○井堀
委員 私は深追いをしようとは思いません。ぜひ
一つ以上二つの要点について十分翫味されまして、あやまちを犯さないように
政府当局にも強く要望をいたしておきます。
次に、大臣も忙しいようでありますから、もう二問ばかりちょっとお答えをいただいて、
あとはそれぞれの
専門家にお尋ねしてみたいと思います。
実は、わが党といたしましては、この
国会における
政府の労働政策に関しては、各方面からの具体的な
要請も持っておるし、それから公約もぜひ実行してもらいたいという、国民にかわっての
政府に対する注文もあります。数多いのでありますが、その中で、予算と
関係いたしました事項については、まだ
予算委員会において多少
発言の
機会をわれわれも持っておりますので、重複を避けて、当面しておりまする問題を二、三点拾って、
一つ御
答弁をいただきたいと思うのであります。
それは
政府の経済政策が、失敗とか破綻とかいう
言葉を避けてもいいと思うのでありますが、具体的に経済政策というものが、いろいろ労働問題に直接大きな影響を投げかけておる点があるのであります。これは
議論をしようとは思いません。事実を取り上げます。それは、たとえば国際収支の調整を行なう、すなわち金融引き締めの形をとって出てきますと、すぐ現われてきておるのは、零細企業、中小企業における労働問題で、これはきわめて深刻な様相を呈している。これは
政府だけの
責任ではないかもしれない。しかしこの問題を実はお気づきになっていないものがたくさんあるように
理解しております。
一つは、今基準局長のところに私の方から
調査を依頼しておりますが、そういう点は、きょう時間がかかりますから後日にしてもよろしいし、局長にお尋ねしてもいいと思いますが、これは一例でありますけれ
ども、今労働省の所管の中で、中小企業と十ぱ一からげに旨っておりますが、実は零細企業、すなわち労働組合の組織も困難である、あるいは労働組合をよし組織することができましても、それは正常に運営する能力を欠いておる実情であることは、言うまでもありません。七百五十万と号し、あるいは八百万に近いといわれている現在の組織
労働者の中で、まだ厳密にいうと一千二百万あるいはもっとあるかもしれないが、その
労働者が組織することが今日に至ってもまだ不可能
——不可能という
言葉が無理でありますれば、組織されていない。これは
日本の労働行政に
責任がある。今までの
日本の民主社会における
労働者の
権利というものは、それは組織されて初めて維持できるというのが絶対の
原則である。ですから、組織されない
労働者がいるとすれば、
日本の労働行政はそこに大きな盲点があると言わなければならぬのであります。ですから千二百万からの未組織
労働者に対して、これを放置しておくということは、労働省にとっては手痛い
一つの大きな不信任の姿だと思いますから、この点の解決をどうなされるかということは、この
国会に具体的に
提案されてくる筋のものであると思います。
そしてそのことは、ただ単に
労働者の人としての
権利が守られていないというだけではありません。不当に
権利が侵されている事実を、私は何回か目撃しているのであります。たとえば
賃金未払い事件が起きました。これは
福永さんも私も同じ選挙区で、自分の地元でありますが、私は
一つの不信任を突きつけられたような感じがいたしました。わずか十九人くらいの従業員しかいないのですが、大宮の駅のすぐ近くで、旋盤を作っているくらいですから、近代的な工業ですが、ただ人数が少ない、規模が小さい。それが金融引き締めのために
賃金未払いになった。それがまた悪いときには悪いことが重なりまして、そこの従業員の一人が自動車の運転免許を持っているから、会社の車をたのまれて運転している。たまたま交通事故にぶつかった。ところが四日前に運転免許の切りかえの時期がきていたのに、うかつでいたというので、
法律通りにいえば無免許運転で罰金がきた。そして交通事故の方は、事故保険に入っていないから、結局向こうに対して七万六千円からの損害示談をした。その損害示談も会社の方で出せない。しかし示談ですから、この方は何回払いかにしてもらったが、罰金の方は容赦ありません。先月の三十日付をもって罰金の期限がきて、納めなければ引っぱられる。法治国ですから、一方はきびしく刑事訴訟法の手続、刑法のきめるところに従って身柄が拘束されてしまう。これの救済の道がありません。
それは冒頭に申し上げた民主社会ですから、
労働者が組織されてこそ初めてそういう
権利が防衛できるという建前です。労働組合が組織されていないということは、こんなに人権がそこなわれる。しかも
日本の強権によって、
法律の力によって拘束される。これはたった
一つの例であります。ですから、
政府の経済政策の転換というものが、このようにきびしく敏感に
労働者に響いてきているということを、よほど労働省はお
考えいただかなければならぬ。抽象的にわれわれは労働基準法の完全実施などというようなスローガンでは、満足できないのであります。私は労働省の監督不行き届きを糾弾されてもいかんともしがたいと思います。しかし私も多少事実を知っております。今日の監督官の制度や人の数をもってしては、訴えてこなければわからない。こういう矛盾は労働省にとってはどうにもしょうがないというのは、監督署の窓口だけだ。しかし労働省としてはあるはずであります。そのためにこそ
労働者の組織を促し、その
権利を守るために行
政府があるわけでありますから、基準監督署、あるいはこれは労政局になるのかどうか知りませんけれ
ども、あなたの所管の
もとにおいて調整を行なわれなければならぬ事柄であると思うのであります。行政がばらばらである。こういう点については非常に重要なことでありますから、きょうすぐ御
答弁をいただかなくてけっこうでありますが、私の方からも直接あなた方の方の監督課長のところに御連絡をいたし、お調べになって、まだ返事が来ませんけれ
ども、文書でいただくようにいたしておきました。これはほんの一例です。これが千二百万の
労働者の
一つの姿、氷山の一角であります。こういう点について
一つ御注意をいただかなければならぬと思うのでありまして、こういうように事態は労働省に大きなウエートがかかって現われてきたと思うのであります。
もう
一つは不完全就業の姿、
政府は非常にりっぱなことを施政方針の中で述べられておりますから、私はそうあってほしいと願う
立場から、幾つかの
労働関係の問題をあげてみたいと思うのでありますが、また
予算委員会でお目にかかる
機会があるかと思いますので、他の
関係等においてただしていきたいと思いますが、きょうのところは選挙区を同じゅうしているよしみもありますから、そう責めばかりはいたしませんけれ
ども、ぜひ
一つ勇気を鼓舞して、熱心に労働行政をやっていただかなければならぬと思われる問題だけを提供しておきます。
答弁は
あとでもけっこうです。今言ったのは労働行政の窓口を調整をして、うまくやっていただきたいということであります。どうもいけませんのは、お役所仕事というものは、基準監督局へ持っていくと、そこだけで終わってしまう。横の連絡をもう少しとってほしい。今の問題は未組織
労働者、これを組織化させるにはどうしたらよろしいか。それは総同盟や全労や総評がやるのだろうということでは許されないということを銘記していただきたい。
次に、これもすぐあなたがお
考えいただけることでありますが、婦人労働の問題が非常に重大な
段階に来ているということです。
婦人少年局長も来ておられるので、
あとで局長さんに
一つ大いに雄弁をふるって御
答弁を願うつもりでありますが、これは私
どもは
政府の所得倍増と称するスローガンの
もとにおける拡大計画の、
一つの大きなしわ寄せが来ておると思う。これは
一つあなたがんばらないと、弱い者の犠牲において
政府の政策が助けられるということを
——しかも破綻はここら辺から出てくると思われます。だからこういう補強工作をいたしますためには、とりあえず労働基準法の問題も出てきます。今の
法律でたくさん手入れをしなければならぬものがある。行政的な
責任、それから社会保険、すなわち労働保険の六人未満の例外規定というようなものをこの際に改めなければならぬということも、こういうところから出てきましょうし、それから労災保険の扱いな
ども問題があります。そういう社会保険
関係、それからことに注文をいたしておきたいと思いますが、労働省が、今度新しい要求の中に現われております
賃金問題を熱心に取り上げることはけっこうでありますが、どうも見当違いをなさっておるようであります。これは時間がなければ
論議できませんから、あなたに
一つお
考えいただいて、御
答弁はあなたでなくてけっこうであります。というのは、
賃金問題を扱うのに労働省の中に
委員会をお設けになるような内容が盛り込まれております。それはどうなるかわかりませんが、なるほど
賃金の問題については、役所だけではとうていこなせないということは百も
承知しておりますが、その場所と方法は非常に大切であります。役所の中に持つとするならば総理府ではないか。というのは、
賃金の問題は最初から雇い主と
労働者との利害が真正面から衝突しております。これは厚生省にも似たような例があります。常識でわかることなんです。医療費を決定するための医療協の問題、
賃金の問題をもし労働省の中に
賃金委員会を設定して
——その
賃金委員会は
労働大臣の諮問機関でしょうけれ
ども、そういうものを労働省がおやりになることは、焼け火ばしを握ることになる……