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1962-02-14 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十四日(水曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 齋藤 邦吉君 理事 永山 忠則君    理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       安藤  覺君    井村 重雄君       伊藤宗一郎君    浦野 幸男君       小沢 辰男君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    澁谷 直藏君       八田 貞義君    早川  崇君       松浦周太郎君    米田 吉盛君       大原  亨君    河野  正君       島本 虎三君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     今村  讓君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (社会局長)  大山  正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君  委員外出席者         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君         建設事務官         (住宅局住宅総         務課長)    大津留 温君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月十四日  委員松山千惠子辞任につき、その補欠として  八田貞義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八田貞義辞任につき、その補欠として松  山千惠子君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  社会福祉拡充のための予算増額に関する請願外  四件(賀屋興宣紹介)(第九〇八号)  同(田中榮一紹介)(第九〇九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九一〇号)  同外二件(細田義安紹介)(第九一一号)  同外二件(本島百合子紹介)(第一一四七  号)  民間社会福祉事業従事者の待遇及び労働条件改  善に関する請願外四件(賀屋興宣紹介)(第  九一二号)  同(田中榮一紹介)(第九一三号)  同(中野四郎紹介)(第九一四号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第九一五号)  同外二件(細田義安紹介)(第九一六号)  同外五件(本島百合子紹介)(第一一四八  号)  民間社会福祉施設従事者処遇改善に関する請  願(廣瀬正雄紹介)(第九一七号)  同(米田吉盛紹介)(第九一八号)  同(池田清志紹介)(第一一〇三号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(渡  邊良夫君紹介)(第九二三号)  低所得階層対策充実等に関する請願米田吉  盛君紹介)(第九二四号)  同(池田清志紹介)(第一一〇二号)  人命尊重に関する請願賀屋興宣紹介)(第  九三六号)  同(天野公義紹介)(第九三七号)  同外一件(福永健司紹介)(第九三八号)  同外五百六十七件(岡崎英城紹介)(第九三  九号)  同件九件(臼井莊一君紹介)(第一二二一号)  緊急失業対策法の改正に関する請願赤澤正道  君紹介)(第九五六号)  国民健康保険に対する国庫負担率引上げ等に関  する請願八田貞義紹介)(第九五七号)  同外五件(池田清志紹介)(第一一四四号)  民間社会福祉施設従事者処遇改善等に関する  請願廣瀬正雄紹介)(第九五八号)  薬種商取扱医薬品に関する厚生省省令撤廃の  請願三木喜夫紹介)(第九五九号)  同(山口丈太郎紹介)(第九六〇号)  同(植木庚子郎君紹介)(第一一八七号)  生活保護基準引上げに関する請願羽田武嗣  郎君紹介)(第九七六号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇四一号)  同(中島巖紹介)(第一一一四号)  児童福祉法に基づく措置費増額に関する請願(  羽田武嗣郎紹介)(第九七七号)  同(唐澤俊樹紹介)(第一〇四二号)  同(中島巖紹介)(第一一一五号)  療術の制度化に関する請願舘林三喜男君外一  名紹介)(第一〇七七号)  同(辻原弘市君紹介)(第一一八八号)  国立療養所看護婦増員等に関する請願小林  進君紹介)(第一一四六号)  動員学徒犠牲者援護に関する請願米田吉盛君  紹介)(第一一四九号)  同(簡牛凡夫君紹介)(第一二一七号)  外傷性せき髄障害者長期傷病給付及び休業補  償費の給付率引上げ等に関する請願櫻内義雄  君紹介)(第一二一八号)  戦没者遺族処遇改善に関する請願田中彰治  君紹介)(第一二一九号)  精神薄弱者福祉対策に関する請願本島百合  子君外一名紹介)(第一二二〇号)  未帰還者問題の解決に関する請願宇田國榮君  紹介)(第一二四七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 厚生行政中、おもに社会保障の問題につきまして、厚生大臣にお伺いをいたしたいと思います。  実は先日も田邉委員関連質問で申し上げました、予算について大蔵省が、事柄の緩急を無視して、一律に要求を押えて査定しようとする傾向に対して、それを是正しなければならないと考えまして、厚生大臣の御意見を伺い、大蔵省を追及いたしたいと考えておりましたが、残念ながら当面の相手である大蔵省がまだ見えておりませんので、その問題は大蔵省が参ってからにいたしまして、さっそくほかの問題に移りたいと思います。社会保障の問題で、防貧救貧ということがいろいろといわれておりまするけれども厚生大臣には、防貧政策救貧政策のどちらを第一とするようないろいろ学説がございますが、大臣としてはどのようにお考えでございますか、今まとまったお考えがあれば、伺わさせていただきたいと思います。今まとまったお考えがなければ、そのままでけっこうでございます。
  4. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 防貧対策救貧対策と分ければいろいろあるだろうと思います。私は、現実施策を進めていく上から申しまして、どちらが大事だというわけにはなかなか割り切れないのじゃなかろうか、ただ限られたワクの中でいろいろな施策を講ずるということを前提として考えますれば、差しおきがたいものにとにかく手をつけるということは、これは当然のことだと思います。しかし、少し大きな観点に立って考えますれば、つまり貧乏をなくするということが、やはり政治としては一番大事な問題の一つだろうと思いますので、さような意味から申しますれば、貧乏退治と申しますか、貧乏のないような政治に持っていくということが、政治の目標としては、非常に大きなものだということは申し上げることができると思いますが、現実施策として進めます場合においては、目の前に捨ておきがたい人がいるのに、それを捨ておいてほかのことをやるわけにも参らぬ、そういう意味で、今どちらが大事だというふうに、かっきりと申し上げるわけには参らぬと思います。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 どちらとも軍配を上げられない御意見でございますが、私はそれはそれでけっこうだと思います。将来に貧乏が起こらないように防貧対策を完成しなければならないし、その問題について直ちに手を染めていかなければならないことは当然でありまするが、観念的に防貧々々ということを言い過ぎて、今までの経済政策の失敗、あるいはまた、今まで防貧政策が完成されておらなかったために、現在非常な貧乏がある、貧困があるという問題について、それに対処することを考えなければ、政治の一番大事なことを置き去りにしたということになろうかと思います。どちらも大事でございまするが、焦点といたしましては、直ちに救貧の方に十分な措置をすることが、まず第一に肝要ではないかと私ども考えるわけでございまして、その両面について御配慮をいただいていることは、私どもと同じような考え方でけっこうだと思うわけでありますが、実際において、救貧政策について十分な対処がされておらない点は、お考えはそうといたしましても、非常に遺憾であります。本年度、救貧政策の中核でございます生活保護予算について、厚生省としては基準を二二%引き上げられる予算要求をされたわけであります。その二二%引き上げる予算要求をされたにつきましては、それだけをはじき出された根拠がおありになると思いまするが、それについてお聞かせをいただきたいと思います。
  6. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 予算編成の過程におきまして、厚生省としまして概算を大蔵省要求いたしました際に、二二%というものを要求したことは、これは御承知通りであります。厚生省としましては、せめてこのくらいは引き上げたいものということで要求をいたしたわけでございますけれども政府部内において、財政当局を初めいろいろ相談をいたしました結果、結果といたしましては、政府全体として、来年度は一三%程度でとめておくのが妥当であろう、こういうことになりましたので、さように決定したわけでございまして、あまり二二%のことをかれこれ言うことは、私も実はいかがかと思うのでございます。ただ心持を申し上げますれば、前々から申し上げておりますように、私どもはやはり経済成長政策というものを捨てたわけではございませんで、ますますこれをやっていきたいというつもりでおります。そして国民生活向上をはかっていきたいという基本気持は、従前同様に堅持して参るつもりでおるわけでございますので、国民生活向上に伴って一部の人が取り残されないようにやって参りたい、むしろほかが二倍になるならもっと引き上げたいという心持をもって、生活保護基準の問題を考えておるわけでございます。昨年来一八%あるいは五%というふうにだんだんと上げて参りましたのも、一つは物価の関係もございましょうが、同時に、国民生活の底をいささかなりとも上げていきたい、こういう心持でやっておるわけでございます。従って、性急な考え方をすれば、二二%どころじゃない、三〇%も四〇%も上げていきたいという気持を実は持っておるわけでございますけれども、これだけを考えていくわけにも参りませんので、少なくとも一般勤労世帯に対する生活上の格差をできることなら縮めて参りたいという心持で、私どもは、この際二二%ぐらい引き上げますと、現在のわれわれの調査しております格差の上から申しますと、これが四五%くらいまで引き上がってくるという心持でいたしておりましたので、一つその程度要求をしようということにいたしたわけでございます。かれこれ勘案いたしました結果、政府全体ではこの際一三%程度に来年度のところはとめておこう、さらにまた将来を期しようということになったわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 ただいまの厚生大臣の御意見は、非常に熱心なお気持も披瀝されておりますし、それから御努力の跡も見えますので、灘尾さん自体責任を追及することは、何といいますか、そういう気持をとめておきたいという気持にもならないわけではありませんけれども、個人ではありませんで、やはり池田内閣社会保障担当者である厚生省最高責任者であるという立場において、幾らお気持がそうであっても、これは国民のために追及せざるを得ないことである。せめて二二%とおっしゃった、ということは、二二%が、厚生省のお考えとして、これは現在の時点においても二二%アップでは足りないということを意味しておられるわけです。それから三〇でも四〇でも上げたい、率直にそうおっしゃっていただいたのは、今までの大臣よりもずっとけっこうと思います。けれどもほんとうの実態は、三〇、四〇上げなければならない、二二%じゃまだ少ないという状態であることをはっきりと現わしていると思います。それについて、せめてということで要求された二二%が、一三%に区切られたということはゆゆしい事柄だろう。その点については、厚生大臣とともに大蔵大臣内閣総理大臣責任を大いに追及しなければならないと思いますけれども、その人たちに対して、非常に政治の先輩であり、すべての点について堪能な士である灘尾さんが奮闘されてもそういうことでとまったということについては、それは内閣総理大臣大蔵大臣が、あるいはまた池田内閣自体が、いかに反動的であるかという証拠であろうかと思いますが、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)それをもしノーノーという言葉のごとくそうでないならば、厚生大臣の御努力がまだ足りなかったということになろうかと思います。そういう点で、こういう問題ではほんとう政府並びに厚生省が完全な、十分な努力をしておられないということになるわけでございます。国民のためにはなはだ遺憾な点であります。ことに、厚生大臣も示唆されておりましたけれども、数年来一般勤労者世帯生活水準の比率が、昭和二十六年ごろからぐんぐんと下がっております。これだけで二二%上げて、さらにその倍くらい上げても、まだ二十六年の基準に達しないわけであります。ですから、生活保護というのは、米価の改定でちょっと補正をした、そこでちょっと上げたというような弁解を、ずっと続いた自由民主党並び保守党内閣がしておられるけれども、その反動的な政策のために、逐次そのような人たちの比較的な生活がつづめられてきた。それは絶対的なものは少し上がっておるでありましょう。けれども、比較的な生活がつづめられてきたということであります。今このようなことのために、世の中で一番苦しんでおられる方が、非常に人権をじゅうりんされておる状態にあるわけです。でございますから、二二や一三では足りない、さらにこれを飛躍的に上げていかなければならないと思います。ところが、灘尾さんが今の御答弁のように誠意を示されても、大蔵省なり内閣に壁があるということであれば、そういうことでない方法——このように有能な、このように熱心な大臣がやられても、せめてもというのがまた区切られるという状態であれば、そのような行政機構や、そのような行政機構の運営について考えを改めて、そうでない方向へ進められるということを考えていく必要があるのではないか。その意味で、たとえば公務員のベースについて、非常に不十分であるけれども人事院の勧告というものがある。それと似たような非常に民主的な審議機関、強力な審議機関でも置いて、行政委員会でもよろしい。しかし、一ぺんにいけないとすれば、強力な審議機関でも置いて、生活保護基準はどうあるべきかということを毎年審議して、そこで勧告したことを政府は守らなければならないというような機関を置いて、毎年々々、半年、一年のずれもなく、その非常に困った人たち生活が脅かされ、人権がじゅうりんされないような措置をとる必要があるのではないかと思うわけでありますが、そのような機関を置くことについて、厚生大臣の前向きの御答弁をいただきたいと思うわけであります。
  8. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は先ほど私自身気持を率直に申し上げたのであります。しかし、予算は、御承知のように政府全体で決定するものでございまして、私がかりに二二%上げたいと申しましても、最後の決定は閣議ですることでございますから、大蔵省がどうとか総理がどうとかいうよりも、むしろその問題は、やはりその決定にあずかっておる私の責任に属することでございますから、その意味におきましての御批評、御批判は甘んじて受けなければならぬ、かように考えている次第でございます。どうぞそういうふうに一つ考え願いたいと思います。私も同じように、現在としては、少なくとも来年度の予算として一三二%程度でとどめようということに同意をしたものでございます。問題はいろいろある、こういうふうにお考えをいただきたいと思うわけであります。私は決してそれを回避するわけじゃございません。同時にまた、生活保護基準の引き上げという問題は、必ずしも一挙に解決し得る問題でもございませんし、他の一般社会生活の実情というものともにらみ合わせて考えなければならぬ点もございましょうし、いろいろ考え合わせました結果が、全体としてはそういうことにおさまったのだというふうに御了解をいただきたいと思います。われわれとしましては、いわゆる経済成長所得倍増というようなことを申し上げております。従って、これに見合って、少なくとも一般生活のレベルが上がるその割合よりももっと引き上げていきたい。よく申すことでございますが、別にはっきりしたあれじゃございませんけれども、一応の目安としましては、この十年間に、生活保護基準は、ほかが倍になるのなら三倍くらいまでは少なくとも持っていこうじゃないか。また、それでとどめるというものじゃございません。その努力は依然として継続していかなければならぬ問題でございますけれども、そういうふうな考え方でもって一応の考え方を立てて、予算要求をしておるわけでありますが、その中でもなるべく早く上げたいというような気持を、われわれ自身としては、厚生省としては持っておるわけでございます。将来の努力はもちろん惜しむものではございませんけれども、できるだけまた来年度も引き続いて考えていきたい、そういう考え方をいたしております。  それから格差の問題でございますが、お話の通りに、従来の資料によりますれば、昭和二十六年ごろから見ますとその後落ちております。それがここ一、二年の間に幾らかずつ回復をしてきておるという状況でございますので、私どもは、この努力を続けることによって、さらにさような点を少なくとも縮めていきたい。おかげさまで、わずかながらもその格差は縮小しつつある。その方向に向かって一そうの努力を今後傾けて参りたい、かように考えておる次第であります。  生活保護基準を一体どこに求めるかという問題は、言うべくしてなかなかむずかしい問題だと存じます。さような意味におきましては、われわれも研究し、また学識経験のある人によほど御研究を願わなくちゃならぬ、そういうふうにも考えております。近ごろの生活保護基準のきめ方等については、幾らか従前より改善はされてきておるのではないかと存じておりますが、さてどの辺でどうしたらいいかということになると、なかなかむずかしい問題で、社会福祉審議会あたりでもいろいろそういう点についての御検討を願っております。われわれとしましても、事が簡単に計算ができ、簡単に進めるようなことができれば非常に幸いだと存じますけれども、そう単純に解決できる問題だとも思いませんが、考え方としましては、八木さんのおっしゃるような方向生活保護基準というものが設定せられていくというふうになれば、少なくとも事務的には非常に助かる問題でございますので、そういう点についての勉強は今後とも続けて参りたいと思います。今直ちに審議会を設けるとかなんとかいう考えはございませんけれども社会福祉審議会等ではいろいろそういう点についても関心を持っていただきまして、御検討願っているようなわけでございます。従って、趣旨についてあえて意見を申し上げるわけじゃございませんけれども、具体的に今こうするとかああするというふうな気持は持ちませんが、何とか適正な生活保護基準というものを、どなたがごらんになってもいいというふうなものができれば非常にしあわせだというふうには存じております。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 実は生活保護基準については、これは憲法二十五条に規定された健康で文化的な最低生活を保持する、それだけのものでないことは、これは周知の事実であります。そうであるにかかわらず、それがなかなかほんとうのところにいかないというような状態でありますから、よほどしっかり考えなければならないと思います。いろいろな問題については、たとえば賃金の問題については労働組合というものが作られて、そこで当然の賃金要求をするということで問題がどんどん進んで参ります。それから、非常に不当なことでありますが、いろいろな労働基本権を制限されているかわりに人事院というものがある。これは不当です。不当ですけれども、まだそういうものがあるために、幾分とも問題が——このごろは人事院も反動化して、ブレーキをかけるようになっているけれども、進むようなシステムになっている。ところが、一番弱い階層で、発言権がなくて、正式に組合の結成というようなことが法律的になくても、集まって政府並びにその力のある方に、こうしてもらいたいという要望あるいは要求を出すような状態にない、この生活保護を受ける人たち、そういう人たちですから、強力な審議会は、ほかにいろいろなものについてあります。審議会ばやりです。要らないような審議会調査会もずいぶんありますけれども、一番肝心なところにそれがないわけです。厚生省は、担当主管庁としていろいろな努力をされておりますけれども、ただいま質疑応答でわかりましたように、その御努力は十分なものではない。ある程度の御努力も、これは灘尾さんの責任だと言われたけれども、非常に無理解な政府全体の政策によって、その不十分なものがまたチェックされるというような状態にあるわけです。ですから、少なくとも、ほかのいろいろなものについてすら要らぬそういうものがあるのですから、こういうことにこそ、ほんとうの強力な権限を持った行政委員会でよろしい、そこまで一ぺんにいけないというならば一番強力な審議会というものを置いて、社会福祉審議会というような力のないものではなしに、権限を置いたそういうものをもって問題を進めていく、これは厚生省を別にそでにするわけじゃございません。そういう点の理論的根拠を出されるということになれば、厚生省がやりたいと思って今までブレーキがかかっていたことを、どんどんおやりになることにもなるだろうし、そういう意味で、そのような機関を置くことについて、前向きに一つ考えをいただきたいと思います。今、即刻に置くとか置かないという御返事は無理かと思いますが、できるだけ至急に前向きにお考えをいただきたいと思いますが、厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  10. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木委員のお気持はよく拝承いたしました。また私どもとしましても、どなたにも向くような何か基準なり、しかもそれが、事務のペースに乗ってどんどん進行していくというような形になることが望ましいことだと思っております。御趣旨につきましては、十分検討さしていただきます。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 それとともに、実際の処理について、末端では、生活保護を受けさしてもらえると思ったのになかなか受けさしてもらえないとか、これだけの生活扶助並びにほかの諸扶助がくると思っていたのにそうでない金額しかもらえなかったとか、もらえないことについて非常に疑問なので、どういう根拠でもらえないかということを伺ったところが、その説明をしてもらえない。これは九州地区にそういうような状況がございます。そういう具体的な問題について、渡しておいてあとで払ったらいいという問題ではありません。この間の最低生活の費用の問題ですから、特に急速に解決しなければならない。そういうような苦情処理というような問題について、これはそんなに大きな機関でなくてもいいですから、非常に公平に、民主的に迅速にそういうような問題が処理できる機関を作る必要があるのではないかと思うのです。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  12. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活扶助あるいは生活保護というようなことは、私は単純な行政じゃないと実は思うのです。それを取り扱う人たちが、よほど親切に、懇切にやってもらわなくちゃならない。また、実際それを通じてその人たち生活に安心感を与え、あるいはまた、立ち上がりのよすがとする、こういうふうなことでなければならぬと思います。従って、今お話しになりましたような事例があるとするならば、もう少しよくわかってもらうように、あるいはこちらに間違いがあれば直せばよろしい、また向こうさんに誤解があれば、誤解を解くというような努力は当然なさるべきことだと私は思うのでございます。それがただお金をあげるというだけの行政に終わってはいけない、こういうふうに考えておる一員なのでございます。  苦情処理の問題等も、そういう意味では第一線の人たちのやり方いかんによってよほど解消するのじゃなかろうか、かように存じますが、今お話しになりましたような問題について、私まだ十分考えたことはございませんので、一つ研究さしていただきます。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 ただいまの生活保護法の運営において、生活保護法の第一条に、「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」とございます。ところが、この自立の助長という問題について、後段で積極的な条文がほとんど見当たらないわけであります。これを解釈して、無理にそれに当たると解釈すれば、生業扶助がこれに当たります。当たりますが、生業扶助は、何らかの仕事を始めるためにそのときに必要な金を出すだけであって、そこで収入を得たときに、その収入は一応法律上では収入に見て、差し引かれることになるわけです。そうなりますと、その仕事は、生活を子供のために、あるいは年寄りのために向上させるということには直ちに役に立たないわけです。数年間経て、それが軌道に乗って生活保護から離れることができるときに初めて役に立つだけであって、それではその間、はずれるまでの間に、仕事をすればするほど疲れる、くたびれる、あるいはせめて物質的な点で子供をかわいがり、親に孝行ができないから、ただ時間的な、人間的な愛情でこれをカバーしようという時間すらも、それをやることにとらわれてしまうというようなことになろうかと思います。ですから、やはりそういうことをしたときに、それだけの実際の生活向上するという方途を講じないと、自立を助長するということにはならない。これはすでに厚生省が認めておられるところであって、勤労控除その他の制度があることを私は存じておりますが、しかしながら、法律の建前が、そのような勤労控除という厚生省の問題に対処して、適切な判断を実施に移すために非常にまずい状態になっている。法律の条文自体が、第一条、第二条、第三条には非常によいことをうたっておきながら、四条以下で非常にきびしく締めて、実際に合わない。厚生省すらも、これはよい意味で法律をぎりぎりの極限まで解釈して運用しなければならぬというような法律自体に間違いがあると思う。その極限に解釈しなければならないというきびしい条文は、これは生活保護法の第一条の精神に反している。憲法二十五条の精神に反している。国の基本法なり、生活保護法の第一条のほんとうの理念に反して、それを行政上の実情に反したような、そのまん中の一番の障害を取り除く必要があると思う。そのような条文を変える必要があると思う。その点について積極的に御検討になる必要があろうと思いますが、それについて厚生大臣の御意見を伺いたい。
  14. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、前にも八木委員からお伺いしたことであります。現在の生活保護法は、その建前が、御承知通り一種の補完的作用と申しますか、元来それぞれ自分で生活の道を立てていく、またその力がある限りは自分でやっていく、しかし、それの足らない人に対して生活保護を適用して、そうして最低限度の生活は維持させる、こういう建前になっておるように承知いたしておるのでありますが、今その根本の建前を変えるとか、いじるとかいうところまでのふんぎりがついておりません。しかし、この生活保護を通じまして、可能な限りは生活保護の適用から抜け出て、自分で生活を立てていくという方向に持っていくべき性質のものではなかろうか、かように考えております。従いまして、今お話しの出ておりましたような、あるいは勤労控除であるとか、生業扶助であるとか、あるいは教育費扶助であるとか、そういうふうな問題についてはできるだけ親切な配慮をしていかなければならぬものと、かように考えておる次第であります。立法的な手段に訴えてその点はどうするかということにつきましては、まだ結論を得ておりませんが、私はお気持の点については十分尊重いたしまして、研究はいたしてみたいと存じます。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 前向きの御検討を厚生大臣の方からおっしゃっていただきましたので、この点非常にけっこうでありますが、非常に大事な問題でありますので、重ねてその問題について申し上げたいと思います。非常に害になっているのは第四条の保護の補足性でありますことは、灘尾先生の御承知通りであります。「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」第四条の第一項です。この「あらゆるもの」というようなしばり方、このしばり方は、厚生省が今現状に合わしたあたたかい配慮をしよう、あるいは自立を助長させようということに非常なブレーキになっている。現状に合わなくて、生活保護法第一条の精神に合わなくて、憲法第二十五条の精神に合わない、このようなものは、やはり取っ払う必要があろうと思う。取っ払う点について、やはりこのようなものがあった方がいい、ないと野放しになってしまうという御意見もあると思う。それについて、そんなに全部取っ払う必要はない、今の非常に工合の悪い点を直すだけの取っ払いをしただけでいいのであって、四条全部をなくす必要はないと思いますけれども、少なくとも厚生省が何だか理屈を考え出して、勤労控除の制度をしなければならないというような現状を法律上しばるようなところだけでも、たとえば「その他あらゆるもの」というようなものを取っ払えば、これはだいぶ法律解釈も楽になって、行政運用もよくなる。実際の問題は複雑な問題ですから、行政官庁がいろいろと規則を、いろいろのやり方の建前で処理しなければならないことが多いと思いますが、それを非常にチェックしている、「その他あらゆるもの」ぐらいははずすということは、現在の状態として、憲法の理念からしても、あるいは現状からしても、どっちから考えても必要ではないか。こんな、前にこういう状態を知らない人が考え出した条文一つで、そのときのお役所の人が、そのときの法制局の人が、ただ観念的に考えてやったかなで書いた五つくらいの文句で世の中の人が苦しみ、行政官庁の人があたたかい配慮をしようとしても、さんざ知恵をしぼらなければならない、こんなことでブレーキをかけられたのでは、国民全体としても政府としても、非常につまらぬであろう、こういう「あらゆるもの」くらいを取っ払うことは、至急に考えていただきたいと思います。それについて厚生大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  16. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほども申し上げましたように、現在の生活保護の制度は、自力でいけるところは自力でいくということを中心にして立てておるように思います。八木先生から憲法二十五条の理念に反するとかいうふうなお言葉もございましたが、私は、必ずしもそれが反しておるとも思いません。その建前の上に立って、いかにして生活保護法をうまく運用していくか、また、その運用の仕方いかんによって殺されもするし、生きもするというふうな場面もあろうかと思います。この行政の運用については、そのそれぞれの行政当局が、ただ金銭上の所有権を移転したのだというふうなことでは済まぬ。やはりそこに、何といいますか、一つの精神というか、魂というか、そういうものを持ってこの制度を運用してもらいたいと思っておるわけでございます。「あらゆるもの」という言葉でございますが、私はその言葉を取ればそれで解決するかどうかというふうな点についても問題がありはしないかと思うのでございますけれども、条文の細部のことにつきましては、御注意もございましたことでございますので、なおよく私ども研究いたしてみますけれども、条文の問題というよりも、やはり実際の運用の妙ということがこの種の立法には相当要るのじゃなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 今いきなり申し上げましたので、御検討になるおひまがなくて、やはりあまり急激なことになってはいけないという御配慮で今のような御返事になったものと、私はよい意味で解釈したいと思いますが、今のお言葉では非常に不十分であって、私どもとしては満足ができないわけです。ですから、時間を置いていただいてけっこうでございますが、一つ御検討になって、前向きに取っ払うことを考えていただきたいと思います。その事実を一つ。前にも申し上げましたけれども、もう一回申し上げますと、たとえば、今勤労控除ということでこういう問題に対処する、自立助長の問題で対処しようとして考えておられる。このときに、必要経費を補てんするという理論に立ってやっておられるわけです。それがいそういう理屈がないと、この厄介な法律があるためにできないわけです。それだとやはりそれだけの壁があってしまうわけです。あたたかい配慮はわかるのですが、たとえば生活保護をしている世帯のうちで、一人の労働者の場合、あるいは家族を三人なり四人なり持った場合でも、勤労控除の考え方で必要経費の控除ということになると、その世帯のうち働いている一人についてだけしか収入認定で控除することができないわけです。一つの子供、三つの子供、五つの子供があっても、六十九のおじいさんがあり、六十七のおばあさんがあっても、その人たち生活が潤うような制度にはならないのです。それではほんとう政治をする立場で不公平だと思われるのです。それがこの法律の厄介な条文のために、やはりできないことになろうかと思うのです。この点だけではありません。積極的に条文を起こしてもよいと思うのです。たとえば、主管大臣の定めるところにより、ある程度の収入については認定をしない場合もあり得る、というようなもっと積極的な条文の方がよいと思いますが、またこれもやはり書いておかないとバランスが合わないので、野放図にする必要はありませんけれども厚生省として今考えてあげたいと思っておられることが、死んだ法律の三つか五つの条文のためにブレーキがかかって、国民の待望していることが実現しないということであっては死んだ政治になりますから、そのような政治を死なす条文をなくし、生かすような条文を入れることを、ぜひ前向きで御検討願いたいと思うわけであります。  それからまた、今の問題にやはり関係があるわけですけれども、この前も申し上げましたが、厚生省では国民の声なりわれわれの申し上げたことなんかをだいぶ考えの中にとめられて、厚生省自体もお考えになって運用がだいぶよくなって参りました。たとえば、ちょっと前までは、生活保護を受けるには自転車の保有しか許されなかったけれども、今度はごく一部、しかも営業用に使っている場合は、スクーターあたりも保持したまま受けられるというふうに変わってきたように伺っております。また、前はラジオだけは保有できて、テレビは、古くてこわれかけておって、売ったら二束三文で、それを余世の楽しみにする老人が持っておっても、もぎ取ってたたき売って、わずか千円くらいのものを補てんしてからでなければ生活保護を適用しないという状態でありましたけれども、テレビについても弾力的に考えるようになられたようであります。これは非常にけっこうでありますけれども、やはり世の中はどんどん進展しますから、テレビがごく一部認められても、もう少し多く認められるようにならなければならないと思いますし、また、粗末な氷の冷蔵庫を持ってやっている、粗末な電気機具があったが、家の経済状態その他が逆転してそういう生活ができなくなった、電気洗たく機は古い型の、てんでだめなものであった場合でも、やはり今は持っていると工合が悪いのです。そういうものを買わないで貧乏に対応した方がよい家庭であっても、世の中の進展で買ってしまったこともあるかもしれません。しかし、世の中の経済状態が変わって、いけると思ったところが、そういう状態になった。しかも一部のそういうものがちょっと残っておる。今売ったところで古くて、だれも引き取り手もなければ、二束三文であるというものも、やはり規則に縛られて売らなければならない。それでわずか生活上の非難を少なくしていたのがだめになってしまうということがあるわけです。前はラジオでも売られた、自転車でも売られたということです。だいぶよくなってきておりますけれども、それについても、やはりこういうことがブレーキになって、もうこれくらいにしようと思っても、ブレーキブレーキで押えられている。いつかそのうちによくなるといっても、その間の貧しい方の生活というのは、やはり人生の一部分です。世の中には、デラックスな車に乗って、晩に、そういう人たちが一年間かかっても食えないような料理を注文して、半分くらい食って、酔いどれて、外へ出てそれを捨ててしまうというような生活をしている人がはんらんしている時代に、そのくらいのものは実際にできるようにしなければならない。そういうことにブレーキをかける条文は、やはり取り除いていただくことに進めていただきたいと思う。  それからもう一つ、家族単位の問題であります。今、結局世帯単位で物事が考えられておりますので、十八才から十九才の子供があって、一生懸命に働いて賃金を取って収入を得ておるといっても、ほかの状態で、父親、母親あるいは弟妹の病気のために生活保護を受けたときに、やはりその働いている子供の生活水準は、生活保護の水準にならざるを得ないという問題があろうかと思います。それでは、働いて一生懸命にやっている子供の人権が、こういうような世帯単位のためにじゅうりんされることになります。また、その子は親孝行で、親や弟妹と一緒に生活をする気を持っておるでしょうけれども、その子が幾ら働いても収入認定に入れられる。その子の一生懸命な努力が、現実一つも報いられないということになる。そういう弊害をなくすために、家族世帯単位で適用しているものを個人単位に移す。夫婦と未成年の子供は個人の一部と考えてもよろしゅうございますけれども、それ以外の者は、個人単位に移した考え方生活保護を適用するという問題を進めてもらわなければならないと思いますので、そういうことにつきまして、厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  18. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話の通りに、現在の生活保護法は、世帯を中心にしての保護をやっておると思うのであります。これはわが国の伝統のしからしむるところということも言えるだろうと思いますが、同時にまた、その状態も漸次変わりつつあるということも認めざるを得ないだろうと私は思うのです。生活保護法は、ただその生活保護世帯のことだけをとらえて考えるわけにも参らない要素があると思います。一般国民生活の実態がどうあるか、あるいはまた、給付の程度なんということになりますと、一般勤労世帯、特にまたそのうちでも低所得の勤労世帯の状態がどうあるかというようなこともあわせ考えつつ、生活保護基準の引き上げというふうな問題も考慮しなければならぬ、そういうような要素があるだろうと私は思うのです。従って、現在のところ、従来の世帯単位でやっているものを直ちに変えてよろしいのかどうか、これはよほど検討を要する問題だと存じます。しかし、世の中がだんだん変わって参りまして、家族の構成というふうなものが、今あなたのおっしゃいましたような狭い範囲の家族構成というふうなことにでもなれば、まれその状況によって考えなければなるまい、こういうふうなことにもなろうと思いますので、固定的な考え方を私はいたしておりませんけれども、これはやはり社会の状態の推移、国民生活の実態の推移というものとにらみ合わせて、生活保護の問題も考えていかなければならない、こういうような考え方をいたしておるわけでございます。その意味で、あまり的確な御返事ができないことをまことに遺憾とするわけでありますけれども、現在の制度の建前をこの際変更するというのには、よほど検討を要するのじゃなかろうか。しかしながら、世の中の状態が変われば、またそれに応じた考え方をしていこうというくらいな、弾力的な姿勢を持った考え方を私どもはとっておるわけであります。今お話しの例にありましたような例を引いてのお話になりますと、なるほどごもっともだというふうな点も、私はないとは申しません。ないとは申しませんけれども、さりとてまた、あまりにこま切れにしてしまうということもいかがなものであろうかというふうな気がいたしておりますので、これらの今変わりつつある社会の状態というものとこういった法律制度との間の調和をどうするかという大きな問題として、私どもも、少なくとも生活保護の部門においてもかような問題について頭を向けていって、検討しなければならぬだろう、こういうふうに考えております。御不満だろうとは思いますけれども、ただいまの考え方はそういうふうな考え方であります。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 法律制定は、社会のそれを必要とする状態より大体においておくれているわけです。ですから、よほど急いでもおそ過ぎるということになろうと思う。ことに、この生活保護を受ける対象の人たちの問題は、非常に貧困に悩んで人権が実際に侵害されている問題で、憲法二十五条の精神がほんとうに浸透していない状態でありますから、ほかの幾分余裕のある階層の方々の問題よりももっと早くする必要があろう。ただ法律論がむずかしいから手がつけられないということが、大きなブレーキの作用になっているのじゃないか。それではいけないと思う。この法律が制定されてからずいぶん年限がたっております。いろいろな基準は改定されたかもしれないけれども、法律の中の実際にやってみたら不便なところ、実際の実情に合わない点は、当然もう五年目くらいに検討されなければならないのであります。ほかの、そうでもない問題がどんどん改正になっている。ですから、法律が全体的に実情に合わない、実情に合わせるのにおくれるという問題、特にこの対象者の問題は、おくれさしてはいけないと思う。ことに、この生活保護法は、十何年間ほうり出されて内容が検討されていないという問題をお考えいただければ、至急に、やはりそういう欠点について直そうという準備を進められる必要があろうかと思います。そういう意味で、急速に進めていただきたいと思います。  また、その必要を感じまして、わが党では、生活保護法の一部改正案という名前でありますが、題名を生活保障法ということに変えて、根本的に生活保護法の欠陥を直すような、前向きになるような法律を準備して、一昨日本国会に提出いたしました。これは私ども一生懸命考えた案でございますが、また政府側としても、またお聞きになっている与党側としても、いろいろ御検討になって御意見があろうかと思います。私どもは前向きであれば、与党の方の御意見を伺い、あるいは政府の御意見を伺ってほんとうに一体になってこれが即時できるのだったら、いろいろお話し合いの気持は十分に持っていますけれども、あらかじめ政府案として今国会に御提出になるならば、その御提出を待ってから審議を始めていただいてもけっこうだし、また、それが間に合わなければ、自由民主党及びわが日本社会党の共同提案として出すというお話があれば、またその点で検討に応ずる考え方は十分に持っているわけでございます。このような生活保護法の一部改正案、実体は生活保障法案が出ておりまして、印刷がきょう配付になっているわけでございますが、どうか至急御検討になっていただいて、その精神がよければ、直ちにそれと同様あるいはそれ以上の法律を出される、あるいは野党の案であっても、出したのに積極的に賛成して、直ちにそのように前進させようじゃないということを、政府自体でも御準備なさるというふうに考えていただきたいと思うわけであります。それについての厚生大臣の御意見を伺いたいと思います。
  20. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 社会党の皆さんが、いろいろ御研究の結果、案をお作りになったことにつきましては、私どもとしても、もちろん謙虚な心持でこれを拝見いたしたいと思います。ただ生活保護の問題は、先ほど来申しておりますように、国民全体の生活の実態あるいは国民感情、こういうようなものと密接な関係のある問題だと思うのでございます。そこらとにらみ合わせて、この制度というものは考えていかなければなるまいかと思います。政府といたしましては、これが検討を怠るとか、検討しなくてもいいとか、そういう考え方は毛頭いたしておりませんけれども、この生活保護改善という問題については慎重に検討を重ねて参りたいと存じておりますので、今直ちにこの国会に生活保護法の改正案を出すという用意は、実に持っておらないわけでございますが、御提出になった案につきましては、十分拝見させていただきたいと思います。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 私どもも、ほんとうの制度としてはどうあるべきか、あるいは国民感情というようなものも考慮に入れて一生懸命検討した案でございますので、どうか一つ十分御参考にしていただきたいと思います。  一応根本の問題に触れましたが、それでは少し具体的な問題に入りたいと思います。  生活保護の中の住宅扶助の問題ですが、住宅扶助の現在の基準について、私も存じておりますが、社会局長からでも——厚生大臣からでももちろんけっこうでございますが、一応御説明願いたいと思います。
  22. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員から答弁させます。
  23. 大山正

    ○大山(正)政府委員 住宅扶助基準につきましては、本年度から引き上げまして、一級地で二千円という基準を設けております。ただ、それでどうしてもできないという場合には、特別基準ということで、その上の金額を認定できるという制度になっております。
  24. 八木一男

    八木(一)委員 特別基準というのは、どのくらいの幅がありますか。
  25. 大山正

    ○大山(正)政府委員 大体第二種公営住宅の家賃を標準にしてきめるわけでございますが、一級地で申しますと、三千二百円までということになっております。
  26. 八木一男

    八木(一)委員 建設省は見えておりますか。
  27. 中野四郎

    中野委員長 今、総務課長が来ています。局長は今建設委員会答弁中ですが……。
  28. 八木一男

    八木(一)委員 この住宅の問題は、一級地、二級地、三級地、いろいろ級地によってずいぶん違うわけですけれども、一級地のお話があったから一級地で話してみますが、第二種公営住宅よりも少ないというふうな基準であっては、非常に少な過ぎると考えます。特別基準があるとはいうものの、一般的に第二種公営住宅よりも普通の基準が少ないということでは話にならぬと思いますけれども、それについてどうお考えですか。
  29. 大山正

    ○大山(正)政府委員 住宅扶助につきましては、実額によるわけでございますので、実際問題としましては第二種公営住宅の家賃よりも低い場合も相当多いわけでございまして、それらの実態を勘案しまして、一応二千円ということにいたしておるわけでございますが、二千円でどうしてもまかなえないような場合には、三千二百円までは特別基準として認めることにいたしております。
  30. 八木一男

    八木(一)委員 家賃はいろいろ断層がありまして、昔から安い家にずっと住んでいるときには、実際上、そんなに安くもありませんけれども、ある程度安い家賃のところもありますが、そうでない世帯では、このような家賃の扶助ではとうていまかなえないような状態のところに住んでいる人が多いわけです。そういう家に住んでおって、病気とか失業という状況生活保護を受けるような状態になっているということになると、このような住宅扶助ではとうていまかない得ないので、住宅扶助分が、ただでさえ健康を守り得ない食糧費の方に食い込んで、健康を保つどころか、ますます健康を侵害するというような生活にならざるを得ないということになろうと思う。こんな少ない住宅扶助では話にならないと思いますし、住宅というものはそこに住まなければ人間の生活ができないのですから、必要なものは全部するということにならなければならない。そんなものは特別基準が作ってあっても、三千二百円ということであってはどうにもならぬと思う。今は五千円、六千円、七千円の家賃で小さいきたないうちがずいぶんありますよ。そこに入っている。昔から、たとえば千五百円とか、そういう安い家賃のうちに入っている人はいい。そうでないうちに入っている人が多いのです。そういう人が生活保護を受ける場合、一級地でも最高で三千二百円ということであれば、二級地、三級地はもっと安いはずです。結局六千円の家賃を払わなければ追い出される。しばらくはがんばっていられるけれども、いやがらせその他でおれなくなる。そういうことになれば、結局ごく最小限度の健康を保つための食糧費の基準が保てないということになる。食糧費の基準は、自分のからだを食いながらやっと命を続けていける程度のものです。ところがそれをさらに縮めたら、健康を保持するどころか、不健康を作り出し、病気を作り出す基準となる、そういうことに拍車をかけることになる。住宅というものはなければ住めない。外に寝られないのです。ですから、今まで六千円くらいの家賃で、生活保護にかかったときには、べらぼうにでかいうちに住んでない限り、ほかのうちにかわれない限りは、六千円の家賃は見るということにならなければ、最低生活を保持することにならないと思う。ほかの問題とは違う。野菜なら、こっちの野菜が高ければ向こうの安い店に行けば買えるということですが、家は隣のうちにもぐり込んで寝るわけにいかない。家宅侵入罪になりますから追い出されてしまう。だからどうしても家賃だけは生活保護費の住宅扶助で見なければ、人間の生活の根本をくつがえすことになろうと思う。それについてどうお考えになりますか。
  31. 大山正

    ○大山(正)政府委員 昭和三十五年の調査によりますと、二千円の基準で大体八〇%くらいの世帯はまかなえる。それ以上につきましては、特別基準でいくというような考え方を一応しておるわけでございますが、お話のように、特別基準でもなかなかまかなえないような問題が残ると思います。この住宅扶助につきましては、なかなかむずかしい問題があるわけでございまして、家主がどんどん引き上げれば、生活保護で幾らでもどんどん見るんだというような立て方もいろいろ問題を生ずるゆえんでございます。私どもは、本年度から現在の基準に引き上げましたので、大体これでやっていけるというように考えるわけでございますが、今後実情を見まして、どうしてもそういうことではやっていけないというような場合におきましては、今後とも一つ引き上げに努力していきたい、かように考えます。
  32. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣にお伺いいたします。建前としては、今の社会局長努力されていることはわかりますけれども、それでは不十分だと思う。住宅については、その実費を全部払う。家主がそれについてつり上げるというような問題は、こういうことにぼやぼやしている建設省の行政をしっかりと締めて、そういう生活保護の住宅扶助が上がったことに便乗して、家賃を高く上げてぼろもうけをするような家主の方を規制しなければならないが、住むだけの家賃は全部補てんをするという原則、原則じゃなしに、完全にそれを保障して、それに便乗して暴利をむさぼる人については、ほかの点で規制をするということがあとで考えられなければならない。そういう者があるからそこまでできないということでは、ほんとう最低生活、健康で文化的な生活を保持するという精神ではないと思う。社会局長はもちろんそういう気持でやっておられると思うのですけれども、こういう問題、今言ったような問題は他省にもかかわりますから、厚生大臣が断固たる勇気を持ってやられないと、社会局長さんではなかなかやりにくい。厚生大臣が住宅については必要な経費は一切住宅扶助で出すというような方向に即刻進められるという御決心を披瀝をしていただきたいと思います。
  33. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 住宅の問題が、国民生活にとりまして最も大事な問題であるということは、仰せの通りでございます。しかし日本の現状におきまして、遺憾ながら、住宅はまだ国民全体の立場から申しましても、これで十分だというところまで至っていない。住宅の整備といいますか、住宅をもっともっと整えていかなければならぬ立場にいるわけでございます。政府としましては、この住宅の増加という問題について、さらに努力を継続しなければならぬと私は思うのであります。さような点からいたしまして、全体的に住宅不足をかこっているのが今日の状況でございますので、まずこれを解決すべく懸命の努力をしなければならぬはずのものと私は思うのであります。今お述べになりました生活保護の世帯等につきましては、ことにこの住宅の問題についてお困りになるようなケースがあるだろうと私も思うのでございます。これらにつきましては、先ほど政府委員がお答え申しましたように、もっと私どもが実態を把握いたしまして、必要欠くべからざるものであれば、この点についてはまた考えなければなるまい、かように考えている次第であります。いずれにいたしましても、全体的に住宅が不足している。従って相当な家賃の払えるような人でも、実にお粗末なところ、健康にして文化的とはちょっと言いがたいようなところで暮らしていらっしゃる方も少なくないと私は思うのでございます。これはやはり全体的に住宅の問題として考えていかなければならぬ一つの大きなポイントであろうと私思うのでございます。住宅の増加というような問題につきましては、厚生省厚生省の立場といたしましても、これが推進に努めて参らなければならぬと思います。あわせて今の生活保護世帯の問題については、とくと一つ考えさせていただきます。
  34. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣が前向きにお考えになっておられることについては、私はあまり意地悪い質問をしないようにしたのですけれども、今の御答弁はいただけないのです。  住宅問題はこれから伺おうと思うのですけれども生活保護というのは、健康で文化的な最低生活をということでやっているわけです。そこで、その住んでいるところから追い出したら、住むところはないわけです。人間のほんとうの居住権、ほんとう人権が侵害されるわけです。そうなったらおん出ていかなければならぬ。たとえば今まで住んでいるきたない家ですよ。きたない家ではあるけれども、家族が五、六人でぎゅうぎゅう詰まっているけれども、四千円とられている家に最大限度三千二百円しかもらえなければ、八百円をどっかで生み出さなければならぬ。そうすると、ただでさえ少ない生活保護基準の中から捻出しなければならない。その金では健康すら保てない、文化的な生活ができないことは歴然たる事実である。そのような最低生活というものまで、住宅扶助がしっかりしていないために脅かされる。どんなに説明しても今のものは十分な生活保護じゃありませんけれども、それを何とかかんとか最低生活だと言っておられるわけです。その皆さんが言っておられるものまで、住宅扶助が実情に合わないために脅かされて、皆さんがぎりぎりにいろいろな理屈をこねまわしてこれが最低生活だと言っておられるものまで減らされる。それはおかしい。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 これはほかのものでしたら、こっちが高ければこっちで買うということができるのです。住宅だけは、おん出て野宿するわけにいかないのです。ですから、これは実費で必要なものは出す。ただそこで出してくれるからといって、とんでもない高い家に入って全部出せというのは、これは当然われわれが言わなくても規制される。ほかに家がない、追い出されて住むところがない、偶然にその家が四千円とられている。部屋だって四千円、五千円、六千円の部屋がありますよ。そんな部屋はたくさんある。これは一級地の部屋だから高いように見えるけれども、二級地、三級地になったらもっと金額が少なくなって参りますけれども、とにかく部屋だって六畳の部屋で五千円という部屋がある。ですから、家で七千円、八千円で、だれが見てもぜいたくだとか、国家の補助に甘えて広いうちに住んでいるとは思えない。きたない、狭い、そういう家なんですよ。そういう家で、しかもその家賃が全部カバーしてもらえないのでは、これはとんでもないことである。住宅扶助に関する限りは、すべて必要なもの——飛び切りぜいたくをするものはほかの方法で、われわれ言わなくても当然厚生省は規制されるにきまっています。とにかく、今入っているところに必要な住宅費は住宅扶助でカバーするという原則を貫いていただかなければならないと思う。今大体カバーされている。それで厚生大臣は、なお足らない分があれば善処すると言われたことは、私は理屈から言いましたことと一致していると思うのです。大体カバーされているとすれば、それは全部カバーしたって予算なんかちょっとしか要らないわけです。実情に合わしてそれに対処されるというならば、その原則通りになるわけです。ですからどうか、住宅問題全体についての御意見はまた伺いますけれども生活扶助の中の住宅扶助については、その必要な経費を全部見るというふうに進めていただきたいと思いますが、ぜひ前向きの、世の中を安心させる御返事をいただきたいと思います。
  35. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 生活保護を受ける世帯の実情にかんがみまして、現在の制度において足らないところがあれば、これは十分検討しなければなりません。また制度としてはかりに動かせないにしましても、そういう世帯をそのままにほうっておいていいという問題ではないと私は思います。その辺のところを十分勘案いたしまして、決して消極的な意味じゃございませんけれどもほんとうに困っておる家庭に対しましては、何とかやっていけるような措置を、いわゆる社会福祉の心持をもってやって参らなければならぬと私は考えております。制度問題につきましては、さらに検討いたします。
  36. 八木一男

    八木(一)委員 最後のお気持の方はけっこうです。その通りぜひやっていただきたいと思うのです。制度の方は、こんなものは厚生大臣がやろうと思ったらすぐできるようになっているので、ぜひ一つやっていただきたいと思う。制度は灘尾さんが決心すればできるのですから、最後のお気持を生かすために、そういうふうにぜひやっていただきたいと思います。  それから次に、生活保護階層のこともそうですけれども一般のボーダ・ラインのことも含めまして、それに関連する住宅問題について、厚生大臣、先ほど言われましたけれども、一応また概括的な御意見を伺いたいと思います。  人間の生活の基盤は、昔から衣食住ということになっているわけですが、食生活の方は、非常に経済の断層があって収入の少ない人、生活基準の低い人、そういう人たちは、十分なものは食えませんけれども、どうやらまあ、食生活は何とか形がついてきた。衣類の方もそうですが、住宅だけが、どうにもこうにもならない状態です。いろいろなところの議論でも話でも、全部家の問題が、ちょっと真剣な生活設計になるとなるわけです。どこの奥さんでも、一体幾つになったら自分のうちが持てるか、そのためにどのくらい貯金しなければならないか。生活設計を指導する雑誌も全部そうです。どこの家庭でも、一生涯かかっても自分の老後をいたわり得る家をどうやりて作るかということが、普通の勤労者の素朴な目標になっている。   〔藤本委員長代理退席、柳谷委員長代理着席〕 ところが、それがほとんど作れない。特別に俸給の高い人、特別にもうけた人、偶然に前から土地を持っていたり家を持っていた人、これは別として、そうじゃない人たちとしては、普通の状態では家というものは持てない。持ち得るとしたならば、ほかの一切の自分たちの人間としての生活を犠牲にして、それ一点に集中してやっと持ち得るというような状態です。これは非常に困った問題だろうと思います。戦後にいろいろ家が少なくなりましたけれども、たとえば西ドイツあたりでは、住宅問題は非常にりっぱに問題が解決をされているようであります。日本においては、この大事な衣食住という三本の柱のうちの残った解決されない一番の柱が、てんで放置されて顧みられない状態です。建設省の方が見えているようでございますが、この問題について建設省よりも厚生省としてどうお考えか。社会保障というのは理念的の保険だとか、保障だとかいうことだけが問題ではありません。住宅問題の解決というのは、広い意味社会保障の一番大きなテーマで喫緊の問題であります。それについて厚生大臣はいかに対処されるか、現状についてどう考えるかということをぜひ伺いたいと思います。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ものの考え方といたしましては、私は八木委員と同様であります。お話しのように、だんだ国民生活が戦後回復して参りまして、衣あるいは食という方面ではどうやらよくなったと申し上げてもよろしいかと思うのであります。一つ足らないのは住の問題であります。この住宅問題につきましては、建設省を中心にいたしまして、政府もいろいろ心配をいたしておるところであります。今秋、数字は覚えておりませんけれども、住宅の供給あるいは住宅の増加という問題についてはいろいろ努力をいたしておるところでありますが、まだ十分なところまで至っていない。従って今後の国の施策の上から申しましても、この住宅の増加という問題については、もっともっと力を入れてやっていかなければならないはずのものと思うのであります。厚生省といたしましても、直接、間接にこの問題につきましては関係が多いのでございますから、御趣旨に沿うように私はできるだけの努力はいたしたいと思います。
  38. 八木一男

    八木(一)委員 建設省の方見えていますか。
  39. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 住宅局の総務課長さんが見えております。
  40. 八木一男

    八木(一)委員 一応建設省の方が見えましたから、大体本年度の予算に載っております計画は、一般住宅として地方公共団体の建てるものに対する補助の戸数は、改良を合わせて五万八千五百戸、それからもう一つ、これはほかの方の関係でやる日本住宅公団の関係で三万三千戸、それから住宅金融公庫の貸付で促進するもの十二万五千戸というふうに予算書に出ておりますが、その通りでございますか。
  41. 大津留温

    ○大津留説明員 その通りでございます。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 大体現在私どものいただいている資料では、日本の住宅不足の絶対量は三百万戸といわれております。それから年々消耗する住宅、焼失とか倒壊とか、そういうものが大体二十万戸といわれております。これではとにかく焼失、滅失する家屋がやや補てんされるだけであって、三百万戸の住宅難というものはほとんど解消できないということになろうと思います。それについて数字を、いや三百万戸ではありません、それはこわれかけの家を言って、もう少し少ないのですというような御説明は別にしていただかなくてけっこうですが、今のスピードでいつごろ住宅難が解決される計画になっているか、そういうことについて御説明願いたいと思います。
  43. 大津留温

    ○大津留説明員 建設省といたしましては、住宅建設計画といたしまして、三十六年度から四十年度までの五カ年間に約四百万戸の建設をいたしたい。これは三十六年度から四十五年度までの十カ年間に一千万戸程度の住宅建設をいたしたいという計画の前期の計画になっております。この五カ年間に四百万戸の建設と申しましても、これは政府の補助とか融資による建設戸数だけではございませんので、民間の方々が自力でお建てになる戸数を含んでおります。全体計画といたしましては、十カ年間に一千万戸の建設ができまするならば、国民の各世帯がそれぞれ独立した一戸の住宅に生活できるという、一応の目標が実現できるものと考えております。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 今建設省で御答弁になりましたように、大部分は自力建設であります。政府が地方公共団体に直接に補助をして建てられるのは、改良住宅を合わせてわずかに五万八千五百戸、そうなれば、自力で建てない限りにおいては、百年河清を待つということになる。今の生きている人が、ほとんど住宅の問題に悩みながら、苦難を越えて希望を達成した人も達成できない人も、心配でどうにもならないまま死んでしまう人もある、そういう状態です。自力建設ということで建設省が考えておられることは、これは非常に間違いだと思う。今の日本にはいろいろ職種もありますけれども、その人たちの苦しんでおる状況でいけば、いつになったら家が建つだろう、そのためにはどういう苦労をしなければならないかということが、少し家庭で真剣な話題の出たときの中心問題です。あそこのうちは家をやっと建てられた、うちはいつになっても見込みがない、そういうことが、人間の一生涯の大部分の心配として頭にこびりついているわけです。それを達成するためには、たとえば本を買って教養を高めるとか、あるいは音楽を聞いて文化的な生活を少しでも味わうとか、あるいは子供に少しでも健康な食い物を食べさせて体位を向上させるとか、そういうことが全部家のために犠牲になっている。そんなことで建設行政を考えられてはいけないと思う。今の建設省は、ただ自力建設で、国民みんなが苦しみ抜いて、そのうちに建てていくだろうと思っている。公営住宅では、改良を入れてもわずかに五万八千五百戸こんなことでは国民全体の苦しみは非常なものですし、その中で特にボーダー・ライン階層であるとか、勤労者であるとか、生活保護世帯などは、これからの生涯のほとんど大部分を、人間らしいすみかで住むということはできないで終わるわけです。所得倍増計画だとか、何とかかんとかえらそうなことが唱えられておりますが、それよりも人間生活の基盤である住宅の問題は、だれもその苦しみを解決してくれない。そういうような問題につきましての政府の取り組み方は、ゼロにひとしいと思う。この点で、一つ厚生大臣が乗り出していただく必要があろうと思う。建設省は、量的な宅地造成なり、住宅の価格の上がらないようにする方法なり、あるいはどんどん建てるなり、そういう全体についても非常に不十分でありますとともに、社会保障的に住宅問題を考えるという点が、建設省の考え方ではほとんどないのではないかと私ども考えられます。今いわれておる住宅の建設計画も、たとえばその中で、無理に社会保障的に見れば、第二種公営住宅だけでございます。第二種公営住宅は政府の補助金を出しているというけれども、実際の土地造成と建設の価格よりもずっと少ないものしか出しておらない。地方公共団体は、住宅に困っている住民がたくさんおられるので建てようとしておるけれども政府からくる補助金は、高率補助といいながら、実際は非常に少ない。東京都の例では、実際に建つものの十分の一くらいしかきていない。ほかの例でもそうです。東京都みたいに財政が裕福なところはいいけれども、裕福でないところは絶対に建てられない。やっているように見えて、全然やっていないと同じです。今の第二種公営住宅の問題と、第一種の問題も同様です。それから公庫住宅というのは、一定の俸給、非常な収入がなければ入れない。住宅金融公庫の融資を受けて、自分で建てようとすれば、頭金がなければ借りられない。全然逆ですよ。さか立ちですよ。頭金が作れないような者こそ、長期の低利な融資を借りて家を建てたい。ところが、頭金がなければ、金融公庫では借りられない。住宅公庫で家を建てようとすると、一定の収入以上でなければ借りられない。相当の収入です。庶民は入れない。こんなものはあと回しでかまわない。公営住宅をどんどん建てたらいい。この公営住宅は、五万八千五百戸作ることになっている。ところが、その単価は、実際に作る十分の一以下である。地方公共団体はそんなものを作れますか。住宅問題は全然からっけつ、ゼロだと言っても間違いない状態であります。社会保障的見地から、厚生大臣がこの問題について、断じて推進してもらわなければ困ると思う。建設省は、長いこと見ておりましたけれども、自力の建設も入れて、ただ家が建っていくだろう、それだけしか考えていない。この間の国民の苦しみは一つ考えていない。金持ちがぽかぽか家を建てている、だから、家はだんだんふえてくるというような考え方しか建設行政にはない。建設省がその考え方を変えられない限りにおいては、厚生大臣は断じてこれを推進されなければならないと思う。前に厚生省の中に、この住宅行政があったはずです。どうしてその住宅行政が今建設省に移ったか。戦後のごたごたの経過からでしょう。そのごたごたの経過の後に、ほんとうに住宅を必要とする国民に、住宅を保障する政策一つもとられていない以上、これは厚生省の行政に取り戻すべきであります。この点について、厚生大臣は住宅行政を厚生省に入れる主張を閣議でされて、そして承認されて、即時社会保障的な住宅政策をやられるという御所信を御披瀝願いたい。
  45. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 率直に申し上げますが、住宅問題は、実は政府の泣きどころであると申し上げてもよろしいかと思うのであります。建設省も、決してこれをおろそかにしているわけじゃございません。建設省も政府もわれわれも一体でございます。建設省といたしましては、鋭意努力をいたしておるところであります。また社会保障的な考慮を全然欠いてやっておるということでも、もちろんないと私は信じております。いかんせん、政府としましても、この住宅問題について、皆さんの御期待に沿うだけの量を一ぺんにそろえるというようなことが、なかなかできないというところに悩みがあるわけでございます。あらゆる方法を講じて、自力建設もけっこうです、借金で建てるのもけっこうであります、また今のように、補助で建てるのもけっこう。いろいろな方法を講じまして、何とか住宅の量をふやしていくという心持で現在やっているように思うのであります。私ども若い時分に、厚生省といいますか、そこで庶民住宅の問題を取り扱った経験が実は私もあるのであります。昔はやっておりましたが、今日では住宅問題は建設省に一元化といいますか、一つにして、そしてみんなが協力してやっていこうという態勢になっておると思うのでありますが、その成績が、今八木委員の御指摘になりますように、なかなか世間の需要に追いついていけないというところに悩みがあるわけであります。これも一面においては、国力といいますか、国民の経済力といいますか、そういう点にも関係を持つものと私は考えるのでございますが、何にいたしましても住宅が不足していることだけは、これは事実であります。この不足を何とか早く解消しようということは、私どもみんなが考えておるところでございます。私は、所管がどこにあろうとそれは問わず、いわゆる社会保障に最も関係の深い役所をあずかる者といたしまして、この問題についてはほんとうにまじめに真剣に努力もし、また建設省にも御協力を申し上げたいと思います。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 閣議の中で、住宅問題を社会保障的に考える点については、どのような論議が今までかわされたか、一つおっしゃっていただきたい。
  47. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府としましても、また私どもの与党といたしましても、この住宅問題というものが、現在の政治の上において最も重要な問題の一つであるということは、よく認識いたしておるつもりであります。従って、問題なく住宅の供給増加ということについては、みな一致してこれを推進するようにいたしているわけであります。
  48. 八木一男

    八木(一)委員 灘尾さんのその御答弁では、社会保障的な考え方で住宅問題を論議しておられないという御答弁になろうかと思います。住宅の絶対量のことだけ言っておられる。社会保障的な考え方池田内閣は住宅問題を考えておられないというふうに了解してよろしゅうございますか。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 われわれとしましては、考えておるつもりでございます。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 閣議でそういうことがどのように論議をされたか、教えていただきたい。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 閣議の内容をかれこれ申し上げるわけには参りません。閣議の内容を一々御披露申し上げるわけにも参りませんが、しかし、この問題については、みんな関心を持っておるということを申し上げておくにとどめたいと思います。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 閣議の中で決定して、社会保障的に住宅問題を考えられるというようなことを理解できるような政策が発表されていれば、こんなことは申しません。全然その事実がない。だから、せめて少しでも今動こうとしているのかどうか、それを伺っているわけです。ところが、厚生大臣の御答弁では、そういう点については推進がされていないということが明らかだ。それではいけないと思う。厚生大臣は、今、内閣全体でと言われました。りっぱな国務大臣です。経験、貫録十分な国務大臣でありながら、そのことを知っておられながら発言をしておられない。建設大臣の方に遠慮する必要はありません。断じて社会保障的な問題で住宅行政を進めていかなければならないと御主張になり、その問題を推進して実現させなければならない。それについての厚生大臣の御意見を伺いたい。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木さんから非常に御鞭撻をいただいたわけですが、閣議の内容をかれこれ申し上げるわけには参りませんけれども、とにかく住宅の問題については、政府全体として非常に関心を持って、これが推進に努めておるのだということを御了解いただきたいと思うのであります、ただそれが、八木さんの御満足のいくところまで至っていないということはございましょうけれども政府としては許される限りの努力はいたしておる、こういうふうに御承知おきいただきたいと思います。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 住宅問題と言われたり、量的な問題を示唆されたりしただけでは——社会保障的な問題について、賢明であって答弁のお上手な厚生大臣が言われないところを見ると、ほとんど考えられていないということです。考えられていないものを、閣議でしゃべられたこともないものをしゃべったと言ってもらう必要はないですし、そんなことはできないと思う。しっかりがんばってもらわなければ困る。幾らでも考え方があるでしょう。たとえば、公庫住宅なんというものを作って減価を償却するという考え方でいけば、家賃は高くならざるを得ない。その家賃を着実に回収しようと思って、一定の収入がなければいけないというようなことを言っている。それでは一番家に困った人に住まわせようという考え方ではない。もちろん公庫住宅はりっぱですから、一番困った人のうちには入らないかもしれない。比較的困った次の人が入るという、そういう階層を入れようという配慮が一つもない。そういうものではなしに、たとえば収入です。家の困った人は一ぺんに出しませんから、全部一ぺんに入れられないかもしれない。これは抽せんの順番で入るかもしれないが、その人の収入の順番において家賃を取る、建設省が補てんできなければ、それは社会保障的にいってカバーするというようなくらいのことは、灘尾さんくらいな頭のいい方は一ぺんに考えられることだろう。僕らだって一ぺんに考えられる。そういう考え方です。それは二の次ですよ。一番焦点は、ほんとうは第二種公営住宅をうんとこさ作るということです。それを実際の値上がりの十分の一くらいのものを出して政府は住宅政策を進めております、五万八千五百戸建てる予定でございます、こんなから回りみたいな、うわべだけのことをなさらないでいただきたい。実際に建つだけの値段に対する国庫負担をしなければ建ちません。東京や大阪では地方公共団体が少しは財政能力があるから、少しは建つかもしれないが、いなかでは建ちません。いなかでも人間は住んでいる。いなかでも住宅を必要としている人がいる。同じ日本人ですから、そういうふうに実際の単価に合わして、それから戸数をふやして、第二種公営住宅をどんどん建てる。その次に、今度は第一種の問題です。第一種は、第二種を建てるまでとめてもいいと思いますが、第一種には幾ら以上の者でなければいけないと書いてある。ところが、第二種の抽せんにはずれた一番貧乏階層の人は、ほかで家に入ると第一種より高い家賃を払わなければならない。逆ですよ。下から、これから以下の人が先に入る、それで余ったらそれ以上の人が入れる、逆にすべきです。ところが、これ以上の人が入れる。その次にこれ以上、そういう階段をつける。第二種が建たない間は第二種に集中して、ほかのものを建てる必要はありません。建っている家があれば、一番下の人をこの第二種に入れる。抽せんにはずれた人は、せめて第一種に入った方がまだ安いですよ。逆順位にしなければならないのに、収入順で、ほんとう政策が逆になっている。全然社会保障的には考えられておりません。家の問題を解決するために徹底的に考えていただきたい。建設大臣なんかに遠慮なさらずに、総理大臣がぼやぼやしているということを教え込んで、ほんとうに即座に貧しい人たちの住宅問題を解決するために、さらに全国民の住宅問題を解決するようにしていただきたいと思います。それについての強い御決心を一つ伺わせていただきたいと思います。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 住宅問題は、先ほどから申しておりますように、とにかく足らないのです。ですから、それはどの層この層ということよりも、とにかくいろいろな層においてみんな住宅が足らないのです。ですから、住宅をふやすということについてまず主力を置かなくちゃならぬと思うのです。だから、建設省といえども社会保障的な考慮を全然欠いて、そうしてものをやっているとは私は思いません。現在やっていることが、建設省といたしましては最大限度の努力をしておられるものと実は思っておるのであります。なかなかいろいろな関係がありまして、住宅の問題だけでものを片づけるわけには参りませんので、御期待に沿えるだけのことは容易にできない、それを私ども残念に思っております。残念に思っておりますが、そういう状態でございます。しかし、今お話しになりましたように、社会保障的な考慮を払って、そうしてこの方面のことをうんと推進しろというお言葉は、私は十分承りまして、今後の私の努力一つの目標といたしたいと存じております。かようなことで御了解願いたいと思います。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 最後の御答弁であれですけれどもほんとうにしっかり推進をしていただきたいと思うわけであります。推進といっても、これは予算は、政府では来年出されるということになるでしょう。それじゃ少しおそいのです。ですから、至急にそういうことを閣議で取り上げられて、それでどういう方法でやるというようなことで、その結論を出されるような御努力、二、三ヵ月中に実を結ぶよう御努力をしていただきたいと思います。できるだけ早くしないと非常に困りますから、最大限度に、至急なうちに内閣全体で住宅問題、特にこれを社会保障的に考えるという問題について前向きの結論を出される、結論を出されるもとでもけっこうですから、そういう御努力をお願いいたしたいと思います。これについての御返答を伺いたいと思います。
  57. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の財政状態のもとにおきまして、政府としましては、今回御審議をお願いいたしております予算程度しか考えることはできなかったということでございますので、二、三ヵ月のうちにどうとかこうとかとおっしゃいましても、私も、じゃこういたしましょうということを言うわけにも参りませんけれども、ただお話の御趣旨はよくわかっておるわけでございます。よくわかっておるわけでございますので、私として考えなければならぬ点、研究しなければならぬ点というような問題についてはまじめに研究をし、検討もさせていただきたいと思います。
  58. 八木一男

    八木(一)委員 実はきょうは建設大臣にも来ていただきたかったのでございますけれども、ほかの委員会関係がありまして、非常に残念でございますが、また別の機会に建設大臣厚生大臣あるいは大蔵大臣、池田内閣総理大臣、四人そろったところでこの問題を取り上げてみたいと思います。それからさらに労働大臣関係もございます。  この問題は一応おきまして、それでは別の問題に触れます。保険局の問題で、船員法の一部改正案を何か準備しておられますが、提出されたのですか。
  59. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 提出いたしております。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 その内容は存じ上げているのですが、船員保険法で非常に厚生省はけしからぬ。七、八年越しの問題ですが、その問題について一つ努力しておられないし、解決する誠意が全然見えない。何の問題だかおわかりでしょうから、一つ率直に……。
  61. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 船員法の一部改正につきましては、内容は先生おわかりだということでありますが、いろいろ従来からも問題点が多々ありまして、この点、今度の一部改正法律案を上程するにあたりまして社会保険審議会の船保部会で論議をしていただきまして、法律案を一応提出すると同時に、船員保険部会において、そういう種々の問題点を次の通常国会までに結論をつけるようにお互いに相談をしてやろうというふうな形で、現在もうすでに論議に入っておりますので、もう少しお待ちを願います。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 たしかもう五年越しの問題ですよ。参議院の社会労働委員会で決議が四年ほど前にできておる。運輸省も厚生省も非常になまけておる。どういう経過でこの問題が四年も放置されたか、経過をお聞かせ願いたい。
  63. 熊崎正夫

    ○熊崎説明員 これまでの経過につきましては、私ども先任の保険課長の方から詳細に承っておるのでございますが、たとえば、船員組合の方の主張と事業主である船主協c会の方の主張と、必ずしも一致しない点が多々あるわけでございます。その辺は八木先生よく御存じのところだろうと思いますが、しかし、今回の法律改正案につきましては、その辺のいろいろな論議の点を最大公約数をとりまして、ともかく現状において最大限お互いに歩み寄りのできる点を考慮いたしまして、例の標準報酬の引き上げを提出することにいたしたわけでございまして、論議は続けておりますが、そういうふうに事業主、被保険者、お互いに歩み寄りがなかなか困難であるという事情がございまして、今日までになっておるのでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、これだけをもって私ども事足れりというふうに考えておるわけではございませんし、被保険者、事業主を含めて今後とも十分検討して、前向きの姿勢で解決したいということをはっきり言明もいたしております。その辺事情を御了承いただきまして、今後の検討に待っていただきたいと思います。
  64. 八木一男

    八木(一)委員 今の事業主と組合員の問題も少しあると思うのですが、そういう問題じゃないです。厚生省の問題ですよ。厚生省ほんとうはガンになっておる。厚生大臣御存じだと思うのですが、実は船員保険の中の健康保険の短期保険の初診時一部負担の問題です。これは健康保険法の一部負担をふやす健康保険法改悪があって、厚生省の実に老獪きわまる、ほんとうにインチキきわまる、けしからぬ作戦で健康保険法が改悪されたわけです。実にけしからぬ方法でやられた。そのときの一環の問題です。全体の問題については、また日をあらためて、滝井先生や私ども、一緒に厚生大臣を徹底的に追及いたしますが、この中の船員保険法の問題で、船員保険の一部負担金を五十円から百円までの間に上げたのです。それは重大問題ですけれども、それを始め出すと三時間ほどかかりますから、それは一応おきまして、船員保険法の問題で一部負担をふやすというときに、船員法という船員のことを規定している法律があるわけです。船員法ではそういう一部負担金を取ってはいけないというふうになっています。そういうものは全部船主の方の負担ということになっている。その法律は厳然としてあるわけです。その船員法違反の法律を作ったわけです。船主の負担だというのを、患者から、お医者さんに見てもらうときに一部負担金を取る。それまで取れなかったのを、横浜でかぜ引きましたというときに、百円出さないと見てもらえない。それまでは出さなくても見てもらえた。全部船主の負担だった。ところが、特に工合が悪いことが起こる。普通の健康保険のときでもけしからぬが、それ以上です。横浜でかぜ引きになるでしょう。それで見てもらって、船に乗って四日市でまた上がる、熱があったからまた見てもらう、また百円取られる、それから神戸でまた取られる、広島でまた取られるというふうになる。二重、三重、五重、十重にも、流感みたいなもので長い病気にかかると金を取られる。ほんとうに船員はお気の毒なんです。健康保険法だって、医者のところへ行ったら一回だけです。それを五百円も六百円も取られる。賃金のいい船員ばかりじゃありません。漁船の船員もあります。そういう不合理なことをやっているわけです。それがけしからぬからそういうことを改めるべきであるということを、四年前に参議院の社会労働委員会で決議されているのに、四年間ほったらかして、みんな忘れたからそのうちに忘れるだろうというふうに考えて、厚生省がなまけ切って、議会をなめ切っているわけです。それはいいことじゃないと思う。厚生大臣、そういうことはいいことじゃないとお思いだろうと思うのですが、厚生大臣の御意見を承りたい。保険局長の御意見はけっこうです。厚生大臣
  65. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省が議会をなめるなんということは毛頭ございません。常に議会の御趣旨を尊重してやっておるつもりでございます。ただいまの御指摘の問題につきましては、私、事情をつまびらかにいたしておりませんけれども、決してなめるとかなめぬとかいうことで物事をやっておらぬつもりでございます。今回の船員保険法について、おそらくそういう問題は論議せられた問題だと存じますけれども、これはよく調べまして、また別の機会にお答えを申し上げたいと思います。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 実はほんとうになまけておるのです。厚生省の保険局は、今の保険局長はりっぱな、有能な能吏でいい人ですが、厚生省の中で保険局に回ってくると、とたんに頑迷固陋になって、とたんにすべてがけしからぬ人間になる。一部負担の問題は、ほんとうにけしからぬ。とにかく昔健康保険が赤字財政のときに、患者が見てもらいに行ってしょうがない、そうして受診率がふえると保険財政が赤字になる——監督と行政、分けるようになりましたからだんだんよくなると思うのですが、とにかく政府管掌健康保険とそれに並んだ船員保険や何かも、保険局が、その点について会社の重役か経理部長みたいなつもりになっている。赤字を出さいことばっかりなんです。それで患者が見てもらいに来て、お医者が見るから金がかかってしょうがない、見せないようにすれば金がかからないという精神から出ている。それじゃ健康保険の本義を抹殺しているわけです。そんな精神をもっていけば、健康保険なんというものはなしにしろ、保険局なんかなくせということに通ずるわけです。それは困るはずなのに、とにかく見せちゃいかぬ、それには金を取ることにすれば、金がしんどいから見せにいかない、だろうということから出発しているわけです。こんなでたらめな行政はない。それを徹底的に追及して、赤字のときに苦しまぎれにしたことは、けしからぬけれども、これは百パーセント追及するが、苦しかったからということで五点くらいはかんべんしてあげてもいいのですが、黒字になってからでもこれをやっている。これは病膏肓に入って、かんべんできない、そういうことになる。そういうような状態で船員保険、これは全般的に特別にけしからぬのですが、船員保険では、特に何回も見てもらって、特別によけい取られる。しかも、船員法では、そういうことはしてはならないと規定してある。法律違反を厚生省がやっているわけです。そういうようなことを厚生省に言えば、それはあとで返すようになっているから大丈夫ですときっと説明します。ところが、そんなことは、貧乏な船員の労働者、漁船の労働者が、あとで返してもらうなんていわれても、その間困ります。おまけに漁船は封建的ですから、あとで船主に返してくれと言ったって、今は景気がよくて人が足りないからいいかもしれないけれども、そうじゃないときは、そんなぐずぐずするやつはやめてくれ、親方に対して無礼なやつだという封建的な社会がまだ残っている。こわくて言えやしない。ぶんなぐられるかもしれないし、首になるかもしれない。泣き寝入りで、五百円も六百円も零細な労働者が払わなくちゃならぬようになっている。お役人は、あとで返すようになっているからいいですと言うかもしれないけれども、こわい親方のところに、百円前に使いましたから返して下さいということを言えるかどうか。今の保険局長ばかり責めるのではないのですが、歴代の保険局長がいかぬのですよ。そういうことなんです。それを厚生省は、一部負担に関する限り絶対に意地を張って、しかも船員保険のほかの法律違反になる、そういう現象があることまでなめてきている。なめるなんという卑俗な言葉は使いたくないけれども、これは全くなめ切っている。四年前の国会の決議なんかどこにあるか、くそくらえだ。どんなにむずかしかろうとも、厚生省に頭のいい人があれだけいて、その問題を一生懸命やれば一週間でできます。四年間もほったらかしておいて、今聞いても、鋭意何とか中と言う。そういうことが行なわれているのです。厚生行政は全般的に一生懸命やっていられることはわかますが、保険局の健康保険並びにそのほかの政府管掌の保険の財政運用的考え方で、非常に頑迷固陋な、被保険者をいじめつける、これ以上前進させない考え方がこびりついて離れない。それに対して徹底的に追及されたものですから、むしろこびりつく以上に意地になる、その問題について一歩後退することは、われわれの面子にかかわるというくらいな気持を持っておられるとしか思えない。この一部負担の問題については、実に頑迷固陋です。ですから、これは、厚生大臣は保険局の意向を聞かれるのはいいのですけれども、保険局の意見に支配されてはなりません。国会の意見で判断されて、こうしろということを保険局に厚生大臣が命ぜられなければ、中で協議してなんということでは、全然進みませんよ。歴代の厚生大臣がごまかされて、その問題を解決できずに退任されておるのです。だから、断じて、厚生大臣国民意見を聞かれて、その意見が正しいと思ったら即時その通りやるべしということを保険局に命令されるべきだと思います。それについての厚生大臣の御意見を承りたいと思います。
  67. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省の中でも、なかなかむずかしいのが保険局でございます。私も実は保険局の問題では一番頭を悩ましておるわけであります。何一つやるにいたしましても、むずかしい点がたくさん出て参りまして、いろいろあちらこちらの御意見をまとめて、皆さんの御納得のいくところでやっていこうというつもりでやっておるのでありますけれども、なかなかそれは思うようにいかぬ場合もあるわけであります。そういうむずかしいところでありますだけに、あるいは八木さんからごらんになると、局長がいつもあそこへ行くと妙になってくるというふうな御批判もあろうかと思いますが、それだけあそこはむずかしいところだというふうに一つ御了承願いたい。よけいなことを申し上げるようでありますが、実は私もかつて船員保険法というものの立案をやったことがある。古い話でありますが、これはつぶれたのでございます。とにかくその話をまとめるのに一年かかってしまった。調査会で一年間やって、もみにもんでようやくまとまったところが、さて国会に提案する段になりまして大蔵省から横やりが入ってだめになり、それでとうとうつぶれてしまったという記憶があります。いかにも船員保険というものはむずかしい。これを取りまとめていくのは容易でないということを、私はそのときに身にしみて感じたわけであります。今回提案するにつきましても、直接は見ておりませんけれども、いろいろなことが議論されたと聞いております。それでどうやらこうやらまとまったところで、今度はその点だけを御審議願って、あとはまた今後の努力によってやっていこうという心持で保険局はおると思いますので、決して国会の決議を軽視するとかなんとかいうことではありません。いろいろ関係の向きがむずかしいものですから、そういうことになっていると思いますので、その辺はあまりおしかりにならぬようにお願いしておきます。厚生省といたしましては、できるだけいいことならやっていこうというつもりで今後とも進んで参る気持でおりますから、御了承をいただきたいと思いますが、今お尋ねの問題につきましては、なおよく私もじかに聞きまして、また別の機会に所見を申し上げることにいたしたいと思います。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、船員保険法は法案が提出されていますから、そのときにまたお伺いをいたしますが、そのときまでに御検討になって、厚生大臣のまともな御回答をお願いしたいと思います。
  69. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  70. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。小林進君。
  71. 小林進

    小林(進)委員 私は灘尾厚生大臣厚生大臣に御就任になりましてから、初めての質問を申し上げるのであります。昨年の何月でございましたか、大臣に御就任になりましてから、今度の厚生大臣厚生行政全般に対する方針は一体何であるかということを、私なりに研究させていただいたのであります。非常に研究させていただきましたが、いわゆる灘尾厚生と称するものの特徴をつかむことができなかった。これは私といたしましてはまことに残念にたえないのであります。それで今度の第四十通常国会の予算編成の途上において、おそらく灘尾厚生の性格というものが現われてくるであろうということで、大きな期待を持っていたわけでございますが、さて明年度の予算を拝見いたしますると、その中でも灘尾厚生らしきものを察知せしめるものが何もない、まことに遺憾千万に感ずる次第でございまして、大臣の施政方針演説会と申しまするか、この四十国会に臨まれる大臣の所信は拝見をいたしました。前後を通じて十分足らずぺらぺらとお読みになったのが、所信表明でございましょうけれども、おそらく事務官僚が作り上げたものをそのままお読みになったという感じでございまして、あの中でも灘尾厚生の特徴というものを残念ながらわれわれはつかむことができないのであります。一つこれが私の大臣就任の中にどうしてもやりたいのだという、灘尾厚生の所信なり特徴なりがおありになりましたら、ここでお聞かせ願いたいと思うのであります。
  72. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の厚生行政に対する考えにつきましては、先般この委員会において申し上げました通りでございます。灘尾厚生行政の特色がないという御批判でございます。あるいはその特色がないところに、私の灘尾行政があるのではないかというふうに考えておるのであります。いろいろ問題点はたくさんございますが、厚生省の各般の行政を見ました場合に、それぞれ改善を要するものが少なくないのです。従ってまた新しいものを出して、これが私の政策だということを申し上げますよりも、現在の厚生行政の水準を引き上げていきたい。そのための努力をしたいという考えのもとに予算にも当たったわけでございますので、決して先般申し上げましたことが、官僚の書いたものをただ読み上げたというのではない。私の考え方を率直に実は申し上げましたような次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  73. 小林進

    小林(進)委員 従来の厚生行政に非常に改善すべき点が多いから、その改善一つ重点を置いていくというお話でございますならば、自来これからは改善大臣というお名前を呈上いたしまして、灘尾厚生大臣別名改善大臣ということで、私ども灘尾厚生を御批判申し上げていきたいと思いますから、さよう御了承をいただきたいと思うのであります。  いろいろあなたのお書きになりました文章なども、目の届く限り私どもはあさって歩いたのでありますが、「厚生」一月号の中にも「一九六二年の厚生行政灘尾弘吉というものがございます。これを一生懸命に何回も読ましてもらったのでありますが、この中でもちょうど厚生白書を煮詰めて項目だけ並べたような、味もそっけもないものが載っているだけでございまして、厚生大臣の所信としてはどうも血もなければ涙もない、味もなければそっけもないということで、委員外発言がありました通り、お粗末千万という感じを受けているわけであります。いささか私どもは落胆をいたしたのであります。と申し上げますことは、歴代厚生大臣はどうも伴食大臣の傾向が強かったのであります。橋本厚生大臣、さらにさかのぼればもっとそのさきにさかのぼりますけれども、一々名前をあげては失礼千万と思われるぐらい、伴食が多かった。その中へ前任者の古井さんが出てこられて、やや厚生行政一つの力点が置かれたのではないか、こういうような感じを持ってわれわれは期待を持ったのでありますが、これは中途にして倒れられた。倒れられたと言ったらいいのでございましょう。何事もなすことなくして、医師会等の猛烈な攻撃の前にうたかたのごとく消え去られた。かわってあなたが出てこられたわけでございますが、厚生官僚いわく、厚生省、旧内務省出身ではあるけれども、古井さんは地方育ち、灘尾さんは本省育ちであって、ほんとう厚生行政のオーソドックスの道を歩いた方だから、今度は期して待つべきものがございます。こういうことで非常にあなたに期待を寄せられていたようであります。これは一般社会大衆はどうか知りませんけれども、あなたが今掌握しておられるいわゆる官僚陣は、だいぶあなたに期待をしたようでありますが、今申し上げたごとく出て参りましたものは非常にお粗末でございまして、残念であります。残念でありますが、そのお粗末な点を、しからば一つこれから御質問を申し上げたいと思うのであります。私の質問はかくのごとく膨大でありますから、きょうは委員長一つ条件を出しました。それは大臣が途中にして席をはずされるならば、私は質問はやりません。厚生大臣と社労委員会における理事小林進の最初の問答でございますから、最低五時間は大臣にここに落ちついていただいて、私の質問を受けていただかなければならない。これは委員長も与党の理事諸君ものんだのであります。これで私は質問に立ったのでございます。従って実のある質問はだんだんあとの方へ参りますから、大臣もそのお気持一つ腰を落ちつけて、私の質問に答えていただきたいと思います。  本論に入る前に私は序論として、簡単な問題から片づけておきたいと思う。その意味において質問の重点は前後いたしますけれども、まず簡単な問題から申し上げます。  第一問は、厚生行政の問題ではございません。これは官僚の規律に関する問題でございます。これは前にも私は古井さんにお尋ねいたしました。古井さんにお尋ねいたしましたものは、三十三年度の衆議院選挙に関する官僚の選挙応援の姿に対する私の質問でございました。私どもは行政法にはそう明るくはありませんけれども、一通りは私は勉強して参りました。官吏というものの身分がどうであり、官吏と称するものの地位がかくなければならないものであるということは、一応学んで参りました。いわゆる大衆に奉仕をして、時の政府や時の政党には常に中立でなくちゃいけない。これがいわゆる官吏のあり方であります。それがどうも中立性が失なわれている。非常に中立性が乱れているのだ。それが選挙のときに現われる。今まで厚生省の役人であった同僚諸君がおりますから、私はあまり具体的に申し上げませんけれども、それが政党に所属して、きのうまでは役人だった、きょうからは政党の一員となって選挙に立候補するときに、一体各省の役人はそれに対してどういうふうな応援の仕方をしておるか。これが実に大きな弊害を流しておりますから、その関係で今度の選挙法の改正にも、官吏をやめたる者、役人をやめたる者、官公吏をやめたる者は、一定の期間立候補することができないようにしなければならぬというような、そういう措置を講じているのも、この官吏の中立性が乱れている、こういうことを防止しなければならないということで、こういう苦心が払われていることは、政党内閣の閣僚として大臣は十分了承せられているところと私は思うのであります。最近また参議院選挙が行なわれます。各省の有力な高等の官僚がその参議院選挙を目ざして、おやめになっておる。そして直ちに選挙の事前運動に入られる。これは私は否定できないと思うのです。大臣、御承知だと思う。しかし事前運動、けっこうです。勝つためにはあらゆる手段、方法を用いなければならないのでありますから、けっこうでしょう。法律の許す限りけっこうですが、それに対して今までの同僚であり、先輩であるからという、そういう関係で政党に所属をして立候補をする。その自分たちの前歴の役人に対して——現職ではありません。前歴のある役人に対して、国家の各省が——国家権力ですよ。省の組織機構を利用いたしまして、あるいはわれわれに言わせれば悪用いたしまして、そして選挙に勝つための運動をすることが、一体許されているかどうかということです。これは私は大臣にいろいろな証拠があって申し上げる。けれども、これは何も厚生省だけに限られた問題ではない。ほかの省にもありまするし、何も私は大ぜいの中でそういう証拠をあげて、大臣を急場に追い込もうなんという気持はありませんけれども、またささいな点ならばわれわれは人間の世界でありまするから見のがしていいとは思いますけれども、それをいろいろな国家機関の下部末端の機関を活用いたしまして、あるいは直接の関係はありませんけれども、たとえていえば都道府県の民生部あるいは衛生部あるいは本省の直接の機関、そういうものを通じて巧妙な、いわゆる選挙の票を集めるような運動をせられることは、どう巧妙であろうとも、やはり今の役職を活用し、国家権力を活用した選挙運動ではないかと思うのでありまして、こういうことが大臣現実に行われていない、厚生省に関する限り行われていないと、一体あなたは明確に御否定になりますかどうか。もし行なわれている懸念があるとするならば、それに対してどういう処置をおとりになりましょうか、私はそれを一つ承っておきたいと思います。
  74. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの中にもありましたように、各省の高級官僚と申しますか、それが立候補するという問題についていろいろ論議のありますことは、私もよく承知いたしております。いろいろ問題点もあろうかと思うのでございます。ただそれに対して各省の公務員が、選挙運動がましいことをやるということは許されないことでございます。それぞれみな好むところに従って投票するということは、これはもちろん問題のないことでありますけれども、役所の組織を利用して何か選挙運動でもやっておるというふうなことがあるといたしまするならば、これは戒めなければならぬことであります。これはもう申し上げるまでもないことだと私は思っております。
  75. 小林進

    小林(進)委員 私は大臣の非常に明確な御返答をいただきまして、これ以上追及しようとは思いません。古井さんは私のこういう質問に対して、いいことだとは思わぬけれども、役人にも友情がある、あるいは先輩のきずながある、厚生省だけではない、各省でもやっております、だから人と人並みのことをやらざるを得ないというふうな、非常に政治的な御返答がありまして、私はけしからぬと思ったのであります。しかしさすがに灘尾さんです。あなたはその点、古井さんよりは非常に明確な御返答をいただきまして、その点私は非常に敬服をいたしております。  ただここでいま一つだけつけ加えておきたいことは、県の民生部や衛生部あるいは出先の保健所を通じて、民間の各種の保健行政の方へ手をお回しになって、どう巧妙におやりになろうとも、そういう官庁につながる民間団体の中には、少なくとも三分の一はやはり時の政府に反対をする、われわれ社会党に通ずるものはいるのですから、どう巧妙におやりになっても、その巧妙な作戦は必ずわれわれのところへ間髪を入れず流れてくる、こういうことを一つ大臣から、あなたの下僚諸君の高級官僚によく事実をお話し願いたい。彼らは社会党なんかいたって、国家権力と巧妙なる行政の技術をもってすれば、わからないように事前運動ができるとお考えになっているかもしれません。そうはいかない。やはりこれが民主政治の妙味でございますから、そこら辺は一つ十分お気をつけて、私どもが具体的な証拠をあげて二度も三度も大臣とこんな不愉快な問答をする機会のないように、大臣の方から一つ十分御注意をいただきたい。  次に私は事務的な問題から処置をしていきたいと思うのでありますが、中央医療協議会の問題でございます。これは法律も完成をいたしまして、実施せられていなければならない形のものでありまするが、今なお軌道に乗っておらないようでありまするし、特に地方のいわゆる医療協議会というものはまだ成立もしていないし、動いてもいない。中央もそうであります。これに対して一体いつこれを軌道にお乗せになるのか、また一体お乗せになる確信があるのか、一つ大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  76. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 さきの臨時国会で医療協議会に関するいわゆる改組法案というものを提案いたしまして、御審議の結果、成立いたしたわけでございます。従いましてその成立いたしましたいわゆる改組法なるものは、これを実施に移さなければならぬのが私ども責任でございます。私どもといたしましてはこの改組法案につきましていろいろ当時から議論がございまして、かなり不平を言われる方もあるし、不満を述べられる方もある。私も実は手ひどい抗議を受けたのでございますが、その経過は経過といたしまして、いやしくも国会で成立した法律でございますので、これはぜひ協力してもらいたい、私ども誠意を持ってその実施をはかっていこうという努力をいたしておるわけでございますけれども、今御指摘になりましたように、今もって組織を完了して再出発するというところまで至っておらぬことは非常に残念に存じます。私もまた相済まぬこととも思っておる次第でございます。何さま、しかしいずれも関係の深い向きでございますし、これらの方々の協力なくしては医療保険の行政を進めていくわけにも参らぬのでありまして、私どもといたしましてはあくまでも誠意を尽して、この関係の向きの方々の御協力を得べく、せっかく努力をいたしておるところであります。なかなか思うように運びませんので、実は私も非常に遺憾に存じておりますけれども、しかしわれわれが今後さらに努力を重ねることによりまして、この問題はいずれは解決するもの、さように考えてせっかくやっておるところであります。地方の医療協につきましては、特に現実問題といたしまして、急いで再出発しなければならぬという事情もございます。これはもう小林さんもよく御承知通りでございます。さようなことでもございますので、特にこの問題につきましては、なるべく早く再出発いたしたいというので、せっかく今その話をいたしておるところでありますからそう遠からざるうちにこの問題については目鼻がつくのではなかろうかという期待を持って、今いろいろやっておるところでございます。
  77. 小林進

    小林(進)委員 大臣が御努力をされていることは私ども新聞紙上を通じて十分了承いたしておるのでありますが、これは申し上げるまでもなく古井さんの時代とはちょうど逆になりまして、古井さんはこの中央医療協議会を医師会の反対でついにものにすることができなくして退陣をせられた。先ほど私が申し上げたようにさびしく去っていかれた。今度その実情を察知しながら、あなたは一つの新しい形のものを作り上げられて、幸いにして医師会はこの原案を了承せられたわけであります。ところが今度は反対側の被保険者の方で反対をしてきた。六つの団体が反対をいたしておりまするが、その中で聞けば国保の方は了承をしたといいまするか、陥落をして、もちろん総評は最初から不離不即でそれほど強い反対はいたしませんでしたけれども、今なお健保連でありますとか社保連でありますとか、それと全労でありますとか、二つの団体がどうしても大臣の説得に応じないというのが今日の実情であります。今のお話によれば、地方の問題は何か成立し得るような見通しがあるような御回答であったように聞いておりますが、現実に今でもこの地方の医療協が発足をしないために一千七百名でありますか、一千七百名近くの保険医の認定の継続ができないで困っておるというようなことをわれわれは了承しているのでありまするが、これは一体このままにしておいて差しつかえないものかどうか、それを一つお伺いいたしたいと思います。
  78. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 差しつかえないと言われる性質の問題ではございません。なるべく早くさようなことをなくさなければなりませんので、せっかく努力をいたしておるところでございます。問題は、地方は地方で委嘱する問題でございます。どうしてもこの問題がどうにもならぬという状態になれば、またその考え方もあるいはしなければならぬかとも思いますけれども、ともかく従来から特に密接な関係にあり、将来ともまたお互いに協力していかなければならない団体との間の問題でございますので、私どもとしましてもあくまで理解と協力を求めるという方向において努力をいたしたいと思います。地方の困っている事情等につきましては、関係団体の向きも実情は御承知であろうと思います。私どもが誠意を持ってお話をすれば、そう遠からざるうちにこの問題は何とか解決の道があるのではなかろうかという期待を持って、今せっかくやっているところでございますから、しばらくお待ちを願いたいと思います。
  79. 小林進

    小林(進)委員 大臣が御努力されているのを私どもが質問をして、もし事態が好転しているものを逆転せしめるような形になってもいけませんから、しばらく時間をかしてくれとおっしゃるならば、私どもそれ以上しいて責任を追求しようとは考えないのであります。これとうらはらをなしております臨時医療報酬協議会、これも政府が法律を国会に出すということを新聞が報じておりますが、あるいはきのうあたりお出しになったのでありまするかどうか、その点一つお伺いしたいと思います。
  80. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 臨時医療調査会法案、こう呼ばれておる法案でございますが、それにつきましては政府としましてはこの国会に提案をいたしたいと考えております。まだしかし提案するところまで至っておりませんが、そう遠からざるうちに提案の運びになるだろうと考えております。
  81. 小林進

    小林(進)委員 けさの新聞を見ましたら、これは十二日政府、自民党が今国会に提出することにきめたのでありますから、まだなるほど御提出にはなっていないようでございます。これに対して、十三日ですからきのうですね。また医師会は何か午後の二時にお茶の水の日本医師会で全理事会を開かれて、そこで臨時医療報酬調査会設置法案にはあくまでもやはり反対をする、こういう決定をされておりまして、私どもが第三者の立場で見ておったよりもさらにその反対が強固だという感じを私自身が受けておるのでありますが、この問題に対する大臣の見通しはいかがでありますか。
  82. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この法案につきましては、小林さんも御承知のように昨年の通常国会にも一度提案をした問題でございます。当時から医師会方面におきましては、この法案に対して反対の意向を出しておられたのであります。われわれといたしましてはこの法案は、今後の診療報酬の問題を正常な姿において進めて参ります上において役立つ法案だと考えておるのは、当初から今も変わりはないわけであります。できることなら関係の向きのそれぞれの御賛成をいただきたいというので今日までやって参りましたが、遺憾ながら今もって医師会の皆様方の積極的な御賛成を得るところまでは至っておりません。しかしこの問題は今後の診療報酬問題を進めていく上から申しますと、われわれとしてはぜひ提案をして御賛成をいただきたい法案でございますので、多少の反対がありましてもこの国会に提案し、もちろんその間医師会に対する努力を怠るわけでもありません。同時に国会の審議を通じましていろいろまた御質問もあり、御意見もあろうかと存じます。その過程において御理解を得られる点も少なくないだろうというふうにも考えますので、今日の場合といたしましてはともかく一つ提案をして御審議をいただきたい、さような心持でせっかく準備を進めておるところでございます。
  83. 小林進

    小林(進)委員 その内容については、また設置法でも出ましたときに十分質問させていただくことにして、これは社会労働委員会でなくて、あるいは内閣委員会に行くかもしれませんが、いずれにいたしましても、十分内容を審議させていただくことにいたしまして、ただ、今のところ私のお尋ねをしたいことは、今、中央医療協に非常に強く反対をいたしておりまする全労あるいは社保協の皆様方も、この臨時医療報酬調査会法が通ることと、それからいま一つは何か病院の代表が医療協に入ることを条件にしてこの中央医療協を承認してもいいじゃないか。あるいは中央医療協に反対している諸君は、この臨時医療報酬調査会を条件にしてあるいは強い反対をやや軟化せしめてもよろしいというふうな、そういう雰囲気を思わせるような点なきにしもあらずですけれども、一方医師会の方は、中央医療協は断じてこれを実施すべし、臨時医療報酬調査会は断固としてこれを排撃すべし、その間にはいささかも妥協を許さぬという、非常に強硬な態度がうかがわれるのでございまするが、いま一度この両方の反対勢力に対する見通しを大臣からお伺いいたしておきたいと思うのであります。というのは、大臣が案外安易にお考えになっていると大へんだと思う。思い起こせば、みんな医師会のこうした類似の問題で、歴代の大臣が倒れているからでございます。坂田道太君のごときは、とうとう最後は気違い扱いまでもされて、そうして実に残忍な形で厚生大臣を追われていくというのも、これはみんな——古井さんも解決できなかった。厚生省にすわった古井さんも解決できなかった。灘尾厚生大臣がおいでになったのでございまするし、古井や坂田にできないことをもってしても、わしの実力をもってすれば、石井派の総帥灘尾の力をもってすればと、大きな自信を持っているかどうかは知りませんけれども、われわれ第三者の立場から見た場合に、なかなかこれはそう容易な問題ではない、こう考えておるものでございますから、大臣の成功を祈りながらも、あえて老婆心からお尋ねする次第であります。お見通しを一つ承りたいと存じます。
  84. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、医療協の改組の問題につきましては、医師会は久しぶりに賛成をしてくれたわけであります。しかるところ、それができますというと、今度は支払者側の諸君が、その案につきまして、あるいはその成立の経過につきまして、非常な御不満をお持ちになって、実は私としては予期せざる強い反対を受けた、こういうふうに考えるのでございます。私自身には何もそうまで不平を持ち、不満を持たれなくてもよろしいものではなかろうかという気持はもちろんございます。ございますが、現実にそういうふうな反対を受けましたことは明らかな事実であります。しかし政府としましては、国会で皆さんの御賛成を得て成立さしていただいた法律でございますので、あくまでもこれが実施のために努力するということは当然の責務と思っております。そのつもりでせっかくやっておるわけであります。その間に支払者側の諸君の間に、あるいは医療報酬調査会をなぜやらなかったとか、いろいろ問題もございますが、私はこれは特別の条件というふうな意味には考えておらない。また条件とかなんとかいうふうな意味においてこの問題を処理すべきではない、こういうふうに考えておるわけであります。医療協議会は医療協議会として成立した法律案でありますので、ぜひこれには協力していただきたいということでやっておるわけであります。医療報酬調査会は、もともと厚生省社会保障審議会に諮問をいたし、その答申を得て、厚生省が発議して、前の通常国会にも出して、懸案になっておる事項であります。しかもそのことが、今後の医療診療報酬の問題を解決する上において私どもも役立つ問題と考えておりますので、引き続いて私どももこの法案を国会に提出して、御審議を願いたい、こういう心持でおるわけであるのでありまして、はたして支払者側の諸君がどういうことになりますか、この法律案が成立すれば、それでさっぱりと片づくのか、あるいは成立を待たずして片づくのか、そこらのところのはっきりした見通しは持っておりません。しかし私は、やはり一つ一つかような問題を努力いたしまして解決することによって、だんだんと問題が片づいていくのではなかろうか。もともと国民皆保険の今日になりますれば、政府も支払者側も医師会も、それぞれこの国民皆保険の充実発展のためにお互いに協力していかなければならぬ、こういう関係に立たなければならぬと思うのであります。不幸にして現在いろいろな問題がございますけれども、これはあくまでも私ども努力いたし、また皆さんの御協力をいただきまして、さような何かかたき同士というような気持関係だけは一つなくしたいものと、こういう念願のもとに努力いたしております。それがあるいはある場合には一方を刺激するとか、ある場合には一方の反対を受けるとかいう場合もございましょうけれども、もちろんやはり関係者側の御意向というものは十分尊重しなければなりませんけれども、一面厚生省といたしましては、やはり政府としての一つの主体性を持った考え方でもって物事を努力しながら進めていく、この立場をとってやって参りたいと存じておるような次第であります。さよう御了承をいただきたいと思います。
  85. 小林進

    小林(進)委員 この問題は私ども、法案が出ましたときに、社会党も実は臨時医療報酬調査会設置法に対する社会党独自の案を持っておりますから、厚生省原案に対する修正案といいまするか、われわれ独自の原案という別なものを持っております。それと対比しながら内容については御質問申し上げたいと思いまして、このたびは大臣の御成功をお祈り申し上げるということで私この問題はとどめたいと思いますけれども、ただ一点、先ほども申し上げましたように、地方医療協議会に千七百名保険医ならざる者がいるわけであります。しかし、では現実に診断、治療を行なっていないかといえば、行なっているはずであります。どういう便法で行なって、しかもこれは一体合法的に許されているものかどうか。これが合法的に許されて支障ないものならば、何も地方医療協議会をそう力を入れてやる必要もないわけでありますので、這般の事情をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  86. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 厚生省といたしましては、一日も早く地方医療協議会を発足さしたい、かように考えて今日までやって参っておるわけであります。従って、その間において診療に従事せられるようになられた方に対しましては、何らかの便法を考えなければならぬというふうに考えて今日まで来ておるわけでありますが、いろいろ現実に御迷惑もかけておると存じます。いつまでもこういう状態で進んでいくわけには参りませんので、先般滝井さんの御質問に対してもお答えをいたしましたが、私は極力早期にこの地方医療協議会くらいは少なくとも発足させなくてはならぬという考え方のもとに、関係の向きとも特にこの点については話し合いを進めておるわけであります。遠からざるうちに目鼻がつくものと存じております。いつまでもかような状態を続けるということに対しましては、厚生省もそれではならぬという考え方をしておりますので、この程度一つ御了承願いたいと思うのであります。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 なるべく早く再出発するようにいたしたいと思います。
  87. 小林進

    小林(進)委員 はなはだ不満ではございますけれども、これ以上は問題をむしろこんがらかせる危険もまたございまするから、ここら辺で一応この問題は閉じまして、あとは一つ大臣の仕上げを拝見することにいたしまして、また一定の期日が参りましても、事態が好転しない場合には、今度は一つまたあらためて質問をしてみたいと考えておる次第でございます。  次には、ただいま流行の流行性感冒といいますか、むずかしい言葉でいいますと、何かビールス菌の蔓延ということだそうでございますが 非常に感冒がはやっております。これに対する予防の処置を一体どう講じられているのか。聞くところによりますと、このビールス菌というのは非常に悪性でございまして、しかもこれは今年度初めて現われた菌ではないそうです。三十二年にも同じ菌がわが日本にも流行したことがあって、非常に多くの被害者を生じたということでございます。しかもこのたびのこの流行性感冒の蔓延をする危険というものは、昨年の暮れころから顕著なる徴候があった。もしそのときに厚生省が的確なる予防処置をおとりになっていたならば、これほどまでに全国的に蔓延することはなかったであろうということは、大方専門家の口をそろえて言っているところでございます。この点、一体大臣責任はどうでありますか、厚生省責任はどうなっておるのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  88. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回のいわゆる流感の蔓延につきましては、実は非常に頭を痛めております。厚生省としては最善を尽くしてその蔓延を防止するということに努力すべきことは、当然考えておる次第であります。この問題につきましては、専門的な事項もございますので、一応政府委員から従来の経過等につきまして、あるいは今後の対策等につきまして、御説明させることにいたしたいと存じますから、御了承を願いたいと思います。
  89. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 ただいまの流行しておりますインフルエンザの予防対策ということについての御質問でございますが、補足いたします。  昨年暮れにこの流行予測の線が出ましたのは、実際に国民のある数の血清検査をいたしまして今回はやっておりますA2型に対する免疫の成立が非常に低くなっておるということで、決定的な学者の意見がある程度出たことをおさしになっておられると思います。ただ私ども行政といたしましては、三十二年にはやりましてから、その後ごくわずかの数でございましたが、三十五年にAが少数はやりました。このときには少数でおさまりましたのは、三十二年の約四千万と推定されるのですが、国民がなれられましたので、まだ免疫が残っておったので、この程度でとどまっておった。さらにその翌年であります三十六年の正月からはやりました流感では、今度は違った型のB型というのがはやりまして、幸いにしてA型は発生をしなかったのでございますが、三十二、三年当時の免疫がますますなくなっておるということで、行政的にはこの冬にA型のものが相当はやるかもしれぬということは、夏以前にある程度予測を立てまして、これは確実な根拠ではございませんが、従来の疫学的に見ました流行の波というものを予測いたしまして、そのために夏に、約半年製造の日数のかかります予防ワクチンをA1、A2、Bと混合にいたしまして、平年の約五倍、従来でございますと一年間ほぼ千リットル、おとなにいたしまして約百万人分の量が大体の通年の製造量でございます。ただ三十六年につきましては、その倍の二千リットルをとったのでございますが、それのさらに多くなりましたものから比べましても二倍半、平年分作っております量の約五倍の量を夏に計画生産をしてもらうという予測を立てまして、国内の業界が生産にかかりまして、ほぼ十二月末までにそのうちの約八割であります三千八百リットルが、約半年かかりまして製造、検定が終わりました。これは約半年かかるのでございます。しかもこのためには、例年いつも困ることですが、受精鶏卵に外から病毒を注射いたしまして、受精鶏卵一個からほぼ一人分弱ができるという、非常にむずかしい技術でございますが、多数の受精鶏卵をそれぞれ集めまして製造したものを配布済みでございます。さような形で一応は例年よりも相当強い予防対策になるだろうということできたわけでございます。  この四千リットル、おとなにいたしまして四百万人分、これに子供を平均入れますと約六百万人分になりますが、これの一割、日本人口の一割を占めます東京に一割程度の五、六十万人分が確保されるというのが常識でありましたが、これは自由な生産に基づいてそれぞれの地方の任意な、本省の流行予測に基づいての希望需給ということになっておりましたために、東京都ではこれの購入は予定数の十分の一しかしておらない。すなわちおとなの約五万人分程度、子供を入れまして七万人分程度しか、東京都では確保しておらなかったという遺憾な状況があります。それが災いしたのかどうか、これは的確ではございませんけれども、一月の半ばになりまして東京に集団発生を見た、こういうことになりまして、東京を中心に非常な蔓延を見まして、東京から方々に流行したと思われる形跡を残しつつ、千葉、神奈川が東京に次いで発生を見、さらに関東一円、現在は大阪、京都、神戸あたりに数校の学校発生を見、さらに福岡にわずか見、北の方で青森に見るということで、昨日現在二十三都道府県五指定都市から、いわゆる集団的な発生が最小限度一学級以上あったという報告を見るに至ったわけであります。  なおこのインフルエンザのワクチンにつきましては、業務行政の上で、すでに配布いたしました四千リットルのほかに、国といたしましても百二十リットルほどは、最悪の緊急なところに重点的に使用するために待機保留をいたしております。そのほかに逐次もうほぼ千リットルほどが追加されましたが、九月ごろ仕込んだものが次々と検定が上がりまして、今重点的な配布を続けておる状況でございます。従いまして例年よりは予測は立てましてやったのでありますが、なおかような状況で、東京ですでに一学級以上起こりましたのが九百校、全校休校をいたしております。これは今しておるのではなくて、一ぺん休校して現在開校しておるものも延べにいたしまして百五十校、学級閉鎖いたしたもの約三千クラス、ということは、東京では小中学校ではほぼ半数程度がこの被害を受けたということでございます。その他はまだ非常に少数な率でございますが、そのようなことになったことは非常に遺憾でございまして、これに対しまして、こういう状況、あるいは過去数年間のA型なりB型なりのはやっておる状況から見まして、全国民に毎年これをやるということはまずまず不可能ではないかと思います。しかし流行をある程度に食いとめて、被害を最小限度食いとめる。すなわち死亡を多数出さない。かかっても軽症にする。しかもその軽症なものを、業務に差しつえないとか、営業に差しつかえない程度にこれを防止するという方法はある程度あるわけでございまして、それには、そういうふうな一番弱者の集団をねらいまして、毎年あらかじめ相当程度接種すべく、毎年一定の時期に了しております。  ただしこれは普通流行性感冒という日本語がございますので、冬と思われまして、冬の前に来ませんと措置をしないのでございますが、ことしは偶然一月から起こりましたが、三十二年の四千万人をこしました流行は五月の中旬に発生いたしまして、盛夏の時期である八、九月に多数死にまたは蔓延したのでございますが、それがその後また秋に再燃したという状況でございますので、必ずしもこれは冬の伝染病として措置するということでは、今度逆にまた虚をねらわれるおそれがございますので、この時期のねらい方がむずかしい。それから一般世間が、下火になりますと、はたしてこれらの痛い予防注射を多数にやってもらえるかどうというのが、いつも食い違いまして困難をいたします。先ほど言いましたように、予定しましたものが東京都では十分の一しか確保請求がなかったというような状況になるわけであります。この点はやはり行政的な教育と指導が非常に必要と思いますが、さような形で、今重点的にあらかじめ恒常的に最小限度のポイントをやっておくということと、それから一般的なやり方に対する知識の啓発、こういうことで、ことしの状況にかんがみましても、ワクチンの生産確保の問題と伴いましてやっていきたい。おそまきになって恐縮でございますが、まだ今東京中心のひどいものが一応は地方に行きましたが、それほど濃厚にはなっておりませんので、ことしもこの対策といたしましては、発生防止、蔓延防止、それから個人衛生と公衆衛生と両方ございますが、これはまだ残りの都道府県には十分指導するということにいたし、さらにこの結果を逐次血清検査を確認いたしまして、次の流行の予測を立てて、重点的な対策の参考に資して間違いのないようにいたしたい、こう存じておるわけであります。
  90. 小林進

    小林(進)委員 だいぶ御懇篤な御説明がありましたが、結論においては、昭和三十二年には四千万人の罹病者があった。その経験に基づいて、今年度もA2型の流行の危険性が予測せられたから、例年の五倍の、それがA2型とはきまりませんで、B、C等それぞれそろえてワクチンの準備をされたというお話を承ったのでありますが、その点までは非常にけっこうでございます。しかしどれだけ準備をしたかといえば、三十二年四千万名罹病した経験に照らして、去年に準備したのは六百万名、この六百万名は非常にお粗末過ぎるじゃないか。しかも半年もかかるものであるならば、なおさらもっと多量に準備すべきではなかったか、私はそう思う。ここに私は行政の見通しの悪さがあったと思う。現実に今東京都が一割の六十万名分を受けておればいいのに、今のお話によれば問題を安易に考えて、五万あるいは子供の分を換算して七万しかとらなかったから、このくらい流行したのだというふうに聞けるようなお話もありましたけれども、今東京はもちろんでございますが、現実のこの時点で困っておることは薬がないことだ。どこの診療所に行ったって、どこの保健所に行ったって、薬がないのです。現に本院のごときも、公報に載せられて、きょうから国会議員には午前十時から午後の五時まで予防ワクチンをやるから集まれというのです。私も命が惜しいから飛んでいきましたが、これは先生方だけの特権でございまして、作業しておるわれわれはまだこのワクチンを打っていただくわけには参らぬのであります。それじゃ困るじゃないか、わしだけ打ってもらったところで、周囲にいるあなた方が打ってもらわなければうつされる危険があって、身の安全を保てないから、そんなつれないことは言わないで、君まず先に打ったらどうか。そうはできないのでございます。こういう状態でございまして、いかに薬が欠乏しておるかということは、一例をもって万事を推しはかるべしでございまして、まことに私は残念しごくと思うのでございますが、今お話を承れば四千リットルでございますか、仕込んだのが出てくるそうでありますけれども、四千リットルで六百万名といえばそれの四分の一でございます。大体しろうとの計算でも百五十万人、一体現在罹病している人が何人おりますか。今現在かぜに冒されて東京だけでも三千クラス休んでおる、それは延べであります。今全部一齋に休んでおるわけではないでございましょうけれども、全国的に推定せられる罹病者がどのくらいおりますか。そして現在仕込みで出てきた百五十万名の予防ワクチンがその罹病者の何%に該当するのか。間に合わないじゃありませんか。弱いのから先に死んでいけとおっしゃるのならば、そういう厚生行政もありがたいきわみでございまして、これがしかし与党自民党の厚生政策とおっしゃるならば、これは仕方がない。われわれは現実国民に訴えて判断を仰ぐほかにないのでございますけれども、そこら辺をいま一応詳しく、推定せられる現在冒されておる患者に対する薬がどれだけあるのか、ワクチンがどれだけあるのか。ワクチンだけではない。ここには紙がありまして、うがいをしろとか、十分な睡眠をとれとか、人込みに行くなというような、いろいろな御訓示が出ておりますけれども、しかし問題は、やはり予防ワクチンであります。その比率を承りたいのであります。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  91. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 この予防ワクチンは、もう出た患者の治療薬ではございません。これはむしろ出た患者の周辺で、まだかかっておらぬ者で予防するのに必要な患者に、どれだけ足りるかという問題をおさしになっておることと思いますけれども、そのためには、中心になります患者数が参考になるわけであります。東京の推定でございますが、これは実を言いますと、先ほど言いましたように、学校がそれぞれ校医とも相談して、校長から教育委員会に届け出られる。これが唯一のたよりでございまして、大体今のところ、先ほど言いましたようにほぼ九百校、小中学校の半数でございますので、その中でまたクラスは大体三倍ないし四倍ということでございますから、学校のクラスからいいますとほぼ四分の一に当たります。この四分の一のクラスで一クラスのうち二割程度、五十名のところ十名休みますと大体閉鎖になる、こういうことでございます。その後それ以上にふえておりますが、一応のめどはさようなことになっております。そういたしますと、全在籍学校数のほぼ一割程度近くがかかっておるということになりますので、これから推計いたしまして、小中学校には東京都民のほとんどの家庭が出しておりますので、全家庭の一割には入っているであろうということで、一千万人とすれば百万人、こういう推計を下さざるを得ないのであります。といいますのは、これが届出伝染病になっておりまして、医師にかかりますと届け出られることになっております。ただこれはわれわれの周囲でも、大体流感にかかったといいましても、家でかぜ薬を飲んで休むというのが十人のうち九人までであります。医師にわざわざ保険証を使って今度のインフルエンザで行くというのは、気管支炎を起こすとか、相当余病を起こすとか、あるいは子供という場合でありまして、届出で把握できるものはごくごくの一部、このようなわけで、的確な羅病数というものは、いつもインフルエンザの場合には確認できない。しいてあげれば、地元の開業医さんが、自分のところにかかってきた者に口頭で聞きまして、ここには来ないが、同じかかっている者がどのくらいかということを把握してもらって、これを寄せ集めて推計を下す、これ以外にないのでございます。これはこういうような伝染病の行政上の一番の難点でございます。特徴でございます。さようなことからいいますと、今東京が九百校、その他の二十二府県、五指定都市が昨日現在までで三百五十校ございまして、ほぼ東京以外の全国の集計が東京の三分の一でございますので、東京が百万といたしまするならば、ほぼその三分の一程度が地方に発生しておるということで、それを合わせまして百三十万人くらいがきのうまでにとにかくかかった、こういうことでございます。従って東京はほとんど今のように全部渡ってしまって、防疫学的にはこれから実際に東京に多数配布いたしましても、効果のほどはあまり保証できない。完全に免疫できますには二週間かかる。もちろん途中にもそれはそれなりに免疫はだんだんと上がってきますから幾分ききますけれども、まあできないといたしますれば、今外に発生しつつある府県は従来の配給も多数受けておりましてやっておりますが、今後のものは大阪とかそういうような、ことに密集地域の、発生をようやく見たというようなところにやっていくならば、比率からいいますとその住民全部ということになりますが、乳児とかあるいは老人、あるいは警察官を初め、社会活動に一割も休まれては困るというようなところに、重点的に指導いたしまして使ってもらう。かようなことで、及ばずながら幾分能率的にやっていく、これ以外にないのでございます。  今からこの生産にかかりましても、先ほど言いましたように、完成まで半年かかりますので、今度の流行には間に合わない。いかんとも仕方がない。従って五千リットルの製造予定を、当時何千リットルということは考えられないのでございますが、ただこれは一人分弱に一個の受精卵、これも死んだ卵ではだめで、受精卵に植え付ける。しかも夏場の生きた受精卵の一番少ないときでございまして、これは相当な卵の価格にまで影響するような大きな材料でございます。さようなことで作りますので、値段もおとなでございますと、技術料を含めまして一回の注射でほぼ百九十円かかるというようなものでございますので、原価も従ってそれに近い百五十円くらいかかるものでございますから、これがほんとうに計画生産いたしまして、使わなかった、あるいは売れなかった場合、これは必要がなかったらけっこうでございますけれども、その犠牲負担が巨額なものになる。これはいろいろと製造者にいくとか、あるいは買い込んだものが負担しなければいかぬということでございます。しかも保存期間は一年半、これも冷凍いたしまして一年半でございますので、それまでに一年間流行がありませんと、何億、何十億がロスになる。なかなかこれがむずかしい。いろいろと国家で買い上げておいて、あとすぐでも使うという話がございますが、諸外国でもなかなかそれが難点でございまして、進まぬということです。しかしそうといっても、こういうふうに毎年何千万という国民が、いよいよ毎年あるいは一年おきにかかるということになりますと、そうも言っておられません。これは十分まじめにこれから検討して、最小限度の対策は立てなければいかぬ、こう存じておるわけでございます。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと関連しますが、結局今のお話を聞くと、ワクチンその他の準備が経済的な問題から非常に難渋をきわめておるわけです。そこで学校における学級閉鎖の基準、それから全校が休校に入る基準、これを私は厚生省としては明白に示す必要があると思うのです。御存じの通り小学校、中学校の生徒は非常に学校に行きたがるわけです。少しくらい熱があったって、一日休むということは、子供にとっては非常に苦痛なものですから、休まずにお母さんにおんぶしてでも行く、こういう形になるわけです。そうしますと、行けば予防注射をしていないわけですから必ず感染する。この病気は家族の中でも、おとなも池田総理以下藤山経済企画庁長官までかかっておりますけれども、何といっても子供が一番多いわけです。かかってもすぐに熱を出して休まなければならぬというのは子供なんです。その感染のもとはどこかというと学校なんです。だからこの際、その基準をはっきりしてもらって、そして厚生大臣が閣議で、文部大臣はしろうとですから、こういう点については何といっても灘尾厚生大臣が発言をして、思い切って東京じゅうの学校を五日なら五日これから全部ぴちっと休ましてしまう。そして子供をしばらく勉強もさせずに全部安静にさせて、滋養のあるものを食わせる。そうすると、だんだん陽気がよくなってきますから、一挙に感冒は防止できると思うのです。ところがそれが優柔不断で、ワクチンもやらずにぐずぐず言っているところに問題があると思うのです。そこでその学級閉鎖の基準、学校を全部休む基準というものを、一体どういう工合に厚生省は作って文部省に提示しておるのか、これを一つここで明らかにしておいていただきたいと思います。
  93. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 これは厚生省の正規の契約に基づいたものはきまっておりませんけれども、三十二年のときに各省連絡対策本部ができまして、これで逐次検討しつつ決定版はあのときに出しまして、秋の問題に対処したわけでございますが、厚生省としては、一学級のうちほぼ十名以上出たら必ずその学級を閉鎖する、それから学校全体として二割程度の学級が閉鎖するような集団発生を見たら学校閉鎖を考慮する、しかも閉鎖をした場合には、休む日は連続四日は最低限度必要だ、これは菌の排泄と、それから再発の従来の臨床症状から見まして必要である、こういうことをきめたのでございます。そこから先は、今言いました十人程度というのを、東京都では昨年、一昨年は、ほぼ一五%程度になりましたときに教育委員会で大体校長が報告して閉鎖するというように、県の実情によりまして指示を出しております。今回もほぼ一五%の線で出しております。私の方できめましたのは、そういうふうに二割程度、十名程度ということで、一種の準則のようなことを当時のことできめまして、毎年本省としてはその取りきめできておる。現在も四日間の線もその通り私の方では指導しておる、こういうことでございます。  ただ、これをきっちり何%ということにするかという点につきましては、どの線がいいかというのは、なかなか学者の方に諮りましても決定的な意見が出ませんので、二割になったときとすればいいか、一割五分でいいかというのは、これは初発校と、それから非常に流行が激しくなって参りまして、途中から出る学校というふうになりますと、途中から出る学校ではむしろ率を下げて、同じ病気と思われるものが早くわかりますから、もう五、六名のところでやるというふうに下げるという方式を東京都もやっておられますが、われわれとしても、最初の確認はほぼ十名程度出れば、ビールス分離等が間に合わなくても早く学級閉鎖を行なう、こういう指導をしておるわけでございます。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、今年はもう九百校も休んでおるという実情ですから、そういう連絡会議を持たれて、あなたの方のその意思をお伝えになったかどうかということです。これを教育委員会なり学校長だけにまかしておったのでは、校長先生は自分の学校が閉鎖をするということは不名誉なことなんですよ。いかにその学校の衛生管理が悪かったか、こういうことになるわけです。そこでこれは幾分天下りになるかもしれませんが、どうせ厚生省で今ワクチンを用意しておるわけじゃないのだから、たちの悪いかぜですから蔓延することは確実です。従って大臣としては今尾村局長の言った線で、閣議でとくと文部大臣に申し入れをされて、自分の方としてはワクチンが今ない——私もこういうことをよく知っておる方だけれども、今の小林さんの質問で、百九十円もかかるのだ、しかも受精卵でなくちゃならぬ、一個から一人分弱で、真夏に作っておるからいかぬのだ、こういうむずかしいものであるということを実は知らなかったのです。今のを聞くと、これはますます大へんだという感じが濃厚になってくる。おそらくこれは文部大臣は知らぬと思うのです。だから、とくと大臣からこういうワクチンの製造のむずかしさをお伝え願って、そして池田総理も身をもって体験しておることですから、この際この基準を守ってもらいたいと、一ぺんぐらい厚生省がこういう問題にはイニシアチブをとってやることが必要だと思うのですよ。今学校には校医がおります。ところが校医がおるけれども、その校医というものはあなた方ががちっと握っていないんですよ。だから、やはり教育委員会なり教育長と相談をしなければ、校医がこれは学校を休ませた方がいいという意見になっても、ちょっと待って下さい、教育委員会なり教育長に相談してから先生しますから、こうなるんですよ。そこで、校医の威令がなかなか行なわれないという立場にある。それが厚生省の所管なら、伝染病予防法でこうなっている、一つこうせいというあなたの方の命令がさっといけば受けて立てる情勢である。今はそうではないんです。だから、これは校医に意見を求めるけれども、やはり教育長なり教育委員会にいかなければならぬし、校長と相談しなければならない。こういうことで、だんだん相談に日にちがかかるうちにこういうことになる。だからこれは灘尾厚生大臣から文部大臣にとくと閣議で言って、全体の意向として今のものを確認してやる必要があると思う。これはやはり東京以外に蔓延させるということは、結局あなたの方の厚生行政がワクチンの問題でだらしがなかった。去年は小児麻痺、ことしはA2型のアジアかぜである、何というだらしのない厚生行政であるか、こう言われるのです。だから薬がなければ行政的な方法で、やはり最善の方法をとることが私は政治だと思うんですが、どうですか。
  95. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 御趣旨通り必要なことと存じます。ただ、今までやっておりましたことを申し述べますと、去る一月二十二日に、東京のこの集団発生の、まだ確定いたしませんでしたが、発生通告があると同時に、各省連絡会議を招集いたしまして、文部省の衛生担当官初め各省——大体関係いたしますのは労働、自衛隊関係、それから運輸省、こういうような、いつもこういうような流行が起こりますと招集する各省連絡会議がございます。これを招集いたしまして、まず予告をいたしました。その後は東京中心に、学校中心の問題になりましたので、今厚生省に文部省の初中局の担当官が必ず一日置きに来ることになっておりまして、これには地方の情報を流す、それから厚生省としての対策の変更しつつある点を連絡いたしております。これに基づきまして、文部省がそれぞれの都道府県の教育委員会に情報を提供しているようでございます。しかし、それにいたしましても、いよいよ東京以外に、二十三都道府県になりましたので、明後十六日の十時から、今度は幹部を集めまして、大体衛生関係は各省幹部といいましても、わかりますのは課長まででございますので、これを私のところに明後日招集いたしております。ここで今滝井先生のお話しのようなことを、文部省関係では学級閉鎖と、それから学校内の校医をもう少し活用して個人衛生をやるということと、それから労働省関係、運輸省関係では、やはり業務に相当集団的に差しつかえる見込みでございますので、この方の対策を協議して推進する、そのためにはわれわれの行政の方だけでもいけませんので、明日の午後三時から伝染病予防調査委員の会合を催しまして、このビールスの専門家ばかり集まりますが、これによりまして、従来の資料に基づいて、さらに本年続く地方の流行予測対策を技術的に練ってもらう、これを明日の午後三時に考えておりますが、これによりましてとにかく今の段階では、一つ一つの段階を画したい、こうやっておりますので、御趣旨の点なお一そうこれを強くやりまして、今までちょっと間があき過ぎまして、文部省だけは連絡に来ておりましたが、ちょっとほかの方が手薄と思いますので、これはもっとひんぱんに開催して情報を交換したい、これが一番大事だと思います。
  96. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御注意の点よく承りまして、文部大臣とよく相談いたします。
  97. 小林進

    小林(進)委員 このインフルエンザの防止対策については、具体的に児児、学生を中心にした滝井委員の対策の要望があったのでありまするが、いずれにいたしましても、私は大局からながめて、流行が東京都を中心にいたしまして、今日はすでに二十三都道府県にこれが延びてきたのでありまするから、しろうとの大まかな見通しとしても、この流行はさらに燃え盛っていく危険があるのではないかというふうに感ぜられるのでありまするが、しかも先ほどのお話では、夏冬にかかわりない病気だ、三十二年には六月から八月、また秋には再発をしたというようなお話でございまして、そうするとどうもこれは年じゅう流行する性格を持っている。春になったからもう下火になるかといって、冬来たりなば春遠からじなどという甘い気持じゃおれない。こういう病気の性格が明らかになったわけであります。従ってここで一つ画期的な予防の対策を立ててもらわないと、弥縫策じゃ追いつかないではないか。二十三都道府県が、四十六都道府県に延びていく危険があるのではないか、かように考える。それに対する一番の予防の妙薬であるワクチンも、今仰せの通り国民の要望にこたえるためにはあまりにも少な過ぎるのでございますから、一つ薬の足らざる点を予防衛生や環境処理の問題で何とかこれを処置してもらわなければならないと思うのでありまして、一つ画期的な思い切った予防対策を、今も仰せになりました各省連絡会議ですか、そういうところで一つとっていただくことを強く要望をいたしまして、これが二十三都道府県程度でおさまれば、私どもがここで要望した効果があるものとして、一つ来たるべきまたの機会には感謝の質問をいたしまするし、これがまた延びて四十六都道府県などということになれば、今度は論調を改めて一つ御質問申し上げなければならないと思うのでございまして、十分御注意下さることをお願いする次第であります。  インフルエンザの問題はこれくらいにいたしまして、いよいよ本論に入らしていただきたいと思うのでございまするが、いま一つ私は、当面の問題ではございませんが、厚生白書の問題について、これも総括質問に対する一部としてお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  率直に申しまして、三十六年度の厚生行政年次報告書、俗にいう厚生白書をお出しになった。私どももちょうだいいたしましたが、三十五年度の報告書は、私は非常によくできておったというふうに感じたのでございます。第一部が総論で第二部各論でいくのでございまするが、今年度も同じスタイルで、第一部総論、第二部各論でお作りになった。この厚生白書、これは大臣、年々スタイルは全く同じでございまして、私も違いを見出すのに苦労したくらいで、第二部第三章第八節「引き揚げ者、未帰還者、戦争犠牲者の援護」というところに「ソビエトの日本人墓地墓参」などというのが、たまに三十五年度のスタイルと変わった項目で入っている程度でありまして、これはほとんど同じです。内容の数字が変わっている程度の問題であります。やはり厚生白書の生命は、第一部の総論にあるわけです。年次の厚生行政のあり方を率直にここで申し上げるわけでございまするが、御承知通り三十五年度の厚生白書は、これは池田内閣の例の所得倍増計画、三大基本政策、減税と所得と公共投資という三つの柱をとらえて、その中でもいわゆる社会保障に最も重点を指向しなければならないという結論を出しながら、脈々たる白書をお作りになった。厚生行政担当するものとしては、これくらいの気魄とこれくらいの主張は当然あってしかるべきということで、私ども非常におもしろく拝見をした、というよりは勉強させてもらったのであります。ところが、あにはからんや、その厚生白書が大臣承知通り池田さんの逆鱗に触れました。池田総理の逆鱗に触れたその結果は何かといえば——この三大柱の中で、社会保障に重点を置かなければならないというこの日本の現実に即した厚生行政のあり方からながめた場合に、わが日本の社会保障制度、厚生行政というものは、世界列国の水準からながめると非常に劣っておる、まさに十年の開きがあるということで、その数字を並べて、それを三十五年度の年次報告の中に入れられた。これが池田さんのお気に召さない。非常にお気に召さない結果は、時の厚生大臣は中山マサさんでございます。きょうはお見えにならぬのが残念でございまするが、この方が閣議の席上において池田さんから非常におしかりを受けたという、中山マサ先生涙の一幕がある。こういう悲劇を繰り広げながら大臣の座を下がってしまわれたわけでございまするが、しかしわれわれから見れば、ほんとう厚生行政をあずかるものとしては言うべき当然の主張をなされた、実にいいな、こういうふうに拝見した。ところが今年度の厚生白書でございます。大臣、これをお作りになったのはやはりあなたの責任なんでございましょうが、昨年にまさる本年の白書の貧しさよ、実にこれは貧弱そのものであります。第一部の総論、第一章「変動する社会」、こういうことで、何でも世の中は変動しているそうでございまして、人口が変わっている、農村が変わっている、都会が変わっている、何でも変わっていることを看板にして、これはあっちの省、こっちの省からみんな数字を寄せ集めて、ただ並べてみただけの厚生白書であります。これはほんとうにばらばらの数字、記録の羅列です。電話一本で、農林統計記録くれ、総理府の統計局から記録くれ、労働省からくれ、あっちこっちにくれといって、みんな集めてそれを羅列した。これでは池田さんはおしかりにならぬでしょう。ならぬだろうけれども、これは読んでも実に味がない。ちっとも興味もないし、血も通っていません。こういう白書ならばお出しにならぬ方がむしろいいのではないか。去年にまさることしの貧しさは、総理大臣に一喝を食らわせられて厚生省が腰倒れをした産物にあらざるやということを私は感じたのでありまするが、大臣の御所見は一体どうでありますか。去年の白書と今年の白書の価値判断を一つ大臣からまずお聞きいたしておきたいと思うのでございます。
  98. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 価値判断については、小林さんの価値判断で御判断を願いたいと思うのであります。去年の白書について総理大臣から一喝を受けて、それで腰がくだけるというほどの腰抜けと実は私は思っておらぬのであります。厚生省といたしましては、今度はそういう角度から問題をとらえて皆さんの御参考に供する、こういうっもりでやったわけでございます。まことに味がないという御批評で残念でございますけれども、十分と一つごらんをいただきたいと思うのであります。
  99. 小林進

    小林(進)委員 十分ごらんをいただきたいということでございましたが、私は十分見せていただいたのです。大臣の仰せになる前に十分見せていただきまして、あっちを折りこっちを折りして見たのでありますが、しかし何としてもこれくらいの白書しか、これほどの優秀なる大臣とこれほど優秀なる官僚陣をそろえて、そして多額の国費を使いながら、一年間厚生行政をまかせておいてこんなものしかできないのかと思うと、まことに情なくて情なくて、涙の出る思いがするのでございまして、やはりこういう点は一つこの日本の社会保障進歩のために、読む者をして人心を打つ——昨年のは打ちましたよ、胸を打ったです。やはりそういうものを、ほんとう厚生行政のエキスくらいを作り上げるというアイデアですよ、夢ですよ、理想ですよ、信念ですよ、そういうものを私はお作りいただきたいと思うのでありまして、総理大臣の一喝くらいに驚いたものでないとおっしゃるならば、また来年度もお出しになるでしょうが、去年も私どもは白書の問題でだいぶ質問いたしました。そのときに、与党の諸君から、これじゃこの白書が委員会の議題に乗せられるようじゃ困るから、来年度から白書の作り方は一つ注意しなくちゃいかぬね、こういうようなやじが出まして、これはどうもしまったぞ、言わでもがなのことを言って、これがもしも私あたりの質問で退歩するようでは困るなと思ったのですが、その質問が因果関係を結んだかどうかは知りませんが、結果においてはどうも去年に劣る貧しきものができ上がったことだけは否定できぬと思う。大臣は私に読め読めなどといって、私に読むことを強制しておきながら、おそらく大臣は全部お読みにならぬのじゃないですか。大臣一つ昨年度の分とよく比較対照いたしまして、私の言うことが間違っているか間違っていないか、一つ御研究をいただきたい。私は厚生省の権威のために申し上げているのであります。時間もありませんし、まだ質問が山ほどありますから、これはこれくらいにして忠告を発しておきたいと思うのでございます。  さて、大臣にお尋ねをいたしたいという私の総括の質問といたしましては、私は、日本の厚生行政といいますか社会保障には、大きく言って二つの欠点があると思っております。その一つの欠点は、これはもう多くの同僚諸君が言っていることでありますから、私は重複を避けて簡単にいたしたいと思いますけれども、それはやはり国家の総予算あるいは総所得の中に占める社会保障費というものがまだ比率において低過ぎるということであります。これは大臣がどう御答弁をされようとも、私どもは、わが日本における厚生行政社会保障制度というものは一体国家においてどれほどの価値が与えられているかということは、やはり予算あるいはその他において一つの判断をする以外にはないのでありまするけれども、総予算あるいは国民の総所得の中に占めるこの社会保障費というものは、何といっても欧米先進国よりは少ないのであります。これが欠点です。  第二の大きな欠点は、社会保障制度の二重性であります。でこぼこであります。これは私は、去年もここで総理大臣に来ていただいて、総理大臣池田さんにもそのことをお訴え申し上げた。ところが池田さんは、言われてみればその通りだ、だからその点は一つ是正するように努めましょう——先ほど灘尾厚生大臣も、わが社会保障制度には改善すべき点が多々あるとおっしゃった。もし改善すべき点が多々あるとすれば、私は私なりに解釈して、この社会保障制度の二重性といいますか逆保障といいまするか、上に厚く下に薄いという逆の形の社会保障制度が行なわれているのが、わが国の社会保障制度の最大の欠点だと思っているのであります。これは今度の三十七年度の予算の中にも少しも是正せられていないのであります。灘尾厚生行政の中にもこれの手直しが少しも現われていないということが私の最も残念にたえないところであります。この点は、予算委員会一般質問のときに、大蔵大臣やら農林大臣やら労働大臣やらにも御出席をいただきまして、そのときに一つ厚生大臣にゆっくり御質問をいたしたいということで私も準備をいたしておりますから、その点にはなるべく触れないようにして、きょうは総括的な質問をやらしていただきたいと思います。  第一番目の社会保障費が少ないという点でございますけれども、これはわれわれの同僚議員諸君もだいぶやりましたから、若干重複いたしますけれども、いずれにしてもどうしてもこれは申し上げておかなければならないのでありまして、三十六年度は総予算に対する厚生予算というものは、一二・六%、ところが三十七年度は昨年度の二千二百九十六億円に対して二千七百二十三億円で四百二十六億円の増、それが総予算の中に占める比率は一一・二%、こういうことで、一・四%も厚生予算が落ちている。これはやっぱり総予算、総所得に対する社会保障費がその比率において低下してきている証左ではないかと思います。いわゆる厚生行政というものが後退をしている形ではないかと私は考えるのでございます。大臣、いかがでございましょうか。
  100. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 総予算の中に占めております厚生省予算の率でありますが、仰せの通りに、昨年の当初予算と比較いたしますれば三十七年度の予算案は若干落ちておると思います。昨年の補正予算を含めて考えますれば、必ずしも落ちてはいないというふうに考えておりますが、いずれにしましても、おっつかっつというところであろうと私は思うのであります。もちろんわれわれとしましても、総予算中に社会保障費が占める比率の拡大を望んでおるわけでありますが、ただ比率だけでも片づかない面もあろうかと思いまして、しさいに御検討もいただきたいと思うのでございます。昨年は特に国民皆年金の問題でありますとか、あるいは国民皆保険の問題でありますとか、生活保護費の大幅引き上げとか、いろいろ問題がありまして、特に昨年度は大きく予算がふえているという面もございますので、総額でどうだということも大事でございますけれども、一面に予算の内容について御検討をいただきましたならば、多少また御了解をいただける面もあるのではなかろうかと思うのであります。しかし、要するに、われわれとしましては、申すまでもなく社会保障に関する経費がもっともっと大きくあってほしいという念願のもとに努力いたしておる次第でございまして、今年は昨年に比べて大幅な増率はございませんけれども、さらに努力を続けまして、その方向に向かって幾らかでも改善されるようにやって参りたいと存じております。
  101. 小林進

    小林(進)委員 予算の比率だけで社会保障費の内容全般を云々することはできない、そういう御答弁もございましたが、もちろんその通りであります。もちろんその通りでありますが、しかし私どもは、時の政府が重点的に、一体どこに中心を置いているかという一つのバロメーターとしては、やはりこれに一番重点を置いてものを判断する以外にはないのでありまして、それ以外のことというのは、もし考えれば主従の関係でありまして、やはり従が変わっている。たとえて言えば、大臣の仰せになりたいことは、ことしは生活保護費の基準が引き上がったじゃないか、国保の国庫負担率が五分ばかり引き上げになったじゃないか、結核対策としての命令入所患者の要費が増額したじゃないか、精神病の入院補助費が増額になったじゃないか、あるいは児童の保護の措置費が少し去年よりは上回ったじゃないか、国民年金の国庫負担分が増額をしたじゃないか、というような点をあるいは言いたいのだと思うのでございますけれども、私どもは、それを大臣がお言いになるほどありがたくとるわけには決していかないのであります。たとえて言えば、これはあとでも申しますけれども国民年金の国庫負担金が五分値上げになった、これは国としては大きな増でございましょうけれども、それを被保険者の立場で受けている農民や、五人未満の従業員も置かない、ほんとうに零細な商人の個々の立場から見たらどうでありますか。同じ日本人と生まれて、医療の面において、生活の面において、あるいは生まれたときの出産手当から死んだときの葬式代まで、みんな差別のつけっぱなしです。そういう手直しは一つも行なわれていないのでありまして、厚生省が太鼓をたたいて国民年金に五分の負担金を増額したなどということをいかに仰せになっても、国民にとってはちっともありがたくないし、その進歩は少しも見えてこない。保険者団体か市町村がそれで少しは楽になったかもしれませんが、個々の被保険者にとっては何も差がないのでありまして、そういうわけで、この厚生予算というものは、進歩しているよりはむしろ退歩している。だんだん国民生活格差、医療保障、所得保障の格差をむしろ広げる方向に、差をつける方向に今年度の国家予算は走っていると私は判断せざるを得ないのであります。この際、参考までに、これは厚生省のお役人さんに一つ、総所得の中に占める日本の社会保障費の三十七年度の比率をお聞かせ願いたい。同時に、欧米先進国の総所得の中に占める社会保障費が一体どれくらいの比率であって、日本の今年度の比率と比較してどれくらいの差があるのかということを一つお聞かせ願いたいのであります。
  102. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国民の総所得と対比いたしまして、社会保障費がどのくらいあるかとか、どのくらいの割合を占めるとかいう問題は、いろいろな資料によって違いもあるかと思うのでありますが、ILO関係の資料によりまして、これは少し前の話になって参りますけれども、われわれが承知いたしておりますところでは、日本は五、六%というところじゃなかろうかと思うのであります。それに比べまして、ヨーロッパその他のいわゆる先進国と申しますか、そういうような国におきましては、一割以下のところはないのであります。一割よりももっと多い、こういうような状況になっておることは、これはもう否定することのできない事実であります。私どもといたしましては、経済の成長をはかり、国民の所得を増し、その間に社会保障費の充実をはかって参りたいという気持、何とかこれに追いつきたい、もちろん将来は追い越したいということになりましょうが、とにかく追いつきたいという心持でもっていろいろやっておりますが、現在は、遺憾ながら、ただいま申し上げましたように相当な差があることは、これは否定することができません。結局、国民所得の違いということが、大きく働いておるように思います。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕
  103. 小林進

    小林(進)委員 大臣は五、六%ということをおっしゃいましたが、確かに五、六%でございまして、あなた方がお出しになった資料、私どもが見せてもらった資料の中で、これは一九五三年から一九五四年でまことに古いのですが、国民総所得の中に占めるわが日本の社会保障費が六・五%、こういうふうにお出しになっている。これに対して、これも今度いただいた各国の社会保障費の割合ですが、これは一九六一年でございますから新しいものでございますが、ILO各国の社会保障費、これは厚生白書の付表の第五の中にあるのでありますが、その中には西独が二〇%、フランスが一七・九%、オーストリアが一六・五%、ルクセンブルグが一六・五%、ベルギーが一四・八%、イタリアが一四・二%、ニュージーランドが一二・八%、スエーデンが一二・五%、デンマークが一一・六%、フィンランドが一一・六%、イギリスが一一・四%、オランダが同じく一一・四%、ノルウェーが九・九%、何べん読んでみても日本は出てこないわけであります。オーストラリアが八・八%、カナダが八・五%、チリーが八・五%、スイスが八・二%、ユーゴスラビアが九・五%、ポーランドが七・七%、アイスランドが七・六%、出てこないじゃありませんか。出てきませんよ。池田総理がおっしゃる、社会保障は日本の三大柱にいたしましても、そういうわけでございます。あなたたちからいただいたこの付表の五によれば、日本はわずかに五・三%であります。こういう形でございまして、われわれが名前も知らないような中進国、後進国に類すると思われる国々に比較しても、総所得に対する社会保障費の比率というものは、はるかに劣っている。いかに日本の資本主義というものの搾取が激しくて、国民生活の底上げをすることに冷淡であるかということは、私はこれによっても明らかだと思う。そんなところの中で、ほんとうのことを言うと、池田総理は、昨年度の厚生白書のように、大臣までもしかり飛ばして、国民の目をごまかそうとしておられる。ごまかそうとする気はないと言ったところで、数字が表わしているのであります。そういうことに対して、大臣は、日本の国民所得が低いのだから、貧乏だからと言うが、一体この目に映る日本はそんなに貧乏ですか。今私が申し上げましたような、そういう中進国、後進国からながめて、日本はそんなに貧乏な国ですか。僕はそう思いませんね。私なんかが言わなくても、皆さん方は毎晩おいでになっているかもしれませんが、あそこにミカドとかなんとかいうような、実にこの世のものとも思われない遊蕩歓楽の地が、東京を十重二十重に囲んでおるじゃありませんか。しかも、その中に占める——これは厚生行政の問題じゃありませんけれども、一体総生産に対する日本の消費水準はどうですか。こういう遊蕩淪落のちまたやぜいたくな暮らしを含めて、日本における消費水準はどうですか。大体イギリスやアメリカ、フランス、ドイツのような最も進んでいる国で、総生産の六二%が消費水準だといわれておりますが、それに対して日本は五六%、やや生産に対する消費が落ちているというけれども、それは表面であります。表面は落ちているけれども、内面を実際探ったら、おそらく生産に対する消費の水準は、日本は第一等だろうといわれている。なぜかといえば、こういう資本主義の世の中における資本家、大会社、大工場、それから地方行政や何かまで、いわゆる企業の設備投資、今これは設備過剰で、設備投資に基づく赤字貿易だとか輸入超過だとかいうことがいわれておりますが、その過剰投資、三年で十兆円の投資をして、去年一年だけでも三兆七千億円やった。その過剰投資といわれる投資の内容を分析いたしますと、その中の三割くらいは浪費に回っている、消費に回っている。いわゆる接待供応です。アメリカのケネディの弟が来たからといって、どんちゃんどんちゃんこの世の姿ともなく接待を申し上げる。これは厚生省のお役人の関係にはございませんけれども厚生省を除いた通産省や大蔵省、これにあの橋をつけてもらわにゃならぬ、あの交通整理をしてもらわにゃならぬ、あるいはこの事業をもらわにゃならぬという企業体やらあるいは公共団体が、お役人様を連れていって——ある会社には、労務係じゃございません、接待係の重役という者がおりまして、そして連れていって、飲めや歌えの大騒ぎ。わが日本の企業体なんかでは、人件費なんというようなものは必要経費の二位か三位、資材費なんというものも二位か三位、その会社がつぶれそうになったところで、接待費というのが第一位。この接待費というのが、これはすなわち資本の分け前では投資になっている。しかし、内容はこれは浪費だ。そしてそういうむだな浪費が国民生活を堕落せしめて、いわゆる消費水準を高めながら、わが日本の資本主義の悪をかなでながら、きょうはミカドでございます、あしたは紅馬車でございます、あるいは赤坂でございます、新宿でございます、新橋でございますと、こういう投資景気といいますか、それを出しておるのであります。私は厚生省の皆様方には、決してそんな不謹慎なお役人はおいでにならないと思いますから、あえて苦言を言わせていただきますけれども、一体各省の本省のお役人、その給料はわかっております。一体あの中で、一週間に一回でも二回でもゴルフ道具を持って、ゴルフ場に行っておやりになるだけの給料を国家は保障しておりませんでしょう。もちろんあげるべきです。ゴルフなんというものはレクリエーションですから、あげていいけれども、現在の日本の俸給制度では、まだお役人の課長さんや局長さんが、ハイヤーを飛ばしたり、自家用車を飛ばしたりしてゴルフをおやりになって、あちこちでそういうぜいたくな遊興をおやりになるくらいの費用はないはずでありますが、今はもう各官庁におけるゴルフなんというのは圧倒的な流行でございまして、みんな舶来品のゴルフ道具なんかをお持ちになって、そうしておやりになっている。一体このお金は何ですか。私は悪意の推定をして申しわけないけれども、その中にはやはり過剰投資、いわゆる設備投資といわれる金の何%かがこの道具に化けている、こう私は考えておるのでございまして、そういうようなものを含めると、わが日本の消費水準というものは、実に世界の先進国よりもずっと上がっている。上がっているそのさなかに、今申し上げたこの社会保障費だけが実に見る影もなくこういう低下をしている姿は、一体どういうわけでございましょう。これは大臣がおっしゃるように、わが日本の所得が少ないから、国民生活の水準が低いからという理由だけで片づけられる問題ではないと私は考えております。やはり日本の行政ですよ。政治の姿勢です。政府考え方です。方針です。わが日本の池田内閣は、社会保障制度に対しては熱意がない。にせの看板を掲げている。偽りの看板を掲げている。羊頭を掲げて狗肉を売っている。むしろ池田内閣は、貧乏製造内閣であると私は判断いたしておりまするが、大臣いかがでございましょうか。
  104. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お話の中には、私、非常に傾聴した面がたくさんございます。ただ、わが池田内閣社会保障に冷淡であるとか、社会保障に熱意がないという御意見については、私はそれを承服するわけには参りません。われわれといたしましては、熱意を傾けてやっておるつもりであります。お述べになりました中に、確かにお互いに国民の消費生活改善しなければならぬ、消費生活の健全化をはかっていかなければならぬ、そういう面もあると思います。生活上の姿勢を正していくということももちろんあろうかと思いますが、しかし、ごく大きくものを考えました場合には、何といたしましても、私は日本の国民所得というものは、諸外国に比べますと、あまりいばれた姿ではないと思います。人口は多い、国民総所得と人口というふうなものを考えましたときに、お互いの所得というもののレベルが、フランスとかイギリスとかドイツとか、ああいうふうな国と比べますと比較にならないようなことでありますので、従って、予算の編成、社会保障費の充実という面におきましても、やはり財政的な制約を受けざるを得ないということは、おおうべからざる事実だろうと私は思うのであります。同時にまた、これは余談のことになるようでありますけれども社会保障に関する歴史がだいぶ諸外国とは違うと思います。ことに社会保障の大きな要素をなしております年金制度というふうな面におきまして、まだこれがほんとうに働いていないというような点もありますので、そういう関係からも、社会保障費がその総額において外国より劣っている、かような面もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、やはり経済力をつけて、国民の所得をふやして、そうして社会保障を堅実に進めていくという以外に道はないと思います。理想を言えば、私はいろいろ言いたいこともございますけれども、着実に一歩々々前進していく、そのためには国の力をつけていく、この努力を重ねる以外に道はないと思うのであります。お話しになりましたような点につきましては、われわれも反省し、また生活の健全化をはかっていくということについては全く同感でございます。さように心得ますけれども、大きく言えば、やはり今申し上げたようなことになるのではなかろうか、かように存じます。
  105. 小林進

    小林(進)委員 今参議院から、厚生予算が上がるから大臣一つ貸してくれという話が参りました。私は、自分の質問中にこれでは困るから、きょう質問するならば、大臣は五時間ここにいて下さい、さもなければ、途中から切られるようなばらばら質問では困るから、ごめんこうむりたいという条件をつけた。にもかかわらず、今予算が上がるからここで大臣を帰してくれということでございまするから、きょうはこれで私の質問は中止いたします。けれども、そんな途中で休んで一息抜いて、またその中を入れるような、そういうことは私は最初からやりたくなかった。きょうはやめますが、ただし、私はこれから本論に入るつもりだった。これから本論なんです。私が今池田内閣貧乏製造内閣だと申し上げたら、大臣はそんなことはないとおっしゃいましたが、私はそれを資料をもってあなたに申し上げるつもりだった。実は先ほど午前中も、だれかが質問しているときに、貧乏とは何ぞやとヤジを飛ばしましたが、私はあなたに貧乏の定義を承って、池田内閣ほんとう貧乏を製造する内閣か、製造せざる内閣かということを承りたい。貧乏というものは絶対なものではありません。これは相対的なものです。昔はみな裸で、はだしで暮らした。けれども、その当時には貧乏はなかった。なぜかならば、みな同一だったから、同一の世界には貧乏というものはない。原始時代に貧乏はない。徳川時代にも貧乏はなかった。しかし、今日貧乏はある。もし貧乏が比較的の問題ならば、私は大河内さんの言葉を信ずるわけではありませんが、大河内さんあたりは、世界中で一番貧乏人の多いのはアメリカだと言っている。なぜかというと貧富の差が激しいから。持てる者があるから貧乏が出てくる。多い者があるから少ない者が出てくる。少ない者は貧乏感を感じている。池田内閣が、いわゆる最低生活を保障する公的扶助において貧富の差をだんだん開いていくことは、これは貧乏製造内閣である。二十六、七年までは、公的扶助によって最低生活を保障せられている者と一般の消費水準の開きは、まだ六十何%で、四〇%しかなかったが、だんだん開きを激しくして、今日の段階では、一般国民生活水準に比較して、いわゆる最低生活、公的扶助を受けている者の生活水準は三八%で、六十何%も開いているということは、これだけ貧富の差が激しくなった。その差を激しくしたということは、池田内閣貧乏人を作ったことになりませんか。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕 時間がありませんから——あなたも勉強して下さい、あらためて私は池田内閣貧乏製造内閣であるかないか、大臣の御高説を承りたい。きょうは私は途中でやめます。
  106. 中野四郎

    中野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時八分散会