○
關盛説明員 お
手元に、「
公共用地の
取得に伴う
損失補償基準要綱、
昭和三十七年六月二十九日
閣議決定」という
印刷物と、「
公共用地の
取得に伴う
損失補償基準要綱の
施行について」、これも同日付の
閣議了解の
印刷物と、それからそれのもとになりました「
公共用地の
取得に伴う
損失の
補償を円滑かつ適正に行なうための
措置に関する
答申」、この三部の
印刷物を差し上げてございます。実は去る六月二十九日に
閣議におきまして、
損失補償基準に関する
要綱の、つまり大綱にあたるものを
閣議決定されたのでございます。その
施行につきましては、
閣議了解事項という形で同様に
閣議了解がなされたのでございまして、目下この
要綱の線につきまして各省庁において
統一基準を作成する準備を進めておるというのが、現在の段階でございます。この
補償基準要綱の
基礎になりましたものが、御承知の
通りに、
公共用地の
損失の
補償基準を策定するための
審議会が本年の三月末日までにその
審議を終了いたしまして
政府に
答申が行なわれたものでございまして、この
答申の線を尊重いたしまして
要綱ができ上がったのでございます。この
答申に盛られております
事項が今回の
要綱になっておりますからして、従いまして、御
説明を申し上げます
順序は、
答申の方に従いまして、
要綱に触れて御
説明申し上げたい。こういうふうにいたしました方が御理解が十分お願いできるというふうに考えております。従って、
答申について
順序を追いましてごく
概略要綱に触れまして申し上げたいと思います。
まず
答申でございますが、この
答申の三ページから
内容が述べてあるわけでございまして、
答申になりました
事項は、第一といたしましては「
統一的な
損失補償基準の確立」ということでございます。従って、この
統一的な
補償基準を確立するためには、四ページの初めの方にありますように、まず第一に
補償すべき
範囲を明確にすることが必要であるということが述べてございまして、その
補償項目について
補償額算定の
方法の
統一化が必要であるということが第二の問題でございます。そして第三は、そのような
損失補償基準の
実施の面で適正な確保の
措置を考える、こういうことになっております。
そのような体系で、まず第一番目に議論されまして
答申が行なわれましたのが「
補償項目の
整理統一」でございまして、これが四ページの半ば以降に書いてございます。
そこで、問題になりました
項目のまず第一として述べておりますのは「
精神損失に対する
補償」でございます。これは現在
電源開発に伴う水没その他による
損失補償要綱に謝金という
制度があるわけでございますが、この
制度につきましていろいろ論ぜられました結果、この
項目を特別に取り上げる必要はないのではないか、むしろこの
項目は、
社会生活上どうしてもこういう
損失を
補償しなければならないとする場合は、
通常損失として認め得るものは当然その中に入るべきであって、そのような
項目とならないものについては、これは不明確な
補償項目であるから、それ単独で取り上げるのは適当ではない、こういう
趣旨の問題でございます。
それから第二の問題は、
事業損失に対する
補償でございまして、
事業損失に対する
補償につきましては、新たにこの
答申におきましても、
事業が
施行されます場合に、その
施行予定ということによって
付近の一帯の
土地が
低落をする、たとえば
火葬場が来るとかあるいは
終末処理場が予定されるということの結果、その
事業を行なう
場所の
価格が
低落をするというようなことがありますのが、往々見られる現象でございまして、現在の判例、学説は
契約時の
価格、
収用裁決時の
価格によるものでもって
取得するということを
補償金の額の
決定の
基準といたしておりますが、
当該土地を所有する人は、その
土地を他に求めなければなりませんので、このような場合におきましては、現在の
取り扱いとは別に考えなければいかぬ、すなわち、このような場合には、その
事業が行なわれなかったという原状の姿において
価格を
評価すべきである、こういう点がこの
土地の
評価についての現在の
取り扱いと変わった
答申になっておりますから、この点につきましては、お
手元の
要綱の第七条の三項におきましてその
趣旨を成文化いたしておるわけでございます。
次に第二、第三の六ページの
部分は、
残地の問題とそれから
取得せらるべき
土地以外の問題でございます。
残地につきましては、ただいま申しましたようなことも理論上はあり得るのでございますけれども、
残地が
残地としての
価値を喪失するということについては、全体としての
利用価値の減少に伴う
部分は
補償すべきであるけれども、
事業損失の
補償の
対象にはならないということを
答申がうたっておりますので、
要綱の四十一条にはその
規定を設けておるわけでございます。
それから問題は、第三でございまして、これは
事業を行なう
場所そのものではなしに、その
付近地におきまして
工事を
実施しておるとかあるいは
工事の
実施後におきまして非常に騒音が発生する、あるいは日陰になるというような問題あるいは臭気を発する、こういうような問題に対する
対応策はどのようにすべきかということでございます。これは今回の
答申におきましても、
閣議決定の
要綱におきましても、
要綱は四十一条におきまして、さらに
了解事項の第三におきましてこのようなものの
取り扱い方につきましては、
損失補償という
項目で取り上げるべきであるということになっております。
社会生活上受忍すべき
範囲をこえるものにつきましては、
民事訴訟法による
損害賠償というような訴えを提起して初めて行なうということに限ることなく、
現実の
具体の
ケースによりまして、
起業者が
賠償金として支払うべきであるという
処理の仕方でございます。これは今後の
社会の実態から見まして、こういうような
取り扱い方をだんだん拡張することが非常に必要であろうということでございます。
それから第三は、
生活権補償の問題につきましては、
生活権の立て直しについての問題が
現実の問題となるわけでございまして、
生活権という
具体の
権利を設定することはなかなか法律的にもむずかしい点もございますので、
生活権補償という
補償項目は設ける必要は認められないけれども、
公共の
利益となる
事業の
施行に伴って
生活の
基礎を失う者がある場合には、
生活再建の
措置を講ずべきものであるという
答申でございますので、今回の
閣議了解事項の第四におきまして、そのようなことを
決定いたしまして、各方面の
実施についての
協力を求めることの取りきめが行なわれたのでございます。
それから今回の
補償基準におきましては、第七ページのところにありますように、
生活権補償の要求との関連におきまして特に議論されました点は、慣習上認められた
利益に対する
補償というものをどのような
取り扱い方にするかという点でございまして、この(イ)の中ほどに書いてございますように、
権利という
実体法上の
権利ではなくても、
社会通念上
権利と認められる
程度にまで成熟したものにつきましては、これは
現行補償の
基準の中に該当するという
整理の仕方をいたしまして、
補償の
対象にすべきものである、こういう
答申でございまして、従って、この
規定によりまして、
要綱の第二条の第五項におきまして、その
対象として取り上げるべきことを定められておるので、ございます。
それから(ロ)の点は、いわゆる
土地等に
権利を有する者に雇用されている者に対する
補償でございまして、
土地が
取得せられたという場合に、その
土地の上で
事業をやっている人が継続して雇用している
人々に対しましては、
事業が停止もしくは廃止するということによって、いわゆる
失業者としての
保険等の
金額を給付するような
制度がありますけれども、しかし新たに今回の
答申におきましては、まだ
社会政策が十分でない現状におきましては、
離職者補償といたしまして、その企業に雇われている
人々に、再
就職に通常必要とする
期間における
従前の
所得額の
範囲内で適正な額を
基準として
補償すべきであるという新たなる
答申が出て参っておりますので、今回の
要綱の第四十六条におきましては、これらの人に対する再
就職に通常必要とする
期間における
従前の
所得を
補償すべきことを定められておるのでございます。
それから時おり
特別措置法の際にも国会で議論の出ました
生活共同体から分離される者に対する
措置、いわゆる
少数残存者に対する
補償につきましては、
要綱の第四十五条におきましても、その
答申の
趣旨通り、受忍の
範囲をこえるような著しい
損失があり、公平の原則に著しく反するような場合については、
少数分離者に対する
補償は認めるべきであるという形で
結論が出たのでございます。
なお、この
答申におきましては、
追加払いがありますとか
協力奨励金につきましては、
統一的な
補償基準が設定されますならば、
収用契約の
取得の時期の違いによる
物件の
価格の差異はあっても、
補償基準というものが違うということは理論的にはあり得ないので、
追加払いという
制度はおかしいではないか、あるいは
協力奨励金のような場合も、その
あとさきによって
奨励金を出すという
制度は、
統一基準の作成という観点から不合理ではないかという形で
答申がありますので、
追加払いにつきましては、
要綱の第三条、
協力奨励金の
取扱方につきましては、
了解事項の第二において、この
答申の
趣旨通りの
決定をいたしていただいたのでございます。
そのようなことが
補償項目の
統一に関する問題でございまして、第二は、
算定額の
方法の
統一の問題でございます。これにつきましては、
物件の種類によりましていろいろございますので、
土地それから
土地に関する
所有権以外の
権利、それから
営業補償、それから
離作料、
漁業補償というような問題につきまして、個別にその
取り扱いの態度を
答申がきめてありますので、その
結論を要点にして申しますと、まず第一の
土地価格につきましては、
答申の九ページになりますが、従来の
補償基準にはいろいろな
評価の
方法が示されておりますけれども、
土地の正常な
取引価格をもって
基本とすべきであるということに帰着するわけであります。これは
要綱の第七条にその種の
規定が置かれておるわけでございますが、いわゆるこの正常な
取引価格というものは何であるかということをめぐりまして、たとえば
売買実例でありますとかあるいは
収益還元価格でありますとか、あるいは
取得価格及び
投資額、あるいは課税の場合の
評価額、
感情価値、
特殊利用価値、現在の
利用方法、
土地の
附加物、これらについてのそれぞれの
価値は、一面的な、
部分的な理由はあるけれども、それは
評価の点につきましては
統一される
基準ではないということをうたっておりますので、そのような
精神の
規定が盛り込めるように
要綱に挿入してあるわけでございます。
それから
土地に関する
所有権以外の
権利の
評価のうち特に問題になりました点は、
使用貸借による
権利でありまして、この
使用貸借は十一ページのところに(イ)としてございますが、これは
賃借権価格の
一定割合を
中心として定めるべきであるということに
要綱の第十二条で定めておりますが、
答申は三分の一
程度、こう割り切っておりますけれども、これは各
具体の
ケースによっていろいろあろうと思いますので、
要綱は
一定割合というように定められております。それから
占有権につきましては、これはつまり権原のある本権の反映でありますので、いわゆる
不法占有というものに対する
補償を行なう必要はないということを
占有権について
答申がうたっておりますので、
要綱の第十三条においてそのことを
規定しておるわけであります。
それから第三の
営業補償等につきましては、
営業を廃止する場合、
営業を休止する場合、
営業の
規模を縮小する場合につきましてそれぞれ
要綱第三十一条、第三十二条、第三十三条におきましてこの
答申の
規定の
趣旨通りに定められておるわけでございます。
それから
離作料につきましても同様でございまして、
農業を廃止する場合とそれから農地を再
取得するまでの
農業を休止する場合の
措置と、それから
経営規模を縮小する場合、これらにつきましては三十四条、三十五条、三十六条というところにこの
趣旨の
内容を盛った
規定を定めることにいたしたわけでございます。
それから
漁業補償につきましては、特に
漁業権が
取得の
対象といいますか、
譲渡性というものがありませんので、純益を資本還元した額を
基本といたしまして、さらに資源としての漁場の将来性等も勘案いたしまして
評価をするということになった点が、従来の
補償基準の
取り扱い方と変わっております。この詳細につきましては
要綱の十七条、
要綱の三十八条、
要綱の四十条というところに
規定されておるのでございます。
それから建物その他の
物件の移転料につきましては、この
答申の
通りに、移転料の算出の
方法といたしましては
要綱の二十四条、それから
物件の移転に伴いまして法令上施設の改善をすべきことになっている場合の費用につきましては、
補償の
対象と定めることはできないけれども、別途融資のあっせん等を
補償と相まって行なう
生活再建の
措置の中に盛るべきであるということになっておりますので、
閣議の
了解事項の第四においてそのことを定めております。
それから立木
補償につきましては、立木を搬出するところの伐採搬出の費用は、これは
損失と考えるべきものではありませんので、従って
要綱の三十条の第二項におきましては立木を伐採搬出する場合の
損失補償につきましては伐採の適期前に伐採しなければならないということに基づく
損失、及び一時に伐採しなければならないために搬出費が増加した、あるいはまたそのために木材の
価格の
低落を来たすというような場合における
損失を
補償するというように定めることにいたしておるのでございます。
それから第八の空中または地中の使用に対する
補償は、特に国会では線下
補償の問題としていろいろ議論があったところでございます。この最終的な
結論は
要綱の第二十条におきまして空中または地中の使用に対する
補償は年々払いとする場合におきましては
土地の賃料、それから一時払いとする場合におきましては
土地の
価格に、それぞれ
土地の利用が妨げられる
程度に応じて適正に算定した割合を乗じて得た額を
補償するということでございます。
補償金の額の
取り扱い方はそのようになっております。民法の空中または地中の使用権の法律体系が今後新たになれば、これは百パーセント法律的な議論が解決することになりますが、今までのところの
結論をとりまとめたのは、このような結果になっておるのでございます。従って、このような
補償基準はまだ細目がたくさんございますので、
補償のいわゆる
基準の大綱でございますから、この大綱に基づく細目も加えまして、第三にありますように国、
政府機関または
公共団体の行なう
事業につきましてはこの
基準によらなければならないものとするというように、早く必要な
措置を講じなければなりませんので、
了解事項の第一におきましてそのことを
閣議で了解されまして、目下
関係各省におきまして監督する公団、公社等も含めまして、この
補償基準要綱によりまする
実施の
基準を作成中でございます。おおむね本年の九月ごろから新しい
要綱が
実施されるというようになる予定でございます。これらが
公共用地の
取得に伴う
損失補償基準の
要綱でございます。
なお
答申に盛られております
内容は、
公共補償の問題と鑑定
評価制度の問題があったのであります。この
公共補償の問題は大体の大綱を
答申がうたっておりますので、その
答申の
趣旨に従いまして
閣議了解事項の第四におきまして
公共補償について、それから鑑定
評価制度につきましては第五におきまして、ただいま宅地
制度審議会において
審議を進めて、すみやかに
結論を得たくわれわれも考えておりますが、
調査審議をするということに定められております。
以上、
補償基準要綱及び
答申をいただきました建設省といたしましての今日までの協議の
内容と経過の御
説明を申し上げたわけであります。