運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-14 第40回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)    午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 加藤常太郎君    理事 青木  正君 理事 高橋 英吉君    理事 竹山祐太郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 坂本 泰良君 理事 島上善五郎君    理事 畑   和君       荒舩清十郎君    仮谷 忠男君       薩摩 雄次君    首藤 新八君       中垣 國男君    林   博君       福永 一臣君    太田 一夫君       坪野 米男君    堀  昌雄君       山中日露史君    山花 秀雄君       井堀 繁男君  出席国務大臣         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君     ————————————— 三月八日  委員西村直己君辞任につき、その補欠として首  藤新八君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 二月八日  旧沖繩県の地域における公職選挙法適用の暫  定措置に関する法律案田畑金光君外二名提出、  参法第六号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公職選挙法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一〇八号)  国会議員選挙等執行経費基準に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇九  号)      ————◇—————
  2. 加藤常太郎

    ○加藤委員長 これより会議を開きます。  公職選挙法等の一部を改正する法律案、及び国会議員選挙等執行経費基準に関する法律の一部を改正する法律案一括議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。丹羽喬四郎君。
  3. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 公職選挙法等の一部を改正する法律案のうち、ただいま問題になっております二、三の点につきまして自治大臣の御見解を承りたいと思う次第であります。  この法律案制定につきましては、すでにたびたび新聞紙上に伝えられ、政府におきましては、六カ月の間調査会慎重審議をされましたその答申に基づきまして、公明で合理的、適正な選挙法に改正したいというので御提案になった次第でございますが、ややもいたしますと、世上、一部であるかもわかりませんが、答申案に対しまして政府案の方が後退をしているのじゃないかというようなことが論議されておる次第でございます。その最も大きな点は三点で、一つ選挙資金の規正の問題であり、一つ連座制強化の問題、もう一つ高級公務員立候補制限の問題であるということをいわれておるのでございます。私に与えられました今日の時間は非常に短いものでございますから、ほかは省略いたしまして、ことに連座制の問題につきましては、同僚の高橋委員から先般総理大臣に対しまして質疑がなされ、それに対する答弁も得ておる次第でございますので、私は自治大臣に対しまして、主として高級公務員立候補制限、それが今日の自治省原案におきまして、いわゆる公務員全般にわたる準備行為その他の禁止による罰則の強化、また連座制適用というふうになりました経緯、また、いかにしてこういうふうにしなければならなかったかという点につきまして若干お尋ねをいたしたい、こう思う次第であります。  まず第一に、高級公務員立候補制限というものは、前から問題になっていたことでございまして、最初にこれが取り上げられましたのは、たしか昭和二十三年ごろでございましたか、いわゆる県の知事、副知事あるいはまた、市長、助役、こういったものが、その当該地区の衆議院、参議院選挙立候補いたします場合に、許可、認可を乱発いたしまして選挙運動を有利にする、それがために、こういった方面の高級公務員立候補制限をしなければならぬということに端を発しておるように思われる次第でありますが、それが今日におきましては転換して参りまして、知事とか市長というものは選挙によって得た特別職であるから、これらの者は除く、そして選挙によらない一般公務員、しかも高級公務員立候補制限をしよう、しかも、これの一番大きな弊害は参議院全国区にあるのであるから、全国区の高級公務員立候補制限したらどうだというふうに、漸次議論が変わってきたように私ども存じておる次第でございますが、しかしながら、この問題につきましては、昭和二十三年と申しますと、たしか第三、第四国会ごろでございましたか、そのころからの議論でございます。これらの問題は、当時から憲法違反疑いがあるということが国会論議におきましても活発に論じられまして、参考人、学者その他が、これは憲法違反疑いがあるということで、これはついに上程の日を今日まで見なかった次第でございます。また、さきに岸内閣のときでございましたか、選挙制度調査会答申にも高級公務員立候補制限が出されましたが、時の自治庁におきましては、やはり憲法違反疑いありといたしまして、これは成文化しなかったように私ども存じておる次第でございます。しかしながら、再び、今回審議会答申におきましては、これがやはり答申内容といたしまして、今言いました三つの眼目のうちの一つとして取り上げられました。政府におきましては、やはりこの問題は、削除されたと申しますか、内容が変えられまして御提案になった次第でございますが、これにつきまして、自治大臣は、高級公務員立候補制限は、やはり従来通り憲法違反疑いがありといたしましてこれを削除になった次第でございますか、ほかの代案考えた次第でございますか、それともまた、世上一般に伝えられておりますような、立法技術の点からいたしまして難点がありとしてこれが削除された次第でございますか、その点につきましてお伺いをいたしたいと思う次第でございます。これをもう一つ詳しく申し上げますと、いわゆる憲法違反疑いありというのは、憲法第十四条並びに四十四条の平等原則に反するものであるということを主といたしましてこの際代案をお考えになったものであるか、あるいはまた、立法技術上からこれが非常にむずかしくなったものであるか、その点できるだけ一つ詳細な御説明大臣からお願いしたい、こう思う次第であります。
  4. 安井謙

    安井国務大臣 お答え申し上げますが、高級公務員についての立候補制限というものが答申内容であったことは、お話の通りでございます。これにつきまして、政府立法化をいたします際にこれをさらに広げまして、荷扱公務員に限らないで一般公務員にまで広げた、こういう点についての御質問だと存じます。まず第一に、これは憲法上の考えから扱ったかどうかという点でありますが、これは今も御指摘憲法第十四条の、何人も法の前には平等でなければならない、地位身分等によって差別待遇をされてはいかぬ、こういうこと、あるいは選挙被選挙権については平等の権利を持つという、四十四条といったようなものも、十分これはこの法律を制定いたします際の検討の基礎には相なると思うのであります。そこで、ただ私どもは、地位を利用して高級公務員がもし不当な選挙運動をやるということに相なって、それの範囲なり問題が明確になっておれば、そういう部分に対する規制というものが必ずしも憲法違反になるものとも考えないのであります。しかし、単に高級公務員なるがゆえに、こういうことに相なりますと、これは私は明らかに憲法上にも相当の疑念を持ち得るものではないかということを考えまして、種々検討いたしました結果、一定の公務員だけを指定することができるかどうかということにつきまして、技術的に検討いたしたのでございます。これは非常に技術的に無理でございまして、かつて何人かの地位にあった者がそういった非難を受けるような行為があったといわれるようなことは、あるいは事実であるかもしれませんが、それがあったからといって、それじゃその地位にいった何人も全部がこれををやるのだときめてしまうということは、これはいかがなものであろうか。また、それじゃそれ以外の地位では今後絶対にそういった問題が起こらないかどうか、こういう保障もあり得ない。そういたしますと、従来の実績だけを基礎規定をするということも、非常にこれは実際上公平の原則を欠くということでございます。また技術的に考えまして、一部職名をきめましても、職制の改正といったようなものもございます。そうした場合に、職名が変わればどうなるのだ、これは運用上の非常な疑問もあるというような観点、全般的に高級公務員なるがゆえにこれを全部制限するということは、私は憲法上の問題が生ずると思います。一部を制限するには、今申し上げましたような非常に困難な事情等、公平の原則を欠くといったような問題が出て参ります。技術上にも非常にむずかしいし、運営上にもこれは実施がほとんどやれないというような判断に立ちまして、しかし同時に、公務員地位を利用して選挙運動をやるという点につきましては、世上いろいろな御批判もあるようでございますし、また答申も、むしろ精神は、そういった地位を利用するという点について重点があるものと心得まして、この全般公務員に対する選挙運動あるいは類似行為規制を今回はいたしたわけでございます。
  5. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 ただいまの大臣の御説明によりますと、全体の高級公務員立候補制限することは、憲法違反疑いがある、職名を限ってやる場合におきましては、これは憲法違反疑いはないけれども、しかしながら、立法技術上非常に困難だ、それがゆえに、最も公平な見地からして自治省案を出した、こういうことでございますか。
  6. 安井謙

    安井国務大臣 ちょっと今の職名を限るという場合で、こういう職名は明らかに地位を利用するのだということが明確になって、それが明らかな事実だといつでも断定し得るような場合ならば、これはこの職名を指定することもあながち憲法違反とは言えないかもしれませんが、しかし、それが実際はなかなか困難でございますので、そういった問題なしに指定をするということはなかなかできない、こういう次第であります。
  7. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 ただいまの御説明で私は了解をした次第でございますが、確かに大臣がおっしゃった通りに、明らかに制度といたしましてそれらの地位が悪質な選挙違反に利用されるということが立証づけられる官職であれば、いわゆる憲法違反の心配はないというふうに私たちも思う次第でございます。と申しますのは、すでに私から申し上げるまでもなく、要するに、被選挙権選挙権というものは、憲法第十四条、第四十四条にきめられました日本国民の最も大きな権利でございます。これを制限するということは、よほど大きな理由がなければ、ほんとうの意味で公共の福祉に反するという理由がなければ、これは制限をすることができないことは当然であります。今までの選挙法におきましても、要するに、選挙犯罪人であるとか、精神粍弱者であるとかいうような特殊なものだけが制限されておる次第でありまして、一般の者が制限を受けないことは当然であります。また一面からいいまして、国家公吏といたしまして、地方団体公吏といたしまして、あるいは公共団体の吏員といたしまして、一生懸命国家社会のために尽くし、そうしてそれで相当地位にしって全体の公共仕事をしておる者が、公共仕事をしておるがために得票が得られやすいといったようなことで、それで立候補制限を受けるというようなことは、私はこういう間違った議論はないと思う次第でございまして、おそらくは、私はよく外国事例は知りませんが、ほかのいわゆる選挙を行なっておるところの諸外国におきまして、そういったような、高級公務員に限って立候補制制限をしておるところがありますかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  8. 安井謙

    安井国務大臣 具体的な事例につきましては、局長からお答えいたします。
  9. 松村清之

    松村(清)政府委員 フランス及びイタリアにはそういう事例がございますけれども、これは憲法根拠を有するものでございまして、わが国の今の事情とは違っております。
  10. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 そこで私ちょっと重ねてお尋ねしたいわけでございますが、そういった問題でございまして、たしかこの前の選挙制度調査会におきましてもこのことが答申された次第でございますが、自治省におきましては、省議におきまして、これは憲法違反疑いありといたしまして、提案にならなかった次第でございます。ところが、それにもかかわらず、この審議会におきましては、この点につきまして再び触れまして、しかも今回は、これは憲法違反のおそれがあるという点を非常に考慮したと思う次第でございますが、その制限全国参議院選挙に限る、それから法律で指定した職名に限るということになっておる次第でございますが、大体法律で指定した職名ということにいたしまして、その職名範囲につきましては、立案者である自治大臣の方に委任したという格好になっておる次第でございますが、しかしながら、向こうで想定いたしました官職名というのは大体どういう範囲のものであるか、将来の審議につきまして重大でございますから、ここで一つ明らかにしていただきたいと思っておる次第であります。
  11. 松村清之

    松村(清)政府委員 この選挙制度審議会審議過程におきまして——最近の答申におきましては、法律で指定する職というふうに抽象的になっておりますが、この審議会審議過程において、ある委員から一案として提案されたものを参考に具体的に申し上げてみますると、大蔵次官銀行局長主税局長主計局長国税庁長官国税局長農林次官開拓局建設部長農地局事務局長農地局建設部長林野庁長官食糧庁長官食糧庁検査課長建設次官観光局長港湾局長中小企業庁長官、それからあと公社関係で、国鉄総裁国鉄総裁国鉄常務理事国鉄施設局長専売公社総裁、副総裁常務理事電電公社総裁、副総裁、以上が、審議過程提出された案でございます。
  12. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 ただいまの具体的な問題の方がはっきりいたしますので、それで、一つ具体的の今の指名からいたしまして私は大臣にお考えを承りたい、こう思う次第であります。ただいまのそういったような官職は、どういう基準でこれらの職名が上がったかどうか。承りますると、従前の全国参議院得票数が非常に多かったということでこれをきめられた、いわゆる実績主義をとったというような話を聞いている次第でございますが、それでこれをやったかどうか。それによりますると、今ちょっと伺っただけでも、私はまだ寡聞にしまして、大蔵省主計局長全国参議院立候補したということも聞いてない次第でございます。どうもこの基準がちょっとはっきりしませんので、その点をお伺いしたい、こう思っております。
  13. 安井謙

    安井国務大臣 おそらく、審議会でいろいろ論議の対象にされました部局につきましては、過去の実績を参照されまして、特に今まで全国参議院等において立候補されたかつての実績のあるところを取り上げておったのがおもだろうと思います。そのほか、特殊に、もしこれが立つならばこうでもあろうかといったような想定を加えたものが二、三入っておるんじゃなかろうかと思います。私どもとしましては、それじゃこれだけあげればはたして足りるのかということになりますと、はなはだ疑問とせざるを得ないと思っておる次第でございます。
  14. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 ただいまの御説明でありますと、大体は実績主義あとは大体こういったものはどうだろうということのようでございますが、これは重大な問題でございますから、重ねて、審議会にしょっちゅう出られた選挙局長から、その官職をきめた経緯をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  15. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは、ただいま申し上げましたように、ある一人の委員考えられました基準でございますが、この委員が先ほど申し上げましたような職をあげておりますのは、まず基本的に、これらの公務員はその権限が直接国民の利害に著しい影響力を持ち、その権限を利用して全国投票を集むることが可能であるとまずお考えになって、そしてしかも、参議院選挙は過去五回ございましたが、この五回の選挙当選者を出した実績を持っておる、こういう前提でこういう職を拾ったのでございます。ただ、先ほど丹羽委員も御指摘のように、申し述べました職名のうちで大蔵省主計局長食糧庁長官、これらを特に加えておりますのは、当選者を出していないけれども、こういうものは今申しました基準に該当するとこの提案者考えられてつけ加えた、そういう事情になっております。
  16. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 私はそこに非常な問題があると思う次第でございます。先ほども申しました通り、大体、被選挙権は、憲法四十四条によりまして、国民の重大なる権利として認めてられておる。しかも、誤りなく中央、地方あるいは公団等高職公務員として一生懸命働いてきたものが、たまたまその職にある、しかも前任者相当な票数を得たということで、将来自分政治家にならん、政界に出ようということを規制するのに、それらの薄弱な根拠高級公務員立候補制限するというようなことが、わが国に行なわれていかなるものであるかという点につきましては、よほど慎重に大臣初め自治省当局の連中は考えてもらいたい。その審議をする委員の方は熱心でございましょう。しかも、今までの腐敗選挙あるいは堕落選挙を粛正しようと熱心のあまりお作りになった次第でございましょうが、しかしながら、法律技術あるいは憲法上の問題につきましては、心ずし専門家の方ばかりじゃございません。国を憂える熱心のあまりお作りになったのでございましょうが、自治省当局といたしまして、それらのこういう重大な問題につきましては、審議過程におきまして、そういったことは憲法違反疑いも出てくるのじゃないか、あるいはまた、こういうことをしますと、非常に不合理が出てくるのじゃないかというととを十分に意見を言いまして、その結論に至るまでに、立案当局といたしまして、何人にも示唆されずに、独自の立場におきまして、こういうことは無理であるということを十分に意見を述べる必要があったのではないかと私は考えるのでございます。しかも、ただいまの一例をとってみましても、たとえば国税庁長官あるいは主税局長はいかぬ、それでは大蔵省管財局長はどうだ。もし悪いことをするということならば、国有林をどんどん払い下げる、国有地をお前のところに払い下げてやる、こういうことならば幾らでもできる。主計局長よりもできるということが幾つでもある。自治省財政局長が、おれが一つ起債をどんどん許してやるというようなことだったら、幾らでもできる。こういったようなことは幾らでも例はある次第でございます。しかしながら、自治省は幸いに賢明にして、その代案お作りになりましたが、これはもしそういったような地位を利用し、身分を利用し、職権を乱用いたしまして選挙の票を得ようというようなことでございましたら、今言いました高級官僚ばかりでなく、さらに、たとえば専売公社における労組委員長——万一ですよ、組合の票だけでなく、たばこ耕作者の票を集めさせようというので、組合に命じてやるということになったら、おそらく同じことです。むしろ、一般国民大衆に直接呼びかけて——権限としては、たばこの葉の格等を下げる絶対の権力を持っているのは、この専売公社下級職員が持っているということであります。あるいはまた、日教組の幹部が一般のPTAの父兄に呼びかけるということも、組合員ばかりでなく、可能です。これは地位によってといえば、そういう点も多々ある次第でございます。私は、そういう点につきまして、今自治省が御苦労なさってせっかくこれだけの画期的な選挙法お作りになりました御努力に対しては敬意を表しますし、皆さん方も叱責するわけでもないけれども、今問題になっておるのは、世間でいわれているのは、要するに、答申案は進歩的な案である、選挙粛正の熱意にかられたりっぱな案である、自治省案は後退している案であるということである。ところが、自治省大臣からの御説明によりますると、要するに、自分たち憲法違反のおそれのあるものはやっちゃいかね、また技術上できないものはどうしようもないという議論代案お作りになった。私は、先ほど申しました通り、確かにそういったような職名一つ一つ並べましても、それが先ほど言った悪質な選挙運動に利用されるというはっきりした職であるかどうかという具体的根拠というものは見当たりにくいと思う。そういう点では確かに憲法違反疑いを非常に蔵する制限でございます。これらのものにつきまして、もっと事前に審議会委員の方々、その事務当局考えを、公正に言ってまとまらなかったものであるかどうか、その点につき・ましての経緯を承りたい、こう思っております。
  17. 安井謙

    安井国務大臣 審議会原案といいますか、一応目標として指示されました職名だけを取り上げるということは、いかにも不穏当、不均衡じゃないか、こういう御説に対しましては、私どもも全く同感でございます。それじゃ、なぜもう少し、審議会がそういった事態にあるにかかわらず、十分そういう事情を判断していただくデータを出さなかったのか、手落ちじゃないか、こういう御質問であろうと思いますが、私ども、今度の審議会というものにつきましては、できるだけ委員御自身の御意見を尊重するという建前をとりまして、要求されました必要は資料以外のものについては、極力出さないという形をとっております。しかし、今御指摘になって、現在政府としては、これを良心的に取り扱った場合に、こういった法案にしなければならなかったといったような実情から考えますれば、いま少しそういう実情について審議会委員先生方にも十分事情を御説明しておいた方がよかったかしらんというような気はいたします。ただ、われわれはあくまでこの審議会意見を尊重するという趣旨から、あえてあまり政府側意見に類するものを出さなかった次第でございます。
  18. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 ただいまの自治大臣の御説明で、自治省立場なり審議会のあり方につきましての御説明は了解する次第でございます。しかしながら、全般的に言いまして、審議会意見につきまして事務当局がいろいろの口出しをすることは、もちろん、差し控えなければならない次第でございますが、あくまでも立案当局自治省の責任でございます。従いまして、これは立法技術上も不可能である、また憲法上非常に疑いがあるということにつきましては、将来も審議会が継続され、その他の重要問題につきまして御審議を願う次第でございますから、それらの点につきましては一つ十分勇敢に意見を開陳していただきまして、審議会意見誤りのないようにしていただきたい。  さらに、私はちょっと申し上げる次第でございますが、その官職にあるといなとにかかわらず、公務員自分職権を乱用いたしまして投票を得る、あるいは得せしめるというような行為につきましては、これは最も憎むべき犯罪であろうと思う次第でございまして、これらにつきまして、いわゆる世上でもの笑いになっております高級、下級の観念を捨てまして、一般公務員につきましても厳粛なる規制を加え、また、あるものにつきましては連座規定まで加えましたことにつきましては、私は大賛成の意を表する次第でございます。  だいぶ私の時間が長くなりましたので、最後に一つだけお伺いをしたいと思う次第でございます。それは選挙費用の点についてでございます。選挙費用の点につきまして今度は合理的にだいぶ是正をされたようでございますが、今までの選挙犯罪の統計その他を見てみますと、きょうは警察庁、法務省からお見えになりませんけれども大臣公安委員長もお兼ねになっていらっしゃいますから、常識的な御答弁でけっこうだと思いますが、今までの検挙数というものは、やはり買収、供応が一番多い。ほかの文書犯罪なんかに比較して大体におきまして十倍程度になる犯罪でございますが、そのうち、検挙はされましたけれどもほんとうに起訴されたものは三分の一、これが大体従来の統計であろうと思います。三分の一の起訴されたうち、買収、供応が多い。買収、供給も、一村が全部買収、供応でやられたというような珍しいケース、最も忌まわしいケースもございますけれども、大体におきまして、終戦後の選挙におきましては、ことに今日の中選挙区の実情におきましては、末端買収というものはほとんどないのではないか、大体は運動買収じゃないかと思う次第でございますが、その点、大臣のお考えはいかがでございますか。
  19. 安井謙

    安井国務大臣 今お話の選挙違反事例が、買収、供応といったもので検挙されておることが多いことは事実でございますが、これは確かに、買収、供応と選挙の実費との概念がはっきりしていなかった点もかなりそういった作用になっておることも、これまた事実上の問題であろうと思います。そういったものにつきましては、答申の線にも、実費弁償については合理的に判断して引き上げろ、こういう答申が出ております。従って、私ども、そういったものの区別を明確にいたしまして、末端の取り締まり当局が、ほんとうに悪質なものはびしびしやれるが、実費弁償といったものについては、合理的なものである、また合法のものである、この明確な線を明らかにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、今言われますように、大きな選挙区、しかも普通選挙になりまして、御婦人まで入った何十万常に大きく取りざたされますので、全般であるかのごとき印象を与えておるかもしれませんが、数からいえば、私はこれはきわめて少ないものであろうということは、事実上の問題として確認いたしております。
  20. 丹羽喬四郎

    丹羽(喬)委員 そういたしますと、ただいま大臣の御説明で、やはり運動買収が非常に多いということでございますが、運動買収が非常に多いということは、一面におきまして、今大臣がおっしゃったような合理的な費用の算定をするということになってきますると、これは買収でなかった——たとえば、今までの法定費用で、一人の労務者の賃金は幾らときまっておる、ところが、社会通念の労務者の費用と少しかけ離れておる、百円くらい増した、この百円くらいが買収になるというような事例相当多かったということを私は聞く次第でございますが、そういったようなものがやはり今度の選挙におきますと漸次なくなってくる。買収というものは最も忌まわしいことでございます。この忌まわしいことが、しかも国会に出る議員の門出におきましてたくさん行なわれるということは、最も不名誉なことでございます。つきましては、民主政治の基礎を危うくするものとも考える次第でございます。そこで、そういったような運動買収の点におきまして、そういったささいなことでと申しますか——それでも違反は違反でございます。合理的でなかったために違反を起こす。統制経済のときに、統制が非常に不合理に行なわれたというために、ついやみ米を買った、政治の指導が悪かったためにやったということで違反が起こったと同じようなことが起こらないように、ぜひこの点は指導していただきたい。ドイツにおきましては、守れない法律は作らぬということもいわれているそうでございます。そういったような意味で、今日国民が全部選挙に関心を持って、選挙のときにおきましては、正しい者をあげるためには、国民が自由に潤達に選挙運動ができるという雰囲気を盛り上げてくる、そのかわり、違反者はいかぬ、悪質的なものはいかぬという厳重なる取り締まりとともに、合理的な選挙運動をしておる者につきましては、運動者も安心してできるという法律ができてこそ、私は民主主義の基礎が固まると思う次第でございます。いずれ具体的の費用の点につきましては逐条審議のときに御説明があると思いますので、その点につきまして私またいろいろ御質問を申しますし、法律の制定に過誤なからしめるようにお願いいたしたいと思う次第でございます。その点を特にお願いして私の質問を終わらしていただきます。
  21. 加藤常太郎

    ○加藤委員長 次に、山花秀雄君。
  22. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいま同僚の丹羽議員からいろいろ質問がありましたが、最初、若干それに関連して大臣にお尋ねしたいのであります。  高級公務員立候補制限憲法違反かどうかという質疑応答がございましたが、何か違反のおそれがある、疑いがあるとかいうように、非常にあいまいな答弁になっておるのです。この点は自治大臣として、憲法違反か、あるいは違反でないというふうに明確に答えられないものだろうかどうかということをお伺いしたい。
  23. 安井謙

    安井国務大臣 高級公務員なるがゆえに一般的に立候補制限してしまうということは、憲法違反疑いが非常に濃厚であるというふうに私ども解釈しております。しかし同時に、その問題を突き詰める前に、さらにそういうことを法律的に記述化する点においてもこれは採用できないというようなところから、これは採用いたさなかったわけでございます。
  24. 山花秀雄

    ○山花委員 どうもその点は、これはやはり憲法に守られたる基本的人権の問題からして、はっきりした方がいいんじゃないかと思うのです。おそれがあるとか、疑いがあるとかいうようにあいまいにしておきますと、やはり禍根を残すんじゃないか。せんだって選挙制度審議会の方でこの問題について法制局の方に問いただしたときに、それは疑いがないというような回答があったと承っておるのですが、それはおわかりにならないですか。
  25. 松村清之

    松村(清)政府委員 この問題につきましては先ほどから御議論がございましたが、ここ十何年来種々立候補制限の問題が出まして、憲法違反かどうかという問題があるわけでございます。それで、今回選挙制度審議会がこの問題を審議した過程におきまして、法制局の責任者を呼びましてその者から意見を徴したのでございますが、その法制局の公式見解といたしましては、合理的な理由があるならば、立候補制限をすることも憲法に抵触するものではない、ただ、高級公務員全部を立候補制限の対象にすることには合理的理由がない、すなわち、これは憲法違反になる、従って、この高級公務員の職を、合理的な理由があるならば、その一部分をしぼって指定する、そういうことができるならば、これは憲法上の問題はない、こういうような意向でありましたので、選挙制度審議会の最後の答申がああいうことになったと思います。これは三十四年の選挙制度調査会におきましては、高級公務員を全部あらゆる選挙から立候補制限をしておったことに比べますと、それだけ今度の選挙制度審議会としては問題を研究した形になっておりますが、しかし、ただこの最後の、高級公務員の職をしぼって指定する合理的な理由というもののある案というのは、これが実際上困難——というよりも、不可能であるのであります。そういう意味で、大臣も先ほどから、大きくは憲法違反のおそれがある、それからそれをしぼっていくと、これは実際上不可能だ、こういうことで答申をそのままの形で法律案にすることができなかったわけでございます。
  26. 山花秀雄

    ○山花委員 その問題につきましては、わが党といたしましても、今週中に、政府原案に対する修正案の形で、個々に列挙して理由を付して示したいと思いますが、そこでもう一点お尋ねしたいのは、これは一つ事例でありますが、せんだって大分県に、今いわれている高級公務員の、次期立候補を予定されておる方が参りまして、大分県のその役所につながる多くの業者を部長さんが集めて、俗にいう割当会議、あなたの方は千票、あなたのところは千五百票という、そういう会議をやって、それができないとも言えないし、反対だと言うとあとのたたりが恐しいというので——一応前の選挙基準を今度の選挙基準にして割当会議が行なわれた、こういうことが伝えられておるのであります。そういう因果関係と申しましょうか、上から下につながる、利益に関連するような、いわゆる高級公務員というふうにわれわれはこれを限ってやりたいと思いますが、こういうやり方は、これは事前運動にも関する問題でありますが、自治大臣としては選挙違反とお認めになるかどうかということです。
  27. 安井謙

    安井国務大臣 御指摘の大分県の例につきまして、まだ私の方で調査いたしておりませんので、事情が明らかでございませんが、そういった割当等を役所の機関を通じて業界等に命じたということに相なりますれば、これは現行法でもすでに事前運動の違反と相なるものと考えております。また、今後改正しようと思う法律案につきましては、これはさらに、今後いわゆる当選をいたしましても失格するといったような、厳重な規定を設けておるわけであります。
  28. 山花秀雄

    ○山花委員 これも一つ事例になりますが、せんだって予算委員会開催中に、労働大臣が所用があってといって一日休まれました。翌日新聞を見ておりますと、新聞報道では、部下の——これはもう名前がはっきりしておりますが、亀井君が福岡の地方区に立候補するので、それを連れて八幡製鉄その他をあいさつ回りした、こういうことが、親心というような意味で新聞に掲載されております。(「亀井君はやめたよ」と呼ぶ者あり)御承知のように、重要な予算委員会の最中に、何で労働大臣が休んだのかということです。亀井君はやめたからまあいいですが、労働大臣が引き連れてあちこちの有力会社を回っておる。労働大臣の場合は、労働基準法その他いろいろ取り締まりの衝に当たる立場に立っておるのであります。こういう問題は自治大臣どうお考えになるでしょうか。これは具体的事実です。
  29. 安井謙

    安井国務大臣 予算委員会を休まれたとか云々といった問題につきましては、これは当然いろいろ御議論の問題はあろうと思います。そこの事情は私は明らかにいたしませんが、国務大臣という特別職の人が、選挙の問題につきまして事前にいろいろ事務的な打ち合わせをするとか、そういった折衝をするということは、これは今日の法規上当然許されていると思います。それからまた、候補者になるべき人がその立候補の準備のためにいろいろな必要な限度の行動をする、これはいわゆる事前運動とは別の形で認められておることだろうと思います。ただ問題は、それがいわゆる事前運動になるというふうなことになるかどうか、これは事実上の判断によってまたきめなければならないと思っております。
  30. 山花秀雄

    ○山花委員 これは私は、労働大臣という現職の方が、かつての部下を連れてそして八幡製鉄その他有力会社を回ったというところに、一点の疑義を持っているわけです。これは今自治大臣を責めても仕方がございませんが、こういう事例があるということだけは一つ明確にしていただきたいと思います。
  31. 島上善五郎

    ○島上委員 先ほどの憲法問題に関連して一つはっきりと伺っておきたいのですが、ただいまの御答弁は、かつて選挙制度調査会から答申があったように、高級公務員一般を、あらゆる選挙立候補することができない、こういうふうにすると、憲法違反疑いが濃厚である、ただし、特定の地位の者高級公務員一般じゃないですよ。特定の地位の者を、特定の選挙に限って、特定の期間を付して制限するということは、憲法違反ではない、こういう解釈のように承りました。これは、あなたが言ったのは、合理的な理由があるならばということですが、もちろん、合理的な理由のある特定のポストの者、特定の選挙、特定の期間、こういう条件がつくならば、私ども憲法違反でないと確信しておりますが、それでよろしゅうございますか。
  32. 松村清之

    松村(清)政府委員 お話のように、そういうふうに限定いたしたものに合理的な理由がありますならば、憲法違反にならないという法制局の解釈でございます。従って、合理的理由があるかないかということは、これは一つの大きな問題でございますから、その点は……。
  33. 山花秀雄

    ○山花委員 昨日、審議会の方で、これは皆さん御承知だと思いますが、例の人口アンバランスによる定数改正の問題について答申案を出すという、そういう会議が開かれましたが、政務次官がおいでになって、何か、そういう案を今ここで出すと、議員の身分に関する非常な問題で、ただいま国会審議中であるから、むしろ……というような、暗に何か牽制をするような発言をされたということをちょっと承ったのでありますが、それはいかがでありましよう。
  34. 安井謙

    安井国務大臣 政務次官は、私もむろん、あの小委員会へは出席いたしておりません。ただ、事務次官は、あの審議会の幹事でありますので、いろいろと事務上の報告や、実態上の選挙法の扱いといったようなものについては、これは当然の義務として報告いたしております。
  35. 山花秀雄

    ○山花委員 新聞には次官と出ておりましたから、これは政務次官か事務次官か——事務次官がおいでになって、いろいろ示唆を与えたといいましょうか、それはまあいいのですが、これは目下国会審議中だから、下手をすると、前の答申に基づく自治省原案、これがお流れになるんじゃないかというような意味の発言をしたというようなことが、新聞紙上に掲載されておるのです。政務次官であれば、ここにおいでになりますから、よく事情を聞いてみたいと思いますが、事務次官にいたしましても、これは安井大臣の直結しておる人でありますから、これは責任として、大臣はどうお考えになるか、御答弁願いたいと思います。
  36. 安井謙

    安井国務大臣 事務次官が幹事といたしまして諸般の状況を御報告するということは、これはもう当然の義務であろうと思います。私も報告を受けております。昨日こういうような会議の次第であったという報告を受けておりますが、今法律案が上程されて、こういうふうにしてやっておる、現在こういうような状況でありますといったようなことは、当然報告のうちに入っておったと思いますが、それは幹事の言っておることでございますから、それが別に政治的発言の意味を持っておるといったようなものじゃないと確信しております。
  37. 山花秀雄

    ○山花委員 この新聞報道が間違っておるかどうか、これは別問題として、こういうように報道されておるのであります。「審議会の第一次答申にもとづく公選法改正法案が国会審議中なので、議員側に直接関係のある定数是正案を急ぎ答申するのは、いたずらに議員側を刺激し、公選法改正案の成立に重大な影響を与える恐れがあるという」というような新聞記事になっておるのであります。これは私はやはり一種の圧力をかけたというような感じがするのですが、大臣はどうお考えになるか。
  38. 安井謙

    安井国務大臣 私が伺っておりますのは、小委員会で結論が出なかった理由といたしましては、これを事務的にあれこれ御検討されました結果、まだまだこの案には相当問題がある、そういうような意味から、これは一つもう少し慎重に検討したい、そういう小委員会の皆さんの結論である、こういうことでございまして、新聞の一字一句がどういうふうに出ておりますか、私、それがはたしてどういうような言葉になって幹事が発言をしておるのか、言葉までは十分調べておりませんが、しかし、趣旨は、幹事としてはいろいろ諸般の状況を御報告する、これは幹事の役柄でやるのでございまして、それを決定されるのは、これは委員の職責でありますし、当然委員と幹事とは資格も違うのでありますから、私はそれによって委員会自身が独自の御判断をされたものと心得ております。
  39. 山花秀雄

    ○山花委員 ずっと前からの常識論になっておりますのは、十三日に、おくれおくれしておるけれども、一応定数の改正だけは答申して、あとは、政府のやり方がなっておらぬから、もう休むんだというふうに、これが一つの常識論になっていたのであります。それがきのうのこの審議会答申案が出ないというのは、ただいま私が申し上げましたような、この新聞報道で伝えられるようなことが一つの圧力になって、審議会としては、これではもう仕方がないということでやめたのじゃなかろうか、私はそう考えておるのでございます。大臣はまた大臣としてのお考えを今申し述べたと思うのでありますけれども、この点は、今後こういう誤り伝えられないような配慮を一つ大臣の方から事務次官に言っておいてもらいたいと思います。政府は、さきの通常国会の施政方針の一項目に、最近の選挙実情及び世論の動向にかんがみ、選挙の公明化を期することは緊急の要務であると考えると明言し、さらに、選挙制度の改正のための調査審議を急ぎ、すみやかに成案を得るよう努力する所存でありますと、いみじくも池田総理は言明されたのであります。選挙制度審議会は、本国会で十分審議の機会と期日を考慮して、昨年末答申を行なったのであります。しかるに、政府自治省は、今度の選挙制度審議会が三十八国会で設置を見たのは法制に基づくものであり、その第一次答申、これを尊重しなければならないと、同設置法第三条によって規定されているにもかかわらず、本国会政府提案されるまでの政府部内における動き、特に自治省の動き、与党自民党との奇怪千万な折衝が終わって、この間約二カ月余りの時日の経過を見たのであります。提案の改正案の内容は、答申案とはもう似ても似つかぬほど全く骨抜きのざる法になっておるが、自治大臣はこのことについてどう考えておられるのか。ほんとうに真剣にこの国会で成立をお考えになっておるかどうか。真剣にお考えになっておれば、もっと早く私は出し得たのじゃないかと思う。この二カ月間という間、一体何をやっていたのかという点を一つ伺いしたいと思うのです。
  40. 安井謙

    安井国務大臣 まず、この法案を出しまするにつきましては、政府は固い決意のもとに、ぜひこれを成立さしていただきたい、こういう強い期待と希望を持っておるわけでございます。一体答申ができて二カ月余の間何をしておったか。御承知の通り、今度の答申は、全面にわたる画期的な御答申内容でございます。そうしてこれは必ずしも法文的にできおるものじゃございません。趣旨はこうしろああしろ、こういうものでございます。これを一つずつ法文に直しますには、法律自身をごらんいただきましてもおわかりになりますように、非常に大部なものになっておりますが、これを法制化する。それからさらに、御答申精神は尊重しながらも、法文化するためにやむを得ない一部の表現の修正等をやらなければなりません。この場合に、それが一体どこまでやり得るものか、そうして答申精神を尊重しながらも、ここまではぎりぎりの一線だ、これをきめますのには、相当関係当局あるいは法律専門家意見を徴する必要もございまして、このためには非常に手間を食ったことは事実でございます。  それから、党といろいろな折衝をした、こういうお話でございますが、これもやりました。これは政党内閣でございますから、私ども法案を提案します場合に、やはり党内のいろいろな政策上の観点あるいは党の機関の御意見を伺う、これは私は当然やらなければならぬ義務だと心得ております。しかし普通の法案とは違いまして、とうてい原案を作って、あるいは修正案をいただいて、それを織り込むというような形じゃなく、党だけじゃございません、各方面の意見伺い、そうしてまた自治省自身も判断をいたしまして、これは政府の責任においてこの法律案を作って提案をいたしておる次第でございます。
  41. 山花秀雄

    ○山花委員 今大臣答弁を聞いておりますと、答申案相当尊重し、織り込んで、苦心惨たんしてようやくここに提出をした、こういうお話でございました。ところが、われわれが政府提案原案を見ますると、答申案とは全く違った、反対の態度がこの中に現われておるのであります。肝心の重要点である連座制強化の問題であるとかあるいは政治資金等には、全く骨抜きになっておると私ども考えておる。いいかえれば、答申案を尊重していない。大体選挙制度の改革というような案件は、法案作成の段階で与党と話し合いをするということ自体が、私は根本から間違っておると思うのであります。いわんや自治省の最高の責任者が、与党の各派閥の会合に出向いて説明し、注文を聞いたりする。まるで御用聞きのような態度で回っている。そうしてでき上がったのが今度のこれであります。私はこのような態度というものは、さたの限りだと思うのであります。政党内閣だと言って、あなたは今強弁されておりますが、政策の問題と選挙制度改革とは、全く性質を区別して考えなくちゃならぬと私ども考えておるのであります。これははっきり区別して扱うべき性質のものであります。しかも答申案が出されてから自治省の役人が、与党、自民党のみに出向いて答申案の骨抜きや、すりかえに協力しておると言われても、これは私は答弁できないのじゃないかというふうに考えております。はなはだ軽卒な態度じゃないかと思いますが、自治大臣はこれをどうお考えになりますか。
  42. 安井謙

    安井国務大臣 お話の通りに、この法律案は、一般の政策から出ております党の政策を盛った法律案とは違った扱いをすべきである、こういうお話につきましては、私どもも全くその通りであろうと心得ております。ただ非常に重要な法案でございますし、また社会党さんの方からも正式にお話がございまして、今の政審会長あるいは山花さんも島上さんも御一緒だったかと存じますが、そういう方からの御意見も十分承ったわけでございます。そうしてまた、党内におきましてもいわゆるいろいろと政策グループがございます。三百名、百何十名といった議員をかかえておる党でございまするから、できる限りそういったグループの政策の検討の会でこれをお話しする、十分意見も聞き、また意のあるところを通しておくということは、これは手続としては必要なことだろうと思いますが、それによって、その党からあずかった修正案あるいは党の原案という形でこれを扱っていないことは先ほども申し上げた通りで、今お話しのような態度で、私ども一般の政策の法律とは違った扱いをいたしてきておるつもりでございます。
  43. 山花秀雄

    ○山花委員 安井大臣も多分御承知だと思いますが、せんだって、主婦の会であるとか有権者同盟であるとか、その他選挙を公明にしたいという意図を持った十数団体の合同の会議がございました。これは当然、当該の衝に当たられておる安井自治大臣も招待されたと思います。また野党の、この問題に関して責任を持っておる社会党では私、民社党では門司君、それから自民党では高橋君なんかが御出席された。そのときに、山本嘉次郎さんという方が、これは映画監督で、御承知だと思いますが、そのあいさつによりますと、法定選挙費用ということで、法律がちゃんとあるが、法定費用の範囲内で現今の選挙で当選をしてきたというのは、これは国宝的存在だというようなことを言っておられました。これは考え方によりますと、国会に対する大きな侮辱になると私は思うのです。しかし、それが現実の姿ということになりますと、言われてもやむを得ないということになるのじゃないかと思うのです。私のあいさつのときに、自治大臣はおいでになったかどうかわかりませんが、私はそのときこういうあいさつをした。今、山木嘉次郎さんは、法定費用の範囲内で国会に出てくる人は国宝的存在だと言っておりましたが、私に関してはその国宝的存在であります、とはっきり明言いたしましたが、自治大臣高橋同僚議員ははたして明言できるかどうかということになりますと、私もちょっと疑義を持っておるのであります。そこで、すみやかに法改正を行なって、来たるべき参議院選挙あるいはまたその次に迎える衆議院選挙では、国民の信頼にこたえ得るようなりっぱな選挙をお互いにやりたいと思うのでありますけれども、伝えられるところによりますと、参議院自民党関係の方ですか、参議院選挙臨時特例法が用意をされておるというように伝えられておるのであります。それは、今ここで審議しておりますこの選挙法がひょっと流れたらというような配慮で、あるいはそういう配慮でなくても、これもどうせ流れるのだからという、熱意のないところから、参議院だけで一つ参議院の臨時特例法を作ろうといって用意をしておるのではないかと一般では言われておるのでありますが、こういう動きに対して、根本の責任の衝にある自治大臣はどうお考えになりますか。
  44. 安井謙

    安井国務大臣 山木さんの演説は私も聞きまして、まあ山本さんがどの程度までいろいろな選挙の実態に触れられた上での御発言か存じませんが、世間でよくそういうことを言っておるという御趣旨かと思います。また国宝的存在の一人であられる山花さんには大いに敬意を表しますし、また私どもそれにならってありたいものだと思います。  それから、参議院選挙の改正法案でございますが、これは、もしこの選挙法参議院選挙までに間に合いませんと、部分的、技術的な面では今度の参議院選挙に非常に困る面があるというような御心配から、何とかその部分だけでも早く通したいという御希望を持っておられることは私伺っております。しかし、今、政府がいよいよ本案を出しまして御審議を願っておる、そうして、ぜひこれを通していただきたい、こういうような事情にあるということを御了解いただきましたと見えまして、目下その提案については見送ろうという空気が非常に強いというふうに伺っております。
  45. 山花秀雄

    ○山花委員 私は、もっと強い決意を安井大臣の方から伺いたかったのです。今出すと世論にたたかれるから、表面を隠すために蟄居しておる姿が、私は参議院の自民党の手持ち議案を引っ込めておる態度じゃないかと思うのです。そういうことのないように、一つ万難を排して、世論もよく聞いて、りっぱな法案を私としては作りたいというくらいの決意を表明していただきたかったのです。  そこで、せんだってあなたがいろいろ説明をされました点で、項目を追うて質問を重ねていきたいと思いますが、第四のところに、選挙運動費用の合理化、選挙費用制限額について、これを合理的に引き上げて、選挙運動者に対する実費弁償その他を今の物価に合わせるように合理化したい、こういうことでありましたが、現行は多分衆議院段階においては七円と私は記憶しておりますが、今度どの程度に引き上げを行なうお考えでありますか。
  46. 松村清之

    松村(清)政府委員 現在衆議院議員の場合におきましては、七円の単価に、有権者をその選挙区の定数で割って、かけたものになっております。具体的に全国平均を申し上げますと、昭和三十五年、最近の衆議院の選挙は八十一万円の平均でございます。これは今度労務者報酬とか実費弁償とか、そういうものを引き上げますし、また法案の御審議を願いますと、御承知のように、事前運動としての演説会というものの費用もこの法定費用に入れるわけでございます。それでまだ最終的な結論を得ておりませんが、大体平均といたしまして、八十一万円の二倍半ないし三倍程度辺に落ちつくのではなかろうかと思います。そしてこれにつきましては、今度は計算の仕方を変えまして、事前運動の演説会の費用は固定費として各選挙区一律、それから選挙運動期間中の選挙運動費用は、今は有権者数に応じて増減されておりますが、半額を固定費といたしまして、あとの半額は有権者数に応ずるようにする、こういうことで、各選挙区におきます具体的な選挙費用というものは、今よりも接近してくるだろうというふうに見ております。
  47. 山花秀雄

    ○山花委員 ただいまのお答えを伺っておりますと、大体二倍半か三倍、かりに三倍と踏みますと二百三、四十万円、あるいは二倍半ということになると大体二百万円ということに全国平均なります。そこで一つ伺いしたいのは、これは過ぎ去ったことでありますけれども、この前の選挙も、三十三年の衆議院選挙も、各政党から公認料をお渡しになります。これはわれわれ社会党でも、政党公認候補者には若干の公認料を出しております。自民党の関係では、ただいま全国平均八十万円程度と言われましたが、百万円の公認料を出すということで、若干疑義が出て、法定費用より多い公認料を出すとおかしいじゃないかということになって、たとえば五十万円の公認料と五十万円の貸付料という形で、そういう操作で扱われたということは明々白々の事実であります。このほかに、われわれで言えば派閥でありますが、安井さんの方から言えば政策研究会グループというのであります。そのグループの一番上に立っておる人から二百万なり四百万、これは人によっていろいろ違っておりますが、そのような多額の金を、公明選挙を主唱する政党から出すということ自体が選挙を汚す一つの原因である。金がなかったら買収をやろうとしてもやれない。法定費用の三倍も四倍も選挙費用を集める、なお個人でもどこからか集めて参りましょう。そうなりますと、結局従来衆議院選挙では、保守の一千万というのが、これはくろうと筋の常識相場になっております。これで選挙違反が出なければどうかしておるが、選挙違反が出ない。くろうとだから法すれすれのうまい選挙をやったということで、新米の下手なやつがときどき選挙違反に引っかかるというような形が現われてきておるのではないかと思いますが、今後政党の公認料の問題、あるいはその他政党法というのも早晩できると思いますけれども、従来のこういうあり方に対して、選挙の取り締まりないし指導の衝に当たられておる安井大臣はどうお考えでしょうか。
  48. 安井謙

    安井国務大臣 前回または前々回の衆議院の総選挙におきまして、公認料がはたして百万出たのかどうかということにつきまして、今私は明確な記憶はいたしておりませんが、百万出たといたしましても、御承知の通りに、これはいわゆる法定選挙費用というものは八十数万円でありましても、本人が乗るトラックとかあるいは自分が出かけていく場合の実費とか、こういうものはすべて法定費用から省かれておるような事情もありまして、それが必ずしも違法につながるものとは考えておりません。さらに私どもは、しかしそういった御指摘のような弊害の起こらないように、今後ともいろいろと運営面で、法律を明確にいたしまして、十分配慮して、気をつけていけるようなものにいたしたいと考えておるわけでございます。
  49. 山花秀雄

    ○山花委員 確かに選挙に使う宣伝車その他は法定費用以外になっておりますが、大体七掛ということが常識になっておるようであります。法定費用プラス七掛、八十万円であれば百三十万円くらいが全体の選挙の限度になっておる。場所によりまして百五十万円の法定費用のところもありましょう、東京一区とか東京六区というようなところ。それにしても二百四、五十万円というのが一応の限度になっておると思います。これは一例でありますが、私の選挙区で今度もうかった−何でもうかったか、党から百万円もらって、五十万円は公認料で五十万円はインチキの貸付料で、派閥から四百万円もらって自動車一台買ったのだ、落選したって自動車だけ残る、なお当選か落選かわからないので、落選期間中の当分の食いぶちはこれでたくさんだと言って選挙をやっておりました。その人は落選しました。ここまで言えば、安井さんは東京の出身だから、その候補者がだれであろうかということはおわかりになるだろうと思いますが、二回にわたって連続そういうことを公言しておりましたが、二回とも落選しました。だから、これはやはり選挙違反につながる一つのもとになると思いますから、ーーいつまで安井さんが自治省大臣を続けられるかどうかわかりませんけれども、少なくともあなたの在職中にもし大きな国会選挙がありましたならば、おそらく参議院のときにはやはりあなたは自治大臣をやっておられると思いますが、そういうことのないように一つ党の方にも進言をして、りっぱな模範的な公認料をおきめになるように努力をしていただきたいと思います。  なおあなたの御説明の第六に、公務員地位利用による選挙運動に対する規制というのがありますが、公務員地位ということは一体どういうことを意味しておるかという点を、もっと明快に一つ説明願いたいと思います。
  50. 松村清之

    松村(清)政府委員 公務員地位利用という場合の地位は、その公務員の職務権限、それからその地位につながります行政上の組織、こういうものが地位の意味になると思います。
  51. 山花秀雄

    ○山花委員 今のは非常に抽象的な御説明でございましたが、職務上の地位というのは、たとえば局長クラスまでか部長クラスまでかという一つの具体的身分が出てくると思うのでありますが、それはいかがなものでしょう。
  52. 松村清之

    松村(清)政府委員 公務員地位という、この法律案にあります公務員はすべての公務員でございまして、これは局長であろうと課長であろうと係長であろうと、単なる係職員でありましょうと、その者には地位というものがあるわけでございます。
  53. 山花秀雄

    ○山花委員 そこでお尋ねしたい点は、ただいま丹羽委員からも若干質問がありましたが、たとえば公務員は全部労働組合というものを組織しております。これは御承知の通りでございます。労働組合地位公務員のただいまあなたの説明地位と、混同されておるきらいがあると思いますが、この点どうお考えになっていらっしゃいますか。
  54. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは職員組合組合員としての地位と、その人の持っております公務員としての地位、こういうものは二つあるはずでございます。
  55. 山花秀雄

    ○山花委員 そうすると、この法案にうたわれておる公務員地位と労働組合地位とは、別個のものと解釈していいのですか。
  56. 松村清之

    松村(清)政府委員 そういうふうに解釈して差しつかえないと思います。
  57. 山花秀雄

    ○山花委員 そこでお尋ねしたいのは、大体公務員は上級、下級区別なく、この法案の原案には一応私は含まれておるような気がするのですが、この点はいかがでございましょう。
  58. 松村清之

    松村(清)政府委員 その通りでございます。
  59. 山花秀雄

    ○山花委員 それは私は法規制の上から見て、少しおかしいのではないかと思うのです。いわゆる一般公務員というように公務員の幅を広げて参りますと、現在の人事院規則であるとかあるいは一般公務員法であるとかという点で、選挙に関連するある程度の規制が行なわれておると思うのでありますが、その上なお追っかけてこの法律内容規制を盛るお考えですか、いかがでしょうか。
  60. 松村清之

    松村(清)政府委員 国家公務員につきましては国家公務員法及びそれに基づきます人事院規則、地方公務員につきましては地方公務員法、こういうもので公務員の政治的行為について制限が行なわれておりますが、これは公務員の服務上の問題といたしまして規制されておるのでございます。しかしその公務員地位利用によります選挙運動は、単に公務員の服務上の問題であるだけではなくて、それが選挙の自由公正を害することがはなはだしい、そういう意味において、選挙法という法律体系のもとにおいて規制すべきものであると考えるのでございます。
  61. 山花秀雄

    ○山花委員 時間の関係もございますし、同僚議員の方からもっと詳細に質問があろうと思いますので、私は一応この点の質問はこれで保留しておきます。  引き続いてお尋ねしたい点は連座制強化の問題でありますが、御承知のように答申案では、明確に、候補者の父母、配偶者、子及び兄弟姉妹が、買収など悪質選挙違反で刑に処せられた場合は連座の対象にする、そして刑が確定したら自動的に当選は失格する、こういう一つ答申をしておるのでありますが、これが自治省でもだいぶん緩和をされた。われわれはこれを曲げたと言っておりますが、まあ安井大臣の方は多分緩和と言うでありましょう。それからまた党に意見を徴して二転、三転、四転というふうにだんだん緩和されて、われわれから申しますとだんだんひん曲げられて、今日の原案が出て参りました。そこで、今日の原案ではたして連座規定精神が実現できるかどうかという点でお尋ねしたいと思いますが、ある人は、もうここまでくると残るのは精神的影響だけだというようなことで酷評しておりますが、大臣どうお考えになりますか。
  62. 安井謙

    安井国務大臣 連座規定については特にそういったような御批評も承っておるのでありまして、また考え方によって、御批評の側からそういうような点が出るかもしれませんが、私どもはこの連座につきましては、現行法に比べまして今度は相当な拡大強化が行なわれておると思っております。第一に、これは本会議でも申し上げましたように、答申案連座規定は三つの項目になっております。いわゆる総括主宰者の幅を広げるということ、これは取り上げております。それからさらに出納責任者の幅を広げるということ、これも取り上げておるわけでございます。そこで親族縁者という問題になって参りますと、これには、その気持はよくわかるわけでございますが、今日の法律の体系から見ました場合に、実際にいろいろと問題が生じてくるわけでございます。従いましてそういったような観点から、この親類縁者というものは、今まで世間でよく言われておりましたように、候補者の側になって実際上働いておるが、その責任者でないためにのがれておった。こういった問題については、親類縁者といえども普通一般の人と同じように今後連座の対象になることは当然なのであります。それ以外に、それよりさらに軽度の犯罪であっても、当然のこととして連座にひっかけるという点につきましては、私どもこれは憲法上にもやはり疑義があると思います。また諸外国の例を見てみましても、どこにもそういうような親類縁者なるがゆえに取り上げておる例はないのでありまして、そういうような意味から、私どもはこの扱いには非常に慎重を期さざるを得なかった。従いまして、よくイギリス等で連座制は非常にきびしいと言われておりますが、その点につきましても、イギリスなんかの制度を見ましても、非常に免責規定あるいは減票制度といったようなものを採用して補完をしておりまして、これが行き過ぎにならないように、連座については十分な配慮をいたしておる点も考えまして、私ども答申の線は何とか趣旨は生かしたいが、常識上法律概念として認め得るぎりぎりの線にこれを扱ったわけであります。
  63. 山花秀雄

    ○山花委員 この問題につきましては、わが党はわが党として、政府原案に対する修正案を出していきたいと思いますが、そこで問題になりますのは、これは実効がないという点であります。前の三十三年の選挙でも三十五年の選挙でも、あるいは三年前の参議院選挙でも、百日裁判とよく言われております。ところが実際上、百日裁判というのは行なわれていないのが現状なんです。一回目の選挙で違反をやり、二回目の選挙でまた違反をやって当選する。一回目の選挙で、これがもし連座規定適用されるというようなことになりましても、一回目の選挙の任期はもう終わってしまっている。だからこの政府原案でいきますと、おそらく裁判の進行もなく、選挙はもう次の選挙にまたがってしまって、連座規定適用することは私はないと思うのです。これは安井さんもたびたび自分自身で選挙をやっておられますからよくおわかりだと思いますが、これで実効が上がるとお考えになっておられるかどうか。
  64. 安井謙

    安井国務大臣 答申の線におきましても、今の、最初当該選挙で違反を起こした場合に、二回目以降の選挙にまでかかるという趣旨は実はうたわれてないわけであります。今の選挙が非常に裁判がおくれるという点につきましては、できるだけこれは迅速な裁判をやって早く結論を出すというふうになりたいものだと考えております。ただ時効等につきましては、今まで選挙事犯については時効の期間が非常に短かったといったようなものは、今度は一般犯罪と同じように非常に長期にいたしました。そういうような点から考えましても、今度の法案につきましては、私は相当きびしい、実効の上がる規定になっておると考えております。
  65. 山花秀雄

    ○山花委員 何か大臣勘違いされておるのかどうか、実効があるかどうかで、時効の問題じゃありません、今政府原案によると、連座規定で失格という、そういう実効が上がるかどうか、私は上がらないと思うのです。上がらないということになりますと、答申案の尊重なんかごうも考えていないということになるんじゃないですか。そこで、安井大臣は実効が上がるとお考えになっているか。
  66. 安井謙

    安井国務大臣 答申案の線は、今も申し上げましたように、三つのうちの二つは私どもはっきり取り上げておるのであります。最後の点につきまして実効が上がるかどうかという点でありますが、これはその部分に関する限り、答申案のままを取り上げてないことは事実でございますが、それは今までも何回も申し上げましたように、親族縁者だけを対象にして特別の操作をしなければいかぬかどうか、その点に私どもは非常にいろいろと法体系上の疑問を持って処理をしたわけでありまして、連座規定は、何も親族縁者だけを目のかたきにしてやるのが連座規定でないのでありまして、そういったような点につきましては、ほかの点では全部取り上げておりますし、また実効と時効を間違えたと言われますが、時効期間もうんと延ばしておるのでありまして、そういうような意味から、答申の線は明らかに取り上げておるのでありまして、そこから先の実効というものは、やってみてからのお話になろうと思います。ただ親類縁者だけを特別の対象にするという点につきましては、われわれは答申案の線のままではどうしても納得できません。その点については特別の法律的な操作をいたしております。しかし、それは選挙の中の一部なんでありまして、選挙が、それによって実効が上がるとか上がらぬとかいう問題に全部すりかえられるということは、私はちょっと事柄が違うのではないかと思っております。
  67. 山花秀雄

    ○山花委員 いろいろ質疑を重ねて参りたいと思いますが、他に同僚議員からもたくさん質疑の通告が出ておりますので、私はこの程度でやめたいと思いますが、ただいま大臣答弁を聞いておりますと、全く答申案に対する誠意は認められない、私はそう考えております。  なお、私どもは今週中に、政府原案に対して修正案をもって対決していきたいと思います。これを一つこの委員会で十分論議をしていただいて、国会議員としての常識ある結論を出す、そういうことを一つ申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  68. 加藤常太郎

    ○加藤委員長 太田一夫君。
  69. 太田一夫

    ○太田委員 私は、きょうは特に少し趣を変えてみまして、選挙管理委員会の任務、その価値というものを少しお尋ねしてみたいと思います。  まず、逐次雑誌をいただくのですが、「選挙時報」、「選挙——私はあまり俳句が得意でないので、これはおもしろいものだと思って「選挙」という雑誌の俳句をいつも見る。あなたはこれを見て、どこをごらんになりますか。
  70. 安井謙

    安井国務大臣 私はざっと目次を通して、必要だと思う個所は読ましていただきますし、俳句はどうもあまり心得がありませんので、そこのところはあまりよく見ておりません。
  71. 太田一夫

    ○太田委員 選挙局長松村さん、あなたはそちらの一番関心の深い——あなたの随筆が載っていますね。どこどこへ行ったら彼女が迎えてくれたというような随筆が……(笑声)まず「選挙」という雑誌で、どういうところに一番あなたは関心がありますか。
  72. 松村清之

    松村(清)政府委員 私も大臣と同じように目次を見まして、私が関心を持っておる記事だけしか読みません。
  73. 太田一夫

    ○太田委員 大上さん、あなたは常識的に非常にすぐれた人だ、私はその点いつもあなたに敬服しておる。そういう点から見て、この町村、市の出す「選挙時報」、県の選管の連合会が出す「選挙」、これは興味を持ってごらんになったことがありますか。
  74. 大上司

    ○大上政府委員 率直に申し上げますが、表題は見ますが、そのただいまお示しになったような内容については触れたことはございません。
  75. 太田一夫

    ○太田委員 私は国民というものが選挙をどう見ておるかという点について、いつも非常に疑惑を持っているのです。今度連座制の問題とか、政治資金規制法の問題あるいは高級公務員立候補制限の問題、こういう三大目標がクローズ・アップされてきているのも、国民選挙に対する関心の低さというのがこういう問題を発生させたのでしょう、私はそう思うのです。中には非常にすぐれた方は、この選挙をもって非常にバラ色な感想を、あるいは感じを持つ人があります。バラ色の感想を持つ方は、選挙ということによって世の中が清められて進歩して、自分たちの生活がよくなる、こう思っているのです。ところがちょっと考えた人は、どうも選挙なんというものは何回やっても結果は一緒だ、自分を守るのはおれだけだというこの考え方、孤独的な考え方になってしまって、何かすくむ思いをしているのです。中には、そういうことになっている以上は、仕方がないから、来いと言えば行こうか、投票しようと言えばするか、雨が降ればやめようかくらいなことで、どちらかというと非常な低調、無関心さを持っておる者もある。中には、全然選挙なんてだめだ、あんなものをやったって何の価値がある、そんなことに使う金があるならば、学校を建てるときの寄付とかPTAの会費を取らぬでくれ、こういう選挙に対する鋭い抵抗を持っておる層がかなりあるのです。だから選挙に対する国民の観念というものをわれわれはどういうふうに啓発していかなければいけないか、どう指導していかなければいけないかという点が重大問題だと思う。これが常時なされていないから、今日に至っても買収選挙だとか、権力選挙だとかいうようなことが言われる。まことに残念だと思うのですが、大臣、あなたは選挙を重ねるごとに、国民にいかなる観念、感じを与えていくべきとお考えになりますか。もちろん、これは何かしら世の中の進歩の原動力という感じを与えなくちゃとお考えになっていらっしゃると思いますが、その点いかがですか。
  76. 安井謙

    安井国務大臣 まことにごもっともな御説でありまして、これはやはり選挙ごとに、選挙というものに国民の関心を深めていただきまして、そうして実際投票されるのは選挙民であります。候補者や政党が幾らじたばたしましても、選挙民がそっぽを向いておるのでは、これはどうにもなりません。そういった点は今後とも機会あるごとに、またできるだけの方法を通じて公明選挙に対する国民の関心を深めていただきたい、こう思っております。
  77. 太田一夫

    ○太田委員 そうお願いなさるのがあなた方の立場としては正しいし、私たちも、そのあなたの御答弁には同感の意を表しますし、わかるのです。ところが戦後十七年も経まして、今日もなお非常に低級な議論をしなければならない。高級公務員立候補制限の問題が今も山花先生からお話がありましたが、これも皆さんの足元の高級公務員と目される方は、そういうきびしい制限がないために、すでに現実にやっていらっしゃるでしょう。今度参議院全国区の候補者たらんとうわさされておる——本人は知りませんよ、うわさされておる食べものに関する方面の長官をやった方が、長い長い巻紙の印刷物を郵送して、私はどこどこ大学を出て以来どういう官職について、どういうことをしたので、どういう法案の推進力となった。そうして農政関係の方でありますから、今日の農政というものはこういう意味において、私の手柄によって進歩しておるのだ。私はようやく今日時期を得て突然退官をいたしましたが、事務所は東京のどこどこに置いてある。どうぞ来て下さい。もって退官のごあいさつといたしますという活版刷りの長い手紙を郵送していらっしゃる。これはどういうわけでやったかわかりませんよ。それなんか、高級公務員立候補制限というようなことが今日やかましく言われるときに、あなたたち政府の非常に高級官吏といわれている方が、しかも全国区に立候補されるといわれている方が、そういうことをなさるということは、そもそも答申精神などは何を言っているかという気持があるし、公職選挙法なんて抜け穴だらけだ、四大ざる法の一つだ。食管法と、それから独禁法と、もう一つ桃色の何とか法と、それに選挙法を加えて、四大ざる法と言われている。四大ざる法の一つだとみずから高級官吏がとっておられるような、そういう現象が起きてくるということは、私まことに残念だと思うのですが、そういう点どうですか。お気づきになった点はありませんか。
  78. 安井謙

    安井国務大臣 退職したお役人が、退職のあいさつ状を出す、これは私は見方によって必ずしも全面的に否定はできないと思います。結局それが今の常識の範囲内で行なわれておるものかどうか、こういうような形であろうと思います。また、ある団体から推薦されました候補となるべき人が、その公的な機関にも推薦のお礼のポスターなどを張っておる、こういったことも、普通の常識の範囲内かどうかでやはりこれは判断されて、それを越したものについては、今後も厳重に取り締まっていかなければならぬと思っております。
  79. 太田一夫

    ○太田委員 選挙局長いかがですか。もう六月、七月に参議院選挙があることはわかっておる。その前に、選挙に出るために退職をしたと推測される重要なる根拠がある。そこで長々と自分の経歴を書き、金の額ぶちに入れたようなみずからの自己推薦をいたしまして、そしてたくさんの数を選挙区にばらまいたということになれば、これは事前運動じゃありませんか。
  80. 松村清之

    松村(清)政府委員 事前運動になるかどうかと申しますことは、内容がどういうような内容であるか、時期がどういう時期に配られたか、配った範囲がどういう程度のものか、そういう点を総合して判断しなければならないと思いますが、今私、具体的にどういうものであるかは存じませんので、この席でお答えするわけにはいかないと思います。
  81. 太田一夫

    ○太田委員 松村さん、あなたはそうおっしゃるが、私は公職選挙法というのは、実は非常に不備な表現が多いと思うのです。不備な表現が多いので、ざる法となり、またその解釈をめぐっていろいろな判例が出て、あるいはいろいろの紛糾を起こすことがあるのです。今のおっしゃったことでも、判例によれば、解散を見越しての退官あいさつ状を郵送すれば事前運動となることははっきりしておるじゃありませんか。判例集にはちゃんと出ておる。今さらあなたの方が、改選を見越して、選挙があるとわかっておるのに、退官あいさつ状を郵送するということは事前運動とはっきりわかって、断定されておるのを、今さら内容の云々とか、退官あいさつ状だけでは事前運動にならないなんというとんでもないお答えが出るなんということは、専門家としても私はうなずけないのですが、いかがですか。
  82. 松村清之

    松村(清)政府委員 私は先ほど申しましたように、その判例も、おそらくその具体的な事例について総合的に考えた上の判断だと思います。従って、ただ近く選挙があるから、そういう時期に退官あいさつ状を出した、そのことだけで事前運動になる、あるいはならない、こういうことは、一がいに言い切れないと思います。
  83. 太田一夫

    ○太田委員 そういう人がおやりになったことは、そういう言い方によってかばおうとなさることは、公明選挙を推進する本拠の方のおっしゃることじゃない。もし他の人たちがその程度はよかろうと言うなら、それはわかる。あなたたちは常に公明選挙運動の推進の中心となって、公明選挙、公明選挙−ことしは三億円とか予算をふやした、ありがたい、ありがたい、一体そんな考え方でもって、何を啓発するのです。たとえば百二十九条に書いておるではないか。選挙運動の期間というのは、各選挙につき候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければすることはできない。これに反すれば一年以下の禁固または一万五千円以下の罰金ですか、こう書いてある。ところが事前運動というのは、あれも事前運動、これも事前運動という判例が幾多あるのに、有権解釈があるのに、しかもなおかつそういうものが不安定だ、不確定だということは、非常に法の体系としても不備だと思うのですが、どうですかね。
  84. 松村清之

    松村(清)政府委員 私が先ほどから申し上げておりますのは、法律を解釈するに当たっての問題を申し上げておるのでございまして、公明選挙を推進する立場から申しますれば、今事例をあげられましたような長い内容を持った退官あいさつ状のごときは配付されない方が望ましい。だからそういうものはしないように、こういうような運動は私どもとして従来からやっております。ただ法律上これが違反になるかどうかということは、やはり検察当局なり裁判所なり等において、具体的事例によって判断すべきものでございまして、私からこれがどうかと申すことはいたしかねます。
  85. 太田一夫

    ○太田委員 百二十九条の選挙期間というものに違反する行為というのは、もちろんこれは罰則がついておることは御承知の通りでありますが、判例などによりまして、名前だけのポスターでも、それを張ることそのものは事前運動に該当する、違反だということも、はっきりと判例でしておるのです。だから私が申し上げることは、選挙法というものはそれほど難解なんです。難解であり、かつまたざるだ。ところがそういう問題についてあなたの方が常時啓発されるということはない。だから要領のいいものが要領よくのらりくらりと抜け穴を通っておるというのが現状です。そういう現状に対して、あなたたちは粛正の方法を考えなければ相ならない。大体罰則を強化しようとかいろんな制限強化するということは、自由なる選挙、いわゆる選挙の理想には遠ざかるということなんです。遠ざかるということをあなたの方が今やらざるを得ない現実というのは、あなたの方の啓発運動が不足であったということです。その点どうですか。
  86. 松村清之

    松村(清)政府委員 先ほどからお話の事柄は、事前運動というものに該当するかどうかは別といたしまして、こういうようなことが望ましくないことは、これは申すまでもないことでございます。従って私どももこの選挙の啓発にあたりましてはそのようなことのないように、そのことをしないように、こういう方向で啓発関係の仕事に当たっております。
  87. 太田一夫

    ○太田委員 啓発に当たっていらっしゃるけれども、なかなかもってそれが徹底しておらない。(「ざるだからだ」と呼ぶ者あり)ざる法だからそういうことになるのはあたりまえだという議論もあるでしょうけれども、それだけに、そんな変なことにならないように、間違いの起きないように、しかも高級官僚というような方々が歴然たる疑いあることをなさらないように、何かはっきりしなければならないものが出てくるわけでしょう。これはやむを得ないことだというふうにほっておかれたら大へんであって、公明選挙の啓発運動をやっておるのだ、そうして予算はたくさんとりました、予算が三億円ふえましたといっても、選挙が浄化されるということは大間違いです。三億円は一体どう使うものですか、どう使ったらいいのですか。安井大臣どうお考えになりますか。
  88. 安井謙

    安井国務大臣 予算の配分につきましては、都道府県、市町村を通じました選挙管理委員会の活動をできるだけ十分にすること、それからさらに今の民間の公明選挙推進運動にできるだけ援助して、それを民間から盛り上がる力にしていただくようにすること、さらに政府自身もいろいろなマスコミ——新聞、テレビ、ラジオ等を通じまして、これをできるだけ徹底するように今努めておるわけでありまして、来年度に至りましては、でき得れば映画等も利用して、これをできるだけ十分徹底させたいと思っております。しかし先ほどのいろいろなあいさつ状といったようなお話でございますが、私どもこれは程度の問題で、社会常識上の問題でなければならぬと思っております。現に皆さんもお気づきだと思いますが、必ずしもこれは高級公務員に限ったわけではないのでありまして、現在でも東京中の町に、名前だけを書いて、申しわけにスローガンを書いたポスターが町中に張られておる例もございます。また普通の公務員の中で、団体の推薦御礼状といったような形で、あいさつ状を公共の場所に掲示しておる例もあります。しかしこういうものを一々今はたしてここで取り上げて言えるものかどうか、こういう点につきましては、おのずからこれは社会上の常識ということでやらなければなるまいと思うのでありまして、度を過ぎたものにつきましては十分厳重に取り締まっていかなければなるまいと思います。
  89. 太田一夫

    ○太田委員 違反の疑いがあるというのと違反であるというのとは、少し考え方が違いますが、疑いがある、じゃなくて、違反だと断定されておる判例に基づく幾多の行為というものは、世の亀鑑と唱えられるべき人物は少なくともやるべきじゃないと思うんです。そういうことをやられれば、いわゆる事前運動の規制から高級公務員立候補制限ということが当然出てくる。それが一番効果がありますよ、ずいぶん長く巻紙のごときに書いてあるんだから。その長いものをここへ持ち出して本人の名前を出すのはいかにも失礼だから、出さないだけの話なんです。それを皆さんもお考えいただきたい。そういうことはなすべきじゃない。そういうことをなされておる実例が今までもしばしばあったからこそ、今度の答申案というものが出てきたのだと私は思うんです。  そこで、同じように判例のことですが、演説会場で漫画や紙芝居を用いて政権発表を行なう、こういう具体的な例があるのですが、この場合は違反ですか、違反じゃありませんか。
  90. 松村清之

    松村(清)政府委員 大へんむずかしい質問ばかりでなんでございますが、それもその内容なり規模、時期——おそらく選挙運動期間中の問題だと思うのですが、そういうような、状況によりましては利益供与といいますか、そういうものになる場合もあります。しかしこれも具体的事例によってそれぞれ判断すべき問題でありまして、一がいにはこうだと断定はできません。
  91. 太田一夫

    ○太田委員 しからば、会場においてラジオを聞かせた場合はいかがですか。
  92. 松村清之

    松村(清)政府委員 ラジオの場合には、別な意味において問題が出るのではないかと思います。公選法の百五十一条の四に「何人も、この法律規定する場合を除く外、放送設備を使用して、選挙運動のために放送をし又は放送をさせることができない。」とありますから、それが選挙運動のための放送かどうか、その辺むずかしい問題でございますが、これも場合によっては問題になるのではないかと思います。
  93. 太田一夫

    ○太田委員 私はそういうお話を聞こうとは思わないんです。というのは、判例とかあるいは有権解釈というのは確定しているのがある。ところが実際には、地方ではわからないんです。一般選挙運動をやる者には、わからない点が多数あるんです。選挙法というのは御承知の通り、この選挙法を読んだだけではわからないことがたくさんある。だから公明選挙を推進しようとするならば、もっともっと具体的に適切な指導をなされておらないと、今のあなたのような間違った答弁が出てくるんです。ラジオはよろしいということになっているんです。ニュース映画を上映してはいけない、レコードをかけてはいないということになっている。こんなことは常識じゃありませんか。今の話など、ラジオでも有線放送云々というむずかしいことをお考えになるのは、それほど判例というものはむずかしいということです。  そこでさらにあなたにお尋ねすることは、地方選挙があったときに、いろいろな罰則を強化したり、いろいろな判例が出たりいたしますが、それによって引っぱられるのは、主としてどういう人が引っぱられますか。どういう、層といっては何ですが、どういう層がそれに該当して今まで現実に引っぱられておりますか、何かそれについて心当たりがありませんか。おしなべてどういう人がそれで検挙されておりますか。
  94. 松村清之

    松村(清)政府委員 取り締まり当局でございませんので、承知いたしませんが、明白な事犯のある場合につきましては検挙されるものと思います。
  95. 太田一夫

    ○太田委員 大臣、ちょっとあなたにお尋ねしますが、取り締まりというものが非常に公明正大になされるかというと、そうじゃない。今までやられてきたのはそうじゃないのです。それは大物に軽くて小物に重いといいますか、有名な人に対しては非常に手心が加えられ、そうでない者に対してはきびしい。別の言葉で言うならば、与党に対しては寛大であって、野党に対しては厳重である。こういう傾向が今まで顕著です。これは警察が政治的にやるというのではないのです。点数をとらなければならぬから、点数をとるためにそういうことになってくる。一番抵抗の少ないところにいく。悪質な、どんな違反をやったところで、野党の方のはあげていっても、与党の方にはそれは手をつけない、こういう傾向がある。だから警察の点数制というものがどれくらい選挙を毒しておるかということをあなたは知っておるか、参考のために聞いておきたい。
  96. 安井謙

    安井国務大臣 私は、警察の選挙に対する取り締まりが、野党にきびしくて与党に寛大であるとは毛頭考えておりません。今までの実績などを見ましても、これは決してそういうようなことは言えないと思っております。
  97. 太田一夫

    ○太田委員 そうじゃないとおっしゃられなければこの場は過ぎませんから、そうではありませんとお答えになるのは、これはおのずから精神物理学の当然の結論です。私はそういうことに対してこまかく言いません。けれども現実はそうじゃないということです。警察に点数制を課しておるところが私は非常に問題だと思う。警察の点数制というのは問題であります。今まで各地において起きているところの幾多のものが、実は大物というようなのを全然あげておらないから、やはり判例として、あるいはいろいろな違反の統計として御検討になることが非常に片寄っておる。大事な毛のがみなのがされておる。だから先ほど来、連座制がいいの悪いの、いろいろ言われておりますけれども、もし現実に犯罪としてあがっておる、それが全部であるとするならば、連座制くらいのことに対して憲法違反の問題だなどという大きな問題は起きません。そんな大きなものは大してないのだから。のがれておるから、実際あがっておらぬでしょう。もしあれがあがっておらないやつが全部あがっておるときのことを考えるから、連座制がおそろしくなってくるんじゃありませんか。そうじゃありませんか、大臣
  98. 安井謙

    安井国務大臣 いろいろ選挙違反の問題が議論になっておりますのも、たとえば昭和三十五年の選挙違反で、いわゆる大物といわれますか、そういうものも相当あがっておるという例があるので、これはまだ足りないとかなんとか、それは憶測でございまして、私どもこれを云々するわけにはいきませんが、片寄った取り締まりでないということだけは、これは警察当局としても確信を持って申し上げることはできると思っております。
  99. 太田一夫

    ○太田委員 あなたたちの自由民主党のキャッチ・フレーズでありスローガンであった、地方選挙のときの、中央政府と直結する自由民主党の知事候補という、中央政府と直結する何々県知事の何々君という、こういう表現の仕方、これはいかにも私らには、この知事にやはり自由民主党は、中央政府は特段の援助をする、補助金においてあるいは交付金において、特段の援助をするということを暗ににおわせているじゃありませんか、こういうキャッチ・フレーズ自身を与党である自由民主党が掲げておるということが、いかに公明選挙をむずかしくしておるかということでしょう。これについてはどうお考えになりますか。
  100. 安井謙

    安井国務大臣 これは見方がいろいろあるわけでございます。中央と直結する——今の地方の政治につきましても、中央と離れた政治はあり得ない、そういうような意味から、中央と直結するということも、これは私は一つの政策としてあっていいと思います。ただ、それが行き過ぎになって、今言われるような特定の利害誘導をするというようなことになれば、これは厳重に締まらるべきものであると思っております。
  101. 太田一夫

    ○太田委員 それは大臣、利害誘導をもっと具体的に言わなければならない、何々知事を出せばどこどこの橋はすぐにかかるように、来年に回っておる予算をことしにするとかいうようなことを言わなければいけないという、そんなものじゃない。そんなことじゃありませんよ。そう見られるものは、判例で全部いかぬことになっているでしょう。それを、今の中央政治に直結する知事というようなスローガンなんか出した自由民主党の良識を僕は疑うのです。こういうキャッチ・フレーズなどを一向に良心の苛責なしに出すところに、今日の選挙運動規制考えなくちゃならぬ重大な根拠がある、そう思うのですけれども大臣、もう一度その見解を述べて下さい。
  102. 安井謙

    安井国務大臣 選挙のスローガンとか政策とかいうものは、いずれも人民の利益、国民の利益をスローガンにすることは当然でございまするから、そういう意味で、抽象的に国民の利益を標榜するという式のスローガンがあっても私は一向差しつかえないと思います。やはり具体的に利益を誘導するという形のものであるならば、これは締まられるべきものであろうと思います。
  103. 太田一夫

    ○太田委員 まあ選挙法をゆがめる御答弁は、はっきり言って、私はあまり点数を差し上げるわけにはいかぬと思う。選挙法というものはなるべく厳格に解釈して、そうして少なくとも瓜田にくつを結ばずであって、あまり疑いを持たれることはやらない方がいいと思う。今までの選挙というのはあまり一党一派の利害にのみ片寄りまして、そのために、選挙というものが何かしら感じを暗くしておるということは、われわれも大いにするとともに、あなたたちも大いに反省してもらわなければならぬ。われわれも、公明選挙を推進する選挙管理委員会なんかのいろいろな任務などについて、十分関心を持って調査を進めておらなかったことにも何か遺憾な点があるような気がするのですけれども、特に国家公安委員長であり自治大臣であるあなたとしては、そういう点は十分自粛していただくように考えていただかなければならぬと思う。  松村局長さん、今現実にこれからの選挙が、連座規定の問題がだんだん骨抜きにされてきて、そうしてあまり連座は好ましくないとか、罰則は食いたくないとか、当然失格なんということは憲法違反だとかどうとかこうとかいうことで、はっきり言えば、党利党略の個人主義的な考え方がありますけれども、いわゆる勝手な理屈というのは天下に通らない。そこで、松村局長国会議員とか、選挙によって選ばれる者というものは、一体どういう性格を持つのです。国民の代表である、投票した人たちの、自分選挙区の代理者である、こういう点はどうです。
  104. 松村清之

    松村(清)政府委員 それは申し上げるまでもなく、国民全体の代表、そういう観念であることは当然でございます。
  105. 太田一夫

    ○太田委員 そういうことになりますと、この間毎日新聞で世論調査をやりましたけれども、世論調査において、今の選ばれた人たちによって構成されておる内閣に対する評判が悪くなったということに対しては、これはそろそろ解散でも考えなければいけませんね。大臣、どうですか。支持率が下がっちゃったのです。
  106. 安井謙

    安井国務大臣 まあそのときそのときにいろいろな批評なり採点の方法もあろうと思いますが、それが直ちに解散に結びつくものかどうか、これは政局の最高責任者の判断されることであろうと思います。
  107. 太田一夫

    ○太田委員 しかし、とにかくどんな選挙をやってみても、国民がだんだんと選挙に関心を持ち出すようにならなければ、選挙制度をどんなに変えてみたところで、それは画龍点睛を欠くことになろうと思うのです。国民の中に選挙の脱落者がふえておるのです。これをどうやってあなたたちはつなぎとめ、これをさらに向きを変えさせていくか、こういう点ですね。それが先ほどの公明選挙の啓発運動であり、指導運動であろうと思うのですが、そういうことにはっきりしたかまえがなければ、今日の事態に対する対処の仕方としては私は不十分だろうと思う。国民の脱落者というのが増加しておる傾向について、あなたは痛切にお感じになったことはありませんか。
  108. 安井謙

    安井国務大臣 選挙の地区が広がるに従いまして棄権の率が多いという事実があります。これは非常に遺憾なことだと思います。今後ともできるだけ投票率はよくするように最善の努力をいたしたいと思っております。
  109. 太田一夫

    ○太田委員 選挙管理委員会の構成は何人でしたか、松村局長
  110. 松村清之

    松村(清)政府委員 四人でございます。
  111. 太田一夫

    ○太田委員 今度事務員を置くことができるようになりましたが、大体平均何人くらい置かれましたか。
  112. 松村清之

    松村(清)政府委員 都道府県、市町村大体平均いたしまして、十万のところで三人程度でございます。
  113. 太田一夫

    ○太田委員 それによって公明選挙の推進と実現というか——実現するのは、あなたの計算によっては何年先ですか。
  114. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは選挙管理委員の人数とか事務職員の人数とかにあまり関係はないと思います。やはりこの公明選挙連動のやり方が一番大きく左右すると思いますが、申し上げるまでもなく、この公明選挙運動というのは、国民の自覚なり、選挙についての関心なり、政治についての常識なり、そういうものを高めていくわけでございますから、これを五年や六年でこの完全なる効果を期待するわけには参りません。これは十年、二十年、もっと長い月日を待たなければ、理想的な姿には参らない、これは諸外国の例を見ても当然なことでございます。
  115. 太田一夫

    ○太田委員 松村さん、その十年、二十年、いわゆる百年河清を待っていくのでしょう。そういうことになるのです。人間の世の中のことを人間が規制しようとしてもそういうことになるというあなたのお説だと思うのですが、百年河清を待つというのは、のんき過ぎる話だと思うのです。だから、そういうようなことをある程度外科手術をして、そうして一挙に解決するという方法はあるでしょう。たとえば東京都の交通が混雑したら、警察庁は、昼日中は六郷川の橋からこちらへはトラックは入っちゃいけない、路線トラックは入っちゃいけないということでこれを規制して、中の交通秩序を保とうとしている。これは非常にいろいろ問題がありましょうけれども、外科手術でしょう。外科手術をしなければならぬのは、選挙の世界にも同じことが現われているから、十年、二十年、百年だなんということを言ったって仕方がないから、この際、今度選挙が迫っている参議院選挙には、少なくとも公明選挙がやられるのには、何か選挙法というものに大きな規制を加えなければならぬことになるでしょう。よほど思い切った外科的な規制を加えなければ目的を達することができないと思いますが、あなたの所見はどうですか。
  116. 松村清之

    松村(清)政府委員 もちろん、現在の選挙法の不備なところを改正すること、これが選挙の公明化に役立つことは当然でございます。ただ、私は年来、選挙の公明化をはかる基本は、やはり国民の自覚、政治常識の向上、選挙道義の向上、こういうものにあることを痛感いたしておりますものでございますが、そういう意味において、やはりいかに法律を改正いたしましても、一挙に公明選挙というところまで達成するということはむずかしいじゃないか、やはり国民自身の自覚に待つことが基本ではないか、そういうふうに考えております。
  117. 太田一夫

    ○太田委員 このごろ大阪の婦人団体協議会の各位が手紙陳情を出しまして、こういう折に選挙の粛正のために努力されることは大いに期待をしたいと思うが、特に連座制強化すること、公職選挙法の改正を本国会でぜひとも実現すること、この二点を強く訴えてきていらっしゃるわけです。これは今の選挙が非常に腐敗をしておる、暗い、これを何とか直さなければたまらぬという、女性の本能から、直観力から陳情だと思うのですが、少なくとも今度の選挙からそれを何とか手がけていかなければならぬとするならば、本国会でなるべくいい公職選挙法の改正案を作って、そうしてこれを実施する以外に道はない。そういう点から言いましたならば、一番現在問題になっておるのは何かといえば、やはり腐敗選挙だ、金のかかる選挙だ。だから、金のかからないように、選挙公営という思想も盛られておりますけれども一般的に選挙の票を得るための買収行為が非常に多いから、これだけはぜひとも減らさなければならぬ、これだけでも減らそう、こういう点に力点を置いて改正をしなければならぬと思うのですが、あなたの出された案によってその目的は達せられるのですか。
  118. 松村清之

    松村(清)政府委員 私も、現在の選挙のガンは買収、供応であると思っております。従いまして、この政府案におきましても、そういう点に観点を置いて案が作られてあると思いますが、それとともに、先ほど申しましたように、選挙民の側において買収、供応を追放するという気持が大事だと思います。従って、ただいまも民間の公明選挙連盟、その他各都道府県市町村の公明選挙関係の各団体におきましては、買収供応追放という運動を全国的に展開しつつありますが、こういうことによって国民の心を向けていくということが、法律の整備よりも、より大切なのではないか、そういうふうに考えておる次第であります。
  119. 太田一夫

    ○太田委員 そうなりますと、私は地方自治法の不備もあると思うのです。選挙管理委員会が四名にしてあることなどにつきましても、それはいろいろな非常にむずかしい条件があるのだから、むやみにこれをふやすわけにはいかないかもしれませんけれども、四名絶対主義というところにも問題がある。少なくとも、この際、これだけ皆さんのお心がまえがあれば、予算の強化と同時に、陳容の強化ということも考えなくてはならぬと思うのですが、そういうととを全然考えられておらないのはどういうわけですか。
  120. 松村清之

    松村(清)政府委員 選挙管理委員会強化につきましても今度の選挙制度審議会答申が出ておりますが、その答申によりましても、選挙管理委員四名というものについては別に出ておりません。私どもも、四名よりも多くすべきだというふうにも考えておりません。ただ、りっぱな選挙管理委員会を作りますために、選挙管理委員の資格というものにつきまして挙挙制度審議会答申をしております。これはこの通り地方自治法の改正案として今国会に出ております。なお、事務局の整備につきましては、毎年財政の許す範囲におきまして、地方交付税の方で都道府県市町村を通じまして専任職員の充実をはかってきております。
  121. 太田一夫

    ○太田委員 選挙管理委員会にいろいろなことを問い合わせをするが、一向に返事がこない。こういう問題はいいですかと言ったら、選挙ですから、あぶないからやめたらどうですか、そんな返事はないですよ。目の前で県の予算、国の予算などがひもつきで出されて、君の方の町内の何々候補を応援するならば、君の選挙区でこれだけの票がふえるならば、君のところの道路は何百メートル今年繰り上げて舗装してあげるが、どうだ、公然たる誘導が出ておるのに、買収供応、利害誘導罪とはっきりしたものがあるのに、そういうものには、一向にいけないなんということを言われたためしがないのですが、選挙管理委員会の機能を失っているじゃないですか。そんな事務だけをやっておる。
  122. 松村清之

    松村(清)政府委員 これは選挙法の解釈を断定いたしますのは、なかなかむずかしい問題でございまして、選挙管理委員会といたしましても、その土地の選挙管理委員会、そのときの事情によりましては、その場ではっきりと解釈を下すこともむずかしい事情にあると思います。検察当局なり警察当局なりと十分相談をし、また、場合によりましては中央へ照会をして、慎重に検討した上で返事を出す、こういうような形になっておりますので、お話のような事態も所によってはあり得るかと思いますが、これは法律解釈を慎重に断定する上において仕方のないことであろうと思います。
  123. 太田一夫

    ○太田委員 仕方がないことだと言っておけばそれまでかもしれませんけれども、もう少し選挙管理委員会というものを考え直してみる必要があると思うのです。そうしないと、公明選挙推進の中心拠点にはなり得ませんね。それからもう一つは、公明選挙などといったところで、これはたれ幕をどこかにかけ、またポスターをどこかに張って何かコンクールがある、あの程度のものと世人は了承しております。それ以上に進んだことはないから、目の前で大きな買収供応罪が行なわれておるのに、それがあげられたためしがない。そういう幾多の積み重ねの上に、今日公職選挙法の改正案が出てきたのですけれども、今あなたのおっしゃった通りに、なかなかこの解釈もむずかしくて、むずかしいところに持ってきて、今度連座制なんということがさらに回り回ってむずかしくしり抜けになってしまった。まことに残念だと思うのです。  そこで私がもう一つあなたにお尋ねしておきたいことは、警察が選挙取り締まりトラの巻というものをいつも持ってきますが、あれはどういうものですか、だれが作るのですか。
  124. 松村清之

    松村(清)政府委員 私はそのことを存じませんが、おそらく中央の警察当局の方々がいろいろ相談した結果、地方の警察当局が選挙関係を取り締まる基準というようなものをまとめておられるのではないか、そういうふうに推測いたします。
  125. 太田一夫

    ○太田委員 それでは、自治省選挙局長、あなたの方の名において、今日の事態においていろいろな現象が選挙から現われておるならば、こういうふうに気をつけなさい、こういう点は違反ですという積極的な解釈、具体的な解釈を網羅した何か手引きをあなたの方で出されなければならない。それを見せないでいて、さあスピーカーが出過ぎたとか、こまかいところから始まって、そうしてこれは違反だとか、あとでいろいろなことをやっておりますが、そういうようなやり方というものは、あまり明るいやり方ではないですね。あなたの方でそれをお作りになる必要はないですか。これを取り締まり当局に示して、こういう基準でやりなさい、そういうのならばもっと事がわかると思いますが、どうですか。
  126. 松村清之

    松村(清)政府委員 お話の問題は、取り締まり当局のいろいろな取り扱いの基本になる問題でございますから、警察当局において作ったものであろうと思います。また、そういうものを作る過程におきまして、必要の場合には私どもの方に御相談のあるときもあります。そうしてまた、私どもの方におきましても、私ども選挙の公明化の観点から、必要な範囲内の事柄につきましては、選挙のありますことに。パンフレットのようなものにまとめまして、必要なところにお配り申し上げております。
  127. 太田一夫

    ○太田委員 あなたの方の今の取り締まりの基準、法解釈ですね、こういうものは、門外不出の法解釈、門外不出の取り締まり方針というのがあるのですか。
  128. 安井謙

    安井国務大臣 そんなものは私はないと思っております。取り締まりの方針、選挙規則というものは公開されるべきものだと思います。
  129. 太田一夫

    ○太田委員 かりに警察庁において統一したものをお作りになるとするならば、その内容を私どもが要求すれば国会にお出しになる御用意はありますか。
  130. 安井謙

    安井国務大臣 これは作っておるかどうか存じませんが、そういうような一般の資料ならば、当然国会の要求があれば出せる筋のものであると思います。
  131. 太田一夫

    ○太田委員 それで安心をいたしましたが、ほんとうにそれが門外不出のないしょのものであって、選挙民にもだれにも見せてもらえないもので、取り締まり当局の警察当局だけが持っておるものだというようなことになりますと、選挙が暗くなってきて、みんなが選挙にちょっとも手を出せない。たとえば看板が一つ倒れておっても、それに触れると引っぱられそうだから、あの看板はよけて通りましょうというようなことで、全然手を触れないというような無関心さが出る。この国民大多数の無関心さというものが、これは少しひが目かもしれませんが、今の自由民主党の政権においては一番ねらっておるところじゃないか。国民が無関心であれば、選挙というものが自由自在になる、そしてそれが最後には、まかり間違えば民主政治の破滅、独裁政治の方向にいけば大へんなことになると思うのですが、そういうことをあなたは感じておられませんか。
  132. 安井謙

    安井国務大臣 選挙の関心が浅くなるということ、私は特に自由民主党がそんなものを好んでおるとは考えられません。むしろ、投票率が悪いということについては、いつも与党は心配をいたしておるというのが実情でございます。なお、そういった選挙に対していろいろな恐怖心を起こさせないように、そういうような意味におきまして、法律を作るに際しましても、また法律の運用についても、これはやはり周到な用意が要ると思っております。ただ、法律さえきびしくして、何でもかんでも、その目的のためには手段を選ばない、あるいは角をためて牛を殺すというたぐいにならないように、法律自身を出す場合にも、運用にも、十分気をつけなければならぬと思っております。
  133. 太田一夫

    ○太田委員 買収をしたから、その人の側近の者の連座によって当然失格になったところで、角をためて牛を殺すなんというような、そんなことにならぬじゃないですか。逆にその買収や供応を見のがして、腐敗選挙を当然視して、国民の目を選挙からそらさせ、無関心にさせるというところに一番問題がある。それこそ、選挙は何とかやってきたけれども、日本の国政というのは、ますます民主主義から遠ざかって、独裁的になっていく、こういうことになるわけです。そういう点はあなたはお感じになりませんか。取り締まりだけはもっと厳重過ぎるほど厳重であっていいじゃないですか。連座制なんか、なぜもたもたしておるのだとわれわれは思うのです。
  134. 安井謙

    安井国務大臣 やはり法律にはおのずから標準と体系上の常識があろうと思うのでありまして、ただ買収といいましても、その買収の性質にもいろいろございます。それを片っぱしから連座にかけて、本人の当選をすべて失格にするといったような扱いは、私は考えるべきものではない、こう考えております。
  135. 太田一夫

    ○太田委員 それは皆さんの方がわかっておらぬだけの話で、しごくあたりまえになっている。これは方々でずいぶん大がかりな悪らつきわまる買収が山ほど行なわれている。そのような幾多の事例、そして現在の検察当局や警察当局の取り上げない問題が山ほどある。望遠鏡で金の受け渡しをしているのを見ながら、その犯罪があがらないというようなことが各地にあるでしょう。そんなことでは、どんなにきついものを作ってもしれたものだ。法は厳格にしても、取り締まりの方はゆるやかでいい、だから、法ぐらい厳格にしたらどうですか。それを、法がゆるやかで、取り締まりもゆるやかだったら、これは作らぬ方がいいでしょう。選挙局長、いかがですか。
  136. 松村清之

    松村(清)政府委員 政府案は、いろいろ批判はありますが、私どもは、法務省とか法制局、こういうところで十分相談しまして、憲法その他現在の日本の法律にマッチしたそういう案を作っているわけでございまして、別にこれを特にゆるやかにしたとか、そういうことはないのでございます。
  137. 加藤常太郎

    ○加藤委員長 本日はこの程度とし、次会は、明後十六日午前十時三十分より理事会を、午前十一時より委員会を開会いたします。これにて散会いたします。   午後三時四十五分散会