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1962-02-15 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十五日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 齋藤 邦吉君 理事 永山 忠則君    理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       藏内 修治君    澁谷 直藏君       中山 マサ君    八田 貞義君       早川  崇君    米田 吉盛君       島本 虎三君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     今村  讓君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (年金局長)  小山進次郎君  委員員外出席者         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十五日  委員松山千惠子辞任につき、その補欠として  八田貞義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八田貞義辞任につき、その補欠として松  山千恵子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありまするので、これを許します。吉村吉雄君。
  3. 吉村吉雄

    吉村委員 私はきょうは、特に国民年金制の問題について今国会改正案が出されておりますから、その改正案を除いた現状、こういうことについてお伺いをしたいと思っておりますけれども、その前に、現在の社会保障制度全般についての大臣の見解をまず伺っておきたいと思うのであります。  申し上げるまでもないと思うのでありますけれども社会保障政策というものが非常に重視をされて、国民年金あるいは皆保険、こういう工合に形の上では相当整備をされて参ったわけでありますが、しかし、内容的に見ますると、非常に不均衡がある。また、その不均衡についても、特に問題だと考えられるのは、低所得者に対するところの給付というものが非常に低劣である、こういうようなことで、この社会保障制度全般について、総合的な見地から一元化をしていかなければならぬということは、各方面からいわれておるのでありますけれども、こういうようなことについて、厚生大臣としては将来どういうふうにしようとしておるのか、お伺いをしておきたいと思うのです。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘通りに、わが国社会保障制度もどうやら一応の形ができた——もっともこれで十分とは存じませんけれども、大体形ができたかと、かように考えるのでございますが、お話ように、その内容をなすものにつきましては、年金制度におきましても、また医療制度におきましても、いろいろ不均衡があり、ふつり合いがあるということは御指摘通りでございます。これをだんだんと改善いたしまして、つり合いのとれたものに持っていかなければならないことは、私どもも心からさように考えておるのであります。ただ、かような問題は、長い沿革もあることでありますし、それぞれの制度におきましてそれぞれの事情もあり、従って、一挙に問題を解決するということもなかなか困難であろうと思います。また、実質的に給付内容改善する、あるいは向上するというような問題となってきますと、これは国の財政力の問題もございましょうし、また、国民負担能力の問題もございましょうし、要は、やはり経済の成長をはかり、国民所得の増大をはかっていくということが大きな要素をなすものと考えるわけでございます。さよう方向において、政府といたしましても、御承知よう努力をいたしているところであります。これに伴いまして、社会保障制度内容改善充実ということを、鋭意努力して参らなければならぬと思っているわけであります。将来の問題でございますが、かりに一例として医療保障医療保険という面をとらえて申しましても、その総合調整をはかっていくというようなことが、大きな問題となってきておるわけでございます。たびたび申し上げることでございますが、政府としても勉強をし、また、関係諮問機関にもその調査をお願いいたしておるような次第でございます。なるべく早くさようなものの成案を得まして、それに沿って今後の施策を進めて参りたいと存じておるわけであります。  特にまた、医療保障の面なんかで問題となりますのは、国民健康保険あたりが、内容的に見ましても、よほど劣っておるというふうなことでございますので、これを引き上げていくという方向に向かって努力をしたいと思っております。それにつきましても、いかにも財政力が薄弱である、基盤が強固でないというようなこともございますので、財政基盤を強化しつつ、内容改善に向かって努力をしたい、かように考えておる次第でございます。大きく申しますれば、全体の年金制度についても、あるいは医療保障制度につきましても、その総合調整方向に向かって今後とも努力して参りたい、かような考えをいたしておるようなわけでございます。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 そういう方向努力をしていくということについては、わかったわけであります。大体、わが国社会保障制度というものが、歴史的な沿革、そういうものから非常に問題があるということは、われわれもよく了知できるわけでありますけれども、その根本的な原因となっているのは、やはり、たとえばこの年金制度あるいは医療制度につきましても、各省庁に全部またがって、ばらばらになっておる、そういう各省間の十分なる連携というものすらとられていない、こういうところに一つ大きな原因があるのじゃないか。言いかえますと、各省割拠主義とでもいいますか、そういうもののために、厚生省が意図しているよう方向に進んでいかないというふうに考えられる節々が見受けられるわけでありますけれども社会保障政策全般推進役というのは厚生省であり、その責任者厚生大臣でございますから、そういう各省間にあるところの割拠主義といいますか、セクトというものがもし大きな障害になっているとすれば、これは勇断を持って排除していかなければならぬというふうに考えるのです。  特に、先ほど申し上げましたように、そういう給付内容の中で、たとえば日雇い健保だとか、あるいは国民年金だとか、あるいは国保だとか、こういった低所得者が適用になるものが非常に劣悪である。これを引き上げていくということを通じて、上向きに統一の方向に進んでいかなければならなぬじゃないか、このように考えるのです。その一環として、今回国民年金法の一部の改正が行なわれようとすると思うのですが、しかし、たとえば日雇い健保等につきましても、全然改正というものが出されていない。こういうふうなことで、本来は社会保障政策のもとで救われなければならないよう人たちが、非常に冷遇されていることは遺憾だというふうに考えておるわけですけれども、この点はどのように考えますか。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在行なわれております社会保障の中で、高いものを低い方へ引き下げるというよう考え方は、もちろんいたしておらないのであります。低い方を上げていくという方向において努力すべきは当然であろうと考えております。その意味におきましては、日雇い健康保険にいたしましても、また、国民健康保険にいたしましても、多くの問題を残しておるということは御指摘通りであると思います。われわれとしましても、その内容改善充実に向かって努力をいたしたいと存じております。ただ、具体的なお話を申し上げますれば、日雇い健康保険のごときは、これはよほど考えないと、その内容改善充実をはかるということは、なかなかむずかしいと思います。御承知ように、実は現在も日雇い健康保険におきまして、被保険者自体負担をしている割合というものは比較的低いのであります。その被保険者負担をふやすということはなかなか容易ではない。よほど賃金その他が上がって参りませんと、負担能力を越えるようなことをするわけにはもちろん参らない。現状は、率直に申しまして、日雇い労働者健康保険は、今日実は赤字状態ということでございますので、給付内容改善することもけっこうでありますけれども、この日雇い労働者健康保険赤字問題をどうするかというふうなところに思いを及ぼしまして、この制度につきましてももっと深く私ども検討いたしまして、将来ますます一そう改善せられるように持っていかなければならぬ、こういうふうな考え方をいたしまして、この対策についていろいろ真剣に検討をしてみたい、かように考えている状況でございますので、今回これに関する法律案の提案というところまで至らなかったわけでございます。いずれにいたしましても、やはり着実に進んで参らなければなりませんので、その間保険財政という面、そういうものを強化しつつ内容改善をはかっていくというふうな考え方でもって努力をいたしている次第でございます。
  7. 吉村吉雄

    吉村委員 保険財政上の問題からながめていけば、そういうふうになると思うのです。しかし、社会保障というものは、いわば所得の再配分ということがねらいになっていかなければならないはずですから、日雇い労働者等所得が少なく、従って、負担能力というか、保険料負担する能力を勘案するという話をしていきますと、これらの人たち所得が少ないというところに実は問題があるわけでして、むしろそういう所得が少ない人たちに対しては、国庫なり何なりから負担をしていくというのが、本来の社会保障制度あり方ではないかと思うのです。それを社会保険的面のみ、あるいは財政的な面からだけ考えていくとすると、いつまでたっても、本来の意味での所得配分ということにはいかないじゃないかというふうに考えられるのです。従って、日雇い健康保険の問題ばかりではないのですけれども、将来低所得者所得を保障する、あるいは医療保障ということを進めていく場合、保険財政ということよりも、もっと国民として最低の生活、そういうものを維持させるためには国としてどうするか、こういう見地から考えていかなければ、私はほんとう社会保障制度充実していかないというふうに思うのです。従って、今の大臣答弁は、私たちとしてどうしても納得できかねるので、いま一度その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 保険方式をとっておりますので、その保険方式のもとにおいてどう考えるかということを一応考えなければならぬと思っております。その際に、被保険者の方からある程度の負担をしてもらわなければならぬことも当然のことと思いますが、保険財政というものを構成いたしておりますものは、御承知ように、被保険者負担だけではないわけであります。国も相当な負担をいたしておるわけでございます。また、それを通じて、いわゆる所得の再配分がある程度行なわれるということにもなろうかと思います。国の負担にも関係する問題であります。それでは何もかも全部国の負担でやっていくということにまでなれば別でありますが、現在の状況におきましては、改善をはかっていきますためには、あるいは国の負担を増さなければならぬじゃないかという問題もございましょう。そういうふうな点について真剣に検討して参りたいということで、いろいろ検討を重ねておるところでございます。そこにおのずから財政力限界もあることでありますので、一挙に御期待に沿うようなことはなかなかむずかしいといたしましても、国が負担をどの程度までやれるか、こういうようなこと、あるいは被保険者負担能力限界がどうかというようなところもいろいろ検討いたしまして、いわばそれらの力を総合して内容改善をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 吉村吉雄

    吉村委員 今、日雇い健康保険という一つ保険制度に限定をして考えていきますと、確かに保険財政の点から問題があると思います。しかし他の制度、たとえば他の国民健康保険政府管掌でないものですね、こういうところを見ると、相当裕福な保険財政である制度もあるわけです。だから、これは労働者という立場から見ますると、別個の制度であるために、一方においては非常に劣悪な給付しか受けられない、一方においては余って、何といいますか、寮を作ったり温泉ばりの宿舎を作ったりしている、こういうふうな事態があるわけですね。従って、そういうものを統合していくということなくしては、同じ国民でありながら、自分が不幸にして失業して日雇い労働者になったということによって、本来国の政策のもとで受けられるべき、享受もしなければならないはずの制度上の恩恵というものが受けられない、こういうふうになってくるわけです。従って、そういう点から見ても、すべての保険制度というものを統合して、大体同一条件にある、こういうふうにしていくということが、先ほど来言われているように急務になってくると思うのです。ところが、今大臣の言われたのは、一つ一つの例を、劣悪な日雇い健康保険のみについて言われましたから今言ったような問題になる。私はその限りにおいて問題を議論する上すれば、そういう点については、それは今の政治のもとで、やむを得ずして低所得者であるわけです。また、日雇い労働者でもあるわけですから、そういう者については、保険料負担能力云々というよりも、国の財政的な措置によってこれを他の制度並みに引き上げていくという努力をしていくことが、今日の段階で必要じゃないか。それと、一面に他の制度統合をしていく、こういうことをやっていかなければ、これはどうしても満足できないと思うのです。そういう点についてはどうですか。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 将来の問題として考えますれば、国民がひとしく、疾病の場合でありますとか、失業の場合でありますとか、そういうときに同じよう給付を受けると申しますか、そういうふうなあり方が望ましいことだ、かように考えておりますけれども統合ということを考えますのは、なかなか実際問題としては容易でないと思います。ずっと先の問題として考えれば、統合という姿も頭に描いておきたいと実は思うのです。ただその前に、やはりできることからやっていかなくちゃなりませんから、総合し、調整をするという努力をまずやる必要があろうかと思うのです。その総合し、調整するにいたしましても、今のままではなかなかむずかしいんじゃないかという点も、これはあると思います。従いまして、たとえば健康保険問題一つをとらえてみましても、おっしゃる通りに、保険者によってよほど財政力も違っておるわけです。比較的財政力の豊かな保険者もありますし、また政府の管掌しておるよう健康保険になりますと、ややそれよりは劣っておるということも、御承知通りでございます。また、国民健康保険に至りましては、これまた御承知通りに、保険者の力がまだ弱いというような面もありますので、そこらを勘案して考えますると、一番劣っている国民健康保険を引き上げていくというふうなことを考えなければならぬのじゃないか、だんだんある程度ならされたところで一つにするというふうな考え方も出るだろうと思いますけれども、そういうふうに段階を追ってやはり努力をしていかなければ実際的でないのじゃなかろうか、かよう考え方をいたしておるわけでございますが、その総合調整につきましては、先ほど申しました通りに、今検討を重ねておるところであります。一ついい案をいただいたら、なるべくその線に沿って実現をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。それと同時に、現在労働者諸君にいたしましても、非常に大きな企業に従事して、比較的待遇もよろしい向きもありますし、中小企業あたり待遇が比較的悪いという面もあるわけでございます。それらの労働者諸君が、一丸となって健康保険というものを一つにしてやろうじゃないかというふうなお気持が、また調整をし、あるいは統合することをささえる大きな力になるだろうと思うのです。そういう点につきましても、私は、勤労階級皆さん方が同じ気持になって健康保険なら健康保険というものをもっと充実したものにしようじゃないか、そういうふうな協力的なお気持が出ることを、実は非常に期待いたしておるわけであります。さような点が、企業別に考えますと、なかなかむずかしい事情もあるわけでございますが、ただむずかしいむずかしいで、ほっておくわけにいかない。逐次問題を、お話しの通り方向に向かって進めていくべく努力を重ねてみたい、さように存じておる次第でございます。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 国民年金なり国保の問題については、今度の予算の中でも相当改善要素が見られるわけです。その限りにおいては、今大臣が考えておる趣旨に沿って政策が進んでおる、このように言い得ると思うのですけれども先ほど指摘をしましたような最も低劣な条件にあるところの日雇健保法については、改善措置というものがとられていない。こういうことでは、幾らある一定水準まで上げていこう、こういうふうにしていこうとしましても、現実にはなっていかない、こういうふうになると思うのです、労働者の側でも、その統合や何かについて、むしろ積極的な運動をというような話でありましたけれども労働者がそういう気持になり得るようにするためには、もっと労働者の積み立てておるところの多くの金、たとえば年金の問題についてもそうでありまするし、あるいはその他の積立金等についても、厚生年金その他についても、ほんとう意味での労働者のためになるように還元をする、こういうよう方向を国家的な見地から打ち出していかなければ、労働者としては、たとい厚生大臣統合のために、労働者全体がそういう気持になってくれと言われても、なかなかそれはなり切れないと思うのです。すべての運営について、労働者が、自分たちの積んだ金についての発言権なり何なりというものがこれに与えられる、こういう制度を並行していかなければ、言いかえますと、政府労働者に対する政策というものが、労働者から信頼をされるという段階にならなければ、私は今厚生大臣労働者に望んでおるところの気持というものは、なかなか容易に実視をしないと思うのです。そこで、そういうよう気持というものを起こさしていくために、政策的にどうするか、こういうふうになってくると思うのです。その点では、先ほども言いましたように、最も劣悪な条件にあるところのものを、ある一定水準まで上げていく。それをやっていくためには、今日の段階では国家的な施策以外にないと思う。それをその該当者の低収入のために、負担能力ということ、あるいは保険財政、こういうことに重点を置いて話をされたのでは、これは社会保障充実していく、そういう趣旨に沿っていかないんじゃないか、このように私としては考えます。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 比較的劣悪と申しますか、そういう状況にあるものを上げていくという方向については、先ほど申し上げた通りであります。また、話が日雇い労働者保険になりましたが、この日雇い労働者保険についても、私どももこの内容改善したい、向上したい、かように考えております。ただ御承知ように、現在では、まだ国保に比べまして日雇い保険の方が条件がいいという状況になっておるわけであります。従って、どちらを先に、どちらをあとというわけでもございませんけれども国保の問題に手をつけたということであります。日雇い保険につきましては、もっと考えなければならぬ点がある。つまり今の状態でいけば、これは赤字がふえるだけなんですということでありますので、国としても相当考えなくちゃならない要素がございますので、日雇い労務者保険についてはさらに検討を深めていく、こういうことで、せっかく関係部局において勉強しておるところでございます。いずれまた、日雇い保険の問題につきましては御審議を願うこともあろうかと思いますが、ただいまはそういうふうなことでもっと根本的に考えなければならぬのじゃないかというふうな気持でいろいろ検討いたしておるわけであります。このままでいきますと、実は来年度におきましても、赤字という状況皆さんにお目にかけるよう状況でございます。もっと根本的に考えて、将来また御審議を願おう、こういう心持でやっておりますので、御了承願いたいと思います。
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 日雇い健保の問題を議論しようという気持はなかったわけですけれども、ただ具体的にそれが例として出されてきたので……。私は、社会保障制度というものがばらばらな形になって、それで形だけは整った、こういう状態にある、将来はこれを一元化して、全国民同一条件にあるよう方向で進めていかなければならぬじゃないか、こういうふうに申し上げたわけですが、その中で、大臣の方の答弁としては、本人の負担能力云々というお話になって参りましたから、そういうことになると、同一所得というものはいつの時代でもあり得るわけはないので、そういう点は、今日の段階においては低所得者については国で補助していくという方向で進めるよりほかないのじゃないか。他の一面としては、裕福な財政を持っておるところの保険組合もあるわけですから、従って、そういうところとの統合を通じてやるならば、それは一方が非常に赤字であり、一方が非常に裕福だというような問題はなくて済むはずだ、このように考えるのです。そこで統合の問題でありますけれども昭和三十年の三月ですか、社会保障制度審議会の方では、日本の社会保障制度についてはこれを統合していく、そういうことがどうしても必要だということで、この統合をしていくための強力な機関というものを政府の中に設置すべきである、こういう勧告が出忘れているはずだと思います。こういう点について、厚生省としては具体的にどういうふうにしているかを一つ伺いしたい。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御指摘になりました社会保障制度審議会の答申を、私も正確によく承知いたしておりませんが、社会保障についての強力な行政機構というようなものを要望しておられるということは、私ども伺っておるところであります。そういう点で、私どもといたしましては、この際の措置といたしまして、だんだん制度はできましたけれども、今のよう内容的に深く検討してさらに改善し、さらに向上していくためには、もっと行政当局として勉強していかなくちゃならぬ、こういう考え方のもとに、今回の国会において御審議を願うことにいたしております厚生省機構改革を、行なおうということにいたしたのであります。まずその辺から一つ手をつけてみたいと思うのでありますが、いわゆる企画指導というふうなことで、企画とか監督というようなことと現業とを分離して、御承知ように、現在健康保険につきましては、企画現業もみな同じ部局でやっておるわけであります。その現業の方を切り離しまして、厚生本省といたしましては、指導とか監督とか企画とかいうことをもっぱらつかさどる保険局を作っていきたい、こういうふうな考え方をいたしております。年金についても同様でございます。そういうことにいたしまして、将来の問題に対していかに対処するかということに取り組んでいこう、そういう心持で御審議をこの問題についてお願いした次第でございます。この問題につきましては、大きな問題でございますので、なお私どもといたしましても十分検討いたしたいと存じますけれども、ただいまのところは一応厚生省機構改革をやって、そうしてなかなかむずかしい問題でございますけれども、これと取り組んで、おっしゃるよう内容改善も向上もやろうし、あるいは総合調整もやろうし、さらに進んでは、統合という方角を目ざして努力していきたい、こういうふうに考えております。
  15. 吉村吉雄

    吉村委員 今回出されておるところの行政機構改革調査会ですか、何か今大臣答弁になりましたですね。これは国の行政のあり方についてどうしたらいいのか、どういう機構とどういう組織がいいのかということを長期にわたって検討していこう、こういうことだろうと思います。私の指摘しましたのは、社会保障制度審議会の方から、社会保障制度全般の将来の方向について、これを統合していくためにはどうしたらいいのかということについて、非常に問題があるのは各省庁間にそれぞれ所管がまたがっておる、こういうことがなわ張り争いというのですか、そういうことが一つの障害になっておるようだから、従って、そういうものを統一をしていくためには、政府の中にこれらを統合して企画、運営をしていく、こういうことを検討することが必要ではないだろうか、そういうための組織というものを作りなさい、こういう勧告が出ていると思うのです。これは先ほど大臣指摘されましたところの行政機構の全般的な改革というものとは、関連はないとは言いませんけれども、具体的な意味では直接の関係はないと思います。今回の保険庁の問題等についても、本来であれば、この社会保障制度審議会の勧告の趣旨から出発をして、その総体的なアイデアができ、そのアイデアに従って保険庁なら保険庁というものができていく、こういう構想であるとするならば、私はそれはそれなりにいいと思うのです。ところが、そうでないようでございますから、この勧告の趣旨は一体どういうふうになったのかという点をお伺いしているわけなのです。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いわゆる社会保障関係の仕事が各省にまたがっておるというのは、御指摘通りであります。これはなかなかむずかしい問題でございまして、従来、その問題が起こるごとにいろいろ意見の食い違いを生じたり、議論をしたりという問題でありますが、今までの実績は、御承知通りに、私率直に申し上げますれば、厚生省が一般的に扱うという問題の方が先にどんどん進んでおれば、そういうことにもならぬかと思うのでありますが、なかなかそこまでいかない。しかし、それぞれの分野においてはこれだけのことができるという状態になって参りますために、これを阻止するということはいかにもおかしい。やはり実際できるものはでかしていくということにならざるを得ないと思うのです。そういう事情が積み重なって今のようなことになっておると思いますが、ずっと先の問題といたしましては、お話通りに、これを統合するということも考えてみなければならない、また、望ましいことではないかと私どもも考えておる。さしあたっては、それの間のふつり合いがないというふうにしたいということも考えなければならぬ問題でございますが、従来の沿革から申しますと、お話通り事情にやむなくなっておるということでございますので、これを直ちに今一つのところにまとめてしまうということは、望ましいことかは存じませんけれども、またそれぞれの沿革もあり、事情もあり、内容も違っておりますので、そう簡単にはいかない、私はこういうふうに存じておる次第であります。行政機構の問題につきましては、従ってこれらを今全部一元化して、一つの行政組織のもとにやっていくということは、実際問題としてはなかなかむずかしい点があろうかと思います。将来の問題としてこの問題は考えていかなければなるまい、かように考えている次第であります。
  17. 吉村吉雄

    吉村委員 この社会保障制度審議会で勧告をされている趣旨は——私が言うていることを少し誤解されておるようですけれども政府の中にたとえば社会保険省みたいなものを作って、それで運営するのがいいのじゃないかということを言っているのじゃないのです。この勧告の趣旨は、そういうことは望ましいけれども、それは一挙になかなか困難であろう、従って、現在の段階としては、各省庁間にまたがっておるところの、この社会保障を管掌しているという今日の状態を、少なくとも各省庁間で総合的に立案、企画し得るよう機構が必要じゃないか。これは三十年の段階で言っているわけですよ。そういうことが必要じゃないかということを勧告している。それが一体どうなっているのかということを私としては聞いているわけです。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては、現実に各省でいろいろな施策を講ぜられます場合に、もちろん厚生省と無相談でおやりになっているのは一つもないのであります。常に厚生省と相談の上でおやりになるということでございますので、決して各省が単独に勝手なことをやっており、厚生省がそれを見ているということではないのであります。その点につきましては十分連絡は受けており、また、われわれの方の意見も申し上げておるわけでございますが、ただ厚生省でこれを企画し、厚生省でこれを立案するという段階まで現在の状態といたしましては至っておらない。その点は、実はあからさまに言えば、厚生省としてはあまり望ましい形じゃないと存じておりますけれども、これは将来の問題として考えなければなりませんが、現状においてはやはり各省中心に考えて、厚生省との連絡をし、調整をはかっていく、こういう姿で進んでおるわけであります。さよう意味においては、社会保障制度審議会の御期待通りのところまでまだ至っていないというふうに御了承願います。
  19. 吉村吉雄

    吉村委員 努力はしておるけれども、なかなか実現しないということのようなんですけれども、これでは社会保障についての総括的な責任省であるところの厚生省として、他の官庁がこれらを所管している、その連絡を受けている、こういうことだけでは、厚生省が意図しておるような全体的な、総合的な保障政策というものは進んでいかないのじゃないかというふうに考えられるのです。そういうことのためにこの勧告が出ていると私は思うのです。だから、勧告でございますから、まあ、やるもやらないも御自由ということになれば別です。しかし、今の池田内閣は、社会保障政策充実ということを大きな柱にしているわけですから、それは池田内閣ばかりでなしにすべての政党がそのことを叫ばざるを得ないのは当然のことだと思うのです。そういう点からするならば、社会保障制度審議会等から三十年にこういう勧告が出ておるわけですから、もう六、七年になっている。従って、その勧告を受けて、こういうよう機構、こういうような運営方針をとっておるとか、こういうような組織を作りましたとか、こういうことでなくては、努力をしておる努力をしておる、なかなかむずかしゅうございまして、というだけでは、私は一歩の前進にもならぬと思うのです。従って、この勧告を受けて、たとえばそれを具体的にどうするかということについて、審議会の方では協力を惜しまないということまで付言されているわけですから、おそらくこのことについて、厚生省としてはさらに社会保障制度審議会の方にその具体的な方法はどうかというような諮問をするとか、そのくらいまで進んでもいいんじゃないか、こう思っておったわけですけれども、それもなされていないとすれば、これは言葉の上で努力していると言うだけであって、どうも具体的には進んでいないといわざるを得ないと思うのです。もしそうであるとするならば、この委員会でも私は再三聞いておるのですけれども社会保障というものを充実していくためにも、年度的、計画的に進めていけというような話が再三指摘されておるようですけれども、これもなかなかその実施に移っていない。たとえば、今の高度経済成長十カ年計画を見ても、どうもその点が、最初の段階においてもわれわれの意図するものとはずいぶん違うものしか出ていないというようなことは、このような専門的に扱っているところの勧告とかあるいは答申とかいうものを、軽視すると言うのは語弊があるかもしれませんけれども、もっと真剣にとらえて、そうしてこの勧告なりあるいは答申というものを一つの武器として政府部内でこれを主張していく、こういうことが非常に重要じゃないかと思うのです。それはまた、池田内閣にとっても、政策を実施していくという建前から、国民に公約をしているという社会保障充実の建前からしても、こういうものを厚生省なら厚生省が主張した場合に、これに反対をするというわけにはいかないと私は思う。そういう点で、五年も六年も過ぎておりますから、もっと真剣に取り組んでもらいたい、このようにお願いしておきたいと思うのです。  次に、国民年金関係について、一部改正法案が出ておりますから、改正の部分には触れないで、現在の状況について少しくお聞きしておきたいと思う。  この国民年金法が実施される場合に、これの適用該当者というのは、厚生省の発表した数字では二千四百六十余万人、強制加入の対象者はそのうちの二千三百万だ、こういうことで発足したと思うのです。その後いろいろな経緯はあったわけでありますけれども、最近の状態で、この強制適用対象者それから任意適用対象者、この対象者のうちで実際に加入をしている人数というのはどのくらいになっておるのか、まず事務当局からお伺いしたい。
  20. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先生仰せの通り国民年金をいよいよ始めますときに調査いたしたのでありますが、そのときの適用対象者はおよそ二千四百万程度というふうにつかんだのであります。これは昭和三十五年の八月に全国の市町村について調査をいたして、それを積み上げた数字でございます。ところが、このときは、ちょうど御承知通り非常に反対運動の強いときでございまして、調査の中にかなり推計等が入らざるを得なかったよう事情がございますが、とにかく二千四百万程度というふうにつかんでスタートをしたのであります。ところが、実際にやってみますと、現に被保険者であるはずの人で加入をしないという者もおりますけれども、どうも二千四百万という数字そのものに少し違いがありそうだ、これはちょうどそのころから被保険者でなくなる者がふえてきた、つまり先ほどしばしばおっしゃるように、人口構造が雇用者に移る傾向が進み始めてきたというので、ぐんぐん予想以上減ってきたということもございますので、それじゃもう一回一つ正確につかみ直そうというようなことで、昨年の七月にもう一回全国的に調査をしたのであります。前置きは少し長くなりましたが、それが現在私どもがつかんでおる数字でございます。これによりますと、二千四百万と申し上げておりました数字は、二千二百十一万であります。このうちで、実際に強制加入で入って参りました者が千六百六十万、任意加入で入って参りました者が二百五十八万、合わせて千九百十七万程度でございます。従いまして、まだ三百万程度が入るべくして入らない、こういう状況でございまして、二千二百十一万をもとにいたしますと、八六・七%の人が現在加入済みであり、それ以外の人についての適用手続が現在進行中である、こういう状況でございます。
  21. 吉村吉雄

    吉村委員 合計で二千二百十一万人のうち、千六百六十万が加入している、このうち任意加入者が二百五十八万、こういうことになりますね。
  22. 小山進次郎

    ○小山政府委員 私、お尋ねの通りお答え申し上げなくて恐縮でございましたが、二千二百十一万というのが総数でございます。このうち強制適用の被保険者たるべき者が千九百三十六万、それから任意加入の被保険者として予定しておりました者が二百八十五万、こういうことであります。それからこれに対して現実に加入して参りました者が千九百十七万、このうち強制適用の対象で入って参りました者が千六百六十万、任意加入の対象で入って参りました者が二百五十八万、こういうことでございます。
  23. 吉村吉雄

    吉村委員 わかりました。そうしますと、強制加入の対象者、この加入の実績というものは、任意加入対象の実績よりも非常に低いということが言えるわけであります。この制度趣旨からいたしますと、本来であるならば、任意加入対象者よりも強制加入対象者の方に重点が置かれなければならないと思うのです。その点が、強制適用該当者の加入というものは、割合にすればどのくらいになりますか、何十パーセントくらいになりますか、しか入っていない、こういう状況でありますけれども、その大きな原因というものは一体どのように考えられておるか。
  24. 小山進次郎

    ○小山政府委員 最大の原因は、適用にあたっては納得してもらって入るようにしているということであります。従って、任意加入の場合には、もともと納得して入るという筋合いの人々でありますから、予定しておったものに対してかなり接近した数字が得られる。おそらくこれは、ここ一年くらいの間で、予定しておりました程度の任意加入は入って参ると思います。これに対して強制加入の方は、まだ納得し切らなかったり、あるいは割合に行政上把握しにくいという人がいるわけであります。住民登録の上ではいるのだけれども、いつ行っても留守だという人が、特に最近の大都市生活では非常に多うございます。これは大都市の事務をやっております者が共通に言っておりますが、対象者として名簿上はっきりしているはずの人を回って参りますと一回でその日のうちに会えるのが大体三分の一であります。残り三分の二については何回か繰り返して行く。ところが、結局本人にはどうしても会えないで、ことずてで帰ってくる。こういうよりな人が多いわけでございまして、なかなかそこが的確に適用に持っていけない。従来こういう場合には、国民健康保険の場合には、いわばしごくあっさりと、あなたは強制適用の被保険者であります、法律によって強制適用なんですから、被保険者ですと言って、一方的に確定してしまうわけであります。国民年金については、これは申し上げるまでもないことですが、ここ一年半以来の事情がありまして、特にこの問題については慎重を期して、納得ずくでやろうじゃないか、こういうことできている結果がこうなっている、こういう状況であります。
  25. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、今年金局長から答弁がありました事務的な、あるいは連絡的なもの、そういうものばかりでなしに、この制度自体に相当大きな不満を持っておる、こういうことが大きな原因をなしているのじゃないかと思う。だからこそ政府の方では、私としては異例だと考えるのでありますけれども、三十四年に施行されて直ちにその改正、また改正、こういうようなことが行なわれなければならなかったというのは、当初出発した当時の制度それ自体に大きな欠陥を持っている。これに対して国民の反対の意見というものが強くなっている。こういうことがこの届出を渋滞せしめる大きな原因であったと思うのです。社会党の方の反対運動云々という話も中にあるようでありますけれども、しかし、反対運動にせよ何にせよ、運動というものは、その国民なり対象者というものが、その気持にならない限りは発展するわけはないのです。そういう点から見て、この制度に対するところの不満、内容についての不満、こういうものが一番大きな原因になって、実はその当初二千四百万というような数字で出発したけれども、なかなかそこまでいかない。これは該当者が二千二百万だということでありますから、現在のところ八七・七%、こういいましても、内容的にいいますと、強制適用該当者の加入割合というものが低いということが明らかでありますから、この原因について、私としてはそういうように考えている。(「騒いだから悪い」と呼ぶ者あり。)騒いだから悪いという意見もある……   〔発言する者多し〕
  26. 中野四郎

    中野委員長 静粛に願います。
  27. 吉村吉雄

    吉村委員 もちろん、そういう反対運動があったということも原因一つでしょう。しかし、その反対運動によってその人たちが届出をしないということには、運動というものがそう盛り上がるのには、その条件がなくちゃならないのだ。その条件というものは、この制度の中に不備な点がたくさんある。あるからこそ、政府の方で、発足後一年以内の間に、二回にわたって改正しなければならないという事態を生んでいるんだというふうに私は断ぜざるを得ないのです。まあそれは触れないとしまして、反対運動があったからだけという考え方は、与党の方々は捨てていただかないと困る、このように考えます。  それで問題は、この制度内容を高めていくということが一番大切なことだと思うのです。与党の方々が、今はそう言っていますけれども、地方に帰って言いますことは、やはり皆さんも、この制度の不満の点をさんざん演説の中で指摘されていることを私も聞いているのですから、あまり騒がない方がいいと思う。そういう点で、私の問題にしたいと思う点は、大体三百万からの人たちが適用を除外されておる、こういう結果に今日の段階においてはなっておる、こういうことですね。これは国民年金という趣旨からすると、はなはだどうも芳しくない、こういう結果になると思うのです。これらの未適用者、未加入者、こういう人たちに対して、政府としては将来一体どうするのか、また、国民年金というキャッチ・フレーズの点から見て、どのようにこれを措置するのかということが、今日の段階においては非常に重要な点になっていると思う。その点は一体どうでありますか。
  28. 小山進次郎

    ○小山政府委員 これはいつも申し上げていることでありますが、現在やっております加入促進の努力をさらに続けて参りたいと思います。  それから、なお御参考までに申し上げたいと思いますが、私、現在の適用状況は決していいとは申し上げません。しかし、総じてこの種のものは、適用漏れというのが相当多いのが従来の例でございます。これは一例として申し上げていいと思うのですが、保険については、もう昭和の初期からずっとこうやっておるわけなのでありますが、これがいよいよ東京都で国民健康保険をやるということになって、全部都民が洗われるということになりましたならば、その年に一挙に健康保険の適用者が七十万以上ふえたのです。それは一体どういうことかというと、実は本来健康保険に入るべからし人が入らなかったというのが、とにかく国民健康保険健康保険ということで、両方から洗われることになってきたので実は入ってきた、こういうわけであります。むしろこの種の事情は、この方面に詳しい人にはもうあたりまえだといわれておったことであります。その意味で、適用漏れというものをそれほど神経質に考えるということはむしろ考えものなんで、とにかく多少の適用漏れがあっても、時間をかけて確実に把握していくという態度を持っていきさえすれば、この問題は促進し得るものである、かように確信をいたしております。
  29. 吉村吉雄

    吉村委員 このくらいの数字はやむを得ない状態なんだという話に、私としては今の答弁は理解します。しかし、そうであってはいけないことも事実だと思うのですね。それでいいんだという問題じゃないと思う。だから、その点について、これはこれでやむを得ないのだということではどうにもならないと思うので、特に私が申し上げているのは、国民年金という立場で今政策は進められておる。従って、そういう点からしますと、この三百万からの人たちがこれから除外されているということは、非常に重大な問題だと思うのですよ。私は、先ほどから申し上げておりますように、この制度なり内容というものを改善していく、こういうことによって、これは皆さんが期待する以上に、届出というものは起こるであろうというようには考えておるのです。それを事務的な面だけとらえられて、これくらいの実績は通常の姿なんだ、こういうことでは、私はどうしても今の事務当局の考え方が非常に怠慢のように考えられるのです。従って、大胆としては、これは政策上の問題として、三百万からの、特に強制適用対象者の加入実績が非常に悪い。特に都市部においては悪い、こういう状態にある。これを一体将来どういうふうにしていくのか。そういう皆年金という政策の点からして、これをどういうふうにしていくのかということを、一つ大臣の方から御答弁を願いたいと思います。
  30. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 年金局長がお答えいたしましたのは、決して事務当局としてこの問題をおろそかにするというつもりで申し上げたのではない、私はかように存じます。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 ただ御参考のために実情を申し上げておるという程度にお聞き取り願いたいと思いますが、われわれとしましては、先ほど年金局長も申しましたように、国年皆年金のことでございます。従って、適用すべき人には全部適用になるのが当然だと思っております。従いまして、それに対する努力というものは、局長が申したことでありますけれども、依然継続いたしましてやって参りたい、かように存じております。あくまでもめちゃくちゃな適用をするというようなことではございません。納得を得て加入してもらうという気持でもって、その努力を継続して参りたいと存じておる次第であります。
  31. 吉村吉雄

    吉村委員 私の申し上げているのは——そういう事務的な努力というものは、これは当然しなければならぬと思うのです。私は、もっと内容充実していく、たとえばこの制度の中で一番欠陥だと思われるのは、老齢年金等については支給開始が六十五才だ、あるいは月額三千五百円だ、こういうようなことが、他のものと比較をして非常に劣悪である、こういう点が非常に問題であると思うのです。今回一部改正が出ていますから、この一部改正も、私は非常に大きな前進だということは認めます。認めますけれども、そういうふうな政策的なものを前進させて内容的に高めていくという努力をしていかなかったならば、事務的な面だけでは、この届出の実態というものを解消しないように私としては考えているのです。そういう点について、厚生大臣としてはどう考えているか。
  32. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民年金内容改善するということについては、私も同感であります。この内容改善に向かっては、皆様方の御協力を得てだんだんとやって参りたい、さように存じておる次第であります。その点について、別に何も申し上げることはございません。ただ私として申し上げたいと思いますことは、なるほど今の国民年金制度については御不満な方もいらっしゃると思います。あるいはこれじゃもの足らぬという感じを持っておられる方も非常に多いだろうと私は思うのであります。そういう点については、皆さんの御協力のもとに、政府としましては漸次改善する方向に向かって進まなければならぬと存じておりますが、同時に、多少御不満でも、ほとんど大多数の方が加入していらっしゃるのですから、不満だから加入しないというよう気持一つ捨てていただいて、やはり入っていただいて保険料も払っていただく、そうすれば積立金がそれだけふえるのであります。そういうふうなことが、また改善一つのよすがともなるわけであります。できるだけ入るべき人が全部入っていただく、不完全であってもすでに法が実施されておるわけでありますので、これにはぜひ御協力を願いたい、そういう心持でおるわけでございます。いずれにいたしましても、魅力が少なければ自然それだけ寄りつきにくくなってくるというのは、これは人間の心持だろうと思います。その点はわかるのでありますけれども、これについては、やはり逐次できる程度の改善を積み重ねていく以外にない、同時に、そういう心持でこちらもやるのであります。現在のところ御不満でも、先のところをお考えになれば、だんだんとよくなってくるわけでありますので、ぜひ加入していただきたい、極力お願いをして、一つ未加入のないようにいたしたいと存じております。
  33. 吉村吉雄

    吉村委員 いま一つ、事務的なものをお尋ねしておきます。保険料の納入実績はどういう状態になっていますか。
  34. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先月の末が第三回目の納期限になっておりますが、それまでに納められました保険料の総額が百三十七億でございます。
  35. 吉村吉雄

    吉村委員 その百三十七億というのは、予定の収入に対してはどのくらいの割合ですか。
  36. 小山進次郎

    ○小山政府委員 設定いたしました目標に対して八一・二%という率でございます。
  37. 吉村吉雄

    吉村委員 これは、加入実績とそれから納入実績というのは大体見合ったような形になっているようでありますけれども、この点につきましては、厚生省の方でも大へん努力をされた模様でありますが、相当無理な徴収、こういうことがとられている部分が一部あるのです。たとえば納税組合に強制的に加入せしめてとるとか、あるいは協同組合の貯金の中から差し引くとか、こういうことも一部にはありますから、こういう点については、成績をよくするということの余り、本人の意思に反したことすらとられている危険性もありますから、十分留意してやっていただきたいと思うのです。  次にお尋ねしておきたいのは、今回生活保護基準をさらに一三%上げるということが予算上措置されておる。この引上率自体については、われわれとしてはもちろん少ない、こういう立場をとっていますけれども、この国民年金法が発足する際は、生活扶助基準は東京都で標準世帯八千六百円ですか、大体そのくらいであったかと思うのです。昨年の当初一八%上げて、さらに補正で五%、今回一三%、こういうことで、その合計が一万三千四百七十円というのですから、従って、この制度が発足する当時は、八千六百円から七百円くらいであったかと思うのです。生活保護基準をこれだけ引き上げをしたということから見ますと、国民年金の大きな柱であるところの拠出制の老齢年金の月額三千五百円というものについても、当然改定がなされてしかるべきじゃないか、こういうふうに私としては考えるのですけれども、今回の改正案にはそういう内容はない。これは一体どういうわけなのか、保護基準との関係一つ御説明を願いたいと思います。
  38. 小山進次郎

    ○小山政府委員 前々から申し上げておりますように、国民年金年金額は、国民の生活水準の上昇に応じて引き上げていくが当然のことでございます。法律にもその趣旨を明示しているわけであります。それで、将来これをどういうふうに引き上げていくかということについて、すでに一年来いろいろ案を練っているわけであります。まだこれは審議会を中心にしていろいろ御議論願っている段階でありますけれども、案自体としては相当固まっております。十年目に、現在の三千五百円というのを、もしこの制度所得比例的な制度に直していく場合には七千円程度に引き上げたい、それから現在のフラット制度を維持していくという場合には五千円程度に引き上げていく、それに関するいろんな問題をきわめてまとめましたものをもとにして、いろいろ御論議願っているわけであります。従って、これが固まりますれば、五年目の改正の場合に、そういう計画に応じた改正措置が行なわれる、こういうことになるわけであります。特にこの改正問題で、私ども当局側として一番考えておりますことは、国民年金改正問題については、われわれの段階で案を作る、それは相当具体的なものを作って、しかも国民各界各層で十分御検討願うだけの時間を置きたい、案そのものを示して、二年なり何なり十分そこで御検討いただいて、今度は中身がわからないままでいろいろな議論をせざるを得ないというよう事情なしに、十分中身を了解した上で調整すべきものは調整する、意見の相違のあるものは意見の相違点と、それぞれの意見の根拠というものを明らかにする、そういうようなことで、次の改正の時期が、三十六年を起算点として四十一年ということになりますので、そのときにそれを実施するようなものをまとめていきたい、こういうことで進んでおるわけであります。
  39. 吉村吉雄

    吉村委員 私が先ほどお尋ねしたのは、この三千五百円というものが算出されるのにあたっては、生活扶助基準というものが非常に大きな基底になっている、こういうことであったと思うのです。もちろん負担能力とか国家財政あるいは最低生活費、こういうものを考慮されての上であったと思うのですが、そういうものを総合的に考えて、その基礎になったものは確かに生活保護基準であったと思うのです。これは社会保障制度審議会の答申によりましても、老人一人当たりの農村居住の人たちの生活費を算定して、それを基礎にしてはじき出したのが三千五百円だ、こういうふうに答申の中には出ておる。その点から考えてみますと、これと関連をしますのは経済成長の問題だ、このようになると思います。この経済成長の問題につきましても、政府が常に呼号していますように、昨年度のごときは一三・何%、あるいはその前の年は九%、こういうことで非常に大きな成長がある。ですから、国民の最低生活を保障するためには、生活保護基準を引き上げなければならない。こういうことで、政府にとっては非常に大幅引き上げをやってきたと思う。だから、もちろん法律の中には「五年ごとに、」云々ということが書かれてあります。書かれてありますけれども先ほども申し上げましたように、こういう制度は魅力を持たせていくということが大切だ、このようにも大臣は言われています。だとするならば、この三千五百円が出発するときのことを考えてみると、生活保護基準をこれだけまで引き上げていっているのですから、従って今日の段階においてはこのくらいにまでしていく、こういうようなことは、私は五年たたなくてやって悪いということはないと思う。部分的な改正を行なっているわけですから、むしろこういう状態の中でこそ、全体をほんとうに快く加入せしめるためには、生活保護基準が、皆さんが言っているように相当大幅にと言っているのですが、われわれはそれでも不満足だと言っているわけです、そういう点からすると、この点はむしろ相互関連の中でこの引き上げを検討して出してくる、こういう時期じゃなかったかというふうに考えておるのですけれども大臣は一体どう考えますか。
  40. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 年金内容の問題につきましては、これはまた始終上げたり下げたりするわけにも参らぬ問題だろうと思います。ある程度の年限のたったところで検討して、改定するものは改定する、こういうよう考え方に立っておるわけであります。従って、法律にもその趣旨のことが出ておる。厚生省としましては、その線に沿って検討をいたしておるわけでございます。同時に、この問題は、私もよくわからぬのでありますけれども、数理の問題その他でかなり検討には時間のかかる問題かと存じておりますが、局長も申しておりますように、五年先で改定のことを御審議願うといたしまするならば、それよりも早くこちらの考え方を出して、そうして皆さん方の御批判も受け、それに従ってまた具体的な改正案というものを国会で御審議願おう、こういうよう状態でございます。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕 今直ちにその改正案国会に出すという段階までは至っておりませんし、また、現実にその必要もないのではなかろうか、かように考えておる次第であります。
  41. 吉村吉雄

    吉村委員 その必要もないというのは、先ほど大臣答弁からすると、私は少し問題だと思うのです。言葉じりをとらえるつもりはありませんけれども、生活保護基準と非常に関係の深い数値として三千五百円が出されている。それについても問題があるのですけれども、その当時は二千円というものが一つの数値の基礎になって、経済成長率はきっと二%ぐらいにしか見ていないのです。ところが、その後の政府の発表によりましても、それどころか、九%ないしは一三・何%と、こういうふうに言っている。しかも、その有力な要素一つになっておったところの生活保護基準も、その後三回にわたって改正をされている、こういうことなんですから、これは関連の中で、当然厚生省としては問題にしていかなければならぬ。もちろん五年後に出せばいいということに事務的にはなると思うのです。しかし、それはあくまでも事務的な話であって、制度をよくしていく、そして全体をこれに加入せしめていく、こういうような意欲を持っているとするならば、これは前に主張しておってもいいはずなんですから、出発する状況を振り返ってみるならば、当然今日の段階においては改正案を出してもいい、このように私としては考えるのですが、どうですか。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日の段階において直ちに改正をするというのには、準備が不足いたしておると思います。もっと検討しなければならぬと、私はかように考えるのであります。同時に、生活水準の変化——われわれはもちろん向上させるべく努力をいたしておるわけでありますが、生活水準の向上ということは今後ますますいたしてくるわけであります。一年々々これを変えていくというわけにも参りませんので、さよう意味におきまして、相当な期間を置いて、そこで確実なところをつかんで改定していくというふうな考え方のもとに年金制度は運用していかなくちゃならぬのかと思いますが、今直ちに生活保護水準が幾らか上がったということで改正をする必要はないのじゃなかろうか、私はかように考えておる次第でございます。もちろん将来改正する場合におきましては、先ほど局長も申しました生活保護の基準はもとよりのこと、国民生活一般の向上というふうな点を十分考えの中に入れて次の改正がなさるべきものと、私はかように考えるのであります。
  43. 吉村吉雄

    吉村委員 私の言っているのは、生活保護基準というのは、この制度の出発にあたって使われた数字が非常に大きな要素をなしているのだ。それは一〇%やその辺上げたからということならば、私は五年後とかなんとかいうことでもいいと思うのです。ところが、もう両三回にわたってそれは引き上げが行なわれている。合計すると三六%も引き上げられておりますすよ。しかも、経済成長率というものが、またそれに大きな要素をなしている。その経済成長率も、これまた先ほど言ったように、政府の統計によって見れば、全体として大きく率が向上しておる。こういうことなんですから、従って、この制度の適用を受けておる国民あるいは受けなければならないところの国民の側からいたしますと、そういう制度であるとするならば、他の関係をする数値を引き上げたという場合には、また一方関係をした方も引き上げていく、こうなくては納得できないのじゃないか。だからこそ、未加入者がいつまでたっても絶えない、こういう状態になるのじゃないか。先ほど大臣は、加入せしめるというのは事務的に説得をするだけではなかなかうまくいかない、こういうことを肯定されておりますが、それならばそれなりに、この一番問題になるところの老齢年金というものを、生活保護基準を引き上げた段階において同時に提案する、こういう態度でなくてはならぬじゃないかということを私としては聞いているのです。
  44. 小山進次郎

    ○小山政府委員 年金額を引き上げていくというお考えについては、私ども全く同じ考えでございます。むしろ制度の創設当時から一番熱心にそれを考え、かつ主張しておったわけであります。その意味で先生のお考えと同じわけなんでありますが、ただ先生の御議論には若干沿革的な違いがございまして、先生が社会保障制度審議会の答申にこういうふうにあるとおっしゃっているのは、おっしゃる通りでございます。社会保障制度審議会の答申はそうであったのでございます。ところが、この点については、当時政府側は社会保障制度審議会の答申をとらなかったのであります。なぜとらないかというと、およそ国民年金の基準をきめるのに、生活保護基準というものをとることについて、どうも同調しがたい点がある。そこで、どういうふうにしたかというと、国民年金をきめる場合の基準として、生活保護の基準ではなくて、国民の普通の生活をしていく場合に必要とされる費用のうちで必要なものを年金の基準として考えようということになったわけであります。どう違ったかといいますと、社会保障制度審議会は二千円を基準にして考えたのであります。現在の国民年金法は、三千五百円を基準にして考えたのであります。その点が違いの一つであります。それから違いの二番目は、先生おっしゃったように、社会保障制度審議会の答申は、二千円を基礎にして、毎年の経済成長は二%、その根拠は、明治以来の日本の経済成長が、とり方によっては二・六%ないし三%足らずになる。そこのところは安全を見て二%と押えるのだ、こう押えておいて、そのうち〇・五%だけはほかに使わなければならぬ、従って一・五%だけを年金に反映させる、こういうことで、これを三十五年間複利計算で延ばしていったら三千五百円になったので三千五百円、こういう年金をきめたわけであります。従って、あの考え方に立ちますと、年金の額というものは、将来三十五年間据え置きという考え方になるわけであります。社会保障制度審議会は、同時に保険料も毎年その分だけよけいにとっていく、こういう構成をとったわけであります。従って、あの考え方をとると、年金は三千五百円ときめておくけれども保険料は低いところからスタートしてだんだん上げていく。そうなりますと、将来三十五年間は、保険料の引き上げはするけれども年金の引き上げはしないという制度になるという構成になるわけであります。それでその点は、政府側としてのとり方に、第一に先生もおっしゃっているように、だれが考えたって、あの当時の状態において将来の経済成長が二%平均なんということは、事実にこれは明らかに違うことなのであります。そうかといって、あの当時の状態において、将来数十年にわたって何%というふうに%をあげて、だれもが納得するような数字はきめられなかった。そうだとすれば、そのときどきの状態に応じて、いつでも引き上げられる態勢のスタートをしなければいけない。従って、将来の成長を見込んでしまって、保険料も先食いするということは一切しないで、制度スタートのときにおいて収支を合わせておく、こうしておけば、その後において経済成長があれば、保険料にも余力がありますから年金額も引き上げていくことができる、こういうふうなことになっているわけで、その点は違うわけであります。ただし、その年金額を活発に引き上げていくというお考えは、これは全く私どもも初めからそう考えておるわけでございまして、今繰り返し大臣が申し上げ、私が申し上げていることは、五年後に引き上げをするためには、現在すでに議論を始めて、この議論に二年ないし三年近く使わなければいけない。一番大きい問題は、財政方式をどうするかという問題でございます。一口に賦課式と言っておりますけれども、実は賦課式というのは、みな口から出まかせを言っているだけでありまして、どの限度においてどういうやり方で賦課式をやっていったらできるのかということについて、人を納得させるような提案をしている人は、日本にまだ一人もいないのであります。しかし、今までのように完全積立式にこだわって、それから少しも離脱しないという考え方も、どうもこれはそろそろ卒業しなければならぬ、こういう時期に日本の年金制度は今いるわけであります。この問題はみなで議論をして、納得のいくような結論を出すまでには相当の時間がかかる。ほかに例をあげるとたくさんありますけれども、そういうようなわけで、先生のようなお気持で現在すでにスタートしているのですが、これがまとまるのにまだ三年ぐらいかかる、こういう状態だという事情でございます。
  45. 吉村吉雄

    吉村委員 その三千五百円というのは、社会保障制度審議会で四十年後にこれこれ、こういうふうに出した数字と、それから厚生省で別な理論構成で出した数字、これは偶然の一致であるかどうかわかりませんが、その点については、私は今議論しようとは思いません、そういうことで提案されたというのであれば……。しかし、この年金制度年金法の中で非常に重要な要素をなしているのが、老齢年金が三千五百円であるということは明らかだと思うんですよ。そういう点から考えてみて、今局長が言われました国民生活というものがむしろ重点で、それに合わせていくんだ、そうだとするならばなおさら、もう今日の段階においては、生活保護基準や何かと関係してこなければならない、こういうふうにならざるを得ないと思うのです。だから、もちろん五年に一回ずつ検討する、こういうふうになっているから、それまでの間二年ぐらいかかって云々という話でありますが、それはそれとしていいと思うのです。しかし、そういうような、この基準の三千五百円というものを出すのにあたっての国民生活との振り合い、こういうものを考えてみるならば、生活保護基準をこれほど大幅に引き上げておるんだから、厚生省としては、当然、それがそのままになるかどうかは別として、国民にアッピールするためにも、明確に態度を出しておくことの方がいいんじゃないか、このように考えるのです。その点、今回の改正を提案するにあたっての社会保障制度審議会に対する諮問ですか、その答申も、老齢年金の引き上げについては検討すべきであるという答申が出ているやに私は聞いておるが、まだ資料はもらっていませんけれども、だとするならば、当然にその努力をしていかなければ、先ほどおっしゃったように、三百万人の人たちがまだ未加入という状態はいつまでたっても解決をしない。同時にまた、国民年金という終局の目標を達成するわけにもいかない、このように考えますので、事務手続の面とか、そういう問題を離れて内窓をよくしていく。その大きな柱になっているのは、老齢年金というものを大幅に引き上げて、将来おれがこうなった場合にはこうなれるのだ、こういうような目標というものを対象者に与えていく。これは私はできるだけ早くしなければ困るというふうに思うのです。そうでないと、未加入者が新たに加入するということになるためには、いろいろ感情の問題その他も出てくると思う。要は、その内容改善する、しかも、大きな柱であるところのものの改善をやっていく。部分的な改善は出ているから、それはそれでいいと思う。しかし、これはいわば二次的なものだというふうに考えているのです。年金制度の本質からするならば、やはり老齢年金というものの額を引き上げていくために、さらに急速に、しかも積極的に努力をしていただきたい、このようにお願いをしたいと思います。  以上で私の質問は終わりますが、大臣にそれについての見解を伺っておきたいと思います。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 吉村さんのおっしゃるお気持はよくわかります。また、私どもも、老齢年金というものは重視いたします。この老齢年金の引き上げという問題については、すでに事務当局においても検討をいたしておるところでございます。厚生省考え方が、ある程度世間の方にごらんに入れる程度のものができますれば、これを明らかにすることは私はちっともかまわないと思います。そういうものを明らかにして、また御批判を受けるという性質の問題だろうかと考えております。現在すでに検討をいたしておるところでございますので、私どもとしましては、おっしゃるお気持はよくわかるし、また、老齢年金改善をやっていきたいという気持のもとにやっておりますことを一つ御了承願いたいと思います。
  47. 中野四郎

    中野委員長 関連事項について発言の要求がありますので、これを許します。本島百合子君。
  48. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまの質問に関連いたしまして御質問申し上げたいと存じますが、この年金問題が本会で論議せられましたとき、質問に立ったわけであります。そのとき申し上げたことは、物価にスライドするということが明文化されておるわけであって、今日物価が騰貴しておりますことはもう御承知通りで、昨年は何回にもわたって、すべての物価が最低三割上がったといわれております。それに伴いまして、三十七年の一月から三十八年の三月までの間に物価はもう一度上がる。大体二・八%くらいは経済企画庁でも上がるということを発表しておるわけです。ところが、実際問題としてはこれではとどまらない、やはり年に三割以上上がるだろう、こういわれておるわけです。そういたしますと、物価が年々歳々上がって参るという傾向にあるときに、支給される額というものが三千五百円ということになりますので、納付する人々が、どうも地の生命保険と比較いたしまして、ほんとうに魅力がない。そこでこれはどうしても物価にスライドしなければ、せっかく加入はしてみたものの、今度は現実にはお金は払わないというわけで、昨年、自民党の松山先生、社会党の淺沼先生とともに、私は山形県、秋田県に国政調査に参ったのですが、加入率はいいのだが、納付される金額がどうしても予定通り入らないということで、農村は非常に困るということをいわれたわけです。こういう点に対して、もう一度厚生大臣から、近き将来にこういう程度までは考えるというようなお考えがあるならば聞かしていただきたいと同時に、加入しても金が入ってこないというのは、どの程度のお金が納まっていないのか。これは厚生省の方にもうすでに統計があると思いますが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど吉村委員のお尋ねもございましたが、現在の老齢年金の三千五百円というものは、私は決して魅力的なものとは思いません。ことに先の長い話でありますので、これは当然、経済事情の向上に伴いまして引き上げていくというよう心持を持ってこの制度検討をし、また、運用をいたしておるところでございます。できるだけ引き上げるということにおいては、本島先生も私も同じことなんです。そういう気持でやって参りたいと存じております。また、なるべく早くというのが、吉村先生の御質問の御趣意だろうと思います。そのお気持もよくわかるのであります。できることならばそうありたいという気持もいたしますけれども年金制度というようなものの年金額をどうするかという問題には、相当複雑な準備を必要といたしますので、そう簡単にはなかなかできない。同時にまた、せっかくやるなら喜んでいただけるようなところまで持ってきたいわけでありますけれども、いろいろな関係において、被保険者負担の問題あり、また国の負担の問題あり、いろいろ複雑な問題もありますので、早急に結論を得るということはなかなか困難だと思うのでありますが、すでに事務当局としましては、次の引き上げという問題に取り組んで検討いたしておるよう状況でございますので、この点御了承いただきたいと思うのであります。  なおまた、保険料等についてのお尋ねにつきましては、政府委員からお答えをいたしたいと思います。
  50. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ちょうど一月の末が三回目の徴収の期限でございますが、このときの状況は、目標の八割二分程度でございました。
  51. 本島百合子

    ○本島委員 八割二分しか掛金が入らないわけですが、罰則規定がたしかあったはずです。この適用については、当時私が御質問しましたときに、当分は宣伝期間であるために、すぐには適用いたしませんとはおっしゃったようでした。そういう点について、かりに何月かを目標にして、そうしてどうしても納まらないものに対して罰則規定を適用される意思があるのかないのか、そういう点を伺いたい。
  52. 小山進次郎

    ○小山政府委員 保険料の徴収については、罰則を適用するというようなことは全然ございません。これはおそらく、今後だんだん進んで参りまして納めないという場合が出てくる、その場合はどうするかというお尋ねになると思いますが、何とか納得ずくで話をして納めてもらうようにする。それで強制徴収というようなことは、明らかに相当豊かでありながら納めないというような場合について、やるかやらぬかということが検討されるということになるわけでございます。それから罰則適用云々の問題は、おそらく加入すべくして加入しない人に対してそうするかどうか、こういうことになると思うのでありますけれども、これもたびたび申し上げている通り、あくまで納得ずくで入ってもらうという態度を今後とも続けていきたい、かように考えます。
  53. 本島百合子

    ○本島委員 なぜこれを聞くかと申しますと、最初からこの年金には疑点が多いということ、魅力がないというようなことで、非常に加入率が悪かったわけなんです。今おっしゃるのは、八割三分まで目標額に到達したようだ、こうおっしゃっているのですが、地域によりますと、どうしてもそれが納得いかないから加入しないのだ、もちろん納めない、こういうことで、かなり全国的には残っておると思うのです。こういう人々のところに、罰則規定がありますから、それに準じていたしますといって、加入勧誘と申しますか、そういうようなことを市町村でやっていらっしゃるところがあるわけなんです。ですから、自分たちはどうしても反対だ、こういう気持でおるが、始末に困っている、こういう御相談を受けて参ったわけであります。従って、この質問をするわけですが、そういう場合どうなさっていくかということを、いま一度お聞かせ願いたいと思います。
  54. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先生のおっしゃる加入すべき人で加入しないという人の割合、これは今のところ一二、三%でございます。逆に加入すべき人のうちで、現に加入している人の割合は八七%程度になっております。先ほど申し上げました八割二分程度というのは、加入している人のうちで保険料を納めている人の割合でございます。  それから先生がおっしゃったような問題は、市町村の第一線で仕事をしている人には、そういう悩みを持っている人が非常にあろうと思います。特に適用が進んで参りますと、たとえばある市町村で、だれとだれとだれが入らないのだというくらいに対象が非常にはっきり限定されてくるわけでありまして、そういうような人々に対しても、なおかつ今のような態度をとらねばいかぬのか、それではお前たち国会で偉い人々にものを申し上げているときには、いかにも話のわかるように聞こえるかもしれぬけれども、第一線で仕事をやっている者としてはたまらぬぞ、どこかでケリをつけてほしい、こういう気持を持っていることは事実でございます。私もその点については非常に心が痛んでいるわけでございますが、しかしこの問題は、第一線の人にしんぼうしてもらって、あくまで納得ずくで入ってもらうようにしていく努力を続けて、問題を解決いたしたいと思います。あと一年もたてば、私はこの適用問題というのは、ほぼいけるところまではいくだろうと思います。そういう意味合いにおいて、今後とも今までのような納得ずくで入ってもらうという態度を続けて参る、かように考えておるわけであります。
  55. 本島百合子

    ○本島委員 掛金の問題でございますが、厚生省の方からのお話ですと、ある程度目標に近いところまできているからとおっしゃるけれども、農村などを歩いてみますと、税金以外の保険料ですから、非常に高いものになる。どうしても、自分たちの家族を全部合わすと五百円前後になる。それが毎月ということになるから、とてもじゃないけれども払えない。従って、滞納が出てくるということになるわけです。そういう点なんかについて、これは国民健康保険の場合において所得に比例しておるわけですから、画一的でなくて、所得に比例して、同額所得者からよけいもらっても低額所得者層の方をずっと下げてやる、そういうものの考え方に立てないかということを御質問したわけです。こういう年金についてもいろいろ欠陥が出てきた今日、近き将来に、そういう所得に比例するというよう考え方になれないものかどうか、こういう点をお尋ねしたい。
  56. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先生がおっしゃるような、非常に納めることがつらいというよう人たちに対しては、前々から申し上げておりますように、保険料を免除するという制度がございます。現在でもこれをやっております。現に非常に多く免除をしております県では、対象の二六%までが保険料の免除を受けておるのでございます。そういうような場合でございますから、この免除は実情に即してやって参りたい。特に今度国会で御察議をいただきます国民年金法改正法案では、この免除を受けた人にも国庫負担がつく、こういうことになるわけでありますから、その意味でこういう人々の問題は解決する、こういうことになるわけでございます。
  57. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま御答弁を聞いているとごもっともで、なかなかいいように感じられるのですが、免除の規定を設けてやらなければならぬ人も出てくるわけで、本来ならば、せっかくできた皆年金ですから、みんなやろうという気持は持っているわけです。どこかに矛盾があるからこういうことが出てくるわけで、そういう意味合いからすれば、やはり今後同じように、年金の問題についても納付する期間を短縮するとか、給付年月をもっと引き下げてあげるとか、こういうものを考えていかなければいけないのじゃないだろうか。私が本会議のときに申し上げたのは、厚生年金と同じようにしていったらどうかということを言ったわけであります。それはあまりに理想過ぎてそういうわけにいかない、掛金の関係もあってまずいのだ、こういう御答弁であったわけですが、少なくとも厚生年金と同じように、男は五十五才、女は五十才からこの年金給付を始めてもらう、そしてまた、その間に掛金の方も、所得に応じてこういうふうにやっていけば、これはもうかなりの魅力が出てくる。そういうことを申し上げたわけですけれども年金の場合は国民健康保険と違いますから、そういう算定はむずかしい、地方財政によっては違っております、こういう答弁だったのです。けれども、一般に聞いて歩いてみますと、やはり厚生年金と同じよう考え方に——厚生年金だって満足じゃないけれども、少なくともそういう線くらいまでこの国民年金もやってもらえたならば、こういう気持国民の中に非常にあるということです。そういう点については厚生大臣はどうお考えになりましょうか、今日すぐこうするということはできないことであると思いますけれども、将来の考え方としてはどうであるかということをお尋ねしたい。
  58. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民年金内容をもっと改善し、向上させなければならないという考え方につきましては、私どもように考えておるわけであります。この点は本島委員と全く同じであります。また、せめて厚生年金くらいまでというお考えもよくわかるのであります。すでに今のお話の中にもございましたが、厚生年金それ自体がまだこれでは足らない、引き上げなければならぬというよう段階にまできておるわけでございます。その点も検討いたしておるわけでございますが、お話にも将来の問題ということでございましたので、将来の問題といたしましては、やはり各種年金総合調整というふうなことを考えて参らなければならぬと思います。従って、われわれとしましては、国民年金についても、事情の許す限り内容をもっと豊かなものにしたいという心持でやっておるわけでございますが、何さま被保険者負担能力の問題もございますし、国の負担ということにもおのずから限界もあることでございますので、その間の事情を考えながら、内容の向上に向かって皆さん方の御協力を得て進んで参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  59. 中野四郎

    中野委員長 関連事項について発言を求められております。これを許します。小林進君。
  60. 小林進

    ○小林(進)委員 国民年金で、年金額の引き上げは保険料にも影響してきますから、なお五年ごとに規定を改正するという規定があるから、今困難だという厚生省側の御説明も一応は無理からぬ。しかし、それを私は今ここで全部肯定するわけではないのですが、一応の数字は出ておる、こう考えます。そのうちで一体福祉年金はどうか、これは保険料はございません。まして補完的処置ではありましょうけれども、福祉年金にしても、老齢年金にしても、母子年金にしても保険料はありません。五年の規定もございません。これは先ほどからわが党の吉村委員が言っておるように、私はやはり生活保護法を一応基準としておきめになったものと思う。どういう基準でおきめになったのか知りませんが、私は小山さんのごとき博学ではございませんので、この点はお聞かせを願いたいと思います。いずれにしても、それをおきめになったときから比べると、今日は非常に物価並びに生活水準が高騰をいたしております。あなた方の大蔵大臣をして言わしむるならば、生活保護においてももう四割以上引き上げているじゃないかということを一生懸命してPRおる。それなら、私はこの福祉年金についても、当然支給額を改定して下さってもよろしいのじゃないか、むしろ改定すべきじゃないかと思いますが、この点いかがでありましょうか、お聞かせを願いたい。
  61. 小山進次郎

    ○小山政府委員 いきさつの方から申し上げますと、実は大臣からも明後年度の実施を期して、福祉年金年金額について検討するようにという御指示を受けております。今までの考え方は、本会議等で大臣がしばしば申されておりますように、現在まだ相当数の人がいろいろな制限がありまして、福祉年金を受くべくして受けていない状態にいるわけであります。それが今回、たとえば、ごくわずかな公的年金を受けている者には、併給とかあるいはいろいろな所得制限の基準を引き上げるとかいうことで、かなり広くまで及ぶということになりまして、まだ若干問題は残っておりますけれども、まず支給制限問題については、もう少し手を入れれば、ほぼそう無理のないところまでいけるというところに近づきつつあるわけであります。そうだとすれば、ただいま先生仰せのよう事情があるので、当然明後年、つまり現在御審議を願っております予算の次の予算になるわけでありますが、そのときの実施を期して今から年金額も検討をするように、こういうことでございまして、これは今いろいろ検討をしておるところでございます。
  62. 小林進

    ○小林(進)委員 明後年を期して福祉年金の支給額を十分考慮するという御説明は、私ども一応ちょうだいをいたしますが、ともかく今年度もこうやって生活保護法の基準を四割以上も引き上げておるにかかわらず、福祉年金については、制限を若干緩和したとおっしゃるが、十三万円の制限を十五万円までお引き上げになった。スズメの涙という言葉がございますが、ほんのスズメの涙の修正でこれをごまかしておいでになる。これは実に実情に即しないと思うのでございまして、何も十三万円の制限を十五万円に修正していただかぬでも、われわれ社会党が主張をいたしております六十五才以上当面二千円がございます。基準年度四十年になりますれば三千円でございますが、当面は二千円。諸物価の高騰による生活水準の引き上げと現在の保護基準の状態からながめて、この主張が無理だろうか、無理じゃないと思う。そこら辺に改正してもらえば、制限などというものは問題にならない。全部が解決してしまう。また、この主張は私がここで言うわけじゃない。おそらく老齢者全部に聞いても、社会党の案がよろしいと言うでしょう。そんなわずかな制限の緩和よりは、社会党の主張の方がよろしい、全国民が支持すると確信します。老齢者は必ず支持します。どうですか、そのよう一つ措置できませんか。今すぐできないにしても、明年度、明後年度あたりは少なくともその線あたりに持っていけないかどうか。これは世論でございますから、世論を代表して大臣一つお聞きしておきます。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 福祉年金の額の問題でありますが、もちろん千円が二千円になるとか、千五百円が二千円になるということは、これは喜ばれるのは当然だと思います。それで御反対になる向きはもちろんないと思います。ただ現実問題といたしまして、われわれも今の状態ではどうであろうかと考えますので、私は事務当局に、この年金額の問題について検討するようにということを申しておるわけであります。どういう結論が出ますかわかりませんけれども、よく検討してもらうことにして、話を進めておるわけございます。それと同時に、年金額を引き上げることも大事でございますが、まだもう少し年金を受ける範囲の問題を考えるのが先じゃないかということで、今回の支給条件の緩和を皆さん方に御審議をお願いしておるわけであります。これが一応のところにいきますれば、年金額の引き上げという問題についても積極的に、十分考慮してみたいと存じております。なお、よけいなことのようでありますけれども、今回御審議を願う問題の中に他の公的年金との併給というようなこともございますので、そういうことによって、また、広い範囲において、低所得層の方々に対する幾らかのお役に立つのじゃないかと考えております。いずれにしましても、福祉年金の額の問題については検討を進めることにいたしておりますので、その程度で御了承を願いたいと思います。
  64. 小林進

    ○小林(進)委員 これでもう終わりますが、大臣言わずもがなのことをおっしゃいますから、私もまた質問をするのでございますけれども、併給の問題でございます。僕は、生活保護者にみんなむしろ併給すべきだと思うんです。それを軍人の扶助料の問題だけを併給するというやり方が、実は間違いなんです。これはむしろ軍国主義の復活を潜在的に思わせるような、そういう併給の仕方なんです。これはきょうの問題でありませんから、私はあらためてやります。やるなら全部やる。  ただ、今の問題ですが、補完的処置として、やはり福祉年金を先におやりになった。実施されたんです。実施しておいて、実施をしながら今度は三十六年度から初めて年金の徴収を開始されたのでありますから、僕はやはりこの福祉集金の方を先に修正していって、先を歩かして、国民年金をあとから修正していく、あるいは年金額も修正していく、出発の歴史はそうなっているのですから、そうする意味においてもまず福祉年金を——さっき小山さんは、三十五年から五年目ですから四十一年ですか、四十一年に国民年金は改定せられると言われたが、その前に、まず福祉年金を社会の実情に合わせて改正をしていくということが、その出発の経緯からながめても私は正しいんじゃないかと思いますから、一つ早急にこれを改正するように御努力を願いたい、先ほども、これは残念ながら大臣じゃなくて小山さんから、明後年、おそらく来年度の予算の審議のときにはちゃんと改正案が、福祉年金の引き上げが出てくるというふうなお話がございましたから、これは大臣になりかわって小山さんが答弁されたものと了解いたしまして、私は、この関連質問をこれで終わることにいたします。
  65. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどお答え申し上げました通り、私としましては、そのつもりで検討するようにということを申しておるわけでございます。検討の結果がどういうことになりますか、それはそのときのことでありますが、厚生省としましては、そういうつもりでこの問題と取り組んでいこう、こういう気持を持っておることを御了解願いたいと思います。
  66. 中野四郎

    中野委員長 八木一男君。
  67. 八木一男

    ○八木(一)委員 厚生大臣社会局長と医務局長にちょっと御質問を申し上げたいと思います。  実は非常に急を要する問題でございますので、日程外にお願いをしたわけでございますが、奈良県の奈良市に日赤病院があるわけです。この日赤病院について、県庁の整備計画の場所に日赤病院がありました関係で、県庁の方は、そこをどいてくれということから始まりまして、日赤の非常に不熱心な投げやりの状態と相待って、県知事であり、日赤の支部長である奥田良三という人の態度としては、この日赤病院を閉鎖するというような方針をきめられまして、それで日赤の従業員やそこに入っている患者たちは、それでは困る、また、非常に公的病院の少ない奈良の市といたしましては、市民も、それでは信頼のおける公的病院が少なくなるから困るということで、今いろいろ問題が起こっているところであります。その問題全体の背景についてもお伺いをいたしたいのでございますが、非常に緊急な問題でありますので、それから派生した事態について、ぜひ厚生大臣のお考えを伺っておきたいと思うのです。  そのことで閉鎖をしようとかかっている方の側では、一月の三十一日にどうしても閉鎖をする、であるからということで、今まだ入院中の患者に対して退院させようということを強制して、非常に圧力をかけているわけであります。その支部側も、病院の管理者側も……。そこには、特に分院には結核の重症患者がおりまして、環境を変えることは悪いということを自分も知っておりますし、また非常に苦しい状態でありますから、そのまま置いてそこで療養したいという気持が患者に強いわけであります。それを圧力をかけ、患者がそれで困ると言いましたところ、結局生活保護を受けているよう人たちが多いので、そういうことを担当している人たちを使って圧力をかけて、家族からも、退院させねば困ったことになるのではないかという圧力をかけて、退院強制をしているという状態にある。  それで一月二十九日に、虎谷久子という結核の重症患者が、そういうようなまわりの圧力のために済生会の病院に転院をいたしました。転院をいたしましてから容態が悪くなりまして、二月二日の朝なくなったわけであります。非常に重度の患者でありまして、なくなったことについて、あとで、受け入れた側の済生会の奈良病院の院長は久米さんという人でありますが、「右肺の機能はまったく失い、左肺にも障害が見られ、ろく膜にも影響が出ている重症だった。そのため心臓に負担がかかりすぎ心臓衰弱が死因となった。しかし直接の原因は、一日にたくさんの家族が面会に来たので興奮したためだと思う。」というようなことを新聞記者に対して発表しているわけです。とにかく圧力による転院が、その死の直接原因かあるいは間接原因か存じませんけれども、非常に大きな影響を及ぼしたものと見られるわけであります。  再起を目ざして一生懸命療養していた人が、このような日赤のやり方、病院の管理者のやり方で生命を失うというような結果を招来したことは、これはどちらがその原因かということは水かけ論で、いろいろな逃げる議論もあるかと思いますけれども、だれが見ましても、そのような転院後すぐなくなったということは、それが原因一つになっていることは明らかであります。こういうような医療上ゆゆしき問題で、また、特に博愛を旨とする日赤の関係者がこういうことをやったということは、非常に重大な問題であります。それについて厚生大臣はどのようにお考えか、一つ御所見を伺いたいと思います。
  68. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまお尋ねになりました中の具体的なことについては、私もよく承知いたしておりません。おそらく事務当局においても調査中だと存じておりますけれども、その辺についてのお答えは差し控えたいと思いますが、お述べになりました問題について、非常に無理なことがそこにありますと、これは望ましいこととは存じません。ことに、今のようなことで動かしてはならぬ人を動かしたというようなことがかりにあったとすれば、これは遺憾に存じますけれども、今具体的なことがわかりませんので、その批判は差し控えたいと存じます。何にいたしましても、こういうふうな状態になりましたことについて、われわれは気をつけなければならぬ点が多々あるように存じます。関係者がお互いに反省をし、そして円満に物事が進んでいくようにありたいものと念願いたしておる次第であります。これはまあ日赤と県の関係と申しますか、その辺でいろいろやっておることと存じますが、そのためにと申しますか、そういう関係で、なくなられました方に対しましては非常にお気の毒に存じております。そういうことがあってはならぬという心持で一ぱいでございますが、具体の問題の処理ということになりますれば、私もよく事情をつまびらかにいたしておりませんので、すぐお答えはできませんが、事務当局でわかっている限りのことはお答え申し上げたいと存じます。
  69. 八木一男

    ○八木(一)委員 今初めてこの事実をお知りになったわけですから、今の御答弁で非常にけっこうだと思いますが、問題はまだ残っておるわけであります。まだ転院をすることは工合が悪い、だから療養をしたいという患者が残っております。その中に重度の患者がおるわけであります。引き続きこのような人が強制的に転院をさせられて、またそのようなことが起こったら大へんな問題であると思うのです。その意味で公的病院についての監督をしておられる、医務局、あるいはまた、日赤についての監督権を持っておられる社会局を通じて、厚生大臣のお気持で、そのような強制退院またはそれによる容体の急変ということが起こらないように、これは引き続いて起こりましたら大へんでございます。日赤問題の背景についてはまた機会を得てゆっくりと——ゆっくりというよりもできるだけ早い機会に、もっと時間をかけて厚生大臣のお考えを伺い、いろいろ御要請をいたしたいと思いますが、まず緊急な問題として、そのような強制退院、患者を追い出すということをしないように、厚生省の方の病院に対する行政上の監督権あるいは日赤に対する監督権を発動していただいて、そのようなことが引き続き起こらないように処置してもらいたいと思いますが、それについての厚生大臣の……。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 強制退院とかあるいは追い出すかというような事態であってはいけないと私は思います。ただ問題は、病院の経常主体が変わるとかなんとかいうことで、そこに処置をしなければならぬものがあるということについては、患者の方々の御協力を得てスムーズにものがいくようにあってほしいと私は思うのでありますが、追い出すとか、強制するとかいうことでなしに、かりにそれをどこかに移ってもらうとしまして、その移った結果が非常に悪い、今お述べになりましたような例、そういうことになるおそれがあるというふうな場合には、やはりよほど慎重に扱ってもらわなければならぬと思います。責任を持ってその間のことは処置してもらいたいというふうに思います。いずれにしましても、この問題は、それだけの問題ではないようお話しになりましたが、やはり問題として解決し、処理すべきものについては、お互いに理解し合って、円満に解決するということが一番望ましいのでありますが、結論がすでに出ておるとしますれば、その解決策に向かって関係皆さん方にも御協力をぜひいただきたいものと、さように考えるわけであります。
  71. 八木一男

    ○八木(一)委員 閉鎖という問題につきましては、長いことそこの職場を守ってきた従業員としては、これは賛成できない。それから奈良市は公的病院の病床が少ないわけです。そこの病床が少ないのを、日赤等の公的病院があるからカバーしておるということを常々厚生省が言っておられるわけです。それが減るということになれば、結局全国の平均から見て、非常にそういうような病床が少なくなるわけです。これも好ましい問題ではありません。日赤という団体は非常に奇々怪々なる団体であって、病院と本社との責任関係はあいまいもことしておる。病院の方には全体的には相当資金の余裕がありながら、病院の整備等に金を出さない。そういうような間違ったやり方をしておることが非常に根本的な悪い問題であって、監督官庁としての厚生省としては、これは日赤のあのような使命にかんがみて、そのような方法をとらないで、りっぱな再建をするようなことを御指導いただきたいと思いますけれども、きょうは突然でございますし、この問題はできるだけ早い別な機会にお伺いさせていただきたいと思いますが、特に緊急で、また、きょう、あすにでも強制退院があってなくなる方があったら大へんですから、絶対に患者を追い出す、強制退院をさせるようなことはさせないよう厚生省監督権を発動していただいて、日赤病院あるいは奈良の日赤の支社等にそのよう厚生省の御意向をお伝えになって、そのようなことが起こらないように善処していただきたいと思うわけでございます。それについて厚生大臣のはっきりした御返事を伺って、あとの質問は、別のできるだけ早い機会にいたしたいと思います。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 具体的事実がわかりませんので、それに対してどうとかこうとかいうことは申し上げかねるのでありますけれども、今申しましたように、無理々々にいわゆる追い出すとかなんとかいうようなことであれば、よほど取り扱いを慎重にしてもらいたいと思います。しかし、同時にまた、病院の関係からしてどこかに移ってもらわなければならぬ、どこかにかわってもらわなければならぬという事情があるといたしますれば、それに対して、差しつかえない限りは患者の諸君も協力してもらわねばならぬ、かように考えておる次第であります。  いま一つ、奈良にどうとかこうとかいうことについては、具体的な御返事はいたしかねますが、私としましては、十分関係者から話を聞いて、考えてみたいと思います。
  73. 八木一男

    ○八木(一)委員 具体的にはっきりしないと申されましたが、非常に残念なんです。直ちに医務局並びに社会局の方から、奈良の日赤病院あるいはまた日赤の支部に、そのような患者を強制退院させたことで患者がなくなったという話を聞いている、もしそういうことがあるならばゆゆしき大事であるので、そういうことをしないように、そういう患者の生命、健康に関するようなことは、病院としてあるいは日赤として、そういうことがあったら非常にゆゆしき問題である、そういうことが今後絶対に起こらないように、強制退院とか追い出しとかいうようなことを強行しないようにというような御指示、御連絡を——これは、かりにそういうことが起こるかもしれませんので、それだけすぐにやっていただきたいと思いますが、それについてのお答えを……。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 実情をさらに取り調べまして、その上で善処いたしたいと思います。
  75. 八木一男

    ○八木(一)委員 すぐ連絡をとっていただいて、とにかく厚生大臣はそういうことが起こったかどうか、それが原因であったかどうかについて、——一方的に病院側、県が悪いということをきめつけたら、それは悪いのではないかという御配慮があるのではないかと思います。しかし、そんな配慮は要らないので、そうじゃないということならば、向こうはそうじゃないということを解明なさるでしょうから、とにかくなくなってしまった命は返らない、容態が悪くなってしまったらそれをなおすのは非常に困難です。強制退院、患者追い出しというようなことで患者の生命なり容態に急変があったら大へんですから、そういうことがあったという話を聞いたが、そういうことが絶対にないよう措置をすべきであるというようなことを、厚生省の病院に対する行政、あるいは日赤に対する監督権を発動させていただいて、即時御連絡、御善処を願いたいわけです。それだけしていただくことをお約束して下さい。
  76. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 承知いたしました。
  77. 中野四郎

    中野委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十八分散会