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1962-02-13 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十三日(火曜日)    午後一時三十二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 大石 武一君 理事 齋藤 邦吉君    理事 永山 忠則君 理事 藤本 捨助君    理事 小林  進君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       安藤  覺君    井村 重雄君       伊藤宗一郎君    浦野 幸男君       小沢 辰男君    加藤鐐五郎君       佐伯 宗義君    澁谷 直藏君       楢橋  渡君    八田 貞義君       松浦周太郎君    大原  亨君       河野  正君    五島 虎雄君       島本 虎三君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         総理府総務長官 小平 久雄君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働事務官         (婦人少年局長)谷野 せつ君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 中山 賀博君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働事務官         (大臣官房審議         官)      工藤 誠爾君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 二月九日  委員八田貞義辞任につき、その補欠として橋  本龍伍君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員中村英男辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  中村英男君が議長指名委員に選任された。 同月十三日  委員米田吉盛辞任につき、その補欠として八  田貞義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員八田貞義辞任につき、その補欠として米  田吉盛君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  発言の申し出がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 きょうは、社会党代表いたしまして、政府労働施策一般について御質問いたしたいと思います。特に労働者権利の問題、賃金の問題、労働条件問題等で重要なる問題につきまして、集中的に質問をいたしたいと思います。  まず第一に御質問いたしたい点は、ILO八十七号条約批准の問題でございますが、端的に質問申し上げますけれども政府ILO八十七号条約をこの国会提案をする意思があるのかないのか、こういう点を、まず第一に質問をいたしたいと思います。
  4. 福永健司

    福永国務大臣 政府は、しばしば考え方を明らかにしております通り、ただいまお話しのILO八十七号条約は、すみやかに国会提出いたしたいと存じております。
  5. 大原亨

    大原委員 すみやかに出すという御答弁でありますが、一体いつお出しになるのでありますか。今日までしばしば国会提案をされましたけれども国会審議をする時間的な余裕のほとんどないということがわかっておるときに提案をいたしまして、ILOに対しまして、国際舞台に言いわけをするというふうな政府態度でありましたけれども、今日の段階では、もはやすでに前国会においても論議し尽くされたことでありますが、いつ一体お出しになるのか、こういう点を御答弁いただきたいと思います。
  6. 福永健司

    福永国務大臣 少なくとも、私限りにおきましては、できれば今週中にもと考えております。そういうような私においての考えではございますが、政府全体、また提出与党の方でもいろいろ御心配をいただかなければならぬというような意味において、連絡等も今までもとっておりますが、さらに連絡等もとらなければならないこともございますので、一両日中に与党の方とも最終的な打ち合わせを遂げて、今申しましたような希望の方にぜひ持っていきたい。ちょうど官房長官も見えておりますが、官房長官にも何分の協力を願いたい、こういうように私は考えております。
  7. 大原亨

    大原委員 福永労働大臣内外注視の中で孤軍奮闘しておられることは、私ども理解できるのであります。しかしながら、少なくともこれは、後にいろいろと御質問いたしますように、労働者権利の問題は、労働条件賃金の問題と表裏一体であります。従って、懸案のこの問題を日本政府がどう解決するかということは、国際貿易・為替の自由化に当面している日本経済外交の中におきましても、非常に重要な問題であります。アメリカ関係はもちろん、EEC関係、ガット三十五条関係等を中心にいたしましても、まことに重大な問題であるといわなければならぬのであります。特にILOは、労使各一名、政府代表二名という、そういう三者構成による特殊な国際舞台であります国連の専門機構であることは、御承知通りであります。従って、この中におきまして日本がこの問題をどう扱うかということは、全国注視の的であります。労働大臣は、列国議会同盟の執行委員であるというようなことで、国際会議におきましては自民党内随一の名のある人であります。しかしながら、このこととILOの処理の仕方につきましての手ぎわ手ぎわの問題とは、全く別の問題であります。きょう官房長官に御出席をいただきましたのは、政府全体といたしまして、政党内閣議院内閣といたしまして、かなめの地位にあって総理大臣を補佐いたしております大平官房長官は、労働大臣は今週中に提案をするという御趣旨でありますが、ほんとうILO八十七号条約批准するつもりで、そういう責任ある措置をおとりになるというお考えであるのかどうか、こういう点につきまして、ここにあらためて御質問をいたしたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平政府委員 ILO八十七号条約批准の問題は、ここ数年間の懸案になっておりまして、その懸案を一日も早く解決して労使関係が正常に行なわれますことは、国内的にも、また国際的にも非常に大事なことであると私ども考えております。労働大臣からは毎日のように、提案を急ぐように御要請を受けております。私どもといたしましても、今申しましたように、この懸案をできるだけ早く解決したいという願望におきましては人後に落ちないのでございますが、ただいままでの状況は、大原委員も御承知のような状況でございまして、そのような運びに至っていないことは非常に遺憾でございます。今国会になりましてこの案件をどのように処理するかということにつきましては、政府としてはそういう願望を前々から持っております。できるだけ早い機会国会に御提案を申し上げて、御審議が願えるような状況になりたいものだと念願しつつ、今与党側とせっかく折衝中でございまして、遠からず結論出して御報告申し上げたいと思います。
  9. 大原亨

    大原委員 今、大平官房長官の方から、政府としては与党と今折衝中であるという御答弁であります。与党折衝中というのは、今の段階におきましてどういうことが問題でございますか。どういうことを折衝していらっしゃるのですか。その点について、私はこの国会を通じて明らかにしてもらいたいと思うのです。
  10. 大平正芳

    大平政府委員 いつ御提案申し上げるのが適当かということについて、協議いたしておるわけでございます。
  11. 大原亨

    大原委員 労働大臣が御答弁になっておりましたが、今週中に出すという労働大臣の御答弁と違うと思いますが、官房長官いかがですか。
  12. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申しましたように、労働大臣からは、今国会始まりまして以来終始早く出していただきたい、こういう御要請を受けておることば、先ほど申しました通り事実でございます。せっかく今協議中でございますから、しばらく待っていただきたい。
  13. 大原亨

    大原委員 逐次質問をいたしますけれども政府は今日まで三回にわたって提案をされたと思うのです。しかしながら、通常国会も相当の期間を経過いたしておりまするし、ILO結社自由委員会も二月の会議を控えまして、国際舞台におきましても、後に申し上げるように、日本政府はきわめて困難な立場にあると思うのです。何を協議になっておるのか、どういう障害があるのか、こういう点を私ははっきりしてもらわないと、先般の予算委員会のように、日本政府書簡をめぐりましていろいろとまた問題が出てくると思うのでありますが、その点につきまして、もう一歩突っ込んだ官房長官の御答弁をいただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平政府委員 先々国会に御提案申し上げるべく、御案内のように、政府は慎重に検討いたしまして政府案を作り上げたわけでございます。そして先々国会出しまして、あのような状況で廃案になったわけでございますが、一度きまりました政府案は、そのまま私ども政府といたしましては堅持して今日に至っておるわけでありまして、今、提案につきまして——内容の問題ではなくて、いつ御提案申し上げるのが適当かということだけにつきまして、協議中でございます。
  15. 大原亨

    大原委員 前の国会におきましても、国会の末期に提案いたしまして、政府書簡も、ILOに対する報告書の問題につきまして議論になりましたけれども、そうして継続審議にするなどということを対外的に宣伝しておったのであります。そういうことから考えてみましたら、いつ提出するかという時期について、今日いまだに政府与党の間において問題になるというようなことについては、われわれは全然理解できないのであります。この点につきまして、私は政府の全体の認識が欠けておるのではないかと思う。この問題につきましては、すでに七回にわたって日本政府は、ILOにおいて、国会提案をして批准をするということを約束いたしておる。私どもと同じように社会労働委員会のメンバーの一人であります倉石前労働大臣にいたしましても、あるいは石田労働大臣にいたしましてもそうであります。石田労働大臣は、昨年のILO総会に参りまして日本に帰ったときに、国民に対しまして新聞記者を通じてあいさつをしておる。その中に、日本国際場裏においてこのような釈明をするのは最後の機会であるように思われる、こういうようなことをはっきり言っておるのであります。こういう問題について、日本政府理解の仕方というものがほんとう理解をしていない、こういう点を私どもは推測するのでありますけれども、その点について、今の段階でどういうことが障害なのか、障害は何かという点を、もう少し具体的に答弁してもらいたい。
  16. 大平正芳

    大平政府委員 政府の歴代の労働大臣が、ILOに参りまして言われました通り政府としては、何とかこの原案をできるだけ早く解決したいという願望に変わりはございませんし、政府案も鋭意固めまして、現在御提案準備ができておりますことも御案内通りであります。ただ、先ほど申しましたように、たとえばいつ御提案するかということにつきまして、その他の法律案同様に与党側協議中である、こういうわけでございます。
  17. 大原亨

    大原委員 官房長官の御答弁によりますと、政府与党との間の話し合いができない、こういうことであります。だから、先般の予算委員会においても政府報告書をめぐって問題になりましたけれども、これは政府与党との間の関係の問題である、こういうことは、私はきわめてはっきりしておると思う。これは自民党社会党との関係の問題ではないのであります。その点については、私は、このILO重大性にかんがみまして、政府はその責任を明らかにしてもらいたい。この点、労働大臣は異議ありませんね。
  18. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま与党政府協議をいたしておりますることは、政府提出すれば、そのあとに来たるべき事態等について政府与党も検討をいたしておく必要もあろうかということは、これはまあ当然であります。従来とも審議方法等につきまして、いろいろ国会国会としての御論議もあった次第でございまして、さような過去の経過等にかんがみましても、ただ出しさえすればいいというわけにも参らぬか、こう思うわけでございます。それにいたしましても、私どもといたしますと、できるだけ早く提出いたしまして、あと国会でしかるべくお願いいたしたい、こういうところであります。国会へ出てしまいますと、それから与野党間でいろいろ御論議等もあり得る場合があるわけでございます。従って、与党政府の問題ではございますが、勢い与野党間での関連を持つ問題にもなる、こういうことにはなるわけでございまして、その辺も全然無関心でいるわけには参りません。そこで、先ほど官房長官が言われるような顧慮も必要である、こういうことであろうかと考えます。
  19. 大原亨

    大原委員 今重大な発言があったのです。議席からは、同僚の与党委員の諸君からは、これは自民党の党の問題である、党と党の間の問題であるというような議論があるわけです。しかし、この法案出して、そうしてこの法案をどういうふうな取り扱いにするかということは、これは政府与党の一体の責任なんです。労働大臣は、出したい出したい、今週中に出す、こういうことを言っている。官房長官はその言葉を濁している。与党の方は、新聞報道等によって聞きますると、出したって審議を進める必要はないだろうというような報道を公然となされておる。ILOの問題に関しましては、政府態度というものはまるっきり、ミミズのようなものですね。アミーバのようなものじゃないですか。近代政党としての体をなしておらぬじゃないですか。そういう問題につきましては、これはだれが聞いたって、こんなことについて政府与党責任でないと言う者はいないわけです。  昨年の十一月の結社自由委員会理事会におきまして、いろいろ議論になったのでありますが、その議論になりましたときに、結社自由委員会は、日本政府措置に対しまして失望したというふうな、外交慣例上異例の発言をいたしておるのであります。そのときに、日本政府は、五十八報告といわれる結社自由委員会理事会が承認いたしております報告書によりましてもそのことが裏づけてありますが、次の通常国会には提案をして、国会の承認を求めるべく努力をするんだということを書簡の中に書いておる。その書簡結論の前に、この問題が野党責任であるかのごとく、継続審議の問題を含めて書いておりましたので、先般の予算委員会におきましてはこれが問題になったのであります。政府は、結社自由委員会が二月に開かれるけれども、この通常国会にこの問題を出して、審議して批准をしないということになると、六月に総会があるわけでありますけれども国会におきましては、そういうチャンスは本年中実質的にないのであります。特別国会臨時国会等は会期が短いということになりまして、今まで政府はしばしば言いのがれをいたしましたけれども、そういう条件があるわけであります。だから、すみやかにこの問題をすっきりした形において提案をされて、国際的な常識に沿うたような批准の仕方をすることが、私は、日本の国民的な立場に立って、ただ一つとるべき道であると思うのであります。そういう国際舞台に対しまして、政府自体責任を感じておられるかどうか、そういう点につきまして、再度官房長官の方から御答弁いただきたい。
  20. 大平正芳

    大平政府委員 今大原委員が言われたような認識に立っておりますから、政府としては鋭意努力いたしまして、その準備をして参りましたことは御案内通りでございます。  それから御案内のように、私ども政府出します法律案等は、政党内閣であります以上、与党側に御了承を得て出す慣例になっております。従いまして、今その手続をとりつつある状況にあるにすぎないわけであります。
  21. 大原亨

    大原委員 今までの毎回の国会におきまして、政府は同じような答弁を繰り返してきたのであります。官房長官に、私は政府全体の認識代表しておられると思うから、端的に聞くのですが、問題になっておる公労法四条三項、地公労法五条三項は、日本がすでに一九五三年に批准をいたしております九十八号条約違反をしているんだ、抵触をしているんだ、こういう結論が、ILOにおいては、労使代表ではなしに、専門家の集団であるところの専門家委員会においてはっきり出ているわけです。こういうことは、日本憲法からいいましても、条約に抵触する法律であることは明確なのであります。これは外務委員会においても議論いたしましたので、この点については議事録等と比較いたしまして追及をいたしたいと存じますけれども、このことは日本憲法ではそういうふうになっているのです。多数国間のILO機構において、条約に関しましてそういう確定的な解釈専門家委員会がやっておるのであります。それ以上に日本がこの問題についてほおかむりをして、四の五の言うて、八十七号、九十八号条約に、専門家委員会ILOの機関が指摘しているように、公労法四条三項、地公労法正条三項が抵触しておる。そういう問題をからめて、この批准をおくらせているということは、一にかかって政府の怠慢であって、それを野党責任になすりつけることもできない。政府は、そういうすっきりした、国際的な、あるいは憲法に従った解釈見解を持つならば、この問題は一気に解決できると思う。そういう点を政府閣僚諸公理解していないのではないか。労働大臣に対してはあとでゆっくり御質問いたしますが、官房長官政府全体は、そういうことを認識していないのじゃないですか。社会党は、そういう国際犯罪、そういう国際的な問題については、共犯者になることは私は拒否するのだ、国際場裏において指摘された以外の問題について、みそもくそも一緒にしてやるのだという、そういう不見識なことは、社会党は同調しないのだ、そういう点について、政府見解認識の度合いを代表する官房長官の御答弁をいただきたい。
  22. 福永健司

    福永国務大臣 私の所管に関しますので、官房長官の御答弁の前にちょっと申させていただきたいと思いますが、九十八号条約との関連においての問題は、この前だいぶ大原さんからも他の委員会で御質疑がございました。私は、私なりの見解を申し上げた次第でございまして、必ずしも、ただいまおっしゃった通りのようには私は了承できないわけでございます。従って、大原さんの御所見が、与野党を問わず、またその他広い範囲のものを含めて、最終的結論であるかのごとく御表現になりますが、その点は、私どもはいささか考えを異にいたしますことをちょっと申し上げておきたいと思います。
  23. 大原亨

    大原委員 官房長官は、そのあとに答えていただきます。工藤審議官は、政府代表して、ILO理事代表としてジュネーブに行っていた人でありますが、その工藤審議官質問をいたしたい。ILO専門家会議は、これは満場一致制ですか。
  24. 工藤誠爾

    工藤説明員 専門家委員会の運営につきましては、こまかい議事規則はありませんけれども、実際上の取り扱いとしては、満場一致でやることになっているかと思います。
  25. 大原亨

    大原委員 あなたには事実だけをお尋ねしますが、専門家会議におきましては、明文の報告書がございます。結社自由委員会報告書の中にも専門家会議結論を引用いたしておりますから、これは労働大臣が言うように水かけ論ではありません。  そこで、もう一つあなたにお聞きしたいが、ILO総会においても分科会を設けましたし、あるいは理事会その他労使代表が出ているそういう委員会において——日本政府の問題は別ですよ。日本政府を除いて、労働者使用者政府代表で、福永労働大臣がちょっと言葉を濁されましたけれどもILO九十八号条約公労法四条三項、地公労法五条三項は違反しているのだ、抵触しているのだ、こういう専門家会議結論に対して異論を差しはさんだり、意見を表明した資本家代表政府代表がありますか。
  26. 工藤誠爾

    工藤説明員 御承知のように、この委員会は過去三回ございまして、私そのまん中の一九六〇年の委員会には参加しておりませんので、このときの模様は知りませんが、その他の委員会におきましては、日本の問題につきましては、日本政府及び労使のグループのリーダーが発言いたしたかと記憶いたしております。
  27. 大原亨

    大原委員 官房長官、今ILO政府工藤理事代表から事実の御報告があったわけであります。労働大臣が今言われておりますが、これはあと一つゆっくりやりますが、そういう事実であります。日本政府資本家代表以外には——最近は日本資本家代表も、このことを発言すると不利だから発言しない。日本政府代表もほとんど発言していない。結社自由委員会議事録やいろいろの方面から調査してみますと、そうであります。日本政府だけがそういうことを言ってがんばっている。すでに批准したILO九十八号条約には、公労法四条三項が違反をするということが指摘をされておるのです。その問題がすっきり解決すれば、これは一時間か二時間のうちに国会を通ってしまうのです。この問題は、自民党社会党において異議はないのです。後に述べるような改悪法案、政策的な法案を出すから、そのことをやることは、労使対等原則話し合い原則協力原則、そういう原則をじゅうりんすることになるから国際犯罪共犯を犯すことになるとわれわれは考える。だから、私どもはそれに対して同調しない。その点について、政府全体の認識が足りないのじゃないか。このことは、ひいては憲法違反をするのじゃないか。こういう点について、一つあなたの御見解をお伺いしたいことと、もう一つ、第二の質問といたしましては、労働大臣は今週中に政府提案として出す、こういうふうに言われましたけれども、あなたはこの点について、労働大臣であり、国務大臣である福永大臣との間において、見解の相違はないかどうか、この二つの点についてお伺いいたしたいと思います。
  28. 福永健司

    福永国務大臣 私は、先ほど提出時期につきましては、私限りでは、できれば今週中にもと考えておりますと、こういうように表現をいたしました。それに加えまして、しかし政府全体としてのあり方、また与党との関連においてはなお協議を要しますので、御了承いただきたいというような趣旨のことを申しました。確定的な表現はいたしておりませんことについて御了承をいただきたい、こう思います。
  29. 大平正芳

    大平政府委員 大へん政府をおしかりでございますが、政府といたしましては、今日の置かれた条件もとにおいてILOをいかにかして批准したい、その目標に向かいまして最善の努力をいたしまして、政府与党内の意見を取りまとめまして案を作ったわけでございます。そしてできるだけ早く御審議いただいて、批准を願うような運びにいたしたいという悲願に燃えておるわけでございます。問題は、前々国会状況でも大原委員も御了解願えます通り、この問題をめぐる空気はなかなか緊張したものでありましたことは御案内通りでございまして、今私ども与党側協議中でございますが、この問題は、そういう非常に緊張した案件であるということで、私ども非常に苦慮いたしておるという状況でありまして、政府としては、やるべきことはやってきたわけでございまするし、今日といえどもILO条約が円満に批准完了することを心から祈念いたしておるわけでございます。
  30. 大原亨

    大原委員 大平官房長官、私が第二の質問で申し上げましたのは、労働大臣は今週中に提案をする、こう言われたのでありますが、その見解と同じですかというのです。今になって努力する、あるいは協力するということではいけません。
  31. 大平正芳

    大平政府委員 先ほども申しました通り労働大臣からそういうきつい御要請を受けておりますことは事実でございまして、今せっかく協議中でございます。そういうことでございます。
  32. 大原亨

    大原委員 本日は、二月の中旬になりまして、十三日であります。国会は二月と三月一ぱいが大体審議の山といわれておる。日本の政界におきましては、六月に参議院選挙があるわけでありまして、衆参両院の状況を見てみますと、このILO重大性にかんがみて、私どもがこの問題を慎重に審議する期間といたしますと、国会開会以来相当時日を経過いたしておりまして、時間を過ごしておられる。今日批准を希望するだの、努力するだのということでは、政府責任は立たないと思う。その点につきまして、労働大臣は具体的な目標を示されたのでありますから、官房長官から、もう少し具体的な御答弁をしていただきたい。政府全体といたしましての決意が問題であると思うのであります。議院内閣制でありますから、政府提案権は内閣が持っておるのであります。この問題につきまして、政府法案を用意しておるのであったならばどういう見解で扱うかということは、政府全体の責任であります。そういう点につきまして、具体的に突っ込んだ御答弁をいただきたいのであります。
  33. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申し上げました通り、今与党側協議中でございます。
  34. 大原亨

    大原委員 労働大臣にお尋ねいたしますが、労働大臣は、今週中にILO条約について国会提案をしたい、こう言われました。そういう見通しに立たれた根拠について、さらに重ねて突っ込んでの御答弁をいただきたい。
  35. 福永健司

    福永国務大臣 先刻申し上げましたように、私限りでは、できれば今週中にもともと考えております。こういう表現を用いましたゆえんのものは、先ほどからいろいろお話がありましたように、できるだけ早いことを期していかなければならない。また過去の経過等もございまするし、そしてまた、近くジュネーブにおいていろいろこの種の関係会議等が行われるというような事情等にもかんがみまして、できることならば、先ほど申し上げましたようなタイミングで出すことが私限りにおいては望ましい、こういうことでございます。その点を私は正直に申し上げた次第でございます。
  36. 大原亨

    大原委員 労働大臣がこの国会におきまして御答弁になったわけでありますが、この労働大臣のお気持は、私たちはよくわかるのでありますけれども、しかし、国務大臣でもあるし、政府全体を代表して、ILOに対しましては責任を負うておると思うのであります。対外的には外務大臣の役割も実際上は果たしておるわけであります。日本政府代表して、あなたの一挙手一投足はなされておるのであります。それを政府全体といたしましては、与党の中はもちろんでありますが、ハチの巣を突いたように、全く意思統一がなされていないということが、私どもははっきりいたしたわけであります。  一つ質問を申し上げておきますが、二月の二十二日と三日に予定されておる結社自由委員会に、政府はその後の進捗状況報告する義務があるとなされておる。あとわずかに十日間くらいでありますが、どのような内容でどのような報告をなされようといたしておるのか、こういう点につきまして労働大臣質問いたします。
  37. 福永健司

    福永国務大臣 そういうこともございますので、すみやかに出したいと今苦慮いたしておるわけでございます。出ると出ないとでは、そこへ報告する報告の仕方が違ってくるわけでございます。その辺に、私が先ほど表現いたしましたごとく、私限りではできるだけ云々ということになるわけでございます。ひたすら官房長官にも深き御理解を願いたいと今努力をいたしております。
  38. 大原亨

    大原委員 官房長官お急ぎのようでありまするから、一つ官房長官に御質問いたしますけれども、今お見かけの通りであります。労働大臣は、そういう私どもの主張につきまして理解をされておると思うのでありまするが、まことに孤軍奮闘をいたしておるわけであります。それから座席からいろいろと、自由民主党の与党の諸君から議論が起きておりまするように、全く与党の中はハチの巣をつついたように百鬼夜行であります。その中に立ちまして、大平官房長官はきわめて政治的な答弁をされておるわけでありまするが、これは政党内閣議院内閣でありまするから、政府全体が閣議において基本方針を明確にきめられることが必要なんです。そういうことにおきまして、私は官房長官の御答弁では全く不満でありまして、満足できないのです。だから、私はその点について明確な答弁を、もう三度目になりまするが、一つ要求をいたします。労働大臣との間におきましても、きわめて答弁の相違がある。一々私はそのあげ足をとる意思はありません。これを前進させる意味において、私ども社会党はこの問題を熱心に考えておるという、そういうことの表明として御質問いたしておるのであります。官房長官の御答弁一つ具体的に——簡単でなしに、具体的に話していただきたい。
  39. 大平正芳

    大平政府委員 政府与党ILO批准に関する見解は、百鬼夜行とおっしゃいましたけれども、完全に一致いたしまして、閣議決定を経て、政府案というのはちゃんときまっておるわけでございます。この間、何ら間然するところはございません。ただ問題は、いつ国会提案するかという一点にかかって協議中だ、こういう状況であります。
  40. 大原亨

    大原委員 政府は、ジュネーブのILOに対しまして、昨年の秋の報告におきましてどういうことを言っておるかというと、継続審議に対しても野党の同調が得られる見通しがなくなったので、法案提案を断念したということを言っておるのであります。提案をして審議をする期間がないときに提案をしておいて、そうして対外的な責任のがれをやろうといたしておりまして、そしてそういう提案のいたし方をしたのであります。しかし、継続審議があるとかないとかいうことを対外的に表明しておきながら、いまだに提案をする時期について考えておるのだ、意見が一致しないのだ、そういうようなことなんかは、これは私は日本国民のみならず、全世界に対しまして言いわけのできない問題じゃないかと思うのですよ。これは矛盾いたしておるでしょう。官房長官、いかがですか。
  41. 大平正芳

    大平政府委員 今申し上げた通りでございまして、それ以上加える言葉はございません。
  42. 大原亨

    大原委員 時期を選ぶというのは、私は前後一貫した行動ではないではないか、時期を選びながら提案がおくれておる障害は何か、こういう点について、今までたび重ねて質問をいたしております。障害は何ですか。
  43. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申しましたように、政府から出します法律案、予算案、条約案等は、与党と打ち合わせて意見の一致を見て、それで出す建前になっておりまして、これもその例外じゃないということにすぎないわけでございます。ただILOの問題というのは、大原委員も御案内通り、大へん複雑深刻な問題であるということで今協議を、先ほど労働大臣が言われた通り苦慮いたしておる段階でございます。
  44. 大原亨

    大原委員 官房長官、納得できません。深刻な問題であるというのは、何が深刻なんですか。何も深刻な問題はないでしょう。きわめて国際舞台におきましても論理整然とした議論であって、国際的な常識にかのうた問題ですよ。一九五三年に日本ILOに復帰いたしましたときに、憲法の二十一条結社の自由と、そして憲法二十八条労働三権の問題を、全文をあげまして、日本にはこんな憲法がありますから、国際慣習に従って公正競争の中において世界の平和を守っていきます、こういう宣言をいたしておるのです。そういうことから考えまして、国際的な常識にかのうたような条約並びに法律案の取り扱い政府がするならば、これは全然問題がないはずです。ましてや、すでに批准をいたしました九十八号条約公労法四条三項が違反をいたしておるということが、はっきりいたしておるのでしょう。どこに深刻な問題があるのですか。深刻な問題というのは何ですか。
  45. 大平正芳

    大平政府委員 大原委員のような御見解もございますし、またその問題につきまして、批准いたしますとするならば国内的な体制はこうせねばならぬという意見もございますし、皆さんお考えでございますから、いろいろな意見があるわけでございます。私どもとしては、そういった政府与党内部の意見を取りまとめまして、政府案を鋭意作って参ったわけでございます。このことは御理解いただけるだろうと思うのであります。問題は、これをいつ御提案するかという一点にかかっておるのだということを、たびたび今申し上げた通りであります。
  46. 中野四郎

    中野委員長 滝井君から関連質問があるそうですから、これを許します。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 今の官房長官発言、きわめて重大ですから、少し関連させてもらいたいのですが、それは、すでにILOに関する法案は閣議でもきまってしまっておる。今の発言の中にも、政府与党の間には意見の一致を見ておる、こうおっしゃった。一にかかって国会にいつ提出するかという、この時期の協議中だ、こうおっしゃったわけですね。これは福永さん、間違いないでしょうね。その通りでしょうね。すでに政府与党の意思統一はできておる、閣議決定もきまった。一にかかって提出の時期だけだ、政府与党の間にも意見の一致を見ておると今おっしゃった。
  48. 福永健司

    福永国務大臣 大体そういうことだと思います。
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、政党政治ですから、閣議で物事を決定してしまったときには、これは与党との意思の統一ができていなければ、法案は閣議決定しないはずです。そうしますと、もう出す時期だけです。一週間以内に労働大臣出したいとおっしゃった。あなたは、これを一週間以内に出すとはなかなか言えないわけです。そうすると、一体その言えない理由はどこにあるかということです。与党政府の間の意思の統一はできております、ただ出す時期だけですという、その時期について、これは何も隘路がなければ、ここで一週間以内に出せるという福永さんの意見にあなたは同調できるわけです。ところが、それが同調できない。できないその一点は一体何かということです。(「特別委員会だ」と呼ぶ者あり)それは特別委員会だという言葉がありますが、特別委員会国会内部の問題であって、政府の関知するところではないわけです。これは与党なら与党責任がありまして、与党とわれわれの意見の一致を見ないから出せないと言ったらいい。ところが、与党政府との間は完全に一致しておるとおっしゃっておる。それで、そこらをはっきりしなければ、われわれとしては、官房長官労働大臣——労働大臣は一週間以内とおっしゃっておる。ところが、官房長官としてはそれが言えないというのなら、あなたの上の総理にここに来てもらって、これは国際的な問題ですから、はっきりせざるを得ない。あなたがここで、一週間以内に、私もともに一つ福永労働大臣協力をして努力をしてやりましょう、やれる見込みだ、それに向かって努力しよう、こうなれば、これは意見の一致を見るわけです。ところが、その意見の一致を見ないから、僕らは、くどいようだけれども、お尋ねすることになるわけです。もう他のものは全部はっきりした。ただ一点、なぜ一週間以内に努力をするという労働大臣意見に同調できないかというところがわからないのです。これを一つ官房長官から重ねて明らかにしてもらいたい。
  50. 大平正芳

    大平政府委員 労働大臣からは、先ほど申しましたように、きつい御要請がございました。先ほどここで表明されたような願望を持たれておりますから、それを体しまして、与党側と今協議中でございます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 与党との間に意見の一致を見ておる、こう言われたのです。与党政府との間には何も間然するところはないとさいぜんおっしゃった。これは速記録をお調べになったらいい。そうすると、提出されたあとは、国会の中の運営の問題になってくる。すなわち、野党与党との問題になってくるわけです。政府与党との問題ではなくなってくる。それから先は国会の自主性にまかせたらいいんじゃないでしょうか。そこまで政府が、何か国会の中にまで心配をされる必要はない。それは政党内閣の基盤の与党が今度おやりになるわけです。(「政党政治だからいいじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、政府与党の間は意見の一致を見ておるとおっしゃるんだから、そこらあたりが、時期についてそう言うのはおかしい。それでは、何で一体それをそんなに明白に言えないという問題があるのかと、こうわれわれとしてはならざるを得ない。
  52. 中野四郎

    中野委員長 滝井君にちょっと申し上げますが、先ほどからの御意見だいぶ伺っておりますと、その取り扱いについての与党との話し合いを今しておる、意見は一致しておる、こう言っておられるんですが、さらにその上の御質問なんでしょうか。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 そうなんです。それならその理由をはっきりしてくれと言うんです。
  54. 大平正芳

    大平政府委員 内容につきましては、政府与党とも完全に一致いたしております。で、時期につきまして、労働大臣の御要請を込めて今せっかく与党側折衝中でございます。
  55. 大原亨

    大原委員 今の御答弁を聞いておりますと、対外政治的にも対内政治的にも、責任大臣である労働大臣が御答弁になった非常に具体的な答弁と、総理大臣にかわって御出席いただきました大平官房長官の御答弁とには、差があるわけでございます。明らかに矛盾がある。政府内の意見の不統一です。私は、田中政調会長呼ぶわけにいかぬけれども、ここは単なる時間つぶしじゃないのでありますから、やはり本委員会責任ある池田内閣総理大臣の御出席をいただいて、議院内閣のトップに立っておる総理大臣のはっきりした御見解を聞かないと日本の国民経済の上からいっても、外交の上からいっても重大なILOの問題につきまして、政府取り扱いが、今日までのようなあいまいな答弁だけで私どもが時間を空費いたしておりますと、国家の機関といたしましての機能を発揮しないことになる。私は、委員長に対しまして池田総理大臣出席を求めまして、政党内閣議院内閣といたしましての最高責任者の責任ある答弁を要求いたします。
  56. 中野四郎

    中野委員長 暫時休憩をいたします。    午後二時二十六分休憩      ————◇—————    午後二時五十分開議
  57. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大原亨君。
  58. 大原亨

    大原委員 ILO八十七号条約批准につきまして、今までずっと質問を続けてきたのでありますが、労働大臣からいろいろと決意の表明があったのであります。労働大臣はその答弁の中で、しばしば今週中に出したいと、そういう決意と、そして責任のある努力の目標を出されたのです。これに対しまして官房長官の御答弁があいまいであったために、私ども総理大臣出席を要求いたしたのでありますが、この際あらためて官房長官より、内閣を代表いたしまして御決意のほどを御答弁いただきたいと思います。
  59. 大平正芳

    大平政府委員 提出の時期につきましては、労働大臣の意思を体して最善の努力を払います。
  60. 大原亨

    大原委員 これから今週中といいましても四、五日でありますが、時間が経過するに従いまして、官房長官の御決意が誠意のあるものであるかどうかということがはっきりわかるわけであります。その御誠意がおありになるかどうかという点をちょっと私は突っ込んでお聞きいたしますために、質問をたくさん予定いたしておりますけれども、大切な点だけを二、三質問いたします。  問題はILO八十七号条約関連する法規といわれておる関連法規の問題であります。これは小平総務長官がおられませんので、官房長官に少し専門的なことになりますが、しかし、これはしばしば問題となりましたので常識でございますけれども関連法案といところで、私ども社人党の立場はきわめて明確であります。これは責任ある公党といたしまして、明確にいたしておくのであります。  公労法四条三項と地公労法五条三項は八十七号条約に抵触するということで、ILOにおいては基本権の重大なる八十七号条約趣旨にかんがみて、日本がいまだに批准していない八十七号条約につきましても、批准を求めてきたのであります。この公労法四条三項、地公労法五条三項は、すでに批准いたしました九十八号に抵触するという各級機関の意思決定がなされておるのであります。従って、国内におきましても、学者その他を入れました労懇の決議におきましては、関連法規につきまして明確に規定いたしましたのは、公労法四条三項と地公労法五条三項であります。その他の、いわゆる政府関連法案というところの付属の法律案につきまして、私ども政府提案権を否認するものではありません。この法案につきましては、独自の国内政策といたしましてお出しになることについて、何らこれに妨害を加えたり、否定いたしているのではありません。しかしながら、内外ともに専門家ILOの機関において認められました常識を逸脱いたしまして、そうして関連法規と称して、すでに日本労使の間において慣行として行なわれておる、そういう諸問題につきまして、一方的にILOの精神に反して、これを改悪するようなそういう法案をからましたから、いろいろとこれは混乱をいたしておると思うのであります。だから、私は政府提案権を十分尊重いたしまするし、社会党はそういう点においては明快であります。しかしながら、少なくとも八十七号条約批准する問題は、すでに批准いたしました九十八号条約の問題と一緒にすっきりした形において、この問題に対処することが、私は国会を正常化するだけでなしに、日本の国際的な信用を高める唯一の道である。私はこの点を確信いたすのであります。そういう社会党のはっきりいたしました見解に対しまして、これに対する違った見解があれば、一つ官房長官はその御見解を明らかにしていただきたいのであります。これは大切な問題であります。この認識とあなたの理解、そういう問題でありますし、誠意の問題でございますから、その点に対しましての御見解をお伺いしたいのであります。お急ぎのようでありますから、あなたに質問を集中いたします。
  61. 大平正芳

    大平政府委員 関連法案の範囲につきまして大原委員から、あなたの属する日本社会党の御見解はとくと承りました。私ども解釈政府案に具体化されておるわけでございます。これは提案になりましたあとでいろいろ御論議があろうと思いますが、私どもといたしましてはILO条約の精神、条文等を十分吟味いたしまして、法律専門家意見も十分聴取いたしまして、自信のある案を作りましたわけでございます。論議国会でいろいろ行なわれるでございましょうけれども、私どもとしては確信を持って提案できる準備をいたしておるのでございます。
  62. 大原亨

    大原委員 あまり深入った質問は今日以後のこの論議におきまして、ここでもやりますし、あらゆる機会にやります。ただ一つ、あなたが御答弁になりまして確信を持っていると言われたのですが、このことを私は質問いたしまして、関連法規かどうかという点についての御見解を伺いたいのであります。  鉄道営業法の改正があるのであります。鉄道営業法の改正には、これは古い法律でありますからいろいろ問題があるのであります。これは御承知通りであります。しかしその関連法規の中に、汽車の車掌さんが定員以上の客を汽車に乗せた場合に、その車掌さんが処罰されるという規定がある。その規定はおかしいでしょう。今は逆に車掌や鉄道が客を定員以上にむちゃくちゃに押し込んでいる。(「しり押しアルバイトで」と呼ぶ者あり)与党の諸君が言われるように、しり押しアルバイトを動員してやっておる。公然と法律違反してやっておる。そういう法律の改正等について、罰則の強化とからめまして八十七号条約関連法規と称して提案になっておるのだが、八十七号条約のどこに関係がありますか。これは明快な問題であります。私は審議をとやかく言うわけでないけれども、どこに関係があるのですか。そういう全く関係のない法案出しておるから、こういうようにあらゆる問題が輻輳いたしまして混乱しておるのではありませんか。官房長官、どうですか。
  63. 大平正芳

    大平政府委員 私は法律専門家でございませんが、政府には専門家がたくさんおりまして、作られた案につきまして信頼をいたしておるわけであります。
  64. 大原亨

    大原委員 今私が言いましたことは信頼できますか。これはちゃんと政党内閣でありますから……。これは常識的な話で、専門的な話でないですよ。法案はきまっておる。前に社労でやったときと違って、法案はきまっておる。私は一つ例を申し上げたのですが、鉄道営業法の改正は八十七号条約とどこに関連があるのですか。これは国際的に見たら恥辱だと思います。そういうことについて社会党が、自民党に対しまして、政府に対しまして審議の方法まで同調いたしますことば、国際犯罪共犯者のようなことになり、八十七号条約批准にブレーキをかけることになる。これを国際場裏ILOに持っていきましたら、そういうことは恥になるのです。そういうことで、八十七号条約重大性と労働常識に従いまして私どもは判断しているのです。そういう点からいって、関連法規であるということはもってのほかであると思う。常識的な問題です。専門的な問題でありません。常識的な問題です。総務長官には逐次専門的な分野の問題を質問いたしますけれども、あなたには一、二、例をあげて質問いたしますが、おかしいでしょう。どうですか。
  65. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申しました通り、鉄道営業法が関連法規であるかどうかということは、論議のあることは承知いたしておりますが、これは関連法案であるという政府部内の解釈は、法律専門家がいろいろ集まりまして御検討した結果でありますので、私はそれを信頼しておる。こう申し上げておるのであります。
  66. 大原亨

    大原委員 私は非常に簡単なことを御質問したのですよ。鉄道営業法の改正の骨子になっておるのは二つ、三つあるのですよ。罰則を強化することと一緒に、車掌が定員以上乗せたらいけない、そういう法律を削除するわけですけれども、そういうことについてはどこに関連があるのですか。八十七号条約結社の自由とか団結権の擁護なんかについてどこに関係があるか。官房長官、今の点はあなたの常識から見てどうですか。常識ですよ。専門家じゃありませんよ。常識に合致しないようなことをやっているから問題になるのですよ。いかがですか。
  67. 大平正芳

    大平政府委員 だから先ほども申し上げました通り、私の常識といたしまして、政府部内でいろいろ練りまして、関連法案としてお作りになられた、こういう見解を信頼しておる、こういうことでございます。(「関連があるのだよ」と呼ぶ者あり)
  68. 大原亨

    大原委員 今私は関連法規の認識に関しまして、社会党としての考え方、責任ある考え方を申し上げることが、この論議を通じまして、建設的に八十七号条約批准するのだ。このことについては、こちらの委員席から自由民主党の諸君が盛んに、関連をしている、こういう不規則発言をしておるのです。だから、そのことについて問題があるのだから、そこについては公党といたしまして、あるいは政府といたしまして、やはりはっきりした見解をここに持たなければいけないですよ。国際的な専門家じゃないですよ。国内における専門家意見はあるわけです。
  69. 大平正芳

    大平政府委員 関連法案の範囲につきまして論議があるということは承知いたしておりますが、私は、政府専門家が寄りまして、これを関連法案でございますと作り上げたものを、信頼しておるということを申し上げたのです。
  70. 大原亨

    大原委員 私ども見解ははっきり申し上げたのですよ。八十七号条約関係しない政策的な問題については、政府提案権を持っておられるのですから、堂々と御提案になって、そうして国会審議いたしましょう。少なくとも八十七号条約関連があると、内外の専門家が指摘をしておる公労法四条三項、地公労法五条三項以外の問題について、労使の慣行を一方的にじゅうりんしたりすることはよくない。ILOの労働憲章の十九条の第八項にもありますけれども、現在の状況について労働者が不満やあるいは既得権と思われる問題について一方的にこれを否定しない、このことは尊重されるのだ、そういう規定があるのですよ。だから、そのことがはっきりしないものですから、国際舞台において、日本は資本家と労働者代表政府代表が四つに組んでけんかをすることになるのです。国内において十分そういう問題について筋を通してやれば、建設的な議論を通じまして意思の統一点があると思うのです。そのはっきりした段階ですから、政府といたしましても、専門家ではなくても、それぞれ議員は法律を作る最高機関のメンバーです。それが大臣になり官房長官になっているのですから、そういう問題について、私は具体的な問題を提起いたしまして、御質問いたしておるのです。そういうことが納得できなければ、政府は言いがかりをつけてむりやりに押しているのだ、与党の多数をもって押しているのだ、こういうことになります。これでは労使の正常な慣行はできません。問題の消化ができませんから、国際舞台においていろいろと衆人環視の中において、政府のみっともない態度を露呈することになる、いかがですか。
  71. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど答弁申し上げた通りでございます。関連法案の範囲につきまして論議のあることは承知いたしております。私どもとしては、政府法律専門家がそう判定して出してきたものに対して、御信頼申し上げているということです。
  72. 大原亨

    大原委員 原則的に社会党の主張についてはどうお考えですか。政府関連法規と称しているものについては、公労法四条三項、地公労法五条三項を除いては、私は政府の政策的な立法だと考えるから、全然別個の立場において政府提案権に基づいて提案をして下さい。そういうふうにしたことを妨害するのではありません。慎重審議をいたします。しかし少なくとも八十七号条約の問題は、国際舞台におきましては、経済、外交とも深い関係を持っている問題です。アメリカにおいてもEECにおいても非常に注視している問題です。私はあとで資料を提示いたしますけれども、どういうふうに外国の労働組合の機関紙等において論ぜられておるかという問題を私は申し上げたいが、権利の問題と労働基準の問題、賃金の問題は同一なんです。箱根会談でもそうでしょう。結局はその問題です。そういう問題については建前を通すべきである。社会党の主張はそれなんだ。そういう問題について皆さん方が私どもに対しまして納得のできる答弁ができなければ、これは皆さんがむちゃを言っていることになる。社会党のそういう原則、そういうすっきりした建前に対しまして、どういう見解がおありか、こういう点について明快な答弁を私はやってもらいたい。
  73. 大平正芳

    大平政府委員 そういう見解もあり得ると思うのです。
  74. 大原亨

    大原委員 大平官房長官は、そういう見解を是認された。(「あり得ると言ったのだ」と呼ぶ者あり)あり得るということは、是認されたのだ。  そこでその点につきましては、官房長官にはお帰りいただきますけれども、閣内におきまして、あまりみっともないことがないように、どこから見られても正々堂々と政策をやっていく。八十七号条約労働者結社の自由、団結権の自由が保障されておる。そのかたきを長崎で討つというような卑劣なことはしない。封建的なことはしない。それをすれば、国際舞台において将来ますます問題になる。これが一々日本の低賃金、無権利の非難を受けることになる。従いまして、そういう問題につきましては政府部内を督励いたしまして、池田総理大臣官房長官がよく御指導なさいまして、全体といたしまして間違いのないようにやってもらいたい。あなたにその点についての御決意を最後に表明していただきまして、あなたにお帰りをいただくことにいたします。
  75. 大平正芳

    大平政府委員 ILO八十七号条約批准の問題につきましては、他の案件におけると同様に、誠心誠意、慎重に取り組んで参りたいと思います。
  76. 大原亨

    大原委員 小平総務長官がお見えになっておるようですから、小平総務長官は、ILO条約関連法規につきましては、政府代表するどのような権限を持っておられますか、あるいは責任を持っておられますか。
  77. 小平久雄

    ○小平政府委員 国家公務員法、その関係におきましては総理府の所管になっております。その関係でございます。
  78. 大原亨

    大原委員 いわゆる政府関連法規と呼称している法案につきましては、どういう御責任を持っておられますか。国家公務員法だけですね。
  79. 小平久雄

    ○小平政府委員 さようであります。
  80. 大原亨

    大原委員 それは藤枝長官の答弁と違うのです。私は記録を読んでもよろしゅうございますが、国家公務員法、地方公務員法、教育公務員特例法を含めまして、全体の取りまとめ役と申しますか、そういう公務員関係については総務長官がおやりになっている、こういう答弁でありました。
  81. 小平久雄

    ○小平政府委員 先ほど申し上げましたのは、直接の所管として国家公務員法の関係、こう申し上げたのですが、総理府の本来の職務からいたしまして、連絡調整を行なう、こういう立場からすれば、今御指摘のような関係も生じてくると思います。
  82. 大原亨

    大原委員 国家公務員法と地方公務員法につきまして、いわゆる関連法規の見解につきまして具体的な質問をいたしたいと思っておったのですが、時間がだいぶ過ぎておりますから、またの機会に譲りたいと思います。  労働大臣に御質問いたしますが、労働大臣は非常な決意をただいま表明されたわけでございます。労働大臣、こういう事実があるのですね。アメリカのILOにおける労働組合代表のホープルという人が、会議の席上で、アメリカの繊維の組合の機関紙に書いてある記事を引用いたしまして、日本では結社の自由が完全に認められていない、こういうふうに繊維労働者が、いわば日本のけちを——けちでなくて事実を指摘したわけですが、そういう批判をした記事をILOの舞台において示して、日本の労働代表にこのことを話をした、こういうことを私は確かめたのであります。アメリカの繊維製品の一〇%の賦課金の問題や、その他輸入制限の問題、特にガットの三十五条に関連いたしまして、EECはこのことについては非常に敏感であります。先ほどから申し上げている通りであります。私はこういう問題に対しまして、政府全体がどのような認識を持っておられるのか、こういう点を労働大臣といたしまして明らかにしていただきたい。
  83. 福永健司

    福永国務大臣 御質問の御趣旨が私よくわからないのですが、今おっしゃったようなことにつきましては、われわれは大いに関心を持たなければならぬというように考えておりますが、今おあげになりました具体的な事実につきましては、私あまりよく承知いたしておりません。
  84. 大原亨

    大原委員 工藤審議官にお聞きいたしたいところなんですが、時間がだいぶたっておりまするから、私の方では、この問題につきましては今週中という一つのめどがございますので、この八十七号条約関連いたしましてはたくさんの意見質問を用意いたしておりましたが、八十七号条約関係した部分だけはこれでとどめておきます。  あとわずかでありますから簡潔にお答えいただきたいのですが、昨年のILO総会におきまして、労働時間短縮についての勧告が決議されようといたしたのであります。決議されようとしたせつなに、日本代表が棄権をいたしまして、会議が流会になりました。そういうことがございまして、政府はどのような意図でそういう態度をとられたのかということが、各国の非常な疑惑の的でありました。本年は、異例の措置でありまするが、理事会で確認をされまして、本年の六月のILO総会におきまして、四十時間労働の労働制の問題の勧告の決議がなされる、こういうことがあるわけであります。本年の六月のILO総会に対しまして、労働時間短縮の問題に政府はどのような態度で臨まれるのか、こういう点について簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  85. 福永健司

    福永国務大臣 前に、わが国の政府代表も退席して定足数を欠くに至ったということは、私も認識いたしております。ただいまの御表現では、日本が退席したので、ということですが、日本ばかりでなく、幾つかの国がその際そういう措置に出たことは、当時としては、本問題についてそういうことをいたしました代表は、なお慎重に扱って、この際直ちに結論を出すのはいかがかというような顧慮よりしてそういうことに出た、こう思うわけであります。  六月にどうするかというお話につきましては、まだこれから先のことでございますので、直ちに本日予告編というようなことで申し上げることは私いかがかと思いますが、労働時間の短縮ということは、原則的には私は望ましいと思いますが、それぞれの国の事情によりまして慎重を要することが多々ございます。わが国の場合におきましても、一足飛びにこの四十時間というところへはなかなか参りがたい事情等もございます。しかし先ほども申し上げましたように、向かうべき方向としては、これは労働者全体の立場よりいたしましてもおのずから明らかでございますので、いずれにしましても、長い目で見た方向と、わが国の実情の調和をいかにするかというような観点からいたしまして、ただいまおあげになりましたそのときに間に合うように、みっちりそれまでに検討をいたして善処したいと考えております。
  86. 大原亨

    大原委員 労働大臣の御答弁の中で、前段にちょっと正直なところがあった。今までの労働大臣でありましたら——ILOの昨年の総会におきまして日本が退席した、棄権したということは、流会戦術に出たということ、作戦上そうやったのだということをあなたは言われたのですが、それを、みんながそういう疑惑を持っておるのに、日本労働大臣——労働大臣でありますが、間違いないと思いますが、その労働大臣は、そうじゃないと、こういう否定のことを言ったのであります。あなたの御答弁は非常に正直であります。しかし私はあえて前の答弁がうそであって、あなたの答弁ほんとうであるということについては、責任を追及いたしません。  あとの方なんですが、本年六月に時間短縮の問題がILOにおいて議論になる場合に、日本政府の、前の石田労働大臣態度は、四十時間について、直ちに日本においては実施できないような特殊事情があるということを言っておられたが、問題は、その前の四十八時間制をどう実施するかということだ、こういうことを言っておったのであります。この答弁につきましての、私どもが賛成できるできないは別にいたしまして、労働大臣は、この六月のILO総会に臨み、特に日本の労働界におきましては、オートメーションに、近代化に、機械化に関連をいたしまして、国内の労働四団体は、全部時間短縮、四十時間制を要求いたしておる。これは全部の一致した意見であります。そういう労働者側が要望し、熱望いたしておる政策や、国際的に重大な問題に対しまして、政府がどのように近づいていくかという抱負や政策が労働大臣にないというようなことは、これは私は少しいかがかと思うのであります。労働大臣労働大臣としての御見識において欠くるところがあるのじゃないか、こういうふうに率直に思うのです。そういう点についてははっきりした方針を示して、そして世界の大勢である四十時間労働制にどう近づくのだという、そういう政策を当然持つべきであります。労働大臣、いかがですか。
  87. 福永健司

    福永国務大臣 前段御指摘になりました点につきましては、当時その会議に私自身が出ておったわけでもないし、また労働大臣をやっておったわけでもございませんので、ああいうような表現をいたしたのでありますが、誤解を生ずるといけませんので、当時出席いたしました者から、実情は実情で申し上げさしていただきたいと存じます。  なお後段の点は、今大原さんのおっしゃりますような事情もございますので、こういうことも考慮に入れまして今後に処したい、こういうように考えておりますが、いずれにいたしましても重大な問題に結論を与えることでございまするので、ものの考え方、方向というような表現においては、先ほど申し上げましたように私は考えておるわけでございます。何ヵ月か後の会議において、わが政府がどういう態度に出るかということを今日直ちに申すことは、これはまあいろいろの方面にも影響することでございまして、その結論を出すのに間に合うように最終的な決定をいたしまして、その節に、ただいま申し上げましたようなことも考慮に入れた措置に出たい、こういうことでございます。今直ちに、六月にはこうするであろうということを確定的に申すことは、私としては適当でない、こう考えるわけでございます。
  88. 大原亨

    大原委員 労働大臣の御答弁をそのまま聞いておりますと、何ですか、こういうふうに理解してよろしいですか。労働時間短縮については全然具体的な施策の用意はない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 福永健司

    福永国務大臣 具体的な施策がないということではございません。現にわれわれといたしても、大きな動きないしは方向につきまして、もとより認識もいたしておるわけでございますが、日本全体の事情よりいたしますと、なかなか今おあげになりましたような方向までに行ってない部分等もございます。従って、こういうこと等についてわれわれは、たとえばかりにこの労働時間短縮についてお話のような結論に到達するとするならば、政府としても一般の産業に対して行政指導の上でいろいろやっていかなければならぬ。わけて、そういう結論になりまして以後はより一そうそういうことでございます。従ってこれらのことを関連して考えます場合におきましては、政府政府なりにいろいろ物事を考えた上での措置もなければならぬ、こういう意味でございます。拱手傍観なすところを知らずという意味ではございません。御了承を願いたいと思います。
  90. 工藤誠爾

    工藤説明員 お許しをいただきまして、ちょっと事実関係について御説明申し上げたいと思いますが、先ほど大原先生のお話で、昨年のILO総会において日本政府は退席したというお話でございましたが、日本政府といたしましては、態度をはっきりするために総会において演説をいたしまして棄権をいたした次第でありまして、退席いたしたのは使用者のグループでございます。
  91. 大原亨

    大原委員 棄権したことは同じ効果を及ぼしているのです。だから、おって反対すればいいのです。おって反対すれば会議は成立しているわけです。だから決議になる。だから、棄権するのも同じなんです。福永労働大臣、あなたはその点については、あちらこちらお忙しいと思うのですが、しかしこれは非常に大切な問題で、労働界で要望しておるのです。あなたの答弁はまるきり日経連や資本家の代表答弁ですよ。前の労働大臣はどういうことを答弁していたかというと、現行法規を守るためにさらにきびしくやる必要があると言っているのだ。どういうことかというと、政令とか規則において現在の基準法を目こぼししているのです。ざる法にしているのです。さらにたとえば四十八時間以上の超過勤務につきまして超勤料を五割増しにするとか、そういう国際的な立法の例があるわけです。そういう施策においては、いろいろな政策を集めて、それらを基準法を中心といたしまして施策を進めるべきだ。特に基準法などにつきましても、全国各地を回ってみますと、人員が足らない、手間がない、実際上監督もできない、機能を発揮していない。それでどんどん圧力がかかってくる、こういうことでありまして、基準法が守られていない、そういう問題等に対しまして、その正しい履行の中において、私は時間短縮がそういう態勢に即応しないと、世界一の経済成長率を誇っておる日本が、労働条件においてはまるきり考えがないということになるから、これは私は日本政府の名誉のためにあなたの答弁は取り消して、出直してもらいたい。今の答弁はひどい答弁ですよ。むちゃくちゃな答弁です。
  92. 福永健司

    福永国務大臣 そういう意味にお聞きをいただいたとすれば、私も大へん残念でございます。御批判は御自由でございますが、私は決して日経連的言動をやっておるわけではございませんし、先ほど申し上げました意味も、日本の実情がいろいろだから、従って労働時間短縮というような方向にいくためには、いろいろ政府としてもやらなければならないことがあるという意味において申し上げたつもりであります。用語拙劣なために誤解を生じたりとすれば、これは私の表現があまり上手でなかったということでありますが、ただいま御指摘のような意味のことも考慮しつつ申し上げた言葉であることを御理解いただきたいと存じます。
  93. 大原亨

    大原委員 それでは、たとえば私ども社会党といたしましては基準法改正についての原案は持っておるし、近く出すかもしれません。それは別にいたしまして、政府としてはどういう見通しのもとに四十時間労働制の国際的な水準に到達するのだという若干の段階的な見通しぐらい方針として持ち、そうして本年度においてはどういう施策を実行していきたい、こういうことがないと、これは日本の国際信用にかかわる問題です。本年六月の総会では当然これは決議をされるのであります。勧告が決議をされますと、毎年々々私どもはどのようにこれを忠実に実行しているかということについて報告しなければならない。うそを言うわけにいきません。うそを言えばまた労使間の問題になってくるわけであります。だから私はそういう点についてすみやかに政府の労働時間短縮に対する方針を立ててもらいたい。これに対する労働大臣の御決意を伺いたいのであります。
  94. 福永健司

    福永国務大臣 現在の労働時間でも、全部が全部それ以内ということは言い切れないと思います。従って先ほどから申し上げております通り、そういう実情に対しましては、政府はただいま大原さんも御指摘のように、行政指導なり監督なりというものを適切にやっていかなければなりませんし、また一面世界的の趨勢といたしましての労働時間の短縮、こういうことにも思いをいたして、かりにわが国も四十時間に短縮するということについて仲間になるとするならば、そういうことがしいいような方向へ持っていく措置を講じなければならぬ、こういうようなこと等もあるわけであります。まあ何ヵ月か後のことでございますから、そういうことにも対処しつつ、六月における善処をしていかなければならない、こういうように考えております。
  95. 大原亨

    大原委員 ここは議会でありますから、国内の政治の政策をお聞きするわけです。だから、六月のILO総会に対しまして、政府は具体的にどういう施策を用意しておられるかということ、施策を用意しておられるのにはどういう問題があるかということを、私は重点にお聞きしているわけでありますが、あなたの方はきわめて微温的な答弁をされたのです。これは別の機会に御質問を申し上げますし、同僚からも御質問があると思いますが、すみやかにこの政策を立ててもらいたい。最低賃金制に対する勧告の問題もありまするが、この問題は、いまだに日本条約批准していない。批准できない日本の最低賃金制である。その事実が証明しておる。この問題につきましても、私は追及をいたしたいのでありますが、時間も相当たっている。  そこで、私がもう一つ質問いたしたいのは、昨年のILO総会におきまして、労働者住宅についての勧告がなされた。労働者住宅に対する勧告をなされました際に、政府はいつどのような措置をするのかという点につきまして、政府のお考えをお聞きしたいのであります。
  96. 福永健司

    福永国務大臣 これは私も方向といたしまして同感なんでございますが、ただわが国の実情よりいたしますと、私が申すまでもなく、現に社宅等によって便宜を受けている人たちも相当あるわけであります。従って、直ちにこれを廃止する方向へということになりますと、かえって労働者諸君のためにもならないような事情等もありますので、わが国の実情とあわせ考えつつ前進していく方向でなければならぬ、こういうように考えている次第でありまして、住宅政策全体についての建設省のとる施策とも符節を合わせなければなりません。連絡、打ち合わせ等を行ないつつ、ただいま申し上げましたような考え方で前進いたしたいと思います。
  97. 大原亨

    大原委員 勧告の扱いですね。勧告が採択されたら、日本政府はどう扱うのですか。
  98. 工藤誠爾

    工藤説明員 毎年ILO総会で採択されました条約及び勧告につきましては、次の通常国会にその訳文及び政府見解を付して提出するということになっています。今御質問のありました労働者住宅の勧告につきましては、関係の各省と訳文につきまして目下調整中でございますので、遠からぬ将来に国会提出できるものと考えております。
  99. 大原亨

    大原委員 いつ出しますか。
  100. 工藤誠爾

    工藤説明員 今次国会中に必ず提出いたします。
  101. 大原亨

    大原委員 労働大臣から、社宅の問題について、私が御質問申し上げないのに問題点を御答弁になりました。この問題は、私は建設省や外務省全部呼びまして、もう一回建設的な議論をしたいと思います。たとえば住宅公団の政策にいたしましても、住宅金融公庫の政策にいたしましても、財政投融資——たとえば厚生年金の積立金というものは、労働者出している積立金なんです。そういう積立金を使いまして労働者住宅を社宅として作る。そういう際に、首になるあるいはやめてしまったら出ていかなければならぬということは、これは労働者側の積立金、厚生年金の自分が出した積立金が労務管理だけに使われておるじゃないか。それではいけない。だからそういう場合に、たとえばそういう住宅であっても、やめた場合に社宅を出なければならぬという、そういう今までの規定を改めて、たとい会社をやめようが、そこで働いた人は、ずっとその住宅に住める、こういうふうに、労務管理政策に利用されないような、そういう政策はあるわけです。そういう具体的な問題は方針としてはできる、政策としてはできる、こういう問題が一番大切な問題だと思う。これは私は意見として申し上げておくし、またあらためてこれは建設省なりあるいはその他の各省の問題で、厚生年金の積立金等とも関連をいたしまして、一つ意見や御質問をいたしたい、これは徹底的に究明をしていきたいと思うのであります。  以上をもちまして、ILO関係に対する政府考え方の根本的な問題を、大まかな問題だけについて御質問いたしました。所定の時間も相当たっておりまするが、賃金問題その他につきましては、同僚の方から質問いたしますときに関連をいたしまして、それぞれ一つ追及をいたしたい。従って労働政策万般の問題につきまして、労働省なり政府は、非常に重要な問題でございますから、真剣にかまえて、一つ十分与野党を通じましての討論の上に立ちまして、それを実行していただくようにやっていただきたい、こういうことを最後に要望いたしておきます。その点につきまして、労働大臣の御決意をお伺いいたしまして、第一段の総括質問を終わる、こういうことにいたします。
  102. 福永健司

    福永国務大臣 御鞭撻をいただいて恐縮に存じます。せいぜい御説のようなことも気をつけて今後に処したいと思います。
  103. 中野四郎

    中野委員長 関連事項について質問の要求があります。これを許します。井堀繁男君。
  104. 井堀繁男

    ○井堀委員 ごく簡単に重要な部分を二、三労働大臣から伺っておきたいと思います。  それは先ほど来の論議で明らかになったようでありますが、ILOの問題でありますけれども、一九五一年の十一月二十六日の、すなわち三十四回総会議事録政府はごらんいただいておると思うのでありますが、私どもはこの議事録を非常に重視いたしております。この点に対する日本政府代表者の、委員会における労使委員からの質問に対しての明確な答弁が記録されておるのであります。この辺の解釈について一つ明らかにいたしておきたいと思います。その点に対する政府見解一つお答えいただきたいと思います。
  105. 工藤誠爾

    工藤説明員 今御質問の点でございますが、ちょうど日本ILOに再加盟が承認されたときの問答かと思います。その決議の関係でございますか。
  106. 井堀繁男

    ○井堀委員 政府答弁の内容です。——それでは質問に答えられるように、もう少し私の質問の筋を申し上げます。  その記録によりますと、日本政府代表は、ILOに再加盟をいたしまするために申請書を出し、その申請書に対する審議が行なわれておるのであります。その中で、憲法第二十一条と第二十八条を引例して、わが国の態度を明確にしておる。そこで問題になりますのは、八十七号条約批准政府が渋っておりまする理由をわれわれは疑っておるわけです。そういう疑いはこの中からは生じてこないと思いまするから、実はお尋ねをしておるのであります。でありますから、全部お答えいただかぬでけっこうであります。その中で、日本憲法第二十八条関係について、日本政府代表労使委員に対して明確な答弁をいたしておることが記録されております。その部分だけでもけっこうでありますから、はっきりこの際政府態度を述べておく必要があるのではないかと思ってお尋ねをしておるのであります。
  107. 工藤誠爾

    工藤説明員 ただいま手元に当時の記録を持っておりませんが、日本憲法にも明記してあるように、勤労権を尊重するという趣旨であったかと存じます。
  108. 井堀繁男

    ○井堀委員 これはどうぞ勉強をしていただきたい。先ほど来の国会のいろいろな問題の中で、私はきめ手になる事項だと思うのです。労働大臣が閣議で、他の閣僚や総理を納得せしめるための非常に重要な主張の一つにもなるし、あるいは今後の国会におけるこの種の問題をめぐって、いたずらなる混乱を避ける意味でも、明確にすべきであると思うのであります。これは申すまでもなく日本国を代表して日本政府代表者が、国際会議において明らかにしたことでありますから、これを否定したり、あいまいなものにすることの許されないことは、言うまでもないことであります。  私は、この記録全体を通して感じられることが一つであります。それからその部分的なものをあげますと、当時の日本政府代表は、日本憲法第二十一条と第二十八条をことさらに摘出をして——その二十八条の部分を読んでみますと、日本憲法二十八条は、勤労者の団結及び団体交渉をする権利が保障されている旨を言明いたしているのみならず、それに付言をしてその内容の説明をいたしております。このことはILO八十七号条約の内容と全く一致しておるのであります。こういう点からいいますならば、八十七号条約批准の手続を怠っておっただけで、この批准を行なおうと行なうまいとどっちにいたしましても、日本の国際的な信義の上からいいますならば、八十七号条約の内容というものは、当然忠実に日本国において実施されていかなければならぬということは、この部分で明らかであります。  この点を労働大臣がよく御承知であるかどうかを実は疑っておったわけであります。きょうの質問にずばり答えていただけるようであれば、閣議における決定も問題がないでありましょうし、あるいは国会にこの条約批准の手続をするのについても、ちゅうちょする必要はなかったのじゃないか。こういう点をのみ込んでおいでにならなかったのではないかという不安がありましたからお尋ねをしたわけでありますが、事務当局も、このILO条約がこの委員会で問題になったにもかかわらず、その記録をお持ちになっていなかったという点、労働大臣が御承知でなかったという点は、要するに今後の国会審議の上にも重大な影響がありますので、一日も早くこの点を十分お読みいただいて、その精神に今私が申し上げたことと反する点がありましたら、きょうでなくてけっこうでありますから、その反駁する意味の御答弁をいただきたいと思います。  それからいま一つ大事な問題は、ILO憲章の前文であります。これは時間がありますならば、そちらに読んでいただいて、その前文に対するわが政府解釈を実は伺っておきたいと思うのでありますが、これも時間を省く意味で私が少し意見を加えて質問してみましょう。  私の解するところによりますと、ILO憲章前文には、一応八十七号条約の中に規定してある結社の自由と団結権を保護する内容は、その前文において十分言い表わしてあるものと理解しておるのであります。日本政府、ことに労働省は、このILO憲章の前文に対する理解をどのようにいたしておるかということを、この機会に明らかにしておく必要があると思います。これは御承知でありましょう。この点について一つ見解を伺っておきたいと思います。
  109. 福永健司

    福永国務大臣 まず全体の前提となる前文であり、またわが国がILOに加盟するにおいての心がまえとして理解をしていなければならぬはずの前文の条文について、ただいま井堀さんがおっしゃったような工合に、わが政府理解しておるつもりでございます。
  110. 井堀繁男

    ○井堀委員 そうむずかしい文書ではありませんから、異なった解釈理解ができるはずがないのでありますが、念のために実はお尋ねしたのであります。この二つの事柄は、八十七号条約を一日も早く日本政府国会の承認を得て、そうして国際信義を一日も早く忠実に実施していくということは、私はちっとも障害が起こってこないと思う。すなわち国内法の一部改正を必要とする部分は、公労法あるいは地公労法の一部に抵触することは明らかでありますが、他の問題については国内の問題として処理のできる性質のものだと理解しておるわけであります。それ以外に、立場、持ち場を異にすることによって、こういうものが変わってくるはずのものではないと信ずるからであります。でありますから、私どもはこういう国際問題あるいは外交上の事柄というものを政争の具に供したり、あるいは国内における恥を外に出すようなふうにとられるような扱い方というものは、国際的な舞台においてなすべきではないとかたく戒めておりますから申し上げるのであります。  ことに問題は、大へん誤解をしたり、あるいはためにせんとするようなものから起こってくる紛争ではないかとすら考えるのであります。それはこの二点でも明らかになりましたように、ILOに再加盟をいたしました経過を記録の上で拝見してみますと、終戦後、日本の国際的地位というものを、一日も早く国際的な舞台に復帰せしめねばならぬという、国民の強い要望があったことは事実であります。その要望を一番可能で合理的な道を選ぼうとしたのが、当時国連復帰の道が困難であったので、日本政府代表者をわざわざ国連に送って、正式には参加できませんから側面から、各国やあるいは理事国に対して非常に熱心な奔走をしたことは、隠れもない過去の事実であります。またこれを国民が支持したことも偽りない事実であります。そういう経過からいたしまして、国連に復帰する以前に、国連の専門機関である、ある意味においては国連の背骨をなすような専門委員会ILOに復帰できたというこの経過から考えてみて、そのとき日本政府はこういう言明をしたということはきわめて当然であります。ILO憲章の中を貫いておる新しい民主主義というか、平和主義を伴った一つの哲理が、このILOの精神を貫いておることを私どもは重視するのであります。でありますから、いやしくも平和主義、民主主義を口にし、もしくはそれを信奉する者は、ILO精神に疑いを持つ者はないと思います。またそういう立場からILO理解しなければならぬと思うのであります。  そういう点で今二つの点をお尋ねしたのでありまして、一つ日本国がILOに復帰するときの具体的な意思を表明しておるのが、さっき私がお尋ねいたしました十一月二十六日の委員会の記録であります。これを読めば読むほど、日本の今のILO八十七号条約をめぐる争いが、どうにも理解ができなくなるはずであると私は思います。これは私一人ではなくて、すべての人の氷解できることだと思います。この日本国を代表してILO復帰の主張をいたしました、あるいは各国からの質問に答えて言ったことが偽りであろうなどということは、——もうだれしも否定のできない事実であります。でありますならば、もうこのときすでに八十七号条約の内容というものは、日本国は忠実にこれを履行しますということを約束済みであります。さらにILO憲章の前文を今労働大臣の御答弁のように理解するとするならば、八十七号条約批准がいかにおくれておったかということは、ただ単に手続がおくれたということに解すべきではないか。先ほど来この委員会官房長官との質疑応答を聞いておりまして、どうも日本政府はこの事実をお忘れになっておる。あるいはやや専門的なことに属するので、そこまで政府理解を深めていなかったというふうに私どもは善意に理解している。なるべく早くこういうぶざまな状態を解消するという大切な時期に来ておる、こういうふうに考えますと同時に、第一に質問いたしましたものは、日本憲法二十八条の精神を説いておるのでありますから、もう議論の余地はないはずであります。ILO条約批准するとしないとにかかわらず、日本憲法に抵触するような法律は、ひとり政府だけではありませんで、国民のすべてが権利を守るために不断の努力要請しておるわけでありますから、与野党にかかわらず、われわれの努力目標の一つでなければならぬと思うのでありまして、こういう意味で二つ今お尋ねしたことに対して、御答弁一つは明確にありましたが、一つはまだお調べが十分でないそうであります。お調べになって明確に御答弁いただきますが、これは八十七号条約をスムーズにこの国会批准せしめる第一の要件になると思うのであります。それ以外に多くの論争を貴重な国会においていたすことはどうかというふうに考えましたので、実はお尋ねしたわけであります。なお労働大臣のこれに対する所見を伺って、この点は一応後日の問題にいたしたいと思います。
  111. 福永健司

    福永国務大臣 貴重な御意見を拝聴いたしたのでありますが、私どもはこれとともに累次にわたりまして、八十七号条約批准にあたりましては、関連国内法の整備を行なうということを、閣議等でもしばしば申し合わせておるわけでございます。この措置もとって、お説のようなことにいたし、不備のないことにいたしたい、こう考えておる次第であります。
  112. 井堀繁男

    ○井堀委員 私は深追いをしようとは思いません。ぜひ一つ以上二つの要点について十分翫味されまして、あやまちを犯さないように政府当局にも強く要望をいたしておきます。  次に、大臣も忙しいようでありますから、もう二問ばかりちょっとお答えをいただいて、あとはそれぞれの専門家にお尋ねしてみたいと思います。  実は、わが党といたしましては、この国会における政府の労働政策に関しては、各方面からの具体的な要請も持っておるし、それから公約もぜひ実行してもらいたいという、国民にかわっての政府に対する注文もあります。数多いのでありますが、その中で、予算と関係いたしました事項については、まだ予算委員会において多少発言機会をわれわれも持っておりますので、重複を避けて、当面しておりまする問題を二、三点拾って、一つ答弁をいただきたいと思うのであります。  それは政府の経済政策が、失敗とか破綻とかいう言葉を避けてもいいと思うのでありますが、具体的に経済政策というものが、いろいろ労働問題に直接大きな影響を投げかけておる点があるのであります。これは議論をしようとは思いません。事実を取り上げます。それは、たとえば国際収支の調整を行なう、すなわち金融引き締めの形をとって出てきますと、すぐ現われてきておるのは、零細企業、中小企業における労働問題で、これはきわめて深刻な様相を呈している。これは政府だけの責任ではないかもしれない。しかしこの問題を実はお気づきになっていないものがたくさんあるように理解しております。一つは、今基準局長のところに私の方から調査を依頼しておりますが、そういう点は、きょう時間がかかりますから後日にしてもよろしいし、局長にお尋ねしてもいいと思いますが、これは一例でありますけれども、今労働省の所管の中で、中小企業と十ぱ一からげに旨っておりますが、実は零細企業、すなわち労働組合の組織も困難である、あるいは労働組合をよし組織することができましても、それは正常に運営する能力を欠いておる実情であることは、言うまでもありません。七百五十万と号し、あるいは八百万に近いといわれている現在の組織労働者の中で、まだ厳密にいうと一千二百万あるいはもっとあるかもしれないが、その労働者が組織することが今日に至ってもまだ不可能——不可能という言葉が無理でありますれば、組織されていない。これは日本の労働行政に責任がある。今までの日本の民主社会における労働者権利というものは、それは組織されて初めて維持できるというのが絶対の原則である。ですから、組織されない労働者がいるとすれば、日本の労働行政はそこに大きな盲点があると言わなければならぬのであります。ですから千二百万からの未組織労働者に対して、これを放置しておくということは、労働省にとっては手痛い一つの大きな不信任の姿だと思いますから、この点の解決をどうなされるかということは、この国会に具体的に提案されてくる筋のものであると思います。  そしてそのことは、ただ単に労働者の人としての権利が守られていないというだけではありません。不当に権利が侵されている事実を、私は何回か目撃しているのであります。たとえば賃金未払い事件が起きました。これは福永さんも私も同じ選挙区で、自分の地元でありますが、私は一つの不信任を突きつけられたような感じがいたしました。わずか十九人くらいの従業員しかいないのですが、大宮の駅のすぐ近くで、旋盤を作っているくらいですから、近代的な工業ですが、ただ人数が少ない、規模が小さい。それが金融引き締めのために賃金未払いになった。それがまた悪いときには悪いことが重なりまして、そこの従業員の一人が自動車の運転免許を持っているから、会社の車をたのまれて運転している。たまたま交通事故にぶつかった。ところが四日前に運転免許の切りかえの時期がきていたのに、うかつでいたというので、法律通りにいえば無免許運転で罰金がきた。そして交通事故の方は、事故保険に入っていないから、結局向こうに対して七万六千円からの損害示談をした。その損害示談も会社の方で出せない。しかし示談ですから、この方は何回払いかにしてもらったが、罰金の方は容赦ありません。先月の三十日付をもって罰金の期限がきて、納めなければ引っぱられる。法治国ですから、一方はきびしく刑事訴訟法の手続、刑法のきめるところに従って身柄が拘束されてしまう。これの救済の道がありません。  それは冒頭に申し上げた民主社会ですから、労働者が組織されてこそ初めてそういう権利が防衛できるという建前です。労働組合が組織されていないということは、こんなに人権がそこなわれる。しかも日本の強権によって、法律の力によって拘束される。これはたった一つの例であります。ですから、政府の経済政策の転換というものが、このようにきびしく敏感に労働者に響いてきているということを、よほど労働省はお考えいただかなければならぬ。抽象的にわれわれは労働基準法の完全実施などというようなスローガンでは、満足できないのであります。私は労働省の監督不行き届きを糾弾されてもいかんともしがたいと思います。しかし私も多少事実を知っております。今日の監督官の制度や人の数をもってしては、訴えてこなければわからない。こういう矛盾は労働省にとってはどうにもしょうがないというのは、監督署の窓口だけだ。しかし労働省としてはあるはずであります。そのためにこそ労働者の組織を促し、その権利を守るために行政府があるわけでありますから、基準監督署、あるいはこれは労政局になるのかどうか知りませんけれども、あなたの所管のもとにおいて調整を行なわれなければならぬ事柄であると思うのであります。行政がばらばらである。こういう点については非常に重要なことでありますから、きょうすぐ御答弁をいただかなくてけっこうでありますが、私の方からも直接あなた方の方の監督課長のところに御連絡をいたし、お調べになって、まだ返事が来ませんけれども、文書でいただくようにいたしておきました。これはほんの一例です。これが千二百万の労働者一つの姿、氷山の一角であります。こういう点について一つ御注意をいただかなければならぬと思うのでありまして、こういうように事態は労働省に大きなウエートがかかって現われてきたと思うのであります。  もう一つは不完全就業の姿、政府は非常にりっぱなことを施政方針の中で述べられておりますから、私はそうあってほしいと願う立場から、幾つかの労働関係の問題をあげてみたいと思うのでありますが、また予算委員会でお目にかかる機会があるかと思いますので、他の関係等においてただしていきたいと思いますが、きょうのところは選挙区を同じゅうしているよしみもありますから、そう責めばかりはいたしませんけれども、ぜひ一つ勇気を鼓舞して、熱心に労働行政をやっていただかなければならぬと思われる問題だけを提供しておきます。答弁あとでもけっこうです。今言ったのは労働行政の窓口を調整をして、うまくやっていただきたいということであります。どうもいけませんのは、お役所仕事というものは、基準監督局へ持っていくと、そこだけで終わってしまう。横の連絡をもう少しとってほしい。今の問題は未組織労働者、これを組織化させるにはどうしたらよろしいか。それは総同盟や全労や総評がやるのだろうということでは許されないということを銘記していただきたい。  次に、これもすぐあなたがお考えいただけることでありますが、婦人労働の問題が非常に重大な段階に来ているということです。婦人少年局長も来ておられるので、あとで局長さんに一つ大いに雄弁をふるって御答弁を願うつもりでありますが、これは私ども政府の所得倍増と称するスローガンのもとにおける拡大計画の、一つの大きなしわ寄せが来ておると思う。これは一つあなたがんばらないと、弱い者の犠牲において政府の政策が助けられるということを——しかも破綻はここら辺から出てくると思われます。だからこういう補強工作をいたしますためには、とりあえず労働基準法の問題も出てきます。今の法律でたくさん手入れをしなければならぬものがある。行政的な責任、それから社会保険、すなわち労働保険の六人未満の例外規定というようなものをこの際に改めなければならぬということも、こういうところから出てきましょうし、それから労災保険の扱いなども問題があります。そういう社会保険関係、それからことに注文をいたしておきたいと思いますが、労働省が、今度新しい要求の中に現われております賃金問題を熱心に取り上げることはけっこうでありますが、どうも見当違いをなさっておるようであります。これは時間がなければ論議できませんから、あなたに一つ考えいただいて、御答弁はあなたでなくてけっこうであります。というのは、賃金問題を扱うのに労働省の中に委員会をお設けになるような内容が盛り込まれております。それはどうなるかわかりませんが、なるほど賃金の問題については、役所だけではとうていこなせないということは百も承知しておりますが、その場所と方法は非常に大切であります。役所の中に持つとするならば総理府ではないか。というのは、賃金の問題は最初から雇い主と労働者との利害が真正面から衝突しております。これは厚生省にも似たような例があります。常識でわかることなんです。医療費を決定するための医療協の問題、賃金の問題をもし労働省の中に賃金委員会を設定して——その賃金委員会労働大臣の諮問機関でしょうけれども、そういうものを労働省がおやりになることは、焼け火ばしを握ることになる……
  113. 中野四郎

    中野委員長 井堀さん、労働大臣は参議院で補正予算の採決があるそうでありますから……。
  114. 井堀繁男

    ○井堀委員 それでは時間もあるようでありますから……。これは非常に大切な問題でありますから、できてしまってからは追及したくないと思います。今生まれようとしておるから申し上げる。こういう構想は悪いことではない。今の賃金体系その他の問題は喫緊の問題なんです。そういう問題についてはもちろん労働団体の意見も聞いておられるようでありますから、非常にいいことだと思いますが、国会としては諮問機関を設けるということなら、こういうところに設けてはいかぬのではないかと思うので、その意見を聞いておきたい。そういう問題もありますから、時間的に急ぐものがたくさんあるわけであります。  わが党はこの委員会で残念ながら長時間の発言機会を得ることができないものでありますから、一緒に申し上げてしまいますが、労使協議制の問題も問題があります。特にあなたのお仕事の中で一番問題になってくる労働者の通勤と住宅の問題について、労働力の摩滅をどうするか。拡大計画に労働政策が沿っていかなかったら悲劇が起こるというような問題が、実は火がついて起こっておることがたくさんあります。そういうような問題について、きょうは時間がありませんから、できますならば文書で質問をいたしてもと考えておったくらいでありますが、これもまた国会法のあれがめんどうでありまして、ごく簡単なものでないとできません。そういうような問題が実は労働省にはすぐ出てきております。  ですから、要約いたしますと三つに大きく分けていけると思うのであります。一つは労働行政について積極的な手を打ってほしい。一つは立法手段の中で大きな誤りを来たさないように、大切に気つけなければならぬものが出てきておる。いいことに着手しておりながらできない。零細企業の労働者の問題については、今非常に大きく権利が侵されつつありますから、これは政策上の問題として工夫を願いたい。こういうふうに考えて、実は十二項目ばかりきょう簡単に棒書きにしてお尋ねしようと思ったのでありますが、それも時間的にかないませんので、そういう点を一つお含みの上で、十分御検討願ってしかるべき回答を願って、きょうはあなたの決意だけを一つお伺いいたしたいと思います。
  115. 福永健司

    福永国務大臣 いろいろ御高説を伺ったわけでありまして、一々についてお答えをしなければならぬわけでありますが、概括的な表現でお許しをいただきたいと思います。  わが国の現状といたしまして、近代的な労使関係を持たないような実情がまだ一部にあることは、御指摘の通りでございます。これもはなはだ遺憾であり、そういうことのゆえに御指摘のようなことも間々生じがちであるという点についても、大いに心いたさなければならぬと存じます。そういうようなことも考えまして、今後積極的に労働行政の総合的運営を心がけていきたいと存ずる次第でございます。  賃金問題その他につきましては、一部私ども考え、ないし申し上げておるのでないことが誤り伝わっておること等もございます。一々そういう点をあげて申し上げることはいたしませんけれども、ただいま御指摘のようなことは今後大いに参考にいたしまして、善処いたしたいと存ずる次第でございます。
  116. 井堀繁男

    ○井堀委員 婦人少年局長にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。労働大臣退席のようでございますので、局長から二、三お答えをいただいて、問題のあるところは一つ省内で適宜御調整を願っておきたいと思うのであります。  婦人少年局長にお尋ねをいたすのでありまするが、あなたの方でことしお作りになりましたところの「婦人労働の実情」について、実は勉強さしていただいたのであります。なかなかよくできております。この報告書によりましても明確になって参りまするように、最近の婦人労働の姿というものが、量の上においては格別大きな変化を見ませんけれども、質において憂慮すべき実情がうかがえるのであります。私の感じたところを一、二出してお尋ねいたしたいと思いますが、まあ概括してみますると、昭和三十年から三十五年の五年間の動きを見てみますと、総数において婦人労働というものが非常にふえてきておる。千七百十五万であったものが千八百二十八万にふえたということは、ただ単に労働人口がふえてきたのに比例してふえたと見れば大したことはありませんけれども日本の産業経済の中で婦人の地位がこんなに重視されてくるようになったということについては、かなり大きな関心を持たなければならぬと思うのです。ことにその分析の中で、第一次産業、第二次産業、第三次産業に分類をいたしまして、その中の婦人労働の位置を見ますると、何といいましても第三次産業に圧倒的にふえておるようであります。比較的私どもがふえるだろうと思っておりました第二次産業についての比率よりは、はるかに第三次にふえてきている。そして第一次産業はずっと減ってきておる。この関係だけを見て判断することは早計かもしれませんけれども、大きな傾向はわかる。  それからもう一つ、あなたの方の統計で見なければなりませんのは、女子労働の姿ですね。どういうところへどう行っているかということの中で、労働条件の中から一応観察ができると思うのです。労働条件を見ますると、だんだんと男女の格差というものが大きくなってきておる。あなたの方のこの統計だけでは不十分でありますが、この統計の出どころを検討してみましたら、総理府の就業構造基本調査に依存することが資料の面で非常に多いようであります。私も非常に興味深くあの資料を検討しておるのです。所得格差が非常に大きい。その大きい中で婦人が非常に大きな役割をして、男子と婦人の賃金格差というものが大きく開いてきておる。しかも第一次、第二次、第三次産業に分類をしてみてもぴたっとはまる。でありますから、これは局長さん、さっきの問題とも関連がありまするが、基本産業、大きな事業場、官公庁、それから三公社五現業といったような政府企業のもとにおける労働条件だけを見て、国際的な比較をとってはいけない。これは比較がないのでありますけれども、もし国際的に婦人労働の労働条件の比較がとれたら、チープ・レーバーと非常にたたかれますよ。繊維産業の中の十大紡績だけは一応姿をよくしてきておる。でございますから、繊維産業だけの比較をとってごらんなさい。規模別のものがここに出ておりますが、このとり方はかなりずさんだと私は思う。ほんとうの婦人労働の姿を出す場合には、未組織労働、中小企業、零細企業のもとに働いているもの、あるいは家内労働か雇用労働かわからぬというようなかすかすの境にある労働というのが、婦人労働の非常に大きな割合を占めておる、こういうようにあなたの報告書を私は拝見したのであります。その見方が間違っておりますなら一つお答えをいただくし、そうだとおっしゃるなら、婦人の労働対策というものは喫緊の問題になってきておるというふうに理解すべきじゃないか。まず基本的なこの報告書に対する私の見方が、そういう見方はすべきでないとおっしゃるのかどうであるか、その点を伺って、また質問を進めてみたいと思います。
  117. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいま先生から、婦人労働の実情について私どもの出版いたしましたものの中から、先生の御見解を伺ったのでございますが、先生がお示しになりましたように、日本の婦人労働者の産業経済の中での地位というものは、非常に変化をいたしておるのでございます。まず基本的に、先生はむしろ質において変化をしているとおっしゃられましたのですが、質ばかりではございませんで、量におきましても、非常に多く数がふえているのでございます。特に女子労働の中で、一般的な就業者というよりも、雇用者としての女子労働者がふえているのでありまして、ちょうど昨年の一番女子労働者がふえました時期におきます雇用労働者の数が、七百六十万くらいを数えているわけでございます。年間の平均の資料で載っておりますのが六百八十万くらいでございますが、月によりまして若干の差がございますけれども、七百万を突破しているというような情勢でございまして、今から六、七年前に比べますと、雇用労働者がちょうど倍くらいにふえている計算になるわけでございます。  第一点といたしましてこのように量がふえておりますと同時に、先生が御指摘になりましたように、質におきましても大へん違ってきているわけでございます。まず労働力としての質から申し上げてみますと、婦人労働者としての年令が高くなっております。平均年令が高くなっておりますし、それからまた勤続期間もふえておりますし、それから家庭を持って働いている婦人も若干ふえているわけでございます。また婦人の労働者として働く部面を産業別によって見ましても、先生が御指摘になられましたように、第二次産業、第三次産業におきまして非常に増加が著しいわけでございます。特に第二次、第三次産業におきましては、女子の増加が著しいわけでございますが、その中でも、同じ産業部面におきましても、事務部面に働く婦人労働者が大へんふえて参っております。量並びに質の変化が最近急速に行なわれているわけでございまして、従来から日本の婦人労働者は割合に短い期間働いて、そして割合に間に合わせの労働者として考えられていたのでございますが、最近におきましては、企業の中で大事な働く人としての労働力の性格を持ってくるようになって参りました。  労働力の量として、質としての変化のほかに、先生が第三に御指摘になられましたように、労働条件についての御意見をおっしゃられたのでございますが、この婦人労働の実情において示しております中で、男女の賃金の格差が大へん大きくなっているではないかというようなことを先生が御指摘になられまして、実際に一九五五年の男子に対する女子の賃金の割合が四三・七%から、一九六〇年には四二・八%となって参りまして、男女の格差が少し広がっているわけでございます。  ところが、男女の賃金の格差を申し上げます場合に、これは賃金を全体の労働者の中で平均をいたしました平均賃金の格差でございます。そこで、平均賃金考え方から申しますと、一般的には、先ほど私が御説明申し上げましたように、勤続が延びたとか、あるいは結婚している人がふえたとか、年令が高くなったという女子労働者としての特性がございますが、しかしやはり婦人は、どちらかと申しますと、結婚をすれば家庭に入るというような家庭の責任を持っております関係上、どうしても勤続期間は男子に比べると短いわけでございますし、そういうような関係で、仕事につきますような場合にも、比較的訓練の要らない単純作業に従事をするようなことになりまして、比較的賃金の安いところに女の人が集中している、こういう形から平均をいたしますと、どうしても男女の賃金の格差が広まってくる、大きくなるわけでございます。ことに最近におきましては、急速に膨張いたしました産業におきまして、熟練しない労働者がかなり新しく採用されておりますので、全体の平均賃金に対して、女子の平均賃金が低くなる傾向があるものではないかと思うのでございます。  逆に、女子と男子の賃金一つの傾向を申し上げてみますと、職業につきました最初の賃金、つまり初任給におきましては、最近最低賃金法も進んで参りましたし、中学並びに高等学校を卒業いたしまして直ちに就職する者につきましての男女の償金の格差はほとんど少なくて、九八%から九九%ぐらいのところなのでございますが、勤続年数を加えますごとに賃金の格差が多くなりまして、三十五才、四十才ぐらいになって男女の格差が非常に広がるというような賃金の特性を婦人が持っておりますために、一そうこういうような傾向になるものではないかと存じます。一般的に女子の特性からいたしまして、勤続年数が短いために、また熟練の要らない仕事に集中をしているというような傾向が大きく影響を与えて、質金格差の幅を広めていることではないかと思うのでございます。
  118. 井堀繁男

    ○井堀委員 私、この資料をまだ全部見たわけではありません、多少粗漏な調査の結果でお尋ねすることになるかもしれませんが、ほかのデータでいろいろ賃金の問題を扱ってみておるわけです。それは今あなたも御指摘になりましたように、婦人の労働条件の問題について警戒をしなければならぬというのは、技術革新あるいはオートメ化によって、婦人の今後の進出というものは非常に積極的に要請されてくると思うのです。それは一つには、企業採算の上から、コスト引き下げの一つの勢いとして、男子の労働にかわって女子労働が入りやすくなってきた。すなわち、基本的な技術を仕込めば男も女も変わらない。それからオートメ化などによる機械化というものがだんだん進んでいきますと、むしろ単純な作業は、男子労働より婦人労働の方が適格性があるといわれるような傾向が非常に多くなってくる。ですから、国際会議でも問題になりますように、同質労働に対する同一の賃金というものは、労働省にとって、あなたのところにとっては、非常な抵抗を受けながらそれを推進しなければならぬと思うのですが、失礼な言い方ですけれども、今日の労働省の行政能力をもってしては、特に婦人少年局をああいう姿で置いておったのでは——御婦人を軽視する意味じゃありませんよ。局長さんはりっぱな方でありましょうけれども、スタッフの上からいい、人数の上からいい、地方庁の分野からいって——地方庁に行きますと、いつも私はそう思うのですけれども、婦人少年室というのはありますけれども、二人か三人ぐらいで、よくやっておられると思います。だから、こういう省内における機構上の問題についてもう少し強い発言がなされて、しかも、予算の上に出てくるのではないかと実は期待をかけておった。それが現われていなかったものですから、きょうは大いに労働大臣のネジを巻いてやろうと思っておいでをいただいたわけですけれども、これは一つ局長さん、この問題だけでも片づけませんと、これはもう資本主義の当然の勢いですからね。しかも、国際競争というものは、いやがおうでもそういうものを強制してきます。そうすると、吹き上げられるのはチープ・レーバーじゃないか、私は、この統計でも頭がよければすぐ分析すると思う。事実をおおい隠すことはできませんよ。統計は不十分でありましても、わかっておる。私、最近そういう工場を特に注意して見ておりますけれども、たとえば自動車工業に一例をとってみますと、下請協力工場ですからね。たとえば自動車の部品の中でウインドウ・ワイパー、あんな一つの小さなものですけれども、あれは二百幾つかの部品で成り立っている。その工場は四百か五百ぐらいの工場で、非常に優秀なものができるというので、名前は避けますけれども、埼玉県にありますが、そこの生産は大体八〇%が外注です。会社では七〇%と言っておりますけれども、八〇%が要するに外注です。その外注は例外なく御婦人です。これは基準法の適用を受けないような家内労働ではないかと思われるような姿です。しかし、私どもから見れば、基準法の適用を受けるのです。それなのに目が届いておりません。ここには社会保険はありません。労働保険はありません。賃金未払い事件が起こっても、調べはありません。婦人労働の分野にこれは非常に顕著になってきているのでありますので、あなたの方でこういうものに対して何か御計画がおありでしょうか、この点、ちょっと心配なものですから、伺っておきたいと思います。
  119. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいま先生から、婦人労働につきましていろいろ御心配をいただきまして感謝申し上げますが、私ども、先生がおっしゃられましたように、技術革新とかオートメーションが直ちに婦人の雇用問題、労働条件あるいは労働保護にいろいろ関係があると存じまして、婦人少年局の婦人労働課におきましては、技術革新、オートメーションの一番激しく行なわれている部門を選びまして実態調査を進めております。その一つの例として申し上げますと、最近、事務の機械化が非常に集中的に行なわれまして、事務労働者が、五年前に比べて約三倍ぐらいにふえている情勢なのであります。しかも、その事務内容が変わっておりますために起こってくるいろいろな問題を耳にいたしますので、ちょうど昨年、婦人少年室を通しまして全国的な調査を実施いたしました。ごく最近におきまして、その概要を中間報告として発表させていただいたわけでございます。この調査の結果をまとめまして皆様に参考として差し上げますと同時に、私どもといたしましても、事務従事者に対する職業訓練の問題、それから職務の過程をどのように組織立てていくかという問題、それから労働時間とか休憩とかの労働保護の問題、それからまた、それに伴ういろいろの職業的な疾患に類するような職業上の苦痛を緩和するのにどうしたらいいかといったような問題につきまして、この調査をまとめました上、いろいろ専門家の皆様の御意見を伺いながら方針を立てまして、労務管理の参考として使用者考えていただくような材料を提出いたしたいと思っているわけでございます。  それからまた、先生が技術革新、オートメーションの促進に伴って、婦人の役割がだんだん重要になってくる、それについては、同一労働・同一賃金に対する考え方も進める必要があるではないかといろいろ御心配いただいたのでございますが、婦人少年局におきましては、やはりこの啓蒙活動のプログラムの一つといたしまして、男女同一労働・同一賃金に関しての考え方について社会の理解が十分でございませんために、ちょうど昨年は働く婦人の福祉運動の期間中に、この同一賃金に対する考え方の基本的なことを皆様にお知らせし、問題があればお話し合いの中にわかっていただくというような考え方で、地方の婦人少年室を通しましていろいろな懇談会を催しまして、労使の皆様の御理解をいただくと同時に、世間一般の方にこの問題をわかっていただくための啓蒙活動を実施いたしたのでございます。私どもはそれで十分であるとは思っておらないのでございまして、今後婦人労働の実態調査あるいは啓蒙活動を通しまして、今日の時代の進歩において、婦人労働者が参加をしていく上から起こってくる事態を的確にとらえて、保護の対策あるいは労務管理に対する資料などを差し上げるための活動を続けて参りたいと思っているわけでございます。
  120. 井堀繁男

    ○井堀委員 お気づきのようでありますからくどくど申しませんけれども、私どもも非常に心配しておりまする傾向は、今後婦人労働というものは、一つには、日本の経済の中に占める地位というものは、ただ単に労働保護という立場だけではなしに、もっと積極的な意味を持たした対策が必要である。それからもう一つ大切なことは、婦人労働の分野というのが量の上でも非常にふえてきた。この統計でいきましても、ことし四〇何%ですか、ですから大きいと思います。そこで資料の統計でも、既婚者が非常にふえてきた。この統計でいきますと、一九六〇年の九月現在のもので見ましても、未婚者が三〇・四%に対し、有配偶者が五三・八%、この六ページの統計に出ております。こういうように、労働力人口全体の中におきまして、雇用労働者によっても違うでしょうが、割合同じようなことになっておると思います。とにかく世帯持ちが多くなってきた。共かせぎということにもなるでありましょうが、一つには、やはり日本労働者、勤め人の低所得に対する家計を主婦が補わなければならぬという、生活面からくるものがあると思うのです。こういう意味でも、私は、婦人の労働という問題はよほど考えていただかなければいけないと思う。ですから、その家族労働によって生活費を補っていく、こういう問題が相当重要だと思います。だから、これはどうしても労働者自身の労働運動として燃え上がってこないのです。これはやはり先進国との違いがある。先進国の有配偶者が共かせぎをしている事情とは、非常にそこにわけが違うという点の掘り下げが足らないのじゃないか。こういり点は、要するに、きびしく統計その他の中にも批判をされてもいいんじゃないか。  それからもう一つ大切なことは、そのために母体が一体完全に保護されておるだろうか。これは冒頭に申し上げたように、激しい国際競争の中に、日本のような、零細企業、中小企業を多く持つ産業構造の中では、どうしても労働者にしわ寄せをして競争に一時耐えようとすることは、いい悪いじゃないと思う。だから、そこで一番抵抗力の弱いところに荷がかかってくるということは、資本主義の当然のところです。そこで労働省、特に婦人少年局の私は強い要請が望まれると思う。  それからもう一つ大事な点は、婦人労働が、この中にも出ておりますけれども、育児と子供の教育といいますか、育児、教養の問題をこういう状態に放置していていいかどうか。これはすぐ現われてこないので、気がついたときには、もう二十年、三十年を経過している。子供が世に出たときには一体どうなるかということを、婦人少年局としてはきびしく見守って、そういうものに対する見通しや意見を述べる行政府ではないかと私は思う。これはとかく目先を追いがちでありますし、ことにきびしい要請が周囲から襲いかかっております日本の経済、日本の政治の姿からいいますと、将来一番声を大にして主張しなければならぬのは、このお母さん方の労働ではないか。今、団地などでも声が上がってきておるのを聞きますと、託児所の問題です。団地を作っても託児所一つない、こんなばかな住宅なんかないじゃないかということを、なぜ婦人少年局は叫ばないか。さっきのように、四〇何%働いておる。子供を生んじゃならぬということはあり得ない。ですから、この問題を政治問題にしないはずはないと思う。ただ育児とかあるいは子供の教育といえば、何か抽象的に響きますけれども、実は具体的なんですね。さっき例をあげましたように、団地の中で一番先に作らなければならぬのは、共かせぎが多いですから、託児所じゃないか。仕事に行っている間、ただ子供を預かっていてくれれば無事でよかったというだけで満足するということでいたならば、日本の教育は誤ると思う。ことに新しい教育というものは、学校だけに依存するわけに参らぬのであります。こんな婦人の大きな問題が持ち上がっておるのに、一体労働省の婦人少年局はこの状態でいいだろうか。ちょっと強過ぎますか。どうも私は非常に強い不安を感ずる。こういう問題については、今度のような予算の中では、一番先に大手を振ってとってくるべきではないか。  それからもう一つは、やはり婦人労働の場合は、どこの国でもそうでありますけれども、民主社会がいろいろの要請をしてきます。婦人の地位が、経済的にもあるいは社会的にも政治的にも、ある程度男に負けない水準に達しないところに民主主義というものはない、ことに平和主義なんか生まれぬという学者の説は、単なるお説教ではなしに、福祉国家を築き上げている国々の実態というものは、婦人労働が、社会的役割についても、また経済的役割についても——経済といいましても、収入という問題もありますけれども、同時に、一つには、やはり効率的な消費といいますか、これからの新しい社会における消費の問題は、ただ単に消極的なものではなしに、これはアメリカ経済の中でも非常にやかましく取り上げられておりますし、欧米先進国の中で一番問題になっておることは消費の問題なんです。今までわれわれの考えた消費は、効率的な消費ではない。要するに倹約して、取った低い収入を効率に使おうといった消極的なものから、そうではなくて、その国、その社会の経済を推し進めるのがやはり消費の動向にある、内容にあるという方向に変わってきている。こりいう点で、私は婦人労働の問題は、数の上において非常にふえてきたもろもろの問題、弊害の問題や社会問題を投げかけていると同時に、こういった推進的な役割が婦人の間から起こってくるような、せめて言えば労働組合ですけれども、婦人の労働組合という特殊なものはありません。この中にも出ておりますけれども日本の労働運動の中における婦人の声というものは、まだ非常に低いのです。だから、いろいろな方面を見てみましたけれども、行政の面では、私はあなたの方がイニシアチブを握り、やはり推進の先頭に立たなければならぬというふうに理解されるのでありますが、こういう点についていかようにお考えになっておりますか、伺いたいと思います。
  121. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 婦人労働者の質が変わってくることの一つの特徴といたしまして、既婚者の増加ということを先生御指摘になられましたんですが、実際に雇用労働者の中で、婦人労働者の既婚婦人の割合が、一番最近の国勢調査によりますと、約二割という数字を示しております。そのほかに、婦人少年局は、年々女子保護実施状況調査を実施いたしております。これは労働基準法の六章関係の母性保護に関する調査の附帯調査として、その調査対象の事業場の既婚婦人がどれくらいあるかということの調査を実施しておるのでございますが、これも同じような数字を示しているわけでございます。この既婚婦人は、総括的な見方から申し上げますと、三公社五現業といったようなところは別といたしまして、一般の私企業におきましては、どちらかというと、中小企業に既婦者が多く働いておるわけでございます。これはやはり家計を補うために働く必要があって働く人たちでございまして、中小企業におきましては、やはり家庭を持って働いておる婦人の問題が、非常に大事なことであると私どもは思っておるわけでございます。  そこで、私どもは、この中小企業に働く婦人の保護のため、あるいは福祉を高めるために、先ほど御説明いたしましたような働く婦人の福祉運動におきまして、母体保護、福祉からその他の条件に及んで、三年継続して啓蒙活動を実施いたしたわけでございます。それとあわせまして、特に中小企業におきましては、近隣から通う結婚婦人が多うございますので、私どもは働く婦人の家を中小企業の密集地帯に置くことを考えまして、年々予算に、わずかでございますが、二ヵ所くらいなのでございますが、何年か計画でこれを置きまして、そこには託児のための、特に乳児も含めた託児の施設を置くように話が進められまして 付近の働くお母さんたちから大へん喜ばれている施設になっているわけでございます。私どもは、この育児と子供の教養の問題につきまして、託児所も必要なのでございますが、あらゆる機会に、労働組合の皆さんあるいは婦人団体の皆様といろいろお話し合い機会を持ちますので、このようなときには、託児所だけではなくて、できれば家庭保育もあわせて進められるように考えたらどうであろうかといったような話し合いも進めているわけでございます。予算の上で実らせることは、私どもの性質からいたしまして大へん困難なのでございますが、問題の重要性はよく存じておりまして、私どもの機能の及ぶ限りにおきまして、働くお母さんの働きやすい、そして母性の保護が全うされるようなものを、皆様の理解の中に実施していただくように進めることに努力をいたしているわけでございます。  なお、私どもは、特に労働組合の皆様がどんな困難な問題を持っていらっしゃるかということを伺いながら、調査や啓蒙活動を進めることが大事だと思いますので、少なくも年二回は、本省、地方それぞれが組合の皆さんと当面の婦人労働の問題について御意見を伺いながら、お話し合いの中に、婦人労働問題に対する理解を進めるということのための努力をいたしているわけでございます。先生のおっしゃられますように、日本の民主主義を進めます中で、特に婦人の地位を高め、そして年少者の保護をはかり、婦人労働者の保護をはかっていくということは非常に大事なことで、私どもは力が及びませんのでございますが、機能の許す限りにおいて、誠心誠意そのために働かしていただきたいと思っているのでございます。
  122. 井堀繁男

    ○井堀委員 大へん熱心におやりになっていることを、私どもは陰ながら敬意を表しておりますが、個人の力には限度がございますから、やはりできるだけ制度の上で伸びてもらいたいという意味で実はお尋ねしておるわけであります。一番望ましいことは、結論をどんぴしゃで言いますと、労働省は、労働大臣には御婦人がすわるくらいの政治力が望ましい、厚生省もそうでありましょう、ということを一番先に願っておったのですけれども、厚生大臣は一応御婦人が出ましたけれども労働大臣の方はまだのようであります。というのは、実質的にいって、おだてるわけじゃありませんけれども、婦人の問題は、私は先へいってやったのでは間に合わぬという気がいたします。さっきも申し上げたように、気がついたときには民族に相当大きな傷がついている、その傷はだれを責めても除けないという深い憂慮を実は私は感ずるのです。ちょっと言い方は大げさかもしれませんが、そういう事情でありますから、とりあえずの問題でもいろいろやり方があるのじゃないか。そういう意味で、実はわが党といたしましても検討いたしまして、新しい法律を作ることばかりが能じゃありませんけれども、第一には、今の行政能力というものを一〇%あるいはそれ以上に増していく。次には、予算の割愛はどこへ先に重点を置くかというような点で順位を置いて、婦人労働の保護の上にぐっと持っていかなければならぬ。さらに、できるならも一つと新しい、要するに機構や制度を考えてほしい、こういうふうに段階的にものを見ております。  その中で、今心がまえの問題については、私とあなたとそう食い違いがあるはずはないと思います。やり方ですけれども、実はあなたに聞くより労働大臣に聞くべきだったのでありますが、気のついた点だけを申し上げましても、第一に、今の社会保険、労働保険なんかにつきましても、国民皆保険というものはいい傾向ではありますけれども、その皆保険はとかく零細企業、中小企業、婦人労働の一番伸びておる分野においては失業保険ができておるのですから、健康保険に対する意欲はずっと薄らいでいるし、やはり雇い主負担があるものですから、雇い主は逃げたがる。健康保険のほかに、厚生年金もついでに逃げている。従って、失業保険もできるだけめんどうを見ない。任意包括という制度がありましても、事実上はから回りしている。こういう点は、やはり婦人少年局あたりから、婦人労働者の中から労働保険、社会保険というものに対して、もっと強い運動が起こってこなければいかぬのじゃないか。運動は起こらぬにいたしましても、行政府であるあなたの方から問題にしたらどうか。労働省の中で中小企業問題を扱うところはないのです。みな言うことはいさぎよいことを言いますが、質問したらすぐ足が出て、何もやっておりはしない。だから、一番労働行政で重点を置かなければならぬ部分がこの点からはずれている。そういう点で、あなたの方がそういう問題を取り上げてもいいのじゃないか。今啓蒙宣伝してやっておられることはいいけれども、とかく実際と結びついていない。もう少し、そこであなたの職場は一体どうして社会保険に加入しませんかという問題をあなたのところで調べれば、基準局との裏表ですから、すぐできると思うのです。こういう問題を一つぜひ取り上げるべきじゃないか。そうすれば、次には、いやでもおうでも政府法律で命ぜられたものがありますから、これを押していけば相当大きな予算が、あなたの方に回らなくても、労働省のほかの方へ回ってくることになると思う。  それから次に、労働基準法の問題も、とかく労働組合が取り上げますとかどが立つことになりますけれども、御婦人の団体で取り上げられる場合にはすなおに受け取られる。そして世論も支持をします。だから、労働基準法の実施についてどうすべきかということを一つ。  時間がありませんから、あと簡単に言います。それから、今労働組合の組織があるところはいいと思う。未組織分野が非常に多い。だから、こういうところにいきなり労働組合をということは、婦人局としては無理があるかもしれませんが、これは労政局長に聞くとすぐわかると思うのです、労政局長はとぼけた答弁をすると思うのですけれども日本の労働省設置法を読んだらすぐわかるのです。日本の労働組合も経営者もいけませんよ。労働組合を作るということは、すぐに雇い主と事をかまえて、闘争の分野にだけ必要だという理解がある。そうじゃないのですよ。近代産業における労働組織ということを考えれば、組織労働でなければ健全な経営ができるはずがない。婦人の場合は、一つそういう点にも頭を用いてもらいたい。集まりを見ておりますと——私は直接参りません、報告は必ず受けることにしておりますが、経営者の了解を得て集まっております。またそうでなければ集めにくいのです。そういう点はいいところだと思う。そういう点で、近代的な労働者のあり方というものは、組織的な人格の上に初めて認められてくるということを、もっと平易につかんでいただくような運動が盛り込まれぬものであろうか。一番基本的なものでありながら、どうも逃げる可能性がある。日本の労働行政の中で、とかく労政局というと、労働運動を押えるような役割をするような印象を与えておる。それは行き過ぎをためるのもけっこうでしょう。大事なことは、そういう未組織労働者を組織化されてこそ、そういう役割が果たせる。数の上で実に多いにもかかわらず、それが組織化されない。これをもっと突っ込んでいかなければ中途半端になる。せっかくあなたはいろいろな計画があるけれども、筋が抜けて、歯どめをしていくという大切な措置が労働行政の中に抜けている。やはり労使関係をものにしていくために、どうしてそれに組織を与えていくかということに対する基本的な指導があっていい、あるいはそういうテーマが、もうとうに出てきていいのじゃないか。地方で私は申し上げますけれども、どうもあなたに、労働者に言わないとものにならぬような感じがいたしましたので、この際意見を加えておきます。  次は、労働者福祉の問題について、今何べんか言われましたね。託児所の問題とか、家庭の内面指導の問題、いいと思う。しかし、これも一番肝心なことは、近代的なという言葉はあまり抽象的になりましょうが、労働者の福祉というものは周囲から与えるものではなくて、民主社会においては、主体的な要求が起こってこなければものにならない。主体的な要求をまず起こすような措置をする、それに対する行政的な援護をしていくというようなものも入っていないじゃないか。こういう点が実は入ってくれば、今までおやりになっているものも息を吹き返して、芽が出てくるというふうに思われるのです。  あといろいろありますけれども委員長の方から何か御都合があるようですから、できるだけ端折ってお尋ねしたわけです。重ねて申し上げましたから、わかりにくかったかもしれません。
  123. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 先生のお尋ねの社会保険に加入しておらないところでの婦人労働者の保護の問題でございますが、私どももそのことを気にいたしておりまして、特に地域の婦人団体とお話し合いをいたしますようなときなどには、とにかく社会保険に対しての関心を高めるように、いろいろ話し合いにおいて進めているわけでございます。ことに健康保険その他につきまして、婦人労働者の母体保護の上から、労働組合との話し合いのときには、その内容の問題その他についても、どうしたらいいかという点についていろいろ検討を進めているわけでございますが、なお私どもに、御指摘のように大へん足らないところがあると存じますので、今後もそのことについて、もう少し努力をさしていただきたいと思います。  それから、労働基準法の実施につきましては、基準監督官が責任を持っておるわけでございますが、婦人少年室といたしましては、特にいろいろな事業場を視察いたしましたり、また婦人労働者との話し合いの席などでいろいろな意見も伺いましたり、また労働者からじかに訴えられることも多いのでございまして、そのような機会をとらえまして、私ども婦人少年局から地域の労働基準局に対して、この点について特に実施をしてほしいということを強硬にお願いをして、何とか成績を上げているような事例もあるのでございます。特に基準法の実施について、監督的なことは実施いたさないのでございますが、実態調査の節にいろいろあがって参ります事柄については、いつも基準局と話し合って、基準局の監督方針の中にこれを織り込むように、私ども調査を役立てていただいておるようなわけでございまして、私どもといたしましては、労働者との話し合いにおきまして、あるいはまた視察におきまして、実態調査の過程におきまして、また啓蒙活動の過程におきまして、そしてまた基準法が実施されやすいように、その雰囲気を作っていくような役割を啓蒙活動において果たさせていただいておるわけでございます。  なお、労働組合の組織につきまして、私どもは、やはり民主的な、基本的な労働者としての条件で、近代的な労働者としての地位を労働組合において得るということが基本的な問題であると思うのでございます。そこで、婦人少年局の婦人労働のプログラムの一つといたしまして、労働組合とは何であるか、あるいは団体交渉とは何であるか、話し合いということはどういうことであるかといったような、民主的な関係における基本的な事柄がわかるような啓蒙資料を作成いたしまして、皆様に参考に差し上げたこともございました。私どものプログラムの中にたくさんなものがありますために、それだけに集中しているわけには参りませんのでございますが、気にいたしまして努力をしたわけでございます。  最後に先生の御指摘になられました民主主義の基本的な問題について、もっと自主的な力を動かすような意欲を盛り立てるような働きかけがあるべきじゃないかというお話でございます。私も、民主主義の基本的な原則は自主性にあると思うのでございます。ことに婦人問題などにつきまして、昔から機械的な中で自己の主張もできなかった婦人の地位というものを新たに回復するための基本的なものとしては、やはり何といっても自主性でございますし、人間的な基本的なものであると思います。そこで、私どもは、やはりいろいろな話し合いの中に、啓蒙の中に、特に婦人週間などを通しまして婦人の地位を上げますような場合におきましては、ともかくも自主性ということを中心に、いつの週間においてもこのことを表に掲げまして、この自主性を涵養するために婦人がどうあればいいかということを考えるということに、基本的な態度を置いて努力をさせていただいているわけでございます。以上におきまして努めておりますが、どうかよろしくお願いいたします。
  124. 井堀繁男

    ○井堀委員 大へん時間も経過いたしましたが、ただいまの中で、ちょっと私どもの今までの経験の中で懸念いたしますのは、抽象的にはおっしゃる通りだと思います。やはり婦人自身の問題だと思うのです。しかし、日本の婦人くらい手かせ足かせの多い姿というものは、まだ前近代的だと思うのです。具体的に言いますと、あなたもお認めになっているように、家庭に縛られております。ですから、日本の労働婦人というのは、二重の労働をしいられておる。それはなるほど、電気がまができましたからみそ汁も御飯も作らずに済むかもしれませんが、まだ日本の家族社会あるいは一般の社会の中においては、婦人というものは二重、三重の拘束を受けている。ですから、自由にしてあげるということ、自主性を生み出す前に、そういう周囲のものを取り払う役割が婦人少年局においては積極的に計画され、また活動されなければならぬのじゃないかということを私は言いたいんです。なるほどそういう相違はあっても、それを制約するものがあまりに多過ぎるし、強過ぎる。一例をあげますと、憲法法律その他の制度で男女同権ということになりましても、家族の中における老人に対する負担ということを非常に聞くんです。ですから、お年寄りがおりますと、それはお年寄りにすると、自分が若いときには親孝行をしいられて、大いにおしゅとに仕えて苦労して、ようやくおしゅうとになってめんどうを見てもらうようになったら、時代が違いますということでじゃけんにされたんでは何とも言えぬという気持もわかりますけれども、そういうことで、要するに今日重荷を持っておるのです、何でもないことのようですけれども。これは周囲全体の問題かもしれません。  それから冒頭に申し上げましたように、今日の労働というものは、夫の家計を補うためのきびしい強制があるものですから、できるだけ家計の切り回しというんですか、それが全部と言っていいくらいじゃないか。共同と言いながら、やはり奥さんが財布を預るんです。十分の財布ならだれでもやりますけれども、やはり切り盛りですからね。そういう点で動かなければなりませんから、市場をあさって買ってあげるという時間の制約があるわけです。そういう点は非常に強いわけです。そういったような社会的な、経済的な、家族的な封建性の強い男性の中にまだあるということを、私は前提にしなければいけないと思うのです。だから、もし日本の婦人保護の行政があるとするなら、そういう周囲をどんどん断ち切って開いていってあげるという運動があって、初めて自主性がものになる。しかしながら、そんな自由な状態にないということを私はやはり強調しなければいけないと思うのです。それであなたのところに非常に期待をかけている。日本の政治の中で、民主主義に一番貢献のできる、一番効果的な行政といったらあなたのところじゃないかと私は思っておるので、一つ勇気を鼓舞して、具体的に大いに推進していただきたいと思います。私も情熱を込めて質問をしたつもりなんです。  大へん長い時間かかりましたが、あなたの努力をお願いして、私の質問を終わります。
  125. 中野四郎

    中野委員長 関連事項についてちょっと質問があるようでございますから、本島百合子君。
  126. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま井堀委員からの御質問関連いたしまして、御質問いたしたいと思います。  それはただいまは雇用面からの婦人労働が多く取り上げられたわけですが、最近の零細業態の中で働きに出ていく人たちは、どちらかというと、中高年令層に属する婦人たちが多いわけです。この人たちは正規の労働者として認められていない。大体はパートという形において雇われておるわけなんであります。従って、正規の賃金をもらうことはない。それからまた、かりにそういう賃金を契約いたしまして入りましても、その事業主が都合が悪いときには、家事の都合により退職という形において、失業保険のかけられているようなところでも失業保険の適用を受けさせない、こういう例が非常に多いのでございます。こういう面については、どういうふうな監督指導をしておられるのかということが一点。  今申し上げましたように、パートの人たちに対しては何らの保護政策はない。といって、その婦人は、家庭の家計を補うために働くという形の人たちですから、ほとんどの人が、一〇〇%に近い人が低額所得層の人なんです。従って、家庭には子供がある。こういうような状態の中で苦しみながらやっている。しかし、最低賃金法の適用も受けられないというような状態のところに働いておりますから、非常に労働条件は劣悪であるし、待遇は悪い、こういう状態に置かれているわけです。  いま一つは、未亡人に多いと思うのですが、大会社あるいは銀行等、最近は掃除婦というような、小使さんというのを正常な状態においては雇っておらないで、いろいろの団体ができておりまして、そこから派遣されて、朝何時から何時まで、夕方は何時から何時までというような、請負制度のような形によって働きに出ている。これは一〇〇%未亡人がやっておる。それは賃金ももちろん安い。親方に対する気がねもある。こういうような状態でいながらも、そういうところでなければそういう働き場所も得られない、こういう状態にあるのは御承知通りです。従って、こういうところに働く婦人たちに特別な保護というものを考えていかなければならない。だが現在の段階では、少しもこれらの人々に手が差し伸べられておらないというのが、現在の姿であろうと思うわけです。こういう点についてどういうふうに今までなさってきたか、またこれからなさろうとするのか。とにかくもぐりの職業あっせんというような形のものでいろいろのものができているということ、こういう点、時間があれば詳しく述べていきたいのですけれども委員長もどこかへお出かけになるそうでございますので、また次の機会にそういう点を申し上げますが、ざっと要約してみて、そういうものがあるということでございます。こういう婦人労働者に対してどういうふうになさっておられるか、またこれからなさるお気持であるか、簡単でけっこうですから、御答弁を願いたい。
  127. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 中高年令層の婦人につきましては、従来私どもは、就職が大へん困難でございましたので、むしろ就職を援助するというような面に努力をいたして参ったのでございます。たとえば、三十過ぎになりますと、なかなか適職を得られない問題がございます。ことに中高年令層でございますと、子供を持っておる、あるいはまた、家庭を持っているということから、よけい雇用市場で歓迎されない問題があったわけでございます。そこで、婦人少年局におきましては、特にこの就職の機会を援助する、就職を円滑にするというような目的を持ちまして、婦人少年問題審議会に、未亡人の職業対策という名目で、中高年令層の職業対策について努力をしていただいて参りました。その結果、中高年令層の就職のしやすい職業補導施設として、一つは家事サービスの補導所を設ける運びになりまして、東京と大阪の二ヵ所にできているわけでございます。   〔委員長退席、永山委員長代理着席〕  それから中高年令層の婦人、特に未亡人が、どのような職場に働いているかということの実態調査をいたします。その結果、大体現在の労働者の一〇%は働いているということがわかったのでございまして、その調査の結果、未亡人あるいは中高年令層の職業としてこういうものが考えられるというテキストを作成いたしまして、職業安定所に、就職の紹介のための、職業指導のための紹介になる資料として全国的に配ったのでございます。  なお、中高年令属の就職の援助の対策といたしまして、職業を探してもなかなか見つかりませんので、特に職業のお世話をする相談機関といたしまして、婦人少年室協助員に相談業務の指導をいたしまして、この方々の活躍によって、適職を得られるような援助を進める態勢をとって参ったのでございます。  以上は、中高年令層婦人の就職対策の援助なのでございますが、ただいま先生のお話の問題は、それとはちょっと違いまして、むしろ労働条件に関する問題のように思うのでございます。私どもも、現在まだ努力はいたしておらないのでございますが、将来のプログラムの一つといたしまして最近考えておりますところは、特に中高年令層の多いパート・タイマーの仕事について、一体どんなところに、どのような仕事で、どのような条件で働いているか、どういう家庭の構成であるか、そこにはどういう問題があるかというような調査を実施いたしまして、それと関連させて、その他のただいま先生のおっしゃられた正規の労働者としてではない、つまり臨時の、あるいはパート・タイム的な婦人労働者の労働問題を、さらに続けて検討させていただきたいという考えを持っているわけでございます。まだ調査を実施する段階には至っておりませんが、企画の中に考えているわけでございます。  以上をもちまして将来にわたって努力をさせていただきたいと思います。
  128. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまの問題は非常に大切な問題だと思うのです。三十七年度予算の中にもない様子でございます。これは至急に調査していただきまして——非常の数の多い場面で働いておる、ほんとうに日陰で働いておるというような状態に置かれておる、その数が最近はふえて参っております。こういうことが言えるわけですから、そういう点は、三十七年度でもし予算がどうしてもないということであれば、追加予算でも要求されまして、至急この調査並びに保護、管理、こういう立場をとっていただきたいと思います。  それから、先ほど井堀委員が申された中で当然おっしゃるだろうと思っておりましたが、いろいろ多岐にわたられたようで落とされておりますので、私から補足して質問するわけですが、たとえば保母さんの例をとってみましても、文部省と厚生省の保母さんは、非常に待遇が違うことはすでに御承知のはずです。私立幼稚園等で働く人たちは、公共施設あるいは保育所で働く人たちよりは賃金が安い、こういうことははっきりしておるわけなんです。従って、ずっと前の委員会で私が労働条件の悪い点、また特に婦人等の問題については、厚生省の所管であろうとも、文部省の所管であろうとも、労働省の方から厚生省なりあるいは文部省等に進言してほしい、そして労働条件の是正をしてほしいということを申し上げたことがあるわけです。そういう点からいたしまして、やはりこういう状態で働く人たちが、文部省と厚生省の所管において賃金も違ってきておる。それからまた、そういう人が一番困っておることは、先ほど言われておるように、既婚婦人が勤めることが多くなってきておる。従って、妊娠中におきます代替要員といいますか、そういう方々の人員がととのっていない。そのために、いろいろな施設で働いておられる人々は、どうしても妊娠と同時に職場をやめていかざるを得ない。しかし、今日では、そのやめるということより働かなければならないということの方が多いわけなんです。ということは、やはり先ほど言われる通りに、子供を預けてパートでも働いていった方が、家庭の経済をになっていくのにいい。物価騰貴に接して、夫だけの収入ではそれほど家族をまかない切れませんから、そういう傾向が強くなっております。ですから、そういう無理が出てくる。その無理の中で、今度その人たちを預かって働く人たちのところへ無理がきておるというような悪循環的な労働条件になっておるように見受けられる。場所によっては、時間でも三時以降は預かりませんといって断わられます。これでは預ける方も困るのです。預かる方も、代替要員がいないということで自分のからだを酷使して、寿命の縮まる思いをしてやっておるというのが現実なんです。そういう点などについても、これはどの役所がやるべきか、あるいはどの局が担当すべきかといえば、やはりお宅しかないというような感じ方がするわけです。特に婦人労働者のことですから、そういう点も御調査いただいて、そしてそういう施設に働く人の労働条件のアンバランスの是正、賃金の適正化、あるいはまた、今言うように代替要員というような人々、産前産後も十分にやっていただけるように、その代替の人をここへちゃんと置くような制度、こういうものを、厚生省に属しようが、文部省に属しようが、どういうところにあろうとも、その婦人たちを守って、進言していただくのがお宅の局だ、こう私は考えて、井堀先生もそういう考えを持っておられたわけでしょうが、おっしゃらなかったようでございますので、こういうことをお宅の方から各省にあてて言っていただきたい。同時に、民間に対しても御検討いただいて、それが非常に劣悪であるというような状態においては勧告をしてもらいたい。そうしなければ、婦人労働というものの地位も高まらないし、今多少好況の波を受けておりますので、婦人労働者というものが喜ばれ、また中高年令層まで引っぱり出されるというような状態でありますが、不況の波がもうすでに襲ってきておる。こうした場合には、やはり何の保護もなく打ち切られていかなければならぬし、また、そういう悪い条件の中で働いておっても改善される時期がないということになるわけです。今こそ改善する時期だ、こう思うわけですから、そういう点についても、御調査と同時にそういうことに対する注意、勧告と申しましょうか、役所同士のことは私は言葉はわかりませんが、そういう点に思い切って働き方をしていただきたい、こういうことを要望するわけです。
  129. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 ただいま本島先生の保母さんの問題についての御意見でございますが、婦人少年局といたしましては、この保母という職業は、専門的な技術的な職業であります割に、社会事業的な性格の職業でありますためでございましょうか、労働条件につきましては割に認められない、恵まれていない職業であるということを思っているわけでございます。そのために婦人少年局といたしましては、ちょうど今から二年前に、保母さんの労働条件につきましてもう少し改善をする対策があるのではないか、労働の実態はどうであるかというような点について研究会議を催したのでございます。これは保母さん自体の御意見、それから社会事業施設の使用者、また行政官庁として厚生省の方も、あるいは社会事業の団体の方も参加していただきまして、幾つかの問題点をはっきりいたしまして、この結果を全国に報告といたしまして配ったのでございます。ところが、保母さんの問題につきましては、やはり労働条件を上げます場合に、具体的には厚生省との関連が非常に大きいものでございまして、正式の勧告というような形はとっておりませんけれども、このような研究会議を通しまして、私どもの意のあるところは十分厚生省の方にお伝えをしてあるわけでございます。従いまして、保母さんの条件の改善につきましては、私どもは側面から気にして努力いたしてきたということについて御了承いただきたいと思うのでございます。
  130. 本島百合子

    ○本島委員 今私、保母さんの例だけをとったのですが、福祉施設に必要な職業は、保母さんだけではないわけでありまして、児童指導員あるいは職業指導員から教母、寮母、栄養士、看護婦、こういうような多くの方々がありますね。こういう方々の状態が、やはり今申し上げたと同じような状態にあるわけなんです。ですから、こういう特に福祉施設等に働くような婦人たちの労働条件の格差と劣悪な労働条件、そういう点、それから在来の病院というようなもの、これはもう予算のときに私ども大蔵省とも折衝にはしょっちゅう参っておりますが、なかなか得られないのです。こういう点は、やはり婦人労働者としての立場から、お宅の所管から、やはりそういう点に対する要望、勧告、こういう点をあわせてしていただくことによって改善されていくのではないか、このように思うわけでありますので、あわせて申し上げて、御答弁は要りません。どうか一つ、婦人、児童の福祉のために、お宅が中軸となって、ほんとうにいい業績が上がっていくような局として発展されていくことと同時に、そのことが私ども婦人、子供にとっては大きなしあわせをもたらすもとだということで、一つがんばっていただくということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  131. 島本虎三

    ○島本委員 関連して一つだけ伺っておきます。  今一婦人問題の中で、いろいろ論議されて私もほんとうに拝聴していました。また、卒業期になりまして、温泉地やその他に大量に、若い中学校や高等学校を出た一部の人が集団で女中さんに就職していったり、またはいろいろな関係で家庭の方に女中さんとして入っていくような人も相当数ある。ことに東北、北海道のようなところからは集団で参りまして、まあ、ある場合には賞賛され、また、トラブルのもとになったりする場合さえあるわけです。賞賛とトラブルのもととは反対なんです。中で働く人の状態を見ましても、女中さんの場合には、放任されたままの状態で、何ら指導がないのじゃないかと思うのです。労働条件、それから待遇、こういうような方面の改善だとか、退職金だとか、給与だとか、こういうようなもののはっきりした見通しや制度化を何か考えておるのか。ことに女中さんの現在のような使われ方、接待さんといいますか、女中さんのことなんですな、こういう人たちの現在使われておる時間だとか、こういうことが基準法にのっとって間違いなく行なわれておるのかどうかという点は、やはりこれは重大な問題だと思います。その数だとか、また制度化、または待遇、こういうような問題について、はっきりしたことを考えて実施しておられますかどうか、また、おられないとすれば、これからどうするつもりであるのか、この機会にちょっと伺っておきたいと思います。
  132. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 女中さんと申しましても、個人家庭の女中さんとそれから旅館、料理店などにおられる女中さんと、いろいろあると思うのでございますが、前の個人家庭の女中さんにつきましては、昨年度、一昨年度二ヵ年にわたりまして実態調査を実施いたしました。労働条件から女中さんの意見を伺うところまで広めて調査をいたしたのでございます。その結果によりまして、いろいろ問題点もわかったのでございますが、なお個人家庭の女中さんの問題につきましては、使い方の近代化その他の問題もございますので、今後その結果を啓蒙の方に載せて、状態の改善のために努力をしたいと思っているわけでございます。
  133. 島本虎三

    ○島本委員 退職金なんかはどうです。
  134. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 個人家庭の女中さんの賃金、それから退職の場合の給与その他も含めて実態調査を実施いたしました。ここにございますのが、その報告書でございます。あとでこれを差し上げさしていただきたいと思います。  それから旅館、料理店の女中さんにつきましては、ちょっと今正確な年度は忘れましたけれども、昭和三十二年度に実施いたしております。これはやはり同じように労働者の実態調査でございますから、労働条件を主体にして調査をしてございますし、また、労働者としての特性がどういうものであろうかということも、この調査の中に盛られているわけであります。その結果、旅館、料理店の女中さんに対しての問題点がわかりましたので、労働基準法の施行上の問題点として、私どもは内部で、基準局に対して、勧告という形じゃないのですが、話し合いにおいて考慮してもらうように進めているわけでございます。  なお、先生の新しく集団で入られた女中さんの問題その他につきましては、新しい問題でございますので、今後私どもとして、このような場所における婦人労働者の問題について、もう少し気をつけて、保護の方針などについても考えさしていただきたいと思います。
  135. 島本虎三

    ○島本委員 それはまことに研究は大いにしていただきたいと思います。ことにその調書、私よく拝見さしていただきたいと思います。社会悪の根源だとかいろいろ弱い押し込められた層等を見ましても、やはり個人家庭の場合よりも旅館や何かで働いている女中さんなんか、老後どうすることもできなくなって使いっぱなしにされて、退職金もなし、賃金さえも自分の生活を維持するに足らないような状態で次から次とかわられても、これはどうにもしようがない、首切られてもやむを得ないことと、泣き寝入りされているところも相当あるかのように承っている。しかし、手を入れてみても黙して語らず、どうにもならない。弱き者よという名前ではまことに現在の風に合いませんけれども、やはり現在も沈黙を美徳として、あまり発表されてないような傾向があるんです。こういうような方面に働く婦人の立場を擁護する意味におきましても、賃金の点など、よく見て指導してやるべきだと思うのです。うんと長く働いているところは、国の方の勧告や国の方の世話によってでも、退職金などの制度化を考えてやってもいいんじゃないかと思うのです。こういうふうな方面では、社会党も大いに応援しますから、大いに皆さんやって下さい。今まで退職金の問題だとか賃金の問題だとか、こういうふうな問題で改善策を進言したり、これを制度化して何かやったりして努力されておりますか。
  136. 谷野せつ

    ○谷野政府委員 基準局と協力いたしまして、地域を選びまして、特に労働時間の問題と、それから賃金を明確にするということ——退職金までははっきりいたしておりませんが、とにかくそういう二つの問題を掲げまして改善をするように努力をいたしまして、はっきりさせた幾つかの実績が上がっているのでございます。そのようにいたしまして、だんだん推し広めていくように努力をいたしたいと思っております。
  137. 島本虎三

    ○島本委員 それでは、あとでその調書をいただいてから、もう一回お尋ねいたします。
  138. 永山忠則

    ○永山委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十分散会