○小山
政府委員 年金額を引き上げていくというお考えについては、私
ども全く同じ考えでございます。むしろ
制度の創設当時から一番熱心にそれを考え、かつ主張しておったわけであります。その
意味で先生のお考えと同じわけなんでありますが、ただ先生の御議論には若干
沿革的な違いがございまして、先生が
社会保障制度審議会の答申にこういうふうにあるとおっしゃっているのは、おっしゃる
通りでございます。
社会保障制度審議会の答申はそうであったのでございます。ところが、この点については、当時
政府側は
社会保障制度審議会の答申をとらなかったのであります。なぜとらないかというと、およそ
国民の
年金の基準をきめるのに、生活保護基準というものをとることについて、どうも同調しがたい点がある。そこで、どういうふうにしたかというと、
国民の
年金をきめる場合の基準として、生活保護の基準ではなくて、
国民の普通の生活をしていく場合に必要とされる費用のうちで必要なものを
年金の基準として考え
ようということになったわけであります。どう違ったかといいますと、
社会保障制度審議会は二千円を基準にして考えたのであります。現在の
国民年金法は、三千五百円を基準にして考えたのであります。その点が違いの
一つであります。それから違いの二番目は、先生おっしゃった
ように、
社会保障制度審議会の答申は、二千円を基礎にして、毎年の経済成長は二%、その根拠は、明治以来の日本の経済成長が、とり方によっては二・六%ないし三%足らずになる。そこのところは安全を見て二%と押えるのだ、こう押えておいて、そのうち〇・五%だけはほかに使わなければならぬ、従って一・五%だけを
年金に反映させる、こういうことで、これを三十五年間複利計算で延ばしていったら三千五百円になったので三千五百円、こういう
年金をきめたわけであります。従って、あの
考え方に立ちますと、
年金の額というものは、将来三十五年間据え置きという
考え方になるわけであります。
社会保障制度審議会は、同時に
保険料も毎年その分だけよけいにとっていく、こういう構成をとったわけであります。従って、あの
考え方をとると、
年金は三千五百円ときめておくけれ
ども、
保険料は低いところからスタートしてだんだん上げていく。そうなりますと、将来三十五年間は、
保険料の引き上げはするけれ
ども、
年金の引き上げはしないという
制度になるという構成になるわけであります。それでその点は、
政府側としてのとり方に、第一に先生もおっしゃっている
ように、だれが考えたって、あの当時の
状態において将来の経済成長が二%平均なんということは、事実にこれは明らかに違うことなのであります。そうかといって、あの当時の
状態において、将来数十年にわたって何%というふうに%をあげて、だれもが納得する
ような数字はきめられなかった。そうだとすれば、そのときどきの
状態に応じて、いつでも引き上げられる態勢のスタートをしなければいけない。従って、将来の成長を見込んでしまって、
保険料も先食いするということは一切しないで、
制度スタートのときにおいて収支を合わせておく、こうしておけば、その後において経済成長があれば、
保険料にも余力がありますから
年金額も引き上げていくことができる、こういうふうなことになっているわけで、その点は違うわけであります。ただし、その
年金額を活発に引き上げていくというお考えは、これは全く私
どもも初めからそう考えておるわけでございまして、今繰り返し
大臣が申し上げ、私が申し上げていることは、五年後に引き上げをするためには、現在すでに議論を始めて、この議論に二年ないし三年近く使わなければいけない。一番大きい問題は、
財政方式をどうするかという問題でございます。一口に賦課式と言っておりますけれ
ども、実は賦課式というのは、みな口から出まかせを言っているだけでありまして、どの限度においてどういうやり方で賦課式をやっていったらできるのかということについて、人を納得させる
ような提案をしている人は、日本にまだ一人もいないのであります。しかし、今までの
ように完全積立式にこだわって、それから少しも離脱しないという
考え方も、どうもこれはそろそろ卒業しなければならぬ、こういう時期に日本の
年金制度は今いるわけであります。この問題はみなで議論をして、納得のいく
ような結論を出すまでには相当の時間がかかる。ほかに例をあげるとたくさんありますけれ
ども、そういう
ようなわけで、先生の
ようなお
気持で現在すでにスタートしているのですが、これがまとまるのにまだ三年ぐらいかかる、こういう
状態だという
事情でございます。