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滝井委員 今の統計ではちょっと区区で、はっきりしたものがつかめぬようですが、これはあとでもう少し典型的なところを私言いたいのですが、問題をもとへ返して、
国民健康保険の
一般会計からの繰り入れというものについて、どうも
政府は自信がないということは非常に残念なんです。これは
現実にその市町村が入れておるわけですから、入れさしておきながらそれについての跡始末を
厚生省が何も考えていないというところに問題がある、これは何か考えなければいかぬ。しかも、地方財政
計画に載らぬような金を四十五億も五十億も出さしておって、そのまま制度を進めておるというところに、この制度に対する熱意が
不足で、そして欠陥があるということですよ。これは当然何か考えてもらわなければならぬ。
そこで、これと関連をしてきまずから申しますが、こういう形になって
一般会計からよけいに入れておるところはどういうことになるかというと、調整交付金が今度はよけいにいくのです。この
保険というのは、所得の
格差を縮めるための
保険にもかかわらず、所得の
格差を拡大する
保険になっておるということです。だから
社会保障ではなくなってきておる。その一番典型的な例を、調整交付金というものに焦点を当てて少し問題にしてみるといい。これは
一般会計からの繰り入れと無関係ではない、非常に重要な関係を持つのです。というのは、まず東京都と茨城県の石岡市というのが調査されておりますが、総
医療費で東京が三千九百十五円、茨城県の石岡市は千九百七十一円、だから半分ですね。この場合に
国庫負担はどういうことになるかというと、
医療費でいくわけですから、東京都にはどっさり金がいくわけです。石岡市には、二割五分ですからいかないわけです。そうすると、今度は
一般会計からの繰り込みを見ると、これが重要な役割を演じてくるのです。
医療費をよけいにするということは、
一般会計からの繰り入れがある
程度よけいになれば、また
医療費の
負担がそれだけ余裕が出てくるわけです。だから東京都のような大きな財政力が背後にある自治体の
国民健康保険というものは、やみであろうと何であろうと、とにかく莫大な金を入れるわけです。そこの政治力です。そこの住民の要望と、そこの首長、すなわち東京都の
社会保障に入る金が、首長の熱意でよけい入るか少なく入るかという形が出てくるわけです。この
一般会計からの繰り入れというものは、東京と石岡は雲泥の差で、東京がよけい入ってくる。そうすると、その場合に一体調整交付金はどうなるかというと、この調整交付金はこうなる。東京は被
保険者一人
当たり百八十七円もらえるのです。ところが石岡はゼロです。何ももらえないのです。これは自治体の貧富の
格差を縮めるといってできておったこの調整交付金が、今度は逆に、お金持ちと貧乏人との
格差を広げる役割になってきておるのです。茨城県全体の十六市の一人
当たりの
平均調整交付金の額は九円です。東京が百八十七円であるにもかかわらず、東京よりはるかに
国民所得の低い茨城県が九円です。そうしますと、これは一体どういうことになるかというと、
一般会計からの繰り入れが多くて、従って
医療費の支出が多い、だから東京はますますお金持ちになる、茨城県の石岡市はますます貧乏になる。
国民健康保険というものは、貧富の
格差を調整するためにできておる制度なんですよ。ところが、これはそうならない。従って、これは調整交付金自体のやり方に問題がある。なるほど問題があるのですよ。調整交付金のむずかしいやり方をちょっと見たけどれも、相当の問題がある。そこでこの際私たちは、
医療給付費を二割五分から上げる
理論的な根拠ができないとするならば、この調整交付金によって、お金持ちと貧乏人の
格差を是正する
方向に持っていかなければならぬ。従って、東京都の百八十七円というものはゼロにして、石岡市は百八十円に持っていく制度を作らなければならぬのです。そうしないと
格差の是正にならない。これは
実態調査が明らかにそうなっておる。従って、さいぜん私が財政力の豊かなところということを指摘したのはそのためなんです。すなわち、
一般会計から入れ得る
程度の財政の余力のあるところは、それだけ
医療の
給付費に
制限がないのです。一番冒頭に申しました入院とか往診あるいは寝具等に対する
制限が、
一般会計から入れて、なくなってくるわけです。従って、そういう
制限のないところは
医療費の総額が多いですから、調整交付金もよけいいくし、二割五分の
国庫負担金もよけいいくからますますよくなってくる。だから
格差拡大の
方向になってくる。こういうように、この
国民健康保険制度というものは貧乏人をよくするための制度であるのが、お金持ちをよくする制度に逆転をしてきた。こういう制度のままでこの七割
給付を実現しようとするならば、貧しいところはますますよけいな
保険料を取らなければならぬということになる。従って、そこの住民は、国の補助はもらえずに、しかも吸い上げられる
保険料は増加をするという制度であるというのが、今の
国民健康保険の
実態なんです。
もう時間がないけれ
ども、これは私もう少し綿密に
質問して、あなた方を泣かせなければならぬところなんです。現在、
国民健康保険の被
保険者の実に七一%は農業人口です。これはあなた方の調査では、四二%が大体農業らしいという今個人的にお話がありましたが、七一%は農業人口です。そうしてこの七一%の農業人口の中で、わずかに六・四%だけが所得税の
負担能力がある。これはことし、多分千四百万人くらいの所得税の納入者がおります。千四百万だったと記憶しておりますが、あるいはもっとふえているかもしれません。
〔
委員長退席、小沢(辰)
委員長代理着席〕
ところが、その中で、農業における所得税の担税者というものは非常に少ない。
国民健康保険に加入している被
保険者の七一%は農業人口ですが、その中で六・四%しか所得税を納めていないんですよ。そうすると、他の者は全部所得税を納めない零細農家、その中から市町村民税よりよけいなものを取る。そうすると、七割
給付を実現しようとすれば、今の約四倍
程度の三千円を取らなければならないということになる。これは一体できるかということなんです。これは不可能ですよ。そうしてあとの二九%は何かというと中小企業者です。二九%は中小商工業者で、しかもその中小企業者の中の六割
程度、もうちょっと水増しすれば七割
程度が、固定資産を持たない零細企業者です。そして自治省の調査では、
国保被
保険者の八八%は
年間二十万円以下の低所得者層であるということは、これは奥野さんも認めておる。そうすると、最近における農業人口の変化をごらんになると――これは僕の友人で並木君というのが農林省におりますが、この並木君あたりの調査によっても、
昭和二十五年は、農業人口というのは全人口の四割ちょっとを占めておったのです。ところが、これが三十六年には二割九分ですよ。というと千三百万人
程度になる。ぐっと下がってくるわけです。そして千三百万人の農業人口の中で、長男で農業を継ぐというのは、今まで大体四十万人ぐらいありました。四十万人ぐらい若者が農業に行っておった。ところが、三十六年は七万六千人しか農業人口は残らない。そうすると、農業人口の大半は女性なんです。ここから
保険料を吸い上げて七割
給付をやるのですから、現在
日本は農業革命というものが起ころうとしておる。当然これが機械化の
方向にいかざるを得ないでしょう。そうすると、そういう農業における変化の
実態、それから今度七割
給付をやる場合に、今よりも四倍の
保険料をこれから取っていこうとするのですから、これはとてもできない。そうして今の制度のままならば、貧乏なところには金がいかない制度になっておるのです。それで、これを七割
給付を実現すると
厚生省はおっしゃるのだから、一体どういう手品でやるかということをここで明らかにしてもらわなければならぬわけです。そうでなければ、これから
厚生省は、新聞なんかに七割なんということを言ってもらっちゃ困る。ここでそれを明言できずして、新聞なんかに言ってもらっては困る。あなた方は、このからくりの中で一体どうして七割
給付を実現するのか。まず、
保険料の
負担というものが、
現実に市民税が高くてどうにもならぬというところにきておるんですよ。今
首尾木さんが御
説明したように、今のままの制度でいけば、
保険料を、七百七十二円を三千二円にしなければならぬ。それが不可能ならば、それに肩がわりするものとして
一般会計から入れるか、あるいは
国庫負担を増加するよりほかに方法はない。だから、ここを
政府は忌憚なく
国民の前に明らかにしてもらわなければならぬ。今の
国民健康保険というものは、逆立ちの
国民健康保険です。富裕なところにはたくさんいくけれ
ども、貧乏なところにはいかないという
国民健康保険なんです。それは
国庫負担においても、調整交付金においても同じです。この矛盾を、あなた方はどういう方法で打開してやろうとしておるのか。これは今の問題です。来年、再来年の問題ではない。今年からの調整交付金なり
国庫負担金の配分の問題に関連をしてきておる。ここらあたりを、もう少しはっきりしておいてもらいたいと思うのです。それをはっきりしなければ、
国保なんか二割を二割五分に上げて、附帯
決議をつけたって意味がないですよ。だからここで、少なくとも与党も野党も、思い切って
国庫負担を二割を三割に引き上げ、そうして五分の調整交付金を一割に引き上げ、合計四割にする、そうすると七割
給付が実現できるから、何かそういう応急の
措置を講じないと、附帯
決議なんかでその場その場でのがれるということは、
国民健康保険の現状では非常に問題があると思うのです。今私は明らかにその矛盾を指摘したのですから、
政府は
一つそれらのものに明快なる解明をやっていただきたいと思うのです。