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1962-03-07 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)     午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長代理 理事 藤本 捨助君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       澁谷 直藏君    中山 マサ君       楢橋  渡君    赤松  勇君       大原  亨君    河野  正君       五島 虎雄君    島本 虎三君       田邊  誠君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         郵 政 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (保険局長)  高田 浩運君         郵政事務官         (大臣官房長) 金澤 平藏君         郵政事務官         (簡易保険局         長)      板野  學君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君  委員外出席者         議     員 五島 虎雄君         議     員 八木 一男君         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         厚生事務官         (医務局次長) 鈴村 信吾君         郵政事務官         (簡易保険局規         画課長)    大松 喬寛君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金課長)    東村金之助君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  医療金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第三五号)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)  最低賃金法案勝間田清一君外十二名提出、衆  法第一六号)      ――――◇―――――
  2. 藤本捨助

    藤本委員長代理 これより会議を開きます。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十七分休憩      ――――◇―――――    午後一後四十一分開議
  3. 藤本捨助

    藤本委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案及び勝間田清一君外十二名提出最低賃金法案、以上二案を一括議題とし、審議を進めます。
  4. 藤本捨助

    藤本委員長代理 提案理由の説明を聴取いたします。八木一男君。
  5. 八木一男

    八木(一)議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題と相なりましたわが党提出生活保護法の一部を改正する法律案、すなわち生活保障法案につき、その提出理由趣旨並びにその内容の大綱につき、御説明申し上げます。  生活保護制度が、憲法第二十五条の精神を実現すべき制度の中で最も大切なものであり、社会保障制度基盤をなすものでありますことは議論の余地のないところでありますが、この重要な制度規定する生活保護法が、制定後十数年間、その間に、社会状態家族関係経済状態生活水準等の急激な変遷に際会しているのにかかわらず、変化に応じた根本的な改正がなされず、その運用も、また、枝葉末節にとらわれて根本的精神にもとる方向がとられ、そのため、憲法に明記された健康で文化的な生活を営む国民基本的権利が、実際には保障されず、多くの不運な人たち人間らしい生活をなし得ないでいる現状ば、まことに憤激にあり、非常に複雑な構成になっておりますことは各位の御承知通りでありますが、そのあらゆるものが、あまりにも低過ぎていることは、周知の事実でございます。  まず、その中心である生活扶助制度で調べてみますと、一級地標準五人世帯で一月、一万一千九百二十円・一人当たり月二千三百八十四円しか支給しないのでありまして、そのうち飲食物費は、月八千二百十円、一人当たり千六百四十二円、一人一食平均十八円ということに和なります。もっと具体的に年令別地域別に、飲食費一食当たりを出しますと、六才かち八才までが一級地で一食平均約十九門、四級地約十四円、十八才から二十四才までが一級地約二十五円、四級地約十九円、たえない状態であり、その間の政府の責任は、まさに重大といわなければならないと存じます。  わが党は、この現状にかんがみ4活保護法を抜本的に改め、その重大な欠陥を是正して、憲法の条章のほんとう意味の実現をはかろうとするものでありまして、法律名も、その趣旨に即応するよう、生活保障法と改めようとするものであります。  以下順次、おもなる改正点とその理由について御説明申し上げます。  まず改正の第一の柱は、基準改定を適切迅速なものにするために、生活保障基準審議会を作ることであります。生活保護制度には生活、住宅、教育、出産、生業、葬祭、一時の各扶助制度があり、また六種類加算制度、四種類控除制度があり、かつ、その基準年令別、性別、世帯構成別所在地域別にそれぞれ計算されるわけであり、非常に複雑な構成になっておりますことは各位の御承知通りでありますが、そのあらゆるものが、あまりにも低すぎていることは、周知の事実でございます。  まず、その中心である生活扶助制度で調べてみなすと、一級地標準五人世帯で一月、一万一千九百二十円、一人当たり月二千三百八十四円しか支給しないのでありまして、そのうち飲食物費は、月八千二百十円、一人当たり千六百四十二円、一人一食平均十八円ということに相なります。もっと具体的に年令別地域別に、飲食費一食当たりを出しますと、六才から八才までが一級地で一食平均約十九円、四級地約十四円、十八才から二十四才までが一級地約二十五円、四級地約十九円六十才以上一級地約二十二円、四級地約十六円ということに相なるわけであります。多いところで二十円代、少ないところでは十数円代の食費という、まことに驚くべき僅少な金額に相なるわけでございまして、これでは全く健康な生活ということはできず、ただ現在生きているというだけで、自分体力を消耗し、当然長らえるべき生命を縮めているといっても断じて過言ではないのであります。嗜好品費を分析いたしますると、たばこ、甘味品等は考慮されておらず、パンツなど消耗度の多い下着が一年に約二着余、四十ワットの電灯しかつけられない状態では、文化的な生活などは絶対に言えないのであります。  右のような実情から見て、即時大幅な基準引き上げが断じて必要であり、その後も物価の上昇に見合うことはもちろん、さらに一般生活水準向上等に従って、時を移さず改定をさるべきものであります。  しかるにかかわらず、基準引き上げについてはその場限りのごまかしの方法しかとられていなかったため、生活扶助を受ける世帯生活水準は、一般勤労世帯生活水準に比して、立法当時よりぐんぐんと低下してきたのであります。  すなわち、その比率は、昭和二十六年及び二十七年が五四・八%でありましたのが、二十八年より四〇%台に下がり、三十二年度よりは三九%台に下がり、本年度改定によって四〇%をわずかに上回り、明年度予算案基準でようやく四二%に達するであろうかと推定されるたけであります。健康で文化的な最低生活水準ということは絶えず進展すべきものであり、単純にきめがたいものでありますが、特定の国における特定の時点においては客観的に決定し得るもので、かつ決定すべきものであります。  しかも、最低限度というからには、その実施を予算ワクというもので縛り、不可能にすることは絶対に許されないものであり、逆にそのことを国民に保障するために、予算が組まれなければならない性質のものであります。  しかるにかかわらず、この当然の原則が完全に無視され、主管官庁予算要求までが当てずっぽうのきわめて無責任、無気力、不十分のものであり、さらに、それすらも予算ワクということで大なたをふるわれるというやり方では、いつでも不運な人たち人間らしい生活を保障されることは実現できないことになり、その間における人権の侵害はあとからではいかにしても補うことはできなくなるわけであります。  このような欠陥をなくし、この法律に実際の筋金を入れるために、生活保障基準審議会制度を設けようとしていることがまず第一の改正点であります。すなわち、同法の第二章のあと生活保障基準審議会の章を起こし、基準決定に関する厚生大別権限との関係に関して第八条に第三項を新しく規定するほか、所要の改正をすることによって同審議会の活用をはかろうとするものでありまして、まず、審議会は両院の同意を得て、内閣総理天臣が任命する委員八名及び厚化労働大蔵、各事務次官計十一名をもって構成され、十分重大な任務を補佐するに足る事務局を置き、毎年一回以上保護基準の適否に関する報告義務変更の必要を認める場合の勧告権を持ち、また、厚生大臣基準変更の際の諮問義務並びに厚生大臣審議会意見によりがたいと認めるときの再諮問義務規定し、さらに審議会の答申、意見勧告に対する政府尊重義務規定するものでありまして、審議会として、最も大きな権限を付与してその熱心な調査、民主的な審議による適切迅速な決定によって、従来の政府の怠慢、無責任のため、憲法第二十五条の精神が実際に十分に確立されていない弊を除こうとするものであります。  改正の第二の柱は自立助長に関してであります。  本法目的として、第一条に自立助長が明記されておりますが、自後の具体的条文は、わずかに生業扶助の項を除いて、それ以外はこの目的を実現しようという意味を持つものは全然なく、それのみか、この目的を抹殺する作用を有する第四条のごとき規定すらあるのであります。自立助長は、対象者が機械ではなく、生きた感情を持つ人間であることを念頭に入れたものでなければ実効が上がりません。現在の収入認定制度は、不運な人が何とか苦しい努力の中から人間らしい生活を再建しようとする意欲を喪失させる仕組みになっております。夫が死亡し、足腰の不自由な老母と、幼い三人、四人の子をかかえている母が懸命に働いた収入扶助の金から差し引かれるのでは、疲れだけが残る仕事をやめて、せめて家族たちのそばにいて、子供たちをかわいがり、親に孝養を尽くした方がよいという気持になることはあたりまえの話であろうと思います。芳しい中、条件の悪い中で、母を慕う子供、看護してあげたい親を目をつぶって家に残し、働きに出ることは、その子供に、親に、少しでもおいしいもの、栄養になるものを食べさせたいという考え方で気力をふるって働いているのに、その収入が実際の生活を潤すものにならないのでは、働く意欲など喪失し、自立の道は閉ざされてしまうことは明らかであります。  現在の制度運用においても、この実態が直視され、行政上はこの法律をできるだけ広く解釈して、冷酷無比な収入認定制度を緩和しようという方法がとられておりますが、いかんせん、第四条第一項の鬼畜のごとき条文に縛られて、十分なものになっておりません。  いわゆる、勤労控除という制度は、大衆の切なる希望に従って厚生省が知恵をしぼり切って作った制度でありますか、条文に縛られて、必要経費控除という理論の上にしか立てないため、実際の働きによる実生活向上という問題はほとんど解決しておらず、勤勉控除等でもし実際的に幾分の効果ありとしても、この制度は働く者一名につき幾ら控除制度であって、前例のごとき、家族を多くかかえた未亡人には何分の一の効果しか及ばないわけであります。従って、この勤労控除制度必要経費補充という目的のため有効な制度であり、存続拡充すべきでありますが、ほんとう自立を促進するためには、これとは別に、対象家族に応じた、しかも必要経費というワクに縛られない収入認定控除制度を作り、要保護当家庭中のある程度働き得る者が家族のために一生懸命働いた収入が実際に相当程度家族を潤し、その結果さらに働く意欲を燃やし、仕事の習熟、顧客の増加等によってさらに収入がふえ、自立の道が急速にかつ大きく開けるようすべきであります。本案はそのため第九条の二の規定を新しく設け、右の目的を達成しようとするものであります。  以上は、事立助長をはばむ収入認定を緩和しようとする条文でありますが、他の点においても自立助長に配慮いたしておりますことはもちろんであります。  改正の第三の柱ば、適用の過酷な要件を緩和しようとするものであります。  現行法でこれを規定いたしておりますのは、保護補足性条項、すなわち、第四条第一項及び第二項であります。まづ第一項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と規定されているのでありまして、あらゆるものまで極端に縛ったこの過酷きわまる条文のために、数年前までは、病床の老人がただ一つの楽しみであったラジオ、それも、売り払った場合幾らの金にもならないものでも処分しなければ、扶助が受けられない。なき夫の形見記念品を泣く泣く手離さなければ扶助が受けられない、田畑のまん中の家を処分しなければ医療扶助が受けられないといった状態があったわけであります。  このように、実情に合わない条文に対して、行政に当たるものは、厳密にいえばこの悪条文幾分犯したともいうべき苦しい解釈をしながらできるだけあたたかい運用がなされ、現在ではラジオとか自転車とかを保有し、また家屋等の全般的な処分をしなくても保護が受けられるようになってはおり、また、逐年幾分ずつ緩和される傾向にありますけれども、やはりこの条文に縛られて実情にそぐわず、対象者人間らしい感情を踏みにじり、あるいは再起希望を断つことが非常に多いわけであります。  この点を改めるため、右条文中、「その他あらゆるもの」を「その他のもの」に改めて、冷酷な鉄条網を取り払い、さらに、積極的にただし書きを加えて、たとえば親の形見夫婦記念品老人病人子供等娯楽品など、社会通念上保有させることが適当なもの及び将来再起のため必要な、たとえば、家屋田畑、店舗、オートバイ、三輪車等々、自立助長に適当なものの保有をしたままで保護が受けられるようにしようとするものであります。  次に第二項では、民法扶養義務者扶養本法保護に優先して行なわれるものとすることになっており、この条文のため、家族とともに余裕のないきりきりの生活をしている人が、要保護者に対する扶養義務のため、その生活を破壊されたり、また、それをめぐって、親戚間の感情が対立したり、また、遠方に親戚がいるため、保護を必要とする者が急速に保護が受けられなかったり、いろいろの不都合が生じ、担当者も扱いに苦悩する現状にかんがみ、実情に合わない民法扶養義務優先条項を削除して、あたたかい運営を行なおうとするものであります。  改正の第四の柱は、現在保護世帯単位として行なうことを原則としているのを、個人単位原則とすることに改めようとするものであります。  現在世帯単位原則とされているため、民法にいわゆる生活保持義務者ではない扶養義務者同一世帯にいることによって、要保護者と完全に同一水準生活をしいられることになっていることは、全く不合理といわなければならないことでありまして、実例をもって考えてみますと、障害者の父、病人の母、幼い弟妹二名と同一世帯でいる十八才の少年が、どのくらい懸命に働いても、収入がこの五人分の生活保護費以上の金額にならない限り実生活費引き上げることにならないわけであって、若い青年の人権がじゅうりんされ、両親に対する孝心も実際には実を結ばないことになるわけでありますので、このような重大な欠陥をなくすため、第十条を改め、原則的に個人単位とし、ただ例外として、同一世帯夫婦並びに親と未成年の子供のみを一体として扱うことにしようとするものであります。  このことによって、要保護世帯の中で懸命な努力をする青少年は、その働きに兄合う生活を建設し、かつ、実際的には収入のある部分は両親弟妹生活のため消費せられて、青少年勤労による自己の生活建設努力と、家族に少しでもよい生活をと願う愛情が、実際上実を結ぶことになると考えるものであります。  改正の第五の柱は、本法施行上の芳情の処理を民主的なものにするため、中央地方苦情処理機関を置こうとするものであります。  従来、本法の取り扱いにいろいろ苦情が生じ、かつ、その処理が必ずしも適切に行なわれないことは、いわゆる朝日裁判の例をもっても明らかでありますが、裁判に訴えることはもちろん、実際は官僚の手によって冷ややかに処理されることが多い、大臣知事決定に期待が持てず、苦情申し立てすらもあきらめている対象者が多い今日、民主的な機関を設けて本法のよき運用を期することが緊要なことであり、そのため第九章の二を新しく規定し、中央生活保障審査会地方生活保障審査会を置こうとするものであります。中央審査会厚生大臣にかわってこの任務を行なうものであり、厚生大臣の任命する学識経験者六名、関係行政機関職員五名、計十一名をもって構成するものであります。特に、その機関の特質にかんがみ、行政の側よりする圧力を排するため、心身故障など特別の場合のほかは、その意に反して罷免することができないことにしようとするものであります。地方審査会は、現行法知半にかわってこの任務を行なうものであり、学識経験者七名、関係地方公共団体職員六名、計十三名をもって構成し、委員の身分が保障されることば、中央審査会と同様であります。  以上が具体的な改正点でありますが、その他本法理念を明らかにするための改正を行なうものであります。  まず、現行法目的が、生活に困窮する国民に対して作られたもであるとしているのを発展させ、憲法第二十五条の理念を明確に確立させるため、生活に困窮するというあいまいかつ消極的な規定を改め、健康で文化的な生活を維持することができないものに対して、適用させるものであることを規定するため、第一条及び第四条を改正し、さらにこの改正と前述五項の抜本的な本法骨組改造に対応し、かつ、題名よりくる恩恵的な誤解を一掃し、国民生存権を明確にするため、題名生活保障法改正しようとするものであります。  本改正法は、昭和三十七年十月一日から施行しようとするものであり、ただし、生活保障基準審議会規定は、その任務上、公布の日から直ちに施行するものであります。  本法施行に要する直接の費用ば、基準審議会及び審査会費用で年間約五千万円であります。  以上が本法案内容の概要でありますが、要するに、本法案社会保障基盤法律である生活保護法が、あらゆる面でその目的を十分に果たしておらず、国民生存権がはなはだしく侵害されている点を根本的に改め、憲法第二十五条の精神を実際に確立しようとするものであります。  健威生活を保障する目的を持った法律が不完全であり、対象者自分体力を食べて、健康をすり減らしながら毎日を送らなければならない状態、文化的などとは、どんな観点よりも言えない状態、寿命や人間性をすり減らす状態幾分でも少なくするためには、この法律をごまかすことをすらしなくてはならない状態関係官庁が違反すれすれの行政解釈をしなければならない状態を考えるとき、生活保護法改正は一日もゆるがせにすることはできないと存じます。  この様な欠点を根本的に改め、ほんとうに健康で文化的な生活を保障し、さらに、ほんとう自立助長をはかるため、あらゆる観点から検討いたしました本法案でありまして、憲法を尊重し、擁護する義務を持たされ、そのことに最も忠実な各位の、慎重な御審議の上の急速なる満場一致御可決を心からお願いする次第であります。(拍手)
  6. 藤本捨助

  7. 五島虎雄

    五島議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、最低賃金法案提案理由を説明いたします。  本法案提出いたします理由は、第一に、現行法内容、その運用状況を見ましても、致命的な欠陥があることであります。第二に、社会党案最低賃金制の本来の精神、すなわち、憲法第二十五条、労働基準法第一条、ILO第二十六号条約趣旨に立脚するものであるということであります。社会党最低賃金法案を提案する理由は、右の二点に集約されるのでありますが、特に、本法案が現実的に要請される理由は、最近の労働情勢より見て、若年労働者不足臨時工の増大、中高年令層就職難という雇用状況から見て明らかであります。  第一の理由、つまり税行法の致命的な欠陥を具体的に例示いたしますと、大体次の五つの点に要約できると思うのであります。  その一は、現行法労使対等原則を無視しているということであります。  ILO第二十六号条約を見れば明らかなように、最低賃金制運用にあたっては、労使が対等の立場で参加すべきことを規定しております。最低費金制趣旨が、労働者最低生活を保障しようということにある以上、このILO第二十六号条約の言うところは、当然守られなければならないものであります。しかるに、政府は、今なお第二十六号条約を無視して批准しようともせず、またこの条約に違反する現行最低賃金法運用によって、わが国の低賃金構造が温存されるという欠陥が、はっきりと実証されているのであります。  その二は、現行最低賃金法運営による実績を見ますと、最低賃金額を算定するにあたって、労働者生計費が全く考慮されていないという欠陥であります。  現行最低賃金法第三条は、「最低賃金は、労働者生計費類似労働者賃金及び通常事業賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」と規定されております。この規定は、最低賃金決定基準として、国際的通念となっている三原則、すなわち、前述いたしました労働者生計費類似労働者賃金及び通常事業賃金支払い能力の三原則を総合的に勘案しなければならないこととは一致しているのであります。しかるに、最低賃金額を実際に決定するにあたっては、三原則のうちの一つ、つまり企業賃金支払い能力のみが優先的に考慮されている実情でありますために、類似の業務に従事する労働者であっても、企業の規模が相違するというだけで賃金に非常な格差があるのであります。さらに、労働者生計費を無視した企業本位業者間協定による最低賃金額でありますために、最近の異常な物価騰貴により実質賃金はますます低下いたし、その結果、若年労働者を大企業に独占されて、労働力不足に悩むという自家撞着に陥っているのであります。このようなことになる理由としては、監督行政予算不足のために確保されておらないということもありましょうが、根本的な理由は、現行法運営が全く企業本位となって行なわれているからであります。  その三は、現行法労働者組織化を妨げる役割を果たしているということであります。  周知のように、諸外国における最低賃金法制定動機を考えてみまするに、最も大きな動機一つとして、労働者組織化の促進ということがあげられているのであります。この諸外国のあり方と比較いたしますときに、わが国の現行最低賃金法運営は、全くこれと逆行する傾向を示しているのであります。たとえば、大企業労働組合が労働協約を結び、その協約下に未組織の労働者を組織しようと努力している最中に、低い賃金業者間協定を結んで、労働者組織化努力を水泡に帰せしめるということ、これはまことに遺憾なことでありますが、数多くの事実としてあげらていることであります。本来、労働行政目的は、労働者組織化を育成し、それによって労働者生活向上をはかることにあるのであります。この労働行政本来の目的に違反して現行最低賃金法運営されている限り、私どもは根本的立場から現行法の廃止を要求せざるを得ないのであります。  その四は、現行の最低賃金制度が最高賃金制化しつつあるということであります。  このようになる理由は、現行の最低賃金協定が、過当競争の排除と求人難の打開ということに基づいて決定されている実情の中にあると思うのであります。過当競争を排除するために業者が協定し、一定の賃金以下は支払ってはならないということを決定はするが、一たんその事態が回避されれば、この決定した最低賃金額標準賃金として固定化し、結局、頭打ち賃金としての作用を持ってきているのであります。このことは、現行最低賃金額が業者本位に決められている断然の帰結でありまして、このような事態が一般化する傾向を私たちは深く懸念するのであります。  その五は、現行法が右にあげたような欠陥を持ちながらも運営されていくことは、結局全国一律の最低賃金制は成立し得なくなることであります。  右の五点はごく大まかに見た現行最低賃金法欠陥でありますが、このような欠陥を持つ最低賃金法は、むしろわが国の低賃金構造の維持に役立つものでありまして、私どものとうてい容認し得ないものであります。従って、現行最低賃金法成立以後の施行状況を見ますと、昭和三十七年二月末現在で、業者間協定による最低賃金の締結数は八百四十九件、適用使用者数八万五千人、適用労働者数は百三十九万人であります。このうち、最低賃金法第九条、業者間協定による最低賃金決定方式による最低賃金決定状況を見ますと、六百六十四件、その適用者数は、使用者で七万四千人、労働者百二十二万人であります。この実情から見まして、現行法の適用数が雇用労働者全体に占める割合は、きわめて微少の部分にしかすぎないのでありまして、これは実質的に、現行法が、わが国の低賃金構造の維持の役割を果たしていることを如実に物語っているのであります。このような認識に立ちますとき、私どもは現行法を廃止し、本来の意味最低賃金法を成立させるほかないと考えるわけであります。ここに日本社会党があらためて最低賃金法を提出し、わが国の低賃金構造を打破し、労働者の健康にして文化的な生活を実現しようとする現実的な要請があるのであります。  次に、私は、日本社会党提案の最低賃金法案目的法案内容の概略について申し上げたいと思うのであります。  まず、本法案目的は、わが国の低賃金構造を打破し、労働者に対して憲法第二十五条に規定する健康で文化的な最低限度生活を営むことを可能ならしめることにあります。  周知のように、池田内閣の高度成長政策の失敗は、国民生活にはかり知れない悪影響を及ぼしているのであります。特に、わが国の実態を見ますときに、最低限の生活すら維持できない貧困者が八百万人をこえて存在するのでありまして、これを雇用労働者賃金の面から見ますと、最低限の生活をするに必要な賃金すら得ていない不完全就業者が八百万人もいるのであります。そして、池田内閣の高度成長政策の失敗による激浪は、社会の最下層に呻吟するこれらの貧困者、低賃金労働者に対して、最も深刻な結果をもたらしているのでありますが、それに対して何らの救済措置を講ぜられていないのであります。これは道義的に見ても、また社会保障政策の上から見ても重大な問題でありますが、このような低賃金労働者を一掃しない限り、わが国の全般としての賃金水準の上昇はあり得ないのであります。そしてこの低賃金構造打破のためには、全国一律の最低賃金制がまず必要であり、これなくしてはわが国の賃金実態を正しい方向に向けることはできないと思うのであります。  要するに、日本社会党最低賃金法案目的は、日本の低賃金構造の実態に目を向け、その構造打破が急を要するとの観点に立つとともに、またILO第二十六号条約精神をもくんで提案されたものであります。  次に、私は、日本社会党最低賃金法案のおもな点について、法案趣旨を説明いたしたいと思うのであります。  第一に、本法案は、労働基準法第二十八条第二項に基づいて作られたものであります。御承知のように、現行法の成立の際、第二十八条は修正され、第二十九条から第三十一条までは削除されております。  社会党案は附則において労働基準法第二十七条を削除し、第二十八条から第三十一条までを修正して復活しておりますが、その意図は次の点にあるのであります。  すなわち、労働基準法最低賃金規定は、憲法精神を受け継いで具体化し、労働者最低賃金を保障すべき立場から作られたものであります。しかるに、政府は、この憲法精神をじゅうりんし、労働基準法最低賃金規定を骨抜きした現行最低賃金法を作ったわけでありますが、私どもは、現行最低賃金法は、憲法労働基準法ILO第二十六号条約精神にもとるものであると深く憂慮するのであります。ここに私どもが、憲法基準法の精神に沿った、正しい意味最低賃金法案を提案する理由があり、労働基準法第二十八条から第三十一条までを復活させた重大な意義があると信ずるのであります。  第二は、最低賃金額決定基準は、生計費一般賃金水準その他の事情を考慮して定めることといたしました。これは、現行法欠陥のところで述べましたように、監督行政の不行き届きと関連して、業者の賃金支払い能力があまりに優先する企業本位の偏向を防止し、正しい意味最低賃金額決定させることにあるのであります。  第三に、雇用されている労働者は、原則としてすべて一律に、一ヵ月最低八千円を保障されることにいたしました。現行法運営による業者間最低賃金においても、その絶対額が最低生活費に及ばないのみか、同業種間においてすら最低賃金額に格差があり、労働者の団結、組織化を阻害していることにかんがみまして、全国一律の最低賃金額決定いたしたのであります。  第四に、最低賃金の定めを含む労働協約が、一定の地域の事業の大多数の労働者によって結ばれた場合、この協約をその地域の他の同種の労働者にも拡張適用できる道を開いたものであります。ここで「一定の地域」とは、全国または府県、あるいは一行政上の単位をも含むものであります。これは、最低賃金についての業種別、規模別、地域別の格差を解消し、労働者組織化を促進し、労働者生活安定と向上をはかろうとすることにほかならないのであります。  第五に、この協約の拡張適用の場合、適用を受ける方の労使に異議申し出の権利を認めたことでありますが、この異議申し出が賃金審議会で認められた場合、その意見に基づいて一年の猶予と、一年の範囲内で別段の定めをすることができる道を開いたことであります。  第六に、本法案では中央賃金審議会勧告権を与え、スライド制を規定し、労働大臣がこの勧告を受けた場合は、必要な措置を講ずべき義務規定いたしたのであります。  以上はごく概略の本法案内容説明でありますが、何とぞ、慎重審議の上、本法案精神である普遍妥当性をを理解され、本法案を御採決されんことを望むものであります。(拍手)
  8. 藤本捨助

    藤本委員長代理 なお、両案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。      ――――◇―――――
  9. 藤本捨助

    藤本委員長代理 次に、内閣提出医療金融公庫法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案、以上二案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  10. 滝井義高

    ○滝井委員 医療金融公庫法の一部を改正する法律案について、質疑を続行したいと思います。  医療金融公庫法審議されましたときに、多分三十五年七月だったと思いますが、医療機関の配置の計画というものが、この医療金融公庫を運営する上にきわめて重要であるということがわかったわけです。当時、医療機関の配置の計画というものは、国会に参考資料として提出をされました。ところが、その出た参考資料というものが、省の省議決定をしたものでなくして、医務局の一試案にすぎないことが質疑の過程でわかってきたわけです。こういう重要なものを一医務局の試案では困る、当然これは、大臣決裁を経て厚生省全体の案として出してもらいたいということで、少しもめまして、その結果、厚生省では、じゃそういうことにいたしましょうということで省議決定をして、厚生省案として出された経緯が実はあるわけです。そこで、医療金融公庫の本来の目的を達成していくためには、病院の整備の計画というものが非常に重要になってくるわけです。ところが、一方、この第四十国会におきまして、医療機関の配置と重要な関係のある一つ事業団が、まさに衆議院を通過しょうとしておるわけです。それは簡易保険郵便年金福祉事業団法という法律です。この趣旨とするところは、ある程度私は納得いきます。ある程度いきますけれども、幾分いかないところがあるわけで御質問申し上げるのですが、まず厚生大臣は、簡易保険郵便年金福祉事業団法が閣議を通過するときに、一体どういう論議をされたかということです。この法案の持つ意義、将来の展望等について、社会保障を担当する大臣としてはどういう議論を郵政大臣とされたかを、まず一つここで明らかにしておいてもらいたい。
  11. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この法案につきましては、関係省との間で事務的に打ち合わせを遂げましたものが閣議に上ってきたわけでございます。閣議においては、格別の議論なくして決定されたものでございます。
  12. 滝井義高

    ○滝井委員 事務的に確実に打ち合わせたのでしょうか。事務的に打ち合わせていない。この前、打ち合わせたという答弁はなかった。
  13. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 次官会議の議を経て閣議に上ってきておるわけであります。
  14. 滝井義高

    ○滝井委員 法律というものは、そういう形でお作りになるのですか。少なくともこういう重大な影響を及ぼす法律というものは、次官会議だけですっといくものではないと私は思う。やはりそれぞれの担当課長なり局長が、相当精密な論議を重ねておかなければならぬものだと思うのです。厚生省は、こういう中にいろいろな問題があることさえ、私の指摘した当時には知りませんでしたよ。そこでお尋ねしますが、灘尾厚生大臣、成人病対策というものの今後の厚生行政における位置というものは、あなたはどうお考えになっているのですか。
  15. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 成人病対策は、今後の厚生行政にとってはきわめて重要な意義を持つものと考えております。
  16. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、これは大臣で御答弁いかなければ局長でかまいませんが、ことし一体予算的に、成人病対策でどういうことをあなた方、おやりになる所存ですか。
  17. 川上六馬

    ○川上政府委員 成人病対策は、御承知のように成人病にかかる者がだんだんふえて参りますし、成人病による死亡率なども非常に高くなっておるわけであります。厚生省といたしましては、公衆衛生局が成人病全体の対策についていろいろと計画をいたしておるわけでございますが、医務局といたしましては、特にその中で最も重要なガンの問題につきまして、御承知のようにガン・センターを設置するように、今極力努力いたしているような次第であります。なお、その他国立病院などにおきましては、いろいろな成人病につきましてセンターを置くように――今置いてもおりますし、今後そういうセンターを増設して参りたいというふうに考える次第でございます。
  18. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じの通り、今日本の死因の第一位は脳溢血です。それからガンです。その次は心臓病です。その次、老衰です。こうやって見ると、日本の死因の四番目までは、いわゆる成人以上の疾患が中心になってきている。昔は先天性弱質、下痢、腸炎、肺炎等の小児疾患だ。しかし、最近は日本の成人病がふえたために、この成人病が非常に多くの死因の中心になってきた。少なくともあなた方は、医療費を少なくして、人間の天寿を全うさせるという方向に政策を進めようとすれば、当然成人病対策の長期計画をお持ちでしょう。全然、長期計画なんか考えていませんか。何か成人病対策の長期の計画を――ガンをなくすとか脳溢血を減らそうとすれば、何か長期の計画をお立てにならなければいかぬわけですね。こういう点、どうですか。
  19. 川上六馬

    ○川上政府委員 私の所管でございませんが、厚生省に成人病対策委員会を設けて、そこで検討していこうというように聞いております。
  20. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その場合に郵政省と――簡易保険とか郵便年金というものは、やはりこれは老後を安定せしめていくものですね、だから寿命が長くなれば、簡易保険の支払いは少なくて済むわけですから、これは目的が一致するわけです。だからこそ、簡易保険あるいは郵便年金の方では、事業団を作って、できるだけ多くの人に加入してもらって、そうして命を長くして、老後はこの保険で、こういうことになると思うのです、スローガンとしては。あなたの方と向こうとの間に、これは生命保険会社がそうであると同様に――たとえば火災の予防をやる。そのためには火災保険にも加入してもらうけれども、やはり消防というものを強化しなければならぬ。火災保険会社と消防というものは不可分のものなんですね。と同じように、あなた方の方の成人病の長期対策と簡易保険なり郵便年金というものは、非常に重要な関係があるのです。その厚生省の長期の成人病対策の方に、郵政省からだれか委員でも来ていただいて、あなた方、十分意見を聞いておりますか。
  21. 川上六馬

    ○川上政府委員 委員会に郵政省の方が入っておられるというふうには聞いておりませんけれども、先ほどお話がありましたような、事業団で行なわれるところの医療施設を作る場合におきましては、厚生省と十分打ち合わせてやろうというふうに聞いておりまして、その点、私は、将来の計画の一環として成人病対策を考えていきたいというように考えておるのでございます。
  22. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも、そういう一環として考えるぐらいのことじゃ、なかなか問題があると思う。では医務局は、郵政省がお立てになっている、郵政事業の十カ年計画による福祉施設設定計画案というものを御存じですか。そういうものを提示されて御相談を受けたことがありますか。
  23. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 法案の作成の過程におきまして、われわれの部課の者が一度そういうことを伺ったことはあるようでありますが、私ども、まだ十分その内容承知いたしておりません。
  24. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生大臣、ことしの予算をごらんになると、成人病対策は二千四百十一万五千円。もちろんガン・センター九億五千百十二万四千円というのがあるけれども、これは国立病院の特別会計でおやりになるわけです。しかしこれは、成人病対策の重要な一環です。郵政省の方では、十カ年計画をお立てになっておやりになるのですよ。ところが、厚生省の方の成人病対策というのは、そういう十カ年の計画なんかもお持ちになっておらぬ。これでは、私に別の言葉で言わしめれば、郵政省は、厚生省たよりならぬということなんですよ。だからこれは乃公出でずんばということになる。そうでしょう、厚生大臣の不信任じゃないですか。これでは郵政省の厚生大臣不信任です。そして十カ年計画もお知りにならぬ。こういう行政というものは、一体一つの政党内閣のもとで行なわれていいものですか。だれか与党の人が言っておったが、おれらがやろうとしたって、役人が言うことを聞かぬからできぬのだ。これじゃ、まるっ切り政党内閣じゃない。ただ頭に迫水さん、灘尾さんという政党人があるだけで、あとはそれぞれ、勝手にみんな役人がやっておる。各省の連絡というものは全くない。閣議で相談は受けた、次官は知っておるけれども、所管の局長、次長は知らぬ、官房長も知らぬということでは行政はできぬですよ。こういう形では厚生省も要らない。私は昨日大蔵委員会に行ってだいぶがんばってきたんですが、厚生年金だって同じです。厚生省が厚生年金をやろうとする前に、日経連を中心として企業年金がどんどん進んでしまったら厚生年金はできやしない。厚生省の行政は、長期の所得を保障する年金と、短期を保障する医療というものと二通りあるのだということは、歴代の厚生大臣が就任するたびに堂々とここで演説されておるけれども、その短期も長期も、みんなよそがやって、厚生省はもぬけのからになりつつあるというのが現状です。私は、実はこういうことは言いたくない。こういうことを言って郵政省の法案に反対すれば、郵政省は、滝井義高というやつはろくなやつじゃないと恨まれます。あるいは法人等の企業年金に行って私が反対すれば、大蔵省の主税局長や課長は、滝井のやつが来て要らぬことを言わなければ通るんだが、来るから通らないと言われます。私は、いい子になろうと思ったらそんなことは言わぬのが一番いい。しかし、はたしてそれが日本の行政社会保障というものが大衆のためになるかということを考えなければいかぬ。もっと高い見地から考えなければいかぬ。高い見地から議論をしなければいかぬ。一個の利己主義とただ一局の仕事をやるために、他のものを犠牲にしていいということは成り立たぬと思うのです。このフェア・プレーの高い精神が、日本の政治にないところに問題がある。だから、私は憎まれてもこれはやらざるを得ない。この勇気が厚生省の役人なり郵政省の役人に必要なんです。それがない。みんな立身出世を考えて、あるいは自分が今度やめたときには、事業団さえ作っておけば行かれるという、自己中心行政が行なわれているところに問題がある。もっとフランクな、国民の資金を合理的に、もっと有効に使おうとすれば、こんなものは出てこないはずです。  そこでお尋ねしますが、厚生省はこれについては知らないから、郵政省に今ここで全貌を明らかにしてもらう責任がある。郵政事業の十カ年計画における財政上の裏づけというものは、どういう資金計画になっておりますか。
  25. 板野學

    ○板野政府委員 御承知のように、簡易生命保険、郵便年金がこういう福祉施設を行なうというのは、結局加入者の方の保険を生かしまして、加入者のためにも事業のためにもこれはいい、また事業の募集、維持等にも非常に役立つわけでございます。これは民間の生命保険でも、あるいは諸外国の生命保険でも、一致してこういう仕事をやっておるわけでございます。従いまして、私どもが十カ年計画を立てます場合には、これは単に福祉施設ばかりでなく、事業全般の十カ年計画を実は一昨年策定いたしたわけでございまして、その付随的な一つの計画として大体の考え方を述べておるわけでございます。  そしてこの福祉施設の財源でございますけれども、大体民間の生命保険におきましては、剰余金の五%程度は重役の賞与であるとかあるいは福祉施設に投じてもいい、このような法律上の規定を持っております。また諸外国の例を見まして、特にアメリカのニューヨーク州の保険法におきましては、収入保険料の大体一%程度はこれに投じてもいい。従いまして、大体そういう見当で、保険事業におきましては、やはり剰余金は配当金に分配するということが基本の原則でございますけれども、その程度のものは配当金にそう影響ない、こういう工合に考えまして、今後の十カ年間におきまして、大体簡易保険事業、郵便年金の剰余金と目されるものが三千八百億くらいあるわけであります。従いまして、そういう点からいろいろ勘案いたしまして、その五%の範囲内ということになりますと、一応百八十億見当のものをこの福祉施設に投入しましても、分野金その他につきましてそう影響がない、また加入者に対しましても、むしろそういう現物配当をいたす方が、今後の貨幣価値の変動とか加入者の方の健康保持という点から見て、その方が妥当である、こういうような結論からいたしまして、一応の十カ年計画を策定いたした次第でございます。
  26. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、三千八百億の剰余金の五%というと約百九十億程度ですね。
  27. 板野學

    ○板野政府委員 大体四・六%程度を計上いたしたわけであります。
  28. 滝井義高

    ○滝井委員 約二百億近くの金になるわけですね。
  29. 板野學

    ○板野政府委員 先ほど申し上げましたように、大体百八十億見当のものを十カ年に割り振って計画いたしたものであります。
  30. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省にお尋ねしますが、これは大事なところです。郵政省で十カ年に百八十億です。年間十八億ですよ。成人病は厚生省が本流です。成人病対策をやらなければならぬ本流の予算というものは幾らです。岩尾さんもうしろにおられますが、あなたの方でお認めになったのは二千四百十一万五千ですよ。月とスッポンじゃないですか。だからこれは厚生省不信任ですよ。厚生省ができないから一つこちらでやろう、こういうことになる。手をあげようとしておるが、それは成人病対策だけではございません、こうおっしゃるだろうけれども、成人病対策みなそれに通じている。なぜならば、これは老後の安定をして、みな長生きをしてもらう施策としてやるのですからね。福祉施設というものを通じて一貫しているのです。あなた方おそらくそう言うだろうと思って、前もって言っておきます。そうすると、片方は十八億、これは保養センターだって生活館だって、みなわれわれ健康で文化的な生活を送るために作ったのですから、やはり寿命は延びていくのです。そうすれば、寿命が延びれば延びるほど、保険の運営というものは、長期にわたって保持できるわけだから安定している。預かっている側としては、短命で死ぬよりも、みな長く生きてもらう方がいいのです。そうすると、厚生大臣の方は、あなたの方の行政が郵政省におんぶした方がいい、二重にする必要はない。厚生省の会計の中に、国立病院特別会計で掲載をしておりますというのと同じように、成人病対策はこの簡易保険郵便年金福祉事業団に計上しております。こう書いておけばいい。そうしてあとは厚生省は研究だけで、施設はそれでどんどんやってもらう。これの方が郵便年金は伸びます。今郵便年金も簡易保険も幾分頭打ちになりつつありますからね。そうして何が伸びるかというと、財政投融資の中では、厚生年金なり国民年金の強制貯蓄が伸びつつある。そういう形なんですから、一体これで責任を持った成人病対策なんか行なえますか、今の郵政省の行政とあなたの行政を比べてみて。   〔藤本委員長代理退席、柳谷委員長代理着席〕
  31. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省の成人病対策については、私専門でもございませんが、大体の方向といたしましては、滝井さんも御承知と思いますけれども、ガン関係につきましては、ガン・センターその他の診療施設を設置するということに現在の予算が指向いたしておるわけであります。それからその他のいわゆる成人病につきましては、どちらかといえば、早期発見、早期治療というような点に重点を置いて研究いたしておるわけであります。現在、実態調査その他でいろいろ検討いたしておるところでございます。ただいま何カ年計画というふうなものは持っておりませんけれども、先ほどお答え申し上げましたように、きわめて重要な部門、ことに老人がだんだんとふえていく、国民の年令が延びていくという事態にかんがみまして、将来特に重要な部門であろうと考えておる次第でございます。それにつきまして、今度の簡易保険年金の福祉事業団でございますが、私は、これはこれとしてきわめてけっこうなお考えだろうと思うのであります。簡易保険あるいは郵便年金の加入者の福祉のためにこういったような施設を講じていかれるということにつきましては、何ら異議を差しはさむ余地はない、きわめてけっこうなことだと思うのであります。また、成人病の施設につきましても、何もかも国でやっていかなければならぬというふうには、私は考えないのであります。全国にこういったふうな施設ができるだけたくさんできまして、老人福祉のために役立つのが一番けっこうだと思うのであります。そういう意味におきまして、これによってひさしを取られるとか、ひさしとかおもやとかいうふうなことにはならぬと思います。やはり基本は厚生省でどこまでも勉強をし、検討いたして参りますけれども、他の方面においてどんどん施設を講じていただくということについては、歓迎こそすれ、かれこれ言う筋合いは少しもないと思います。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 できるのはわれわれも賛成です。では作るのになぜ事業団を作らなければならぬのかということです。事業団を作らなくたって今までもやれておるのだから、それだから厚生省は事業団を作ることを賛成しておるのです。多々ますます弁ずることは僕も賛成なのです。ところが、その作ることについてあなたの方を素通りしておる。あなたの方は全然御存じない。そうすると、一体郵政省の方は、こういうガンや脳溢血の専門家というものは非常に少ないのです。厚生省と全然相談せずして、そういう技術者をどこから連れてくるかということです。そうなると、郵政省が自分で医学校を建てなければならぬ。今度は自分で医科大学を建てることになるのです。そうしなければ計画が合わなくなる。岡かどこかに、この前長谷川さんが言っておったでしょう、日赤か済生会が病院を建てた。建てたけれども医者も看護婦も来ないのでそのままだ、閑古鳥が鳴いておるということを予算委員会で言っておったでしょう。せっかく被保険者の福祉を増進するために、百八十億の金を投じて十カ年計画で建てた。ところが、これは保養所だって、成人病センターだって医者も要りますよ、看護婦も要りますよ。病院じゃなくたって、そういうものが要るのです。一体そういう専門家はどこでやるのか、厚生省が計画的にやらなければならないでしょう。当然綿密な相談が行なわれなければならぬでしょう。こういう大字なお金なのですから、それは三千八百億の余った金だといったって、これをむだにしていいわけはないのです。だからそういう点をもう少し綿密にやっていただいて、有効に金を使っていただかなければ、何か法案を出してやれば、われわれ代議士がめくら判を押すというようなことでは困るのです。まあ与党さんのおやりになることだから、野党のわれわれが要らぬ世話を焼かぬでもいいという感じはします。しかし、これは国民のお金ですからね。だから私は、実は少し頭がくしゃくしゃしておるのです。まるきり厚生行政というものはなっておらぬです。厚生省の役人諸君は、一体何を勉強しておるのだろうと思うのです。こんなものを勉強しなければいかぬですよ。そうしてみずから議論を吹っかけに郵政省に行かなければいかぬです。野党のわれわれから指摘されて、ようやくどうだこうだ、そうなると向こうの逓信委員会は、あしたにでも通そう、こうなっちゃう。こっちでも悪地でもとめよう、こうなっちゃう。意地っぱりになるのです。  そこで保険局長に伺いますが、昭和二十九年に簡易保険の診療所が二十八カ所設置されています。現在多分二十八か九あると思うのです。この事業団法を見てみますと、これは被保険者以外も見ることができることになっているわけです。これは簡易生命保険法の一部を改正する部分の四章、加入者福祉施設、六十八条の二項です。「前項の施設は、加入者の利用に支障がなく、かつ、その利益を増進すると認められる場合には、加入者以外の者に利用させることができる。」こうなっておる。それから郵便年金法の一部改正部分の四十二条二項も、同じ条文があるのです。そこで、これは保険医療機関ですか。
  33. 高田浩運

    ○高田政府委員 これはまだ具体的に手続がなされておりませんので、ここでかれこれ言うのはまだ早いと思いますが、おそらく保険医療機関に適合するものもあろうと思います。適合すれば、これは私の方で当然保険医療機関として認める、こういうことになろうと思います。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 高田さんも勉強不足だ。現在二十八カ所ある。あるものを、これは現物出資する形になるのです。こういう工合に勉強不足だから話にならぬですよ。こうしてこの前から国会で問題になって、われわれが目の色を変えてやんやん言っておるときに、私は前にも一ぺんここで質問したことがある。郵政省に尋ねますが、これは保険医療機関の指定を受けていますか。
  35. 板野學

    ○板野政府委員 現在までは、加入者以外の者の診療をしておりませんからその指定を受けておりませんが、ここで支障がない場合には利用さすことができるという規定でございまして、これは厚生省の方とも事務的には打ち合わせをいたしまして、もし厚生省でそれでいいんだということになれば利用さすことができるということで、させなければならぬということではございません。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この簡易保険の診療所は全部無料ですか。
  37. 板野學

    ○板野政府委員 実費の料金をとっております。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 そこで皆保険ですから、簡易保険の被保険者は同時に健康保険の被保険者であり、国民健康保険の被保険者なんです。だから保険証を出したときに、現金をとるということがおかしいのです。結局福祉をやるといいながらも、保険証ば通用しないような診療所でしょう。おかしいじゃないですか。保険証を持って行ったら、無料にならなければならぬ。こういう矛盾があるのです。この前払は一ぺんここで指摘したのです。だからあなた方は、こういうものは国民のためだ何だといっておるけれども、厚生省が国民皆保険だと金科玉条に掲げて、そうして保険証を渡した者に通用せずに実費をとるのですから、だからこれは野ばらいですよ。簡易保険診療所の歴史的な経過を一ぺん説明してみて下さい。これは一ぺん大正十一年に健康相談所を開設したのです。ところが、そののち昭和十九年に健康相談所を厚生省に移管したのです。こういう歴史的な経過がある。そうしてその後、やはり簡易保険を普及させるためには持ってこなければいかぬというので、昭和二十九年になってまた新しく設置した、こういう歴史的経過があるのです。この歴史的な経過にかんがみても、いかにこの病院をここに置くということが合理的でなかったかということがわかるのです。しかも、保険証を示してもだめなんですからね。実費を払うだけ被保険者が損じゃないですか。こういう制度が二十世紀の後半に白昼公然とまかり通っておるのです。そうしてそれを厚生省は知らない。よくもまた、あれだけ理届っぽい大蔵省が、成人病その他で血みどろの要求をしても認めなかった大蔵省が、こんなものを認めたものだと思います。大蔵省はよく筋を通すのです。しかし、ここのところは筋が通っておらない。そうすると、将来はどうするのです。診療所をお作りになる。これはおそらくさらに充実することになるでしょう、これから百八十億も金が入っていくのですから。そのほかに成人病センターができる。その成人病センターは保険証は通用しますか。
  39. 板野學

    ○板野政府委員 この診療所につきましては、ただいまのところこれを拡充するという計画は持っておりません。それから老人病のセンターというものも、これは一応の計画でございまするので、将来そういう計画がもし具体化するということになりますれば、これはただいま先生のおっしゃいましたように、厚生省とも十分打ち合わせまして実行しなければならぬのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 では百八十億の金で、具体的に一番先にやろうとするものは、一体何をやるのです。
  41. 板野學

    ○板野政府委員 御承知のように、長期の老人ホームと申しますか、加入者ホーム、これは郵便年金の受取人というものが戦後のインフレによりまして非常に打撃を受けておるわけでありまして、そういう人にも幾分一つお報いしたい、こういう気持で、この加入者のホームを作っておるわけでございまして、ただいまこれが三つできておりますけれども、将来はこれを十二くらいは作って、そしてできるだけ一つ公平にしたい。それから短期の保養施設、いわゆるレクリエーション施設というものも、最近は非常に加入者の方からの御要望もございますし、また国会の決議等もございますので、そういうものが今度の計画のほとんど重点的な施策になります。それから生活、特に都会生活においては結婚式場が要るとか、いろいろな要望もございますので、そういうものが長期計画の大半を占める一つ事業になる、こういうふうに私ども考えております。
  42. 滝井義高

    ○滝井委員 この計画によりますと、加入者ホームば既設、今三カ所と言われたが、これは四カ所になっていますね。建設中四カ所、今後の計画四カ所、計十二カ所、保養センターが全部で三十五カ所をお作りになるようですが、成人病センターに議論を集中したら、成人病センターが先になるような、何かうやむやな答弁になってきたのですが、しかし、加入者の福祉を増進しようとすれば、これは長生きをする政策というものを講ずる以外にないのですよ。そうすると、保養センターに入れば、そのそばでやはり身体検査をして、これは短期のものはいわば人間ドックの変型になるわけですが、そこで温泉のあるところで、やはり医者がおって、身体検査をしてくれて、そしてあなたは全身の検査をもう一ぺん綿密にやる必要がある。これは成人病だ、私のところはこういう施設を持っているからそこへおいでなさい。こういうことになって、そして検査した結果、ガンがあるから手術だ、こういうようなことになると思うのですよ。その有機的な連携がなくて、これがこま切れでやられているのでは意味がなくなるのです。だから私は、百八十億の金をつぎ込むというのは、やはりそういう有機的なものにされなければいかぬと思うのです。われわれは幸いにごまかされずにこのことを指摘することができたから、両大臣ともおわかりいただいたと思うのだけれども、やはりこういうものをおやりになるときには、もう少しまじめに――と言っては語弊がありますけれども、真剣に、もう少し長期の展望に立ったものをやっていただかないと、これは長期の金をつぎ込んでいくのですからね。かつて大正の時代には相談所を作った。ところが、何かどこからか異議が出たために、またそれを厚生省に移管してしまった。ところが、どうもやはり診療所を持っておらなければ工合が悪いというので診療所を持っている。同じ運命で、成人病センターだって、あるいは保養センターだって、そういう形になる可能性が十分あるのです。ただこれを厚生省がやる、そうすると、あれはまた厚生省へ移管しようかということになりかねない。それならば初めから厚生省でやった方がいいということにもなるし、あるいはそうでなければ十分連絡をとっておやりになる、私が言いたい真意というのは、こういうことなんです。どうですか、両大臣は、事業団をお作りになったならば、そういうものか進展をして――今まで事業団がなくておやりになっていたのでしょう。一体どこが進展をしないのですか、今までの状態では。百八十億の金というものは、事業団を作ろうと作るまいと、剰余金の五%というものは、外国だってやっておるのだからやれるのだという理論的な背骨をお作りになっておるでしょう。そうすると、事業団ができなければならぬという理論はどこからも出てこない。今までの姿でおやりになっておったっていいじゃないですか。
  43. 板野學

    ○板野政府委員 御承知のように、私ども加入者の福祉を増進したり、あるいはその事業を伸ばすということが事業のためにも非常によろしい、また事業を伸ばすためにもそのことが大へん役立つものでございますので、こういう方面に力を入れて参りたい。ところが、これは今まで直接省で経営しておったわけでございますけれども、予算の面、人の面、いろいろな面で国として経営をしていくよりも、やはり事業団にこれを代行させる方がいろいろの面で非常に能率的にいける、かつサービスの面におきましても、私、公務員のサービスが悪いとは申しませんけれども、やはり前だれかけで――いわゆる特殊な施設でございますので、前だれかけでやればよりよいサービスもできる、こういうように考えまして、事業団を作ることにいたした次第でございます。
  44. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 関連して。今、医療行政の一元化の問題に関連をして、簡保の専業団問題が問題になったのですけれども、板野局長のお話を聞いておりますと、いわゆるサービスを向上したり、効率的な運用をはかるために省直接の運営から事業団に移すんだ、こういうお話であります。それだけであればあまり意義はないように思いますし、役人の仕事というものはきわめて非能率的だというようなことをみずから告白するようなものであると思いますが、私はそればかりではないと思う。これに関連するところの簡易生命保険法と郵便年金法の改正がありまするし、さっき滝井委員からもお話がありましたけれども、この改正案の内容は今までと違いますね。被保険者というのと、今度名前を使っている加入者というのは、一体どう違うのですか。
  45. 板野學

    ○板野政府委員 先生のおっしゃる通りでございまして、今までは、簡易保険につきましては被保険者、郵便年金につきましては郵便年金の受取人ということになっておりました。しかしながら、保険の契約者その他の関係につきましても、たとえば契約者は保険金を支払う側でございますので、やはりそういう人につきましても健康であり、寿命が延びるということは、事業のためにも、加入者のためにも非常に喜ばしい、こういう考え方をもちまして、その範囲を広げる方が加入者のためにも、また事業のためにも非常にいい、こういうことでこの幅を広げた次第でございます。
  46. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 従って、今までは被保険者だけが対象になっておって、実費をもらっておったのです。簡易保険の証書か何かを持っていけばよかったのでしょう。それが今度、簡易保険の場合には、保険の契約者、受取人を含め、被保険者も含めてこれを加入者という。年金の場合には、受取人かあるいは継続受取人というのが今までの規定だったのですね、これをさらに広げる、こういう格好になってきた。それでもって加入者の福祉施設、しかも、今までは保険施設であったが福祉施設に広げた。そうしますると、先ほどの御答弁とは違いまして、これは事業団に移すと同時にその内容を充実させ、拡大をして、その対象もさらに広げていこうという意図があることば明確でしょう。そのためにこそ事業団の効率的な運用ということが必要だという認識を持って、あなた方はこれを設立しようということではないかと思うのですけれども、その点はどうですか。
  47. 板野學

    ○板野政府委員 田邊先生のおっしゃる通りでございます。
  48. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ですから、さっきから滝井委員が質問をしているように、これはただ単に何か事務の移管を郵政省が考えたというのではなくて、今の事業の形態、特に戦後におけるところの、いわゆる保険の加入というものが、一応いわゆる掛金の満期あるいは期間の満期、こういったものがくる、ちょうど循環期に当たっている。従って、昨年度あたりから、簡易保険の加入者の状況というものが少しく頭打ちになっている。こういう傾向があるわけですから、これを打開しなければならない。こういうような中でもって、何とか一つ加入者に喜ばれるような施設を作り上げたい。これがまず頭にきて、それでもって事業団というものが出てきた。これが全部でなくても一面だろうと思うのです。従って、これはもちろん簡易保険ではその積立金運用権を使って加入者に対する貸付をする、こういうことをやっているわけです。来年度百四十億くらい貸付をする、こういうサービスをするということでやっておるわけですけれども、たまたまこの事業団の設立、しかも、主として今までの診療所でない、いわゆる加入者ホーム、保養センターあるいは成人病センターというようなものを新しく設立することを含めての事業団を設立するという方向にいくことは、やはり医療行政にさらに一段と足を突っ込み、一段と医療の行政の上に郵政省が秘極的な意図を持ってこういう形になってきたのではないかと思うのです。ただ単に加入君へのサービスというだけでなく、そういう一面もある。この両面が今度の事業団設立のおもなる趣旨になる、こういう形になろうと思いますが、そういう点、やはり間違いないですね。
  49. 板野學

    ○板野政府委員 先生のおっしゃいます通りに、ちょうど終戦後簡易保険が非常に苦境に立ちまして、いわゆるインフレによって累年大きな赤字を出したわけでございます。終戦後幕集いたしました額は約二十億でございます。それで、ちょうど十年、十五年満期の保険金の満期が三十七年度から始まりまして、四十年度までに約三千億の積立金を返還しなければならぬ、こういう簡易保険にとりましては非常に重大な時期に差しかかっておるわけでございます。一方、御承知のように、積立金の運用におきましては、主として地方公共団体にこれを貸し付け、また公益事業に貸し付けておりますから、その運用利回りというものは非常に低いわけであります。民間の生命保険は大体九分に回りますけれども、簡易保険は六分ですから、三分の開きがございます。現在積立金が約八千三百億ございますので、三分違いますと、年間二百四十億も収入が減るわけでございます。これは結局、加入者に対しましては非常に大きな損失になるわけでございまして、私どもといたしましては、事業が非常に大きな曲がりかどにきておるということと、もう一つは、加入者のためにできるだけのサービスをしなければいけない、こういう考え方のもとに福祉施設を拡充し、かつ専業の進展をさらにはかっていかなければならないという重大な時期に現在あるわけでございまして、先生のおっしゃいます通り、そういう考え方も含めてこの群業団を作りたいというふうに考えております。
  50. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ですから、今までは被保険者だけだったけれども、今度はそれ以外の者も含めて加入者ということになる。そうすると、今度は保険証を持っていけば、たとえば健康保険の加入者は、その証を持っていけば無料で本人はかかれるわけですね。
  51. 板野學

    ○板野政府委員 これは無料ということでなしに、やはり保険組合の加入者として、一般の点数、一点何円という単価がございますので、その単価に従って料金をいただくということになろうかと思います。
  52. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そうしますと、厚生省の方は今までの状態と違ってきたということを御認識いただいたと思います。そこで、ちょっとこれは横道にそれるのですけれども、郵政省は逓信病院等の医療施設を持っているのですね。それから逓信診療所、こういった診療所をいわゆる閉鎖的な施設として持っておるわけですが、これと簡易保険の診療所というのが今まであったのですね。逓信病院等は、部外者は全然利用していないのですか。
  53. 板野學

    ○板野政府委員 これは逓信従業員の施設としてできておるわけでございますので、私は中をよく知りませんけれども、部外者はいないと思います。部外者と申しましても、すでに退職いたした者につきましては、規定によりまして、これを利用できるというような制度になっておる次第でございます。
  54. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 一般の公的医療機関、あるいは閉鎖的な医療施設、そういったものに、ある程度退職した者が入っておるという事実は、私はいいとか悪いということはここでは養いませんが、板野局長さんは知らぬと言いますけれども、逓信病院なんかは、事実問題としては大へんなものです。閉鎖的な病院になっていない。私が持っておるリストを言ってもいいが、覆わぬが、逓信病院なり逓信診療所すらもが、今まで実はかなりそういった例がある。これを今度はさらに被保険者ばかりでない、加入者というふうに広げて、しかも、加入者に支障がない場合はそれ以外の者にも利用できるというような条項すらも設けて今度の専業団は発足しようというのですから、当初の計画が、政府出資が四億円ばかり、それから交付金がやはり四億円ばかりという形でありましょうけれども、これはどんどんふえていくという格好にならざるを得ないと思う。短期借り入れも予定しておる。こういう格好になれば、将来の見通しというものは、ここに十カ年計面を立てておりますけれども、これとは違った要素で、事業団の今後の趨勢はさらに拡大発展をするのではないか、こういうふうな見通しを持つのですけれども、また、郵政省自身もそういう一応の見通しを立ててこの事業団の設立を考えたのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。
  55. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 簡易保険というものが独占でなくなって、民間との競争の立場になり、創設当時の簡易保険の特殊の意義が失われておりますような状態でありますので、政府でも、この簡易保険を一そう維持発展せしめるためには非常に努力しなければならない立場にあると思っております。その努力をしていくためには、加入者といいますか、加入者に対するサービスも一そう拡充していく、そういう意味において、今回の事業団の問題、あるいは先ほど板野局長が申しました剰余金のほぼ五%に相当するような金を、こういう福祉的な施設に回していこうという計画を立てたのでありまして、医療の方に郵政省は入っていこうというようなことが重点でないと思います。ただ、診療所で他の医療者に利用させるという点も、そこに病院があって、本来のそれを利用する資格のある人の利用に差しつかえない範囲において、ほかの人がちょっと見てくれとかけ込んできたものを、あなたは資格がないからといって断わらないで、ほかに支障のない限りは見てやるという道を開いておくというだけで、もし厚生省の方で、いけない、厳格に閉鎖的にいやれというなら、私どもはそれでちっとも差しつかえない。しかし、一般人たちが、診療所があるのに見てくれないというのもおかしいじゃないか、こう言えば、手すきな限りは見てやる、こういうことで、それによってわれわれの方が医療の方にますます入っていこうという考えは、少なくとも私にはありません。おそらく事務当局にもそういう考え方はないと思います。
  56. 滝井義高

    ○滝井委員 論理的な矛盾が出てくるわけです。どういう矛盾が出てくるかというと、国の政策というものは皆保険政策を推進しているわけです。すべての国民は、健康保険か、あるいは共済組合か、日雇いか、国民健康保険か、とにかく五、六種類ある保険のどこかにみな入ることになっておる。従って、簡易保険なり郵便年金の被保険者諸君も、いずれかの保険に入っておるわけです。そうしますと、たまたま簡易保険なり郵便年金の被保険者であったがゆえに、被保険者来たれというその診療所に行った。そして保険証を出したところが、その者は健康保険の被保険者でもあるし、同時に簡易保険の被保険者でもあるという二軍のいわば特権を持っておるにもかかわらず、その第一の皆保険の健康保険の保険証が通らずに実費を払わなければならぬというのは、被保険者にとっては福祉ではないのです。被保険者にとっては、これは大へんなことなんです。しかも、これは保険医療機関じゃないんだから――今度申請すれば保険医療機関にしましょうと言いますけれども、そうじゃないのですから、当然療養費払いをしてもらわなければならないことになる。これはこの計画をごらんになっても、診療所収入が三千四百八十九万六千円、二十九の診療所の全部の年を通じての収入がこれだけある。金をとられる。福祉じゃない。そうでしょう。しかも、田邊君が御指摘のように、閉鎖的なものならば――逓信病院というのは郵政省の従業員または電電公社の従業員が行くから、われわれが閉鎖的なものとして見ているわけです。ところが、これは日本国民がみんな被保険者になり得る、契約さえすれば無条件になり得るのです。しかし、郵政省に入れてくれと言ったって、無条件に日本国民を入れません。だからこれは閉鎖的な事業主の病院とは違うのです。そうでしょう。国の政策として簡易保険なり郵便年金をどんどんふやそうとしている。ところが、それが、その被保険者になる限りはだれでも行けるというならば、これは何も被保険者だけに限る必要はない。加入者以外でも、あいたら、大臣も今御指摘になったように見ましょう、こういうわけです。そうすると、これは保険医療機関にしなければならないということになる。保険医療機関にしないと今言ったような矛盾が出てくる。金を払わなければならぬ。この矛盾を排除しようとすれば、保険医療機関にしなければならぬ。保険医療機関にすれば、この配置というものは、医療金融公庫におけるところのわれわれの審議の対象になった医療機関の整備計画の中に入っておいてもらわなければ困るというのが、私の主張なんです。あなた方自身がすでにその矛盾をここで告白してくれたので、私はそれを結論として出しただけですよ。  そうすると、厚生省は、こういうものをわざわざ作って二重の保険にしておいて、それで恩典を受けると思ったら、現金を払わなければならぬという制度を、一体許していいのかどうかということです。保険証は役に立たぬのです。同じ国でやるのですよ。しかも、国でやったら能率が悪いから、今度は事業団でやると言いますけれども、事業団のお金はどこから出てきたかというと、結局特別会計から出ていく金なんです。同じことなんです。この解明がここでできざる限りは、ほんとうはこういう法案を通してはいかぬのです。こういうことは、われわれは専門家だからこういう矛盾を指摘することができる。これは厚生省の皆さんは勉強しておらぬから、そんなものは何も気づかぬで、僕から指摘されて、なるほどと大臣なんか首を縦に振っていらっしゃるけれども、これではいけないのです。こういうものは、行政というものがむちゃくちゃなんです。被保険者に多大の利益を与えるかのごときスローガンを掲げておるけれども、羊頭を掲げて狗肉を売るというのはこのことです。だから保険証を持って行ったら無料にしてもらわなければならぬ。それを過去の実績は実費をとっている。
  57. 板野學

    ○板野政府委員 加入者のサービスのために、郵政大臣は簡易保険法の六十八条、年金法の四十二条の規定によりまして、普通よりも安い料金をもって加入者にサービスをいたしましょうということでございますので、ある程度割り引いた料金をもってやるということになっておる次第でございます。サービスの関係であります。
  58. 滝井義高

    ○滝井委員 それがサービスにならぬのですよ。国民皆保険で、健康保険の被保険者は、保険証を持って行ったらどこの病院だって無料なんです。被保険者というのは、世帯主が中心になっておって、家族ならば半額です。なるほどそれが実費であった場合は、半額と実費と比べたら安いかもしれないが、しかし、実際に実費というからには、おそらく事業団に移せば独立採算制になってくるでしょう。これはもう殷鑑遠からず、労働福祉事業団でも、今や労災の患者だけ扱っておったのでは全国の労災病院はやっていけない。労災病院の実態をごらんなさい。労災の患者というのは、被保険者をどの程度見ておるかというと、四割、五、六分です。あとの五割四、五分というものは、一般の者を見なければ労災病院は立ち行かない。私はあとで、典型的な厚生省の健康保険の病院で証明します。これは保険局長厚生大臣がおられないから、郵政省を先にやるわけですけれども、そうしなければ今はやっていけないのです。それはこの前、私が強引にがんばった虎の門病院がそうなんです。虎の門病院は、国家公務員共済組合の病院ですよ。国家公務員法を見ると、これは全然組合員以外ば見ることができないことになっておる。ところが、組合員だけ見ておったのでは、虎の門病院ばやっていけない。だから、虎の門病院の入院患者をお調べになってごらんなさい。私、調べてみたら、六割前後は一般患者ですよ。健康保険なり生活保護なりの思考です。だからこれだって同じです。そうしなければ、また簡易保険なり郵便年金の加入者はふえないのですよ。すでに入っておる人たちだけを対象にしたのではふえない。やはり加入者以外の者をこれに入れることによって魅力を持たせるのです。それは私は、郵政省がこういうものを作らなければならぬ理由はわかります。なぜならば、最近における簡易保険なり郵便年金の新契約を見ると、もう急角度で下がってきておるのです。特にこれは三十、五年から三十六年にかけて、急角度に下がり始めた。一体なぜ下がり始めたか。なぞは簡単です。それは国民年金ができたからですよ、中小企業と農村が国民年金に強制加入させられるのですから、大衆は簡易保険や郵便年金に加入するだけの財政余力がなくなってきたのですよ。これにみんないってしまう。だから三十六年は急角度です。ここでも厚生行政と競合してくるのですよ。短期のものでも競合する、長期のものでも競合してくるのです。従って、これはよほどお互いに意思統一をして、そうして簡易保険を伸ばすし、国民年金も伸ばすし、それから医療の問題についてもするということならば、内閣は根本的な検討をやらなければならぬところに現在きておるわけです。それにあなたは目をおおって、何かこういうものを作ったら、簡易保険は伸びるという錯覚を起こしたら大間違いですよ。私は伸びないという太鼓判を押しておきます。こういう百八十億の金をつぎ込んだけれども、どぶに捨てるようなことになる。きょうはこれ以上言ったって、結局あなた方は今のように答弁できないのですから、もう一回とくと灘尾厚生大臣と郵政大臣と御相談になって、そうしてもう少し根本的な、簡易生命保険なり郵便年金の伸びる方向を一体どうしたら伸びるのか、しかも、その厚生行政に加勢をしてもらわなければならぬのが、逆にあなた方が厚生行政の中に乗り込んでいって厚生省と相談なくしてやるのじゃなくて、両省がお互いに相談をして、持ちつ持たれつの関係で――郵便年金なんというものは国民年金と同じですよ。ここらをお話し合いにならぬところに問題がある。どちらも国の政策としておやりになるのでしょう。だから、ここらをもう少し腹を割ってお話し合いになって、どうするかということをおきめにならぬと、これは大へんなことになる。だから片一方では、郵便年金なり簡易保険は伸びないからというので、ますます全国的に成人病センターを作る、診療所も作らなければ勧誘がうまくいかない。こういう金は一体どこに使われるか。こういう積立金なり特別会計の剰余金は、最近の日本の財政の傾向としてはどこに使われているかというと、住宅と病院、保養センター、老人ホーム、こういうところにきまっておるのです。ほかにいくところがないのですよ。全部厚生行政に殺到してくる以外に方法はないのです。そうだとするならば、これを受け入れる厚生行政というものは、よっぽど頭を涼しくして、そして腹を割って各大臣と話し合って、お互いの持ちつ持たれつの協力態勢を話し合いの中で作って、そして国民の零細な金を集めたこのものを、合理的に最高の能率を上げていくということにいかざるを得ないと思う。私は、単にこれを目のかたきにしておるわけじゃないのです。全般的にそういう矛盾が、国民年金が発足した後には、もはや郵政省のこういう年金に現われてきているわけです。大臣、これは「簡易生命保険新契約」という、この五十三ページをごらんになると、三十五年で二百六十六万六千七百三十四の新契約の件数が、三十六年では百六十一万九千九百三十八件と、四月から十一月までですけれども、伸びが鈍いのです。三十五年と三十四年をお比べになりますと、三十四年は二百九十四万件あったが、三十五年は二百六十六万件、こういうふうに減っている。国民年金が実施されてからだんだん下り坂になってきているのです。こういう点は、将来の簡易生命保険なり郵便年金のあり方と国民年金とをどう調整するかという問題は、すでにここに問題が萌芽的な形態として出てきているのです。だから今度は、それを短期の医療なり成人病センターとか保養センターでやって頽勢を挽回しょうとしても、西に倣いている太陽を扇で東にあおぎ返そうとするようなものです。だからそういう点、もう少し良識ある、わが尊敬する迫水さんですからね――これはどちらも良識ある人ですから、お話し合いになればわかると思うのです。どうですか、迫水さんの御意見一つ
  59. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 どうも滝井さんのおっしゃることは、私にはっきりわかったような、わからないような、要領を得ないのです。というのは、こういうような診療所というものはもう役に立たぬぞ、こうおっしゃることなのか。その診療所というものは、健康保険、国民健康保険、ことに国民皆保険がどん、どん進行しつつある世の中になってきたのですから、健康保険の証書を持ってきた人たちはただにしてやるということに診療所もしてやればいい、私は簡単にそう思います。そこで今聞いてみますと、現在はまだそういうような指定を受けていない。それでは指定を受けることにしたらいいだろうと今簡易保険局長に言いましたら、厚生省と話をして指定を受けることにしてもけっこうです、ただし、何か健康保険と国民健康保険は一定の限界があって、その限界を越えるものは補完的に有料のものもあっていいのじゃないか、こういう話ですから、私は厚生省と相談して、診療所に関します限りはそのように処置したいと思います。  ただ、もう一つ申し上げたいことは、診療所は今日以上にふやす計画はございませんから、要するに、だんだんに国民皆保険になり、いろいろなふうになってくると、診療所の持つ意味というものが、これ以上拡大する必要はないのだというところにきているのです。従って、今後は老人ホームとかあるいは保養センターとかいう、医療と関係ない――あると言えばあるのですけれども、もう少し広い立場に立ったところの方に進展していこう、こういう考え方を持っているわけです。それで成人病センターの問題は、これは的確な計画は必ずしもあるわけではなくて、先ほどおっしゃいましたように、命を長くするためには、成人病で死ぬのが一番多いから、その問題についてやはり何かしなければいけないであろうということで一応そこに向かっているのでして、あとは、具体的にやるときにはもちろん厚生省と十分御相談をするわけでして、この十カ年計画というのは、要するに、国会の諸先生が将来どういう計画かと必ずおっしゃるだろうというようなことを、一応とにかく道筋を立てて、大体こういう方向にいきたいと思います、こういうことで、もしこれに御批判があれば幾らでも変えていきます。また具体的にやるときには、これはもちろん厚生省に十分連絡をとっていきたいと思います。それで診療所のことは、つい私は今まであまり勉強もしなかったのは申しわけなかったですけれども、ここに今簡易保険局長と打ち合わせて、大体そういうことで処置いたしたいと思います。
  60. 滝井義高

    ○滝井委員 一つのものができ上がりますと、そのでき上がったものは、その目的を貫徹するためにわれわれの意思を越えて動き始めるものなんです。そういうものなんです。じゃ今これを保険医療機関として指定を受けましょう、そうすれば、指定を受けたらそれは無料にしてくれるかどうかという問題がまず一つある。これは当然、実費を取っていたものは、保険証を持って行ったら無料になるだろうと思います。家族もおそらく無料にしてくれるだろうと思う。今まで実費を半額負担で払ったのが払わなくてもいいということになれば、無料になるのですから、しかも、これは加入者として非常に範囲を広げているのですから、無料になると思う。そうなって保険医療機関になりますと、厚生省の配置計画にかかりますよということなんです。今はかかっていない。これは閉鎖的なものなんだから。だからそういう点が一つある。そうすると、これはかっての歴史的な経過を見ると、一ぺんお作りになっていたけれども、やはりこれは厚生省から異議が出た。こんなものをどんどん郵政省がやってもらっちゃ困るというので、厚生省に移管したのです。こういう歴史的経過があるのです。これは問題があった。簡易保険の相談所というのはあったわけですが、いかぬというので移管して、そうして今度はまた、勧誘の上からある方がいいのだということでお作りになったと思うのです。従って、そういうものが今度は保険医療機関になれば、厚生省の医療機関の整備計画というものと、十分調整をしてもらわなくちゃならぬという問題が一つあるわけです。  それからあとの方の成人病センターその他は、今回十カ年やるのだから、出しておかぬと滝井君などに怒られるだろうということらしいのですが、加入者ホームというのは、やはり大臣、医者が要るのですよ。加入者ホームには医者も要るし、保健婦も要るし、看護婦も要るし、栄養士も要るのです。加入者ホームにそういうものを置かないと、事務職員だけでは、だめなんです。加入者ホームの役をしないのです。命を長らえる、被保険者の健康を保持してやる機能を果たさないというのですよ。だから加入者ホームには、医者や保健婦や看護婦の優秀な者を置くことによって、ますます被保険者の拡大ができるのです。これは僕はすみからすみまで一々研究した上での反撃ですから、ごまかされないですよ。大臣は加入者ホームばかり今度はやるのだとおっしゃるのだけれども、これはお医者さんも要るのです。保健婦も要るのです。看護婦も要るのです。栄養士もいなければ、そんなものは保養の意味はないのです。
  61. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 この診療所が、厚生省の医療機関の配置計画に合うかどうか。まあ現在以上にふやす場合にはそれに載るわけでありますが、現在ある以上はふやさないという計画ですから、厚生省の医療配置計画のものでも、現在あるものをそのまま一つ尊重してもらうように私は厚生大臣に話そうと思います。  それから加入者ホームのことは、まことに不完全、先生のおっしゃるように完全にするためにはその通りでしょうけれども、現在は不完全で、申しわけないといえば申しわけないようなものでございますけれども、医者のいるのは熱海が一カ所、あとは付近の民間の病院とタイアップしてやっておりますので、実はお医者さんがいない状況だそうでございます。
  62. 滝井義高

    ○滝井委員 そういうように、建てるけれども不完全なもので、本来の加入者ホームとしての目的を達成できなくなるのです。そうすると、これは加入者ホームとしての意義は半減されちゃうのです。大体医療職というものが加入者ホームにはよけいいなければならないのです。事務職員ばかりよけいおっちゃいけないのです。だから常識ですよ。何だかこういうようにずさんな計画であわて回って事業団をお作りになるならば、今加入者ホームはできているのですから、一つもう少し医師、保健婦、看護婦、栄養士、こういうところをがちっと充実して、そうして被保険者が安心して加入者ホームに入る。そうすれば、そこではいろいろな簡単な身体検査も見てもらえるというくらいに充実していくことが親切というものですよ。何かまあ国会を通ればいい、まあいいかげんな一つ統計資料だけ出しておけ、そうすれば、議員はあまり勉強せぬから、すうすうとごまかしていけるだろうという甘い考えでは、やはり天網かいかい疎にして漏らさずということわざがあるように、ときどきひっかかるのです。こうやってね。だから私はこれ以上言いたくないですが、大体言いたいおもなことは言いました。  ただ一つだけ、厚生省と両方にちょっと聞いてみたのですが、診療施設と療養施設というのはどう違うのですか。今度の法律では、簡易保険郵便年金福祉事業団という力は診療施設になっておる。年金福祉事業団の方は療養施設なんです。
  63. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 診療と療養という言葉でございますが、大体同じ意味に使っておるとわれわれは了解しております。これは背の法律等で、たとえば療養に使った、それからいろいろないきさつもございまして、大体同じような意味に使っておるわけでございますが、過去の経緯等もございまして、一応二つの言葉が使われておる、こういう現状でございます。
  64. 滝井義高

    ○滝井委員 これは実は法制局で議論をしてみたんですが、はっきりしないんです。この郵便簡易保険でも、年金福祉事業団は診療施設、保養施設と、こうなっているのです。二つにしてあるのです。ところが、この三つのものを同じくやる年金福祉事業団は、これを診療施設、保養施設の二番目の診療の療と二番目の保養の養をとって療養施設とした。これは町方の施設を一つの言葉で現わしているのですよ。高田さんの方の法律はそうなっている。そういう工合になっているのですけれども、これはなかなか郵政省頭がいいなと思ったんです。同じことを書くと年金福祉事業団と同じことをやるのじゃないかと言われるから、そいつをこう分裂さしているんですね。核分裂を。これは法律用語というのはきわめて重要なのですよ。あん摩、はり、きゅう、柔道整復師とこう書きますね。これは何のためか、その柔道整復師を一番上に書いてもいいんじゃないかという論もあるけれども、そうじゃない。やっぱり法律の重みなんです。この法律では、はりというものが一番重点だということなんです。あれは重点の順序だそうです。やはりこの用語だってそうです。こういうところは、やはり法制局というのは法律を書くときに――林修三さんをここに呼んでごらんなさい。非常に重要なものとして答弁するはずですよ。これはそういう形で、どうも小さいところだけれども郵政省は頭がいい、なかなかそういう点ではうまくしている。この問題は非常に多い問題がありますけれども、一応私は、この法案についてはもう少し政府の間で意思統一をしてもらわぬと、簡単に私はよろしいと言って通すわけにいかぬのじゃないかと思う。きょう大目がみずから発言になったように、十カ年計画なんというのはとりあえず出しているもので、内容は今まで通りの診療所二十九カ所と加入者ホームをやるだけだ、あとのものはまだ絵にかいたもちじゃ、しかし金は百八十億ありますぞ、こういうことがはっきりしてきたんです。そういう星雲状態ならば、もうちょっとお話し合いになって次の国会にお出しになってもおそくはないと思うのです。やがて参議院の選挙が終われば臨時国会があるのだから、その臨時国会の冒頭にこれをお出しになってもおそくばないのじゃないかという感じがするので、もう少し両者の門に意思統一をしてやってもらわぬと、どうも問題があるような感じがします。関連があるそうですから……。
  65. 島本虎三

    ○島本委員 今のに関連して郵政大臣にちょっと……。今この簡保の福祉事業団の問題で、医療行政全体から見ていろいろな点が質問されておるわけです。今私どもの方で、ついでにこの問題だけはぜひ所管大臣に聞いておかなければならない。現在いる人は国家公務員である。ところが、今度事業団になられた場合には身分がはっきり変わることになるじゃないか。その場合には労働条件も明確に変わるのじゃないか。今まではなんですけれども、今度は理事長というものができ上がってしまう。理事長のもとにすべてこれが握られるようになるのじゃないか。その場合の労働条件というようなものに対しては、現在より上がっても絶対下がらないものである、賃金等においては、別荘より一五%は上げても決して下げないものであるというようなはっきりした確信があるのですかどうか、その点まず伺いたいと思います。
  66. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 ちょっとお答えします前に、さっきの滝井さんの、金が百八十億あるというお話ですけれども、これは一応簡保及び郵便年金が相当伸びることを前提として計画された数字でございまして、もうそれがきまり切ってあるというのではなくして、非常に努力しなければできないのだということだけは御了承を願いたいと思います。  それからなお、ただいまの身分の変更に伴う労働条件でございますけれども、私の建前は、給料は一般の公務員に比して一五%高いところできめる、こういうことでありますが、労働内容というのですか、そういうものは現在より決して上がらないということを建前にやる、こう考えております。
  67. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、事業団そのものは独立採算制によって運営されるということになりますと、現在のようなその建前をずっと固執して参りますと、それはどっかでくずれるか、無理がくるか、または運営上支障を来たすというような結果が出てくるのではないかということをおそれるのですが、この点等も絶対間違いありませんか。
  68. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私は、その経費は国が出していくので、これでもうけてこれでまかなう独立採算制ということは、やや当たらないのではないかと思います。
  69. 島本虎三

    ○島本委員 もしそうだといたしますと、今後は労働条件の点に対しては、国家公務員の現在よりは決して下回らないものである。これは大臣がこの席ではっきり申しましたから、私どもは未来永劫に、大臣がかわってもこれは鉄壁であって間違うことはない。従業員が現在おそれているのは、身分が転換されてしまったあと、当然今度配置転換がくるわけです。希望者だけやる、配置転換になっていくいかないということは当然出てくるでしょう。そのあと何年間かたって、カシの木のように日の当たるところに対してはぐんぐん伸びるけれども、日の当たらないところはしぼんでおる。そのしぼんでおる方になられては困る。この一点が福祉専業団であるということに解される。若干この点についてはPRの不足もあるかもしれませんが、まだまだ猜疑心を持っておるのは事実なんです。この点に対しても、そういうことは絶対ないのだ、現在より悪くならないのだということを断言することは、もう一回していただかないと……。
  70. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 もう一回断言をいたします。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、独立採算制にいかないのですか。診療所の収入は三千四百八十九万六千円で二十九カ所、三千四百八十九万六千円を三十九で割ると一カ所百二十万になるのです。これは普通の診療所だと百二十万くらいしかもうからないのですよ。そうすると、今後保険証で無料にするということ、それから当然加入者ホームなんかも実質だ、こういうことになるわけですから、そうするとそれはずっと金が減ってくる、損金がよけいに出てくるわけです。そうしますと、給料を国家公務員の今までよりか一割五分も上げるということになれば、相当の金を注ぎ込んでいかないと全部赤子です。だからその点は、そういう赤字になっても、独立採算制でなくて全部この金を――百八一億は仮定の問題ですが、年十八億程度をつぎ込んで、その剰余金の五%に当たるものを全部使ってもよろしい、設備になったもの以外には使ってよろしい、こう理解して差しつかえないのですか。
  72. 板野學

    ○板野政府委員 現在までは、御承知のように直営でございまするので、全部郵政特別会計の経費でもって支弁をいたしたわけであります。今度事業団に入りますと、その運営費につきましては、交付金の形で、ことしの予算案には四億四千二百万円の運営費を計上いたしておるわけでございます。その他診療所の収入、あるいは加入者ホームは実費をとっておりますから、それが約五千万円程度くらいになると思います。その経費を差し引きましたものが、交付金として今度は簡易保険郵便年金特別会計から交付されるということになる次第でございます。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 従って、赤字が出ても、その交付金というものは被保険者の増加につれて絶えず増加していくものだ。利用がふえればふるえるほど赤字が出てくるわけであります。交付金が多くなる。これは必ず制限なく出せる、こういう形でないと国のベース・アップに追いついていけないのです。私ばどうしてそれを強く言うかというと、あとで私は質問したいと思うのですが、健康保険で、大蔵省がそれをやらせないからそれができないのです。ついでだから、あなた方の将来の参考のために言っておきますが、今健康保険の病院があるわけです。これは厚生省の所管のものです。これが診療収入は四十一億です。その他の収入が三千五百四十七万程度であります。従って、四十一億五千二百二十八万六千円の、三十六年度では決算見込みの収入があるわけです。そうすると、支出は幾らになるかというと、人件費が二十一億四千五百十八万四千円になるわけです。そして医薬品その他いろいろ要るわけですから、これが二十二億五千九百八十三万七千円で、四十四億五百二万一千円の支出になるわけです。そうしますと、今度は去年の十月にベース・アップがあった。そこでベース・アップを国家公務員と同じようにやろうとすると、三千三百五十二万五千円の金が要るわけです。これを出しますと、五百三十九万九千円の不足になってしまうわけです。健康保険病院が六十八あります。これは厚生省の施設は全部厚生保険特別会計の業務勘定から出しておる。ちょうどあなた方と同じ格好になるわけです。ところが、これが五百三十九万九千円の不足になって、ベース・アップはまだできない。これは大蔵省が出すことを許さないのです。そして同時に、しからばその六十八の病院の実態はどうかというと、黒字が三十六、赤字は三十二となっておる。これは独立採算制に必然的に追い込まれていって、ベース・アップができないで今困っておる。こういう実態にならないように、国家公務員がベース・アップをしたならば、必ずそれとくびすを接してこの従業員のべース・アップができる。同時に、被保険者のサービスを診療所は無視しない。加入者ホーム等は実費、こういう形にする。そうすると、必ず利用者がふえればふえるほどウナギ登りに赤字が累積してくる。そうなったときに運営費の中に人件費が入るわけですから、従ってこれはぐっと締められてくる。それは殷鑑遠からず、私はこれからこれをやろうと思っておったのですが、これがあるのです。だからこの点は、ここでまず確約をしておいてもらわぬと、こういうことになってサービスが両面悪くなる、そこに働く職員は、身分は国家公務員に移管したけれども悪くたる、施設の方の待遇も悪くなって、医者は置かない、看護婦も置かない、炊事のおばさんだけだというような加入者ホームでは意義がなくなってしまうのです。だから、ここで国家公務員と必ずベース・アップを同じくする、赤字が出れば親方日の丸でまかなう、こういうことがはっきりしてくれば、これは健康保険の病院よりははるかに優秀なもので、われわれは今後の模範として、健康保険病院なんかも厚生大臣にその通りやりなさい、こういうことになるわけです。
  74. 板野學

    ○板野政府委員 この事業団に出しまする建設経費なり運営経費は、先ほど申し上げましたように、剰余金を一応の目安にはいたしますけれども、事業に必要な経費として今まで郵政特別会計から出しておったわけでございますから一それは財源が必ずそこから出るわけであります。従いまして、これは独立採算制でございませんので、一般公務員のベース・アップがあれば、必ずそこから出てくるということを申し上げておきます。
  75. 滝井義高

    ○滝井委員 今の簡保年金事業団のことは、もう少し厚生大臣と郵政大臣はとくとお話し合いになっていただきたいと思います。  そこで、今健康保険病院のことに触れましたから、これから医療金融公庫の核心に入っていきます。健康保険病院は、今言ったように三十六年度決算見込みでは五百三十九万九千円の金が不足をしてくる、こういう実態にあるのであります。ベース・アップが行なわれていない。この健康保険病院のために国は施設費としてどの程度ことしの予算で今まで出しておりますか、あるいは過去で出しておりますか。
  76. 高田浩運

    ○高田政府委員 健康保険関係の病院、診療所の整備費は、三十七年度は約十六億でございます。
  77. 滝井義高

    ○滝井委員 その十六億は、厚生保険特別会計の業務勘定の中の福祉施設費二十八億一千八百三十一万八千円の中に入っておるのですか。
  78. 高田浩運

    ○高田政府委員 その通りでございます。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、あと十二億は何ですか。
  80. 高田浩運

    ○高田政府委員 業務勘定への繰り入れと保険施設費でございます。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 今業務勘定の中のことを尋ねておるのですよ。業務勘定の中に福祉施設費二十八億一千八百三十一万八千円がある。この二十八億の中で十六億は健康保険病院の建設だ、あと十二億は何かと聞いておる。
  82. 高田浩運

    ○高田政府委員 今業務勘定と申しましたのは、純粋の事務的な経費、庁費その他の経費という意味でございます。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 それは違います。庁費は四億七千八百八十五万三千円と、ちゃんと別にあるのですから……。
  84. 高田浩運

    ○高田政府委員 業務勘定の繰り入れが約二十四億、そのうち約十六億が病院、診療所そのほか福祉施設の整備費です。それから四億が保健施設費、それからあとの四億がいわゆる庁費その他の事務的な経費、そういうことでございます。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 とにかく健康保険の病院には十六億つぎ込む、ここをはっきりしておけばいいです。  そうしますと、健康保険の病院は、あなたの方のお隣にある年金福祉事業団からお金を幾ら借りております。福祉事業団から金を借りておりますか借りておりませんか。
  86. 高田浩運

    ○高田政府委員 年金福祉事業団からは借りておりません。これはできたばかりですから、借りておりません。ただ、還元融資からは約七億ございます。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 還元融資から七億借りておるわけですね。最近は借りることをおやめになっていらっしゃるのですか。
  88. 高田浩運

    ○高田政府委員 その通りでございます。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 そのおやめになった理由というのはどこにあるのです。
  90. 高田浩運

    ○高田政府委員 これはやはり国の施設でございますから、国の予算による経費の支出でやることが適当である、かような考え方でございます。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 還元融資をお借りになって、同じ国同士だけれども、利子は払っておったでしょう。
  92. 高田浩運

    ○高田政府委員 もちろん利子は払います。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 これでからくりが解けてきたわけです。いいですか。この健康保険病院というのは、健康保険の模範的な診療をやるために作った病院です。これが第一ですね。税金はかかりません。病院の施設は全部国が出すのですよ。たまたま七億借りておったのです。ところが、利子が払えなくなっちゃったのです。なぜならば、ベース・アップその他によって赤字になる。利子六分五厘ですからね。これは健康保険と同じ単価でおやりになっておるのでしょう。
  94. 高田浩運

    ○高田政府委員 その通りです。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、これではっきりしてきたですね。いいですか。健康保険の模範的な病院として国がお作りになったのです。そうしてその病院の施設費というものは、厚生保険の特別会計の業務勘定からお出しになるわけです。その診療の単価というものは、健康保険の単価でおやりになるわけです。ところが、そこに働く従業員は、国家公務員の給与よりかずっと低いでしょう。これは、私は、過去に小沢さんが保険課長時代から、もう三回くらいやっているのです。低いはずですがね。それを国家公務員と同じようにするという約束をここでやっているのです。それで、なっていますか。
  96. 高田浩運

    ○高田政府委員 御承知のように、健康保険病院は、国立病院みたいに全国一本の管理を従来しておりませんで、各病院ごとにそれぞれの経営管理をやっておったのが実情でございます。それをできるだけアンバランスをなくしようじゃないかということで、今、全社連を中心にして努力しておる、その過程であります。従って、これを全国一本の給与の体系としてどうこうというところまでは現実にいっておりませんが、全体としては、大体国家公務員に準じて行なうように配慮していると思います。  なお、先ほどお話しのベース・アップの問題については、現在交渉中でございますので、いずれこれは解決を見ること、だと考えております。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 今のベースは、国家公務員は二万七千円ベースですね。この病院のベースは幾らですか。
  98. 高田浩運

    ○高田政府委員 以往手元に数字を持ち合わせておりませんので、後刻調べてお話し申し上げます。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 およそわかりませんか。二万一千円ベースくらいじゃないですか。多分二万一千円ベースくらいじゃないかと思います。国家公務員よりずっと安く使っておる。そうしますと、これは還元融資で六分五厘の金を借りて、この病院は無税で、施設費は全部国が出してくれてやったけれども、これは赤字でどうにもならなくなりつつある。国家公務員と同じベースにいけない。現在赤字の病院は三十二ある。そうすると、病院というのは、健康保険をやっておかなければ、医療金融公庫は金を貸さないでしょう。
  100. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 そういう運営をいたしております。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 健康保険をやらなければ金は貸さない、そうすると、これは一体利子は今幾ら払わせることになるのですか。
  102. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 利子は、資金の麺類によって違いますが、設備資金につきましては、いわゆる不足病床地区の新築資金、増改築資金が六分五厘、その他の地区が八分、それから機械購入資金は九分、長期運転資金は九分、こういうことになっております。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 不足地区は六分五厘、その他が八分、そうしますと、これは全部国が建物までやってくれて、税金がかからずに、国家公務員よりか安い給料でやっておりながら、赤字でやっていけないのです。もう一つ尋ねますが、この健康保険病院は差額徴収をおやりになっておるのでしょう。たとえば、いつか僕が日赤で指摘したように、一等とか二等の特別の病室をお作りになって、それにお入りになったらその分だけよけい金をとるということを、おやりになっておるところがあるんじゃないですか。
  104. 高田浩運

    ○高田政府委員 病室についてはございます。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣、なぜそういうことをやるかというと、結局健康保険の模範病院でもやらなければ足を食わなければならぬ、手を食わなければならぬ。これは七億しか六分五厘の利息は払っておらぬ、あと全部国がまるがかえですよ。そうしてこれです。そうしますと、医療金融公庫から金を借りた、この公庫の対象になる病院というものが、八分の利子を払って、同じ単価で一体やっていけるのかということです。皆保険だ、そうして保険証は、公的医療機関であろうと私的医療機関であろうと、あるいは公的医療機関でない準公的な医療機関であろうと、天下ごめんです。どこでもみんな一緒です。ところが、大臣の足元の健康保険病院が差額徴収をやらなければやっていけない。差額徴収を最近新しく建てたところは全部やっています。東京も横浜も川崎も三島も、みなやっておる。新しく建てたところはみなやっておるのです。やらなければやっていけないのです。これは健康保険の模範病院ですよ。厚生省が自分でやっているのだから、監査にひっかけようにもひっかけられないのです。日経連さんその他が監査をやれやれと言うから、まず厚生省の六十八の模範病院を監査をやってみたら、みなひっかかりますよ。この実態を一体どうするのかということです。医療金融公庫の目的は、なるべく医師のおらぬようなところに作ろう、病院のないようなところに作ろうということになっておる。そういう不足地区は六分充血だ、こうおっしゃるけれども、そういうところは、借りて病院を作ったって採算が合わないから借りないでしょう。去年の夏からずっと建築資材の代金が上がったために、もう今は医療金融公庫に申し出が少なくなってきた。なぜかというと、医療金融公庫の貸し出しの建築単価が安いからです。それはもう統計に現われていますよ。そうすると、必要なところは押さえつけられる、これを借りたって利子が高くて、今の医療体系では払えぬということになる。払えなければ、大蔵省ではここを幸いと医療金融公庫のワクをだんだん締めつけてくる、削られてくるわけです。だからこの問題を解決するまず第一のポイントはどこかというと、厚生年金の還元融資と同じ利子の金にするということです。還元融資の金はここに入ってきているのですからね。これをこの前の保険局長は、ここで私に、そうしますと約束した。ところが、その保険局長がぼんと首になって高田さんになったら、いつの間にかそんなことは忘れてしまっているのです。それをやりますから医療金融公庫法を通してくれと言って、通したら局長は首になって、あとの局長は、これは今度は医務局の所管です、たとえば私立大学の付属病院は医務局の所管です、医務局に行くとそれは医療金融公庫だ、こういうことで私をうまくペテンにかけたような格好になっている。そうして今や大蔵省の主計局と銀行局が納得しないのだ、こう言うのです。大蔵省が納得しないのなら、これに書く以外にないのです。六分五厘と書けばいいのです。国会は国権の最高機関ですから、書けばいいのです。しかし、そうまで無理をしたくないから、ここで銀行局長――銀行課長ですか、きょうはあなたが六分五厘にすると言うまでやることになるのですが、今の理屈では、明らかに厚生省の無税金のまるがかえの病院ができないのです。だからまるがかえの病院がどうして還元融資を受けなくなったかというと、あれを借りたら利子を払わなければならぬ、これは大へんだということに結論はなったのです。だからこれを一つ大臣の所信を伺って、それからうしろにおられる主計局なり銀行局の意見を伺いたい。もしそういう差別をつけるならば、診療報酬にも差別をつけて、利子分だけよけい診療報酬を取らしてもらうということになれば一番いい。しかし、それでは被保険者が大へんですから、利子を下げる以外にないのです。この点について大臣の答弁を承りたい。
  106. 高田浩運

    ○高田政府委員 大樹がお答えになる前に、ちょっと私から申し上げたいと思います。  第一に、健康保険病院の赤字の問題でございます。これは確かにお話しのように、経営上赤字が出ているところがございます。しかし、この点は立地条件でありますとか、あるいは経営の状況でありますとか、それらのことも十分考えなければならぬ問題でございますし、それからなお、健康保険病院の人件費を調べてみますと、総経費に対して約五〇%になっているのであります。国立病院等に比べますと、人件費の占める割合というのは低い状況にございます。そういった点も勘案をして、健康保険病院の経営の問題については、実は私就任以来よく検討してみたいというふうに考えておりまして、今日までまだ十分目的を果たしておりませんが、これはやはり経営上の問題として、個々の病院なりあるいは全体について十分検討をしてみたい、かように考えております。  それからもう一つ、これは信義の問題でもございますので申し上げさしていただきたいと思いますが、先ほど前の局長はよいと言ったが、今度はいかぬというような印象にとれるようなお話でございますが、私もその点は前局長の答弁をしさいに検討さしてもらいまして、これはそういうものは対象として考えられるということで、答弁の趣旨からいたしますと、その当時それを受け取る適当なところがなかったという状態でございましたので――なかったと申しますか、そういう状態になっておりませんでしたので、それは一つの対象として考えられるという意味で答弁をしたわけでございまして、その後省内においていろいろ検討いたしました結果、お話しの学校法人病院につきましては、医療金融公庫の方で取り扱うということになったわけでございまして、別にその辺を右左したというふうにおとりいただくのはちょっと私の気持と違いますので、その点を釈明させていただきます。
  107. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府関係の病院の実態等につきまして、逆に滝井さんから御指摘をいただいて恐縮に存じております。現在の病院の経営状態が楽でないということは、私ども聞いておるわけでございます。人件費等につきましても、かなり窮屈な思いをしておるということでございます。これにつきましては、もちろんわれわれといたしましては、待遇の改善等につきましても努力しなければならぬと思います。と同時に、政府管掌の健康保険病院の経営管理の面につきましても、さらに実態をよく調べまして、合理化できるところは合理、化していかなくてはならぬ、経費の節約のできるところは節約して参らなければならぬと思います。いずれにいたしましても、かなり窮屈な思いをしておることは事実でございますので、御指摘につきましてはおろそかにいたしませんで、検討させていただきたいと思っております。  なお、それに関連いたしまして、政府の病院ですらそうなんだからというような御趣旨のお尋ねであったように思うのでありますが、政府関係の病院が民間の病院よりも有利な条件にありながら、そういう状態であるから、医療金融公庫の貸付等についても特に考えろ、こういう御趣旨であろうと私は思うのであります。この問題につきましては、先般もお答えいたしたと思うのでございますが、年金福祉事業団が発足いたしまして、それの金利との関係におきましていろいろ御要望もあるわけでございます。厚生省といたしましては、この年金福祉事業団の金利の関係とつり合いのとれたものにしたいという心持で、今財政当局といろいろ話をいたしておるところであります。沿革も若干違いますし、また予算等の関係もありまして、まだ結論には至っておりませんけれども、心持はそういう心持で話し合いをいたしておるところでございます。さように一つ御了承をいただきたいと思うのであります。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 実はこの法案内容は、理事長を総裁にするというのと、資本金をふやすだけの簡単な内容なんです。しかし、この法案で一番問題なのは、最近における建築資材その他の騰貴のために、幾らこれをふやしたって借り手が少なくなったらだめだ、医療機関の適正な配置ができないですから。借り手を増加させて、建設単価その他をきちっとしなければならぬわけです。そしてわれわれは、このごろ資料として厚生省に、年金福祉事業団と医療金融公庫との対照表を作ってくれと要求をしたのです。それが出てきた。ところが、一番問題ば利子です。だから、その利子を今当局と交渉中だからもうちょっと待てというなら、この法案というものは結論が出るまで待たしてもらわなければならぬことになる。私はきょうは今一つの実例をあげて、政府の直轄、保険局直轄の健康保険病院でさえもが七億を借りてやっておったけれども、利子の六分五厘はとても払えぬということで全部切りかえております。そういう実態があるということなんです。しかも、それは健康保険の模範病院だから、全部健康保険の患者ばかり入れておるかというと、そうじゃない。差額徴収もやっておりますよ。そしてかせがなければ――かせいでも現実になお人費の占める比率は五割、国立病院の方は低いとおっしゃっておるのだが、その低い力さえもやっていけないのです。だから、いわんや八分なんという高い金利を払ったらやっていけるはずがないですよ。それをもしやっていかせようとすれば、だれが一体損するか、被保険者が損する。そっちの力に転嫁する、それは許されぬというわけです。それならば、被保険者に転嫁をされないならば、年金福祉事業団と同じように医療金融公庫も取り扱いなさい。これは理論の筋が通っておる。なぜならば、年金福祉事業団も病院をお建てになる。初めは生活協同組合の病院、海員掖済会、あれは医療金融公庫の対象だったでしょう、今度この法律ができるまでは。これで金を貸しておったのじゃないですか、貸しておったでしょう、これは保険局の所管だから……。
  109. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 今まで公庫で貸しておりました。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 医療金融公庫が貸しておった。ところが、今度年金福祉事業団ができたら福祉事業団に移してしまった。それはどうしてかというと、海員の方は海員ですから被保険者、それから生協も広く被保険者、そうすると、一体医療金融公庫の貸し出しの病院は、被保険者は扱っておらぬのかということです。国民皆年金でしょう、どこに差別があるのですか。どこに白黒の、サギとカラスの区別がつきますか、つかないじゃないですか。こういうところは、厚生省は大蔵省の銀行局にちょっとやられておる。そして今のような大きな年金福祉事業団のようなところは抜けてしまっておる。だから厚生省は、だめだと言うのです。だから、これは一つうしろから、今の理論展開に反発ができれば、銀行局、一つ反発のできるような理論展開をしてもらいたいと思うのです。そしてあなた方がこれだけやるというなら、銀行局の責任で主計局に行って――そしてそういう医療金融公庫から借りた医療機関は、国が別にその診療費を補てんしてやらなければ、患者からもらわなければならぬことになってしまう。こういう差別待遇というものが行なわれていいということはないのです。これは税金で差別したらいいのです。公的医療機関と私的医療機関はそういう実態がどこが違うか、これをせんじ詰めていくと、違うところはたった一つしかない。すなわち、もうけた利潤が個人の私有に帰するか、あるいは公のものになるかという違いです。あとは全部同じです。従って、その違うところに、国が押えるところは税金を取ればいいのです。これで片づく。あとはみんなフェア・プレーで平等でいい。税金を取る、そうでなければ公的医療機関からも税金を取らなければいかぬということになるが、どうですか、あのぜいたくな、そこらの開業医とは天と地の差のある聖路加病院は税金がかからない。そして山深き人里離れたところで、雪の中でも何でも、自転車に乗っててくてくやっている私的医療機関だって税金がかかるのです。金殿玉楼のような、しかもお金持ちしか入れぬような聖路加病院は、税金はかかりません。こういう矛盾を作っておる。だから、これは医療金融公庫と年金福祉事業団と私は貸す利子は一緒でいい。これはどう考えても理論の筋は通っておる。だから、これは主計局と銀行局の一つ反論をお聞きしたいと思います。
  111. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいまの御質問でございますが、最初お話しになりました全社連の病院でございます。これは厚生年金の、何といいますか、被保険者の金でもって設立したものでございますから、従いまして、われわれの方で現在考えております医療金融公庫と年金福祉事業団との性格の相違ということから申しますと、むしろ医療金融公庫ではなくて、被保険者の作った病院ということで年金福祉事業団の方にいくのではないか、こういうふうに考えております。  それから、先ほどからの御質問でございますが、基本的には、やはり利用者という面をわれわれの方では見ているのではございませんで、できておる施設自体が、そういった被保険者の拠出した保険福祉施設であるかどうかという点に着目しております。被保険者の利用の面から申しますと、現在のように皆保険になりますと、あらゆる私的医療機関も保険を扱っております。すべて保険の利用者ということになりますが、特に年金福祉事業団で厚生年金並びに船員保険、国民年金の還元融資的な色彩を持たしておりますのは、そういった保険の被保険者の拠出した金をもって作られる施設に対しては、特に同じような金を安く貸そうという趣旨で貸しているわけであります。従いまして、現在の医療金融公印の建前は、医療の適正な普及向上ということでございまして、特に不足地区に医療機関を作ろうということでできておるわけでございます。そこで、一般的な私的医療機関全体に対する資金の供与ということもございますけれども、特に不足地区についてはそういった資金の供給というものを円滑にしたいということで、六分五厘というような利子で安くしているわけでございます。従いまして、一般の増床につきましては甲種、乙種に分けまして、不足地区でないところは増床は見ないというようなことで、そういったところの改築については八分ということにしているわけであります。こういった医療機関におきます性格、いわゆる対象の相違からいいますと、現在の年金福祉事業団の六分五厘という還元融資的な利率というものを、そのまま医療金融公庫に持っていくということは問題ではないかと思います。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、大蔵省所管の国家公務員の共済組合、理事長は今井一男氏、こういうものはどんどん医療機関の密集地帯に建ててもよろしい――これは国が保険料の半分は出しておりますね。大蔵省としては、そういう国の税金が保険料の半分入っているものは、どんどん建ててもいいということになるのですか。被保険者のために私的医療機関だって一生懸命やるし、私立大学の付属病院だって一生懸命に大衆の医療と健康のためにやっております。そういうものは利子は商いぞ、そしてそういうものが建てるならば、革深いいなかならば六分五厘だ、しかし一方、これは国の税金だ、還元融資の積立金じゃない、そういう税金から出ていくものは、大都会のまん中に金殿玉楼のような病院をどんどん建てても、厚生省は一口も半口も文句を言うことができぬ、こういう不合理をあなたは許しますか。同じ大蔵省の主計局で許可するのです。大蔵省の、同じあなたの同僚が許可するのでしょう、会計課長ですか。そういうものは平気でまかり通っております。ああいうものこそ、いなかにやらなければいかぬ。これは一銭も出さぬでいなかに行かせられるのです、予算を認めなければいいのだから。片一方は、自分で病院を建てよう、金借りましょうといって国民のサービスしょうという人には、高い利子を取っていなかに行かせようとするならば、一文も国から貸さなくても行けるところがあるわけです。貸さなくてもいなかに行ける。そういうものはほったらかしているのだ。だからこれでは頭隠してしり隠さぬで、病院全体の考え方からすると理屈が通らぬですよ。これはあに国家公務員の共済組合の病院のみならんや、ほとんどすべての公的医療機関及びこれに準ずるものは、厚生省の管轄の健保病院も含めてみなやっていますよ。天下ごめんだ。みなやっている。労災病院ができたら隣に年金病院を建てる。年金病院と労災病院の隣に共済組合の病院を建てている。みんな天下ごめんです。むしろこういうところにこそ手綱を締めなければいかぬ。新聞で池田内閣はたががゆるんでおるというけれども、たががないのだということを池田首相に言っておったのですが、これとまさに同じですよ。たががゆるむのじゃなくて、たががないんですよ。だから銀行局にしても、課長さんにしても、岩尾さんにしても、正義心というものはこういうところに燃やしてもらわなければいかぬ。医療金融公庫の利子の八分を六分五厘に下げるような――あまりファイトを燃やさぬでいいようなところにファイトを燃やして、燃やさなければならぬところに燃やしていないようなところがある。だから、これは一つきょうここで銀行局と相談をして、六分五厘でやるという言明をしていただきたいと思うのです。大臣が参議院に行かなければならぬということですから、きょうが無理ならば、あしたもう一ぺん同じようにやっていいですよ。
  113. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいま先生のおっしゃいました御趣旨においては、私も全く同感でございます。ただ、共済病院につきましては、実際上建てる場合によく厚生省の医務局の方と連絡をいたしておりまして、その了承のもとに作るというふうにわれわれの方では了解いたしておるわけでございます。  それから年金福祉事業団の方につきましても、今回もし融資をいたします場合には、不足地区に貸し出すものというふうに、できるだけ限定をいたしたいというふうに考えております。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 不足地区とおっしゃるけれども、医療機関の整備計画というものにのっとって、人口十万までは幾ら、十万から三十万までについてのベットは幾らでよろしい、それから三十万以上は五十五なら五十五だ、こうきまっているのですね。そのワクの中で建てる医療機関ならば、あなたの今の意見は、医療金融公庫六分五厘でいいということなんですか。不足地区というのは、それが不足地区なんですよ。人口が増加すれば不足地区というのはだんだん変わってくる、今のお答えはそういうことでいいのですか。
  115. 岩尾一

    ○岩尾説明員 私の申し上げましたのは、共済の問題と、それから今回できます年金福祉事業団の融資をやる場合にも、先ほど先生がおっしゃいましたように、還元融資ならばどんなに密集しているところでもかまわないのかという御質問でございましたので、それはそういうことではなくて、やはり不足地区に建てるものでなければならぬ、こういうことでございます。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 従って、不足地区というのは、今言ったように厚生省の医療機関整備計画というのが省議決定をしている、それを今ものさしにしてやっているのだが、それでいくのですか。そうすると、不足地区には、さいぜんの御答弁では六分五厘で貸しますよ。それだったら医療金融公庫も、東京のまん中だって、ものさしに合わなければ六分五厘で貸すことになる。そういうことに理解して差しつかえないのかということが一つ。今度は裏を返すと、年金福祉自業団――今、年金福祉事業団の貸付というのは、どこに建ててもいいのですよ。チェックしょうがない。医療法というのは通っていないから、規制する法律的根拠がない。だから、そうすると、過剰地帯に年金福祉事業団の金を借りて建てるものは八分にしますかということに、逆説的に言うとなりますね。その場合は八分にするのですか。そんなことはないのでしょう。
  117. 岩尾一

    ○岩尾説明員 不足地区の定義につきましては、もちろん人口の増加その他によって多少状態も変わって参りますし、医療機関の増加によっても変わるわけですから、そういう状況に応じて、常に同じ基準であるというふうには考えておりません。従って、医療金融公庫についても、そういった意味の検討は必要であるかと考えております。もし年金福祉事業団が、今私が申しましたようなことをやるとしますと、やはり医療金融公庫と同じような基準が必要ではないか。ただ先ほど申されましたように、現在法律もないのでそういうことはできないのじゃないか、まさにそうだと思いますけれども、それは融資をやる場合の業務方法書なり何なりにおいてそういう基準を作れば確保ができるのではないか、こういうふうに考えます。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとうしろで私語してわからないのですが、今の見解では、年金福祉事業団についても、医療機関整備計画の基準に従って貸出をやっていく、こういう趣旨解釈していいのかどうかということです。それはおれらの方針と違うぞという私語があったので、はっきりわからなかったのです。
  119. 高田浩運

    ○高田政府委員 その点は厚生省の関係でもございますので、私から申し上げたいと思います。  病院の新設または増床につきましては、病床の不足しております地域でございますとか、診療所の普及がおくれている地域に融資をするということにいたしておりますし、その具体的なやり方等については、十分病院、診療所の整備に関する基準について主務局と打ち合わせてやるということになっております。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 法律はもう通ってしまっているのですよ。年金福祉事業団というのは実施の段階ですよ。三十七年度は第二年度になります。去年五十億です。
  121. 高田浩運

    ○高田政府委員 その実施につきましては、やはり業務方法書に従い、あるいは厚生大臣の方針に従ってやるわけでございますから、その業務方法書なり厚生省の方針というものを、私が今申し上げたその通りにやっていきたい、やっていこう、こういうことでございます。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、不足地区でなければ金を貸さないようにする、不足地区というその基準に当てはまるところでなければ金を貸さないようにしていく、こういう意味ですね。
  123. 高田浩運

    ○高田政府委員 抽象的にはそうでございます。ただ具体的にどの程度がどうであるかということは、主務局の方と打ち合わせて進めるつもりにいたしております。不足地区の解釈が、いろいろこの場合考え方が違う面もありますので、その辺は十分主務局の方と打ち合わせをして進める、こういう考え方でございます。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、業務方法書で、不足地区でないところに金を貸す場合には八分になりますか。
  125. 高田浩運

    ○高田政府委員 そういうところには貸さない方針ということを申し上げております。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。そうすると、六分五厘だ、従って、医療機関の整備計画の基準によってそれは原則的に貸し出しをやる。そうしますと、不足地区については同じことになる。不足のところは六分五厘という説明があったのですよ。不足のところは医療金融公庫も六分五厘ですね。そうしてきちっと言明しておいてもらえばいいのです。医療機関整備計画において不足地区というのは、医療金融公庫、年金福祉事業団が同一の基準でいくのだ、同一基準については全部六分五厘でございます。これで銀行局と主計局がその通りだと言ってくれればいいわけです。それをはっきりさえしてくれれば、もうあとは、向こうが言明してくれれば法律に書かれるのですからね。それとも大臣が、その通りでございますと言って、あと閣議で責任を持ってくれれば、僕ら法律に与野党協力して書かれる。そうすると、あしたこれが通りますからね。大臣に言明してもらいたい。
  127. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど私がお答え申し上げました通りでございまして、まだ話が済んでおりません。話が済まなければ、ここで何とも言うわけには参りません。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 それならばこれは――今高橋等さんも来て参議院もやかましく言っておりますから、きょうはこれでやめますが、これはもう少しありますし、あす委員会がありますから、それまでに大蔵大臣と御相談の上で、灘尾さんは慎重で慎重居士だということはよく知っておりますし、長い間実施しなければならぬ法律ですから慎重の方がいいですが、あすまでに御相談いただいて、もう一ぺん御答弁いただきたいと思いますが、どうですか。
  129. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 なるべく早く話をつけたいと思います。あすまでにつくかつかないか、これもわかりませんが、なるべく早くつけてやりたいと思います。
  130. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十分散会