○
八木(一)
委員 大先輩に若僧の
意見を率直に聞いていただきまして、非常にありがたいと思います。私どもも、もし言って誤りの点がありましたら、今度またそういうことを訂正するようにします。ぜひ一つ
論議を前向きで進めてもらいたいと思います。
実はこの
金額の点でございますが、前にも申し上げましたので簡単に申し上げますが、六十五才で月三千五百円という
金額が、一応
社会保障制度審議会の
年金制度に対する答申を
もとにして、自民党でも検討され、
厚生省で原案を作られた。
社会保障制度審議会の
委員を私いたしておりまして、いろいろなものに関与いたしましたけれども、
年金の答申が一番ふできな答申であります。それ以外は相当ですが、あれはあそこの答案としてはふできであります。特に障害や母子で、
政府のあとで出された原案の方が前向きであったことを主張いたしました私としては、
政府の力が
幾分その点前向きであったことを
理解いたしております。非常にふできといってはほかの方に失礼かと思いますけれども、少なくともほかの答申よりは不十分だった答申であったわけでございますが、それがその当時で、経済の成長をごくわずかに見ておりまして、二%の成長と見ています。その後
所得倍増
計画、経済の成長
計画が進みまして、ぐんぐんと伸びております。ことしは少し調整期に入っておるようでございますけれども、どんなに少なくとも五%や六%で伸長することは明らかであろうと思います。また政権交代が行なわれまして
日本社会党が
内閣を作ってやるときには、
計画的ではございますけれども、自民党さんより以上に成長させるつもりでございますから、政権が交代してもそれ以下になる心配は毛頭ない。ところが、間違った推定で二%で組んでおります。そこでさらに余裕をとって、一・五でそういう
年金額がふえていくという
計算にいたしまして、時の生活保護基準の一人当たり大体平均二千円ということから
計算いたしまして、それで四十年後に三千五百円、一・五のパーセンテージをとっております。そういう
金額を出した。ところが、この点は、今度
政府の方が、
社会保障制度審議会の不十分な答申をさらに不十分なものになさったわけでありますが、
社会保障制度審議会では四十年後を設定しておる。
政府の方の原案は、開始が四十五年後であります。大体これは不十分なものをさらに値切ったという形で、
政府の原案は非常に間違っておるわけでありますが、そういう点で、明治以後の経済成長率は全部で四%、それから終戦後の経済成長率は一〇%をオーバーしておるのではないか。そのくらいであって、経済成長は、成長率が減るという
議論もありますけれども、どんなに減っても少なくとも五%以下にはならないと思われるときに、二%というような低い――複利
計画でありますから、二と五の開きは天井と平地くらいの大きな違いが出てくるわけであります。そういう間違った
もとから答申が出、それを
もとにして
政府案が作られたわけでありますから、六十五才月三千五百円というものは、根本的に大幅に、あの時点において改定をせられなければならない問題であったのです。それについて大いに
論議がかかわされましたけれども、いろいろな準備をして今発足をするのだから、とにかくこれを通してほしい。われわれはほかの点で徹底的に反対をしましたけれども、そういうことで通ってきた。
年金制度を作ることは賛成でありましたけれども、
内容が不十分なのと
社会保険的な部分が多かったために、反対したわけであります。ところが
政府としては、与党の方々に、これは不十分でありますけれども初めだからがまんして下さい、ぐんぐんよくしますから。その一番の根本は、いろいろな手直しをしましたけれども、やはりその集中点は
金額だろうと思う。それが改定をされていないわけです。その当時でも少なくとも、二、三倍にはしなければならなかった。それがされていない。従って
国民は、やや本能的といいますか、やや感覚的でありますけれども、六十五才になって、四十五年後になって三千五百円、そんな金はどうなるかわからぬということで魅力が少ないようであります。魅力が少ないということは、
政府が非常に熱心に検討されて、一生懸命に浸透に努められておるものに対して
協力の度が足らない、あるいはそれに対して批判が起こるということの
中心の問題になろうと思います。ですから、当然最初の過程からいって変えなければならない問題であれば、急速に目標を変える必要があろうと思うのです。ただし、将来の見込みが少ないから、今、たとえば三千五百円を三倍の一万五百円にしたところで、これは二万円にしなければならない、三万円にしなければならない。この前古井さんは、
灘尾先生の御就任の前に、この
委員会で、わしは三万円ぐらいにしなければならないということを言っておられました。それはもちろん三万円くらいにした方がいいに違いない。四万円くらいにした方がいいに違いありません。しかしそれは、
計算が済んでから目標を作るということで技術的に難易はあるかもしれませんが、それよりも
国民に
理解させるためには、今一万五千円でもあるいは二万円でもいいですから、とにかく三千五百円では魅力が少ないのだ、これは変えるのだという方針を直ちに示して、それがまだ少なければ、それからじっくり検討して、一万五千円が少なければそれを三万円にする、四万円にするということを検討してやられたらいいと思うのです。検討の済むまで三千五百円でとめておきましたら、これはいろいろな
年金制度に対する
期待が少なくて、
保険料の支払いその他に対する非
協力の態度が一部まだ残ると思います。また、そうでなしに、国が
年金制度で老後のことは安心してもらえるということに十分な自信がないために、ぼろもうけをして老後の準備をしようということで、しろうとが株なんかに投資して、それですってんてんになったりする。それならまだ大したことはありませんけれども、競合するような中小企業をどんどん興す。もう隠居したり、自分のなれた仕事をしたらいいのに、一握千金をねらって妙なことを始めて、それでそっちで競合が起こって、その事業を推し進めて参りますと、武士の商法でひっくり返ってだめになってしまう。そういう老後の不安定に対する焦慮から無謀な冒険が起ころう。そういうことを防止するためには、早く目標をきめて、こういう
年金が確保されるのだから、自分のなれた仕事、自分の適当な仕事について、それにまっしぐらに邁進して給与で暮らす、あるいは商売の収入で暮らす。老後はそういうものがあるから安心なんだというような安心感を与えることが、
ほんとうに落ちついた
意味の勤労意欲を増すと思うのです。そういう
意味で、技術的なとかなんとかいうようなことでなしに、もっと勇敢に、急速に、
国民のためを思われて
年金額をふやす、具体的に今直ちにこれだけにする、さらに情勢に応じてふやすというような目標を早く立てていただきたいと思います。この幅を大幅にしていただきたい。それについての
厚生大臣の御
意見を伺いたい。