○坂本
委員 私は、筑後川総合開発計画の一環として行なわれております下筌・松原ダムに対する強烈な反対があるわけでありますが、今下筌ダム用地が土地収用法によって収奪されようとしておるのでありますが、この土地収用の点についても多数の不備欠陥がありますから、その点について質問をいたしたいと思うのであります。
その前に申し上げたいことは、下筌・松原ダムの反対は、筑後川総合開発計画そのものを云々するものではないのでありまして、
建設省が公共のためと称し、すなわちダムによって筑後川の洪水を調節して、その下流の
地域の洪水被害をなくそう、こう主張しておりますが、これは口実でありまして、表面上の
理由にすぎない、これは発電を加えた多目的ダムと称して、電力発電、いわゆる電源開発のためである、こういう主張が数年来の反対の闘争と申しますか、それによりまして、日本における専門科学者の注目するところとなり、その専門科学者の鑑定等によりまして明らかになりつつあるのであります。熊本県側の室原氏ら志屋部落の反対君たちは、筑後川下流住民のためにならない下筌・松原ダム計画には、祖先伝来の土地や
住宅、墳墓の地を犠牲に供すべきではない、こういう
理由のもとで、いわゆる下筌のダム地点、蜂之巣城に立てこもって、死んでも不当な九地建の計画には応ずることはできないと、決死の抵抗をしておる始末であります。国民の所有権すなわち
財産権は、旧憲法二十七条におきましても、その所有権を侵害することはできない、こういうので、所有権を保障しておりましたが、旧憲法時代は、公益という名目で、当時の軍閥、陸海軍用地、飛行場用地等々、強制的に土地の所有権を剥奪して参ったのであります。新憲法もまた、第二十九条におきまして、
財産権を侵してはならないとして保障しておりますが、今回は、この憲法では、公共のためというのがありますから、この公共のためと称して強制権を発動して国民の所有権を剥奪しておる、こういう状態ができておるのであります。しかしながら、新憲法の民主的立場において土地収用法の
改正となり、旧憲法時代に比較いたしまして、国民の所有権、保障された
財産権の守護と申しますか守る立場においては、新憲法は旧憲法の比ではないのであります。しかしながら、やはり例の砂川問題、これは米軍立川飛行場の滑走路の
拡張の問題で、まだその反対が四、五年たっても続けられておりまして、その間滑走路の構築は、砂川町の農民の土地の取り上げに対する非常な抵抗によりまして実現せずにおる始末であります。新島問題は自衛隊の射撃場の設置というところでこれまた国民の
財産権が侵害されようとしており、また下筌事件も、これはいわゆる電力資本が国家権力によって、洪水調節という美名のもとに、あの阿蘇山の奥の静かな、農業、林業に従事しておる素朴な山間の部落民が侵害されて、そしてあの豊かな小国杉の植林、山間の耕地、先祖伝来の
住宅等々を剥奪されようとしておる、こういう状態にあるのであります。従いまして、今や下筌・松原多目的ダムは国家予算数十億を費やして付帯事業が進められ、先ほど申しましたような下筌ダム地点の土地の強制収用が、不当な事業認定によって熊本県収用
委員会において進められておる、こういう状態であります。ところが一方、建設
大臣を相手としますところの事業認定無効の訴訟が東京
地方裁判所に提起せられまして、書面上から見ても不当であるというようなことで、わざわざ東京
地方裁判所の実地検証が数回行なわれ、反対派室原氏らの申請する七名の鑑定人、さらに
建設省側が申請しております六名の鑑定人の鑑定書が提出される、こういうような状態にある。この問題は、冒頭に申し上げましたように、
建設省の不法な計画が専門科学者によって暴露されつつあるのであります。そこで本日は、九地建による下筌ダム地点の強制収用に対する事業認定申請が違法であるという
観点に立ちまして、これに基づきまして正しいと主張せられる
建設省の事業認定処分の点を究明いたしたい、かように存ずるわけであります。
そこで第一にお尋ねいたしたいことは、熊本収用
委員会に提出されておる事業認定申請書を見ますと、土地収用法十六条によって事業認定がなされ——これは十八条の間違いじゃないかと私思うのですが、事業認定申請書には十六条と書いてあります。さらにこの付属事業計画書というのがついておりまするが、これを見ますといわゆる多目的ダム法第四条によるところの本件ダム計画に基づく事業認定申請ではないじゃないか、こういうふうに
考えられるのです。この点は先般
昭和三十七年度の予算の
審議に際しまして、第四分科会において尋ねましたが、どうもはっきりいたしませんから、あらためてここにお聞きしたいのでありますが、収用法
施行規則三条一号による参考書類を事業認定申請書には添付されておるかどうか、まずその点をお聞きしたいと思います。