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1962-02-20 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十日(火曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 大石 武一君 理事 永山 忠則君    理事 藤本 捨助君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       安藤  覺君    井村 重雄君       伊藤宗一郎君    浦野 幸男君       小沢 辰男君    佐伯 宗義君       松山千惠子君    赤松  勇君       淺沼 享子君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    田邊  誠君       中村 英男君    吉村 吉雄君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         防衛政務次官  笹本 一雄君         総理府事務官         (防衛庁長官官         房長)     加藤 陽三君         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (婦人少年局         長)      谷野 せつ君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         労働事務官         (職業訓練局         長)      村上 茂利君  委員外出席者         総理府事務官         (防衛庁参事         官)      麻生  茂君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  和田 勝美君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 二月十九日  委員松浦周太郎君辞任につき、その補欠として  中曽根康弘君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十六日  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出、衆法第九号)は本委員会に付  託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。井村車雄君。
  3. 井村重雄

    井村委員 私は、中小企業労働問題と失業対策について、二、三大臣並びに政府委員からお答弁をいただきたいと思います。大臣は、当委員会において冒頭の所信を披瀝されるにあたって、完全雇用労働条件向上労働経済近代化ということをうたわれております。すなわち、労働力確保雇用の拡大、労働生産性労働条件向上、特に中小企業労働条件格差是正ということを言っておられるのであります。私はいろいろな角度から見て、今日非常に重要になっておるのは、この中小企業労働問題であろうと存ずるのであります。これはもとより労働者立場からも、また経営者立場からも、検討すべきいろいろな問題があると思うのでありまして、今日の中小企業が曲がりかどに来ておるというふうなことは、その労働力の問題、経営の問題とあわせて、非常に困難なる時期に逢着しておると思うのであります。少し問題をあげて、御意見をお伺いいたしたいと思います。  賃金格差是正すると言っておられますが、これは結局、結論的に申し上げれば、賃金を大幅に引き上げるというふうなことであろうかと存ずるのでございます。しかし、これにはやはり条件があると思うのであります。中小企業経営基盤を強化しないで、格差是正ということは容易ではないと思うのでございます。もちろん、今日、池田内閣のとっておられる経済成長の目的ということは、要するに、経済を成長せしめ、その段階において地域的、業種的な所得格差是正しなければならないという至上命令があると私は考えておるのでございます。今日いろいろ経済成長努力はおありでしょうが、大企業中小企業あるいは零細企業との間の所得格差実態がどうなっておるか、お伺いをいたしたいと存じます。
  4. 福永健司

    福永国務大臣 井村先生御説のごとく、できるだけ格差を縮小したいということは、私どもの強い念願でございます。しかし、それには中小企業経営基盤強化等について、国の施策全体が強力に推し進められなければならない次第でございます。そういうことでなくて、ただ格差だけを縮小しようとしても、これは大へんな無理がございます。従って、おおむね御趣旨のようなことを私も考えておる次第でございます。幸いにいたしまして、最近、日本雇用情勢全体の事情からいたしまして、若い人の初任給等は、大企業中小企業でかなり接近して参りました。ただ中高年令者等につきまして、かなり大きな差があるわけでございます。ただいまそういう実態についてというお話でございますので、事務当局から若干数字的にも申し上げたいと存じますが、まあこういう、あとで申し上げますような事情でございますので、困難な問題は非常にたくさんございますけれども、何とかそういう実態を克服して、格差縮小方向へ持っていきたいというのが、私ども念願でございます。
  5. 大島靖

    大島政府委員 中小企業の大企業に対する所得格差の点でございますが、御承知通り賃金格差は、大企業に比べまして約半分程度になっております。ただ最近、ここ二、三年来でありますが、小規模事業の大企業に対する賃金格差は相当縮小して参っております。本年に入りましても、なおかつ縮小いたしております。ただ、今大臣から御報告申し上げましたように、初任給においては、大体大企業中小企業の間にほとんど格差がないという状況でございます。たとえば昨年三月の新中卒の、新規学卒者初任給全国平均でとってみましても、大体男子で七千三百九十円程度になっておるのでありますが、これを規模別にとってみますと、ほとんど差がございません。もちろん地方的には相当な格差があるのですが、規模によりましては格差がない。ただ、中高年令層に至りますと、大体平均賃金格差と同じような隔たりが出て参るわけであります。ここ数年来の年令別賃金上昇率を見ますと、やはり若年層賃金上昇率というものは非常に高率でございます。そういった関係で、今申しましたような格差現状が出て参る。一方、経営上の格差を見てみましても、御承知通り日本における大企業小規模事業生産性格差というものは、非常にはなはだしいわけであります。それが諸外国ですと、大体小規模事業におきましても、生産性格差というのは八〇からせいぜい落ちまして七〇%までであります。日本の場合は、ほとんど賃金格差パラレル程度に落ちて参りました。低いものになりましては五〇%以下にまで落ちて参ります。この非常に低い生産性というものを、小規模事業資本回転率を激しくいたしましてカバーしているというのが現状でございます。従って、井村先生指摘のように、やはり中小企業経営全般において生産性を上げていくと同時に、この賃金格差というものをできるだけ是正して参る、こういう方向で行政を進めて参りたいと考えております。
  6. 井村重雄

    井村委員 最低賃金あるいは初任給というものは、若年労働者賃金格差はかなり縮小されておるという事実は承知をいたしております。今もお聞きした通りでございますが、中小企業で今日経営困難とかいろいろな問題が起きておる点――今言われたような生産性の問題と賃金格差の問題、あるいは資本量というような問題、また、過当競争等、いろいろ要素もありますけれども経営条件が整う前に非常な賃金攻勢が急激に押し迫ってきたというのも、一つの大きなファクターだと思うのであります。ことに労働力不足ということで、原資を考えないで、労働者確保ということに高賃金を出しておるという非常に危険な形勢があるのでありますが、こういうことについて何か対策を考えておられますか。
  7. 大島靖

    大島政府委員 ただいま先生指摘の問題は、現在の中小企業労働問題の中でも最も重要な問題であろうかと存じます。初任給が最近のように非常に上がって参ります。これは労務需要関係から起こっておるわけなんであります。これ自体は非常にけっこうなことだと思っておりますが、ただ初任給がぐんぐん上がって参りますと、在籍労働者賃金との調整というようなものをいかにするかということが非常に大きな問題です。私どもの方で、実は昨年、大体全国で一千ぐらいの会社につきまして、お宅の会社では賃金問題で一体どういう点がお困りでしょうかというアンケートを出したことがあります。この場合、困っておる賃金問題というものは、大企業中小企業で顕著に違っております。中小企業賃金問題の悩みの圧倒的多数は、今先生の御指摘の問題に集中いたしております。従って、最近の初任給上昇に伴って、在籍労働者賃金とのバランスをいかにとっていくか、これが今後の問題であります。従って、この問題につきまして、初任給在籍労働者賃金とがしかるべきバランスがとれる、それから同時に、そういった賃金調整というものが、かなり長期的に見て、経営として耐え得られるものである、また同時に、そういった賃金体系の全般的な手直しというものは非常にむずかしい問題でありますので、中小企業経営者にとりまして、それがわかりいい形で行なわれる、こういった大体三つの条件を備えるような形で、私どもも、できるだけ中小企業経営者に対して啓蒙なり援助なりを申し上げていかなければならぬ、かように考えております。私も、さっき申しましたように、この問題は、現在の中小企業労働問題の中で一番重要な、かつ切実な問題だと考えております。
  8. 井村重雄

    井村委員 もう一つ、これは後ほどお伺いしたいと思いますが、ここで申し上げてみたいと思うのです。経営者側について見ても、非常にまだ考えなければならぬ点があると思うのです。ことに労働組合に対する認識不足労務管理の不手ぎわというふうな問題が非常にあるのであります。経営者が、従来の封建的な考え方を捨てて、労務管理生産性向上というものが不可欠のものであるということをよく認識しなければならぬと思うのですが、労働省側としては、これらを指導し、あるいは育成していく何かの方策を立てておられますか。
  9. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいま御指摘のように、中小企業におきましては、労使関係者とも、近代的な労使関係を打ち立てるための自主的処理能力欠如という点が見受けられます。その原因となっておりますものは、ただいま御指摘のような労務管理に対するところ認識欠如、あるいは労使関係話し合い等に対するところ認識欠如というような点があげられると思います。従いまして、労働省といたしましては、この労使関係者認識理解を高めていくということにつきまして、平素からよき労使慣行を確立するための援助をいたしたいと考えておりまして、ただいまやりつつありますところの具体的な方策といたしましては、労働相談員を民間の有識者から委嘱いたしまして、これを労政事務所に置きまして、具体的な問題に対するところ相談に応ずる、さらに、労使双方に対するところ労働問題の講習会を開催いたしまして、理解認識向上に努める、同時に、労政事務所職員等に具体的に中小企業事業所を巡回いたさせまして、実情調査及び個別指導相談に応じて行なう、あるいは中小企業の中から問題のありそうな業種を抜き出しまして、従業員態度測定を行なうというような、具体的な対策を現在とりつつあるわけでございます。新しい年度におきましても、この内容をさらに拡充いたしまして、ただいま御指摘のような関係者認識理解向上に資したいと考えております。
  10. 井村重雄

    井村委員 この点は今後指導ということに十分力を入れていただかないと、いたずらなる紛争を起こしたり、あるいはロックアウトをやったりするような例も多いのでありまして、これは私は両者にとって不幸だと思うのであります。こういう点で、経営近代化のためにもよき労使慣行の確立ということに一段の努力をお願いするものであります。  次に、労働力不足でありますが、これは非常に重要な問題だと思うのであります。よく設備近代化技術革新といわれますけれども技術革新に非常に適応性を持っておる若年労働者が特に中小企業不足をしておるという事実は、御承知通りだと思うのであります。大体ここ一、二年の間の中学新規卒業者就職状況を見ましても、小さな百人以下という工場充足率は、五百人以上の大企業工場に比して三分の一にも満たない、こういう状況でありまして、これは技術革新とかあるいは設備近代化ということにマッチをして、生産性向上をなして、その上で賃金体系を整えていくということに相反した一つの現象であります。これは非常に大きい問題だと思うのですが、若年労務者需給という問題に何らかの方法で打つ手がありますかどうか。ことに十五八以下というような零細企業に至っては、ここ数年来、ほとんど三分の一、五分の一という程度充足率しかないという状況でありますが、こういう問題についてどういうお考えを持っておられますか。
  11. 三治重信

    三治政府委員 若年労働者不足原因を考えてみますと、今度の三年続いた高度経済成長による労働力需要増加、また、各家庭における所得増による進学率の増、また、終戦前の非常な出生率の低下による若年労働者減少というふうに、三者相反した方向に向かって非常に不足を来たしたわけでありますが、これを現在の需給状況から見ますと、どうしてもその間の新規学卒の絶対的不足ということはいなめない事実でございます。さらにまた、三十八年から四十二年までは、戦後の非常なベビー・ブームによる新規労働力供給増加しますけれども、それでも所得増加による進学率増加によりまして、いわゆる中学卒新規労働力不足というものはなかなか解消しないと労働省は見ております。従って、その補充対策といたしましては、そこに中小企業方たちに、はたして新規若年労働者でなければその営業が維持できないかどうかということについて、私の方では、その職務分析を通じて、雇用の質をある程度転換していただくというふうなことも考えなければならないのじゃないか。これが単に適正配置あるいは新規学卒需給調整で量的に間に合うならばけっこうだと思いますけれども労働力供給が若干増加してもこれは絶対的な不足だと思います。なおまた、それが大企業ばかりに行って、中小企業、ことに零細企業には新規学卒がいかない、それをまた法的強制力、物理的な、または安定所が強制的に誘ってみても、やはりそういうところに若干は行ってもそれがまたすぐやめて、移動率が非常に高くなるという格好になるわけでございます。その点、やはり新規学卒につきましては、ある程度本人に適する職業につくようにやるということ、また一面、先ほど問題になりました労務管理なり、それから経営者側労働条件の改善ということと相待って、そこに平均的な労務需給をやりますけれども、絶対的な不足条件に対しましては、やはり新しく別個の職業体制をとらなければその満足を得られないのではないかというふうで、目下その点につきまして、新規学卒以外の補充方策について検討して参りたいというふうに考えております。
  12. 井村重雄

    井村委員 労働力の絶対量が不足しているということは事実でございます。経済成長につれて労務需給が多くなるということも事実でありますが、私はここで一つ提案をしてみたいのです。日本では婦人の方が勤労をきらうという傾向が比較的あるのではないかと思うのですが、余裕のある婦人労働力を、ここで系統的に産業労務につかせるというふうな方策を何か考えられたことがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
  13. 三治重信

    三治政府委員 今までのところ、ここ両三年、むしろ問題は労働力の過剰が叫ばれていたので、労働省としても、そういう対策についてやはり政策としての、またそういう予測としての適応態勢というものは確かにおくれていると思います。本省に婦人少年局がありまして、われわれも一緒に婦人労働問題について討議もしておりますが、むしろ婦人の地位と婦人労働条件、男女の同一労働同一賃金の問題、そういう婦人関係のいわゆる条件向上ということが非常に問題になっております。そういう問題がおもに討論の対象になっておりましたが、しかし、わが国の婦人労働を忌避する、ことにある程度所得以上の方がそういう関係にあるかどうかにつきまして、詳細な結果はまだ出ておりませんが、戦後においてやはり一番雇用が伸びたのは婦人労働者でございまして、この婦人労働者雇用労働者として就業する、働く率というものは、男子よりか非常に戦後向上しております。今後ともこの婦人労働者労働関係に入る上昇率というものは、私は男子以上じゃないかと思います。従って、その間に、ただ婦人がきれいな仕事を希望して、あるいはほんとうの生産労働にあまりつかない。または家庭に一たん入った後の再就職、これはおもに労働力不足の欧米におきましては、家庭に入ってある程度子供が学校へ行くようになって、親の手を離れる場合の再就職部面が、労働力補充の非常に大きな力になっております。現在の婦人労働力の急激な上界は、若年労働者また新規学卒就業増でございまして、それもまた、従来は結婚したら就業をやめるというのがおもだったのが、それが結婚によって就業をやめないということで、婦人労働者雇用が非常にふえたわけであります。今おっしゃるように、やはり家庭に入って子供がある程度手を離れた場合の再就職の問題については、これは一般的な日本における中高年令者就業難と同じ問題であると思います。ことに婦人については、その条件が現在のところ悪いわけであります。そういう問題について、今後この労働力不足補充対策というような部面、または家庭に新しい所得をもたらすという部面において検討していきたいというふうに考えております。
  14. 井村重雄

    井村委員 これはお願いをいたしておきたいのですが、まだまだ労働力不足というものは続くと思うのであります。従ってまた、今日まで、戦後の日本の女子の体力が非常に向上いたして参っているのでありまして、相当の産業労働に耐え得る力を持って参ったものと私ども見ているのでありまして、そういうふうな面について何らかの対策を立て、急速に調査もなされまして、今後軽作業方面にはできるだけ労働意欲を向けて、婦人労働力を動員するような方策を立てていただきたいと私は要求いたしておきます。  そこで次に、今後、しからばこの労働力供給源は必然的に農村余剰労働力に向けられると思いますので、少しお尋ねしたいのですが、農村労働人口その他、これが生産工業部面へ今後十年間にどれくらいの労働人口を移動せしめるか、何かそういうふうな数字がございましたら、お聞きいたしたいと思います。
  15. 三治重信

    三治政府委員 所得倍増計画による農業から、第一次廃業から、あるいは第二次、第三次への労働力がどの程度移動するであろうかという見方につきましては、一応の計数が出ております。しかし、農業者減少原因は、いわゆる農家出身新規学卒新規労働力の大半が、農家補充要員までも第二次、第三次に引き上げる、その結果による減少というのが主力でありまして、農業に従事している方が転業するという格好の方は、しっかりした数字あとで申し上げますが、百五十万弱というふうに考えております。大体農林省あるいは全体的な需給部面から見ますと、農家が、大体三十年単位で一世帯交代するというふうになりますと、約三十万ないし三十五万の補充要員が要るわけでございますが、それが大体、ここのところ、一番低いときの三十五年では十七、八万程度しか補充に残らないというふうな格好になります。そうすると、農業に現に従事している方が転業しなくても、農業人口は絶対的にも減っていくという格好になる。それがさらに第二次、第三次で新規労働力でふえていくわけですから、相対的比率になりますと、第一次産業が、基準年次においては三九・六%なのが四十五年度においては比率としては二三・七%の就業構造になる、従って、二次――これはことに製造業関係でありますが、二次は、基準年次において二四・二%のものが、四十五年度には三二・二%になる、第三次では、三〇・七%なのが三七・七%になるというふうになるわけでございます。また、実際において、農家から二次、三次産業への転向は、一面農村から完全に離村する方というものと、それから農村の従来の、伝来の農家には住んでいるけれども、やはり付近に工場誘致なり新産業の開発によって、従来の農家、自分の生家から通勤する方、この通勤する方が非常にふえるであろうということでございます。  先ほど申し上げましたのは間違いでありまして、第一次就業者の減が、十カ年計画では二百四十三万人でございます。農業従業者がそれだけ絶対数において減少する、農業就業から減少する。これは農村から出ていくということではなくて、農業就業することから離れる。先ほど申し上げましたように、離村する方と農家から町の工場や商店に通う方とあって、農村人口は必ずしもそれだけ減らぬかもしれぬけれども農業就業者としてはそれだけ減るであろうということであります。
  16. 井村重雄

    井村委員 そこで、ちょっとこまかいことですが、先ほど触れました中小企業労働組合結成状況であります。近ごろは中小企業の非常にこまかい、小さな事業所工場等結成されるようでありますが、昨年度の労組の結成状況はどういうふうな状況になっておりますか、お聞きいたします。
  17. 堀秀夫

    堀政府委員 最初に、中小企業労働者組合新規結成は相当増大の傾向にあるわけでありまして、三十六年の上期の統計が出ておりますが、組合員二百人未満の場合についての集計でございますが、三十六年上期中におきまするところの新しく結成されました組合の数が千九百七十五件、組合員数は十万六百四十一名であります。これを前年の同期と比べてみますると、三十五年の上期におきまして新しく結成されました組合数は千三百七十七件、組合員数が六万五千六百八名でありましたので、これと比べてみますると、組合数におきましても、組合員数におきましても、三十六年上期におきましては前年の同期に比べまして約五割も新しい組合結成増加しておる、こういう状況でございます。   〔委員長退席藤本委員長代理着席
  18. 井村重雄

    井村委員 これは時間を要しますし、簡単に申したいのですが、この組合結成状況、その動機原因――たとえば賃金の不払い、遅配にあるのか、労働時間の問題にあるのか、あるいは上級組合指導によるのか、自発的に、自主的に結成の機運が出てくるのか、あるいは非常に感情的な反抗というふうなところから出てきたものか、いろいろこの動機原因等もあろうかと存じますから、どうか一つその組合結成状況を、詳細プリントしていただきたいと思うのであります。同時に、経営者がそれに対してどういう態度をとっておるか、あるいはロックアウトをもって対抗したような例がないかどうか、そういうふうなものを一つ出していただきたいと存じます。  次に、中小企業労働者の福祉問題について二、三お尋ねしたいのでありますが、最低賃金制度の問題でございます。これもいろいろ昨年度、三十六年を第一歩にして、三年間に二百五十万適用いたしたいというふうな御説明が昨年あったと存ずるのでありますが、これがどういうふうな状況で進んでおるか、三十六年度の実数、最低賃金適用はどういうふうになっておるか、少しお伺いしたいのであります。ことに日給制が多いのか、逐次月給制になっておるか、それから賃金がどれほど伸びておるか等について、少し事情をお聞きしたいと思います。
  19. 大島靖

    大島政府委員 最近の最低賃金制の普及状況について概略御報告申し上げますと、今御指摘のように、三年間に二百五十万の適用労働者ということで進めておりますが、昨年末で適用労働者は約百二十万人程度に上っております。現在になりますと、大体百二十三万をオーバーしておる状況であろうと思っております。  この百二十万の適用労働者の概況を産業別に見てみますと、繊維産業、機械製造、それから印刷、製本の事業、こういった業種に集中しております。こういった業種においては、たとえば繊維産業でございますと大体四、五〇%の適用率になる。一方、たとえば商業とかサービス業の方面を見てみますと、まだその適用労働者の率が一%ないし三%程度という低率でございます。すなわち産業別に見ますと、ある種の産業に非常に集中いたしておるということが言えると思います。それから最低賃金ができております地方別に申しますと、東京、静岡、愛知、広島、岡山、こういったところに非常に集中いたしております。約半数ぐらいはその地方でできておる。従って、地方的に申しましてもかなりのアンバランスがあるわけでございます。これを金額的に見ますと、ただいま御指摘の日給、月給制の問題は、必ずしもこの最賃の業種と直接のかかわりはなく、むしろ産業なり業極の実態によって変わるわけでありますが、きめ方といたしましては一日幾らというきめ方になっておりまして、この金額の点は、大体二百三、四十円から二百七、八十円というぐらいのところが一番多うございます。大体こういうふうな現状になっております。  現在の進捗状況で参りますと、大体三年間に二百五十万人の適用労働者にするという計画は順調に進むのではないかと思っておりますが、ただいま報告申し上げましたように、産業別にも地域別にもいろいろアンバランスがございますので、こういった点を今後どういうふうにして参るか、こういった今後の最賃制の運営の方針につきまして、現在中央最低賃金審議会におきまして検討を願っておる次第であります。
  20. 井村重雄

    井村委員 この最低賃金制が普及することによって、かなり中小企業経営が安定いたしまして、割合これが喜ばれておるという事実でありますが、私ども地方を回ってみますと、いろいろ地方の労働省の出先機関に人手が少なくて、希望が非常に多いけれどもなかなかこれをやれないというふうなことをよく聞くのでありますが、これはやはり、要るものならばもう少し要員をふやしてすみやかにやられて、同時に、単に量という問題でなしに、質ということも考えられて、地域あるいは業者間の差額の是正にもう少し本腰を入れて、これを是正されるように努力をしていただきたいと思うのであります。  それから次に、退職金の制度でございますが、これは現在いかような程度に適用されておりますか。それと、私はこれは大臣にお尋ねしたいのですが、政府はこの退職資金制度についてはもう少し思い切った原資を補給して、この恩典をもう少し高めてやらなければならぬじゃないかと思うのですが、どういうお考えでしょうか。
  21. 福永健司

    福永国務大臣 先刻来、幾つかの点について、こうあるようにという御所見を拝聴いたしておるのでございます。いずれもそういう点につきましては、御説のことを心して今後善処いたしたいと存じます。  ただいま御質問の最後の点につきましては、昨年ある程度の改善を加えたのでありますが、まだとても十分でないと考えます。御説のように、今後さらにそういう措置をとるように努力をしたいと思っております。
  22. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいまの大臣の御答弁に補足して、若干最近の状況を御説明申し上げます。  中小企業退職金共済制度の最近の実績は、三十六年度十月末現在におきまして従業員数が五十万八千名、事業所の数が三万八千でございます。三十六年の三月末と比べますると、事業所数で一万一千の増、事業員数で十七万七千名の増加でございます。三十六年度の月平均の加入数は、事業所数で千六百十四でございます。従業員数は二万五千三百二十八名でございまして、これを前年度の実績であるところ事業所数が千四百五十九、従業員数が一万九千名というのと比べますると、最近におきまして加入状況は非常に増大しておるわけでございまして、おかげさまで、ほぼ順調な発展を示しておるわけでございます。ただ、その内容につきまして、いろいろ関係者からの御要望もあるわけでございます。昨年の法律改正によりまして、国からするところの補助等につきましても若干の改善を行なったわけでございます。また、その結果といたしまして、先ほど申し上げましたように、加入状況が促進されたという原因にもなっておるわけでございますが、さらにこの改善につきまして、関係者からいろいろな御意見も伺っております。これらの問題につきまして、労働省関係者をもって構成するところの退職共済の審議会も設置されておりますので、これらの御意見を今後十分拝聴いたしまして、さらにこの内容の改善について検討をいたしたい考えであります。
  23. 井村重雄

    井村委員 ぜひ一つ、これは国の補助をもう少し高めるように御尽力をいただきたいと存じます。  次に、今回労働省の中に賃金部を設定されましたが、これはどういう構想で、どういう思想のもとで運営されますか。
  24. 福永健司

    福永国務大臣 御承知のように、賃金とか給与とかいうことについて、労働省のみならず、ほかの省、たとえば大蔵省等にもこの種の機関があるわけてございますが、何と申しましても、労働者の給与を中心になって考えるところ労働省でなければならぬと私は考えております。もとより労働省自体が、たとえば個々の賃金の折衝等に介入するというような意図は毛頭持っておりませんけれども、先ほどからお話もございますように、同じような労働でありながら賃金格差があるというような事情等もございますので、ぜひ賃金全体が、そういうような国民経済的な見地から見て望ましい姿になるようにいたしたい、こういうことも考えております。従って、従来労働省賃金課というものは最低賃金の普及が中心でございまして、今後もこれは大いに普及させていかなければなりませんけれども、こういう大事な問題について、一つの課だけでやっている程度ではいけない。問題の重要性にかんがみまして、どうしてもこの機構の強化をして――私は確信するのでありますが、労働省にこういう機構ができ、これが強化されるということは、究極において労働者のために大いに役立つであろう、また、賃金というものが国民経済の中でよき均衡を保つ姿になるであろう、こういうことを考えまして、そういうことのためには、従来も努力はいたしておりましたけれども、もっともっと賃金等に関する正確な資料等を整えまして、各方面にこれを提供する等の措置によって、いろいろ賃金問題についてお話しのございますようなことについての合理化をはかっていきたい、大体こういうような考えでおるわけであります。
  25. 井村重雄

    井村委員 それではもう一つ賃金問題で少しお尋ねしたいのでありますが、そういうふうに労働者の福祉のために、賃金課、賃金部というものが、いろいろ賃金体系調査研究、統計資料というものを出すために、科学的に体系づけるということの研究をやりたいということでございますが、先ほどお答えにありましたように、今日大企業中小企業との最低賃金あるいは初任給というものの格差はほとんどなくなってきた、ところが中、高年層では大きな開きがある、従って、若年労働者は相当初任給においては恵まれておるけれども中小企業を好まないで大企業の方へ吸収される。要するに、年功序列型であるというところに、魅力がある。いかに最低賃金を引き上げても、中小企業ところへはこれを吸収し得ないという一つの問題がある。また、中小企業が今日まで若年労働者の比較的低い賃金でささえられて経営をやってきたのが、これが大企業賃金形態をとればとうてい経営をし得ない。ところが、また逆の見方も立つのであります。ある一定の年令をもって家族構成の中に相当働き手のあるような人は、最低賃金の上がる率に応じて必ずしも増給を願うよりは、長く職場におりたい、下から突き上げがきて、いわゆる賃金構成が上に上がるに従って改まるというのでは、その職場におりづらいというような一面の心理もあるかと思うのであります。そういうことで、年功序列型の賃金体系をある一定年限で率を逓減するとか、あるいは場合によっては定年前にストップするというような形式をとるとか、何か賃金体系に新たな構想がございませんかどうか、お伺いしてみたいと思います。
  26. 福永健司

    福永国務大臣 現在の日本賃金体系が理想的なものであるかどうかということにつきましては、私もある程度疑問を持っております。日本と同じ程度、ないし日本より以上に工業的にも進歩しておりますような国々の事情について、私も若干研究もいたしてみ、また、現実にその国に参りまして事情等も聞いておるのでありますが、   〔藤本委員長代理退席、永山委員長代理着席〕 それぞれにこの問題については相当な悩みを持って、従って改善をしてきておりまして、日本とはずいぶん違った姿のところも多いわけでございます。従って、この種の問題は急激にというわけには参りませんけれども日本の場合も、現在の姿が理想的であるかどうかということについては、これは相当に考えていかなければならぬと思います。ただし、今御質問のございましたように、そういうことについて何か新たな構想が今あるかということでございますが、この点につきましては、私ども相当慎重に確信を持って臨まなければならぬと思いますので、賃金部もできましたら、一そうこういう点について勉強をいたしまして、確信を持ってからその種のことを世に問うようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  27. 井村重雄

    井村委員 最後に、労働時間の問題であります。これは先般社会党の委員の方からも質問がありましたが、世界全般の情勢といたしまして、逐次労働時間を短縮するという傾向にあることはいなめない事実であります。また、労働者の健康を守るため、福祉のためには労働時間を短縮しなければならぬのでありますが、これにはいろいろ重要な問題もあるから、早急な解決は望むべくもないと思うのでありますが、比較的今日まで労働時間が非常に長かった商業サービス方面、その他一部の中小企業等でも、よく一斉閉店あるいは週休制その他をやるようになっておるのであります。昨年私はこの問題で質問いたしましたときに、これを立法化する意思はないかどうかお尋ねしたところ、なるべくならば行政指導でいきたいということでありましたが、はたしてそれで適正であるかどうか。全般的に、まず労働時間の短縮という前提から考えて、これらを立法化する御意思はないかどうかをお伺いしたいと思います。
  28. 福永健司

    福永国務大臣 労働時間の短縮ということは、方向といたしまして私も望ましいと存じます。ことに、先ほどから井村先生も御指摘のように、労働力の絶対量が不足しておるというようなことを考慮いたしますと、そういうときにこそ完全雇用の達成等に向かって大いに前進しなければならぬし、また、そういうときがいいと私は考えるのであります。と申しましても、一足飛びにそういうことをすることは、日本の現実から見まして非常にあちこちに問題を投げかけることになりますので、そういうことを考慮しつつ、国情に沿った前進をしていかなければならない、こういうふうに思うわけででございます。  そこで、ただいま具体的に御指摘の一斉閉店だとかあるいは週休制等というようなことと関連して、商業部門、ことに中小商業部門等について、こういったことを法制化するかどうかということでごいざいますが、先ほどお説にもございましたように、事情がかなり区々まちまちでございますだけに、画一的に法律でぴたっとということもなかなか困難であるので、きめのこまかい行政指導がぜひ必要であろうと思うわけでございます。ただいまのところそういうことでやっておるのでありますが、そういうことだけでは足りない、法律でもきめた方がよろしいというような段階になりますれば、そういう措置もとらなければならぬかと思いますが、ただいまのところでは、先ほど申し上げましたような行政指導を強力に推進していくということで進みたいと存じております。
  29. 井村重雄

    井村委員 この問題の最後にお尋ねしたいのであります。これは昨年度も一つ申し上げた点もあるのでありますが、近時余暇利用ということが、一斉閉店あるいは週休制にからんであるのであります。それと並行的と見るかどうかは人によって違うのでありますが、非行少年が非常に多くなっておるという事実は、ある程度見のがせないと思うのであります。従って、労働時間短縮等にからんで、この余暇をいかにするかということが大きな問題でないか、これをもう少し労働省その他各省機関が寄って、組織的、系統的に指導する必要がないかどうか。単にレクリェーションのみに走るといのではなしに、これをもって教育の共通の時間を持たせるということ、そうした機関をできるだけ助成して設けてやるということが必要であろうと思う。  もう一つ重要な点は、健康管理であります。各所に保健所あるいはいろいろな健康相談所はございますけれども、日曜、祭日は大てい休みであります。ことに中小企業、商業サービス部門の零細企業労働者の健康状態は、他の大企業労働者に比して非常に悪いのであります。これは健康保険の罹病率から見ても、また、罹病実数から見ても、中小企業部面就業しておる若い人たちの有病率が非常に多いのであります。従って、こうした施設を設けるにあたりましても、健康管理、保健指導ということに、もう少し余暇を利用していくような体系一つ立てていただきたいと思うのであります。よく厚生省の年金福祉事業団等でいろいろな施設をやっておりますが、住宅も大切でありますけれども工場の採光、通風あるいは便所の改造、その他教育集会の場所等の改造にも充てないと、単に大企業の住宅とかあるいは厚生施設のみに充てるのではなくて、そういう零細部門――ことに今日東京あたりの不完全な三階建住宅等で、火災等で家族その他従業員が焼死している例があるのであります。こうした点を今後強力に指導していく、同時に、健康管理に重点を置いた余暇利用ということに組織立ててやっていただきたい、私は特にこれを希望してやまないものでありますが、御意見をお伺いしたいと思います。
  30. 福永健司

    福永国務大臣 御説の点はまことにごもっともでございまして、そういう方向へ特段の努力をしていきたいと存ずる次第でございますが、これは単に労働省のみでなくして、今もお話がありましたように、関係者がそういうことに心をそろえて対処していかなければならぬと思うわけでございます。よき労働者はよき青年であってもらいたいと思うわけでありますので、せっかくよく働いているような人が、休みのときにつまらぬことをするというようなことにならぬように持っていきたいと思います。最近そういうようなことを、私どもの手近なところあたりでも、町なら町、市なら市というものも大いに考慮するようになって参りまして、町で作っている野球場とか運動場とかいうようなものを、今お話しのようなことに優先的に使っているようなところもだいぶ出て参りました。町をあげて、市をあげてそういうような形にいくというようなこと等も望ましいわけでございます。広く関係者に呼びかけて、そういう方向にいくように一段と努力をいたしたいと存じます。
  31. 井村重雄

    井村委員 中小企業経営が健全になっていくということは、経営者の利得ばかりじゃなく、究極の目的において、労働者が非常にしあわせになるということでありまして、これについてやはり労働省、通産省、厚生省等、これは各省ばらばらでなしに、深く総合的に考えなければならぬものがありはしないか、最低賃金制の問題、退職金の問題等も、私は先ほど申し上げましたが、最後に賃金の遅配欠配とかいうふうな問題で、これに対する何らかの補完方法というふうな制度が考えられないかどうか。いわゆる系列会社にあっては、大企業とその系列下にある中小企業との間の技能者、技術者の系補的な交流、賃金の補完、保険制度の創設等もここに考えられてもいいのではないかと思うのでありますが、これに対する大臣の所見はいかがですか。
  32. 福永健司

    福永国務大臣 御説のような点について、施策の総合的な運営がなければならぬことは申すまでもございません。従って、関係各省とも、そういう点で、御説のような考え方で接触を保ちつつ参るようにいたしたいと思うわけでございます。  最後にお話しになりました、賃金について一種の保険のような制度ということでございますが、これは一つ研究してみたいと存じます。
  33. 井村重雄

    井村委員 中小企業の問題はこれで打ち切りまして、最後に、簡単に失業対策事業についてお伺いしたいと思います。これは私は昨年申し上げましたから、ことしは問題をしぼって簡単に二、三の点を申し上げてみたいと思うのであります。  現在の失業対策事業についてでありますが、これはおそらく相当前にできた緊急立法でありまして、今では、非常に非能率な、また、一見矛盾した問題と見られておるのであります。今日の失業対策事業は、だれが見てもきわめて非能率であり、国費の浪費とさえ極論されておるのであります。ことに全国の市長会あるいは町村会では、問題の処理に非常に困って、手をあげておるような状況でないかと思うのであります。今年度の予算を見ても、大体三百七十億程度の予算が組まれておりますが、これに関連した失業対策のその他の事業費、地方公共団体の負担しておるものを加えると、優に六百億以上の国費を費やしておる。はたしてそれがこの目的にうまく対処されておるかどうかというふうなことになると、非常に問題があると思うのです。ことに、この立法当時から見れば、公共事業の分量、地方自治体の仕事の分量、労働力需給状況から見て、非常に状況が変わっておるのであります。私は、必ずしもこういうふうな経費そのものを惜しむものではありませんけれども、もっと有効に、後進地域の開発あるいは産業開発等にこれが使えないものかどうかというふうに、根本的に考えなければならぬ時期がきたと思うのでありますが、大田は、この法律というものをいわゆる社会保障と見られるのか、あるいは単に就職までの臨時の就職あっせんと見られるのか、その立法の理念について一言お伺いいたしたいと思います。
  34. 福永健司

    福永国務大臣 現在の失業対策事業につきまして、いろいろの御批判があることは私ども粛々承知もいたしておりまするし、私どもも非常に頭を痛くいたしております問題でございます。そういうふうな観点からいたしまして、今年は、従来よりはある程度前進した施策をとったつもりでございます。しかし、これは不徹底であるという御批判も確かにあろうかと思うのでございます。さればこそ頭を痛くしておる、こういうことにもなるのであります。社会保障か、一時、次に就職するための配意からのことかというわけでございますが、この問題は、一言でぴしゃっと答えることはなかなかむずかしいのでございまして、私は、失業者であるという事態が永続することを望まないのでございます。失業者というものはできるだけすみやかに常用化されることが望ましい、こういうように存ずるわけであります。従って、今年は、従来と違った雇用奨励の措置、その他今までよりはかなりに前進した方策をとったつもりでございます。ただし、先ほど申し上げたように徹底はいたしておりません。その点、私もはなはだ残念に思っておるのであります。国の施策全体として、財政当局ともいろいろ折衝の結果、ようやくここまできたというのが実際なんでございますが、私は決してこれをもって足れりとしているのではございません。現にこの事業に働いている諸君の中にも、社会保障的な意味で受け取っている人も一部おりますし、また一部は、そういうのでなくて、自分たちは働きたいんだという意味において、これは社会保障というものであってもらいたくないんだという労働者諸君も相当いるのでございます。従って、私どもも、この事業の性格というものはいろいろの面から見なければならぬと思います。一口で答えられないということは、そういう意味で申し上げた次第でございます。答弁が不徹底のようでございますが、実情を最もよく御存じの井村先生において、一つ私のこの苦衷を御了承願いたいと思う次第であります。
  35. 井村重雄

    井村委員 大臣の答弁のお苦しい戸とも、私はよくお察し申し上げるのであります。別にそう私は皮肉るつもりもございませんけれども、しかし、これはもう断固として改正すべき時期にきたということだけは事実であります。これは私は申し上げますけれども、いわゆる事業主体と施行主体というものを分けて、施行主体のところに行っている者は自由就業でありますが、いずれも就労手帳を持っている者に区別はないわけであります。一般失対に就業する者も、いわゆる請負業者の施行主体のところに行く者にも手帳の区別はないはずでありますが、いかがですか。
  36. 三治重信

    三治政府委員 御説の通りであります。
  37. 井村重雄

    井村委員 そうした場合に、期末手当は、事業主体へ行った者と一般失対へ行った者と区別されておりますかいかがですか。
  38. 三治重信

    三治政府委員 盆暮れの特別措置につきましては、今の就労の安定所の配置が、一般失対、特別失対あるいは民間事業というふうに、その雇用場所を開拓してそれぞれ能力に応じて配置するというふうになっておりますので、従って、今の一般失対に就労する一般失対の適格者の手帳を持っておられる方については、一般失対だけに就労する者あるいは公共事業、特失臨就に途中で年間相当行かれる方も、地方事業主体としての特別措置の金額については大体差はない、その事業主体において、自分の所管の管轄区域の安定所に登録されている失対労務者についての措置は、一人当たり大体区別はないというふうに思っております。
  39. 井村重雄

    井村委員 私のお聞きしたいのは、いわゆる施行主体の方に行っている日雇い労務者には、国家並びに地方自治団体から出す期末手当は支給していないかということです。
  40. 三治重信

    三治政府委員 施行主体にはありません。
  41. 井村重雄

    井村委員 これはさような建前でありましょうけれども、なかなかその区分が明瞭に参っておりません。一般失対へ行っている者も、施行主体の方へ行っている者も、期末手当をとる場合には、やはり国並びに地方自治体からとっておるような状況であります。そこにはっきりと区別はできてないのです。そこに私は矛盾があると思うのです。私は、今日法改正の第一にやってもらいたいということは、社会保障的に見て、一般失対でどうしてもやらなければならない高齢者、病弱者、あるいは偶発的な不幸に見舞われたような人に対しては、やはり一般失対の方へ向けるということも社会保障という観点から必要であろうけれども、民間事業体へ就労できる者は、いわゆる就労手帳を渡す、審査をするときに規格を改めて、はっきりこれを別にして、とにかく自由契約による日雇い労務者として、これをあっせんの対象にする、まず第一段階の法改正はそこへ踏み切っていただいてけっこうだと思うのです。なぜかと申しますれば、今日生活保護五人家族の収入は、東京の一級地で一万数千円の生活保護があるのです。ところが、日雇い労務者は四百二十五円で、これを二十二日と勘定して一万円に満たない金であります。片一方、作業をやらないで国家からもらう者が一万数千円、片一方は、働いて一万円に満たない九千何百円という金をとっておる。一般失対でやる者を生活保護に入れて、別に失対作業費というものをプラスしてやれば、この人は非常にしあわせにできるのじゃないか。今の失対法では、一般失対に従事しておる者は地方自治体の特別公務員となっておる。生活保護者には一万数千円の金を国家から支払いながら、別に国家公務員でもなければ、地方公務員でもない。むしろこれを生活保護の中に吸収して、働きたいという者に働かせて、いわゆる失対作業手当というものをやって、生活保護プラス作業費というものでやればしあわせになるのじゃないか。そこに地方自治体との間の特別公務員という雇用関係、身分関係が出てこない。これが年々歳々、期末手当で赤旗を立てて弱い市役所、町村役場を取り巻いて、一時行政機能が麻痺するのです。こういう点は、私は昨年も申し上げたのでありますが、大臣もなかなか踏み切れぬでしょうけれども、やはり英断を持って構想を変えていただかなければならぬ。そうして手帳を発行するときには年令制限を付する、年令的に四十才以上の者は全部これをいわゆる施行主体の方へ行くように、いわゆる特別失対に吸収するようにする、そうしてあくまでもこれは自由企業の形にして、民間企業に移していくというところに、あなたの常用雇用の方へいくという意味が一歩前進するわけでございます。そういうふうに手帳をはっきり区分してやらないと、私は非常に問題だと思うのです。そういう点で十分お考えをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  42. 福永健司

    福永国務大臣 今度の予算を編成いたしますときにも、この失業対策関係の問題については、私ども、ずいぶん検討もし、論議もしたのでありますが、先ほども申し上げましたような次第で、前進はいたしましたものの不徹底でございます。ただいまいろいろ貴重なお説も拝聴いたしましたので、一段と研究を進めたいと存じます。
  43. 井村重雄

    井村委員 これで私の質問を終わります。
  44. 永山忠則

    ○永山委員長代理 淺沼享子君。
  45. 淺沼享子

    ○淺沼委員 私は、雇用促進事業団の運営に関する問題につきまして、若干お尋ねしたいと思います。  雇用促進事業団は、現存の雇用、失業の情勢に対処して、国の責任において雇用の一そう適切な促進をはかる目的のもとに、昨年七月より発足したものでありすが、その後の運営の状況並びに成果についてお知らせ願いたいと思います。
  46. 福永健司

    福永国務大臣 お説のように、雇用促進事業団は、大きな使命を持って事業を遂行しておるわけでございます。今御質問の、ごく最近の事情といたしましては、相当実績も上げているように私は考えておる次第でございます。詳細につきましては、事務当局からお答えいたさせます。
  47. 三治重信

    三治政府委員 雇用促進事業団が現在やっております事業は、炭鉱離職者の援護の仕事と、それから職業訓練の仕事、ことにこれは失業保険施設として、全国各都道府県に一カ所ずつの総合職業訓練所並びに指導員の養成の中央職業訓練所の仕事、そういうことをやっておるわけであります。それからさらに、移転就職者のための住宅の建設並びに貸与ということでございます。  先ほど申し上げました炭鉱離職者の援護の問題につきましては、失業保険の方でやりますと同じように、やはり炭鉱離職者のための住宅の確保、そのために雇用主に対する住宅確保奨励金、それから遠隔地に移動するための移転資金というような仕事をやっておりまして、昨年の九月ないし十一月に発足しまして、大体順調に進展しておると思っております。さらに、石炭援護関係の強化につきましては、三十七年度でさらに雇用奨励金、また、失業保険の資金を特別融資する二十億円の特別融資制度というものが新しい年度から発足することになっておりまして、現在それの準備をさせております。
  48. 淺沼享子

    ○淺沼委員 これまでの状況は大体わかったのでございますが、江車総合訓練所についてお尋ねします。  私は去る二月五日、五島委員が一緒に江東総合職業訓練所を見て参った気でありますが、職業訓練所といえば陰気な感じなところではないかと想像して行ったのでありますが、みんな明るく一生懸命に訓練を受けている姿を見まして、安心したのでございます。機械科、機械製図科、洋服科、洋裁科という各科目の訓練現場を見せていただきましたが、あいた部屋があまり目立ちましたのでお尋ねしましたところ、三十七年度からこの訓練所が改組されるので、九月採用する後期生を募集しなかった由で、聞くところによりますと、一月二十七日の、雇用促進事業団理事長から江東総合職業訓練所長あての通達により、その改組案が示されて、昭和三十七年度から、雇用労働者等の再訓練施設として発足することに内定したとのことで、失業保険の受給者や職業一訓練希望者の訓練から、雇用労働者再訓練機関として運営していく方針を示されている由でございます。変更することについて、私は、訓練生の人たちに、この訓練所の改組の問題、洋裁、洋服科の廃止について尋ねたのでございますが、皆さんさみしそうな表情をして、口々に、現状のまま続けてほしい、むしろ拡充してもらいたいと強い希望で、雇用労働者の再訓練施設になることや廃科になることは反対であると申しておりました。私は、この訓練所の卒業生が非常な喜びをもって産業界に迎えられ、りっぱにその成果を上げている様子を聞きまして、何も改組とか廃科することはない、もっと拡充すべきであると考えるのでございますが、どういう理由でそうなさるのか、内容と目的を御説明いただきたいと思います。
  49. 福永健司

    福永国務大臣 非常に繊細な感覚でこの総合訓練所を見ていただき、また、今後いかにあるべきかということで御説を述べていただいたのでございます。実は東京総合職業訓練所という非常に大きな施設を今度作るので、江東の方は、従来やっておりました仕事をこの大きな施設の方へ吸収する、そして従来の江東の訓練所は再訓練のようなことに向けるという、こういう方針にいたしておるのでございますが、ただいま御指摘のような、いわば洋裁のような関係のものは、場所的にいっても江東あたりになお存続するとか、ないしは何か適当な方法をとることが望ましいという御意見につきましては、私も何とか考えなければいかぬ、方針は方針としてより大きなものを作る、このことはこれはやるといたしまして、御説のような点を現実的に何とか特別の措置をとって解決したいというような気持で、きょうは御質問いただきましたが、前々から淺沼先生がそうしたことに御心配をしていただいております事情については私も承知いたしておりましたので、事務当局をして何とかいい方法はないかということで検討をさしておるわけでございます。   〔永山委員長代理退席、藤本委員長代理着席〕 それからの詳細につきまして、事務当局からもお答え申し上げたいと思います。
  50. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 基本的な考えにつきましては、ただいま大臣からお答え申し上げた通りでございます。一応三十七年度の予算編成の際にとりました考え方としましては、大臣の御答弁の最初の部分がそういう考えであるわけでございますが、ただ施設がせっかくあるわけでございますので、再訓練のみならず、その施設を遊ばせておかずに、何か適当な方法で実態的に従来に近い訓練ができないであろうか、そういう線で十分検討するように、こういうお考えを大臣からお示しいただいておるわけであります。先生承知のように、総合職業訓練所の経営は、直接には雇用促進事業団が行なっておるわけでございますので、そういった機関とも十分協議いたしまして、善処する方向一つ考えさせていただきたい、かように考えておる次第であります。
  51. 淺沼享子

    ○淺沼委員 昨年雇用促進事業団法の審議の際、衆参の社労委員会におきまして、その事業団の業務運営の適正化を期する目的をもって運営協議会を設置することを附帯決議としていますが、その運営協議会の発足したのはいつでございますか。協議会に協議して運営されているのでございますか、また、江東の場合、その議を経たのでございますか。
  52. 三治重信

    三治政府委員 運営協議会は、昨年たしか十一月か十二月だったと思いますが、発足いたしております。それで、その江東の問題につきましては、昨年末御説明して、事業団の方では了解をとっておるというふうに聞いております。
  53. 淺沼享子

    ○淺沼委員 運営協議会の意見を聞くずっと以前から江東の改組が進められていたことは、三十六年度後期訓練生の不採用によって明らかですが、そうであれば、附帯決議の精神に反すると思います。その経過を簡単にお答え願います。
  54. 三治重信

    三治政府委員 江東の総合職業訓練所につきます従来のいきさつにつきまして、あるいは御存じかとも思いますが、御説明いたします。  江東職業訓練所は、失業保険施設として総合訓練所を作るようにしました二十八年度からたしか二十九年度にあそこを作ったと思いますが、東京都に当時は委託して作ったわけでございます。適当な敷地、建物がないためにあそこは都の焼けビルであったのでありますが、それを改修して作って、東京都といたしましても、また労働省といたしましても、東京の総合訓練所はとりあえずこれで出発するけれども、適当な期間に一つ土地を見つけて、全国に範とするりっぱな総合訓練所を作るという了解のもとに、あそこをとりあえず作ったということで発足したわけでございます。そうして途中、八王子の方へ東京都が土地を見つけてくれまして計画して着手しましたところ、前の福祉事業団ができて、総合訓練所がこうたくさん全国にできてくると、あとやはり指導員の確保が非常に困難である、従って、やはりそういう指導員養成所としての中央職業訓練所を作る議が持ち上がったわけであります。そうしますと、八王子ではあまりにもへんぴになるということで、また新しく現在の小平に中央職業訓練所を作る。それならば、一緒に東京総合訓練所の方もやった方がいいじゃないかということになりまして、これは当時労働福祉事業団の運営協議会でございますが、そういうことから出まして、その答申で協議も経て、また、東京都と相談の上、八王子の施設は東京都の一般の職業訓練所にする、小平の方の土地を私の方へ一万数千坪いただきまして、中央訓練所と総合訓練所を同時に作って、今日まで至ったわけでございます。そうしてその場合には、東京総合職業訓練所、中央職業訓練所を合体して作っていって、これが完成する暁には江東の総合訓練所は廃止するということで、ずっと東京都と話をし、また、関係方面とも話をして建設していく、それが今度の三十七年度予算で、大体施設の方としての予算が全部入ることになったわけでございます。そのために、江東の処置は、従来ならば完全に廃止するわけでございますが、あの地区にやはり訓練施設があまりないのと、それからあの地区に再訓練施設というものがやはり将来訓練形態として必要じゃないか、そのためには、やはり再訓練施設ということで発足していこうというふうにきめたわけでございます。
  55. 淺沼享子

    ○淺沼委員 次に、江東の改組プランはいかなる理由に基づいてなされたかが問題だと思います。江東地区の場合は、中小企業も多く、昔から低所得層の最も多い地帯として、有名な人口密集地帯でございます。そうした関係から応募者も非常に多く、求人数も三・五倍に達しております。従って、この方面の業界や地域の人々が、その存続とより一そうの拡充を熱望しているのが、陳情書や調査によって明らかになっているのでございます。今度の改組案のように、サービス機関としなければならぬ理由はないと思うのでございます。そういう業界や地元の意見を調査されたことがあるのでございますか、どうですか。
  56. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 いきさつにつきましては、三治局長から先ほどお話がございました。大体東京の公共職業訓練組織の体制を見ますと、都で経営いたしておりますのが十二カ所ございます。これが各地区にあるわけでございますが、その中で、先ほど来先生からお話がございました女子を対象とするような訓練所につきましては、たとえば洋服、洋裁といったものは、牛込の職業訓練所で女子専門に扱っております。あるいはまた、タイピストとか経理事務員はお茶の水の訓練所でやっておりますというふうに、いろいろ工夫をこらしてやっておるわけでございます。そこで、こういった訓練組織なり体制につきましては、一方においては一般職業訓練所があり、一方においてはより高次の総合的なものとして総合訓練所があり、それは雇用促進事業団でやる、こういう体制になっております。かつまた、先生御存じのように、事業内においては事業内訓練をやっておるというふうに、幾つかの訓練体系がございますので、そういった各種の訓練体系を総合的に勘案して、職業訓練についてのサービスに遺憾なきを期したいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、先ほど大臣の御答弁がございまして、私も申し上げたのでございますが、たとえば、地元において、さらにあの訓練所を存続させたいという場合におきまして、それはどのような訓練体系のもとに存続させるかといったような技術的問題、その他いろいろありますので、昭和三十七年度については、予算上の問題としては一応結論が出たようなことになっておりますが、さらに三十八年度についてどう持っていくかという点につきまして、これは十分慎重に検討さしていただきたい。従来までの手続の問題よりも、問題は、先生の御意向及び地元関係者の意向などを十分伺いまして、よりよき姿に持っていくということが建設的な考え方ではなかろうかという考えのもとに、さらに検討して参りたい、かように考えております。
  57. 淺沼享子

    ○淺沼委員 江東の場合は、東京都からの委託金が切られるというのが大きな理由であると思いますが、その委託制度は、全国的に見てどういう経過になっておりますか。江東職訓のような例がほかにもありますかどうか、お伺いします。
  58. 三治重信

    三治政府委員 総合職業訓練所が発足いたしましたときには、先ほど御説明いたしましたように、都道府県に経営を委託したわけでございます。そして、五年前に雇用促進事業団ができましたので、事業団経営に切りかえた次第でございます。そのときに関係方面との約束としては、一応運営費として人件費と若干の維持管理費を出す、そのほかの運営費、いわゆる資材費その他水道、ガス、電気というようなものの大部分は都道府県がめんどうを見るというようなことで、一応委託契約を結んで経営をしていたわけでございます。それが事業団に切りかわった場合に、その都道府県が従来出していた経費についていろいろ問題が起こりまして、その場合の処置として、事業団が引き継いで、総合訓練所の建設が完成し、一応の経費の見通しがつくまで、逐次、できる限り財源を見つけて、事業団が全経営費を見るように努力する。その間当分の間、都道府県は、従来都道府県が直接出していた分を、今度は事業団への委託費として出してほしいということで、委託契約として今日までなっておるわけでございます。従って、現在のところ、総合職業訓練所が運営されている、各都道府県全部委託費が出ておりますが、今年におきまして、定員の約一千七百名について転職訓練をやる分につきまして、また先年、事業団の石炭特別対策として炭鉱の離職者に対する転職訓練、こういう部面の、いわゆる転職訓練として新しくやる分につきましては、都道府県が委託を受けないで、全額国がその経費を見るようにしております。また、一面長期訓練、いわゆる専門的な訓練として二年生訓練を一昨年から始めました。この分につきましても、都道府県の委託費を受けないで、事業団独自で経営する。従って、当初は全面的に、人件費以外の運営費を都道府県に依頼していたのでありますが、逐次そういうふうな格好で委託費を減少させてきている。この点につきましては、地方によりまして、都道府県から強い希望がありまして、そういう委託費を使うくらいなら自分の手で訓練所を経営したい。また、事業団は事業団で、全額自分の責任で運営費も見て、経営をしたいという希望が強くありました。それから自治省自身も、地方財政の健全化からいってもそういうことが望ましいということで、それを強く希望されておりますので、逐次、そういう訓練内容の欠陥並びにその財源的な措置も、関係方面と折衝して、運営費も全額取るような方向でやっていく。しかし、いずれにいたしましても相当な金額になりますので、これは一年ではできません、ここ数年かかってそういうふうに切りかえていく予定で、せっかく努力中であります。
  59. 淺沼享子

    ○淺沼委員 この委託金が打ち切られる場合、あるいは縮小される場合、委託金が出ないからといって事業主からの金を目当てとしたり、授業料を徴収したりすることは、総合訓練所の公共性を無視する結果を招くもとであり、委託能力のある大企業のサービス機関になるおそれが多分にあります。私は、雇用事業団法の審議に当たって、この事業の運営費用に相当な金額を一般会計より支出することを目途として、その出資金や交付金を増額するよう努めるという附帯決議を生かすことが必要であると思います。今度の予算でそういう努力をされましたかどうか、現在の委託金の問題についてどんな方針をお持ちでございますか。
  60. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 有料、無料の問題が今関連して出て参ったのでありますが、こういうことであろうと存じます。つまり新規学校卒業生の基礎訓練をやる、あるいは失業状態にある労働者の基礎訓練をやる、あるいは失業者の配置転換のための訓練をやるという場合には、これはもちろん無料を原則とする現在の訓練方式でやっておるわけでございます。先生指摘のお金を取るという問題は、おそらく再訓練を行なう、つまり、一たん事業場に雇用関係が成立して現に働いておる労働者が、よりよき技術を身につけたいという意味でさらに訓練をするという場合に、それは特定事業場に所属しておる労働者に対してサービスをするということになりますので、失業者に対する訓練、あるいは新規学校卒業生のようにまだ就職していない者に対する訓練と趣が若干違いますので、そういった再訓練についてどうするかという問題があるわけでございます。ただ、御指摘の江東の訓練所において再訓練をどのように行なうかという点については、まだ具体的な案が決定をいたしておりません。これは今後における検討問題でございます。しかし、それを進めるということになれば、先生指摘のような、御希望のような形が実現しないということになるわけでございますので、ただいまのところ一つそういった問題、まだ最終的に決定いたしておりませんので、いろいろな問題を含めまして至急検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  61. 淺沼享子

    ○淺沼委員 次に、都内小平の総合職業訓練所についてでございますが、これは江東を廃止する目的で昨年末発足したそうですが、現在の訓練内容について簡単な御説明をお願いいたします。
  62. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 小平に設置されます東京総合訓練所は、本年度施設費一億五千万円ほどをさらに追加計上いたしまして、三十七年度で完成を見たいと考えております。ここで行ないます職種につきましては、ずいぶんたくさんございますが、例を拾ってみますと、機械工、板金工、溶接工、電工、電気機械修理工等、現在種目として確定しておりますのは九職種ございます。さしあたりの定員といたしましては二百二十五名の者を訓練しよう、こういうことにいたしておる次第でございます。
  63. 淺沼享子

    ○淺沼委員 内容につきましてはわかったのでございますが、小平の場合、江東と違って車町訓練のみ行なっており、その期間は三年であること、実習負担金を徴収していること、山里的に東京では、片寄っているということ、失業保険法第二十条の三による失業保険給付日数の延長措置が受けられないこと等の理由で未亡人や失業者、ほんとうに希望する人々が訓練を受けられないことになるのが事実ではないかと思います。それから江東の場合、改組によれば、洋服、洋裁科はいずれも廃科になり、小平の場合も全然その科目がなく、総合訓練所から洋服、洋裁科目は姿を消し、女性を締め出す結果になってしまいます。今回の改組の目的は、国の方針としての生産の近代化に該当する職業訓練を重要視するということで、洋服、洋裁の廃科の方針がとられたと思うのでございますが、婦人や中高年層のように、必ずしも近代産業職業訓練に適応しない人々もおります。私は、その人たちに対する職業訓練、転職訓練も重要視されねばならないと思います。洋服、洋裁の訓練は、特に女性に対する職業訓練、転職訓練として重要な分野を占めております。またその役割も果たしてきたところでありまして、雇用促進事業団がこれを取りやめる理由は見当たりません。特に最近の新聞によりましても、大都市においては、婦人子供服の仕立てや、ミシン工を求めている倍率は十人に一人と、その求人難を伝えております。都道府県や洋裁学校等、洋裁、洋服の訓練施設があるからという理由で雇用促進事業団がその分野を縮小することは、その運営上間違いであり、むしろ拡充と専門訓練を行なうべきであると思いますが、労働省婦人少年局としては、婦人職業訓練についてどのような方針をお持ちでいらっしゃいますか。
  64. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御質問の前半の点につきまして、私から答えさせていただきます。東京の総合訓練所は、二カ年の専門の訓練ではないかという御指摘でございます。これは御指摘通りでございます。つまり訓練所の程度と申しますか、これを考えました場合に、半年のものもございますれば、一年のものもある、しかし、より充実した課程を訓練するために二年の訓練という訓練形態もあって差しつかえない、いや、むしろ必要なわけでございまして、それゆえに東京総合訓練所は、二年という専門訓練をやるということにしておるわけであります。しかし一方、一年という短期訓練も必要でございますので、他の東京の場合を申し上げますと、十二カ所設置されております一般の公共職業訓練所で、そういった短期の訓練をやっておるわけでございます。たまたま江東職業訓練所の廃止をめぐりまして、これならば女性の専門職種であるわけでありますが、洋服と洋裁、それぞれ五十名、五十名で百名でございますが、そのことをもって直ちに女性の職業訓練について意を用いないというようなことではございませんので、むしろ私どもといたしましては、お茶の水訓練所のようにタイピストとか経理事務もあれば、牛込の訓練所のように洋裁、和裁、洋服いろいろあるというように、一方においてはそういった女子に適する職業訓練を専門化し、高度な訓練所を作るというようなことも必要であろうかと考えておるわけであります。たまたま江東の問題につきましては、先ほど来大臣からも御答弁申し上げ、私も申し上げておるような次第であります。そういった点で御了解いただきたいと思います。
  65. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 先ほどから先生に、いろいろ婦人職業対策につきまして御心配いただきまして、感謝申し上げます。婦人職業訓練につきましては、先生が御心配いただきましたように、いろいろな意味から大へん大事な意味を持っておると思うのでございます。女性の職業につきましては、比較的年令の高い人が、なかなか就職がしにくいわけでございますし、一応家庭に入りましたような人は、特に就職がしにくいわけでございますし、このような人たちは、技術がないということによってやはり就職の機会を得ることが困難でございますので、婦人に対して、就職の機会を結びつけるという意味におきましても、職業訓練の施設が大事な意味を持ってくると思うのでございます。先ほどからの再訓練の問題につきましては、婦人職業の地位の向上その他の意味もございますが、むしろその前の、就職しやすいために技術を補導するという意味で婦人職業訓練を考えていくということは、大へんに私は大事なことではないかと思っております。このような意味におきまして、特に先ほどからのお話の裁縫のようなことは、婦人家庭的な家事の仕事の延長でございまして、もともと婦人に対しては適職であると思うのでございます。また一方から申し上げますと、先生が御指摘下さいましたように、大規模企業よりも、むしろこういう仕事につきまして中小企業の方で人を求めておる機会も大きいのでございますので、婦人就職の機会を楽にするという意味におきましても、私は、裁縫のような仕事については職業訓練を設けておくということは、婦人職業対策の上から大事なことではないかと思っております。婦人少年局におきましては、そういう考え方に立ちまして、婦人が家事的な仕事に適しているという考え方から、家事サービスの職業補導施設を特に設けまして、就職のしにくい未亡人などに、就職のできやすい機会を得ていただくという考え方で運営をいたして参っておりまして、かなりな実績を上げているのでございますが、なお私どもはそういう考え方に立ちまして、婦人職業訓練――就職しやすいために、また、今日婦人に求めている職場というものがいろいろございますので、婦人に適した職を選びまして、なお婦人少年問題審議会の先生方と御相談いたしまして、婦人に対して適職の職業訓練に導くための方策をどうしたらよいかというようなことについて、御意見を承りながら、職業訓練局と御相談して進めさせていただきたいと思っております。
  66. 淺沼享子

    ○淺沼委員 事業団は各県一カ所ずつの総合訓練所を置くという方針のようですが、東京の場合、その人口の現状から見ましても、数カ所あるのが当然ではないでしょうか。北海道の場合四カ所に拡充されておりますし、江東の改組は全く時代の要求に逆行するものであり、技術労働者不足している現在、社会の要求にこたえる道ではないと思うのでございます。私は職業訓練の拡充強化が要求されている今日、これまでの訓練所を廃して全く異なった姿にすることは、この要求に対する発展的な方向ではないと思います。サービス機関が必要ならばほかの方法もあると思いますが、その点どのようにお考えでいらっしゃいますか。
  67. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 訓練所というような施設の設置につきましては、当該地域におきますところの技能工の需要等を十分考えなければならないことは当然でございます。また一方におきましては、利用する訓練生の交通の便否等もいろいろ考慮に入るわけでございます。北海道についての例示がございましたけれども、北海道は、総合訓練所四カ所以外に一般訓練所が約十五ございますが、これは御承知のような非常に広い地域でございますので、個所数をある程度多くしませんと訓練生の利用に不便である、こういう点から個所数も多くなっておるわけでございます。一方、東京都の場合は、北海道とは全く比較にならぬほど交通が便利でございますので、個所数は少なくても職種その他によってその点はカバーする。具体的に申しますと、北海道では訓練生の定数が約千七百でございますが、東京都の方は、個所数は少ないけれども、職種の数も定員もはるかに多うございまして、定員は二千五百というふうに上回っておるような次第であります。そういった点、いろいろな要素を考慮しなければなりませんが、ただ考え方といたしましては、先生指摘の点、非常に私ども示唆に富むものと拝聴いたしましたので、今後におきましては十分そういった点も考慮いたしまして、検討いたしたいと存じます。
  68. 福永健司

    福永国務大臣 いろいろ淺沼先生からの御意見がございまして、私も終始拝聴いたしておるわけでございますが、何らかの形で御趣旨に沿うように、せいぜい努力をいたします。
  69. 淺沼享子

    ○淺沼委員 これまでの御答弁をお伺いいたしまして、労働省職業訓練について重要視されていることはよくわかりました。私は、ほんとうに訓練が必要な転職者や未亡人の期待に沿う職業訓練行政を強力に推進していただくことを要望し、江東の場合も、その観点から再検討していただいて、ぜひ訓練希望者や地元の人々の要望にこたえていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  70. 五島虎雄

    ○五島委員 関連して伺いたいのでありますが、淺沼委員の質問に対して、労働大臣から、何らかの方法において検討すると言われたことについては、私たちも、淺沼委員はある点満足されたと思うのです。しかし、その具体的な方法を村上局長から説明されたわけですけれども、村上局長は、労働大臣の方針について、基本的にはその通りにやるけれども、昭和三十七年度の予算ではもうおしまいだ、そこで昭和三十八年から何らか具体的に検討したい、こういうようなことですが、淺沼委員と一緒に私も江東職業訓練所を見学させていただいたわけですけれども、去年の四月に入所した人がことしの三月修了して、そうして一〇〇%以上の就職率でありますので、淺沼委員も一部触れられましたように、非常に希望に輝いて訓練を受けておられるわけです。ところが、さいぜん淺沼委員も言われましたように、部屋はあいておる、それはなぜか、後期の希望者を採用していないからだ。そうすると、三月で卒業するということで、三十八年から具体的にというようなことになるならば、この一年間をどういうように経過されるのか。そこで、その一年間は予算はつけられてないけれども、そういうような地域的な状況も勘案し、それからまた、少年婦人局長が申されましたように、婦人の職場を圧縮してはならない、そういうような特殊の条件もあるし、江東職業訓練所の地域的な状態も勘案して、何らかの対策をとるということの具体的な方針を、ここで明らかに聞くということはなかなかむずかしいでしょうけれども、しからば、四月になったら何らかの方法でこの希望者を募集されるのか。募集しないでそのままいってしまうと、指導職員はそのまま数名の方々が遊んでおらなければならぬ、こういうようなことになりかねない。そこで、もう少しこういうことを明らかにしておく必要があるのではなかろうかと私は思うのです。  それからまた、小平の総合訓練所が、大きな施設を持って新しくでき、一億数千万円の施設もとって、そうして二百五十名の訓練をやる、こういうようなことですけれども、これは長期の二年制の訓練であって、失業保険者はそこには入所はできないのでしょう。それからまた、失業保険を受けている人たちは、総訓の方には入所できないと思うのです。そうすると、江東職業訓練所の方に現在の施設を持つことによって、失業者は救われるのではないかと思うのです。そういうようなことがありますから、淺沼委員の質問に対して少し付加してこれを明らかにして、冒頭に淺沼委員が言われましたように、これを継続してもらうことが望ましいのだ、あるいはこれをより発展せしめることが望ましいのだという訓練生の気持等々から察するのに、われわれは、やはり女の職場というものをできるだけ開放してやって、そうしてできるだけ職業の転換等々、広範囲に考慮することが公益性を持つのではないかと思いますが、この点についてもう少々明らかにしておいてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
  71. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 具体的内容を申し上げたいのでございますが、先ほど申し上げましたように、江東につきましては街訓練をどうするか、今の形で延長するかどうかという問題がございます。しかも、予算的に三十七年度ははなはだ問題がありまして、暫定でやるとしてもどうするかといういろいろの問題があるわけでございます。私も約二週間前にその話を伺いまして、至急検討に着手したわけでございますが、はなはだ申しわけないことでございますけれども、私の個人的な理由によりまして、前後十日ばかり東京を留守にいたしまして、その検討がややおくれておるような次第でございます。この点まことに申しわけないことでございますが、しかし、早急に結論を出したい。その結論を出す方向は、すでに大臣から御答弁いただいておる通りでありますから、一つこの点お許しを願いたいと思います。
  72. 五島虎雄

    ○五島委員 村上局長の今の答弁は、御不幸があったそうで、私よく理解ができます。それで、できるだけすみやかに淺沼委員の質問の内容を尊重されて、堅実にこれが伸びるように、そうしてできるならばそれがもっと拡大されるように願いたい。私は江東職業訓練所を見たのですけれども、裏に五百坪以上のあき地があります。これは東京都の敷地だそうです。そういうようなことで、東京都とよく話し合うならば、もっともっとあそこは活用できるのじゃないかというように考えてきました。それから三治局長が説明された江東を再訓練の訓練所にするというようなことで、その条件が、東京都と話をし合って小平に敷地をあれするから、交換的に洋裁や洋服も廃科しなければならない。そうしてあそこを再訓練の訓練所にするのだ、こういうことですけれども三治局長の政治的な、技術的な、そうして東京小平職業訓練所を総訓に拡大しようという気持はわかります。しかし、婦人の職場に考慮をされていないのじゃないか。廃科したり組織を改変しようというようなことについては、雇用促進事業団の中で協議会があるわけです。十二月にこれが発足されて、一月二十六日に協議会が行なわれて、翌日は雇用促進事業団の団長の方から江東職業訓練所の方に廃科するようにしたのだからと、たった一日間のうちに通達をやった。ところが、その協議会の委員である総評の事務局長の岩井さんは、二十六日に出席しておったけれども、その話は何も出なかった、こういうようなことである。そうすると、労働省の方針通りに、協議会に何も議題を出さないで、了解をされないで、方針通りにやらされているのじゃないか。協議会は何をするところか、こういうようなことを考えます。私はそれを明らかにせよとかなんとか言うのじゃございませんよ。従って、まあこれを残し、あるいは拡大する、そのために訓練局長も努力すると習われるから、その誠意――村上局長ははなはだ誠意の人だと私は思う。ですから、私はその誠意を尊重したい。おまけに労働大臣の基本的な考え方もある。ところが、何か職業訓練の予算やら方針を見ますと、オートメーション化に関するところの近代生産事業に対するところ職業訓練に重点を注いでおって、何か弱い立場における、あるいはそういうような高度の訓練を受け得ない国民に対するところの考慮が非常に少ないのじゃないかというように考えておる。昭和三十四年に発表されたところ職業訓練長期基本計画、これを見ましても、再訓練、事業内職業訓練あるいはその高度な職業訓練というようなことで、仕事を持たないあるいは失業者でなかなか再雇用ができないというような人、あるいは高度の訓練を受け得ない国民がたくさんいる。こういうところにやはり幾%かのウエートをもって配意する必要があるだろう。従って、村上局長が言われましたように、東京一般職業訓練所には牛込の女性の洋裁部とか洋服部とかいうのがある。大臣が言われましたように、東京都は全国の十分の一以上の人口を擁するところです。江東から牛込まで通うわけにはいきません。そういうことがあるならば、石炭合理化対策のように失業者に交通費を出す、あるいは訓練費等をも考慮しなければならないというような問題が出てくるのではないかと思う。そうする現在の職業訓練の方針が十カ年計画で行なわれているわけですけれども、その生産、再生産の方向に重点を注ぐということ、それから北海道のように広範囲にわたっているところは、地域が広大ですから、四カ所作られても五カ所作られても異議はございません。私たちは、職業訓練の施設そのものが全国的に少ないと思う。そしてまた、職業訓練の訓練所に収容する訓練生も、はなはだ少ないと思っている。この十カ年間で失業者あるいは近代化に即した訓練が行き届くだろうかどうだろうかということが考えられるわけです。われわれ社会党は、もっともっと施設に重点をかけて、費用もうんと出して、その職業訓練に万全を期せなければならないと思う。これは完全雇用達成の大きな一手段ですから、私はそう考える。従いまして、淺沼委員の質問されたことは江東訓練所の廃科の問題ですけれども、これをゆるがせにしておいたら、将来は女の洋裁あるいは洋服を問わず、女の職業訓練というようなものは、全国的になくなるのではないかというふうに考える。従って、私は頂門の一針をここに置いて言っておきますから、今後この点についても大きなウエートをもって考慮していただきたい、こう思うわけです。決してその職業内の再訓練とかあるいは高度の再訓練とか、それから長期の訓練とか、そういうような訓練に反対するものではありません。もっともっと徹底的にやらなければならぬと思います。しかし、それには忘れるものがあるから、さいぜん申しましたように、局長の答弁を尊重し、労働大臣の基本的な考え方を尊重して、私たちは期待しております。従って、四月一日からは何らかの姿で江東にも置ける、こういうように思います。
  73. 藤本捨助

    藤本委員長代理 河野君。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 私は、労働の県本政策について若干の質問を行ないたいわけでございますが、本論に入るに際しまして、一応労働大臣が示されました所信表明の中の基本方針について、あらためて御所見を承っておきたいと考えます。  御承知のように、この第四十回国会の開会にあたって、福永労働大臣は、その所信表明の中で、完全雇用の達成と労働条件向上という近代国家における労働政策の基本的目標を達成するため、積極的施策を展開していきたい、それについては、第一には、労働力の流動化と技能労働者確保を中心とした積極的雇用対策の推進、第二には、労働条件向上あるいは労働条件格差是正あるいは労働者福祉の増進、第三点といたしましては、労使関係近代化、この点につきましては、労使双方に対しまして、労使間におけるルールの確立のために努力をしてほしい、こういう意味の要望を強く行なって参られたわけでございます。もちろん政党政治でございますし、責任政治でございますから、日本労働問題に対します最高の責任者は労働大臣である。従って、日本のもろもろの労働行政というものは、すべて日本労働行政の最高責任者であるべき労働大臣の方針に沿う体制が打ち立てられていかなければならぬということは、否定することのできない事実であろうかと考えております。そこで論議を発展させていきます必要上、一応今私が御指摘を申し上げました福永労働大臣労働政策に対します基本方針につきまして、若干御説明を願っておきたいと考えます。
  75. 福永健司

    福永国務大臣 過般当委員会におきまして私の考えておりますことの大要を申し上げた次第でございまして、その幾つかの点について、ただいま具体的に摘出されてお話があったのでございます。それらの点は、いずれも私においていろいろ考えております施策の中でも基本的なものとして今後推進して参りたい、こういうように考えておる次第でございます。ただいま御質問いただきました御趣旨は、かなり広い意味においての表現のようでございましたが、あといろいろ具体的に御指摘を願いつつ、お答えを申し上げたいと存じます。   〔藤木委員長代理退席、委員長着席〕
  76. 河野正

    ○河野(正)委員 先般の当委員会におきます所信表明で御表明いただいた基本方針でございますか、それらに対して御確認願うことは当然のことであろうと考えております。特に私がきょう御指摘を申し上げたいと思います点は、所信表明の冒頭に強調されております完全雇用の達成という問題でございまして、このことは、とりもなおさず失業者を出さぬという一語に尽きると思います。ところが、これは何も私ども委員会だけで取り上げるべき筋合いのものでもございませんし、すでにそれぞれ各委員会においても論議されておるようでございますけれども、いわゆる臨時行政調査会におきます佐藤会長の発言問題、この問題も、少なくとも日本労働行政の最高責任者が労働大臣であるということであるといたしますならば、日本のすべての労働行政の問題は、そういう労働大臣の基本方針に沿うということが政党政治の建前であるし、責任政治の建前であろうというように考えるわけでございます。かつて吉田総理の当時、福永労働大臣が吉田学校の優等生というわけではございませんが、吉田総理が天引き首切りをやった。そして非常に大きな問題を提起されたことは御承知通りでございます。それであるからということで取り上げたわけではございませんけれども、たまたま佐藤会長の発言問題が、それぞれの委員会でも論議の焦点になっておる。しかも、先ほど私が指摘申し上げましたように、労働大臣は、完全雇用達成のために今最大の努力を傾注していきたいという方針等もございます。そういう方針から言いますと、こういう発言はまことに不謹慎な発言であろうかとも考えられますし、なお私が問題といたしたいと思います点は、もし臨時行政調査会の中で人員整理というものが認められぬということであるならば、即刻行政調査会の委員を辞任したい、こういう発言というものは、私はきわめて重要だというように考えております。いろいろ個人的な御意見はございましょう。ございましょうけれども、政府の方針と全く正反対な方針を述べ、しかも、その意見が取り上げられなければ委員を辞任したいというようなことになりますと、私は、何のために政府が臨時行政調査会を設置したのか、その意義は全く消失されるというようにも考えるわけです。そこで、これは他の委員会と関連する問題でもございますけれども、事は私ども委員会におきますところ労働基本政策と最も関係の深い点でもございますので、この点に対しまする御所見を一つ承っておきたいと考えます。
  77. 福永健司

    福永国務大臣 いわゆる佐藤発言につきましては、私、直接聞いたわけでもないしいたしますので、これに対する批判というものは慎まなければならないと思うのであります。新聞等にいろいろ伝わっておりますところによって判断いたしましても、簡単に考えると、どうもわれわれの考えているところと少し違うような気がいたしますが、こういうことは十分聞いてみないと意味を取り違えること等もございますので、直ちにあの発言をされたことによって――今河野さんおっしゃるように、根本的に労働大臣の考え等とも違う、従って、この種のものにこういう人が委員になることがどうこうというところまで考え方を及ぼしていくことも、にわかにそういうこともいかがかと思うわけでございます。私自体の所管において委嘱しておりまする委員の方等でございましたら、さっそく本人に直接いろいろな話を聞いてということもございますが、さらに真相をきわめたいとは存じますけれども、直接に批判することにつきましては、今しばし私差し控えたい。御了承願います。
  78. 河野正

    ○河野(正)委員 もちろん直接の所管でございません。しかしながら、国の基本的な労働対策につきましては労働大臣が最高の責任者でもございますので、私はこういう問題につきましては、特に重大な関心を持っていただかぬとならぬということをあえてここで御指摘を申し上げておきたいと考えます。  そこで、そういう案件と関連をして、もう一つ取り上げてみたい点がございます。本日は防衛政務次官御出席のようでございますが、防衛庁設置法の改正に基づきまして、調達庁職員の身分の変更が行なわれようといたしております。もちろんこの防衛庁設置法にいたしましても、私が先ほど労働大臣に御所見をお伺いいたしました基本的な事項と矛盾するものが何点かございます。そこで私は、これは労働大臣に聞いていただきたいし、さらには防衛庁にも所見を承っていただいて、少なくとも労働行政に対しまする最高の方針というものが責任政治――政党政治でございます以上は責任政治でございますので、労働大臣の方針に従っていただかなければならぬということでもございますので、防衛庁設置法の改正に基づいてどういう点が問題点になるとお考えになっておるのか、これは一つ防衛庁の政務次官の方に御見解を承っておきたいと思います。
  79. 笹本一雄

    ○笹本政府委員 今回の防衛庁の建設本部と調達庁を統合して防衛施設庁、この設置でございますが、これは長年問題になっておったことでありまして、この機会に調達庁と防衛庁の建設本部を統合して、そしてそれを防衛施設庁というふうに改正の法案をお願いしておるわけであります。労働大臣の今お話しになられたうちの人員整理とかいう問題について、どう考えておるかという御質問と思いますが、これは両方を統合しますと、ここに総務とか人事とかあるいは会計とかという管理系統の分野が一緒になりますので、それを他の方に転換しようというので、整理の対象ということは目的でありません。仕事は一緒になりますけれども、これを防衛庁の建設の関係に吸収し、またはいろいろ仕事が量において少なくなっているものがありますから、これに対しては、今までの調達庁の様子を見て参りますと、年々自然にやめていく人と、それから要するに転換する人たちが、数年の間の統計を見ますと、年間七十五名くらいあるのです。そこで、今法案のうちに出ております二百名くらいを三年の間に転換したい。自然にやめる八と総合していったならば、三十八年、九年、四十年の間にそのくらいの人が吸収されていくのじゃないか、こういうふうな建前をとっております。この法案を作るについて、人員を整理するとかいうことは、この法案を提案する上において一つも考えておりません。以上のような事情で、今度のこの法案の御審議をお願いしたわけであります。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 防衛庁は防衛庁なりの御答弁があったわけでございますが、しかしながら、この設置法が改正された暁においてどういう事態が起こってくるかということが、きわめて重大な問題でございます。その中の一つには、今問題になっております身分を、現行の一般職より特別職に切りかえる、そのために労働組合の運動というものが完全に抑圧される。そういたしますると、一方の労働大臣の方は、労使関係近代化をはかりたい、こういうことを三本の柱の一つとして取り上げて強調されておる。それからさらには、機構改革に伴って人員整理が起こらないということでございましょうけれども、実際統合されますと、大体千名程度の首切りが行なわれるという結果が生まれてくる。どういうことかと申しますと、たとえばすでに防衛庁では五十五才以上の定年制というものを施行されておる。そこで調達庁から防衛庁に入って参りますと、自然にやめなければならぬ、そういう魔術というものがこの法案の陰に隠されておる。そういう点を見のがしてはならぬ。ただ表面は、なるほど自然退職というものが一年間七十五名あるから、三年間で二百名くらい消化するじゃないかということでございますけれども、実際現実に起こってくる現象というものは、今私が申し上げましたように、一般職から特別職に切りかえられる、そのために労働組合運動というものが完全に抑圧される、あるいは定年制その他によって、いよいよ防衛庁の方に入りますと、公然処分しなければならぬ、そういう問題があるわけなんです。私どもはそういう問題を心配して、今申し上げたことを取り上げておるわけです。ですから、非常に表面的なお考えだけでこの問題を処理いたしますと、これはさっきも私が取り上げました臨時行政調査会の佐藤会長発言と笹本さんのおっしゃることは、全く同じことになってしまう。そうなると、労働大臣よくお聞きのことと思いますけれども、実際に聞いたことがないから、適当であるとか適当でないとかいうような批判は避けたいということでございますが、今あなたのおっしゃったことは、労働大臣は聞いておられるわけです。それに対しては御批判を願わなければならぬということになるわけでございますので、そういう私が御指摘を申し上げました実態等も十分お聞きを願って、どういうふうにお考えになるか、一つ御所見を承りたい。
  81. 笹本一雄

    ○笹本政府委員 調達庁の方と自衛隊――防衛庁のやつは、二十九年かに防衛庁の特別職というものがきまっておりまして、その方へ入ってくる方は、やはり自衛隊員と同じ仕事になりますから特別職員になりますが、自衛隊の仕事を一つもしないような、そうして駐留軍その他のことをやっておられる方は、一般職員としまして、この人は従前のように組合運動ももちろんできる。それから今お話しの自衛官の方は定年がございますが、事務系統の方には定年がございません。でありますから、今河野さんのおっしゃった五十五になれば定年になるというお話でございますが、事務官の方にはそれはない。自衛官の方には出てくるわけであります。それからあとへ残った自衛隊の方の仕事をしない人は、従前と同じ組合運動もできる、こういうことになっております。
  82. 河野正

    ○河野(正)委員 そうすると、それでは一つ率直にお聞きしたいのですが、防衛施設庁の職員になっても一般職から特別職に切りかえられるということはないというふうに理解してよろしいですか。
  83. 笹本一雄

    ○笹本政府委員 先ほど申し上げましたように、自衛隊の仕事をする者は特別職になるわけであります。自衛隊の仕事をしない、駐留軍の仕事とか、そういうものをやっておる者は、これは従前通り、一般職の職員でございますから、さいぜん申し上げましたように、組合運動もできるということであります。
  84. 河野正

    ○河野(正)委員 そうしますと、実際には今調達業務があるわけですね。それですから、別に防衛施設庁が設置されて、調達庁から防衛施設庁に移管されても、調達業務というものは依然として残っていくわけですね。そうしますと、実質的には調達庁の職員というものは、従前の仕事があるわけですから、そこで従前の仕事をするということで、全員一般職であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  85. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 ちょっと政務次官の御答弁を補足して申し上げます。調達庁の職員が今度の防衛施設庁の職員になるわけでございますが、機構の立て方といたしまして、防衛施設庁の本庁を総務部、施設部、建設部、労務部、四つに分けておるわけであります。この総務部、施設部、建設部の方は、いずれも自衛隊仕事、それから駐留米軍等に関する今までの仕事を一緒にやるわけでございます。労務部の方は、今までと同じように、米軍に対する労務の提供等の仕事をやるわけでございまして、労務部の系統の職員は、自衛隊に関する仕事は全然ないわけであります。そこで、労務部の系統の職員百二十名、調停官というのでございますが、これと、それから地方調達不動産審議会、中央調達不動産審議会、被害者給付金審査会というものがございますが、この委員の方々、この方々は自衛隊の仕事に全然関係ありませんから今まで通り一般職として、それ以外の者は特別職になる、こういうわけでございます。
  86. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで非常に言葉のごまかしがあったと思うのです。私どもが聞いておりますと、調達業務というものが残っておるので調達業務をやるのだ。自衛隊の仕事をやるのでなくて、調達業務をやる者については一般職だ、こうおっしゃる。ところが、今の官房長の言葉を聞いておりますと、大部分が自衛隊の仕事をやる。今調達庁の職員がどのくらいおるかわかりませんが、百名か二百名が労務を担当する。それだけが結局一般職だということになりますと、調達庁から移管されます職員の大部分というものは特別職なのだ、こう私が指摘してきたことは一向誤りでない。もちろんさっきの話を聞いておると、調達業務をやっておる者については一般職だ、自衛隊の方はどうかということになりますと――何も今調達業務が大幅に削減されたから統合するわけではない。これは今突然調達業務というものが縮小される、それだから統合するわけではないのですね。これはさっき政務次官が、業務が漸減しておるので統合したいという方針を固めておったというふうな御指摘があったと思うのですよ。そこで急激に減ったわけではないのですね。ですから、極端に言いますと、今までの調達業務がそのままそっくり残って防衛庁に移管される、こういうふうになると思うのです。そうしますと、今度移管されるであろう。員の大部分というものが、一般職でなければならぬというふうに私ども理解するわけですけれども、今官房長の話を聞きますと、その中のちょっぴりが一般職であって、大部分が特別職だということになりますと、私が冒頭に指摘したこの組合運動の抑圧ということは、私は一向言葉ははずれていないと思うのです。その点、いかがですか。
  87. 笹本一雄

    ○笹本政府委員 私がさいぜん申し上げましたのは、自衛隊に関係する仕事に少しも関係のない純然たる調達業務といいますか、駐留軍の労務関係に属する者は一般職になる。でありますから、その中で、自衛隊の建設部も一緒になりますが、そういうふうに仕事がこっちに関係してやる人は、これはやはり特別職になる。ですから、私の申し上げたのは、自衛隊の仕事に一つ関係のない労協関係その他の人たちは一般職になる、こっちの関係の仕事を少しする人は特別職になることになる、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  88. 河野正

    ○河野(正)委員 そこでわかりやすく言いますと、調達業務というものは残っておるわけですから、今の職員の大部分の人が一般職であるということならわかるのです。ここで調達業務が一挙に縮小されたということでございますれば、これは別問題です。しかしながら、別に調達業務が一挙に減少されたわけではないのですから、極端に言いますと、今まで通りの調達業務を背負ったままこれを防衛庁に移管されるわけですね。ですから、調達庁の職員の大部分が一般職であって、一部の者が、今度の合理化によって防衛庁の仕事をしなければならぬというような、その人が特別職なら、これは話は若干わかります。ところが、結果的には逆なんですね。一部が一般職で、大部分が特別職だ、こういうことになりますと、私はさっき指摘したように、どうも労働大臣が御指摘されておりまする労使関係近代化、民主的なルールの確立、そういう意味から見て参りましても、これは労働大臣の基本方針に反するのではないかというふうに考えるわけです。その点は一体どうでしょうか。
  89. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 仕事の量から申しますると、いろいろあろうと思います。ただ、今までとっております。考え方といたしましては、自衛隊の業務を直接支援する者は、つまり自衛隊員として厳正な規律と強固な団結のもとに職務を遂行するような体制にいたしませんければ、国民の負託にこたえ得ないのではないかというのが、私どもの従前から持つ考え方でございます。今回調達庁の職員の方と自衛隊の建設関係の仕事をやっております建設本部が一緒になりまして、今言ったような防衛施設庁の体制を作るわけであります。先ほど申し上げましたように、四つの部のうちの三つは、いつでも自衛隊の関係の仕事をやるわけです。米軍関係の今までと同じような仕事がございますが、相並んで自衛隊の仕事もやるわけでありますから、この面から見ますれば、やはり私どもは特別職の隊員として、規律と団結のもとに働いてもらうことが適当ではないか、こう思うわけ一あります。
  90. 河野正

    ○河野(正)委員 私が最初から指摘しているのは、そういうお考えではないですかということなので、そういうふうに率直に言われるということは、敵ながらあっぱれですよ。ところが、私どもはそういう考え方が間違っておるというのです。もちろんそういう考え方というものは、この防衛庁の機構の強化拡充によって、将来は国防省に昇格というようなこともいろいろ論議されておるようでございまするが、そういう意味の防衛体制の強化、そういうしわ寄せによって今度調達職員というものが一般職から特別職に切りかえられて、組合運動というものが抑圧されていく、私もそういう理解をしておる。ですから、官房長が今率直に言われたのですが、そういう考え方に私どもはま向こうから反対だということを先ほどから指摘しておるわけです。ところが、そのことは労働大臣の示されておりまする日本労働行政のあり方からいいますると、非常にもとっておるわけです。もちろん組合運動というものを大きく発展させようというのが労働大臣の基本方針の第三の旗である。ですから、あなたの方の防衛方針は、これは別問題として、少なくとも労働者立場というものは、やはり政党政治、責任政治である以上は、労働大臣の示した方針によって労働対策というものは進められなければならぬ。あなたの方の防衛方針は、これは別ですよ。そういう方針は官房長が答弁されたことでけっこうです。私どもは反対ですけれども。ですけれども労働者の基本的な権利というものは、やはり国の労働行政の最高責任者というものは労働大臣でありますから、そういう労働大臣の方針に沿うべきだというように私どもは強く主張するわけです。そういうわけでございますから、そういうふうな理解に立って――やはりそれは労働者の権利よりも、われわれの方針の方が優先するのだということでございますならば、大胆率直にそういうようにお答えを願っておきたいと思います。
  91. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 これはいろいろ御意見がございましょう。ただ私ども立場から申しますれば、これは国の労働行政というものと防衛庁がやっておりますことと矛盾してはいけない。しかしながら、今言ったようにいろいろな点を勘案いたしまして、私どもは、自衛隊に与えられた任務を遂行していくためには、今申し上げたような考え方をとらなければいかぬのではないかということで、今度の法案を提出したわけでございます。
  92. 河野正

    ○河野(正)委員 そこで大臣、いろいろ防衛庁との論議をお聞き願ったと思いますが、労働大臣労働者の権利擁護という、そういう基本的な方針、それと、防衛庁が今度考えております方針との間に矛盾が出てくるわけですね。そういう矛盾に対して大臣はどういうふうにお考えになりますか、一つ率直に御意見を承りたい。
  93. 福永健司

    福永国務大臣 仕事の内容等、きわめて詳細には、私承知いたしておらないのでございますが、ただいまの防衛庁の責任者の御答弁を伺っておりまして、防衛目的、自衛隊、国の仕事をする人々だから、そういう身分になるということの一応の御見解とわれわれの申していることは、さして私は矛盾はないのではないかと思うのです。しかし、これはその仕事の実態について詳しく検討してみますと、若干ある身分の人でもこういうような面もある、ああいうような面もあるというようなことで、意見が分かれてくることはあり得るのではないかと思うのです。しかし、今の御質問のような矛盾はないのではないかというように私は考えておるのであります。ただし、先ほど申し上げましたように、その仕事の内容等について一々詳しく私は承知いたしておるわけではございませんので、今の御答弁を聞きながら申し上げたことであることを御了承願いたいと思います。
  94. 河野正

    ○河野(正)委員 賢明な労働大臣の答弁でしたけれども、今の答弁には満足するわけには参らぬわけです。というのは、大臣が矛盾をお認め願うならけっこうだと思う。これは矛盾は矛盾でも、実際現実にこれをどうするかという調整の問題について、非常に困難な問題がございまょう。でしょうけれども、一方では組合運動というものは育成していきたい、労使の慣行というものをますますレールに乗せていきたいというふうにおっしゃっておる。ところが、今度の防衛庁設置法の一部改正によりますと、身分が、一般職が特別職となって組合運動が抑圧される。しかも、私が先ほどからいろいろ申し上げましたように、今までの調達業務がなくなれば刑ですけれども、調達業務はそのまま背負っていってやるわけですから、現実に自衛隊の仕事をする人は、私どもから与えますると非常に少ないわけです。大部分の人が一般職に残られるなら話はわかるけれども、それは防衛庁の方針として困るというようなことでございますから、これは今まで労働大臣が、本委員会においてもいろいろ労使関係の問題について強調されて参ったそういう方針と、私は矛盾するというふうに考える。ところが、矛盾するかどうかということになりますると、なかなか政府間同士の話し合いで調整はむずかしい点はあろうかと思います。でしょうけれども、その考え方として、矛盾するのだという言葉だけは認めていただかぬと私はこの話は前進せぬと思うのですが、いかがでございましょうか。
  95. 福永健司

    福永国務大臣 矛盾するとは、よく調べてみませんとなかなか言い切れないと私は思うのでございます。ただいまお話を伺っておって答弁をいたしておるのでありますが、ある仕事について見ても、ある人がその仕事についていること、いろいろの性質を持つ場合もあろうと思うのです。私伺っていてそう思うのですが、先ほど伺いつつ、自衛隊の仕事もだが、従来の調達関係の仕事も、両方やるような人もあるようにちょっと今ここで聞いておるのであります。そういうような人をどう理解していくかということですが、そういう点で、防衛庁の方では、一部従来の調達業務的な仕事であり、一部自衛隊の仕事、そういうようなものについては、自衛隊の性格上、これを自衛隊の方の規律によって律していきたい、こういうようなことのようでございます。それらの仕事の内容について私一々当たっておりませんので、十分な答えはできないと思うのでありますが、今防衛庁でも言われますように、私どもの考え方についても留意しつつ、こういうもののいずれにするかということについては善処していただけるもの、こういうように私は思っております。先ほど河野さんはしばしば矛盾があると言われましたが、一部どうかなと思われる節があるかないかということであろうと思うわけでございます。そういうような点については、実は私もだいぶ前からそういう点気をつけて、一つ労働省の考えにも矛盾しないようにということは、防衛庁の長官にも連絡しておいたのであります。今度出ております法案によって、現実にどの人がどうということにつきましては、私自身まだ十分な認識がないわけでございます。さらに私も研究いたしたいと考えております。
  96. 河野正

    ○河野(正)委員 労働大臣も十分認識がないようでございますので、この点につきましては、いずれあらためて機会を見て、いろいろ御所見を承りたいと考えるのでございます。  そこで、今度は具体的な問題について若干お尋ねを申し上げたいと思います。それはことしの二月八日、板付基地において、諸機関の労務者三十名全員の首切りが通告されたわけであります。特に私がきょうその問題を取り上げました理由は、御承知のように、昨年の暮れ協定が締結されまして、そして今までの直用労務者が間接雇用というふうに切りかえられたことは、御承知通りでございます。間接雇用に切りかえられたとたんに首切りが行なわれたというところに、私は非常に大きな特色があろうかというふうに考えております。その点について当局側の御報告をまず承って、これは労働行政といろいろな問題がございますので、そういう点については労働大臣からの御所見を承って参りたい、かように考えております。
  97. 笹本一雄

    ○笹本政府委員 調達庁長官から詳しく御説明いたします。
  98. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま御質問がありました板付基地におきますウェートレス三十名の人員整理のことにつきまして、概況を御報告申し上げます。  この板付基地の兵隊食堂におきますウエートレス三十名が、三月三十一日付で整理される旨が現地の労務管理機関に通報されたのであります。その人員整理が行なわれる理由は、この食堂が、従来から赤字であった、しかも、毎年この赤字が累積しておるということで、このウエートレス三十名の雇用を継続することができなくなったということでございます。この食堂の内容について申し上げますと、一九六〇年の秋におきましても、赤字運営のためにウエートレスの約半数が人員整理されたのであります。その経理の内容を見ますと、一昨年の十二月以降、食堂運営の経費が収入を約六千ドル超過した、そのうち一九六一年度に生じた赤字が約四千八百ドルということでございます。このままこの運営を継続いたしますと、一九六二年中には約八千五百ドルの赤字が予想されるという事態に至っておるのでございます。そのような状態でございます。一方、これらのサービスに対する経費は兵隊が自発的に拠出する、その負担金によってまかなわれておる。兵隊も現在負担している以上の出費には反対しておる。また一方、兵隊はセルフ・サービスでその食堂を利用することを申し出ておるというようなことでございますので、現地の軍司令官も現在以上に負担を兵隊にかけない方がよいという結論になりまして、やむを得ずこの人員整理が行なわれることになったということでございます。
  99. 河野正

    ○河野(正)委員 なるほど軍側の釈明を聞いて参りましても、もちろんそれは調達庁も軍側の釈明をそのまま御報告になったと思いますけれども、そういう報告を聞いて参りましても、赤字だ、赤字が累積された、そこで首を切るのだというようなお話のようでございます。ところが、これは御承知だと思いますけれども、この板付基地関係の中には、諸機関労務者というものが、約八百名存在いたします。ところが、その八百名の中で、現在労働組合に加盟いたしておりますのは三十名、諸機関労務者というもの、これは昔の直用というもので、協約が締結されまして、これが今度は諸機関労務者になった。この諸機関労務者というものが八百名おって、その中の三十名が労働組合に加盟しておる。ところ労働組合に加盟した三十名だけが今度ばっさりやられたということになりますと、私は赤字が真の原因ではなくて、むしろ組合運動に対しまする介入、弾圧という考え方が、今度の首切りに大きく支配されておるのではないか。そういうことになりますと、今度の首切りというものは、赤字財政ということではなくて、むしろ不当労働行為の傾向が強い。こういう点に対して、実際当局側は考えられたかどうか。調達庁はアメリカ軍といろいろ交渉してもらうわけですから、調達庁がそういう姿勢でおっていただかぬと、強硬な対策は立たぬと思う。交渉できぬと思う。アメリカ側の方で、赤字でございますから、ああさようでございますか、そういうことでは困ると思う。赤字はどんどん出てきます。たとえば、私は科学技術特別委員会に出ておりますが、科学技術庁の予算が若干ふえた。何でふえたかというと、人件費でふえておる。卒業費でふえておるのではない。人件費が膨張してふえておる。どこでも人件費が膨張してふえてきておる。そこで人件費がふえてくる。これは当然のことだと思う。定期昇給、べース・アップということで首切られるなら、今後駐留軍の労務者というものは安閑として勤務するわけに参らぬ。そこで、私はそういうことも一つ計算の中に入っていると思う。むしろ今度の首切りが行なわれたのは、八百名もおる中でたった三十名しか組合に入っておらぬ。そこで昨年の暮れ協約が締結されて、今までの直用というものが間接雇用になった。正雇用になったこの際、そういう分子というものは整理しておこうではないか。そういう意図で今度の首切りが行なわれたのではなかろうか、そういう感じを強く持っておるのでございますが、そういう点に対してはどういう工合にお考えになっておるか。また、今の不当労働行為の可能性が非常に強いという点については、労働省としてはどういうふうにお考えになりますか。今のお話を聞いて、この点は労働省からも若干御所見を承っておきたいと考えます。
  100. 福永健司

    福永国務大臣 事実関係につきましては、私詳細に承知をいたしておるわけではございませんが、ただいまお話を伺っていて、私は私なりに感ずるところがあるわけでございます。申すまでもなく、不当労働行為につきましては労働組合法が規定いたしておる通りございます。また、不当労働行為であるかいなかということの決定は、労働委員会が、法律に定めました手続を経て決定することになっております。従って、私は、直ちにこれが不当労働行為であるかどうかということを労働大臣がこういう国会の席で申すことは適当でない、こう考えますので、直接にこれが不出労働行為であるとかないとかいうことは、申し上げることは差し控えたいと思うわけでありますが、お話を伺いつつ、私も関心を持ってこれはよく調査しなけばならなぬ、こう考えます。
  101. 林一夫

    ○林(一)政府委員 板付墓地におきまする駐留軍労務者は約二千四百名おるのであります。そのらち組合に加盟しておるのが千四百二十三名、約千四百名おるのであります。というわけで、板付基地関係の駐留軍労務者の中においても、約半数以上は組合に参加しておるのであります。また、先ほど、この三十名のウェートレスが組合に加盟しているから首を切ったのではないか、整理したのではないかというような御質問がありましたが、このほかに東京とか神奈川におきましても、この諸機関従業員が整理されておるのであります。特に板付基地において組合に参加しておる者三十名だけを整理したというふうには考えられないと思います。やはりこれは、今までの経営が赤字継続で、今後もこれ以上兵隊に負担させることはできない、しかも、今後はこの食堂についてはセルフ・サービスで利用していきたいというような兵隊の強い希望もありまして、ウェートレスを整理するということになったのでございます。そういうわけで、現地の福岡県におきましても、できるだけこの人員整理を圧縮するように、また整理がやむを得ない場合においては、他の職場に配置転換をするというように交渉いたしております。
  102. 河野正

    ○河野(正)委員 長官がそういう不勉強な御答弁をされるから、実際聞いていただいておる労働大臣は迷惑ですよ。あなたは今、二千四百名の従業員がおって、総員千四百名が組合に参加しておる、こういうお話です。私はそういうことを言っておるわけじゃない。御承知のように、協約が締結されまして、直用も間接雇用に切りかえられた。ところが、従来の直用は今日諸機関労務者というのです。この諸機関労務者というものは八百人おるわけですよ。そのうちの三十名しか組合には加盟しておらぬ。二千四百名の中の千四百名が組合に参加しておるとおっしゃるのは、これはかねがねの間接雇用の労務者なんです。そのほかに直用というのが今までおったんです。これが今度協約が締結されて、なるほど間接雇用になったけれども、これは諸機関労務者というのです。その諸機関労務者というのは八百名おるわけです。そのうちの三十名だけが組合に加盟して、あと組合に入っておらぬ。私はそういうことを指摘しておるのに、あなたは、何か今までの間接雇用を取り上げて、どうも私が捏造でもしてここで論議しておるかのような御答弁をされることは、全く不可解です。そういうことではあなたの答弁のあれはありませんよ。みな聞いておられる皆さんが、認識を誤られますよ。そういうお答えでしたら、二千四百名おって千四百名が組合に加盟しておる、何も三十名が特別なものではないというような御答弁をなさったら、ほかの方が認識を誤ります。そういう認識不足な答弁をされては困ります。少なくとも当局側ですから、正しい答弁をしていただかなければ、もちろん私どもより正しい答弁をしていただかなければそういう認識で今日の駐留軍労務者問題を解決しようというようなことでは、これは私ども全く納得いきません。幸いにして労働大臣が、これは話を聞いておるとどうも工合の悪い点がある、よく調査をしてみようというふうにまで労働大臣はおっしゃっておるわけです。直接の責任者であるあなたがそういうことでは、私は言語道断だと思います。この点は全くあなたの答弁は誤っておりますから、訂正されると同時に、そういう正しい認識に立っての御答弁をあらためてお願いしたい。
  103. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が先ほど申しましたのは、別に間違ったことを申し上げたのではない。おっしゃる通りに、あそこの諸機関労務者につきましては、八百名のうち三十名が組合に加入しております。この三十名が今度整理されたということでございますが、あそこの従業員は、諸機関労務者以外にいわゆる従来の間接雇用の労務者が約二千三百名おる。そのうち組合に加入しておるのは千四百名であるということを申し上げたのです。間接雇用に切りかえられた従業員二千三百名のうち約千四百名が組合に加入しておるということを申し上げましたのは、この三十名のウエートレスが、組合に加入しておるから直ちに弾圧されて整理されたということではないという一つの反証に申し上げただけでございます。おっしゃる通り、このウエートレス三十名は諸機関労務者であり、この三十名が組合に加入しておるということははっきりしておることでございます。
  104. 河野正

    ○河野(正)委員 全く認識不足もはなはだしいと思うのですよ。諸機関労務者というものが――これは昔は直用ですよ、これが八百名おって、その中で組合に加入しておるのは三十名しかおらぬ、しかも、その三十名だけがばっさりと首を切られたということを申し上げているので、今までの間接雇用の問題を私は言っているわけじゃない。それをあえてあなた方がおっしゃるところに、非常にあなた方の答弁のずるさがありますよ。そんなことでは、今後あなたたちに駐留軍問題を全面的におまかせするわけにいかぬ。その点は、さっき労働大臣がそれはどうもおかしい、調査の必要があろうとおっしゃっておりますから、私は労働大臣の誠意に期待いたします。  それから、赤字々々とおっしゃいますけれども、すでに三十五年の末におきましても、赤字を理由として首切りを行なった。それですから、今さら赤字だから首を切るということでもないわけです。しかも、さっき私が申し上げましたように、各省でも政府機関でも人件費がどんどん膨張しておる。これは当然のことだと思う。ところが、御承知のように、昨年の暮れ協約が締結された。当然そういう予算の裏づけということも考えて、政府雇用に切りかえられたと思うのです。そういうことは、労働者の身分というものを全然考えずに、形式的に政府雇用に切りかえられたのですか。そうじゃないでしょう。労働者の身分を確保するために、私は政府雇用に切りかえられたと思うのです。しかも、赤字というのは今始まったのではなくて、今までずっと赤字です。私はその赤字が理由ではなかろうと思うし、なおかつ、協約を締結するにあたって、そういう予算の裏づけを全然考慮せずに、ただ漫然と切りかえをなさったのか、その辺のお考えをお尋ね申し上げたい。
  105. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この赤字の点でございますが、先ほども申しましたように、毎年赤字が累積されておるということは間違いのないことでございます。先ほど申し上げましたように、このまま経営すると、一九六二年中には約八千五百ドルの赤字が出ることが予想されておる。毎年赤字が累積されるというような事態に至りましたので、兵隊もこれ以上分担金を出すわけには参らぬ、また、そのような事情ならセルフ・サービスでやりたいという申し出があって、このような人員整理が行なわれるに至ったのでございます。もちろん、このようなことにつきましては、調達庁は人員整理を圧縮しなくちゃならぬ。また、万一整理がやむを得ない場合においては、配置転換等の方法を考えて、それを少なくするようなことを主張しまして、現在現地の福岡県において米軍と折衝いたしておるところであります。もちろん、調達庁としましても、必要があれば中央の司令部との交渉を行たいたいというように考えております。
  106. 河野正

    ○河野(正)委員 赤字というものは、もう今始まったわけではなく、年々累積するわけです。これはどこの政府機関でも同じです。そうすれば、当然そういうことを計算に入れて協約が締結され、政府雇用になされなければならないと思うのです。もちろん、各政府機関では、べース・アップ、定期昇給というものは義務費です。そうすれば、駐留軍労務者に対しても、当然そういう定期昇給あるいはべース・アップで起こってくる賃金の累積については、政府雇用である以上、政府が補償すべきではないかというように私は考える。それがなくしてどうして政府雇用、間接雇用というふうに協約の締結が行なわれたのか。私は義務費として政府が何らかの補償措置を講ずべきだというように思いますが、その点はどうですか。
  107. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在福岡県におきましては、この人員整理を圧縮するように交渉いたしているようであります。また、整理がやむを得ない場合においては、配置転換をするようにというわけで強く交渉いたしております。先ほども申しましたように、現地の事情をよく調査しまして、どうしても中央において折衝する必要がありますならば中央の司令部と折衝いたしたい、こういうように考えております。
  108. 河野正

    ○河野(正)委員 この赤字というのは、もう毎年々々累増してくるわけです。これに昇給とべース・アップで人件費が圧縮されるということはないのです。ですから、このことを許すとするならば、毎年首切りが行なわれていくということになる。それでこの点を私は強調するわけです。そういう見通しの上に立っているわけですから、そういう趨勢に対する根本的対策が当然必要だというように考えるわけです。そういう根本的な対策がありますか。なければまた来年首切りです。再来年も首切りです。ですから、そういう趨勢に対する根本的な対策があるかないか、その点を明らかにしていただきたい。
  109. 林一夫

    ○林(一)政府委員 おっしゃる通りに、給与改定等による予算不足を理由に人員整理を行なうということは、これはできるだけ避けるべきことでありますが、調達庁といたしましては、在日米軍の中央への予算要求の際には、こういう点も考慮して強く増額を申し出てもらっております。
  110. 河野正

    ○河野(正)委員 これは兵隊のポケット・マネーから出ているとおっしゃるのですか。それでは予算の要求をどこにするのですか。兵隊にとおっしゃるのですか。どうもあなたの言うことは理屈が合わぬ。
  111. 小里玲

    ○小里政府委員 私直接この労務関係をやっておりますので、長官の答弁を補足して御説明申し上げたいと思います。  今先生のおっしゃいますように、駐留軍労務者の給与並びに手当等は、国家公務員の上昇に準じて実施しております。そこで、毎年給与額が上昇を来たしておりますが、その上昇に要する予算を、何らかの形で米軍といたしましては捻出しなければならぬ。そこで、MLCといいますか、従来から調達庁が雇用主になっております労務者につきましては、これは軍の直接の予算でございますので、この財源をほかから捻出をして、そして労務者の給与の上昇額に充てるようにということを私どもは常に主張し、米軍に要求をしてきておるわけでございます。ところが、最近特にドル防衛等によりまして、ドルの節約ということで軍全体の予算が縮小されてきておる関係上、労務者の給与の上昇額をそのままほかから財源を持ってきて埋め合わせる、使うということがなかなか意のように運ばないような事例が起こるのでございます。そこで、たとえば佐世保等におきましても、この賃金の上昇による財源の捻出ができないということのゆえをもって、人員整理をやるというようなことが最近には起こっております。それから最近起こっております例といたしましては、陸軍関係で四百数十名の人員整理をやるということで通告が参りまして、その四百数十名につきましては、給与の上昇による財源の捻出ができない、だから首切りをやるんだということではございませんで、陸軍全体の予算が非常に縮減された、その十分の一程度でも労務費から捻出したいということのゆえをもって、四百数十名の首切りを出してきたわけでございますが……。
  112. 河野正

    ○河野(正)委員 諸機関労務者に対する賃上げについてはどうするかということなんです。これは政府予算でなくて、兵隊のポケット・マネーでしょう。その点について答えて下さい。
  113. 林一夫

    ○林(一)政府委員 MLCにつきましては、そういう工合に陸軍全体の予算の方から何とか捻出してくれということをわれわれとしては強く要求し、賃金が上昇したがゆえに首切りをやらなければいかぬということはできるだけ避けよう、こういう主張を行なってきているわけでございます。そこで、このMLCでない諸機関労務者につきましては、先ほどの長官の説明にもございましたように、政府の予算ではなしに、原則としてそれを利用する人たちが拠出し合ってそれでまかなっていく、あるいは剰余金等を一部使っている場合もございますが、原則としては利用者によっての拠出金でまかなっていく、こういうことでございます。今回の板付の場合を見ますと、一昨年の公務員の十二・四%の大幅な上昇の際、あのときに七十名おりました者を……。
  114. 河野正

    ○河野(正)委員 そういうことじゃなくて、要するに、次々と赤字が出てくるわけですから、その根本対策をどうしますかということを聞いている。それを答えて下さいよ。
  115. 林一夫

    ○林(一)政府委員 七十名を結局三十名に減らしまして、今回また三十名を全部――食堂閉鎖ではございませんが、兵隊のセルフ・サービスにするということでございまして、われわれとしては、できれば軍司令官の権限下にあるほかの諸機関、たとえばボーリングでありますとか、あるいはクラブでありますとか、そういうところからの利益金といいますか、そういうものをこちらの方に回して今までやっておったらしいのですが、それが回すことができなくなった。さればといって、兵隊の拠出をよけいさせるということも、兵隊たちとしては承服できない。さればといって、先生のおっしゃいますように、日本政府でこれを出すということは、直用の方は、御案内と思いますが、全部米軍でそういう給与等は支払う建前になっておりますから、日本政府でこれを支払うということはできません。従って、どうしても財源は向こうで見なければいかぬ。そのためには、兵隊たちの利用者の負担金を上げるか、それともほかから利益金をそこへ回すかというような操作以外にないのでございまして、従って、今回の場合は、兵隊はもうわれわれはセルフ・サービスでよろしい、こう言っておりますし、司令官としては、今まではその赤字を補てんするためにほかから利益金を回しておったのですが、それがリミットにきた、こういうことで、調達庁としては、そういうセルフ・サービスにするということに対して、これは絶対にまかりならぬと言ってこれを阻止するといいますか、やらせないようにするということはちょっと不可能であろう。従って、私どもといたしましては、やはり配置転換とかあるいはその他の方法によって、犠牲者になる労務者を救うということ以外には、現在のところでは方法はないと思います。
  116. 河野正

    ○河野(正)委員 あるのですよ。たとえばMLCに切りかえる。これは横田あるいは立川では、ウェートレスをこのMLCのKPに切りかえたという事例があるわけですよ。そういう事例があるにかかわらず、今言ったように、兵隊にこれ以上要求するわけにいかぬ、政府が出すわけにいかぬ、そういうことだけでこの問題を処理しておったというところに問題がある。そういう救済法があり、やった事例があるにかかわらず、そういうものには全部ふたをしておいて、今申し上げるように全く無責任な態度でおられるということは全く了承できない。時間がありませんから申し上げませんが、具体的にはMLCのKPに切りかえる、皿洗い、コックに切りかえるというような手もあるのですから、当然そういう点に対する努力というものをされなければならぬ。私の方から数えるような格好になりますが、これはもちろん専門家ですから、当然あなたの方からそういう方策を講じておらなければならぬと思うのです。最後に、この点について、明快にこの問題の解決策を一言でお答え願いたい。
  117. 小里玲

    ○小里政府委員 直用関係の労務者をMLCに切りかえるということは、各地で行なわれたということは私も知っておりますし、現地の労務管理事務所長とは、現在折衝をやっておりますときに、そういう話も出して、何とかいかないものかというような折衝もやっております。私どもとしましては、まだそういう折衝の過程にございますから、現地の労務管理事務所あるいは県の意向を十分聞きまして、そしてこの人たちを何とか救う方法はないかということで中央交渉もやりたい、こういうふうに思っております。
  118. 河野正

    ○河野(正)委員 今いろいろ私が論議しておりますように、駐留軍関係の労務者というものは非常に低い地位に置かれているわけです。ある意味においては、日本労働行政の中においては非常に日の当たらない場に置かれていると思うのです。しかも、これは失礼な話ですけれども、今いろいろ申し上げたような調達庁の認識の仕方もあります。そこで、これは一つ労働行政の最高の責任者でございますから、大臣一つ十分関心を持っていただいて、駐留軍労務者が今まで日の当たらない谷間におったわけですから、これを日の当たるようなところに持っていくような努力というものをぜひ大臣がして、調達庁にハッパをかけてやっていただくように、それに対する大臣の所見を最後に一言でいいから伺いたい。
  119. 福永健司

    福永国務大臣 なるたけ御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。
  120. 中野四郎

    中野委員長 本日はこの程度にとどめ次会は明二十一日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。   午後一時五十八分散会