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1962-04-20 第40回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十日(金曜日)    午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 加藤常太郎君    理事 高橋 英吉君 理事 竹山祐太郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 福永 一臣君    理事 島上善五郎君 理事 畑   和君    理事 堀  昌雄君       木村 公平君    首藤 新八君       田中 榮一君    中垣 國男君       永山 忠則君    林   博君       藤原 節夫君    松本 一郎君       太田 一夫君    山中日露史君       山花 秀雄君    井堀 繁男君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  祐君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君  委員外出席者         自治事務官         (選挙局選挙課         長)      中村 啓一君         自治事務官         (選挙局管理課         長)      桜沢東兵衛君     ————————————— 四月二十日  委員青木正君、荒舩清十郎君、仮谷忠男君及び  薩摩雄次辞任につき、その補欠として松本一  郎君、藤原節夫君、木村公平君及び永山忠則君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員木村公平君、永山忠則君及び藤原節夫君辞  任につき、その補欠として仮谷忠男君、薩摩雄  次君及び荒舩清十郎君が議長指名委員に選  任された。 同日  理事青木正君同日委員辞任につき、その補欠と  して福永一臣君が理事に当選した。 同日  理事坂本泰良君同日理事辞任につき、その補欠  として堀昌雄君が理事に当選した。     ————————————— 四月十八日  連座制強化に関する請願井堀繁男紹介)(  第四一二九号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第四一三〇号)  選挙違反者罰則強化に関する請願伊藤卯四  郎君紹介)(第四一三一号)  同(井堀繁男紹介)(第四一三二号)  選挙区別人口議員定数の不均衡是正に関する  請願井堀繁男紹介)(第四一三三号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第四一三四号)  同(本島百合子紹介)(第四一三五号)  会社、労働組合等からの政治献金禁止に関する  請願外七件(本島百合子紹介)(第四一三六  号)  同(井堀繁男紹介)(第四一三七号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第四一三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  公職選挙法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇八号)  国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇九  号)      ————◇—————
  2. 加藤常太郎

    加藤委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。本日、理事でありました青木正君が委員辞任されましたので、理事一名欠員となりました。つきましては、理事補欠選任を行なわなければなりませんが、先例により、その補欠委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤常太郎

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、理事福永一臣君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 加藤常太郎

    加藤委員長 公職選挙法等の一部を改正する法律案及び国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案一括議題といたします。  本日は、池田内閣総理大臣に対する質疑を行ないますが、総理大臣に対する質疑は、前回の理事会の協議により、二時間程度とし、これを自民党五十分、社会党五十分、民社党二十分程度にいたすこととなっておりますので、あらかじめ御了承願います。  それでは、これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。福永一臣君。
  5. 福永一臣

    福永(一)委員 今度の選挙法改正にあたりましては、世間では、政府改正案選挙制度審議会答申にだいぶん違ったことがあって、いわゆる尊重していないというような批判もあるようでございます。しかし、われわれはそうは思わないのでございまして、政府相当審議会答申を尊重しておるのでございます。ただし、審議会答申をよく見ますと、必ずしも実情にぴったり合った点ばかりではないのでございまして、のみならず、法理論上から申しましても不合理な点が発見されますので、これを当然手直しして政府案が出されたということも認めるわけであります。その点で世間で非常に誤解を抱いて、ゆがめられたとか、あるいは尊重しなかったという批評があるのだと思います。  それではどういう点が不合理か、あるいは実情に即しないかということを申し上げますならば、具体的に言うなら、高級公務員立候補制限とか、あるいはまた、連座規定において親子、親族を連座せしめ、問答無用で、憲法で与えられている裁判上……(「問答無用じゃないよ」と呼ぶ者あり)答申はそうだよ。裁判手続なくして直ちに失格というようなことが、答申案でございました。そこでわれわれが憲法上、法の平等という意味において、何人裁判所において裁判を受ける権利を奪われるものではないという、この憲法によりましても、当然これは裁判を受けるように修正されておるわけでございます。なるほど審議会メンバー顔ぶれを見ますと、日本における学識と良識との最高峰であって、この顔ぶれにも私は不足はないと思います。しかも六カ月にわたって終始熱心に討議されて答申をされたということに対しては、その御苦労と御熱意に対しましては、私は感謝すべきであると思うし、また同じく公明選挙、金のかからぬ選挙ということを目標にしている審議会、それはわれわれ当然——今日行なわれている選挙が金がかかって公明を欠く、これは遺憾ながら認めざるを得ないので、この点では私は共通の考えを持っておるのでございますから、審議会に何もけちをつけるわけではございませんけれども、ただ審議会の過程において、審議会メンバーの中にも憲法学者もあり、法律専門家もあったのですが、今申しましたようなすこぶる憲法疑義のあるような、あるいは立法精神から申しましてちょっと不合理な点があるようなところも——これは聞くところによれば、相当異議が出たそうでございます。ところが、最後の総会において、一気呵成に多数決できめられたといういきさつも聞いておる次第でございますから、この点において政府が多少手直し、修正をされて、政府案として提出されるのは、これは当然だと思いますが、われわれ立法府にある者が、これをまたうのみにしてそのまま賛成をするわけにも参りませんので、われわれは当委員会において慎重審議立法府立場においてつぶさに検討しておるところでございます。選挙法というのは、見れば見るほどむずかしいもので、これはなかなかややこしいものでございます。しかし、われわれ候補者たらんとする国会議員にとりましては、全く人ごとではありません。法文の一言半句といえども、これをうっかり見のがすわけには参りませんので、全神経をとがらしておるというのが、これが実情でございます。  さて、今日の選挙法というものは、おおむね刑罰主義でございます。とにかくひっかけて罰しようというようにしかわれわれ受け取ることができないのが、今日の選挙法でございます。これは法務省の資料に基づいたものでございますが、ちょっと御披露を申し上げます。昭和三十年、三十三年、三十五年に衆議院の総選挙がございました。この三回の衆議院選挙において違反に問われて、容疑者として取り調べ中に自殺した者が、驚くなかれ十三人あるのです。これは、終戦後八回ばかり総選挙がありましたが、あとの五回は入っておりません。ただ三回で十三名、おそらく八回を全部合計しましたら、数十名に上るのじゃないかと私は思うのであります。これは、警察の取り調べ中に発生した事件が多いのでございます。これを見ても、選挙違反というものはなまやさしいものではない、非常に深刻なものであるということの証拠であろうと私は思います。強盗、殺人をした凶悪犯人が自殺するなんということはめったにありませんけれども、わずかな供応とかなんとかに問われて……(「わずかでもいけない」と呼ぶ者あり)それは金額、の多寡には私は差別をつけませんけれども、そんなに凶悪な破廉恥罪をしたり、さようなものではないのに自殺をするということは、これは私は注目すべきことであると思うのであります。だから今日、刑罰主義選挙法をどうわれわれは考えるべきか、そして選挙というものは、今日民主主義の社会、国家において、その主権者たる国民がその主権を行使するただ唯一の機会が、この選挙でございます。この重大なる選挙において、国民が明朗にかつ公正に自由な選挙をするためには、取り締まりの面ばかり強化しちゃいかぬと思うのです。これはどうしても国民に対して政治教育といいますか、政治意識の高揚をするためには、一大啓発運動をする必要があると私は思います。そして、一方において取り締まり、一方において政治意識を高めて、選挙に対する国民の高い意識を持ってもらうというようにいたすべきだと思います。私は政治啓蒙運動一大展開を必要とすると思いますが、総理においては、この点どういうふうにお考えでございますか、お答えを願います。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 民主主義国家におきまして、選挙が重要なことは申すまでもございません。この最も重要な選挙制度が公正かつ明朗に行なわれることは、やはり民主主義の発達の根本をなすものでございます。従いまして、違反に対して刑罰主義をもって臨むということは、これは明朗公正な選挙を期待するゆえんのものではございません。あくまで国民がこぞってほんとう公明選挙に徹し、そして、徹した上でなおかつ誤まりがあればこれを取り締まる、こういう二つの方法でいかなければならぬということは、お話しの通りでございます。私は、そういう意味におきまして、選挙制度審議会の案を見まして、政府が最も妥当だと考え制度を打ち立てまして御審議を願っておるわけであります。あくまで刑罰主義のみによってやろうとは考えておりません。公明選挙運動もこれと同時に進めていきたいという考えであります。
  7. 福永一臣

    福永(一)委員 次に、今日の選挙のあり方についてですが、選挙というものは、本来から言うなら、候補者がやるべきものではなくて、有権者たる選挙民が主体となってやるべきものであって、候補者は受け身でなければならぬと思うのです。ところが、遺憾ながら今はその逆でございまして、今の選挙というものは、候補者たる者個人々々の選挙になっておるのでございます。そこで、その個人は金がかかり、あるいはまた、がんじがらめ選挙法で縛られて、いやな思いをしながら選挙をやっておるというのが現状でございます。(「がんじがらめとは何だ」と呼び、その他発言する者あり)そこで、どうしてもこれは従来いわれておりますように、選挙公営でなければいけない。個人選挙から公営。公に国がやる。そうすれば社会党諸君も、わが党の諸君も、同じような金を使って……   〔発言する者あり〕
  8. 加藤常太郎

    加藤委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。
  9. 福永一臣

    福永(一)委員 そして……   〔発言する者あり〕
  10. 加藤常太郎

    加藤委員長 発言の妨げになりますから、御静粛にお願いします。
  11. 福永一臣

    福永(一)委員 そこでどうしても、これはむずかしい選挙法で、選挙をされる方も、する方も、非常な不自由を感ずるわけです。そこで選挙というものはどうしてもこれは、公明にして自由潤達国民的行事でなければならぬと思います。それにはやはりこれは個人にまかしておかないで、国が相当思い切って公営に移行しなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。総理選挙公営についてどういうお考えでありますか、お聞かせ願いたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点全く同感でございまして、私はこの選挙公営という線に沿って進んでいきたいと考えております。今回の改正案もその方向に向かって一歩進んでおるという考えでおるのであります。
  13. 福永一臣

    福永(一)委員 今度の選挙法を見ますと、一番の問題点は、何と申しましても連座制でございます。連座という言葉は聞いただけでもあまり愉快な言葉じゃございません。いかにも何百年か前のキリシタンバテレンの踏み絵を思い出したり、佐倉宗五郎はりつけを思い出したりするくらいに、連想します。そこで、総括主宰者出納責任者が悪質な違反を犯した場合に候補者もそれで失格する、こういう点は現行法においてもそうなっておりますので、別に取り立てて申すわけではありませんが、今度の改正案には親子兄弟までもがねらいとなっておるのであります。これは新時代に必ずしも即しない。今や家族制度は改められて、そして個人々々になっておりますから、選挙に関してだけ親子兄弟連座を作るということは、時代逆行じゃないかと思うのです。そこでわれわれはこれに対しまして非常に検討を加えて参りましたが、せっかく政府としても審議会答申を尊重される意味において提案して参られましたので、これにはあまり反対をしたいとは思いません。しかし、多少まだここに議論の余地があることだけは申し上げておきたいと思います。  それから、ただいま私は個人選挙から公営に移行していくべきが本筋であると申し上げましたが、政党政治活動ということを強化しなければ、私はどうしても公営と両々相待つことができないと思います。それには政治資金規正法、こういうものの非常な制約がありまして、非常に政党政治活動をはばむようなことになっておりますが、これも思い切って一つ自由にしていただきたい。たとえば献金に対する免税とか、あるいは政党に対して国家補助くらい与えてやって、十分なる政党活動ができるようにされたらどうか。この点について総理はどうお考えでございますか、お伺いいたします。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙に対しての公営を拡大をしていく、同時にまた、政党選挙活動また選挙演説等につきましても、これを広げていく必要がある。今回の改正にもそれを盛っておるのであります。そしてまた、政党政治活動を十分にできるようにいたしますためには、やはり政治資金という問題につきましても今後考慮していかなければならぬと思います。私は、行く行くは政党法の制定、あるいは政治資金規正法改正等政党活動が十分に行なわれ、ほんとう民主主義政治のもとである政党活動というものの育成強化に、今後も力を入れていきたいと考えておるのであります。その一端は今回にも現われておりますが、ただ選挙資金の問題につきましては非常にいろいろ問題がございますので、今後選挙制度審議会におきましても、こういう問題につきまして十分検討をお願いいたしたいと私は考えておるのであります。また私は、これはわが党のことを言ってどうかと思いますが、こういう意味におきまして、国民協会等一般大衆政党の政策並びに政治資金のつながりを公正にしたいという気持で、自分自身としても、この政党資金につきまして、できるだけ公正に、そして国民の個々の方々の募金という方向に持って行くよう努力いたしておるのでございます。
  15. 福永一臣

    福永(一)委員 それから、もう一つお聞きしたいのです。総理大蔵大臣をされたことがありますが、大蔵大臣をされておるときに、あれは前田多門さんの公明選挙推進連盟ですか、ああいうところに金を出されたのもあなただと思います。あれは大蔵大臣として私は非常に英断だったと思います。その後しばしば選挙に対しては、池田さんは大蔵大臣を何べんもされたのですが、その都度気前よく出されたことは、私は、従来の総理のうちでも、選挙ということに対して、公明化、あるいは金のかからぬ選挙公営化という、ずっと質問してきました条項に対しては、比較的御熱心だろう——持ち上げるわけではありませんが、大いに御熱心だったと思います。そこで、いろいろな外郭団体強化——強化ということは金を出すことですよ。それから都道府県の選管の強化といったことも、要するに金でございますから、一つ思い切って金を出してもらって、そして公明選挙の一翼をになうというような強い機関にしていただきたいことをお願いする次第であります。要するに、選挙は取り締まるばかりが能じゃない。法律を作る一方において、よい選挙が行なわれる環境を作ることが大切だと私は思います。その環境を作る施策は、政府責任だと思います。どうか一つこの点について十分なる責任を感じていただきたいことを付言いたしまして、私の質問を終わります。
  16. 加藤常太郎

    加藤委員長 次に、畑和君。
  17. 畑和

    畑委員 少し声帯炎をわずらっているものですから、声が少し池田さんに似たような声になりましてお聞きずらいと思います。われわれ委員会でも議論をいたして参りまして、一度総理に御出席願って終局的な話をいたしまして御意見を承りたい、かように考えておりました。ただ、またあと自民党の方で何か修正案等も用意されているような話でございますので、その模様いかんによりましては、われわれはまださらに質問を続行しなければならぬというふうに考えておりますが、たまたまきょうおいでになりましたので、重要な点についてお伺いいたしておきたいと思うのであります。  まず、最初に私がお尋ねいたしたいのは、公職選挙法という法律そのものに対する位置づけというか、その性格というか、意義というか、そういうことに対する総理の御見解、基本的な認識、そういったものについてお伺いいたしたいのでありますが、その前に私の見解を一応申し上げます。  新憲法のもとに、日本の国が民主主義でやっていくことになりました。国会国家の最高の機関であるということになりました。われわれはそれによって選ばれてきたわけでありますが、また同時に地方におきましても、すべて首長及び議員は公選でございます。従って根本的には、正しく民意を反映するということが重要だと思うのであります。ところが、とかくそれが阻害されておるのが現状ではないか、かように思うのであります。従って、選挙法そのものについてはあくまで白紙であって、党利党略的なことは考慮すべきではない、かように考えておるわけであります。おそらくその点については、総理としてもそういうふうに御答弁になるとは思いますが、要は私は心がまえだと思うのです。一応その点について総理の御見解を承っておきます。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 民主主義政治のもとにおきましては、先ほどお答えしたように、選挙公明に行なわれることはもう基本的の問題でございます。従いまして、これは全部の方々が自由に、公正に行ない得るようにすることが根本だと考えております。
  19. 畑和

    畑委員 ところで、最近行なわれる選挙が、総選挙を初めといたしまして、地方選挙におきましても、非常に選挙界が腐敗をいたしておる。そしてこれは何とかせねばならぬというような世論が巻き起こって、その結果、池田総理におきましても、そのために法律審議会を設置をして、その三条におきまして、その答申は尊重するということを明文でうたっておるわけであります。この選挙界を粛正するためには、もちろん、先ほども言われておりましたが、国民自身教育啓発ということが必要であることは言うを待たないのでありますが、しかしこればかりでは百年河清を待つにひとしいということで、とりあえず何とか今の現状を打破しなければいかぬということで、審議会でも思い切った答申をしたと私は承知をいたしております。従って刑罰も、ほかの各法と比べてこれ以上刑罰強化することはどうかということで、それもそのことでありますけれども、そのほかに連座ということをさらに強化をした。これによって各自が自粛自戒して、選挙界が間接的に粛正せられるであろうということを期待して、審議会連座制強化に踏み切ったと私は理解をいたしております。また、そのほか高級公務員立候補制限の問題、それから政治資金問題等々ございまするが、そういったことはあくまで公明選挙、金によって災いされない選挙、こういうことを目標としておると思うのです。ところで今度その答申案が発表された、また、それによって政府から改正案が出されたわけでありますが、私この前本会議質問をいたしましたように、重要な点で政府案答申とそれておる、いわゆるざる法だと、われわれから言わしめれば言いたいのでありますが、そういうふうなことになっておると思うのであります。  そこで、まず連座制強化の問題でありまするが、政府ではこれを答申案と変わったように修正いたしておりますが、その理由とするところは、憲法違反しはしないか、いわゆる憲法三十一条、三十二条に違反しはしないかというようなことが理由のようであります。何人といえども法律上の手続によらずして刑罰に処せられない、また、何人裁判を受ける権利を奪われない、こういう規定に触れはせぬかということが理由のようであります。しかし、このことにつきましては学者の中にも両論ございまして、連座制の問題は、三十一条のいわゆる刑罰ではない、こういうようなことでこれを肯定する議論もまたあるのです。そこでそれは憲法違反ということを心配すればきりがないので、そのことを理由にするということになると、とても当然失格なんてできっこないということになります。もう何度も申し上げませんけれども、結局選挙違反を犯しても、連座するなんというときにはもうとっくに任期が切れておるというような事態になりまして、ざる法だと言わざるを得ないわけであります。そこで政府の方では憲法九条につきましても、われわれは大いに見解を異にしておるのですが、戦力放棄戦争放棄ということを明文にうたってあるにもかかわらず、自衛権がある、そのために、第九条はそういう意味ではないのだというて、われわれの見解からすれば憲法違反をあえて犯して、自衛隊が今りっぱな軍隊になっておる。そういうことを一方にしておきながら、この連座制の場合になると——何とかして選挙違反をなくしたいという大目的に沿うためには、若干の異論がありましても、踏み切って連座制強化をやらなければ、とてもこの事態は救えない、かような認識をいたしておるのであります。ところが先ほどの福永さんの意見のようなことで、ともかく人情に反するとか、その他家族制度の趨勢にもとるとかいうようなこと、あるいは憲法違反するとかいう理由のもとに、それを回避しているようにわれわれは考える。これはやはりあくまで、第三者土俵を作ってくれたのだから、少しは無理であっても第三者に従うべきだ。われわれはある意味では被告だと思うのです。結局選挙をする人のために選挙法はなければならぬ。従ってわれわれは、少し不利であっても、それらの第三者の作ってくれた土俵に従わなければならぬ。そういう立場から考えますると、憲法違反という名目でこれを回避しているというふうにしかわれわれには思われない。従ってその意味で非常に党派性がある、党利党略であるとわれわれは言わざるを得ないのであります。この点はいかがでございますか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙制度というものは非常に重要でございますので、選挙制度審議会法を設けまして、そうしてりっぱな方々に御熱心に御審議を願って答申を得ました。われわれはこの答申をあくまで尊重する態度でいっておるのであります。お話連座規定につきまして、われわれは第三者が作られました土俵におおむねのっかっていっている、おおむねのっかっていっているが、しかし今の実態から考えまして、あまりにそれがきつ過ぎるとか、また憲法疑義があるような点につきましては、できるだけ疑義を除くようにしていくことが政府の方針であるのであります。大体におきまして、連座制の問題につきましても、総括責任者とか、出納責任者だけに限らず、それに類するようなものにつきましても答申通りにいたしておるのであります。ただ親子兄弟姉妹、夫婦、この問題につきましては、わが国の家族制度は今はなくなっておりますけれども、人情といたしまして、多年の日本国民のあれといたしまして、選挙の公正が大事だからといって、一度に無理なところまでいくということはいかがなものか、こういういろいろな点を考えまして、この程度ならば答申の趣旨をそう乱すものでもないし、私は今の場合におきましては、これが適当なところではないかと結論を出した次第でございます。
  21. 畑和

    畑委員 私は今の総理の答弁では納得いたさないのです。結局やる気があるのかないのかということに、私は帰着すると思うのです。ただ議論をいたしておりますと時間がなくなりますので、先に進みます。  同じような意味で、政治資金の規正の問題がございます。これは選挙法の方につきましては、選挙に関してと書いてある。これは当然でしょう。ところが答申案の方では政治資金規正法の方に、選挙に関してと何とを問わず、最初はむしろ個人に限るという議論があったようでありますけれども、それも無理だろうということで、国と請負契約しておるものばかりでなく、その上に補助金、助成金等をもらっておる団体は、政治資金に関しては寄付してはならぬというふうに答申はいたしておる。その理由は、私が今さら言うまでもないと思います。そういうことで、やはり思い切ってやらなければならぬというふうに、答申案は荒手術として考えたのだと私は思うのであります。ところが政府案は、公職選挙法にも書いてありますが、政治資金規正法の方にも選挙に関してということになって、政治資金ならば従来通りでよろしいというようなことになっておる。そういうことになりますると、区別がつかないということになります。この間公聴会で公述人にいろいろ聞きました。自民党推薦の人たちまでがこの区別はなかなかつきにくい、こういうようなことを口をそろえて一応言っておりました。その人たちは、理想としてはやはりそうあるべきだということを肯定いたしておりました。ただ現実の問題として、急速にそういうようにすることはどうかと思うので、とりあえず選挙に関してということにした政府案に賛成するということで、きわめて理論的には私弱い主張であったというふうに考えるのであります。この点思い切って答申案の通りに、政治資金についても禁止するということにするのでなければ、ほんとうに政治を明朗化するということにならぬと思うのでありますが、この辺の見解いかがですか。簡単に御答弁願います。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙を公正にするということは、非常に大切でございます。しかしそのためにおきましても政党政治活動をうんとやっていくということもまた、これは必要なのでございます。従いまして、そこにむずかしい問題がある。だから私は、今の政治並びに選挙に関しての金銭の取り扱いということにつきましては、もっともっと研究していかなければならぬ問題だと思います。従いまして、先ほど答えましたように、政党法並びに政治資金規正法につきましても検討を加えて、そうしてりっぱなものに盛り立てたいという気持があるのであります。今実際問題といたしまして、補助金とかいろいろな点をやっているところのものは、これは一切もう政治資金を出してはいかぬということにきめるが、今の現状でどうかという点を相当研究しなければならぬと思います。私はまだ選挙制度につきましていろいろ御審議を願わなければなりませんし、また政党法政治資金規正法につきましても検討しなければならぬ、こういう事態になっておりますので、今回はこの程度一つやってみて、そうして今後の検討に待ちたいというのが私の考えであるのであります。
  23. 畑和

    畑委員 政治資金についての総理の御答弁にも、やはり私同意できない。結局は現状では云々というような口実で、そこには党利党略党派性がひそんでおるというふうに私は考えざるを得ないのであります。しかし深追いをいたしてもいたし方ございませんから、その次に進みます。  もう一つの問題は、御承知のように、高級公務員立候補制限の問題でございます。これは本会議でも申しましたが、答申の趣旨もおわかりだと思いますから、もう申しません。いろんな不正が相当ある。それが地位を利用しておるのはおおいがたい。そういうことではならぬから、それをいっそのこと立候補を禁止しようというのであります。ところで、今までこの委員会で自治大臣等の見解を承っておりましたが、その理由とするところは、憲法違反ではない、これはもう支配的な意見でございます、ただ合理的な根拠がありさえすれば、特定の部局を、地位を指定してやれば憲法違反にはならないということであるけれども、それを指定することがなかなか困難である、帯に短したすきに長しというか、いろんなことで、あれでもこれでもということでむずかしいということを理由にしていることは明らかです。しかし、われわれはできないことはないはずだと思う。これはりっぱに憲法違反にならないはずだと思う。そこで社会党は、修正案で役職を指定いたしました。ずさんであるというそしりがあるかもしれませんが、われわれは地方分部局を持つ中央官庁の高級職員を指定しておるわけです。実績主義によると、そうでないのが出てくることもある。今度の源田空将の場合のようなことも出てくる。われわれは予想もしなかったことであります。答申はそういうことでしておるのに、政府の方ではそれを削って、地位利用の方だけに限った。しかも一般公務員、上も下もないということにして、非常にぼやけている。これもわれわれがざる法だと言っている理由なのでありますが、この点も幾ら議論をしてもだめかもしれぬ。   そこでちょっと気がついたのですが、今の源田空将の問題です。源田サーカスの団長ですか、航空幕僚長かと思いましたが、あの人はこの間、この選挙法審議されているまっ最中にやめて、今度参議院に立候補するというようなことを声明されておる。自民党の方でもこれを受け入れて、むしろすすめて、やめて出すようにしたというような新聞記事をお書き方になっておるのであります。実はこの点については、公職選挙法でたまたま問題になっておる高級公務員立候補制限の問題とからんで、また非常に不愉快に思ったわけです。たまたま問題になっておる。政府はそうではなくて、立候補はさせて、あと地位の利用は云々ということになればいいのじゃないかということかもしれませんが、たまたまこれが大きな問題になっておるときに、源田さんのああいうことになったのでありまして、われわれはその点が非常に不可解でたまらぬわけです。  そこで、実はこの間公述人の意見を聞きました。そのときに、はからずも御手洗氏が言うておりました。こちらで聞いたわけじゃありませんけれども、向こうで最初の公述のときに、たまりかねてこういうことを言っておる。ちょっと聞いていただきたい。「近ごろ、ごく近いときに、自衛隊のある有力な幕僚長が職を辞して、そうして与党から参議院全国区に立候補するという意思を発表しておられますが、実にけしからぬことだ、」顔色を変えて言っていました。「もしさようなことが慣例になって自衛隊の幹部が引き続き、今申したような例に従って全国区議員立候補するというようなことになりました場合、元の上長と部下との関係、これによって自衛隊はどういう地位になりましょうか。私どもは、自衛隊が健全に成長して、ほんとう国民のものとならなければいけないと思って、及ばずながら日夜苦心いたしておりますが、そのような不心得者が出て、それを有力な政党が支持するというようなことになりますと、自衛隊はもう崩壊するのではないか、少なくとも精神的に国民からそむかれるのではないか、かようなことを憂えます。これは余談でありますけれども、今日の参議院全国区における官僚のばっこというものはそこまできておる。かような事態に対してきびしい制限を加えるということは、私はぜひとも必要ではないか。これは国を憂える余りさように申すのであります。」こういうふうに申して非常に憤慨しておられました。たまたまこうした選挙法が問題になっているときにこういうことになったのは、私はきわめて遺憾だと思うのです。それだからやはり、高級公務員制限政府ではしたくないんだな、こう勘じらざるを得ない。国民もおそらくそう思うでしょう。それは、一人立候補すればこれはなかなか有名な人だから、自衛隊はもちろんこぞって投票するだろうし、また当選するかもしれない。一人の議席がふえるかもしれないけれども、私は池田内閣の点数はこれによってふえはせぬ、かえって減るだろう、かように思うわけであります。この点自民党の総裁でもあられる池田総理として、どんな程度まで関与されたか、どう考えておられるか、その点を承りたい。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 源田君の立候補につきましては、本人から党公認の申請が出ましたので、われわれ選挙委員会に付議いたしまして、そうして公認をすることにいたしたのでございます。私は、個人の資格におきまして政治に関与したいという申し出があれば、政党としてこれを公認することは何ら差しつかえのないことだと考えております。
  25. 畑和

    畑委員 どうも、その点も納得がいかぬのであります。しかし時間がございませんから、次に進みます。  この選挙法につきまして、最近になりまして自民党の中から、さらに筆を加えようというような動きがあるようであります。われわれは非常に不可解でなりません。最初持って回ってそれで答申がゆがめられたのに、さらにまた、自民党の方で手を加えようという動きがあるようであります。きわめて遺憾である。事前運動の百回というようなことは結局金がかかる、事前運動がかえって激しくなる、こういうようなことで、その点だけに関しますれば、われわれも同感の点があるのです。あるのでありますけれども、しかし、それに便乗してそのほかに総括主宰者の次に位する地域の主宰者という問題をどうしようか、あるいはまた後援会の供応接待等につきまして、答申では選挙に関してと言っていないのに、すでに政府案選挙に関してと、こううたっている。さらに通常の供応接待ならよろしい、こうなっている。これだけになっているのを、さらに選挙に関してというのを意識的に切ろうとするとか、あるいは選挙に際してとかにするような動きがあるように聞いております。そのほかにもまた、選挙に携わる人たちに金を払うと買収になって引っぱられる懸念があるから、常々と経費を払おうというようなこともあります。もちろん労務者等については払うことになっております。そのほかの人も実費がかかったときには実費を払うことになっている。そのほかに、二十日もお世話してくれるのだから金を払わぬわけにいかぬが、これが違反だということでは困る、これを直そう、こういうこと。選挙に金をかけない、大いにサービスでやるということが本来の精神だということからいたしますれば、こういった動きは私はきわめて不可解だと思います。それがあるようでありますから、自民党の総裁であられる総理のこれに対する見解はどうであるか。今日の朝日新聞の社説におきましても、この点に触れております。今度の選挙法改正について首相の決意いかんというような意味のことが書いてありましたが、これに対して首相はどう考えておられるか、この点についてお伺いいたします。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、審議会答申案を尊重し、政府といたしましてはこれが最良の案と考えて御審議願っておるのでございます。お話のような点は、私どもまだ十分承知いたしておりません。私はぜひとも本国会でこの公職選挙法改正案が通過いたしますことを心から願っているのであります。
  27. 畑和

    畑委員 時間がございません。先に進みます。それに関連して、結局きょうは二十日、二十四日に通すとか通さぬとか言っておられますが、われわれはその修正の案いかんによりましては、もっと態度を強化いたす覚悟であります。今の原案の程度でありますれば、われわれは反対ではございますけれども、その反対がそれぞれおのずと違うのです。そういうことで、あらかじめわれわれはきのう党声明を発表いたしておりますが、そういう線を十分頭に入れて首相の善処を願いたい、かように考えるわけです。それからこれがあんまりおそくなりますと、参議院の方にいって審議の期間がない、参議院の審議権の無視だということにもなる。あまりさっさとやりますと。従って委員会は、こちらの衆議院の方で、相当急ぐ必要がある、それを今ごろになっていろんなことをごちゃごちゃやり出すと、なかなか大へんだ。また、それを故意に流そうという人たちが自民党内にいることも承知いたしております。われわれはその人たちに利用されたくない。われわれはやはりあくまでもわれわれの主張を通しながら、堂堂とわれわれの主張を聞いてもらってやりたいという考えでありますが、その点につきまして、これでやれる見通しがあるかどうか、参議院の審議権ということも考慮に入れて、御意見を伺いたい。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、今国会におきまして両院をぜひ通過させるよう一つ御協力を願いたい、こう考えております。
  29. 畑和

    畑委員 最後に一つ伺います。それは定数アンバランスの是正の問題であります。この点につきましてはいろいろ選挙法の方でごたごたしておりますので、自治大臣の方でちょっと手を入れたかどうか知りませんが、それをちょっと新聞に書かれたことがある。それで待ってくれということで待っておるようでありますが、いずれ出てくると思うのです。そういたしますれば、もちろん今国会に間に合わないことはわかっております。それが出ましたら、今度臨時国会がいずれあると思いますが、その臨時国会に、もし答申の方が出てきますれば出すお考えがあるかどうか、この点を最後に承って私の質問を終わりたいと思います。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、出て参りましてからきめる問題でございます。そうして、また、審議会の方の御意向もございましょうし、区制の問題との関連もございますので、十分その点を勘案いたしまして善処いたしたいと思っております。
  31. 加藤常太郎

    加藤委員長 次に堀昌雄君。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま池田総理がお答えになりました中で、私実はもう一回重ねて伺っておきたいことがございますが、その前にちょっと自治大臣に確認をいたしたいと思います。  三月十四日の当委員会におきまして安井自治大臣が、わが方の質問に対してこういうお答えをしておられます。今度の政府案の提案の経過でありますけれども、「党といろいろな折衝をした、こういうお話でございますが、これもやりました。これは政党内閣でございますから、私ども法案を提案します場合に、やはり党内のいろいろな政策上の観点あるいは党の機関の御意見を伺う、これは私は当然やらなければならぬ義務だと心得ております。」「そうしてまた、党内におきましてもいわゆるいろいろと政策グループがございます。三百名、百何十名といった議員をかかえておる党でございまするから、できる限りそういったグループの政策の検討の会でこれをお話しする、十分意見も聞き、また意のあるところを通しておくということは、これは手続としては必要なことだろうと思います」こうお答えになっておりますけれども、これはこの通り確認してよろしゅうございますか。
  33. 安井謙

    ○安井国務大臣 その通りだと考えております。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 総理にお伺いをいたします。この法案が提出されます経過では、自治大臣が今お述べになりましたように、十分与党内の意向を聴取し、各派のいろいろな意見もお考えになって、そうして政府原案が提案されたと考えております。そこでただいま畑委員質問に対して、総理は、原案で一つ通してもらいたい、こういうふうにおっしゃいました。私も、政府の最高責任者として当然であろうかと思います。ただ、ここでこれだけ十分に与党の意向を入れられて、いろいろ一般の非難もありましたが、政府は最良の策と考えて御提案になっておる政府原案が国会にかかった場合に、なるほど国会国会として独自の判断を持ち得ることは当然でございますけれども、この修正にあたって野党である私どもや民主社会党が反対をしておることに対して、与党側が再びイニシアチブをとって修正をするということになりますと、前段でおやりになったいろんなことは、これはきわめて不十分であったということなのか、政府の側において、政党内閣だからいろいろと相談するのはあたりまえだ。しかしそれを提案をして、また国会へ持ってきて与党だけで修正をするということは、政党内閣のあり方として私はいかがであろうかと思いますが、その点についての総裁としての池田さんの御意見を伺いたいと思います。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 私は先ほど申し上げましたごとく、審議会答申十分検討いたしました。そして党の意見も一応聞きまして、これが最上の案として出しておるのであります。しかし国会は国権の最高機関でございます。いろいろ御審議の上で国会の意思を決定されれば、これはやむを得ないと思います。私は政党の総裁とし、また内閣総理大臣として、一応こういうふうに最良の案として御審議を願っているのであります。まだきまりもしないいろんなものについて、想像的に私の意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私は今池田総理がおっしゃったことの中で、池田総理としてのお立場のお答えは十分に了承いたします。ただ総裁としては今度はやはりその党の最高の責任者として、同一の人間が、片方では最良の案だと言って出したものを通そうとし、片方ではこれは最良の案ではないからという立場からこれを修正をするということは、この点においては総裁としての立場としては——やはりきょうの朝日の社説が申しておりますように「これらの改悪は許すべきではないと思う。与党内には、これらの修正が波乱を呼んで時間切れになるのをねらう動きもあるという。池田首相および与党幹部の政治的良心と決意を望む。」こういうふうな社説が出ているわけでございます。そこで総裁としては、今後そういうことが出ることに対しては、総理の今おっしゃった最良の案であるという線でこれを収拾なさるのか、私は国民に対しての、これは与党、最大の党の総裁としての責任であると考えますが、いかがでしょうか。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 一党の総裁といたしまして、また内閣総理大臣として、最良の案として御審議願っておるのであります。しかしやっぱり民主主義でございますから、私は最良の案と思い、また皆さんもそのお考えになっていろいろ御検討の結果、それ以上の案があるということについては、これは、一切耳をかさないということはいかがなものかと思います。しかしただいまのところ、私は修正案についていろいろ議論があるということも、内容も聞いておりません。党からも何も連絡はございません。私はただいまのところ、この案はいい案であると考えておるのであります。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 国会審議の中でそれ以上にいい案であるならば、こうおっしゃいました。ですからそのことは、もちろんそれ以上いい案というのはいろいろございましょう。国会議員にとってそれ以上いい案という場合もございましょうし、国民立場にとってそれ以上いい案というものもあるわけでございます。われわれは、特にこの選挙法の問題につきましては、国会議員がみずからの立場に立って最良の案という感じではなくて、国民立場に立って、冷静にみずからを反省をしながら、さらに総裁のおっしゃった最良の案を考えるべきであって、最良の案のその上にまた最良の案はあり得ない、最良というものは、これはベストの案なんであって、ベターの案ではないのでありますから、ベスト案の上にさらにベストの案のありようはないのであります。この点は特に一つ御留意を願っておきます。   〔発言する者多し〕
  39. 加藤常太郎

    加藤委員長 御静粛に願います。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、先ほどの問題で出ておりますけれども、総理はこの前の本委員会におきます御答弁の中で、選挙資金と政治の資金とは違う、こういうふうに実はお答えになっておるわけでございます。過般の公聴会におきまして、与野党を通じての公述人の方に私はお伺いをいたしました。はたして選挙資金政治資金は区別できるでしょうか。御出席の公述人は、与野党を通じて、これは区別できません、こういうお答えでございました。そこで、総理はそういうふうなお答えでございますが、一体それではどういうところで総理はこれは区別できるとお考えになるか。公述人の声は私は国民の声だと思いますが、総理はこれをどうお考えになっておりますか。
  41. 池田勇人

    池田国務大臣 観念上選挙についての選挙費用の資金と、そして政策その他の発表に必要な資金、これは違いましょう。これは選挙中に、政治活動資金選挙資金との区別がむずかしい場合もございましょう。しかし観念的には違うのがほんとうじゃこざいませんか。区別がむずかしいからといって、左も右も同じだということは私はいかがなものかと思います。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 実は政党が使われる場合には、おっしゃるように、政治資金選挙資金と区別はつくわけであります。ところが外から政党に入って参ります資金については、これは政党が恣意的に使い得るわけでありまして、これは選挙資金だから選挙だけに使ってくれ、これは政治資金だから選挙に使ってくれるなというわけには参りません。ですから、これの区別の問題は、政党の側からものを見るのではなくて、そこに出す人たちの側を第三者が見る場合に、これをどう判断するかというところで問題の分かれ目があると思うのであります。そういう意味では、これは私は公述人のお答えのように、区別できないのが当然だと思いますが、もう一回重ねてその点をお答えいただきたいと思います。
  43. 池田勇人

    池田国務大臣 区別できない場合もありましょう。しかし観念的には区別できるものなんです。大きく分ければできます。しかしその接触点につきまして区別しにくい点がございましょう。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実は御承知のように選挙制度審議会は現在審議を休んでおいでになります。このことは、私どもの国会における審議を静かに見ておられると申しますか、皆さん方選挙制度審議会委員の御努力が——ちょっと静かにしてくれませんか。
  45. 加藤常太郎

    加藤委員長 質問中はどうか御静粛に願います。
  46. 堀昌雄

    ○堀委員 審議会の方は静かに見ておられて、私たちの審議の態度を見守った結果によって再び御審議を始められようということだろうと思いますが、ただ、実はこの任期は六月で終わりになるはずでございます。あと時間も十分にありませんから、先ほど総理がおっしゃった政党法なり政治資金の問題について御答申が出るかどうか、ちょっとわかりません。そこで、もし今後の御答申が出なかったとするならば、政治資金の一部についてはすでに御答申があるわけでございますが、そのすでに答申のあった、現在あるものについて、そういう場合にはどういうふうにお考えになりますか。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 審議会の今後の審議状況その他を今想像いたしましてとやこう言うことは、私は差し控えたいと思います。
  48. 堀昌雄

    ○堀委員 審議会はやがてこの六月で終わりになりますが、当初予定された問題は、実はあと時間が不十分で、十分にできないと思います。しかし、委員の任期は一年でございますが、今後やはりこれは引き続き重要な問題をかかえておるわけでありますから、政府としては、今後の審議会の任期切れ等の問題等に対しては、大体どういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、審議会がいかなる範囲におきまして御答申になるか、それを見ましてから今後の問題を考えていきたいと思っております。
  50. 堀昌雄

    ○堀委員 先ほど畑委員も触れましたけれども、実は源田前空幕長の問題でありますけれども、この問題は、もちろん総理がおっしゃったように、個人が自発的に党の公認を求め、そして選挙に出られることは個人の自由で、当然かと思います。しかしこのことによって起こる問題は、相当重大な問題をはらんでおると思うのであります。それは何かと申しますと、なるほど今衆参両院を通じての国会議員の中には、軍人であった前歴の方はたくさんおいでになります。しかしこれは少なくとも現在あるそういう組織の中の方ではありません。すでにあった組織の幹部の方でございます。ところが今度初めて現在ある——これは自衛隊とおっしゃってもわれわれは軍隊と同様だと理解をいたしますが、その幹部が今度は議員になるということは、これは非常に問題としては重要な問題を含んでおると思います。特にその場合に問題が起こることは、この人が出ることによって、軍隊のような機構として上から下への一列の命令系統というものがあるわけでありますから、こういう形のものによって選挙が行なわれるということになることは、これは単に高級公務員立候補等の問題を越えて、きわめて重大な問題があるというふうに私は考えますが、この点について総理はどういうふうにお考えになりますか。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 源田君個人考えで、政治に参画したいというので立たれるのであります。そのことにつきましては、私は個人の意向で公認を求められたときに公認することは、これは何も差しつかえがないと思います。その他の点につきましては国民が審判されると思います。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がございませんから先を急ぎまして、実はある非公開の席で、有力なる自民党の党員の方から伺ったわけでありますが、過ぐる昭和三十五年七月に行なわれました自由民主党の総裁公選の際に、多額の金品の動きがあったということを申されたことがございます。その方のお話によりますと、そのことが全体の公明選挙に非常に大きな関係がある、こういうお話がございました。当時松村さんは、金権選挙を排すというようなことをおっしゃって、それは事実無根のことでなかったと見えて、現在やはり党の幹部としておいでになるわけでありますから、そういう点で、またもやこの七月には総裁公選が行なわれるように新聞で承っておりますが、この公明選挙の問題と——なるほど総裁公選には選挙法は適用されません。しかし適用されないからといって、これはやはり最大の与党の総裁公選でありますから、国民注視の的でありまして、これこそ公明なる選挙が行なわれるのが至当と考えますが、これについて一つ池田総理のお答えを承りたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙は、どの選挙でも公正でなければなりません。公正に行なわれることをわれわれは期待しております。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、ここで単なる答弁として公正なることが行なわれることを期待するとおっしゃることは、それはその通りでありますが、やはり問題は、事実がそういうふうにならなければならないと思うのであります。  そこで私は、まず今のこの選挙法の中で一番国民も心配をし、あるいは新聞の論調も心配をしておるのは何かというと、選挙の腐敗について心配をしておるのであります。その選挙の腐敗が何に通ずるかというと、やがては民主主義に対する絶望感といいますか、そういうことにつながることを多くの識者がおそれておると思うのであります。御承知のように、この間の公聴会においでになった御手洗さんは、通常は大体皆さんの方の側の公述人として御出席になる方です。その方が、われわれ社会党が御推薦をして出ていただいて、手きびしく皆さん方の批判をなさいました。これは何も御手洗さんがわれわれ社会党の肩を持って御批判になったと私は思っておりません。これは国民立場に立って批判をされたものだと私どもは考えておるわけでありまして、言いかえるならば、御手洗さんは自由民主党の将来について御心配のあまりやっておられるのである。ここを私は、皆さん方はもう少し謙虚にお聞きになる必要があると考えます。そこでいろいろな識者、たとえば政府の主要なる関係委員会に出ておられる中山伊知郎さんのお話等によりましても——ちょっとここで中山さんのお話を申しておきますが、「多数を取っている自民党として国民に言える最後のせりふは、われわれはあなた方から選ばれたんじゃないか、あなた方が私を選んだのだ、ということでしょう。だから、選び方についてはあなた方の言う通りにしました、選挙民公平選挙をする力を与えてわれわれは出た、その選良がその責任においてやるんだから、あなた方も聞きなさい、という態度になぜ出られないかということです。それを逆に選挙の実際を知らないやつがやっては困るんだ、実際問題としてはこうなんだということで押しつけ、自分たちに都合のいい選挙の方法をやっていたんじゃ、国民責任がある、ということはいえないじゃないか。」こういうふうに中山伊知郎さんは言っておられるわけであります。時間がございませんから、私これで終わりますけれども、この際一つ、朝日新聞の社説ではございませんが、総理は、国民にこたえる意味において、筋道の通った、そうしてさっきおっしゃった、少なくともあなたの責任である最良の選挙法改正と思われるものを推進されることが、私は総理としての当然の責務であると考えますので、もう一回これについてだけお答えをいただきたい。
  55. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見、承っておきます。また私の考えは、先ほど申し上げた通りでございます。この案が今国会で両院を通過しますよう、努力を続けていきたいと思います。
  56. 加藤常太郎

  57. 島上善五郎

    ○島上委員 私は関連質問で、ごく短い時間、二点についてお伺いしたいと思います。  現在の公職選挙法は俗にざる法だといわれております。非常に抜け穴が多い。不十分なところがある。その不十分なところを改正しようというのが、国民の要望でもありますし、選挙制度審議会答申の趣旨であろうと思います。従いまして、大まかに申しますならば、現在の選挙法について、少なくとも悪質違反につきましてはもっと罰則を強化しよう、買収供応をなくして、選挙違反が封じられるように強化しようというのが答申の精神でもあり、またこれを著しく曲げてはおりますけれども、政府案強化方向をとっているものと私ども見ております。政府もまたそういうふうに、今までの答弁では答弁しております。この現在の選挙法を、悪質違反につきましては罰則を初めその他取り締まりを強化する、こういう方向であることを総理はお認めかどうか。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 選挙違反に対します罰則は強化しておるのでございます。私はやはり選挙ごとの状況を見まして適当な措置をとることを、今後も続けていきたいと思います。
  59. 島上善五郎

    ○島上委員 そういたしますと、現在の段階においては強化しなければならぬということを総理もお認めだと、私はただいまの答弁で受け取りました。ところが、私はこれは言葉じりじゃないと思うのです。先ほどの福永君の質問では、現行法においてがんじがらめにされている、こういう言葉を使いました。現行法がんじがらめにされているということは、これは重大なものの考え方だと思うのです。先だっての公聴会において、いわゆる野放し論がありました。二十億でも三十億でも使わして富の再配分をしなさい、こういう野放し論がありました。将来の問題としては別です。私は少なくとも現在の段階においては、この野放し論は許されないと思います。従って、現行法がすでにがんじがらめにしておるというものの考え方は、やはり許されないと思うのです。がんじがらめにされておるという考え方は、現行法をもっとゆるやかにしよう、こういう考えに通じますし、やがては野放し論にも通ずると思うのです。この点に対する総理のお考えを……。
  60. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの御質問に対しましては、今回の選挙法改正強化しているかとおっしゃるから、強化しております、こういうことであります。私は、先ほども申し上げましたごとく、選挙法改正は、その事態の状況を見ながら善処していかなければならぬ、罰則を強化するばかりでは効果は上がらない。罰則を強化しなくてもいいような状況になるよう、PRその他のことをしなければいかぬ。過去もそういうふうに続けてきておるのであります。だから、強化の必要があるなら、今後の事態に即応して強化する場合もあります。しかし、それのみやってはいけない。やはり公明選挙運動をいたしまして、罰則を適用しなくてもいいようなりっぱな選挙が行なわれるようPRすることが必要である、こういう両方のことを言っておるのであります。
  61. 島上善五郎

    ○島上委員 私も現在のことをお伺いしているのです。ですから、法律強化一点張りでよろしいとは、私どもも考えておりません。私はこの前も、質問の際申しましたように、国民に対する啓蒙と申しますか、私は国民責任を転嫁することは間違いだと思いますが、現在の状況においては、国民の協力とか啓蒙ということが必要であり、もう一つは、それにも増して必要なのは、政党及び候補者の自粛反省が必要だと思う。それなしに国民に自覚、協力を求める、あるいは国民責任を転嫁することは間違いだと思う。それと同時に、現在の状況においては、悪質違反に対しては取り締まり及び罰則を強化する必要がある、こう私ども考える。この点においては、総理も、今の御答弁の範囲ではそうだと私は受け取りました。そうして将来はそういうような取り締まりとか、めんどうなことをしなくてもいいように、そういう事態に持っていこう、それは将来の方向としてはそうあるべきで、私も賛成です。しかし、今出されておる法律は現在の状態に適合するように改正しようというのですから、それには、今の法律は不十分である、現行法は不十分である、そこで現行法より、少なくとも悪質違反に対する取り締まり、罰則は強化しようとする方向であることは、私は間違いないと思うのです。いかがですか。
  62. 池田勇人

    池田国務大臣 現行法よりも、今回御審議願っておる法案の方が罰則強化になっております。
  63. 島上善五郎

    ○島上委員 そうだといたしますと、答弁は簡単でけっこうですが、現行法を目して、われわれ候補者がんじがらめにしておる……(「それ言葉のあやだ」と呼ぶ者あり)言葉じゃない。これは思想です。がんじがらめにしておるから、もっと自由に野放しにしなさいというお考えには反しますね、反対でございますね。
  64. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、人の言われたことにつきまして、総理大臣としての批評は差し控えたいと思います。これは主観の問題でございます。
  65. 島上善五郎

    ○島上委員 主観の問題じゃないですよ。現在の法律がんじがらめであるから、もっと緩和して野放しにしなさい、こういう公聴会の公述があったのですから……。いや、福永君のことを言っているのじゃない。関連して、ほかのことを言っているんですよ。ですから、現在の法律はむしろ野放しにしなさい、十億でも二十億でも使って、所得の再分配をしなさい、こういうばかげた公述がございましたが、これと今あなたが答弁したこととは、まさに違うのですね。そうでしょう。現在の法律を、取り締まりや罰則をもっと緩和して、自由にして野放しにしなさい——将来の問題とは別ですよ。十年、二十年、三十年の先の将来の問題は別ですよ。現在は、これを緩和して野放しにすることができないというふうにお考えか、野放しにしてよろしいというふうにお考えか。先に答弁しましたから、簡単に伺います。
  66. 池田勇人

    池田国務大臣 公述人が言われたことに対しまして、私がとやこう批判することはできません。そうしてまた公述人がおっしゃったのを、前後ずっと読んでみないと、批判することはいかがかと思います。私はそれよりも、私の答えがあなたの気持と合っているか合ってないかをお聞きになりたいのだと思います。しからば、今の法律よりも今回の改正案の方が罰則を強化している、これで十分じゃございますまいか。公述人がここで言われたことを、片言隻句をとって私がどうこう言うことは、今後の公聴会のあれから申しまして——私がとやこう意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
  67. 島上善五郎

    ○島上委員 それは総理の答弁でわかっていることだから、私はそれ以上聞かぬでもいいけれども、明らかに私どもと考えの根底は同じです。現在はざる法で不十分だから、もっと強化しなければならぬということは、程度の違いだけで、あとは同じです。従って、あなたの党の中に、今の法律がんじがらめだから野放しにしなさいというような考えを持っておる、そういう考え自体は間違いなんですよ。私はこのことは別に答弁は要りません。  もう一つの点を伺います。選挙公営をもっと徹底したい、選挙公営強化する線で進んでおる、先ほどこういう御答弁がありました。選挙公営をもっと強化するということは、完全公営か、完全公営に近いところまで強化したい、こういうお考えかどうか。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 完全公営か、完全公営に近いところまでと申しましても、これは程度のあることでございまして、先ほど来申し上げましたように、選挙制度というものは国民の意向その他にずっとあれしまして、適したように徐々に方向として公営選挙に持っていき、政党選挙に持っていきたい。これは私は民主主義の今の理想だと考えております。
  69. 島上善五郎

    ○島上委員 もう一つだけ。これはあとでまたゆっくり大臣に伺いますが、大へんな食い違いがあるのですよ。完全公営ということ、もしくは完全公営に近い公営ということは、公営以外の部分がそれだけなくなることですね。そうでしょう。もし完全公営ということになれば、公営以外の選挙運動はゼロになることですよ。かりに九五%公営ならば、五%しか公営でない選挙運動はないということですよ。私は、方向としてはそれは間違いだと思うんです。方向としては、個人の運動から政党の運動へということが一つ。それから国民が自由濶達に選挙運動に参加できるように、弊害のない部分については自由濶達に国民選挙運動ができるようにするということは、これは公営ではないのですよ。完全公営ならば、公営以外の部分はなくなることなんだ。完全公営はソ連と同じです。これは言葉をかえて言えば完全官営なんですよ。方向としてはむしろ西ドイツのように——公営なんて一つもないのですからね。それは政党が発達し、国民政治意識の水準も高い、そういう状態になれば、公営と称して官営の選挙の部分をだんだん少なくしていく、政党がやる選挙運動、政党に属しない国民がやる選挙運動の幅を広げていく、これが方向であるべきだと思うのです。それに対する考え方を聞きたい。これで終わります。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 これは選挙の官営とか公営とか、いろいろな言葉の問題があるようでございますが、これは今われわれとしては個人中心であったり、経費その他についても国の見る場合が少ない、こういうものはやはり国で相当見ていくということが選挙公営といわれておるのでございます。今ここで選挙法で官営か公営かという議論は、しばらく先にいたしたいと考えております。
  71. 島上善五郎

    ○島上委員 総理はわからないようですから、自治大臣にあと質問しますから、よく勉強して下さい。
  72. 加藤常太郎

    加藤委員長 次に井堀繁男君。
  73. 井堀繁男

    井堀委員 ただいままで政府の説明なり総理大臣の御答弁の中でわれわれの重視しておりますのは、選挙制度審議会答申を尊重するという一点にあったと思うのであります。そこで、選挙制度審議会答申の中で、はなはだしく相違しております点に気づきましたので、その点を一、二お尋ねしてみたいと思うのであります。  一つは、社会党修正案によって補完しようとしております三つの点があげられております。その一つは、高級公務員立候補制限を参議院の全国区において行なおうという第一委員会答申であります。これは全く政府は見送っております。社会党はこれを修正の形で提案をしておるわけであります。第二委員会連座制強化政治資金の問題でありますが、これは程度の差になるかと思うのでありますけれども、この点はきわめて重要な内容になりますので、この点をお尋ねをしてみたい。最後に、第三委員会の問題について、多少部分的にお尋ねをしてみようと思うのであります。  第一委員会高級公務員立候補制限の問題は、私どもは、まだ非常な欠点のある答申であるのではないかとすら思うくらいです。しかし、まず参議院の全国区の場合にこれを適用してみたらどうかという意味答申であると理解しております。従って、問題があります点については、今まで相当論議もして参っておりますので、焦点は明らかになったと思うのでありますが、こういうように、高級公務員あるいはこれに類する人々が公の地位を利用したり、あるいはそういうものが選挙に利用されることを禁ずることは当然だと思うのであります。この点を漏らされたことは、私は千慮の一失だと思うのであります。多少困難がありましても、答申案を尊重するということになりますと、こういう点はまっ先に取り上げるべきではなかったか。  それから、時間がありませんから二つ一緒にお尋ねをいたしますが、連座制強化の問題は、先ほども論議がありましたように、確かに一つ強化方向に踏み出したということは、程度の差であると思いますが、しかしこの問題について、私は次のことをちょっとお答えをいただきたいと思うのであります。これは何人も、取り締まりを強化したり、制裁が強化することは望ましいことでないことは、みな意見の一致しておるところであるけれども、今日の腐敗した選挙を粛正していくためのやむを得ざる切開手術である、必要悪であるという前提であります限りにおいては、その制裁が必ず法律の精神を貫くように、最善の措置が同時にとられなければならぬものだと判断しておるのでありますが、今までの審議の上では、どうしても総理にお答えいただく問題となったと思います。現在の政府原案にいたしましても、制裁が強化されるのでありますし、連座制強化される点については、私は確かに一つのいい点だと思いますが、その場合に、その犯罪の実態をどうして把握するか。すなわち捜査でありますとか、あるいは検挙、摘発といったような忌まわしいものがつきまとうことは、制裁を強化すれば必然のことであります。ところが、このことに対して今までただしたのでありますが、これに対する何らの措置が行なわれていないのは、結局この法律は空文化する危険性がある。それから、運の悪いのがひっかかるというような、まことに不合理な形が露骨になってくる。でありますから、どうしてもやはり選挙関係の取り締まりあるいは捜査などについては、人権をもちろん尊重しながらでありますから、非常に高度の技術と工夫の要る犯罪捜査になると思うのでありますが、これについて特別の予算措置なり、あるいはそれに対する機構の改善などが伴ってきて初めて納得のできるものと思うのでありますが、これが今までの質疑応答の中では政府に用意がありません。これは内閣の首班として、一つの判断を伺っておく必要がある問題だと思います。  まず、この二点について、政府の所見を伺いたいと思います。
  74. 池田勇人

    池田国務大臣 高級公務員立候補制限につきましては、いろいろわれわれも考えたのでございます。これは高級下級ということよりも、公職の地位を利用してやることがいけない。私はこれで大体目的を達し得ると考えておるのであります。  第二の、人権の尊重ということはもちろん必要でございますが、やはり取り締まりは十分厳重にやっていかなければならない。ただ私は、今の取り締まりの状況を見ましても、衆議院選挙、参議院選挙につきましては、非常にその取り締まりがあれでございますが、地方選挙につきましては非常にルーズなんじゃないかという気がいたしておるのであります。そういう点につきまして、私は自治大臣にもこの前も申したことがあるのでございますが、選挙といえば衆議院、参議院に限らず、地方選挙につきましても十分取り締まりをしていかないと、やはり選挙というものを、何と申しますか、軽く見るような気風が起こってはいかぬと思いますから、人権の尊重は当然でございますが、取り締まりの厳正は、これまた選挙の公正、公明のためにも必要な措置と考えております。
  75. 井堀繁男

    井堀委員 この法律改正に伴いまして、必然的にやはりそういうものの制度も改善されなければならぬということをお認めのようでありますので、しかるべく措置が行なわれるものと判断して、了承したいと思います。  その次にお尋ねをしたいと思いまするのは、第一の問題について、高級公務員あるいはその他でしょうが、そういう地位を云々されるということは当然のことでありますが、法律規定するという点について非常に困難なること、われわれもよく理解しております。しかし、これは一つには、自粛せしめるための適切な表現でないかと思いまするが、要するに一罰百戒といったような性質のものではないか。だから、参議院の全国区だけに限った。私は全国区だけではないと思う。衆議院の場合でも、あるいは参議院の地方区の場合でも、一つの現実の問題をお答え願えばよくわかる。まあ人の名前は避けたいと思いますが、某政務次官を最近までやっておられて、地方区の立候補者で猛烈な運動をなさっておる。この方は、長い間その省の監督指導の地位にあったのでありまして、特にその筋ではエキスパートであります。でありますから、もちろん人徳もあると思いますけれども、そういう当時のことからだと思いますが、目に余るような動きが活発であります。お気づきでないとするならば——これは労働省所管であります。でありますから、監督署のような動き方というものは、選挙には非常に大きな影響力を持っておる。これは現実に行なわれておるのでありまして、こういうような事実をどう自粛していくかということから、こういう法律を設けたらどうかということを答申してきたものと判断するのであります。まず隗より始めるということになれば、政府自身がこういう問題に対して自粛をするような——これはまあ政党の方の責任でもあると思いまするが、そういう意味で、私は、参議院の全国区に限ってこういう規定をするということは、ある意味においてむごいようではありまするけれども、そういう一つの罰則規定といいますか、制限規定というようなものは、そういう者に自粛せしめるのに大きな役判を持つと思うのでありますが、総理はこういう点に対してどういう御判断でありましょうか。
  76. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、今の全国的のものか、地方的のものかということよりも、やはり地位を利用する、過去の経歴がものを言うことは、これはやむを得ぬ。これは人柄の、人についてのものであります。しかし、地位を利用するということは、選挙公明を欠くことになりますので、それを押えることが一番じゃないかと思います。
  77. 井堀繁男

    井堀委員 次にお尋ねいたしたいと思いますのは、第三委員会の問題でありますが、第三委員会の問題は、今度の委員会で一番多く論議され、また、政府が提案するにあたって、答申案をよけて通った、三つの、たとえば政治資金規正法にいたしましても、あるいは罰則制裁規定強化についても、非常に苦しんで立案されておる点はよくわかる。しかし、それは一方に国民の自覚を徹底せしめるということと、政党並びに候補者の自粛を強く要求しておるところに、こういう罰則規定意味があると思うのであります。そういう点からいたしまして、罰則規定は、踏み出すときはきびしいがいい。その時期に当面した候補者なり、あるいは運悪くそれに関連をさせられた者もあるかもしれませんが、そういうものを一掃するためには、やはり踏み出すときにはきびしい規定が必要であるという点について、私は答申案を全面的に支持しておるわけであります。それを緩和したら、その精神はくずれてしまう。しかし、それよりは他の方法でということになれば、私は第三委員会の問題だと思う。第三委員会の問題の中で、国民の自覚を徹底せしめるための運動と、それから政党なり候補者に自粛を要求する関係とが同時に出ておると思う。すなわち、国民の自覚を徹底するということは、関心を高めるということにもなるわけです。でありまするならば、この委員会が要求しておりまするように、選挙犯罪に対するものの考え方、扱い方、その中で政府がまず率先してやるべきことを指示しておりまするのは、恩赦の取り扱いなどについては、選挙違反については慎重な考慮を払えというようなことは、一つの私は教えだと思うのです。これはすぐ政府考え方を聞きたい国民の要請でもあると思う。  次は、裁判の促進をはかれということも、連座制の問題と関連して離すことのできないものです。そういたしますると、今日の裁判がおくれるということは、こういうものに対する裁判官の人数の問題その他の関係があると思いまするから、どうしても政府はこれに対する財政的な措置をとらなければ、答申にこたえることにならないと思う。もし先ほどの質問者に答弁されたように、できるだけそういったような選挙制度全体を明るくして前進せしめるという一般の要望にこたえるとするならば、今日のように比較的財政余力のできた現状において予算を思い切ってとることによって、この答申にこたえる結果になると思うのであります。これは総理でないと御答弁ができない。そういう財源的な措置、しかも大幅な財源要求をされておるのでありますが、この点に対する政府の所見を一つ伺っておきます。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 公明選挙を徹底する場合におきまして罰則の強化、取り締まりの強化、これも必要でございますが、お話の恩赦の点、これは従来もいろいろ議論があったところでございます。私はこういう一般の要望につきましては十分承知いたしております。今後こういう問題につきましては、とくと考慮いたしたいと思います。  第二の裁判の促進、これはこの選挙違反ばかりでない、一般にどうしても裁判というものを促進しなければならぬ、こういうのでわれわれ努力いたしておるのであります。ことにこの選挙法につきましても、私はその必要性を痛感いたしております。従いまして、裁判官の任用その他待遇につきましては、今政府として十分検討いたしております。この選挙法改正ばかりでなく、ほかの問題につきましても、裁判官の不足ということは強く叫ばれておるのでございます。今後、この点につきましては善処いたしたいと考えております。
  79. 井堀繁男

    井堀委員 次に、第三委員会答申の中で最も重視せられておりますのは、「学校教育及び社会教育の充実」という見出しで、内容についても、かなりしさいな指示を与えておるのであります。これはせんだって、ここに文部省の関係局課長に御出席を求めて内容を伺ったのです。学習指導要領の中などに改善を加えて、この趣旨に沿うように述べられておりましたが、このことは当座の間に合わぬと思う。それでは次の参議院や衆議院選挙にはすぐに役立たないのでありますけれども、このことは日本選挙制度あるいは民主主義、議会主義の基礎を基礎づけていく重要な事柄だと思うのであります。従来、この委員会でこういう問題が取り上げられたことはなかったのです。今度の審議会の中でこれが取り上げられたということは、私は重視すべきであると思う。ことに、このことはもしその指導を誤りますると、ぬぐうことのできない事態を築いてしまう。でありまするから、こういう答申が行なわれた以上は、われわれもこの問題については慎重な審議をして、そうして将来を期していかなければならない大問題だと思うのであります。これはほかのものと違いまして、悪いから改めればよいというわけにいかぬのであります。ある程度人間の思想を作り上げていくような作用もなし得るのであります。特に小学校の六年生、あるいは中学の三年生、そうして高等学校の学習指導要領として公式に指定していく、きわめて権力を背景とする偉大な指導力を伴う内容であります。よほどこれが民主主義の理想として、そうして現実と調和できるようなものでなければならぬと思うのであります。こういう点に対して政府としては、答申にこたえるための何か指導をなさっておられますか。これは専門的なことでありましょうから、方針だけ伺っておきます。
  80. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、選挙公明に行なわれなければならぬことは申すまでもありません。それに対しまして、選挙に対しましての関心を与え、これが公正に行なわれることが民主主義発達の基本であるということを、私はやはり小学校、中学校あるいは高等学校におきまして指導していくことは必要なことであると考えております、従いまして、文部省におきましてもそういう方向で進んでいると思っております。
  81. 井堀繁男

    井堀委員 次に、公民教育の中で、この前関係者には要望しておきましたが、これは総理にぜひ一つ実行してもらいたい。それは公民館とか、あるいは社会教育の中では、婦人やあるいは青年の学習活動というものが社会教育法によって一定の指示は与えておりますけれども、事実は全く地方は乱脈であります。この間もちょっと事実を取り上げて言ったのでありますが、特定の政党の幹部が公民館の館長の地位にあるということは、こういうように法律の上でも明確になってきた際においては、要するに世間のいたずらな疑いを受けるだけであって、本人がりっぱな人でありましても、そういうものは遠慮すべきであると思うが、かなり多くの地域にそういうものが見受けられる。もし公民館の館長を、衆議院や参議院の候補者にかつてはなり、今後もなろうというような人が勤めておりますと、この人は言うまでもなく世間から疑われます。神でない限り、その間違いは起こしやすいので、こういう点は当然改めていかなければならぬ問題だと思う。まずこういうような点を粛正し、そうして改めていかれなければ、何ぼ答申案を尊重すると言いましても、実は上がらぬと思う。こういう問題について、改善をすぐ行なうべきじゃないか。  それから、時間がありませんから、もう一つ最後にお答えを願っておきたいと思いまするが、私がこの答申案の中で一番重視しておりまするのは、第三委員会の最後のところに、公明選挙推進のため、あるいは選挙管理委員会強化その他のために、大幅な予算財源を用意すべきことを強調しております。これは特に現在の予算額があまりに僅少であるということをぴたり断言している。そして大幅な増額ということをわざわざうたっている。そうして地方末端にまでそのことを徹底させることを要請しております。このことが用意されなければ、何ぼ尊重するとか言いましても、特にこの第三委員会の問題は意味をなさなくなる。これは非常に重要な点だと思いまするから、この二点について一つ御答弁をいただきたい。
  82. 池田勇人

    池田国務大臣 公民館のような公的機関のものに政党色が入るということは、私はこれは慎まなければならぬことだと考えております。  御質問の第二の、公明選挙運動に対しましての予算の盛り方、これは私は、三十六年度におきましても三十五年度のほとんど倍額をあれしまして、三十七年度にもまた増額いたしました。そしてまたこの予算の執行につきましても、各地方団体がまちまちでございますから、私はひもつきと申しますか、とにかく自治省におきまして公明選挙にこれだけは使えというふうな指示を与えるようお願いしたような状況でございまして、今後も第三委員会のあの答申につきましては、十分われわれは傾聴いたしまして進んでいきたいと思います。
  83. 井堀繁男

    井堀委員 以上で私の質問を終わるわけでありまするが、時間がないんですから無理でありましたが、とにかく私は、答申案を尊重するということは、この際与野党いずれも責任を持って当たらなければならぬと思うのであります。というのは、法律答申案を尊重するからということを書いたとか書かぬとかいうことよりは、ああいう制度というものは、民主主義制度のもとにおける最も留意しなければならぬ組織でもありますし、機構でもありまするから、そういうものの答申が完全に行なわれて、私は結果が悪くてもそうするという行き方の方が当然だと思っておったのでありますが、先ほども御指摘いたしましたように、社会党からあのような大幅な修正を要求されなければならぬような事態は、まことに面目ない次第だと思うのであります。ぜひ一つ政府・与党の方でも、その精神を尊重するという総理大臣答申の精神に従って、今からでもおそくないと思いますが、私は社会党修正案にも満足しておるものではありませんけれども、政府原案よりははるかに答申案に接近したものとして敬意を表しておるわけであります。こういう点は、私は超党派的に合意して、そういう意味での修正を行なわれるということが望ましいと思います。後退するようなことはいささかもあってはならぬと思うのであります。こういう点については、一つぜひ政府原案についても、われわれの意思を十分尊重して修正の機会が与えられるよう要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  84. 加藤常太郎

    加藤委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  85. 加藤常太郎

    加藤委員長 この際お諮りいたします。  理事であります坂本泰良君より、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 加藤常太郎

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  つきましては、理事一名が欠員となりましたので、その補欠選任を行なわなければなりませんが、先例により、委員長においてその補欠指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 加藤常太郎

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、理事堀昌雄君を指名いたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕