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1962-03-23 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十三日(金曜日)    午後一時十七分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 八木 一男君       大石 武一君    佐伯 宗義君       永山 忠則君    楢橋  渡君       八田 貞義君    松浦周太郎君       松山千惠子君    河野  正君       島本 虎三君    田邊  誠君       滝井 義高君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月二十二日  引揚医師特例受験資格に関する請願外一件(安  藤覺紹介)(第二七一九号)  同外二件(綱島正興紹介)(第二七二〇号)  同(舘林三喜男紹介)(第二七四七号)  同(小澤佐重喜紹介)(第二七七八号)  同(伊藤郷一君紹介)(第二八九五号)  同外一件(松浦周太郎紹介)(第二八九六  号)  同(松浦周太郎紹介)(第三一二六号)  同(中川俊思君紹介)(第三一二七号)  離島及び無医村の医療対策に関する請願外一件  (安藤覺紹介)(第二七二一号)  同外二件(綱島正興紹介)(第二七二二号)  同(生田宏一紹介)(第二七七七号)  同(伊藤郷一君紹介)(第二八九七号)  同(松浦周太郎紹介)(第二八九八号)  同(中川俊思君紹介)(第三一二八号)  同(松浦周太郎紹介)(第三一二九号)  引揚者給付金等支給法改正に関する請願(前  田義雄紹介)(第二七二三号)  同(野田卯一紹介)(第二七八一号)  同(仮谷忠男紹介)(第三一二三号)  同(森下國雄紹介)(第三一二四号)  同(山口好一紹介)(第三一二五号)  原爆被害者救援に関する請願倉成正紹介)  (第二七二四号)  同(中村幸八君紹介)(第二七二五号)  同外三件(田口長治郎紹介)(第二七四五  号)  同(八木一男紹介)(第二七四六号)  同(有田喜一紹介)(第二七六五号)  同(井村重雄紹介)(第二七六六号)  同(大石武一紹介)(第二七六七号)  同(大橋武夫紹介)(第二七六八号)  同(岡田修一紹介)(第二七六九号)  同(片島港君紹介)(第二七七〇号)  同(勝澤芳雄紹介)(第二七七一号)  同(小島徹三紹介)(第二七七二号)  同(渡海元三郎紹介)(第二七七三号)  同(富田健治紹介)(第二七七四号)  同(永田亮一紹介)(第二七七五号)  同外一件(原茂紹介)(第二七七六号)  同(受田新吉紹介)(第二八二〇号)  同(佐々木良作紹介)(第二八二一号)  同(阪上安太郎紹介)(第二八二二号)  同(藤原節夫紹介)(第二八二三号)  同(三木喜夫紹介)(第二八二四号)  同(山口丈太郎紹介)(第二八二五号)  同(山口鶴男紹介)(第二八二六号)  同(湯山勇紹介)(第二八二七号)  同(藤本捨助君紹介)(第二九〇四号)  同(石橋政嗣君紹介)(第三一三〇号)  同(兒玉末男紹介)(第三一三一号)  同(佐々木更三君紹介)(第三一三二号)  同(田中武夫紹介)(第三一三三号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願石山權作君紹介)(第二七四三  号)  同(勝間田清一紹介)(第二八三三号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二八三四号)  同(山崎始男紹介)(第二九〇五号)  同(滝井義高紹介)(第三一一三号)  同外四件(戸叶里子紹介)(第三一一四号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三一一五号)  一般職種別賃金即時廃止等に関する請願(佐  藤觀次郎紹介)(第二七四四号)  元南満州鉄道株式会社職員の戦傷病者戦没者遺  族等援護法適用に関する請願大石武一君紹  介)(第二七七九号)  同(田中龍夫紹介)(第二七八〇号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第二八三五号)  同(田中龍夫紹介)(第二八三六号)  同(本島百合子紹介)(第二八三七号)  同(佐々木義武紹介)(第三一一七号)  原爆被害者援護法制定に関する請願松本俊一  君紹介)(第二七八二号)  同(内海清紹介)(第二八二八号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願外一件(松本  俊一紹介)(第二七八三号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第三一一九号)  同(砂原格紹介)(第三一二〇号)  同(永山忠則紹介)(第三一二一号)  同(古川丈吉紹介)(第三一二二号)  未帰還者問題及び元満州開拓関係者対策に関す  る請願小山平二紹介)(第二八二九号)  保育所予算増額に関する請願外十一件(川上貫  一君紹介)(第二八三〇号)  同外十一件(志賀義雄紹介)(第二八三一  号)  同外九件(谷口善太郎紹介)(第二  八三二号)  せき髄損傷患者に対する長期傷病給付金増額  等に関する請願春日一幸紹介)(第二八九  九号)  全国一律八千円の最低賃金制確立に関する請適  外四件(吉村吉雄紹介)(第二九〇〇号)  同外五十五件(猪俣浩三紹介)(第二九〇一  号)  同(石田宥全君紹介)(第三一一八号)  小児マヒ対策に関する請願田邊誠紹介)(  第二九〇二号)  栄養士法等の一部改正に関する請願藤枝泉介  君紹介)(第二九〇三号)  栄養士法改正に関する請願八田貞義君紹  介)(第三一一六号)  外傷性せき髄障害者長期傷病給付及び休業補  償費の給付率引上げ等に関する請願小林進君  紹介)(第三一三四号)  同(河野正紹介)(第三一三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第三二号)  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第七二号)  臨時医療報酬調査会設置法案内閣提出第一〇  一号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案臨時医療報酬調査会設置法案及び八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案、以上五案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  3. 吉村吉雄

    吉村委員 私は 前国会で制定されましたところの児童扶養手当法の一部を改正する法律案について、若干政府の見解をただしておきたいというふうに考えます。  この児童扶養手当法の前国会におきますところの提案の説明を聴取いたしておったわけでありますが、これは社会保障制度の一環として、母子家庭及びこれに準ずる状態にある児童手当を支給する、そうして児童福祉の増進をはかるという立場で提案されておるのでありますが、しかし、その後の審査経過から明らかになって参りましたのは、それは現行国民年金法の補完的な性格を持つものであるということが、政府側答弁によってほぼ明らかになってきたというふうに考えられるわけでございます。そこで私は、まずお伺い申し上げたいのは、この児童扶養手当法という、そういう法律名称の与える一般的な印象、これはどう見て参りましても、諸外国で行なっておりますところの児童手当ないしは家族手当、こういうような印象を受けざるを得ない、このようになると思います。しかしながら、この印象というものと法案内容というものは、私が申し上げるまでもなく大へん相違いたしておって、諸外国で実施しておるような、そういう制度というものとはもうまるきり違っている、このようにも考えられるわけです。それは先ほど申し上げましたように、国民年金法の補完的な制度、そういう立場に立っての立法でありますから、そうなるだろうと思うのであります。  そこで、まずお聞き申し上げておきたいのは、御承知のようにILO社会保障最低基準に関する条約の第七部、家族給付の項を見て参りますと、すべての児童ないしは家族、こういうものについて最低限度生活を保障するために国が何らかの施策をすべきである、こういうような趣旨が盛られていることは御承知の通りだろうと思うのです。従って私は、この児童扶養手当法というものが与えているところの一般的な印象、特に諸外国においては、この法律名称を聞いただけで、おそらく日本も相当社会保障制度が充実した国だというふうに、内容を知らない場合には考えるだろうと思うのです。従って、この児童扶養手当法というものが、諸外国で行なっているところの児童手当あるいは家族給付、そしてまた、その根幹となっておりますところのILOの百二号に基づくところの社会保障最低基準に関する条約家族給付、こういうものとはどういう関係に立っているのか、どういう理解のもとにこれが考えられ、これを将来どういうふうにしていこうとするのか、このILO条約との関係一つお伺いしておきたいと思うのです。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 児童扶養手当は、お話の中にもございましたように、また前の臨時国会で御説明申し上げましたように、国民年金の中の母子年金という制度がございますが、それから漏れておる児童につきまして、主として生別母子世帯と申しますか、そういう境遇にある児童に対しまして扶養手当を出そうというわけでございますので、大体国民年金に対して補完的な意味を持っておると申し上げてよろしいと思うのであります。いわゆる国際条約ILOあたりで申しております児童手当ないしは家族給付というようなものとは、将来はともかくといたしまして、さしあたりそれに対応する趣旨をもちまして作った制度ではないと申し上げてもよろしいかと思います。今申しましたように、国民年金にありますものに相応するものとしてできておる、かように御理解をいただきたいと思うわけであります。いわゆる児童手当ないしは家族給付というようなものにつきましては、これは諸外国にもだんだんとその例もあるわけでございます。日本といたしましては、社会保障制度として欠けておる面であろうと私ども思うのであります。そういうことでございますので、今後の問題としまして、これをどう扱っていくか、どういうふうに取り上げていくかというような点について、政府部内におきましても検討中でございます。また、私ども諮問機関であります中央児童福祉審議会にも、児童手当部会という名称部会を設けまして、そこで基本的な問題から検討してもらっておるような状況でございます。行く行くは、いわゆる児童手当ないしは家族給付といううよな問題に発展をさせたいという考え方のもとに、検討いたしておるような次第でございます。この児童扶養手当法案——あるいは名称が、おっしゃったような印象を与えるかもしれませんけれども、将来の児童手当あるいは家族給付というふうな制度を考えます場合に、この児童扶養手当でありますとか、あるいは国民年金母子福祉年金というようなものが、もちろん関連を持ってくるとは思いますけれども、今の段階におきましては、そこまでの関係にはならない、もっぱら今後の検討に待つ、こういう状態であることを申し上げておきたいと思います。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 きょう私は会議録を持ってこなかったのでありますけれども、前国会におきますところの大臣答弁を見ますると、この児童扶養手当法というものが、将来の児童手当、諸外国で行なっているところの児童手当、こういうものとの関連についての質問に対して、これは将来児童手当の萌芽的な、そういう性格を有するものであるという趣旨答弁をしているように見受けるわけです。今の答弁を聞いておりますと、もちろん関連はあるけれども、あくまでも国民年金の補完的な、そういう性格のものであって、ILOの百二号に基づくところの児童手当あるいは家族給付、そういうものとは無関係だというふうに受け取れる趣旨答弁でありますけれども、この点は、前国会答弁からするとややニュアンスが違ったように考えられるのですけれども、こういう点についてはどちらの理解に立つのが正しいのですか。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 児童扶養手当制度そのものといたしましては、今申しましたようなことでございます。その対象範囲も、きわめて極限せられている対象に対しての制度でございます。さような意味におきまして、この制度がいわゆる児童手当制度としてどうなるのか、こういうことになりますと、一応これは別のものと申し上げざるを得ないのであります。しかし、今後の児童手当制度等検討いたします場合に、また将来その検討の結果でき上がります場合に、今の扶養手当制度でありますとか、あるいは母子年金制度でありますとか、そのほかいろいろ児童に関する関連した制度がたくさんあると思うのでございますが、そういうものがみな検討対象となると私は思うのであります。そういうふうに考えますれば、この制度がいわば小さな一つの芽である、こういうふうに申し上げてもよろしいかと思うのであります。心持においてはそう変わったということはないのでありますが、あるいは私の表現の仕方がそういうふうな印象で受け取れたと思いますけれども制度的に申しますれば、今申し上げますようなつもりで、実は私、前も申し上げたつもりであります。これらについては、その後の発展する児童手当制度というものを考える場合に、やはり一つの芽になる、かような考え方をいたしているわけでございます。
  7. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますと、やはりウエートとしては、当然現在の国民年金制度の補完的な性格、こういうものがこの立法趣旨だということになると思うので、それで特に私の心配をいたしますのは、すべての諸外国——すべてということは妥当かどうかわかりませんが、大多数の国におきましては、児童手当制度というものが完備され、しかもILO百二号によってその最低基準というものが明示されている、わが国におきましても、この児童手当制度というものを作れということについては、各方面から意見が出されているはずです。このような状態の中で、非常に問題があると私どもが考えておりますところの国民年金法の補完的な性格、こういう意味を持っておって発足をし、これを拡大していこうという考え方だといたしますと、これは国民年金法というものが改まらない限りこの制度自体も発展していかない、こういうふうな因果関係を持ってくるのではないか、このように考えられるわけです。この支給額と、あるいは所得制限緩和等につきましても、年金法の一部改正と見合って改正を意図されておるという点から、この点はうかがうことができるわけでございますから、従って私は、将来厚生省なりあるいは国が、本格的な意味での児童手当法というものを制度化していくために、この法律があるためにかえって児童手当法というものを作り上げる熱意というものが、むしろ減殺される危険があるのではないか、こういうようなことを非常に危惧せざるを得ないわけです。そうであるかどうかは別といたしまして、御承知のように、中央児童福祉審議会から厚生大臣に対して児童福祉行政刷新強化に関する意見、こういうものが三十五年八月四日に中山厚生大臣あてに出されておるはずでありますが、この中で、ちょっと読んでみますと、「児童福祉法が制定され、わが国児童福祉行政が戦後面目を一新して発足して以来既に十数年を経ている。この問児童福祉行政が著しく進展したことも事実であるが、しかし、反面において、いまなお不備の点も少くない。昨年十一月国際連合総会において児童権利宣言が採択され、同十二月厚生大臣よりこの宣言の決定を契機として、この際わが国児童福祉行政の全面的な刷新強化を図るについて、その具体策を当審議会に諮問されたので、これが方策について検討を進めることとなった。当審議会は、この問題について、特に小委員会を設け、本年一月以来鋭意審議を進めてきた。小委員会においては、昭和三十一年五月当審議会によってなされた児童福祉行政の諸問題に関する意見具申のその後の実施状況についての検討を含め、児童福祉行政の全般に及んで審議が行なわれ、広はん多岐にわたって論議されたのであるが、特に当面児童福祉行政刷新強化のために最低限必要と考えられる基本的事項に問題をしぼって、重点的に意見が取りまとめられ、総会における審議を経て、ここに当審議会の答申として提出されることとなったものである。当審議会は、この意見が迅速確実に政府によって実施されることを要請するものである」云々ということで、特に強調されておりますのは、諸外国と同様の児童手当制度をすみやかに実施すべきである、こういうようなことが一昨年厚生大臣あて意見として出されておる。こういう事情でございますけれども、その過程でこの児童扶養手当法案というものができたということになって参りますと、当然私は、諸外国で行なっておるところの児童手当との関連あるいは福祉審議会からのこの意見、こういうものとの関連をあわせ考えざるを得ないというふうに思うのです。従って、前国会におきますところの厚生大臣答弁等から見られますのは、児童福祉審議会に対してこの問題についてなお検討をわずらわしておる、こういう趣旨答弁があるのでありますけれども、この児童手当法制定についての審議会のその後の経過等について、若干伺っておきたいというように思うわけです。
  8. 黒木利克

    黒木政府委員 事務的な答弁でございますから、私から申し上げます。  昨年の六月、児童福祉審議会の中に児童手当部会が設けられまして、現在まで九回審議をいたしております。現在まで審議されましたおもな事項は、第一は、児童手当制度をめぐる諸問題についてでございますが、児童手当制度をめぐる経済的、社会的その他いろいろな諸問題がありますから、それについて自由討議の形で発言をし合われたのであります。その内容は、児童手当制度目的に関する問題点というものにまとまっております。それから第二に、先ほど申しました児童手当制度目的に関する諸問題を審議いたしまして、児童養育費の問題にだんだん審議が進みまして、明年度予算児童養育費調査という予算が入ったのでございます。これは全国二十六都道府県対象にいたしまして、一都道府県七十六世帯対象にして児童養育費が幾らかかっておるか、その年令別、あるいはまた、その他内容についての詳細な調査をする、そういうような調査をまとめた上で一つ具体的な案を作ってみようというようなことで、現在その案を研究することに着手をいたしておるような次第でございます。
  9. 吉村吉雄

    吉村委員 中央児童福祉審議会の中に児童部会というものが設置をされて、そうして児童手当制度化についての検討が行なわれているということは、前国会からも同じような答弁が繰り返されておるわけです。私は若干疑問に思いますのは、先ほど私が通読をいたしましたけれども、この中央児童福祉審議会では、早急に児童手当というものを制度化すべきであるという意見厚生大臣に三十五年に出している。その出したところの審議会で、今度は児童手当制度化するためにどうしたらいいかという作業を行なっている。本来であるならば、早く制度化しなさいという意見を具申しているわけでありますから、当然にこの作業は進捗をしなければならないはずだというふうに思うのです。ところが、今聞いてみますと、現在実態調査中である、こういう趣旨作業の現況でありますけれども、ここに私は若干の問題点があるのではないか。早くしなさいというふうに意見具申をしているところでありますから、この制度化のためのものをやっていこうとするのであるならば、もっとその作業というものは、あるいはその資料等も整備されておって、そうして早急に実現できる、そういうことを考えるのが常識ではないかというふうに思うのです。そういう点から考えてみて、私は、この児童扶養手当法というものが制度化されたことによって、いわゆる児童手当法というものを実際に法制化していく努力というものが、政府の間にその熱意が幾分でも薄れてきているのではないか、こういうふうに——思い過ごしかどうかは別です。しかしながら、そういうような心配をせざるを得ないわけです。ですから、この児童手当法というものを制度化するにあたって、審議会でもっと事務を促進すべきであろうというように考えますし、最も根本的な障害になっているものは一体何なのかということを、一つ明らかにしてもらいたいと思うのです。まあ私は、大体財政的な問題であろうというふうに考えますけれども、一番問題となっている点は一体何なのかということを、一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 黒木利克

    黒木政府委員 審議会で今まで御審議願ったうちで最も重点を置きましたのは、児童手当制度目的をどこに置くかということでございます。御案内のように、児童手当制度をやるためには、大体三つくらいの目的が考えられるのでございます。諸外国の例を見ましても、大体この三つに分類できると思うのでありますが、わが国の現在の段階において、この目的のうちのどこに一体重点を置くべきかということに審議の大半が費やされたのでございます。  詳細に申し上げますと第一に、児童福祉を阻害する原因として児童家庭の貧困というものがあげられますが、これに対して児童手当を設けるんだという目的一つ、もう一つは、わが国終身雇用制年功序列型賃金という形態がだんだん職務給に移行しつつある、これに対応してその移行を促進するために児童手当制度を設けるべきだという意見、第三には、貧富の問題にかかわりなく、児童福祉を一そう積極的に増進するために児童手当制度を設けるというような、三つ目的が考えられる。そこで、いろいろこの目的検討しました結果、問題点がいろいろ分析されたのであります。第一は、なるほど児童手当制度の究極の目的は、児童福祉を積極的に増進することにある、従って、これに応ずる制度をできるだけすみやかに実現することが望ましいだろう、しかし一挙に達成することがはたして容易かどうか、これは財政的な理由もございますが、なかなか困難であろう、そこで被用者に関する制度とそれ以外の一般国民に関する制度と、三つに分けて進めていく必要があるのではないだろうか、つまり両制度を同時に発足させるか、あるいは被用者だけの制度をまず作るか、こういう問題が一つある。それから第二には、被用者に関する制度を作る場合に、企業規模範囲をどのようにきめるかという問題がある。つまり大企業中小企業その他小さな企業まで含めて一つ制度を作る場合には、所得の再配分にからんでいろいろ問題があるであろう、そこで企業規模範囲をどのようにするかという問題。それから賃金形態がだんだん職務給になりつつあるといわれておりますが、しかし、各企業によってこれがまちまちでございますから、まず年功序列型さえないような中小企業から始めて、大体大企業にそれを及ぼしていくというようなことも一案ではなかろうか。その場合に、国のコントリビューションというものをどのようにするかという問題、それから被用者以外の一般国民に関する制度としては、その財源の調達方法がいろいろ問題になるのでありますが、その場合に低所得者層対象として発足するか、あるいは最初から被用者以外の一般国民の全部を対象にするかというような、対象の問題が一つある。それから従来の厚生年金保険とか船員保険、恩給などにおける寡婦年金とか遺児年金、先ほど御質問にございました母子福祉年金なりあるいは児童扶養手当など、現行の制度とどう調整するか、あるいは併給するかというような問題、あるいは社会保障制度関連して税法上のいろいろな免除の各種控除の規定がございますが、それとの関係をどうかみ合わせるかというような問題、それからもう一つは、こういう手当制度のほかに、個人の経済を通さない、いわば共同社会施設と申しますか、そういう施設の整備を促進する必要性があるが、それとの関連をどうするかというような問題、あるいは日本における扶養の義務の関係が、だいぶ給付の内容関連を持ってくるわけでありますが、子供の養育費のすべてをこういう手当制度によって解決するか、あるいは親の扶養の義務というもの、そういうある程度経済的な義務も残しておくかどうか、こういう問題を一体どうやるかというような問題点についていろいろ議論がありまして、なかなか結論が出ないのでございます。しかし、ともかくも一案を作ってみて、それによっていろいろ、こういうような関連問題を審議するという方が、審議を促進することになるのではなかろうかというので、次回には大体現実的に可能なと思えるような案を一つ作ってみて、それを議題にして審議の促進をはかっていこうという段階でございます。  なお、先ほど申しました養育費の調査は、その場合の手当内容をどうするか、額をどうするかというような問題、特に第一子、第二子、第三子とございますが、一体第一子から始めるのか、あるいは二子以降に始めるのか、あるいは一子と二子の間に給付額の差額を設ける必要があるのかということを、この調査によって突き詰めて参ろうという現在審議段階でございます。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 次回というのは、いつですか。
  12. 黒木利克

    黒木政府委員 三月の末日に一応開く予定にはしております。
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 この児童扶養手当法というのが、諸外国で行なっているところの本来の児童手当、こういうものとの関連なしには考えられないということは、大体皆さん方も同じような考えだろうと思います。日本よりもいわゆる経済の成長なり生産の度合いというものが低いといわれている国が、この児童手当の問題については率先してこれを制度化している、こういうことから、わが国でもこれを急いでやっていかなければならない、こういうことを各方面から指摘されて、今審議会の方で作業中で、その経緯がわかったわけであります。  そこで、今いろいろな作業経過を報告になったわけですが、このままの状態でこれらの作業を進めていくとすれば、非常に長時間を要するということになるのではないか。この際何かの制度を実施する——日本の場合には児童手当というものを実施するということは、いわば大英断だろうというふうに思うのです。そういう場合に、いろいろ事務的な問題を検討していくということよりも、最も大切なことは、この施策というものを実施していくところの熱意が一番大切じゃないか。そういう熱意と行動によって、初めて障害というものは克服できることになるだろうと思うのです。そういう点から考えてみて、この審議会の方では、すでに一昨年、児童手当制度というものを迅速に実施すべきだという意見を具申している、これを受けて政府がまた審議会の方にその実施段階作業を求めている、こういう状態なんですが、私は、こういう作業を何回も繰り返してやっていくというあり方は、むしろ制度を作り上げるためにのみやっているきらいなしとしない、こういうふうに考えられるわけです。先ほども申し上げましたように、事務的にはたくさんの困難というものがある、このように考えられますが、それらを突破していけるものは、やはり厚生大臣なりあるいは総理大臣なり、これを実施していく熱意いかんが事柄をきめるというふうに考えます。  そこで、この際お聞きしておきたいのは、厚生大臣が、このILOの百二号条約に基づいての、その基準に従ったところの児童手当あるいは家族手当、こういうものを実施していくためにどういう決意を持っているかということが一つと、それからそのあとの事項とも関連いたしますので、現在外国で実施しているところの児童手当制度というものはどういう内容のものなのか、二、三例をあげて知らせてもらいたいと思うわけです。  特に一つつけ加えてお聞きしておきたいのは、この児童扶養手当法は、所得によって制限をする、こういうあり方でありますが、これはILOの百二号とは全く性格が違うものであるということが言われているからそれでもいいと思うのでありますけれども外国で実施しているところの児童手当制度の中に、所得によって手当支給というものを制限しているというような例があるのかないのか、こういう点も、あわせて一つ知らせてもらいたいと思います。これは事務局の方でいいと思います。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 児童手当制度についての今日までの検討の過程につきましては、今局長から御説明申し上げました通りでございます。この制度については、お話しのありましたように、かつて中央児童福祉審議会でもすみやかにこれをやるべし、こういう話があり、また国会でも、皆さん方の方から御熱心な御要望もあったわけであります。政府としましても、日本社会保障制度というものを通観いたしました場合に、この制度がいわば欠けておると申し上げてもよろしい分野だろうと思うのです。部分的には、社会保障の一環といえば一環といえると思いますが、今の児童扶養手当制度であるとか母子福祉年金であるとか、そのほかあちらこちらに児童の保護に関する制度があるわけでございますけれども、いわゆるILO等でいっておりますような児童手当制度というものは、まだ制度的にまとまったものは日本にはない。その新しい分野として残されておるわけでございます。政府としましては、日本社会保障制度の改善充実をはかっていく、また完備をはかっていくということを大きな目標といたしておるわけでございますので、この児童手当制度につきましても、これを実現いたしたいと考えておる次第でございます。しかしながら、新しい分野に手を染めます場合に、あまりまた性急であってはならぬと私は思うのです。十分検討を遂げ、日本の国情に沿ったものから作っていかなければなるまいかと思う次第でございます。現在各国において行われておる諸制度、私もつまびらかにはいたしておりませんけれども、やはりいろいろな形の制度があるように思うのです。そういうふうなものも十分参考にしなければなりません。同時にまた、日本自身のこれまでの沿革なり、また実力なり、日本の国情なりというものに合たものを作っていかなければなるまいかと思いますだけに、この検討につきましては、私はやはり相当慎重に、周密にやってほしい、かように考えておる次第でございます。従って、先ほど話もありましたように、一体どういう趣旨重点を置いて考えていくか、どういう形のものを作っていくかというような基本的な問題から十分検討してもらいまして、成案を得ましたならば厚生省としましては熱意を持ってこれが実現に努力する、こういう気持でもって現在諮問をいたしておるところでございます。御了承をいただきたいと思います。  そのほかの点につきましては政府委員の方から……。
  15. 黒木利克

    黒木政府委員 ILO条約との関係でございますが、ILO条約で、家族手当の部門で批准を了しておる国は五カ国でございます。西ドイツ、イタリア、ノルウェー、スエーデン、イギリスでございます。数は少ないのでございます。  それから、各国の児童手当制度の分類をしたものがございますが、まず全国民対象にしておるか被用者のみを対象にしておるかというようなことで分類したものがございます。その中で、先ほど申されました所得制限があるかないかということで、所得制限のありますのも、たとえば第二子については所得制限があるが、第三子以下についてはないというような分類もございまして、詳細な分類が要るわけでございますが、一応所得制限のある国では、デンマークとかブラジル、西ドイツ等でございます。  それから財源の関係で、全額国庫負担をしておるか一部国庫負担か、あるいは全額を事業主が負担しておるか、事業主と被用者が折半しておるか、あるいは自営業者等がどういうふうな負担になっておるかというような、これはたくさんの国がございましてたくさんの分類の方法がございますけれども、分類した表がございますから差し上げたいと思います。
  16. 吉村吉雄

    吉村委員 そこで、先ほど、現在の審議会作業状況から見まして、三月末日ごろに、一応今日の段階において実施できるであろうというような想定に立った具体案を持って作業を進める、こういう段階にあるという話があったわけでありますが、もしそれが審議会の案として答申された場合には、これは相当詳細にわたって調査をした上での結論だろうと思いますし、それからまた、現段階において実施でき得るものという前提に立ってのようでございますから、そうしますと、厚生省としましては、その答申を最大限尊重して直ちに法制化していく、こういうような考え方があるのかどうかを、この際承っておきたいと思います。
  17. 黒木利克

    黒木政府委員 先ほども申しましたように、児童手当制度は、わが国の社会的な、経済的な、そのほか他の政策的な関連と非常に複雑にからみ合っておりまして、各方面の代表の方の御意見がなかなか一致しないのでございます。特に最低賃金制度との問題が実は最もむずかしいのでございまして、ある委員の意見によりますと、最低賃金をやった後でなければ児童手当はやるべきじゃないじゃないか、何となれば、最低賃金の額をきめる場合に、児童手当制度が先行するというと、最低賃金が下回ってきめられるという心配もあるではないかというような論議も実はございました。扶養手当制度を実施するにいたしましても、他の制度との関連が実に複雑でございます。しかし、そうは言っておっても、小田原評定になるおそれがあるものでありますから、ともかくも一つたたき台として原案を一つ作れということになったのでございまして、この原案をもととして、たたき台として、いろいろな諸制度との関連あるいは順位、そういうものを審議して参るということになりますから、中央児童福祉審議会の答申は早急には期待できないと思います。しかし、ともかくも審議の促進の方法として、そういう手だてを考え出したということでございますから、審議促進の熱意は御理解願いたいと思うのであります。
  18. 吉村吉雄

    吉村委員 中央児童福祉審議会は、作業をすることが任務じゃないと思うのです。児童福祉のためにどうあるべきかということを審議してこれを答申する、こういう任務であるわけですから、そういう過程を今日まで経てきた、しかも中央児童福祉審議会の方から、児童手当法については早急に政府は実施をすべきであるという意見を具申をしておる。その具申をしたところの同じ機関が、いろいろな過程を経て、そうして、いろいろな困難はもちろんあると思うが、あっても三月末日までに一応の現実に実現可能だと考えられるような案を骨子として審議をしていこう、こういう段階にきたというのでありますから、だからその事務がいつまでも続けられるというだけでは何らの効果も果せないと思う。当然審議会の方としては、前に意見を具申しているという観点からしても、政府に対して意見答申ということが想定をされる、またこれを早めてやってもらわなければならないと私どもは思うのです。その場合に、一体政府は、その答申案というものを直ちに法制化していくという、そういう熟意がなくては、単にこの事務的な繁忙を繰り返しているだけにすぎないということになると思います。だから先ほど私が申し上げましたように、問題は、いろいろな障害はいずれの場合にでもある。あるけれども、これを実施していこうとする熱意が、問題を解決するか解決しないかの分かれ道になるのでありますから、そういう点について審議会の方の作業がそこまで進んでおるとすれば、答申案が出た場合には、早急にこれを法制化していくという、そういう決意を聞かなければ、私は今日までの努力というものは全くむだであるし、あるいはまた、制度化しようということを幾ら答弁されても、答弁のための答弁、こういうことに終ってしまうと思うのです。私が申し上げるまでもないと思うのでありますけれども、国連の児童憲章によると、児童は一番先に救済の対照にならなければならないということがいわれておるわけでありますし、それを日本でも受けて立っておるわけでありますが、その児童に対するところの救済制度が一番おくれている。おくれているからこそ、各方面から指摘されて政府もようやく本腰になってきた。こういう事情でありますので、審議会の方がそこまで進んでいるとすれば、答申案が出た場合には、これを次回の通常国会等に提案をするという、そういう考え方があるか——あるはずだというふうに思うのでありますけれども、その点について、大臣どうですか。
  19. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど私がお答え申し上げましたように、私はこの問題については、よほど慎重な検討を重ねた上で結論を得るべきものじゃなかろうか、こういう考え方をいたしておるわけであります。審議会の方の審議経過でございますが、私の聞いておりますところによれば、基本的な問題について、いろいろな意見が出ておるという段階だろうと思うのであります。ただ、いろいろな意見が述べっぱなしにされておったのでは、なかなかまとまらないというので、何かそこに話の種になるものを一つ出して、それをもとにしていろいろまた具体的に論議をしてもらおう、こういうつもりで案を事務当局の方で何か考えましてこれを出していこう、こういうふうな段階ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。従いまして、それをかりに採用していただいて、それを中心にいろいろ論議が重ねられるといたしましても、問題が問題でございますだけに、なかなかその審議には相当な時間がかるのじゃなかろうかと私は思っておるのでありまして、いつまでものんべんだらりとやられておったのでは困るのでありますけれども、同時にまた、この問題についてはほんとうに真剣に検討してもらいたいと私は思っておりますので、拙速ということは必ずしも期待いたしておらない。十分一つ審議を遂げていただきたい。その結果として、児童福祉審議会から何らかの答申が得られました場合においては、これは政府としてその答申を尊重するのは当然のことだと私は思う。もちろんそのときの政府の事情、都合等によりまして、直ちに全部を採用することができるかできないかということはありましょうけれども、基本の心持としましては、これを尊重して実現に努力することが、これは当然政府としての任務であろう、かように考えておる次第でございますが、なかなかその答申までに——私はあまり性急に答申を出されても困る。十分検討を遂げられました上で、これならばというようなものをぜひ出していただきたいものと期待しておるような次第でございます。
  20. 吉村吉雄

    吉村委員 それでは、あと若干残っておるのですけれども、本会議ですから一応終わります。
  21. 中野四郎

    中野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十七日午前十時より委員会委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会をいたします。    午後二時五分散会