○田中(織)
委員 官房長官のおられる間に、もう二点だけあわせて
質問申し上げますからお聞きいただきたいのであります。
一つは、先ほど私が申し上げましたように、自民党の中にも同和問題議員懇談会が設置せられまして、いろいろ部落の実情等について研究され、それが
政府へいろいろ
政策の実現という形で推進されておる点については敬意を表するのです。たまたま私ども最近手に入れましたところによりますと、この議員懇談会の同和問題
資料第二集として、これは京都大学の教授だったと記憶するのでありますが、法学博士滝川政次郎なる学者が「歴史上より見たる同和問題」ということで議員懇談会で講演されたものが、こういうパンフレットになって、これは私どもの団体で複製したものでありますけれども、
出しておられる。しかもその中に冒頭のところから見て、「今日の未解放部落、すなわち江戸時代に穢多、あるいは非人という名前で呼ばれました特殊部落の祖先は、中国から
日本に帰化してきた民族の末裔であるというのが私の結論であります。」それからその次に「大体四世紀ごろ、つまり仁徳天皇の名前で
日本の歴史に出ておる時代以後、
日本は三韓を服属せしめておりましたので、それ以後欽明天皇の任那滅亡に至るまでの三世紀間に、
日本に帰化してきた三韓人はおびただしい数に上っています。西暦六六三年、天智天皇の元年に
日本は唐、新羅の連合軍と南鮮の白村江で戦いまして、大敗北を喫し、百済国はほろびまして、何百万という人間が
日本に亡命して参ったのであります。つまりその子孫が今日の特殊部落の大宗をなしておる。」という記述があるわけなんです。この問題は官房長官あるいは総務長官、
灘尾厚生大臣は、こういうものが自民党の議員懇談会から出されておるのを
御存じか、どうか。しかもこの点については、いわゆる部落の起源として人種起源説をとっておるのでありますが、そういう形の考え方を基盤にして、いわゆる同和問題というものを取り上げられるということになれば、私これこそ本質的に重大な問題だと思うのです。同じ
日本民族の中で、われわれの理解ではやはり封建時代の身分制、いわゆる政治の、そういう
意味の、極端な言葉で言えば分裂
政策の申し子として今日もなおそういうものが残存しているんだ、こういうことが、これは学者の間でも定説なんですね。ところがわれわれも学生時代から滝川政次郎なる学者の名前を知っておりますけれども、まあここ三年くらい前のことではないかとも思うのでありますけれども、こういう考え方を自民党の諸君に滝川教授が教えて、それに基づいて部落対策を講じられているということになれば、これは今同和対策
審議会なりあるいは先ほど八木
委員も触れられましたけれども、憲法十四条に規定しておる問題としてそれの正しい実現だという形で取り上げられるというのと大きな開きが出てくると思うのでありますが、この問題については官房長官も、これはどうも
政府の同和対策の基本的な考え方にそういうものが持たれておるということになれば、私ゆゆしき問題だと思うので、この機会に伺っておくわであります。
〔藤本
委員長代理退席、
委員長着席〕
それから、あわせて
関連でありますからもう一問お伺いをいたしますが、これは実は文部
大臣が来ていただけばいいのでありますが、私どもの聞いたところによると、
灘尾現
厚生大臣がかって文部
大臣でもございましたし、またこの財団法人に何らかの形で
関係を持っておられるということでありますけれども、二月二十五日の読売新聞によりますと、「京都の西本願寺が、社会の谷間にあえぐ人たちを救おうと、設立をすすめていた財団法人「同和教育振興会」はこのほど発足した。親鸞聖人の七百回大遠忌の記念
事業として
計画され、岡寺の記念
事業費一千万円に」、同寺というのは西本願寺、「一千万円に文部省の補助金一千万円をあわせ、このほど認可されたが、これよりさき、昨年六月に着工された同会の会館も京都市右京区山ノ内御堂町にちかく完成する。」という記事が出ておるのであります。同和教育の問題については、先般も文部省の初等中等局で
計画をいたしました研修会の問題で私ども文部省へ抗議にも参ったようないきさつがあるのでありますが、教育の面から部落問題の解決のために資するということは非常に重要なことだと思うのです。ところが私がこの問題を取り上げまする点は、御承知のように憲法の二十条によりますと「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」それから「国及びその
機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」という憲法の規定があるわけなのです。私はそういう
意味で、もちろん西本願寺が直接の対象ではないことは私も理解いたしますけれども、本願寺の
関係が
主体になってこしらえた財団法人というものに対して文部省が一千万円という補助金を出すということについては、これは私はやはり憲法二十条の「国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」という規定の実質的な
内容に違反するおそれがあるのではないか。確かに西本願寺は信徒のうちに部落
関係者が非常に多いのです。関西から中、四国、九州へかけまして、ほとんど未解放部落の
関係の人は浄土真宗、しかも西本願寺の系統の檀徒が多いことは承知いたしております。そういう
関係から、従来も同朋会なりその他の形で本願寺自体としても部落問題に取り組んでいるということについては私どもも承知しておるのでありますけれども、この際文部省から特定の宗教団体が実質的に中心になっておる団体に一千万円という多額の補助金を
出してやるということは、どうもこれは憲法に違反するし、そういう形で同和教育問題を取のり上げられるということになりますと、私が前段に御
質問申し上げました問題とも
関連をいたしまして、部落問題について新しい党派性を持ち込むような結果になるのでありまして、その点は政党
内閣の時代でありますから、特に部落のおくれた人たちの中には、やはり時の政権を持っておる政党とのつながりを考えておられる人たちはたくさんあるわけなのです。それは私、政党支持自由の原則に従ってけっこうなことだと思うのでありますけれども、あまり問題が問題だけに、この問題について党派性を持ち込まれるということになると、私どもがどんなに努力をいたしましても、差別は拡大されていく、こういうことになると思うのです。この点についてはすでに補助金が交付されたのかどうか。たしか三十六年度の
予算か何かで文部省
予算の中に計上されておるように伺うのでありますが、私ども
予算審議のときに、うかつにもこの点についての詳細な検討ができなかたために、今日こういう
質問をしなければならぬのでありまするけれども、これは憲法二十条の
趣旨から言っても避けなければならぬことだし、重大な問題だと思うので、この際
政府のこの二点に対する所信を伺っておきたいと思います。