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1962-03-15 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十五日(木曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    佐伯 宗義君       永山 忠則君    楢橋  渡君       八田 貞義君    松浦周太郎君       松山千惠子君    渡邊 良夫君       赤松  勇君    淺沼 享子君       大原  亨君    河野  正君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主計局次長) 谷村  裕君         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (保険局長)  高田 浩運君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     大崎  康君         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君         厚生事務官         (保険局国民健         康保険課長)  首尾木 一君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         自治事務官         (税務局市町村         税課長)   佐々木喜久治君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 三月十四日  引揚者給付金等支給法改正に関する請願(小  笠公韶君紹介)(第二三二五号)  同(堤康次郎紹介)(第二四七〇号)  同(橋本龍伍君外一名紹介)(第二四七一号)  同(細田吉藏紹介)(第二六四〇号)  同(菅太郎紹介)(第二六九一号)  療術の制度化に関する請願外五件(堤康次郎君  紹介)(第二三二六号)  同(前田義雄紹介)(第二四六五号)  同(濱田幸雄紹介)(第二四六六号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二六六二号)  同(齋藤憲三紹介)(第二六九三号)  生活保護基準引上げ等に関する請願小林進君  紹介)(第二四三五号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願外五件(戸叶里子紹介)(第二  四三六号)  同外一件(広瀬秀吉紹介)(第二四三七号)  同(逢澤寛君紹介)(第二四八六号)  同(大村清一紹介)(第二四八七号)  同(島本虎三紹介)(第二四八八号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二四八九号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二六三八号)  同(藤井勝志紹介)(第二六三九号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二七〇二号)  同外一件(森山欽司紹介)(第二七〇三号)  元南満州鉄道株式会社職員の戦傷病者戦没者遺  族等援護法適用に関する請願外一件(濱田幸雄  君紹介)(第二四六七号)  同外四件(田中龍夫紹介)(第二四六八号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第二六三六号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願堤康次郎君  紹介)(第二四六九号)  同(高津正道紹介)(第二六六七号)  同(松平忠久紹介)(第二七〇五号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願細田義安紹介)(第二四九〇  号)  同(中村高一君紹介)(第二六三七号)  同(福田篤泰紹介)(第二六六八号)  災害救助法を適用されない災害における生活保  護者仮設住宅建設に関する請願二階堂進君  紹介)(第二四九八号)  鹿屋市に国民宿舎建設に関する請願二階堂進  君紹介)(第二五〇〇号)  市地域における生活保護費県費負担に関する  請願二階堂進紹介)(第二五〇一号)  原爆被害者救援に関する請願吉村吉雄君紹  介)(第二六四一号)  同(村上勇紹介)(第二六六九号)  同(二宮武夫紹介)(第二七〇一号)  日雇労働者健康保険法改善に関する請願外一  件(八木一男紹介)(第二六四二号)  引揚医師特例受験資格に関する請願加藤勘十  君紹介)(第二六六三号)  同外一件(松浦周太郎紹介)(第二六六四  号)  同(前田榮之助君紹介)(第二六九七号)  同(堂森芳夫紹介)(第二六九八号)  離島及び無医村の医療対策に関する請願加藤  勘十君紹介)(第二六六五号)  同外一件(松浦周太郎紹介)(第二六六六  号)  同(前田榮之助君紹介)(第二六九九号)  同(堂森芳夫紹介)(第二七〇〇号)  原爆被害者援護法制定に関する請願高津正道  君紹介)(第二六九四号)  同外一件(高橋等紹介)(第二六九五号)  同(前田榮之助君紹介)(第二六九六号)  一般職種別賃金即時廃止等に関する請願(五  島虎雄紹介)(第二六九二号)  戦争犯罪関係者補償に関する請願保利茂君  紹介)(第二七〇四号)  保育所予算増額に関する請願外三十件(島上善  五郎紹介)(第二七〇六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二五号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第九号)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出  第三二号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  国民健康保険法の一部を改正する法律案児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案及び八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありまするので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 大臣承知のように、医療給付内容については、医療給付内容がいいとか悪いとか、こういう優劣はございますけれども、一応国保財政がだんだん好転するようなきざしにあったわけです。ところがそれは大体三十五年度までで、三十六年度よりは、特に昨年二回にわたりまする医療費改定等もございますが、そういうものも手伝って、好転しつつあった国保財政が、今度はまただんだんと窮迫を告げてくる、こういう情勢に変化をいたして参ったのであります。従いましてそういうものの解決のために、特別療養給付費補助金制度とか、あるいは国庫負担率が今度二割五分、こういうような引き上げ等が行なわれるようになったわけでございます。ところが実際には、今私が御指摘を申し上げましたように、一方においては行政指導として給付内容改善をはかる、こういうこと、さらに一方においては受診率というものが高まっていくというようなことで、なるほど今度の法案による引き上げによって国庫負担が二割五分になる、そういう面はございますが、一方においては、今申し上げるような別な新しい条件が生まれてくる。そこで考えようによりましてはイタチごっこのような格好になってくるという状態にあるのが、今日の国保財政実態であるというふうに理解するわけです。そこで今のようなこそく的な方法は、なるほど若干進歩ではありますけれども、必ずしも抜本的な解決法だとはいえないというふうに私は考えるわけです。そこでそういう抜本的な解決策について、どういうふうなお考えで今後臨んで参られようとするのか、その辺の御所信一つ承っておきたいと思います。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民健康保険は本年度の当初から、いわゆる皆保険の形を整えたわけでございますが、その内容につきましては、御指摘通りに問題がたくさん残っておるわけでございます。皆保険実施日なお浅くというところでございまして、さような関係もございましょうし、また医療費引き上げというような事態にも当面いたしまして、国保財政がなかなか安定というところまで至っておらないのが現状だろうと思うのでございます。給付内容お話のように改善余地が非常に多く残されておる、この方もやって参らなければなりませんし、同時にまた各保険者財政状況から見ますと、いまだ安定しないという状況でございますので、実は国保としては皆保険実施早々非常にむずかしい局面に直面いたしておるわけでございます。しかし何と申しましても、財政的な基盤というものが不安定な状態のままでは、給付内容改善すると申しましましても、なかなか思うにまかせないところがあるわけでございますので、本年度医療費引き上げにつきましては、とりあえずあまり保険者の迷惑にならないというので、国も相当奮発いたしたつもりでございます。来年度以降の問題としましては、今回御審議をお願いいたしておりまする国の負担率引き上げていく、こういう形でやっておるわけであります。しかし今回五分引き上げることによって、当面の急は大体カバーし得たかと私は思うのでございますけれども、今後の趨勢考えます場合に、問題の医療内容向上ということもありますし、受診率も必ずしも低下するというふうには考えられぬわけであります。この財政問題を中心といたしまして、さらに根本的に検討をしなければならないのではないか、私はさように考えておるわけであります。従って国保の問題につきましては、今抜本的というお言葉がございましたが、ほんとうに国保財政なりまた給付内容改善なりについて、厚生省としましても真剣にこれに取り組みまして、将来安定しつつ向上していくという方途を見出さなければならない、こういう考え方のもとに現在おるわけでございます。これからの勉強だと私は思っております。
  5. 河野正

    河野(正)委員 今大臣から今後の国保財政に対しまする抜本的な方針についての御所見を承ったわけでございますが、これはなかなかむずかしい問題でございます。しかしながら政府が少なくとも今日医療保障制度確立を期待をし、さらには強力に推進するという建前をとっておりまする以上は、これは国保財政というものを充実していただいて、少なくとも他の保険と同様に内容というものが整備充実されなければならぬというふうに考えるわけです。  そこで一般的な方針については今御所見を承ったわけでございますが、さらにもう少し具体的にどうやるべきかというふうな点で若干お尋ね申し上げたいと思います。それは今私が一般的に申し上げました財政状態というものを、もう少し深く堀り下げて検討いたして参りますると、なるほど昭和三十二年におきましては約十四億の黒字、さらに三十三年度におきましては二十億、三十四年度におきましては十九億、三十五年度におきましては四十一億、こういうように三十五年度まではやや好転の傾向を示したのでございますけれども、先ほど私が御指摘申し上げましたように、三十六年度におきましては、それはもちろん原因として医療費の二回にわたる是正、あるいはまた受診率向上、その他いろいろあると思いますけれども、いずれにいたしましても保険財政というものが今度はやや窮迫状態に移行した。ところがそういう新しい条件のもとに、窮迫したという事実もございますけれども、一方におきましては好転しつつあるという三十四年度の決算におきましても、全般的には黒字である。ですけれども保険者ごと検討いたして参りますると、実は赤字を出した保険者というものが五百六十六、これは全保険者の一七%に及んでおるわけです。そういたしますると、全般的に地ならしをしてながめてみると、なるほど黒字財政であるけれども、しかし今申し上げますように、一七%に相当する五百六十六という保険者というものは赤字だ、こういうことで保険者の中で非常なアンバランスがある。これは保険財政が非常に好転しておる過程の中でも、そういうふうな状態であるということになりますると、今度は保険財政というものがだんだで窮迫をしてくるという状態になりますると、今申し上げましたような傾向というものが、さらに一そう濃厚になってくるという一つ見通しが立つわけです。そこで全般的な問題についても相当強力な対策というものを講じなければならぬけれども、そういうアンバランス、ことに保険財政窮迫するというような一つ傾向の中でございますから、従ってそういうアンバランスというものをさらに拡大されるというふうな一つ見通しでもあるわけです。従ってそういうアンバランスに対するところの対策というものを、当然これは重点的に考えていただかぬと、全般だけを地ならしして考えていただいても、今申し上げますようにそういうアンバランスのために、この医療保障制度というものが非常に欠陥を伴ってくるということになりますので、そういう点に対しましても、一つこの際御所信を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘通りだろうと私も思うのでございます。全体的には向上改善されておりましても、個々保険者について検討いたしますれば、事情がいろいろ違っておるということは認めざるを得ないと思います。この辺のことにつきましては厚生省としましても、国民保険、皆保険がいわば実施早々ということでございます。三十六年度までの間はこれまでの努力によりまして、財政状態の悪いところも各保険者努力ないしは厚生省もいろいろお世話しまして、だんだん改善していきつつある。一挙に皆保険ということになりました結果、まだ経験の浅いところも私は少なくないと思います。ことに大きな都市あたりで新しく皆保険を始めた、国民保険を始めたというようなところもございますので、まだ実施早々に属する保険者も少なくないわけでございます。そういうふうなことでただいまの状況というものについて、もう少しわれわれも見きわめる必要があるのではないか。言いかえますならば、全体的な観察だけでなくて、やはり個々保険者実情というふうなものにつきましても、もっと検討を必要とするのではないか、かように考えるわけであります。実情を精査いたしました上で、今後の対策というものについても確立をして参らなければならないと思う次第でございます。保険そのものとしては同じようなことをやっておりましても、個々保険者の、個々の町村の保険状態から申しますと、資力の関係その他でいろいろ事情も違っておる。そこらについては、その辺の調整をとる方法というふうなものも、もっとこさいに考えていかなければならぬ。現在もその制度はあるわけでありますけれども、さような点につきましても、さらに厚生省としましては研究もし、調査もいたしまして、改善をはかっていかなければならぬ余地があるいはあるのではないか、かようにも考えている次第でございます。何さま本年度から皆保険をやり、しかも実施早々医療費引き上げというようなことにも遭遇いたしましたので、かなり国民健康保険としてはむずかしい事態に早々からぶつかっておるようなわけでありますので、やはり冷静に事態を見きわめました上で、これに対する対策というものは考えていかなければならない、こう考えておる次第であります。
  7. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ具体的資料を示して、国の対策が早急に立てられることを私どもが強く望みますゆえんというものは、いろいろ根拠があるわけです。たとえば保険料保険税検討して参りましても、ややともいたしますと、国のそういう対策がおくれておるために、国民に対するしわ寄せというものが非常に強く押しかかってきているのではなかろうかというような感じも実は持つわけです。そこで若干そういう点に対します私どもの意見を述べて、そうして早急に対策が立てられることを実は希望いたすわけであります。  そこで資料を見てみますと、昭和三十五年度の一世帯当たり調定額というものが大体三千八百十六円です。それから被保険者の一人当たり調定額が八百七十八円になっております。ところがこれを三十年あたりからずっと検討して参りますと、昭和三十年におきましては一世帯当たり調定額が二千六百三十六円、被保険者一人当たり調定額が五百十五円、それが三十一年、三十二年、三十三年、三十四年、三十五年となるに従って、だんだんと上昇しておる。ところが上昇するについては、いろいろ理由があると思う。ところがその上昇の度合いというのが非常に問題だと思うのです。と申し上げますのは、三十五年になりますと一世帯当たり調定額が三千八百十六円、それから被保険者一人当たり調定額が八百七十八円、そうしますと三十年から三十五年、五年間に大体一世帯当たり調定額で四八%の上昇を示しておる。それから被保険者一人当たり調定額になりますと大体七〇%の上昇率を示している。これは医療内容向上したりいろいろございますから、それだけ結局住民福祉に役立つわけですから、ある程度上昇する点はやむを得ぬと思います。ところがこれがあまり急激に上昇しますと、国民に対するしわ寄せというものが非常に大き過ぎる。従って犠牲が大き過ぎるというようなことになろうかと考えるわけです。そこで今まで各保険団体その他のアンバランス、あるいは保険財政に対しまする一般論、そういう点を取り上げて参りましたが、結局せんじ詰めて参りますと、国民に全部しわ寄せがくるというふうな結果になっておると思うのです。そこでこういう急激な国民一人当たりに対する負担上昇ということについては、十分考慮をいただかなければならぬというふうに考えるわけですが、そういう点に対してどのようにお考えになっておりますか、この際あわせてお尋ねを申し上げておきたいと思います。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 数字の示すところはお話通りだと私も思うのであります。これにはいろいろ理由もあれば原因もあろうかと存じます。だからある意味においては国民健康保険をやったことが、効果があるのだということにもなろうかと思うのであります。つまりだんだんと国民健康保険が発展いたしますにつれまして、国民病気の場合の必要な措置がとられやすくなってきた。つまり医者にかかりやすくなってきたというふうな事態も、確かにその間に私はあると思います。それからまたふえました理由の中には、御承知のように国民保険は当初どちらかといえば農村地区といいますか、そちらの方から出発して参りましたが、だんだん拡充するにつれまして、都市の方面にもこれが移ってきた。そういうふうなことも受診率を大いに高めた一つ原因になろうかと思うのでございます。これが高まるにつれまして、被保険者負担というものもだんだんと高くなってくる、こういうことになってきたわけだと思うのでございます。今お話通りに、現在の被保険者負担というものが年ごとに急激に増してくるというようなことは、望ましい事態とは私も思っておりません。   〔委員長退席、 澁谷委員長代理着席〕 問題は、被保険者負担能力が一体どうあろうかということにも関係をいたして参りますので、負担能力がどんどん上昇しておることでありますならば、この負担を吸収して格別大なる支障もないということになりましょうが、そこに多少無理が入ってくるということになりますと、これは考えなければならないということになるわけでございます。政府といたしましては、今直ちに被保険者のそういうものについて——結局はこれは国民負担になってくるわけでありますけれども、経済の成長、国民所得上昇というようなこととにらみ合わせまして、その辺のことも考えていかなければならない。今直ちに私は国の負担率をどうするこうするということを申し上げる用意もございませんけれども、しかしお話のように、被保険者の過重の負担になっておるということになりますれば、自然、制度というものも堅実な発展を遂げにくいということにもなって参りますので、十分その辺のことにつきましては研究して参りたいと存じます。
  9. 河野正

    河野(正)委員 実は今私は数字をあげて、今の制度のもとでは国民に対するしわ寄せがかなり強過ぎるという点の御指摘をしたわけです。と同時に、最近厚生省が発表いたしました国民健康調査によりましても、医療費出費というものがだんだんとふえておるというような結果が出て参っておるわでです。この調査によりますと、国民は一年間の中で大体延べ一カ月ぐらい病気をしたりけがをして苦しんでおる、こういう結果が出ております。そうして現金で払った治療費というものが年間千二百五十一円に上っております。一方では皆保険といわれて、医療保険制度というものが強力に推進されておる。ところが一方においては今申し上げたように、国民の一世帯当たり負担というものが高まると同時に、そのほかに、これは厚生省でやった国民健康調査によりましても、医療に関するそれ以外の出費というものがふえておるということですから、先ほど私が申し上げましたような保険料保険税数字以上の犠牲を払っているというようなことも言えようと思うのです。それからさらには私ども考えてみなければならぬ点は、病気をした場合に医師歯科医師にかかった者は五五%です。それから医師歯科医師にかからずに売薬によった者がまだ四〇%おる。一方では国が医療保障制度を強力に推進していく、そして国民保険達成というようなことになりつつあるわけですけれども、今申し上げるように、なお実際正規医師あるいは歯科医師にかかった者が五五%で、実際病気であるけれども正規医師歯科医師診療を受けないで、個人の金で売薬にたよって病気をなおしているというふうな人々が四〇%もおる。こういう実態というものは、これはもう国保に限ったことではございませんで、今の医療保険制度そのものにある。しかし給付内容が悪いとか、あるいは僻地で診療所の恩恵に浴することができぬというようなこと、この数字の中で大きな比重を占めているのは、やはり国保に属する階層の方々ではなかろうかという判断もいたすわけです。そういたしますと、今後の国保のあり方については、私はよほど考えていただかなければならぬ面が多いのじゃないかと考えるが、一体こういう実態というものは、今日の制度のどういう点に主として基因しておるかというふうにお考えになっておるのか、その辺は今後の制度改善という面に大きな要素を持って参りますから、私はそういう点に対しまする御所見もこの際承っておきたいと考えます。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民健康保険実施せられまして、その結果としまして、従来医者にかかりたいと思ってもかかれなかった人が医者にかかりやすくなった、こういう事実は確かにあると思うのであります。従って医療保険制度が進んで参りますにつれまして、医師歯科医師にかかるいわゆる医療費というものがふえていくということは、当然の趨勢ではないかと思うのでございますが、ただ一面におきまして、まだ医師歯科医師にかからないで、家庭内でしかるべく治療をしておる向きも少なくないように思います。実は私驚いたのでありますが、先般地方に参りましたときに、いわゆる家庭薬の配置をやっておる業者の諸君にお目にかかった。そうしますと、私は大体しろうと考えで、都市はともかくとして農村方面にそれが非常に多いのだろう、こういうふうに実は考えておったのでありますが、東京の銀座を中心としての地区に、かなり多くの配置薬というものが配置せられておるというような実情も伺いましたので、こういうような点を考えますと、なるほど保険制度はできた、そしてかかろうと思えば医者にもかかれるということでありますけれども、これはおそらく資力の問題というよりも、長い間の習慣といいますか、いわゆる実際上の便宜といいますか、そういうふうなところが、やはり家庭薬というものの存在の意義をあらしめておるのではなかろうか、かようにも考える次第でございます。こういうふうな問題は今度どういうふうに発展して参りますか、趨勢といたしましては、やはり私は正規医師歯科医師にかかっていくという方向がだんだんと大きく出てくるものと存じますが、まあ一がいにそうも言えない、今のような事例もあるわけであります。軽い、大したことでもないような病気については、家庭薬の存在の意義というようなものも決して没却するわけには参らない。大勢から申しますと、今申しました通りでございますが、この辺のことにつきましても、まだ私も的確な判断ができかねるのでありますが、いずれにしましても病気を早期に発見し、早期に治療するということが、健康保持の一番大きな眼目であろうと私も思うのでございますが、そういう意味から申しますと、家庭薬の効果もさることながら、やはり正規医師歯科医師にかかりやすくしていくということについては、政府として始終関心を持っておらなければならないことでありまして、言いかえますするならば、各種の健康保険実施の上におきまして、そういうふうな点をおろそかにしてはならない、こういう考え方をしております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 私ども家庭薬の効果がゼロだというふうには考えないわけでございますが、しかし今せっかく皆保険制度というものが形式的には達成されておる、あとは内容充実の問題が残っておると思いますけれども、そういう情勢でございますから、今後そういう内容の充実刷新というものについて努力を願わなければならぬ。これは当局がやるだけでなくて、実際の被保険者がこれに対する意欲を示す、あるいは協力を示すということにならぬと、完全な発展を期することはできない。ところが今のようなことでは、私はそれがだんだん強化されるというふうには考えませんけれども、この皆保険の実質的な発展のテンポというものに対して、ある程度障害を与えるのではなかろうか。先ほども申し述べましたように、国民一人当たり一年間に現金で支払った治療費が千二百五十一円、この中身を検討しますと、医師が八百八十六円で、歯科医師が八十六円、それから売薬が二百円、それからあんま、はり、きゅう、骨継ぎ、これが六十五円、案外売薬の比重が強いのですね。医師の約四分の一は売薬で済ましておる。ところが実際に、最近のインフルエンザもございましたが、集団赤痢あるいは食中毒というような不幸な事態がちょいちょい起こりますが、そういう不測の事態とこういう面との関係等を考えて参りますと、これはただ金銭上の問題ではなくて、公衆衛生の中でも非常に重要な意義を持ってくるのではなかろうかと私は考えるわけです。そこで私は、今まで国民負担が強過ぎるというような点で御指摘は申し上げましたが、しかし単にそういう負担が強まるというだけでなくて、公衆衛生の面に及ぼす影響がかなり出てくるように私ども考えるわけです。  そこで一つこういう制度改正の機会でありますから、この際公衆衛生局長がおいででございますので伺っておきたいと思いますが、今申し上げますような売薬にたよる、あるいはとにかく正規医療機関に受診せず、そのために起こってくる疫学上の影響、これはかなり多いと思うのです。そういう点について明らかにされるような資料がございましたならばこの際お聞かせ願って、そういう点に対しても大臣は強く御関心を持っていただいて、さらに改善のテンポを早めていただくという意味で、局長の方から御所信がありましたならば一つお示しいただきたい。
  12. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの公衆衛生関係の、ことに疾病に限定いたしますと、疾病で医療機関にかからないで売薬等で事を済ませる、そのために流行病の大きな爆発の原因になるというようなことは、常識的には非常にあるのではないかと考えておりますが、インフルエンザ等については、医療機関にかかった、かからぬということでこういうような結果になるというのは、なかなかデータがつかみにくいのでございますが、御承知のように日本で一番被害が大きくて、公衆衛生上の大問題であります赤痢の場合、私どもがつかめますのは年間約十万の届出患者でありますが、これは医師にかかって明らかに赤痢として発見された者、それ以外に食品衛生監視その他の保菌者検索で推定約五十万人くらいの者が症状を現わす、ないしはもちろん届出もせず保菌者としてある。このうちの約二割ないし三割は各種の薬剤に対しましても耐性菌による保菌者である。こういう事実があるわけであります。軽い下痢の場合に、医師に行けばいいものを行かないで、自分で薬を買って飲んだために、症状はおさまったが保菌者になったのではないか、この説は非常に強うございまして、これは最近の赤痢の学問上にも一番重大問題になっております。これらの耐性菌の保菌者がどういうような原因でできたかというのは、結論は出ておりませんけれども、今のお話のようなものとも非常に関係がある。しかしこれは必ずしも経済的に困るから、医者に行きたいのだが行かぬで、自分で薬を買って安く上げたとも考えられないのでありまして、これは経済のみならず、もし赤痢だと診断されたらどうしよう、営業に差しつかえる、その他のいろいろな本人の生活上の問題が非常に大きな部分を占めて、隠蔽というようなことが相当あるのではないかと思われます。その他幾つかの同様な問題がございますけれども、ただ医療機関にかかる、かからぬ、売薬にしたために、この流行なりあるいは公衆衛生上の疾病が疫学的に大きくなっているというデータは、なかなかつかめておりません。常識的な判断をいたしております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 今局長から御答弁になりましたように、なかなか具体的な資料は捕捉しにくいと思いますけれども、常識的に私はかなりあると思うのです。たとえば今度のインフルエンザにおきましても、簡単ですから売薬にたよっていく。予防注射の方にはなかなか入り込まないで、売薬にたよっていく。それがために感染源をだんだん拡大していくというようなことで、常識的に考えながら、私はそういう傾向というものがこのインフルエンザあるいは集団赤痢その他に、かなり大きな影響力を持っておると思うのです。そういう面から見ても、こういう点については医療保険制度の中でかなり検討を加えなければならぬ問題ではなかろうかというようなことで、この際一つ御考慮をお願い申し上げておきたいと思います。  それから今までちょいちょい出て参りましたけれども、今日国保において問題点がたくさんございます。たとえば負担能力の問題等もその一つでございますし、もう一つの問題は、給付内容が一般の被用者保険と比較した場合に大きな開きがある。これはしばしば政府の方でも御指摘を願っておるわけでございますし、また実際国民の側に立ちますと、これが非常に大きな問題になってくる。中にはそれがために国民保険といわれます中で、大きな比重を持っておりますところの国保に対しますところの住民の不満というようなものも、かなり強いものがございます。今一、二の例を拾って参りましても、応診の給付制限が七%、給食一八%、寝具一九%、歯科補綴一八%、こういうふうに給付制限というものがかなりある。ところが国保の階層というものは、これもしばしば指摘されておりますように、低所得者層というものが大体国保の範囲内にある。そこで私はこの給付内容改善するということが、国民保険の達成にとって非常に急務だというように考えます。なるほどいろいろ厚生省から出されておりまする書物その他を読みましても、給付内容改善については極力努力しなければならぬというようなことが示されております。示されておりますけれども、実際は現実に給付制限のないのは六〇%程度であって、四〇%前後というものは給付制限を受けておる。こういうふうな状態では国民の側も満足するわけにいきませんし、さらに私は国民保険制度といわれる一枚看板というものが、そういうことでは納得できかねるというように考えるわけです。そこでなるほど今度の法改正によって国庫負担が五分引き上げられて、二割五分というようなことでもございますけれども、なかなか今のような状態では、給付内容改善に手を伸ばすということは、至難なことではなかろうかというように私は考える。ところが実際に受益者の方から見ると、給付内容改善ということが非常に切実な要望であります。それでは一体政府は、この給付内容改善についてはどういう方法努力されていかれようとするのか、ただ給付内容改善のために行政指導をしたいとか、その他のことが表明されておりますけれども、一体具体的にはどういうふうにやるのか、この辺はきわめて重要なことだと思いますので、一つお示しいただきたい。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日本のいわゆる国民保険は何と申しますか、いわば皆保険と申しながら、きわめてラフなデッサンができ上がっているというような状況ではないかと思うのです。従って各種保険の間のアンバランスがひどいということは、しばしば指摘をいただいておる通りであります。われわれとしましても、デッサンをほんとうの絵に描き上げていかなければならぬということは、これはもう基本的な考え方であります。しかし、実際問題として考えます場合には、やはりそれをやってのけるだけの力がなければ、実現はおぼつかないわけであります。なるべく早くやりたいという心持はだれしも持っておることだと思うのでございますけれども、被保険者負担能力の問題もございましょうし、あるいはまた地方公共団体等の財政的な問題もからんで参ってくる問題だと思います。そう簡単には結論が出にくい問題であります。今日までやっておりますことは、これはもう河野さんよく御承知のように、逐次いわゆる従来の給付制限というものを緩和し、あるいは撤廃するという努力をいたしておりますし、さらに進んでは、被保険者の療養給付費に対する負担率等も引き上げて、被保険者医者にかかりやすい方向に進んでいかなければならぬと思います。方向はその通りだと思いますけれども、問題は、どうしてこれをこなしていくかというところに問題があるわけであります。先ほども申しましたけれども、今各種の医療保険がありますし、またそれぞれの保険にいろいろ問題がございますけれども、特に国民の大半を占めておるような国民健康保険を充実して参らなければ、健康保険をやったと申しましても満足はできないわけであります。いかにしてこの国風健康保険財政的な基盤を整え、そうしてこれに基づいて内容的な改善をはかっていくかというのが、実は当面一番大きな課題ではないかと私ども思っておるわけでありまして、せっかく検討して参りたいと思います。何にしても、あまり実情を無視して背伸びをしたようなことをやりましても、結局はほんとうの成功はむずかしいことでもありますので、着実な態度をもちまして漸次進めて参りたい、こういう考え方をいたしております。国民に経済力がついてくる、あるいは農村等もだんだんと各種の政策が実施されることによりまして力がついてくれば、その方面からの一つ解決の糸口もついてくるだろうし、また国の財政力がますます伸びてくるということになりますれば、その方面からの施策もまた講ぜられてくると思います。いずれにいたしましても、着実に進んでいくためには、一歩々々やっていく以外にはない、こういう考え方で、実は気持は非常に急いでおりますけれども、さりとてまた慎重を欠いた態度もとれないということで、まともにこの問題と取り組んで検討し、漸次解決の方途を見出して参りたい、こういうように考えておる次第であります。いずれにいたしましても、今日医療保障の問題が非常にやかましい。その中でも、特に厚生省として関心を持って急いで何とかやらなければならぬ問題として、私ども国民保険の問題を特に考えておる次第でございます。
  15. 河野正

    河野(正)委員 この国保の使命を大別してみますと、その一つ保険給付、もう一つは被保険者の健康の保持増進の、この二つに大別されるだろうと考えるわけであります。特に農山漁村におきましては、あるいはまた僻地におきましては、そういう被保険者の健康の保持増進という面における使命は、非常に重大なものがあろうというように考えます。そういう意味ではこの直営診療所というような施設が具体的に出てくるわけでございますけれども、もともとそういう農山漁村なり、あるいは僻地においては、財政面において非常に脆弱な面がある。ところがそういうところにこそ、この健康の保持増進をする必要性というものが非常に強い。そこでなかなかむずかしい問題が起こってくるわけでございますけれども、大体この直営診療所については、その設立のために三分の一の国庫補助がある。ところがもともと農山漁村あるいは僻地におきましては、財政状態というものが非常に脆弱である。そこでこの直営診療所の一部に国庫補助をいただいても、実際にはそのあとの運営というものがなかなか困難だということは、これはもうしばしば論議された点でございまして、今さら申し上げるまでもないと思いますけれども、しかし現実にはそういう現実というものが依然として残っておる。しかも使命からいいますると、非常に重大な使命があるというようなことでございまするので、こういう点については早急に具体的に解決してもらう必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、今これらの点についてどういうふうに御検討を願っておりますか、一つこの際お示しを願えればお示しを願いたいと思います。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国保財政状態改善いたしますこと、ないしは国保内容改善していくということが、急務であるということは御指摘通りであり、われわれもその通り考えているわけでございます。その問題の一環として、実は私も感ずるのでございますけれども病気になってからこれをなおすというのが、主として現在の健康保険の仕事になっておるわけでございますが、しかしこれをさらに根本的に考えますれば、日本全国各地域を通じまして病気を少なくするということに、お互いに努力しなければならぬと思うのでございます。先ほど流感の話も出て参りましたが、各種の伝染病等の問題を考えます場合に、ある地方において伝染病がしょうけつするということになりますれば、もうそれだけでも健康保険はやっていけないというような事態にもなるわけでございますので、疾病の予防とこういう問題につきましては、特に厚生省としましてはもっともっと考えなければならぬ面があるのではないか。同時にまた、平素の各被保険者家庭なり御本人の健康の保持という問題につきましても、もっと積極的な努力があってよろしいのではないかと思う。それを一体どこでこなしていくかという問題を考えます場合に、これが保険のワクの中で解決されていくのが望ましいことであります。ことに地域組織でありますところの国民健康保険のごときは、その地方の住民の健康保持のために、実は相当な活動をしてほしいというような性格を持っておるものだと思うのでございますが、これを一体保険のワクの中でやるかどうかという問題も、一つの研究問題だと思いますが、私はそういう方面につきましてはやはり国の健康対策といいますか、国民の健康を保持し増進するという立場から、国が相当な力をこの方面に注いでもいいのではないか、こういう考え方でございます。そうしますことによって財政的にかなり各種の保険者を、間接的、直接的かは存じませんけれども、とにかく援助することにはなるのではないか、こう思うのでございます。この予防方面について、あるいは健康の保持について、従来以上に政府なりあるいは地方の公共団体が、その本来の仕事として努力をするという方向にさらにこれを進めて参らなければならぬ。また同時に医療施設の少ない地域における診療所の問題がお話にも出て参りましたが、これも私は現在の国民健康保険状況のもとにおいて、あるいはまたその地域の状況において直接診療所を持って、そうしてやることがはたして現状に適するのかどうかというような点についても、よほど政府としては考えなければならぬ問題があると思うのであります。現在まで若干の助成もいたして参っておりますけれども、そういうことでは結局なかなか持たないという地域もあろうかと思うのであります。これにつきましてはやはり国民健康保険というふうなワクの中だけで考えないで、国の一つの施策として、そういう地域に対する診療所の便宜をどうして与えるかという問題として考えていかなければならぬ。国民健康保険を推進するという立場に立っております以上は、国民健康保険の内部だけの問題としないで、国がやはりそういう問題にもっと力を注いでよろしいのではないか。実際問題としては河野さんも御承知通りに、なかなかむずかしい要素を含んでおると思いますけれども、いろいろな工夫をこらすことによって、側面から国民健康保険の成績が上がって参りますように、国としても援助していかなければならぬのではないか。いやしくも全国民に対して保険実施し、みんなが保険に加入するということが義務づけられております以上、国なり公共団体として、国民あるいは地方の住民のために、そういうサービスをもっと積極的にやるべきではないか。こんな考え方もいたしておりますので、いわゆる僻地対策とか、無医村対策とかいうような問題につきましても、今までも何がしかのことはやって参りましたけれども、その努力はやはり今後もさらに工夫をこらして進めていかなければならぬものと考えまして、いろいろ検討をしてもらっておるところでございます。
  17. 河野正

    河野(正)委員 せっかく医療保険制度が推進され、国民保険制度が達成されましても、内容が伴わぬというと、農業共済ではございませんけれども制度はいいものであっても内容が伴わぬというと、結局住民あるいはまた国民から総反撃を食うというような結果になって、私どももそういう点はかなり重要視しなければならぬ点ではなかろうかというようなことを考えておるわけです。従って大臣が仰せのように、必ずしも国保のワクの中で解決せぬでも、要は皆保険制度内容を充実して、国民保険医療制度というものを完全に達成するということが目的でございますから、それらの点については国が、国保であろうとなかろうと、要するにそういう面に対しまする対策確立していただくということが問題でございますので、一つさらに格段の御配慮をいただきたいと考えます。  それから先ほど申し上げましたように国保の使命というものは、保険給付と被保険者の健康の保持増進にあるというようなことで御指摘を申し上げましたが、その使命を達成するためには、先ほど申し上げましたように直診の問題もございます。あるいはこれは政府が直診に限らず、政府として考えますということでございますから、それでけっこうでありますけれども、いずれにいたしましてもそういう問題がございます。  それからもう一つは、特に健康の保持増進の面でございますが、それらにつきましては保健婦を中心とするところの保健サービスを行なうということが、一つの使命であろうかというふうに考えております。特に後段の保健サービスでございますが、これは農山漁村あるいは僻地におきましては伝染病、それから寄生虫病などの予防活動、あるいはまた食生活の改善、環境衛生の改善、そういう多種にわたる面におきまして、かなり重要性を持っておると思う。しかもその推進母体というものが、先ほど申し上げますように保健婦である。ところが実際にその保健婦の総数を見て参りますと、五千三百六十三名、保健婦を設置いたしました保険者数というものが二千三百五十というような実態でございます。ところがこういうふうな保健サービス、先ほどの施設の問題もございますが、そういうふうな保健サービスとか施設というような面は、住民の健康の増進のみならず、疾病の予防に寄与する点が非常に多いわけです。これは大臣もちょっと触れられましたけれども病気をなおすというよりも、病気を少なくするという面に寄与する面が非常に多いわけです。このことが実際には国保医療費の合理的節減に、非常に寄与していくというようなことになる。それですから、積極的に国保財政を強化するという面もございますけれども、一面においては、今私が指摘するような保健サービス、あるいは施設の改善等によって疾病を少なくしていく。そのことにより、保険財政の合理的節減に役立っていく。そこで今私が指摘しましたような保健婦の設置、この面も保険財政に結果的に非常に大きな影響をもたらす点でございますから、当然私はそういう財政の面からいっても、この保健婦の設置というものについては強化していただく必要があると思う。結果的にはその方が金が要らぬで済む。しかも結局病気にならぬで済むということになりますと、経済面にも寄与するが、住民の健康増進にも非常に役立つ。これは一石二鳥でございますから、そういう点については、当然設置のために国が格段の御配慮をいただくということが適切な方法ではなかろうか。なるほど今日におきましても三分の一は国庫補助でございますけれども、全額補助いたしましても、結果的には財政上プラスになる面が非常に多い。全額出してもかえってもうけるというような結果になりはせぬかというような考え方が、成り立つわけでございますけれども、そういう点については、さらに格段の努力を願わなければならぬところではなかろうかというふうに考えるのですが、その点についてはいかがでございましょうか。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は御質問の御趣旨に全く同感でございます。国民健康保険が力がつきまして、それぞれの保険者において、こういうふうな保健婦等を充実いたしまして、いわゆる保健サービスと申しますか、保健活動というものが活発に行なわれるということが、むしろ話としては本筋ではなかろうかと思うくらい大事なことだと思うのであります。また健康の問題、あるいはその地域における栄養の問題、そういうふうな問題について、平素から住民の福祉のためにこれが行なわれているということになりますれば、いわゆる疾病の治療というふうな面は、よほど様子が変わるかと考えまして、その意義は非常に大きいと私は思うのであります。さような意味合いにおきまして、保健婦の設置等につきまして、国といたしましては今後さらに考究いたしまして、一そうその方を強化して参りたいという方向については、私は何も異存はございません。できるだけ努力したいと存じます。同時にまた現在の状況のもとにおきましては、国民健康保険組合それ自身にそういう方面の活動力が不十分であるという段階におきましては、必ずしも国民健康保険のワクに拘泥する必要もない。側面からこれを援助していくというような意味合いにおきまして、国民健康保険の協力を得て、各地方における保健活動をもっと強化するというようなことも考えていかなければならぬ。来年度の予算といたしましては、御承知のように保健婦について若干増を見込んでおります。また単価につきましても、若干の増額を見込んでおりますような次第でございますが、これとても決して十分とは存じませんけれども、私はお話のような方向は実は非常に大事なことではないか、こう思いますので、国保財政、あるいは給付内容改善というような問題とあわせ考えて、この方面のことについても十分考慮して参りたいと思います。
  19. 河野正

    河野(正)委員 国民の健康増進というような面が出て参りましたので、それについては、国保の場合には直診が適切であるのか、あるいは国が別個にそういう医療施設というものを具体的に考えていくべきであるか、いずれにしても国民保険制度というものを内容的に充実していくという面から、いろいろお尋ね申し上げたわけでございます。  それで広く国民の健康増進管理という建前から、医療機関の整備というものが、実際の地方の実情に即した形で推進されなければならぬわけでございますが、そういう整備計画というものは、今日どういう方向で行なわれつつあるのか、この辺の事情一つこの際承っておきたいと思います。
  20. 川上六馬

    ○川上政府委員 医療機関の整備計画でございますが、これは大体御承知と思いますけれども、少し前のことから申しますと、昭和二十五年に戦後の医療機関の整備を行なうために、医療機関の整備の中央審議会がございまして、そこで医療機関整備計画というものが一応策定されております。続いて昭和二十六年に基幹病院整備計画要綱というものが医療審議会の方で決定されまして、大体の整備方針というものは、その時代から一応出ているわけでございますが、その後だいぶ医療機関が整備されて参りまして、整備目標などを改めなければならぬというような事態になって参りましたので、医務局といたしましては、先ほど申しましたような計画などを骨子といたしまして、医務局の案を策定いたしたわけであります。その大体のところを申し述べますと、病院の整備計画、それから診療所の整備計画、それから財政措置というふうに分けて考えているわけでございます。  病院につきましては、一応昭和四十年度を目標にしておるわけでございますが、三十五年の末におきましては総病床数が人口一万に七三・五となっているのを、昭和四十年度には人口一万対九一・三というような目標を立てまして、その内容につきましては、一般病床、あるいは精神病床、結核病床、伝染病床などで内訳を作っているわけでございますが、その目標を達成いたしますために、都市や農村別に人口当たりの基準を作りまして、そしてその基準以下のところを基準まで持ち上げるというようなことを、補助金とかあるいは融資によって現在やっているような状態でございます。   〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕  それから診療所につきましては、これは大体少なくとも人口二千に一つ診療所は整備しなければならぬ。それから歯科診療所の方は、人口三千人に少なくとも歯科の診療所一つ置きたいということを目標にやっておるわけでございます。無医地区等につきましては、特に国民保険のもとでは整備を急ぐ必要があると考えておりますので、国保の直診もやっておるわけでございますが、特に診療所の自立自営ができない、そういう無医地区に対しましては国が助成して、御承知通り三十一年度から年次計画でやっております。その計画は一応明年度三十九カ所の診療所を設置いたしますと、当初の目的を一応達成するという状況になっております。それから診療所を建てるまでもないというところにつきましては、巡回の自動車とかあるいは船とかというものを国庫で助成いたしまして、補助をいたしまして整備をしつつある状況でございます。
  21. 河野正

    河野(正)委員 国民の健康増進、管理という建前で、医療機関の整備が行なわれなければならぬということは、今まで私どもが申し上げてきた主張の中からも必要であろうと考えます。また厚生大臣もそういう方針でいろいろと具体的に御努力願うということも、これは既定の事実でございます。そこで今局長からも御説明があったように、都市、農村それぞれ人口割で基準を設定をして、適正配置をしていこうというふうな御説明もあったようでございます。そこで一般論として申し上げますと、そういう医療機関というものは普遍的に設置されるという方向をとらざるを得ないだろうと考えるのです。中には特殊なケースもございます。そこで一、二例をあげて御指摘を申し上げて、お答えを願いたいと思いますが、たとえば先般来問題となって参りました福岡の基幹病院、これがいよいよ四年ぶりに完成をするわけでございます。ところが現地でもぼつぼつ問題になっておりますのは、一般の患者も大いに歓迎するというようなことで、病院建設事務所では早くもPRを開始したというようなことが新聞で報道されておるわけです。私はりっぱな施設、高度な施設で、国民が恩恵に浴するということを否定するものではありません。ところが今私が指摘しましたように、全く営利主義でやるような方針については、どうも納得できない。これは明らかに国の整備計画にも反することであって、当然国としても慎しまなければならぬ。ところがそういうPRを積極的に開始した、そういうことになりますと、私は何もこれは特定の地域ではなくて、普遍的に基幹病院であっても直診してもよろしいということになると思う。こういうことが今局長からお答えのございました整備計画の方針にややそれる行為ではなかろうかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  22. 川上六馬

    ○川上政府委員 これは御承知のように、厚生省は国立病院というものの中で、特にブロックに一つは基幹病院として権威のある総合病院を作ろうという方針を立てまして、すでに大部分終えておるわけでありますが、福岡におきましてもやはり九州ブロックの一つの基幹病院を作るということで、現在整備をいたしております。これはやはり私どもといたしましては、実際の診療上の最も権威のある病院にしたいということを目的にいたしておるわけでございます。従いまして設備の方としても事業の方にしましても、特に充実をいたしたいと思っておるわけです。今のように一般患者をすべて吸収するPRをして、一般患者をそこに吸収するという意図は、私は持っておらないわけであります。おそらく施設といたしましてもそういう意味でPRをやっているとは思いません。病院というものは御承知のように一般診療所で扱いにくいものを扱う、ことに専門的な総合的な治療を必要とするものを扱うというような趣旨で行なうものであります。診療所で扱えるものを病院で吸収しようというような考えはございませんし、むしろそういう患者が来ましても、これはもよりの診療所によって治療を受けられて十分と思うものは、それを帰すようにしたい。あるいは入院患者でももうすでに入院治療を要しないものは自宅に帰して、もよりの開業医の方で診療をしてもらうというような建前で、これを運営したいというように考えておるわけであります。もしそういう点に反するようなことがございましたら、私の方から十分注意をいたしたいと思っております。
  23. 河野正

    河野(正)委員 権威ある診療実施していきたい、そこに私はブロックごとに設置する意義が出てくると思う。ところが新聞で報道されておりますように、何でも歓迎いたしますというようなPRを行なっておるということでございますけれども、そういう方針でいけば、何もブロックごとに設置する必要はない。それこそ普遍的に設置すればいいのであって、ただ権威のある診療をする、そういう意義が私はブロックごとに設置したという結果になっておると思うのです。ところがややもいたしますと、今日までのいろいろな公立医療機関の運営を見ておりますると、必ずしも今のような状態ではないので、実はこの前も心配いたしまして、一つ運営委員会を作ろうじゃないかということで、運営委員会を設置していただいて、運営の適切化をはかっていこうということでございましたけれども、今のような傾向がだんだん出てくるということは、必ずしも好ましい傾向ではない。私はりっぱな医療国民に及ぼすということについては賛成でございますけれども、今のような営利主義で運営されることについては、所期の方針にももとることでございますから、十分御注意を願いたい。それに関連いたしまして、福岡の古賀の三診療所の組織統合が形式的には一応完了いたしました。一応三十六年度は二百床建設されるということでございますが、それではこの国立療養所福岡東病院が今後完全に完成されるまでには、若干の歳月が必要だろうと考えますが、今後どういう年次計画で組織統合と同時に施設の完全統合をお考えになっておりまするか、その辺の事情一つお聞かせ願いたいと思います。
  24. 川上六馬

    ○川上政府委員 古賀の三診療所の統合は、御承知のように本年一月四日行なったわけでありますが、この計画は私の方では大体次のように考えておるわけであります。  現在の福岡療養所、清光園、それから福寿園というものを合わせますと、病床といたしまして千七百十床でありまして、この三つであったものを統合して一つの基幹的な療養所にしたいということでありますが、この統合のために特に施設を縮小するということは考えておりません。しかし一ぺんに全部恒久的な施設にするということもできませんので、大体におきまして八百床くらいのものを恒久建築にしていこうという考えを持っておりまして三十六年度におきましては一応一億五千九百万円ばかりの予算を計上して、外科の病棟二百床、それから手術棟というものを作るということにいたしておるわけであります。現在予算の御審議を願っておるわけでありますが、三十七年度におきましてはもう一つのもとの東京療養所である清瀬の病院というものを合わせて一つにするという計画がございまして、それを合わせて三十七年度の予算といたしましては一億六千万円、それから国庫債務の二億五千九百万円、合わせて四億一千九百万円ほどのものを計上いたしております。これをどう分けるかということにつきましては、まだ決定いたしておりませんけれども、基幹病院でありますところの福岡東病院というものにつきまして、この中から適当な予算を計上して、さらに三十七年度整備をいたしたいと思っておるわけであります。結局だんだん年次的にこれを整備いたしまして、りっぱなものにしたい。結核につきましてはもっと診療の上におきましても、研究あるいは医療関係者の再教育というようなものについて、十分期待にこたえるようなものにいたしたいというふうに考えておる次第であります。
  25. 河野正

    河野(正)委員 結局年次的に整備されなければならぬことは、私ども了解するわけです。それでは一体具体的にどういう方針で年次計画を立てられておるか、それを聞いておきませんと、これは、後ほどいろいろお尋ねしますけれども、もちろんこれと関係いたしますので、一つ具体的にどういう方針を立てられるか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  26. 川上六馬

    ○川上政府委員 ただいま申しましたように、第一年度におきまして外科の病棟と手術棟を作っていく、外科の病棟が二百床、それから第二年度におきましては、今それを検討いたしておるわけでありますが、むろん病床もふやしていかなければなりませんし、最近では管理棟が急ぐのではないかという意見が現地から出ておるわけであります。予算の範囲で今の病棟、管理棟、あるいは診療棟というようなものを、順序によりましてだんだん作っていくということで、別に全部の計画を詳細にここでまだ申し上げるまでの段階に至っておらないのですが、よく現地等の事情考えまして、それに応ずるような工合にやっていきたいと思っております。
  27. 河野正

    河野(正)委員 少なくとも組織統合が行なわれたわけですから、具体的に内容的にはどういう形で推進していこうという年次計画というものがなければ、ちょっと私どもも将来に対する不安を持つわけです。従って現地の従業員も、将来の方針というものを具体的に示されぬと、そこで将来は一体どうなるのだということでいろいろ心配して、現在紛争状態が続いているわけですね。私はこれはやはりこの前の委員会でもお願いしたわけですけれども、もう組織統合が行なわれたわけですから、具体的にその年次計画を立てられて、第二年度はどうだ、第三年度はどうだ、従って第何年度には完成するのだという具体的な方針をやはり示されぬ限りは、今の労使間の紛争というものはいつまでたっても私は解決せぬと思うのです。ぜひ青写真を示していただきたいというわけで先般もお願いしたわけですけれども、まだ示される段階でないのかどうか。実はそのとき安藤政務次官が、すみやかに青写真を作成して示しますという約束を、この委員会でせられたわけです。それをやらぬようですと、いつまでたっても従業員は不安を持つわけです。そういう方針だといっても、途中で方針が変わらないかということでいろいろ不安を持つ。その不安が結局紛争の種になるということでございますので、実はそういう一切の不安を除去しようじゃないかということを当委員会でもお願いをして、当時、安藤政務次官からいろいろとお答えを願ったわけです。その点についていかがですか。
  28. 川上六馬

    ○川上政府委員 職員の人たちが特に不安に思うことは、統合によって施設を縮小するのではないか、従って人員を整理されるのではないか、あるいは今申しましたような恒久建築にする分はよいとしても、あとの施設はもう手を加えないで、老朽化するにまかしておられるのではないかというふうな不安がございまして、特にそういう点についてわれわれの意見を聞かれたわけでございますが、ただいま申しましたように、決してそういう意味で統合するのではない。縮小のために統合するのではない。むしろ結核というものの最終責任、結核対策の最終責任というものは国が持つべきであるという建前に立ちまして、つまり今の結核に対して、もうすでに大学あたりに対してもそれほど期待ができない。結核医がなかなかないとか、あるいは結核研究所の看板が塗りかえられる、そういう事態になって参りましたので、そういうことでは大学にもあまり将来期待ができないというような考え方で、国がこの重要な結核対策に対してやはり最終の責任をとろうという考え方で、特に金をかけてそういう基幹療養所を作っているわけであります。もし縮小のための統合なら、何もそういう金を積極的にかけるはずはないわけであります。それだけの金をかけて、りっぱな権威のある基幹療養所を作ろうという考えでやっておりますので、今組合の職員の人たちが心配するようなことは決して考えていない。あくまで私は前向きの姿勢で、そうした積極的な施策を講じているわけでありますので、今一々具体的な、この計画は何年先にはどうなるということはまだお示しする段階に至っておりませんけれども、そういう意図のもとに極力努力しているということで御了承いただきたいと思います。
  29. 河野正

    河野(正)委員 御承知のように今までいろいろ労使間で交渉が行なわれて、そうして今局長からもお話がございましたように、三療養所合わせますと千七百床ございますが、その千七百床のうち八百床を新設のものにする。第二は組織統合を前提としての病床数の減少ですね。あるいは従業員の減員を行なう。それから第三点といたしましては、実際に組織統合を行なったわけですけれども、実質的にこの合同というものが、三つの療養所が対等の立場で、お互いにそれぞれ一の人格で合同する、こういう話し合いが進められて参ったことは御承知通りです。そこで実はこの三つの点についてどういうふうにお考えになるか、まず一つ所信をお聞きしておきたいと思います。
  30. 川上六馬

    ○川上政府委員 ただいま申しましたように施設は統合のために縮小しない。ベッドですね。それから人員はそのために特に整理することはやりません。それからやはり同じような立場で三者を統合させるという方針でやっております。
  31. 河野正

    河野(正)委員 実はそういうことになりますと、これは大臣にもお聞きしたいのですが、千七百床は確保する。そのうちの八百床だけは耐火建築でいくということですね。それから合同のためのベッドの縮小はやりません。それから人員の減少もやらぬ。それから合同は三療養所対等、それぞれ一の人格で行なう。大体この三つの項目が確認をされておるわけです。そこでその三つの項目が確認されておるならば、年次計画できちっと具体的に進められてしかるべきではなかろうか。そういう方針がとにかく非常に見通しが立たぬということであるならば、私はさっきいろいろ御説明がありましたように、現状を見てというようなことになると思いますけれども、この三つの項目は厚生省で確認されておるわけですね。その通りやります。そうするならば年次計画で組織が統合された——実質的な統合ですね。今度は今言ったようにばらばらですから、結果としては古賀の東福岡病院一本になった。これは実質的に統合しなければならぬ。その実質的統合は何年後に完成するのだ、どういう形で完成するのだという年次計画、青写真というものが当然作らるべきではなかろうか。この点についてはさきの委員会において、政務次官から御確認を願ったというようなことです。ですからこれはそういう方向というものがはっきり確認されておるのですから、すみやかにその青写真を作って、きちっとした計画を示される必要があるのじゃないか。それがないから従業員は、どうもだまされるのじゃないだろうかということで不安を持っている。ですから、この三項目が確認されておるわけですから、それなら三項目に基づいて、具体的に年次計画というものを作ってしかるべきではないかというように考えられるわけですが、この点大臣、いかがでしょう。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 具体的な問題、まことにうかつで私もよく承知いたしておりませんので、従来の経過がどうであったのかということも十分承知はいたしておりません。おそらく事務当局としては、こうしたいというものは持っておるかと私ども思うのでございますけれども、毎年々々の予算の関係等がありまして、あまり的確なことを申し上げかねるような実情があるのではないかと想像いたしております。なお私も一つよく事務当局から聞きまして、また他の機会にでもあらためてお答え申し上げたいと思います。
  33. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ申し上げますのは、たとえば定床についてですけれども、なるほど確認事項では千七百床ですね。ですけれども現実には三百床が空床になっておるわけです。つまり千四百床です。そこで現地の諸君は、なるほど千七百床を減床しないというふうな確約を得ておるけれども、現実に千四百しかない。そこでその千四百の既成の事実というものが固定化するのではないかというような心配もあるわけです。  そこで先般も新設施設の定床は、現在の各施設の定床を合計したものとなる予定である。この予定については非常にいろいろいざこざがあったわけです。というのは、なるほど現在の定床というのは千七百であるけれども、際のベッド数というものは千四百である。そこでそれがそのまま既成の事実になって、固定化されるおそれがあるのではないかというようなところで一つの不安がある。これは一、二の例として取り上げたのですが、そういう不安は解消してよろしいというようにお考えでしょうか。
  34. 川上六馬

    ○川上政府委員 現在御承知のように国立療養所はたくさんあるわけですけれども、定床と現在の患者の開きというものは相当各所にあるわけでございまして、そうかといってすぐその定床は改定するような考えは持っておりません。その点は一般療養所と同じように考えていただきたいと思います。
  35. 河野正

    河野(正)委員 それから職員の定員でございますが、これも大体厚生省から現地の施設長に対して出されました通牒によりますと、各療養所の職員を合計した数というふうに定められておるようでございますが、現在の職員数が幾らでございましょうか。
  36. 川上六馬

    ○川上政府委員 合わせて六百四十八でございます。
  37. 河野正

    河野(正)委員 結局この定員でいくというふうに理解してけっこうですね。
  38. 川上六馬

    ○川上政府委員 そうでございます。
  39. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ申し上げましたが、先ほど申し上げましたように、取りまとめて申し上げますと、一応八百床の新設であるけれども、定床というものは千七百でいくということ、それからさらにはこの組織統合を前提として職員の減員は行なわない、いわゆる三療養所の合計した数でいくというふうに理解してけっこうでございます。
  40. 川上六馬

    ○川上政府委員 さようでございます。
  41. 河野正

    河野(正)委員 それから実際に職員が統合されますと、いろいろ現地で問題になっておりますような三療養所対等の立場で合同するというような点も問題になっておるようでございますけれども、いろいろそれは微妙な点もあろうと思います。その辺を十分一つ御理解を願っておかないと、あとで職員の間のいろいろな問題が発生するというような問題もございます。  そこでそういう点についても一つ御確認を願っておりますけれども、まだ現地ではもやもやした空気もございます。ですからそういう不安を一掃するために、先ほど大臣からもお答え願いましたように、早急に一つ事務当局で話し合いをされて、そうして具体的な年次計画を立案する、これは大綱でけっこうだと思います。予算が伴いますから……。大体こういう方針でいくという方向は一つぜひお示し願いたい、この点は大臣、よろしゅうございますね。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省としての考え方を、大体こういう方向でいきたいということをきめることは、これはできると思いますけれども、ただいま申されましたように予算の関係その他もございますので、そのときそのときによって多少の変更ということもあり得るかと思います。お約束して、またあとでだまされたというようなことを言われたのでは非常に困る問題でございますだけに、事務当局も慎重にやっておることだと思いますが、私よく調べまして、またお答え申し上げたいと思います。
  43. 河野正

    河野(正)委員 そのほか、実は国保財政医療費の問題、あるいは地域差の問題、いろいろ関連する問題があるわけでございますけれども、話し合いの結果、これでという話でございますから、一応これにて本日は中止いたしまして、またいずれ機会を見ていろいろお尋ねをすることにしたいと思います。
  44. 中野四郎

  45. 本島百合子

    ○本島委員 昨日から国保改正についての御質問がございますが、今回の改正の点については反対ではありません。ありませんが、昨日永山委員も言われたように、保険財政の健全化ということから考えられたとするならば、今回の二割五分に引き上げられたということは少し足りないじゃないか、あと五分も上げて一割程度引き上げるということにすればうまくいくのじゃないか、それでも足りないが、こういう御質問があったわけであります。私どももそういう点を考えておるわけでありますが、この点の見通しはどうでございましょうか、その点をお伺いいたします。
  46. 高田浩運

    ○高田政府委員 きのうも申し上げましたが、いろいろ計算をしてみまして、被保険者一人当たり保険料調定額を見てみますと、一応計算としては、三十六年度九百七十円、三十七年度九百六十五円という推計を私どもはいたしておるわけでございます。こういうふうに三十七年度が三十六年度よりも少ない数字になっております原因は、国庫負担率五分の引き上げに伴いまして約百九十円保険料が軽減できる、そういう結果に基づくものでございます。従って一つは現状において、現在の保険料が非常に負担にたえないほど高過ぎるという前提に立てば、この程度では不十分だということになりますし、あるいはまたこれが少し見込み違いで、たとえば医療費の増高等が予想以上に伸びたということになりますとこの数字が狂ってくる、そういう問題になるわけでありますけれども、一応いろいろ過去の経験等から推算をいたしますと、こういうような状況であるということを一つ御了承いただきたいと思います。
  47. 本島百合子

    ○本島委員 この点は大へん重要なところだと思うわけでありますが、結局多少保険料は軽減されたといわれましても、皆保険という点から、なおかつ産業の発展あるいは雇用の増大ということから、国保の加入者は減っていくわけなんですね。そして残された人たちは、低所得層並びに老人と子供が多くなるということは見通しがつくわけなんです。そうした場合においての考え方に立って参りますれば、もう保険というものについても、いろいろの保険を調整統合して一本化し、なおかつ不均衡がないようにしていかなければならぬ、これはかねていわれておることなんです。そうしますと、今回の値上げによってそれが近づいていっているものか、あるいはこれは単独でここ数年続けながら将来考えようとしておるのか、そういう点はどうなんでしょうか。
  48. 高田浩運

    ○高田政府委員 御承知のように、またきのうも申し上げましたように、被用者健康保険等の療養給付費は国民健康保険に比べて高くなっておるし、また一部負担についても、被用者保険の本人は全額であるにかかわらず、国民保険の大部分は五割ということになっているということで、お話のように両者差があるわけであります。それで社会保障の本質からいって、できるだけ国民均等な社会保障の給付を与えてやることが望ましいし、その意味で私ども努力しておるし、また皆さん方にも御努力をいただいておる。そこで同じような給付にするという手段でございますが、現状においてこれらの違ったものをがらがらにして平均いたしますと、結局上の方が落ちるという結果にならざるを得ないわけであります。これではやはり目的を達するゆえんではないので、現実の政策目標としては、やはり低い方を引き上げていくということが、当面の施策の重点にならなければならぬと思います。そういう意味で、国民健康保険給付内容引き上げ、あるいはこれに伴う財政上の強化ということを当面の目標にして、その一つの手段として本案を提案して御審議をいただいている、こういうのでございます。
  49. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま御答弁にありましたように、給付の問題についても、全国民が当然七割給付はされるものと期待しておったわけです。前大臣のときもそれをおっしゃったものですから、私どもも当然なされる、こう考えたわけです。厚生省で七割給付の要求をお出しになったけれども、これが通っていないといういきさつ、これは大蔵省の考え方であろうが、一番難点となったのはどういうところにあったのかということが一点。それからその七割給付をするという要求に際しまして、厚生省は世帯主だけに七割給付するという考え方に立っておられたように聞いております。そうすると先ほどから言われているように、社会保障の観点に立てば、世帯主と被扶養者というような差を考えられたのはどういうわけか。これは被保険者全部一律に七割給付であるべきはずだと存じます一七割給付でいくと主張するならばそういうことが出てくるはずなんです。その点今回の予算要求のときには、世帯主に限って七割給付というように考えて要求をされた。そうすると片手落ちではないですか。新憲法下、そして民法の解釈から参りましても、人権の尊重で個人々々の権利というものが重んじられているこの時代に、なぜその差を考えてなさったか。もちろん一挙にはできないからという遠慮があったかもしれませんが、どうせ否決されるのだったら、なぜ基本的な見地に立って打ち出しをかけてお行きにならなかったかと思うわけですが、最初の点について大臣にお答え願いたいと思います。
  50. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の予算で、いろいろ御審議をいただいているわけでありますが、お話通りに予算を要求する立場と申しますか、厚生省としましては、少なくとも世帯主の七割給付はやりたい、かような心持でいろいろ検討をいたしておりましたわけであります。予算の折衝にあたりまして、結局は保険財政ないしは国保財政というような関係が強いわけでございますけれども、ともかく今回は療養給付率の五分引き上げということに主力を注ぎまして、これを実現するということになりまして、御期待に沿うことができなかったわけでございます。ただ先ほど局長からもお話し申し上げておりますように、ただいまの国民健康保険状態でもって事足れりというふうに私ども考えてはいないわけであります。この七割給付、これは世帯主の七割給付ということを申しているわけでございますが、これもしかし究極の目的ではない。七割をもっと上げなくてはならぬということも考えなければならぬ問題でございます。お言葉にもございましたけれども、目標はそんな低いところにはないわけでございますけれども、スタートのラインがだいぶ下がっております。これを逐次回復していく、そしてだんだん上げていくということを、現実問題としてやらざるを得ない。なかなか一挙にはそこまでいかない。これは一つ保険ということでございますので、やはり被保険者の方の御負担ということも考えなければなりませんし、同時にまた国もこれに対する援助をするといたしましても、国の援助にもおのずから限界があるので、逐次問題を解決していくという方向で進まざるを得ないと思うのであります。経済の高度の成長をはかり、国民所得の増大をはかり、国民生活の向上をはかっていくということが、お互いの究極の目的でございます。そういうふうな施策がだんだん実を結んで参りますならば、現在保険料負担が苦しいというような方々も、ある程度解消せられるであろうということも考えられます。同時にまた国の方から申しましても、国民の所得が増大すれば、必ずしも今のように、国民の税金につきましても、二割で固定しなければならぬとか、二割以下でなければならぬとか、そういうこともない。社会保障関係の進んでおる国々の国民の税負担状況を見ますと、日本のように低い国はないと思う。これもしかしやはり国民にそれだけの力がついてくれば、少々税負担が上がりましても響き方は軽いということにもなりましょう。そういったような道を通りまして、ひとり国民健康保険のみならず、社会保障全体について政府としても考えていかなければならない問題であります。さしむき国民健康保険が、実は医療保険といたしましては、厚生省として最大の関心事でございます。今回の御審議を願いますものは、療養給付費の五分引き上げということを中心としての案でございますけれども、私どもはこれでいいのだ、これで十分なんだというふうな考え方はもちろんいたしておりません。むしろ国民健康保険を中心として、日本の医療保険をいかにして改善充実するかということを、当面課せられた大きな課題として、真剣に取り組んでいかなければならぬと思います。この国民健康保険の一番の弱点と申しますか、難点と申しますかは、何と申しましても保険財政の基盤が弱いということ、安定していないということであります。一つにはいわゆる皆保険になりましたのがこの間で、実施早々のことでありますので、そういったふうな面もあろうと思いますけれども、御指摘にもありましたように、何さま地方の、ことに国民健康保険の被保険者の方々の所得の水準があまり高くないわけであります。そういう点で、財政上の問題が大きく国民健康保険にかぶさってくる。これをどういうふうに解決していくかということが今後の問題でございますが、その方途といたしましてはいろいろございましょう。一般的に申せば、今申しましたように国民の所得をふやすということが、何よりも大事なことだということがいえる。何と申しましてもお互いの共同の力によって、医療保障の実を上げようという建前でございます。そういう意味から申しますと、国民の所得能力の増大ということをはかる政策が、非常に大きな意義を持つと思うのであります。それはそれといたしまして、現在の財政基盤を強化する方法としましては、私はいろいろな考え方があるだろうと思うのです。現在のような方法だけでやっていいものかどうかということでございます。先ほども話に出たのでありますけれども、直接に国民健康保険財政を強化するという方法もありますし、同時にまた間接に国民健康保険財政支出を軽減するというふうな方向の施策も考え考えられぬわけじゃない。たとえて申しますと、国民健康保険実施されております地域において、保健活動、いわゆる健康保持の活動が強化されるとか、あるいは栄養の改善ということが進んでくるとか、こういう施策が進んで参りますれば、おのずから病気は減ってくるわけであります。病気が減ってくれば、少なくとも療養給付に対する国民健康保険負担は減ってくる、またそうなくちゃならぬと私は思います。  そういうふうないろいろな方法がありましょう。国が負担するだけでいいのか、あるいは市町村にも一つ御心配願った方がいいのか、いろいろな問題があろうと思うのでありますが、ともかく現在の国民健康保険状況に、私どもも皆さんと御同様に満足いたしているわけではございません。これをむしろ医療保障の中におけるまずもって取り上げて真剣に検討すべき問題として、私どもは扱っておるわけであります。またいろいろお知恵も拝借いたしまして、なるべくすみやかに国民健康保険財政基盤が一そう強化せられる。さらに七割給付あるいは八割給付というようなことが実現できるように持って参りたい、こういうつもりでせっかく事務当局にも勉強してもらい、関係の諮問機関等にも検討をわずらわしておるわけであります。御協力をぜひいただきたいと思います。
  51. 本島百合子

    ○本島委員 見通しはどうですか。大体どれくらいの年月で——七割給付とせっかくおっしゃっているから、その点が二年なり三年たてばできるのではなかろうかという見通しは……。
  52. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、今申しましたように、私は決してゆうちょうな考え方をいたしているわけではございません。しかしまたあまりに事を急いで国民健康保険の基盤をそこなうようなことがあってはいけない、堅実に進んで参らなければならぬのでございまして、今回皆さんの御賛成を得て予算案が成立いたしますならば、とにかく当面の国民健康保険財政基盤はかなり強化せられることにはなろうと思いますけれども、しかし今後一体被保険者受診率がどういうふうな状態になるか、あるいは現実の負担能力がいかがであろうかというような点につきましても、多少の時日をかしてよく精査いたしまして、そして確実な判断資料によりまして方法考えていかなければなるまい。検討は現に開始いたしておると申し上げてもよろしいのでありますが、なるべくすみやかに結論を得まして、また皆様方にも御相談申し上げまして、国民健康保険改善、少なくともいわば医療保障における底上げができるようにいたしたいものと念願いたしておる次第でございます。
  53. 高田浩運

    ○高田政府委員 試算でございますから、多少の誤りがあると思いますけれども、全部を七割給付にいたしました場合に、国庫負担を約百八十三億増加いたします。そういたしました場合において、保険料は従前の約二倍という負担状況になります。
  54. 本島百合子

    ○本島委員 百八十三億円の増加ですね。その場合保険料が倍に上がるのですか。
  55. 高田浩運

    ○高田政府委員 七割給付になればそれだけ費用がふえるわけですから、結局それを国庫負担保険料でまかなわなければならない。その場合、国庫負担をかりに三割といたしますと、これだけの負担増になる。同時に保険料負担がこれだけふえていく。この場合、給付率が七割になりますと、受診率が現在よりもっと上がってくると見なければならないと思います。その辺をやはり計算に入れますとこういうことになると思います。
  56. 本島百合子

    ○本島委員 ちょっと私、自民党さんに属していられる大臣に聞きたいのですが、この七割給付ということを主張してきた国民の感情というものは、保険料が上がる、その中においての七割給付とは考えていないのですよね。むしろ現在の保険料が軽減され、なおかつ給付率はよくなる、こういう考え方での七割給付ということが言われたわけです。大臣の言われたように、われわれも七割給付とは言っていないのです。私どもは今日の国家財政から見ていっても、八割給付はできるのじゃないか、こういうふうに言っておったのですが、たまたま厚生省が七割給付で予算要求をされたと聞いたから、七割給付でお聞きしたわけです。そうすると国民感情と全く合わないことを考えていられたのだということを、今感じるわけなんです。この点どうでございますか。
  57. 高田浩運

    ○高田政府委員 実はこれで予算要求しようという意味ではないので、かりに試算をすればこういうことになる、これで相当な負担がかかるということを一つ御了承いただきたいという意味で申し上げたわけなんで、三十八年度の予算要求をどうするかということは、よく御審議の経過等にもかんがみまして検討して案を練りたい、かように考えております。
  58. 本島百合子

    ○本島委員 この点は一番大切なところです。七割給付にしてしまった、保険料は上がったでは、これは何にもならないということになります。むしろ保険料も高過ぎるし、低額所得層にとっては非常に困難性を帯びてきておる。そうすると現在の保険財政の健全化をはかるためにという、今日の改正案が提示された説明書の中にあることと全く違ってくるわけなんですよ。ですからそういう点できのう永山委員が非常にここのところをついていられたことは、そばで聞いておったわけなんです。こういう点で一番考えさせられることは、自民党さんの悪口を言って申しわけありませんが、選挙の前にはいいことを言われるけれども、実際やってみると中身は逆に行っていたというようなこと、所得倍増もその例の一つですが、そういうことで何か国民は、灘尾厚生大臣はせっかくいいことをやったけれども、陰に何かあるのじゃないか、こういうふうにいつも陰に何かあるのじゃないかと思わせられる理由が、こういうところにあると思うのです。ですから七割給付希望しておる、八割給付をさしたいと考えておる、それは保険料を上げるのではないのだ、むしろ今日の状況からすれば下げるのだ、保険料は年々積もって多額になってくるわけなんです。そういたしますと昨年からの状況から、保険財政が三十六年から三十七年三月まで大体どの程度になるわけですか、国民健康保険に対する保険料の徴収率は……。
  59. 高田浩運

    ○高田政府委員 九二%でございます。
  60. 本島百合子

    ○本島委員 とにかくこの実際を見ておりますと、保険料は皆保険下において割合かけているのですね。貧しい家庭でも保険料はかけておるのです。かけなければちゃんと督促が来ます。私のうちは毎月督促に来られる方ですから。ですから間違いなく入っていくのです。九二%とおっしゃるけれども、これはもっと率が高いはずですよ。そういう意味から考えていけば、先ほどの受診率との比較の問題で、昨日もかなり詳しくおっしゃっておったようですが、それと重複される必要はありません。しかしこの受診率の程度は七割給付できた場合においては高まるだろうというのは、私は大臣の言葉と逆だと思うのです。大臣は予防医学の方に力を入れて発言をされておるから、治療を受ける人が少なくなってくるということが望ましいので、そうならなければならない、こうおっしゃるのです。そうすると受診率は下がってくるということになるのですよね。今日においても予防医学は日本の場合かなり発達してきておりますから、ほんとうに一年々々と経験を積んで参りますれば、最初は半額でもやってもらえるのだというのでぱっとかかってきますが、だんだんそれが減ってくるというのがよその例ではないですか。外国の例から見ても、この率は年々減っていくということです。最初はもの珍しいということがあるし、今まで治療したくてもできなくてがまんしておったから、ぱっとかかるわけです。大臣の計算の仕方は逆になると思う。そういうことからすれば、厚生省はいつも予算を取るのが下手だとこう言われているのです。この間大臣は、そうじゃない、このごろは上手になってことしはふえた、こう答弁されたけれども、それはおかしいのです。国民の低額所得者に大きな負担をかけ、重荷を背負わせ、これこれになったからということは、それは表面だけであって、現実に計算を立てていくと逆になる。だから厚生省は予算の取り方が下手だ、こういうことが言われるわけだと思います。せめて世帯主だけ七割給付ということではなくて、全被保険者に対して七割給付という、差をつけない給付に踏み切れないものか。そういう点は保険料の徴収率、その他受診率等の統計から出てくることであろうけれども、そういうことを私は強く要望しておきます。今までのような答えではどうもうらはらで、逆のことを言われているような、そうしていつもうそを言われているような気が、国民の気持から抜け切らないという状態でありますから、そういう点で要望しておきます。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 うらはらなことを申しているつもりは実はないのでございますが、現在の状態に立脚いたしまして給付内容改善する。本島さんのおっしゃるように保険料はむしろ下げろ、給付はよくしろということになりますれば、これはどこかでその穴を埋めていかなければならぬ、これは当然のことだと思います。それを国が埋めるのか、どこが埋めるのかという問題がございます。いずれにしましても国庫財政には相当響いてくる問題であるということは、当然のことだと思います。おそらく本島さんもそれはむしろ期待なさっていらっしゃるのではなかろうかと思うのであります。それだけにやはり予算の編成の上におきましても、相当むずかしい要素がそこにあるわけでございまして、国庫負担の増額ということを私は否定するものではございません。ございませんけれども、そう簡単に給付をどんどん上げていって、足らぬ分は全部国で持て、こういうふうにも現実問題としてなかなかいかない。現に本年度の予算の編成につきましても、私どもの希望といたしましては、給付率に対する五分引き上げということのほかに、世帯主の七割給付ぐらいは実現したい、こういうことでいろいろ心配もいたしましたけれども、残念ながら私ども無力にしてそこまでやることができなかったということでございますけれども、今のような財政上の考慮ということも払いながら進んで参らなければならないものでございます。これが当面の問題でございます。当面今すぐこうするということになりますれば、やはりそういうことになろうかと私は思います。ただ少し長きにわたって国民健康保険財政負担を軽くする、被保険者負担を軽くしていくというようなことを考え国民健康保険が堅実に発展していくようにするためには、ただそれだけでなくて、いろいろあわせ考えなければならぬ面もあるのではなかろうか、こういう意味合いにおいて、先ほど私は地方の住民の健康の保持増進あるいは疾病の予防、こういう点に対する国ないし公共団体の努力というものもあわせて行なうことによって、問題の解決はよほど変わってくるのではなかろうか、このようにも考えておりますので、申し上げたわけであります。今すぐ何とかしろ、こういうお話になりますと、結局国の負担をどうする、あるいはまた現実に地方の公共団体が従来負担をいたしておりますそういう負担を、どういう形においてやってもらうか、こういうふうな問題、削るのではございませんけれども、慎重に検討して参らなければならぬ点があると思います。  それからまたお話にも出ておりますけれども保険開始当初はどなたも一ぺん保険にかかってみようというようなお気持、それはないことはないと私も思います。そういう意味から申しましても、国民のいわゆる受診率の問題につきましても、なお推移を見る必要もあろうかと思います。また国民の所得につきましても、ただ所得が低い低いと仰せになりますけれども、それらの点につきましても、一般論はともかくといたしまして、一応役所としましても所得能力の増加あるいは減少、こういう事態につきまして調査も進め、今後の推移も見ていかなくちゃならぬ、こういうふうな点をあわせ考えまして、ともかく私どもとしましては、医療保険の中で今一番われわれが努力しなければならぬのは国民健康保険改善充実ということにあるというつもりで、検討をいたしたいと存じておることを、私は実は申し上げたつもりでございます。局長の言うこととそううらはらのことを申し上げているわけではない。いわんやだますとかなんとかという気持はさらさらございませんので、御了承いただきたいと思います。
  62. 本島百合子

    ○本島委員 大臣のその熱意というものを持続していって、ぜひともこうした国保に対する改善というものを一日も早く願うわけですが、大体支払う人、それから治療を受ける人たちの話を聞いてみますと、国保と健保の差で、どうしてもこれは健保によりたい、こういう希望が出てくるわけなんです。しかしかりにその給付率をたな上げしても、こういう点の改善はできないか、国保と健保との差を縮めて、そうしてみなひとしく受けられるのだ、個人負担も平等にいくのだ、こういうふうになってくると、その保険事務の方も簡素化されていいだろうし、われわれも非常に助かる、こういうわけですが、そういう点はどうでございましょうか。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 こまかく申せばいろいろまた議論もあろうかと思うのでございますが、ごく大局的な話として申し上げれば、前々から申し上げておることでありますけれども国保引き上げていく、そうして国民がひとしく進歩した医療を受けるような状態に持っていきたいということが私どもの理想でございます。それに向かって努力していきたいと思います。
  64. 本島百合子

    ○本島委員 私はもうきょうはお昼の時間もきておりますから、ゆっくりできませんので、基本的なことだけをお尋ねするわけですが、たとえば国保にかかりました場合に、他府県にまたがって治療が受けられませんですね。皆保険化で、みな保険にかかれば他府県でもやれるのだ、こういう考え方を持っておるわけです。実際はこれは契約しておるところでなければできない。あるいはまた私どもでこの間も一つケースがありましたが、一たん支払ってもらって、あと何カ月後に割り戻す方法もあるからそうして下さいよ、こう言われる。またお医者さんによってはめんどうくさいから、いや、うちはいたしませんと言って断わられてしまう。それでは皆保険という精神からおよそ遠いような気がする。どこの県であっても、私どもはどこでも病気をしたときにすぐ飛び込んでやってもらえる、こういう形が望ましいわけですが、これはもともと発足当時市町村から始まってできておるわけですから、そういう点の差もあるでしょうが、こういう点は今後どういうふうに改正していかれようとしておるか。
  65. 高田浩運

    ○高田政府委員 これはお話のように、どこに行っても容易に保険で見てもらえるという仕組みにすることが理想だろうと思いますが、ただ現実に保険という仕組みを勅かしていく上からいけば、一応法律に書いてありますように、今お話のような仕組みにするのもやむを得ない点があるわけであります。これらはやはり国民健康保険制度全般の問題と関連するわけでございますから、そういう立場でこれは検討すべき問題だと考えております。
  66. 本島百合子

    ○本島委員 この点は掛金の率が違うために、こういう結果になっておりますなんと言って、簡単にお医者さんはお答えになるわけですが、それではおかしいじゃないかといってこちらで問い合わしたならば、やはり再度そういうお答えになっておるのです。そうしますと、掛金がどこでどういうふうに違うのかということになるのですが、やはり東京の治療は高くて、地方の県は安いということはなるのですか。高田政府委員 今の取り扱いは、掛金の多寡によってこういうような取り扱いをしているという意味ではございませんので、誤解のないように一つお願いいたします。
  67. 本島百合子

    ○本島委員 そこのところがやはり国民の素朴な感情からしますと、お医者さんの歩がそうなんですからね。だから、それは基準があってちゃんと取られているわけなんですから。それから治療されるときにも点数制でいっているわけでしょう。表によってなさっているのでしょう。そうするとどうもこれはおかしなことになってしまう。
  68. 首尾木一

    首尾木説明員 療養給付の事務は、原則といたしまして都道府県内の保険者及び被保険者関係においてのみ、療養を取り扱うということになっておりますが、実情を申しますと、全国取り扱いということも行なっております。他府県のお申し出がありますれば、その申し出を受けたところについては保険の取り扱いをするというふうになっております。こういう現状になっておりますのは、実は各保険者が非常に多数に上っておりまして、医療機関が他の府県の市町村と直接に診療その他支払いというようなことについて折衝するということが不便な問題もございまして、そういうふうな関係から、実情として当初からこういうふうな扱いになっておるわけであります。今後こういうふうなことについては、なるべく簡素化するという方向で検討して参りたいと考えております。
  69. 本島百合子

    ○本島委員 簡単な素朴な考え方でいけば、皆保険というのはどこでもいいという考え方を持つのは当然だと思う。ところが都道府県の扱いがあるから、計算上めんどくさいから、こう片づけられたのでは皆保険の精神に反するので、できるだけ早い機会に、こう言っておられますが、全国一律にどこでも受けられるように……。そうしてその繁雑な事務の簡素化とおっしゃっておるのですが、事務の簡素化なんというのは、考えればすぐできるのです。それをお役所仕事で下請いたしますと、複雑にしてようやく権威を保たせるなんというような形で、複雑から複雑へといっているわけですね。そうするとお医者さんはたまったものでないのです。私の知っているお民者さんも、三日間から一週間は診療休止してしまって、保険のあれを書くのに一生懸命、奥さんまで動員してやってやっとだ、こういう状態なんです。ですからこれはほんとうに事務の簡素化がぴしゃっといって、そうしてお医者さんの手間もとらない、患者さんたちもどこへでも行ってすぐ受けられる、こういう形が出てこない限りにおいては、この国保の精神もしっかりと生まれたものだとは言えないわけです。こういう点については、大臣どうお考えになりますか。とにかく何児にもまたがって旅行する人は、旅行先で病気したときに全く参ってしまう。金のある人ならばどこの病院でも飛び込んで制限なしに見ていただけるわけですけれども、それができないという人が多いわけですからね。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この点につきましては私ども何も文句はございません。その通りだと思います。できるだけ事務の簡素化ということで、被保険者の諸君の便宜を考えるということを考えていくのは、これは当然のことだと思うのであります。同時にまたお医者さんの便宜も考えていかなければならぬ。そういう点で始終検討しておるのが現在の健康保険だと思います。そういう方面の事務を簡素化するという問題につきましては、現に保険局でもいろいろ検討もいたしております。これはもうかなり強い御希望を各方面から受けておるのでございますから、私どもといたしましては決しておろそかにする気持はございません。われわれの方も簡素にした方がいいにきまっておるのであります。ただ支払い、受取り、そういうふうな関係上、なかなかそうルーズなここをやるわけにも参りません。そこらに難点があるのでありますが、これは現に保険局長のところで研究をいたしております。また被保険者の力がどこへ行っても保険証を出せばかかれるという事態になれば、これは一番便利だと思います。そこまで持っていくのには、現在のようにいろいろ保険がばらばらになっております。そうして給付のやり方も違っておるというふうな状態では、なかなかむずかしい点がございますので、御不便をおかけしておると思いますが、この点も今後医療保険というものが進んで参りまして、いわゆる総合調整というようなことでもうまくできるというような事態がくれば、よほどこれは簡単になると思いますが、各市町村ごとにそれぞれやっております。しかもその給付の仕方等も町村によっては、場合によっては違う点もございます。そこらに問題があるのではないかと思います。これは御趣旨につきましては何の異存はないのでありますから、研究させていただきたいと存じます。
  71. 本島百合子

    ○本島委員 うしろでいい答弁だなんて言っておるけれども、あまりよくないのです。やはりそういう差が出てくるということは、被保険者にとっては非常に苦痛なことだし、この精神からいっても全くだまされているというような気が、その場その場で起こってくるわけなんです。ですから健保と国保の調整一本化、あるいはまた七割給付を全国一律にする、世帯主と被扶養者とを区別しない、こういうようなほんとうに本筋に立ったものができ上がってくれば、これは非常に楽になってくる。そうすれば私どもも、これは初めて国民健康保険の完全な実施が行なわれた、こういうふうに考えるわけなんですが、それがないからいろいろの問題が起こってくるわけで、そういう点について政府も特段の努力をされて一口もすみやかにとおっしゃるけれどもも、すみやかとおっしゃっても五年から六年たってすみやかにでは、とてもじゃない、待ち切れない、こういう感情が沸いてくるわけです。ですから先ほども聞いておるように、何年ぐらいを目途として改正なさる意思があるかどうかというわけですから、大臣もなかなかその点を何年という区切りをつけていらっしゃいませんので、この点はほんとうにすみやかに、ここ一、二年の間にこうした矛盾した点を解決されることを強く要望します。そしてなおかつ市町村の財政負担ということについて、今回の五分引き上げではどうにもならないという市町村がかなりあると思われる。これは厚生省でおわかりになっていると思うのです。大体これでもって落ちつくのだという計算の上だと説明はされておるのですが、現実にはならないのだということを言っている。ですからその点では、あなたの方の御調査で大体どういう県でどのくらいあるのかということのお見通しがあるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  72. 高田浩運

    ○高田政府委員 三十五年度の決算によりますると、赤字保険者が約四百ございます。もっともこの赤字というのが、収支のバランスのとり方の問題でございますから、純粋の赤字、ほんとうの意味での赤字がこれだけであるか、あるいは四百のうちにもほんとうの赤字と称するものでないものもあろうと思いますが、一応この数字になっております。それからなお昨日来申し上げておりますように、少なくとも今度の五分の引き上げによりまして、保険料の増高は一応押え得るというふうな私どもは推算をいたしております。現状が苦しいという事情はわかりますけれども、これは社会保障を進めていく上からいけば、やはり努力をしなければならぬ点だろうと思いますので、苦しいなら苦しいなりに努力していくところに進歩があるわけでございますから、国の方でも上げる、地方の方でも御努力いただくということによって、将来進歩改善をはかっていきたい、こう思います。
  73. 本島百合子

    ○本島委員 それは地方財政の問題と関連するのですが、どんな仕事におきましても、地方公共団体等は補助率等によってようやく補っていくというのが多いわけなんですね。ですから、こういう社会保障の大きな柱であるところの国保というようなものが、地方財政の片しさによって十二分に運営ができない、こういうような場合に、一応債務と心得るなんてやられたのでは、それならやめた方がいいということになる。皆保険はここからくずれてしまうわけです。ですからそういう点の配慮が私は一番必要じゃないかと思う。今回も五分の引き上げを感謝しておるとおっしゃるが、実態を聞いてみるととんでもない。そうするならば、昨日から永山委員が言われるように、あと五分引き上げてやってくれれば完全にいく。五分引き上げができるかできないか、こういう御質問のようだったのです。そのときに社会党の滝井さんもいられて、私もおったのですが、もう五分上げたら一ぺんに解消するから、五分引き上げられないか、五分上げるなら質問をやめてしまってこの法案を通してもいい、このくらいに滝井さんは言っておられたのですが、こういう点にひっかかっておると思うのですが、そういう点の見通しはどうです。
  74. 高田浩運

    ○高田政府委員 この点はよきに越したことはないと思いますけれども、一応念のために、現在二割五分の国庫負担と五分の調整交付金と合わせまして、これを保険料に換算すれば幾らくらいになるかということを計算いたしてみましたところが、被保険者一人頭にして千六十四円に私どもの計算ではなります。一方保険料負担は、昨日来申し上げておりますように、現実の保険料負担は九百六十五円、すなわち被保険者一人頭について見ますと、保険料よりも国で持っておる額の方が大きい、これは現実そうなるわけであります。そういう状況でございまして、これは国もこれから給付内容引き上げに伴って補助率の増額等、あるいは財政の強化のための補助の増ということに努力しなければならぬと思いますが、やはり保険というか、国民の福祉に関することでございますから、みんなが努力しなければならぬ点がまだあるのではないかということも、一つ念のために申し上げさしていただきます。
  75. 本島百合子

    ○本島委員 これで質問を終わりといたしますが、今回のこの国民健康保険法改正については、これはないよりはいい。一歩前進という形においてわれわれもある程度了承します。ところがこのあとに控えておる法案で、報酬の審議会設置法が出てくるわけですね。これを考えていきますと、またここで問題が出てくると私は考えております。そういう意味合いからいたしまして、やはりこういう改正のときに思い切って矛盾をなくしていく、そういう努力がなされていかなければ、あれも立てたい、こうもしたいというようなやり方でやっていっても、弥縫しているような格好ですから、あっちからもこっちからもいろいろな問題が出てくるということになると思います。そういう意味合いからして、なぜ今度予算折衝のときに、赤字団体もあるわけですし、そういう点から見て思い切って引き上げ率を高くしなかったか、また給付率の問題等についても思い切ってやってもらえなかったか、大蔵省の査定によってこれができなかったと思いますが、われわれ被保険者の立場からすれば、むずかしいことを言われてもちっともわからない、要は自分たちの負担率が下がるということです。そうすることが防貧の対策にもなるし、またそれが社会保障の大きなねらいでもあろう、こう思うわけです。そういう意味で来年度の予算までには、ぜひとも一律七割給付の線を打ち出していただきたい、と同時に地方の町村立という考え方を一歩前進さして、県なり国なりというものが統括できて、そうしてどこの県の人であろうとも、どこでも治療が受けられる、その支払い分は同じである、こういうような格好をとる、そういうことをここでばっと打ち出していただいたならば、厚生大臣は将来総理大臣になられるだろう、こういうことまで町では言っておるわけですから、それくらい思い切った線を打ち出していただくことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  76. 中野四郎

    中野委員長 この際本会議散会まで休憩をいたします。    午後零時四十九分休憩      ————◇—————    午後三時二十一分開議
  77. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大原亨君。
  78. 大原亨

    ○大原委員 医療の機会均等という角度から、まず最初に二、三の点を御質問したいのであります。国民保険ということで国民年金を全部実施いたしましたが、一つの問題は無医地区の問題だと思うのですが、この無医地区の実態と、それからそれに対する対策、これを簡潔に御答弁いただきたい。
  79. 首尾木一

    首尾木説明員 昭和三十三年八月現在の実態調査によりますと、全国で無医地区の総数が千百八十四町村、そのうちで交通機関等の関係から医療機関を必ずしも設置する必要がないと認められるものが四百十一でございまして、さらに、医療機関を設置する必要があるけれども、設置しても経営が事実上困難と認められる地区が六百五十六、それから無医地区のうちで人口、地勢、交通の状況から医療機関を設置すれば、その経営が可能と認められる地区が百十二ということになっておりまして、先ほど申し上げた六百五十六地区が、実際に法的な施策をもって医療機関を設置しなきゃならない地区であるというふうに一応考えられておるわけであります。この六百五十六地区を対象にいたしまして、このうちで特に僻地と思うものにつきましては、医務局におきまして僻地診療所に対する補助を行ないまして、それからさらに、その他僻地には該当しないけれども、この無医地区を対象にいたしまして国民健康保険の方で直営診療施設を設置しまして、その解消に努めて参っておるところでございます。
  80. 大原亨

    ○大原委員 終わりの方がよくわからなかったのですが、無医地区に対しまして今六百五十カ所ぐらいは医療の施設がない、こういうお話だったと思うのですが、それに対しまして、実際には、常識的に言って、健康保険をかけていて、そうして病気もあるだろうけれども医療の機関がない。だからその皆保険をやる場合には、そういう医療機関に対して、やはり被保険者がかかることができるような措置を並行してとっていかなきゃならぬと思うのです。当面、今直ちにできぬといったところで、何年計画かで医療についてはいろいろと操作して、機会の均等をはかっていくということが必要じゃないかと思うのです。たとえば公的医療機関その他を中心として、採算はとれぬかもしれぬけれども、一定の政府のバック・アップのもとにやる、こういう政策は必ず必要だと思うのです。国民保険という見地からもこのことを考えないと、保険税を取るだけということになって、実際上は売薬その他によりまして支出が逆に多くなってくる、こういう結果にならないか、こう思いますけれども、その点は、今よりももうちょっと具体的な対策はありませんか。
  81. 高田浩運

    ○高田政府委員 医務局の関係でございますが、医務局長がおりませんので、かわってお答えいたします。  無医地、区の解消対策といたしまして、僻地の診療所を開設いたしまして無医地区を解消させる計画を実施いたしておるのでありますが、一応三十七年度までの目標で計画を立てまして、診療所の設置及び運営費の不足額について二分の一を補助する、そういうような計画を立て、三十七年度におきましては、設置費の補助四千三百十六万円、運営費の補助九千八百五十万円というものが計上されております。そのほかに、そういった固定的な施設だけでは十分でない場所がございますので、巡回診療用の自動車あるいは船を整備するようにいたしておりまして、これも三十六年度において自動車二十三台、船二隻を整備する、こういうことになっておるのでございます。そのほかの保険関係の直営診療所の整備等に努めておることは、前々から私たちの申しておる通りでございます。  なお、これが結局国民健康保険保険料との関連を生じてくるわけでございますが、確かにお話しのように、診療所を整備するということと皆保険とが、政策的には並行すべき性質のものであることは当然でございます。実際問題としては、こういうふうに皆保険になりましても、なお無医地区があるということでございますが、それに関連して、結局こういう地区は受診率がおのずから低いわけでございますから、保険料との関係においては、当然その影響というものは考慮されるというふうに御了解いただきたいと思います。
  82. 大原亨

    ○大原委員 受診率が低いというのは、実態把握ができていないと思います。実際には、病気いたしましても、国民健康保険自体が、五割ほどは窓口で出さなければならぬという制度と一緒に、非常に貧困な人は利用の機会が少なくて、売薬その他による、こういうことになっております。だから医療の施設がなくて、交通機関で非常に遠いところまで行かなければならぬ、乗りものを利用しなければならぬということになりますと、結局そういうふうな費用がたくさんかかるということであります。従って、担当局長はおられぬのですが、これはまだ法案も残っておりますから後ほど質問いたしますが、無医村を解消する、そういう厚生省の具体的な指導や計画について、一つ資料を私のところへお出しいただきたい。これを要望しておきます。  それから医療の機会均等という観点から、今日、表面上はどの程度問題になっておるか私も実態は知りませんが、しかし、重要なる問題としましては、たとえば国民健康保険に関連いたしまして、制限診療の問題がございます。それから差額の徴収、療養費払いですか、こういうことがだんだんと拡大をいたして参りますと、これは私はやはり医療の機会均等を根本からくずすものであると思うのであります。だから、そういう制度上の矛盾点につきましては、保険内容その他において改善することが必要であると思います。従って、制限診療の問題と差額徴収の問題、療養費払い等の問題に対しまして、厚生省といたしまして、国民健康保険は特に低所得階層を対象といたしておりますから、そういう関係実態なり考え方を簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  83. 高田浩運

    ○高田政府委員 第一に給付制限の問題でございますが、きのうも申し上げましたけれども、往診料、給食、寝具、歯科補綴、これについて給付制限を行なっておりますところは、往診料二百四十保険者、給食六百五十一保険者、寝具六百九十保険者、歯科補綴六百七十八保険者、こういう現状でございます。これにつきましては、三十七年度国庫負担率が五分引き上がりましたのを機会にして、この制限を撤廃するように私の方としては当該保険者に対して強力に指導を行なうつもりでおります。  それから差額徴収につきましては、これは病室の問題でございますし、国民健康保険だけでなしに、健康保険についても同じような取り扱いをいたしております。この辺は統一して考えなければならぬ問題だと考えております。
  84. 大原亨

    ○大原委員 お医者さんあるいは被保険者の立場からいいまして、やはり皆保険についてはいろいろな考え方があると思うのですが、しかし、医療の機会均等ということが皆保険一つの目的ですから、こういう問題については、はっきりした制限診療とかあるいは療養費払い等をやたらにやるということになって参りますと、いろいろと弊害が出てくると思いますが、そういう点につきましては、厚生省といたしましても、制度上の改善と一緒に、そういうことのなきを期するという方針でやっていただきたいと思うのであります。その点につきましての御決意なり方針を簡単に厚生大臣の方からお聞かせ願いたいと思います。
  85. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 しばしばお話に出るのでございますが、国民健康保険医療内容が、他の保険に比べまして劣っている点があることは事実でございます。申すまでもなく、われわれの目標といたしましては、よい方に近づけていくという努力をやっていかなければならぬものと心得て、その方に進んで参りたいと思っております。
  86. 大原亨

    ○大原委員 これは今まで質問があったかと思うのですが、昭和三十六年度、この三月で終わりますけれども、その三十六年度におきましては、御承知のように約一四・九%医療費が上がっておるわけであります。その結果、被保険者負担の増加は、総額として大体どのくらいなんですか。三十六年度途中でさらに再改定等がございましたけれども、概算でよろしいのですが、医療費単価引き上げに伴いまして被保険者負担が大体どのくらいふえているか、こういう点を一つ
  87. 高田浩運

    ○高田政府委員 被保険者負担保険料へのはね返り分というふうに考えますと、御承知のように、七月に一二・五%上げました場合における二・五%の保険料へのはね返り分につきましては、これは補正予算で全額見た。それから、秋の二・三%引き上げに伴う保険料へのはね返り分については、これも補正予算で全額見た。残りの十億に対する保険料はね返り分二十四億のうち十五億、これは特別療養負担金として見た。残りの九億のうち約五億は結核、精神の特別対策でこれは解消する。残る四億程度が保険料へのはね返り分として残る、こういうことになるわけでございます。これを被保険者一人頭に割ってみますと大体十円程度になる、こういうことでございます。
  88. 大原亨

    ○大原委員 それでは、窓口払いを含めまして、被保険者負担はどのくらいふえておりますか。
  89. 首尾木一

    首尾木説明員 患者負担額としまして、昭和三十七年度は総額で百十億であります。
  90. 大原亨

    ○大原委員 この問題はいろいろ問題があると思うのですけれども、これから小さな質問をすれば時間がかかるので端折って質問いたしますが、問題は、医療費引き上げによりまして患者負担が増大をいたすことは必然であります。そこで、国民健康保険と他の健康保険と比べてみましていつも問題になる点は、やはり精神病、結核患者の世帯主を除いては、全部が五割しか医療費負担しないのが原則である。ただし、市町村によって若干違うのがありますけれども、そういうことであります。そういたしますと、いつも議論されるのですが、低所得階層が対象である国民健康保険において窓口負担が非常に多い、こういうことから起きる問題と、もう一つは、都市と農村、富裕な町村と貧困な町村、こういうところによって国民の所得が違っている。しかしながら、病気は大体同じようなものである。貧乏なほど大体病気をたくさんしておるし、病気になってもなかなかなおらない、こういうのが常識だと思うのであります。そういたしますと、今のような市町村単位の保険財政を国が二割五分、今度新しくプラス五分の調整金でカバーするということだけでは、これはやはり医療の機会均等という点からいいまして問題は解決しない。今まで質問があったと思うんですが、国庫負担引き上げていくということ、そして患者の窓口負担を少なくしていくということ、あるいは経営主体を変えていくということ、経営主体を県あるいは国にする、こういう問題で医療の機会均等をはかっていく、こういう問題等が私はあると思うのであります。だからそういう観点から考えて——今日税金はどんどん上がっておるとは言わぬが、一方では、国の税金は所得税等で一部下がっておる面があるけれども保険税はおそらく飛躍的に増加をしておる、こういう実情であります。保険税負担が非常に多くて、特に農村へ行くほど、被用者が少ないために負担が多くなっておる、こういうことであります。従って、減税心々といいましても、結局そういう一面においては負担過重ということで、重税ということになってくるのであります。そういう面から、出す方と、サービスの面と、それから財政の経営主体の面から考えてみまして、これはそういう点を総合的に解決していかなければならない。国庫負担の問題を含めまして解決しなければ、これは皆保険医療機会均等の趣旨は貫けない。国民の立場に立って考えてみまして、私はたくさん問題があると思うんです。これを一々ずっと質問いたしますと、きょう夜中までかかりますから、できるだけ端折って一括して言ったわけですが、こういう問題につきまして、厚生省といたしましては、他の保険との格差をなくするという観点からも、やはり一定の方針をもって当たる必要があるのじゃないか、こういう点を思うのでありますが、二、三の点を抽出いたしまして質問いたしたわけですけれども、これらにつきましてどういうふうな対策なり御見解を持っておられるか、こういう点を一つ総括的に御質問いたしたいと思います。
  91. 高田浩運

    ○高田政府委員 お話のように、医療保障の給付内容というのは、国民ひとしくなることが望ましいわけですけれども、現在のところは、従来申し上げておりますように、健康保険等のいわゆる被用者保険国民健康保険との間にはかなりに違いがある。これをどうやっていくかということになりますと、やはりこれはまず第一の着手としては、低い方を引き上げていくということが政策目標にならなければならないと思いますし、その意味において、国民健康保険給付内容改善、それから財政力の強化ということをはかっていかなければならないわけでございますし、今度国庫負担率二割を二割五分に引き上げたのもその趣旨でございます。給付内容改善については、これは先ほどもお話がありましたように、従来とも努力しておりますが、今後一そうこれは努力をしていきたいと思います。  それからお話のように、国民健康保険内部において、保険者ごと給付の額に、計算をいたしました場合に相当の違いがございます。これらは結局、一つには、先ほど来お話しの医療機関の普及が、一方においては十分なところがあり、一方においてはそうでないところがあるという点でございますとか、あるいはまた、従来の習慣でありますとか、いろいろな問題がからんで、そういうような差異になって現われていると思います。これらについて総合的に、医療機関の分布の適正の問題、医療機関の少ないところに対する一そうの助成の問題、さらに財政力の問題については、予算にあります財政調整交付金等の運用によって十全をはかっていかなければならないと思いますが、これら現在行なっております施策についてもなお改善余地があるわけでございますので、十分今後努力いたしたいと思います。
  92. 大原亨

    ○大原委員 経営主体について何かの考え方はありませんか。機関に諮問するとか、厚生省といたしましての考え方はありませんか。どうしても私は矛盾ではないかと思います。
  93. 高田浩運

    ○高田政府委員 経営主体については、現在のごとく市町村がよろしいか、あるいは府県単位がよろしいか、あるいはまた別個の考え方をとるか、これはいろいろな考え方がございます。この点については、前に社会保障制度審議会においてもずいぶん御審議をいただいたところでもございますが、その場合の一応の結論としましては、三十二年だったと思いますが、現在のごとく市町村単位が妥当である、これが一応の結論になっておるわけでございます。従って、私どもとしては、一応その線で現在は考えているわけでございますけれども、しかし、医療保障の進展の情勢にもかんがみまして、この問題は他の保険との関連も考慮し、十分検討すべき性質のものと考えております。
  94. 大原亨

    ○大原委員 市町村単位でやる場合には、それを補うようなそういうシステムでなければいかぬわけです。財政負担能力にも不均衡があるので、応益部分、頭割り部分もあるわけですから、徴収の仕方といたしましては……。  ちょっとお尋ねするのですが、保険税は、昭和三十年なら三十年を基礎にいたしまして、現在どのくらいふえておりますか。
  95. 高田浩運

    ○高田政府委員 被保険者一人当たり保険料徴収額について申し上げますと、昭和三十年五百十四円八十九銭、三十一年五百六十六円七十九銭、三十二年六百二十三円十四銭、三十三年六百九十五円六十五銭、三十四年七百八十円三十九銭、三十五年八百八十四円八十五銭、三十六年は推定でございますが、九百七十円、三十七年は、これも推定でございますが、九百六十五円、かような計算になっております。
  96. 大原亨

    ○大原委員 昭和三十年を基礎にいたしまして——これは五百十四円でありますが、三十六年は九百七十円というふうに、倍とは言いませんが、税金と同じような形でふえておるわけでありますが、今の市町村単位のシステムでいきますと、どうしても足りなければ府県税を増徴する、窓口負担も多くする、こういうことになる。あるいは診療を制限するということになると思うのでありますが、それを補うためには、やはり国民所得に応じた保険税の払い方をきめると一緒に、足りない分は、薄い厚いを考えて国が国庫補助の形でやっていく、そういう制度をとらないと、市町村でやるにいたしましても、市町村でやったらいいという社会保障制度審議会の答申は、そういうことの裏づけがあって初めて私は問題になると思うのです。そういう点についてはぜひ是正しないと、機会均等ということにならないと思うのです。利用度だけを考えてみましても、これは議論すればたくさんありますけれども、問題は解決しないのであります。結局は利用できないようにしておいて、利用度が少ないというのでは困るのです。だから、そういう点についてもやはり考えていくべきではないか。市町村でやるというならば市町村でやって、国全体で機会均等をはかっていくような、そういう制度というものを考えていかないと、せっかくの皆保険も画龍点睛を欠くということになるのではないかと思うのですが、そういう点につきまして一つ十分考えていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  97. 高田浩運

    ○高田政府委員 そういうような線に沿って努力いたします。
  98. 大原亨

    ○大原委員 それからこれは特別調整交付金とも関係いたしますが、まずお聞きしたいのは、特別調整交付金は、大体法令がございまますけれども、話の順序といたしまして、どういうことを基礎にいたしまして、公平に町村に分けておりますか、簡潔に一つ
  99. 首尾木一

    首尾木説明員 調整交付金総額の二〇%を特別調整交付金に充てておりまして、この特別調整交付金につきましては、それぞれこれを交付すべき場合を政令で定めて、これに基づいて交付しております。その場合と申しますのは、第一は、災害等によりまして保険料を減免した場合、それから第二は、災害等によりまして一部負担金を減免した場合、それから流行病及び災害による疾病、負傷にかかる療養の給付費が、療養の給付費総額の相当額に上る場合、それからさらに、結核性疾病あるいは精神病にかかる療養の給付費が、療養の給付費総額のこれも相当額をこえる場合、これは率として十分の二をこえる場合というふうにきめております。それから次に、地域的特殊疾病にかかる疾病の療養の給付費が、療養給付費総額のうちでこれも相当額をこえる場合、それから原子爆弾被爆者にかかる療養の給付費が、療養の給付費総額の相当額をこえる場合、それから次に、資格喪失後の継続給付にかかる額がある場合、一部負担金の割合を減じた場合、往診、歯科補綴、入院の場合の給食及び寝具設備について、療養の給付の範囲を拡大した場合に、その年度において増加する額について特別調整交付金を交付するというのであります。それからさらに、その他普通調整交付金において見込みます保険料の額が過大な見積もりになっている場合に、それを修正するような項目の調整交付金の交付を認める、大体以上のような場合に特別調整交付金を交付することになっております。
  100. 大原亨

    ○大原委員 この特別調整交付金は、そういうふうな一般的な問題以外に、特別に災害その他支出がふえた場合にこれにつけ加えるというふうになっておるのだと思うのですが、これはやはり、たとえば療養費の支払いの総額の実情その他を考えて、金額的にも穴を埋めるようになっているのですか。大体これはこのくらいだろう、こういうことでつかみ銭でやるわけですか。たとえば地方財政などで、基準財政需要額との関係で額を測定するというような方法ではないけれども、中身は違うけれども、そういうやり方等でやって、その差額を支払うということになっているわけですかどうですか。
  101. 首尾木一

    首尾木説明員 調整交付金には、御承知のように普通調整交付金と特別調整交付金がございまして、普通調整交付金が総体の調整交付金の八〇%を目途として、普通調整交付金を交付してありますが、それにつきましては、ただいま仰せになりましたような方法でもって一定の取るべき保険料と想定されるものと、需用費との差額を基準にしまして、交付するというような形をとっております。それから特別調整交付金につきましては、それぞれの項目ごとに交付金の基準を定めておりまして、その基準に従って交付するということになっておるわけでございます。
  102. 大原亨

    ○大原委員 それではこの結核、精神病の関係と原爆被爆者の関係をこれから質問いたすわけですが、最初に原爆被爆者の関係です。  各方面の努力によりまして、昭和三十二年に原爆医療法が制定をされまして、認定被爆者の制度ができました。それから昭和三十五年に特別被爆者の制度ができまして、相当多数の人々が医療給付の恩恵を受けることになったわけであります。それにはそれなりの相当の理由があったわけであります。そこで問題となっておりますのは、一人当たり医療費の比較なんですが、原爆被爆者の中で特別被爆者、これは健康もよくないし、特別に国が管理する必要があってやったわけですけれども、特別被爆者の一人当たり国民健康保険における医療費と、それから全国的な平均でもよろしいと思うのですが、きのうも永山委員等から質問があったようですが、一人当たりの全国的な医療費、こういうものを比較する資料があれば出してもらいたいと思います。
  103. 首尾木一

    首尾木説明員 三十六年度医療費の推定について申し上げます。これは広島、長崎その他あろうと思いますが、広島市の例についてお話し申し上げますと、特別被爆者の場合に、三十六年度の年間医療費は一人当たり一万七千四百八十二円、一般被保険者は四千六百七円となっております。それから、ただいまのは特別被爆者の数字を申し上げたわけでございますが、被爆者一般の数字で申し上げますと、三十六年度推定で一人当たりの療養給付費は一万四百三十円となっております。
  104. 大原亨

    ○大原委員 ここに一つ問題があるわけですが、昭和三十六年の医療費が、全国的な一年間の一般平均では四千六百七円ということに今お話しになりました。特別被爆者は一万七千四百八十二円、こういうふうに四倍も多いわけです。だからこれに対しましてこのままにほうっておきますと、特別被爆者を除いた一般市民の保険税を上げなければならぬ、あるいは他の町村で問題になっておるけれども、広島、長崎その他被爆者の多いところは、一般市民税から持ち出しをしなければならぬということになります。これは自治省や大蔵省にも質問いたしたいと思っておるのでありますが、こういうふうに四倍もということになりまして、それで調整交付金で穴を埋めるというふうなことは、これはできるのですか、やっているのですか。そうしないと、やはり医療の機会均等という面から、これは何らか国がどこかで財政措置をしなければならぬ問題である、バランスをとらなければならぬ問題でありますから、これはどういうふうにお考えになっておりますか、やっていなかったらやっていないでいいですよ。今の点はまず保険局の方にお尋ねするのですが、国民健康保険財政のバランスをとる、あるいは国民の側から見ると、医療の機会均等をはかるという観点から保険税負担の公平ということがあるわけですが、これは一般的な問題としても議論いたしますけれども、この問題として問題にいたしますと、一般の国民健康保険の総医療費は、平均いたしまして四千六百七円、昭和三十六年度ではかかるというのです。今の御答弁によりますと、広島の特別被爆者、長崎もそうですけれども、これは数万いるわけであります。これの人々の医療費は一万七千四百八十二円、こういうふうになっておるのでありますけれども、これは保険財政の上からいいまして、国はどのような方針でどれだけの金額をカバーいたしておるのか、こういう点を、できていなければできていない、十分でなければそのままでよろしいですから、まず一つ答弁をしていただきたい。
  105. 首尾木一

    首尾木説明員 先ほど私が申し上げました数字につきまして、全国平均の三十六年度における一人当たり医療費は三千五百九十六円でございまして、先ほど申し上げました四千六百七円という数字は、これは広島の普通被保険者数字でございます。それからなお、ただいま特別被爆者について一万七千四百八十二円という数字を申し上げたわけでございますが、現在の調整交付金との関係におきましては、算定方法におきまして、普通被爆者を含めまして、原子爆弾被爆者の医療費が一般の被保険者医療費よりも高い額につきまして調整交付金を考えているわけでございますので、その際の基礎数字といたしましては、さきに申し上げました一万四百三十円が基準になっておるわけでございます。このように一般被爆者と一般被保険者との医療費が異なるということによりまして、保険者負担分が増加する部分につきまして現在特別調整交付金を行なっているわけでございますが、さらに普通調整交付金におきましても、第一種調整交付金は、医療費が全国の平均よりも高い場合には出る仕組みになっておりまして、その部分につきましても、広島市に対しては第一種の普通調整交付金が流れるというふうな仕組みになっております。なお、三十五年度の調整交付金の交付額を申し上げますと、普通調整交付金において広島に千百七十七万二千円、特別調整交付金として二百五十八万九千円が広島に交付されております。
  106. 大原亨

    ○大原委員 それは全然問題にならぬ数字だと思うのですけれども数字といたしましては問題にならぬでしょう。いかがですか、今の差額からいいまして、問題にならぬでしょう。その一万四百三十円という金額からいたしまして問題にならぬでしょう。その問題にならぬところはどうしておるのですか。
  107. 首尾木一

    首尾木説明員 ただいま申し上げましたのは、三十六年度の調整交付金につきましてはいまだ交付しておりませんので、三十五年度の調整交付金を申し上げたわけでございます。三十五年度当時におきましては、一般被爆者の医療費が、年間で四千九百三十五円であったわけでございますが、一般被保険者が三千五百三円でございまして、その差額は現在ほどは開いておらないというふうなことになっております。三十六年度、先ほど申し上げたような一万四百三十円と四千六百七円とのその差ほどは開いておらなかったために、このような少ない額が出ておるというふうな結果になっておるわけでございます。
  108. 大原亨

    ○大原委員 今お話しになりましたのは昭和三十六年です。広島、長崎あるいは周辺市町村で被爆者が多いところで、特別被爆者がある場合においては全部問題になるのですが、その場合、昭和三十六年の数字を言われたのですが、一人当たり医療費は、昭和三十六年は特別調整交付金はまだまだたくさん出なければならぬというわけになるでしょう。そうならぬですか。
  109. 高田浩運

    ○高田政府委員 ちょっと説明の関係から、三十五年度と六年度……。長から申し上げました調整交付金総額については、三十五年度のことでございますから、それの基礎としてのいわゆる被爆者の一人頭の費用は四千九百三十五円九十一銭、三十六年度の一万四百三十円五十三銭に比べますとずっと低いわけですね。それで今申し上げました普通調整交付金千百七十七万二千円、特別調整交付金二百五十八万九千円、こういう数字になるわけでありまして、三十六年度において一万四百三十円五十三銭ないし一般被保険者の費用四千六百七円四十八銭、これを基礎にした数字というのはこれから計算をするわけでございまして、従って、この数字によってもおわかりいただけますように、それはぐっとふえるわけであります。
  110. 大原亨

    ○大原委員 それはいつごろ計算するのですか。
  111. 高田浩運

    ○高田政府委員 今月中に計算をするつもりでございます。
  112. 永山忠則

    ○永山委員 関連して。三十六年度に原爆の政府の追加予算をとりましたね。あれと一緒にしてどのくらいになっておるのですか。
  113. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 原爆関係医療費といたしまして、全部合わせまして四億四千万円です。
  114. 永山忠則

    ○永山委員 そこで、それは結局一部負担が四億四千万円ですから、広島市、長崎市の保険財政負担は四億四千万円となるわけです。その中で二割政府が持つわけですね。療養給付の二割を政府が持つ。そうすると、あと全部両市の保険財源で持たなければいかぬでしょう。
  115. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 今のは、補正予算をとりましたのは、本来の原爆症と特別被爆者の両方のことを申し上げました。実際の特別被爆者だけでございますと、当初予算が三十六年度七千四百六十四万円でありましたところへ、予備費を二億九千二百七十五万円とりまして、それからそれに補正を九百七十九万円とりました。合計三億七千七百十八万円、これがその数字であります。
  116. 永山忠則

    ○永山委員 そこで、三億七千七百万円の二割を政府が出して、あとは長崎と広島が保険料でまかなわなければならぬという結果になるのです。すなわち、社会保険が優先するという法律をなにしましたから、それがために特別被爆者分の半分は政府が出し、本人負担政府で出しますが、その他は保険料でまかなうわけで、政府が二割しかくれないのですから、そうすると、約三億七千万のうちの八割に近いものを長崎と広島が持たなければならぬ。すなわち、保険者保険料で持たねばならぬ。だからして、経済が非常に困難をきわめておるということになるのじゃないですか。
  117. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまのは、これで見ますのは一般の健康保険、共済その他の被扶養者も入っておるわけでございます。従って、国保は、ほぼ私どもの方の三十五年から六年の半ばまでの推定では、約半分でございます。従って、三億七千万円の半分、約一億八千万円ほどが国保の方への負担と、その他は国家共済とか、いろいろなものがございます。それの被扶養者という方になりますので、今の二割の問題は、その対象になりますのは国保の一億八千万ほどの部分ではないかと思います。
  118. 永山忠則

    ○永山委員 そこで、一億八千万の八割は、結局長崎と広島が持たねばならぬ。すなわち、保険料でまかなわなければならぬ。それで広島、長崎の保険経済が非常に困難をきわめておるので、この点は是正してもらわなければならぬ。被爆者の分は、政府は全部見てやるといいながら、他の被保険者が全部でかついでおるという結果を来たしておるのですから、この不合理性をぜひ是正してもらいたいという点をちょっと申し上げておきます。
  119. 大原亨

    ○大原委員 今の点につけ加えて。広島の事務当局に、担当の課員の人に計算してもらったら、昭和三十七年で、今の状況でいくと、九千六百六十一万三千円ほど特別にこの特別被爆者という制度のために持ち出しをしなければならぬというわけです。それは計算の基礎をずっと言いますと長くかかるから申し上げませんが、そういう計算を僕は事務的にしてもらいました。長崎も、これよりもっと少ないけれども、相当のものであります。それを特別調整交付金で——これは政策上の問題で議論するわけですが、特別調整交付金で穴を埋めることができるだろうか。
  120. 高田浩運

    ○高田政府委員 全部を特別調整交付金で肩がわりをするということには、なかなかならないと思いますが、今広島の両先生のお話にもありましたように、実情としては国保としては非常に艱難をしております事情十分考慮して、三十六年度の特別調整交付金の交付につきましては、十分その辺の実情を考慮して考えたい、そういう心組みでおります。
  121. 永山忠則

    ○永山委員 それで大臣にお尋ねしたいのです。この非常な不合理性を調整交付金で調整することもできるのですが、しかし他の市町村の保険財政にも非常に迷惑になりますので、これは原爆医療費は社会保険が優先して見ることをやめて、政府が全部めんどうを見てやろうという本旨に従って、将来何か一つ考えてみるというお考えをお持ちであるかどうか。
  122. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 状況によって十分検討してみたいと思います。
  123. 大原亨

    ○大原委員 それで今こっちの与党席から話があるのだが、とても九千何百万という金を特別調整交付金の現状では出せぬと思うのです。実際は、幾らあなたが事務当局ではじかれてこういう数字を出しても、出せぬのじゃないか。うなずいておるけれども、その通りだ。それはそのままで率直でいいと思うのです。市民税から持ち出す、あるいは保険税をふやすという以外にないわけです。保険税をふやすということならば、被爆者でない新しく入った人やその周辺の人がかぶるということになる。お互い助け合いということになるが、それはもう少し広い視野で考えなければならぬということになる。そうなれば、市民税で出したということになれば出してもよろしいが、市民税で出した場合に、そうすると、自治省としては、全国的に財政操作の上で十分現状を認めてカバーするかどうか、昭和三十六年はどうするのだ、昭和三十七年はどうするのだ、こういう問題が出てくると思うのです。
  124. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 現在の建前では、国民健康保険会計の費用を、御承知のように法令で一部負担金、国庫質掛金としてまかなう建前をとっております。従いまして、今のような事情につきましても、それらの財源で支出するように運用していただきたいという希望を自治省としては持っております。一般会計からの補てんは、建前として考えておらぬわけであります。
  125. 大原亨

    ○大原委員 そこで、地方交付税のそういう地方財政のシステムからいえば、自治省はそういうふうな答弁をしないと取られてしまうから、それはそういう答弁しか出ぬと思うが、これは不都合ではないですか。保険税というのは形を変えた税金なんです。そして一方では減税しておるけれども、どんどん全体的にはふえておるということが一つ問題。どうしても国庫負担をふやさなければならぬという問題は、これは大蔵省の問題。しかし地方の住民の負担の均衡という点からいえば、自治省では、全体的に基準財政需要額と収入基準額を計算いたしまして、差額を出すようになっておる。そういう均衡という点からいえば、特別被爆者、そういう特殊な原爆の被害によって三十が人なくなって、三十万人今全国に被害者がおるという現実で、これは放置できないということで国が健康管理をした場合において、そういう保険税の調整交付金では出せないということになる。そうすると、地方交付税においてもこれは出す建前でないということになったら、あなたは政府の総理大臣という立場でもいいから、どういうふうにしたらいいと思いますか。立法上どこに欠陥があるのだというようにお考えになりますか、自治省の方のお考えを聞きたい。
  126. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 現在の制度の建前の中における問題と、制度全体を変える問題と、二つあるだろうと思います。制度の建前を現状において考えています限りは、私たちは調整交付金の問題であろう、こう思っておるわけでございます。なお、制度をどう変えていくかというような問題につきましては、これはまたいろいろ議論がある問題でございまして、自治省として今この際どうあるべきだということは差し控えたいと思います。
  127. 大原亨

    ○大原委員 局長としては無理かもしれぬ、しかし大蔵大臣の代理の主計官、どうですか、これはどこからか出すわけです。どこからか出さなければならぬ。どこからか出して機会均等等をはからなければならぬという場合に、どこから出したらいいか。
  128. 岩尾一

    ○岩尾説明員 広島と長崎の原爆の医療費が非常に高い。従来原爆の被爆者に対する法律ができない前におきましては、一般の被爆者の方は、やはり保険にかかっておられたわけであります。それが原爆の被爆者の法律ができまして保険で見ていない、一部負担金で出しておるものを、原爆被爆者の法律で見ようということにいたしました。そういたしますと、急に医療費というものが上がってきたというところに、私どもの方には多少納得のいかない点があるわけでございます。そこで実際上、そういったいわゆる保険料にかわるべき保険者負担というものがふえてくる場合に、現在の国保の態勢といたしましては、全体の療養給付につきまして、保険者負担の半分を国で見るということで一応見ておるのです。その場合に、二割は医療費に応じて見ますけれども、あとの五%は財政調整交付金で見るという建前でありますから、現在六十五億程度の財政調整交付金を見ておると思いますが、その中で、どうしてもそういった特殊な状況によって、しかも一般の市町村等に比べて負担が過重になっておるという点があれば、当然財政調整交付金で見るべきものであって、国庫負担自体をそれによってどうこうするという問題ではないというふうに考えております。
  129. 大原亨

    ○大原委員 それは大蔵省の見解は、自治省の法令を変えて、そして交付税で見ろ、こういうことでしょう。国民健保の国庫負担の問題ではなしに、交付税で見ていく以外にない、こういう答弁でしょう。
  130. 岩尾一

    ○岩尾説明員 そうじゃございませんで、現在二割の国庫負担をやっておりますが、さらに五%の財政調整交付金で見ておるわけです。財政調整交付金の趣旨というものは、そういった特殊な状況によって保険者負担が過重になった場合に、これを調整しようということで見ておるものでございますから、これをもって調整すべき問題であって、全体の補助率なり負担率というものをどうこういう問題ではないであろう、こういうふうに考えております。
  131. 大原亨

    ○大原委員 保険局長、五%の調整交付金が多い少ないという問題はありますが、これで穴を埋めることができますか。
  132. 高田浩運

    ○高田政府委員 先ほどお話しの数字、これは私の数字とちょっと違いますけれども、全部これを肩がわりするということは、これは困難であろうと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、現地の実情というものを十分考慮して、三十六年度の交付については考えたいという気持で、まだこれは全国から数字が整いませんので、結論を出すわけには参りませんけれども、そういう気持で考えたいということを申し上げておるのでございます。
  133. 大原亨

    ○大原委員 今の御答弁に対しましてのこちらの質問はちょっと保留しておきますが、最初は、厚生省の方は、実際問題として九千万円はなかなかむずかしいということで、そういうお気持の答弁でございました。私もいろいろと検討してみましたが、実際上むずかしいのだろうと思うのです。そういたしますと、自治省が冷酷に言うように保険税を上げて、あるいは一部負担においてまかなえ、こういうことは、やはり申し上げたように不合理です。法律がそうなっておりますから、これは改正しなければそういうことが実現できない、こういうことですけれども、しかし国民健康保険については、そういう問題を解決しなければいけないのじゃないですか。自治省、どう思われますか。各市町村は赤字をたくさん持っておるのですよ。その原因というものは、やはり貧困な財政の市町村は国民個人々々の所得も低いわけです。応益部分、応能部分でいろいろやりましても、負担が多くなる。貧乏な方は、医療施設はいろいろなことで医療の機会均等をはからないで、何とかしているからという点もありますけれども、遠いから利用度が少ないという点もありますけれども、そういう立場からいえば、負担が多くてサービスが悪いということになる。そうして持ち出しが多いということになってしまう。それに対しては、自治省としても、そういう赤字をある程度計算をして見ていくという制度にしなければいけないんじゃないか。これを一つ研究してくれませんか。これをやらなければ、国庫負担を増額する以外にないですよ。あなたの見解はいかがですか。それはあまりはっきりしたことは言えぬだろうと思うのですけれども……。
  134. 奥野誠亮

    ○奥野政府委員 世の中が前進しておりますので、国民健康保険事業のあり方につきましても、いろいろ改革を加えていかなければならない問題が多分にあると私たちも考えておるわけであります。三十七年度につきましては、国庫負担率が五%引き上げられた、これもやはり前進だろう、こう思っておるわけでございます。自治省の立場で考えますと、なるたけ国民負担を均衡のとれたものにしていきたい、そういう場合に、国民健康保険税の負担のあり方につきましては、確かに問題があるという気持を持っておるわけでございまして、そういう意味で、そういう問題も指摘いたして参ってきているわけでございます。幸いにして国庫負担率引き上げで、こういう問題についてさらに一そう格差を広げていくという傾向は阻止できているだろうと思うのでございますけれども、さらに将来も一そう改善に向かって努力していかなければならぬ、こういう気持を持っているわけでございます。  なお、赤字の問題は、幸いにしてここ数年経済の情勢がよろしいものですから、国保税の徴収率もかなりよくなってきているのでございます。そういうこともあわせて、赤字がどんどん進んできた傾向が鈍化してきたというよりも、若干その後停滞したということになりましょうが、そういう意味で、財政そのものはよくなってきている、こういうふうに思っているわけでございます。  ただし、自治省の立場からいいますと、負担区分によって定められている通りに、たとえば事務費の国庫負担にしましても、実際必要なものをちゃんと交付するように、基礎をしっかりしたものにしてもらいたいという希望も持っているわけでございまして、御指摘になりましたように、問題がたくさんあると考えておりますが、自治省は自治省の方の立場から国保財政改善に向かって努力したい、こういう気持を持っているわけでございます。
  135. 大原亨

    ○大原委員 局長としては、はっきりした政治的答弁はできないと思います。しかし、これは皆保険になったんですよ。当初出発した保険数理一本では処理できないような状況にあるわけです。市町村議会の意思決定によって、そういう点を考えながら町村で負担していくという、保険税負担能力に応じて市町村民税から入れていくということでは必ずしもなくなった。国が制度として医療の機会均等をはかるために皆保険をやったわけですから、その機会の均等という建前からいえば、それは保険国庫負担をふやすと一緒に、一番底であるところの国民健康保険について、これはどこへもいくのですから、税金は所得の再分配ということがあるわけですから、そういう点から考えていって、当然にその保険財政からくるいわゆる財政負担を公平にしなければ、市町村を国民健康保険の経営主体にするという議論が成り立たなくなってしまう。医療費というものの機会均等をはかるためには、国でやらなければならぬということになる。ですから、この問題については、自治省としては抜本的に、総合的に検討してもらうように要請したいわけです。  それからこれは公衆衛生局長と大蔵省の方に制度の問題としてお尋ねして、厚生大臣にお尋ねしたいと思います。昨年の改正だったと思いますが、精神衛生については、御承知のように、これは全部保険財政から抜けさせたわけです。命令入所の場合については、精神も結核も八割が国庫負担で、二割が県費負担ということになった。やはり原爆医療法は、健康保険にとってみると、法体系からいえば、特別法じゃないかと思うんですよ。だから、これは保険局長と時間がないから十分議論できないが、一年や二年や五年で終わるような臨時的な特別調整交付金で出す金かどうかということも問題です。これは相当長い期間のものです。当時被爆した人の胎児にも影響があるということについては、はっきりわかっている。造血機能や増殖機能に影響がありますから、これは恒久的なわけですよ。それを国民健康保険のうちの二割のワク外、五%の調整交付金で一時的な、弥縫的な策を講ずるというようなことは、これは他の費目を見て一々検討すればいいので、これは常識的に見て不適当だと思うんですよ。ですから、行政監察委員会が、精神病について結核と同じような保障をとれということで、八割国庫負担と二割県費負担ということになったと思うのですけれども、これをどこかで負担するということになると、保険税負担するか、市町村民税で負担するか、一般の国費で負担するかという、そういう負担区分を考えてみると、やはり特別法と一般法の原則も考えてみてワクをはずしていって、精神衛生法や結核予防法のような、そういう制度にしていくことが——行政監察の結果については私も読んでみましたけれども、はっきりは書いておりません、大体そういう方向でやって厚生省も踏み切ったと思うし、大蔵省も了承したと思うのです。そういうことをやることが弥縫策でなしに、せっかく国として特別の医療措置をとるという方針をきめたのですから、制度の問題としては、交付税の問題以外にそういう特別法として、国費として処理しながら地方負担考えていって、地方負担については地方財政の中において処理する、こういうことが制度上からも筋が通っているんじゃないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、そういう点について、近い将来の問題としても、現状を十分実態を把握していただきながら検討していただきたいと思うのですが、大蔵省の考え方を示していただきたいと思います。
  136. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先生の御意見は、ちょうど結核、精神につきまして、命令入所、措置入院等につきまして八割の国庫負担をやるような新政策を昨年とりましたのと同じように、原爆障害者につきまして別途にそういった八割負担で法律を作って、そしてそれは保険優先ということではなくて、その方の法律を優先さしていくべきじゃないかという御主張だと思います。大蔵省といたしましては、本来、結核、精神につきまして今申し上げましたような措置をとりましたのは、結核がほかに非常に感染するおそれのある病気であるということ、いわゆる社会防衛的な見地が一つと、それから結核が非常に長い病気でございまして、低所得者にとって非常に負担が過重であるということ、この二つの点からそういった新しい法律を作りまして、非常に他人に感染させるような形で、しかも低所得の人は全部公費負担ということで、八割国庫負担という制度を作ったわけでございます。原爆等につきましては——これは九州の水俣にも、非常に長い病気で、原因がよくわからないのですけれども、そういった何らかの原因でひどい症状を起こす病気がございます。原爆につきましても、そういった意味で非常にみじめな病気ではあるのでございますけれども、特に国が、あらゆる病気の中で別途そういった法律をもって措置するものであるかどうかということにつきましては、原爆自体がそういった戦争の災害でございますし、もし原爆についてそういう措置をとるならば、ほかのいろいろな病気についても、やはりある程度みじめな病気とかあるいはそういう負担のかかる病気があるわけでございまして、結核、精神のように特殊な目的を持って作っているなら別でございますけれども、特に原爆であるからこれを一般の保険とは別に、今申しましたような特殊な法律を作って、先にその方でみんな見ていくということは、ほかとの関連においていかがかと考えております。ただ、今申しましたように非常に長い病気でもございますので、原爆医療法というのを作りまして、保険で見ておりましても、なお一部負担を出すものについてこれは負担にならないように、国の方で見るという趣旨であの法律を作った次第でございます。
  137. 大原亨

    ○大原委員 事務当局で答弁する限界があると思うのですが、結局特別被爆者の制度ができたというのは、やはり一定の条件のもとにおいて放射能を非常にたくさん受けたということなんです。だから健康管理を国が十分にしていくということなんです。ある一方から言えば、これはぜいたくだという人もあるのですけれども、しかし実際上は、やはりほかの生活援護の問題等はもちろん別個の問題として、医療の問題については、そういう制度昭和三十二年から三十五年にわたって作ったわけです。本年も一部改正いたしたわけであります。そのことは、その原爆による症状というものが人道上放置できない、こういうところに立法趣旨があるわけであります。それに対しては国が十全の健康管理をしなければいけない、こういった立法の趣旨があるわけですから、そのこと自体が特殊性を認めておるわけです。そして保険を加えて十割負担をするという結果、施設の利用度も高くなっている。高くなっているということは、これは十割支出ということも関係があるでしょうけれども、そういう点を考えてみました場合には、立法の趣旨は、私がしばしば言うように、国が肩がわりしたんだから責任を持てという国際法違反の問題は別に論議するとしても、今日までの特別立法、医療法の立法の経過というものは、人道上の見地から、被爆者について一定の放射能を受けた人は造血機能も増殖機能もガンその他について大きな障害があるのだから、そういうからだに抵抗力をつける、発病を防止する、病気が出た場合には余病が併発しないようにするという健康管理を、あらゆる面にわたってやるという制度を作ったのですから、そういう趣旨に従って特別の措置をするということは、あなたの御答弁の中から聞きましても必ずしも不適当ではないと思うのです。その点につきましては、十分大蔵省において研究してもらいたいと思いますが、その点について、よけいなことは言わぬで簡単に一つ所信を述べていただきたいと思います。
  138. 岩尾一

    ○岩尾説明員 今先生の申された趣旨で法律はできておるわけであります。結果といたしましては、原爆の被爆者につきましては保険で見てもらって、あとは全部また国で見るということになっておりますから、全部公費で見てもらうということになっております。  それから今申しました結核の命令入所も同じようなことになっております。それでおっしゃる趣旨は、その場合に保険で見るのがどうもおかしいのではないかということであろうと思うのでありますが、これは先ほど申しましたように、本来特別な法律で、たとえば他人に感染させるから特に府県知事が命令をして入れるというような場合であれば別でございますけれども、現状においては、皆保険でやれる基礎のものは見てしまって、なおかつ本人の負担がきつい面を法律で見るということであれば、それでそういう措置としては十分ではないかと考えております。
  139. 永山忠則

    ○永山委員 関連して。今の結核と精神病は特別に見てもいい、原爆の方はそういう性格でないから、それまで見ないでもいいのではないかという議論は、それならば半分も見ぬでいいだろう、国が見ぬでもいいだろうという議論になる。さらにまた、原爆病院を別に作らぬでもいいのではないか、大学で、数億の金をかけて特別に研究せぬでもいいのではないかという議論になる。結核や精神病以上に重要な病症であるという見地において研究もしなければならぬ、さらに特別病院も作らなければならぬというようになっておるのでありますから、結核や精神病と比べものにならぬほど問題にならぬものだから、政府はめんどうを見ぬでもいいのだというような議論は承服できぬ。ことに遺伝の問題も出てきます。幾らいってもなかなか治療が完備しないで、非常に重大な病気になっておるわけです。その意味において政府がめんどうを見させるというのですから、やはり一つ特別に御考慮願うということでなくちゃならぬと思うのです。
  140. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先生のおっしゃるような意味で今の医療法ができておるわけです。  大原先生の御意見は、今申しましたような医療法が、結核や精神のように保険より優先といいますか、保険と別に、先に命令入所した場合には公費で全部見るような法律を特別に作ってやったらどうかという御趣旨でございまして、先生のおっしゃるようにわれわれは、原爆が遺伝病じゃないとか、あるいは障害のない病気であるというふうには考えておらないので、現在の原爆医療法は、そういう病気であるのでそういった原爆を受けた人の負担を軽減するために全部国で見るという制度ができておりますので、それで十分ではないかというふうに存ずる次第でございます。
  141. 永山忠則

    ○永山委員 結核、精神以上に治療も要するし、重要であるから、結核、精神と相並んで、むしろそれ以上にやるべきだ、だから御研究をなさい、こう言っているわけです。
  142. 岩尾一

    ○岩尾説明員 結核の場合には、先ほど申しましたように他人に感染させる、精神は自傷、他傷というような、自分でみずからを傷つけ、しかも他人を傷つけるというようなあぶない病気である。従って、家庭状況も非常に不安定になりますから、そういう者は特に命じて入所させるということで、別の見地でやっているわけであります。
  143. 大原亨

    ○大原委員 それではこの問題については逐次締めくくっていきますが、私が今までずっと質問したのは、結局は、一人当たり医療費は特別被爆者は非常に莫大だ。これは広島、長崎、その周辺の町村では数万おる。それに対して特別調整交付金で払うということはできない。現実問題として、昭和三十七年の推定は九千万円だ。実際上調整交付金の五%の分ではできないじゃないか。地方財政の交付税でこのバランスをとるかということになると、そうはいかぬじゃないか。じゃ一体どうするのだ、こういう問題から、原爆医療法の全体の立法の趣旨から考えてみて、そういう国費負担の特例措置をとるべきではないか、こういう議論へいったわけです。あなたの議論は、そういう局面においては、私は理由になるかとも思うのだけれども、しかし全体として見るとそうはいかぬ。結局、一人一人の保険税負担は多くなってくる、そして特別被爆者以外の人も多くなってくる、特別被爆者も保険税負担は多くなる。しかも病気やその他によって健康が害されて、生活能力を持たないということになると、収入も少ない、貧困の原因になるわけであります。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 これは不公平じゃないか。これをどこで埋めるかということについては、ずっとせんじ詰めていっても話にならぬ。こういう問題は、地方交付税の改正の問題で、赤字の問題と一緒に被爆者については国が特別の措置をとるべきだ、こういう財政上の措置をとるべきだ。一人々々の被爆者にとっては、そういうことは関係ないわけです、どこからもらったっていい。ないけれども、しかし財政全体からいうと、回り回ってやっぱり地方負担ということになって、機会均等ということにも反するじゃないか。そうすれば、立法の趣旨から考えてみて、自損他壊とか、他人に感染するということとは違うけれども、しかし立法の趣旨として、これを見るということについては保険税を払うんだから何ら支障がないじゃないか、当然そうすべきじゃないか。そうしなかったら、行政としての公平さというものはどこでやるのか、こういうことであります。質問の趣旨はわかりましたか。主計官、よけいなことを言わぬで、わかったらわかったように言って下さい。質問の趣旨はわかりましたか。
  144. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいま申されました来年の見込みが九千万というお話でございますが、この点私の方はまだこまかい計算をしておりませんので、九千万であるかどうかということは、ちょっと即断はしにくいと思います。いずれことしの例等から見ましても、かなりの増加になっておることは事実であろうと思いますが、それが財政調整交付金をもってまかない切れないというふうには言えないんではないか、こういうふうに考えております。財政調整交付金は、現在六十八億程度の金を持っております。そのうちの八割というのが、先ほど厚生省の方で申されましたように、もし医療給付費が高いならば、その高い割合に応じてさらに交付するわけであります。従って、来年は二割五分国庫負担をするわけでありますが、三割分について、しかも高いところには高い割合で金がいく。そうしてなお、財政調整交付金の五%の中の二〇%というものは、特殊な原因によって、たとえば災害によって一部負担金を免除したとか、あるいは保険料を免除したとか、あるいは結核の患者が非常に多いとか、そういったところには、つかみと言うと失礼でございますけれども、二割の中で配分をしていけることになっておるわけでございます。そこで、その金の中でさばいていくわけでございますが、かりに六十八億の二割といたしましても大体十三、四億という金になるわけでございますから、これをもってさばく場合に全額どうかということは、これはまたいろいろ計算があると思いますけれども、少なくともさばき切れないというようなものではないと思います。
  145. 大原亨

    ○大原委員 それでは最後に厚生大臣、今までの御答弁は事務当局の答弁でありましたから、全体を把握してもらったと思いますので、特に広島出身の厚生大臣においては、重大なる決意をもって明快な答弁をいただくようにお願いいたします。
  146. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 原爆医療に関連いたしましてのお尋ねでありますが、先ほど来いろいろお話も出ておりましたが、この原爆医療法がどういう趣意で作られたか、あるいはどういう経過をたどってでき上がったかということは、永山さんなり大原さんなりよく御存じの通りだと思います。その趣意において何らの変わりはないのでございます。また、今その趣旨を変えようとも政府として考えておりません。当初からの趣旨でやっていこうと考えておるわけでございます。その結果が現在の法律になっておるわけであります。この法律の中でものを考えていただくということになりますれば、今のような広島とか長崎とか、原爆に関連いたしまして特に受診率が高い、病人が多いという特殊の事情考えなければならぬ。さような特殊の事情に対応するために調整金制度ができておるわけでございます。従いまして、私どもとしましては、現行法のもとにおきましては、この調整金制度を活用して、なるべくそういう特殊の事情について、非常に迷惑をすることのないように考えていかなければならぬ、これは当然のことだと考えます。そういう考え方でもってやって参りたいと思うわけであります。問題は、そういう特殊の調整をする財源が、はたして十分であるかないかというところに結局帰着するのじゃなかろうかと思うのであります。われわれとしましては、今度の予算を幸いにして通過させていただきますれば、その予算の範囲内において、できるだけさような面についての考慮を払っていく、こういうことになってくるわけであります。先ほど永山さんの御質問に対しましても、私は状況によって考えますということを申し上げましたが、今後広島市、長崎市等の原爆関係都市において、どの程度の特殊事情があるのかというふうな点がはっきり出てくるということになりまして、その場合に、全国的な視野においてこれを配分しなければなりませんが、その配分の関係においていかにも不足しているじゃないか、いかにも不十分じゃないかというふうなことがありますれば、その状況に即応して政府としては考えなければならぬという問題になってくるわけであります。これはこれからの問題であります。従いまして、ただいまのところは、先ほど来自治省あるいは大蔵省の当局からお答えになりましたように、現行法の中でこの調整金制度を何とかうまく活用いたしまして、この事態に対処していこう、こういう考え方になっておるわけでございます。なおよく検討いたしまして、配分につきましてもできるだけ御期待に沿うようにいたしたいと存じますけれども、結果は、まだ数字が出ておらないわけでありますから、何とも申し上げかねますが、心組みといたしましては、これを活用して、何とかさような点において特に財政上困る、あるいは保険税負担の上において困るというような地区に対しまして、なるべく御迷惑をかけぬようにいたしたい、こういうように運用して参りたいと思います。
  147. 永山忠則

    ○永山委員 ただいまの御説の点を十分御研究願いたいということは、ことし七億のうちで、特別被爆者の分で国保関係分が五億ぐらいあるとしますと、その五億のうち国保国庫負担は二割五分ですが、調整交付金を大幅にして一割五分見て四割国庫負担をしてもらったとしましても、残りの六割、すなわち三億は国保の税金でまかなわなくてはならぬのですから、要するに、五億円のうちの大体三億円ぐらいは、広島、長崎の国保保険者負担するということになるのですよ。広島、長崎の保険者が、全部それだけのものは特別負担をせねばならぬということになる、保険財政で見ねばならぬということになるわけなんです。だからして、われわれは命令入所をしろということを言っているのじゃないんですよ。命令入所と同じように財政的処置をしなさいと言っているのです。それをやらなければ、広島、長崎の人が特別なそれだけの犠牲をするということは、これはこの場合やるべきじゃないじゃないかということを、大臣もよく御研究を願いたいと思います。
  148. 大原亨

    ○大原委員 今の点は厚生大臣が御答弁になりましたし、永山委員の方からも御要望があったわけですが、とにかく現行法において最大限の努力をして実態把握をした上でやってもらうということと同時に、足りなかったら、筋を通してくれば大蔵省の方で出すというふうな御答弁でありますから、そのときには大いに出してもらう、追加予算でも何でも計上するという建前で、さらに全体を見た上で制度を改めるということで、厚生大臣の方から十分誠意のある御答弁をいただきましたので、一つ大臣の方によろしくお願いしておきます。  それから、貧乏と低所得階層と保険財政は非常に関係があるということなんですが、私どもといたしましては、従来から言っているように、結核とか精神病については全額給付にいたしまして、そして窓口においては七割は負担をするというふうなことがないと、やはり国民健康保険というものは、現状においては医療の機会均等の機能を十分果たさぬのではないかと思っておるのですが、そういう趣旨からいいますと、今までしばしば指摘したことがあるのですが、精神病と結核衛生につきまして命令入所の措置をとったということは、財政上もあるいは制度の上からもこれに一歩近づいたものといたしましてきわめて好ましい措置である、きわめて不満足ではあるけれどもよりよい措置である、その面におきましてはこれを推進してもらいたいという希望をわれわれは持っておるわけであるし、灘尾厚生大臣もしばしばこれに同感の意を表されております。ただ、問題はいろいろあるわけでございまして、きょうは非常にお急ぎの方もあるようでありますし、時間も切迫いたしておりますから端的に御質問いたすのですが、結核予防法におきましてせっかく命令入所の措置ができた——今までの質疑応答で古井厚生大臣のときもそうでしたが、灘尾厚生大臣のときもそうですが、命令入所で予算が足りなくなったならば——これはやはり、命令入所をいたしますと国民健康保険財政がそれだけ助かるわけです。特に農村等において、結核患者等が多い場合においては保険財政が助かるわけです。ですから、ワクを拡大していくということが、やはり少しずつよくなっていく道であると私は思うのです。従って、今までも若干の努力をいただきましたが、しかし最近の情勢を見てみますと、大蔵省やその他において少しブレーキをかけておるんじゃないかと私は思うのであります。その点は、詳細には申し上げる時間がないので私は申し上げませんが、昭和三十七年の三月現在の推定によりますと、結核のこの命令入所の適用者は七万をこえておるわけであります。しかしながら、来年度昭和三十七年の政府予算の説明を聞いてみますと、六万二千六百十六件ということになっておるのであります。これは生活保護の部面を転換させる面と一般の患者を命令入所に切りかえるという面を含んでおるわけです。つまり予算が現状よりも低いわけであります。そういうことになると、一体どういう操作をされるのであろうかと思うのであります。長期の療養でありますから、だんだんと現状から命令入所を後退させていかなければならぬのではないか。そういう点を、厚生省の方はどういう計算で、どのようなことで御了承になったか、あるいは大蔵省の方はこんなにもむちゃくちゃな予算査定をしたのか、こういうことになるわけですが、この二つの点につきまして御答弁いただきたいと思う。
  149. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 今の年度末に七万程度ということは、いろいろなことで、前には推定がございましたけれども、実際には、今度の半年分の命令入所のやり方は、在院中のものが切りかえられるということを許したわけでございます。この制度からいいますと、社会防衛の意味からは在院して隔離されておりますので、現実にはすぐには役に立たぬ。むしろ役に立つのは入院料の肩がわりというようなことでございましたが、これはやはり重視いたしましてこの制度をやったわけでございます。これは半年ごとに、院内においてそういうような条件、排菌の状況家庭状況等が続くかどうかによりまして普通の入院に切りかえ得る、また切りかえなければならぬような制度になっております。命令して拘束するというのが建前でありますから、そういうような条件が整わなければ今度は普通に切りかわるということで、これはもうすでに、ある程度菌がなくなって普通に切りかえられたものもある。そういうような形から見ますと、現実に、集計数でございませんが、多くて大体六万四千というのが現在あるであろうということでございます。これは資料を今集計中でございますが、さような数でございます。それから、これができましたのは、今言いましたような在院中の者の切りかえが三分の二を占めてきているわけでございますが、これがたまっておるために、外からとります三分の一の数は、ほんとうの目的通り条件に合った者を取り上げる、つまり一番の低所得で排菌の多い、危険度の多い者から取り上げるという形でございますので、このままの数が、今のやり方をやっていきますとますますふえるというような確実性もないわけであります。そうかといって減る部面は、在院しておる者が目的を達して、命令入所の形から切りかわるということは相当出てくるわけであります。回転といいますか……。さような形で三十六年度に半年始めて、三十七年度に初めてこれを通年で、ベッドのワクでしかも取っておりますので、これはやはりこの程度が適当であろうというわけで取ったわけでございます。さような意味でございますので、これも固定とはわれわれも考えておりませんので、この実績を見まして入った者が半年でどの程度目的を達するか、さらに大部分が一年になるかということによりまして、通年ベッドで取っておりますので、これが三回転すれば三人分に使えるわけであります。一回転ならば一人分しか使えないということでございますので、著しく今よりも、せっかく受けておったものが四月からマイナスの方になるというふうには当面は考えておりません。むしろ次年度にまたどうふやすか、実績によりましてということであろうと思います。
  150. 大原亨

    ○大原委員 昭和三十七年度厚生省として幾ら要求いたしましたか。
  151. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 要求といいましても、ほかの仕事もそうでございますけれども厚生省内部で私どもが好きなように組むという点ではもっと膨大なものであります。これは要求でありませんので、われわれが算定して……。
  152. 大原亨

    ○大原委員 要求したのは幾らですか。
  153. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 大蔵省に要求したのは若干多いということですが、これはごかんべん願いたいと思います。
  154. 大原亨

    ○大原委員 大蔵省はどういう見通しなんですか。大蔵省の方に経過を聞きたいのは、今まで、具体的な議論をするわけですから質疑応答においてできるだけ出ていただくようにしておるわけです。われわれはそのときに、結核で入院しておる患者であっても、命令入所の措置をとらないと病院を抜けて出る、あるいは家へ帰らなければならない、療養が続けられない、そういう人々に対しては当然命令入所の措置をするということがこの法の精神である、こういう質疑応答もありましたが、そのことについては厚生省は了承いたしました。だからそういうことでは、今のお話のように、そういうこともやってやり過ぎたというような答弁なんだ。今の話を聞きますと、率直に言うとそうなんです。私が突き詰めるとそういうことなんです。今度はやらないということの裏返しみたいな答弁になっているわけです。それではいけないのであって、これはやはり、現在入院しておる人であっても法律の影響というものを平等に受ける、こういうことからいえばその制度は進めるべきだ。しかもこの制度は、実績主義に基づいて、足りなければ義務支出をするという建前である。ただし、法律において若干の抜け道はある。府県知事の査定権その他認定権もあるだろうが、しかしそれにいたしましても、全県的に見てみますと、こういう制度を進めていくという建前において、やはり法を生かして使うということによって保険財政も助かれば、結核やあるいは精神病についても助かる、こういうことであります。   〔藤本委員長代理退席、齋藤(邦)委員長代理着席〕 だから大蔵省の方は、そういう点は理解をしてもらいたいと私は思うわけです。理解をされたかどうか、頭を下げておられますけれども、私は厚生大臣にこの問題をあとに保留いたしておきますけれども一つ大臣の御答弁をいただきたい点は、今までの質疑応答いたしましたことが、ひっくり返っておるわけじゃないでしょうが、これがひっくり返りまして逆行するということになりますと、やはり国民健康保険財政面からいいましても、低所得階層の結核や精神病の面から見ましてもいけないと思うのですが、これを運用してみて、公衆衛生局長の御答弁がありましたけれども、今までの質疑応答や議論の上に立って、義務支出であるという面から考えてみましても、足りなければどんどん一つワクを拡大するのだ、こういう御答弁であったのであります。古井厚生などというのは非常にはっきりした答弁をしました。それは同感だ、こういう御答弁でありまして、灘尾厚生大臣も、慎重でありましたが、御趣旨は同じ御答弁でありました。従って、私どもの言わんとしているところはわかっておるわけでありますが、現在入院患者を含めて、必要が起きた場合においては、やはり予算上の措置は実際の運営面を見た上において十分な考慮を払う、こういう点について、大臣といたしましての決意を簡潔に御表明いただきたいと思うのであります。
  155. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、この制度をきわめて有意義な制度考えております。ますます前進をはかって参りたいと思います。
  156. 齋藤邦吉

    齋藤(邦)委員長代理 滝井義高君。
  157. 滝井義高

    ○滝井委員 国民健康保険法の一部を改正する法律案について質問をいたしたいのですが、ことしの国民健康保険の助成費を見ますと、特別の療養給付費補助金十五億というのが削減をされておる。これは一体どういう理由で削減されたか。
  158. 高田浩運

    ○高田政府委員 これは国庫負担率五分の引き上げに吸収をしたということであります。
  159. 滝井義高

    ○滝井委員 国庫負担の五分は、医療費改定以前においてもすでに国保財政が苦しい、だからわれわれは、国会の議決で昨年の四月以来もみにもんで五分にしたので、政府の方は七月一日から医療費を改定する、さらにその後に緊急是正等もございましたけれども医療費の増によって患者の負担その他がふえる、従って、ここに十五億の金を出すことになったのだ、こういう説明をしたわけです。そうしますと、法律によらずして特別療養給付費十五億円を出すというのは非常に珍しいケースなんだ、こういうことをやってもいいかと言ったら、いやこれは財政危機でやむを得ませんからこういうことをやるのです、医療費が上がったから、それに対応するものとして十五億を組みました、こういうことなんです。吸収したと言うけれども、当然国保経済は、約八十億程度のものが、五%の引き上げがあれば財源が増加するということは地方は待っておるわけですから、その中から十五億削減するということは、十五億だけ当てがはずれたことになるわけです。では、十五億削減して、国保経済というものは隆々たる隆盛の方向にあるのですか。ないわけでしょう。これがまず第一に気に入らないところです。五%に吸収したと言うけれども、吸収しておらぬのです。五%は、初めから八十億程度というのはきまっているのです。ことしの予算でいえば七十九億何がしです。大蔵省はどうしてこの十五億を削ったんです。
  160. 岩尾一

    ○岩尾説明員 先ほど保険局長からお話しがございましたように、昨年、三十六年度におきまして医療費の改定が見込まれまして、それが保険者負担に響くであろうということで十五億円を計上したわけであります。三十七年度予算におきましては、そういった医療費の増高を含めまして保険者負担が増高することを考慮に入れまして、二割の国庫負担を二割五分と上げたわけであります。そういった意味合いの保険者負担というものは、十五億円をとった場合と比べて、現在の三十七年度予算における保険者負担はどうであるかということを検討いたしますと、一人当りの保険料で見ていただければよろしいかと思いますが、三十六年度の、先生の申されました十五億以外には、今回約九億六千万補正予算で見ております。そういうものを入れまして、全体の一人当たり保険料負担は、市町村の場合七百六十八円というのが、三十七年度は七百十四円というふうに下がって参ります。その意味からいたしましても、われわれといたしましては、三十六年に見た特別の療養給付費というものは、三十七年度国庫負担の五%引き上げでまかなえるのではないか、こういうことで計上しなかったわけであります。さらに、医療費の増高は、大体緊急是正と七月引き上げ分とを含めまして、全体といたしましては約一六%の引き上げになるわけであります。この一六%引き上げのうち国庫負担分を二割五分といたしますと、大体四%ということに相なります。従いまして、五%引き上げのうちの四%というものが、大体医療費引き上げと見ていいわけであります。なお一%分というのは、全体としての保険者負担というものを軽減しておる、こういう形になっております。
  161. 滝井義高

    ○滝井委員 健康保険のも削られましたね。これは幾ら削られましたか。
  162. 高田浩運

    ○高田政府委員 三十六年度八億でございましたのを、三十七年度予算には五億でございます。
  163. 滝井義高

    ○滝井委員 この三億削られたのはどういう理由ですか。国庫負担も何もないのですよ。
  164. 高田浩運

    ○高田政府委員 これは健康保険勘定における収入支出のバランスを見て、五億で適当であると考えて五億にしたわけであります。
  165. 滝井義高

    ○滝井委員 この健康保険勘定というのは、医療費引き上げる前から黒字なのです。そうでしょう、約一千万に及ぶ中小企業者のために国がわずかに五億円しか出さない。そうしてこれを医療費の改定で三億を加えて八億にした。ところが、もう削られておるじゃないですか。かつて六十億借りた借金の返済は今どうしておるのです。
  166. 高田浩運

    ○高田政府委員 これはもう済みました。
  167. 滝井義高

    ○滝井委員 済んだといったって、あれは国が十億ずつくれることになっておりますが、もらっておりますか。十億ずつもらいましたか。今まで毎年繰り延べておったでしょう。借金を返すのを繰り延べて、そのかわり十億国がくれなかったんですがね。
  168. 岩尾一

    ○岩尾説明員 政府管掌健康保険に対します繰り入れでございますが、三十年に六十億ということで、そのうちの実際の繰り入れを十億いたしまして、七十億の赤字がございますけれども、十億を繰り入れまして、あとの六十億は毎年繰り入れようということで、法案を提出したわけでございます。その後特別会計法におきまして、今申しましたのは、政府管掌健康保険におきまして歳入不足がある場合には、そういったことをやり得るというような規定に基づいてやったわけでございますが、その後保険法の改正によりまして、もっと前向きの形で、積極的に健康保険財政を強化する意味で補助ができるという規定ができまして、それに基づいて三十一年には三十億、三十二年に三十億、三十三年に十億というふうに出て参りまして、現在、先生がおっしゃいますように五億という線できておるわけでございます。先ほどの赤字の分は、実行上、現在の政府管掌健康保険の三十年当字の赤字から非常に黒字に転化いたしまして、その際に実際の保険の中におきまして、当時運用部から借りておりました金を、年度繰り越しの金と関連をいたしまして逐次返して参りまして、三十三年に全部実行上は返しております。大体そういうような状況でございます。
  169. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、返して六十億国からもらうのはどうしましたかというのです。もうもらわないで、結局六十億は出世払い、自分で払っちゃったわけですね、黒字になったからというので。あの法律はあるはずですよ。毎年繰り延べの法律、去年まで出しておったのですからね。全部もらったわけじゃない。もらっておったというが、もらっておらぬはずですよ。
  170. 岩尾一

    ○岩尾説明員 二つございまして、今申しましたのは積極的な——一つは、初年度だけは六十億の赤字の分の十億でございますが、あとの分は、積極的に保険財政を強化するという意味で入れてきておった金でございます。しかし、いずれにいたしましても、そういった趣旨で入れていった金に基づいて、保険財政というものは非常によくなって参ったわけでございます。そして現実には、六十億のその当時の借金自体は全部前で返してしまった。ただし、先生おっしゃいますように、六十億について十億ずつ入れようという法律は別にあるわけでございまして、その分につきましては、毎年心々実際上の歳入不足にならないわけでございますから、実行する必要はございません。従って、それについては毎年繰り延べてきておる、こういう状況でございます。
  171. 滝井義高

    ○滝井委員 これはおかしなことだと思うのですよ。いいですか、今の政府管掌の健康保険にしても、国民健康保険にしても、組合管掌の健康保険なり国家公務員の共済組合の保険にしてみても、これは雲泥の差がありますよ。組合健保と政府管掌と比べてごらんなさい、これは三対一ですよ。組合が三ならば政府管掌は一の力しかない。そのくらいの給付しかやっていない。国保に至っては、この政府管掌のまた半分なんです。その零細な四千五百万の被保険者、千万の中小企業の被保険者のために国が当然これは出さなければならない金を、医療費の改定の問題が鎮静をしたら、もう翌年は予算を十五億やるといったものを削る。三億やっておったものをまた削る。そして前のこの借金というものは出世払いで、お前が黒字になったからお前払えということならば、この保険は進歩がないのじゃないですか。一番最下層の、池田内閣が所得倍増政策で内容を上げてやるんだ、格差を縮めるんだということが、それじゃちっとも縮まらぬじゃないですか。これは一体どういうことなんですか。大臣、何で三億を黙って削られて、十五億を黙って削減されたか、私はこれは納得がいかぬと思うのです。昨年からちっともこれは前進してないですよ。なるほど二割が二割五分になったという点においては前進しておるけれども、一体被保険者医療内容その他が前進したかというと、ちっとも前進していない。当然十五億というものは既得権なんですからね。二割五分のほかに、これは大蔵省が厚生省と話し合って自主的に金がついたのだから、われわれがむしろこういう金は変則的なおかしな金だと言ったけれども、いやこれでいく、こういう形でやれるのだということを前の保険局長は言ってきておるんですよ。そういうやれる道を開いたものを、ことしになったらぽんと削ってしまうということはおかしい。その十五億があればこれは医療内容の前進ができるし、奥野さんの方の一般会計からの繰り入れの問題も、これは半分で済むことになる。四十九億の一般会計からの繰り入れがあるのですから、十五億をもらっておれば、少なくとも四十九億の中から十五億だけ一般会計から入れなくてもいいという形ができて、自主独立の形が幾分でも前進するわけですよ。これは大臣、どういう意味で——あなたは一体これは削ることでおりたのですか。こんなものは絶対おりるべきではないのです。政府管掌の問題ですよ。
  172. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 本年度の十五億円というものは、現行法の国庫負担分というものを前提としての十五億円だろうと思うのです。結局医療費が値上げをしなくちゃならぬ、増高してくるということに対しての措置として、この財政措置がとられたと思うのであります。それらの点をすべて勘案いたしまして、来年後かはら二割五分にしようと先ほど局長も答えたところでございますが、これをもってこの問題は吸収したものと私ども心得ておるわけでございます。特におりたとかおりないとかいうことではないわけてございます。  なおまた、前々からの国費の健康保険財政に対する繰り入れの問題でございますが、これは私の理解するところでは、主として健康保険財政の問題だと思うのであります。健康保険財政赤字を続けておる、こういう状態のもとにこの問題が考えられたと思うのであります。幸いにしてその状態改善せられて参りましたので、今日では特別に繰り入れをしない、こういう形になっておると思うのであります。今後の財政状況いかんによってはまた考えなければならぬ問題かと思いますけれども、さしむきのところ、これを入れる必要もないのではなかろうかということで大蔵省との間の話し合いがついておるような状況でございます。
  173. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは少しも前進がないわけです。国民健康保険というのは、あらゆる手段、方法を通じて、やはり国の金をもらおうとしておるのが今までの行き方なんですね。だから事務費その他についても、綿密な計算をして要求しておったはずでしょう。幸いに十五億もらっておったのですから、それを五%前進したからといって今度十五億下がれば、前進して一歩後退したのと同じで、一歩しか行かないことになる。いわんや政府管掌の健康保険に至っては一つも前進してないでしょう。ただ自前で黒字になった。黒字になったならば、その分は、八木さんがきのうごろからやかましく言っているように、一部負担をみな撤廃する方向に行かなければならない。少なくとも入院についての一日三十円というものはやめなければならぬ。あるいは今大原さんや永山さんが言われておったように、原爆のああいう問題というものは国保がどんどん出ていって片づける、健康保険が片づけるというふうにならなければならぬ。あるいは小児マヒのワクチン、あるいはアジアかぜの予防に保険証を使えるという形に前進しなければならぬでしょう。そういう前進が一つもないのに、黙って大蔵省の言う通りに下がるということは——下がる下がらぬではないとおっしゃるけれども、これは結果としては下がったことですよ。これでもう保険経済から言えば、社会保険全体から言えば、そのほかの船員保険その他のものも下がっているのですから、これは約二十億になんなんとする金が後退しておるわけですよ。だからこういう行き方というものは、これは熱意があるのかないのかということが非常にわからぬことになるわけです。まずこういう不満が一つあります。  もう一つ、一体今の医療保障の水準というものは、国が負担をするもの、それから保険料、こういう日本の医療保障水準というのは一体何%ですか。
  174. 高田浩運

    ○高田政府委員 どういう意味ですか。
  175. 滝井義高

    ○滝井委員 総医療費の中で医療保障の水準というのがありましょう。国際的に言うでしょう。総医療費の中で占める保険料とか国庫負担というものは、一体どの程度のものなんだということなんですよ。これはいつもわれわれが論議をする場合に非常に重要な問題です。あなたの方の厚生行政の長期計画にも、ちゃんと目標を定めておるはずでしょう。
  176. 高田浩運

    ○高田政府委員 六七%でございます。
  177. 滝井義高

    ○滝井委員 それは全保険を平均して六七%でしょう。そうすると、長期計画では幾らに見ておりますか。
  178. 高田浩運

    ○高田政府委員 八〇%に持っていきたいということを一応の考え方にしております。
  179. 滝井義高

    ○滝井委員 六七%における医療保障の水準は、現在の日本の国民所得にしたら何%になりますか。総医療費国民所得の何%ですか。何%と見たらいいか。
  180. 高田浩運

    ○高田政府委員 四%でございます。
  181. 滝井義高

    ○滝井委員 八〇%にすると何%になりますか。これは倍くらいになるでしょう。これはお宅の方は八%くらいと言っているから、そうでしょう。だれか知っている方いませんか。議論をする上に大事なところですから……。
  182. 大崎康

    ○大崎説明員 今後十年後に国民所得も伸びるわけでございますが、このうち現在の総医療費国民所得の率でございますが、四%がそのまま持続すると仮定いたしますと、八〇%の保険水準というものは国民所得の約三・二%程度になるわけです。
  183. 滝井義高

    ○滝井委員 六七%のときに国民所得に占める総医療費は四%、八〇%になりますと、国民所得の三・二%、こういうことになるわけですね。医療の水準というものは、すなわち国が負担する分、あるいは保険料、税でまかなう分、それが総医療費の八割、こういうことですよ。八割というときには、国民所得に占める総医療費というものは三・二ということですか。
  184. 大崎康

    ○大崎説明員 これは御説明が足らなかったと思いますが、こういうことになるわけでございます。総医療費国民所得に占める割合は、現在約四%でございます。そのうちに国なり何なりで、いわゆる公費で負担するものが六七%あるわけです。四%のうちに六七%あるわけです。それが十年後におきましてはどういうふうになるかといいますと、国民所得が上がりますが、それにつれましてまた総医療費も上がる。その程度は約四%といたしまして、その四%のうち、八〇%の水準でございますと、約三・二%が対国民所得比になるわけでございます。   〔齋藤(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に八〇%になれば、当然国民健康保険も八〇%にすることになるんでしょう。一番これは低いんですからね。平均が八〇%になるんですから……。国民健康保険より低いのはないんですね。日雇い健康保険の対象者は、人間の数は少ない。国保の被保険者は四千五百万人、だんだん百万人から二百万人ずつずっと減っておりますけれども、百五十万人くらいずつ出ていったって、十年後には三千四、五百万人くらいに最終的になっていくでしょう。そうしますと、一番低い国民健康保険医療保障水準というもの、すなわち公費で見る分というものは、保険料も入るでしょうが、結局それが八〇%になる、こういうことなんですよね。そうして、国民健康保険も当然そうなるんでしょう。こういうことなんです。
  186. 高田浩運

    ○高田政府委員 そういうこと……。
  187. 滝井義高

    ○滝井委員 一番低い国民健康保険も八割いくでしょう。
  188. 大崎康

    ○大崎説明員 全部を八割に持っていきたいということでございます。
  189. 滝井義高

    ○滝井委員 だから、全部を八割に持っていくんですから、一番低い国民健康保険も八割近くにいっておかなければだめじゃないでしょうかということです、今が六七ですから……。そうでしょう。
  190. 大崎康

    ○大崎説明員 十年後の水準は、今御説明申し上げましたように、八〇%になるわけでございます。しかし、この八〇%と申しますのは、総医療費の八〇%というものが公の会計を通るということの意味でございます。従いまして、各社会保険制度のいわゆる給付率が幾らになるかということは、また別の問題でございます。しかしながら、現在の六十数%というものが八十%に上がるということでございますから、国保給付率も、当然現在の五割というものは相当上がって、五割と八割の中間程度、あるいは八割にさや寄せした水準、この程度でほぼ定まるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。
  191. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その厚生省当局の、一体今のようにこま切れ的に国民健康保険国庫負担をちょびちょび出していくと——保険に療養給付費を補助するのは、国民健康保険一つですよね。他のものは、療養給付費についての補助は入っていないのです。これ一つです。そうすると、いわばこれは特異な形態をとっておる。これはあとで質問しますが、特異な形態をとっている。これを一体、将来あなた方は今のような工合にずっと続けていかれるつもりなのか、それとも十年の後の長期構想としては、一体これをどう持っていったら他の保険と均衡のとれた、いわゆる八〇%程度のものに近づいていくことができるかということなんです。その方法を、一つ局長、お示しを願いたいと思うのです。どういう方法で八〇%程度に——いろいろ例外はありますが、今原則的に五割のものをどうすれば八割程度に持っていけるか、その一番実現しやすい道を教えて下さい。
  192. 高田浩運

    ○高田政府委員 一挙にはなかなかいかないと思いますから、漸進的にいかなければなりませんが、その一つの手段として、七割給付というものを段階的に実現したいということで予算要求をいたしました。もちろん、これを全部保険料にかぶらせるということについては問題がありますから、やはり保険料国庫負担との両方で考えるということになるわけでございますけれども、そういうような方法を段階的に続けていって、終局の目的に達せしめる、これよりほかにないだろうと思います。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今後の方針は、今の制度を何ら変更することなく国庫負担を一寸刻みに増加していく。それから所得の前進に応じて保険料の増加をしていく、こういうことで八割の実現を期したい、こう理解して差しつかえありませんか。
  194. 高田浩運

    ○高田政府委員 保険全体の制度を、現在のままずっと固定をしていくというところまでは申し上げていないわけであります。これはこの問題としてやはり検討余地はあると思います。さしあたっての措置としては、やはり低いところの向きの給付内容というものを引き上げて、そのための保険料あるいは国庫負担法による財政上の措置を講じていくという建前をとっております。
  195. 滝井義高

    ○滝井委員 国家公務員の共済組合なり地方公務員の共済組合の短期保険に、その保険料を国が二分の一負担しているというのはどういう理論からきているのですか、これをお伺いします。
  196. 岩尾一

    ○岩尾説明員 共済組合につきましては、本人の掛金が半分、国の掛金が半分、これは事業主の立場でやっております。
  197. 滝井義高

    ○滝井委員 形式論的には事業主の立場ですよ、民間と同じです。しかし、それは国民の税金です。これは一般の企業の事業主が払う金とは違いますよ。企業の払うのは経費として落とす、いわば利潤から落としているわけです。この民間の事業主が半分払うことをそっくりそのままこれに持ってくることには、やはり問題があるのです。その通りにはいかないのです。この理論を持っていくと、国民健康保険に国が——主権者は国民ですから、自分の税金を二分の一事業主に肩がわりして、事業主というのは擬制をするわけです。この擬制論というのはあるのです。どういうところにあるかというと、たとえば土建業者です。土建の被保険者自身はどうしておるかというと、擬制適用を受けて、そうして被保険者自身が事業主分と労働者分を出しておるわけです。これは擬制適用ですね。この理論が当てはまるということになってくるわけです。そうしますと、国民は主権者ですから、国は国として一ぺん現われたらいいのです。国として二割五分出す、しかし被保険者保険料の二分の一は、今度は擬制的なものとして現われてきている。事業主の擬制適用です。これは当然国家公務員なり地方公務員に国が二分の一出している。これは使用者として出てきているわけです。しかも、それは国民の税金なんですから、事業主の普通の金とは違うわけです。そうすると、国民のものを国民に擬制適用するということは、理論的に私は可能だと思う。これをやる以外にはないと思う。今の段階では、そうしないと国民健康保険の前進はない。二割五分ずつもらってきておったのでは、いつまでもいかないと思う。たまたま山林の労働者等は擬制適用を受けているわけですから、被保険者に可能であるならば、国が不可能であるという理論はないと思う。国にも可能だと思う。これを保険当局なり大蔵省は一体どう考えるかということです。
  198. 谷村裕

    ○谷村政府委員 厚生省当局にお聞きになっておられたようでありますが、大蔵省どうだと振り返っておっしゃいますものですから、私が立ちました。  使用者の立場で国が二分の一見てやろうというのは、擬制ではなくて、全く国が使用者であるから見ておるのだと思います。国が見ておりますものは、確かに税金から出てくるわけでございますが、それはあたかも使用者が払う給料が、やはりわれわれの給料と同じような意味において給料を払っておるわけでありますから、たとい税金で費用負担の二分の一が払われても、それはおかしくないと思います。税金であることは、もちろんその通りでございます。あくまで使用者の立場から考えております。もし今のお説のように、すべての被用者でない方々に対して、国が使用者である立場を擬制にとったらどうかという話になって参りますと、これは社会保険全体としまして、被用者と被用者でない人と、それに対して国というものがどういう立場でものを考えるかという広い問題になってくると思うのです。ただ国民健康保険だから、あるいは被用者でない方々の保険だからといって、いきなり国が使用者の立場に擬制されるという議論には直ちにならないと思います。
  199. 滝井義高

    ○滝井委員 直ちになるならぬの問題ではないのです。事業主が二分の一負担しておるという二分の一の負担のやり方とその財源の本質を見ると、一方は税金だから違うのですよ。事業主の金というものは私的資本の金です。私企業なんです。ところが、国家の金というものは国民の税金なんだから、私企業と本質的に違う。国民の税金を——擬制という言葉が悪ければまねしただけだ。民間の事業で事業主が二分の一出すから、国も一つ使用者の立場で同じように二分の一出してみろ、こういう形をまねしたわけです。それを擬制という言葉が悪ければ、まねといいます。ところが、今度一方民間でなくて政府管掌の健康保険等を見ると、日雇い等においては擬制適用というものが行なわれる。それは被保険者が、みずから使用主の立場とそれから被保険者の立場と両方持って保険料を納めていく。そうすると、国が主権者である国民のために擬制をしても悪くはないだろうということです。直ちに出られないと言うけれども、これは出られないことはない。やろうと思えば政策で出れることになる。その出る場合には、国民健康保険だけに出るとは言えない。それは政府管掌の健康保険にも出る。組合管掌にも出ていく。しかしそれは、財政が豊かなところには擬制適用の率を少し安く出したらいい。これが政策なんです。こういう方法をとる以外に保険の前進はないのですよ。今の国民健康保険なり政府管掌の健康保険に金を入れてくる方法はないのです。社会保障というけれども政府管掌の健康保険には事務費だけしか出さないのです。それから社会保障といいながら、たとえば今度地方公務員の共済組合ができる。あれなんかは国が出さないで地方自治体が出す。一方一割というのは交付税、交付金という例外的な変形のもので出てくる。こういうように、国はやろうと思ったら自分の勝手なことをやるのですよ。ある場合には、五割五分というものは一般財源から出す。なるほど交付税も一般財源かもしれぬけれども、しかし、国が一割か二割出さなければならぬものを、交付税という地方自治体に一般財源で肩がわりさせるという方法をおとりになっておる。そうしますと、こういう政府管掌の健康保険なり国民健康保険について、私は国が保険料の一部を見ることはむずかしくないと思う。当然社会保障だから見るべきなんですよ。それを今まで見ていない、それをとり得ない厚生当局の非力さというものは概嘆にたえないですね。すでにとっておったものも取り返されてしまう、こういう事態でしょう。だから今の高田さんのような御説明では、ほとんど前進がないということです。前進の方法は、われわれの主張とあなた方の主張とは少し違うようでありますから議論になりますが、そこで今度あなた方の主張と調子を合わせながら少し質問してみたいと思いますが……。
  200. 中野四郎

    中野委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  201. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。  次会は来たる二十日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十五分散会