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黒木政府委員 審議会で今まで御
審議願ったうちで最も
重点を置きましたのは、
児童手当制度の
目的をどこに置くかということでございます。御案内のように、
児童手当制度をやるためには、大体
三つくらいの
目的が考えられるのでございます。諸
外国の例を見ましても、大体この
三つに分類できると思うのでありますが、
わが国の現在の
段階において、この
目的のうちのどこに
一体重点を置くべきかということに
審議の大半が費やされたのでございます。
詳細に申し上げますと第一に、
児童の
福祉を阻害する原因として
児童の
家庭の貧困というものがあげられますが、これに対して
児童手当を設けるんだという
目的が
一つ、もう
一つは、
わが国の
終身雇用制、
年功序列型賃金という
形態がだんだん
職務給に移行しつつある、これに対応してその移行を促進するために
児童手当制度を設けるべきだという
意見、第三には、貧富の問題にかかわりなく、
児童の
福祉を一そう積極的に増進するために
児童手当制度を設けるというような、
三つの
目的が考えられる。そこで、いろいろこの
目的を
検討しました結果、
問題点がいろいろ分析されたのであります。第一は、なるほど
児童手当制度の究極の
目的は、
児童の
福祉を積極的に増進することにある、従って、これに応ずる
制度をできるだけすみやかに実現することが望ましいだろう、しかし一挙に達成することがはたして容易かどうか、これは財政的な理由もございますが、なかなか困難であろう、そこで
被用者に関する
制度とそれ以外の
一般の
国民に関する
制度と、
三つに分けて進めていく必要があるのではないだろうか、つまり両
制度を同時に発足させるか、あるいは
被用者だけの
制度をまず作るか、こういう問題が
一つある。それから第二には、
被用者に関する
制度を作る場合に、
企業の
規模の
範囲をどのようにきめるかという問題がある。つまり大
企業と
中小企業その他小さな
企業まで含めて
一つの
制度を作る場合には、
所得の再配分にからんでいろいろ問題があるであろう、そこで
企業の
規模の
範囲をどのようにするかという問題。それから
賃金の
形態がだんだん
職務給になりつつあるといわれておりますが、しかし、各
企業によってこれがまちまちでございますから、まず
年功序列型さえないような
中小企業から始めて、
大体大企業にそれを及ぼしていくというようなことも一案ではなかろうか。その場合に、国のコントリビューションというものをどのようにするかという問題、それから
被用者以外の
一般国民に関する
制度としては、その財源の
調達方法がいろいろ問題になるのでありますが、その場合に低
所得者層を
対象として発足するか、あるいは最初から
被用者以外の
一般国民の全部を
対象にするかというような、
対象の問題が
一つある。それから従来の厚生年金保険とか船員保険、恩給などにおける寡婦年金とか遺児年金、先ほど御質問にございました
母子福祉年金なりあるいは
児童扶養手当など、現行の
制度とどう調整するか、あるいは併給するかというような問題、あるいは
社会保障制度と
関連して税法上のいろいろな免除の各種控除の規定がございますが、それとの
関係をどうかみ合わせるかというような問題、それからもう
一つは、こういう
手当制度のほかに、個人の経済を通さない、いわば共同社会施設と申しますか、そういう施設の整備を促進する必要性があるが、それとの
関連をどうするかというような問題、あるいは
日本における扶養の義務の
関係が、だいぶ給付の
内容と
関連を持ってくるわけでありますが、子供の養育費のすべてをこういう
手当制度によって解決するか、あるいは親の扶養の義務というもの、そういうある程度経済的な義務も残しておくかどうか、こういう問題を一体どうやるかというような
問題点についていろいろ議論がありまして、なかなか結論が出ないのでございます。しかし、ともかくも一案を作ってみて、それによっていろいろ、こういうような
関連問題を
審議するという方が、
審議を促進することになるのではなかろうかというので、次回には大体現実的に可能なと思えるような案を
一つ作ってみて、それを議題にして
審議の促進をはかっていこうという
段階でございます。
なお、先ほど申しました養育費の
調査は、その場合の
手当の
内容をどうするか、額をどうするかというような問題、特に第一子、第二子、第三子とございますが、一体第一子から始めるのか、あるいは二子以降に始めるのか、あるいは一子と二子の間に給付額の差額を設ける必要があるのかということを、この
調査によって突き詰めて参ろうという現在
審議の
段階でございます。