屋が不謹慎きわまるそういう答弁日本国会をごまかしていこうとするから、私の質問も時間をかけざるを得ないのであります。個人の身上調査に関することではありませんか。それに関することが半年も調査をして、それが保安上危険であるかどうかという判断もつけ得ないということであれば、これは裏を返せば怠慢であるとわれわれは思わざるを得ないのであります。何で一体半年以上もかかるのですか。ヘビのなま殺しのように悪いやり方だ。そういうようなことは、労働者の権利を侵害する最も大きな罪だと思うけれども、まだ調査中でございますか。調査中でないというもっと的確な答弁をやって下さい。
  114. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この調査はどこまでも公正慎重にやるという必要があるので、相当手続において時間がかかるという点は御了解をいただきたいのでございます。大体今まで出勤停止の期間は平均四カ月ということになっております。
  115. 小林進

    ○小林(進)委員 これは労働省にお伺いしますが、労政局長、どうですか。半年も出勤停止を命じて、そうしてそのまま放任しておくような行為は、日本労働者保護の立場から許されますか。
  116. 堀秀夫

    ○堀政府委員 なるべく早期に解決されることが望ましいと考えます。
  117. 小林進

    ○小林(進)委員 今のお話通りであります。労働省においても早期解決の必要を認めているのに、半年以上も放任されているのでありますから、これはまず保安上危険のないものだと判断して差しつかえないと思いますが、長官、いかがでございますか。
  118. 林一夫

    ○林(一)政府委員 保安上危険であるかどうかというようなことは、これは慎重に調査をする必要があるので、そういうような意味におきまして、いろいろな機関においてこれは調査するのでございます。その手続が相当かかるのであります。そういうようなわけで、なるべく早く調査を完了するという努力はいたしておるのでありまするが、結局平均四カ月というような期間を要しておるような事情であります。
  119. 小林進

    ○小林(進)委員 どのときが危険であり、どの点が危険でないか、中間報告が個々の問題について、あなたは雇い主なんだから、米軍からそのつど報告あるものと判断してよろしいが、目下調査中であって、あなた方調達庁の方には、その経過あるいは個々の疑問とする点等について、一体具体的な話し合いが行なわれているのかどうか。米軍関係と調達庁長官との事案に対する関係をお聞きしたいのです。
  120. 林一夫

    ○林(一)政府委員 このような調査は、米軍内部においても調査をいたします。また各労管事務所においても調査いたします。調達庁においても調査をするということで、各機関を通じて慎重に調査をすることになっておるのであります。事柄が重大な事柄でございますので、完全な結論は出せないのでございますが、慎重に調査しまして早く結論を出すという方針で従来やってきておるわけであります。   〔渋谷委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 小林進

    ○小林(進)委員 三つの機閥において調査すると言われましたが、ほかのことは別として、調達庁がお調べになりましたその結果を、一つここでお聞かせ願いたいのであります。
  122. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在調査の段階にございますので、はっきりここで申し上げることは差し控えます。
  123. 小林進

    ○小林(進)委員 労働協約に関しては五年間契約更新中だ。しかも個々のケースも、東京の地図局に勤めている支部役員二名が、昨年の九月二十八日付で保安の出勤停止を受けた。昨年の九月二十八日から慎重々々と言われましたところで、裁判所や検事局のように、事件が山ほど、何件と固まっているようなお役所におきましても、こんな三カ月も六カ月も放任しておくことなんかありませんよ。何ですか、先ほどからお伺いすれば、昨年一年間で五件だというじゃありませんか。しかも回答はないという。出勤停止が五件だという。人数は五人だという。たった五人の人間を、その人の白か黒か、危険があるかないかを調べにかかっておる。六カ月もかかってなお調べ切れない。慎重にかまえる。あなた、そういう理屈が通りますか。ここは国会ですよ。国会議員を侮辱するような、軽べつをするような答弁はやめて下さい、本人は何回ほど呼んでお調べになったか、回数をお聞きしたい。
  124. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほどから申し上げます通り、この保安上の危険があるかどうかというような調査は、事重要な事案でございまして、そう簡単には調査は終了しないのであります。公正に、しかも慎重に調査をする必要があるのでございます。ほうっておくわけではないのであります。四カ月やるということは四カ月閥十分に調査をするということでございまして、やはり慎重を期して調査をしておるということでございます。その点は御了承いただきたいと存じます。
  125. 小林進

    ○小林(進)委員 私はそういう答弁には了承できません。平均四カ月もかかったということは、その役所的な仕事のやり方は私はお粗末過ぎると思っている。しかも今の事案は四カ月ではない、六カ月ですよ。六カ月の間、生かすでもなければ殺すでもない、不安定のままに投げ出されている労働者の苦しみ、一言の抗弁する余地がないではありませんか。事が慎重ならば、なおさら早期に解決しなさい。慎重だから何年かかってもよろしい、何カ月かかってもよろしいという理屈が一体どこにありますか。あなた方がいかにかいらいであるかということをみずから物語っている。正直にそれは言いなさい。そこには底があるならば、こういう事情でどうも調査が進みませんなら進みませんと言われればよろしい。相手は子供ではないのだから、私ども。国民を背中にしてあなた方に質問をしているのですから、いま少しきちっとした、人をして納得せしめるような答弁をして下さい。  それならば、私はお伺いしますけれども、三十六年の三月三十一日付で神奈川の地方労働委員会から、大船のPXに勤務していた七名の救済命令が出されたが、軍側の拒否により地労委の命令は不履行になっている。これは労働委員会に仲裁申し立てをして、これは黒ではない、白だ、こういうようなことが労働委員会に立証されているにもかかわらず、これがそのまま不履行になっているのは一体どういうわけだ。さらに神奈川の地労委から横浜の地方裁判所に救済命令不履行の通知が出されておるけれども、裁判所もこれは何らの措置もとられていない。これと同じようなことが福岡にもある。労働委員会が調査をして、これは絶対間違いがないのだ、駐留軍に忠勤を励んで正しく行動をしてきたという証明が、民主的なる労働委員会においてなされているけれども、それがその救済命令も履行されていないということは、口には日本労働基準法を守るの、労働基本法を尊奉するのといいながら、今私が一時間なり二時間にわたって質問した中で、日本労働法規は一つも採用されてないじゃありませんか。みなじゅうりんされているではありませんか。日本の民間の労働組合においては、その会社等においてそういうようなことが、いわゆる地労委の救済命令が不履行になったときには、相当大きな過料というものを会社は食わなければならないのです。そうして日本の法規の尊厳が保たれている。あなた方は一体雇主として、この地労委の命令をどういうふうに考えているのですか。この救済命令をどのように一体処置されたのですか。これは大臣、わかりますでしょう。あなたは大臣として……。労働大臣、あなたの番ですよ。
  126. 堀秀夫

    ○堀政府委員 本件は御承知と思いまするが、旧協定下に発生した事件でありまして、ただいま御指摘のように神奈川地労委において救済命令が出て、これが確定した事件であります。本件について日米双方で意見が対立しておりますのは、旧協定下のこの種の事件について先方が管轄権がない、このように主張しておることから対立しておるわけであります。今回の制度の改正によりまして、今後はこのような事例はなくなるわけでありまするが、この問題につきましても、政府といたしましては、日本労働法を守るという見地から、米側において適当なる措置をとってもらいたいということを再三折衝しておるわけでございますが、今のような対立がありまして解決しておりません。しかしながらこの問題につきまして、労働省といたしましてもさらに先方に対しまして検討を求めまして、労働者の実質的保護の万全をはかりたいと考えて、目下努力中であります。
  127. 小林進

    ○小林(進)委員 いみじくも労政局長はこれは上手に答弁された。答弁されたが、これはみずからのサボタージュをごまかすための答弁でありまして、これは労働大臣としても重大な責任があります。私が労働大臣であれば、こういう救済命令が行なわれなければ、これは人民の前に深く陳謝をいたしまして責任をとります。今の大臣は責任をとることを知らない。嘆かわしいことであります。  それはさておいて、雇い主たる調達庁——米軍がその救済規定を不履行だ、裁判もまた管轄違いだからといって強制する権利がないといっても、雇い主たる調達庁のいわゆる政治的、道義的責任は私は免れないはずじゃないかと思う。それをあなた方は責任を負わないで、じんぜん今日まで日を過ごして、ただ雇い主でもないアメリカ政府と交渉するなんということは、これは大衆を愚弄するもはなはだしいのであって、一体調達庁は雇い主としてどういう責任をおとりになるかということを私はお聞きしておるのであります。——調達庁に聞いているのです。調達庁は雇い主なんですから、雇い主の立場を聞いておるのです。
  128. 中野四郎

    中野委員長 堀君に発声を許しました。
  129. 堀秀夫

    ○堀政府委員 先ほど私が申し上げた通り、この事件につきましては、米軍の直用時代に発生した問題でございます。これが制度の改正によりまして、今後これらの種類の労務者も、今先生が御指摘になっているように、使用者がはっきりと調達庁ということになるわけでございまして、今後においてはこの種の問題は起きないように、手続等もはっきりと定められたわけであります。そこでこの問題につきましては、使用者たる米軍が、日本の地労委の命令につきまして、管轄権の問題で異議を申し立てておる、そのために日米間の主張が相いれない、こういう問題でございますので、念のため申し上げます。
  130. 小林進

    ○小林(進)委員 時間がありませんから私は論争しませんけれども、事件が起きたのはその旧の契約の時代であろうとも、神奈川の地方労働委員会から命令が出されたのは三十六年の三月三十一日じゃありませんか。新しい契約がなされてから、新しい安保条約が成立した以後の話ではありませんか。ならば、事案が別であろうとも新しい雇い主として——私は先ほどから法的には言っておりませんよ。政治的、道徳的に、なぜ一体雇い主として責任を持たないか、責任を感じないかと私は聞いておるのです。
  131. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御指摘は三十六年三月三十一日付の決定に対する問題でございまして、この当時はまだ直用時代でございます。直用が間接雇用に切りかえられたのは昨年の十二月一日からであります。当時は直用時代でございまして、その事情は一つ御了承をいただきたいと思います。
  132. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた方は労働者が首を切られて、首を切られっぱなしになっておるのを、そういう管轄違いだとか、やれ日にちがどうなのだという、そういうことで言いのがれをしているのであって、労働者立場でものを考えるなんということはつめのあかほどもないじゃありませんか。  もう応問がありませんから私はこれでやめます。やめますが、今までの話を全部聞いておりますれば、残念ながら日本の調達庁、調達庁長官以下これに属する者は、日本の調達庁とはいささかも考えられない。アメリカ軍の日本エージェントだ、日本の代理店としか考えられない。戦争が済んでもはや十七年、戦後ではないなどという、そういう言葉の陰には、まだこういう一つの盲点が置いてあって、戦争直後そのままの屈辱的な形のものが残っている。その形のままの悲しむべき前近代的な労働行政が行なわれている。残念にたえません。私はとてもこういうものを黙認するわけにはいきません。きょうは時間がありませんから、また来週あらためてこの問題を根本的にやらしていただくということにいたしまして、問題を留保して私は同僚に譲ります。
  133. 中野四郎

    中野委員長 関連を許します。滝井義高君
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 これで駐留軍労働者の管理の問題について二回質問したわけです。その前に河野正議員から再三にわたっていろいろ御答弁を求めたわけですが、今度は防衛庁設置法の一部が改正をされることになっているわけですね。そうして調達庁が防衛施設庁として吸収されるわけです。そうしますと労働問題その他についてはますますやりにくくなってくるわけですね、今度は自衛隊の中に入ってしまうのですから。こうなった場合に、藤枝さんは防衛庁長官として、外務大臣と、日米安全保障委員会ですか、あれに入っているわけですね。根本的には、調達庁長官以下労務部長までが、給与の全部かどうか知らぬけれども、おそらくその給与の一部だろうと思うのですが、米軍の報奨費ですか、償還金というのですか、それでまかなわれているわけですよ。そうしますと、ものを言おうと思ったって、金の出るところ、のど首を押えているわけですから、言えないわけです。政府はアメリカに気前よく、ガリオア、エロアの金でさえも、ただでもらっていると思うものでも四億九千万ドル、利子をつけて二千億以上のものをお払いになるわけです。だから私は、こういうものは何もアメリカの金をもらう必要はない。われわれは貧乏といえども、調達庁の役人に払う給料ぐらいあるのです。一千億ぐらいの税金の自然増があるのですから、それをまずあなたが、日米新安全保障条約によってできておるあの日米安全保障委員会、それから合同委員会、こういうところできちっとやって返してしまう。そうしてやはり日本の公務員として——今特別職ですよ、給料としてきちっとまかなえるようにまずされることが先決です。そうしてその土に立って、自主性を持って、労働問題を安全保障委員会なり合通委員会でお持ち出しになってやらなければいかぬ。今までの質疑応答では沖繩と変わらぬです。僕が黙って聞いておったら沖繩と同じですよ。日本における駐留軍の労務政策というのは、沖繩の住民が取り扱われておるのと同じ姿が日本の内地で行なわれている。私は、きょうはあなたがそれをやれるかどうかということを、一つ最後に締めくくりで答弁をもらいたいのです。こういうことができなければ、これはもちろんわれわれは反対ですが、よくも政府は防衛庁設置法の一部改正なんというものをぬけぬけと出してきたなと思うのです。こういうものをもしあなたがお出しになってやるというのなら、これは藤枝さんはあした不信任です。あなたはここに来て二、三回の質疑応答をお聞きになっているはずだ。僕も黙って聞いておったのですが、われわれ日本人の血があるならば、あなたにもあるはずだ。もしもありながらアメリカに黙っておるならば、昔幣原さんの軟弱外交といわれたけれども、ほんとうに軟弱外交ですよ。だから、これを一つ言明を願いたい。あなたは、一つ日米安全保障委員会でやる、合同委員会に持ち出す、給料は一つ全部日本の給料を出す、これさえやってもらえば、そこから一つきちっとした突破口ができてくる。どうですか。
  135. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 この労務管理に要する費用というものは、米軍が要求する労務を提供するに要する費用なんでございまして、これはもうアメリカが払うのが当然なんで、そういうとるものはとるべきだと思います。ただ、それだからいかにも何か軟弱な外交といいますか、駐留軍の言う通りになっているようなことは全然ないのでありまして、やはり労務閥係の者は労務管理をやっております。調達庁の者は調達庁長官以下そういうことにはかかわりなく、対等の立場で主張をいたしておるわけでございます。アメリカに何も恩を着せる必要もないのではないか。向こうで必要なためにかかる費用は、当然日本政府としてはとっていいのじゃないか。そういうこととは別に、滝井さんが指摘されるように、何か非常に卑属な態度でやっているのではないかということにつきましては、われわれは心して、十分に対等の立場であり、しかも日本労働慣行その他については十分米側の納得を得るような努力をしていく、その全力を尽くすということはやって参りたいと考えておる次第でございます。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 アメリカがくれるものはもらってもいいじゃないか、こうおっしゃるわけです。当然だと言ったって、調達庁長官以下の給料を何もアメリカの償還金の中から出す必要はない、日本国家公務員ならば。調達庁長官雇用主なんでしょう。あなたの給料は幾らアメリカからもらっておるのですか。あなたばかりじゃない、調達庁にはかなりおるわけでしょう。
  137. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私の給料の中で米国のごやっかいになっておるものはございません。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 アメリカの償還金で給料をまかなわれているのじゃないですか。
  139. 林一夫

    ○林(一)政府委員 長官の給料は関係ございません。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 労務部長は。
  141. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労務部長の給料の中には入っております。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 大体どの程度入っていますか。
  143. 小里玲

    ○小里政府委員 私を初め労務の職員、それから府県の職員、労管の職員、駐留軍労務関係をやっておりまする職員の給料は、一切アメリカが持っております。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 その通りでしょう。そうしますと給料を握られておる者が、今度は公平な立場に、裁判官の立場に立ってやるなんということは日本の常識では不可能なのです。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり(そんなことはないと言っておるけれども小沢君だって僕が給料を出せば、小沢君は僕の言うことを聞くようになる。厚生省の役人のときの小沢君と国会議員の小沢君はまるっきり違うのです。従ってこういうものはそれと同じです。労務部長以下日本の公務員ですから国会に出ておる。それならばきちっと日本の給料としてもらって、そのほかもらうものがあれば別にもらったらいいのです。別の形でもらったらいい。全部まるがかえだということを今答弁したじゃないですか。こういうことを黙って今まであなた方がやってきていることが問題なんです。だからこういうことを約束してくれるかどうかということです。きちっとやってもらわなければ困る。
  145. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 米軍から直接労務職員が給料をもらっている場合には、そういうことをおっしゃられるかもしれませんが、予算をごらんいただきますならば、労務の職員その地につきましては日本政府の予算で払っているわけです。そのうちアメリカの必要によってそういうものをやっているのですから、それについてはアメリカが日本政府に償還をする、それは当然なのではないか。米軍が直接労務部の職員の給与その他を払っているわけではないのでございます。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 それは通り抜け勘定で考えているだけで、従ってそんなものは別のものだ、人件費というものは日本の政府が持ちますよということをきちっとさしておく必要があるのですよ。とにかく労務政策というものが、だらしのないことははっきりしてきておる。これ以上言いません。私の番が次回やってくるのですからそのときにやりますけれども、これは沖繩と同じです。沖繩より悪いです。次回でやりますよ。      ————◇—————
  147. 中野四郎

    中野委員長 次に、労使関係に関する、特に日本国有鉄道における労働問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  148. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいままで駐留軍労務者のきわめて不当な労働条件下にある問題について、この委員会で審査を進められておったわけでありますが、私は、非常に長い間労使慣行としては訓練をされて参ったはずの国鉄の労使の問題について、これから若干質問をしていきたいと思うのです。総裁が出席することを要求しておいたわけでありますが、事情によって来れないそうでありますから、一つ責任を持った答弁をしてもらいたい、このように前もって要望をしておきたいと思います。昨日の夕刊を見ますと現在の国鉄の労使関係というものがただならぬ状態にある。新聞の報道するところによりますと、国鉄労働組合としましては、今までの国鉄の労使関係と全く異なった措置を国鉄当局がとったことに憤慨をして、これを是正していかなければならない、こういう考え方に立って闘争をする、こういう趣旨の報道がなされておるのでありますけれども、このことは、私は、国鉄の労使関係十七年の間においても、いわば異常な状態、異常な原因があって起きた問題ではないかというふうに考えられます。この新聞に報道されておるところの実態というものについて、国有鉄道当局としては、どういうふうに対処をし、どういうふうに考えられておるか。この点をお伺いをしておきたいと思うのです。
  149. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今回起こっております事柄が、今まであまり例のなかったことであるという点は、確かにおっしゃる通りであろうと思いますが、しかし従来からやっておりました団体交渉その他に臨んでの当局側の行き方といたしましては、何も今度特に変わったことをやったというような事実はございません。ただしかし、今まででございますと、年度末手当の問題にいたしましてもその他の問題にいたしましても、国鉄には数個の組合がございますので、それらの組合が同時的に、妥結をするもときは妥結をするということが、大体今までの姿でございました。そういう点で、今回は、団体交渉の過程において、国鉄労働組合との間の話がまとまらない間に他の組合との交渉が妥結したということでございまして、そのために、何と申しますか、国鉄労働組合だけが何か取り残されたような姿になっておりまして、そのために組合側の内部においていろんな問題があるということは承知いたしておりますし、それについて、場合によれば、実力行使もまたやるかもしれないというような情勢にあるということは、私ども承知をいたしておりますが、しかしそういうような事態は、できるだけと申しますか、極力回避するようにいたさなければなりませんので、なお組合との間で今後も団体交渉が継続されることになっております。
  150. 吉村吉雄

    ○吉村委員 ただいまの答弁によりますと、今回の事態というものは、従来と異なった事態ではあるけれども、国鉄当局の団体交渉のやり方それ自体には変わったものはなかったという趣旨の答弁をなされています。たまたま国鉄労働組合だけが妥結から取り残された、こういう状態になったということを平面的にあなたは述べられておるのでありますけれども、そういうようなことが、実際問題としてどういう事態を生んでいるかということについては当然お考えになっておると思うのです。先ほどの答弁の中に、共通した問題等については大体同時に妥結をするという方向をとってきた、こういうお話でありますけれども、これは、物理的にいえば、同時に妥結と、いうことは、時間的な関係から見てできない相談なんです。従って、当然その中には、あなた方にとって、今までやってきたところの慣行というものがあったはずだと思う。その横行というものが今回は守られなかったというところに、実は本質的な副題がある、こういうふうに私は思うのです。日本労使関係というものは、法的な面から見ましてもまだまだ不備な点がある。そういうような不備な点は、労使の長い慣行の中で、慣行の積み重ねによってこれを正常なものとしていくというのが非常に大切だといわれておるわけでありますが、その中で、今副総裁が答弁になりましたけれども、そんななまやさしい考え方で、国鉄労働組合だけが取り残されたんだ、そういうようなことだけで一体この問題が処理できるのかどうか、そういうようなことで、これから起きようとする、起きるかもしれないところの事態が回避されるのかどうかということについては、私は非常に大きな問題がそこにひそんでおると思うのです。そういうものの考え方であるからこそ、国鉄の労使関係というものが時によって非常に問題になる、このように考られるわけであります。従って、国鉄の労使関係の中で、国鉄労働組合あるいはそれ以外の多くの組合がある、十四の組合があるというふうに言われましたけれども、同時に妥結はできないわけでありますから、従来の関係はどういうふうな方法でやってきたのかということを、まず明確にしてもらいたい。
  151. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄の部内には現在十数の労働組合がございますけれども、実際に団体交渉をやっておりますのは四つの組合とでございます。ただいまお言葉の通り、物理的、時間的にほんとうの意味の同時妥結というようなことはもちろんできませんので、そこにおのずから曲後の差異ができるのでございますけれども、実際の状況といたしましては、これは労働組合側の相互の間においてもいろいろ連絡もとられておる模様でございまして、妥結の日付その他については、従来は大体同じ日に妥結した形を整えるようにいたしております。しかし実際問題として、組合の方は四つございますが、受ける方の私ども一つしかございませんので、その間におのずから前後の差異ができるのはやむを得ない次第でございます。  ただここで私の申し上げておきたいと思いますことは、国鉄当局側といたしましては、四つの組合に対して、いつの場合でも変わった申し入れをするというようなことはいたしておりません。同じような申し入れをいたしております。同じような申し入れに対しまして、組合側からそれで了承したという回答がありました場合に、いや、ほかの方からの回答がない限り、あなたの方が了承すると言われても、あなたの方とだけ妥結するわけに参りませんというようなことは、いまだかって申したことはないのでございまして、今回の場合も、当局側の申し出に対して、組合側の方で、自分たちの組合はそれで了承をした、こういう返事をいただいた組合との間では、まだ国鉄労働組合と話がついてないから、あなたの方と妥結するわけに参りませんよというようなことは申せない立場でございますので、たまたま今回のできごとは、三つの組合が先に了承をされた、従ってその了承された組合との間では年度末手当の問題を妥結したけれども、国鉄労働組合の方は、なお了承できない、さらに団体交渉を続行するということになっておりますので、それを当局側としてはお受けいたしておるというのが現在の状況でございます。
  152. 吉村吉雄

    ○吉村委員 今回の場合のことについての説明は、了承はしませんけれども、話はわかりました。しかしそのこと自体が、従来の慣行からして非常に異例に属する結果を招いたのではないか、こういうことについては、あなたは、冒頭の私の質問に対して認められておると思うのです。私はそのことが非常に問題だと思うのです。同時に妥結をするということは、実際問題としてできないわけでございますから、同じような案というものを各組合に提示して、そうして最終的には同じような妥結ということになる。しかしそこには時間的なズレというものは当然にして起きる。こういうような関係の中で、どこを一体主体にし、どこを中心として一番先に妥結するかといった方が一番具体的と思うのですけれども、そういうような長い慣行というものが生まれておったと思うのです。そのことが今回に限ってそうでないという結果を来たしたというところに問題がある。なぜ一体そのような措置をとらなければならなかったのか、この点を一つ明らかにしてもらいたい。
  153. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 団体交渉の具体的な経過につきましては、本日その衝に当たりました中村務理事が来ておりますので、中村務理事からお答えをさしていただきたいと思うのでございますが、私どもといたしましては、従来とも国鉄の労使関係全体が円満におさまるということは、もちろん念願でございますから、いつの場合でも、時間的に実際の問題として前後のずれはあましてりも、同じときに全部の組合とできるだけ問題を妥結するように努力をしておったのでございます。現在でも別にその方針を変えておるわけでもなんでもございませんが、ただ交渉の過程におきまして、先ほども申し上げましたように当局側で提示いたしました案を自分たちの組合はそれでのむのだ、こう言われた場合、それを待てということは申すわけに参りません。それでたまたまこういうふうなことになったということにつきましては、決してこれが非常に望ましい姿であるとは思っておりませんけれども、まあこういうずれができたのもやむを得ないことでございまして、たお私どもといたしましてはさらに努力をいたしまして、国鉄労働組合との間で紛争を早くまとめるようになお一そう努力いたしたい、かように脅えております。
  154. 吉村吉雄

    ○吉村委員 中村務理事にお伺いいたしますが、今主要な組合といいますか、実際的に団体交渉をやっている組合というのは四つだというふうに言われたのですが、この四つの組合の組合名と、その構成人員を一つ明らかにしてもらいたい。
  155. 中村卓

    中村説明員 国鉄労働組合、これが昨年の十二月一日現在の組合員数でございますが三十万八千九百六十二名、それから国鉄動力車労働組合、これが同じく昨年の十二月一日の組合員数でございますが五万四千二百三十八名、それからその次は国鉄職能別労働組合連合、これは職能別組合の連合した連合体でございますが、これも組合員数が全部で一万三千五百八十五名、それから国鉄地方労働組合総連合、これは地方労働組合の総連合体でございまして、この組合員が二万三千六百三十一名、これだけが中央交渉をやっている大きな組合でございます。
  156. 吉村吉雄

    ○吉村委員 先ほど副総裁の答弁を聞いておって、与党の議員の方々からその通りだという話がありますが、私は正常な労使関係というものを打ち立てていくという立場に立って話を進めようといたしておるのでありますから、そこで十分常識的に皆さんにも考えていただかなければならぬ、こう思うのです。今数字で明らかにされましたように、四つの組合はありますけれども現実には国鉄労働組合が三十一万弱、あとは全部合わせてみましても十万にならない、こういう状態にあるわけです。もし先ほどの副総裁の答弁そのままの考え方で将来にわたって運営されるということになったとするならば、同じような問題について団体交渉をするという場合に、二万三千六百三十一名の組合員の組合がこれをのんだという場合に、そういうような少人数の組合がのんだということを他の組合にまで強制をする、こういう結果を来たしかねないと思うのです。そういうことを避けなければならないということから、労働法の中にもいろいろ規制があるはずです。あなた方はそれはおわかりになっておると思うのです。わかっておればこそ、しかも企業の正常な運営ということを考えればこそ、今まではとにかくこういうような多くの組合はあるけれども、同時に妥結をするということができ得ない、そういう物理、的な時間的な関係もあるからして、どこを中心としてやってきたかということについては、私が言うまでもなくあなた方が慣行の中で打ち立てられておると思うのです。それを今の答弁のようにどこかの組合でわれわれの案をのんだ場合には、これはやむを得ないのですというようなことがあったとするならば、これはもうごく少人数の組合のいう主張というものを、たくさんの労働者にこれを適用しなければならないという事態を、あなたみずからこれを認めることになる。こういう結果になると思うのです。その結果は企業の中にどういう影響を来たすかということは私が言うまでもないでしょう。そういう点において、先ほどの吾孫子副総裁の答弁というものは、きわめて事務的にはそうであるかもしれないけれども、その答弁の持つ内客というものは、きわめて大きな影響労働運動全体の上に与える、こういうふうに考えざるを得ないと思う。どうですか。
  157. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、全部の組合とできるだけどんな問題でも一緒に解決するということが、一番望ましいことであるというふうに考えておることは、今までもそうでございましたし、今後もその通りでございます。ただしかし組合員の数が多いか少ないかということによって差別をつけて、甲の組合にはこういう条件を示し、乙の組合にはこういう条件を示すというわけには参りません。これは当然のことでございますが、すべての職員に対して公平に扱わなければなりませんので、同じことを申すわけでございますが、しかし従来は、これは実際の話を申し上げるのでございますが、組合相互の間においてもいろいろ連絡が行なわれておったのが普通であったと思います。特に今度直接の非常に大きな問題にされております点は、動力車労働組合と妥結したということが、大きく問題にされておるようでありまするが、この動力車労働組合というのは、先生方もよく御存じのように国鉄労働組合と同様に総評の傘下に入っておる組合でありまして、お互いに今まででございますと、よく連絡しておったのでございます。今回たまたま動力車労働組合が先ほども申しましたように、国鉄労働組合と連絡があったかなかったか存じませんけれども、先に了承されたわけでありまして、そういう際に当局側からあなたの方は国鉄労働組合とよく連絡をとってありますかということを、念を押すわけにも参りませんし、お前らの申し入れでわれわれは妥結するのだということになった場合に、それは待ってくれということはその場では申せないのでございます。当局側の申し入れをのんでくれば妥結せざるを得ないわけでございます。ただしかし希望といたしましては、私どもは全部の組合となるべく同じ時期に妥結することを従来も望んでおりましたし、今後も望んでおりますが、今回の事態はやむを得なかったのであります。
  158. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私は個々の組合がどうとかこうとかいうことを今言おうとしておるのではないのです。動力車労働組合とか何とかいうことを副総裁の方から答弁を求めているわけではないのです。問題は幾つかの組合がある。その組合と共通問題についての団体交渉をやってきた場合、従来の慣行としては、職員の大多数を占めるところの国鉄労働組合というものと一応話がついて、話がつくまでにはもちろん他の組合とも九分通り話をつけておったでしょう。しかしながら結果からいえば、時間的な関係でいうと、どこから先に妥結の状態を来たしておったかということを考えてみると、それは私が申し上げるまでもないと思うのです。それは、あなた方が大多数を占めるところの組合を相手にしてやっていくという慣行を打ち立てられてきたと思うのです。そのことが、いろいろ国鉄の内部には問題があったにせよ、曲がりなりにも大多数の組合が中心になることによって、労使関係というものが、不安定ながらも安定をしてきた大きな原因になっていたと思うのです。今川の場合には、時たまたま当局の提案をしたことを一つの組合がのんだからどうにもならなかったのだ、こういうふうに言われますけれども、しかしそのことが一体どういう影響を与えるかということは、私は言うまでもないと思うのです。それは、現実に今までの慣行を無視されているといって国鉄労働組合が非常に憤慨をしておる、この事実によって、あなた方はよくおわかりになっているはずだと思うのです。私は極端な例を申し上げますと、一万の組合員があなた方の提案したものをのんだ場合に、提案をしたものをのんだからといって妥結ができるか。おそらくその場合によく考えてみなければならないというふうに思いつくのが普通だと思うのです。そのことを思いつかないとするならば、これはもう国鉄の労使関係を担当しているというわけにはいかない、その資格なしというふうに言っても過言じゃないと思うのです。だとするならば、今までの慣行を無視して、そうしてどこの組合とも、当局の提案をのんだところと順次妥結していくのだ、そういうふうに今後するのだとするならば、今日までの国鉄の労使関係というものからすると、大きな労働政策の転換といわなければならない、このように私ども考えるのでございますけれども、こういうふうに私たちが考えることは、あなたはどう思いますか。
  159. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 労使間の紛争というものをできるだけないようにして参りますためには、もちろんお言葉までもなく、大多数の従業員を代表する組合との間で平和な労使関係が保たれるということが肝要であろうということは、ちっとも私も別の考えをしておるわけではございません。しかし今回の場合、やはり相手が分かれておりまして、時間的にずれていろいろ話し合いをしておるという際に、これは私どもの力の及ばない範囲でどこかの組合があとに残ったというようなことが起こることもやむを符なかったと考えていただきたいのでございます。先ほど来申し上げておりますように、私どもはどこの組合に対しても同じことを申しておったわけであります。その同じことに対して先に了承するという組合が出てくれば、私どもは、それに対してちょっと待ったということは申すわけに参りません。そういう事情であったということを御了解願いたいと思います。
  160. 楯兼次郎

    ○楯委員 関連して。労働大臣にお伺いいたしますが、今吉村君の質問に対して、当時国鉄当局がとった立場を非常に介助され、正当化されておるわけです。ところが実情は、あなた、報告をお聞きになったかどうか知りませんが、まず第一番に労働大臣にお聞きしたいことは、先ほど中村常務の方から読み上げましたように、国鉄労働組合は三十万以上です。そのほか二、三の組合がありますが、いずれも一万、二万あるいは五万、こういう組合です。その一番大きい組合を捨てておいて、そうして小さな組合と協定を結んで、大きな団体、三十万以上の国労にこれを押しつけようとすることは、労組法十七条の精神からいって妥当であるかどうか、まず第一点をお聞きしたいと思います。
  161. 福永健司

    ○福永国務大臣 私は全体の仕上げをうまくやってもらいたい、こういうように考えております。ただ国鉄の理事者の諸君が、実際にそういう折衝に当たって、過去何年かの経験もあろうし、どういうようにやれば全体の仕上げがうまくできるかということは、国鉄の理事諸君自体においてよくお考えをいただくことであります。従って私は、どちらを先にしろとかあとにしろとかいうようなことまでは、私自身申すべきことではない、こう考えておりますが、これを要するに、先ほども申し上げましたように、どういうようにしたら全体がうまくいくかということについてはお考えいただく方が賢明だろうと、まあこのぐらいなことです。しかし先ほどから伺っておりますと、必ずしもそういう今起こっておるような方向へ積極的に向けようとしたのじゃなくて、こういうことになっておるような説明を伺っておるのであります。そういう点を伺っておりますと、これまた無理からぬことであるというようにも私拝聴いたしておるのであります。なかなか苦心をいたしておりますことについて、まあしかし結局において全体の仕上げをうまくこれからやってもらわなければならないので、この上とも特段の努力を願いたい、私はこういうように考えます。
  162. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、私は関連でありますから、簡単に労働大臣に常識的なことをお伺いしますが、今吉村君の質問に対して、当局の答弁は、仕上げをうまくやるという労働大臣の意図に反しておるのです。まず第一は、終戦後公共企業体等労働関係法の適用を受ける組合から十何年続いた慣行を、今度は全然ひっくり返して、無視をしておるという点です。それから団体交渉の席に総裁、副総裁は出席をしておらない。中村常務あるいは職員局長二人の単独意見によって、十数年続いた労働慣行がひっくり返されているのですよ。だから、この当局の交渉委員にそういうやり方を委託をしたのか、一任したのか、こういうわれわれの質問に対しては、そういうことをはっきり言っておらないわけです。その結果が今日のような状況をもたらした。それからいま一つは、小さい組合、大きい組合、いずれを先にあとに協定を結んでもいいではないか、こういうことを言っておられますが、実情は違うのですよ。二十六日の夜は、国労と団体交渉をそれでは二十七日の午前十時からやりましょうと言って別れておるのです。だから、当局は前進をしない最後の腹であるとしても、またあす団体交渉をやりましょうと言えば、当然組合側は多少なりとも現在の線から前進をするという希望を持つ。これはあなたが労働組合の委員長だったら私はそうだと思うのですよ。そうして話をして別れた直後に、動力車その他の組合と協定をして、次の朝になったら、これが最後の線で、もう何とも仕方ありません。その前日、あすから団交をやりましょう、こういう希望を持たして別れさしておいて、そして、午前の三時か六時か知りませんが、その直後ほかの組合と協定を結んで、朝これを追及をすれば、いや、あれが最後の線であるからいかんともしがたい、全くこれは背信行為じゃないですか。私は多くの説明は要らないと思うのですよ。こういうことをやっておるから、今日三十数万の国鉄労働組合は、ほんとうに腹の中から憤激をしておるのです。われわれ社会党は、先ほども運輸委員会で私は申し上げたのですが、何も当局の総裁や副総裁をつるし上げる、やっつけるというつもりでやっておらぬのです。この真に腹の底から怒った三十数万の国労の問題をいかにして解決をするかというので、われわれは質問をしておる。ところが答弁は、やれ正当である、やれどこの組合と協定してもいいであろう、こういうような自己の国鉄幹部数人の立場だけ正当化しようという答弁しか聞かれない。幾ら国鉄当局がそういう答弁をしても、現実に三十数万は、新聞も報じておりますから労働大臣御承知だと思うのですが、ほんとうに腹から怒って、実力行使に入ろうとしておるわけですよ。そういう行き違いがあるのです。十何年の慣行を今度ひっくり返したのですよ。あす話し合いをやりましょう、その舌の根がかわかないうちに他の組合と協定を結んで、そうしてあれが最後の線です、こんなことに怒らないような人は、これは男じゃないと思うのです。あなただって怒ると思う。どうですか。だから自己の非があるなら率直に改めて、この窮状を打開するような方途を講じればいいんだ、こう私どもは思う。どうですか、労働大臣。
  163. 福永健司

    ○福永国務大臣 私は労働大臣といたしまして、経営者側もまた労働者側も、いずれもその立場を尊重して対処しなければならないわけでありまして、従って、先ほども申し上げておりまするように、全体としてうまく仕上げをしてくれることが望ましいという表現を、きわめて平たい言葉でありますが、いたしたのであります。この交渉が現に行なわれております途中で、今経営者がいけなかったとか、よかったとか、ないしは、さらにまた上手だとか下手だとかいうことについて申し上げますこと自体が、今後の交渉にも影響を及ぼさないとも限りません。従って私は、先ほども申し上げましたような考えでいるわけでございまして、この上とも努力をされて、うまく仕上げをしてもらいたい、こう思うわけでございます。先ほどからいろいろお話がございましたように、大きいものに対してどうあるべきかとか、あるいは交渉の際に総裁がいたとか、いないとか、そこいらのところはそれぞれ心得て国鉄経営者も折衝しているのでありましょうから、その節々について、私はいいとか悪いとか言うことは避けたいと思うのでありますが、これを要するに、この上ともの努力によってぜひ全体としてうまく仕上げてもらいたい、こういうように存じております。
  164. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一点だけ。今労働大臣のおっしゃった、今、国労とは団交の継続中なんですよ。だからこの問題を、あなたの希望するようにうまく仕上げていくという道はただ一つしかない。われわれは、冒頭に吉村君が言ったかどうか知りませんが、今度の問題は、金額の寡の問題ではないわけなんです。これは慣行否認という問題が、今日の事態を惹起しておるわけなんです。従って幾ら議論をいたしておりましても、今日の窮状を打開するのはただ一つしかない。それは今あなたのおっしゃったように総仕上げをうまくやる。今国労と当局は団交中なんです。従って、結論はもう私が言わなくてもわかっておると思うのですが、その結論は、幾ら団交を重ねましても、二十六日の他の組合との締結の線を二歩も出ない、こういうところに問題があるのです。そんなら、なぜあすの朝また交渉をやりましょう、こういうばかなことを言うか、こういう点なんですがね。だから団交継続中ですから、国労が納得する線で結論を出すように労働大臣は勧告すべきだと私は思うのです。そうしなければ、当局、幹部数人のあやまちのために汽車がとまり、非常に国民は迷惑するのです。だから自分たちの非を改めて、こういうやり方が解決をするように当然私は労働大臣として国鉄に勧告すべきだ、こう思うのですが、どうですか。
  165. 福永健司

    ○福永国務大臣 こんなことで汽車がとまったりなどすれば、国民から相当深刻な批判があるものと私は思います。それがだれに対して向けられるかというようなことは、これは私どもがどうこう言うのでなくて、国民それ自体がされることでありますが、いずれにいたしましても私どもは、そういう事態が起こることは、はなはだ望ましくないことでございます。そういうことは回避すべきであると思うのでありますが、それはそれといたしまして、有能な——皆さんから言うと有能だという表現がいいか悪いかわりませんが、有能な国鉄の経営者諸君が苦労をしまして今の事態に対処しておりまして、このあとうまくやって仕上げれば確かに有能だということになりましょうから、私はその期待を持っておるのでありますが、折衝の経過等において、先ほども申し上げましたように一々ある時点々々においてのことをとらえて、私が今直ちにどうこうと言うことはいかがかと存じますが、国会の諸先生の質問を受けつつ、今総裁にかわって出た副総裁の吾孫子君以下の諸君が、私と一緒にこれはすべて聞いておりまするから、あらためて勧告というようなことをいたしまして事を一そう紛糾せしめるよりも、賢明な諸君がよく判断して今後に処するであろうことを私は期待いたしておる次第であります。
  166. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労働大臣の大へん苦しい答弁というふうに受け取らざるを得ない意見を聞いたのですが、今大臣が答弁になった中で、たとえば国鉄労働組合が今回の措置、慣行無視というものに非常に憤慨をして実力行使をかまえておる。その結果として予測し得ない事態が起こるかもしらぬ、はなはだそういうことは困るという趣旨の話がありました。私はそのこと自体は非常に困ると思います。しかし結果というものは原因なくしては生まれない。私どもが今問題にしておるのは、そういう結果というものを招来するところの原因というものがどこにあるのか、このことについて先ほど副総裁にも質問をし、あるいは副総裁の方からも話があったわけですが、事は今までの慣行を無視をして、そうして国鉄労働組合との話を継続すると言っておきながら、その数時間後に他の組合と妥結をしてしまった。こういう横行を無視したというところに、国鉄の労働者が憤慨をする最大の原因がある、このように私ども考えておるのです。大臣もおわかりの通り、労組法の十七条には、一事業場の職員の一般的拘束力の問題については、四分三の職員の意思によって他の職員の意思を拘束をする、こういうことが書かれておるわけです。もちろん国鉄は一事業場というわけにはいきません、大きな企業でありますから。しかしこの法の意図するところのものは、これは同じであると思うのです。ですからそういうような十七条というものが設けられたということは、今のような事態というものを予測したかどうかはわかりませんけれども一つ企業一つ事業場内においていろいろ混乱が起きてはいけない、こういうことから民主的な立場に立って、多数の意見というものを尊重する、こういう立場に立ってできたものと思うのです。そしてその企業の混乱というものを防止していく、こういうねらいが十七条の中にあると思うのです。ですから、事業場とかなんとかいうものを離れてこの法の法意というものは、そういうふうに解釈するのが私は受光だろうと思うのです。それゆえにこそ今日まで国鉄の労使関係というものは、大多数の組合であるところの国鉄労働組合を中心にして事の最終の結末というものをつけてきた、このように私は考えておるわけです。  そこで労働大臣が先ほど楯委員の質問した十七条の問題と関連をしてどういうふうにお考えですかということに対しては、明確な答弁はなされていません。もちろん苦しい立場ではありましようけれども、この労使の紛争というものは何らかの形でその結末をつけなければ大きな問題に発展する、そういう状態にあるのです。この場合に公労法を管掌するところの労働大臣が、あるいはまた労働問題についての責任者であるところの労働大臣が、組合法についての見解なり今回の国鉄の労使間に起きておるとところの問題、慣行を無視したところの問題等について、やはり責任あるところの態度を示すということが、問題を前進させ、解決をさせる手段の一つではないかと思うのです。あいまいな態度だけが必ずしもよい結果をもたらさない、特に今回の場合には私はそうだと思うのです。どうですか。
  167. 福永健司

    ○福永国務大臣 今おあげになりました十七条の法の意味するところのものは、国鉄の経堂者の緒君もよく理解しているものと思いますし、私はまたそれを理解していることを期待するものでございます。そういうことも考え、長年やってきた経験にかんがみて、関係の諸君がうまく仕上げをしてくれることを私は望んでおる次第でございます。先ほども吾孫子副総裁の言葉の中に出ておりましたが、動力車組合の関係についても、同じ総評の傘下でもあることだし、向こうが回答されたので、それを無視するわけにもいかなかったというような意味の表現等もございました。しかし現実には、今おあげになっておりますようなあと先の問題、現実相当めんどうな事態が起こっているというようなこと、こういうこともよく考えていかなければならないわけでございましょうから、そういう今起こっております事情を十分考えて、今後さらに折衝を続ける、こう言っておるのでございます。この努力に私は期待をいたしたい、こう考えます。
  168. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大臣にもっと事態を認識をしてもらうというために、先ほど栃委員の方からも話がありましたが、私は慣行無税の中でもさらに重要な背信行為というものがあるというふうに聞いておる。というのは、二十六日の国鉄労働組合との団体交渉において、この年度末手出の問題の最終の場面で、いわばほかの組合が妥結の空気にある、こういう場合にどういうことを国鉄当局が言うておるかと言いますと、従来の慣行に従って、慣行通りにこの問題の処理をしたいという趣旨のことを言明をされておる。従来の慣行というのは一体何かというならば、先ほどから私が強調いたしておるところのものです。だとするならば、この言明というものを国鉄労働組合の代表者が受けて、そして問題はないと思って帰った、その直後において慣行を無視したところの他の組合との妥結をするということは、これは文書には書かれておらないにしても、私はいわば協約の精神、約束というものを無視する大きな背信行為だと思うのです。こういうように慣行無視ということと、同時にその瞬間におけるところの背信的な行為、こういうものが国鉄労働者三十数万の人たちを憤激せしめている大きな原因になっている。従って私は、この問題は副総裁が答弁をされているように、一つの組合がのんだためにやむを得ないんだというようななまやさしい問題の考え方では処理できない、このように考えざるを得ないのです。私は、むしろもしあなた方が軽率でこういう結果になったというふうにお認めになるのであるならば、その反省の上に立って、この事態収拾というものを、国鉄当局がみずから円満解決の前進の方向に進めていく、こういうふうに答弁をしてしかるべきじゃないかと思うのです。それでないならば従来の慣行を破って、そして国鉄労働組合の団結というものを分裂させていくというような意図があったというふうに結果的に見られてもやむを得ないのじゃないか、このように考えるのでありますけれども、この二つの点についての見解を副総裁からお聞きしたい。
  169. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 現在の私どもの団体交渉その他の取り扱い方が不手ぎわではないか、またお前らのやり方はなっておらぬ、無能だという御非難は甘受いたしますけれども、ぺてんがあったとか、背信があったとかいうことは、毛頭そういうことは考えておりません。団体交渉の問題にいたしましても、この詳しいことは、必要があれば中村即応からお答えをいたさせますが、当局側から団体交渉を継続しようということを言ったのではないのでありまして、国鉄労組の方からあしたも続けてやってくれというお申し出があったので、それに対して当局側も、それじゃまたあしたやりましょうと言っておるのであって、当局側でもって団体交渉をやろうとこっちから言って、そしてそれをぺてんにかけて動力車労組と先に妥結したというようなことではございませんので、そういう点だけは一つ十分御了解を願いたいと思うのでございます。
  170. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういうような意図はなかったと言われてみましても、現実にはそういう結果になっておるというふうに私ども考えざるを得ないのです。先ほども私が質問をしたように、そう考える私の考えが間違っておるかというふうに私が質問したのは、それなんです。今あなたは、国鉄当局の方から交渉してくれということを言うたわけではない、こういう趣旨のことを言いました。組合が言うたか、当局が言うたかは別です。どっちが言うたにしましても、その結論が、では交渉をやろうということになったならば、その結論を守ってやるということが紳士的な態度だと思うのです。そういうようなことを考えた場合に、今あなたが自分たちのあやまちというものを正当化するために言う、その態度というものは、私はどうしても納得ができない。結果としては、意図的なものであったかどうかは別として非常に今後の国鉄の労使関係にとって重大な問題があなた方の軽率な態度があるいは意識的な態度の中から生まれ出ようとしておる。このことに対して意識的にやったというふうに私たちは考えざるを得ない。そうでなかったら、あなた方の軽率の上にそういう結果になったとするならば、その反省に立って、この問題の事態収拾をするという熱意をみずから示さなければならないはずだと思うのです。そこでそういう点については、あなた方がどうも態度を明確にしないから、私はやはり同じようなことを誓わなければならない。あやまちというものは、人間でありますから、あると思うのです。しかしそのあやまちというものが予測し得ないような大きな問題になろうとしておるのですから、国鉄の正常な運営というものを考えて、あなた方としたならば、この事態に立ってどうしなければならないかということを考えるべきだろう。いま一つは、意識的にやったとするならば、私は問題は別だと言っておるのです。軽率でそういう結果が生まれたとするならば、そこは反省をして、新たな角度からこの事態収拾をはかるということが経営者の責任じゃないですか。そういう点についてどちらなのか、その点を明確にしてもらいたいと思うのです。
  171. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 再々申し上げておりますように、私どもといたしましては、全従業員と話が一日も早くまとまることを希望いたしております。たまたま現在の段階において、不幸にして国鉄労働組合との間の話がついておりませんけれども、これにつきましては、今後なおさらに努力いたしまして、早く穏便に事柄が片づきますように努力いたしたいと考えております。
  172. 吉村吉雄

    ○吉村委員 それでは副総裁、国鉄労働組合とはまだ団体交渉の段階にある、こういうことです。団体交渉を続けていくということでありますが、団体交渉を続けていく以上は、当然に、今まで他の組合と妥結したためにそれに執着しないという前提がなくちゃならぬと思うのですが、どうですか。
  173. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 私どもは、これまた再々申し上げておりますように、組合員の多い少ないにかかわらず、どの組合に対しても国鉄としてなし得るぎりぎりのことを申し上げておるのでありまして、その点につきまして、ある組合にだけ特別の約束をするというようなことはできないと考えております。しかし団体交渉は、お申し入れのある限り続けるつもりであります。
  174. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その考え方は、私は非常に重要だと思う。   〔発言する者多し〕
  175. 中野四郎

    中野委員長 静粛に、静粛に。
  176. 吉村吉雄

    ○吉村委員 その考え方は、単に形式的な団体交渉を続けていこうという、そういう態度にすぎないのです。   〔発言する者多し〕
  177. 中野四郎

    中野委員長 発言がよくわかりませんから、静粛に願います。
  178. 吉村吉雄

    ○吉村委員 他の組合と妥結して何時間か過ぎた、それと異なったものを出す考えはない、団体交渉は続けていく、こういうことである以上は、この国鉄労働組合との団体交渉というものは、単に交渉をするという遷延策にすぎない、こう言われてもやむを得ないでしょう。団体交渉をするということは、問題を解決するために、今日までの問題と離れて交渉を続けるという前提がなくては、団体交渉の意味はないのです。それがあなたの今の答弁では、今までのものと同じようなものしか出し得ないという趣旨の答弁なんです。だとするならば、組合法の十七条の精神にもとって、少数の組合と協定をしたものが大多数の組合を拘束するという結果になるのではないか、こういうふうなことについてどう考えておるか。
  179. 中野四郎

    中野委員長 吉村君、答弁がないようですがいかがですか。——関連をして発言を許します。広瀬秀吉君。
  180. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今、再度吉村委員が尋ねた問題に対して、副総裁答えられないわけですけれども、二十六日の晩に、国鉄労働組合とさらに引き続き団交をいたしましょう、こういう取りきめをしているわけです。しかもその前に、その他の小さな組合を相手にして当局が妥結しそうだという情報は、全国に流れておる。そしてまた、そういうことで国鉄労働組合が乗らなかった場合には一方支給をするらしいという情報も、これは巷間に流布されておった。そういうようなところから、一部には国電をとめてまで、国鉄当局のそういう一方支給というようなめちゃくちゃなやり方に、反省を求めようじゃないかというような空気が起こっておった。それに対して国鉄労働組合は、団体交渉はまだ煮詰まっていない、成熟していない、もっと深めてもうこれくらいの額では妥結できないのだ、もっと深め、前進させよう、こういう気持であなた方のかに団交の申し入れをやった。団交はやりましょう、あしたもやりましょう、こう言っておいて、とたんに二、三時間の後には某組合と妥結をする、さらに数時間を置いてまた別な組合と妥結をする、その際にあなた方は、国鉄労働組合に実はゆうべこういうことを約束しておる、もう一回団交して煮詰めようということになっておるのだ、君たちの気持はわかるけれども、もうちょっと待ってもらえないかという立場に、あなた方だけがそういうことを言える立場にあったのです。しかもそれは、今まで労使慣行としてやってきたことなんです。あなたはそれをさっき認められた。労使慣行として確立されたことなんだということを言われている。それにもかかわらず、数時間後にもうばんと妥結をして、また続いて妥結をしている。こういうようなことをやった行為が、一体これが背信行為でないのかどうか、この点についてのはっきりした判断を——これは私は、さっき楯委員の質問に対しても、また吉村委員の質問に対しても労働大臣答えられていないのですけれども労働大臣にこの点の判断を伺いたいと思うのです。  そもそも労使関係というのは、日本においては非常に歴史が浅いわけです。しかしその浅い中においても、あるいはまた、労働法においてもこの適用というものは非常に浅い。そういう中で、特に公労法なんかは非常に不備の多い法律である。憲法違反の疑いすらあるといわれて、だんだんにそういうような問題も論議されてきている、そういう性格の公労法であります。そういう中で一番大事なのは、私はやはり労使慣行の積み重ね、そういう中で、とにもかくにも、先ほど副総裁も言明されたような慣行というものが確立されている。その底を貫いているものは、私はやはり信義誠実の原則だと思うのです。労使関係の中から不備の多い法律、その法仲の一番悪い部分労働組合を抑えつけることのできるようなところだけを勝手にあなた方が解釈をして、そうしてその方にその方に行ったならは——信義誠実の原則なんという、労使慣行の中の一番大事な問題をあなた方はどう考えているのか、この点の判断を私は労働大臣からまずお伺いしたいし、また副総裁にも、もう一度そういう背信行為について、これは閥違いであったということを認める答弁をしていただきたい。
  181. 福永健司

    ○福永国務大臣 交渉がきわめて重大な段階にありますこの時期において、今秋が背信行為と考えるかどうかというようなお尋ねに対して断定的なことを習うことは、これは避けなければならないと思うのであります。また、先ほどから吉村さんも、軽率であったのか意識的であったのかというようなお言葉によっての御質問もございました。私はこの軽率、意誠的という二つの場合だけでなく、先ほどございました表現からするならば、信義誠実を重んじてやっても、なおかつ、また起こり得る事態もあろうかと思うのでございますが、しかし、いずれにいたしましても、私は、労働大臣たる立場経営者側のことも、また労働者側のこともよく理解しまして、この両者が相互的信頼、理解の上に立ってうまく話し合ってくれることを衷心期待いたしておるのでありまして、残念なことに、ただいまいろいろ御指摘のありましたような事態になっております現時点を私は深く憂えるものでございますが、願わくはこの交渉に当たられる諸君が、今も皆さんのような御意見のあることもよく拝聴いたしておることでもありますので、今後さらに一そう誠心誠意話し合いがまとまるように努力してくれることを、私は衷心望む次第でございます。
  182. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいま大臣から御答弁がございましたが、大臣のお言葉の通り考え方で、私どもも一日も早くこの問題を円満裏に解決するように、なお努力いたしたいと思っております。
  183. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 国鉄労働組合は非常に憤激をして、国電をとめようなどという計画すら、あなた方は二十七日に交渉をやりましょうということでそれを収拾をして、もうそんなことをするなということを、国鉄はもうちゃんと団交を継続しようと言っているからやめてくれ、一方においてこういう努力をしている。いいですか大臣、そういうような努力をしているのですよ。そして平穏におさめて今日まで事態を起こさせない、そして平和的な団交で問題をさらに前進させるために努力しようとしていた。それに対してそれをやりましょうと約束をして、国鉄労働組合にはそういう下部機関の盛り上がりというものを抑えさせておきながらそういうことにしておいて、わずか数時間後には、国鉄労働組合には何ら一片の通告もなしに、他の組合と交渉を妥結する。しかもその、他の組合の実勢力というようなものは、これは労組法十七条で言うところの四分の一以下に相当する組合なんですよ。そういうところと妥結をしてしまう。そしてこれに対して、どことやるときでも、もう当局の最終案を出しているんだから、あとはもう交渉をやろうといったって中身は何もないのだから、向かい合って話し合っているだけなんだ、こういうような態度であなた方はそういう組合と妥結したに違いないわけです。そういうやり方というものは、これは明らかに私は背信行為だと思う。労使関係の中で、一番とうとい原則は信義誠実の原則だと思う。これは法の精神法律のいろいろ不備な点、そういうようなものを補って、労使関係というものを、ほんとうに平和的に最もいい姿でやっていくための最大の原則だと私は思う。これに明確に反しておりませんか。この点をもう一つあなたに答えていただきたいと思います。反しなかったですか。
  184. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 労使関係の基底をなすべきものが信義誠実の原則でなければならないとおっしゃるお言葉は、全くその通りだと思います。私ども、いつもそういうふうに考えております。しかし、今回の団交がこういう形でなぜ妥結されなければならなかったかということにつきましては、先ほど申し上げた通りでございまして、私どもに背信の意図があったというようなお言葉だけは、そういう考えは毛頭ございませんので、御了解をいただきたいと思います。
  185. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 関連でありますから、これ一問でとりあえず終わりますが、先ほど労働大臣の答弁に続いて吾孫子副総裁が、そのようなつもりで努力いたします、円満な解決のために今後も十分努力したいということを言ったわけでありますが、今日すでに小さな組合と妥結したこの条件というものを前進させる意向がその中に含まれるか、それともあくまで国鉄労働組合を往生させてそれに従わせるということが円満な解決なのか、この点についてはっきり答えていただきたいのが一つ。  それからもう一つは、先ほどあなたも認められたように、労使慣行というものは、俗に言われる判例法と私は同じ性格のものである、このように思うわけです。それで、この法慣習なりあるいは判例の積み重ねによるものは、いわば一種の慣習法として尊重さるべき筋合いのものだと思う。しかも、労働関係の訴訟におきまして、長い間法慣習的に成立した労使慣行というものを当局が一方的に破った。このことによって労働組合に損害が及んだ場合に、それに対する損害賠償を認めた判例というようなものもあるわけでありますが、そういう点についてあなた方は知っておりますか。もし知っておるとすれば、今度のようなべらぼうなことはしないと思うのでありますけれども、法慣習あるいは労使慣行、十数年にわたって築き上げてきたこの慣習、労使慣行というものに対して、あまりにもあなた方が弊履のごとくこれを捨て去ったではないか。この二点について、労働大臣並びに副総裁のお答えをいただきたいと思うのであります。
  186. 福永健司

    ○福永国務大臣 慣行が法律と同じような効力を持つような、言うなれば世習法化したことになるかどうかということ、それにつきましては、具体的に検討いたしませんと、どういう部分のものがどうかということになろうかと思うのでありまするが、せっかくできている慣習は、努めてこれは守らなければいかぬと思うし、またそれが便宜であろう、こういうふうに思う次第でございます。現実に起こっておる問題で、どの部分がどうということまで私どもが申し上げるのはいかがかと思います。  なお、この交渉につきましては、労使双方で今話し合いをしているところでございます。従って、内容的な点で、今出ているのをさらに前進するのかどうかというようなことにつきましては、私が今云々すべきものではもとよりございませんし、また当事者もここでそういうことを言ってしまうということも、これは上手、下手の点から言えば、あまり上手でないというふうに思うのでございます。これは経営者側のなんでございますので、それは賢明な諸君が適当に考えていると思うのでありますが、私からも答えろということでございますので、お答え申し上げるとするならば、大体労働大臣としては、今申し上げたようなことを申し上げることによって御了承いただきたいと思います。
  187. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 団体交渉の今後の進め方につきましては、誠意を持って当たるということで御了承願いたいと思います。  それから慣行の問題でございますが、これは実は、先ほど申し上げましたように労使の間にも慣行がございますし、労労の間にもいろいろ慣行はあったと思います。しかし、いずれにいたしましても、われわれといたしましては、全職員を相手にいたしまして、全部の職員を代表する全部の組合とできるだけ同じペースの上で解決ができますように、今後とも努力をいたしたいと考えております。
  188. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 一応これで終わります。
  189. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私どもは、今度の団体交渉のあり方というものが非常に思わぬ事態を招きつつある、何とかしなければならないという立場に立ってあなた方に質問しているわけです。それは私どももそうでありますと同時に、むしろあなたの方が、もっと積極的にこの事態の収拾というものをはかるべき立場にあることは、言うまでもないと思います。その道については、今広瀬委員の方からも再三言われて、誠意を持って事に当たる、こういう趣旨の回答でございますから、その誠意というものがどういうものであるかということについては、事態を収拾する、そういう立場に立つものというふうに理解をせざるを得ない。しかも、私の推測が許されるとするならば、今回の問題は、あなた方にとっては思わぬ失敗だったという心境だろうと思うのです。そういうように私は考えますので、その点について今非常に大きな問題が起ころうとしつつあるのですから、一つその誠意の中身の問題については、今までの問題にあまり固執しないで、そして曲向きの姿勢で誠意を持って事態収拾をする、こういう立場答弁だろう、このように理解をしておきたいというふうに思うのです。  あと私は、今回のこの問題を通じて、今までの国鉄の労使関係の中でいろいろ問題がある。そういうものを、具体的に事例をあげながら皆さん方の見解を明らかにしておきたいというふうに考えたわけでございますけれども、きょうは限られた時間でありますからあとの機会を見ることにいたします。何と申し上げましても、今回の問題は非常に重大な問題である。こういうことについては、副総裁も中村務理事も十分お考えになって、一つ先ほど申し上げたように事態を前進せしめていくという立場に立って、しかも労働大臣の先ほど来の答弁を聞いておっても具体的な解決策というものを言い得ない、その立場にあるということは私はわかります。わかりますけれども、この事態を何とかしていかなければならないという、そういう気持になっていることもその通りだろうと思いますから、従って労働行政の最高責任者として、今回の措置というものについては十分配慮をされて、そうして思わぬ事態というものが現実化しないように、積極的な努力というものを進めてもらわなければならぬ、このように考えるのであります。なお、大臣と副総裁の方から、私の今申し上げたことについて、簡単でけっこうですから答弁をいただきたいと思います。
  190. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま吉村さんから、思わぬ事態という言葉の表現がございましたが、現に起こっております事態も、私こういうことになろうという経過はおおむね承知いたしておりますが、みずから交渉に当たっているという立場ではなく、私は一種の第三者的な深い関心を持って、いろいろ——労使双方という立場からいえば第三者的な立場ではございますが、この思わぬ事態の起こっていることを深く残念に思う次第でございまして、さらに一そうの思わぬ事態が起らないことを衷心望むものであります。私は私なりの努力をいたしたいと存じます。
  191. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 今後とも労使関係の正常化のために誠意を持って努力いたしたいと思います。
  192. 中野四郎

    中野委員長 関連質問を許します。大原君。
  193. 大原亨

    ○大原委員 労働大臣とそれから国鉄の副総裁の方に、私は簡単に、今までの質疑応答の上に立ちまして質問をいたします。  最初に労働大臣。今までの質疑応答で明らかになりましたように、国労と国鉄当局との間におきましては団体交渉が継続中であります。そこで私は労働大臣、この労使関係、公労法の関係については、労働大臣が監督官庁の長としてこれを正常化するということは、やはり法律の解釈に基づいて、これを忠実に国鉄の当局に履行させるということが大切であります。従って、私が質問いたします点につきまして、簡潔に、ノーかイエスか、こういう点について一つお答えいただきたい。あなたは常識を備えておられる人でありますから、あまり常識的なことでべらべらしゃべられると、何を言っているかわからないことになりますから、その点は常識で私の質問を御判断いただきまして、賢明な御答弁をいただきたい。  労働大臣に対する質問は、今まで質問が出ておりましたように、労組法の十七条——労働組合法は一般法であって、公労法は特別法である。従って、一般法の精神が守られるということは、長い間の労働運動の経験として、労働組合法ができてきた歴史的な経過を見れば明らかであります。その十七条には、「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。」こういう精神です。これは団結権の精神からいって、大多数の労働者の意向に基づいて労使関係を規定する、四分の三で大多数の労働者が契約いたしましたことについては、他の労働者に及ぼす、こういうことです。こういう精神です。これは国鉄の当局もよく聞いておいていただきたい。そのことは、三六協定その地においてもやはりこの精神があるわけです。  そこで私が労働大臣にお尋ねしたい点は、頭はあまり働かさぬでもいいように端的に私質問いたしますが、つまりこういうことであります。団体交渉が継続中でありますから、今のお話のように、労働大臣も十分監督されまして、誠意を持って今後国労との間において国鉄当局に団交をさせるように推進する。誠意を持ちまして推進をいたしました結果、誠心誠意によりまして妥結をいたしました国労との間の妥結につきましては、三十二万の労働者を国鉄労働組合は占めておるわけですから——他の労働者は、合わせましてもその国労の四分の一であります。従って、この十七条の精神に従いまして、国労において誠心誠意妥結をいたしました点は、他の組合にも効果が及ぶのであります。従って、誠心誠意をもろて団体交渉を進めて参りました結果、国労の結果が一般国鉄労働者の関係に及ぶことは明らかであります。従って、この労組法の精神に従って、今後の、継続中の団体交渉を誠実に国鉄当局と国労との間においてなすことによって、この問題の解決の道があるわけであります。その経過におきましてどういう経過がありましょうとも、あるわけであります。そういう労組法と公労法の精神に従って労使の関係を正常化すべきであるという、そういう法律上の精神について、あなたはどういうふうにお考えになりますか。その点について、一つ監督官庁といたしまして見解を明らかにしていただきたい。
  194. 福永健司

    ○福永国務大臣 私、常識的にお答えいたしますが、常識的だけではいかぬというようなお話がございましたので、もし足らざるところはやや専門的な政府委員をして埋め合わせ、補足させることにいたします。  十七条の精神、これはもとより尊重しなければならぬと思います。特別法において特段の定めがあれば、もちろんその特別法の方が、その部分に関する限り優先することは申すまでもないのでございますが、ただいまのお話の場合、法律的に申しますと、組合が法人格を別にするところのものがある場合にどうかというようなことについては、いろいろ意見のあるところだろうと私は思います。思いますが、いずれにしても、先ほどから吾孫子副総裁が繰り返して言っておられるように、あまりちぐはぐになるということは、これまた望ましからぬことであります。従って、そういうことの調和がどういう点においてなされるかということにつきましては、今後、いわゆる誠意を持って交渉する経過において話し合いがされるところであろう、こう思いますので…。
  195. 大原亨

    ○大原委員 簡単でいいです。私が言ったことに賛成でしょう。
  196. 福永健司

    ○福永国務大臣 今大原さんのお話は、大きな組合と別ななにができれば、小さい組合の方へそれが自然に及ぶというように言われた、これは法律的には、そのままそういうことの効果を生ずるとはにわかに言いがたい、私の方の常識ではそうだろうと思います。(「十七条ではそうなっている」と呼ぶ者あり)十七条の解釈はなかなかむずかしいと思います。法人格の別の組合と、それぞれ正式に別々にきめた場合ということになるといろいろありましょうが、法律論——法律論でありますが、政治的感覚をもって申しますならば、大部分諸君との話合いと一部の人のとが違うということの姿のままであることは、これは望ましからぬことでもございます。従って、そこいらをよく認識して、しかも誠意を持って交渉に当たられるでありましょうから、今大原さんの言われるようなことについては、おのずから適当な結論が出るであろうということを私は期待しております。
  197. 大原亨

    ○大原委員 つまり、四十万の労働者があったときに、一万や五百の労働者が法人格を持っておるからといっても、その間において団体交渉によって協約が締結されたら、これが既成事実となって働かないということになれば、労働者が団結して労使対等の原則という、その精神の上に立った労組法が根本からひっくり返ることになる。あなたは労組法の専門家でないから、常識的にどっちでもいいような答弁をされるが、私は答弁の趣旨がわからぬ。法律上云々と言われたが、この精神は、大多数の労働者が団結をして、当局との間において団体交渉をしていくことを中心として、労使の慣行の正常化と労使対等の原則を履行させるということが、はっきりいたしておるのであります。その点は、労政局長いいですね。
  198. 堀秀夫

    ○堀政府委員 労組法十七条、これはもとより公労法の一般規定でありますから、公共企業体にも及ぶことは当然のことでございます。  それから十七条の法律解釈の問題でございますが、これはここにありまするように、一つ事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の労働者が、一つ労働協約を締結した場合にはそれが他を拘束する、こういうことになるわけでございます。そこで、一般論としては、ただいまおっしゃった通りであります。ただ問題は、事業場と申しますのが、御承知のように国鉄内部においていろいろ分かれております。それから同種かどうかという問題もございます。これは純粋法律論として申し上げておるわけでございます。そこで、その事業場ごとにどういうことになるか、それはいろいろ異なった場合もあり得ると思います。しかし、この十七条は、大多数の同種労働者との協約がある場合に、それが小部分の同種労働者との労働協約の関係につきまして一般的拘束力がある、こういうことを言ったのであります。これは協約の拘束力の問題でございます。
  199. 大原亨

    ○大原委員 労働大臣、今の点は政府委員の方が説明をいたしましたが、この法律精神について、私が言う通りだと言うのです。私は、あまり一銭一厘、一%もの厳格な問題を言っているのじゃないのです。大多数の労働者労働協約を締結いたしましたら、それが少数の労働者についても効力を及ぼすのだ、こういうのが十七条の精神ですから、団体交渉の継続中であるから、あなたは監督官庁といたしまして、この法の精神に従って、労使双方が誠意を持って正常化のために努力することを期待すると言ったのだから、法律上の論争については問題はございません。こういうことを言ったわけです。そこで、その精神に従ってという労政局長の御答弁ではっきりいたしたと思うのです。労働大臣、その点理解いただけましたね。そういう観点から、一つ十分検討していただきたいと思います。
  200. 福永健司

    ○福永国務大臣 むしろ常識的な考えを言えということで、逆戻りになったわけでございますが、私は今おっしゃるようなこともございますので、そういうことも考慮しつつ、あまりちぐはぐな結果にならぬように、誠意を持っての折衝が、今後行なわれるであろうことに期待を寄せておるのであります。
  201. 大原亨

    ○大原委員 吾孫子副総裁に質問いたします。今私は、団体交渉が継続中である、三十二万の国労との間において、つまり大多数の労働者を占めておる国労との間において、団体交渉を誠意を持って、継続する、こういうことについては、あなたは抽象的に答弁いたしましたが、その結果において出たことについては、他の少数の組合に対して救力を及ぼすことができるのだ、これが十七条の精神だということは、政府委員から答弁があったわけです。あなたの答弁の中で私が納得できない点は、今後の推移について、私ども十分監視いたしますけれども、今の動力車との間においての団体交渉云々、私はこの問題については触れない、触れないけれども、そういう結果に拘束をされないで、これがぎりぎりだというふうにあなたは答弁した、これ以上の回答はないと言ったから、そんな団体交渉というものがあるか、五千名とか五百名、一万名とかいう労働組合との間に締結しておるものが、三十二万、その他大多数の労働者の団体交渉を制約するような結果は、これは労使の正常な慣行じゃないのだ、このことを十七条は言っているのだ。だから、十七条の精神に従って、一般的な労組法なんだから、その精神に従って、国労との間においてあなたは誠心誠意団体交渉を進めるべきです。そういういろいろな問題は度外視して進めるべきです。こういう点を、労組法の精神に従って、当然あなたは誠意を持ってお約束になってしかるべきだと思いますが、いかがでありますか。
  202. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 先ほど申し上げました通り、誠意を持って団体交渉を続けるつもりでございます。
  203. 滝井義高

    ○滝井委員 関連して。そうしますと、他の組合と合意をしたものが、必ずしもそのまま所信を貫くものでないと、こう理解して差しつかえありませんね。
  204. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 御質問の意味がよくわかりませんが、(「よくわかる」と呼び、その他発言する者あり)私どもといたしましては、すべての組合に対して、いつも同じような立場で了解していただくように今までもやってきておりますので、今後もそういうふうにやって参りたいと考えております。
  205. 滝井義高

    ○滝井委員 それじゃだめです。それじゃ誠意にならない。   〔「そうだ、そうだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  206. 中野四郎

    中野委員長 せっかくの質問も答弁も聞こえませんから、少し静粛にして下さい。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 労働大臣が誠意を持ってやることを待期している、こうおっしゃる。そうすると、今度あなたの方も、労働大臣の言われる通り誠意を持ってやります、こうおっしゃった。ところが、誠意を持ってやるというのは何だと言ったら、それはもうすでに今きまっているものから、下げるわけにも出るわけにも参りません。これでは誠意じゃない。だから、従って下げる場合も出る場合もあるかもしれないけれども、両方あるわけでしょう。誠意を持ってやるのだということには、弾力があるということが入っておりますかということです。だから、弾力があるということが入っているということならそれでいいし、そうでないということならだめですよ。労働大臣の誠意とは違う。そこをはっきり。   〔「はっきり言え」と呼び、その他発言する者多し〕
  208. 中野四郎

    中野委員長 少し静粛に願います。
  209. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 団体交渉につきましては、誠意を持って当たるということは、再々繰り返し申し上げておる通りであります。その内容についてどうこうするというようなことは、この席で申し上げるわけに参りません。
  210. 滝井義高

    ○滝井委員 だめです。それじゃ一つ総裁を呼んで下さい。われわれは初めから総裁を要求しておりますからね。
  211. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと滝井君に申し上げますが、話し合いをして、総裁は本日は出られないから、それで副総裁でよろしいということで参ったのでありますから、その点は御了承願いたいと思います。
  212. 滝井義高

    ○滝井委員 答弁ができないじゃないですか、最高責任者に来てもらわなければ。
  213. 中野四郎

    中野委員長 委員長から滝井君に御注意申し上げますが、今申し上げた通りです。だから、きょうは総裁は出られないのだから、もしあらためてというなら来週ですが、来週だと、それじゃ日にちが間に合わないでしょう。従って、そういう無理を言わずに話を進めていただきたいと思います。
  214. 滝井義高

    ○滝井委員 だから私は、誠意を持って交渉をされるということは、これは下がる場合もあるし、前進する場合もありますよ、弾力をもっておやりになるのでございますか、こう言っておる。ところが、そうではございません、それは前の通りでございます、こういう答弁ですから、それでは誠意がないことになってしまう。だから弾力ある態度をもってやるということが誠意のあることです。これでいいのです。それを一つ言って下さいよ。労働大臣は仕上げがまずいと言っている。壁を塗る場合だって、まず第一に竹を組んで、それから今度は荒塗りということをやるでしょう。それから今度は上塗り、これをやって仕上げができるのです。白壁を一番下に塗ったのではりっぱな壁にならぬ、これを言っているのですよ。だからやっぱりきちっとやらなければならない。これが労働の慣行だと思うのです。だからいろいろ労働組合とおやりになったことも一つの方法で、これはかれこれ申しません。しかし、こういう形になっておるのだ、組合は自主的にのんでおるのだけれども、まだのんでおらないところがある。四分の三はのんでおらない。従って、それは誠意を持って団交に当たるということは、弾力がある態度でなければ、もとのものから一歩も前進も後退も何もない、同じところだということでは誠意にならぬわけですよ。労働大臣が誠意を持ってやるとおっしゃるなら、労働大臣はわかったのですから、国鉄の方は、総裁のかわりにお出になっておるのですから、弾力ある態度で誠意を持って臨みますと、こういうことが言えないはずがない。
  215. 福永健司

    ○福永国務大臣 直接に私が質問を受けたのではございませんが、私の言葉と関連してのことでございますので、私ちょっと説明さしていただきます。  仕上げがまずいという表現をしておるわけでございますが、ぜひ仕上げがうまくいくように、こういう期待を持っておる、こういうことなのであります。  そこで私、先刻来伺っておりまして、大きな組合と小さな組合との間の関係でああいう事態が起こったようなことにもかんがみまして、今滝井さんがおっしゃいます弾力があるのかないのかというようなことを、交渉でなくてここで言ってしまうということは、これは組合に対してちとまずいのじゃないか。これは私は私なりに思いますが、そこで事内容にわたることでございますから、副総裁はなかなか言いにくいだろうと思いますし、私はまた、経営者側の立場に立ってものを言っているのじゃございません。誠意を持ってということの表現をいたしておる。そういうことを期待しているという表現をいたしたのでございます。従って私は、私がお答えするとするならば、弾力がありますとも言えないが、ないとも言えない、こういうことであろうと思うのです。非常にあいまいな表現のようなことでございますけれども、この場で弾力はございませんということも言い切れないだろうし、弾力がありますということも言い切れないのじゃないか、こういうように思うのでございまして、いろいろ個々の論議を聞いておりますから、従ってこういう論議も参考にしつつ、経営者諸君がうまくやるであろうことを私は期待いたしておるわけであります。
  216. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、重ねて吾孫子さんにお尋ねいたしますが、今の労働大臣の答弁であなたも了承しますか。
  217. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまの大臣の含蓄あり、また示唆に富んだお言葉に深く感銘いたしております。
  218. 吉村吉雄

    ○吉村委員 時間の制約がありますから、なお当局の誠意ある団体交渉に臨む態度、こういうものについて、私どもは重大な関心を持って監視をしていきたい、こう思います。  そこで最後に申し上げておきますけれども、十七条の法意というものについて、先ほど政府委員あるいは労働大臣から明確に答弁をされているわけです。このことについては国鉄当局の方でもおわかりになったと思いますから、私はこの十七条の問題については、四分の一にしか満たないところの組合員、ここの結論というものを四分の三の大多数の組合に押しつけるということは、十七条の法意に違反をする、こういう立場に立って各員がいろいろ申し上げているわけですから、従って、誠意を持って団体交渉をするというその中身の問題は、当然に団体交渉というものは最初から固定をしたものではないのですから、あまり弾力があるとかないとかいう問題に固執をする必要はないと私は思う。従って、当然それは伸び縮みというものがあるのが団体交渉なんです。この場合においては、ただいまあなたの答弁されている誠意というものは、この事態を生んでおるところの原因というものが、従来の慣行というものを無視した点から出発をしておる。そうしてわれわれの望まないような事態というものは起こる危険性がある、こういう状態に立って国鉄当局としてはどうしなければならないか、どうすれば事態収拾ができるかという、そういう誠意のあり方に立って対処してもらう、これ以外には道はないと思う。そういうことを強く要求して、なお今後のあなた方の動向等については監視を続けながら、一応私の質問はきょうはこれで終わりにしておきたいと思います。
  219. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  220. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて下さい。  この際、委員長より国鉄労使双方に申し入れますが、本問題の解決については、誠意を持って話し合いを進めるよう努力していただきたいということを、特に要望いたします。
  221. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 委員長のお言葉に沿いまして、できるだけ努力いたします。
  222. 中野四郎

    中野委員長 それでは参考人を呼んで下い。  本問題につきましては、参考人として国鉄労働組合書記長の山田晦日君が出席されております。  参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人には、御多忙のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。日本国有鉄道における労働問題は、各方面に広く関心が持たれておりますが、当委員会におきましても、この機会に、本問題に直接御関係をお持ちになられますあなたから、忌憚のない御意見を伺い、調査の参考といたしたいと存じます。  なお議事規則の定めるところによりまして、参考人が発言をなさいます際には委員長の許可を得ていただくこと、また、参考人は委員に対して質疑することは、できないことになっておりますので、以上お含みおき願いたいと存じます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  223. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大へん忙しいところを御苦労さまですが、実はただいままで、非常にここ一、二日の間に問題になっておりますところの国鉄の労使関係について、国鉄当局の見解を当委員会としてただしておったわけでございますけれども、この際、一方の当事者でありますところの国鉄労働組合の方の見解というものもあわせてお尋ねをして、正しい判断というものを得たい、こういう考え方でごく簡単に質問をしていきたい、このように考えます。  まず初めにお尋ねを申し上げたいのは、国鉄の企業の中にはたくさんの数の労働組合がある、こういうことでございますけれども、この数多い労働組合の中で、国鉄労働組合が大多数の労働者を擁する組合として、国鉄当局との間の団体交渉なり何なりに携わってきたと思うわけです。従って、数多い労働組合が一つ企業の中にあるという特殊な状態でございますから、当然にして他の企業と違ったところの労使慣行というものが生まれていたはずだと思うのです。具体的には、たとえば各組合が共通するところの問題等については、今までの慣行としては国鉄労働組合がどういう位置を占め、他の組合との関係はどういうふうなことで、最終結論といいますか、交渉が行なわれておったかということについてお尋ねをしておきたいと思うのです。
  224. 山田耻目

    ○山田参考人 国鉄労働組合と国鉄当局の間に行なわれておりました公労法上示す団体交渉の諸事項について、どういう立場にあって諸交渉を進めてきたかということでございます。御指摘のように国鉄の企業の内部には、今日数個の組合がございます。しかも、昭和二十八年に、機関車乗務員の人たちを主体とする機関車労働組合——現在の動力車労働組合でございますが、この組合が国鉄労働組合から分かれまして、団体交渉権というものを確立をいたしました。このときにさかのぼりまして、国鉄労働組合の団体交渉の慣行というものは確立をされておるわけです。それは、その労働組合の持っておる労働者の特殊の事情については、その組合が交渉し、妥結することができる、全体の企業の中に占めておる全労働者の共通の問題、たとえば賃金あるいは人事に関する諸条項、あるいは福利厚生に関する諸条項、こういう事柄につきましては、国鉄労働組合が、企業の中に占めておる組織人員が、労組法十七条にいっておりますところの四分の三以上の組織人員を持っておりますために、国鉄労働組合が主たる立場で交渉をし、妥結をし、しかる後に他の組合がそれと同じ立場をとる、こういうふうに実質的な慣行というものが確立をされて、今日に至っております。大体以上であります。
  225. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、数ある組合の中で、国鉄労働組合が、労組法十七条により示されるところの大多数の組合員を擁する組合ということで、団体交渉の結論というものについては、共通問題については国鉄労働組合が妥結をし、順次他の組合が妥結する、こういう慣行であったということでございますが、この慣行が一回でも異なったような様相を呈したということは、今日まで全然なかったのですか。
  226. 山田耻目

    ○山田参考人 ございません。私たちは、まだ労働運動が日本では未熟でございますけれども労働組合と経営者の側で妥結をいたしました事柄は、その結論について、よしんば不満であったとしても、労働組合側も道義上の責任を負います。経営者側も、みずからの意図する以上のものが措置されたとしても、それには道義上の責任を負わなくてはなりません。この両者の関係がきちんと確立されていった中にこそ、初めて労使の関係が、いわゆる道義と誠実の中で確立をされていくことになるわけであります。私たちは、今日までその立場をずっと貫いてきておりましたし、その立場が一番正しい——そうあるべきものなのだということに論理的にはなりましたとしても、それを具体的に整理していくのは、やはり労組法上の三分の二という多くの数が、それを賛成をし、それを求めているというこの裏づけが必要であろう、そういう気持で、国鉄労働組合が主たる締結の任に出たり、それを中心にして各組合も同調をしていく、この立場は国鉄労働組合と当局との間に、今日までいささかも狂いはございませんでした。
  227. 吉村吉雄

    ○吉村委員 国鉄労働組合が、大多数の労働者を擁する組合として、正常な労使慣行確立のために、責任を持った態度をもって今日まで当たられてきたということについては、敬意を表したいと思うのでございます。  そこで、次にお伺い申し上げたいのは、新聞の報ずるところによりますと、年度末手当の交渉をめぐって、国鉄労働組合を初め他の幾つかの組合との間に国鉄当局と交渉が行なわれておった、この交渉が国鉄労働組合との間に最終結論が得られないままに、他の組合と国鉄当局との間に交渉が妥結をした、こういうことによって、今参考人から申し述べられたところの長い間にわたって打ち立てられた慣行というものが、無視されたということが大きな原因となって、この国鉄当局の慣行無視の態度に抗議をする、こういう趣旨できょうから三十一日にかけて実力行使を計画しておる、こういうようなことが新聞に報道されておるのでありますけれども、これは今参考人から申し述べられた慣行からしますと、新聞の報ずるところがもし正しいとするならば、非常に大きな問題であるというふうに私は考えるわけです。従って、今回の年度末手当の交渉をめぐるところの国鉄当局との交渉の経緯、他の組合との関係、こういうものについてお尋ねを申し上げたいと思うのです。
  228. 山田耻目

    ○山田参考人 確かに、御指摘のように二十七日の明け方から、私たちが予想しなかったような異常な事態が当局の手によって引き起こされまして、今日職場の中には、限りない経営者に対する不満と怒りというものが渦巻いておりまして、部分的にかなり危険な状態に立ち至っております。昭和三十二年の三月二十三日に、諸先生も御記憶があろうかと思いますが、抜き打ちストという、そういう言われ方をするような不測の事態が起こりました。あのときと同じような憤激というものが、全国津々浦々の国鉄の職場に今日起こっております。今私たちは、それを国鉄労働組合の統制ある指導の中できちんと処理をしていきながら、そういう事態を引き起こさせた主因に対して、その態度の変更を強く求めております。そういう事態について、何がそうさせたかということを申し上げてみたいと考えます。  市の起こりは、年度末手当の解決にございました。私たちは、昨年の暮れに国鉄経営者に対しまして、昨年の年度末手当が〇・五でございましたが、ことしは、御存じのように白紙ダイヤ改正といわれるほど、十一万数千キロの膨大なダイヤ改正をいたしました。これは線路の増設をいたしたのではございません。よって持つすべての車両を動員して、労働者の数はきわめて少ししかふやさずに、労働の密度を詰められるだけ詰めて、そうして国鉄の収入の増をはかっていこうとしておるのがダイヤ改正でございます。今日、東海道線には急行が三十本、準急が十五本、特急が十四本、その間を縫って電車、貨物が走っております。六分間に一本という列車の速度で走っております、それをさばいておりますのは、国鉄四十五万の労働者であります。今日駅々には、毎日の収入表というものが、前月対比、前年対比という格好で掲示をされまして、労働者に増収の意欲をかり立てております。このグラフは、昨年と比べまして約五百億の増収にことしはなっております。予定収入が七%程度見込まれ、その上、今日三百五十日現在で二百四十億をこえようといたしておるのです。職場の労働者は、去年〇・五出たからことしは、これだけ働いたのだからもっとたくさん出るだろう、現場の駅長さんも地方の局長さんも、ことしはもう少し出してやれるだろう、こういう気持を持っていた事実は明らかにございました。  その立場で、私たちも、〇・五プラス三千円という、去年よりか三千円ほど多く要求をいたしました。それが昨年の暮れでございます。そうして回を重ねて団体交渉いたしましたが、御存じのように年度末手当というものは季節の手当でございます。三月三十一日という年度内に決算処理をいたしませんと、年を越すと技術的にむずかしい面もありますので、いずれにしても三月三十一日までには支払い手続がとられる、こういう時間的な制約もございまして、比較的団体交渉というものは三月に入って煮詰められていくのが、一般的な過去の趨勢でございました。  そこで私たちも、三月に入りまして幾たびか交渉をいたしました。そのときに、その交渉に先だちまして、経理担当重役の常務理事の兼松さんと、労務担当の常務理市の中村さんと、職員局長の河村さんと私と話をしておりましたときに、兼松さんの方から、山田さん、ずいぶんもうかっているけれども、なかなか金額を出すのはむずかしい、だから、ことしは国鉄が先に出すことをやめて、国鉄は他公社の成り行きを見てきめていったら、金額はかなりいい工合にいくのじゃないかと思う、だからあまり急がないようにしてほしいという話がございました。この話は、一昨々日来の団体交渉の中で私が明らかにしましたが、出席をいたしておりました中村常務も肯定をいたしております。そういう立場で、私たちも、年度末手当の妥結については、他の公社の成り行きも見ながら、企業の採算の度合いも検討していきながら、じっくり団体交渉を行なっていくという立場をとっておりました。  ところが、三月の二十四日になりまして、動力車労働組合なりその他数個の組合と当局との間に、かなり時期を急いで妥結の方法が求められるという動きを察知いたしました。私たちは、今日までの経緯、過程の中で、そういう事態が起こり得るとは夢想だにしておりませんでしたから、ただ単なるうわさとして聞き捨てしながら、私たちは団体交渉を強めていっておりました。私たちの団体交渉こそが、国鉄労働組合三十二万、ひいては四十五万の国鉄の職員の手当をきめていく唯一最大の組合であるという過去の経緯もございましたから、団体交渉をその場で煮詰めていたわけでございます。それが、申し上げたように三月二十四日になりまして、どうも動力車労働組合を初め一、二の第二組合と妥結するのではないかという空気が見えました。そこで私たちは当局に対して、従来の慣行をよもやお破りではないだろうなという立場から話をしてみましたところ、必ずしも当局としては、その段階でそこまでの処置をするという気持はなかったように見受けられました。これが見受けられたという程度以上のものではございません。  そこで二十六日になりまして、ちょうど当局が新賃金を公労委に提訴いたしておりますその調停の事情聴取に応じますときに、私が仲裁移行の手続を当局に同意を求めるために河村職員局長と話をいたしました。そのときに河村職員局長が、山田さん、動力車と第二組合と実は妥結をしたい、金額はおおむね〇・四プラス千円程度である。それは河村さん本気ですか、国鉄労働組合はどうするのですかと言ったら、おいやなら一方的な措置をしたい、こういうおっしゃり方をして労働省にお出向きになりました。私はきわめて事態は危険であると判断をいたしまして、直ちに機関にかけて相談をいたしました。そうしてその日の夕方の八時ごろから、その問題について当局と団体交渉を行ないました。もちろんそのときには、その情報が漏れましたために、東京周辺の国鉄労働者はきわめて激しい怒りを爆発させまして、都電がとまるという事態も起こって参りました。私たちは、そういう事態を阻止することは、やはり国鉄働労組合が社会にも、組織にも責任を負うという立場で、国鉄労働組合の指令のないうちには、一切の行動をしてはならないという立場で行動指令を出して団体交渉に入りました。  そうして交渉の中で、当局は、今申し上げましたような数個の組合と妥結をして、でき得べくんば実施をしたい、国鉄労働組合も何とかこの線で納得願えないかという立場で求めてきましたけれども、私たちは、骨頭申し上げましたように兼松常務理事なり中村務理事なりの当時の意向もあるし、私たちはそのことが一番得策であると判断をしておるから、三日や五日の日にちをあせらずに、じっくり誠意を尽くして団体交渉をやっていかなければならない、その道こそが、結果がどうあれ、四十五万という国鉄の職員を納得させる唯一の道筋なんだ、こういう立場で条理を尽くして当局に反省を求めました。当局は、その過程で十時ごろに相談をしたいというので休憩に入りましたために、当局の意向を私たちは待ちました。その待つ間に、私たち国鉄労働組合を代表する三役と七人の部長と、十人で職員局長室に中村常務と河村職員局長をたずねまして、多くの人がおる団体交渉の席上では言い出しにくかろうから、ざっくばらんに言って下さい、長い間の労使慣行を破るようなことをしてくれると大へんな事態になりますよ、東京はあのように激高しているんだ、だからどうか動力車と妥結をする道をとらずに、第二組合と妥結をする道をとらずに、五万や八万の人たちが三十二万人の賃金をきめていくという態度だけはとってくれるな、この立場を条理を尽くして申し上げました。ところが、当局はその態度を受けてもう一度検討したいということで、休憩後の団体交渉を再開いたしました、その団体交渉の席上、当局は、組合側の団体交渉の過程で述べられた誠意を持って団交を継続する態度を認めよう。こういう結論が出たのであります。そのとき、私はなおつけ加えまして、賃金の支弁の手続、給料支払いの手続というものは、一切国鉄労働組合の調印終了後に、期日の決定を含めて行なっていくのだ。こういうことを申して、それは納得させて整理をいたしたわけであります。そのときに、私の方からもう一度、答弁に当たった河村職員局長の態度があいまいだということで、河村さん、あなたのおっしゃっている気持は、初回の団体交渉で述べられた意思が間違っていたので態度を変えられたのですねという質問に対して、態度を変えて提案をしておるのであります、こういうふうに、危惧すべき諸点のだめ押しまでされて、その団体交渉は終わったのです。私たちは、この種の手続に関する団体交渉をやりましたのは、私が書記長になって三年ばかりになりますけれども、初めてであります。きわめておろかしいことであると考えながらも、それをしなければならない事態が、当時経営者の気持の中にはあったということを御理解願いたいと思うのです。しかも、それをおやめいただいて、団体交渉を誠意を持ってやっていこう。組合側も三十一日ころに何かかまえておるそうだけれども、そういうことはやってくれるな、こういう意向までありました。  そこで私は、そういう不測の事態は、お互いの誠意を込めた団体交渉が、ほんとうに煮詰められていけばいくほど解消できるものなのです。これが道義と信義を前提とした労使関係でなくてはなりません。こういう立場を申し上げて団体交渉再開をきめ、日取りは翌日の十時から開会をしていこうときめて、別れたのが夜の十一時半でございます。そうして私たちは本部に帰りまして、執行委員会を開きまして全員に了解を求め、東京周辺の各級機関に対しても、不測の事態が起こらないように措置をいたしまして家に帰りました。  ところが朝になりまして、全国の職場から、ものすごい勢いで本部に連絡が入って参りました。動労は妥結したではないか、第二組合は妥結をしたではないか、これはどういうことなんだ、こういう憤激が強まって参りましたので、私もびっくりいたしまして当局に電話をいたしましたところ、当局は本朝の四時に動力車と妥結をした、八時二十分と八時五十分に職能労連と地方労連と妥結をした、こういう答弁がされました。そこで私は、きわめて言葉をきびしくして叱責をいたしました。おれたちと団体交渉を終わって、たった四時間後になぜまとめたのか、なぜ翌朝まで待ってくれなかったのか、どうしてもまとめなきゃならぬ事態が起こったのなら、ああいう団体交渉を約束をしたけれども事態はこうなっておる、国鉄労働組合は承知してくれ、なぜこういう態度をあなたはおとりにならなかったのか。そこに私たち国鉄労働組合がぺてんにかけられた、背信行為だというきびしい不満が、そこから起こってきております。  いま一つは、申し上げましたように、今日職場で働く労働者は、国鉄労働組合という大きな組織が、全従事員の八割近くを持っておるこの組織が、おれたちの労働条件賃金と手当をきめてくれる唯一の組合なんだ、にもかかわらず、八千とか一万三千、五万という人たちがおれたちの賃金をきめてくることはいけないことなんだ、そんなことじゃ仕事がしたくない、そういう不満が素朴な職場の労働者の中に起こってくることは、私は当然だと思います。しかし、そういう話では全体をまとめていくわけには参りませんし、いつも私たちがやりますように列車が混乱いたしますと国民が迷惑をする、そのことはよく承知をいたしておりますし、いたずらにそういう事態を起こしてはならない。もちろん国鉄労働者は、御存じのように定員法で十二万七千も首を切られまして、今日新規採用いたしませんから、四十五万人の労働者で——昭和二十五年、公共企業体定員法実施という時期の人間の数が五十万四千でありますが、そのときの仕事量を一〇〇として、今一九〇の仕事をいたしております。旅客にして五十一億人の輸送、貨物にして一億九千万トンの輸送をいたしております。そういう事情の中で、私たちの国鉄労働者は、新規採用はされませんから年令は三十八才をこえています。家族は平均三人おります。しかも賃金は、二万六千三百三十三円という平均賃金です。そういう芳しい中で、もちろん仕事を少し休んで汽車に混乱を及ぼすということは、国民に迷感をかけることは承知いたしておりますけれども、それのみを追及しておったのでは、国鉄労働者のほんとうのしあわせは作れません。だから、今日のような事態が起こりますと、そういう気持を頭に持ちながらも職場の中で不安、不満が増大をしてきて、国民の皆さんに御迷惑をかけるような事態が起こり得るという条件を備えておるという立場だけは、御理解をいただきたいと思うのです。それを私たちは一応とりまとめをいたしまして、国鉄当局に対しまして、きょうも、そうしてきのうも激しい団体交渉を行なっております。  その団体交渉では、私ははっきり申し上げているのです。金紙については、私たちは〇・五プラス三千円を要求しておる。当局は〇・四プラス千円をお出しになっておる。私は〇・五プラス三千円を徹底的に固執はいたしません。それは他公社の振り合いを見て下さい。今日の段階で、全電通は〇・五プラス千五百円が出ようとしているではないですか。もう一つの専売の公社だって、それに近い数字が出ようとしておるではないですか。なぜ国鉄だけが〇・四プラス千円でなくちゃいかぬのですか。こういう立場をもっと煮詰めていって、私たちが〇・五になるのなら、私はそれでもけっこうだ。そういう団体交渉を誠意を持って進めていくためには、二十六日の明け方妥結をなさったあの道を一つお取り消しになって、事態を白紙に返して団体交渉を深めていただきたい。そういう全く私たちまじめな気持で、今日の現状を解決をする唯一の道筋として今日交渉いたしておるのでございますけれども、当局は私たちの意をくみ取ろうとせずに、かなり頑迷な態度で抵抗いたしております。この事態が続きます限り、申し上げましたように、国鉄労働者は、これから先労働運動を民主的に正しく発展させていくためにも、今日まで育て上げられてきた労使の慣行だけは、どのようなことをしてでも守りたいと思います。そういう立場一つどうか御理解をいただきまして、今日職場の中に残っておる幾つかの混乱も、明日以降かなり増大していく要素を含んでおることを明らかにしたいと思います。しかも三十一日には、東京の都電を初めとする全国的な大混乱が起こることも、この段階では残念ながら申し上げなくちゃならぬと思っております。  以上が今日までの経緯と、私たちの扱ってきた実情であるというふうにおくみ取りをいただきたいと思います。
  229. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大へん簡明にして理解しやすい説明があったわけでございますが、それで今までの経緯をお聞きしますと、一番問題なのは、長い間にわたって樹立されたところの慣行というものが、当局の一方的な意思——意識的かどうかは別として、これが破られたということと、あわせて、その二十六日の夜半に当局が再度団体交渉を継続する、こういうことを言明しておりながら、なお数時間後に他の組合と妥結をしたという、いわば背信的な行為、こういうものについて、国鉄の労働者が、国鉄の労働組合の指令するといなとを問わず、この事態というものをきわめて重大視して、そして自然発生的に事態が悪化しつつある、こういう状態にあることが明らかになったわけでございます。  そこで私がお尋ね申し上げたいのは、先ほど国鉄の副総裁との質疑応答の中で、この事態を解決するために、一つの道としては、今国鉄労働組合とは団体交渉を継続しつつあるということになっておるので、この際事態収拾のために、労組法十七条にいうところの四分の三以上の労働者を持つ国鉄労働組合が、今後の交渉に当たって取りきめられるところの結論については、十分誠意を持って交渉に当たってもらいたい、こういうことを要望いたしましたところが、国鉄当局としては、誠意を持って交渉をするという態度を表明されました。なお、この点については、委員会の意思を代表して特に委員長の方からその旨の発言があり、吾孫子副総裁がその要請にこたえる趣旨の答弁をして帰ったのであります。私どもは、現実の事態というものが起こってきたところの原因については十分理解もできるわけでありますけれども、しかし、それは好むべき事態でないことは、参考人も再度強調されておる通りです。従って、この事態に立って解決の道というものは、やはり従来の慣行をこの際生かしていく以外方法はない。そのためには、国鉄労働組合を主体にした継続さるべき団体交渉にあたって、今まで他の組合との間に出た結論、これに固執をしないという態度で前進をする、そういう態度で交渉をすべきではないか、そういうことを強調いたしたのでありますけれども、この点については、団体交渉の範囲に属する問題であるということで、いまだ国鉄当局の態度は明確になっておりません。ただ、誠意を持って事態収拾のために団体交渉を継続する、こういうことが本委員会で明らかになったわけです。従って、国鉄労働組合としましては、この事態に立って、もちろん事を好むものではないと思いますが、当局が誠意ある態度をこれから——今までの説明では、どうも頑迷で前進するような姿はなかったというお話でありますが、先ほどの委員会における答弁からしますと、誠意を持った交渉をするという約束をしていきましたので、事態収拾のために、組合としてはぎりぎり一ぱいのところまで交渉によってこのことを解決していく、こういう気持があるかどうかをお伺いしておきたいと思うのです。
  230. 山田耻目

    ○山田参考人 誠意を持って団体交渉を継続したいということは、私たちの最も好むところでございます。ただ問題は、誠意を持って団体交渉をするということは、一般論で言えることであってはならないと思うのです。具体的な年度末手当をめぐる団体交渉誠意のある団体交渉でなくてはなるまい。そのためには前提が必要になります。本日動力車なり第二組合と妥結をしたことが、すでに各局に落とされて支弁の手続がなされておる段階で、誠意を持って団体交渉をするということにはならないと私は思います。この一切の行為を中止する。言いかえたら、団交でまとめた事柄を一応たな上げをして、三十二万を擁する主たる国鉄労働組合と取りきめていくのだ、この立場が貫かれていかなけければ、誠意を持って団体交渉をするということは単なる言葉の表現としては受け得られますけれども、それが実際に労使の慣行の確立であるか従来の継続であるかということについては、国鉄労働組合は納得をしませんし、国鉄労働者も納得をしないでしょう。これらについて、私たちは当局に誠意ある団交の具体的な例証としてそれを求めておりますから、その立場を、一つわれわれの言う誠意ある団体交渉というふうに本委員会は御理解をいただきたいと思います。  それからいま一点。私たちは、誠意ある団体交渉という事柄と交渉によってまとまった事柄については、誠心誠意これを実行していく、そういう一つの例証の中に、諸先生も御承知と思いますけれども、今日、国鉄は非常にきびしい合理化を受けております。つい先だって両被服工場、豊川、京都工場等を含めまして、四工場の廃止統合がかなり長期にわたって組合側と協議をされました。この妥結の事態というものは、私たち非常にきびしい叱責を労働者から受けたような妥結の状態でございましたけれども、私たちがこれをまとめた以上は、これを国鉄労働組合の組合員に忠実に守っていただくということ以外に、協約を順守し、尊重していくという道筋はない。組合も時には不利なときもありましょう、と時には当局が不利なときもありましょう。しかし、まとまった協約というものは、それを順守していくのが労働組合と当局の正しい慣行のあり方だということで、きわめて苦しい道を今日まで歩いて参りました。こういう事柄等が、私たちは、お互いが誠意を通して信頼し合える結論として受けとめたときの、お互いが努力し合っていく指標でなくちゃならぬと思うのです。今回の当局のいう誠意を持った団体交渉というものは、片方で〇・四プラス千円を動労と第二組合とに出しておいて、この額は動かせないぞ、すでに妥結しておるのだからということをうしろに隠しながら、言葉で誠意を持ってという迫られ方をしたのでは、私たちはどうしても納得できません。その意味で屡まじめに団体交渉をやって下さいというお気持は十分いただきますけれども、やはり私たちは、戦後でき上がった国鉄労働組合は未熟でございますけれども、ほんとに苦しい思いをして育ててきた労使の慣行だけは、どんな代償を払っても守り抜いていきたい、この決意だけは強く持っておることを明らかにしておきたいと思います。
  231. 小林進

    ○小林(進)委員 関連して。重ねて一言だけお尋ねいたしたいのでありますが、私たちは、三十日、三十一日に行なわれるこのゼネストを、何とか回避をしたいということで国鉄労使双方においでを願いまして、そして貴重な時間を拝借して貴重な御意見を伺ったのでありますが、特に組合書記長の山田さんからは、実に理路整然たるお話を承りまして、まことにごもっともであるというふうな感を深ういたしたのでございますが、それに対して、当局側も、この席上で特に委員長の発言に応じて、大いに一つ成立のために誠意を尽くすということを、数回にわたって吾孫子副総裁が言明されていたのであります。私どもは、この両者の言い分に信頼をいたしまして、むしろ眠った子を起こすといいますか、問題を掘り下げて、傷口を大きくするようなことは一つ避けて、労使双方の良識と御誠意に一つ期待をいたしたいと思うのでございますが、そういう意味でなるべく意地の悪い質問は避けたいと思うのです。ただ、将来の労使のあり方として、どうしてもこの際明確にしておかなければならない一点は、これは二十七日の皆様方の団交の途上における当局側の豹変であります。これだけは、もしこんなことが一つの慣行として将来労使の話し合いの場で繰り返されるということならば、これは大へんなことであります。先ほどのお話によりますれば、夜の十一時であります。十一時に再開せられた団交の席上において、他の関係の組合との話し合いをやめにして、そのままにいたしまして国労との交渉を続けるという明確な約束をしておきながら、わずか三時間か四時間しかたたない、しかも夜中の午前三時に他の組合との団交を成立させて調印されたということは、これは私は全くだまし討ちじゃないか、きんちゃく切りよりもひどいやり方じゃないかと思うのでありますが、その過去を問おうとするのではないけれども、こういうことが将来の慣例にされたのでは大へんだという、その一点がありますから特にお尋ねするのでありますが、そのような豹変をされた理由、組合側から見られた当局側の真意というものが一体どこにあったか、将来もまたそういうことが管理者側によって繰り返される危険はないものかどうか、この点を一つお答え願いたいと思うのであります。
  232. 山田耻目

    ○山田参考人 われわれは、当局と団体交渉をいたしますときには、かなり距離も縮めて、できるだけ人間的な信頼感も見つけ合う一つ態度をとらなければ、人間同志の団体交渉というものは、なかなかまとまるものじゃございません。ですから、私たちは、そういう立場で誠意を持って団体交渉をしてまとめた事柄が、ああいう形になろうとは夢にも思っていませんでした。だからそれをなじる私たちの気持というものは、ここでそれを再現して申し上げることができないくらい、激しいもでございましたし、情けないものでございました。その中で私は、なぜそうなさったのですか、この理由だけは聞かして下さい、しかもなぜ明け方の四時ごろそれをしなければならなかったのですか、なぜ朝の八時半まで待って、おい国鉄労組はどうだと一言声をかけてくれなかったのか、その態度を求めたけれども、これに対しては、中村常務も河村職員局長も口を緘して語りません。そういう立場を推測していきまとす——推測ははなはだ失礼でございますけれども、もしや国鉄の中に数個の労働組合があれば、その妥結する事項というものが全職員に共通するものであったとしても、いずれの労働組合と妥結するかということは、これは当事者同士の勝手である、こういう慣行を打ち立てなさろうとする気持があるのではあるまいか、もしも、それがあったとしたら重大な事態であります。私はそんなことはないと思う。私たちは、そこまで当局の気持を勘ぐりたくない。だから私は、当局にもそういう気持で問いただすことはいたしておりません。ただ、あまりにも口を織してお語りならぬところに、非を悟ってそうなさっておるのか、それともそういう気持をお持ちになっておるのか、そこらあたりについては事情はわかりません。ただここで言えますことは、二度とそういうことを起こさせてはならない、今後は、団体交渉は一切書面の交換をして、捺印をしてやらなければならぬというくらいの配慮をも、私は必要とするという気持も片方では持っておるのが実情であります。
  233. 小林進

    ○小林(進)委員 私の質問はこれで終わりますが、先ほどから繰り返して申しましたように、もう数日に迫りましたこのどたんばにおける両者の交渉の成功を祈る、そのために私はこれで質問をやめるのでありますが、当局側のこのやり方は納得したわけではございません。成功、不成功を見た上で、私ども、また大いに一つこの問題を取り上げなければならない。留保いたしまして、私の質問を終わります。
  234. 澁谷直藏

    澁谷委員 自民党の立場から、一言参考人に希望を申し上げておきたいと思います。  ただいま参考人のきわめて明快なる御説明によりまして、大体の実情は了解をいたしました。私は従来も、国鉄労組と国鉄の経常当局との間の今までのあり方から見て、国鉄の当局が意識的に不信行為をやったというようなことはとうていこれは考えられません。人間のやることでありますから、何かの手違いからただいまお話しになったような、きわめて不幸な事態が起きてきたのではないかと私は思うのであります。委員長も先ほど委員会を代表して希望を表明されたのでありますが、その線に沿って、労使双方とも誠心誠意話し合いをして問題を収拾していただきたい。書記長のお話では、下部の盛り上がりその他の状況から見て、によってはきわめて不幸な不測の事態が起こるかもしれぬということを漏らされておるのでありますけれども、万が一にもそのような事態が発生して、当然それは公労法の禁止する争議行為という形をとりましょうから、それに対して当局が法律違反ということで首を切る、かって国鉄が繰り返したあの泥沼のような状態を、再現してはならないと私は思うのであります。そういう意味合いにおきまして、まだ日にちはあるのでありますから、最後まで希望を捨てないで、誠意を持って交渉していただきたいということを申し上げます。
  235. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大へん御苦労をかけたわけでありますが、今回の国鉄労使の中におけるところの問題点、それからそれに付随するところの事態の全貌が、ようやく明らかになったわけでございます。私はその事情を聞いておって、これでは国鉄労働組合が、あるいは国鉄の労働者が怒るのは無理はない、こういう気持を深くしたところです。なお、今の説明をお聞きになっておりました人々全体が、そういう気持になったと思うのです。従って、先ほど私が申し上げましたように、吾孫子副総裁は、誠意を持って交渉に当たる、こういう話をしました。この誠意というものは、山田書記長の今回の体験からすれば、実際その言葉通りに信じられない、具体的な何かがなければならない、こういうことになるのは当然であり、私どももまたそれを期待いたしておるわけです。私どもといたしましては、国鉄当局が言明をいたしましたところの誠意というものを、委員会としても十分監視して、そうして正しい従来の労使慣行に戻るようにしていきたい、このように考えております。  なお、今澁谷委員の方からも話がございましたように、特に与党の委員の方々も、その話を聞いて事情がおわかりになったと思います。幸いに与党の方々は、公社なり当局なりに対しても影響力を持っておるはずでございますから、事態を円満に収拾し、そうして正常な労使慣行に戻すよう努力するためのただいまの意見発表かとも考えますので、私どもとしましては、そういうことをも特に期待しつつ、そうして先ほどお話しの誠意というものを見守りながら、国鉄労使関係というものが、ほんとうに円満な、そして正常な関係に戻るように進めていただきたいと考えます。きょうは大へん御苦労さまでした。
  236. 中野四郎

    中野委員長 山田参考人にはいろいろ参考意見をお述べいただき、本問題に多大の参考になりましたことを、厚く御礼申し上げます。  次会は明二十九日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。   午後六時三十三分散会