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1962-03-16 第40回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十六日(金曜日)    午前十一時九分開議  出席委員    委員長 加藤常太郎君    理事 青木  正君 理事 篠田 弘作君    理事 丹羽喬四郎君 理事 坂本 泰良君    理事 島上善五郎君 理事 畑   和君       荒舩清十郎君    藏内 修治君       田中 榮一君    中垣 國男君       林   博君    太田 一夫君       坪野 米男君    山中日露史君       山花 秀雄君    井堀 繁男君  出席国務大臣         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  裕君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求の件  公職選挙法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇八号)  国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇九  号)      ————◇—————
  2. 加藤常太郎

    加藤委員長 これより会議を開きます。  この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査を進めております内閣提出公職選挙法等の一部を改正する法律案は、きわめて重要な案件でありますので、公聴会を開き、広く各界の学識経験者より意見を聴取し、委員会審査に慎重を期したいと存じます。つきましては、衆議院規則の定めるところにより、議長に対して、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤常太郎

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、公聴会開会の日時、人選等、諸般の手続は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤常太郎

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ————◇—————
  5. 加藤常太郎

    加藤委員長 それでは、これより公職選挙法等の一部を改正する法律案及び国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案一括議題といたし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。林博君。
  6. 林博

    林委員 まず、自治大臣にお尋ねしたいのでありますが、私は、憲法論その他につきましてはすでに同僚の委員から相当な質問もなされておりまするし、また連座規定の同居の親族等部分につきましても、かなりいろいろな質問が出ておりますので、こういう憲法論等にはきょうは触れませんで、実際上われわれが非常に問題である、また公明選挙を推進する上において、今回の改正案がはたして公明選挙に役立つものであるかどうかというような二、三の点を具体的にあげまして、私は質疑をいたしたいと思うのであります。安井自治大臣は多年の選挙を御自身で行なわれておる方でございまするから、この改正案真実公明選挙に役立つものであるかどうかということはよくおわかりでありましょうし、またこの今回の改正案内容につきましても相当詳細に御存じであると存ずるのであります。  そこで、まず第一に私がお尋ねいたしたいのは、大臣は、この今回の改正案を御自分経験等からして、真に公明選挙に役立つものであるというふうにお考えになって提案されておるのであるか、あるいは選挙制度審議会設置法に、選挙制度審議会答申を尊重しなければならないという拘束が一つあるわけです。だから、必ずしも腹の中ではこれには賛成できない点も多々あるけれども、とにかく答申を尊重するということが法律で義務づけられておるので、その答申のうちから、ほんとうにこれはどうにもしようがないという部分を除いてこの提案をなされたのであるか、そのいずれであるか、一つ最初に承りたいと存じます。
  7. 安井謙

    安井国務大臣 まず第一に、政府といたしましては、審議会答申を尊重しなければならぬという建前のもとに、この答申案検討いたしたわけでございます。その結果として、私どもとしては、立法常識上どうも工合が、悪いという点については、これは若干の修正をいたしまして、あとは、これならとにかく今の公明選挙という目標には現段階からいって相当前進できるものであるという確信を持って、この提案をいたしておるわけでございます。
  8. 林博

    林委員 大臣は、前進できるものと確信を持ってこれを提案なされたという御答弁でございました。しかしながら、私はこの法律案をいろいろ検討いたしてみまして、細部にわたる検討まではいっておりませんが、ある程度検討はしてみたのでありますが、私個人の意見といたしましては、この改正案は私どもの期待した選挙制度改正案ほんとう公明選挙を行ないたいという熱望に沿える改正案ではないと思うのです。私どもが望んでおるところにちっとも触れておらない思います。たとえば、私どもが今非常に疑問に思っておるのは、実際選挙にあたりまして、法定選挙費用というものがあります。これをどう口一はい使えるかということを常に考えておる。  そこで、私はまず選挙局長から——選挙局長じゃないとわからないと思いますので、選挙局長にお尋ねいたしますが、全国衆議院選挙区のうちで、現行法法定選挙費用の一番多い選挙区はどこで、どのくらいの額になっておりましょうか。
  9. 松村清之

    松村(清)政府委員 東京の第二区で二百六万、これは一昨年の衆議院の際の計算でございます。
  10. 林博

    林委員 実は、私の選挙区が一番多いのかと思っておったのですが、それ以上に二百六万という選挙区があるということでございます。そこで私は、この二百六万という選挙区の東京都第二区で、候補者現実にその法定選挙費用を、選挙法に反しない範囲内において合理的に目一ぱい支出した場合に、選挙局長はどの程度支出できるとお思いになるか。私は自分選挙区の法定選挙費用、たしか百五十が前後だと思ったのですが、幾ら計算してみても、現行選挙法でいきますと目一ぱいまで使えない、八十万くらいしか出てこないのです。そこで二百万という法定選挙費用を合理的に使う場合に、一応こういうことが法律で定められておるのですから、どういうふうに使えるものか、この点について私は伺いたいと思います。また使える限度というものは自治省計算されたことがあるかどうか、実際に計算されたことがあるならば、その金額の範囲をお教え願いたいと思います。
  11. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは現行法費用算出方式に欠点があるために、お話のようなことになるのだろうと思います。御承知のように、衆議院の各選挙区におきます法定費用は、七円に有権者数を定数で翻ったものをかけておりますから、選挙区の有権者数の非常に多い、たとえば東京の今例に出されましたような選挙区におきましては、法定費用が非常に割くなるわけでございます。平均は全国で八十一万でございますが、今の二区のように、三百万をこえるというところが出てきます。これは確かに現行算出方式の欠陥でありますとともに、もう一つは、本来各選挙区におきます議員一人当たりの人口というものが平均化されなければならないのが、非常にアンバランスになっておるようなところからも、原因をいたしておるのでございます。従いまして、私どもがこういう費用計算した際におきましては、お話のように当時の単価でございますと、大体法律で認められた選挙運動に限って二十日間の運動期間にやる、こういう前提に立ちますれば、お話のように八十万円程度でまあまあやれるのではなかろうか、十分ではありませんが、そういうふうに考えるのでございます。従いまして、特に東京都のように費用計算上多くなるし、また実際の費用支出にあたりまして、東京のようなところは短時間で選挙区を回れます。地方の一県一選挙区のようなところでは泊ったり何かしなければなりませんが、そういう二つの事情をかみ合わせましても、東京都の法定費用というものは実際上なかなか使い切れないのではなかろうか、そういうふうに実は私も推測いたしておるのでございます。しかし詳細のことは私は存じ上げません。
  12. 林博

    林委員 私がお聞きしているのは、八十万くらいでやれるのではなかろうかということじゃないのです。八十万以上使えるかどうかということなんです。私は幾ら計算しても出てこないんですよ、八十万以上の法定選挙費用というものが。それは現実には法定選挙費用というものが二百六万ときめられている。それ以上使えば、労務者の幅を拡大し、実費弁償をするなりしてやると、これは違反になってしまうのです。それで使うことができない。こういうところに私は選挙法の非常な落とし穴があると思う。われわれはこれに引っかかってしまう。一度自治省で、東京二区だとか東京六区が、どのように選挙費用目一ぱいに使ったら使い切れるものかというモデル・プランを立てていただきたい。資料として提出いただきたいと思うのです。そのように、現行法は守れないように最初からできているのです。法定選挙費用は二百六万、現実には八十万しか使えないような選挙法なのです。公明選挙だとかなんとかいうけれども、こういうところに着眼して、現実に合わしたように選挙法を直していかなければならぬ、これが一番大事だと思うのです。ところが答申案は、多少算定の基準は変えたようであるけれども、一向にそういうことを考えてくれておらない。  私はいま一つ具体的な質問をするのですが、私は今選挙費用を使い切れないと言ったが、なぜ使い切れないかということなんです。今法務省なんかで統計をとっておりますが、選挙違反では買収犯が非常に多い。ところがこの買収犯は、選挙制度審議会委員諸君が、買収等の悪質な事犯と、こう言われた、あの概念とはおそらく違った買収犯であろうと私は思う。というのは、今現実に起こっている買収犯の大多数は、労務者運動員、いわゆる労務賃金運動報酬かの限界がはっきりしないために、その限界線におけるものが買収として認定されておる場合が非常に多い。そのために、私どもは、これはあやしい、限界線だと思えば、労務君の報酬が出せないということなんです。また実費弁償もそうなんです。たとえば選挙事務所まで区議会議員などが選挙対策か何かで通ってくる。また選挙事務所で来客に会う、そのために通ってきます。そういう費用は元来は実費弁償で落とせるはずです。二十日間で計算しますと、距離にもよりますけれども、八千円から一万円になる。ところが、こういう費用実費弁償として支出したら、自動車は受け取りを出さない、これが警察庁に逮捕され、裁判所に行きますと、みんな買収になります。私どもが、それは労務賃金だ、実費弁償だと幾ら言っても、大てい通らない。通る場合もありますけれども、通らない場合が多い。こういうことで、労務賃運動報酬限界がはっきりしない、実費弁償支出ができないということのために、実際は法定選挙費用が使えなくなっておるのですよ。私は、こういうところに公明選挙ができないほんとう原因があると思うのです。この点に関しまして、自治大臣いかがですか。
  13. 安井謙

    安井国務大臣 御指摘のように、労務費というものと実費弁償あるいは事務費用弁償といったようなものの境界が今まで明確でなかった。ことに末端の解釈によってこれが左右されておったという事態は確かにある。従いまして、今度はその点につきましてはかなり合理的な計算をいたしまして、法定費用基準を示します場合には内容的なものもできるだけ具体化いたしまして、取り締まり当局にも基準として示し得るようなものにいたしたいというふうに考えております。
  14. 林博

    林委員 そういたしますと、自治省といたしましては、労務者という概念をどういう場合というふうに明示していく、こういうことなんですか。
  15. 安井謙

    安井国務大臣 労務者あるいは単に肉体労働というものでなくても、純事務的に労務を提供しておる者、こういう者につきましては、今後ははっきりとした報酬制度を立てたい、こう考えております。
  16. 林博

    林委員 今の自治大臣のおっしゃったことは少し違うと思うのですが、それはあとでお尋ねするとして、まず選挙局長にお尋ねしますが、それでは労務費連動報酬、これは現存どのように区別されているか。これは判例はないはずです。法理上はないでしょうが、現実にあなた方なり法務省ではどういう解釈をとっておられるのか、その点について承りたいと思います。
  17. 松村清之

    松村(清)政府委員 現在の公選法によりますと、労務者とは、雇用契約として機械的な労務に携わって報酬を受ける者、こう解釈をいたしております。この選挙運動に従事する者、これはいわゆる運動員でございまして、これには報酬が出せない、こういう建前になっております。今度の改正案では、ただいま大臣がおっしゃいましたように、機械的な労務というもの、機械的な事務に携わるものを含めまして、そういうものに報酬を出せる、こういう案になっております。
  18. 林博

    林委員 機械的な労務と言われましたけれども、現在機械的な労務というものは選挙法にはないと思うのです。機械的な労務というのはどういうものですか。たとえばポスターを預けて張るにしても、電柱へぺたぺた張って歩くわけにはいかないでしょう。それで、結局張る場所を選定しなければならぬ。頭を働かして、知っている家へ行って張らしてくれと言ったりしなければだめで、反対派のところに行っても張らしてもらえないので、純然たる機械的な労務というものはないのです。そういう点についてはどうお考えになりますか。
  19. 松村清之

    松村(清)政府委員 今お示しの事例のような場合におきましては、ポスターを張るということが主たる目的でございまして、それに付随して、張らしてくれと頼んで歩くわけでございますから、そういうものは公選法にいう労務者、こういうふうに考えてよいと思います。
  20. 林博

    林委員 それを公選法にいう労務者考えていい、こういうお話だったのですが、ポスターはいわゆる人夫みたいなものでは張れないのです。ある程度選挙運動事務をする者あるいは選挙運動に従事する者が張る場合が大多数なんです。そうしますと、裁判所は、それは選挙連動に従下する者だ、その者がたまたまポスターを張ったのだから労務者ではないといって、労務者と認めないわけなんです。そういう点についてはどうお考えになっておりますか。現実にそういう年例が幾らでもあるのです。
  21. 松村清之

    松村(清)政府委員 現実には純粋の選挙運動員が、お話しのように。ポスターを張って歩くという事例があるかもしれません。しかし、そういうのは、やはり裁判所解釈のように、これは本来運動員であって、運動員がかたわらポスターを張って歩くわけでございますから、そういう者に報酬を出すことは法律に照らして疑義があると思います。ただ公選法で予想しております労務者は、ポスターをどこへ張るか、そういう指図は運動員から受けてやるべきものだと思います。そういうようなことは現実にはいろいろ問題があるかもしれませんけれども法律考え方解釈といたしましては、私がただいま申しましたように考えざるを得ないかと思います。
  22. 林博

    林委員 今の御解釈は私としては納得できないのです。しかし、裁判所なり法務省がそういう見解をとっておるらしいということは、私も最近になってわかった。こんなことは一般の人はわからない。最近になって選挙局長なんかからいろいろお聞きして、そういう統一的な解釈をとっておられるということが初めてわかったのです。私も長年弁護士をやっておりまして、法律専門で通っておりますけれども、最近になってそういうことが初めてわかったのであります。そのように日本の選挙法は難解で、一般の人にはなかなかわからない。選挙というものはこわいものだという概念が植えつけられているわけです。選挙制度審議会が、買収等悪質な事犯というような字句を使っておられるけれども買収等悪質な事犯と言われるその言葉の中に、今言ったような労務賃運動報酬との限界線がむずかしいというようなことを認識なさってこの答申をなさっておるのかどうか、私は非常な疑問を持っております。この点については今お尋ねいたしませんが、非常に疑問がある。むしろ私は選挙制度審議会委員の方をこの席上に呼んで、私の口からいろいろお尋ねしてみたい、またお教え願いたい、このように思っておるわけであります。  これに関連してもう一つだけ、先ほど事務員ということが出ましたが、今度の改正法には、確かに労務者の中に、カッコして、「選挙運動のために使用する事務員を含む。」こういうことになっていますね。事務員を含むという意味をつけたことは、これによって何か従来と特別に解釈が違ってくるのですか。私は実益がないと思うんですが、これはどういうことなんですか。
  23. 松村清之

    松村(清)政府委員 そこで書き上げました事務員というのは、選挙事務所の中で、帳簿をつけたり、そろばんをはじいたり、そういう室内において事務をとっておるものを考えたのでございますが、こういうものについては、従来、おそらく労務者報酬というものが支給されておったかと思います。また、法律上も、そういう人に労務者報酬を支払えるという解釈になっております。ただ労務者という中にそういった事務員が入るかどうか、こういう疑問も一部の意見としてございましたので、この際はっきりいたすことにいたしまして、含む、こういうふうに今度いたしたわけでございます。
  24. 林博

    林委員 私は、今の議論は違うと思うのです。この事務というのは、機械的事務でしょう。従来の労務者観念に入っていますよ。われわれも従来の労務者観念に入れています。裁判所でも入れてくれると思うのです。たとえば、はがき書きをするとか、純然たる事務、これは機械的な事務です。労務者の中に入ると思うのです。そういう解釈で少しも疑問はありません。ただ、われわれが事務々々ということを言い、また要望しておったのはどういうことかと言うと、たとえば出納責任者、ここにいう事務員の中には出納責任者は入っていないでしょう。まず、その点から伺いましょう。
  25. 松村清之

    松村(清)政府委員 出納責任者は入って一おりません。
  26. 林博

    林委員 私が問題にしますのは、出納責任者というものは、とにかく二十日間事務所にいっ切りで、選挙にかかり切りなんです。大へん重大な職務なんです。ところが、今の選挙法では、ただやれ、こういうことになっておりますね。私は、これはおよそ時代離れしておると思うんです。こんなことでは、出納責任者を私が見つけようと思っても、見つけようがないのです。何かの機会に埋め合わせをするか、もぐって何とかするか、あるいは何かで恩を売っておくか何かするものを使わなければ、ただで二十日間働くような人はありませんよ。われわれだって、政治に関与して歳費をもらっているのです。審議会委員諸君だって、審議会に出れば、おそらく日当というものが出ると思う。今はだれだってそうなんです。捜査官だって、捜査をやるには、ちゃんと予備費から出ているじゃないですか。それを、選挙運動をする者だけ、二十日間ただやれ、選挙運動ただやるものだ、これは一体どういうことなんでしょう。私はそんなことで選挙はできるはずはないと思う。正当な報酬というものは当然払っていいのじゃないか。また、選挙事務に携わる者でも、たとえば登録するとかなんとかして、正当な報酬というものは当然認めるべきものじゃないか。こういうことを考えることによって初めて選挙公明ということができるんですよ。だから、選挙事務長に手当を払うとか、あるいは労務者報酬運動報酬限界を厳密にするとか、こういうことをやることによって初めて、選挙法を守っていこう、ほんとうにこの選挙法通りにやっていこうということを私ども考える。ところが、これが含まれていないのです。一体、自治大臣はこういう点に対してどうお考えになるのですか。
  27. 安井謙

    安井国務大臣 私もその点は非常に御説のような点に疑問を持ち、また御説のような点がわかるのであります。選挙事務を二十日も一月もやっておりながら、特殊の選挙事務に携わる人だけは無料でやることを強要することが、はたして今の時代思想に合っておるかという点については、非常に疑問を持ちます。しかし、実際に選挙運動をやるいわゆる事務長あるいは出納責任者というようなものは、機械的に、あるいは赤の他人じゃできない仕事だろうと思います。具体的に言って——はたして当たるかどうか知りませんが、区会議員であるとか町会の有力者で、こういう人を政治的にかつぎ出そうということで政治的に働いておるような人には、今日までの選挙法観念では報酬は出せないし、またこれは出さないということは、議論の余地はありましょうが、やむを得ないことではなかろうかと思います。しかし、そのほかの事務ほんとうにとっている人はだれでもただで働けというふうに押しつけることは、御承知のように、むしろ非常に好ましくない傾向を呼ぶと思いますので、そういった点で、純事務的な部面についてはやはり実費弁償というものを与えるべきだ、また出すべきだというふうに今度の建前はやりたいと思って、この内容も、そういうような意味では区分を明確にしたい、こう思っておる次第で、従来の純労務者といわれておるものから逸脱してよく誤解を招くといった点については、少なくとも常識の判断の線で相当この規定を明らかにして、これは実費弁償あるいは労務報酬だということの実態を明らかにしていきたい、こう考えております。
  28. 林博

    林委員 区会議員だとか、そういう人が出納責任者になっているからいいのじゃないかというようなお話ですけれども、われわれだって、国会議員として名誉職といっているわけです。ほんとうはからだを国にささげているわけです。それでもやはり歳費をもらっている。また、歳費をもらわなければやっていけないわけです。出納責任者だけそういう費用を出さないということは、どこかに反対の根拠があるんじゃないか、あるいは反対しているところがあるんじゃないか。私の聞くところによりますと、選挙制度審議会の小委員会においては、こういう費用を認めるという結論が出たと思う。私は、非常にけっこうなことだ、これで選挙公明化になるんだと思っておったら、ところが委員会の方で、否決された、こういうのです。どういう理由で否決されたのでしょうか。どういう理由で、私は最善だと思うこの小委員会の決定が否決されたのか、その点について伺いたいと思います。
  29. 松村清之

    松村(清)政府委員 お話のように、選挙制度審議会審議過程におきまして、この問題につきましては両論がございました。一つは、今日の社会経済情勢から考えて、総括主宰者出納責任者、そのほか一定の数を限った選挙運動員に対しては報酬を支給すべきであるという意見と、それからもう一つは、これと反対に、選挙運動というものは本来自発的に行なうもので、他から報酬を受けて行なうべき性質のものではない、これは現行法考え方でございますが、そういう両論が対立いたしまして、審議のある過程におきましては、報酬を支給すべきであるという論の方が優勢であったのでございますけれども最後答申におきまして、現行法建前であるべきだという論の方が有力な結論を得たのでございます。ただ、この場合におきまして、出納責任者報酬を支給すべきだという論は、最後に否決はされましたけれども、これはほんのごく少数の差でございまして、選挙運動員に対する報酬はともかくとして、出納責任者には報酬を支給すべきだという論はかなり有力であったのでございます。しかし、最後は両方とも現行法建前結論が出た、こういう事情でございます。
  30. 林博

    林委員 ただいまの御説明を承っても、どうも何ゆえ削ったかという論拠ははっきりしないわけです。しかし、私がちょっと、耳にしたところによりますと、こういう出納責任者その他について費用を支給するということは法務省筋反対だ、捜査当局反対なんだというお話もちょっと聞いたのですが、こういう事実がございましたか。
  31. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは率直に申しまして、政府部内におきまして、法務省は、この問題につきましては、従来から強く反対をいたしております。
  32. 林博

    林委員 その法務省捜査当局反対するという論拠はどういうところにあるのでしょうか。
  33. 松村清之

    松村(清)政府委員 ちょうど、先般、去年の通常国会で参議院の選挙の特例法が出ました場合に、この報酬の問題がその法案に入っておったわけです。これについて政府意見を尋ねられた際に、これは公式とまでは言えませんけれども法務省の見解といたしましては、ただいま私が述べましたように、選挙運動候補者またはその推薦者等が本来自発的に行なうべきもので、単なる労務とは異なり、他からの強制により、あるいは他から報酬を受けて行なうべき性質のものでないことは、従来一般に是認された見解であり、今後とも維持されるべきものと考える、従来選挙運動報酬の支給が買収罪として重く罰せられるのもこの趣旨に出たものであることは言うまでもない、こういうことを言っておりますが、法務省も必ずしもこれをかたく主張しておるのではなくて、たまたまこの参議院の特例法のような法案でこういうことをやるのが筋としていけないということを考えておりまして、従って、そのあとで、こういう選挙制度の根本に関する問題は、選挙制度審議会等の慎重な審議を経て行なうべきである、従って法務省も、選挙制度審議会審議の結果出た結論であるならばこれに従う、こういう意見でございますけれども、内心この制度に賛成であるということは私も言えないのじゃないかと思います。
  34. 林博

    林委員 これ以上選挙局長捜査上の必要によるものかどうかお尋ねしたって、これは選挙局長には答弁できないことであって、私は、機会があったら、きょうでなくてもいいですが、法務省一つよく聞いてみたいと思います。はたしてそれが捜査上、そうしなければ捜査ができないんだということであれば、捜査のためにそういうことをするということは、私ははなはだ遺憾だと思うのです。やはり選挙というものは、公明選挙をやるために選挙法というものがあるのであって、ただ単に捜査をやりよくするためにそういう規定を設けるというようなことは、全くこれは言語道断だ、こういうように思うのですが、それは法務省に私は伺うことにいたしまして、その点はこれでやめます。  それからさらにお伺いをいたしたいのですが、これは先ほど触れたのですが、連座制の問題についてちょっと触れたいと思います。この審議会答申案によりますと、連座制の失格するものを三つ加えたわけですね。その中に、買収等悪質な事犯、こうなっておるわけです。ところが、審議会の方々は——これは審議会委員の方々じゃないとわからないわけだけれども審議会の方々は、先ほど私が申し上げたように、労務者報酬運動報酬限界が非常にむずかしい、その範囲をちょっとこえたもの、たとえば三日間の労務費を払うのを五日間払ってしまった、これは買収だというような見解で処罰されることがあるわけで、これで略式命令を受けた、そういう場合は失格するのだ、そういう場合もやはり買収であり、悪質な事犯に入るのだというそういう御認識の上にこの答申を出されたのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  35. 松村清之

    松村(清)政府委員 その点につきましては、審議会のことでございますから、私もどうであったということをはっきり申し上げかねますが、私の推測では、ここで買収等の悪質犯といっておりますのは、買収、供応、その他新聞の不法利用、こういうことが連座の対象になるという現行法規定をそのまま引っぱってきて答申に持ってきたのではないか、そういうふうに考えております。
  36. 林博

    林委員 これは審議会の方にお尋ねしてみなければわからないのですが私が安井自治大臣に非公式にお尋ねしたところによると、何かそういうことに対する認識が当初は自治大臣もなかったのではないかと思われる。これは失言かもしれませんが、そういう節もあるわけなんです。そこで私は、おそらくこれは買収等悪質な事犯——かりに労務費が五日分で千七百五十円、そのうち二日分超過しておったというようなことで略式命令の罰金を受けたというような場合を含めないで、悪質な買収事犯という考え方ではなかったかというふうに推測されるわけです。これはわかりませんけれども——そこで私は、出納責任者とか総括主宰者、これはわずかな罰金であっても受けた場合には、失格してもやむを得ないと思いますが、たとえば親族規定とか、あるいは地域の主宰者、このような場合には非常に弊害が出てくるのではないかというようなことも考えております。政府におきましてはこういうような点も考えられたのでしょう。親族等については制限し過ぎるほどの制限をいたしてしまった。それでそういう点を考えられたことと私は思うのです。ところが、(「ざる法なんだよ」と呼ぶ者あり)ざる法かもしれないけれども、一方において、親族現実においては確かに答申案よりも後退している。ところが、地域の主宰者の点においては、後退どころか、前進していると思うのです。これは後ほどお聞きしますが、親族規定部分についてちょっと法律上問題になると思われますのは、親族規定で「(第四号に掲げる者については、これらの罪を犯し禁錮以上の刑に処せられ、その刑につき執行猶予の言渡しを受けなかったとき)」とありますね。ところが、執行猶予というのは、その犯罪だけが悪質か悪質でないかだけによって言い渡されるということではないのです。かりにその被告人に前科があった場合、かりに軽微なものであっても、これは法律上言い渡しができない場合もあるわけです。そうしますと、選挙違反が悪質であるか悪質でないかということにかかわらず、そのひっかかった当人が前科があるかないかということによって、選挙違反内容の実態ではなくして、そういう偶発的な事犯というような被告人個人にかかわる理由によって、本人が失格するかしないかということが決定されるようなことになってしまうのですが、こんなことでいいのでしょうか。
  37. 松村清之

    松村(清)政府委員 そういう場合もあるかと思いますが、おそらく大ていの場合におきましては、やはその罪のり状況を考え裁判所は判決をするだろうと思います。また、親族連座につきまして、親族なるがゆえに連座にかけないということで何かのしぼりをするといたしますならば、私ども考えられるところでは、その辺の規定考えるより道がなかったわけでございます。
  38. 林博

    林委員 私はこれは実におかしいしばりだと思う。これは法律上実にへんちくりんだと私個人は考えております。私は今一つの例しかあげなかったのですが、こういう例をあげれば、この法律がおかしいということは幾らでも言えますが、この点はやめておきます。  それから、今まであまり議題にはならなかったのですが、連座規定の中で「数箇に分けられた選挙区(選挙区がないときは、選挙の行なわれる区域)の地域のうち一又は二以上の地域における選挙運動を主宰すべき者として公職の候補者又は第一号に掲げる者から定められ、当該地域における選挙運動を主催した者」こうなっていますが、数箇に分けられた選挙区」であるとか、「選挙区がないときは、選挙の行なわれる区域」というのは、一体どういうことなんですか。
  39. 松村清之

    松村(清)政府委員 「数箇に分けられた選挙区」と申しますのは、選挙区を数箇に分けるということで、数箇という意味は、二以上五つか六つ、七つか八つ——これは十をこえることはないと思います。十をこえれば数箇とは言えませんから、そいうことは社会通念によってその場合に具体的にきめられなければならないと思いますが、「選挙区がないとき」というのは、たとえば参議院の全国区のような場合におきましては、これは全国の地域にわたって今申しましたような二つ以上の選挙地域に分ける、こういう意味でございます。
  40. 林博

    林委員 この「数箇に分けられた選挙区」だとかなんとかいうことは、どうも今説明を聞いても、さっぱり何のことかわからぬのです。実際何のことかわからぬです。私ども考えたってわからない。たとえば私の選挙区で六区ありますと、荒川区一区をいうのか、あるいは南千住の町をいうのか、あるいは三河島の町と南千住の町と含めたものをいうのか、さっぱり明らかでない。具体的に言うとどういうことになるのですか。ほんとうにこれじゃもう法律の形をなしてないと思うのですがね。
  41. 松村清之

    松村(清)政府委員 選挙区を分けない場合は、これは選挙区は一つで、区域は一つでございますが、これを二つに分ける、その区域を二つに分けた場合、その場合はこれにすでに該当するわけですが、二つに分けた場合、その一つまたは二つ以上ですから、その一つの地域においてこういう選挙運動を主宰すべき者ときめられて主宰した者、三つに分ける場合、四つに分ける場合、いろいろあるかと思いますが、要するに、一般的にこの地区責任者、こういうふうにいわれておる者がこの規定に該当するわけでございます。
  42. 林博

    林委員 私はそんな分け方ではこれは全く納得できないと思うのです。選挙制度審議会答申によりますと、相当広範剛にわたって運動を主宰した者という言葉が使ってあるわけですね。私は、相当広範囲にわたってということはどういうことだといって、前に非公式にお尋ねしたところが、選挙区を二つまたは三つに分けた場合だというお話だった。だから私は、おそらく選挙制度審議会答申意味は、選挙区を二つか三つに分けた場合だろうというふうに考えておったところが、この条文を見てみますと、そういう意味じゃないのですね。これでは十でも十一でもというふうに考えられる。そうすると、はるかに答申より行き過ぎているじゃないですか。そう思いませんか。ずいぶんおかしな規定だと思うのですがね。
  43. 松村清之

    松村(清)政府委員 今申しましたように、「数箇」というのは、これは十をこえるものは数箇とは言えないと思います。これはやはり二つ以上から五、六、その辺を数箇というべきで、十をこえれば数箇と言えないと思います。
  44. 林博

    林委員 どうもまだあいまいもことして、私は納得できないのです。納得ができないのですが、それでは見方を変えてみまして、これを脱法しようと思えば、ひっかかる人はないわけですよ。候補者または総括主宰者が地区の責任者等を置かなければいいわけなんです。この法律ができたら、私は、お前ここの責任者になれなんという候補者はないと思うのです。これは私も作りませんよ。ここの責任者になれなんと、言って、それが千円くらいの罰金をとられて失格したのではかないませんからね。
  45. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは作るか作らないかは候補者自身のお考えで、私どもとしては別にどうという考えを持っておりません。
  46. 林博

    林委員 ところが、ここに私は一つ問題があると思うのです。なるほど、候補者総括主宰者は地区責任者は作らない、こう思うのです。作らないと思うけれども、私は、ただ一つ、この規定があぶない、行き過ぎになると思われるということを心配しておるのです。それは参議院の選挙のような場合に、または東京都の参議院の選挙、あるいは私どものような広い選挙区の場合に、出納責任者は一人しかいないわけですね。選挙事務所全国参議院は十数個余りある。これらの支出方法です。出納責任者が一人しかいないところで、出納責任者が全部金を出すわけにいかないでしょう。これらの支出方法が、法律上はどうして支出するのが合法的であるか、また現実にはこの金がどういうふうに支出されておるのであろうか、この点をお尋ねいたします。
  47. 松村清之

    松村(清)政府委員 法律的には、出納責任者が直接支払うか、あるいは遠隔等の地にあります場合には、出納責任者の文著による承諾を得て支出する、これは法律建前でございます。ただ、実際上どういうふうに支払うかということになりますと、私も選挙運動の実態をつまびらかにいたしておりませんので、お答えすることはできません。
  48. 林博

    林委員 自治大臣選挙の経験者でございますから、自治大臣にお尋ねしますが、自治大臣東京都の選挙区で、自治大臣支出承諾書を使っておられますか。それとも、…出納責任者から直接金を払っておられますか。それとも、各現地で代払いをしておいて、それをあとで受け取りを持って出納責任者のところへ請求に来ておられるか。
  49. 安井謙

    安井国務大臣 これは私個人の選挙の問題になりますが、これは代理出納者を置くという形を原則として、それは数は非常に少ないのですが、遠隔の地にはとっております。それから、きわめてまれに立てかえ払いという場合も起きてくると思います。
  50. 林博

    林委員 これは私は現実には代払いだと思うのです。全国区の選挙区の場合なんか、選挙事務灰でみな代払いをして、それを最後出納責任者に集計しておるというのが現実ではないかと思うのです。ところが、これは違法なんですね。選挙局長、どうですか。
  51. 松村清之

    松村(清)政府委員 違法かどうか、相当の問題があろうかと思います。
  52. 林博

    林委員 今の選挙局長の答弁、私は非常に不満なのです。私は選挙法に明らかに反すると思うんですよ。選挙法において、支出選挙出納責任者か、あるいは百八十七条によって、文書による支出承諾書がなければ支払いができないことになっておる。それ以外は違法ではないのですか。そういうことを選挙局長は一体認識がないのですか。いま一度御答弁願いたい。
  53. 松村清之

    松村(清)政府委員 法律上は、ただいま私が申し上げたように、出納責任者がみずから支払うか、出納責任者が支払いの文書による承諾書を与えてやるか、この二通りでございます。
  54. 林博

    林委員 私は、選挙局長が代払いを認められるような認められないような答弁をされたことは、非常に遺憾なのです。というのは、支出承諾書というものがなぜあるかというと、出納責任者のところに法定選挙費用というものがある、支出承諾書を与えなければ、出納責任者のところで総額がつかめないのではないですか。代払いしておったら、幾ら代払いされたかわからない。それを集計されたときには超過しているかもしれない。そのために支出承諾書というものを出して、各選挙事務所なり地区の責任者に渡しておる。これが私はほんとう選挙だと思う。これをやらなければ、公明選挙になりっこないのではないですか、自治大臣
  55. 安井謙

    安井国務大臣 今の選挙局長が代払いということを認めたような言い方をしておるのは、私は今のは勘違いだと思います。出納承諾書をもらって、かわりに払うという意味で局長は答えたと思うのです。これは聞き違いの誤解だと思いますから……。
  56. 林博

    林委員 それならけっこうです。しかし、現実には私は支出承諾群というものは出てないと思うのです。代払いでやって、あとで請求しておるのではないかと思うのです。そこに選挙腐敗の原因があると考えている。ところが、もとに戻るのですが、この連座制の規定の場合に、一つまたは二つの地区における云々ということがありますね。これは総括主宰者か、候補者が定める場合なのですが、しかしながら、現実にはその支出承諾書というものは地区の責任者に渡されていると思うのです。これはただ概括的に渡しただけではいけない。御承知のように、金額を限定し、そして使途を限定して渡せば、概括的でもいいという解釈になっておりますね。ただ、判例には、概括的にただばく然と渡してはいけない、金員の使途を限定して渡せばいいということになっておる。ところが、現実には私はこれは地区の責任者に渡されると思うのです。候補者総括主宰者でなければ、だれに、どこに、どのくらいの費用が要るかということがわからないのです。そうしますと、連座規定の場合の、二百五十一条の二の三号に今言われたような「数箇に分けられた選挙区」というような規定があるわけなのですが、その支出承諾書を与えられた者が、これは大ていの場合、候補者も知っているその地区の主宰者と認定される場合が私は多いのではないかと思うのです。そうお考えになりませんか、自治大臣
  57. 安井謙

    安井国務大臣 そこでこれは程度の問題で、やはり規定されなければならぬと思うのです。つまり、臨時にそこでの一部についての支払いを委任したといったような場合に、これをそこの責任者と見るわけにはいくまいと思います。でありますから、別の方の側から、出納責任者にかわって出した金を扱った者については、その金額の限度が、別に過半数というふうにうたってあるわけでございます。  ついででございますが、これは議論が生ずると思いますが、地区を分けるといいますと、たとえば東京でいえば、今の林さんのところが六つ区があるという場合に、おおむねそれぞれの区に責任者というものが置かれるであろう、そういう場合、その責任者が、やはり総括主宰者にかわるべきものとして該当するというのが、常識の線であろうと思うわけであります。
  58. 林博

    林委員 大体こういう法律ができてしまいますと、私どもは地区の責任者というものは置かないと思う。置かないと思いますけれども現実には支出承諾書を出しますね。その支出承諾書を出した者が責任者と、捜査当局なり裁判所で認定される確率が非常に多いわけです。ところが、その支出承諾書をもらった者が、今言った労務費で多少の超過払いをしたということで罰金を受けた、そうすると私が失格してしまうのです。かりに私が選挙法通りにやろうと思って、一生懸命支出承諾書を出してやると、出先においてちょっとした間違いで千円くらいの超過が出て、五千円なら五千円の罰金を受ければ、私は失格、こういうことになってしまう。そうしますと、現実にはどういうことになるかというと、支出承諾書なんか出すよりも、むしろ出先で払わしておいて、こっちへ請求させればいい、そして地区の責任者さえきめなければ、自分が失格することもない、こういうことになってしまう。そうしますと、この規定を設けたために、実際に支出承諾書を使う人は今でも少ないのに、ますますなくなってしまいはしないかということを私は考えるわけであります。こんなあぶなっかしいものを出さないで、それよりも、代払いさせておいて、こっちへ請求をさせた方がいいじゃないか。しかし、これは違法です。そういう違法を奨励させるような規定になりはしないかということを心配するのですが、その点はどうですか。
  59. 安井謙

    安井国務大臣 お話のような危険もありますし、さらに、これはいずれ細則なり政令で内容はきめなければならぬと思いますが、たとえば、間違って千円とか二千円とか過払いをした、多少意識はあったにしましても、そういう場合の事実上の責任は、これは出納責任者にかわるべき責任という意味で、その人が全体の法定費用の過半数を支出したような人であった場合、こういうふうになっておりますから、実際上当てはまる場合はきわめて少ないと思います。
  60. 林博

    林委員 実際上は当てはまる場合は少ないというけれども、私は支出承諾書を出すから一真剣に心配しておるわけです。支出承諾書を出して、出先でちょっとした間違いで罰金を取られた場合、自分が失格するのですから、これはほんとうに心配な問題だと思うのです。
  61. 松村清之

    松村(清)政府委員 実際問題としては、裁判所の認定になりますから——いろいろ問題があるかもしれませんが、法律的には、ここに書いてありますように、公職の候補者または第一号に掲げる者、すなわち総括主宰者から「定められ」ということがあるわけです。「定められ」とあると、もう意思が完全に通じておるということがなければいけませんので、従ってこの法律には御心配の点がないようになっております。ただ、その意思があるかないかを裁判の過程でどう実際に判断されるか、そこに問題がかかってくると思います。
  62. 林博

    林委員 私も、これは出納責任者が、責任者と定めた場合でない、候補者なり総括主宰者が地区の責任者と定めた場合だということは承知しております。ただ、裁判なり捜査過程——候補者が知らぬものじゃない。現実に知っていますよ。どこの地区に支出承諾書を出しておるということは、候補者が知っていなければ出っこないのですから。これは実際問題としては、選挙法を守ろうという意図のある人にとっては大へんな規定です。頭から無視して、支出承諾書なんか出すばかがあるかという考えを持っておられる方には、痛くもかゆくもない規定だというように考えております。これ以上追及いたしませんが、ほんとうにこの法案を通すならば、そういう点を私ども真剣に考えていかなければならないということを考えておりますし、大臣もこの点よくお考え願いたい、このように思っております。  時間もだいぶ迫りましたから、まだ質問する機会があると思いますので、あと一点だけ簡単にお尋ねしたいと思いますが、事前運動の演説会というものを認めましたね。百回ですね。私は、これは大へんな間違いだというふうに実は考えております。まずお尋ねしたいのは、事前運動の演説会のポスターについては、枚数の制限がありますか。
  63. 松村清之

    松村(清)政府委員 枚数の制限はいたしておりません。
  64. 林博

    林委員 これは、かりに百回、五百枚ずつ選挙中と同じように張ったとして、五万枚になりますね。ところが、現実には、選挙前になると、一区に二万枚くらいずつビラを張る人があるのです。六区なんか十二万枚も張る人がある。私が計算してみたら、十二万枚のビラを張るには、いろいろな費用をまぜると二百万かかりますよ。まさか一回の事前運動に二万枚ずつ演説会のポスターを張らないだろうけれどもポスターの制限もない、演説会も野放しに百回までやれば、金を持った人はべたべたポスターを張りますよ。選挙局長は、ポスターを制限しなくても、今度選挙費用に算入されるから、そちらの力で抑えられるのじゃないか、おそらくこう言うかもしれないけれども、そのときには選挙対策本部なんかできておりません。平時なんだから、警視庁でも法務省でも、ポスターを五百枚張ったか、二万枚張ったか、枚数を一々数えることはしないわけです。だから、抜け道を考えようとすれば考えられる。これは私がやったというのじゃない。私も捜査に携わったことがあったから、その経験上言っているわけです。そういうわけで、ポスターをべたべた張って、百回演説会をやってごらんなさい。何千万という金がかかりますよ。必ずかかります。それで、選挙制度審議会は、公明選挙で金のかからない選挙をやるのだということをモットーとしておられるだろうけれども、私ども考えるところでは、べらぼうに金のかかる選挙になると思う。しかも選挙中の法定費用は、先ほど言ったようにろくに使えないで、事前運動費は野放しだという結論になってしまう。私は、こんな事前の演説会などというものは断じて廃止すべきものだという意見でございますが、いかがでございましょうか。
  65. 安井謙

    安井国務大臣 今のポスターの無制限という点でありますが、これは今の事前選挙演説会を許すことと、ポスターの今御指摘のような点は、もっと具体的な面で検討してみる必要があると思いますが、今の法律があろうとなかろうと、平時においては、ポスターをむやみに張っておるという例は非常に多いのであります。ですから、今のような枚数制限のようなことについては、もう少し検討してみます。検討してみますが、しかし、そのために非常に弊害が起きるというふうには考えません。現に、すでにその意図のもとにむやみに。ポスターを張ってあるというような例は、東京都内にもたくさんあるわけであります。
  66. 林博

    林委員 それはおかしいと思うのです。私はこの法律ができた結果、雨後のタケノコのように演説会をやる者が出てくるのじゃないかと思う。それは現職議員はないですよ。現職議員はないけれども、そうでない人は非常な選挙運動が出てくるのじゃないかと思う。今だと事前運動とみなされるというので、多少遠慮している気味があるのですよ。それを大っぴらに許されたということになれば、金を持っている人はむやみに演説会をやって、むやみにポスターを張り、チラシまでまくということですから、大へんなことになると思うのですが、大臣はそうお考えになりませんか。
  67. 安井謙

    安井国務大臣 私は、選挙と相当離れた期間に、今の演説会をやるためとか、あるいはスローガンを周知徹底させるために、あるいは現職議員であろうとなかろうと、現在やっている限り、これは非常に常識を逸脱した者は別でありますが、それはほとんどの人が現在やっておられますし、そのやっている点については、今事前運動の中には入れられていないと考えております。現にあらゆる面でやっている例はたくさんございます。
  68. 林博

    林委員 ただいま島上委員から教えられたわけですが、これは六十回でしたね。私もそう言われて気がついたのですが、寺中では、前後を通じて百回ですが、それを答申と違って事前に百回ということにされた根拠ですね、どういうところを根拠としてそういうことをされたのか。私はとんでもない話だと思う。
  69. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは御指摘のように、答申では、衆議院と参議院の地方区は選挙運動期間中を通じて百回、ただ、参議院の全国区は事前に百回、こうなっております。それで、事務当局でこれを法律化する過程におきまして——いろいろ選挙をあちこちくらがえするわけですね。そこで、やはり歩調をそろえておく方がよかろう、歩調をそろえるには、言論、文書を緩和すべし、事前運動はむしろ自由でもいいじゃないかという、審議過程もありましたので、多い方へ歩調をそろえたのでございます。
  70. 林博

    林委員 審議会の方々は、事前運動の演説会にどのくらいの金がかかるかということがわからないのだろうと思うが、ここにおられる代議士の皆さんはよく御承知だろうと思うのです。私はこういうことには反対なんです。しかしながら、私は、今回の選挙法全体を通じてただいま三点しか質問しなかったので、あとは後に社会党案が出る機会まで質問を留保したいと思うので質問をやめるわけでありますが、しかしながら、この選挙法にはほんとうに疑問の点が多い。私は決して前進はしていないのじゃないかという疑念を多分に持っていることを申し上げまして、時間も参りましたので、私の質疑を終わります。
  71. 加藤常太郎

    加藤委員長 本日はこの程度とし、次会は公報をもってお知らせすることにいたしまして、これにて散会いたします。    午後零時十二分散会